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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-23
(54)【発明の名称】注入システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/19 20060101AFI20220816BHJP
   A61M 5/315 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
A61M5/19
A61M5/315 502
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576023
(86)(22)【出願日】2020-06-22
(85)【翻訳文提出日】2022-02-18
(86)【国際出願番号】 US2020039013
(87)【国際公開番号】W WO2020257799
(87)【国際公開日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】62/864,509
(32)【優先日】2019-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518264424
【氏名又は名称】クリーデンス メドシステムズ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Credence MedSystems,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ディアス,スティーヴン エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】スティーズ-ブラッドリー,ゲイリー
(72)【発明者】
【氏名】シュルザス,アラン イー.
(72)【発明者】
【氏名】シャンリー,コナー エドワード
(72)【発明者】
【氏名】ルン,ミナ エム.
(72)【発明者】
【氏名】ティラック,ジェフ
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD07
4C066EE16
4C066FF05
4C066GG16
4C066HH13
(57)【要約】
本発明の注入システムは、近位端に近位開口部を規定し、遠位端に遠位針インターフェースを規定するシリンジ本体を含む。本システムは、シリンジ本体内に配置された近位および遠位ストッパも含み、それぞれ近位および遠位薬剤チャンバを形成する。本システムは、シリンジ本体に対して近位ストッパ部材を挿入するように手動で操作されるように構成されたプランジャ部材をさらに含む。さらに、本システムは流体移送アセンブリを含み、この流体移送アセンブリが、遠位ストッパ部材を貫通して近位薬剤チャンバと遠位薬剤チャンバを流体的に結合するように構成された貫通部材と、遠位出口管と、少なくとも部分的に貫通部材の一部の周りに配置され、流体通路を規定する移送部材とを含む。貫通部材の遠位端は、遠位出口管内に配置されている。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
注入システムであって、
近位端に近位開口部を規定し、遠位端に遠位針インターフェースを規定するシリンジ本体と、
前記シリンジ本体内に配置された近位ストッパ部材および遠位ストッパ部材であって、前記近位ストッパ部材と前記遠位ストッパ部材との間に近位薬剤チャンバを形成し、前記遠位ストッパ部材と前記シリンジ本体の遠位端との間に遠位薬剤チャンバを形成する、近位ストッパ部材および遠位ストッパ部材と、
前記シリンジ本体に対して前記近位ストッパ部材を挿入するように手動で操作されるように構成されたプランジャ部材と、
流体移送アセンブリであって、
前記近位薬剤チャンバおよび前記遠位薬剤チャンバを流体的に結合するために前記遠位ストッパ部材を貫通するように構成された貫通部材と、
遠位出口管であって、その中に前記貫通部材の遠位端が配置される遠位出口管と、
前記貫通部材の一部の周りに少なくとも部分的に配置された移送部材であって、流体通路を規定する移送部材とを含む流体移送アセンブリと
を備えることを特徴とする注入システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記移送部材が、前記貫通部材の一部の上に配置されたスリーブを含むことを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のシステムにおいて、
前記スリーブが、前記貫通部材の一部の表面に前記流体通路を規定することを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記移送部材が、その近位端に面取りされた角部を備えることを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記貫通部材の一部は、前記貫通部材の遠位端における幾何学的特徴部および前記貫通部材の一部の近位端における前記遠位出口管に比べて、直径が減少していることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項5に記載のシステムにおいて、
前記幾何学的特徴部の遠位端および前記遠位出口管の近位端が、前記貫通部材の一部の近位端および遠位端に近位肩部および遠位肩部をそれぞれ形成することを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項6に記載のシステムにおいて、
前記移送部材が閉じた構成および開いた構成を有し、
前記閉じた構成では、前記移送部材が、前記近位肩部と遠位肩部との間において前記貫通部材の一部の周りに配置され、前記移送部材が、第1の直径を有し、
前記開いた構成では、前記貫通部材および前記遠位出口管が前記移送部材内でスライド可能となるように、前記移送部材が、前記第1の直径よりも大きい第2の直径を有することを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項7に記載のシステムにおいて、
前記プランジャ部材から前記遠位ストッパ部材への流体圧により提供される約6lbf~約10lbfを前記遠位出口管に加えることによって、前記移送部材が前記閉じた構成から前記開いた構成に変換されることを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項7に記載のシステムにおいて、
前記移送部材が、その遠位端に遠位方向を向く漏斗を備え、
前記移送部材が閉じた構成にあるときに、前記遠位出口管の近位端が、前記遠位方向を向く漏斗内に配置され、
前記遠位出口管の近位端が、前記移送部材に対する前記遠位出口管の遠位方向の移動に伴って、前記移送部材をくさびのような押し込みにより開き、それにより前記移送部材を前記閉じた構成から前記開いた構成に変換するように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項7に記載のシステムにおいて、
前記第1の直径が、前記幾何学的特徴部の遠位端の直径以下であることを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項7に記載のシステムにおいて、
前記第2の直径が、前記遠位出口管の近位端の直径よりも大きいことを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項7に記載のシステムにおいて、
前記移送部材が、前記遠位出口管に予め設定された大きさの力を加えることにより、前記閉じた構成から前記開いた構成に変換するように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項12に記載のシステムにおいて、
前記予め設定された大きさの力が、約6lbf~約10lbfの遠位方向に向けられた力であることを特徴とするシステム。
【請求項14】
請求項5に記載のシステムにおいて、
前記幾何学的特徴部の遠位端の直径が、前記遠位出口管の近位端の直径と実質的に同じか、またはそれよりも大きいことを特徴とするシステム。
【請求項15】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記貫通部材が前記遠位ストッパ部材を貫通するように構成され、前記移送部材が、前記遠位ストッパ部材を広げて、開いた流体通路を維持するように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項16】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記移送部材が、リビングヒンジを含むことを特徴とするシステム。
【請求項17】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記移送部材が、細長い側部開口部を備えることを特徴とするシステム。
【請求項18】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記遠位ストッパ部材が、前記貫通部材の近位端を前記遠位ストッパ部材の中心に向けて案内するように構成された漏斗を備えることを特徴とするシステム。
【請求項19】
請求項18に記載のシステムにおいて、
前記移送部材が、半径方向に延びる部材を備え、この半径方向に延びる部材が、前記漏斗と物理的に干渉して、前記漏斗に接触したときに、前記漏斗および前記遠位ストッパ部材に対する前記移送部材の近位方向の移動を停止させるように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項20】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記貫通部材が、その近位端に幾何学的特徴部を有することを特徴とするシステム。
【請求項21】
請求項20に記載のシステムにおいて、
前記幾何学的特徴部が、前記遠位ストッパ部材を貫通するように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項22】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記遠位出口管が、スプリット開放遠位端を備えることを特徴とするシステム。
【請求項23】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記遠位出口管が、近位側開口部および近位端開口部を備え、
前記貫通部材が、前記近位側開口部と前記近位端開口部との間の距離よりも長いことを特徴とするシステム。
【請求項24】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記遠位出口管に溶接されたリングをさらに備えることを特徴とするシステム。
【請求項25】
請求項24に記載のシステムにおいて、
前記遠位出口管の遠位端が前記遠位針インターフェースの遠位端に向かって予め設定された距離を超えて延びるのを防止するように、前記リングが構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項26】
請求項1に記載のシステムにおいて、
当該システムが、搬送構成、移送構成および混合構成を有し、
前記搬送構成では、前記貫通部材の全体が前記遠位薬剤チャンバ内に配置され、
前記移送構成では、前記貫通部材が前記遠位ストッパ部材を少なくとも部分的に貫通し、前記貫通部材および前記移送部材が、少なくともそれぞれ部分的に前記近位薬剤チャンバ内に配置され、
前記混合構成では、前記近位ストッパ部材および前記遠位ストッパ部材が互いに接触し、それにより前記近位薬剤チャンバから前記遠位薬剤チャンバに第1の薬剤成分が移送され、前記第1の薬剤成分が前記遠位薬剤チャンバ内の第2の薬剤成分と混合されることを特徴とするシステム。
【請求項27】
請求項26に記載のシステムにおいて、
当該システムが移送構成にあるときに、前記流体通路が、前記近位チャンバと前記遠位チャンバとの間に流体経路を形成することを特徴とするシステム。
【請求項28】
請求項26に記載のシステムにおいて、
前記混合構成にあるとき、または注入中に、前記移送部材が前記近位ストッパ部材を完全には貫通しないことを特徴とするシステム。
【請求項29】
請求項26に記載のシステムにおいて、
当該システムが前記混合構成に達した後、前記遠位出口管がくさびのように押し入って前記移送部材を開き、前記遠位ストッパ部材の更なる遠位方向の移動に伴って前記移送部材内で近位方向にスライドすることを特徴とするシステム。
【請求項30】
請求項26に記載のシステムにおいて、
当該システムが、前記遠位ストッパ部材に予め設定された大きさの力を加えることにより、前記搬送構成から前記移送構成に変換するように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項31】
請求項30に記載のシステムにおいて、
前記予め設定された力の大きさが、約3~5lbfの遠位方向に向けられた力であることを特徴とするシステム。
【請求項32】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記遠位出口管が、
その遠位端にある遠位端開口部と、
前記遠位薬剤チャンバ内に配置された近位側開口部とを備えることを特徴とするシステム。
【請求項33】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記シリンジ本体に対する前記近位ストッパ部材および前記遠位ストッパ部材の移動によって、前記近位チャンバの第1のサイズおよび前記遠位薬剤チャンバの第2のサイズを変更することができることを特徴とするシステム。
【請求項34】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記近位チャンバおよび前記遠位薬剤チャンバがそれぞれ、患者に注入する前に互いに混合される薬剤の第1の成分および第2の成分を含むことを特徴とするシステム。
【請求項35】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記移送部材が、金属により形成されていることを特徴とするシステム。
【請求項36】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記移送部材が、ポリマーにより形成されていることを特徴とするシステム。
【請求項37】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記移送部材が、ラッチ状態およびラッチ解除状態を有するラッチを備え、
前記ラッチが、前記ラッチ状態において、前記移送部材に対する前記貫通部材および前記遠位出口管の軸方向の移動を阻止し、
前記ラッチが、前記ラッチ解除状態において、前記移送部材に対する前記貫通部材および前記遠位出口管の軸方向の移動を許容することを特徴とするシステム。
【請求項38】
請求項37に記載のシステムにおいて、
前記ラッチが、プラスチックヒンジを含むことを特徴とするシステム。
【請求項39】
請求項38に記載のシステムにおいて、
前記プラスチックヒンジが開いて、前記ラッチを前記ラッチ状態から前記ラッチ解除状態に変換することを特徴とするシステム。
【請求項40】
請求項38に記載のシステムにおいて、
前記プラスチックヒンジが、前記ラッチに予め設定された大きさの力を加えることに応答して開くことを特徴とするシステム。
【請求項41】
請求項40に記載のシステムにおいて、
前記予め設定された大きさの力が、約6lbf~約10lbfの遠位方向に向けられた力であることを特徴とするシステム。
【請求項42】
請求項37に記載のシステムにおいて、
前記ラッチは、予め設定された大きさの力が前記ラッチに加えられるまで前記移送部材をラッチ状態に保持する脆弱リンクを備えることを特徴とするシステム。
【請求項43】
請求項42に記載のシステムにおいて、
前記予め設定された大きさの力が、約6lbf~約10lbfの遠位方向に向けられた力であることを特徴とするシステム。
【請求項44】
シリンジ修正デバイスであって、
流体移送アセンブリを備え、この流体移送アセンブリが、
シリンジの近位薬剤チャンバおよび遠位薬剤チャンバを流体的に結合するために前記シリンジの遠位ストッパ部材を貫通するように構成された貫通部材と、
前記シリンジの針の近位端に結合するように構成された遠位出口管であって、その中に前記貫通部材の遠位端が配置される遠位出口管と、
前記貫通部材の一部に少なくとも隣接して配置された移送部材とを備え、遠位移送部材が、前記貫通部材による前記遠位ストッパ部材の貫通時に前記遠位薬剤チャンバと前記近位薬剤チャンバとを流体的に結合するように構成された流体通路を規定することを特徴とするシリンジ修正デバイス。
【請求項45】
請求項44に記載のデバイスにおいて、
前記遠位出口管が、前記針の近位端に前記遠位出口管を結合するように構成されたスロットを備えることを特徴とするデバイス。
【請求項46】
注入システムであって、
近位端に近位開口部を規定し、遠位端に遠位針インターフェースを規定するシリンジ本体と、
前記シリンジ本体内に配置された近位ストッパ部材および遠位ストッパ部材であって、前記近位ストッパ部材と前記遠位ストッパ部材との間に近位薬剤チャンバを形成し、前記遠位ストッパ部材と前記シリンジ本体の遠位端との間に遠位薬剤チャンバを形成する、近位ストッパ部材および遠位ストッパ部材と、
前記シリンジ本体に対して前記近位ストッパ部材を挿入するように手動で操作されるように構成されたプランジャ部材と、
流体移送アセンブリと、
後退防止機構を有するフィンガフランジとを備え、
前記後退防止機構が、
前記プランジャ部材に対抗力を与えて、ブレーキタブに対する前記プランジャ部材の近位方向への移動を阻止するように構成されたブレーキタブと、
前記後退防止機構を前記フィンガフランジの凹部に維持するように構成された保持特徴部とを有することを特徴とする注入システム。
【請求項47】
請求項46に記載のシステムにおいて、
前記フィンガフランジが、前記フィンガフランジを前記シリンジ本体のフランジに取り付けるように構成された別の凹部をさらに備えることを特徴とするシステム。
【請求項48】
請求項46に記載のシステムにおいて、
前記後退防止機構が、前記凹部と前記後退防止機構の寸法との間の公差を小さくするように構成された複数のフィットタブをさらに備えることを特徴とするシステム。
【請求項49】
請求項46に記載のシステムにおいて、
前記後退防止機構が、金属クリップであることを特徴とするシステム。
【請求項50】
請求項46に記載のシステムにおいて、
前記ブレーキタブが、弾性を有する自己作動する爪であることを特徴とするシステム。
【請求項51】
請求項50に記載のシステムにおいて、
前記ブレーキタブが、前記後退防止機構の平面に対して遠位方向に鋭角に配置されていることを特徴とするシステム。
【請求項52】
請求項51に記載のシステムにおいて、
前記ブレーキタブの鋭角性および弾性により、近位方向に後退する際に前記プランジャ部材に対する摩擦力が増加することを特徴とするシステム。
【請求項53】
請求項51に記載のシステムにおいて、
前記プランジャ部材が近位方向に後退するときに、前記ブレーキタブが、前記ブレーキタブの鋭角性および弾性により、前記後退防止機構を介して前記フィンガフランジの内壁に外向きの力を及ぼすことを特徴とするシステム。
【請求項54】
請求項46に記載のシステムにおいて、
前記フィンガフランジが、前記後退防止機構と干渉して前記後退防止機構を前記凹部内に保持するように構成されたエッジを有する開口部をさらに備えることを特徴とするシステム。
【請求項55】
請求項46に記載のシステムにおいて、
前記後退防止機構が、「C」字形を有することを特徴とするシステム。
【請求項56】
請求項46に記載のシステムにおいて、
前記後退防止機構が、「O」字形を有することを特徴とするシステム。
【請求項57】
請求項46に記載のシステムにおいて、
前記プランジャ部材が前記シリンジ本体内に挿入された後に、前記後退防止機構が、前記シリンジ本体からの前記プランジャ部材の取り外しを防止することを特徴とするシステム。
【請求項58】
請求項46に記載のシステムにおいて、
前記対抗力が、摩擦力および反力を含むことを特徴とするシステム。
【請求項59】
安全注入システムであって
近位端に近位開口部を規定し、遠位端に遠位針インターフェースを規定するシリンジ本体と、
前記シリンジ本体内に配置されたストッパ部材と、
前記シリンジ本体に対して前記ストッパ部材を挿入するように手動で操作されるように構成されたプランジャ部材と、
針、針ハブおよび針ラッチを含む針ハブアセンブリとを備え、
前記針ラッチが、ラッチアームのペアを有し、
前記針が、前記ラッチアームのペアの一部を受け入れるように構成された環状のラッチ溝を有し、
前記針ハブが、前記針ラッチをラッチ状態に圧縮するように構成された凹部を規定し、前記ラッチ状態では、前記針が、前記針ラッチおよび前記針ハブに対して固定されることを特徴とする安全注入システム。
【請求項60】
請求項59に記載のシステムにおいて、
前記針ラッチが開放状態にバイアスされ、前記開放状態では、前記針が前記針ラッチおよび前記針ハブに対して移動可能であることを特徴とするシステム。
【請求項61】
請求項59に記載のシステムにおいて、
前記針ラッチが保持タブのペアを備え、前記保持タブが、前記保持タブが前記凹部からの前記針ラッチの遠位方向の移動を防止する真っ直ぐな状態と、前記針ラッチが前記凹部から遠位方向に移動可能である曲がった状態とを有することを特徴とするシステム。
【請求項62】
請求項61に記載のシステムにおいて、
前記保持タブのペアが、約2lbf~約4lbfの遠位方向に向けられた力を加えることにより、前記真っ直ぐな状態から前記曲がった状態へと変化するように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項63】
安全注入システムであって
近位端に近位開口部を規定し、遠位端に遠位針インターフェースを規定するシリンジ本体と、
前記シリンジ本体内に配置されたストッパ部材と、
前記シリンジ本体に対して前記ストッパ部材を挿入するように手動で操作されるように構成されたプランジャ部材と、
針、針ハブおよびエラストマー保持/シール部材を含む針ハブアセンブリとを備え、
前記エラストマー保持/シール部材が、前記針を受け入れるように構成された開口部を有し、
前記針が、前記エラストマー保持/シール部材の一部を受け入れるように構成された環状の座部を有し、
前記エラストマー保持/シール部材が、前記エラストマー保持/シール部材および前記針ハブに対する前記針の長手方向の移動を一時的に防止するために、前記針に解放可能に結合するように構成されていることを特徴とする安全注入システム。
【請求項64】
請求項63に記載のシステムにおいて、
前記エラストマー保持/シール部材が、約1.5lbf~約3.0lbfの遠位方向に向けられた力を加えることで前記針を解放するように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項65】
請求項63に記載のシステムにおいて、
前記エラストマー保持/シール部材が、Oリングまたはエラストマーのスラブを含むことを特徴とするシステム。
【請求項66】
注入システムであって、
遠位端に保持レッジを有する成形された本体部材と、
前記成形された本体部材の遠位端の保持レッジに結合された針ハブアセンブリとを備え、前記針ハブアセンブリが、
前記保持レッジに結合された針ハブと、
前記針ハブに結合された針とを備え、
前記針ハブが、その近位端に配置されたラッチのペアを有し、前記ラッチが、前記保持レッジと干渉して前記針ハブを前記成形された本体の保持レッジに結合するように構成されていることを特徴とする注入システム。
【請求項67】
請求項66に記載のシステムにおいて、
前記成形された本体部材の遠位端と前記針ハブの内面との間に配置されたガスケットをさらに備えることを特徴とするシステム。
【請求項68】
請求項66に記載のシステムにおいて、
前記本体部材が、環状オレフィンコポリマーまたは環状オレフィンポリマーから成形されていることを特徴とするシステム。
【請求項69】
注入システムであって、
遠位端に針結合部材を有する成形された本体部材と、
前記成形された本体部材の遠位端の結合部材に結合された針ハブアセンブリとを備え、
前記針ハブアセンブリが、
前記結合部材に結合された針ハブと、
前記針ハブに結合された針とを備え、
前記針ハブが、その近位端に配置された保持リングを有し、この保持リングが、前記針ハブを前記成形された本体の結合部材に結合するように構成されていることを特徴とする注入システム。
【請求項70】
請求項66に記載のシステムにおいて、
前記保持リングが、複数の歯を有し、前記複数の歯が、前記針結合部材の遠位方向への通過を可能にするように屈曲する一方で、前記針結合部材に食い込んで近位方向への移動を阻止するように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項71】
請求項66に記載のシステムにおいて、
前記成形された本体部材の遠位端と前記針ハブの内面との間に配置されたガスケットをさらに備えることを特徴とするシステム。
【請求項72】
請求項66に記載のシステムにおいて、
前記本体部材が、環状オレフィンコポリマーまたは環状オレフィンポリマーから成形されていることを特徴とするシステム。
【請求項73】
注入システムであって、
近位端に近位開口部を規定し、遠位端に遠位針インターフェースを規定するシリンジ本体と、
前記シリンジ本体内に配置された近位ストッパ部材および遠位ストッパ部材であって、前記近位ストッパ部材と前記遠位ストッパ部材との間に近位チャンバを形成し、前記遠位ストッパ部材と前記シリンジ本体の遠位端との間に遠位チャンバを形成する、近位ストッパ部材および遠位ストッパ部材と、
前記シリンジ本体に対して前記近位ストッパ部材を挿入するように手動で操作されるように構成されたプランジャ部材と、
流体移送アセンブリとを備え、前記流体移送アセンブリが、
前記遠位ストッパ部材を貫通するように構成された貫通管と、
中実の細長い部材であって、前記貫通管が前記中実の細長い部材の一部の周りに少なくとも部分的に配置されている、中実の細長い部材と、
遠位管であって、前記中実の細長い部材の遠位端が、前記遠位管の近位端に配置されている、遠位管とを備え、
前記貫通管が、前記貫通管の近位端が前記遠位ストッパ部材を完全に貫通するのに必要な力を増加させるように構成された真空ストッパのペアを備え、
前記貫通管の近位端が前記遠位ストッパ部材を完全に貫通した後、前記貫通管が、前記近位チャンバと前記遠位チャンバとの間に流体通路を規定することを特徴とする注入システム。
【請求項74】
請求項73に記載のシステムにおいて、
前記真空ストッパの各々が、半径方向外向きに遠位方向に延びるタブを含むことを特徴とするシステム。
【請求項75】
請求項73に記載のシステムにおいて、
前記遠位ストッパ部材に配置された漏斗インサートをさらに備え、この漏斗インサートは、半径方向に延びる部材が前記漏斗インサートに接触したときに、前記貫通管の前記真空ストッパと干渉して、前記漏斗インサートおよび前記遠位ストッパ部材に対する前記貫通管の近位方向の移動を停止させるように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項76】
請求項75に記載のシステムにおいて、
前記漏斗インサートが、前記貫通管の近位端を前記遠位ストッパ部材の中心に向けて案内するように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項77】
請求項73に記載のシステムにおいて、
前記貫通管が、
管状部材と、
その遠位端において、前記管状部材の長手方向の軸に直交するように配置されたディスクとをさらに備えることを特徴とするシステム。
【請求項78】
請求項77に記載のシステムにおいて、
前記ディスクが、前記ディスクを前記管状部材に接続する複数の半径方向内向きに伸縮するストッパを規定することを特徴とするシステム。
【請求項79】
請求項78に記載のシステムにおいて、
前記複数の半径方向内向きに伸縮するストッパが、前記ディスクのほぼ中央に調節可能な開口部を規定することを特徴とするシステム。
【請求項80】
請求項79に記載のシステムにおいて、
前記調節可能な開口部が、前記中実の細長い部材が前記ディスクおよび前記貫通管を完全に通過することを防止するように構成された小さな構成を有し、
前記調節可能な開口部が、前記中実の細長い部材が前記ディスクおよび前記貫通管を完全に通過できるように構成された大きな構成を有することを特徴とするシステム。
【請求項81】
請求項80に記載のシステムにおいて、
前記遠位管が、その近位端に近位方向を向く肩部を有し、前記肩部は、前記調節可能な開口部が小さな構成にあるときに、前記複数の半径方向内向きに伸縮するストッパと干渉して、前記貫通管に対する前記遠位管の近位方向の移動を阻止するように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項82】
請求項81に記載のシステムにおいて、
前記小さな構成にある前記調節可能な開口部の直径が、前記肩部の外径よりも小さく、
前記大きな構成にある前記調節可能な開口部の直径が、前記肩部の外径よりも大きいことを特徴とするシステム。
【請求項83】
請求項80に記載のシステムにおいて、
前記管状部材を前記ディスクから離れるように近位方向に移動させると、前記調節可能な開口部が小さな構成から大きな構成へと変化することを特徴とするシステム。
【請求項84】
請求項80に記載のシステムにおいて、
前記ディスクを前記管状部材から離れるように遠位方向に移動させると、前記調節可能な開口部が小さな構成から大きな構成に変化することを特徴とするシステム。
【請求項85】
請求項80に記載のシステムにおいて、
前記プランジャ部材から前記遠位ストッパ部材に流体圧によって提供される前記貫通管への予め設定された大きさの近位方向に向けられた力の適用によって、前記調節可能な開口部が小さな構成から大きな構成へと変換されることを特徴とするシステム。
【請求項86】
請求項85に記載のシステムにおいて、
前記予め設定された大きさの近位方向に向けられた力が、約7.5lbf~約10lbfであることを特徴とするシステム。
【請求項87】
請求項80に記載のシステムにおいて、
前記遠位ストッパ部材を貫通する管状部材が、前記複数の半径方向内向きに伸縮するストッパに半径方向内向きの力を加えて、前記調節可能な開口部を小さな構成に保持することを特徴とするシステム。
【請求項88】
請求項73に記載のシステムにおいて、
前記貫通管が、前記貫通管に対する前記中実の細長い部材の遠位方向の動きを制限するように構成された、半径方向内向きに近位方向に延びるタブのペアをさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項89】
請求項88に記載のシステムにおいて、
前記中実の細長い部材が、前記貫通管に対する前記中実の細長い部材の遠位方向の動きを制限するために、前記半径方向内向きに近位方向に延びるタブと干渉するように構成された遠位方向を向く肩部を備えることを特徴とするシステム。
【請求項90】
請求項73に記載のシステムにおいて、
前記貫通管が、近位端開口部、中間開口部および遠位開口部を規定し、
前記貫通管の近位端が前記遠位ストッパ部材を完全に貫通した後、前記近位チャンバと遠位チャンバとの間の流体通路が、前記近位端開口部、前記中間開口部および前記遠位開口部を含むことを特徴とするシステム。
【請求項91】
請求項73に記載のシステムにおいて、
前記遠位チャンバ内に真空をさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項92】
請求項73に記載のシステムにおいて、
前記貫通管が、その近位端に面取りされた角部を有することを特徴とするシステム。
【請求項93】
請求項73に記載のシステムにおいて、
当該システムが、搬送構成、移送構成および混合構成を有し、
前記搬送構成では、前記貫通管の全体が前記遠位チャンバおよび前記遠位ストッパ部材内に配置され、
前記移送構成では、前記貫通管が前記遠位ストッパ部材を部分的に貫通し、前記貫通管の開いた近位端が、前記近位チャンバ内に配置され、
前記混合構成では、前記近位ストッパ部材および前記遠位ストッパ部材が互いに接触し、それにより第1の薬剤成分を前記近位チャンバから前記遠位チャンバに移送して、前記第1の薬剤成分を前記遠位チャンバ内の第2の薬剤成分と混合することを特徴とするシステム。
【請求項94】
請求項93に記載のシステムにおいて、
当該システムが移送構成にあるとき、前記貫通管が前記近位チャンバと前記遠位チャンバとの間に流体経路を形成することを特徴とするシステム。
【請求項95】
請求項93に記載のシステムにおいて、
前記貫通管が、前記遠位ストッパ部材を完全には貫通しないことを特徴とするシステム。
【請求項96】
請求項93に記載のシステムにおいて、
当該システムが混合構成に達した後、前記遠位ストッパ部材の更なる遠位方向の移動により、前記中実の細長い部材が前記貫通管から解放されることを特徴とするシステム。
【請求項97】
請求項93に記載のシステムにおいて、
前記遠位ストッパ部材に予め設定された大きさの力を加えることにより、当該システムが前記搬送構成から前記移送構成に変換されることを特徴とするシステム。
【請求項98】
請求項97に記載のシステムにおいて、
前記予め設定された力の大きさが、約7.5lbf~約10lbfの遠位方向に向けられた力であることを特徴とするシステム。
【請求項99】
請求項73に記載のシステムにおいて、
前記近位チャンバおよび前記遠位チャンバが、患者に注入する前に互いに混合される薬剤の第1の成分および第2の成分をそれぞれ含むことを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して流体注入に対する様々なレベルの制御を容易にするための注入システム、デバイスおよびプロセスに関し、より詳細には、医療環境におけるマルチチャンバの安全シリンジに関連するシステムおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1A(2)に示すような数百万ものシリンジが、医療環境で毎日消費されている。典型的なシリンジ(2)は、管状本体(4)、プランジャ(6)および注射針(8)を含む。図1Bに示すように、そのようなシリンジ(2)は、患者に流体を注入するだけでなく、薬瓶、バイアル、バッグまたは他の薬剤封入システム(10)などの容器から流体を引き出すか、またはそれら容器内に流体を排出するために利用することもできる。実際、米国などの一部の国では、無菌状態の維持に関する懸念と、規制上の制約により、特定の患者の環境に示すように、シリンジ(2)と一緒に薬瓶(10)を使用した場合、そのような薬瓶は、単一の患者に対してのみ使用され、その後、処分しなければならず、それにより薬瓶や残りの薬剤の廃棄物から多くの医療廃棄物がもたらされ、特定の重要な薬剤の周期的な不足の原因にもなる。図2Aを参照すると、3本のルアー型シリンジ(12)が示されており、それぞれが、遠位側に配置されたルアー継手形状(14)を有し、それらが、図2Bに示すルアーマニホールドアセンブリ(16)などの同様の継手形状を有する他のデバイスと結合されるようになっている。図2Bのルアーマニホールドアセンブリは、静脈内注入バッグの使用の有無にかかわらず、患者に液体薬剤を静脈内投与するために使用することができる。図2Aのシリンジのルアー継手(14)は、「雄」ルアー継手と呼ばれ、図2Bのルアー継手(18)は、「雌」ルアー継手と呼ばれることもあり、ルアーインターフェースの一方は、ネジ山が形成されて(この場合、その構成を「ルアーロック」構成と称することもある)、両者が相対的な回転により結合され、それが圧縮荷重と組み合わされる場合もある。言い換えれば、ルアーロックの一実施形態では、回転が、おそらく圧縮とともに、雄継手(14)のネジ山を係合させるために利用され、このネジ山は、雌継手(18)上のフランジと係合して、デバイスを流体封入された結合状態とするように構成されている。別の実施形態では、ネジ山または回転を用いることなく、圧縮を使用してルアー係合を提供するために、テーパ状のインターフェース形状が利用されることもある(そのような構成は、「スリップオン」または「円錐」ルアー構成と称することもある)。そのようなルアー結合は、オペレータにとって比較的安全であると認識されているが、ルアー結合の組立中に薬がこぼれたり、漏れたり、部品が破損したりする危険性がある。一方、針注入構成を使用すると、鋭い針が人や望ましくない構造物に接触したり、刺したりする危険性がある。このような理由から、いわゆる「安全シリンジ」が開発されてきた。
【0003】
安全シリンジ(20)の一実施形態が、図3に示されており、この実施形態では、管状のシールド部材(22)が、シリンジ本体(4)に対してロック位置から解放されたときに、針(8)を覆うようにバネ付勢されている。安全シリンジ(24)の別の実施形態が、図4Aおよび図4Bに示されている。この構成では、シリンジ本体(4)に対してプランジャ(6)が完全に挿入された後、図4Bに示すように、引き込み可能な針(26)が、管状本体(4)内の安全位置に引き込まれる(28、26)ように構成されている。それ自体に納めるように構成されたそのような形態は、血液の飛び散り/エアロゾル化の問題や、誤作動して作動が早過ぎる可能性のある予め載荷されたエネルギーの安全な貯蔵、バネ圧縮体積内の残留デッドスペースに起因する全用量注射を与える際の精度の喪失、および/または痛みや患者の不安に関連し得る引き込み速度制御の喪失に関連する可能性がある。
【0004】
図5Aおよび図5Bに示すようなプレフィルドシリンジアセンブリに対する需要の増加により、シリンジ市場がさらに複雑化しており、それらは一般に、シリンジ本体または「薬剤封じ込め送達システム」(34)と、プランジャ先端、プラグまたはストッパ(36)と、ルアー型インターフェースに取り付けられた遠位シールまたはキャップ(35)とを備える(図5Aは定位置にあるキャップ35を示しているが、図5Bはルアー型インターフェース14を例示するために、キャップを取り外してある)。液体薬剤は、遠位シールとプランジャ先端(36)の遠位端(37)との間の容積または薬剤リザーバ(40)内にある。プランジャ先端(36)は、標準的なブチルゴム材料を含むことができ、関連するシリンジ本体構造および材料に対する好ましいシールおよび相対運動特性を容易にするために、生体適合性潤滑性コーティング(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」)などでコーティングされている。図5Bのシリンジ本体(34)の近位端は、シリンジ本体(34)の材料と一体的に形成された従来の一体型シリンジフランジ(38)を備える。フランジ(38)は、シリンジ本体(34)から半径方向に延びるように構成されており、シリンジ本体(34)の周囲の全周または円周の一部となるように構成されている。部分的なフランジは、「クリップドフランジ」として知られており、他方のフランジは「フルフランジ」として知られている。フランジは、指でシリンジを把持するために使用され、プランジャを押して注射を行うための支持を提供する。シリンジ本体(34)は、好ましくは、ガラスまたはポリマーのような半透明の材料を含む。チャンバまたはリザーバ(40)内に封じ込められた容積を形成し、針を介した関連流体の排出を補助するために、プランジャ先端(36)をシリンジ本体(34)内に配置することができる。シリンジ本体(34)は、ほぼ円筒形を(すなわち、円形の断面形状を有するプランジャ先端36がシリンジ本体(34)に対してシールを確立するように)規定することができ、または楕円形などの他の断面形状を有するように構成することもできる。
【0005】
このようなアセンブリは、充填、包装および医薬品/薬剤インターフェーシング材料の選択とコンポーネントの使用に関する世界の絶え間なく変化する規制のすべてを満たす余裕のある世界で数少ない製造業者によって標準化され、正確に大量製造される可能性があるため、望ましい。しかしながら、そのような単純な構成では、一般的に、単回使用、安全性、自動無効化および針刺し防止に関する新しい世界基準を満たすことはできない。このため、特定のサプライヤは、1つのソリューションで規格のすべてまたはその少なくとも一部を満たそうとする、より「垂直」ソリューション、例えば、図5Cに示すようなもの(41)に移行してきており、多くの異なるシナリオでそれらの基準を満たそうとした結果、そのような製品には重大な制限があり(図3図4Bを参照して上述したような制限を含む)、在庫および使用費用が比較的高くなる可能性がある。
【0006】
場合によっては、多成分注入システムは、注入前に、注入可能な成分(例えば、液体および/または粉末)を混合することができる。いくつかのシステムは、単一の注入デバイスを利用して、ある容器から成分の液体を引き出し、その液体成分を別の容器に移して、その中の乾燥成分を可溶化する。その後、患者に注入するために、可溶化した乾燥成分を注入デバイス内に引き込む。そのようなシステムでは、露出した針を多く取り扱う必要があり、1または複数のキャップを外した針にユーザを不必要に曝すことに繋がる。さらに、液体成分をある容器から別の容器に手動で移すと、液体成分の移動が不完全になり、最終的な混合注入剤の成分の比率に影響を与える可能性がある。さらに、成分の複数の容器にアクセスして操作すると、注入プロセスが複雑になり、それによりユーザエラーのリスクが増大する。このため、複数の容器の複数の成分に対する手動によるアクセスおよび混合を簡略化する多成分注入システムが必要である。
【0007】
これらの制限は、複数の成分を混合して注入するように構成されたマルチチャンバ注入システムによって対処される。しかしながら、複数成分の注入剤を正確に取り扱い、混合し、送達するために、マルチチャンバ注入システムを正確に制御する必要性が残っている。
【0008】
さらに、注入する可能性のある液体(例えば、医薬品)の増加は、金属(例えば、針のステンレス鋼)にそのような液体が曝される時間を最小にするというさらに別の要件が生じる。
【0009】
また、注入システムに針刺し防止技術を組み込むことも望ましい。シリンジの内部に少なくとも部分的に針の鋭利な端部を引き込む能力は、注入を行う人および患者を不注意による針刺し負傷から保護する。
【0010】
現在利用可能な構成の欠点に対処する注入システムが必要とされている。特に、図5Aおよび図5Bを参照して説明したような、従来から提供されるプレフィルドシリンジアセンブリの既存の比較的良好に制御されたサプライチェーンを利用することができる、精密な制御を行うマルチチャンバの安全注入ソリューションの必要性がある。
【発明の概要】
【0011】
実施形態は、注入システムに関する。特に、実施形態は、多成分注入剤の取り扱い、混合および送達を正確に制御するマルチチャンバ安全注入システムを対象とする。
【0012】
一実施形態では、注入システムが、近位端に近位開口部を規定し、遠位端に遠位針インターフェースを規定するシリンジ本体を含む。このシステムは、シリンジ本体内に配置された近位ストッパ部材および遠位ストッパ部材も含み、近位ストッパ部材と遠位ストッパ部材との間に近位薬剤チャンバを形成し、遠位ストッパ部材とシリンジ本体の遠位端との間に遠位薬剤チャンバを形成する。このシステムは、シリンジ本体に対して近位ストッパ部材を挿入するように手動で操作されるように構成されたプランジャ部材をさらに含む。さらに、このシステムは、流体移送アセンブリを含み、この流体移送アセンブリが、近位薬剤チャンバおよび遠位薬剤チャンバを流体的に結合するために遠位ストッパ部材を貫通するように構成された貫通部材を含む。流体移送アセンブリは、遠位出口管も含み、貫通部材の遠位端が遠位出口管内に配置されている。流体移送アセンブリは、貫通部材の一部の周りに少なくとも部分的に配置された移送部材をさらに含み、遠位移送部材が、流体通路を規定する。
【0013】
1または複数の実施形態では、移送部材が、貫通部材の一部の上に配置されたスリーブを含む。スリーブは、貫通部材の一部の表面に流体通路を規定することができる。移送部材は、その近位端に面取りされた角部を含むことができる。幾何学的特徴部の遠位端の直径は、遠位出口管の近位端の直径と実質的に同じであるか、またはそれよりも大きくすることができる。貫通部材は、遠位ストッパ部材を貫通するように構成することができ、移送部材は、遠位ストッパ部材を広げ、開いた流体通路を維持するように構成することができる。
【0014】
1または複数の実施形態では、貫通部材の一部が、貫通部材の遠位端における幾何学的特徴部および貫通部材の一部の近位端における遠位出口管に比べて直径が減少している。幾何学的特徴部の遠位端および遠位出口管の近位端は、貫通部材の一部の近位端および遠位端にそれぞれ近位肩部および遠位肩部を形成することができる。
【0015】
1または複数の実施形態では、移送部材が閉じた構成および開いた構成を有し、閉じた構成では、移送部材が、近位肩部と遠位肩部との間において貫通部材の一部の周りに配置され、移送部材が、第1の直径を有し、開いた構成では、貫通部材および遠位出口管が移送部材内でスライド可能となるように、移送部材が、第1の直径よりも大きい第2の直径を有する。移送部材は、プランジャ部材から遠位ストッパ部材への流体圧により提供される約6lbf~約10lbf(重量ポンド)を遠位出口管に加えることによって、閉じた構成から開いた構成に変換され得る。
【0016】
1または複数の実施形態では、移送部材が、その遠位端に遠位方向を向く漏斗を含む。遠位出口管の近位端は、移送部材が閉じた構成にあるときに、遠位方向を向く漏斗内に配置される。遠位出口管の近位端は、移送部材に対する遠位出口管の遠位方向の移動に伴って、移送部材をくさびのような押し込みにより開き、それにより移送部材を閉じた構成から開いた構成に変換するように構成されるものであってもよい。
【0017】
1または複数の実施形態では、第1の直径が、幾何学的特徴部の遠位端の直径以下である。第2の直径は、遠位出口管の近位端の直径よりも大きくてもよい。移送部材は、遠位出口管に予め設定された大きさの力を加えることにより、閉じた構成から開いた構成に変換するように構成され得る。予め設定された大きさの力は、約6lbf~約10lbfの遠位方向に向けられた力とすることができる。
【0018】
1または複数の実施形態では、移送部材がリビングヒンジを含む。移送部材は、細長い側部開口部を含むことができる。遠位ストッパ部材は、貫通部材の近位端を遠位ストッパ部材の中心に向けて案内するように構成された漏斗を含むことができる。移送部材は、半径方向に延びる部材を含むことができ、この半径方向に延びる部材が、漏斗と物理的に干渉して、漏斗に接触したときに、漏斗および遠位ストッパ部材に対する移送部材の近位方向の移動を停止させるように構成されている。貫通部材は、その近位端に幾何学的特徴部を含むことができる。幾何学的特徴部は、遠位ストッパ部材を貫通するように構成され得る。
【0019】
1または複数の実施形態では、遠位出口管が、スプリット開放遠位端を含む。遠位出口管は、近位側開口部および近位端開口部を含むことができる。貫通部材は、近位側開口部と近位端開口部との間の距離よりも長くすることができる。本システムは、遠位出口管に溶接されたリングを含むことができる。リングは、遠位出口管の遠位端が遠位針インターフェースの遠位端に向かって予め設定された距離を超えて延びるのを防止するように構成され得る。
【0020】
1または複数の実施形態では、本システムが、搬送構成、移送構成および混合構成を有し、搬送構成では、貫通部材が完全に遠位薬剤チャンバ内に配置され、移送構成では、貫通部材が遠位ストッパ部材を少なくとも部分的に貫通し、貫通部材および移送部材が、少なくともそれぞれ部分的に近位薬剤チャンバ内に配置され、混合構成では、近位ストッパ部材および遠位ストッパ部材が互いに接触し、それにより近位薬剤チャンバから遠位薬剤チャンバに第1の薬剤成分が移送され、第1の薬剤成分が遠位薬剤チャンバ内の第2の薬剤成分と混合される。流体通路は、本システムが移送構成にあるときに、近位チャンバと遠位チャンバとの間に流体経路を形成することができる。移送部材は、混合構成にあるとき、または注入中に、近位ストッパ部材を完全には貫通しないようにしてもよい。本システムが混合構成に達した後、遠位出口管は、くさびのように押し入って移送部材を開き、遠位ストッパ部材の更なる遠位方向の移動に伴って移送部材内で近位方向にスライドする。
【0021】
1または複数の実施形態では、本システムは、遠位ストッパ部材に予め設定された大きさの力を加えることにより、搬送構成から移送構成に変換するように構成されている。予め設定された力の大きさは、約3~5lbfの遠位方向に向けられた力である。遠位出口管は、その遠位端にある遠位端開口部と、遠位薬剤チャンバ内に配置された近位側開口部とを含むことができる。近位および遠位薬剤チャンバのそれぞれの第1および第2の大きさは、シリンジ本体に対する近位および遠位ストッパ部材の移動によって変更可能である。近位および遠位薬剤チャンバはそれぞれ、患者に注入する前に互いに混合される薬剤の第1および第2の成分を含むことができる。移送部材は、金属またはポリマーから形成することができる。
【0022】
1または複数の実施形態では、移送部材が、ラッチ状態およびラッチ解除状態を有するラッチを含む。ラッチは、ラッチ状態において、移送部材に対する貫通部材および遠位出口管の軸方向の移動を防止し、ラッチが、ラッチ解除状態において、移送部材に対する貫通部材および遠位出口管の軸方向の移動を許容する。ラッチは、プラスチックヒンジを含むことができる。プラスチックヒンジは、開いて、ラッチをラッチ状態からラッチ解除状態に変換することができる。プラスチックヒンジは、ラッチに予め設定された大きさの力を加えることに応答して開くものであってもよい。予め設定された大きさの力は、約6lbf~約10lbfの遠位方向に向けられた力であり得る。ラッチは、予め設定された大きさの力がラッチに加えられるまで移送部材をラッチ状態に保持するための脆弱リンクを含むことができる。予め設定された力の大きさは、約6lbf~約10lbfの遠位方向に向けられた力であり得る。
【0023】
別の実施形態では、シリンジ修正デバイスが、流体移送アセンブリを含む。流体移送アセンブリは、シリンジの遠位ストッパ部材を貫通して、シリンジの近位および遠位薬剤チャンバを流体的に結合するように構成された貫通部材を含む。また、流体移送アセンブリは、シリンジの針の近位端に結合するように構成された遠位出口管も含み、貫通部材の遠位端が遠位出口管内に配置されている。流体移送アセンブリは、貫通部材の一部に少なくとも隣接して配置された移送部材をさらに含み、遠位移送部材は、貫通部材による遠位ストッパ部材の貫通時に遠位薬剤チャンバと近位薬剤チャンバとを流体的に結合するように構成された流体通路を規定する。遠位出口管は、遠位出口管を針の近位端に結合するように構成されたスロットを含むことができる。
【0024】
さらに別の実施形態では、注入システムが、近位端に近位開口部を規定し、遠位端に遠位針インターフェースを規定するシリンジ本体を含む。このシステムは、シリンジ本体内に配置された近位ストッパ部材および遠位ストッパ部材も含み、近位ストッパ部材と遠位ストッパ部材との間に近位薬剤チャンバを形成し、遠位ストッパ部材とシリンジ本体の遠位端との間に遠位薬剤チャンバを形成する。このシステムは、シリンジ本体に対して近位ストッパ部材を挿入するように手動で操作されるように構成されたプランジャ部材をさらに含む。さらに、このシステムは、流体移送アセンブリを含む。さらに、このシステムは、後退防止機構を含むフィンガフランジを備える。後退防止機構は、プランジャ部材に対抗力を与えて、ブレーキタブに対するその近位方向の移動を防止するように構成されたブレーキタブと、後退防止機構をフィンガフランジの凹部に維持するように構成された保持特徴部とを有する。
【0025】
1または複数の実施形態では、フィンガフランジが、フィンガフランジをシリンジ本体のフランジに取り付けるように構成された別の凹部も含む。後退防止機構は、凹部と後退防止機構の寸法との間の公差を小さくするように構成された複数のフィットタブも含むことができる。後退防止機構は、金属クリップであってもよい。
【0026】
1または複数の実施形態では、ブレーキタブが、弾性を有する自己作動する爪である。ブレーキタブは、後退防止機構の平面に対して遠位方向に鋭角に配置することができる。ブレーキタブの鋭角性と弾性は、近位方向への後退時にプランジャ部材に対する摩擦力を増大させることができる。また、ブレーキタブが鋭角であることにより、プランジャ部材の表面に接触するブレーキタブの鋭い湾曲したエッジによって加えられる、プランジャ部材に平行な反力が生じる。この力により、プランジャ部材の近位方向への移動が妨げられる。また、ブレーキタブの鋭角性と弾性により、プランジャ部材が近位方向に後退したときに、ブレーキタブが後退防止機構を介してフィンガフランジの内壁に外向きの力を及ぼすことができる。
【0027】
1または複数の実施形態では、フィンガフランジが、後退防止機構と干渉して後退防止機構を凹部内に保持するように構成されたエッジを有する開口部も含む。後退防止機構は、「C」または「O」の形状を有することができる。後退防止機構は、プランジャ部材がシリンジ本体に挿入された後に、シリンジ本体からのプランジャ部材の取り外しを防止することができる。対抗力は、摩擦力および反力を含むことができる。
【0028】
さらに別の実施形態では、注入システムが、近位端に近位開口部を規定し、遠位端に遠位針インターフェースを規定するシリンジ本体を含む。システムは、シリンジ本体内に配置された近位および遠位ストッパ部材も含み、近位および遠位ストッパ部材の間に近位チャンバを形成し、遠位ストッパ部材とシリンジ本体の遠位端との間に遠位チャンバを形成する。このシステムは、シリンジ本体に対してストッパ部材を挿入するように手動で操作されるように構成されたプランジャ部材をさらに含む。さらに、本システムは、流体移送アセンブリを含む。この流体移送アセンブリは、遠位ストッパ部材を貫通するように構成された貫通管を含む。このアセンブリは、中実の細長い部材も含み、貫通管が、少なくとも部分的に中実の細長い部材の一部の周りに配置されている。このアセンブリは、遠位管をさらに含み、中実の細長い部材の遠位端が、遠位管の近位端に配置されている。貫通管は、貫通管の近位端が遠位ストッパ部材を完全に貫通するのに必要な力を増加させるように構成された真空ストッパのペアを含む。貫通管の近位端が遠位ストッパ部材を完全に貫通した後、貫通管は、近位チャンバと遠位チャンバとの間に流体通路を規定する。
【0029】
1または複数の実施形態では、真空ストッパの各々が、半径方向外向きに遠位方向に延びるタブを含む。また、遠位ストッパ部材に配置された漏斗インサートも含むことができ、この漏斗インサートは、半径方向に延びる部材が漏斗インサートに接触したときに、漏斗インサートおよび遠位ストッパ部材に対する貫通管の近位方向の移動を停止させるために、貫通管の真空ストッパと干渉するように構成されている。漏斗インサートは、貫通管の近位端を遠位ストッパ部材の中心に向けて案内するように構成され得る。
【0030】
1または複数の実施形態では、貫通管がさらに、管状部材と、その遠位端において管状部材の長手方向軸に直交して配置されたディスクとを含む。ディスクは、ディスクを管状部材に接続する複数の半径方向内向きに伸縮するストッパを規定することができる。複数の半径方向内向きに伸縮するストッパは、ディスクのほぼ中央に調節可能な開口部を規定することができる。調節可能な開口部は、中実の細長い部材がディスクおよび貫通管を完全に通過することを防止するように構成された小さな構成と、調節可能な開口部が、中実の細長い部材がディスクおよび貫通管を完全に通過できるように構成された大きな構成とを有することができる。
【0031】
1または複数の実施形態では、遠位管が、その近位端に近位方向を向く肩部を有し、この肩部は、調節可能な開口部が小さな構成にあるときに、複数の半径方向内向きに伸縮するストッパと干渉して、貫通管に対する遠位管の近位方向の移動を防止するように構成されている。小さな構成にある調節可能な開口部の直径は、肩部の外径よりも小さくてもよい。大きな構成にある調節可能な開口部の直径は、肩部の外径よりも大きくてもよい。管状部材をディスクから離れるように近位方向に移動させると、調節可能な開口部が小さな構成から大きな構成へと変化し得る。ディスクを管状部材から離れるように遠位方向に移動させると、調節可能な開口部が小さな構成から大きな構成に変化し得る。
【0032】
1または複数の実施形態では、プランジャ部材から遠位ストッパ部材に流体圧によって提供される貫通管への予め設定された大きさの近位方向に向けられた力の適用によって、調節可能な開口部が小さな構成から大きな構成へと変換される。予め設定された大きさの近位方向に向けられた力は、約7.5lbf~約10lbfであり得る。遠位ストッパ部材を貫通する管状部材は、複数の半径方向内向きに伸縮するストッパに半径方向内向きの力を加えて、調節可能な開口部を小さな構成に保持することができる。
【0033】
1または複数の実施形態では、貫通管が、貫通管に対する中実の細長い部材の遠位方向の動きを制限するように構成された、半径方向内向きに近位方向に延びるタブのペアをさらに含む。中実の細長い部材は、貫通管に対する中実の細長い部材の遠位方向の動きを制限するために、半径方向内向きに近位方向に延びるタブと干渉するように構成された遠位方向を向く肩部を含むことができる。
【0034】
1または複数の実施形態では、貫通管が、近位端開口部、中間開口部および遠位開口部を規定する。貫通管の近位端が遠位ストッパ部材を完全に貫通した後、近位チャンバと遠位チャンバとの間の流体通路は、近位端開口部、中間開口部および遠位開口部を含む。また、システムは、遠位チャンバ内に真空を含むことができる。貫通管は、その近位端に面取りされた角部を含むことができる。
【0035】
1または複数の実施形態では、本システムが、搬送構成、移送構成および混合構成を有し、搬送構成では、貫通管の全体が遠位チャンバおよび遠位ストッパ部材内に配置され、移送構成では、貫通管が遠位ストッパ部材を部分的に貫通し、貫通管の開いた近位端が、近位チャンバ内に配置され、混合構成では、近位ストッパ部材および遠位ストッパ部材が互いに接触し、それにより第1の薬剤成分を近位チャンバから遠位チャンバに移送して、第1の薬剤成分を遠位チャンバ内の第2の薬剤成分と混合する。貫通管は、本システムが移送構成にあるときに、近位チャンバと遠位チャンバとの間に流体経路を形成することができる。貫通管は、遠位ストッパ部材を完全には貫通しないようにしてもよい。本システムが混合構成に達した後、中実の細長い部材は、遠位ストッパ部材の更なる遠位方向の移動により、貫通管から解放されるものであってもよい。本システムは、遠位ストッパ部材に予め設定された大きさの力を加えることにより、搬送構成から移送構成に変換され得る。予め設定された力の大きさが、約7.5lbf~約10lbfの遠位方向に向けられた力であり得る。近位チャンバおよび遠位チャンバは、患者に注入する前に互いに混合される薬剤の第1の成分および第2の成分をそれぞれ含むことができる。
【0036】
本発明の上述した実施形態および他の実施形態は、以下の詳細な説明に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0037】
実施形態の上述した態様および他の態様は、添付図面を参照してさらに詳細に説明されており、それら図面においては、様々な図面中の同じ要素が共通の符号によって示されている。
【0038】
図1図1Aおよび図1Bは、従来の注入シリンジ構成の様々な態様を示している。
図2図2Aおよび図2Bは、従来の注入シリンジ構成の様々な態様を示している。
図3図3は、従来の注入シリンジ構成の様々な態様を示している。
図4図4Aおよび図4Bは、従来の注入シリンジ構成の様々な態様を示している。
図5図5A図5Cは、従来の注入シリンジ構成の様々な態様を示している。
図6図6Aおよび図6Bは、いくつかの実施形態に係る、使用後に遠位針の端部/先端が保護構成に引き込まれるシリンジベースのデュアルチャンバ安全注入システムの様々な態様を示している。
図7図7A図7Pは、いくつかの実施形態に係るシリンジベースのデュアルチャンバ安全注入システムを使用して混合および注入するための方法のステップ中における、同システムの様々な態様を示している。
図8図8は、いくつかの実施形態に係るデュアルチャンバ注入システムを示している。
図9図9は、いくつかの実施形態に係るデュアルチャンバ注入システムを示している。
図10図10は、いくつかの実施形態に係るデュアルチャンバ注入システムで使用するための流体移送アセンブリのコンポーネントを示している。
図11図11は、いくつかの実施形態に係るデュアルチャンバ注入システムで使用するための流体移送アセンブリのコンポーネントの組立てを示している。
図12図12は、いくつかの実施形態に係るデュアルチャンバ注入システムで使用するための流体移送アセンブリのコンポーネントの組立てを示している。
図13図13は、いくつかの実施形態に係るデュアルチャンバ注入システムで使用するための流体移送アセンブリのコンポーネントの組立てを示している。
図14図14は、いくつかの実施形態に係るデュアルチャンバ注入システムで使用するための流体移送アセンブリのコンポーネントの組立てを示している。
図15図15は、いくつかの実施形態に係るデュアルチャンバ注入システムにおける流体移送アセンブリを示している。
図16図16は、いくつかの実施形態に係るデュアルチャンバ注入システムにおける流体移送アセンブリを示している。
図17図17は、いくつかの実施形態に係るデュアルチャンバ注入システムにおける流体移送アセンブリを示している。
図18図18は、いくつかの実施形態に係るデュアルチャンバ注入システムにおける流体移送アセンブリを示している。
図19図19は、いくつかの実施形態に係るデュアルチャンバ注入システムにおける流体移送アセンブリを示している。
図20図20は、いくつかの実施形態に係るデュアルチャンバ注入システムにおける流体移送アセンブリを示している。
図21図21Aは、いくつかの実施形態に係るデュアルチャンバ注入システムにおける流体移送アセンブリを示している。図21B図21Eは、いくつかの実施形態に係るデュアルチャンバ注入システムで使用するための流体移送アセンブリおよびそのコンポーネントを示している。
図22図22は、いくつかの実施形態に係るデュアルチャンバ注入システムで使用するための流体移送アセンブリおよびそのコンポーネントを示している。
図23図23は、いくつかの実施形態に係るデュアルチャンバ注入システムで使用するための流体移送アセンブリおよびそのコンポーネントを示している。
図24図24は、いくつかの実施形態に係るデュアルチャンバ注入システムで使用するための流体移送アセンブリおよびそのコンポーネントを示している。
図25図25は、いくつかの実施形態に係るデュアルチャンバ注入システムで使用するための流体移送アセンブリおよびそのコンポーネントを示している。
図26図26は、いくつかの実施形態に係るデュアルチャンバ注入システムで使用するための流体移送アセンブリおよびそのコンポーネントを示している。
図27図27は、いくつかの実施形態に係るデュアルチャンバ注入システムで使用するための流体移送アセンブリおよびそのコンポーネントを示している。
図28図28は、いくつかの実施形態に係るデュアルチャンバ注入システムで使用するための流体移送アセンブリおよびそのコンポーネントを示している。
図29図29A図29Hは、いくつかの実施形態に係るデュアルチャンバ注入システムで使用するための流体移送アセンブリおよびそのコンポーネントを示している。
図30図30は、デュアルチャンバ注入システム変換キットの一部を形成することができる流体移送アセンブリを示している。
図31図31は、いくつかの実施形態に係るデュアルチャンバ注入システム変換キット、およびシングルチャンバ注入システムをデュアルチャンバ注入システムに変換する際のその使用を示している。
図32図32は、いくつかの実施形態に係るデュアルチャンバ注入システム変換キット、およびシングルチャンバ注入システムをデュアルチャンバ注入システムに変換する際のその使用を示している。
図33図33は、いくつかの実施形態に係るデュアルチャンバ注入システム変換キット、およびシングルチャンバ注入システムをデュアルチャンバ注入システムに変換する際のその使用を示している。
図34図34は、いくつかの実施形態に係るデュアルチャンバ注入システム変換キット、およびシングルチャンバ注入システムをデュアルチャンバ注入システムに変換する際のその使用を示している。
図35図35は、いくつかの実施形態に係るデュアルチャンバ注入システムで使用するための後退防止機構を示している。
図36図36は、いくつかの実施形態に係るデュアルチャンバ注入システムで使用するための後退防止機構を示している。
図37図37は、いくつかの実施形態に係るデュアルチャンバ注入システムで使用するための後退防止機構を示している。
図38図38は、いくつかの実施形態に係るデュアルチャンバ注入システムで使用するための後退防止機構を示している。
図39図39は、いくつかの実施形態に係るデュアルチャンバ注入システムで使用するための後退防止機構を示している。
図40図40は、いくつかの実施形態に係るデュアルチャンバ注入システムで使用するための後退防止機構を示している。
図41図41は、いくつかの実施形態に係るデュアルチャンバ注入システムで使用するための後退防止機構を示している。
図42図42は、いくつかの実施形態に係るデュアルチャンバ注入システムで使用するための後退防止機構を示している。
図43図43は、いくつかの実施形態に係るデュアルチャンバ注入システムで使用するための後退防止機構を示している。
図44図44A図44Fは、いくつかの実施形態に係る安全な針引き込み注入システムで使用するための弾性針ラッチを有する針ハブアセンブリを示している。
図45図45A図45Dは、いくつかの実施形態に係る安全な針引き込み注入システムで使用するためのエラストマー針保持システムを有する針ハブアセンブリを示している。
図46図46A図46Eは、いくつかの実施形態に係る針ハブ取付機構を有する注入システムを示している。
図47図47A図47Hは、いくつかの実施形態に係る針ハブ取付機構を有する注入システムを示している。
図48図48は、いくつかの実施形態に係る流体移送アセンブリおよびそのコンポーネントを含むデュアルチャンバ注入システムを示している。
図49図49は、いくつかの実施形態に係る流体移送アセンブリおよびそのコンポーネントを含むデュアルチャンバ注入システムを示している。
図50図50は、いくつかの実施形態に係る流体移送アセンブリおよびそのコンポーネントを含むデュアルチャンバ注入システムを示している。
図51図51は、いくつかの実施形態に係る流体移送アセンブリおよびそのコンポーネントを含むデュアルチャンバ注入システムを示している。
図52図52は、いくつかの実施形態に係る流体移送アセンブリおよびそのコンポーネントを含むデュアルチャンバ注入システムを示している。
図53図53は、いくつかの実施形態に係る流体移送アセンブリおよびそのコンポーネントを含むデュアルチャンバ注入システムを示している。
図54図54は、いくつかの実施形態に係る流体移送アセンブリおよびそのコンポーネントを含むデュアルチャンバ注入システムを示している。
図55図55は、いくつかの実施形態に係る流体移送アセンブリおよびそのコンポーネントを含むデュアルチャンバ注入システムを示している。
図56図56は、いくつかの実施形態に係る流体移送アセンブリおよびそのコンポーネントを含むデュアルチャンバ注入システムを示している。
図57図57は、いくつかの実施形態に係る流体移送アセンブリおよびそのコンポーネントを含むデュアルチャンバ注入システムを示している。
図58図58は、いくつかの実施形態に係る流体移送アセンブリおよびそのコンポーネントを含むデュアルチャンバ注入システムを示している。
図59図59は、いくつかの実施形態に係る流体移送アセンブリおよびそのコンポーネントを含むデュアルチャンバ注入システムを示している。
図60図60は、いくつかの実施形態に係る流体移送アセンブリおよびそのコンポーネントを含むデュアルチャンバ注入システムを示している。
図61図61は、いくつかの実施形態に係る流体移送アセンブリおよびそのコンポーネントを含むデュアルチャンバ注入システムを示している。
図62図62は、いくつかの実施形態に係る流体移送アセンブリおよびそのコンポーネントを含むデュアルチャンバ注入システムを示している。
図63図63は、いくつかの実施形態に係る流体移送アセンブリおよびそのコンポーネントを含むデュアルチャンバ注入システムを示している。
【0039】
様々な実施形態の上記および他の利点および目的を得る方法をより良く理解するために、添付の図面を参照しながら、実施形態のより詳細な説明を提供する。なお、図面は一定の縮尺で描かれておらず、同様の構造または機能の要素が、全体を通して同様の符号で示されていることに留意されたい。それらの図面は、特定の例示的な実施形態のみを示しており、よって実施形態の範囲を限定するものとみなされるべきではないことを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0040】
例示的なプレフィルドデュアルチャンバ安全注入システム
図6Aおよび図6Bを参照すると、従来の近位および遠位ストッパ部材(32、36)が内部に配置された従来の既製のプレフィルドシリンジ本体(34)を有するプレフィルドデュアルチャンバ安全注入システム(100)の斜視図および縦断面図が示されている。近位および遠位ストッパ部材(32、36)は、シリンジ本体(34)とともに、近位および遠位チャンバ(40、42)を規定する。近位および遠位ストッパ部材(36、37)は、近位チャンバ(40)の近位端および遠位端を閉塞する。遠位ストッパ部材(36)は、遠位チャンバ(42)の近位端を閉塞する。いくつかの実施形態では、近位ストッパ部材(32)の遠位端および遠位ストッパ部材(36)の近位端は、潤滑性ポリマーコーティング(例えば、PTFE)でコーティングすることができ、近位および遠位ストッパ部材(32、36)の第1および第2のポリマーコーティングが、シリンジ本体(34)とともに、近位チャンバ(40)を規定している。潤滑性ポリマーコーティングは、近位および遠位ストッパ部材(32、36)のゴムを第2の液体(254)から隔離する役割を果たす。近位および遠位ストッパ部材(32、36)は、図6Aおよび図6Bに示すように向けることができ、あるいは潤滑性コーティングが遠位チャンバ(42)を向くように遠位ストッパ(36)が反転されて、遠位チャンバ(42)内の第1の液体(252)が保管のために潤滑性コーティングに接触するようにしてもよい。
【0041】
針カップリングアセンブリ(606)は、針カバー部材(63)が保管用に取り付けられた状態で、遠位チャンバ(42)の遠位端に配置されている。デュアルチャンバ安全注入システムは、ユーザが様々な程度でシリンジ本体(34)に対してプランジャアセンブリ(44)を順次挿入することにより、遠位チャンバ(42)からの第1の液体(252)の注入に続いて、近位チャンバからの第2の液体(254)の連続注入を容易にする。プランジャアセンブリ(44)は、近位ストッパ部材(32)、プランジャハウジング部材(69)およびプランジャ操作インターフェース(128)を含む。遠位および近位チャンバ(42、40)内にそれぞれ配置された第1および第2の液体は、水性または油性の薬液などの任意の液体またはゲルであってよい。
【0042】
デュアルチャンバ安全注入システム(100)は、ステイクド針(staked needle)構成を有し、この構成では、ユーザに提供される際に、針スパインアセンブリ(「針」)(76)および針カップリングアセンブリ(606)を含む針アセンブリが、針カバー部材(63)を取り外した後に、注入の準備ができた定位置に取り付けられており、針カバー部材は、その内部表面に、保管中に針遠位端(78)および/または遠位ハウジング部分と接触するエラストマーシール材料を有することができる。代替的には、針カバー部材(63)は、シリンジ本体(34)への汚染の侵入を防ぎながら、液体(252、254)の移動に起因する圧力をシリンジ本体(34)の内部から逃がすことができるベント(図示省略)を含むことができる。ステイクド針は、定位置に取り付けられているように描かれているが、ステイクド針は、ルアースリップまたはルアーロックインターフェース(図示省略)を使用してシリンジ本体(34)に取り外し可能に結合することができ、針部材の近位端(50)は、ルアーインターフェースを通って遠位チャンバ(42)内に延在している。代替的に、針は、シリンジの代わりにカートリッジ本体のフランジに固定的にまたは取り外し可能に取り付けられるものであってもよい。図6Aおよび図6Bに示す実施形態では、安全な針引き込み部材のかなりの部分がプランジャハウジング内に存在する。
【0043】
図7A図7Pを参照すると、多成分薬剤の注入およびシリンジ本体内への針の引き込みを容易にするように設計された構成の様々な態様が例示されており、ここでは、患者に送達される直前に、2以上の薬剤成分が組み合わされて、注入用の組合せまたは溶液が形成される。一態様では、液体の第1の薬剤成分/希釈剤(252)を、注入の直前に、凍結乾燥された薬剤成分などの薬剤の粉末の形態などの実質的に非液体の第2の薬剤成分(254)と組み合わせることができる。図7A図7Pを参照して本明細書に記載の構成は、同じシリンジ本体(34)内の2以上のチャンバが注入溶液の移送、混合および注入のために利用される、デュアルチャンバ構成に関するものである。
【0044】
図7Aおよび図7Bを参照すると、シリンジ本体(34)の内部の2部分の間の遠位ストッパ部材(36)によって、近位および遠位薬剤チャンバ(40、42)が形成されており、遠位薬剤チャンバ(42)が、空気またはガスギャップと、非液体薬剤(254)とを含み、遠位ストッパ部材(36)の反対側にある近位薬剤チャンバ(40)が、液体希釈剤(252)を含み、この液体希釈剤が、近位ストッパ部材(32)によって近位側に閉じ込められている。液体希釈剤(252)は、薬剤の第1の成分であり、非液体薬剤(254)は、薬剤の第2の成分である。
【0045】
図7Cと、図7Dの関連する断面図を参照すると、針カップリングアセンブリの様々なコンポーネント(ここでは、いわゆる「ステイクド」針カップリングアセンブリ(606)が例示されているが、ステイクド構成だけでなくルアーカップリング構成を含む、後述するような他の針アセンブリを利用することができる)。ラグ特徴部(258)は、例えば図7Aに示すように、針カップリングアセンブリ(606)を針カバー部材(63)に結合するのを補助するように構成されている。針シャフトの周りのシール部材(260)として小さなOリングを利用することができ、一方、シリンジ本体(34)/針カップリングアセンブリ(606)のインターフェースでシール部材(262)として大きなOリングを利用することができる。代替的には、小さなOリング(260)と大きなOリング(262)を組み合わせて、Oリングのシール機能の両方を果たす単一のシールにすることができる。また、小さなOリング(260)を使用して、針シャフトの周りとシリンジ本体(34)の両方をシールすることもできる。
【0046】
針は、より遠位側に位置する中間開口部/開口(266)から排出される液体希釈剤の流入を可能にするように構成された複数(例えば4つ)の近位開口部/ポート(270)を含み、ルーメンプラグ(268)は、針ルーメンを閉塞して、図6Nおよび図7Hを参照して上述したような条件下で、近位開口部(270)から中間開口部(266)への流路を形成する。また、針は、中間開口部(266)とはルーメンプラグ(268)の反対側に遠位開口部(264)を含む。遠位開口部(264)は、患者に液体を注入するために、針を介して針遠位端(48)に流体的に結合されている。
【0047】
図7Eを参照すると、近位銛インターフェース(84)が、近位および遠位ストッパ部材(32、36)を連続的に貫通し、プランジャロッド内のカップリング特徴部(針保持特徴部などが、例えば、図7Nおよび図7Pに例示されている(要素712))と結合するように構成されている。図7Fは、近位および遠位ストッパ部材(32、36)の両方を連続的に貫通し、注入が患者に与えられた後に、針部材をプランジャロッド内に少なくとも部分的に引き込むためにプランジャロッド内のカップリング特徴部と結合するように構成されたスパイク式の銛カップリングインターフェース(85)を示している。
【0048】
図7A図7B図7G図7Pは、上述したようなデュアルチャンバ安全注入システムを利用する注入手順の一連の動作を示している。図7Aおよび図7Bを参照すると、注入アセンブリが安定した構成にあり、この構成では、出荷または注入患者ケアシナリオに持ち込むことができ、第1の薬剤成分/液体希釈剤(252)が、第2の非液体薬剤成分(254)から分離され、ともにシリンジ本体内にあり、遠位ストッパ部材(36)の互いに反対側に位置する。
【0049】
図7Gおよび図7Hは、遠位(36)および近位(32)ストッパ部材を一緒にシリンジ本体(34)に対して前進させる、プランジャアセンブリ(44)の初期挿入動作を示している。図7Hを参照すると、針アセンブリの近位端(50)を突き刺して遠位ストッパ部材(36)を横切るのに十分な前進により、シリンジ本体(34)の以前に分離された2つのチャンバ(40、42)間に流体経路が形成され、近位薬剤チャンバ(40)内の液体の第1の薬剤成分(252)が、移送管(46)を介して、近位開口部(270)の少なくとも一つに流入し、より遠位側の中間開口部(266)から出て、遠位薬剤チャンバ(42)内の非液体の第2の薬剤成分(254)に到達するようになっている。
【0050】
図7Iおよび図7Jは、ストッパ部材(36、32)が互いに隣接するまでさらに挿入したときに、液体の第1の薬剤成分/希釈剤(252)が遠位薬剤チャンバ(42)内に移動して、非液体の第2の薬剤成分(254)に合流することを示している。図7Kおよび図7Lは、時間とともに、かつ/または手動での撹拌により、液体の第1の薬剤成分/希釈剤(252)および以前は非液体の第2の薬剤成分(254)が混合されて、混合薬剤溶液(272)が形成されることを示している。
【0051】
いくつかの実施形態では、特に凍結乾燥された非液体の第2の薬剤成分を用いて、混合薬剤溶液(272)が、最小限の撹拌または時間経過で、または撹拌または時間経過なしで、形成することができる。別の実施形態では、特に懸濁液中に保持されている薬剤または乳化された薬剤では、混合を促進するために激しい振とうが必要となる場合がある。激しく振る場合、プランジャ操作インターフェース(128)から親指を離すことができると、ユーザにとって便利である。液体の第1の薬剤成分(252)を近位薬剤チャンバから遠位薬剤チャンバ(40、42)に移送する間に、圧力が遠位薬剤チャンバ(42)に蓄積することがある。この圧力は、近位および遠位ストッパ部材(32、36)に作用してストッパの動きに抵抗する。また、ユーザが親指でプランジャアセンブリ(44)を拘束していない場合、圧力の蓄積によってストッパ部材(32、36)およびプランジャ操作インターフェース(128)が近位方向に移動する可能性もある。プランジャアセンブリ(44)における混合構成ラッチまたは「混合クリック」は、圧力の蓄積によるプランジャ操作インターフェース(128)の動きに抵抗を与えるために利用することができ、薬剤の振とうまたは混合のためにユーザがプランジャ操作インターフェース(128)から親指を離すことを可能にする。また、混合クリックは、液体の第1の薬剤成分(252)の移送が完了したことを可聴式でかつ/または触覚的に示すものであってもよい。また、遠位薬剤チャンバ(42)は、薬剤成分の混合を補助する撹拌デバイスを含むことができる。
【0052】
混合溶液(272)の注入の準備ができたアセンブリでは、図7Mおよび図7Nに示すように、針カバー部材(63)を取り外すことができ、プランジャアセンブリ(44)および関連するストッパ部材(36、32)の押し下げ/挿入により、露出した針遠位端(48)で患者に注入することができる。図7Oおよび図7Pを参照すると、プランジャアセンブリ(44)および関連するストッパ部材(32、36)の完全な押し下げ/挿入により、鋭い針遠位端/先端(48)が、少なくとも部分的に遠位および近位ストッパ部材(36、32)を通って、シリンジ本体(34)、針カップリングアセンブリ(606)、または少なくとも部分的にプランジャアセンブリ(44)内の安全な位置に自動的に後退することができる。
【0053】
デュアルチャンバ安全注入システムのための例示的な流体移送アセンブリ
図8は、いくつかの実施形態に係る多成分注入剤の成分の取り扱い、混合および送達の正確な制御を提供するように構成された流体移送アセンブリを含むデュアルチャンバ注入システム800を示している。図6A図7Bおよび図7G図7Pに示すデュアルチャンバ注入システム100と同様に、デュアルチャンバ注入システム800は、シリンジ本体810と、近位および遠位ストッパ部材812、814と、プランジャ部材816とを含む。プランジャ部材816は、シリンジ本体の近位開口部を介して、シリンジ本体810の内部818に挿入される。また、シリンジ本体810は、その遠位端に遠位針インターフェース820も含む。図6A図7Bおよび図7G図7Pに示すデュアルチャンバ注入システム100は、ステイクド針を有するが、シリンジ本体810は、ルアーロックタイプの遠位針インターフェース820を有する。遠位針インターフェース820は、ルアーロックに限定されるものではなく、他のタイプの針/チューブインターフェースであってもよい。近位および遠位ストッパ部材812、814は、シリンジ本体810とともに、近位薬剤チャンバ822を規定する。遠位ストッパ部材814およびシリンジ本体810は、遠位薬剤チャンバ824を規定する。プランジャ部材816は、近位ストッパ部材812をシリンジ本体810に対して挿入するために、手動で操作することができる。非圧縮性流体が近位薬剤チャンバ822内に配置されている場合、近位ストッパ部材812を挿入すると、遠位ストッパ部材814もシリンジ本体810に対して挿入される。
【0054】
図6A図7Bおよび図7G図7Pに示すデュアルチャンバ注入システム100は、流体の移送および送達のための様々な開口部を持つ針を有するが(図7C図7Fを参照)、デュアルチャンバ注入システム800は、流体の移送および送達のための流体移送アセンブリ830を含む。
【0055】
図9に示すように、いくつかの実施形態に係る流体移送アセンブリ830は、貫通部材840と、遠位出口管850と、移送部材860とを含む。貫通部材840は、部分的に遠位出口管850内に配置され、部分的に移送部材860内に配置されている。遠位出口管850は、概して、デュアルチャンバ注入システム800の使用中に遠位出口管850の遠位方向の移動を防止するためにその上に溶接されたジャムリング852を含む細長い管状部材である。遠位出口管上のジャムリング852の位置は、遠位出口管の遠位端とシリンジ本体810の遠位端との間にシールクリアランス853を残すように構成されている。シールクリアランス853は、保管および搬送中にシリンジキャップが漏れるのを防ぐ。
【0056】
図10は、いくつかの実施形態に従って明確にするために、上にある移送部材860を省略して、遠位出口管850に挿入された貫通部材840を示している。貫通部材840と遠位出口管850との間の接合部842は、意図しない流体の流れを防止する水密シール842を形成するように溶接されている。貫通部材840は、概して、その近位端に幾何学的特徴部844を含む細長い中実部材である。図10に示す幾何学的特徴部844は、遠位ストッパ部材814を貫通するように構成された三次元矢じり形状を有する。幾何学的特徴部844を除いた貫通部材840の外径は、実質的に一貫しており、遠位出口管850の内部にぴったりと収まるように構成されている。すなわち、貫通部材840の外径は、遠位出口管850の内径よりも僅かに小さい。
【0057】
幾何学的特徴部844の遠位端は、貫通部材840の外径よりも大きい外径寸法/直径を有する。また、遠位出口管850の近位端も、貫通部材840の外径よりも大きい外径寸法/直径を有する。このため、幾何学的特徴部844の遠位端および遠位出口管850の近位端は、貫通部材840の環状に凹んだ部分848を取り囲む近位および遠位肩部846、854を形成する。環状に凹んだ部分848は、移送部材を閉じた構成(後述)で保持するためのサイズおよび形状を有する。
【0058】
貫通部材840は、近位開口部/接合部/水密シール842と、ジャムリング852の近傍で遠位出口管850の側壁に形成された側部開口部856との間で、遠位出口管850の内部を実質的に満たすのに十分な長さを有する。図10に示す実施形態では、貫通部材840の遠位端が、側部開口部856に隣接するその近傍にあるポイントXまで延びている。近位開口部842と側部開口部856の間で遠位出口管850の内部を満たすのに加えて、貫通部材840は、環状に凹んだ部分848を形成するのに十分な追加の長さを有する。
【0059】
遠位出口管は、スプリット端858を有する遠位開口部を含み、側部開口部856と遠位開口部858との間は中空となっている。側部開口部856と遠位開口部858との間の遠位管は、流体が遠位薬剤チャンバから出て、遠位開口部858から出ることができる流路Yを形成する。遠位開口部858におけるスプリット端は、遠位出口管850を、デュアルチャンバ注入システム800からの遠位出口を形成する管状部材に結合するように構成されている。例示的な管状部材には、針およびチューブが含まれるが、それらに限定されるものではなく、それらの両方がルアーコネクタに取り付けられるものであってもよい。
【0060】
図11図14は、いくつかの実施形態に係る、貫通部材840の環状に凹んだ部分848に取り付けられる移送部材860を示している。図11は、取り付けられる前の移送部材860を示している。移送部材860は、金属シートから切り取られたものであってもよい。移送部材860は、2つのプラスチック/リビングヒンジ862と、閉じた構成と開いた構成(後述)との間での移送部材860の変換を容易にするようなサイズおよび形状の長手方向の開口部864とを含む。プラスチック/リビングヒンジ862および長手方向の開口部864は、貫通部材840に対する移送部材860の保持力を調節するように変更することができる。また、移送部材860は、その遠位端に漏斗866も含む。移送部材860は、2つの半径方向に延びる部材868をさらに含み、各々が、遠位ストッパ部材814と干渉して移送部材860に対する遠位ストッパ部材814の遠位方向の移動を阻止するように構成された翼の形状をしている。
【0061】
図12は、流体移送アセンブリ830が組み立てられる前の、貫通部材840(これは、遠位出口部材850に既に結合されている)および移送部材860の相対的な位置を示している。移送部材860は、貫通部材840の環状に凹んだ部分848と位置合わせされている。
【0062】
図13は、移送部材860が貫通部材840の環状に凹んだ部分848の上に配置されるように、貫通部材840および移送部材860を互いの方向に動かしている様子を示している。
【0063】
図14は、貫通部材840の環状に凹んだ部分848の周りに移送部材860を圧着している様子を示している。圧着は、手動または機械/ロボットで行うことができる。移送部材860を圧着することにより、移送部材860が貫通部材840の環状に凹んだ部分848に着座される。着座されると、移送部材860は、その閉じた構成になる。閉じた構成では、近位肩部846が、移送部材860の近位端と干渉して、移送部材860に対する貫通部材840の遠位方向の移動を防止する。さらに、閉じた構成では、遠位肩部854が、移送部材860の遠位端で漏斗866と干渉して、移送部材860に対する貫通部材840の近位方向の移動を防止する。
【0064】
移送部材860が図14に示す閉じた構成にあり、貫通部材840の環状に凹んだ部分848に着座した状態において、流体移送アセンブリ830は、デュアルチャンバ注入システム800の他のコンポーネントと組み立てることができる。
【0065】
図15は、いくつかの実施形態に係るデュアルチャンバ注入システム800の選択されたコンポーネントの分解図を示している。組み立てられた流体移送アセンブリ830は、ジャムリング852がシリンジ本体810の遠位端と干渉してシリンジ本体810に対する流体移送アセンブリ830の更なる遠位方向の移動を防ぐまで、シリンジ本体810の近位開口部を介して挿入される。遠位ストッパ部材814は、貫通部材840の近位端の幾何学的特徴部844を遠位ストッパ部材814の中心に向けるように構成されたガイド/漏斗813を含む。その後、ガイド/漏斗813を含む遠位ストッパ部材814は、貫通部材840の近位端にある幾何学的特徴部844が遠位ストッパ部材814の中心に隣接するガイド/漏斗813の中心に当接するまで、シリンジ本体810の近位開口部を介して挿入される。遠位ストッパ部材814を挿入すると、遠位薬剤チャンバ824が規定される。次に、近位ストッパ部材812がシリンジ本体810の近位開口部から挿入され、それにより近位薬剤チャンバ824が規定される(図8を参照)。その後、プランジャ部材816が、シリンジ本体810の近位開口部を介して挿入され、(例えば、プランジャ部材816を近位ストッパ部材812にねじ込むことによって;図8を参照)近位ストッパ部材812に結合される。
【0066】
図16は、いくつかの実施形態に係る搬送/出荷時の構成にあるデュアルチャンバ注入システム800を示している。搬送/出荷時の構成では、貫通部材840の幾何学的特徴部844の近位端が、ガイド/漏斗813および遠位ストッパ部材814のそれぞれの中心に留まっている。幾何学的特徴部844の近位端は、遠位ストッパ部材814の内面上にあり、遠位ストッパ部材814に加えられる遠位方向に向けられる力に応答して、遠位ストッパ部材814を貫通する準備ができている。搬送/出荷時の構成では、近位および遠位薬剤チャンバ822、824が、互いに隔離されており、その中に含まれる任意の薬剤成分も互いに隔離されている。さらに、近位薬剤チャンバ822に含まれる任意の薬剤成分は、シリンジ本体810のガラス側面、近位および遠位ストッパ部材812、814にのみ露出され、これにより、近位薬剤チャンバ822内の金属に反応する薬剤成分の搬送が容易となる。
【0067】
図17は、いくつかの実施形態に係る移送構成にあるデュアルチャンバ注入システム800を示している。移送構成では、幾何学的特徴部844が、遠位ストッパ部材814に加えられた遠位方向に向けられた力(例えば、もともとはプランジャ部材816、近位ストッパ部材812および近位薬剤チャンバ822内の非圧縮性流体を介して加えられた力)に応答して、遠位ストッパ部材814を貫通している。遠位ストッパ部材814を貫通して幾何学的特徴部844を駆動するために必要な遠位方向に向けられる力の大きさは、約3lbf~約5lbfであり得る。移送構成では、移送部材860の近位端が、近位薬剤チャンバ822内に配置されている。移送部材860は、貫通部材840の環状に凹んだ部分848(図10および図14を参照)の上に流体通路(例えば、トレンチ)861を規定する。移送構成では、流体通路861が、近位および遠位の薬剤チャンバ822、824の間の流体流路である。このため、プランジャ部材816およびそれに結合された近位ストッパ部材812の遠位方向の移動により提供され得る近位薬剤チャンバ822内の増加した圧力によって、流体は、近位薬剤チャンバ822から遠位薬剤チャンバ824に移送される。移送部材860は、流体通路861を通る液体の流れに対する抵抗を低減するように構成された面取りされた角部およびその近位端も含む。
【0068】
移送構成において、ユーザは、プランジャ部材816に対して遠位方向に向けられた力を加えて、近位薬剤チャンバ822内の液体薬剤成分を遠位薬剤チャンバ824に移送し、その中の粉末薬剤成分を可溶化することができる。液体薬剤成分は、流体移送アセンブリ830の移送部材860により遠位ストッパ部材814に形成された流体通路861を介して移送される。
【0069】
図18は、いくつかの実施形態に係る、幾何学的特徴部844に導かれた流体移送アセンブリ830が遠位ストッパ部材814(図17を参照)を完全に貫通する間に、移送部材860に作用する力を示している。遠位ストッパ部材814を介した流体移送アセンブリ830の挿入中、遠位ストッパ部材の材料の摩擦は、遠位方向に向けられた力F1を移送部材860に及ぼす。しかしながら、遠位方向に向けられた力F1は、移送部材860の遠位端の漏斗866と遠位肩部854との間の干渉によって発生する反力F2によって打ち消される。力F1およびF2の釣り合いにより、流体移送アセンブリ830が遠位ストッパ部材814を貫通する際に、移送部材860が貫通部材840の環状に凹んだ部分848(図10および図14を参照)内に留まる。遠位ストッパ部材814および幾何学的特徴部844は、流体移送アセンブリ830が遠位ストッパ部材814を貫通するのに必要な遠位ストッパ部材814が幾何学的特徴部844に及ぼす力の大きさが、約3lbf~約5lbfとなるように構成されている。
【0070】
図19は、いくつかの実施形態に係るデュアルチャンバ注入システム800が混合構成に達した後のデュアルチャンバ注入システム800を示している。混合構成では、近位および遠位ストッパ部材812、814が互いに接触するように近位ストッパ部材812が遠位方向に進み、それにより近位薬剤チャンバ822が実質的に潰れている。混合構成では、近位薬剤チャンバ822内の任意の液体薬剤成分が、移送部材860により遠位ストッパ部材814に形成された流体通路861を通って、遠位薬剤チャンバ824に移送されている。その時点で、遠位薬剤チャンバ824内の薬剤成分を混合するために、(例えば、反転させることによって)デュアルチャンバ注入システム800を撹拌することができる。薬剤成分を混合した後、多成分注入剤は送達/注入の準備ができている。
【0071】
デュアルチャンバ注入システム800が混合構成に達した後、プランジャ部材816に遠位方向に向けられた力をさらに加えることで、近位および遠位ストッパ部材812、814が貫通部材840に対して遠位方向に押される(図18を参照)。最初に、遠位方向に向けられた力は、近位および遠位ストッパ部材812、814を移送部材860に対して遠位方向に移動させる。しかしながら、移送部材860に対する遠位ストッパ部材814の遠位方向の移動に伴い、半径方向に延びる部材/ウィング868がガイド/漏斗813の内面に当接し、それにより、移送部材860に対する遠位ストッパ部材814(図19および図20を参照)の遠位方向の更なる移動が阻止される。半径方向に延びる部材/ウィング868とガイド/漏斗813との間の干渉により、ガイド/漏斗813によって移送部材860に追加の力を加えることができる。この追加の力(すなわち、約6lbf~約10lbf)は、移送部材860を閉じた構成(図18を参照)から図20に示す開いた構成へと変換するのに十分である。遠位方向に向けられた力の大きさが約6lbf~約10lbfに達すると、遠位出口管850の近位端によって形成された遠位肩部854が、移送部材860の遠位端の漏斗866に対してくさびのように押し入り、それにより管状の移送部材860が開かれる。移送部材860がくさびのような押し込みにより開くと、その閉じた構成からその開いた構成へと変化する。
【0072】
移送部材860が開いた構成では、遠位出口管850およびそれに結合された貫通部材840が、近位および遠位ストッパ部材812、814に対して近位方向に移動することができる。そのような遠位方向の移動により、貫通部材840は、近位ストッパ部材812を貫通する。移送部材860は、遠位ストッパ部材814のみを貫通し、近位ストッパ部材812を貫通しないため、プランジャ部材816への流体漏れ経路は存在しない。近位ストッパ部材812は、貫通部材840および遠位出口管850が近位ストッパ部材812を貫通する際に、それらの周りをシールすることになる。
【0073】
図20は、いくつかの実施形態に係るデュアルチャンバ注入システム800が混合構成に達して、移送部材860が開いた構成に達した後の、流体移送アセンブリ830および遠位ストッパ部材(明確にするために図示せず)内のガイド/漏斗813の相対的な位置を示している。移送部材860の半径方向に延びる部材/ウィング868は、ガイド/漏斗813と干渉して、移送部材860に対するガイド/漏斗813および遠位ストッパ部材814の遠位方向の移動を防止する。
【0074】
図21Aは、いくつかの実施形態に係る、移送部材860が開いた構成にある流体移送アセンブリ830を示している。ガイド/漏斗813および遠位ストッパ部材は、明確にするために省略されている。デュアルチャンバ注入システム800は、混合された多成分注入剤の一部をデュアルチャンバ注入システム800から排出することによって、混合構成を超えて移動している。上述したように、遠位出口管850の近位端により形成された遠位肩部868は、移送部材860の遠位端の漏斗866からくさびのように押し入り、移送部材860を開いた構成にする。移送部材860が開いた構成にある状態では、移送部材860が、遠位出口管850に対して近位方向に移動することができる。
【0075】
図21B図21Eは、いくつかの実施形態に係る流体移送アセンブリ2130(図21Eを参照)を示している。流体移送アセンブリ2130は、貫通部材2140と、遠位出口管2150と、移送部材2160とを含む。貫通部材2140および遠位出口管2150は、図7図21Aに示す上述した貫通部材840および遠位出口管850に類似している。一つの違いは、図21Eの貫通部材2140が、図7図21Aに示す貫通部材840よりも短いことである。貫通部材の長さが短いのは、後述する移送部材2160を収容するためである。
【0076】
図21B図21Dは、移送部材2160を上面図、側面図および斜視図で示している。図21B図21Dの移送部材2160は、図11の移送部材860と同様である。例えば、移送部材2160は、プラスチックヒンジ2162と、長手方向の開口部2164と、半径方向に延びる部材/ウィング2168のペアとを有する。移送部材2160のこれらのコンポーネントは、上述した移送部材860における対応するコンポーネントとほぼ同じである。移送部材2160、860の間の1つの相違点は、図21B図21Dに示す移送部材2160が、図11に示す移送部材860の遠位端にある漏斗/ガイド866のような漏斗/ガイドをその遠位端に有していないことである。別の相違点は、図21B図21Dに示す移送部材2160が、遠位出口管2150の近位端に形成された遠位肩部2154と干渉するように構成されたデテント2166のペアをその近位端に有することである(図21Eを参照)。
【0077】
デテント2166は、移送部材2160が図21A図21Eに示す閉じた構成にあるときに、移送部材2160に対する遠位出口管2150およびそれに結合された貫通部材2140の近位方向の移動を阻止するように構成されている。移送部材2160は、予め設定された大きさの遠位方向に向けられた力(例えば、約6lbf~約10lbf)が移送部材2160に加えられるまで、その閉じた構成に留まるように構成されている。いくつかの実施形態では、予め設定された大きさの遠位方向に向けられた力が移送部材2160に加えられると、遠位肩部2154が、デテント2162を越えて押し、それにより移送部材2160をこじ開けて、開いた構成に変換することができる。移送部材2160がその開いた構成にある状態で、遠位出口管2150およびそれに結合された貫通部材2140は、移送部材2160に対して遠位方向に自由に動くことができる。
【0078】
図17に示す移送構成を参照して上述したように、遠位ストッパ部材814を貫通して幾何学的特徴部844を駆動するために必要な力の大きさは、約3lbf~約5lbfであり得る。デュアルチャンバ注入システム800が移送構成になった後、追加の力により流体が近位チャンバ822から遠位チャンバ824に押し出される(図17を参照)。流体の大部分が近位チャンバ822から遠位チャンバ824に移送された後、デュアルチャンバ注入システム800は、混合構成にある。図19および図20に示すように遠位方向に向けられた力をさらに加えると、プランジャ部材816に加えられた遠位方向に向けられた追加の力により、半径方向に延びる部材/ウィング868が遠位ストッパ部材814のガイド/漏斗813の内面に突き当たるまで、遠位ストッパ部材814が移送部材860に対して遠位方向に移動する。この時点で、部材/ウィング868とガイド/漏斗813との間の干渉により、遠位出口管850、2150の近位端によって形成された遠位肩部854、2154に、より大きな力(例えば、約6lbf~約10lbf)を加えることができ、これにより、移送部材860、2160にくさびのように押し入り、それぞれの開いた構成とすることができる。このため、図8図21Eに示す流体移送アセンブリ830、2130は、遠位ストッパ部材814の貫通を容易にして、より小さい(例えば、約3lbf~約5lbf)力を加えることで、デュアルチャンバ注入システム800を、図16に示す搬送構成から図17に示す移送構成に変換することができる。また、流体移送アセンブリ830は、デュアルチャンバ注入システム800が図17に示す移送構成にある間に、近位薬剤チャンバ822から遠位薬剤チャンバ824に流体を容易に移送することもできる。流体移送アセンブリ830は、移送部材860をその閉じた構成からその開いた構成に変換するためのより大きな(例えば、約6lbf~約10lbf)力を加えることにより、移送部材860をくさびのような押し込みにより容易に開くことができる。
【0079】
従って、流体移送アセンブリ830は、近位薬剤チャンバ822から遠位薬剤チャンバ824への流体の移送中、その流体と遠位薬剤チャンバ824内の第2の薬剤成分との混合中、並びに、デュアルチャンバ注入システム800からの混合した多成分注入剤の排出中に、容易に制御を向上させることができる。図8図21Eに示す上述した流体移送アセンブリ830、2130は、ストッパ部材、シリンジ本体、カートリッジ本体およびルアーコネクタなどの既製のコンポーネントとともに使用することができる。また、流体移送は、プランジャ部材や針ハブなどの安全針引き込み部材とともに使用することができる。
【0080】
力の具体的な大きさを述べたが、遠位ストッパ部材814を貫通するために、近位薬剤チャンバ822から遠位薬剤チャンバ824に流体を移送するために、かつ混合多成分注入剤を排出するために、必要な力の大きさを変化させるように、流体移送アセンブリ830に変更を加えることができる。デュアルチャンバ注入システム800の様々な機能を達成するために必要な力の大きさを変化させることにより、システム800の制御が向上する。
【0081】
ポリマー移送部材を有するデュアルチャンバ安全注入システムのための例示的な流体移送アセンブリ
図22は、いくつかの実施形態に係るデュアルチャンバ注入システムで使用するための流体移送アセンブリ2230および遠位ストッパ部材814を示している。デュアルチャンバ注入システムの他のコンポーネントは、図8に示す上述したデュアルチャンバ注入システム800におけるものと同一であってもよい。それらの他のコンポーネントは、ストッパ部材、シリンジ本体、カートリッジ本体およびルアーコネクタなどの既製のコンポーネントであってもよい。また、他のコンポーネントは、プランジャ部材や針ハブなどの安全針引き込みコンポーネントであってもよい。
【0082】
図22に示す流体移送アセンブリ2230は、貫通部材840および遠位出口管850を含む。これらのコンポーネントはともに、図8図21Eに示す上述したものと同一である。流体移送アセンブリ2230と上述した流体移送アセンブリ830との違いは、移送部材2260である。金属のシートから形成されている上述の移送部材860とは異なり、移送部材2260は、ポリマーから形成されている。いくつかの実施形態では、移送部材2260がポリマーから成形される。
【0083】
流体移送アセンブリ2230、遠位ストッパ部材814およびガイド/漏斗813は、図22の搬送構成にある。その構成では、幾何学的特徴部844が、ガイド/漏斗813および遠位ストッパ部材814のそれぞれの中心に配置されている。
【0084】
図23は、いくつかの実施形態に係る、移送構成にある流体移送アセンブリ2230および遠位ストッパ部材814を示している。流体移送アセンブリ830に関して上述したように、流体移送アセンブリ2230および遠位ストッパ部材814は、遠位ストッパ部材814に加えられる予め設定された大きさの遠位方向に向けられる力(例えば、約3lbf~約5lbf)によって、幾何学的特徴部844が遠位ストッパ部材814を貫通するように構成されている。移送構成では、貫通部材840および移送部材2260も遠位ストッパ部材814を貫通する。移送部材2260の長手方向断面の凹部は、遠位ストッパ部材814を通る流体通路(例えば、トレンチ)2261を形成する。上述したように、デュアルチャンバ注入システムが移送構成になった後、遠位方向に向けられた力が継続的に加えられることにより、近位チャンバから遠位チャンバ(図示せず)に流体が押し込まれる。
【0085】
図24は、いくつかの実施形態に係るデュアルチャンバ注入システムが混合構成に達した後の流体移送アセンブリ2230および遠位ストッパ部材814を示している。移送部材2260は、ラッチ2262のペアを含み、これらラッチ2262は、閉じた状態にバイアスされているときに、遠位出口管850がラッチ2262を越えて近位方向に移動するのを阻止する(図22および図23を参照)。ラッチ2262は、ガイド/漏斗813の表面に当接したときに作動し、遠位出口管850の近位端から作用を受ける。ラッチ2262を作動させると、図24に示すように、ラッチ2260が開いた状態に変形し、それにより遠位出口管850がラッチ2262を越えて近位方向に移動することが可能になる。ラッチ2262は、ラッチ2262を作動させるのに十分な遠位ストッパ部材814に加えられる力の大きさが約6lbf~約10lbfとなるように構成されている。移送部材2260は、遠位出口管850の近位端が移送部材2260を通過する際に、より滑らかな移行を提供する(すなわち、力/抵抗の変動を最小限に抑える)ために、漏斗2263も含む。
【0086】
図25図27は、いくつかの実施形態に係る流体移送アセンブリ2230の近位端を示している。移送部材2260およびそのラッチ2262は、図25および図26に示されている。ラッチは、貫通部材840が遠位ストッパ部材を貫通する大きさの力(例えば、約3lbf~約5lbf)が加えられたときに、そのバイアスされた閉じた状態に留まるように構成されている。これにより、ラッチ2262を作動させるのに十分な力(例えば、約6lbf~約10lbf)が加えられるまで、移送部材2260からの遠位出口管850および貫通部材840の早過ぎる解放が防止される。このため、図22図27に示す流体移送アセンブリ2230のラッチ2262は、上述したような多成分注入剤送達における遠位ストッパ貫通ステップ、流体移送ステップおよび流体排出ステップを制御する機構を提供する。
【0087】
図28は、いくつかの実施形態に係るデュアルチャンバ注入システムで使用するための流体移送アセンブリ2830を示している。この流体移送アセンブリ2830は、図22図27に示す流体移送アセンブリ2230と同様である。流体移送アセンブリ2230、2830の違いは、移送部材2260、2860のラッチ機構の設計にある。ラッチ2862に加えて、図28に示す移送部材2860は、脆弱リンク2864(図29Aを参照)のペアも含む。脆弱リンク2864は、十分な力(例えば、約6lbf~約10lbf)が遠位ストッパ部材に加えられるまで、ラッチ2862がその開いた状態に変形するのを防止する。この追加の機構は、上述したような多成分注入剤送達における遠位ストッパ貫通ステップ、流体移送ステップおよび流体排出ステップに対する別の制御を提供する。
【0088】
図29B図29Dは、いくつかの実施形態に係る流体移送アセンブリとともに使用するための移送部材2960を示している。移送部材2960は、図29Aに示す移送部材2860と非常によく似ている。例えば、図29B図29Dに示す移送部材2960は、ラッチ機構を形成するラッチ2962のペアも有する。移送部材2860、2960の違いは、図29B図29Dに示す移送部材2960が脆弱リンク2964を1つのみを有することである。脆弱リンク2964は、十分な力(例えば、約6lbf~約10lbf)が遠位ストッパ部材に加えられるまで、ラッチ2962がその開いた状態に変形するのを防ぐ。この単一の脆弱リンク2964の設計は、上述したような多成分注入剤送達における遠位ストッパの貫通ステップ、流体移送ステップおよび流体排出ステップに対する制御を向上させるための別の設計オプションを提供する。
【0089】
図29E図29Hは、遠位端、近位端および脆弱リンク2964’を含む移送部材2960’を示している。移送部材は、移送部材2960’の内面によって規定され、流体の流れを促進するために移送部材2960’を通って延びる内部流路2966を有する。移送部材2960’は、単一の流路または複数の流路で構成することができる。図29E図29Hに示す移送部材2960’には、4つの流路が存在する。内部流路2966は、移送部材2960’の近位端から遠位端まで延びている。代替的には、内部流路2966は、移送部材2960’の長さの一部にわたって延びるものであってもよい。移送部材2960’の近位端は、切れ目のない完全なリングを形成することにより、貫通部材(2968;図29Gを参照)の近位端を周方向に取り囲むように構成されている。移送部材2960’の近位端の周方向の性質は、移送部材2960’の半径方向の剛性を高め、移送部材2960’の近位端がストッパ部材のゴム材料を貫通する際に発生する圧潰力に抵抗する。移送部材2960’は、COC、COP、ポリプロピレンまたは他の医療グレードのポリマーなどのポリマーで構成することができる。移送部材2960’の貫通部材2968への取り付けは、移送部材2960’を貫通部材2968の近位端上にスライドさせることによって達成することができる。移送部材2960’の近位端は、弾性的に拡張して、貫通部材2968の近位端が移送部材2960’の近位端開口部を通過することを可能にするように構成されている。貫通部材2968の近位端が移送部材2960’の近位端の近辺を通過した後、移送部材2960’の近位端開口部は、より小さい直径に弾性的にすぐに元に戻って、移送部材2960’が貫通部材2968から外れるのを防止する。流体の移送が完了すると、ユーザはプランジャ部材に遠位方向に向けられた力を加え、それにより脆弱リンク2964’に打ち勝ち/破壊し、貫通部材2968が移送部材2960’に対して長手方向に移動するのを許容する。
【0090】
例示的なデュアルチャンバ安全注入システム変換キット
図30は、デュアルチャンバ注入システム変換キット3000(図31図34を参照)の一部を形成することができる、流体移送アセンブリ3002を示している。流体移送アセンブリ3000は、後述するように、シングルチャンバ注入システムをデュアルチャンバ注入システムに変換するために、図31に示すような既製のシリンジとともに使用することができる。流体移送アセンブリ3002は、貫通部材840、移送部材2260および遠位出口部材3050を含み、これらは、上述した対応するコンポーネントと同様である。遠位出口部材3050におけるラッチ3051は、流体移送アセンブリ3002を針の近位端に結合することを可能にする。遠位出口部材3050のスプリット遠位端3058は、流体移送アセンブリ3002が様々な出口様式(例えば、針、ルアーコネクタ、チューブ)に結合することを可能にする。
【0091】
図31図34は、デュアルチャンバ注入システム変換キット3000を用いてシングルチャンバ注入システムを変換する方法を示している。図31に示すステップでは、流体移送アセンブリ3002が、既製のシリンジ本体3010の近位開口部から挿入される。流体移送アセンブリ3002の遠位出口管3050は、針ハブアセンブリ3070の針3072の近位端上に外篏され、それにより流体移送アセンブリ3002が針3072および針ハブアセンブリ3070に結合される。
【0092】
図32は、流体移送アセンブリ3002を針ハブアセンブリ3070に結合させた様子を示している。
【0093】
図33は、多成分注入剤の乾燥/凍結乾燥成分3015を、近位開口部を介してシリンジ本体3010の中に加える様子を示している。その後、貫通部材840(図30を参照)の近位端が遠位ストッパ部材3014の中央に配置されるまで、既製の遠位ストッパ部材3014がシリンジ本体3010の近位開口部を介して挿入される。遠位ストッパ部材3014をシリンジ本体3010内に配置することで、乾燥/凍結乾燥成分3015が配置された遠位薬剤チャンバ3024が形成される。
【0094】
図34は、多成分注入剤の液体/希釈剤成分3017を、近位開口部を介してシリンジ本体3010の中に加える様子を示している。その後、既製の近位ストッパ部材3012が、液体/希釈剤成分3017の上に、シリンジ本体の近位開口部を介して挿入される。近位ストッパ部材3012をシリンジ本体3010内に配置することで、液体/希釈剤成分3017が配置された近位薬剤チャンバ3022が形成される。次に、フィンガフランジ3080およびプランジャ部材3016が、現在のデュアルチャンバ注入システムに追加される。針ハブアセンブリ3070およびプランジャ部材3016は、プランジャ部材および針ハブなどの安全針引き込みコンポーネントを含むことができる。
【0095】
流体移送アセンブリ3002は、上述した対応するコンポーネントと同様の貫通部材840、移送部材2260および遠位出口部材3050を含むものとして説明してきたが、デュアルチャンバ安全注入システム変換キットにおける流体移送アセンブリは、上述した移送部材860および/または遠位出口部材850などの様々な同等のコンポーネントを含むことができる。
【0096】
後退防止機能を有する例示的なフィンガフランジ
マルチチャンバ多成分混合注入システムは、第1のチャンバ内に別のチャンバの1つからの流体が押し込まれると、第1のチャンバ内に圧力が蓄積される可能性がある。第1のチャンバ内の圧力は、プランジャ部材を後方/近位方向に押し、それによりマルチチャンバ多成分混合注入システムの機能を妨げる可能性がある。
【0097】
図35図43は、本明細書に記載のデュアルチャンバ注入システムへの一方向ラチェットの追加を示している。一方向ラチェットは、最小の抵抗力でプランジャ部材を遠位方向に移動させることを可能にするとともに、プランジャ部材の外面にラチェット歯が係合することによって、プランジャ部材が近位方向に移動するのを防止することができる。多成分注入調合剤の混合段階では、液体が移送される際に空気圧が遠位チャンバに蓄積される。この圧力が蓄積されることで、親指に近位方向の反力が発生する。歯のないラチェットを追加すると、この反力が打ち消され、プランジャ部材が近位方向に移動するのを防ぐことができる。歯のないラチェットが係合した状態では、ユーザはプランジャ部材の位置を維持するために遠位方向の力を継続的に加える必要がない。プランジャ部材の外面が滑らかであり、かつラチェットアームがプランジャ部材に食い込むように構成されている場合には、ラチェットは、歯のないものであってもよい。この場合、プランジャ部材の位置が無限小の増分で維持される。代替的には、ラチェットは、プランジャ部材の外面に設けられた環状の溝またはねじ山と係合して、漸増の位置停止を提供することができる。環状溝は、ラチェットが係合していることをユーザに示す触覚的および/または聴覚的なクリックまたはフィードバックを提供することができる。
【0098】
図35は、いくつかの実施形態に係る後退防止特徴部3590を有するフィンガフランジ3580を備えたデュアルチャンバ注入システム3500を示している。後退防止特徴部3590は、シリンジ本体3510に対するプランジャ部材3516の近位方向の移動を防止する一方で、遠位方向の移動を可能にする。シリンジ本体3510、プランジャ部材3516、フィンガフランジ3580および後退防止特徴部3590に加えて、デュアルチャンバ注入システム3500は、近位および遠位ストッパ部材3512、3514および針ハブアセンブリ3570も含む。プランジャ部材3516は、シリンジ本体の近位開口部を介して、シリンジ本体3510の内部3518に挿入される。近位および遠位ストッパ部材3512、3514は、シリンジ本体3510とともに、近位薬剤チャンバ3522を規定する。遠位ストッパ部材3514およびシリンジ本体3510は、遠位薬剤チャンバ3524を規定する。プランジャ部材3516を手動で操作して、シリンジ本体3510に対して近位ストッパ部材3512を挿入することができる。非圧縮性流体が近位薬剤チャンバ3522に配置されている場合、近位ストッパ部材3512を挿入すると、遠位ストッパ部材3514もシリンジ本体3510に対して挿入される。
【0099】
図36図39は、フィンガフランジ3580を示しており、このフィンガフランジは、シリンジ本体3510の近位端に形成された小フランジ3511に取り付けられるように構成されている(図39を参照)。図36に示すように、フィンガフランジ3580は、フィンガフランジ3580をシリンジ本体3510に結合するために小フランジ3511を受け入れるように構成された第1の凹部3582を規定する。また、フィンガフランジ3580は、後退防止機構3590を受け入れるように構成された第2の凹部3584を規定する。後退防止機構3590は、遠位方向の移動を許容しつつ、後退防止機構3590に対するプランジャ部材3516の近位方向の移動に対抗力を与えるように構成された一対のブレーキタブ3592を含む。対抗力は、ブレーキタブ3592がプランジャ部材3516の外面3517に接触するときの摩擦力と、ブレーキタブ3592がプランジャ部材3516の外面3517に食い込むときの反力とを含むことができる。ブレーキタブ3592の鋭角により、プランジャ部材3516の表面3517に接触するブレーキタブ3592の各々の鋭い湾曲したエッジによって加えられる、プランジャ部材3516に平行な反力が生じる。この反力は、摩擦力とともに、プランジャ部材3516が近位方向に移動するのを防ぐ。フィンガフランジ3580は、プランジャ部材3516を受け入れるように構成された「C」字形の開口部3586をさらに規定する(図35を参照)。「C」字形の開口部3586により、フィンガフランジ3580は、組立中にプランジャ部材3516が挿入された後で、小フランジ3511の側方から小フランジ3511上にスライドさせることができる。また、図35図39に示す「C」字形のフィンガフランジ3580および後退防止機構3590は、プランジャ部材3516が挿入された後に、シリンジ本体3510の小フランジ3511にスライド/スナップ留めすることができる。近位ストッパ部材3514にねじ込まれたプランジャ部材3516を有するシリンジ本体3510は、輸送のための出荷トレイに、よりしっかりと詰めることができる。後退防止機構3590を有するフィンガフランジ3580は、出荷後に留められ、シリンジ本体3510とプランジャ部材3516の両方の周りにスナップ留めされる。
【0100】
図37に示すように、後退防止機構3590は、概ね「C」字形のクリップである。いくつかの実施形態では、後退防止機構3590は、金属シートから切り取られ又は打ち抜かれ、その後、その特定の部分が最終的な形状に曲げられる。後退防止機構3590は、上述したように、プランジャ部材3516の近位方向の移動に対抗する摩擦力を提供するように構成された一対のブレーキタブ3592を含む。ブレーキタブ3592は、弾性的に変形可能であり、自己作動する。ブレーキタブ3592は、後退防止機構3590の平面に対して遠位方向に鋭角に延びている(すなわち、ブレーキタブ3592は下向きに曲げられている)。ブレーキタブ3592の角度および弾性により、プランジャ部材3516は、ブレーキタブ3592を越えて遠位方向にスライドすることができる。プランジャ部材3516がブレーキタブ3592に対して近位方向に引っ張られると、ブレーキタブ3592は、プランジャ部材3516の外面3517に接触して食い込み、ブレーキタブ3592に対するプランジャ部材3516の近位方向の移動を阻止する。ブレーキタブ3592は自己作動するため、近位方向の移動を試みると、ブレーキタブ3592は、プランジャ部材3516に加わる摩擦力とプランジャ部材3516への食い込み量を増加させることによりプランジャ部材3516と係合し、その近位方向の移動を阻止する。実際に、ブレーキタブ3592は、プランジャ部材3516に係合して、その近位方向の移動を防止するための一対の爪を形成する。いくつかの実施形態では、プランジャ部材(図示省略)には、ブレーキタブ3592のラチェット効果を高めるために、その上に環状溝のねじ山が設けられ、かつ/または形成されている。後退防止機構3590およびブレーキタブ3592は、使用後にプランジャ部材3516をデュアルチャンバ注入システム3500から取り外すことを防止する。
【0101】
また、後退防止機構3590は、フィンガフランジ3580の第2の凹部3584に後退防止機構3590を保持するように構成された一対の保持タブ3594を含む。保持タブ3594は、内側に曲げられ、それによりフィンガフランジ3580の第2の凹部3584の内側を摩擦力および反力で把持して、第2の凹部3584からの後退防止機構3590の取り外しを防止するように構成されている。また、保持タブ3594は、自己作動し、後退防止機構3590が第2の凹部3584から引っ張られるときに、増加する摩擦力および反力を提供する。図38に示す実施形態では、フィンガフランジ3580が、後退防止機構3590から保持タブ3594を受け入れるように構成された一対の開口部3588を含み、摩擦の代わりに干渉によって後退防止機構3590を第2の凹部3584に保持する。
【0102】
また、図37に示すように、後退防止機構3590は、第2の凹部3584と後退防止機構3590との間の公差を小さくするように構成された4つのフィットタブ3596を含み、それにより第2の凹部3584内に後退防止機構3590をよりピッタリと嵌め込むことができる。いくつかの実施形態では、フィンガフランジ3580がポリマーから成形され、よって、その中に正確かつ精密に形成することができる凹部の最小サイズの制限があるため、元の許容公差がより大きくなる。一方、後退防止機構3590は、金属シートから切り出され、よって第2の凹部3584の高さよりも薄いプロファイルを有する。フィットタブ3596は、後退防止機構3590の厚さ/高さを増加させ、それにより第2の凹部3584内でのよりタイトな嵌め込みを与える。また、フィットタブ3596は、後退防止機構3590に剛性も与える。このため、プランジャ部材3516が近位方向に引っ張られると、ブレーキタブ3592は、(その弾性と角度により)後退防止機構3590に外向きの力を及ぼすことになる。この外向きの力は、後退防止機構3590およびフィットタブ3596を介して伝達されて、後退防止機構3590の剛性により、フィンガフランジ3500の第2凹部3584の内側を押す。この外向きの力は、摩擦力に対する反力およびプランジャ部材3516に加わる反応力であり、その近位方向の移動を防止する。
【0103】
図40図43は、いくつかの実施形態に係る後退防止特徴部4090を有するフィンガフランジ4080を備えたデュアルチャンバ注入システム4000を示している。デュアルチャンバ注入システム4000は、図35図39に記載の上述したデュアルチャンバ注入システム3500と同じコンポーネントを多く有する。それらのコンポーネントは、デュアルチャンバ注入システム3500の対応するコンポーネントと同じ符号を有する。デュアルチャンバ注入システム3500、4000の違いは、フィンガフランジ3590、4090にある。プランジャ部材3516を受け入れるための「C」字形の開口部3586を有する図36および図37に記載のフィンガフランジ3590とは異なり、図41および図4に記載のフィンガフランジ4090は、プランジャ部材3516を受け入れるための「O」字形の開口部4086を有する。「O」字形の開口部4086は、使用後のデュアルチャンバ注入システム4000からのプランジャ部材3516の取り外しを防止するための追加の機構を提供する。
【0104】
図42に示すように、フィンガフランジ4080内の後退防止機構4090は、「O」および/または長方形の形状を有する。後退防止機構4090は、金属シートから切り取ることができる。後退防止機構4090の「O」および/または長方形の形状により、後退防止機構4090はフィンガフランジ4080内に挿入され、プランジャ部材3516がシリンジ本体3510に挿入される前に、後退防止機構4090を有するフィンガフランジ4080が小フランジ3511にスナップ留めされる(図40および図43を参照)。そのような実施形態では、プランジャ部材3516が、フィンガフランジ4080の「O」字形の開口部4086を介して挿入される。このため、フィンガフランジ4080の「O」字形の開口部4086、プランジャ部材3516およびシリンジ本体3510の間の干渉により、組立後にシリンジ本体3510からフィンガフランジ4080を取り外すのが妨げられる。一方、「C」字形の開口部3586を有する図35図40に示すフィンガフランジ3580は、組立中にいつでも、小フランジ3511の側方から小フランジ3511にスライド/スナップ留めすることができる。また、フィンガフランジ4080の「O」字形の開口部4086は、プランジャ部材3516をシリンジ本体3510内に位置合わせする。
【0105】
図42に記載の後退防止機構4090のブレーキタブ4092は、上述した図37に記載の後退防止機構3590のブレーキタブ3592と同一である。図42に記載の後退防止機構4090における保持タブ4094は、上述した図37に記載の後退防止機構3590における保持タブ3594と同様である。違いは、後退防止機構4090には単一の保持タブ4094があるのに対して、後退防止機構3590には一対の保持タブ3594があることである。図42に記載の後退防止機構4090のフィットタブ4094は、上述した図37に記載の後退防止機構3590のフィットタブ3596と同様である。違いは、後退防止機構4090には3つのフィットタブ4094があるのに対して、後退防止機構3590には4つのフィットタブ3594があることである。
【0106】
図40図43に記載の後退防止機構4090は対称的であり、手動でも自動でも大量の組立を簡素化する。プランジャ部材(図示省略)が環状の溝および/またはねじ山を有する実施形態では、後退防止機構4090が、デュアルチャンバ注入システム4000からのプランジャ部材3516の取り外しを防止することができる。さらに、「O」字形の後退防止機構4090の一対の長いビームは変形可能であり、後退防止機構4092が外側に曲がることを可能にし、それにより、外側/長いフィットタブ4096を介して第2の凹部4084の内壁に外側の反力を伝達することができる。
【0107】
例示的な弾性針ラッチ
図44A図45Bは、いくつかの実施形態に係る安全注入針引き込みシステム4400で使用するための針ラッチ機構4490を示している。弾性針ラッチ4490は、針ハブ4474に配置され、注入中にシリンジ本体4410の遠位端に針4472を保持し、注入が完了した後に、引き込みのために針4472を解放する。図44Aは、針ラッチ4490が針4472を針ハブ4474に結合しているラッチ状態の針4472を示す注入システム4400の半断面図である。針4472は、弾性針ラッチ4490に結合する環状のラッチ溝4476を有する。弾性針ラッチ4490は、ラッチアーム4492のペアが針の環状ラッチ溝4476と係合するように拘束および/または圧縮されるラッチ状態(図44Aを参照)と、ラッチアーム4492がすぐに自由に開き、環状ラッチ溝4476から外れて、針4472を引き込みのために解放するラッチ解除状態(図44Bを参照)とを有するように構成されている。針ハブ4474は、ラッチ構成で、弾性針ラッチ4490を拘束するように構成された、内径および拘束面を有する凹部4478を規定する。
【0108】
図44Bは、針のラッチ解除プロセスを説明する別の半断面図である。針4472のラッチを解除するために、針4472および結合された弾性針ラッチ4490は、プランジャ部材(図示省略)を前進させることによって遠位方向に押される。弾性針ラッチ4490は、注入が実質的に完了した後に、針ラッチ4490が遠位方向に押されるように構成されている。弾性針ラッチ4490の遠位方向の動きは、それを凹部4478から移動させ、ラッチアーム4492が凹部4478内の拘束面を遠位方向にスライドすることを可能にし、それにより、(ラッチアーム4492が拡大するようにバイアスされるため)ラッチアーム4492が半径方向に拡大することを可能にする。ラッチアーム4492が半径方向に拡大することで、ラッチアーム4492のラッチ面が針の環状ラッチ溝4476から外れ、それにより針4472が解放されて、針ハブ4474およびシリンジ本体4410に対して近位方向に引き込まれる。針引き込み機構は、弾性針ラッチ4490とともに使用することができる。
【0109】
図44Cおよび図44Dは、弾性針ラッチ4490の可撓性ラッチ解除力アーム/保持タブ4494のペアを示す半断面図(長手方向軸上で図44Aおよび図44Bから90度回転させた図)である。図44Cは、ラッチ状態の針4472を示し、図44Dは、ラッチ解除状態の針4472を示している。針4472をラッチ解除するのに望ましい力は、約2lbf~約4lbfである。所望のラッチ解除力でラッチ解除するように弾性針ラッチを構成するために、保持タブ4494は、針ハブ4474のノーズコーンの内側のほぼ近位方向を向く環状棚4471に係合する。図44Cでは、保持タブ4494が、真っ直ぐな状態にあり、弾性針ラッチ4490が凹部(図44Aを参照)から遠位方向に移動するのを阻止するようになっている。保持タブ4494は、遠位方向に向けられた力が針アセンブリに加わると(それにより、遠位方向に向けられた力が弾性針ラッチ4490に伝達されると)、保持タブ4494が環状棚4471に係合するように構成されている。保持タブ4494は、所望のラッチ解除力に達するまで、遠位方向に向けられた針のラッチ解除力に反応する。所望のラッチ解除力に達した時点で、保持タブ4494は近位方向に曲がり、曲がった状態に変形して、弾性針ラッチ4490が凹部4478から遠位方向に進むことを可能にし、それによりラッチの拘束が取り除かれて、針4472が解放されることを可能にする。図44Eおよび図44Fは、ラッチアーム4492がラッチ解除状態にあり、保持タブ4494が真っ直ぐな状態にある、図44A図44Dの弾性針ラッチ4490の斜視図である。
【0110】
例示的なエラストマー針保持システム
図45A図45Dは、いくつかの実施形態に係る、注入中に針4572を保持し、注入完了後に針4572を引き込むための機構を示す半断面図である。安全注入システム4500は、針ハブ4574、エラストマーシール4590、および環状のシールシート4576を有する針4572(図45B)を含む。エラストマーシール4590(図45C)は、内側シール面、シリンジシール面および針ハブシール面を有する。エラストマーシール4590は、シリンジ本体4510の内側、針ハブ4574、および針4572の外側の間に圧力シールを提供するように構成されている。また、エラストマーシール4590は、摩擦および/または機械的な係合機構によって針4572の外側にも結合され、これにより、注入中にシリンジ本体4510の内部への針4572の近位方向の移動に対する抵抗が与えられる。近位方向の移動に対する抵抗力は、注入を行うのに十分である一方で、針引き込み機構が針4572をシリンジ本体4510内および/またはプランジャ部材内に保持して引き込むのを妨げるほど強くないように調整されている。近位方向の移動抵抗力が約1.5lbfを超えかつ約3.0lbf未満であると、組立および注入を可能にする十分な移動抵抗力が得られる一方で、引き込みバネが針保持力に打ち勝って針4572を引き込むことを可能にする(図45Dを参照)。代替的には、エラストマーシールは、Oリング、または組立時に針4572によって貫通されるエラストマーのスラブ(図示省略)であってもよい。いくつかの実施形態では、針4572は、キャップの取り外し、取り扱い、薬剤の注入の間に、かつ/または患者から針4572を取り外す間に、針4572の遠位方向の移動を防止するために、針ハブ4574の内部の近位方向を向く面と係合する遠位方向を向く面を有する。
【0111】
ポリマーシリンジ本体のための例示的な針ハブ取付機構
図46A図46Eは、様々な実施形態に係る、針ハブ4674をポリマーシリンジ本体4610に結合するための取付機構を示している。様々な実施形態では、ポリマーシリンジ本体4610が、環状オレフィンコポリマーまたは環状オレフィンポリマーから成形されている。ポリマーシリンジ本体4610は、針保持レッジ4611を有する。図46C図46Eに示すように、針ハブ4674は、ラッチ4675を有し、このラッチは、針保持レッジ4611を遠位方向に通過させた後に、針保持レッジ4611の近位側にある空間4617(図46Eを参照)に嵌入し、それにより針ハブ4674をポリマーシリンジ本体4610に結合するように構成されている。また、注入システムは、ポリマーシリンジ本体4610の遠位側にある針ハブ4674の内部にガスケット4615(図46Bを参照)も含む。
【0112】
図47A図47Hは、様々な実施形態に係る、針ハブ4774をポリマーシリンジ本体4710に結合するための取付機構を示している。図47Aは、針4772、針ハブ4774、針保持リング4790およびガスケット4715を含む針ハブアセンブリの分解斜視図である。図47Aに示す実施形態は、針ラッチおよび針ラッチアクチュエータを含むが、これらのコンポーネントは、成形ポリマー注入システム本体とともに使用するための針ハブアセンブリにおいて任意であり、他の針ハブアセンブリの実施形態は、針ラッチおよび針ラッチアクチュエータを省略することが可能である。様々な実施形態では、ポリマーシリンジ本体4710が、環状オレフィンコポリマーまたは環状オレフィンポリマーから成形されている。図47Dに示すように、ポリマーシリンジ本体4710は、その遠位端に滑らかな針結合部材4711を有する。針ハブ4774は、針結合部材4711の上に結合するための保持リング4774を有する。
【0113】
金属製の保持リング4775は、反対方向に比べて一方向により容易に曲がるようにバイアスされた歯4777(図47Gおよび図47Hを参照)を含む。このため、保持リング4775は、成形ポリマーシリンジ本体4710の遠位端において、針結合部材4711(図47Eを参照)の上を近位方向により容易に滑ることができ、一方で、針結合部材4711の上で遠位方向に保持リング4775を取り外す際には、相対的に大きな抵抗を与える。実際、保持リング4775の歯4777は、針ハブ4774がポリマーシリンジ本体4710から引き離されるときに、針結合部材4711をえぐる/食い込むことさえある。
【0114】
歯4777とポリマーシリンジ本体4710との間には自動制動作用が生じ、これが針結合部材4711上の保持リング4775の除去に抵抗するのを補助する。歯4777は、より多くの除去力が加えられるに連れて、針結合部材4711により強く結合する傾向がある。これは、組立後に歯4777と針結合部材4711との間に形成される浅くない角度によるものであり、それにより、除去力が増すに連れて歯4777と針結合部材4711との間の摩擦が増加して、歯4777が針結合部材4711から離脱するのを防ぐことができる。歯4777のドーム状の湾曲および保持リング4775の周囲の金属は、歯4777に構造的強度を与え、それにより針結合部材4711をほぼ半径方向の力で圧迫し、自動制動作用を強化するのを助けるとともに、歯4777が針結合部材4711の解放に抵抗するのを助ける。針結合部材4711と保持リング4775との間の干渉は、近位方向に針ハブ4772をポリマーシリンジ本体4710に装着することを可能にする一方で、遠位方向に針ハブ4772をポリマーシリンジ本体4710から取り外すのを妨げる。金属保持リング4775は、その金属組成により、ポリマーシリンジ本体4710よりも高い硬度および弾性を有する。
【0115】
図31図34に示す様々なコンポーネントは、既製品または安全針引き込みコンポーネントとして記載されているが、デュアルチャンバ注入システム変換キット3000および流体移送アセンブリ3002は、様々な注入システムおよびシステムコンポーネントとともに使用することができる。
【0116】
デュアルチャンバ安全注入システムのための例示的な流体移送アセンブリ
図48図63は、いくつかの実施形態に係る、多成分注入剤の成分の取り扱い、混合および送達の正確な制御を提供するように構成された流体移送アセンブリを含むデュアルチャンバ注入システム5100を示している。図6A図7B図7G図7P図8図29Dに示すデュアルチャンバ注入システム100と同様に、図51に示すように、デュアルチャンバ注入システム5100は、シリンジ本体5110、近位および遠位ストッパ部材5114、5112、およびプランジャ部材5116を含む。プランジャ部材5116は、シリンジ本体5110の近位開口部を介して、シリンジ本体5110の内部5118に挿入される。また、シリンジ本体5110は、その遠位端にキャップ付き遠位針インターフェース5120も含む。図6A図7Bおよび図7G図7Pに示すデュアルチャンバ注入システム100は、ステイクド針を有するが、シリンジ本体5110は、ルアーロックタイプの遠位針インターフェース5120を有する。なお、遠位針インターフェース5120は、ルアーロックに限定されるものではなく、他のタイプの針/管インターフェースであってもよい。遠位針インターフェイス5120は、汚染を最小限に抑えるとともに、シリンジ本体5110の内部5118における任意選択的な真空の保持を容易にするために、キャップされている。任意選択的な真空の利点には、空気への薬剤の曝露の低減、近位薬剤チャンバ5122から遠位薬剤チャンバ5124への液体薬剤成分の移送の力の補助、および薬剤混合中に遠位薬剤チャンバをベントする必要性の排除が含まれ、それによりキャップされた遠位針インターフェース5120が可能になる。キャップされた遠位針インターフェース5120は、有毒な薬剤成分を有する実施形態において、ユーザの暴露を最小限に抑える。
【0117】
近位および遠位ストッパ部材5114、5112は、シリンジ本体5110とともに、近位薬剤チャンバ5122を規定する。遠位ストッパ部材5112およびシリンジ本体5110は、遠位薬剤チャンバ5124を規定する。プランジャ部材5116は、シリンジ本体5110に対して近位ストッパ部材5114を挿入するために、手動で操作することができる。非圧縮性流体が近位薬剤チャンバ5122内に配置されている場合、近位ストッパ部材5114を挿入すると、遠位ストッパ部材5112もシリンジ本体5110に対して相対的に挿入される。
【0118】
図6A図7Bおよび図7G図7Pに示すデュアルチャンバ注入システム100は、流体の移送および送達のための様々な開口部を有する針を備えるが(図7C図7Fを参照)、デュアルチャンバ注入システム5100は、流体の移送および送達のための流体移送アセンブリ5130を含む。
【0119】
図53に示すように、いくつかの実施形態に係る流体移送アセンブリ5130は、スパインアセンブリ5000および貫通管4800を含む。スパインアセンブリ5000は、遠位管5010と、遠位管5010内に部分的に配置され、貫通管4800内に部分的に配置された中実の細長い部材5020とを含む。遠位管5010は、通常、中実の細長い部材5020と遠位管5010との間の気密溶接によって密封される管状部材である。
【0120】
上述したように、中実の細長い部材5020は、溶接によって遠位管5010に結合され得る。図55に示すように、遠位管5010の近位端は、中実の細長い部材5020との接合部に、近位方向を向く肩部5012を形成する。中実の細長い部材5020は、様々なワイヤおよびバンドから形成することができる。代替的には、中実の細長い部材5020は、単一の材料片から形成されるものであってもよい。いずれにしても、中実の細長い部材5020は、その近位端の近くに、凹んだ領域と、遠位方向を向く肩部5022とを規定する。
【0121】
図48および図55に示すように、貫通管4800は、ディスク部材4830に移動可能に結合された管状部材4810を含む。管状部材4810は、管状部材4810の外面から半径方向外向きに遠位方向に延びる真空ストッパ4814のペアを規定する。真空ストッパ4814は、漏斗インサート4900(図49を参照)の漏斗表面4910と干渉し、搬送構成における貫通管4800および漏斗インサート4900の相対的な位置を安定させるとともに、漏斗インサート4900を貫通管4800を越えて遠位方向に移動させるのに必要な力の量を調整するように構成されている。管状部材4810は、真空ストッパ4814のペアのそれぞれ一つに隣接して、管状部材4810の内部への中間開口部4816のペアも規定する。管状部材4810は、管状部材4810の外面から半径方向内向きに近位方向に延びる後退防止タブ4818のペアをさらに規定する。後退防止タブ4818は、中実の細長い部材5020上の遠位方向を向く肩部5022と干渉して、貫通管4800に対する中実の細長い部材5020の遠位方向の動きを制限するように構成されている。管状部材4810は、後退防止タブ4818のペアのそれぞれ一つに隣接して、管状部材4810の内部への一対の遠位開口部4820のペアも規定する。貫通管4800は、一片のシートメタルを曲げることによって形成することができる。
【0122】
図48および図55に示すように、ディスク部材4830は、複数の半径方向内向きに伸縮するストッパ4832を規定する。半径方向内向きに伸縮するストッパ4832は、ディスク部材4830に隣接して管状部材4810に移動可能に接続されて配置されている。半径方向内向きに伸縮するストッパ4832の1つは、ディスク部材4830を管状部材4810に接続する接続部材4836を含む。半径方向内向きに伸縮するストッパ4832は、ディスク部材4830のほぼ中央に調節可能な開口部4834を規定する。
【0123】
調節可能な開口部4834は、小さな構成(図48に示す)と大きな構成(図62に示し、本明細書に記載する)との間で調整可能である。調節可能な開口部4834が小さな構成にあるとき、遠位管5010上の近位方向を向く肩部5012は、半径方向内向きに伸縮するストッパ4832と干渉して、貫通管4800のディスク部材4830に対する遠位出口管5010の近位方向の移動を防ぐ。調節可能な開口部4834が大きな構成にあるとき、遠位管5010は、記載のように、貫通管4800に対して近位方向に自由に動くことができる。管状部材4810がディスク部材4830に対して遠位方向に押されると(例えば、遠位ストッパ部材5112を貫通管4800の上で遠位方向に駆動する、遠位薬剤チャンバ5124内の真空および/またはプランジャ部材5116に加えられる遠位方向に向けられた力によって)、半径方向内向きに伸縮するストッパ4832が開くことが阻止される。しかしながら、管状部材4810がディスク部材4830に対して遠位方向に押されなくなると、半径方向内向きに伸縮するストッパ4832は、自由に変形することができ、調節可能な開口部4834を小さな構成から大きな構成に変えることができる(本明細書で説明する図62を参照)。
【0124】
図48図50は、別個のコンポーネントとして、貫通管4800、漏斗インサート4900およびスパインアセンブリ5000を示している。図51図53は、真空ストッパ4814が遠位ストッパ部材5112の漏斗インサート4900の漏斗表面4910と干渉して、シリンジ本体5110に対する遠位ストッパ部材5112の遠位方向の移動を開始するのに必要な遠位方向に向けられた力の大きさを増加させる搬送構成のデュアルチャンバ注入システム5100を示している。真空ストッパ4814および漏斗表面4910によって必要とされる遠位方向に向けられた力の大きさの増加は、いくつかの実施形態において存在する遠位薬剤チャンバ5124内の真空を用いたデバイスの安定性を促進する。
【0125】
図54は、デュアルチャンバ注入システム5100の組立を示している。先ず、スパインアセンブリ5000がシリンジ本体5110の内部5118に挿入される。次に、貫通管4800が、スパインアセンブリ5000の近位端の上にねじ込まれて、流体移送アセンブリ5130が形成される。
【0126】
図55は、スパインアセンブリ5000の上にスナップ留めされた後の貫通管4800を示している。この構成では、貫通管4800に対するスパインアセンブリ5000の近位方向の動きが、遠位管5010の近位方向を向く肩部5012と、ディスク部材4830の半径方向内向きに伸縮するストッパ4832との間の干渉によって制限されている。また、貫通管4800に対するスパインアセンブリ5000の遠位方向の動きも、中実の細長い部材5020の遠位方向を向く肩部5022と、管状部材4810の後退防止タブ4818との間の干渉によって制限されている。図55は、スパインアセンブリ5000の上にある貫通管4800を示している。図55は、貫通先端によって規定される近位開口部4822を貫通する鋭い貫通先端4812も示している。
【0127】
図56は、図54に続く、デュアルチャンバ注入システム5100の組立における次のステップを示している。漏斗インサート4900は、遠位ストッパ部材5112内に挿入される(例えば、ねじ込まれるか、押し込まれる)。その後、漏斗インサート4900を有する遠位ストッパ部材5112は、貫通管4800の真空ストッパ4814が漏斗インサート4900の漏斗表面4910と干渉するまで、近位開口部を介してシリンジ本体5110の内部5118に挿入され(図48および図49を参照)、遠位ストッパ部材5112が本明細書に記載のデュアルチャンバ注入システム5100の搬送構成に保持される。次に、近位ストッパ部材5114が近位開口部からシリンジ本体5110の内部5118に挿入される。最後に、プランジャ部材5116が近位ストッパ部材5114に結合される(例えば、ねじ込まれる)。
【0128】
いくつかの実施形態では、近位ストッパ部材5114がシリンジ本体5110に挿入される前に、液体薬剤成分を近位薬剤チャンバ5122内に導入することができる。そのような実施形態では、液体薬剤成分の非圧縮性により、近位薬剤チャンバ5122に出口流路が開かれるまで、遠位ストッパ部材5112に対する近位ストッパ部材5114の位置が維持される。いくつかの実施形態では、遠位ストッパ部材5112がシリンジ本体5110内に挿入される前または後に、液体または乾燥/凍結乾燥した薬剤成分を遠位薬剤チャンバ5124内に導入することができる。遠位薬剤チャンバ5124内の液体薬剤成分は、真空を使用して定位置で凍結乾燥することができ、その後、キャップされた遠位針インターフェース5120を使用して遠位薬剤チャンバ内に維持することができる。乾燥/凍結乾燥された薬剤成分が遠位薬剤チャンバ5124に導入される場合、真空をそのまま遠位薬剤チャンバ5124内に生成し、キャップされた遠位針インターフェース5120を使用して真空を維持することができる。
【0129】
図57は、デュアルチャンバ注入システム5100が上述したような搬送構成にあるときの、遠位ストッパ部材5112、漏斗インサート4900、貫通管4800およびスパインアセンブリ5000を示している。遠位薬剤チャンバ5124内に真空を有するいくつかの実施形態では、真空が、遠位ストッパ部材5112に遠位方向に向けられた約6.5lbfの力を生成することができる。このため、貫通管4800の真空ストッパ4814および漏斗インサート4900の漏斗表面4910は、それらのコンポーネント間の干渉に打ち勝って、貫通管4800が漏斗インサート4900内に入り、遠位ストッパ部材5112を貫通するために、6.5lbfを超える遠位方向に向けられた力が必要とされるように構成することができる。例えば、貫通管4800の真空ストッパ4814および漏斗インサート4900の漏斗表面4910は、それらのコンポーネント間の干渉に打ち勝って、貫通管4800が漏斗インサート4900内に入り、遠位ストッパ部材5112を貫通するために、7.5lbfの遠位方向に向けられた力が必要とされるように構成することができる。遠位方向に向けられた力の追加の1lbfは、ユーザがプランジャ部材5116にその力を加えることによって与えることができる。
【0130】
貫通管4800の真空ストッパ4814と漏斗インサート4900の漏斗表面4910との間の干渉に打ち勝つのに十分な遠位方向に向けられた力を加えると、図58および図59に示すように、貫通管4800の近位開口部4822が近位薬剤チャンバ5122と流体連通するまで、貫通管4800の鋭い貫通先端4812が遠位ストッパ部材5112を貫通する。遠位ストッパ部材5112を介して鋭い貫通先端4812を駆動するための例示的な力の大きさは、約4lbf~約5lbfである。真空が約6.5lbfの遠位方向に向けられた力を供給するため、貫通管4800の真空ストッパ4814と漏斗インサート4900の漏斗表面4910との間の干渉に打ち勝った後、システムは「自動貫通」することができる。図58および図59は、近位および遠位の薬剤チャンバ(5122、5124)の間に出口流路が開いている移送構成のデュアルチャンバ注入システム5100を示している。出口流路は、貫通管4800の近位開口部4822と、貫通管4800の内部と、貫通管の遠位開口部4820とを含む。スパインアセンブリ5000の中実の細長い部材5020の近位端は、出口流路の最遠位端を占めるだけなので、出口流路を通る流体の流れに対する抵抗は非常に僅かである。いくつかの実施形態では、流体の流れを駆動するために必要な力は、約2.2lbf未満である。遠位薬剤チャンバ5124に真空が存在する実施形態では、真空により生成された遠位方向に向けられた力(例えば、6.5lbf)が、液体薬剤成分を近位薬剤チャンバ5122から出口流路を通って遠位薬剤チャンバ5124内に引き込むことができる。液体薬剤成分が近位薬剤チャンバ5122から引っ張られると、近位ストッパ部材5114もシリンジ本体5110に対して遠位方向に引っ張られる。
【0131】
図60は、複数成分薬剤の注入方法の次のステップを示している。図56に示す近位薬剤チャンバ5122は、遠位薬剤チャンバ5124内の真空の作用および/またはユーザがプランジャ部材5116に加えた遠位方向に向けられた力のいずれかによって、実質的または完全に潰れている。近位薬剤チャンバ5122内の液体薬剤成分は、出口流路を通って遠位薬剤チャンバ5124内に流れている。遠位薬剤チャンバ5124内の凍結乾燥薬剤成分は、液体薬剤成分によって溶解されることとなる。デュアルチャンバ注入システム5100は、凍結乾燥薬剤成分の可溶化を促進するために撹拌することができる。この時点で、デュアルチャンバ注入システム5100は、混合構成になっている。デュアルチャンバ注入システム5100の様々なコンポーネントは、液体薬剤成分を遠位薬剤チャンバ5124に移動させることによって、真空が完全に消費されるように構成することができる。
【0132】
図60に示す混合構成において、遠位薬剤チャンバ5124内の混合薬剤は、注入の準備ができている。シリンジ本体5100は、混合薬剤などの流体が遠位薬剤チャンバ5124から出るのを可能にするために、遠位端開口部5030(図52を参照)を含む。上述したように、図52は、液体薬剤成分の移送および/または混合薬剤の混合が完了するまで、遠位薬剤チャンバ5024からの遠位端開口部5030を介した流出経路を遮断するキャップされた遠位針インターフェース5120を含む、デュアルチャンバ注入システム5100の一実施形態を示している。そのような実施形態において、キャップされた遠位針インターフェース5120は、注入前にキャップが外される。そして、注入前に、注入針(図示省略)を含む針アセンブリを、キャップの外された遠位針インターフェース5120に結合することができる。他の実施形態では、注入前に、チューブによって、キャップの外された遠位針インターフェース5120をIVバッグに接続することができる。キャップの外された遠位針インターフェース5120が注入の対象に接続された後、注入を開始することができる。遠位方向に向けられた力をプランジャ部材5116にさらに加えると、近位および遠位ストッパ部材5114、5112の両方がシリンジ本体5110に対して遠位方向に移動し、遠位薬剤チャンバ5124の混合薬剤がキャップの外された遠位針インターフェース5120から押し出されて、注入が実行される。
【0133】
図61および図62は、デュアルチャンバ注入システム5100が混合構成の後に、近位および遠位ストッパ部材5114、5112が互いに接触している様子を示している。図61は、管状部材4810をディスク部材4830に対して押し付けることにより、半径方向内向きに伸縮するストッパ4832が一緒に押されて、調節可能な開口部4834がその小さな構成に保持され、それによりスパインアセンブリ5000が貫通管4800にラッチされる様子を示している。貫通管4800が作られる比較的厚い(例えば、0.009インチの)金属および狭いスライドクリアランス(例えば、0.0025インチ)は、半径方向内向きに伸縮するストッパ4832がその後伸縮できる程度を制限する。
【0134】
図62に示すように、プランジャ部材5116に遠位方向に向けられた力をさらに加えると、ディスク部材4830と漏斗インサート4900との間のギャップが閉じられる(図62)。その後、遠位方向に向けられた力は、漏斗インサート4900を介して伝達されることにより、貫通管4800のディスク部材4830を押して貫通管4800の管状部材4810から遠位方向に遠ざけるが、管状部材4810は、遠位ストッパ部材5112および漏斗インサート4900内に(例えば、バーブ(図示省略)によって)静止状態に保持される。これにより、ディスク部材4830が管状部材4810から遠位方向に移動し、半径方向内向きに伸縮するストッパ4832が調節可能な開口部4834(図48を参照)から離れるように曲がり、小さな構成から大きな構成に変換される。これにより、スパインアセンブリ5000が貫通管4800からラッチ解除され、スパインアセンブリ5000が貫通管4800を介して近位ストッパ部材5114を貫通することが可能となる。貫通管は、ディスク部材4830によって近位ストッパ部材5112および漏斗インサート4900に殆ど保持されたままとなる。
【0135】
図63は、遠位薬剤チャンバ5124から混合薬剤を注入した後のデュアルチャンバ注入システム5100を示している。この時点で、デュアルチャンバ注入システム5100は、完了した構成にある。近位ストッパ部材5114は、遠位ストッパ部材5112と接触し、遠位ストッパ部材は、シリンジ本体5110の遠位端と接触している。スパインアセンブリ5000の近位端は、遠位および近位ストッパ部材5114、5112の両方を貫通し、プランジャ部材5116内に入っている。貫通管4800は、近位ストッパ部材5112を完全には貫通しておらず、それにより、プランジャ部材5116への逆流のリスクを最小限に抑えることができる。いくつかの実施形態では、混合薬剤の注入後、スパインアセンブリ5000およびそれに取り付けられた針(図示省略)をシリンジ本体5110の内部に引き込んで、安全注入システムを提供することができる。
【0136】
図48図63に示すデュアルチャンバ注入システム5100およびそのコンポーネントは、液体薬剤成分の移送および/または混合薬剤の混合が完了する前に、薬剤の偶発的および/または早過ぎる投薬を防止する。同時に、デュアルチャンバ注入システム5100は、混合薬剤が準備されて注入の準備が整った後に、注入に対する低い抵抗を含む。デュアルチャンバ注入システム5100は、近位薬剤チャンバ5122から遠位薬剤チャンバ5124への液体薬剤の移送および薬剤の混合の間、スパインアセンブリ5000を貫通管4800にロックされた状態で維持し、それにより不完全な混合および流体の移送を防止することによって、これを達成することができる。スパインアセンブリ5000が貫通管4800からロック解除されると、スパインアセンブリ5000上の近位および遠位ストッパ部材5114、5114の遠位方向の移動に対する抵抗が最小となる。様々な実施形態の遠位薬剤チャンバにおいて真空を述べているが、真空は、注入システムの任意選択的な特徴である。代替的には、真空は、いくつかの実施形態の近位および遠位の薬剤チャンバの両方に存在するものであってもよい。デュアルチャンバ注入システム5100は、針の引き込みシステムと適合性があるが、針の引き込みシステムなしで使用することもできる。デュアルチャンバ注入システム5100は、多種多様なシリンジサイズ(例えば、20ccシリンジ)と適合性がある。
【0137】
本明細書に説明および記載されているプレフィルドデュアルチャンバ安全注入システムのいくつかはルアーロックコネクタを含むが、本明細書に記載の後退防止機構、安全注入針引き込みシステムおよび針ハブ取付機構を含む注入構成およびデュアルチャンバ構成は、オートインジェクタであるカートリッジ、およびステイクド針またはルアースリップコネクタを有するシリンジを備えた注入システム、および針の無いシリンジで使用することができる。
【0138】
本発明の様々な例示的な実施形態が本明細書に記載されている。これらの例は、非限定的な意味で参照される。これらは、本発明のより広範に適用可能な態様を例示するために提供されている。本発明の真の趣旨および範囲から逸脱することなく、記載の発明に様々な変更を加えることができ、均等物に置き換えることができる。さらに、特定の状況、材料、物質の組成、プロセス、プロセス行為またはステップを、本発明の目的、趣旨または範囲に適合させるために、多くの変更を加えることができる。さらに、当業者によって理解されるように、本明細書に記載および例示された個々のバリエーションの各々は、本発明の範囲または趣旨から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態の何れかの特徴から容易に分離され、またはそれらの特徴と組み合わされ得る個別の構成要素および特徴を有する。そのような変更はすべて、本開示に関連する特許請求の範囲内にあることが意図されている。
【0139】
対象となる診断処置または介入処置を実行するために説明したデバイスの何れかが、そのような介入を実行する際に使用するためにパッケージ化された組合せで提供されるものであってもよい。それらの供給「キット」は、使用説明書をさらに含み、そのような目的のために一般的に採用されるような無菌トレイまたは容器にパッケージ化されるものであってもよい。
【0140】
本発明は、対象のデバイスを用いて実行され得る方法を含む。その方法は、そのような好適なデバイスを提供する行為を含むことができる。そのような提供は、エンドユーザによって実行されるものであってもよい。すなわち、「提供する」という行為は、エンドユーザが、対象となる方法において、必要なデバイスを提供するために、取得、アクセス、アプローチ、配置、セットアップ、起動、電源投入またはその他の行為を行うことを単に必要とするだけである。本明細書に記載の方法は、論理的に可能な任意の順序で、あるいは記載された事象の順序で、記載された事象を実行することができる。
【0141】
本発明の例示的な態様は、材料の選択および製造に関する詳細とともに、上述されている。本発明の他の詳細に関しては、それらは、先に引用した特許および刊行物に関連して理解され得るだけでなく、当技術分野の当業者には一般的に知られているか、または理解され得るものである。例えば、当技術分野の当業者であれば、1または複数の潤滑性コーティング(例えば、ポリビニルピロリドン系組成物などの親水性ポリマー、テトラフルオロエチレンなどのフルオロポリマー、PTFE、親水性ゲルまたはシリコーン)を、必要に応じて、移動可能に結合された部分の比較的大きな境界面など、デバイスの様々な部分に関連して使用することができ、それにより例えば、器具の他の部分または近くの組織構造物に対するそのような対象の低摩擦操作または前進を容易にすることができることを理解するであろう。一般的にまたは論理的に採用される追加の行為に関して、本発明の方法に基づく態様についても同様のことが当てはまるであろう。
【0142】
さらに、本発明は、様々な特徴を任意に組み込んだいくつかの例を参照して説明してきたが、本発明の各バリエーションに関して企図されるように記載または開示されたものに限定されるものではない。本発明の真の趣旨および範囲から逸脱することなく、記載の発明に様々な変更を加えることができ、(本明細書に記載されているか、または簡潔にするために含まれていないかにかかわらず)均等物に置き換えることができる。さらに、値の範囲が提供される場合、その範囲の上限と下限との間のすべての介在値と、記載した範囲内の他の記載した値または介在値が、本発明の範囲内に包含されることを理解されたい。
【0143】
また、記載した本発明のバリエーションの任意の特徴は、独立して、または本明細書に記載された特徴のうちの任意の1または複数の特徴と組み合わせて記載および主張され得ることが企図される。単数の項目への言及は、同じ項目が複数存在する可能性を含む。より具体的には、本明細書およびこれに関連する特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」、「said」および「the」は、特に明記しない限り、複数の指示対象を含む。言い換えれば、冠詞の使用は、本開示に関連する特許請求の範囲と同様に、上記説明における主題項目の「少なくとも1つ」を可能にする。そのような請求項は、任意の要素を除外するように起草される場合があることに留意されたい。このため、この記述は、請求項の要素の列挙に関連して、「単独」、「のみ」などの排他的な用語を使用する先の記載、または「否定的な」限定を使用するための先の記載として機能することを意図している。
【0144】
そのような排他的な用語を使用することなく、本開示に関連する請求項における「含む」という用語は、所与の数の要素がそのような請求項に列挙されているかどうか、または特徴の追加がそのような請求項に記載された要素の性質を変化させるとみなされるかどうかにかかわらず、任意の追加要素を含むことを可能にするものとする。本明細書で具体的に規定されている場合を除き、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、請求項の有効性を維持しつつ、可能な限り広く一般的に理解される意味を与えるものとする。
【0145】
本発明の幅は、提供された実施例および/または主題の明細書に限定されるものではなく、むしろ、本開示に関連する請求項の文言の範囲によってのみ限定されるものである。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
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【国際調査報告】