(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-23
(54)【発明の名称】バイナリーサイクル発電システム
(51)【国際特許分類】
F22B 1/16 20060101AFI20220816BHJP
【FI】
F22B1/16 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576238
(86)(22)【出願日】2020-06-17
(85)【翻訳文提出日】2022-02-14
(86)【国際出願番号】 FI2020050434
(87)【国際公開番号】W WO2020254727
(87)【国際公開日】2020-12-24
(32)【優先日】2019-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521554653
【氏名又は名称】ウェレスコ オイ
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ウェルムンドセン ユハ レイダー
(57)【要約】
本願は、電力を生成するためのバイナリーサイクル発電システム100に関する。システムは、第1の流体106を蒸発させる熱交換器116と、タービンコンバータ120と、発電機122と、蒸発した第1の流体を凝縮させる第1の凝縮器124と、を備える。タービンコンバータは、蒸発した第1の流体のエネルギーを機械的エネルギーに変換し、発電機は、機械的エネルギーから電力を生成する。熱交換器は、ヒートポンプ110の一部である第2の凝縮器116であり、ヒートポンプ内を循環する第2の流体108からの熱を第1の流体に伝達して第1の流体を蒸発させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力を生成するためのバイナリーサイクル発電システム(100)であり、
第1の流体(106)を蒸発させるための熱交換器(116)と、
タービンコンバータ(120)と、
発電機(122)と、
蒸発した第1の流体を凝縮させるための第1の凝縮器(124)と、
を備え、
前記タービンコンバータは、蒸発した第1の流体のエネルギーを機械的エネルギーに変換し、前記発電機は、機械的エネルギーから電力を生成する、バイナリーサイクル発電システム(100)であって、
前記熱交換器は、ヒートポンプ(110)の一部である第2の凝縮器(116)であり、前記ヒートポンプは、第1の流体を蒸発させるように、前記ヒートポンプ内を循環する第2の流体(108)から第1の流体に熱(111)を伝達することを特徴とする、
バイナリーサイクル発電システム(100)。
【請求項2】
前記ヒートポンプは、周囲の空気から第2の流体に熱を抽出する空気源ヒートポンプ(110)である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ヒートポンプは、熱エネルギーが第2の流体に伝達され、第2の流体の蒸発を引き起こす蒸発器(112)を備える、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記ヒートポンプの流路系の一部が、河川もしくは湖沼系の水中、または海水中に配置されており、前記ヒートポンプは、水から第2の流体に熱を抽出し、第2の流体は、前記ヒートポンプの流路系を循環し、熱エネルギーが第2の流体に移行し、第2の流体の蒸発を引き起こす、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記ヒートポンプは、蒸発した第2の流体を圧縮してその圧力および温度を上昇させる圧縮機(114)を備える、請求項3または4に記載のシステム。
【請求項6】
前記ヒートポンプは、前記第2の凝縮器内で前記第1の流体に熱を移す際に凝縮して冷却された第2の流体を、その圧力および温度が低下するように膨張させる膨張器(118)を備える、請求項1~5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
第1の流体を前記第2の凝縮器に向けて循環させる液体ポンプを備える、請求項1~6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のバイナリーサイクル発電システム(100)において電力を生成するための発電方法であって、
第2の凝縮器(116)によって、第1の流体が蒸発するように第2の流体(108)から第1の流体(106)に熱を伝達するステップと、
タービンコンバータ(120)によって、蒸発した第1の流体のエネルギーを機械的エネルギーに変換するステップと、
第1の凝縮器(124)によって、蒸発した第1の流体を凝縮させるステップと、
発電機(122)によって、機械的エネルギーから電力を生成するステップと、
を少なくとも含む、発電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、一般に、バイナリーサイクル発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、世界で最も差し迫った問題の1つは、気候変動、例えば、地球の気温上昇にどのように対処するかということである。気候変動の原因は、温室効果ガスの増加により、太陽光によって生成されたより多くの暖かさが大気や海洋に閉じ込められることであると言われている。主な温室効果ガスは二酸化炭素(CO2)であり、大気中に二酸化炭素が増加する主な原因は、私たちが必要とするエネルギーのために、石炭、石油、泥炭などの化石燃料を燃やしたことにある。
【0003】
有害な化石燃料を使わずに発電する解決策としては、地熱エネルギーを利用したバイナリーサイクル発電プラントが知られている。このような発電プラントでは、地熱貯留層(geothermal reservoir)から温水を汲み上げ、熱交換器を介して循環させ、地下の貯留層(reservoir)に戻す。別の流体、つまりバイナリー流体も熱交換器に送られ、そこで蒸発させ、タービンに通す。蒸発した流体は、タービンを出た後、冷気のラジエータや冷水で凝縮され、再び熱交換器を通る。蒸発した流体はタービンを回転させ、タービンに接続された発電機によって、タービンで発生した機械的エネルギーから電力を生成する。
【0004】
これらの解決策は、地下の貯留層の水を加熱する火山活動に依存しているため、そのような活動が行われている地域にしか設置できないという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の1つの目的は、既知の解決策の欠点を解消し、工業用ヒートポンプを使用して、周囲の空気または湖水、河川水、海水から、バイナリー流体を加熱するために熱交換器で使用される熱を取得し、この熱をバイナリー流体に伝達するバイナリーサイクル発電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの目的は、独立請求項による発電システムおよび発電方法を提供することによって満たされる。
【0007】
本発明の1つの実施形態は、電力を生成するためのバイナリーサイクル発電システムである。このシステムは、第1の流体を蒸発させるための熱交換器と、タービンコンバータと、発電機と、蒸発した第1の流体を凝縮させるための第1の凝縮器と、を備える。タービンコンバータは、蒸発した第1の流体のエネルギーを機械的エネルギーに変換し、発電機は、機械的エネルギーから電力を生成する。熱交換器は、ヒートポンプの一部である第2の凝縮器である。ヒートポンプは、第1の流体が蒸発するように、ヒートポンプ内を循環する第2の流体から第1の流体に熱を伝達する。
【0008】
本発明の1つの実施形態は、バイナリーサイクル発電システムにおいて電力を生成するための発電方法であり、これは先のシステムの実施形態に従ったものである。この方法は、第2の凝縮器によって、第1の流体が蒸発するように第2の流体から第1の流体に熱を伝達するステップと、タービンコンバータによって、蒸発した第1の流体のエネルギーを機械的エネルギーに変換するステップと、を少なくとも含む。また、この方法は、第1の凝縮器によって、蒸発した第1の流体を凝縮させるステップと、発電機によって、機械的エネルギーから電力を生成するステップと、を含む。
【0009】
本発明のさらなる実施形態は、従属請求項に定義されている。
【0010】
本発明の実施形態を、添付の図を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、クリーンかつ十分に効果的な方法で電力を生成するためのバイナリーサイクル発電システム100を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
システム100は、少なくとも2つのサイクル102、104を備えており、流体106、108間の熱伝達、そしてもちろんサイクル102、104間の熱伝達を提供するために、1つの流体106、108が各サイクル102、104内を循環する。流体106、108は、第1の流体106が第1のサイクル102内を循環し、第2の流体108が第2のサイクル104内を循環するように配置されている。
【0013】
第1および第2のサイクル102、104は共に、図中に別々の参照番号が付されていない流路系を構成しており、第1および第2の流体106、108は、第1および第2のサイクル102、104内でこれらの流路系に沿って循環する。
【0014】
第2のサイクル104は、ヒートポンプ110で構成されており、第2の流体108は、ヒートポンプ110の外部から熱(エネルギー)111を受け取り、それを第1のサイクル102の第1の流体106に移すために循環する。
【0015】
第2の流体108は、液体の状態での沸点が、気体の熱エネルギーをより小さな体積に凝縮させる凝縮プロセスに適しているように選択される。第2の流体108は、例えば、プロピレングルコールまたはエチルアルコールからなる。
【0016】
ヒートポンプ110は、蒸発器112を備えており、ヒートポンプ110およびシステム100の外部から受けた熱エネルギー111が第2の流体108に伝わり、その熱111によって、蒸発器112を流れる第2の流体108が蒸発する。
【0017】
ヒートポンプ110は、図にしたがって、周囲の空気から第2の流体108に熱111を抽出する空気源ヒートポンプであってよい。
【0018】
あるいは、ヒートポンプ110は、第2のサイクル104の流路系を蒸発器112に接続せずに製造してよい。また、第2のサイクル104は、本実施形態では、第2の流体108が循環する閉ループである。第2のサイクル104の流路系の一部、例えば図中の蒸発器112の構造体の内部に提示されている流路部分は、河川や湖沼系の水の中、あるいは海水の中に配置(浸漬;immergered)されている。ヒートポンプ110は、水(海水)から第2の流体108に熱111を抽出し、ヒートポンプ110(システム100)の外部、すなわち水から受け取った熱エネルギー111は、第2のサイクル104の流路系の浸漬された部分を流れる際に、第2の流体108に伝達される。これにより、蒸発器112の場合と同様に、第2の流体108の蒸発が行われる。その他、この代替実施形態の動作は、図の実施形態に準拠している。
【0019】
ヒートポンプ110がどのように熱111を受け取るかにかかわらず、システム100は、電気エネルギーの生産のためのクリーンエネルギーおよび無限のエネルギー資源を可能にする。
【0020】
ヒートポンプ110は、圧縮機114をさらに備える。蒸発した第2の流体108は、蒸発器112から、または流路系の浸漬された部分から、流路系に沿って圧縮機114に流れ、圧縮機114は、蒸発した第2の流体108の圧力および温度が上昇するように、蒸発した第2の流体108を圧縮する。
【0021】
ヒートポンプ110は、第2の凝縮器(熱交換器)116をさらに備える。加圧された高温の第2の流体108は、流路系に沿って圧縮機114から凝縮器116に流れ、第2の流体108が第2凝縮器116に沿って流れると、第2の流体108にある熱は、第1のサイクル102を循環する第1の流体106に移動し、その結果、第1の流体106が蒸発する。
【0022】
第2の流体108は、熱を第1の流体106に移す際に、凝縮して冷える。
【0023】
ヒートポンプ110は、膨張器118をさらに備える。第2の流体108は、凝縮器116でその熱を再放出した後、流路系に沿って膨張器118に流れ、第2の流体108の圧力と温度とが低下するように第2の流体108を膨張させる。
【0024】
次いで、膨張器118の後、膨張した第2の流体108は、流路系に沿って蒸発器112にまたは流路系の浸漬された部分に再び戻り、そこで外部からの熱111を再び受けられる状態になることで、そのサイクルを完了する。
【0025】
また、第2のサイクル104と同様に、第1のサイクル102においても、熱交換器として動作する凝縮器116を備える。そのため、熱交換器(第2の凝縮器)116は、ヒートポンプ110および第1のサイクル102で共有されている。
【0026】
熱交換器116は、上記で説明したように、第1の流体が蒸発するように、第2の流体108から第1の流体106に熱を伝達する。
【0027】
第1の流体106は、それが液体の状態にあるときの沸点が周囲の温度よりもわずかに高くなるように選択される。第1の流体106は、例えば、ペンタンまたはイソブタンからなる。
【0028】
沸点が利用可能な温度、すなわち熱111に対して最適化されるように、閉ループシステム100、110の内部の絶対圧は制御されてよい。
【0029】
第1のサイクル102は、タービンコンバータ120をさらに備える。蒸発した第1の流体106は、熱交換器116から(ヒートポンプ110から)第1のサイクル102の流路系に沿ってタービンコンバータ120に流れ、タービンコンバータ120は、蒸発した第1の流体106のエネルギーを機械的エネルギーの形態、すなわち回転運動Rに変換する。
【0030】
第1のサイクル102は、発電機122をさらに備える。回転運動R、すなわち生成された機械的エネルギーは、発電機122において電力を生成するために使用される。
【0031】
第1のサイクル102は、(第1の)凝縮器124をさらに備える。タービンコンバータ120に回転Rを起こさせた第1の流体106は、流路系に沿ってタービンコンバータ120から凝縮器124に向かって流れ、そこで蒸発した第1の流体106が凝縮される。
【0032】
第1のサイクル102は、液体ポンプ126をさらに備える。凝縮された第1の流体106は、凝縮器124から流路系に沿って液体ポンプ126に流れ、この液体ポンプ126は、第1のサイクル102内の第1の流体106を循環させ、その結果、第1の流体106を熱交換器116に向けて導く。
【0033】
最後に、液体ポンプ126の後、第1の流体106は、流路系に沿って熱交換器116に戻ることで、そのサイクルを完了し、そこで、(ヒートポンプ110からの)第2の流体108からの熱を再び受け取る準備ができる。
【0034】
本発明は、これらの上述した実施形態に限定されるものではなく、以下の請求項の範囲内で可能なすべての実施形態を含むものである。
【図】
【国際調査報告】