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特表2022-537108シリケート系伝熱流体、その調製方法およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-24
(54)【発明の名称】シリケート系伝熱流体、その調製方法およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/10 20060101AFI20220817BHJP
【FI】
C09K5/10 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021571575
(86)(22)【出願日】2020-06-18
(85)【翻訳文提出日】2021-12-07
(86)【国際出願番号】 EP2020067008
(87)【国際公開番号】W WO2020254517
(87)【国際公開日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】19181336.9
(32)【優先日】2019-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517207808
【氏名又は名称】アルテコ エヌヴィ
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】クレイズ, サンドラ
(72)【発明者】
【氏名】リーヴェンス, サージ
(57)【要約】
本発明は、式(I)の芳香族ポリ酸またはその塩を含むシリケート系伝熱流体に関する。前記組成物は、ホウ酸塩または異なる芳香族酸を含む同様の組成物と比較して、アルミニウムおよび鉄合金基材の両方に対して増加した腐食抑制を示すことが見出された。本発明はさらに、前記シリケート系伝熱流体の調製のための濃縮物およびキット、前記シリケート系伝熱流体の調製のための方法、ならびに前記シリケート系伝熱流体を使用する方法および使用に関する。


【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース流体と、シリケートと、式(I)の芳香族ポリ酸またはその塩とを含む組成物であって、
前記ベース流体は、水、アルコールまたはそれらの混合物からなる組成物。
【化1】

[式中、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、COOY、SO(OY)またはPO(OY)から選択され;
Yは水素またはカチオンを表し;
、RおよびRの少なくとも2つが水素ではなく;
、XおよびXは、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシ、アルキル、アリール、アルコール、アルデヒド、ケトン、エステル、アミドまたはアミンから選択される。]
【請求項2】
前記シリケートが、無機ケイ酸塩、好ましくはメタケイ酸アルカリ金属、好ましくはメタケイ酸ナトリウムである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
、XおよびXが、水素、ヒドロキシ、アルキルまたはアルコールから独立して選択され、好ましくはX、XおよびXが、水素、ヒドロキシ、C~CアルキルまたはC~Cアルコールから独立して選択される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
式(I)の芳香族ポリ酸が、式(I)a、(I)b、(I)cまたは(I)dの化合物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【表A】
【請求項5】
前記ベース流体が、水、モノエチレングリコール、モノプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、グリセロールまたはそれらの混合物からなる、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
式(I)の芳香族ポリ酸とシリケートとの重量比が、100:1~1:100の範囲、好ましくは50:1~1:50の範囲、より好ましくは20:1~1:20の範囲、より好ましくは10:1~1:10の範囲、より好ましくは5:1~1:5の範囲、最も好ましくは3:1~1:3の範囲である、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
組成物が、(組成物の総重量に対して)80重量%超、例えば85重量%超、90重量%超、95重量%超、98重量%超、99重量%超または99.5重量%超のベース流体を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
以下のうちの1つ、2つ、または3つをさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
・ モリブデン酸塩、好ましくは無機モリブデン酸塩であって、モリブデン酸塩の量が1ppm(重量)超、好ましくは10ppm(重量)超、好ましくは100ppm(重量)超であるもの;
・ トリアゾール、好ましくはトリルトリアゾールまたはベンゾトリアゾールであって、(組成物の総重量に対して)0.001重量%超、好ましくは0.01重量%超、好ましくは0.1重量%超の量であるもの;および
・ 脂肪族モノカルボキシレート、好ましくはC~C10脂肪族モノカルボキシレートからなる群から選択される脂肪族モノカルボキシレート、より好ましくはC~C脂肪族モノカルボキシレートからなる群から選択される脂肪族モノカルボキシレートであって、(組成物の総重量に対して)0.01重量%超、好ましくは0.1重量%超、好ましくは0.5重量%超の量であるもの。
【請求項9】
即時使用可能な組成物である、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物であって
・ 前記シリケートの濃度は、30~150ppmの範囲内のSi(重量)、好ましくは50~140ppmの範囲内のSi、好ましくは70~130ppmの範囲内のSi、最も好ましくは75~125ppmの範囲内のSiであり;且つ
・ 前記組成物は、90重量%超、好ましくは95重量%超、好ましくは98重量%超、好ましくは99重量%超のベース流体を含む、組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の即時使用可能な組成物を調製するのに適した濃縮物である、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物であって、前記シリケートの濃度は、150ppm超のSi(重量)、好ましくは170ppm超のSi、好ましくは185ppm超のSi、最も好ましくは200ppm超のSiである、組成物。
【請求項11】
前記濃縮物の80重量%超、好ましくは85重量%超、好ましくは90重量%超が、ポリアルコール、好ましくはモノエチレングリコール、モノプロピレングリコール、1,3-プロパンジオールおよびグリセロールからなる群から選択されるポリアルコール、最も好ましくはモノエチレングリコールである、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記濃縮物が、水および/またはアルコールの添加のみによって;好ましくは、水、モノエチレングリコール、モノプロピレングリコール、1,3-プロパンジオールおよび/またはグリセロールの添加のみによって;最も好ましくは、水の添加のみによって、請求項9に記載の即時使用可能な組成物を調製するのに適している、請求項10または11に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1~12からのいずれか一項に記載の組成物を調製するためのキットであって、
(i)水、アルコールまたはそれらの混合物中、好ましくは水、モノエチレングリコール、モノプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、グリセロールまたはそれらの混合物中、より好ましくは水、モノエチレングリコールまたはそれらの混合物中、最も好ましくは水中の、シリケートの第1の溶液を含む第1の容器;および
(ii)水、アルコールまたはそれらの混合物中、好ましくは水、モノエチレングリコール、モノプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、グリセロールまたはそれらの混合物中、より好ましくは水、モノエチレングリコールまたはそれらの混合物中、最も好ましくは水中の、式(I)の芳香族ポリ酸またはその塩の第2の溶液を含む第2の容器
を含み、
前記シリケートの濃度は、(前記第1の容器中の溶液の重量に対して)100ppm超のSi、好ましくは400ppm超のSi、好ましくは1000ppm超のSiであり;且つ
前記芳香族ポリ酸の濃度は、(前記第2の容器中の溶液の総重量に対して)0.1重量%超、好ましくは1重量%超、より好ましくは5重量%超である、キット。
【化2】

[式中、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、COOY、SO(OY)またはPO(OY)から選択され;
Yは水素またはカチオンを表し;
、RおよびRの少なくとも2つが水素ではなく;
、XおよびXは、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシ、アルキル、アリール、アルコール、アルデヒド、ケトン、エステル、アミドまたはアミンから選択される。]
【請求項14】
式(I)の化合物の、伝熱流体の腐食抑制を改善するための、好ましくはシリケートを含む伝熱流体の腐食抑制を改善するための、より好ましくはシリケートを含み、且つホウ酸塩および/または亜硝酸塩フリーの伝熱流体の腐食抑制を改善するための使用。
【化3】

[式中、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、COOY、SO(OY)またはPO(OY)から選択され;
Yは水素またはカチオンを表し;
、RおよびRの少なくとも2つが水素ではなく;
、XおよびXは、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシ、アルキル、アリール、アルコール、アルデヒド、ケトン、エステル、アミドまたはアミンから選択される。]
【請求項15】
a. 内燃機関、ソーラーシステム、燃料電池、電気モーター、発電機、バッテリー、バッテリー電気自動車、または電子機器から選択されるシステム、好ましくは内燃機関において熱を発生させる工程;
b. 請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物を工程aのシステムと接触させる工程;
c. 前記システムから前記組成物に熱を伝達する工程;
d. 前記組成物を熱交換器に通す工程;および
e. 前記組成物から熱を除去する工程
を含む熱交換方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の属する技術分野]
[0001] 本発明は、ホウ酸塩および/または亜硝酸塩などの添加剤フリーで配合することができるシリケート系伝熱流体に関する。本発明はさらに、前記シリケート系伝熱流体の調製のための濃縮物およびキット、前記シリケート系伝熱流体の調製のための方法、ならびに前記シリケート系伝熱流体を使用する方法および使用に関する。
【0002】
[従来技術]
[0002] 伝熱流体は、内燃機関、ソーラーシステム、燃料電池、電気モーター、発電機、電子機器などに関連する熱交換システムにおいて広く使用されている。伝熱流体は、一般に、ベース流体および1つ以上の添加剤から構成される。
【0003】
[0003] 歴史的に、伝熱を考慮すると、水が好ましいベース流体であった。多くの用途において、不凍特性が必要とされ、アルコール、グリコールまたは塩のような凝固点降下剤と混合された水からなるベース流体が使用される。伝熱流体中に存在する添加剤は、凝固点を(さらに)低下させること、熱交換特性を改善すること、腐食を抑制することなどの様々な機能性を得るために使用することができる。伝熱流体は、金属部品(アルミニウム合金、鋳鉄、鋼、銅、黄銅、はんだなど)と連続的に接触するので、それらは、ほとんど常に、1つ以上の腐食防止剤を含有する。
【0004】
[0004] 無機ケイ酸塩などのシリケートは、アルミニウム保護を提供するために特に有用な公知の腐食防止剤である。アルミニウムは、今日のエンジンにおいて代替物としてますます使用されているが、鋳鉄および鋼は、エンジンブロック、シリンダライナ、クランクシャフトおよび排気ガス再循環冷却器などの高馬力エンジンのいくつかの部品に依然として頻繁に使用されている。したがって、高馬力エンジン等に使用される伝熱流体は、追加の腐食防止剤を含む必要がある。追加の腐食防止剤は、通常、鉄合金(例えば鋳鉄/鋼)の腐食防止特性で知られている亜硝酸塩および/またはホウ酸塩などのさらなる無機腐食防止剤の形態である。
【0005】
[0005] 例えば、米国特許第5643493号は、特定量の水、トリアゾール、アルカリ金属水酸化物、ホウ酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩、ケイ酸塩安定剤および消泡剤を含む腐食防止剤濃縮物を記載している。
【0006】
[0006] しかしながら、冷却剤配合物における亜硝酸塩およびホウ酸塩の使用は、関連する健康および環境上の危険に対する認識が高まっているため、プレッシャーを受けている。例えば、伝熱流体中の亜硝酸塩の供給源として使用される亜硝酸ナトリウムは、CLP規則(EC)No1272/2008に従って、急性毒性、経口(カテゴリー3)および急性水生毒性(カテゴリー1)として分類される。伝熱流体中のホウ酸塩の供給源として使用されるホウ砂は、同じ規則の下で再生カテゴリー1Bにおいて毒性として分類される。したがって、ホウ酸塩および/または亜硝酸塩の使用を低減または排除することができる代替の無機ケイ酸塩系冷却剤が必要とされている。
【0007】
[0007] 本発明の目的は、改良された無機ケイ酸塩系伝熱流体を提供することである。
【0008】
[0008] 本発明のさらなる目的は、公知の亜硝酸塩および/またはホウ酸塩含有伝熱流体と比較して、同等または改善された鉄合金(鋳鉄または鋼など)腐食抑制を有しながら、減少した量の亜硝酸塩および/またはホウ酸塩を含む無機ケイ酸塩系伝熱流体を提供することである。
【0009】
[0009] 本発明のさらなる目的は、公知の亜硝酸塩および/またはホウ酸塩含有伝熱流体と比較して、同等または改善された鉄合金(鋳鉄または鋼など)腐食抑制を有しながら、亜硝酸塩および/またはホウ酸塩を含まない無機ケイ酸塩系伝熱流体を提供することである。
【0010】
[0010] 本発明のさらなる目的は、亜硝酸塩および/またはホウ酸塩含有伝熱流体などの公知の伝熱流体と比較して長い耐用年数を有する無機ケイ酸塩系伝熱流体を提供することである。
【0011】
[発明が解決しようとする課題]
[0011] 本発明者らは、驚くべきことに、これらの目的の1つ以上が、式(I)の芳香族ポリ酸またはその塩をさらに含むシリケート系伝熱流体を使用することによって満たされ得ることを見出した。
【化1】

[式中、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、COOY、SO(OY)またはPO(OY)から選択され;
Yは、水素、アルカリ金属カチオン、アンモニウムカチオン、またはこれらの組み合わせを表し;
、RおよびRの少なくとも2つが水素ではなく;
、XおよびXは、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシ、アルキル、アリール、アルコール、アルデヒド、ケトン、エステル、アミドまたはアミンから選択される。]
【0012】
[0012] 添付の実施例に示されるように、シリケートおよび式(I)の化合物を含む組成物は、ホウ酸塩または異なる芳香族酸を含む同様の組成物と比較して、アルミニウムおよび鉄合金基材の両方に対して増加した腐食抑制を示すことが見出された。本発明による組成物を使用することにより、例えば伝熱流体中に使用される亜硝酸塩および/またはホウ酸塩の量を著しく減少させることができ、または完全に排除することさえできることが、本開示に基づいて当業者に理解されるであろう。さらに、本発明による組成物を使用することによって、既知の伝熱流体の耐用年数を延ばすことが可能であり得る。
【0013】
[0013] したがって、第1の態様において、本発明は、ベース流体、シリケートおよび式(I)の芳香族ポリ酸またはその塩を含む、改善された腐食保護を示す組成物を提供する。
【0014】
[0014] 好ましい実施形態において、本発明の組成物は、即時使用可能な(ready-to-use)組成物の形態で提供される。
【0015】
[0015] 好ましい実施形態では、本発明の組成物は、本明細書に記載の即時使用可能な組成物を調製するための濃縮物の形態で提供される。
【0016】
[0016] 別の態様では、本発明は、本明細書に記載の即時使用可能な組成物を調製するためのキットを提供する。
【0017】
[0017] 別の態様では、本発明は、本明細書に記載の組成物を調製する方法を提供する。
【0018】
[0018] 別の態様では、本発明は、濃縮物から本明細書に記載の即時使用可能な組成物を調製する方法を提供する。
【0019】
[0019] 別の態様では、本発明は、キットから本明細書に記載の即時使用可能な組成物を調製する方法を提供する。
【0020】
[0020] 別の態様において、本発明は、式(I)の化合物またはその塩の対応する使用を提供する。
【0021】
[0021] 別の態様では、本発明は、本明細書に記載の即時使用可能な組成物の対応する使用を提供する。
【0022】
[実施形態の説明]
[0022] 第1の態様において、本発明は、ベース流体と、シリケートと、式(I)の芳香族ポリ酸またはその塩とを含む組成物であって、ベース流体は、水、アルコールまたはそれらの混合物からなる組成物を提供する。
【化2】

[式中、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、COOY、SO(OY)またはPO(OY)から選択され;
Yは水素またはカチオンを表し;
、RおよびRの少なくとも2つが水素ではなく;
、XおよびXは、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシ、アルキル、アリール、アルコール、アルデヒド、ケトン、エステル、アミドまたはアミンから選択される。]
【0023】
[0023] 非常に好ましい実施形態では、組成物は、(組成物の総重量に対して)80重量%超、例えば85重量%超、90重量%超、95重量%超、98重量%超、99重量%超または99.5重量%超のベース流体を含む。
【0024】
[シリケート]
[0024] 本発明による組成物に使用されるシリケートは、無機ケイ酸塩または有機シリケートであってよい。
【0025】
[0025] 本発明の好ましい実施形態では、シリケートは無機ケイ酸塩である。本明細書で使用するとき、用語「無機ケイ酸塩」は、アニオンがケイ素および酸素からなる任意の塩を指す。
【0026】
[0026] 本発明の好ましい実施形態では、シリケートは、メタケイ酸カリウム、オルトケイ酸ナトリウム、二ケイ酸カリウム、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム、メタケイ酸リチウム、オルトケイ酸リチウム、二ケイ酸ルビジウム、四ケイ酸ルビジウム、混合ケイ酸塩、ケイ酸テトラメチルアンモニウム、ケイ酸テトラエチルアンモニウム、ケイ酸アンモニウム、ケイ酸テトラヒドロキシエチルアンモニウム、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される無機ケイ酸塩である。本発明の非常に好ましい実施形態において、シリケートは、アルカリ金属メタケイ酸塩、好ましくはメタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム、およびそれらの組み合わせから選択されるアルカリ金属メタケイ酸塩、最も好ましくはメタケイ酸ナトリウムである。
【0027】
[0027] 本発明の実施形態において、シリケートは、Si(OR)型の有機オルトケイ酸エステルなどの有機ケイ酸エステルであり、式中、Rはアルキル、アリールまたはヒドロキシアルキル基であり、好ましくはRはC~Cアルキル、アリールまたはヒドロキシアルキル基であり、好ましくはRはメチル、エチルまたはプロピルであり、最も好ましくはRはメチルである。
【0028】
[芳香族ポリ酸]
[0028] 本明細書で使用される「COOY」、「SO(OY)」および「PO(OY)」という表現は、それぞれ、カルボン酸またはその塩、スルホン酸またはその塩、およびホスホン酸またはその塩を表すことが当業者には理解されよう。
【0029】
[0029] 本教示に基づいて、本発明による組成物に含まれる芳香族ポリ酸は、遊離酸形態、塩、典型的には塩基付加塩の形態、異なる塩の混合物の形態、または遊離酸と1つ以上の塩形態との混合物の形態で提供され得ることが、当業者によって理解される。本発明の好ましい実施形態では、Yが水素、アルカリ金属カチオン、アンモニウムカチオンまたはそれらの組合せを表す、本明細書に記載の組成物が提供される。本発明の実施形態において、Yはカチオンを表す。原則として、本発明は、塩の任意の特定の(群)に限定されず、Yは、任意のカチオンを表すことができ、好ましくは、Yは、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、アンモニウムカチオン、またはこれらの組み合わせを表し、より好ましくは、Yは、アルカリ金属カチオン、アンモニウムカチオン、またはこれらの組み合わせを表す。実施形態において、アルカリ金属カチオンは、カリウムまたはナトリウム、好ましくはナトリウムである。いくつかの実施形態では、アンモニウムカチオンは、式(NRR’R’’R’’’)で表される第4級アンモニウムカチオンであり、式中、R、R’、R’’およびR’’’は、分岐または直鎖C~Cアルキルおよび分岐または直鎖C~Cヒドロキシアルキルの群から、好ましくはメチル、エチル、n-プロピルおよびイソプロピルから独立して選択される。いくつかの実施形態では、アンモニウムカチオンは、式(HNRR’R’’)で表されるプロトン化第三級アミンであり、式中、R、R’およびR’’は、分岐または直鎖C~Cアルキルおよび分岐または直鎖C~Cヒドロキシアルキルの群から、好ましくはメチル、エチル、n-プロピルおよびイソプロピルから独立に選択される。
【0030】
[0030] 本発明の好ましい実施形態では、X、XおよびXが独立して水素、ヒドロキシ、アルキルまたはアルコールから選択され、好ましくはX、XおよびXが独立して水素、ヒドロキシ、C~CアルキルまたはC~Cアルコールから選択される、本明細書に記載の組成物が提供される。
【0031】
[0031] 本発明の特定の実施形態では、X、XおよびXの少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個、より好ましくは全てが、水素、ヒドロキシ、C~CアルキルまたはC~Cアルコールを表す、本明細書に記載の組成物が提供される。
【0032】
[0032] 本発明の特定の実施形態において、X、XおよびXの少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個、より好ましくは全てが水素を表す、本明細書に記載の組成物が提供される。
【0033】
[0033] 本発明の特定の実施形態では、X、XおよびXの少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個、より好ましくは全てがヒドロキシを表す、本明細書に記載の組成物が提供される。
【0034】
[0034] 本発明の特定の実施形態では、X、XおよびXの少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個、より好ましくは全てが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチルまたはtert-ブチルから選択されるアルキル基を表す、本明細書に記載の組成物が提供される。
【0035】
[0035] 本発明の特定の実施形態では、X、XおよびXの少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個、より好ましくは全てが、メチルまたはエチルから選択されるアルキル基を表す、本明細書に記載の組成物が提供される。
【0036】
[0036] 本発明の特定の実施形態では、X、XおよびXのうちの少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個、より好ましくは全てが、フェニル、2-トリル、3-トリル、4-トリル、3-o-キシリル、4-o-キシリル、2-m-キシリル、4-m-キシリル、2-p-キシリル、ベンジル、1-ヒドロキシフェニル、2-ヒドロキシフェニル、3-ヒドロキシフェニル、4-ヒドロキシフェニル、1-o-クレゾリル、3-o-クレゾリル、4-o-クレゾリル、5-o-クレゾリル、6-o-クレゾリル、1-m-クレゾリル、2-m-クレゾリル、4-m-クレゾリル、5-m-クレゾリル、6-m-クレゾリル、1-p-クレゾリル、1-p-クレゾリル、3-p-クレゾリル、1-アミノフェニル、2-アミノフェニル、3-アミノフェニル、2-メトキシフェニル、3-メトキシフェニル、4-メトキシフェニル、1-ナフチルまたは2-ナフチルから選択され、好ましくはフェニルまたは4―ヒドロキシフェニルから選択される。
【0037】
[0037] 本発明の特定の実施形態において、X、XおよびXの少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個、より好ましくは全てが、アルコール、好ましくは脂肪族分岐および直鎖C~Cヒドロキシアルキルから選択されるアルコール、好ましくはヒドロキシメチル、1-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシエチル、1-ヒドロキシプロピル、2-ヒドロキシプロピル、3-ヒドロキシプロピル、1-ヒドロキシブチル、2-ヒドロキシブチル、3-ヒドロキシブチル、4-ヒドロキシブチルから選択されるアルコールを表す、本明細書に記載の組成物が提供される。
【0038】
[0038] 本発明の特定の実施形態では、X、XおよびXの少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個、より好ましくは全てが、-(CH(CO)Zから選択されるアルデヒドまたはケトンを表し、nが、0、1、2、3、4または5であり、Zが、水素、分岐または直鎖C~Cアルキル、好ましくは水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチルまたはtert-ブチルからなる群から選択される、本明細書に記載の組成物が提供される。
【0039】
[0039] 本発明の特定の実施形態では、X、XおよびXの少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個、より好ましくは全てが、-(CH(COO)Zから選択されるエステルを表し、nが、0、1、2、3、4または5であり、Zが、分岐または直鎖C~Cアルキルからなる群から、好ましくは水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチルまたはtert-ブチルから選択される、本明細書に記載の組成物が提供される。
【0040】
[0040] 本発明の特定の実施形態では、X、XおよびXの少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個、より好ましくは全てが、-(CH(CON)Zから選択されるアミドを表し、nが、0、1、2、3、4または5であり、ZおよびZが、水素、分岐または直鎖C~Cアルキルからなる群から、好ましくは水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチルまたはtert-ブチルから独立して選択される、本明細書に記載の組成物が提供される。
【0041】
[0041] 本発明の特定の実施形態では、X、XおよびXの少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個、より好ましくは全てが、-(CHNZから選択されるアミンを表し、nが、0、1、2、3、4または5であり、ZおよびZが、水素、分岐または直鎖C~Cアルキルおよび分岐または直鎖C~Cヒドロキシアルキルからなる群から、好ましくは水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチルまたはtert-ブチルから独立して選択される、本明細書に記載の組成物が提供される。
【0042】
[0042] 本発明の好ましい実施形態では、R、RおよびRの1つがCOOYである、本明細書に記載の組成物が提供される。
【0043】
[0043] 本発明の好ましい実施形態では、R、RおよびRの1つがCOOYであり、R、RおよびRのいずれも水素ではない、本明細書に記載の組成物が提供される。
【0044】
[0044] 本発明の好ましい実施形態では、R、RおよびRのうちの1つがCOOYであり、X、XおよびXがそれぞれ独立して水素およびメチルから選択される、本明細書に記載の組成物が提供される。
【0045】
[0045] 本発明の好ましい実施形態では、R、RおよびRのうちの1つがCOOYであり、X、XおよびXが水素である、本明細書に記載の組成物が提供される。
【0046】
[0046] 本発明の好ましい実施形態では、R、RおよびRの1つが水素である、本明細書に記載の組成物が提供される。
【0047】
[0047] 本発明の非常に好ましい実施形態では、R、RおよびRがそれぞれ独立して水素、COOYまたはSO(OY)から選択される、本明細書に記載の組成物、好ましくは即時使用可能な組成物が提供される。
【0048】
[0048] 本発明の非常に好ましい実施形態では、式(I)の芳香族ポリ酸が、式(I)a、(I)b、(I)cまたは(I)dの化合物である、本明細書に記載の組成物が提供される。
【表A】
【0049】
[0049] したがって、本発明の好ましい実施形態では、メタケイ酸アルカリ金属、好ましくはメタケイ酸ナトリウムと、式(I)の芳香族ポリ酸またはその塩とを含む組成物であって、
ベース流体は、水、モノエチレングリコール、モノプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、グリセロールまたはそれらの混合物からなり;且つ
前記組成物が、(前記組成物の総重量に対して)80重量%超のベース流体を含む組成物を提供する。
【化3】

[式中、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、COOY、SO(OY)またはPO(OY)から選択され;
Yは水素またはカチオンを表し;
、RおよびRの少なくとも2つが水素ではなく;
、RおよびRの1つはCOOYであり;
、XおよびXは水素である。]
【0050】
[シリケートおよび芳香族ポリ酸の濃度]
[0050] 好ましい実施形態では、本発明の組成物は、本明細書に記載のシリケートを10ppm超のSi(重量)、好ましくは100ppm超のSiの量で含むように提供される。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、本明細書に記載のシリケートを10000ppm未満のSi(重量)、好ましくは2000ppm未満のSiの量で含むように提供される。
【0051】
[0051] 好ましい実施形態において、本発明の組成物は、(組成物の総重量に対して)0.001重量%超の式(I)の芳香族ポリ酸、好ましくは0.01重量%超の式(I)の芳香族ポリ酸を含むように提供される。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、(組成物の総重量に対して)20重量%未満の式(I)の芳香族ポリ酸、好ましくは10重量%未満の式(I)の芳香族ポリ酸を含むように提供される。
【0052】
[0052] 式(I)の芳香族ポリ酸が塩の形態で使用される場合、本明細書で使用される芳香族ポリ酸の量は、芳香族ポリ酸アニオンの量を指す(すなわち、カチオン性対イオンの重量を除く)。
【0053】
[0053] 好ましい実施形態では、本発明の組成物は、式(I)の芳香族ポリ酸対シリケートの重量比が、100:1~1:100の範囲内、好ましくは50:1~1:50の範囲内、より好ましくは20:1~1:20の範囲内、より好ましくは10:1~1:10の範囲内、より好ましくは5:1~1:5の範囲内、最も好ましくは3:1~1:3の範囲内であるように提供される。本明細書で使用するとき、芳香族ポリ酸が塩の形態で使用される場合、および/または、シリケートが無機ケイ酸塩である場合、重量比は、芳香族ポリ酸アニオンおよびケイ酸塩アニオンに基づいて計算される(すなわち、カチオン性対イオンの重量を除く)。
【0054】
[ベース流体]
[0054] 本発明の実施形態では、ベース流体は、水、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、モノプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ペンタプロピレングリコール、ヘキサプロピレングリコール、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフルフリル、エトキシル化フルフリル、グリセロールのジメチルエーテル、ソルビトール、1,2,6-ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、メトキシエタノール、およびグリセロールからなる。
【0055】
[0055] 本明細書で使用される場合、「モノエチレングリコール」は、「エタン-1,2-ジオール」を意味すると解釈されるべきであり、「MEG」と互換的に称される。
【0056】
[0056] 本明細書で使用される場合、「モノプロピレングリコール」は、「プロパン-1,2-ジオール」を意味すると解釈されるべきであり、互換的に「MPG」と呼ばれる。
【0057】
[0057] 本発明の非常に好ましい実施形態において、ベース流体は、水、モノエチレングリコール、モノプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、グリセロールまたはそれらの混合物からなる。
【0058】
[0058] 本発明の実施形態では、ベース流体は、(ベース流体の重量に対して)50重量%超の水、好ましくは70重量%超、好ましくは85重量%超、好ましくは95重量%超の水を含む。本発明の実施形態では、ベース流体は水からなる。
【0059】
[0059] 本発明の実施形態では、ベース流体は、(ベース流体の重量に対して)50重量%超、好ましくは70重量%超、好ましくは85重量%超、好ましくは95重量%超のモノエチレングリコールを含む。本発明の実施形態では、ベース流体はモノエチレングリコールからなる。
【0060】
[0060] 本発明の実施形態では、ベース流体は、(ベース流体の重量に対して)50重量%超のモノプロピレングリコール、好ましくは70重量%超、好ましくは85重量%超、好ましくは95重量%超のモノプロピレングリコールを含む。本発明の実施形態では、ベース流体はモノプロピレングリコールからなる。
【0061】
[0061] 本発明の実施形態において、ベース流体は、(ベース流体の重量に対して)50重量%超の1,3-プロパンジオール、好ましくは70重量%超、好ましくは85重量%超、好ましくは95重量%超の1,3-プロパンジオールを含む。本発明の実施形態では、ベース流体は1,3-プロパンジオールからなる。
【0062】
[0062] 本発明の実施形態では、ベース流体は、(ベース流体の重量に対して)50重量%超のグリセロール、好ましくは70重量%超、好ましくは85重量%超、好ましくは95重量%超のグリセロールを含む。本発明の実施形態では、ベース流体はグリセロールからなる。
【0063】
[0063] 本発明の実施形態では、本明細書で提供される組成物は、モノエチレングリコール、モノプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、およびグリセロールを含まない。本発明の実施形態において、本明細書で提供される組成物は、脂肪族ポリオールフリーである。
【0064】
[0064] 当業者によって理解されるように、ベース流体は、通常、「適量(quantum satis)」で添加され、したがって、その量は、特に限定されない。本発明の実施形態では、組成物は、99.9重量%未満(組成物の総重量に対して)、例えば99.8重量%未満、99.5重量%未満または99重量%未満のベース流体を含む。
【0065】
[ホウ酸塩/亜硝酸塩フリー]
[0065] 本発明の非常に好ましい実施形態では、本明細書で提供される組成物は、無機ホウ酸塩を実質的に含まない。実施形態において、組成物は、1000ppm(重量)未満の無機ホウ酸塩、好ましくは200ppm(重量)未満、好ましくは50ppm(重量)未満、より好ましくは10ppm(重量)未満の無機ホウ酸塩を含む。
【0066】
[0066] 無機ホウ酸塩が塩の形態で使用される場合、本明細書で使用される無機ホウ酸塩の量は、ホウ酸アニオンの量を指す(すなわち、カチオン性対イオンの重量を除く)。
【0067】
[0067] 本発明の非常に好ましい実施形態では、本明細書で提供される組成物は、ホウ酸塩を実質的に含まない。実施形態において、組成物は、1000ppm(重量)未満のホウ酸塩、好ましくは200ppm(重量)未満、好ましくは50ppm(重量)未満、より好ましくは10ppm(重量)未満のホウ酸塩を含む。本明細書で使用される「ホウ酸塩」という用語は、無機および有機ホウ酸塩の両方を指す。
【0068】
[0068] 本発明の非常に好ましい実施形態では、本明細書で提供される組成物は、無機亜硝酸塩を実質的に含まない。実施形態において、組成物は、1000ppm(重量)未満の無機亜硝酸塩、好ましくは200ppm(重量)未満、好ましくは50ppm(重量)未満、より好ましくは10ppm(重量)未満の無機亜硝酸塩を含む。
【0069】
[0069] 本発明の好ましい実施形態では、本明細書で提供される即時使用可能な組成物は、亜硝酸塩を実質的に含まない。実施形態において、即時使用可能な組成物は、1000ppm(重量)未満の亜硝酸塩、好ましくは200ppm(重量)未満、好ましくは50ppm(重量)未満、より好ましくは10ppm(重量)未満の亜硝酸塩を含む。
【0070】
[0070] 無機亜硝酸塩が塩の形態で使用される場合、本明細書で使用される無機亜硝酸塩の量は、亜硝酸アニオンの量を指す(すなわち、カチオン性対イオンの重量を除く)。
【0071】
[0071] 本発明の非常に好ましい実施形態では、本明細書で提供される組成物は、無機亜硝酸塩および無機ホウ酸塩を実質的に含まない。実施形態において、組成物は、1000ppm(重量)未満、好ましくは200ppm(重量)未満、好ましくは50ppm(重量)未満、より好ましくは10ppm(重量)未満の無機亜硝酸塩および無機ホウ酸塩の合計量を含む。
【0072】
[0072] 本発明の好ましい実施形態では、本明細書で提供される組成物は、亜硝酸塩およびホウ酸塩を実質的に含まない。実施形態において、組成物は、1000ppm(重量)未満、好ましくは200ppm(重量)未満、好ましくは50ppm(重量)未満、より好ましくは10ppm(重量)未満の亜硝酸塩およびホウ酸塩の合計量を含む。
【0073】
[pH]
[0073] 本発明の好ましい実施形態では、6.5~11、より好ましくは7~9のpHを有する、本明細書で定義される組成物が提供される。
【0074】
[腐食防止]
[0074] 本明細書を通して説明されるように、本発明による組成物は、改善された腐食抑制を示す。したがって、本発明の好ましい実施形態では、組成物中に沈められた鋳鉄クーポン(EN-GJL-250,DIN EN 1561)が、MTV5061(2000)(加熱)に従って試験したときに20mg未満、好ましくは15mg未満の重量損失を示し、かつ/またはアルミニウムクーポン(EN AC-AlSi10Mg(a)T6、DIN EN1706)が、MTV5061(2000)(加熱)に従って試験したときに10mg未満、好ましくは2mg未満の重量損失を示す、本明細書で定義される組成物が提供される。
【0075】
[添加剤]
[0075] 好ましい実施形態では、本発明の組成物は、腐食防止剤、抗酸化剤、耐摩耗剤、界面活性剤、消泡剤からなる群から選択される1つ以上の添加剤をさらに含む。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、(組成物の総重量に対して)0.001~10重量%、好ましくは0.01-5重量%の範囲内の量の前記添加剤のうちの1つ以上をさらに含む。
【0076】
[0076] 好ましい実施形態において、本発明の組成物は、チアゾール、トリアゾール、ポリオレフィン、ポリアルキレンオキシド、シリコーン油、脂肪族モノカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂肪族トリカルボン酸、モリブデン酸塩、およびリン酸塩からなる群から選択される1つ以上の添加剤をさらに含む。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、(組成物の総重量に対して)0.001~10重量%、好ましくは0.01~5重量%の範囲内の量の前記添加剤のうちの1つ以上をさらに含む。
【0077】
[0077] 本発明の好ましい実施形態では、トリアゾールまたはチアゾール、好ましくは芳香族トリアゾールまたはチアゾールをさらに含む、本明細書で定義される組成物が提供される。本発明の好ましい実施形態では、トリルトリアゾール、ベンゾトリアゾールまたはそれらの組合せからなる群から選択される1種または複数のトリアゾールをさらに含む、本明細書で定義される組成物が提供される。
【0078】
[0078] 本発明の実施形態では、(組成物の総重量に対して)0.001重量%超、好ましくは0.01重量%超、好ましくは0.1重量%超、および/または、10重量%未満、好ましくは5重量%未満、好ましくは3重量%未満の量のトリアゾールまたはチアゾール、好ましくはトリルトリアゾールまたはベンゾトリアゾールをさらに含む、本明細書で定義される組成物が提供される。
【0079】
[0079] 本発明の実施形態では、消泡剤をさらに含む、本明細書で定義される組成物が提供される。好ましくは、消泡剤は、ポリオレフィン、ポリアルキレンオキシド、ケイ素ポリマー(3Dケイ素ポリマーなど)またはシリコーン油からなる群から選択される。
【0080】
[0080] 本発明の実施形態では、消泡剤を(組成物の総重量に対して)0.001重量%超、好ましくは0.005重量%超、好ましくは0.01重量%超、および/または、10重量%未満、好ましくは5重量%未満、好ましくは3重量%未満の量でさらに含む、本明細書で定義される組成物が提供される。
【0081】
[0081] 本発明の実施形態では、芳香族カルボキシレート、脂肪族モノカルボキシレート、脂肪族ジカルボキシレート、脂肪族トリカルボキシレート、モリブデン酸塩、およびリン酸塩からなる群から選択される腐食防止剤をさらに含む、本明細書で定義される組成物が提供される。
【0082】
[0082] 本発明の実施形態では、脂肪族モノカルボキシレート、好ましくはC~C12脂肪族モノカルボキシレートからなる群から選択される脂肪族モノカルボキシレート、好ましくはC~C10脂肪族モノカルボキシレートからなる群から選択される脂肪族モノカルボキシレート、より好ましくはC~C脂肪族モノカルボキシレートからなる群から選択される脂肪族モノカルボキシレートを、(組成物の総重量に対して)0.01重量%超、好ましくは0.1重量%超、好ましくは0.5重量%超、および/または、10重量%未満、好ましくは5重量%未満、好ましくは3重量%未満の量でさらに含む、本明細書で定義される組成物が提供される。
【0083】
[0083] 本発明の実施形態では、脂肪族ジカルボキシレート、好ましくはC~C16脂肪族ジカルボキシレートからなる群から選択される脂肪族ジカルボキシレートを、(組成物の総重量に対して)0.01重量%超、好ましくは0.1重量%超、好ましくは0.3重量%超、および/または、10重量%未満、好ましくは5重量%未満、好ましくは3重量%未満の量でさらに含む、本明細書で定義される組成物が提供される。
【0084】
[0084] 本発明の実施形態では、脂肪族トリカルボキシレート、好ましくはC~C18脂肪族トリカルボキシレートからなる群から選択される脂肪族トリカルボキシレートを、(組成物の総重量に対して)0.001重量%超、好ましくは0.005重量%超、好ましくは0.01重量%超、および/または、10重量%未満、好ましくは5重量%未満、好ましくは3重量%未満の量でさらに含む、本明細書で定義される組成物が提供される。
【0085】
[0085] 本発明の実施形態では、芳香族カルボキシレート、好ましくは、ベンゾエート、ベンゼン-1,2-ジカルボキシレート、ベンゼン-1,2,3-トリカルボキシレート、ベンゼン-1,2,4-トリカルボキシレート、ベンゼン-1,4-ジカルボキシレートおよびそれらの組合せからなる群から選択される芳香族カルボキシレートを、(組成物の総重量に対して)0.001重量%超、好ましくは0.005重量%超、好ましくは0.01重量%超、および/または、10重量%未満、好ましくは5重量%未満、好ましくは3重量%未満の量でさらに含む、本明細書で定義される組成物が提供される。
【0086】
[0086] 本発明の実施形態では、モリブデン酸塩、好ましくは無機モリブデン酸塩を、1ppm(重量)超、好ましくは10ppm超、好ましくは100ppm超、および/または、10000ppm未満、好ましくは1000ppm未満、好ましくは500ppm未満の量でさらに含む、本明細書で定義される組成物が提供される。
【0087】
[0087] モリブデン酸塩が塩の形態で使用される場合、本明細書で使用されるモリブデン酸塩の量は、モリブデン酸塩アニオンの量を指す(すなわち、カチオン性対イオンの重量を除く)。
【0088】
[0088] 本発明の実施形態では、リン酸塩、好ましくは無機リン酸塩を、1ppm(重量)超、好ましくは10ppm超、好ましくは100ppm超、および/または、10000ppm未満、好ましくは1000ppm未満、好ましくは500ppm未満の量でさらに含む、本明細書で定義される組成物が提供される。
【0089】
[0089] リン酸塩が塩の形態で使用される場合、本明細書で使用されるリン酸塩の量は、リン酸塩アニオンの量を指す(すなわち、カチオン性対イオンの重量を除く)。
【0090】
[0090] 本発明の実施形態では、抗酸化剤をさらに含む、本明細書で定義される組成物が提供される。好ましくは、酸化防止剤は、2,6-ジ-t-ブチルメチルフェノールおよび4,4’-メチレン-ビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)などのフェノール;芳香族アミン、例えばp,p-ジオクチルフェニルアミン、モノオクチルジフェニルアミン、フェノチアジン、3,7-ジオクチルフェノチアジン、フェニル-1-ナフチルアミン、フェニル-2-ナフチルアミン、アルキルフェニル-1-ナフタルアミンおよびアルキルフェニル-2-ナフタルアミン、ならびに硫黄含有化合物、例えばジチオホスフェート、ホスファイト、スルフィドおよびジチオ金属塩、例えばベンゾチアゾール、錫ジアルキルジチオホスフェートおよび錫ジアリールジチオホスフェートからなる群から選択される。
【0091】
[0091] 本発明の実施形態では、(組成物の総重量に対して)0.001重量%超、好ましくは0.005重量%超、好ましくは0.01重量%超、および/または、10重量%未満、好ましくは5重量%未満、好ましくは3重量%未満の量の酸化防止剤をさらに含む、本明細書で定義される組成物が提供される。
【0092】
[0092] 本発明の実施形態では、耐摩耗剤をさらに含む、本明細書で定義される組成物が提供される。好ましくは、耐摩耗剤は、ホスフェートエステル、ホスファイト、チオホスファイト、例えば亜鉛ジアルキルジチオホスフェート、亜鉛ジアリールジチオホスフェート、トリクレジルホスフェート、塩素化ワックス、硫化脂肪およびオレフィン、例えばチオジプロピオン酸エステル、ジアルキルスルフィド、ジアルキルポリスルフィド、アルキルメルカプタン、ジベンゾチオフェンおよび2,2’-ジチオビス(ベンゾチアゾール);有機鉛化合物、脂肪酸、ハロゲン置換有機ケイ素化合物、およびハロゲン置換リン化合物からなる群から選択される。
【0093】
[0093] 本発明の実施形態では、(組成物の総重量に対して)0.001重量%超、好ましくは0.005重量%超、好ましくは0.01重量%超、および/または、10重量%未満、好ましくは5重量%未満、好ましくは3重量%未満の量の耐摩耗剤をさらに含む、本明細書で定義される組成物が提供される。
【0094】
[0094] 本発明の実施形態では、界面活性剤をさらに含む、本明細書で定義される組成物が提供される。好ましくは、界面活性剤は、R-Xで表される化合物の塩であるアニオン性界面活性剤などのアニオン性界面活性剤からなる群から選択される。
ここで、Xは硫酸基、リン酸基、スルホン酸基またはカルボン酸基を表し、好ましくは硫酸基であり;Rは
-分枝鎖または直鎖C~C24アルキル基;
-分岐鎖または直鎖のモノ不飽和C~C24アルケニル基;
-分岐鎖または直鎖多価不飽和C~C24アルケニル基;
-C~C15アルキルを含むアルキルベンゼン基;
-C~C15アルケニルを含むアルケニルベンゼン基;
-C~C15アルキルを含むアルキルナフタレン基;
-C~C15アルケニルを含むアルケニルナフタレン基;
-C~C15アルキルを含むアルキルフェノール基;および
-C~C15アルケニルを含むアルケニルフェノール基
から選択される。
【0095】
[0095] 本発明の実施形態では、(組成物の総重量に対して)0.001重量%超、好ましくは0.005重量%超、好ましくは0.01重量%超、および/または、10重量%未満、好ましくは5重量%未満、好ましくは3重量%未満の量の界面活性剤をさらに含む、本明細書で定義される組成物が提供される。
【0096】
[0096] 非常に好ましい実施形態では、本明細書に記載の組成物は、伝熱流体、好ましくは、内燃機関、ソーラーシステム、燃料電池、電気モーター、発電機、バッテリー、バッテリー電気自動車、または電子機器での使用に適した伝熱流体、最も好ましくは、内燃機関での使用に適した伝熱流体(エンジン冷却剤とも呼ばれる)である。
【0097】
[0097] 当業者によって理解されるように、(例えば)意図される用途に応じて、本発明による組成物は、様々な濃度で配合され、使用され得る。したがって、本発明は、シリケート、式(I)の芳香族ポリ酸または本明細書に記載の他の添加剤の濃度によって特に限定されない。したがって、想定される用途に応じて、本明細書に記載の組成物は、そのまま使用するのに適していてもよく、または使用前にベース流体による希釈を必要としてもよい。しかしながら、本発明者らは、本発明の組成物を、内燃機関の冷却剤としての使用に適し得る即時使用可能な組成物の形態で、または前記即時使用可能な組成物を調製するのに適した濃縮物の形態で提供することが特に有利であることを見出した。
【0098】
[即時使用可能]
[0098] 本発明の非常に好ましい実施形態では、本明細書に記載の組成物は、即時使用可能な組成物の形態:
・ シリケートの濃度は、30~150ppmの範囲内のSi(重量)、好ましくは50~140ppmの範囲内のSi、好ましくは70~130ppmの範囲内のSi、最も好ましくは75~125ppmの範囲内のSiである;および
・ 組成物は、90重量%超、好ましくは95重量%超、好ましくは98重量%超、好ましくは99重量%超のベース流体を含む
で提供される。
【0099】
[0099] 本発明の実施形態において、本明細書で提供される即時使用可能な組成物は、35ppm超のSi(重量)、40ppm超のSi、45ppm超のSi、55ppm超のSi、60ppm超のSi、65ppm超のSi、または70ppm超のSiの濃度でシリケートを含む。
【0100】
[00100] 本発明の実施形態では、本明細書で提供される即時使用可能な組成物は、150ppm未満のSi(重量)、145ppm未満のSi、140ppm未満のSi、135ppm未満のSi、または130ppm未満のSiの濃度でシリケートを含む。本発明の実施形態において、本明細書で提供される即時使用可能な組成物は、150ppm未満のSi(重量)、145ppm未満のSi、140ppm未満のSi、135ppm未満のSi、または125ppm未満のSiを含む。
【0101】
[00101] 本発明の実施形態において、本明細書で提供される即時使用可能な組成物は、(組成物の総重量に対して)0.002重量%超、好ましくは0.004重量%超、好ましくは0.008重量%超、好ましくは0.01重量%超、好ましくは0.012重量%超、好ましくは0.015重量%超、好ましくは0.020重量%超、好ましくは0.025重量%超、好ましくは0.03重量%超、好ましくは0.04重量%超、好ましくは0.05重量%超、好ましくは0.07重量%超の式(I)の芳香族ポリ酸を含む。
【0102】
[00102] 本発明の実施形態において、本明細書で提供される即時使用可能な組成物は、(組成物の総重量に対して)1重量%未満の式(I)の芳香族ポリ酸、好ましくは0.5重量%未満、より好ましくは0.25重量%未満の式(I)の芳香族ポリ酸を含む。
【0103】
[00103] 本発明の実施形態において、本明細書で提供される即時使用可能な組成物は、(組成物の総重量に対して)5重量%未満の式(I)の芳香族ポリ酸、好ましくは2重量%未満、好ましくは1重量%未満、好ましくは0.80重量%未満、好ましくは0.75重量%未満、好ましくは0.70重量%未満、好ましくは0.65重量%未満、好ましくは0.60重量%未満、好ましくは0.55重量%未満、好ましくは0.50重量%未満、好ましくは0.45重量%未満、好ましくは0.40重量%未満、好ましくは0.35重量%未満、好ましくは0.30重量%未満の式(I)の芳香族ポリ酸を含む。
【0104】
[00104] 好ましい実施形態では、本明細書で提供される即時使用可能な組成物は、(組成物の総重量に対して)0.001~5重量%の式(I)の芳香族ポリ酸、好ましくは0.01~1重量%、より好ましくは0.05~0.25重量%の式(I)の芳香族ポリ酸を含む。
【0105】
[00105] 好ましい実施形態では、本明細書で提供される即時使用可能な組成物は、(組成物の総重量に対して)30~70重量%のポリアルコール、好ましくはモノエチレングリコール、モノプロピレングリコール、1,3-プロパンジオールおよびグリセロールからなる群から選択されるポリアルコール、最も好ましくはモノエチレングリコールを含む。
【0106】
[濃縮物]
[00106] 本発明の好ましい実施形態では、本明細書に記載の組成物は、本明細書に記載の即時使用可能な組成物を調製するのに適した濃縮物の形態で提供される。
【0107】
[00107] 好ましい実施形態では、濃縮物は、水および/またはアルコールの添加によって;好ましくは、水、モノエチレングリコール、モノプロピレングリコール、1,3-プロパンジオールおよび/またはグリセロールの添加によって;最も好ましくは、水の添加によって、本明細書に記載の即時使用可能な組成物を調製するのに適している。非常に好ましい実施形態では、濃縮物は、水および/またはアルコールを添加のみによって;好ましくは、水、モノエチレングリコール、モノプロピレングリコール、1,3-プロパンジオールおよび/またはグリセロールの添加のみによって;最も好ましくは水の添加のみによって、即時使用可能な組成物を調製するのに適している(すなわち、濃縮物から本明細書に記載の即時使用可能な組成物を調製するために、他の成分を添加する必要がない)。
【0108】
[00108] 実施形態において、シリケートの濃度が150ppm超のSi(重量)、好ましくは170ppm超のSi、好ましくは185ppm超のSi、最も好ましくは200ppm超のSiである濃縮物が提供される。
【0109】
[00109] 好ましい実施形態では、シリケートの濃度が151~300ppmの範囲内のSi(重量)、好ましくは151~275ppmの範囲内のSi、より好ましくは180~260ppmの範囲内のSi、最も好ましくは190~250ppmの範囲内のSiである濃縮物が提供される。
【0110】
[00110] 好ましい実施形態では、シリケートの濃度が301~10000ppmの範囲内のSi(重量)、好ましくは500~9000ppmの範囲内のSi、より好ましくは800~8000ppmの範囲内のSi、最も好ましくは1000~7000ppmの範囲内のSiである濃縮物が提供される。
【0111】
[00111] 好ましい実施形態では、濃縮物は、本明細書で定義されるベース流体;本明細書で定義されるシリケート;および式(I)の芳香族ポリ酸又はその塩を含み、ここでシリケートの濃度が150ppm超のSi(重量)、好ましくは170ppm超のSi、好ましくは185ppm超のSi、最も好ましくは200ppm超のSiであり、且つ濃縮物の80重量%超、好ましくは85重量%超、好ましくは90重量%超がポリアルコール、好ましくはモノエチレングリコール、モノプロピレングリコール、1,3-プロパンジオールおよびグリセロールからなる群から選択されるポリアルコール、最も好ましくはモノエチレングリコールである。
【0112】
[00112] 好ましい実施形態では、濃縮物は、本明細書で定義されるベース流体;本明細書で定義されるシリケート;および式(I)の芳香族ポリ酸又はその塩を含み、ここでシリケートの濃度が150ppm超のSi(重量)、好ましくは170ppm超のSi、好ましくは185ppm超のSi、最も好ましくは200ppm超のSiであり、且つ濃縮物の80重量%超、好ましくは85重量%超、好ましくは90重量%超が水である。
【0113】
[00113] 好ましい実施形態では、濃縮物は、本明細書で定義されるベース流体を含む。本明細書で定義されるシリケート;本明細書で定義される式(I)の芳香族ポリ酸またはその塩前記濃縮物は、(濃縮物の総重量に対して)0.01重量%超、好ましくは0.09重量%超の量の芳香族ポリ酸を含む。
【0114】
[00114] 実施形態において、濃縮物は、本明細書で定義されるベース流体;本明細書で定義されるシリケート;および本明細書で定義される式(I)の芳香族ポリ酸またはその塩を含み、ここでシリケートの濃度は、151~300ppmの範囲内のSi(重量)、好ましくは151~275ppmの範囲内のSi、より好ましくは180~260ppmの範囲内のSi、最も好ましくは190~250ppmの範囲内のSiであり、且つ濃縮物は、(濃縮物の総重量に対して)0.1重量%超、好ましくは0.3重量%超、より好ましくは0.7重量%超の量で芳香族ポリ酸を含む。
【0115】
[00115] 実施形態において、濃縮物は、本明細書で定義されるベース流体;本明細書で定義されるシリケート;および本明細書で定義される式(I)の芳香族ポリ酸またはその塩を含み、ここでシリケートの濃度は、301~10000ppmの範囲内のSi(重量)、好ましくは500~9000ppmの範囲内のSi、より好ましくは800~8000ppmの範囲内のSi、最も好ましくは1000~7000ppmの範囲内のSiであり、且つ濃縮物は、(濃縮物の総重量に対して)1重量%超、好ましくは2重量%超、より好ましくは5重量%超の量で芳香族ポリ酸を含む。
【0116】
[調製方法]
[00116] 本発明の別の態様では、本明細書で定義される組成物を調製する方法であって、
(i)本明細書で定義されるベース流体を提供する工程;
(ii)本明細書で定義されるシリケートを提供する工程;
(iii)本明細書で定義される式(I)の芳香族ポリ酸を提供する工程;
(iv)場合により、本明細書に定義されるさらなる添加剤を提供する工程;および
(v)工程(i)のベース流体を、工程(ii)のシリケート、工程(iii)の芳香族ポリ酸および工程(iv)の任意のさらなる添加剤と混ぜて、組成物を得る工程
を含む方法が提供される。
【0117】
[00117] 本発明によれば、化合物の添加順序は特に限定されない。
【0118】
[00118] 本発明の別の態様では、本明細書で定義される即時使用可能な組成物を調製する方法であって、
(i)本明細書で定義される濃縮物を提供する工程;
(ii)水、アルコールまたはそれらの混合物を提供する工程;
(iii)場合により、本明細書に定義されるさらなる添加剤を提供する工程;および
(iv)工程(i)の濃縮物を、工程(ii)の水、アルコールまたはそれらの混合物および工程(iv)の任意のさらなる添加剤と混ぜて、即時使用可能な組成物を得る工程
を含む方法が提供される。
【0119】
[00119] 好ましい実施形態では、本明細書で定義される即時使用可能な組成物を調製する方法であって、
(i)本明細書で定義される濃縮物を提供する工程;
(ii)水、アルコールまたはそれらの混合物を提供する工程;および
(iii)工程(i)の濃縮物を工程(ii)の水、アルコールまたはそれらの混合物と混ぜて、即時使用可能な組成物を得る工程
を含む方法が提供される。
【0120】
[00120] 非常に好ましい実施形態では、工程(ii)のアルコールは、モノエチレングリコール、モノプロピレングリコール、1,3-プロパンジオールおよびそれらの組合せからなる群から選択される。
【0121】
[00121] 好ましい実施形態では、工程(ii)は、(濃縮物の重量に対して)50重量%超の水、アルコールまたはそれらの混合物、好ましくは100重量%超、150重量%超、200重量%超または500重量%超の水、アルコールまたはそれらの混合物を提供することを含む。
【0122】
[キットのパーツ]
[00122] 本発明の別の態様では、本明細書で定義される組成物、好ましくは即時使用可能な組成物を調製するためのキットであって、
(i)水、アルコールまたはそれらの混合物中、好ましくは水、モノエチレングリコール、モノプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、グリセロールまたはそれらの混合物中、より好ましくは水、モノエチレングリコールまたはそれらの混合物中、最も好ましくは水中の本明細書で定義されるシリケートの第1の溶液を含む第1の容器;および
(ii)水、アルコールまたはそれらの混合物中、好ましくは水、モノエチレングリコール、モノプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、グリセロールまたはそれらの混合物中、より好ましくは水、モノエチレングリコールまたはそれらの混合物中、最も好ましくは水中の本明細書で定義される芳香族ポリ酸の第2の溶液を含む第2の容器;を含み、
シリケートの濃度は、(第1の容器中の溶液の重量に対して)100ppm超のSi、好ましくは400ppm超のSi、好ましくは1000ppm超のSiであり;且つ
芳香族ポリ酸の濃度は、(第2の容器中の溶液の総重量に対して)0.1重量%超、好ましくは1重量%超、より好ましくは5重量%超である、
キットが提供される。
【0123】
[00123] 実施形態において、キットは、本発明による改善された腐食抑制を示す組成物を得るために、第1の容器および第2の容器ならびに水、アルコールおよびそれらの混合物を組み合わせるための説明書をさらに含む。
【0124】
[00124] 本発明の別の態様では、本明細書で定義される組成物、好ましくは即時使用可能な組成物を調製する方法であって、
(i)本明細書で定義される第1の容器および本明細書で定義される第2の容器を含む、本明細書で定義されるキットを提供する工程;
(ii)水、アルコールまたはそれらの混合物を提供する工程;
(iii)場合により、本明細書に定義されるさらなる添加剤を提供する工程;および
(iv)工程(i)で提供されるキットの第1の容器を、工程(i)で提供されるキットの第2の容器、工程(ii)の水、アルコールまたはそれらの混合物、および工程(iii)の任意選択のさらなる添加剤と混ぜて、即時使用可能な組成物を得る工程
を含む方法が提供される。
【0125】
[00125] 本発明の実施形態では、本明細書で定義される組成物、好ましくは即時使用可能な組成物を調製する方法であって、
(i)本明細書で定義される第1の容器および本明細書で定義される第2の容器を含む、本明細書で定義されるキットを提供する工程;
(ii)水、アルコールまたはそれらの混合物を提供する工程;
(iii)工程(i)で提供されるキットの第1の容器を、工程(i)で提供されるキットの第2の容器および工程(ii)の水、アルコールまたはそれらの混合物と混ぜて、即時使用可能な組成物を得る工程
を含む方法が提供される。
【0126】
[00126] 非常に好ましい実施形態では、工程(ii)のアルコールは、モノエチレングリコール、モノプロピレングリコール、1,3-プロパンジオールおよびそれらの組合せからなる群から選択される。
【0127】
[00127] 本発明によれば、成分の添加順序は特に限定されない。
【0128】
[00128] 好ましい実施形態では、工程(ii)は、(第1および第2の溶液の合計重量に対して)50重量%超の水、アルコールまたはそれらの混合物、好ましくは100重量%超、150重量%超、200重量%超または500重量%超の水、アルコールまたはそれらの混合物を提供することを含む。
【0129】
[使用/方法]
[00129] 本発明の別の態様では、伝熱流体として、好ましくは内燃機関、ソーラーシステム、燃料電池、電気モーター、発電機、バッテリー、バッテリー電気自動車、または電子機器における伝熱流体として、最も好ましくは内燃機関における伝熱流体としての、本明細書で提供される組成物、好ましくは即時使用可能な組成物の使用が提供される。
【0130】
[00130] 本発明の別の態様では、本明細書で提供される組成物、好ましくは即時使用可能な組成物を金属表面と接触させることを含む、腐食を抑制する方法が提供される。
【0131】
[00131] 本発明の別の態様では、本明細書に記載の組成物、好ましくは即時使用可能な組成物を含む、内燃機関、ソーラーシステム、燃料電池、電気モーター、発電機、または電子機器が提供される。
【0132】
[00132] 本発明の別の態様では、伝熱流体の腐食抑制を改善するための、好ましくは本明細書に記載のシリケートを含む伝熱流体の腐食抑制を改善するための、より好ましくは本明細書に記載のシリケートを含む伝熱流体の腐食抑制を改善するための、本明細書に記載の式(I)の化合物の使用であって、伝熱流体がホウ酸塩および/または亜硝酸塩を含まない使用が提供される。
【0133】
[00133] 本発明の別の態様では
a. 内燃機関、ソーラーシステム、燃料電池、電気モーター、発電機、バッテリー、バッテリー電気自動車、または電子機器から選択されるシステム、好ましくは内燃機関において熱を発生させる工程;
b. 本明細書に記載の組成物を工程aのシステムと接触させる工程;
c. システムから組成物に熱を伝達する工程;
d. 組成物を熱交換器に通す工程;および
e. 組成物から熱を除去する工程
を含む熱交換方法が提供される。
【0134】
[実施例]
[実施例1]
[00134] 鋳鉄および鋼の保護に対する本発明による組成物の驚くべき効果は、以下の試験条件を用いて、鋳鉄および鋼の試験片を組成物に浸漬することによって実証された。
【0135】
[00135] ASTM D1384-05の修正版(2012年に再承認)に従って、金属試験束を調製した。鋳鉄試験片(EN-GJL-250,DIN EN 1561)と鋼試験片(FePO4,DIN EN 10130)を、鋼スペーサーおよびテトラフルオロエチレン製の絶縁スペーサーを試験束と黄銅脚(CuZn37,DIN 17660)の間に使用して分離した。試料を、以下の表に示す組成物の脱イオン水を使用した40v%希釈液400mlに完全に浸漬する。溶液および金属試料を含むフラスコを閉じ、90℃のオーブンに168時間入れる。表1は、本発明による(伝熱流体である)異なる組成物の配合を示す。表2は、比較例の配合を示す。全ての組成物は、範囲が指定されている同じ量の成分、および成分が一般的に指定されている場合には同じ成分を使用して配合した。
【表1】

【表2】
【0136】
[00136] 試験の最後に、金属試験片を直ちに分離し、軟質毛ブラシおよび水で洗浄し、その後、個々の試験片をさらなる洗浄処理に供する。試料を、(腐食防止剤として)0.1v%プロパルギルアルコールを含有する脱イオン水中の10v%塩酸溶液に室温で10分間1回浸漬する。次に、試料を水で洗浄し、乾燥させる。金属試料の重量損失を測定し、本発明による組成物の腐食保護性能の洞察を提供する。表3は、本発明による実施例(実施例1~4)および比較例(比較例5~10)の結果の概要を示す。本発明による実施例(実施例1-4)は比較例と比較して、鋳鉄および鋼の試料では、重量損失が著しく低い。比較例6で得られた鋼の保護は、ホウ酸塩の使用によるものである。
【表3】
【0137】
[実施例2]
[00137] 鋳鉄およびアルミニウムに対する本発明の組成物の驚くべき効果は、試験法MTV5061(2000)による動的伝熱条件下でさらに実証された。この試験では、実施例1の表1および2に記載の組成物の脱イオン水の40v%希釈液を、加熱および非加熱鋳鉄クーポン(EN-GJL-250,DIN EN 1561)を有する試験セルおよび加熱および非加熱アルミニウムクーポン(EN AC-AlSi10Mg(a)T6、DIN EN1706)を有する第2の試験セルを含む試験装置中で循環させる。さらに、金属試験束を有する容器を循環試験リグに設置する。金属試験束はまた、他の金属試料と共に、オーブン試験で使用したものと同じタイプの鋳鉄および鋼試料を含む。試験の最後に、金属試験片を直ちに分離し、軟質毛ブラシおよび水で洗浄し、その後、個々の試験片を、方法MTV5061(2000)に記載されているような追加の洗浄処理に付す。(腐食防止剤として)0.1体積%のプロパルギルアルコールを含有する脱イオン水中の10体積%の塩酸溶液中に、室温で10分間、鋳鉄および鋼試料を1回浸漬する。次に、試料を水で洗浄し、乾燥させる。表4は、本発明による実施例(実施例1~2)および比較例(比較例5)について得られた結果の概要を示す。以下の表から分かるように、本発明の実施例(実施例1~2)では、比較例と比較して、とりわけ、著しく改善された鋳鉄、鋼、およびアルミニウムの保護が得られる。
【表4】

【国際調査報告】