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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-23
(54)【発明の名称】液晶系光バルブ
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/137 20060101AFI20220816BHJP
   C09K 19/54 20060101ALI20220816BHJP
   C09K 19/60 20060101ALI20220816BHJP
   C09K 19/38 20060101ALI20220816BHJP
   C09K 19/56 20060101ALI20220816BHJP
   C09K 19/12 20060101ALI20220816BHJP
   C09K 19/30 20060101ALI20220816BHJP
   C09K 19/34 20060101ALI20220816BHJP
   C09K 19/20 20060101ALI20220816BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
G02F1/137 500
C09K19/54 B
C09K19/60 A
C09K19/38
C09K19/54 Z
C09K19/56
C09K19/12
C09K19/30
C09K19/34
C09K19/20
G02F1/13 505
G02F1/13 500
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021574971
(86)(22)【出願日】2020-06-15
(85)【翻訳文提出日】2022-02-15
(86)【国際出願番号】 EP2020066420
(87)【国際公開番号】W WO2020254219
(87)【国際公開日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】19180639.7
(32)【優先日】2019-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】シェーネフェルト、 クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ユンゲ、 ミハエル
(72)【発明者】
【氏名】ゲーベル、 マルク
(72)【発明者】
【氏名】リシキ、 ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】カイザー、 ケヴィン
【テーマコード(参考)】
2H088
4H027
【Fターム(参考)】
2H088EA33
2H088FA10
2H088GA02
2H088GA03
2H088GA10
2H088GA13
2H088GA17
2H088HA01
2H088JA06
2H088KA02
2H088KA26
2H088KA30
2H088MA20
4H027BD02
4H027BD07
4H027BD09
4H027BD12
4H027BE04
4H027BE05
4H027CD05
4H027CG04
4H027CG05
4H027CH04
4H027CH05
4H027CM05
4H027CQ01
4H027CQ04
4H027CQ05
4H027CU04
4H027CU05
4H027CW02
4H027DP03
(57)【要約】
【課題】液晶系光バルブを提供する。
【解決手段】本発明は光学的な透明状態および不透明状態において作動可能であり、それらの間を電気的にスイッチ可能な光バルブの調製方法であって、1種類以上のメソゲン化合物、1種類以上のキラル化合物、1種類以上の二色性色素および1種類以上の重合性メソゲン化合物を含む液晶性媒体を含む層中に提供された1種類以上の重合性メソゲン化合物が光重合に供される方法に関する。本発明は更に当該方法で使用される液晶媒体と、当該方法を行うことによって得られるか、またはそれぞれ得られ得る光バルブと、モバイルデバイスにおける当該光バルブの使用とに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学的な透明状態および不透明状態において作動可能であり、それらの間を電気的にスイッチ可能な光バルブの調製方法であって、
(i)それぞれ電極が設けられた対向する2枚の透明基板の間に介在する層として、1種類以上のメソゲン化合物、1種類以上のキラル化合物、1種類以上の二色性色素および1種類以上の重合性メソゲン化合物を含む液晶性媒体を提供すること、
ただし液晶媒体は、70℃以上の透明点を有し、
ただし1種類以上の重合性メソゲン化合物は、媒体の全内容物を基準に4重量%以下の量で媒体中に含まれており、および
(ii)光重合を使用して、層中の1種類以上の重合性メソゲン化合物を重合させること
を含む方法。
【請求項2】
1種類以上の重合性メソゲン化合物の光重合は層中の電界、好ましくは交流電界の存在下で行われ、ただし層は好ましくは2μm~50μm、より好ましくは5μm~25μmの範囲内の厚さを有し、ただし好ましくは印加電場は液晶性媒体を含む層中にホメオトロピック配向を誘発する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1種類以上の重合性メソゲン化合物は、1個または2個以上のアクリレート基および/またはメタクリレート基を含む請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
光重合は、0.1mW/cm~100mW/cmの範囲内の強度を有する光、好ましくはUV光を使用して、1分~240分の範囲内の時間で行われる請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
光学的な透明状態および不透明状態において作動可能であり、それらの間を電気的にスイッチ可能な光バルブであって、光バルブは請求項1~4のいずれか1項に記載の方法を行うことによって得られるか、またはそれぞれ得られ得る光バルブ。
【請求項6】
光学的な透明状態および不透明状態において作動可能であり、それらの間を電気的にスイッチ可能な光バルブであって、
・1種類以上のメソゲン化合物、1種類以上のキラル化合物および1種類以上の二色性色素を含む液晶媒体と、ただし液晶媒体は70℃以上の透明点を有し、および
・1種類以上の重合性メソゲン化合物の重合によって得られるか、またはそれぞれ得られ得る1種類以上のポリマー構造を含むポリマー成分と、ただしポリマー成分は、材料の全内容物を基準に4重量%以下の量で材料中に含まれており、
を含む材料を含むスイッチ層を含み、
ただし光学的な透明状態の光バルブは、好ましくはASTM D 1003に従って決定される15%未満のヘイズと、好ましくはDIN EN410に従って決定される45%を超える光透過度とを有し、不透明状態では、好ましくはASTM D 1003に従って決定される65%を超えるヘイズと、DIN EN410に従って決定される35%未満の光透過度とを有する光バルブ。
【請求項7】
液晶媒体は、不透明状態において0.55μm以上のピッチを示す請求項5または6に記載の光バルブ。
【請求項8】
請求項1~4のいずれか1項に記載の方法において使用するための液晶媒体であって、
・媒体の全内容物を基準に4重量%以下の量で、1種類以上の重合性メソゲン化合物と、
・1種類以上のメソゲン化合物と、
・1種類以上のキラル化合物と、および
・1種類以上の二色性化合物と
を含む液晶媒体。
【請求項9】
請求項8に記載の液晶媒体であって、液晶媒体は正の誘電率異方性Δεと、20℃および589nmで決定される0.13以上の光学異方性Δnとを有し、
ただし液晶性媒体に含有される1種類以上のキラル化合物は、5μm-1以上のらせんツイスト力の絶対値を有する液晶媒体。
【請求項10】
液晶媒体は、式IおよびIIの化合物から選択される1種類以上のメソゲン化合物を含む請求項8または9に記載の液晶媒体。
【化1】
(式中、
およびRは互いに独立に、F、Cl、CF、OCF、および1~15個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝状のアルキルもしくはアルコキシまたは2~15個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝状のアルケニルから選択される基を表し、該基は無置換、CNもしくはCFで一置換またはハロゲンで一置換もしくは多置換されており、ただし1個以上のCH基は酸素原子が互いに直接連結しないようにして、それぞれの場合で互いに独立に-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCOO-または-C≡C-で置き換えられてよく、
11は、
【化2】
を表し、
nは、0または1を表し、および
21、A31およびA41は互いに独立に、
【化3】
を表し、
ただしLは、それぞれの出現で同一または異なってF、ClおよびBrから選択されるハロゲンであり、および
およびRは互いに独立に、F、CF、OCF、CNおよび1~15個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝状のアルキルもしくはアルコキシまたは2~15個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝状のアルケニルから選択される基を表し、該基は無置換、CNもしくはCFで一置換またはハロゲンで一置換もしくは多置換されており、ただし1個以上のCH基は酸素原子が互いに直接連結しないようにして、それぞれの場合で互いに独立に-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCOO-または-C≡C-で置き換えられてよく、および
、LおよびLは、互いに独立にHまたはFを表す。)
【請求項11】
液晶媒体は、式III、IVおよびVの化合物から選択される1種類以上のメソゲン化合物を含む請求項8~10のいずれか1項に記載の液晶媒体。

【化4】
(式中、
およびRは互いに独立に、F、CF、OCF、CNおよび1~15個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝状のアルキルもしくはアルコキシまたは2~15個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝状のアルケニルから選択される基を表し、該基は無置換、CNもしくはCFで一置換またはハロゲンで一置換もしくは多置換されており、ただし1個以上のCH基は酸素原子が互いに直接連結しないようにして、それぞれの場合で互いに独立に-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCOO-または-C≡C-で置き換えられてよく、および
、L、LおよびLは、互いに独立にHまたはFを表し、
およびRは互いに独立に、1~15個の炭素原子、好ましくは1~7個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝状のアルキルもしくはアルコキシ、または2~15個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝状のアルケニル表し、該基は無置換、CNもしくはCFで一置換またはハロゲンで一置換もしくは多置換されており、ただし1個以上のCH基は酸素原子が互いに直接連結しないようにして、それぞれの場合で互いに独立に-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCOO-または-C≡C-で置き換えられてよく、
iは、0、1または2であり、および
およびXは互いに独立に、F、CF、OCFまたはCNを表す。)
【請求項12】
液晶媒体は少なくとも3種類の異なる二色性色素を、好ましくは媒体の全内容物を基準に3重量%以下の量で含む請求項8~11のいずれか1項に記載の液晶媒体。
【請求項13】
液晶媒体は、少なくとも1種類の二反応性重合性または多反応性重合性メソゲン化合物を含む請求項8~12のいずれか1項に記載の液晶媒体。
【請求項14】
請求項5~7のいずれか1項に記載の光バルブにおいて使用するための変調材料であって、
・1種類以上のメソゲン化合物、1種類以上のキラル化合物および1種類以上の二色性色素を含む液晶媒体と、ただし液晶媒体は70℃以上の透明点を有し、および
・1種類以上の重合性メソゲン化合物の重合によって得られるか、またはそれぞれ得られ得る1種類以上のポリマー構造を含むポリマー成分と、ただしポリマー成分は、材料の全内容物を基準に4重量%以下の量で材料中に含まれており、
を含む変調材料。
【請求項15】
モバイルデバイスまたはそれぞれポータブルデバイスにおける請求項5~7のいずれか1項に記載の光バルブの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学的な透明状態および不透明状態において作動可能であり、それらの間を電気的にスイッチ可能な光バルブの調製方法であって、1種類以上のメソゲン化合物、1種類以上のキラル化合物、1種類以上の二色性色素および1種類以上の重合性メソゲン化合物を含む液晶性媒体を含む層中に提供された1種類以上の重合性メソゲン化合物が光重合に供される方法に関する。本発明は更に当該方法で使用される液晶媒体と、当該方法を行うことによって得られるか、またはそれぞれ得られ得る光バルブと、モバイルデバイスにおける当該光バルブの使用とに関する。
【背景技術】
【0002】
光の透過を制御または変調するデバイスはディスプレイ用途で一般的に使用されており、アイウェア、メガネ、ゴーグルおよびバイザーなどの各種モバイルデバイスにも使用してよく、拡張および仮想現実環境のコンテキストで応用してよい。光バルブまたは光シャッターなどの光強度変調器は、液晶(LC:liquid crystal)をベースにできる。原理的には、このような光バルブまたは光シャッターは、光の吸収または光の散乱に依存できる。
【0003】
デバイスによっては光の透過率を可逆的に変更することができ、通常は電気的なスイッチによって入射光の強度を減衰、減光または着色できるが、異なる動作状態において散乱またはヘイズをほとんど示さないようにできる。よって、そのようなデバイスは、明状態および暗状態、即ち相対的に高い光透過率の状態と相対的に低い光透過率の状態で作動し、その間をスイッチでき、両方の状態は実質的に非ヘイズ性である。
【0004】
そのような可逆的な透過率変化を提供するために、幾つかのモードおよび構成を採用できる。ツイストネマチック(TN:twisted nematic)、スーパーツイストネマチック(STN:super-twisted nematic)および垂直配向(VA:vertical alignment)液晶セルでは、光の透過率を制御するために偏光子が使用される。また二色性色素分子でドープされた液晶ホストに基づくゲスト-ホスト液晶セルを使用することも可能である。これらのゲスト-ホスト系は、光透過率を変化させるための偏光子が一切なく使用できる。しかしながら実施形態および用途によっては、ゲスト-ホスト液晶セルは少なくとも1つの偏光子と組み合わせて使用される。
【0005】
光散乱を使用する液晶系光変調器としては、所謂ポリマー分散液晶(PDLC:polymer dispersed liquid crystal)またはカプセル化もしくはネマティック曲面配向相液晶(NCAP:nematic curvilinear aligned phase)、ポリマーネットワーク液晶(PNLC:polymer network liquid crystal)、コレステリック液晶(CLC:cholesteric liquid crystal)、ポリマー安定化コレステリックテキスト液晶(PSCT:polymer stabilized cholesteric texture)および動的散乱液晶デバイスが挙げられる。これらの散乱型デバイスは、透明状態、即ち光学的に透明または非ヘイズ状態と、光散乱状態、即ち半透明またはヘイズ状態との間でスイッチできる。
【0006】
そのような散乱型デバイスを非散乱状態、即ち光学的に透明な状態から散乱状態にスイッチすると、半透明の外観が生じるように光の透過率が変化し、これは曇り、濁り、拡散またはヘイズとしても知覚される。散乱モードに基づくデバイスは特に、希望に応じてデバイスを光学的に透明な状態から散乱状態にスイッチ、典型的には電気的にスイッチした時に、一時的にプライバシーを提供したり、特徴または情報を隠したりするために使用できる。
【0007】
D.-K.Yangら著、「Cholesteric liquid crystal/polymer dispersion for haze-free light shutters」、Applied Physics Letters、第60巻(1992年)、第3102~3104頁(非特許文献1)には、コレステリック液晶を用いた低濃度のポリマーの分散と、この材料を不透明な光散乱状態および透明状態の間でスイッチできる光変調器において使用することとが記載されている。
【0008】
またデバイスにおいて、吸収および散乱による光変調を組み合わせることも可能である。このようにしてヘイズを与えることに加えて、全体的な光強度の減少を示す不透明状態を得ることができる。特定の実施において光の減衰のために二色性色素を使用でき、幾つかの例においては、これらの色素は更に着色を提供できる。
【0009】
国際公開第00/60407号(特許文献1)には、不透明および透明な動作モードを持つ電気光学的グレイジング構造が記載されている。
【0010】
B.-H.Yuら著、「Simultaneous control of haze and transmittance using a dye-doped cholesteric liquid crystal cell」、Liquid Crystals、第42巻(2015年)、第1460~1464頁(非特許文献2)には、シースルーディスプレイにおいて使用するための色素ドープコレステリック液晶を使用する光シャッターデバイスが提案されている。
【0011】
J.Heoら著、「Fast-switching initially-transparent liquid crystal light shutter with crossed patterned electrodes」、AIP Advances、第5巻、第047118頁(2015年)(非特許文献3)には、ポリマーネットワーク液晶および二色性色素を使用し、交差パターン電極を備え、透明状態および不透明状態の間をスイッチ可能な光シャッターが記載されている。不透明状態においてデバイスは背景画像を遮断し、黒色を提供できる。提案される光シャッターは、シースルーディスプレイおよびスマートウィンドウにおける潜在的な用途を有し得る。
【0012】
B.-H.Yuら著、「Light shutter using dye-doped cholesteric liquid crystals with polymer network structure」、Journal of Information Display、第18巻(2017年)、第13~17頁(非特許文献4)には、シースルーディスプレイにおいて使用するためで、ポリマーネットワーク構造を備え、色素ドープコレステリック液晶を使用する光シャッターが提案されている。
【0013】
当該分野においては、改良された光学的および電気光学的性能を備える更なる光変調器、特に光シャッターなどの光バルブに対するニーズがある。また当該分野においては、そのようなスイッチ可能なデバイスを製造する適切な方法に対するニーズも存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第00/60407号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】D.-K.Yangら著、「Cholesteric liquid crystal/polymer dispersion for haze-free light shutters」、Applied Physics Letters、第60巻(1992年)、第3102~3104頁
【非特許文献2】B.-H.Yuら著、「Simultaneous control of haze and transmittance using a dye-doped cholesteric liquid crystal cell」、Liquid Crystals、第42巻(2015年)、第1460~1464頁
【非特許文献3】J.Heoら著、「Fast-switching initially-transparent liquid crystal light shutter with crossed patterned electrodes」、AIP Advances、第5巻、第047118頁(2015年)
【非特許文献4】B.-H.Yuら著、「Light shutter using dye-doped cholesteric liquid crystals with polymer network structure」、Journal of Information Display、第18巻(2017年)、第13~17頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って本発明の目的は、光学的な透明状態および不透明状態において作動可能であり、それらの間を電気的にスイッチ可能であり、改善された光学的および電気光学的性能を有する光バルブを調製するための簡便、効率的および堅牢な方法を提供することである。本発明の更なる目的は、好ましい性能を有し、モバイルおよびポータブルデバイスならびに拡張現実またはそれぞれの仮想現実のコンテキストにおける使用に特に適している光バルブを提供することである。別の目的は、本発明による方法での使用に特に適しており、光バルブにおいて結果として好ましい変調材料となり、有利な化学的、物理的および電気光学的特性を有する液晶媒体を提供することである。本発明の更なる目的は、以下の詳細な説明から当業者には直ちに明らかである。
【0017】
目的は独立請求項で定義される主題により解決される一方で、好ましい実施形態は、それぞれの従属請求項で規定され、下で更に記載する。
【0018】
本発明は特に、主な態様、好ましい実施形態および特定の特徴を含む以下の項目を提供し、それらはそれぞれ単独で、および組み合わせて上の目的の解決に貢献し、最終的に追加の利点を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の第1態様は、光学的な透明状態および不透明状態において作動可能であり、それらの間を電気的にスイッチ可能な光バルブの調製方法であって、
(i)それぞれ電極が設けられた対向する2枚の透明基板の間に介在する層として、1種類以上のメソゲン化合物、1種類以上のキラル化合物、1種類以上の二色性色素および1種類以上の重合性メソゲン化合物を含む液晶性媒体を提供すること、
ただし液晶媒体は、70℃以上の透明点を有し、
ただし1種類以上の重合性メソゲン化合物は、媒体の全内容物を基準に4重量%以下の量で媒体中に含まれており、および
(ii)光重合を使用して、層中の1種類以上の重合性メソゲン化合物を重合させること
を含む方法を提供する。
【0020】
本明細書において光バルブとは、間隔をあけて配置され電極が提供された2枚の壁、特に2枚の透明基板で形成されたセルとして構成され、ただしセルは光変調材料を含む、光の変調のための素子を意味する。
【0021】
光学的な透明状態とは、低いヘイズの高透過率の状態を指す。好ましくは光学的な透明状態において調製された光バルブは、好ましくはASTM D 1003に従って決定される15%未満のヘイズと、好ましくはDIN EN410に従って決定される45%を超える光透過度とを有する。不透明状態とは、高いヘイズの低透過率の状態を指す。好ましくは不透明状態において調製された光バルブは、好ましくはASTM D 1003に従って決定される65%を超えるヘイズと、DIN EN410に従って決定される35%未満の光透過度とを有する。
【0022】
本発明では、特定の状況や用途のために、モバイルまたはポータブルデバイスでの使用に特に有利な光バルブを提供することが望ましいと認識された。この場合、軽量な構造の他に、高いスイッチならびに低動作電圧および低電力消費を得ることが望まれている。本発明による方法および材料の組み合わせを使用することにより、驚くべきことに、高スイッチを示し、適切な低電圧および低エネルギー消費で動作可能な光バルブが得られることが見出された。加えて本方法は、特にスイッチ速度に関して、低温でも有利な性能を有する光バルブを提供する。これらの特性の組み合わせは、モバイル用途での使用を考慮した場合、大きなメリットをもたらす。加えて、この方法では媒体を光重合にさらすにもかかわらず、驚くべきことに、例えば電気的破壊および光安定性などに関して良好な信頼性、耐久性、安定性を示す光バルブを調製することができることが見出された。
【0023】
驚くべきことに本発明による方法は、本明細書に記載されるような有利な特性を示す光バルブを調製するための簡便および効率的な方法を提供する。
【0024】
本発明の別の態様は、光学的な透明状態および不透明状態において作動可能であり、それらの間を電気的にスイッチ可能な光バルブであって、光バルブは本明細書の上および下に記載される本発明による方法を行うことによって得られるか、またはそれぞれ得られ得る光バルブに関する。
【0025】
本発明では、好ましい性能および外観は不透明な状態だけでなく光学的に透明な状態でも望ましいことが認識され、後者の状態では不要なヘイズを回避または最小化し、透過率を比較的高くすることが望ましいとされた。本発明に従って提供されるような光バルブは、有利にそのような低ヘイズ透明状態を与えることができ、さらに、不透明状態における全体の光透過率を調整し特に最小にする可能性とともに、十分に効率的および十分に均一な散乱を与えることができる。加えてデバイスは、有利に低いスイッチ電圧および低エネルギー消費、状態間の高いスイッチならびに良好な信頼性、耐久性および安定性、例えば電気的破壊および光安定性など更なる利点を提供できる。
【0026】
更に本発明で使用する材料および方法は、スイッチ可能なセルにアクティブマトリックスアドレスを使用する可能性も与える。よって光バルブを多数のピクセルに分割することにより、情報の表示や、拡張または仮想現実のコンテキストでの使用が実現される。
【0027】
本発明の別の態様において、光学的な透明状態および不透明状態において作動可能であり、それらの間を電気的にスイッチ可能な光バルブであって、
・1種類以上のメソゲン化合物、1種類以上のキラル化合物および1種類以上の二色性色素を含む液晶媒体と、ただし液晶媒体は70℃以上の透明点を有し、および
・1種類以上の重合性メソゲン化合物の重合によって得られるか、またはそれぞれ得られ得る1種類以上のポリマー構造を含むポリマー成分と、ただしポリマー成分は、材料の全内容物を基準に4重量%以下の量で材料中に含まれており、
を含む材料を含むスイッチ層を含み、
ただし光学的な透明状態の光バルブは、好ましくはASTM D 1003に従って決定される15%未満のヘイズと、好ましくはDIN EN410に従って決定される45%を超える光透過度とを有し、不透明状態では、好ましくはASTM D 1003に従って決定される65%を超えるヘイズと、DIN EN410に従って決定される35%未満の光透過度とを有する光バルブが提供される。
【0028】
本発明によれば光の吸収および散乱の両方を行うことができ、光を統御するためのデバイスが提供される。よってデバイスは、2つの異なる光学状態、即ち低ヘイズ高透過率状態および高ヘイズ低透過率状態の間で遷移することができる。光バルブは、光の通過、特に太陽光の通過を調節するのに有用であるが、ランプ、発光ダイオード、特に有機発光ダイオード、照明器具などの人工光源からの光の通過も調節するのに有用である。不透明な状態において光バルブは、視覚的な障壁を作り出すことができる。
【0029】
好ましい実施形態において光バルブのスイッチ層に含まれる材料に含まれる液晶媒体は、不透明な状態で0.55μm以上のピッチを示す。
【0030】
驚くべきことに上および下に記載する液晶媒体およびポリマー成分を含む材料を含むスイッチ層を設けることによって、改良された光バルブが得られることが見い出された。特に現在定義されているような高い透明点および好ましくは長いピッチを有するコレステリックまたはキラルネマチック媒体を、少なくとも1種類の重合性メソゲン化合物の重合から得られるポリマー構造を含む比較的少量のポリマー成分と組み合わせて提供すると、驚くべきことに好ましい透明状態、即ち有利に均質な低ヘイズおよび光学的透明状態ならびに高められた散乱効率を有する散乱状態を有するデバイスを与えることができ、このデバイスは電圧を印加することによって状態の間で便利にスイッチすることが可能である。
【0031】
特に本明細書に記載されているように長いピッチのコレステリック媒体をポリマー成分の存在と好ましく組み合わせることで、適切に広い角度散乱分布を有する予想外の強い散乱を与えることができる。これは既に素子内の単一のスイッチ層のみを提供することが、好適なヘイズをもたらすことができるという点で有益である。加えてスイッチ層の厚さは比較的低く、特に実質的に50μm未満でよく、よって動作電圧および電力消費だけでなく、材料の使用も低減される。
【0032】
更に1種類以上の二色性色素を液晶媒体中、好ましくは溶液中で好適に提供することにより、特に不透明状態での光透過率を有利に調整し、所望により最小化することができ、同時に着色した不透明状態を提供する可能性も付与することができる。
【0033】
ここで定義する通りに材料の組み合わせを設定および調整することで、良好な性能を持つ光バルブを得ることができる。
【0034】
従って本発明の別の態様は特に本発明による方法において使用するための液晶媒体に関し、該媒体は媒体の全内容物を基準に4重量%以下の量の1種類以上の重合性メソゲン化合物、種類以上のメソゲン化合物、1種類以上のキラル化合物および1種類以上の二色性化合物を含む。
【0035】
本発明による液晶媒体を提供することによって、改善された特性、特に好適に高い透明点および好適に長いピッチを有する媒体が得られることが驚くべきことに本発明によるスイッチ層および光バルブ用の変調材料の調製に特に有用であることが見いだされた。加えて媒体は広い液晶相、好適に高い光学異方性、好適に高い電圧保持率(VHR:voltage holding ratio)、良好な低温安定性および良好な光安定性などの更なる利点を提供できる。
【0036】
本発明の更なる態様において、特に本発明による光バルブにおいて使用するための変調材料であって、
・1種類以上のメソゲン化合物、1種類以上のキラル化合物および1種類以上の二色性色素を含む液晶媒体と、ただし液晶媒体は70℃以上の透明点を有し、および
・1種類以上の重合性メソゲン化合物の重合によって得られるか、またはそれぞれ得られ得る1種類以上のポリマー構造を含むポリマー成分と、ただしポリマー成分は、材料の全内容物を基準に4重量%以下の量で材料中に含まれており、
を含む変調材料が提供される。
【0037】
本発明による変調材料は、スイッチ素子、好ましくは光を調整する光可変デバイス、特に光の散乱および調光に基づく光バルブにおいて有益に使用することができる。本発明による変調材料は、電磁放射、好ましくは光、特に太陽光だけでなく人工光源からの光の通過を調節するためのデバイスにおいて有益である。
【0038】
本発明による変調材料は、CLC散乱型デバイスに使用されることが特に好ましい。材料が、有利に高い透明点および好ましくは比較的長いピッチを有するキラルネマチックまたはコレステリック液晶媒体を、現在定義されているようなポリマー成分と組み合わせて含む場合、特に所謂ポリマー安定化コレステリックテクスチャー(PSCT: polymer stabilized cholesteric texture)を提供する場合、特定の利点、例えば散乱効果または均一性および外観の点で得ることができることが現在認識されている。
【0039】
驚くべきことに本明細書に記載のプロセスを実施して得られた変調材料は、良好な信頼性および安定性、特に光安定性を示すことができる。提供された材料の組み合わせと本明細書に記載されたプロセス条件とを有利に調整し合わせることによって、1種類以上の二色性色素を含む安定で効率的な変調材料が初期媒体を光重合に供しているにもかかわらず、得ることが可能である。
【0040】
本発明によれば本明細書に記載の液晶媒体および変調材料は、スイッチ層において有益に配置および使用することができる。よって更なる態様において本発明による媒体またはそれぞれ材料を含み、好ましくは成るスイッチ層が提供される。
【0041】
電気的にスイッチ可能で、光学的な透明状態および不透明状態で動作可能なスイッチ素子を提供するなどのために、スイッチ層を2枚の基板の間に配置できる。
【0042】
重合安定化により散乱状態での散乱性能および効率が向上する一方で、依然として透明状態での好ましい透明度を達成できる。
【0043】
本発明の別の態様は、モバイルデバイスまたはそれぞれポータブルデバイスにおける光バルブの使用に関する。
【0044】
光バルブは低電圧および低消費電力に加え、高いスイッチ時間、温度依存性の低減、0℃以下の低温での信頼性の高いスイッチを好ましくは与え得る。組合された特性は、特にモバイル用途において有有用である。光バルブは、例えば透明または通常シースルーディスプレイにおいて、および異なる照明条件、特に異なる環境光条件下において、モバイル用途において望まれる情報の強調されたコントラストまたは読みやすさの達成に一時的に、即ち所定の期間だけ寄与し、他の期間は寄与しないことが可能である。
【0045】
それによって本発明を制限することなく以下では、側面、実施形態および特定の特徴により本発明を例示し、ならびに特定の実施形態を、より詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本明細書において好ましくは用語「液晶」(LC、liquid crystal)は、幾つかの温度範囲(サーモトロピックLC)において液晶メソ相を有する材料または媒体に関する。
【0047】
用語「メソゲン化合物」および「液晶化合物」は、1個以上のカラミチック(棒状または板状/ラス状)またはディスコティック(円盤状)メソゲン基、即ち液晶相またはメソ相の挙動を誘起する能力を有する基を含む化合物を意味する。
【0048】
LC化合物または材料およびメソゲン基を含むメソゲン化合物または材料は、必ずしもそれら自体が液晶相を示す必要はない。また、それらが他の化合物との混合物においてのみ液晶相挙動を示すことも可能である。これとしては、低分子量非反応性液晶化合物、反応性または重合性液晶化合物および液晶ポリマーが挙げられる。
【0049】
カラミチックメソゲン化合物は、通常、互いに直接または連結基を介して連結された1個以上の芳香族または非芳香族環状基から成るメソゲンコアを含み、任意にメソゲンコアの末端に連結された末端基からなり、任意にメソゲンコアの長辺に連結された1個以上の横方向の基からなり、これらの末端および横方向の基は通常カルビルまたはヒドロカルビル基、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシなどの極性基または重合性基から例えば選択できる。
【0050】
簡単にするために用語「液晶(liquid crystal)」または「液晶(liquid-crystalline)」材料または媒体は、液晶材料または媒体およびメソゲン材料または媒体の両方に使用され、その逆もまた同様であり、用語「メソゲン」は、材料のメソゲン基に使用される。
【0051】
用語「非メソゲン化合物または材料」は、上で定義した通りのメソゲン基を含まない化合物または材料を意味する。
【0052】
本明細書で使用されるとき用語「ポリマー」は、1個以上の異なる種類の繰り返し単位(分子の最小構成単位)の骨格を包含する分子を意味すると理解され、そして一般に知られている用語「オリゴマー」、「コポリマー」、「ホモポリマー」などを含む。更にポリマーという用語はポリマー自体に加えて、開始剤、触媒およびそのようなポリマーの合成に付随する他の要素からの残留物を含み、そのような残留物はそれに共有結合していないと理解される。そのような残留物およびその他の要素は更に通常、重合後の精製工程で除去される一方で、それらは一般に容器間、溶媒または分散媒体間を移す時にポリマーと共に残留するように典型的にはポリマーと混合または共混合される。
【0053】
用語「重合」は、複数の重合性基またはそのような重合性基を含有するポリマー前駆体(重合性化合物)を一緒に結合することによってポリマーを形成する化学プロセスを意味する。
【0054】
また1個の重合性基を有する重合性化合物は「一反応性」化合物と、2個の重合性基を有する化合物は「二反応性」化合物と、および2個を超える重合性基を有する化合物は「多反応性」化合物とも呼ばれる。また重合性基を持たない化合物は、「非反応性」または「非重合性」化合物とも呼ばれる。
【0055】
用語「膜」および「層」は、多少なりとも顕著な機械的安定性を有する剛性または可撓性の自己支持型または自立型の膜または層ならびに支持基板上または2枚の基板間のコーティングまたは層を含む。
【0056】
用語「キラル」は一般に、その鏡像に重ね合わせることができない物体を説明するために使用される。対照的に「アキラル」(非キラル)な物体は、それらの鏡像と同一の物体である。本発明による媒体はキラリティーを示す。これはキラルネマチック液晶としても既知のコレステリック液晶を提供することで達成できる。キラルネマチックおよびコレステリックという用語は他に明言されない限り、本明細書において同義的に使用される。
【0057】
本明細書において
【化1】
は、トランス-1,4-シクロヘキシレンを表す。
【0058】
本明細書では他に明示しなければ全ての濃度は質量パーセントで与えられ、それぞれの完全な混合物に関するものである。
【0059】
全ての温度は摂氏度(摂氏、℃)で与えられ、温度の差は全ての摂氏度で表される。全ての物理的性質および物理化学的または電気光学的パラメータは他に明示しなければ、20℃の温度について決定され与えられる。
【0060】
光の透過および散乱は好ましくは、380nm~780nmのスペクトル範囲における電磁放射の透過および散乱を意味する。
【0061】
スイッチとは好ましくは2つの状態間の切り替えを意味し、好ましくは一方の状態は非散乱性で人間の目には実質的に透明または透明に見え、他方の状態は散乱性または拡散透過性で人間の目には半透明または不透明に見える。不透明な状態は同時に、黒色または代替的に可視スペクトル全体をカバーしない別の色を与えることができる。
【0062】
しかしながら、また本発明によるスイッチ層は更なるスイッチ状態、特に中間状態を有することも可能である。
【0063】
従って本発明によれば好ましくおよび有利には、完全に不透明な状態と、装置を通して可視性を有する状態との間のスイッチが得られる。
【0064】
本発明による光学的な透明状態において光バルブは好ましくは、好ましくはASTM D 1003に従って決定される15%未満、より好ましくは10%未満、より更に好ましくは5%未満、特に2.5%未満のヘイズと、好ましくはDIN EN410に従って決定される45%を超える、より好ましくは50%を超える、より更に好ましくは55%を超える、特に65%を超える光透過度とを有する。
【0065】
本発明による光学的な不透明状態において光バルブは好ましくは、好ましくはASTM D 1003に従って決定される65%を超える、より好ましくは80%を超える、より更に好ましくは90%を超えるヘイズと、好ましくはDIN EN410に従って決定される35%未満、より好ましくは25%未満、より更に好ましくは10%未満、特に5%未満の光透過度とを有する。不透明状態において本発明による光バルブは、好ましくはASTM D 1003に従って決定される75%以上のヘイズを有する。
【0066】
ヘイズの測定には、BYK-Gardner社製のヘイズメーターを使用できる。また、分光光度計、特に分光光度計およびUlbricht球を使用することも可能である。
【0067】
本発明によるスイッチは好ましくは、電気的なスイッチを意味する。電気的なスイッチは典型的には、基板、例えばガラス基板またはプラスチック基板に電極を設けることによって達成できる。ある実施形態において導電層が基板上に設けられ、導電層は透明導電性材料、例えば透明導電性酸化物、好ましくはインジウムスズ酸化物(ITO:indium tin oxide)またはSnO:F、特にITO、または導電性ポリマー、または薄い透明金属および/または金属酸化物層、例えば銀からなる、またはそれらから形成される。導電性層は好ましくは、電気的接続を備える。電圧は、好ましくは電池、充電式電池、スーパーキャパシタまたは外部電流源によって供給され、より好ましくは外部電流源によって供給される。
【0068】
ある実施形態において基板上に、例えばポリイミド(PI:polyimide)製の配向層が設けられている。特に、導電層および配向層が基板上に一緒に設けられていることが好ましい。この場合、配向層(orientation layer)または配向層(alignment layer)は配向層がLC媒体に接触するように、導電層の上に設けられる。配向層、好ましくはポリイミド層は、特に界面において、液晶媒体の分子の均一配向または平面配向、あるいは代替的にホメオトロピック配向を与えるように配置されてよい。特定の実施形態において所謂ツイストネマティック(TN:twisted nematic)ジオメトリで用いられるように、90°の方向差を有する両基板上にラビングされたポリイミドが使用される。
【0069】
特定の実施形態においてプレチルト角を有する配向層が使用され、例えば、TNジオメトリに対して0°~20°または垂直配向(VA:vertically aligned)ジオメトリに対して80°から90°の範囲のプレチルト角を有する。
【0070】
他の実施形態の代替またはそれによる配向膜のない基板も使用される。配向層、例えばポリイミド層を追加層として設けることは、有益に回避され得る一方で、効果的および効率的なスイッチ挙動は依然として実現され得ることが驚くべきことに見い出された。
【0071】
また配向層の代わりに、しかし配向層に加えても、基板上にパッシベーション層またはバリア層、例えば酸化シリコンまたは窒化シリコンを含む、好ましくは酸化シリコンまたは窒化シリコンから成るパッシベーション層を設けることも可能である。パッシベーション層および配向層の両方が基板上に設けられる場合、それらは配向層が最上位となるように、即ちLC媒体に接触するように配置される。
【0072】
本発明による方法は、光学的な透明状態および不透明状態において作動可能であり、それらの間を電気的にスイッチ可能であり、スイッチ層を含むスイッチ素子、特に光バルブを提供する。本方法を実施することによって得られるスイッチ層は、1種類以上のメソゲン化合物、1種類以上の二色性色素および1種類以上のキラル化合物を含む液晶媒体と、1種類以上の重合性メソゲン化合物の重合によって得られるか、またはそれぞれ得られ得る1種類以上のポリマー構造を含むポリマー成分とを含む材料を含む。
【0073】
本発明によればポリマー成分は、材料の全内容物を基準に4重量%以下、好ましくは3重量%以下、より好ましくは2重量%以下、特に1重量%以下の量で材料中に含まれる。好ましい実施形態においてポリマー成分は、材料の全内容物を基準に0.5重量%~1.5重量%の範囲内の量で材料中に含まれる。
【0074】
ポリマー成分は、1種類以上の重合性メソゲン化合物の重合によって得られるか、またはそれぞれ得られ得る1種類以上のポリマー構造を含む。ポリマー成分が、1種類以上の重合性メソゲン化合物のみを重合して得られること、即ちポリマー成分が、前駆体として1種類以上の重合性メソゲン化合物のみに基づくか、それぞれからのみ誘導される1種類以上のポリマー構造から成ることが好ましい。
【0075】
本方法によってポリマー成分は、1種類、2種類または3種類の重合性メソゲン化合物、より更に好ましくは1種類または2種類の重合性メソゲン化合物を重合することによって、その場で、特にスイッチング層中において好ましくは調製される。
【0076】
本発明による重合性メソゲン化合物はメソゲン基と、1個以上の重合性基、即ち重合に適した官能基とを含む。また、これらの化合物は反応性メソゲン(RM:reactive mesogen)またはメソゲンモノマーとしても知られている。RMは、一反応性および/または二反応性もしくは多反応性であることができる。
【0077】
本方法で使用する液晶媒体は、少なくとも1種類の二反応性または多反応性重合性メソゲン化合物を含むことが好ましい。
【0078】
本発明により使用される重合性化合物(1種類または多種類)が反応性メソゲン(1種類または多種類)のみを含む、即ち全ての反応性モノマーがメソゲンであることが好ましい一方で、代替実施形態において1種類以上のRMを1種類以上の非メソゲン重合性化合物と組み合わせて使用することも可能である。
【0079】
重合性化合物およびメソゲン化合物は、得られるポリマー成分および変調材料中のLC媒体の屈折率を一致させる観点から選択することができ、透明状態の向上に有利に寄与し得る。
【0080】
本発明により特に本方法で使用され光バルブ中に提供される液晶媒体は、70℃以上、より好ましくは80℃以上、より更に好ましくは90℃以上、なお更に好ましくは98℃以上、引き続き更に好ましくは102℃以上、特に115℃以上の透明点を有する。媒体は90℃~160℃、より好ましくは100℃~150℃の範囲内の透明点を有することが好ましい。
【0081】
全て物理的特性および物理化学的または電気光学的パラメータは一般に知られている方法、特に「Merck Liquid Crystals、Physical Properties of Liquid Crystals」、1997年11月刊、メルク社、ドイツ国に従って決定される。
【0082】
透明点点、特にキラルネマチック相またはコレステリック相と等方相との間の相転移温度は、一般に知られている方法、例えばメトラーオーブン、偏光顕微鏡下のホットステージ、または示差走査熱量(DSC:differential scanning calorimetry)分析を用いて測定および決定できる。本発明によれば透明点は、好ましくはメトラーオーブンを使用して決定される。
【0083】
更に本発明により好ましくは光バルブのスイッチ層に用いられる液晶媒体は、散乱状態において0.55μm以上のピッチを示す。
【0084】
ここで提供される通りのコレステリックまたはキラルネマチック媒体は好ましくは、比較的長いピッチ、特に好ましくは780nmを超えるブラッグ型反射を与えるピッチを有する。この場合にも平面的なテクスチャは、可視光スペクトルにわたって好ましい透過を与えることができる。
【0085】
本明細書においてピッチとはコレステリックらせんのピッチpを意味し、ピッチpはCLCの配向軸(ディレクター)が2π回転を起こすための距離である。好ましい実施形態において媒体は、0.75μm以上、より更に好ましくは1.00μm以上、特に1.50μm以上のピッチを示す。
【0086】
好ましくは1種類以上のキラルドーパントの濃度は、結果として生じるキラルピッチが0.55μm~10μmの範囲内になるように設定される。
【0087】
本発明によれば、ピッチは、特に20℃における選択反射極大の波長λmaxのNIR分光測定から決定される。ピッチpは、λmax=n(λmax)×pの式を用いてλmaxの測定値から決定され、ここでn(λmax)はλmaxにおける屈折率である。
【0088】
また当該分野で既知のウェッジセル法を使用し、特に20℃において、らせんツイスト力HTP(helical twisting power)を測定し、決定したピッチを確認することも可能である。
【0089】
驚くべきことに本発明による光バルブは、効率的で十分に強い散乱、特に拡散透過率を目視で、特に広い面積でも均質な外観を与える不透明状態にスイッチし、動作できる。この均一な外観は有利には色が中性の外観を含み、これは、虹のような外観のような不要な色アーティファクトを最小化し、または回避することさえできることを意味する。
【0090】
本発明によるスイッチ層に提供されるような材料は、例えば材料ドメイン、特に境界、欠陥またはランダム構造からの散乱によって所望のヘイズを有する十分な散乱を与えることができると考えられており、一方で周期的構造によって生じる入射光の回折は、関連の長さスケールにおいて周期性を十分に乱すまたは破壊することによって、特にポリマー成分の導入によって実質的に抑制または回避することができるが驚くべきことに、この点については僅かな量で含まれている場合でも有効であり得る。
【0091】
加えて本発明による方法を使用することにより、有利には殆どまたは全く識別可能な残留ヘイズを有する光学的に透明な状態および比較的大きな光透過率を有する光バルブを得ることが可能である。
【0092】
光バルブ自体は好ましくは、光源を一切含まない。光バルブは好適には、例えばラミネート、接着または実装によってディスプレイ、スクリーンまたは眼鏡などの電気光学的デバイスに組み込まれ得る。
【0093】
好ましくは、光バルブは偏光子を含まない。
【0094】
光バルブは、例えば1mm程度の小さなサイズから1m以上のサイズまで様々なサイズの範囲内で実現されてもよく、それは異なる形状、例えば正方形、長方形、円形、楕円形、三角形、多角形を有してよい。
【0095】
本発明によればスイッチ層および光バルブの状態は、電極によって印加される電界を使用して制御される。電極は好ましくは、コーティングの形態で基板上に配置される透明電極である。コーティングは一般に、スイッチ層に面している基板側または表面に施される。
【0096】
ある実施形態において電極は、それらが連続するようにパターン化および/または構造化されていない。よってスイッチ可能な領域全体は、電界を印加することによってアドレスされ、同時にスイッチされる。代替の実施形態において電極は、電界を印加することによって他の領域から独立してスイッチされ得る個別にアドレス可能な領域または画素を形成するようにパターン化され得る。この場合、分割された領域を能動的および独立にアドレス指定するために、一般的に使用されているTFT技術を使用してよい。
【0097】
本明細書で説明する通り液晶媒体は、本方法で使用され、得られるスイッチ層および光バルブに提供される。
【0098】
好ましい実施形態において本発明により使用される通りのLC媒体は、正の誘電率異方性を有する。この場合、3~45の範囲内、より好ましくは5~30の範囲内の誘電異方性Δεを有する液晶性混合物が好ましい。
【0099】
Δεは誘電異方性を表し、Δε=ε-εである。誘電異方性Δεは20℃および1kHzにおいて決定される。
【0100】
しかしながら代替の実施形態において、負の誘電率異方性を有するLC媒体を提供することも可能である。この場合、-6~-3の範囲内の誘電異方性Δεを有する液晶性混合物が好ましい。
【0101】
好ましくは本発明による媒体は、複屈折としても知られる好適に高い光学異方性Δnを有し得る。本明細書に記載され、本発明によるスイッチ層および光バルブにおいて使用される媒体は、好ましくは20℃および589nmにおいて決定される0.13以上、より好ましくは0.16以上、より更に好ましくは0.20以上の光学異方性Δnを示す。
【0102】
上および下でΔnは光学異方性を示し、Δn=n-nであり、光学異方性Δnは20℃および波長589.3nmにおいて決定される。
【0103】
本発明により使用される媒体は、式IおよびIIの化合物から選択される1種類以上のメソゲン化合物を含むことが好ましい。
【0104】
【化2】
【0105】
式中、
およびRは互いに独立に、F、Cl、CF、OCF、および1~15個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝状のアルキルもしくはアルコキシまたは2~15個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝状のアルケニルから選択される基を表し、該基は無置換、CNもしくはCFで一置換またはハロゲンで一置換もしくは多置換されており、ただし1個以上のCH基は酸素原子が互いに直接連結しないようにして、それぞれの場合で互いに独立に-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCOO-または-C≡C-で置き換えられてよく、
11は、
【化3】
を表し、
nは、0または1を表し、および
21、A31およびA41は互いに独立に、
【化4】
を表し、
ただしLは、それぞれの出現で同一または異なってF、ClおよびBrから選択されるハロゲンであり、および
およびRは互いに独立に、F、CF、OCF、CNおよび1~15個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝状のアルキルもしくはアルコキシまたは2~15個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝状のアルケニルから選択される基を表し、該基は無置換、CNもしくはCFで一置換またはハロゲンで一置換もしくは多置換されており、ただし1個以上のCH基は酸素原子が互いに直接連結しないようにして、それぞれの場合で互いに独立に-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCOO-または-C≡C-で置き換えられてよく、および
、LおよびLは、互いに独立にHまたはFを表す。
【0106】
本発明により使用される媒体は媒体の全内容物を基準にして、式IおよびIIの化合物から選択される1種類以上のメソゲン化合物を少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも10重量%、より更に好ましくは15重量%含むことが特に好ましい。
【0107】
好適に高い光学異方性に加えて本発明による媒体は有利には、良好な光安定性および好適に高い透明点と組み合わせて好適に高い電圧保持率(VHR:voltage holding ratio)を示し得る。
【0108】
反応性メソゲンを特に規定されたような低い量で使用し、好ましくは低濃度で使用できる高いHTPを有するキラルドーパントを使用することで、有利に高い透明点を維持することに寄与し得る。
【0109】
媒体はコレステリックまたはカイラルネマチック媒体である。コレステリック液晶(CLC:cholesteric liquid crystal)は通常、初期状態では例えばある波長の光を反射する平面構造を持ち、交流電圧パルスの印加によってフォーカルコニックな光散乱構造に、またはその逆にスイッチできる媒体を含んでいる。より強い電圧、特により強い電圧パルスを印加すると、CLC媒体はホメオトロピックな透明状態にスイッチし、そこから電圧の急速なオフ後に平面状態に、またはゆっくりとオフ後にフォーカルコニック状態に緩和できる。
【0110】
平面状のテクスチャにおいてブラッグ反射が起こり、反射光はコレステリックヘリックスと同じ掌性を持つ。
【0111】
フォーカルコニック状態では、らせん軸がランダムに配置され、ドメイン境界での屈折率の不連続な空間変化のため、テクスチャに光散乱が見られる。
【0112】
平面およびフォーカルコニックコンフィギュレーションの両者は外部電界がない状態において、通常、安定である。CLCのテクスチャが平面からフォーカルコニックにスイッチと、ブラッグ反射がなくなり、らせん軸がランダムに分布するため、入射光が散乱される。
【0113】
しかしながら状態間のスイッチは、通常、正の誘電異方性(Δε>0)を持つ液晶分子および垂直電界の間の誘電カップルによってコレステリックヘリックスが完全にほどけるホメオトロピック状態によってのみ達成される。
【0114】
本発明による実施形態においてスイッチ層のヘイズ不透明状態は、上記フォーカルコニック状態であり得る。
【0115】
あるいは好ましい実施形態によれば本発明において、高いヘイズ状態はポリドメイン構造によって形成される。好ましくは、このポリドメイン構造は十分に強い散乱を生じる一方で、ブラッグ型反射挙動が、少なくともある程度は依然として観察可能なままである。ポリドメインを含むか好ましくはポリドメインから成るこの相では、らせん軸の方向は通常ドメインごとに異なり、ドメイン境界が通常発生する。しかしながらマクロ的には、この相は均質に見え、特に人間の目には均質に不透明またはヘイズに見え、層領域全体にわたって目に見える欠陥がないことがある。
【0116】
ポリドメイン構造は、例えば、平面的またはホメオトロピックに配向した従来の配向膜を使用して得ることができ、有利には比較的低い電圧でポリドメイン状態へのスイッチ可能である場合がある。しかしながらポリドメイン構造は、また配向層が存在しない場合にも得ることができる。
【0117】
加えてポリマー成分が変調材料およびスイッチ層に存在することで、散乱性能に好影響を与え、安定化させることができる。
【0118】
好ましい実施形態において非散乱状態または透明状態は、上記ホメオトロピック状態によって形成できる。この点において現在得られる有利に高いVHRは、自己放電挙動に対してこの状態の素子を安定化させるのに有用であり、よって著しく低いリフレッシュ速度および/または低い電力消費であっても状態を維持できる。
【0119】
あるいは非散乱状態または透明状態は、上記平面テクスチャによって形成できる。
【0120】
キラルネマチックまたはコレステリック媒体を使用すると、比較的安定した状態、さらには双安定性を提供できるため、この媒体からなるデバイスの消費エネルギーが少なくなるという利点がある。特に電界をオフにした後、少なくともかなりの時間、それぞれの状態を保持することができ、電圧のアドレスまたはリフレッシュをより頻繁に行うことが可能になり得る。
【0121】
好ましい実施形態において光バルブは交流電圧V1の印加により光学的に透明な状態にスイッチ可能であり、交流電圧V2の印加により不透明な状態にスイッチ可能であり、V1>V2である。
【0122】
ある実施形態においてスイッチされた透明状態、特にホメオトロピック配向を有する状態は15V~100V、より好ましくは20V~80V、特に25V~50Vの範囲内の電圧を加えることによって維持される一方で、スイッチされた不透明状態は、0Vであっても、少なくともある時間安定であり得る。
【0123】
好ましくは本発明による光バルブは二重周波数アドレスを使用しないので、必要な電子機器を簡素化することができる。
【0124】
上記の通り媒体は好ましくは、780nmを超える波長で選択的な反射を示す。従って媒体は好ましくは、近赤外線(NIR)スペクトル領域で反射する。
【0125】
キラルドーパントおよびそれらの濃度は、媒体のコレステリックピッチが適切に設定または調整されるように提供できる。CLC媒体は例えば、ネマチックLC媒体に高いツイスト力を有するキラルドーパントをドープすることで調製できる。そして誘発されたコレステリックらせんのピッチpは式(1)に従って、キラルドーパントの濃度cおよびらせんツイスト力HTPによって与えられる。
【0126】
【数1】
【0127】
また個々のドーパントのHTPの温度依存性を補償し、らっせんピッチおよびCLC媒体の反射波長の温度依存性を小さくするために、例えば2種類以上のドーパントを使用することも可能である。そして合計HTP(HTPtotal)については、近似的に(2)式が成立する。
【0128】
【数2】
【0129】
式中cは、それぞれ個々のドーパントの濃度であり、HTPは、それぞれ個々のドーパントのらせんツイスト力である。
【0130】
液晶媒体は1種類以上のキラル化合物、特に1種類以上のキラルドーパントを含む。キラルドーパントは好ましくは高い絶対値のHTPを有し、一般にメソゲン基礎混合物に比較的低濃度で添加することができ、アキラル成分中で良好な溶解性を有する。2種類以上のキラル化合物が用いられる場合、それらは同じまたは反対の回転方向およびツイストの同じまたは反対の温度依存性を有してよい。
【0131】
本発明による1種類以上のキラル化合物は、好ましくはメルク社より市販の液晶混合物MLC-6828中において好ましくは5μm-1以上、より好ましくは10μm-1以上、より更に好ましくは15μm-1以上の絶対値のヘリカルツイスト力を有する。好ましくはメルク社より市販の液晶混合物MLC-6828中において20μm-1以上、より好ましくは40μm-1以上、より更に好ましくは60μm-1以上、最も好ましく波80μm-1以上~260μm-1以下の範囲内の絶対値のヘリカルツイスト力(HTP:helical twisting power)を有するキラル化合物が特に好ましい。
【0132】
1種類以上のキラル化合物は媒体の全体内容物を基準にして、好ましくは2重量%以下、より好ましくは1重量%以下、より更に好ましくは0.5重量%以下の量で液晶媒体中に含まれる。
【0133】
本発明の好ましい実施形態においてキラル成分は、全てが同一の符号のHTPを有する2種類以上のキラル化合物から成る。個々の化合物のHTPの温度依存性は、高くても低くてもよい。媒体のピッチの温度依存性は、HTPの異なる温度依存性を有する化合物を対応する比率で混合することで補償できる。
【0134】
適切なキラルドーパントは当該分野において既知であり例えば、コレステリルノナノアート、R/S-811、R/S-1011、R/S-2011、R/S-3011、R/S-4011、R/S-5011、特にR/S-5011、B(OC)2CH-C-3またはCB15(全てメルク社、ダルムシュタット市、ドイツ国)などの幾つかは商業的に入手可能である。
【0135】
特に適切なドーパントは、1個以上のキラル基および1個以上のメソゲン基、またはキラル基と共にメソゲン基を形成する1個以上の芳香族または脂環族基を含む化合物である。
【0136】
適切なキラル基は例えば、キラル分枝炭化水素基、キラルエタンジオール類、ビナフトール類またはジオキソラン類、更に、糖誘導体、糖アルコール、糖酸、乳酸、キラル置換グリコール、ステロイド誘導体、テルペン誘導体、アミノ酸または少数で好ましくは1~5個のアミノ酸配列から成る群より選択される一価または多価キラル基である。
【0137】
好ましいキラル基は、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、アラビノースおよびデキストロースなどの糖誘導体;例えば、ソルビトール、マンニトール、イジトール、ガラクチトールまたはそれらの無水誘導体などの糖アルコール、特に、ジアンヒドロソルビド(1,4:3,6-ジアンヒドロ-D-ソルビド、イソソルビド)、ジアンヒドロマンニトール(イソソルビトール)またはジアンヒドロイジトール(イソイジトール)などのジアンヒドロヘキシトール類;例えば、グルコン酸、グロン酸およびケトグロン酸などの糖酸;例えば、1個以上のCH基がアルキルもしくはアルコキシで置換されたモノもしくはオリゴエチレンまたはプロピレングリコールなどのキラル置換グリコール基;例えば、アラニン、バリン、フェニルグリシンもしくはフェニルアラニンなどのアミノ酸またはこれらのアミノ酸の1~5個の配列;例えば、コレステリルまたはコール酸基などのステロイド誘導体;例えば、メンチル、ネオメンチル、カンフェイル、ピネイル、ターピンイル、イソロンギホリル、フェンチル、カレイル、ミルテニル、ノピル、ゲラニル、リナロイル、ネリル、シトロネリルまたはジヒドロシトロネリルなどのテルペン誘導体である。
【0138】
好適なキラル基およびメソゲン性キラル化合物は例えば、ドイツ国特許第34 25 503号明細書、ドイツ国特許第35 34 777号明細書、ドイツ国特許第35 34 778号明細書、ドイツ国特許第35 34 779号明細書およびドイツ国特許第35 34 780号明細書、ドイツ国特許第43 42 280号明細書、欧州特許第01 038 941号明細書ならびにドイツ国特許第195 41 820号明細書に記載されている。
【0139】
本発明によって使用される好ましいキラル化合物は、以下の化合物の群から選択される。
【0140】
ある実施形態において以下の式A-1~A-IIIの化合物から成る群より選択されるドーパントが好ましい。
【0141】
【化5】
【0142】
式中、
a11およびRa12は、それぞれ互いに独立に、2~9個、好ましくは7個までの炭素原子を有するアルキル、オキサアルキルまたはアルケニルであり、あるいはRa11は、メチルまたは1~9個の炭素原子を有するアルコキシであり、好ましくは両者が、アルキル、好ましくはn-アルキルであり、
a21およびRa22は、それぞれ互いに独立に、1~9個、好ましくは7個までの炭素原子を有するアルキルまたはアルコキシ、2~9個、好ましくは7個までの炭素原子を有するオキサアルキル、アルケニルまたはアルケニルオキシであり、好ましくは両者が、アルキル、好ましくはn-アルキルであり、
a31およびRa32は、それぞれ互いに独立に、2~9個、好ましくは7個までの炭素原子を有するアルキル、オキサアルキルまたはアルケニルであり、あるいはRa11は、メチルまたは1~9個の炭素原子を有するアルコキシであり、好ましくは両者が、アルキル、好ましくはn-アルキルである。
【0143】
以下の式の化合物から成る群より選択されるキラルドーパントが特に好ましい。
【0144】
【化6】
【0145】
更に好ましいドーパントは、以下の式A-IVのイソソルビド、イソマンニトールまたはイソイジトールの誘導体である。
【0146】
【化7】
【0147】
式中、
【化8】
【0148】
好ましくは、ジアンヒドロソルビトールである。
【0149】
および例えば、ジフェニルエタンジオール(ヒドロベンゾイン)、特に以下の式A-Vのメソゲン性ヒドロベンゾイン誘導体(示していないが、(R、S)、(S、R)、(R、R)および(S、S)エナンチオマーを含む。)などのキラルエタンジオール類である。
【0150】
【化9】
【0151】
式中、
【化10】
それぞれ互いに独立に、Lで一置換、二置換もしくは三置換されてもよい1,4-フェニレン、または1,4-シクロヘキシレンであり、
Lは、H、F、Cl、CNまたは1~7個の炭素原子を有しハロゲン化されていてもよいアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニルもしくはアルコキシカルボニルオキシであり、
cは、0または1であり、
は、-COO-、-OCO-、-CHCH-または単結合であり、および
は、1~12個の炭素原子を有するアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニルまたはアルキルカルボニルオキシである。
【0152】
式A-IVの化合物は、国際公開第98/00428号に記載されている。式A-Vの化合物は、英国特許出願公開第2,328,207号明細書に記載されている。
【0153】
他の実施形態において非常に特に好ましいドーパントは、国際公開第02/94805号に記載される通りのキラルビナフチル誘導体、国際公開第02/34739号に記載される通りのキラルビナフトールアセタール誘導体、国際公開第02/06265号に記載される通りのキラルなTADDOL誘導体、ならびに国際公開第02/06196号および国際公開第02/06195号に記載される通りの少なくとも1個のフッ素化された架橋基および末端または中央キラル基を有するキラルドーパントである。
【0154】
式A-VIのキラル化合物が特に好ましい。
【0155】
【化11】
【0156】
式中、
、X、YおよびYは、それぞれ互いに独立に、F、Cl、Br、I、CN、SCN、SF、1~25個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝状のアルキル(該基は、F、Cl、Br、IまたはCNで一置換または多置換されてもよく、ただし加えて、1個以上の隣接していないCH基は、それぞれ互いに独立に、Oおよび/またはS原子が互いに直接結合しないようにして、-O-、-S-、-NH-、NR-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCOO-、-S-CO-、-CO-S-、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられていてもよい。)、重合性基または20個までの炭素原子を有するシクロアルキルもしくはアリール(該基は、ハロゲン、好ましくはFで一置換もしくは多置換されているか、重合性基で一置換もしくは多置換されていてよい。)であり、
およびxは、それぞれ互いに独立に、0、1または2であり、
およびyは、それぞれ互いに独立に、0、1、2、3または4であり、
およびBは、それぞれ互いに独立に、芳香族または完全もしくは部分飽和脂肪族6員環(ただし、1個以上のCH基はN原子で置き換えられていてもよく、1個以上の隣接していないCH基はOおよび/またはSで置き換えられていてもい。)であり、
およびWは、それぞれ互いに独立に、-Z-A-(Z-A-Rであり、もしくは2個のうちの一方はRまたはAであり、ただし、両者は同時にHではなく、または
【化12】
およびUは、それぞれ互いに独立に、CH、O、S、COまたはCSであり、
およびVは、それぞれ互いに独立に、(CH(ただし、1~4個の隣接していないCH基はOおよび/またはSで置き換えられていてもよい。)であり、ならびにVおよびVの一方は単結合であり、
【化13】
両者が単結合であり、
およびZは、それぞれ互いに独立に、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-O-COO-、-CO-NR-、-NR-CO-、-O-CH-、-CH-O-、-S-CH-、-CH-S-、-CF-O-、-O-CF-、-CF-S-、-S-CF-、-CH-CH-、-CF-CH-、-CH-CF-、-CF-CF-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-、-CH=CH-、-CF=CH-、-CH=CF-、-CF=CF-、-C≡C-、これらの基の2個の組合せ(ただし、2個のOおよび/またはSおよび/またはN原子は互いに直接結合しておらず、好ましくは、-CH=CH-COO-または-COO-CH=CH-である。)または単結合であり、
、AおよびAは、それぞれ互いに独立に、1,4-フェニレン(ただし、1個または2個の隣接していないCH基はNで置き換えられていてもよい。)、1,4-シクロヘキシレン(ただし、1個または2個の隣接していないCH基はOおよび/またはSで置き換えられていてもよい。)、1,3-ジオキソラン-4,5-ジイル、1,4-シクロヘキセニレン、1,4-ビシクロ[2.2.2]オクチレン、ピペリジン-1,4-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイル、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイルまたは1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル(ただし、これらの基のそれぞれはLで一置換または多置換されていてもよい。)であり、加えてAは単結合であり、
Lはハロゲン原子、好ましくは、F、CN、NO、1~7個の炭素原子を有するアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニルまたはアルコキシカルボニルオキシ(ただし1個以上のH原子は、FまたはClで置き換えられていてもよい。)であり、
mは、それぞれの場合で独立に、0、1、2または3であり、および
RおよびRは、それぞれ互いに独立に、H、F、Cl、Br、I、CN、SCN、SF、それぞれ1個もしくは3個~25個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分岐状アルキル(該基は、F、Cl、Br、IまたはCNで一置換または多置換されていてもよく、ただし1個以上の隣接していないCH基は、-O-、-S-、-NH-、-NR-、-CO-、-COO-、-OCO-、-O-COO-、-S-CO-、-CO-S-、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられていてもよく、ただし、2個のOおよび/またはS原子は互いに直接結合されていない。)または重合性基である。
【0157】
式A-VI-1のキラルナフチル誘導体が特に好ましい。
【0158】
【化14】
【0159】
特に、以下の式A-VI-1a~A-VI-1cから選択されるものである。
【0160】
【化15】
【0161】
式中、環BおよびZは、式A-IVで定義される通りであり、より好ましくはZは-OCO-または単結合であり、
は式A-IVで定義される通りか、Hか、1~4個の炭素原子を有するアルキルであり、および
bは、0、1または2である。
【0162】
更に、式A-VI-2のキラルビナフチル誘導体が特に好ましい。
【0163】
【化16】
【0164】
特に、以下の式A-VI-2a~A-VI-2fから選択されるものである。
【0165】
【化17】
【0166】
【化18】
【0167】
式中、Rは式A-VIで定義される通りであり、XはH、F、Cl、CNまたはR、好ましくはFである。
【0168】
特に好ましい実施形態において本発明によるキラル媒体は、式R-5011およびS-5011の1種類以上の化合物を含む。ある実施形態において媒体は、R-5011を含む。他の実施形態において媒体は、S-5011を含む。
【0169】
本発明によるLC媒体は好ましくおよび有利に、高い信頼性および高い電気抵抗率を示す。また本発明によるLC媒体は好ましくはおよび有利に、高い電圧保持率(VHR:voltage holding ratio)を示す。S.Matsら著、Liquid Crystals第5巻、第1320頁(1989年);K.Niwaら著、Proc.SID Conference、サンフランシスコ、1984年6月、第304頁(1984年);T.JacobおよびU.Finkenzeller著、「Merck Liquid Crystals-Physical Properties of Liquid Crystals」、1997年を参照。本発明によるLC媒体のVHRは、好ましくは75%以上、より好ましくは85%以上、より更に好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上である。他に記載しない限りVHRの測定は、T.Jacob、U.Finkenzeller著、「Merck Liquid Crystals-Physical Properties of Liquid Crystals」、1997年に記載される通りに行われる。
【0170】
本発明によれば方法において、媒体の全内容物を基準に4重量%以下の量の1種類以上の重合性メソゲン化合物を含む液晶媒体が提供される。
【0171】
1種類以上の重合性メソゲン化合物は、媒体の全内容物を基準に好ましくは3重量%以下の量、より更に好ましくは2重量%以下の量、特に好ましくは1.25重量%以下の量で媒体中に含有される。
【0172】
好ましくは1種類以上の重合性メソゲン化合物は、1個または2個以上のアクリレートおよび/またはメタクリレート基を含む。
【0173】
本発明による媒体において好ましくは1種類以上の重合性、硬化性または硬化可能な化合物、好ましくは1種類以上の光硬化性モノマーが提供され、変調材料およびスイッチ層におけるポリマー成分に対し前駆体として有利に機能できる。
【0174】
使用される反応性メソゲン(RM:reactive mesogen)またはメソゲンモノマーは、メソゲン基と1個以上の重合性基、即ち重合に適する官能基とを含む。
【0175】
特に好ましい実施形態において使用される重合性化合物(1種類または多種類)は反応性メソゲン(1種類または多種類)のみを含み、即ち全ての反応性モノマーはメソゲンである。あるいはRMは、1種類以上の非メソゲン重合性化合物と組み合わせて提供され得る。
【0176】
RMは、一反応性および/または二反応性もしくは多反応性でよい。好ましくは使用されるRMは二反応性または多反応性、特に二反応性である。ある実施形態において1種類以上の二反応性RMが、少なくとも1種類の一反応性RMと組み合わせて使用される。
【0177】
本発明の好ましい実施形態において、1種類以上の重合性メソゲン化合物は式Mの化合物から選択される。
【0178】
【化19】
【0179】
式中、個々の基は次の通り定義される:
MaおよびRMbは、それぞれ互いに独立に、P、P-Sp-、H、F、Cl、Br、I、-CN、-NO、-NCO、-NCS、-OCN、-SCN、SFまたは1~25個の炭素原子を有し直鎖状もしくは分岐状のアルキルであって、ただし、また隣接しないCH基は、それぞれ互いに独立に酸素および/または硫黄原子が互いに直接連結されないようにして、-C(R)=C(R00)-、-C≡C-、-N(R00)-、-O-、-S-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-で置き換えられてもよく、ただし、また1個以上の水素原子は、F、Cl、Br、I、CN、PまたはP-Sp-で置き換えられてもよく、ただし好ましくはRMaおよびRMb基の少なくとも1個は、PまたはP-Sp-基であるか含んでおり、
好ましくは
MaおよびRMbは、それぞれ互いに独立に、P、P-Sp-、H、ハロゲン、SF、NO、アルキル、アルケニルまたはアルキニル基であり、ただし好ましくはRMaおよびRMb基の少なくとも1個は、PまたはP-Sp-基であるか含んでおり、
Pは、重合性基であり、
Spは、スペーサー基または単結合であり、
M1およびAM2は、それぞれ互いに独立に、芳香族、ヘテロ芳香族、脂環式またはヘテロ環式基であり、好ましくは、4~25個の環原子、好ましくは炭素原子を有し、該基は、また、縮合環を包含するか含有してもよく、該基はLで単置換または多置換されていてもよく、
Lは、P、P-Sp-、OH、CHOH、F、Cl、Br、I、-CN、-NO、-NCO、-NCS、-OCN、-SCN、-C(=O)N(R、-C(=O)Y、-C(=O)R、-N(R、置換されていてもよいシリル、6~20個の炭素原子を有する置換されていてもよいアリール、または1~25個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状のアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシ、または2~25個の炭素原子を有するアルケニルまたはアルキニル基であって、ただし、また1個以上の水素原子は、F、Cl、PまたはP-Sp-で置き換えられていてもよく、好ましくは、P、P-Sp-、H、OH、CHOH、ハロゲン、SF、NO、アルキル、アルケニルまたはアルキニル基であって、
はハロゲン、好ましくはFであり、
M1は、-O-、-S-、-CO-、-CO-O-、-OCO-、-O-CO-O-、-OCH-、-CHO-、-SCH-、-CHS-、-CFO-、-OCF-、-CFS-、-SCF-、-(CHn1-、-CFCH-、-CHCF-、-(CFn1-、-CH=CH-、-CF=CF-、-C≡C-、-CH=CH-、-COO-、-OCO-CH=CH-、-CR00または単結合であり、
およびR00は、それぞれ互いに独立に、Hまたは1~12個の炭素原子を有するアルキルであり、
は、P、P-Sp-、H、ハロゲン、1~25個の炭素原子を有する直鎖状、分岐状または環状のアルキルであって、ただし、また1個以上の隣接していないCH基は、酸素および/または硫黄原子が互いに直接連結しないようにして、-O-、-S-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-で置き換えられていてもよく、ただし、また1個以上の水素原子は、F、Cl、PまたはP-Sp-で置き換えられていてもよく、6~40個の炭素原子を有する置換されていてもよいアリールまたはアリールオキシ基、または、2~40個の炭素原子を有する置換されていてもよいヘテロアリールまたはヘテロアリールオキシ基であり、
m1は、0、1、2、3または4であり、および
n1は、1、2、3または4であり、
ただし、RMa、RMbおよび存在する置換基Lの群からの少なくとも1個の置換基、好ましくは1個、2個または3個の置換基、より好ましくは1個または2個の置換基は、PまたはP-Sp-基であるか、少なくとも1個のPまたはP-Sp-基を含む。
【0180】
maおよびRmbの一方または両方がPまたはP-Sp-である式Mの化合物が特に好ましい。
【0181】
本発明による液晶媒体における使用に適しており好ましいRMは例えば、以下の式から選択される。
【0182】
【化20】
【0183】
【化21】
【0184】
【化22】
【0185】
【化23】
【0186】
【化24】
【0187】
【化25】
【0188】
式中、個々の基は以下の通り定義される:
~Pは、それぞれ互いに独立に重合性基(好ましくはPに対して、上および下で特定される定義を有する。)、より好ましくはアクリレート、メタクリレート、フルオロアクリレート、オキセタン、ビニル、ビニルオキシまたはエポキシ基であり、
Sp~Spは、それぞれ互いに独立に単結合またはスペーサー基(好ましくは上および下で与えられるSpの定義の1つを有する。)、より好ましくは-(CHp1-、-(CHp1-O-、-(CHp1-CO-O-または-(CHp1-O-CO-O-であり、ただしp1は1~12の整数であり、ただし最後に述べた基において隣接する環への結合は酸素原子を介しており、ただしP-Sp-、P-Sp-およびP-Sp-基の1個は、Raaでもよく、
aaは、H、F、Cl、CN、または、1~25個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状のアルキル(ただし、また1個以上の隣接していないCH基は、それぞれ互いに独立に酸素および/または硫黄原子が互いに直接連結しないようにして、-C(R)=C(R00)-、-C≡C-、-N(R)-、-O-、-S-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-で置き換えられていてもよく、ただし、また1個以上の水素原子は、F、Cl、CNまたはP-Sp-で置き換えられていてもよい。)、より好ましくは1~12個の炭素原子を有し直鎖状または分岐状で一フッ素化または多フッ素化されていてもよいアルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニルまたはアルキルカルボニルオキシ(ただし、アルケニルおよびアルキニル基は少なくとも2個の炭素原子を有し、分岐状の基は少なくとも3個の炭素原子を有する。)であり、
およびR00は、それぞれの場合で同一または異なって、それぞれ互いに独立にHまたは1~12個の炭素原子を有するアルキルであり、
およびRは、それぞれ互いに独立に、H、F、CHまたはCFであり、
は、-O-、-CO-、-C(R)-または-CFCF-であり、
およびZは、それぞれ互いに独立に、-CO-O-、-O-CO-、-CHO-、-OCH-、-CFO-、-OCF-または-(CH-を表し、ただしnは、2、3または4であり、
Lは、それぞれの場合で同一または異なって、上式Mで与えられる意味を有し、好ましくはF、Cl、CNまたは1~12個の炭素原子を有し直鎖状または分岐状で一フッ素化または多フッ素化されていてもよいアルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニルまたはアルキルカルボニルオキシ、好ましくはFであり、
L’およびL”は、それぞれ互いに独立に、H、FまたはClであり、
~Xは互いに独立に、-CO-O-、-O-CO-または単結合であり、
rは、0、1、2、3または4であり、
sは、0、1、2または3であり、
tは、0、1または2であり、および
xは、0または1である。
【0189】
適切な重合性化合物は例えば、表Gに列記されている。特に好ましい反応性メソゲンは、それぞれ例1および3に示される通りの式RM-A、RM-BおよびRM-Cの化合物である。
【0190】
重合性化合物は、少なくとも1個の重合性基を有する。重合性基は好ましくは、CH=CW-COO-、
【化26】
CH=CW-(O)k1-、CH-CH=CH-O-、(CH=CH)CH-OCO-、(CH=CH-CHCH-OCO-、(CH=CH)CH-O-、(CH=CH-CHN-、HO-CW-、HS-CW-、HWN-、HO-CW-NH-、CH=CW-CO-NH-、CH=CH-(COO)k1-Phe-(O)k2-、Phe-CH=CH-、HOOC-、OCN-から選択され、ここでWは、H、Cl、CN、フェニルまたは1~5個のC原子を有するアルキル、特にH、ClまたはCHであり、WおよびWは、それぞれ互いに独立にHまたは1~5個のC原子を有するアルキル、特にH、メチル、エチルまたはn-プロピルであり、Pheは1,4-フェニレンであり、k1およびk2は、それぞれ互いに独立に0または1である。重合性または反応性基は好ましくは、ビニル基、アクリレート基、メタクリレート基、フルオロアクリレート基、オキセタン基またはエポキシ基、特に好ましくはアクリレート基またはメタクリレート基から選択される。
【0191】
ある実施形態において1種類以上のRMに加えて、非メソゲン性モノマーが媒体に含まれる。好ましくは、1種類以上の重合性化合物、非メソゲン性モノマーまたはRMのいずれか、または両者はアクリレート類、メタクリレート類、フルオロアクリレート類および酢酸ビニル類から選択され、ただし、より好ましくは組成物は更に、ジアクリレート類、ジメタクリレート類、トリアクリレート類およびトリメタクリレート類から好ましくは選択される1種類以上の二反応性および/または三反応性重合性化合物を含む。
【0192】
好ましい実施形態において本発明による媒体は、1種類以上の非メソゲン性モノアクリレート類、特に好ましくはメチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシ-ブチルアクリレートおよびイソボルニルアクリレートから選択される1種類以上の化合物を含む。
【0193】
追加的または代替的に本発明による媒体は好ましくは、1種類以上の非メソゲン性モノメタクリレート類、特に好ましくはメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ノニルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、2-エチル-ヘキシルメタクリレート、2-ヒドロキシ-エチルメタクリレート、2-ヒドロキシ-ブチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレートおよび1-アダマンチルメタクリレートから選択される1種類以上の化合物を含む。
【0194】
少なくとも1種類の架橋剤、即ち2個以上の重合性基を含む重合性化合物を媒体に添加することが特に好ましく、ただし好ましくは二反応性または多反応性RMが使用される。
【0195】
これに関して二反応性および多反応性化合物は、それら自体のポリマーネットワークを形成するためにおよび/または実質的に一反応性化合物の重合から形成されるポリマー鎖を架橋するために役立ち得る。
【0196】
代替的または追加的に、当該分野で既知の従来の架橋剤を使用できる。二反応性または多反応性アクリレート類および/またはメタクリレート類を追加して提供することが特に好ましい。特に好ましい化合物は、エチレンジアクリレート、プロピレンジアクリレート、ブチレンジアクリレート、ペンチレンジアクリレート、ヘキシレンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エチレンジメタクリレート、プロピレンジメタクリレート、ブチレンジメタクリレート、ペンチレンジメタクリレート、ヘキシレンジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリテート、トリメチルプロパントリメタクリレートおよびペンタエリスリトールトリアクリレートから選択される。
【0197】
一反応性モノマーと二反応性または多反応性モノマーとの比率は、形成される重合体成分の特性に影響を与えるように有利に設定および調整できる。
【0198】
反応を促進するために適切で従来から使用されている開始剤、特に光開始剤、例えばアゾ化合物またはLuperox型開始剤などの有機過酸化物を媒体に添加できる。更に重合のための適切な条件ならびに開始剤の適切な種類および量は当技術分野で既知であり、文献に記載されている。重合開始剤が媒体に含まれる場合、光開始剤の使用が好ましい。
【0199】
例えばUV光によって重合する場合、UV照射下で分解して重合反応を開始させるフリーラジカルまたはイオンを生成する光開始剤を使用できる。アクリレートまたはメタクリレート基を重合するためには、好ましくはラジカル光開始剤が使用される。ビニル、エポキシドまたはオキセタン基を重合するためには、好ましくはカチオン光開始剤が使用される。また加熱すると分解して重合を開始するフリーラジカルまたはイオンを生成する熱重合開始剤を使用することも可能である。典型的なラジカル光開始剤は例えば、商業的に入手可能なIrgacure(登録商標)、例えばIrgacure 651(BASF社より入手可能、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オンを含む。)またはDarocure(登録商標)(チバガイギー社、バーゼル市、スイス国)である。典型的なカチオン性光開始剤は例えば、UVI 6974(ユニオンカーバイド社)である。更なる有用な光開始剤としてはα-アミノケトン類、例えばIrgacure 907、クマリン類、ホスフィンオキシド類、例えばIrgacure 2100、アシルホスフィン類、例えばIrgacure 819が挙げられる。
【0200】
特定の実施形態において添加される重合開始剤、好ましくは光開始剤は、1種類以上のメソゲン重合開始剤、好ましくは1種類以上のメソゲン光開始剤、即ち重合を開始でき、それ自体は異方性およびメソゲン特性を有する1種類以上の反応性化合物を含み、好ましくは成る。
【0201】
しかしながら特に好ましい実施形態によれば、重合開始剤、特に光重合開始剤は使用されない。ある場合、これはVHRを改善でき、スイッチ層においてイオンを生成する傾向を低減できる。これは、良好な信頼性および安定性を有する変調材料および光バルブを得ることおよび維持することに寄与し得る。従って本発明による方法で使用するための液晶媒体において好ましい実施形態によれば、重合開始剤は添加されない。
【0202】
良好なVHRを維持および達成するために好ましくは、重合の反応生成物中の不純物を最小限に保つか、実質的に回避する。特に残留する反応性種および帯電した汚染物質は、適切および好ましくは最小限に保たれる。例えばUV重合が行われる場合、好ましい実施形態において可視スペクトルに近づく比較的長い波長を有する光が用いられ、好ましくは340nm~380nm、より更に好ましくは360nm~380nmの範囲内のUV光が有利に使用される。このようにしてLC媒体の成分、特に1種類以上の二色性色素の好ましくない光劣化または分解を回避できるか、少なくとも最小化できる。光重合開始剤を使用する場合、照射波長および光重合開始剤を適切に適合させるか調整できる。
【0203】
光重合開始剤を使用しない好ましい場合、少なくとも数種類の重合性化合物が光反応を起こし得て、それ自体で重合反応を開始できるように光の波長範囲を設定でき、一方で更にLC媒体の非反応成分、特に1種類以上の二色性色素の劣化または分解を回避できるか少なくとも最小化できる。所望の波長範囲を得て設定することは、当該技術分野において既知の従来法、例えば光学フィルター、特にエッジフィルターを使用することで達成できる。
【0204】
本発明による媒体は、上および下に規定する1種類以上の重合性メソゲン化合物を媒体に供給することで重合体構造をその場で製造するために有利に使用できることが驚くべきことに見出された。更に1種類以上の重合性メソゲン化合物を1種類以上の二色性色素と共に適切に選択し、二色性色素の吸収特性に関して光重合で使用する光の波長を設定し調整することで、更に二色性色素およびその性能を維持しながら、材料中に所望の重合および重合生成物を与える効率的で堅牢な方法を提供できる。ある実施形態において照射光の波長またはそれぞれの波長スペクトルは、二色性色素の吸収帯との重なりが最小となるように選択される。
【0205】
媒体中の重合性化合物は重合後に安定な系が得られるように選択でき、例えば熱加熱工程などの更なる処理工程においても安定であり、良好なVHRを維持できる。
【0206】
更に本発明によれば、比較的少量の重合性メソゲン化合物(1種類または多種類)のみが使用され、安定性に有利な影響を与え、好ましくない劣化を最小できる。
【0207】
本発明によれば媒体は、ポリマー成分、特にポリマーネットワークを含む変調材料を調製するために使用され、ポリマー成分は、上および下に記載する通りの重合性化合物(1種類または多種類)を重合することによって得られるか、それぞれから得ることが可能である。
【0208】
ポリマー成分の提供は、LC媒体の1つ以上の状態または相を安定化させるのに有益であり得る。
【0209】
ポリマー成分は媒体の全内容物を基準に、好ましくは0.1重量%~4重量%の範囲、より好ましくは0.5重量%~1.5重量%の範囲の量で媒体中に含有される。
【0210】
ポリマー成分は、得られる材料の有利な性質に寄与し得る。例えばポリマー成分は、リフレッシュまたは電圧の再印加なしに、このヘイズ状態をより長期間、特に数日間まで維持することができるような、著しく安定したヘイズ状態、特にポリドメイン状態に寄与することができる。また速いスイッチ時間、特に観察されるような優れたτoffスイッチ時間の達成にも寄与できる。
【0211】
更に本発明によるCLC媒体を含む材料中に提供されるようなポリマー成分は、散乱効率および外観、例えば均一性および視野角依存性の点で有利に影響することができる。それによって、斜めの視野角の下で生じることがある色アーティファクトが著しく低減され得る。
【0212】
好ましい実施形態において変調材料は液晶媒体およびポリマー成分を含み、ポリマー成分は反応性メソゲンの重合によって得られるポリマーネットワークを含み、反応性メソゲンは好ましくはアクリレート基、特に好ましくはモノアクリレート基、ジアクリレート基またはトリアクリレート基、ビニルエーテル基およびエポキシド基から選ばれる少なくとも1個の基を含む。本明細書で使用されるアクリレート基(1個または複数個)を含む化合物は、アクリルモノマー、メタクリルモノマー、およびそのようなモノマーの混合物を含む。
【0213】
重合は、常法により行うことができる。重合は、1段以上の工程で行うことができる。本発明による方法において重合性化合物(1種類または多種類)の重合は化学線放射への曝露によって達成され、化学線放射への曝露とは、UV光、可視光またはIR光などの光照射、X線またはガンマ線による照射、またはイオンまたは電子のような高エネルギー粒子による照射を意味する。好ましい実施形態において、フリーラジカル重合が行われる。
【0214】
光重合には、UV線を使用することが好ましい。また可視光、特に紫色光または青色光と共にUV光を併用することも可能である。例えば340nm~420nm、好ましくは360nm~405nmのスペクトル範囲の光を使用できる。また代替の実施形態において可視光のみ、特に380nm~415nmの範囲の光、例えばレーザー光源からの可視光を使用することも可能である。
【0215】
重合は、適当な温度で行うことができる。ある実施形態において重合は、メソゲン混合物の透明点より低い温度で行われる。しかしながら代替の実施形態において、重合を透明点以上において実施することも可能である。
【0216】
当該方法において重合は光照射によって、即ち光、好ましくはUV光によって行われる。化学線放射のための光源として、例えば単一のUVランプまたは一組のUVランプを使用できる。高いランプパワーを使用する場合、硬化時間を短縮できる。光放射のための別の可能な光源は、例えばUVレーザー、可視レーザーまたはIRレーザーなどのレーザーである。
【0217】
ある実施形態において重合は、色素ドープキラル液晶ホスト混合物に、好ましくは二反応性化合物および任意に適切な光開始剤を含む1種類以上の重合性化合物を添加し、UV照射への曝露により重合性化合物を重合することで行われる。
【0218】
好ましくは重合は、キラル液晶ホスト混合物の予め定められた状態に維持された電気光学的セル内で行われる。好ましい実施形態において重合、好ましくはUV光を用いた重合は、媒体がホメオトロピック状態にあるときに行われ、典型的に好ましくは電界が印加される。
【0219】
層中における材料の光重合のために好ましくは30秒~300分、より好ましくは1分~240分の露光時間が用いられ、好ましくは0.01mW/cm~100mW/cm、より好ましくは0.1mW/cm~100mW/cm、より更に好ましくは0.5mW/cm~75mW/cmの範囲内の照射強度が使用される。特定の実施形態において、光重合のための好ましい時間帯および特に好ましいUV曝露時間は、1分~120分、より好ましくは5分~60分、特に10分~30分の範囲内であり、UV光強度は、好ましくは1mW/cm~50mW/cmの範囲内である。
【0220】
光重合は室温で行われてもよいが、代替実施形態において光重合を高温で行うことが好ましい。
【0221】
従って、ある実施形態において熱的な予熱工程が光重合の前に実施され、周囲室温よりも温度を上昇させる。この場合、透明点より低い温度を設定し、維持することが好ましい。このようにして、しかしながら媒体がネマチック相またはそれぞれキラルネマチック相を有する状態で、より高い温度で重合を行うことができる。
【0222】
本発明によれば媒体は、1種類以上の多色性色素、特に1種類以上の二色性色素を、好ましくは0.05重量%~5重量%、より好ましくは0.1重量%~2.5重量%の量で含む。
【0223】
色素(1種類または多種類)の濃度は好ましくは、更に得られる変調材料の適切な性能、特に所望の色および調光効果を保証しながら方法および特に光重合を効果的および効率的に実施できるように選択する。
【0224】
二色性色素は好ましくは例えば、アゾ色素、アントラキノン、チオフェノラントラキノン、メチン化合物、アゾメチン化合物、メロシアニン化合物、ナフトキノン、テトラジン、ピロメテン色素、マロノニトリル色素、リレン、特にペリレンおよびテリレン、チアジアゾール色素、チエノチアジアゾール色素、ベンゾチアジアゾール、チアジアゾロキノキサリン、Irgaphor Black X11 DCおよびジケトピロロピロールから選択できる。特に国際公開第2014/187529号に記載される通りのアゾ化合物、アントラキノン、チオフェノラントラキノン、ベンゾチアジアゾール、特に国際公開第2015/090497号に記載される通りのジケトピロロピロール、特に国際公開第2014/090373に記載される通りのリレンが特に好ましい。
【0225】
本方法で使用するための液晶媒体は、好ましくは1種類、2種類、3種類、4種類、5種類、6種類、7種類、8種類、9種類または10種類の異なる二色性色素、特に好ましくは2種類または3種類の二色性色素を含む。
【0226】
ある実施形態において液晶媒体は、少なくとも3種類の異なる二色性色素を含み、好ましくは媒体の全体内容物を基準にして、3重量%以下、より好ましくは1.5重量%以下の量である。
【0227】
ある実施形態においてスイッチ層の二色性色素の吸収スペクトルは好ましくは、目に黒色の印象が生じるように互いに補完し合う。本発明による液晶媒体の2種類以上の二色性色素は好ましくは、可視スペクトルの大部分をカバーする。目に黒または灰色に見える色素の混合物を調製することができる正確な方法は当業者に知られており、例えばM.Richter、Einfuhrung in die Farbmetrik[Introduction to Colorimetry]、第2版、1981年、ISBN 3-11-008209-8、Verlag Walter de Gruyter & Coに記載されてる。
【0228】
別の実施形態では、異なる色、例えば、赤、緑、青の設定が行われる。
【0229】
色素混合物の色位設定は、比色分析の分野で説明されている。この目的のために個々の色素のスペクトルはランベルト-ベール則を考慮して計算され、全体的なスペクトルが得られ、複合照明、例えば昼光用の照明D65の下で比色分析の規則に従って対応する色位および輝度値に変換される。それぞれの光源、例えばD65によって白色点の位置が固定され、表で引用される(例えば、上の文献)。さまざまな色素の比率を変えることで、異なる色位を設定し得る。
【0230】
好ましい実施形態によれば媒体およびスイッチ層は、赤色およびNIR領域において、即ち600~2000nmの波長において、好ましくは650~1800nmの範囲内、特に好ましくは650~1300nmの範囲内で光を吸収する1種類以上の二色性色素を含む。
【0231】
好ましい二色性色素は、アゾ色素、アントラキノン類、チオフェノールアントラキノン類、メチン化合物、アゾメチン化合物、メロシアニン化合物、ナフトキノン類、テトラジン類、ペリレン類、テリレン類、クアテリレン類、高級リレン類、ピロメテン類、チアジアゾール類、ベンゾチアジアゾール類、ニッケルジチオレン類、(メタル)フタロシアニン類、(メタル)ナフタロシアニン類および(メタル)ポルフィリン類から選択される。これらのうち、アゾ色素、チオフェノールアントラキノン類、チアジアゾール類およびベンゾチアジアゾール類が特に好ましい。
【0232】
ある実施形態において媒体またはスイッチ層中に提供される二色性色素は、好ましくはB.Bahadur著、Liquid Crystals-Applications and Uses、第3巻、1992年、World Scientific Publishing社、第11.2.1章に示される色素類から、特に好ましくは本明細書に存在する表に与えられる明示的な化合物から選択される。
【0233】
前記色素は、当業者に既知で文献に幾度も記載されている二色性色素類に属する。よって例えば、アントラキノン色素は、欧州特許第34832号明細書、欧州特許第44893号明細書、欧州特許第48583号明細書、欧州特許第54217号明細書、欧州特許第56492号明細書、欧州特許第59036号明細書、英国特許第2065158号明細書、英国特許第2065695号明細書、英国特許第2081736号明細書、英国特許第2082196号明細書、英国特許第2094822号明細書、英国特許第2094825号明細書、特開昭55-123673号公報、独国特許第3017877号明細書、独国特許第3040102号明細書、独国特許第3115147号明細書、独国特許第3115762号明細書、独国特許第3150803号明細書および独国特許第3201120号明細書に記載され、ナフトキノン色素は、独国特許第3126108号明細書および独国特許第3202761号明細書に記載され、アゾ色素は、欧州特許第43904号明細書、独国特許第3123519号明細書、国際公開第82/2054号、英国特許第2079770号明細書、特開昭56-57850号公報、特開昭56-104984号公報、米国特許第4308161号明細書、米国特許第4308162号明細書、米国特許第4340973、T.Uchida、C.Shishido、H.SekiおよびM.Wada著:Mol.Cryst.Lig.Cryst.第39巻、第39~52頁(1977年)、およびH.Seki、C.Shishido、S.YasuiおよびT.Uchida著:Jpn.J.Appl.Phys.第21巻、第191~192頁(1982年)に記載され、およびペリレン類は、欧州特許第60895号明細書、欧州特許第68427号明細書および国際公開第82/1191号に記載されている。リレン色素は例えば、欧州特許第2166040号明細書、米国特許出願公開第2011/0042651号明細書、欧州特許第68427号明細書、欧州特許第47027号明細書、欧州特許第60895号明細書、独国特許第3110960号明細書および欧州特許第698649号明細書に記載されている。
【0234】
媒体および光バルブのスイッチ層に存在してよい好ましい二色性色素の例を下に示す。
【0235】
【表1】
【0236】
【表2】
【0237】
【表3】
【0238】
【表4】
【0239】
【表5】
【0240】
【表6】
【0241】
【表7】
【0242】
【表8】
【0243】
スイッチ層中の色素は全体の透過率の変動を提供し得て、不透明な状態では色付きまたはそれぞれ黒色の外観を与えることができる。
【0244】
好ましい実施形態において本発明によるデバイスのスイッチ層は、1種類以上のクエンチャー化合物を含む。これは本発明によるデバイスが、スイッチ層において1種類以上の蛍光色素を含んでいる場合に特に好ましい。効果的なクエンチングを達成するためにクエンチャー化合物は、それぞれの色素系、特に色素の組み合わせにおいて最も長い波長で吸収する色素に適合させる必要がある。本発明によるスイッチ層の好ましい実施形態において任意に添加されるクエンチャー化合物は、スペクトルの可視部分の蛍光が抑制されるように選択される。
【0245】
本発明による光バルブは、1層のみのスイッチ層を含むことが好ましい。
【0246】
また、しかしながら別の実施形態では1層より多いスイッチ層、特に2層のスイッチ層を提供することも可能である。
【0247】
好ましくは本発明により使用される媒体は媒体の全内容物を基準にして、式IおよびIIの化合物から選択される1種類以上のメソゲン化合物を少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも10重量%、より更に好ましくは15重量%含有する。ある実施形態において媒体は、式Iの1種類以上の化合物を媒体の全内容物を基準にして、好ましくは5重量%~30重量%の範囲内の量で含む。場合によっては、2種類または3種類以上の式Iの化合物が媒体に含まれることが有益で好ましいことがある。
【0248】
好ましくは式Iにおいて定義される基A11は、
【化27】
を表す。
【0249】
ある実施形態において、式Iで定義されるnは0を表す。
【0250】
好ましい実施形態において式Iの1種類以上の化合物は、式Ia、IbおよびIcの化合物から、より好ましくは式IaおよびIbの化合物から選択される。
【0251】
【化28】
【0252】
式中、
およびRは互いに独立に、F、Cl、CF、OCF、および1~15個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝状のアルキルもしくはアルコキシまたは2~15個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝状のアルケニル(該基は無置換、CNもしくはCFで一置換またはハロゲンで一置換もしくは多置換されており、ただし1個以上のCH基は酸素原子が互いに直接連結しないようにして、それぞれの場合で互いに独立に-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCOO-または-C≡C-で置き換えられてよい。)から、好ましくはF、CF、OCF、1~9個の炭素原子を有する直鎖状のアルキルもしくはアルコキシまたは2~9個の炭素原子を有するアルケニルから選択される基を表し、
Lは、それぞれの出現で同一または異なってHまたはF、ClおよびBrから、好ましくはFおよびClから選択されるハロゲンであり、より好ましくは、それぞれの出現で同一または異なってHまたはFである。
【0253】
式Iの化合物のフェニレン環が置換されている場合、置換基(1種類または多種類)はFであり、更に末端基RおよびRがClを含まないことが特に好ましい。
【0254】
特に好ましい実施形態において式Iの1種類以上の化合物は、Clを含まない化合物から選択される。
【0255】
特に好ましい実施形態において液晶性媒体は、Cl含有化合物を含まない。
【0256】
式Iによる環A21、A31およびA41の少なくとも1個は、少なくとも1個のF置換基を有することが更に特に好ましい。式Iによる環A21、A31およびA41が一緒になって少なくとも2個のF置換基を有することが更に特に好ましい。
【0257】
本発明による媒体においてCNを含む化合物の使用は、好ましくは75重量%以下、より好ましくは50重量%以下、より更に好ましくは25重量%以下、特に15重量%以下に好ましくは有利に制限される。特に好ましい実施形態において、CNを含む化合物の使用は完全に回避される。
【0258】
液晶媒体は好ましくは、媒体の好ましい特性、例えば良好なVHRおよび好ましい安定性に寄与するか維持する観点から添加されるメソゲン化合物を含む。
【0259】
ある実施形態において本発明による液晶媒体は式IIの1種類以上の化合物を、媒体の全内容物を基準に好ましくは1重量%~45重量%、より好ましくは5重量%~25重量%の範囲内の量で含む。場合によっては、式Iの2種類または3種類以上の化合物が媒体に含まれることが有益で好ましいことがある。
【0260】
更なる実施形態において本発明による液晶媒体は、式IIIの1種類以上の化合物を含む。
【0261】
【化29】
【0262】
式中、RおよびRはRの通り定義され、LおよびLは式IIのLの通り定義される。
【0263】
式IIIの化合物は、好ましくは1重量%~45重量%、より好ましくは5重量%~25重量%の合計濃度で媒体中で使用される。
【0264】
媒体は、式Iの1種類以上のメソゲン化合物、任意に1種類以上の光開始剤、および式IIおよびIIIの化合物の群から選択される1種類以上のメソゲン化合物を含むことが好ましい。
【0265】
媒体が、上記の通りの式Iの1種類以上の化合物、式IIの1種類以上の化合物、および式IIIの1種類以上の化合物を含むことが特に好ましい。
【0266】
好ましくは本発明による液晶媒体は、式IVの1種類以上の化合物を代替、好ましくは加えて含む。
【0267】
【化30】
【0268】
式中、
は、1~15個の炭素原子、好ましくは1~7個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝状のアルキルもしくはアルコキシ、または2~15個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝状のアルケニル表し、該基は無置換、CNもしくはCFで一置換またはハロゲンで一置換もしくは多置換されており、ただし1個以上のCH基は酸素原子が互いに直接連結しないようにして、それぞれの場合で互いに独立に-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCOO-または-C≡C-で置き換えられてよく、
iは、0、1または2であり、
およびLは、互いに独立にHまたはFであり、および
は、F、CF、OCFまたはCNを表す。
【0269】
式IVの化合物は、好ましくは1重量%~45重量%、より好ましくは5重量%~25重量%の合計濃度で媒体中で使用される。
【0270】
媒体は、上および下に記載する通りの1種類以上の式Iの化合物、1種類以上の式IIの化合物、1種類以上の式IIIの化合物および1種類以上の式IVの化合物を含むことが特に好ましい。
【0271】
更なる実施形態において本発明による液晶媒体は式Vの1種類以上の化合物を、媒体の全内容物を基準に好ましくは1重量%~15重量%、より好ましくは5重量%~10重量%の範囲内の量で含む。
【0272】
【化31】
【0273】
式中、
は、1~15個の炭素原子、好ましくは1~7個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝状のアルキルもしくはアルコキシ、または2~15個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝状のアルケニル表し、該基は無置換、CNもしくはCFで一置換またはハロゲンで一置換もしくは多置換されており、ただし1個以上のCH基は酸素原子が互いに直接連結しないようにして、それぞれの場合で互いに独立に-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCOO-または-C≡C-で置き換えられてよく、および
は、F、CF、OCFまたはCN、好ましくはCFを表す。
【0274】
特に好ましい実施形態において式Iの1種類以上の1種類以上の化合物は、式I-1およびI-2の化合物から選択される。
【0275】
【化32】
【0276】
式中、
およびRは、上式Iaで定義される通りであり、
Lは、それぞれの出現で同一または異なってHまたはFである。
【0277】
任意に媒体は、表Dに示され説明される通りのCC-n-VおよびCC-n-Vmとして指定される化合物から選択される1種類以上の化合物を更に含み、ただし好ましくはnおよびmは互いに独立に1~7の整数であり、特に1重量%~25重量%の濃度範囲内である。
【0278】
任意に本発明による媒体は物理的特性を調整するために、更なる液晶化合物を含んでよい。そのような化合物は、当該分野で知られている。本発明による媒体中のこれらの任意に更に含まれる液晶化合物の濃度は、好ましくは0重量%~30重量%、より好ましくは0.1重量%~20重量%、最も好ましくは1重量%~15重量%である。
【0279】
好ましくは本発明による媒体は、下表Fに示す通りの式R-5011の化合物を含む。
【0280】
本発明による液晶性媒体は、通常の濃度で更なる添加剤を含んでよい。これらの更なる成分の合計濃度は全混合物を基準に0%~5%、好ましくは0.1%~4%の範囲内である。それぞれ使用される個々の化合物の濃度は、好ましくは0.01%~3%の範囲である。本明細書において液晶媒体の液晶成分および化合物の濃度の値および範囲については、これらおよび同様の添加物の濃度は考慮しない。特に媒体は、安定剤、酸化防止剤、フリーラジカルスカベンジャー、連鎖移動剤、例えばチオエーテル、および/または可塑剤などの慣用的で適切な添加剤を、好ましくは0.01重量%~5重量%の量で更に含んでよい。安定剤は、例えば熱ストレスまたは光ストレスによる劣化または酸化に対して、媒体および変調材料を更に安定化させるのに有用であり得る。
【0281】
本明細書において他に明記しない限り、全ての濃度は重量パーセントで与えられる。
【0282】
本発明による液晶媒体は複数の化合物、好ましくは3~30種類、より好ましくは4~20種類、最も好ましくは4~16種類の化合物から成る。これらの化合物は、従来の方法で混合される。原則として使用量の少ない方の化合物の必要量を、使用量の多い方の化合物に溶解させる。温度がより高い濃度で使用される化合物の透明点よりも上の場合、溶解過程の完了を観察することは特に容易である。しかしながら、また例えば、化合物の同族または共晶混合物である所謂プレミックスを使用するか、構成要素自体が直ちに使用できる混合物である所謂マルチボトル系を使用して、他の従来法で媒体を調製することも可能である。
【0283】
上および下に記載するメソゲン化合物またはその混合物の多くは、商業的に入手可能である。これらの化合物は公知であるか、文献(例えば、Houben-Weyl、Methoden der Organischen Chemie[Methods of Organic Chemistry]、Georg-Thieme-Verlag、Stuttgartなどの標準的な著作)に記載のそれ自体公知の方法によって、正確には公知で前記反応に適した反応条件下で調製できる。また本明細書において、それ自体既知であるが、より詳細には本明細書で言及されない改変をすることもできる。本発明による媒体は、それ自体従来の方法で調製される。一般に成分は好ましくは高温で、互いに溶解される。誘電異方性、粘度および/または液晶相の配向を改変するために、適切な添加物または物質を添加できる。
【0284】
本発明による用語「アルキル」は好ましくは、1~7個の炭素原子を有する直鎖状および分岐状のアルキル基、特に直鎖状の基であるメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルおよびヘプチルを包含する。2~5個の炭素原子を有する基が一般に好ましい。
【0285】
アルコキシは直鎖状または分岐状でよく、それは好ましくは直鎖状で、1個、2個、3個、4個、5個、6個または7個の炭素原子を有し、従って好ましくはメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシまたはヘプトキシである。
【0286】
本発明による用語「アルケニル」は好ましくは、2~7個の炭素原子を有する直鎖状および分岐状のアルケニル基、特に、直鎖状の基を包含する。特に好ましいアルケニル基は、C~C-1E-アルケニル、C~C-3E-アルケニル、C~C-4-アルケニル、C~C-5E-アルケニルおよびC-6E-アルケニル、特に、C~C-1E-アルケニル、C~C-3E-アルケニルおよびC~C-4E-アルケニルである。好ましいアルケニル基の例は、ビニル、1E-プロペニル、1E-ブテニル、1E-ペンテニル、1E-ヘキセニル、1E-ヘプテニル、3-ブテニル、3E-ペンテニル、3E-ヘキセニル、3E-ヘプテニル、4-ペンテニル、4Z-ヘキセニル、4E-ヘキセニル、4Z-ヘプテニル、5-ヘキセニル、6-ヘプテニルなどである。5個までの炭素原子を有する基が一般に好ましい。
【0287】
フッ素化アルキルまたはアルコキシ基は好ましくは、CF、OCF、CFH、OCFH、CFH、OCFH、C、OC、CFHCF、CFHCFH、CFHCFH、CHCF、CHCFH、CHCFH、CFCFH、CFCFH、OCFHCF、OCFHCFH、OCFHCFH、OCHCF、OCHCFH、OCHCFH、OCFCFH、OCFCFH、CまたはOC、特にCF、OCF、CFH、OCFH、C、OC、CFHCF、CFHCFH、CFHCFH、CFCFH、CFCFH、OCFHCF、OCFHCFH、OCFHCFH、OCFCFH、OCFCFH、CまたはOC、特に好ましくはOCFまたはOCFHを含む。好ましい実施形態においてフルオロアルキルは末端フッ素を有する直鎖状の基、即ちフルオロメチル、2-フルオロエチル、3-フルオロプロピル、4-フルオロブチル、5-フルオロペンチル、6-フルオロヘキシルおよび7-フルオロヘプチルを包含する。しかしながら、フッ素の他の位置は排除されない
【0288】
オキサアルキルは好ましくは、式C2n+1-O-(CHの直鎖状の基を包含し、ただしnおよびmは、それぞれ互いに独立に1~6である。好ましくは、nは1で、mは1~6である。
【0289】
オキサアルキルは好ましくは、直鎖状の2-オキサプロピル(=メトキシメチル)、2-(=エトキシメチル)または3-オキサブチル(=2-メトキシエチル)、2-、3-または4-オキサペンチル、2-、3-、4-または5-オキサヘキシル、2-、3-、4-、5-または6-オキサヘプチル、2-、3-、4-、5-、6-または7-オキサオクチル、2-、3-、4-、5-、6-、7-または8-オキサノニル、2-、3-、4-、5-、6-、7-、8-または9-オキサデシルを表す。
【0290】
ハロゲンは好ましくはFまたはCl、特にFである。
【0291】
上述の基の1個が、1個のCH基が-CH=CH-で置き換えられたアルキル基の場合、これは直鎖状または分岐状でよい。それは好ましくは直鎖状で、2~10個のC原子を有する。従って、それは特に、ビニル、プロパ-1-または-2-エニル、ブタ-1-、-2-または-3-エニル、ペンタ-1-、-2-、-3-または-4-エニル、ヘキサ-1-、-2-、-3-、-4-または-5-エニル、ヘプタ-1-、-2-、-3-、-4-、-5-または-6-エニル、オクタ-1-、-2-、-3-、-4-、-5-、-6-または-7-エニル、ノナ-1-、-2-、-3-、-4-、-5-、-6-、-7-または-8-エニル、デカ-1-、-2-、-3-、-4-、-5-、-6-、-7-、-8-または-9-エニルを表す。
【0292】
上述の基の1個が、1個のCH基が-O-で置き換えられており、1個が-CO-で置き換えられているアルキル基の場合、これらは好ましくは隣接している。よって、これらはカルボニルオキシ基-CO-O-またはオキシカルボニル基-O-CO-を含む。これらは好ましくは直鎖状であり、2~6個の炭素原子を有する。
【0293】
それらは従って特に、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、ペンタノイルオキシ、ヘキサノイルオキシ、アセチルオキシメチル、プロピオニルオキシメチル、ブチリルオキシメチル、ペンタノイルオキシメチル、2-アセチルオキシエチル、2-プロピオニルオキシエチル、2-ブチリルオキシエチル、3-アセチルオキシプロピル、3-プロピオニルオキシプロピル、4-アセチルオキシブチル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペントキシカルボニル、メトキシカルボニルメチル、エトキシカルボニルメチル、プロポキシカルボニルメチル、ブトキシカルボニルメチル、2-(メトキシカルボニル)エチル、2-(エトキシカルボニル)エチル、2-(プロポキシカルボニル)エチル、3-(メトキシカルボニル)プロピル、3-(エトキシカルボニル)プロピルまたは4-(メトキシカルボニル)ブチルである。
【0294】
上述の基の1個が、1個のCH基が無置換または置換された-CH=CH-で置き換えられ、隣接するCH基がCO、CO-OまたはO-COで置き換えられたアルキル基の場合、これは直鎖状または分岐状でよい。それは好ましくは直鎖状で、4~13個の炭素原子を有する。それは従って特に、アクリロイルオキシメチル、2-アクリロイルオキシエチル、3-アクリロイルオキシプロピル、4-アクリロイルオキシブチル、5-アクリロイルオキシペンチル、6-アクリロイルオキシヘキシル、7-アクリロイルオキシヘプチル、8-アクリロイルオキシオクチル、9-アクリロイルオキシノニル、10-アクリロイルオキシデシル、メタクリロイルオキシメチル、2-メタクリロイルオキシエチル、3-メタクリロイルオキシプロピル、4-メタクリロイルオキシブチル、5-メタクリロイルオキシペンチル、6-メタクリロイルオキシヘキシル、7-メタクリロイルオキシヘプチル、8-メタクリロイルオキシオクチルまたは9-メタクリロイルオキシノニルである。
【0295】
上述の基の1個が、CNまたはCFで一置換されたアルキルまたはアルケニル基の場合、この基は好ましくは直鎖状である。CNまたはCFによる置換は任意の位置である。
【0296】
上述の基の1個が、ハロゲンで少なくとも一置換されたアルキルまたはアルケニル基の場合、この基は好ましくは直鎖状であり、ハロゲンは好ましくはFまたはCl、より好ましくはFである。多置換の場合、ハロゲンは好ましくはFである。また結果として得られる基としてパーフルオロ基も挙げられる。一置換の場合、フッ素または塩素置換基は任意所望の位置であるが、好ましくはω-位である。
【0297】
分岐基を有する化合物は、従来の液晶基材への溶解性が良いため、重要視されることがある。しかしながら、それらが光学活性の場合、それらはキラルドーパントとして特に適している。
【0298】
この種の分岐基は、一般に1個より多い鎖分岐を含まない。好ましい分岐基は、イソプロピル、2-ブチル(=1-メチルプロピル)、イソブチル(=2-メチルプロピル)、2-メチルブチル、イソペンチル(=3-メチルブチル)、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルペンチル、イソプロポキシ、2-メチルプロポキシ、2-メチルブトキシ、3-メチルブトキシ、2-メチルペントキシ、3-メチルペントキシ、2-エチルヘキシ、1-メチルヘキシまたは1-メチルヘプトキである。
【0299】
上述の基の1個が、2個以上のCH基が-O-および/または-CO-O-で置き換えられたアルキル基の場合、これは直鎖状または分岐状でよい。それは好ましくは分岐状であり、3~12個の炭素原子を有する。それは従って特にビスカルボキシメチル、2,2-ビスカルボキシエチル、3,3-ビスカルボキシプロピル、4,4-ビスカルボキシブチル、5,5-ビスカルボキシペンチル、6,6-ビスカルボキシヘキシル、7,7-ビスカルボキシヘプチル、8,8-ビスカルボキシオクチル、9,9-ビスカルボキシノニル、10,10-ビスカルボキシデシル、ビス(メトキシカルボニル)メチル、2,2-ビス(メトキシカルボニル)エチル、3,3-ビス(メトキシカルボニル)プロピル、4,4-ビス(メトキシカルボニル)ブチル、5,5-ビス(メトキシカルボニル)ペンチル、6,6-ビス(メトキシカルボニル)ヘキシル、7,7-ビス(メトキシカルボニル)ヘプチル、8,8-ビス(メトキシカルボニル)オクチル、ビス(エトキシカルボニル)メチル、2,2-ビス(エトキシカルボニル)エチル、3,3-ビス(エトキシカルボニル)プロピル、4,4-ビス(エトキシカルボニル)ブチルまたは5,5-ビス(エトキシカルボニル)ペンチルである。
【0300】
本発明の別の態様において、本発明による媒体または変調材料を含むスイッチ層が提供される。
【0301】
本発明によるスイッチ層は、好ましくは2μm~50μm、より更に好ましくは4μm~40μm、特に10μm~25μmの範囲内の厚さを有する。
【0302】
光バルブにおいてスイッチ層は、2枚の基板、特に2枚の透明基板の間に配置される。
【0303】
基板はガラスまたはポリマー、特にガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、COP(環状オレフィンポリマー)またはTAC(トリアセチルセルロース)を含んでよく、好ましくは成ってよい。
【0304】
特に好ましい実施形態において、ガラス基板が使用される。
【0305】
最終的に組み立てられた光バルブは、UV光を遮断する1層以上の層を更に含むことができる。
【0306】
有利には光バルブは、本明細書に記載の簡便で効率的なプロセスによって製造できる。
【0307】
調製方法において1種類以上の重合性メソゲン化合物を含む液晶媒体は、それぞれ電極を備える2枚の対向する透明基板の間に層として提供される。好ましくは電極は各基板の内面上に導電層として配置され、より好ましくは導電層はそれぞれパッシベーション層上に配置され、より更に好ましくはパッシベーション層間に配置され、任意に液晶媒体に直接接触する配向層が更に提供される。
【0308】
続いて1種類以上の重合性メソゲン化合物を、特に光重合を用いて重合させる。好ましくは1種類以上の重合性メソゲン化合物の光重合は、層中の電界、好ましくは交流電界の存在下で行われ、好ましくは層は2μm~50μm、より好ましくは5μm~25μmの範囲内の厚さを有し、好ましくは印加される電界は液晶媒を含む層中のホメオトロピック配向を誘発する。
【0309】
本明細書に記載の方法において重合は、光重合によって、好ましくはUV光を用いて行われる。特に好ましい実施形態において重合の間、少なくとも一時的に媒体の配向、好ましくはホメオトロピック配向を誘発するために電界が印加される。重合中に所定の配向を設定するための電圧の印加は、スイッチ層および光バルブの製品特性に有利な影響を与えることができる。例えば重合中にホメオトロピック配向を誘発することは、均質な低ヘイズの透明状態の達成に寄与し、さらに不透明状態において均質で適切に強いヘイズを得ることができる。
【0310】
光重合時の温度は、例えば20℃~100℃の範囲、好ましくは透明点以下で制御することが可能である。
【0311】
好ましい実施形態において反応性メソゲンは自己開始型であり、別の実施形態において重合を誘発するために光開始剤が使用される。
【0312】
スイッチング層における材料の光重合には、好ましくは30秒~240分、より好ましくは1分~120分の曝露時間が使用され、好ましくは0.01mW/cm~100mW/cm、より好ましくは0.1mW/cm~50mW/cm、より更に好ましくは1mW/cm~50mW/cm、特に2mW/cm~20mW/cmの範囲内の照射強度が使用される。
【0313】
重合には幾つかのパラメータ、例えば照射量、任意に印加される電圧の大きさまたはそれぞれの周波数、電界強度、および媒体中のキラルドーパントおよび二色性色素の量を適切に設定または変化させることができる。
【0314】
光重合に続いて更に処理を行うことができる。好ましくは重合工程の後に熱処理が行われる。熱処理、即ち前の重合工程と比較して上昇した温度への曝露は、更なる硬化または更なる転化率または重合の完了をもたらし得る。これは製品の性能および安定性の点で有益であり、特に製品において残留する未反応モノマーの量が最小化される点で有益である。
【0315】
重合に続く任意の熱処理工程は、好ましくは5分~240分、より好ましくは10分~120分、特に20分~60分の範囲の時間行われる。熱処理は、好ましくは85℃~200℃、より好ましくは110℃~190℃、特に140℃~180℃の範囲内の温度を使用する。
【0316】
また使用する基板に前処理工程、例えばUV-オゾン処理またはプラズマ処理などの表面処理方法を行うことも可能であり、これにより、より大きな面積での配向および濡れ挙動を改善し、均質性の向上、ならびに透明状態での不要なヘイズの好ましい減少に寄与することができる。
【0317】
本明細書に記載の方法はデバイスに単一のスイッチ層のみが使用される場合であっても、好ましい耐久性、低ヘイズの透明状態、および良好な不透明度を与える散乱状態を有する光バルブを製造するために有利に有用である。
【0318】
本発明および特に以下の例においてメソゲン化合物の構造は、頭字語とも呼ばれる略称を用いて示される。これらの頭字語において化学式は、下表A~Cを用いて以下のように略される。全ての基C2n+1、C2m+1およびC2l+1、またはC2n-1、C2m-1およびC2l-1は、それぞれn個、m個およびl個のC原子を有する直鎖状のアルキルまたはアルケニル、好ましくは1E-アルケニルを表す。表Aには化合物のコア構造の環要素に用いるコードを列記す一方で、表Bには連結基を示す。表Cには左端または右端基のコードの意味を与える。頭字語は任意の連結基を持つ環要素のコードに続いて、第1のハイフンと左側の末端基のコード、第2のハイフンと右側の末端基のコードで構成される。表Dには、それぞれの略称と共に化合物の例示構造と示す。
【0319】
<表A:環要素>
【0320】
【表9】
【0321】
【表10】
【0322】
【表11】
【0323】
<表B:連結基>
【0324】
【表12】
【0325】
<表C:末端基>
【0326】
【表13】
【0327】
【表14】
【0328】
式中、nおよびmはそれぞれ整数を表し、3つの点「...」は、この表からの他の略称のための場所である。
【0329】
以下の表には、それぞれの略称と共に例示的な構造を示す。これらは、略称の規則の意味を説明するために示される。それらは更に、好ましく使用される化合物を示す。
【0330】
<表D:例示的構造>
【0331】
【表15】
【0332】
【表16】
【0333】
【表17】
【0334】
【表18】
【0335】
【表19】
【0336】
【表20】
【0337】
【表21】
【0338】
【表22】
【0339】
【表23】
【0340】
【表24】
【0341】
【表25】
【0342】
【表26】
【0343】
【表27】
【0344】
【表28】
【0345】
【表29】
【0346】
【表30】
【0347】
【表31】
【0348】
【表32】
【0349】
【表33】
【0350】
【表34】
【0351】
【表35】
【0352】
【表36】
【0353】
【表37】
【0354】
式中、n、mおよびlは好ましくは互いに独立に、1~7を表す。
【0355】
以下の表は、本発明による媒体において安定剤として使用することができる例示的な化合物を示す。
【0356】
<表E>
表Eは、本発明によるLC媒体に添加することができる可能な安定剤を示し、nは1~12の整数、好ましくは1、2、3、4、5、6、7または8を表し、末端メチル基は示されていない。
【0357】
【表38】
【0358】
【表39】
【0359】
【表40】
【0360】
【表41】
【0361】
【表42】
【0362】
【表43】
【0363】
【表44】
【0364】
【表45】
【0365】
LC媒体は、好ましくは0~10重量%、特に1ppm~5重量%、特に好ましくは1ppm~1重量%の安定化剤を含む。
【0366】
下表Fは、本発明によるメソゲン媒体においてキラルドーパントとして好ましく使用できる例示的な化合物を示す。
【0367】
<表F>
【0368】
【表46】
【0369】
【表47】
【0370】
【表48】
【0371】
【表49】
【0372】
本発明の好ましい実施形態においてメソゲン媒体は、表Fに示される化合物から選択される1種類以上の化合物を含む。
【0373】
本発明によるメソゲン媒体は好ましくは、上表D~Fに示される化合物から選択される2種類以上、好ましくは4種類以上の化合物を含む。
【0374】
ある実施形態において本発明によるLC媒体は好ましくは、表Dに示される3種類以上、より好ましくは5種類以上の化合物を含む。
【0375】
<表G>
【0376】
表Gは本発明によるLC媒体において、好ましくは反応性メソゲン化合物として使用できる例示化合物を照合したものである。好ましくは、重合のために開始剤または2種類以上の開始剤の混合物を添加する。開始剤または開始剤混合物は好ましくは、混合物を基準にして0.001~2重量%の量で添加される。適切な開始剤は例えば、Irgacure(登録商標)651(BASF社製)である。
【0377】
【表50】
【0378】
【表51】
【0379】
【表52】
【0380】
【表53】
【0381】
【表54】
【0382】
【表55】
【0383】
【表56】
【0384】
【表57】
【0385】
【表58】
【0386】
【表59】
【0387】
【表60】
【0388】
【表61】
【0389】
【表62】
【0390】
【表63】
【0391】
【表64】
【0392】
【表65】
【0393】
【表66】
【0394】
【表67】
【0395】
【表68】
【0396】
【表69】
【0397】
本発明の好ましい実施形態においてメソゲン媒体は、表Gの化合物の群から選択される1種類以上の化合物を含む。
【0398】
本発明による液晶性媒体は表Dの化合物、好ましくは表Dの式の群から選択される3種類以上の異なる式の化合物の群から選択される好ましくは4種類以上、より好ましくは6種類以上、より更に好ましくは7種類以上、特に好ましくは8種類以上の化合物を含む。媒体は追加して表Eの式の群から選択される1種類または2種類以上の化合物を含むことが特に好ましい。より更に好ましくは媒体は更に、表Gの式の群から選択される1種類または2種類以上の化合物を含む。
【0399】
以下の実施例は、単に本発明を説明するためのものであり、いかなる意味においても本発明の範囲を限定するものと見なしてはならない。実施例およびその改変または他の等価物は、本開示に照らして当業者には明らかになるであろう。
【0400】
しかしながら以下の例示に示す物性および組成は、どのような特性が達成され、どのような範囲でそれらが改変され得るかを示している。特に好ましく達成することができる様々な特性の組み合わせは、よって十分に定義されている。
【実施例
【0401】
例において、
は20℃における容量閾電圧[V]を表し、
は20℃および589nmにおける異常屈折率を表し、
は20℃および589nmにおける通常屈折率を表し、
Δnは20℃および589nmにおける光学的異方性を表し、
εは20℃および1kHzにおけるダイレクターに平行な誘電率を表し、
εは20℃および1kHzにおけるダイレクターに垂直な誘電率を表し、
Δεは20℃および1kHzにおける誘電異方性を表し、
cl.p.、T(N,I)は透明点[℃]を表し、
γは20℃で測定される回転粘度[mPa・s]を表し、磁界中での回転法で決定され、
は20℃における「スプレイ(splay)」変形に対する弾性定数[pN]を表し、
は20℃における「ツイスト(twist)」変形に対する弾性定数[pN]を表し、
は20℃における「ベンド(bend)」変形に対する弾性定数[pN]を表す。
【0402】
本発明については用語「閾電圧」は他に明示しない限り、容量閾値(V)に関する。また例において一般的に通常であるが、10%相対コントラスト(V10)に対する光学的閾値も示す場合がある。
【0403】
液晶混合物および複合系は,以下に与える通りの組成および物性で実現される。それらの特性および光学的性能を検討する。
【0404】
<参照例1>
以下の表に示される組成および特性を有する液晶基礎混合物B-1を調製し、その一般的な物理的特性に関して特性解析する。
【0405】
【表70】
【0406】
<参照例2>
以下の表に示される組成および特性を有する液晶基礎混合物B-2を調製し、その一般的な物理的特性に関して特性解析する。
【0407】
【表71】
【0408】
コレステリック混合物C-2は、99.00%の混合物B-2を、Merck社、ダルムスタット、独国から入手可能な1.00%のキラルドーパントR-5011と混合することで調製される。
【0409】
<参照例3>
以下の表に示される組成および特性を有する液晶基礎混合物B-3を調製し、その一般的な物理的特性に関して特性解析する。
【0410】
【表72】
【0411】
コレステリック混合物C-3は、99.54%の混合物B-3を、Merck社、ダルムスタット、独国から入手可能な0.46%のキラルドーパントR-5011と混合することで調製される。
【0412】
<比較例1>
上参照例1に記載される通りの91.125%の混合物B-1を、Merck社、ダルムスタット、独国から入手可能な6.493%のキラルドーパントCB15と、2.370%のエチレングリコールジメタクリレートと、0.010%のポリジメチルシロキサンと、0.002%の2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールmethylphenolと混合することでコレステリック混合物CC-1を調製する。
【0413】
混合物CC-1を、ITO電極を備えるガラス基板(0.7mm無アルカリガラス)およびポリイミド配向膜(日本合成ゴム製AL-1054、平面、TNラビング)を有し、セルギャップは25μmの電気光学的セル中に充填する。
【0414】
セルを40℃に予熱する。引き続き電圧(100Vrms)を印加しながら、UV光(340nm未満の強度をカットオフするフェイシャルトナー、光強度3mW/cm)を60分間照射することにより、40℃で重合を行う。
【0415】
得られるセルは白色の外観およびヘイズが96%の不透明状態を有し、ただしヘイズは、分光光度計(Lambda1050、パーキンエルマー社)および150mmのUlbricht球を使用してASTM1003-92に従い決定される。得られるセルは50Vで5.2%のヘイズで光学的透明状態を有し、20℃において99msのτonおよび32msのτoffを有する。0℃においてセルは750msのτonおよび134msのτoffを有する。
【0416】
<例1>
上参照例2に記載の99.50%のコレステリック混合物C-2を0.50%のIrgaphor Black X11DC(BASF社製)と混合して、色素ドープ混合物M-1を調製する。99.225%の混合物M-1を0.75%の式RM-Aの化合物と、
【化33】
0.025%の光開始剤Irgacure(登録商標)651(以下、IRG-651と略称する。)とを混合して、混合物M-1-1を調製する。
【化34】
【0417】
混合物M-1-1を、ITO電極を備えるガラス基板(0.7mm無アルカリガラス)およびポリイミド配向膜(日本合成ゴム製AL-1054、平面、TNラビング)を有し、セルギャップは25μmの電気光学的セル中に充填する。
【0418】
セルを40℃に予熱する。引き続き電圧(100Vrms)を印加しながら、UV光(340nm未満の強度をカットオフするフェイシャルトナー、光強度3mW/cm)を60分間照射することにより、40℃で重合を行う。
【0419】
得られるセルは不透明状態で67%のヘイズを有する。得られるセルは100Vで2.0%のヘイズで光学的透明状態を有し、20℃において65msのτonおよび2.8msのτoffを有する。0℃においてセルは236msのτonおよび10.0msのτoffを有する。
【0420】
<例2>
上参照例2に記載のコレステリック混合物C-2に0.118%の式DD-1の化合物と、
【化35】
0.142%の式DD-2の化合物と、
【化36】
0.242%の式DD-3の化合物とを添加して、色素ドープ混合物M-2を調製する。
【化37】
【0421】
99.225%の混合物M-2を上例1に記載の0.750%の式RM-Aの化合物と、上例1に記載の0.025%のIRG-651と混合して、混合物M-2-1を調製する。
【0422】
混合物M-2-1を、ITO電極を備えるガラス基板(0.7mm無アルカリガラス)およびポリイミド配向膜(日本合成ゴム製AL-1054、平面、TNラビング)を有し、セルギャップは25μmの電気光学的セル中に充填する。
【0423】
セルを40℃に予熱する。引き続き電圧(100Vrms)を印加しながら、UV光(340nm未満の強度をカットオフするフェイシャルトナー、光強度3mW/cm)を60分間照射することにより、40℃で重合を行う。
【0424】
得られるセルは黒色の外観の不透明状態および84%のヘイズがを有する。得られるセルは100Vで2.5%のヘイズで光学的透明状態を有し、20℃において101msのτonおよび2.8msのτoffを有する。0℃においてセルは368msのτonおよび9.8msのτoffを有する。
【0425】
<例3>
上参照例2で調製された98.713%の混合物M-2を0.037%のIRG-651と、0.625%の式RM-Bの化合物と、
【化38】
0.625%の式RM-Cの化合物と混合して、混合物M-3を調製する。
【化39】
【0426】
上例2における混合物M-2に記載した通り、混合物M-3を処理し測定する。得られるセルは不透明状態および光学的に透明な状態において、好ましい電気光学的性能を示す。
【0427】
<例4>
上参照例3に記載されるコレステリック混合物C-3に、上例1に記載される0.750%の式RM-Aの化合物と、0.025%のIRG-651と、上例2に記載される0.109%の式DD-1の化合物と、上例2に記載される0.132%の式DD-2の化合物と、上例2に記載される0.254%の式DD-3の化合物とを添加して混合物M-4を調製する。
【0428】
混合物M-4を、ITO電極を備えるガラス基板(0.7mm無アルカリガラス)およびポリイミド配向膜(日本合成ゴム製AL-1054、平面、TNラビング)を有し、セルギャップは25μmの電気光学的セル中に充填する。
【0429】
セルを40℃に予熱する。引き続き電圧(100Vrms)を印加しながら、UV光(340nm未満の強度をカットオフするフェイシャルトナー、光強度3mW/cm)を60分間照射することにより、40℃で重合を行う。
【0430】
得られるセルは黒色の外観の不透明状態および93%のヘイズがを有する。得られるセルは50Vで5.0%のヘイズで光学的透明状態を有し、20℃において68msのτonおよび2.8msのτoffを有する。0℃においてセルは126msのτonおよび9.0msのτoffを有する。
【0431】
<例5>
上参照例3に記載される98.298%の混合物B-3を、0.458%のキラルドーパントR-5011と、上例1に記載される0.750%の式RM-Aの化合物と、上例2に記載される0.109%の式DD-1の化合物と、上例2に記載される0.132%の式DD-2の化合物と、上例2に記載される0.253%の式DD-3の化合物と混合して混合物M-5を調製する。
【0432】
混合物M-5を、ITO電極を備えるガラス基板(0.7mm無アルカリガラス)およびポリイミド配向膜(日本合成ゴム製AL-1054、平面、TNラビング)を有し、セルギャップは25μmの電気光学的セル中に充填する。
【0433】
セルを40℃に予熱する。引き続き電圧(100Vrms)を印加しながら、UV光(340nm未満の強度をカットオフするフェイシャルトナー、光強度3mW/cm)を60分間照射することにより、40℃で重合を行う。
【0434】
得られるセルは黒色の外観の不透明状態および83%のヘイズがを有する。得られるセルは50Vで1.5%のヘイズで光学的透明状態を有し、20℃において56msのτonおよび7.7msのτoffを有する。0℃においてセルは116msのτonおよび25msのτoffを有する。
【0435】
<例6>
上参照例3に記載される混合物B-3に、0.458%のキラルドーパントR-5011と、上例1に記載される0.750%の式RM-Aの化合物と、0.025%のIRG-651と、0.123%の式DD-4の化合物と、
【化40】
0.337%の式DD-5およびDD-6の化合物の混合物と、
【化41】
0.117%の式DD-7の化合物と、
【化42】
0.173%の式DD-8の化合物とを添加して混合物M-6を調製する。
【化43】
【0436】
混合物M-6を、ITO電極を備えるガラス基板(0.7mm無アルカリガラス)およびポリイミド配向膜(日本合成ゴム製AL-1054、平面、TNラビング)を有し、セルギャップは25μmの電気光学的セル中に充填する。
【0437】
セルを40℃に予熱する。引き続き電圧(100Vrms)を印加しながら、UV光(340nm未満の強度をカットオフするフェイシャルトナー、光強度3mW/cm)を60分間照射することにより、40℃で重合を行う。
【0438】
得られるセルは黒色の外観の不透明状態および94%のヘイズがを有する。得られるセルは100Vで7.6%のヘイズで光学的透明状態を有し、20℃において15msのτonおよび3.3msのτoffを有する。0℃においてセルは42msのτonおよび9.8msのτoffを有する。
【0439】
<例7>
上参照例3に記載される混合物C-3に、0.037%のIRG-651と、上例3に記載される0.625%の式RM-Bの化合物と、上例3に記載される0.625%の式RM-Cの化合物と、上例2に記載される0.109%の式DD-1の化合物と、上例2に記載される0.132%の式DD-2の化合物と、上例2に記載される0.254%の式DD-3の化合物とを添加して混合物M-7を調製する。
【0440】
上例2における混合物M-2-1に記載した通り、混合物M-7を処理し測定する。得られるセルは不透明状態および光学的に透明な状態において、好ましい電気光学的性能を示す。
【国際調査報告】