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特表2022-536960LISTERIAの検出のための変異体バクテリオファージを生成するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-22
(54)【発明の名称】LISTERIAの検出のための変異体バクテリオファージを生成するための方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 7/01 20060101AFI20220815BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20220815BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20220815BHJP
【FI】
C12N7/01
C12Q1/02
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021575361
(86)(22)【出願日】2020-06-18
(85)【翻訳文提出日】2021-12-17
(86)【国際出願番号】 US2020038501
(87)【国際公開番号】W WO2020257502
(87)【国際公開日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】62/864,894
(32)【優先日】2019-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511172461
【氏名又は名称】ラボラトリー コーポレイション オブ アメリカ ホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ギル, ホセ エス.
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン, ドワイト ライマン
(72)【発明者】
【氏名】エリクソン, スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】グエン, ミン ミンディ バオ
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
4B063QA18
4B063QQ01
4B063QQ16
4B063QQ17
4B063QQ18
4B063QQ19
4B063QR79
4B063QR80
4B063QS28
4B063QS36
4B063QX02
4B065AA98X
4B065AB01
4B065BA01
4B065CA46
(57)【要約】
変化した宿主範囲を有する変異体バクテリオファージの生成のための方法が、本明細書で開示される。さらに、サンプル中の微生物(例えば、Listeria spp.)の迅速検出のための方法およびシステムが、本明細書で開示される。後期遺伝子領域中にインジケーター遺伝子を含む遺伝子改変されたバクテリオファージがまた、開示される。バクテリオファージ(例えば、Listeria特異的バクテリオファージ)の特異性は、特異的微生物(例えば、Listeria spp.)の検出を可能にし、インジケーターシグナルは、アッセイ感度を最適化するために増幅され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡大した宿主範囲を有する変異体バクテリオファージを生成する方法であって、前記方法は、
(i)宿主細菌株および標的宿主細菌株を含む種々の比の一連の第1の共培養混合物を調製する工程;
(ii)ファージ株を、前記第1の共培養混合物の各々に添加する工程;
(iii)前記第1の共培養混合物および前記ファージ株を、細菌培養条件下でインキュベートする工程;
(iv)前記複数の第1の共培養物の各々からファージ溶解物を集める工程;
(v)前記複数の第1の共培養物の各々からのファージ溶解物をプールする工程;
(vi)ファージ溶解物をアッセイして、前記バクテリオファージ宿主範囲が拡大されているか否かを決定する工程;ならびに
(vii)拡大した宿主範囲を有する変異ファージを単離する工程、
を包含する方法。
【請求項2】
前記選択されたファージ株は、前記宿主細菌株に感染し、前記標的宿主細菌株に感染しない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記選択されたファージ株は、A511、P100、LMA4、およびLMA8から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記宿主細菌株は、Listeria monocytogenes 19115である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記標的宿主細菌株は、Listeria monocytogenes 51782である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記一連の複数の第1の共培養物は、1:0、9:1、1:1、1:9、および0:1の前記宿主細菌株:前記標的宿主細菌株の比を構成する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記アッセイされたファージが拡大した宿主範囲の証拠を示すまで、工程が反復される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
各共培養比において培養された、前記得られたファージを継代する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記バクテリオファージゲノムの後期遺伝子領域に挿入されたインジケーター遺伝子を含む拡大した宿主範囲を有する組換え変異体バクテリオファージであって、ここで前記組換えバクテリオファージは、宿主細菌および標的宿主細菌に感染するように変異されている、組換え変異体バクテリオファージ。
【請求項10】
前記組換えバクテリオファージは、野生型A511、P100、LMA4またはLMA8バクテリオファージに由来する、請求項9に記載の組換え変異体バクテリオファージ。
【請求項11】
前記インジケーター遺伝子は、コドン最適化され、内因性シグナルを生成する可溶性タンパク質生成物または基質との反応の際にシグナルを生成する可溶性酵素をコードする、請求項9に記載の組換え変異体バクテリオファージ。
【請求項12】
前記コドン最適化したインジケーター遺伝子の上流に非翻訳領域をさらに含み、ここで前記非翻訳領域は、バクテリオファージ後期遺伝子プロモーターおよびリボソーム進入部位を含む、請求項9に記載の組換え変異体バクテリオファージ。
【請求項13】
少なくとも2種の異なるタイプの組換え変異体バクテリオファージを含み、ここで前記組換えバクテリオファージのうちの少なくとも1種は、請求項9に記載のインジケーター遺伝子を含む、カクテル組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2019年6月21日出願の米国仮特許出願第62/864,894号に基づく優先権を主張する。米国仮特許出願第62/864,894号および米国特許出願第16/776,417号の開示は、それらの全体において本明細書に参考として援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、バクテリオファージの生成のための方法およびその得られるバクテリオファージに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
生物学的サンプル、食品サンプル、水サンプル、および臨床サンプル中の細菌、ウイルス、および他の微生物の検出のための選択性を改善することは、非常に重要である。微生物病原体は、ヒトおよび家畜の中で実質的罹患率、ならびに莫大な経済損失を引きおこし得る。また、微生物の検出は、ある特定の微生物(例えば、Listeria spp.、Salmonella spp.、またはStaphylococcus spp.)で汚染された食品の摂取によって引きおこされる生命を脅かすまたは致命的な病気の勃発を考えれば、米国食品医薬品局(FDA)および疾病対策センター(CDC)、ならびに米国農務省(USDA)にとって優先順位は高い。
【0004】
細菌の検出のための旧来の微生物検査は、非選択的および選択的な富化培養、続いて、選択培地上でのプレーティングおよび疑われるコロニーを確認するためのさらなる検査に依拠する。このような手順は、数日間を要し得る。種々の迅速な方法が調査され、時間要件を低減するために実践されてきた。しかし、これらの方法は、欠点を有する。例えば、直接イムノアッセイまたは遺伝子プローブを要する技術は、概して、適切な感度を得るために、一晩の富化工程を要する。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査はまた、増幅工程を含み、従って、非常に高い感度および選択性の両方の能力がある;しかし、PCR検査に経済的に供され得るサンプルサイズは、制限される。細菌懸濁物が薄いと、大部分の小さな部分サンプルは細胞がなく、従って、精製および/または長々とした富化工程がなおも必要とされる。
【0005】
旧来の生物学的富化に必要とされる時間は、サンプルの標的細菌集団の増殖速度によって、サンプルマトリクスの影響によって、および必要とされる感度によって規定される。実際問題として、大部分の高感度方法は、一晩のインキュベーションを採用し、全体として約24時間かかる。培養に必要とされる時間に起因して、これらの方法は、同定されるべき生物およびサンプル供給源に依存して、最大3日間かかる可能性がある。この遅滞時間は、汚染された食品、水、または他の製品が既に家畜またはヒトに侵入してしまっている可能性があることから、概して不適切である。さらに、抗生物質耐性細菌および生物防御の懸念の増大は、水サンプル、食品サンプルおよび臨床サンプル中の細菌病原体の迅速同定を全世界で最重要優先度にしている。
【0006】
バクテリオファージ(ファージ)は、それらの宿主特異性の範囲が狭いことに起因して、食品サンプル、環境サンプル、および臨床サンプル中の病原性細菌を検出するために使用され得る。ファージの狭い宿主範囲は、有害でない細菌の検出を排除しながら、潜在的に病原性の細菌を検出するために使用され得る。しかし、ファージは、特異的に過ぎて、サンプルに存在する潜在的に有害な細菌の各血清型または種を検出できない。サンプル中の目的の細菌の検出は、ファージカクテルの使用を必要とし得る。従って、新たな目的の標的宿主を含むように、特定の宿主に対して特異的なファージの宿主範囲を拡げることは、有利であり得る。
【0007】
従って、拡大した宿主範囲を有するバクテリオファージを生成する方法および拡大した宿主範囲を有するバクテリオファージが必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
要旨
本開示の実施形態は、拡大した宿主範囲を有する変異体バクテリオファージ(ファージ)を生成する方法およびその得られるファージを含む。本開示は、種々の方法で具現化され得る。
【0009】
1つの局面において、本開示は、拡大した宿主範囲を有する変異体バクテリオファージを生成する方法に関する。いくつかの実施形態において、上記方法は、(i)宿主細菌株および標的宿主細菌株を含む種々の比の一連の第1の共培養混合物を調製する工程;(ii)ファージ株を、上記第1の共培養混合物の各々に添加する工程;(iii)上記第1の共培養混合物および上記ファージ株を、細菌培養条件下でインキュベートする工程;(iv)上記複数の第1の共培養物の各々からファージ溶解物を集める工程;(v)上記複数の第1の共培養物の各々からのファージ溶解物をプールする工程;(vi)ファージ溶解物をアッセイして、上記細菌宿主範囲が拡大されているか否かを決定する工程;ならびに(vii)拡大した宿主範囲を有する変異ファージを単離する工程を包含する。
【0010】
別の局面において、本開示は、その得られた、拡大した宿主範囲を有する変異体バクテリオファージであって、ここで上記変異体バクテリオファージは、宿主細菌株および標的宿主細菌株に感染し得るものに関する。
【0011】
他の場合には、狭い宿主範囲を有するバクテリオファージを利用することは、有利である。従って、別の局面において、本開示は、低減した宿主範囲を有する変異体バクテリオファージを生成する方法に関する。いくつかの実施形態において、上記方法は、(i)バクテリオファージのテールスパイクタンパク質をコードする遺伝子を変異させる工程;(ii)子孫ファージ溶解物を、上記変異したバクテリオファージから生成する工程;(iii)ファージ溶解物をアッセイして、上記細菌宿主範囲が低減しているか否かを決定する工程;および(iv)低減した宿主範囲を有する変異ファージを単離する工程を包含する。
【0012】
さらに別の局面において、本開示は、拡大した宿主範囲ゲノムを有する変異体バクテリオファージの後期遺伝子領域に挿入されたインジケーター遺伝子を含む組換えバクテリオファージに関する。いくつかの実施形態において、上記組換えバクテリオファージは、遺伝子改変されたListeria特異的バクテリオファージゲノムである。ある特定の実施形態において、上記組換えバクテリオファージは、Listeria spp.を特異的に認識するバクテリオファージに由来する遺伝子改変されたバクテリオファージゲノムを含む。いくつかの実施形態において、上記組換えバクテリオファージを調製するために使用されるバクテリオファージは、1または複数のListeria spp.に特異的に感染する。一実施形態において、上記組換えバクテリオファージは、他のタイプの細菌の存在下で、宿主細菌株および標的宿主細菌株を区別し得る。
【0013】
組換えインジケーターバクテリオファージを調製するための方法がまた、本明細書で開示される。いくつかの実施形態は、標的病原性細菌に特異的に感染する野生型バクテリオファージを選択する工程;インジケーター遺伝子を含む相同組換えプラスミド/ベクターを調製する工程;上記相同組換えプラスミド/ベクターを、標的病原性細菌へと形質転換する工程;上記形質転換した標的病原性細菌に、上記選択された野生型バクテリオファージを感染させ、それによって、相同組換えが上記プラスミド/ベクターと上記バクテリオファージゲノムとの間で起こることを可能にする工程;ならびに組換えバクテリオファージの特定のクローンを単離する工程を包含する。いくつかの実施形態において、上記選択された野生型バクテリオファージは、Listeria特異的バクテリオファージである。いくつかの実施形態において、上記選択された野生型バクテリオファージは、マイオウイルス(例えば、T4、T4様ウイルス、ListeriaファージLMTA-94、P100ウイルスまたはVil様)である。いくつかの実施形態において、上記選択された野生型バクテリオファージは、Listeria spp.に感染する。他の実施形態において、上記選択された野生型バクテリオファージは、ポドウイルス(例えば、T7様ウイルスまたはSp6様ウイルス)である。他の実施形態において、上記選択された野生型バクテリオファージは、LMA4およびLMA8である。LMA4およびLMA8は、P100ウイルス属におけるように、マイオウイルスである。
【0014】
いくつかの実施形態において、本発明は、サンプル中の目的の微生物を検出するための方法であって、上記方法は、上記サンプルを、上記目的の微生物に感染する組換えバクテリオファージとともにインキュベートする工程であって、ここで上記組換えバクテリオファージは、上記バクテリオファージの後期遺伝子領域に挿入されたインジケーター遺伝子を含み、その結果、宿主細菌の感染後のバクテリオファージ複製の間の上記インジケーター遺伝子の発現が、可溶性インジケータータンパク質生成物を生じる工程、および上記インジケータータンパク質生成物を検出する工程であって、ここで上記インジケータータンパク質生成物の陽性検出は、上記目的の微生物が上記サンプルに存在することを示す工程を包含する方法を含む。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
拡大した宿主範囲を有するバクテリオファージを生成するための方法、およびその得られた変異体バクテリオファージが、本明細書で提供され、上記変異体バクテリオファージは、試験サンプル(例えば、生物学的サンプル、食品サンプル、水サンプル、および環境サンプル)中の目的の微生物(例えば、Listeria spp.)の検出のために使用され得る。検出は、富化のために培養することなく、またはいくつかの実施形態では、微生物が潜在的に増殖し得る最小限のインキュベーション期間で行われるアッセイにおいて、遺伝子改変された感染性因子を使用して、以前に可能であると考えられていたより短い時間枠で達成され得る。
【0016】
いくつかの局面において、本開示は、目的の微生物を検出するための方法に関する。上記方法は、上記目的の微生物(例えば、Listeria spp.)の検出のための感染性因子を使用し得る。例えば、ある特定の実施形態において、上記目的の微生物は、Listeria spp.であり、上記感染性因子は、Listeria spp.に特異的に感染するバクテリオファージである。いくつかの実施形態において、上記バクテリオファージは、拡大した宿主範囲を有するように変異されており、Listeria monocytogenesの多数の血清型に感染し得る。従って、ある特定の実施形態において、上記方法は、サンプルを、目的の細菌に感染する組換え変異体バクテリオファージとともにインキュベートすることによって、上記サンプル中の目的の細菌の検出を含み得る。ある特定の実施形態において、上記組換え変異体バクテリオファージは、インジケーター遺伝子を含む。上記インジケーター遺伝子は、ある特定の実施形態において、上記バクテリオファージの後期遺伝子領域に挿入され得、その結果、宿主細菌の感染後のバクテリオファージ複製の間の上記インジケーター遺伝子の発現は、インジケータータンパク質生成物の生成を生じる。上記方法は、上記インジケータータンパク質生成物を検出する工程であって、ここで上記インジケータータンパク質生成物の陽性検出は、上記目的の細菌が上記サンプルに存在することを示す工程を包含し得る。ある実施形態において、上記インジケータータンパク質は、可溶性である。
【0017】
本発明の方法およびシステムの実施形態は、種々の環境における種々の微生物(例えば、細菌)の検出および定量(食品サンプル、水サンプル、および環境サンプルからの病原体の検出が挙げられるが、これらに限定されない)に適用され得る。本発明の方法は、高い検出感度および特異度を迅速に提供する。いくつかの実施形態において、検出は、バクテリオファージの1回の複製サイクル内で可能であり、これは、予測外のことである。
【0018】
定義
本明細書で別段定義されなければ、本発明に関連して使用される科学用語および専門用語は、当業者が一般に理解する意味を有するものとする。さらに、文脈によって別段必要とされない限り、単数の用語は、複数を含むものとし、複数の用語は、単数を含むものとする。一般に、本明細書に記載されている細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学およびタンパク質および核酸化学およびハイブリダイゼーションとの関連で使用される命名法、ならびにこれらの技術は、当該分野で周知であり、一般に使用されるものである。公知の方法および技術は、別段示されなければ、当該分野で周知の従来の方法によって、および本明細書を通して考察される種々の一般のおよびより具体的な参考文献において記載されているように一般に行われる。酵素反応および精製技術は、当該分野で一般に達成されるように、または本明細書に記載のように、製造元の仕様によって行われる。本明細書に記載されている実験手順および技術に関連して使用される命名法は当該分野で周知のものであり、一般に使用される。
【0019】
下記の用語は、別段示されなければ、下記の意味を有すると理解されるものとする:
【0020】
本明細書で使用される場合、用語「a」、「an」、および「the」は、他に特に留意しない限り、1つまたは複数に言及し得る。
【0021】
「または」という用語の使用は、代替物のみを言及することが明確に示されない限り、または代替物が相互排他的でない限り、「および/または」を意味するために使用されるが、本開示は、代替物のみおよび「および/または」に言及する定義を支持する。本明細書において使用する場合、「別の」は、少なくとも第2またはそれ超を意味することができる。
【0022】
本出願を通して、「約」という用語は、ある値が、その値を決定するために用いられているデバイス、方法についての固有の誤差の変動、またはサンプル間に存在する変動を含むことを示すために使用される。
【0023】
用語「固体支持体」または「支持体」とは、その上に生体分子が結合し得る基材および/または表面を提供する構造物を意味する。例えば、固体支持体は、アッセイウェル(すなわち、例えば、マイクロタイタープレートまたはマルチウェルプレート)であり得るか、または固体支持体は、フィルター、アレイ、または移動性の支持体(例えば、ビーズ)または膜(例えば、フィルタープレート、ラテックス粒子、常磁性粒子またはラテラルフローストリップ)上の位置であり得る。
【0024】
用語「結合因子」とは、第2の(すなわち、異なる)目的の分子に特異的および選択的に結合し得る分子に言及する。相互作用は、例えば、水素結合、ファンデルワールス相互作用、または静電相互作用もしくは疎水的相互作用の結果として非共有結合性であり得るか、あるいは相互作用は共有結合性であり得る。用語「可溶性結合因子」とは、固体支持体に会合(すなわち、共有結合または非共有結合)していない結合因子に言及する。
【0025】
本明細書で使用される場合、「分析物」とは、測定されている分子、化合物もしくは細胞をいう。目的の分析物は、ある特定の実施形態において、結合因子と相互作用し得る。本明細書で記載される場合、用語「分析物」とは、目的のタンパク質もしくはペプチドをいい得る。分析物は、アゴニスト、アンタゴニスト、もしくはモジュレーターであり得る。あるいは、分析物は、生物学的効果を有しなくてもよい。分析物としては、低分子、糖、オリゴサッカリド、脂質、ペプチド、ペプチド模倣物、および有機化合物などが挙げられ得る。
【0026】
用語「検出可能な部分」または「検出可能な生体分子」または「レポーター」または「インジケーター」または「インジケーター部分」とは、定量的アッセイにおいて測定され得る分子をいう。例えば、インジケーター部分は、基質を、測定され得る生成物に変換するために使用され得る酵素を含み得る。インジケーター部分は、生物発光の放射を生じる反応を触媒する酵素(例えば、ルシフェラーゼ)であり得る。あるいは、インジケーター部分は、定量され得る放射性同位体であり得る。あるいは、インジケーター部分は、発蛍光団であり得る。あるいは、他の検出可能な分子が使用され得る。
【0027】
本明細書で使用される場合、「バクテリオ-ファージ(bacteriophage)」または「ファージ(phage)」とは、複数の細菌のウイルスのうちの1種またはそれより多くを含む。本開示において、用語「バクテリオファージ」および「ファージ」は、生きている細菌、真菌、マイコプラズマ、原生動物、酵母、および他の顕微鏡レベルの生存している生物に侵入し得るウイルスであって、そして上記生物を使用して、そのウイルス自体を複製するウイルスを指す、マイコバクテリオファージ(例えば、TBおよびパラTBに関する)、マイコファージ(mycophage)(例えば、真菌に関する)、マイコプラズマファージ、および任意の他の用語などのウイルスを含む。ここで、「顕微鏡レベルの」とは、最大寸法が1ミリメートルまたはそれ未満であることを意味する。バクテリオファージは、それら自体を複製する手段として、天然において細菌を使用するように進化したウイルスである。ファージは、このことを、ファージ自体を細菌に付着させ、そのDNA(もしくはRNA)をその細菌の中に注入し、上記ファージを数百倍もしくはさらには数千倍も複製するようにその細菌を誘導することによって行う。これは、ファージ増幅ともいわれる。
【0028】
本明細書で使用される場合、「後期遺伝子領域(late gene region)」とは、ウイルス生活環において後期に転写されるウイルスゲノムの領域をいう。上記後期遺伝子領域は、代表的には、最も豊富に発現される遺伝子(例えば、上記バクテリオファージ粒子へとアセンブルされる構造タンパク質)を含む。後期遺伝子は、クラスIII遺伝子と同義であり、構造およびアセンブリ機能を有する遺伝子を含む。例えば、上記後期遺伝子(クラスIIIと同義)は、ファージT7では、例えば、感染後8分から溶解するまでに、クラスI(例えば、RNAポリメラーゼ)は、早期に4~8分に、およびクラスIIは、6~15分に転写されるので、IIおよびIIIのタイミングは重なり合っている。後期プロモーターは、天然に位置し、このような後期遺伝子領域において活性であるプロモーターである。
【0029】
本明細書で使用される場合、「富化のための培養」とは、旧来からの培養(例えば、微生物繁殖に都合のよい培地中でのインキュベーション)をいい、語句「富化」の他の考えられる使用(例えば、サンプルの液体構成要素を取り出して、その中に含まれる上記微生物を濃縮することによる富化)、または微生物繁殖の旧来の促進を含まない富化の他の形態と混同されるべきではない。ある期間にわたる富化のための培養は、本明細書で記載される方法のいくつかの実施形態において使用され得る。
【0030】
本明細書で使用される場合、「宿主範囲(host range)」とは、病原体によって使用される宿主の種の数に言及する。宿主範囲は、バクテリオファージ、宿主、または環境的な特徴に由来する宿主範囲に対する制限とともに、バクテリオファージが感染し得る生物の幅を記載する。
【0031】
本明細書で使用される場合、「組換え(recombinant)」とは、他では見出されない遺伝物質を一緒にするように実験において通常行われる場合の遺伝子(すなわち、核酸の)改変をいう。この用語は、本明細書で用語「改変された(modified)」と交換可能に使用される。
【0032】
本明細書で使用される場合、「RLU」とは、ルミノメーター(例えば、GLOMAX(登録商標)96)または光を検出する類似の機器によって測定される、相対発光量をいう。例えば、ルシフェラーゼと適切な基質(例えば、NANOLUC(登録商標)とNANO-GLO(登録商標))の間の反応物の検出が、検出されるRLUでしばしば報告される。
【0033】
本明細書で使用される場合、「結果までの時間(time to results)」とは、サンプルインキュベーションの開始から結果が生成されるまでの時間総量をいう。結果までの時間は、いかなる確認試験時間も含まない。データ収集は、結果が生成された後の任意の時間で行われ得る。
【0034】
変異体バクテリオファージの生成
拡大した宿主範囲を有する変異体バクテリオファージを生成する方法の実施形態は、遺伝的改変のためのバクテリオファージの選択とともに始まる。いくつかのバクテリオファージは、標的細菌に対して高度に特異的である。このことは、高度に特異的な検出の機会を示す。場合によっては、高度に特異的なファージの宿主範囲を拡げて、単一のアッセイにおいて潜在的に有害な細菌の多数の株の検出を可能にすることは、有利である。
【0035】
バクテリオファージの宿主範囲は、そのバクテリオファージが生産的に感染し得る細菌の幅(すなわち、属、種、または系統)であるとみなされる。いくつかのバクテリオファージの宿主範囲は、かなり狭く、同じ種内のわずかな系統に感染する能力を有するのみである。他のファージは、多くの細菌種に、ときおり異なる属にわたって感染し得る。しかし、大部分のバクテリオファージは、比較的狭い宿主範囲を有すると考えられる。これは、部分的には、ファージの宿主結合タンパク質の特異性、感染している間の生化学的相互作用、関連するプロファージまたは特定のプラスミドの存在、および細菌のファージ耐性機序に起因し得る。
【0036】
場合によっては、非常に広い宿主範囲を有するファージを利用することは、有利である。従って、1つの局面において、本開示は、拡大した宿主範囲を有する変異体バクテリオファージを生成する方法に関する。いくつかの実施形態において、上記方法は、(i)宿主細菌株および標的宿主細菌株を含む種々の比の一連の第1の共培養混合物を調製する工程;(ii)ファージ株を、上記第1の共培養混合物の各々に添加する工程;(iii)上記第1の共培養混合物および上記ファージ株を、細菌培養条件下でインキュベートする工程;(iv)上記複数の第1の共培養物の各々からファージ溶解物を集める工程;(v)上記複数の第1の共培養物の各々からのファージ溶解物をプールする工程;(vi)ファージ溶解物をアッセイして、上記細菌宿主範囲が拡大されているか否かを決定する工程;ならびに(vii)拡大した宿主範囲を有する変異ファージを単離する工程を包含する。
【0037】
他の場合には、狭い宿主範囲を有するバクテリオファージを利用することは、有利である。従って、別の局面において、本開示は、低減した宿主範囲を有する変異体バクテリオファージを生成する方法に関する。いくつかの実施形態において、上記方法は、(i)バクテリオファージのテールスパイクタンパク質をコードする遺伝子を変異させる工程;(ii)子孫ファージ溶解物を、上記変異したバクテリオファージから生成する工程;(iii)ファージ溶解物をアッセイして、上記細菌宿主範囲が低減しているか否かを決定する工程;および(iv)低減した宿主範囲を有する変異ファージを単離する工程を包含する。
【0038】
いくつかの実施形態において、上記選択された野生型バクテリオファージは、Listeria特異的バクテリオファージである。ある特定の実施形態において、上記選択された野生型バクテリオファージは、Caudovirales目のファージに由来する。Caudoviralesは、2本鎖DNA(dsDNA)ゲノムを有するテールのあるバクテリオファージの目である。Caudovirales目の各ビリオンは、ウイルスゲノムを含む正二十面体のヘッドおよび可撓性のテールを有する。Caudovirales目は、5つのバクテリオファージ科を含む:Myoviridae(長い収縮性のテール)、Siphoviridae(長い非収縮性のテール)、Podoviridae(短い日収縮性のテール)、Ackermannviridae、およびHerelleviridae。用語マイオウイルスは、正二十面体ヘッドおよび長い収縮性のテールを有し、Myoviridae科およびHerelleviridae科の両方の中のバクテリオファージを包含する任意のバクテリオファージを記載するために使用され得る。いくつかの実施形態において、上記選択された野生型バクテリオファージは、Myoviridae科のメンバー(例えば、ListeriaファージB054、ListeriaファージLipZ5、ListeriaファージPSU-VKH-LP041、およびListeriaファージWIL-2)である。他の実施形態において、上記選択された野生型バクテリオファージは、Herelleviridae科のメンバーである。Herelleviridae科の下のPecentumvirus属は、ListeriaファージLMSP-25、ListeriaファージLMTA-148、ListeriaファージLMTA-34、ListeriaファージLP-048、ListeriaファージLP-064、ListeriaファージLP-083-2、ListeriaファージLP-125、ListeriaウイルスP100、ListeriaファージList-36、ListeriaファージWIL-1、ListeriaファージvB_LmoM_AG20、およびListeriaウイルスA511のようなバクテリオファージを含む。LMA4およびLMA8はまた、同様に、Herelleviridae科の下のpecentumvirus属の中である。他の実施形態において、上記選択された野生型バクテリオファージは、LMA4またはLMA8である。ある特定の場合に、上記選択された野生型バクテリオファージはLP-ES3Aであり、これは、A511に由来するが、Listeria monocytogenesの血清型3Aに感染し得るように適合されている。さらに他の実施形態において、上記選択された野生型バクテリオファージは、Ackermannviridae科のメンバーである。さらに他の実施形態において、上記選択された野生型バクテリオファージは、Siphoviridae科のメンバーであり、これは、ListeriaファージA006、A118、A500、B025、LP-026、LP-030-2、LP-030-3、LP-037、LP-101、LP-110、LP-114、P35、P40、P70、PSA、vB_LmoS_188、およびvB_Lmos_293を含む。他の実施形態において、上記選択された野生型バクテリオファージは、LP-ES1である。LP-ES1はまた、同様に、Siphoviridae科の下のHomburgvirus属の中である。
【0039】
いくつかの実施形態において、拡大した宿主範囲を有する変異体バクテリオファージを生成する上記方法は、目的の細菌に対して特異的であるバクテリオファージを同定および選択する工程を包含する。いくつかの実施形態において、上記目的の細菌は、潜在的に有害な細菌である。さらなる実施形態において、上記選択されたバクテリオファージは、宿主細菌株に感染し得るが、標的宿主細菌株に感染し得ない。宿主細菌株は、選択されたファージが感染し得る任意の細菌株である。標的宿主細菌株は、選択されたファージが感染できない任意の細菌株である。いくつかの実施形態において、上記選択されたファージは、標的宿主細菌株に感染し得るように変異される。
【0040】
他の実施形態において、低減した宿主範囲を有する変異体バクテリオファージを生成する上記方法は、目的の細菌に特異的であるバクテリオファージを同定および選択する工程を包含する。いくつかの実施形態において、上記目的の細菌は、潜在的に有害な細菌である。さらなる実施形態において、上記選択されたバクテリオファージは、宿主細菌株に感染し得るが、非標的宿主細菌株にも感染し得る。宿主細菌株は、選択されたファージが感染し得る任意の細菌株である。非標的宿主細菌株は、選択されたファージが感染し得る、所望の使用に関して不利である任意の細菌株である。いくつかの実施形態において、上記選択されたファージは、非標的宿主細菌株に感染し得ないように変異される。
【0041】
Listeria属は、7つの種(monocytogenes、ivanovii、seeligeri、innocua、welshimeri、martii、およびgrayi)を含む。2種のみが、病原性であることが公知である: L.monocytogenesおよびL.ivanovii(以前は、L.monocytogenes血清型5)。しかし、L.ivanoviiは、主に動物に感染し、ヒトにおいて希に疾患を引きおこす。血清型決定は、種のレベル未満でListeriaの分離株を区別する。L.monocytogenes株は、菌体抗原(O)および鞭毛抗原(H)におけるバリエーションに従って血清型決定される。細菌の表面は、リポポリサッカリド(LPS)で覆われ、LPSの最も外側の部分は、O抗原として公知である。菌体抗原は、グラム陽性細菌およびグラム陰性細菌の両方において見出される。鞭毛は、細菌の移動を助けるテール様構造体である。鞭毛の細長い糸様の部分は、H抗原といわれる。
【0042】
L.monocytogenesは、高度な遺伝的多様性およびクローン性集団構造を有する。L.monocytogenesの12の血清型(1/2a、1/2b、1/2c、3a、3b、3c、4a、4b、4c、4d、4e、および7)が認識されている。L.monocytogenes内の2つの主要な系統発生学的な部門は、記載されている。第1の部門は、血清型1/2b、3b、4b、4d、および4eからなり、第2の部門は、血清型1/2a、1/2c、3a、および3cからなる。さらに、あまり一般的でない血清型4aおよび4cはまた記載されており、第3の部門を構成する。3つの血清型(1/2a、1/2b、および4b)は、臨床例のうちの大部分を引きおこす原因である。食品および環境から単離されたL.monocytogenesのうちの50%超は、血清型1/2(特に、1/2aおよび1/2b)である。しかし、血清型4b系統は、ヒトリステリア症の食品由来の勃発の最も優勢な原因である。
【0043】
いくつかのバクテリオファージは、L.monocytogenesのいくつかの血清型に感染し得るが、他には感染し得ない狭い宿主範囲を有する。例えば、いくつかのバクテリオファージは、Listeria monocytogenes 19115(血清型4b)に特異的であるが、Listeria monocytogenesの他の血清型(例えば、Listeria monocytogenes 51782(血清型3a))を検出し得ない。いくつかの実施形態において、上記選択されたバクテリオファージは、Listeria monocytogenesの1つの血清型に特異的であるが、Listeria monocytogenesの別の血清型に感染し得ない。場合によっては、上記選択されたバクテリオファージは、Listeria monocytogenes 19115(血清型4b)に特異的であるが、Listeria monocytogenes 51782(血清型3a)に感染し得ない。
【0044】
いくつかのバクテリオファージは、多数の属にわたる細菌の種に感染し得る広い宿主範囲を有することが公知である。例えば、バクテリオファージMuは、Escherichia coli、Citrobacter freundii、Shigella sonnei、およびEnterobacterの種に感染し得る。同様に、いくつかのバクテリオファージは、特定の細菌属内で広い宿主範囲を有することが公知である。例えば、多数のListeria特異的バクテリオファージ(A511およびP100が挙げられる)は、Listeria monocytogenesのいくつかの血清型、および他のListeria sppに感染し得る。
【0045】
ある特定の適用のために、広い宿主範囲を有するListeria特異的バクテリオファージを使用することは、有利であり得る。他の適用のために、Listeriaの多数の種に感染し得るListeria特異的ファージを使用することは有利であり得る。従って、いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、少なくとも2種、3種、4種、5種、6種、および7種のListeriaに感染し得るように変異される。他の実施形態において、バクテリオファージは、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12の血清型のL.monocytogenesに感染し得るように変異される。
【0046】
いくつかの実施形態において、上記方法は、宿主細菌株および標的宿主細菌株を含む種々の比の一連の第1の共培養混合物を調製する工程を包含する。さらなる実施形態において、宿主細菌株および標的宿主細菌株は、各々のストック培養物を得るために別個に培養される。ある特定の実施形態において、上記宿主細菌株は、Listeria monocytogenes 19115(血清型4b)に関するものである。さらなる実施形態において、上記標的細菌株は、Listeria monocytogenes 51782(血清型3a)である。他の実施形態において、上記標的細菌株は、Listeria monocytogenes血清型1/2aである。いくつかの実施形態において、上記標的細菌株は、Listeria monocytogenes血清型1/2bである。さらに他の実施形態において、上記標的細菌株は、以下のListeria monocytogenes血清型のうちの1またはこれより多くを含む: 1/2a、1/2b、1/2c、3a、3b、3c、4a、4b、4c、4d、4e、および7。
【0047】
目的の選択されたファージの存在下にいたことがない上記宿主および標的宿主細菌株の容積を別個に培養した後に、上記細菌培養物は、種々の比で互いに合わされ、一連の共培養物が作られる。1つの場合に、上記一連の複数の第1の共培養物は、1:0、9:1、1:1、1:9、および0:1の上記宿主細菌株:上記標的宿主細菌株の比を構成する。他の場合には、上記複数の第1の共培養物は、1:0~0:1の間の任意の適切な比を構成する。
【0048】
さらなる実施形態において、上記方法は、ファージ株を、上記第1の共培養混合物の各々に添加する工程を包含する。共培養物 対 ファージの比は、ファージ/宿主の最小感染多重度(MOI)に依存して変動して、生産的な培養物感染を引きおこし得る。場合によっては、上記MOIは、少なくとも0.1、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、または5.0である。ある特定の実施形態において、上記MOIは1.0である。いくつかの実施形態において、上記ファージ株は、Listeria spp.に対して特異的である。他の実施形態において、上記ファージ株は、Listeria monocytogenesに対して特異的である。さらに他の実施形態において、上記ファージは、Listeria monocytogenesの1つの血清型に対して特異的である。例えば、上記選択されたファージは、Listeria monocytogenes 19115(血清型4b)に対して特異的であり得る。ある種の場合に、上記ファージは、A511、P100、LMTA-94、LMA4、LMA8、P70、LP-ES1、LP-ES3Aから選択される。
【0049】
ある種の場合に、上記方法は、上記第1の共培養混合物および上記ファージ株を、細菌培養条件下でインキュベートする工程を包含する。上記宿主および/または標的宿主生物に適切な増殖培地は、1.2~1.5% アガーで作製され、滅菌ペトリ皿に注がれ、固化して、「基層(base layer)」を作ることを可能にされる。対数増殖期中期にある300μLの細菌培養物は、100μLのファージと混合され、15~20分間振盪しながら室温でインキュベートされる。次いで、その感染した培養物は、0.7~1.0% アガーで作られた、細菌が増殖するために適した4mLの融解した(50~55℃)培地と混合され、ペトリ皿の中に基礎アガー層の上に注がれる。「上層(top layer)」は、室温へと冷却し、固化させ、次いで、細菌株が培養される最適な増殖条件下で12~15時間インキュベートされる。
【0050】
いくつかの実施形態において、上記方法は、ファージ溶解物を、上記複数の第1の共培養物の各々から集める工程を包含する。ある特定の実施形態において、インキュベーション後に、上記ファージ溶解物は、上記第1の共培養混合比の各々から分離される。いくつかの実施形態において、各共培養混合物は遠心分離され、その上清は、ファージ溶解物を得るために濾過される。例えば、各共培養物は、3220×gで室温において20分間遠心分離され得る。いくつかの実施形態において、上記フィルターは、0.75μm、0.65μm、0.55μm、0.45μm、0.35μm、0.25μm、または0.15μm未満である。ある特定の実施形態において、上記フィルターは、0.45μmである。場合によっては、上記複数の第1の共培養物の各々からのファージ溶解物は、ファージ溶解物の単一の容積を得るためにプールされる。
【0051】
いくつかの実施形態において、上記方法は、ファージ溶解物をアッセイして、上記細菌宿主範囲が拡大されているか否かを決定する工程を包含する。場合によっては、上記プールしたファージ溶解物は、上記同定した宿主株上に、および上記選択された標的宿主株上に、単一のプラークのためにプレートされる。例えば、二重重層アッセイは、上記宿主および標的宿主生物に対するバクテリオファージ特異性に関してチェックするために使用され得る。上記宿主および標的宿主性物の非処理の対数増殖期中期の培養物は、増殖され、二重重層アッセイにおいて使用され得る。プラーク形成単位(PFU)が形成される場合、上記アッセイにおいて使用される生物に対する感染活性が検出される。この工程は、元の宿主に対する感染活性が失われ、所望の宿主拡大事象を受けた変異ファージを曝すことを確実にする。
【0052】
いくつかの実施形態において、上記プールしたファージ溶解物は、次いで、本明細書で詳細に記載されるように、上記複数の第1の共培養物へと継代され、単離され、再びアッセイされる。継代は、上記標的宿主細菌株に感染する変異ファージが検出されるまで反復される。いくつかの実施形態において、ファージは、少なくとも2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、または10回継代される。
【0053】
いくつかの実施形態において、上記方法は、拡大した宿主範囲を有する変異ファージを単離する工程を包含する。上記宿主および標的宿主生物の両方に対する活性の確認後に、上記方法は、上記変異ファージを単離する工程を包含する。いくつかの実施形態において、上記単離された変異ファージ集団は、次いで、変異ファージのストックを生成するために拡大される。
【0054】
開示される方法は、上記ファージが、他の方法では感染しない所定の細菌宿主に感染する手順を提示する。
【0055】
従って、本発明の方法は、特定の目的の微生物を認識し、結合する、感染性因子と関連する結合因子の高い特異性を利用する。
【0056】
他の適用において、より狭い宿主範囲を有するバクテリオファージを使用することは、有利であり得る。例えば、臨床上関連する血清型(1/2a、1/2b、および4b)にのみ感染する能力がありかつ非病原性Listeria血清型に感染できないListeria特異的ファージを使用することは、有利であり得る。従って、いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、L.monocytogenesの病原性血清型に感染する能力がありかつL.monocytogenesの非病原性血清型に感染できないように変異される。
【0057】
いくつかの実施形態において、バクテリオファージの宿主範囲は、宿主特異性の原因であるタンパク質を改変することによって、低減または変化され得る。細菌宿主特異性は、細胞壁結合ドメイン(CBD)またはバクテリオファージに存在する他のタンパク質によって規定され得る。CBDは、特異的細胞壁認識にとって重要であり、エンドリシン、またはスパニン、またはテールファイバー、またはテールスパイクタンパク質に存在し得る。例えば、テールスパイクタンパク質は、細菌宿主の細胞表面に結合し、細菌宿主認識を媒介する。従って、テールスパイクタンパク質の変異は、変異したバクテリオファージが特定の細菌株を認識する能力を変化させるために使用され得る。
【0058】
従って、いくつかの実施形態において、テールファイバーまたはテールスパイクタンパク質をコードする遺伝子は、特定のバクテリオファージの特異性を変化または低減するために変異され得る。例えば、バクテリオファージは、2つのテールスパイクタンパク質(第1のものは第1のL.monocytogenes血清型(例えば、4b)に対する特異性を提供し、第2のものは第2のL.monocytogenes血清型(例えば、7)に対する特異性を提供する)を有し得る。従って、いくつかの実施形態において、1つのテールスパイクタンパク質は、上記バクテリオファージの特異性を変化させるために変異され得る。バクテリオファージを変異させるために当該分野で概して公知の任意の分子的方法が、テールファイバー/テールスパイクタンパク質を変化させるために使用され得、その結果、バクテリオファージの特異性は狭くされる。例えば、バクテリオファージは、ランダム変異誘発プロトコールに供され得る。
【0059】
場合によっては、バクテリオファージゲノムが、重なり合うDNAフラグメントへと分割され得る。目的のテールスパイクタンパク質(すなわち、目的のものではない血清型に対して特異的なテールスパイクタンパク質)をコードするフラグメントは、その遺伝子内の標的化された変異誘発を導入するために、エラープローンPCRを使用して増幅され得る。ゲノムDNAのフラグメントは、次いで、ファージゲノムのライブラリーを生成するために再アセンブリされ得る。プールしたファージゲノムは、次いで、Listeriaへとトランスフェクトされ得、それによって、変異した子孫ファージを生成する。次いで、子孫ファージは、目的のListeria株上でのプラーク形成に関してアッセイされ得る。次いで、所望の特異性を有する生存できるファージ変異体は、単離され得る。
【0060】
従って、いくつかの実施形態において、本開示は、低減した宿主範囲を有する変異体バクテリオファージを生成する方法に関する。いくつかの実施形態において、上記方法は、(i)バクテリオファージのテールスパイクタンパク質をコードする遺伝子を変異させる工程;(ii)子孫ファージ溶解物を、上記変異したバクテリオファージから生成する工程;(iii)ファージ溶解物をアッセイして、上記細菌宿主範囲が低減しているか否かを決定する工程;および(iv)低減した宿主範囲を有する変異ファージを単離する工程を包含する。
【0061】
インジケーター変異体バクテリオファージ
本明細書でより詳細に記載されるように、本開示の組成物および方法は、病原性微生物の検出における使用のための感染性因子を含み得る。ある特定の実施形態において、本開示は、組換えインジケーター変異体バクテリオファージであって、ここで上記バクテリオファージゲノムは、インジケーターまたはレポーター遺伝子を含むように遺伝子改変されるものを含む。いくつかの実施形態において、本開示は、以前に変異されたバクテリオファージのゲノムにインジケーター遺伝子が組み込まれた組換え変異体バクテリオファージを含む組成物を含み得る。いくつかの実施形態において、上記変異体バクテリオファージは、本明細書で詳細に記載される方法に従って生成される。いくつかの実施形態において、上記変異体バクテリオファージは、拡大されたおよび/または低減された宿主範囲を有する。
【0062】
組換えインジケーター変異体バクテリオファージは、レポーターまたはインジケーター遺伝子を含み得る。上記感染性因子のある特定の実施形態において、上記インジケーター遺伝子は、融合タンパク質をコードしない。例えば、ある特定の実施形態において、宿主細菌の感染後のバクテリオファージ複製の間の上記インジケーター遺伝子の発現は、可溶性インジケータータンパク質生成物を生じる。ある特定の実施形態において、上記インジケーター遺伝子は、上記変異体バクテリオファージの後期遺伝子領域に挿入され得る。後期遺伝子は、構造タンパク質をコードすることから、他のファージ遺伝子より高いレベルで一般に発現される。上記後期遺伝子領域は、クラスIII遺伝子領域であってよく、主要カプシドタンパク質の遺伝子を含み得る。
【0063】
いくつかの実施形態は、上記主要カプシドタンパク質遺伝子の下流に相同組換えのための配列を設計する工程(および必要に応じて調製する工程)を含む。他の実施形態は、主要カプシドタンパク質遺伝子の上流に相同組換えのための配列を設計する工程(および必要に応じて調製する工程)を含む。いくつかの実施形態において、上記配列は、非翻訳領域の後にコドン最適化レポーター遺伝子を含む。非翻訳領域は、ファージ後期遺伝子プロモーターおよびリボソーム進入部位を含み得る。
【0064】
いくつかの実施形態において、上記選択された野生型バクテリオファージは、Caudovirales目のファージに由来する。Caudoviralesは、2本鎖DNA(dsDNA)ゲノムを有するテールのあるバクテリオファージの目である。Caudovirales目の各ビリオンは、ウイルスゲノムを含む正二十面体のヘッドおよび可撓性のテールを有する。Caudovirales目は、5つのバクテリオファージ科を含む: Myoviridae(長い収縮性のテール)、Siphoviridae(長い非収縮性のテール)、Podoviridae(短い非収縮性のテール)、Ackermannviridae、およびHerelleviridae。用語マイオウイルスは、正二十面体ヘッドおよび長い収縮性のテールを有し、Myoviridae科およびHerelleviridae科の両方の中のバクテリオファージを包含する任意のバクテリオファージを記載するために使用され得る。いくつかの実施形態において、上記選択された野生型バクテリオファージは、Myoviridae科のメンバー(例えば、ListeriaファージB054、ListeriaファージLipZ5、ListeriaファージPSU-VKH-LP041、およびListeriaファージWIL-2)である。他の実施形態において、上記選択された野生型バクテリオファージは、Herelleviridae科のメンバーである。Herelleviridae科の下のPecentumvirus属は、ListeriaファージLMSP-25、ListeriaファージLMTA-148、ListeriaファージLMTA-34、ListeriaファージLP-048、ListeriaファージLP-064、ListeriaファージLP-083-2、ListeriaファージLP-125、ListeriaウイルスP100、ListeriaファージList-36、ListeriaファージWIL-1、ListeriaファージvB_LmoM_AG20、およびListeriaウイルスA511のようなバクテリオファージを含む。LMA4およびLMA8はまた、同様に、Herelleviridae科の下のpecentumvirus属の中である。他の実施形態において、上記選択された野生型バクテリオファージは、LMA4またはLMA8である。ある特定の場合に、上記選択された野生型バクテリオファージは、LP-ES3Aであり、これは、A511に由来するが、Listeria monocytogenesの血清型3Aに感染し得るように適合されている。さらに他の実施形態において、上記選択された野生型バクテリオファージは、Ackermannviridae科のメンバーである。さらに他の実施形態において、上記選択された野生型バクテリオファージは、Siphoviridae科のメンバーであり、これは、ListeriaファージA006、A118、A500、B025、LP-026、LP-030-2、LP-030-3、LP-037、LP-101、LP-110、LP-114、P35、P40、P70、PSA、vB_LmoS_188、およびvB_Lmos_293を含む。他の実施形態において、上記選択された野生型バクテリオファージは、LP-ES1である。LP-ES1はまた、同様に、Siphoviridae科の下のHomburgvirus属の中である。
【0065】
いくつかの実施形態において、インジケーターバクテリオファージは、Listeria特異的ファージに由来する。インジケーターバクテリオファージは、Pecentumvirus、Tequatravirus、ViI、Kuttervirus、Homburgvirus、A511、P100、P70、LMTA-94、LMA4、LMA8、P70、LP-ES1、LP-ES3AまたはListeriaファージLMTA-94、P70、T7、T7様、T4、T4様、Listeria spp.特異的バクテリオファージ、ViI、もしくはViI様(GenBank/NCBIによればKuttervirus)バクテリオファージと少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99% 同一性を有するゲノムを有する別のバクテリオファージから構築され得る。他の実施形態において、上記選択された野生型バクテリオファージは、A511、P100、P70、LP-ES1、LP-ES3A、LMA4またはLMA8である。いくつかの実施形態において、上記インジケーターファージは、特定の病原性微生物に対して高度に特異的なバクテリオファージに由来する。上記遺伝的改変は、野生型遺伝子の欠失を回避してもよく、従って、その改変されたファージは、多くの市販のファージより野生型感染性因子に類似したままであってもよい。環境に由来するバクテリオファージは、環境の中で見出される細菌に対してより特異的であり得るので、市販のファージとは遺伝子が別個であり得る。
【0066】
本発明の別の局面において、カクテル組成物は、組換えバクテリオファージのうちの少なくとも1つのタイプを含む。いくつかの実施形態において、上記カクテル組成物は、LMA4、LMA8、A511、P70、LP-ES1、およびLP-ES3Aから構築される組換えバクテリオファージのうちの少なくとも1つのタイプを含む。他の実施形態において、上記カクテル組成物は、LMA8、LP-ES1、およびLP-ES3Aから構築される組換えバクテリオファージのうちの少なくとも1つのタイプを含む。
【0067】
さらに、非必須であると考えられるファージ遺伝子は、認識されていない機能を有し得る。例えば、見かけは非必須の遺伝子は、アセンブリにおける巧妙な切断、適合、もしくはトリミング機能など、バーストサイズを上昇させることにおいて重要な機能を有し得る。従って、遺伝子を欠失させてインジケーターを挿入することは、有害であり得る。大部分のファージは、それらの天然のゲノムより数パーセント大きいDNAをパッケージし得る。この考察では、より小さなインジケーター遺伝子は、バクテリオファージ(特に、より小さなゲノムを有するバクテリオファージ)を改変するためのより適切な選択であり得る。OpLucおよびNANOLUC(登録商標)タンパク質は、わずか約20kDa(コードするのに約500~600bp)である一方で、FLucは、約62kDa(コードするのに約1,700bp)である。比較のために、T7のゲノムは約40kbpである一方で、T4ゲノムは、約170kbpであり、Listeria特異的バクテリオファージのゲノムは約157kbpである。さらに、レポーター遺伝子は細菌によって内因的に発現されるべきでなく(すなわち、細菌ゲノムの一部でない)、高いシグナル対バックグラウンド比を生成するべきであり、タイムリーに容易に検出可能であるべきである。PromegaのNANOLUC(登録商標)は、改変されたOplophorus gracilirostris(深海エビ)ルシフェラーゼである。いくつかの実施形態において、PromegaのNANO-GLO(登録商標)、イミダゾピラジノン基質(フリマジン)と組み合わせたNANOLUC(登録商標)は、低いバックグラウンドで頑健なシグナルを提供し得る。
【0068】
いくつかのインジケーター変異ファージ実施形態において、上記インジケーター遺伝子は、野生型ファージ遺伝子を無傷のままにして、機能的遺伝子の破壊を回避するために非翻訳領域へと挿入され得、これは、非実験室株の細菌に感染させる場合に、より大きな適合をもたらし得る。さらに、3つ全てのリーディングフレームに終止コドンを含めることは、リードスルー(発現漏れ(leaky expression)としても公知)を低減することによって、発現を増加させる一助になり得る。このストラテジーはまた、上記ファージから分離できないバックグラウンドシグナル(例えば、ルシフェラーゼ)として現れる融合タンパク質が低レベルで作られるという可能性を排除し得る。
【0069】
インジケーター遺伝子は、種々の生体分子を発現し得る。上記インジケーター遺伝子は、検出可能な生成物を発現する遺伝子または検出可能な生成物を生成する酵素である。例えば、1つの実施形態において、上記インジケーター遺伝子は、ルシフェラーゼ酵素をコードする。種々のタイプのルシフェラーゼが使用され得る。代替の実施形態において、および本明細書でより詳細に記載されるように、ルシフェラーゼは、Oplophorusルシフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、Luciaルシフェラーゼ、Renillaルシフェラーゼまたは操作されたルシフェラーゼのうちの1種である。いくつかの実施形態において、ルシフェラーゼ遺伝子はOplophorusに由来する。いくつかの実施形態において、インジケーター遺伝子は、NANOLUC(登録商標)などの遺伝子改変されたルシフェラーゼ遺伝子である。
【0070】
従って、いくつかの実施形態において、本発明は、上記後期(クラスIII)遺伝子領域において非バクテリオファージインジケーター遺伝子を含む遺伝子改変されたバクテリオファージを含む。いくつかの実施形態において、上記非天然のインジケーター遺伝子は、後期プロモーターの制御下にある。ウイルス後期遺伝子プロモーターを使用することは、上記レポーター遺伝子(例えば、ルシフェラーゼ)がウイルスカプシドタンパク質のように、高レベルで発現されるのみならず、内因性細菌遺伝子またはさらには初期ウイルス遺伝子のように停止もされないことを確実にする。
【0071】
いくつかの実施形態において、上記後期プロモーターは、Pecentumvirus、Tequatravirus、Homburgvirus、もしくはKuttervirusプロモーター、または選択された野生型ファージにおいて見いだされる、すなわち、遺伝的改変なしのプロモーターに類似の別のファージプロモーターである。上記後期遺伝子領域は、クラスIII遺伝子領域であり得、上記バクテリオファージは、ListeriaファージLMTA-94、P70、A511、LP-ES1、LP-ES3A、LMA4、LMA8、Pecentumvirus、Tequatravirus、Homburgvirus、Kuttervirus、T7、T4、T4様、ViI、Listeria spp.特異的バクテリオファージ、またはLMTA-94、LMA4、LMA8、Pecentumvirus、Tequatravirus、Homburgvirus、Kuttervirus、T7、T4、ViI、もしくはListeria特異的バクテリオファージと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%もしくは95% 相同性を有するゲノムを有する別の野生型バクテリオファージに由来し得る。上記Pecentumvirus後期遺伝子プロモーターは、-10領域からなるのみならず、-35領域からもなることから、T4またはTequatravirusプロモーターとは異なる。この-35領域は、大部分の細菌プロモーターにおいて見出される標準的-35領域とは異なる。
【0072】
感染性因子に対する遺伝的改変は、核酸の小さなフラグメント、遺伝子の実質的部分、もしくは遺伝子全体の挿入、欠失、または置換を含み得る。いくつかの実施形態において、挿入もしくは置換された核酸は、非天然の配列を含む。非天然のインジケーター遺伝子は、バクテリオファージプロモーターの制御下にあるように、バクテリオファージゲノムへと挿入され得る。従って、いくつかの実施形態において、上記非天然のインジケーター遺伝子は、融合タンパク質の一部ではない。すなわち、いくつかの実施形態において、遺伝的改変は、上記インジケータータンパク質生成物が上記野生型のバクテリオファージのポリペプチドを含まないように構成され得る。いくつかの実施形態において、上記インジケータータンパク質生成物は、可溶性である。いくつかの実施形態において、本発明は、目的の細菌を検出するための方法を包含し、上記方法は、試験サンプルをこのような組換えバクテリオファージとともにインキュベートする工程を包含する。
【0073】
いくつかの実施形態において、宿主細菌の感染後の子孫バクテリオファージにおけるインジケーター遺伝子の発現は、遊離の可溶性タンパク質生成物をもたらす。いくつかの実施形態において、上記非天然のインジケーター遺伝子は、ファージ構造タンパク質をコードする遺伝子と連結していないので、融合タンパク質を生じない。カプシドタンパク質への検出部分の融合物(すなわち、融合タンパク質)を使用するシステムとは異なり、本発明のいくつかの実施形態は、可溶性インジケーターまたはレポーター(例えば、可溶性ルシフェラーゼ)を発現する。いくつかの実施形態において、上記インジケーターまたはレポーターは、理想的には、上記バクテリオファージ構造を含まない。すなわち、上記インジケーターまたはレポーターは、上記ファージ構造に結合されない。よって、上記インジケーターまたはレポーターの遺伝子は、上記組換えファージゲノムにおける他の遺伝子と融合されない。これは、上記アッセイの感度を大いに増大させ得(単一の細菌まで)、上記アッセイを単純化し得、上記アッセイが、検出可能な融合タンパク質を生成する構築物で必要とされるさらなる精製工程に起因する数時間とは対照的に、いくつかの実施形態に関しては、2時間もしくはこれより短い時間で完了することを可能にする。さらに、融合タンパク質は、例えば、酵素活性部位のコンホメーションもしくは基質へのアクセスを変化させ得るタンパク質折り畳みの制約に起因して、可溶性タンパク質より活性が低い場合がある。濃度が、10 細菌細胞/mL サンプルである場合、例えば、2時間未満が、上記アッセイに十分であり得る。
【0074】
さらに、定義による融合タンパク質は、上記バクテリオファージにおけるタンパク質のサブユニットに付着される部分の数を制限する。例えば、融合タンパク質のためのプラットフォームとして働くように設計された市販のシステムを使用すると、各T7バクテリオファージ粒子において遺伝子10Bカプシドタンパク質の約415コピーに相当する、融合部分の約415コピーが生じる。この制約がなければ、感染した細菌は、上記バクテリオファージに適合し得るより多くの上記インジケータータンパク質生成物(例えば、ルシフェラーゼ)のコピーを発現すると予測され得る。さらに、大きな融合タンパク質(例えば、カプシド-ルシフェラーゼ融合物)は、上記バクテリオファージ粒子のアセンブリを阻害し得、そのようにして、より少ないバクテリオファージ子孫を生じる。従って、可溶性の非融合インジケーター遺伝子生成物が好ましいものであり得る。
【0075】
いくつかの実施形態において、上記インジケーターファージは、検出可能な酵素などのレポーターをコードする。上記インジケーター遺伝子生成物は、光を生じ得、そして/または色の変化によって検出可能であり得る。種々の適切な酵素は、市販されている(例えば、アルカリホスファターゼ(AP)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、もしくはルシフェラーゼ(Luc))。いくつかの実施形態において、これらの酵素は、上記インジケータータンパク質生成物として働き得る。いくつかの実施形態において、ホタルルシフェラーゼは、上記インジケータータンパク質生成物である。いくつかの実施形態において、Oplophorusルシフェラーゼは、上記インジケータータンパク質生成物である。いくつかの実施形態において、NANOLUC(登録商標)は、上記インジケーター部分である。他の操作されたルシフェラーゼまたは検出可能なシグナルを生成する他の酵素もまた、適切なインジケータータンパク質生成物であり得る。
【0076】
いくつかの実施形態において、可溶性インジケータータンパク質の使用は、汚染している親ファージを、上記感染したサンプル細胞の溶解物から除去する必要性を排除する。融合タンパク質システムを用いると、サンプル細胞に感染させるために使用される任意のバクテリオファージは、付着される検出部分を有し、上記検出部分も含む娘バクテリオファージから区別できない。サンプル細菌の検出は、新たに作り出された(デノボ合成された)検出部分の検出に依拠するので、融合構築物の使用は、古い(親)部分を新たに作り出された(娘バクテリオファージ)部分から分離するためにさらなる工程を要する。これは、上記バクテリオファージの生活環の完了の前に、上記感染した細胞を複数回洗浄する工程、物理的もしくは化学的手段によって感染後に過剰な親ファージを不活性化する工程、および/または上記親バクテリオファージを結合部分(例えば、ビオチン)で化学的に改変する工程(これは、次いで、結合および分離され得る(例えば、ストレプトアビジン被覆セファロースビーズによって))によって達成され得る。しかし、除去時にすべてのこれら試みを使用したとしても、親ファージは、少ない数のサンプル細胞の感染を保証するために高濃度の親ファージが使用される場合に残存することができ、感染した細胞の子孫ファージからのシグナルの検出を不明確にし得るバックグラウンドシグナルを作り出す。
【0077】
対照的に、本発明のいくつかの実施形態において発現される可溶性インジケータータンパク質生成物を用いると、最終溶解物からの上記親ファージの精製は不要である。なぜなら上記親ファージは、付着されるいかなるインジケータータンパク質をも有しないからである。従って、感染後に存在する任意のインジケータータンパク質は、感染した1個もしくは複数の細菌の存在を示して、新たに作り出されていなければならない。この利益を利用するために、親ファージの生成および調製は、細菌培養物中での親バクテリオファージの生成の間に生成された任意の遊離インジケータータンパク質からの上記ファージの精製を含み得る。標準的なバクテリオファージ精製技術は、本発明に従うファージのいくつかの実施形態を精製するために使用され得る(例えば、スクロース密度勾配遠心分離、塩化セシウム等密度(isopycnic)密度勾配遠心分離、HPLC、サイズ排除クロマトグラフィー、および透析または派生技術(例えば、Amiconブランドの濃縮器 - Millipore, Inc.)。塩化セシウム等密度超遠心分離は、親ファージ粒子を、上記細菌宿主中のファージの増殖の際に生成される汚染するルシフェラーゼタンパク質から分離するために、本発明の組換えファージの調製の一部として用いられ得る。このようにして、本発明の親組換えバクテリオファージは、上記細菌における生成の間に生成される任意のルシフェラーゼが実質的にない。上記ファージストックに存在する残りのルシフェラーゼの除去は、上記組換えバクテリオファージが試験サンプルとともにインキュベートされる場合に観察されるバックグラウンドシグナルを実質的に低減し得る。
【0078】
改変されたバクテリオファージのいくつかの実施形態において、上記後期プロモーター(クラスIIIプロモーター、例えば、Pecentumvirus、Homburgvirus、T7、T4、ViI、またはLMA4/8由来のもの)は、上記バクテリオファージ粒子へとアセンブルされる構造タンパク質の遺伝子を転写する同じバクテリオファージのRNAポリメラーゼに対して高いアフィニティーを有する。これらのタンパク質は、各バクテリオファージ粒子が、これら分子の数十個もしくは数百個ものコピーを含むので、上記ファージによって作られる最も豊富なタンパク質である。ウイルス後期プロモーターの使用は、最適には、上記ルシェラーゼインジケータータンパク質の発現の高レベルを確実にし得る。上記インジケーターファージが由来する元の野生型バクテリオファージ(例えば、Pecentumvirus、T4、T7ベースの、ViIベースの、またはLMAベースのシステムに伴って、Pecentumvirus、Homburgvirus、T4、T7、ViI、またはLMA4/8後期プロモーター)に由来するか、これに特異的か、またはこの下で活性な後期ウイルスプロモーターの使用は、上記インジケータータンパク質の最適な発現をさらにさらに確実にし得る。標準的な細菌(非ウイルス/非バクテリオファージ)プロモーターの使用は、いくつかの場合では、発現に有害であり得る。なぜならこれらのプロモーターは、バクテリオファージ感染の間に(上記バクテリオファージがファージタンパク質生成のための細菌資源を優先するために)しばしばダウンレギュレートされるからである。従って、いくつかの実施形態において、上記ファージは、好ましくは、発現をファージ構造構成要素のサブユニットの数に制限しないゲノム内での配置を用いて、可溶性(遊離)インジケータータンパク質をコードし、高レベルで発現するように操作されている。
【0079】
本開示の組成物は、1種または複数種の野生型または遺伝子改変された感染性因子(例えば、バクテリオファージ)および1種または複数種のインジケーター遺伝子を含み得る。いくつかの実施形態において、組成物は、同じまたは異なるインジケータータンパク質をコードおよび発現し得る、異なるインジケーターファージのカクテルを含み得る。いくつかの実施形態において、バクテリオファージのカクテルは、少なくとも2種の異なるタイプの組換えバクテリオファージを含む。
【0080】
Listeria spp.を検出するために変異体バクテリオファージを使用する方法
本明細書で注記されるように、ある特定の実施形態において、本開示は、微生物を検出するために感染性粒子を使用する方法に関する。
【0081】
別の局面において、本開示は、サンプル中の目的の細菌を検出するための方法であって、上記方法は、上記サンプルを、宿主および目的の標的宿主細菌に感染するバクテリオファージとともにインキュベートする工程であって、ここで上記バクテリオファージは、インジケーター遺伝子を含み、その結果、上記目的の細菌の感染後のバクテリオファージ複製の間の上記インジケーター遺伝子の発現は、可溶性インジケータータンパク質生成物の生成を生じる工程;および上記インジケータータンパク質生成物を検出する工程であって、ここで上記インジケータータンパク質生成物の陽性検出は、上記目的の細菌が上記サンプルに存在することを示す工程を包含する方法に関する。
【0082】
いくつかの実施形態において、選択されたバクテリオファージは、宿主範囲を拡大および/または低減するために、本明細書で詳細に記載されるように変異される。いくつかの実施形態において、上記選択されたバクテリオファージは、Listeria monocytogenesの1つの血清型に対して特異的であり得る。例えば、いくつかのバクテリオファージは、Listeria monocytogenes 19115(血清型4b)に対して特異的であるが、Listeria monocytogenesの他の血清型(例えば、Listeria monocytogenes 51782(血清型3a))を検出できない。いくつかの実施形態において、上記選択されたバクテリオファージは、Listeria monocytogenesの1つの血清型に対して特異的であるが、Listeria monocytogenesの別の血清型に感染できない。場合によっては、上記選択されたバクテリオファージは、Listeria monocytogenes 19115(血清型4b)に対して特異的であるが、Listeria monocytogenes 51782(血清型3a)に感染できない。
【0083】
いくつかの実施形態において、上記変異したバクテリオファージは、宿主および目的の標的宿主細菌に感染する。ある特定の実施形態において、上記宿主細菌株は、Listeria monocytogenes 19115(血清型4b)に関するものである。さらなる実施形態において、上記標的細菌株は、Listeria monocytogenes 51782(血清型3a)である。
【0084】
いくつかの実施形態において、上記変異体バクテリオファージは、上記ファージの複製の間に可溶性ルシフェラーゼを発現するように操作され得る。ルシフェラーゼの発現は、ウイルスカプシドプロモーター(例えば、バクテリオファージT7またはT4後期プロモーター)によって駆動され、高発現を生じる。親ファージは、それらがルシフェラーゼを含まないように調製されるので、上記アッセイにおいて検出されるルシフェラーゼは、細菌細胞の感染の間に、子孫ファージの複製に由来しなければならない。従って、上記親ファージを上記子孫ファージから分離する必要は、一般にはない。
【0085】
いくつかの実施形態において、上記サンプルにおける細菌の富化は、試験前に必要とされない。いくつかの実施形態において、上記サンプルは、増殖を助長する条件でのインキュベーションによって試験の前に富化され得る。このような実施形態では、富化期間は、サンプルのタイプおよびサイズに応じて、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、24時間またはそれより長くてもよい。
【0086】
一実施形態において、本発明は、サンプル中で目的の細菌を検出するための方法であって、上記方法は、上記サンプルを、上記目的の細菌に感染する組換えバクテリオファージとともにインキュベートする工程であって、ここで上記組換えバクテリオファージは、上記バクテリオファージの後期遺伝子領域に挿入されたインジケーター遺伝子を含み、その結果、宿主細菌の感染後のバクテリオファージ複製の間の上記インジケーター遺伝子の発現は、可溶性インジケータータンパク質生成物の生成を生じる工程;および上記インジケータータンパク質生成物を検出する工程であって、ここで上記インジケータータンパク質生成物の陽性検出は、上記目的の細菌が上記サンプルに存在することを示す工程を包含する方法を含み得る。いくつかの実施形態において、検出されるインジケータータンパク質の量は、上記サンプルに存在する上記目的の細菌の量に相当する。
【0087】
本明細書でより詳細に記載されるように、上記方法は、親インジケーターバクテリオファージが上記サンプルに存在する細菌に感染する濃度範囲を利用し得る。いくつかの実施形態において、上記インジケーターバクテリオファージは、単一細胞などの上記サンプル中に非常に少ない数で存在する標的細菌を迅速に見いだし、標的細菌に結合し、感染するのに十分な濃度で上記サンプルに添加される。いくつかの実施形態において、上記ファージ濃度は、1時間未満で上記標的細菌を見いだし、標的細菌に結合し、感染するのに十分であり得る。他の実施形態において、これらの事象は、上記サンプルへのインジケーターファージの添加の後、2時間未満、3時間未満、または4時間未満で起こり得る。例えば、ある特定の実施形態において、上記インキュベートする工程のためのバクテリオファージ濃度は、1×10 PFU/mLより高いか、1×10 PFU/mLより高いか、または1×10 PFU/mLより高い。
【0088】
ある特定の実施形態において、上記組換え感染性因子は、上記感染性因子ストックの生産の際に生成され得るいかなる残留インジケータータンパク質も含まないように、精製され得る。従って、ある特定の実施形態において、上記組換えバクテリオファージは、上記サンプルとともにインキュベートする前に、塩化セシウム等密度密度勾配遠心分離を使用して精製され得る。上記感染性因子がバクテリオファージである場合、この精製は、DNAを有しないバクテリオファージ(すなわち、空のファージまたは「ゴースト」)を除去するという、追加の利点を有し得る。
【0089】
本発明の方法のいくつかの実施形態において、上記微生物は、サンプルからの上記微生物のいかなる単離または精製もなしに検出され得る。例えば、ある特定の実施形態において、1または数個の目的の微生物を含むサンプルは、アッセイ容器(例えば、スピンカラム、マイクロタイターウェル、またはフィルター)に直接適用され得、上記アッセイはそのアッセイ容器の中で行われる。このようなアッセイの種々の実施形態は、本明細書に開示される。
【0090】
試験サンプルアリコートは、マルチウェルプレートのウェルへと直接分配され得、インジケーターファージが添加され得、そして感染のための十分な期間の後、溶解緩衝液は、インジケータータンパク質のための基質(例えば、ルシフェラーゼインジケーターのためのルシフェラーゼ基質)と同様に添加され得、インジケーターシグナルの検出のためにアッセイされ得る。上記方法のいくつかの実施形態は、フィルタープレートの上で行われ得る。上記方法のいくつかの実施形態は、インジケーターファージによる感染の前に、上記サンプルの濃縮の有りまたはなしで行われ得る。
【0091】
例えば、多くの実施形態において、マルチウェルプレートは、上記アッセイを行うために使用される。プレート(または検出する工程が行われ得る任意の他の容器)の選択は、上記検出する工程に影響を及ぼし得る。例えば、いくつかのプレートは、光の放射の検出に影響を及ぼし得る、着色したもしくは白色のバックグラウンドを含み得る。概して、白色のプレートは、より高い感度を有するが、より高いバックグラウンドシグナルをも生じる。プレートの他の色は、より低いバックグラウンドシグナルを生成し得るが、わずかにより低い感度を有し得る。さらに、バックグラウンドシグナルに関する1つの理由は、1つのウェルから別の隣接するウェルへの光の漏れである。白色のウェルを有するいくつかのプレートがあるが、上記プレートの残りは黒色である。これは、上記ウェルの内部での高いシグナルを可能にするが、ウェルからウェルへの光の漏れを防止し、従って、バックグラウンドを低減し得る。従って、プレートもしくは他のアッセイ容器の選択は、上記アッセイのための感度およびバックグラウンドシグナルに影響を与え得る。
【0092】
本発明の方法は、感度を増加させるための種々の他の工程を包含し得る。例えば、本明細書でより詳細に考察されるように、上記方法は、過剰な親バクテリオファージおよび/または上記バクテリオファージ調製物を汚染するルシフェラーゼもしくは他のレポータータンパク質を除去するために、上記バクテリオファージを添加した後であるが、インキュベートする前に、上記捕捉されかつ感染した細菌を洗浄する工程を包含し得る。
【0093】
いくつかの実施形態において、上記目的の微生物の検出は、上記微生物の集団を増加させる方法としての、上記サンプルを培養する必要性なしに、完了し得る。例えば、ある特定の実施形態において、検出に必要とされる合計時間は、28.0時間、27.0時間、26.0時間、25.0時間、24.0時間、23.0時間、22.0時間、21.0時間、20.0時間、19.0時間、18.0時間、17.0時間、16.0時間、15.0時間、14.0時間、13.0時間、12.0時間、11.0時間、10.0時間、9.0時間、8.0時間、7.0時間、6.0時間、5.0時間、4.0時間、3.0時間、2.5時間、2.0時間、1.5時間、1.0時間、45分または30分未満である。結果までの時間を最小にすることは、病原体に対する食品および環境の試験において重大である。
【0094】
当該分野で公知のアッセイと対照的に、本発明の方法は、個々の微生物を検出し得る。従って、ある特定の実施形態において、上記方法は、サンプルに存在する上記微生物の≦10個の細胞(すなわち、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個の微生物)を検出し得る。例えば、ある特定の実施形態において、上記組換えバクテリオファージは、Listeria spp.に高度に特異的である。一実施形態において、上記組換えバクテリオファージは、他のタイプの細菌の存在下で、Listeria spp.を区別し得る。ある特定の実施形態において、上記組換えバクテリオファージは、上記サンプル中の特異的タイプの単一細菌を検出するために使用され得る。ある特定の実施形態において、上記組換えバクテリオファージは、上記サンプル中の2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個または100個程度の少なさの特異的細菌を検出する。
【0095】
従って、本発明の局面は、インジケータータンパク質を介して試験サンプル中の微生物の検出のための方法を提供する。いくつかの実施形態において、上記目的の微生物が細菌である場合、上記インジケータータンパク質は、感染性因子(例えば、インジケーターバクテリオファージ)と関連づけられ得る。上記インジケータータンパク質は、基質と反応して、検出可能なシグナルを放射してもよいし、内因性のシグナル(例えば、蛍光タンパク質)を放射してもよい。いくつかの実施形態において、上記検出感度は、試験サンプル中の上記目的の微生物の50個、20個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、もしくは2個程度の少なさの細胞の存在を明らかにし得る。いくつかの実施形態において、上記目的の微生物の実に1個の細胞が、検出可能なシグナルを生じ得る。いくつかの実施形態において、上記バクテリオファージは、P100ウイルス、T4様またはViI様バクテリオファージである。いくつかの実施形態において、上記組換えバクテリオファージは、Listeria特異的バクテリオファージに由来する。ある特定の実施形態において、組換えListeria特異的バクテリオファージは、Listeria spp.に対して高度に特異的である。
【0096】
いくつかの実施形態において、上記感染性因子によってコードされるインジケータータンパク質は、上記感染性因子の複製の間または後に検出可能であり得る。インジケーター部分としての使用に適した検出可能な生体分子の多くの異なるタイプが、当該分野で公知であり、多くは市販されている。いくつかの実施形態において、上記インジケーターファージは、酵素を含み、これは上記インジケータータンパク質として働く。いくつかの実施形態において、上記インジケーターファージのゲノムは、可溶性タンパク質をコードするように改変される。いくつかの実施形態において、上記インジケーターファージは、検出可能な酵素をコードする。上記インジケーターは、光を放射し得る、および/または添加される基質における色の変化によって検出可能であり得る。種々の適切な酵素は、市販されている(例えば、アルカリホスファターゼ(AP)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、またはルシフェラーゼ(Luc))。いくつかの実施形態において、これらの酵素は、上記インジケータータンパク質として働き得る。いくつかの実施形態において、ホタルルシフェラーゼは、上記インジケータータンパク質である。いくつかの実施形態において、Oplophorusルシフェラーゼは、上記インジケータータンパク質である。いくつかの実施形態において、NANOLUC(登録商標)は、上記インジケータータンパク質である。他の操作されたルシフェラーゼもしくは検出可能なシグナルを生成する他の酵素はまた、適切なインジケータータンパク質であり得る。
【0097】
従って、いくつかの実施形態において、上記方法、システムまたはキットの組換えバクテリオファージは、野生型Listeria特異的バクテリオファージから調製される。いくつかの実施形態において、上記インジケーター遺伝子は、内因性シグナルを放射するタンパク質、例えば、蛍光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質など)をコードする。上記インジケーターは光を放射し得る、および/または色の変化によって検出可能であり得る。いくつかの実施形態において、上記インジケーター遺伝子は、基質と相互作用してシグナルを発生する酵素(例えば、ルシフェラーゼ)をコードする。いくつかの実施形態において、上記インジケーター遺伝子は、ルシフェラーゼ遺伝子である。いくつかの実施形態において、上記ルシフェラーゼ遺伝子は、Oplophorusルシフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、Renillaルシフェラーゼ、External Gaussiaルシフェラーゼ、Luciaルシフェラーゼまたは操作されたルシフェラーゼ、例えばNANOLUC(登録商標)、Rluc8.6-535またはオレンジナノ-ランタンのうちの1つである。
【0098】
上記インジケーターを検出する工程は、光の放射を検出する工程を包含し得る。いくつかの実施形態において、ルミノメーターは、基質とのインジケーター(例えば、ルシフェラーゼ)の反応を検出するために使用され得る。RLUの検出はルミノメーターで達成することができ、または、他の機械もしくはデバイスもまた、使用され得る。例えば、分光光度計、CCDカメラ、またはCMOSカメラが、色の変化および他の光の放射を検出し得る。検出にとって絶対RLUが重要であるが、単一細胞または少数の細胞が確実に検出されるためにはシグナル対バックグラウンド比も高い(例えば、>2.0、>2.5または>3.0)ことが必要である。
【0099】
いくつかの実施形態において、上記インジケーターファージは、上記ファージが特異的に認識しかつ感染する細菌の感染の際にのみ生成される酵素(例えば、ルシフェラーゼ)の遺伝子を含むように遺伝的に操作される。いくつかの実施形態において、上記インジケータータンパク質は、ウイルス生活環において後期に発現される。いくつかの実施形態において、本明細書で記載される場合、上記インジケーターは、可溶性タンパク質(例えば、可溶性ルシフェラーゼ)であり、そのコピー数を制限するファージ構造タンパク質と融合されない。
【0100】
従って、インジケーターファージを利用するいくつかの実施形態において、本発明は、目的の微生物を検出するための方法を包含し、上記方法は、少なくとも1個のサンプル細菌を捕捉する工程;上記少なくとも1個の細菌を、複数のインジケーターファージとともにインキュベートする工程;子孫ファージを生成し、可溶性インジケーター部分を発現するための、感染および複製の時間を与える工程;ならびに上記子孫ファージ、好ましくは上記インジケーターを検出する工程であって、ここで上記インジケーターの検出は、上記細菌が上記サンプルに存在することを示す工程を包含する。
【0101】
例えば、いくつかの実施形態において、上記試験サンプル細菌は、プレートの表面に結合することによって、または上記サンプルを細菌学的フィルター(例えば、0.45μm孔サイズのスピンフィルターまたはプレートフィルター)を通してろ過することによって、捕捉され得る。一実施形態において、上記感染性因子(例えば、インジケーターファージ)は、最小限の体積で、上記フィルター上に直接捕捉されたサンプルに添加される。一実施形態において、上記フィルターまたはプレート表面上に捕捉された微生物は、その後、過剰な結合されていない感染性因子を除去するために、1回または複数回洗浄される。一実施形態において、培地(例えば、Luria-Bertaniブロス(本明細書でLBとも称される)、緩衝化ペプトン水(本明細書でBPWとも称される))、またはTryptic SoyブロスもしくはTryptone Soyブロス(本明細書でTSBとも称される)を、さらなるインキュベーション時間のために添加して、細菌細胞およびファージの複製、ならびに上記インジケータータンパク質をコードする遺伝子の高レベル発現を可能にし得る。しかし、試験アッセイのいくつかの実施形態の驚くべき局面は、インジケーターファージとの上記インキュベーション工程が単一のファージ生活環にとって十分長いことのみが必要であるということである。バクテリオファージを使用することの増幅力は、上記ファージが数サイクルにわたって複製するように、より時間を要すると以前は考えられていた。インジケーターファージの単一の複製サイクルが、本発明のいくつかの実施形態に従って高感度かつ迅速検出を容易にするために十分であり得る。
【0102】
いくつかの実施形態において、細菌を含む試験サンプルのアリコートをスピンカラムに適用し得、組換えバクテリオファージでの感染および任意の過剰なバクテリオファージを除去するための選択肢的な洗浄後に、検出される可溶性インジケーターの量は、感染した細菌によって生成されるバクテリオファージの量に比例する。
【0103】
上記細菌の溶解の際に周囲の液体へと放出された可溶性インジケータータンパク質(例えば、ルシフェラーゼ)は、次いで、測定および定量され得る。一実施形態において、上記溶液は、フィルターを通して遠心分離され、その濾液はアッセイ(例えば、ルミノメーターでの)のために新しい容器に収集され、その後、上記インジケーター酵素のための基質(例えば、ルシフェラーゼ基質)が添加される。あるいは、インジケーターシグナルは、フィルター上で直接測定され得る。
【0104】
種々の実施形態において、上記精製された親インジケーターファージは、上記検出可能なインジケーター自体を含まない。なぜなら上記親ファージは、これが試験サンプルとともにインキュベーションするために使用される前に精製され得るからである。後期(クラスIII)遺伝子の発現は、ウイルス生活環において後期に起こる。本発明のいくつかの実施形態において、親ファージは、いかなる存在するインジケータータンパク質(例えば、ルシフェラーゼ)をも排除するために精製され得る。いくつかの実施形態において、宿主細菌の感染後のバクテリオファージ複製の間の上記インジケーター遺伝子の発現は、可溶性インジケータータンパク質生成物を生じる。従って、多くの実施形態において、上記検出工程の前に親ファージを子孫ファージから分離することは必須ではない。一実施形態において、上記微生物は、細菌であり、上記インジケーターファージは、バクテリオファージである。一実施形態において、上記インジケーター部分は、可溶性ルシフェラーゼであり、これは、上記宿主微生物の溶解の際に放出される。
【0105】
従って、代替の一実施形態において、上記インジケーター基質(例えば、ルシフェラーゼ基質)は、フィルター上にあるままであるかまたはプレート表面に結合したままである上記サンプルの一部とともにインキュベートされ得る。よって、いくつかの実施形態において、上記固体支持体は、96ウェルフィルタープレート(もしくは通常の96ウェルプレート)であり、上記基質反応は、上記プレートを上記ルミノメーターの中に直接置くことによって検出され得る。
【0106】
例えば、一実施形態において、本発明は、Listeria spp.を検出するための方法を包含し得、上記方法は、96ウェルフィルタープレート上に捕捉された細胞に、感染の際にルシフェラーゼを発現し得る複数の親インジケーターファージを感染させる工程;過剰なファージを洗い流す工程;LBブロスを添加し、ファージが複製しかつ上記特定のListeria spp.標的を溶解する時間を与える工程(例えば、30~120分);およびルシフェラーゼ基質を添加し、上記96ウェルプレートにおいて直接、ルシフェラーゼ活性を測定することによって上記インジケータールシフェラーゼを検出する工程であって、ここでルシフェラーゼ活性の検出は、上記Listeria spp.が上記サンプルに存在することを示す工程を包含する。
【0107】
別の実施形態において、本発明は、Listeria spp.を検出するための方法を包含し得、上記方法は、96ウェルプレート中の液体溶液もしくは懸濁物中の細胞に、感染の際にルシフェラーゼを発現し得る複数の親インジケーターファージを感染させる工程;ファージが複製しかつ上記特定のListeria spp.標的を溶解する時間(例えば、30~120分)を与える工程;およびルシフェラーゼ基質を添加し、上記96ウェルプレートにおいて直接、ルシフェラーゼ活性を測定することによって、上記インジケータールシフェラーゼを検出する工程であって、ここでルシフェラーゼ活性の検出は、上記Listeria spp.が上記サンプルに存在することを示す工程を包含する。このような実施形態において、捕捉する工程は、必須ではない。いくつかの実施形態において、上記液体溶液もしくは懸濁物は、消費可能な試験サンプル(例えば、野菜洗浄液)であり得る。いくつかの実施形態において、上記液体溶液または懸濁物は、濃縮されたLBブロス、Tryptic/Tryptone Soyブロス、緩衝化ペプトン水または栄養ブロスで強化した野菜洗浄物であり得る。いくつかの実施形態において、上記液体溶液または懸濁物は、LBブロス中で希釈した細菌であり得る。
【0108】
いくつかの実施形態において、上記細菌の溶解は、上記検出工程の前、その間、もしくはその後に起こり得る。実験は、感染した溶解されていない細胞が、いくつかの実施形態において、ルシフェラーゼ基質の添加の際に検出可能であり得ることを示唆する。おそらくは、ルシフェラーゼは、完全な細胞溶解なしに、細胞から出ていき得る、および/またはルシフェラーゼ基質が細胞に入り得る。従って、スピンフィルターシステムを利用する実施形態のために、上記溶解物へと放出されるルシフェラーゼのみ(かつルシフェラーゼはさらに無傷の細菌の中にない)が、上記ルミノメーターにおいて分析される場合、溶解は、検出のために必要とされる。しかし、溶液もしくは懸濁物中のサンプルとともにフィルタープレートもしくは96ウェルプレートを利用する実施形態のために、無傷の細胞および溶解した細胞で満ちている元のプレートが上記ルミノメーターにおいて直接アッセイされる場合、溶解は、検出に必須ではない。
【0109】
いくつかの実施形態において、インジケータータンパク質生成物(例えば、ルシフェラーゼ)と基質との反応は、30分またはそれより長くにわたって続き得、種々の時点での検出は、感度を最適化するために望ましいことであり得る。例えば、上記固体支持体として96ウェルフィルタープレートを、および上記インジケーターとしてルシフェラーゼを使用する実施形態において、ルミノメーター読み取りは、最初に、および10分もしくは15分の間隔で、上記反応が完了するまで行われ得る。
【0110】
驚くべきことに、試験サンプルに感染させるために利用される高濃度のファージは、非常に短い時間枠で、標的微生物の非常に少数の検出を成功裏に達成した。ファージを試験サンプルとともにインキュベートすることは、いくつかの実施形態において、単一のファージ生活環にとって十分長いことのみを必要とする。いくつかの実施形態において、このインキュベートする工程のためのバクテリオファージの濃度は、7×10、8×10、9×10、1.0×10、1.1×10、1.2×10、1.3×10、1.4×10、1.5×10、1.6×10、1.7×10、1.8×10、1.9×10、2.0×10、3.0×10、4.0×10、5.0×10、6.0×10、7.0×10、8.0×10、9.0×10、または1.0×10 PFU/mLより高い。
【0111】
ファージのこのような高濃度での成功は驚くべきことである。なぜならファージの多数が、「非感染溶菌」と以前に関連しており、これは、標的細胞を死滅させ、それによって、より早期のファージアッセイからの有用なシグナルの生成を妨げたからである。本明細書で記載される調製されたファージストックの浄化(clean-up)は、この問題を軽減する助けとなると考えられる(例えば、塩化セシウム等密度密度勾配超遠心分離による浄化)。なぜなら上記ファージと関連付けられたいかなる汚染するルシフェラーゼをも除去する工程に加えて、この浄化はまた、ゴースト粒子(ghost particle)(DNAを失った粒子)を除去し得るからである。上記ゴースト粒子は、「非感染溶菌」を介して細菌細胞を溶解し得、上記細胞を早期に死滅させ、それによってインジケーターシグナルの生成を防止することができる。電子顕微鏡法は、粗製のファージ溶解物(すなわち、塩化セシウム浄化前)が50%より多いゴーストを有し得ることを明らかに示す。これらのゴースト粒子は、細胞膜に穴をあける多くのファージ粒子の作用を通じて、上記微生物の早期の死滅に寄与し得る。従って、ゴースト粒子は、高いPFU濃度が有害であると報告された以前の問題の一因であった可能性がある。さらに、非常にきれいなファージ調製物は、上記アッセイが洗浄工程なしで行われることを可能にし、このことは、初期濃縮工程なしで上記アッセイが行われることを可能にする。いくつかの実施形態は初期濃縮工程を含み、いくつかの実施形態において、この濃縮工程はより短い富化インキュベーション時間を可能にする。
【0112】
試験方法のいくつかの実施形態は、確認アッセイをさらに含み得る。初期の結果を通常は後の時点で確認するために、種々のアッセイが当該分野で公知である。例えば、サンプルが培養され得(例えば、実施例に記載されるCHROMAGAR(登録商標)/DYNABEADS(登録商標)アッセイ)、微生物DNAの存在を確認するためにPCRが利用され得、または、初期の結果を確認するために他の確認アッセイが使用され得る。
【0113】
ある特定の実施形態において、本発明の方法は、感染性因子での検出に加えて、上記サンプルから目的の微生物(例えば、Listeria spp.)を精製および/または濃縮するために、結合因子(例えば、抗体)の使用を組み合わせ得る。例えば、ある特定の実施形態において、本発明は、サンプル中の目的の微生物を検出するための方法を包含し、上記方法は、上記微生物(例えば、Listeria spp.)を上記サンプルから、上記目的の微生物(例えば、Listeria spp.)に特異的な捕捉抗体を使用して、先の支持体上に捕捉する工程;上記サンプルを、Listeria spp.に感染する組換えバクテリオファージとともにインキュベートする工程であって、ここで上記組換えバクテリオファージは、上記バクテリオファージの後期遺伝子領域に挿入されたインジケーター遺伝子を含み、その結果、宿主細菌の感染後のバクテリオファージ複製に間の上記インジケーター遺伝子の発現は、可溶性インジケータータンパク質生成物を生じる工程;および上記インジケータータンパク質生成物を検出する工程であって、ここで上記インジケータータンパク質生成物の陽性検出は、Listeria spp.が上記サンプルに存在することを示す工程を含む。
【0114】
いくつかの実施形態において、合成ファージは、病原体検出アッセイにおける使用のための望ましい形質を最適化するために設計される。いくつかの実施形態において、遺伝的改変のバイオインフォマティクスおよび以前の分析は、望ましい形質を最適化するために使用される。例えば、いくつかの実施形態において、ファージテールタンパク質をコードする遺伝子は、特定の種の細菌を認識しかつこれに結合するために最適化され得る。他の実施形態において、ファージテールタンパク質をコードする遺伝子は、細菌の属全体、または属内の特定の種のグループを認識しかつこれらに結合するために最適化され得る。このようにして、上記ファージは、病原体のより広いまたはより狭いグループを検出するために最適化され得る。いくつかの実施形態において、上記合成ファージは、上記レポーター遺伝子の発現を改善するために設計され得る。さらにおよび/または代わりに、場合によっては、上記合成ファージは、検出を改善するために上記ファージのバーストサイズを増大させるために設計され得る。
【0115】
いくつかの実施形態において、上記ファージの安定性は、貯蔵期間を改善するために最適化され得る。例えば、酵素生命的溶解度(enzybiotic solubility)は、その後のファージ安定性を増大させるために、増大され得る。さらにおよび/または代わりに、ファージ熱安定性が最適化され得る。熱安定性ファージは、貯蔵の間の機能的活性をより良好に保存し、それによって、貯蔵寿命を増大させる。従って、いくつかの実施形態において、上記熱安定性および/またはpH寛容性は、最適化され得る。
【0116】
いくつかの実施形態において、上記遺伝子改変されたファージまたは上記合成して導出されたファージは、検出可能なインジケーターを含む。いくつかの実施形態において、上記インジケーターは、ルシフェラーゼである。いくつかの実施形態において、上記ファージゲノムは、インジケーター遺伝子(例えば、ルシフェラーゼ遺伝子または検出可能なインジケーターをコードする別の遺伝子)を含む。
【実施例
【0117】
実施例1. Listeria monocytogenesの3A血清型を認識するためのListeriaファージ進化
継代#1: 19115(血清型4b)/51782(血清型3a)の混合物のファージ進化の1つの例において、Listeria monocytogenesを、1mM CaClを有する2mL Brain Heart Infusion(BHI)(合計5本のチューブ-各ファージにつき1セット)中で、以下の比において調製した(% 宿主/標的: 100/0、90/10、50/50、10/90、および0/100)。
【0118】
ファージを、1.0のMOIにおいて、各チューブに個々に添加した。チューブを、振盪しながら30℃において一晩インキュベートした。チューブを遠心分離し、その上清(ファージ溶解物)を、0.45μmフィルターを通して濾過した。
【0119】
全てのファージ溶解物(全ての宿主/標的比チューブから)をプールし、宿主および標的株に対して1個のプラークのためにプレートした。プラーク溶解物を、ピペットチップでプラークを拾い上げ、Luria Broth(LB) MOPS緩衝液に添加することによって、標的株上で形成されるプラークから調製した。プラーク溶解物を、宿主および標的株上に、単一のプラークのためにプレートした。これらの工程を、少なくとも合計4回反復して、変異ファージを単離した。
【0120】
継代#2~#3: 上記工程4からのファージ溶解物(250μL)を、1mM CaClを有する4mLのBHIに添加した。ファージ溶解物を、振盪しながら(約160rpm)30℃において10時間インキュベートした。チューブを遠心分離し、上清(ファージ溶解物)を、0.45μmフィルターを通して濾過した。ファージ溶解物を、宿主および標的株上に、単一のプラークのためにプレートした。
【0121】
プラーク溶解物を、ピペットチップでプラークを拾い上げ、Luria Broth(LB) MOPS緩衝液に添加することによって、標的株上で形成されるプラークから調製した。プラーク溶解物を、宿主および標的株上に、単一のプラークのためにプレートした。これらの工程を、少なくとも合計4回反復して、変異ファージを単離した。
【0122】
最初の2回の継代で標的株に対してプラークが認められなければ、全ての工程を反復した。
【国際調査報告】