(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-23
(54)【発明の名称】黒体放射装置
(51)【国際特許分類】
G01J 5/53 20220101AFI20220816BHJP
【FI】
G01J5/53
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021554755
(86)(22)【出願日】2020-10-27
(85)【翻訳文提出日】2021-09-10
(86)【国際出願番号】 CN2020124136
(87)【国際公開番号】W WO2021232676
(87)【国際公開日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】202020844621.9
(32)【優先日】2020-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518209698
【氏名又は名称】シェンチェン センスタイム テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHENZHEN SENSETIME TECHNOLOGY CO.,LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワン シュー
(72)【発明者】
【氏名】マー ジュンション
【テーマコード(参考)】
2G066
【Fターム(参考)】
2G066AC02
2G066CA15
2G066CB01
(57)【要約】
黒体放射装置であって、筐体と、黒体と、制御部材と、を備え、筐体内に収容空間を有し、一方側の側壁に貫通孔が開設され、黒体は、筐体における、貫通孔が開設される側壁の内壁に設けられ、黒体は、貫通孔をカバーし、貫通孔を介して外部へ露出し、収容空間に温度調節液体が収容され、制御部材は、筐体に設けられ、且つ制御部材は、黒体の設定温度に基づいて、温度調節液体の温度が設定温度になるように調節する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒体放射装置であって、
筐体と、黒体と、制御部材と、を備え、
前記筐体内に収容空間を有し、一方側の側壁に貫通孔が開設され、前記黒体は、前記筐体における、前記貫通孔が開設される側壁の内壁に設けられ、前記黒体は、前記貫通孔をカバーし、前記貫通孔を介して前記筐体の外側へ露出し、前記収容空間に温度調節液体が収容され、前記制御部材は、前記筐体に設けられ、且つ前記制御部材は、前記黒体の設定温度に基づいて、前記温度調節液体の温度が前記設定温度になるように調節する、
黒体放射装置。
【請求項2】
前記筐体内に、前記制御部材に電気的に接続される第1加熱部材及び撹拌部材が設けられ、前記温度調節液体の温度が前記設定温度より低い場合、前記制御部材は、前記第1加熱部材を、前記温度調節液体を加熱するように制御し、前記制御部材は、前記温度調節液体の各箇所の温度を均一にするように、前記撹拌部材を、前記温度調節液体を撹拌するように制御することを特徴とする
請求項1に記載の黒体放射装置。
【請求項3】
前記筐体内に、前記制御部材に電気的に接続される第2加熱部材が更に設けられ、前記第1加熱部材は、前記筐体の底部に設けられ、前記第2加熱部材は、前記筐体の側部に設けられ、
前記制御部材は、前記温度調節液体の温度を調節するように、前記第1加熱部材及び/又は前記第2加熱部材を、起動して制御し、
ここで、前記第2加熱部材及び前記第1加熱部材は、いずれも、パルス幅変調方式により制御されるものであり、
前記撹拌部材は、第1撹拌部材と、第2撹拌部材と、を備え、前記第1撹拌部材の軸線は、前記第2撹拌部材の軸線に平行ではないことを特徴とする
請求項2に記載の黒体放射装置。
【請求項4】
前記筐体に、前記制御部材に電気的に接続される空冷ユニットが設けられ、前記温度調節液体の温度が前記設定温度より高い場合、前記制御部材は、前記温度調節液体の温度を低下させるように、前記第1加熱部材をオフにするように制御し、前記空冷ユニットを起動することを特徴とする
請求項2に記載の黒体放射装置。
【請求項5】
前記筐体内に、前記制御部材に電気的に接続される複数の第1温度センサが設けられ、複数の前記第1温度センサのそれぞれは、前記温度調節液体の各箇所の温度を検出するように、異なる箇所に位置し、
前記制御部材は、複数の前記第1温度センサにより検出された温度が異なる信号を受信した場合、前記制御部材は、前記撹拌部材を起動するように制御し、
前記制御部材は、複数の前記第1温度センサにより検出された温度がいずれも前記設定温度より低い信号を受信した場合、前記制御部材は、前記第1加熱部材を起動するように制御し、
前記制御部材は、複数の前記第1温度センサにより検出された温度がいずれも前記設定温度より高い信号を受信した場合、前記制御部材は、前記空冷ユニットを起動するように制御することを特徴とする
請求項4に記載の黒体放射装置。
【請求項6】
前記黒体に、前記制御部材に電気的に接続される複数の第2温度センサが設けられ、複数の前記第2温度センサは、前記黒体に均一に分布し、複数の前記第2温度センサは、前記黒体の温度が前記設定温度に達するかどうかを検出するように構成されることを特徴とする
請求項5に記載の黒体放射装置。
【請求項7】
前記筐体に、前記制御部材にそれぞれ電気的に接続される環境温度センサ及び環境湿度センサが更に設けられ、前記環境温度センサは、環境温度を取得し、前記環境湿度センサは、環境湿度を取得し、環境温度及び環境湿度は、温度補償に用いられることを特徴とする
請求項1に記載の黒体放射装置。
【請求項8】
前記筐体に、ユーザインタラクションユニット及び警報ユニットが更に設けられ、前記ユーザインタラクションユニットは、前記黒体放射装置の現在状態を表示し、及びユーザから入力される制御命令を受信するように構成され、
前記黒体放射装置の現在状態が利用不可能である場合、前記警報ユニットは、警報提示を発することを特徴とする
請求項1に記載の黒体放射装置。
【請求項9】
前記黒体の形状は円状であり、円の直径は、5-25cmであることを特徴とする
請求項1に記載の黒体放射装置。
【請求項10】
前記筐体は、内筐体と、外筐体と、を備え、前記外筐体は、前記内筐体を被包し、前記外筐体と前記内筐体との間に保温断熱材が設けられることを特徴とする
請求項1に記載の黒体放射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2020年05月19日に提出された、出願番号が202020844621.9である中国特許出願に基づいて提出されるものであり、当該中国特許出願の優先権を主張し、該中国特許出願の全ての内容が参照として本願に組み込まれる。
【0002】
本願は、サーマルイメージングデバイスキャリブレーションの技術分野に関し、特に黒体放射装置に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、赤外線熱画像技術の成長及びソフトウェアアルゴリズムの更新に伴い、高精度の赤外線サーマルイメージングデバイスの設計及び製造の需要は、特に、人体の非接触式温度測定分野において、ますます切実になる。人体の温度測定などの高精度が求められるシーンにおいて、生産過程において、赤外線サーマルイメージングデバイスの製品に対して高精度のキャリブレーション又は較正を行う必要がある。サーマルイメージングデバイスの製品に対して、キャリブレーション又は較正のために選択される黒体は、一般的には、面状黒体放射源を必要とするが、従来の面放射の安定性が低い。
【発明の概要】
【0004】
第1態様において、本願は、黒体放射装置を提供する。該黒体放射装置は、筐体と、黒体と、制御部材と、を備え、前記筐体内に収容空間を有し、一方側の側壁に貫通孔が開設され、前記黒体は、前記筐体における、前記貫通孔が開設される側壁の内壁に設けられ、前記黒体は、前記貫通孔をカバーし、前記貫通孔を介して前記筐体の外側へ露出し、前記収容空間に温度調節液体が収容され、前記制御部材は、前記筐体に設けられ、且つ前記制御部材は、前記黒体の設定温度に基づいて、前記温度調節液体の温度が前記設定温度になるように調節する。筐体を設け、筐体内に温度調節液体を配置し、制御部材が温度調節液体の温度を設定温度に調節し、温度調節液体の温度を黒体に伝導することにより、黒体の温度を設定温度に達する。温度調節液体は、高い温度安定度を有することで、所定の期間内の温度変動が許容値を超えないことを確保し、黒体を常に設定温度にし、温度安定度が高く、それによって、赤外線サーマルイメージングデバイスのキャリブレーションの需要を満たすことができる。
【0005】
一実施例において、前記筐体内に、前記制御部材に電気的に接続される第1加熱部材及び撹拌部材が設けられ、前記温度調節液体の温度が前記設定温度より低い場合、前記制御部材は、前記第1加熱部材を、前記温度調節液体を加熱するように制御し、前記制御部材は、前記温度調節液体の各箇所の温度を均一にするように、前記撹拌部材を、前記温度調節液体を撹拌するように制御する。
【0006】
一実施形態において、前記筐体内に、前記制御部材に電気的に接続される第2加熱部材が更に設けられ、前記第1加熱部材は、前記筐体の底部に設けられ、前記第2加熱部材は、前記筐体の側部に設けられ、前記制御部材は、前記温度調節液体の温度を調節するように、前記第1加熱部材及び/又は前記第2加熱部材を起動して制御し、ここで、前記第2加熱部材及び前記第1加熱部材は、いずれも、パルス幅変調方式により制御されるものである。第1加熱部材及び第2加熱部材をパルス幅変調方式により制御することで、異なる加熱電力を出力し、必要に応じて、異なる時刻で、温度調節液体に対して異なる加熱効果を果たすことができる。
【0007】
一実施形態において、前記撹拌部材は、第1撹拌部材と、第2撹拌部材と、を備え、前記第1撹拌部材の軸線は、前記第2撹拌部材の軸線に平行ではない。第1撹拌部材による温度調節液体の撹拌流動方向は、第2撹拌部材による温度調節液体の撹拌流動方向と異なり、これにより、温度調節液体の流動混合を均一にする速度を速くすることができる。
【0008】
一実施形態において、前記筐体に、前記制御部材に電気的に接続される空冷ユニットが設けられ、前記温度調節液体の温度が前記設定温度より高い場合、前記制御部材は、前記温度調節液体の温度を低下させるように、前記第1加熱部材をオフにするように制御し、前記空冷ユニットを起動し、温度調節液体の温度を低下させる必要がある場合、空冷ユニットを起動し、空冷ユニットにより温度調節液体を降温し、温度調節液体の温度を新たな設定温度に低下させる。
【0009】
一実施形態において、前記筐体内に、前記制御部材に電気的に接続される複数の第1温度センサが設けられ、複数の前記第1温度センサのそれぞれは、前記温度調節液体の各箇所の温度を検出するように、異なる箇所に位置し、前記制御部材は、複数の前記第1温度センサにより検出された温度が異なる信号を受信した場合、前記制御部材は、前記撹拌部材を起動するように制御し、前記制御部材は、複数の前記第1温度センサにより検出された温度がいずれも前記設定温度より低い信号を受信した場合、前記制御部材は、前記第1加熱部材を起動するように制御し、前記制御部材は、複数の前記第1温度センサにより検出された温度がいずれも前記設定温度より高い信号を受信した場合、前記制御部材は、前記空冷ユニットを起動するように制御する。
【0010】
一実施形態において、前記黒体に、前記制御部材に電気的に接続される複数の第2温度センサが設けられ、複数の前記第2温度センサは、前記黒体に均一に分布し、複数の前記第2温度センサは、前記黒体の温度が前記設定温度に達するかどうかを検出するように構成される。黒体の各箇所の温度を取得することで、温度調節液体の温度の設置を容易にし、温度調節液体の熱伝導により、黒体の各箇所の温度を均一にし、設定温度に達する。
【0011】
一実施形態において、前記第1温度センサ及び前記第2温度センサの精度は、摂氏0.005(℃)であり、つまり、第1温度センサ及び第2センサはいずれも、PT1000高精度センサである。従来のPT100センサに比べて、PT1000高精度センサは、温度に対する分解能がより高く、温度調節液体の温度及び黒体の温度をより正確に測定し、設定温度により近く、設定温度との偏差が大きすぎることを避けることができる。
【0012】
一実施形態において、前記筐体に、前記制御部材にそれぞれ電気的に接続される環境温度センサ及び環境湿度センサが更に設けられ、前記環境温度センサは、環境温度を取得し、前記環境湿度センサは、環境湿度を取得し、環境温度及び環境湿度は、温度補償に用いられる。
【0013】
一実施形態において、前記筐体に、ユーザインタラクションユニット及び警報ユニットが更に設けられ、前記ユーザインタラクションユニットは、前記黒体放射装置の現在状態を表示し、及びユーザから入力される制御命令を受信するように構成され、前記黒体放射装置の現在状態が利用不可能である場合、前記警報ユニットは、警報提示を発する。
【0014】
一実施形態において、前記黒体の形状は円状であり、円の直径は、5-25センチメートル(cm)であることで、黒体と筐体の内壁とを密接させ、収容空間の密封を確保することができるだけでなく、貫通孔を介して露出する黒体の面積を十分に大きくし、複数の赤外線サーマルイメージングデバイスのキャリブレーションを同時に行うこともできる。
【0015】
一実施形態において、前記筐体は、内筐体と、外筐体と、を備え、前記外筐体は、前記内筐体を被包し、前記外筐体と前記内筐体との間に保温断熱材が設けられることで、環境温度が内筐体に及ぼす影響を減少させ、温度安定度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本願の実施形態又は従来技術における技術的解決手段をより明確に説明するために、以下、実施形態又は従来技術の説明に必要な図面を簡単に説明する。勿論、以下に説明される図面は本願の一部の実施例に過ぎず、当業者にとっては、創造的な労働を要することなく、これらの図面に基づいて他の図面を得ることもできる。
【
図1】一実施例に係る黒体放射装置の立体構造の模式図である。
【
図2】一実施例に係るフロントプレート及び黒体の分解構造の模式図である。
【
図3】一実施例に係る黒体がフロントプレートに設けられた平面構造の模式図である。
【
図4】一実施例に係るトッププレート方向に沿った側面から見た黒体放射装置の立体構造の模式図である。
【
図5】一実施例に係る黒体放射装置の断面構造の模式図である(但し、トッププレートが図示されていない)。
【
図6】一実施例に係る黒体放射装置の制御部の構造の模式図である。
【
図7】一実施例に係る黒体放射装置の使用プロセスの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本願の実施形態における図面を参照しながら、本願の実施形態における技術的解決手段を明瞭かつ完全に説明する。勿論、記述される実施形態は、本願の全ての実施形態ではなく、一部の実施形態だけである。本願の実施形態に基づいて、当業者が創造的な労働を経なくて獲得しえる全ての他の実施例は、いずれも本願の保護範囲に属するものである。
【0018】
図1を参照すると、本願は、黒体放射装置100を提供する。該装置は、筐体10と、黒体20と、制御部材(図示されず)と、を備える。
図4及び
図5を参照すると、一実施例において、筐体10は、直方体状であってもよく、底板11、フロントプレート12、左板13、リアプレート14、右板15及びトッププレート16を備え、底板11は、トッププレート16に対向し、フロントプレート12は、リアプレート14に対向し、左板13は、右板15に対向する。他の実施例において、筐体10は、楕円体、球体などのような他の形状であってもよい。なお、一部の実施例において、筐体10は、内筐体及び外筐体を備えてもよく、外筐体は、内筐体を被包し、外筐体と内筐体との間に保温断熱材が設けられることで、環境温度が内筐体に及ぼす影響を減少させ、温度安定度を向上させることができる。
【0019】
筐体10内に収容空間102を有し、一方側の側壁(例えば、フロントプレート12)に貫通孔101が開設される。黒体20は、筐体10における、貫通孔101が開設される側壁(例えば、フロントプレート12)の内壁に設けられる。黒体20は、貫通孔101をカバーし、貫通孔101を介して筐体101の外側へ露出する。収容空間102に温度調節液体(図示されず)が収容される。温度調節液体は黒体20と接触し、温度調節液体の温度は、黒体20に伝導して、黒体20の温度を調節する。
【0020】
温度調節液体の温度安定度は、0.01℃であってもよい。つまり、温度調節液体の温度は、0.01℃内に安定する。温度調節液体は、水、有機溶媒などであってもよい。一部の実施例において、水を温度調節液体として選択し得ることで、コストが低く、温度安定度が0.01℃に達することができるなどの特徴を有する。
【0021】
筐体10は、制御部17を更に備える。制御部17は、トッププレート16から突き出る。制御部17内に制御部材が設けられる。他の実施例において、制御部17は、他の箇所に設けられてもよい。制御部材は、黒体20の設定温度に基づいて、温度調節液体の温度が設定温度になるように調節する。
【0022】
赤外線サーマルイメージングデバイスに対してキャリブレーションを行う場合、黒体20を放射源とし、赤外線サーマルイメージングデバイスは黒体20の温度を検出することによってキャリブレーションされる。筐体10を設け、筐体10内に温度調節液体を配置し、制御部材により、温度調節液体の温度を設定温度に調節し、温度調節液体の温度を黒体20に伝導することにより、黒体20の温度を設定温度に達する。温度調節液体の温度安定度が、0.01℃であることで、高い温度安定度を有し、所定の期間内の温度変動が許容値を超えないことを確保することができ、黒体20を常に設定温度にし、温度安定度が高く、それによって、赤外線サーマルイメージングデバイスのキャリブレーションの需要を満たす。
【0023】
制御部17に、ユーザインタラクションユニットが更に設けられ、ユーザインタラクションユニットは、例えば、ディスプレイ80、ボタン90などであってもよい。ディスプレイ80は、黒体放射装置100の現在状態を表示するように構成される。現在状態は、温度調節液体の温度値、黒体20の温度値などを含む。ディスプレイ80は、カレンダー、ユーザ名などの情報を表示することもできる。ディスプレイ80の寸法は、7インチであってもよく、寸法が大きくと、表示可能な情報量が大きい。ボタン90は、ユーザから入力される制御命令を受信するように構成され、例えば、黒体の設定温度の数値を入力、修正するように構成される。ボタン90は、パワーオン、シャットダウン、他のパラメータの制御などの操作を行うこともできる。他のパラメータは限定されない。
【0024】
図2から
図4を参照すると、黒体20がフロントプレート12の内壁に設けられることを例とする。黒体20の形状は、円状である。円の直径Dは、5-25cmである。貫通孔101の形状も円状であり、且つ黒体20の直径Dは、貫通孔101の直径よりも大きい。貫通孔101の直径は、3-20cmであってもよい。本願の一部の実施例において、黒体20の直径Dは、25cmであり、貫通孔101の直径は、20cmであることで、黒体20とフロントプレート12の内壁とを緊密に接続し、収容空間102の密封を確保することができるだけでなく、貫通孔101から露出する黒体20の面積を十分に大きくし、複数の赤外線サーマルイメージングデバイスのキャリブレーションを同時に行うこともできる。一実施例において、黒体20の直径Dは、5cmであり、貫通孔101の直径は、3cmであることで、黒体放射装置全体の構造をコンパクトし、携帯しやすく、いつでも使えるようにすることができる。
【0025】
図1、
図4及び
図5を参照すると、筐体10内に、制御部材に電気的に接続される第1加熱部材41及び撹拌部材(31/32)が設けられ、温度調節液体の温度が設定温度より低い場合、制御部材は、第1加熱部材41を、温度調節液体を加熱するように制御し、温度調節液体の各箇所の温度を均一にするように、制御部材は、撹拌部材(31/32)を、温度調節液体を撹拌するように制御する。
【0026】
一実施例において、筐体10内に、制御部材に電気的に接続される第2加熱部材42が更に設けられ、第1加熱部材41は、筐体10の底部に設けられ、つまり、第1加熱部材41は、底板11に近接する箇所に設けられ、例えば、ホルダを介して底板11に固定される。第2加熱部材42は、筐体10の側部に設けられ、つまり、第2加熱部材42は、フロントプレート12、左板13、リアプレート14及び右板15のうちのいずれか1つの板に近接する箇所に設けられ、例えば、ホルダを介して上記いずれか1つの板に固定される。第1加熱部材41及び第2加熱部材42の四周に温度調節液体が満ちることで、温度調節液体を十分に加熱することができる。
【0027】
制御部材は、温度調節液体の温度を調節するように、第1加熱部材41及び/又は第2加熱部材42を、起動して制御する。一部の実施例において、
温度調節液体の温度を迅速に向上させるように、第1加熱部材41及び第2加熱部材42を同時に起動する。温度調節液体の温度を正確に調節するように、第1加熱部材41及び第2加熱部材42のうちの1つを起動する。例えば、黒体放射装置100の起動直後の場合、温度調節液体の温度が低い。例えば、温度調節液体の温度と設定温度との差は、3℃よりも大きく、黒体20の設定温度よりも遥かに低い。この場合、第1加熱部材41及び第2加熱部材42を同時に起動して、温度調節液体の温度を迅速に向上させる。温度調節液体の温度が、設定温度に近い温度に向上した場合、例えば、温度調節液体の温度と設定温度との差が0℃-3℃である場合、第1加熱部材41及び第2加熱部材42のうちの1つをシャットダウンし、第1加熱部材41又は第2加熱部材42により引き続き加熱を行う。1つの加熱部材が減少されたため、温度上昇の幅が少なくなり、温度調節液体の温度を正確に制御し、温度調節液体の温度が設定温度に達することを確保することができる。第1加熱部材41及び第2加熱部材42は、抵抗式ヒーターであってもよく、他のタイプのヒーターであってもよく、これに対してあまりに限定しない。
【0028】
ここで、第1加熱部材41及び第2加熱部材42は、いずれも、パルス幅変調方式により制御され、デューティー比は、0%~100%である。パルス幅は、例えば、100ヘルツ(Hz)~800KHzであり、一部の実施例において、200Hz~500KHzである。第1加熱部材41及び第2加熱部材42をパルス幅変調方式により制御することで、異なる加熱電力を出力し、例えば、0-100ワット(W)の加熱電力を出力することができ、必要に応じて、異なる時刻で、温度調節液体に対して異なる加熱効果を果たすことができる。
【0029】
一実施例において、撹拌部材は、第1撹拌部材31と、第2撹拌部材32と、を備え、第1撹拌部材31の軸線は、第2撹拌部材32の軸線に平行ではない。つまり、第1撹拌部材31による温度調節液体の撹拌流動方向と第2撹拌部材32による温度調節液体の撹拌流動方向とは異なり、それによって、温度調節液体の流動混合を均一にする速度を速くすることができる。一部の実施例において、第1撹拌部材31の軸線は、第2撹拌部材32の軸線に垂直である。例えば、第1撹拌部材31の軸線は、垂直方向であり、第2撹拌部材32の軸線は、水平方向である。第1撹拌部材31及び第2撹拌部材32はいずれもパルセータ構造であってもよく、モータにより駆動されて回転する。モータは制御部材に電気的に接続される。制御部材は、モータの異なる回転方向及び速度を制御し、第1撹拌部材31及び第2撹拌部材32の回転方向及び回転速度を変更し、それによって、温度調節液体の流動方向及び速度の多様性を実現させ、温度調節液体の温度均一化の速度を速くすることができる。
【0030】
一実施例において、筐体10に、制御部材に電気的に接続される空冷ユニット(図示されず)が設けられ、温度調節液体の温度が設定温度より高い場合、制御部材は、温度調節液体の温度を低下させるように、第1加熱部材41及び第2加熱部材42をオフにするように制御し、空冷ユニットを起動する。キャリブレーションされる赤外線サーマルイメージングデバイスが多様である可能性があるため、一部の赤外線サーマルイメージングデバイスのキャリブレーション温度が高く、一部の赤外線サーマルイメージングデバイスのキャリブレーション温度が低い。例えば、高温の赤外線サーマルイメージングデバイスのキャリブレーションを完了した後、低温の赤外線サーマルイメージングデバイスをキャリブレーションする場合、高温の赤外線サーマルイメージングデバイスをキャリブレーションする時の黒体20の設定温度が高いため、温度調節液体の温度も高く、しかしながら、低温の赤外線サーマルイメージングデバイスをキャリブレーションする時の黒体20の設定温度が低くて、温度調節液体の温度を低下させる必要がある。そのため、空冷ユニットを設ける。温度調節液体の温度を低下させる必要がある場合、空冷ユニットを起動する。空冷ユニットにより、温度調節液体を降温し、温度調節液体の温度を新たな設定温度に低減させる。空冷ユニットは、ファン、放熱フィン、放熱孔などの構造を含んでもよい。空冷ユニットは、トッププレート16に近接する箇所に設けられて、温度調節液体の液面以上に位置してもよい。
【0031】
一実施例において、筐体10内に、制御部材に電気的に接続される複数の第1温度センサ50が設けられ、複数の第1温度センサ50のそれぞれは、温度調節液体の各箇所の温度を検出するように、異なる箇所に位置する。例えば、第1温度センサ50の数は、5個である。底板11、フロントプレート12、左板13、リアプレート14及び右板15にそれぞれ1つの第1温度センサ50が設けられる。第1温度センサ50は、第1加熱部材41及び第2加熱部材42と、ずらして設けられている。勿論、第1温度センサ50の数は、5個に限定されず、より少なくても多くてもよい。
【0032】
制御部材は、複数の第1温度センサ50により検出された温度が異なる信号を受信した場合、つまり、温度調節液体の各箇所の温度が異なる(不均一である)場合、制御部材は、撹拌部材(31/32)を、起動するように制御し、これにより、温度調節液体の流動を速くし、温度調節液体の各箇所の温度を同一にする(均一にする)。
【0033】
制御部材は、複数の第1温度センサ50により検出された温度がいずれも設定温度より低い信号を受信した場合、制御部材は、温度調節液体を加熱し、温度調節液体の温度を設定温度に向上させるように、第1加熱部材41及び/又は第2加熱部材42を、起動するように制御する。
【0034】
制御部材は、複数の第1温度センサ50により検出された温度がいずれも設定温度より高い信号を受信した場合、制御部材は、温度調節液体を降温し、温度調節液体の温度を設定温度に低下させるように、空冷ユニットを、起動するように制御する。
【0035】
一実施例において、
図3を参照すると、黒体20に、制御部材に電気的に接続される複数の第2温度センサ60が設けられ、複数の第2温度センサ60は、黒体20に均一に分布し、複数の第2温度センサ60は、黒体20の温度が設定温度に達するかどうかを検出するように構成される。例えば、第2温度センサ60の数は、4個であり、黒体20の上、下、左、右の4つの縁の箇所に、それぞれ1つの第2温度センサ60が設けられる。これにより、黒体20の上下左右という4つの箇所の温度を検出することができる。勿論、第2温度センサ60の数は、4個に限定されず、より少なくてもより多くてもよい。黒体20の各箇所の温度を取得することで、温度調節液体の温度の設置を容易にし、温度調節液体の熱伝導により、黒体20の各箇所の温度を均一にし、設定温度に達する。
【0036】
一実施例において、
図3から
図5を参照すると、第1温度センサ50及び第2温度センサ60の精度は、0.005℃である。つまり、第1温度センサ50及び第2温度センサ60はいずれもPT1000高精度センサである。従来のPT100センサに比べて、PT1000高精度センサは、温度に対する分解能がより高く、温度調節液体の温度及び黒体20の温度をより正確に測定し、設定温度により近く、設定温度との偏差が大きすぎることを避けることができる。他の実施例において、第1温度センサ50及び第2温度センサ60の精度は、0.01℃であってもよく、温度調節液体の温度変動を正確に認識する要件を満たすことができる。
【0037】
一実施例において、
図1、
図4及び
図5を参照すると、筐体10に、制御部材にそれぞれ電気的に接続される環境温度センサ71及び環境湿度センサ72が更に設けられ、環境温度センサ71は、環境温度を取得し、環境湿度センサ72は、環境湿度を取得し、環境温度及び環境湿度は、温度補償に用いられる。環境温度センサ71及び環境湿度センサ72は、筐体10の外周に設けられ、黒体放射装置100の周囲の環境温度及び環境湿度を検出するように構成される。黒体20は、筐体10の貫通孔101を介して外部に露出するため、環境温度及び環境湿度が黒体20に一定の影響を及ぼし、温度補償を行う必要がある。環境温度センサ71は、環境温度が設定温度より高いことを検出した場合、周囲環境の高温は、黒体20に伝導し、黒体20の温度を上昇させる。温度調節液体により温度調節を行う場合、黒体20の昇温による影響を考慮する必要がある。例えば、温度調節液体の温度を、設定温度よりも僅かに低い温度に加熱又は降温して、また、周囲環境の高温による黒体20に対する昇温作用により、協力作用で黒体20の温度をちょうど設定温度にする。同様に、環境湿度も黒体20の温度に影響を及ぼす。環境温度の影響を参照して、環境湿度も温度補償に用いられ、黒体20の温度を設定温度にすることを確保する。
【0038】
一実施形態において、
図1を参照すると、筐体10に、警報ユニット(図示されず)が更に設けられる。警報ユニットは、音響光学警報装置であってもよい。黒体放射装置100の現在状態が利用不可能である場合、警報ユニットは、警報提示を発する。上記で説明したように、黒体放射装置100の現在状態は、温度調節液体の温度値、黒体20の温度値などを含む。現在状態が利用不可能であり、即ち、黒体放射装置100は、また赤外線サーマルイメージングデバイスのキャリブレーションを行うように構成されることが不能である。可能な原因は、黒体20の温度が設定温度に達しないこと、温度調節液体の温度が均一ではないこと、設定温度に等しくないことなどであってもよく、他の制御部材が準備できないなどのシステム異常要因を含んでもよい。警報ユニットは、警報を出し、赤外線サーマルイメージングデバイスのキャリブレーションが一時的に不可能であり、待ち又は異常排除を行う必要があるようにユーザに注意する。現在状態が利用可能である場合、警報ユニットは、警報を取り消す。従って、赤外線サーマルイメージングデバイスのキャリブレーションを行うことができる。
【0039】
図6を参照すると、黒体放射装置の制御システムの構造的なブロック図において、本願の黒体放射装置の制御構造は、筐体10に設けられる制御部材150、及び制御部材150に電気的に接続される空冷ユニット160、警報ユニット170、認証ユニット180、第1撹拌部材31、第2撹拌部材32、第1加熱部材41、第2加熱部材42、複数の第1温度センサ50、複数の第2温度センサ60、環境温度センサ71、環境湿度センサ72、ディスプレイ80、ボタン90などを備える。ここで、制御部材150は、データ取得ユニット151、データ演算ユニット152、データ記憶ユニット153、制御ユニット154、マンマシンインタラクションユニット155、較正データ記憶ユニット156などを備える。制御部材150として、MCU(Microcontroller Unit:マイクロ制御ユニット)構造を用いることができる。制御部材150内の各ユニットは、それぞれ、データ取得、演算、記憶、制御、マンマシンインタラクション及び較正データ記憶の機能を果たす。従来のMCU構造を参照すればよく、ここであまりに限定しない。認証ユニット180の役割は、セキュリティ暗号化である。認証ユニット180は、パスワードアンロック、指紋アンロック、顔アンロックなどの構造であってもよい。ユーザはデバイスを用いる場合、認証ユニット180による認証に合格した後に、操作を行うことができる。これにより、無関係者の操作によりデバイスを損傷することを避ける。空冷ユニット160、警報ユニット170などの他の構造は、前文で詳述したため、ここで、詳細な説明を省略する。
【0040】
図7を参照しながら、一実施例の黒体放射装置の使用方法を説明する。
【0041】
ステップS701において、システムをパワーオンする。
【0042】
ステップS702において、パワーオンしてセルフテストし、認証を行う。
【0043】
ここで、システムを電源投入しパワーオンした後にセルフテストし、各センサが正常であるかどうかを検査し、権限を読み取り、認証を行う。
【0044】
ここで、セルフテスト及び認証に合格した場合、ステップS703を実行し、ユーザにより配置された黒体温度情報を引き続き読み取る。セルフテスト及び認証に失敗した場合、ディスプレイにより警報情報を表示する。5分間(min)後にシステムは、自動的に待機する。
【0045】
ステップS703において、システムは、パワーオンして、配置された温度情報を読み取る。
【0046】
ステップS704において、ユーザは、黒体温度を設定する。
【0047】
ステップS705において、現在の温度調節液体の温度と設定温度との差を検査する。
【0048】
ここで、システムは、ユーザにより設定された黒体温度情報を読み取った後、現在の温度調節液体の温度を検査する。設定温度と温度調節液体の温度との差(設定温度から現在の温度調節液体の温度を減る)Δ≧3℃である場合、ステップS706を実行し、システムは、二重チャネルによる加熱を起動し、第1加熱部材及び第2加熱部材が同時に加熱を行い、システムの昇温を速くし、効率を向上させる。温度差が0℃<Δ<3℃である場合、ステップS708を実行し、システムは、底部の第1加熱部材を起動して加熱し(又は、システムの中部の第2加熱部材を起動して加熱し)、加熱電力を調節する。温度差がΔ<0℃である場合、ステップS707を実行する。つまり、現在の温度調節液体の温度が設定温度より大きい場合、システムは、加熱チャネルをシャットダウンし、空冷ユニットを起動し、空冷の強度を調節する。
【0049】
ステップS708において、第1加熱部材または第2加熱部材を起動する。
【0050】
ステップS709において、実際の黒体温度を読み取る。
【0051】
ステップS710において、黒体温度と設定温度との差を判定し、加熱パルス幅を50%とする。
【0052】
ここで、0℃<Δ<3℃である場合、システムは、実際の黒体温度を読み取った後、設定温度と黒体温度との差を計算する。
【0053】
1)前記温度差がΔ≧0.005℃である場合、ステップS711を実行し、加熱パルス幅を1%~5%低下させ、黒体温度を検出する。システムは、引き続き待つようにユーザに注意する。システムの温度が0.005≧Δ≧-0.005℃になるまで、第1加熱部材(又は第2加熱部材)のデューティー比を低下させることで加熱電力を調節する。
【0054】
2)前記温度差がΔ≦-0.005℃である場合、ステップS712を実行し、加熱パルス幅を1%~5%向上させ、黒体温度を検出する。システムは、引き続き待つようにユーザに注意する。加熱を制御する第1加熱部材(又は第2加熱部材)のデューティー比を向上させることで、加熱電力を向上させる。最終的に、閉ループ制御を実現させ、システムの第1加熱部材(又は第2加熱部材)の加熱電力を一定にし、黒体温度を0.005≧Δ≧-0.005℃に安定する。
【0055】
3)システム温度又は黒体温度が0.005≧Δ≧-0.005℃に安定した場合、ステップS713を実行し、加熱パルス幅を安定させる。システムは、状態指示OKを出力し、現在の黒体温度が安定したことを表し、ユーザが使用できる。
【0056】
一部の実施例において、システムが安定しない場合(Δ≦-0.005℃又はΔ≧0.005℃)、システムは、引き続き待つようにユーザに注意する。システム温度が±0.005℃に安定した後、外部環境の温度が変動するため、システムの加熱制御の電力は、50%ぐらいで変動する。
【0057】
一部の実施例において、ユーザは、新たな黒体のターゲット温度を設定した後、システムは、ステップS705から実行する。
【0058】
一部の実施例において、外部環境の温度が突然に変動して、黒体の恒温条件が±0.005℃を満たさないことを引き起こす場合、システムは、音響光学警報を発する。
【0059】
以上に開示したものは、本願の複数の実施形態だけであり、勿論、これは、本願の特許請求の範囲を限定するものではない。当業者は、上記実施形態の全て又は一部のプロセスを実現することを理解できる。本願の特許請求の範囲に基づいて行われる均等変化は、依然として本願の範囲に含まれるものとする。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本実施例において、筐体を設け、筐体内に温度調節液体を配置し、制御部材により、温度調節液体の温度を設定温度に調節し、温度調節液体の温度を黒体に伝導することにより、黒体の温度を設定温度にする。温度調節液体は、高い温度安定度を有することで、所定の期間内の温度変動が許容値を超えないことを確保することができ、黒体を常に設定温度にし、温度安定度が高く、それによって、赤外線サーマルイメージングデバイスのキャリブレーションの需要を満たす。
【国際調査報告】