(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-22
(54)【発明の名称】B型肝炎ウイルス(HBV)ワクチンおよびHBVを標的化するRNAiの組合せ
(51)【国際特許分類】
A61K 39/00 20060101AFI20220815BHJP
A61P 31/20 20060101ALI20220815BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20220815BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20220815BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220815BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20220815BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220815BHJP
C12N 15/34 20060101ALN20220815BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20220815BHJP
【FI】
A61K39/00 G
A61P31/20
A61P1/16
A61K35/76
A61P43/00 121
A61K31/7105
A61K48/00
C12N15/34 ZNA
C12N15/113 100Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021575215
(86)(22)【出願日】2020-06-18
(85)【翻訳文提出日】2022-02-14
(86)【国際出願番号】 IB2020055696
(87)【国際公開番号】W WO2020255007
(87)【国際公開日】2020-12-24
(32)【優先日】2019-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510020022
【氏名又は名称】ヤンセン・サイエンシズ・アイルランド・アンリミテッド・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100153693
【氏名又は名称】岩田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】ホートン,ヘレン
(72)【発明者】
【氏名】デ クレウス,アン マーティン エム
(72)【発明者】
【氏名】ベルケ,ジャン マーティン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA13
4C084ZB33
4C084ZC75
4C085AA03
4C085BA89
4C085CC40
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4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
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4C086ZB33
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA05
4C087NA13
4C087ZB33
4C087ZC75
(57)【要約】
B型肝炎ウイルス(HBV)ワクチンおよびHBV遺伝子の発現を阻害するためのRNAi剤の治療的組合せが記載される。開示された治療的組合せを使用して、特に慢性HBV感染症を有する個体において、HBVに対する免疫応答を誘導する方法またはHBV誘導疾患を処置する方法も記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする対象におけるB型肝炎ウイルス(HBV)感染症の処置に使用するための治療的組合せであって、
i)a)配列番号2と少なくとも95%同一なアミノ酸配列からなる切断型HBVコア抗原、
b)前記切断型HBVコア抗原をコードする第1のポリヌクレオチド配列を含む第1の天然に存在しない核酸分子、
c)配列番号7と少なくとも90%同一なアミノ酸配列を有するHBVポリメラーゼ抗原であって、逆転写酵素活性およびRNアーゼH活性を有しないHBVポリメラーゼ抗原、および
d)前記HBVポリメラーゼ抗原をコードする第2のポリヌクレオチド配列を含む第2の天然に存在しない核酸分子
の少なくとも1つ;ならびに
ii)HBV遺伝子の発現を阻害するためのRNAi剤であって、
1)表2に示されるコアセンス鎖配列およびアンチセンス鎖配列を有するRNAi剤;
2)表3に示されるセンス鎖配列およびアンチセンス鎖配列を有するRNAi剤;
3)表4に示されるコアセンス鎖配列およびアンチセンス鎖配列を有するRNAi剤、好ましくは表4に示される改変されたセンス鎖配列およびアンチセンス鎖配列を有するRNAi;
4)表5に示される標的配列を標的化するRNAi剤;
5)表6に示されるコアセンス鎖配列およびアンチセンス鎖配列を有するRNAi剤;
6)表7に示されるコアアンチセンス配列を有するRNAi剤および表8に示されるコアセンス鎖配列、好ましくは表7に示される改変されたセンス鎖配列および表8に示される改変されたアンチセンス鎖配列を有するRNAi;および
7)表9に示されるアンチセンス鎖およびセンス鎖の二重鎖を有するRNAi剤であって、好ましくは表9に示される二重鎖を含むRNAi剤
からなる群から選択されるRNAi剤
を含む、前記治療的組合せ。
【請求項2】
前記HBVポリメラーゼ抗原および前記切断型HBVコア抗原の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の治療的組合せ。
【請求項3】
前記HBVポリメラーゼ抗原および前記切断型HBVコア抗原を含む、請求項2に記載の治療的組合せ。
【請求項4】
前記切断型HBVコア抗原をコードする前記第1のポリヌクレオチド配列を含む前記第1の天然に存在しない核酸分子、および前記HBVポリメラーゼ抗原をコードする前記第2のポリヌクレオチド配列を含む前記第2の天然に存在しない核酸分子の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の治療的組合せ。
【請求項5】
それを必要とする対象におけるB型肝炎ウイルス(HBV)感染症の処置に使用するための治療的組合せであって、
i)配列番号2に少なくとも95%同一なアミノ酸配列からなる切断型HBVコア抗原をコードする第1のポリヌクレオチド配列を含む第1の天然に存在しない核酸分子;および
ii)配列番号7と少なくとも90%同一なアミノ酸配列を有するHBVポリメラーゼ抗原をコードする第2のポリヌクレオチド配列を含む第2の天然に存在しない核酸分子であって、前記HBVポリメラーゼ抗原は、逆転写酵素活性およびRNアーゼH活性を有しない、第2の天然に存在しない核酸分子;ならびに
iii)HBV遺伝子の発現を阻害するためのRNAi剤であって、
1)表2に示されるコアセンス鎖配列およびアンチセンス鎖配列を有するRNAi剤;
2)表3に示されるセンス鎖配列およびアンチセンス鎖配列を有するRNAi剤;
3)表4に示されるコアセンス鎖配列およびアンチセンス鎖配列を有するRNAi剤、好ましくは表4に示される改変されたセンス鎖配列およびアンチセンス鎖配列を有するRNAi;
4)表5に示される標的配列を標的化するRNAi剤;
5)表6に示されるコアセンス鎖配列およびアンチセンス鎖配列を有するRNAi剤;
6)表7に示されるコアアンチセンス配列を有するRNAi剤および表8に示されるコアセンス鎖配列、好ましくは表7に示される改変されたセンス鎖配列および表8に示される改変されたアンチセンス鎖配列を有するRNAi;および
7)表9に示されるアンチセンス鎖およびセンス鎖の二重鎖を有するRNAi剤であって、好ましくは表9に示される二重鎖を含み、より好ましくは、標的化リガンドにコンジュゲートされているRNAi剤
からなる群から選択されるRNAi剤
を含む、前記治療的組合せ。
【請求項6】
前記第1の天然に存在しない核酸分子が、前記切断型HBVコア抗原のN末端に作動可能に連結されたシグナル配列をコードするポリヌクレオチド配列をさらに含み、前記第2の天然に存在しない核酸分子が、前記HBVポリメラーゼ抗原のN末端に作動可能に連結されたシグナル配列をコードするポリヌクレオチド配列をさらに含み、好ましくは、前記シグナル配列は、独立して、配列番号9または配列番号15のアミノ酸配列を含み、好ましくは、前記シグナル配列は、独立して、配列番号8または配列番号14のポリヌクレオチド配列によってコードされる、請求項4または5に記載の治療的組合せ。
【請求項7】
a)前記切断型HBVコア抗原が、配列番号2または配列番号4のアミノ酸配列からなり;
b)前記HBVポリメラーゼ抗原が、配列番号7のアミノ酸配列を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の治療的組合せ。
【請求項8】
前記第1および第2の天然に存在しない核酸分子のそれぞれが、DNA分子であり、好ましくは、前記DNA分子は、プラスミドまたはウイルスベクターに存在する、請求項1~7のいずれか一項に記載の治療的組合せ。
【請求項9】
同じ非天然の核酸分子中に、前記第1の天然に存在しない核酸分子および前記第2の天然に存在しない核酸分子を含む、請求項4~8のいずれか一項に記載の治療的組合せ。
【請求項10】
2つの異なる天然に存在しない核酸分子中に、前記第1の天然に存在しない核酸分子および前記第2の天然に存在しない核酸分子を含む、請求項4~8のいずれか一項に記載の治療的組合せ。
【請求項11】
前記第1のポリヌクレオチド配列が、配列番号1または配列番号3と少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列を含む、請求項4~10のいずれか一項に記載の治療的組合せ。
【請求項12】
前記第1のポリヌクレオチド配列が、配列番号1または配列番号3のポリヌクレオチド配列を含む、請求項11に記載の治療的組合せ。
【請求項13】
前記第2のポリヌクレオチド配列が、配列番号5または配列番号6と少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列を含む、請求項4~12のいずれか一項に記載の治療的組合せ。
【請求項14】
前記第2のポリヌクレオチド配列が、配列番号5または配列番号6のポリヌクレオチド配列を含む、請求項13に記載の治療的組合せ。
【請求項15】
前記RNAi剤が、表9に示されるAD04580;AD04585;AD04776;AD04872;AD04962;AD04963;AD04982;またはAD05070の二重鎖構造を有し、好ましくは前記RNAi剤が、表10に描写された標的化リガンド(NAG13)、(NAG13)s、(NAG18)、(NAG18)s、(NAG24)、(NAG24)s、(NAG25)、(NAG25)s、(NAG26)、(NAG26)s、(NAG27)、(NAG27)s、(NAG28)、(NAG28)s、(NAG29)、(NAG29)s、(NAG30)、(NAG30)s、(NAG31)、(NAG31)s、(NAG32)、(NAG32)s、(NAG33)、(NAG33)s、(NAG34)、(NAG34)s、(NAG35)、(NAG35)s、(NAG36)、(NAG36)s、(NAG37)、(NAG37)s、(NAG38)、(NAG38)s、(NAG39)、または(NAG39)sにコンジュゲートされている、請求項1~14のいずれか一項に記載の治療的組合せ。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の治療的組合せ、およびそれを必要とする対象におけるB型肝炎ウイルス(HBV)感染症を処置することに治療的組合せを使用するための説明書を含むキット。
【請求項17】
それを必要とする対象におけるB型肝炎ウイルス(HBV)感染症を処置することに使用するための、請求項1~15のいずれか一項に記載の治療的組合せ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電子提出された配列表の参照
本出願は、作成日が2020年6月15日で、サイズ47kbを有するファイル名「065814_12WО1_Sequence_Listing」を有するASCIIフォーマットの配列表としてEFS-Webを介して電子提出された配列表を含有する。EFS-Webを介して提出された配列表は、本明細書の一部であり、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、その開示の全体が参照により本明細書に組み込まれている、2019年6月18日に出願された米国仮出願第62/862,754号の優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
B型肝炎ウイルス(HBV)は、4つのオープンリーディングフレームおよび7つのタンパク質をコードする小さい3.2kbの肝臓指向性DNAウイルスである。およそ2億4000万人の人が、血液中のウイルスおよびサブウイルス粒子が6ヶ月超持続することによって特徴付けられるB型慢性肝炎感染症(慢性HBV)を有する(Cohen et al. J. Viral Hepat. (2011) 18(6), 377-83)。持続性のHBV感染症は、HBV特異的T細胞受容体がウイルスペプチドおよび循環中の抗原によって慢性的に刺激されることにより、循環中および肝臓内のHBV特異的CD4+およびCD8+ T細胞の枯渇をもたらす。その結果、T細胞の多機能性が減少する(すなわち、IL-2、腫瘍壊死因子(TNF)-α、IFN-γレベルの減少、および増殖の欠如)。
【0004】
HBV感染症に対する安全かつ有効な予防ワクチンは、1980年代以降、利用できるようになり、B型肝炎予防の主流である(世界保健機関、B型肝炎:ファクトシートNo.204[インターネット]2015年3月)。世界保健機構は、全ての乳児のワクチン接種を推奨しており、B型肝炎の流行が低いまたは中間の国では、全ての子供および青年(年齢<18歳)、ならびにある特定のリスク集団カテゴリーの人々のワクチン接種を推奨している。ワクチン接種により、世界全体での感染率は劇的に低下した。しかし、予防用ワクチンは、確立されたHBV感染症を治癒しない。
【0005】
慢性的なHBVは現在、IFN-α、ならびにヌクレオシドまたはヌクレオチドアナログによって処置されているが、ウイルスRNAの鋳型として、したがって新規ビリオンの鋳型として根本的な役割を果たす共有結合閉鎖環状DNA(cccDNA)と呼ばれる細胞内ウイルス複製中間体が、感染した肝細胞において持続することにより、最終的な治癒は生じない。誘導されたウイルス特異的T細胞およびB細胞応答は、cccDNAを有する肝細胞を有効に排除することができると考えられている。HBVポリメラーゼを標的とする現行の治療は、ウイルス血症を抑制するが、核に存在するcccDNAおよび関連する循環中の抗原の産生に及ぼす効果は限定的である。最も厳格な治癒の形態は、生物からのHBVcccDNAの排除であり得るが、これは自然の転帰としてもいずれかの治療介入の結果としても観察されていない。しかし、HBV表面抗原(HBsAg)の喪失は、臨床的に信頼できる治癒等価物であり、その理由は疾患の再発が重度の免疫抑制の場合に限って起こり得、これは予防的処置によって防止できるためである。このように、少なくとも臨床的見地から、HBsAgの喪失は、HBVに対する免疫再構成の最も厳格な形態に関連する。
【0006】
例えば、peg化インターフェロン(pegIFN)-αによる免疫調節は、有限の一連の処置による非処置時の持続的応答に関して、ヌクレオシドまたはヌクレオチド治療と比較してより良好であることが証明されている。直接の抗ウイルス剤の効果の他にも、IFN-αは、細胞培養およびヒト化マウスにおいてcccDNAの後成的抑制を発揮することが報告されており、これは、ビリオン生産性および転写物の低減をもたらす(Belloni et al. J. Clin. Invest. (2012) 122(2), 529-537)。しかし、この治療もなお副作用を伴い、理由の一部としてIFN-αがHBV特異的T細胞に及ぼす調節的影響がごくわずかであることから、全体的な応答はむしろ低い。特に、治癒率は低く(<10%)、毒性は高い。同様に、直接作用するHBV抗ウイルス剤、すなわちHBVポリメラーゼ阻害剤であるエンテカビルおよびテノフォビルは、ウイルス抑制の誘導において単剤として有効であり、薬物耐性変異体の出現に対する遺伝的障壁が高く、肝疾患の進行を持続的に防止する。しかし、HBsAgの喪失またはセロコンバージョンによって定義される慢性B型肝炎の治癒が、そのようなHBVポリメラーゼ阻害剤によって達成されることはめったにない。したがって、これらの抗ウイルス剤は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の抗レトロウイルス治療と同様に、理論的には、肝疾患の再発を防止するためにいつまでも投与する必要がある。
【0007】
治療的ワクチン接種は、慢性的に感染した患者からHBVを排除する潜在性を有する(Michel et al. J. Hepatol. (2011) 54(6), 1286-1296)。多くの戦略が探索されているが、今日まで治療的ワクチン接種の成功は証明されていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、B型肝炎ウイルス(HBV)、特に慢性的なHBVの処置において、高い治癒率で忍容性が良好な有限の処置のアンメットメディカルニーズが存在する。本発明は、B型肝炎ウイルス(HBV)感染症に対する免疫応答を誘導するための治療的組合せまたは組成物および方法を提供することによって、このニーズを満たす。本発明の免疫原性組成物/組合せおよび方法を使用して、慢性HBV感染症を有する対象等の対象に治療免疫を提供することができる。
【0009】
全般的態様では、本出願は、それを必要とする対象におけるHBV感染症の処置に使用するための、1つまたは複数のHBV抗原、またはHBV抗原をコードする1つまたは複数のポリヌクレオチド、およびHBV遺伝子の発現を阻害するためのRNAi剤を含む治療的組合せまたは組成物に関する。
【0010】
一実施形態では、治療的組合せは、
i)a)配列番号2と、少なくとも95%、例えば少なくとも95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列からなる切断型HBVコア抗原、
b)切断型HBVコア抗原をコードする第1のポリヌクレオチド配列を含む第1の天然に存在しない核酸分子;
c)配列番号7と、少なくとも90%、例えば少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を有するHBVポリメラーゼ抗原であって、逆転写酵素活性およびRNアーゼH活性を有しないHBVポリメラーゼ抗原、および
d)HBVポリメラーゼ抗原をコードする第2のポリヌクレオチド配列を含む第2の天然に存在しない核酸分子
の少なくとも1つ;および
ii)HBV遺伝子の発現を阻害するためのRNAi剤、例えば本明細書に記載されるもの
を含む。
【0011】
一実施形態では、切断型HBVコア抗原は、配列番号2または配列番号4のアミノ酸配列からなり、HBVポリメラーゼ抗原は、配列番号7のアミノ酸配列を含む。
【0012】
一実施形態では、治療的組合せは、HBVポリメラーゼ抗原および切断型HBVコア抗原の少なくとも1つを含む。ある特定の実施形態では、治療的組合せは、HBVポリメラーゼ抗原および切断型HBVコア抗原を含む。
【0013】
一実施形態では、治療的組合せは、切断型HBVコア抗原をコードする第1のポリヌクレオチド配列を含む第1の天然に存在しない核酸分子、およびHBVポリメラーゼ抗原をコードする第2のポリヌクレオチド配列を含む第2の天然に存在しない核酸分子の少なくとも1つを含む。ある特定の実施形態では、第1の天然に存在しない核酸分子は、切断型HBVコア抗原のN末端に作動可能に連結されたシグナル配列をコードするポリヌクレオチド配列をさらに含み、第2の天然に存在しない核酸分子は、HBVポリメラーゼ抗原のN末端に作動可能に連結されたシグナル配列をコードするポリヌクレオチド配列をさらに含み、好ましくは、シグナル配列は、独立して、配列番号9または配列番号15のアミノ酸配列を含み、より好ましくは、シグナル配列は、それぞれ配列番号8または配列番号14のポリヌクレオチド配列によってコードされる。
【0014】
ある特定の実施形態では、第1のポリヌクレオチド配列は、配列番号1または配列番号3と、少なくとも90%、例えば少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列を含む。
【0015】
ある特定の実施形態では、第2のポリヌクレオチド配列は、配列番号5または配列番号6と、少なくとも90%、例えば少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列を含む。
【0016】
ある特定の実施形態では、本発明に有用なHBV遺伝子の発現を阻害するためのRNAi剤、加えて関連情報、例えばその構造、生産、生物学的活性、治療用途、投与または送達などは、US20130005793、WO2013003520またはWO2018027106に記載されており、それらの内容が参照によりそれらの全体として本明細書に組み込まれている。
【0017】
一実施形態では、治療的組合せは、
a)配列番号2と、少なくとも95%、例えば少なくとも95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列からなる切断型HBVコア抗原をコードする第1のポリヌクレオチド配列を含む第1の天然に存在しない核酸分子;
b)配列番号7と、少なくとも90%、例えば少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を有するHBVポリメラーゼ抗原をコードする第2のポリヌクレオチド配列を含む第2の天然に存在しない核酸分子であって、HBVポリメラーゼ抗原は、逆転写酵素活性およびRNアーゼH活性を有しない、第2の天然に存在しない核酸分子;および
c)1)表2に示されるコアセンス鎖配列およびアンチセンス鎖配列を有するRNAi剤;
2)表3に示されるセンス鎖配列およびアンチセンス鎖配列を有するRNAi剤;
3)表4に示されるコアセンス鎖配列およびアンチセンス鎖配列を有するRNAi剤、好ましくは表4に示される改変されたセンス鎖配列およびアンチセンス鎖配列を有するRNAi;
4)表5に示される標的配列を標的化するRNAi剤;
5)表6に示されるコアセンス鎖配列およびアンチセンス鎖配列を有するRNAi剤;
6)表7に示されるコアアンチセンス配列を有するRNAi剤および表8に示されるコアセンス鎖配列、好ましくは表7に示される改変されたセンス鎖配列および表8に示される改変されたアンチセンス鎖配列を有するRNAi;ならびに
7)表9に示されるアンチセンス鎖およびセンス鎖の二重鎖を有するRNAi剤であって、好ましくは表9に示される二重鎖を含むRNAi剤
からなる群から選択されるHBV遺伝子の発現を阻害するためのRNAi剤
を含む。
【0018】
ある特定の実施形態では、RNAi剤は、脂質組成物または脂質ナノ粒子によって、それを必要とする対象に送達される。他の実施形態では、RNAiは、標的化リガンド、例えばN-アセチルガラクトサミンを含む標的化リガンドにコンジュゲートすることによってそれを必要とする対象に送達される。好ましくは、RNAiは、本明細書に記載される標的化リガンド、例えばN-アセチルガラクトサミンを含む標的化リガンドにコンジュゲートすることによってそれを必要とする対象に送達される。
【0019】
好ましくは、治療的組合せは、a)配列番号2または配列番号4のアミノ酸配列からなる切断型HBVコア抗原をコードする第1のポリヌクレオチド配列を含む第1の天然に存在しない核酸分子;b)配列番号7のアミノ酸配列を有するHBVポリメラーゼ抗原をコードする第2のポリヌクレオチド配列を含む第2の天然に存在しない核酸分子、および(c)本明細書に記載されるHBV遺伝子の発現を阻害するためのRNAi薬剤を含む。好ましくは、RNAi薬剤は、表9に示される二重鎖を含む。二重鎖のそれぞれは、好ましくは、標的化リガンドに、好ましくはN-アセチルガラクトサミンを含む標的化リガンド、より好ましくは表10に示される構造を含む標的化リガンドにコンジュゲートされている。
【0020】
好ましくは、治療的組合せは、配列番号1または配列番号3と、少なくとも90%、例えば少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列を含む第1の天然に存在しない核酸分子、および配列番号5または配列番号6と、少なくとも90%、例えば少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列を含む第2の天然に存在しない核酸分子を含む。
【0021】
より好ましくは、治療的組合せは、a)配列番号1または配列番号3の第1のポリヌクレオチド配列を含む第1の天然に存在しない核酸分子;b)配列番号5または6の第2のポリヌクレオチド配列を含む第2の天然に存在しない核酸分子;およびc)本明細書に記載されるHBV遺伝子の発現を阻害するためのRNAi剤を含む。
【0022】
一実施形態では、第1および第2の天然に存在しない核酸分子のそれぞれは、DNA分子であり、好ましくはDNA分子は、プラスミドまたはウイルスベクターに存在する。
【0023】
別の実施形態では、第1および第2の天然に存在しない核酸分子のそれぞれは、RNA分子であり、好ましくはmRNAまたは自己増殖RNA分子である。
【0024】
一部の実施形態では、第1および第2の天然に存在しない核酸分子のそれぞれは、独立して、脂質ナノ粒子(LNP)と共に製剤化される。
【0025】
別の一般的な態様では、本出願は、本出願の治療的組合せを含むキットに関する。
【0026】
本出願はまた、B型肝炎ウイルス(HBV)に対する免疫応答の誘導に使用するための本出願の治療的組合せまたはキット;およびB型肝炎ウイルス(HBV)に対する免疫応答を誘導するための医薬の製造における本出願の治療的組合せ、組成物またはキットの使用にも関する。使用は、別の免疫原性剤または治療剤、好ましくは別のHBV抗原または別のHBV療法との組合せをさらに含んでいてもよい。好ましくは、対象は慢性HBV感染症を有する。
【0027】
本出願はさらに、それを必要とする対象におけるHBV誘導疾患の処置に使用するための本出願の治療的組合せ、またはキット、およびそれを必要とする対象におけるHBV誘導疾患を処置するための医薬の製造における本出願の治療的組合せ、またはキットの使用に関する。使用は、別の治療剤、好ましくは別のHBV抗原との組合せをさらに含み得る。好ましくは、対象は慢性HBV感染症を有し、HBV誘導疾患は、進行線維症、肝硬変、および肝細胞癌(HCC)からなる群から選択される。
【0028】
本出願はまた、本発明の実施形態による治療的組合せを、それを必要とする対象に投与することを含む、HBVに対する免疫応答を誘導する方法またはHBV感染症またはHBV誘導疾患を処置する方法にも関する。
【0029】
本発明の他の態様、特色および利点は、本発明の詳細な説明、ならびにその好ましい実施形態および添付の特許請求の範囲を含む以下の開示から明らかであろう。
【0030】
前述の要約、ならびに以下の本出願の好ましい実施形態の詳細な説明は、添付の図面と共に読むとより良好に理解される。しかし、本出願は、図面に示された実施形態そのものに限定されないと理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1Aおよび
図1Bは、本出願の実施形態に従うDNAプラスミドの略図を示す。
図1Aは、本出願の実施形態に従うHBVコア抗原をコードするDNAプラスミドを示す。
図1Bは、本出願の実施形態に従うHBVポリメラーゼ(pol)抗原をコードするDNAプラスミドを示す;HBVコアおよびpol抗原は、CMVプロモーターの制御下で発現され、N末端シスタチンSシグナルペプチドは、細胞からの分泌時に発現された抗原から切断される;プラスミドの転写調節エレメントは、CMVプロモーターとHBV抗原をコードするポリヌクレオチド配列との間に位置するエンハンサー配列、およびHBV抗原をコードするポリヌクレオチド配列の下流に位置するbGHポリアデニル化配列を含む;第2の発現カセットは、プラスミドにおいて逆方向に含まれ、Amp
r(bla)プロモーターの制御下でカナマイシン耐性遺伝子を含む;複製開始点(pUC)もまた、逆方向に含まれる。
【
図2】
図2Aおよび
図2Bは、本出願の実施形態に従うアデノウイルスベクターにおける発現カセットの略図を示す。
図2Aは、CMVプロモーター、イントロン(ヒトApoAI遺伝子に由来する断片-GenBank受託番号X01038、塩基対295~523、ApoAIの第2のイントロンを有する)、ヒト免疫グロブリン分泌シグナル、この後に続く切断型HBVコア抗原のコード配列およびSV40ポリアデニル化シグナルを含有する、切断型HBVコア抗原の発現カセットを示す。
図2Bは、HBVポリメラーゼ抗原に作動可能に連結された切断型HBVコア抗原の融合タンパク質の発現カセットを示し、これは、HBV抗原を除き、それ以外は切断型HBVコア抗原の発現カセットと同一である。
【
図3】
図3は、実施例3に記載されたようにHBVコア抗原またはHBV pol抗原を発現する異なるDNAプラスミドで免疫化されたBalb/cマウスのELISPOT応答を示す;様々なワクチン接種した動物群から単離された脾細胞を刺激するのに使用されるペプチドプールは、灰色のスケールで示される;応答性T細胞の数は、脾細胞10
6個当たりのスポットを形成する細胞(SFC)として表されるy軸に示される。
【
図4-1】
図4は、US20130005793でより詳細に記載されている、本発明に有用なHBV遺伝子を標的化するRNAi剤のコア配列を示す。
【
図5-1】
図5は、US20130005793でより詳細に記載されている、本発明に有用なHBV遺伝子を標的化するRNAi剤の改変された配列を示す。
【
図6-1】
図6は、US20130005793でより詳細に記載されている、本発明に有用なHBV遺伝子およびその改変されたカウンターパートを標的化するRNAi剤のコア配列を示す。
【
図7】
図7は、WO2018027106でより詳細に記載されている、HBVサブタイプADW2、遺伝子型A、完全ゲノムGenBank AM282986.1から採取した本発明に有用なHBV RNAi剤に関する例示的な19-merのHBV cDNA標的配列を示す。
【
図8】
図8は、WO2018027106でより詳細に記載されている、本発明に有用なHBV RNAi剤アンチセンスおよびセンス鎖のコアストレッチ配列を示す。
【
図9-1】
図9は、WO2018027106でより詳細に記載されている、本発明に有用なHBV RNAi剤のアンチセンス配列を示す。
【
図10-1】
図10は、WO2018027106でより詳細に記載されている、本発明に有用なHBV RNAi剤のセンス配列を示す。
【
図11-1】
図11は、WO2018027106でより詳細に記載されている、本発明に有用なHBV RNAi剤二重鎖の例を示す。
【
図12-1】
図12は、WO2018027106でより詳細に記載されている、本発明に有用な標的化リガンドの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
様々な刊行物、論文、および特許が、背景および本出願全体を通して引用または記載されているが、これらの参照の各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。本明細書に含まれている文書、行為、材料、デバイス、品目等に関する考察は、本発明の内容を提供する目的のためである。そのような考察は、これらの事柄のいずれかまたは全てが、開示または特許請求される任意の本発明に関連して先行技術の一部を形成すると認めたわけではない。
【0033】
それ以外であると定義している場合を除き、本明細書で使用する全ての科学技術用語は、本発明が属する当業者に一般的に理解される意味と同じ意味を有する。そうでなければ、本明細書で使用するある特定の用語は、本明細書に記載の意味を有する。本明細書で引用した全ての特許、公開された特許出願、および刊行物は、それが本明細書に十分に記載されているように参照により本明細書に組み込まれている。
【0034】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの」、「1つの(an)」、および「その」は、本文がそれ以外であると明白に示していない限り、複数形を含むことに注意しなければならない。
【0035】
それ以外であると示していない限り、一連の要素に先行する「少なくとも」という用語は、その一連のあらゆる要素を指すと理解される。当業者は、本明細書に記載の本発明の特定の実施形態に対する多くの均等物を、単なる通例の実験を使用して認識するか、または確認することができる。そのような均等物は、本発明に包含されると意図される。
【0036】
以下に続く本明細書および特許請求の範囲を通して、本文がそれ以外であることを必要としていない限り、用語「含む」および「含む(comprises)」および「含む(comprising)」等の変化形は、記載の整数もしくはステップまたは整数もしくはステップの群を含むことを暗示するが、他の任意の整数もしくはステップまたは整数もしくはステップの群を除外しないと理解される。本明細書で使用する場合、用語「含む」は、用語「含有する」もしくは「含む(including)」に置換することができ、または時に本明細書において使用される場合、「有する」という用語に置換することができる。
【0037】
本明細書で使用される場合、「からなる」は、特許請求の範囲の要素に明記されていないいかなる要素、ステップ、または成分も除外する。本明細書で使用される場合、「本質的にからなる」は、特許請求の範囲の基本的および新規特徴に実質的に影響を及ぼさない材料またはステップを除外しない。上記の用語「含む(comprising)」、「含有する」、「含む(including)」、および「有する」はいずれも、本出願の一態様または一実施形態の文脈において本明細書で使用されている場合は常に、本開示の範囲を変化させるために用語「からなる」または「本質的にからなる」と置換することができる。
【0038】
本明細書で使用される場合、複数の列挙された要素の間の接続詞「および/または」は、個々のおよび組合せの選択肢の両方を包含すると理解される。例えば、2つの要素を「および/または」で接続する場合、第1の選択肢は第2の要素を有しない第1の要素の適応性を指す。第2の選択肢は、第1の要素を有しない第2の要素の適応性を指す。第3の選択肢は、第19よび第2の要素の両方の適応性を指す。これらの選択肢の任意の1つが、その意味に含まれ、したがって本明細書で使用される用語「および/または」の必要条件を満たすと理解される。1つより多くの選択肢の同時の適応性もまた、その意味に含まれ、したがって用語「および/または」の必要条件を満たすと理解される。
【0039】
それ以外であると明記していない限り、本明細書で記載する濃度または濃度範囲等のいかなる数値も、全ての例において用語「約」によって修飾されると理解される。このように、数値は典型的に、列挙した値の±10%を含む。例えば、濃度1mg/mLは、0.9mg/mL~1.1mg/mLを含む。同様に、濃度範囲1mg/mL~10mg/mLは、0.9mg/mL~11mg/mLを含む。本明細書で使用される場合、本文が明白にそれ以外であることを示していない限り、数値範囲の使用は、全ての可能性がある小範囲、そのような範囲内の整数および値の分数を含む、その範囲内の全ての個々の数値を明白に含む。
【0040】
アミノ酸配列を参照して使用する場合の、語句「パーセント(%)配列同一性」または「%同一性」、または「%同一である」は、アミノ酸配列の全長を構成するアミノ酸残基の数と比較して、2つまたはそれより多くの整列させたアミノ酸配列の同一のアミノ酸のマッチ(「ヒット」)数を記載する。言い換えれば、2つまたはそれより多くの配列のアライメントを使用して、当技術分野で公知の配列比較アルゴリズムを使用して測定した場合に最大に一致するように、配列を比較および整列させた場合、または手作業で整列させて肉眼で検分する場合に、同じであるアミノ酸残基のパーセンテージ(例えば、アミノ酸配列の完全長に対する90%、91%、92%、93%、94%、95%、97%、98%、99%、または100%同一性)を決定してもよい。配列同一性を決定するために比較される配列は、このように、アミノ酸の置換、付加、または欠失によって異なっていてもよい。タンパク質配列を整列させるための適したプログラムが当業者に公知である。タンパク質配列のパーセンテージ配列同一性は、例えば、CLUSTALW、Clustal Omega、FASTAまたはBLAST、例えばNCBI BLASTアルゴリズム(Altschul SF, et al(1997), Nucleic Acids Res. 25:3389-3402)等のプログラムによって決定することができる。
【0041】
本明細書で使用される場合、2つまたはそれより多くの治療または構成要素を対象に投与する文脈における、用語および語句「組合せ」または「組み合わせて」、「同時送達」、および「共に投与する」は、2つのベクター、例えばDNAプラスミド、ペプチドまたは治療的組合せおよびアジュバント等の2つまたはそれより多くの治療剤または構成要素の同時投与または後続の投与を指す。「同時投与」は、2つまたはそれより多くの治療または構成要素の少なくとも同じ日の投与であり得る。2つの構成要素を「共に投与する」または「組み合わせて投与する」場合、それらは、個別の組成物において短時間の間に、例えば24、20、16、12、8、もしくは4時間、もしくは1時間以内に連続して投与することができ、またはそれらは単一の組成物で同時に投与することができる。「後続の投与」は、同じ日または別の日における2つまたはそれより多くの療法または構成要素の投与であり得る。用語「組み合わせて」の使用は、治療または構成要素が対象に投与される順序を制限しない。例えば、第1の治療または構成要素(例えば、HBV抗原をコードする第1のDNAプラスミド)を、第2の治療または構成要素(例えば、HBV抗原をコードする第2のDNAプラスミド)および/または第3の療法または構成要素(例えば、HBV遺伝子の発現を阻害するためのRNAi剤)の投与の前(例えば、5分から1時間前)、付随してもしくは同時に、または後に(例えば、5分から1時間後)に投与することができる。一部の実施形態では、第1の治療または構成要素(例えば、HBV抗原をコードする第1のDNAプラスミド)、第2の治療または構成要素(例えば、HBV抗原をコードする第2のDNAプラスミド)および第3の療法または構成要素(例えば、HBV遺伝子の発現を阻害するためのRNAi剤)を、同じ組成物で投与する。他の実施形態では、第1の療法または構成要素(例えばHBV抗原をコードする第1のDNAプラスミド)、第2の療法または構成要素(例えば、HBV抗原をコードする第2のDNAプラスミド)、および第3の療法または構成要素(例えば、HBV遺伝子の発現を阻害するためのRNAi剤)が、個別の組成物で、例えば2または3つの個別の組成物で投与される。
【0042】
本明細書で使用される場合、「天然に存在しない」核酸またはポリペプチドは、自然界に存在しない核酸またはポリペプチドを指す。「天然に存在しない」核酸またはポリペプチドは、研究所および/または製造の状況で合成、処置、作製、および/またはそうでなければ操作することができる。一部の例では、天然に存在しない核酸またはポリペプチドは、処置前に天然に存在する核酸またはポリペプチドには存在しない特性を示すように、処置、処理、または操作されている天然に存在する核酸またはポリペプチドを含み得る。本明細書で使用される場合、「天然に存在しない」核酸またはポリペプチドは、それが発見された天然起源から単離または分離されている核酸またはポリペプチドであり得て、それが天然起源で会合している配列との共有結合を欠如する。「天然に存在しない」核酸またはポリペプチドは、組換えによって、または他の方法、例えば化学合成を介して作製することができる。
【0043】
本明細書で使用される場合、「対象」は、本出願の実施形態に従う方法によって処置されるまたは処置された任意の動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトを意味する。本明細書で使用される用語「哺乳動物」は、任意の哺乳動物を包含する。哺乳動物の例には、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ネコ、イヌ、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、非ヒト霊長類(NHP)、例えばサルまたは類人猿、ヒト等が挙げられるがこれらに限定されず、より好ましくはヒトである。
【0044】
本明細書で使用される場合、用語「作動可能に連結された」は、記述の構成要素がその意図する様式でそれらを機能させる関係にある連結または並置を指す。例えば、目的の核酸配列に作動可能に連結された調節配列は、目的の核酸配列の転写を指示することが可能であり、または目的のアミノ酸配列に作動可能に連結されたシグナル配列は、膜を超えて目的のアミノ酸配列を分泌または移動させることが可能である。
【0045】
本出願の読者を助ける試みで、説明は様々な段落または節で区切られているか、または本出願の様々な実施形態を対象としている。これらの区切りは、段落または節または実施形態の物質を別の段落、節、または実施形態の物質と切り離すと考えるべきではない。逆に、当業者は、説明が広い応用を有し、企図することができる様々な節、段落、および文章の全ての組合せを包含すると理解するであろう。いかなる実施形態の考察も単なる例であることを意味しており、特許請求の範囲を含む本開示の範囲はこれらの例に限定されないと示唆することを意図する。例えば、本明細書に記載の本出願のHBVベクターの実施形態(例えば、プラスミドDNAまたはウイルスベクター)は、特定の順序で配置したある特定のプロモーター配列、エンハンサーまたは調節配列、シグナルペプチド、HBV抗原のコード配列、ポリアデニル化シグナル配列等を含むがこれらに限定されない特定の構成要素を含有し得るが、当業者は、本明細書で開示される概念が、本出願のHBVベクターにおいて使用することができる他の順序で配置した他の構成要素にも等しく当てはまり得ることを認識するであろう。本出願は、特定の組合せが明白に記載されているか否かによらず、本出願のHBVベクターにおいて使用することができる任意の配列を有する任意の応用可能な構成要素の任意の組合せでの使用を企図する。本発明は、一般的に、1つまたは複数のHBV抗原および少なくとも1つのHBV遺伝子の発現を阻害するためのRNAi薬剤を含む治療的組合せに関する。
【0046】
B型肝炎ウイルス(HBV)
本明細書で使用される場合、「B型肝炎ウイルス」または「HBV」は、ヘパドナウイルス科のウイルスを指す。HBVは、4つのオープンリーディングフレームおよび7つのタンパク質をコードする小さい(例えば、3.2kb)肝臓指向性のDNAウイルスである。HBVによってコードされる7つのタンパク質は、small(S)、medium(M)、およびlarge(L)表面抗原(HBsAg)、またはエンベロープ(Env)タンパク質、プレコアタンパク質、コアタンパク質、ウイルスポリメラーゼ(Pol)、およびHBxタンパク質を含む。HBVは、3つの表面抗原またはエンベロープタンパク質、L、M、およびSを発現し、Sが最小であり、Lが最大である。MおよびLタンパク質におけるエクストラドメインはそれぞれ、Pre-S2およびPre-S1と呼ばれる。コアタンパク質は、ウイルスヌクレオキャプシドのサブユニットである。Polは、ウイルスDNAの合成にとって必要であり(逆転写酵素、RNアーゼH、およびプライマー)、これは感染した肝細胞の細胞質に局在するヌクレオキャプシドで起こる。プレコアは、N末端シグナルペプチドを有するコアタンパク質であり、そのN末端およびC末端でタンパク質分解によりプロセシングされ、感染した細胞からいわゆるB型肝炎e抗原(HBeAg)として分泌される。HBxタンパク質は、共有結合閉鎖環状DNA(cccDNA)の効率的な転写にとって必要である。HBxは、ウイルスの構造タンパク質ではない。HBVの全てのウイルスタンパク質は、mRNAを共有するコアおよびポリメラーゼを除き自身のmRNAを有する。タンパク質プレコアを除き、いずれのHBVウイルスタンパク質も翻訳後タンパク質分解によるプロセシングを受けない。
【0047】
HBVビリオンは、ウイルスエンベロープ、ヌクレオキャプシド、および1コピーの部分的二本鎖DNAゲノムを含有する。ヌクレオキャプシドは、コアタンパク質の120個の二量体を含み、S、M、およびLウイルスエンベロープ、または表面抗原タンパク質に埋もれているキャプシド膜によって覆われている。細胞内に侵入後、ウイルスは、脱殻し、ウイルスポリメラーゼが共有結合したキャプシドを含有するリラックスした環状DNA(rcDNA)が核に移行する。そのプロセスの間、コアタンパク質のリン酸化が構造の変化を誘導し、核移行シグナルを露出させ、キャプシドといわゆるインポーチンとの相互作用を可能にする。これらのインポーチンは、コアタンパク質と核膜孔複合体との結合を媒介し、それによってキャプシドが分解し、ポリメラーゼ/rcDNA複合体が核に放出される。核内でrcDNAが、脱タンパク質化され(ポリメラーゼの除去)、宿主DNA修復機構によって共有結合閉鎖環状DNA(cccDNA)ゲノムに変換され、重複する転写物がHBeAg、HBsAg、コアタンパク質、ウイルスポリメラーゼおよびHBxタンパク質をコードする。コアタンパク質、ウイルスポリメラーゼ、およびプレゲノムRNA(pgRNA)は、細胞質で会合し、未成熟なpgRNA含有キャプシド粒子へと自己アセンブリし、これはさらに成熟rcDNAキャプシドへと変換して共通の中間体として機能し、エンベロープに包まれて感染性のウイルス粒子として分泌されるか、または核に再度輸送されて安定なcccDNAプールを補充および維持する。
【0048】
今日まで、HBVは、エンベロープタンパク質に存在する抗原性エピトープに基づいて4つの血清型(adr、adw、ayr、ayw)に、およびウイルスゲノムの配列に基づいて8つの遺伝子型(A、B、C、D、E、F、G、およびH)に分類される。HBV遺伝子型は、異なる地域にわたって分布している。例えば、アジアで最も多い遺伝子型は、遺伝子型BおよびCである。遺伝子型Dは、アフリカ、中東、およびインドで一般的であるが、遺伝子型Aは、北部ヨーロッパ、サハラ下アフリカ、および西アフリカで広く認められる。
【0049】
HBV抗原
本明細書で使用される場合、用語「HBV抗原」、「HBVの抗原性ポリペプチド」、「HBV抗原性ポリペプチド」、「HBV抗原性タンパク質」、「HBV免疫原性ポリペプチド」、および「HBV免疫原」は全て、対象においてHBVに対する免疫応答、例えば液性免疫応答および/または細胞性免疫応答を誘導することが可能なポリペプチドを指す。HBV抗原は、HBVのポリペプチド、その断片もしくはエピトープ、または複数のHBVポリペプチド、その一部もしくは誘導体の組合せであり得る。HBV抗原は、宿主において保護的免疫応答を生じる、例えばウイルス疾患または感染症に対する免疫応答を誘導することが可能であり、および/または対象において、ウイルス疾患または感染症に対して対象を保護する、ウイルス疾患もしくは感染症に対する免疫を生じる(すなわち、ワクチン接種する)ことが可能である。例えば、HBV抗原は、任意のHBVタンパク質、例えばHBeAg、プレコアタンパク質、HBsAg(S、M、またはLタンパク質)、コアタンパク質、ウイルスポリメラーゼ、または任意のHBV遺伝子型、例えば遺伝子型A、B、C、D、E、F、G、および/もしくはHに由来するHBxタンパク質からのポリペプチドまたはその免疫原性断片、またはその組合せを含み得る。
【0050】
(1)HBVコア抗原
本明細書で使用される場合、用語「HBVコア抗原」、「HBc」、および「コア抗原」は全て、対象においてHBVコアタンパク質に対する免疫応答、例えば液性免疫応答および/または細胞性免疫応答を誘導することが可能なHBV抗原を指す。用語「コア」、「コアポリペプチド」、および「コアタンパク質」の各々は、HBVウイルスコアタンパク質を指す。完全長のコア抗原は、典型的には、183アミノ酸長であり、アセンブリドメイン(アミノ酸1~149)および核酸結合ドメイン(アミノ酸150~183)を含む。34残基の核酸結合ドメインは、プレゲノムRNAキャプシド形成にとって必要である。このドメインはまた、核輸入シグナルとしても機能する。これは、17個のアルギニン残基を含み、その機能と整合して、高度に塩基性である。HBVコアタンパク質は溶液中で二量体であり、二量体は、正二十面体のキャプシドへと自己アセンブルする。コアタンパク質の各々の二量体は、いずれかの側にα-ヘリックスドメインが隣接する4つのα-ヘリックスバンドルを有する。核酸結合ドメインを欠如する切断型HBVコアタンパク質もまた、キャプシドを形成することが可能である。
【0051】
本出願の一実施形態では、HBV抗原は、切断型HBVコア抗原である。本明細書で使用される場合、「切断型HBVコア抗原」は、HBVコアタンパク質の完全長を含有しないが、対象においてHBVコアタンパク質に対する免疫応答を誘導することが可能であるHBV抗原を指す。例えば、HBVコア抗原は、典型的に17個のアルギニン(R)残基を含有するコア抗原の高度に正に帯電した(アルギニンに富む)C末端核酸結合ドメインの1つまたは複数のアミノ酸を欠失させるように改変することができる。本出願の切断型HBVコア抗原は、好ましくはHBVコア核輸入シグナルを含まないC末端切断型HBVコアタンパク質、および/またはC末端HBVコア核輸入シグナルが欠失している切断型HBVコアタンパク質である。一実施形態では、切断型HBVコア抗原は、C末端核酸結合ドメインの1~34アミノ酸残基の欠失、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、または34アミノ酸残基の欠失、好ましくは34アミノ酸残基全ての欠失を含む。好ましい実施形態では、切断型HBVコア抗原は、C末端核酸結合ドメインの欠失を含み、好ましくは34アミノ酸残基全ての欠失を含む。
【0052】
本出願のHBVコア抗原は、複数のHBV遺伝子型(例えば、遺伝子型A、B、C、D、E、F、G、およびH)に由来するコンセンサス配列であり得る。本明細書で使用される場合、「コンセンサス配列」は、例えば相同なタンパク質のアミノ酸配列のアライメント(例えば、Clustal Omegaを使用して)によって決定した、相同なタンパク質のアミノ酸配列のアライメントに基づく人工的なアミノ酸配列を意味する。これは、少なくとも100個の天然のHBV単離体からのHBV抗原(例えば、コア、pol等)の配列に基づいて、配列アライメントにおける各位置で見出される最も頻繁なアミノ酸残基の計算された順序であり得る。コンセンサス配列は、天然に存在せず、ネイティブウイルス配列とは異なり得る。コンセンサス配列は、マルチプル配列アライメントツールを使用して異なる起源からの複数のHBV抗原配列を整列させるステップ、および多様なアライメント位置で最も頻繁なアミノ酸を選択するステップによって設計することができる。好ましくは、HBV抗原のコンセンサス配列は、HBV遺伝子型B、C、およびDに由来する。用語「コンセンサス抗原」は、コンセンサス配列を有する抗原を指すために使用される。
【0053】
本出願に従う例示的な切断型HBVコア抗原は、核酸結合機能を欠如し、哺乳動物において少なくとも2つのHBV遺伝子型に対する免疫応答を誘導することが可能である。好ましくは、切断型HBVコア抗原は、哺乳動物において少なくともHBV遺伝子型B、CおよびDに対するT細胞応答を誘導することが可能である。より好ましくは、切断型HBVコア抗原は、ヒト対象において少なくともHBV遺伝子型A、B、CおよびDに対するCD8 T細胞応答を誘導することが可能である。
【0054】
好ましくは、本出願のHBVコア抗原は、コンセンサス抗原、好ましくはHBV遺伝子型B、C、およびDに由来するコンセンサス抗原、より好ましくはHBV遺伝子型B、C、およびDに由来する切断型コンセンサス抗原である。本出願に従う例示的な切断型HBVコアコンセンサス抗原は、配列番号2または配列番号4と少なくとも90%同一である、例えば配列番号2または配列番号4と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、95.5%、96%、96.5%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列からなる。配列番号2および配列番号4は、HBV遺伝子型B、C、およびDに由来するコアコンセンサス抗原である。配列番号2および配列番号4は、それぞれネイティブコア抗原の高度に正に帯電した(アルギニンに富む)核酸結合ドメインの34アミノ酸C末端欠失を含有する。
【0055】
本出願の一実施形態では、HBVコア抗原は、配列番号2のアミノ酸配列からなる切断型HBV抗原である。別の実施形態では、HBVコア抗原は、配列番号4のアミノ酸配列からなる切断型HBV抗原である。別の実施形態では、HBVコア抗原は、成熟HBVコア抗原配列、例えば配列番号2または配列番号4のアミノ酸配列のN末端に作動可能に連結されたシグナル配列をさらに含有する。好ましくは、シグナル配列は、配列番号9または配列番号15のアミノ酸配列を有する。
【0056】
(2)HBVポリメラーゼ抗原
本明細書で使用される場合、用語「HBVポリメラーゼ抗原」、「HBV Pol抗原」、または「HBV pol抗原」は、対象においてHBVポリメラーゼに対する免疫応答、例えば液性免疫応答および/または細胞性免疫応答を誘導することが可能であるHBV抗原を指す。用語「ポリメラーゼ」、「ポリメラーゼポリペプチド」、「Pol」、および「pol」は、HBVウイルスDNAポリメラーゼを指す。HBVウイルスDNAポリメラーゼは、N末端からC末端に、マイナス鎖DNA合成のプライマーとして作用する末端タンパク質(TP)ドメイン、ポリメラーゼ機能にとって必須ではないスペーサー、転写のための逆転写酵素(RT)ドメイン、およびRNアーゼHドメインを含む4つのドメインを有する。
【0057】
本出願の一実施形態では、HBV抗原は、HBV Pol抗原、またはその免疫原性断片または組合せを含む。HBV Pol抗原は、例えばある特定の酵素活性を減少させるかまたは実質的に排除するために、ポリメラーゼおよび/またはRNアーゼドメインの活性部位に変異を導入することによって、抗原の免疫原性を改善するためにさらなる改変を含有し得る。
【0058】
好ましくは、本出願のHBV Pol抗原は、逆転写酵素活性およびRNアーゼH活性を有さず、哺乳動物において少なくとも2つのHBV遺伝子型に対する免疫応答を誘導することが可能である。好ましくは、HBV Pol抗原は、哺乳動物において少なくともHBV遺伝子型B、CおよびDに対するT細胞応答を誘導することが可能である。より好ましくは、HBV Pol抗原は、ヒト対象において、少なくともHBV遺伝子型A、B、CおよびDに対するCD8 T細胞応答を誘導することが可能である。
【0059】
このように、一部の実施形態では、HBV Pol抗原は、不活化Pol抗原である。一実施形態では、不活化HBV Pol抗原は、ポリメラーゼドメインの活性部位に1つまたは複数のアミノ酸変異を含む。別の実施形態では、不活化HBV Pol抗原は、RNアーゼHドメインの活性部位に1つまたは複数のアミノ酸変異を含む。好ましい実施形態では、不活化HBV pol抗原は、ポリメラーゼドメインおよびRNアーゼHドメインの両方の活性部位に1つまたは複数のアミノ酸変異を含む。例えば、ヌクレオチド/金属イオン結合にとって必要であり得るHBV pol抗原のポリメラーゼドメインにおける「YXDD」モチーフを、例えばアスパラギン酸塩残基(D)の1つまたは複数をアスパラギン残基(N)に置換することによって、変異させることができ、それによって金属配位機能を排除するかまたは低減させ、それによって逆転写酵素機能を減少させるかまたは実質的に排除することができる。あるいは、または「YXDD」モチーフの変異に加えて、HBV pol抗原のRNアーゼHドメインにおけるMg2+配位にとって必要な「DEDD」モチーフを、例えば1つまたは複数のアスパラギン酸塩残基(D)をアスパラギン残基(N)に置換することによって、および/またはグルタミン酸塩残基(E)をグルタミン(Q)に置換することによって変異させることができ、それによってRNアーゼH機能を減少させるかまたは実質的に排除することができる。特定の実施形態では、HBV pol抗原は、(1)ポリメラーゼドメインの「YXDD」モチーフにおいてアスパラギン酸塩残基(D)をアスパラギン残基(N)に変異させることによって、および(2)RNアーゼHドメインの「DEDD」モチーフにおける第1のアスパラギン酸塩残基(D)をアスパラギン残基(N)に、および第1のグルタミン酸塩残基(E)をグルタミン残基(N)に変異させることによって改変され、それによってpol抗原の逆転写酵素およびRNアーゼH機能を減少させるかまたは実質的に排除する。
【0060】
本出願の好ましい実施形態では、HBV pol抗原は、コンセンサス抗原、好ましくはHBV遺伝子型B、C、およびDに由来するコンセンサス抗原であり、より好ましくはHBV遺伝子型B、C、およびDに由来する不活化コンセンサス抗原である。本出願に従う例示的なHBV polコンセンサス抗原は、配列番号7と少なくとも90%同一である、例えば配列番号7と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、95.5%、96%、96.5%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%同一である、好ましくは配列番号7と少なくとも98%同一である、例えば配列番号7と少なくとも98%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。配列番号7は、ポリメラーゼおよびRNアーゼHドメインの活性部位に位置する4つの変異を含むHBV遺伝子型B、C、およびDに由来するpolコンセンサス抗原である。特に、4つの変異は、ポリメラーゼドメインの「YXDD」モチーフにおけるアスパラギン酸塩残基(D)のアスパラギン残基(N)への変異、ならびにRNアーゼHドメインの「DEDD」モチーフにおける第1のアスパラギン酸塩残基(D)のアスパラギン残基(N)への変異、およびグルタミン酸塩残基(E)のグルタミン残基(Q)への変異を含む。
【0061】
本出願の特定の実施形態では、HBV pol抗原は、配列番号7のアミノ酸配列を含む。本出願の他の実施形態では、HBV pol抗原は、配列番号7のアミノ酸配列からなる。さらなる実施形態では、HBV pol抗原は、成熟HBV pol抗原配列、例えば配列番号7のアミノ酸配列のN末端に作動可能に連結されたシグナル配列をさらに含有する。好ましくは、シグナル配列は、配列番号9または配列番号15のアミノ酸配列を有する。
【0062】
(3)HBVコア抗原およびHBVポリメラーゼ抗原の融合体
本明細書で使用される場合、「融合タンパク質」、または「融合体」は、単一の天然のポリペプチドに通常存在しない少なくとも2つのポリペプチドドメインを有する単一のポリペプチド鎖を指す。
【0063】
本出願の一実施形態では、HBV抗原は、好ましくはリンカーを介して、HBV Pol抗原に作動可能に連結された切断型HBVコア抗原、または切断型HBVコア抗原に作動可能に連結されたHBV Pol抗原を含む融合タンパク質を含む。
【0064】
例えば、第1のポリペプチドおよび第2の異種ポリペプチドを含有する融合タンパク質では、リンカーは、主に第1のポリペプチドと第2の異種ポリペプチドとの間のスペーサーとしての役目を果たす。一実施形態では、リンカーは、ペプチド結合によって共に連結されたアミノ酸、好ましくはペプチド結合によって連結された1~20個のアミノ酸で構成され、アミノ酸は、20個の天然に存在するアミノ酸から選択される。一実施形態では、1~20個のアミノ酸は、グリシン、アラニン、プロリン、アスパラギン、グルタミン、およびリジンから選択される。好ましくは、リンカーは、立体妨害を受けないアミノ酸、例えばグリシンおよびアラニンで大部分が構成される。例示的なリンカーは、ポリグリシン、特に(Gly)5、(Gly)8、ポリ(Gly-Ala)、およびポリアラニンである。以下の実施例に示される1つの例示的な適したリンカーは、(AlaGly)nであり、式中nは2~5の整数である。
【0065】
好ましくは、本出願の融合タンパク質は、哺乳動物において、少なくとも2つのHBV遺伝子型のHBVコアおよびHBV Polに対する免疫応答を誘導することが可能である。好ましくは、融合タンパク質は、哺乳動物において少なくともHBV遺伝子型B、CおよびDに対するT細胞応答を誘導することが可能である。より好ましくは、融合タンパク質は、ヒト対象において少なくともHBV遺伝子型A、B、CおよびDに対するCD8 T細胞応答を誘導することが可能である。
【0066】
本出願の一実施形態では、融合タンパク質は、配列番号2または配列番号4と少なくとも90%同一である、例えば少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、95.5%、96%、96.5%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列を有する切断型HBVコア抗原、リンカー、および配列番号7と少なくとも90%同一である、例えば少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、95.5%、96%、96.5%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列を有するHBV Pol抗原を含む。
【0067】
本出願の好ましい実施形態では、融合タンパク質は、配列番号2または配列番号4のアミノ酸配列からなる切断型HBVコア抗原、nが2~5の整数である(AlaGly)nを含むリンカー、および配列番号7のアミノ酸配列を有するHBV Pol抗原を含む。より好ましくは、本出願の実施形態に従う融合タンパク質は、配列番号16のアミノ酸配列を含む。
【0068】
本出願の一実施形態において、融合タンパク質は、融合タンパク質のN末端に作動可能に連結されたシグナル配列をさらに含む。好ましくは、シグナル配列は、配列番号9または配列番号15のアミノ酸配列を有する。一実施形態では、融合タンパク質は、配列番号17のアミノ酸配列を含む。
【0069】
本発明に使用することができるHBVワクチンに関する追加の開示は、2018年12月18日に出願された米国特許出願第16/223,251号に記載されており、この出願の内容、より好ましくはこの出願の実施例は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている。
【0070】
ポリヌクレオチドおよびベクター
別の一般的な態様では、本出願は、本出願の実施形態による発明に有用なHBV抗原をコードする天然に存在しない核酸分子、および天然に存在しない核酸を含むベクターを提供する。第1または第2の天然に存在しない核酸分子は、本出願に有用なHBV抗原をコードするあらゆるポリヌクレオチド配列を含むことができ、これは、本発明の開示を考慮して当技術分野で公知の方法を使用して作製することができる。好ましくは、第1または第2のポリヌクレオチドは、本出願の切断型HBVコア抗原およびHBVポリメラーゼ抗原の少なくとも1つをコードする。ポリヌクレオチドは、組換え技術(例えば、クローニング)によって得た、または合成(例えば、化学合成)によって産生されたRNAの形態またはDNAの形態であり得る。DNAは、一本鎖もしくは二本鎖であり得るか、または二本鎖および一本鎖配列の両方の部分を含有し得る。例えば、DNAは、ゲノムDNA、cDNA、またはその組合せを含み得る。ポリヌクレオチドはまた、DNA/RNAハイブリッドでもあり得る。本出願のポリヌクレオチドおよびベクターは、組換えタンパク質産生、宿主細胞におけるタンパク質の発現、またはウイルス粒子の産生のために使用することができる。好ましくは、ポリヌクレオチドは、DNAである。
【0071】
本出願の一実施形態では、第1の天然に存在しない核酸分子は、配列番号2または配列番号4と少なくとも90%同一である、例えば配列番号2と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、95.5%、96%、96.5%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%同一である、好ましくは配列番号2または配列番号4と98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列からなる切断型HBVコア抗原をコードする第1のポリヌクレオチド配列を含む。本出願の特定の実施形態では、第1の天然に存在しない核酸分子は、配列番号2または配列番号4のアミノ酸配列からなる切断型HBVコア抗原をコードする第1のポリヌクレオチド配列を含む。
【0072】
配列番号2または配列番号4のアミノ酸配列からなる切断型HBVコア抗原をコードする本出願のポリヌクレオチド配列の例には、配列番号1または配列番号3と少なくとも90%同一である、例えば配列番号1または配列番号3と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、95.5%、96%、96.5%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%同一である、好ましくは配列番号1または配列番号3と98%、99%、または100%同一であるポリヌクレオチド配列が挙げられるがこれらに限定されない。切断型HBVコア抗原をコードする例示的な天然に存在しない核酸分子は、配列番号1または3のポリヌクレオチド配列を有する。
【0073】
別の実施形態では、第1の天然に存在しない核酸分子は、HBVコア抗原配列のN末端に作動可能に連結されているシグナル配列のコード配列をさらに含む。好ましくは、シグナル配列は、配列番号9または配列番号15のアミノ酸配列を有する。より好ましくは、シグナル配列のコード配列は、配列番号8または配列番号14のポリヌクレオチド配列を含む。
【0074】
本出願の実施形態では、第2の天然に存在しない核酸分子は、配列番号7と少なくとも90%同一な、例えば配列番号7と、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、95.5%、96%、96.5%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%または100%同一な、好ましくは配列番号7と100%同一なアミノ酸配列を含むHBVポリメラーゼ抗原をコードする第2のポリヌクレオチド配列を含む。本出願の特定の実施形態では、第2の天然に存在しない核酸分子は、配列番号7のアミノ酸配列からなるHBVポリメラーゼ抗原をコードする第2のポリヌクレオチド配列を含む。
【0075】
配列番号7と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むHBV Pol抗原をコードする本出願のポリヌクレオチド配列の例には、配列番号5または配列番号6と少なくとも90%同一である、例えば配列番号5または配列番号6と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、95.5%、96%、96.5%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%同一である、好ましくは配列番号5または配列番号6と98%、99%、または100%同一であるポリヌクレオチド配列が挙げられるがこれらに限定されない。HBV pol抗原をコードする例示的な天然に存在しない核酸分子は、配列番号5または6のポリヌクレオチド配列を有する。
【0076】
別の実施形態では、第2の天然に存在しない核酸分子は、HBV pol抗原配列、例えば配列番号7のアミノ酸配列のN末端に作動可能に連結されているシグナル配列のコード配列をさらに含む。好ましくは、シグナル配列は、配列番号9または配列番号15のアミノ酸配列を有する。より好ましくは、シグナル配列のコード配列は、配列番号8または配列番号14のポリヌクレオチド配列を含む。
【0077】
本出願の別の実施形態では、天然に存在しない核酸分子は、HBV Pol抗原に作動可能に連結された切断型HBVコア抗原、または切断型HBVコア抗原に作動可能に連結されたHBV Pol抗原を含むHBV抗原融合タンパク質をコードする。特定の実施形態では、本出願の天然に存在しない核酸分子は、配列番号2または配列番号4と少なくとも90%同一である、例えば配列番号2または配列番号4と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、95.5%、96%、96.5%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%同一である、好ましくは配列番号2または配列番号4と100%同一である、より好ましくは配列番号2または配列番号4と100%同一であるアミノ酸配列からなる切断型HBVコア抗原;リンカー;ならびに配列番号7と少なくとも90%同一である、例えば配列番号7と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、95.5%、96%、96.5%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%同一である、好ましくは配列番号7と98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含むHBVポリメラーゼ抗原をコードする。本出願の特定の実施形態では、天然に存在しない核酸分子は、配列番号2または配列番号4のアミノ酸配列からなる切断型HBVコア抗原、nが2~5の整数である(AlaGly)nを含むリンカー、および配列番号7のアミノ酸配列を含むHBV Pol抗原を含む融合タンパク質をコードする。本出願の特定の実施形態では、天然に存在しない核酸分子は、配列番号16のアミノ酸配列を含むHBV抗原融合タンパク質をコードする。
【0078】
HBV抗原融合タンパク質をコードする本出願のポリヌクレオチド配列の例には、配列番号1または配列番号3と少なくとも90%同一である、例えば配列番号1または配列番号3と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、95.5%、96%、96.5%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%同一である、好ましくは配列番号1または配列番号3と98%、99%、または100%同一であるポリヌクレオチド配列であって、配列番号11と少なくとも90%同一である、例えば配列番号11と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、95.5%、96%、96.5%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%同一である、好ましくは配列番号11と98%、99%、または100%同一であるリンカーコード配列に作動可能に連結され、リンカーコード配列がさらに、配列番号5または配列番号6と少なくとも90%同一である、例えば配列番号5または配列番号6と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、95.5%、96%、96.5%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%同一である、好ましくは配列番号5または配列番号6と98%、99%、または100%同一であるポリヌクレオチド配列にさらに作動可能に連結される、ポリヌクレオチド配列が挙げられるがこれらに限定されない。本出願の特定の実施形態では、HBV抗原融合タンパク質をコードする天然に存在しない核酸分子は、配列番号5または配列番号6にさらに作動可能に連結された配列番号11に作動可能に連結された配列番号1または配列番号3を含む。
【0079】
別の実施形態では、HBV融合体をコードする天然に存在しない核酸分子は、HBV融合体配列、例えば配列番号16のアミノ酸配列のN末端に作動可能に連結されているシグナル配列のコード配列をさらに含む。好ましくは、シグナル配列は、配列番号9または配列番号15のアミノ酸配列を有する。より好ましくは、シグナル配列のコード配列は、配列番号8または配列番号14のポリヌクレオチド配列を含む。一実施形態では、シグナル配列を含むコードされた融合タンパク質は、配列番号17のアミノ酸配列を含む。
【0080】
本出願はまた、第1および/または第2の天然に存在しない核酸分子を含むベクターにも関する。本明細書で使用される場合、「ベクター」は、遺伝子材料を別の細胞に運ぶために使用され、そこで複製および/または発現させることができる核酸分子である。本開示を考慮して当業者に公知の任意のベクターを使用することができる。ベクターの例には、プラスミド、ウイルスベクター(バクテリオファージ、動物ウイルス、および植物ウイルス)、コスミド、および人工染色体(例えば、YAC)が挙げられるがこれらに限定されない。好ましくは、ベクターはDNAプラスミドである。ベクターは、DNAベクターまたはRNAベクターであり得る。当業者は、本開示を考慮して標準的な組換え技術を通して、本出願のベクターを構築することができる。
【0081】
本出願のベクターは、発現ベクターであり得る。本明細書で使用される場合、用語「発現ベクター」は、転写することが可能なRNAをコードする核酸を含む任意のタイプの遺伝子構築物を指す。発現ベクターには、組換えタンパク質発現のためのベクター、例えばDNAプラスミド、またはウイルスベクター、および対象の組織において発現させるために対象に核酸を送達するためのベクター、例えばDNAプラスミドまたはウイルスベクターが挙げられるがこれらに限定されない。発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現レベル等の要因に依存し得ることは当業者によって認識される。
【0082】
本出願のベクターは、多様な調節配列を含有し得る。本明細書で使用される場合、用語「調節配列」は、複製、重複、転写、スプライシング、翻訳、核酸またはその誘導体の1つ(すなわち、mRNA)の安定性および/または宿主細胞もしくは生物への輸送を含む、核酸分子の機能的調節を可能にする、寄与する、またはモジュレートする任意の配列を指す。本開示の文脈では、この用語は、プロモーター、エンハンサー、および他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナルおよびmRNA安定性に影響を及ぼすエレメント)を包含する。
【0083】
本出願の一部の実施形態では、ベクターは、非ウイルスベクターである。非ウイルスベクターの例には、DNAプラスミド、細菌人工染色体、酵母人工染色体、バクテリオファージ等が挙げられるがこれらに限定されない。非ウイルスベクターの例には、RNAレプリコン、mRNAレプリコン、改変mRNAレプリコン、または自己増幅mRNA、閉鎖線形デオキシリボ核酸、例えば線形共有結合閉鎖二本鎖DNA分子など線形共有結合閉鎖DNAが挙げられるがこれらに限定されない。好ましくは、非ウイルスベクターは、DNAプラスミドである。「DNAプラスミド」は、「DNAプラスミドベクター」、「プラスミドDNA」または「プラスミドDNAベクター」と互換的に使用され、適した宿主細胞において自立複製を可能にする、二本鎖で一般的に環状のDNA配列を指す。コードされるポリヌクレオチドの発現のために使用されるDNAプラスミドは、典型的には、複製開始点、マルチクローニングサイト、および例えば抗生物質耐性遺伝子であり得る選択可能マーカーを含む。使用することができる適したDNAプラスミドの例には、周知の発現系において使用するための市販の発現ベクター(原核細胞および真核細胞系の両方を含む)、例えば大腸菌(Escherichia coli)におけるタンパク質の産生および/または発現のために使用することができるpSE420(Invitrogen、San Diego、Calif.);酵母(Saccharomyces cerevisiae)株における産生および/または発現のために使用することができるpYES2(Invitrogen、Thermo Fisher Scientific);昆虫細胞における産生および/または発現のために使用することができるMAXBAC(登録商標)完全バキュロウイルス発現系(Thermo Fisher Scientific);哺乳動物細胞における高レベルの構成的タンパク質発現のために使用することができるpcDNA(商標)またはpcDNA3(商標)(Life Technologies、Thermo Fisher Scientific);ならびにほとんどの哺乳動物細胞において目的のタンパク質の高レベルの一過性の発現のために使用することができるpVAXまたはpVAX-1(Life Technologies、Thermo Fisher Scientific)が挙げられるがこれらに限定されない。任意の市販のDNAプラスミドの骨格を、宿主細胞におけるタンパク質発現を最適にするために、通常の技術および容易に入手可能な出発材料を使用して、例えばある特定のエレメント(例えば、複製開始点および/または抗生物質耐性カセット)の方向を逆転させるように、プラスミドに対して内因性のプロモーター(例えば、抗生物質耐性カセットにおけるプロモーター)を置換するように、および/または転写されたタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列(例えば、抗生物質耐性遺伝子のコード配列)を置換するように改変することができる(例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning a Laboratory Manual, Second Ed. Cold Spring Harbor Press(1989)を参照されたい)。
【0084】
好ましくは、DNAプラスミドは、哺乳動物宿主細胞におけるタンパク質発現にとって適した発現ベクターである。哺乳動物宿主細胞におけるタンパク質発現にとって適した発現ベクターには、pcDNA(商標)、pcDNA3(商標)、pVAX、pVAX-1、ADVAX、NTC8454等が挙げられるがこれらに限定されない。好ましくは、発現ベクターはpVAX-1に基づくが、これを、哺乳動物細胞におけるタンパク質発現を最適にするためにさらに改変することができる。pVAX-1は、DNAワクチンにおいて一般的に使用されるプラスミドであり、強いヒト中間初期サイトメガロウイルス(CMV-IE)プロモーター、その後に続くウシ成長ホルモン(bGH)由来ポリアデニル化配列(pA)を含有する。pVAX-1は、細菌プラスミドの繁殖を可能にする小さい原核細胞プロモーターによって駆動されるpUC複製開始点およびカナマイシン耐性遺伝子をさらに含有する。
【0085】
本出願のベクターはまた、ウイルスベクターであり得る。一般的に、ウイルスベクターは、非感染性にされているが、それでもなおウイルスプロモーターおよびトランスジーンを含有し、それによってウイルスプロモーターを通してのトランスジーンの翻訳を可能にする、改変ウイルスDNAまたはRNAを保有する遺伝子操作ウイルスである。ウイルスベクターはしばしば、感染性の配列を欠如することから、それらは大規模トランスフェクションのためにはヘルパーウイルスまたはパッケージングラインを必要とする。使用することができるウイルスベクターの例には、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、腸内ウイルスベクター、ベネズエラウマ脳炎ウイルスベクター、セムリキ森林ウイルスベクター、タバコモザイクウイルスベクター、レンチウイルスベクター等が挙げられるがこれらに限定されない。使用することができるウイルスベクターの例には、アレナウイルスウイルスベクター、複製欠損アレナウイルスウイルスベクターまたは複製コンピテントアレナウイルスウイルスベクター、2分節または3分節アレナウイルス、感染性アレナウイルスウイルスベクター、ゲノム分節の1つのオープンリーディングフレームが欠失しているかまたは機能的に不活性化されている(および本明細書に記載のHBV抗原をコードする核酸によって置換されている)アレナウイルスゲノム分節を含む核酸、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、例えばクローン13株またはMP株、およびフニンウイルス、例えば、Candid #1株等のアレナウイルス等のアレナウイルス等が挙げられるがこれらに限定されない。ベクターはまた、非ウイルスベクターでもあり得る。
【0086】
好ましくは、ウイルスベクターはアデノウイルスベクター、例えば組換えアデノウイルスベクターである。組換えアデノウイルスベクターは、例えばヒトアデノウイルス(HAdV、またはAdHu)、またはシミアンアデノウイルス、例えばチンパンジーもしくはゴリラアデノウイルス(ChAd、AdCh、またはSAdV)もしくはアカゲザルアデノウイルス(rhAd)に由来し得る。好ましくは、アデノウイルスベクターは、組換えヒトアデノウイルスベクター、例えば組換えヒトアデノウイルス血清型26、または組換えヒトアデノウイルス血清型5、4、35、7、48等のいずれか1つである。他の実施形態では、アデノウイルスベクターは、rhAdベクター、例えばrhAd51、rhAd52またはrhAd53である。
【0087】
ベクターは、線形共有結合閉鎖二本鎖(linear covalently closed double-stranded)DNAベクターであってもよい。「線形共有結合閉鎖二本鎖DNAベクター」は、本明細書で使用される場合、構造的にプラスミドDNAとは異なる線形閉鎖デオキシリボ核酸(DNA)を指す。これは、プラスミドDNAの利点の多くに加えてRNA戦略に類似した最小のカセットサイズを有する。例えば、これは、コードされた抗原性配列、プロモーター、ポリアデニル化配列、およびテロメア末端を一般的に含むベクターカセットであり得る。プラスミドフリーの構築物は、細菌の配列を必要とすることなく酵素的なプロセスを介して合成することができる。好適な線形共有結合閉鎖DNAベクターの例には、商業的に入手可能な発現ベクター、例えば「Doggybone(商標)閉鎖線形DNA」(dbDNA(商標))(Touchlight Genetics Ltd.;London、England)が挙げられるがこれらに限定されない。例えば、内容全体が参照により本明細書に組み込まれるScott et al, Hum Vaccin Immunother. 2015 Aug; 11(8): 1972-1982を参照されたい。DNA分子、例えば本発明の活性分子を送達するためのこのようなベクターを作り出し、使用するための、線形共有結合閉鎖二本鎖DNAベクター、組成物および方法の一部の例は、US2012/0282283、US2013/0216562、およびUS2018/0037943に記載されており、これらのそれぞれの関連する内容は、参照によりその全体が組み込まれる。
【0088】
本出願にとって有用な組換えベクターは、本開示を考慮して当技術分野で公知の方法を使用して調製することができる。例えば、遺伝子コードの縮重を考慮して、同じポリペプチドをコードするいくつかの核酸配列を設計することができる。本出願のHBV抗原をコードするポリヌクレオチドは、宿主細胞(例えば、細菌または哺乳動物細胞)における適切な発現を確保するために、任意選択でコドン最適化することができる。コドン最適化は、当技術分野で広く適用される技術であり、コドン最適化ポリヌクレオチドを得る方法は本開示を考慮して当業者に周知である。
【0089】
本出願のベクター、例えば、DNAプラスミド、ウイルスベクター(特にアデノウイルスベクター)、RNAベクター(例えば自己増殖RNAレプリコン)、または線形共有結合閉鎖二本鎖DNAベクターは、これらに限定されないが、ベクターのポリヌクレオチド配列によってコードされたHBV抗原の複製および発現などのベクターの従来の機能を確立するために、任意の調節エレメントを含み得る。調節エレメントには、プロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、翻訳終止コドン、リボソーム結合エレメント、転写ターミネーター、選択マーカー、複製開始点等が挙げられるがこれらに限定されない。ベクターは、1つまたは複数の発現カセットを含み得る。「発現カセット」は、細胞機構にRNAおよびタンパク質を作製するよう指示するベクターの一部である。発現カセットは典型的には、3つの構成要素:プロモーター配列、オープンリーディングフレーム、および任意選択でポリアデニル化シグナルを含む3’非翻訳領域(UTR)を含む。オープンリーディングフレーム(ORF)は、開始コドンから終止コドンまでの目的のタンパク質(例えば、HBV抗原)のコード配列を含有する読み取り枠である。発現カセットの調節エレメントは、目的のHBV抗原をコードするポリヌクレオチド配列に作動可能に連結させることができる。本明細書で使用される場合、用語「作動可能に連結された」は、その最も広い妥当な文脈で解釈され、機能的に関連するポリヌクレオチドエレメントの連結を指す。ポリヌクレオチドは、別のポリヌクレオチドと機能的関係にある場合に「作動可能に連結」されている。例えば、プロモーターは、それがコード配列の転写に影響を及ぼす場合、コード配列に作動可能に連結されている。本明細書に記載の発現カセットにおいて使用するために適した任意の構成要素を、本出願のベクターを調製するために任意の組合せおよび任意の順序で使用することができる。
【0090】
ベクターは、目的のHBV抗原の発現を制御するために、好ましくは発現カセット内にプロモーター配列を含み得る。用語「プロモーター」は、その通常の意味で使用され、作動可能に連結されたヌクレオチド配列の転写を開始するヌクレオチド配列を指す。プロモーターは、それが転写するヌクレオチド配列の近くの同じ鎖上に位置する。プロモーターは、構成的、誘導型、または抑制性であり得る。プロモーターは、天然に存在するかまたは合成であり得る。プロモーターは、ウイルス、細菌、真菌、植物、昆虫、および動物を含む起源に由来し得る。プロモーターは、同種プロモーター(すなわちベクターと同じ遺伝的起源に由来する)または異種プロモーター(すなわち、異なるベクターまたは遺伝的起源に由来する)であり得る。例えば、使用されるベクターが、DNAプラスミドである場合、プロモーターは、プラスミドに対して内因性であり得るか(同種)、または他の起源に由来し得る(異種)。好ましくは、プロモーターは、発現カセット内でHBV抗原をコードするポリヌクレオチドの上流に位置する。
【0091】
使用することができるプロモーターの例には、シミアンウイルス40(SV40)のプロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルスウイルス(MMTV)プロモーター、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)プロモーター、例えばウシ免疫不全ウイルス(BIV)長末端反復(LTR)プロモーター、モロニーウイルスプロモーター、トリ白血病ウイルス(ALV)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、例えばCMV前初期プロモーター(CMV-IE)、エプスタインバーウイルス(EBV)プロモーター、またはラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーターが挙げられるがこれらに限定されない。プロモーターはまた、ヒト遺伝子のプロモーター、例えばヒトアクチン、ヒトミオシン、ヒトヘモグロビン、ヒト筋クレアチン、またはヒトメタロチオネインのプロモーターであり得る。プロモーターはまた、組織特異的プロモーター、例えば天然または合成の筋特異的または皮膚特異的プロモーターであり得る。
【0092】
好ましくは、プロモーターは、強い真核細胞プロモーター、好ましくはサイトメガロウイルス前初期(CMV-IE)プロモーターである。例示的なCMV-IEプロモーターのヌクレオチド配列を、配列番号18または配列番号19に示す。
【0093】
ベクターは、発現された転写物を安定化する、RNA転写物の核輸出を増強する、および/または転写-翻訳カップリングを改善する追加のポリヌクレオチド配列を含み得る。そのような配列の例には、ポリアデニル化シグナルおよびエンハンサー配列が挙げられる。ポリアデニル化シグナルは、典型的には、ベクターの発現カセット内の目的のタンパク質(例えば、HBV抗原)のコード配列の下流に位置する。エンハンサー配列は、転写因子が結合すると、関連する遺伝子の転写を増強する調節性DNA配列である。エンハンサー配列は、ベクターの発現カセット内で、好ましくはHBV抗原をコードするポリヌクレオチド配列の上流であるが、プロモーター配列の下流に位置する。
【0094】
本開示を考慮して当業者に公知の任意のポリアデニル化シグナルを使用することができる。例えば、ポリアデニル化シグナルは、SV40ポリアデニル化シグナル、LTRポリアデニル化シグナル、ウシ成長ホルモン(bGH)ポリアデニル化シグナル、ヒト成長ホルモン(hGH)ポリアデニル化シグナル、またはヒトβ-グロビンポリアデニル化シグナルであり得る。好ましくは、ポリアデニル化シグナルは、ウシ成長ホルモン(bGH)ポリアデニル化シグナル、またはSV40ポリアデニル化シグナルである。例示的なbGHポリアデニル化シグナルのヌクレオチド配列を配列番号20に示す。例示的なSV40ポリアデニル化シグナルのヌクレオチド配列を配列番号13に示す。
【0095】
本開示を考慮して当業者に公知の任意のエンハンサー配列を使用することができる。例えば、エンハンサー配列は、ヒトアクチン、ヒトミオシン、ヒトヘモグロビン、ヒト筋クレアチン、またはウイルスエンハンサー、例えばCMV、HA、RSV、もしくはEBV由来のエンハンサーであり得る。特定のエンハンサーの例には、ウッドチャックHBV転写後調節エレメント(WPRE)、ヒトアポリポタンパク質A1前駆体(ApoAI)に由来するイントロン/エクソン配列、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)長末端反復(LTR)の非翻訳R-U5ドメイン、スプライシングエンハンサー、合成ウサギβ-グロビンイントロン、またはその任意の組合せが挙げられるがこれらに限定されない。好ましくは、エンハンサー配列は、HTLV-1 LTRの非翻訳R-U5ドメイン、ウサギβ-グロビンイントロン、およびスプライシングエンハンサーの3つの連続するエレメントの複合配列であり、これを本明細書において「トリプルエンハンサー配列」と呼ぶ。例示的なトリプルエンハンサー配列のヌクレオチド配列を配列番号10に示す。別の例示的なエンハンサー配列は、配列番号12に示すApoAI遺伝子断片である。
【0096】
ベクターは、シグナルペプチド配列をコードするポリヌクレオチドを含み得る。好ましくは、シグナルペプチド配列をコードするポリヌクレオチド配列は、HBV抗原をコードするポリヌクレオチド配列の上流に位置する。シグナルペプチドは、典型的には、タンパク質の局在化を指示し、それが産生される細胞からのタンパク質の分泌を容易にし、ならびに/または抗原発現および抗原提示細胞に対する交差提示を改善する。シグナルペプチドは、ベクターから発現される場合、HBV抗原のN末端に存在し得るが、細胞からの分泌時にシグナルペプチダーゼによって切断される。シグナルペプチドが切断されている発現されたタンパク質は、しばしば「成熟タンパク質」と呼ばれる。本開示を考慮して当技術分野で公知の任意のシグナルペプチドを使用することができる。例えば、シグナルペプチドは、シスタチンSシグナルペプチド、免疫グロブリン(Ig)分泌シグナル、例えばIg重鎖ガンマシグナルペプチドSPIgG、またはIg重鎖イプシロンシグナルペプチドSPIgEであり得る。
【0097】
好ましくは、シグナルペプチド配列は、シスタチンSシグナルペプチドである。シスタチンSシグナルペプチドの例示的な核酸およびアミノ酸配列をそれぞれ、配列番号8および9に示す。免疫グロブリン分泌シグナルの例示的な核酸およびアミノ酸配列をそれぞれ、配列番号14および15に示す。
【0098】
ベクター、例えばDNAプラスミドはまた、細菌複製開始点、ならびに細菌細胞、例えば大腸菌(E. coli)におけるプラスミドの選択および維持のための抗生物質耐性発現カセットも含み得る。細菌の複製開始点および抗生物質耐性カセットは、ベクター内でHBV抗原をコードする発現カセットと同じ方向に、または反対(逆)方向に位置することができる。複製開始点(ORI)は、そこで複製が開始される配列であり、プラスミドが細胞内で再生および生存することを可能にする。本出願で使用するために適したORIの例には、ColE1、pMB1、pUC、pSC101、R6K、および15A、好ましくはpUCが挙げられるがこれらに限定されない。pUC ORIの例示的なヌクレオチド配列を配列番号21に示す。
【0099】
細菌細胞における選択および維持のための発現カセットは典型的には、抗生物質耐性遺伝子に作動可能に連結されたプロモーター配列を含む。好ましくは、抗生物質耐性遺伝子に作動可能に連結されたプロモーター配列は、目的のタンパク質、例えばHBV抗原をコードするポリヌクレオチド配列に作動可能に連結されたプロモーター配列とは異なる。抗生物質耐性遺伝子は、コドン最適化することができ、抗生物質耐性遺伝子の配列組成は通常、細菌、例えば大腸菌(E. coli)のコドン使用に調整される。カナマイシン耐性遺伝子(Kanr)、アンピシリン耐性遺伝子(Ampr)、およびテトラサイクリン耐性遺伝子(Tetr)、ならびにクロラムフェニコール、ブレオマイシン、スペクチノマイシン、カルベニシリン等に対して耐性を付与する遺伝子を含むがこれらに限定されない、本開示を考慮して当業者に公知の任意の抗生物質耐性遺伝子を使用することができる。
【0100】
好ましくは、ベクターの抗生物質発現カセットにおける抗生物質耐性遺伝子は、カナマイシン耐性遺伝子(Kanr)である。Kanr遺伝子の配列を配列番号22に示す。好ましくは、Kanr遺伝子はコドン最適化されている。コドン最適化したKanr遺伝子の例示的な核酸配列を配列番号23に示す。Kanrは、そのネイティブプロモーターに作動可能に連結させることができ、またはKanr遺伝子を異種プロモーターに連結させることができる。特定の実施形態では、Kanr遺伝子を、blaプロモーターとしても知られるアンピシリン耐性遺伝子(Ampr)プロモーターに作動可能に連結させる。blaプロモーターの例示的なヌクレオチド配列を配列番号24に示す。
【0101】
本出願の特定の実施形態では、ベクターは、配列番号7と、少なくとも90%、例えば90%、91%、92%、93%、94%、95%、96、97%、好ましくは少なくとも98%、例えば少なくとも98%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%または100%同一なアミノ酸配列を含むHBV pol抗原からなる群から選択されるHBV抗原の少なくとも1つ、および配列番号2または配列番号4と、少なくとも95%、例えば95%、96、97%、好ましくは少なくとも98%、例えば少なくとも98%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%または100%同一なアミノ酸配列からなる切断型HBVコア抗原をコードするポリヌクレオチドを含む発現カセット;5’末端から3’末端に、プロモーター配列、好ましくは配列番号18のCMVプロモーター配列、エンハンサー配列、好ましくは配列番号10のトリプルエンハンサー配列、およびシグナルペプチド配列、好ましくは配列番号9のアミノ酸配列を有するシスタチンSシグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含むHBV抗原をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結された上流の配列;およびポリアデニル化シグナル、好ましくは配列番号20のbGHポリアデニル化シグナルを含むHBV抗原をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結された下流の配列を含むDNAプラスミドである。そのようなベクターは、配列番号23と少なくとも90%同一である、例えば配列番号23と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、95.5%、96%、96.5%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%同一である、好ましくは配列番号23と100%同一である抗生物質耐性遺伝子、好ましくはKanr遺伝子、より好ましくはコドン最適化Kanr遺伝子をコードするポリヌクレオチドであって、抗生物質耐性遺伝子をコードするポリヌクレオチドの上流で作動可能に連結された配列番号24のAmpr(bla)プロモーターに作動可能に連結されたポリヌクレオチドを含む抗生物質耐性発現カセット、および複製開始点、好ましくは配列番号21のpUC oriをさらに含む。好ましくは、抗生物質耐性カセットおよび複製開始点は、プラスミドにおいてHBV抗原発現カセットとは逆方向で存在する。
【0102】
本出願の別の特定の実施形態では、ベクターはウイルスベクター、好ましくはアデノウイルスベクター、より好ましくはAd26またはAd35ベクターであって、配列番号7と少なくとも90%、例えば90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、好ましくは少なくとも98%、例えば少なくとも98%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列を含むHBV pol抗原、および配列番号2または配列番号4と少なくとも95%、例えば95%、96%、97%、好ましくは少なくとも98%、例えば少なくとも98%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列からなる切断型HBVコア抗原からなる群から選択されるHBV抗原の少なくとも1つをコードするポリヌクレオチド;5’末端から3’末端に、プロモーター配列、好ましくは配列番号19のCMVプロモーター配列、エンハンサー配列、好ましくは配列番号12のApoAI遺伝子断片配列、およびシグナルペプチド配列、好ましくは配列番号15のアミノ酸配列を有する免疫グロブリン分泌シグナルをコードするポリヌクレオチド配列を含む、HBV抗原をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結された上流の配列;ならびにポリアデニル化シグナル、好ましくは配列番号13のSV40ポリアデニル化シグナルを含む、HBV抗原をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結された下流の配列を含む発現カセットを含むベクターである。
【0103】
本出願の一実施形態では、ベクター、例えばプラスミドDNAベクターまたはウイルスベクター(好ましくはアデノウイルスベクター、より好ましくはAd26またはAd35ベクター)は、配列番号7のアミノ酸配列を有するHBV Pol抗原をコードする。好ましくは、ベクターは、配列番号5または配列番号6のポリヌクレオチド配列と少なくとも90%同一である、例えば配列番号5または配列番号6と90%、91%、92%、93%、94%、95%、95.5%、96%、96.5%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%同一である、好ましくは配列番号5または配列番号6と100%同一であるHBV Pol抗原のコード配列を含む。
【0104】
本出願の一実施形態では、ベクター、例えばプラスミドDNAベクターまたはウイルスベクター(好ましくはアデノウイルスベクター、より好ましくはAd26またはAd35ベクター)は、配列番号2または配列番号4のアミノ酸配列からなる切断型HBVコア抗原をコードする。好ましくは、ベクターは、配列番号1または配列番号3のポリヌクレオチド配列と少なくとも90%同一である、例えば配列番号1または配列番号3と90%、91%、92%、93%、94%、95%、95.5%、96%、96.5%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%同一である、好ましくは配列番号1または配列番号3と100%同一である切断型HBVコア抗原のコード配列を含む。
【0105】
本出願のなお別の実施形態では、ベクター、例えばプラスミドDNAベクターまたはウイルスベクター(好ましくはアデノウイルスベクター、より好ましくはAd26またはAd35ベクター)は、配列番号7のアミノ酸配列を有するHBV Pol抗原、および配列番号1または配列番号3のアミノ酸配列からなる切断型HBVコア抗原を含む融合タンパク質をコードする。好ましくは、ベクターは、配列番号1または配列番号3と少なくとも90%同一である、例えば配列番号1または配列番号3と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、95.5%、96%、96.5%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%同一である、好ましくは配列番号1または配列番号3、より好ましくは配列番号1または配列番号3と98%、99%または100%同一である切断型HBVコア抗原のコード配列であって、配列番号5または配列番号6と少なくとも90%同一である、例えば配列番号5または配列番号6と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、95.5%、96%、96.5%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%同一である、好ましくは配列番号5または配列番号6と、より好ましくは配列番号5または配列番号6と98%、99%または100%同一であるHBV Pol抗原のコード配列に作動可能に連結された切断型HBVコア抗原のコード配列を含有する融合体のコード配列を含む。好ましくは切断型HBVコア抗原のコード配列は、配列番号11と少なくとも90%同一である、例えば配列番号11と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、95.5%、96%、96.5%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%同一である、好ましくは配列番号11と98%、99%または100%同一であるリンカーのコード配列を介してHBV Pol抗原のコード配列に作動可能に連結されている。本出願の特定の実施形態では、ベクターは、配列番号5または配列番号6にさらに作動可能に連結された配列番号11に作動可能に連結された、配列番号1または配列番号3を有する融合体のコード配列を含む。
【0106】
本出願のHBV抗原をコードするポリヌクレオチドおよび発現ベクターは、本開示を考慮して当技術分野で公知の任意の方法によって作製することができる。例えば、HBV抗原をコードするポリヌクレオチドを、当業者に周知である標準的な分子生物学技術、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)等を使用して発現ベクターに導入または「クローニング」することができる。
【0107】
細胞、ポリペプチドおよび抗体
本出願はまた、本明細書に記載の任意のポリヌクレオチドおよびベクターを含む細胞、好ましくは単離された細胞も提供する。細胞は、例えば組換えタンパク質の産生のために、またはウイルス粒子を産生するために使用することができる。
【0108】
本出願の実施形態は、本出願のHBV抗原を作製する方法にも関する。方法は、宿主細胞に、プロモーターに作動可能に連結された本出願のHBV抗原をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターをトランスフェクトするステップ、トランスフェクトした細胞を、HBV抗原の発現にとって適した条件下で増殖させるステップ、および任意選択で細胞において発現されたHBV抗原を精製または単離するステップを含む。HBV抗原は、アフィニティクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー等を含む当技術分野で公知の任意の方法によって細胞から単離または収集することができる。組換えタンパク質発現のために使用する技術は、本開示を考慮して当業者に周知である。発現されたHBV抗原はまた、発現されたタンパク質を精製または単離することなく、例えばHBV抗原をコードする発現ベクターをトランスフェクトして、HBV抗原の発現にとって適した条件で増殖させた細胞の上清を分析することによって、試験することもできる。
【0109】
このように、配列番号2、配列番号4、または配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む天然に存在しないまたは組換えポリペプチドも提供される。上記および以下に記載するように、これらの配列をコードする単離された核酸分子、プロモーターに作動可能に連結されたこれらの配列を含むベクター、およびポリペプチド、ポリヌクレオチド、またはベクターを含む組成物もまた、本出願によって企図される。
【0110】
本出願の一実施形態では、組換えポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも90%同一である、例えば配列番号2と90%、91%、92%、93%、94%、95%、95.5%、96%、96.5%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。好ましくは、天然に存在しないまたは組換えポリペプチドは、配列番号2からなる。
【0111】
本出願の別の実施形態では、天然に存在しないまたは組換えポリペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも90%同一である、例えば配列番号4と90%、91%、92%、93%、94%、95%、95.5%、96%、96.5%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。好ましくは、天然に存在しないまたは組換えポリペプチドは配列番号4を含む。
【0112】
本出願の別の実施形態では、天然に存在しないまたは組換えポリペプチドは、配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも90%同一である、例えば配列番号7と90%、91%、92%、93%、94%、95%、95.5%、96%、96.5%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。好ましくは、天然に存在しないまたは組換えポリペプチドは配列番号7からなる。
【0113】
同様に、本出願の天然に存在しないポリペプチドに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片も提供する。本出願の一実施形態では、本出願の天然に存在しないHBV抗原に対して特異的である抗体は、別のHBV抗原に特異的に結合しない。例えば、配列番号7のアミノ酸配列を有するHBV Pol抗原に特異的に結合する本出願の抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を有しないHBV Pol抗原に特異的に結合しない。
【0114】
本明細書で使用される場合、用語「抗体」は、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、ヒト化、Fv、FabおよびF(ab’)2、二機能性ハイブリッド(例えば、Lanzavecchia et al., Eur. J. Immunol. 17:105, 1987)、一本鎖(Huston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879, 1988; Bird et al., Science 242:423, 1988)、および変化した定常領域を有する抗体(例えば、米国特許第5,624,821号明細書)を含む。
【0115】
本明細書で使用される場合、抗原に「特異的に結合する」抗体は、1×10-7Mまたはそれ未満のKDで抗原に結合する抗体を指す。好ましくは、抗原に「特異的に結合する」抗体は、1×10-8Mもしくはそれ未満、より好ましくは5×10-9Mもしくはそれ未満、1×10-9Mもしくはそれ未満、5×10-10Mもしくはそれ未満、または1×10-10Mもしくはそれ未満のKDで抗原に結合する。用語「KD」は、解離定数を指し、KdのKaに対する比(すなわち、Kd/Ka)から得られ、モル濃度(M)として表記される。抗体のKD値は、本開示を考慮して当技術分野の方法を使用して決定することができる。例えば、抗体のKDは、表面プラズモン共鳴、例えばバイオセンサーシステム、例えばBiacore(登録商標)システムを使用することによって、またはバイオレイヤー干渉技術、例えばOctet RED96システムを使用することによって決定することができる。
【0116】
抗体のKD値がより小さければ、抗体が標的抗原に結合する親和性はより高い。
【0117】
RNAi薬剤
本出願はまた、本明細書では「HBV RNAi分子」または「HBV RNAi薬剤」とも称される、HBV遺伝子の発現を阻害するためのRNAi薬剤の治療用途にも関する。
【0118】
HBV遺伝子の発現を阻害するためのRNAi薬剤は、当技術分野で公知である。例えば、HBV遺伝子の発現を阻害するためのRNAi薬剤には、これらのそれぞれの内容が本明細書にその全体が組み込まれるUS20130005793、WO2013003520およびWO2018027106に記載されるものが挙げられるがこれらに限定されない。
【0119】
各HBV RNAi剤は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含む。センス鎖およびアンチセンス鎖はそれぞれ、16~30ヌクレオチドの長さであり得る。一部の実施形態では、センスおよびアンチセンス鎖はそれぞれ、17~26ヌクレオチドの長さであり得る。センスおよびアンチセンス鎖は、同じ長さであるか、またはそれらは異なる長さであるかのいずれであってもよい。一部の実施形態では、センスおよびアンチセンス鎖は、それぞれ独立して、17~26ヌクレオチドの長さである。一部の実施形態では、センスおよびアンチセンス鎖は、それぞれ独立して、17~21ヌクレオチドの長さである。一部の実施形態では、センスおよびアンチセンス鎖の両方は、それぞれ21~26ヌクレオチドの長さである。一部の実施形態では、センス鎖は、約19ヌクレオチドの長さであり、一方でアンチセンス鎖は、約21ヌクレオチドの長さである。一部の実施形態では、センス鎖は、約21ヌクレオチドの長さであり、一方でアンチセンス鎖は、約23ヌクレオチドの長さである。一部の実施形態では、センスおよびアンチセンス鎖の両方は、それぞれ26ヌクレオチドの長さである。一部の実施形態では、RNAi剤のセンスおよびアンチセンス鎖は、それぞれ独立して、17、18、19、20、21、22、23、24、25、または26ヌクレオチドの長さである。一部の実施形態では、二本鎖RNAi剤は、約16、17、18、19、20、21、22、23または24ヌクレオチドの二重鎖長さを有する。センス鎖とアンチセンス鎖との間の完全なまたは実質的な相補性を有するこの領域は、典型的には、15~25(例えば、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25)ヌクレオチドの長さであり、アンチセンス鎖の5’末端で、またはその近くで起こる(例えば、この領域は、アンチセンス鎖の5’末端から、完全にまたは実質的に相補的ではない0、1、2、3、または4ヌクレオチド離れていてもよい)。
【0120】
センス鎖およびアンチセンス鎖はそれぞれ、16~23核酸塩基の長さであるコアストレッチ配列を含有する。アンチセンス鎖のコアストレッチ配列は、HBV mRNA標的中に存在するヌクレオチド配列(時には、例えば標的配列とも称される)に100%(完全に)相補的であるか、または少なくとも約85%(実質的に)相補的である。センス鎖のコアストレッチ配列は、アンチセンス鎖中のコアストレッチ配列に100%(完全に)相補的であるか、または少なくとも約85%(実質的に)相補的であり、したがってセンス鎖のコアストレッチ配列は、HBV mRNA標的中に存在するヌクレオチド配列(標的配列)に完全に同一であるか、または少なくとも約85%同一である。センス鎖のコアストレッチ配列は、対応するアンチセンスコア配列と同じ長さであってもよいし、またはそれは異なる長さであってもよい。一部の実施形態では、アンチセンス鎖のコアストレッチ配列は、16、17、18、19、20、21、22、または23ヌクレオチドの長さである。一部の実施形態では、センス鎖のコアストレッチ配列は、16、17、18、19、20、21、22、または23ヌクレオチドの長さである。
【0121】
本明細書で使用される場合、「RNA干渉剤」、「RNAi剤」、「RNA干渉分子」または「RNAi分子」は、標的mRNAのメッセンジャーRNA(mRNA)転写物の翻訳を配列特異的な方式で減少または阻害することが可能な、RNAまたはRNA-hke(例えば、化学的に改変されたRNA)オリゴヌクレオチド分子を含有する組成物を意味する。RNAi剤は、本明細書で使用される場合、RNA干渉メカニズム(すなわち、哺乳類細胞のRNA干渉経路機構(RNA誘導型サイレンシング複合体またはRISC)との相互作用を介してRNA干渉を誘導すること)を介して、またはあらゆる代替メカニズムもしくは経路によって作動することができる。RNAi剤は、その用語が本明細書において使用されるように、主としてRNA干渉メカニズムを介して作動すると考えられるが、開示されたRNAi剤は、いずれの特定の作用の経路またはメカニズムに縛られたりまたは限定されたりしない。本明細書で開示されるRNAi剤は、センス鎖およびアンチセンス鎖で構成され、その例には、短鎖干渉RNA(siRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、マイクロRNA(miRNA)、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)、およびダイサー基質が挙げられるがこれらに限定されない。本出願のRNAi剤は、好ましくはdsRNAである。本明細書に記載されるRNAi剤のアンチセンス鎖は、標的化されるmRNAに少なくとも部分的に相補的である。RNAi剤は、改変されたヌクレオチドおよび/または1つまたは複数の非ホスホジエステル結合で構成されていてもよい。
【0122】
用語「二本鎖RNA」、「dsRNA分子」、または「dsRNA」は、本明細書で使用される場合、2つの逆平行の、実質的に相補的な核酸鎖を含む二重鎖構造を有するリボ核酸分子またはリボ核酸分子の複合体を指す。二重鎖構造を形成する2つの鎖は、1つのそれより大きいRNA分子の異なる部分であってもよいし、またはそれらは、別々のRNA分子であってもよい。2つの鎖が1つのそれより大きい分子の一部であり、それゆえに二重鎖構造を形成する一方の鎖の3’末端とそれぞれの他方の鎖の5’末端との間がヌクレオチドの中断のない鎖によって接続される場合、接続されているRNA鎖は、「ヘアピンループ」と称される。2つの鎖が、二重鎖構造を形成する一方の鎖の3’末端とそれぞれの他方の鎖の5’末端との間のヌクレオチドの中断のない鎖以外の手段によって共有結合で接続される場合、接続されている構造は、「リンカー」と称される。RNA鎖は、同じまたは異なる数のヌクレオチドを有し得る。二重鎖構造に加えて、dsRNAは、1つまたは複数のヌクレオチドオーバーハングを含んでいてもよいし、または平滑末端化されていてもよい。
【0123】
本明細書で使用される場合、用語「サイレンシングする」、「低減する」、「阻害する」、「下方調節する」、または「ノックダウンする」は、所与の遺伝子の発現に対して言及される場合、遺伝子が転写される細胞、細胞群、組織、臓器、または対象における遺伝子から転写されたRNAのレベル、またはmRNAから翻訳されたポリペプチド、タンパク質もしくはタンパク質サブユニットのレベルによって測定される遺伝子の発現が、細胞、細胞群、組織、臓器、または対象が本明細書に記載されるオリゴマー化合物、例えばRNAi剤で処置されたときに、そのように処置されていない第2の細胞、細胞群、組織、臓器、または対象と比較して低減されることを意味する。
【0124】
用語「B型肝炎ウイルス遺伝子」は、本明細書で使用される場合、B型肝炎ウイルスの複製および病因に必要な遺伝子、特に、コアタンパク質、ウイルスポリメラーゼ、表面抗原、e抗原およびXタンパク質をコードする遺伝子、ならびにその機能的な断片をコードする遺伝子に関する。用語「B型肝炎ウイルス遺伝子/配列」は、野生型配列だけでなく、前記遺伝子/配列に含めることができる突然変異および変更にも関する。したがって、本出願は、本明細書で提供される具体的なRNAi剤に限定されない。本出願はまた、このような突然変異/変更を含むB型肝炎ウイルス遺伝子のRNA転写物の対応するヌクレオチドストレッチに少なくとも85%相補的なアンチセンス鎖を含むRNAi剤にも関する。
【0125】
用語「コンセンサス配列」は、本明細書で使用される場合、遺伝子型A、B、CおよびDのB型肝炎ウイルスゲノム配列のなかでも高度に保存されている、少なくとも13個の連続するヌクレオチド、好ましくは少なくとも17個の連続するヌクレオチド、最も好ましくは少なくとも19個の連続するヌクレオチドを指す。
【0126】
「標的配列」は、本明細書で使用される場合、一次転写産物のRNAプロセシングの生成物であるmRNAなどのB型肝炎ウイルス遺伝子の転写中に形成されたmRNA分子のヌクレオチド配列の連続する部分を指す。
【0127】
用語「配列を含む鎖」は、本明細書で使用される場合、標準的なヌクレオチド命名法を使用して言及される配列によって記載されるヌクレオチドの鎖を含むオリゴヌクレオチドを指す。しかし、本明細書において詳述されるように、このような「配列を含む鎖」はまた、改変されたヌクレオチドのように改変も含み得る。
【0128】
RNAi剤は、in vitroでのアッセイにおいて、すなわちin vitroで、B型肝炎ウイルスの発現を、少なくとも約60%、好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは少なくとも80%阻害することが可能である。用語「in vitro」は、本明細書で使用される場合、細胞培養アッセイを含むがこれに限定されない。当業者は、特に本明細書で提供されるアッセイに照らして、このような阻害の割合および関連する効果を容易に決定することができる。用語「オフターゲット」は、本明細書で使用される場合、配列相補性に基づき記載されたRNAi剤にハイブリダイズさせるインシリコの方法によって予測されるトランスクリプトームの全ての非標的mRNAを指す。本出願のRNAi剤は、B型肝炎ウイルス遺伝子の発現を好ましくは特異的に阻害し、すなわちいずれのオフターゲットの発現も阻害しない。
【0129】
本出願のRNAi剤は、標的配列に1つまたは複数のミスマッチを含有していてもよい。好ましい実施形態では、本出願のRNAi剤は、13個以下のミスマッチを含有する。RNAi剤のアンチセンス鎖が標的配列に対してミスマッチを含有する場合、ミスマッチの領域がアンチセンス鎖の5’末端のヌクレオチド2~7以内に配置されないことが好ましい。別の実施形態では、ミスマッチの領域がアンチセンス鎖の5’末端のヌクレオチド2~9以内に配置されないことが好ましい。
【0130】
本明細書で使用される場合、別段の指定がない限り、用語「相補的な」は、第2のヌクレオチド配列に対して第1のヌクレオチド配列を記載するのに使用される場合、第1のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドが、第2のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドと、ある特定の条件下でハイブリダイズし、二重鎖構造を形成する能力を指す。「相補的な」配列は、本明細書で使用される場合、そのハイブリダイズする能力に関する上記の必要条件を満たす限り、非ワトソン-クリック型の塩基対ならびに/または非天然および改変ヌクレオチドから形成された塩基対を含んでいてもよいし、または全体的にそれから形成されていてもよい。
【0131】
用語「アンチセンス鎖」は、標的配列に実質的に相補的な領域を含むdsRNAの鎖を指す。用語「相補性を有する領域」は、本明細書で使用される場合、配列、例えば標的配列に実質的に相補的なアンチセンス鎖上の領域を指す。相補性の領域が標的配列に完全に相補的というわけではない場合、ミスマッチは、多くの場合、アンチセンス鎖の5’末端のヌクレオチド2~7の外側で許容される。
【0132】
用語「センス鎖」は、本明細書で使用される場合、アンチセンス鎖の領域に実質的に相補的な領域を含むdsRNAの鎖を指す。「実質的に相補的な」は、センスおよびアンチセンス鎖中のオーバーラップするヌクレオチドの好ましくは少なくとも85%が相補的であることを意味する。
【0133】
HBV RNAi剤の形成に使用されるセンスおよびアンチセンス鎖のヌクレオチド配列の例は、それらの内容が本明細書にそれらの全体として取り込まれるUS20130005793およびWO2018027106から再掲される
図4~6および8~10に提供される。
【0134】
HBV RNAi剤センスおよびアンチセンス鎖がアニールして、二重鎖を形成する。HBV RNAi剤のセンス鎖およびアンチセンス鎖は、互いに部分的に、実質的に、または完全に相補的であってもよい。相補的二重鎖領域内において、センス鎖のコアストレッチ配列は、アンチセンスコアストレッチ配列に、少なくとも約85%相補的であるか、または100%相補的である。一部の実施形態では、センス鎖のコアストレッチ配列は、アンチセンス鎖のコアストレッチ配列の対応する16、17、18、19、20、または21ヌクレオチド配列に少なくとも約85%または100%相補的な、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、または少なくとも21ヌクレオチドの配列を含有する(すなわち、HBV RNAi剤のセンス鎖およびアンチセンスコアストレッチ配列は、少なくとも85%塩基対合した、または100%塩基対合した、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、または少なくとも21ヌクレオチドの領域を有する)。
【0135】
一部の実施形態では、本明細書で開示されるHBV RNAi剤のアンチセンス鎖は、本明細書に記載されるアンチセンス鎖配列のいずれかと0、1、2、または3ヌクレオチド異なる。一部の実施形態では、本明細書で開示されるHBV RNAi剤のセンス鎖は、本明細書に記載されるセンス鎖配列のいずれかと0、1、2、または3ヌクレオチド異なる。
【0136】
本明細書に記載されるHBV RNAi剤のセンスおよびアンチセンス鎖の長さは、独立して16~30ヌクレオチドの長さである。一部の実施形態では、センスおよびアンチセンス鎖は、独立して17~26ヌクレオチドの長さである。一部の実施形態では、センスおよびアンチセンス鎖は、19~26ヌクレオチドの長さである。一部の実施形態では、記載されたRNAi剤のセンスおよびアンチセンス鎖は、独立して17、18、19、20、21、22、23、24、25、または26ヌクレオチドの長さである。センスおよびアンチセンス鎖は、同じ長さであるか、またはそれらは異なる長さであるかのいずれであってもよい。一部の実施形態では、センス鎖およびアンチセンス鎖は、それぞれ26ヌクレオチドの長さである。一部の実施形態では、センス鎖は、23ヌクレオチドの長さであり、アンチセンス鎖は、21ヌクレオチドの長さである。一部の実施形態では、センス鎖は、22ヌクレオチドの長さであり、アンチセンス鎖は、21ヌクレオチドの長さである。一部の実施形態では、センス鎖は、21ヌクレオチドの長さであり、アンチセンス鎖は、21ヌクレオチドの長さである。一部の実施形態では、センス鎖は、19ヌクレオチドの長さであり、アンチセンス鎖は、21ヌクレオチドの長さである。
【0137】
センス鎖および/またはアンチセンス鎖は、任意選択で、独立して、コア配列の3’末端、5’末端、または3’および5’末端の両方に追加の1、2、3、4、5、または6ヌクレオチド(伸長)を含有し得る。アンチセンス鎖の追加のヌクレオチドは、存在する場合、HBV mRNAにおける対応する配列に相補的であってもよいし、またはそうでなくてもよい。センス鎖の追加のヌクレオチドは、存在する場合、HBV mRNA中の対応する配列と同一であってもよいし、またはそうでなくてもよい。アンチセンス鎖の追加のヌクレオチドは、存在する場合、対応するセンス鎖の追加のヌクレオチドに相補的であってもよいし、またはそうでなくてもよい。
【0138】
伸長は、本明細書で使用される場合、センス鎖のコアストレッチ配列および/またはアンチセンス鎖のコアストレッチ配列の5’および/または3’末端に、1、2、3、4、5、または6ヌクレオチドを含む。センス鎖における伸長ヌクレオチドは、対応するアンチセンス鎖中のヌクレオチド、コアストレッチ配列ヌクレオチドまたは伸長ヌクレオチドのいずれかに相補的であってもよいし、またはそうでなくてもよい。逆に、アンチセンス鎖における伸長ヌクレオチドは、対応するセンス鎖中のヌクレオチド、コアストレッチ配列ヌクレオチドまたは伸長ヌクレオチドのいずれかに相補的であってもよいし、またはそうでなくてもよい。一部の実施形態では、RNAi剤のセンス鎖およびアンチセンス鎖の両方が、3’および5’伸長を含有する。一部の実施形態では、一方の鎖の3’伸長ヌクレオチドの1つまたは複数は、他方の鎖の1つまたは複数の5’伸長ヌクレオチドと塩基対を形成する。他の実施形態では、一方の鎖の3’伸長ヌクレオチドの1つまたは複数は、他方の鎖の1つまたは複数の5’伸長ヌクレオチドと塩基対を形成しない。一部の実施形態では、HBV RNAi剤は、3’伸長を有するアンチセンス鎖および5’伸長を有するセンス鎖を有する。一部の実施形態では、HBV RNAi剤は、1、2、3、4、5、または6ヌクレオチドの長さの3’伸長を有するアンチセンス鎖を含む。他の実施形態では、HBV RNAi剤は、1、2、または3ヌクレオチドの長さの3’伸長を有するアンチセンス鎖を含む。一部の実施形態では、アンチセンス鎖の伸長ヌクレオチドの1つまたは複数は、ウラシルもしくはチミジンヌクレオチドまたは対応するHBV mRNA配列に相補的なヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、3’アンチセンス鎖の伸長は、これらに限定されないが、AUA、UGCUU、CUG、UG、UGCC、CUGCC、CGU、CUU、UGCCUA、CUGCCU、UGCCU、UGAUU、GCCUAU、T、TT、U、UU(それぞれ5’から3’に列挙される)を含むかまたはそれからなる。一部の実施形態では、アンチセンス鎖の3’末端は、追加の脱塩基ヌクレオシド(Ab)を含み得る。一部の実施形態では、AbまたはAbAbは、アンチセンス鎖の3’末端に付加されていてもよい。
【0139】
一部の実施形態では、HBV RNAi剤は、1、2、3、4、または5ヌクレオチドの長さの5’伸長を有するアンチセンス鎖を含む。他の実施形態では、HBV RNAi剤は、1または2ヌクレオチドの長さの5’伸長を有するアンチセンス鎖を含む。一部の実施形態では、アンチセンス鎖の伸長ヌクレオチドの1つまたは複数は、ウラシルもしくはチミジンヌクレオチドまたは対応するHBV mRNA配列に相補的なヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、5’アンチセンス鎖の伸長は、これらに限定されないが、UA、TU、U、T、UU、TT、CUC(それぞれ5’から3’に列挙される)を含むかまたはそれからなる。アンチセンス鎖は、上述される3’伸長のいずれかを、存在する場合、記載された5’アンチセンス鎖の伸長のいずれかと組み合わせて有していてもよい。
【0140】
一部の実施形態では、HBV RNAi剤は、1、2、3、4、または5ヌクレオチドの長さの3’伸長を有するセンス鎖を含む。一部の実施形態では、センス鎖の伸長ヌクレオチドの1つまたは複数は、アデノシン、ウラシル、もしくはチミジンヌクレオチド、ATジヌクレオチド、またはHBV mRNA配列におけるヌクレオチドに対応するヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、3’センス鎖の伸長は、これらに限定されないが、T、UT、TT、UU、UUT、TTT、またはTTTT(それぞれ5’から3’に列挙される)を含むかまたはそれからなる。
【0141】
一部の実施形態では、センス鎖の3’末端は、追加の脱塩基ヌクレオシドを含み得る。一部の実施形態では、UUAb、UAb、またはAbは、センス鎖の3’末端に付加されていてもよい。一部の実施形態では、センス鎖の3’末端に付加された1つまたは複数の脱塩基ヌクレオシドは、逆方向であってもよい(invAb)。一部の実施形態では、1つまたは複数の逆方向の脱塩基ヌクレオシドは、標的化リガンドとRNAi剤のセンス鎖の核酸塩基配列との間に挿入され得る。一部の実施形態では、RNAi剤のセンス鎖の1つまたは複数の末端の終端部またはその近くに1つまたは複数の逆方向の脱塩基ヌクレオシドを含めると、RNAi剤の強化された活性または他の所望の特性をもたらすことができる。一部の実施形態では、HBV RNAi剤は、1、2、3、4、5、または6ヌクレオチドの長さの5’伸長を有するセンス鎖を含む。一部の実施形態では、センス鎖の伸長ヌクレオチドの1つまたは複数は、ウラシルもしくはアデノシンヌクレオチドまたはHBV mRNA配列におけるヌクレオチドに対応するヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、センス鎖の5’伸長は、CA、AUAGGC、AUAGG、AUAG、AUA、A、AA、AC、GCA、GGCA、GGC、UAUCA、UAUC、UCA、UAU、U、UU(それぞれ5’から3’に列挙される)であり得るがこれらに限定されない。センス鎖は、3’伸長および/または5’伸長を有していてもよい。
【0142】
一部の実施形態では、センス鎖の5’末端は、追加の脱塩基ヌクレオシド(Ab)またはヌクレオシド(AbAb)を含み得る。一部の実施形態では、センス鎖の5’末端に付加された1つまたは複数の脱塩基ヌクレオシドは、逆方向であってもよい(invAb)。一部の実施形態では、1つまたは複数の逆方向の脱塩基ヌクレオシドは、標的化リガンドとRNAi剤のセンス鎖の核酸塩基配列との間に挿入され得る。一部の実施形態では、RNAi剤のセンス鎖の1つまたは複数の末端の終端部またはその近くに1つまたは複数の逆方向の脱塩基ヌクレオシドを含めると、RNAi剤の強化された活性または他の所望の特性をもたらすことができる。
【0143】
HBV RNAi剤の形成において使用されるヌクレオチド配列の例は、US20130005793およびWO2018027106から再掲される
図4~6および8~10に提供される。一部の実施形態では、HBV RNAi剤のアンチセンス鎖は、
図4~6、8または9に記載の配列のいずれかのヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、HBV RNAi剤のアンチセンス鎖は、
図4~6、8または9に記載の配列のいずれかの、ヌクレオチド1~17、2~15、2~17、1~18、2~18、1~19、2~19、1~20、2~20、1~21、2~21、1~22、2~22、1~23、2~23、1~24、2~24、1~25、2~25、1~26、または2~26の配列を含む。一部の実施形態では、HBV RNAi剤のセンス鎖は、
図4~6、8または10に記載の配列のいずれかのヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、HBV RNAi剤のセンス鎖は、
図4~6、8または10に記載の配列のいずれかの、ヌクレオチド1~18、1~19、1~20、1~21、1~22、1~23、1~24、1~25、1~26、2~19、2~20、2~21、2~22、2~23、2~24、2~25、2~26、3~20、3~21、3~22、3~23、3~24、3~25、3~26、4~21、4~22、4~23、4~24、4~25、4~26、5~22、5~23、5~24、5~25、5~26、6~23、6~24、6~25、6~26、7~24、7~25、7~25、8~25、8~26の配列を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載されるRNAi剤のセンスおよびアンチセンス鎖は、同じ数のヌクレオチドを含有する。一部の実施形態では、本明細書に記載されるRNAi剤のセンスおよびアンチセンス鎖は、異なる数のヌクレオチドを含有する。一部の実施形態では、RNAi剤のセンス鎖の5’末端およびアンチセンス鎖の3’末端は、平滑末端を形成する。一部の実施形態では、RNAi剤のセンス鎖の3’末端およびアンチセンス鎖の5’末端は、平滑末端を形成する。一部の実施形態では、RNAi剤の両方の末端は、平滑末端を形成する。一部の実施形態では、RNAi剤のどちらの末端も平滑末端化されていない。平滑末端は、本明細書で使用される場合、2つのアニールした鎖の末端ヌクレオチドが相補的である(相補的塩基対を形成する)二本鎖RNAi剤の末端を指す。一部の実施形態では、RNAi剤のセンス鎖の5’末端およびアンチセンス鎖の3’末端は、フレイド末端(frayed end)を形成する。一部の実施形態では、RNAi剤のセンス鎖の3’末端およびアンチセンス鎖の5’末端は、フレイド末端を形成する。一部の実施形態では、RNAi剤の両方の末端は、フレイド末端を形成する。一部の実施形態では、RNAi剤のどちらの末端も、フレイド末端ではない。フレイド末端は、本明細書で使用される場合、2つのアニールした鎖の末端ヌクレオチドが対を形成するが(すなわちオーバーハングを形成しない)、相補的ではない(すなわち非相補的対を形成する)二本鎖RNAi剤の末端を指す。オーバーハングは、本明細書で使用される場合、二本鎖RNAi剤の一方の鎖の末端における1つまたは複数の対合していないヌクレオチドのストレッチである。対合していないヌクレオチドは、センス鎖にあってもよいし、またはアンチセンス鎖にあってもよく、3’または5’オーバーハングのいずれかを生成する。一部の実施形態では、RNAi剤は、平滑末端およびフレイド末端、平滑末端および5’オーバーハング末端、平滑末端および3’オーバーハング末端、フレイド末端および5’オーバーハング末端、フレイド末端および3’オーバーハング末端、2つの5’オーバーハング末端、2つの3’オーバーハング末端、5’オーバーハング末端および3’オーバーハング末端、2つのフレイド末端、または2つの平滑末端を含有する。
【0144】
ヌクレオチド塩基(または核酸塩基)は、全ての核酸の成分である複素環式のピリミジンまたはプリン化合物であり、その例としては、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)、およびウラシル(U)が挙げられる。用語「ヌクレオチド」は、本明細書で使用される場合、改変されたヌクレオチド(例えば、ヌクレオチド模倣物、脱塩基部位(Ab)、または代用物での置き換え部分)を含み得る。改変されたヌクレオチドは、様々なポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド構築物において使用される場合、細胞中での化合物の活性を保存し、それと同時にこれらの化合物の血清中での安定性を増加させることができ、さらに、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド構築物を投与したときのヒトにおけるインターフェロン活性を活性化する可能性も最小化することができる。
【0145】
一部の実施形態では、HBV RNAi剤は、塩、混合された塩、または遊離の酸として調製または提供される。一部の実施形態では、HBV RNAi剤は、ナトリウム塩として調製される。このような形態は、本明細書で開示される本出願の範囲内である。
【0146】
「細胞に導入する」は、RNAi剤に対して言及される場合、当業者によって理解される通り、細胞への取り込みまたは吸収を容易にすることを意味する。RNAi剤の吸収または取り込みは、助力を受けない拡散性の、または能動的な細胞プロセスを介して、または補助剤またはデバイスによって起こすことができる。この用語の意味は、in vitroでの細胞に限定されず、RNAi剤も「細胞に導入する」ことができ、この場合、細胞は、生物の一部である。このような例において、細胞への導入は、生物への送達を含むことになる。例えば、in vivoでの送達の場合、RNAi剤は、組織部位に注射してもよいし、または全身投与してもよい。例えば、本出願のRNAi剤は、医療介入が必要な対象に投与されることが想定される。このような投与は、前記対象における罹患した部位への、例えば、肝臓組織/細胞への、または肝臓がん組織のような癌性組織/細胞への本出願のRNAi剤、ベクターまたは細胞の注射を含み得る。加えて、注射は、好ましくは想定される罹患した組織に近接してなされる。in vitroにおける細胞への導入としては、電気穿孔およびリポフェクション等の当技術分野で公知の方法が挙げられる。
【0147】
用語「半減期」は、本明細書で使用される場合、化合物または分子の安定性の尺度であり、特に本明細書で提供されるアッセイに照らして当業者公知の方法によって評価することができる。用語「非免疫刺激性」は、本明細書で使用される場合、記載されたRNAi剤による免疫応答のいかなる誘導もないことを指す。免疫応答を決定する方法は、当業者に周知であり、例えば実施例の章に記載されたようにサイトカインの放出を評価することによる方法である。
【0148】
改変されたヌクレオチド
一部の実施形態では、HBV RNAi剤は、1つまたは複数の改変されたヌクレオチドを含有する。本出願の核酸は、当技術分野において十分に確立されている方法によって合成および/または改変することができる。「改変されたヌクレオチド」は、本明細書で使用される場合、リボヌクレオチド(2’-ヒドロキシルヌクレオチド)以外のヌクレオチドである。一部の実施形態では、少なくとも50%(例えば、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)のヌクレオチドが、改変されたヌクレオチドである。本明細書で使用される場合、改変されたヌクレオチドには、デオキシリボヌクレオチド、ヌクレオチド模倣物、脱塩基ヌクレオチド(本明細書ではAbとして示される)、2’-改変ヌクレオチド、3’-3’連結(逆転)ヌクレオチド(本明細書ではinvdN、invN、invn、invAbとして示される)、非天然の塩基を含むヌクレオチド、架橋されたヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)、2’,3’-セコヌクレオチド模倣物(非ロックド核酸塩基アナログ、本明細書ではNUNAとして示される)、ロックドヌクレオチド(本明細書ではNLNAとして示される)、3’-0-メトキシ(2’ヌクレオシド間で連結された)ヌクレオチド(本明細書では3’-OMenとして示される)、2’-F-アラビノヌクレオチド(本明細書ではNfANAとして示される)、5’-Me、2’-フルオロヌクレオチド(本明細書では5Me-Nfとして示される)、モルホリノヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド(本明細書ではvpdNとして示される)、ビニルホスホネートを含有するヌクレオチド、およびシクロプロピルホスホネートを含有するヌクレオチド(cPrpN)が挙げられるがこれらに限定されない。2’-改変ヌクレオチド(すなわち5員環の糖環の2’位にヒドロキシル基以外の基を有するヌクレオチド)には、2’-0-メチルヌクレオチド(本明細書では、ヌクレオチド配列中、小文字の「n」として示される)、2’-デオキシ-2’-フルオロヌクレオチド(本明細書ではNfとして示され、本明細書ではまた2’-フルオロヌクレオチドとしても示される)、2’-デオキシヌクレオチド(本明細書ではdNとして示される)、2’-メトキシエチル(2’-0-2-メトキシルエチル)ヌクレオチド(本明細書ではNMまたは2’-MOEとして示される)、2’-アミノヌクレオチド、および2’-アルキルヌクレオチドが挙げられるがこれらに限定されない。必ずしも所与の化合物中の全ての位置で均一に改変されていなくてもよい。逆に、1つより多くの改変が、単一のHBV RNAi剤中に組み込まれていてもよく、またはその単一のヌクレオチド中への組み込みであってもよい。HBV RNAi剤のセンス鎖およびアンチセンス鎖は、当技術分野で公知の方法で合成および/または改変することができる。1つのヌクレオチドにおける改変は、別のヌクレオチドにおける改変から独立している。
【0149】
改変された核酸塩基としては、5-置換ピリミジン(pyrimidmes)、6-アザピリミジンおよびN-2、N-6および0-6置換プリン、(例えば、2-アミノプロピルアデニン、5-プロピニルウラシル、または5-プロピニルシトシン)、5-メチルシトシン(5-me-C)、5-ヒドロキシメチルシトシン(cytosme)、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6-アルキル(例えば、6-メチル、6-エチル、6-イソプロピル、または6-n-ブチル)誘導体、アデニンおよびグアニンの2-アルキル(例えば、2-メチル、2-エチル、2-イソプロピル、または2-n-ブチル)および他のアルキル誘導体、2-チオウラシル、2-チオチミン、2-チオシトシン、5-ハロウラシル、シトシン、5-プロピニルウラシル、5-プロピニルシトシン、6-アゾウラシル、6-アゾシトシン、6-アゾチミン、-ウラシル(プソイドウラシル)、4-チオウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-スルフヒドリル(sulfhydiyl)、8-チオアルキル、8-ヒドロキシルおよび他の8-置換アデニンおよびグアニン、5-ハロ(例えば、5-ブロモ)、5-トリフルオロメチル(trifluoiOinethyl)、および他の5-置換ウラシルおよびシトシン、7-メチルグアニンおよび7-メチルアデニン、8-アザグアニンおよび8-アザアデニン、7-デアザグアニン、7-デアザアデニン(dea/aadenine)、3-デアザグアニン、ならびに3-デアザアデニン等の合成および天然の核酸塩基が挙げられる。一部の実施形態では、RNAi剤のヌクレオチドの全てまたは実質的に全てが、改変されたヌクレオチドである。本明細書で使用される場合、存在するヌクレオチドの実質的に全てが改変されたヌクレオチドであるRNAi剤は、リボヌクレオチドであるセンス鎖およびアンチセンス鎖の両方に4つまたはそれより少ない(すなわち、0、1、2、3、または4つ)のヌクレオチドを有するRNAi剤である。本明細書で使用される場合、存在するヌクレオチドの実質的に全てが改変されたヌクレオチドであるセンス鎖は、リボヌクレオチドであるセンス鎖中に2つまたはそれより少ない(すなわち、0、1、または2つの)ヌクレオチドを有するセンス鎖である。本明細書で使用される場合、存在するヌクレオチドの実質的に全てが改変されたヌクレオチドであるアンチセンスセンス鎖は、リボヌクレオチドであるセンス鎖中に2つのまたはそれより少ない(すなわち、0、1、または2つの)ヌクレオチドを有するアンチセンス鎖である。一部の実施形態では、RNAi剤の1つまたは複数のヌクレオチドは、リボヌクレオチドである。
【0150】
用語「糖置換基」または「2’-置換基」は、本明細書で使用される場合、酸素原子を含むまたは含まないリボフラノシル部分の2’位に結合した基を含む。糖置換基には、フルオロ、O-アルキル、O-アルキルアミノ、O-アルキルアルコキシ、保護されたO-アルキルアミノ、O-アルキルアミノアルキル、O-アルキルイミダゾールおよび式(O-アルキル)mのポリエーテル(式中、mは、1~約10である)が挙げられるがこれらに限定されない。これらのポリエーテルのなかでも、線形および環状ポリエチレングリコール(PEG)、および(PEG)含有基、例えばクラウンエーテル、とりわけ、Delgardo et. al. (Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems (1992) 9:249)によって開示されたものが好ましい。さらなる糖改変は、Cook (Anti-fibrosis Drug Design, (1991) 6:585-607)によって開示されている。フルオロ、O-アルキル、O-アルキルアミノ、O-アルキルイミダゾール、O-アルキルアミノアルキル、およびアルキルアミノ置換は、参照によりその全体が組み込まれる「Oligomeric Compounds having Pyrimidinc Nucleotide(s) with 2’ and 5’ Substitutions.」というタイトルの米国特許第6,166,197号に記載されている。
【0151】
本出願に適した追加の糖置換基としては、2’-SRおよび2’-NR2基が挙げられ、式中、各Rは、独立して、水素、保護基または置換または非置換のアルキル、アルケニル、またはアルキニルである。2’-SRヌクレオシドは、参照によりその全体が組み込まれるUS5670633に開示されている。2’-SR単量体シントンの取り込みは、Hamm et al. (J. Org. Chem., (1997) 62:3415-3420)によって開示されている。2’-NRヌクレオシドは、Thomson JB, J. Org. Chem., (1996) 61 :6273-6281;およびPolushin et al., Tetrahedron Lett., (1996)37:3227-3230によって開示されている。本出願に適したさらなる代表的な2’-置換基としては、式IまたはIIの1つを有するものが挙げられる:
【0152】
【化1】
式中、
Eは、C
1~C
10アルキル、N(Q3)(Q4)またはC(Q3)(Q4)であり;各Q3およびQ4は、独立して、H、C
1~C
10アルキル、ジアルキルアミノアルキル、窒素保護基、テザーまたは非テザーコンジュゲート基、固体支持体へのリンカーであるか;またはQ3およびQ4は、一緒になって、任意選択でNおよびOから選択される少なくとも1つの追加のヘテロ原子を含む窒素保護基または環構造を形成し;
q1は、1から10の整数であり;
q2は、1から10の整数であり;
q3は、0または1であり;
q4は、0、1または2であり;
各Z1、Z2、およびZ3は、独立して、C
4~C
7シクロアルキル、C
5~C
14アリールまたはC
3~C
15ヘテロシクリルであり、前記ヘテロシクリル基中のヘテロ原子は、酸素、窒素および硫黄から選択され;
Z4は、OM1、SMI、またはN(M1)
2であり;各M1は、独立して、H、C
1~C
8アルキル、C
1~C
8ハロアルキル、C(=NH)N(H)M2、C(=O)N(H)M2またはOC(=O)N(H)M2であり;M2は、HまたはC
1~C
8アルキルであり;
Z5は、C
1~C
10アルキル、C
1~C
0ハロアルキル、C
2~C
10アルケニル、C
2~C
10アルキニル、C
6~C
14アリール、N(Q3)(Q4)、OQ3、ハロ、SQ3またはCNである。
【0153】
式Iの代表的な2’-O-糖置換基は、参照によりその全体が組み込まれる「Capped 2’-Oxyethoxy Oligonucleotides」というタイトルのUS6172209に開示されている。式IIの代表的な環状2’-O-糖置換基は、参照によりその全体が組み込まれる「RNA Targeted 2’-Modified Oligonucleotides that are Conformationally Preorganized」というタイトルのUS6271358に開示されている。
【0154】
リボシル環にO-置換を有する糖も、本出願に適している。環Oの代表的な置換には、S、CH2、CHF、およびCF2が挙げられるがこれらに限定されない。
【0155】
オリゴヌクレオチドはまた、糖模倣剤を有していてもよく、例えばペントフラノシル糖の代わりにシクロブチル部分を有していてもよい。このような改変された糖の調製に関する代表的な米国特許には、参照によりこれらの全てが本明細書に組み込まれるUS5359044、US5466786、US5519134、US5591722、US5597909、US5646,265、およびUS5700920が挙げられるがこれらに限定されない。
【0156】
改変されたヌクレオシド間連結
一部の実施形態では、HBV RNAi剤の1つまたは複数のヌクレオチドは、非標準的な連結または主鎖(すなわち、改変されたヌクレオシド間連結または改変された主鎖)によって連結される。一部の実施形態では、改変されたヌクレオシド間連結は、リン酸を含有しない共有結合のヌクレオシド間連結である。改変されたヌクレオシド間連結または主鎖には、5’-ホスホロチオエート基(本明細書では小文字の「s」として示される)、キラルホスホロチオエート、チオホスフェート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、アルキルホスホネート(例えば、メチルホスホン酸または3’-アルキレンホスホネート)、キラルホスホネート、ホスフィネート、ホスホロアミデート(例えば、3’-アミノホスホロアミデート、アミノアルキルホスホロアミデート、またはチオノホスホロアミデート)、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、モルホリノ連結、正常な3’-5’連結を有するボラノホスフェート、ボラノホスフェートの2’-5’連結アナログ、または隣接するヌクレオシド単位の対が3’-5’と5’-3’または2’-5’と5’-2’で連結されている逆転した極性を有するボラノホスフェートが挙げられるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、改変されたヌクレオシド間連結または主鎖は、リン原子を欠如している。リン原子が欠如した改変されたヌクレオシド間連結には、短鎖アルキルまたはシクロアルキル糖間連結、混成のヘテロ原子およびアルキルもしくはシクロアルキル糖間連結、または1つまたは複数の短鎖ヘテロ原子または複素環式糖間連結が挙げられるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、改変されたヌクレオシド間主鎖には、シロキサン主鎖、スルフィド主鎖、スルホキシド主鎖、スルホン主鎖、ホルムアセチル(formacetyl)およびチオホルムアセチル主鎖、メチレンホルムアセチルおよびチオホルムアセチル主鎖、アルケンを含有する主鎖、スルファミン酸主鎖、メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノ主鎖、スルホン酸およびスルホンアミド主鎖、アミド主鎖、ならびに混成のN、O、S、およびCH2構成要素を有する他の主鎖が挙げられるがこれらに限定されない。
【0157】
一部の実施形態では、HBV RNAi剤のセンス鎖は、1、2、3、4、5、または6つのホスホロチオエート連結を含有していてもよく、HBV RNAi剤のアンチセンス鎖は、1、2、3、4、5、または6つのホスホロチオエート連結を含有していてもよく、またはセンス鎖およびアンチセンス鎖の両方は、独立して、1、2、3、4、5、または6つのホスホロチオエート連結を含有していてもよい。一部の実施形態では、HBV RNAi剤のセンス鎖は、1、2、3、または4つのホスホロチオエート連結を含有していてもよく、HBV RNAi剤のアンチセンス鎖は、1、2、3、または4つのホスホロチオエート連結を含有していてもよいし、またはセンス鎖およびアンチセンス鎖の両方は、独立して、1、2、3、または4つのホスホロチオエート連結を含有していてもよい。一部の実施形態では、HBV RNAi剤のセンス鎖は、少なくとも2つのホスホロチオエートヌクレオシド間連結を含有する。一部の実施形態では、少なくとも2つのホスホロチオエートヌクレオシド間連結は、センス鎖の3’末端から1~3位におけるヌクレオチドの間である。一部の実施形態では、少なくとも2つのホスホロチオエートヌクレオシド間連結は、センス鎖の5’末端から1~3、2~4、3~5、4~6、4~5、または6~8位におけるヌクレオチドの間である。一部の実施形態では、HBV RNAi剤のアンチセンス鎖は、4つのホスホロチオエートヌクレオシド間連結を含有する。一部の実施形態では、4つのホスホロチオエートヌクレオシド間連結は、センス鎖の5’末端から1~3位におけるヌクレオチドの間であり、5’末端から19~21、20~22、21~23、22~24、23~25、または24~26位におけるヌクレオチドの間である。一部の実施形態では、HBV RNAi剤は、センス鎖中に少なくとも2つのホスホロチオエートヌクレオシド間連結、および3または4つを含有する。
【0158】
一部の実施形態では、HBV RNAi剤は、1つまたは複数の改変されたヌクレオチドおよび1つまたは複数の改変されたヌクレオシド間連結を含有する。一部の実施形態では、2’-改変ヌクレオシドは、改変されたヌクレオシド間連結と組み合わされる。
【0159】
化学修飾
本出願のRNAi剤は、安定性を強化するために化学修飾されていてもよい。本出願の核酸は、当技術分野において十分に確立されている方法によって合成および/または改変することができる。化学修飾には、2’改変、非天然塩基の導入、リガンドへの共有結合、およびホスフェート連結のチオホスフェート連結での置き換え、逆方向のデオキシチミジンが挙げられるがこれらに限定されない。この実施形態では、二重鎖構造の完全性は、少なくとも1つの、好ましくは2つの化学連結によって強化される。化学連結は、様々な周知の技術のいずれかによって、例えば共有結合、イオン性または水素結合;疎水性相互作用、ファンデルワールスまたはスタッキング相互作用を導入することによって;金属-イオン配位の手段によって、またはプリンアナログの使用を介して達成することができる。好ましくは、RNAi剤を改変するのに使用できる化学基には、メチレンブルー;二機能性基、好ましくはビス-(2-クロロエチル)アミン;-アセチル-N’-(p-グリオキシルベンゾイル)シスタミン;4-チオウラシル;およびソラレンが挙げられるがこれらに限定されない。好ましい一実施形態では、リンカーは、ヘキサエチレングリコールリンカーである。この場合において、RNAi剤は、固相合成によって生産され、ヘキサエチレングリコールリンカーは、標準的な方法(例えば、Williams DJ and Hall KB, Biochem. (1996) 35: 14665-14670)に従って組み込まれる。特定の実施形態では、アンチセンス鎖の5’末端およびセンス鎖の3’末端は、ヘキサエチレングリコールリンカーを介して化学連結される。別の実施形態では、RNAi剤の少なくとも1つのヌクレオチドは、ホスホロチオエートまたはホスホロジチオエート基を含む。RNAi剤の末端における化学結合は、好ましくはトリプルへリックス結合によって形成される。
【0160】
HBV RNAi剤
一部の実施形態では、本明細書で開示されるHBV RNAi剤は、
図7に示されるHBVゲノムの位置またはその近くでHBV遺伝子を標的化する。一部の実施形態では、本明細書で開示されるHBV RNAi剤のアンチセンス鎖は、
図7に開示された標的の19-merのHBV配列に完全に、実質的に、または少なくとも部分的に相補的なコアストレッチ配列を含む。
【0161】
一部の実施形態では、HBV RNAi剤は、アンチセンス鎖(5’→3’)の19位が
図7に開示された19-merの標的配列の1位と塩基対を形成することが可能なアンチセンス鎖を含む。一部の実施形態では、HBV RNAi剤は、アンチセンス鎖(5’→3’)の1位が
図7に開示された19-merの標的配列の19位と塩基対を形成することが可能なアンチセンス鎖を含む。一部の実施形態では、HBV RNAi剤は、アンチセンス鎖(5’→3’)の2位が
図7に開示された19-merの標的配列の18位と塩基対を形成することが可能なアンチセンス鎖を含む。一部の実施形態では、HBV RNAi剤は、アンチセンス鎖(5’→3’)の2~18位が、
図7に開示された19-merの標的配列の18~2位に配置されたそれぞれの相補的塩基のそれぞれと塩基対を形成することが可能なアンチセンス鎖を含む。
【0162】
一部の実施形態では、HBV RNAi剤は、
図4~6または8に示される19-merのコアヌクレオチド配列を含む。
図4~6または8に記載のヌクレオチド配列を含むかまたはそれからなるHBV RNAi剤のセンス鎖およびアンチセンス鎖は、ヌクレオチドまたは改変されていないヌクレオチドであってもよい。一部の実施形態では、
図4~6または8に記載のヌクレオチド配列を含むかまたはそれからなるセンスおよびアンチセンス鎖配列を有するHBV RNAi剤は、全て、または実質的に全て改変されたヌクレオチドである。一部の実施形態では、本明細書で開示されるHBV RNAi剤のアンチセンス鎖は、
図4~6または8に記載のアンチセンス鎖配列のいずれかと0、1、2、または3ヌクレオチド異なる。一部の実施形態では、本明細書で開示されるHBV RNAi剤のセンス鎖は、
図4~6または8に記載のセンス鎖配列のいずれかと0、1、2、または3ヌクレオチド異なる。
【0163】
改変されたHBV RNAi剤のアンチセンス鎖配列、加えてその基礎となる改変されていない配列は、
図6および9に提供される。改変されたHBV RNAi剤のセンス鎖、加えてその基礎となる改変されていない配列は、
図6および10に提供される。HBV RNAi剤を形成することにおいて、
図6および9~10に列挙した改変されていない配列のそれぞれにおけるヌクレオチドのそれぞれは、改変されたヌクレオチドであってもよい。
【0164】
本明細書(
図9~10を含む)で使用される場合、改変されたヌクレオチド、標的化基、および結合基を示すのに以下の表記が使用される。当業者は、配列による別段の指定がない限り、単量体は、オリゴヌクレオチド中に存在する場合、5’-3’-ホスホジエステル結合によって互いに連結されることを容易に理解しているであろう:
A=アデノシン-3’-リン酸;
C=シチジン-3’-リン酸;
G=グアノシン-3’-リン酸;
U=ウリジン-3’-リン酸
n=任意の2’-OMe改変ヌクレオチド
a=2’-0-メチルアデノシン-3’-リン酸
as=2’-0-メチルアデノシン-3’-ホスホロチオエート
c=2’-0-メチルシチジン-3’-リン酸
cs=2’-0-メチルシチジン-3’-ホスホロチオエート
g=2’-0-メチルグアノシン-3’-リン酸
gs=2’-0-メチルグアノシン-3’-ホスホロチオエート
t=2’-0-メチル-5-メチルウリジン-3’-リン酸
ts=2’-0-メチル-5-メチルウリジン-3’-ホスホロチオエート
u=2’-0-メチルウリジン-3’-リン酸
us=2’-0-メチルウリジン-3’-ホスホロチオエート
Nf=任意の2’-フルオロ改変ヌクレオチド
Af=2’-フルオロアデノシン-3’-リン酸
Afs=2’-フルオロアデノシン-3’-ホスホロチオエート(phosporothioate)
Cf=2’-フルオロシチジン-3’-リン酸
Cfs=2’-フルオロシチジン-3’-ホスホロチオエート
Gf=2’-フルオログアノシン-3’-リン酸
Gfs=2’-フルオログアノシン-3’-ホスホロチオエート
Tf=2’-フルオロ-5’-メチルウリジン-3’-リン酸
Tfs=2’-フルオロ-5’-メチルウリジン-3’-ホスホロチオエート
Uf=2’-フルオロウリジン-3’-リン酸
Ufs=2’-フルオロウリジン-3’-ホスホロチオエート
dN=任意の2’-デオキシリボヌクレオチド
dT=2’-デオキシチミジン-3’-リン酸
NuNA=2’,3’-セコヌクレオチド模倣物(非ロックド核酸塩基アナログ)
NLNA=ロックドヌクレオチド
NfANA=2’-F-アラビノヌクレオチド
NM=2’-メトキシエチルヌクレオチド
AM=2’-メトキシエチルアデノシン-3’-リン酸
AMs=2’-メトキシエチルアデノシン-3’-ホスホロチオエート
TM=2’-メトキシエチルチミジン-3’-リン酸
TMs=2’-メトキシエチルチミジン-3’-ホスホロチオエート
R=リビトール
(invdN)=任意の逆方向デオキシリボヌクレオチド(3’-3’連結ヌクレオチド)
(invAb)=逆方向(3’-3’連結)脱塩基デオキシリボヌクレオチド、表を参照
(invAb)s=逆方向(3’-3’連結)脱塩基デオキシリボヌクレオチド-5’-ホスホロチオエート、表6を参照
(invn)=任意の逆方向2’-OMeヌクレオチド(3’-3’連結ヌクレオチド)s=ホスホロチオエート連結
vpdN=ビニルホスホネートデオキシリボヌクレオチド
(5Me-Nf)=5’-Me、2’-フルオロヌクレオチド
cPrp=シクロプロピルホスホネート、WO2018027106の表6を参照
epTcPr=WO2018027106の表6を参照
epTM=WO2018027106の表6を参照。
【0165】
当業者は、所与のオリゴヌクレオチド配列の3’末端における末端ヌクレオチドは、所与の単量体のそれぞれの3’位に、エクスビボにおけるリン酸部分の代わりに典型的にはヒドロキシル(-OH)基を有することになることを容易に理解するであろう。
【0166】
標的化基および結合基としては、以下が挙げられ、それらの化学構造は、以下のWO2018027106の表6に提供され、その一部は、表10(
図12)に描写される:(PAZ)、(NAG13)、(NAG13)s、(NAG18)、(NAG18)s、(NAG24)、(NAG24)s、(NAG25)、(NAG25)s、(NAG26)、(NAG26)s、(NAG27)、(NAG27)s、(NAG28)、(NAG28)s、(NAG29)、(NAG29)s、(NAG30)、(NAG30)s、(NAG31)、(NAG31)s、(NAG32)、(NAG32)s、(NAG33)、(NAG33)s、(NAG34)、(NAG34)s、(NAG35)、(NAG35)s、(NAG36)、(NAG36)s、(NAG37)、(NAG37)s、(NAG38)、(NAG38)s、(NAG39)、(NAG39)s。各センス鎖および/またはアンチセンス鎖は、上記で列挙したあらゆる標的化基または結合基、加えて配列の5’および/または3’末端にコンジュゲートした他の標的化または結合基を有していてもよい。
【0167】
本明細書に記載されるHBV RNAi剤は、アンチセンス鎖をセンス鎖とアニーリングすることによって形成される。代表的な配列の対合は、
図11に示される二重鎖識別番号によって例示される。
【0168】
本明細書で開示されるHBV RNAi剤について、アンチセンス鎖(5’末端から3’末端)の1位におけるヌクレオチドは、HBV遺伝子に完全に相補的であってもよいし、またはHBV遺伝子に非相補的であってもよい。一部の実施形態では、アンチセンス鎖(5’末端から3’末端)の1位におけるヌクレオチドは、U、A、またはdTである。一部の実施形態では、アンチセンス鎖(5’末端から3’末端)の1位におけるヌクレオチドは、センス鎖とA:UまたはU:Aの塩基対を形成する。
【0169】
一部の実施形態では、HBV RNAi剤は、本明細書に記載される二重鎖のいずれかのアンチセンス鎖および/またはセンス鎖ヌクレオチド配列のいずれかの改変されたヌクレオチド配列を有するアンチセンス鎖およびセンス鎖を含み、アシアロ糖タンパク質受容体リガンド標的化基をさらに含む。
【0170】
HBV遺伝子の発現を阻害するためのRNAi剤は、当技術分野で公知である。例えば、HBV遺伝子の発現を阻害するためのRNAi剤には、その内容の全体が本明細書に組み込まれるUS20130005793、WO2013003520、およびWO2018027106に記載されるHBV遺伝子の発現を阻害するためのRNAi剤が挙げられるがこれらに限定されない。
【0171】
HBV遺伝子の発現を阻害するためのRNAi剤の例としては、例えば、US20130005793の表1、2および4(本明細書では表2~4(
図4~6)として再掲される)またはWO2018027106の表1~5(本明細書では表5~9(
図7~11)として再掲される)に記載の配列の1つを含むRNAi剤が挙げられる。
【0172】
HBV遺伝子の発現を阻害するためのRNAi剤の例としては、例えば、表9に示される二重鎖を含むRNAi剤が挙げられる。特定の実施形態によれば、RNAi剤は、二重鎖AD04872(本明細書では配列番号25~26)(WO2018027106のAM06282-AS(配列番号126および171)およびAM06288-SS(配列番号252および302))およびAD05070(本明細書では配列番号27~28)(WO2018027106のAM06606-AS(配列番号140および188)およびAM06605-SS(配列番号262および328))の少なくとも1つを含み、これらのそれぞれは、表10に描写された構造を有するものの1つ等の標的化リガンド、例えばNAG37にコンジュゲートされている。
【0173】
標的化基、結合基、および送達媒体
一部の実施形態では、HBV RNAi剤は、これらに限定されないが、標的化基、結合基、送達ポリマー、または送達媒体などの1つまたは複数の非ヌクレオチド基にコンジュゲートされている。非ヌクレオチド基は、RNAi剤の標的化、送達または付着を強化することができる。標的化基および結合基の例は、WO2018027106の表6に提供される。非ヌクレオチド基は、センス鎖および/またはアンチセンス鎖のいずれかの3’および/または5’末端に共有結合で連結されていてもよい。一部の実施形態では、HBV RNAi剤は、センス鎖の3’および/または5’末端に連結された非ヌクレオチド基を含有する。一部の実施形態では、非ヌクレオチド基は、HBV RNAi剤のセンス鎖の5’末端に連結されている。非ヌクレオチド基は、RNAi剤に、直接的に、またはリンカー/結合基を介して間接的に連結されていてもよい。一部の実施形態では、非ヌクレオチド基は、不安定性の、切断可能な、または可逆的な結合またはリンカーを介して、RNAi剤に連結されている。
【0174】
一部の実施形態では、非ヌクレオチド基は、コンジュゲートの細胞または組織特異的な分布および細胞特異的な取り込みを改善するためにそれに付着されるRNAi剤またはコンジュゲートの薬物動態または生体内分布特性を強化する。一部の実施形態では、非ヌクレオチド基は、RNAi剤のエンドサイトーシスを強化する。
【0175】
標的化基または標的化部分は、コンジュゲートの細胞特異的な分布および細胞特異的な取り込みを改善するためにそれらに付着されるコンジュゲートの薬物動態または生体内分布特性を強化する。標的化基は、1価、2価、3価の、4価であってもよいし、またはそれより高い原子価を有していてもよい。代表的な標的化基には、細胞表面分子への親和性を有する化合物、細胞受容体リガンド、ハプテン、抗体、モノクローナル抗体、抗体断片、および細胞表面分子への親和性を有する抗体模倣物が挙げられるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、標的化基は、リンカー、例えばPEGリンカー、または1、2、もしくは3つの脱塩基および/もしくはリビトール(脱塩基リボース)基を使用してRNAi剤に連結されている。一部の実施形態では、標的化基は、ガラクトース誘導体のクラスターを含む。5’末端に反応性基、例えばアミン基を有する本明細書に記載されるHBV RNAi剤を合成することができる。反応性基は、あとで当技術分野において典型的な方法を使用して標的化部分を付着するのに使用することができる。一部の実施形態では、標的化基は、アシアロ糖タンパク質受容体リガンドを含む。一部の実施形態では、アシアロ糖タンパク質受容体リガンドは、1つまたは複数のガラクトース誘導体を含むかまたはそれからなる。ガラクトース誘導体という用語は、本明細書で使用される場合、ガラクトースと、ガラクトースのものに等しいかまたはそれより大きいアシアロ糖タンパク質受容体への親和性を有するガラクトースの誘導体との両方を含む。ガラクトース誘導体には、ガラクトース、ガラクトサミン、N-ホルミルガラクトサミン、N-アセチルガラクトサミン、N-プロピオニルガラクトサミン、N-n-ブタノイルガラクトサミン、およびN-イソブタノイルガラクトースアミン(例えば:Iobst, S.T. and Drickamer, K. J.B.C. 1996, 277, 6686を参照)が挙げられるがこれらに限定されない。in vivoにおけるオリゴヌクレオチドおよび他の分子の肝臓への標的化に有用なガラクトース誘導体、およびガラクトース誘導体のクラスターは当技術分野で公知である(例えば、Baenziger and Fiete, 1980, Cell, 22, 611-620;Connolly et al., 1982, J. Biol. Chem, 257, 939-945を参照)。ガラクトース誘導体は、in vivoにおいて、肝細胞の表面上に発現されるアシアロ糖タンパク質受容体(ASGPr)へのその結合を介して分子を肝細胞に標的化するのに使用されてきた。ASGPrリガンドのASGPrへの結合は、肝細胞への細胞特異的な標的化および肝細胞への分子のエンドサイトーシスを容易にする。ASGPrリガンドは、単量体(例えば、単一のガラクトース誘導体を有する)または多量体(例えば、複数のガラクトース誘導体を有する)であってもよい。ガラクトース誘導体またはガラクトース誘導体クラスターは、当技術分野で公知の方法を使用してRNAiポリヌクレオチドの3または5’末端に付着されていてもよい。ガラクトース誘導体クラスター等の標的化基の調製は、例えば、これら両方の内容の全体が本明細書に組み込まれるUS20180064819およびUS20170253875に記載されている。
【0176】
本明細書で使用される場合、ガラクトース誘導体クラスターは、2~4個の末端ガラクトース誘導体を有する分子を含む。末端ガラクトース誘導体は、そのC1炭素を介して分子に付着されている。一部の実施形態では、ガラクトース誘導体クラスターは、ガラクトース誘導体三量体(トリアンテナリーガラクトース誘導体または3価ガラクトース誘導体とも称される)である。一部の実施形態では、ガラクトース誘導体クラスターは、N-アセチルガラクトサミンを含む。一部の実施形態では、ガラクトース誘導体クラスターは、3つのN-アセチルガラクトサミンを含む。一部の実施形態では、ガラクトース誘導体クラスターは、ガラクトース誘導体四量体(テトラアンテナリーガラクトース誘導体または4価ガラクトース誘導体とも称される)である。一部の実施形態では、ガラクトース誘導体クラスターは、4つのN-アセチルガラクトサミンを含む。
【0177】
ガラクトース誘導体三量体は、本明細書で使用される場合、それぞれ中央の分岐点に連結された3つのガラクトース誘導体を含有する。ガラクトース誘導体四量体は、本明細書で使用される場合、それぞれ中央の分岐点に連結された4つのガラクトース誘導体を含有する。ガラクトース誘導体は、糖のC1炭素を介して中央の分岐点に付着されていてもよい。一部の実施形態では、ガラクトース誘導体は、リンカーまたはスペーサーを介して分岐点に連結されている。一部の実施形態では、リンカーまたはスペーサーは、フレキシブルな親水性スペーサー、例えばPEG基である(例えば、米国特許第5,885,968号;Biessen et al. J. Med. Chem. 1995 Vol. 39 p. 1538-1546を参照)。一部の実施形態では、PEGスペーサーは、PEG3スペーサーである。分岐点は、3つのガラクトース誘導体の付着を許容し、さらに、RNAi剤への分岐点の付着を許容するあらゆる小分子であり得る。分岐点基の例は、ジリジンまたはジグルタメートである。分岐点のRNAi剤への付着は、リンカーまたはスペーサーを介して起こり得る。一部の実施形態では、リンカーまたはスペーサーは、フレキシブルな親水性スペーサー、例えば、これに限定されないが、PEGスペーサーを含む。一部の実施形態では、リンカーは、リジッドなリンカー、例えば環式基を含む。一部の実施形態では、ガラクトース誘導体は、N-アセチルガラクトサミンを含むかまたはそれからなる。一部の実施形態では、ガラクトース誘導体クラスターは、ガラクトース誘導体四量体で構成され、ガラクトース誘導体四量体は、例えば、N-アセチルガラクトサミン四量体であってもよい。
【0178】
一部の実施形態では、結合基は、RNAi剤にコンジュゲートされている。結合基は、標的化基または送達ポリマーまたは送達媒体への薬剤の共有結合による連結を容易にする。結合基は、RNAi剤のセンス鎖またはアンチセンス鎖の3’または5’末端に連結されていてもよい。一部の実施形態では、結合基は、RNAi剤のセンス鎖に連結されている。一部の実施形態では、結合基は、RNAi剤のセンス鎖の5’または3’末端にコンジュゲートされている。一部の実施形態では、結合基は、RNAi剤のセンス鎖の5’末端にコンジュゲートされている。結合基の例には、第一アミンおよびアルキンのような反応性基、アルキル基、脱塩基ヌクレオシド、リビトール(脱塩基リボース)、および/またはPEG基が挙げられるがこれらに限定されない。
【0179】
リンカーまたは結合基は、1つまたは複数の共有結合を介して、1つの化学基(例えばRNAi剤)または目的の分節を別の化学基(例えば標的化基または送達ポリマー)または目的の分節に連結する2つの原子間の接続である。不安定性の連結は、不安定性の結合を含有する。連結は、任意選択で、2つの合体した原子間の距離を長くするスペーサーを含んでいてもよい。スペーサーは、連結にフレキシビリティーおよび/または長さをさらに追加することができる。スペーサーとしては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、アラルケニル基、およびアラルキニル基を挙げることができるがこれらに限定されず、これらのそれぞれは、1つまたは複数のヘテロ原子、複素環、アミノ酸、ヌクレオチド、および糖を含有していてもよい。スペーサー基は当技術分野において周知であり、前記の列挙は、記載の範囲への限定を意味しない。
【0180】
送達媒体
一部の実施形態では、送達媒体は、RNAi剤を細胞または組織に送達するのに使用することができる。送達媒体は、細胞または組織へのRNAi剤の送達を改善する化合物である。送達媒体は、これらに限定されないが、両親媒性ポリマー、膜作用性ポリマー、ペプチド、メリチンペプチド、メリチン様ペプチド(MLP)、脂質、可逆的に改変されたポリマーもしくはペプチド、または可逆的に改変された膜作用性ポリアミン等のポリマーを含んでいてもよいし、またはそれらからなっていてもよい。
【0181】
一部の実施形態では、RNAi剤は、脂質、ナノ粒子、ポリマー、リポソーム、ミセル、DPCまたは当技術分野において利用可能な他の送達系と組み合わせることができる。RNAi剤はまた、標的化基、脂質(これらに限定されないが、コレステロールおよびコレステリル誘導体など)、ナノ粒子、ポリマー、リポソーム、ミセル、DPC(例えば、それぞれ参照により本明細書に組み込まれているWO2000/053722、WO2008/0022309、WO2011/104169、およびWO2012/083185、WO2013/032829、WO2013/158141を参照)、または当技術分野において利用可能な他の送達系に化学的にコンジュゲートされていてもよい。
【0182】
オリゴヌクレオチドにコンジュゲートした他の親油性化合物としては、1-ピレン酪酸、1,3-ビス-O-(ヘキサデシル)グリセロール、およびメントールが挙げられる。受容体媒介エンドサイトーシスのためのリガンドの一例は、葉酸である。葉酸は、葉酸受容体媒介エンドサイトーシスによって細胞に入る。葉酸が結合しているRNAi剤は、葉酸受容体媒介エンドサイトーシスを介して細胞に効率的に輸送されるであろう。オリゴヌクレオチドの3’末端への葉酸の付着は、オリゴヌクレオチドの細胞内取り込みの増加をもたらす(Li S, Deshmukh HM, and Huang L, Pharm. Res. (1998) 15: 1540)。オリゴヌクレオチドにコンジュゲートした他のリガンドとしては、ポリエチレングリコール、炭水化物クラスター、架橋剤、ポルフィリンコンジュゲート、および送達ペプチドが挙げられる。ある特定の場合において、カチオン性リガンドのオリゴヌクレオチドへのコンジュゲーションは、ヌクレアーゼへの耐性の改善をもたらすことが多い。カチオン性リガンドの代表的な例は、プロピルアンモニウムおよびジメチルプロピルアンモニウムである。興味深いことに、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、カチオン性リガンドがオリゴヌクレオチドにわたり分散された場合、mRNAへのその高い結合親和性を保持することが報告されている。Manoharan M, Antisense & Nucleic Acid Drug Development (2002) 12: 103およびそこに記載の参考文献を参照されたい。
【0183】
追加の改変はまた、オリゴヌクレオチドの他の位置に、特に3’末端ヌクレオチドにおける糖の3’位になすことができる。例えば、本出願のリガンドにコンジュゲートしたオリゴヌクレオチドの1つの追加の改変は、オリゴヌクレオチドへの1つもしくは複数の追加の非リガンド部分の化学的な連結、またはオリゴヌクレオチドの活性、細胞分布もしくは細胞内取り込みを強化するコンジュゲートを含む。このような部分には、脂質部分、例えばコレステロール部分(Letsinger et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, (1989) 86:6553)、コール酸(Manoharan et al, Bioorg. Med. Chem. Lett., (1994) 4: 1053)、チオエーテル、例えば、ヘキシル-S-トリチルチオール(Manoharan et al., Ann. N Y. Acad. Sci., (1992) 660:306;Manoharan et al, Bioorg. Med. Chem. Let., (1993 ) 3:2765)、チオコレステロール(fhiochoiesterol)(Oberhauser et al., Nucl Acids Res., (1992) 20:533)、脂肪鎖、例えば、ドデカンジオール(dodecandiol)またはウンデシル残基(Saison-Behmoaras et al., EMBO J., (1991) 10: 1 1 1;Kabanov et al, FEBS Lett., (1990) 259:327;Svinarchuk et al, Biochimie, (1993) 75:49)、リン脂質、例えば、ジヘキサデシル-rac-グリセロールまたはトリエチルアンモニウム1,2-ジ-O-ヘキサデシル-rac-グリセロ-3-H-ホスホネート(Manoharan et al, Tetrahedron Lett., (1995) 36:3651;Shea et al, Nucl Acids Res., (1990) 18:3777)、ポリアミンまたはポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al., Nucleosides & Nucleotides, (1995) 14:969)、またはアダマンタン酢酸(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., (1995)36:3651)、パルミチル部分(Mishra et al., Biochim. Biophys. Acta, (1995) 1264:229)、またはオクタデシルアミンまたはヘキシルアミノカルボニルオキシコレステロール部分(Crooke et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., (1996) 277:923)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0184】
追加の改変はまた、オリゴヌクレオチドの他の位置に、特に3’末端ヌクレオチドにおける糖の3’位になすことができる。例えば、本出願のリガンドにコンジュゲートしたオリゴヌクレオチドの1つの追加の改変は、オリゴヌクレオチドへの1つもしくは複数の追加の非リガンド部分の化学的な連結、またはオリゴヌクレオチドの活性、細胞分布もしくは細胞内取り込みを強化するコンジュゲートを含む。このような部分には、脂質部分、例えばコレステロール部分(Letsinger et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, (1989) 86:6553)、コール酸(Manoharan et al, Bioorg. Med. Chem. Lett., (1994) 4: 1053)、チオエーテル、例えば、ヘキシル-S-トリチルチオール(Manoharan et al., Ann. N Y. Acad. Sci., (1992) 660:306;Manoharan et al, Bioorg. Med. Chem. Let., (1993 ) 3:2765)、チオコレステロール(fhiochoiesterol)(Oberhauser et al., Nucl Acids Res., (1992) 20:533)、脂肪鎖、例えば、ドデカンジオール(dodecandiol)またはウンデシル残基(Saison-Behmoaras et al., EMBO J., (1991) 10: 1 1 1;Kabanov et al, FEBS Lett., (1990) 259:327;Svinarchuk et al, Biochimie, (1993) 75:49)、リン脂質、例えば、ジヘキサデシル-rac-グリセロールまたはトリエチルアンモニウム1,2-ジ-O-ヘキサデシル-rac-グリセロ-3-H-ホスホネート(Manoharan et al, Tetrahedron Lett., (1995) 36:3651;Shea et al, Nucl Acids Res., (1990) 18:3777)、ポリアミンまたはポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al., Nucleosides & Nucleotides, (1995) 14:969)、またはアダマンタン酢酸(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., (1995)36:3651)、パルミチル部分(Mishra et al., Biochim. Biophys. Acta, (1995) 1264:229)、またはオクタデシルアミンまたはヘキシルアミノカルボニルオキシコレステロール部分(Crooke et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., (1996) 277:923)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0185】
本出願はまた、オリゴヌクレオチド内の特定の位置に関して実質的にキラル的に純粋なオリゴヌクレオチドを採用する組成物も含む。
【0186】
実質的にキラル的に純粋なオリゴヌクレオチドの例には、少なくとも75%のSpまたはRpであるホスホロチオエート連結を有するもの(Cook et al.、US5587361)、および実質的にキラル的に純粋な(SpまたはRp)アルキルホスホネート、ホスホロアミデートまたはホスホトリエステル連結を有するもの(Cook、US5212295およびUS5521302)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0187】
ある特定の場合において、オリゴヌクレオチドは、非リガンド基によって改変されていてもよい。多数の非リガンド分子が、オリゴヌクレオチドの活性、細胞分布または細胞内取り込みを強化するために、オリゴヌクレオチドにコンジュゲートされており、このようなコンジュゲーションを実行するための手順は、科学文献で入手可能である。このような非リガンド部分としては、脂質部分、例えばコレステロール(Letsinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, (1989, 86:6553))、コール酸(Manoharan et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., (1994, 4: 1053))、チオエーテル、例えば、ヘキシル-S-トリチルチオール(Manoharan et al, Ann. N. Y. Acad. Sci, (1992, 660:306;Manoharan et al., Bioorg. Med. Chem. Let., (1993, 3:2765))、チオコレステロール(Oberhauser et al, Nucl. Acids Res., (1992, 20:533))、脂肪鎖、例えば、ドデカンジオールまたはウンデシル残基(Saison-Behmoaras et al., EMBO J., (1991)10:111;Kabanov et al., FEBS Lett, (1990) 259:327;Svinarchuk et al, Biochimie, (1993) 75:49)、リン脂質、例えば、ジヘキサデシル-rac-グリセロールまたはトリエチルアンモニウム1,2-ジ-O-ヘキサデシル-rac-グリセロ-3-H-ホスホネート(Manoharan et al, Tetrahedron Lett., (1995) 36:3651;Shea et al., Nucl. Acids Res., (1990) 18:3777)、ポリアミンまたはポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al, Nucleosides & Nucleotides, (1995) 14:969)、またはアダマンタン酢酸(Manoharan et al.. Tetrahedron Lett., (1995)36:3651)、パルミチル部分(Mishra et al., Biochim. Biophys. Acta, (1995) 1264:229)、またはオクタデシルアミンまたはヘキシルアミノカルボニルオキシコレステロール部分(Crooke et al, J. Pharmacol. Exp. Ther., (1996) 277:923)が挙げられる。典型的なコンジュゲーションプロトコールは、配列の1つまたは複数の位置にアミノリンカーが結合しているオリゴヌクレオチドの合成を含む。次いでアミノ基は、適切なカップリングまたは活性化試薬を使用してコンジュゲートされている分子と反応する。コンジュゲーション反応は、それでもなお固体支持体結合にしているオリゴヌクレオチドを用いるか、または液相中でのオリゴヌクレオチド切断の後のいずれかに実行することができる。HPLCによるオリゴヌクレオチドコンジュゲートの精製は、典型的には純粋なコンジュゲートを生じる。
【0188】
代替として、コンジュゲートされている分子は、分子中に存在するアルコール基を介して、またはリン酸化可能なアルコール基が結合しているリンカーの付着によって、ビルディングブロック、例えばホスホアミダイトに変換してもよい。重要なことには、これらのアプローチのそれぞれは、リガンドがコンジュゲートしたオリゴヌクレオチドの合成に使用することができる。アミノが連結されたオリゴヌクレオチドは、カップリング試薬の使用を介して、またはNHSまたはペンタフルオロフェノレート(pcntfluorophcnolate)エステルとしてリガンドの活性化後に、リガンドと直接カップリングすることができる。リガンドホスホロアミダイトは、カルボキシル基の1つへのアミノヘキサノール(aminohcxanol)リンカーの付着、それに続いて末端アルコール官能基のホスフィチレーション(phosphityation)を介して合成することができる。他のリンカー、例えばシステアミンはまた、合成されたオリゴヌクレオチド上に存在するクロロアセチルリンカーへのコンジュゲーションにも利用することができる。
【0189】
当業者は、細胞、組織または生物に本出願の分子を導入する方法について容易に認識している。対応する例は、本出願の上記の詳細な説明にも提供されている。例えば、記載されたRNAi剤の少なくとも1つの鎖をコードする本出願の核酸分子またはベクターは、トランスフェクション等のような当技術分野で公知の方法で細胞または組織に導入することができる。
【0190】
RNAi剤の導入のための意味および方法も提供される。例えば、グリコシル化および葉酸で改変された分子による標的化された送達は、ガラクトースおよびラクトース等のリガンドを有するポリマー担体の使用、または様々な巨大分子への葉酸の付着を含み、このような送達が、葉酸受容体に送達されることになる分子の結合を可能にする。抗体以外のペプチドおよびタンパク質、例えば、in vivoでsiRNAを送達するためのRGD改変ナノ粒子など、または多成分(非ウイルス)の送達系、例えば短いシクロデキストリン、アダマンタン-PEGなどによる、標的化された送達が公知である。さらには、抗体の(1価)Fab断片(またはこのような抗体の他の断片)または単鎖抗体などの抗体または抗体断片を使用する標的化された送達も想定される。標的に方向付けた送達のための注射アプローチは、とりわけ、流体力学的なi.v.注射を含む。またRNAi剤のコレステロールコンジュゲートも標的化された送達に使用でき、それにより親油性基へのコンジュゲーションは、細胞の取り込みを強化し、オリゴヌクレオチドの薬物動態および組織生体内分布を改善する。またカチオン性送達系も公知であり、それによって正味の陽性(カチオン性)電荷を有する合成ベクターは、容易にポリアニオン核酸との複合体形成および負電荷を有する細胞膜との相互作用が可能になる。このようなカチオン性送達系はまた、カチオン性リポソーム送達系、カチオン性ポリマーおよびペプチド送達系も含む。dsRNA/siRNAの細胞内取り込みのための他の送達系は、アプタマー-ds/siRNAである。また遺伝子療法アプローチは、記載されたRNAi剤またはそれをコードする核酸分子を送達するのにも使用することができる。このような系は、非病原性ウイルス、改変されたウイルスベクター、加えてナノ粒子またはリポソームを用いた送達の使用を含む。RNAi剤の細胞内取り込みのための他の送達方法は、細胞、臓器または組織の、体外での、例えばエクスビボでの処置である。これらの技術のうちある特定のものは、Akhtar, Journal of Clinical Investigation (2007) 1 17:3623-3632、Nguyen et al, Current Opinion in Molecular Therapeutics (2008) 10: 158-167、Zamboni, Clin Cancer Res (2005) 1 1 :8230-8234またはIkeda et al, Pharmaceutical Research (2006) 23 : 1631-1640のような刊行物に記載され要約されている。
【0191】
RNAi剤およびそのコンジュゲートを作製および使用する方法は、当技術分野で公知である。あらゆるこのような公知の方法は、HBV遺伝子の発現を阻害するためのRNAi剤およびそのコンジュゲートを作製および使用するために本出願に関して使用することができる。RNAi剤およびそのコンジュゲートを作製および使用するの方法は、例えば、US20130005793、WO2013003520、WO2018027106、US5218105、US5541307、US5521302、US5539082、US5554746、US5571902、US5578718、US5587361、US5506351、US5587469、US5587470、US5608046、US5610289、US6262241、WO9307883に記載され、これらは全て、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0192】
組成物、治療的組合せ、およびワクチン
本出願はまた、1つまたは複数のHBV抗原、本出願による1つまたは複数のHBV抗原をコードするポリヌクレオチド、および/またはベクター、ならびに/または1つまたは複数のHBV遺伝子の発現を阻害するためのRNAi剤を含む組成物、治療的組合せ、より特にキット、およびワクチンにも関する。本明細書に記載される本出願のHBV抗原、ポリヌクレオチド(RNAおよびDNAを含む)、および/またはベクターのいずれか、ならびに本明細書に記載される本出願のHBV遺伝子の発現を阻害するためのRNAi剤のいずれかを、本出願の組成物、治療的組合せまたはキット、およびワクチンに使用することができる。
【0193】
本出願の実施形態では、組成物は、配列番号2または配列番号4に少なくとも90%同一なアミノ酸配列からなる切断型HBVコア抗原をコードするポリヌクレオチド配列を含む単離されたまたは天然に存在しない核酸分子(DNAまたはRNA)、または配列番号7と少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含むHBVポリメラーゼ抗原、単離されたまたは天然に存在しない核酸分子を含むベクター、および/または単離されたまたは天然に存在しない核酸分子によってコードされた単離されたまたは天然に存在しないポリペプチドを含む。
【0194】
本出願の実施形態では、組成物は、配列番号7と少なくとも90%同一な、好ましくは配列番号7と100%同一なアミノ酸配列を含むHBV Pol抗原をコードするポリヌクレオチド配列を含む単離されたまたは天然に存在しない核酸分子(DNAまたはRNA)を含む。
【0195】
本出願の実施形態では、組成物は、配列番号2または配列番号4に少なくとも90%同一な、好ましくは配列番号2または配列番号4に100%同一なアミノ酸配列からなる切断型HBVコア抗原をコードする単離されたまたは天然に存在しない核酸分子(DNAまたはRNA)を含む。
【0196】
本出願の実施形態では、組成物は、配列番号2または配列番号4に少なくとも90%同一な、好ましくは配列番号2または配列番号4と100%同一なアミノ酸配列からなる切断型HBVコア抗原をコードするポリヌクレオチド配列を含む単離されたまたは天然に存在しない核酸分子(DNAまたはRNA);および配列番号7と少なくとも90%同一な、好ましくは配列番号7と100%同一なアミノ酸配列を含むHBV Pol抗原をコードするポリヌクレオチド配列を含む単離されたまたは天然に存在しない核酸分子(DNAまたはRNA)を含む。切断型HBVコア抗原およびHBV Pol抗原のコード配列は、同じ単離されたまたは天然に存在しない核酸分子(DNAまたはRNA)に存在していてもよいし、または2つの異なる単離されたまたは天然に存在しない核酸分子(DNAまたはRNA)に存在していてもよい。
【0197】
本出願の実施形態では、組成物は、配列番号2または配列番号4に少なくとも90%同一な、好ましくは配列番号2または配列番号4に100%同一なアミノ酸配列からなる切断型HBVコア抗原をコードするポリヌクレオチドを含むベクター、好ましくはDNAプラスミドまたはウイルスベクター(例えばアデノウイルスベクター)を含む。
【0198】
本出願の実施形態では、組成物は、配列番号7と少なくとも90%同一な、好ましくは配列番号7と100%同一なアミノ酸配列を含むHBV Pol抗原をコードするポリヌクレオチドを含むベクター、好ましくはDNAプラスミドまたはウイルスベクター(例えばアデノウイルスベクター)を含む。
【0199】
本出願の実施形態では、組成物は、配列番号2または配列番号4に少なくとも90%同一な、好ましくは配列番号2または配列番号4と100%同一なアミノ酸配列からなる切断型HBVコア抗原をコードするポリヌクレオチドを含むベクター、好ましくはDNAプラスミドまたはウイルスベクター(例えばアデノウイルスベクター);および配列番号7と少なくとも90%同一な、好ましくは配列番号7と100%同一なアミノ酸配列を含むHBV Pol抗原をコードするポリヌクレオチドを含むベクター、好ましくはDNAプラスミドまたはウイルスベクター(例えばアデノウイルスベクター)を含む。切断型HBVコア抗原コード配列を含むベクターおよびHBV Pol抗原のコード配列を含むベクターは、同じベクター、または2つの異なるベクターであってもよい。
【0200】
本出願の一実施形態では、組成物は、配列番号2または配列番号4と少なくとも90%同一である、好ましくは配列番号2または配列番号4と100%同一であるアミノ酸配列からなる切断型HBVコア抗原であって、配列番号7と少なくとも90%同一である、好ましくは配列番号7と100%同一であるアミノ酸配列を含むHBV Pol抗原に作動可能に連結された切断型HBVコア抗原、またはその逆を含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクター、好ましくはDNAプラスミドまたはウイルスベクター(例えば、アデノウイルスベクター)を含む。好ましくは、融合タンパク質は、切断型HBVコア抗原をHBV Pol抗原に作動可能に連結する、またはその逆に連結するリンカーをさらに含む。好ましくは、リンカーは、アミノ酸配列(AlaGly)nを有し、式中nは2~5の整数である。
【0201】
本出願の実施形態では、組成物は、配列番号2または配列番号4に少なくとも90%同一な、好ましくは配列番号2または配列番号4に100%同一なアミノ酸配列からなる単離されたまたは天然に存在しない切断型HBVコア抗原を含む。
【0202】
本出願の実施形態では、組成物は、配列番号7と少なくとも90%同一な、好ましくは配列番号7と100%同一なアミノ酸配列を含む単離されたまたは天然に存在しないHBV Pol抗原を含む。
【0203】
本出願の実施形態では、組成物は、配列番号2または配列番号4に少なくとも90%同一な、好ましくは配列番号2または配列番号4と100%同一なアミノ酸配列からなる単離されたまたは天然に存在しない切断型HBVコア抗原;および配列番号7と少なくとも90%同一な、好ましくは配列番号7と100%同一なアミノ酸配列を含む単離されたまたは天然に存在しないHBV Pol抗原を含む。
【0204】
本出願の実施形態では、組成物は、配列番号7と少なくとも90%同一な、好ましくは配列番号7と100%同一なアミノ酸配列を含むHBV Pol抗原に作動可能に連結された、配列番号2または配列番号14に少なくとも90%同一な、好ましくは配列番号2または配列番号4に100%同一なアミノ酸配列からなる切断型HBVコア抗原を含む単離されたまたは天然に存在しない融合タンパク質を含み、または逆もまた同様である。好ましくは、融合タンパク質は、切断型HBVコア抗原をHBV Pol抗原に作動可能に連結する、またはその逆に連結するリンカーをさらに含む。好ましくは、リンカーは、アミノ酸配列(AlaGly)nを有し、式中nは2~5の整数である。
【0205】
本出願の実施形態では、組成物は、HBV遺伝子の発現を阻害するためのRNAi剤、例えばUS20130005793、WO2013003520またはWO2018027106に記載されるものを含む。
【0206】
本出願はまた、本出願の実施形態による切断型HBVコア抗原およびHBV pol抗原を発現するポリヌクレオチド、ならびに/または本出願の実施形態によるHBV遺伝子の発現を阻害するためのRNAi剤を含む治療的組合せまたはキットにも関する。本明細書に記載される本出願のHBVコアおよびpol抗原をコードするあらゆるポリヌクレオチドおよび/またはベクターが、本出願の治療的組合せまたはキットで使用でき、本明細書に記載される本出願のあらゆるHBV遺伝子の発現を阻害するためのRNAi剤が、本出願の治療的組合せまたはキットで使用できる。
【0207】
本出願の実施形態によれば、それを必要とする対象におけるHBV感染症の処置に使用するための治療的組合せまたはキットは、
i)a)配列番号2と少なくとも95%同一なアミノ酸配列からなる切断型HBVコア抗原、および
b)切断型HBVコア抗原をコードする第1のポリヌクレオチド配列を含む第1の天然に存在しない核酸分子
c)配列番号7と少なくとも90%同一なアミノ酸配列を有するHBVポリメラーゼ抗原であって、逆転写酵素活性およびRNアーゼH活性を有しないHBVポリメラーゼ抗原、および
d)HBVポリメラーゼ抗原をコードする第2のポリヌクレオチド配列を含む第2の天然に存在しない核酸分子
の少なくとも1つ;ならびに
ii)HBV遺伝子の発現を阻害するためのRNAi剤、例えば本明細書に記載されるもの
を含む。
【0208】
本出願の特定の実施形態では、治療的組合せまたはキットは、i)配列番号2に少なくとも95%同一なアミノ酸配列からなる切断型HBVコア抗原をコードする第1のポリヌクレオチド配列を含む第1の天然に存在しない核酸分子;ii)配列番号7と少なくとも90%同一なアミノ酸配列を有するHBVポリメラーゼ抗原をコードする第2のポリヌクレオチド配列を含む第2の天然に存在しない核酸分子であって、HBVポリメラーゼ抗原は、逆転写酵素活性およびRNアーゼH活性を有しない、第2の天然に存在しない核酸分子;ならびにiii)HBV遺伝子の発現を阻害するためのRNAi剤であって、好ましくは表9に示される二重鎖を含み、より好ましくは二重鎖AD04872(配列番号25~26)およびAD05070(配列番号27~28)の少なくとも1つを含むRNAi剤であり、これらのそれぞれは、表10に描写された構造を有するものなどの標的化リガンド、例えばNAG37にコンジュゲートされている、RNAi剤を含む。
【0209】
本出願の実施形態に従って、ワクチンの組合せまたはキットにおけるポリヌクレオチドは、そのようなポリヌクレオチドから発現されたHBV抗原が、同じまたは異なるポリヌクレオチドから発現されたか否かによらず、共に融合されるかまたは個別のタンパク質として産生されるように、連結され得るかまたは個別であり得る。一実施形態では、第1および第2のポリヌクレオチドは、発現されたタンパク質がまた個別のタンパク質であるが、組み合わせて使用されるように、同じまたは個別の組成物のいずれかとして組み合わせて使用される個別のベクター、例えば、DNAプラスミドまたはウイルスベクターに存在する。別の実施形態では、第1および第2のポリヌクレオチドによってコードされるHBV抗原を、HBVコア-pol融合抗原が産生されるように、同じベクターから発現させることができる。任意選択で、コアおよびpol抗原を、短いリンカーによって共に結合または融合することができる。あるいは、第1および第2のポリヌクレオチドによってコードされるHBV抗原は、コアおよびpol抗原コード配列の間にリボソーム翻訳スリップ部位(シス-ヒドロラーゼ部位としても知られる)を使用して、単一のベクターから独立して発現させることができる。この戦略によって、個々のコアおよびpol抗原が単一のmRNA転写物から産生されるバイシストロニック発現ベクターが得られる。そのようなバイシストロニック発現ベクターから産生されるコアおよびpol抗原は、mRNA転写物のコード配列の順序づけに応じて、追加のN末端またはC末端残基を有し得る。この目的のために使用することができるリボソーム翻訳スリップ部位の例には、手足口病ウイルス(FMDV)のFA2翻訳スリップ部位が挙げられるがこれらに限定されない。別の可能性は、第1および第2のポリヌクレオチドによってコードされるHBV抗原を、2つの個別のベクター、すなわち1つがHBVコア抗原をコードし、1つがHBV pol抗原をコードするベクターから独立して発現させることができることである。
【0210】
好ましい実施形態では、第1および第2のポリヌクレオチドは、個別のベクター、例えばDNAプラスミドまたはウイルスベクターに存在する。好ましくは個別のベクターは、同じ組成物に存在する。
【0211】
本出願の好ましい実施形態に従って、治療的組合せまたはキットは、第1のベクターに存在する第1のポリヌクレオチド、第2のベクターに存在する第2のポリヌクレオチドを含む。第1および第2のベクターは同じまたは異なり得る。好ましくは、ベクターはDNAプラスミドである。
【0212】
本出願の特定の実施形態では、第1のベクターは第1のDNAプラスミドであり、第2のベクターは第2のDNAプラスミドである。第1および第2のDNAプラスミドの各々は、複製開始点、好ましくは配列番号21のpUC ORI、および好ましくは配列番号23と少なくとも90%同一であるポリヌクレオチド配列を有するコドン最適化Kanr遺伝子を含み、好ましくはblaプロモーター、例えば配列番号24に示すblaプロモーターの制御下にある抗生物質耐性カセットを含む。第1および第2のDNAプラスミドの各々は、独立してプロモーター配列、エンハンサー配列、および第1のポリヌクレオチド配列または第2のポリヌクレオチド配列に作動可能に連結されたシグナルペプチド配列をコードするポリヌクレオチド配列のうちの少なくとも1つをさらに含む。好ましくは、第1および第2のDNAプラスミドの各々は、第1のポリヌクレオチドまたは第2のポリヌクレオチドに作動可能に連結された上流の配列を含み、上流の配列は、5’末端から3’末端に、配列番号18または配列番号19のプロモーター配列、エンハンサー配列、および配列番号9または配列番号15のアミノ酸配列を有するシグナルペプチド配列をコードするポリヌクレオチド配列を含む。第1および第2のDNAプラスミドの各々はまた、HBV抗原のコード配列の下流に位置するポリアデニル化シグナル、例えば配列番号20のbGHポリアデニル化シグナルも含み得る。
【0213】
本出願のある特定の実施形態では、第1のベクターはウイルスベクターであり、第2のベクターはウイルスベクターである。好ましくは、ウイルスベクターの各々は、アデノウイルスベクター、より好ましくはAd26またはAd35ベクターであって、本出願のHBV pol抗原または切断型HBVコア抗原をコードするポリヌクレオチド;5’末端から3’末端に、プロモーター配列、好ましくは配列番号19のCMVプロモーター配列、エンハンサー配列、好ましくは配列番号12のApoAI遺伝子断片配列、およびシグナルペプチド配列、好ましくは配列番号15のアミノ酸配列を有する免疫グロブリン分泌シグナルをコードするポリヌクレオチド配列を含む、HBV抗原をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結された上流の配列;ならびにポリアデニル化シグナル、好ましくは配列番号13のSV40ポリアデニル化シグナルを含む、HBV抗原をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結された下流の配列を含む発現カセットを含むアデノウイルスベクターである。
【0214】
別の好ましい実施形態では、第1および第2のポリヌクレオチドは、単一のベクター、例えばDNAプラスミドまたはウイルスベクターに存在する。好ましくは単一のベクターは、アデノウイルスベクター、より好ましくはAd26ベクターであって、本出願のHBV pol抗原および切断型HBVコア抗原をコードし、好ましくは融合タンパク質として本出願のHBV pol抗原および切断型HBVコア抗原をコードするポリヌクレオチド;5’末端から3’末端に、プロモーター配列、好ましくは配列番号19のCMVプロモーター配列、エンハンサー配列、好ましくは配列番号12のApoAI遺伝子断片配列、およびシグナルペプチド配列、好ましくは配列番号15のアミノ酸配列を有する免疫グロブリン分泌シグナルをコードするポリヌクレオチド配列を含む、HBV pol抗原および切断型HBVコア抗原をコードするポリヌクレオチド配列に作動可能に連結された上流の配列;ならびにポリアデニル化シグナル、好ましくは配列番号13のSV40ポリアデニル化シグナルを含むHBV抗原をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結された下流の配列を含む発現カセットを含むアデノウイルスベクターである。
【0215】
本出願の治療的組合せが第1のベクター、例えばDNAプラスミドまたはウイルスベクター、および第2のベクター、例えばDNAプラスミドまたはウイルスベクターを含む場合、第1および第2のベクターの各々の量は特に限定されない。例えば、第1のDNAプラスミドおよび第2のDNAプラスミドは、10:1~1:10の重量比で、例えば10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、または1:10の重量比で存在し得る。好ましくは、第1および第2のDNAプラスミドは、1:1の重量比で存在する。本出願の治療的組合せは、HBV感染症の処置に有用な第3の活性薬剤をコードする第3のベクターをさらに含んでいてもよい。
【0216】
本出願の組成物および治療的組合せは、追加のHBV抗原および/もしくは追加のHBV抗原もしくはそれらの免疫原性断片、例えばHBsAg、HBV Lタンパク質もしくはHBVエンベロープタンパク質をコードする追加のポリヌクレオチドまたはベクター、またはそれをコードするポリヌクレオチド配列、または本出願の実施形態によるHBV遺伝子の発現を阻害するためのRNAi剤を含み得る。しかし、特定の実施形態では、本出願の組成物および治療的組合せは、ある特定の抗原を含まない。
【0217】
特定の実施形態では、本出願の組成物または治療的組合せまたはキットは、HBsAgまたはHBsAgをコードするポリヌクレオチド配列を含まない。
【0218】
別の特定の実施形態では、本出願の組成物または治療的組合せまたはキットは、HBV Lタンパク質またはHBV Lタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含まない。
【0219】
本出願のなお別の特定の実施形態では、本出願の組成物または治療的組合せは、HBVエンベロープタンパク質またはHBVエンベロープタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含まない。
【0220】
本出願の組成物および治療的組合せはまた、薬学的に許容可能な担体も含み得る。薬学的に許容可能な担体は、非毒性であり、活性成分の有効性を妨害してはならない。薬学的に許容可能な担体は、1つまたは複数の賦形剤、例えば結合剤、崩壊剤、膨張剤、懸濁剤、乳化剤、湿潤剤、潤滑剤、香味料、甘味料、保存剤、色素、溶解剤、およびコーティングを含み得る。薬学的に許容可能な担体は、ビヒクル、例えば脂質ナノ粒子(LNP)を含み得る。担体または他の材料の正確な性質は、投与経路、例えば筋肉内、皮内、皮下、経口、静脈内、皮下、粘膜内(例えば、腸)、鼻腔内、または腹腔内経路に依存し得る。液体注射可能調製物、例えば懸濁剤および液剤の場合、適した担体および添加剤は、水、グリコール、油、アルコール、保存剤、着色剤等を含む。固体経口調製物、例えば散剤、カプセル剤、カプレット、ゲルキャップおよび錠剤の場合、適した担体および添加剤は、デンプン、砂糖、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤等を含む。鼻腔内スプレー/吸入混合物の場合、水溶液/懸濁液は、適した担体および添加剤として水、グリコール、油、エモリエント、安定剤、湿潤剤、保存剤、芳香剤、着香料等を含み得る。
【0221】
本出願の組成物および治療的組合せは、経口(腸内)投与および非経口注射を含むがこれらに限定されない、投与を容易にするためおよび有効性を改善するために対象への投与にとって適した任意の物質で製剤化することができる。非経口注射は、静脈内注射または注入、皮下注射、皮内注射、および筋肉内注射を含む。本出願の組成物はまた、経粘膜、眼、直腸、長時間作用型埋め込み、舌下投与、門脈循環を迂回する舌の下の口腔粘膜、吸入、または鼻腔内を含む他の投与経路のために製剤化することもできる。
【0222】
本出願の好ましい実施形態では、本出願の組成物および治療的組合せは、非経口注射のために、好ましくは皮下、皮内注射、または筋肉内注射のために製剤化され、より好ましくは筋肉内注射のために製剤化される。
【0223】
本出願の実施形態に従って、投与のための組成物および治療的組合せは、典型的には薬学的に許容可能な担体、例えば水性担体中の緩衝溶液、例えば緩衝食塩水等、例えばリン酸緩衝食塩水(PBS)を含む。組成物および治療的組合せはまた、pH調節剤および緩衝剤等の生理的条件を近似するために必要な薬学的に許容可能な物質を含有し得る。例えば、プラスミドDNAを含む本出願の組成物または治療的組合せは、薬学的に許容可能な担体としてリン酸緩衝食塩水(PBS)を含有し得る。プラスミドDNAは、例えば0.5mg/mL~5mg/mL、例えば0.5mg/mL、1mg/mL、2mg/mL、3mg/mL、4mg/mL、または5mg/mL、好ましくは1mg/mLの濃度で存在し得る。
【0224】
本出願の組成物および治療的組合せは、当技術分野で周知の方法に従ってワクチン(「免疫原性組成物」とも呼ばれる)として製剤化することができる。そのような組成物は、免疫応答を増強するためのアジュバントを含み得る。製剤における各々の構成要素の最適な比は、本開示を考慮して当業者に周知の技術によって決定することができる。
【0225】
本出願の特定の実施形態では、組成物または治療的組合せは、DNAワクチンである。DNAワクチンは、典型的には強い真核細胞プロモーターの制御下で目的の抗原をコードするポリヌクレオチドを含有する細菌プラスミドを含む。プラスミドが宿主の細胞の細胞質に送達されると、コードされた抗原が、内因性に産生され、プロセシングされる。得られた抗原は、典型的には、液性および細胞性免疫応答の両方を誘導する。DNAワクチンは、それらが少なくとも改善された安全性を提供し、温度安定であり、抗原性のバリアントを発現させるように容易に適合させることができ、および産生が単純であることから有利である。本出願の任意のDNAプラスミドを使用してそのようなDNAワクチンを調製することができる。
【0226】
本出願の他の特定の実施形態では、組成物または治療的組合せは、RNAワクチンである。本出願のRNAワクチンは、典型的には目的の抗原、例えば融合タンパク質またはHBV抗原をコードする少なくとも1つの一本鎖RNA分子を含む。RNAが宿主の細胞の細胞質に送達されると、コードされる抗原が内因性に産生されてプロセシングされ、DNAワクチンと類似の液性および細胞性免疫応答の両方を誘導する。RNA配列をコドン最適化して、翻訳効率を改善することができる。RNA分子は、安定性および/または翻訳を増強するために、本開示を考慮して当技術分野で公知の任意の方法で改変することができ、例えば少なくとも30アデノシン残基のポリAテールを付加することによって、および/またはRNA合成の際に取り込まれ得るかもしくはRNA転写後に酵素的に操作され得る改変リボヌクレオチド、例えば7-メチルグアノシンキャップによって5末端をキャッピングすることによって改変することができる。RNAワクチンはまた、アルファウイルス発現ベクターから作製された自己複製RNAワクチンでもあり得る。自己複製RNAワクチンは、融合タンパク質またはHBV抗原RNAの複製を制御するサブゲノムプロモーターの後にレプリカーゼの下流に位置する人工ポリAテールを含む、アルファウイルス科に属するウイルスに由来するレプリカーゼRNA分子を含む。
【0227】
ある特定の実施形態では、さらなるアジュバントが、本出願の組成物または治療的組合せ中に含まれていてもよいし、または本出願の組成物または治療的組合せと共に投与されてもよい。別のアジュバントの使用は、任意選択であり、ワクチン接種目的で組成物が使用される場合、免疫応答をさらに強化することができる。本出願による共投与または組成物中に含めるのに好適な他のアジュバントは、好ましくはヒトにおいて潜在的に安全な、十分許容され有効なものであるべきである。アジュバントは、免疫チェックポイント阻害剤(例えば、抗PD1、抗TIM-3等)、toll-like受容体アゴニスト(例えば、TLR7アゴニストおよび/またはTLR8アゴニスト)、RIG-1アゴニスト、IL-15スーパーアゴニスト(Altor Bioscience)、変異体IRF3およびIRF7遺伝子アジュバント、STINGアゴニスト(Aduro)、FLT3L遺伝子アジュバント、およびIL-7-hyFcが挙げられるがこれらに限定されない低分子または抗体であり得る。例えば、アジュバントは、例えば以下の抗HBV剤:HBV DNAポリメラーゼ阻害剤;イムノモジュレーター;toll-like受容体7モジュレーター;toll-like受容体8モジュレーター;toll-like受容体3モジュレーター;インターフェロンアルファ受容体リガンド;ヒアルロニダーゼ阻害剤;IL-10のモジュレーター;HBsAg阻害剤;toll-like受容体9モジュレーター;シクロフィリン阻害剤;HBV予防用ワクチン;HBV治療用ワクチン;HBVウイルス侵入阻害剤;ウイルスmRNAを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチド、より特に抗HBVアンチセンスオリゴヌクレオチド;低分子干渉RNA(siRNA)、より特に抗HBV siRNA;エンドヌクレアーゼモジュレーター;リボヌクレオチドレダクターゼの阻害剤;B型肝炎ウイルスE抗原阻害剤;B型肝炎ウイルスの表面抗原を標的とするHBV抗体;HBV抗体;CCR2ケモカインアンタゴニスト;サイモシンアゴニスト;サイトカイン、例えばIL12;キャプシドアセンブリモジュレーター、ヌクレオタンパク質阻害剤(HBVコアまたはキャプシドタンパク質阻害剤);核酸ポリマー(NAP);レチノイン酸誘導遺伝子1の刺激剤;NOD2の刺激剤;組換えサイモシンアルファ-1;B型肝炎ウイルス複製阻害剤;PI3K阻害剤;cccDNA阻害剤;免疫チェックポイント阻害剤、例えばPD-L1阻害剤、PD-1阻害剤、TIM-3阻害剤、TIGIT阻害剤、Lag3阻害剤、CTLA-4阻害剤;免疫細胞(より特にT細胞)において発現される共刺激受容体のアゴニスト、例えばCD27およびCD28;BTK阻害剤;HBVを処置するための他の薬物;IDO阻害剤;アルギナーゼ阻害剤;ならびにKDM5阻害剤から選択することができる。
【0228】
ある特定の実施形態では、第1および第2の天然に存在しない核酸分子のそれぞれは、独立して脂質ナノ粒子(LNP)と共に製剤化される。
【0229】
本出願はまた、本出願の組成物および治療的組合せを作製する方法も提供する。組成物または治療的組合せを産生する方法は、本出願のHBV抗原をコードする単離されたポリヌクレオチド、ベクター、および/またはポリペプチドを、1つまたは複数の薬学的に許容可能な担体と混合するステップを含む。当業者は、そのような組成物を調製するために使用される通常の技術を熟知している。
【0230】
免疫応答を誘導するまたはHBV感染症を処置する方法
本出願はまた、それを必要とする対象においてB型肝炎ウイルス(HBV)に対する免疫応答を誘導する方法であって、本出願の組成物または免疫原性組成物の免疫原性有効量を対象に投与するステップを含む方法も提供する。本明細書に記載の本出願の組成物および治療的組合せのいずれも、本出願の方法に使用することができる。
【0231】
本明細書で使用される場合、用語「感染症」は、病原体による宿主の侵入を指す。病原体は、それが宿主に侵入することが可能で、宿主内で複製または繁殖することが可能である場合、「感染性」であると考えられる。感染性作用剤の例には、ウイルス、例えばHBVおよびある特定の種のアデノウイルス、プリオン、細菌、真菌、原虫等が挙げられる。「HBV感染症」は、具体的には、HBVによる宿主生物、例えば宿主生物の細胞および組織の侵入を指す。
【0232】
語句「免疫応答を誘導する」は、本明細書に記載の方法に関連して使用する場合、それを必要とする対象において、感染症、例えばHBV感染症に対して所望の免疫応答または効果を引き起こすことを包含する。「免疫応答を誘導する」はまた、病原体、例えばHBVに対して処置するために治療免疫を提供することも包含する。本明細書で使用される場合、用語「治療免疫」または「治療的免疫応答」は、ワクチン接種した対象が、それに対するワクチン接種を行った病原体による感染症を制御することができること、例えばHBVワクチンによるワクチン接種によって付与されたHBV感染症に対する免疫を意味する。一実施形態では、「免疫応答を誘導する」は、それを必要とする対象において免疫を生じること、例えばHBV感染症等の疾患に対する治療効果を提供することを意味する。ある特定の実施形態では、「免疫応答を誘導する」は、HBV感染症に対する細胞性免疫、例えばT細胞応答を引き起こすまたは改善することを指す。ある特定の実施形態では、「免疫応答を誘導する」は、HBV感染症に対する液性免疫応答を引き起こすまたは改善することを指す。ある特定の実施形態では、「免疫応答を誘導する」とは、HBV感染症に対する細胞性および液性免疫応答を引き起こすまたは改善することを指す。
【0233】
本明細書で使用される場合、用語「保護免疫」または「保護免疫応答」は、ワクチン接種した対象が、それに対するワクチン接種を行った病原体による感染症を制御することができることを意味する。通常、「保護免疫応答」を有する対象は、ごく軽度から中等度の臨床症状を示すか、または症状を全く示さない。通常、ある特定の病原体に対して「保護免疫応答」、または「保護免疫」を有する対象は、前記病原体による感染症の結果として死亡することはない。
【0234】
典型的には、本出願の組成物および治療的組合せの投与は、HBV感染後にHBVに対する免疫応答を生成するか、または例えば治療的ワクチン接種の場合では、HBV感染症に特徴的な症状を発症させる治療目的を有する。
【0235】
本明細書で使用される場合、「免疫原性有効量」または「免疫学的有効量」は、それを必要とする対象において所望の免疫効果または免疫応答を誘導するために十分な組成物、ポリヌクレオチド、ベクター、または抗原の量を意味する。免疫原性有効量は、それを必要とする対象において免疫応答を誘導するために、十分な量であり得る。免疫原性有効量は、それを必要とする対象において免疫を生じるために、例えばHBV感染症等の疾患に対する治療効果を提供するために十分な量であり得る。免疫原性有効量は、多様な要因、例えば対象の身体条件、年齢、体重、健康等;特定の応用、例えば保護免疫または治療免疫を提供すること;およびそれに対する免疫が望ましい特定の疾患、例えばウイルス感染症に応じて変化し得る。免疫原性有効量は、本開示を考慮して当業者によって容易に決定することができる。
【0236】
本出願の特定の実施形態では、免疫原性有効量は、以下の効果の1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれより多くを達成するために十分である組成物または治療的組合せの量を指す:(i)HBV感染症またはそれに関連する症状の重症度を低減または改善すること;(ii)HBV感染症またはそれに関連する症状の持続を低減させること;(iii)HBV感染症またはそれに関連する症状の進行を防止すること;(iv)HBV感染症またはそれに関連する症状の退行を引き起こすこと;(v)HBV感染症またはそれに関連する症状の発生または発症を防止すること;(vi)HBV感染症またはそれに関連する症状の再発を防止すること;(vii)HBV感染症を有する対象の入院を低減させること;(viii)HBV感染症を有する対象の入院期間を低減させること;(ix)HBV感染症を有する対象の生存を増加させること;(x)対象におけるHBV感染症を排除すること;(xi)対象におけるHBV複製を阻害または低減させること;ならびに/または(xii)別の治療の予防効果または治療効果を増強または改善すること。
【0237】
免疫原性有効量はまた、臨床的セロコンバージョンへの進展と整合するまでHBsAgレベルを低減させるために;対象の免疫系による感染した肝細胞の低減に関連する持続的なHBsAgクリアランスを達成するために;HBV抗原特異的活性化T細胞集団を誘導するために;および/または12ヶ月以内のHBsAgの持続的喪失を達成するために十分な量でもあり得る。目標とする指標の例は、500コピーのHBsAg国際単位(IU)の閾値より下のより低いHBsAgおよび/またはより高いCD8数を含む。
【0238】
一般的な指針として、DNAプラスミドを参照して使用する場合の免疫原性有効量は、DNAプラスミド全体の約0.1mg/mL~10mg/mLの範囲、例えば0.1mg/mL、0.25mg/mL、0.5mg/mL、0.75mg/mL、1mg/mL、1.5mg/mL、2mg/mL、3mg/mL、4mg/mL、5mg/mL、6mg/mL、7mg/mL、8mg/mL、9mg/mL、または10mg/mLであり得る。好ましくは、DNAプラスミドの免疫原性有効量は、8mg/mL未満、より好ましくは6mg/mL未満、さらにより好ましくは3~4mg/mL未満である。免疫原性有効量は、1つのベクターまたはプラスミド、または複数のベクターもしくはプラスミドに由来し得る。さらなる一般的な指針として、免疫原性的に有効な量は、ペプチドに対して使用される場合、約10μg~1mg/投与の範囲、例えば10、20、50、100、200、300、400、500、600、700、800、9000、または1000μg/投与であり得る。免疫原性有効量は、単一の組成物で、または複数の組成物で、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の組成物(例えば、錠剤、カプセル剤または注射剤、または皮内送達のために適合させた任意の組成物、例えば皮内送達パッチを使用する皮内送達)で投与することができ、複数のカプセル剤または注射剤の投与は、集合的に対象に免疫原性有効量を提供する。例えば、2つのDNAプラスミドを使用する場合、免疫原性有効量は3~4mg/mLであり、各プラスミドについて1.5~2mg/mLであり得る。同様に、いわゆるプライム-ブーストレジメンにおいて、対象に免疫原性有効量を投与し、その後同じ対象に免疫原性有効量の別の用量を投与することが可能である。プライム-ブーストレジメンのこの一般的な考え方は、ワクチンの分野の当業者に周知である。さらなるブースター投与を、必要に応じて任意選択でレジメンに追加することができる。
【0239】
2つのDNAプラスミド、例えばHBVコア抗原をコードする第1のDNAプラスミドおよびHBV pol抗原をコードする第2のDNAプラスミドを含む治療的組合せを、両方のプラスミドを混合するステップおよび混合物を単一の解剖学的部位に送達するステップによって、対象に投与することができる。あるいは、各々が単一の発現プラスミドを送達する2つの個別の免疫を実施することができる。そのような実施形態では、両方のプラスミドを2つの個別の免疫の混合物として単一の免疫として投与するかによらず、第1のDNAプラスミドおよび第2のDNAプラスミドを、10:1~1:10の重量比で、例えば10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、または1:10の重量比で投与することができる。好ましくは、第1および第2のDNAプラスミドは、1:1の重量比で投与される。
【0240】
一般的な指針として、免疫原性的に有効な量は、RNAi剤に対して使用される場合、約0.05mg/kg~約5mg/kg、例えば約0.05mg~約4mg/kgまたは約1mg/kg~約3mg/kgの範囲、または例えば約0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5または5mg/kgであってもよいが、それよりさらに多くてもよく、例えば約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、40、50、60、70、80、90または100mg/kgであってもよい。また固定された単位用量、例えば、50、100、200、500または1000mgを与えてもよいし、または用量は、患者の体表面積に基づいて、例えば、500、400、300、250、200、または100mg/m2であってもよい。通常、患者を処置するために、1~8回の用量(例えば、1、2、3、4、5、6、7または8回)を投与してもよいが、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20またはそれより多くの用量を与えることができる。
【0241】
本出願のRNAi剤の投与は、1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、2週間、3週間、1ヶ月、5週間、6週間、7週間、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月またはそれより長い期間の後に繰り返すことができる。長期投与の場合のように、繰り返しの処置過程も可能である。繰り返しの投与は、同じ用量でなされてもよいし、または異なる用量でなされてもよい。例えば、本出願のRNAi剤は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、もしくは40日目の少なくとも1つにおいて、または代替として、処置開始後の、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19もしくは20週目の少なくとも1つにおいて、1日当たり、約0.05~5mg/kg、例えば0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5もしくは5mg/kgの量での1日投薬量として、またはそれらのあらゆる組合せで、単回用量、または24、12、8、6、4、もしくは2時間毎の数回に分けた用量、またはそれらのあらゆる組合せを使用して提供することができる。
【0242】
一部の実施形態では、それを必要とする対象に投与されるAD04872のAD05070に対する比率は、約2:1である。一部の実施形態では、それを必要とする対象に投与されるAD04872のAD05070に対する比率は、約3:1である。一部の実施形態では、それを必要とする対象に投与されるAD04872のAD05070に対する比率は、約1:1である。一部の実施形態では、それを必要とする対象に投与されるAD04872のAD05070に対する比率は、約4:1である。一部の実施形態では、それを必要とする対象に投与されるAD04872のAD05070に対する比率は、約5:1である。一部の実施形態では、それを必要とする対象に投与されるAD04872のAD05070に対する比率は、約1:2である。
【0243】
好ましくは、本出願の方法に従って処置される対象は、HBV感染対象、特に慢性HBV感染症を有する対象である。急性HBV感染症は、生得の免疫系の効率的な活性化がその後の広い適応性の応答(例えば、HBV特異的T細胞、中和抗体)によって補完されることによって特徴付けられ、これは通常、感染した肝細胞の複製の抑制または除去の成功をもたらす。これに対し、そのような応答は、ウイルス負荷および抗原負荷が高い場合には損なわれるかまたは減損し、例えばHBVエンベロープタンパク質が大量に産生され、感染性ウイルスに対して1,000倍過剰量でサブウイルス粒子として放出され得る。
【0244】
慢性HBV感染症は、ウイルス量、肝酵素レベル(壊死炎症活性)、HBeAg、またはHBsAg量、またはこれらの抗原に対する抗体の存在によって特徴付けられる語句として記載される。cccDNAレベルは、およそ10~50コピー/細胞で比較的一定のままであるが、ウイルス血症はかなり多様であり得る。cccDNA種の持続は慢性化をもたらす。より詳しくは、慢性HBV感染症のフェーズは:(i)高いウイルス量および正常またはわずかに上昇した肝酵素によって特徴付けられる免疫寛容フェーズ;(ii)肝酵素の有意な上昇を伴うウイルス複製レベルの低下または減少が観察される免疫活性化HBeAg陽性フェーズ;(iii)血清中の低いウイルス量および正常な肝酵素レベルを伴う低い複製状態の後にHBeAgセロコンバージョンが起こり得る不活性なHBsAgキャリアフェーズ;および(iv)ウイルス複製が周期的に起こり(再活性化)、肝酵素レベルの同時の変動、プレコアおよび/または基礎コアプロモーターの変異が一般的であり、HBeAgが感染細胞によって産生されないHBeAg陰性フェーズを含む。
【0245】
本明細書で使用される場合、「慢性HBV感染症」は、6ヶ月より長いHBVの検出可能な存在を有する対象を指す。慢性HBV感染症を有する対象は、慢性HBV感染症のいずれかのフェーズにあり得る。慢性HBV感染症は、当技術分野でその通常の意味に従って理解される。慢性HBV感染症は、例えば急性HBV感染症後6ヶ月またはそれより長い間のHBsAgの持続によって特徴付けられ得る。例えば、本明細書で呼ぶ慢性HBV感染症は、米国疾病予防管理センター(CDC)によって公表された定義に従い、それに従って慢性HBV感染症を以下の臨床基準によって特徴付けることができる:(i)B型肝炎コア抗原に対するIgM抗体(IgM抗HBc)陰性およびB型肝炎表面抗原(HBsAg)陽性、B型肝炎e抗原(HBeAg)陽性、もしくはB型肝炎ウイルスDNAに関する核酸試験陽性、または(ii)HBsAgもしくはHBV DNAの核酸試験陽性、または少なくとも6ヶ月間空けて2回のHBeAg陽性。
【0246】
好ましくは、免疫原性有効量は、慢性HBV感染症を処置するために十分である本出願の組成物または治療的組合せの量を指す。
【0247】
一部の実施形態では、慢性HBV感染症を有する対象は、ヌクレオシドアナログ(NUC)処置を受けており、NUC抑制されている。本明細書で使用される場合、「NUC抑制」は、HBVの検出不能なウイルスレベルおよび安定なアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベルを少なくとも6ヶ月間有する対象を指す。ヌクレオシド/ヌクレオチドアナログ処置の例は、HBVポリメラーゼ阻害剤、例えばエンタカビルおよびテノフォビルを含む。好ましくは、慢性HBV感染症を有する対象は、進行した肝線維症または肝硬変を有しない。そのような対象は典型的に、線維症に関してMETAVIRスコア3未満および9kPa未満のフィブロスキャン結果を有するであろう。METAVIRスコアは、B型肝炎患者の肝生検における組織病理学的評価によって炎症および線維症の程度を評価するために一般的に使用される採点システムである。採点システムは、2つの標準化された数字:炎症の程度を反映する数字、および線維症の程度を反映する数字を割付する。
【0248】
慢性HBVの排除または低減は、ウイルス性肝硬変および肝細胞癌を含む重度の肝疾患の早期の疾患の妨害を可能にし得ると考えられている。このように、本出願の方法はまた、HBV誘導疾患を処置するための治療としても使用することができる。HBV誘導疾患の例には、肝硬変、がん(例えば、肝細胞癌)、および線維症、特にMETAVIRスコアが線維症に関して3またはそれより高いことによって特徴付けられる進行線維症が挙げられるがこれらに限定されない。そのような実施形態では、免疫原性有効量は、12ヶ月以内のHBsAgの持続的な喪失および臨床疾患(例えば、肝硬変、肝細胞癌等)の有意な減少を達成するために十分な量である。
【0249】
本出願の実施形態に従う方法は、それを必要とする対象に、本出願の組成物と組み合わせて別の免疫原製剤(例えば、別のHBV抗原または他の抗原)、または別の抗HBV剤(例えば、ヌクレオシドアナログまたは他の抗HBV剤)を投与するステップをさらに含む。例えば、別の抗HBV剤または免疫原性剤は、免疫チェックポイント阻害剤(例えば、抗PD1、抗TIM-3等)、toll-like受容体アゴニスト(例えば、TLR7アゴニストおよび/またはTLR8アゴニスト)、RIG-1アゴニスト、IL-15スーパーアゴニスト(Altor Bioscience)、変異体IRF3およびIRF7遺伝子アジュバント、STINGアゴニスト(Aduro)、FLT3L遺伝子アジュバント、IL-12遺伝子アジュバント、IL-7-hyFc;HBV envに結合するCAR-T(S-CAR細胞);キャプシドアセンブリモジュレーター;cccDNA阻害剤、HBVポリメラーゼ阻害剤(例えば、エンテカビルおよびテノフォビル)が挙げられるがこれらに限定されない低分子または抗体であり得る。いずれかの抗HBV活性剤は、例えば低分子、抗体またはその抗原結合性断片、ポリペプチド、タンパク質、または核酸であり得る。いずれかの抗HBV剤は、例えば、HBV DNAポリメラーゼ阻害剤;イムノモジュレーター;toll-like受容体7モジュレーター;toll-like受容体8モジュレーター;toll-like受容体3モジュレーター;インターフェロンアルファ受容体リガンド;ヒアルロニダーゼ阻害剤;IL-10のモジュレーター;HBsAg阻害剤;toll-like受容体9モジュレーター;シクロフィリン阻害剤;HBV予防用ワクチン;HBV治療用ワクチン;HBVウイルス侵入阻害剤;ウイルスmRNAを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチド、より特に抗HBVアンチセンスオリゴヌクレオチド;低分子干渉RNAs(siRNA)、より特に抗HBV siRNA;エンドヌクレアーゼモジュレーター;リボヌクレオチドレダクターゼ阻害剤;B型肝炎ウイルスE抗原阻害剤;B型肝炎ウイルスの表面抗原を標的とするHBV抗体;HBV抗体;CCR2ケモカインアンタゴニスト;サイモシンアゴニスト;サイトカイン、例えばIL12;キャプシドアセンブリモジュレーター、ヌクレオタンパク質阻害剤(HBVコアまたはキャプシドタンパク質阻害剤);核酸ポリマー(NAP);レチノイン酸誘導遺伝子1の刺激剤;NOD2の刺激剤;組換えサイモシンアルファ-1;B型肝炎ウイルス複製阻害剤;PI3K阻害剤;cccDNA阻害剤;免疫チェックポイント阻害剤、例えばPD-L1阻害剤、PD-1阻害剤、TIM-3阻害剤、TIGIT阻害剤、Lag3阻害剤、およびCTLA-4阻害剤;免疫細胞(より特に、T細胞)において発現される共刺激受容体のアゴニスト、例えばCD27、CD28;BTK阻害剤;HBVを処置するための他の薬物;IDO阻害剤;アルギナーゼ阻害剤;およびKDM5阻害剤から選択することができる。
【0250】
送達方法
本出願の組成物および治療的組合せは、非経口投与(例えば、筋肉内、皮下、静脈内、または皮内注射)、経口投与、経皮投与、および鼻腔内投与を含むがこれらに限定されない、本開示を考慮して当業者に公知の任意の方法によって対象に投与することができる。好ましくは、組成物および治療的組合せは、非経口(例えば、筋肉内注射または皮内注射によって)、または経皮投与される。
【0251】
組成物または治療的組合せが1つまたは複数のDNAプラスミドを含む本出願の一部の実施形態では、投与は皮膚を通しての注射、例えば筋肉内または皮内注射、好ましくは筋肉内注射であり得る。筋肉内注射は、電気穿孔、すなわちDNAプラスミドの細胞への送達を容易にするための電場の印加と組み合わせることができる。本明細書で使用される場合、用語「電気穿孔」は、生体膜において顕微鏡的経路(孔)を誘導するために膜内外で電場パルスを使用することを指す。In vivo電気穿孔の間、適切な大きさおよび持続の電場を細胞に印加し、細胞膜透過性が一過性に増強された状態を誘導し、このようにして単独では細胞膜を通過することができない分子の細胞取り込みを可能にする。電気穿孔によるそのような孔の作製は、細胞膜の1つの側から他方の側への生体分子、例えばプラスミド、オリゴヌクレオチド、siRNA、薬物等の通過を容易にする。DNAワクチンを送達するためのIn vivo電気穿孔は、宿主細胞によるプラスミド取り込みを有意に増加させることが示されているが、注射部位で軽度から中等度の炎症ももたらす。その結果、皮内または筋肉内電気穿孔では、通常の注射と比較するとトランスフェクション効率および免疫応答が有意に改善される(例えば、それぞれ最大1,000倍および100倍)。
【0252】
典型的な実施形態では、電気穿孔は、筋肉内注射と組み合わせる。しかし、電気穿孔を非経口投与の他の形態、例えば皮内注射、皮下注射等と組み合わせることも可能である。
【0253】
本出願の組成物、治療的組合せ、またはワクチンの電気穿孔による投与は、可逆的な孔を細胞膜に形成させるために有効なエネルギーのパルスを哺乳動物の所望の組織に送達するように構成することができる電気穿孔デバイスを使用して達成することができる。電気穿孔デバイスは、電気穿孔構成要素および電極アセンブリまたはハンドルアセンブリを含み得る。電気穿孔構成要素は、電気穿孔デバイスの以下の構成要素の1つまたは複数を含み得る:コントローラー、電流波形ジェネレーター、インピーダンステスター、波形ロガー、インプットエレメント、ステータス報告エレメント、接続口、メモリー構成要素、電源、および電源スイッチ。電気穿孔は、in vivo電気穿孔デバイスを使用して達成することができる。本出願の組成物および治療的組合せ、特にDNAプラスミドを含むものの送達を容易にすることができる電気穿孔デバイスおよび電気穿孔方法の例は、CELLECTRA(登録商標)(Inovio Pharmaceuticals、Blue Bell、PA)、Elgenエレクトロポレーター(Inovio Pharmaceuticals、Inc.)Tri-Grid(商標)送達システム(Ichor Medical Systems、Inc.、San Diego、CA 92121)、ならびにその全ての全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第7,664,545号明細書、米国特許第8,209,006号明細書、米国特許第9,452,285号明細書、米国特許第5,273,525号明細書、米国特許第6,110,161号明細書、米国特許第6,261,281号明細書、米国特許第6,958,060号明細書、および米国特許第6,939,862号明細書、米国特許第7,328,064号明細書、米国特許第6,041,252号明細書、米国特許第5,873,849号明細書、米国特許第6,278,895号明細書、米国特許第6,319,901号明細書、米国特許第6,912,417号明細書、米国特許第8,187,249号明細書、米国特許第9,364,664号明細書、米国特許第9,802,035号明細書、米国特許第6,117,660号明細書、および国際特許出願国際公開第2017172838号明細書に記載されるものを含む。In vivo電気穿孔デバイスの他の例は、その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれている、代理人文書番号688097-405WOとして本出願と同じ日に提出されている「Method and Apparatus for the Delivery of Hepatitis B Virus (HBV) Vaccines」と題する国際特許出願に記載されている。同様に、本出願の組成物および治療的組合せを送達するための応用によって企図されるのは、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第6,697,669号明細書に記載されるパルス電場の使用である。
【0254】
組成物または治療的組合せが1つまたは複数のDNAプラスミドを含む本出願の他の実施形態では、投与方法は経皮である。経皮投与は、DNAプラスミドの細胞への送達を容易にするために表皮アブレーションと組み合わせることができる。例えば、表皮アブレーションのために皮膚パッチを使用することができる。皮膚パッチを除去すると、組成物または治療的組合せが剥削された皮膚に堆積することができる。
【0255】
送達方法は、上記の実施形態に限定されず、細胞内送達のための任意の手段を使用することができる。本出願の方法によって企図される他の細胞内送達方法には、リポソーム封入、脂質ナノ粒子(LNP)等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0256】
ある本出願の特定の実施形態では、投与方法は、脂質組成物、例えば脂質ナノ粒子(LNP)である。治療用生成物(例えば本発明の1種または複数の核酸分子)を送達するのに使用することができる脂質組成物、好ましくは脂質ナノ粒子には、水性部分が両親媒性の脂質二重層によって封入されている、または脂質が治療用生成物を含む内部をコーティングしているリポソームもしくは脂質小胞;または脂質で封入された治療用生成物が比較的無秩序な脂質混合物内に含有されている脂質集合体もしくはミセルが挙げられるがこれらに限定されない。
【0257】
特定の実施形態では、LNPは、本発明の核酸分子、例えばDNAまたはRNA分子を封入するために、および/またはその標的細胞への送達を強化するために、カチオン脂質を含む。カチオン脂質は、選択されたpHで、例えば生理学的なpHで正味の正電荷を有するあらゆる脂質種であり得る。脂質ナノ粒子は、1つまたは複数のカチオン脂質、非カチオン脂質およびポリエチレングリコール(PEG)で改変された脂質を採用した様々な比率の多成分の脂質混合物を含めることによって調製することができる。いくつかのカチオン脂質が文献に記載されており、その多くが商業的に入手可能である。例えば、本発明の組成物および方法に使用するのに好適なカチオン脂質としては、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP)が挙げられる。
【0258】
LNP製剤は、アニオン性脂質を含んでいてもよい。アニオン性脂質は、選択されたpHで、例えば生理学的なpHで正味の負電荷を有するあらゆる脂質種であり得る。アニオン性脂質は、カチオン脂質と組み合わされる場合、LNPの全体的な表面電荷を低減するため、およびLNP二分子層構造のpH依存性の崩壊を導入するために使用され、ヌクレオチド放出を容易にする。いくつかのアニオン性脂質が文献に記載されており、その多くが商業的に入手可能である。例えば、本発明の組成物および方法に使用するのに好適なアニオン性脂質としては、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)が挙げられる。
【0259】
LNPは、本発明の開示を考慮して当技術分野において周知の方法を使用して調製することができる。例えば、LNPは、エタノール注入または希釈、薄膜の水和、凍結融解、フレンチプレスまたは膜押出し、透析ろ過、音波処理、界面活性剤透析、エーテル注入、および逆相蒸発を使用して調製することができる。
【0260】
活性な核酸分子、例えばこの発明の核酸分子を送達するための脂質担体を生成するための脂質、脂質組成物、および方法の一部の例は、US2017/0190661、US2006/0008910、US2015/0064242、US2005/0064595、WO/2019/036030、US2019/0022247、WO/2019/036028、WO/2019/036008、WO/2019/036000、US2016/0376224、US2017/0119904、WO/2018/200943、WO/2018/191657、US2014/0255472、およびUS2013/0195968に記載されており、これらのそれぞれの関連する内容は、参照によりその全体が組み込まれる。
【0261】
本出願のRNAi剤を含む医薬組成物は、薬理学的に有効な量の少なくとも1種のRNAiおよび薬学的に許容可能な担体を含む。しかし、このような「医薬組成物」はまた、このようなRNAi剤の個々の鎖、または本出願のRNAiに含まれるセンスまたはアンチセンス鎖の少なくとも一方の鎖をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結された調節配列を含むベクターを含んでいてもよい。また本明細書で定義されるRNAiを発現するかまたは含む細胞、組織または単離された臓器が「医薬組成物」として使用できることも想定される。
【0262】
本出願のHBV遺伝子の発現を阻害するためのRNAi剤は、対象に、あらゆる好適な経路によって、例えば静脈内(i.v.)輸注もしくはボーラス注射によって非経口で、筋肉内に、または皮下に、または腹腔内に投与することができる。静脈内輸注は、例えば15、30、60、90、120、180、または240分間にわたり、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12時間にわたり与えることができる。
【0263】
筋肉内、皮下および静脈内での使用の場合、本出願のRNAi剤を含む医薬組成物は、一般的に、適切なpHおよび等張性に緩衝化された滅菌水溶液または懸濁液に提供されるであろう。好ましい実施形態では、担体は、独占的に水性緩衝液からなる。この状況において、「独占的に」は、B型肝炎ウイルス遺伝子を発現する細胞におけるdsRNAの取り込みに影響を与えるかまたはそれを媒介する可能性がある補助剤または封入物質が存在しないことを意味する。本出願による水性懸濁液は、懸濁化剤、例えばセルロース誘導体、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドンおよびトラガカントゴム(gum tragaeanth)、および湿潤剤、例えばレシチンを含んでいてもよい。水性懸濁液のための好適な保存剤としては、エチルおよびn-プロピルp-ヒドロキシベンゾエートが挙げられる。本出願に従って有用なRNAi剤を含む医薬組成物としてはまた、体からの迅速な消失からRNAi剤を保護するための封入製剤、例えばインプラントおよびマイクロカプセル化した送達系などの放出制御製剤も挙げられる。生分解性の生体適合性ポリマー、例えばエチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸を使用することができる。このような製剤の調製のための方法は、当業者には明らかであろう。リポソーム懸濁液および二重特異性抗体はまた、薬学的に許容可能な担体としても使用することができる。これらは、当業者公知の方法に従って、例えば、参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれるPCT公報W091/06309およびWO2011/003780に記載されたように調製できる。
【0264】
アジュバント
本出願の一部の実施形態では、HBVに対する免疫応答を誘導する方法は、アジュバントを投与するステップをさらに含む。用語「アジュバント」および「免疫刺激剤」は、本明細書において互換的に使用され、免疫系の刺激を引き起こす1つまたは複数の物質として定義される。この文脈において、アジュバントは、本出願のHBV抗原および抗原性HBVポリペプチドに対する免疫応答を増強するために使用される。
【0265】
本出願の実施形態に従って、アジュバントは、本出願の治療的組合せもしくは組成物に存在し得るか、または個別の組成物で投与することができる。アジュバントは、例えば低分子または抗体であり得る。本出願で使用するために適したアジュバントの例には、免疫チェックポイント阻害剤(例えば、抗PD1、抗TIM-3等)、toll-like受容体アゴニスト(例えば、TLR7および/またはTLR8 アゴニスト)、RIG-1アゴニスト、IL-15スーパーアゴニスト(Altor Bioscience)、変異体IRF3およびIRF7遺伝子アジュバント、STINGアゴニスト(Aduro)、FLT3L遺伝子アジュバント、IL-12遺伝子アジュバント、およびIL-7-hyFcが挙げられるがこれらに限定されない。アジュバントの例は、例えば、なかでも以下の抗HBV薬剤:HBV DNAポリメラーゼ阻害剤;イムノモジュレーター;Toll様受容体7モジュレーター;Toll様受容体8モジュレーター;Toll様受容体3モジュレーター;インターフェロンアルファ受容体リガンド;ヒアルロニダーゼ阻害剤;IL-10のモジュレーター;HBsAg阻害剤;Toll様受容体9モジュレーター;シクロフィリン阻害剤;HBV予防ワクチン;HBV治療ワクチン;HBVウイルス侵入阻害剤;ウイルスmRNAを標的化するアンチセンスオリゴヌクレオチド、より特に抗HBVアンチセンスオリゴヌクレオチド;短鎖干渉RNA(siRNA)、より特に抗HBV siRNA;エンドヌクレアーゼモジュレーター;リボヌクレオチドレダクターゼの阻害剤;B型肝炎ウイルスE抗原阻害剤;B型肝炎ウイルスの表面抗原を標的化するHBV抗体;HBV抗体;CCR2ケモカインアンタゴニスト;チモシンアゴニスト;サイトカイン、例えばIL12;キャプシドアセンブリモジュレーター、核タンパク質阻害剤(HBVコアまたはキャプシドタンパク質阻害剤);核酸ポリマー(NAP);レチノイン酸誘導性遺伝子1の刺激因子;NOD2の刺激因子;組換えチモシンアルファ-1;B型肝炎ウイルス複製阻害剤;PI3K阻害剤;cccDNA阻害剤;免疫チェックポイント阻害剤、例えばPD-L1阻害剤、PD-1阻害剤、TIM-3阻害剤、TIGIT阻害剤、Lag3阻害剤、およびCTLA-4阻害剤;免疫細胞(より特にT細胞)上に発現される共刺激受容体のアゴニスト、例えばCD27、CD28;BTK阻害剤;HBVを処置するための他の薬物;IDO阻害剤;アルギナーゼ阻害剤;およびKDM5阻害剤から選択することができる。
【0266】
本出願の組成物および治療的組合せはまた、少なくとも1つの他の抗HBV剤と組み合わせて投与することもできる。本出願と共に使用するために適した抗HBV剤の例には、低分子、抗体、および/またはHBV envに結合するCAR-T治療(S-CAR細胞)、キャプシドアセンブリモジュレーター、TLRアゴニスト(例えば、TLR7および/またはTLR8アゴニスト)、cccDNA阻害剤、HBVポリメラーゼ阻害剤(例えば、エンテカビルおよびテノフォビル)、および/または免疫チェックポイント阻害剤等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0267】
少なくとも1つの抗HBV剤は、例えば、HBV DNAポリメラーゼ阻害剤;イムノモジュレーター;toll-like受容体7モジュレーター;toll-like受容体8モジュレーター;toll-like受容体3モジュレーター;インターフェロンアルファ受容体リガンド;ヒアルロニダーゼ阻害剤;IL-10のモジュレーター;HBsAg阻害剤;toll-like受容体9モジュレーター;シクロフィリン阻害剤;HBV予防用ワクチン;HBV治療用ワクチン;HBVウイルス侵入阻害剤;ウイルスmRNAを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチド、より特に抗HBVアンチセンスオリゴヌクレオチド;低分子干渉RNAs(siRNA)、より特に抗HBV siRNA;エンドヌクレアーゼモジュレーター;リボヌクレオチドレダクターゼ阻害剤;B型肝炎ウイルスE抗原阻害剤;B型肝炎ウイルスの表面抗原を標的とするHBV抗体;HBV抗体;CCR2ケモカインアンタゴニスト;サイモシンアゴニスト;サイトカイン、例えばIL12;キャプシドアセンブリモジュレーター、ヌクレオタンパク質阻害剤(HBVコアまたはキャプシドタンパク質阻害剤);核酸ポリマー(NAPs);レチノイン酸誘導遺伝子1の刺激剤;NOD2の刺激剤;組換えサイモシンアルファ-1;B型肝炎ウイルス複製阻害剤;PI3K阻害剤;cccDNA阻害剤;免疫チェックポイント阻害剤、例えばPD-L1阻害剤、PD-1阻害剤、TIM-3阻害剤、TIGIT阻害剤、Lag3阻害剤、およびCTLA-4阻害剤;免疫細胞(より特に、T細胞)において発現される共刺激受容体のアゴニスト、例えばCD27、CD28;BTK阻害剤;HBVを処置するための他の薬物;IDO阻害剤;アルギナーゼ阻害剤;およびKDM5阻害剤から選択することができる。そのような抗HBV剤は、本出願の組成物および治療的組合せと同時にまたは連続的に投与することができる。
【0268】
プライム/ブースト免疫方法
本出願の実施形態はまた、いわゆるプライム-ブーストレジメンで、組成物または治療的組合せの免疫原性有効量を対象に投与するステップ、およびその後に同じ対象に組成物または治療的組合せの免疫原性有効量の別の用量を投与するステップも企図する。このように、一実施形態では、本出願の組成物または治療的組合せは、免疫応答をプライミングするために使用されるプライマーワクチンである。別の実施形態では、本出願の組成物または治療的組合せは、免疫応答をブーストするために使用されるブースターワクチンである。本出願のプライミングおよびブースティングワクチンは、本明細書に記載の本出願の方法において使用することができる。プライム-ブーストレジメンのこの一般的な考え方は、ワクチン技術分野の当業者に周知である。本明細書に記載の本出願の組成物および治療的組合せのいずれも、HBVに対する免疫応答をプライミングおよび/またはブースティングするためのプライムおよび/またはブーストワクチンとして使用することができる。
【0269】
本出願の一部の実施形態では、本出願の組成物または治療的組合せは、免疫をプライミングするために投与することができる。組成物または治療的組合せは、免疫をブースティングするために再投与することができる。組成物またはワクチン組合せのさらなるブースター投与を、任意選択で必要に応じてレジメンに追加することができる。アジュバントは、免疫をブースティングするために使用される本出願の組成物に存在することができ、ブースティング免疫のために本出願の組成物または治療的組合せと共に投与される個別の組成物に存在することができ、またはブースティング免疫として単独で投与することができる。アジュバントがレジメンに含まれるそれらの実施形態では、アジュバントは、好ましくは免疫をブースティングするため使用される。
【0270】
プライム-ブーストレジメンの例示的なおよび非制限的な例は、本出願の組成物または治療的組合せの免疫原性有効量の1回用量を対象に投与して、免疫応答をプライミングするステップ、および次に本出願の組成物または治療的組合せの免疫原性有効量の別の用量を投与して、免疫応答をブーストするステップを含み、ブースティング免疫は、プライミング免疫を最初に投与した約2~6週間後、好ましくは4週間後に初めて投与される。任意選択で、プライミング免疫を最初に投与した10~14週間後、好ましくは12週間後に、組成物または治療的組合せまたは他のアジュバントのさらなるブースティング免疫を投与する。
【0271】
キット
同様に本明細書において本出願の治療的組合せを含むキットも提供される。キットは、第1のポリヌクレオチド、第2のポリヌクレオチドおよびHBV遺伝子の発現を阻害するためのRNAi剤を1つまたは複数の個別の組成物中に含むことができ、またはキットは、第1のポリヌクレオチド、第2のポリヌクレオチドおよびHBV遺伝子の発現を阻害するためのRNAi剤を単一の組成物中に含むことができる。キットはさらに、1つまたは複数のアジュバントまたは免疫刺激剤、および/または他の抗HBV剤を含み得る。
【0272】
動物またはヒト生物において投与時に抗HBV免疫応答を誘導または刺激する能力は、当技術分野で標準的な多様なアッセイを使用してin vitroまたはin vivoのいずれかで評価することができる。免疫応答の開始および活性化を評価するために利用することができる技術の一般的な説明に関しては、例えばColiganら(1992 and 1994, Current Protocols in Immunology; ed. J Wiley & Sons Inc, National Institute of Health)を参照されたい。細胞性免疫の測定は、CD4+およびCD8+ T細胞に由来する細胞を含む活性化エフェクター細胞によって分泌されるサイトカインプロファイルの測定(例えば、ELISPOTによるIL-10またはIFNガンマ産生細胞の定量)によって、免疫エフェクター細胞の活性化状態の決定によって(例えば、古典的な[3H]チミジン取り込みによるT細胞増殖アッセイまたはフローサイトメトリーに基づくアッセイ)、または感作された対象における抗原特異的Tリンパ球に関してアッセイすることによって(例えば、細胞傷害性アッセイにおけるペプチド特異的溶解等)実施することができる。
【0273】
細胞性および/または液性応答を刺激する能力は、抗体結合および/または結合の競合によって決定することができる(例えば、Harlow, 1989, Antibodies, Cold Spring Harbor Pressを参照されたい)。例えば、免疫原を提供する組成物の投与に応答して産生される抗体の力価を、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって測定することができる。免疫応答はまた、ウイルスの中和が、特異的抗体によるウイルスの反応/阻害/中和を通しての感染性の喪失として定義される中和抗体アッセイによっても測定することができる。免疫応答はさらに、抗体依存性細胞食作用(ADCP)アッセイによって測定することができる。
【0274】
実施形態
本発明はまた、以下の非限定的な実施形態も提供する。
【0275】
実施形態1は、それを必要とする対象におけるB型肝炎ウイルス(HBV)感染症の処置に使用するための治療的組合せであって、
i)a)配列番号2と、少なくとも95%、例えば少なくとも95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列からなる切断型HBVコア抗原、
b)切断型HBVコア抗原をコードする第1のポリヌクレオチド配列を含む第1の天然に存在しない核酸分子、
c)配列番号7と、少なくとも90%、例えば少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を有するHBVポリメラーゼ抗原であって、逆転写酵素活性およびRNアーゼH活性を有しないHBVポリメラーゼ抗原、および
d)HBVポリメラーゼ抗原をコードする第2のポリヌクレオチド配列を含む第2の天然に存在しない核酸分子
の少なくとも1つ;ならびに
ii)HBV遺伝子の発現を阻害するためのRNAi剤、例えばそれらの内容が参照によりそれらの全体として本明細書に組み込まれるUS20130005793、WO2013003520またはWO2018027106に記載されるもの
を含む治療的組合せである。
【0276】
実施形態2は、HBVポリメラーゼ抗原および切断型HBVコア抗原の少なくとも1つを含む、実施形態1に記載の治療的組合せである。
【0277】
実施形態3は、HBVポリメラーゼ抗原および切断型HBVコア抗原を含む、実施形態2に記載の治療的組合せである。
【0278】
実施形態4は、切断型HBVコア抗原をコードする第1のポリヌクレオチド配列を含む第1の天然に存在しない核酸分子、およびHBVポリメラーゼ抗原をコードする第2のポリヌクレオチド配列を含む第2の天然に存在しない核酸分子の少なくとも1つを含む、実施形態1に記載の治療的組合せである。
【0279】
実施形態5は、それを必要とする対象におけるB型肝炎ウイルス(HBV)感染症の処置に使用するための治療的組合せであって、
i)配列番号2に少なくとも95%同一なアミノ酸配列からなる切断型HBVコア抗原をコードする第1のポリヌクレオチド配列を含む第1の天然に存在しない核酸分子;および
ii)配列番号7と少なくとも90%同一なアミノ酸配列を有するHBVポリメラーゼ抗原をコードする第2のポリヌクレオチド配列を含む第2の天然に存在しない核酸分子であって、HBVポリメラーゼ抗原は、逆転写酵素活性およびRNアーゼH活性を有しない、第2の天然に存在しない核酸分子;および
iii)HBV遺伝子の発現を阻害するためのRNAi剤、例えばそれらの内容が参照によりそれらの全体として本明細書に組み込まれるUS20130005793、WO2013003520またはWO2018027106に記載されるもの
を含む治療的組合せである。
【0280】
実施形態6は、第1の天然に存在しない核酸分子が、切断型HBVコア抗原のN末端に作動可能に連結されたシグナル配列をコードするポリヌクレオチド配列をさらに含む、実施形態4または5に記載の治療的組合せである。
【0281】
実施形態6aは、第2の天然に存在しない核酸分子が、HBVポリメラーゼ抗原のN末端に作動可能に連結されたシグナル配列をコードするポリヌクレオチド配列をさらに含む、実施形態4から6のいずれか一項に記載の治療的組合せである。
【0282】
実施形態6bは、シグナル配列が、独立して、配列番号9または配列番号15のアミノ酸配列を含む、実施形態6または6aに記載の治療的組合せである。
【0283】
実施形態6cは、シグナル配列が、独立して、配列番号8または配列番号14のポリヌクレオチド配列によってコードされる、実施形態6または6aに記載の治療的組合せである。
【0284】
実施形態7は、HBVポリメラーゼ抗原が、配列番号7と、少なくとも98%、例えば少なくとも98%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%同一なアミノ酸配列を含む、実施形態1から6cのいずれか一項に記載の治療的組合せである。
【0285】
実施形態7aは、HBVポリメラーゼ抗原が、配列番号7のアミノ酸配列を含む、実施形態7に記載の治療的組合せである。
【0286】
実施形態7bは、切断型HBVコア抗原が、配列番号2と、少なくとも98%、例えば少なくとも98%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%同一なアミノ酸配列からなる、実施形態1から7aのいずれか一項に記載の治療的組合せである。
【0287】
実施形態7cは、切断型HBV抗原が、配列番号2または配列番号4のアミノ酸配列からなる、実施形態7bに記載の治療的組合せである。
【0288】
実施形態8は、第1および第2の天然に存在しない核酸分子のそれぞれが、DNA分子である、実施形態1から7cのいずれか一項に記載の治療的組合せである。
【0289】
実施形態8aは、DNA分子が、DNAベクター上に存在する、実施形態8に記載の治療的組合せである。
【0290】
実施形態8bは、DNAベクターが、DNAプラスミド、細菌人工染色体、酵母人工染色体、および閉鎖した線形デオキシリボ核酸からなる群から選択される、実施形態8aに記載の治療的組合せである。
【0291】
実施形態8cは、DNA分子が、ウイルスベクター上に存在する、実施形態8に記載の治療的組合せである。
【0292】
実施形態8dは、ウイルスベクターが、バクテリオファージ、動物ウイルス、および植物ウイルスからなる群から選択される、実施形態8cに記載の治療的組合せである。
【0293】
実施形態8eは、第1および第2の天然に存在しない核酸分子のそれぞれが、RNA分子である、実施形態1から7cのいずれか一項に記載の治療的組合せである。
【0294】
実施形態8fは、RNA分子が、RNAレプリコン、好ましくは自己増殖RNAレプリコン、mRNAレプリコン、改変されたmRNAレプリコン、または自己増幅mRNAである、実施形態8eに記載の治療的組合せである。
【0295】
実施形態8gは、第1および第2の天然に存在しない核酸分子のそれぞれが、独立して、脂質組成物、好ましくは脂質ナノ粒子(LNP)と共に製剤化される、実施形態1から8fのいずれか一項に記載の治療的組合せである。
【0296】
実施形態9は、同じ天然に存在しない核酸分子中に第1の天然に存在しない核酸分子および第2の天然に存在しない核酸分子を含む、実施形態4から8gのいずれか一項に記載の治療的組合せである。
【0297】
実施形態10は、2つの異なる天然に存在しない核酸分子中に、第1の天然に存在しない核酸分子および第2の天然に存在しない核酸分子を含む、実施形態4から8gのいずれか一項に記載の治療的組合せである。
【0298】
実施形態11は、第1のポリヌクレオチド配列が、配列番号1または配列番号3と、少なくとも90%、例えば少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列を含む、実施形態4から10のいずれか一項に記載の治療的組合せである。
【0299】
実施形態11aは、第1のポリヌクレオチド配列が、配列番号1または配列番号3と、少なくとも98%、例えば少なくとも98%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列を含む、実施形態11に記載の治療的組合せである。
【0300】
実施形態12は、第1のポリヌクレオチド配列が、配列番号1または配列番号3のポリヌクレオチド配列を含む、実施形態11aに記載の治療的組合せである。
【0301】
実施形態13 第2のポリヌクレオチド配列が、配列番号5または配列番号6と、少なくとも90%、例えば少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列を含む、実施形態4から12のいずれか一項に記載の治療的組合せ。
【0302】
実施形態13a 第2のポリヌクレオチド配列が、配列番号5または配列番号6と、少なくとも98%、例えば少なくとも98%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列を含む実施形態13に記載の治療的組合せ。
【0303】
実施形態14は、第2のポリヌクレオチド配列が、配列番号5または配列番号6のポリヌクレオチド配列を含む、実施形態13aに記載の治療的組合せである。
【0304】
実施形態15は、RNAi剤が、表2に示されるコアセンス鎖配列およびアンチセンス鎖配列を有する、実施形態1から14のいずれか一項に記載の治療的組合せである。
【0305】
実施形態15aは、RNAi剤が、表3に示されるセンス鎖配列およびアンチセンス鎖配列を有する、実施形態1から14のいずれか一項に記載の治療的組合せである。
【0306】
実施形態15bは、RNAi剤が、表4に示されるコアセンス鎖配列およびアンチセンス鎖配列を有する、実施形態1から14のいずれか一項に記載の治療的組合せである。
【0307】
実施形態15cは、RNAi剤が、表4に示される改変されたセンス鎖配列およびアンチセンス鎖配列を有する、実施形態15bに記載の治療的組合せである。
【0308】
実施形態15dは、RNAi剤が、表5に示される標的配列を標的化する、実施形態1から14のいずれか一項に記載の治療的組合せである。
【0309】
実施形態15eは、RNAi剤が、表6に示されるコアセンス鎖配列およびアンチセンス鎖配列を有する、実施形態1から14のいずれか一項に記載の治療的組合せである。
【0310】
実施形態15fは、RNAi剤が、表7に示されるコアアンチセンス配列および表8に示されるコアセンス鎖配列を有する、実施形態1から14のいずれか一項に記載の治療的組合せである。
【0311】
実施形態15gは、RNAi剤が、表7に示される改変されたセンス鎖配列および表8に示される改変されたアンチセンス鎖配列を有する、実施形態15fに記載の治療的組合せである。
【0312】
実施形態15hは、RNAi剤が、表9に示されるアンチセンス鎖およびセンス鎖の二重鎖を有する、実施形態1から14のいずれか一項に記載の治療的組合せである。
【0313】
実施形態15iは、RNAi剤が、表9に示されるAD04580;AD04585;AD04776;AD04872;AD04962;AD04963;AD04982;またはAD05070の二重鎖構造を有する、実施形態15hに記載の治療的組合せである。
【0314】
実施形態15jは、治療的組合せが、HBV遺伝子のSオープンリーディングフレーム(ORF)を標的化する第1のRNAi剤、およびHBV遺伝子のXオープンリーディングフレーム(ORF)を標的化する第2のRNAi剤を含む、実施形態1から14のいずれか一項に記載の治療的組合せである。
【0315】
実施形態15kは、第1のRNAi剤が、AD04001;AD04002;AD04003;AD04004;AD04005;AD04006;AD04007;AD04008;AD04009;AD04010;AD04422;AD04423;AD04425;AD04426;AD04427;AD04428;AD04429;AD04430;AD04431;AD04432;AD04433;AD04434;AD04435;AD04436;AD04437;AD04438;AD04439;AD04440;AD04441;AD04442;AD04511;AD04581;AD04583;AD04584;AD04585;AD04586;AD04587;AD04588;AD04590;AD04591;AD04592;AD04593;AD04594;AD04595;AD04596;AD04597;AD04598;AD04599;AD04734;AD04771;AD04772;AD04773;AD04774;AD04775;AD04822;AD04871;AD04872;AD04873;AD04874;AD04875;AD04876;AD04962;およびAD05164からなる群から選択され;第2のRNAi剤が、AD03498;AD03499;AD03500;AD03501;AD03738;AD03739;AD03967;AD03968;AD03969;AD03970;AD03971;AD03972;AD03973;AD03974;AD03975;AD03976;AD03977;AD03978;AD04176;AD04177;AD04178;AD04412;AD04413;AD04414;AD04415;AD04416;AD04417;AD04418;AD04419;AD04420;AD04421;AD04570;AD04571;AD04572;AD04573;AD04574;AD04575;AD04576;AD04577;AD04578;AD04579;AD04580;AD04776;AD04777;AD04778;AD04823;AD04881;AD04882;AD04883;AD04884;AD04885;AD04963;AD04981;AD04982;AD04983;AD05069;AD05070;AD05071;AD05072;AD05073;AD05074;AD05075;AD05076;AD05077;AD05078;AD05147;AD05148;AD05149;およびAD05165からなる群から選択され、これらのそれぞれは、WO2018027106に記載されており、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、実施形態15jに記載の治療的組合せである。
【0316】
実施形態15lは、第1のRNAi剤が、配列番号25~26の配列を有する二重鎖を含むAD04872であり、第2のRNAi剤が、配列番号27~28の配列を有する二重鎖を含むAD05070である、実施形態15kに記載の治療的組合せである。
【0317】
実施形態15mは、第1のRNAi剤が、AD04872であり、第2のRNAi剤が、AD04982である、実施形態15kに記載の治療的組合せである。
【0318】
実施形態15nは、第1のRNAi剤が、AD04872であり、第2のRNAi剤が、AD04776である、実施形態15kに記載の治療的組合せである。
【0319】
実施形態15oは、第1のRNAi剤が、AD04585であり、第2のRNAi剤が、AD04580である、実施形態15kに記載の治療的組合せである。
【0320】
実施形態15pは、RNAi剤が、脂質組成物、好ましくは脂質ナノ粒子に製剤化される、実施形態1から15oのいずれか一項に記載の治療的組合せである。
【0321】
実施形態15pは、RNAi剤が、標的化リガンドにコンジュゲートされている、実施形態1から15oのいずれか一項に記載の治療的組合せである。
【0322】
実施形態15qは、標的化リガンドが、N-アセチルガラクトサミンを含む、実施形態15pに記載の治療的組合せである。
【0323】
実施形態15rは、標的化リガンドが、表10に描写された、(NAG13)、(NAG13)s、(NAG18)、(NAG18)s、(NAG24)、(NAG24)s、(NAG25)、(NAG25)s、(NAG26)、(NAG26)s、(NAG27)、(NAG27)s、(NAG28)、(NAG28)s、(NAG29)、(NAG29)s、(NAG30)、(NAG30)s、(NAG31)、(NAG31)s、(NAG32)、(NAG32)s、(NAG33)、(NAG33)s、(NAG34)、(NAG34)s、(NAG35)、(NAG35)s、(NAG36)、(NAG36)s、(NAG37)、(NAG37)s、(NAG38)、(NAG38)s、(NAG39)、または(NAG39)sであり、これらのそれぞれはWO2018027106でより詳細に記載されており、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、実施形態15pに記載の治療的組合せである。
【0324】
実施形態15sは、標的化リガンドが、(NAG34)、(NAG34)s、(NAG35)、(NAG35)s、(NAG36)、(NAG36)s、(NAG37)、(NAG37)s、(NAG38)、(NAG38)s、(NAG39)、または(NAG39)sであり、より好ましくは(NAG37)または(NAG37)sである、実施形態15pに記載の治療的組合せである。
【0325】
実施形態15tは、標的化リガンドが、RNAi剤のセンス鎖にコンジュゲートされている、実施形態15pから15sのいずれか一項に記載の治療的組合せである。
【0326】
実施形態16は、実施形態1から15tのいずれか一項に記載の治療的組合せ、およびそれを必要とする対象におけるB型肝炎ウイルス(HBV)感染症を処置することに治療的組合せを使用するための説明書を含むキットである。
【0327】
実施形態17は、それを必要とする対象におけるB型肝炎ウイルス(HBV)感染症を処置する方法であって、実施形態1から15tのいずれか一項に記載の治療的組合せを対象に投与することを含む方法である。
【0328】
実施形態17aは、処置が、それを必要とする対象においてB型肝炎ウイルスに対する免疫応答を誘導し、好ましくは対象は、慢性HBV感染症を有する、実施形態17に記載の方法である。
【0329】
実施形態17bは、対象が、慢性HBV感染症を有する、実施形態17または17aに記載の方法である。
【0330】
実施形態17cは、対象が、進行した線維症、硬変症および肝細胞癌(HCC)からなる群から選択されるHBV誘導疾患の処置を必要とする、実施形態17から17bのいずれか一項に記載の方法である。
【0331】
実施形態18は、治療的組合せが、皮膚を介した注射によって、例えば、筋肉内または皮内注射、好ましくは筋肉内注射によって投与される、実施形態17~17cのいずれか一項に記載の方法である。
【0332】
実施形態19は、治療的組合せが、第1および第2の天然に存在しない核酸分子の少なくとも1つを含む、実施形態18に記載の方法である。
【0333】
実施形態19aは、治療的組合せが、第1および第2の天然に存在しない核酸分子を含む、実施形態19に記載の方法である。
【0334】
実施形態20は、天然に存在しない核酸分子が、電気穿孔を併用した筋肉内注射によって対象に投与される、実施形態19または19aに記載の方法である。
【0335】
実施形態21は、天然に存在しない核酸分子が、脂質組成物によって、好ましくは脂質ナノ粒子によって対象に投与される、実施形態19または19aに記載の方法である。
【0336】
[実施例]
上述した実施形態に、それらの広範な発明概念から逸脱することなく変更をなし得ることが当業者に理解されるであろう。それゆえに、この発明は、開示された特定の実施形態に限定されないが、本発明の説明で定義される通りの本発明の本質および範囲内の改変を網羅することが意図されることが理解される。
【0337】
[実施例1]
HBVコアプラスミドおよびHBV polプラスミド
pDK-polおよびpDK-コアベクターの概略図が、それぞれ
図1Aおよび1Bに示される。CMVプロモーター(配列番号18)、スプライシングエンハンサー(三重の複合配列)(配列番号10)、シスタチンS前駆体シグナルペプチドSPCS(NP_0018901.1)(配列番号9)、およびpol(配列番号5)またはコア(配列番号2)遺伝子を含有するHBVコアまたはpol抗原に最適化された発現カセットを、標準的な分子生物学的技術を使用してpDKプラスミド主鎖に導入した。
【0338】
プラスミドを、in vitroで、コアおよびpol特異的抗体を使用したウェスタンブロット分析によって、コアおよびpol抗原発現に関して試験したところ、細胞の、および分泌されたコアおよびpol抗原(データは示されない)について矛盾のない発現プロファイルを提供することが示された。
【0339】
[実施例2]
切断型HBVコア抗原とHBV Pol抗原との融合体を発現するアデノウイルスベクターの生成
アデノウイルスベクターの作製は、単一のオープンリーディングフレームから発現された融合タンパク質として設計されている。例えば2つの個別の発現カセットを使用する、または2つの配列を分離するために2A様配列を使用する、2つのタンパク質を発現させるための追加の構成も同様に想像することができる。
【0340】
アデノウイルスベクターの発現カセットの設計
発現カセット(
図2Aおよび
図2Bに図示する)は、CMVプロモーター(配列番号19)、イントロン(配列番号12)(ヒトApoAI遺伝子に由来する断片、GenBank受託番号X01038、塩基対295~523、ApoAIの第2のイントロンを有する)、後に続く最適化コード配列-ヒト免疫グロブリン分泌シグナルコード配列(配列番号14)の後に続くコア単独またはコアとポリメラーゼとの融合タンパク質、その後に続くSV40ポリアデニル化シグナル(配列番号13)で構成される。
【0341】
分泌シグナルは、過去の実験により、誘発されるT細胞応答に影響を及ぼすことなく(マウスの実験)、分泌されるトランスジーンを有する一部のアデノウイルスベクターの製造性が改善することが示されたことから含めた。
【0342】
コアタンパク質の最後の2つの残基(VV)およびポリメラーゼタンパク質の最初の2つの残基(MP)を融合すると、隣接する相同配列と共にヒトドーパミン受容体タンパク質(D3アイソフォーム)上に存在する接合配列(VVMP)をもたらす。
【0343】
コア配列とポリメラーゼ配列との間にAGAGリンカーを挿入すると、この相同性が排除され、ヒトプロテオームのBlastにおいてさらなるヒットなしに戻った。
【0344】
[実施例3]
マウスにおけるDNAワクチンのin vivo免疫原性試験
HBVコア抗原またはHBVポリメラーゼ抗原をコードするDNAプラスミドを含有する免疫治療用DNAワクチンを、マウスにおいて試験した。試験の目的を、BALB/cマウスへの電気穿孔を介した筋肉内送達後にワクチンによって誘導されたT細胞応答を検出するように設計した。最初の免疫原性試験は、導入されたHBV抗原によって誘発される細胞性免疫応答を決定することに集中した。
【0345】
特に、試験したプラスミドは、
図1Aおよび1Bにそれぞれ示すように、および上記の実施例1で説明したように、pDK-PolプラスミドおよびpDK-コアプラスミドを含んだ。pDK-Polプラスミドは、配列番号7のアミノ酸配列を有するポリメラーゼ抗原をコードし、pDK-コアプラスミドは、配列番号2のアミノ酸配列を有するコア抗原をコードした。第1に、各々のプラスミドによって個々に誘導されたT細胞応答を試験した。DNAプラスミド(pDNA)ワクチンを、マウス前脛骨筋モデルに適用するために適合させた市販のTriGrid(商標)送達システム-筋肉内(TDS-IM)を使用して、電気穿孔を介してBALB/cマウスに筋肉内送達した。電気穿孔によるDNAのマウスへの筋肉内送達の方法およびデバイスに関する追加の説明に関しては、その開示の全体が参照により本明細書に組み込まれている、国際特許出願国際公開2017172838号明細書、および2017年12月19日に提出された「Method and Apparatus for the Delivery of Hepatitis B Virus (HBV) Vaccine」と題する米国特許出願第62/607,430号を参照されたい。特に、電極間に2.5mmの間隔を空けて、電極直径が0.030インチである電極アレイを有するTDS-IM v1.0デバイスのTDS-IMアレイを、導体の長さが3.2mm、有効な貫通深度が3.2mmであり、電極の菱形構成の主軸が筋繊維と平行な方向を向くように、選択した筋肉内に経皮挿入した。電極の挿入後、注射を開始してDNA(例えば、0.020ml)を筋肉内に分布させた。IM注射の完了後、250V/cm電場(印加電圧59.4~65.6V、印加電流の限界4A未満、0.16A/秒)を、全期間約400msの間、10%デューティ比(すなわち、電圧を、約400msの期間のうち全体で約40msの間、積極的に印加する)で全6パルスを局所に印加する。電気穿孔手順の終了後、TriGrid(商標)アレイを除去し、動物を回復させた。BALB/cマウスへの高用量(20μg)投与を、表1に要約するように実施した。マウス6匹に、HBVコア抗原をコードするプラスミドDNA(pDK-コア;群1)を投与し、マウス6匹に、HBV pol抗原をコードするプラスミドDNA(pDK-pol;群2)を投与し、およびマウス2匹に陰性対照として空のベクターを投与した。動物に、2週間空けて2回のDNA免疫を行い、最後の免疫の1週間後に脾細胞を収集した。
【0346】
【0347】
IFN-γ酵素結合イムノスポット(ELISPOT)によって抗原特異的応答を分析および定量した。このアッセイにおいて、免疫した動物の単離された脾細胞を、コアタンパク質、Polタンパク質、または小さいペプチドリーダーおよび接合配列(各ペプチド2μg/ml)を含むペプチドプールと共に一晩インキュベートした。これらのプールは、コアおよびPolワクチンベクターの遺伝子型BCDコンセンサス配列にマッチする11残基が重複する15量体ペプチドからなった。大きい94kDan HBV Polタンパク質を中央で2つのペプチドプールに分割した、抗原特異的T細胞を相同なペプチドプールによって刺激し、IFN-γ陽性T細胞を、ELISPOTアッセイを使用して評価した。単一の抗原特異的T細胞によるIFN-γの放出を、適切な抗体によって、およびスポット形成細胞(SFC)と呼ばれるマイクロプレート上での着色スポットとしてその後の色素産生の検出によって可視化した。
【0348】
DNAワクチンプラスミドpDK-コア(群1)によって免疫したマウスでは、HBVコアに対する実質的なT細胞応答が達成され、1,000SFC/細胞10
6個(
図3)に達した。Pol 1ペプチドプールに対するPol T細胞応答は強力であった(~1,000SFC/細胞10
6個)。弱いPol-2指向性抗Pol細胞応答は、おそらく、マウスにおける限定的なMHC多様性が原因であった。これは、1つの抗原からの異なるエピトープの認識が同等でないこととして定義されるT細胞イムノドミナンスと呼ばれる現象である。この試験において得られた結果を確認する確認試験を実施した(データは示していない)。
【0349】
上記の結果は、マウスにおけるHBV抗原をコードするDNAプラスミドワクチンによるワクチン接種が、投与したHBV抗原に対する細胞性免疫応答を誘導することを証明する。非ヒト霊長類でも類似の結果が得られた(データ示さず)。
【0350】
[実施例4]
in vivoでのマウスにおけるHBV siRNAと組み合わせたDNAワクチンの免疫原性研究
C57BL/6雄マウス(6~8週齢;Janvier、France)を、尾静脈注射を介して1×PBSで希釈した1×10
11vgのAAV-HBV(FivePlus MMI、China)に感染させる。処置開始前の28日間、感染を確立させる。次いでマウス(n=8/群)を6つの別々の群に分けて、siRNA単独もしくは治療ワクチン(Tx Vx)単独で、または組み合わせて(表2)調査する。TxVxは、上記の実施例1のpDK-PolプラスミドとpDK-コアプラスミドとの1:1混合物である(それぞれ
図1Aおよび1Bも参照)。siRNAは、WO2018027106(例えば、WO2018027106の請求項54)に記載された通りであり、より特に、WO2018027106に記載されたように2種のRNAi剤の混合物、すなわちAD04872+AD5070、AD04872+AD04982、AD04872+AD04776、またはAD04585+AD04580である。表2に、siRNAおよびTx Vxの両方の投与および投与のタイミングを示す。処置の第1日がD0に指定され、28日の感染確立期間の後である。
【0351】
【0352】
Tx Vxを表2で指示された濃度で1×PBSで希釈し、電気穿孔を介して脛骨筋筋肉(Ichor、USA)に投与する。siRNAは、1×PBS中10mpkの濃度で頸部の後ろへの皮下注射を介して送達される。群4および6におけるsiRNAおよびTx Vxの組合せは、一緒に(群4)投与されるか、またはsiRNAが最初のTx Vx投与前の3週間(群6)または最後のsiRNA処置後の3週間(群7)に投与されるように時差的に投与される。全てのエンドポイントは、最後の薬物投与後の3週間であり、これは群1~4では42日目、群5および6では63日目、および群7および8では84日目に対応する。
【0353】
血液試料を週1回採取して、血清中のウイルスパラメーター(HBeAg、HBsAgおよびHBV DNA)および肝臓ALTを測定する。脾臓をエンドポイントで採取し、ex vivoにおけるTx Vxコアおよびpol配列の両方をカバーするHBVペプチドプールでの刺激の後に、全ての群でIFNγELISPOTによって免疫原性を評価する。全てのエンドポイントは、最後の治療用量の3週間後である。
【0354】
本明細書に記載の実施例および実施形態は、単なる例証目的のためであり、広い本発明の概念から逸脱することなく、上記の実施形態に変更を行うことができると理解される。したがって、本発明は、開示の特定の実施形態に限定されないと理解され、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神および範囲内の改変を含むと意図される。
【配列表】
【国際調査報告】