(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-23
(54)【発明の名称】絶縁コーティング組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 163/00 20060101AFI20220816BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20220816BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20220816BHJP
C23C 26/00 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
C09D163/00
C09D7/65
C09D7/61
C23C26/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021574957
(86)(22)【出願日】2020-06-17
(85)【翻訳文提出日】2022-02-02
(86)【国際出願番号】 CN2020096610
(87)【国際公開番号】W WO2020253732
(87)【国際公開日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】201910520499.1
(32)【優先日】2019-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519444443
【氏名又は名称】ピーピージー コーティングス (クンシャン) カンパニー, リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ジュ, ルオイ
(72)【発明者】
【氏名】ホリデイ, リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ユアン, ミンミン
【テーマコード(参考)】
4J038
4K044
【Fターム(参考)】
4J038DB061
4J038DB451
4J038DB471
4J038DB481
4J038HA286
4J038HA506
4J038HA526
4J038HA536
4J038KA06
4J038KA08
4J038KA10
4J038MA04
4J038MA05
4J038NA01
4J038NA03
4J038NA15
4J038NA21
4J038PB05
4J038PC02
4K044AA02
4K044AB10
4K044BA21
4K044BB11
4K044BC00
4K044BC02
4K044CA53
(57)【要約】
本発明は、絶縁コーティング組成物、そのような絶縁コーティング組成物でコーティングされた基材、および絶縁コーティング組成物を使用することによって基材を保護するための方法に関する。絶縁コーティング組成物は、少なくともa)化学強化エポキシ樹脂構成成分であって、エポキシ樹脂に化学反応を介して結合されるエラストマーセグメントである化学強化セグメントの比率が、上記化学修飾エポキシ樹脂構成成分の総重量に基づいて、20~49重量%の範囲である、化学強化エポキシ樹脂構成成分と、b)硬化剤と、c)補強繊維と、d)0.05~0.7g/cm3、好ましくは0.08~0.5g/cm3、より好ましくは0.1~0.4g/cm3の範囲の密度を有する低密度充填材とを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁コーティング組成物であって、少なくとも
a)化学強化エポキシ樹脂構成成分であって、前記エポキシ樹脂に化学反応を介して結合されるエラストマーセグメントである化学強化セグメントの比率が、前記化学修飾エポキシ樹脂構成成分の総重量に基づいて、20~49重量%の範囲である、化学強化エポキシ樹脂構成成分と、
b)硬化剤と、
c)補強繊維と、
d)0.05~0.7g/cm
3、好ましくは0.08~0.5g/cm
3、より好ましくは0.1~0.4g/cm
3の範囲の密度を有する低密度充填材とを含む、絶縁コーティング組成物。
【請求項2】
前記化学強化セグメントの比率が、32~42重量%などの、23~45重量%の範囲である、請求項1に記載の絶縁コーティング組成物。
【請求項3】
前記化学強化エポキシ樹脂構成成分が、ポリエステル修飾エポキシ樹脂、ポリ(メタ)アクリル修飾エポキシ樹脂、ポリウレタン修飾エポキシ樹脂、ポリエーテル修飾エポキシ樹脂、スチレンポリマー修飾エポキシ樹脂、ポリオレフィン修飾エポキシ樹脂、およびポリアミド修飾エポキシ樹脂、好ましくはポリエステル修飾エポキシ樹脂、および/もしくはポリ(メタ)アクリル修飾エポキシ樹脂、より好ましくはポリエステル修飾エポキシ樹脂から選択される少なくとも1つを含むか、またはポリエステル修飾エポキシ樹脂、ポリ(メタ)アクリル修飾エポキシ樹脂、ポリウレタン修飾エポキシ樹脂、ポリエーテル修飾エポキシ樹脂、スチレンポリマー修飾エポキシ樹脂、ポリオレフィン修飾エポキシ樹脂、およびポリアミド修飾エポキシ樹脂、好ましくはポリエステル修飾エポキシ樹脂、および/もしくはポリ(メタ)アクリル修飾エポキシ樹脂、より好ましくはポリエステル修飾エポキシ樹脂から選択される少なくとも1つからなる、請求項1に記載の絶縁コーティング組成物。
【請求項4】
前記化学強化エポキシ樹脂構成成分が、芳香族エポキシ樹脂、脂肪族および/または脂環式ポリエポキシドから選択されるエポキシ樹脂、好ましくはビスフェノール、特にビスフェノールA、ビスフェノールF、またはビスフェノールA/F、およびそれらの水素化生成物に基づくエポキシ樹脂に基づく、先行請求項のいずれか一項に記載の絶縁コーティング組成物。
【請求項5】
前記絶縁コーティング組成物が、結合剤として熱硬化性ポリマーマトリックスを含有し、前記化学強化エポキシ樹脂構成成分が、前記組成物中の前記熱硬化性ポリマーマトリックス結合剤の少なくとも60重量%、好ましくは75重量%超、より好ましくは85重量%超、最も好ましくは95重量%超または100重量%を構成する、先行請求項のいずれか一項に記載の絶縁コーティング組成物。
【請求項6】
前記硬化剤の量が、前記組成物の総重量に基づいて、10~30重量%である、先行請求項のいずれか一項に記載の絶縁コーティング組成物。
【請求項7】
前記補強繊維の量が、前記組成物の総重量に基づいて、2.5~5重量%または3~4.5重量%などの、2.1~6重量%の範囲である、先行請求項のいずれか一項に記載の絶縁コーティング組成物。
【請求項8】
前記低密度充填材の量が、前記組成物の総重量に基づいて、5~60重量%、好ましくは7~50重量%、より好ましくは10~30重量%の範囲である、先行請求項のいずれか一項に記載の絶縁コーティング組成物。
【請求項9】
前記低密度充填材が、中空ガラスバブルと有機ポリマー微小球との組み合わせを含有し、好ましくは中空ガラスバブルおよび有機ポリマー微小球からなる、先行請求項のいずれか一項に記載の絶縁コーティング組成物。
【請求項10】
前記組成物が、いずれの場合も、前記組成物の総重量に基づいて、5~30重量%、好ましくは8~21重量%または8~15重量%の中空ガラスバブル、および5~20重量%、好ましくは7~15重量%または8~12重量%の有機ポリマー微小球を含有する、先行請求項のいずれか一項に記載の絶縁コーティング組成物。
【請求項11】
中空ガラスバブル対有機ポリマー微小球の質量比が、1:1~1.6:1などの、0.6:1~2:1である、先行請求項のいずれか一項に記載の絶縁コーティング組成物。
【請求項12】
前記有機ポリマー微小球が、固体であり、好ましくは、天然または合成のエラストマーポリマーまたはゴム状ポリマー、例えば、アクリロニトリルポリマー、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリオレフィン、デンプン、ポリ乳酸、天然ゴム、スチレン-ブタジエンゴム、カルボン酸スチレン-ブタジエンゴム、ブタジエン-アクリロニトリルゴム、カルボン酸ブタジエン-アクリロニトリルゴム、ポリブタジエンゴム、シリコンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、ブタジエン-スチレン-ビニルピリジンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、多硫化ゴム、アクリレート-ブタジエンゴム、ポリウレタンゴム、フッ素ゴム、およびエチレン-酢酸ビニルポリマー、ならびにそれらの混合物、あるいはコポリマー、または上述のポリマーもしくは上述のポリマーを形成するモノマーによって形成されたコアシェル構造を有するコポリマー、あるいはそれらの混合物から選択される、先行請求項のいずれか一項に記載の絶縁コーティング組成物。
【請求項13】
前記ポリマー微小球が、アクリロニトリルポリマー、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリオレフィン、ポリブタジエンゴム、エチレン-酢酸ビニルポリマー、または上述のポリマーもしくは上述のポリマーを形成するモノマーによって形成されたコアシェル構造を有するコポリマー、あるいはそれらの混合物を含有し、好ましくは前記ポリマー微小球が、アクリロニトリルポリマーのシェルを有する微小球である、請求項12に記載の絶縁コーティング組成物。
【請求項14】
前記ポリマー微小球が、タルク、焼成カオリン、石灰石、炭酸カルシウム、珪灰石、および/またはヒュームドシリカ、好ましくは炭酸カルシウムから選択される無機鉱物粉末によって被覆されている、請求項12に記載の絶縁コーティング組成物。
【請求項15】
前記硬化剤が、アミン、アミン付加物、ポリアミド、およびポリエーテルアミン、好ましくはポリアミド硬化剤から選択される少なくとも1つを含有する、先行請求項のいずれか一項に記載の絶縁コーティング組成物。
【請求項16】
前記補強繊維が、ポリエステル繊維、鉱物繊維、セラミック繊維、ガラス繊維、炭素繊維、および玄武岩繊維、好ましくはガラス繊維、炭素繊維、および/もしくはセラミック繊維から選択される少なくとも1つを含有する、先行請求項のいずれか一項に記載の絶縁コーティング組成物。
【請求項17】
前記組成物が、前記組成物の総重量に基づいて、5~15%の可塑剤および/または5~20%の希釈剤をさらに含有する、先行請求項のいずれか一項に記載の絶縁コーティング組成物。
【請求項18】
基材であって、前記基材上に請求項1~17のいずれか一項に記載の絶縁コーティング組成物がコーティングされる、基材。
【請求項19】
前記基材が、金属基材、好ましい鋼、より好ましくは鋼構造物である、請求項18に記載の基材。
【請求項20】
組成が先行請求項のいずれか一項に記載の絶縁コーティング組成物とは異なる少なくとも1つの追加のコーティングが、前記基材上にコーティングされ、好ましくは、前記追加のコーティングが、難燃性コーティングである、先行請求項のいずれか一項に記載の基材。
【請求項21】
前記難燃性コーティングが、酸源、膨張剤(発泡剤)、および炭素源から選択される構成成分を含有する膨張コーティングであることを特徴とする、請求項20に記載の基材。
【請求項22】
基材を保護するための方法であって、
(1)第1のコーティング、好ましくは難燃性コーティングで必要に応じてコーティングされた基材を提供するステップと、
(2)請求項1~17のいずれか一項に記載の絶縁コーティング組成物を前記基材または前記第1のコーティング上に塗布するステップとを含む、方法。
【請求項23】
前記基材が、金属基材、好ましくは鋼、より好ましくは鋼構造物である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記難燃性コーティングが、酸源、膨張剤(発泡剤)、および炭素源から選択される構成成分を含有する膨張コーティングであることを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁コーティング組成物、そのような絶縁コーティング組成物でコーティングされた基材、および絶縁コーティング組成物を使用して、基材を保護する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体天然ガス(LNG、一般に-162℃程度に低い場合がある)の探査、貯蔵、および出荷中に、衝突、激しい振動、または長期的な腐食によって生じる液化天然ガスの漏出リスクがある。超低温を有する漏出した液体は、短期間で周囲の鋼構造を急冷し、鋼の低温脆性現象につながり、鋼に割れまたは破断を生じさせ、それにより構造崩壊およびその後の災害をもたらす。
【0003】
超低温を有する液体に遭遇するときの鋼構造の急激な温度低下を遅らせるために、鋼構造は、例えば、ポリウレタン発泡プラスチック(PUR)、ポリイソシアヌレート(PIR)、発泡ガラス、シリカエアロゲルフェルトなどによる断熱保護を施される。ロックウールおよびバルクセラミック繊維などのいくつかの従来の材料は、ヒトに対する有害性のために禁止されている。断熱保護コーティングは、それらの便利な加工性および耐久性のために、工学的にますます考慮されている。
【0004】
先行技術では、エポキシ樹脂系断熱保護コーティングは、一般に、鋼構造の耐食性および断熱保護に使用される。例えば、CN105658748Aは、少なくとも1つの補強繊維およびエポキシ樹脂に基づく接着促進剤を含む粉末コーティング組成物について開示している。組成物は、鋼などの基材上にコーティングされて、耐食性および耐チップ性を提供する。しかし、超低温条件下での断熱保護に関する提案はない。
【0005】
しかしながら、超低温に遭遇したとき、これらの先行技術のエポキシ樹脂系コーティングは、一般に、コーティングの粘着力または基材/プライマー上のコーティングの接着力よりも大きい内部応力によって生じるコーティング収縮に起因して、割れるか、または脱落する。したがって、断熱特性が劣化し、期待される保護を達成することができない。深刻な場合には、基材上の難燃性コーティングが同時に割れるか、さらには脱落し、耐火特性をさらに劣化させる場合がある。さらに、低温使用のためのこれらの通常のエポキシ樹脂系断熱コーティングは、一般に、より高い熱伝導係数およびより低い断熱効率を有する。
したがって、先行技術におけるこれらの欠陥を克服するために、純粋なエポキシ樹脂に基づく断熱保護コーティングを改善することが緊急に必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】中国特許出願公開第105658748号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
本発明の発明者らは、本発明の絶縁コーティング組成物が先行技術における上記問題を解決することができることを、広範囲の実験および継続的な努力を通じて見出した。特に、本発明の絶縁コーティング組成物により、より高い可撓性およびより高い断熱効率を有し、基材の耐凍結特性、特に耐低温割れ性(特に、例えば、-120℃もしくは-160℃程度に低い、さらには-180℃程度に低い超低温)を高め、同時に、難燃性能力を有するコーティング(難燃性コーティング)などの、基材上の下層にある既存のコーティングを保護し、それによって、より良好な耐火特性を達成する、コーティング膜を得ることができる。さらに、本発明による組成物は、便利な加工性および耐久性を有する。本発明に特に好適な基材は、金属基材、特に、鋼、亜鉛めっき鋼、アルミニウム、ステンレス鋼、または鋼構造物である。
【0008】
したがって、第1の態様では、本発明は、絶縁コーティング組成物であって、少なくとも以下の:
a)化学強化エポキシ樹脂構成成分であって、エポキシ樹脂に化学反応を介して結合されるエラストマーセグメントである化学強化セグメントの比率が、該化学修飾エポキシ樹脂構成成分の総重量に基づいて、23~45重量%、または32~42重量%などの、20~49重量%の範囲である、化学強化エポキシ樹脂構成成分と、
b)硬化剤と、
c)補強繊維と、
d)0.05~0.7g/cm3、好ましくは0.08~0.5g/cm3、より好ましくは0.1~0.4g/cm3の範囲の密度を有する低密度充填材とを含む、絶縁コーティング組成物、に関する。
【0009】
別の態様では、本発明は、基材であって、該基材上に上記絶縁コーティング組成物がコーティングされる基材に関する。
【0010】
更なる態様では、本発明は、基材を保護するための方法であって、
(1)第1のコーティングで必要に応じてコーティングされた基材を提供するステップと、
(2)上記絶縁コーティング組成物を基材、または基材の第1のコーティング上に塗布するステップとを含む、方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明の詳細な説明
任意の操作実施例における、または別段指示される場合を除き、本明細書および特許請求の範囲で使用される成分の量、反応条件などを表すすべての数は、すべての場合において、「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、特に異議を唱えない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記述する数値パラメータは、本発明によって得られる所望の特性に依存して変動し得る近似値である。少なくとも、また、特許請求の範囲の範囲への均等論の適用を限定しようとするものではなく、各数値パラメータは、報告された有効数字の数に照らして、通常の概数技法を適用することによって少なくとも解釈されるべきである。
【0012】
本発明の広い範囲を記述する数値範囲およびパラメータは近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に記述される数値は可能な限り正確に報告される。しかしながら、いずれの数値も、それらのそれぞれの試験測定値に見出される標準偏差から必然的にもたらされる一定の誤差を本質的に含有する。
【0013】
また、本明細書に列挙される任意の数値範囲は、その中に包含されるすべての部分範囲を含むことが意図されることを理解されたい。例えば、「1~10」の範囲は、列挙された最小値1と列挙された最大値10との間(それらの値を含む)、すなわち、1に等しいまたは1を超える最小値、および10に等しいまたは10未満の最大値を有する、すべての部分範囲を含むことが意図される。
【0014】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、冠詞「a」、「an」、および「the」は、明示的かつ明確に1つの指示対象に限定されない限り、複数の指示対象を含む。
【0015】
さらに、本明細書およびその添付の特許請求の範囲では、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリル」、もしくは「ポリ(メタ)アクリル」という用語、または同様の表現は、各々、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーまたは化合物を意味し、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メチルアクリルアミド、アクリレート、またはメタクリレートなど、およびそれらの対応するポリマー、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、アクリレート、またはメタクリレートなどを含む。
【0016】
本明細書中で与えられる本発明の様々な実施形態および実施例は、本発明の範囲を限定するものとして理解されるべきではない。
【0017】
本発明による組成物は、結合剤として熱硬化性ポリマーマトリックスを含有する。結合剤は、一般に、コーティング中の様々な機能性添加剤(充填材または可塑剤など)とは別に、不揮発性物質として理解され、これらは、ポリマーまたは樹脂などの膜を形成するためのベース構成成分であり、加熱または硬化剤との反応を受けるなどの際に、コーティング膜を形成する。本発明に従って定義される化学強化エポキシ樹脂構成成分は、熱硬化性ポリマーの主要部を構成する、すなわち、組成物中の熱硬化性ポリマー結合剤の総量の、好ましくは、少なくとも60重量%、より好ましくは、少なくとも75重量%、最も好ましくは、少なくとも85重量%、特に、少なくとも95重量%、または100重量%を占める。化学強化エポキシ樹脂構成成分は、本発明の組成物によって形成されたコーティングの可撓性の改善に重要である。有利な実施形態では、本発明の組成物中の熱硬化性ポリマー結合剤は、完全に、本発明に従って定義された化学強化エポキシ樹脂構成成分からなる。
【0018】
本発明では、「化学強化エポキシ樹脂構成成分」とは、グラフト化、縮合、または付加などの化学反応を介して、可撓性を有する強化セグメントをエポキシ樹脂に意図的に結合することによって直接得られる生成物、または非強化エポキシ樹脂と前述の直接得られる化学強化生成物とを混ぜることによって得られる生成物を意味する。強化セグメントの比率を制御することによって、エポキシ樹脂の靭性を調整する。強化セグメントは、一般に、エラストマーセグメントである。エラストマーセグメントは、当業者によく知られているエラストマー(ゴムまたはポリマーを含む)に由来するセグメントであり、これらのセグメントは、ゴムエラストマー特性を有し、一定の応力負荷下で変形し、応力の除去時にエラストマー弾性である。エポキシ樹脂を化学的に強化するための多様な形があり、これらは当業者に知られているか、または容易に利用可能である。
【0019】
本発明では、好適な化学修飾は、エポキシ樹脂に一定の可撓性およびエラストマー特性を付与するように、エポキシ基の開環を通したエポキシ樹脂での化学反応によって、強化セグメント、特にエラストマーセグメントを直接つなぐことを意味し得る。
【0020】
有利な実施形態では、強化セグメントは、特に、6個を超える、好ましくは6~100個もしくは8~50個、または30個などの、8個を超える炭素原子を有し、必要に応じてエステル、アクリロイル、ウレタン、および/またはエーテル基を有する直鎖または分枝鎖のエラストマーセグメントである。したがって、それに対応して、これらのセグメントとしては、芳香族または脂肪族のポリオールおよびポリ酸から反応したポリエステルセグメント、ポリ(メタ)アクリルセグメント、ポリウレタンセグメント、ポリエーテルセグメントが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、別の有利な実施形態では、セグメントはまた、いくつかの他のエラストマーセグメント、特に、スチレン/ブタジエンエラストマーなどのスチレンポリマー、ポリオレフィンエラストマー、クロロプレンゴム、ブタジエン-アクリロニトリルゴム、およびポリアミドエラストマーなどからのセグメントを含む。
【0021】
それに対応して、本発明の好ましい実施形態では、化学強化エポキシ樹脂構成成分は、ポリエステル修飾エポキシ樹脂、ポリ(メタ)アクリル修飾エポキシ樹脂、ポリウレタン修飾エポキシ樹脂、ポリエーテル修飾エポキシ樹脂、スチレンポリマー修飾エポキシ樹脂、ポリオレフィン修飾エポキシ樹脂、およびポリアミド修飾エポキシ樹脂、好ましくはポリエステル修飾エポキシ樹脂、ならびに/またはポリ(メタ)アクリル修飾エポキシ樹脂、より好ましくはポリエステル修飾エポキシ樹脂から選択される少なくとも1つを含むか、または好ましくは、ポリエステル修飾エポキシ樹脂、ポリ(メタ)アクリル修飾エポキシ樹脂、ポリウレタン修飾エポキシ樹脂、ポリエーテル修飾エポキシ樹脂、スチレンポリマー修飾エポキシ樹脂、ポリオレフィン修飾エポキシ樹脂、およびポリアミド修飾エポキシ樹脂、好ましくはポリエステル修飾エポキシ樹脂、ならびに/またはポリ(メタ)アクリル修飾エポキシ樹脂、より好ましくはポリエステル修飾エポキシ樹脂から選択される少なくとも1つからなる。
【0022】
さらに、化学強化エポキシ樹脂はまた、非強化エポキシ樹脂と上記のような化学的に強化されているエポキシ樹脂とを混ぜることによって得ることができる。したがって、1つの例示的な操作は、化学強化エポキシ樹脂構成成分を形成するように、化学強化エポキシ樹脂と非強化エポキシ樹脂とを、有利な撹拌および溶融(必要な場合)の条件下で、指定された比率で十分に混合することである。その後、それらは、組成物中に熱硬化性ポリマー結合剤またはその主要部として使用される。
【0023】
本発明では、直接的な化学修飾によって得られたエポキシ樹脂を使用するか、それと非修飾エポキシ樹脂との混合物を化学強化エポキシ樹脂として使用するかのいずれかでの、修飾エポキシ樹脂構成成分中の化学強化セグメントの比率が不可欠である。耐低温割れ性を維持しながら、より望ましい可撓性効果を達成するために、化学強化セグメントの比率は、化学強化エポキシ樹脂構成成分の総重量に基づいて、23~45重量%または32~42重量%などの、20~49重量%である。例示的な計算法では、化学強化セグメントの比率は、(強化エラストマーの重量)/(強化エラストマーの重量+非強化修飾エポキシ樹脂ベースまたは修飾前のエポキシ樹脂ベースの重量の合計)によって得ることができる。
【0024】
特に好ましい化学強化エポキシ樹脂は、ポリエステルセグメントを有するエポキシ樹脂、すなわち、ポリエステル修飾エポキシ樹脂である。好ましくは、可撓性の酸官能性ポリエステルおよびポリエポキシドから調製されるエポキシ官能性付加物である。一般に、直鎖ポリエステルは、分枝鎖ポリエステルよりも好ましい。酸官能性ポリエステルは、有機ポリカルボン酸またはその無水物と有機ポリオールとのポリエステル化によって調製することができる。一般に、ポリカルボン酸およびポリオールは、脂肪族または芳香族の二価酸およびジオールである。好ましい実施形態では、例えば、アゼライン酸、セバシン酸などのC4~10長鎖脂肪族二価酸、およびブタンジオールおよびプロパントリオールなどのC3~6ジオールまたはトリオールを使用して、反応させ、直鎖または分枝鎖の可撓性ポリエステルを得ることができる。それに対応して、市販のポリエステル化学修飾エポキシ樹脂を非修飾エポキシ樹脂と好適な比率で十分に混合することによって得られる、本発明によるポリエステル修飾化学強化エポキシ樹脂も使用することができる。ポリエステル修飾エポキシ樹脂に関する詳細はまた、US5,070,119を参照することができ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。したがって、ポリエステル修飾エポキシ樹脂は、JH0711中間体の商品名などで商業的に入手することができる。
【0025】
別の特に好ましい化学強化エポキシ樹脂は、ポリ(メタ)アクリル修飾エポキシ樹脂である。十分な可撓性は、化学反応を通して可撓性長鎖ポリ(メタ)アクリルセグメントを組み込むことによって、エポキシ樹脂に付与することができる。したがって、ポリ(メタ)アクリル修飾エポキシ樹脂も知られており、当業者は、先行技術の方法に従って商業的に入手するか、または容易に調製することができる。例えば、グラフト化コポリマーは、アクリレートコポリマー活性基中に組み込み、次いで、アクリレートコポリマー活性基がエポキシ基またはヒドロキシ基と反応することによって形成することができる。代替的に、本発明の化学強化エポキシ樹脂構成成分はまた、好適な比率で、修飾剤としてのポリ(メタ)アクリル化学修飾エポキシ樹脂を非修飾エポキシ樹脂ベースに組み込むことによって得ることができる。
【0026】
ポリウレタン修飾エポキシ樹脂も好適である。対応するポリウレタンを導入して、エポキシ樹脂の可撓性を付与する。これらのポリウレタン修飾エポキシ樹脂も知られており、当業者によって商業的に入手するか、または先行技術の方法に従って当業者によって容易に調製することができる。例えば、PU/EP修飾系は、溶融条件下で、イソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーとエポキシ樹脂とを混合し、反応させることによって得ることができる。代替的に、例えば、ビスフェノールAエポキシ樹脂は、イソシアネート基末端ポリエーテルポリウレタンオリゴマーでグラフト化され得る。
【0027】
さらに、適用可能な化学強化エポキシ樹脂はまた、オキシアルキレン基を含むポリエーテル修飾エポキシ樹脂を含む。これらの基は、エポキシ樹脂骨格に吊り下がり得るか、または骨格の一部として内部に含まれ得る。これらのポリエーテル修飾エポキシ樹脂の調製も知られている。
【0028】
さらに、いくつかの他のエラストマー修飾エポキシ樹脂、特にスチレンポリマー、ポリオレフィン、およびポリアミド修飾エポキシ樹脂も使用することができる。それらの調製およびカテゴリーも当業者によく知られている。例示的な実施形態では、例えば、市販の製品EPONTMResin 58034を使用することができ、これは、ネオペンタンジオールのジグリシジルエーテルとカルボキシル基末端ポリブタジエン-アクリロニトリルポリマーエラストマーとの反応から得られたエラストマー修飾エポキシ官能性付加物である。
【0029】
非強化エポキシ樹脂として、および本発明の組成物中の化学強化エポキシ樹脂ベースとして好適なエポキシ樹脂は、同一であっても異なっていてもよく、一般に、知られている様態で得ることができる。それらは、例えば、対応するオレフィン酸化、またはエピクロロヒドリンと、対応するポリオール、ポリフェノール、もしくはアミンとの反応、特にポリフェノール、ポリオール、もしくはアミンとエピクロロヒドリンとのグリシジル化反応から得られる。エポキシ樹脂は、一般に、モノエポキシドまたはポリエポキシド、特に、1つより多いかまたは一般に約2つの1,2-エポキシ基を有するポリエポキシドを含む。一般に、エポキシ樹脂のエポキシ当量範囲は、約100~約2000、典型的には約180~500などであり得る。エポキシ樹脂は、飽和もしくは不飽和、環式もしくは非環式、脂肪族、脂環式、芳香族、または複素環式であり得る。それらは、ハロゲン、ヒドロキシ基、およびエーテル基などの置換基を含有し得る。
【0030】
好適なエポキシ樹脂は、ポリフェノールのポリグリシドールエーテルなどの芳香族エポキシ樹脂であり、ポリフェノールは、2,2-ビス(4-ヒドロキシルフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、4,4-ジヒドロキシルジフェニルメタン(ビスフェノールF)、ジ(4-ヒドロキシルフェニル)-1,1-イソブタン、ジ(4-ヒドロキシルtertブチルフェニル)-2,2-プロパン、ジ(2-ヒドロキシルナフチル)メタン、4,4’-ジヒドロキシルベンゾフェノン、レゾルシノール、ヒドロキノン、ベンゼンジメタノール、フロログルシノール、およびカテコール、ならびにそれらの混合物、ならびに/または酸性条件下で得られたフェノールおよびホルムデヒドの縮合生成物などである。
【0031】
他の好適なエポキシ樹脂としては、脂肪族または脂環式ポリエポキシド、特に以下:
-飽和または不飽和、分枝鎖または非分枝鎖、環式もしくは開鎖の二官能性、三官能性、または四官能性C2~C30アルコール、特にエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、オクタングリコール、ポリプロピレングリコール、ジメチロールシクロヘキサン、ネオペンチルグリコール、ジブロモネオペンチルグリコール、ヒマシ油、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ソルビトールもしくはグリセロール、またはアルコキシ化グリセロール、もしくはアルコキシ化トリメチロールプロパンのグリシジルエーテル、
-水素化ビスフェノールA、F、もしくはA/F液体樹脂、または水素化ビスフェノールA、F、もしくはA/Fのグリシジル化生成物、
-トリグリシジルシアヌレートもしくはトリグリシジルイソシアヌレート、またはエピクロロヒドリンとヒダントインとの反応生成物などのアミドもしくは複素環式窒素塩基のN-グリシジル誘導体、
-ビニルシクロヘキセン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロドデカジエン、シクロドデカトリエン、イソプレン、1,5-ヘキサジエン、ブタジエン、ポリブタジエン、またはジビニルベンゼンなどのオレフィンの酸化に由来するエポキシ樹脂、も挙げられる。
【0032】
好ましいエポキシ樹脂は、芳香族エポキシ樹脂、脂肪族および/または脂環式エポキシ樹脂に基づくエポキシ樹脂、より好ましくはビスフェノール(ビスフェノールA、ビスフェノールF、またはビスフェノールA/Fなど)に基づく、特にビスフェノールA、ビスフェノールF、またはビスフェノールA/F(それらのジグリシジルエーテルなど)、およびそれらの水素化生成物に基づくエポキシ樹脂である。
【0033】
さらに、特に好適なポリエポキシドは、200g/当量未満のエポキシ当量を有する。それらの例としては、Dow Chemical Corporationから市販されているD.E.R.331 EPOXY RESIN、Nan Ya Plastic Corporation製のNPEL-128E、またはKukdo Chemical製のYD-128などが挙げられる。さらに、好適な修飾エポキシ樹脂として、市販の製品JH0711中間体も言及することができ、これは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂に基づくポリエステル修飾エポキシ樹脂である。
【0034】
本発明で使用される硬化剤は、本発明で使用される熱硬化性ポリマー、特にエポキシ樹脂および/または修飾エポキシ樹脂と反応し、それらを硬化させることができる限り、特に限定されない。好ましい硬化剤としては、アミン、アミン付加物、ポリアミド、およびポリエーテルアミンなど、特に好ましくはポリアミド硬化剤が挙げられる。
【0035】
アミン硬化剤は、エポキシ樹脂に広く使用される有機ポリアミン化合物である。特定のアミン硬化剤としては、ポリアミンが挙げられ、これらの例としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、イソホロンジアミン、m-キシリレンジアミン、m-フェニレンジアミン、1,3-ビス(アミノエチル)シクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、N-アミノエチルピペラジン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチルジフェニルメタン、およびジアミノジフェニルスルホンが挙げられるが、これらに限定されない。これらのポリアミン硬化剤の市販グレードの製品を使用することができる。
【0036】
さらに、上記ポリアミンのいずれかの付加物も使用することができる。ポリアミンの付加物は、ポリアミンとエポキシ樹脂などの好適な反応性化合物との反応によって形成される。この反応は、硬化剤中の遊離アミン含有量を減少させ、これにより、硬化剤を低温および/または高湿度環境下で使用することをより好適にする。
【0037】
硬化剤として、Jeffamine D230、Jeffamine 600、Jeffamine 1000、Jeffamine 2005、およびJeffamine 2070などが挙げられるが、これらに限定されない、Huntsman Corporationから市販されている様々なJeffamineなどの様々なポリエーテルアミンも使用することができる。
【0038】
硬化剤として、様々なポリアミドも使用することができる。一般的に言えば、ポリアミドは、二量体脂肪酸とポリエチレンアミンとの反応生成物、および少数のモノマー脂肪酸を含有する。二量体脂肪酸は、モノマー脂肪酸のオリゴマー化によって調製される。ポリエチレンアミンは、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンなどの任意の高級ポリエチレンアミンであり得、中でも、ジエチレントリアミンが最も一般的に使用されている。ポリアミドを硬化剤として使用するとき、それにより、コーティングが、耐食性と耐水性との良好なバランスを有するようになり得る。さらに、ポリアミドはまた、コーティングが、良好な可撓性、適切な硬化速度、および他の望ましい特性を有するようにすることができる。本発明に好適な市販の硬化剤の例は、ポリアミドVersamid 150である。
【0039】
硬化剤の量は重要ではなく、当業者によって容易に決定することができるが、例示的な有利な実施形態では、硬化剤の量は、組成物の総重量に基づいて、15~20重量%、16~19重量%、17~19重量%などである、10~30重量%である。代替的に、本発明の絶縁コーティング組成物中の硬化剤の量は、10、11、12、13、14、または15重量%~18、19、20、21、22、23、24、または25重量%であり得る。上記範囲の各終点値を任意に組み合わせて、本発明の絶縁コーティング組成物中の様々な硬化剤の量を規定することができる。
【0040】
さらに、本発明の組成物は、硬化促進剤を含み得る。硬化促進剤は、樹脂の硬化プロセスを促進し、硬化温度を低下させ、硬化時間を短縮することができる物質の部類である。典型的な硬化促進剤としては、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミンなどの脂肪アミン促進剤;BDMA、DBUなどの無水物促進剤;ポリエーテルアミン触媒;ジブチルスズジラウレート、オクタン酸第一スズなどのスズ促進剤が挙げられる。本発明の一実施形態では、硬化促進剤は、Air Products(Evonik)から市販されているANCAMINE K54である。
【0041】
有利な実施形態では、硬化促進剤の量は、絶縁コーティング組成物の総重量に基づいて、2~3重量%などの、2~5重量%である。
【0042】
本発明の絶縁コーティング組成物はまた、1つまたは1つより多くの補強繊維を含まなければならない。本発明者らは、特に、本発明において好ましいこれらの補強繊維が低温または超低温下での基材の耐割れ性を高めることができることを見出した。
【0043】
原則として、本発明で使用するのに好適な繊維に特に制限はない。例としては、無機繊維および有機繊維が挙げられるが、これらに限定されない。典型的な無機繊維としては、炭化ホウ素繊維、炭化ケイ素繊維、炭化ニオブ繊維などの炭化物繊維;窒化ケイ素繊維などの窒化物繊維;ホウ素繊維、ホウ化物繊維などのホウ素含有繊維;ケイ素繊維、アルミナ-ホウ素-二酸化ケイ素繊維、E-ガラス(アルカリを含まないアルミニウムボレート)繊維、C-ガラス(アルカリを含まないまたは低アルカリのソーダ石灰-アルミノボロシリケート)繊維、A-ガラス(アルカリ-アルカリ石灰-シリケート)繊維、S-ガラス繊維、無機ガラス繊維、石英繊維などのケイ素含有繊維が挙げられる。本発明の様々な実施形態では、好ましいガラス繊維としては、E-ガラス繊維、C-ガラス繊維、A-ガラス繊維、S-ガラス繊維などが挙げられる。典型的な有機繊維としては、例えば、ポリエステル繊維が挙げられる。
【0044】
本発明の実施形態では、有用な無機繊維はまた、セラミック繊維を含む。セラミック繊維は、それらの主要な構成要素のうちの1つが磁器の主要な構成成分であるアルミナであり、したがってセラミック繊維と呼ばれているため、ケイ酸アルミニウム繊維としても知られている。酸化ジルコニウムまたは酸化クロムのドーピングは、セラミック繊維の適用温度をさらに上昇させることができる。セラミック繊維は、軽量、耐高温性、良好な熱安定性、ならびに低い熱伝導率のものであり、高温、高圧、および/または摩耗しやすい様々な環境で使用することができる。
【0045】
本発明の様々な実施形態では、有用な無機繊維はまた、玄武岩繊維を含む。玄武岩繊維は、1450℃~1500℃で溶融した後、白金ロジウム合金ブッシングプレートを通して玄武岩石を高速で引くことによって形成された連続繊維である。玄武岩繊維は、高強度のS-ガラス繊維に匹敵する強度を有する。
【0046】
本発明の絶縁コーティング組成物では、補強繊維の量は、最大5重量%、最大4重量%などの、絶縁コーティング組成物の総重量に基づいて、2.1~6重量%、好ましくは3重量%~4.5重量%などの、2.5~5重量%である。過度な補強繊維は、組成物の粘度を極度に増加させ、加工性に影響を及ぼし得る。
【0047】
好ましくは、補強繊維は、ポリエステル繊維、鉱物繊維、セラミック繊維、ガラス繊維、炭素繊維、および玄武岩繊維のうちの少なくとも1つを含み、より好ましくは、ガラス繊維、炭素繊維、およびセラミック繊維のうちの少なくとも1つから選択される。
【0048】
別の好ましい実施形態では、補強繊維の長さは、1mm~10mmである。本発明によれば、過度に長さが長い場合には、加工性に悪影響を及ぼす一方、過度に長さが短い場合には、耐低温割れ性に悪影響を及ぼす。
【0049】
本発明による組成物はまた、0.05~0.7g/cm3、好ましくは0.08~0.5g/cm3、より好ましくは0.1~0.4g/cm3の範囲の密度を有する低密度充填材を含む。本発明では、充填材の低密度を確実にすることが重要である。本発明の発明者らは、低密度充填材、特に、中空ガラスバブルと有機ポリマー微小球との組み合わせが本発明の絶縁コーティング組成物中に含まれる場合、高められていないにしても、組成物の可撓性を損なうことなく、非常に優れた耐低温割れ性を得ることができることを予想外に見出した。
【0050】
本発明での使用に好適な中空ガラスバブルは、ガラス材料で作製された中空構造を有するバブル形状の微小球であり、これらは充填材技術において知られている材料であり、一般に高い圧縮強度を有する。これらの中空ガラスバブルは、例えば、3M Glass bubble VS5500などの、3MTMガラス微小球K、S、およびiMのシリアル番号の製品として商業的に入手することができる。
【0051】
有機ポリマー微小球は、一般に、円形またはほぼ円形の形状、および数十ナノメートル~数百マイクロメートルの範囲の粒径を有するポリマー粒子を指す。それらの生成および調製は知られており、広く商業的に入手することができる。
【0052】
本発明の範囲では、有機ポリマー微小球は、好ましくは固体、すなわち非中空ポリマー微小球である。非固体または中空構造を有するポリマー微小球と比較して、固体有機ポリマー微小球は、組成物の靭性および低温での耐低温割れ性により望ましいことが見出された。さらに、有機ポリマー微小球はまた、コアシェル構造を有するポリマーを含むことができる。
【0053】
好適なポリマー微小球として、例えば、アクリロニトリルポリマー、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリオレフィン、デンプン、ポリ乳酸、天然ゴム、スチレン-ブタジエンゴム、カルボン酸スチレン-ブタジエンゴム、ブタジエン-アクリロニトリルゴム、カルボン酸ブタジエン-アクリロニトリルゴム、ポリブタジエンゴム、シリコンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、ブタジエン-スチレン-ビニルピリジンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、ポリスルフィドゴム、アクリレート-ブタジエンゴム、ポリウレタンゴム、フルオロゴム、およびエチレン-ビニルアセテートポリマーのうちの少なくとも1つを含む、一定の圧縮強度を有する天然もしくは合成のエラストマーポリマー材料またはゴム状ポリマー材料から選出することができる。代替的に、それらは、コポリマー、または上述のポリマーもしくは上述のポリマーを形成するモノマーによって形成されたコアシェル構造を有するコポリマー、あるいはそれらの混合物であり得る。好ましい実施形態では、ポリマー微小球は、アクリロニトリルポリマー、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリオレフィン、ポリブタジエンゴム、エチレン-酢酸ビニルポリマー、または上述のポリマーもしくは上述のポリマーを形成するモノマーによって形成されたコアシェル構造を有するコポリマー、あるいはそれらの混合物を含む。特に好ましくは、ポリマー微小球は、アクリロニトリルポリマーシェルを有する微小球である。
【0054】
さらに、ポリマー微小球は、無機鉱物粉末などで表面コーティングされ得る。好適な無機鉱物粉末としては、タルク、焼成カオリン、石灰石、炭酸カルシウム、珪灰石、ヒュームドシリカなど、好ましくは炭酸カルシウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。これらの有機ポリマー微小球は、例えば、DUALITE E 130-095D製品として商業的に入手することができる。
【0055】
さらに、発明者らは、本発明の最良の効果を達成するために、低密度充填材の量がコーティング組成物の総重量に基づいて、5~60重量%、好ましくは7~50重量%、より好ましくは10~30重量%の範囲で有利に制御されるべきであることを見出した。好ましくは、低密度充填材は、中空ガラスバブルおよび有機ポリマー微小球からなり、組成物は、好ましくは、8~21重量%または8~15重量%などの、5~30重量%の中空ガラスバブル、および好ましくは7~15重量%または8~12重量%などの、5~20重量%の有機ポリマー微小球を含む。好ましい実施形態では、中空ガラスバブル対有機ポリマー微小球の質量比は、1:1~1.6:1などの、0.6:1~2:1である。
【0056】
本発明の絶縁コーティング組成物では、好ましくは、様々な無機添加剤の量は、15重量%~35重量%、15重量%~30重量%、または15重量%~25重量%などの、絶縁コーティング組成物の総重量に基づいて、15重量%~45重量%である。代替的に、本発明の絶縁コーティング組成物中の無機添加剤の量は、15、16、17、18、19、20、21、22、23、または24重量%~31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40重量%であり得る。上記範囲の終点を任意に組み合わせて、本発明の絶縁コーティング組成物中の無機添加剤の量を規定することができる。
【0057】
本発明の絶縁コーティング組成物は、加えて、溶媒、他の硬化触媒、顔料もしくは他の着色剤、強化剤、チキソトロープ、促進剤、界面活性剤、可塑剤、増量剤、安定剤、腐食抑制剤、希釈剤、ヒンダードアミン光安定剤、UV光吸収剤、接着促進剤、および酸化防止剤などの、1つまたは1つより多くの必要に応じた成分ならびに/または添加剤をさらに含み得る。代替的に、上記成分および/または添加剤を使用して、本発明の絶縁コーティング組成物中に含まれる混合物を、本発明の絶縁コーティング組成物中の他の構成成分と共に形成することもできる。
【0058】
有利な実施形態では、本発明による絶縁コーティング組成物は、フタレート、特にフタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、もしくはフタル酸ジ(2-プロピルヘプチル)(DPHP)、水素化フタレート、特に水素化フタル酸ジイソノニル(DINCH)、テレフタレート、特にテレフタル酸ジオクチル、トリメリテート、アジペート、特にアジピン酸ジオクチル、アゼレート、セバケート、ポリオール、特にポリオキシアルキレンポリオールもしくはポリエステルポリオール、ベンゾエート、グリコールエーテル、グリコールエステル、有機ホスフェート、ホスホネートもしくはスルホネート、ポリブテン、ポリイソブチレン、または天然脂肪もしくは油に由来する可塑剤、特にエポキシ化された大豆油もしくはアマニ油などのカルボン酸エステルを含むが、これらに限定されない、本発明のエポキシ樹脂に好適な可塑剤をさらに含む。可塑剤の量は、組成物の総重量に基づいて、6~10%などの、5~15%であることが好ましい。
【0059】
有利な実施形態では、本発明による絶縁コーティング組成物は、少なくとも1つの低粘度希釈剤を含み、それの量は、好ましくは、組成物の総重量に基づいて、6~15%などの、5~20%である。単官能性エポキシ希釈剤、長鎖カシューナッツシェル油修飾希釈剤、および他の低粘度非反応性希釈剤などを含むこれらの希釈剤は、エポキシ樹脂の粘度を低下させるために使用され、当業者によく知られている。それらは、例えば、NX 4708、Epotuf 37-058、およびgrilonit RV1812として商業的に入手することができる。
【0060】
本発明の絶縁コーティング組成物は、当業者によく知られている任意の方法によって調製することができる。本発明の絶縁コーティング組成物を調製するための方法では、上記構成成分は、所望の比率で混合することができる。一実施形態では、上記構成成分を順次容器に投入し、次いで均質になるまで撹拌する。構成成分の添加の順序に特に制限はない。
【0061】
本発明は、本発明に従う絶縁コーティング組成物がコーティングされている、コーティングされた基材に関する。そのようなコーティングされた基材の低温割れ特性を著しく高めることができる。
【0062】
好適な基材としては、鉄金属、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、ならびに他の金属および合金基材などの剛性金属基材が挙げられる。本発明の実践で使用される鉄金属基材は、鉄、鋼、およびそれらの合金を含み得る。有用な鋼材料の非限定的な例としては、冷間圧延鋼、亜鉛めっき(亜鉛コーティング)鋼、電気亜鉛めっき鋼、ステンレス鋼、酸洗鋼、GALVANNEALなどの亜鉛-鉄合金、およびそれらの組み合わせが挙げられる。鉄金属と非鉄金属または複合体との組み合わせも使用することができる。本発明による基材は、プラスチックまたはガラス繊維複合体などの複合体材料を含み得る。特に好適な基材は、鋼、特に鋼構造物である。鋼構造物としては、例えば、海上石油プラットフォーム、LNG貯蔵タンク、輸送パイプライン、船舶、車両、および列車などの輸送車両、特にLNGをエネルギー源として使用するものが含まれる。
【0063】
任意のコーティング組成物を基材の表面上に堆積させる前に、表面を十分に洗浄して脱脂することによって、表面から異物を除去するのが一般的な慣行であるが、必須ではない。そのような洗浄は、典型的には、基材を最終用途の形状に形成した(プレス加工、溶接など)後に行われる。基材の表面は、表面を機械的に研磨する、またはメタケイ酸ナトリウムおよび水酸化ナトリウムなどの、当業者によく知られている市販のアルカリ性もしくは酸性洗浄剤で洗浄/脱脂するなどの物理的または化学的手段によって洗浄することができる。洗浄剤の非限定的な例は、PPG Industries,Inc.から市販されているアルカリ系洗剤、CHEMKLEEN 163である。
【0064】
洗浄ステップに続いて、基材は、任意の残渣を除去するために、脱イオン水、溶媒、またはすすぎ剤の水溶液ですすぐことができる。基材は、例えば、エアナイフを使用することによって、基材を高温に短時間曝すことによって水を蒸発させることによって、または水切りロール間に基材を通すことによって、空気乾燥させることができる。
【0065】
基材は、むき出しの洗浄された表面であり得、油っぽくてもよく、1つまたは1つより多くの前処理組成物で前処理され、そして/または電着、スプレー塗布、ディップコーティング、ロールコーティング、カーテンコーティングなどを含むが、これらに限定されない、任意の方法によって塗布される1つまたは1つより多くのコーティング組成物、プライマー、トップコートなどで前塗装され得る。したがって、基材は、既に少なくとも1つの機能性コーティングでコーティングされ得、次いで上記の絶縁コーティング組成物がそのコーティング上にコーティングされる。有利な実施形態では、本発明の絶縁コーティング組成物は、任意の中間層を使用することなく、基材または機能性コーティング上に直接コーティングすることができる。
【0066】
有利な実施形態では、基材上の難燃性コーティングを保護して、その発火特性を高めるために、本発明による絶縁コーティング組成物は、基材上に存在する難燃性能力を有するコーティング(すなわち、難燃性コーティング)の上に塗布することができる。ここで、断熱保護が可能な本発明の絶縁コーティング組成物は、直接的に難燃性コーティングの上部であり得るか、または中間層を介して難燃性コーティング上に間接的に塗布することができる。また、本発明による断熱コーティングと難燃性コーティングとの間に少なくとも1つの他の機能性コーティングがあり得る。したがって、本発明はまた、基材であって、組成が本発明による絶縁コーティング組成物とは異なる少なくとも1つの追加のコーティングが、基材上にコーティングされ、好ましくは、該追加のコーティングが、難燃性コーティングである、基材に関する。
【0067】
難燃性コーティング、好ましくは膨張性コーティングは、一般に、酸源、膨張剤(発泡剤)、および炭素源から選択される構成成分を含む。
【0068】
難燃性コーティングが火炎または熱に曝されるときに酸源が酸を生成する。好適な酸源としては、リン含有酸源および硫黄含有酸源が挙げられるが、これらに限定されない。リン含有酸源としては、リン酸ナトリウム、リン酸カリウムまたはリン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム(APP)、リン酸モノアンモニウム、リン酸ジアンモニウム、リン酸トリクロロエチル(TCEP)、リン酸トリクロロプロピル(TCPP)、ピロリン酸アンモニウム、リン酸トリフェニルなどのリン酸塩が挙げられる。硫黄含有酸源としては、スルホン酸ナトリウム、スルホン酸カリウムまたはスルホン酸アンモニウム、パラトルエンスルホン酸塩などのスルホン酸塩、硫酸ナトリウム、硫酸カリウムまたは硫酸アンモニウムなどの硫酸塩が挙げられる。
【0069】
膨張剤は、火炎または熱に曝されるときに不燃性ガス、一般に、窒素を生成する。生成されたガスは、炭素源に由来するチャー(char)を膨張させ、泡状の保護層を形成する。膨張剤としては、一般に、メラミンシアヌレート、メラミンホルムアルデヒド、メチロール化メラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、メラミン一リン酸塩、ビス(メラミンリン酸塩)、メラミンリン酸二水素塩などのメラミン塩、またはホウ酸、ならびに五ホウ酸アンモニウム、ホウ酸亜鉛、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸リチウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸マグネシウム、およびボロシリケートなどのホウ酸塩などの、メラミンおよびホウ素含有化合物が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0070】
炭素源は、火炎または熱に曝されるとチャー(char)に転換され、それにより、基材上に防火保護層を形成する。炭素源は、例えば、芳香族化合物(長鎖炭化水素置換基を有するものなど)またはトール油脂肪酸(TOFA)であり得る。
【0071】
しかしながら、好ましくは、本発明の絶縁コーティング組成物は、難燃性コーティング組成物とは区別され、したがって、本発明の組成物は、酸源、膨張剤(発泡剤)、および炭素源から選択される構成成分を含まない。
【0072】
本発明の絶縁コーティング組成物は、スプレーコーティング、ディップコーティング/含浸、ブラシコーティング、またはフローコーティングを含む1つまたは1つより多くの方法によって基材に塗布することができ、ほとんどの場合、塗布するためにスプレーコーティングが使用される。例えば、WIWA Duomix 333 PFPなどの、加熱可能な二重管充填エアレススプレーコーティング装置、または同様の装置を使用することができる。Graco XM70シリーズなどの、共通のワイヤ加熱二重管充填スプレーコーティング装置も使用することができる。WIWA HERKULES 35075 PFPのようなポンプでも、予混合後の塗布に使用することができる。コーティングの乾燥膜厚さは、典型的には、0.5~20mm、0.5~18mm、0.8~16mmなどの、0.1~40mmである。代替的に、本発明の絶縁コーティング組成物のコーティング厚さは、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、または0.8mm~10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20mmであり得る。代替的に、本発明の絶縁コーティング組成物のコーティング厚さは、1、2、3、4、5、または6mm~30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40mmであり得る。
【0073】
最後に、およびそれに対応して、本発明は、基材を保護するための方法であって、該方法は、以下の、
(1)第1のコーティングで必要に応じてコーティングされた基材を提供するステップと、
(2)上記絶縁コーティング組成物を基材、または基材上の第1のコーティング上に塗布するステップとを含み、
有利には、本発明による第1のコーティングおよび絶縁コーティングが、組成および機能に関して異なる、方法に関する。好ましくは、第1のコーティングは、上記機能性コーティングであり、より好ましくは、上記難燃性コーティングである。
【0074】
以下の実施例は、本発明の様々な実施形態を例示することを意図しているが、いかなる手段においても本発明を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0075】
【0076】
2.絶縁コーティング組成物の調製
各絶縁コーティング組成物サンプルを、表1に列挙した成分およびそれらの重量比に従って配合した。
エポキシ樹脂Epoxy 828およびJH0711中間体を、指示した比率で分散デバイスを備えた容器に注ぎ込んだ。10分間のゆっくりとした撹拌下で、エポキシ樹脂希釈剤を均質になるまで添加した。分散させながらガラス繊維を添加した。1~2時間の高速撹拌後、一緒に束ねられた繊維フィラメントを散布した。次に、中空ガラスバブルおよびポリマー修飾充填材を、水でゆっくりと冷却しながら添加した。プロセス全体の温度を70度以下に制御した。最後に、増粘補助剤を添加し、均質に混合し、結合剤を得た。
【0077】
Versamid 150およびJeffamine D 230を、分散デバイスを備えた容器の中に添加し、次いで触媒を添加した。均質になるまでゆっくりと撹拌。1~2時間の高速撹拌後、一緒に束ねられた繊維フィラメントを散布した。増粘補助剤を添加し、10分間十分に分散させた。3M Glass bubble VS5500およびDualite E30-095Dを、水で冷却しながらゆっくりと添加し、均質に混合した。プロセス全体の温度を70度以下で制御し、硬化剤を得た。
【表1】
【0078】
3.特性試験
可撓性および耐低温割れ性
液体窒素浸漬実験:
長さ500mm、幅500mm、および厚さ10mmを有するフラット鋼パネルを、その表面にサンディングを施し、エポキシプライマー(エポキシプライマー、Sigmacover 280、PPG Industriesによる製造)でコーティングした。次いで、試験する絶縁コーティング組成物サンプルを、膜厚さ12mmを有するフラットパネル表面に塗布した。調製した試験試料を室温で24時間、次いで60℃でさらに4時間硬化させた。次に、フレームとフラットパネルとの間の間隙をシーラントで充填した状態で、フレームを試料の表面上に設置した。-196℃の液体窒素を、一定量フレームに注ぎ込み、フラットパネル裏面の温度を測定した。起こり得る割れについてコーティングを観察し、温度限界に達するために必要な時間を記録した。実験結果を以下の表2に示した。
【表2】
【0079】
4.比較実験
(1)修飾エポキシ樹脂構成成分についての研究
サンプル1-1、1-2、1-3、および2を、主に修飾エポキシ樹脂構成成分の組成を変化させて、下記表3に示す組成で上記のように調製した。樹脂の乾燥状況を、ガラス繊維および低密度充填材を添加せずに調査した。
【表3】
【0080】
表3に示すように、50%ポリエステルセグメント修飾エポキシ樹脂(サンプル1-1)のみを使用したとき、乾燥速度は低下し、7日後に樹脂系は、手で触れて、依然として粘着性であった。対照的に、非修飾エポキシ樹脂(サンプル2)のみを使用したとき、樹脂系は、乾燥が速すぎて硬すぎた。
【0081】
(2)ガラス繊維の量についての調査
サンプル1-4、1-5、1-6、1-7、および2を、主にガラス繊維の量を変化させて、下記表3に示す組成で上記のように調製した。
【表4】
【0082】
表4に示すように、ガラス繊維の比率が3%超に達した後、表面に実質的に割れが見られなかったか、またはわずかな割れしか見られなかったが、過剰なガラス繊維(サンプル1-8など)は、加工するには高すぎる系の粘度をもたらした。
【0083】
(3)低密度充填材についての調査
サンプル1-9、1-10、および1-11を、主に低密度充填材の量を変化させて、下記表5に示す組成で上記のように調製した。
【表5】
【0084】
表5に示すように、中空ガラスバブルおよび有機ポリマー微小球の両方が耐割れ性を増加させることができるが、中空ガラスバブルを含有するサンプルは、より高い密度およびより高い硬度を有し、わずかに低い割れ特性を有する一方で、有機ポリマー微小球を含有するサンプルは、より軽い重量を有し、より乾燥がゆっくりであった。
【0085】
本発明の特定の実施形態は、例示する目的で上に記載されているのに対して、添付の特許請求の範囲に定義されるような本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の詳細の数多くの変形が行われ得ることは、当業者には明らかであろう。
【国際調査報告】