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特表2022-537109噴霧乾燥ビタミンB12を含む固体医薬剤形
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-24
(54)【発明の名称】噴霧乾燥ビタミンB12を含む固体医薬剤形
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/714 20060101AFI20220817BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20220817BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220817BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220817BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20220817BHJP
   A61K 31/155 20060101ALI20220817BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20220817BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20220817BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20220817BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
A61K31/714
A61K9/14
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K47/02
A61K31/155
A61K47/12
A61K9/20
A61K9/48
A61P3/02 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021571578
(86)(22)【出願日】2020-06-17
(85)【翻訳文提出日】2022-01-31
(86)【国際出願番号】 EP2020066750
(87)【国際公開番号】W WO2020254396
(87)【国際公開日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】19180448.3
(32)【優先日】2019-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
【住所又は居所原語表記】Het Overloon 1, NL-6411 TE Heerlen,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】ミジック, ズドラブカ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA29
4C076AA36
4C076AA53
4C076CC22
4C076DD26A
4C076DD43
4C076EE30
4C076EE38
4C076FF36
4C076GG09
4C076GG14
4C084AA19
4C084MA35
4C084MA37
4C084MA41
4C084NA03
4C084NA05
4C084ZC22
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA39
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA41
4C086NA03
4C086NA05
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4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206HA31
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA55
4C206MA57
4C206MA61
4C206NA03
4C206NA05
4C206ZC22
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、ビタミンB12の少なくとも1つの噴霧乾燥製剤及び少なくとも1つのさらなる活性医薬成分を含む固体医薬剤形に関する。前記少なくとも1つのさらなる活性医薬成分は、好ましくはメトホルミン又はその薬学的に許容できる塩である。本発明の剤形を作製するとき、含量の均一性は良好である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ビタミンB12の少なくとも1つの噴霧乾燥製剤、
b)少なくとも1つのさらなる活性医薬成分、及び
c)少なくとも1つの薬学的に許容できる固体賦形剤
を含む固体医薬剤形であって、
ビタミンB12と前記少なくとも1つのさらなる活性医薬成分との間の重量比が、1:10.000.000~1:1.000である、固体医薬剤形。
【請求項2】
前記少なくとも1つの固体医薬賦形剤が、酸性度レギュレーター、固化剤、放出剤、充填剤、結合剤、潤滑剤、滑剤、安定剤、崩壊剤又は懸濁化剤であり、且つ前記少なくとも1つの医薬賦形剤が、好ましくは酸性度レギュレーターである、請求項1に記載の固体医薬剤形。
【請求項3】
前記少なくとも1つの固体活性医薬賦形剤が、カルシウム塩であり、且つ前記カルシウム塩が、好ましくはリン酸カルシウムであり、且つ
前記リン酸カルシウムが、好ましくは無水リン酸カルシウム又は含水リン酸カルシウムであり、且つ
前記無水リン酸カルシウムが、好ましくは、無水リン酸一カルシウム(Ca(HPO)、無水リン酸二カルシウム(CaHPO)又は無水リン酸三カルシウム(Ca(PO)である、
請求項1又は2に記載の固体医薬剤形。
【請求項4】
前記少なくとも1つのさらなる活性医薬成分が、メトホルミン又はその薬学的に許容できる塩であり、且つ前記少なくとも1つのさらなる活性医薬成分が、好ましくはメトホルミンHClである、請求項1~3のいずれか一項に記載の固体医薬剤形。
【請求項5】
ビタミンB12の前記噴霧乾燥製剤が、ビタミンB12及び少なくとも1つの助剤化合物を含む水溶液の噴霧乾燥により入手可能であり、且つ
前記少なくとも1つの助剤化合物が、好ましくは、クエン酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸、マルトデキストリンクエン酸及び加工食品デンプンからなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の固体医薬剤形。
【請求項6】
ビタミンB12の前記噴霧乾燥製剤が、ビタミンB12の前記噴霧乾燥製剤の総重量を基準として、0.01~1重量%、好ましくは0.05~0.5重量%及び最も好ましくは0.1重量%のシアノコバラミンを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の固体医薬剤形。
【請求項7】
ビタミンB12の前記噴霧乾燥製剤が、水分散性又は水溶性であり、且つビタミンB12の前記噴霧乾燥製剤が、好ましくは水溶性である、請求項1~6のいずれか一項に記載の固体医薬剤形。
【請求項8】
経口固体医薬剤形であり、且つ
前記経口固体医薬剤形が、好ましくは錠剤又はカプセル剤であり、且つ前記錠剤が、好ましくは圧縮錠剤である、請求項1~7のいずれか一項に記載の固体医薬剤形。
【請求項9】
ビタミンB12及び少なくとも1つのさらなる活性医薬成分を含む固体医薬剤形を作製する方法であって、
-ビタミンB12及び少なくとも1つの賦形剤を含む水溶液を噴霧乾燥するステップ
を含む、方法。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載の固体医薬剤形が調製される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ビタミンB12及び少なくとも1つのさらなる活性医薬成分を1:10.000.000~1:1.000の重量比で含む固体医薬剤形を作製するときの、含量の均一性を増加させるためのビタミンB12の噴霧乾燥製剤の使用。
【請求項12】
前記固体医薬剤形が、請求項1~8のいずれか一項に記載の固体医薬剤形である、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
メトホルミンを必要とする患者の治療における使用が意図された、
a)ビタミンB12の少なくとも1つの噴霧乾燥製剤、
b)メトホルミン又はその薬学的に許容できる塩、及び
c)少なくとも1つの薬学的に許容できる固体賦形剤
を含む固体医薬剤形。
【請求項14】
糖尿病の治療における使用が意図された、
a)ビタミンB12の少なくとも1つの噴霧乾燥製剤、
b)メトホルミン又はその薬学的に許容できる塩、及び
c)少なくとも1つの薬学的に許容できる固体賦形剤
を含む固体医薬剤形。
【請求項15】
前記固体医薬剤形が、請求項1~8のいずれか一項に記載の固体医薬剤形である、請求項13又は14に記載の使用が意図された固体医薬剤形。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、摂取がビタミンB12の枯渇を引き起こす場合の活性医薬成分(API)に関する。
【0002】
[発明の背景]
特定のAPIの長期使用の間、血清ビタミンB12レベルが低下する。かかるAPIの例がメトホルミンである。
【0003】
ビタミンB12の正常より低い吸収は、ビタミンB12の摂取増加により補償され得る。いくつかの食品は(肝臓及び腎臓など)は、比較的高い量のビタミンB12を含む。しかし、多くの患者、特に採食主義者の場合、食用内臓の消費増加は選択肢でない。
【0004】
結晶ビタミンB12は、DSM(登録商標)Nutritional Products(Switzerland)で市販されており、錠剤又はカプセル剤に添加することができる。
【0005】
ビタミンB12の推奨日当(RDA)は、約2μgである。比較では、メトホルミンの典型的な維持用量は、2000mg/日である。これは0.002mg:2000mgの重量比=1:1.000.000に対応する。各カプセル剤中又は各錠剤中のビタミンB12の個別含量が同じであることを確認することが課題である。
【0006】
非常に少ない量のビタミンB12と、それに対し、患者の血清ビタミンB12レベルを低下させることが知られている非常に多い量のAPIとを含む固定用量配合剤(FDC)を作製するとき、含量の均一性を改善することが求められる。特に、ビタミンB12よりも重量で少なくとも1万倍大きいメトホルミンHClを含む固体経口医薬剤形を作製するとき、ビタミンB12の含量の均一性を改善することが求められる。
【0007】
[発明の概要]
本発明の基礎となる問題は、
a)ビタミンB12の少なくとも1つの噴霧乾燥製剤、
b)メトホルミンHClなどの少なくとも1つのさらなる活性医薬成分、及び
c)少なくとも1つの薬学的に許容できる固体賦形剤
を含む固体医薬剤形であって、
ここで前記少なくとも1つのさらなる活性医薬成分の摂取が、ビタミンB12の枯渇を引き起こし、且つ/又は
ここでビタミンB12と前記少なくとも1つのさらなる活性医薬成分との間の重量比が、好ましくは1:10.000.000~1:1.000である、
固体医薬剤形によって解決される。
【0008】
作製プロセス中、市販のビタミンB12結晶の代わりにビタミンB12の噴霧乾燥製剤を使用するとき、得られる固体医薬剤形の含量の均一性は、劇的に改善される。したがって、本発明は、含量の均一性を改善するためのビタミンB12の噴霧乾燥製剤の使用にも関する。ビタミンB12及び少なくとも1つのさらなる活性医薬成分を1:10.000.000~1:1.000の重量比で含む固体医薬剤形を作製するとき、本発明は、経口固体医薬剤形を作製するための、ビタミンB12の少なくとも1つの噴霧乾燥製剤、少なくとも1つの薬学的に許容できる賦形剤及び少なくとも1つのさらなる活性医薬成分を含む混合物の使用にも関する。
【0009】
好ましいビタミンB12は、シアノコバラミンである。ビタミンB12の噴霧乾燥製剤中のシアノコバラミンの濃度が低い場合に特に、良好な含量の均一性が達成される。本発明の好ましい実施形態では、ビタミンB12の噴霧乾燥製剤は、ビタミンB12の噴霧乾燥製剤の総重量を基準として、0.01~1重量%、好ましくは0.05~0.5重量%及び最も好ましくは0.1重量%のシアノコバラミンを含む。
【0010】
本発明は、本明細書に記載の固体医薬剤形を作製する方法にも関する。前記方法は、
-ビタミンB12及び少なくとも1つの賦形剤を含む水溶液を噴霧乾燥するステップ
を含む。
【0011】
本発明の好ましい実施形態では、少なくとも1つのさらなる活性医薬成分は、メトホルミン又はメトホルミンHClなどのその薬学的に許容できる塩である。メトホルミン及びビタミンB12の併用摂取は、メトホルミンによって引き起こされるビタミンB12の枯渇を低減する。したがって、本発明は、メトホルミン誘導性ビタミンB12欠乏の治療又は予防における使用が意図された、本明細書に記載の固体医薬剤形にも関する。
【0012】
本発明の好ましい実施形態では、本明細書に記載の固体医薬剤形は、錠剤、カプセル剤又は散剤である。かかる剤形を調製するため、少なくとも1つの薬学的に許容できる固体賦形剤の添加は、推奨される、又はそれよりも必要である。少なくとも1つの固体医薬賦形剤は、好ましくはリン酸カルシウム又はクエン酸カルシウムなどのカルシウム塩である。
【0013】
[発明の詳細な説明]
ビタミンB12は、活性医薬成分である。本発明は、(a)ビタミンB12の少なくとも1つの噴霧乾燥製剤、(b)少なくとも1つのさらなる活性医薬成分及び(c)少なくとも1つの薬学的に許容できる固体賦形剤を含む固体医薬剤形に関する。好ましいビタミンB12は、シアノコバラミンである。
【0014】
[定義]
用語「含む(comprising)」は、オープンタームである。したがって、本明細書に記載の固体医薬剤形は、3つ以上の活性医薬成分(API)を含んでもよい。しかし、本発明の固体医薬剤形は、好ましくは、ビタミンB12及び1つのさらなる活性医薬成分といった2つの活性医薬成分のみを含む。
【0015】
ビタミンB12結晶は、結晶の総重量を基準として、少なくとも98重量%のビタミンB12含量を有する一方で、ビタミンB12の噴霧乾燥製剤は、噴霧乾燥製剤の総重量を基準として、90重量%未満のビタミンB12を含む。本発明によると、ビタミンB12の噴霧乾燥製剤は、ビタミンB12結晶の代わりに使用される。ビタミンB12の多種多様な噴霧乾燥製剤が公知である。本明細書に記載の固体医薬剤形は、2種以上の噴霧乾燥ビタミンB12製剤を含んでもよい。しかし、好ましくは、本発明の固体医薬剤形は、1種の噴霧乾燥ビタミンB12製剤のみを含む。
【0016】
本発明の固体医薬剤形は、少なくとも1つの薬学的に許容できる固体賦形剤を含む。しかし、好ましくは、本発明の固体医薬剤形は、少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つ、最も好ましくは少なくとも4つの薬学的に許容できる固体賦形剤を含む。
【0017】
それ故、本発明の例示的実施形態は、
a)ビタミンB12の1つの噴霧乾燥製剤、
b)メトホルミンHClなどの1つのさらなる活性医薬成分、及び
c)少なくとも4つの薬学的に許容できる固体賦形剤
を含む固体医薬剤形であって、
ビタミンB12の前記噴霧乾燥製剤が、ビタミンB12の噴霧乾燥製剤の総重量を基準として90重量%未満のビタミンB12を含み、且つ/又は
ビタミンB12と前記少なくとも1つのさらなる活性医薬成分との間の重量比が、好ましくは1:10.000.000~1:1.000である、
固体医薬剤形に関する。
【0018】
本発明との関連では、用語「固体医薬剤形」は、錠剤、カプセル剤及び散剤などの剤形を指す。散剤(経口溶液を調製するための散剤など)は、典型的には、サシェ又はスティックパック中にパッケージングされる。或いは、散剤は、2片のカプセル剤(例えば、ゼラチンカプセル剤のサイズが0,00又は000)に充填されてもよい。本発明の好ましい実施形態では、用語「固体医薬剤形」は、錠剤、カプセル剤及び散剤からなる群から選択される固体経口医薬剤形を指す。本発明のさらにより好ましい実施形態では、用語「固体医薬剤形」は、圧縮錠剤を指す。
【0019】
ビタミンB12は、周知の水溶性ビタミンである。本発明との関連では、用語「ビタミンB12」は、ビタミンB12の任意のビタマーを指し、ビタミンB12誘導体及び/又はビタミンB12の代謝産物を含む。しかし、好ましくは、用語「ビタミンB12」は、シアノコバラミンを指す。シアノコバラミンは、好適な微生物を使用する発酵により生成されてもよい。
【0020】
「結晶ビタミンB12」は、結晶の総重量を基準として、少なくとも98重量%のビタミンB12を含む。好ましくは、本発明の固体医薬剤形は、結晶ビタミンB12を全く含まない。
【0021】
本発明の固体医薬剤形は、ビタミンB12の少なくとも1つの噴霧乾燥製剤を含む。表現「ビタミンB12の噴霧乾燥製剤」は、ビタミンB12及び少なくとも1つの賦形剤を含む水溶液の噴霧乾燥によって入手可能である散剤を指し、前記少なくとも1つの賦形剤は、好ましくは、クエン酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸、マルトデキストリンクエン酸及び加工食品デンプンからなる群から選択される。本発明の好ましい実施形態では、表現「ビタミンB12の噴霧乾燥製剤」は、シアノコバラミン及び少なくとも1つの賦形剤を含む水溶液を噴霧乾燥することにより入手可能である散剤を指し、前記少なくとも1つの賦形剤は、好ましくは、クエン酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸、マルトデキストリン及び加工食品デンプンからなる群から選択される。
【0022】
少なくとも1つの賦形剤の存在に起因し、ビタミンB12の噴霧乾燥製剤は、噴霧乾燥製剤の総重量を基準として90重量%未満のビタミンB12を含む。ビタミンB12の噴霧乾燥製剤中のビタミンB12の正確な濃度は、噴霧乾燥製剤中の賦形剤の量に依存する。好ましくは、本発明のビタミンB12の噴霧乾燥製剤は、噴霧乾燥製剤の総重量を基準として1重量%以下のビタミンB12を含み、ここでビタミンB12を含んでいないビタミンB12の噴霧乾燥製剤は除外される。さらに好ましくは、本発明のビタミンB12の噴霧乾燥製剤は、散剤の総重量を基準として1重量%以下のシアノコバラミンを含む水溶性又は水分散性散剤であり、ビタミンB12を含んでいない散剤は除外される。本発明の最も好ましい実施形態では、表現「ビタミンB12の噴霧乾燥製剤」は、シアノコバラミン及び少なくとも1つの賦形剤を含む水溶液を噴霧乾燥することにより入手可能である散剤を指し、前記賦形剤は、好ましくは、クエン酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸、マルトデキストリン及び加工食品デンプンからなる群から選択され、且つ前記散剤は、散剤の総重量を基準として1重量%以下のシアノコバラミンを含み、ビタミンB12を含んでいない散剤は除外される。
【0023】
少なくとも1つのさらなる活性医薬成分(API)は、好ましくは、APIで治療中の患者の血清ビタミンB12レベルを低下させる活性医薬成分である。かかる薬剤の例として、メトホルミンが挙げられる。ほとんどの場合、かかる低下は、瞬時には生じない。多くの場合、その低下は、患者が前記APIを少なくとも3か月間にわたり又は少なくとも6か月間にわたり又は少なくとも12か月にわたり摂取しているとき、認められる。
【0024】
本発明との関連では、用語「メトホルミン」は、メトホルミン又はその薬学的に許容できる塩を指す。おそらく最も知られているメトホルミンの薬学的に許容できる塩は、メトホルミンHClである。したがって、本発明の最も好ましい実施形態では、用語「メトホルミン」は、メトホルミンHClを指す。
【0025】
メトホルミンは、成形性(compactibility)及び流動性の不良を有する。したがって、メトホルミンは、好ましくは錠剤化する前に顆粒化される。かかる造粒プロセス中、メトホルミンは、圧縮するのが容易である、流動性がある、本質的にダストフリーの顆粒剤に変換される。本発明との関連では、用語「顆粒化メトホルミン」は、メトホルミン又はその薬学的塩を含む顆粒剤を指す。好ましくは、用語「顆粒化メトホルミン」は、顆粒剤の総重量を基準として少なくとも50重量%のメトホルミン、及び少なくとも1つの賦形剤を含む顆粒剤を指し、ここで前記賦形剤は、好ましくは潤滑剤の存在下又は不在下で結合剤である。好適な結合剤が、例えば、Arndt et al.,“Roll Compaction and Tableting of High Loaded Metformin Formulations Using Efficient Binders”,AAPS PharmSciTech,July 2018,Volume 19,Issue 5,pp2068-2076に列記されている。本発明との関連では、用語「顆粒化メトホルミン」は、顆粒化メトホルミンHClなどのメトホルミンの顆粒化された薬学的に許容できる塩を含む。したがって、用語「顆粒化メトホルミン」は、顆粒剤の総重量を基準として少なくとも50重量%のメトホルミンHCl、及び少なくとも1つの賦形剤を含む顆粒剤を指してもよく、前記賦形剤は、好ましくは、潤滑剤の存在下又は不在下で結合剤である。顆粒化メトホルミンは、市販されている。Vistin Pharma(Oslo,Norway)で入手可能であるようなメトホルミン顆粒(granulate)DCグレード92.6%は、潤滑剤としてステアリン酸マグネシウムを含む。したがって、本発明の最も好ましい実施形態では、用語「顆粒化メトホルミン」は、ステアリン酸マグネシウム及び顆粒剤の総重量を基準として少なくとも90重量%のメトホルミンHClを含む顆粒剤を指す。
【0026】
本発明との関連では、用語「薬学的に許容できる固体賦形剤」は、25℃及び標準大気(圧力=1.01325bar)で固体である、任意の薬学的に許容できる賦形剤を指す。したがって、該用語は、酸性度レギュレーター、固化剤、放出剤、フィラー、結合剤、潤滑剤、滑剤、安定剤、崩壊剤及び懸濁化剤を、25℃及び標準大気で固体である条件で含む。ビタミンB12がpH感受性であることを考慮すると、本発明の固体医薬剤形は、好ましくは少なくとも1つの酸性度レギュレーターを含む。本発明によると、少なくとも1つの薬学的に許容できる固体賦形剤は、好ましくはカルシウム塩又はカルシウム塩の混合物である。選択されたカルシウム塩に応じて、カルシウム塩は、例えば潤滑剤及び/又は酸性度レギュレーターであってもよい。
【0027】
本発明との関連では、用語「カルシウム塩」は、任意の薬学的に許容できるカルシウム塩を指す。したがって、該用語は、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム及びクエン酸カルシウムを含む。用語「クエン酸カルシウム」は、クエン酸一カルシウム、クエン酸二カルシウム及びクエン酸三カルシウムを含む。公知のクエン酸三カルシウム塩は、無水クエン酸カルシウム(即ち、Ca(C)及び二クエン酸三カルシウム四水和物(即ち、[Ca(C(HO)]・2HO)を含む。用語「リン酸カルシウム」は、無水リン酸カルシウム及び含水リン酸カルシウムを含む。公知の無水リン酸カルシウムは、例えば、無水リン酸一カルシウム(Ca(HPO)、無水リン酸二カルシウム(CaHPO)及び無水リン酸三カルシウム(Ca(PO)である。炭酸カルシウムは、式CaCOを有する化合物である。
【0028】
微結晶性セルロース(MCC)は、セルロースの酸加水分解によって調製された周知の賦形剤である。工業規模で、MCCは、希薄なミネラル酸を用いる木材及び/又は綿セルロースの加水分解によって得られる。次に、処理パルプはすすがれ、製粉などのさらなる処理ステップの存在下又は不在下で噴霧乾燥される。極めて多くのタイプの微結晶性セルロース(MCC)が市場で入手可能である。本発明との関連では、用語「微結晶性セルロース」は、Table 1 of T.Vehovec et al.:“Influence of different types of commercially available microcrystalline cellulose on degradation of perindopril erbumine and enalapril maleate in binary mixtures”,Acta Pharm.62(2012),page 518に列記された賦形剤などの部分的に解重合されたセルロースからなるあらゆるタイプの微結晶性セルロースを含む。PROSOLV(登録商標)SMCCなどのケイ化微結晶性セルロースも含まれる。本発明との関連では、用語「ケイ化微結晶性セルロース」は、微結晶性セルロース(MCC)及びコロイド状二酸化ケイ素(CSD)などの二酸化ケイ素を含む賦形剤を指す。
【0029】
「含量の均一性」は、活性医薬成分の一貫した用量が、バッチの各個別の剤形中(例えば、各カプセル剤中、各錠剤中又は各サシェ剤中)で維持されることを保証する。例えばカプセル剤又は錠剤の品質を制御するとき、含量の均一性が決定される。そのため、複数の、例えばカプセル剤又は錠剤がランダムに選択され、各カプセル剤中又は錠剤中の活性医薬成分の個別含量をアッセイするため、好適な分析法が適用される。欧州及び米国の薬局方によると、得られたアッセイ分析結果から、相対標準偏差(RSD)及び合格判定値(AV)が計算される必要がある。RSDが小さくなると、含量の均一性が改善される。計算された合格判定値は、15未満である必要がある。本発明との関連では、RSD及びAVは、好ましくは、「米国薬局方」,37th revision,physical tests,<905> Uniformity of Dosage Units,May 1,2014に示される通りに計算される。用語「ビタミンB12含量の均一性」は、複数の固体医薬剤形がランダムに選択され、各固体医薬剤形中のビタミンB12の個別含量をアッセイするため、好適な分析法が適用されるとき、使用される。
【0030】
[固体医薬剤形]
本発明は、ビタミンB12を含む固体医薬剤形に関する。好ましくは、前記固体医薬剤形は、シアノコバラミンを含む錠剤、カプセル剤又は散剤である。
【0031】
本発明の固体医薬剤形は、好ましくは1μg~10μgのシアノコバラミン、より好ましくは2μg~9μgのシアノコバラミン及び最も好ましくは3μg~4μgのシアノコバラミンを含む。固体医薬剤形が錠剤である場合、本発明の錠剤は、好ましくは錠剤あたり1μg~10μgのシアノコバラミン、より好ましくは錠剤あたり2μg~9μgのシアノコバラミン及び最も好ましくは錠剤あたり3μg~4μgのシアノコバラミンを含む。安全性に関しては、許容できる上部摂取レベル(ULとして公知)は、証拠が十分であるとき、ビタミン及びミネラルについて設定される。ビタミンB12の場合、高用量からの有害作用についてのヒトデータが存在しないことから、ULは存在しない。
【0032】
本発明の固体医薬剤形は、少なくとも1つのさらなる活性医薬成分を含む。好ましくは、前記少なくとも1つのさらなる活性医薬成分は、メトホルミン又はその薬学的に許容できる塩である。メトホルミンの好ましい薬学的に許容できる塩は、メトホルミンHClである。典型的には、本発明の固体医薬剤形は、5g未満、好ましくは4g未満、より好ましくは3g未満及び最も好ましくは2g未満の質量を有する。
【0033】
典型的には、本発明の固体医薬剤形は、1日2回摂取されるべきである。本発明の好ましい実施形態では、固体医薬剤形は、ビタミンB12と、1000mgのメトホルミンHCl、500mgのメトホルミンHCl又は850mgのメトホルミンHClとを含み、ここでビタミンB12とメトホルミンHClとの間の重量比は、1:10.000.000~1:1.000、好ましくは1:5.000.000~1:2.000及び最も好ましくは1:1.000.000~1:4.000である。本発明のさらに好ましい実施形態では、固体医薬剤形は、1000mgのメトホルミンHCl又は500mgのメトホルミンHClと1μg~10μgのシアノコバラミンとを含む錠剤又はカプセル剤である。最も好ましい実施形態では、固体医薬剤形は、1000mgのメトホルミンHClと1μg~4μgのシアノコバラミンとを含む錠剤である。典型的には、これらの錠剤の2つは、1日あたり、メトホルミンHClの一日量が2000mgに達するように投与される。
【0034】
各カプセル剤中、各錠剤中又は散剤の各部分中のビタミンB12含量の均一性を保証することは、極めて困難である。市販のビタミンB12結晶を使用するとき、ビタミンB12含量の均一性は極めて不良である。いくつかの試験では、90%を超える相対標準偏差(RSD)値が測定された。
【0035】
ビタミンB12含量の均一性は、市販のビタミンB12結晶を使用する代わりにビタミンB12の噴霧乾燥製剤を使用すると、著しく改善され得る。噴霧乾燥製剤中のビタミンB12の濃度を低めると、ビタミンB12含量の均一性が高まる。ビタミンB12の噴霧乾燥製剤の総重量を基準として1重量%のシアノコバラミンを含有する、ビタミンB12の噴霧乾燥製剤を使用すると、4%未満の相対標準偏差(RSD)が達成され得る。同じプロセス中で、ビタミンB12の噴霧乾燥製剤の総重量を基準としてわずか0.1重量%のシアノコバラミンを含有する、ビタミンB12のより希釈された噴霧乾燥製剤を使用すると、RSDはさらに2%に低減され得る。
【0036】
したがって、本発明は、好ましくは、
a)ビタミンB12の噴霧乾燥製剤、
b)少なくとも1つのさらなる活性医薬成分、及び
c)少なくとも1つの薬学的に許容できる固体賦形剤
を含み、
ここでビタミンB12の前記噴霧乾燥製剤が、ビタミンB12の噴霧乾燥製剤の総重量を基準として、好ましくは0.01~1重量%、より好ましくは0.05~0.5重量%及び最も好ましくは0.1重量%のシアノコバラミンを含む、
固体医薬剤形に関する。
【0037】
当業者は、ビタミンB12のかかる噴霧乾燥製剤の作製方法を理解している。一実施形態では、本明細書に記載のビタミンB12の噴霧乾燥製剤は、米国特許第5,397,576号明細書の実施例1中に開示のように作製される。
【0038】
少なくとも1つのさらなる活性医薬成分は、好ましくはメトホルミン又はその薬学的に許容できる塩である。したがって、本発明の固体医薬剤形は、好ましくは、
a)ビタミンB12の噴霧乾燥製剤、
b)メトホルミン又はその薬学的に許容できる塩、及び
c)少なくとも1つの薬学的に許容できる固体賦形剤
を含み、
ここでビタミンB12の前記噴霧乾燥製剤は、ビタミンB12の噴霧乾燥製剤の総重量を基準として、好ましくは0.01~1重量%、より好ましくは0.05~0.5重量%及び最も好ましくは0.1重量%のシアノコバラミンを含む。
【0039】
さらにより好ましい実施形態では、本発明の固体医薬剤形は、
a)ビタミンB12の噴霧乾燥製剤、
b)メトホルミンHCl、及び
c)少なくとも1つの薬学的に許容できる固体賦形剤
を含み、
ここでビタミンB12の前記噴霧乾燥製剤は、ビタミンB12の噴霧乾燥製剤の総重量を基準として、0.01~1重量%、より好ましくは0.05~0.5重量%及び最も好ましくは0.1重量%のシアノコバラミンを含み、且つ/又は
ここでシアノコバラミンとメトホルミンHClとの間の重量比は、1:10.000.000~1:1.000、好ましくは1:5.000.000~1:2.000及び最も好ましくは1:1.000.000~1:4.000である。
【0040】
本発明の少なくとも1つの薬学的に許容できる固体賦形剤は、好ましくは、酸性度レギュレーター、固化剤、放出剤、充填剤、結合剤、潤滑剤、滑剤、安定剤、崩壊剤及び/又は懸濁化剤である。ビタミンB12は、pH変化に感受性がある。
【0041】
したがって、本発明の固体医薬剤形は、好ましくは、
a)ビタミンB12の噴霧乾燥製剤、
b)メトホルミンHCl、及び
c)少なくとも1つの酸性度レギュレーター
を含み、
ここでビタミンB12の前記噴霧乾燥製剤は、ビタミンB12の噴霧乾燥製剤の総重量を基準として、好ましくは0.01~1重量%、より好ましくは0.05~0.5重量%及び最も好ましくは0.1重量%のシアノコバラミンを含み、且つ
ここで前記少なくとも1つの酸性度レギュレーターは、好ましくはカルシウム塩であり、且つ前記カルシウム塩は、好ましくは、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム及びクエン酸カルシウムからなる群から選択される。
【0042】
本発明との関連では、リン酸カルシウムは、好ましい酸性度レギュレーターである。それ故、本発明のさらに好ましい実施形態は、
a)ビタミンB12の噴霧乾燥製剤、
b)メトホルミンHCl、及び
c)少なくとも1つのカルシウム塩
を含み、
ここでビタミンB12の前記噴霧乾燥製剤が、ビタミンB12の噴霧乾燥製剤の総重量を基準として、好ましくは0.01~1重量%、より好ましくは0.05~0.5重量%及び最も好ましくは0.1重量%のシアノコバラミンを含み、且つ
前記少なくとも1つのカルシウム塩が、好ましくは無水リン酸カルシウム又は含水リン酸カルシウムであり、且つ
前記無水リン酸カルシウムが、好ましくは、無水リン酸一カルシウム(Ca(HPO)、無水リン酸二カルシウム(CaHPO)又は無水リン酸三カルシウム(Ca(PO)であり、且つ
ビタミンB12とメトホルミンHClとの間の重量比が、1:10.000.000~1:1.000、好ましくは1:5.000.000~1:2.000及び最も好ましくは1:1.000.000~1:4.000である、
本発明の固体医薬剤形に関する。
【0043】
本発明の好ましい実施形態では、固体医薬剤形は錠剤である。錠剤を圧縮する場合、充填剤が必要になり得る、又は少なくとも推奨される。したがって、本発明の好ましい実施形態は、
a)ビタミンB12の噴霧乾燥製剤、
b)メトホルミンHCl、
c)少なくとも1つのカルシウム塩、及び
d)少なくとも1つの充填剤
を含む錠剤であって、
ここでビタミンB12の前記噴霧乾燥製剤が、ビタミンB12の噴霧乾燥製剤の総重量を基準として、0.01~1重量%、より好ましくは0.05~0.5重量%及び最も好ましくは0.1重量%のシアノコバラミンを含み、且つ
シアノコバラミンとメトホルミンHClとの間の重量比が、1:10.000.000~1:1.000、好ましくは1:5.000.000~1:2.000及び最も好ましくは1:1.000.000~1:4.000であり、且つ
前記少なくとも1つの充填剤が、好ましくは微結晶性セルロース又はケイ化微結晶性セルロースである、
錠剤に関する。
【0044】
顆粒化メトホルミンを使用するとき、錠剤を圧縮することは、より容易である。或いは、メトホルミンを含む混合物は、混合物を錠剤に圧縮する前、顆粒化され得る。他の場合、結合剤が造粒のために使用される。したがって、本発明の好ましい実施形態は、
a)ビタミンB12の噴霧乾燥製剤、
b)メトホルミンHCl、
c)少なくとも1つのカルシウム塩、
d)少なくとも1つの充填剤、及び
e)少なくとも1つの結合剤
を含む錠剤であって、
ここでビタミンB12の前記噴霧乾燥製剤が、ビタミンB12の噴霧乾燥製剤の総重量を基準として、0.01~1重量%、より好ましくは0.05~0.5重量%及び最も好ましくは0.1重量%のシアノコバラミンを含み、且つ
前記少なくとも1つの充填剤が、好ましくは微結晶性セルロース又はケイ化微結晶性セルロースである、
錠剤に関する。
【0045】
本発明の最も好ましい実施形態は、
a)ビタミンB12の噴霧乾燥製剤、
b)メトホルミンHCl、及び
c)少なくとも1つのカルシウム塩、
d)少なくとも1つの充填剤、及び
e)少なくとも1つの結合剤
を含む錠剤であって、
ここでビタミンB12の前記噴霧乾燥製剤が、ビタミンB12の噴霧乾燥製剤の総重量を基準として1重量%未満のシアノコバラミンを含み、且つ
シアノコバラミンとメトホルミンHClとの間の重量比が、1:10.000.000~1:1.000、好ましくは1:5.000.000~1:2.000及び最も好ましくは1:1.000.000~1:4.000であり、且つ
前記少なくとも1つの充填剤が、好ましくは微結晶性セルロース又はケイ化微結晶性セルロースである、
錠剤に関する。
【0046】
本発明の他の実施形態は、
a)ビタミンB12の噴霧乾燥製剤、
b)顆粒化メトホルミンHCl、
c)少なくとも1つのカルシウム塩、及び
d)少なくとも1つの充填剤
を含む錠剤であって、
ここでビタミンB12の前記噴霧乾燥製剤が、ビタミンB12の噴霧乾燥製剤の総重量を基準として、0.01~1重量%、より好ましくは0.05~0.5重量%及び最も好ましくは0.1重量%のシアノコバラミンを含み、且つ
シアノコバラミンとメトホルミンHClとの間の重量比が、1:10.000.000~1:1.000、好ましくは1:5.000.000~1:2.000及び最も好ましくは1:1.000.000~1:4.000であり、且つ
前記少なくとも1つの充填剤が、好ましくは微結晶性セルロース又はケイ化微結晶性セルロースである、
錠剤に関する。
【0047】
[本発明の固体医薬剤形を作製する方法]
本発明の一実施形態では、医薬剤形は、散剤である。かかる散剤は、散剤の成分を混合することにより調製され得る。任意選択的には、散剤は次に、カプセルシェル若しくはサシェに充填され得る、又は錠剤に圧縮され得る。それにより、ビタミンB12の噴霧乾燥製剤が使用される場合、含量均一性が改善される。
【0048】
ビタミンB12の好適な噴霧乾燥製剤は、DSM(登録商標)Nutritional Products(Switzerland)から「ビタミンB12 1%SD」又は「ビタミンB12 0.1%WS」として市販されている。「ビタミンB12 1%SD」は、各製品の総重量を基準として1重量%のシアノコバラミンを含む一方で、「ビタミンB12 0.1%WS」は、各製品の総重量を基準として0.1重量%のシアノコバラミンを含む。本発明によると、「ビタミンB12 0.1%WS」は、ビタミンB12の好ましい噴霧乾燥製剤である。
【0049】
本発明は、ビタミンB12及び少なくとも1つのさらなる活性医薬成分を、1:10.000.000~1:1.000、好ましくは1:5.000.000~1:2.000及び最も好ましくは1:1.000.000~1:4.000の重量比で含む固体医薬剤形を作製するときの、含量の均一性を増加させるためのビタミンB12の噴霧乾燥製剤の使用に関する。本発明の好ましい実施形態では、ビタミンB12の噴霧乾燥製剤の総重量を基準として、0.01~1重量%、好ましくは0.05~0.5重量%及び最も好ましくは0.1重量%のシアノコバラミンを含むビタミンB12の噴霧乾燥製剤は、ビタミンB12及びメトホルミン又はその薬学的に許容できる塩を含む固体医薬剤形を作製するとき、含量の均一性を増加させるため、使用される。最も好ましくは、本発明は、500mg、850mg又は1000mgのメトホルミンHClを含む固体経口医薬剤形を作製するための、ビタミンB12の噴霧乾燥製剤の総重量を基準として0.1重量%のシアノコバラミンを含む噴霧乾燥製剤の使用に関する。
【0050】
本発明は、本明細書に記載のような固体医薬剤形を作製する方法であって、
-ビタミンB12及び少なくとも1つの助剤化合物を含む水溶液を噴霧乾燥するステップを含み、ここで前記少なくとも1つの助剤化合物が、好ましくは、クエン酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸、マルトデキストリンクエン酸及び加工食品デンプンからなる群から選択される、
方法にも関する。
【0051】
本明細書に記載のような固体医薬剤形を作製する好ましい方法は、
-ビタミンB12の少なくとも1つの噴霧乾燥製剤、少なくとも1つのさらなる活性医薬成分及び少なくとも1つの薬学的に許容できる固体賦形剤を混合することにより散剤を提供するステップを含み、ここでビタミンB12と前記少なくとも1つのさらなる活性医薬成分との間の重量比は、1:10.000.000~1:1.000、好ましくは1:5.000.000~1:2.000及び最も好ましくは1:1.000.000~1:4.000である。
【0052】
本明細書に記載のような固体医薬剤形を作製するさらにより好ましい方法であって、
-ビタミンB12の少なくとも1つの噴霧乾燥製剤、少なくとも1つのさらなる活性医薬成分及び少なくとも1つのカルシウム塩、少なくとも1つの充填剤及び少なくとも1つの結合剤を含む混合物を提供するステップと、
-提供された混合物を顆粒化するステップと、
-任意選択的には、得られた顆粒を少なくとも1つの錠剤に圧縮するステップと、
を含む方法において、ビタミンB12と前記少なくとも1つのさらなる活性医薬成分との間の重量比は、1:10.000.000~1:1.000、好ましくは1:5.000.000~1:2.000及び最も好ましくは1:1.000.000~1:4.000である。
【0053】
本明細書に記載のような固体医薬剤形を作製するさらに好ましい方法であって、
-ビタミンB12の少なくとも1つの噴霧乾燥製剤、メトホルミンHCl及び少なくとも1つのカルシウム塩、少なくとも1つの充填剤及び少なくとも1つの結合剤を含む混合物を提供するステップと、
-提供された混合物を顆粒化するステップと、
-任意選択的には、得られた顆粒を少なくとも1つの錠剤に圧縮するステップと、
を含む方法において、ビタミンB12とメトホルミンHClとの間の重量比は、1:10.000.000~1:1.000、好ましくは1:5.000.000~1:2.000及び最も好ましくは1:1.000.000~1:4.000である。
【0054】
本明細書に記載のような固体医薬剤形を作製する他の方法であって、
-ビタミンB12の少なくとも1つの噴霧乾燥製剤、顆粒化メトホルミンHCl及び少なくとも1つのカルシウム塩、少なくとも1つの充填剤及び少なくとも1つの結合剤を含む混合物を提供するステップと、
-任意選択的には、得られた混合物を少なくとも1つの錠剤に圧縮するステップと、
を含む方法において、ビタミンB12とメトホルミンHClとの間の重量比は、1:10.000.000~1:1.000、好ましくは1:5.000.000~1:2.000及び最も好ましくは1:1.000.000~1:4.000である。
【0055】
本明細書に記載のような固体医薬剤形を作製する最も好ましい方法は、
-ビタミンB12の少なくとも1つの噴霧乾燥製剤、少なくとも1つのさらなる活性医薬成分及び少なくとも1つのカルシウム塩、微結晶性セルロース及び少なくとも1つの結合剤を含む混合物を提供するステップと、
-提供された混合物を顆粒化するステップと、
-任意選択的には、得られた顆粒を少なくとも1つの錠剤に圧縮するステップと、
を含む方法において、ビタミンB12と前記少なくとも1つのさらなる活性医薬成分との間の重量比は、1:10.000.000~1:1.000、好ましくは1:5.000.000~1:2.000及び最も好ましくは1:1.000.000~1:4.000である。
【0056】
[医学的使用及び治療方法]
本発明は、薬剤としての使用が意図された本明細書に記載の固体医薬剤形にも関する。固体医薬剤形がメトホルミンを含む場合、本発明は、メトホルミンを必要とする患者の治療における使用が意図された本明細書に記載の固体医薬剤形にも関する。それ故、本発明の一実施形態は、メトホルミンを必要とする患者の治療における使用が意図された、
a)ビタミンB12の少なくとも1つの噴霧乾燥製剤、
b)メトホルミン又はその薬学的に許容できる塩、及び
c)少なくとも1つの薬学的に許容できる固体賦形剤
を含む固体医薬剤形に関する。
【0057】
糖尿病を患う患者は、メトホルミンを必要とすることがある。したがって、本発明は、糖尿病の治療における使用が意図された、メトホルミンを含む本明細書に記載の固体医薬剤形にも関する。それ故、本発明の一実施形態は、糖尿病の治療における使用が意図された、好ましくは糖尿病を患うビーガン又は菜食患者の治療における使用が意図された、
a)ビタミンB12の少なくとも1つの噴霧乾燥製剤、
b)メトホルミン又はその薬学的に許容できる塩、及び
c)少なくとも1つの薬学的に許容できる固体賦形剤、
を含む固体医薬剤形に関する。ビーガン及び菜食患者は特に、正常より低い血清ビタミンB12レベルである傾向がある。
【0058】
本発明は、糖尿病を治療するための方法であって、本明細書に記載の固体医薬剤形を投与するステップを含む方法にも関する。本発明の好ましい実施形態は、糖尿病を治療するための方法であって、固体医薬剤形であって、
a)ビタミンB12の少なくとも1つの噴霧乾燥製剤、
b)メトホルミン又はその薬学的塩、及び
c)少なくとも1つの薬学的に許容できる固体賦形剤
を含む固体医薬剤形を投与するステップを含む、方法に関する。
【0059】
この治療を適用するとき、メトホルミン誘導性ビタミンB12欠乏は、予防、軽減又は治療される。
【0060】
[実施例]
[実施例1]
実施例1では、3種の異なる錠剤を調製した。各錠剤は、549.9mgのリン酸カルシウム(無水、Emcompress(登録商標)で入手可能)及び0.0078mgのビタミンB12を含んだ。ビタミンB12の供給源以外、異なる種類の錠剤は同一であった。
【0061】
含量均一性に対する影響を検討するため、以下の3種の異なるビタミンB12を試験した:
-ビタミンB12結晶(結晶ビタミンB12、DSM(登録商標)Nutritional Productsで入手可能)
-ビタミンB12 1%SD(ビタミンB12の噴霧乾燥製剤、DSM(登録商標)Nutritional Productsで入手可能)
-ビタミンB12 0.1%WS(ビタミンB12の噴霧乾燥製剤、DSM(登録商標)Nutritional Productsで入手可能)
【0062】
22×9mmの長方形パンチ及び20kNの圧縮力を用いるKorsch XL100ロータリー錠剤化装置(Korsch AG,Berlin,Germany)で錠剤を圧縮した。
【0063】
次に、ビタミンB12の含量均一性を、10の各アッセイ測定値(Eurofins(登録商標),Germanyにより実施されたHPLC分析)から算出した標準偏差RSD(%)及び合格判定値(AV)を介して評価した。
【0064】
下の表1に示す通り、ビタミンB12の2つの噴霧乾燥製剤についての相対標準偏差(RSD)値は5%未満であり、錠剤中のビタミンB12の許容できる含量均一性、ひいては均一分布が示された。それに対し、ビタミンB12結晶についての含量均一性は極めて不良であった。
【0065】
【表1】
【0066】
RSD及びAVは、「米国薬局方,37th revision,May 1,2014,physical tests,<905> Uniformity of Dosage Units」で示された通りに算出した。
【0067】
[実施例2]
実施例2では、(a)ビタミンB12の噴霧乾燥製剤、(b)メトホルミン及び(c)いくつかの薬学的に許容できる固体賦形剤を含む錠剤を調製した。Vistin Pharma(Oslo,Norway)で入手可能な顆粒化メトホルミンDC 92.6%を使用した。薬学的に許容できる固体賦形剤として、2種の異なるカルシウム塩を使用した。得られた錠剤は非常に硬く、崩壊時間は短く、且つ錠剤化プロセスの間にキャッピングは認められなかった。
【0068】
下の表2は、本発明の錠剤の組成を示す。
【0069】
【表2】
【0070】
両錠剤は、863.9mg92.6%=800mgのメトホルミンを含んだ。両錠剤は、1.56mg1%=0.0156mgのシアノコバラミンを含んだ。したがって、シアノコバラミン:メトホルミンの重量比は、錠剤中で1:51.282であった。
【0071】
両錠剤は、メトホルミンで治療可能である医学的適応を患っている患者を治療するのに好適である。したがって、両錠剤は、糖尿病の治療における使用が意図される。
【国際調査報告】