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特表2022-537045抗原特異的T細胞を誘発するために操作された細菌
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-23
(54)【発明の名称】抗原特異的T細胞を誘発するために操作された細菌
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/74 20150101AFI20220816BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20220816BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220816BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20220816BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20220816BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220816BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20220816BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20220816BHJP
   A61P 27/00 20060101ALI20220816BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20220816BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20220816BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20220816BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20220816BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20220816BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20220816BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20220816BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20220816BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20220816BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20220816BHJP
   A61P 27/16 20060101ALI20220816BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20220816BHJP
   A61K 38/38 20060101ALI20220816BHJP
   A61K 38/28 20060101ALI20220816BHJP
   A61K 38/37 20060101ALI20220816BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220816BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20220816BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220816BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20220816BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALN20220816BHJP
   C12N 5/0784 20100101ALN20220816BHJP
   C12N 5/0786 20100101ALN20220816BHJP
   C12N 5/0781 20100101ALN20220816BHJP
   C07K 14/62 20060101ALN20220816BHJP
   C07K 14/77 20060101ALN20220816BHJP
   C07K 14/75 20060101ALN20220816BHJP
   C12N 9/12 20060101ALN20220816BHJP
   C12N 9/24 20060101ALN20220816BHJP
   C12N 9/04 20060101ALN20220816BHJP
   C12N 9/48 20060101ALN20220816BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20220816BHJP
【FI】
A61K35/74 A
A61P37/02
A61P25/00
A61P3/10
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P1/04
A61P37/06
A61P27/00
A61P7/06
A61P1/00
A61P17/14
A61P7/04
A61P1/16
A61P27/02
A61P9/00
A61P21/04
A61P21/00
A61P1/18
A61P27/16
A61P15/00
A61K38/38
A61K38/28
A61K38/37
A61P35/00
A61K38/17
C12N1/21 ZNA
C07K19/00
C12N5/0783
C12N5/0784
C12N5/0786
C12N5/0781
C07K14/62
C07K14/77
C07K14/75
C12N9/12
C12N9/24
C12N9/04
C12N9/48
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021575364
(86)(22)【出願日】2020-06-18
(85)【翻訳文提出日】2022-02-02
(86)【国際出願番号】 US2020038526
(87)【国際公開番号】W WO2020257519
(87)【国際公開日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】63/033,811
(32)【優先日】2020-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/863,594
(32)【優先日】2019-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520091661
【氏名又は名称】チャン ザッカーバーグ バイオハブ, インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】フィッシュバック, マイケル エー.
(72)【発明者】
【氏名】永島 一樹
(72)【発明者】
【氏名】チェン, イーイン イー.
【テーマコード(参考)】
4B050
4B065
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B050CC03
4B050DD02
4B050LL01
4B065AA21X
4B065AA21Y
4B065AA23X
4B065AA23Y
4B065AA30X
4B065AA30Y
4B065AA53X
4B065AA53Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA01
4C084BA44
4C084DA36
4C084DB34
4C084MA13
4C084MA55
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA01
4C084ZA32
4C084ZA33
4C084ZA34
4C084ZA36
4C084ZA53
4C084ZA55
4C084ZA66
4C084ZA68
4C084ZA75
4C084ZA81
4C084ZA92
4C084ZA94
4C084ZA96
4C084ZB07
4C084ZB08
4C084ZB09
4C084ZB15
4C084ZB21
4C084ZB26
4C084ZC35
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC31
4C087BC54
4C087BC55
4C087BC68
4C087MA13
4C087MA55
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA01
4C087ZA32
4C087ZA33
4C087ZA34
4C087ZA36
4C087ZA53
4C087ZA55
4C087ZA66
4C087ZA68
4C087ZA75
4C087ZA81
4C087ZA92
4C087ZA94
4C087ZA96
4C087ZB07
4C087ZB08
4C087ZB09
4C087ZB15
4C087ZB21
4C087ZB26
4C087ZC35
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA41
4H045BA61
4H045CA40
4H045DA37
4H045DA70
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
異種抗原を発現する改変微生物、例えば生きている組換え共生細菌、および改変微生物を使用して異種抗原に対する抗原特異的免疫応答を誘導する方法が提供される。改変微生物は、自己免疫疾患の処置を必要とする対象において自己免疫疾患を処置するために異種抗原に対する調節性T細胞免疫応答を誘導するために使用することができ、または自己免疫疾患の処置を必要とする対象において増殖性疾患を治療するために異種抗原に対するエフェクターT細胞免疫応答を誘導するために使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生きている組換え共生細菌であって、前記細菌が非天然タンパク質またはペプチドを発現するように操作され、前記タンパク質またはペプチドが宿主の疾患または症状に関連し、前記宿主への前記細菌の投与に際し前記細菌による天然宿主ニッチのコロニー形成をもたらすと、前記宿主が前記非天然タンパク質またはペプチドに対する適応免疫応答を開始し、前記適応免疫応答が調節性T細胞(Treg)応答またはエフェクターT細胞(Teffector)応答である、組換え共生細菌。
【請求項2】
前記天然宿主ニッチの前記コロニー形成が、持続性または一過性である、請求項1に記載の組換え共生細菌。
【請求項3】
前記天然宿主ニッチが、一過性にコロニー形成され、コロニー形成が1日~60日間である、請求項2に記載の組換え共生細菌。
【請求項4】
前記天然宿主ニッチが、一過性にコロニー形成され、コロニー形成が3.5日間~60日間である、請求項2に記載の組換え共生細菌。
【請求項5】
前記天然宿主ニッチが、一過性にコロニー形成され、コロニー形成が7日間~28日間である、請求項3または4に記載の組換え共生細菌。
【請求項6】
コロニー形成が、前記宿主への投与の1日後、3.5日後、7日後、14日後、28日後、または60日後に前記宿主から得られた試料に対して行われるポリメラーゼ連鎖反応またはコロニー形成アッセイによって決定される、請求項1~5のいずれか一項に記載の組換え共生細菌。
【請求項7】
前記投与が、前記細菌と天然免疫系パートナー細胞との相互作用をもたらす、請求項1~6のいずれか一項に記載の組換え共生細菌。
【請求項8】
前記天然免疫系パートナー細胞が抗原提示細胞である、請求項7に記載の組換え共生細菌。
【請求項9】
前記抗原提示細胞が、樹状細胞、マクロファージ、B細および腸上皮細胞からなる群から選択される、請求項8に記載の組換え共生細菌。
【請求項10】
前記天然宿主ニッチが、胃腸管、気道、泌尿生殖路および皮膚からなる群から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の組換え共生細菌。
【請求項11】
前記非天然タンパク質またはペプチドが、宿主タンパク質またはペプチドである、請求項1~10のいずれか一項に記載の組換え共生細菌。
【請求項12】
前記細菌が、グラム陰性菌である、請求項1~11のいずれか一項に記載の組換え共生細菌。
【請求項13】
前記グラム陰性菌が、Bacteroides thetaiotaomicron、Helicobacter hepaticusおよびParabacteroides sp.からなる群から選択される、請求項12に記載の組換え共生細菌。
【請求項14】
前記細菌が、グラム陽性菌である、請求項1~11のいずれか一項に記載の組換え共生細菌。
【請求項15】
前記グラム陽性菌が、Staphylococcus epidermidis、Faecalibacterium sp.およびClostridium sp.からなる群から選択される、請求項14に記載の組換え共生細菌。
【請求項16】
前記投与が、局所的、経腸的、非経口的および吸入からなる群から選択される経路を介する、請求項1~11のいずれか一項に記載の組換え共生細菌。
【請求項17】
前記経路が局所的である、請求項16に記載の組換え共生細菌。
【請求項18】
前記細菌がS.epidermidisである、請求項17に記載の組換え共生細菌。
【請求項19】
前記経路が経腸的である、請求項16に記載の組換え共生細菌。
【請求項20】
前記細菌が、Bacteroides spp.、Clostridium spp.、Helicobacter spp.、Parabacteroides spp.およびPrevotella spp.からなる群から選択される、請求項19に記載の組換え共生細菌。
【請求項21】
前記細菌が、Bacteroides thetaiotaomicron、Bacteroides vulgatusおよびBacteroides finegoldiiからなる群から選択される、請求項20に記載の組換え共生細菌。
【請求項22】
前記適応免疫応答がTreg応答であり、前記細菌が、Bacteroides spp.、Helicobacter spp.、Parabacteroides spp.、Clostridium spp.、Staphylococcus spp.、Lactobacillus spp.、Fusobacterium spp.、Enterococcus spp.、Acenitobacter spp.、Flavinofractor spp.、Lachnospiraceae spp.、Erysipelotrichaceae spp.、Anaerostipes spp.、Anaerotruncus spp.、Coprococcus spp.、Clostridiales spp.、Odoribacter spp.、Collinsella spp.、Bifidobacterium spp.、Streptococcus spp.およびPrevotella spp.からなる群から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の組換え共生細菌。
【請求項23】
前記適応免疫応答がTreg応答であり、前記細菌が、Clostridium ramosum、Staphylococcus saprophyticus、Bacteroides thetaiotaomicron、Clostridium histolyticum、Lactobacillus rhamnosus、Parabacteroides johnsonii、Fusobacterium nucleatum、Enterococcus faecium、Lactobacillus casei、Acenitobacter lwofii、Bacteroides ovatus、Bacteroides vulgatus、Bacteroides uniformis、Bacteroides finegoldii、Clostridium spiroforme、Flavonifractor plautii、Clostridium hathewayi、Lachnospiraceae bacterium、Clostridium bolteae、Erysipelotrichaceae bacterium、Anaerostipes caccae、Anaerotruncus colihominis、Coprococcus comes、Clostridium asparagiforme、Clostridium symbiosum、Clostridium ramosum、Clostridium sp.D5、Clostridium scindens、Lachnospiraceae bacterium、Clostridiales bacterium、Bacteroides intestinalis、Bacteroides caccae、Bacteroides massiliensis、Parabacteroides distasonis、Odoribacter splanchnicus、Collinsella aerofaciens、Acinetobacter lwoffii、Bifidobacterium breve、Bacteroides finegoldii、Bacteroides fragilis、Bacteroides massiliensis、Bacteroides ovatus、Bifidobacterium bifidum、Lactobacillus acidofilus、Lactobacillus casei、Lactobacillus reuteri、Streptococcus thermophilusおよびPrevotella histicolaからなる群から選択される、請求項22に記載の組換え共生細菌。
【請求項24】
前記細菌が、Bacteroides thetaiotaomicron、Bacteroides vulgatus、Bacteroides finegoldiiおよびHelicobacter hepaticusからなる群から選択される、請求項23に記載の組換え共生細菌。
【請求項25】
前記疾患または症状が自己免疫障害である、請求項22~24のいずれか一項に記載の組換え共生細菌。
【請求項26】
前記自己免疫障害が、多発性硬化症、I型糖尿病、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾患、セリアック病、グレーブス病、橋本自己免疫性甲状腺炎、白斑、リウマチ熱、悪性貧血/萎縮性胃炎、円形脱毛症、免疫性血小板減少性紫斑病、側頭動脈炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、強皮症、抗リン脂質症候群、1型自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、シェーグレン症候群、アジソン病、疱疹状皮膚炎、川崎病、交感神経性眼炎、HLA-B27関連急性前部ブドウ膜炎、原発性硬化性胆管炎、円板状エリテマトーデス、結節性多発性動脈炎、CREST症候群、重症筋無力症、多発性筋炎/皮膚筋炎、スチル病、自己免疫性2型肝炎、ウェゲナー肉芽腫症、混合性結合組織病、顕微鏡的多発血管炎、自己免疫性多腺性症候群、フェルティ症候群、自己免疫性溶血性貧血、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、ギラン・バレー症候群、ベーチェット病、自己免疫性好中球減少症、水疱性類天疱瘡、本態性混合型クリオグロブリン血症、線状限局性強皮症、自己免疫性多腺性症候群1(APECED)、後天性血友病A、バッテン病/神経セロイドリポフスチン症、自己免疫性膵炎、橋本脳症、グッドパスチャー病、尋常性天疱瘡、自己免疫性播種性脳脊髄炎、再発性多発性軟骨炎、高安動脈炎、チャーグ・ストラウス症候群、後天性表皮水疱症、瘢痕性類天疱瘡、落葉状天疱瘡、自己免疫性副甲状腺機能低下症、自己免疫性下垂体炎、自己免疫性内耳疾患、自己免疫性リンパ増殖性症候群、自己免疫性卵巣炎、自己免疫性精巣炎、自己免疫性多腺性症候群、コーガン症候群、嗜眠性脳炎、持久性隆起性紅斑、エバンス症候群、免疫調節異常性多腺性腸症X連鎖(IPEX)、イッザック症候群/後天性神経筋緊張症、ミラーフィッシャー症候群、モルバン症候群、PANDAS、POEMS症候群、ラスムッセン脳炎、全身硬直症候群、フォークト-小柳-原田症候群、視神経脊髄炎、移植片対宿主病、および自己免疫性ブドウ膜炎からなる群から選択される、請求項25に記載の組換え共生細菌。
【請求項27】
前記自己免疫障害が、多発性硬化症およびI型糖尿病からなる群から選択される、請求項25または26に記載の組換え共生細菌。
【請求項28】
前記非天然タンパク質またはペプチドが、オボアルブミン、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質、インスリン、クロモグラニンA、ハイブリッドインスリンペプチド、プロテオリピドタンパク質、ミエリン塩基性タンパク質、ビリン、上皮細胞接着分子、コラーゲンアルファ-1、アグリカンコアタンパク質、60kDaシャペロニン2、ビメンチン、アルファ-エノラーゼ、フィブリノーゲンアルファ鎖、フィブリノーゲンベータ鎖、キチナーゼ3様タンパク質、60kDaミトコンドリア熱ショックタンパク質、マトリックスメタロプロテイナーゼ-16、甲状腺ペルオキシダーゼ、チロトロピン受容体、サイログロブリン、グルテン、TSHRタンパク質、グルタミン酸デカルボキシラーゼ2、受容体型チロシン-タンパク質ホスファターゼ-様N、グルコース-6-ホスファターゼ2、インスリンアイソフォーム2、亜鉛トランスポーター8、グルタミン酸デカルボキシラーゼ1、GAD65、UniProt:A2RGM0、インテグリンアルファ-Iib、インテグリンベータ-3、EBV DNAポリメラーゼ触媒サブユニット、2’3’-環状ヌクレオチド3’ホスホジエステラーゼ、ミエリン関連オリゴデンドロサイト塩基性タンパク質、小核リボ核タンパク質、U1小核リボ核タンパク質、ヒストンH2B、ヒストンH2A、ヒストンH3.2、ベータ-2-糖タンパク質、ヒストンH4、60Sリボソームタンパク質L7、TNF-アルファ、ミエロペルオキシダーゼ、Cbir1、MS4A12、DNAトポイソメラーゼ、CYP2D6、O-ホスホセリル-tRNAセレニウムトランスフェラーゼ、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体、スペクトリンアルファ鎖、ステロイド21ヒドロキシラーゼ、アセチルコリン受容体、MMP-16、ケラチン関連タンパク質、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4、ミエロブラスチン、U1小核リボ核タンパク質70kDa、血液型Rh(D)、血液型Rh(CE)、ミエリンP2タンパク質、末梢ミエリンタンパク質22、ミエリンタンパク質P0、S-アレスチン、コラーゲンアルファ-1、凝固因子VIII、コラーゲンアルファ-3(IV)、デスモグレイン-3、デスモグレイン-1、インスリン-2、主要DNA結合タンパク質、チロシナーゼ、5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸オキシダーゼ、HLA-A2、アクアポリン-4、ミエリンプロテオリピドタンパク質、ABCトランスポーター、HLA I B-27アルファ鎖、HLA I B-7アルファ鎖、およびレチノール結合タンパク質3からなる群から選択される、請求項25または26に記載の組換え共生細菌。
【請求項29】
前記非天然タンパク質またはペプチドが、オボアルブミン、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質、インスリン、クロモグラニンA、ハイブリッドインスリンペプチド、プロテオリピドタンパク質、ミエリン塩基性タンパク質、ビリン、上皮細胞接着分子からなる群から選択される、請求項28に記載の組換え共生細菌。
【請求項30】
前記細菌が、前記発現されたタンパク質またはペプチドを分泌するように操作されている、請求項22~29のいずれか一項に記載の組換え共生細菌。
【請求項31】
前記細菌が、前記タンパク質またはペプチドと天然細菌タンパク質またはその一部とを含む融合タンパク質を発現するように操作されている、請求項22~29のいずれか一項に記載の組換え共生細菌。
【請求項32】
前記タンパク質またはペプチドが、前記天然細菌タンパク質またはその一部のN末端またはC末端に融合されている、請求項31に記載の組換え共生細菌。
【請求項33】
前記天然細菌タンパク質が、シアリダーゼ、エンドヌクレアーゼ、分泌エンドグリコシダーゼ、抗シグマ因子、チオールペルオキシダーゼ、仮想タンパク質BT_2621、仮想タンパク質BT_3223、ペプチダーゼ、Iccファミリーホスホヒドロラーゼ、エキソ-ポリ-アルファ-D-ガラクツロノシダーゼ、および仮想タンパク質BT_4428からなる群から選択される、請求項31または32に記載の組換え共生細菌。
【請求項34】
前記天然細菌タンパク質がシアリダーゼまたは抗シグマ因子である、請求項33に記載の組換え共生細菌。
【請求項35】
前記適応免疫応答がTエフェクター応答であり、前記細菌が、S.epidermidis、Corynebacterium spp.、Parabacteroides distasonis、Parabacteroides gordonii、Alistipes senegalensis、Parabacteroides johnsonii、Paraprevotella xylaniphila、Bacteroides dorei、Bacteroides uniformis JCM 5828、Eubacterium limosum、Ruminococcaceae bacterium cv2、Phascolarctobacterium faecium、Fusobacterium ulcerans、Klebsiella pneumoniae、Clostridium bolteae 90B3、Clostridium cf.saccharolyticum K10、Clostridium symbiosum WAL-14673、Clostridium hathewayi 12489931、Ruminococcus obeum A2-162、Ruminococcus gnavus AGR2154、Butyrate-producing bacterium SSC/2、Clostridium sp.ASF356、Coprobacillus sp.D6 cont1.1、Eubacterium sp.3_1_31 cont1.1、Erysipelotrichaceae bacterium 21_3、Subdoligranulum sp.4_3_54A2FAA、Ruminococcus bromii L2-63、Firmicutes bacterium ASF500、Firmicutes bacterium ASF500、Bacteroides dorei 5_1_36/D4 supercont2.3、Bifidobacterium animalis subsp.Lactis ATCC 27673およびBifidobacterium breve UCC2003からなる群から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の組換え共生細菌。
【請求項36】
前記細菌が、S.epidermidis LM087およびCorynebacterium spp.からなる群から選択される、請求項35に記載の組換え共生細菌。
【請求項37】
前記疾患または症状が増殖性障害である、請求項35または36に記載の組換え共生細菌。
【請求項38】
前記増殖性障害が癌である、請求項37に記載の組換え共生細菌。
【請求項39】
前記癌が、黒色腫、基底細胞癌腫、扁平上皮癌腫、および精巣癌から選択される、請求項38に記載の組換え共生細菌。
【請求項40】
前記癌が黒色腫である、請求項38に記載の組換え共生細菌。
【請求項41】
前記非天然タンパク質またはペプチドが、PMEL、TRP2、MART-1、NY-ESO、MAGE-Aおよびネオ抗原からなる群から選択される、請求項35~37のいずれか一項に記載の組換え共生細菌。
【請求項42】
前記非天然タンパク質またはペプチドがPMELである、請求項41に記載の組換え共生細菌。
【請求項43】
前記細菌が、前記発現されたタンパク質またはペプチドを分泌するように操作されている、請求項35~42のいずれか一項に記載の組換え共生細菌。
【請求項44】
前記細菌が、前記タンパク質またはペプチドと天然細菌タンパク質またはその一部とを含む融合タンパク質を発現するように操作されている、請求項35~42のいずれか一項に記載の組換え共生細菌。
【請求項45】
前記タンパク質またはペプチドが、前記天然細菌タンパク質またはその一部のN末端またはC末端に融合されている、請求項44に記載の組換え共生細菌。
【請求項46】
前記天然細菌タンパク質が、シアリダーゼ、エンドヌクレアーゼ、分泌エンドグリコシダーゼ、抗シグマ因子、チオールペルオキシダーゼ、仮想タンパク質BT_2621、仮想タンパク質BT_3223、ペプチダーゼ、Iccファミリーホスホヒドロラーゼ、エキソ-ポリ-アルファ-D-ガラクツロノシダーゼ、および仮想タンパク質BT_4428からなる群から選択される、請求項35~45のいずれか一項に記載の組換え共生細菌。
【請求項47】
前記天然細菌タンパク質がシアリダーゼまたは抗シグマ因子である、請求項46に記載の組換え共生細菌。
【請求項48】
前記細菌が、複雑性の高い定義された微生物群と組み合わせて投与される、請求項1~47のいずれか一項に記載の組換え共生細菌。
【請求項49】
前記宿主が哺乳動物である、請求項1~48のいずれか一項に記載の組換え共生細菌。
【請求項50】
前記哺乳動物がヒトである、請求項49に記載の組換え共生細菌。
【請求項51】
請求項1~50のいずれか一項に記載の組換え共生細菌を操作するために使用されるポリヌクレオチド。
【請求項52】
非天然タンパク質またはペプチドに由来する抗原を表示する抗原提示細胞を生成する方法であって、請求項1~50のいずれか一項に記載の組換え共生細菌を対象に投与することを含み、前記投与が、前記細菌による前記天然宿主ニッチのコロニー形成、抗原提示細胞による前記細菌の内在化、および前記抗原提示細胞による前記抗原の提示をもたらす、方法。
【請求項53】
前記天然宿主ニッチの前記コロニー形成が、持続性または一過性である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記天然宿主ニッチが、一過性にコロニー形成され、コロニー形成が1日~60日間である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記天然宿主ニッチが、一過性にコロニー形成され、コロニー形成が3.5日間~60日間である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記天然宿主ニッチが、一過性にコロニー形成され、コロニー形成が7日間~28日間である、請求項54または55に記載の方法。
【請求項57】
コロニー形成が、前記宿主への投与の1日後、3.5日後、7日後、14日後、28日後、または60日後に前記宿主から得られた試料に対して行われるポリメラーゼ連鎖反応またはコロニー形成アッセイによって決定される、請求項52~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記投与が、前記細菌と天然免疫系パートナー細胞との相互作用をもたらす、請求項52~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記天然免疫系パートナー細胞が前記抗原提示細胞である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記抗原提示細胞が、樹状細胞、マクロファージ、B細胞および腸上皮細胞からなる群より選択される、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記天然宿主ニッチが、胃腸管、気道、泌尿生殖路および皮膚からなる群から選択される、請求項52~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記提示がMHC II複合体内にある、請求項52~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記提示がMHC I複合体内にある、請求項52~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記細菌がグラム陰性菌である、請求項52~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記グラム陰性菌が、Bacteroides thetaiotaomicron、Helicobacter hepaticus、Parabacteroides sp.およびPrevotella spp.からなる群から選択される、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記細菌がグラム陽性菌である、請求項52~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記グラム陽性菌が、Staphylococcus epidermidis、Faecalibacterium sp.およびClostridium sp.からなる群から選択される、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記投与が、局所的、経腸的、非経口的および吸入からなる群から選択される経路を介する、請求項52~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記経路が局所的である、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記細菌がS.epidermidisである、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記経路が経腸的である、請求項68に記載の方法。
【請求項72】
前記細菌が、Bacteroides spp.、Clostridium spp.、Helicobacter spp.、Parabacteroides spp.およびPrevotella spp.からなる群から選択される、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記細菌が、Bacteroides thetaiotaomicron、Bacteroides vulgatusおよびBacteroides finegoldiiからなる群から選択される、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記天然細菌タンパク質が、シアリダーゼ、エンドヌクレアーゼ、分泌エンドグリコシダーゼ、抗シグマ因子、チオールペルオキシダーゼ、仮想タンパク質BT_2621、仮想タンパク質BT_3223、ペプチダーゼ、Iccファミリーホスホヒドロラーゼ、エキソ-ポリ-アルファ-D-ガラクツロノシダーゼ、および仮想タンパク質BT_4428からなる群から選択される、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記天然細菌タンパク質がシアリダーゼまたは抗シグマ因子である、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記非天然タンパク質またはペプチドがメラノサイトオリゴデンドロサイト糖タンパク質である、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記疾患または症状が、多発性硬化症である、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
対象においてT細胞応答を生成する方法であって、請求項1~50のいずれか一項に記載の組換え共生細菌を前記対象に投与することを含み、前記投与が、前記細菌による天然宿主ニッチのコロニー形成および前記T細胞応答の生成をもたらし、前記T細胞応答が、前記非天然タンパク質またはペプチドに由来する抗原に対するものである、方法。
【請求項79】
前記天然宿主ニッチの前記コロニー形成が、持続性または一過性である、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記天然宿主ニッチが、一過性にコロニー形成され、コロニー形成が1日~60日間である、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記天然宿主ニッチが、一過性にコロニー形成され、コロニー形成が3.5日間~60日間である、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記天然宿主ニッチが一過性にコロニー形成され、コロニー形成が7日間~28日間である、請求項80または81に記載の方法。
【請求項83】
コロニー形成が、前記宿主への投与の1日後、3.5日後、7日後、14日後、28日後、または60日後に前記宿主から得られた試料に対して行われるポリメラーゼ連鎖反応またはコロニー形成アッセイによって決定される、請求項78~82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
前記投与が、局所的、経腸的、非経口的および吸入からなる群から選択される経路を介する、請求項78~83のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
前記経路が局所的である、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記経路が経腸的である、請求項84に記載の方法。
【請求項87】
前記細菌が、Bacteroides spp.、Clostridium spp.、Helicobacter spp.、Parabacteroides spp、Prevotella spp.およびStaphylococcus epidermidisからなる群から選択される、請求項84~86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
前記T細胞応答がTregまたはTエフェクター応答である、請求項84~87のいずれか一項記載の方法。
【請求項89】
前記経路が経腸的であり、前記T細胞応答がTreg応答である、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記細菌が、Bacteroides spp.、Clostridium spp.、Helicobacter spp.、Parabacteroides spp.およびPrevotella spp.からなる群から選択される、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記細菌が、Bacteroides thetaiotaomicron、Bacteroides vulgatusおよびBacteroides finegoldiiからなる群から選択される、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記天然細菌タンパク質が、シアリダーゼ、エンドヌクレアーゼ、分泌エンドグリコシダーゼ、抗シグマ因子、チオールペルオキシダーゼ、仮想タンパク質BT_2621、仮想タンパク質BT_3223、ペプチダーゼ、Iccファミリーホスホヒドロラーゼ、エキソ-ポリ-アルファ-D-ガラクツロノシダーゼ、および仮想タンパク質BT_4428からなる群から選択される、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記天然細菌タンパク質がシアリダーゼまたは抗シグマ因子である、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
前記非天然タンパク質またはペプチドがミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質である、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
前記疾患または症状が、多発性硬化症である、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
前記経路が局所的であり、前記T細胞応答がTエフェクター応答である、請求項88に記載の方法。
【請求項97】
前記細菌がS.epidermidisである、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
対象の疾患または症状を処置する方法であって、請求項1~50のいずれか一項に記載の組換え共生細菌を前記対象に投与することを含み、前記投与が、前記細菌による天然宿主ニッチのコロニー形成およびT細胞応答の生成をもたらし、前記T細胞応答が、前記非天然タンパク質またはペプチドに由来する抗原に対するものであり、前記T細胞応答が、前記対象の前記疾患または症状を処置する、方法。
【請求項99】
前記天然宿主ニッチの前記コロニー形成が、持続性または一過性である、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
前記天然宿主ニッチが、一過性にコロニー形成され、コロニー形成が1日~60日間である、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
前記天然宿主ニッチが、一過性にコロニー形成され、コロニー形成が3.5日間~60日間である、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
前記天然宿主ニッチが、一過性にコロニー形成され、コロニー形成が7日間~28日間である、請求項100または101に記載の方法。
【請求項103】
コロニー形成が、前記宿主への投与の1日後、3.5日後、7日後、14日後、28日後、または60日後に前記宿主から得られた試料に対して行われるポリメラーゼ連鎖反応またはコロニー形成アッセイによって決定される、請求項98~102のいずれか一項に記載の方法。
【請求項104】
前記疾患または症状が、自己免疫障害および増殖性障害からなる群から選択される、請求項98~104に記載の方法。
【請求項105】
前記自己免疫障害が、多発性硬化症、I型糖尿病、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾患、セリアック病、グレーブス病、橋本自己免疫性甲状腺炎、白斑、リウマチ熱、悪性貧血/萎縮性胃炎、円形脱毛症、免疫性血小板減少性紫斑病、側頭動脈炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、強皮症、抗リン脂質症候群、1型自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、シェーグレン症候群、アジソン病、疱疹状皮膚炎、川崎病、交感神経性眼炎、HLA-B27関連急性前部ブドウ膜炎、原発性硬化性胆管炎、円板状エリテマトーデス、結節性多発性動脈炎、CREST症候群、重症筋無力症、多発性筋炎/皮膚筋炎、スチル病、自己免疫性2型肝炎、ウェゲナー肉芽腫症、混合性結合組織病、顕微鏡的多発血管炎、自己免疫性多腺性症候群、フェルティ症候群、自己免疫性溶血性貧血、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、ギラン・バレー症候群、ベーチェット病、自己免疫性好中球減少症、水疱性類天疱瘡、本態性混合型クリオグロブリン血症、線状限局性強皮症、自己免疫性多腺性症候群1(APECED)、後天性血友病A、バッテン病/神経セロイドリポフスチン症、自己免疫性膵炎、橋本脳症、グッドパスチャー病、尋常性天疱瘡、自己免疫性播種性脳脊髄炎、再発性多発性軟骨炎、高安動脈炎、チャーグ・ストラウス症候群、後天性表皮水疱症、瘢痕性類天疱瘡、落葉状天疱瘡、自己免疫性副甲状腺機能低下症、自己免疫性下垂体炎、自己免疫性内耳疾患、自己免疫性リンパ増殖性症候群、自己免疫性卵巣炎、自己免疫性精巣炎、自己免疫性多腺性症候群、コーガン症候群、嗜眠性脳炎、持久性隆起性紅斑、エバンス症候群、免疫調節異常性多腺性腸症X連鎖(IPEX)、イッザック症候群/後天性神経筋緊張症、ミラーフィッシャー症候群、モルバン症候群、PANDAS、POEMS症候群、ラスムッセン脳炎、全身硬直症候群、フォークト-小柳-原田症候群、視神経脊髄炎、移植片対宿主病、および自己免疫性ブドウ膜炎からなる群から選択される、請求項104に記載の方法。
【請求項106】
前記自己免疫障害が、多発性硬化症およびI型糖尿病からなる群から選択される、請求項105に記載の方法。
【請求項107】
前記増殖性障害が癌である、請求項104に記載の方法。
【請求項108】
前記癌が、黒色腫、基底細胞癌腫、扁平上皮癌腫、および精巣癌から選択される、請求項107に記載の方法。
【請求項109】
前記癌が黒色腫である、請求項107に記載の方法。
【請求項110】
前記投与が、局所的、経腸的、非経口的および吸入からなる群から選択される経路を介する、請求項98~109のいずれか一項に記載の方法。
【請求項111】
前記経路が局所的である、請求項110に記載の方法。
【請求項112】
前記細菌がS.epidermidisである、請求項111に記載の方法。
【請求項113】
前記疾患が癌である、請求項112に記載の方法。
【請求項114】
前記癌が黒色腫である、請求項113に記載の方法。
【請求項115】
前記非天然タンパク質またはペプチドが、メラノサイト特異的抗原および精巣癌抗原からなる群から選択される、請求項113に記載の方法。
【請求項116】
前記メラノサイト特異的抗原が、PMEL、TRP2およびMART-1からなる群より選択される、請求項115記載の方法。
【請求項117】
前記精巣癌抗原が、NY-ESOおよびMAGE-Aからなる群より選択される、請求項115に記載の方法。
【請求項118】
前記経路が経腸的である、請求項110に記載の方法。
【請求項119】
前記細菌が、Bacteroides spp.、Clostridium spp.、Helicobacter spp.、Parabacteroides spp.およびPrevotella spp.からなる群から選択される、請求項118に記載の方法。
【請求項120】
前記細菌が、Bacteroides thetaiotaomicron、Bacteroides vulgatusおよびBacteroides finegoldiiからなる群から選択される、請求項119に記載の方法。
【請求項121】
前記天然細菌タンパク質が、シアリダーゼ、エンドヌクレアーゼ、分泌エンドグリコシダーゼ、抗シグマ因子、チオールペルオキシダーゼ、仮想タンパク質BT_2621、仮想タンパク質BT_3223、ペプチダーゼ、Iccファミリーホスホヒドロラーゼ、エキソ-ポリ-アルファ-D-ガラクツロノシダーゼ、および仮想タンパク質BT_4428からなる群から選択される、請求項120に記載の方法。
【請求項122】
前記天然細菌タンパク質がシアリダーゼまたは抗シグマ因子である、請求項121に記載の方法。
【請求項123】
前記自己免疫障害が、多発性硬化症、I型糖尿病、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾患、セリアック病、グレーブス病、橋本自己免疫性甲状腺炎、白斑、リウマチ熱、悪性貧血/萎縮性胃炎、円形脱毛症、免疫性血小板減少性紫斑病、側頭動脈炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、強皮症、抗リン脂質症候群、1型自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、シェーグレン症候群、アジソン病、疱疹状皮膚炎、川崎病、交感神経性眼炎、HLA-B27関連急性前部ブドウ膜炎、原発性硬化性胆管炎、円板状エリテマトーデス、結節性多発性動脈炎、CREST症候群、重症筋無力症、多発性筋炎/皮膚筋炎、スチル病、自己免疫性2型肝炎、ウェゲナー肉芽腫症、混合性結合組織病、顕微鏡的多発血管炎、自己免疫性多腺性症候群、フェルティ症候群、自己免疫性溶血性貧血、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、ギラン・バレー症候群、ベーチェット病、自己免疫性好中球減少症、水疱性類天疱瘡、本態性混合型クリオグロブリン血症、線状限局性強皮症、自己免疫性多腺性症候群1(APECED)、後天性血友病A、バッテン病/神経セロイドリポフスチン症、自己免疫性膵炎、橋本脳症、グッドパスチャー病、尋常性天疱瘡、自己免疫性播種性脳脊髄炎、再発性多発性軟骨炎、高安動脈炎、チャーグ・ストラウス症候群、後天性表皮水疱症、瘢痕性類天疱瘡、落葉状天疱瘡、自己免疫性副甲状腺機能低下症、自己免疫性下垂体炎、自己免疫性内耳疾患、自己免疫性リンパ増殖性症候群、自己免疫性卵巣炎、自己免疫性精巣炎、自己免疫性多腺性症候群、コーガン症候群、嗜眠性脳炎、持久性隆起性紅斑、エバンス症候群、免疫調節異常性多腺性腸症X連鎖(IPEX)、イッザック症候群/後天性神経筋緊張症、ミラーフィッシャー症候群、モルバン症候群、PANDAS、POEMS症候群、ラスムッセン脳炎、全身硬直症候群、フォークト-小柳-原田症候群、視神経脊髄炎、移植片対宿主病、および自己免疫性ブドウ膜炎からなる群から選択される、請求項118~122のいずれか一項に記載の方法。
【請求項124】
前記自己免疫障害が多発性硬化症である、請求項123に記載の方法。
【請求項125】
前記細菌が、Bacteroides thetaiotaomicron、Bacteroides vulgatusおよびBacteroides finegoldiiからなる群から選択される、請求項124に記載の方法。
【請求項126】
前記非天然タンパク質がミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質である、請求項125に記載の方法。
【請求項127】
前記細菌が、複雑性の高い定義された微生物群と組み合わせて投与される、請求項52~126のいずれか一項に記載の方法。
【請求項128】
前記宿主が哺乳動物である、請求項52~127のいずれか一項に記載の方法。
【請求項129】
前記哺乳動物がヒトである、請求項128に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2019年6月19日に出願された米国仮特許出願第62/863,594号および2020年6月2日に出願された米国仮特許出願第63/033,811号に基づく利益および優先権を主張し、それらの開示はすべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府支援の研究開発の下でなされた発明の権利に関する声明
本発明は、国立衛生研究所(NIH)によって授与された助成金番号:DK113598の下で政府支援を受けてなされた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0003】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含み、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。2020年6月18日に作成された前記ASCIIコピーの名称はFBI-001WO_SL_ST25.txtであり、サイズは7,866バイトである。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
共生微生物叢は、主に、胃腸管、気道、泌尿生殖路および皮膚などのバリア部位に存在し、そこで自然免疫系および適応免疫系を機能的に調整する。これらの微生物に対する免疫寛容は、これらの各部位で確立されなければならない。胃腸管では、単純な円柱上皮は、管腔細菌からの空間的分離を容易にし、また常在樹状細胞に寛容原性シグナルを送達することによって微生物抗原の免疫原性を低下させる厚い粘液層によって被覆されている。自然リンパ球系細胞は、MHCクラスII依存性機構を介して共生特異的CD4T細胞応答を制限し、インターロイキン-22を産生し、これは微生物の解剖学的封じ込めをさらに促進する。特異的腸常在CD103CD11b樹状細胞はまた、炎症促進性CD4サブセットよりも調節性T(Treg)細胞の誘導を促進することによって腸の恒常性を維持するのに重要な役割を果たす(Scharschmidt T.C.et al.,Immunity 2015,November 17;43(5):1011-1021を参照のこと)。興味深いことに、皮膚などの他の微生物ニッチでは、特定の共生微生物(例えば、Staphylococcus epidermidis)が、皮膚樹状細胞との相互作用を介してCD8+エフェクターT細胞応答を選択的に誘導することが実証されている(Naik S.et al.,Nature 2015,520:104-108を参照のこと)。
【0005】
reg細胞は、末梢組織、特にそれらが安定に存在するバリア部位における免疫恒常性の確立および維持において主要な役割を果たす。腸粘膜固有層では、Treg細胞は自己寛容を維持するだけでなく、共生生物に対する寛容の媒介において重要な役割を果たす。腸常在Treg細胞の大部分は共生抗原を認識し、胸腺由来Treg細胞は腸内微生物に対する寛容を支持する。さらに、特定の細菌種は、粘膜固有層(Id.)のTreg細胞を増殖させる。
【0006】
regはTヘルパー(T)細胞のサブセットであり、ナイーブCD4細胞と同じ系譜に由来すると考えられる。Tregは、自己抗原に対する寛容の維持および自己免疫疾患の予防に関与する。Tregはまた、エフェクターT細胞(Teff)の誘導および増殖を抑制する。Tregは、TGF-β、IL-35およびIL-10などの阻害性サイトカインを産生する。Tregは、転写因子Foxp3を発現する。ヒトでは、Treg細胞の大部分は、MHCクラスII拘束性CD4+細胞であるが、FoxP3+、MHCクラスI拘束性CD8+細胞である少数集団が存在する。Tregはまた、サブセット:胸腺で成長する「天然」CD4+CD25+FoxP3+Treg細胞(nTreg)、および末梢で生じる「誘導性」調節性細胞(iTreg)に分けることもできる。iTregはまた、CD4+CD25+FoxP3+であり、末梢において成熟CD4+T細胞から成長する(すなわち、胸腺の外側)。iTregはまた、RORγtおよびFoxp3の両方を発現することができる(Sefik E.,et al.,’’Individual intestinal symbionts induce a distinct population of RORgamma(+)regulatory T cells,’’Science 2015;349:993-997を参照のこと)。研究は、樹状細胞によって産生されたTGF-βおよびレチノイン酸がナイーブT細胞を刺激してTregに分化させることができ、消化管内のナイーブT細胞が抗原刺激後にTregに分化することを示した。iTregは、TGF-βを添加することによって培養中に誘導することもできる。
regとは対照的に、Tエフェクター(Teff)細胞は、一般に、抗原特異的T細胞受容体(TCR)活性化時に、様々なクラスの病原体に対処することに特化した膜結合および分泌タンパク質のアレイの発現または放出を介して炎症促進性応答を刺激する。Teff細胞には3つのクラス:CD8+細胞傷害性T細胞、T1細胞およびT2細胞がある。CD8+細胞傷害性T細胞は、細胞表面のMHCクラスI分子に関連して提示される細胞内病原体(例えば、ウイルス)のペプチド断片を表示する標的細胞を認識して死滅させる。CD8+細胞傷害性T細胞は、感染した標的細胞の膜と融合する溶解性顆粒中に予め形成された細胞毒素を貯蔵する。CD8+細胞傷害性T細胞は、Fas発現標的細胞においてアポトーシスを誘導するFasリガンドをさらに発現する。T1細胞およびT2細胞は、両方ともCD4を発現し、細胞内小胞内で分解され、MHCクラスII分子に関連して細胞表面上に提示されるペプチド断片を認識する。T1細胞は、マクロファージおよびB細胞を含む多くの他の免疫細胞を活性化し、それにより、細胞内微生物のより効率的な破壊および排除を促進することができる。T2細胞は、B細胞の分化を刺激し、体液性免疫応答の抗体および他のエフェクター分子の産生を促進する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Scharschmidt T.C.et al.,Immunity 2015,November 17;43(5):1011-1021
【非特許文献2】Naik S.et al.,Nature 2015,520:104-108
【非特許文献3】Sefik E.,et al.,’’Individual intestinal symbionts induce a distinct population of RORgamma(+)regulatory T cells,’’Science 2015;349:993-997
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の要旨
一実施態様では、生きている組換え共生細菌であって、細菌が非天然タンパク質またはペプチドを発現するように操作され、タンパク質またはペプチドが宿主の疾患または症状に関連し、宿主への細菌の投与に際し細菌による天然宿主ニッチのコロニー形成をもたらすと、宿主が非天然タンパク質またはペプチドに対する適応免疫応答を開始し、適応免疫応答が調節性T細胞(Treg)応答またはエフェクターT細胞(Teffector)応答である、組換え共生細菌が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、天然宿主ニッチのコロニー形成は、持続性または一過性である。特定の実施形態では、天然宿主ニッチは、一過性にコロニー形成され、コロニー形成は、1日~60日間である。特定の実施形態では、天然宿主ニッチは、一過性にコロニー形成され、コロニー形成は、3.5日間~60日間である。特定の実施形態では、天然宿主ニッチは、一過性にコロニー形成され、コロニー形成は、7日間~28日間である。いくつかの実施形態では、コロニー形成が、宿主への投与の1日後、3.5日後、7日後、14日後、28日後、または60日後に宿主から得られた試料に対して行われるポリメラーゼ連鎖反応またはコロニー形成アッセイによって決定される。いくつかの実施形態では、投与は、細菌と天然免疫系パートナー細胞との相互作用をもたらす。特定の実施形態では、天然免疫系パートナー細胞が抗原提示細胞である。特定の実施形態では、抗原提示細胞は、樹状細胞、マクロファージ、B細胞、および腸上皮細胞からなる群から選択される。
【0009】
いくつかの実施形態では、天然宿主ニッチは、胃腸管、気道、泌尿生殖路および皮膚からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、非天然タンパク質またはペプチドは、宿主タンパク質またはペプチドである。いくつかの実施形態では、細菌はグラム陰性菌である。特定の実施形態では、グラム陰性菌は、Bacteroides thetaiotaomicron、Helicobacter hepaticusおよびParabacteroides sp.からなる群から選択される。特定の実施形態では、細菌はグラム陽性菌である。特定の実施形態では、グラム陽性菌が、Staphylococcus epidermidis、Faecalibacterium sp.およびClostridium sp.からなる群から選択される。
【0010】
いくつかの実施形態では、投与は、局所的、経腸的、非経口的および吸入からなる群から選択される経路を介する。特定の実施形態では、投与経路は局所的である。いくつかの実施形態では、細菌はS.epidermidisである。特定の実施形態では、投与経路は経腸的である。いくつかの実施形態では、細菌が、Bacteroides spp.、Clostridium spp.、Helicobacter spp.、Parabacteroides spp.およびPrevotella spp.からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、細菌は、Bacteroides thetaiotaomicron、Bacteroides vulgatusおよびBacteroides finegoldiiからなる群から選択される。
【0011】
いくつかの実施形態では、適応免疫応答がTreg応答であり、前記細菌が、Bacteroides spp.、Helicobacter spp.、Parabacteroides spp.、Clostridium spp.、Staphylococcus spp.、Lactobacillus spp.、Fusobacterium spp.、Enterococcus spp.、Acenitobacter spp.、Flavinofractor spp.、Lachnospiraceae spp.、Erysipelotrichaceae spp.、Anaerostipes spp.、Anaerotruncus spp.、Coprococcus spp.、Clostridiales spp.、Odoribacter spp.、Collinsella spp.、Bifidobacterium spp.、Streptococcus spp.およびPrevotella spp.からなる群から選択される。特定の実施形態では、適応免疫応答がTreg応答であり、細菌が、Clostridium ramosum、Staphylococcus saprophyticus、Bacteroides thetaiotaomicron、Clostridium histolyticum、Lactobacillus rhamnosus、Parabacteroides johnsonii、Fusobacterium nucleatum、Enterococcus faecium、Lactobacillus casei、Acenitobacter lwofii、Bacteroides ovatus、Bacteroides vulgatus、Bacteroides uniformis、Bacteroides finegoldii、Clostridium spiroforme、Flavonifractor plautii、Clostridium hathewayi、Lachnospiraceae bacterium、Clostridium bolteae、Erysipelotrichaceae bacterium、Anaerostipes caccae、Anaerotruncus colihominis、Coprococcus comes、Clostridium asparagiforme、Clostridium symbiosum、Clostridium ramosum、Clostridium sp.D5、Clostridium scindens、Lachnospiraceae bacterium、Clostridiales bacterium、Bacteroides intestinalis、Bacteroides caccae、Bacteroides massiliensis、Parabacteroides distasonis、Odoribacter splanchnicus、Collinsella aerofaciens、Acinetobacter lwoffii、Bifidobacterium breve、Bacteroides finegoldii、Bacteroides fragilis、Bacteroides massiliensis、Bacteroides ovatus、Bifidobacterium bifidum、Lactobacillus acidofilus、Lactobacillus casei、Lactobacillus reuteri、Streptococcus thermophilusおよびPrevotella histicolaからなる群から選択される。特定の実施形態では、細菌は、Bacteroides thetaiotaomicron、Bacteroides vulgatus、Bacteroides finegoldiiおよびHelicobacter hepaticusからなる群から選択される。
【0012】
いくつかの実施形態では、疾患または症状は、自己免疫障害である。特定の実施形態では、自己免疫障害が、多発性硬化症、I型糖尿病、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾患、セリアック病、グレーブス病、橋本自己免疫性甲状腺炎、白斑、リウマチ熱、悪性貧血/萎縮性胃炎、円形脱毛症、免疫性血小板減少性紫斑病、側頭動脈炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、強皮症、抗リン脂質症候群、1型自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、シェーグレン症候群、アジソン病、疱疹状皮膚炎、川崎病、交感神経性眼炎、HLA-B27関連急性前部ブドウ膜炎、原発性硬化性胆管炎、円板状エリテマトーデス、結節性多発性動脈炎、CREST症候群、重症筋無力症、多発性筋炎/皮膚筋炎、スチル病、自己免疫性2型肝炎、ウェゲナー肉芽腫症、混合性結合組織病、顕微鏡的多発血管炎、自己免疫性多腺性症候群、フェルティ症候群、自己免疫性溶血性貧血、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、ギラン・バレー症候群、ベーチェット病、自己免疫性好中球減少症、水疱性類天疱瘡、本態性混合型クリオグロブリン血症、線状限局性強皮症、自己免疫性多腺性症候群1(APECED)、後天性血友病A、バッテン病/神経セロイドリポフスチン症、自己免疫性膵炎、橋本脳症、グッドパスチャー病、尋常性天疱瘡、自己免疫性播種性脳脊髄炎、再発性多発性軟骨炎、高安動脈炎、チャーグ・ストラウス症候群、後天性表皮水疱症、瘢痕性類天疱瘡、落葉状天疱瘡、自己免疫性副甲状腺機能低下症、自己免疫性下垂体炎、自己免疫性内耳疾患、自己免疫性リンパ増殖性症候群、自己免疫性卵巣炎、自己免疫性精巣炎、自己免疫性多腺性症候群、コーガン症候群、嗜眠性脳炎(encephalitis lethartica)、持久性隆起性紅斑、エバンス症候群、免疫調節異常性多腺性腸症X連鎖(IPEX)、イッザック症候群/後天性神経筋緊張症、ミラーフィッシャー症候群、モルバン症候群、PANDAS、POEMS症候群、ラスムッセン脳炎、全身硬直症候群、フォークト-小柳-原田症候群、視神経脊髄炎、移植片対宿主病、および自己免疫性ブドウ膜炎からなる群から選択される。特定の実施形態では、自己免疫障害は、多発性硬化症およびI型糖尿病からなる群より選択される。
【0013】
いくつかの実施形態では、非天然タンパク質またはペプチドが、オボアルブミン、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質、インスリン、クロモグラニンA、ハイブリッドインスリンペプチド、プロテオリピドタンパク質、ミエリン塩基性タンパク質、ビリン、上皮細胞接着分子、コラーゲンアルファ-1、アグリカンコアタンパク質、60kDaシャペロニン2、ビメンチン、アルファ-エノラーゼ、フィブリノーゲンアルファ鎖、フィブリノーゲンベータ鎖、キチナーゼ3様タンパク質、60kDaミトコンドリア熱ショックタンパク質、マトリックスメタロプロテイナーゼ-16、甲状腺ペルオキシダーゼ、チロトロピン受容体、サイログロブリン、グルテン、TSHRタンパク質、グルタミン酸デカルボキシラーゼ2、受容体型チロシン-タンパク質ホスファターゼ-様N、グルコース-6-ホスファターゼ2、インスリンアイソフォーム2、亜鉛トランスポーター8、グルタミン酸デカルボキシラーゼ1、GAD65、UniProt:A2RGM0、インテグリンアルファ-Iib、インテグリンベータ-3、EBV DNAポリメラーゼ触媒サブユニット、2’3’-環状ヌクレオチド3’ホスホジエステラーゼ、ミエリン関連オリゴデンドロサイト塩基性タンパク質、小核リボ核タンパク質、U1小核リボ核タンパク質、ヒストンH2B、ヒストンH2A、ヒストンH3.2、ベータ-2-糖タンパク質、ヒストンH4、60Sリボソームタンパク質L7、TNF-アルファ、ミエロペルオキシダーゼ、Cbir1、MS4A12、DNAトポイソメラーゼ、CYP2D6、O-ホスホセリル-tRNAセレニウムトランスフェラーゼ、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体、スペクトリンアルファ鎖、ステロイド21ヒドロキシラーゼ、アセチルコリン受容体、MMP-16、ケラチン関連タンパク質、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4、ミエロブラスチン、U1小核リボ核タンパク質70kDa、血液型Rh(D)、血液型Rh(CE)、ミエリンP2タンパク質、末梢ミエリンタンパク質22、ミエリンタンパク質P0、S-アレスチン、コラーゲンアルファ-1、凝固因子VIII、コラーゲンアルファ-3(IV)、デスモグレイン-3、デスモグレイン-1、インスリン-2、主要DNA結合タンパク質、チロシナーゼ、5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸オキシダーゼ、HLA-A2、アクアポリン-4、ミエリンプロテオリピドタンパク質、ABCトランスポーター、HLA I B-27アルファ鎖、HLA I B-7アルファ鎖、およびレチノール結合タンパク質3からなる群から選択される。特定の実施形態では、非天然タンパク質またはペプチドが、オボアルブミン、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質、インスリン、クロモグラニンA、ハイブリッドインスリンペプチド、プロテオリピドタンパク質、ミエリン塩基性タンパク質、ビリン、上皮細胞接着分子からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、細菌は、発現されたタンパク質またはペプチドを分泌するように操作される。いくつかの実施形態では、細菌が、前記タンパク質またはペプチドと天然細菌タンパク質またはその一部とを含む融合タンパク質を発現するように操作されている。いくつかの実施形態では、タンパク質またはペプチドが、天然細菌タンパク質またはその一部のN末端またはC末端に融合されている。いくつかの実施形態では、天然細菌タンパク質が、シアリダーゼ、エンドヌクレアーゼ、分泌エンドグリコシダーゼ、抗シグマ因子、チオールペルオキシダーゼ、仮想タンパク質BT_2621、仮想タンパク質BT_3223、ペプチダーゼ、Iccファミリーホスホヒドロラーゼ、エキソ-ポリ-アルファ-D-ガラクツロノシダーゼ、および仮想タンパク質BT_4428からなる群から選択される。特定の実施形態では、天然細菌タンパク質がシアリダーゼまたは抗シグマ因子である。
【0014】
いくつかの実施形態では、適応免疫応答がTエフェクター応答であり、細菌が、S.epidermidis、Corynebacterium spp.、Parabacteroides distasonis、Parabacteroides gordonii、Alistipes senegalensis、Parabacteroides johnsonii、Paraprevotella xylaniphila、Bacteroides dorei、Bacteroides uniformis JCM 5828、Eubacterium limosum、Ruminococcaceae bacterium cv2、Phascolarctobacterium faecium、Fusobacterium ulcerans、Klebsiella pneumoniae、Clostridium bolteae 90B3、Clostridium cf.saccharolyticum K10、Clostridium symbiosum WAL-14673、Clostridium hathewayi 12489931、Ruminococcus obeum A2-162、Ruminococcus gnavus AGR2154、Butyrate-producing bacterium SSC/2、Clostridium sp.ASF356、Coprobacillus sp.D6 cont1.1、Eubacterium sp.3_1_31 cont1.1、Erysipelotrichaceae bacterium 21_3、Subdoligranulum sp.4_3_54A2FAA、Ruminococcus bromii L2-63、Firmicutes bacterium ASF500、Firmicutes bacterium ASF500、Bacteroides dorei 5_1_36/D4 supercont2.3、Bifidobacterium animalis subsp.Lactis ATCC 27673およびBifidobacterium breve UCC2003からなる群から選択される。特定の実施形態では、細菌が、S.epidermidis LM087およびCorynebacterium spp.からなる群から選択される。
【0015】
いくつかの実施形態では、疾患または症状は増殖性障害である。いくつかの実施形態では、増殖性障害は、癌である。特定の実施形態では、癌が、黒色腫、基底細胞癌腫、扁平上皮癌腫、および精巣癌から選択される。特定の実施形態では、癌は、黒色腫である。
【0016】
いくつかの実施形態では、非天然タンパク質またはペプチドが、PMEL、TRP2、MART-1、NY-ESO、MAGE-Aおよびネオ抗原からなる群から選択される。特定の実施形態では、非天然タンパク質またはペプチドがPMELである。
【0017】
いくつかの実施形態では、細菌は、発現されたタンパク質またはペプチドを分泌するように操作される。いくつかの実施形態では、細菌が、前記タンパク質またはペプチドと天然細菌タンパク質またはその一部とを含む融合タンパク質を発現するように操作されている。特定の実施形態では、タンパク質またはペプチドが、天然細菌タンパク質またはその一部のN末端またはC末端に融合されている。いくつかの実施形態では、天然細菌タンパク質が、シアリダーゼ、エンドヌクレアーゼ、分泌エンドグリコシダーゼ、抗シグマ因子、チオールペルオキシダーゼ、仮想タンパク質BT_2621、仮想タンパク質BT_3223、ペプチダーゼ、Iccファミリーホスホヒドロラーゼ、エキソ-ポリ-アルファ-D-ガラクツロノシダーゼ、および仮想タンパク質BT_4428からなる群から選択される。特定の実施形態では、天然細菌タンパク質がシアリダーゼまたは抗シグマ因子である。
【0018】
いくつかの実施形態では、細菌が、複雑性の高い定義された微生物群と組み合わせて投与される。
【0019】
いくつかの実施形態では、宿主は哺乳動物である。特定の実施形態では、哺乳動物はヒトである。
【0020】
別の実施態様では、本明細書に開示される組換え共生細菌を操作するために使用されるポリヌクレオチドが本明細書で提供される。
【0021】
別の実施態様では、非天然タンパク質またはペプチドに由来する抗原を表示する抗原提示細胞を生成する方法であって、本明細書に開示される組換え共生細菌を対象に投与することを含み、投与が、細菌による天然宿主ニッチのコロニー形成、抗原提示細胞による細菌の内在化、および抗原提示細胞による抗原の提示をもたらす方法が、本明細書で提供される。特定の実施形態では、天然宿主ニッチのコロニー形成は、持続性または一過性である。特定の実施形態では、天然宿主ニッチは、一過性にコロニー形成され、コロニー形成は、1日~60日間である。特定の実施形態では、天然宿主ニッチは、一過性にコロニー形成され、コロニー形成は、3.5日間~60日間である。特定の実施形態では、天然宿主ニッチは、一過性にコロニー形成され、コロニー形成は、7日間~28日間である。特定の実施形態では、コロニー形成が、宿主への投与の1日後、3.5日後、7日後、14日後、28日後、または60日後に宿主から得られた試料に対して行われるポリメラーゼ連鎖反応またはコロニー形成アッセイによって決定される。
【0022】
いくつかの実施形態では、投与は、細菌と天然免疫系パートナー細胞との相互作用をもたらす。いくつかの実施形態では、天然免疫系パートナー細胞は抗原提示細胞である。特定の実施形態では、抗原提示細胞は、樹状細胞、マクロファージ、B細胞、および腸上皮細胞からなる群から選択される。特定の実施形態では、天然宿主ニッチは、胃腸管、気道、泌尿生殖路および皮膚からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、提示はMHC II複合体内にある。いくつかの実施形態では、提示はMHC I複合体内にある。いくつかの実施形態では、細菌はグラム陰性菌である。特定の実施形態では、グラム陰性菌は、Bacteroides thetaiotaomicron、Helicobacter hepaticus、Parabacteroides sp.およびPrevotella spp.からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、細菌はグラム陽性菌である。特定の実施形態では、グラム陽性菌が、Staphylococcus epidermidis、Faecalibacterium sp.およびClostridium sp.からなる群から選択される。
【0023】
いくつかの実施形態では、投与は、局所的、経腸的、非経口的および吸入からなる群から選択される経路を介する。いくつかの実施形態では、経路は局所的である。特定の実施形態では、細菌はS.epidermidisである。いくつかの実施形態では、経路は経腸的である。特定の実施形態では、細菌は、Bacteroides spp.、Clostridium spp.、Helicobacter spp.、Parabacteroides spp.およびPrevotella spp.からなる群から選択される。特定の実施形態では、細菌は、Bacteroides thetaiotaomicron、Bacteroides vulgatusおよびBacteroides finegoldiiからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、天然細菌タンパク質が、シアリダーゼ、エンドヌクレアーゼ、分泌エンドグリコシダーゼ、抗シグマ因子、チオールペルオキシダーゼ、仮想タンパク質BT_2621、仮想タンパク質BT_3223、ペプチダーゼ、Iccファミリーホスホヒドロラーゼ、エキソ-ポリ-アルファ-D-ガラクツロノシダーゼ、および仮想タンパク質BT_4428からなる群から選択される。特定の実施形態では、天然細菌タンパク質がシアリダーゼまたは抗シグマ因子である。特定の実施形態では、非天然タンパク質またはペプチドは、メラノサイトオリゴデンドロサイト糖タンパク質である。特定の実施形態では、疾患または症状は、多発性硬化症である。
【0024】
別の実施態様では、対象においてT細胞応答を生成する方法であって、本明細書に開示される組換え共生細菌を対象に投与することを含み、投与が、細菌による天然宿主ニッチのコロニー形成およびT細胞応答の生成をもたらし、T細胞応答が、非天然タンパク質またはペプチドに由来する抗原に対するものである方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、天然宿主ニッチのコロニー形成は、持続性または一過性である。特定の実施形態では、天然宿主ニッチは、一過性にコロニー形成され、コロニー形成は、1日~60日間である。特定の実施形態では、天然宿主ニッチは、一過性にコロニー形成され、コロニー形成は、3.5日間~60日間である。特定の実施形態では、天然宿主ニッチは、一過性にコロニー形成され、コロニー形成は、7日間~28日間である。
【0025】
いくつかの実施形態では、コロニー形成が、宿主への投与の1日後、3.5日後、7日後、14日後、28日後、または60日後に宿主から得られた試料に対して行われるポリメラーゼ連鎖反応またはコロニー形成アッセイによって決定される。いくつかの実施形態では、投与は、局所的、経腸的、非経口的および吸入からなる群から選択される経路を介する。特定の実施形態では、経路は局所的である。特定の実施形態では、経路は経腸的である。いくつかの実施形態では、細菌が、Bacteroides spp.、Clostridium spp.、Helicobacter spp.、Parabacteroides spp.、Prevotella spp.およびStaphylococcus epidermidisからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、T細胞応答は、Treg応答またはTeffector応答である。特定の実施形態では、経路は経腸的であり、T細胞応答はTreg応答である。いくつかの実施形態では、細菌が、Bacteroides spp.、Clostridium spp.、Helicobacter spp.、Parabacteroides spp.およびPrevotella spp.からなる群から選択される。特定の実施形態では、細菌は、Bacteroides thetaiotaomicron、Bacteroides vulgatusおよびBacteroides finegoldiiからなる群から選択される。
【0026】
いくつかの実施形態では、天然細菌タンパク質が、シアリダーゼ、エンドヌクレアーゼ、分泌エンドグリコシダーゼ、抗シグマ因子、チオールペルオキシダーゼ、仮想タンパク質BT_2621、仮想タンパク質BT_3223、ペプチダーゼ、Iccファミリーホスホヒドロラーゼ、エキソ-ポリ-アルファ-D-ガラクツロノシダーゼ、および仮想タンパク質BT_4428からなる群から選択される。特定の実施形態では、天然細菌タンパク質がシアリダーゼまたは抗シグマ因子である。特定の実施形態では、非天然タンパク質またはペプチドは、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質である。特定の実施形態では、疾患または症状は、多発性硬化症である。特定の実施形態では、経路は局所的であり、T細胞応答はTeffector応答である。特定の実施形態では、細菌はS.epidermidisである。
【0027】
別の実施態様では、対象の疾患または症状を処置する方法であって、本明細書に開示される組換え共生細菌を対象に投与することを含み、投与が、細菌による天然宿主ニッチのコロニー形成およびT細胞応答の生成をもたらし、T細胞応答が非天然タンパク質またはペプチドに由来する抗原に対するものであり、T細胞応答が対象の疾患または症状を処置する方法が本明細書で提供される。
【0028】
いくつかの実施形態では、天然宿主ニッチのコロニー形成は、持続性または一過性である。特定の実施形態では、天然宿主ニッチは、一過性にコロニー形成され、コロニー形成は、1日~60日間である。特定の実施形態では、天然宿主ニッチは、一過性にコロニー形成され、コロニー形成は、3.5日間~60日間である。特定の実施形態では、天然宿主ニッチは、一過性にコロニー形成され、コロニー形成は、7日間~28日間である。特定の実施形態では、コロニー形成が、宿主への投与の1日後、3.5日後、7日後、14日後、28日後、または60日後に宿主から得られた試料に対して行われるポリメラーゼ連鎖反応またはコロニー形成アッセイによって決定される。
【0029】
いくつかの実施形態では、疾患または症状は、自己免疫障害および増殖性障害からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、自己免疫障害が、多発性硬化症、I型糖尿病、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾患、セリアック病、グレーブス病、橋本自己免疫性甲状腺炎、白斑、リウマチ熱、悪性貧血/萎縮性胃炎、円形脱毛症、免疫性血小板減少性紫斑病、側頭動脈炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、強皮症、抗リン脂質症候群、1型自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、シェーグレン症候群、アジソン病、疱疹状皮膚炎、川崎病、交感神経性眼炎、HLA-B27関連急性前部ブドウ膜炎、原発性硬化性胆管炎、円板状エリテマトーデス、結節性多発性動脈炎、CREST症候群、重症筋無力症、多発性筋炎/皮膚筋炎、スチル病、自己免疫性2型肝炎、ウェゲナー肉芽腫症、混合性結合組織病、顕微鏡的多発血管炎、自己免疫性多腺性症候群、フェルティ症候群、自己免疫性溶血性貧血、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、ギラン・バレー症候群、ベーチェット病、自己免疫性好中球減少症、水疱性類天疱瘡、本態性混合型クリオグロブリン血症、線状限局性強皮症、自己免疫性多腺性症候群1(APECED)、後天性血友病A、バッテン病/神経セロイドリポフスチン症、自己免疫性膵炎、橋本脳症、グッドパスチャー病、尋常性天疱瘡、自己免疫性播種性脳脊髄炎、再発性多発性軟骨炎、高安動脈炎、チャーグ・ストラウス症候群、後天性表皮水疱症、瘢痕性類天疱瘡、落葉状天疱瘡、自己免疫性副甲状腺機能低下症、自己免疫性下垂体炎、自己免疫性内耳疾患、自己免疫性リンパ増殖性症候群、自己免疫性卵巣炎、自己免疫性精巣炎、自己免疫性多腺性症候群、コーガン症候群、嗜眠性脳炎(encephalitis lethartica)、持久性隆起性紅斑、エバンス症候群、免疫調節異常性多腺性腸症X連鎖(IPEX)、イッザック症候群/後天性神経筋緊張症、ミラーフィッシャー症候群、モルバン症候群、PANDAS、POEMS症候群、ラスムッセン脳炎、全身硬直症候群、フォークト-小柳-原田症候群、視神経脊髄炎、移植片対宿主病、および自己免疫性ブドウ膜炎からなる群から選択される。特定の実施形態では、自己免疫障害は、多発性硬化症、およびI型糖尿病からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、増殖性障害は、癌である。特定の実施形態では、癌が、黒色腫、基底細胞癌腫、扁平上皮癌腫、および精巣癌から選択される。特定の実施形態では、癌は、黒色腫である。
【0030】
いくつかの実施形態では、投与は、局所的、経腸的、非経口的および吸入からなる群から選択される経路を介する。特定の実施形態では、経路は局所的である。特定の実施形態では、細菌はS.epidermidisである。いくつかの実施形態では、疾患は癌である。いくつかの実施形態では、癌は黒色腫である。いくつかの実施形態では、非天然タンパク質またはペプチドは、メラノサイト特異的抗原および精巣癌抗原からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、メラノサイト特異的抗原は、PMEL、TRP2およびMART-1からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、精巣癌抗原は、NY-ESOおよびMAGE-Aからなる群より選択される。
【0031】
いくつかの実施形態では、経路は経腸的である。いくつかの実施形態では、細菌が、Bacteroides spp.、Clostridium spp.、Helicobacter spp.、Parabacteroides spp.およびPrevotella spp.からなる群から選択される。特定の実施形態では、細菌は、Bacteroides thetaiotaomicron、Bacteroides vulgatus、およびBacteroides finegoldiiからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、天然細菌タンパク質が、シアリダーゼ、エンドヌクレアーゼ、分泌エンドグリコシダーゼ、抗シグマ因子、チオールペルオキシダーゼ、仮想タンパク質BT_2621、仮想タンパク質BT_3223、ペプチダーゼ、Iccファミリーホスホヒドロラーゼ、エキソ-ポリ-アルファ-D-ガラクツロノシダーゼ、および仮想タンパク質BT_4428からなる群から選択される。特定の実施形態では、天然細菌タンパク質がシアリダーゼまたは抗シグマ因子である。
【0032】
いくつかの実施形態では、自己免疫障害が、多発性硬化症、I型糖尿病、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾患、セリアック病、グレーブス病、橋本自己免疫性甲状腺炎、白斑、リウマチ熱、悪性貧血/萎縮性胃炎、円形脱毛症、免疫性血小板減少性紫斑病、側頭動脈炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、強皮症、抗リン脂質症候群、1型自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、シェーグレン症候群、アジソン病、疱疹状皮膚炎、川崎病、交感神経性眼炎、HLA-B27関連急性前部ブドウ膜炎、原発性硬化性胆管炎、円板状エリテマトーデス、結節性多発性動脈炎、CREST症候群、重症筋無力症、多発性筋炎/皮膚筋炎、スチル病、自己免疫性2型肝炎、ウェゲナー肉芽腫症、混合性結合組織病、顕微鏡的多発血管炎、自己免疫性多腺性症候群、フェルティ症候群、自己免疫性溶血性貧血、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、ギラン・バレー症候群、ベーチェット病、自己免疫性好中球減少症、水疱性類天疱瘡、本態性混合型クリオグロブリン血症、線状限局性強皮症、自己免疫性多腺性症候群1(APECED)、後天性血友病A、バッテン病/神経セロイドリポフスチン症、自己免疫性膵炎、橋本脳症、グッドパスチャー病、尋常性天疱瘡、自己免疫性播種性脳脊髄炎、再発性多発性軟骨炎、高安動脈炎、チャーグ・ストラウス症候群、後天性表皮水疱症、瘢痕性類天疱瘡、落葉状天疱瘡、自己免疫性副甲状腺機能低下症、自己免疫性下垂体炎、自己免疫性内耳疾患、自己免疫性リンパ増殖性症候群、自己免疫性卵巣炎、自己免疫性精巣炎、自己免疫性多腺性症候群、コーガン症候群、嗜眠性脳炎(encephalitis lethartica)、持久性隆起性紅斑、エバンス症候群、免疫調節異常性多腺性腸症X連鎖(IPEX)、イッザック症候群/後天性神経筋緊張症、ミラーフィッシャー症候群、モルバン症候群、PANDAS、POEMS症候群、ラスムッセン脳炎、全身硬直症候群、フォークト-小柳-原田症候群、視神経脊髄炎、移植片対宿主病、および自己免疫性ブドウ膜炎からなる群から選択される。特定の実施形態では、自己免疫障害は、多発性硬化症である。いくつかの実施形態では、細菌は、Bacteroides thetaiotaomicron、Bacteroides vulgatusおよびBacteroides finegoldiiからなる群から選択される。特定の実施形態では、非天然タンパク質はミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質である。
【0033】
いくつかの実施形態では、細菌が、複雑性の高い定義された微生物群と組み合わせて投与される。
【0034】
いくつかの実施形態では、宿主は哺乳動物である。特定の実施形態では、哺乳動物はヒトである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、本開示の組換え細菌株によって発現される外因性抗原に対する調節性T細胞応答を生成するための例示的な方法を示す。
【0036】
図2図2は、オボアルブミン(OVA)ペプチドを発現するように操作されたBacteroides thetaiotaomicronによるOVA抗原ペプチドの発現を実証するウエスタンブロットのデータを示す。
【0037】
図3図3は、B16-FLT3L刺激DCおよびOVA+B.thetaiotaomicronまたはWT B.thetaiotaomicron(陰性対照)と4時間共培養したOTIIトランスジェニックマウスの脾臓由来のOVA特異的T細胞のフローサイトメトリー分析を示す。
【0038】
図4図4は、B.thetaiotaomicron(図4A)、Bacteriodes vulgatus(図4B)およびBacteroides finegoldii(図4C)によるミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)融合構築物の発現を実証するウエスタンブロットのデータを示す。
【0039】
図5図5は、抗原提示細胞(APC;脾臓樹状細胞)、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)特異的T細胞、およびMOG35-55ペプチドを発現するように操作された、生きているまたはオートクレーブされた野生型B.thetaiotaomicronまたは組換えB.thetaiotaomicronを含むインビトロ共培養物におけるCD4+T細胞活性化のフローサイトメトリーのデータを示す。
【0040】
図6図6は、EAEの誘導の2週間前(0日目)に、野生型MOGを発現するB.vulgatusおよびB.finegoldiiの混合物(BVF_WT)、またはMOG融合構築物を発現するB.vulgatusおよびB.finegoldiiの混合物(BVF_MOG)を投与された純粋隔離群マウスの実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)スコアを示す。
【0041】
図7図7は、EAEの誘導の2週間前(0日目)に、野生型B.vulgatusおよびB.finegoldiiとの混合物(BVF_WT)またはMOG35-55融合構築物を発現するように操作された組換えB.vulgatusとB.finegoldiiとの混合物(BVF_MOG)を投与されたマウスにおける7日目のCD4+T細胞集団のフローサイトメトリーのデータを示す。
【0042】
図8図8は、APC、OT-IまたはOT-IIトランスジェニックマウスから単離されたオボアルブミン(OVA)特異的T細胞、およびOVAペプチドを発現するように操作された組換えStaphylococcus epidermidisを含むインビトロ共培養物におけるCD8+(図8A)およびCD4+(図8B)T細胞活性化のフローサイトメトリーのデータを示す。
【0043】
図9図9は、APC、8restトランスジェニックマウスから単離されたPMEL抗原特異的T細胞、およびPMEL抗原を発現するように操作された組換えStaphylococcus epidermidisを含むインビトロ共培養物におけるCD8+T細胞活性化のフローサイトメトリーのデータを示す。
【0044】
図10図10は、黒色腫細胞の皮下または腹腔内注射の2週間前または1週間後のいずれかにOVA+/-ルシフェラーゼを発現するように操作された組換えS.epidermidisを局所投与したマウスにおけるOVA+B16F0黒色腫腫瘍重量(図10A)および放射輝度(図10Bおよび10C)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
詳細な説明
1.定義
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。
【0046】
本明細書で使用される「1つの(a)」および「1つの(an)」という用語は、「1またはそれを超える(one or more)」を意味し、文脈が適切でない限り複数を含む。
【0047】
本明細書で使用される場合、「共生」という用語は、一方がいくらかの利益を引き出し、他方が損なわれない、異なる種の2つの生物間の相利共生関係を指す。例えば、共生微生物は、宿主腸内微生物叢、宿主皮膚微生物叢、宿主粘膜微生物叢または他の宿主ニッチ微生物叢の非病原性メンバーとして通常存在するものであり得る。
【0048】
本明細書で使用される場合、「細菌」という用語は、細菌(単一の細菌細胞)および細菌(複数)、ならびにそれらの改変された(組換え)細菌細胞、細菌および細菌株などの単数および複数の両方を含む。
【0049】
本明細書で使用される場合、「共生細菌」という用語は、脊椎動物宿主において共生である細菌、細菌(単数または複数)、細菌細胞または細菌株を指す。当業者によって理解されるように、ほとんどの共生細菌は典型的には相利共生であるが、共生株は、宿主免疫不全、微生物ディスバイオシスまたは腸バリア障害などの特定の条件下で病原体になるか、または病態を引き起こす可能性がある。例えば、共生細菌は、宿主腸内微生物叢、宿主皮膚微生物叢、宿主粘膜微生物叢、または他の宿主ニッチ微生物叢の非病原性メンバーとして通常存在する。
【0050】
本明細書で使用される場合、「コロニー形成」、「コロニー形成された」または「コロニー形成する」という用語は、宿主のニッチにおける微生物、例えば生きている組換え共生細菌の占有を指す。コロニー形成は、持続性であり得る(例えば、60日間にわたって持続する)か、または一過性であり得る(例えば、1~60日間持続する)。
【0051】
本明細書で使用される場合、「異種」という用語は、細胞または生物によって通常または天然に産生または発現されない分子(例えば、ペプチドまたはタンパク質)を指す。
【0052】
「抗原」という用語は、免疫応答を誘発することができる分子(例えば、ペプチドまたはタンパク質)またはその免疫学的に活性な断片を指す。ペプチド抗原は、典型的には、抗原提示細胞(APC)によってTリンパ球(T細胞とも呼ばれる)などの免疫細胞に提示される。
【0053】
「異種抗原」という用語、またはタンパク質もしくはペプチドに関して、「非天然」という用語は、細胞または生物によって通常発現されない抗原を指す。この用語は、T細胞受容体に結合し、免疫応答を誘導する抗原またはその断片を含む。例えば、タンパク質またはペプチド抗原は、抗原提示細胞(APC)によって、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスIまたはMHCクラスII分子に関連してAPCの細胞表面上に発現される短いペプチドに消化される。したがって、抗原という用語は、APCによって提示され、T細胞受容体によって認識されるペプチドを含む。異種抗原は、宿主由来抗原または非宿主由来抗原であり得る。
【0054】
宿主における微生物ニッチに関して、「天然」という用語は、共生微生物または宿主免疫細胞が通常の非病原性条件下で天然に存在する宿主内または宿主上の環境を指す。
【0055】
微生物、例えば細菌によって発現されるタンパク質に関して、「天然」という用語は、自然界の野生型微生物に通常発現され、存在するタンパク質またはその一部を指す。
【0056】
「有効量」または「治療有効量」という用語は、治療を必要とする対象または患者に投与した場合に医学的症状または疾患の1またはそれを超える症状を予防、減少または排除するのに十分な組成物の量を指す。
【0057】
本明細書で使用される場合、「作動可能に結合される」という用語は、調節配列またはプロモーター配列とコード領域配列との間などの1またはそれを超える核酸配列間の機能的結合を指し、コード領域配列の転写は、結合された調節配列によって正または負に調節される。
【0058】
本明細書で使用される場合、「抗原特異的」は、所与の抗原に特異的な宿主で生成される免疫応答を指す。この用語は、目的の抗原に高親和性で結合することができる抗体によって認識される抗原に対する応答、およびMHC(分子および目的の抗原の分解産物である短いペプチド)を含む複合体を認識して結合するT細胞受容体(TCR)による抗原に対する応答を含む。細菌抗原は、典型的には、APCの表面上のMHCクラスII分子に結合するペプチドに分解され、これはT細胞のTCRによって認識される。
【0059】
本明細書で使用される場合、「抗原提示細胞(APC)」は、T細胞などのリンパ球による認識のための抗原をプロセシングおよび提示することによって、対象の細胞性免疫応答を媒介する免疫細胞を指す。APCは、多くの場合「抗原提示」と呼ばれる、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)と複合体化した抗原を自身の表面に表示する。いわゆる「プロフェッショナルAPC」は、ヘルパーT細胞(CD4+T細胞)に抗原を提示する。プロフェッショナルAPCの例としては、樹状細胞、マクロファージ、ランゲルハンス細胞およびB細胞が挙げられる。
【0060】
「調節性T細胞」または「Treg」という用語は、免疫系を調節し、自己抗原に対する寛容を維持し、自己免疫疾患を予防するT細胞の亜集団を指す。Tregは、CD4+T細胞およびCD8+T細胞の活性化、増殖およびサイトカイン産生を抑制し、B細胞および樹状細胞も抑制する。2種類のTreg細胞がある。「天然」Tregは胸腺で産生されるが、胸腺外(末梢)のナイーブT細胞から分化するTregは「適応」Tregと呼ばれる。天然Tregは、CD4 T細胞受容体およびCD25(IL-2受容体の成分)ならびに転写因子FOXP3を発現する。Tregはまた、免疫応答を抑制するTGF-ベータ、IL-10およびアデノシンなどの分子を産生し得る。適応Tregは、CD4、CD45RO、Foxp3およびCD25を発現する(’’Human CD4+CD25hi Foxp3+regulatory T cells are derived by rapid turnover of memory populations in vivo,’’Vukmanovic-Stejic M,et al.,J Clin Invest.2006 Sep;116(9):2423-33を参照のこと)。
【0061】
本明細書で使用される場合、「Tエフェクター」、「エフェクターT」または「Teff」という用語は、炎症促進性免疫応答を誘発するように免疫系を調節する膜および分泌タンパク質の産生によって媒介される、細胞活性化時にエフェクター機能を発揮するT細胞の亜集団を指す。Teff細胞には、CD8+細胞傷害性T細胞、T1細胞、T2細胞およびT17細胞が含まれる。
【0062】
本明細書で使用される場合、「改変された」という用語は、自然界に存在しない生物、細胞、または細菌を指す。この用語は、「組換え」または「操作された」と互換的に使用される。
【0063】
本明細書で使用される場合、「自己免疫疾患」は、身体の内因性器官、組織、および/または細胞を攻撃する免疫系に関連するかまたはそれによって引き起こされる疾患または病理学的症状を指す。
【0064】
本明細書で使用される場合、「自己免疫抗原」は、内因性の器官、組織または細胞に対する免疫応答を誘発する内因性の器官、組織または細胞によって発現される抗原を指す。
【0065】
本明細書で使用される場合、「動物」は、組換え共生微生物(例えば、操作された細菌)で処置される生物を指す。動物としては、限定されないが、哺乳動物(例えば、マウス、サル、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコなど)が挙げられ、より好ましくはヒトが挙げられる。
【0066】
本明細書で使用される場合、「宿主」は、共生微生物(例えば、共生細菌)がその中に、またはその上にコロニー形成する非微生物生物を指す。宿主は、哺乳動物宿主、例えばヒト宿主であり得る。
【0067】
本明細書で使用される場合、「対象」または「患者」という用語は互換的に使用され、改変微生物、例えば本発明の生きている組換え共生細菌が投与される生物を指す。いくつかの場合、対象は、自己免疫性または増殖性の疾患、障害または症状を有する。対象は、哺乳動物対象、例えばヒト対象であり得る。
【0068】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容され得る担体」という用語は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液、水、エマルジョン(例えば、油/水または水/油エマルジョンなど)、および様々な種類の湿潤剤などの標準的な薬学的担体のいずれかを指す。組成物はまた、安定剤および保存剤を含むことができる。担体、安定剤およびアジュバントの例については、例えば、Martin,Remington’s Pharmaceutical Sciences,15th Ed.Mack Publ.Co.,Easton,PA[1975]を参照のこと。
【0069】
2.改変微生物
異種抗原を発現するように操作された改変微生物、および対象において異種抗原に対する免疫応答を誘導する方法が本明細書に記載される。いくつかの実施形態では、改変微生物は、細菌、古細菌および真菌など、ヒトにコロニー形成するかまたは共生する、生きている微生物を含む。いくつかの実施形態では、生きている改変微生物は、生きている改変細菌、生きている改変細菌(複数)、または異種抗原を発現するように操作された生きている改変細菌株である。一実施態様では、改変細菌は、対象において抗原特異的免疫応答を誘導することができる異種抗原を発現する共生細菌である。共生細菌に対する自然免疫応答および適応免疫応答とは異なり、本開示は、哺乳動物抗原などの異種抗原を発現する操作された細菌株を提供する。いくつかの実施形態では、異種抗原は、共生細菌に対して非天然であるが宿主に天然のタンパク質またはペプチドである。いくつかの実施形態では、異種抗原は、共生細菌および宿主の両方に対して非固有であるタンパク質またはペプチドである。改変細菌は、宿主において共生している細菌に由来するので、対象に投与した場合、病原体であることは予期されない。
【0070】
いくつかの実施形態では、改変微生物または改変微生物を含む医薬組成物は、天然宿主ニッチに投与される。例えば、宿主の腸ニッチに固有の共生細菌に由来する生きている組換え共生細菌を、コロニー形成のために同じ宿主の腸ニッチに投与する。別の例では、宿主の皮膚ニッチに固有の共生細菌に由来する操作された細菌を、コロニー形成のために同じ宿主の皮膚ニッチに投与する。
【0071】
いくつかの実施形態では、改変微生物、例えば生きている組換え共生細菌は、対象に投与された場合、天然宿主ニッチに持続的にコロニー形成する。例えば、いくつかの実施形態では、生きている組換え共生細菌は、60日間にわたって、112日間にわたって、178日間にわたって、1年間にわたって、2年間にわたって、または5年間にわたって、天然宿主ニッチに存続する。
【0072】
いくつかの実施形態では、改変微生物、例えば生きている組換え共生細菌は、対象に投与された場合、天然宿主ニッチに一過性にコロニー形成する。例えば、いくつかの実施形態では、生きている組換え共生細菌は、1~60日間、2~60日間、10~60日間、20~60日間、40~60日間、1~40日間、2~40日間、10~40日間、20~40日間、1~20日間、2~20日間、10~20日間、1~10日間、または2~10日間、天然宿主ニッチに一過性にコロニー形成する。いくつかの実施形態では、改変微生物は、対象の天然宿主ニッチに一過性にコロニー形成し、次いで、宿主内の異なるニッチに移動する。
【0073】
いくつかの実施形態では、微生物、例えば生きている共生細菌の組換え修飾は、対象に投与された場合、微生物がその天然宿主ニッチにコロニー形成する能力に影響を及ぼさない。例えば、いくつかの実施形態では、非天然タンパク質またはペプチドを発現するための生きている共生細菌の組換え改変は、共生細菌の天然生理学に実質的に影響せず、それにより、共生細菌が宿主および/またはその天然宿主ニッチに存在する他の微生物叢との天然相乗的相互作用に関与する能力を維持し、その共生細菌の天然宿主ニッチのコロニー形成を促進する。
【0074】
操作された細菌は、異種抗原またはその免疫学的に活性な断片に特異的に結合するT細胞受容体を発現するT細胞の生成をもたらす、異種抗原に対する抗原特異的免疫応答を誘導するのに有用である。したがって、操作された細菌は、治療有効量の操作された細菌、または操作された細菌を含む医薬組成物を対象に投与することによって、対象の疾患または症状を処置するために使用することができる。投与後、対象の免疫系は、細菌によって発現される異種抗原に結合する抗原特異的T細胞を産生することによって応答する。いくつかの実施形態では、免疫系は、発現した異種タンパク質またはペプチドに対応する自己抗原または他の抗原に対する宿主の免疫応答を低下させる抗原特異的調節性T細胞(Treg)を産生することによって応答する。いくつかの実施形態では、免疫系は、発現された異種抗原、例えば腫瘍関連抗原に対する免疫応答を促進する抗原特異的T細胞(Teff)を産生することによって応答する。
【0075】
本明細書に記載の改変微生物(例えば、細菌、古細菌および真菌)および方法は、対象に投与された場合に異種抗原に特異的な免疫応答を生成するという利点を提供する。本開示はまた、抗原特異的免疫細胞、例えばキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)を生成するための現在のアプローチを超える利点を提供し、これは作製が困難で高価であり、耐久性が疑わしいものであり、サイトカイン放出症候群および神経毒性などのオフターゲット効果のために患者に投与すると安全ではない可能性がある。対照的に、共生微生物は、強力かつ長期持続性の免疫応答を誘発するのに有用であってよく、オフターゲット効果がないか、または最小限である対象の生涯にわたって投与され得る。したがって、生きている共生微生物は、長期間にわたって対象に投与するのは望ましくない弱毒化された病原性の非共生微生物、例えば弱毒化Listeriaを超える利点を提供する。弱毒化した病原性の非共生細菌を投与すると、弱毒化細菌が病原性形態に戻る可能性のため、特に長期間にわたって対象にリスクが生じる。対照的に、生きている共生細菌は、潜在的に長期間にわたって非病原性形態で宿主対象にコロニー形成することができ、したがって持続性抗原特異的T細胞集団をもたらす継続的な刺激を提供することができ、これはT細胞応答が短命であり得るので重要である。
【0076】
いくつかの実施形態では、改変微生物は、樹状細胞、マクロファージ、B細胞、腸上皮細胞、および/または自然リンパ球系細胞などの抗原提示細胞(APC)によって貪食される。APCによって貪食された後、改変微生物は溶解され、異種抗原は消化され、免疫細胞に提示される。いくつかの実施形態では、異種抗原はタンパク質またはペプチドであり、より小さいペプチド断片に消化され、ペプチド断片はMHC分子に結合し、免疫細胞への提示のためにAPCの表面に表示される。いくつかの実施形態では、免疫細胞はナイーブT細胞である。抗原特異的免疫応答は、インビトロまたはインビボで誘発され得る。いくつかの実施形態では、改変微生物は、異種抗原に対するTreg応答を誘導するために、APCによって貪食され、プロセシングされ、提示される。いくつかの実施形態では、改変微生物は、異種抗原に対するTeff応答を誘導するためにAPCによって貪食され、プロセシングされ、提示される。
【0077】
3.細菌株
いくつかの実施形態では、改変微生物は、生きている組換え細菌または細菌株である。いくつかの実施形態では、生きている組換え細菌は、共生細菌または細菌株に由来する。いくつかの実施形態では、生きている組換え細菌は、哺乳動物の共生細菌または細菌株に由来する。いくつかの実施形態では、生きている組換え細菌または細菌株は、ヒトの共生細菌または細菌株に由来する。いくつかの実施形態では、生きている組換え細菌または細菌株は、ヒトのニッチ、例えば、胃腸管、気道、泌尿生殖路および/または皮膚に固有の共生細菌または細菌株に由来する。
【0078】
いくつかの実施形態では、生きている組換え細菌は、通常は非病原性である共生細菌、例えば、共生細菌が投与された健康な対象(例えば、コンピテント免疫系を有する対象)において疾患または有害もしくは望ましくない健康状態を引き起こさない細菌に由来する。いくつかの実施形態では、生きている組換え細菌は、経口、経鼻、経膣、直腸、皮下、皮内、筋肉内または局所経路によって投与された場合、非病原性である。いくつかの実施形態では、生きている組換え細菌は、経口、局所または経鼻吸入によって投与された場合、非病原性である。いくつかの実施形態では、細菌は腸溶コーティングカプセル中に投与される。
【0079】
いくつかの実施形態では、生きている組換え細菌は、哺乳動物の消化管に固有の共生細菌に由来する。例えば、いくつかの実施形態では、生きている組換え細菌は、Bacteroides spp.、Clostridium spp.、Faecalibacterium spp.、Helicobacter spp.、Parabacteroides spp.、またはPrevotella spp.に由来する。いくつかの実施形態では、生きている組換え細菌は、Bacteroides thetaiotaomicron、Bacteroides vulgatus、Bacteroides finegoldii、またはHelicobacter hepaticusに由来する。
【0080】
いくつかの実施形態では、生きている組換え細菌は、哺乳動物の皮膚に固有の共生細菌に由来する。例えば、いくつかの実施形態では、生きている組換え細菌は、Staphylococcus spp.またはCorynebacterium spp.に由来する。いくつかの実施形態では、生きている組換え細菌は、Staphylococcus epidermidisに由来する。例えば、いくつかの実施形態では、生きている組換え細菌は、S.epidermidis LM087に由来する。
【0081】
いくつかの実施形態では、生きている組換え細菌は、グラム陰性である共生細菌に由来する。例えば、いくつかの実施形態では、グラム陰性菌は、Bacteroides spp.、Helicobacter spp.、またはParabacteroides spp.である。いくつかの実施形態では、生きている組換え細菌は、B.thetaiotaomicron、B.vulgatus、B.finegoldii、またはH.hepaticusである。
【0082】
いくつかの実施形態では、生きている組換え細菌は、グラム陽性である共生細菌に由来する。例えば、いくつかの実施形態では、グラム陽性菌は、Staphylococcus spp.、Faecalibacterium spp.、またはClostridium spp.である。いくつかの実施形態では、生きている組換え細菌はS.epidermidisである。
【0083】
いくつかの実施形態では、生きている組換え細菌は、哺乳動物宿主においてTreg応答を誘導することが知られている共生細菌に由来する。例えば、いくつかの実施形態では、生きている組換え細菌は、Bacteroides spp.、Helicobacter spp.、Parabacteroides spp.、Clostridium spp.、Staphylococcus spp.、Lactobacillus spp.、Fusobacterium spp.、Enterococcus spp.、Acenitobacter spp.、Flavinofractor spp.、Lachnospiraceae spp.、Erysipelotrichaceae spp.、Anaerostipes spp.、Anaerotruncus spp.、Coprococcus spp.、Clostridiales spp.、Odoribacter spp.、Collinsella spp.、Bifidobacterium spp.、Streptococcus spp.、またはPrevotella spp.に由来する。
【0084】
いくつかの実施形態では、生きている組換え細菌は、Clostridium ramosum、Staphylococcus saprophyticus、Bacteroides thetaiotaomicron、Clostridium histolyticum、Lactobacillus rhamnosus、Parabacteroides johnsonii、Fusobacterium nucleatum、Enterococcus faecium、Lactobacillus casei、Acenitobacter lwofii、Bacteroides ovatus、Bacteroides vulgatus、Bacteroides uniformis、Bacteroides finegoldii、Clostridium spiroforme、Flavonifractor plautii、Clostridium hathewayi、Lachnospiraceae bacterium、Clostridium bolteae、Erysipelotrichaceae bacterium、Anaerostipes caccae、Anaerotruncus colihominis、Coprococcus comes、Clostridium asparagiforme、Clostridium symbiosum、Clostridium ramosum、Clostridium sp.D5、Clostridium scindens、Lachnospiraceae bacterium、Clostridiales bacterium、Bacteroides intestinalis、Bacteroides caccae、Bacteroides massiliensis、Parabacteroides distasonis、Odoribacter splanchnicus、Collinsella aerofaciens、Acinetobacter lwoffii、Bifidobacterium breve、Bacteroides finegoldii、Bacteroides fragilis、Bacteroides massiliensis、Bacteroides ovatus、Bifidobacterium bifidum、Lactobacillus acidofilus、Lactobacillus casei、Lactobacillus reuteri、Streptococcus thermophilusおよびPrevotella histicolaに由来する。
【0085】
いくつかの実施形態では、生きている組換え細菌は、哺乳動物宿主においてTeff応答を誘導することが知られている共生細菌に由来する。例えば、いくつかの実施形態では、生きている組換え細菌は、Staphylococcus spp.、Parabacteroides spp.、Alistipes spp.、Bacteroides spp.、Eubacterium spp.、Runimococcaceae spp.、Phascolarctobacterium spp.、Fusobacterium spp.、Klebsiella spp.、Clostridium spp.、Coprobacillus spp.、Erysipelotrichaceae spp.、Subdoligranulum spp.、Ruminococcus spp.、Firmicutes spp.、またはBifidobacterium spp.に由来する。
【0086】
いくつかの実施形態では、生きている組換え細菌は、S.epidermidis、Parabacteroides distasonis、Parabacteroides gordonii、Alistipes senegalensis、Parabacteroides johnsonii、Paraprevotella xylaniphila、Bacteroides dorei、Bacteroides uniformis JCM 5828、Eubacterium limosum、Ruminococcaceae bacterium cv2、Phascolarctobacterium faecium、Fusobacterium ulcerans、Klebsiella pneumoniae、Clostridium bolteae 90B3、Clostridium cf.saccharolyticum K10、Clostridium symbiosum WAL-14673、Clostridium hathewayi 12489931、Ruminococcus obeum A2-162、Ruminococcus gnavus AGR2154、Butyrate-producing bacterium SSC/2、Clostridium sp.ASF356、Coprobacillus sp.D6 cont1.1、Eubacterium sp.3_1_31 cont1.1、Erysipelotrichaceae bacterium 21_3、Subdoligranulum sp.4_3_54A2FAA、Ruminococcus bromii L2-63、Firmicutes bacterium ASF500、Firmicutes bacterium ASF500、Bacteroides dorei 5_1_36/D4 supercont2.3、Bifidobacterium animalis subsp.Lactis ATCC 27673およびBifidobacterium breve UCC2003に由来する。
【0087】
異種抗原を発現するように操作され得る例示的な共生細菌株を表1に列挙する。
【表1-1】
【表1-2】
【0088】
4.異種抗原
いくつかの実施形態では、改変微生物、例えば生きている組換え共生細菌は、細菌において天然に発現されない異種抗原を発現するように操作される。例えば、いくつかの実施形態では、異種抗原は、通常、非細菌宿主中にあるか、非細菌宿主中に存在するか、非細菌宿主によって発現される。いくつかの実施形態では、非細菌宿主は、改変微生物が由来する共生細菌の天然宿主である動物である。いくつかの実施形態では、異種抗原は、通常、共生細菌の宿主にあるか、共生細菌の宿主に存在するか、共生細菌の宿主によって発現される。いくつかの実施形態では、異種抗原は、脊椎動物または哺乳動物に存在する抗原である。いくつかの実施形態では、異種抗原は、マウス抗原またはヒト抗原などの哺乳動物抗原である。いくつかの実施形態では、異種抗原は、タンパク質またはその抗原性断片である。
【0089】
いくつかの実施形態では、異種抗原は自己免疫抗原である。例えば、いくつかの実施形態では、異種抗原は、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質、インスリン、クロモグラニンA、ハイブリッドインスリンペプチド、プロテオリピドタンパク質、ミエリン塩基性タンパク質、ビリン、上皮細胞接着分子、コラーゲンアルファ-1、アグリカンコアタンパク質、60kDaシャペロニン2、ビメンチン、アルファ-エノラーゼ、フィブリノーゲンアルファ鎖、フィブリノーゲンベータ鎖、キチナーゼ3様タンパク質、60kDaミトコンドリア熱ショックタンパク質、マトリックスメタロプロテイナーゼ-16、甲状腺ペルオキシダーゼ、チロトロピン受容体、サイログロブリン、グルテン、TSHRタンパク質、グルタミン酸デカルボキシラーゼ2、受容体型チロシン-タンパク質ホスファターゼ-様N、グルコース-6-ホスファターゼ2、インスリンアイソフォーム2、亜鉛トランスポーター8、グルタミン酸デカルボキシラーゼ1、GAD65、UniProt:A2RGM0、インテグリンアルファ-Iib、インテグリンベータ-3、EBV DNAポリメラーゼ触媒サブユニット、2’3’-環状ヌクレオチド3’ホスホジエステラーゼ、ミエリン関連オリゴデンドロサイト塩基性タンパク質、小核リボ核タンパク質、U1小核リボ核タンパク質、ヒストンH2B、ヒストンH2A、ヒストンH3.2、ベータ-2-糖タンパク質、ヒストンH4、60Sリボソームタンパク質L7、TNF-アルファ、ミエロペルオキシダーゼ、Cbir1、MS4A12、DNAトポイソメラーゼ、CYP2D6、O-ホスホセリル-tRNAセレニウムトランスフェラーゼ、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体、スペクトリンアルファ鎖、ステロイド21ヒドロキシラーゼ、アセチルコリン受容体、MMP-16、ケラチン関連タンパク質、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4、ミエロブラスチン、U1小核リボ核タンパク質70kDa、血液型Rh(D)、血液型Rh(CE)、ミエリンP2タンパク質、末梢ミエリンタンパク質22、ミエリンタンパク質P0、S-アレスチン、コラーゲンアルファ-1、凝固因子VIII、コラーゲンアルファ-3(IV)、デスモグレイン-3、デスモグレイン-1、インスリン-2、主要DNA結合タンパク質、チロシナーゼ、5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸オキシダーゼ、HLA-A2、アクアポリン-4、ミエリンプロテオリピドタンパク質、ABCトランスポーター、HLA I B-27アルファ鎖、HLA I B-7アルファ鎖、およびレチノール結合タンパク質3またはそれらの抗原性断片である。
【0090】
いくつかの実施形態では、異種抗原は、自己免疫疾患に関連する抗原である。例えば、いくつかの実施形態では、異種抗原は、多発性硬化症、I型糖尿病、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾患、セリアック病、グレーブス病、橋本自己免疫性甲状腺炎、白斑、リウマチ熱、悪性貧血/萎縮性胃炎、円形脱毛症、免疫性血小板減少性紫斑病、側頭動脈炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、強皮症、抗リン脂質症候群、1型自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、シェーグレン症候群、アジソン病、疱疹状皮膚炎、川崎病、交感神経性眼炎、HLA-B27関連急性前部ブドウ膜炎、原発性硬化性胆管炎、円板状エリテマトーデス、結節性多発性動脈炎、CREST症候群、重症筋無力症、多発性筋炎/皮膚筋炎、スチル病、自己免疫性2型肝炎、ウェゲナー肉芽腫症、混合性結合組織病、顕微鏡的多発血管炎、自己免疫性多腺性症候群、フェルティ症候群、自己免疫性溶血性貧血、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、ギラン・バレー症候群、ベーチェット病、自己免疫性好中球減少症、水疱性類天疱瘡、本態性混合型クリオグロブリン血症、線状限局性強皮症、自己免疫性多腺性症候群1(APECED)、後天性血友病A、バッテン病/神経セロイドリポフスチン症、自己免疫性膵炎、橋本脳症、グッドパスチャー病、尋常性天疱瘡、自己免疫性播種性脳脊髄炎、再発性多発性軟骨炎、高安動脈炎、チャーグ・ストラウス症候群、後天性表皮水疱症、瘢痕性類天疱瘡、落葉状天疱瘡、自己免疫性副甲状腺機能低下症、自己免疫性下垂体炎、自己免疫性内耳疾患、自己免疫性リンパ増殖性症候群、自己免疫性卵巣炎、自己免疫性精巣炎、自己免疫性多腺性症候群、コーガン症候群、嗜眠性脳炎(encephalitis lethartica)、持久性隆起性紅斑、エバンス症候群、免疫調節異常性多腺性腸症X連鎖(IPEX)、イッザック症候群/後天性神経筋緊張症、ミラーフィッシャー症候群、モルバン症候群、PANDAS、POEMS症候群、ラスムッセン脳炎、全身硬直症候群、フォークト-小柳-原田症候群、視神経脊髄炎、移植片対宿主病、または自己免疫性ブドウ膜炎に関連する。
【0091】
例えば、いくつかの実施形態では、異種抗原は、多発性硬化症(MS)に関連するミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質またはその抗原性断片である。いくつかの実施形態では、異種抗原は、I型糖尿病(例えば、インスリン)に関連する膵臓抗原またはその抗原性断片である。
【0092】
いくつかの実施形態では、異種抗原は、癌などの増殖性障害に関連する抗原またはその抗原性断片である。例えば、いくつかの実施形態では、異種抗原は、黒色腫、基底細胞癌腫、扁平上皮癌腫、または精巣癌に関連する。いくつかの実施形態では、異種抗原は、PMEL、TRP2またはMART-1などのメラノサイト特異的抗原である。いくつかの実施形態では、異種抗原は、NY-ESOまたはMAGE-Aなどの精巣癌抗原である。いくつかの実施形態では、異種抗原はネオ抗原である。いくつかの実施形態では、異種抗原はネオ抗原ではない。
【0093】
いくつかの実施形態では、異種抗原は、共生細菌または宿主のいずれによっても天然に発現されないタンパク質またはその抗原性ペプチド断片である。例えば、いくつかの実施形態では、異種抗原は、宿主のセリアック病に関連するグルテンまたはその抗原性断片である。
【0094】
いくつかの実施形態では、異種抗原は、表2に列挙されるアミノ酸配列を有するペプチドを含む。
【表2】
【0095】
いくつかの実施形態では、改変微生物、例えば生きている組換え共生細菌は、改変微生物が発現するように操作されている異種抗原に対する調節性T細胞応答を宿主において誘導することができる。換言すれば、異種抗原が抗原提示細胞の表面上のナイーブT細胞に提示されると、ナイーブT細胞はTreg細胞に分化する。当技術分野で知られているように、Treg細胞への分化は、TGF-βを含むサイトカインの存在などの適切な条件下で誘導することができる。特定の機構に拘束されることを意図するものではないが、改変微生物、例えば生きている組換え共生細菌は、ナイーブT細胞のTreg細胞への分化に有利に働くAPCによるサイトカインの産生を誘導し得る。いくつかの実施形態では、改変微生物、例えば生きている組換え共生細菌は、異種抗原に対するTreg応答を誘導するが、CD8+またはTh17 T細胞などのT細胞の他のサブセットによって媒介される免疫応答を誘発しない。
【0096】
いくつかの実施形態では、改変微生物、例えば生きている組換え共生細菌は、微生物が抗原提示細胞(APC)によって貪食され、抗原またはその抗原性断片がHLA分子に関連してT細胞に提示される場合に免疫応答を誘発するのに十分なレベルで異種抗原を発現する。細菌におけるタンパク質発現レベルを最適化するための方法は、Rosano G.,et al.’’Recombinant protein expression in Escherichia coli:advances and challenges,’’ Front Microbiol.2014;5:172(2014年4月17日にオンライン公開されている)に記載されている。
【0097】
いくつかの実施形態では、異種抗原は、非天然アミノ酸を含む。「非天然アミノ酸」とは、20個の共通アミノ酸の1つではないアミノ酸を指し、天然にコードされるアミノ酸(限定されないが、20個の共通アミノ酸を含む)の修飾によって天然に生じるが、それ自体は翻訳複合体によって成長中のポリペプチド鎖に組み込まれないアミノ酸が含まれるが、これらに限定されない。天然にコードされていない天然に生じるアミノ酸の例としては、N-アセチルグルコサミニル-L-セリン、N-アセチルグルコサミニル-L-トレオニンおよびO-ホスホチロシンが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、「非天然アミノ酸」という用語は、天然には生じず、合成的に得られ得るか、または非天然アミノ酸の修飾によって得られ得るアミノ酸を含むが、これらに限定されない。
【0098】
改変微生物、例えば生きている組換え共生細菌による異種抗原の発現は、抗原RNAまたはタンパク質の発現を検出するアッセイ、例えばRT-PCR、ノーザン解析、マイクロアレイまたはウエスタンブロットを使用して検出することができる。
【0099】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の異種抗原は、共生細菌または細菌株によって発現される内因性タンパク質または内因性タンパク質の機能性断片に結合される。例えば、いくつかの実施形態では、異種タンパク質またはその抗原性断片を内因性共生細菌タンパク質またはその機能性断片に結合して、生きている組換え共生細菌によって発現される融合タンパク質を形成することができる。いくつかの実施形態では、異種タンパク質またはその抗原性断片は、内因性共生細菌タンパク質またはその機能性断片のN末端に融合される。いくつかの実施形態では、異種タンパク質またはその抗原性断片は、内因性共生細菌タンパク質またはその機能性断片のC末端に融合される。いくつかの実施形態では、異種抗原またはその抗原性断片を、アミノ酸リンカーによって内因性共生細菌タンパク質またはその機能的部分に結合することができる。
【0100】
いくつかの実施形態では、異種抗原またはその抗原性断片は、シアリダーゼ、エンドヌクレアーゼ、分泌エンドグリコシダーゼ、抗シグマ因子、チオールペルオキシダーゼ、仮想タンパク質BT_2621、仮想タンパク質BT_3223、ペプチダーゼ、Iccファミリーホスホヒドロラーゼ、エキソ-ポリ-アルファ-D-ガラクツロノシダーゼ、仮想タンパク質BT_4428、またはそれらの機能的断片に結合する。
【0101】
5.核酸
いくつかの実施形態では、改変微生物、例えば生きている組換え共生細菌は、異種タンパク質またはその抗原性断片を発現するために使用される異種核酸を含む。いくつかの実施形態では、異種核酸は、異種タンパク質またはその抗原性断片を産生するように翻訳されるRNAである。いくつかの実施形態では、異種核酸は、異種タンパク質またはその抗原性断片(すなわち、DNAは、翻訳されて異種タンパク質またはその抗原性断片を生成するmRNAに転写され得る。)をコードするDNAである。
【0102】
異種核酸は、典型的には、調節配列およびコード領域配列を含む。いくつかの実施形態では、調節配列は、調節配列がコード領域配列の発現(例えば、転写または翻訳)を制御するように、コード領域配列に作動可能に結合されている。調節配列は、転写因子などの調節タンパク質に結合し、作動可能に結合された配列の転写速度に影響を及ぼすプロモーターおよびエンハンサーなどの配列エレメントを含むことができる。例えば、調節配列は、コード領域配列の上流(5’)または下流(3’)、またはその両方に位置し得る。
【0103】
いくつかの実施形態では、コード領域配列は、哺乳動物において免疫応答を誘発するのに有用な異種タンパク質をコードする。当業者に知られているように、様々なオンラインサーバを使用して、MHCIIに強く結合し、T細胞応答を誘発するエピトープコード配列を予測することができる(例えば、Technical University of Denmark Department of Bio and Health Informatics NetMHCIIpanを参照のこと)。核酸はまた、転写および翻訳されると、異種タンパク質を特定の細胞位置または区画(例えば、細胞内、分泌、または膜結合)に輸送するためのシグナルを提供する配列を含み得る。
【0104】
いくつかの実施形態では、異種核酸は、RNAへのコード領域配列の転写をアップレギュレートまたはダウンレギュレートする調節配列を含む発現ベクターである。いくつかの実施形態では、改変微生物、例えば生きている組換え共生細菌は、RNAをアミノ酸およびtRNAなどのタンパク質に翻訳するために必要な成分を含む。発現ベクターは、生きている組換え共生細菌、例えば細胞質(可溶性、封入体なし)、周辺質、細胞表面タンパク質に融合されたもの、または細菌によって分泌されたものにおいて、どこにでも異種抗原の発現を指示する調節エレメントを含むことができる。細菌における組換えタンパク質の発現のための核酸ベクターは、当業者に周知である。例えば、いくつかの実施形態では、発現ベクターは、pNBU2-bla-ermGb、pNBU2-bla-tetQb、またはpExchange-tdk(例えば、Wang J.et al.(2000).J Bacteriol.182.3559-71;pMM668,Addgene;Mimee M.et al.(2015)Cell Syst.1(1):62-71;およびKoropatkin N.et al.2008.Structure.16(7):1105-1115を参照のこと。
【0105】
別の例では、いくつかの実施形態では、発現ベクターは、Whitakerら、’’Tunable Expression Tools Enable Single-Cell Strain Distinction in the Gut Microbiome,’’Cell 169,538-546,April 20,2017に記載されているように、抗原エピトープコード領域を細菌ゲノムに組み込むために使用されるpWW3837ベクター(Genbank# KY776532)である。
【0106】
いくつかの実施形態では、異種核酸は、細菌のゲノムに安定に組み込まれる。いくつかの実施形態では、異種核酸は、細菌中でプラスミドとして維持される。いくつかの実施形態では、異種核酸はエピソーマルプラスミドである。
【0107】
いくつかの実施形態では、異種核酸は、表3に列挙されるエピトープコード領域配列を含む。
【表3-1】
【表3-2】
【0108】
いくつかの実施形態では、異種核酸は、非天然ヌクレオチドまたは天然ヌクレオチドの類似体を含む。ヌクレオチド類似体または非天然ヌクレオチドには、塩基、糖またはリン酸部分に対する任意のタイプの修飾を含むヌクレオチドが含まれる。修飾は、化学修飾を含み得る。修飾は、例えば、主鎖、糖成分またはヌクレオチド塩基の3’OHまたは5’OH基であり得る。修飾は、天然に生じないリンカー分子および/または鎖間もしくは鎖内架橋の付加を含み得る。一実施態様では、修飾核酸は、3’OHもしくは5’OH基、主鎖、糖成分もしくはヌクレオチド塩基の1またはそれを超える修飾、および/または天然に生じないリンカー分子の付加を含む。一実施態様では、修飾骨格は、ホスホジエステル骨格以外の骨格を含む。一実施態様では、修飾糖には、デオキシリボース以外の糖(修飾DNA中)またはリボース以外の糖(修飾RNA中)が含まれる。一実施態様では、修飾塩基は、(修飾DNA中の)アデニン、グアニン、シトシンもしくはチミン以外の塩基、または(修飾RNA中の)アデニン、グアニン、シトシンもしくはウラシル以外の塩基を含む。
【0109】
6.生きている組換え共生細菌の生産方法
共生細菌は、参照により本明細書に組み込まれるGreen,M.R.and Sambrook,J.,eds.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,4th ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(2012)、およびAusubel,F.M.,et al.Current Protocols in Molecular Biology(Supplement 99),John Wiley&Sons,New York(2012)に記載されている一般的な分子生物学的方法を使用して、異種抗原またはその抗原性断片を発現するように操作され得る。
【0110】
異種抗原またはその抗原性断片を発現する生きている組換え共生細菌株を産生するために、抗原エピトープコード配列を発現ベクターにクローニングすることができる。代表的な発現ベクターはpWW3837ベクター(Genbank# KY776532)である(Whitaker et al.,’’Tunable Expression Tools Enable Single-Cell Strain Distinction in the Gut Microbiome,’’Cell 169,538-546,April 20,2017を参照のこと)。抗原性エピトープコード配列は、Gibsonアセンブリなどの公知の方法によって発現ベクターにクローニングすることができる。次いで、発現ベクターを、Escherichia coli S17 lambda pirドナー株などの適切な細菌ドナー株にエレクトロポレーションすることができる。E.coliドナー株は、コンジュゲーションのためにレシピエントの生きている共生細菌と一晩共培養し、発現ベクターの組み込みについて陽性コロニーをスクリーニングすることができる。
【0111】
異種抗原の発現は、抗原をコードするRNAの発現の検出を含む様々なアッセイによって、例えばノーザン解析またはRT-PCRによって、またはタンパク質抗原の発現を検出することによって、例えばウェスタン解析によって決定することができる。
【0112】
7.医薬組成物
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の改変微生物、例えば生きている組換え共生細菌と、薬学的に許容され得る担体とを含む医薬組成物が本開示で提供される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、対象によって摂取された場合、または別の方法で対象に投与された場合、本明細書に記載の改変微生物によって発現される異種抗原に対する抗原特異的T細胞応答を誘導する。いくつかの実施形態では、組成物は、本明細書に記載の改変微生物によって発現される異種抗原に対する抗原特異的Treg応答を誘導する。いくつかの実施形態では、組成物は、本明細書に記載の改変微生物によって発現される異種抗原に対する抗原特異的Teff応答を誘導する。
【0113】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、組成物が対象に投与された場合に抗原特異的T細胞応答を誘導する異種抗原をコードする異種核酸を含む生きている組換え共生細菌を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、組成物が対象に投与された場合に抗原特異的Treg応答を誘導する異種抗原をコードする異種核酸を含む改変共生細菌を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、組成物が対象に投与された場合に抗原特異的Teff応答を誘導する異種抗原をコードする異種核酸を含む改変共生細菌を含む。
【0114】
本明細書に記載の医薬組成物は、薬学的に許容され得る賦形剤を含むことができる。薬学的に許容され得る賦形剤の例としては、滅菌溶液、例えば、水、生理食塩水およびリン酸緩衝溶液が挙げられるが、これらに限定されない。医薬賦形剤のさらなる例は、Handbook of Pharmaceutical Excipients,8th Edition,Authors/Editor:Sheskey,Paul J.;Cook,Walter G.;Cable,Colin G.,Pharmaceutical Press(ISBN:978-0-857-11271-2)に記載されている。使用される賦形剤の種類は、対象への投与経路に依存するであろうことが理解されよう。
【0115】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、哺乳動物の消化管に固有の共生細菌に由来する改変細菌を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、Bacteroides sp.およびHelicobacter sp.から選択される生きている組換え共生細菌を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、組換えB.thetaiotaomicron、B.vulgatus、B.finegoldiiまたはH.hepaticusを含む。
【0116】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、哺乳動物の皮膚に固有の共生細菌に由来する改変細菌を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物はStaphylococcus spp.を含む。例えば、いくつかの実施形態では、医薬組成物は組換えS.epidermidisを含む。
【0117】
本明細書に開示される医薬組成物は、経口、経鼻、皮下、皮膚、皮内、筋肉内、粘膜または直腸などの異種抗原に対する抗原特異的免疫応答を誘導する適切な経路を介して対象に投与することができる。
【0118】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物は、改変微生物、例えば生きている組換え共生細菌が、改変微生物が由来する微生物が元々生息したであろう対象のニッチにコロニー形成することを可能にする適切な経路を介して対象に投与される。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物を対象に経口投与して、改変微生物、例えば対象の消化管に固有の共生細菌に由来する生きている組換え細菌が宿主の胃腸管にコロニー形成することを可能にする。いくつかの実施形態では、例えば、本明細書に開示される医薬組成物を対象に局所投与して、改変微生物、例えば対象の皮膚に固有の共生細菌に由来する生きている組換え細菌が宿主の皮膚にコロニー形成することを可能にする。
【0119】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、本明細書に記載の改変微生物、例えば生きている組換え共生細菌が放出される前に胃を通って小腸への通過を可能にする、遅延放出腸溶コーティングなどの材料を含む。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物は、本明細書に記載の改変微生物、例えば生きている組換え共生細菌を含有する腸溶コーティングカプセルを含む。いくつかの実施形態では、腸溶コーティングは、胃の酸性pHなどの酸性pHでは安定であるが、小腸のpH(pH7~9)などのアルカリ性pHでは分解または急速に溶解するポリマーを含む。
【0120】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、対象の疾患または病理学的症状を処置するのに有用な追加の薬剤をさらに含むことができる。さらなる薬剤の例としては、対象における疾患または病理学的症状を処置するために有用な小分子薬物または抗体が挙げられる。
【0121】
8.調節性T細胞応答を誘導する細菌を含む合成細菌群
本開示に従って産生された改変微生物(例えば、生きている組換え共生細菌)は、抗原特異的T細胞免疫応答を誘導するために対象に投与され得る。細胞を投与することは、一般に、単一細胞の投与を指すのではなく、複数の細胞、典型的には所望の特性(すなわち、異種抗原またはその抗原性断片の発現)を有する細胞のクローン集団を投与することを包含することが認識されるであろう。
【0122】
2018年11月21日に出願された米国仮出願第62/770,706号明細書、および関連する国際特許出願第PCT/US 2019/062689号(いずれも「High Complexity Synthetic Gut Bacterial Community」と題され、その各々の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)は、インビトロおよびインビボのバックフィル方法を使用して生成された定義された安定した微生物群、すなわち「バックフィル群」、およびそのような群を作製する方法を記載している。これらの微生物群は、目的の微生物が群から脱落せず、腸内の競合する微生物によって過剰増殖されず、過剰増殖して腸内の他の微生物が置換されないように微生物生態系が恒常性にあるという意味で、ヒト微生物叢を含む腸などの哺乳動物(例えば、ヒト)の腸に生着した場合に、目的の細胞を含み、安定である。集団中の株の組み合わせが不安定である場合、集団は予測不可能な方法で変化する可能性があり、これは群の代謝表現型を変化させる可能性がある。
【0123】
米国仮出願第62/770,706号明細書および関連する国際特許出願第PCT/US2019/062689号は、所望の「代謝表現型」を有する群の生成、スクリーニングおよび生着を記載している。一実施態様では、代謝表現型は、1またはそれを超える第1の化合物を1またはそれを超える第2の化合物に変換する微生物株または微生物群の能力であり得る。例示のために、1つの例において、第1の化合物(1またはそれを超える)は、微生物または群によって第2の化合物(1またはそれを超える)に酵素的に変換され、代謝表現型は、第2の化合物(1またはそれを超える)の量の増加である。
【0124】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の改変微生物、例えば生きている組換え共生細菌は、国際出願第PCT/US2019/062689号明細書に開示されているような複雑性の高い定義された微生物群と組み合わせて投与することができる。本開示の一態様によれば、複雑性の高い定義された微生物群の所望の表現型は、異種抗原またはその抗原性断片を、異種抗原に対する抗原特異的T細胞応答を誘導するのに十分な量で発現する、本明細書に開示されるような生きている組換え共生細菌細胞の能力である。したがって、本開示の一態様では、改変微生物、例えば生きている組換え共生細菌を含む複雑性の高い定義された微生物群を対象(例えば、ヒトなどの哺乳動物)に投与して、組換え細菌が由来する共生細菌が元々生息したであろう対象のニッチのコロニー形成を可能にし、生きている組換え共生細菌によって発現される異種抗原またはその抗原性断片に対する抗原特異的T細胞応答の誘導をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の生きている組換え共生細菌を含む複雑性の高い定義された微生物群は、その群が生着した対象において抗原特異的調節性T細胞応答を誘導する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の生きている組換え共生細菌を含む複雑性の高い定義された微生物群は、その群が生着した対象において抗原特異的Tエフェクター細胞応答を誘導する。
【0125】
当業者は、異種抗原に対する抗原特異的T細胞応答を誘導することができる複雑性の高い定義された微生物群集は、国際出願第PCT/US2019/062689号明細書に記載されているように、「代謝表現型」が抗原特異的T細胞応答を誘発する能力であるという改変を加えて産生され得ることを理解するであろう。この場合、培養またはインビボのバックフィル群を、所望の抗原特異的T細胞応答を誘導する能力についてアッセイする。所望の抗原特異的T細胞応答は、「代謝表現型」の一種であると考えられ得る。あるいは、その表現型を「免疫表現型」と呼ぶことが時には好都合である。
【0126】
免疫表現型についてのアッセイは当技術分野で公知であり、限定されないが、「T細胞応答を検出する方法」と題された本開示のセクションに記載されるアッセイを含む本開示に記載される。
【0127】
9.抗原特異的T細胞応答を誘導する方法
別の実施態様では、本明細書に記載の改変微生物、例えば生きている組換え共生細菌によって発現される異種抗原またはその抗原性断片に対する抗原特異的T細胞応答を誘導する方法が提供される。方法は、インビトロまたはインビボで実施することができる。いくつかの実施形態では、目的の異種抗原を発現する生きている組換え共生細菌をAPCと接触させ、APCは組換え細菌を貪食し、MHCクラスIまたはMHCクラスII分子上に提示するために異種抗原またはその抗原性断片をプロセシングする。APCの例としては、樹状細胞、マクロファージ、ランゲルハンス細胞、B細胞、腸上皮細胞および自然リンパ系細胞が挙げられる。いくつかの実施形態では、APCは、CD103+CD11b+樹状細胞などの樹状細胞である。いくつかの実施形態では、APCは腸マクロファージ、例えばCX3CR1+腸マクロファージである。
【0128】
いくつかの実施形態では、その細胞表面上のMHC分子と複合体を形成してプロセシングされた異種抗原を表示するAPCを、次いでナイーブT細胞などのT細胞と接触させる。いくつかの実施形態では、ナイーブT細胞上のT細胞受容体(TCR)へのプロセシングされた異種抗原/MHC複合体の結合は、ナイーブT細胞の調節性T細胞(Treg)への分化をもたらす。いくつかの実施形態では、ナイーブT細胞のT細胞受容体(TCR)の活性化は、ナイーブT細胞の調節性T細胞(Treg)への分化をもたらす。いくつかの実施形態では、ナイーブT細胞上のT細胞受容体(TCR)へのプロセシングされた異種抗原/MHC複合体の結合は、ナイーブT細胞のエフェクターT細胞(Teff)への分化をもたらす。
【0129】
抗原特異的T細胞応答の誘導は、特異的T細胞亜集団に対する細胞表面マーカー発現分析(例えば、フローサイトメトリー分析によって)などの適切なアッセイを使用して検出することができる。Treg細胞を検出するための好適なアッセイが本明細書に記載される。
【0130】
抗原特異的T細胞応答を誘導するインビトロ方法では、目的の異種抗原を発現する生きている組換え共生細菌を、APCが細菌を貪食し、異種抗原をプロセシングし、プロセシングされた抗原を細胞表面に表示することを可能にする条件下で、適切な培地中でAPCと共に培養する。ナイーブT細胞は、APCおよび細菌のインビトロ培養物に添加することができるか、またはAPCは、細菌から単離し、ナイーブT細胞と共に培養することができる。培地は、T細胞の生存および所与のT細胞サブセットへの分化を促進する成長因子およびサイトカインを含み得る。いくつかの実施形態では、培地は、TGF-βなどのTreg細胞の分化を促進する因子を含む。いくつかの実施形態では、培地は、IL-12、IL-2、およびIFNγなどのTeff細胞の分化を促進する因子を含む。
【0131】
いくつかの実施形態では、T細胞は初代T細胞である。いくつかの実施形態では、T細胞は、対象の腸または脾臓から単離された初代T細胞である。いくつかの実施形態では、単離されたT細胞は完全に分化したTregを含む。いくつかの実施形態では、新たに単離された初代T細胞は、増殖因子またはサイトカインを含まない塩基性培地(すなわち、DMEM+5%FBS)中で培養される。
【0132】
抗原特異的T細胞応答を誘導する別の実施形態では、方法はインビボ方法である。いくつかの実施形態では、対象または患者は、改変微生物、例えば、目的の異種抗原を発現する生きている組換え共生細菌を含む医薬組成物を投与される。医薬組成物は、本明細書にさらに記載される任意の適切な経路によって投与することができる。例えば、いくつかの実施形態では、組換え細菌を対象の天然の胃腸ニッチに送達するために、医薬組成物が対象に摂取される。いくつかの実施形態では、例えば、医薬組成物は、対象の表皮ニッチへの組換え細菌の送達のために局所投与される。理論に拘束されないが、医薬組成物が対象に投与された後、目的の異種抗原を発現する改変微生物、例えば、生きている組換え共生細菌は、対象のAPCによって貪食され、プロセシングされ、対象のナイーブT細胞に提示され、それによって抗原特異的T細胞応答を誘導することが予想される。いくつかの実施形態では、医薬組成物の投与は抗原特異的Treg応答を誘発する。いくつかの実施形態では、医薬組成物の投与はTeff応答を誘発する。
【0133】
いくつかの実施形態では、Tregへの分化は、APCに貪食された細菌の種類によって影響される。いくつかの実施形態では、異種抗原は、異種抗原が発現される細菌株に応じて、異なるT細胞集団の分化を誘導することができる。例えば、いくつかの実施形態では、哺乳動物の腸ニッチと共生する細菌株に由来する生きている組換え共生細菌は、組換え細菌によって発現される異種抗原に特異的なTreg応答を誘導することができるが、同じ異種抗原は、哺乳動物の皮膚ニッチと共生する細菌株に由来する生きている組換え共生細菌で発現された場合、抗原特異的CD8+Teff応答の生成を誘導する。
【0134】
10.T細胞応答を検出する方法
異種抗原に対する抗原特異的T細胞応答は、当技術分野で公知の様々な技術によって検出することができる。例えば、T細胞応答は、本明細書に開示される生きている組換え共生細菌またはそれを含む医薬組成物を投与された対象からリンパ球を単離し、抗原特異的T細胞の存在についてエクスビボでリンパ球をアッセイすることによって検出することができる。ヒト対象から単離された抗原特異的T細胞を検出するための方法は、例えば、「Manual of Molecular and Clinical Laboratory Immunology,7th Edition」 Editors:B.Detrick,R.G.Hamilton,and J.D.Folds,2006,e-ISBN:9781555815905に記載されている。
【0135】
抗原に対するT細胞応答を検出する方法には、フローサイトメトリー、サイトカインアッセイ(例えばELISA)およびTCRシーケンシングが含まれる。フローサイトメトリーを使用して、ナイーブT細胞の活性化T細胞への分化前後の細胞表面および/または細胞内マーカーの発現を検出することができる。例えば、抗原特異的Treg応答を検出するために、細胞を、CD3、CD4、CD25、FOXP3およびCD127に結合する抗体で標識し、CD3+、CD4+、CD25hi、FOXP3+およびCD127loである細胞でゲート開閉することができる。活性化T細胞はしばしばCD25をアップレギュレートし、Foxp3はエフェクター(非抑制性)T細胞系譜によって発現されるので、別のゲーティング戦略は、Foxp3を省略し、CD3+、CD4+、CD25hiおよびCD127lo細胞である細胞を選別することである。次いで、選別された細胞の集団を、例えば、サイトカイン分析および/または非Treg T細胞(CD3+CD4+CD25-、CD127hi)との抑制共培養アッセイによって、Treg特性についてアッセイすることができる。誘導性Tregはまた、RORγtおよびFoxp3の両方の発現について分析することによって検出することができる(Xu M.et al.,’’c-Maf-dependent regulatory T cells mediate immunological tolerance to a gut pathobiont,’’Nature.2018 Feb 15;554(7692):373-377を参照のこと)。
【0136】
抗原特異的Treg細胞を検出するための他のアッセイとしては、抑制アッセイが挙げられる。例えば、レスポンダーCD4+T細胞をポリクローナルに刺激し、異なる比率の推定Treg細胞と共培養し、培養物をH-チミジンで処理してレスポンダーT細胞のDNA合成をモニターする。Treg細胞は、共培養アッセイにおいてサイトカインIL-2およびIFN-γの産生を測定することによっても検出することができ、これは、これらのサイトカインのレベルが、レスポンダーT細胞のTreg抑制によって低下するからである。抗原特異的Treg応答を検出するための別のアッセイは、レスポンダーT細胞におけるIL-2およびIFN-γmRNAまたはCD69およびCD154表面タンパク質発現の発現を検出することであり、ここで、抑制は、レスポンダーT細胞を推定Treg細胞と共培養した5~7時間以内に検出することができる。これは、参照により本明細書に組み込まれる(McMurchy et al.,’’Suppression assays with human T regulatory cells:A technical guide,’’Eur.J.Immunol.2012.42:27-34を参照のこと)。
【0137】
抗原特異的Treg応答を検出するためのさらなるアッセイとしては、Miragaia et al.,’’Single-Cell Transcriptomics of Regulatory T Cells Reveals Trajectories of Tissue Adaptation,’’Immunity 50,493-504,February 19,2019に記載されているような単一細胞mRNAの配列解析、Bhairavabhotla et al.,Transcriptome Profiling of Human FoxP3+Regulatory T Cells,’’Human Immunology,Volume 77,Issue 2,February 2016,Pages 201-213に記載されているトランスクリプトームプロファイリングが挙げられる。抗原特異的Treg応答を検出するための別のアッセイは、Rossetti et al.,’’TCR repertoire sequencing identifies synovial Treg cell clonotypes in the bloodstream during active inflammation in human arthritis,’’Ann Rheum Dis 2017;76:435-441(doi:10.1136/annrheumdis-2015-208992)に記載されているように、Treg細胞のTCRを配列決定することを含む。
【0138】
抗原特異的Treg応答を検出するためのさらに別のアッセイは、Baron U.et al.,’’DNA demethylation in the human FOXP3 locus discriminates regulatory T cells from activated FOXP3(+)conventional T cells,’’Eur J Immunol 2007;37:2378-89(doi:10.1002/eji.200737594)に記載されているように、T細胞におけるFoxP3遺伝子座のDNAメチル化を検出することを含む。
いくつかの実施形態では、抗原特異的Treg応答を検出するためのアッセイは、APC、異種抗原(または異種抗原発現細菌)およびT細胞共培養系を使用する。適切な共培養期間(例えば、約1、2、3、4、または5時間の共培養)後、Nur77の発現をモニタリングして抗原特異的TCR活性化を検出する。
【0139】
抗原特異的Teff応答を検出するために、細胞を、特異的T細胞系譜に特徴的なT細胞マーカーに結合する抗体で標識することができ、異なるT細胞サブセット集団の割合を、当業者に公知の技術(例えば、Syrbe,et al.(1999)Springer Semin Immunopathol 21,263-285;Luckheeram RV et al.(2012).Clin Dev Immunol.2012;2012:925135;Mahnke YD et al.(2013)Cytometry A 83(5):439-440を参照のこと)を使用して分析することができる。例えば、いくつかの実施形態では、細胞は、CD3、CD8、CCR 7、IFNγ、T-bet、CXCR3、CCR 5、IL-4、IL-5、GATA3、STAT6、CCR4、CCR8、IL-17、RORγT、またはCCR6に結合する1またはそれを超える抗体で標識することができる。さらなる例では、CD8+T細胞を同定するために、細胞をCD3、CD8、およびCCR7に結合する抗体で標識し、CD3+、CD8+、およびCCR7-である細胞でゲート開閉することができる。
【0140】
抗原特異的Teff応答を検出するためのアッセイは、当業者に周知である。例えば、いくつかの実施形態では、抗原特異的Teff応答を検出するためのアッセイは、APC、異種抗原(または異種抗原発現細菌)およびT細胞共培養系を使用する。適切な共培養期間(例えば、約1、2、3、4、または5時間の共培養)後、Nur77の発現をモニタリングして抗原特異的TCR活性化を検出する(例えば、Ashouri JF and Weiss A(2017)J Immunol.198(2)657-668を参照のこと)。
【0141】
抗原特異的Teff細胞を検出するための他のアッセイには、増殖アッセイが含まれる。例えば、レスポンダーCD8+T細胞をポリクローナルで刺激し、異なる比率の推定Teff細胞と共培養し、培養物をH-チミジンで処理して、レスポンダーT細胞のDNA合成をモニターする。Teff細胞は、共培養アッセイにおけるサイトカイン(例えば、IFN-γ)の産生を測定すること、ならびにパーフォリンおよびグランザイムの産生を測定することによっても検出することができる。
【0142】
11.処置方法
本明細書に記載の医薬組成物を用いて対象または患者の疾患、障害または症状を予防または処置する方法も提供される。いくつかの実施形態では、方法は、治療有効量の、本明細書に記載の改変微生物、例えば生きている組換え共生細菌細胞または株を含む医薬組成物を対象に投与することを含む。医薬組成物は、対象において有害反応を誘発しない任意の適切な経路によって対象に投与することができる。例えば、医薬組成物は、経口、経鼻、経膣、直腸、局所、皮下、皮内または筋肉内経路によって投与することができる。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、対象によって経口摂取されるか、対象に局所投与されるか、対象によって吸入されるか、または対象に注射される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、医薬品が放出される前に胃を通って小腸への通過を可能にする遅延放出腸溶コーティングなどの材料で投与される。したがって、いくつかの実施形態では、医薬組成物は、改変微生物、例えば本明細書に記載の生きている組換え共生細菌を含有する腸溶コーティングカプセルを含む。
【0143】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の改変微生物、例えば生きている組換え共生細菌を含む医薬組成物は、自己免疫疾患の予防または処置に使用される。本明細書に開示される改変微生物によって処置され得る自己免疫疾患の例としては、多発性硬化症、I型糖尿病、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾患、セリアック病、グレーブス病、橋本自己免疫性甲状腺炎、白斑、リウマチ熱、悪性貧血/萎縮性胃炎、円形脱毛症、免疫性血小板減少性紫斑病、側頭動脈炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、強皮症、抗リン脂質症候群、1型自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、シェーグレン症候群、アジソン病、疱疹状皮膚炎、川崎病、交感神経性眼炎、HLA-B27関連急性前部ブドウ膜炎、原発性硬化性胆管炎、円板状エリテマトーデス、結節性多発性動脈炎、CREST症候群、重症筋無力症、多発性筋炎/皮膚筋炎、スチル病、自己免疫性2型肝炎、ウェゲナー肉芽腫症、混合性結合組織病、顕微鏡的多発血管炎、自己免疫性多腺性症候群、フェルティ症候群、自己免疫性溶血性貧血、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、ギラン・バレー症候群、ベーチェット病、自己免疫性好中球減少症、水疱性類天疱瘡、本態性混合型クリオグロブリン血症、線状限局性強皮症、自己免疫性多腺性症候群1(APECED)、後天性血友病A、バッテン病/神経セロイドリポフスチン症、自己免疫性膵炎、橋本脳症、グッドパスチャー病、尋常性天疱瘡、自己免疫性播種性脳脊髄炎、再発性多発性軟骨炎、高安動脈炎、チャーグ・ストラウス症候群、後天性表皮水疱症、瘢痕性類天疱瘡、落葉状天疱瘡、自己免疫性副甲状腺機能低下症、自己免疫性下垂体炎、自己免疫性内耳疾患、自己免疫性リンパ増殖性症候群、自己免疫性卵巣炎、自己免疫性精巣炎、自己免疫性多腺性症候群、コーガン症候群、嗜眠性脳炎(encephalitis lethartica)、持久性隆起性紅斑、エバンス症候群、免疫調節異常性多腺性腸症X連鎖(IPEX)、イッザック症候群/後天性神経筋緊張症、ミラーフィッシャー症候群、モルバン症候群、PANDAS、POEMS症候群、ラスムッセン脳炎、全身硬直症候群、フォークト-小柳-原田症候群、視神経脊髄炎、移植片対宿主病、および自己免疫性ブドウ膜炎が挙げられる。
【0144】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の改変微生物、例えば生きている組換え共生細菌を含む医薬組成物は、増殖性疾患の予防または処置に使用される。増殖性疾患の例としては、黒色腫、基底細胞癌腫、扁平上皮癌腫および精巣癌が挙げられる。
【0145】
本明細書に記載の方法を試験するために、任意の適切な動物モデルを使用することができる。いくつかの実施形態では、動物モデルは、マウスモデルまたは非ヒト霊長類モデルである。
【0146】
12.細菌株を含むキット
別の実施態様では、改変微生物、例えば生きている組換え共生細菌を含むキットが提供される。キットは、本明細書に記載の異種抗原を発現する生きている組換え共生細菌を含むことができる。いくつかの実施形態では、異種抗原は、共生細菌の非細菌宿主に通常存在する抗原である。例えば、異種抗原は、脊椎動物または哺乳動物によって発現されるかまたはそれらに存在する抗原であり得る。
【0147】
いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に記載の医薬組成物を含む。例えば、キットは、改変微生物、例えば異種抗原を発現する生きている組換え共生細菌を含む医薬組成物を含むことができる。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、異種抗原に対する調節性T細胞応答を誘導することができる。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、異種抗原に対してエフェクターT細胞応答を誘導することができる。
【0148】
いくつかの実施形態では、キットはまた、医薬組成物を対象または患者に投与するための説明書を含み得る。さらに、キットは、医薬組成物の投与を補助する薬学的賦形剤を含むことができる。
【0149】
いくつかの実施形態では、キットはまた、対象における疾患または病理学的症状を処置するために有用であるさらなる薬剤を含むことができる。さらなる薬剤の例としては、対象における疾患または病理学的症状を処置するために有用な小分子薬物または抗体が挙げられる。
【実施例
【0150】
現在一般的に説明されている本開示は、本開示の特定の態様および実施形態の説明の目的のためにのみ含まれ、いかなる方法によっても決して本開示の範囲を限定することを意図するものではない以下の実施例を参照することによってより容易に理解されるであろう。
【0151】
実施例1-Bacteroides株におけるOVAの発現
抗原エピトープコード配列を、GibsonアセンブリによってpWW3837ベクター(Genbank#KY776532)(Whitaker et al.,’’Tunable Expression Tools Enable Single-Cell Strain Distinction in the Gut Microbiome,’’Cell 169,538-546,April 20,2017を参照のこと)にクローニングした。ベクターを E.coli S17 lambda pirドナー株に電気穿孔した。E.coliドナー株を、BHI血液プレート上でのコンジュゲーションのためにレシピエント細菌と一晩共培養した。バイオマスを削り取り、BHI Blood+erm/gentプレート上にプレーティングした。陽性コロニーをコロニー-PCRによってスクリーニングした。
【0152】
図2に示すように、ウエスタンブロッティングデータは、OVAエピトープを発現するように操作されたBacteroides thetaiotaomicron(OVAB.thetaiotaomicron)は、検出可能なレベルのOVAを示したが、野生型B.thetaiotaomicron(WT B.thetaiotaomicron;陰性対照)はシグナルを示さないことを実証している。
【0153】
実施例2-組換えBacteroides株によるOVA特異的T細胞のインビトロ誘導
OTIIトランスジェニックマウスの脾臓から単離したOVA特異的T細胞を、B16-FLT3L刺激DCおよびOVAB.thetaiotaomicronまたはWT B.thetaiotaomicronと4時間共培養した。図3に示すように、OVAB.thetaiotaomicronと共に培養したOTII T細胞は、Nur77の発現をアップレギュレートする(特異性を高めるために2つの異なるNur77抗体を使用した)。
【0154】
実施例3-組換えBacteroides株におけるMOG融合ペプチドの発現
ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)35~55ペプチド配列をpWW3837ベクターにクローニングし、E.coliドナー株にエレクトロポレーションし、実施例1に記載されているのと同様の方法を使用して共生レシピエント株とコンジュゲートした。
【0155】
共生細菌株および発現構築物を表4にまとめる。
【表4】
【0156】
図4に示されているように、抗FLAG抗体を使用したウエスタンブロッティングデータは、FLAGタグ付きMOG35-55ペプチド(BT_MOG#1およびBT_MOG#5)を発現するように操作されたB.thetaiotaomicron(図4A)、FLAGタグ付きMOG35-55ペプチド(BV_MOG#1およびBT_MOG#5)を発現するように操作されたBacteroides vulgatus(図4B)、およびFLAGタグ付きMOG35-55ペプチド(BF_MOG#1およびBF_MOG#5)を発現するように操作されたBacteroides finegoldii(図4C)がいずれも検出可能なレベルのMOGペプチドを示したのに対して、野生型B.thetaiotaomicron、B.vulgatusおよびB.finegoldii(それぞれBT_W、BV_W、BF_W)はシグナルを示さなかったことを実証している。
【0157】
実施例4-組換えBacteroides株によるMOG特異的T細胞のインビトロ誘導
脾臓樹状細胞(DC)を増殖させるために、CD45.1 C57BL/6(The Jackson Laboratory、株#002014)マウスの脇腹に、FLT3Lを過剰発現する5×10個のB16黒色腫細胞を皮下注射した。11日目に、脾臓を採取し、脾臓解離キット(Miltenyi)を使用して消化し、脾臓DCをCD11cマイクロビーズ(Miltenyi)を使用して精製した。
【0158】
細菌抗原を調製するために、MOG35-55ペプチドを発現する生きている組換えB.thetaiotaomicron(実施例3に記載の方法と同様の方法によって調製)を洗浄し、完全T細胞培地(DMEM、10% FBS、10mM HEPES、50μM 2-ME)に再懸濁した。65℃で15分間加熱殺菌を行い、細菌生存率の喪失を培養によって確認した。オートクレーブした抗原を、細菌懸濁液を121℃、15psiで45分間オートクレーブすることによって調製した。CD4 T細胞単離キット(Miltenyi)を使用して、2D2 TCR-Tgマウス(The Jackson Laboratory、株#006912)の脾臓および末梢リンパ節からMOG特異的T細胞を単離し、精製した。
【0159】
APC-T細胞共培養物を調製するために、2×10個の脾臓DCに、37℃で4時間、10~50または40μg/mlの総タンパク質の感染多重度(MOI)で、生きている菌、熱殺菌した菌またはオートクレーブ処理菌をパルスした。2×10個のMOG特異的2D2 CD4 T細胞をAPCに添加した。共培養後2日目に、細胞を収集し、CD45.1、CD45.2、TCRb、CD4、CD25、CD44、CD69に対する蛍光色素コンジュゲート抗体(ThermoFisher ScientificまたはBioLegend)で染色し、フローサイトメトリー(Attune NxT)によって評価した。生きている細胞をLive/Dead Aqua(ThermoFisher Scientific)によって除外した。FlowJo v10を使用してデータ分析を行った。
【0160】
図5Aおよび図5Bに示すように、MOG35-55ペプチドを発現する組換えB.thetaiotaomicron株(L124、DR18.2、およびDR1)は、野生型B.thetaiotaomicron(wt)よりも大きいCD4+T細胞の抗原特異的誘導を誘導した。
【0161】
実施例5-組換えBacteroides株によるMOG特異的T細胞のインビボ誘導
実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)モデルを多発性硬化症(MS)のマウスモデルとして使用した。無菌の8~10週齢のC57BL/6マウスまたはC57BL/6-Tg(Tcra2D2、Tcrb2D2)1Kuch/Jマウスに、MOG35-55ペプチド発現細菌(BVF-MOG=MOG35-55を発現するB.vulgatusおよびB.finegoldiiの混合物)または陰性対照としての野生型共生細菌(BVF-WT=野生型B.vulgatusとB.finegoldiiの混合物)を1日目に経口接種した。野生型および組換え細菌株を、実施例3に前述したように得た。14日目に、これらのマウスを、200μLの完全フロイントアジュバント(CFA)中に乳化した200μgのMOG35~55を含有するHooke Kit(登録商標)MOG35-55/CFAエマルジョン(EK-2110、Hooke Labs、St Lawrence、マサチューセッツ州、米国)で皮下免疫した。MOG35-55/CFA免疫後2時後の14日目に、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中200ngの百日咳毒素(PTX)を各マウスの腹腔内に注射した。15日目に、PBS中200ngの百日咳毒素(PTX)を腹腔内注射した。EAEスコアおよび体重を、疾患の重症度および病期を評価するために15日目から34日目まで毎日評価した。この実験からの苦痛を軽減するために、マウスを3.5のスコアに達したときに安楽死させた。スコア0は、運動機能の明らかな変化がないことを意味する。スコア0.5は、尾部の遠位麻痺であり、スコア1は完全尾部麻痺、スコア1.5は一方または両方の後肢の軽度不全麻痺、スコア2は後肢の重度の不全麻痺、スコア2.5は一方の後肢の完全な麻痺、スコア3は両方の後肢の完全な麻痺、スコア3.5は後肢の完全な麻痺および一方の前肢の不全麻痺である。スコア≧3.5に達したマウスを安楽死させる。
【0162】
35日目に、マウスを安楽死させた。組織学的分析のために脊髄試料を調製した。鼠径リンパ節を収集し、PBSで洗浄し、解離させて細胞懸濁液を得て、FoxP3染色緩衝液セット(eBioscience)を使用して固定し、BD-LSRII装置でのフローサイトメトリー分析のために様々な蛍光標識抗体で染色した。
【0163】
図6に示すように、組換えB.vulgatusおよびB.finegoldii発現MOG35-55ペプチドの混合物(BVF-MOG)を投与したマウスは、野生型B.vulgatusおよびB.finegoldiiの混合物(BVF-WT)を投与したマウスと比較して、EAEスコアが有意に減少した。*p≦0.05、**p≦0.01 結果は3つの独立した実験からのものである。
図7Aに示すように、組換えB.vulgatusおよびB.finegoldii発現MOG35-55ペプチドの混合物(BVF-MOG)を投与したマウスは、野生型B.vulgatusおよびB.finegoldiiの混合物(BVF-WT)を投与したマウスと比較して、リンパ節FoxP3+Helios-CD4+T細胞の数が増加した。組換えB.vulgatusおよびB.finegoldii発現MOG35-55ペプチドの混合物(BVF-MOG)を投与したマウスはまた、野生型B.vulgatusおよびB.finegoldiiの混合物(BVF-WT)を投与したマウスと比較して、より少ないIL17+CD4+T細胞(図7B)およびIFN-γ+CD4+T細胞(図7C)を示した。
【0164】
参照による組み込み
本明細書で言及される各特許文献および科学論文の全開示は、あらゆる目的のために参照により組み込まれる。
【0165】
均等物
本発明は、その精神または本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で具体化されてもよい。したがって、前述の実施形態は、本明細書に記載の発明を限定するのではなく、あらゆる点で説明的であると見なされるべきである。したがって、本発明の範囲は、上記の説明ではなく添付の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
2022537045000001.app
【国際調査報告】