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特表2022-536998NOx放出を低減させるバーナおよびこのバーナの運転方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-23
(54)【発明の名称】NOx放出を低減させるバーナおよびこのバーナの運転方法
(51)【国際特許分類】
   F23C 9/08 20060101AFI20220816BHJP
   F24H 3/00 20220101ALI20220816BHJP
   F23D 14/22 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
F23C9/08 403
F24H3/00 A ZAB
F23D14/22 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021531376
(86)(22)【出願日】2019-06-21
(85)【翻訳文提出日】2021-06-22
(86)【国際出願番号】 EP2019066530
(87)【国際公開番号】W WO2020253970
(87)【国際公開日】2020-12-24
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519340086
【氏名又は名称】エコノヴァ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ベルト ドムブロウスキ
(72)【発明者】
【氏名】ホルスト グラーフ フォン シュヴァイニッツ
【テーマコード(参考)】
3K019
3K065
【Fターム(参考)】
3K019AA06
3K019BA01
3K019BD03
3K065TA01
3K065TB01
3K065TB12
3K065TB17
3K065TC03
3K065TD04
3K065TD05
3K065TE04
3K065TF03
(57)【要約】
本発明は、NOx放出を低減して加熱室(55、55’)を加熱するバーナ(10;11;12)に関する。バーナ(10;11;12)は、混合燃焼室(54;54’)と、混合燃焼室(54;54’)内に配置された混合着火装置(51)と、混合着火装置(51)と接続され混合着火装置(51)へ燃料を供給するように構成された燃料供給部(50)とを含む。混合燃焼室(54;54’)へ少なくとも1つの空気部分流(L1)を供給するように構成された空気供給部(30;30’)がさらに設けられている。燃焼室開口部(53;53’)は、加熱すべき加熱室(55;55’)に向けて混合燃焼室(54;54’)を開放する。これらに加え、燃料供給部(50)を介した燃料流(B)を制御するように、かつ空気供給部(30;30’)を介した少なくとも1つの空気部分流(L1)を制御するように、制御手段(60)が構成されており、バーナ(10;11;12)および制御手段(60)は、混合着火装置(51)から燃焼室開口部(53;53’)を通り抜けて加熱室(55;55’)内に伸びる安定した火炎(56;56’)によって、バーナ(10;11;12)を運転するように構成されている。この場合、バーナ出力に関係づけられた燃焼室開口部(53;53’)の断面積は、1.5mm/kW~10mm/kWの範囲内にある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
NOx放出を低減して加熱室(55、55’)を加熱するバーナ(10;11;12)であって、
混合燃焼室(54;54’)と、
前記混合燃焼室(54;54’)内に配置された混合着火装置(51)と、
前記混合着火装置(51)と接続されており、前記混合着火装置(51)へ燃料を供給するように構成されている燃料供給部(50)と、
前記混合燃焼室(54;54’)へ少なくとも1つの空気部分流(L1)を供給するように構成されている空気供給部(30;30’)と、
加熱すべき加熱室(55;55’)に向けて前記混合燃焼室(54;54’)を開放する燃焼室開口部(53;53’)と、
前記燃料供給部(50)を介した燃料流(B)を制御するように、かつ前記空気供給部(30;30’)を介した少なくとも1つの空気部分流(L1)を制御するように、構成されている制御手段(60)と
を含み、
前記バーナ(10;11;12)および前記制御手段(60)は、前記混合着火装置(51)から前記燃焼室開口部(53;53’)を通り抜けて前記加熱室(55;55’)内に伸びる安定した火炎(56;56’)によって、前記バーナ(10;11;12)を運転するように構成されており、
バーナ出力に関係づけられた前記燃焼室開口部(53;53’)の断面積は、1.5mm/kW~10mm/kWの範囲内にある、
NOx放出を低減して加熱室(55、55’)を加熱するバーナ(10;11;12)。
【請求項2】
バーナ出力に関係づけられた前記燃焼室開口部(53;53’)の断面積は、1.5mm/kW~8mm/kWの範囲内にあり、好ましくは1.5mm/kW~6mm/kWの範囲内にあり、特に好ましくは1.5mm/kW~5mm/kWの範囲内にある、
請求項1記載のバーナ。
【請求項3】
前記空気供給部は空気供給管(30)により形成されており、該空気供給管(30)内では、前記混合燃焼室(54)が形成され、かつ前記空気供給管(30)が前記燃焼室開口部(53)を形成するように、前記混合着火装置(51)が配置されている、
請求項1または2記載のバーナ。
【請求項4】
バーナ出力に関係づけられた前記燃焼室開口部(53)の断面積は、1.5mm/kW~5mm/kWの範囲内にあり、特に好ましくは2.5mm/kW~3.5mm/kWの範囲内にある、
請求項3記載のバーナ。
【請求項5】
前記空気供給部(30;30’)を少なくとも部分的に取り囲むレキュペレータ(40、40’)を有しており、該レキュペレータ(40、40’)を介して第2の空気部分流(L2)を、前記混合燃焼室(54;54’)へ、または前記混合燃焼室(54)外の前記加熱室(55;55’)へ供給可能である、
請求項1から4までのいずれか1項記載のバーナ。
【請求項6】
前記空気供給部は空気供給管(30’)により形成されており、該空気供給管(30’)内に前記混合着火装置(51)が、前記混合燃焼室(54’)が形成されるように、かつ前記レキュペレータ(40’)が前記燃焼室開口部(53’)を形成する一方、前記第2の空気部分流(L2)が、前記レキュペレータ(40)から前記混合燃焼室(54’)内に案内されるように、配置されている、
請求項5記載のバーナ。
【請求項7】
バーナ出力に関係づけられた前記燃焼室開口部(53’)の断面積は、3mm/kW~10mm/kWの範囲内にあり、特に好ましくは3mm/kW~6mm/kWの範囲内にある、
請求項6記載のバーナ。
【請求項8】
前記制御手段(60)は、予め定められたパラメータ値に達した後では、空気流はほぼ同じままで前記燃料流(B)を増加させるように構成されている、
請求項1から7までのいずれか1項記載のバーナ。
【請求項9】
前記制御手段(60)は、燃料流(B)対空気流比を1:20から1:10に変化させるように構成されている、
請求項8記載のバーナ。
【請求項10】
前記予め定められたパラメータ値は加熱すべき室内の温度である、
請求項8または9記載のバーナ。
【請求項11】
前記温度は200℃~500℃である、
請求項10記載のバーナ。
【請求項12】
前記混合燃焼室(54;54’)内に火炎監視手段(52)が配設されており、該火炎監視手段(52)は、前記混合着火装置(51)の領域内の火炎(56;56’)を検出するように構成されている、
請求項1から11までのいずれか1項記載のバーナ。
【請求項13】
前記燃料流(B)および/または前記第1の空気部分流(L1)の流れ変更手段が設けられており、該手段が前記制御手段(60)によって起動されると、前記火炎(56:56’)が不安定化されて消されることになり、
前記バーナ(10;11;12)は、次いで前記燃焼室開口部(53;53’)の外側で、該燃焼室開口部(53;53’)から流出する燃料および空気の無炎酸化反応が行われるように、構成されている、
請求項1から12までのいずれか1項記載のバーナ。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか1項又は複数項記載のバーナの運転方法であって、
混合着火装置(51)から燃焼室開口部(53;53’)を通り抜けて加熱室(55;55’)内に伸びる安定した火炎(56;56’)が形成されるように、制御手段(60)が燃料流(B)および少なくとも1つの空気部分流(L1)を制御する、
バーナの運転方法。
【請求項15】
前記制御手段(60)は、予め定められたパラメータ値に達した後では、空気流をほぼ同じままに維持して前記燃料流(B)を増加させる、
請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記制御手段(60)は、燃料流(B)対空気流比を1:20から1:10に変化させる、
請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記予め定められたパラメータ値は加熱すべき室内の温度である、
請求項15または16記載の方法。
【請求項18】
前記温度は200℃~500℃である、
請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記加熱室(55;55’)の温度Tを求め、燃料/空気混合物の着火温度よりも高い予め定められた温度Tに達したならば、前記火炎(56;56’)が不安定化されて消され、次いで前記燃焼室開口部(53;53’)の外側で、該燃焼室開口部(53;53’)から流出する燃料および空気の無炎酸化反応が行われるように、前記燃料流(B)および/または前記第1の空気部分流(L1)の流れを変更させる、
請求項14から18までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NOx放出を低減して加熱室を加熱するバーナに関し、このバーナは、混合燃焼室と燃焼室開口部とを含み、この燃焼室開口部によって混合燃焼室が加熱すべき加熱室に向けて開放される。混合燃焼室内に火炎が生成され、この火炎の熱により加熱室が加熱される。本発明はさらに、かかるバーナの運転方法に関する。
【0002】
この種のバーナは特に、工業用熱処理施設において炉室を加熱するために使用され、これをたとえば熱処理のためのチャンバ炉、加熱および鍛造のための台車炉、ローラ炉床炉、または回転炉床炉とすることができる。ただし、この種の工業用バーナの用途は多岐にわたるため、これらの例は例示的なものにすぎないと理解されたい。
【0003】
バーナは、気体状または液体状の燃料を空気または酸素と共に用いて運転される。この場合、パルス出力バーナまたは高出力バーナがますます使用されるようになってきており、これによれば燃料と空気とが燃焼室内で混合されて着火される。発生した高温燃焼ガスが、高速で燃焼室開口部を通って加熱すべき加熱室に流入する。加熱室を炉室そのものとすることができ、または気密に炉壁を通って炉室に突入する放射管とすることができる。
【0004】
この場合、燃焼時にできるかぎり僅かなNOx値しか生じさせないようにする努力が払われているけれども、このことは相互に作用し合う様々なパラメータに左右される。1つの有利な措置として判明したのはたとえば、工業用バーナを2つの運転モードで運転することであり、その際に第2の運転モードは無炎酸化反応を含み、これによって低いNOx値が実現される。
【0005】
たとえば欧州特許第0685683号明細書に開示されている工業用バーナは、混合燃焼室内での火炎によるスタートモードと、混合燃焼室外での無炎酸化反応による加熱モードとの間で切り替え可能である。この目的で2つの異なる燃料ノズル装置が設けられており、それらによって燃料を選択的に混合燃焼室へ(スタートモード)、および燃焼室流出開口部近傍へ(加熱モード)、供給することができる。スタートモードと加熱モードとの切り替えは、加熱室内において予め定められた温度に達した後に行われ、その際にこの温度は、無炎酸化反応のために混合物を付加的な着火なく燃焼室流出開口部の領域で燃焼させることがきるよう、燃料/空気混合物の着火温度よりも高い。
【0006】
しかしながらこのような形式の工業用炉のためには、2つの異なる燃料供給部および高温運転中の切り替えが必要とされる。しかもこのような炉は、上述の着火温度には達していないかまたはまだ達していなかった加熱室領域では、無炎酸化反応に基づく低いNOx値を実現することができない。さらにこのような工業用炉のためには煩雑な監視が必要とされる。なぜならば、混合燃焼室内の火炎は加熱モードへの切り替え後に消え、それゆえこの火炎の存在に基づき炉を監視することはもはやできないからである。
【0007】
したがって本発明の課題は、特に上述の欠点を回避しながら僅かなNOx値を達成できるようにしたバーナおよびバーナの運転方法を提供することにある。
【0008】
本発明によればこの課題は、独立請求項1記載のバーナによって解決される。従属請求項2から13には、このバーナの有利な発展形態が示されている。さらに本発明の課題は、請求項14記載のかかるバーナの運転方法および請求項15から19記載のこの方法の有利な発展形態によって解決される。
【0009】
ここで留意されたいのは、各請求項に個々に挙げられている特徴を、技術的に目的に適った任意の態様で互いに組み合わせることができ、それらは本発明のさらなる実施形態を表す、ということである。本明細書は、特に付加的に図面を参照しながら、本発明の特徴を記述し本発明について詳細に記すものである。
【0010】
本発明によるバーナによって加熱室を加熱することができ、この場合、加熱室はたとえば炉室または加熱すべき炉室に突入した放射管である。したがってバーナを、直火または放射管によって運転することができる。放射管として様々な形式の放射管を使用することができる。たとえばこれはSER型(Single Ended Radiant Tube)の放射管である。ただしたとえば、P型またはDP型の放射管も使用することができる。好ましくは、1つの炉室に複数のバーナが装備される。好ましくは、1つの炉室に複数のバーナが装備される。これは工業用バーナであり、このバーナは、工業用熱処理施設において特に炉室を直接加熱するために用いられる。本発明によるバーナの構造および運転態様によって、NOx放出を低減することができるけれども、その際にこのバーナはさらなる利点をもたらす。
【0011】
この目的で本発明によるバーナは混合燃焼室を有しており、その内部に混合着火装置が配置されている。燃料供給部が混合着火装置と接続されており、これは混合着火装置へ燃料を供給するように構成されている。さらに、混合燃焼室へ第1の空気部分流を供給するように構成された空気供給部が設けられている。バーナは、空気および液体状または好ましくは気体状の燃料によって運転される。たとえば天然ガスが使用される。混合燃焼室は、燃焼室開口部を介して加熱すべき加熱室に向けて開放されている。
【0012】
さらにバーナには制御手段が設けられており、この制御手段は、燃料供給部を介した燃料流Bを制御するように、かつ空気供給部を介した少なくとも1つの空気部分流を制御するように、構成されている。バーナおよびこの制御手段は、混合着火装置から燃焼室開口部を通り抜けて加熱室内に伸びる安定した火炎によって、バーナを運転するように構成されている。かかる細長い火炎は、それぞれ異なる特性をもつ複数の火炎領域を有する。これは少なくとも混合燃焼室内の第1の火炎領域であり、この火炎領域はたとえばイオン化電極によって検出可能である。燃焼室開口部の外側に第2の火炎領域が形成され、この領域は流出する流れが高速であることを特徴としている。
【0013】
本発明によれば、バーナ出力に関係づけられた燃焼室開口部の断面積は、1.5mm/kW~10mm/kWの範囲内にある。本発明の1つの実施形態によれば、バーナ出力に関係づけられた燃焼室開口部の断面積は、1.5mm/kW~8mm/kWの範囲内にあり、好ましくは1.5mm/kW~6mm/kWの範囲内にあり、特に好ましくは1.5mm/kW~5mm/kWの範囲内にある。
【0014】
これらの値によって、燃焼室開口部の領域において著しく高い流出速度を達成することができ、これによって他方、排出ガスが加熱室からこの領域における火炎にいっそう強く吸い込まれる。この場合、燃料室開口部の断面積は、公知のバーナの場合に該当するよりも著しく小さく選定される。たとえば公知の空気/燃料バーナの場合には、バーナ出力に関係づけられた燃焼室開口部の断面積が10mm/kWよりも大きくなることが多い。この値を著しく小さくするのを避ける理由は、そのようにすると経験上、火炎をもはや安定した状態で信頼性を伴って操作することができない、ということによる。しかしながら本発明が基礎とする認識は、バーナの適切な構造および運転によって10mm/kWを大きく下回る値も実現できる、ということである。特にこのことは、混合着火装置の領域における安定した火炎の生成と共に行われる。よって、制御手段および混合着火装置は、混合燃焼室において安定した火炎を生成するように構成されている。
【0015】
本発明によれば、燃焼室開口部においていっそう高い流出速度がもたらされ、これによって他方では、加熱室からの排出ガスのいっそう強い吸い込みが引き起こされ、このことによりNOx放出を低減することができる。この場合、乾き排出ガス中の3%のOに関して、5~100mg/Nmの範囲内、もしくはSER放射管を用いて50~150mg/Nmの範囲内のNOx値を達成することができる。これに加え、特に長いSER放射管の場合には流出速度が高められることによって、加熱室内の温度プロフィルを改善することができる。
【0016】
本発明がさらに有する利点とは、混合着火装置の領域における安定した火炎を継続的に検出することができ、それによって監視できることである。したがって本発明の1つの実施形態によれば、混合燃焼室内に火炎監視手段が設けられており、この火炎監視手段は、混合着火装置の領域内の火炎を検出するように構成されている。この火炎監視手段はたとえば、火炎の領域内に突入したイオン化ロッドである。火炎監視手段は、混合燃焼室内の火炎の存在を監視するために使用され、このことは高温スイッチングによる解決手段よりも比較的簡単であり、信頼性を伴って実施することができる。
【0017】
このようにすればバーナの機能を、燃焼室内の火炎の存在に基づき簡単な態様で監視することができる。かくして本発明によって可能になるのは、乾き排出ガス中の3%のOに関して、5~100mg/Nmもしくは50~150mg/Nmの範囲内の低いNOx値を達成するために、特に無炎酸化反応を利用する必要がない、ということであり、このような無炎酸化反応の監視は、監視可能な火炎が存在しないことから、煩雑でありかつ比較的不確かである。
【0018】
さらに本発明によるバーナを用いることによって、すでに約300~500℃の加熱室温度からNOx低減が可能である一方、無炎酸化反応を用いた場合には、約800℃の温度において初めてこのことが可能である。したがって本発明によるバーナを有利には、高い出力が要求されているが、加熱すべき領域内の温度は800℃を超えないまたはまだ超えてない熱処理施設の領域において、使用することができる。たとえば連続加熱炉の高出力の第1のゾーンにおいて、本発明によるバーナは最も効果的である。
【0019】
好ましくはさらにレキュペレータが設けられており、これはバーナの空気供給部を少なくとも部分的に取り囲んでいる。ただし本発明は、レキュペレータのないバーナ構造形態においても使用することができる。かかるレキュペレータを多種多様な形式で形成することができ、これは基本的に加熱室からレキュペレータ内に高温排出ガスを受け入れる手段を有する。さらにレキュペレータは、燃焼用空気をレキュペレータへ供給し、レキュペレータを介して案内される高温排出ガスを用いてこの燃焼用空気を加熱する手段を有する。レキュペレータは、高温排出ガスと供給された燃焼用空気との間の適切な伝熱を実現するよう、相応に構成されている。したがってレキュペレータを介して混合燃焼室へ、または混合燃焼室外の加熱室へ、第2の空気流L2を供給することができる。この第2の空気流L2がレキュペレータから混合燃焼室へ供給されるのか、または加熱すべき加熱室へ直接供給されるのかは、バーナの構造形態に依存する。任意選択的に第1の空気流L1を、やはりレキュペレータを介して予加熱することができる。
【0020】
燃焼室開口部の達成可能な断面積も、レキュペレータを備えたバーナの構造形態に基本的に依存する。なぜならば、レキュペレータにより予加熱された燃焼用空気を、様々な形式で燃焼に供給することができるからである。本発明の1つの実施形態によれば、空気供給部はたとえば空気供給管により形成されており、この空気供給管内に混合着火装置が、混合燃焼室が形成されるように配置されている。この場合には空気供給管が燃焼室開口部を形成する。かかる構造形態の場合、燃焼室開口部について著しく小さい直径を実現することができ、この場合、バーナ出力に関係づけられた燃焼室開口部の断面積はたとえば、1.5mm/kW~5mm/kWの範囲内にあり、特に好ましくは2.5mm/kW~3.5mm/kWの範囲内にある。
【0021】
レキュペレータを備えた構造形態の場合、第2の空気部分流L2はたとえばレキュペレータから加熱室内に案内される。この場合には、第2の予加熱された空気流L2は、混合燃焼室へ直接供給されるのではなく、この第2の空気部分流L2は、混合燃焼室外の火炎領域に供給される。
【0022】
レキュペレータを備えたバーナの別の構造形態によれば、空気供給部はやはり空気供給管により形成され、この空気供給管内に混合着火装置が、混合燃焼室が形成されるように配置されている。ただしこの実施形態の場合には、レキュペレータが燃焼室開口部を形成する一方、第2の予加熱された空気部分流L2が、レキュペレータから好ましくはやはり混合燃焼室内へ案内される。このようにすれば混合燃焼室内への全空気流は、前述の実施形態の場合よりも多くなるが、それにもかかわらず燃焼室開口部について著しく小さい直径を実現することができ、この場合、バーナ出力に関係づけられた燃焼室開口部の断面積は、3mm/kW~10m/kWの範囲内にあり、特に好ましくは3mm/kW~6mm/kWの範囲内にある。
【0023】
本発明の1つの実施形態によれば、制御手段はさらに、予め定められたパラメータ値に達した後では、空気流に対する燃料流Bの比を変化させるように、特に高めるように、構成されている。レキュペレータを有する、したがって複数の空気部分流を有する構造形態の場合、第1および第2の予加熱された空気流の合計に対する燃料流Bの比が変化させられ、特に高められる。本発明の1つの実施形態によれば、制御手段は好ましくは、予め定められたパラメータ値に達した後、空気流(特に第1および第2の予加熱された空気流の合計)をほぼ同じままに維持して、燃料流Bを増加させるように構成されている。予め定められたパラメータ値は温度の値であり、これは特に、加熱すべき室内の基準温度もしくは加熱すべき室の内部における特定のゾーン内の基準温度(ゾーン温度)である。ただし本発明によれば室は必ずしも加熱室でなくてもよく、そうではなく温度に対する適切な基準点が規定され、これはバーナの組み込み状況に応じて変更可能である。基準温度は好ましくは、たとえば燃料として天然ガスが用いられる場合には、この温度から燃料流B対空気流比を1:20から1;10に変化させることができるように、選定されるかまたは実験的に求められる。この温度はたとえば200℃~500℃である。他のガス状燃料であれば他の適切な混合比となる可能性があり、したがってここで挙げた天然ガスに関する混合比の変化は、本発明の説明のために例示的に用いられるにすぎない。
【0024】
このような形式の制御手段によって特に、冷間状態におけるバーナを、1:20という燃料流B対空気流(特に第1および第2の予加熱された空気部分流の合計)の比で始動することができる。これによって、燃焼室開口部を通って加熱室内に伸びる安定した火炎の形成が可能になる。ただし、バーナおよび炉がバーナの運転が続けられて加熱したならば、比を1:10まで変更することができ、それによっても火炎は不安定にはならない。バーナは好ましくは、最大空気量においてまずは半分の出力で運転され、火炎の十分な安定化が同様に可能な規定の温度条件に達したならば、最大出力で引き続き運転していくことができる。このようにすることで、バーナの様々な加熱段階において、流出速度が高いにもかかわらず、燃焼室開口部の領域で安定した火炎を生成することができる。
【0025】
任意選択的にバーナは、無炎酸化反応による運転にバーナを切り替える手段を有する。この目的でたとえば、燃料流および/または第1の空気部分流の流れ変更手段が設けられており、これが制御手段によって起動されると、火炎が不安定化されて消される。バーナはさらに、次いで燃焼室開口部の外側において、燃焼室開口部から高速で流出する燃料と空気との無炎酸化反応が行われるように、構成されている。このことが前提とするのは、この領域における温度が混合物の着火温度よりも高い値、すなわち約800℃、に達している、ということである。このため、制御手段と接続された相応の温度監視手段が設けられている。このような無炎酸化反応の場合にも、燃焼室開口部において燃料および空気の流出速度が高められていることで、有利には排出ガスのいっそう強い吸い込みが引き起こされ、このことによってやはりNOx値が低減される。
【0026】
無炎酸化反応への切り替えのためのこの種の流れ変更を、欧州特許第0685683号明細書において提案されているように、たとえば燃料ランスを長くすることによって実現することができ、これは燃焼室開口部の領域内まで突入している。また、混合着火装置からの燃料の流出を変化させるよう制御することも可能である。
【0027】
本発明には、本発明の実施形態によるバーナの運転方法も含まれており、この方法によれば、混合着火装置から燃焼室開口部を通り抜けて加熱室内に伸びる安定した火炎が形成されるように、制御手段が燃料流と少なくとも1つの空気部分流とを制御する。
【0028】
この方法は特に加熱開始フェーズのために、予め定められたパラメータ値に達した後、制御手段が空気流に対する燃料流の比を高める、という任意選択的な措置を含む。特にこのことは、制御手段が既述のように空気流をほぼ同じままに維持して燃料流を増加させる、というようにして行われる。たとえば制御手段は、燃料流対空気流比を1:20から1:10に変化させる。レキュペレータを備えた構造形態の場合には、上述の空気流が第1の空気部分流と第2の空気部分流とから合成される。したがってやはりこの方法によれば、予め定められたパラメータ値は加熱すべき室内の温度であり、この温度は200℃~500℃である、というようにすることが考えられている。このように方法を実施することによって、これまでに述べた利点が得られる。
【0029】
無炎酸化反応による運転に任意選択的に切り替えるために、この方法によれば1つの実施形態において以下のようにすることが考えられている。すなわち、加熱室の温度Tが求められ、燃料/空気混合物の着火温度よりも高い予め定められた温度Tに達したならば、火炎が不安定化されて消され、次いで燃焼室開口部の外側で、燃焼室開口部から流出する燃料および空気の無炎酸化反応が行われるように、燃料流および/または第1の空気部分流の流れが変更させられる。このように方法を実施することによって、これまでに述べた利点が得られる。
【0030】
従属請求項、および図面に基づく好ましい実施例の以下の説明から、本発明のさらなる利点、特別な点および目的に適った発展形態が明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明によるバーナの第1の実施形態を概略的に示す断面図である。
図2】バーナを制御するための制御手段の1つの実施形態を流れ図として示す図である。
図3】本発明によるバーナの第2の実施形態を概略的に示す断面図である。
図4】本発明によるバーナの第3の実施形態を概略的に示す断面図である。
【0032】
図1には、本発明によるバーナ10の第1の実施形態が概略的に示されており、この図に基づき本発明の基本的な特徴について説明する。ただしバーナの構造を限定的なものとして理解すべきではなく、図1は特に、構成要素および部材寸法の概略的描写を表しているにすぎない。同じことは、さらなる実施形態を示す図3および図4についても当てはまる。レキュペレータが設けられていない構造形態も同様に一緒に含まれている。
【0033】
バーナ10は炉壁20に組み込まれており、火炎56を生成し、この火炎56によって加熱室55を加熱することができる。この実施形態によればこれは裸火であり、これによって加熱室55がじかに加熱される。ただし間接的な加熱による他の実施形態も可能であり、その場合には放射管が使用される。かかる実施形態は図4に示されている。
【0034】
バーナ10は混合燃焼室54を有しており、これは空気供給部30により空気供給管として形成される。この空気供給部30に燃焼空気が取り込まれ(図示せず)、第1の空気部分流L1として混合燃焼室54に流入する。この空気導入管30内部に混合着火装置51が取り付けられており、これは燃料供給部50と接続されていて、この燃料供給部50を介して混合着火装置51に燃料が供給される。燃料はたとえば天然ガスである。
【0035】
混合着火装置51は、燃料がそこから流出して、燃料流Bと第1の空気部分流L1とから成る混合物の着火により安定した火炎56を発生させることができるよう、適切な態様で構成されている。図1の概略的な図面では、そのために複数の燃料流が側方において所定の角度で混合着火装置51から流出しているけれども、このことを限定的なものとして理解すべきではない。他のあらゆる適切な混合着火装置51も同様に使用することができる。
【0036】
この実施形態によればバーナはさらに、空気供給管30を取り囲むレキュペレータ40を有する。加熱室55から高温排出ガスA1がレキュペレータ40内に引き込まれ、第2の空気部分流L2が向流として加熱される。任意選択的に、第1の空気部分流L1もレキュペレータ40において予加熱されたものとすることができる。第2の予加熱された空気部分流L2は加熱室55へ供給される。このことは細長い火炎56の領域で行われ、その際にこの火炎56は種々の火炎領域を有する。第1の火炎領域56aは混合燃焼室54内に存在し、この場合、空気供給管30が燃焼室開口部53を形成しており、この開口部53を通って火炎56が、混合着火装置51から始まって延在している。第2の火炎領域56bは、加熱室55において燃焼室開口部53の前方に形成されている。この火炎領域56bに、第2の予加熱された空気部分流L2がレキュペレータ40から供給される。同時に高温排出ガスA2が、加熱室55から火炎領域56bに吸い込まれる。
【0037】
バーナのこの構造の場合、バーナ出力に関係づけられた燃焼室開口部53の断面積は、1.5mm/kW~5mm/kWの範囲内にあり、特に好ましくは2.5mm/kW~3.5mm/kWの範囲内にある。これにより結果として燃焼室開口部53において高い流出速度がもたらされ、このような高い流出速度が火炎領域56bにおいて低いNOx値を生じさせる。混合燃焼室54内の火炎56のNOx生成と合計して、直火の場合には全体で、乾き排出ガス中の3%のOに関連して、5~100mg/Nmの範囲内の僅かなNOx値を達成することができる。さらに火炎56を良好に監視することができ、その際にこの目的で混合燃焼室54内にイオン化ロッド52が設けられており、これを用いて火炎56の存在を検出することができる。
【0038】
バーナを図1の運転状態に移行させる目的で好ましくは、冷間のバーナ10であっても安定した火炎56を生成することができるよう、燃料流Bと空気部分流L1、L2とを所定のように制御することで加熱開始フェーズが行われる。この目的で制御手段60が設けられており、その構造をたとえば図2から見て取ることができる。バーナ10には、このバーナ10への燃料および空気の供給を可能にする制御手段60が装備されている。以下では、燃料のことを単にガスと称する。ガスの流れに関しては、バーナ10から出発して直列に、調整弁61、ガス弁63、補償装置64、およびガス供給部(図示せず)への接続のためのボール弁65が設けられている。空気の流れに関しては、バーナ10から出発して直列に、調整弁66、空気弁67、補償装置68、および空気供給部(図示せず)への接続のための仕切弁69が設けられている。調整弁61とガス弁63との間に並列回路として、1つのガス弁を備えた定圧レギュレータ62およびバイパス路におけるさらに別のガス弁62aが設けられている。調整弁66と空気弁67との間において、ガス弁を備えた定圧レギュレータ62に向かってパルス管路70が分岐している。
【0039】
この制御手段を用いて、最初は冷間状態にあるバーナを約1:20の燃料対空気比で始動させることができ、このことによって安定した火炎56の形成が可能となる。この場合、すでに最大空気量が供給される一方、燃料流はガス弁62aを介して最初は低減されている。バーナ10の構造および炉内の環境条件によっては、燃料流を予め定められた温度以降は増加させることができ、それというのもそのとき火炎56は燃料の割合が増えても安定しているからである。この温度からは燃料流に関してガス弁62aから弁(定圧レギュレータ)62へと切り替えられ、それによって燃料流が増やされ、その際にたとえば約1:10の燃料対空気比が設定される。
【0040】
図3には、本発明によるバーナ11の択一的な実施形態が示されており、ただしこの場合にはレキュペレータ40’が燃焼室開口部53’を形成している。したがってレキュペレータ40’内で予加熱された第2の空気部分流L2’は、第1の空気部分流L1と共に混合燃焼室54’内で合流する。ただし、2つの火炎領域56aおよび56bを有する火炎56が同様に形成され、残りの構成要素も図1の実施形態に相応する。バーナ出力に関係づけられた燃焼室開口部53’の断面積だけはここでは、3mm/kW~10mm/kWの範囲内にあり、特に好ましくは3mm/kW~6mm/kWの範囲内にある。
【0041】
図4には、図3の実施形態によるバーナ12が示されており、この場合には加熱すべき加熱室55’が火炎管42内に配置されている。火炎管42は放射管41によって取り囲まれており、これは間接的な加熱のために炉壁20から炉内室に突入している。放射管41内の火炎管42によって、バーナ12へと戻る高温排出ガスA3の流れを生じさせることができ、その際に排出ガスA3は、排出ガスA1としてレキュペレータに供給されるか、または排出ガスA2として火炎領域56bによって吸い込まれる。たとえばSER放射管を使用した場合、本発明によれば、乾き排出ガス中の3%のOに関連して、50~150mg/Nmの範囲内のNOx値を達成することができる。
【符号の説明】
【0042】
10、11、12 バーナ
20 炉壁
30、30’ 空気供給部、空気供給管
40、40’ レキュペレータ
41 放射管
42 火炎管
50 燃料供給部
51 混合着火装置
52 火炎監視手段、イオン化ロッド
53 燃焼室開口部
54、54’ 混合燃焼室
55、55’ 加熱室
56 火炎
56a,56b 火炎領域
60 制御手段
61 調整弁 ガス
62 ガス弁V2を備えた定圧レギュレータ
62a ガス弁 バイパス路
63 ガス弁 V1
64 補償装置
65 ボール弁
66 調整弁 空気
67 空気弁
68 補償装置
69 仕切弁
70 パルス管路
L1 空気部分流
L2 予加熱された空気部分流
B 燃料流
A1 レキュペレータ内の排出ガス流
A2 火炎における排出ガス流
A3 逆方向の排出ガス流
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】