(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-22
(54)【発明の名称】網状炭素複合材料
(51)【国際特許分類】
C08J 9/28 20060101AFI20220815BHJP
【FI】
C08J9/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021575090
(86)(22)【出願日】2020-06-18
(85)【翻訳文提出日】2022-02-02
(86)【国際出願番号】 US2020038405
(87)【国際公開番号】W WO2020257436
(87)【国際公開日】2020-12-24
(32)【優先日】2019-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500307340
【氏名又は名称】アーケマ・インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】900 First Avenue,King of Prussia,Pennsylvania 19406 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ラミン・アミン-サナイェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジェレミー・ブレズン
(72)【発明者】
【氏名】マーク・オーバート
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA38
4F074AA48
4F074AC02
4F074AG08
4F074CB34
4F074CB47
4F074DA02
4F074DA23
4F074DA47
(57)【要約】
本発明は、網状フィルム複合材料、及び最大80%の気孔率を含み、圧縮後に高い回復を示す3次元の多孔質及び導電性マトリックスとして適切な網状フィルム複合材料を製造する方法を開示する。網状フィルム複合材料は、高降伏応力(すなわち、50ダイン/cm2を超える)を示し、溶媒に溶解した高MW樹脂(すなわち、室温の5%NMPでの溶液粘度が100cpを超える)及び比表面積の高い(すなわち、1m2/gを超える、好ましくは10m2/gを超える)炭素の分散ナノ粒子(例には、導電性炭素、カーボンナノチューブ、グラフェン、活性炭、又はそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。)からなるスラリーをキャスティング及び乾燥することによって製造される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)樹脂及びb)ナノ粒子を含む網状コーティング又はフィルムであって、
前記網状コーティング又はフィルムは連続多孔質構造を有し、前記多孔質構造は10体積%~80体積%の連続細孔であり、前記樹脂の溶液粘度は約100cp~10,000cp、好ましくは100cp~5000cp(NMPでは5wt%、水溶液ポリマーの場合は2wt%、室温で測定)であり、ナノ粒子は炭素系で表面積が1~10000m
2/g、好ましくは1~5000m
2/g、好ましくは1~1000m
2/gであり、前記フィルムは、圧縮され、次に加熱された後に、少なくとも30%、好ましくは50%、好ましくは55%、好ましくは60%、好ましくは70%の厚さ又は気孔率の回復を示す、網状コーティング又はフィルム。
【請求項2】
前記樹脂は、以下からなる群から選択される、請求項1に記載の網状コーティング又はフィルム:ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、PVDFコポリマー、ポリエチレンテトラフルオリドエチレン(PETFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリビニルアルコール(PVOH)、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロースCMC、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸(PMAA)、及びそれらのコポリマー、並びにそれらの組み合わせ。
【請求項3】
平均細孔サイズは500nm未満、好ましくは100nm未満、より好ましくは50nm未満である、請求項1又は2に記載の網状コーティング又はフィルム。
【請求項4】
前記樹脂は、ポリフッ化ビニリデンのホモポリマー又はコポリマーを含む、請求項1に記載の網状コーティング又はフィルム。
【請求項5】
前記樹脂はポリメタクリレートを含む、請求項1に記載の網状コーティング又はフィルム。
【請求項6】
前記樹脂はカルボキシメチルセルロースを含む、請求項1に記載の網状コーティング又はフィルム。
【請求項7】
前記樹脂はポリアクリル酸及び/又はポリメタクリル酸を含む、請求項1に記載の網状コーティング又はフィルム。
【請求項8】
前記ナノ粒子は、グラフェン、カーボンナノチューブ、導電性炭素、活性炭、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の網状コーティング又はフィルム。
【請求項9】
前記ナノ粒子は導電性炭素を含む、請求項1又は2に記載の網状コーティング又はフィルム。
【請求項10】
前記ナノ粒子は活性炭を含む、請求項1又は2に記載の網状コーティング又はフィルム。
【請求項11】
ポリマーとナノ粒子の重量パーセントの比は、80:20~10:90、好ましくは70:30~20:80である、請求項1又は2に記載の網状コーティング又はフィルム。
【請求項12】
前記ナノ粒子の表面積は1~700m
2/g、より好ましくは1~600m
2/gである、請求項1又は2に記載の網状コーティング又はフィルム。
【請求項13】
前記コーティングは、0.1~500μm、好ましくは0.5~100μm、より好ましくは0.5~50μm、より好ましくは0.5~20μmの厚さを有する、請求項1又は2に記載の網状コーティング又はフィルム。
【請求項14】
前記ナノ粒子のサイズは500nm未満、好ましくは200nm未満である、請求項12に記載の網状コーティング又はフィルム。
【請求項15】
前記ナノ粒子のサイズは100nm未満である、請求項12に記載の網状コーティング又はフィルム。
【請求項16】
網状コーティング又はフィルムを作製する方法であって、前記方法は、以下のステップ:
a)溶剤に溶解した樹脂を提供すること(ここで、前記ポリマーは、溶液粘度が約100cp~10000cp、好ましくは100cp~5000cp(NMPでは5wt%、水溶液ポリマーの場合は2wt%の水、室温));
b)ナノ粒子を提供すること(ここで、前記ナノ粒子の表面積は1~10000m
2/gである);
c)前記樹脂溶液と前記ナノ粒子を組み合わせてスラリーを生成すること(ここで、前記ポリマーの重量パーセントとナノ粒子の重量パーセントの比は80:20~5:95である);
d)前記スラリーをキャスティングして、基材上にコーティング又はフィルムを形成すること;
e)形成された前記コーティング又はフィルムを乾燥させること
を含み、
乾燥後の前記コーティング又はフィルムは多孔質構造を有し、前記多孔質構造は10体積%~80体積%の連続細孔であり、
前記スラリーは、50ダイン/cm
2~5000ダイン/cm
2、好ましくは75~3000ダイン/cm
2の降伏応力を示し、前記スラリーの固形分は2~30重量%の固形分、好ましくは2~20重量%の固形分であり、前記フィルムは、圧縮され、次に加熱された後に、少なくとも30%、好ましくは50%、好ましくは55%、好ましくは60%、好ましくは70%の厚さ又は気孔率の回復を示す、方法。
【請求項17】
平均細孔サイズは1000nm未満である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
平均細孔サイズは100nm未満、より好ましくは10nm未満である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記樹脂は、以下からなる群から選択される、請求項16又は17に記載の方法:ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、PVDFコポリマー、ポリエチレンテトラフルオリドエチレン(PETFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリビニルアルコール(PVOH)、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロースCMC、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸(PMAA)、及びそれらのコポリマー、並びにそれらの組み合わせ。
【請求項20】
前記樹脂は、ポリフッ化ビニリデンのホモポリマー又はコポリマーを含む、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項21】
前記樹脂はポリメタクリレートを含む、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項22】
前記樹脂はカルボキシメチルセルロースを含む、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項23】
前記樹脂はポリアクリル酸及び/又はポリメタクリル酸を含む、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項24】
前記ナノ粒子は、グラフェン、カーボンナノチューブ、導電性炭素、活性炭、又はそれらの混合物からなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記ナノ粒子は導電性炭素又は活性炭を含む、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項26】
前記ナノ粒子がグラフェン又はカーボンナノチューブを含む、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項27】
前記溶媒が、水、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン及び炭化水素からなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記溶媒が、NMP、水、アセトン及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、好ましくはNMPである、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記溶媒が水を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記溶媒がNMPを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項31】
前記溶媒及び前記ナノ粒子の両方を含む、形成された前記スラリーの固形分は2~30%、好ましくは2~15重量%である、請求項24に記載の方法。
【請求項32】
前記溶媒及び前記ナノ粒子の両方を含む、形成された前記スラリーの固形分は2~12重量%である、請求項24に記載の方法。
【請求項33】
ポリマーとナノ粒子の重量パーセントの比は、80:20~10:90である、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項34】
ポリマーとナノ粒子の重量パーセントの比は、70:30~20:80である、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項35】
前記ナノ粒子の表面積は1~700m
2/g、より好ましくは1~600m
2/gである、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項36】
前記コーティングが、0.1~100μm、好ましくは0.5~50μm、より好ましくは0.5~20μmの厚さを有する、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項37】
前記ナノ粒子のサイズが500nm未満、好ましくは200ナノメートル未満である、請求項24に記載の方法。
【請求項38】
前記ナノ粒子のサイズが100nm未満である、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項39】
前記フィルムは、圧縮され、次に加熱された後に、少なくとも55%、好ましくは少なくとも60%の厚さ又は気孔率の回復を示す、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項40】
前記網状フィルム又はコーティングは、ウェットオンウェットプロセスの1つのステップで前記基材と同時に直接キャスティングされる、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項41】
請求項16~40のいずれか1項に記載の方法によって作製された網状コーティング又はフィルム。
【請求項42】
請求項1~15及び41のいずれか1項に記載の網状コーティング又はフィルムを含む物品であって、前記物品は、ウェアラブル電子機器又は生物医学センサーのセパレーター、燃料電池の拡散層、リチウムイオン電池又は電気二重層コンデンサのアノード又はカソード、電磁干渉、EMI、又は高周波干渉、RFI、シールド、及び触媒担体などの電気化学デバイスからなる群から選択される、物品。
【請求項43】
請求項1~15及び41のいずれか1項に記載の網状コーティング又はフィルムを含む物品であって、電気化学デバイスを含む物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、網状(多孔質、連続気泡マトリックス構造)フィルム複合材料を製造する方法を開示する。前記複合材料は、導電性複合材料として、燃料電池のガス拡散層として、又は電気二重層コンデンサの高効率電極として適している。
【背景技術】
【0002】
網状フィルム複合材料は、非常に多孔質の低密度固体フィルムである。網状フォームは、ネットのような非常に連続な構造を指す。同様に、網状フィルム複合材料も非常に連続な気泡構造でできており、大きな比表面積や衝撃時の高エネルギー吸収など、それらのバルク対応物と比較して新規な物理的特性を示す。その卓越した強度対重量比により、触媒媒体、触媒担体、エネルギー貯蔵、減衰、構成部品の構築、及び保護コーティングに最適である。しかしながら、十分な量の炭素(>20%)が固体フィルムに組み込まれる場合、導電性を与えるために、フィルムはしばしば不十分な機械的及び熱的安定性を示す。破壊時の伸びがはるかに低く、それは、脆くて破壊しやすく、フォーム又は網状フィルムに変形できないことを意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
薄い多孔質フィルムは、多くの場合、溶融加工可能なプラスチックで作られ、これは、溶液キャスティング又は押し出しによってフィルムを形成し、次に延伸してフィルム内に30~60%の気孔率を生成する。今日の一般的な薄い多孔質フィルム(厚さ100μm未満)は、一般に、ポリプロピレン(融点約160~165℃)、ポリエチレン(融点約110~135℃)、又はそれらのブレンドに基づくものである。例えば、米国特許第4,620,956号及び第5,691,047号は、ポリオレフィン多孔質フィルム又はセパレーターを製造するための溶融押出及び延伸プロセスを開示し、米国特許第8,064,194号及び第8,012,799号は、ポリオレフィン多孔質フィルム又はセパレーターを製造するための溶液キャスティングプロセスを開示している。米国特許出願第2009/0208832号及び第2010/0183907号に開示されているポリフッ化ビニリデン(PVDF)(溶融温度約165~170℃)で作られた多孔質セパレーターも知られている。このような薄い多孔質フィルムの重大な欠点は、高温での寸法安定性が低いこと、又は収縮につながる可能性のある熱的堅牢性の欠如である。さらに、著者の知る限り、気孔率が20%を超え、体積抵抗率が10,000Ω・cm未満の薄い多孔質導電性フィルム(厚さ100μm未満)はない。
【0004】
PVDFは、その優れた電気化学的耐性及びフルオロポリマー間の優れた接着性のために、非水性電解質デバイスのセパレーター用のバインダー又はコーティングとして有用であることが発見されている。セパレーターは、電池のアノードとカソードの間にバリアを形成し、高イオン輸送を実現しながら電子短絡を防ぐ。ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、及びその共重合体は、耐久性のあるコーティング、ワイヤージャケット、リチウムイオン電池のバインダー、化学薬品の配管、連続気泡及び独立気泡フォームなど、多くの用途で使用されている。ただし、高い絶縁性を示すため、導電性になるには30%以上の炭素が必要である。このような高い炭素負荷では、PVDF-炭素複合材料から低密度のフォーム又はフィルムを作成することはほぼ不可能である。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】
図1は、4%の固形分を有するスラリーからキャスティングされた40/60の比率のPVDF/炭素で作られた本発明の複合材料の高解像度写真である。炭素はデンカブラックLi435(デンカ製)であり、PVDFはKynar(登録商標)HSV-1810(Arkema製)。複合材料は120℃のオーブンで30分間乾燥させた。
【発明を実施するための形態】
【0006】
「コポリマー」は、2つ以上の異なるモノマー単位を有するポリマーを意味するために使用される。「ポリマー」は、ホモポリマー及びコポリマーを含むために使用される。樹脂とポリマーは同じ意味で使用される。ポリマーは、均質、不均質であり得、コモノマー単位の勾配分布を有し得る。引用されたすべての参考文献は、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で使用される場合、特に明記されていない限り、パーセントは重量パーセントを意味するものとする。結晶化度及び融解温度は、ASTMD3418に記載されているように、10℃/分の加熱速度でDSCによって測定される。溶融粘度は、232℃でASTMD3835に従って測定され、100sec-1においてkPoiseで表される。ポリマーの希薄溶液粘度と還元粘度は、ASTMD2857に記載されているように室温で測定される。
【0007】
網状フィルム又はコーティングとは、多孔質の連続気泡マトリックス構造を有するフィルム又はコーティングを意味する。「連続気泡」とは、細孔が囲まれていないことを意味する。流体は細孔間を移動できる。ボイドの割合又は気孔率は、連続気泡マトリックスを圧縮するか、密度を測定するか、又はボイドを液体で満たして密度の変化を測定することによって測定できる。好ましくは、ボイドは密度によって測定される。
【0008】
ナノサイズのフィラー又はナノサイズの粒子は、フィラー又は粒子のサイズが1μm未満、好ましくは500nm未満、好ましくは200nm未満であることを意味する。ナノサイズの粒子は100nm未満にすることができる。粒子サイズは、光散乱(NicomやMicrotechの機器など)によって測定された体積平均粒子サイズである。
【0009】
高比表面積粒子とは、粒子の表面積が1m2/gよりも大きく、好ましくは5m2/gよりも大きく、より好ましくは10m2/gよりも大きいことを意味する。好ましくは、1m2/g~10000m2/g、好ましくは、1m2/g~5000m2/g、1m2/g~1000m2/g、より好ましくは1m2/g~700m2/g、さらにより好ましくは10m2/g~500m2/gである。粒子の表面積は5m2/g~700m2/gであり得る。一部の高比表面積粒子は、3次元の分岐構造を有する。これは、大きなアスペクト比の粒子をもたらし得るフラクタル形状と呼ばれることがある。フラクタル形状は、3次元の分岐を持つ集合体である。例えば、導電性炭素構造の一次粒子は、3次元の分岐構造に凝集する可能性がある。これは、緊密に結合された多くの一次粒子で構成されている。
【0010】
高分子量とは、ASTMD2857を使用して、室温(25℃)のNMPにおいて5%で測定される少なくとも100cp、好ましくは100cp~10,000cp、より好ましくは100cp~5000cpの溶液粘度、又は粘度が低下していることを意味し、Rvは、少なくとも0.2dl/g、最大2dl/gである。
【0011】
降伏応力は、流体の流れを開始するために必要な最小のせん断応力である。高降伏応力は、少なくとも50ダイン/cm2、好ましくは100ダイン/cm2より大きく、125ダイン/cm2より大きいものである。降伏応力は最大5000ダイン/cm2、好ましくは最大3000ダイン/cm2であり得る。また、スラリーはキャスティング可能でなければならず、これは、スラリーの溶液粘度が室温で20,000cP未満、好ましくは10,000cp未満であることを意味する。
【0012】
圧縮されてから加熱された後の体積又は気孔率の回復は、圧縮されてから150℃で10分間加熱された後のコーティング又はフィルムの厚さを圧縮前の厚さで割ることによって計算される。
【0013】
本発明は、ナノサイズの細孔を有する網状フィルム複合材料、及びナノサイズの細孔を有する網状フィルム複合材料を作製する方法を提供する。ナノサイズの細孔は、平均細孔サイズが500nm未満、好ましくは2nm~500nmである。本発明はまた、圧縮後、圧縮前の気孔率の少なくとも30%まで気孔率が回復する、ナノサイズの細孔を有する網状フィルム複合材料から作製されたコーティングを提供する。圧縮され、次に加熱された後の体積又は気孔率の回復は、少なくとも30%、好ましくは50%、好ましくは55%、好ましくは60%、好ましくは70%又は元の厚さであり得る。
【0014】
網状フィルム複合材料は、異なるタイプの樹脂及び多種多様な炭素系のナノサイズ粒子を用いて製造することができる。
【0015】
網状フィルム複合材料は、高比表面積粒子と高分子樹脂を溶媒中、室温(25℃)で組み合わせることによって作製され、低い固形分(すなわち、総固形分が30重量%未満、好ましくは20重量%未満、より好ましくは12%未満、さらには10%未満)でも高い降伏応力(50ダイン/cm2を超える)を示すスラリーをもたらす。スラリーをキャストし、高温で乾燥させることにより、ナノサイズの細孔を備えた網状フィルム複合材料を形成する。加熱されたとき(30~180℃、好ましくは80℃以上、より好ましくは110℃以上)の圧縮後のフィルムは、圧縮前の元の気孔率の少なくとも30%(好ましくは、圧縮前の元の気孔率の少なくとも60%、好ましくは50%、好ましくは55%、さらにより好ましくは少なくとも70%)まで気孔率が回復する。
【0016】
驚くべきことに、高比表面積粒子(すなわち、導電性カーボン、カーボンナノチューブ、グラフェンなどのナノサイズのカーボンベースの材料)及び高分子樹脂(例えば、室温のNMPで5%の溶液粘度が100cpを超える高MW-PVDF)、又は高MW-PMMA(粘度が低下し、Rvが0.5dl/gを超える)のスラリー(NMPで作られる)は、低い固形分(すなわち、総固形分が30重量%未満、好ましくは20重量%未満、より好ましくは12%未満、さらには10%未満)でも高い降伏応力(50ダイン/cm2を超える)を示し得ることがわかった。分散粘度が低いため(つまり、室温で10,000cp未満)、キャスティングが容易である。この高降伏応力スラリーをキャスティングし、高温(すなわち、50~180℃、好ましくは80~180℃、好ましくは120℃以上)で乾燥させると、ナノサイズの細孔を有する網状フィルム複合材料が形成された。フィルムは、加熱されたときに圧縮後に気孔率の回復を示した。興味深いことに、これらの網状フィルム複合材料は、室温のカレンダーロールを使用して厚さの半分に圧縮できる。これは、複合材料が少なくとも約50%の気孔率を含むことを単純に示している。さらに予想外なことに、圧縮された複合材料は、例えば120℃のオーブンに入れたり、潜在的な溶媒にさらしたりするなど、単純なポリマー弛緩が行われると、元の高さの50%以上に戻るまで膨張することができる。この反発は、これらの複合材料が機械的に非常に永続的な連続気泡構造を持っていることを示している。ポリマーに対する炭素の比率は大きく変化することができ、炭素含有量が高いほど、より高い気孔率(より低い密度)の複合材料が得られる。
【0017】
炭素フィラーのタイプは、例えば、導電性炭素、カーボンナノチューブ、グラフェン、又はそれらの組み合わせであり得、これで高い電子伝導性を付与する。
【0018】
本発明の一実施形態では、半結晶性である高分子量PVDF(室温でNMPにおいて5%で測定された100cpを超える溶液粘度を有する)が本発明において機能する。
【0019】
PMMA(低減された粘度、Rv、0.5dl/gを超える)、及び高MW PAA(室温のpH7の水中で測定された100から最大1000cp、好ましくは最大5000の溶液粘度を有する)のような高分子量樹脂を使用して、高降伏応力スラリー(50ダイン/cm2を超える)を取得でき、最終的に、PVDFで作られた網状フィルムと同様の特性の網状フィルム複合材料を製造できる。
【0020】
本発明で有用なフィラーの種類は、例えば、導電性炭素、カーボンナノチューブ、活性炭、グラフェン、又はそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない、炭素系の材料である。
【0021】
少量の他のフィラー(0~15重量%、好ましくは10重量%未満)は組成物中に存在し得る。他のフィラーには、例えば、アルミナ、シリカ、BaTiO3、CaO、ZnO、ボヘマイト、TiO2、SiC、ZrO2、ケイ酸ホウ素、BaSO4、ナノクレイ、Pb(Zr、Ti)O3、Pb1-xLaxZryO3(0<x<1、0<y<1)、PBMg3Nb2/3)3、PbTiO3、ハフニア(HfO(HfO2)、SrTiO3、SnO2、CeO2、MgO、NiO、Y2O3、Al2O3、SiO2、セラミック、又はそれらの混合物が含まれる。また、他の有用な有機フィラーは、アラミドフィラーとファイバー、ポリエーテルエーテルケトンファイバー、ポリエーテルケトンケトンファイバー、PTFEファイバー、及びナノファイバー、カーボンナノチューブ、及びそれらの混合物を含むがこれらに限定されない、チョップドファイバーである。
【0022】
樹脂は、高い溶液粘度(すなわち、室温のNMPにおいて5%で測定された100cpより高い)を有するべきである。好ましくは、溶液粘度は、室温のNMPにおいて測定された5%固形分で100~10,000cp、より好ましくは100~5000cpである。水溶性ポリマーの場合、2%の水中において室温(25℃)でpH7で測定すると、溶液の粘度は100cp~10000cpであり、100cp~5000cpであることが好ましい。本出願では、pHは、ポリマーの種類と用途に応じて2~12の範囲で変化する。
【0023】
本発明において有用なポリマー(樹脂)は、以下のホモポリマー及びコポリマーを含むが、これらに限定されない:ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレンテトラフルオリドエチレン(PETFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリ(アルキル)アクリレート、ポリ(アルキル)メタクリレート、ポリスチレン、ポリビニルアルコール(PVOH)、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロースCMC、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸(PMAA)。他の有用なポリマーには、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトン、及びポリエステルが含まれる。
【0024】
ポリフッ化ビニリデン
好ましい実施形態では、ポリマーは、ポリフッ化ビニリデンホモポリマー又はコポリマーである。本明細書で使用される「フッ化ビニリデンポリマー」(PVDF)という用語は、その意味の範囲内で、通常は高分子量のホモポリマー、コポリマー、及びターポリマーのいずれも含む。PVDFのコポリマーは、より柔らかいため(より低いTm、融点及び減少した結晶構造を有する)が特に好ましい。そのようなコポリマーには、少なくとも1つのコモノマーとコポリマー化されたフッ化ビニリデンが含まれる。本発明の最も好ましいコポリマー及びターポリマーは、ポリマー中のすべてのモノマー単位の総重量のうち、フッ化ビニリデン単位が少なくとも50モル%、少なくとも70モル%、好ましくは少なくとも75モル%、より好ましくは少なくとも80モル%、さらにより好ましくは少なくとも85モルを構成するものである。
【0025】
フッ化ビニリデンのコポリマー、ターポリマー及び高級ポリマーは、フッ化ビニリデンを以下からなる群からの1つ又は複数のモノマーと反応させることによって作製することができる:フッ化ビニル;トリフルオロエテン;テトラフルオロエテン;3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン、3,3,3,4,4-ペンタフルオロ-1-ブテン、及びヘキサフルオロプロペンなどの1つ又は複数の部分的又は完全にフッ素化されたα-オレフィン;部分的にフッ素化されたオレフィンヘキサフルオロイソブチレン;パーフルオロメチルビニルエーテル、パーフルオロエチルビニルエーテル、パーフルオロ-n-プロピルビニルエーテル、及びパーフルオロ-2-プロポキシプロピルビニルエーテルなどのパーフルオロビニルエーテル;パーフルオロ(1,3-ジオキソール)及びパーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)などのフッ素化ジオキソール;アリル、部分的にフッ素化されたアリル、又はフッ素化されたアリルモノマー(2-ヒドロキシエチルアリルエーテル又は3-アリルオキシプロパンジオールなど);並びにエテン又はプロペン。いくつかの好ましい実施形態では、コモノマーは、以下からなる群から選択される:テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン、フッ化ビニル、ペンタフルオロプロペン、テトラフルオロプロペン、パーフルオロメチルビニルエーテル、パーフルオロプロピルビニルエーテル。
【0026】
特に好ましいのは、少なくとも約75から最大90モル%のフッ化ビニリデン、及び対応して10~25モル%のヘキサフルオロプロペンから構成されるコポリマーである。フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロペン及びテトラフルオロエチレンのターポリマーもまた、本明細書で具体化されるフッ化ビニリデンコポリマーのクラスの代表である。
【0027】
一実施形態では、フッ化ビニリデンポリマーには、最大50重量%、好ましくは最大20重量%、より好ましくは最大15重量%ヘキサフルオロプロペン(HFP)単位、及び50重量%、好ましくは80重量%、より好ましくは85重量%以上のVDF単位が存在する。電池などの最終用途環境で優れた寸法安定性を備えたPVDF-HFPコポリマーを提供するために、HFP単位を可能な限り均一に分散させることが望ましい。
【0028】
セパレーターコーティング組成物に使用するためのPVDFのコポリマーは、好ましくは、溶融粘度によって測定されるとき高分子量を有する。高分子量とは、ASTM方法D-3835に従って、232℃で100sec-1において測定されたとき、10kilоpoiseを超える、好ましくは20kilоpoiseを超える溶融粘度を有するPVDFを意味する。
【0029】
ポリビニリデン系のポリマーなどのフルオロポリマーは、当技術分野で知られている任意のプロセスによって製造される。乳化及び懸濁重合などのプロセスが好ましく、US6187885及びEP0120524に記載されている。
【0030】
合成ポリアミド
ポリアミドは、分子鎖の繰り返し単位がアミド基によって互いに連結されているポリマー(長い、複数の単位の分子から構成される物質)である。アミド基の一般化学式はCO-NHである。それらは、アミン(NH2)基とカルボキシル(CO2H)基の相互作用によって生成される場合もあり、アミノ酸又はアミノ酸誘導体(分子がアミノ基とカルボキシル基の両方を含む)の重合によって生成される場合もある。
【0031】
ポリアミドの合成は当技術分野で十分に説明されており、例えば、WO15/071604、WO14179034、EP0550308、EP0550315、US9637595がある。
【0032】
ポリアミドは、以下の縮合又は開環生成物であり得る:
-アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、11-アミノウンデカン酸及び12-アミノドデカン酸などの1つ又は複数のアミノ酸、あるいは、カプロラクタム、オエナンソラクタム、ラウロラクタムなどの1つ又は複数のラクタム;及び
-ヘキサメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、ビス(p-アミノシクロヘキシル)メタン、及びトリメチルヘキサメチレンジアミンなどのジアミンと、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸などの二酸の1つ又は複数の塩又は混合物。
【0033】
ポリアミドの例には、PA6、PA7、PA8、PA9、PA10、PA11、及びPA12、ならびにPA6,6のようなコポリアミドが含まれ得る。
【0034】
コポリアミドは、少なくとも2つのアルファ、オメガ-アミノカルボン酸又は2つのラクタム、又は1つのラクタム及び1つのアルファ、オメガ-アミノカルボン酸の縮合から得られる。コポリアミドは、少なくとも1つのアルファ、オメガ-アミノカルボン酸(又は1つのラクタム)、少なくとも1つのジアミン及び少なくとも1つのジカルボン酸の縮合から得られる。
ラクタムの例には、主環上に3~12個の炭素原子を有するものが含まれ、このラクタムは置換され得る。例えば、β、β-ジメチルプロピオラクタム、α、α-ジメチルプロピオラクタム、アミロラクタム、カプロラクタム、カプリラクタム及びラウロラクタムがある。
【0035】
アルファ、オメガ-アミノカルボン酸の例には、アミノウンデカン酸及びアミノドデカン酸が含まれる。ジカルボン酸の例には、アジピン酸、セバシン酸、イソフタル酸、ブタン二酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、スルホイソフタル酸のナトリウム又はリチウム塩、二量体化脂肪酸(これらの二量体化脂肪酸は、少なくとも98%の二量体含有量を有し、好ましくは水素化されている)及びドデカン二酸、及びHOOC-(CH2)10-COOHが含まれる。
【0036】
ジアミンは、6~12個の炭素原子を有する脂肪族ジアミンであり得る。それは、アリール及び/又は飽和環状タイプであり得る。例としては、ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、テトラメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、1,5-ジアミノヘキサン、2,2,4-トリメチル-1,6-ジアミノヘキサン、ジアミンポリオール、イソホロンジアミン(IPD)、メチルペンタメチレンジアミン(MPDM)、ビス(アミノシクロヘキシル)メタン(BACM)、及びビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(BMACM)がある。
【0037】
コポリアミドの例には、以下が含まれる:カプロラクタムとラウリルラクタムのコポリマー(PA6/12)、カプロラクタム、アジピン酸、ヘキサメチレンジアミンのコポリマー(PA6/6-6)、カプロラクタム、ラウリルラクタム、アジピン酸、ヘキサメチレンジアミンのコポリマー(PA6/12/6-6)、カプロラクタム、ラウリルラクタム、11-アミノウンデカン酸、アゼラン酸及びヘキサメチレンジアミンのコポリマー(PA6/6-9/11/12)、カプロラクタム、ラウリルラクタム、11-アミノウンデカン酸、アジピン酸及びヘキサメチレンジアミンのコポリマー(PA6/6-6/11/12)、並びにラウリルラクタム、アゼライン酸、ヘキサメチレンジアミンのコポリマー(PA6-9/12)。
【0038】
ポリアミドには、ポリエーテル-b-ポリアミド及びポリエステル-b-ポリアミドなどのポリアミドブロックコポリマーも含まれる。
【0039】
別のポリアミドは、ArkemaのORGASOL(登録商標)超微細ポリアミド6、12、及び6/12粉末であり、これらは微細多孔質であり、それらの製造プロセスのために連続気泡を有する。これらの粉末の粒子サイズ範囲は非常に狭く、グレードに応じて5~60μmであり得る。5~20のより低い平均粒子サイズが好ましい。
【0040】
アクリル
本明細書で使用されるアクリルポリマーは、メタクリレート及びアクリレートモノマーから形成されるポリマー、コポリマー及びターポリマー、ならびにそれらの混合物を含むことを意味する。メタクリレートモノマー及びアクリレートモノマーは、モノマー混合物の51~100%を構成し得、スチレン、アルファメチルスチレン、アクリロニトリルを含むがこれらに限定されない他のエチレン性不飽和モノマーの0~49%が存在し得る。適切なアクリレート及びメタクリレートモノマー及びコモノマーは、以下を含むが、これらに限定されない:メチルアクリレート、エチルアクリレート及びエチルメタクリレート、ブチルアクリレート及びブチルメタクリレート、イソオクチルメタクリレート及びアクリレート、ラウリルアクリレート及びラウリルメタクリレート、ステアリルアクリレート及びステアリルメタクリレート、イソボルニルアクリレート及びメタクリレート、メトキシエチルアクリレート及びメタクリレート、2-エトキシエチルアクリレート及びメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート及びメタクリレートモノマー。メタクリル酸やアクリル酸などの(メタ)アクリル酸はコモノマーになり得る。アクリルポリマーには、典型的には乳化重合によって作製されるコアシェル構造などの多層アクリルポリマーが含まれる。
【0041】
スチレン
本明細書で使用されるスチレン系ポリマーは、スチレン及びアルファメチルスチレンモノマーから形成されるポリマー、コポリマー及びターポリマー、ならびにそれらの混合物を含むことを意味する。スチレン及びアルファメチルスチレンモノマーは、モノマー混合物の50~100%を構成し得、アクリレート、メタクリレート、アクリロニトリルを含むがこれらに限定されない他のエチレン性不飽和モノマーの0~50%が存在し得る。スチレンポリマーは、以下を含むが、これらに限定されない:ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン-アクリレート(ASA)コポリマー、スチレンアクリロニトリル(SAN)コポリマー、スチレンブタジエンゴム(SBR)などのスチレン-ブタジエンコポリマー、メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン(MBS)、及びスチレン-メチルメタクリレートコポリマー(S/MMA)などのスチレン-(メタ)アクリレートコポリマー。
【0042】
本明細書で使用されるポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びエチレンとプロピレンのコポリマーを含むことを意味する。エチレン及びプロピレンモノマーは、モノマー混合物の51~100%を構成し得、アクリレート、メタクリレート、アクリロニトリル、無水物を含むがこれらに限定されない他のエチレン性不飽和モノマーの0~49%が存在し得る。ポリオレフィンの例には、エチレンエチルアセテートコポリマー(EVA)、エチレン(メタ)アクリレートコポリマー、エチレン無水物コポリマー及びグラフト化ポリマー、プロピレン(メタ)アクリレートコポリマー、プロピレン無水物コポリマー及びグラフト化ポリマーが含まれる。
【0043】
スラリーを作製するための本発明において有用な溶媒には、水、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン及び炭化水素が含まれるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、溶媒は、NMP、水、又はアセトンである。溶媒は、使用されるポリマーを溶解して、目に見える透明な溶液を提供できなければならない。例えば、PVDFはNMPに可溶である。PVDFは水に溶けないため、PVDFに水は使用されない。ポリビニルアルコール(PVOH)、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロースCMC、ポリアクリル酸(PAA)、及びそれらのコポリマーは、一般に水溶性である。
【0044】
他の添加剤
本発明のコーティング組成物は、所望の要求を満たしながら、有効量の他の添加剤(フィラー、レベリング剤、消泡剤、pH緩衝液、及び配合に通常使用されるその他の副成分を含むが、これらに限定されない)をさらに含み得る。
【0045】
本発明のスラリーコーティング組成物において、さらに任意選択で、湿潤剤、増粘剤又はレオロジー調整剤を有することができる。
【0046】
湿潤剤は、コーティング組成物スラリー中に、溶媒100部あたり、0~5部(すべて重量部)、又は0.1~5部、好ましくは0~3部、又は0.1~3部の1つ又は複数の湿潤剤が存在することができる。界面活性剤は湿潤剤として機能することができるが、湿潤剤は非界面活性剤を含み得る。いくつかの実施形態において、湿潤剤は、有機溶媒であり得る。任意選択の湿潤剤の存在により、粉末状物質をスラリーに均一に分散させることができる。有用な湿潤剤は、以下を含むが、これらに限定されない:TRITON(登録商標)シリーズ(Dow製)及びPLURONIC(登録商標)シリーズ(BASF製)、BYK-346(BYK Additives製)などのイオン性及び非イオン性界面活性剤、及び溶媒と相容性のある有機液体(NMP、DMSO、及びアセトン)を含むが、これらに限定されない。
【0047】
増粘剤及び/又はレオロジー調整剤は、コーティング組成物中に、水100部あたり、0~10部(すべて重量部)、好ましくは0~5部の1つ又は複数の増粘剤又はレオロジー調整剤が存在し得る。上記の分散液に増粘剤又はレオロジー調整剤を添加すると、キャスティングプロセスに適切なスラリー粘度を提供しながら、粉末状材料の沈降を防止し、又は減速させる。有機レオロジー調整剤に加えて、無機レオロジー調整剤を単独で又は組み合わせて使用することもできる。
【0048】
総固形分及びナノ粒子フィラーに対する樹脂の比率は、高降伏応力、すなわち、50ダイン/cm2より高く、好ましくは75ダイン/cm2より大きく、さらにより好ましくは100ダイン/cm2より大きく、又は200ダイン/cm2よりさらに大きいスラリーを生成するように選択されるべきである。降伏応力は最大5000ダイン/cm2、好ましくは最大3000ダイン/cm2である。
【0049】
スラリーの固形分は、2重量%~30重量%の固形分、好ましくは2~20重量%、さらにより好ましくは2~12重量%、又は2~10重量%(ポリマーの重量とナノ粒子の重量の合計に基づく)であり得る。
【0050】
炭素は、高い比表面積を有し、溶媒中で良好な分散性を有し、好ましくはフラクタル形状の構造である。
【0051】
いくつかの要因が網状フィルム複合材料の気孔率又は密度に影響を与える可能性があり、例えば、スラリー中の固形物を減少させる(すなわち、10%から6%に)と、数パーセント高い気孔率が生成され、より高い乾燥温度(すなわち、100℃の代わりに180℃)は、気孔率を数パーセント増加させ、MW樹脂が高いほど気孔率が高くなり、表面積の大きいフィラーは気孔率が高くなる。これらすべての調整可能な特性を適用して、特定の用途に望ましい特性を備えた網状フィルム複合材料を製造することができる。
【0052】
用途:
本発明の網状フィルム複合材料は、電流を遅くすることによって、デバイス内のホットスポットを調節することができる。
【0053】
本発明の網状フィルム複合材料は、ウェアラブル電子機器又は生物医学センサー用の非常に柔軟で変形可能な導電性フィルムである。
【0054】
本発明の網状フィルム複合材料は、燃料電池の拡散層として使用することができる。
【0055】
本発明の網状フィルム複合材料は、リチウムイオン電池又は電気二重層コンデンサのアノード又はカソードのホストとして使用することができる。
【0056】
本発明の網状フィルム複合材料は、電磁干渉、EMI、又は高周波干渉、RFI、シールドとして使用することができる。
【0057】
本発明の網状フィルム複合材料は、触媒担体として使用することができる。
【0058】
網状フィルム複合材料は、高温で収縮しないだけでなく、電流を遅くするために、デバイス内のホットスポットで膨張するように調整することもできる。
【0059】
網状フィルム複合材料の別の利点は、異なる表面にキャスティングすることができ、導電性ネットワークとして機能することができることである。柔軟性が高く変形可能な導電性フィルムは、ウェアラブル電子機器や生物医学センサーに役立つ。
【0060】
別の例として、50%の気孔率を有する、PVDFと導電性炭素との網状フィルム複合材料は、例えば、双極板コーティングとして、又は燃料電池の拡散層として、リチウムイオン電池のアノード又はカソードのホストとして、エネルギー貯蔵に用途を有することができ、長いサイクル寿命を提供できる(すなわち、リチウム硫黄電池)。本発明の複合材料は、非常に大きな表面積を有するため、電気二重層コンデンサの高効率電極としても使用することができる。
【0061】
別の例として、50%の気孔率を有する、PVDFと導電性炭素との網状フィルム複合材料は、プロトン交換膜(Proton Exchange Membrane、PEM)、直接メタノール(Direct Methanol、DMFC)及びリン酸(Phosphoric Acid、PAFC)スタックを含む様々なタイプの燃料電池の主要な構成部品であるガス拡散層としての用途を有することができる。ガス拡散層は、燃料電池の膜の両側に配置され、H2、空気/酸素、メタノール、生成ガスなどの反応物が均一に流れるようにする。
【0062】
本発明の網状フィルム複合体は、特にPVDFは耐紫外線性と耐放射線性があるために、電子機器、特に航空学で使用される有効な軽量電磁干渉、EMI、又は高周波干渉、RFI、シールド又はシールドガスケットなどの他の用途を有することができる。
【0063】
網状フィルム複合材料はまた、触媒駆動反応のための高表面媒体を提供し、触媒効率を改善するための触媒担体として使用することができる。触媒は網状フィルムに組み込むことも、その上に堆積させることもできる。
【0064】
用途:
温度に対する応答は、樹脂組成物で調整することができる。例えば、より高いHFP(すなわち、20%HFP)含有量の樹脂からなる網状フィルム複合材料は、同じ膨潤/膨張を得るためにより高い温度を必要とする可能性があるより低いHFP(すなわち8%HFP)含有量を有するものと比較して、より低い温度で膨潤/膨張するので、PVDF樹脂中のHFPコモノマーの量を変える。VDFのコポリマー中のHFPの好ましい重量パーセントは、1~25重量%であるが、より高い重量パーセント(50重量%まで)のHFPを使用することができる。
【0065】
コーティングは、基材上にキャスティングすることができ、基材から除去して別の基材上に配置することができ、あるいは、ウェットオンウェットプロセスで別の層と組み合わせてキャスティングすることができる。
【0066】
網状フィルム複合材料の別の利点は、別の層と同時にキャスティングできること、すなわち、ダブルスロットダイキャスト機を使用して、ウェットオンウェット技術を使用して2つのスラリー層を同時にキャスティングできることである。統合された構造は、その後、乾燥とカレンダーのステップの間に形成される。電気化学デバイス又は濾材の電極セパレーターのような多層複合構造の場合、ウェットオンウェットでキャスティングすることができる。ウェットオンウェット技術を使用すると、2つの層が絡み合い、急激な界面がなくなり、接着性が向上する。網状フィルム又はコーティングは、ウェットオンウェットプロセスの1つのステップで、基材と同時に直接基材にキャスティングすることができる。
【0067】
コーティング
一実施形態では、炭素系のナノ粒子又は繊維は、化学的に(エッチング又は官能化などによって)、機械的に、又は照射によって(プラズマ処理などによって)表面処理され得る。
【0068】
粒子はナノサイズである。好ましくは、繊維は1μm未満の直径を有する。
【0069】
炭素系のナノ粒子は、ポリマー固体及び炭素系のナノ粒子の合計に基づいて、コーティング組成物中に20~95重量%、好ましくは20~90重量%で存在する。炭素系のナノ粒子の含有量が20重量%未満である場合、バインダーポリマーは、粒子間に形成される間質体積を減少させるほど大量に存在することになる。
【0070】
別の例では、網状フィルム複合材料を保護コーティングとして使用することができ、すなわち、ナノサイズのZnO又はナノTiO2が含まれる場合、それは高いUV遮断/保護を示す。
【0071】
網状フィルム複合材料はまた、触媒駆動反応のための高表面媒体を提供し、触媒効率を改善するための触媒担体として使用することができる。触媒は網状フィルムに組み込むことも、その上に堆積させることもできる。
【0072】
コーティング方法
コーティング組成物は、ブラシ、ローラー、インクジェット、ディップ、ナイフ、グラビア、線材、スキージ、フォームアプリケーター、カーテンコーティング、真空コーティング、スロットダイ又はスプレーなどの当技術分野で知られている手段によって、基材の少なくとも1つの表面に塗布することができる。次に、コーティングは、室温又は高温で基材上で乾燥される。最終的な乾燥コーティングの厚さは、0.5~500μm、好ましくは1~100μm、より好ましくは2~50μmの厚さである。
【0073】
いくつかの側面において、網状フィルム複合材料は、別の層と同時にキャスティングすることができる。
【0074】
本発明の側面
側面1:a)樹脂及びb)ナノ粒子を含む網状コーティング又はフィルムであって、
前記コーティング又はフィルムは多孔質構造を有し、前記多孔質構造は10%~80%の連続細孔であり、前記樹脂の溶液粘度は約100cp~10,000cp、好ましくは100cp~5000cp(NMPでは5wt%、水溶液ポリマーの場合は2%の水、室温で測定)であり、ナノ粒子は炭素系で表面積が1~10000m2/g、好ましくは1~5000m2/g、好ましくは1~1000m2/gであり、前記フィルムは、圧縮され、次に加熱された後に、少なくとも30%、好ましくは50%、好ましくは55%、好ましくは60%、好ましくは70%の厚さ又は気孔率の回復を示す、網状コーティング又はフィルム。
側面2:平均細孔サイズは500nm未満、好ましくは100nm未満、より好ましくは50nm未満である、側面1に記載の網状コーティング又はフィルム。
側面3:前記樹脂は、以下からなる群から選択される、側面1又は2に記載の網状コーティング又はフィルム:ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、PVDFコポリマー、ポリエチレンテトラフルオリドエチレン(PETFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリビニルアルコール(PVOH)、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロースCMC、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸(PMAA)、及びそれらのコポリマー、並びにそれらの組み合わせ。
側面4:前記樹脂は、ポリフッ化ビニリデンのホモポリマー又はコポリマーを含む、側面1~3のいずれか1項に記載の網状コーティング又はフィルム。
側面5:前記樹脂はポリメタクリレートを含む、側面1~3のいずれか1項に記載の網状コーティング又はフィルム。
側面6:前記樹脂はカルボキシメチルセルロースを含む、側面1~3のいずれか1項に記載の網状コーティング又はフィルム。
側面7:前記樹脂はポリアクリル酸及び/又はポリメタクリル酸を含む、側面1~3のいずれか1項に記載の網状コーティング又はフィルム。
側面8:前記ナノ粒子は、グラフェン、カーボンナノチューブ、導電性炭素、活性炭、及びそれらの混合物からなる群から選択される、側面1~7のいずれか1項に記載の網状コーティング又はフィルム。
側面9:前記ナノ粒子は導電性炭素を含む、側面1~7のいずれか1項に記載の網状コーティング又はフィルム。
側面10:前記ナノ粒子は活性炭を含む、側面1~7のいずれか1項に記載の網状コーティング又はフィルム。
側面11:ポリマーとナノ粒子の重量パーセントの比は、80:20~10:90、好ましくは70:30~20:80である、側面1~10のいずれか1項に記載の網状コーティング又はフィルム。
側面12:前記ナノ粒子の表面積は1~700m2/g、より好ましくは1~600m2/gである、側面1~11のいずれか1項に記載の網状コーティング又はフィルム。
側面13:前記コーティングは、0.1~500μm、好ましくは0.5~100μm、より好ましくは0.5~50μm、より好ましくは0.5~20μmの厚さを有する、側面1~12のいずれか1項に記載の網状コーティング又はフィルム。
側面14:前記ナノ粒子のサイズは500nm未満、好ましくは200nm未満である、側面1~13のいずれか1項に記載の網状コーティング又はフィルム。
側面15:前記ナノ粒子のサイズは100nm未満である、側面1~13のいずれか1項に記載の網状コーティング又はフィルム。
側面16:網状コーティング又はフィルムを作製する方法であって、前記方法は、以下のステップ:
溶剤に溶解した樹脂を提供すること(ここで、前記ポリマーは、溶液粘度が約100cp~10000cp、好ましくは100cp~5000cp(NMPでは5wt%、水溶液ポリマーの場合は2wt%の水、室温で測定)となる分子量を有する);
ナノ粒子を提供すること(ここで、前記ナノ粒子の表面積は1~10000m2/gである);
前記樹脂溶液と前記ナノ粒子を組み合わせてスラリーを生成すること(ここで、前記ポリマーの重量パーセントとナノ粒子の重量パーセントの比は80:20~5:95である);
前記スラリーをキャスティングして、コーティング又はフィルムを形成すること;
形成された前記コーティング又はフィルムを乾燥させること
を含み、
乾燥後の前記コーティング又はフィルムは多孔質構造を有し、前記多孔質構造は10%~80%の連続細孔であり、
前記スラリーは、50ダイン/cm2~5000ダイン/cm2、好ましくは75~3000ダイン/cm2の降伏応力を示し、前記スラリーの固形分は2~30重量%の固形分、好ましくは2~20重量%の固形分であり、前記フィルムは、圧縮され、次に加熱された後に、少なくとも30%、好ましくは50%、好ましくは55%、好ましくは60%、好ましくは70%の厚さ又は気孔率の回復を示す、方法。
側面17:平均細孔サイズは1000nm未満である、側面16に記載の方法。
側面18:平均細孔サイズは100nm未満、より好ましくは10nm未満である、側面16に記載の方法。
側面19:前記樹脂は、以下からなる群から選択される、側面16~18のいずれか1項に記載の方法:ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、PVDFコポリマー、ポリエチレンテトラフルオリドエチレン(PETFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリビニルアルコール(PVOH)、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロースCMC、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸(PMAA)、及びそれらのコポリマー、並びにそれらの組み合わせ。
側面20:前記樹脂は、ポリフッ化ビニリデンのホモポリマー又はコポリマーを含む、側面16~18のいずれか1項に記載の方法。
側面21:前記樹脂はポリメタクリレートを含む、側面16~18のいずれか1項に記載の方法。
側面22:前記樹脂はカルボキシメチルセルロースを含む、側面16~18のいずれか1項に記載の方法。
側面23:前記樹脂はポリアクリル酸及び/又はポリメタクリル酸を含む、側面16~18のいずれか1項に記載の方法。
側面24:前記ナノ粒子は、グラフェン、カーボンナノチューブ、導電性炭素、活性炭、又はそれらの混合物からなる群から選択される、側面16~23のいずれか1項に記載の方法。
側面25:前記ナノ粒子は導電性炭素又は活性炭を含む、側面16~23のいずれか1項に記載の方法。
側面26:前記ナノ粒子がグラフェン又はカーボンナノチューブを含む、側面16~23のいずれか1項に記載の方法。
側面27:前記溶媒が、水、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン及び炭化水素からなる群から選択される、側面16~26のいずれか1項に記載の方法。
側面28:前記溶媒が、NMP、水、アセトン及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、好ましくはNMPである、側面16~26のいずれか1項に記載の方法。
側面29:前記溶媒が水を含む、側面16~26のいずれか1項に記載の方法。
側面30:前記溶媒がNMPを含む、側面16~26のいずれか1項に記載の方法。
側面31:前記溶媒及び前記ナノ粒子の両方を含む、形成された前記スラリーの固形分は2~15重量%である、側面16~30のいずれか1項に記載の方法。
側面32:前記溶媒及び前記ナノ粒子の両方を含む、形成された前記スラリーの固形分は2~12重量%である、側面16~30いずれか1項に記載の方法。
側面33:ポリマーとナノ粒子の重量パーセントの比は、80:20~10:90である、側面16~32いずれか1項に記載の方法。
側面34:ポリマーとナノ粒子の重量パーセントの比は、70:30~20:80である、側面16~32いずれか1項に記載の方法。
側面35:前記ナノ粒子の表面積は1~700m2/g、より好ましくは1~600m2/gである、側面16~34いずれか1項に記載の方法。
側面36:前記コーティングが、0.1~100μm、好ましくは0.5~50μm、より好ましくは0.5~20μmの厚さを有する、側面16~34いずれか1項に記載の方法。
側面37:前記ナノ粒子のサイズが500nm未満、好ましくは200ナノメートル未満である、側面16~36いずれか1項に記載の方法。
側面38:前記ナノ粒子のサイズが100nm未満である、側面16~36いずれか1項に記載の方法。
側面39:前記フィルムは、圧縮され、次に加熱された後に、少なくとも55%、好ましくは少なくとも60%の厚さ又は気孔率の回復を示す、側面16~36いずれか1項に記載の方法。
側面40:前記網状フィルム又はコーティングは、ウェットオンウェットプロセスの1つのステップで前記基材と同時に直接キャスティングされる、側面16~39いずれか1項に記載の方法。
側面41:側面16~40のいずれか1項に記載の方法によって作製された網状コーティング又はフィルム。
側面42:側面1~15及び41のいずれか1項に記載の網状コーティング又はフィルムを含む物品であって、前記物品は、ウェアラブル電子機器又は生物医学センサーのセパレーター、燃料電池の拡散層、リチウムイオン電池又は電気二重層コンデンサのアノード又はカソード、電磁干渉、EMI、又は高周波干渉、RFI、シールド、及び触媒担体などの電気化学デバイスからなる群から選択される、物品。
側面42:側面1~15及び41のいずれか1項に記載の網状コーティング又はフィルムを含む物品であって、電気化学デバイスを含む物品。
側面43:側面1~15及び41のいずれか1項に記載の網状コーティング又はフィルムを含む物品であって、燃料電池の拡散層を含む物品。
側面44:側面1~15及び41のいずれか1項に記載の網状コーティング又はフィルムを含む物品であって、触媒担体の拡散層を含む物品。
【0075】
試験方法
測定される熔融粘度は、ASTM方法D-3835に従って、232℃で100sec-1において測定される。
【0076】
ナノ粒子の粒子サイズは、Malvern Masturizer 2000粒子サイズ分析器を使用して測定することができる。データは、重量平均粒子サイズ(直径)として示される。
【0077】
粉末/ラテックス平均離散粒子サイズは、レーザー光散乱を使用するNICOMPTM380サブミクロン粒子サイザーを使用して測定することができる。データは、重量平均粒子サイズ(直径)として示される。
【0078】
複合材料の密度は、複合材料の重量を特定のサンプルの体積で割ることによって計算された。最初に複合材料をアルミホイルにキャスティングし、次にキャスティングされた複合材料のスタンプカットによって表面積が1.33cm2のサンプルを作成した。サンプルの厚さは、0.1μmの精度を持つマイクロメーターで測定された。複合材料の重量は、分析天びんを使用して測定され、アルミホイルの重量が差し引かれた。固体材料の密度は、公開されている文献値に基づいている。すなわち、PVDFポリマー=1.78g/cm3、PMMA=1.13g/cm3、CMC=1.6g/cm3である。
【0079】
材料のBET比表面積、細孔容積、及び細孔サイズ分布は、QUANTACHROMENOVA-Eガス収着装置を使用して求めることができる。窒素の吸着と脱着の等温線は77Kで生成される。マルチポイントBrunauer-Emmett-Teller(BET)窒素吸着法は、比表面積を特定するために使用される。非局所密度汎関数理論(Nonlocal Density Functional Theory、NLDFT、N2、77k、スリット細孔モデル)を使用して、細孔容積と細孔サイズ分布を特定する。
【0080】
溶液粘度:ASTM2857
【0081】
降伏応力逆計算:ブルックフィールド粘度計DV-III Ultra、Herschel-Bulkleyモデル方程式に基づくスピンドルCP52計算:
【数1】
τ=せん断応力(D/cm
2)
k=定指数(cP)
n=流動指数
τ°=降伏応力(D/cm
2)
D=せん断速度(1/秒)
(τ=せん断応力(D/cm
2):加えられた応力に平行な1つ又は複数の平面に沿った滑りによって材料の変形を引き起こす傾向がある力。
τ°=降伏応力(D/cm
2):降伏応力は、物体が恒久的に変形するか、流れ始めるため必要がある応力の量である。
k=定指数(cP):流体の性質に関連する。流体の粘性が高くなると、定指数が増加する。
D=せん断速度(1/秒):せん断速度は、流体の1つの層が隣接する層を通過する速度の変化率である。
n=流動指数:複雑な流体の流動挙動は、従来、変形速度とせん断速度の変化に対する粘度依存性に基づいて、ニュートン流体と非ニュートン流体を区別することで特徴付けられる。)
【0082】
τはせん断応力である。粘度を得るには、せん断速度で割る必要がある。計算は次のとおりである。
【数2】
【0083】
式中、kではCentipoiseで表されているため、100で割ってD/cm
2とし、それをτ°に足す必要がある。τ°を逆算すると、方程式は次のようになる。
【数3】
【0084】
体積抵抗率測定:
スラリーを約110μmの厚さのアルミホイル上にキャスティングし、120℃で30分間対流式オーブンに入れた。次に、Instron試験機を3.09cm
2の金メッキ電極とともに使用して、さまざまな圧縮力の下での抵抗率を求める。円形の金でコーティングされた接点は、3M両面テープを使用してInstronの固定具に接着された。抵抗は、横河デジタル抵抗計(755601、4探針)を使用して測定した。接触圧力は、Instron(500Nロードセル)を使用して20N/minの速度で適用される。すべてのデータは手動で記録された。抵抗率は圧力とともに低下し、約100Nがプラトーに達する。
【数4】
A=見かけの接触面積、cm
2
R=測定された抵抗、Ω
δ_eff=有効厚さ
【実施例】
【0085】
例1:異なる導電性炭素を使用し、対照例としてヒュームドアルミナを使用して、PVDF/HFPと50wt%HFP及びPMMA(RV=1.1dl/g)樹脂のPVDF(Kynar 1810)コポリマーの網状フィルム複合材料のカレンダー処理後の圧縮からの回復。
【0086】
【0087】
これは、炭素系の材料には回復が見られるが、Al2O3では回復が見られなかったことを示している。加熱すると、元の体積の30%を超える回復が観察される。
【0088】
例2:網状フィルム複合材料に対する温度の影響:
【0089】
【0090】
これは、50%を超える気孔率又は元の気孔率が加熱時に回復することを示している。
【0091】
抵抗率測定:
スラリーは、NMP(Aldrich製)、導電性カーボンsuper-P(Timcal製)、及び、Kynar(登録商標)HSV-900(Arkema製)、Solef-5130(Solvay製)、Kynar(登録商標)HSV-1810(Arkema製)を含む3つの異なるPVDF樹脂で構成された。3つの複合材料をアルミホイル上にキャスティングし、続いて120℃の対流オーブンで乾燥させた。得られた複合材料は、以下の体積抵抗率を示した。
【0092】
【0093】
抵抗率測定の再現性は比較的良好であるように思われ、100(Ω・cm)を超える差は顕著であると見なすべきである。
【手続補正書】
【提出日】2022-02-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)樹脂及びb)ナノ粒子を含む網状コーティング又はフィルムであって、
前記網状コーティング又はフィルムは連続多孔質構造を有し、前記多孔質構造は10体積%~80体積%の連続細孔であり、前記樹脂の溶液粘度は約100cp~10,000cp、好ましくは100cp~5000cp(NMPでは5wt%、水溶
性ポリマーの場合は2wt%、室温で測定)であり、ナノ粒子は炭素系で表面積が1~10000m
2/g、好ましくは1~5000m
2/g、好ましくは1~1000m
2/gであり、前記フィルムは、圧縮され、次に加熱された後に、少なくとも30%、好ましくは
少なくとも50%、好ましくは
少なくとも55%、好ましくは
少なくとも60%、好ましくは
少なくとも70%の厚さ又は気孔率の回復を示す、網状コーティング又はフィルム。
【請求項2】
前記樹脂は、以下
のホモポリマーまたはコポリマーからなる群から選択される、請求項1に記載の網状コーティング又はフィルム:ポリフッ化ビニリデン(PVDF)
、ポリエチレンテトラフルオリドエチレン(PETFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリ
(アルキル)アクリレート、ポリ
(アルキル)メタクリレート、ポリスチレン、ポリビニルアルコール(PVOH)、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロースCMC、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸(PMAA)
、並びにそれらの組み合わせ。
【請求項3】
平均細孔サイズは500nm未満、好ましくは100nm未満、より好ましくは50nm未満である、請求項1又は2に記載の網状コーティング又はフィルム。
【請求項4】
前記樹脂は、ポリフッ化ビニリデンのホモポリマー又はコポリマーを含む、請求項1
~3のいずれか1項に記載の網状コーティング又はフィルム。
【請求項5】
前記樹脂はポリメタクリレートを含む、請求項1
~3のいずれか1項に記載の網状コーティング又はフィルム。
【請求項6】
前記樹脂は
カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル
酸又はポリメタクリル酸
のうちの少なくとも1つを含む、請求項1
~3のいずれか1項に記載の網状コーティング又はフィルム。
【請求項7】
前記ナノ粒子は、グラフェン、カーボンナノチューブ、導電性炭素、活性炭、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1
~6のいずれか1項に記載の網状コーティング又はフィルム。
【請求項8】
ポリマーとナノ粒子の重量パーセントの比は、80:20~10:90、好ましくは70:30~20:80である、請求項1
~7のいずれか1項に記載の網状コーティング又はフィルム。
【請求項9】
網状コーティング又はフィルムを作製する方法であって、前記方法は、以下のステップ:
a)溶剤に溶解した樹脂を提供すること(ここで、前記ポリマーは、溶液粘度が約100cp~10000cp、好ましくは100cp~5000cp(NMPでは5wt%、水溶
性ポリマーの場合は2wt%の水、室温)
である);
b)ナノ粒子を提供すること(ここで、前記ナノ粒子の表面積は1~10000m
2/gである);
c)前記樹脂溶液と前記ナノ粒子を組み合わせてスラリーを生成すること(ここで、前記ポリマーの重量パーセントとナノ粒子の重量パーセントの比は80:20~5:95である);
d)前記スラリーをキャスティングして、基材上にコーティング又はフィルムを形成すること;
e)形成された前記コーティング又はフィルムを乾燥させること
を含み、
乾燥後の前記コーティング又はフィルムは多孔質構造を有し、前記多孔質構造は10体積%~80体積%の連続細孔であり、
前記スラリーは、50ダイン/cm
2~5000ダイン/cm
2、好ましくは75~3000ダイン/cm
2の降伏応力を示し、前記スラリーの固形分は2~30重量%の固形分、好ましくは2~20重量%の固形分であり、前記フィルムは、圧縮され、次に加熱された後に、少なくとも30%、好ましくは
少なくとも50%、好ましくは
少なくとも55%、好ましくは
少なくとも60%、好ましくは
少なくとも70%の厚さ又は気孔率の回復を示す、方法。
【請求項10】
前記樹脂は、以下
のホモポリマーまたはコポリマーからなる群から選択される、請求項
9に記載の方法:ポリフッ化ビニリデン(PVDF)
、ポリエチレンテトラフルオリドエチレン(PETFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリ
(アルキル)アクリレート、ポリ
(アルキル)メタクリレート、ポリスチレン、ポリビニルアルコール(PVOH)、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロースCMC、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸(PMAA)
、並びにそれらの組み合わせ。
【請求項11】
前記樹脂は、ポリフッ化ビニリデンのホモポリマー又はコポリマーを含む、請求項
9に記載の方法。
【請求項12】
前記樹脂はポリメタクリレート
のホモポリマー又はコポリマーを含む、請求項
9に記載の方法。
【請求項13】
前記樹脂は
カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル
酸又はポリメタクリル酸
のうちの少なくとも1つのホモポリマー又はコポリマーを含む、請求項
9に記載の方法。
【請求項14】
前記ナノ粒子は、グラフェン、カーボンナノチューブ、導電性炭素、活性炭、
及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項
9~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記溶媒及び前記ナノ粒子の両方を含む、形成された前記スラリーの固形分は2~30
重量%、好ましくは2~15重量%である、請求項
9~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
ポリマーとナノ粒子の重量パーセントの比は、80:20~10:90である、請求項
9~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記ナノ粒子のサイズが500nm未満、好ましくは200ナノメートル未満である、請求項
9~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記フィルムは、圧縮され、次に加熱された後に、少なくとも55%、好ましくは少なくとも60%の厚さ又は気孔率の回復を示す、請求項
9~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記網状フィルム又はコーティングは、ウェットオンウェットプロセスの1つのステップで前記基材と同時に直接キャスティングされる、請求項
9~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
請求項1
~8のいずれか1項に記載の網状コーティング又はフィルムを含む物品であって、前記物品は、ウェアラブル電子機器又は生物医学センサーのセパレーター、燃料電池の拡散層、リチウムイオン電池又は電気二重層コンデンサのアノード又はカソード、電磁干渉、EMI、又は高周波干渉、RFI、シールド、及び触媒単体などの電気化学デバイスからなる群から選択される、物品。
【国際調査報告】