(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-23
(54)【発明の名称】強化された熱電子放出のためのエミッタ構造物
(51)【国際特許分類】
H01J 19/14 20060101AFI20220816BHJP
H01J 1/20 20060101ALI20220816BHJP
H01J 1/146 20060101ALI20220816BHJP
H01J 1/148 20060101ALI20220816BHJP
H01J 19/066 20060101ALI20220816BHJP
H01J 19/068 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
H01J19/14
H01J1/20
H01J1/146
H01J1/148
H01J19/066
H01J19/068
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022506383
(86)(22)【出願日】2020-07-07
(85)【翻訳文提出日】2022-03-28
(86)【国際出願番号】 US2020040974
(87)【国際公開番号】W WO2021021392
(87)【国際公開日】2021-02-04
(32)【優先日】2019-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504019881
【氏名又は名称】ロッキード マーティン コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】LOCKHEED MARTIN CORPORATION
【住所又は居所原語表記】6801 Rockledge Drive, Bethesda, MD 20817, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100168871
【氏名又は名称】岩上 健
(72)【発明者】
【氏名】エバーソン フランズ ヘンドリック
(72)【発明者】
【氏名】ソヴリン ランダル ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】ハインリッヒ ジョナサン ロバート
(72)【発明者】
【氏名】サリヴァン レジーナ マリコ
(57)【要約】
一実施形態では、システムは、カソードと、カソードのカソードチューブ内に少なくとも部分的に設置された熱電子エミッタとを含む。熱電子エミッタは、中空円筒形状である。中空円筒は、外面と非平滑内面とを含む。外面は、カソードチューブの内面に接触するように構成される。非平滑内面は、平滑な表面に比べて、表面積の増加をもたらす複数の構造物を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソードチューブを備えるカソードと、
前記カソードチューブ内に少なくとも部分的に設置された熱電子エミッタと、
を備えるシステムであって、
前記熱電子エミッタは、中空円筒の形状をなし、
前記中空円筒は、外面と、非平滑内面とを備え、
前記外面は、前記カソードチューブの内面に接触するように構成され、
前記非平滑内面は、複数の構造物を備え、
前記非平滑内面の前記複数の構造物は、平滑な表面に比べて、表面積の増加をもたらす、システム。
【請求項2】
前記非平滑内面の前記複数の構造物は、
前記熱電子エミッタの第1の端部から、前記第1の端部の反対側にある前記熱電子エミッタの第2の端部まで延びる複数の半円形谷部と、
前記熱電子エミッタの前記第1の端部から前記熱電子エミッタの前記第2の端部まで延びる複数の隆起部であって、前記複数の隆起部のそれぞれが、前記複数の半円形谷部の2つの間にある、前記複数の隆起部と、
を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記非平滑内面の前記複数の構造物は、
前記熱電子エミッタの第1の端部から、前記第1の端部の反対側にある前記熱電子エミッタの第2の端部まで延びる複数の三角形谷部と、
前記熱電子エミッタの前記第1の端部から前記熱電子エミッタの前記第2の端部まで延びる複数の隆起部であって、前記複数の隆起部のそれぞれが、前記複数の三角形谷部の2つの間にある、前記複数の隆起部と、
を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記非平滑内面の前記複数の構造物は、
前記熱電子エミッタの第1の端部から、前記第1の端部の反対側にある前記熱電子エミッタの第2の端部まで延びる複数の矩形谷部であって、前記複数の矩形谷部のそれぞれは、
第1の側面と、
前記第1の側面と平行な第2の側面と、
底面と、
を含む、前記複数の矩形谷部と、
前記熱電子エミッタの前記第1の端部から前記熱電子エミッタの前記第2の端部まで延びる複数の隆起部であって、複数の隆起部のそれぞれは、前記複数の矩形谷部の2つの間にある、前記複数の隆起部と、
を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記複数の矩形谷部のそれぞれの前記底面は、湾曲している、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記矩形谷部の各々の前記底面は平坦であり、
前記矩形谷部の各々の前記底面は、前記矩形谷部のそれぞれの前記第1及び第2の側面に直交する、請求項4に記載のシステム。
【請求項7】
前記熱電子エミッタは、タングステン、トリエーテッドタングステン、六ホウ化ランタン、酸化バリウム、及び六ホウ化セリウムからなる群から選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
カソードチューブを備えるカソードと、
前記カソードチューブ内に少なくとも部分的に設置された熱電子エミッタと、
を備えるシステムであって、
前記熱電子エミッタは、中空円筒の形状をなし、
前記中空円筒は、外面と内面とを備え、
前記内面は、前記内面の下方又は上方に延びる複数の構造物を備える、システム。
【請求項9】
前記内面の前記複数の構造物は、
前記熱電子エミッタの第1の端部から、前記第1の端部の反対側にある前記熱電子エミッタの第2の端部まで延びる複数の半円形谷部と、
前記熱電子エミッタの前記第1の端部から前記熱電子エミッタの前記第2の端部まで延びる複数の隆起部であって、前記複数の隆起部のそれぞれが、前記複数の半円形谷部の2つの間にある、前記複数の隆起部と、
を備える、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記内面の前記複数の構造物は、
前記熱電子エミッタの第1の端部から、前記第1の端部の反対側にある前記熱電子エミッタの第2の端部まで延びる複数の三角形谷部と、
前記熱電子エミッタの前記第1の端部から前記熱電子エミッタの前記第2の端部まで延びる複数の隆起部であって、前記複数の隆起部のそれぞれが、前記複数の三角形谷部の2つの間にある、前記複数の隆起部と、
を備える、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記内面の前記複数の構造物は、
前記熱電子エミッタの第1の端部から、前記第1の端部の反対側にある前記熱電子エミッタの第2の端部まで延びる複数の矩形谷部であって、前記複数の矩形谷部のそれぞれは、
第1の側面と、
前記第1の側面と平行な第2の側面と、
底面と、
を含む、前記複数の矩形谷部と、
前記熱電子エミッタの前記第1の端部から前記熱電子エミッタの前記第2の端部まで延びる複数の隆起部であって、複数の隆起部のそれぞれは、前記複数の矩形谷部の2つの間にある、前記複数の隆起部と、
を備える、請求項8に記載のシステム。
【請求項12】
前記複数の矩形谷部のそれぞれの前記底面は、湾曲している、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記矩形谷部の各々の前記底面は平坦であり、
前記矩形谷部の各々の前記底面は、前記矩形谷部のそれぞれの前記第1及び第2の側面に直交する、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記熱電子エミッタは、タングステン、トリエーテッドタングステン、六ホウ化ランタン、酸化バリウム、及び六ホウ化セリウムからなる群から選択される、請求項8に記載のシステム。
【請求項15】
第1の表面と、
前記第1の表面の反対側にある第2の表面と、
前記第1の表面の下方又は上方に延びる複数の構造物と、
を備える熱電子エミッタ。
【請求項16】
前記熱電子エミッタは、円板形の平面熱電子エミッタである、請求項15に記載の熱電子エミッタ。
【請求項17】
前記第1の表面の前記複数の構造物は、複数の円錐形窪みを備える、請求項16に記載の熱電子エミッタ。
【請求項18】
前記第1の表面の前記複数の構造物は、
複数の同心谷部と、
複数の同心隆起部であって、前記複数の同心隆起部のそれぞれは、前記複数の同心谷部の2つの間にある、前記複数の同心隆起部と、
を備える、請求項16に記載の熱電子エミッタ。
【請求項19】
前記熱電子エミッタは、中空円筒形状である、請求項15に記載の熱電子エミッタ。
【請求項20】
前記第1の表面の前記複数の構造物は、
前記熱電子エミッタの第1の端部から、前記第1の端部の反対側にある前記熱電子エミッタの第2の端部まで延びる複数の半円形谷部と、
前記熱電子エミッタの前記第1の端部から前記熱電子エミッタの前記第2の端部まで延びる複数の隆起部であって、前記複数の隆起部のそれぞれが、前記複数の半円形谷部の2つの間にある、前記複数の隆起部と、
を備える、請求項19に記載の熱電子エミッタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、熱電子放出に関し、より具体的には、強化された熱電子放出のためのエミッタ構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱電子エミッタは、例えば、電子源、プラズマ源、及び宇宙船の電気推進装置(例えば、イオンスラスタ)で使用されるカソードの重要な構成要素である。熱電子エミッタの表面から電子を放出させるために、熱電子エミッタには1600℃以上の高熱が加えられる。熱電子エミッタから放出される総電流は、熱電子エミッタの温度及び表面積によって決まる。より高い温度及びより大きな表面積は、より大きな放出電流をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、より高い温度は重大な熱的課題を追加し、より大きな熱電子エミッタは望ましいものではないか又は特定の用途に適合しない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
1つの実施形態では、システムは、カソードと、カソードのカソードチューブ内に少なくとも部分的に設置された熱電子エミッタとを含む。熱電子エミッタは、中空円筒形状である。中空円筒は、外面と非平滑内面とを含む。外面は、カソードチューブの内面に接触するように構成される。非平滑内面は、平滑な表面に比べて、表面積の増加をもたらす複数の構造物を含む。
【0005】
別の実施形態では、システムは、カソードと、カソードのカソードチューブ内に少なくとも部分的に設置された熱電子エミッタとを含む。熱電子エミッタは、中空円筒形状である。中空円筒は、外周面と内面とを含む。内面は、内面の下方又は上方に延びる複数の構造物を含む。
【0006】
別の実施形態では、熱電子エミッタは、第1の表面と、第1の表面の反対側にある第2の表面とを含む。熱電子エミッタは、各々が第1の表面の下方又は上方に延びる複数の構造物をさらに含む。
【0007】
本開示は、一般的なシステムに対して多数の技術的利点を提供する。一例として、開示されたシステムは、各々が放出面の下方又は上方に延びる構造物を含む放出面を有する熱電子エミッタを含む。例えば隆起部及び/又は谷部とすることができる構造物は、放出面の表面積を増加させ、それによって放出面から放出される電子量を増加させるように機能する。これにより、熱電子エミッタは、同じサイズの一般的な熱電子エミッタよりも低温で動作することができるが、依然として同じ電流が得られる。その結果、熱電子エミッタの機能寿命を延ばすことができる。加えて、開示された表面構造物を有する熱電子エミッタは、同じ温度で動作する同じサイズの一般的な熱電子エミッタよりも多くの電流を生成することになる。その結果、このような熱電子エミッタを利用する装置の温度を上昇させることなく、その性能を高めることができる。いくつかの実施形態では、表面構造は、他の近傍表面からの放射電力も遮断し、これは同様の表面積をもつ非構造化表面と比較して性能を向上させることができる。また、表面構造は、熱電子エミッタが蒸発して内面の形状が変化する場合に、より均一な放出電流を生成するように設計することができる。
【0008】
他の技術的利点は、以下の図面、説明、及び特許請求の範囲の記載から当業者には容易に明らかになるであろう。さらに、本明細書では特定の利点が列挙されているが、様々な実施形態は、列挙された利点の全て、一部、又はいずれも含まない場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】特定の実施形態による、例示的なカソードを示す。
【
図2】特定の実施形態による、
図1のカソードと共に使用することができる例示的な熱電子エミッタを示す。
【
図3A】特定の実施形態による、
図2の熱電子エミッタの断面図を示す。
【
図3B】特定の実施形態による、
図1の熱電子エミッタの様々な実施形態の断面図を示す。
【
図3C】特定の実施形態による、
図1の熱電子エミッタの様々な実施形態の断面図を示す。
【
図3D】特定の実施形態による、
図1の熱電子エミッタの様々な実施形態の断面図を示す。
【
図3E】特定の実施形態による、
図1の熱電子エミッタの様々な実施形態の断面図を示す。
【
図3F】特定の実施形態による、
図1の熱電子エミッタの様々な実施形態の断面図を示す。
【
図4A】特定の実施形態による、平面熱電子エミッタを示す
【
図4B】特定の実施形態による、
図4Aの平面熱電子エミッタの断面図を示す。
【
図5A】特定の実施形態による、別の平面熱電子エミッタを示す。
【
図5B】特定の実施形態による、
図5Aの平面熱電子エミッタの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
熱電子エミッタは、多くの異なるプラズマ装置に重要な電子流を放出するために使用される。例えば、熱電子エミッタは、電子源、プラズマ源、及び宇宙船の電気推進装置(例えば、イオンスラスタ)に使用されるカソードの重要な構成要素である。熱電子エミッタは、十分な電子流を放出するために、非常に高い温度(例えば1600℃)に加熱する必要がある。高い温度は、より多くの電子放出、達成可能な大きな電流、及び良好なプラズマ装置の性能につながる。しかしながら、電子放出を増やすために熱電子エミッタの温度を高くすることは、必ずしも望ましいものではないか又は実現可能ではない。
【0011】
一般的な熱電子エミッタのこれらの課題及び他の課題に対処するために、本開示は、各々が熱電子エミッタの放出面の下方又は上方に延びる構造物を各々が含む熱電子エミッタの様々な実施形態を提供する。構造物は、例えば、隆起部及び/又は谷部とすることができ、放出面の表面積を増加させ、それによって、放出面から放出される電子量を増加させるように機能する。これにより、開示された構造物を有する熱電子エミッタは、同じサイズの一般的な熱電子エミッタよりも低温で動作することができるが、依然として同じ電流が得られる。その結果、熱電子エミッタの機能寿命を延ばすことができる。加えて、開示された表面構造物を有する熱電子エミッタは、同じ温度で動作する同じサイズの一般的な熱電子エミッタよりも多くの電流を生成することになる。その結果、このような熱電子エミッタを利用する装置の性能を高めることができる。特定の実施形態において、表面構造物は、他の近傍表面構造物からの放射電力を遮断し、失われる熱の一部を低減するという追加の利点を有することもできる。また、表面構造物は、熱電子エミッタの寿命中にエミッタ表面が蒸発する場合に、特定の電流放出プロファイルを与えるように設計することができる。
【0012】
本開示の理解を深めるために、特定の実施形態の例を以下に示す。以下の例は、決して本開示の範囲を制限するか又は定義するように解釈されるべきではない。本開示の実施形態及びその利点は、同様の番号が同様の要素及び対応する要素を示すために使用される添付図面を参照することによって最もよく理解されるであろう。
【0013】
図1は、本開示の実施形態による例示的なカソード100を示す。いくつかの実施形態では、カソード100は、加熱器110、カソードチューブ120、及びカソードチューブ120内に部分的に又は完全に設置される熱電子エミッタ130を含む。いくつかの実施形態では、加熱器110は、カソードチューブ120を部分的に又は完全に取り囲む。他の実施形態では、加熱器110はカソードチューブ120内に統合される。
【0014】
一般に、カソード100は、電子源、プラズマ源、又は宇宙船の電気推進装置(例えば、イオンスラスタ)などの装置で使用することができる。加熱器110は、イオンスラスタなどのプラズマ装置で使用される電子流を熱電子エミッタ130から生成するために、熱電子エミッタ130を加熱する。以下でより詳細に説明するように、熱電子エミッタ130は、一般的な熱電子エミッタとは異なり、エミッタ表面の表面積を増加させるように機能する構造物を有するエミッタ表面を含む。放出面の表面積を増加させることにより、構造物は、滑らかな放出面を有する同一の熱電子エミッタに比べて、熱電子エミッタ130がより大量の電子を放出することを可能にする。
【0015】
図2は、特定の実施形態による、例示的な熱電子エミッタ130Aを示し、
図3Aは、
図2の熱電子エミッタ130Aの断面図を示す。これらの図に示されるように、熱電子エミッタ130は、外側加熱面131及び内側エミッタ面132を含む中空円筒形状とすることができる。他の実施形態では、熱電子エミッタ130は、円板形状の平面エミッタとすることができる(例えば、
図4A-5B)。熱電子エミッタ130は、タングステン、六ホウ化ランタン、酸化バリウム、トリアードタングステン、六ホウ化セリウムなどの何らかの適切な材料から形成することができる。
【0016】
一般に、熱電子エミッタ130のいくつかの実施形態の外側加熱面131は、カソードチューブ120の内面に接触するように構成されている。外側加熱面131は、熱電子エミッタ130に内側エミッタ面132から電子を放出させるために、加熱器110などの外部熱源によって加熱される。いくつかの実施形態において滑らかでない内側エミッタ面132は、構造物136を含む。構造物136の何らかの数、配置、サイズ、及び形状は、滑らかなエミッタ表面を利用する(すなわち、構造物136のない)一般的な熱電子エミッタに比べて、内側エミッタ面132に表面積の増加をもたらすために、内側エミッタ面132上で利用することができる。構造物136の様々な実施形態は、
図3B-5Bを参照して以下でさらに説明する。本明細書では、構造物136の特定の数、配置、サイズ、及び形状が例示されているが、本開示は、構造物136の例示された実施形態に限定されない。
【0017】
図2及び3Aの示された実施形態では、構造物136は、複数の半円形谷部136A(例えば、10個の半円形谷部136A)及び複数の隆起部136B(例えば、10個の隆起部136B)を含む。半円形谷部136Aは、概して、熱電子エミッタ130の第1の端部133から熱電子エミッタ130の第2の端部134まで延びる。熱電子エミッタ130の第2の端部134は、熱電子エミッタ130の第1の端部133とは反対側にある。同様に、隆起部136Bは、概して、熱電子エミッタ130の第1の端部133から熱電子エミッタ130の第2の端部134まで延びる。隆起部136Bのそれぞれは、2つの半円形谷部136Aの間にある。隆起部136Bは、平坦とすることができ(図示のように)、又はいくつかの実施形態では点とすることができる。いくつかの実施形態では、半円形谷部136Aは、円形ではなく楕円形とすることができる。いくつかの実施形態では、半円形谷部136Aは、最初に、熱電子エミッタ130の中心138の周りで半径136の穴を開けることによって形成することができる。次に、半円形谷部136Aを形成するために、半径139の複数の穴は、半径136の穴の外周の周りに開けることができる。他の実施形態では、これら2つの穴開けステップは、逆にすることができる。他の実施形態では、何らかの他の適切な製造方法を使用して、熱電子エミッタ130を形成することができる。
【0018】
図3B-3Fは、熱電子エミッタ130の様々な代替実施形態の断面図である。
図3B及び3Cにおいて、熱電子エミッタ130B及び130Cの構造物136は、複数の矩形谷部136C(例えば、4つの矩形谷部136C)及び複数の隆起部136B(例えば、4つの隆起部136B)を含む。矩形谷部136Cは、概して、熱電子エミッタ130の第1の端部133から熱電子エミッタ130の第2の端部134まで延びる。隆起部136Bのそれぞれは、2つの矩形谷部136Cの間にある。矩形谷部136Cは、第1の側面301、第2の側面302、及び底面(bottom edge)303を含む。いくつかの実施形態では、第2の側面302は、第1の側面301と平行である。いくつかの実施形態では、矩形谷部136Cのそれぞれの底面303は、湾曲している(例えば、
図3B)。他の実施形態では、矩形谷部136Cのそれぞれの底面303は、平坦である(例えば、
図3C)。底面303が平坦である実施形態では、底面303は、第1の側面301及び第2の側面302の両方に直交することができる。
【0019】
図3D及び3Eにおいて、熱電子エミッタ130D及び130Eの構造物136は、複数の三角形谷部136D(例えば、
図3Dでは8つの三角形谷部136D、
図3Eでは6つの三角形谷部136D)及び複数の隆起部136B(例えば、
図3Dでは8つの隆起部136B、
図3Eでは6つの隆起部136B)を含む。三角形谷部136Dは、概して、熱電子エミッタ130の第1の端部133から熱電子エミッタ130の第2の端部134まで延びる。隆起部136Bのそれぞれは、2つの三角形谷部136Dの間にある。
【0020】
図3Fでは、熱電子エミッタ130Fの構造物136は、複数の楔部136E(例えば、4つの楔部136E)及び複数の隆起部136B(例えば、4つの隆起部136B)を含む。楔部136Eは、概して、熱電子エミッタ130Fの第1の端部133から熱電子エミッタ130Fの第2の端部134まで延びる。隆起部136Bのそれぞれは、2つの楔部136Eの間にある。他の実施形態で示されるように隆起部136Bが尖っているか又は平坦である代わりに、
図3Fの隆起部136Bは、熱電子エミッタ130の中心で互いに結合する。各楔部136Eは、何らかの適切な形状(例えば、三角形、正方形、矩形、円形など)とすることができる。
【0021】
図4A及び5Aは、平面的な円板形の熱電子エミッタ410(例えば、410A及び410B)の様々な実施形態を示す。
図4Bは、特定の実施形態による、
図4Aの熱電子エミッタ410Aの断面図を示し、
図5Bは、
図5Aの熱電子エミッタ410Bの断面図を示す。これらの実施形態では、熱電子エミッタ410は、第1の表面401と、第1の表面401と反対側にある第2の表面402とを含む。いくつかの実施形態では、第2の表面402は、外側加熱面131に類似することができ、第1の表面401は、内側エミッタ面132に類似することができる。一般に、第1の表面401は、第1の表面401の表面積を増加させ、それによって第1の表面401から放出され得る電子量を増加させるように機能する複数の構造物136を含む。構造物136は、第1の表面401の下方(図示のように)又は上方のいずれかに延びることができる。いくつかの実施形態では、熱電子エミッタ410は、円板形状である。他の実施形態では、熱電子エミッタ410は、何らかの他の適切な形状(例えば、楕円形、正方形、矩形など)とすることができる。熱電子エミッタ410は、熱電子エミッタ130を参照して上述したものなど、何らかの適切な材料から形成することができる。
【0022】
図4A及び4Bに示されるように、熱電子エミッタ410Aは、複数の円錐形窪み136Fと、円錐形窪み136Fの間の複数の隆起部136Bとを含む。熱電子エミッタ410Aは、何らかの数及び配置の円錐形窪み136Fを含むことができ、円錐形窪み136Fは、何らかの適切な形状又はサイズとすることができる。いくつかの実施形態では、円錐形窪み136Fは、代替的に円錐形以外の異なる形状の凹みとすることができる。例えば、窪み136Fは、球形、円形、楕円形、三角形、楕円形などの形状の凹みとすることができる。
【0023】
図5A及び
図5Bに示されるように、熱電子エミッタ410Bは、複数の同心谷部136G及び複数の同心隆起部136Bを含む。同心隆起部136Bのそれぞれは、2つの同心谷部136Gの間にある。熱電子エミッタ410Bは、何らかの数及び配置の同心谷部136Gを含むことができ、同心谷部136Gは、何らかの適切な形状又はサイズとすることができる。例えば、同心谷部136Gは、三角形、正方形、円形、楕円形などの何らかの適切な形状とすることができる。
【0024】
本明細書では、「又は」は、明示的にそのように定められない限り又は文脈によってそのように定められない限り、包括的であり、排他的ではない。従って、本明細書では、「A又はB」は、明示的にそのように定められない限り又は文脈によってそのように定められない限り、「A、B、又は両方」を意味する。さらに、「及び」は、明示的にそのように定められない限り又は文脈によってそのように定められない限り、結合及び各自の両方を意味する。従って、本明細書では、「A及びB」は、明示的にそのように定められない限り又は文脈によってそのように定められない限り、「A及びBを合わせて又はそれぞれ独自に」を意味する。
【0025】
本開示の範囲は、本明細書に記載又は図示された当業者が理解する例示的な実施形態の全ての変更例、置換例、変形例、代替例、及び修正例を含む。本開示の範囲は、本明細書で説明又は図示された例示的な実施形態に限定されない。さらに、本開示では、特定の構成要素、特徴、機能、作用、又はステップを含むものとして本明細書でそれぞれの実施形態を説明及び図示するが、これらの実施形態のいずれも、本明細書の何らかの場所で説明又は図示されて当業者が理解する構成要素、特徴、機能、作用、又はステップの何らかの組み合わせ又は順列を含むことができる。さらに、特許請求の範囲において、特定の機能を実行するように適合され、配置され、特定の機能を実行することができ、そのように構成され、そのように実施可能であり、そのように動作可能であり、又はそのようの動作する装置もしくはシステム、又は装置もしくはシステムの構成要素の参照は、装置、システム、又は構成要素がそのように適合され、配置され、特定の機能を実行することができ、そのように構成され、そのように実施可能であり、そのように動作可能であり、又はそのようの動作する限り、特定の機能を起動させ、作動させ、又はロック解除するか否かに関わらず、その装置、システム、構成要素を含む。
【手続補正書】
【提出日】2022-03-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソードチューブを備えるカソードと、
前記カソードチューブ内に少なくとも部分的に設置された熱電子エミッタと、
前記カソードチューブを少なくとも部分的に取り囲み、前記熱電子エミッタを加熱するように構成された加熱器と、
を備えるシステムであって、
前記熱電子エミッタは、中空円筒の形状をなし、
前記中空円筒は、外面と、非平滑内面とを備え、
前記外面は、前記カソードチューブの内面に接触するように構成され、
前記非平滑内面は、複数の構造物を備え、
前記非平滑内面の前記複数の構造物は、平滑な表面に比べて、表面積の増加をもたらす、システム。
【請求項2】
前記非平滑内面の前記複数の構造物は、
前記熱電子エミッタの第1の端部から、前記第1の端部の反対側にある前記熱電子エミッタの第2の端部まで延びる複数の半円形谷部と、
前記熱電子エミッタの前記第1の端部から前記熱電子エミッタの前記第2の端部まで延びる複数の隆起部であって、前記複数の隆起部のそれぞれが、前記複数の半円形谷部の2つの間にある、前記複数の隆起部と、
を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記非平滑内面の前記複数の構造物は、
前記熱電子エミッタの第1の端部から、前記第1の端部の反対側にある前記熱電子エミッタの第2の端部まで延びる複数の三角形谷部と、
前記熱電子エミッタの前記第1の端部から前記熱電子エミッタの前記第2の端部まで延びる複数の隆起部であって、前記複数の隆起部のそれぞれが、前記複数の三角形谷部の2つの間にある、前記複数の隆起部と、
を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記非平滑内面の前記複数の構造物は、
前記熱電子エミッタの第1の端部から、前記第1の端部の反対側にある前記熱電子エミッタの第2の端部まで延びる複数の矩形谷部であって、前記複数の矩形谷部のそれぞれは、
第1の側面と、
前記第1の側面と平行な第2の側面と、
底面と、
を含む、前記複数の矩形谷部と、
前記熱電子エミッタの前記第1の端部から前記熱電子エミッタの前記第2の端部まで延びる複数の隆起部であって、複数の隆起部のそれぞれは、前記複数の矩形谷部の2つの間にある、前記複数の隆起部と、
を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記複数の矩形谷部のそれぞれの前記底面は、湾曲している、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記矩形谷部の各々の前記底面は平坦であり、
前記矩形谷部の各々の前記底面は、前記矩形谷部のそれぞれの前記第1及び第2の側面に直交する、請求項4に記載のシステム。
【請求項7】
前記熱電子エミッタは、タングステン、トリエーテッドタングステン、六ホウ化ランタン、酸化バリウム、及び六ホウ化セリウムからなる群から選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
カソードチューブを備えるカソードと、
前記カソードチューブ内に少なくとも部分的に設置された熱電子エミッタと、
前記カソードチューブを少なくとも部分的に取り囲み、前記熱電子エミッタを加熱するように構成された加熱器と、
を備えるシステムであって、
前記熱電子エミッタは、中空円筒の形状をなし、
前記中空円筒は、外面と内面とを備え、
前記内面は、前記内面の下方又は上方に延びる複数の構造物を備える、システム。
【請求項9】
前記内面の前記複数の構造物は、
前記熱電子エミッタの第1の端部から、前記第1の端部の反対側にある前記熱電子エミッタの第2の端部まで延びる複数の半円形谷部と、
前記熱電子エミッタの前記第1の端部から前記熱電子エミッタの前記第2の端部まで延びる複数の隆起部であって、前記複数の隆起部のそれぞれが、前記複数の半円形谷部の2つの間にある、前記複数の隆起部と、
を備える、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記内面の前記複数の構造物は、
前記熱電子エミッタの第1の端部から、前記第1の端部の反対側にある前記熱電子エミッタの第2の端部まで延びる複数の三角形谷部と、
前記熱電子エミッタの前記第1の端部から前記熱電子エミッタの前記第2の端部まで延びる複数の隆起部であって、前記複数の隆起部のそれぞれが、前記複数の三角形谷部の2つの間にある、前記複数の隆起部と、
を備える、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記内面の前記複数の構造物は、
前記熱電子エミッタの第1の端部から、前記第1の端部の反対側にある前記熱電子エミッタの第2の端部まで延びる複数の矩形谷部であって、前記複数の矩形谷部のそれぞれは、
第1の側面と、
前記第1の側面と平行な第2の側面と、
底面と、
を含む、前記複数の矩形谷部と、
前記熱電子エミッタの前記第1の端部から前記熱電子エミッタの前記第2の端部まで延びる複数の隆起部であって、複数の隆起部のそれぞれは、前記複数の矩形谷部の2つの間にある、前記複数の隆起部と、
を備える、請求項8に記載のシステム。
【請求項12】
前記複数の矩形谷部のそれぞれの前記底面は、湾曲している、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記矩形谷部の各々の前記底面は平坦であり、
前記矩形谷部の各々の前記底面は、前記矩形谷部のそれぞれの前記第1及び第2の側面に直交する、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記熱電子エミッタは、タングステン、トリエーテッドタングステン、六ホウ化ランタン、酸化バリウム、及び六ホウ化セリウムからなる群から選択される、請求項8に記載のシステム。
【請求項15】
中空円筒の形状の熱電子エミッタであって、
前記円筒の内面と、
前記
内面の反対側にある
前記円筒の外面と、
前記
中空円筒の前記内面
内の複数の構造物と、
を備え
、
複数の構造物は、
前記円筒の第1の端部から、前記第1の端部の反対側にある前記円筒の第2の端部まで延びる複数の楔部と、
前記円筒の前記第1の端部から前記円筒の第2の端部まで延びる中央部と、
を備え、
前記複数の楔部のそれぞれが、前記中央部に結合される、熱電子エミッタ。
【国際調査報告】