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特表2022-537074PADI4を腫瘍マーカーとして製造した抗原、抗体及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-23
(54)【発明の名称】PADI4を腫瘍マーカーとして製造した抗原、抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20220816BHJP
   C07K 16/40 20060101ALI20220816BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20220816BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20220816BHJP
   C12N 9/78 20060101ALN20220816BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/40 ZNA
C12P21/08
G01N33/574 A
C12N9/78
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022505592
(86)(22)【出願日】2020-08-28
(85)【翻訳文提出日】2022-01-26
(86)【国際出願番号】 CN2020112240
(87)【国際公開番号】W WO2022011800
(87)【国際公開日】2022-01-20
(31)【優先権主張番号】202010669810.1
(32)【優先日】2020-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】522036211
【氏名又は名称】山東新創生物科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】常 暁天
(72)【発明者】
【氏名】呂 学燕
(72)【発明者】
【氏名】楊 冬霞
(72)【発明者】
【氏名】▲シン▼ 艶秋
(72)【発明者】
【氏名】▲ゴ▼ 玉霞
(72)【発明者】
【氏名】邵 石麗
(72)【発明者】
【氏名】劉 鳳
(72)【発明者】
【氏名】馮 軍超
(72)【発明者】
【氏名】▲シン▼ 軍
(72)【発明者】
【氏名】李 琳
【テーマコード(参考)】
4B050
4B064
4H045
【Fターム(参考)】
4B050CC03
4B050DD11
4B064AG27
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC15
4B064CC24
4B064CE03
4B064CE12
4B064DA14
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA51
4H045FA74
4H045GA15
4H045GA26
(57)【要約】
PADI4を腫瘍マーカーとして製造した抗原、抗体及び使用に関するものであり、前記抗原のアミノ酸配列はSEQ ID NO.1に示されている。本発明は、また、前記抗原で製造した特異的抗体を開示する。前記タンパク質PADI4モノクローナル抗体は、ELISAプレートに被覆されたタンパク質PADI4モノクローナル抗体と、ビオチン標識タンパク質PADI4モノクローナル抗体とを含む。本発明の前記抗体を用いて製造した検出キットは、ヒト血清中のタンパク質PADI4のレベルを効果的かつ安定的に測定することができ、広いスペクトル性と検出可能性を有し、試験の再現性が良い。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチジルアルギニンデイミナーゼ4を腫瘍マーカーとして製造した抗原であって、
アミノ酸配列はSEQ ID NO.1に示されている抗原。
【請求項2】
ヌクレオチド配列はSEQ ID NO.2に示されている請求項1に記載の抗原の発現遺伝子。
【請求項3】
ペプチジルアルギニンデイミナーゼ4を腫瘍マーカーとして製造した抗体135-B9であって、
1本の重鎖と1本の軽鎖から構成され、重鎖のアミノ酸配列はSEQ ID NO.3に示され、軽鎖のアミノ酸配列はSEQ ID NO.5に示されている抗体135-B9。
【請求項4】
重鎖のヌクレオチド配列はSEQ ID NO.4に示され、軽鎖のヌクレオチド配列はSEQ ID NO.6に示されている請求項3に記載の抗体135-B9の発現遺伝子。
【請求項5】
ペプチジルアルギニンデイミナーゼ4を腫瘍マーカーとして製造した抗体197-A5であって、
2本の重鎖と1本の軽鎖から構成され、重鎖のアミノ酸配列はそれぞれSEQ ID NO.7とSEQ ID NO.9に示され、軽鎖のアミノ酸配列はSEQ ID NO.11に示されている抗体197-A5。
【請求項6】
重鎖のヌクレオチド配列はそれぞれSEQ ID NO.8とSEQ ID NO.10に示され、軽鎖のヌクレオチド配列はSEQ ID NO.12に示されている請求項5に記載の抗体197-A5の発現遺伝子。
【請求項7】
請求項3に記載の抗体135-B9及び請求項5に記載の抗体197-A5の有効成分としての腫瘍検出試薬の製造における使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はPADI4を腫瘍マーカーとして製造した抗原、抗体及びその使用に関するものであり、分子バイオアッセイの技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
ペプチジルアルギニンデイミナーゼ(Peptidylarginine deiminase、PAD又はPADI)は人体組織中の酵素の1種であり、現在、全部で5種類のPAD酵素(即ちPAD1、2、3、4及び6)を発見した。これらの酵素は、ヒト染色体のlp36領域に位置する遺伝子群によってコードされ、様々な組織分布を有する。カルシウムイオンの存在下で他のいくつかの組織タンパク質にポスト翻訳修飾(post-translational modification)をすることができる。この酵素は、ポリペプチド鎖中のアルギニン(arginine)のアミノ基をカルボニル基に触媒することで、アルギニンをシトルリン(citrulline)に変換することができる。シトルリンは非自然アミノ酸である。PADにより触媒されるポリペプチド中のアルギニンをシトルリンに変換するこの過程をシトルリン化(citrullination)と呼ぶ。シトルリン化したタンパク質は、構造が変化するため、その酵素活性、代謝活性、調節機能や構造機能がすべて変化する。したがって、シトルリン化はリン酸化、アセチル化、グリコシル化、メチル化、ユビキチン化と同様に重要なタンパク質の翻訳後修飾の手段である。
【0003】
近年、免疫学、細胞生化学及び分子遺伝学の研究により、PAD4(ペプチジルアルギニンデイミナーゼ4 Peptidylarginine deiminase4、又はPADI4)はヒト関節リウマチの発病過程において非常に重要な役割を果たすことが証明され、しかも腺癌のマーカーとして、腺癌の臨床診断試薬の製造に使用することができる。組織チップなどのスクリーニング技術を用いて、PADI4(ペプチジルアルギニンデイミナーゼ4)は多種の悪性腫瘍組織と患者の血液中(乳癌、肺癌、腎臓癌、膀胱癌、結腸癌、子宮癌、卵巣癌など)の発現レベルが著しく高くなり、各種の良性腫瘍、慢性炎症(胃平滑筋腫、子宮筋腫、子宮頸部ポリープ、胆嚢炎、子宮頸部炎、滑膜炎など)及び健常人に低発現又は発現しないことを発見した。これらの結果はPADI4が腫瘍の発病過程と密接に関連しているだけでなく、多種の悪性腫瘍組織に発現し、広いスペクトル性と検出可能性を有する腫瘍マーカーであることを示した。
【0004】
特許文献1:中国特許文献CN101101290A(出願番号200610070392.4)は、ペプチジルアルギニンデイミナーゼ4からなる腫瘍血清マーカーを開示しており、ここで、前記腫瘍とは、乳癌、肝臓癌、腎臓癌、卵巣癌、前立腺癌、膀胱癌の1つを指す。また、腫瘍を検出する臨床診断試薬の製造における前記腫瘍血清マーカーの使用を開示する。本発明により提案された腫瘍血清マーカーを用いて製造した腫瘍臨床診断試薬又はキットは、1つの指標のみを検出することにより、被験者が悪性腫瘍に罹患しているか否かの事前判定を可能とし、それにより、より少ない費用でより短い検出時間で検診を行うことができ、臨床診断のための信頼性の高い根拠を提供することができる。しかし、現在、中国国内ではまだ患者の血清中のPADI4を検出するキットが確立されておらず、主要な技術障害として、抗原としてヒト由来PADI4タンパク質とし、昆虫バキュロウイルスの発現系を用いて組換え発現を行い、N末端に精製用にTwin Strepタグを追加し、細胞としてsf9細胞を用い、可溶性タンパク質を抗原として獲得する必要がある。発現精製試験をしたところ、PADI4はsf9細胞に発現しており、最適な発現条件は30ulウイルスプラスミド(M.O.I.~1)がSf9細胞を3日間感染することであり、その技術障害は発現精製後の収率が低いことであり、収率は0.34mg/L、純度は80%しかなく、モノクローナル抗体を製造するのに必要な抗原量は少なくとも3.5mgであり、そのため、十分な抗原を獲得するのに体積を大きく拡大する必要があり、また、抗体の製造は免疫、融合、亜クローン及びスクリーニングと株決定、抗体生産の段階を経なければならず、PADI4タンパク質とPADI2タンパク質の相同性が高いため、スクリーニング時に交差反応を除去する必要があることも、この技術の発展を阻害する主要な難題である。
【0005】
そのため、高感度、高特異性及び安定性のPADI4検出キットを開発し、乳癌、肺癌、腎臓癌、膀胱癌、結腸癌、子宮癌、卵巣癌などの癌血清中のPADI4の検出に用いることは、上記の腫瘍のスクリーニング、診断や治療に対して重要な意義がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】中国特許文献CN101101290A(出願番号200610070392.4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術の欠点に対して、本発明は、再現性が高く、安定性に優れ、広いスペクトル及び検出可能性を有し、腫瘍の臨床診断に有用な腫瘍診断キットの製造における、PADI4(ペプチジルアルギニンデイミナーゼ4)の使用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は以下の技術案を採用する。
【0009】
ペプチジルアルギニンデイミナーゼ4を腫瘍マーカーとして製造した抗原であって、アミノ酸配列はSEQ ID NO.1に示されている。
【0010】
上記抗原の発現遺伝子においては、ヌクレオチド配列はSEQ ID NO.2に示されている。
【0011】
ペプチジルアルギニンデイミナーゼ4を腫瘍マーカーとして製造した抗体135-B9であって、1本の重鎖と1本の軽鎖から構成され、重鎖のアミノ酸配列はSEQ ID NO.3に示され、軽鎖のアミノ酸配列はSEQ ID NO.5に示されている。
【0012】
上記抗体135-B9の発現遺伝子においては、重鎖のヌクレオチド配列はSEQ ID NO.4に示され、軽鎖のヌクレオチド配列はSEQ ID NO.6に示されている。
【0013】
ペプチジルアルギニンデイミナーゼ4を腫瘍マーカーとして製造した抗体197-A5であって、2本の重鎖と1本の軽鎖から構成され、重鎖のアミノ酸配列はそれぞれSEQ ID NO.7とSEQ ID NO.9に示され、軽鎖のアミノ酸配列はSEQ ID NO.11に示されている。
【0014】
上記抗体197-A5の発現遺伝子においては、重鎖のヌクレオチド配列はそれぞれSEQ ID NO.8とSEQ ID NO.10に示され、軽鎖のヌクレオチド配列はSEQ ID NO.12に示されている。
【0015】
上記抗体135-B9及び抗体197-A5の有効成分としての腫瘍検出試薬の製造における使用。
【0016】
腫瘍診断キットであって、
タンパク質PADI4モノクローナル抗体で被覆されたELISAプレート、対照サンプル、洗浄液、停止液、希釈液、ワサビペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジン(HRP-SA)及びワサビペルオキシダーゼ発色基質を含み、
前記タンパク質PADI4モノクローナル抗体は抗体135-B9及び抗体197-A5を含む。
【0017】
本発明によれば、好ましくは、前記ELISAプレートは96ウェルELISAプレートである。
【0018】
本発明によれば、好ましくは、前記対照サンプルは、人工的に合成されたPADI4タンパク質である陽性対照を含む。
【0019】
本発明によれば、好ましくは、前記希釈液は10mlのFBS(ウシ胎児血清)を90mlのPBST溶液に加え、均一に混合して得られる5%FBS-PBSTである。
【0020】
本発明によれば、好ましくは、前記洗浄液はpH7.4のPBS溶液にTween-20を0.1体積%加えて均一に混合したPBST溶液である。
【0021】
本発明によれば、好ましくは、前記停止液は、2mol/Lの塩酸溶液である。
【0022】
本発明によれば、好ましくは、前記ワサビペルオキシダーゼ発色基質は、濃度30質量%の過酸化水素をクエン酸緩衝液で1000倍希釈した発色液Aと、濃度20質量%のジメチルスルホキシドを含有するクエン酸緩衝液にテトラメチルベンジジンを0.4mg/mlの割合で加えて製造した発色液Bとを含む。
【0023】
本発明によれば、好ましくは、前記抗体135-B9は、ELISAプレートに被覆され、抗体197-A5は、ビオチン標識抗体197-A5である。
【0024】
上記の腫瘍診断キットの製造方法であって、
アミノ酸配列がSEQ ID NO.1に示されている抗原を製造するステップ(1)と、
1本の重鎖と1本の軽鎖から構成され、重鎖のアミノ酸配列はSEQ ID NO.3に示され、軽鎖のアミノ酸配列はSEQ ID NO.5に示されている抗体135-B9を製造するステップ(2)と、
2本の重鎖と1本の軽鎖から構成され、重鎖のアミノ酸配列はそれぞれSEQ ID NO.7とSEQ ID NO.9に示され、軽鎖のアミノ酸配列はSEQ ID NO.11に示されている抗体197-A5を製造し、ビオチンで標識し、ビオチン標識抗体197-A5を製造するステップ(3)と、
ステップ(2)で製造した抗体135-B9をELISAプレートに被覆した後、キットを組み立てて腫瘍診断キットを製造するステップ(4)とを含む。
【0025】
本発明によれば、好ましくは、前記ステップ(3)の標識は、具体的には、
ビオチン(Biotin)をN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)で溶解し、濃度20mg/mlのビオチン溶液を得るステップ1)と、
抗体197-A5をPBS緩衝液に溶解し、炭酸塩緩衝液(CBS)を用いてpH8.5に調整し、濃度1~10mg/mlの抗体197-A5溶液を得るステップ2)と、
抗体1mgあたりビオチン溶液を5μl加える割合で、ステップ1)で製造したビオチン溶液とステップ2)で製造した抗体197-A5溶液を混合し、室温で遮光下2時間撹拌するステップ3)と、
液体(抗体緩衝液とビオチン緩衝液の混合液)を収集し、PBS緩衝液を用いて透析し、その過程でPBS緩衝液を3~4回交換するステップ4)とを含む。
【0026】
本発明によれば、好ましくは、前記ステップ(4)の被覆は、具体的には、
このように製造した135-B9モノクローナル抗体を直接吸着法を用いてpH9.6のPBS緩衝液で4μg/mlに希釈し、100μl/ウェルの添加量で96ウェルELISAプレートに加え、37℃の条件で2時間放置した後、洗浄液で洗浄し、脱水することにより、135-B9モノクローナル抗体で被覆された96ウェルELISAプレートを得る。
【0027】
原理の説明
PADI4は腫瘍マーカーとして広いスペクトルを有する識別性を持っている。既存のマーカーは、せいぜい2~3種類の腫瘍を識別する。PADI4及びその産物であるシトルリン化アンチトロンビンは乳癌、肺癌、腎臓癌、膀胱癌、結腸癌、子宮癌、卵巣癌などの患者の血液中に顕著に発現する。PADI4をマーカーとする検出技術は低コストで腫瘍健康センサスや外来初診に用いることができる。PADI4は腫瘍マーカーとしての作用機序が明確であり、腫瘍治療の進展状況を判断する理論的基礎がある。現在の腫瘍マーカーの作用機序はほとんど不明であるため、腫瘍治療効果のモニタリングに用いることができない。PADI4はアンチトロンビン、細胞ケラチンや細胞フィブロネクチンを修飾することによって腫瘍毛細血管の増殖を刺激し、細胞アポトーシスを抑制することができる。試験により、高発現のPADI4はP53癌抑制遺伝子の下流遺伝子に対する制御を妨害できることを発見した。そのため、PADI4をマーカーとする本キットは臨床検査において広いスペクトル性と特異性を有する。
【発明の効果】
【0028】
有益な効果
本発明は、特異的な抗原で免疫を行い、抗体135-B9及び抗体197-A5を得るものであり、一般的な酵素結合免疫吸着試験を基に、ビオチンとワサビペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジンとの高い増幅作用により、被験サンプル中のタンパク質PADI4の発現レベルを測定する高感度ビオチン-アビジン-酵素結合免疫検出キットを確立した。本発明のタンパク質PADI4検出キットを用いると、ヒト血清中の腫瘍タンパク質PADI4レベルを効果的かつ安定的に測定することができ、その特異性が高く、試験の再現性が良い。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】腫瘍タンパク質のモノクローナル抗体135-B9と197-A5の精製後両抗体の変性ゲル及び非変性ゲルのPAGE図である。
図2】腫瘍タンパク質のモノクローナル抗体135-B9で抗原を識別したSDS-PAGE及びWestern blot解析結果である。
図3】ELISA法を用いる、乳癌、乳癌術後、乳腺線維患者及び健常人の血清の450nmにおける吸収ピークにおけるPADI4の発現レベルの検出である。
図4】ELISA法を用いる、肝癌、肝癌術後、肝海綿状血管腫患者及び健常人の血清の450nmにおける吸収ピークにおけるPADI4の発現レベルの検出である。
図5】ELISA法を用いる、卵巣癌、卵巣癌術後患者及び健常人の血清の450nmにおける吸収ピークにおけるPADI4の発現レベルの検出である。
図6】ELISA法を用いる、前立腺癌、列腺癌術後、前立腺肥大患者及び健常人の血清の450nmにおける吸収ピークにおけるPADI4の発現レベルの検出である。
図7】抗体ペアの組み合わせ135(4μg/ml)~197(0.5μg/ml)に対応する検量線の図である。
図8】抗体ペアの組み合わせ135(4μg/ml)~197(0.25μg/ml)に対応する検量線の図である。
図9】抗体ペアの組み合わせ135(2μg/ml)~197(0.25μg/ml)に対応する検量線の図である。
図10】抗体ペアの組み合わせ135(1μg/ml)~197(0.25μg/ml)に対応する検量線の図である。
図11】抗体ペアの組み合わせ135(4μg/ml)~197(0.125μg/ml)に対応する検量線の図である。
図12】抗体ペアの組み合わせ135(2μg/ml)~197(0.125μg/ml)に対応する検量線の図である。
図13】抗体ペアの組み合わせ135(1μg/ml)~197(0.125μg/ml)に対応する検量線の図である。
図14】抗体ペアの組み合わせ135-197biotinに対応する検量線の図である。
図15】抗体ペアの組み合わせ135-122biotinに対応する検量線の図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下では、本発明の技術案について、実施例及び明細書の添付図面を参照してさらに説明するが、本発明の特許範囲はこれに限定されない。
【0031】
試薬由来
96ウェルELISAプレート:ブランドCorning、商品番号:3599;
PADI4抗原タンパク質:人工合成;
健常人の血清:山東省腫瘍病院健康診断人群から;
ワサビペルオキシダーゼ-ストレプトアビジン:ブランドJackson、商品番号:016-030-084;
洗浄液と停止液はすべて普健生物科技有限公司から購入;
ワサビペルオキシダーゼ発色基質:TMB発色液、普健生物科技有限公司から購入。
【0032】
実施例1
タンパク質PADI4モノクローナル抗体の製造:
(1)抗原の製造:
a)コドン最適化、遺伝子合成
タンパク質PADI4は合計663AAs、分子量74.47KDaであり、シグナルペプチドがなく、膜貫通らせんがなく、265-271 AAsに疎水性の強い領域がある。相同性の比較結果と組み合わせたところ、可溶性タンパク質を抗原とする必要があり、大腸菌系の可溶性発現タンパク質PADI4の1-260 AAs(疎水領域を除去し、相同性は比較的低い)でマウスを免疫してモノクローナル抗体を製造し、ベクターとしてpET28bを採用し、C末端をベクター上の6 Hisタグに連結し、酵素切断部位をNcoI/XhoIとした。
【0033】
b)プラスミド抽出(キット名:Endo-free plasmid Mini Kit I(50)、OMEGA bio-tek):
1)一晩で培養した菌液4mLを12000rpmで1min遠心分離した後、菌体を収集した。
2)Solution Iを250μL加えて細胞を再懸濁させた。
3)Solution IIを250μL加え、4~6回軽く反転させて菌体を十分に分解し、室温で2min放置した。
4)Solution IIIを350μL加えた直後、白色の綿状沈殿が出現するまで数回反転させて均一に混合し、12,000rpmで10min遠心分離した。
5)前のステップで収集した上清を吸着カラムに移し、12,000rpmで1min遠心分離し、収集管内の廃液を廃棄した。
6)吸着カラムにBuffer HBを500μL加え、12,000rpmで1min遠心分離し、収集管内の廃液を廃棄した。
7)吸着カラムにDNA Wash Bufferを700μL加え、12,000rpmで1min遠心分離した後、廃液を廃棄し、洗浄を1回繰り返した。
8)空のカラムを12,000rpmで2min遠心分離した。
9)吸着カラムを無菌の遠心管に置き、50μLの無菌水を加え、室温で2min放置し、12,000rpmで1min遠心分離し、プラスミド溶液を遠心管に収集し、操作を1回繰り返した。
【0034】
c)プラスミドでDH10Bacを形質転換した。
1)DH10Bacコンピテント細胞(Invitrogen社より購入)を氷上で解凍した。
2)100μl高効率DH10Bacコンピテント細胞を予冷した1.5mlのチューブに注入した。
3)細胞にステップb)で製造したプラスミドDNAを3μl加え、軽く混合した。
4)氷上で30分間インキュベートした。
5)42℃で90秒間熱ショックをした。
6)すぐに氷上で2分間放置した。
7)非耐性LB培地を900μl加えた。
8)37℃、180rpmで振とう培養を4時間した。
9)それぞれ10μl、20μl、30μlを取って異なる濃度でLBプレートに塗布し、濃度ごとに3枚のLBプレートに塗布し、ここで、LBプレートは50μg/ml Kan、7μg/ml Gentamicin、10μg/ml tetracycline、100μg/ml X-gal、40μg/ml IPTGを含む。
10)37℃のインキュベーターで48時間遮光培養した。
【0035】
d)白青プラークスクリーニング及び検証
1)ステップc)で培養した白色クローンを採取し、新しいLBプレート(50μg/ml Kan、7μg/ml Gentamicin、10μg/ml tetracycline、100μg/ml X-gal、40μg/ml IPTG)に再ストリークし、37℃で48h遮光培養した。
2)16個の白プラーククローンを、それぞれ50μg/ml Kan、7μg/ml Gentamici、10μg/ml tetracyclineを含有する液体5mlに接種し、37℃、200rpmで一晩培養した。
3)PCRで組換えBacmidを検証し、1~16番号のモノクローナル菌株を選択して検証した。
4)PCRで同定された陽性クローンからキットで組換えプラスミドDNA(キット名:Endo-free plasmid Mini Kit I(50)、OMEGA bio-tek)を抽出した。
【0036】
e)組換えバキュロウイルスP1世代を製造した(6ウェルプレートによるSf9細胞のトランスフェクション)
1)抗生物質含有SFX培地をウェルあたり2ml含む6ウェルプレートに9×10 Sf9細胞を接種し、27℃で1時間培養した。
2)トランスフェクション試薬の準備:精製した組換えプラスミドDNA2μgを、抗生物質を含まないSFX培地100μlに加え、Cellfectin試薬を完全に混合し、5~10回反転混合し、Cellfectin試薬を6μl吸い出し、抗生物質を含まないSFX培地100μlに加え、Cellfectin試薬をプラスミドDNAを含む培地に加え(総体積約210μl)、室温で軽く3min混合し、室温で15分間インキュベートした。
3)DNA/トランスフェクション試薬混合体のインキュベーション中に、細胞から培地を除去し、抗生物質を含まない無血清培地2mlで洗浄し、洗浄培地を廃棄した。
4)混合体を含有する各チューブに抗生物質を含まない無血清培地0.8mlを加え、軽く均一に混合し、細胞含有ウェルに混合体を加えた。
5)27℃で5時間培養した。
6)培養液を除去し、全培地5ml(ペニシリン50単位/mlとストレプトマイシン50μg/ml、血清5%)を細胞に加えた。
7)27℃で1週間培養後、1000rpm/minで5min遠心分離し、上清をP1ウイルス株(cultur medium)とした。
【0037】
f)P1世代の発現試験
1)遠心分離により得られた細胞をPBS緩衝液10mlに加え、2sの間隔で2s超音波処理し、合計3minとし、上清(native)と沈殿(denatured)を12000rpmで2min遠心分離し、沈殿を8Murea+PBSで溶解した。
2)収集したウイルスの上清(culture medium)、上清(native)と沈殿(denatured)を、それぞれ12μl取ってサンプルとし、SDS-PAGE(12%、80v濃縮ゲル、20min、120v分離ゲル、45min)にかけて発現を検証した。
【0038】
g)P2世代ウイルスの製造
1)P1世代の発現の試験結果により、目的タンパク質の発現が示され、P2世代のウイルス製造を継続した。
2)体積200mlの細胞を用意し、体積200μlのP1世代ウイルスを加えた。
3)27℃の高湿度インキュベーターで細胞を1週間培養し、500×gで5min遠心分離して細胞と破片を棄却し、上清を収集してP2世代ウイルスを得た。
【0039】
h)MOI試験
1)6ウェルプレートに細胞状態の良い細胞上清30ml(2×10細胞/ml)を加えた。
2)その中にそれぞれ30μl、150μl、300ulのP2世代ウイルス液を加え、48hと72h培養した後、それぞれ1.5mlをサンプリングして発現試験同定を行った。
3)収集したサンプルに2sの間隔で2s超音波処理を行い、合計3minとし、上清(native)と沈殿(denatured)を12000rpmで2min遠心分離し、沈殿を8Murea+PBSで溶解した。
4)SDS-PGAE同定も同様であった。
【0040】
i)200ml精製試験
1)MOI試験結果により、P2世代ウイルスを30μl選択して72h感染することを精製試験条件とした。
2)200mlの細胞を良好な状態まで培養し、検出した細胞密度が3×10となると、30μlのP2世代ウイルスを加え、72h培養した後、サンプルを収集した。
3)12000rpmで30min遠心分離した後に上清を収集した。
4)精製:Strep-tactin樹脂を用いてSTREPタグのアフィニティー精製を行った。
【0041】
(2)モノクローナル抗体の製造:
1)動物免疫:上記で製造した抗原を用いてマウスを計4回免疫し、融合前に免疫を衝撃し、1~2回融合した。
2)細胞融合及びスクリーニング:血清免疫の結果が良いマウスを選択して細胞融合に用い、1~2回融合し、融合ごとに5~6回のElisaスクリーニング(交差反応を検出する必要がある)を行い、1回目にモノクローナル抗体を得て、株化して腹水を生産し、ペアリングをした。もしペア抗体が得られなかった場合は、2回目の細胞融合を行い、2回目の融合で得られた細胞株を株化して腹水を生産し、次に、1回目で得られた細胞株とともにペアリングした。これにより、タンパク質PADI4モノクローナル抗体を安定的に分泌する能力を有する2つのハイブリドーマ細胞株が得られ、それぞれハイブリドーマ細胞株135-A1-B9、ハイブリドーマ細胞株197-C11-A5と命名された。
3)腹水の生産及び精製:培養したハイブリドーマ細胞をマウスの腹腔に注射し、1~2週間かけて腹水を生産し、proteinA/Gにより腹水を精製し、精製した後にタンパク質PADI4モノクローナル抗体135-B9と197-A5を得た。
【0042】
図1には、腫瘍タンパク質モノクローナル抗体135-B9と197-A5の精製後両抗体の変性ゲル及び非変性ゲルのPAGE図が示されており、第1レーンは135-B9モノクローナル抗体変性後の重鎖と軽鎖のSDS-PAGE結果、第2レーンは197-A5モノクローナル抗体変性後の重鎖と軽鎖のSDS-PAGE解析結果、第3レーンは135-B9モノクローナル抗体変性前のSDS-PAGE結果、第4レーンは197-A5モノクローナル抗体変性前のSDS-PAGE結果である。図2には、モノクローナル抗体135-B9で抗原を識別したWesternblot解析結果が示されており、第1レーンは135-B9モノクローナル抗体で0.5μg抗原を識別したSDS-PAGE解析結果、第2レーンは135-B9モノクローナル抗体で0.25μg抗原を識別したSDS-PAGE解析結果である。
4)精製後の抗体力価の検出:モノクローナル抗体について間接ELISA法で力価を検出し、1:64000より大きいものは合格であり、そうでない場合は当該抗体に対応する細胞株を再培養し、細胞をマウスに注射して腹水精製抗体を生産した。
5)精製した抗体の標識(Biotin)
i)Biotinを濃度20mg/mlとなるようにDMFで溶解した。
ii)抗体を最終濃度1~10mg/mlとなるようにPBSに溶解し、CBSを用いてpH8.5に調整した。
iii)抗体1mgあたりビオチン溶液5μlを加え、室温で遮光下2時間撹拌した。
iv)反応物を収集してPBSを用いて一晩透析し、途中でPBSを3~4回交換した。
【0043】
ビオチン化モノクローナル抗体197-A5
1)Biotinを濃度20mg/mlとなるようにDMFで溶解した。
2)抗体を最終濃度1~10mg/mlとなるようにPBSに溶解し、CBSを用いてpH8.5に調整した。
3)抗体1mg当たりビオチン溶液5ulを加え、室温で遮光下2時間撹拌した。
4)反応物を収集してPBSを用いて一晩透析し、途中でPBSを3~4回交換した。
上記の成分を従来の方法で組み立てて腫瘍診断キットとした。
【0044】
96ウェルELISAプレートの被覆:
直接吸着法を用いて、上記で製造した135-B9モノクローナル抗体をpH9.6のPBS緩衝液で4μg/mlに希釈し、96ウェルELISAプレートに100μl/ウェルの添加量で加え、37℃の条件で2時間放置した後、洗浄液で洗浄し、脱水することにより、135-B9モノクローナル抗体で被覆された96ウェルELISAプレートを得た。
【0045】
実施例2
実施例1に記載のキットの使用ステップは次のとおりである。
1)抗体固相化プレートを室温に回復して平衡化した。
2)標準サンプル希釈液(PADI4)を加え、希釈液を用いて計7個の勾配で10ng/mlから0.015625ng/mlに希釈し、1ウェル当たり100μlとし、最後のウェルを空白対照とし、希釈液100μlを加え、測定サンプル100μl、37℃、1.5hとした。
3)PBST 300μlでプレートを5回洗浄し、液体で乾かした。
4)197-C11-A5-Antibody-Bioを加え、使用前に希釈液で2μg/mlに希釈し、1ウェル当たり100μl、37℃、1hとした。
5)PBST 300μlでプレートを5回洗浄し、液体で乾かした。
6)Streptavidin-HRPを加え、使用前に希釈液で1:2000に希釈し、1ウェル当たり100μl、37℃、30minとした。
7)PBST 300ulでプレートを5回洗浄し、液体で乾かした。
8)TMB発色を行い、すなわち、1ウェル当たり100μlとし、37℃で10min発色した。
9)2M塩酸で停止し、1ウェルあたり50μlとした。
3、検出結果:
停止液を添加してから15min以内に、酵素結合装置を用いて450nmの波長条件下で各検出ウェルの光学濃度OD値を検出し、検出キットの検出基準は、被測定血清のOD値が以上の場合には検出サンプルを陽性と判定し、そうでない場合には検出サンプルを陰性と判定することである。検出の結果、本発明で製造された被覆96ウェルELISAプレートの変動係数CV値は20%未満であり、同一ロット及び異なるロットの検出キットに対して試験を行い、試験の結果、ロット内及びロット間のキットのCV値はいずれも20%未満であり、このことから、本発明のPADI4検出キットは高い精密性を有することが示された。
【0046】
実施例3 本発明のPADI4検出キットを用いた臨床サンプルの検出:
実施ケース1:乳癌112例、乳癌術後86例、肝細胞癌77例、肝細胞癌術後24例、食道癌64例、食道癌術後24例、胃癌94例、胃癌術後43例、結腸癌2l例、結腸癌術後15例、直腸癌19例、直腸癌術後28例、膵臓癌21例、膵臓癌術後6例、卵巣癌29例、卵巣癌術後11例、及び性別と年齢が一致した正常対照群160例を検出し、結果を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
すべての試験データは3回の繰り返し試験によって得られ、t検定をしたところ、PADl4は乳癌、肝細胞癌、食道癌、胃癌、結腸直腸癌、膵臓癌、卵巣癌の各種悪性腫瘍患者の血清中に健常対照群と比較して非常に高い発現があり、統計学的有意差があった(P<0.05)。乳癌、肝細胞癌、胃癌、結腸直腸癌、膵臓癌、卵巣癌などの術後患者血清中のPADl4発現は明らかに低下した。
【0049】
実施ケース2:ELISA法を用いて腫瘍患者の血液を検出したところ、PADI4及びその産物であるシトルリン化アンチトロンビンは乳癌、肺癌、腎臓癌、膀胱癌、結腸癌、子宮癌、卵巣癌などの患者の血液中で顕著に発現し、一方、健常人では発現しない或いは発現量が非常に低いことを発見した。図3に示すように、ELISA法を用いて各種腫瘍患者及び術後と健常人の血清中のPADI4の発現レベルを測定した。棒グラフの各カラムは、患者又は健常人の血清の450nmにおける吸収ピークを表している。結果により、一部の良性腫瘍、腫瘍切除手術後の患者血清と健常人血清とを比較すると、PADI4は乳癌、肝臓癌、腎臓癌、卵巣癌、前立腺癌、膀胱癌などの悪性腫瘍患者血清中の発現レベルが明らかに高くなった。
【0050】
比較例1
タンパク質PADI4の発現レベルの検出における本発明の技術案の顕著な効果をさらに説明するために、本発明の研究開発過程において同一条件下でスクリーニングした他の抗体を選択して、本願に記載の抗体の効果と比較する。
(1)二重抗体サンドイッチELISA検出システムの構築:スクリーニングした26個のモノクローナル細胞株を抗体生産に供し、精製後、力価が良い抗体を21株選択してビオチン標識を行い、チェッカーボード滴定実験を用いて、二重抗体サンドイッチELISA法により26株のモノクローナル抗体と18株のビオチン標識抗体がペアになるかどうかを検出し、PADI4タンパク質を標準タンパク質とし、PADI2タンパク質を陰性対照とし、9株の捕捉抗体と9株のビオチン標識抗体を選択し、次のステップの内生性検出を行った。
(2)ペア抗体による内因性サンプルの検出:チェッカーボード滴定実験を用いて、二重抗体サンドイッチELISA法により、スクリーニングした9株のモノクローナル抗体と9株のビオチン標識抗体のペアリングを検出し、スクリーニングしたこれらの抗体を捕捉抗体としてELISAプレートを被覆し、ビオチン標識抗体を検出抗体、PADI4タンパク質を標準タンパク質、PADI2タンパク質を陰性対照タンパク質、甲から提供された陽性血清と陰性血清を内因性サンプルとして、それぞれ2つずつペアリング検証を行った。チェッカーボード滴定実験により、P/N値が最も大きく(次の表2に示す)、反応が最も敏感な10群の抗体ペアを選択し、次の最適化実験を行った。
【0051】
【表2】
【0052】
(3)最適抗体ペアの予備スクリーニング:前のステップで決定された10群の抗体ペア(表2参照)について、勾配希釈されたPADI2タンパク質、PADI4タンパク質、陽性血清、陰性血清を検出し、結果は次のとおりである。
【0053】
【表3】
【0054】
表3のデータから、10群の抗体ペアはすべて陰性対照タンパク質PADI2を識別せず、交差反応がないことを示している。
【0055】
【表4】
【0056】
表4のデータから、10群の抗体ペアはすべて陽性対照タンパク質PADI4を識別できることを示している。
【0057】
【表5】
【0058】
表5のデータから、陽性血清OD/陰性血清ODが3倍より大きい5群の抗体ペアの組み合わせ(1、2、3、5及び6縦列)を選択し、次の捕捉抗体と検出抗体の条件最適化を行い、ここで、捕捉抗体135に3つの濃度勾配(1/2/4μg/ml)を設定し、5つの検出抗体にそれぞれ3つの濃度勾配(0.5/1/2μg/ml)を設定してPADI4タンパク質(濃度0.1μg/ml~0.0015625μg/ml倍比希釈)、陰性血清(希釈倍数1/2/4倍)、陽性血清(希釈倍数1/2/4倍)を検出し、プレーティングを表6に示す。
【0059】
【表6-1】
【0060】
【表6-2】
【0061】
【表6-3】
【0062】
【表6-4】
【0063】
【表6-5】
【0064】
データを表7(黒太字はPADI4データ-検量線、3、4、7及び8縦列のD、E、F行は陰性血清データ(1/2/4倍希釈)、残りの黒非太字は陽性血清データ)に示す。
【0065】
【表7】
【0066】
表7のデータから分かるように、陰影充填部分のデータは、血清希釈倍数の増加に伴い、OD値が低下する傾向にあり、対応する抗体ペアの組み合わせは135(4μg/ml)~197(0.5μg/ml)であり、対応する検量線は表8及び図7に示される。
【0067】
【表8】
【0068】
(4)抗体ペアの組み合わせ135(4μg/ml)~197(0.5μg/ml)についてさらに条件最適化をして抗体ペアの最適作動濃度を決定した。
〔1〕条件最適化:捕捉抗体135に3つの濃度勾配(4/2/1μg/ml)を設定し、検出抗体197にそれぞれ3つの濃度勾配(0.5/1/2μg/ml)を設定してPADI4タンパク質(濃度50ng/ml~0.78125ng/ml倍比希釈)を検出した。
〔1〕に基づいて〔2〕条件最適化を行った:捕捉抗体135に1つの濃度勾配(4μg/ml)を設定し、検出抗体197にそれぞれ2つの濃度勾配(0.25/0.125μg/ml)を設定してPADI4タンパク質(濃度50ng/ml-0.78125ng/ml倍比希釈)を検出した。
〔2〕に基づいて、〔3〕条件最適化を継続した:捕捉抗体135に3つの濃度勾配(4/2/1μg/ml)を設定し、検出抗体197にそれぞれ2つの濃度勾配(0.25/0.125μg/ml)を設定してPADI4タンパク質(濃度50ng/ml~0.78125ng/ml倍比希釈)を検出した。
各条件の組み合わせデータを表9~表14及び図8図13に示す。
【0069】
【表9】
【0070】
【表10】
【0071】
【表11】
【0072】
【表12】
【0073】
【表13】
【0074】
【表14】
【0075】
以上の6つの抗体ペアデータを総合的に比較し(R値、同一抗原濃度に対応するOD値、検出抗体濃度値(感度))、抗体ペアの最適作用濃度は、Antibody135(4μg/ml)-PADI4タンパク質(50ng/ml~0.78125ng/ml)-197-bio(0.125μg/ml)であった。
【0076】
まとめ:
プレーティング及び検出されたデータから、3つの希釈倍数(1×、2×、4×)における陽性血清、陰性血清及び空白対照のOD値から、各希釈倍数における陽性血清OD/陰性血清OD値の比(空白背景値を差し引いた値)を算出し、結果を表15に示す。
【0077】
【表15】
【0078】
以上のデータを総合的に比較したところ、各抗体ペアはそれぞれPADI4タンパク質とPADI2タンパク質を測定し(クロススクリーニング除去)、及び陽性血清、陰性血清のOD値をスクリーニングして5群の抗体ペアを決定する。この5群の抗体ペアは、同じ血清希釈度を検出した場合に、抗体ペアの陽性血清/陰性血清の比(比が高く、陽性と陰性の区別度が良い)を比較すると、135-197biotinと135-122biotinの方が良く、対応する検量線を表16~表17及び図14図15に示す。
【0079】
【表16】
【0080】
【表17】
【0081】
両抗体ペアの感度(同じ抗原濃度に対応するOD値)と検量線の相関性(R)について比較したところ、135-197biotin抗体ペアはすべて135-122biotinより顕著に優れていた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【配列表】
2022537074000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-01-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチジルアルギニンデイミナーゼ4を腫瘍マーカーとして製造した抗体135-B9であって、
1本の重鎖と1本の軽鎖から構成され、重鎖のアミノ酸配列はSEQ ID NO.3に示され、軽鎖のアミノ酸配列はSEQ ID NO.5に示されている抗体135-B9
【請求項2】
重鎖のヌクレオチド配列はSEQ ID NO.4に示され、軽鎖のヌクレオチド配列はSEQ ID NO.6に示されている請求項1に記載の抗体135-B9の発現遺伝子。
【請求項3】
ペプチジルアルギニンデイミナーゼ4を腫瘍マーカーとして製造した抗体197-A5であって、
2本の重鎖と1本の軽鎖から構成され、重鎖のアミノ酸配列はそれぞれSEQ ID NO.7とSEQ ID NO.9に示され、軽鎖のアミノ酸配列はSEQ ID NO.11に示されている抗体197-A5
【請求項4】
重鎖のヌクレオチド配列はそれぞれSEQ ID NO.8とSEQ ID NO.10に示され、軽鎖のヌクレオチド配列はSEQ ID NO.12に示されている請求項3に記載の抗体197-A5の発現遺伝子。
【請求項5】
腫瘍は、乳癌、肝細胞癌、食道癌、胃癌、結腸癌、直腸癌、膵臓癌又は卵巣癌であることを特徴とする、PADI4をマーカーとする腫瘍検出試薬の製造における、請求項1に記載の抗体135-B9及び請求項3に記載の抗体197-A5の有効成分としての使用。
【国際調査報告】