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特表2022-536948クオラムクエンチングラクトナーゼの安定化変異体及び病原体の治療におけるその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-22
(54)【発明の名称】クオラムクエンチングラクトナーゼの安定化変異体及び病原体の治療におけるその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/55 20060101AFI20220815BHJP
   C12N 9/14 20060101ALI20220815BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220815BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220815BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220815BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220815BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220815BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20220815BHJP
   A01N 63/50 20200101ALI20220815BHJP
【FI】
C12N15/55
C12N9/14 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A01P3/00
A01N63/50 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021575258
(86)(22)【出願日】2020-06-17
(85)【翻訳文提出日】2022-02-16
(86)【国際出願番号】 IL2020050673
(87)【国際公開番号】W WO2020255131
(87)【国際公開日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】62/862,348
(32)【優先日】2019-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521550714
【氏名又は名称】ミガル ガリラヤ リサーチ インスティテュート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アフリアット-ジュノウ,リブナット
(72)【発明者】
【氏名】エロフ,マーヤン
(72)【発明者】
【氏名】グレーヴィチ,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】イェリン,メリー ダフニー
【テーマコード(参考)】
4B050
4B065
4H011
【Fターム(参考)】
4B050CC04
4B050CC05
4B050DD02
4B050FF01
4B050LL05
4B065AA01Y
4B065AA26X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA31
4B065CA47
4H011AA01
4H011BB19
4H011DH11
(57)【要約】
変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼ又はその機能的断片、並びにそれらをコード化する核酸分子及びベクターが提供される。さらに、前記変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼを発現する細胞及びそれらを生成するための方法に加えて、植物又はその一部、器官、若しくは植物繁殖材料などの宿主における細菌の感染を治療又は予防するための方法であって、前記変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼ又はその野生型酵素をそれらに適用することを含む、方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1と少なくとも30%の同一性を有するアミノ酸配列中の配列番号1の59位又は172位に対応するアミノ酸残基が置換されている、変異野生型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼを含む変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼ又はその機能的断片であって、G59に対応するグリシン残基が、バリン、アラニン、ロイシン、及びイソロイシンから選択されるアミノ酸残基で置換されているか、又はH172に対応するヒスチジン残基が、チロシン、フェニルアラニン、及びトリプトファンから選択されるアミノ酸残基で置換されており、前記変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼは、前記野生型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼと実質的に同一のTIMバレルフォールドを有し、その活性部位に保存された触媒残基を有する、前記変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼ又はその機能的断片。
【請求項2】
配列番号1のG59に対応するグリシン残基がバリンで置換されている、請求項1に記載の変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼ。
【請求項3】
配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む又は本質的にそれからなる、請求項2に記載の変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼ。
【請求項4】
配列番号1のH172に対応するヒスチジン残基がチロシンで置換されている、請求項1に記載の変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼ。
【請求項5】
配列番号3に記載のアミノ酸配列を含む又は本質的にそれからなる、請求項4に記載の変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼ。
【請求項6】
タグをさらに含む、請求項1に記載の変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼ。
【請求項7】
前記変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼが、非変異野生型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼの熱安定性と比較して増加した熱安定性、又は前記非変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼと比較して、基質としてN-(3-オキソ-ヘキサノイル)-ホモセリンラクトンを用いて提供される実質的に同様又はより高いラクトナーゼ触媒活性を有する、請求項1に記載の変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼ。
【請求項8】
50として表される前記増加した熱安定性が約50℃~約80℃、例えば約65℃である、請求項7に記載の変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼ。
【請求項9】
前記非変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼと比較して延長された貯蔵寿命を有する、請求項7又は8に記載の変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼ。
【請求項10】
配列番号1のG59に対応するグリシン残基がバリンで置換されているか、又は配列番号1のH172に対応するヒスチジン残基がチロシンで置換されており、前記変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼが、非変異野生型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼの熱安定性と比較して増加した熱安定性、又は前記非変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼと比較して、基質としてN-(3-オキソ-ヘキサノイル)-ホモセリンラクトンを用いて提供される実質的に同様又はより高いラクトナーゼ触媒活性を有する、請求項1に記載の変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼ。
【請求項11】
配列番号2又は配列番号3に記載のアミノ酸配列を含む又は本質的にそれからなり、T50として表される前記増加した熱安定性が約55℃~約80℃、例えば約65℃であるか、又は前記変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼは、前記非変異型ホスホトリ
エステラーゼ様ラクトナーゼと比較して延長された貯蔵寿命を有する、請求項10に記載の変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼ。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼを含む組成物。
【請求項13】
CuSOなどの銅塩をさらに含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
植物又はその一部、器官、若しくは植物繁殖材料における細菌の感染を治療又は予防するための方法であって、前記植物は、N-(3-ヒドロキシブタノイル)-L-ホモセリンラクトン(C4-HSL)、N-(3-オキソ-ヘキサノイル)-ホモセリンラクトン(C6-オキソ-HSL)、N-[(3S)-テトラヒドロ-2-オキソ-3-フラニル]オクタナミド(C8-オキソ-HSL)、及びN-[(3S)-テトラヒドロ-フラニル]デカンアミド(C10-HSL)から選択されるラクトンを分泌する細菌に感染している又は感染しやすく、
前記植物又はその一部、器官、若しくは植物繁殖材料に対して、結核菌(M. tuberclorosis)由来の野生型推定パラチオン加水分解酵素(PPH、配列番号1)と少なくとも30%の同一性を有し、前記野生型推定パラチオン加水分解酵素と実質的に同一のTIMバレルフォールドを有し、その活性部位に保存された触媒残基を有する、ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼ、その機能的断片、又は請求項1~11のいずれか一項に記載の変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼを適用することを含む、前記方法。
【請求項15】
前記細菌が、エルウィニア・アミロボラ(Erwinia amylovora)、軟腐病菌(Pectobacterium carotovorum)、シュードモナス・シリンガエ(Pseudomonas syringae)、シュードモナス・コルゲート(Pseudomonas corrugata)、バークホルデリア・ベトナミエンシス(Burkholderia vietnamiensis)、バークホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)、バークホルデリア・タイランデンシス(Burkholderia thailandensis)、及び緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、並びに任意の病原型からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記細菌がエルウィニア・アミロボラ(Erwinia amylovora)である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記細菌が軟腐病菌(Pectobacterium carotovorum)である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記細菌がシュードモナス・シリンガエ(Pseudomonas syringae)である、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記シュードモナス・シリンガエが、シュードモナス・トマト(Pseudomonas tomato)(従来はPseudomonas syringae pv. tomatoとして公知)である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
結核菌由来の前記推定パラチオン加水分解酵素又はその組成物、及びCuSOなどの銅塩を含む別個の組成物は、前記植物又はその部分、器官、若しくは植物繁殖材料に別々に適用される、請求項14~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
配列番号1のG59がバリンで置換された前記変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼ、例えば配列番号2又は配列番号11に記載のアミノ酸配列を含む又は本質的にそれからなる、前記変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼ、又は配列番号1のH172がチロシンで置換された前記ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼ、例えば配列番号3又は配列番号12に記載のアミノ酸配列を含む又は本質的にそれからなる、前記変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼ、を適用することを含む、請求項14~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
請求項1~11のいずれか一項に記載の変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼをコード化する核酸配列を含む単離核酸分子。
【請求項23】
配列番号5、配列番号6、配列番号8、配列番号9、配列番号14、又は配列番号15に記載の核酸配列を含む、請求項22に記載の核酸分子。
【請求項24】
プロモーターに作動可能に連結された、請求項22又は23に記載の核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項25】
請求項22又は23に記載の単離核酸分子又は請求項24に記載の発現ベクターを含む細胞。
【請求項26】
細菌、真菌、哺乳動物又は植物細胞、好ましくは大腸菌から選択される、請求項25に記載の細胞。
【請求項27】
変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼ又はその機能的断片を生成する方法であって、
(i)請求項25又は26に記載の細胞を培養することと、
(ii)前記変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼを前記細胞から分離することにより、変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼを得ることと、を含む、前記方法。
【請求項28】
前記細胞が、細菌、真菌、哺乳動物又は植物細胞、好ましくは大腸菌から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼが、タグをさらに含む、請求項27又は28に記載の方法。
【請求項30】
請求項1~11のいずれか一項に記載の変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼ又は請求項12又は13の組成物で少なくとも部分的に覆われた又はコーティングされた、植物又はその一部、器官、若しくは植物繁殖材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、クオラムセンシング依存性細菌感染症の管理、特に火傷病及び他の植物病害の管理に関する。
【背景技術】
【0002】
クオラムセンシング調節系を介して病原体によって引き起こされる疾病は、臨床及び農業環境において大きな課題を提示している。例えば、バラ科のリンゴ、ナシ、及び他の一員に影響を与えるエルウィニア・アミロボラ(Erwinia amylovora)によって引き起こされる伝染病である火傷病の効果的な管理は、多面的で大部分が予防的であり、衛生管理、培養方法、銅殺虫剤、有効成分としてストレプトマイセス・リディカス(Streptomyces lydicus)を含む製品、及び抗生物質(例えば、ストレプトマイシンやオキシテトラサイクリン)の組み合わせの利用による(1)。
【0003】
様々な作物のクオラムセンシング調節系を介して病害を引き起こす可能性のある一般的な植物病原菌の他の例は、軟腐病菌(Pectobacterium carotovorum(2))、シュードモナス・シリンガエ(Pseudomonas syringae(3))、及びシュードモナス・コルゲート(Pseudomonas corrugate(4))であり、ジャガイモ(Solanum tuberosum L.)、インゲン豆(Phaseolus vulgaris)、及びトマト(Lycopersicon esculentum)に影響を及ぼす。クオラムセンシング調節系に依存する日和見病原体である緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)は、植物病原体であり、嚢胞性線維症患者及び免疫不全患者の罹患率及び死亡率の主要な原因でもある。
【0004】
ただし、規制による制約、公衆衛生上の懸念、及び耐性の発達により、抗生物質やその他の薬剤の使用の長期的な見通しが大幅に制限されている(5)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、火傷病及び他の衰弱性植物病害の効果的な薬剤及び管理に対する満たされていないニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、本発明は、配列番号1と少なくとも30%の同一性を有するアミノ酸配列中の配列番号1の59位又は172位に対応するアミノ酸残基が置換されている、変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼを含む変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼ又はその機能的断片であって、G59に対応するグリシン残基が、バリン、アラニン、ロイシン、及びイソロイシンから選択されるアミノ酸残基で置換されているか、又はH172に対応するヒスチジン残基が、チロシン、フェニルアラニン、及びトリプトファンから選択されるアミノ酸残基で置換されており、前記変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼは、前記野生型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼと実質的に同一のTIMバレルフォールドを有し、その活性部位に保存された触媒残基を有する、前記変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼ又はその機能的断片を提供する。
【0007】
別の態様では、本発明は、上記で定義される変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼを含む組成物を提供する。
【0008】
追加の態様では、本発明は、植物又はその一部、器官、若しくは植物繁殖材料における細菌の感染を治療又は予防するための方法であって、前記植物は、N-(3-ヒドロキシブタノイル)-L-ホモセリンラクトン(C4-HSL)、N-(3-オキソ-ヘキサノイル)-ホモセリンラクトン(C6-オキソ-HSL)、N-[(3S)-テトラヒドロ-2-オキソ-3-フラニル]オクタナミド(C8-オキソ-HSL)、及びN-[(3S)-テトラヒドロ-フラニル]デカンアミド(C10-HSL)から選択されるラクトンを分泌する細菌に感染している又は感染しやすく、前記方法が、前記植物又はその一部、器官、若しくは植物繁殖材料に対して、結核菌(M. tuberclorosis)由来の野生型推定パラチオン加水分解酵素(PPH、配列番号1)と少なくとも30%の同一性を有し、前記野生型推定パラチオン加水分解酵素と実質的に同一のTIMバレルフォールドを有し、その活性部位に保存された触媒残基を有するホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼ、その機能的断片、又は上記で定義される変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼ又は上記で定義された組成物のいずれか1つを適用することを含む、前記方法を提供する。
【0009】
さらに追加の態様では、本発明は、上記で定義される変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼをコード化する核酸配列を含む単離された核酸分子を提供する。
【0010】
さらに追加の態様では、本発明は、プロモーターに作動可能に連結された、本発明の核酸分子を含む発現ベクターを提供する。
【0011】
さらに別の態様では、本発明は、上記で定義される単離核酸分子又は発現ベクターを含む細胞を提供する。
【0012】
さらに別の態様では、本発明は、上記で定義される変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼ又はその機能的断片を生成する方法であって、(i)上記の開示された実施形態のいずれか1つの細胞を培養することと、(ii)前記変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼを前記細胞から分離することにより、変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼを得ることとを含む、前記方法を対象とする。
【0013】
さらなる態様において、本発明は、上記で定義される組成物で少なくとも部分的に覆われた又はコーティングされた、植物又はその一部、器官、若しくは植物繁殖材料を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A図1A及び図1Bは、結核菌由来の推定パラチオン加水分解酵素(PPH)の生化学的特徴付けを示す図である。PPHを大腸菌(E.coli)-BL21(DE3)で組換え発現させた後、アミロースカラムを使用して精製工程を行い、PPH活性をC6-オキソ-HSL(E0=0.01μM、25℃)で分析した。C6-オキソ-HSLの加水分解は、pH指示薬であるクレゾールパープルを使用したカルボン酸生成物の放出によってモニタリングした。(a)PPHは、様々な温度範囲内で活性であることが判明した。活性は、チオブチリルブチロラクトン(TBBL)(6)で試験した。その活性は40℃で最適であり、50℃までその活性の80%を維持した。(b)0.056±0.009mMのK値、10.16±0.01s-1、1.81×10-1/M-1のkcat/K
図1B】同上。
図2A図2A図2Dは、PPH進化型バリアントが、C6-オキソ-HSLでの活性の増加、熱安定性の増加、及び貯蔵寿命の改善を示すことを示す図である。(a)45℃での細菌溶解物のインキュベーション後、PPHのライブラリーを基質としてTBBLでスクリーニングした。熱インキュベーション後に最も高い活性を示すバリアントを、大規模な生成及び精製のために採用した。以下の変異を含むバリアント:バリアントPPH_R2:P4-D5のG58V及びバリアントPPH_R2のH171Y:野生型酵素より2倍高いPPH_R2:P4-D5の場合、3.70×10-1-1の高い触媒活性kcat/K、及びPPH_R2の場合、9.67×10-1/M-1のkcat/Kを示すP8-D12。(b)どちらのバリアントも熱安定性が向上しており、50%の残留活性が15度増加し、60℃まで100%維持される。(c)精製から4日後、バリアントPPH_R2:P4-D5はその活性の100%を維持し、野生型(wt)PPHはその活性の50%を維持し、さらに37日後にwtPPHはその活性の95%を失活した。PPH_R2 :P4-D5はその活性の80%を失活した。(d)結核菌由来のPPHの解明された構造、pdb番号pdb 4if2は、活性部位から遠く離れた進化型バリアントの変異G58V(*)及びH171Y(**)の位置を示している。
図2B】同上。
図2C】同上。
図2D】同上。
図3図3は、野生型QQラクトナーゼ(PPH)がエルウィニア・アミロボラにおけるレバン生成を減少させる能力を示す棒グラフを示す図である。レバン生成は、スクロースの添加後3時間後に1μMのQQラクトナーゼの添加の有無にかかわらず、スクロース(バッファー)を添加したLB培地で増殖させたエルウィニア・アミロボラ(単離株Ea2tp0)培養物で分光的に観察された。
図4A図4A図4Cは、植物におけるエルウィニア・アミロボラ感染の病原性アッセイを示す図である。ナシの果実に、活性バッファーでインキュベートしたエルウィニア・アミロボラ細胞懸濁液(10CFU/mL)(a)又は結核菌(M. tuberculosis)から精製した2μM PPHでインキュベートしたエルウィニア・アミロボラ細胞懸濁液(b)を接種した(7)。28℃で7日間培養した後、未接種対照は実験全体を通して無症候性のままであり、精製PPHとのインキュベーション後の接種したナシは、対照(エルウィニア・アミロボラ培養物及びバッファーのみ)よりも症状が少ないように見えた。1列目の10個のナシは細菌及び酵素の活性バッファーで処理し、2列目は野生型PPHと細菌で処理し、3列目はPPH_R2:P4-D5(G59V-PPHに対応)と細菌で処理した(C)。
図4B】同上。
図4C】同上。
図5A図5A図5Cは、エルウィニア・アミロボラ(10CFU/ml)に感染した後の、グロースチャンバー内の健康な(A;写真上)および感染した(A;写真下)ナシの花におけるエルウィニア・アミロボラ感染の病原性アッセイを示す図である。簡潔には、セイヨウナシ「Spadona」の開花した開花枝を、22℃のグロースチャンバー(明期12時間、暗期12時間)に置いた。4μMのwtPPHとその進化型変異体であるPPH_R2:P4-D5(G59Vに対応)を含む酵素溶液を花に噴霧し、2時間後に、エルウィニア・アミロボラの細胞懸濁液(10CFU/mL)を噴霧するか、酵素及び培養物の両方を1:1の比率で30分間混合してから噴霧した。エルウィニア・アミロボラ培養物のみを対照として使用した(陽性対照)。標準として、一般的に使用される抗生物質である4ppmのオキソリン酸を使用した。実験は3回繰り返して実施した(各繰り返しで10個の花)。湿度を保つために、チャンバー内の空調及び照明を感染後一晩停止した。図5Bでは、火傷病の症状は、感染から3、7、及び12日後に評価され、12日後に結果が示された(LSD、P<0.05、n=30)。図5Cでは、進化型変異体PPH_R2:P4-D5は、圃場での火傷病の症状を軽減し、70%の抑制を示す。この阻害度は、今日使用されている抗生物質であるオキソリン酸(70%)と同様である。簡潔には、セイヨウナシ「Spadona」の木の開花に、進化型変異体PPH-G58V(4μM)を様々な時期に噴霧した。感染の30~45分前又は感染と同時(噴霧前に酵素溶液を培養物と30分間混合することによる)。全ての場合において、10CFU/mLのエルウィニア・アミロボラ細菌培養物を使用した。感染後、高湿度を確保するために一晩ビニール袋で花を覆った。実験は5回の繰り返しで実施し、木の両側に5個ずつの花、計10個の花が各繰り返しに含まれた。木に生った状態での処理は、4回未満とした。接種後13日目に各開花の罹患花を計数して病害の症状を評価した。圃場試験は、北部のフラバレー果樹園実験農場(Hula Valley Orchards Experimental Farm)(北緯33度8分58.10秒、東経35度37分16.93秒)で実施した。
図5B】同上。
図5C】同上。
図6図6は、配列番号1、2、3、10、及び50の部分配列のアラインメントを示す図である。保存された活性部位の触媒残基(白文字)及びPPHで置換されている2つの残基(G59V及びH172Y)が示されている。
図7A図7A及び図7Bは、ナシ果実におけるエルウィニア・アミロボラ感染の病原性アッセイの結果を示す図である。(A)感染した果実は、未処理(左)か、0.25mM CuSO(硫酸銅(II))のみ(中央)又は0.25mM CuSO及び4μM PPH-R2:P4-D5の組み合わせ(右)のいずれかで処理した。(B)対照及び処理した果実の感染直径の測定値の要約を示す棒グラフ。
図7B】同上。
【発明を実施するための形態】
【0015】
クオラムセンシング(QS)は、様々な細菌で発生するシグナル伝達系であり、自身の個体群密度を感知し、N-アシルホモセリンラクトン(AHL)などの小さな拡散性シグナル分子の分泌を介して病原性遺伝子の発現を同期させる(8)。これらの分子は、腐敗酵素(例えば、ポリガラクチュロナーゼ)やアミロボランなどのバイオフィルム成分の生成など、QS依存性病原体の病原性遺伝子発現を誘発する上で重要な役割を果たす(9)。クオラムクエンチング(QQ)酵素による微生物QSシステムへの干渉は、疾病管理の潜在的な戦略として提案されている。これは、QQは細胞増殖を制限するのではなく、病原菌の病原性発現を停止することを目的としており、抗生物質耐性を克服する可能性を示しているためである(10)。
【0016】
結核菌由来のホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼ(本明細書では結核菌由来の推定パラチオン加水分解酵素、PPHとも称される)はクオラムクエンチング酵素であり(7)、以下に定義されるように、TIMバレルフォールド及び保存された触媒部位を有するホスホトリエステラーゼ(PTE)様のラクトナーゼ(7)に属する。
【0017】
本発明によれば、PPHの配列における特定の変異は、対応する野生型酵素と比較して、変異型酵素に熱安定性の増加を付与することが見出された。例として使用された特定のバリアントは、酵素を精製するためのタグとして使用される、マルトース結合タンパク質(MBP)に融合した最初のN末端メチオニンを欠失する野生型又は変異体タンパク質であった(配列番号10~12)。G58をバリンに置換すると62℃で50%の残留活性を有する酵素が得られ、H171をチロシンに置換すると65℃で50%の残留活性を有する酵素が得られると同時に、野生型結核菌ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼと比較して触媒活性が維持又は改善されることが判明した(図2A及び図2B)。さらに、G58をバリンに置換すると、野生型酵素の2倍のkcat/Kを有する酵素が得られる。なお、変異型酵素の固有の触媒活性が非常に高いため(表3を参照)、62℃~65℃の比較的非常に高い温度で50%の残留活性であったとしても、高い活性を維持する(kcat/Kが約1~2×10-1-1)。
【0018】
本明細書に開示されるタンパク質又はその断片における特定のアミノ酸残基の位置は、
配列番号1に示されるような野生型結核菌ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼの番号付けによるものであり、アミノ酸残基の1文字のコードと、野生型結核菌ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼにおけるその位置を参照して指定される。よって、例えば、野生型結核菌ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼの59位に対応する位置のグリシン(本明細書ではG59とも称される)は、ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼ断片又はMUSCLE(Multiple Sequence Comparison by Log-Expectation)若しくはMAFFT(Multiple Alignment using Fast Fourier Transform)などのタンパク質化学の分野で周知のアラインメントアルゴリズムに従った、異なるサイズの相同ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼにおいてもG59と称されることとなる(例えば、図6参照)。
【0019】
明確にするために、本明細書の実施例2~4で使用される融合タンパク質の配列中のアミノ酸残基、G58及びH171の位置は、単離野生型全長タンパク質のG59及びH172にそれぞれ対応する。同様に、結核菌由来のホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼの三次元構造を解明するために使用される機能的に活性な欠失変異体の配列は、4つの最初のN末端アミノ酸残基を欠失している(11)。よって、本明細書で特徴付けられる酵素の55位のグリシンは、本発明の酵素のアミノ酸残基の位置を同定するために使用される系によると、G59に対応する。
【0020】
ある位置のアミノ酸残基を別のアミノ酸残基で置換することは、アミノ酸残基の1文字コード、上記で定義されたその位置、及び元のアミノ酸残基を置き換えるアミノ酸残基の1文字のコードを参照することによって示される。したがって、例えば、G59のバリンによる置換はG59Vと示される。
【0021】
上記を考慮して、一態様では、本発明は、配列番号1と少なくとも30%の同一性を有するアミノ酸配列中の配列番号1の59位又は172位に対応するアミノ酸残基が置換されている、変異野生型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼを含む変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼ又はその機能的断片であって、G59に対応するグリシン残基が、バリン、アラニン、ロイシン、及びイソロイシンから選択されるアミノ酸残基で置換されているか、又はH172に対応するヒスチジン残基が、チロシン、フェニルアラニン、及びトリプトファンから選択されるアミノ酸残基で置換されており、前記変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼは、前記野生型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼと実質的に同一のTIMバレルフォールドを有し、その活性部位に保存された触媒残基を有する、すなわち、前記変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼの活性部位は、前記野生型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼの触媒残基と同一である、前記変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼ又はその機能的断片を、提供する。
【0022】
本発明の核酸分子によってコード化されるタンパク質は、特定のアミノ酸配列によって本明細書で定義されるものに限定されず、これらのタンパク質のバリアントであってもよく、又は上記に開示されたものと実質的に同一のアミノ酸配列を有し得る。本明細書で使用される「実質的に同一」のアミノ酸配列は、1又は複数の保存的又は非保存的アミノ酸置換、欠失、又は挿入によって参照配列とは異なる配列を指し、これは特に、そのような置換が分子の活性部位ではない部位で起こり、ポリペプチドが本質的にその機能的特性を保持している場合である。保存的アミノ酸置換は、例えば、あるアミノ酸を同じクラスの別のものに置換し、例えば、ある疎水性アミノ酸を別の疎水性アミノ酸に、極性アミノ酸を別の極性アミノ酸に、塩基性アミノ酸を別の塩基性アミノ酸に、及び酸性アミノ酸を別の酸性アミノ酸に置換する。1又は複数のアミノ酸をペプチドから欠失可能であり、したがって、その生物学的活性を著しく変化させることなくその断片が得られ、本明細書では「機能的断片」と称される。
【0023】
本明細書で使用される「バリアント」という用語は、それぞれ1又は複数の塩基対、コドン、又はアミノ酸残基で修飾されたポリヌクレオチド又はポリペプチドを指し、それでもなお天然に存在する配列のポリペプチドの生物学的及び酵素的活性を保持する。
【0024】
特定の実施形態において、全てのバリアント及びホモログを含む全ての変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼの生物学的活性又は酵素機能は、基質特異性及びkcat、K、及びkcat/Kなどの速度論的パラメーターによって定義される。ラクトナーゼ活性を測定するための方法は、当技術分野で周知であり、例えば、以下の実施例で教示されるように、C6-オキソ-ホモセリンラクトンなどのラクトンの加水分解は、既に記載されているように(35)、pH指示薬を使用してカルボン酸生成物の出現を追跡することによってモニタリング可能である。
【0025】
触媒残基は、PTE様ラクトナーゼ(PLL)全体で保存されている:His26、His28、His182及びHis211、並びにAsp270。6番目の結合残基はカルバミル化Lys149である(番号付けはPPH用)(図2D及び図6)。これらのアミノ酸残基のいずれかに変異があると、機能欠失となる。
【0026】
結果として、上記で定義されたように、本発明の変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼのいずれか1つは、未変化の活性部位を有する。すなわち、配列番号1の野生型全長PPHのHis26、His28、Lys149、His182、His211、及びAsp270に対応するこれらの変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼのアミノ酸残基のそれぞれが保存されている。
【0027】
特定の実施形態において、配列番号1と少なくとも30%の同一性を有し、野生型酵素のものと実質的に同一であるTIMバレルフォールドを含む、本明細書に記載の各変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼ、相同体、及びバリアント/変異体PPHは、C4-HSL (PubChem CID:10330086、別名3-ヒドロキシ-C-HSL, N-(3-ヒドロキシブタノイル)-L-ホモセリンラクトン)、C6-オキソ-HSL (PubChem CID:688505、別名N-(3-オキソ-ヘキサノイル)-ホモセリン、N-カプロイル-L-ホモセリンラクトン、N-[(3S)-テトラヒドロ-2-オキソ-3-フラニル]ヘキサナミド、HHL)、C8-オキソ-HSL (PubChem CID:6914579、別名N-[(3S)-テトラヒドロ-2-オキソ-3-フラニル]オクタンアミド)、及びC10-HSL (PubChem CID:10131281、別名N-[(3S)-テトラヒドロ-2-オキソ-3-フラニル]デカンアミド)などが挙げられ、特にC6-オキソ-HSLである、ラクトンを加水分解可能な活性酵素である。
【0028】
「TIMバレルフォールド」という用語は、本明細書ではその従来の意味で使用され、ペプチド骨格に沿って交互になる8つのα-ヘリックス及び8つの平行なβ-ストランドからなる保存されたタンパク質フォールドを指す(12)。
【0029】
タンパク質の三次構造を決定するための、又はそのモデルを生成するための方法は、当技術分野で周知であり、多数のタンパク質に対して容易に行い得る。例えば、TIMバレルフォールドのモデルは、公知の構造テンプレートとシーケンス構造アラインメントに基づいてモデルを計算する自動ソフトウェア・パイプラインであるMODPIPEを使用して生成してもよい(13)。
【0030】
本発明の変異野生型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼのバリアント及びホモログは、変異体タンパク質を特徴付ける変異を含まない、配列番号1の野生型ホスホトリエス
テラーゼ様ラクトナーゼとのそれらの配列同一性によって定義される。したがって、例えば、変異体G59Vと90%の同一性を有するホモログは、1位~58位及び60位~330位のアミノ酸残基を含む配列(又は1位~330位のアミノ酸残基を含み、59位に関連する配列は野生型G59と同一)と90%の同一性を有する。
【0031】
特定の実施形態において、配列番号1と少なくとも30%の同一性を有するアミノ酸配列は、配列番号1と30%~99%、30%~98%、30%~97%、30%~96%、30%~95%、30%~90%、30%~85%、30%~80%、30%~75%、30%~70%、30%~65%、30%~60%、30%~55%、30%~50%、30%~45%、30%~40%、40%~99%、40%~98%、40%~97%、40%~96%、40%~95%、40%~90%、40%~85%、40%~80%、40%~75%、40%~70%、40%~65%、40%~60%、40%~55%、40%~50%、40%~45%、50%~99%、50%~98%、50%~97%、50%~96%、50%~95%、50%~90%、50%~85%、50%~80%、50%~75%、50%~70%、50%~65%、50%~60%、50%~55%、60%~99%、60%~98%、60%~97%、60%~96%、60%~95%、60%~90%、60%~85%、60%~80%、60%~75%、60%~70%、60%~65%、70%~99%、70%~98%、70%~97%、70%~96%、70%~95%、70%~90%、70%~85%、70%~80%、70%~75%、80%~99%、80%~98%、80%~97%、80%~96%、80%~95%、80%~90%、80%~85%、90%~99%、90%~98%、90%~97%、90%~96%、又は90%~95%の同一性を有する。
【0032】
特定の実施形態において、配列番号1と少なくとも30%の同一性を有するアミノ酸配列は、配列番号1と少なくとも31%、少なくとも32%、少なくとも33%、少なくとも34%、少なくとも35%、少なくとも36%、少なくとも37%、少なくとも38%、少なくとも39%、少なくとも40%、少なくとも41%、少なくとも42%、少なくとも43%、少なくとも44%、少なくとも45%、少なくとも46%、少なくとも47%、少なくとも48%、少なくとも49%、少なくとも50%、少なくとも51%、少なくとも52%、少なくとも53%、少なくとも54%、少なくとも55%、少なくとも56%、少なくとも57%、少なくとも58%、少なくとも59%、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、又は少なくとも98%の同一性を有する。
【0033】
特定の実施形態において、配列番号1と少なくとも30%の同一性を有するアミノ酸配列は、配列番号1と31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有する。特定の実施形態において、前記アミノ酸配列は、少なく
とも79%の同一性を有し、配列番号16~110(表2)に示される配列の群から選択される。
【0034】
特定の実施形態において、配列番号1のG59に対応するグリシン残基が、バリン、アラニン、ロイシン、又はイソロイシンによって置換されているか、又は配列番号1のH172に対応するヒスチジン残基が、チロシンフェニルアラニン又はトリプトファンで置換されている。特定の実施形態において、これらの置換のいずれか1つは、配列番号16~110のいずれか1つと比較して、変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼの配列における唯一の置換であるが、他のアミノ酸残基の所望の保存的置換又はN末端若しくはC末端の1又は複数のアミノ酸残基の所望の欠失を除く。特定の実施形態において、これらの置換のいずれかは、配列番号1と比較して、変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼの配列における唯一の置換である。すなわち、例えば、酵素機能に影響を及ぼさないN末端又はC末端でのアミノ酸残基の所望の欠失を除いて、アミノ酸配列に他の修飾はなされない。
【0035】
特定の実施形態において、配列番号1のG59に対応するグリシン残基が、バリンによって置換されている。特定の実施形態において、これは、配列番号16~110のいずれか1つと比較して、変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼの配列における唯一の置換であるが、他のアミノ酸残基の所望の保存的置換又はN末端若しくはC末端の1又は複数のアミノ酸残基の所望の欠失を除く。特定の実施形態において、これは、他のアミノ酸残基の保存的置換を除いて、配列番号1と比較した、変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼの配列における唯一の置換である。特定の実施形態において、これは、配列番号1と比較して、変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼの配列における唯一の置換である。すなわち、N末端又はC末端の1又は複数のアミノ酸残基の所望の欠失を除いて、アミノ酸配列に他の修飾はなされない。特定の実施形態において、変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼは、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むか、又は本質的にそれからなる。
【0036】
特定の実施形態において、配列番号1のH172に対応するヒスチジン残基が、チロシンによって置換されている。特定の実施形態において、これは、配列番号16~110のいずれか1つと比較して、変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼの配列における唯一の置換であるが、他のアミノ酸残基の所望の保存的置換又はN末端若しくはC末端の1又は複数のアミノ酸残基の所望の欠失を除く。特定の実施形態において、これは、他のアミノ酸残基の保存的置換を除いて、配列番号1と比較した、変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼの配列における唯一の置換である。特定の実施形態において、これは、配列番号1と比較して、変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼの配列における唯一の置換である。すなわち、N末端又はC末端の1又は複数のアミノ酸残基の所望の欠失を除いて、アミノ酸配列に他の修飾はなされない。特定の実施形態において、変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼは、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含むか、又は本質的にそれからなる。
【0037】
実用的な目的のために、本発明の野生型又は変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼのいずれか1つを、溶解性の向上のために、リガンド含有基質への特異的結合によって細胞抽出物から分離するのに有用なタグを含む融合タンパク質として提供してもよい。例えば、本発明の改良型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼのいずれか1つは、アミノ末端にマルトース結合タンパク質との融合タンパク質として提供されてもよい。タグの他の例には、キチン結合タンパク質(CBP)、Strepタグ(例えば、ストレプトアビジンに対して固有の結合親和性を示す選択された9アミノ酸ペプチド(AWRHPQFGG))、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、及びポリ(His)タグが挙げられる。変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼの溶解性を改善するために
使用されるチオレドキシン(TRX)及びポリ(NANP)を含むタグも使用され得る。タグは、化学薬品によって、又はタンパク質分解若しくはインテインスプライシング(intein splicing)などの酵素的手段によって、所望により除去可能である。
【0038】
あるいは、前記ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼは、増殖培地へのその分泌を促進するシグナル配列を含む融合タンパク質として提供又はコード化されてもよい。これは、細胞を破壊する必要性を排除し、増殖培地を収集するだけで本発明のタンパク質を回収することを可能にするため有用である。シグナル配列は、タンパク質の発現に使用される宿主細胞の種類に合うものとなっている。Freudl(14)は、細菌では、2つの主要な輸出経路、通常の分泌又はSec経路及びツインアルギニン転座又はTat経路が、原形質膜を通過するタンパク質の輸送のために存在することを教示している。これらの代替タンパク質輸出システムの1つへの経路は、Sec又はTat特異的シグナルペプチドを目的の標的タンパク質のアミノ末端に融合させる必要がある。
【0039】
要するに、本発明のホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼは、Sec又はTatシグナルペプチドを含む融合タンパク質として提供されてもよい。これらのペプチドは、正に帯電したn領域、中央の疎水性h領域、及びシグナルペプチダーゼの認識部位(コンセンサス:A-X-A)を含む極性c領域からなる同様の三者構成の全体構造を有する。Tatシグナルペプチドでは、2つの高度に保存されたアルギニン残基を含む特徴的なアミノ酸コンセンサスモチーフが、しばしば著しく長いn領域とh領域との間の境界に存在する。さらに、Tatシグナルペプチドのh領域は、Secシグナルペプチドに見られるものよりも疎水性がほとんどなく、Tatシグナルペプチドのc領域には、しばしば正に帯電したアミノ酸(いわゆるSec回避モチーフ)が存在し、Sec経路へのTat基質の誤ったターゲティングを防ぐ。
【0040】
シグナルペプチドは、それぞれのタンパク質トランスロカーゼへのターゲティング及び膜移行に必要であることに加えて、それぞれの標的タンパク質の生合成、折り畳み速度論、及び安定性にもさらなる影響を及ぼすことから、これまでのところ、特定の標的タンパク質及び特定の細菌発現宿主の観点から、どのシグナルペプチドが最もよく機能するかを事前に予測することはできない。しかしながら、所望のタンパク質に最適なシグナルペプチドを見つけるための方法は周知であり、例えば、Freudl(本明細書に完全に開示されているかのように参照により援用される)。シグナル配列は、分泌の過程で除去され得るか、化学薬品によって、又はタンパク質分解若しくはインテインスプライシングなどの酵素的手段によって所望により除去可能である。
【0041】
特定の実施形態において、タグに融合された本発明の変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼのいずれか1つは、そのN末端又はC末端において(野生型PPHと比較して)N末端の1~4アミノ酸残基などの1~10アミノ酸残基を欠失してもよく、前記タグはN末端に融合している。さらに、リンカーは、タグの配列と、例えば、約10残基のポリアスパラギンなどの変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼとの間に挿入され得る。
【0042】
特定の実施形態において、変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼ融合タンパク質は、配列番号10、11、又は12のものである。
【0043】
特定の実施形態において、上記実施形態のいずれか1つの変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼは、非変異野生型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼの熱安定性と比較して増加した熱安定性、又は前記非変異野生型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼと比較して、基質としてN-(3-オキソ-ヘキサノイル)-ホモセリンラクトン(C
6-オキソ-HSL)を用いて提供される実質的に同様又はより高いラクトナーゼ触媒活性を有する。
【0044】
本明細書で使用される「熱安定性」という用語は、高温に曝露されたとき、又は曝露後、すなわち、ほとんどの関連タンパク質において部分的又は完全な変性及び失活を引き起こす温度で、その活性を維持するタンパク質の固有の特性を指す。熱安定性は、酵素をある範囲内の温度でインキュベートし、次に最適温度で触媒活性を測定した後、酵素の最大活性の50%(最適条件で)が得られる温度として、相対項T50で測定される場合が多く、本明細書では「50%残留活性」と称される。
【0045】
特定の実施形態において、増加した熱安定性は、野生型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼのそれよりも実質的又は有意に高い、すなわち約40℃より実質的又は有意に高い温度での50%の残留活性(特定の温度でのインキュベーション後)によって特徴付けられる。
【0046】
特定の実施形態において、50%の残留活性(T50)として表される増加した熱安定性は約50℃~80℃、50℃~75℃、50℃~70℃、50℃~65℃、60℃~80℃、60℃~75℃、60℃~70℃、60℃~65℃、70℃~80℃、70℃~75℃、又は75℃~80℃であるか、50℃、51℃、52℃、53℃、54℃、55℃、56℃、57℃、58℃、59℃、60℃、61℃、62℃、63℃、64℃、65℃、66℃、67℃、68℃、69℃、70℃、71℃、72℃、73℃、74℃、75℃、76℃、77℃、78℃、79℃、又は80℃である。
【0047】
特定の実施形態において、増加した熱安定性は、約65℃で50%の残留活性を含み、特にG59をバリンに置換すると、約62℃で50%の残留活性を有する酵素になり、H172をチロシンに置換すると、約65℃で50%の残留活性を持つ酵素になる。
【0048】
特定の実施形態において、変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼG59Vは、野生型酵素のそれより2倍高いkcat/Kを有する酵素をもたらす。
【0049】
本明細書で使用される「実質的に類似のラクトナーゼ触媒活性」という用語は、参照と同桁数のラクトナーゼ活性、例えば、野生型酵素のラクトナーゼ活性として同桁数を指す。
【0050】
さらに、本発明によれば、変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼは、前記非変異野生型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼと比較して、延長された貯蔵寿命を有することが見出された。明示されているように、例えば変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼの触媒活性は、室温(約25℃)で37日間保存すると実質的に高くなる(2倍)一方、非変異野生型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼのラクトナーゼ触媒活性は、室温で37日間保存した後の元の活性の約5%である。精製から13日後、バリアントPPH_R2:P4-D5(G59Vに対応)の残留活性は約50%であったが、野生型酵素の活性は20%であった(図2C)。
【0051】
したがって、特定の実施形態において、上記の実施形態のいずれか1つの変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼは、前記非変異野生型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼと比較して延長された貯蔵寿命を有する。
【0052】
特定の実施形態において、上記の実施形態のいずれか1つの変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼは、最大40日間、例えば4~40、6~40、8~40、10~40、12~40、14~40、16~40、18~40、20~40、22~40、24
~40、26~40、28~40、30~40、32~40、34~40、36~40、38~40、4~38、6~38、8~38、10~38、12~38、14~38、16~38、18~38、20~38、22~38、24~38、26~38、28~38、30~38、32~38、34~38、36~38、4~36、6~36、8~36、10~36、12~36、14~36、16~36、18~36、20~36、22~36、24~36、26~36、28~36、30~36、32~36、34~36、4~34、6~34、8~34、10~34、12~34、14~34、16~34、18~34、20~34、22~34、24~34、26~34、28~34、30~34、32~34、4~32、6~32、8~32、10~32、12~32、14~32、16~32、18~32、20~32、22~32、24~32、26~32、28~32、30~32、4~30、6~30、8~30、10~30、12~30、14~30、16~30、18~30、20~30、22~30、24~30、26~30、28~30、4~28、6~28、8~28、10~28、12~28、14~28、16~28、18~28、20~28、22~28、24~28、26~28、4~26、6~26、8~26、10~26、12~26、14~26、16~26、18~26、20~26、22~26、24~26、4~24、6~24、8~24、10~24、12~24、14~24、16~24、18~24、20~24、22~24、4~22、6~22、8~22、10~22、12~22、14~22、16~22、18~22、20~22、4~20、6~20、8~20、10~20、12~20、14~20、16~20、18~20、4~18、6~18、8~18、10~18、12~18、14~18、16~18、4~16、6~16、8~16、10~16、12~16、14~16、4~14、6~14、8~14、10~14、12~14、4~12、6~12、8~12、10~12、4~10、6~10、8~10、4~8、6~8、又は4~6日間の貯蔵寿命を有する。特定の実施形態において、上記の実施形態のいずれか1つの変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼは、約4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、又は40日間の貯蔵寿命を有する。
【0053】
特定の実施形態において、本発明の変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼでは、配列番号1のG59に対応するグリシン残基がバリンで置換されているか、又は配列番号1のH172に対応するヒスチジン残基がチロシンで置換されており、上記で定義されるように、前記変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼが、非変異野生型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼの熱安定性と比較して増加した熱安定性、又は上記で定義されるように、前記非変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼと比較して、基質としてN-(3-オキソ-ヘキサノイル)-ホモセリンラクトンを用いて提供される実質的に同様又はより高いラクトナーゼ触媒活性を有する。
【0054】
特定の実施形態において、変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼは、配列番号2、配列番号3、配列番号11、又は配列番号12に示されるアミノ酸配列を含むか、又は本質的にそれからなり、T50として表される前記増加した熱安定性が約55℃~約80℃、例えば約65℃(又は上記で定義される)であるか、又は上記で定義されるように、前記変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼは、前記非変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼと比較して延長された貯蔵寿命を有する。
【0055】
別の態様では、本発明は、上記の実施形態のいずれか1つの変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼを含む組成物を対象とする。
【0056】
特定の実施形態において、上記の組成物のいずれか1つは、石鹸、高級アルコール硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、第四級アンモニウム塩、ポ
リアルキレンオキシドなどの農業的に許容される界面活性剤、キサンタンガムやタルク、リグノ硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストリンなどのコーティング剤、アルギン酸ナトリウムなどのゲル形成剤、脂肪アルコールポリグリコールエーテルであるGenapol(登録商標)X060及びポリジメチルシロキサン消泡剤エマルジョンであるAF(登録商標)365 Antifoamなどの湿潤剤、ポリジメチルシロキサン消泡剤エマルジョンであるAF(登録商標)365 Antifoamなどの非イオン性界面活性剤消泡剤、及び/又はグリセロールなどの安定剤をさらに含む。前記組成物は、固体担体、液体担体、乳化剤、及び分散剤などをさらに含み得、これらはすべて当技術分野で周知である。これらの担体の例には、アカシア、酸性白土、ベントナイト、炭酸カルシウム、二酸化炭素、粘土、珪藻土、フレオン、カオリン、ニトロセルロース、及びデンプンが挙げられる。
【0057】
特定の実施形態において、上記の組成物のいずれか1つは、固体材料(例えば、粉末)又は溶液の形態で処方される。
【0058】
特定の実施形態において、上記の組成物のいずれか1つは、金属、例えば銀若しくは銅又はそれらの合金(真ちゅう、青銅、白銅、銅-ニッケル-亜鉛)、硫酸銅(CuSO)などの金属イオン塩などの追加の抗菌剤、ストレプトマイシン硫酸塩、オキシテトラサイクリン、オキソリン酸、及びゲンタマイシンなどの植物農業で使用される抗生物質、又はマンコゼブ(Mancozeb)、トリシクラゾール(Tricyclazole)、カルベンダジム(Carbendazim)、ヘキサコナゾール(Hexaconazole)、メタラキシル(Metalaxyl)、ベノミル(Benomyl)、ジフェノコナゾール(Difenoconazole)、プロピコナゾール(Propiconazole)、キタジン(Kitazin)、テブコナゾール(Tebuconazole)、オキシ塩化銅(Copper oxychloride)、トリデモルフ(Tridemorph)、及びプロピネブ(Propineb)などの殺菌剤をさらに含む。
【0059】
特定の実施形態において、上記の組成物のいずれか1つは、1又は複数の生理学的に許容される担体又は賦形剤をさらに含む医薬組成物である。前記担体は、前記組成物の他の成分と適合性があり、そのレシピエントに有害であってはならないという意味で「許容可能」でなければならない。
【0060】
「担体」という用語は、活性剤が投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、又はビヒクルを指す。前記医薬組成物中の担体は、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン(ポリビドン又はポビドン)、トラガカントガム、ゼラチン、デンプン、乳糖、又は乳糖一水和物などの結合剤、アルギン酸及びトウモロコシ澱粉などの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム又はラウリル硫酸ナトリウムなどの潤滑剤又は界面活性剤、及びコロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤を含んでいてもよい。
【0061】
追加の態様では、本発明は、クオラムセンシング調節系を介して、細菌に感染している又は感染しやすい宿主の細菌感染を治療又は予防する方法であって、前記細菌は、N-(3-ヒドロキシブタノイル)-L-ホモセリンラクトン(C4-HSL)、N-(3-オキソ-ヘキサノイル)-ホモセリンラクトン(C6-オキソ-HSL)、N-[(3S)-テトラヒドロ-2-オキソ-3-フラニル]オクタナミド(C8-オキソ-HSL)、及びN-[(3S)-テトラヒドロ-フラニル]デカンアミド(C10-HSL)から選択されるラクトンを分泌し、前記方法は、前記宿主に、結核菌由来の野生型推定パラチオン加水分解酵素(PPH、配列番号1)と少なくとも30%の同一性を有し、前記野生型推定パラチオン加水分解酵素と実質的に同一のTIMバレルフォールドを有し、その活性部位に保存された触媒残基を有する、ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼ、その機能的断片、又は上記の開示された実施形態のいずれか1つ又は上記で定義された組成物のい
ずれか1つの変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼを適用又は投与することを含む、前記方法を提供する。結核菌由来の推定パラチオン加水分解酵素の基質特異性は、Afriat et al., 2006(7)より公知である。
【0062】
上記のラクトンの1又は複数を分泌する細菌の例には、
クオラムセンシング調節系に依存するグラム陰性日和見病原体である緑膿菌は、植物病原体であり、嚢胞性線維症患者及び免疫不全患者の罹患率及び死亡率の主要な原因でもあり、C4-HSL及びC12-オキソ-HSLを分泌する(22)。
【0063】
シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)は土壌や水中に見られ、C8-HSLを分泌する主要な食品腐敗菌である(23)。これはヒトにおける疾病の特異な原因であり、通常、免疫系が低下している患者に影響を及ぼす。
【0064】
エルウィニア・アミロボラはバラ科作物に火傷病を引き起こし、N-アシルホモセリンラクトン、N-(3-オキソ-ヘキサノイル)-ホモセリンラクトン、及びN-(3-ヒドロキシ-ヘキサノイル)-ホモセリンラクトンを生成及び分泌する(15)。
【0065】
軟腐病菌は、トマトでは細菌の茎の腐敗及び果実の腐敗を引き起こし、ジャガイモでは軟腐病を引き起こし、QSシグナル伝達を使用して細胞外酵素やHrp(III型分泌)システムなどの病原性因子の発現、および主に3-オキソ-C6及び3-オキソ-C8AHLによって制御されるカルバペネム系抗生物質の産生を制御する(16)(17)(18)(19)(Barnard a et al., 2007)。
【0066】
シュードモナス・コルゲートは、C6-HSLクオラムセンシングシグナル(3-オキソ-C6及び3-オキソ-C8 AHL)を分泌して、病原性、抗菌活性、及び適応度に寄与する特性を調節する(4)。
【0067】
シュードモナス・シリンガエは細菌の斑点病を引き起こし、3-オキソ-C6、3-オキソ-C8、C8-AHLに固有の複数のQS回路を使用することが報告されている(21)。
【0068】
バークホルデリア・ベトナミエンシスは複数のAHL分子を生成し、主なAHLであるN-デカノイルホモセリンラクトン(C10-HSL)、C8-HSL、及びN-ヘキサノイルホモセリンラクトン(C6-HSL)を有し(24)、バークホルデリア・セパシアはN-オクタノイルホモセリンラクトンを分泌し(25)、並びにバークホルデリア・タイランデンシスはN-オキソ-デカノイルホモセリンラクトン(C10-オキソ-HSL)及びN-オキソ-オクタノイルホモセリンラクトン(C8-オキソ-HSL)を分泌する(26)。
【0069】
特定の実施形態では、前記宿主は植物であり、したがって本発明は、植物又はその一部、器官、若しくは植物繁殖材料における細菌の感染を治療又は予防するための方法であって、前記植物は、N-(3-ヒドロキシブタノイル)-L-ホモセリンラクトン(C4-HSL)、N-(3-オキソ-ヘキサノイル)-ホモセリンラクトン(C6-オキソ-HSL)、N-[(3S)-テトラヒドロ-2-オキソ-3-フラニル]オクタナミド(C8-オキソ-HSL)、及びN-[(3S)-テトラヒドロ-フラニル]デカンアミド(C10-HSL)から選択されるラクトンを分泌する細菌に感染している又は感染しやすく、前記方法が、前記植物又はその一部、器官、若しくは植物繁殖材料に対して、結核菌(M. tuberclorosis)由来の野生型推定パラチオン加水分解酵素(PPH、配列番号1)と少なくとも30%の同一性を有し、前記野生型推定パラチオン加水分
解酵素と実質的に同一のTIMバレルフォールドを有し、その活性部位に保存された触媒残基を有する、ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼ、その機能的断片、又は上記の開示された実施形態のいずれか1つ又は上記で定義された組成物のいずれか1つの変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼを適用又は投与することを含む、前記方法を提供する。
【0070】
よって、特定の実施形態において、前記細菌が、エルウィニア・アミロボラ、軟腐病菌、シュードモナス・シリンガエ、シュードモナス・コルゲート、バークホルデリア・ベトナミエンシス、バークホルデリア・セパシア、バークホルデリア・タイランデンシス、及び緑膿菌、並びに任意の病原型からなる群から選択される。特定の実施形態において、前記細菌は、エルウィニア・アミロボラ、軟腐病菌、及びシュードモナス・シリンガエから選択されるC6-オキソ-HSLを分泌する細菌である。
【0071】
特定の実施形態において、前記はエルウィニア・アミロボラであり、それによって引き起こされる植物病害は、例えば、リンゴやナシなどのナシ状果樹などのバラ科作物の火傷病である。
【0072】
特定の実施形態において、前記細菌は、軟腐病菌であり、それによって引き起こされる植物病害は、ニンジン、ジャガイモ、トマト、葉物野菜、カボチャなどのウリ科植物、タマネギ、ピーマン、セントポーリアなどの植物に対する細菌性軟腐病であり、特に、ジャガイモのビートヴァスキュラーネクロシス(beet vascular necrosis)及び黒脚病(blackleg)、並びに多くの異なる樹種でのスライムフラックス(slime flux)病である。
【0073】
特定の実施形態において、前記細菌はシュードモナス・シリンガエであり、それによって引き起こされる植物病害は、細菌性斑点病である。特に、シュードモナス・シリンガエ細菌は、シュードモナス・トマト(従来はPseudomonas syringae pv. tomatoとして公知)であり得、前記病害はトマト細菌性斑点病であり得る。
【0074】
特定の実施形態において、前記宿主は、嚢胞性線維症患者及び免疫不全の個体などの哺乳動物であり、前記細菌は、緑膿菌又はシュードモナス・フルオレッセンスである。
【0075】
特定の実施形態において、結核菌由来の推定パラチオン加水分解酵素又は上記の実施形態のいずれか1つで定義されるその組成物、及びCuSOなどの銅塩を含む別個の組成物を、前記植物又はその部分、器官、若しくは植物繁殖材料に別々に適用する。2つの組成物は、同時に又は連続して適用され得る。
【0076】
特定の実施形態において、上記の実施形態のいずれか1つの細菌の感染を治療又は予防する方法は、上記の実施形態のいずれか1つの変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼを適用することを含む。
【0077】
特定の実施形態において、上記の開示された実施形態のいずれかの細菌の感染を治療又は予防する方法は、配列番号1のG59がバリンで置換された前記変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼ、例えば配列番号2又は配列番号11に記載の又は上記の実施形態のいずれか1つで定義されるアミノ酸配列を含む又は本質的にそれからなる、前記変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼ、又は配列番号1のH172がチロシンで置換された前記ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼ、例えば配列番号3又は配列番号12に記載の又は上記の実施形態のいずれか1つで定義されるアミノ酸配列を含む又は本質的にそれからなる、前記変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼ、を適用することを
含む。
【0078】
さらに追加の態様では、上記の実施形態のいずれか1つで定義される変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼをコード化する核酸配列を含む単離核酸分子を提供する。
【0079】
特定の実施形態において、前記単離核酸分子は、リガンド含有基質への特異的結合によって細胞抽出物から分離するのに有用なタグを含む融合タンパク質をコード化する。例えば、本発明の野生型又は改良変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼのいずれか1つをコード化する核酸配列は、マルトース結合タンパク質をコード化する配列に融合され得る(例えば、配列番号13~15のいずれか1つに記載されているように、又はそのようなタグに同様に融合された表2の配列番号16~110の配列のいずれかをコード化し得る)。あるいは、前記核酸配列は、上記のように増殖培地への分泌を促進するシグナル配列を含む本発明のホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼのいずれか1つをコード化する。
【0080】
特定の実施形態において、前記核酸配列は、配列番号4(野生型)、配列番号5(G59V)、配列番号6(H172Y)、又は配列番号10(MBPとの野生型融合)に記載されている野生型又は変異体酵素をコード化する元の未修飾DNA配列である。
【0081】
特定の実施形態において、前記核酸配列は、その発現レベルを増加させるために、大腸菌における発現のために最適化される。例えば、前記核酸配列は、大腸菌でよく見られるtRNAと一致するようにそのコドンを変更することによって最適化され得る(例えば、Puigbo et al., Nucleic Acids Research, 2007, Vol. 35を参照)。特定の実施形態において、野生型酵素の最適化された配列は、配列番号7に示される通りである。
【0082】
特定の実施形態において、前記(コドン最適化)核酸配列は、配列番号8[G59V]又は配列番号9[H172Y]に記載される通り、又はそのMBP融合タンパク質は、配列番号14及び15に示される通りである。
【0083】
さらに追加の態様では、本発明は、プロモーターに作動可能に連結された上記の開示された実施形態のいずれか1つの核酸分子を含む発現ベクターを提供する。
【0084】
調節配列が、それに連結されたコード化配列に対して調節効果を発揮可能な場合、コード化核酸配列は、調節配列(例えば、プロモーター)に「作動可能に連結」される。
【0085】
本明細書で使用される場合、「プロモーター」という用語は、RNAポリメラーゼが結合してRNAの転写を開始する遺伝子の転写開始部位の上流にあるDNAの領域を指す。プロモーターは遺伝子発現の開始を制御する。
【0086】
本発明のいくつかの実施形態によれば、プロモーターは、単離されたポリヌクレオチド及び/又は宿主細胞に対して異種である。
【0087】
任意の適切なプロモーター配列を、本発明の核酸構築物によって使用してもよい。プロモーターは構成的又は誘導性であり得る。
【0088】
さらに別の態様では、本発明は、上記に開示された実施形態のいずれか1つの単離核酸分子又は上記で定義された発現ベクターを含む及び/又は発現する細胞を提供する。
【0089】
特定の実施形態において、前記細胞は、細菌、真菌、哺乳動物又は植物細胞、好ましく
は細菌細胞、特に大腸菌から選択される。
【0090】
さらに別の態様では、本発明は、変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼ又はその機能的断片を生成する方法であって、(i)上記の開示された実施形態のいずれか1つの細胞を培養することと、(ii)前記変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼを前記細胞から分離することにより、変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼを得ることとを含む、前記方法を対象とする。
【0091】
特定の実施形態において、前記細胞は、細菌、真菌、哺乳動物又は植物細胞、好ましくは細菌細胞、特に大腸菌から選択される。
【0092】
細菌細胞を増殖させるための方法、及び細胞から分泌されたタンパク質を回収するための方法は、当技術分野で周知である(Choi, J.H., and Lee, S.Y., 2004)。非限定的な例として、大腸菌細胞は、グルコースを含む溶原培地(LB)培地などの適切な増殖培地で増殖させてもよい。次に、細菌を回収し、適切な溶解バッファーで溶解し、例えば超音波処理によって破壊する。あるいは、タンパク質は、増殖培地へのタンパク質の分泌を促進するシグナル配列でタグ付けされており、これにより、細胞を溶解する工程が節約される。次に、分泌又は放出されたタンパク質は、清澄化された増殖培地又は溶解物から単離及び精製される。目的のタンパク質が単離を容易にする目的でタグ付けされている場合、タグに特異的に結合するカラムで精製され、洗浄され、溶出される。例えば、目的のタンパク質とマルトース結合タンパク質とを含む組換えタンパク質を含む清澄化した溶解物をアミロースカラムにロードする。次に、組換えタンパク質をマルトース添加カラムバッファーで溶出する。タンパク質を含む溶出画分を収集し、濃縮し、所望によりサイズ排除カラムを使用して分画する。変異酵素を生成するための方法の非限定的な特定の例は、以下の実施例に見出される。
【0093】
特定の実施形態において、前記ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼは、マルトース結合タンパク質(MBP)などのタグをさらに含む(例えば、配列番号10~12のいずれか1つに示される又は同様にそのようなタグに融合されている表2の配列番号16~110の配列のいずれかに記載されている)。あるいは、本発明のホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼは、上記のように増殖培地への分泌を促進するシグナル配列を含む融合タンパク質として提供又はコード化され得る。
【0094】
さらに、ラクトナーゼ及びホスホトリエステラーゼの触媒活性は、例えば、本発明の実験部分に開示された方法によって、それぞれの基質で試験され得る。
【0095】
さらなる態様において、本発明は、上記の実施形態のいずれか1つの組成物で少なくとも部分的に覆われるか又はコーティングされた、植物又はその一部、器官、若しくは植物繁殖材料を提供する。
【0096】
特定の実施形態では、前記植物は、リンゴ及びナシの木などのバラ科作物、ニンジン、ジャガイモ、トマト、葉物野菜、カボチャ及び他のウリ科植物、タマネギ、ピーマン、セントポーリアなどのイワタバコ科、ビーツ、及びジャガイモから選択される。
【0097】
本明細書で使用される「治療(する)」という用語は、所望の生理学的効果を得る手段を指す。その効果は、病害及び/又は病害に起因する症状を部分的又は完全に治癒するという点で治療的であり得る。この用語は、病害を抑制すること、すなわちその発症を阻止すること、病害を改善すること、すなわち病害の退行を引き起こすこと、又は感染を防止又は制限することにより、植物又はその一部、器官、若しくは植物繁殖材料を病害から保護することを指す。本明細書で使用される用語はさらに、例えば、EPSの形成に寄与す
る細胞外多糖(EPS)マトリックス又はレバンの減少に見られる細菌の病原性の減少を指す(図3を参照)。
【0098】
「予防(する)」という用語は、本明細書では「保護(する)」又は「予防的治療」という用語と互換的に使用されてもよく、識別可能な微生物感染前に、感染しやすい哺乳動物、植物又はその一部、器官、若しくは植物繁殖材料への本発明の組成物を適用することを指す。
【0099】
前記組成物を適用することにより、例えば、種子、果実、開花、又は花への感染を防ぐ方法は、本予防方法の対象ではなかった種子、果実、開花、又は花と比較して、その後の感染の減少をもたらし得る。前記処理は細菌の死滅させたり細胞増殖の阻害したりしないため、前記用語は必ずしも微生物感染又は微生物の存在の完全な欠如をもたらすと理解されるべきではない。例えば、識別可能な感染の前に微生物感染を防止する方法に供された種子は、植え付け後、本方法に供されなかった種子に由来する植物と比較して、より長い茎長及び葉量を有する植物をもたらし、この場合、本発明の防止方法の効果が観察され得る。植物バイオマス収量の違いは、未処理の種子と比較して、種子の無感染、又は予防的処理にもかかわらず、その後に発症した前処理された種子の感染レベル低下の結果となる。花、全開花、及び果実は、本発明の組成物を適用することによって同様に前処理してもよく、その結果、花、開花、及び果実の完全性が維持され(図4A図4Cを参照)、したがって収量が増加する。別の例は、(同じ圃場又は他の圃場からの)感染した植物の近くで成長する植物又は実生における微生物の感染を防ぐために本発明の方法を使用することが考えられる。感染性病原体が感染した植物又は圃場から元々感染していない植物又は圃場に広がる場合、予防的処理は植物を保護し、よって本方法の対象とされなかった植物又は苗と比較してより高い収量をもたらす。
【0100】
本発明の方法は、本明細書で定義される組成物を、植物又は部分、器官、若しくは植物繁殖材料に直接適用することを含み得る。あるいは、前記組成物は、顆粒、粉剤、乳化性濃縮物、水和剤、ペースト、水性流動性物質、乾燥流動性物質、油剤、エアロゾル、噴霧剤、又は燻蒸剤などの製剤に、上記のように適切な固体担体、液体担体、乳化および分散剤とともに適用することができる。
【0101】
特定の実施形態において、上記の組成物又は製剤のいずれか1つは、噴霧、浸漬、ドレッシング、コーティング、ペレット化、又は浸漬によって、植物又はその一部、器官、若しくは植物繁殖材料に適用される。
【0102】
特定の実施形態において、本発明の方法は、種子、根、果実、塊茎、球根、根茎、又は植物の一部などの繁殖材料に対する上記で定義された細菌の感染の治療又は予防を目的とし、前記組成物は、感染の検出の前又は後に、噴霧、浸漬、ドレッシング、コーティング、ペレット化、又は浸漬によって前記繁殖材料に適用される。
【0103】
特定の実施形態において、前記植物繁殖材料は、種子又は果実である。
【0104】
特定の実施形態では、前記植物の部分は、葉、枝、花、開花、花序、又は茎である。
【0105】
「結核菌由来のホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼ」という用語は、本明細書では、「結核菌由来の推定パラチオン加水分解酵素(PPH)」及びクオラムクエンチング(QQ)PPHという用語と互換的に使用される。
【0106】
「本質的に~からなる」又は「~から本質的になる」という移行句は、アミノ酸又は核酸配列を指す場合、列挙された配列を含み、列挙されていないタンパク質自体又は核酸配
列によってコード化されるタンパク質の基本的及び新規の特性に実質的に影響を及ぼさない配列の存在又は不在を受け入れる配列を指す。
【0107】
50%の残留活性が測定される温度を指す場合の「実質的に高い」という用語は、基準より少なくとも5℃高い差を指す。
【0108】
「より有意に高い」という用語は、例えば、α=0.05のスチューデントのt検定で試験した統計的に有意な差を指す。
【0109】
本明細書で使用される「約」という用語は、提供された値より10%上又は下の値も含まれることを意味する。しかしながら、「約」という用語が前に付いていない数値は、全ての場合にこの用語によって修飾されていると理解されるべきである。したがって、特にそれとは反対の指示がない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載された数値パラメーターは、本発明によって得られることが求められる所望の特性に応じて±10%まで変動し得る近似値である。
【0110】
【表1】
【0111】
【表2-1】

【表2-2】

【表2-3】

【表2-4】

【表2-5】

【表2-6】

【表2-7】
【0112】
次に、本発明を以下の非限定的な実施例によって説明する。
【実施例
【0113】
材料及び方法:
クローニング、発現、及び精製
結核菌由来の推定パラチオン加水分解酵素(PPH)(7)(Syntezza)の合成遺伝子を、マルトース結合タンパク質(MBP)との融合体として発現させるために、発現ベクターpMal-c4X(NEB)のEcoRI部位及びPstI部位にクローニングし、pMAL-c4x-PPHを生成し、これを使用して大腸菌(Escherichia coli)DH5R細胞を形質転換した。
【0114】
PPH野生型及びバリアントの発現及び精製
大規模生産のために、100μg/mLアンピシリン及び0.5mM MnClを含むLB培地(5 mL)に、pMAL-c4xPPHで新たに形質転換した大腸菌BL21(DE3)細胞の単一コロニーを接種し、一晩増殖させた。得られた培養物を500mLの同じ培地に加え、30℃で一晩増殖させた。後続の工程を4℃で行った。細胞を遠心分離により回収し、溶解バッファー[50mM Tris-HCl(pH8.0)、10mM NaHCO、1:500に希釈したヒスチジンタグ付きプロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma社)、及び100 μMZnCl]に再懸濁した。遠心分離後、上清をカラムバッファー[50mM Tris(pH8.0)、0.25M NaCl、100μM ZnCl]で平衡化したアミロースカラム(NEB)に通した。融合タンパク質は、10mMマルトースを添加したカラムバッファーで溶出した。収集した画分の酵素活性をチオブチリルブチロラクトン(TBBL)で分析し、最も高い活性を含む画分を一
緒にプールし、アセンブリバッファーに対して透析した。融合酵素の純度は、12%ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)によって確立され、4℃で保存した。
【0115】
酵素反応速度論
PPHバリアントのラクトナーゼ活性は、96ウェルプレート及びマイクロタイタープレートリーダー(BioTeK社、光学長:約0.5cm)を使用して25℃で200μLの反応容量の吸光度変化をモニタリングすることにより分析した。各基質について、基質濃度に関係なく、同じ濃度の有機溶媒で、記載されているように反応を行った(7)。使用した基質を、モニタリング波長、経路長0.5cmの吸光係数、及び最終有機溶媒含有量と共に以下に示す:TBBL及び指示薬としての0.5mM 5,5‘-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)(DTNB)(33)(412nm、7000OD/M、1%アセトニトリル、0.5%DMSO)。C6-オキソ-ホモセリンラクトンの加水分解は、既に記載されているように(35)、pH指示薬を使用してカルボン酸生成物の出現を追跡することによってモニタリングした。反応混合物は、0.2M NaCl及び2.5mM ビシンバッファー(pH8.3)に0.01~1mMのラクトン基質を含み、pH指示薬として0.2~0.3mMのクレゾールパープル(577nm、1550~2500OD/M、1%DMSO)を添加した。初期速度(V)は、酵素の非存在下での自発的加水分解のバックグラウンド速度に対して補正した。速度論的パラメーターは、GraphPadを使用してミカエリス・メンテン(Michaelis-Menten)方程式[V=kcat[E][S]/([S]+K)]に直接初期速度を当てはめることによって得た。誤差範囲は、少なくとも3回の独立した測定から得られたデータの標準偏差に関連している。
【0116】
ライブラリーの構築及びスクリーニング
PPH遺伝子に由来する遺伝子ライブラリーは、遺伝子ごとに平均2つの非同義変異を生成するように調整されたGeneMorph IIランダム突然変異誘発キット(Agilent社)を使用して構築した。変異原性PCRに続いて、pMal-c4Xについて説明したように、ライブラリーを改変pMALベクターにクローン化して戻した。クローン化したライブラリーをBL21細胞に形質転換し、100μg/mLアンピシリン及び1%(w/v)グルコースを添加したLBプレートにプレーティングした。スクリーニングの各ラウンドで、約600のランダムに選択した単一コロニーを採取し、100μg/mLアンピシリン及び1%(w/v)グルコースを添加した500μLのLBを含む96ディープウェルプレートで、37℃で振とうしながら一晩増殖させた。一晩培養物を使用して、96個のディープウェルプレートに200μg/mLアンピシリンを添加した新鮮な500μLのLBを(1:20希釈で)接種した。細胞を30℃で約4時間振とうしながらOD600=0.6~1.0まで増殖させた後、イソプロピルβ-d-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)を添加し(最終濃度0.4mM)、ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼの発現を誘導した。20℃で一晩インキュベートした後、細胞をペレット化し、-80℃で凍結した。細胞を溶解バッファー(100mM Tris、pH8、100μM MnCl、150mM NaCl、100μg/mLリゾチーム、0.5単位/mLベンゾナーゼ、0.1%トリトンX-100、1:500プロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma P8849)を、25℃で960rpmで1時間振とう)に再懸濁した。溶解物を遠心分離により清澄化し、45℃でインキュベートし、室温に冷却し、活性バッファーで希釈し、指示薬として0.5mM 5,5‘-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)(DTNB)と共にTBBLの加水分解をアッセイした。各ラウンドでは、GeneMorphIIキットを使用して遺伝子をシャッフル及び変異させた次のラウンドの親として機能するように、活性が最も多いバリアントを選択した。
【0117】
wtPPH及びその進化型の熱安定性及び貯蔵寿命
熱安定性は、酵素バリアントを4~70℃の範囲内の温度で1時間プレインキュベートすることによって試験し、0.5μMに設定し、TBBLは0.2mMに設定した(6)。残留活性は、室温でラクトナーゼ活性を追跡することによって測定した。貯蔵寿命の測定では、wtPPH及び進化型バリアント(0.5μM酵素濃度)の両方のラクトナーゼ活性を、精製後、酵素溶液を室温に保った後、0.1mM TBBLで18日間測定した。
【0118】
実施例1.c6-オキソ-HSLによる酵素の組換え発現、精製、及び生化学的性質決定
結核菌由来のPPHのコード化遺伝子及びその進化型バリアントを、発現ベクターpMal-c4Xにクローン化し、大腸菌-BL21(DE3)(配列番号10)で、高結合性変異体(A313V)マルトース結合タンパク質との融合タンパク質として過剰発現させた。次に、細胞を溶解し、アミロースカラム(NEB)を使用してタンパク質を精製した。精製後、酵素の最適温度、熱安定性、及び発色基質(TBBL、チオブチリルブチロラクトン)での貯蔵寿命を試験した。C6-オキソ-HSL(別名N-カプロイル-L-ホモセリンラクトン、N-[(3S)-テトラヒドロ-2-オキソ-3-フラニル]ヘキサンアミド、HHL)、植物病原体のエルウィニア・アミロボラ(E.amylovora)によって分泌されるラクトンとの活性について、前述のように、pH指示薬アッセイを使用した(7)。図1B及び図2Aを参照。PPHはC6-オキソ-HSLで高い活性を示し、Kcat/K 値は、1.24×10-1/M-1であった(表3を参照)。その最適温度は40℃であり(図1A)、熱安定性の観点から、55℃で50%の残留活性を示した。図2Bを参照。
【0119】
実施例2.ランダムな遺伝子ライブラリーの構築並びにより高い活性、熱安定性、及び貯蔵寿命を備えた改良型バリアントの単離
PPHコード化遺伝子を使用して、Gene Morphランダム突然変異誘発キット(Agilent社)を使用して遺伝子ライブラリーを構築した。PCR増幅後、得られたPCR産物を、EcoRI及びPstIで消化し、pMAL-c2xにライゲーションした後、外部プライマーを使用したネステッドPCRのテンプレートとして使用した。ライブラリープラスミドを大腸菌DH5αにエレクトロポレーションし、ライブラリーサイズを5000と推定し、プラスミドDNAを単離した。非選択ライブラリーの個々のクローンの配列を決定し、遺伝子あたり平均2~3個の点突然変異を特定した。ランダム突然変異誘発(3~4×10バリアントのライブラリーサイズ)の作成及び熱安定性の向上のためのスクリーニング(ラウンドあたり600バリアント)の数ラウンドを使用して、固有配列を有する2つのバリアントを単離した。図2を参照。以下の変異を内包するバリアント:バリアントPPH_R2:P4-D5のG58V[G59V;配列番号11]及びバリアントPPH_R2:P8-D12のH171Y[H172Y;配列番号12]は、野生型酵素と同桁数の10-1-1の高い触媒活性kcat/Kを示す(表3)。PPH_R2:P4-D5の場合、kcat/Kは2倍に増加した。表3及び図2Aを参照。さらに、熱安定性が向上し、50%の残留活性が約15度増加し、60℃まで100%の活性を維持した(図2B)。wtPPHと比較した進化型バリアントの貯蔵寿命をさらに分析した。図2Cに示すように、精製から13日後、バリアントPPH_R2:P4-D5の残留活性は約50%であったが、wtPPHの活性は20%であった。これにより、抗菌処理として農業での使用により適したものとなる。
【0120】
【表3】
【0121】
実施例3.野生型QQPPHラクトナーゼは、培養中の細胞外多糖形成を阻害する
細胞外多糖(EPS)マトリックスの形成に見られる細菌毒性の尺度として、前述のプロトコルに従って、500mMのショ糖を添加した後、400nmでレバン生成を分光的に観察した(Molina et al., 2005)。
【0122】
精製した野生型PPHタンパク質をエルウィニア・アミロボラの細胞培養に適用すると、EPS産生の30%の減少が観察された(図3)。G59V変異体及びH172Y変異体は、EPS産生の減少に少なくとも同じくらい効果的であると予想される。
【0123】
実施例4.PPH変異体による火傷病の治療
ナシの火傷病を阻害するQQラクトナーゼの能力を評価するために、前述のプロトコルに従って、野生型PPH酵素を使用して植物の病原性アッセイを確立した(28)(29)。傷つけた未成熟ナシの果実にエルウィニア・アミロボラを接種し、症状の発現をモニタリングした。ナシに対して、以下の3つの処理を施した:20℃において300rpmで1時間のインキュベーション後、細菌培養のみ、精製した野生型又は変異体PPH酵素を用いた細菌培養、酵素活性バッファーを1:1の比率で用いた細菌培養。そのために、未成熟セイヨウナシ(Pyrus communis、「Safadona」)を70%エタノールで表面滅菌して、細菌培養物のみ又は対照としてのラクトナーゼバッファー及びラクトナーゼでインキュベートした細菌を使用した細菌培養物を用いて滅菌針で穿刺し、加湿チャンバー内で28℃でインキュベートした。症状を、接種後2、4、6、及び7日目に記録した。28℃で7日間培養した後、病害の症状を測定した。未接種対照は、実験を通して無症候性のままであった。各処理群は10個のナシからなり、実験は3回の独立した試験で経時的に繰り返した。図4A図4Cに見られるように、細菌-酵素(結核菌由来のPPH)溶液を用いて穿刺したナシの火傷病病変は、対照と比較して同程度に黒色化及び拡大していなかった。PPH_R2:P4-D5変異体(配列番号11)(図4C、上から3列目)は、野生型酵素(配列番号10)(図4C、上から2行目)よりも感染制御において効果的であった。
【0124】
火傷病の治療又は予防における、H172Y(配列番号3又は12に記載のアミノ酸配列からなる)などのH172に変異を有する変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼ又は所望によりMBP融合タンパク質として発現され、配列番号1におけるG59V若しくはH172Yに対応するアミノ酸残基が置換されている、配列番号16~110のPLLのいずれかの有効性を、野生型PPH及びG59VPPHについて上記と同様に試験する。野生型変異体よりも火傷病の軽減及び抑制におけるこれらの変異体のより高い効力が期待される。
【0125】
実施例5.グロースチャンバー及び圃場でのPPH及びその変異体による花の火傷病の治療方法
方法
セイヨウナシ「Spadona」の開花した開花枝を、22℃のグロースチャンバー(明期12時間、暗期12時間)に置いた。4μMのwtPPHとその進化型変異体を含む酵素溶液を花に噴霧し、2時間後に、エルウィニア・アミロボラの細胞懸濁液(10CFU/mL)を花に噴霧するか(感染前)、酵素及び培養物の両方を1:1の比率で30分間混合してから噴霧(混合)した。エルウィニア・アミロボラ培養物のみを対照として使用した。実験は3回繰り返して実施し、各繰り返しで10個の花を使用した。チャンバー内の乾燥及び温度上昇を防ぐために、チャンバー内の空調及び照明を感染後2時間停止した。
【0126】
圃場実験では、セイヨウナシ「Spadona」の木の花に様々な酵素溶液を噴霧した:wtPPH及び進化型変異体PPH-G58V(4μM)。様々な適用期間で試験した:感染の30~45分前又は感染と同時(噴霧前に酵素溶液を培養物と30分間混合することによる)。全ての場合において、10CFU/mLのエルウィニア・アミロボラ細菌培養物を使用した。感染後、高湿度を確保するために一晩ビニール袋で花を覆った。実験は5回の繰り返しで実施し、木の両側に5個ずつの花、計10個の花が各繰り返しに含まれた。木に生った状態での処理は、4回未満とした。接種後13日目に各開花の罹患花を計数し、接種後24日目に感染した花を計数して病害の症状を評価した。同様の実験を、セイヨウナシ「Costia」で実施した。感染後12日目及び35日目に同様に病害評価を行った。圃場試験は、2019年と2020年の2年連続で、北部のフラバレー果樹園実験農場(Hula Valley Orchards Experimental
Farm)(北緯33度8分58.10秒、東経35度37分16.93秒)で実施した。感染した花の計数による接種から24日後のセイヨウナシ「Spadona」の木のデータを示す。
【0127】
結果
PPH野生型及び進化型変異体が、グロースチャンバー内で花の病原性を阻害する能力を試験した。図5A及び図5Bのように、接種後6日目、4μMのwtPPH及びPPH-G58Vの両方が、病原体感染前に適用した場合、未処理の対照と比較して花の感染を30%抑制した。オキシリン酸は45%抑制された。酵素及びバクテリアを混合して花に噴霧した場合、処理は効果的であったが(20%抑制)、感染の兆候が増加した。
【0128】
圃場では、混合処理よりも変異体のプレインキュベーションに明らかな利点が観察され、現在使用されている抗生物質であるオキソリン酸と同様の阻害範囲で、PPH-G58Vによる70%近くの阻害が認められた(図5C)。
【0129】
火傷病の治療又は予防における、H172Y(配列番号3又は12に記載のアミノ酸配列からなる)などのH172に変異を有する変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼ又は所望によりMBP融合タンパク質として発現され、配列番号1におけるG59V若しくはH172Yに対応するアミノ酸残基が置換されている、配列番号16~110のPLLのいずれかの有効性を、野生型PPH及びG59VPPHについて上記と同様に試験する。野生型変異体よりも火傷病の軽減及び抑制におけるこれらの変異体のより高い効力が期待される。
【0130】
実施例6.PPH変異体及び銅塩の組み合わせによる火傷病の治療
銅は、エルウィニア・アミロボラ感染の抑制に使用する保護剤(0.19g/Lの濃度)として周知である。
【0131】
この予備実験は、相加効果を達成するために、PPH_R2:P4-D5(PPH-G58V)と共に低用量のCu2+を使用する可能性を確認するために実施した。2つの分離株(511及び576と命名)からのエルウィニア・アミロボラの単一コロニーの混合
物を、LB培地(10mL)で一晩培養し、4時間リフレッシュし、各分離株をOD600 0.5に正規化した。培養懸濁液を室温で30分間以下と混合した:(i)0.25μM CuSO、(ii)4μM PPH_R2:P4-D5及び0.25μM CuSO。未処理の培養懸濁液を対照として使用した。
【0132】
未成熟ナシを1%HClで数秒間滅菌した後、HOで洗浄し、別の混合物に浸した滅菌針で穴を開けた。処理した果実を、25℃の加湿チャンバー内で培養した。病害症状を示す直径を9日後に測定した。各処理は3回の繰り返しで実施し、各繰り返しには3~6個の未成熟ナシが含まれている。
【0133】
予備データは、0.25mM CuSOを使用すると、未成熟ナシにおけるエルウィニア・アミロボラの感染度が大幅に抑制され、0.25 mM CuSO溶液に4μM
PPH_R2:P4-D5を添加すると、CuSO単独よりも優れた効果が得られた。
【0134】
図7の結果は、CuSOと変異体酵素PPH_R2:P4-D5との組み合わせにより、感染直径から計算される(n=12~18個の未成熟果実)感染率(%)(n=3 )に見られるように、どのナシも感染しなかったため、症状が完全に抑制されたことを示している。
【0135】
果実及び開花は、ナシの果実及び開花の火傷病に対して、様々な濃度のCuSO(例えば、0.0125、0.025、0.25、及び2.5mM)を単独で、又は野生型若しくは変異体酵素と(例えば、4μMで)組み合わせて処理される。対照は未処理であり、バッファーのみ又は酵素のみで処理されている。試験される変異酵素は、G59V(配列番号2又は11に記載のアミノ酸配列からなる)などのG59に変異を有する変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼ、H172Y(配列番号3又は12に記載のアミノ酸配列からなる)などのH172に変異を有する変異型ホスホトリエステラーゼ様ラクトナーゼ、又は所望によりMBP融合タンパク質として発現され、配列番号1におけるG59V若しくはH172Yに対応するアミノ酸残基が置換されている、配列番号16~110のPLLのいずれかであり、火傷病の治療又は予防において、野生型PPH及びG59VPPHについて上記と同様に試験する。
野生型変異体よりも火傷病の軽減及び抑制におけるこれらの変異体のより高い効力が期待される。
【0136】
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図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
【配列表】
2022536948000001.app
【国際調査報告】