IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.の特許一覧

特表2022-537105メトホルミンHCl、ビタミンB12、及び少なくとも1つの流動性添加物を含む組成物
<>
  • 特表-メトホルミンHCl、ビタミンB12、及び少なくとも1つの流動性添加物を含む組成物 図1
  • 特表-メトホルミンHCl、ビタミンB12、及び少なくとも1つの流動性添加物を含む組成物 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-24
(54)【発明の名称】メトホルミンHCl、ビタミンB12、及び少なくとも1つの流動性添加物を含む組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/155 20060101AFI20220817BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20220817BHJP
   A61K 31/714 20060101ALI20220817BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20220817BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20220817BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20220817BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20220817BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20220817BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
A61K31/155
A61P3/10
A61K31/714
A61K47/04
A61K9/20
A61K9/48
A61K47/26
A61K47/36
A61K47/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021571572
(86)(22)【出願日】2020-06-17
(85)【翻訳文提出日】2022-01-31
(86)【国際出願番号】 EP2020066768
(87)【国際公開番号】W WO2020254409
(87)【国際公開日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】19180449.1
(32)【優先日】2019-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
【住所又は居所原語表記】Het Overloon 1, NL-6411 TE Heerlen,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】ケンツ, マーティン トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ミジック, ズドラブカ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC21
4C076DD25
4C076DD26
4C076DD43
4C076DD80
4C076EE30
4C076FF07
4C076FF68
4C076FF70
4C076GG04
4C086AA02
4C086DA39
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA06
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA52
4C086NA10
4C086NA20
4C086ZC35
4C206AA02
4C206HA31
4C206KA14
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA06
4C206MA55
4C206MA57
4C206MA72
4C206NA10
4C206NA20
4C206ZC35
(57)【要約】
本発明は、a)メトホルミンHCl、b)ビタミンB12、及びc)少なくとも1つの流動性添加物を含む組成物に関する。流動性添加物は、カルシウム塩を含む。好ましいカルシウム塩は、リン酸カルシウムである。組成物は、良好な流動性を有し、固形医薬投薬形態の製造のために使用することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)メトホルミンHCl
b)ビタミンB12の少なくとも1つの噴霧乾燥製剤、及び
c)少なくとも1つの流動性添加物
を含む組成物であって、
前記少なくとも1つの流動性添加物は、カルシウム塩を含む、組成物。
【請求項2】
前記流動性添加物は、粉末である及び前記粉末は、好ましくは、一次粒子の凝集体を含む、前記一次粒子は、カルシウム塩を含む又はそれからなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記流動性添加物の総重量に基づいて、10wt.%未満の前記流動性添加物は、40メッシュによって保持される及び30wt.%を超える前記流動性添加物は、100メッシュによって保持される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
メトホルミンHClと前記少なくとも1つの流動性添加物との間の重量比は、200:1~1:1である、より好ましくは100:1~1:1である、さらにより好ましくは50:1~1:1である、最も好ましくは30:1~1:1である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記カルシウム塩は、リン酸カルシウム又は炭酸カルシウムである及び前記カルシウム塩は、好ましくはリン酸カルシウムである、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記カルシウム塩は、無水リン酸カルシウム又は含水リン酸カルシウムである及び前記カルシウム塩は、好ましくは無水リン酸カルシウムである及び前記無水リン酸カルシウムは、好ましくは、無水リン酸一カルシウム(Ca(HPO)、無水リン酸二カルシウム(CaHPO)、又は無水リン酸三カルシウム(Ca(PO)である及び前記カルシウム塩は、最も好ましくは、無水リン酸二カルシウム(CaHPO)である、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
ビタミンB12の前記噴霧乾燥製剤は、ビタミンB12及び少なくとも1つの補助化合物を含む水溶液の噴霧乾燥によって得られる並びに
前記少なくとも1つの補助化合物は、好ましくは、クエン酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸、マルトデキストリン、クエン酸、及び食用加工デンプンからなる群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物は、混合物である及び前記混合物は、好ましくは、粉末性混合物である、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記混合物は、好ましくは30未満、より好ましくは28未満、最も好ましくは25未満のCarr指数を有する及び/又は
前記混合物は、15mmの内径を有するオリフィスを有する漏斗を通る前記混合物の流量を測定する場合、好ましくは少なくとも250g/分、より好ましくは少なくとも500g/分、最も好ましくは少なくとも1000g/分の流量を有する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物を含む固形医薬投薬形態。
【請求項11】
前記固形医薬投薬形態は、経口固形医薬投薬形態である並びに
前記経口固形医薬投薬形態は、好ましくは、錠剤又はカプセルである及び前記錠剤は、好ましくは、圧縮錠剤である、請求項1~10のいずれか一項に記載の固形医薬投薬形態。
【請求項12】
メトホルミンHCl及びビタミンB12の固定用量の組み合わせを製造するための方法であって、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物が、ガイド手段を流下するようにさせるステップを含む、方法。
【請求項13】
請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物は、チューブ、ホース、導管、流路、又は溝を流下する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
メトホルミンHCl及びビタミンB12を含む組成物の流動性を増加させるための一次粒子の凝集体の使用であって、前記一次粒子は、カルシウム塩を含む又はそれからなる、使用。
【請求項15】
前記凝集体の総重量に基づいて、10wt.%未満の、好ましくは6wt.%未満の前記凝集体は、325メッシュを通過する及び/又は凝集体の総重量に基づいて、30wt.%未満の、好ましくは26wt.%未満の前記凝集体は、200メッシュを通過する及び/又は前記凝集体の総重量に基づいて、30wt.%を超える、好ましくは35wt.%を超える前記凝集体は、100メッシュによって保持される及び/又は前記凝集体の総重量に基づいて、10wt.%未満の、好ましくは5wt.%未満の前記凝集体は、40メッシュによって保持される、請求項14に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、メトホルミンHClを含む固形経口投薬形態の製造に関する。
【0002】
[背景技術]
メトホルミンHClは、既知の医薬品有効成分(API)である。メトホルミンHClを含む固形投薬形態は、市販されている。
【0003】
メトホルミンHClは、流動性が非常に乏しい粉末である。
【0004】
医薬投薬形態を製造する場合、流動性は重要である。粉末の流動性が乏しいと、低品質の製品、生産率の低下、バッチの不合格、及び場合によっては、製品の回収につながる。粉末の流動性は、(i)造粒によって又は(ii)流動性添加物を追加することによって改善することができる。国際公開第2016/096997号パンフレットは、医薬品送達系の流動性を改善するための、表面で反応する炭酸カルシウムの使用を開示する。欧州特許出願公開第2938362A1号明細書は、メトホルミンの錠剤組成物を産生するための乾燥造粒プロセス及びその組成物を開示する。
【0005】
メトホルミン治療の間、患者のビタミンB12血清レベルを維持することは、重要である。
【0006】
中国特許出願公開第101716182A号明細書は、メトホルミン塩酸塩及びビタミンB12を含有する医薬の組み合わせを開示する。中国特許出願公開第101716182A号明細書の好ましい実施形態において、メトホルミン塩酸塩及びビタミンB12は、キットとして包装される別々に形成される製剤である。しかしながら、医薬品のキットは、多くの欠点を有する:患者の服薬遵守が、不良である、追加のスペース及びスタッフが、キットの梱包に必要とされる、並びに使用期限の監視が、より複雑になる。加えて、キットは、追加の管理費用及び梱包費用などのように、費用を上げる引き金となる。これらの欠点は、キットの代わりに固定用量組み合わせ(FDC)を提供することによって克服することができる。固定用量組み合わせ(FDC)は、錠剤、カプセル、又は粉末であってもよい。選ばれた形態にかかわらず、流動性の粉末は、必要とされる。前記流動性の粉末は、次いで、圧縮されて錠剤にされてもよい、空のカプセル剤皮の中に充填されてもよい、又は包若しくはスティックパックの中に充填されてもよい。
【0007】
メトホルミンHCl及びビタミンB12の両方を含む固形医薬組成物の必要性がある。固定用量組み合わせ(FDC)を製造するのに適したものとなるように、配合物は、流動性でなければならず、メトホルミンHCl及びビタミンB12の含量均一性が高くなければならない。組成物は、保存に安定していなければならず、好ましくは直接圧縮できる(DC)。組成物中に含有される賦形剤は、US Food&Drug Administration(FDA)などの主な保健当局により許容されなければならない。
【0008】
[発明の概要]
本発明の根底にある問題は、
a)メトホルミンHCl
b)ビタミンB12、及び
c)少なくとも1つの流動性添加物
を含む組成物によって解決され、
前記少なくとも1つの流動性添加物は、少なくとも1つのカルシウム塩を含む又はそれからなる。
【0009】
本発明の流動性添加物は、粒子から本質的になる粉末である。前記粒子は、好ましくは、比較的大きい。特に良好な流動性は、流動性添加物の総重量に基づいて、10wt.%未満の、組成物の流動性添加物が、40メッシュによって保持され、30wt.%を超える、組成物の流動性添加物が、100メッシュによって保持される場合に、達成される。好ましい実施形態において、本発明の流動性添加物は、一次粒子の凝集体を含む又はそれからなる。従って、本発明はまた、メトホルミンHCl及びビタミンB12を含む組成物の流動性を増加させるための一次粒子の凝集体の使用にも関し、前記凝集体は、少なくとも1つのカルシウム塩を含む又はそれからなる。
【0010】
選ばれたカルシウム塩が本発明の組成物の流動性を維持する又は増加させる限り、任意の種類のカルシウム塩を使用することができる。本発明の好ましいカルシウム塩は、無水リン酸二カルシウム(CaHPO)である。
【0011】
本発明の組成物が、比較的多量の流動性添加物を含む場合、特に高い流動性が達成される。本発明の好ましい実施形態において、メトホルミンHClと少なくとも1つの流動性添加物との間の重量比は、200:1~1:1、より好ましくは100:1~1:1、さらにより好ましくは50:1~1:1、最も好ましくは10:1~1:1である。
【0012】
本発明の組成物は、好ましくは、ビタミンB12の噴霧乾燥製剤を含む。本発明の組成物が、ビタミンB12の噴霧乾燥製剤を含む場合(ビタミンB12結晶の代わりに)、得られた固定用量の組み合わせにおけるビタミンB12の含量均一性は、特に良好である。加えて、得られた固定用量の組み合わせの保存安定性は、良好である又は非常に良好である。
【0013】
本発明はまた、メトホルミンHCl及びビタミンB12の固定用量の組み合わせを製造するための方法であって、本明細書において記載される組成物を、容器(例えば包若しくはカプセル剤皮)の中に又はダイの中に(例えば錠剤成形機のダイの中に)充填するステップを含む方法にも関する。本発明の方法の好ましい実施形態において、本明細書において記載される組成物は、ガイド手段を流下して、容器の中に又はダイの中に入る。
【0014】
本発明の固定用量の組み合わせは、錠剤、カプセル、包、又はスティックパックなどの固形経口投薬形態である。本発明の固形経口投薬形態により治療されている患者は、健康なビタミンB12血清レベルを維持する又は取り戻す。従って、本発明はまた、メトホルミンによって誘発されるビタミンB12欠乏の治療又は予防において使用するための本明細書において記載される固形経口投薬形態にも関する。
【0015】
キットと比較すると、本発明の固定用量の組み合わせは、患者の服薬遵守を改善した。従って、本発明はまた、患者の服薬遵守を増加させるための方法であって、本明細書において記載される固形経口投薬形態は、メトホルミン及びビタミンB12の補充を必要とする患者に投与される、方法にも関する。
【0016】
[発明を実施するための形態]
本発明は、(a)メトホルミンHCl、(a)ビタミンB12、及び(b)少なくとも1つの流動性添加物を含む組成物に関する。本発明の組成物は、好ましくは、噴霧乾燥製剤ビタミンB12を含む。ビタミンB12は、好ましくは、シアノコバラミンである。本発明に関して、ビタミンB12は、医薬品有効成分であるとみなされる。
【0017】
[定義]
略語「wt.%」は、重量%を意味する。
【0018】
用語「含む(comprising)」は、オープンターム(open term)である。そのため、本明細書において記載される組成物は、1つを超える種類の流動性添加物を含んでいてもよい。同様に、本明細書において記載される組成物は、1つを超える種類の噴霧乾燥ビタミンB12製剤を含んでいてもよい。しかしながら、好ましくは、本明細書において記載される組成物は、1つの種類の噴霧乾燥ビタミンB12製剤のみを含む。典型的に、本発明の組成物は、いくつかの薬学的に許容される賦形剤を含み、薬学的に許容される賦形剤の1つは、流動性添加物である。従って、本発明の例証となる実施形態は、
a)メトホルミンHCl
b)ビタミンB12の1つの噴霧乾燥製剤、
c)1つの流動性添加物、及び
d)少なくとも1つのさらなる薬学的に許容される賦形剤
を含む組成物であって、
前記少なくとも1つの流動性添加物は、少なくとも1つのカルシウム塩を含む又はそれからなる、組成物に関する。
【0019】
本発明の固形医薬投薬形態は、本明細書において記載される組成物を含む。本発明に関して、用語「固形医薬投薬形態」は、錠剤、カプセル、及び粉末などの投薬形態を指す。粉末(経口液用の粉末など)は、典型的に、包又はスティックパック中に包装される。その代わりに、粉末は、ツーピースのカプセル(例えばゼラチンカプセルサイズ0、00、又は000)の中に充填されてもよい。本発明の好ましい実施形態において、用語「固形医薬投薬形態」は、錠剤、カプセル、及び粉末からなる群から選択される固形経口医薬投薬形態を指す。本発明のさらに好ましい実施形態において、用語「固形医薬投薬形態」は、圧縮錠剤を指す。
【0020】
本発明の固形医薬投薬形態は、好ましくは、結晶セルロース(MCC)を含む。MCCは、セルロースの酸加水分解によって調製される、よく知られている賦形剤である。工業規模では、MCCは、希釈した鉱酸を使用する木及び/又は綿のセルロースの加水分解によって得られる。処理されたパルプは、次いで、すすがれ、粉砕などの追加の行程段階あり又はなしで、噴霧乾燥させる。数多くのタイプの結晶セルロース(MCC)が、市場で入手可能である。本発明に関して、用語「結晶セルロース」は、T.Vehovec et al.:“Influence of different types of commercially available microcrystalline cellulose on degradation of perindopril erbumine and enalapril maleate in binary mixtures”Acta Pharm.62(2012),page 518の表1に掲載される賦形剤などの部分的に脱重合されたセルロースからなる、任意のタイプの結晶セルロースを含む。PROSOLV(登録商標) SMCCなどのケイ化結晶セルロースもまた、含まれる。本発明に関して、用語「ケイ化結晶セルロース」は、結晶セルロース(MCC)及びコロイド状二酸化ケイ素(CSD)などの二酸化ケイ素を含む賦形剤を指す。
【0021】
ビタミンB12は、よく知られている水溶性ビタミンである。本発明に関して、用語「ビタミンB12」は、ビタミンB12の任意のビタマーを指し、ビタミンB12誘導体及び/又はビタミンB12の代謝産物を含む。しかしながら、好ましくは、用語「ビタミンB12」は、シアノコバラミンを指す。シアノコバラミンは、適した微生物を使用して発酵によって産生されてもよい。
【0022】
「結晶ビタミンB12」は、結晶の総重量に基づいて、少なくとも98重量%のビタミンB12を含む。好ましくは、本発明の組成物は、いかなる結晶ビタミンB12も含まない。
【0023】
本発明の組成物は、好ましくは、ビタミンB12の少なくとも1つの噴霧乾燥製剤を含む。「ビタミンB12の噴霧乾燥製剤」という語句は、ビタミンB12及び少なくとも1つの賦形剤を含む水溶液を噴霧乾燥させることによって得られる粉末を指し、前記少なくとも1つの賦形剤は、好ましくは、クエン酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸、マルトデキストリン、クエン酸、及び食用加工デンプン(modified food starch)からなる群から選択される。本発明の好ましい実施形態において、「ビタミンB12の噴霧乾燥製剤」という語句は、シアノコバラミン及び少なくとも1つの賦形剤を含む水溶液を噴霧乾燥させることによって得られる粉末を指し、前記少なくとも1つの賦形剤は、好ましくは、クエン酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸、マルトデキストリン、及び食用加工デンプンからなる群から選択される。
【0024】
ビタミンB12結晶は、結晶の総重量に基づいて、少なくとも98重量%のビタミンB12含有量を有する。少なくとも1つの賦形剤の存在のために、ビタミンB12の噴霧乾燥製剤は、噴霧乾燥製剤の総重量に基づいて、90重量%未満のビタミンB12を含む。ビタミンB12の噴霧乾燥製剤中のビタミンB12の厳密な濃度は、噴霧乾燥製剤中の賦形剤の量による。好ましくは、本発明のビタミンB12の噴霧乾燥製剤は、噴霧乾燥製剤の総重量に基づいて、1重量%以下のビタミンB12を含む。当業者は、ビタミンB12がないビタミンB12の噴霧乾燥製剤が除外されることを理解する。さらに、好ましくは、本発明のビタミンB12の噴霧乾燥製剤は、粉末の総重量に基づいて、1重量%以下のシアノコバラミンを含む水溶性の又は水分散性の粉末である。当業者は、ビタミンB12がない粉末が除外されることを理解する。本発明の最も好ましい実施形態において、「ビタミンB12の噴霧乾燥製剤」という語句は、シアノコバラミン及び少なくとも1つの賦形剤を含む水溶液を噴霧乾燥させることによって得られる粉末を指し、前記賦形剤は、好ましくは、クエン酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸、マルトデキストリン、及び食用加工デンプンからなる群から選択される並びに前記粉末は、粉末の総重量に基づいて、1重量%以下のシアノコバラミンを含む。前と同じように、当業者は、ビタミンB12がない粉末が除外されることを理解する。
【0025】
本発明に関して、用語「メトホルミン」は、メトホルミン又はその薬学的に許容される塩を指す。メトホルミンのおそらく最も知られている薬学的に許容される塩は、メトホルミンHClである。そのため、本発明の最も好ましい実施形態において、用語「メトホルミン」は、メトホルミンHClを指す。
【0026】
メトホルミンHClは、成形性及び流動性が乏しい。そのため、メトホルミンHClは、好ましくは、錠剤化の前に造粒される。そのような造粒プロセスの間に、メトホルミンは、圧縮するのが容易である、易流動性で、本質的に無塵の顆粒に変換される。本発明に関して、用語「粒状メトホルミン」は、本明細書において記載される組成物を含む顆粒を指す。従って、用語「粒状メトホルミン」は、メトホルミンHCl、ビタミンB12の少なくとも1つの噴霧乾燥製剤、少なくとも1つの流動性添加物、及び好ましくは少なくとも1つのさらなる薬学的に許容される賦形剤を含む顆粒を指す。典型的に、前記少なくとも1つのさらなる賦形剤は、バインダー及び/又は潤滑剤である。適したバインダーは、例えば、Arndt et al.,“Roll Compaction and Tableting of High Loaded Metformin Formulations Using Efficient Binders”,AAPS PharmSciTech,July 2018,Volume 19,Issue 5,pp2068-2076に掲載される。
【0027】
本発明に関して、用語「カルシウム塩」は、任意の薬学的に許容されるカルシウム塩を指す。従って、この用語は、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、及びクエン酸カルシウムを含む。炭酸カルシウムは、式CaCOを有する化学化合物である。用語「クエン酸カルシウム」は、クエン酸一カルシウム、クエン酸二カルシウム、及びクエン酸三カルシウムを含む。既知のクエン酸三カルシウムといった塩は、無水クエン酸カルシウム(すなわちCa(C)及び二クエン酸三カルシウム四水和物(すなわち[Ca(C(HO)]・2HO)を含む。用語「リン酸カルシウム」は、無水リン酸カルシウム及び含水リン酸カルシウムを含む。無水リン酸カルシウム、無水リン酸一カルシウム(Ca(HPO)、無水リン酸二カルシウム(CaHPO)、又は無水リン酸三カルシウム(Ca(PO)が知られている。本発明の最も好ましい実施形態において、カルシウム塩という用語は、無水リン酸二カルシウム(CaHPO)を指す。
【0028】
3つの主なタイプの流動助剤が、知られている:機械的流動助剤、含気性流動助剤、及び流動性添加物。本発明の「流動性添加物」は、流動性が乏しい製品と混合される場合に、流動性が乏しい製品の流動性を改善する固形組成物である。本発明に関して、流動性が乏しい製品は、メトホルミンHCl及びビタミンB12の噴霧乾燥製剤などのビタミンB12を含む混合物である。典型的に、本発明の流動性添加物は、粉末である。いかなる粉末も、粒子を含む又はそれからなる。本発明の好ましい実施形態において、流動性添加物は、二次粒子を含み又はそれからなり、各二次粒子は、一次粒子の凝集体である。
【0029】
「含量の均一性」は、組成物が、たくさんの非常に小さな部分に小分けされる場合であっても、組成物の各部分において、医薬品有効成分の(例えばビタミンB12の)均一な用量が、維持されることを確実にする。例として、例えばカプセル又は錠剤の品質を検査する時、含量の均一性を判定する。そのために、複数の、例えばカプセル又は錠剤を、無作為に選択し、各カプセル又は錠剤中の医薬品有効成分の個々の含量を定量するために、適した分析方法にかける。相対標準偏差(RSD)を、次いで、算出することができる。RSDが低いほど、含量の均一性は良好である。80%を超えるRSDは、明らかに許容されない。用語「ビタミンB12含量の均一性」は、複数の固形医薬投薬形態を無作為に選択し、各固形医薬投薬形態中のビタミンB12の個々の含量を定量するために、適した分析方法にかける場合に使用される。
【0030】
[本発明の組成物]
本発明の組成物は、好ましくは、メトホルミンHCl、ビタミンB12の少なくとも1つの噴霧乾燥製剤、及び少なくとも1つの流動性添加物を含む混合物である。流動性添加物は、好ましくは、少なくとも1つのカルシウム塩を含む又はそれからなる粉末である。
【0031】
粉末は、固形粒子を含む又はそれからなる。いくつかの市販されている粉末は、一次粒子の凝集体を含む。そのような凝集体は、二次粒子と称されてもよい。そのような粉末の例は、増量剤Di-Cafos(登録商標)(Budenheimで入手可能)である。Di-Cafos(登録商標)は、一次粒子の凝集体を含む粉末であり、前記一次粒子は、無水リン酸二カルシウム(CaHPO)又はリン酸二カルシウム二水和物(CaHPO・2HO)などの第二リン酸カルシウムを含む又はそれからなる。さらに知られている増量剤は、Tri-Cafos(登録商標)である。Tri-Cafos(登録商標)は、一次粒子の凝集体を含む粉末であり、前記一次粒子は、無水リン酸三カルシウム(Ca(PO)などの第三リン酸カルシウムを含む又はそれからなる。本発明によれば、第二リン酸カルシウム又は第三リン酸カルシウムを使用することができる。しかしながら、第二リン酸カルシウムが好ましく、無水リン酸二カルシウム(CaHPO)が、特に好ましい。
【0032】
従って、本発明の一実施形態は、
a)メトホルミンHCl
b)ビタミンB12の少なくとも1つの噴霧乾燥製剤、及び
c)少なくとも1つの流動性添加物
を含む組成物であって、
前記少なくとも1つの流動性添加物は、一次粒子の凝集体を含む粉末である及び前記一次粒子は、第二リン酸カルシウムを含む若しくはそれからなる及び前記第二リン酸カルシウムは、好ましくは、無水リン酸二カルシウム(CaHPO)である又は
前記少なくとも1つの流動性添加物は、一次粒子の凝集体を含む粉末である及び前記一次粒子は、第三リン酸カルシウムを含む若しくはそれからなる、組成物に関する。
【0033】
一実施形態において、本発明の組成物は、少なくとも1つの流動性添加物を含み、
・流動性添加物の総重量に基づいて、10wt.%未満の、好ましくは6wt.%未満の、組成物の流動性添加物は、325メッシュを通過する及び/又は
・流動性添加物の総重量に基づいて、30wt.%未満の、好ましくは26wt.%未満の、組成物の流動性添加物は、200メッシュを通過する及び/又は
・流動性添加物の総重量に基づいて、30wt.%を超える、好ましくは35wt.%を超える、組成物の流動性添加物は、100メッシュによって保持される及び/又は
・流動性添加物の総重量に基づいて、10wt.%未満の、好ましくは5wt.%未満の、組成物の流動性添加物は、40メッシュによって保持される。
【0034】
粒度変換表を、下記に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
従って、本発明の好ましい実施形態は、
a)メトホルミンHCl
b)ビタミンB12の少なくとも1つの噴霧乾燥製剤、及び
c)少なくとも1つの流動性添加物
を含む組成物であって、
前記少なくとも1つの流動性添加物は、一次粒子の凝集体を含む、前記一次粒子は、無水リン酸二カルシウム(CaHPO)を含む若しくはそれからなる並びに/又は
流動性添加物の総重量に基づいて、10wt.%未満の流動性添加物は、40メッシュによって保持される及び30wt.%を超える流動性添加物は、100メッシュによって保持される、組成物に関する。
【0037】
ほとんどの場合、流動性添加物は、比較的低濃度で機能性を付与する。流動性添加物が多いほど、流動特性が良好であると多くの人が考えるが、当業者は、こういった考えが、ほとんどの場合、間違っていることを知っている(“Powder Handling:Make the Most of Flow Additives”by:Armstrong,B.;Clayton,J.Chemical Processing,2014,77(4))。この一般的な認識にもかかわらず、本発明の組成物は、好ましくは、比較的多量の流動性添加物を含む。好ましくは、メトホルミンHClと少なくとも1つの流動性添加物との間の重量比は、200:1~1:1である、より好ましくは100:1~1:1である、さらにより好ましくは50:1~1:1である、最も好ましくは30:1~1:1である。従って、本発明の好ましい実施形態は、
a)メトホルミンHCl
b)ビタミンB12の少なくとも1つの噴霧乾燥製剤、及び
c)少なくとも1つの流動性添加物
を含む組成物であって、
前記少なくとも1つの流動性添加物は、一次粒子の凝集体を含む、前記一次粒子は、無水リン酸二カルシウム(CaHPO)を含む又はそれからなる及び
メトホルミンHClと少なくとも1つの流動性添加物との間の重量比は、200:1~1:1である、より好ましくは100:1~1:1である、さらにより好ましくは50:1~1:1である、最も好ましくは30:1~1:1である、組成物に関する。
【0038】
組成物の各部分におけるビタミンB12含量の均一性を確実にすることは、極めて難しい。市販されているビタミンB12結晶を使用する場合、ビタミンB12含量の均一性は、多くの場合、非常に乏しい。いくつかの試験において、90%を超える相対標準偏差(RSD)値が、測定された。
【0039】
ビタミンB12含量の均一性は、市販されているビタミンB12結晶を使用する代わりに、ビタミンB12の噴霧乾燥製剤を使用する場合、大いに改善することができる。噴霧乾燥製剤中のビタミンB12の濃度が低いほど、ビタミンB12含量の均一性は高くなる。ビタミンB12の噴霧乾燥製剤の総重量に基づいて、1重量%のシアノコバラミンを含有するビタミンB12の噴霧乾燥製剤を使用する場合、4%未満の相対標準偏差(RSD)を達成することができる。同じプロセスにおいて、使用する場合、ビタミンB12の噴霧乾燥製剤の総重量に基づいて、0.1重量%のシアノコバラミンしか含有しない、より薄い、ビタミンB12の噴霧乾燥製剤は、RSDを、2%までさらに下げることができる。ビタミンB12の適した噴霧乾燥製剤は、DSM(登録商標)Nutritional Products(スイス(Switzerland))から、「ビタミンB12 1%SD」又は「ビタミンB12 0.1%WS」として市販されている。「ビタミンB12 1%SD」は、それぞれの製品の総重量に基づいて、1重量%のシアノコバラミンを含むのに対して、「ビタミンB12 0.1%WS」は、それぞれの製品の総重量に基づいて、0.1重量%のシアノコバラミンを含む。本発明によれば、「ビタミンB12 0.1%WS」は、ビタミンB12の好ましい噴霧乾燥製剤である。
【0040】
従って、本発明の好ましい実施形態は、
a)メトホルミンHCl
b)ビタミンB12の少なくとも1つの噴霧乾燥製剤、及び
c)少なくとも1つの流動性添加物
を含む組成物であって、
前記少なくとも1つの流動性添加物は、一次粒子の凝集体を含む、前記一次粒子は、無水リン酸二カルシウム(CaHPO)を含む又はそれからなる及び
メトホルミンHClと少なくとも1つの流動性添加物との間の重量比は、200:1~1:1である、より好ましくは100:1~1:1である、さらにより好ましくは50:1~1:1である、最も好ましくは30:1~1:1である及び
ビタミンB12の前記噴霧乾燥製剤は、ビタミンB12の噴霧乾燥製剤の総重量に基づいて、好ましくは0.01~1重量%、より好ましくは0.05~0.5重量%、最も好ましくは0.1重量%のシアノコバラミンを含む、組成物に関する。
【0041】
当業者は、ビタミンB12のそのような噴霧乾燥製剤を製造する方法について知っている。一実施形態において、ビタミンB12の本明細書において記載される噴霧乾燥製剤は、米国特許第5,397,576号明細書の実施例1において開示されるように、産生される。
【0042】
従って、本発明の好ましい実施形態は、
a)メトホルミンHCl
b)ビタミンB12の少なくとも1つの噴霧乾燥製剤、及び
c)少なくとも1つの流動性添加物
を含む組成物であって、
前記少なくとも1つの流動性添加物は、一次粒子の凝集体を含む、前記一次粒子は、無水リン酸二カルシウム(CaHPO)を含む若しくはそれからなる並びに
メトホルミンHClと少なくとも1つの流動性添加物との間の重量比は、200:1~1:1である、より好ましくは100:1~1:1である、さらにより好ましくは50:1~1:1である、最も好ましくは30:1~1:1である並びに
ビタミンB12の前記噴霧乾燥製剤は、ビタミンB12の噴霧乾燥製剤の総重量に基づいて、好ましくは0.01~1重量%、より好ましくは0.05~0.5重量%、最も好ましくは0.1重量%のシアノコバラミンを含む並びに/又は
ビタミンB12の噴霧乾燥製剤は、ビタミンB12及び少なくとも1つの補助化合物を含む水溶液の噴霧乾燥によって得られる並びに前記少なくとも1つの補助化合物は、好ましくは、クエン酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸、マルトデキストリン、クエン酸、及び食用加工デンプンからなる群から選択される、組成物に関する。
【0043】
本発明の組成物は、好ましくは混合物、より好ましくは粉末性(powderous)混合物である。それは、良好な流動性を有する。本明細書において記載される組成物は、15mmの内径を有するオリフィスを有する漏斗を通る組成物の流量を測定する場合、好ましくは少なくとも250g/分、より好ましくは少なくとも500g/分、最も好ましくは少なくとも1000g/分の流量を有する。
【0044】
Carr指数は、粉末の流動性の指標として使用される。本発明に関して、用語「Carrの指数」、「Carr指数」、及び「圧縮度」は、同じことを意味する。圧縮度(従って、さらにCarr指数)は、以下の通りに算出される:
圧縮度=100×[(ρtapped-ρbulk)/ρtapped
式中、
ρtappedは、粉末のタップ密度である。
ρtappedは、粉末の疎充てん時のかさ密度である。
【0045】
好ましくは、本明細書において記載される組成物は、好ましくは30未満、より好ましくは28未満、最も好ましくは25未満のCarr指数を有する。従って、本発明の最も好ましい実施形態は、
a)メトホルミンHCl
b)ビタミンB12の少なくとも1つの噴霧乾燥製剤、及び
c)少なくとも1つの流動性添加物
を含む組成物であって、
前記少なくとも1つの流動性添加物は、一次粒子の凝集体を含む、前記一次粒子は、無水リン酸二カルシウム(CaHPO)を含む若しくはそれからなる及び
メトホルミンHClと少なくとも1つの流動性添加物との間の重量比は、200:1~1:1である、より好ましくは100:1~1:1である、さらにより好ましくは50:1~1:1である、最も好ましくは30:1~1:1である及び
ビタミンB12の前記噴霧乾燥製剤は、ビタミンB12の噴霧乾燥製剤の総重量に基づいて、0.1重量%のシアノコバラミンを含む及び
組成物は、好ましくは30未満、より好ましくは28未満、最も好ましくは25未満のCarr指数を有する混合物である及び/又は
組成物は、15mmの内径を有するオリフィスを有する漏斗を通る組成物の(すなわち混合物の)流量を測定する場合、好ましくは少なくとも250g/分、より好ましくは少なくとも500g/分、最も好ましくは少なくとも1000g/分の流量を有する混合物である、組成物に関する。
【0046】
固形医薬投薬形態
好ましくは、本発明の組成物は、固形医薬投薬形態を製造するために使用される。従って、製造された固形医薬投薬形態は、本発明の組成物を含む。好ましくは、固形医薬投薬形態は、錠剤、カプセル、又は包中の若しくはスティックパック中の粉末である。
【0047】
本発明の固形医薬投薬形態は、好ましくは1μg~10μgのシアノコバラミン、より好ましくは1μg~6μgのシアノコバラミン、最も好ましくは1μg~4μgのシアノコバラミンを含む。固形医薬投薬形態が錠剤である場合、本発明の錠剤は、好ましくは錠剤あたり1μg~10μgのシアノコバラミン、より好ましくは錠剤あたり1μg~6μgのシアノコバラミン、最も好ましくは錠剤あたり1μg~4μgのシアノコバラミンを含む。安全性に関しては、証拠が十分である場合、許容上限摂取量(ULとして知られる)が、ビタミン及びミネラルについて設定されている。ビタミンB12の場合、高用量による副作用についてのヒトのデータがないので、ULはない。
【0048】
本発明の固形医薬投薬形態は、好ましくは、少なくとも1つのさらなる薬学的に許容される賦形剤を含む。典型的に、本発明の固形医薬投薬形態は、5g未満、好ましくは4g未満、より好ましくは3g未満、最も好ましくは2g未満の質量を有する。
【0049】
本発明の好ましい実施形態において、固形医薬投薬形態は、ビタミンB12及び1000mgのメトホルミンHCl、500mgのメトホルミンHCl、又は850mgのメトホルミンHClを含み、ビタミンB12とメトホルミンHClとの間の重量比は、1:10.000.000~1:1.000、好ましくは1:5.000.000~1:2.000、最も好ましくは1:1.000.000~1:4.000である。本発明のさらに好ましい実施形態において、固形医薬投薬形態は、1000mgのメトホルミンHCl又は500mgのメトホルミンHCl及び1μg~10μgのシアノコバラミンを含む錠剤又はカプセルである。最も好ましい実施形態において、固形医薬投薬形態は、1000mgのメトホルミンHCl及び1μg~4μgのシアノコバラミンを含む錠剤である。典型的に、これらの錠剤は、2000mgのメトホルミンHClの1日量に達するように、1日に2錠、与えられる。
【0050】
従って、本発明の好ましい実施形態は、
a)メトホルミンHCl
b)ビタミンB12の少なくとも1つの噴霧乾燥製剤、及び
c)少なくとも1つの流動性添加物
を含む固形医薬投薬形態であって、
前記少なくとも1つの流動性添加物は、カルシウム塩を含む並びに
前記ビタミンB12は、シアノコバラミンである及びシアノコバラミンとメトホルミンHClとの間の重量比は、1:10.000.000~1:1.000、好ましくは1:5.000.000~1:2.000、最も好ましくは1:1.000.000~1:4.000である、固形医薬投薬形態に関する。
【0051】
本発明の好ましい実施形態において、固形医薬投薬形態は、錠剤である。錠剤を圧縮するために、増量剤が、必要とされ得る又は少なくとも推奨される。好ましい増量剤は、結晶セルロース及びケイ化結晶セルロースである。従って、本発明の好ましい実施形態は、
a)メトホルミンHCl
b)ビタミンB12の少なくとも1つの噴霧乾燥製剤、
c)少なくとも1つの流動性添加物、及び
d)少なくとも1つの増量剤
を含む錠剤であって、
前記流動性添加物は、粉末である及び前記粉末は、好ましくは、一次粒子の凝集体を含む、前記一次粒子は、カルシウム塩を含む若しくはそれからなる並びに/又は
前記少なくとも1つの増量剤は、好ましくは、結晶セルロース若しくはケイ化結晶セルロースである、錠剤に関する。
【0052】
メトホルミンを含む混合物が、圧縮して錠剤にする前に造粒される場合、錠剤の圧縮は、より簡単になる。造粒のために、バインダーが、使用される。そのため、本発明はまた、
a)粒状メトホルミンHCl
b)ビタミンB12の少なくとも1つの噴霧乾燥製剤、及び
c)少なくとも1つの流動性添加物
を含む組成物であって、
前記少なくとも1つの流動性添加物は、カルシウム塩を含む並びに
前記ビタミンB12は、シアノコバラミンである及びシアノコバラミンとメトホルミンHClとの間の重量比は、1:10.000.000~1:1.000、好ましくは1:5.000.000~1:2.000、最も好ましくは1:1.000.000~1:4.000である並びに/又は
メトホルミンHClと少なくとも1つの流動性添加物との間の重量比は、200:1~1:1である、より好ましくは100:1~1:1である、さらにより好ましくは50:1~1:1である、最も好ましくは30:1~1:1である、組成物にも関する。
【0053】
本発明の固形医薬投薬形態を製造するための方法
本発明の固形医薬投薬形態は、2つの薬学的に活性な成分:メトホルミンHCl及びビタミンB12を含む。従って、本発明の固形医薬投薬形態は、メトホルミンHCl及びビタミンB12の固定用量の組み合わせである。
【0054】
そのような固形医薬投薬形態を製造する場合、本明細書において記載される組成物は、カプセル剤皮の中に充填される又は包の中に充填される又は圧縮して錠剤にする。いずれにせよ、製造プロセスの間、本明細書において記載される組成物は、ガイド手段を流下し、容器の中に入る。前記容器は、包、空の、まだ密封していないスティックパック、又は丸剤メーカーの構成要素(例えばダイ)であってもよい。それによって、チューブ、ホース、導管、流路、又は溝などの任意の適したガイド手段が、使用されてもよい。
【0055】
従って、本発明はまた、メトホルミンHCl及びビタミンB12の固定用量の組み合わせを製造するための方法であって、本明細書において記載される組成物が、ガイド手段を流下するようにさせるステップを含み、
前記ガイド手段は、好ましくは、チューブ、ホース、導管、流路、若しくは溝である及び/又は
本明細書において記載される組成物は、好ましくは、流下して、容器の中に入り、前記容器は、好ましくは、開いている包、開いているスティックパック、若しくは丸剤メーカーの構成要素である、方法にも関する。
【0056】
医学的使用及び治療の方法
本発明はまた、医薬として使用するための、本明細書において記載される固形医薬投薬形態にも関する。本明細書において記載される固形医薬投薬形態は、メトホルミンを含む。従って、本発明の一実施形態は、メトホルミンを必要とする患者の治療において使用するための固形医薬投薬形態であって、前記固形医薬投薬形態は、
a)メトホルミンHCl
b)ビタミンB12の少なくとも1つの噴霧乾燥製剤、及び
c)少なくとも1つの流動性添加物
を含み、
前記少なくとも1つの流動性添加物は、少なくとも1つのカルシウム塩を含む又はそれからなる、固形医薬投薬形態に関する。
【0057】
糖尿病に罹患している患者は、メトホルミンを必要としてもよい。そのため、本発明はまた、糖尿病の治療において使用するための本明細書において記載される固形医薬投薬形態にも関する。従って、本発明の一実施形態は、糖尿病の治療において使用するための固形医薬投薬形態であって、前記固形医薬投薬形態は、
a)メトホルミンHCl
b)ビタミンB12の少なくとも1つの噴霧乾燥製剤、及び
c)少なくとも1つの流動性添加物
を含み、
前記少なくとも1つの流動性添加物は、少なくとも1つのカルシウム塩を含む又はそれからなる、固形医薬投薬形態に関する。
【0058】
流動性添加物としてのカルシウム塩の使用
最後に、本発明は、メトホルミンHCl及びビタミンB12を含む組成物の流動性を増加させるための一次粒子の凝集体の使用であって、前記一次粒子は、カルシウム塩を含む又はそれからなる、使用に関する。好ましい実施形態において、本発明は、メトホルミンHCl及びビタミンB12を含む組成物の流動性を増加させるための一次粒子の凝集体の使用であって、前記一次粒子は、無水リン酸二カルシウム(CaHPO)を含む若しくはそれからなる並びに/又は流動性添加物の総重量に基づいて、10wt.%未満の凝集体は、40メッシュによって保持される及び30wt.%を超える凝集体は、100メッシュによって保持される、使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1図1は、実施例1及び2において測定される流量を示す図である。x軸に、それぞれのオリフィスの内径を、mmで示す。y軸に、それぞれの流量を、g/分で示す。 予想される通り、オリフィスの内径が大きいほど、流量は大きくなる。これは、流量>0g/分を有するすべてのテストした組成物に当てはまる。 オリフィスのある特定のサイズについて、CaCO3 95MDは、DiCafos A150よりも大きな流量(g/分)を有する。15mmの内径で、例えば、CaCO3 95MDの流量(2143g/分)は、DiCafos A150の流量(1636g/分)よりも大きい。しかしながら、それぞれのカルシウム塩のみに目を向ける代わりに、混合物に目を向けると、実態は逆である。これは、驚くべきことである。15mmの内径で、例えば、メトホルミンHCl、ビタミンB12の噴霧乾燥製剤、及びCaCO3 95MDを含む混合物の流量(163g/分)は、メトホルミンHCl、ビタミンB12の噴霧乾燥製剤、及びDiCafos A150を含む混合物の流量(909g/分)よりも小さい。15mm未満(すなわち10mm、9mm、7mm、及び5mm)の内径では、メトホルミンHCl、ビタミンB12の噴霧乾燥製剤、及びCaCO3 95MDを含む混合物の流量は、さらに0g/分であった(すなわち、混合物は全く流動しなかった)。 DiCafos A150は、一次粒子の比較的大きな凝集体を含む市販されている粉末である。
図2】イオン化カルシウムの様々な原料の影響についてテストするために、4つの類似の錠剤を、調製した。図2は、実施例3で調製した4つの錠剤の圧縮プロファイルを示す図である。
【0060】
[実施例]
[実施例1(プレテスト)]
実施例1において、いくつかのプレテストを行った。
【0061】
市販されているメトホルミンHClの流動性を、以下の通りに測定した:
粉末流動性は、Pharmatest PTG-S4自動粉末特性評価機(Pharma Test Apparatebau AG、Hainburg、ドイツ(Germany))で決定した。このシステムは、現行のEP<2.9.36/17>及びUSP<1174>薬局方並びに国際ISO4324規格に従って、顆粒及び粉末の流動挙動を測定する。
【0062】
質量流量(g/分)は、オリフィス流量計(flow through an orifice)による方法を介して決定した。流量は、特定の量の粉末(100g)が、様々な直径を有するオリフィスを流れるのに必要とされる時間として解釈される。易流動性の粉末は、直径5、7、9、10、及び15mmの全セットを流れることができるはずである。流量対オリフィス直径のプロットは、流動曲線と呼ばれる。3つの並行した測定を、流量を決定するために実行した。
【0063】
予想される通り、メトホルミンHCl自体の流量は、最も大きなオリフィス(すなわち内径=15mm)を使用した場合でさえ、非常に小さかった。
【0064】
次いで、(a)DiCafos A150(無水リン酸二カルシウム、Budenheimで入手可能)及び(b)CaCO3 95MD(炭酸カルシウム、Particle Dynamicsで入手可能)の流動性を、いくつかのサイズのオリフィスを使用して同様に測定した。
【0065】
オリフィスのサイズに関係なく、CaCO3 95MDは、DiCafos A150よりも大きな流量(g/分)を有した。
【0066】
これらの流動性テストの結果は、以下を示唆する:
1.固形経口投薬形態の製造のために、メトホルミンHClの流動性は、改善される必要がある。
2.DiCafos A150もCaCO3 95MDも、薬学的に許容される流動性添加物として使用することができる。
3.CaCO3 95MDは、DiCafos A150よりも良好な流動性添加物である。
【0067】
さらなるプレテストとして、Carr指数を測定した:
CaCO3 95MDのCarr指数(15.8)は、DiCafos A150のCarr指数(17.4)よりも低かった。だいたいの目安として、Carr指数が低いほど、流動性は良好である。そのため、Carr指数の測定により、CaCO3 95MDがDiCafos A150よりも良好な流動性添加物であることが期待されることが確認される。
【0068】
要約すると、実施例1は、CaCO3 95MDが、DiCafos A150より優れていることを示す。
【0069】
[実施例2(混合物の流動性)]
メトホルミンHCl、ビタミンB12の噴霧乾燥製剤、及び実施例1の2つの流動性添加物のうちの1つ(すなわちDiCafos A150又はCaCO3 95MD)を含む2つの混合物を調製した。メトホルミンHClと流動性添加物との間の重量比は、いずれの場合もおよそ4:1とした。
【0070】
2つの混合物の流動性を、次いで、実施例1において記載されようにテストした。
【0071】
オリフィスのサイズに関係なく、流動性添加物としてDiCafos A150を含む混合物は、CaCO3 95MDを含む混合物よりも大きな流量を有した(図1を参照)。実施例1のプレテストが逆のことを示唆したので、これは非常に驚くべきことである。
【0072】
実施例2の測定の概要を、下記の表1に示す。
【0073】
【表2】
【0074】
実施例2は、実施例1の結果が間違っていることを示すものではない。しかしながら、実施例2は、メトホルミンHCl/ビタミンB12の配合物といった特別な場合において、DiCafos A150は、CaCO3 95MDよりも流動性を増加させることを示す。これは、驚くべきことである。
【0075】
DiCafos A150は、一次粒子の凝集体を含む粉末である。
【0076】
[実施例3]
4つの類似の錠剤混合物を、調製し、それぞれ、粒状メトホルミンDC 92.6%、ビタミンB12の噴霧乾燥製剤(DSM(登録商標)Nutritional Productsで入手可能)、Aerosil 200、潤滑剤としてのステアリン酸マグネシウム、バインダーとしてのProsolv(登録商標)SMCC90(JRS Pharmaで入手可能な)、及び流動性添加物としてのカルシウム塩を含んだ。それによって、4つの異なる種類のカルシウム塩についてテストした:炭酸カルシウム(95MD Particle Dynamicsで入手可能)、無水リン酸二カルシウム(DiCafos A150、無水、Budenheimで入手可能)、二クエン酸三カルシウム四水和物(Merckで入手可能)、及び無水クエン酸カルシウム(Gadotで入手可能)。
【0077】
錠剤を圧縮するために、シングルパンチプレス(Korsch XP-1、Korschで入手可能、ベルリン(Berlin))を使用した。
【0078】
4つの錠剤混合物はすべて、どのカルシウム塩を使用したかに関係なく、うまく圧縮して錠剤にすることができた。各錠剤は、同量のメトホルミン、ビタミンB12(噴霧乾燥製剤)、Ca2+(100mg/錠剤)、Aerosil 200、及び潤滑剤を含んだ。得られた錠剤のそれぞれが1500mgの質量を有するように、錠剤あたりのバインダー(Prosolv(登録商標)SMCC90)の量を、次いで選んだ。
【0079】
錠剤の硬度を、次いで、Kramer UTS4 1装置を使用して測定した。得られた圧縮プロファイル(Fpress対Fcrush)を、図2に示す。Fcrushは、錠剤を軸方向に破壊するのに必要とされる力である。Fpressは、錠剤化の間に、上部のパンチによって生じる力である。
【0080】
[実施例4]
医学的指標に応じて、メトホルミンの徐放性(XR)投薬形態又は速放性(IR)投薬形態が、処方される。市販されている速放性製剤の例は、Glucophage(登録商標)IRである。
【0081】
速放性を達成するために、錠剤の崩壊時間は、適度に短くなければならない。
【0082】
実施例4において、メトホルミンHCl、ビタミンB12の噴霧乾燥製剤、及びカルシウム塩を含む4つの錠剤の物理的特徴を、測定した。
【0083】
結果を、下記の表2に示す。
【0084】
【表3】
【0085】
錠剤の硬度は、Kramer UTS4 1試験機(Kraemer Elektronik GmbH、Darmstadt、ドイツ)で、USP<1217>及びEP<2.9.8.>において記載されるように測定した。発明者らは、錠剤を軸方向に破壊するために必要とされる力を測定した。10回の測定の平均値を示す。
【0086】
錠剤の崩壊は、37℃の900 mL脱塩水中で、DISI-1崩壊試験機(Charles Ischi PG Pharma Prueftechnik、Zuchwill、スイス)を使用することによって、USP<701,2040>に従って特性評価した。6つの並行した測定を、実行した。崩壊時間の上限は、コーティングしていない錠剤について30分間である(USP<2040>)。
【0087】
錠剤の硬度に密接に関係する破砕性は、機械的摩耗の間の重量損失の程度を指す。最初の錠剤重量の1%以下の最大の損失は、許容されるものとみなされる(USP1216>、EP<2.9.7.>)。発明者らは、10個の錠剤について、4分間、25rpmの回転速度で、AE-1 Friabilator(Charles Ischi AG Pharma Prueftechnik、Zuchwill、スイス)においてテストした。錠剤の重量損失を記録した。
【0088】
実施例4は、炭酸カルシウムの代わりに、無水リン酸二カルシウムを使用した場合に、崩壊時間が短くなることを示す。6分間の崩壊時間は許容されるが、必要に応じて、崩壊剤を追加することによって短縮することができる。
【0089】
[実施例5]
実施例5において、3つの異なる種類の錠剤を調製した。各錠剤は、549.9mgのリン酸カルシウム(無水、Emcompress(登録商標)で入手可能)及び0.0078mgのビタミンB12を含んだ。ビタミンB12の原料の他は、異なる種類の錠剤で同一とした。
【0090】
含量均一性に対する影響を調査するために、以下の3つの異なる種類のビタミンB12についてテストした。
-ビタミンB12cryst.(結晶ビタミンB12、DSM(登録商標)Nutritional Productsで入手可能)
-ビタミンB12 1%SD(ビタミンB12の噴霧乾燥製剤、DSM(登録商標)Nutritional Productsで入手可能)
-ビタミンB12 0.1%WS(ビタミンB12の噴霧乾燥製剤、DSM(登録商標)Nutritional Productsで入手可能)
【0091】
錠剤は、22×9mmの長方形のパンチ及び20kNの圧縮力を使用して、Korsch XL 100回転打錠機(Korsch AG、ベルリン、ドイツ)で圧縮した。
【0092】
ビタミンB12の含量均一性を、次いで、10回の個々の定量による測定値から算出される標準偏差RSD(%)によって評価した(HPLC分析はEurofins(登録商標)、ドイツによって行った)。
【0093】
下記の表3に示されるように、ビタミンB12の2つの噴霧乾燥製剤に関する相対標準偏差(RSD)値は、5%未満であり、許容される含量均一性、それゆえに、錠剤においてビタミンB12が均一に分布することを示した。対照的に、ビタミンB12結晶に関する含量均一性は、極めて乏しかった。
【0094】
【表4】
図1
図2
【国際調査報告】