(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-24
(54)【発明の名称】メトホルミン及びクエン酸カルシウムを含む医薬剤形
(51)【国際特許分類】
A61K 31/155 20060101AFI20220817BHJP
A61K 31/714 20060101ALI20220817BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20220817BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20220817BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220817BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20220817BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20220817BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20220817BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20220817BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
A61K31/155
A61K31/714
A61P3/10
A61P3/02 101
A61P43/00 121
A61P25/02
A61K9/20
A61K9/48
A61K47/12
A61K47/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021571573
(86)(22)【出願日】2020-06-17
(85)【翻訳文提出日】2022-01-31
(86)【国際出願番号】 EP2020066762
(87)【国際公開番号】W WO2020254404
(87)【国際公開日】2020-12-24
(32)【優先日】2019-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
【住所又は居所原語表記】Het Overloon 1, NL-6411 TE Heerlen,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】ケンツ, マーティン トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ミジック, ズドラブカ
(72)【発明者】
【氏名】シュナイター, ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】トプチャン, アラクシア
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC21
4C076CC22
4C076DD29
4C076DD41C
4C076DD43
4C076FF05
4C076FF07
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4C076FF34
4C076FF36
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA11
4C086HA28
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4C086NA05
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4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206HA31
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA55
4C206MA57
4C206MA72
4C206NA03
4C206NA05
4C206NA06
4C206NA11
4C206ZA20
4C206ZC35
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、a)メトホルミン又はその薬学的に許容される塩、及びb)クエン酸カルシウムを含む医薬剤形に関する。本発明の好ましい実施形態では、この剤形は、ビタミンB12をさらに含む。本発明はまた、この剤形の、メトホルミン誘発性ビタミンB12吸収障害の予防又は軽減における使用にも関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)メトホルミン又はその薬学的に許容される塩、
b)クエン酸カルシウム、
及び
c)ビタミンB12の少なくとも1種の供給源
を含む医薬剤形。
【請求項2】
前記医薬剤形は、
a)粒状メトホルミン、好ましくは粒状メトホルミン塩酸塩、
及び/又は
b)無水クエン酸カルシウム、二クエン酸三カルシウム四水和物、若しくはこれらの混合物、
及び/又は
c)結晶性ビタミンB12、若しくはビタミンB12の噴霧乾燥製剤
を含む、請求項1に記載の医薬剤形。
【請求項3】
前記クエン酸カルシウムは、二クエン酸三カルシウム四水和物である、請求項1又は2に記載の医薬剤形。
【請求項4】
前記医薬剤形は、Ca
2+ 0.0001~0.012molを含み、好ましくは、Ca
2+ 0.0003~0.006molを含み、最も好ましくは、Ca
2+ 0.0005~0.001molを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬剤形。
【請求項5】
前記医薬剤形は、経口剤形であり、前記経口剤形は、好ましくは固体経口剤形であり、前記固体経口剤形は、好ましくは錠剤又はカプセル剤であり、前記錠剤は、好ましくは圧縮錠剤である、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬剤形。
【請求項6】
前記医薬剤形は、錠剤又はカプセル剤であり、前記錠剤又は前記カプセル剤は、好ましくは、重量が2500mg未満であり、より好ましくは、重量が2000mg未満であり、最も好ましくは、重量が1800mg未満である、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬剤形。
【請求項7】
医薬剤形を調製する方法であって、
a)メトホルミン又はその薬学的に許容される塩、クエン酸カルシウム、ビタミンB12の少なくとも1種の供給源、及び好ましくは少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む混合物を準備する工程、
b)工程a)の前記混合物を錠剤へと圧縮する工程
を含む方法。
【請求項8】
前記混合物は、粒状メトホルミン、又はメトホルミンの粒状の薬学的に許容される塩を含み、前記混合物は、好ましくは、粒状メトホルミンHClを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ビタミンB12の少なくとも1種の供給源は、結晶性ビタミンB12、又はビタミンB12の噴霧乾燥製剤であり、前記ビタミンB12の少なくとも1種の供給源は、好ましくは、ビタミンB12の噴霧乾燥製剤である、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記混合物は、二クエン酸三カルシウム四水和物を含み、並びに/又は前記混合物は、少なくとも1種の流動化剤、少なくとも1種の潤滑剤、及び少なくとも1種の結合剤を含み、前記少なくとも1種の結合剤は、好ましくは、微結晶性セルロースである、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
メトホルミン又はその薬学的に許容される塩を含む錠剤の硬度を上昇させるための二クエン酸三カルシウム四水和物の使用であって、二クエン酸三カルシウム四水和物は、前記錠剤に添加される、使用。
【請求項12】
メトホルミン誘発性ビタミンB12欠乏症の処置又は予防における使用のための、クエン酸カルシウムを含む組成物。
【請求項13】
メトホルミン誘発性ビタミンB12吸収障害又はメトホルミン誘発性末梢神経障害の予防又は軽減における使用のための、クエン酸カルシウムを含む組成物。
【請求項14】
前記組成物は、ビタミンB12をさらに含む、請求項12又は13に記載の組成物。
【請求項15】
前記クエン酸カルシウムは、無水クエン酸カルシウム、二クエン酸三カルシウム四水和物、又はこれらの混合物であり、前記クエン酸カルシウムは、好ましくは二クエン酸三カルシウム四水和物である、請求項12~14のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、2型糖尿病の処置のためのメトホルミンの使用に関する。
【0002】
[発明の背景]
メトホルミンの長期にわたる使用中に、ビタミンB12の吸収が減少する可能性がある。例えば、GLUCOPHAGE(登録商標)の製品モノグラフには、下記の警告が含まれている:
「GLUCOPHAGE(登録商標)による長期にわたる処置は、末梢神経障害を引き起こす場合がある血清ビタミンB12レベルの低下を伴っている。末梢神経障害という重篤な症例が、ビタミンB12欠乏症との関連でGLUCOPHAGE(登録商標)処置により報告されている(ADVERSE REACTIONS,Post-Market Adverse Drug Reactionsを参照されたい)。血清ビタミンB12レベルのモニタリングが推奨される。」
【0003】
GLUCOPHAGE(登録商標)は、メトホルミン塩酸塩錠剤が販売されているブランドの一つにすぎない。同様の警告を、他の製薬業者の添付文書に見出し得る。
【0004】
Bauman他は、炭酸カルシウムの摂取量の増加により、メトホルミン誘発性ビタミンB12吸収障害を回復し得ることを示している(Diabetes Care,Volume 23,Number 9,September 2000,pages 1227-1231)。Baumanの研究では、患者には下記の2種の錠剤が投与された:通常のメトホルミン錠剤、加えて炭酸カルシウムを含む栄養補助食品。
【0005】
栄養補助食品は容易に入手可能であるが、1つのみではなくて2つの錠剤を定期的に服用する必要がある場合には、患者コンプライアンスが著しく低いことは有名である。このことは、特に高齢者の糖尿病患者に当てはまり、なぜならば、糖尿病患者ではさらなる併用薬があることが多いからである。併用薬は、いわゆる「錠剤数」(即ち、投与される錠剤の数)を増加させ、そのため、治療の順守が低下するリスクを増加させる。
【0006】
1つの錠剤が処方薬(Rx)を含み、2つ目の錠剤がスーパーマーケットで購入可能である場合には、患者コンプライアンスはさらに悪化する。これまで、患者は、全く異なる供給路に由来する錠剤の組み合わせ摂取に全く慣れていない。
【0007】
加えて、ビタミンB12欠乏症の症状は、かなり緩やかに起こり、慢性的な高血糖及び糖尿病により引き起こされる症状と区別できない場合がある。従って、1つ又は2つの炭酸カルシウムの補助栄養食品を抜いても、患者の状態が直ちに悪くなるわけではない。このことはまた、患者のコンプライアンスにも悪影響を及ぼしており、なぜならば、薬物の服用過程中に緩和をあまり感じないという認識が、処置レジメンを中断するという患者の決断に影響を及ぼすからである。
【0008】
本発明により解決される課題は、Bauman他により提案されている処置レジメンを適用する場合に患者のコンプライアンスを改善することである (Diabetes Care 23:1227-1231,2000)。
【0009】
そのため、メトホルミン誘発性ビタミンB12吸収障害を予防するか又は回復し、且つ患者コンプライアンスを改善し、副作用がないか又はわずかであり、貯蔵安定性であり、飲み込みやすく、製造が容易であり、及び製薬業界の品質基準を満たす多剤混合薬(FDC)が必要とされている。
【0010】
[発明の概要]
B12-IF複合体が回腸細胞表面受容体に付着するためには、イオン性カルシウムが必須である。メトホルミンは、粘膜細胞膜に関してカルシウムと競合することから、ビタミンB12吸収障害は、イオン性カルシウムにより少なくとも部分的に回復する。
【0011】
カルシウムイオンは、錠剤へと圧縮されるために固体形態を有しなければならない。従って、カルシウムイオンを含むカルシウム塩が使用される。多くのカルシウム塩が知られている。食品では、乳酸カルシウム、二リン酸カルシウム、及びリン酸三カルシウム等のカルシウム塩が使用される。ラクトビオン酸カルシウムは、医薬品の懸濁化剤として使用される白色粉末である。ステアリン酸カルシウムは既知の潤滑剤であり、製パンでは、一リン酸カルシウムが膨張剤として使用される。経口使用の可能性があるカルシウム塩のリストにはまた、亜硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、及び酢酸カルシウム等の化合物も含まれる。
【0012】
本発明の根底にある問題は、必要なカルシウムイオンの供給源としてクエン酸のカルシウム塩を選択することにより解決される。
【0013】
様々な種類のクエン酸カルシウムが知られている。例は、無水クエン酸カルシウム、又はその水和形態、例えば、二クエン酸三カルシウム四水和物若しくはクエン酸カルシウム六水和物である。
【0014】
本発明との関連では、二クエン酸三カルシウム四水和物が好ましい。そのため、本発明の好ましい実施形態は、二クエン酸三カルシウム四水和物、及びメトホルミン又はその薬学的に許容される塩を含む経口多剤混合薬(FDC)に関する。本発明の特に好ましい実施形態は、二クエン酸三カルシウム四水和物、及びメトホルミン塩酸塩を含む経口多剤混合薬(FDC)に関する。
【0015】
様々な種類の多剤混合薬が知られている。本発明との関連では、この多剤混合薬は、好ましくは、カプセル剤又は錠剤等の固体経口剤形である。
【0016】
固体経口剤形の製造に関して、クエン酸カルシウムの選択は驚くべきことであり、なぜならば、この固体経口剤形は、少なくとも一見したところ非常に大きい固体経口剤形になるからである。そのような大きい錠剤又はカプセル剤は、飲み込むことが困難であることから、患者コンプライアンスを改善しない。クエン酸カルシウムとして二クエン酸三カルシウム四水和物が使用される場合には、説明した望ましくないサイズの増加が特に顕著である。
【0017】
体積/サイズの前記望ましくない増加は、炭酸カルシウムと比較して、クエン酸カルシウム1グラム当たりの比較的少量のカルシウムイオンに起因する。炭酸カルシウムは、Baumanの試験で投与されているカルシウム塩である。
【0018】
炭酸カルシウム(CaCO3;100,09g/mol)1グラムは、二クエン酸三カルシウム四水和物([Ca3(C6H5O7)2(H2O)2]・2H2O;570.5g/mol)1グラムと比べて、カルシウムイオンの数(mol)が著しく多い。Baumanの試験では、比較的多量の経口炭酸カルシウム(1.2g/日、Ca2+ 0.012molに相当する)が投与されたことから、このことは重要である。Ca2+ 0.012molを投与するためには、二クエン酸三カルシウム四水和物6.8gを、通常量のメトホルミンと共に錠剤へと圧縮しなければならないか、又はカプセル剤に充填しなければならないだろう。
【0019】
このことは、ほとんど不可能であると思われる。
【0020】
本発明者らは、クエン酸カルシウムを含み、且つメトホルミン誘発性ビタミンB12吸収障害を予防するか又は回復する、適度に小さい固体経口剤形を提供するための驚くべき方法を発見した。
【0021】
本発明の好ましい実施形態は、二クエン酸三カルシウム四水和物及びメトホルミン塩酸塩を含む錠剤又はカプセル剤に関する。
【0022】
[クエン酸カルシウムの二重機能性]
驚くべきことに、クエン酸カルシウムの添加により、錠剤の崩壊時間に悪影響を及ぼすことなく、この錠剤が硬化される。そのため、本発明との関連では、クエン酸カルシウムは、下記の二重機能性を有する:医学的機能(例えば、ビタミンB12吸収障害の少なくとも部分的な回復)、及び生薬的機能(錠剤硬化剤としての生薬的機能)。換言すると、メトホルミンへのクエン酸カルシウムの添加により、錠剤は、ビタミンB12吸収障害を回復するか又は軽減し、同時に最適な錠剤硬度を有する。
【0023】
クエン酸カルシウムのこの二重機能性に起因して、他の賦形剤を省略し得るか、又は錠剤中のこの賦形剤の量を減少させ得る。そのため、錠剤圧縮を容易にするために一般的に添加されている他の賦形剤を省略するか又は減少させることにより、クエン酸カルシウムの欠点(即ち、クエン酸カルシウム1グラム当たりのCa2+の量の制限に起因する大きい錠剤サイズ)を部分的に補い得る。各賦形剤を添加する必要がなくなることにより、錠剤がより小さくなり、製造プロセスが簡略化され、及び/又は売上原価(COGS)が下がる。
【0024】
そのため、本発明はまた、二重機能性化合物としてのクエン酸カルシウムの使用であって、この2つの機能は、(i)錠剤硬度を上昇させること、及び(ii)メトホルミン誘発性ビタミンB12吸収障害を予防するか又は回復することである、使用にも関する。
【0025】
[クエン酸カルシウムの高い溶解性及びバイオアベイラビリティ]
Bauman他は、1日当たり炭酸カルシウム1.2gを投与するように教示する。理論上、これは、Ca2+ 0.012molの摂取に相当する。しかしながら、理論上、炭酸カルシウムとして患者が利用可能なのはCa2+ 0.012mol未満であり、なぜならば、炭酸カルシウムは溶解性に限界があるからである。
【0026】
クエン酸カルシウムは、炭酸カルシウムと比べて溶解性が高い。加えて、クエン酸カルシウムは、炭酸カルシウムと比べてバイオアベイラビリティが優れていることが示されている(Tondapu et al.,Comparison of the Absorption of Calcium Carbonate and Calcium Citrate after Roux-en-Y Gastric Bypass,OBES SURG(2009)19:1256)。
【0027】
クエン酸カルシウムの高い溶解性及び/又はバイオアベイラビリティにより、経口剤形中のカルシウム塩の量が減少する。そのため、炭酸カルシウム1.2g(Baumanの試験では、Ca2+ 0.012molに相当する)の添加と同一か又は少なくとも同様の効果を得るには、二クエン酸三カルシウム四水和物6.8g未満を錠剤へと圧縮すれば十分である。さらに、二クエン酸三カルシウム四水和物の量の減少の結果として、錠剤サイズは、便利な経口投与に許容されるようになる。
【0028】
そのため、本発明の好ましい実施形態は、クエン酸カルシウム、及びメトホルミン又はその薬学的に許容される塩を含む固体経口剤形であって、前記固体経口剤形は、Ca2+ 0.012mol未満を含み、好ましくは、Ca2+ 0.006mol未満を含み、最も好ましくは、Ca2+ 0.001mol未満を含む、固体経口剤形に関する。
【0029】
[クエン酸カルシウムの医学的機能を活用する]
レバー、魚、チーズ、及び他の食品は、ビタミンB12を含む。しかしながら、たとえ患者の食物が、ビタミンB12を含む食品を含む場合であっても、メトホルミンの長期にわたる使用後に、患者のビタミンB12血清レベルが最終的には低下する可能性がある。これは、ビタミンB12の吸収障害に起因する。吸収障害は、食品中のビタミンB12の吸収が100%よりも著しく低いことを意味する。
【0030】
患者のビタミンB12血清レベルを上昇させるための一方法は、食品からのビタミンB12の吸収を改善することである。Bauman他により示されているように、このことは、炭酸カルシウムの経口摂取により行なわれ得る。
【0031】
本発明の好ましい実施形態では、Ca2+の医療効果は、ビタミンB12の併用投与により活用される。そのため、ビタミンB12の吸収が改善されるだけでなく、ビタミンB12の1日当たりの摂取量も増加する。本発明のこの実施形態では、クエン酸カルシウムの量をさらに減少させることが許容されており、なぜならば、ビタミンB12の吸収障害が部分的にのみ回復される場合には、吸収障害の完全な回復へのギャップは、ビタミンB12の摂取量の増加により埋められるからである。クエン酸カルシウムの量の減少の利点は、固体経口剤形のより小さいサイズであり、なぜならば、より小さい錠剤/カプセル剤は飲み込むことが容易だからであり、患者コンプライアンスが改善される。
【0032】
そのため、本発明はまた、メトホルミン及びクエン酸カルシウムを含む錠剤のサイズを減少させる方法であって、この錠剤のクエン酸カルシウムは、ビタミンB12に部分的に置き換えられている、方法にも関する。本発明はまた、メトホルミン及びクエン酸カルシウムを含むカプセル剤のサイズを減少させる方法であって、このカプセル剤のクエン酸カルシウムは、ビタミンB12に部分的に置き換えられている、方法にも関する。本発明の好ましい医薬剤形は、錠剤又はカプセル剤であり、且つCa2+ 0.0001~0.012molを含み、好ましくはCa2+ 0.0003~0.006molを含み、最もはCa2+ 0.0005~0.001molを含む。
【0033】
[最適な反応の達成に向けて:潜在的な副作用の管理]
最近では、患者は、インターネットを介して自分自身で情報を得、「炭酸カルシウム」に関する検索により、炭酸カルシウムの習慣的な摂取により腎臓結石のリスクが増加する可能性があることが明らかになるだろう。インターネット検索により、この真実が明らかになるかどうかにかかわらず、患者のコンプライアンスへの影響があるだろう。
【0034】
クエン酸カルシウムは、驚くべき多機能性化合物であるだけでなく、クエン酸カルシウムには腎臓結石を誘発するという歴史がないことから、患者により十分に認知されることも予想される。対照的に、尿中のクエン酸塩は、尿中のシュウ酸カルシウム及びリン酸カルシウムの過飽和を低下させることが知られており、シュウ酸カルシウム及びリン酸カルシウムは、腎臓結石中で見出される最も一般的な結晶性物質の一つである(Usui et al.,Urinary Citrate in Kidney Stone Disease Tokai J Exp Clin Med.,Vol.28,No.2,pp.65-70,2003)。
【0035】
そのため、本発明はまた、メトホルミン又はその薬学的塩と、カルシウムイオンの少なくとも1種の供給源とを含む医薬剤形で処置された場合に、腎臓結石の発生リスクを排除するか又は減少させるためのクエン酸カルシウムの使用にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】イオン性カルシウムの様々な供給源の影響を試験するために、4種の同様の錠剤を調製した。
図1は、これら4種の錠剤の圧縮プロファイルを示す。Fcrushは、錠剤を軸方向に壊すのに必要な力である。Fpressは、錠剤化中に上方パンチにより生じた力である。
【
図2a】2種の異なる結合剤の影響を試験するために、2種の類似の錠剤を調製した。イオン性カルシウムの供給源として、両方の錠剤とも、二クエン酸三カルシウム四水和物を含んだ。
図2aは、これら2種の錠剤の圧縮プロファイルを示す。
【
図2b】再び、2種の異なる結合剤の影響を試験するために、2種の類似の錠剤を調製した。しかしながら、今回は、これら2種の錠剤は、イオン性カルシウムの供給源として炭酸カルシウムを含んだ。
図2bは、これら2種の錠剤の圧縮プロファイルを示す。
【0037】
[本発明の詳細な説明]
本発明の好ましい実施形態は、クエン酸カルシウム、メトホルミン、及びビタミンB12を含む医薬剤形に関する。クエン酸カルシウムは、胃中における溶解性が優れており、回腸中では沈殿物が少ないか又はほとんどない。クエン酸カルシウム及びビタミンB12の同時経口投与により、特に効果的な方法で、メトホルミン誘発性ビタミンB12欠乏症が予防されるか又は回復する。3種全ての成分(即ち、クエン酸カルシウム、メトホルミン、及びビタミンB12)を含む多剤混合薬を提供することにより、特に良好な患者コンプライアンスが達成される。
【0038】
[定義]
本発明との関連では、「クエン酸カルシウム」という用語は、クエン酸のあらゆるカルシウム塩を指す。そのため、この用語は、クエン酸一カルシウム、クエン酸二カルシウム、及びクエン酸三カルシウムを含む。本発明の好ましい実施形態では、「クエン酸カルシウム」という用語は、あらゆる種類のクエン酸三カルシウム塩を指す。既知のクエン酸三カルシウム塩として、無水クエン酸カルシウム(即ち、Ca3(C6H5O7)2)、及び二クエン酸三カルシウム四水和物(即ち、[Ca3(C6H5O7)2(H2O)2]・2H2O)が挙げられる。従って、「クエン酸カルシウム」という用語は、好ましくは、無水クエン酸カルシウム、二クエン酸三カルシウム四水和物、又はこれらの混合物を指す。本発明との関連では、「Ca2+」は、イオン性カルシウム又はカルシウムイオンと称される。
【0039】
ビタミンB12は、公知の水溶性ビタミンである。本発明との関連では、「ビタミンB12」という用語は、ビタミンB12のあらゆるビタマーを指し、且つビタミンB12誘導体及び/又はビタミンB12の代謝産物を含む。しかしながら、好ましくは、「ビタミンB12」という用語は、シアノコバラミンを指す。シアノコバラミンは、適切な微生物を使用する発酵により製造され得る。
【0040】
本発明との関連では、結晶性ビタミンB12を使用し得る。結晶性ビタミンB12は、市販されている。
【0041】
しかしながら、本発明の好ましい実施形態では、ビタミンB12の噴霧乾燥製剤が使用される。「ビタミンB12の噴霧乾燥製剤」という表現は、ビタミンB12及び少なくとも1種の賦形剤を含む水溶液を噴霧乾燥させることにより得られる粉末を指し、前記少なくとも1種の賦形剤は、好ましくは、クエン酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸、マルトデキストリンクエン酸、及び加工食品デンプンからなる群から選択される。本発明の好ましい実施形態では、「ビタミンB12の噴霧乾燥製剤」という表現は、シアノコバラミン及び少なくとも1種の賦形剤を含む水溶液を噴霧乾燥させることにより得られる粉末を指し、前記少なくとも1種の賦形剤は、好ましくは、クエン酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸、マルトデキストリン、及び加工食品デンプンからなる群から選択される。典型的には、「ビタミンB12の噴霧乾燥製剤」という表現は、ビタミンB12の噴霧乾燥製剤の総重量を基準として0.01~1重量%の、好ましくは0.05~0.5重量%の、最も好ましくは0.1重量%のシアノコバラミンを含む水溶性粉末又は水分散性粉末を指す。そのため、本発明の最も好ましい実施形態では、「ビタミンB12の噴霧乾燥製剤」という表現は、シアノコバラミン及び少なくとも1種の賦形剤を含む水溶液を噴霧乾燥させることにより得られる粉末を指し、前記賦形剤は、好ましくは、クエン酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸、マルトデキストリン、及び加工食品デンプンからなる群から選択され、且つ前記粉末は、この粉末の総重量を基準として1重量%以下のシアノコバラミンを含む。
【0042】
メトホルミンは、公知の医薬品である。本発明との関連では、「メトホルミン」という用語は、メトホルミン又はその薬学的に許容される塩を指し得る。メトホルミンのおそらく最も既知の薬学的に許容される塩は、メトホルミンHClである。従って、本発明の最も好ましい実施形態では、「メトホルミン」という用語は、メトホルミンHClを指す。本発明の医薬剤形は、好ましくは、メトホルミンHCl 500mg又はメトホルミンHCl 1000mgを含む。本発明の好ましい実施形態では、医薬剤形は、メトホルミンHCl 1000mgを含む錠剤又はカプセル剤である。
【0043】
メトホルミンは、成形性及び流動性に乏しい。従って、メトホルミンは、好ましくは、錠剤化の前に造粒されている。そのような造粒プロセス中に、メトホルミンは、圧縮されやすい、易流動性であり本質的に粉塵を含まない顆粒へと変換される。本発明との関連では、「粒状メトホルミン」という用語は、メトホルミン又はその薬学的な塩を含む顆粒を指す。好ましくは、「粒状メトホルミン」という用語は、顆粒であって、この顆粒の総重量を基準として少なくとも50重量%のメトホルミンと、少なくとも1種の賦形剤とを含む顆粒を指し、前記賦形剤は、好ましくは、結合剤及び/又は潤滑剤である。好適な結合剤は、例えば、Arndt et al.,“Roll Compaction and Tableting of High Loaded Metformin Formulations Using Efficient Binders”,AAPS PharmSciTech,July 2018,Volume 19,Issue 5,pp 2068-2076で列挙されている。本発明との関連では、「粒状メトホルミン」という用語は、メトホルミンの粒状の薬学的に許容される塩(例えば、粒状メトホルミンHCl)を含む。従って、「粒状メトホルミン」という用語は、顆粒であって、この顆粒の総重量を基準として少なくとも50重量%のメトホルミンHClと、少なくとも1種の賦形剤とを含み、前記賦形剤は、好ましくは、結合剤及び/又は潤滑剤である。粒状メトホルミンは、市販されている。Vistin Pharma(オスロ、ノルウェー)で入手可能なメトホルミン顆粒DCグレート 92.6%は、潤滑剤としてステアリン酸マグネシウムを含む。従って、本発明の最も好ましい実施形態では、「粒状メトホルミン」という用語は、顆粒であって、ステアリン酸マグネシウムと、この顆粒の総重量を基準として少なくとも90重量%のメトホルミンHClとを含む顆粒を指す。
【0044】
本発明との関連では、「医薬剤形」という用語は、好ましくは、経口剤形を指す。メトホルミンの液体経口剤形が既知である(例えば、インドにおけるRiomet(登録商標))が、「医薬剤形」という用語は、好ましくは、固体経口剤形(例えば、錠剤、カプセル剤、及び散剤)を指す。散剤(例えば、経口液剤用の散剤)は、典型的には、小袋又はスティックパックに包装されている。或いは、散剤は、2ピースのカプセル剤(例えば、ゼラチンカプセル剤サイズ0、00、又は000)に充填され得る。本発明の好ましい実施形態では、「医薬剤形」という用語は、錠剤、カプセル剤、及び散剤からなる群から選択される固体経口剤形を指す。本発明のさらにより好ましい実施形態では、「医薬剤形」という用語は、錠剤又はカプセル剤を指す。本発明の最も好ましい実施形態では、「医薬剤形」という用語は、圧縮錠剤を指す。好ましくは、本発明の錠剤は、重量が2500mg未満であり、より好ましくは2000mg未満であり、最も好ましくは1800mg未満である。同様に、本発明のカプセル剤は、好ましくは、重量が1600mg未満であり、より好ましくは1200mg未満であり、最も好ましくは1000mg未満である。
【0045】
微結晶性セルロース(MCC)は、セルロースの酸加水分解により調製される公知の賦形剤である。工業スケールでは、MCCは、希薄な鉱酸を使用する木材及び/又は綿セルロースの加水分解により得られる。次いで、処理したパルプを、粉砕等の追加のプロセス工程の有無にかかわらず、すすいで噴霧乾燥させる。多数の種類の微結晶性セルロース(MCC)が市販されている。本発明との関連では、「微結晶性セルロース」という用語は、部分的に解重合されたセルロースからなる、あらゆる種類の微結晶性セルロースを含む(例えば、T.Vehovec et al.:“Influence of different types of commercially available microcrystalline cellulose on degradation of perindopril erbumine and enalapril maleate in binary mixtures”,Acta Pharm.62(2012),page 518の表1に列挙されている賦形剤)。除外されるのは、PROSOLV(登録商標)SMCC等のケイ化微結晶性セルロースである。本発明との関連では、「ケイ化微結晶性セルロース」という用語は、微結晶性セルロース(MCC)と、コロイド状二酸化ケイ素(CSD)等の二酸化ケイ素とを含む賦形剤を指す。
【0046】
[医薬剤形]
本発明は、
a)メトホルミン又はその薬学的に許容される塩、
b)クエン酸カルシウム、
及び
c)ビタミンB12
を含む医薬剤形に関する。
【0047】
本発明の好ましい実施形態は、
a)メトホルミン又はその薬学的に許容される塩、
b)クエン酸カルシウム、
及び
c)ビタミンB12
を含む固体経口剤形に関する。
【0048】
本発明のより好ましい実施形態は、
a)メトホルミン又はその薬学的に許容される塩、
b)クエン酸カルシウム、
及び
c)ビタミンB12
を含む錠剤又はカプセル剤であって、
前記錠剤又は前記カプセル剤は、好ましくは、Ca2+ 0.0001~0.012molを含み、より好ましくは、Ca2+ 0.0003~0.006molを含み、最も好ましくは、Ca2+ 0.0005~0.001molを含む、錠剤又はカプセル剤に関する。
【0049】
本発明では、メトホルミンHClは、メトホルミンの好ましい薬学的に許容される塩である。そのため、本発明の好ましい実施形態は、
a)メトホルミンHCl 500mg、又はメトホルミンHCl 1000mg、
b)無水クエン酸カルシウム、二クエン酸三カルシウム四水和物、又はこれらの混合物、
及び
c)任意選択的なビタミンB12
を含む錠剤、カプセル剤、又は散剤に関する。
【0050】
本発明では、クエン酸カルシウムは、好ましくは、無水クエン酸カルシウム、二クエン酸三カルシウム四水和物、又はこれらの混合物を指す。そのため、本発明の好ましい実施形態は、
a)メトホルミンHCl、
b)無水クエン酸カルシウム、二クエン酸三カルシウム四水和物、又はこれらの混合物、
及び
c)ビタミンB12
を含む錠剤又はカプセル剤であって、
前記錠剤又は前記カプセル剤は、好ましくは、Ca2+ 0.0001~0.012molを含み、より好ましくは、Ca2+ 0.0003~0.006molを含み、最も好ましくは、Ca2+ 0.0005~0.001molを含む、錠剤又はカプセル剤に関する。
【0051】
錠剤の圧縮中に、粒状メトホルミンを使用する場合には、キャッピングを回避し得るか、又は少なくとも減少させ得る。従って、本発明はまた、
a)粒状メトホルミン、好ましくは粒状メトホルミンHCl、
b)無水クエン酸カルシウム、二クエン酸三カルシウム四水和物、又はこれらの混合物、
及び
c)ビタミンB12
を含む錠剤にも関する。
【0052】
本発明では、ビタミンB12は、好ましくは、シアノコバラミンを指す。そのため、本発明の好ましい実施形態は、
a)メトホルミンHCl 500mg、又はメトホルミンHCl 1000mg
b)無水クエン酸カルシウム、二クエン酸三カルシウム四水和物、又はこれらの混合物、
及び
c)シアノコバラミン
を含む錠剤又はカプセル剤であって、
前記錠剤又は前記カプセル剤は、好ましくは、Ca2+ 0.0001~0.012molを含み、より好ましくは、Ca2+ 0.0003~0.006molを含み、最も好ましくは、Ca2+ 0.0005~0.001molを含む、錠剤又はカプセル剤に関する。
【0053】
ビタミンB12の噴霧乾燥製剤を使用することにより、ビタミンB12の含有量均一性を劇的に改善し得る。そのため、本発明の好ましい実施形態は、
a)メトホルミンHCl、
b)無水クエン酸カルシウム、二クエン酸三カルシウム四水和物、又はこれらの混合物、
及び
c)ビタミンB12の少なくとも1種の噴霧乾燥製剤、好ましくは、シアノコバラミンの少なくとも1種の噴霧乾燥製剤
を含む錠剤、カプセル剤、又は散剤に関する。
【0054】
本発明の同様に好ましい実施形態は、
a)粒状メトホルミンHCl、
b)無水クエン酸カルシウム、二クエン酸三カルシウム四水和物、又はこれらの混合物、
及び
c)シアノコバラミンの少なくとも1種の噴霧乾燥製剤
を含む錠剤であって、
前記錠剤は、好ましくは、Ca2+ 0.0001~0.012molを含み、より好ましくは、Ca2+ 0.0003~0.006molを含み、最も好ましくは、Ca2+ 0.0005~0.001molを含む、錠剤に関する。
【0055】
本発明の同様に好ましい実施形態は、少なくとも1個の顆粒を含む錠剤であって、前記顆粒は、
a)メトホルミンHCl、
b)無水クエン酸カルシウム、二クエン酸三カルシウム四水和物、又はこれらの混合物、
及び
c)シアノコバラミンの少なくとも1種の噴霧乾燥製剤
を含む、錠剤に関する。
【0056】
驚くべきことに、無水クエン酸カルシウムの代わりに二クエン酸三カルシウム四水和物を使用する場合には、錠剤硬度を改善し得る。従って、本発明の好ましい実施形態は、
a)メトホルミン又はその薬学的に許容される塩、
b)二クエン酸三カルシウム四水和物、
及び
c)ビタミンB12
を含む錠剤であって、
前記錠剤は、好ましくは重量が2500mg未満であり、より好ましくは2000mg未満であり、最も好ましくは1800mg未満である、錠剤に関する。
【0057】
本発明のより好ましい実施形態は、
a)メトホルミンHCl、
b)二クエン酸三カルシウム四水和物、
及び
c)ビタミンB12、好ましくはシアノコバラミン
を含む錠剤に関する。
【0058】
本発明の同様に好ましい実施形態は、
a)メトホルミンHCl、好ましくは粒状メトホルミンHCl、
b)二クエン酸三カルシウム四水和物、
及び
c)シアノコバラミンの少なくとも1種の噴霧乾燥製剤
を含む錠剤に関する。
【0059】
本発明のさらにより好ましい実施形態は、
a)メトホルミンHCl、好ましくは粒状メトホルミンHCl、
b)二クエン酸三カルシウム四水和物、
及び
c)ビタミンB12の少なくとも1種の噴霧乾燥製剤
を含む錠剤であって、
前記ビタミンB12の噴霧乾燥製剤は、好ましくは、シアノコバラミン及び少なくとも1種の賦形剤を含む水溶液を噴霧乾燥させることにより得られる粉末であり、
且つ
前記少なくとも1種の賦形剤は、好ましくは、クエン酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸、マルトデキストリン、及び加工食品デンプンからなる群から選択され、
且つ
前記粉末は、好ましくは、この粉末の総重量を基準として1重量%以下のシアノコバラミンを含む、
錠剤に関する。
【0060】
本発明はまた、メトホルミン又はその薬学的に許容される塩を含む錠剤の硬度を上昇させるための二クエン酸三カルシウム四水和物の使用であって、二クエン酸三カルシウム四水和物は前記錠剤に添加される、使用に関する。
【0061】
驚くべきことに、ケイ化微結晶性セルロースの代わりに微結晶性セルロースを使用する場合には、錠剤硬度をさらに改善し得る。従って、本発明の好ましい実施形態は、
a)メトホルミン又はその薬学的に許容される塩、
b)二クエン酸三カルシウム四水和物
c)任意選択的なビタミンB12、
及び
d)微結晶性セルロース
を含む錠剤であって、
前記錠剤は、この錠剤の総重量を基準として1重量%未満の、好ましくは0.5重量%未満の、最も好ましくは0.1重量%未満のケイ化微結晶性セルロースを含み、且つ前記錠剤は、好ましくは、ケイ化微結晶性セルロースを含まない、錠剤に関する。
【0062】
そのため、本発明の最も好ましい実施形態は、
a)メトホルミンHCl、好ましくは粒状メトホルミンHCl、
b)二クエン酸三カルシウム四水和物、
c)ビタミンB12の少なくとも1種の噴霧乾燥製剤、
及び
d)微結晶性セルロース
を含む錠剤であって、
前記錠剤は、この錠剤の総重量を基準として1重量%未満の、好ましくは0.5重量%未満の、最も好ましくは0.1重量%未満のケイ化微結晶性セルロースを含み、
且つ
前記ビタミンB12の噴霧乾燥製剤は、シアノコバラミン及び少なくとも1種の賦形剤を含む水溶液を噴霧乾燥させることにより得られる粉末であり、
且つ
前記賦形剤は、好ましくは、クエン酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸、マルトデキストリン、及び加工食品デンプンからなる群から選択され、
且つ
前記粉末は、好ましくは、この粉末の総流量を基準として1重量%以下のシアノコバラミンを含む、
錠剤に関する。
【0063】
本発明のあまり好ましくない実施形態は、液剤に関する。好ましい液体経口剤形は、
a)メトホルミン又はその薬学的に許容される塩、
b)無水クエン酸カルシウム、二クエン酸三カルシウム四水和物、又はこれらの混合物、
及び
c)ビタミンB12
を含む。
【0064】
そのような液体経口剤形は、選択されたクエン酸カルシウムの特性に起因して良好な貯蔵安定性を有する。
【0065】
[本医薬剤形を調製する方法]
本発明の一実施形態では、医薬剤形は、散剤である。そのような散剤を、この散剤の成分を混合することにより調製し得る。混合は、必要な含有量均一性を達成するのに必要である。混合方法の選択とは無関係に、ビタミンB12の噴霧乾燥製剤が使用される場合には含有量均一性が改善される。好適なビタミンB12の噴霧乾燥製剤は、DSM(登録商標)Nutritional Productsから、“Vitamin B12 1%SD”又は“Vitamin B12 0.1%WS”として市販されている。本発明との関連では、市販の“Vitamin B12 0.1%WS”は、好ましいビタミンB12の噴霧乾燥製剤である。従って、本の好ましい実施形態は、医薬剤形を調製する方法であって、
a)メトホルミン又はその薬学的に許容される塩、クエン酸カルシウム、ビタミンB12の少なくとも1種の噴霧乾燥製剤、及び好ましくは少なくとも1種の賦形剤を混合することにより粉末を準備する工程
を含む方法に関する。
【0066】
本発明の別の実施形態では、医薬剤形は、液剤であるか、又は液体経口溶液の調製用の散剤である。液体医薬剤形を調製するために、結晶性ビタミンB12を使用し得る。そのため、本発明はまた、メトホルミン、ビタミンB12、クエン酸カルシウム、及び水を含む液剤であって、前記液剤は、結晶性ビタミンB12、メトホルミンの少なくとも1種の供給源、及びクエン酸カルシウムの少なくとも1種の供給源を水に溶解させることにより及び/又は分散させることにより得られる、液剤にも関する。
【0067】
好ましくは、本発明の医薬剤形は、錠剤である。そのような錠剤を、
a)メトホルミン又はその薬学的に許容される塩、クエン酸カルシウム、及び好ましくは少なくとも1種の賦形剤を含む混合物を準備する工程、
b)工程a)の混合物を錠剤へと圧縮する工程
を含む方法により調製し得る。
【0068】
好ましい方法は、
a)メトホルミン又はその薬学的に許容される塩、クエン酸カルシウム、ビタミンB12、及び好ましくは少なくとも1種の賦形剤を含む混合物を準備する工程、
b)工程a)の混合物を錠剤へと圧縮する工程
を含む。
【0069】
より好ましい方法は、
a)メトホルミン又はその薬学的に許容される塩、二クエン酸三カルシウム四水和物、ビタミンB12の少なくとも1種の噴霧乾燥製剤、及び好ましくは少なくとも1種の賦形剤を含む混合物を準備する工程、
b)工程a)の混合物を錠剤へと圧縮する工程
を含む。
【0070】
この方法により調製された錠剤は、好適な硬度を有する。この錠剤の硬度をさらに上昇させるために、微結晶性セルロースを添加し得る。そのため、同様に好ましい方法は、
a)メトホルミン又はその薬学的に許容される塩、クエン酸カルシウム、ビタミンB12、及び微結晶性セルロースを含む混合物を準備する工程、
b)工程a)の混合物を錠剤へと圧縮する工程
を含む。
【0071】
錠剤を圧縮する際に、キャッピングが観察されることがある。キャッピングという用語は、プレス機から排出される際に、又はハンドリングプロセス中に、錠剤の上部又は下部が本体から部分的に又は完全に水平に分離してキャップを形成する場合に使用される。圧縮前の造粒により、キャッピングを回避し得る。そのため、本発明の医薬剤形を調製する好ましい方法は、
a)メトホルミン又はその薬学的に許容される塩、クエン酸カルシウム、ビタミンB12、及び少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む混合物を準備する工程、
b)工程a)の混合物の造粒工程、
c)工程b)の混合物を錠剤へと圧縮する工程
を含む。
【0072】
そのため、錠剤を圧縮する前に追加のプロセス工程を挿入することにより、キャッピングを回避し得る。或いは、及び好ましくは、粒状メトホルミン又はメトホルミンの粒状の薬学的に許容される塩を使用することにより、キャッピングを回避し得る。そのため、本発明の医薬剤形を調製する好ましい方法は、
a)粒状メトホルミンHCl、クエン酸カルシウム、ビタミンB12、及び少なくとも1種の賦形剤を含む混合物を準備する工程、
b)工程a)の混合物を錠剤へと圧縮する工程
を含み、
前記賦形剤は、好ましくは、微結晶性セルロースである。
【0073】
[クエン酸カルシウムの使用]
ビタミンB12の吸収が起こることになっている腸の部位(即ち回腸)にカルシウムイオンを与えることにより、メトホルミン誘発性ビタミンB12欠乏症及びメトホルミン誘発性ビタミンB12吸収障害を予防し得るか、処置し得るか、又は軽減し得る。残念ながら、炭酸カルシウムの経口投与の場合には、この炭酸カルシウムの相当な部分が、望まれていない沈殿に起因して回腸中で利用可能ではないだろう。
【0074】
本発明の発明者らは、SIF(模擬腸液、pH=6.8、Ph.Eur.に従って調製した)中において、クエン酸カルシウムが他のカルシウム塩と比べて良好な溶解性を有することを発見した。Fallingborgによれば、小腸では、pHは、pH6から回腸末端中の約7.4へと徐々に上昇する(“Intraluminal pH of the human gastrointestinal tract”,Dan Med Bull. 1999 Jun;46(3):183-96)。従って、ヒト回腸中におけるカルシウムイオンの沈殿は、クエン酸カルシウムが投与された場合には起こる可能性が低い。
【0075】
従って、本発明の一実施形態は、少なくとも1種のカルシウム塩及びメトホルミンを含む医薬組成物の摂取後のヒト回腸中におけるカルシウムイオンの沈殿を予防するためのクエン酸カルシウムの使用に関する。本発明の好ましい実施形態は、少なくとも1種のカルシウム塩及びメトホルミンを含む医薬組成物の摂取後のヒト回腸中におけるカルシウムイオンの沈殿を予防するための、無水クエン酸カルシウム、二クエン酸三カルシウム四水和物、又はこれらの混合物の使用に関する。本発明のさらにより好ましい実施形態は、少なくとも1種のカルシウム塩、メトホルミン、及びビタミンB12を含む医薬組成物の摂取後のヒト回腸中におけるカルシウムイオンの沈殿を予防するための、無水クエン酸カルシウム、二クエン酸三カルシウム四水和物、又はこれらの混合物の使用に関する。
【0076】
本発明の代替実施形態は、模擬腸液中及び/又はヒト回腸中におけるカルシウムイオンの沈殿を予防するための、医薬剤形中におけるクエン酸カルシウムの使用に関する。本発明の同様に好ましい実施形態は、哺乳動物内で(好ましくはヒト内で)空腸から回腸へと移動しているカルシウムイオンの沈殿を予防するための、医薬剤形中におけるクエン酸カルシウムの使用に関する。
【0077】
[処置方法]
本発明はまた、メトホルミン誘発性ビタミンB12欠乏症の処置又は予防の方法であって、本明細書で説明されている医薬剤形を投与する工程を含む方法にも関する。そのため、本発明の好ましい実施形態は、メトホルミン誘発性ビタミンB12欠乏症の処置又は予防の方法であって、
a)メトホルミン又はその薬学的に許容される塩、
b)二クエン酸三カルシウム四水和物、
及び
c)ビタミンB12、好ましくはシアノコバラミン
を含む医薬剤形を投与する工程を含む方法に関する。
【0078】
本発明の代替実施形態は、メトホルミン誘発性ビタミンB12欠乏症の処置又は予防における使用のための、本明細書で説明されている組成物に関する。この代替実施形態はまた、メトホルミン誘発性ビタミンB12欠乏症の処置又は予防における使用のための、本明細書で説明されている錠剤又はカプセル剤であって、前記錠剤又は前記カプセル剤は、Ca2+ 0.0001~0.012molを含み、好ましくはCa2+ 0.0003~0.006molを含み、最もはCa2+ 0.0005~0.001molを含む、錠剤又はカプセル剤にも関する。これらの代替実施形態では、クエン酸カルシウムは、好ましくは、無水クエン酸カルシウム、二クエン酸三カルシウム四水和物、又はこれらの混合物であり、二クエン酸三カルシウム四水和物が特に好ましい。
【0079】
本発明はまた、メトホルミン誘発性ビタミンB12吸収障害の予防又は軽減の方法であって、本明細書で説明されている医薬剤形を投与する工程を含む方法にも関する。そのため、本発明の好ましい実施形態は、メトホルミン誘発性ビタミンB12吸収障害の予防又は軽減の方法であって、
a)メトホルミン又はその薬学的に許容される塩、
b)二クエン酸三カルシウム四水和物、
及び
c)任意選択的なビタミンB12、好ましくはシアノコバラミン
を含む医薬剤形を投与する工程を含む方法に関する。
【0080】
代替実施形態は、メトホルミン誘発性ビタミンB12吸収障害の予防又は軽減における使用のための、本明細書で説明されている医薬剤形に関する。この代替実施形態はまた、メトホルミン誘発性ビタミンB12吸収障害の予防又は軽減における使用のための、本明細書で説明されている錠剤又はカプセル剤であって、前記錠剤又は前記カプセル剤は、Ca2+ 0.0001~0.012molを含み、好ましくはCa2+ 0.0003~0.006molを含み、最も好ましくはCa2+ 0.0005~0.001molを含む、錠剤又はカプセル剤にも関する。これらの代替実施形態では、クエン酸カルシウムは、好ましくは、無水クエン酸カルシウム、二クエン酸三カルシウム四水和物、又はこれらの混合物であり、二クエン酸三カルシウム四水和物が特に好ましい。
【0081】
メトホルミンによる長期にわたる処置は、末梢神経障害を引き起こす場合がある血清ビタミンB12レベルの低下を伴っている。従って、本発明はまた、メトホルミン誘発性末梢神経障害の予防の方法であって、本明細書で説明されている医薬剤形を投与する工程を含む方法にも関する。そのため、本発明の好ましい実施形態は、メトホルミン誘発性末梢神経障害の予防の方法であって、
a)メトホルミン又はその薬学的に許容される塩、
b)二クエン酸三カルシウム四水和物、
及び
c)任意選択的なビタミンB12、好ましくはシアノコバラミン
を含む医薬剤形を投与する工程を含む方法に関する。
【0082】
代替実施形態は、メトホルミン誘発性末梢神経障害の予防における使用のための、本明細書で説明されている医薬剤形に関する。この代替実施形態はまた、メトホルミン誘発性末梢神経障害の予防における使用のための、本明細書で説明されている錠剤又はカプセル剤であって、前記錠剤又は前記カプセル剤は、Ca2+ 0.0001~0.012molを含み、好ましくはCa2+ 0.0003~0.006molを含み、最も好ましくはCa2+ 0.0005~0.001molを含む、錠剤又はカプセル剤にも関する。これらの代替実施形態では、クエン酸カルシウムは、好ましくは、無水クエン酸カルシウム、二クエン酸三カルシウム四水和物、又はこれらの混合物であり、二クエン酸三カルシウム四水和物が特に好ましい。
【0083】
[実施例]
[実施例1]
[第1の試験]
メトホルミンHCl、ビタミンB12の噴霧乾燥製剤(DSM(登録商標)Nutritional Productsで入手可能)、結合剤、及びカルシウム塩をそれぞれ含む3種の類似の錠剤混合物を調製した。これにより、下記の3種の異なるカルシウム塩を使用した:それぞれ、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、及び二クエン酸三カルシウム四水和物。3種全ての場合で、キャッピングを観察した。そのため、第1の試験の3種の錠剤混合物はいずれも、錠剤へと圧縮するのに成功し得なかった。
【0084】
[第2の試験]
第2の試験では、第1の試験と同様に3種の錠剤混合物を調製した。しかしながら、今回は、非粒状メトホルミンHClの代わりに、粒状メトホルミン(メトホルミンDC 92.6%、潤滑剤としてのステアリン酸マグネシウムと共に造粒されている、Vistin Pharmaで入手可能)を使用した。この第2の試験では、どのカルシウム塩が使われているかにかかわらず、キャッピングを観察しなかった。
【0085】
実施例1では、錠剤を圧縮すべきである場合には、粒状メトホルミンを使用することが好ましいことが示されている。或いは、非粒状メトホルミンを、クエン酸カルシウム及び他の任意選択的な化合物と混合する。次いで、そのようにして得られた混合物を、実際の錠剤化プロセス前に造粒する。
【0086】
[実施例2]
実施例2では、粒状メトホルミンDC 92.6%、ビタミンB12の噴霧乾燥製剤(DSM(登録商標)Nutritional Productsで入手可能)、流動化剤としてのAerosil 200、潤滑剤としてのステアリン酸マグネシウム、結合剤としてのProsolv(登録商標)SMCC90(JRS Pharmaで入手可能)、及びカルシウム塩をそれぞれ含む4種の類似の錠剤混合物を調製した。これにより、下記の4種の異なるカルシウム塩を試験した:炭酸カルシウム(Particle Dynamicsで入手可能な95MD)、リン酸二カルシウム無水物(DiCafos A150、無水物、Budenheimで入手可能)、二クエン酸三カルシウム四水和物(Merckで入手可能)、及び無水クエン酸カルシウム(Gadotで入手可能)。
【0087】
錠剤を圧縮するために、シングルパンチプレス(Korsch XP-1、Korsch,ベルリンで入手可能)を使用した。
【0088】
どのカルシウム塩が使用されているかにかかわらず、4種全ての錠剤混合物を錠剤へと圧縮することに成功し得た。それぞれの錠剤は、同量のメトホルミン、ビタミンB12(噴霧乾燥製剤)、Ca2+(100mg/錠剤)、流動化剤、及び潤滑剤を含んだ。次いで、1個の錠剤当たりの結合剤(Prosolv(登録商標)SMCC90)の量を、得られた錠剤のそれぞれが1500mgの質量を有するように選択した。
【0089】
次いで、錠剤硬度を、Kraemer UTS4 1装置を使用して測定した。得られた圧縮プロファイルを、
図1に示す。
【0090】
図1は、錠剤の硬度がカルシウム塩の選択に依存することを示す。最も硬い錠剤は、二クエン酸三カルシウム四水和物を使用した場合に得られる。驚くべきことに、錠剤硬度は、無水クエン酸カルシウムを使用した場合に大きく下がる。
【0091】
炭酸カルシウム塩に関しても、良好な硬度が得られた。しかしながら、炭酸カルシウムには、模擬腸液中における溶解性及び/又はバイオアベイラビリティが低いという欠点がある。加えて、炭酸カルシウムに対する患者の認識は否定的である。リン酸二カルシウム無水物は、二クエン酸三カルシウム四水和物ほど良好には機能しなかった。
【0092】
[実施例3]
錠剤硬度をさらに改善するために、下記の表1に示すように、4種の類似の錠剤混合物を調製した。
【0093】
【0094】
前記4種の錠剤混合物を、実施例2と同様に錠剤へと圧縮した。次いで、錠剤硬度を測定した。結果を、
図2a及び
図2bに示す。
【0095】
図2aは、Ca
2+の供給源として二クエン酸三カルシウム四水和物を含み、且つ結合剤としてAvicel(登録商標)PH102(3a)又はProsolv(登録商標)SMCC90(3a’)を含む錠剤の圧縮曲線を示す。
【0096】
図2bは、Ca
2+の供給源として炭酸カルシウムを含み、且つ結合剤としてAvicel(登録商標)PH102(3b)又はProsolv(登録商標)SMCC90(3b’)を含む錠剤の圧縮曲線を示す。
【0097】
実施例3は、メトホルミンを含む錠剤の硬度を、この錠剤がイオン性カルシウムの供給源としてクエン酸カルシウムを含むという条件で、結合剤として微結晶性セルロースを使用することによりさらに改善し得ることを示す。驚くべきことに、クエン酸カルシウムの代わりに炭酸カルシウムを使用する場合には、ケイ化微結晶性セルロースを微結晶性セルロースに置き換えても錠剤硬度を改善し得ない。
【0098】
[実施例4]
実施例4では、4種の異なるカルシウム塩の溶解性を、ICP-OES(誘導結合プラズマ発光分析)によるCa2+イオン含有量の決定により、3種の異なる溶解媒体中で分析した。
【0099】
カルシウム塩は、下記であった:
- 炭酸カルシウム(Particle Dynamicsで入手可能な95MD)、
- リン酸二カルシウム無水物(DiCafos A150、Budenheimで入手可能)、
- 二クエン酸三カルシウム四水和物(Merckで入手可能)、
- 無水クエン酸カルシウム(Gadotで入手可能)。
【0100】
可溶化媒体は、下記であった:
- 水、
- SGF(模擬胃液、pH=1.1、Ph.Eur.に従って調製した)、
- SIF(模擬腸液、pH=6.8、Ph.Eur.に従って調製した)。
【0101】
3種全ての溶解媒体を37℃まで加熱し、この温度で分析を実施した。この分析中に、この可溶化媒体に塩を過剰に添加して、24時間にわたり混合した。その後、溶液をろ過し、ATR-IR分析を使用して沈殿物を調べて、出発物質(例えば、それぞれのCa塩)の存在を確認した。ろ過した溶液を、Ca2+イオン含有量に関して分析した。得られた溶解性の結果を、表2、3、及び4に示す。
【0102】
3種全ての媒体中で、炭酸カルシウムは、最も低い溶解性を示す。そのため、炭酸カルシウム以外のカルシウム塩を投与する場合には、Bauman他により教示されたカルシウムイオンの量を減少させ得る。
【0103】
SGF(模擬胃液)では、リン酸二カルシウムの溶解性は、2種のクエン酸カルシウム塩の溶解性とある程度類似している。そのため、3種全ての場合で、カルシウムイオンが患者の胃中で利用可能であるだろうと想定され得る。しかしながら、患者の胃は重要ではない。
【0104】
ビタミンB12の吸収の場合には、ビタミンB12-IF複合体が形成され、次いで、この複合体が回腸中の腸細胞受容体に結合する。患者の回腸中におけるこのプロセスのためには、イオン性カルシウムの存在が必須である。そのため、カルシウムイオンが必要なのは回腸中である。
【0105】
SIF(模擬腸液)中では、2種のクエン酸カルシウム塩の溶解性は、リン酸二カルシウム及び炭酸カルシウムの溶解性と比べて有意に高い。そのため、(炭酸カルシウム又はリン酸二カルシウムの代わりに)クエン酸カルシウムを経口投与する場合には、ビタミンB12吸収障害を効果的に回復させ得る。「効果的」は、Bauman他による示唆と比べて少ないカルシウム塩の量が、メトホルミン誘発性ビタミンB12吸収障害を回復させるのに十分であることを意味し得る。
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
[実施例5]
医学的適応症に応じて、持続放出(XR)剤形又は即時放出(IR)剤形のいずれかが処方される。市販の即時放出製剤の一例は、Glucophage(登録商標)IRである。
【0110】
即時放出を達成するためには、錠剤の崩壊時間を短くしなければならない。多くの場合では、錠剤硬度が上昇すると、崩壊時間は通常と比べて長くなる。驚くべきことに、このことは、Ca2+の供給源として二クエン酸三カルシウム四水和物を使用した場合には当てはまらない。
【0111】
実施例5では、実施例2の4種の錠剤の物理的特性を測定した。結果を、下記の表5に示す。
【0112】
【0113】
錠剤硬度を、Kraemer UTS4 1テスター(Kraemer Elektronik GmbH,Darmstadt,ドイツ)により、USP<1217>及びEP<2.9.8.>で説明されているように測定した。本発明者らは、錠剤を軸方向に壊すのに必要な力を測定した。示されているのは、10回の測定の平均値である。
【0114】
錠剤崩壊を、37℃で、脱塩水900mL中においてDISI-1崩壊テスター(Charles Ischi PG Pharma Prueftechnik,Zuchwill,スイス)を使用することにより、USP<701,2040>に従ってキャラクタライズした。6回の並行測定を実行した。崩壊時間の上限は、コーティングされていない錠剤の場合は30分である(USP<2040>)。
【0115】
錠剤硬度に密接に関係する摩損度は、機械的な摩耗中における重量減少の程度を指す。最初の錠剤重量の1%以下の最大減少は、許容されると考えられる(USP<1216>、EP<2.9.7.>)。本発明者らは、4分にわたり25rpmの回転速度にて、AE-1 Friabilator(Charles Ischi AG Pharma Prueftechnik,Zuchwill,スイス)で10個の錠剤を試験した。錠剤の重量減少を記録した。
【0116】
驚くべきことに、Ca2+の供給源として二クエン酸三カルシウム四水和物を使用することにより、(i)硬度が高い、(ii)崩壊時間が短い、及び(iii)摩損度が低い錠剤が得られる。
【0117】
[実施例6]
実施例6では、3種の異なる錠剤を調製した。各錠剤は、リン酸カルシウム(無水、Emcompress(登録商標)で入手可能)549.9mg、及びビタミンB12 0.0078mgを含んだ。ビタミンB12の供給源を除いて、これら異なる種類の錠剤は同一であった。
【0118】
含有量均一性への影響を調べるために、下記の3種の異なるビタミンB12を試験した:
- ビタミンB12結晶(結晶性ビタミンB12、DSM(登録商標)Nutritional Productsで入手可能)、
- ビタミンB12 1%SD(ビタミンB12の噴霧乾燥製剤、DSM(登録商標)Nutritional Productsで入手可能)、
- ビタミンB12 0.1%WS(ビタミンB12の噴霧乾燥製剤、DSM(登録商標)Nutritional Productsで入手可能)。
【0119】
22×9mmの楕円形パンチ及び20kNの圧縮力を使用して、Korsch XL 100回転式打錠機(Korsch AG,ベルリン、ドイツ)で錠剤を圧縮した。
【0120】
次いで、10回の独立したアッセイ決定(Eurofins(登録商標),ドイツ)により行なったHPLC分析)から算出した標準偏差RSD(%)により、ビタミンB12含有量均一性を評価した。
【0121】
下記の表6に示すように、ビタミンB12の2種の噴霧乾燥製剤に関する相対標準偏差(RSD)値は、5%未満であり、このことは、許容可能な含有量均一性を示し、そのため錠剤中のビタミンB12の均一な分布を示す。対照的に、ビタミンB12結晶に関する含有量均一性は、極度に低かった。
【0122】
【0123】
[実施例7(好ましい錠剤の処方)]
下記の表7は、本発明の錠剤の組成を示す。
【0124】
【0125】
表7の錠剤は、下記の特徴の内の少なくともいくつかを有する:
・ この錠剤は非常に硬いが、崩壊時間は短く、錠剤化プロセス中にキャッピングを観察しなかった。
・ 相当量のクエン酸カルシウムを含むにもかかわらず、錠剤厚は通常と比べて高くない。
・ 錠剤は、患者コンプライアンスに悪影響を及ぼさない。2個の、又はさらには3個の別々の錠剤の摂取と比較して、この錠剤は、患者コンプライアンスを増強することが期待される。
・ この錠剤の経口摂取により、メトホルミン誘発性ビタミンB12吸収障害を予防し、及び/又は少なくとも部分的に回復する、回腸中におけるCa2+イオンの量が得られることが期待される。
・ この錠剤の経口摂取により、メトホルミン誘発性ビタミンB12欠乏症を予防し、及び/又は少なくとも部分的に回復する、回腸中におけるCa2+イオンの量が得られる。
・ この錠剤は、医薬品の基準を満たす高い含有量均一性を有する。
【国際調査報告】