IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ グアンドン ティーシーアールキュア バイオファーマ テクノロジー カンパニー リミテッドの特許一覧 ▶ ティーシーアールキュア バイオファーマ コーポレイションの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-23
(54)【発明の名称】抗ALPP CAR-T細胞療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/17 20150101AFI20220816BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20220816BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20220816BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220816BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220816BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220816BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220816BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220816BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20220816BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20220816BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20220816BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20220816BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20220816BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20220816BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20220816BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220816BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
A61K35/17 Z
C12N15/13 ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K19/00
C07K16/28
C07K14/705
C12N15/867 Z
C12N15/86 Z
A61K38/17
A61K39/00 H
A61P35/00
A61P37/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576442
(86)(22)【出願日】2020-06-23
(85)【翻訳文提出日】2022-02-17
(86)【国際出願番号】 US2020039084
(87)【国際公開番号】W WO2020263796
(87)【国際公開日】2020-12-30
(31)【優先権主張番号】62/865,244
(32)【優先日】2019-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521232359
【氏名又は名称】グアンドン ティーシーアールキュア バイオファーマ テクノロジー カンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】521063052
【氏名又は名称】ティーシーアールキュア バイオファーマ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】チェン ルイ
(72)【発明者】
【氏名】アレキサンダー ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ザオ リシア
(72)【発明者】
【氏名】ウルフ ブルック
(72)【発明者】
【氏名】ロアーク リアノン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AA92X
4B065AA94X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA02
4C084BA44
4C084DC50
4C084NA14
4C084ZB021
4C084ZB091
4C084ZB261
4C085AA02
4C085BB11
4C085CC03
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB64
4C087BB65
4C087CA04
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZB02
4C087ZB09
4C087ZB26
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、例えば、卵巣がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、精巣がんなどを含むALPP陽性がんを有するがん患者の治療のための抗ALPP CAR-T細胞療法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんを治療する方法であって、患者のがんを治療するために有効量の遺伝子操作された抗腫瘍ヒトT細胞を該患者に投与する段階を含み、該抗腫瘍ヒトT細胞が、CARをコードする組換えDNA配列を、該患者から抽出されたT細胞に組み込むことによって得られたものであり、コードされる該CARが、がん細胞で発現するALPPに結合するALPP抗原結合ドメインを含む、方法。
【請求項2】
前記がんが肺がんである、請求項1記載の患者を治療する方法。
【請求項3】
前記がんが胃がんである、請求項1記載の患者を治療する方法。
【請求項4】
前記がんが膵がんである、請求項1記載の患者を治療する方法。
【請求項5】
前記がんが頭頸部がんである、請求項1記載の患者を治療する方法。
【請求項6】
前記がんが結腸直腸がんである、請求項1記載の患者を治療する方法。
【請求項7】
前記がんが尿路上皮がんである、請求項1記載の患者を治療する方法。
【請求項8】
前記がんが腎がんである、請求項1記載の患者を治療する方法。
【請求項9】
前記がんが生殖器のがんである、請求項1記載の患者を治療する方法。
【請求項10】
前記生殖器のがんが卵巣がんである、請求項8記載の患者を治療する方法。
【請求項11】
前記生殖器のがんが子宮内膜がんである、請求項8記載の患者を治療する方法。
【請求項12】
前記生殖器のがんが子宮頸がんである、請求項8記載の患者を治療する方法。
【請求項13】
前記生殖器のがんが精巣がんである、請求項8記載の患者を治療する方法。
【請求項14】
がんを治療する方法であって、患者のがんを治療するために有効量の遺伝子操作された抗腫瘍ヒトT細胞を該患者に投与する段階を含み、
該抗腫瘍ヒトT細胞が、CARをコードする組換えDNA配列を、該患者から抽出されたT細胞に組み込むことによって得られたものであり、コードされる該CARが、ALPP抗原結合ドメインを含み;
該CAR-T細胞の抗原結合ドメインが、抗体または抗体フラグメントからなり;
該抗体が、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:3より選択される重鎖可変領域と、SEQ ID NO:2またはSEQ ID NO:4より選択される軽鎖可変領域とを有する、方法。
【請求項15】
前記抗体が、重鎖可変領域SEQ ID NO:1および軽鎖可変領域SEQ ID NO:2を有する、ALPPに対するマウス抗体である、請求項14記載のがんを治療する方法。
【請求項16】
前記抗体が、重鎖可変領域SEQ ID NO:3および軽鎖可変領域SEQ ID NO:4を有する、ALPPに対するヒト化抗体である、請求項14記載のがんを治療する方法。
【請求項17】
(a)胎盤アルカリホスファターゼ(ALPP)を特異的に認識する細胞外抗原結合ドメイン;(b)膜貫通ドメイン;および(c)細胞内シグナル伝達領域を含む、キメラ抗原受容体。
【請求項18】
前記抗原結合ドメインが、重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL)を含む、請求項17記載のキメラ抗原受容体。
【請求項19】
前記VHが、重鎖相補性決定領域(CDR)1、2、および3を含み、前記VLが、VL CDR1、2、および3を含み、
該VH CDR1、2、および3のアミノ酸配列ならびに該VL CDR1、2、および3のアミノ酸配列が、以下:
(1)該VH CDR1、2、および3のアミノ酸配列が、それぞれSEQ ID NO:45、46、および47に示され、該VL CDR1、2、および3のアミノ酸配列が、それぞれSEQ ID NO:48、49、および50に示される;
(2)該VH CDR1、2、および3のアミノ酸配列が、それぞれSEQ ID NO:51、52、および53に示され、該VL CDR1、2、および3のアミノ酸配列が、それぞれSEQ ID NO:54、55、および56に示される;
(3)該VH CDR1、2、および3のアミノ酸配列が、それぞれSEQ ID NO:57、58、および59に示され、該VL CDR1、2、および3のアミノ酸配列が、それぞれSEQ ID NO:60、61、および62に示される;
(4)該VH CDR1、2、および3のアミノ酸配列が、それぞれSEQ ID NO:63、64、および65に示され、該VL CDR1、2、および3のアミノ酸配列が、それぞれSEQ ID NO:66、67、および68に示される;ならびに
(5)該VH CDR1、2、および3のアミノ酸配列が、それぞれSEQ ID NO:81、82、および83に示され、該VL CDR1、2、および3のアミノ酸配列が、それぞれSEQ ID NO:84、85、および86に示される
のうちの1つである、請求項18記載のキメラ抗原受容体。
【請求項20】
前記VHが、SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、または13に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるか、またはそれを含み;前記VLが、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、または14に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるか、またはそれを含む、請求項18または19記載のキメラ抗原受容体。
【請求項21】
前記VHが、SEQ ID NO:1に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記VLが、SEQ ID NO:2に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項20記載のキメラ抗原受容体。
【請求項22】
前記VHが、SEQ ID NO:3に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記VLが、SEQ ID NO:4に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項20記載のキメラ抗原受容体。
【請求項23】
前記VHが、SEQ ID NO:5に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記VLが、SEQ ID NO:6に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項20記載のキメラ抗原受容体。
【請求項24】
前記VHが、SEQ ID NO:7に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記VLが、SEQ ID NO:8に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項20記載のキメラ抗原受容体。
【請求項25】
前記VHが、SEQ ID NO:9に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記VLが、SEQ ID NO:10に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項20記載のキメラ抗原受容体。
【請求項26】
前記VHが、SEQ ID NO:11に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記VLが、SEQ ID NO:12に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項20記載のキメラ抗原受容体。
【請求項27】
前記VHが、SEQ ID NO:13に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記VLが、SEQ ID NO:14に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項20記載のキメラ抗原受容体。
【請求項28】
前記抗原結合ドメインが、scFvを含む、請求項17~27のいずれか一項記載のキメラ抗原受容体。
【請求項29】
前記VH領域および前記VL領域が、可動性リンカーによってつながっている、請求項17~28のいずれか一項記載のキメラ抗原受容体。
【請求項30】
前記可動性リンカーが、アミノ酸配列
を含む、請求項29記載のキメラ抗原受容体。
【請求項31】
前記可動性リンカーが、アミノ酸配列
を含む、請求項29記載のキメラ抗原受容体。
【請求項32】
ヒンジ領域をさらに含む、請求項17~31のいずれか一項記載のキメラ抗原受容体。
【請求項33】
前記ヒンジ領域が、IgG、CD8、またはCD28に由来する膜近位領域を含む、請求項32記載のキメラ抗原受容体。
【請求項34】
前記ヒンジ領域が、CD8の膜近位領域を含む、請求項33記載のキメラ抗原受容体。
【請求項35】
前記膜貫通ドメインが、CD4、CD8、またはCD28の膜貫通領域を含む、請求項17~34のいずれか一項記載のキメラ抗原受容体。
【請求項36】
前記膜貫通ドメインが、CD8の膜貫通領域を含む、請求項35記載のキメラ抗原受容体。
【請求項37】
前記ヒンジ領域および/または前記膜貫通領域がヒトCD8に由来する、請求項34または36記載のキメラ抗原受容体。
【請求項38】
SEQ ID NO:38に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:38と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項17~37のいずれか一項記載のキメラ抗原受容体。
【請求項39】
前記細胞内シグナル伝達領域が、活性化細胞質シグナル伝達ドメインを含む、請求項17~38のいずれか一項記載のキメラ抗原受容体。
【請求項40】
前記活性化細胞質シグナル伝達ドメインが、T細胞において一次活性化シグナルを誘導することができ、T細胞受容体(TCR)の構成要素であり、かつ/または免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)を含む、請求項39記載のキメラ抗原受容体。
【請求項41】
前記細胞内シグナル伝達領域が、CD3ゼータの機能性シグナル伝達ドメインであるか、またはそれを含む、請求項17~40記載のキメラ抗原受容体。
【請求項42】
前記CD3ゼータがヒトCD3ゼータである、請求項41記載のキメラ抗原受容体。
【請求項43】
前記細胞内シグナル伝達領域が、SEQ ID NO:40に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:40と少なくとも90%配列同一であるアミノ酸配列であるか、またはそれを含む、請求項42記載のキメラ抗原受容体。
【請求項44】
前記細胞内シグナル伝達領域が、共刺激シグナル伝達領域をさらに含む、請求項17~43のいずれか一項記載のキメラ抗原受容体。
【請求項45】
前記共刺激シグナル伝達領域が、前記膜貫通ドメインと前記細胞内シグナル伝達領域との間にある、請求項44記載のキメラ抗原受容体。
【請求項46】
前記共刺激シグナル伝達領域が、MHCクラスI分子、TNF受容体タンパク質、免疫グロブリン様タンパク質、サイトカイン受容体、インテグリン、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAMタンパク質)、活性化NK細胞受容体、BTLA、Tollリガンド受容体、OX40、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CDS、ICAM-1、LFA-1、CD11a/CD18、4-1BB(CD137)、B7-H3、CDS、ICAM-1、ICOS(CD278)、GITR、BAFFR、LIGHT、HVEM(LIGHTR)、KIRDS2、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、NKp44、NKp30、NKp46、CD19、CD4、CD8アルファ、CD8ベータ、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7Rアルファ、ITGA4、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、NKG2D、NKG2C、TNFR2、TRANCE/RANKL、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、CD69、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP-76、PAG/Cbp、およびCD19aからなる群より選択されるタンパク質に由来する機能性シグナル伝達ドメインを含む、請求項44または45記載のキメラ抗原受容体。
【請求項47】
前記共刺激シグナル伝達領域が、OX40、CD28、4-1BB、ICOSに由来する機能性シグナル伝達ドメイン、またはそのシグナル伝達部分であるか、またはそれを含む、請求項46記載のキメラ抗原受容体。
【請求項48】
前記共刺激シグナル伝達領域が、4-1BBの細胞内シグナル伝達ドメインを含む、請求項47記載のキメラ抗原受容体。
【請求項49】
前記4-1BBが、ヒト4-1BBである、請求項48記載のキメラ抗原受容体。
【請求項50】
前記共刺激シグナル伝達領域が、SEQ ID NO:39に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:39と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列であるか、またはそれを含む、請求項49記載のキメラ抗原受容体。
【請求項51】
前記共刺激シグナル伝達領域が、CD28および4-1BBの細胞内シグナル伝達ドメインを含む、請求項47記載のキメラ抗原受容体。
【請求項52】
前記CD28がヒトCD28であり、前記4-1BBがヒト4-1BBである、請求項50記載のキメラ抗原受容体。
【請求項53】
前記共刺激シグナル伝達領域が、SEQ ID NO:90に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:90と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列であるか、またはそれを含む、請求項52記載のキメラ抗原受容体。
【請求項54】
SEQ ID NO:18、20、22、24、26、28、30、91、92、または93に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、キメラ抗原受容体。
【請求項55】
前記アミノ酸配列が、SEQ ID NO:18と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である、請求項54記載のキメラ抗原受容体。
【請求項56】
前記アミノ酸配列が、SEQ ID NO:20と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である、請求項54記載のキメラ抗原受容体。
【請求項57】
前記アミノ酸配列が、SEQ ID NO:22と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である、請求項54記載のキメラ抗原受容体。
【請求項58】
前記アミノ酸配列が、SEQ ID NO:24と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である、請求項54記載のキメラ抗原受容体。
【請求項59】
前記アミノ酸配列が、SEQ ID NO:26と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である、請求項54記載のキメラ抗原受容体。
【請求項60】
前記アミノ酸配列が、SEQ ID NO:28と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である、請求項51記載のキメラ抗原受容体。
【請求項61】
前記アミノ酸配列が、SEQ ID NO:30と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である、請求項54記載のキメラ抗原受容体。
【請求項62】
前記アミノ酸配列が、SEQ ID NO:91と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である、請求項54記載のキメラ抗原受容体。
【請求項63】
前記アミノ酸配列が、SEQ ID NO:92と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である、請求項54記載のキメラ抗原受容体。
【請求項64】
前記アミノ酸配列が、SEQ ID NO:93と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である、請求項54記載のキメラ抗原受容体。
【請求項65】
請求項17~64のいずれか一項記載のキメラ抗原受容体をコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項66】
請求項65記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項67】
抗PD-1抗体またはその抗原結合性フラグメントをコードする核酸をさらに含む、請求項66記載のベクター。
【請求項68】
抗PD-L1抗体またはその抗原結合性フラグメントをコードする核酸をさらに含む、請求項66記載のベクター。
【請求項69】
ウイルスベクターである、請求項66~68のいずれか一項記載のベクター。
【請求項70】
前記ウイルスベクターが、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターである、請求項69記載のベクター。
【請求項71】
請求項17~64のいずれか一項記載のキメラ抗原受容体を含む、操作された細胞。
【請求項72】
請求項65記載のポリヌクレオチドまたは請求項66~70のいずれか一項記載のベクターを含む、操作された細胞。
【請求項73】
対象(例えばヒト対象)から得られた初代細胞である、請求項71または72記載の操作された細胞。
【請求項74】
細胞株である、請求項71または72記載の操作された細胞。
【請求項75】
免疫細胞である、請求項71~74のいずれか一項記載の操作された細胞。
【請求項76】
前記免疫細胞が、NK細胞またはT細胞である、請求項75記載の操作された細胞。
【請求項77】
T細胞である、請求項71~76のいずれか一項記載の操作された細胞。
【請求項78】
前記T細胞がCD8+である、請求項77記載の操作された細胞。
【請求項79】
前記T細胞がCD4+である、請求項77記載の操作された細胞。
【請求項80】
前記T細胞が、ヒト対象から単離される、請求項76~79のいずれか一項記載の操作された細胞。
【請求項81】
前記キメラ抗原受容体を発現する、請求項71~80のいずれか一項記載の操作された細胞。
【請求項82】
サイトカインおよび/または共刺激リガンドを発現する、請求項71~81のいずれか一項記載の操作された細胞。
【請求項83】
前記サイトカインおよび/または共刺激リガンドが膜に係留される、請求項82記載の操作された細胞。
【請求項84】
前記サイトカインおよび/または共刺激リガンドが分泌される、請求項82記載の操作された細胞。
【請求項85】
前記サイトカインが、IL-2、IL-5、またはIL-12である、請求項82~84のいずれか一項記載の操作された細胞。
【請求項86】
前記共刺激リガンドが、CD40L(CD154)または41-BBL(CD137L)である、請求項82~84のいずれか一項記載の操作された細胞。
【請求項87】
抗体またはその抗原結合性フラグメント(例えばscFv)を発現する、請求項71~86のいずれか一項記載の操作された細胞。
【請求項88】
前記抗体またはその抗原結合性フラグメントが、免疫チェックポイント阻害剤である、請求項87記載の操作された細胞。
【請求項89】
前記抗体またはその抗原結合性フラグメントが、PD-1、PD-L1、またはCTLA-4に特異的に結合する、請求項88記載の操作された細胞。
【請求項90】
請求項66~70記載のベクターをインビトロまたはエクスビボで細胞に導入する段階を含む、操作された細胞を作製するための方法。
【請求項91】
前記ベクターがウイルスベクターであり、前記導入する段階が形質導入によって実行される、請求項90記載の方法。
【請求項92】
細胞の集団を生成する方法であって、細胞に核酸を導入する段階を含み、該核酸が、請求項65記載のポリヌクレオチド、または請求項17~64のいずれか一項記載のキメラ抗原受容体をコードする核酸を含む、方法。
【請求項93】
対象におけるALPP関連疾患または障害を治療する方法であって、請求項71~89のいずれか一項記載の操作された細胞を該対象に投与する段階を含む、方法。
【請求項94】
前記ALPP関連疾患または障害ががんである、請求項93記載の方法。
【請求項95】
前記がんが、精巣がん、子宮内膜がん、卵巣がん、子宮頸がん、尿路上皮がん、膵がん、肝がん、または胃がんである、請求項94記載の方法。
【請求項96】
前記対象にチェックポイント阻害剤を投与する段階をさらに含む、請求項93~95のいずれか一項記載の方法。
【請求項97】
前記チェックポイント阻害剤が、抗PD-1抗体もしくはその抗原結合性フラグメント、抗PD-L1抗体もしくはその抗原結合性フラグメント、または抗CTLA-4抗体もしくはその抗原結合性フラグメントである、請求項96記載の方法。
【請求項98】
抗ALPP抗体またはその抗原結合性フラグメントであって、以下:
相補性決定領域(CDR)1、2、および3を含む重鎖可変領域(VH)であって、該VH CDR1領域が、選択されたVH CDR1のアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、該VH CDR2領域が、選択されたVH CDR2のアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、該VH CDR3領域が、選択されたVH CDR3のアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、VH;ならびに
CDR1、2、および3を含む軽鎖可変領域(VL)であって、該VL CDR1領域が、選択されたVL CDR1のアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、該VL CDR2領域が、選択されたVL CDR2のアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、該VL CDR3領域が、選択されたVL CDR3のアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、VL
を含み、
ここで、該選択されたVH CDR1、2、および3のアミノ酸配列ならびに該選択されたVL CDR1、2、および3のアミノ酸配列が、以下:
(1)該選択されたVH CDR1、2、および3のアミノ酸配列が、それぞれSEQ ID NO:51、52、および53に示され、該選択されたVL CDR1、2、および3のアミノ酸配列が、それぞれSEQ ID NO:54、55、および56に示される;
(2)該選択されたVH CDR1、2、および3のアミノ酸配列が、それぞれSEQ ID NO:57、58、および59に示され、該選択されたVL CDR1、2、および3のアミノ酸配列が、それぞれSEQ ID NO:60、61、および62に示される;
(3)該選択されたVH CDR1、2、および3のアミノ酸配列が、それぞれSEQ ID NO:63、64、および65に示され、該選択されたVL CDR1、2、および3のアミノ酸配列が、それぞれSEQ ID NO:66、67、および68に示される;ならびに
(4)該選択されたVH CDR1、2、および3のアミノ酸配列が、それぞれSEQ ID NO:81、82、および83に示され、該選択されたVL CDR1、2、および3のアミノ酸配列が、それぞれSEQ ID NO:84、85、および86に示される
のうちの1つである、抗ALPP抗体またはその抗原結合性フラグメント。
【請求項99】
ALPPに結合する抗体またはその抗原結合性フラグメントであって、選択された重鎖可変領域(VH)配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含むVH、および選択された軽鎖可変領域(VL)配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含むVLを含み、該選択されたVH配列が、SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、および13より選択され、該選択されたVL配列が、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、および14より選択される、ALPPに結合する抗体またはその抗原結合性フラグメント。
【請求項100】
ヒトALPPに特異的に結合する、請求項98または99記載の抗体またはその抗原結合性フラグメント。
【請求項101】
ヒト化抗体またはその抗原結合性フラグメントである、請求項98~100のいずれか一項記載の抗体またはその抗原結合性フラグメント。
【請求項102】
単鎖可変フラグメント(scFv)である、請求項98~101のいずれか一項記載の抗体またはその抗原結合性フラグメント。
【請求項103】
請求項98~102のいずれか一項記載の抗体またはその抗原結合性フラグメントのVH CDR1、2、および3、ならびにVL CDR1、2、および3を含む、抗体またはその抗原結合性フラグメント。
【請求項104】
請求項98~103のいずれか一項記載の抗体またはその抗原結合性フラグメントのVH CDR1、2、および3、ならびにVL CDR1、2、および3を含む、キメラ抗原受容体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2019年6月23日に出願された米国仮出願第62/865,244号の恩典を主張する。前記出願の全内容は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
技術分野
本開示は、がん患者の治療のための抗ALPP CAR-T細胞療法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
卵巣がんは、女性におけるすべてのがんのおよそ3%を占め、米国女性のがん関連死の5位である。早期症状および有効な卵巣がんスクリーニング検査の欠如のせいで、卵巣がんは、女性生殖器系のすべてのがんの中で最も高い死亡率を有する。ALPP(胎盤アルカリホスファターゼ)の発現と卵巣がんとの間に数多くの関連性が報告されている。正常組織では、ALPPは、妊娠末期の胎盤および子宮内膜でのみ検出可能である。対照的に、ALPPは、卵巣がん、特に卵巣腺がん、漿液性嚢胞腺がん、未分化がん、および未分化胚細胞腫において強く発現する。加えて、ALPPはまた、一部の他の悪性腫瘍、特に精巣セミノーマおよび子宮内膜がんにおいて検出される。
【0004】
免疫細胞療法の最近の臨床的および商業的成功は、この領域に大きな関心を生じさせた。がんの治療におけるこの進歩にもかかわらず、特定のがんに対する様々な処置の有効性は、比較的乏しいままである。したがって、有効な抗がん療法について未解決のニーズが存在する。
【発明の概要】
【0005】
概要
本開示は、例えば、卵巣がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、精巣がんなどを含むALPP陽性がんを有するがん患者の治療のための抗ALPP CAR-T細胞療法に関する。遺伝子操作されたT細胞は、標的細胞を認識および攻撃することができる。これらのT細胞は、宿主から単離することができ、例えば適切なウイルス媒介性トランスフェクション法または非ウイルス性トランスフェクション法を使用して、遺伝的に改変することができる。その後、改変されたT細胞を養子細胞療法として患者に注入し戻すことができる。
【0006】
一局面では、本開示は、患者のがんを治療するために有効量の遺伝子操作された抗腫瘍ヒトT細胞を該患者に投与する段階を含む、がんを治療する方法に関する。いくつかの態様では、抗腫瘍ヒトT細胞は、CARをコードする組換えDNA配列を、患者から抽出されたT細胞に組み込むことによって得られたものである。いくつかの態様では、コードされるCARは、がん細胞で発現するALPPに結合するALPP抗原結合ドメインを含む。
【0007】
いくつかの態様では、がんは肺がんである。いくつかの態様では、がんは胃がんである。いくつかの態様では、がんは膵がんである。いくつかの態様では、がんは頭頸部がんである。いくつかの態様では、がんは結腸直腸がんである。いくつかの態様では、がんは尿路上皮がんである。いくつかの態様では、がんは腎がんである。いくつかの態様では、がんは生殖器のがんである。いくつかの態様では、生殖器のがんは卵巣がんである。いくつかの態様では、生殖器のがんは子宮内膜がんである。いくつかの態様では、生殖器のがんは子宮頸がんである。いくつかの態様では、生殖器のがんは精巣がんである。
【0008】
一局面では、本開示は、患者のがんを治療するために有効量の遺伝子操作された抗腫瘍ヒトT細胞を該患者に投与段階を含む、がんを治療する方法に関する。いくつかの態様では、抗腫瘍ヒトT細胞は、CARをコードする組換えDNA配列を、患者から抽出されたT細胞に組み込むことによって得られたものである。いくつかの態様では、コードされるCARは、ALPP抗原結合ドメインを含む。いくつかの態様では、CAR-T細胞抗原結合ドメインは、抗体または抗体フラグメントからなる。いくつかの態様では、抗体は、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:3より選択される重鎖可変領域と、SEQ ID NO:2またはSEQ ID NO:4より選択される軽鎖可変領域とを有する。
【0009】
一局面では、本開示は、本明細書に記載される、がんを治療する方法に関する。いくつかの態様では、抗体は、重鎖可変領域SEQ ID NO:1および軽鎖可変領域SEQ ID NO:2を有する、ALPPに対するマウス抗体である。
【0010】
一局面では、本開示は、本明細書に記載されるがんを治療する方法に関する。いくつかの態様では、抗体は、重鎖可変領域SEQ ID NO:3および軽鎖可変領域 SEQ ID NO:4を有する、ALPPに対するヒト化抗体である。
【0011】
一局面では、本開示は、(a)胎盤アルカリホスファターゼ(ALPP)を特異的に認識する細胞外抗原結合ドメイン;(b)膜貫通ドメイン;および(c)細胞内シグナル伝達領域を含む、キメラ抗原受容体に関する。
【0012】
いくつかの態様では、抗原結合ドメインは、重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。
【0013】
いくつかの態様では、VHは、重鎖相補性決定領域(CDR)1、2、および3を含み、VLは、VL CDR1、2、および3を含む。いくつかの態様では、VH CDR1、2、および3のアミノ酸配列ならびにVL CDR1、2、および3のアミノ酸配列は、以下のうちの1つである:
(1)VH CDR1、2、および3のアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:45、46、および47に示され、VL CDR1、2、および3のアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:48、49、および50に示される;
(2)VH CDR1、2、および3のアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:51、52、および53に示され、VL CDR1、2、および3のアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:54、55、および56に示される;
(3)VH CDR1、2、および3のアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:57、58、および59に示され、VL CDR1、2、および3のアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:60、61、および62に示される;
(4)VH CDR1、2、および3のアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:63、64、および65に示され、VL CDR1、2、および3のアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:66、67、および68に示される;ならびに
(5)VH CDR1、2、および3のアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:81、82、および83に示され、VL CDR1、2、および3のアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:84、85、および86に示される。
【0014】
いくつかの態様では、VHは、SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、または13に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるか、またはそれを含み;VLは、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、または14に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるか、またはそれを含む。
【0015】
いくつかの態様では、VHは、SEQ ID NO:1に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、VLは、SEQ ID NO:2に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0016】
いくつかの態様では、VHは、SEQ ID NO:3に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、VLは、SEQ ID NO:4に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0017】
いくつかの態様では、VHは、SEQ ID NO:5に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、VLは、SEQ ID NO:6に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0018】
いくつかの態様では、VHは、SEQ ID NO:7に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、VLは、SEQ ID NO:8に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0019】
いくつかの態様では、VHは、SEQ ID NO:9に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、VLは、SEQ ID NO:10に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0020】
いくつかの態様では、VHは、SEQ ID NO:11に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、VLは、SEQ ID NO:12に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0021】
いくつかの態様では、VHは、SEQ ID NO:13に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、VLは、SEQ ID NO:14に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0022】
いくつかの態様では、抗原結合ドメインは、scFvを含む。
【0023】
いくつかの態様では、VH領域およびVL領域は、可動性リンカーによってつながっている。
【0024】
いくつかの態様では、可動性リンカーは、アミノ酸配列
を含む。いくつかの態様では、可動性リンカーは、アミノ酸配列
を含む。
【0025】
いくつかの態様では、キメラ抗原受容体は、ヒンジ領域をさらに含む。いくつかの態様では、ヒンジ領域は、IgG、CD8、またはCD28に由来する膜近位領域を含む。いくつかの態様では、ヒンジ領域は、CD8の膜近位領域を含む。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、CD4、CD8、またはCD28の膜貫通領域を含む。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、CD8の膜貫通領域を含む。いくつかの態様では、ヒンジ領域および/または膜貫通領域はヒトCD8に由来する。いくつかの態様では、キメラ抗原受容体は、SEQ ID NO:38に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:38と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0026】
いくつかの態様では、細胞内シグナル伝達領域は、活性化細胞質シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの態様では、活性化細胞質シグナル伝達ドメインは、T細胞において一次活性化シグナルを誘導することができ、T細胞受容体(TCR)の構成要素であり、かつ/または免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)を含む。いくつかの態様では、細胞内シグナル伝達領域は、CD3ゼータの機能性シグナル伝達ドメインであるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、CD3ゼータはヒトCD3ゼータである。いくつかの態様では、細胞内シグナル伝達領域は、SEQ ID NO:40に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:40と少なくとも90%配列同一であるアミノ酸配列であるか、またはそれを含む。
【0027】
いくつかの態様では、細胞内シグナル伝達領域は、共刺激シグナル伝達領域をさらに含む。いくつかの態様では、共刺激シグナル伝達領域は、膜貫通ドメインと細胞内シグナル伝達領域との間にある。
【0028】
いくつかの態様では、共刺激シグナル伝達領域は、MHCクラスI分子、TNF受容体タンパク質、免疫グロブリン様タンパク質、サイトカイン受容体、インテグリン、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAMタンパク質)、活性化NK細胞受容体、BTLA、Tollリガンド受容体、OX40、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CDS、ICAM-1、LFA-1、CD11a/CD18、4-1BB(CD137)、B7-H3、CDS、ICAM-1、ICOS(CD278)、GITR、BAFFR、LIGHT、HVEM(LIGHTR)、KIRDS2、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、NKp44、NKp30、NKp46、CD19、CD4、CD8アルファ、CD8ベータ、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7Rアルファ、ITGA4、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、NKG2D、NKG2C、TNFR2、TRANCE/RANKL、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、CD69、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP-76、PAG/Cbp、およびCD19aからなる群より選択されるタンパク質に由来する機能性シグナル伝達ドメインを含む。
【0029】
いくつかの態様では、共刺激シグナル伝達領域は、OX40、CD28、4-1BB、ICOSに由来する機能性シグナル伝達ドメイン、またはそのシグナル伝達部分であるか、またはそれを含む。いくつかの態様では、共刺激シグナル伝達領域は、4-1BBの細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの態様では、4-1BBはヒト4-1BBである。いくつかの態様では、共刺激シグナル伝達領域は、SEQ ID NO:39に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:39と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列であるか、またはそれを含む。
【0030】
いくつかの態様では、共刺激シグナル伝達領域は、CD28および4-1BBの細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの態様では、CD28はヒトCD28であり、4-1BBはヒト4-1BBである。いくつかの態様では、共刺激シグナル伝達領域は、SEQ ID NO:90に示されるアミノ酸配列またはSEQ ID NO:90と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列であるか、またはそれを含む。
【0031】
一局面では、本開示は、SEQ ID NO:18、20、22、24、26、28、30、91、92、または93に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、キメラ抗原受容体に関する。
【0032】
いくつかの態様では、アミノ酸配列は、SEQ ID NO:18と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である。いくつかの態様では、アミノ酸配列は、SEQ ID NO:20と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である。いくつかの態様では、アミノ酸配列は、SEQ ID NO:22と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である。いくつかの態様では、アミノ酸配列は、SEQ ID NO:24と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である。いくつかの態様では、アミノ酸配列は、SEQ ID NO:26と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である。いくつかの態様では、アミノ酸配列は、SEQ ID NO:28と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である。いくつかの態様では、アミノ酸配列は、SEQ ID NO:30と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である。いくつかの態様では、アミノ酸配列は、SEQ ID NO:91と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である。いくつかの態様では、アミノ酸配列は、SEQ ID NO:92と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である。いくつかの態様では、アミノ酸配列は、SEQ ID NO:93と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である。
【0033】
一局面では、本開示は、本明細書に記載されるキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドに関する。
【0034】
一局面では、本開示は、本明細書に記載されるポリヌクレオチドを含むベクターに関する。
【0035】
いくつかの態様では、ベクターは、抗PD-1抗体またはその抗原結合性フラグメントをコードする核酸をさらに含む。いくつかの態様では、ベクターは、抗PD-L1抗体またはその抗原結合性フラグメントをコードする核酸をさらに含む。
【0036】
いくつかの態様では、ベクターはウイルスベクターである。いくつかの態様では、ウイルスベクターは、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターである。
【0037】
一局面では、本開示は、本明細書に記載されるキメラ抗原受容体を含む操作された細胞に関する。
【0038】
一局面では、本開示は、本明細書に記載されるポリヌクレオチドまたはベクターを含む操作された細胞に関する。
【0039】
いくつかの態様では、操作された細胞は、対象(例えばヒト対象)から得られた初代細胞である。いくつかの態様では、操作された細胞は細胞株である。いくつかの態様では、操作された細胞は免疫細胞である。いくつかの態様では、免疫細胞は、NK細胞またはT細胞である。いくつかの態様では、操作された細胞はT細胞である。いくつかの態様では、T細胞はCD8+である。いくつかの態様では、T細胞はCD4+である。いくつかの態様では、T細胞はヒト対象から単離される。
【0040】
いくつかの態様では、操作された細胞は、キメラ抗原受容体を発現する。
【0041】
いくつかの態様では、操作された細胞は、サイトカインおよび/または共刺激リガンドを発現する。いくつかの態様では、サイトカインおよび/または共刺激リガンドは膜に係留される。いくつかの態様では、サイトカインおよび/または共刺激リガンドは分泌される。いくつかの態様では、サイトカインはIL-2、IL-5、またはIL-12である。いくつかの態様では、共刺激リガンドはCD40L(CD154)または41-BBL(CD137L)である。いくつかの態様では、操作された細胞は、抗体またはその抗原結合性フラグメント(例えばscFv)を発現する。
【0042】
いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合性フラグメントは免疫チェックポイント阻害剤である。いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、PD-1、PD-L1、またはCTLA-4に特異的に結合する。
【0043】
一局面では、本開示は、本明細書に記載されるベクターをインビトロまたはエクスビボで細胞に導入する段階を含む、操作された細胞を作製するための方法に関する。
【0044】
いくつかの態様では、ベクターはウイルスベクターであり、導入する段階は、形質導入によって実行される。
【0045】
一局面では、本開示は、核酸を細胞に導入する段階を含む、細胞の集団を生成する方法に関し、その際、核酸は、本明細書に記載されるポリヌクレオチド、または本明細書に記載されるキメラ抗原受容体をコードする核酸を含む。
【0046】
一局面では、本開示は、本明細書に記載される操作された細胞を対象に投与する段階を含む、対象におけるALPP関連疾患または障害を治療する方法に関する。
【0047】
いくつかの態様では、ALPP関連疾患または障害はがんである。いくつかの態様では、がんは、精巣がん、子宮内膜がん、卵巣がん、子宮頸がん、尿路上皮がん、膵がん、肝がん、または胃がんである。
【0048】
いくつかの態様では、方法は、チェックポイント阻害剤を対象に投与する段階をさらに含む。いくつかの態様では、チェックポイント阻害剤は、抗PD-1抗体もしくはその抗原結合性フラグメント、抗PD-L1抗体もしくはその抗原結合性フラグメント、または抗CTLA-4抗体もしくはその抗原結合性フラグメントである。
【0049】
一局面では、本開示は、相補性決定領域(CDR)1、2、および3を含む重鎖可変領域(VH)ならびにCDR1、2、および3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、抗ALPP抗体またはその抗原結合性フラグメントに関する。いくつかの態様では、VH CDR1領域は、選択されたVH CDR1のアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、VH CDR2領域は、選択されたVH CDR2のアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、VH CDR3領域は、選択されたVH CDR3のアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、VL CDR1領域は、選択されたVL CDR1のアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、VL CDR2領域は、選択されたVL CDR2のアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、VL CDR3領域は、選択されたVL CDR3のアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、選択されたVH CDR1、2、および3のアミノ酸配列ならびに選択されたVL CDR1、2、および3のアミノ酸配列は、以下のうちの1つである:
(1)選択されたVH CDR1、2、および3のアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:51、52、および53に示され、選択されたVL CDR1、2、および3のアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:54、55、および56に示される;
(2)選択されたVH CDR1、2、および3のアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:57、58、および59に示され、選択されたVL CDR1、2、および3のアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:60、61、および62に示される;
(3)選択されたVH CDR1、2、および3のアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:63、64、および65に示され、選択されたVL CDR1、2、および3のアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:66、67、および68に示される;ならびに
(4)選択されたVH CDR1、2、および3のアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:81、82、および83に示され、選択されたVL CDR1、2、および3のアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:84、85、および86に示される。
【0050】
一局面では、本開示は、選択されたVH配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および選択されたVL配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、ALPPに結合する抗体またはその抗原結合性フラグメントに関する。いくつかの態様では、選択されたVH配列は、SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、および13より選択され、選択されたVL配列は、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、および14より選択される。
【0051】
いくつかの態様では、抗体または抗原結合性フラグメントは、ヒトALPPに特異的に結合する。
【0052】
いくつかの態様では、抗体または抗原結合性フラグメントは、ヒト化抗体またはその抗原結合性フラグメントである。
【0053】
いくつかの態様では、抗体または抗原結合性フラグメントは、単鎖可変フラグメント(scFv)である。
【0054】
一局面では、本開示は、本明細書に記載される抗体またはその抗原結合性フラグメントのVH CDR1、2、および3、ならびにVL CDR1、2、および3を含む、抗体またはその抗原結合性フラグメントに関する。
【0055】
一局面では、本開示は、本明細書に記載される抗体またはその抗原結合性フラグメントのVH CDR1、2、および3、ならびにVL CDR1、2、および3を含む、キメラ抗原受容体に関する。
【0056】
本明細書に使用される場合の「遺伝子操作された細胞」または「遺伝的に改変された細胞」という用語は、当該細胞における核酸配列の改変を有する細胞を指し、当該細胞には、そのゲノム中に1つもしくは複数のヌクレオチドの挿入、欠失、置換、もしくは改変を有する細胞、および/または外因性核酸配列(例えばベクター)を有する細胞であって、外因性核酸配列が必ずしもゲノムに組み込まれていない細胞が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0057】
本明細書に使用される場合、「末梢血液細胞」という用語は、好酸球、好中球、T細胞、単球、K細胞、顆粒球、およびB細胞を含むが、それらに限定されるわけではない、末梢血中に通常見出される細胞を指す。
【0058】
本明細書に使用される場合、「がん」または「がん細胞」という用語は、制御されずに分裂している、例えば固形腫瘍または血液中の過剰の腫瘍細胞を形成している、細胞を指す。そのような細胞の例には、急速に増殖している細胞の成長によって特徴付けられる異常な状況または状態を有する細胞を含む。本用語は、侵襲性の病理組織学的種類またはステージにかかわらず、がん性成長、例えば腫瘍;発がん過程、転移組織、および悪性形質転換細胞、組織、または器官を含むことが意味される。がん細胞は、固形腫瘍または血液中の過剰の腫瘍細胞(例えば血液がん)を形成することができる。代替的または追加的に、それは、侵襲性の病理組織学的種類またはステージにかかわらず、すべての種類のがん性成長または発がん過程、転移組織または悪性形質転換細胞、組織、もしくは器官を含むことができる。固形腫瘍の例には、さまざまな器官系の悪性腫瘍、例えば、肉腫、腺がん、およびがん腫、例えば肝臓、肺、乳房、胃腸管(例えば結腸)、尿生殖器(例えば、腎細胞、尿路上皮細胞)、前立腺および咽頭を冒すものが含まれる。腺がんには、大部分の結腸がん、直腸がん、腎細胞がん、肝がん、非小細胞肺がん、小腸がんおよび食道がんなどの悪性腫瘍が含まれる。本明細書に記載される方法によって治療できるがんの例には、例えば、骨がん、膵がん、皮膚がん(例えば黒色腫)、頭頸部がん、皮膚もしくは眼内悪性黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、肛門部がん、胃がん、精巣がん、子宮がん、卵管がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、腟がん、外陰がん、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、食道がん、小腸がん、内分泌系がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟組織肉腫、尿道がん、陰茎がん、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病を含む慢性もしくは急性白血病、リンパ性リンパ腫、膀胱がん、腎臓もしくは尿管のがん、腎盂がん、中枢神経系(CNS)腫瘍、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮がん、扁平上皮がん、および/またはT細胞リンパ腫が含まれる。
【0059】
本明細書に使用される場合、「ベクター」という用語は、導入されたヌクレオチド配列の所望の遺伝子発現を得るためにポリヌクレオチド配列(例えば外来遺伝子)を宿主細胞に導入することができる媒体を指す。クローニングベクターは、例えば、プラスミド、ファージ、ウイルスなどを含むことができる。もっとも一般的な種類のベクターは、関心対象の遺伝子を含む追加的なDNAセグメントをライゲートすることができる閉じた環状二本鎖DNAループを指す「プラスミド」である。別の種類のベクターは、輸送されるべき核酸構築物がウイルスゲノム内にライゲートされるウイルスベクターである。ウイルスベクターは、それらが導入された宿主細胞において自律的複製することができる、または宿主細胞のゲノム内にそれら自体を組み込み、それにより、宿主ゲノムと一緒に複製される場合がある。さらに、ある種のベクターは、それらが機能的に連結される遺伝子の発現を指示することができる。そのようなベクターは、本明細書において「組換え発現ベクター」または単に「発現ベクター」と称される。いくつかの態様では、ベクターはウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)である。いくつかの態様では、ベクターはレトロウイルスベクターである。いくつかの態様では、ベクターは、レトロウイルスgag、pol、およびenv遺伝子を除去し、関心対象の遺伝子と置換することによって生み出すことができる。
【0060】
本明細書に使用される場合、「対象」は、哺乳動物、例えばヒトまたは非ヒト動物である。いくつかの態様では、細胞、細胞集団、または組成物が投与される対象、例えば患者は、哺乳動物、典型的には霊長類、例えばヒトである。いくつかの態様では、霊長類はサルまたは類人猿である。対象は、雄性または雌性であることができ、乳児、若年、青年、成体および老齢の対象を含む任意の適切な年齢であることができる。いくつかの態様では、対象は、イヌ、ネコ、ウマ、げっ歯動物、ラット、またはマウスなどの非霊長類哺乳動物である。
【0061】
本明細書に使用される場合、「T細胞」という用語は、胸腺において発生し、免疫応答に重要な役割を演じるリンパ球の種類である細胞を指す。T細胞は、細胞表面でのT細胞受容体の存在により他のリンパ球と識別することができる。
【0062】
本明細書に使用される場合、「約」という用語は、測定可能な値、例えば量、期間などを指し、特定の値からの±20%、±10%、±5%、±1%、±0.5%または±0.1%の変動を包含する。
【0063】
本明細書に使用される場合、「抗体」という用語は、少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5、または6つ)の相補性決定領域(CDR)(例えば、免疫グロブリン軽鎖に由来する3つのCDRのいずれかまたは免疫グロブリン重鎖に由来する3つのCDRのいずれか)を含有し、エピトープに特異的に結合することができる任意の抗原結合分子を指す。抗体の非限定的な例には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、単鎖抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、およびヒト化抗体が含まれる。いくつかの態様では、抗体は、ヒト抗体のFc領域を含有することができる。抗体という用語はまた、誘導体、例えば二重特異性抗体、単鎖抗体、ダイアボディー(diabody)、線状抗体、および抗体フラグメントから形成された多重特異性抗体を含む。
【0064】
本明細書に使用される場合、「抗原結合性フラグメント」という用語は、完全長抗体の部分を指し、その際、該抗体の該部分は、抗原に特異的に結合することができる。いくつかの態様では、抗原結合性フラグメントは、少なくとも1つの可変ドメイン(例えば、重鎖の可変ドメインまたは軽鎖の可変ドメイン)を含有する。抗体フラグメントの非限定的な例には、例えば、Fab、Fab'、F(ab')2、およびFvフラグメントが含まれる。
【0065】
本明細書に使用される場合、「ヒト化抗体」という用語は、非ヒト(例えばマウス)免疫グロブリンに由来する最小配列を含有し、かつヒト免疫グロブリンに由来する配列を含有する、非ヒト抗体を指す。非限定的な例では、ヒト化抗体は、レシピエント抗体の超可変(例えばCDR)領域残基が、所望の特異性、親和性、および能力を有する非ヒト抗体(例えばドナー抗体)、例えば、マウス、ラット、またはウサギ抗体に由来する超可変(例えばCDR)領域残基によって置換されたヒト抗体(レシピエント抗体)である。いくつかの態様では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト(例えばマウス)免疫グロブリン残基によって置換されている。いくつかの態様では、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体に見出されない残基を含有し得る。これらの改変は、抗体の性能をさらに洗練するために行うことができる。いくつかの態様では、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含有し、可変ドメインでは、超可変ループ(CDR)のすべてまたは実質的にすべては、非ヒト(例えばマウス)免疫グロブリンのものに対応し、フレームワーク領域のすべてまたは実質的にすべては、ヒト免疫グロブリンのものである。ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)の、典型的にはヒト免疫グロブリンの、少なくとも一部分を含有することができる。ヒト化抗体を、当技術分野において公知の分子生物学的方法を使用して作製することができる。ヒト化抗体を生成するための方法の非限定的な例は、本明細書に記載される。
【0066】
本明細書に使用される場合、「単鎖抗体」という用語は、抗原に特異的に結合することができる少なくとも2つの免疫グロブリン可変ドメイン(例えば、哺乳動物免疫グロブリン重鎖または軽鎖の可変ドメイン)を含有する単一のポリペプチドを指す。単鎖抗体の非限定的な例は、本明細書に記載されている。
【0067】
抗体または抗体関連分子(例えばCAR)を指す場合に本明細書に使用される「特異的に結合すること」および「特異的に結合する」という語句は、抗体が、好ましくは他の分子よりも、その標的分子(例えばALPP)と相互作用することを意味する。それは、該相互作用が、標的分子上の特定構造(すなわち、抗原決定基またはエピトープ)の存在に依存するからであり;言い換えると、その試薬は、一般的にすべての分子ではなく、むしろ、特異的構造を含む分子を認識し、それと結合する。標的分子に特異的に結合する抗体は、標的特異的抗体と称される場合がある。例えば、ALPP分子に特異的に結合する抗体は、ALPP特異的抗体または抗ALPP抗体と称される場合がある。
【0068】
本明細書に使用される場合、「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、少なくとも2つのアミノ酸の任意長のアミノ酸ポリマーを指すために互換的に使用される。
【0069】
本明細書に使用される場合、「ポリヌクレオチド」、「核酸分子」、および「核酸配列」という用語は、少なくとも2つのヌクレオチドの任意長のヌクレオチドポリマーを指すために本明細書において互換的に使用され、非限定的に、DNA、RNA、DNA/RNAハイブリッド、およびそれらの改変物を含む。
【0070】
特に定義されないかぎり、本明細書に使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって通常理解されるものと同じ意味を有する。方法および材料が、本発明における使用のために本明細書に記載されているが、当技術分野において公知の他の適切な方法および材料も使用することができる。材料、方法、および例は、単に例証であり、限定することを意図しない。本明細書に言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、配列、データベースエントリー、および他の参考文献は、それらの全体で参照により組み入れられる。矛盾する場合、定義を含む本明細書が優先される。
【0071】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および図面から、ならびに特許請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0072】
例示的な態様は、参照された図面において例証される。本明細書において開示される態様および図面は、限定的ではなく例証的と見なされるべきであることが意図される。
【0073】
図1A】A02 CARプラスミドについての配列マップを示す。
図1B】A03 CARプラスミドについての配列マップを示す。
図1C】A06 CARプラスミドについての配列マップを示す。
図1D】A02P03 CARプラスミドについての配列マップを示す。T2Aは、2A自己切断型ペプチドをコードする。
図1E】A02PL01 CARプラスミドについての配列マップを示す。T2Aは、2A自己切断型ペプチドをコードする。
図2】Jurkat T細胞におけるA02およびA03 CARの発現を示す。Jurkat細胞に形質導入しなかった(UT)、またはA02もしくはA03 CARを発現するように形質導入した。形質導入の4日後にプロテインL染色によってCARの発現レベルを測定した。
図3】A02およびA03 CAR-T細胞の活性化を示す。非形質導入(UT)Jurkat細胞およびJurkat細胞のみ(ブランク)を対照として役立てた。
図4】ヒトT細胞におけるA02およびA03 CARの発現を示す。A02またはA03 CARを発現するようにヒトPBMCに形質導入した。形質導入の4日後にプロテインL染色によってCARの発現を測定した。
図5】CD4+ A02およびA03 CAR-T細胞の活性化を示す。ヒトCD4+ T細胞における細胞内IFN-γ発現をフローサイトメトリーによって測定した。非形質導入(UT)T細胞およびT細胞のみ(ブランク)を対照として役立てた。
図6】CD8+ A02およびA03 CAR-T細胞の活性化を示す。ヒトCD8+ T細胞における細胞内IFN-γ発現をフローサイトメトリーによって測定した。非形質導入(UT)T細胞およびT細胞のみ(ブランク)を対照として役立てた。
図7】A02およびA03 CAR-T細胞の競合死滅活性を示す。各96ウェルプレートは4つの反復を含んでいた。生きたSiHaおよび293T細胞をフローサイトメトリーによって分析し、残存した生きたSiHaおよび293T細胞の数に基づいて競合死滅効率を計算した。
図8】A02およびA03 CAR-T細胞のインビボ毒性を示す。体重変化を測定することによってインビボ毒性を評価した。
図9】A02およびA03 CAR-T細胞のインビボ抗腫瘍効力を示す。***、非形質導入型と比較してp=0.0009;*、非形質導入型と比較してp=0.0281。
図10A】ELISAによって決定された場合のALPPへの抗ALPP抗体の結合の結合曲線のセットを示す。
図10B】細胞ベースの結合アッセイによって決定された場合のALPPへの抗ALPP抗体の結合の結合曲線のセットを示す。
図11A】プロテインLアッセイによって決定された場合の非形質導入(UT)T細胞、またはA02、A03、A05、A06、もしくはA07 CAR-T細胞のCAR発現レベルを示すグラフである。
図11B】非形質導入(UT)T細胞、またはA02、A03、A05、A06、もしくはA07 CAR-T細胞におけるIFNγの発現を示すフローサイトメトリーの結果のセットである。CAR-T細胞をSiHaまたは293T細胞と共培養した。CD8+細胞をフローサイトメトリーによって分析した。
図11C】非形質導入(UT)T細胞、またはA02、A03、A05、A06、もしくはA07 CAR-T細胞におけるIFNγの発現を示すフローサイトメトリーの結果のセットである。CAR-T細胞をSiHaまたは293T細胞と共培養した。CD4+細胞をフローサイトメトリーによって分析した。
図11D】様々なエフェクター対標的細胞比での競合死滅曲線を示す。
図12A】プロテインLアッセイによって決定された場合の非形質導入(UT)T細胞、またはA02、A02P03、もしくはA02PL01 CAR-T細胞のCAR発現レベルを示すグラフである。
図12B】非形質導入(UT)T細胞、またはA02、A02P03、もしくはA02PL01 CAR-T細胞におけるIFNγ発現を示すフローサイトメトリーの結果のセットである。CAR-T細胞をSiHaまたは293T細胞と共培養した。CD8+細胞をフローサイトメトリーによって分析した。
図12C】非形質導入(UT)T細胞、A02、A02P03、もしくはA02PL01 CAR-T細胞におけるIFNγ発現を示すフローサイトメトリーの結果のセットである。CAR-T細胞をSiHaまたは293T細胞と共培養した。CD4+細胞をフローサイトメトリーによって分析した。
図12D】様々なエフェクター対標的細胞比での競合死滅曲線を示す。
図13A】SiHa細胞を移植され、非形質導入T細胞、またはA02、A02P03、A02PL01、A03、もしくはA06 CAR-T細胞を注射されたNSGマウス(The Jackson Laboratory)の生存曲線を示す。
図13B】SiHa細胞を移植され、非形質導入T細胞、またはA02、A02P03、A02PL01、A03、もしくはA06 CAR-T細胞を注射されたNSGマウスのマウス体重変化のパーセンテージを示す。
図14】重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)のCDR1、2、3配列を示す。
図15-1】本開示に記載される配列を提供する。
図15-2】本開示に記載される配列を提供する。
図15-3】本開示に記載される配列を提供する。
図15-4】本開示に記載される配列を提供する。
図15-5】本開示に記載される配列を提供する。
図15-6】本開示に記載される配列を提供する。
図15-7】本開示に記載される配列を提供する。
図15-8】本開示に記載される配列を提供する。
図15-9】本開示に記載される配列を提供する。
図15-10】本開示に記載される配列を提供する。
図15-11】本開示に記載される配列を提供する。
図15-12】本開示に記載される配列を提供する。
図15-13】本開示に記載される配列を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0074】
詳細な説明
ヒト免疫系は、感染したまたは損傷を受けた細胞のみならず、がんになった細胞を認識および除去することができる。免疫細胞療法は、ヒト免疫系を利用し、がん療法に革命をもたらしている。それは、患者への免疫細胞の移入を伴う。細胞は、免疫系に由来することがもっとも一般的であり、患者または別の個体に起源をもつことができる。自己がん免疫療法において、免疫細胞は患者から抽出され、遺伝的に改変され、インビトロ培養され、同じ患者に戻される。比較として、同種療法は、ドナー対象から単離され、それから拡大増殖された細胞を伴う。免疫細胞の多数の異なる種類が免疫細胞療法に使用される。これらの細胞療法には、例えば、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)療法、操作T細胞受容体(TCR)療法、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法、およびナチュラルキラー(NK)細胞療法が含まれる。
【0075】
キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞としても知られる)は、免疫療法に使用するための、人工T細胞受容体を産生するように遺伝子操作されたT細胞である。CAR-T細胞療法では、キメラ抗原受容体をコードするベクターによって細胞がトランスフェクトされる。キメラ抗原受容体は、がん抗原に結合することができ、がん抗原がMHCによって提示されることを必要としない。いくつかの他の免疫細胞もまた、これらの細胞療法に使用することができる。例えば、ナチュラルキラー細胞にもまた、キメラ抗原受容体をコードするベクターをトランスフェクトすることができる。
【0076】
胎盤型アルカリホスファターゼ(PLAPまたはALPP)は、正常なヒト組織発現が胎盤、子宮頸部、および子宮に限られる、形質膜に局在する酵素である。しかし、ALPPは、卵巣がん、子宮頸がん、および精巣がんにおいても発現し、したがってALPPは、これらの腫瘍型の分子マーカーと見みなされている。理論的には、正常組織におけるALPPのこの限られた発現および上記がんにおけるそのアップレギュレーションを、がんの診断および予後予測を改善するためのみならず、大きな副作用のない新しい治療法を開発するために、うまく活用することができる。
【0077】
本開示は、ALPP陽性腫瘍を有するがん患者を治療するための抗ALPP CAR-T細胞療法に関する。さらに本開示は、ALPP陽性がんを有する患者に対する細胞ベース療法として使用することができる抗ALPP CAR-T細胞を作製するための方法を開示する。
【0078】
一局面では、ALPP陽性腫瘍を有する患者のために開発された新規な治療法としての抗ALPP CAR-T療法が、本明細書において提供される。この抗ALPP CARを操作して患者特異的T細胞内に導入し、それを単一の治療剤として送達することができる。さらに、これらの患者特異的抗ALPP CAR-T細胞は、多種多様なALPP関連がんに対して改善された効力および特異性を示す。上述のように、正常ヒト組織においてALPPの発現は高度に限定されている。そのことは、このタンパク質を標的とするCAR-T細胞療法が忍容性良好であることができることを示唆している。事実、子宮頸がんの動物モデルを使用して本明細書において行われた研究は、抗ALPP CAR-T細胞療法が実際に安全で効果的であることを実証している。
【0079】
いくつかの態様では、本開示は、個別化抗腫瘍免疫療法のための方法を提供し、その際、抗ALPP CAR操作T細胞は、患者の血液から作製される。これらの操作されたT細胞を、患者に細胞療法産物として再注入することができる。次いで、そのような産物を、とりわけ卵巣がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、または精巣がんを有する患者を含む、ALPP陽性腫瘍を有する任意の患者に適用することができる。
【0080】
いくつかの態様では、本開示は、操作されたT細胞を作製する方法を提供し、その際、これらのT細胞に、抗ALPP CAR導入遺伝子を含有するレトロウイルスベクターがトランスフェクトされ、次いでインビトロで拡大増殖される。これらの拡大増殖された細胞は、患者に注入し戻され、そこで操作されたT細胞は、ALPP陽性腫瘍細胞を同定および破壊する。
【0081】
いくつかの態様では、MP71レトロウイルス構築物は、標準的な分子生物学的技法を用いて生成される。さらに、A02(図1A)およびA03(図1B)は、本開示によるレトロウイルスプラスミドマップを開示し、その際、A02(図1A)は、ALPPを認識しているマウスH17E2モノクローナル抗体をベースとするのに対し、A03(図1B)は、H17E2のヒト化バージョンである。
【0082】
さらに本開示は、異なる種類のがんに及ぼすCAR-T細胞の効果を検出するインビトロ方法を提供する。ALPP抗原に応答するCAR-T細胞の活性化は、ALPP陽性SiHa子宮頸がん細胞を使用して評価することができ、その際、Jurkat細胞およびPBMC CAR-T細胞の両方は、SiHa細胞との共培養の際に特異的に活性化される。CAR-T細胞の活性化を、確立されたT細胞活性化マーカーCD69(図3)およびIFN-γ(図5および6)の発現によって測定することができる。
【0083】
さらに本開示は、異なる種類のがんに及ぼすCAR-T細胞の効果を検出するインビボ方法を提供する。このために、免疫欠損NSGマウスにSiHa細胞を腹腔内接種して、ALPP陽性腫瘍を形成させた。続いて、A02もしくはA03 CAR-T細胞または非形質導入T細胞を抗腫瘍療法として投与した。非形質導入T細胞で処置されたマウスでは腫瘍が急速に進行して、動物の死亡を引き起こした一方で、A02またはA03 CAR-T細胞のいずれかによる処置は、動物の生存率を顕著に改善し(図9)、この処置によって、観察可能な毒性は引き起こされなかった(図8)。これらの結果は、抗ALPP CAR-T細胞療法が生殖器のALPP陽性腫瘍に対する安全で有効な治療法であることを示唆している。
【0084】
本開示の態様により、抗ALPP CAR-T細胞療法は、子宮頸部、卵巣、子宮内膜、子宮、精巣、脳、甲状腺、肺、膵臓、頭頸部、胃、結腸直腸、腎臓、および尿路上皮細胞のがんを含むが、それらに限定されるわけではない、ALPPの上昇した発現を有する異なる種類のがんのために使用することができる。
【0085】
いくつかの態様により、CARは、本来のマウス抗ALPP結合ドメインを含む単鎖抗体フラグメントを含む。抗体は、SEQ ID NO:1によって表される配列を有する重鎖可変領域およびSEQ ID NO:2によって表される配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0086】
いくつかの態様では、CARは、ヒト化抗ALPP結合ドメインを含む。抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:3によって表される配列を有する重鎖可変領域およびSEQ ID NO:4によって表される配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0087】
いくつかの態様では、レトロウイルスプラスミドA02(図1A)がトランスフェクトされた細胞は、マウス抗ALPP結合ドメインを有するCARを発現する。抗体(H17E2)フラグメントは、重鎖可変領域SEQ ID NO:1および軽鎖可変領域SEQ ID NO:2を含む。
【0088】
一局面では、本開示はまた、ヒトALPPに対する特異性を有するヒト化抗体または抗体フラグメントを提供する。いくつかの態様では、ヒト化抗体または抗体フラグメントは、マウス抗体(例えばH17E2)からの相補性決定領域(CDR)をヒト抗体可変領域フレームワークに転移することによって作製される。この発生した分子を、がんの治療または診断に使用することができる。
【0089】
いくつかの態様では、レトロウイルスプラスミドA03(図1B)がトランスフェクトされた細胞は、ヒト化抗ALPP結合ドメインを有するCARを発現する。ヒト化抗体フラグメントは、重鎖可変領域SEQ ID NO:3および軽鎖可変領域SEQ ID NO:4を含む。
【0090】
臨床的に、抗ALPP CARを操作して患者特異的T細胞内に導入し、単一の治療剤として送達することができる。本明細書において示されるインビトロおよびインビボ結果に基づくと、この戦略は、多種多様なALPP関連がんに対する改善された効力および特異性を有することができる。
【0091】
ALPPおよびがん
胎盤型アルカリホスファターゼ(PLAP)(NCBI GENE ID:250)としても知られる胎盤アルカリホスファターゼ(ALPP)は、正常なヒト組織発現が胎盤、子宮頸部、および子宮に限られる、形質膜に局在する酵素である。ALPPはホモ二量体の膜結合型糖タンパク質酵素である。それは、4つのアルカリホスファターゼイソ酵素から構成される多重遺伝子族に属する。これらの酵素は、ホモ二量体として機能し、その酵素機能に必要な1つのマグネシウムイオンおよび2つの亜鉛イオンを含有する触媒部位を有する。それは、特異的炎症疾患過程の調節に重要な役割を演じる。腸、胎盤、胎盤様、および肝臓/骨/腎臓という、別個であるが関係する少なくとも4つのアルカリホスファターゼがある。胎盤型アルカリホスファターゼ(ALPP)は、妊娠第三期の間に胎盤に存在するALPPの膜結合型イソ酵素(ReganおよびNagao型)と反応する。胎盤型アルカリホスファターゼは、精巣胚細胞腫の同定に有用である。胚細胞腫とは異なり、ALPP陽性体細胞腫は、上皮膜抗原(EMA)を一様に発現する。
【0092】
上昇したALPP発現は、通例、卵巣がん、子宮頸がん、および精巣がんに見出される。ALPPの発現はまた、精巣セミノーマ、原発性頭蓋内胚細胞腫、上皮性卵巣がん、卵巣腺がん、漿液性嚢胞腺がん、未分化がん、未分化胚細胞腫、子宮がん、子宮内膜がん、尿路上皮がん、胃がん(stomach cancer)、肺がん、膵がん、骨肉腫、および胃がん(gastric cancer)において観察されている。その限定された発現パターンのせいで、ALPPを、ALPP陽性がんについての分子マーカーおよび治療標的の両方と見なすことができる。
【0093】
本開示は、ALPP陽性がんを有するがん患者の治療のための抗ALPP CAR-T細胞療法に関する。本開示はまた、ALPPを標的とする抗体または抗原結合性フラグメントを提供する。
【0094】
キメラ抗原受容体および結合分子
キメラ抗原受容体(CAR)は、正常なT細胞活性化の多数の面を組み合わせて単一のタンパク質にしたものである。CARは、細胞外抗原認識ドメインを細胞内シグナル伝達ドメインと連結しており、そのため、抗原が結合するとT細胞が活性化する。CARは、典型的には4つの領域:抗原結合ドメイン、細胞外ヒンジ領域、膜貫通ドメイン、および細胞内T細胞シグナル伝達ドメインから構成される。
【0095】
抗原結合ドメインは、受容体の外部ドメイン部分として細胞外側に露出している。抗原結合ドメインは、潜在的標的分子と相互作用し、CAR-T細胞が、マッチする分子を発現している任意の細胞への標的指向性を有することを担っている。抗原結合ドメインは、典型的には、モノクローナル抗体の可変領域が単鎖可変フラグメント(scFv)として一緒に連結したものに由来する。scFvは、短いリンカーペプチドでつながった免疫グロブリン軽(VL)鎖と重(VH)鎖とから作られたキメラタンパク質である。これら2つの鎖の間のリンカーは、可動性のためのその中のグリシンおよびセリンのストレッチのみならず、可溶性付加のためのグルタメートおよびリシンのストレッチを有する親水性残基からなる。いくつかの態様では、抗原結合ドメインは、腫瘍関連抗原、例えば、BCMA、CD19、CD22、CD30、CD33、CD56、CD123(IL-3Rとしても知られる)、CEA、EBV関連抗原(例えばLMP2)、EGFR、GD2、GPC3、HER2、HPV関連抗原(例えばE6)、MAGE抗原、メソセリン、MUC-1、NY-ESO-1、PSCA、PSMA、ROR1、WT1、またはクローディン18.2に特異的に結合する。いくつかの態様では、抗原結合ドメインはALPPに特異的に結合する。
【0096】
スペーサーとも呼ばれるヒンジは、抗原結合ドメインと細胞の外膜との間にある小さな構造ドメインである。理想的なヒンジは、scFv受容体頭部の可動性を高め、CARとその標的抗原との間の空間的制約を低減する。これは、抗原結合およびCAR-T細胞と標的細胞との間のシナプス形成を促進する。ヒンジ配列は、多くの場合に、例えば、IgG、CD8、およびCD28を含む免疫分子に由来する膜近位領域をベースとする。
【0097】
膜貫通ドメインは、細胞膜を貫通する疎水性アルファヘリックスからなる構造要素である。それは、CARを形質膜に係留し、細胞外ヒンジおよび抗原結合ドメインを細胞内シグナル伝達領域と橋架けする。このドメインは、受容体全体としての安定性に不可欠である。一般的に、内部ドメインのもっとも膜近位の構成要素に由来する膜貫通ドメインが使用されるが、異なる膜貫通ドメインは、異なる受容体安定性をもたらす。CD28膜貫通ドメインは、高発現する安定な受容体をもたらすことが知られている。
【0098】
細胞内T細胞シグナル伝達ドメインは、細胞内部の受容体内部ドメインに位置する。抗原が外部抗原結合ドメインに結合した後、CAR受容体は一緒にクラスターを形成し、活性化シグナルを伝達する。次いで、受容体の内部細胞質末端は、T細胞内部でシグナル伝達を持続させる。正常なT細胞活性化は、CD3-ゼータの細胞質ドメインに存在する免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)のリン酸化に依存する。この過程を模倣するために、CD3-ゼータの細胞質ドメインは、通例、主要なCAR内部ドメイン構成要素として使用される。T細胞はまた、活性化後に存続するためにCD3シグナル伝達に加えて共刺激分子を必要とする。この理由から、CAR受容体の内部ドメインはまた、典型的には、共刺激タンパク質に由来する1つまたは複数のキメラドメインを含む。CD28、CD27、CD134(OX40)、およびCD137(4-1BB)を含む多種多様な共刺激分子に由来するシグナル伝達ドメインが、試験され、好結果であった。
【0099】
様々なCAR分子およびこれらのCAR分子を発現しているベクターを、本明細書に記載される方法に使用することができる。いくつかの態様では、CAR分子は、腫瘍関連抗原、例えばALPPに特異的に結合する。いくつかの態様では、CARは、SEQ ID NO:18、20、22、24、26、28、30、34、36、91、92、もしくは93のいずれかに示されるアミノ酸配列;またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0100】
ヒンジ、膜貫通ドメイン、および細胞内T細胞シグナル伝達ドメインを含む抗原受容体の例示的な構造、ならびにそのような受容体を操作するための方法および細胞内に導入するための方法は、例えば、Chandran et al., "T cell receptor‐based cancer immunotherapy: Emerging efficacy and pathways of resistance." Immunological reviews 290.1 (2019): 127-147;Cartellieri, Marc, et al., "Chimeric antigen receptor-engineered T cells for immunotherapy of cancer." BioMed Research International 2010 (2010);およびPCT公報番号WO2017173256A1;US2002/131960、US2013/287748、US2013/0149337、米国特許第6,451,995号、同第7,446,190号、同第8,252,592号に記載され;それらの各々は、その全体で参照により本明細書に組み入れられる。
【0101】
本開示は、ALPPに特異的に結合するキメラ抗原受容体(CAR)またはそのフラグメントを提供する。本明細書に記載されるCARまたはそのフラグメントは、ALPPに結合することができる。
【0102】
本開示は、(a)胎盤アルカリホスファターゼ(ALPP)を特異的に認識する細胞外抗原結合ドメイン;(b)膜貫通ドメイン;および(c)細胞内シグナル伝達領域を含むCARまたはそのフラグメントを提供する。いくつかの態様では、抗原結合ドメインは、重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。いくつかの態様では、本明細書に記載されるCARまたはそのフラグメントのVHおよびVLは、本明細書に記載されるマウス抗ALPP抗体(例えばA02)のVHおよびVLと同一である。いくつかの態様では、本明細書に記載されるCARまたはフラグメントのVHおよびVLは、本明細書に記載されるヒト化抗ALPP抗体(例えば、A03、A04、A05、A06、A07、またはA08)のVHおよびVLと同一である。
【0103】
A02 CAR、関連抗体、またはその抗原結合性フラグメントの抗原結合ドメイン(例えばscFv)のCDR配列は、それぞれSEQ ID NO:45、46、および47を含むまたはそれからなるVH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3、ならびにそれぞれSEQ ID NO:48、49、および50を含むまたはそれからなるVL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3を含む。
【0104】
A03 CAR、関連抗体、またはその抗原結合性フラグメントの抗原結合ドメイン(例えばscFv)のCDR配列は、それぞれSEQ ID NO:51、52、および53を含むまたはそれからなるVH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3、ならびにそれぞれSEQ ID NO:54、55、および56を含むまたはそれからなるVL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3を含む。
【0105】
A04 CAR、関連抗体、またはその抗原結合性フラグメントの抗原結合ドメイン(例えばscFv)のCDR配列は、それぞれSEQ ID NO:57、58、および59を含むまたはそれからなるVH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3、ならびにそれぞれSEQ ID NO:60、61、および62を含むまたはそれからなるVL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3を含む。
【0106】
A05 CAR、関連抗体、またはその抗原結合性フラグメントの抗原結合ドメイン(例えばscFv)のCDR配列は、それぞれSEQ ID NO:63、64、および65を含むまたはそれからなるVH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3、ならびにそれぞれSEQ ID NO:66、67、および68を含むまたはそれからなるVL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3を含む。
【0107】
A06 CAR、関連抗体、またはその抗原結合性フラグメントの抗原結合ドメイン(例えばscFv)のCDR配列は、それぞれSEQ ID NO:69、70、および71を含むまたはそれからなるVH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3、ならびにそれぞれSEQ ID NO:72、73、および74を含むまたはそれからなるVL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3を含む。
【0108】
A07 CAR、関連抗体、またはその抗原結合性フラグメントの抗原結合ドメイン(例えばscFv)のCDR配列は、それぞれSEQ ID NO:75、76、および77を含むまたはそれからなるVH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3、ならびにそれぞれSEQ ID NO:78、79、および80を含むまたはそれからなるVL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3を含む。
【0109】
A08 CAR、関連抗体、またはその抗原結合性フラグメントの抗原結合ドメイン(例えばscFv)のCDR配列は、それぞれSEQ ID NO:81、82、および83を含むまたはそれからなるVH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3、ならびにそれぞれSEQ ID NO:84、85、および86を含むまたはそれからなるVL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3を含む。
【0110】
A02 CAR、関連抗体、またはその抗原結合性フラグメントの抗原結合ドメインにおけるVHのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:1に示される。A02 CAR、関連抗体、またはその抗原結合性フラグメントの抗原結合ドメインにおけるVLのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:2に示される。
【0111】
A03 CAR、関連抗体、またはその抗原結合性フラグメントの抗原結合ドメインにおけるVHのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:3に示される。A03 CAR、関連抗体、またはその抗原結合性フラグメントの抗原結合ドメインにおけるVLのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:4に示される。
【0112】
A04 CAR、関連抗体、またはその抗原結合性フラグメントの抗原結合ドメインにおけるVHのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:5に示される。A04 CAR、関連抗体、またはその抗原結合性フラグメントの抗原結合ドメインにおけるVLのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:6に示される。
【0113】
A05 CAR、関連抗体、またはその抗原結合性フラグメントの抗原結合ドメインにおけるVHのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:7に示される。A05 CAR、関連抗体、またはその抗原結合性フラグメントの抗原結合ドメインにおけるVLのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:8に示される。
【0114】
A06 CAR、関連抗体、またはその抗原結合性フラグメントの抗原結合ドメインにおけるVHのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:9に示される。A06 CAR、関連抗体、またはその抗原結合性フラグメントの抗原結合ドメインにおけるVLのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:10に示される。
【0115】
A07 CAR、関連抗体、またはその抗原結合性フラグメントの抗原結合ドメインにおけるVHのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:11に示される。A07 CAR、関連抗体、またはその抗原結合性フラグメントの抗原結合ドメインにおけるVLのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:12に示される。
【0116】
A08 CAR、関連抗体、またはその抗原結合性フラグメントの抗原結合ドメインにおけるVHのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:13に示される。A08 CAR、関連抗体、またはその抗原結合性フラグメントの抗原結合ドメインにおけるVLのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:14に示される。
【0117】
いくつかの態様では、CAR、関連抗体、またはその抗原結合性フラグメントの抗原結合ドメインのVHおよびVLのアミノ酸配列は、ヒト化されている(例えば、配列を異なるアミノ酸置換で改変することができる)。いくつかの態様では、VHおよびVLは、ヒト化配列の1つよりも多いバージョンを有することができる。いくつかの態様では、ヒト化VHは、SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、または13と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である。いくつかの態様では、ヒト化VLは、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、または14と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である。
【0118】
さらに、いくつかの態様では、本明細書に記載されるCAR、関連抗体またはその抗原結合性フラグメントはまた、SEQ ID NO:45~47、SEQ ID NO:51~53、SEQ ID NO:57~59、SEQ ID NO:63~65、SEQ ID NO:69~71、SEQ ID NO:75~77、およびSEQ ID NO:81~83の群より選択される1、2、もしくは3つの重鎖可変領域CDR;ならびに/またはSEQ ID NO:48~50、SEQ ID NO:54~56、SEQ ID NO:60~62、SEQ ID NO:66~68、SEQ ID NO:72~74、SEQ ID NO:78~80、およびSEQ ID NO:84~86の群より選択される1、2、もしくは3つの軽鎖可変領域CDRを含有することができる。
【0119】
いくつかの態様では、本明細書に記載されるCAR、関連抗体またはその抗原結合性フラグメントは、相補性決定領域(CDR)1、2、3を含む重鎖可変領域(VH)を有することができ、CDR1領域は、選択されたVH CDR1のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、または95%同一であるアミノ酸配列を含むまたはそれからなり、CDR2領域は、選択されたVH CDR2のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、または95%同一であるアミノ酸配列を含むまたはそれからなり、CDR3領域は、選択されたVH CDR3のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、または95%同一であるアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。いくつかの態様では、CAR、関連抗体またはその抗原結合性フラグメントは、CDR1、2、3を含む軽鎖可変領域(VL)を有することができ、その際、CDR1領域は、選択されたVL CDR1のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、または95%同一であるアミノ酸配列を含むまたはそれからなり、CDR2領域は、選択されたVL CDR2のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、または95%同一であるアミノ酸配列を含むまたはそれからなり、CDR3領域は、選択されたVL CDR3のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、または95%同一であるアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。選択されたVH CDR1、2、3のアミノ酸配列および選択されたVL CDR1、2、3のアミノ酸配列を図14に示す。
【0120】
いくつかの態様では、本明細書に記載されるCAR、関連抗体またはその抗原結合性フラグメントは、0、1または2つのアミノ酸挿入、欠失、または置換を有するVH CDR1;0、1または2つのアミノ酸挿入、欠失、または置換を有するVH CDR2;0、1または2つのアミノ酸挿入、欠失、または置換を有するVH CDR3のうち1、2、または3つを含有するVHを含有する。
【0121】
いくつかの態様では、本明細書に記載されるCAR、関連抗体またはその抗原結合性フラグメントは、0、1または2つのアミノ酸挿入、欠失、または置換を有するVL CDR1;0、1または2つのアミノ酸挿入、欠失、または置換を有するVL CDR2;0、1または2つのアミノ酸挿入、欠失、または置換を有するVL CDR3のうち1、2、または3つを含有するVLを含有する。
【0122】
挿入、欠失、および置換は、CDR配列内、またはCDR配列の一方もしくは両方の末端にあることができる。いくつかの態様では、CDRは、Kabat番号付けスキームに基づいて決定される。
【0123】
本開示はまた、ALPPに結合するCARまたはそのフラグメントを提供する。CAR、関連抗体またはその抗原結合性フラグメントは、選択されたVH配列と少なくとも80%、85%、90%、または95%同一であるアミノ酸配列を含むまたはそれからなる重鎖可変領域(VH)、選択されたVL配列と少なくとも80%、85%、90%、または95%同一であるアミノ酸配列を含むまたはそれからなる軽鎖可変領域(VL)を含有する。いくつかの態様では、選択されたVH配列はSEQ ID NO:1であり、選択されたVL配列はSEQ ID NO:2である。いくつかの態様では、選択されたVH配列はSEQ ID NO:3であり、選択されたVL配列はSEQ ID NO:4である。いくつかの態様では、選択されたVH配列はSEQ ID NO:5であり、選択されたVL配列はSEQ ID NO:6である。いくつかの態様では、選択されたVH配列はSEQ ID NO:7であり、選択されたVL配列はSEQ ID NO:8である。いくつかの態様では、選択されたVH配列はSEQ ID NO:9であり、選択されたVL配列はSEQ ID NO:10である。いくつかの態様では、選択されたVH配列はSEQ ID NO:11であり、選択されたVL配列はSEQ ID NO:12である。いくつかの態様では、選択されたVH配列はSEQ ID NO:13であり、選択されたVL配列はSEQ ID NO:14である。
【0124】
A02 CARの核酸配列およびコードされるアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:17およびSEQ ID NO:18に示される。
【0125】
A03 CARの核酸配列およびコードされるアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:19およびSEQ ID NO:20に示される。
【0126】
A04 CARの核酸配列およびコードされるアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:21およびSEQ ID NO:22に示される。
【0127】
A05 CARの核酸配列およびコードされるアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:23およびSEQ ID NO:24に示される。
【0128】
A06 CARの核酸配列およびコードされるアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:25およびSEQ ID NO:26に示される。
【0129】
A07 CARの核酸配列およびコードされるアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:27およびSEQ ID NO:28に示される。
【0130】
A08 CARの核酸配列およびコードされるアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:29およびSEQ ID NO:30に示される。
【0131】
第三世代A02 CARのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:91に示される。
【0132】
第三世代A03 CARのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:92に示される。
【0133】
第三世代A06 CARのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:93に示される。
【0134】
いくつかの態様では、SEQ ID NO:18、20、22、24、26、28、30、34、36、91、92、または93と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドまたはそのフラグメントが、本明細書において提供される。いくつかの態様では、本明細書に記載されるポリペプチドは、SEQ ID NO:18、20、22、24、26、28、30、34、36、91、92、または93に示されるアミノ酸配列;任意で、約0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、もしくは50個または0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、もしくは50個以下のアミノ酸挿入、欠失、または置換を有するアミノ酸配列を含む。
【0135】
いくつかの態様では、本明細書に記載される抗原結合ドメインは、scFvを含む。いくつかの態様では、本明細書に記載されるVHおよびVLは、可動性リンカーによってつながっている。いくつかの態様では、可動性リンカーは、アミノ酸配列
を含む。いくつかの態様では、可動性リンカーは、アミノ酸配列
を含む。いくつかの態様では、可動性リンカーは、GGGGS(SEQ ID NO:88)の少なくとも1、2、3、4、5、または6つのリピートを含む。いくつかの態様では、可動性リンカーは、1、2、3、4、または5つのアミノ酸の挿入、欠失、または置換を含む。
【0136】
いくつかの態様では、本明細書に記載されるキメラ抗原受容体(CAR)またはそのフラグメントは、ヒンジ領域を含む。いくつかの態様では、ヒンジ領域は、IgG、CD8、CD28、またはそれらの任意の組合せに由来する膜近位領域である。いくつかの態様では、ヒンジ領域はCD8(例えばヒトCD8)の膜近位領域である。いくつかの態様では、本明細書に記載されるキメラ抗原受容体(CAR)またはそのフラグメントは、膜貫通領域を含む。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、4-1BB/CD137、T細胞受容体のアルファ鎖、T細胞受容体のベータ鎖、CD3イプシロン、CD4、CD5、CD8、CD8アルファ、CD9、CD16、CD19、CD22、CD28、CD33、CD37、CD45、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、またはT細胞受容体のゼータ鎖、またはそれらの任意の組合せの膜貫通ドメインである。いくつかの態様では、膜貫通領域は、CD8(例えばヒトCD8)に由来する膜貫通領域である。いくつかの態様では、ヒンジ領域と膜貫通領域とは、直接つながっている。いくつかの態様では、つながったヒンジ領域と膜貫通領域とは、SEQ ID NO:38と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0137】
いくつかの態様では、本明細書に記載されるキメラ抗原受容体(CAR)またはそのフラグメントは、細胞内シグナル伝達領域を含む。いくつかの態様では、細胞内シグナル伝達領域は、免疫細胞(例えばT細胞)において一次活性化シグナルを誘導することができる活性化細胞質シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの態様では、活性化細胞質シグナル伝達ドメインは、T細胞受容体(TCR)の構成要素である。いくつかの態様では、活性化細胞質シグナル伝達ドメインは、免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)を含む。いくつかの態様では、細胞内シグナル伝達領域は、CD3ゼータ、FcRガンマ、FcRベータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79b、CD278(ICOS)、FceRI、CD66d、DAP10、DAP12、またはそれらの組合せに由来するアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、細胞内シグナル伝達領域は、CD3ゼータ(例えばヒトCD3ゼータ)の機能性シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの態様では、細胞内シグナル伝達領域は、SEQ ID NO:40と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0138】
いくつかの態様では、本明細書に記載されるキメラ抗原受容体(CAR)またはそのフラグメントは、共刺激シグナル伝達領域を含む。いくつかの態様では、共刺激シグナル伝達領域は、膜貫通ドメインと細胞内シグナル伝達領域との間にある。いくつかの態様では、共刺激シグナル伝達領域は、MHCクラスI分子、TNF受容体タンパク質、免疫グロブリン様タンパク質、サイトカイン受容体、インテグリン、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAMタンパク質)、活性化NK細胞受容体、BTLA、Tollリガンド受容体、OX40、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CDS、ICAM-1、LFA-1、CD11a/CD18、4-1BB(CD137)、B7-H3、CDS、ICAM-1、ICOS(CD278)、GITR、BAFFR、LIGHT、HVEM(LIGHTR)、KIRDS2、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、NKp44、NKp30、NKp46、CD19、CD4、CD8アルファ、CD8ベータ、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7Rアルファ、ITGA4、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CD 11b、ITGAX、CD 11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、NKG2D、NKG2C、TNFR2、TRANCE/RANKL、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、CD69、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP-76、PAG/Cbp、CD19a、およびCD83リガンドからなる群より選択されるタンパク質に由来する機能性シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの態様では、共刺激シグナル伝達領域は、OX40、CD28、4-1BB、ICOS、またはそのシグナル伝達部分に由来する機能性シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの態様では、共刺激シグナル伝達領域は、4-1BB(例えばヒト4-1BB)の細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの態様では、共刺激シグナル伝達領域は、CD28(例えばヒトCD28)の細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの態様では、共刺激シグナル伝達領域は、CD28(例えばヒトCD28)および4-1BB(例えばヒト4-1BB)の両方の細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
【0139】
いくつかの態様では、4-1BB細胞内シグナル伝達ドメインは、SEQ ID NO:39と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、CD28細胞内シグナル伝達ドメインは、SEQ ID NO:89と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、共刺激シグナル伝達領域は、SEQ ID NO:39と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、共刺激シグナル伝達領域は、SEQ ID NO:90と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0140】
抗ALPP抗体、抗原結合性フラグメント、および抗原結合ドメイン
本開示は、ALPPに特異的に結合する抗体およびその抗原結合性フラグメントを提供する。本明細書に記載される抗体および抗原結合性フラグメントは、ALPPに結合することができる。本明細書に記載されるCARまたはそのフラグメントの抗原結合ドメインは、これらの抗体またはその抗原結合性フラグメントに由来することができる。
【0141】
本開示は、例えば、マウス抗ALPP抗体(例えばA02またはH17E2抗体)、およびそのキメラ抗体、およびそのヒト化抗体(例えば、A03、A04、A05、A06、A07、A08、またはA09抗体)を提供する。A02、A03、A04、A05、A06、A07、A08抗体、および派生する抗体またはその抗原結合性フラグメントのCDR配列は、図14に提供される。
【0142】
ヒト化抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のアミノ酸配列もまた提供される。マウス抗体をヒト化するために種々の方法がある(例えば、配列を異なるアミノ酸置換により改変することができる)ので、抗体の重鎖および軽鎖は、ヒト化配列の1つよりも多いバージョンを有することができる。いくつかの態様では、重鎖可変領域は、SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、または13と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である。いくつかの態様では、軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、または14と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である。重鎖可変領域配列は、軽鎖可変領域配列と対を形成することができ、それらは一緒になってALPPに結合する。
【0143】
ヒト化率(%)は、International Immunogenetics Information System(IMGT)データベース中のヒト抗体配列と比較した場合の重鎖または軽鎖可変領域配列の同一性のパーセンテージを意味する。いくつかの態様では、ヒト化率(%)は、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、または95%よりも大きい。ヒト化率(%)を決定する方法およびトップヒットを決定する方法に関する詳細な説明は、当技術分野において公知であり、例えば、その全体で参照により本明細書に組み入れられるJones, et al., "The INNs and outs of antibody nonproprietary names." MAbs. Vol. 8. No. 1. Taylor & Francis, 2016に記載されている。高いヒト化率(%)は、多くの場合に様々な利点を有し、例えば、ヒトにおいてより安全でより有効であり、ヒト対象に忍容される可能性がより高く、かつ/または副作用を有する可能性がより低い。
【0144】
さらに、いくつかの態様では、本明細書に記載される抗体またはその抗原結合性フラグメントはまた、SEQ ID NO:45~47、SEQ ID NO:51~53、SEQ ID NO:57~59、SEQ ID NO:63~65、SEQ ID NO:69~71、SEQ ID NO:75~77、およびSEQ ID NO:81~83の群より選択される1、2、もしくは3つの重鎖可変領域CDR;ならびに/またはSEQ ID NO:48~50、SEQ ID NO:54~56、SEQ ID NO:60~62、SEQ ID NO:66~68、SEQ ID NO:72~74、SEQ ID NO:78~80、およびSEQ ID NO:84~86の群より選択される1、2、もしくは3つの軽鎖可変領域CDRを含有することができる。
【0145】
本開示はまた、ALPPに結合する抗体またはその抗原結合性フラグメントを提供する。抗体またはその抗原結合性フラグメントは、選択されたVH配列に少なくとも80%、85%、90%、または95%同一であるアミノ酸配列を含むまたはそれからなる重鎖可変領域(VH)、および選択されたVL配列と少なくとも80%、85%、90%、または95%同一であるアミノ酸配列を含むまたはそれからなる軽鎖可変領域(VL)を含有する。いくつかの態様では、選択されたVH配列はSEQ ID NO:1であり、選択されたVL配列はSEQ ID NO:2である。いくつかの態様では、選択されたVH配列はSEQ ID NO:3であり、選択されたVL配列はSEQ ID NO:4である。いくつかの態様では、選択されたVH配列はSEQ ID NO:5であり、選択されたVL配列はSEQ ID NO:6である。いくつかの態様では、選択されたVH配列はSEQ ID NO:7であり、選択されたVL配列はSEQ ID NO:8である。いくつかの態様では、選択されたVH配列はSEQ ID NO:9であり、選択されたVL配列はSEQ ID NO:10である。いくつかの態様では、選択されたVH配列はSEQ ID NO:11であり、選択されたVL配列はSEQ ID NO:12である。いくつかの態様では、選択されたVH配列はSEQ ID NO:13であり、選択されたVL配列はSEQ ID NO:14である。
【0146】
抗ALPP抗体および抗原結合性フラグメントはまた、抗体または抗体フラグメントの抗体バリアント(誘導体およびコンジュゲートを含む)および多重特異性(例えば二重特異性)抗体または抗体フラグメントであることができる。本明細書において提供される追加的な抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、多重特異性(マルチマー性、例えば二重特異性)ヒト抗体、キメラ抗体(例えば、ヒト-マウスキメラ)、単鎖抗体、細胞内発現抗体(すなわち、イントラボディー)、およびその抗原結合性フラグメントである。抗体またはその抗原結合性フラグメントは、任意の種類(例えばIgG、IgE、IgM、IgD、IgA、およびIgY)、クラス(例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2)、またはサブクラスであることができる。いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、IgG抗体またはその抗原結合性フラグメントである。
【0147】
抗体のフラグメントは、完全長抗体の所望の親和性および特異性を保持するかぎり、提供される方法での使用に適している。したがって、ALPPに結合する抗体のフラグメントは、ALPPに結合する能力を保持するであろう。Fvフラグメントは、完全な抗原認識および結合部位を含有する抗体フラグメントである。この領域は、自然界では共有結合であることができる密接な結合を行った1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインとの、例えばscFvとしてのダイマーからなる。各可変ドメインの3つのCDRが相互作用してVH-VLダイマーの表面の抗原結合部位を規定するのは、この配置である。まとめると、6つのCDRまたはそのサブセットは、抗体に抗原結合特異性を付与する。しかし、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的なCDRを3つだけ含む、Fvの半分)であっても、抗原を認識し、それと結合する能力を、通常は結合部位全体より低い親和性であるものの、有することができる。単鎖Fvまたは(scFv)抗体フラグメントは、抗体のVHおよびVLドメイン(または領域)を含み、その際、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖内に存在する。一般的に、scFvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカー(例えば本明細書に記載される可動性リンカー)をさらに含み、該リンカーは、scFvが抗原結合に望ましい構造を形成できるようにする。
【0148】
本開示はまた、本明細書に記載される任意の抗体または抗原結合性フラグメントと交差競合(cross-compete)する抗体またはその抗原結合性フラグメントを提供する。交差競合アッセイは、当技術分野において公知であり、例えば、その全体で参照により本明細書に組み入れられるMoore et al., "Antibody cross-competition analysis of the human immunodeficiency virus type 1 gp120 exterior envelope glycoprotein." Journal of Virology 70.3 (1996): 1863-1872に記載されている。一局面では、本開示はまた、本明細書に記載される任意の抗体または抗原結合性フラグメントと同じエピトープまたは領域に結合する抗体またはその抗原結合性フラグメントを提供する。エピトープビニングアッセイは、当技術分野において公知であり、例えば、その全体で参照により本明細書に組み入れられるEstep et al. "High throughput solution-based measurement of antibocy-antigen affinity and epitope binning." MAbs. Vol. 5. No. 2. Taylor & Francis, 2013に記載されている。
【0149】
一局面では、本開示は、(a)SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、または14より選択されるVLを含むアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;および(b)SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、または13より選択されるVHを含むアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む抗ALPP抗体、またはその抗原結合性フラグメント(例えばscFv)を提供し;その際、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、ALPP(例えば内因性ALPP)に特異的に結合する。
【0150】
いくつかの態様では、本開示は、(a)SEQ ID NO:16のVLを含むアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;および(b)SEQ ID NO:15のVHを含むアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む抗PD-1抗体、またはその抗原結合性フラグメント(例えばscFv)を提供し;その際、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、PD-1とPD-L1との間の相互作用を遮断する。
【0151】
いくつかの態様では、本開示は、(a)SEQ ID NO:32のVLを含むアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;および(b)SEQ ID NO:31のVHを含むアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む抗PD-L1抗体、またはその抗原結合性フラグメント(例えばscFv)を提供し;その際、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、PD-1とPD-L1との間の相互作用を遮断する。
【0152】
いくつかの態様では、VHおよびVLは、可動性リンカーによってつながっている。いくつかの態様では、VHおよびVLは、VH-可動性リンカー-VLの順序でつながっている。いくつかの態様では、VHおよびVLは、VL-可動性リンカー-VHの順序でつながっている。いくつかの態様では、可動性リンカーは、GGGGSGGGGSGGGGS(SEQ ID NO:87)のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、可動性リンカーは、GGGGS(SEQ ID NO:88)の少なくとも1、2、3、4、5、または6つのリピートを含む。いくつかの態様では、PD-1またはPD-L1抗体またはその抗原結合性フラグメント(例えばscFv)は、リーダーペプチドと連結している。いくつかの態様では、リーダーペプチドは、分泌シグナルペプチドである。いくつかの態様では、リーダーペプチドはヒトIL-2リーダーペプチド(SEQ ID NO:42)である。
【0153】
本開示は、本明細書に記載される抗体に由来する様々な抗体およびその抗原結合性フラグメントを提供する。一般に、抗体(免疫グロブリンとも呼ばれる)は、2つのクラスのポリペプチド鎖、軽鎖および重鎖からできている。本開示の抗体の非限定的な例は、2つの重鎖および2つの軽鎖を含む無傷の4つの免疫グロブリン鎖抗体であることができる。抗体の重鎖は、IgM、IgG、IgE、IgA、もしくはIgDを含む任意のアイソタイプまたはIgG1、IgG2、IgG2a、IgG2b、IgG3、IgG4、IgE1、IgE2などを含むサブ-アイソタイプであることができる。軽鎖は、カッパ軽鎖またはラムダ軽鎖であることができる。抗体は、軽鎖の2つの同一のコピーおよび重鎖の2つの同一のコピーを含むことができる。各々が1つの可変ドメイン(または可変領域、VH)および複数の定常ドメイン(または定常領域)を含有する重鎖は、それらの定常ドメイン内のジスルフィド結合形成を介して相互に結合して、抗体の「ステム」を形成する。各々が1つの可変ドメイン(または可変領域、VL)および1つの定常ドメイン(または定常領域)を含有する軽鎖は、ジスルフィド結合形成を介して1つの重鎖に各々結合する。各軽鎖の可変領域は、それが結合している重鎖の可変領域と並んでいる。軽鎖および重鎖の両方の可変領域は、より大きく保存されたフレームワーク領域(FR)の間に挟まれた3つの超可変領域を含有する。
【0154】
相補性決定領域(CDR)として知られるこれらの超可変領域は、抗体の抗原結合表面を含むループを形成する。4つのフレームワーク領域は、大部分はベータ-シートコンフォメーションを採り、CDRは、ベータ-シート構造を接続するループを形成し、場合によってはベータ-シート構造の一部を形成する。各鎖中のCDRは、フレームワーク領域によって近接して保持され、他方の鎖からのCDRと共に抗原結合領域の形成を担っている。
【0155】
抗体のアミノ酸配列を分析することによって抗体のCDR領域を同定するための方法は周知であり、CDRのいくつかの定義が通例使用される。Kabatの定義は、配列多様性をベースとし、Chothiaの定義は、構造ループ領域の位置をベースとする。これらの方法および定義は、例えば、その各々がその全体で参照により本明細書に組み入れられるMartin, "Protein sequence and structure analysis of antibody variable domains," Antibody engineering, Springer Berlin Heidelberg, 2001. 422-439;Abhinandan, et al. "Analysis and improvements to Kabat and structurally correct numbering of antibody variable domains," Molecular immunology 45.14 (2008): 3832-3839;Wu, T.T. and Kabat, E.A. (1970) J. Exp. Med. 132: 211-250;Martin et al., Methods Enzymol. 203:121-53 (1991);Morea et al., Biophys Chem. 68(1-3):9-16 (Oct. 1997);Morea et al., J Mol Biol. 275(2):269-94 (Jan .1998);Chothia et al., Nature 342(6252):877-83 (Dec. 1989);Ponomarenko and Bourne, BMC Structural Biology 7:64 (2007)に記載されている。
【0156】
CDRは、抗原のエピトープを認識するために重要である。本明細書に使用される場合、「エピトープ」は、抗体の抗原結合ドメインによって特異的に結合されることができる標的分子の最小部分である。エピトープの最小サイズは、約3、4、5、6、または7つのアミノ酸であり得るが、これらのアミノ酸は、抗原の一次構造の連続した直鎖配列中にある必要はない。それは、エピトープが、抗原の二次および三次構造をベースとする抗原の三次元配置に依存する場合があるからである。
【0157】
いくつかの態様では、抗体は、無傷の免疫グロブリン分子(例えば、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3、IgM、IgD、IgE、IgA)である。IgGサブクラス(IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4)は、高度に保存されており、それらの定常領域、特にそれらのヒンジおよび上部CH2ドメインが異なる。IgGサブクラスの配列および差異は当技術分野において公知であり、例えば、それらの各々がその全体で参照により本明細書に組み入れられるVidarsson, et al, "IgG subclasses and allotypes: from structure to effector functions." Frontiers in immunology 5 (2014);Irani, et al. "Molecular properties of human IgG subclasses and their implications for designing therapeutic monoclonal antibodies against infectious diseases." Molecular immunology 67.2 (2015): 171-182;Shakib, Farouk, ed. The human IgG subclasses: molecular analysis of structure, function and regulation. Elsevier, 2016に記載されている。
【0158】
抗体はまた、任意の種(例えば、ヒト、げっ歯動物、マウス、ラクダ科)に由来する免疫グロブリン分子であることができる。本明細書において開示される抗体にはまた、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単一特異性、多特異性抗体、および別のポリペプチドと融合された免疫グロブリン結合ドメインを含むキメラ抗体が含まれるが、それらに限定されるわけではない。「抗原結合ドメイン」または「抗原結合性フラグメント」という用語は、無傷抗体の特異的結合活性を保持する抗体の部分、すなわち、無傷抗体の標的分子上のエピトープに特異的に結合することができる抗体の任意の部分である。それは例えば、Fab、Fab'、F(ab')2、およびこれらのフラグメントのバリアントを含む。したがって、いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、例えば、scFv、Fv、Fd、dAb、二重特異性抗体、二重特異性scFv、ダイアボディー、線状抗体、単鎖抗体分子、抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体、および抗体結合ドメインであるか、またはそれと相同である結合ドメインを含む、任意のポリペプチドであることができる。抗原結合ドメインの非限定的な例には、例えば、無傷抗体の重鎖および/もしくは軽鎖CDR、無傷抗体の重鎖および/もしくは軽鎖可変領域、無傷抗体の完全長重鎖もしくは軽鎖、または無傷抗体の重鎖もしくは軽鎖のいずれかに由来する個別のCDRが含まれる。
【0159】
本明細書に記載される方法に使用するために適した抗体のフラグメントもまた、提供される。Fabフラグメントは、軽鎖の可変ドメインおよび定常ドメインならびに重鎖の可変ドメインおよび第1定常ドメイン(CH1)を含有する。F(ab')2抗体フラグメントは、Fabフラグメントのペアを含み、それらのFabフラグメントは、それらの間でヒンジのシステインによってそれらのカルボキシ末端近くに一般的に共有結合的に連結されている。抗体フラグメントの他の化学的カップリングもまた、当技術分野において公知である。
【0160】
線状抗体は、相補性軽鎖ポリペプチドと一緒に抗原結合領域のペアを形成するタンデムFdセグメント(VH-CH1-VH-CH1)のペアを含む。線状抗体は、二重特異性または単一特異性であることができる。
【0161】
本開示の抗体および抗体フラグメントをFc領域において改変し、所望のエフェクター機能または血清半減期を提供することができる。
【0162】
いくつかの態様では、多重特異性抗体は二重特異性抗体である。二重特異性抗体は、抗体分子のペアの間の界面を操作して、組換え細胞培養物から回収されるヘテロ二量体のパーセンテージを最大化することによって作ることができる。例えば界面は、抗体定常ドメインのCH3ドメインの少なくとも一部分を含有することができる。この方法では、第1の抗体分子の界面からの1つまたは複数の小さなアミノ酸側鎖が、より大きな側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)によって置換される。大きなアミノ酸側鎖をより小さな側鎖(例えば、アラニンまたはトレオニン)によって置換することにより、大きな側鎖と同一または類似のサイズの、埋合せとなる「空洞」が第2の抗体分子の界面に生み出される。これが、ホモ二量体などの他の望まれない最終産物と比べてヘテロ二量体の収率を増加させるためのメカニズムを提供する。この方法は、例えば、その全体で参照により組み入れられるWO96/27011に記載されている。
【0163】
いくつかの態様では、抗体または抗原結合性フラグメントは、APC(例えばDC細胞)の機能を高めること、例えば共刺激分子およびMHC分子の表面発現を誘導すること、炎症性サイトカインの産生を誘導すること、ならびに/またはT細胞トリガー機能を高めることができる。
【0164】
いくつかの態様では、Fc領域は、ヒトIgG1、ヒトIgG2、ヒトIgG3、またはヒトIgG4である。いくつかの態様では、抗体はヒトIgG1抗体である。
【0165】
いくつかの態様では、抗体または抗原結合性フラグメントは、機能的Fc領域を有しない。例えば、抗体または抗原結合性フラグメントは、Fab、Fab'、F(ab')2、およびFvフラグメントである。いくつかの態様では、Fc領域は、LALA変異(EUナンバリングにおけるL234AおよびL235A変異)、またはLALA-PG変異(EUナンバリングにおけるL234A、L235A、P329G変異)を有する。
【0166】
いくつかの態様では、抗原結合性フラグメントは、キメラ抗原受容体(CAR)の一部を形成することができる。いくつかの態様では、キメラ抗原受容体は、CD3-ゼータ内部ドメインと融合した、本明細書に記載される単鎖可変フラグメント(scFv)の融合物である。いくつかの態様では、scFvは、1つの重鎖可変ドメイン、および1つの軽鎖可変ドメインを有する。いくつかの態様では、scFvは、2つの重鎖可変ドメイン、および2つの軽鎖可変ドメインを有する。いくつかの態様では、キメラ抗原受容体はまた、多様な共刺激タンパク質受容体(例えば、CD28、41BB、ICOS)に由来する細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの態様では、キメラ抗原受容体は、効力を増強するための複数のシグナル伝達ドメイン、例えばCD3z-CD28-41BBまたはCD3z-CD28-OX40を含む。したがって一局面では、本開示はさらに、本明細書に記載されるキメラ抗原受容体を発現する細胞(例えばT細胞)を提供する。
【0167】
CAR、抗体、抗原結合性フラグメントの特性
いくつかの態様では、本明細書に記載されるCAR、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、免疫細胞(例えば、T細胞、CD8+ T細胞、CD4+ T細胞、マクロファージ、抗原提示細胞)の免疫応答、活性または数を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、2倍、3倍、5倍、10倍、または20倍増加させることができる。
【0168】
いくつかの実行では、抗体(その抗原結合性フラグメント、またはそれに由来する分子、例えばCAR)は、0.1s-1未満、0.01s-1未満、0.001s-1未満、0.0001s-1未満、または0.00001s-1未満の解離速度(koff)でALPPに特異的に結合する。いくつかの態様では、解離速度(koff)は、0.01s-1超、0.001s-1超、0.0001s-1超、0.00001s-1超、または0.000001s-1超である。
【0169】
いくつかの態様では、速度論的結合速度(kon)は、1×102/Ms超、1×103/Ms超、1×104/Ms超、1×105/Ms超、または1×106/Ms超である。いくつかの態様では、速度論的結合速度(kon)は、1×105/Ms未満、1×106/Ms未満、または1×107/Ms未満である。
【0170】
親和性は、速度論的速度定数の商(KD=koff/kon)から推定することができる。いくつかの態様では、KD(Kd)は、1×10-6M未満、1×10-7M未満、1×10-8M未満、1×10-9M未満、または1×10-10M未満である。いくつかの態様では、KDは、50nM、30nM、20nM、15nM、10nM、9nM、8nM、7nM、6nM、5nM、4nM、3nM、2nM、1nM、0.9nM、0.8nM、0.7nM、0.6nM、0.5nM、0.4nM、0.3nM、0.2nM、または0.1nM未満である。いくつかの態様では、KDは、1×10-7M超、1×10-8M超、1×10-9M超、1×10-10M超、1×10-11M超、または1×10-12M超である。
【0171】
抗原に対する抗体の親和性を測定するための一般的な技法は、例えば、ELISA、RIA、および表面プラズモン共鳴(SPR)を含む。いくつかの態様では、抗体は、ヒトALPPに結合する。
【0172】
いくつかの態様では、本開示の抗体は、0.5μg/mlまたはそれ未満のEC50でALPPタンパク質に結合する、0.4μg/mlまたはそれ未満のEC50でALPPタンパク質に結合する、0.3μg/mlまたはそれ未満のEC50でALPPタンパク質に結合する、0.2μg/mlまたはそれ未満のEC50でALPPタンパク質に結合する、0.1μg/mlまたはそれ未満のEC50でALPPタンパク質に結合する、0.02μg/mlまたはそれ未満のEC50でALPPタンパク質に結合する、0.01μg/mlまたはそれ未満のEC50でALPPタンパク質に結合する、0.005μg/mlまたはそれ未満のEC50でALPPタンパク質に結合する、0.004μg/mlまたはそれ未満のEC50でALPPタンパク質に結合する、0.003μg/mlまたはそれ未満のEC50でALPPタンパク質に結合する、0.0.002μg/mlまたはそれ未満のEC50でALPPタンパク質に結合する、0.001μg/mlまたはそれ未満のEC50でALPPタンパク質に結合する。EC50は、本明細書に記載される方法、例えば、ELISAまたは細胞フローサイトメトリーによって決定することができる。
【0173】
操作された細胞
本開示は、CAR、および/または本明細書に記載される様々なタンパク質を発現する操作された細胞(例えば、免疫細胞、T細胞、NK細胞、腫瘍浸潤リンパ球)を提供する。これらの操作された細胞を使用して、本明細書に記載される様々な障害または疾患(例えば、ALPP関連がん)を治療することができる。
【0174】
様々な態様では、操作される細胞を、例えばヒトおよび非ヒト動物から得ることができる。様々な態様では、操作される細胞を、細菌、真菌、ヒト、ラット、マウス、ウサギ、サル、ブタまたは任意の他の種から得ることができる。好ましくは、細胞は、ヒト、ラットまたはマウスに由来する。いくつかの態様では、細胞はマウスリンパ球であって、CAR、またはその抗原結合性フラグメントを発現するように操作(例えば形質導入)される。いくつかの態様では、細胞は、ヒトから得られる。様々な態様では、操作される細胞は血液細胞である。好ましくは、細胞は白血球(例えばT細胞)、リンパ球または任意の他の適切な血液細胞型である。いくつかの態様では、細胞は末梢血液細胞である。いくつかの態様では、細胞は腫瘍浸潤リンパ球(TIL)である。いくつかの態様では、細胞は、T細胞、B細胞またはNK細胞である。いくつかの態様では、細胞はヒト末梢血単核細胞(PBMC)である。いくつかの態様では、ヒトPBMCはCD3+細胞である。いくつかの態様では、ヒトPBMCはCD8+細胞である。
【0175】
いくつかの態様では、細胞はT細胞である。いくつかの態様では、T細胞は、標的細胞の表面の特異的抗原部分を認識する細胞表面受容体を発現することができる。細胞表面受容体は、標的細胞と会合する抗原部分を認識することができる野生型もしくは組換えT細胞受容体(TCR)、キメラ抗原受容体(CAR)、または任意の他の表面受容体であることができる。T細胞は、当技術分野において公知の様々な方法、例えば患者から単離されたT細胞(例えば腫瘍浸潤リンパ球)のインビトロ培養によって得ることができる。遺伝的に改変されたT細胞を、(例えば、患者の末梢血から単離された)T細胞にウイルスベクターを形質導入することによって得ることができる。いくつかの態様では、T細胞は、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、または制御性T細胞である。いくつかの態様では、T細胞は、Tヘルパー1型T細胞およびTヘルパー2型T細胞である。いくつかの態様では、この受容体を発現しているT細胞はαβ-T細胞である。代替的な態様では、この受容体を発現しているT細胞はγδ-T細胞である。いくつかの態様では、T細胞は中枢性メモリーT細胞である。いくつかの態様では、T細胞はエフェクターメモリーT細胞である。いくつかの態様では、T細胞はナイーブT細胞である。
【0176】
いくつかの態様では、細胞はNK細胞である。いくつかの態様では、操作された細胞の調製は、1つまたは複数の培養および/または調製段階を含む。結合分子、例えばCARの導入のための細胞を、試料、例えば生物学的試料、例えば対象から得られたまたは派生したものから単離することができる。いくつかの態様では、細胞が単離される対象は、疾患もしくは状態を有する対象または細胞療法を必要とする対象または細胞療法が投与される対象である。対象は、いくつかの態様では、そのために細胞が単離、加工、および/または操作される養子細胞療法などの特定の治療的介入の必要があるヒトである。
【0177】
いくつかの態様では、細胞は、幹細胞、例えば人工多能性幹細胞(iPSC)を含む複能性および多能性幹細胞である。細胞は、初代細胞、例えば対象から直接単離されたものおよび/または対象から単離され、凍結されたものであることができる。いくつかの態様では、幹細胞は、所望の細胞型(例えばT細胞)を得るために追加的な分化因子と共に培養される。
【0178】
種々の細胞型を、適切な単離方法から得ることができる。単離方法は、細胞における1つまたは複数の特異的分子、例えば表面マーカー、例えば表面タンパク質、細胞内マーカー、または核酸の発現または存在をベースとする、種々の細胞型の分離を含む。いくつかの態様では、そのようなマーカーをベースとする分離のための任意の公知の方法を使用することができる。いくつかの態様では、分離は、親和性または免疫親和性ベースの分離である。例えば、いくつかの局面では、単離は、1つまたは複数のマーカー、典型的には細胞表面マーカーの細胞発現または発現レベルをベースとする、細胞および細胞集団の分離、例えば、そのようなマーカーに特異的に結合する抗体または結合パートナーとのインキュベーションに一般的に続く洗浄段階、および抗体または結合パートナーに結合しなかった細胞からの抗体または結合パートナーと結合した細胞の分離によるものを含む。
【0179】
そのような分離段階は、試薬と結合した細胞がさらなる使用のために保持される正の選択、および/または抗体もしくは結合パートナーに結合しなかった細胞が保持される負の選択をベースとすることができる。いくつかの例では、両方の画分がさらなる使用のために保持される。いくつかの局面では、不均一集団においてある細胞型を特異的に同定する抗体が利用不可能な場合、負の選択が特に有用であることができ、その結果、所望の集団以外の細胞によって発現されるマーカーをベースとする分離が最良に実行される。
【0180】
結合分子を発現させるため、およびそのような結合分子を発現する遺伝子操作された細胞を作製するための、方法、核酸、組成物、およびキットもまた、提供される。遺伝子操作は、一般的に、例えば、レトロウイルス形質導入、トランスフェクション、または形質転換による、治療用分子、例えばCAR、例えばTCR様CAR、ポリペプチド、融合タンパク質をコードする核酸の細胞内への導入を伴う。いくつかの態様では、遺伝子移入は、最初に、例えば細胞を、例えば、サイトカインまたは活性化マーカーの発現により測定される、増殖、生存、および/または活性化などの応答を誘導する刺激と組み合わせることによって、該細胞を刺激し、続いて活性化細胞に形質導入し、培養して臨床適用に十分な数まで拡大増殖させることによって、達成される。
【0181】
いくつかの態様では、組換え核酸は、例えば、サルウイルス40(SV40)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)由来のベクターなどの組換え感染性ウイルス粒子を使用して細胞内に移入される。いくつかの態様では、組換え核酸は、組換えレンチウイルスベクターまたはガンマ-レトロウイルスベクターなどのレトロウイルスベクターを使用してT細胞内に移入される。いくつかの態様では、レトロウイルスベクター、例えば、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)、骨髄増殖性肉腫ウイルス(MPSV)、マウス胚性幹細胞ウイルス(MESV)、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)、または脾フォーカス形成ウイルス(SFFV)に由来するレトロウイルスベクターは、長い末端反復配列(LTR)を有する。大部分のレトロウイルスベクターは、マウスレトロウイルスに由来する。いくつかの態様では、レトロウイルスには、任意のトリまたは哺乳動物細胞源に由来するものが含まれる。レトロウイルスは、典型的には、それらがヒトを含むいくつかの種の宿主細胞に感染できることを意味する両種指向性である。いくつかの態様では、ベクターは、レンチウイルスベクターである。いくつかの態様では、組換え核酸は、エレクトロポレーションを介してT細胞内に移入される。いくつかの態様では、組換え核酸は、トランスポジションを介してT細胞内に移入される。免疫細胞に遺伝物質を導入し、発現させる他の方法には、リン酸カルシウムトランスフェクション、プロトプラスト融合、陽イオンリポソーム媒介トランスフェクション;タングステン粒子促進微粒子銃およびリン酸ストロンチウムDNA共沈が含まれる。これらの方法の多くは、例えば、その全体で参照により本明細書に組み入れられるWO2019195486に記載されている。
【0182】
また、操作された細胞の集団、そのような細胞を含有し、かつ/またはそのような細胞が濃縮された組成物、例えば、結合分子を発現している細胞が、組成物中の総細胞またはT細胞、CD8+もしくはCD4+細胞などの特定の種類の細胞の15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の割合(%)を占めるものも提供される。
【0183】
いくつかの態様では、操作された細胞(例えばCAR-T細胞)は、操作された細胞(例えばCAR-T細胞)を活性化できるように標的細胞(例えば抗原提示細胞)と共に少なくとも1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、12時間、18時間、1日、2日、3日、もしくはそれ以上、または約1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、12時間、18時間、1日、2日、3日、もしくはそれ以上、共培養される。いくつかの態様では、標的細胞はJurkat細胞である。
【0184】
いくつかの態様では、IL-12および改変されたIL-12は、操作された細胞によって発現されることができる。例えば、本明細書に記載される改変IL-12を含む融合タンパク質は、例えば融合タンパク質が膜係留型タンパク質である場合、操作された細胞の細胞表面に発現することができる。ある場合には、本明細書に記載される改変IL-12を含む融合タンパク質は、例えば融合タンパク質が可溶性タンパク質である場合、発現し、分泌されることができる。操作された細胞におけるIL-12の発現は、いくつかの追加的な利点を提供する。例えば、それは、IL-12作用のもっとも強力なメディエーターであるIFN-γのNK細胞およびT細胞からの産生を増加させること、活性化NK細胞、CD8+およびCD4+ T細胞の増殖および細胞傷害性を刺激すること、CD4+ Th0細胞の分化をTh1表現型の方へ変えること、腫瘍細胞に対する抗体依存性細胞傷害(ADCC)を増強すること、ならびにB細胞からのIgG産生およびIgEの産生抑制を、例えば少なくとも1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、もしくは20倍、または約1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、もしくは20倍誘導することができる。
【0185】
いくつかの態様では、標的細胞との共培養は、操作された細胞のサイトカイン(例えばIFNγ)分泌を、共培養なしの操作された細胞のサイトカイン分泌レベルと比較して少なくとも1倍、2倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、200倍、500倍、1000倍、2000倍、5000倍、10000倍、もしくはそれ以上、または約1倍、2倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、200倍、500倍、1000倍、2000倍、5000倍、10000倍、もしくはそれ以上増加させることができる。
【0186】
いくつかの態様では、細胞はヒトPBMCであって、CAR、またはその抗原結合性フラグメントを発現するように操作(例えば形質導入)される。
【0187】
いくつかの態様では、操作された細胞が標的細胞(例えばALPP発現細胞)と共培養された場合、操作された細胞は、サイトカイン(例えばIFNγ)の発現または分泌を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、もしくはそれ以上、または約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、もしくはそれ以上増加させることができる。いくつかの態様では、操作された細胞が標的細胞(例えばALPP発現細胞)と共培養された場合、活性化T細胞集団は、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、もしくはそれ以上、または約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、もしくはそれ以上増加される。いくつかの態様では、T細胞活性化状況を、CD69の発現レベルによって測定することができる。
【0188】
組換えベクター
本開示はまた、本明細書において開示される単離されたポリヌクレオチド(例えば、本明細書において開示されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド)を含む組換えベクター(例えば発現ベクター)、組換えベクターが導入される宿主細胞(すなわち、宿主細胞がポリヌクレオチドおよび/またはポリヌクレオチドを含むベクターを含有するように)、ならびに組換え技法による組換えポリペプチドまたはそのフラグメントの産生を提供する。
【0189】
ベクターが宿主細胞に導入された場合、該ベクターは、関心対象の1つまたは複数のポリヌクレオチドを宿主細胞に送達することができる構築物である。「発現ベクター」は、該発現ベクターが導入された宿主細胞において関心対象の1つまたは複数のポリヌクレオチドを送達し、コードされるポリペプチドとして発現させることができる。したがって、発現ベクターにおいて関心対象のポリヌクレオチドは、発現ベクターを導入された宿主細胞において関心対象のポリヌクレオチドが翻訳されるように、ベクター内の、または宿主細胞のゲノム中の、または関心対象のポリヌクレオチドの組込み部位の近くのもしくはそれに隣接した、プロモーター、エンハンサー、および/またはポリ-A尾部などの調節エレメントと機能的に連結されることによって、発現のためにベクター中に配置される。
【0190】
ベクターを、当技術分野において公知の方法、例えば、エレクトロポレーション、化学トランスフェクション(例えば、DEAE-デキストラン)、形質転換、トランスフェクション、ならびに感染および/または形質導入(例えば組換えウイルス)によって、宿主細胞に導入することができる。したがって、ベクターの非限定的な例には、ウイルスベクター(組換えウイルスを生成するために使用することができる)、ネイキッドDNAまたはRNA、プラスミド、コスミド、ファージベクター、およびカチオン性凝縮剤と会合したDNAまたはRNA発現ベクターが含まれる。
【0191】
本開示は、病理学的疾患または状態の治療のために使用することができる、細胞を遺伝子改変するために適した核酸構築物を含む組換えベクターを提供する。
【0192】
任意のベクターまたはベクター型を使用して、細胞に遺伝物質を送達することができる。これらのベクターには、プラスミドベクター、ウイルスベクター、細菌人工染色体(BAC)、酵母人工染色体(YAC)、およびヒト人工染色体(HAC)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。ウイルスベクターには、組換えレトロウイルスベクター、組換えレンチウイルスベクター、組換えアデノウイルスベクター、泡沫状ウイルスベクター、組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、ハイブリッドベクター、およびプラスミドトランスポゾン(例えば、スリーピングビューティートランスポゾンシステムおよびPiggyBacトランスポゾンシステム)またはインテグラーゼベースのベクターシステムが含まれることができるが、それらに限定されるわけではない。当技術分野において公知である他のベクターもまた、本明細書に記載される方法に関連して使用することができる。
【0193】
いくつかの態様では、ベクターはウイルスベクターである。ウイルスベクターは、ウイルスベクターの製造に特異的な培地中で成長させることができる。ウイルスベクターを成長させるための任意の適切な成長培地および/またはサプリメントを、本明細書に記載される態様により使用することができる。いくつかの態様では、MP71ベクターが使用される。
【0194】
いくつかの態様では、使用されるベクターは組換えレトロウイルスベクターである。レトロウイルスベクターは、関心対象の核酸分子の発現を指示することができる。レトロウイルスは、そのウイルスカプセル中にRNA形態で存在し、それが宿主細胞内で複製した場合に二本鎖DNA中間体を形成する。同様に、レトロウイルスベクターは、RNAおよび二本鎖DNA形態の両方で存在する。レトロウイルスベクターはまた、組換えDNAフラグメントを含有するDNA形態および組換えRNAフラグメントを含有するRNA形態を含む。ベクターは、少なくとも1つの転写プロモーター/エンハンサー、または遺伝子発現を制御する他のエレメントを含むことができる。そのようなベクターはまた、パッケージングシグナル、長い末端反復配列(LTR)またはその部分、ならびに使用されるレトロウイルスに適したプラス鎖およびマイナス鎖プライマー結合部位を含むことができる。長い末端反復配列(LTR)は、レトロトランスポゾンまたはレトロウイルスRNAの逆転写によって形成されるプロウイルスDNAのいずれの末端にも見出される、多数回(例えば、数百または数千回)繰り返す同一のDNA配列である。それらは、ウイルスの遺伝物質を宿主ゲノム内に挿入するためにウイルスによって使用される。任意で、ベクターはまた、ポリアデニル化を指示するシグナル、アンピシリン耐性、ネオマイシン耐性、TK、ヒグロマイシン耐性、フレオマイシン耐性、ヒスチジノール耐性、またはDHFRなどの選択マーカーのみならず、1つまたは複数の制限部位および翻訳終止配列を含むことができる。例えば、そのようなベクターは、5' LTR、リーディング配列、tRNA結合部位、パッケージングシグナル、第2鎖DNA合成起点、および3' LTRまたはその部分を含むことができる。追加的に、本明細書に使用されるレトロウイルスベクターはまた、レトロウイルスgag、pol、およびenv遺伝子の除去および関心対象の遺伝子との置換によって生み出される組換えベクターを指すことができる。
【0195】
いくつかの態様では、ベクターまたは構築物は、1つまたは複数の核酸分子の発現を指示する単一のプロモーターを含有することができる。いくつかの態様では、そのようなプロモーターは、多シストロン性(2シストロン性または3シストロン性)であることができる。例えば、いくつかの態様では、転写ユニットは、単一のプロモーターからのメッセージによって遺伝子産物(例えばCARおよび抗体またはその抗原結合性フラグメントをコードする)の共発現を可能にするIRES(内部リボソーム進入部位)を含有する2シストロン性ユニットとして操作することができる。あるいは、場合によっては、単一のプロモーターは、単一のオープンリーディングフレーム(ORF)中に、自己切断ペプチド(例えばP2AもしくはT2A)をコードする配列またはプロテアーゼ認識部位(例えばフーリン)により互いに分離された2つまたは3つの遺伝子(例えばCARおよび/または抗体もしくはその抗原結合性フラグメントをコードする)を含有するRNAの発現を指示する場合がある。したがって、ORFは、翻訳の途中(2A、例えばT2Aの場合)または翻訳後のいずれかに切断されて個別のタンパク質になる単一のポリタンパク質をコードする。場合によっては、T2Aなどのペプチドは、リボソームに2AエレメントのC末端でのペプチド結合の合成をスキップさせる(リボソームスキッピング)ことができ、2A配列の末端と下流の次のペプチドとの間の分離をもたらす。
【0196】
本明細書に記載されるベクターに関連して様々な細胞株を使用することができる。ポリペプチドを発現させるために使用され得る例示的な真核細胞には、COS 7細胞を含むCOS細胞;293-6E細胞を含む293細胞;CHO-S、DG44、Lec13 CHO細胞、およびFUT8 CHO細胞を含むCHO細胞;PER.C6(登録商標)細胞;ならびにNSO細胞が含まれるが、それらに限定されるわけではない。いくつかの態様では、特定の真核宿主細胞は、それが結合分子に所望の翻訳後改変を行う能力に基づいて選択される。例えば、いくつかの態様では、CHO細胞は、293細胞において産生される同じポリペプチドよりも高いレベルのシアリル化を有するポリペプチドを産生する。一局面では、本開示は、本明細書に記載されるベクターまたはベクターのペアを含む細胞に関する。いくつかの態様では、細胞はT細胞である。
【0197】
いくつかの態様では、CARまたはそのフラグメントをコードするベクターが本明細書において提供される。いくつかの態様では、ベクターは、SEQ ID NO:17、19、21、23、25、27、29、33、または35と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である核酸配列を含む。いくつかの態様では、ベクターは、SEQ ID NO:18、20、22、24、26、28、30、34、36、91、92、または93と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列をコードする。いくつかの態様では、ベクターの配列はコドン最適化されている。
【0198】
一局面では、本開示は、免疫チェックポイント(例えば、PD1、PD-L1、PD-L2、CTLA4、TIM3、CEACAM-1、CEACAM-3、CEACAM-5、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIRI、CD160、2B4、CD80、CD86、B7-H3(CD276)、B7-H4(VTCNl)、HVEM(TNFRSF14またはCD270)、KIR、A2aR、MHCクラスI、MHCクラスII、GAL9、アデノシン、またはTGFR、例えば、TGFRベータ)阻害剤をコードする核酸を含むベクターを提供する。いくつかの態様では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗PD-1または抗PD-L1抗体、またはその抗原結合性フラグメントである。いくつかの態様では、ベクターは、PD-1(例えばヒトPD-1)またはPD-L1(例えばヒトPD-L1)に特異的に結合するscFvをコードする核酸を含む。いくつかの態様では、scFvは、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、VHおよびVLは、可動性リンカーによってつながっている。いくつかの態様では、VHおよびVLは、VH-可動性リンカー-VLの順序でつながっている。いくつかの態様では、VHおよびVLは、VL-可動性リンカー-VHの順序でつながっている。いくつかの態様では、抗PD-1抗体または抗原結合性フラグメント(例えばscFv)のVHのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:15に示される。いくつかの態様では、抗PD-1抗体または抗原結合性フラグメント(例えばscFv)のVLのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:16に示される。いくつかの態様では、抗PD-L1抗体または抗原結合性フラグメント(例えばscFv)のVHのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:31に示される。いくつかの態様では、抗PD-1抗体または抗原結合性フラグメント(例えばscFv)のVLのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:32に示される。いくつかの態様では、可動性リンカーは、GGGGSGGGGSGGGGS(SEQ ID NO:87)のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、可動性リンカーは、GGGGS(SEQ ID NO:88)の少なくとも1、2、3、4、5、または6つのリピートを含む。いくつかの態様では、ベクターは、リーダーペプチドをコードする核酸をさらに含む。いくつかの態様では、リーダーペプチドはヒトIL-2リーダーペプチド(SEQ ID NO:42)である。いくつかの態様では、ベクターは、SEQ ID NO:33と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%同一である核酸配列を含む。いくつかの態様では、ベクターは、SEQ ID NO:34と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む。いくつかの態様では、ベクターは、SEQ ID NO:35と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%同一である核酸配列を含む。いくつかの態様では、ベクターは、SEQ ID NO:36と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む。
【0199】
いくつかの態様では、ベクターは、CAR(例えば、A02、A03、A04、A05、A06、A07、またはA08 CAR)および免疫チェックポイント阻害剤(例えば、抗PD-1または抗PD-L1 scFv)を含む融合ポリペプチドをコードする。いくつかの態様では、ベクターは、T2Aをコードする核酸(SEQ ID NO:41)をさらに含む。いくつかの態様では、CARおよび免疫チェックポイント阻害剤は、T2Aを含むアミノ酸配列によってつながっている。
【0200】
本開示はまた、CAR、その抗原結合性フラグメント、および/またはCAR由来結合分子(例えば、本明細書に記載される機能的部分およびその機能的バリアント、ポリペプチド、もしくはタンパク質を含む)のいずれかをコードするヌクレオチド配列を含む核酸配列を提供する。本明細書に使用される「核酸」は、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、および「核酸分子」を含むことができ、一般的に、天然、非天然または変更されたヌクレオチドを含有することができる、天然起源から合成または得られた単鎖または二本鎖であることができるDNAまたはRNAのポリマーを意味する。さらに、核酸は、相補的DNA(cDNA)を含む。一般的に核酸が挿入、欠失、逆位、および/または置換のいずれも含まないことが好ましい。しかしある場合には、本明細書に記述されるように、核酸が1つまたは複数の挿入、欠失、逆位、および/または置換を含むことが適切であることができる。
【0201】
本明細書に記載される核酸は、当技術分野において公知の手順を使用して、化学合成および/または酵素ライゲーション反応をベースに構築することができる。例えば、核酸は、天然のヌクレオチドまたは様々に改変されたヌクレオチドを使用して化学合成することができる。任意のそのような態様のいくつかでは、ヌクレオチド配列はコドン最適化されている。
【0202】
本開示はまた、本明細書に記載される任意の核酸のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列または本明細書に記載される任意の核酸のヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。
【0203】
いくつかの態様では、アルファ鎖をコードするヌクレオチド配列およびベータ鎖をコードするヌクレオチド配列は、リボソームスキッピングを引き起こすペプチド配列により分離されている。いくつかの態様では、リボソームスキッピングを引き起こすペプチドは、P2AまたはT2Aペプチドである。いくつかの態様では、核酸は合成性である。いくつかの態様では、核酸はcDNAである。
【0204】
いくつかの態様では、ベクターは追加的に、チェックポイント阻害剤(CPI)(例えば、阻害タンパク質)をコードする核酸配列を含むことができる。いくつかの態様では、チェックポイント阻害剤は、例えば、本明細書に記載される任意の抗体またはその抗原結合性フラグメントである。いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、PD-1、PD-L1、PD-L2、2B4(CD244)、4-1BB、A2aR、B7.1、B7.2、B7-H2、B7-H3、B7-H4、B7-H6、BTLA、ブチロフィリン、CD160、CD48、CTLA4、GITR、gp49B、HHLA2、HVEM、ICOS、ILT-2、ILT-4、KIRファミリー受容体、LAG-3、OX-40、PIR-B、SIRPアルファ(CD47)、TFM-4、TIGIT、TIM-1、TIM-3、TIM-4、またはVISTAに特異的に結合することができる。いくつかの態様では、阻害タンパク質はscFv(例えば抗PD-1 scFv)である。いくつかの態様では、ベクターは追加的に、二機能性トラップ融合タンパク質をコードする核酸配列を含むことができる。いくつかの態様では、二機能性トラップタンパク質は、PD-1およびTGF-βの両方を標的とする。いくつかの態様では、二機能性トラップタンパク質は、PD-L1およびTGF-βの両方を標的とする。いくつかの態様では、二機能性融合タンパク質は、PD-L1を遮断し、かつTGF-βを隔離するように設計される。M7824(MSB0011395C)は、ヒトIgG1モノクローナル抗体(mAb)アベルマブをベースとするヒト抗PD-L1 scFvのC末端に連結されたヒトTGF-β受容体II(TGFβRII)の細胞外ドメインを含む。いくつかの態様では、二機能性融合タンパク質は、ヒト抗PD-1 scFvのC末端に連結されたヒトTGF-β受容体II(TGFβRII)の細胞外ドメインを含む。
【0205】
任意のそのような態様のいくつかでは、CAR、またはその抗原結合性フラグメントは、コドン最適化されたヌクレオチド配列によってコードされる。ある特定の態様では、ポリペプチドは、シグナルペプチドを含む。いくつかの態様では、ポリペプチドおよび/または融合タンパク質は組換え型である。
【0206】
本開示はまた、本明細書に記載される任意のヌクレオチド配列と少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一である核酸配列、および本明細書に記載される任意のアミノ酸配列と少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一であるアミノ酸配列を提供する。いくつかの態様では、本開示は、本明細書に記載される任意のペプチドをコードするヌクレオチド配列、または本明細書に記載される任意のヌクレオチド配列によってコードされる任意のアミノ酸配列に関する。
【0207】
いくつかの態様では、核酸配列は、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、150、200、250、300、350、400、500、もしくは600ヌクレオチド、または約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、150、200、250、300、350、400、500、もしくは600ヌクレオチドである。いくつかの態様では、アミノ酸配列は、少なくとも5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、300、400、500、600、700、800、もしくは900アミノ酸残基、または約5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、300、400、500、600、700、800、もしくは900アミノ酸残基である。いくつかの態様では、核酸配列は、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、150、200、250、300、350、400、500、または600ヌクレオチド未満である。いくつかの態様では、アミノ酸配列は、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、300、400、500、600、700、800、または900アミノ酸残基未満である。
【0208】
2つのアミノ酸配列、または2つの核酸配列の同一性パーセントを決定するために、配列は最適な比較目的のために整列される(例えば、最適な整列のために第1および第2のアミノ酸または核酸配列の一方または両方にギャップを導入することができ、比較目的のために非相同配列を無視することができる。次に、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置のアミノ酸残基またはヌクレオチドが比較される。第1の配列中の位置が第2の配列中の対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドで占められている場合、その分子はその位置で同一である。2つの配列の間の同一性パーセントは、2つの配列の最適な整列のために導入する必要があるギャップの数、および各ギャップの長さを考慮して、その配列によって共有される同一な位置の数の関数である。
【0209】
操作された細胞を調製するための方法
本開示は、病理学的疾患または状態を治療するための操作された細胞を調製、製造、および/または使用するための方法またはプロセスを提供する。
【0210】
本明細書に記載されるタンパク質、例えばCARの導入のための細胞を、試料、例えば生物学的試料、例えば対象から得られるまたは対象に由来するものから単離することができる。いくつかの態様では、細胞が単離される対象は、疾患もしくは状態を有する、または細胞療法を必要とする、または細胞療法が投与される対象である。対象は、いくつかの態様では、特定の治療的介入、例えば細胞がそのために単離、処理、および/または操作されている養子細胞療法を必要とするヒトである。
【0211】
したがって、細胞は、いくつかの態様では、初代細胞、例えば初代ヒト細胞である。試料には、対象から直接採取された組織、液体、および他の試料のみならず、1つまたは複数の処理段階、例えば分離、遠心分離、遺伝子操作(例えば、ウイルスベクターを用いた形質導入)、洗浄、および/またはインキュベーションに起因する試料が含まれる。生物学的試料は、生物学的起源から直接得られる試料または処理される試料であることができる。生物学的試料には、体液、例えば血液、血漿、血清、脳脊髄液、滑液、尿および汗、組織および器官試料が、それらに起因する処理された試料を含め、含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0212】
いくつかの局面では、細胞が由来するまたは単離される試料は、血液もしくは血液由来試料であるか、またはアフェレーシスもしくは白血球アフェレーシス産物であるか、またはそれに由来する。例示的な試料には、全血、末梢血単核細胞(PBMC)、白血球、骨髄、胸腺、組織生検、腫瘍、白血病、リンパ腫、リンパ節、腸管関連リンパ組織、粘膜関連リンパ組織、脾臓、他のリンパ組織、肝臓、肺、胃、腸、結腸、腎臓、膵臓、乳房、骨、前立腺、子宮頸部、精巣、卵巣、扁桃腺、もしくは他の器官、および/またはそれに由来する細胞が含まれる。細胞療法、例えば養子細胞療法に関連して、試料には、自家および同種起源の試料が含まれる。
【0213】
いくつかの態様では、細胞は、細胞株、例えばT細胞株に由来する。細胞は、いくつかの態様では、異種起源、例えばマウス、ラット、または非ヒト霊長類から得られる。いくつかの態様では、細胞は、マウスリンパ節から単離される。
【0214】
いくつかの態様では、対象から収集された血液細胞は、例えば、血漿画分を除去するため、およびその後の処理段階に適した緩衝液または培地中に細胞を入れるために、洗浄される。いくつかの態様では、細胞はリン酸緩衝食塩水(PBS)を用いて洗浄される。いくつかの態様では、洗浄溶液は、カルシウムおよび/またはマグネシウムおよび/または多くもしくはすべての二価陽イオンを含まない。いくつかの局面では、洗浄段階は、半自動「フロースルー」遠心分離によって行われる。いくつかの局面では、洗浄段階は、タンジェント流濾過(TFF)によって行われる。いくつかの態様では、洗浄後、細胞は、例えばCa2+/Mg2+不含PBSなどの多種多様な生体適合性緩衝液中に再懸濁される。ある特定の態様では、血液細胞試料の成分が除去され、細胞が培地中に直接再懸濁される。いくつかの態様では、方法には、密度ベースの細胞分離法、例えば赤血球を溶解させ、PercollまたはFicoll勾配をかけて遠心分離を行うことによる末梢血からの白血球の調製が含まれる。
【0215】
いくつかの態様では、方法は、例えば、患者の血液からT細胞を単離する段階;T細胞の集団に遺伝子操作された抗原受容体をコードする核酸構築物を含むウイルスベクターを形質導入する段階;形質導入された細胞をインビトロで拡大増殖させる段階;および/または拡大増殖された細胞を患者に注入する段階であって、操作されたT細胞が抗原陽性腫瘍細胞を探し、破壊する段階のうちの1つまたは複数の段階を含む。いくつかの態様では、核酸構築物はさらに、阻害性タンパク質をコードする配列を含む。いくつかの態様では、これらの操作されたT細胞は、PD-1/PD-L1免疫抑制を遮断し、抗腫瘍免疫応答を強化することができる。方法はさらに、核酸構築物を含有するウイルスベクターによるT細胞のトランスフェクションを含む。
【0216】
いくつかの態様では、方法は、本明細書に記載される任意のベクターをインビトロまたはエクスビボで細胞内に導入する段階を伴う。いくつかの態様では、ベクターはウイルスベクターであり、導入する段階は、形質導入により実行される。いくつかの態様では、細胞は、少なくとも1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、12時間、18時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、2週間、3週間、もしくはそれ以上、または約1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、12時間、18時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、2週間、3週間、もしくはそれ以上形質導入される。いくつかの態様では、方法はさらに、1つまたは複数の作用物質を細胞内に導入する段階を伴い、その際、1つまたは複数の作用物質の各々は、独立して、T細胞受容体アルファ定常部(TRAC)遺伝子および/またはT細胞受容体ベータ定常部(TRBC)遺伝子の遺伝子破壊を誘導することができる。いくつかの態様では、1つまたは複数の作用物質は、阻害性核酸(例えばsiRNA)である。いくつかの態様では、1つまたは複数の作用物質は、DNAを標的とするタンパク質とヌクレアーゼまたはRNAガイドヌクレアーゼ(例えば、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列核酸(CRISPR)関連ヌクレアーゼ)とを含む融合タンパク質である。
【0217】
T細胞のトランスフェクションは、任意の標準的な方法、例えば、リン酸カルシウム、エレクトロポレーション、リポソーム媒介移入、マイクロインジェクション、バイオリスティック粒子送達システム、または専門家に公知の任意の他の方法を使用することによって達成することができる。いくつかの態様では、T細胞のトランスフェクションは、リン酸カルシウム法を使用して行われる。
【0218】
本開示は、個別化抗腫瘍免疫療法を創出する方法を提供する。遺伝子操作されたT細胞は、患者の血液細胞から作製することができる。次いで、これらの操作されたT細胞は、細胞療法の産物として患者に再注入される。
【0219】
治療方法
本明細書において開示される方法を、様々な治療目的のために使用することができる。一局面では、本開示は、対象におけるがんを治療するための方法、対象における腫瘍体積の増加速度を経時的に低減する方法、転移が発生するリスクを低減する方法、または対象において追加の転移が発生するリスクを低減する方法を提供する。いくつかの態様では、治療は、がんの進行を停止、減速、遅延、または阻害することができる。いくつかの態様では、治療は、対象におけるがんの数、重症度、および/または1つもしくは複数の症状の持続期間の低減を生じることができる。
【0220】
一局面では、本開示は、CAR、その抗原結合性フラグメントを発現している操作された細胞の治療有効量を、それを必要とする対象(例えば、がんを有する、または有すると同定もしくは診断された対象)に投与する段階を含む方法を特徴とする。
【0221】
いくつかの態様では、対象はALPP陽性がんを有する。いくつかの態様では、対象は、卵巣がん、子宮頸がん、または精巣がんを有する。いくつかの態様では、対象は、精巣セミノーマ、原発性頭蓋内胚細胞腫、上皮性卵巣がん、卵巣腺がん、漿液性嚢胞腺がん、未分化がん、未分化胚細胞腫、卵巣がん、子宮がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、尿路上皮がん、胃がん(stomach cancer)、肺がん、膵がん、精巣がん、骨肉腫、または胃がん(gastric cancer)を有する。
【0222】
いくつかの態様では、本明細書に記載される操作された細胞によって発現されるIL-12(例えば改変IL-12)は、IL-12を発現しない類似の操作された細胞と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、2倍、3倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、もしくはそれ以上、または約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、2倍、3倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、もしくはそれ以上の、異種がんを治療する改善(例えばがん細胞を死滅させる、または腫瘍体積を低減する)を提供することができる。
【0223】
いくつかの態様では、本明細書において開示される組成物および方法を、がんのリスクのある患者の治療のために使用することができる。当技術分野において公知の様々な方法を用いて、がんを有する患者を同定することができる。
【0224】
本明細書に使用される場合、「有効量」によって、疾患、例えばがんの進行を停止、減速、遅延、または阻害することを含む、有益なまたは所望の結果を引き起こすために十分な量または投薬量が意味される。有効量は、例えば、治療剤および/または治療用組成物が投与されることになる対象の年齢および体重、症状の重症度および投与経路に応じて変動する。したがって、投与は、個人ベースで決定される可能性がある。
【0225】
本明細書に使用される場合、「疾患の発生を遅らせること」という用語は、疾患(がんなど)の発生を先送り、妨害、減速、遅延、安定化、抑制および/または延期することを指す。この遅れは、治療される疾患の履歴および/または個体に応じて様々な期間であることができる。当業者に明らかなように、十分なまたは顕著な遅れは、事実上、個体が疾患を発生しない点で予防を包含することができる。例えば晩期がん、例えば転移の発生を遅延させることができる。
【0226】
有効量は、1回または複数回の投与で投与することができる。例として、有効量の組成物は、患者におけるがんの進行を改善する、止める、安定化する、後退させる、阻害する、減速する、および/もしくは遅らせるのに十分な量であるか、または細胞(例えば、生検された細胞、本明細書に記載されるがん細胞のいずれか、もしくは細胞株(例えばがん細胞株))の増殖をインビトロで改善する、止める、安定化する、後退させる、減速する、および/もしくは遅らせるのに十分な量である。当技術分野において理解されるように、有効性は、とりわけ、患者の履歴のみならず、使用される組成物の種類(および/または投薬量)などの他の要因に応じて変動し得る。
【0227】
有効量および投与スケジュールは、経験的に決定される場合があり、そのような決定を行うことは、当業者の技能の範囲内である。当業者は、投与しなければならない投薬量が、例えば、処置を受ける哺乳動物、投与経路、哺乳動物に投与される特定の種類の治療剤および他の薬物に応じて変動することを理解しているであろう。適切な用量を選択する上での案内は、文献に見出すことができる。加えて、処置は疾患または状態の100%または完全な治療または予防を必ずしも生じない。当業者が潜在的に有利な治療手段と認識する、様々な程度の治療効果を有する複数の治療/予防法が利用可能である。
【0228】
いくつかの局面では、本開示はまた、哺乳動物における疾患/状態を診断する方法を提供し、その際、CAR、抗体、または抗原結合性フラグメントは、対象から得られた試料と相互作用して複合体を形成し、その際、該試料は、1つまたは複数の細胞、ポリペプチド、タンパク質、核酸、抗体、または抗原結合部分、血液、細胞全体、その溶解物、または細胞全体の溶解物の画分、例えばその核もしくは細胞質画分、全タンパク質画分、または核酸画分を含むことができ、複合体の検出は、該哺乳動物における状態の存在を示し、該状態は、がんまたは感染である。さらに、複合体の検出は、非限定的に、ELISA、フローサイトメトリー、蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、マイクロアレイ、サザンブロッティング、電気泳動、ファージ分析、クロマトグラフィーおよびその他などの、当技術分野において公知の任意の数の方法であることができる。したがって、治療方法はさらに、例えば、対象が感染またはがんを有するかどうか決定することによって、該対象が本明細書において開示される治療から利益を得ることができるかどうかを決定することを含むことができる。
【0229】
本明細書に記載される方法のいずれかでは、操作された細胞および/または少なくとも1つの追加的な治療剤を、対象に1週間に少なくとも1回(例えば、週1回、週2回、週3回、週4回、1日1回、1日2回、または1日3回)投与することができる。いくつかの態様では、少なくとも2つの異なる操作された細胞(例えば、細胞が異なる結合分子を発現する)が、同じ組成物(例えば、液体組成物)として投与される。いくつかの態様では、操作された細胞および少なくとも1つの追加的な治療剤は、同じ組成物(例えば、液体組成物)として投与される。いくつかの態様では、操作された細胞および少なくとも1つの追加的な治療剤は、2つの異なる組成物として投与される。いくつかの態様では、少なくとも1つの追加的な治療剤は、丸剤、錠剤、またはカプセル剤として投与される。いくつかの態様では、少なくとも1つの追加的な治療剤は、徐放性経口製剤として投与される。
【0230】
いくつかの態様では、操作された細胞を対象に投与する前、それと同時、またはその後に、1つまたは複数の追加的な治療剤を対象に投与することができる。
【0231】
いくつかの態様では、1つまたは複数の追加的な治療剤を対象に投与することができる。追加的な治療剤はチェックポイント阻害剤(CPI)であることができる。いくつかの態様では、チェックポイント阻害剤は、阻害タンパク質、例えば抗体またはその抗原結合性フラグメントである。チェックポイント阻害剤は、例えばPD-1、PD-L1、PD-L2、2B4(CD244)、4-1BB、A2aR、B7.1、B7.2、B7-H2、B7-H3、B7-H4、B7-H6、BTLA、ブチロフィリン、CD160、CD48、CTLA4、GITR、gp49B、HHLA2、HVEM、ICOS、ILT-2、ILT-4、KIRファミリー受容体、LAG-3、OX-40、PIR-B、SIRPアルファ(CD47)、TFM-4、TIGIT、TIM-1、TIM-3、TIM-4、VISTAおよびそれらの組合せを含む1つまたは複数の免疫チェックポイントを阻害または遮断することができる。いくつかの態様では、阻害タンパク質は、PD-1またはPD-Llを遮断する。様々な態様では、阻害タンパク質は、抗PD-1 scFvまたは抗PD-L1 scFvを含む。阻害タンパク質は、PD-1もしくはPD-L1の低減した発現をもたらす、ならびに/または集団中のT細胞におけるPD-1もしくはPD-L1のアップレギュレーションを阻害する、ならびに/またはPD-1/PD-L1複合体の形成およびそれに続くシグナル伝達を物理的に妨げることができる。いくつかの態様では、阻害タンパク質はPD-1を遮断する。いくつかの態様では、追加的な治療剤は、抗OX40抗体、抗PD-L1抗体、抗PD-L2抗体、抗LAG-3抗体、抗TIGIT抗体、抗BTLA抗体、抗CTLA-4抗体、または抗GITR抗体である。いくつかの態様では、追加的な治療剤は、抗CTLA4抗体(例えばイピリムマブ)、抗CD20抗体(例えばリツキシマブ)、抗EGFR抗体(例えばセツキシマブ)、抗CD319抗体(例えばエロツズマブ)、または抗PD1抗体(例えばニボルマブ)である。
【0232】
いくつかの態様では、追加的な治療剤は二機能性トラップ融合タンパク質である。二機能性トラップタンパク質は、免疫チェックポイントおよびTGF-βの負の調節経路の両方を標的とすることができる。免疫チェックポイントの発現に加えて、腫瘍微小環境は、他の免疫抑制分子を含有する。特に関心がもたれるのは、がんに複数の機能を有するサイトカインTGF-β(TGFB)である。TGF-βは、腫瘍発生初期に腫瘍細胞の増殖を防止し、分化およびアポトーシスを促進する。しかし、腫瘍進行の間、TGF-β受容体の発現欠如または下流のシグナル伝達要素の変異のせいで、腫瘍のTGF-β非感受性が生じる。次いでTGF-βは、それが血管新生、上皮間葉転換(EMT)の誘導、および免疫抑制に及ぼす効果により、腫瘍の進行を促進する。高いTGF-β血清レベルおよび腫瘍上でのTGF-β受容体(TGFβR)の発現欠如は予後不良と相関する。TGFβを標的とする治療法は、限られた臨床活性を示した。いくつかの態様では、二機能性トラップタンパク質は、PD-1およびTGF-βの両方を標的とする。いくつかの態様では、二機能性トラップタンパク質は、PD-L1およびTGF-βの両方を標的とする。いくつかの態様では、二機能性融合タンパク質は、PD-L1を遮断し、TGF-βを隔離するように設計される。M7824(MSB0011395C)は、ヒトIgG1モノクローナル抗体(mAb)、アベルマブをベースとする、ヒト抗PD-L1 scFvのC末端に連結されたヒトTGF-β受容体II(TGFβRII)の細胞外ドメインを含む。いくつかの態様では、二機能性融合タンパク質は、ヒト抗PD-1 scFvのC末端に連結された、ヒトTGF-β受容体II(TGFβRII)の細胞外ドメインを含む。これらの二機能性トラップ融合タンパク質は、例えば、その全体で参照により本明細書に組み入れられるKnudson, et al., "M7824, a novel bifunctional anti-PD-L1/TGFβ Trap fusion protein, promotes anti-tumor efficacy as monotherapy and in combination with vaccine." Oncoimmunology 7.5 (2018): e1426519に記載されている。いくつかの態様では、対象は、本明細書に記載されるCARまたは抗原結合分子および1つまたは複数の二機能性トラップ融合タンパク質を発現する細胞によって処置される。
【0233】
いくつかの態様では、追加的な治療剤は、B-Rafの阻害剤、EGFR阻害剤、MEKの阻害剤、ERKの阻害剤、K-Rasの阻害剤、c-Metの阻害剤、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)の阻害剤、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)の阻害剤、Aktの阻害剤、mTORの阻害剤、二重PI3K/mTOR阻害剤、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)の阻害剤、ならびにイソクエン酸脱水素酵素1(IDH1)および/またはイソクエン酸脱水素酵素2(IDH2)の阻害剤からなる群より選択される1つまたは複数の阻害剤を含むことができる。いくつかの態様では、追加的な治療剤は、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ-1)(IDO1)の阻害剤(例えば、エパカドスタット)である。いくつかの態様では、追加的な治療剤は、HER3の阻害剤、LSD1の阻害剤、MDM2の阻害剤、BCL2の阻害剤、CHK1の阻害剤、活性化ヘッジホッグシグナル伝達経路の阻害剤、およびエストロゲン受容体を選択的に分解する作用物質からなる群より選択される1つまたは複数の阻害剤を含むことができる。
【0234】
いくつかの態様では、追加的な治療剤は、トラベクテジン、nab-パクリタキセル、トレバナニブ、パゾパニブ、セジラニブ、パルボシクリブ、エベロリムス、フルオロピリミジン、IFL、レゴラフェニブ、レオリシン、アリムタ、ジカディア、スーテント、テムシロリムス、アキシチニブ、エベロリムス、ソラフェニブ、ヴォトリエント、パゾパニブ、IMA-901、AGS-003、カボザンチニブ、ビンフルニン、Hsp90阻害剤、Ad-GM-CSF、テモゾロミド(Temazolomide)、IL-2、IFNa、ビンブラスチン、サロミド(Thalomid)、ダカルバジン、シクロホスファミド、レナリドミド、アザシチジン、レナリドミド、ボルテゾミブ(bortezomid)、アムルビシン、カルフィルゾミブ、プララトレキサート、およびエンザスタウリンからなる群より選択される1つまたは複数の治療剤を含むことができる。
【0235】
いくつかの態様では、追加的な治療剤は、アジュバント、TLRアゴニスト、腫瘍壊死因子(TNF)アルファ、IL-1、HMGB1、IL-10アンタゴニスト、IL-4アンタゴニスト、IL-13アンタゴニスト、IL-17アンタゴニスト、HVEMアンタゴニスト、ICOSアゴニスト、CX3CL1を標的とする治療薬、CXCL9を標的とする治療薬、CXCL10を標的とする治療薬、CCL5を標的とする治療薬、LFA-1アゴニスト、ICAM1アゴニスト、およびセレクチンアゴニストからなる群より選択される1つまたは複数の治療剤を含むことができる。
【0236】
いくつかの態様では、カルボプラチン、nab-パクリタキセル、パクリタキセル、シスプラチン、ペメトレキセド、ゲムシタビン、FOLFOX、またはFOLFIRIが対象に投与される。いくつかの態様では、追加的な治療剤は、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、シスプラチン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、メトトレキサート、パクリタキセル、リツキシマブ、ビンブラスチン、ビンクリスチンおよび/またはそれらの組合せより選択される。
【0237】
いくつかの態様では、任意で1つまたは複数の免疫チェックポイント阻害剤(例えば抗PD-1または抗PD-L1抗体)と組み合わせた、本明細書に記載されるCARまたはフラグメントは、エフェクター細胞(例えばT細胞)によって発現された場合に、標的細胞(例えばSiHa細胞)の競合死滅パーセンテージを、CARまたはそのフラグメントを発現していないエフェクター細胞を使用する標的細胞の競合死滅パーセンテージと比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、またはそれ以上増加させる。
【0238】
いくつかの態様では、任意で1つまたは複数の免疫チェックポイント阻害剤(例えば抗PD-1または抗PD-L1抗体)と組み合わせた、本明細書に記載されるCARまたはフラグメントは、対象(例えばマウスまたはヒト患者)の生存率を、CARまたはそのフラグメントを投与されていない対象と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、またはそれ以上増加させる。
【0239】
いくつかの態様では、任意で1つまたは複数の免疫チェックポイント阻害剤(例えば抗PD-1または抗PD-L1抗体)と組み合わせた、本明細書に記載されるCARまたはフラグメントは、対象(例えばマウスまたはヒト患者)の体重増加を、CARまたはそのフラグメントを投与されていない対象と比較して、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、1%未満低減する。
【0240】
組成物および製剤
本開示は、本明細書において開示される方法によって作製された、操作された細胞およびその集団を含有する組成物(薬学的および治療用組成物)を提供する。操作された細胞およびその組成物を対象、例えば患者または動物モデル(例えばマウス)に投与するための方法、例えば治療法もまた提供される。
【0241】
所与の用量またはその分割量中に投与用の細胞数を含む薬学的組成物および製剤、例えば単位投与形態の組成物を含む、投与用の操作された細胞を含む組成物が提供される。薬学的組成物および製剤は、1つまたは複数の任意の薬学的に許容される担体または賦形剤を含むことができる。いくつかの態様では、組成物は、少なくとも1つの追加的な治療剤を含む。
【0242】
薬学的に許容される担体は、薬学的組成物中の活性成分以外の成分を指す。薬学的に許容される担体は、活性成分を妨害せず、対象に無毒である。薬学的に許容される担体には、緩衝剤、賦形剤、安定化剤、または保存剤が含まれることができるが、それらに限定されるわけではない。薬学的処方は、異なる物質および/または作用物質を組み合わせて最終医薬品を作製するプロセスを指す。処方研究は、患者に許容される調製物を開発することを伴う。追加的に、含有する活性成分の生物学的活性を有効にする形態にあり、製剤が投与されるであろう対象に容認しがたい毒性のある追加的な成分を含有しない、調製物。
【0243】
いくつかの態様では、担体の選択は、一部、特定の細胞(例えば、T細胞もしくはNK細胞)および/または投与方法によって決定される。多種多様な適切な処方が利用可能である。例えば、薬学的組成物は、保存剤を含有することができる。適切な保存剤は、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウム、およびベンザルコニウム塩化物を含むことができる。いくつかの態様では、2種以上の保存剤の混合物が使用される。保存剤またはその混合物は、典型的には、組成物合計の重量の約0.0001%~約2%の量で存在する。担体は、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980)によって記載されている。薬学的に許容される担体は、一般的に、採用される投薬量および濃度でレシピエントに無毒であり、それらには、リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;保存剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウム塩化物;ベンザルコニウム塩化物;ベンゼトニウム塩化物;フェノール、ブチルアルコールまたはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えばメチルパラベンまたはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾール);低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリシン;グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む単糖、二糖、および他の糖質;キレート剤、例えばEDTA;糖類、例えばスクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトール;塩形成対イオン、例えばナトリウム;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);および/または非イオン性界面活性剤、例えばポリエチレングリコール(PEG)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0244】
適切な緩衝化剤には、例えば、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸、リン酸カリウム、ならびに様々な他の酸および塩が含まれる。いくつかの態様では、2種以上の緩衝化剤の混合物が使用される。緩衝化剤またはそれらの混合物は、典型的には、組成物合計の重量の約0.001%~約4%の量で存在する。投与可能な薬学的組成物を調製するための方法が公知である。例示的な方法は、例えば, Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Lippincott Williams & Wilkins; 21st ed. (May 1, 2005)により詳細に記載されている。
【0245】
製剤は、水溶液を含むことができる。製剤または組成物はまた、操作された細胞で処置される特定の適応症、疾患、または状態に有用な複数の活性成分、好ましくは細胞と相補的な活性を有するものを含有することができ、それぞれの活性は、相互に有害な影響を与えない。そのような活性成分は、意図される目的に有効な量で適宜組み合わされて存在する。したがって、いくつかの態様では、薬学的組成物は、他の薬学的活性作用物質または薬物、例えばチェックポイント阻害剤、融合タンパク質、化学療法剤、例えば、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、シスプラチン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、メトトレキサート、パクリタキセル、リツキシマブ、ビンブラスチン、および/またはビンクリスチンをさらに含むことができる。
【0246】
薬学的組成物は、いくつかの態様では、疾患または状態を治療または予防するために有効な量(例えば治療有効量または予防有効量)の細胞を含有する。治療効力または予防効力は、いくつかの態様では、処置された対象の定期評価によってモニタリングされる。所望の投薬量を、細胞の単回ボーラス投与によって、細胞の複数回ボーラス投与によって、または細胞の連続注入投与によって送達することができる。
【0247】
細胞および組成物を、標準的な投与技法、製剤、および/または装置を使用して投与することができる。細胞の投与は、自家または異種であることができる。例えば、免疫応答性T細胞または前駆細胞を1つの対象から得て、本明細書に記載される様々な態様によりそれらを遺伝子改変した後、同じ対象または異なる適合する対象に投与することができる。末梢血由来免疫応答性T細胞またはそれらの子孫(例えば、インビボ、エクスビボ、またはインビトロ由来)は、カテーテル投与を含む局所注射、全身注射、局所注射、静脈内注射、または非経口投与を介して投与することができる。通常、治療用組成物(例えば、遺伝子改変された免疫応答細胞を含有する薬学的組成物)を投与する場合、それは一般的に、ユニット投薬量の注射可能形態(液剤、懸濁剤、乳剤)で製剤化される。
【0248】
本明細書において開示される製剤には、経口、静脈内、腹腔内、皮下、肺、経皮、筋肉内、鼻腔内、口腔、舌下、または坐剤投与のためのものが含まれる。いくつかの態様では、細胞集団は非経口投与される。「非経口」という用語は、本明細書に使用される場合、静脈内、筋肉内、皮下、直腸、膣、および腹腔内投与を含む。いくつかの態様では、細胞は、静脈内、腹腔内、または皮下注射による末梢系送達を用いて対象に投与される。
【0249】
組成物は、いくつかの態様では無菌液体製剤、例えば、等張水溶液、懸濁液、エマルション、分散物、または粘性組成物として提供され、それらをいくつかの局面では選択されたpHに緩衝化することができる。液体製剤は、通常、ゲル、他の粘性組成物、および固体組成物よりも調製が容易である。追加的に、液体組成物は、特に注射による投与が幾分より好都合である。他方、粘性組成物を適切な粘度範囲内に製剤化して、特定の組織とのより長い接触期間を提供することができる。液体または粘性組成物は、担体を含むことができ、担体は、例えば、水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール)およびそれらの適切な混合物を含有する溶媒または分散媒であることができる。
【0250】
無菌注射液は、細胞を溶媒中に組み入れることによって、例えば適切な担体、希釈剤、または賦形剤、例えば無菌水、生理食塩水、グルコース、デキストロースなどと混合して、調製することができる。組成物は、所望の投与経路および調製物に応じて、補助物質、例えば湿潤剤、分散剤、もしくは乳化剤(例えばメチルセルロース)、pH緩衝化剤、ゲル化もしくは増粘添加剤、保存剤、香味剤、および/または着色剤を含有することができる。適切な調製物を調製するために標準的な教科書をいくつかの局面で調べることができる。
【0251】
抗菌保存剤、抗酸化剤、キレート剤、および緩衝剤を含む、組成物の安定性および無菌性を高める様々な添加剤を添加することができる。微生物の作用は、様々な抗細菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、およびソルビン酸によって確実に防止することができる。吸収を遅延させる作用物質、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの使用によって、注射用剤形の長期吸収をもたらすことができる。
【0252】
インビボ投与のために使用されるべき製剤は、一般的に無菌である。無菌性は、例えば無菌濾過膜を通した濾過によって容易に達成することができる。
【0253】
本明細書に記載される組成物または薬学的組成物を、投与のための説明書と一緒に、容器、パック、またはディスペンサーの中に入れることができる。
【0254】
投与方法
がんを含む疾患、状態、および障害を治療または予防するための、細胞、集団、および組成物を投与する方法、ならびにそのような細胞、集団、および組成物の使用もまた、提供される。いくつかの態様では、本明細書に記載される方法は、本明細書に記載される疾患、状態、および障害を発生するリスクを低減することができる。
【0255】
いくつかの態様では、本明細書に記載される細胞、集団、および組成物は、治療されるべき特定の疾患または状態を有する対象または患者に、例えば養子細胞療法、例えば養子T細胞療法を介して投与される。いくつかの態様では、提供される方法によって調製された細胞および組成物、例えば、操作された組成物および最終生産組成物は、インキュベーションおよび/または他の加工段階に続いて、対象、例えば疾患または状態を有するまたはそのリスクがある対象に投与される。いくつかの局面では、方法はそれにより、例えば疾患または状態の1つまたは複数の症状を、例えば操作されたT細胞によって認識される抗原を発現しているがんにおける腫瘍量を低下させることによって治療する。
【0256】
養子細胞療法のための細胞の投与のための方法は公知であり、提供される方法および組成物に関連してそれを使用することができる。例えば、養子T細胞療法の方法は、例えば、それらの各々がその全体で参照により本明細書に組み入れられるUS 2003/0170238;米国特許第4,690,915号;Rosenberg, "Cell transfer immunotherapy for metastatic solid cancer-what clinicians need to know." Nature reviews Clinical oncology 8.10 (2011): 577;Themeli et al., "Generation of tumor-targeted human T lymphocytes from induced pluripotent stem cells for cancer therapy." Nature biotechnology 31.10 (2013): 928;Tsukahara et al., "CD19 target-engineered T cells accumulate at tumor lesions in human B-cell lymphoma xenograft mouse models." Biochemical and biophysical research communications 438.1 (2013): 84-89;Davila et al., "CD19 CAR-targeted T cells induce long-term remission and B Cell Aplasia in an immunocompetent mouse model of B cell acute lymphoblastic leukemia." PloS one 8.4 (2013)に記載されている。
【0257】
いくつかの態様では、細胞療法、例えば養子T細胞療法は、細胞療法を受けることになる対象、またはそのような対象に由来する試料からT細胞が単離されるおよび/またはその他の方法で調製される、自家移入によって実行される。したがって、いくつかの局面では、細胞は、処置の必要のある対象、例えば患者に由来し、細胞は、単離および処理に続いて同じ対象に投与される。
【0258】
いくつかの態様では、細胞療法、例えば養子T細胞療法は、細胞療法を受けることになるまたは最終的に受ける対象、例えば第1の対象以外の対象からT細胞が単離されるおよび/またはその他の方法で調製される、同種移入によって実行される。そのような態様では、次いで細胞が同じ種の異なる対象、例えば第2の対象に投与される。いくつかの態様では、第1および第2の対象は、遺伝的に同一である。いくつかの態様では、第1および第2の対象は、遺伝的に類似である。いくつかの態様では、第2の対象は、第1の対象と同じHLAクラスまたはスーパータイプを発現する。
【0259】
いくつかの態様では、対象は、細胞または細胞を含有する組成物の投与前に、疾患または状態、例えば腫瘍を標的とする治療剤で処置される。いくつかの局面では、対象は、他の治療剤に不応性または非応答性である。いくつかの態様では、対象は、例えば、化学療法、放射線照射、および/または造血幹細胞移植(HSCT)、例えば同種HSCTを含む別の治療的介入による処置に続いて、持続性または再発性疾患を有する。いくつかの態様では、投与は、対象が別の療法に抵抗性になったにもかかわらず、対象を効果的に治療する。
【0260】
いくつかの態様では、対象はその他の治療剤に応答性であり、該治療剤を用いた処置は、疾病負荷を低減する。いくつかの局面では、対象は、治療剤に最初応答性であるが、時間と共に疾患または状態の再発を示す。いくつかの態様では、対象は再発していない。いくつかのそのような態様では、対象は、再発のリスクがある、例えば再発のリスクが高いと決定され、したがって、例えば再発の可能性を低減するためまたは再発を予防するために、細胞が予防的に投与される。いくつかの態様では、対象は、別の治療剤を用いた以前の処置を受けていない。
【0261】
いくつかの態様では、細胞は、いくつかの局面で細胞もしくは細胞型の所望の用量もしくは数および/または細胞型の所望の比を含む、所望の投薬量で投与される。したがって、細胞の投薬量は、いくつかの態様では、細胞の総数(またはkg体重あたりの数)および個別の集団またはサブタイプの所望の比、例えばCD4+対CD8+の比をベースとする。いくつかの態様では、細胞の投薬量は、個別の集団中の細胞または個別の細胞型の所望の総数(またはkg体重あたりの数)をベースとする。いくつかの態様では、投薬量は、そのような特徴の組み合わせ、例えば個別の集団中の総細胞の所望の数、所望の比、および細胞の所望の総数をベースとする。
【0262】
いくつかの態様では、細胞の集団またはサブタイプ、例えばCD8+およびCD4+ T細胞は、総細胞の所望の用量、例えばT細胞の所望の用量の許容差でまたは許容差内で投与される。いくつかの態様では、所望の用量は、細胞が投与される対象の細胞の所望の数、または単位体重あたりの細胞の所望の数、例えば、個/kgである。いくつかの態様では、所望の用量は、細胞の最小数または単位体重あたりの細胞の最小数であるか、またはそれを超える。いくつかの態様では、所望の用量で投与される総細胞のうち、個別の集団またはサブタイプは、所望のアウトプット比(例えばCD4+対CD8+の比)でまたはその近くで、例えばそのような比のある種の許容差または誤差内で存在する。
【0263】
いくつかの態様では、細胞は、細胞の個別の集団またはサブタイプのうち1つまたは複数の所望の用量、例えばCD4+細胞の所望の用量および/またはCD8+細胞の所望の用量の許容差または許容差内で投与される。いくつかの態様では、所望の用量は、サブタイプもしくは集団の細胞の所望の数、または細胞が投与される対象の単位体重あたりのそのような細胞の所望の数、例えば個/kgである。いくつかの態様では、所望の用量は、集団もしくはサブタイプの細胞の最小数、または単位体重あたりの集団もしくはサブタイプの細胞の最小数であるか、またはそれを超える。
【0264】
したがって、いくつかの態様では、投薬量は、総細胞の所望の固定用量および所望の比をベースとし、かつ/または個別のサブタイプもしくは亜集団のうち1つまたは複数、例えば各々の所望の固定用量をベースとする。したがって、いくつかの態様では、投薬量は、T細胞の所望の固定用量もしくは最小用量およびCD4+対CD8+細胞の所望の比をベースとし、かつ/またはCD4+および/もしくはCD8+細胞の所望の固定用量もしくは最小用量をベースとする。
【0265】
ある特定の態様では、細胞または細胞のサブタイプの個別集団は、対象に約100万~約1000億個の細胞の範囲、例えば100万~約500億個の細胞(例えば約500万個の細胞、約2500万個の細胞、約5億個の細胞、約10億個の細胞、約50億個の細胞、約200億個の細胞、約300億個の細胞、約400億個の細胞、または前記値の任意の2つによって規定される範囲)、例えば約1000万~約1000億個の細胞(例えば、約2000万個の細胞、約3000万個の細胞、約4000万個の細胞、約6000万個の細胞、約7000万個の細胞、約8000万個の細胞、約9000万個の細胞、約100億個の細胞、約250億個の細胞、約500億個の細胞、約750億個の細胞、約900億個の細胞、または前記値の任意の2つによって規定される範囲)、場合によっては約1億個の細胞~約500億個の細胞(例えば、約1億2000万個の細胞、約2億5000万個の細胞、約3億5000万個の細胞、約4億5000万個の細胞、約6億5000万個の細胞、約8億個の細胞、約9億個の細胞、約30億個の細胞、約300億個の細胞、約450億個の細胞)またはこれらの範囲の間の任意の数で投与される。
【0266】
いくつかの態様では、総細胞の用量および/または細胞の個別の亜集団の用量は、細胞104個または約104個から、109個または約109個/キログラム(kg)体重、例えば105~106個/kg体重の範囲内、例えば、少なくとも1×105個/kg、1.5×105個/kg、2×105個/kg、もしくは1×106個/kg体重、または少なくとも約1×105個/kg、1.5×105個/kg、2×105個/kg、もしくは1×106個/kg体重、または1×105個/kg、1.5×105個/kg、2×105個/kg、もしくは1×106個/kg体重、または約1×105個/kg、1.5×105個/kg、2×105個/kg、もしくは1×106個/kg体重である。例えば、いくつかの態様では、細胞は、104個または約104個から、109個または約109個のT細胞/キログラム(kg)体重で、例えば105個~106個のT細胞/kg体重で、またはそのある特定の誤差範囲内で、例えば、少なくとも1×105個のT細胞/kg、1.5×105個のT細胞/kg、2×105個のT細胞/kg、もしくは1×106個のT細胞/kg体重、または少なくとも約1×105個のT細胞/kg、1.5×105個のT細胞/kg、2×105個のT細胞/kg、もしくは1×106個のT細胞/kg体重、または1×105個のT細胞/kg、1.5×105個のT細胞/kg、2×105個のT細胞/kg、もしくは1×106個のT細胞/kg体重、または約1×105個のT細胞/kg、1.5×105個のT細胞/kg、2×105個のT細胞/kg、もしくは1×106個のT細胞/kg体重で投与される。
【0267】
いくつかの態様では、細胞は、104個または約104個から、109個または約109個のCD4+および/もしくはCD8+細胞/キログラム(kg)体重で、例えば105個~106個のCD4+および/もしくはCD8+細胞/kg体重で、またはそのある特定の誤差範囲内で、例えば、少なくとも1×105個のCD4+および/もしくはCD8+細胞/kg、1.5×105個のCD4+および/もしくはCD8+細胞/kg、2×105個のCD4+および/もしくはCD8+細胞/kg、もしくは1×106個のCD4+および/もしくはCD8+細胞/kg、または少なくとも約1×105個のCD4+および/もしくはCD8+細胞/kg、1.5×105個のCD4+および/もしくはCD8+細胞/kg、2×105個のCD4+および/もしくはCD8+細胞/kg、もしくは1×106個のCD4+および/もしくはCD8+細胞/kg、または1×105個のCD4+および/もしくはCD8+細胞/kg、1.5×105個のCD4+および/もしくはCD8+細胞/kg、2×105個のCD4+および/もしくはCD8+細胞/kg、もしくは1×106個のCD4+および/もしくはCD8+細胞/kg、または約1×105個のCD4+および/もしくはCD8+細胞/kg、1.5×105個のCD4+および/もしくはCD8+細胞/kg、2×105個のCD4+および/もしくはCD8+細胞/kg、もしくは1×106個のCD4+および/もしくはCD8+細胞/kg体重で投与される。
【0268】
いくつかの態様では、細胞は、約1×106個、約2.5×106個、約5×106個、約7.5×106個、もしくは約9×106個のCD4+細胞で、もしくはそのある特定の誤差範囲内で、約1×106個、約2.5×106個、約5×106個、約7.5×106個、もしくは約9×106個のCD4+細胞より多く、および/または少なくとも約1×106個、約2.5×106個、約5×106個、約7.5×106個、もしくは約9×106個のCD4+細胞で、および/または少なくとも約1×106個、約2.5×106個、約5×106個、約7.5×106個、もしくは約9×106個のCD8+細胞で、および/または少なくとも約1×106個、約2.5×106個、約5×106個、約7.5×106個、もしくは約9×106個のT細胞で、投与される。いくつかの態様では、細胞は、約108個~1012個もしくは約1010個~1011個のT細胞、約108個~1012個、もしくは約1010個~1011個のCD4+細胞、および/または約108個~1012個もしくは約1010個~1011個のCD8+細胞で、またはそのある特定の誤差範囲内で投与される。
【0269】
いくつかの態様では、細胞は、複数の細胞集団またはサブタイプ、例えばCD4+およびCD8+細胞またはサブタイプの所望のアウトプット比の許容範囲でまたは許容範囲内で投与される。いくつかの局面では、所望の比は、特定の比であることもでき、または比の範囲であることもできる。例えば、いくつかの態様では、所望の比(例えば、CD4+細胞対CD8+細胞の比)は、1:5もしくは約1:5から、5:1もしくは約5:1(または約1:5よりも大きく、約5:1よりも小さい)、または1:3もしくは約1:3から、3:1もしくは約3:1(または約1:3よりも大きく、約3:1よりも小さい)、例えば2:1もしくは約2:1から、1:5もしくは約1:5(または約1:5よりも大きく、約2:1よりも小さい、例えば5:1、4.5:1、4:1、3.5:1、3:1、2.5:1、2:1、1.9:1、1.8:1、1.7:1、1.6:1、1.5:1、1.4:1、1.3:1、1.2:1、1.1:1、1:1、1:1.1、1:1.2、1:1.3、1:1.4、1:1.5、1:1.6、1:1.7、1:1.8、1:1.9:1:2、1:2.5、1:3、1:3.5、1:4、1:4.5、もしくは1:5、または約5:1、4.5:1、4:1、3.5:1、3:1、2.5:1、2:1、1.9:1、1.8:1、1.7:1、1.6:1、1.5:1、1.4:1、1.3:1、1.2:1、1.1:1、1:1、1:1.1、1:1.2、1:1.3、1:1.4、1:1.5、1:1.6、1:1.7、1:1.8、1:1.9:1:2、1:2.5、1:3、1:3.5、1:4、1:4.5、もしくは1:5である。いくつかの局面では、許容差は、所望の比の約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%以内である(これらの範囲の間の任意の値を含む)。いくつかの局面では、本明細書に記載されるCARは、改善された発現および活性を提供し、それにより、低いエフェクター対標的(E:T)比であっても治療効果を提供する。
【0270】
療法に対する最適な応答は、CARなどの操作組換え受容体が細胞表面において一貫して確実に発現し、かつ/または標的抗原と結合する能力に依存することができる。例えば、場合によっては、ある種の組換え受容体、例えばCARの性質は、場合によっては細胞療法に使用される細胞(例えばヒトT細胞)において発現する場合、組換え受容体の発現および/または活性に影響することができる。状況によっては、特定の組換え受容体、例えばCARの発現レベルは低い可能性があり、そのような組換え受容体を発現している操作された細胞、例えばヒトT細胞の活性は、乏しい発現または乏しいシグナル伝達活性のせいで限られる可能性がある。場合によっては、組換え受容体の発現の一貫性および/または効率、ならびに受容体の活性は、利用可能な治療アプローチのある種の細胞またはある種の細胞集団に限定される。場合によっては、機能的活性を示すために多数の操作されたT細胞(高いエフェクター対標的(E:T)比)が必要とされる。いくつかの態様では、所望の比(E:T比)は、1:10もしくは約1:10から、10:1もしくは約10:1(または約1:10よりも大きく、約10:1よりも小さい)、または1:1もしくは約1:1から、10:1もしくは約10:1(または約1:1よりも大きく、約5:1よりも小さい)、例えば2:1もしくは約2:1から、10:1もしくは約10:1である。いくつかの態様では、E:T比は、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、もしくは10:1よりも大きいか、または約1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、もしくは10:1である。
【0271】
疾患の予防または治療のために適切な投薬量は、処置される疾患の種類、細胞または組換え受容体の種類、疾患の重症度および経過、細胞が予防目的それとも治療目的で投与されるか、以前の療法、対象の臨床歴および細胞に対する応答、ならびに担当医師の裁量に依存する場合がある。組成物および細胞は、いくつかの態様では、対象に1回でまたは一連の処置にわたり適切に投与される。
【0272】
本明細書に記載される細胞は、任意の適切な手段、例えば、ボーラス注入により、注射により、例えば、静脈内または皮下注射、眼内注射、眼周囲注射、網膜下注射、硝子体内注射、経中隔注射、胸膜下注射、脈絡膜内注射、前房内注射、結膜下(subconjectval)注射、結膜下(subconjuntival)注射、テノン下注射、眼球後注射、眼球周囲注射、または後側強膜近傍送達(posterior juxtascleral delivery)により投与することができる。いくつかの態様では、それらは、非経口、肺内、および鼻腔内に、ならびに局所処置が所望の場合は、病巣内投与で投与される。非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下投与が含まれる。いくつかの態様では、所与の用量が、細胞の単回ボーラス投与によって投与される。いくつかの態様では、所与の用量が、例えば3日以内の期間にわたる細胞の複数回ボーラス投与によって、または細胞の連続注入投与によって投与される。
【0273】
いくつかの態様では、細胞は、別の治療的介入、例えば抗体または操作された細胞または受容体または作用物質、例えば細胞傷害剤または治療剤と併用療法の一部として、例えば同時または任意の順序で順次に投与される。細胞は、いくつかの態様では、1つもしくは複数の追加的な治療剤と共に、または別の治療的介入に関連して、同時または任意の順序で順次のいずれかで共投与される。いくつかの状況では、細胞集団が1つまたは複数の追加的な治療剤の効果を高める、またはその逆であるように、細胞が別の療法と十分に近い時間で共投与される。いくつかの態様では、1つまたは複数の追加的な治療剤の前に細胞が投与される。いくつかの態様では、1つまたは複数の追加的な治療剤の後に細胞が投与される。いくつかの態様では、例えば持続性を高めるために、1つまたは複数の追加的な作用物質は、サイトカイン、例えばIL-2を含む。いくつかの態様では、方法は、化学療法剤の投与を含む。
【0274】
細胞の投与に続き、操作された細胞集団の生物学的活性が、いくつかの態様で、例えばいくつかの公知の方法のいずれかによって測定される。評価すべきパラメーターには、インビボで、例えばイメージングによる、またはエクスビボで、例えばELISAもしくはフローサイトメトリーによる、抗原への操作されたT細胞の特異的結合が含まれる。ある特定の態様では、操作された細胞が標的細胞を破壊する能力は、例えば、Kochenderfer et al., "Construction and pre-clinical evaluation of an anti-CD19 chimeric antigen receptor." Journal of immunotherapy (Hagerstown, Md.: 1997) 32.7 (2009): 689およびHermans et al., "The VITAL assay: a versatile fluorometric technique for assessing CTL-and NKT-mediated cytotoxicity against multiple targets in vitro and in vivo." Journal of immunological methods 285.1 (2004): 25-40に記載されている細胞傷害性アッセイなどの、当技術分野において公知の任意の適切な方法を用いて測定することができる。ある特定の態様では、細胞の生物学的活性は、1つまたは複数のサイトカイン、例えばCD107a、IFNγ、IL-2、およびTNFの発現および/または分泌をアッセイすることによって測定される。いくつかの局面では、生物学的活性は、臨床成績、例えば腫瘍量または腫瘍負荷の低減を評価することによって測定される。
【0275】
第1の用量の細胞に続いて1つまたは複数の第2の連続用量が与えられる、反復投与法が提供される。養子療法で対象に投与される場合、複数の細胞用量のタイミングおよびサイズは、一般的に、本明細書に記載される操作された細胞の効力および/または活性および/または機能を増強するように設計される。当該方法は、第1の用量の投与と、通常はそれに続いて1つまたは複数の連続用量の投与(異なる用量の間に特定の時間枠を伴う)とを含む。
【0276】
養子細胞療法の文脈において、所与の「用量」の投与は、単一の組成物および/または中断されない単回投与としての(例えば、単回注射または連続注入としての)所与の量または数の細胞の投与を包含し、また、特定の期間(例えば3日以内)にわたる複数の個別の組成物または注入にて提供される分割用量としての所与の量または数の細胞の投与も包含する。したがって、いくつかの文脈において、第1または連続用量は、単一の時点で与えられるまたは開始される、特定の数の細胞の単回または連続投与である。しかし、いくつかの文脈においては、第1または連続用量は、限られた期間(例えば3日以内)にわたる複数回(例えば1日1回3日間もしくは2日間)の注射または注入、または1日の期間にわたる複数回の注入で投与される。
【0277】
第1の用量の細胞は、単一の薬学的組成物として投与される。いくつかの態様では、連続用量の細胞は、単一の薬学的組成物として投与される。
【0278】
いくつかの態様では、第1の用量の細胞は、合計で第1の用量の細胞を含有する複数の組成物として投与される。いくつかの態様では、連続用量の細胞は、合計で連続用量の細胞を含有する複数の組成物として投与される。いくつかの局面では、追加的な連続用量を、3日以内の期間にわたり複数の組成物として投与することができる。
【0279】
先行用量(例えば第1の用量)との関連での「連続用量」という用語は、合間にいかなる介在用量も対象に投与されることなく、先行用量(例えば第1の用量)の後で同じ対象に投与される、用量を指す。それにもかかわらず、本用語は、単一の分割用量内に含まれる一連の注入または注射における第2、第3、および/またはその他の注射または注入を包含しない。したがって、特に明記しないかぎり、1、2または3日の期間内の第2の注入は、本明細書において使用される場合の「連続」用量と見なされない。同様に、分割用量内の一連の複数の用量における第2、第3、その他の用量はまた、「連続」用量の意味の文脈における「介在」用量とは見なされない。したがって、特に明記しないかぎり、対象が第1の用量の開始後に第2またはその後の用量の細胞の注射または注入を受ける場合であっても、第2またはその後の注射または注入が第1のまたは先行する用量の開始後3日以内に行われたのであれば、第1のまたは先行する用量の開始後に3日よりも長いある特定の期間にわたり投与される用量は、「連続」用量と見なされる。
【0280】
したがって、特に明記しないかぎり、最大3日間にわたる同じ細胞の複数回の投与は、単一用量と見なされ、最初の投与から3日以内の細胞の投与は、第2の用量が第1の用量と「連続的」であるかどうかを決定する目的において、連続用量と見なされず、介在用量と見なされない。
【0281】
いくつかの態様では、複数の連続用量は、いくつかの局面で、第1の用量と第1の連続用量との間のタイミングに関するガイドラインと同じタイミングガイドラインを使用して、例えば第1および複数の連続用量を投与することによって、与えられる。
【0282】
いくつかの態様では、第1の用量と第1の連続用量との間、または第1および複数の連続用量の間のタイミングは、各連続用量が約5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日またはそれ以上よりも長い期間内に与えられるものである。いくつかの態様では、連続用量は、第1または直前の用量の投与後約28日未満である期間内に与えられる。追加的な用量または複数の追加的な連続用量は、後続の用量または後続の連続用量とも称される。
【0283】
細胞の第1の用量および/または1つもしくは複数の連続用量のサイズは、一般的に、改善された効力および/または低減された毒性リスクを提供するように設計される。いくつかの局面では、第1の用量または任意の連続用量の投薬量またはサイズは、上記の任意の投薬量または量である。いくつかの態様では、第1の用量または任意の連続用量における細胞数は、約0.5×106個/kg対象体重~5×106個/kg、約0.75×106個/kg~3×106個/kgまたは約1×106個/kg~2×106個/kgである。
【0284】
本明細書に使用される場合、「第1の用量」は、所与の用量のタイミングが連続または後続用量の投与の前であることを説明するために使用される。この用語は必ずしも、ある用量の細胞療法薬を対象が以前に受けたことがないことを意味するわけではなく、ましてや、ある用量の同じ細胞または同じ組換え受容体を発現するもしくは同じ抗原を標的とする細胞を対象が以前に受けたことがないことを意味するわけでもない。
【0285】
いくつかの態様では、複数の用量を、長期間にわたり(例えば、少なくとも1週間、2週間、3週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、1年、2年、3年、4年、または5年の期間にわたり)対象に投与することができる。熟練の医療従事者は、診断のための本明細書に記載される方法のいずれかを使用して、または処置の効力(例えば、がんの少なくとも1つの症状の観察)に従って、処置期間の長さを決定し得る。
【実施例
【0286】
本発明を以下の実施例においてさらに説明するが、これらの実施例は、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定するものではない。
【0287】
実施例1.構築物の設計
単鎖可変フラグメント(scFv)、ヒンジ領域、膜貫通領域、共刺激シグナル伝達領域および細胞内シグナル伝達領域を含むA02~A09 CARをコードするようにMP71レトロウイルスベクターを構築した。図1A~1Cは、それぞれA02、A03およびA06 CARをコードするレトロウイルスベクターのプラスミドマップを示す。各CARにおいて、scFvは、リンカーペプチド(SEQ ID NO:37)によって軽鎖可変領域(VL)と連結されている重鎖可変領域(VH)を含む。ヒンジ領域および膜貫通領域は両方ともヒトCD8に由来する。共刺激シグナル伝達領域はヒトCD137(4-1BB)に由来し、細胞内T細胞シグナル伝達ドメインはCD247(CD3ゼータ)の細胞質ドメインに由来する。
【0288】
図1Dは、T2A配列(SEQ ID NO:41)によってA02 CARと連結されている抗PD-1 scFvをさらにコードするA02P03ベクターのレトロウイルスベクターのプラスミドマップを示す。より具体的には、抗PD-1 scFvは、ヒトIL-2リーダー配列(SEQ ID NO:42)に続いて、リンカーペプチド(SEQ ID NO:87)によって軽鎖可変領域(VL;SEQ ID NO:16)と連結されている重鎖可変領域(VH;SEQ ID NO:15)を含む。
【0289】
同様に、図1Eは、T2A配列(SEQ ID NO:41)によってA02 CARと連結されている抗PD-L1 scFvをさらにコードするA02PL01ベクターのレトロウイルスベクターのプラスミドマップを示す。より具体的には、抗PD-L1 scFvは、ヒトIL-2リーダー配列(SEQ ID NO:42)に続いて、リンカーペプチド(SEQ ID NO:87)によって重鎖可変領域(VH;SEQ ID NO:31)と連結されている軽鎖可変領域(VL;SEQ ID NO:32)を含む。
【0290】
上記レトロウイルスベクターは、5'LTR(5'の長い末端反復配列)、Ψ RNAパッケージングシグナル(またはレトロウイルスプシーパッケージングエレメント)、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)、および3'LTR(長い末端反復配列)をさらに含む。WPREは、転写された場合に発現を高める三次構造を生み出すDNA配列である。レトロウイルスベクターはまた、選択マーカー遺伝子、すなわちアンピシリン耐性遺伝子を含む。
【0291】
実施例2.レトロウイルスベクターの作製、T細胞の形質導入および拡大増殖
HEK-293T、Jurkat、SiHa、または末梢血単核細胞(PBMC)を、10%ウシ胎仔血清(FBS)を補充したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、10% FBSを補充したRoswell Park Memorial Institute(RPMI)培地、または5%ヒト血清A/Bを補充したX-Vivo(Lonza、Cat #: 04-418Q)中で培養した。標準的なリン酸カルシウム沈殿プロトコールを使用する293T細胞の一過性トランスフェクションによってレトロウイルスベクターを調製した。48時間後にウイルス上清を回収し、それを使用してT細胞に形質導入した。形質導入のために、32℃、2,000gで2時間の遠心分離によって、25μg RetroNectin/ウェル(Clontech Laboratories)でコーティングした非組織培養処理24ウェルプレート上に、新たに回収したレトロウイルス上清をスピンロードした。活性化PBMCをプレート上にロードし、32℃、600gで30分間スピンさせた。
【0292】
T細胞を37℃および5% CO2でインキュベートした。培地を2日毎に補給した。形質導入の4日後に、プロテインL染色に続くフローサイトメトリー分析によって組換えCARの発現を検出した(図2および図4)。Jurkat細胞(図2)またはヒトPBMC(図4)におけるCARの発現を70~90%の範囲で決定した。
【0293】
実施例3.CAR-T細胞の活性化
A02またはA03 CARを発現している0.2×106個のJurkat細胞を0.4×106個のSiHaまたは293T細胞と一晩共培養し、その後、CD3+ Jurkat細胞におけるCD69の発現をフローサイトメトリーによって測定した。図3に示すように、SiHa細胞と共培養されると、A02またはA03 CARを発現しているJurkat細胞の約70~80%が活性化した。対照的に、293T細胞と共培養された場合は、A02またはA03 CAR-T細胞は活性化しなかった。
【0294】
実施例4.インビトロIFN-γ産生および競合死滅アッセイ
0.2×106個のヒトA02またはA03 CAR-T細胞を0.4×106個のSiHaまたはHEK293T標的細胞と1:2のエフェクター対標的比で一晩共培養した。T細胞をブレフェルジンA(Thermo Fisher Scientific, 00-4506-51)およびモネンシン(Thermo Fisher Scientific, 00-4505-51)で4時間処理し、その後、フローサイトメトリーを使用して測定される細胞内IFN-γ発現のためにT細胞を収集した(図5および図6)。生存CD4+またはCD8+リンパ球ゲーティング戦略を使用した。細胞内IFN-γ発現の結果は、A02またはA03 CARを含有するCAR-T細胞がALPP陽性SiHa細胞によって特異的に活性化されたことを示した。
【0295】
さらに、0.03×106個のSiHa細胞および0.03×106個のHEK293T細胞をそれぞれCellTrace CFSEおよびCellTrace Violetで標識した。次いで、標識されたSiHa細胞と293T細胞とを混合し、様々な比で非形質導入T細胞、A02 CAR-T細胞、またはA03 CAR-T細胞と共に一晩共培養した。生きたSiHa細胞および293T細胞をフローサイトメトリーによって分析し、実験前の生きた細胞の総数に占める残存する生きたSiHa細胞および293T細胞の数に基づいて、競合死滅効率を計算した(図7)。さらに結果は、A02およびA03 CAR-T細胞がSiHa細胞を特異的に死滅させたことを示している。したがって、上記知見は、抗ALPP CAR-T細胞療法がALPP陽性腫瘍の治療のための有効な治療アプローチであることを示唆している。
【0296】
実施例5.インビボ腫瘍の移植および処置
6~8週齢の雌性NSGマウスに5.0×106個のSiHa細胞を腹腔内移植した。34日後(試験0日目)、体重および腫瘍成長の臨床徴候の存在に基づいて動物を群分けした。試験0日目に、すべての動物に106個のCAR+ A02細胞もしくはA03細胞または等しい数の非形質導入細胞(細胞11.78×106個/マウス)を腹腔内注射した。さらに、動物ヒッティング研究(animals hitting study)のエンドポイントに基づいて全生存率を評価した。試験エンドポイントを、死亡、瀕死、身体状態スコア2未満の身体状態の激しい低下、動物が正常に移動する能力を妨げた重度の腹部膨満、または20%よりも大きい体重増加として定義した。図8に示すように、結果は、毒性がCAR-T処置と関連しなかったことを示している。図9の結果は、A02またはA03 CAR-T細胞のいずれかを用いた処置が生存率を顕著に改善したことを示している。
【0297】
実施例6.抗ALPP抗体のヒト化
概して、マウス親抗体H17E2(またはA02)に由来する抗体特異的配列(CDR)をヒトドナー配列にグラフトした。各組合せについて独特なヒト性(humanness)スコアを計算するために広範囲の抗体データベースを利用するバイオインフォマティクスソフトウェアに従ってドナー配列を選択した。これらの抗体を発現ベクター内にクローニングし、組換えタンパク質発現のために細胞株にトランスフェクトした。標的タンパク質であるALPPに対する抗体親和性を、ELISAおよび細胞ベースの結合アッセイによってインビトロで試験した。
【0298】
CDRグラフティングおよびリサーフェシング(resurfacing)戦略によって抗体のヒト化を達成した。さらに、脱免疫化(de-immunization)戦略も使用した。抗体モデリングおよび重要フレームワーク残基の同定を含むバイオインフォマティクスツールを利用して、ヒト化重鎖および軽鎖を設計した。最大ヒト化スコアを有する鎖を組み合わせて、ヒト化抗体A03、A04、A05、A06、A07、A08、およびA09を得た。
【0299】
ヒト化VHおよびVLを一過性発現ベクター内にクローニングした。配列決定によって最終構築物を確認した。さらに、重鎖および軽鎖の候補ペア(対照のための1つのキメラペアを含む)をコードするプラスミドを一過性発現のためにCHOまたはHEK293細胞に共トランスフェクトした。発現した抗体を精製し、続いてELISAまたは細胞ベースの結合アッセイによってそれらのエピトープ特異性および親和性の測定を行った。
【0300】
実施例7.ヒト化抗ALPP抗体の結合親和性
親マウス抗体A02、ならびにヒト化抗体A04、A05、A06、A07、A08、およびA09を含む抗ALPP抗体の結合親和性を、ELISAまたは細胞ベースの結合アッセイによって決定した。キメラ抗体を対照として使用した。詳細な方法を以下のように提供する。
【0301】
ELISA
酵素結合性免疫吸着アッセイ(ELISA)プレートをALPP抗原 125ngでコーティングした。プレートのブロッキング後、A02(H17E2)、A04、A05、A06、A07、A08、A09、またはキメラ抗体を含む抗ALPP抗体の系列希釈物を、対応するウェルに添加した。次いで、ビオチン-SP-AffiniPureヤギ抗ヒト抗体を、ヒト化抗体A04、A05、A06、A07、A08、A09、またはキメラ抗体を含有するウェルに添加した。その間、ビオチン-SP-AffiniPureヤギ抗マウスFc抗体を、マウス抗体H17E2を含有するウェルに添加した。次いで、HRP-コンジュゲート型ストレプトアビジンをビオチン検出のために使用した。3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン(TMB)基質を添加した後、OD450を評価することによって最終的な検出を行った。結合曲線および計算したEC50値を、それぞれ図10Aおよび下の表に示す。キメラおよびヒト化抗ALPP抗体について、親マウス抗ALPP抗体H17E2と同等のEC50値が得られた。
【0302】
【表1】
【0303】
細胞ベースの結合アッセイ
0.2×106個のSiHa細胞を、本明細書に記載される抗FLAA抗体を系列希釈したものと共にインキュベートした。その後、AF488ヤギ抗ヒト二次抗体またはAF488ヤギ抗マウスIgG(Fcγフラグメント特異的)を使用して細胞を染色した。次いで、蛍光染色された細胞をフローサイトメトリーによって検出した。結合曲線および計算されたEC50値を、それぞれ図10Bおよび下の表に示す。細胞ベースの結合アッセイによって、キメラおよびヒト化抗ALPP抗体について親マウス抗ALPP抗体H17E2と同等のEC50値が得られた。
【0304】
【表2】
【0305】
実施例8.T細胞におけるヒト化抗ALPP CARの発現および活性
ヒトT細胞におけるCARの発現レベル
対応するヒト化抗体から構築されたA02、A03、A05、A06、またはA07 CARを発現させるためのレトロウイルスプラスミドをヒトPBMCに形質導入した。形質導入の12日後に、プロテインLアッセイによってCARの発現レベルを測定した。図11Aに示すように、すべてのヒト化CARが、形質導入されたPBMCにおいて発現した。
【0306】
IFN-γ発現アッセイ
0.2×106個の非形質導入(UT)T細胞、またはA02、A03、A05、A06、もしくはA07 CAR-T細胞を、0.4×106個のSiHaまたは293T細胞と共に一晩共培養した。次いで、細胞をブレフェルジンAおよびモネンシンで4時間処理し、その後、フローサイトメトリーによって細胞内IFNγレベルを測定した。それぞれ図11Bおよび図11Cに示されるように、CD8+およびCD4+ T細胞集団の両方を分析した。
【0307】
競合死滅アッセイ
0.03×106個のSiHa細胞をCellTrace(商標)CFSEで標識し、0.03×106個の293T細胞をCellTrace(商標)Violetで標識した。標識されたSiHa細胞および293T細胞を混合し、図11Dに示すように、漸増するエフェクター対標的細胞比で、非形質導入(UT)T細胞、またはA02、A03、A05、A06、もしくはA07 CAR-T細胞と共に一晩共培養した。実験を96ウェルプレート中、4つの反復で実行した。生きたSiHaおよび293T細胞をフローサイトメトリーによって定量し、生きたSiHaおよび293T細胞の数に基づいて競合死滅効力を計算した。
【0308】
実施例9.免疫チェックポイント阻害と組み合わせたヒト化抗ALPP CARの発現および活性
ヒトT細胞におけるCARの発現レベル
ヒトPBMCにA02、A02P03、またはA02PL01レトロウイルスを形質導入した。形質導入の12日後に、プロテインLアッセイによってCARの発現レベルを測定した。図12Aに示すように、形質導入されたPBMCにおけるCARの発現を検出した。
【0309】
IFN-γ発現アッセイ
0.2×106個の非形質導入(UT)T細胞、またはA02、A02P03、もしくはA02PL01 CAR-T細胞を、0.4×106個のSiHaまたは293T細胞と共に一晩共培養した。次いで、細胞をブレフェルジンAおよびモネンシンで4時間処理し、その後、フローサイトメトリーによって細胞内IFN-γレベルを測定した。それぞれ図12Bおよび図12Cに示すように、CD8+およびCD4+ T細胞集団の両方を分析した。
【0310】
競合死滅アッセイ
0.03×106個のSiHa細胞をCellTrace(商標)CFSEで標識し、0.03×106個の293T細胞をCellTrace(商標)Violetで標識した。標識されたSiHa細胞および293T細胞を混合し、図12Dに示すように、漸増するエフェクター対標的細胞比で、非形質導入(UT)T細胞、またはA02、A02P03、もしくはA02PL01 CART細胞と共に一晩共培養した。実験を96ウェルプレート中、4つの反復で実行した。生きたSiHaおよび293T細胞をフローサイトメトリーによって定量し、生きたSiHaおよび293T細胞の数に基づいて競合死滅効力を計算した。
【0311】
実施例10.抗ALPP CAR-T細胞のインビボ効力および毒性
合計39匹の雌性10週齢NSGマウスに、200ul PBS中の5.0×106個のSiHa細胞を腹腔内移植した。40日後(試験0日目)、体重および腫瘍成長を示す臨床徴候の存在に基づいて動物を群分けし、次いで、106個のCAR陽性A02、A02P03、A02PL01、A03、A06、または等しい数の非形質導入細胞(17.08×106個/マウス)を腹腔内注射した。死亡、瀕死、身体状態スコア2未満の身体状態の激しい低下、動物が正常に移動する能力を妨げた重度の腹部膨満、または20%よりも大きい体重増加によって決定される試験エンドポイントに動物が到達した時に基づいて全生存率をプロットした。動物の生存率およびマウスの体重によって測定される場合の抗腫瘍効力および毒性をそれぞれ図13Aおよび図13Bに示す。身体状態スコアを決定する詳細は、例えば、共にその全体で参照により本明細書に組み入れられるUllman-Cullere et al., "Body condition scoring: a rapid and accurate method for assessing health status in mice." Comparative Medicine 49.3 (1999): 319-323;Charmaine et al., "Guidelines for assessing the health and condition of mice." Lab Animal 28.5 (1999)に見出すことができる。
【0312】
他の態様
本発明をその詳細な説明に関連して説明してきたものの、前記説明は、本発明を例示することを意図し、その範囲を限定することを意図しないことを理解されたい。本発明は、添付の特許請求の範囲によって定義される。他の局面、利点、および改変は、以下の特許請求の範囲の範囲内である。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図11D
図12A
図12B
図12C
図12D
図13A
図13B
図14
図15-1】
図15-2】
図15-3】
図15-4】
図15-5】
図15-6】
図15-7】
図15-8】
図15-9】
図15-10】
図15-11】
図15-12】
図15-13】
【手続補正書】
【提出日】2022-02-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2022537068000001.app
【国際調査報告】