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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-22
(54)【発明の名称】網状固体電解質セパレーター
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/446 20210101AFI20220815BHJP
   H01M 50/449 20210101ALI20220815BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20220815BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20220815BHJP
   H01M 50/426 20210101ALI20220815BHJP
   H01M 50/42 20210101ALI20220815BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20220815BHJP
   H01M 50/463 20210101ALI20220815BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20220815BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20220815BHJP
   H01G 11/52 20130101ALI20220815BHJP
【FI】
H01M50/446
H01M50/449
H01M50/489
H01M50/403 D
H01M50/426
H01M50/42
H01M50/414
H01M50/463 B
H01M50/443 M
H01M50/434
H01G11/52
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021575091
(86)(22)【出願日】2020-06-18
(85)【翻訳文提出日】2022-02-08
(86)【国際出願番号】 US2020038397
(87)【国際公開番号】W WO2020257430
(87)【国際公開日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】62/863,602
(32)【優先日】2019-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500307340
【氏名又は名称】アーケマ・インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】900 First Avenue,King of Prussia,Pennsylvania 19406 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ラミン・アミン-サナイェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジェレミー・ブレズン
(72)【発明者】
【氏名】マーク・オーバート
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン・コレット
【テーマコード(参考)】
5E078
5H021
【Fターム(参考)】
5E078AA10
5E078AA11
5E078AB02
5E078CA02
5E078CA07
5E078CA10
5E078CA12
5E078CA19
5E078CA20
5H021BB12
5H021CC04
5H021CC07
5H021EE02
5H021EE03
5H021EE05
5H021EE06
5H021EE08
5H021EE10
5H021EE11
5H021EE15
5H021HH00
5H021HH01
5H021HH03
5H021HH04
(57)【要約】
本発明は、固体電池の電解質及びセパレーターの両方として適切である網状固体電解質/セパレーター(RSES)を製造する方法を開示する。網状複合材料は、高降伏応力(50ダイン/cm2以上)を示し、比表面積の高い(すなわち、1m2/gを超える、好ましくは10m2/gを超える)固体電解質のナノ粒子が分散した、LLZO、LSP、LIPON又はその誘導体を含むがこれらに限定されない溶媒に溶解した高MW樹脂(室温のNMPで5%で100cpを超える溶液粘度を有する)で構成されるスラリーのキャスティング及び乾燥によって製造される。この網状の固体電解質/セパレーターは、優れたサイクル特性と高いイオン伝導性を示し、リチウムデンドライトの浸透に抵抗し、高温(最大140℃)で高い寸法安定性(10%未満の収縮)を維持する。さらに、本開示は、電解質及びセパレーターの両方として機能するそのような網状フィルム複合材料を含む電気化学セルに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)樹脂及びb)ナノ粒子を含む網状コーティング又はフィルムであって、
前記コーティング又はフィルムは連続多孔質構造を有し、前記多孔質構造は10体積%~80体積%の連続細孔であり、前記樹脂の溶液粘度は約100cp~10,000cp、好ましくは100cp~5000cp(NMPでは5wt%、水溶液ポリマーの場合は2%の水、室温)であり、前記ナノ粒子はリチウム系で導電性であり、表面積は1~1000m2/gである、網状コーティング又はフィルム。
【請求項2】
平均細孔サイズは500nm未満、好ましくは100nm未満、より好ましくは50nm未満である、請求項1に記載の網状コーティング又はフィルム。
【請求項3】
前記樹脂は、以下からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の網状コーティング又はフィルム:ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、PVDFコポリマー、ポリエチレンテトラフルオリドエチレン(PETFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリビニルアルコール(PVOH)、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロースCMC、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸(PMAA)、及びそれらのコポリマー、並びにそれらの組み合わせ。
【請求項4】
前記樹脂は、ポリフッ化ビニリデンのホモポリマー又はコポリマーを含む、請求項1又は2に記載の網状コーティング又はフィルム。
【請求項5】
前記樹脂は、ポリメタクリレート及び/又はカルボキシメチルセルロースを含む、請求項1又は2に記載の網状コーティング又はフィルム。
【請求項6】
前記樹脂はポリアクリル酸を含む、請求項1又は2に記載の網状コーティング又はフィルム。
【請求項7】
前記ナノ粒子は、以下からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の網状コーティング又はフィルム:Li7La3Zr212(LLZO)、Li3PS4(LSP)、Li6PS5X(X=Cl、Br、又はI)(リチウムアルギロダイト)、リチウムリン酸窒化物(Lipon)、Li2+2xZn1-xGeO4(X=0.55)(LISICON系)、Li0.34La0.51TiO3(ペロブスカイト系)、ドーピングされたLLZO、又はそれらの混合物。
【請求項8】
前記ナノ粒子はLLZOを含む、請求項1又は2に記載の網状コーティング又はフィルム。
【請求項9】
前記ナノ粒子はLSP又はLIPONを含む、請求項1又は2に記載の網状コーティング又はフィルム。
【請求項10】
ポリマーと前記ナノ粒子の重量パーセントの比は、80:20~10:90、好ましくは70:30~20:80である、請求項1又は2に記載の網状コーティング又はフィルム。
【請求項11】
前記ナノ粒子の表面積は1~700m2/g、より好ましくは1~600m2/gである、請求項10に記載の網状コーティング又はフィルム。
【請求項12】
前記コーティングは、1~300μm、好ましくは1~100μm、より好ましくは2~50μmの厚さを有する、請求項1又は2に記載の網状コーティング又はフィルム。
【請求項13】
前記ナノ粒子のサイズは500nm未満、好ましくは200nm未満である、請求項1又は2に記載の網状コーティング又はフィルム。
【請求項14】
網状コーティング又はフィルムを作製する方法であって、前記方法は、以下のステップ:
a)溶剤に溶解した樹脂を提供すること(ここで、前記ポリマーは、溶液粘度が約100cp~10,000cp、好ましくは100cp~5000cp(NMPでは5wt%、水溶液ポリマーの場合は2wt%の水、室温)となる分子量を有する);
b)ナノ粒子を提供すること(ここで、前記ナノ粒子の表面積は1~1000m2/gである);
c)前記樹脂溶液と前記ナノ粒子を組み合わせてスラリーを生成すること(ここで、前記ポリマーの重量パーセントとナノ粒子の重量パーセントの比は80:20~5:95である);
d)前記スラリーをキャスティングしてコーティング又はフィルムを形成すること;
e)形成された前記コーティング又はフィルムを乾燥させること
を含み、
乾燥後の前記コーティング又はフィルムは多孔質構造を有し、前記多孔質構造は10体積%~80体積%の連続細孔であり、
前記スラリーは、50ダイン/cm2~5000ダイン/cm2、好ましくは75~3000ダイン/cm2の降伏応力を示し、前記スラリーの固形分は2~30重量%の固形分、好ましくは2~20重量%の固形分である、方法。
【請求項15】
前記樹脂は、以下からなる群から選択される、請求項14に記載の方法:ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、PVDFコポリマー、ポリエチレンテトラフルオリドエチレン(PETFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリビニルアルコール(PVOH)、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロースCMC、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸(PMAA)、及びそれらのコポリマー、並びにそれらの組み合わせ。
【請求項16】
前記樹脂は、ポリフッ化ビニリデンのホモポリマー又はコポリマーを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
平均細孔サイズは1000nm未満、より好ましくは500nm未満である、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項18】
前記ナノ粒子は、以下からなる群から選択される、請求項14又は15記載の方法:Li7La3Zr212(LLZO)、Li3PS4(LSP)、Li6PS5X(X=Cl、Br、又はI)(リチウムアルギロダイト)、リチウムリン酸窒化物(Lipon)、Li2+2xZn1-xGeO4(X=0.55)(LISICON系)、Li0.34La0.51TiO3(ペロブスカイト系)、ドーピングされたLLZO、又はそれらの混合物。
【請求項19】
前記溶媒及び前記ナノ粒子の両方を含む、形成された前記スラリーの固形分は2~15重量%である、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項20】
前記網状のフィルム又はコーティングは、ウェットオンウェットプロセスの1つのステップで前記基材と同時に直接キャスティングされる、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項21】
請求項1~13のいずれか1項に記載の網状コーティング又はフィルムを含む電池。
【請求項22】
側面1~13のいずれか1つの網状コーティング又はフィルムを含む物品であって、電気化学デバイスである物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学セルのセパレーターとして適切な網状(多孔質、連続気泡マトリックス構造)フィルム複合材料を製造する方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は長い道のりを歩んできており、輸送の多くの要求を満たすことができるが、リチウムイオン電池セルの液体有機電解質は反応性が高く可燃性であるため、安全性を改善する必要がある。したがって、液体電解質をより堅牢で不燃性の固体リチウムイオン伝導性材料に置き換えることへの関心が高まっている。さらに、固体電解質材料は、より堅牢なセル動作を可能にするだけでなく、最高の体積エネルギー密度を提供するリチウム金属アノードの統合を容易にする。固体電解質とリチウム金属アノードの両方を組み合わせると、EV用途の劇的なコスト削減、望ましい密度、及びサイクル寿命の要求を満たすことができる。
【0003】
リチウム金属アノードを備えた固体リチウムイオン導体の使用に関連するいくつかの未解決の課題がある。主な問題は、リチウムデンドライトの形成につながる可能性のある不均一な界面リチウム堆積;特に固体電解質とカソード及びアノードとの界面での低いイオン伝導度;カソード又はアノードの界面での低い酸化還元安定性、及び特にリチウム金属アノードの膨張/収縮に対応するに不十分な機械的強度と柔軟性の両方である。これらの課題は、これまでのところ、輸送及びエネルギー貯蔵分野での全固体電池の大規模な適応を妨げてきた。
【0004】
固体電池は、リチウムイオン又はリチウムポリマー電池に見られる液体又はポリマー電解質の代わりに、固体電極及び固体電解質を使用する電池技術である。充電と放電のサイクル中に、リチウムデンドライトはリチウム金属表面から電解液を通って徐々に成長し、最終的に正極に接触する。これにより、電池の内部短絡が発生し、比較的短いカレンダー寿命の後に電池が使用できなくなる。リチウムデンドライトの形成は、電池のクーロン効率を低下させる可能性もある。さらに、リチウム電極のサイクルによって「こけの生えた」リチウム堆積物が生じ、それが負極から外れる可能性があり、それによって電池の容量が減少する。リチウムデンドライトの成長を防ぐ試みのほとんどは、成功しなかったか、商業的に実用的ではなかった。
【0005】
電解質/セパレーター複合材料を調製するための典型的なアプローチは、ポリマーバインダーをセラミックと混合し、スラリーをテープキャスティングして、セラミック粒子がポリマーマトリックス中に分散した可撓性フィルムを作製することに基づく。しかし、セラミック粒子の非隣接ネットワークは、リチウムイオンをポリマーマトリックス全体に拡散させ、全体的なイオン伝導度を制限する。
【0006】
また、ガラス又はセラミック材料から作られた無機不織布、又はセルロースポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどの有機不織布などの不織布、及び/又はエンジニアリング樹脂に基づく既知のセパレーターが存在する(米国特許第8,936,878号及び第9,412,986号)。
【0007】
複合材料における浸透を増加させるために、エレクトロスピニングされたナノファイバーが試された(米国特許第9,180,412号)。エレクトロスピニングされたナノファイバーの使用は、ポリマーマトリックス内のセラミックネットワークの長さを増やす別の方法である。しかしながら、ナノファイバーは通常、膜面に沿って配向されており、電池用途の伝導方向に沿って、すなわち膜面に垂直に、連続的なセラミック浸透ネットワークを提供することができない。ナノファイバーはまた、ポリマーマトリックス内にランダムに分布する傾向があり、その結果、高いイオン伝導性に到達するうえで有害な凝集及び抵抗性相互接続が生じる。
【0008】
リチウムイオン電池用のセパレーターは、多くの場合、溶融加工可能なプラスチックで作られ、溶液キャスティング又は押し出しによってフィルムを形成し、次に延伸してフィルム内に30~60%の気孔率を生成する。今日の一般的なセパレーターは、一般に、ポリプロピレン(融点約160~165℃)、ポリエチレン(融点約110~135℃)、又はそれらのブレンドに基づくものである。F、これらの純粋な多孔質ポリマーセパレーターは、リチウム金属アノードを備えた電池で使用される場合、リチウムデンドライトの浸透を受けやすく、セル内で短絡を引き起こす可能性があることが知られている。したがって、それらは本質的に安全であるとは見なされない。
【0009】
PVDFは、フルオロポリマーの中でも、その優れた電気化学的耐性及び優れた接着性のために、非水性電解デバイスにおけるバインダーとして、及びセパレーターのコーティングとして有用であることが発見されている。セパレーターは、電池のアノードとカソードの間にバリアを形成し、高イオン輸送を実現しながら電子短絡を防ぐ。
【0010】
ガーネット型LLZOは、2つの安定した結晶形で存在し、立方相は非常に安定であり、イオン伝導度が非常に低く(~10-6S・cm-1)、立方相は無秩序なLiサイトを有することが発見されており、その結果、室温ではるかに高いバルクイオン伝導度(~10-4S・cm-1)になる。したがって、多くの研究は、熱処理又はAl、Ga、Taなどの他の金属のLLZO構造への組み込みのいずれかを適用する立方相の調製に焦点を合わせている。例えば、AlをドーピングしたLLZOは、高イオン伝導度(5.1×10-4S・cm-1)の立方相を安定化するだけでなく、表面及び界面の特性も向上させた(Solid State Ionics, 2000, vol.131, PP.143-157.)。
【0011】
Lu及び同僚(Chemical Engineering Journal, Vol 367 (2019), PP. 230-238)は、イオン伝導媒体としてPVDFとLLZTOのハイブリッドマトリックス(ガーネットタイプLi6.5La3Zr1.5Ta0.5O12)の製造を試みた。彼らはLLZTOとPVDF-HFPの混合物をキャスティングし、固体マトリックスを得た。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
リチウム金属アノード内及び/又はリチウムイオン電池の超高速充電中にリチウムデンドライトのクロスオーバーを回避することができる多孔質媒体が緊急に必要とされている。実行可能な解決策は、カソードとアノードの間に非常に均一な微細多孔質界面を有することであり、これは、酸化に抵抗しながら、デンドライト形成を低減又は回避するためのリチウムイオンの均一な輸送を容易にすることができる。さらに、デンドライトが形成された場合、デンドライトの浸透に抵抗するのに十分な機械的強度を示す必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
「コポリマー」は、2つ以上の異なるモノマー単位を有するポリマーを意味するために使用される。「ポリマー」は、ホモポリマー及びコポリマーを含むために使用される。樹脂とポリマーは同じ意味で使用される。ポリマーは、均質、不均質であり得、コモノマー単位の勾配分布を有し得る。引用されたすべての参考文献は、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で使用される場合、特に明記されていない限り、パーセントは重量パーセントを意味するものとする。特に明記しない限り、分子量は、ポリメチルメタクリレート標準を使用してGPCによって測定された重量平均分子量である。結晶化度及び融解温度は、ASTM D3418に記載されているように、10℃/分の加熱速度でDSCによって測定される。溶融粘度は、230℃でASTM D3835に従って測定され、100s-1においてkPoiseで表される。ポリマーの希薄溶液粘度と還元粘度は、ASTM D2857に記載されているように室温で測定される。
【0014】
網状フィルム又はコーティングとは、多孔質の連続気泡マトリックス構造を有するフィルム又はコーティングを意味する。「連続」とは、細孔が囲まれていないことを意味する。流体は細孔間を移動できる。ボイドの割合又は気孔率は、連続気泡マトリックスを圧縮するか、密度を測定するか、又はボイドを液体で満たして密度の変化を測定することによって測定できる。好ましくは、ボイド(気孔率)は密度によって測定され、これは、フィルムの密度が固体樹脂の密度と比較されることを意味する。
【0015】
ナノサイズのフィラー又はナノサイズの粒子は、フィラー又は粒子のサイズが1μm未満、好ましくは500nm未満、好ましくは200nm未満であることを意味する。ナノサイズの粒子は100nm未満にすることができる。粒子サイズは、光散乱(NicomやMicrotechの機器など)によって測定された体積平均粒子サイズである。
【0016】
高比表面積粒子とは、粒子の表面積が1m2/gよりも大きく、好ましくは5m2/gよりも大きく、より好ましくは10m2/gよりも大きいことを意味する。好ましくは、1m2/g~1000m2/g、より好ましくは1m2/g~700m2/g、さらにより好ましくは10m2/g~500m2/gである。粒子の表面積は5~700m2/gであり得る。一部の高比表面積粒子は、3次元の分岐構造を有する。これは、大きなアスペクト比の粒子をもたらし得るフラクタル形状と呼ばれることがある。フラクタル形状は、3次元の分岐を持つ一次粒子の集合体である。
【0017】
高分子量とは、室温(25℃)のNMPにおいて5%で測定される少なくとも100cp、好ましくは100cp~10,000cp、より好ましくは100cp~5000cpの溶液粘度、又は粘度が低下していることを意味し、Rvは、少なくとも0.2dl/g、最大2dl/gである。
【0018】
降伏応力は、流体の流れを開始するために必要な最小のせん断応力である。高降伏応力は、少なくとも50ダイン/cm2、好ましくは100ダイン/cm2より大きく、125ダイン/cm2より大きいものである。降伏応力は最大5000ダイン/cm2、好ましくは最大3000ダイン/cm2であり得る。また、スラリーはキャスティング可能でなければならず、これは、スラリーの溶液粘度が室温で20,000cP未満、好ましくは10,000cp未満であることを意味する。
【0019】
本発明は、ナノサイズの細孔を有する網状フィルム複合材料、及びナノサイズの細孔を有する網状フィルム複合材料を作製する方法を提供する。ナノサイズの細孔は、平均細孔サイズが500nm未満、好ましくは2nm~500nmである。本発明はまた、ナノサイズの細孔を有する網状フィルム複合材料から作製された電池における電極コーティングを提供する。
【0020】
網状フィルム複合材料は、異なるタイプの樹脂及び多種多様なナノサイズの粒子を用いて製造することができる。網状フィルム複合材料は、一次粒子の凝集体から作られたフラクタル形状構造を有する粒子で作ることができる。
【0021】
網状フィルム複合材料は、高比表面積粒子(リチウム系の導電性材料)と高分子樹脂を溶媒中、室温(25℃)で組み合わせることによって作製され、低い固形分(すなわち、総固形分が30重量%未満、好ましくは20重量%未満、より好ましくは12%未満、さらには10%未満)でも高い降伏応力(50ダイン/cm2を超える)を示すスラリーをもたらす。スラリーをキャストし、高温で乾燥させることにより、ナノサイズの細孔を備えた網状フィルム複合材料を形成する。
【0022】
予期せぬことに、NMPで作られた高比表面積粒子(すなわち、リチウム系の導電性材料)と高分子樹脂(例えば、高MW-PVDF(室温のNMPで5%の溶液粘度が100cpを超える)、又は高MW-PMMA(低減された粘度を有し、Rvが0.5dl/g)のスラリーは、低い固形分(すなわち、総固形分が12%未満)でも高い降伏応力(50ダイン/cm2以上)を示すことができることがわかった。この高降伏応力スラリーをキャスティングし、高温(すなわち、50~180℃、又は80~180、好ましくは120℃以上)で乾燥させると、ナノサイズの細孔を有する網状膜複合材料が形成された。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一実施形態では、半結晶性である高分子量PVDF(室温のNMPにおいて5%で100cpを超える溶液粘度を有する)が本発明で使用された。
【0024】
PMMA(低減された粘度、Rv、0.5dl/gを超える)、及び高MW PAA(室温のpH7の水中で100から最大1000cp、好ましくは最大5000の溶液粘度を有する)のような高分子量樹脂を使用して、高降伏応力スラリー(50ダイン/cm2を超える)を取得でき、最終的に、PVDFで作られた網状フィルムと同様の特性の網状フィルム複合材料を製造できる。
【0025】
網状フィルム複合材料は、異なるタイプの樹脂及び多種多様なナノサイズの粒子を用いて製造することができる。
【0026】
本発明において有用な固体リチウム系の電解質のフィラータイプのナノ粒子、例えば、リチウムを含む導電性フィラーは、以下を含むが、これらに限定されない:Li7La3Zr212(LLZO)、Li3PS4(LSP)、Li6PS5X(X=Cl、Br、又はI)(リチウムアルギロダイト)、リチウムリン酸窒化物(Lipon)、Li2+2xZn1-xGeO4(X=0.55)(LISICON系)、Li0.34La0.51TiO3(ペロブスカイト系)、又はそれらの混合物。LLZO系のナノ粒子、LSP系のナノ粒子、LIPON系のナノ粒子又はそれらの混合物もまた、本発明において使用され得る。Al、Ga、又はTaなどの他の金属でドーピングされたLLZOを本発明で使用することができる。
【0027】
イオン伝導性を改善するために、任意選択で、LiCl、LiPF6、LiTDI、LiFSI、及びLiTFSIを含むがこれらに限定されないものを、イオン伝導性リチウム塩の総膜重量に基づいて0.01~10重量%、好ましくは0.1~3重量%で混合物に添加することができる。LiTDIは、リチウム4,5-ジシアノ-2-(トリフルオロメチル)イミダゾールである。LiFSIはリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドである。LiTFSIはリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドである。
【0028】
任意選択で、機械的強度を改善するため、又はRSES(Reticulated Solid Electrolyte Separator、網状固体電解質セパレーター)の他の特徴を変更するために、強化フィラーを混合物に加えることができる。フィラーの種類も大きく異なり得る。例えば、絶縁フィラーには、アルミナ、シリカ、BaTiO3、CaO、ZnO、ボヘマイト、TiO2、SiC、ZrO2、ケイ酸ホウ素、BaSO4、ナノクレイ、又はそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。また、有用な有機フィラーは、アラミドフィラーとファイバー、ポリエーテルエーテルケトンとポリエーテルケトンケトンファイバー、PTFEファイバー、及びナノファイバー、カーボンナノチューブ、及びそれらの混合物を含むがこれらに限定されない、チョップドファイバーである。
【0029】
樹脂は、高い溶液粘度(すなわち、室温のNMPにおいて5%で測定された100cpより高い)を有するべきである。好ましくは、溶液粘度は、室温のNMPにおいて5%固形分で100~10,000cp、より好ましくは100~5000cpである。水溶性ポリマーの場合、2%の水中において室温(25℃)でpH7で測定すると、溶液の粘度は100cp~10000cpであり、100cp~5000cpであることが好ましい。pHは、ポリマーの種類と用途に応じて2~12の範囲で変化する。本発明において有用なポリマーは、以下のホモポリマー及びコポリマーを含むが、これらに限定されない:ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレンテトラフルオリドエチレン(PETFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリ(アルキル)アクリレート、ポリ(アルキル)メタクリレート、ポリスチレン、ポリビニルアルコール(PVOH)、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロースCMC、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸(PMAA)。他の有用なポリマーには、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトン、及びポリエステルが含まれる。
【0030】
ポリフッ化ビニリデン
好ましい実施形態では、ポリマーは、ポリフッ化ビニリデンホモポリマー又はコポリマーである。本明細書で使用される「フッ化ビニリデンポリマー」(PVDF)という用語は、その意味の範囲内で、通常は高分子量のホモポリマー、コポリマー、及びターポリマーのいずれも含む。PVDFのコポリマーは、より柔らかいため(より低いTm、融点及び減少した結晶構造を有する)が特に好ましい。そのようなコポリマーには、少なくとも1つのコモノマーとコポリマー化されたフッ化ビニリデンが含まれる。本発明の最も好ましいコポリマー及びターポリマーは、ポリマー中のすべてのモノマー単位の総重量のうち、フッ化ビニリデン単位が少なくとも50モル%、少なくとも70モル%、好ましくは少なくとも75モル%、より好ましくは少なくとも80モル%、さらにより好ましくは少なくとも85モルを構成するものである。
【0031】
フッ化ビニリデンのコポリマー、ターポリマー及び高級ポリマーは、フッ化ビニリデンを以下からなる群からの1つ又は複数のモノマーと反応させることによって作製することができる:フッ化ビニル;トリフルオロエテン;テトラフルオロエテン;3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン、3,3,3,4,4-ペンタフルオロ-1-ブテン、及びヘキサフルオロプロペンなどの1つ又は複数の部分的又は完全にフッ素化されたα-オレフィン;部分的にフッ素化されたオレフィンヘキサフルオロイソブチレン;パーフルオロメチルビニルエーテル、パーフルオロエチルビニルエーテル、パーフルオロ-n-プロピルビニルエーテル、及びパーフルオロ-2-プロポキシプロピルビニルエーテルなどのパーフルオロビニルエーテル;パーフルオロ(1,3-ジオキソール)及びパーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)などのフッ素化ジオキソール;アリル、部分的にフッ素化されたアリル、又はフッ素化されたアリルモノマー(2-ヒドロキシエチルアリルエーテル又は3-アリルオキシプロパンジオールなど);並びにエテン又はプロペン。いくつかの好ましい実施形態では、コモノマーは、以下からなる群から選択される:テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン、フッ化ビニル、ペンタフルオロプロペン、テトラフルオロプロペン、パーフルオロメチルビニルエーテル、パーフルオロプロピルビニルエーテル。
【0032】
特に好ましいのは、少なくとも約75から最大90モル%のフッ化ビニリデン、及び対応して10~25モル%のヘキサフルオロプロペンから構成されるコポリマーである。フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロペン及びテトラフルオロエチレンのターポリマーもまた、本明細書で具体化されるフッ化ビニリデンコポリマーのクラスの代表である。
【0033】
一実施形態では、フッ化ビニリデンポリマーには、最大50重量%、好ましくは最大20重量%、より好ましくは最大15重量%ヘキサフルオロプロペン(HFP)単位、及び50重量%、好ましくは80重量%、より好ましくは85重量%以上のVDF単位が存在する。電池などの最終用途環境で優れた寸法安定性を備えたPVDF-HFPコポリマーを提供するために、HFP単位を可能な限り均一に分散させることが望ましい。
【0034】
セパレーターコーティング組成物に使用するためのPVDFのコポリマーは、好ましくは、溶融粘度によって測定されるとき高分子量を有する。高分子量とは、ASTM方法D-3835に従って、232℃で100s-1において測定されたとき、10kPoiseを超える、好ましくは20kPoiseを超える溶融粘度を有するPVDFを意味する。
【0035】
ポリビニリデン系のポリマーなどのフルオロポリマーは、当技術分野で知られている任意のプロセスによって製造される。乳化及び懸濁重合などのプロセスが好ましく、US6187885及びEP0120524に記載されている。
【0036】
合成ポリアミド
ポリアミドは、分子鎖の繰り返し単位がアミド基によって互いに連結されているポリマー(長い、複数の単位の分子から構成される物質)である。アミド基の一般化学式はCO-NHである。それらは、アミン(NH2)基とカルボキシル(CO2H)基の相互作用によって生成される場合もあり、アミノ酸又はアミノ酸誘導体(分子がアミノ基とカルボキシル基の両方を含む)の重合によって生成される場合もある。
【0037】
ポリアミドの合成は当技術分野で十分に説明されており、例えば、WO15/071604、WO14179034、EP0550308、EP0550315、US9637595がある。
【0038】
ポリアミドは、以下の縮合又は開環生成物であり得る:
-アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、11-アミノウンデカン酸及び12-アミノドデカン酸などの1つ又は複数のアミノ酸、あるいは、カプロラクタム、オエナンソラクタム、ラウリルラクタムなどの1つ又は複数のラクタム;及び
-ヘキサメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、ビス(p-アミノシクロヘキシル)メタン、及びトリメチルヘキサメチレンジアミンなどのジアミンと、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸などの二酸の1つ又は複数の塩又は混合物。
【0039】
ポリアミドの例には、PA6、PA7、PA8、PA9、PA10、PA11、及びPA12、ならびにPA6,6のようなコポリアミドが含まれ得る。
【0040】
コポリアミドは、少なくとも2つのアルファ、オメガ-アミノカルボン酸又は2つのラクタム、又は1つのラクタム及び1つのアルファ、オメガ-アミノカルボン酸の縮合から得られる。コポリアミドは、少なくとも1つのアルファ、オメガ-アミノカルボン酸(又は1つのラクタム)、少なくとも1つのジアミン及び少なくとも1つのジカルボン酸の縮合から得られる。
【0041】
ラクタムの例には、主環上に3~12個の炭素原子を有するものが含まれ、このラクタムは置換され得る。例えば、β、β-ジメチルプロピオラクタム、α、αジメチルプロピオラクタム、アミロラクタム、カプロラクタム、カプリラクタム及びラウロラクタムがある。
【0042】
アルファ、オメガ-アミノカルボン酸の例には、アミノウンデカン酸及びアミノドデカン酸が含まれる。ジカルボン酸の例には、アジピン酸、セバシン酸、イソフタル酸、ブタン二酸、1,4シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、スルホイソフタル酸のナトリウム又はリチウム塩、二量体化脂肪酸(これらの二量体化脂肪酸は、少なくとも98%の二量体含有量を有し、好ましくは水素化されている)及びドデカン二酸、及びHOOC(CH2)10-COOHが含まれる。
【0043】
ジアミンは、6~12個の炭素原子を有する脂肪族ジアミンであり得る。それは、アリール及び/又は飽和環状タイプであり得る。例としては、ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、テトラメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、1,5-ジアミノヘキサン、2,2,4-トリメチル-1,6-ジアミノヘキサン、ジアミンポリオール、イソホロンジアミン(IPD)、メチルペンタメチレンジアミン(MPDM)、ビス(アミノシクロヘキシル)メタン(BACM)、及びビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(BMACM)がある。
【0044】
コポリアミドの例には、以下が含まれる:カプロラクタムとラウリルラクタムのコポリマー(PA6/12)、カプロラクタム、アジピン酸、ヘキサメチレンジアミンのコポリマー(PA6/6-6)、カプロラクタム、ラウリルラクタム、アジピン酸、ヘキサメチレンジアミンのコポリマー(PA6/12/6-6)、カプロラクタム、ラウリルラクタム、11-アミノウンデカン酸、アゼラン酸及びヘキサメチレンジアミンのコポリマー(PA6/6-9/11/12)、カプロラクタム、ラウリルラクタム、11-アミノウンデカン酸、アジピン酸及びヘキサメチレンジアミンのコポリマー(PA6/6-6/11/12)、並びにラウリルラクタム、アゼラン酸、ヘキサメチレンジアミンのコポリマー(PA6-9/12)。
【0045】
ポリアミドには、ポリエーテル-b-ポリアミド及びポリエステル-b-ポリアミドなどのポリアミドブロックコポリマーも含まれる。
【0046】
別のポリアミドは、ArkemaのORGASOL(登録商標)超微細ポリアミド6、12、及び6/12粉末であり、これらは微細多孔質であり、それらの製造プロセスのために連続気泡を有する。これらの粉末の粒子サイズ範囲は非常に狭く、グレードに応じて5~60μmであり得る。5~20のより低い平均粒子サイズが好ましい。
【0047】
アクリル
本明細書で使用されるアクリルポリマーは、メタクリレート及びアクリレートモノマーから形成されるポリマー、コポリマー及びターポリマー、ならびにそれらの混合物を含むことを意味する。メタクリレートモノマー及びアクリレートモノマーは、モノマー混合物の51~100%を構成し得、スチレン、アルファメチルスチレン、アクリロニトリルを含むがこれらに限定されない他のエチレン性不飽和モノマーの0~49%が存在し得る。適切なアクリレート及びメタクリレートモノマー及びコモノマーは、以下を含むが、これらに限定されない:アクリル酸メチル、アクリレートエチル及びメタクリレートエチル、ブチルアクリレート及びブチルメタクリレート、イソオクチルメタクリレート及びアクリレート、ラウリルアクリレート及びラウリルメタクリレート、ステアリルアクリレート及びステアリルメタクリレート、イソボルニルアクリレート及びメタクリレート、メトキシエチルアクリレート及びメタクリレート、2-エトキシエチルアクリレート及びメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート及びメタクリレートモノマー。メタクリル酸やアクリル酸などの(メタ)アクリル酸はコモノマーになり得る。アクリルポリマーには、典型的には乳化重合によって作製されるコアシェル構造などの多層アクリルポリマーが含まれる。
【0048】
スチレン
本明細書で使用されるスチレン系ポリマーは、スチレン及びアルファメチルスチレンモノマーから形成されるポリマー、コポリマー及びターポリマー、ならびにそれらの混合物を含むことを意味する。スチレン及びアルファメチルスチレンモノマーは、モノマー混合物の50~100%を構成し得、アクリレート、メタクリレート、アクリロニトリルを含むがこれらに限定されない他のエチレン性不飽和モノマーの0~50%が存在し得る。スチレンポリマーは、以下を含むが、これらに限定されない:ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン-アクリレート(ASA)コポリマー、スチレンアクリロニトリル(SAN)コポリマー、スチレンブタジエンゴム(SBR)などのスチレン-ブタジエンコポリマー、メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン(MBS)、及びスチレン-メチルメタクリレートコポリマー(S/MMA)などのスチレン-(メタ)アクリレートコポリマー。
【0049】
本明細書で使用されるポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びエチレンとプロピレンのコポリマーを含むことを意味する。エチレン及びプロピレンモノマーは、モノマー混合物の51~100%を構成し得、アクリレート、メタクリレート、アクリロニトリル、無水物を含むがこれらに限定されない他のエチレン性不飽和モノマーの0~49%が存在し得る。ポリオレフィンの例には、エチレンエチルアセテートコポリマー(EVA)、エチレン(メタ)アクリレートコポリマー、エチレン無水物コポリマー及びグラフト化ポリマー、プロピレン(メタ)アクリレートコポリマー、プロピレン無水物コポリマー及びグラフト化ポリマーが含まれる。
【0050】
スラリーを作製するための本発明において有用な溶媒には、水、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン及び炭化水素が含まれるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、溶媒は、NMP、水、又はアセトンである。溶媒は、使用されるポリマーを溶解して、目に見える透明な溶液を提供できなければならない。例えば、PVDFはNMPに可溶である。PVDFは水に溶けないため、PVDFに水は使用されない。ポリビニルアルコール(PVOH)、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロースCMC、ポリアクリル酸(PAA)、及びそれらのコポリマーは、一般に水溶性である。
【0051】
他の添加剤
本発明のコーティング組成物は、所望のセパレーターの要求を満たしながら、有効量の他の添加剤(フィラー、レベリング剤、消泡剤、pH緩衝液、及び配合に通常使用されるその他の副成分を含むが、これらに限定されない)をさらに含み得る。
【0052】
本発明のスラリーコーティング組成物において、さらに任意選択で、湿潤剤、増粘剤又はレオロジー調整剤を有することができる。
【0053】
湿潤剤は、コーティング組成物スラリー中に、溶媒100部あたり、0~5部、又は0.1~5部、好ましくは0~3部、又は0.1~3部の1つ又は複数の湿潤剤が存在することができる。界面活性剤は湿潤剤として機能することができるが、湿潤剤は非界面活性剤も含み得る。いくつかの実施形態において、湿潤剤は、有機溶媒であり得る。任意選択の湿潤剤の存在により、粉末状物質をスラリーに均一に分散させることができる。有用な湿潤剤は、以下を含むが、これらに限定されない:TRITONシリーズ(Dow製)及びPLURONICシリーズ(BASF製)、BYK-346(BYK Additives製)などのイオン性及び非イオン性界面活性剤、及び溶媒と相容性のある有機液体(NMP、DMSO、及びアセトンを含むが、これらに限定されない)。
【0054】
増粘剤及び/又はレオロジー調整剤は、コーティング組成物中に、水100部あたり、0~10部、好ましくは0~5部の1つ又は複数の増粘剤又はレオロジー調整剤(すべて重量部)が存在し得る。上記の分散液に増粘剤又はレオロジー調整剤を添加すると、キャスティングプロセスに適切なスラリー粘度を提供しながら、粉末状材料の沈降を防止し、又は減速させる。有機レオロジー調整剤に加えて、無機レオロジー調整剤を単独で又は組み合わせて使用することもできる。
【0055】
総固形分及びナノ粒子フィラーに対する樹脂の比率は、高降伏応力、すなわち、50ダイン/cm2より高く、好ましくは75ダイン/cm2より大きく、さらにより好ましくは100ダイン/cm2より大きく、又は200ダイン/cm2よりさらに大きいスラリーを生成するように選択されるべきである。降伏応力は最大5000ダイン/cm2、好ましくは最大3000ダイン/cm2である。
【0056】
スラリーの固形分は、2重量%~30重量%の固形分、好ましくは2~20重量%、さらにより好ましくは2~12重量%、又は2~10重量%(ポリマーの重量とナノ粒子の重量の合計に基づく)であり得る。
【0057】
ナノ粒子は、高い比表面積を有し、溶媒中で良好な分散性を有し、好ましくはフラクタル形状の構造である。
【0058】
いくつかの要因が網状膜複合材料の気孔率又は密度に影響を与える可能性があり、例えば、スラリー中の固形物を減少させる(すなわち、10%から6%に)と、数パーセント高い気孔率が生成され、より高い乾燥温度(すなわち、100℃の代わりに180℃)は、気孔率を数パーセント増加させ、MW樹脂が高いほど気孔率が高くなり、表面積の大きいフィラーは気孔率が高くなる。これらすべての調整可能な特性を適用して、特定の用途に望ましい特性を備えた網状フィルム複合材料を製造することができる。
【0059】
用途
ナノ粒子(例にはリチウム系の導電性材料を含む)を使用し、気孔率が20~80%、好ましくは25~80%であるPVDFの網状膜複合材料の1つの用途は、安全性を高め、電池の性能を向上させるために、固体状態の電池のセパレーター/電解質として使用されることである。網状フィルム複合材料は、高温で収縮するだけでなく、電池内部のホットスポットで膨張して、暴走電極を互いにさらに隔離する。
【0060】
網状フィルム複合材料の別の利点は、電極と同時にキャスティングできること、すなわち、ダブルスロットダイカスト機を使用して、ウェットオンウェット技術を使用して集電体に2つのスラリー層(活性電極及びセパレーター層)を同時にキャスティングできることである。統合された電極とセパレーター構造は、その後、乾燥とカレンダーのステップの間に形成される。
【0061】
立方体ナノLLZO又は他のナノサイズのリチウム系の導電性材料などのリチウム系の導電性材料の網状膜複合材料(固体イオン接触材料)は、固体リチウム電池の電解質/セパレーターとして使用して、電池の性能と安全性を高めることができる。網状の複合フィルムを使用することにより、電子又はイオンが通過しなければならない拡散長又は経路が最小化され、界面面積が最大化される。樹脂は、カソード面での酸化に抵抗するポリフッ化ビニリデン、及びアノード面での還元に抵抗する特殊なアクリル又はPEO(ポリエチレンオキシド)樹脂にすることができる。さらに、網状フィルム複合材料は、充電及び放電時に発生する体積変化に対応し、デンドライトの侵入の可能性に抵抗することができる。
【0062】
温度に対する応答は、樹脂組成物で調整することができる。例えば、より高いHFP(すなわち、20%HFP)含有量の樹脂からなる網状フィルム複合材料は、同じ膨潤/膨張を得るためにより高い温度を必要とする可能性があるより低いHFP(すなわち8%HFP)含有量を有するものと比較して、より低い温度で膨潤/膨張するので、PVDF樹脂中のHFPコモノマーの量を変える。VDFのコポリマー中のHFPの好ましい重量パーセントは、1~25重量%であるが、より高い重量パーセントのHFPを使用することができる。網状フィルム複合材料の別の利点は、電極と同時にキャスティングできること、すなわち、ダブルスロットダイカスト機を使用して、ウェットオンウェット技術を使用して集電体に2つのスラリー層(活性電極及びセパレーター層)を同時にキャスティングできることである。統合された電極とセパレーター構造は、その後、乾燥とカレンダーのステップの間に形成される。電気化学デバイス又は濾材の電極セパレーターのような多層複合構造の場合、ウェットオンウェットでキャスティングすることができる。ウェットオンウェット技術を使用すると、2つの層が絡み合い、急激な界面がなくなり、接着性が向上する。網状のフィルム又はコーティングは、ウェットオンウェットプロセスの1つのステップで、基材と同時に直接基材にキャスティングすることができる。
【0063】
セパレーターを形成するためのコーティングの使用
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、電池又は他の任意の電気化学デバイス内の過酷な環境に耐えることができ、コーティングに容易に加工することができる。電極上にコーティングされると、コーティングは、別個のセパレーターベースを必要とせずに、電解質/セパレーターとして機能する。セパレーターコーティングは、電気化学的に導電性のリチウム系の導電性材料粒子を含む。好ましくは、リチウム系の導電性ナノ粒子は、セパレーター/電解質コーティング組成物の最大の体積パーセントを構成する。
【0064】
コーティング組成物中の導電性ナノ粒子は、それらの間に間質容積が形成されることを可能にし、それにより、微細孔を形成し、スペーサーとしての物理的形状を維持するのに役立つ。また、粒子は200℃以上の高温でもその物性が変化しないという特徴があるため、粒子を用いたコーティングセパレーターは耐熱性に優れる。無機粒子は、粒子又は繊維の形態であり得る。これらの混合物も想定される。
【0065】
生成される電池の重量を低減することができるので、高密度の材料よりも低密度の材料が好ましい。
【0066】
一実施形態では、粒子又は繊維は、化学的に(エッチング又は官能化などによって)、機械的に、又は照射によって(プラズマ処理などによって)表面処理され得る。
【0067】
リチウム系の粒子はナノサイズである。さらに、細孔が大きすぎると、充電/放電サイクルの繰り返し中に内部短絡が発生する可能性が高くなる。
【0068】
リチウム系の導電性粒子は、ポリマー固体及び無機粒子の合計に基づいて、コーティング組成物中に20~95重量%、好ましくは20~90重量%で存在する。無機材料の含有量が20重量%未満の場合、バインダーポリマーは、無機粒子間に形成される間質体積を減少させ、したがって細孔サイズ及び気孔率を減少させるほど大量に存在し、その結果、電池の品質が低下する。
【0069】
網状フィルム複合材料はまた、触媒駆動反応のための高表面媒体を提供し、触媒効率を改善するための触媒担体として使用することができる。触媒は網状膜に組み込むことも、その上に堆積させることもできる。
【0070】
キャスティング方法
コーティングは、固体基材上にキャスティングされ、次に基材から持ち上げられて電極上に配置され得るか、又は電極上に直接キャストされ得る。
【0071】
コーティング組成物は、ブラシ、ローラー、インクジェット、ディップ、ナイフ、グラビア、線材、スキージ、フォームアプリケーター、カーテンコーティング、真空コーティング、スロットダイ又はスプレーなどの当技術分野で知られている手段によって、電極の少なくとも1つの表面に適用することができる。次に、コーティングは、室温又は高温で電極上で乾燥される。最終的な乾燥コーティングの厚さは、好ましくは1~200μm、好ましくは1~100μm、より好ましくは2~50μmの厚さである。
【0072】
コーティングされた電極は、当技術分野で知られている手段によって、電池、コンデンサ、電気二重層コンデンサ、膜電極接合体(MEA)又は燃料電池などの電気化学デバイスを形成するために使用することができる。非水系電池は、コーティングの両側に負極と正極を配置することで形成できる。例えば、カソードがコーティングされている場合、アノードをコーティングの隣に配置して、アノード-セパレータコーティングカソードのアセンブリを形成することができる。
【0073】
本発明の側面
側面1:a)樹脂及びb)ナノ粒子を含む網状コーティング又はフィルムであって、
前記コーティング又はフィルムは連続多孔質構造を有し、前記多孔質構造は10体積%~80体積%の連続細孔であり、前記樹脂の溶液粘度は約100cp~10,000cp、好ましくは100cp~5000cp(NMPでは5wt%、水溶液ポリマーの場合は2%の水、室温)であり、前記ナノ粒子はリチウム系で導電性であり、表面積は1~1000m2/gである、網状コーティング又はフィルム。
側面2:平均細孔サイズは500nm未満、好ましくは100nm未満、より好ましくは50nm未満である、側面1に記載の網状コーティング又はフィルム。
側面3:前記樹脂は、以下からなる群から選択される、側面1又は2に記載の網状コーティング又はフィルム:ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、PVDFコポリマー、ポリエチレンテトラフルオリドエチレン(PETFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリビニルアルコール(PVOH)、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロースCMC、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸(PMAA)、及びそれらのコポリマー、並びにそれらの組み合わせ。
側面4:前記樹脂は、ポリフッ化ビニリデンのホモポリマー又はコポリマーを含む、側面1~3のいずれか1項に記載の網状コーティング又はフィルム。
側面5:前記樹脂はポリアクリル酸を含む、側面1~3のいずれか1項に記載の網状コーティング又はフィルム。
側面6:前記樹脂がカルボキシメチルセルロースを含む、側面1~3のいずれか1項に記載の網状コーティング又はフィルム。
側面7:前記樹脂がポリアクリル酸及び/又はポリメタクリル酸を含む、側面1~3のいずれか1項に記載の網状コーティング又はフィルム。
側面8:前記ナノ粒子は、以下からなる群から選択される、側面1~7のいずれか1項に記載の網状コーティング又はフィルム。:Li7La3Zr212(LLZO)、Li3PS4(LSP)、Li6PS5X(X=Cl、Br、又はI)(リチウムアルギロダイト)、リチウムリン酸窒化物(Lipon)、Li2+2xZn1-xGeO4(X=0.55)(LISICON系)、Li0.34La0.51TiO3(ペロブスカイト系)、ドーピングされたLLZO、又はそれらの混合物。
側面9:前記ナノ粒子はLLZOを含む、側面1~7のいずれか1項に記載の網状コーティング又はフィルム。
側面10:前記ナノ粒子はLSP又はLIPONを含む、側面1~7のいずれか1項に記載の網状コーティング又はフィルム。
側面11:ポリマーと前記ナノ粒子の重量パーセントの比は、80:20~10:90、好ましくは70:30~20:80である、側面1~10のいずれか1項に記載の網状コーティング又はフィルム。
側面12:前記ナノ粒子の表面積は1~700m2/g、より好ましくは1~600m2/gである、側面1~11のいずれか1項に記載の網状コーティング又はフィルム。
側面13:前記コーティングは、1~300μm、好ましくは1~100μm、より好ましくは2~50μmの厚さを有する、側面1~12のいずれか1項に記載の網状コーティング又はフィルム。
側面14:前記ナノ粒子のサイズは500nm未満、好ましくは200nm未満である、側面1~13のいずれか1項に記載の網状コーティング又はフィルム。
側面15:前記ナノ粒子のサイズは100nm未満である、側面1~13のいずれか1項に記載の網状コーティング又はフィルム。
側面16:網状コーティング又はフィルムを作製する方法であって、前記方法は、以下のステップ:
a)溶剤に溶解した樹脂を提供すること(ここで、前記ポリマーは、溶液粘度が約100cp~10,000cp、好ましくは100cp~5000cp(NMPでは5wt%、水溶液ポリマーの場合は2wt%の水、室温)となる分子量を有する);
b)ナノ粒子を提供すること(ここで、前記ナノ粒子の表面積は1~1000m2/gである);
c)前記樹脂溶液と前記ナノ粒子を組み合わせてスラリーを生成すること(ここで、前記ポリマーの重量パーセントとナノ粒子の重量パーセントの比は80:20~5:95である);
d)前記スラリーをキャスティングしてコーティング又はフィルムを形成すること;
e)形成された前記コーティング又はフィルムを乾燥させること
を含み、
乾燥後の前記コーティング又はフィルムは多孔質構造を有し、前記多孔質構造は10体積%~80体積%の連続細孔であり、
前記スラリーは、50ダイン/cm2~5000ダイン/cm2、好ましくは75~3000ダイン/cm2の降伏応力を示し、前記スラリーの固形分は2~30重量%の固形分、好ましくは2~20重量%の固形分である、方法。
側面17:平均細孔サイズは1000nm未満である、側面16に記載の方法。
側面18:平均細孔サイズが500nm未満、より好ましくは100nm未満である、側面16に記載の方法。
側面19:前記樹脂は、以下からなる群から選択される、側面16~18のいずれか1項に記載の方法:ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、PVDFコポリマー、ポリエチレンテトラフルオリドエチレン(PETFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリビニルアルコール(PVOH)、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロースCMC、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸(PMAA)、及びそれらのコポリマー、並びにそれらの組み合わせ。
側面20:前記樹脂がポリフッ化ビニリデンホモポリマー又はコポリマーを含む、側面16~18のいずれか1項に記載の方法。
側面21:前記樹脂がポリメタクリレートを含む、側面16~18のいずれか1項に記載の方法。
側面22:前記樹脂がカルボキシメチルセルロースを含む、側面16~18のいずれか1項に記載の方法。
側面23:前記樹脂がポリアクリル酸及び/又はポリメタクリル酸を含む、側面16~18のいずれか1項に記載の方法。
側面24:前記ナノ粒子は、以下からなる群から選択される、側面16~23のいずれか1項に記載の方法:Li7La3Zr212(LLZO)、Li3PS4(LSP)、Li6PS5X(X=Cl、Br、又はI)(リチウムアルギロダイト)、リチウムリン酸窒化物(Lipon)、Li2+2xZn1-xGeO4(X=0.55)(LISICON系)、Li0.34La0.51TiO3(ペロブスカイト系)、ドーピングされたLLZO、又はそれらの混合物。
側面25:前記ナノ粒子がLLZOを含む、側面16~23のいずれか1項に記載の方法。
側面26:前記ナノ粒子がLSPを含む、側面16~23のいずれか1項に記載の方法。
側面27:前記溶媒が、水、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン及び炭化水素からなる群から選択される、側面16~26のいずれか1項に記載の方法。
側面28:前記溶媒が、NMP、水、アセトン及びそれらの組み合わせ、からなる群から選択され、好ましくはNMPである、側面16~26のいずれか1項に記載の方法。
側面29:前記溶媒が水を含む、側面16~26のいずれか1項に記載の方法。
側面30:前記溶媒がNMPを含む、側面16~26のいずれか1項に記載の方法。
側面31:前記溶媒及び前記ナノ粒子の両方を含む、形成されたスラリーの固形分が2~30%、好ましくは2から15重量%である、側面16~30のいずれか1項に記載の方法。
側面32:前記溶媒及び前記ナノ粒子の両方を含む、形成されたスラリーの固形分が2~12重量%である、側面16~30のいずれか1項に記載の方法。
側面33:ポリマーの重量パーセントと前記ナノ粒子の重量パーセントの比は、80:20~5:95、好ましくは80:20~10:90である、側面16~32のいずれか1項に記載の方法。
側面34:ポリマーの重量パーセントと前記ナノ粒子の重量パーセントの比は70:30~20:80である、側面16~32のいずれか1項に記載の方法。
側面35:前記ナノ粒子の表面積は1~700m2/g、より好ましくは1~600m2/gである、側面16~34のいずれか1項に記載の方法。
側面36:前記コーティングは、1~300μm、好ましくは1~100μm、より好ましくは2~50μmの厚さを有する、側面16~34のいずれか1項に記載の方法。
側面37:前記ナノ粒子のサイズは500nm未満、好ましくは200nm未満である、側面16~36のいずれか1項に記載の方法。
側面38:前記ナノ粒子のサイズは100nm未満である、側面16~36のいずれか1項に記載の方法。
側面39:前記網状のフィルム又はコーティングは、ウェットオンウェットプロセスの1つのステップで前記基材と同時に直接キャスティングされる、側面16~38のいずれか1項に記載の方法。
側面40:側面16~39のいずれか1項の方法によって作製された網状コーティング又はフィルム。
側面41:側面1~15のいずれか1項に記載のコーティング又はフィルムを含む電池。
側面42:電気化学デバイス及び微粒子フィルターからなる群から物品が選択される、側面1~15のいずれか1項の網状コーティング又はフィルムを含む物品。
【0074】
熔融粘度は、ASTM方法D-3835に従って、232℃で100s-1において測定される。
【0075】
ナノ粒子の粒子サイズは、Malvern Masturizer 2000粒子サイズ分析器を使用して測定することができる。データは、重量平均粒子サイズ(直径)として示される。
【0076】
粉末/ラテックス平均離散粒子サイズは、レーザー光散乱を使用するNICOMP(商標) 380サブミクロン粒子サイザーを使用して測定することができる。データは、重量平均粒子サイズ(直径)として示される。
【0077】
複合材料の密度は、複合材料の重量を特定のサンプルの体積で割ることによって計算された。最初に複合材料をアルミホイルにキャスティングし、次にキャスティングされた複合材料のスタンプカットによって表面積が1.33cm2のサンプルを作成した。サンプルの厚さは、0.1μmの精度を持つマイクロメーターで測定された。複合材料の重量は、分析天びんを使用して測定され、アルミホイルの重量が差し引かれた。固体材料の密度は、公開されている文献値に基づいている。すなわち、PVDFポリマー=1.78g/cm3、PMMA=1.13g/cm3、CMC=1.6g/cm3である。
【0078】
材料のBET比表面積、細孔容積、及び細孔サイズ分布は、QUANTACHROMENOVA-Eガス収着装置を使用して求めることができる。窒素の吸着と脱着の等温線は77Kで生成される。マルチポイントBrunauer-Emmett-Teller(BET)窒素吸着法は、比表面積を特定するために使用される。非局所密度汎関数理論(Nonlocal Density Functional Theory、NLDFT、N2、77k、スリット細孔モデル)を使用して、細孔容積と細孔サイズ分布を特定する。
【0079】
溶液粘度:ASTM 2857
【0080】
降伏応力逆計算:ブルックフィールド粘度計DV-III Ultra、Herschel-Bulkleyモデル方程式に基づくスピンドルCP52計算:
【数1】
τ=せん断応力(D/cm2
k=定指数(cP)
n=流動指数
τ°=降伏応力(D/cm2
D=せん断速度(1/秒)
(τ=せん断応力(D/cm2):加えられた応力に平行な1つ又は複数の平面に沿った滑りによって材料の変形を引き起こす傾向がある力。
τ°=降伏応力(D/cm2):降伏応力は、物体が恒久的に変形するか、流れ始めるため必要がある応力の量である。
k=定指数(cP):流体の性質に関連する。流体の粘性が高くなると、定指数が増加する。
D=せん断速度(1/秒):せん断速度は、流体の1つの層が隣接する層を通過する速度の変化率である。
n=流動指数:複雑な流体の流動挙動は、従来、変形速度とせん断速度の変化に対する粘度依存性に基づいて、ニュートン流体と非ニュートン流体を区別することで特徴付けられる。)
【0081】
τはせん断応力である。粘度を得るには、せん断速度で割る必要がある。計算は次のとおりである。
【数2】
【0082】
式中、kではCentipoiseで表されているため、100で割ってD/cm2とし、それにτ°に足す必要がある。τ°を逆算すると、方程式は次のようになる。
【数3】
【実施例
【0083】
例1:溶媒としてNMPを使用し、固形分が約8%である、PVDF(Kynar)及びLLZOの3つの異なる網状フィルム複合材料。PVDFとLLZOの比率は50:50、30:70、70:30である。気孔率は、測定された密度を固体密度と比較することによって求められる。密度の違いは気孔率による。[1-(測定された密度/固体密度)]×100=%気孔率。
網状のフィルムが形成された。本発明の方法を使用して気孔率を得ることができた。樹脂とナノ粒子の重量比を調整することで、気孔率を変えることができる。
【0084】
例2:PVDF(Kynar HSV-900)を備えたLLZO、RV=1.1のPMMA及び溶媒としてNMPを使用し、固形分が約8%、15%のLLZOから作られる網状フィルム複合材料。PVDFとLLZOの比率は50:50、30:70、70:30であり、PMMAとLLZOの比率は50:50、30:70、70:30である。気孔率は、測定された密度を固体密度と比較することによって求められる。密度の違いは気孔率による。[1-(測定された密度/固体密度)]×100=%気孔率。
網状フィルムは、さまざまなポリマーを使用して形成された。これは、本発明の方法を使用して得ることができた気孔率を示している。樹脂とナノ粒子の重量比を調整することで、気孔率を変えることができる。
【手続補正書】
【提出日】2022-02-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)樹脂およびb)ナノ粒子を含む網状コーティングまたはフィルムであって、
前記コーティングまたはフィルムはオープン多孔質構造を有し、前記多孔質構造は10体積%~80体積%のオープン細孔であり、前記樹脂の溶液粘度は約100cp~10,000cp、好ましくは100cp~5000cp(NMPでは5wt%、水溶ポリマーの場合は2wt%の水、室温)であり、前記ナノ粒子はリチウム系で導電性であり、表面積は1~1000m2/gである、網状コーティングまたはフィルム。
【請求項2】
平均細孔サイズは500nm未満、好ましくは100nm未満、より好ましくは50nm未満である、請求項1に記載の網状コーティングまたはフィルム。
【請求項3】
前記樹脂は、以下のホモポリマーおよびコポリマーからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の網状コーティングまたはフィルム:ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレンテトラフルオリドエチレン(PETFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリ(アルキル)アクリレート、ポリ(アルキル)メタクリレート、ポリスチレン、ポリビニルアルコール(PVOH)、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロースCMC、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸(PMAA)、並びにそれらの組み合わせ。
【請求項4】
前記樹脂は、ポリフッ化ビニリデンのホモポリマーまたはコポリマーを含む、請求項1又は2に記載の網状コーティングまたはフィルム。
【請求項5】
前記樹脂は、ポリメタクリレートまたはカルボキシメチルセルロースのうちの少なくとも1つを含む、請求項1又は2に記載の網状コーティングまたはフィルム。
【請求項6】
前記樹脂はポリアクリル酸を含む、請求項1又は2に記載の網状コーティングまたはフィルム。
【請求項7】
前記ナノ粒子は、以下からなる群から選択される、請求項1~6のいずれか1項に記載の網状コーティングまたはフィルム:Li7La3Zr212(LLZO)、Li3PS4(LSP)、Li6PS5X(X=Cl、Br、またはI)(リチウムアルギロダイト)、リチウムリン酸窒化物(Lipon)、Li2+2xZn1-xGeO4(X=0.55)(LISICON系)、Li0.34La0.51TiO3(ペロブスカイト系)、ドーピングされたLLZO、またはそれらの混合物。
【請求項8】
前記ナノ粒子はLLZOを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の網状コーティングまたはフィルム。
【請求項9】
前記ナノ粒子はLSPまたはLIPONを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の網状コーティングまたはフィルム。
【請求項10】
樹脂と前記ナノ粒子の重量パーセントの比は、80:20~10:90、好ましくは70:30~20:80である、請求項1~9のいずれか1項に記載の網状コーティングまたはフィルム。
【請求項11】
前記ナノ粒子の表面積は1~700m2/g、より好ましくは1~600m2/gである、請求項1~10のいずれか1項に記載の網状コーティングまたはフィルム。
【請求項12】
前記コーティングは、1~300μm、好ましくは1~100μm、より好ましくは2~50μmの厚さを有する、請求項1~11のいずれか1項に記載の網状コーティングまたはフィルム。
【請求項13】
網状コーティングまたはフィルムを作製する方法であって、前記方法は、以下のステップ:
a)溶媒に溶解した樹脂を提供すること(ここで、前記樹脂は、溶液粘度が約100cp~10,000cp、好ましくは100cp~5000cp(NMPでは5wt%、水溶ポリマーの場合は2wt%の水、室温)となる分子量を有する);
b)ナノ粒子を提供すること(ここで、前記ナノ粒子の表面積は1~1000m2/gである);
c)溶媒に溶解した前記樹脂と前記ナノ粒子を組み合わせてスラリーを生成すること(ここで、前記樹脂の重量パーセントとナノ粒子の重量パーセントの比は80:20~5:95である);
d)前記スラリーをキャスティングしてコーティングまたはフィルムを形成すること;
e)形成された前記コーティングまたはフィルムを乾燥させること
を含み、
乾燥後の前記コーティングまたはフィルムは多孔質構造を有し、前記多孔質構造は10体積%~80体積%のオープン細孔であり、
前記スラリーは、50ダイン/cm2~5000ダイン/cm2、好ましくは75~3000ダイン/cm2の降伏応力を示し、前記スラリーの固形分は2~30重量%の固形分、好ましくは2~20重量%の固形分である、方法。
【請求項14】
前記樹脂は、以下のホモポリマーおよびコポリマーからなる群から選択される、請求項13に記載の方法:ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレンテトラフルオリドエチレン(PETFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリ(アルキル)アクリレート、ポリ(アルキル)メタクリレート、ポリスチレン、ポリビニルアルコール(PVOH)、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロースCMC、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸(PMAA)、並びにそれらの組み合わせ。
【請求項15】
前記樹脂は、ポリフッ化ビニリデンのホモポリマーまたはコポリマーを含む、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記ナノ粒子は、以下からなる群から選択される、請求項13~15のいずれか1項に記載の方法:Li7La3Zr212(LLZO)、Li3PS4(LSP)、Li6PS5X(X=Cl、Br、又はI)(リチウムアルギロダイト)、リチウムリン酸窒化物(Lipon)、Li2+2xZn1-xGeO4(X=0.55)(LISICON系)、Li0.34La0.51TiO3(ペロブスカイト系)、ドーピングされたLLZO、またはそれらの混合物。
【請求項17】
前記溶媒および前記ナノ粒子の両方を含む、形成された前記スラリーの固形分は2~15重量%である、請求項13~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記網状のフィルムまたはコーティングは、ウェットオンウェットプロセスの1つのステップで前記基材と同時に直接キャスティングされる、請求項13~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
請求項1~12のいずれか1項に記載の網状コーティングまたはフィルムを含む電池。
【請求項20】
請求項1~12のいずれか1つの網状コーティングまたはフィルムを含む物品であって、電気化学デバイスである物品。
【国際調査報告】