(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-22
(54)【発明の名称】レトルト接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 175/08 20060101AFI20220815BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20220815BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20220815BHJP
【FI】
C09J175/08
C09J11/06
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021575377
(86)(22)【出願日】2020-05-19
(85)【翻訳文提出日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 US2020033612
(87)【国際公開番号】W WO2020256877
(87)【国際公開日】2020-12-24
(32)【優先日】2019-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】ウー、チエ
(72)【発明者】
【氏名】チェン、マイ
(72)【発明者】
【氏名】デワスタレ、スダンワ
【テーマコード(参考)】
3E086
4J040
【Fターム(参考)】
3E086AA23
3E086AD01
3E086BA13
3E086BA14
3E086BA15
3E086BA18
3E086BA19
3E086BA35
3E086BB02
3E086BB41
3E086BB63
3E086BB74
3E086CA01
3E086CA03
4J040EF131
4J040EF281
4J040GA27
4J040JA09
4J040JB01
4J040JB02
4J040KA16
4J040MA10
4J040MB03
4J040MB09
4J040NA06
4J040QA02
(57)【要約】
ラミネートを生成するための溶剤系ポリウレタンレトルト接着剤系であって、(A)(i)少なくとも1つの脂肪族系イソシアネートと(ii)少なくとも1つの芳香族系イソシアネートとのブレンドを含む、少なくとも1つのイソシアネート化合物である成分Aと、(B)(i)少なくとも1つのリン酸エステル化合物、および(ii)1,500g/mol未満の平均分子量を有する少なくとも1つのポリエーテルポリオールを含む、少なくとも1つのイソシアネート反応性成分である成分Bと、を含む、接着剤系;上の接着剤を生成するためのプロセス;上の接着剤を含む、多層ラミネート生成物;ならびに上の接着剤を使用してラミネート生成物を生成するためのプロセス。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶剤系レトルト接着剤組成物であって、
(A)(i)少なくとも1つの脂肪族系イソシアネートと(ii)少なくとも1つの芳香族系イソシアネートとのブレンドを含む、少なくとも1つのイソシアネート化合物である成分Aと、
(B)(i)少なくとも1つのリン酸エステル化合物、および(ii)1,500g/mol未満の平均分子量を有する少なくとも1つのポリエーテルポリオールを含む、少なくとも1つのイソシアネート反応性成分である成分Bと、を含む、溶剤系レトルト接着剤組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つの芳香族系イソシアネートである、成分Aの成分(ii)が、(α)少なくとも1つのイソシアネート化合物と、(β)少なくとも1つのポリオール化合物との反応生成物を含む、イソシアネートプレポリマーである、請求項1に記載の接着剤。
【請求項3】
前記少なくとも1つのリン酸エステル化合物である、成分Bの成分(i)が、以下の構造(I)を有するリン酸エステル化合物であって、
【化1】
式中、R
1が、有機基であり、R
1が、1つ以上の追加のペンダント-OH基を有しても有さなくてもよく、R
1が、構造(I)の1つ以上の追加のペンダント基を有しても有さなくてもよく、-OH基および構造(I)の基のうちの2つ以上が、R
1の同じ原子に結合してもしなくてもよい、リン酸エステル化合物、ウレタン結合を含有するリン酸エステル化合物、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の接着剤。
【請求項4】
前記少なくとも1つのポリエーテルポリオールである、成分Bの成分(ii)が、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリブチレンオキシド系ポリオール、それらの混合物、およびそれらのコポリマーからなる群から選択される、請求項1に記載の接着剤。
【請求項5】
前記少なくとも1つのイソシアネート反応性成分である成分Bが、(iii)1,500g/mol未満の平均分子量を有する少なくとも1つのポリエステルポリオールをさらに含む、請求項1に記載の接着剤。
【請求項6】
前記少なくとも1つのポリエステルポリオールである、成分Bの成分(iii)が、脂肪族ポリエステルポリオール、芳香族ポリエステルポリオール、脂肪族および芳香族ポリエステルポリオールのコポリマー、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の接着剤。
【請求項7】
ラミネートを生成するための溶剤系ポリウレタンレトルト接着剤組成物を生成するためのプロセスであって、
(A)(i)少なくとも1つの脂肪族系イソシアネートと(ii)少なくとも1つの芳香族系イソシアネートとのブレンドを含む、少なくとも1つのイソシアネート化合物である成分Aと、
(B)(i)少なくとも1つのリン酸エステル化合物、および(ii)1,500g/mol未満の平均分子量を有する少なくとも1つのポリエーテルポリオールを含む、少なくとも1つのポリオール、を含む、少なくとも1つのイソシアネート反応性成分である成分Bと、を混和することを含む、プロセス。
【請求項8】
多層ラミネート生成物であって、
(a)少なくとも1つの第1の層と、
(b)少なくとも1つの第2の層と、
(c)前記第1の層と前記第2の層との間に配置された請求項1に記載のレトルト接着剤と、を含み、前記接着剤を硬化させて、前記第1の層を前記第2の層に結合させる、多層ラミネート生成物。
【請求項9】
ラミネート生成物を生成するためのプロセスであって、
(I)前記第1の層および/または前記第2の層の表面の少なくとも一部分に、請求項1に記載のレトルト接着剤を塗布するステップと、
(II)前記接着剤が、前記第1の層と前記第2の層との間に配置されるように、前記第1の層と前記第2の層とを接触させるステップと、
(III)前記接着剤を硬化させて、前記硬化された接着剤を介して前記第2の層に結合された前記第1の層を含むラミネートを形成するステップと、を含む、プロセス。
【請求項10】
請求項8に記載のラミネートを含む、レトルト包装用の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラミネートプロセスにおいて有用なレトルト接着剤組成物、およびそのようなレトルト接着剤組成物の調製に関する。より具体的には、本発明は、ラミネートフィルムと共に使用するための、接着剤組成物が、規制順守、迅速な硬化、および良好な接着性能を呈する、溶剤系レトルト接着剤組成物、ならびにそれを作製するプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
接着剤組成物は、多種多様な目的に有用である。例えば、いくつかの接着剤は、基材の2つ以上のフィルム層を一緒に接着するために使用され、それによって複合フィルム、すなわち、2つ以上のフィルム層を含むラミネートを形成する。基材の例としては、典型的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、金属、紙、またはセロハンなどが挙げられる。異なるラミネート最終使用用途における接着剤の使用は一般に知られている。例えば、接着剤は、一般に、ラミネートフィルム間に塗布され、食品、薬剤、および工業用消耗品の包装、特に食品包装用の可撓性包装業界で使用されるフィルム/フィルムおよびフィルム/ホイルラミネートの製造に使用することができる。ラミネート接着剤は、一般に、(1)溶剤系ラミネート接着剤、(2)無溶剤ラミネート接着剤、および(3)水性ラミネート接着剤、という3つのカテゴリーに分類することができる。接着剤の性能は、カテゴリーによって、また接着剤が塗布される用途によって変わる。比較的良好な耐熱性、耐湿性、および耐薬品性を達成するために、ラミネート接着剤の溶剤系カテゴリー内では、溶剤系ポリウレタンが広く使用されている。
【0003】
溶剤系ラミネート接着剤のカテゴリー内では、多くの種類が存在し、1つの特定の種類としては、多成分ポリウレタン系ラミネート接着剤、より具体的には、2成分接着剤が挙げられる。典型的には、2成分ポリウレタン系ラミネート接着剤は、イソシアネートおよび/またはポリウレタンプレポリマーを含む第1の成分と1つ以上のポリオールを含む第2の成分とを含む。ポリウレタンプレポリマーは、ポリイソシアネートとポリエーテルポリオールおよび/またはポリエステルポリオールとの反応によって得られる。第2の成分は、ポリエーテルポリオールおよび/またはポリエステルポリオールを含む。各成分は、任意選択的に、1つ以上の添加剤を含むことができる。そのような系に使用される一般的な溶剤には、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエンなどが挙げられ、これらはすべてポリウレタンのイソシアネート基の早すぎる反応を防ぐために水分を含まないものでなければならない。
【0004】
接着剤組成物の2つの成分(すなわち、イソシアネート成分およびポリオール成分)は、所定の比で組み合わされ、それによって接着剤組成物を形成する。溶剤中に担持された接着剤組成物は次にフィルム/ホイル基材上に塗布される。塗布された接着剤組成物から溶剤を蒸発させる。次いで、別のフィルム/ホイル基材をもう一方の基材と接触させて、硬化性ラミネート構造体を形成する。ラミネート構造体を硬化させて2つの基材を互いに結合する。
【0005】
溶剤系接着剤組成物は、高性能ラミネート用途(例えば、レトルト、ホットフィル、ボイルインバッグなど)に使用することができる。例えば、レトルト可撓性包装用途では、レトルト可撓性包装は、(1)消費者の利便性、(2)包装に包装された食品の長い貯蔵寿命、および(3)包装された食品の本来の風味の保存などの、いくつかの利点を提供する。レトルトパウチなどのレトルト可撓性包装は、一般的に、3層構造または4層構造などの多層ラミネート構造で構成されている。3層構造は、一般に、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)の外層、金属ホイル(例えば、アルミニウム)の中間層、およびキャストポリプロピレン(CPP)の内層を含み、3層構造は、一般に、PET//ホイル//CPPとして示される。4層構造は、一般に、例えば、PETの外層、金属ホイルの第1の上部中間層、ナイロンの第2の下部中間層、およびCPPの内層を含み、4層構造は、一般に、PET//ホイル//ナイロン//CPPとして示される。ラミネート接着剤は、構造に塗布されて、異なる層を一緒に結合する。レトルト可撓性包装用途に使用されるラミネート接着剤は、摂氏121度(℃)で1時間(時)、または132℃で30分(分)などの高温で、高度に酸性かつ脂肪の多い食品の存在下での極端な性能要件を満たす必要があるだけでなく、ラミネート接着剤はまた、米国食品医薬品局(FDA)および欧州連合(EU)によって公布された規制などの非常に厳しい規制基準を満たす必要がある。
【0006】
既知のレトルト接着剤には、基本的に4種類がある。2つの接着剤は、脂肪族イソシアネートに基づき、規制順守を満たしているが、そのような脂肪族系イソシアネート接着剤の硬化は非常に遅く、接着剤は性能上の問題を有する。他の2種類の接着剤は、芳香族イソシアネートを含有し、そのような芳香族系イソシアネート接着剤は、硬化が迅速であるが、そのような接着剤は、レトルト用途での規制順守を満たさず、また、接着剤は性能の問題も有する。従来技術は、規制順守を満たし、迅速な硬化特性を有し、レトルト用途での良好な接着特性を有する「オールインワン」レトルト接着剤を開示していない。
【0007】
例えば、レトルト用途での既知のラミネート接着剤は、(1)広範なレトルト基材および構造に対して良好な接着性能を呈し、接着剤は、一般に、レトルト用途での世界的な食品規制を順守しているが、接着剤は、既知のラミネート接着剤を使用して作製された包装に食品を包装する前に、40℃超で少なくとも10日間硬化可能であるなどの遅い硬化特性を呈するか、または(2)一般的に、レトルト用途での世界的な食品規制を順守しているが、接着剤は、既知のラミネート接着剤を使用して作製された包装に食品を包装する前に、40℃超で少なくとも10日間硬化可能であるなどの遅い硬化特性を呈し、接着剤は、広範なレトルト基材および構造に対して良好な接着性能を呈さないか、または(3)周囲条件で10日のうちに、または評価温度(例えば、(≧)40℃以上で)5日のうちに硬化可能であるなどの迅速な硬化特性を呈し、接着剤は、典型的なレトルト基材および構造に対して良好な接着性能を呈するが、接着剤は、一般に、レトルト用途での世界的な食品規制を順守せず、例えば、接着剤は、FDAおよびEU規制への準拠に問題を有する。また、芳香族系接着剤は、良好な接着性能を呈しないことが知られている。
【0008】
したがって、優れた接着性能、耐熱性、および耐薬品性を呈するだけでなく、また周囲硬化条件で迅速な硬化特性(すなわち、[<]8日未満の硬化時間)、および評価温度(例えば、≧40℃)で<5日の硬化時間を呈する、レトルト接着剤を提供することが望まれる。同時に、規制順守を満たすレトルト接着剤を提供することが望まれる。例えば、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)およびトルエンジイソシアネート(TDI)などの芳香族ポリイソシアネートを含有する接着剤は、メチレンジフェニルジアミン(MDA)およびトルエンジアミン(TDA)などの、望ましくない、潜在的に接着剤から食品に移動し得る一級芳香族アミンを生成し得る。一般に、FDAおよびEUの食品規制を順守するには、接着剤に厳しいレトルト試験条件を施した後、MDAおよびTDAなどの芳香族アミンがレトルト接着剤を使用する包装に包装された食品に移行する総量を非常に低く、例えば10億分の1(ppb)レベルにする必要があることを、典型的な政府規制を順守するための規制は必要とする。
【発明の概要】
【0009】
本発明では、所望の性能属性を呈し、以前から知られている、レトルト用途に使用される接着剤の問題を解決する、新規の溶剤系接着剤が開示される。一実施形態では、本発明は、イソシアネート成分である成分Aと、イソシアネート基(NCO)反応性成分である成分Bと、を含む、ラミネートを生成するための多成分(例えば、2成分)溶剤系ポリウレタンレトルト接着剤組成物を対象とする。好ましい実施形態では、接着剤組成物は、例えば、(A)少なくとも1つのイソシアネート化合物であって、少なくとも1つのイソシアネート化合物である成分Aが、(i)少なくとも1つの脂肪族系イソシアネートと(ii)少なくとも1つの芳香族系イソシアネートとのブレンドを含む、成分Aと、(B)少なくとも1つのイソシアネート基(NCO)反応性成分であって、少なくとも1つのイソシアネート反応性成分である成分Bが、(i)少なくとも1つのリン酸エステル化合物、および(ii)モル当たり<1,500グラム(g/mol)の平均分子量(Mw)を有するなどの適切な分子量分布を有するポリエーテルポリオールを含む、少なくとも1つのポリオールを含む、成分Bと、を含む。
【0010】
他の実施形態では、本発明は、上の接着剤を生成するためのプロセス、上の接着剤を含む多層ラミネート生成物、および上の接着剤を使用してラミネート生成物を生成するためのプロセスを含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】50℃の高温で3日間硬化させた後の、本発明の試料および比較試料の減衰全反射(ATR)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書に開示される数値範囲は、下限値から上限値(これらを含む)までのすべての値を含む。明示的な値を含有する範囲(例えば、1、または2、または3~5、または6、または7の範囲)では、2つの明示的な値の間の部分範囲が含まれる(例えば、上の範囲1~7は、部分範囲1~2、2~6、5~7、3~7、5~6などを含む)。
【0013】
「組成物」という用語は、組成物を構成する材料の混合物、ならびに組成物の材料から形成された反応生成物および分解生成物を指す。
【0014】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語、およびそれらの派生語は、任意の追加の成分、ステップ、または手順が、本明細書で具体的に開示されているかにかかわらず、それらの存在を除外するよう意図されない。疑義を回避するために、「含む(comprising)」という用語の使用を通じて特許請求されるすべての組成物は、反対の記載がない限り、ポリマーであろうとなかろうと、任意の追加の添加剤、アジュバント、または化合物を含み得る。対照的に、「から本質的になる」という用語は、操作性に必須ではないものを除き、あらゆる続く記述の範囲からあらゆる他の成分、ステップ、または手順を除く。「からなる」という用語は、具体的に描写または列挙されていないあらゆる成分、ステップ、または手順も除く。「または」という用語は、特に明記しない限り、列挙されたメンバーを個別に、ならびに任意の組み合わせで指す。単数形の使用には、複数形の使用が含まれ、逆の場合も同じである。
【0015】
「イソシアネート」は、その構造に少なくとも1つのイソシアネート基を含有する化学物質である。イソシアネート基は、式:-N=C=O、または「NCO」として略して表される。2つ以上または少なくとも2つのイソシアネート基を含有するイソシアネートは、「ポリイソシアネート」である。2つのイソシアネート基を有するイソシアネートは、ジイソシアネートであり、3つのイソシアネート基を有するイソシアネートは、トリイソシアネートである、など。イソシアネートは、芳香族または脂肪族であり得る。
【0016】
「ポリイソシアネート」は、少なくとも2つのイソシアネート基を含有する分子である。
【0017】
「ポリエーテル」は、原子の同じ直鎖中に2つ以上のエーテル結合を含有する化合物である。
【0018】
「ポリエステル」は、原子の同じ直鎖中に2つ以上のエステル結合を含有する化合物である。
【0019】
「ポリオール」は、複数のヒドロキシル(OH)基を含有する有機化合物である。言い換えれば、ポリオールは、少なくとも2つのOH基を含有する。好適なポリオールの非限定的な例としては、2つのOH基を有するジオール、3つのOH基を有するトリオール、および4つのOH基を有するテトラオールが挙げられる。
【0020】
「ポリエステルポリオール」は、化合物の骨格構造内に、ポリエステルおよびポリオールを含有する化合物である。
【0021】
「ポリエーテルポリオール」は、化合物の骨格構造内に、ポリエーテルおよびポリオールを含有する化合物である。
【0022】
より厚い物品における「フィルム層」を指す場合を含めて、「フィルム」は、明示的に指定された厚さを有さない限り、一次元において約0.5ミリメートル(mm)(20ミル)以下の一般に一貫した均一な厚さを有する、任意の薄い、平坦な押出またはキャスト熱可塑性物品を含む。
【0023】
「ポリマーフィルム」は、ポリマーまたはポリマーの混合物から作製されるフィルムである。ポリマーフィルムの組成は、典型的には、80重量パーセント(重量%)の1つ以上のポリマーである。
【0024】
「ポリマー」は、同じ種類であるか異なる種類であるかにかかわらず、モノマーを重合することによって調製されるポリマー化合物である。したがって、ポリマーという総称は、「ホモポリマー」(微量の不純物がポリマー構造に組み込まれ得るという理解の下で、1種類のモノマーのみから調製されたポリマーを指すために用いられる)、および「インターポリマー」という用語を包含し、これはコポリマー(2つの異なる種類のモノマーから調製されたポリマーを指すのに用いられる)、ターポリマー(3つの異なる種類のモノマーから調製されるポリマーを指すのに用いられる)、および3つより多くの異なる種類のモノマーから調製されるポリマーを含む。微量の不純物、例えば、触媒残渣が、ポリマー中および/またはポリマー内に組み込まれ得る。それはまた、すべての形態のコポリマー、例えば、ランダム、ブロックなども包含する。ポリマーは多くの場合、1つ以上の特定のモノマー「から作製されて」いること、特定のモノマーまたはモノマーの種類「に基づいて」いること、特定のモノマー含有量「を含有して」いるなどと称されるが、この文脈において、「モノマー」という用語は、非重合種ではなく、特定のモノマーの重合残余物を指していることが理解されることに留意されたい。一般に、本明細書におけるポリマーは、対応するモノマーの重合形態である「単位」に基づくものと称される。
【0025】
2成分接着剤系を作製するには、イソシアネート含有成分(本明細書では成分A)を含む第1の部分を提供することと、ポリオール成分(本明細書では成分B)などのNCO反応性成分を含む第2の部分を提供することと、次に成分Aと成分Bとを組み合わせるかまたは混合して、2成分接着剤系または組成物を形成することと、を含むことが、接着剤分野では十分に確立されている。
【0026】
1つの広義の実施形態では、本発明は、少なくとも1つのイソシアネート含有化合物を含む成分Aと、少なくとも1つのNCO反応性成分を含む成分Bであって、少なくとも1つのNCO反応性成分が、(i)少なくとも1つのリン酸エステル化合物、および(ii)<1,500g/molの平均Mwを有するポリエーテルポリオールを含む少なくとも1つのポリオールを含有する、成分Bと、を含む、ラミネートを生成するための少なくとも1つの溶剤系ポリウレタンレトルト接着剤を対象とする。一実施形態では、少なくとも1つのNCO反応性成分中のリン酸エステルポリオールは、例えば、0.1重量%~30重量%の濃度で存在し得る。第1の好ましい実施形態では、接着剤の少なくとも1つのイソシアネート化合物は、例えば、少なくとも1つの脂肪族系イソシアネートである。第2の好ましい実施形態では、少なくとも1つのイソシアネート化合物は、(i)少なくとも1つの芳香族系イソシアネートと(ii)少なくとも1つの脂肪族系イソシアネートとのブレンドである。第2の好ましい実施形態では、少なくとも1つの芳香族系イソシアネートは、(i)少なくとも1つのポリイソシアネートと(ii)>1,500g/molのMwを有する少なくとも1つのポリエーテルポリオールとの反応生成物を含む、イソシアネートプレポリマーであり得る。
【0027】
本発明の独自の接着剤は、例えば、(1)良好な接着性能、(2)迅速な硬化特性、および(3)(a)芳香族アミンの移動レベルがないか、または(b)芳香族アミンの移動レベルが非常に低いかのいずれか、を含む、これまでに知られている溶剤系ポリウレタンレトルト接着剤系を上回るいくつかの利点を有する。ひいては、独自の溶剤系ポリウレタンレトルト接着剤系は、レトルト包装物品の作製に使用するための良好な耐熱性および良好な耐薬品性を有するラミネートを作製するプロセスにおいて有用である。
【0028】
別の実施形態では、前述の本発明の溶剤系ポリウレタンレトルト接着剤を作製するために使用される少なくとも1つのイソシアネート含有化合物である成分Aは、例えば、(i)少なくとも1つの脂肪族系イソシアネートと(ii)少なくとも1つの芳香族系イソシアネートとのブレンドである。本発明で有用なイソシアネート含有化合物は、例えば、イソシアネートモノマー、ポリイソシアネート(例えば、二量体、三量体など)、イソシアネートプレポリマー、およびそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択され得る。本明細書で使用される場合、「ポリイソシアネート」は、2つ以上のイソシアネート基を含有する任意の化合物である。
【0029】
さらに、イソシアネート含有化合物は、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、およびそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され得る。「脂肪族ポリイソシアネート」は、芳香族環を全く含有しないポリイソシアネートである。「脂環式ポリイソシアネート」は、化学鎖が環状構造を有する脂肪族ポリイソシアネートのサブセットである。「芳香族ポリイソシアネート」は、1つ以上の芳香族環を含有するポリイソシアネートである。
【0030】
本発明で有用な脂肪族系イソシアネート成分である、成分Aの成分(i)としては、例えば、線状または分岐状アルキレン残基中に、一実施形態では、3つの炭素原子(C)~16C、および別の実施形態では4C~12Cを有する、脂肪族ポリイソシアネートを含む、1つ以上の化合物を挙げることができる。また、本発明での使用に好適なのは、シクロアルキレン残基中に、例えば、一実施形態では4C~18C、および別の実施形態では6C~15Cを有する、脂環式ポリイソシアネートを含む、脂環式ポリイソシアネートである。脂環式ジイソシアネートは、イソホロンジイソシアネートおよびジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(H12MDI)などの環状および脂肪族的の両方で結合したNCO基を指す。
【0031】
本発明で有用な好適な脂肪族ポリイソシアネートおよび脂環式ポリイソシアネートの例としては、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、エチルシクロヘキサンジイソシアネート、プロピルシクロヘキサンジイソシアネート、メチルジエチルシクロヘキサンジイソシアネート、プロパンジイソシアネート、ブタンジイソシアネート、ペンタンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート、ヘプタンジイソシアネート、オクタンジイソシアネート、ノナンジイソシアネート、4-イソシアナトメチル-1,8-オクタンジイソシアネート(TIN)などのノナントリイソシアネート、デカンジ-およびトリイソシアネート、ウンデカンジ-およびトリイソシアネート、ならびにドデカンジ-およびトリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(H12MDI)、2-メチルペンタンジイソシアネート(MPDI)、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート/2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,4-または1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ならびにそれらの二量体、三量体、誘導体、およびそれらの2つ以上の混合物が挙げられるが、それらに限定されない。本発明で有用な好適な脂肪族ポリイソシアネートおよび脂環式ポリイソシアネートとしては、また、例えば、XDI系ポリイソシアネート、H6XDI系ポリイソシアネート、XDIイソシアヌレート、HDI系ポリイソシアネート、H12MDI系ポリイソシアネート、HDIイソシアヌレート、およびそれらの2つ以上の混合物が挙げられる。
【0032】
1つの好ましい実施形態では、本発明で有用な脂肪族系成分としては、例えば、XDI系ポリイソシアネート、HDI系ポリイソシアネート、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0033】
本発明で有用な脂肪族系成分の市販生成物のうちのいくつかの例としては、例えば、Mitsui Chemicalから入手可能なTAKENATE D-110NおよびTAKENATE D-120N;The Coverstro Companyから入手可能なDesmodur N3200およびDesmodurQuix175;ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0034】
本開示による使用に好適な追加のイソシアネート含有化合物としては、4-メチルシクロヘキサン-1,3-ジイソシアネート、2-ブチル-2-エチルペンタメチレンジイソシアネート、3(4)-イソシアナトメチル-1-メチルシクロヘキシルイソシアネート、2-イソシアナトプロピルシクロヘキシルイソシアネート、2,4’-メチレンビス(シクロヘキシル)ジイソシアネート、1,4-ジイソシアナトト-4-メチルペンタン、およびそれらの2つ以上の混合物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0035】
また、本開示による成分Aの成分(i)としての使用に好適なイソシアネート含有化合物としては、例えば、イソシアネートプレポリマーが挙げられる。「イソシアネートプレポリマー」は、一実施形態では(>)2.0超、別の実施形態では3.0~10.0、なお別の実施形態では4.0~7.0の化学量論比(NCO/OH)での、ポリイソシアネートとイソシアネート反応性成分との反応生成物である。ポリイソシアネートは、例えば、上記の芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環ポリ式イソシアネート、およびそれらの混合物から選択される。ポリイソシアネートと反応して、「ポリウレタンプレポリマー」としても知られているイソシアネートプレポリマーを形成することができる好適なイソシアネート反応性成分としては、例えば、ヒドロキシル基、アミノ基、およびチオ基を含む化合物が挙げられる。ポリイソシアネートと反応してイソシアネートプレポリマーを形成することができる、本発明で有用なイソシアネート反応性成分としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリアクリレート、ポリカーボネートポリオール、天然油系ポリオール、およびそれらの2つ以上の混合物が挙げられる。
【0036】
ポリイソシアネートと反応してイソシアネートプレポリマーを形成することができる、本発明で有用なイソシアネート反応性成分はまた、イソシアネート反応性成分のヒドロキシル価およびそのヒドロキシル基の官能価によって特徴付けることができる。「ヒドロキシル価」または「ヒドロキシル値」は、化学物質中の遊離ヒドロキシル基の含有量の尺度である。ヒドロキシル価は、遊離ヒドロキシル基を含有する1グラムの化学物質のアセチル化で取り込まれた酢酸を中和するために必要な水酸化カリウム(KOH)のミリグラム数である。ヒドロキシル価(OHN)は、通常、化学物質のグラム当たりの水酸化カリウムのミリグラム(mg KOH/g)として表される。ヒドロキシル価は、DIN 53240に従って決定される。
【0037】
「ヒドロキシル基の官能価」は、化合物の1分子中に存在するヒドロキシル基の数である。ヒドロキシル基の官能価は、ASTM D4274-16に従って測定され、結果は、一実施形態では1以上、別の実施形態では1~6の整数として報告される。
【0038】
いくつかの実施形態では、イソシアネート反応性成分の平均ヒドロキシル価は、例えば、一実施形態では1mg KOH/g~2,000mg KOH/g、別の実施形態では5mg KOH/g~2,000mg KOH/g、なお別の実施形態では14mg KOH/g~850mg KOH/g、さらに別の実施形態では28mg KOH/g~500mg KOH/g、さらになお別の実施形態では35mg KOH/g~450KOH/gであり得る。いくつかの実施形態では、イソシアネート反応性成分の平均モル質量は、例えば、一実施形態では62g/mol~20,000g/mol、別の実施形態では250g/mol~12,000g/mol、なお別の実施形態では500g/mol~6,000g/mol、さらに別の実施形態では800g/mol~3,000g/molである。
【0039】
いくつかの実施形態では、イソシアネート反応性成分のヒドロキシル基の平均官能価は、例えば、一実施形態では1.0~6.0、別の実施形態では1.8~4.0、なお別の実施形態では2.0~3.0であり得る。本発明の脂肪族系成分によって呈される有利な特性のうちの1つとしては、例えば、幅広い政府規制を順守することができる接着剤を提供することが挙げられる。
【0040】
イソシアネート基を有する化合物はまた、化合物の総重量に基づくイソシアネート基の重量パーセントによって特徴付けられる。イソシアネート基の重量パーセントは、「NCO%」と称され、ASTM D2572-97に従って測定される。
【0041】
本発明のプロセスに使用される脂肪族系成分の量としては、成分A中の成分の総量に基づいて、例えば、一実施形態では30重量%~100重量%、別の実施形態では40重量%~90重量%、なお別の実施形態では50重量%~80重量%が挙げられる。
【0042】
本発明で有用な芳香族系イソシアネート成分である、成分Aの成分(ii)としては、例えば、1,3-および1,4-フェニレンジイソシアネート;1,5-ナフチレンジイソシアネート;2,6-トルエンジイソシアネート(2,6-TDI);2,4-トルエンジイソシアネート(2,4-TDI);2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’-MDI);4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’-MDI);3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニルジイソシアネート(TODI)、およびその異性体;高分子イソシアネート;ならびにそれらの2つ以上の混合物を含むがそれらに限定されない、1つ以上のポリイソシアネート化合物を挙げることができる。
【0043】
本発明で有用な市販の芳香族系成分のうちのいくつかの例としては、例えば、The Dow Chemical Companyから入手可能なIsonate 125M、ADCOTTE L76-204、Coreactant CT、およびCatalyst F;The Covestro Companyから入手可能なDesmodur(登録商標)E2200/76;ならびにそれらの混合物を挙げることができる。本発明の芳香族系成分によって呈される有利な特性のうちの1つとしては、例えば、迅速に硬化することができる接着剤を提供することが挙げられる。
【0044】
本発明のプロセスに使用される芳香族系イソシアネート成分の量は、成分A中の成分の総量に基づいて、例えば、一実施形態では5重量%~95重量%、別の実施形態では20重量%~90重量%、なお別の実施形態では30重量%~90重量%である。
【0045】
前述のように、接着剤を作製するのに使用される少なくとも1つのNCO反応性成分である成分Bは、例えば、(i)少なくとも1つのリン酸エステル化合物、および(ii)<1,500g/molの平均Mwを有するポリエーテルポリオールを含む少なくとも1つのポリオール、を含有する、少なくとも1つのNCO反応性成分である。本明細書で使用される場合、「ポリオール」は、分子当たり2つ以上のヒドロキシル基(すなわち、-OH)を有する化合物を指す。本明細書で使用される場合、「エーテル」は、エーテル結合を含有する化合物を指す。本明細書で使用される場合、「ポリエーテル」は、分子当たり2つ以上のエーテル結合を含有する化合物を指す。ポリエーテルとポリオールとの両方である化合物は、本明細書では「ポリエーテルポリオール」と称される。「脂肪族ポリエーテルポリオール」は、その分子中に芳香族環を全く含有しないポリエーテルポリオールである。「芳香族ポリエーテルポリオール」は、その分子中に1つ以上の芳香族環を含有するポリエーテルポリオールである。
【0046】
一実施形態では、本発明で有用なリン酸エステル化合物である、成分Bの成分(i)は、例えば、以下の化学構造(I)を有するリン酸エステル化合物から選択され得、
【化1】
式中、R
1が任意の有機基である。構造(I)に示されるペンダント基に加えて、R
1は、1つ以上の追加のペンダント-OH基を有しても有さなくてもよく、R
1は、構造(I)の1つ以上の追加のペンダント基を有しても有さなくてもよい。-OH基および構造(I)の基のうちのいずれか2つ以上は、R
1の同じ原子に結合してもしなくてもよい。好ましい実施形態では、各OH基および構造(I)の各基は、R
1の別個の原子に結合している。
【0047】
R
1を特徴付ける簡便な方式は、以下の構造(II)を有する化合物を説明することであり、
【化2】
式中、R
1は、構造(I)のものと同じである。構造(II)を有する化合物は、本明細書では「前駆体ポリオール」と称される。
【0048】
いくつかの実施形態では、好適な前駆体ポリオールは、一実施形態では90g/mol以上、別の実施形態では200g/mol以上、なお別の実施形態では400g/mol以上の数平均Mwを有する。いくつかの実施形態では、好適な前駆体ポリオールは、一実施形態では4,000g/mol以下、別の実施形態では2,000g/mol以下、なお別の実施形態では1,200g/mol以下、さらに別の実施形態では900g/mol以下、さらになお別の実施形態では500g/mol以下の数平均Mwを有する。いくつかの実施形態では、好適な前駆体ポリオールは、一実施形態では200g/mol~4,000g/mol、別の実施形態では400g/mol~2,000g/mol、なお別の実施形態では400g/mol~1,200g/mol、さらに別の実施形態では、400g/mol~900g/molの数平均Mwを有する。
【0049】
いくつかの実施形態では、好適な前駆体ポリオールは、アルキル高級ポリオール、単糖、二糖、および以下の構造(III)を有する化合物であり、
【化3】
式中、R
2、R
3、R
4、およびR
5の各々は、互いに独立して、任意の有機基であり、n
1、n
2、およびn
3の各々は、互いに独立して、0~10の整数である。構造(III)に示されているペンダント基に加えて、R
2は、1つ以上の追加のペンダント基を有しても有さなくてもよい。ペンダント基のうちの2つ以上は、R
2の同じ原子に結合する場合もしない場合もあることがさらに理解される。いくつかの実施形態では、構造(III)を有する化合物の混合物が存在し、構造(III)の化合物は、n
1、n
2、およびn
3のうちの1つ以上の値が互いに異なる。そのような混合物は、パラメータn
1、n
2、またはn
3の非整数値を述べることにより本明細書で説明され、非整数値は、そのパラメータの数平均を表す。そのような混合物の分子量を評価することが所望される場合には、数平均分子量が使用される。
【0050】
構造(III)を有する前駆体ポリオールのうち、1つの好ましい実施形態では、各ペンダント基は、R2の別個の原子に結合している。構造(III)を有する前駆体ポリオールのうち、別の好ましい実施形態では、R3、R4、およびR5のうちの1つ以上は、一実施形態では1C~4C、別の実施形態では2C~3C、なお別の実施形態では3Cを有する炭化水素基である。構造(III)を有する前駆体ポリオールのうち、なお別の好ましい実施形態では、R3、R4、およびR5のうちの1つ以上は、線状、または環式、または分岐状、またはそれらの組み合わせであり得るアルキル基であり、さらに別の好ましい実施形態では、R3、R4、およびR5のうちの1つ以上は、線状または分岐状アルキル基であり、さらになお別の好ましい実施形態では、R3、R4、およびR5のうちの1つ以上は、分岐状アルキル基である。さらにさらに別の好ましい実施形態では、R3、R4、およびR5は、互いに同一である。
【0051】
構造(III)を有する前駆体ポリオールのうち、1つの好ましい実施形態では、n1、n2、およびn3のうちの1つ以上は、0~8である。構造(III)を有する前駆体ポリオールのうち、別の好ましい実施形態では、n1、n2、およびn3のうちの1つ以上は、1以上である。構造(III)を有する前駆体ポリオールのうち、なお別の好ましい実施形態では、n1、n2、およびn3のうちの1つ以上は、6以下である。構造(III)を有する前駆体ポリオールのうち、さらに別の好ましい実施形態では、n1、n2、およびn3は、互いに同じである。
【0052】
一実施形態では、構造(III)を有する前駆体ポリオールの群は、R
2、R
3、R
4、およびR
5の各々がアルキル基である化合物であり、そのような前駆体ポリオールは、本明細書ではアルコキシル化アルキルトリオールとして知られる。トリオールでは、n
1、n
2、およびn
3のうちの少なくとも1つが1以上であり、R
2が、以下の構造(IV)を有する場合、
【化4】
トリオールは、本明細書ではアルコキシル化グリセロールとして知られる。アルコキシル化トリオールでは、R
3、R
4、およびR
5の各々が、正確に3Cを有する分岐状アルキル基である場合、アルコキシル化トリオールは、本明細書ではプロポキシル化トリオールとして知られる。R
2が構造(IV)を有するプロポキシル化トリオールは、本明細書ではプロポキシル化グリセロールとして知られる。
【0053】
アルキル高級ポリオールである前駆体ポリオールのうち、一実施形態では、10C以下の炭素原子を有する化合物であり、別の実施形態では、6C以下の炭素原子を有する化合物であり、なお別の実施形態では、3つ以下の炭素原子を有する化合物であり、さらに別の実施形態では、化合物はグリセロールである。
【0054】
さらになお別の実施形態では、前駆体ポリオールは、アルキル高級ポリオールおよび構造(III)を有する化合物である。n1がn2=n3=0に等しい(=)場合、かつR2がアルキル基、またはヒドロキシル基を有するアルキル基のいずれかである場合、構造(IV)を有する化合物は、アルキル高級ポリオールであることに留意されたい。
【0055】
一実施形態では、前駆体ポリオールの群は、アルキルトリオールおよびアルコキシル化アルキルトリオールである。これらの化合物のうち、グリセロール、および一実施形態ではアルコキシル化グリセロール、別の実施形態ではアルコキシル化グリセロールである。アルコキシル化グリセロールのうち、1つの好ましい実施形態では、プロポキシル化グリセロールである。
【0056】
本発明で有用な別の部類の好適なリン酸エステル化合物としては、ウレタン結合を含有する化合物が挙げられる。ウレタン結合を含有するリン酸エステル化合物は、1つ以上の好適なリン酸官能性ポリオールを、1つ以上のポリイソシアネートと、好ましい実施形態では1つ以上のジイソシアネートを含む1つ以上のポリイソシアネートと反応させることによって作製される。好ましい実施形態では、ポリイソシアネートの量は、反応生成物の一部またはすべてがホスフェート官能性ポリオールであるように十分に低く保持される。あるいは、ポリオールを最初にポリイソシアネートと反応させて-OH末端プレポリマーを作製し得、次にこれをポリリン酸と反応させる。ウレタン結合を有するリン酸エステル化合物としては、ある一般的な実施形態では1,000g/mol~6,000g/molの範囲、別の実施形態では1,200g/mol~4,000g/molの範囲、なお別の実施形態では1,400g/mol~3,000g/molの範囲の数平均Mwを有する化合物が挙げられる。
【0057】
いくつかの実施形態では、リン酸エステル化合物は、前駆体ポリオールおよびリン酸型の酸を含む反応物の反応生成物であり、生じたリン酸エステル化合物は、構造(I)の化学構造を有する。
【0058】
1つの好ましい実施形態では、リン酸型の酸および前駆体ポリオールの量は、以下のMp:Mxの比を決定するために選択される:Mhy=前駆体ポリオールの分子当たりのヒドロキシル基の数;Nx=Mhy-2;Mx=(前駆体ポリオールのモル)×(Nx);およびMp=リン酸型の酸中に含有されるリン原子のモル。
【0059】
一般に、Mp:Mxの比は、一実施形態では0.1:1以上、別の実施形態では0.2:1以上、なお別の実施形態では0.5:1以上、さらに別の実施形態では0.75:1以上である。いくつかの実施形態では、Mp:Mxの比は、1.1:1以下である。
【0060】
一般に、リン酸型の酸対前駆体ポリオールの重量比は、一実施形態では0.005:1以上、別の実施形態では0.01:1以上、なお別の実施形態では0.02:1以上である。いくつかの実施形態では、リン酸型の酸の前駆体ポリオールに対する重量比は、0.3:1以下、または0.2:1以下、または0.12:1以下である。
【0061】
いくつかの実施形態では、リン酸型の酸は、ポリリン酸を含有する。また、一般に、リン酸型の酸中のポリリン酸の量は、リン酸型の酸の重量に基づく重量で、一実施形態では75重量%以上、別の実施形態では80重量%以上、なお別の実施形態では、90重量%以上である。ポリリン酸は、様々なグレードで利用可能であり、各グレードは、パーセンテージで特徴付けられる。グレードを決定するためには、純粋なモノマーオルトリン酸は、五酸化リンの含有量が72.4%であることをまず認識する。いずれのグレードのポリリン酸も分析することができ、1モルのポリリン酸(式量は「Fppa」と表示)は、「Nppo」と表示されるモル数の五酸化リンを含有し、五酸化リンのパーセンテージ(「PCppo」)は、PCppo=(Nppo×142)/Fppaによって求められ、これはパーセンテージで表されるものとみなされる。次に、そのポリリン酸のグレードは、パーセンテージ:グレード=PCppo/72.4で表される比である。
【0062】
いくつかの実施形態では、使用されるポリリン酸は、一実施形態では100%以上、別の実施形態では110%以上のグレードを有する。いくつかの実施形態では、使用されるポリリン酸は、一実施形態では150%以下、別の実施形態では125%以下のグレードを有する。
【0063】
いくつかの実施形態では、本開示の溶剤系接着剤組成物は、1つ以上のリン酸官能性ポリオールに加えて、1つ以上のリン不含ポリオールを含有する。
【0064】
好適なリン酸エステルおよびそのような好適なリン酸エステルの調製に関するさらなる情報は、例えば、PCT公開第WO/2015/168670号に見出すことができる。
【0065】
一般に、本発明で使用されるリン酸エステル化合物である、成分Bの成分(i)の量は、ポリオール成分である成分Bの乾燥重量に基づいて、一実施形態では0.1重量%~80重量%、別の実施形態では1重量%~70重量%、なお別の実施形態では5重量%~60重量%、さらに別の実施形態では10重量%~60重量%、さらになお別の実施形態では20重量%~60重量%である。
【0066】
本発明で有用なポリオール成分である、成分Bの成分(ii)は、少なくとも1つのポリエーテルポリオールを含む。一般に、ポリエーテルポリオールは、一実施形態では<1,500g/mol、別の実施形態では<1,000g/mol、なお別の実施形態では50g/mol~1,500g/molの分子量を有する。別の実施形態では、本発明のポリオール成分である成分Bに組み込まれるポリエーテルポリオールは、150g/mol~1,500g/molの分子量および2.0~6.0の官能価を有する。
【0067】
本発明で有用な好適なポリエーテルポリオールの例としては、例えば、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリブチレンオキシド系ポリオール、およびそれらのコポリマー;ならびにそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0068】
本発明で有用な好適なポリプロピレングリコールの例としては、例えば、プロピレンオキシド、エチレンオキシドに基づくポリオール、またはそれらと、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ソルビトール、スクロース、グリセリン、および/またはそれらの混合物から選択される開始剤との混合物が挙げられるが、それらに限定されない。例えば、ポリプロピレングリコールとしては、The Dow Chemical Companyから入手可能なVORANOL(商標);BASF Companyから入手可能なPLURACOL(商標);Lonzaから入手可能なPOLY-G(商標)、POLY-L(商標)、およびPOLY-Q(商標);ならびにCovestroから入手可能なACCLAIM(商標);ならびにそれらの混合物を挙げることができる。1つの好ましい実施形態では、2~6の官能価、および250g/mol~1,500g/molのMwを有するポリプロピレングリコールが使用される。
【0069】
本発明で有用な好適なポリテトラメチレンエーテルグリコールの例としては、例えば、BASF Companyから入手可能なPOLYTHF(商標);Invistaから入手可能なTERTHANE(商標);Mitsubishiから入手可能なPTMG(商標);およびDairenから入手可能なPTG(商標);およびそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。1つの好ましい実施形態では、2~6の官能価および250g/mol~1,500g/molのMwを有するポリテトラメチレンエーテルグリコールが使用される。
【0070】
本発明で有用な好適なポリブチレンオキシド系ポリオールの例としては、例えば、ポリブチレンオキシドホモポリマーポリオール、ポリブチレンオキシド-ポリプロピレンオキシドコポリマーポリオール、およびポリブチレンオキシド-ポリエチレンオキシドコポリマーポリオール;ならびにそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。1つの好ましい実施形態では、2.0~4.0の官能価および150g/mol~1,500g/molのMwを有するポリブチレンオキシド系ポリオールが使用される。
【0071】
他の実施形態では、本発明で有用なポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、トリイソプロパノールアミン、ネオペンチルグリコール;およびそれらの混合物を含むがそれらに限定されない、例えば低分子量グリコールが挙げられるが、それらに限定されない。
【0072】
一般に、本発明で使用される成分である、ポリエーテルポリオールである、成分Bの成分(ii)の量は、ポリオール成分である成分Bの乾燥重量に基づいて、一実施形態では20重量%~99.9重量%、別の実施形態では30重量%~99重量%、なお別の実施形態では40重量%~95重量%である。
【0073】
ポリエーテルポリオールである、成分Bの成分(ii)に加えて、ポリオール成分Bは、任意選択的に、(iii)少なくとも1つのポリエステルポリオールを含み得る。一般に、ポリエステルポリオールである、成分Bの成分(iii)は、使用される場合、一実施形態では<3,000g/mol、別の実施形態では<3,500g/mol、なお別の実施形態では500g/mol~3,000g/molの分子量を有する。
【0074】
本発明で有用な好適なポリエステルポリオールとしては、例えば、脂肪族ポリエステルポリオール;芳香族ポリエステルポリオール;脂肪族および芳香族ポリエステルポリオールのコポリマー;ポリカーボネートポリオール;ポリカプロラクトンポリオール;ならびにそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。これらのポリエステルポリオールは、多塩基酸と多価アルコールとの反応生成物であるか、またはホスゲンもしくはカーボネートモノマーと多価アルコールとの反応であるか、または環式エステル化合物の開環重合を介して生成される。
【0075】
本発明で有用な好適な多塩基酸の例としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、無水マレイン酸、フマル酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2-ビス(フェノキシ)エタン-p,p’-ジカルボン酸、およびこれらのジカルボン酸の無水物またはエステル形成性誘導体;ならびにp-ヒドロキシ安息香酸、p-(2-ヒドロキシエトキシ)安息香酸、およびこれらのジヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体または二量体酸;ならびにそれらの混合物が挙げられる。これらの多塩基酸は、単独で、または2つ以上の多塩基酸の組み合わせで使用され得る。
【0076】
本開示に従って、任意の既知の多価アルコールを使用することができる。本発明で有用な好適な多価アルコールの非限定的な例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタンジオール、ジメチルブタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサン-ジメタノール、トリエチレングリコール、ポリカプロラクトンジオール、二量体ジオール、ビスフェノールA、および水素化ビスフェノールAなどのグリコール;プロピオラクトン、ブチロラクトン、ε-カプロラクトン、8-バレロラクトン、およびβ-メチル-δ-バレロラクトンなどの環式エステル化合物の開環重合を通じて生成されるポリエステル;ならびに、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、およびネオペンチルグリコールなどの開始剤として2つの活性水素原子を含有する1つ以上の化合物の補助を用いる通常の様式での、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、エピクロロヒドリン、テトラヒドロフラン、およびシクロヘキシレンを含む1つ以上のモノマーの付加重合から生成されるポリエーテル;ならびにそれらの混合物が挙げられる。これらの多価アルコールは、単独で、または2つ以上の多価アルコールの組み合わせで使用され得る。
【0077】
一般的に、ポリオール成分である成分Bに追加され得る、ポリエステルポリオールである、任意選択的な成分Bの成分(iii)の量は、使用される場合、例えば、ポリオール成分である成分Bの乾燥重量に基づいて、一実施形態では0重量%~最大20重量%、別の実施形態では0.01重量%~15重量%、なお別の実施形態では0.1重量%~10重量%を挙げることができる。
【0078】
一般に、本発明の接着剤組成物は、(C)成分Cとして少なくとも1つの溶剤を含む。例えば、それらに限定されないが、溶剤は、酢酸エチル、メチルエーテルケトン、トルエン、およびそれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0079】
本発明のプロセスで使用される溶剤である成分Cの量は、接着剤組成物中の成分の総量に基づいて、一実施形態では20重量%~90重量%、別の実施形態では30重量%~80重量%、なお別の実施形態では40重量%~70重量%であり得る。
【0080】
いくつかの実施形態では、本発明の接着剤組成物は、(D)例えば、触媒、粘着付与剤、可塑剤、レオロジー調整剤、接着促進剤、抗酸化剤、充填剤、着色剤、顔料、界面活性剤、溶剤、ポリマー(例えば、本明細書で上で考察されたもの以外の熱可塑性樹脂を含む)、脱水剤(例えば、シランを含む)、塩化ベンゾイル、他のポリオール(例えば、脂肪性ポリオールを含む、)、紫外線インジケータ、およびそれらの2つ以上の組み合わせを含むがそれらに限定されない、成分Dとしての1つ以上の追加の任意選択的な従来の成分または添加剤を含み得る。
【0081】
例示的な実施形態として、接着剤組成物は、例えば、接着促進剤を含み得る。好適な接着促進剤の非限定的な例には、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、およびアルミネートカップリング剤などのカップリング剤、エポキシ樹脂、リン酸、ポリリン酸、およびリン酸エステルが挙げられる。
【0082】
本発明で有用なシランカップリング剤の例としては、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピル-トリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメチルジメトキシシラン、およびN-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシラン;β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピル-トリメトキシシラン、およびγ-グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのエポキシシラン;ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、およびγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのビニルシラン;ヘキサメチルジシラザン;γ-メルカプトプロピル-トリメトキシシラン;ならびにそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0083】
本発明で有用なチタネートカップリング剤の例としては、テトライソプロポキシチタン、テトラ-n-ブトキシチタン、ブチルチタネート二量体、テトラステアリルチタネート、チタンアセチルアセトネート、チタンラクテート、テトラオクチレングリコールチタネート、チタンラクテート、テトラステアロキシチタン;およびそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0084】
本発明で有用なエポキシ樹脂の例としては、ビスフェノールA-エピクロロヒドリン(エピ-ビス)型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、β-メチルエピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、環式オキシラン型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、ポリグリコールエーテル型エポキシ樹脂、グリコールエーテル型エポキシ樹脂、エポキシ化脂肪酸エステル型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸エステル型エポキシ樹脂、アミノグリシジル型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂;およびそれらの混合物などの既に入手可能な多様なエポキシ樹脂が挙げられるが、それらに限定されない。
【0085】
いくつかの実施形態では、接着促進剤は、リン酸エステル化合物であり得る。他の実施形態では、接着促進剤は、エポキシシラン((3-グリシジルオキシプロピル)-トリメトキシシラン)である。いくつかの実施形態では、リン酸は、ポリオール成分に組み込まれ得るが、エポキシシランは、イソシアネート成分に組み込まれ得る。いくつかの実施形態では、エポキシシランとリン酸の両方がポリオール成分に組み込まれる。
【0086】
いくつかの実施形態では、溶剤などの非反応性成分を除く、接着剤組成物(すなわち、ポリオール成分と一緒のイソシアネート成分)の平均官能価は、2~2.5である。
【0087】
任意選択的な成分Dの量は、使用される場合、接着剤組成物中の成分の総量に基づいて、例えば、一実施形態では0重量%~15重量%、別の実施形態では0.01重量%~10重量%、なお別の実施形態では0.1重量%~5重量%であり得る。
【0088】
1つの広義の実施形態では、接着剤組成物を生成するプロセスは、上記のイソシアネートおよびポリオール成分を混合して、硬化性接着剤組成物を形成することを含む。本発明では、イソシアネート部分とポリオール成分部分との2つの部分を用いることが企図される。また、開示の接着剤組成物のイソシアネート成分およびポリオール成分は、別個に作製され得、望ましい場合、接着剤組成物を使用することが所望されるまで保管されることが企図される。いくつかの実施形態では、イソシアネート成分およびポリオール成分の両方は、各々25℃で液体である。接着剤組成物を使用することが望ましい場合、イソシアネート成分およびポリオール成分を通常、化学量論比(NCO/OH)1~2.5で互いに接触させて一緒に混合する。これらの2つの成分を接触させると、イソシアネート基がヒドロキシル基と反応してウレタン結合を形成する硬化反応が開始することが企図される。2つの成分を接触させることによって形成される接着剤組成物は、「硬化性混合物」と称され得る。
【0089】
接着剤組成物を形成するために、2つの成分の混合は、接着剤組成物を形成し、塗布プロセスの前、最中、または結果としてなどの、接着剤を基材に塗布するプロセスの任意の好適な時間に行われ得る。本ステップのすべては、周囲の室温条件下で実行され得る。必要に応じて、加熱または冷却を用いてもよい。また、混合は、電気的、空気圧的、または他の方法で動力を与えられる機械的ミキサを使用するなどの、好適な従来のミキサを使用して実行され得る。
【0090】
一般の実施形態では、本発明の溶剤系接着剤組成物を調製するためのプロセスは、例えば、(1)イソシアネート成分を提供するステップと、(2)ポリオール成分を提供するステップと、(3)2つの成分を混合して樹脂混合物を形成するステップと、(4)樹脂混合物を溶剤で希釈して、希釈樹脂混合物の総重量に基づいて、一実施形態では25重量%~55重量%、別の実施形態では30重量%~45重量%、なお別の実施形態では35重量%%~40重量%の塗布固形分含有量を有する希釈樹脂混合物を形成するステップと、(5)組成物が基材に塗布される前、および組成物を硬化させる前に、組成物から溶剤を除去して接着剤組成物を形成するステップと、を含む。
【0091】
樹脂混合物を硬化させる前のイソシアネート成分対ポリオール成分の混合比は、一実施形態では100:1~100:12、別の実施形態では100:4~100:10である。
【0092】
本発明の溶剤系接着剤組成物によって呈される有利な特性のうちのいくつかとしては、例えば、(1)良好な接着性能、(2)迅速な硬化、および(3)(a)MDAおよびTDAなどの望ましくない芳香族アミンの移動レベルがないか、または(b)接着剤を使用する包装に包装された食品にMDAおよびTDAなどの望ましくない芳香族アミンの移動レベルが低いかのいずれか、が挙げられる。
【0093】
例えば、レトルト試験前の接着剤の乾燥結合は、一実施形態では500g/25mm超、別の実施形態では500g/25mm~2,500g/25mm、なお別の実施形態では700g/25mm~2000g/25mm、さらに別の実施形態では800g/25mm~1,800g/25mmであり得る。
【0094】
例えば、121℃でのレトルト試験の1時間後の接着剤の結合は、一実施形態では200g/25mm超、別の実施形態では200g/25mm~2,500g/25mm、なお別の実施形態では300g/25mm~2,000g/25mmであり得る。結合は、使用されるフィルム基材の種類に依存し得、いくつかの実施形態では、基材を試験した後、結合の前に不良モードが生じる場合、フィルムを結合することができる。
【0095】
接着剤の硬化時間は、一実施形態では1日~8日、別の実施形態では1日~7日、なお別の実施形態では2日~7日であり得る。
【0096】
本発明の接着剤組成物を使用してラミネートを形成するプロセスもまた、本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、上で考察された接着剤組成物などの接着剤組成物は、25℃で液体状態である。組成物が25℃で固形分であっても、必要に応じて組成物を加熱して、組成物を液体状態に変化させることは許容可能である。所望の固形分が達成されるまで溶剤を混合接着剤組成物に添加する。一般に、一実施形態では、50%以上の固形分含有量が使用される。
【0097】
本発明の接着剤組成物は、基材を一緒に結合するのに有用であり、接着剤組成物は、多種多様な単一の好適な基材、または複数の好適な基材上に使用することができる。基材は、類似の材料であっても異なる材料であってもよい。例えば、いくつかの実施形態では、基材は、高密度、低密度、または中密度プラスチック(例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ABS、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリフェニレン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリスルホン、およびそれらの混合物から選択される種類のもの)、紙、木材、および再構成木材製品、ポリマー被覆基材、ワックス被覆板紙、厚紙、パーティクルボード、織物、皮革、および金属(例えば、アルミニウム、鉄、ならびに他の非鉄)、金属化プラスチック(例えば、金属化プラスチックフィルム)などから選択され得る。
【0098】
複数の基材層の湿式および乾式接着ラミネーションが可能である。接着剤組成物は、輪転式グラビア印刷、フレキソ印刷、従来のまたはエアレススプレー、圧延コーティング、ブラシコーティング、巻線ロッドコーティング、ナイフコーティング、またはカーテン、フラッド、ベル、ディスク、およびディップコーティングプロセスなどのコーティングプロセスなどの、従来の塗布技法を使用して所望の基材に塗布することができる。接着剤組成物で基材をコーティングすることは、基材の表面全体にわたって、または縁に沿って、もしくは断続的な位置でなどの基材の表面の一部分に行うことができる。一旦基材に塗布されると、接着剤組成物は、熱流および空気流の適用、または接着剤組成物中に存在する実質的にすべての残留する溶剤を除去するための何らかの他の好適な従来のアプローチなどによって、乾燥される。
【0099】
本発明の溶剤系接着剤組成物を含むラミネートは、接着剤を2つの異なる基材のうちの少なくとも1つに塗布し、接着剤が2つの基材の表面の間に配置されるように基材を一緒に組み合わせること、次に、接着剤を硬化させて、2つの基材間に結合を形成することによって、形成することができる。基材は、例えば、2つの別個のフィルムを含み得、フィルムの各々は、異なる材料または同じ材料から作製され得る。一般に、接着剤組成物の層は、フィルムの表面に塗布される。一実施形態では、フィルムの表面に塗布される硬化性接着剤組成物混合物の層の厚さは、1ミクロン(μm)~5μmである。本明細書で使用される場合、「フィルム」は、構造の1つの寸法が0.5mm以下であり、構造の他の2つの寸法が両方とも1センチメートル(cm)以上である、任意の構造である。
【0100】
いくつかの実施形態では、別のフィルムの表面を硬化性混合物の層と接触させて未硬化ラミネートを形成する。次いで、硬化性混合物を硬化させるか、または硬化することが可能になる。未硬化ラミネートは、例えば加熱されていてもされていなくてもよいニップローラに通すことによって、加圧することができる。未硬化ラミネートを加熱して硬化反応を促進することができる。
【0101】
ラミネート構造を形成するのに使用される好適な基材としては、紙、織布および不織布、ポリマーフィルム、金属ホイル、金属被覆(金属化)ポリマーフィルム、およびそれらの組み合わせなどのフィルムが挙げられる。本発明による接着剤組成物が1つ以上の基材を一緒に接着している状態で、基材を層化してラミネート構造を形成する。フィルムは、任意選択的に、その上に画像がインクで印刷される表面を有し得る。インクは接着剤組成物と接触していてもよい。いくつかの実施形態では、フィルムは、ポリマーフィルムおよび金属被覆ポリマーフィルムであり、より好ましい実施形態では、ポリマーフィルムである。「ポリマーフィルム」は、ポリマーまたはポリマーの混合物から作製されるフィルムである。ポリマーフィルムの組成は、典型的には、80重量%以上の1つ以上のポリマーである。
【0102】
接着剤組成物は、包装および密封用途に特に魅力的である。例えば、プラスチックフィルム、金属フィルム、または金属化プラスチックフィルムを、本発明の接着剤組成物を用いて(例えば、その表面の全体、またはその縁に沿って、もしくは断続的な位置でなどのその表面の少なくとも一部分に)ラミネートして、ラミネートを形成することができる。1つの好ましい実施形態では、ラミネートは、例えば、2つのフィルム層の間を接着剤で結合させた、少なくとも2層のフィルムで作製されたパウチを形成するために使用される。いくつかの実施形態では、食品をボイルインバッグ調理用に包装してもよく、または得られた積層体を、何らかの他の物品を密封または包装するために使用してもよい。
【実施例】
【0103】
以下の実施例は、本発明をさらに詳細に説明するために提示されるが、特許請求の範囲の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。相反する記載がない限り、文脈から黙示的でない限り、または当該技術分野で慣習的でない限り、すべての部およびパーセントは、重量に基づき、すべての試験方法は、本開示の出願日時点で最新のものである。
【0104】
本発明の実施例(Inv.Ex.)および比較例(Comp.Ex.)で使用される様々な原材料または成分を、以下の表Iに説明する。
【表1】
【0105】
実施例1および2ならびに比較例AおよびB-接着剤
実施例で使用される接着剤配合物の成分は、表IIに記載されており、接着剤配合物は、以下の手順に従って調製される:
【0106】
リン酸エステル化合物を調製するための一般手順
1リットル(L)のマルチネック丸底フラスコをオーブンで乾燥させ、乾燥窒素(N2)で30分間フラッシュし、次に150グラム(g)のVORANOL(商標)CP450ポリエーテルポリオールを充填し、分当たり70ミリリットル(mL/分)のN2掃引下に置いた。シリンジに、4gの115%のPolyphosphoric20酸(PPA)を充填した。PPAを、強く撹拌しながらポリエーテルポリオールに滴下した。最小限の温度上昇が観察された。反応器の内容物を100℃まで1時間加熱し、次に45℃まで冷却した。次に、40gの酢酸エチルを反応器に添加し、続いて50gのISONATE(商標)125Mジイソシアネートをゆっくりと添加した。氷バッチを適用して顕著な発熱を制御して、反応ポットを75℃未満に保持し、黄色25から琥珀色の発色を観察した。次に、反応器を65℃で1時間維持し、その時点で内容物を冷却して包装した。生成物は、以下の特性を有した:固形分76.0%、112mg KOH/gのヒドロキシル価(OHN)、19.0mg KOH/gの酸価(AV)、および1,665ミリパスカル-秒(mPa・s)の25℃での粘度。
【0107】
イソシアネート成分(成分A)を調製するための一般手順
本発明の実施例1および本発明の実施例2のイソシアネート反応性成分を調製するための適切な成分を、表IIに記載する。試料調製の典型的な例として本発明の実施例1のイソシアネート成分を使用して、約450gのADCOTE(商標)577および約50gのMOR-FREE(商標)C33をガラス反応器に充填する。反応器を約40℃まで加熱し、生じた混合物を40℃で約30分間撹拌する。次に、生じた試料混合物を包装し、後で使用するために倉庫に置く。
【0108】
イソシアネート反応性成分(成分B)を調製するための一般手順
本発明の実施例1および本発明の実施例2のイソシアネート反応性成分を調製するための適切な成分を、表IIに記載する。試料調製の典型的な例として実施例1のイソシアネート反応性成分を使用して、約400gのVORANOL(商標)CP450、約40gのPOLYG(商標)30-112、および約360gのリン酸エステル化合物をガラス反応器に充填する。反応器を約40℃まで加熱し、生じた混合物を40℃で約30分間撹拌する。次に、生じた試料混合物を包装し、後で使用するために倉庫に置く。
【0109】
接着剤配合物を調製するための一般手順
イソシアネート反応性成分、イソシアネート成分、および溶剤を含む、接着剤配合物を調製するための適切な成分を、表IIに記載する。接着剤配合試料調製の典型的な例として本発明の実施例1の接着剤を使用して、約1,000gのイソシアネート成分(成分A)、約160gのイソシアネート反応性成分(成分B)、および約1,460gの酢酸エチルをプラスチック容器に充填する。材料を、機械的ミキサを使用して室温(約25℃)で30分間混合して、本発明の実施例1の配合接着剤を得る。
【表2】
【0110】
実施例3および4ならびに比較例CおよびD-ラミネート
ラミネートを調製するための一般手順
表IIIは、上の表IIに記載の接着剤を使用してラミネートおよびラミネート試料を調製するために実施例で使用される様々なフィルムを記載している。溶剤系接着剤に基づくラミネートは、Nordmeccanica Labo Combi 400パイロットコーターを介して室温(約25℃)で生成した。ポリマーフィルムは、ラミネーションの前にコロナ処理し、アルミニウム(Al)ホイルは、コロナ処理せずに使用した。各ラミネートのコート重量は、平方メートル当たり約4.9グラム(g/m2)に維持した。調製したラミネートを、その後、制御された環境(例えば、25℃および50℃で50%の相対湿度)で硬化させた。
【0111】
実施例は、The Dow Chemical Companyから市販のADCOTE(商標)/Coreactant Fを3.26g/m
2(2.00lb/連)で用いて0.00035ミルのAIホイルにラミネートされた12μm(48ゲージ)のポリエステル(「PET」)フィルムである「Prelam」、および3ミル(75μm)の厚さを有するキャストポリプロピレン(「CPP」)フィルムを含む、フィルムを使用して調製する。
【表3】
【0112】
フィルムの試験および測定方法
結合強度測定
幅15mmおよび長さ1インチ(25.4mm)のストリップに切断したラミネート試料に90°T型剥離試験を実行し、4インチ/分(101.6mm/分)の速度で、50ニュートン(N)荷重セルを備えたThwing Albert(商標)QC-3A剥離試験機で1インチ(25.4mm)のストリップ上で引張した。3つの別個の試料ストリップを試験し、3つのストリップの結果値を平均化した。ラミネート中の2つのフィルムが分離(剥離)するときの、引張中の力の平均を記録した。フィルムのうちの1つが伸張または破断した場合、最大の力または破断時の力を記録した。不良モード(FM)または不良のモード(MOF)を、以下の次の名称に従って記録した。
【0113】
「FS」は、「フィルム伸張」を意味する。
【0114】
「FT」は、「フィルムの裂け」(または破断)を意味する。
【0115】
「DL」は、「層剥離」を意味し、二次フィルムが一次フィルムから分離したことを意味する。
【0116】
「AT」は、「接着剤移行」を意味し、接着剤が、一次フィルムに接着不良であり、二次フィルムに移行することを意味する。
【0117】
「AS」は、「接着剤の分裂」(または密着不良)を意味し、接着剤が、一次フィルムおよび二次フィルムの両方に見られることを意味する。
【0118】
「MT」は、「金属移行」を意味し、金属化フィルムから二次フィルムへの金属の移行が生じたことを意味する。
【0119】
「PMT」は、「部分的な金属移行」を意味する。
【0120】
初期結合または「未硬化」結合は、ラミネートの作製後可能な限りすぐに試験した。追加のT型剥離試験は、以下に示す時間間隔で行った。
【0121】
硬化時間
ATRを使用して、ホイル//CPP構造の本発明の接着剤および比較接着剤の硬化を監視し、イソシアネートのピークがATRスペクトルから消えたときに、使用した各接着剤の硬化時間を決定した。
【0122】
パウチを調製するための一般手順
ラミネートは、上記のようにPrelam//CPPから作製した。一方の層のCPPフィルムが他方の層のCPPフィルムと接触するように、ラミネートの9インチ×12インチ(23cm×30.5cm)シートのうちの1つを折り畳んで、約9インチ×6インチ(23cm×15.3cm)の二重層を得た。折り畳んだラミネートの縁をペーパーカッターでトリミングして、約5インチ×7インチ(12.7cm×17.8cm)の折り畳んだ片を得た。折り畳んだ片の2つの長辺と1つの短辺とを縁でヒートシールして、4インチ×6インチ(10.2cm×15.2cm)の内部サイズを有する完成パウチを得た。400°F(204℃)で1秒間(秒)、平方インチ当たり40ポンド(psi)(276キロパスカル[kPa])の水圧で、ヒートシールを行った。各試験のために、2つまたは3つのパウチを作製した。
【0123】
パウチの試験および測定方法
レトルト性能試験
上記のように調製したパウチに、開放縁を通じて100ミリリットル(mL)±5mLの蒸留水(DI水)または1:1:1のソース(ケチャップ、酢、および植物油の等重量部のブレンド)を充填した。試験中にヒートシール不良を引き起こし得るので、ヒートシール領域上への充填物の跳ね上がりを回避した。充填後、パウチの内側への空気の封じ込めを最小限に抑える様式で、パウチの上部を密封した。試験中にパウチの漏れを引き起こすであろう密封部に傷がないことを確実にするために、パウチの4つの側面すべてについて密封が完全であることを検査した。少しでも欠陥のあるパウチは、廃棄し、交換した。場合によっては、試験中に新たな追加の傷が発生したか否かを識別するために、ラミネートの傷に印を付けた。
【0124】
次に、1:1:1のソースを含有するパウチを、121℃に設定したSTERISオートクレーブに1時間置いた。レトルト後にパウチを取り出し、貫通穴、ブリスター、層剥離、または漏れの程度を、印をつけた既存の傷のうちのいずれかと比較した。観察結果を記録した。パウチを切り開き、空にし、石鹸および水ですすいだ。1つ以上の1インチ(2.54cm)のストリップをパウチから切り取り、上記の標準結合強度試験に従って、ラミネート結合強度を測定した。これは、パウチの中身を取り出した後可能な限りすぐに行った。パウチの内部を目視検査し、あらゆる視覚的欠陥を記録した。
【0125】
レトルト規制試料の調製
30.8平方インチ(in2)(198.7平方センチメートル(cm2)で構成されるラミネートの各パウチに、試料当たり100mLの3%酢酸を充填した。次に、パウチをレトルトチャンバーに移行し、121℃で2時間保管した。試験後、周囲温度まで冷却した後、酢酸をポリエチレンボトルに移行した。
【0126】
酢酸試料を抽出し、調製から数日以内の分析用に調製し、調製から24時間以内に液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)を介して分析した。
【0127】
上の試験および測定手順は、上記のように調製した様々な試料に対して実施した。表IVは、そのような試料の性能を説明する。
【表4】
【0128】
溶剤系接着剤では、本発明の実施例1および本発明の実施例2は、優れた耐薬品性および耐熱性を実証している。加えて、本発明の実施例1および本発明の実施例2は、迅速な硬化特性(例えば、硬化まで50℃で3日間)を実証している。本発明の実施例1および本発明の実施例2はまた、低いMDAレベル(例えば、50℃でわずか3日の硬化後に<20ppb)を示している。
【0129】
他の実施形態
一実施形態では、本発明は、溶剤系レトルト接着剤組成物であって、(A)少なくとも1つのイソシアネート化合物である成分Aであって、少なくとも1つのイソシアネート化合物である成分Aが、(i)少なくとも1つの脂肪族系イソシアネートと(ii)少なくとも1つの芳香族系イソシアネートとのブレンドを含む、成分Aと、(B)少なくとも1つのイソシアネート反応性成分である成分Bであって、少なくとも1つのイソシアネート反応性成分である成分Bが、(i)少なくとも1つのリン酸エステル化合物、および(ii)1,500g/mol未満の平均分子量を有する少なくとも1つのポリエーテルポリオールを含む、成分Bと、を含む、溶剤系レトルト接着剤組成物を含む。
【0130】
別の実施形態では、少なくとも1つの脂肪族系イソシアネートである、接着剤の成分Aの成分(i)は、キシリレンジイソシアネート系ポリイソシアネート、1,4-または1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン系ポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネートイソシアヌレート、ヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート、ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン系ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートイソシアヌレート;およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0131】
別の実施形態では、少なくとも1つの芳香族系イソシアネートである、接着剤の成分Aの成分(ii)は、1,3-および1,4-フェニレンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、2,6-トルレンジイソシアネート、2,4-トルレンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニルジイソシアネート、高分子イソシアネート;ならびにそれらの混合物からなる群から選択される。
【0132】
別の実施形態では、少なくとも1つの芳香族系イソシアネートである、接着剤の成分Aの成分(ii)は、(α)少なくとも1つのイソシアネート化合物と、(β)少なくとも1つのポリオール化合物との反応生成物を含む、イソシアネートプレポリマーである。また、別の実施形態では、少なくとも1つのイソシアネート化合物である成分(α)は、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、およびそれらの混合物からなる群から選択される。また、別の実施形態では、ポリオール化合物である成分(β)は、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリアクリレート、ポリカーボネートポリオール、天然油系ポリオール、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0133】
別の実施形態では、ポリエーテルポリオールである成分(β)は、5,000g/mol未満の分子量を有する。また、別の実施形態では、ポリエステルポリオールである成分(β)は、1,500g/mol超の分子量を有する。
【0134】
別の実施形態では、溶剤を含まない、少なくとも1つのイソシアネート化合物である成分Aのイソシアネート含有量は、1重量パーセント~25重量パーセントである。
【0135】
別の実施形態では、少なくとも1つのリン酸エステル化合物である、接着剤の成分Bの成分(i)は、以下の構造(I)を有するリン酸エステル化合物であって、
【化5】
式中、R
1が、有機基であり、R
1が、1つ以上の追加のペンダント-OH基を有しても有さなくてもよく、R
1が、構造(I)の1つ以上の追加のペンダント基を有しても有さなくてもよく、-OH基および構造(I)の基のうちの2つ以上が、R
1の同じ原子に結合してもしなくてもよい、リン酸エステル化合物、ウレタン結合を含有するリン酸エステル化合物、およびそれらの混合物からなる群から選択される。また、別の実施形態では、少なくとも1つのリン酸エステル化合物である、接着剤の成分Bの成分(i)の含有量は、0.1重量パーセント~30重量パーセントである。
【0136】
別の実施形態では、少なくとも1つのポリエーテルポリオールである、接着剤の成分Bの成分(ii)は、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリブチレンオキシド系ポリオール、それらの混合物、およびそれらのコポリマーからなる群から選択される。
【0137】
別の実施形態では、少なくとも1つのイソシアネート反応性成分である接着剤の成分Bは、(iii)1,500g/mol未満の平均分子量を有する少なくとも1つのポリエステルポリオールをさらに含む。
【0138】
別の実施形態では、少なくとも1つのポリエステルポリオールである、接着剤の成分Bの成分(iii)は、脂肪族ポリエステルポリオール、芳香族ポリエステルポリオール、脂肪族および芳香族ポリエステルポリオールのコポリマー、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される。
【0139】
別の実施形態では、少なくとも1つのポリエステルポリオールである、接着剤の成分Bの成分(iii)は、(1)多塩基酸と多価アルコールとの反応生成物、(2)ホスゲンもしくはカーボネートモノマーと多価アルコールとの反応生成物であるか、または(3)環式エステル化合物の開環重合を介して生成される。
【0140】
別の実施形態では、本発明の接着剤は、(C)酢酸エチル、メチルエーテルケトン、トルエン、およびそれらの混合物からなる群から選択される溶剤をさらに含む。
【0141】
別の実施形態では、本発明の接着剤は、(D)触媒、界面活性剤、レベリング剤、消泡剤、レオロジー改質剤、着色顔料、およびそれらの混合物からなる群から選択される添加剤をさらに含む。
【国際調査報告】