(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-24
(54)【発明の名称】イットリア含有ガラス基板
(51)【国際特許分類】
C03C 3/095 20060101AFI20220817BHJP
【FI】
C03C3/095
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021572883
(86)(22)【出願日】2020-06-04
(85)【翻訳文提出日】2022-02-08
(86)【国際出願番号】 US2020036017
(87)【国際公開番号】W WO2020256945
(87)【国際公開日】2020-12-24
(32)【優先日】2019-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】グロス,ティモシー マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ミッチェル,アレクサンドラ ライ チン カオ アンドリューズ
【テーマコード(参考)】
4G062
【Fターム(参考)】
4G062AA01
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4G062NN33
(57)【要約】
ガラス基板は、約45モル%から約70モル%のSiO2、約15モル%から約30モル%のAl2O3、約7モル%から約20モル%のY2O3、および必要に応じて、0モル%から約9モル%のLa2O3を含む。このガラス基板は、高い弾性率(modulus)および破壊靱性を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約45モル%から約70モル%のSiO
2、
約15モル%から約30モル%のAl
2O
3、
約7モル%から約20モル%のY
2O
3、および
必要に応じて、0モル%から約9モル%のLa
2O
3、
を含むガラス基板。
【請求項2】
前記ガラス基板が、約27モル%から約43モル%のR
2O
3を含み、ここで、R
2O
3は、Al
2O
3、Y
2O
3、およびLa
2O
3を含む、請求項1記載のガラス基板。
【請求項3】
前記ガラス基板が、約0.3から約1.7の範囲の[(Y
2O
3+La
2O
3)/Al
2O
3]のモル比を有する、請求項1記載のガラス基板。
【請求項4】
SiO
2が、約50モル%から約70モル%、約52モル%から約70モル%、約52モル%から約66モル%、約54モル%から約66モル%、または約60モル%から約66モル%の範囲にある、請求項1記載のガラス基板。
【請求項5】
Al
2O
3が、約16モル%から約30モル%、約17モル%から約30モル%、約18モル%から約30モル%、約18モル%から約28モル%、または約18モル%から約25モル%の範囲にある、請求項1記載のガラス基板。
【請求項6】
Y
2O
3が、約8モル%から約20モル%、約9モル%から約20モル%、約7モル%から約16モル%、約7モル%から約15モル%、約8モル%から約16モル%、または約10モル%から約16モル%の範囲にある、請求項1記載のガラス基板。
【請求項7】
La
2O
3が、約0.1モル%から約9モル%、約1モル%から約9モル%、約2モル%から約9モル%、または約3モル%から約9モル%の範囲にある、請求項1記載のガラス基板。
【請求項8】
0モル%から約6モル%のB
2O
3をさらに含み、La
2O
3を実質的に含まない、請求項1記載のガラス基板。
【請求項9】
0モル%から約6モル%のMgOをさらに含む、請求項1記載のガラス基板。
【請求項10】
0モル%から約12モル%の、Li
2O、Na
2O、K
2O、またはその組合せをさらに含む、請求項1記載のガラス基板。
【請求項11】
(Al
2O
3-R
2O-RO)のモル百分率の差が、約7から約22の範囲にあり、ここで、R
2Oは、Li
2O、Na
2O、K
2O、およびそれらの任意の組合せからなる群より選択されるアルカリ金属酸化物を含み、ROは、MgO、SrO、BaO、およびそれらの任意の組合せからなる群より選択されるアルカリ土類金属酸化物を含む、請求項1記載のガラス基板。
【請求項12】
CaO、Eu
2O
3、Nb
2O
3、Si
3N
4、WO
3、ZrO
4、およびTiO
2を実質的に含まない、請求項1記載のガラス基板。
【請求項13】
約0.87から約2.0MPa・m
0.5の範囲の破壊靱性(K
IC)を有する、請求項1記載のガラス基板。
【請求項14】
約100GPaから約140GPaの範囲のヤング率、および約30GPaから約60GPaの範囲の剛性率を有する、請求項1記載のガラス基板。
【請求項15】
約45モル%から約70モル%のSiO
2、
約15モル%から約30モル%のAl
2O
3、
約7モル%から約20モル%のY
2O
3、
0モル%から約9モル%のLa
2O
3、
0モル%から約6モル%のMgO、および
0モル%から約12モル%の、Li
2O、Na
2O、K
2O、およびその組合せからなる群より選択されるアルカリ金属酸化物、
から実質的になるガラス基板。
【請求項16】
前記ガラス基板が、約27モル%から約43モル%のR
2O
3を含み、ここで、R
2O
3は、Al
2O
3、Y
2O
3、およびLa
2O
3を含み、該ガラス基板が、約0.3から約1.7の範囲の[(Y
2O
3+La
2O
3)/Al
2O
3]のモル比を有する、請求項15記載のガラス基板。
【発明の詳細な説明】
【優先権】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、ここに全て引用される、2019年6月19日に出願された、米国仮特許出願第62/863550号の米国法典第35編第119条の下での優先権の恩恵を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本開示は、概して、ガラス組成物に関する。より詳しくは、開示された主題は、高い弾性率(modulus)および破壊靱性を有するガラス基板に関する。
【背景技術】
【0003】
フラットパネルディスプレイ、光起電装置、および他の適切な用途に、ガラスなどの光学的に透明な材料から製造された平らなまたは湾曲した基板が使用されている。ディスプレイ用途のために、薄膜トランジスタ(TFT)がガラス基板上に作られることがある。ディスプレイ用途に使用されるガラス組成物は、光学的透明度、良好な熱的および機械的性質、並びに加工および性能要件を満たす寸法安定性を有する必要がある。それに加え、薄膜トランジスタに損傷を与える金属イオンのトランジスタ中への拡散を防ぐ必要がある。
【0004】
剛性ガラスは、ハードディスクドライブ(HDD)内の磁気ディスク、光ディスク、およびメモリディスクなどの情報記録ディスクにも使用される。メモリディスクにおいてより大容量のデータ記憶容量およびより高い性能が要望されるために、性能が改善されたガラス組成物もますます必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガラスは、脆性材料であり、時々、使用中に割れることがある。商業的に使用されるガラスの破壊靱性は、通常、0.8MPa・m0.5に近いかまたはそれより低い。損傷抵抗および/または落下性能を改善するために高い破壊靱性を有するガラスを得ることが、引き続き必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、ガラス組成物、ガラス基板、その製造方法、およびその使用方法を提供する。本開示は、そのようなガラス組成物またはガラス基板を含む物品、並びにそのようなガラス組成を有するガラス基板を含むデバイスも提供する。
【0007】
いくつかの実施の形態によれば、ガラス基板は、
約45モル%から約70モル%のSiO2、
約15モル%から約30モル%のAl2O3、
約7モル%から約20モル%のY2O3、および
必要に応じて、0モル%から約9モル%のLa2O3、
を含む。
【0008】
いくつかの実施の形態において、そのガラス基板は、約27モル%から約43モル%のR2O3を含み、ここで、R2O3は、Al2O3、Y2O3、およびLa2O3の合計である。R2O3含有量の適切な範囲の例としては、以下に限られないが、約28モル%から約40モル%、約30モル%から約40モル%、または約32モル%から約38モル%が挙げられる。いくつかの実施の形態において、そのガラス基板は、約0.3から約1.7、例えば、約0.5から約1.7、または約1から約1.5の範囲の[(Y2O3+La2O3)/Al2O3]のモル比を有する。
【0009】
前記ガラス基板において、SiO2は、任意の適切な範囲で存在する。適切な範囲の例としては、以下に限られないが、約50モル%から約70モル%、約52モル%から約70モル%、約52モル%から約66モル%、約54モル%から約66モル%、または約60モル%から約66モル%が挙げられる。
【0010】
いくつかの実施の形態において、Al2O3は、含有量が15モル%以上である。Al2O3の適切な範囲の例としては、以下に限られないが、約16モル%から約30モル%、約17モル%から約30モル%、約18モル%から約30モル%、約18モル%から約28モル%、または約18モル%から約25モル%が挙げられる。
【0011】
いくつかの実施の形態において、Y2O3は、含有量が7モル%以上である。Y2O3の適切な範囲の例としては、以下に限られないが、約8モル%から約20モル%、約9モル%から約20モル%、約7モル%から約16モル%、約7モル%から約15モル%、約8モル%から約16モル%、または約10モル%から約16モル%が挙げられる。
【0012】
La2O3は、随意的である。La2O3の適切な範囲の例としては、以下に限られないが、約0.1モル%から約9モル%、約1モル%から約9モル%、約2モル%から約9モル%、または約3モル%から約9モル%が挙げられる。ガラス基板がLa2O3を含む場合、そのようなガラス基板はB2O3を含有しない。
【0013】
いくつかの他の実施の形態において、前記ガラス基板は、0モル%から約6モル%のB2O3、例えば、0.1モル%から約6モル%のB2O3、または0.1モル%から約1モル%のB2O3をさらに含む。B2O3が加えられる場合、そのガラス基板は、La2O3を実質的に含まない。
【0014】
前記ガラス基板は、0モル%から約6モル%、例えば、0モル%から約5モル%、0モル%から約4モル%、0モル%から約3モル%、約0.1モル%から約5モル%、約0.1モル%から約4モル%、約0.1モル%から約3モル%のMgOをさらに含むことがある。
【0015】
前記ガラス基板は、Li2O、Na2O、K2O、またはその組合せなどのアルカリ金属酸化物も0モル%から約12モル%でさらに含むことがある。
【0016】
いくつかの実施の形態において、(Al2O3-R2O-RO)のモル百分率の差は、約7から約22、例えば、約7.1から約21.6、約10から約20、または約15から約20の範囲にある。R2Oは、Na2O、K2O、およびそれらの任意の組合せからなる群より選択されるアルカリ金属酸化物を含む。ROは、MgO、SrO、BaO、およびそれらの任意の組合せからなる群より選択されるアルカリ土類金属酸化物を含む。前記ガラス基板は、CaOを実質的に含まない。
【0017】
前記ガラス基板は、いくつかの実施の形態において、CaOに加え、Eu2O3、Nb2O3、Si3N4、WO3、ZrO4、およびTiO2を実質的に含まない。
【0018】
いくつかの実施の形態によれば、本開示は、
約45モル%から約70モル%のSiO2、
約15モル%から約30モル%のAl2O3、
約7モル%から約20モル%のY2O3、
0モル%から約9モル%のLa2O3、
0モル%から約6モル%のMgO、および
0モル%から約12モル%の、Li2O、Na2O、K2O、およびその組合せからなる群より選択されるアルカリ金属酸化物、
から実質的になるガラス基板を提供する。
【0019】
そのガラス基板は、約27モル%から約43モル%のR2O3を含み、ここで、R2O3は、Al2O3、Y2O3、およびLa2O3の合計である。そのガラス基板は、約0.3から約1.7の範囲の[(Y2O3+La2O3)/Al2O3]のモル比を有する。ここに記載されたように、La2O3、B2O3、MgO、およびNa2OとK2Oなどのアルカリ金属酸化物は、随意的である。そのガラス基板がLa2O3を含む場合、そのようなガラス基板は、いくつかの実施の形態において、B2O3を実質的に含まない。
【0020】
本開示において提供されるガラス基板は、加工を容易にするための良好な性質、並びに高い弾性率(modulus)および高い破壊靱性を含む、優れた機械的性質を有する。いくつかの実施の形態において、そのガラス基板は、約0.87から約2.0MPa・m0.5の範囲の破壊靱性(KIC)を有する。そのガラス基板は、約100GPaから約140GPaの範囲のヤング率、および約30GPaから約60GPaの範囲の剛性率も有する。
【0021】
本開示において提供されるガラス基板は、そのような破壊靱性および高い弾性率を提供する非晶構造を有する。しかしながら、いくつかの他の実施の形態において、そのガラス基板は、さらに改善された弾性率および破壊靱性を有するように結晶構造で製造されることがある。
【0022】
他の態様において、本開示は、ここに記載されたガラス基板を製造する方法と使用する方法、そのようなガラス基板を含むガラス物品(または構成部材)、およびそのガラス基板またはガラス物品を含むデバイスも提供する。
【0023】
ガラス物品の例としては、以下に限られないが、パネル、基板、情報記録ディスクまたはメモリディスク、カバー、バックプレーン、および電子機器に使用される任意の他の構成部材が挙げられる。例えば、いくつかの実施の形態において、そのガラス組成物またはガラス基板は、メモリディスク用の基板、もしくは表示装置におけるカバーまたはバックプレーンとして使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明は、添付図面と共に読まれたときに、以下の詳細な説明から最もよく理解される。これらの図面は、一般的な慣行にしたがって、いくつかの実施の形態の説明のためだけであることを強調しておく。
【
図1】いくつかの実施の形態による例示のガラス組成物の軟化点、および軟化点と歪み点との間の差の関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0025】
例示の実施の形態のこの説明は、添付図面に関連して読まれることが意図されており、その図面は、記載された全体の説明の一部と考えるべきである。以後、説明目的のために、下記に記載された実施の形態では、代わりの変種および実施の形態が考えられることを理解すべきである。ここに記載された特定の物品、組成物、および/または過程は、例示であり、限定と考えるべきではないことも理解すべきである。本開示に挙げられた全ての文書は、ここに引用により含まれる。
【0026】
「含む(include)」、「含んでいる(including)」、「含有する(contain)」、「含有している(containing)」などの非限定用語は、「含む(comprising)」ことを意味する。これらの制約がない移行句は、追加の列挙されていない要素または方法の工程を排除しない、要素、方法の工程などの制約のないリストを導入するために使用される。実施の形態が、「含む」という言語で記載されているときはいつでも、「からなる」および/または「から実質的になる」で記載された他の様式で類似の実施の形態も提供されることが理解されよう。
【0027】
「からなる」という移行句およびその変形は、それに通常関連する不純物を除いて、列挙されていない任意の要素、工程、または成分を排除する。
【0028】
「から実質的になる」という移行句またはその変形は、指定の方法、構造または組成物の基本的なまたは新規の性質を実質的に変化させないものを除いて、列挙されていない任意の要素、工程、または成分を排除する。
【0029】
本開示において、名詞は複数の対象も含み、特定の数値への言及は、文脈上明白に他の意味を示す場合を除いて、少なくともその特定の値を含む。値が、「約」という先行詞の使用により、近似として表されている場合、その特定値は別の実施の形態を形成することが理解されよう。ここに用いられているように、「約X」(ここで、Xは数値である)は、好ましくは、包括的に、挙げられた値の±10%を称する。例えば、「約8」という句は、好ましくは、包括的に、7.2から8.8の値を称する。全ての範囲は、存在する場合、包括的かつ組合せ可能である。例えば、「1から5」の範囲が挙げられている場合、その挙げられた範囲は、「1から4」、「1から3」、「1~2」、「1~2および4~5」、「1~3および5」、「2~5」などの範囲を含むものと解釈されるべきである。それに加え、選択肢のリストが積極的に与えられている場合、そのようなリストは、例えば、請求項における消極的な限定によって、選択肢のいずれかが排除されてもよいことを意味すると解釈することができる。例えば、「1から5」の範囲が挙げられている場合、挙げられた範囲は、それによって、1、2、3、4、または5のいずれかが消極的に排除される状況を含むものと解釈されることがある;それゆえ、「1から5」の列挙は、「1および3~5であるが、2ではない」、または単純に「2が含まれない」と解釈されることがある。ここに積極的に挙げられているどの構成部材、要素、属性、または工程も、そのような構成部材、要素、属性、または工程が選択肢として列挙されているか否か、もしくはそれらが孤立して挙げられているか否かにかかわらず、請求項において明白に排除されてもよいことが意図されている。
【0030】
ここに用いられている「実質的」、「実質的に」という用語、およびその変形は、記載された特徴が、ある値または記載と等しいか、またはほぼ等しいことに言及する意図がある。さらに、「実質的に類似」とは、2つの値が等しいか、またはほぼ等しいことを示す意図がある。いくつかの実施の形態において、「実質的に類似」とは、互いの約5%以内、または互いの約2%以内など、互いの約10%以内の値を示すことがある。
【0031】
本開示は、ガラス組成物、その製造方法、およびその使用方法を提供する。本開示は、そのようなガラス組成物から作られたガラス基板または物品、およびそのようなガラス組成物またはそのようなガラス組成を有するガラス基板を含むデバイスも提供する。そのようなガラス組成物は、高含有量のAl2O3、およびY2O3を含む、ここに記載されたような成分を含む。ここに記載されるように、意外なことに、そのようなガラス組成物は、高い弾性率および高い破壊靱性を、ここに記載された他の所望の性質に加え、提供することが分かった。
【0032】
いくつかの実施の形態において、前記基板は、光学的に透明である。基板の例としては、以下に限られないが、平らなまたは湾曲したガラスパネルが挙げられる。
【0033】
文脈上明白に他の意味を示す場合を除いて、ここに用いられている「ガラス物品」または「ガラス」という用語は、ガラスから全体がまたは部分的に製造されたどの物品も包含すると理解される。ガラス物品は、モノリス基板、またはガラスとガラス、ガラスと非ガラス材料、ガラスと結晶質材料、およびガラスとガラスセラミック(非晶相と結晶相を含む)の積層体を含む。
【0034】
ガラスパネルなどのガラス物品は、平らであっても湾曲していてもよく、透明または実質的に透明である。ここに用いられているように、「透明」という用語は、その物品が、約1mmの厚さで、スペクトルの可視領域(400~700nm)において約85%超の透過率を有することを示す意図がある。例えば、例示の透明ガラスパネルは、全ての範囲とその間の部分的範囲を含む、約90%超、約95%超、または約99%超の透過率など、可視光範囲における約85%超の透過率を有することがある。様々な実施の形態によれば、そのガラス物品は、全ての範囲とその間の部分的範囲を含む、約45%未満、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、または約20%未満など、可視領域における約50%未満の透過率を有することがある。特定の実施の形態において、例示のガラスパネルは、全ての範囲とその間の部分的範囲を含む、約55%超、約60%超、約65%超、約70%超、約75%超、約80%超、約85%超、約90%超、約95%超、または約99%超の透過率など、紫外(UV)領域(100~400nm)における約50%超の透過率を有することがある。
【0035】
例示のガラスとしては、以下に限られないが、アルミノケイ酸塩、アルカリアルミノケイ酸塩、ホウケイ酸塩、アルカリホウケイ酸塩、アルミノホウケイ酸塩、アルカリアルミノホウケイ酸塩、および他の適切なガラスが挙げられる。いくつかの実施の形態において、前記ガラス物品は、その物品の複数の部分の間の熱膨張係数の不一致を利用して、圧縮応力領域および引張応力を示す中央領域を作ることによって、機械的に強化されることがある。いくつかの実施の形態において、そのガラス物品は、ガラスを、ガラス転移温度より高い温度に加熱し、次いで、急冷することによって、熱的に強化されることがある。いくつかの他の実施の形態において、そのガラス物品は、イオン交換により化学的に強化されることがある。
【0036】
ここに用いられている「軟化点」という用語は、ガラス組成物の粘度が1×107.6ポアズである温度を称する。
【0037】
ここに用いられている「徐冷点」という用語は、ガラス組成物の粘度が1×1013.18ポアズである温度を称する。
【0038】
ここに用いられている「歪み点」および「T歪み」という用語は、ガラス組成物の粘度が3×1014.68ポアズである温度を称する。
【0039】
ガラスの液相温度(T液相)は、それより高いと結晶相がガラスと平衡状態で共存できない温度(℃)である。液相粘度は、液相温度でのガラスの粘度である。
【0040】
ここに用いられている「CTE」という用語は、ほぼ室温(RT)から約300℃の温度範囲に亘るガラス組成物の熱膨張係数を称する。
【0041】
破壊靱性は、当該技術分野で公知の方法を使用して、例えば、ASTM C1421-10、「Standard Test Methods for Determination of Fracture Toughness of Advanced Ceramics at Ambient Temperature」にしたがって、シェブロンノッチ付き小型角棒、ノッチ付き梁などを使用して、測定することができる。この開示に挙げられた破壊靱性値(KIC)は、Y*
mが、Bubsey, R. T.等の「Closed-Form Expressions for Crack-Mouth Displacement and Stress Intensity Factors for Chevron-Notched Short Bar and Short Rod Specimens Based on Experimental Compliance Measurements」 NASA Technical Memorandum 83796, 1~30頁(1992年10月)の式5を使用して計算されていることを除いて、Reddy, K. P. R.等の「Fracture Toughness Measurement of Glass and Ceramic Materials Using Chevron-Notched Specimens」 J. Am. Ceram. Soc., 71 [6], C-310-C-313 (1988年)に開示されたシェブロンノッチ付き小型角棒(CNSB)法によって測定された値を称する。
【0042】
本開示に挙げられたヤング率値、剛性率、およびポアソン比は、「Standard Guide for Resonant Ultrasound Spectroscopy for Defect Detection in Both Metallic and Non-metallic Parts」と題するASTM E2001-13に述べられた一般型の共鳴超音波スペクトロスコピー技術により測定された値(GPaに変換される)を称する。
【0043】
応力光学係数(SOC)値は、「Standard Test Method for Measurement of Glass Stress-Optical Coefficient」と題するASTM基準C770-16の手順C(ガラスディスク法)に述べられたように測定することができる。
【0044】
ここに記載されたガラス組成物の実施の形態において、構成成分(例えば、SiO2、Al2O3など)の濃度は、特に明記のない限り、酸化物基準のモルパーセント(モル%)で規定されている。
【0045】
「含まない(free)」および「実質的に含まない(substantially free)」という用語は、ガラス組成物中の特定の構成成分の濃度および/または不在を記載するために使用される場合、その構成成分がガラス組成物に意図的に添加されていないことを意味する。しかしながら、そのガラス組成物は、0.01モル%未満の量の汚染物質またはトランプ(tramp)として微量の構成成分を含有することがある。
【0046】
米国特許出願公開第2014/0141226号明細書には、高硬度および高弾性率を有するイオン交換可能なガラスが開示されており、広い組成範囲でイットリアを含有するナトリウムアルミノケイ酸塩ガラスは、相分離または失透のいずれかを示すことが記載されている。例えば、米国特許出願公開第2014/0141226号明細書の
図1に示されたような三元状態図によれば、Al
2O
3の含有量が約15モル%から約22モル%の範囲にあり、イットリアの含有量が約7モル%より多い場合、相分離が起こった;イットリアの含有量が約22.5モル%を超えると、失透が起こった。米国特許出願公開第2014/0141226号明細書は、7モル%までのY
2O
3を有するガラス組成物を与え、それゆえ、そのような失透を避けている。
【0047】
米国特許出願公開第2018/0022635号明細書には、高い破壊靱性を有するガラス組成物およびガラス物品が開示されており、これらは、La2O3、BaO、Ta2O5、Y2O3、およびHfO2からなる群より選択される1種類以上、特に、2種類以上の金属酸化物を含む。そのようなガラス系の物品において、Al2O3の含有量は、約1モル%から約15モル%の範囲にある。
【0048】
本開示は、高含有量のAl2O3、およびY2O3を含む、ここに記載されたような成分を含むガラス組成物またはガラス基板を提供する。意外なことに、そのようなガラス組成物は、良好な品質を有し、高弾性率および高い破壊靱性を含む所望の性質を有するガラス系の物品を提供することが分かった。
【0049】
いくつかの実施の形態によれば、ガラス基板は、
約45モル%から約70モル%のSiO2、
約15モル%から約30モル%のAl2O3、
約7モル%から約20モル%のY2O3、および
必要に応じて、0モル%から約9モル%のLa2O3、
を含む。
【0050】
いくつかの実施の形態において、そのガラス基板は、約27モル%から約43モル%のR2O3を含み、ここで、R2O3は、Al2O3、Y2O3、およびLa2O3の合計である。適切な範囲の例としては、以下に限られないが、約28モル%から約40モル%、約30モル%から約40モル%、または約32モル%から約38モル%が挙げられる。いくつかの実施の形態において、そのガラス基板は、約0.3から約1.7、例えば、約0.5から約1.7、または約1から約1.5の範囲の[(Y2O3+La2O3)/Al2O3]のモル比を有する。
【0051】
ここに記載されたガラス基板の実施の形態において、SiO2は、その組成物の最大成分であり、それゆえ、ガラス網状構造の主成分である。SiO2は、所望の液相粘度を得ると同時に、その組成物に添加されるAl2O3の量を相殺するために使用されることがある。
【0052】
前記ガラス基板において、SiO2は、任意の適切な範囲で存在する。適切な範囲の例としては、以下に限られないが、約50モル%から約70モル%、約52モル%から約70モル%、約52モル%から約66モル%、約54モル%から約66モル%、または約60モル%から約66モル%が挙げられる。
【0053】
ここに記載されたガラス基板は、比較的高含有量でAl2O3をさらに含む。いくつかの実施の形態において、Al2O3は、含有量が15モル%以上である。Al2O3の適切な範囲の例としては、以下に限られないが、約16モル%から約30モル%、約17モル%から約30モル%、約18モル%から約30モル%、約18モル%から約28モル%、または約18モル%から約25モル%が挙げられる。
【0054】
ここに記載された実施の形態におけるガラス基板は、高弾性率および高い破壊靱性のために、Y2O3、La2O3、またはその組合せも含む。
【0055】
いくつかの実施の形態において、Y2O3は、含有量が7モル%以上である。Y2O3の適切な範囲の例としては、以下に限られないが、約8モル%から約20モル%、約9モル%から約20モル%、約7モル%から約16モル%、約7モル%から約15モル%、約8モル%から約16モル%、または約10モル%から約16モル%が挙げられる。
【0056】
La2O3は、随意的である。La2O3の適切な範囲の例としては、以下に限られないが、約0.1モル%から約9モル%、約1モル%から約9モル%、約2モル%から約9モル%、または約3モル%から約9モル%が挙げられる。ガラス基板がLa2O3を含む場合、そのようなガラス基板はB2O3を含有しない。
【0057】
いくつかの他の実施の形態において、前記ガラス基板は、0モル%から約6モル%のB2O3、例えば、0.1モル%から約6モル%のB2O3、または0.1モル%から約1モル%のB2O3をさらに含む。B2O3が加えられる場合、そのガラス基板は、La2O3を実質的に含まない。B2O3およびLa2O3は、同じ配合物中に一緒に添加されることはない。
【0058】
前記ガラス基板は、0モル%から約6モル%、例えば、0モル%から約5モル%、0モル%から約4モル%、0モル%から約3モル%、約0.1モル%から約5モル%、約0.1モル%から約4モル%、約0.1モル%から約3モル%のMgOをさらに含むことがある。
【0059】
前記ガラス基板は、Li2O、Na2O、K2O、またはその組合せなどのアルカリ金属酸化物も0モル%から約12モル%でさらに含むことがある。Li2O、Na2O、K2O、またはその組合せの適切な範囲の例としては、以下に限られないが、0.1モル%から約12モル%、0.1モル%から約10モル%、0.1モル%から約8モル%、0.1モル%から約5モル%が挙げられる。いくつかの実施の形態において、Li2O、Na2O、およびK2Oの合計の含有量は、13%未満である。いくつかの実施の形態において、そのガラス基板は、アルカリ金属酸化物を実質的に含まない。
【0060】
いくつかの実施の形態において、(Al2O3-R2O-RO)のモル百分率の差は、約7から約22、例えば、約7.1から約21.6、約10から約20、または約15から約20の範囲にある。R2Oは、Na2O、K2O、およびそれらの任意の組合せからなる群より選択されるアルカリ金属酸化物を含む。ROは、MgO、SrO、BaO、およびそれらの任意の組合せからなる群より選択されるアルカリ土類金属酸化物を含む。前記ガラス基板は、CaOを実質的に含まない。
【0061】
前記ガラス基板は、いくつかの実施の形態において、CaOに加え、Eu2O3、Nb2O3、Si3N4、WO3、ZrO4、およびTiO2を実質的に含まない。
【0062】
いくつかの実施の形態によれば、本開示は、
約45モル%から約70モル%のSiO2、
約15モル%から約30モル%のAl2O3、
約7モル%から約20モル%のY2O3、
0モル%から約9モル%のLa2O3、
0モル%から約6モル%のMgO、および
0モル%から約12モル%の、Li2O、Na2O、K2O、およびその組合せからなる群より選択されるアルカリ金属酸化物、
から実質的になるガラス基板を提供する。
【0063】
そのガラス基板は、約27モル%から約43モル%のR2O3を含み、ここで、R2O3は、Al2O3、Y2O3、およびLa2O3の合計である。そのガラス基板は、約0.3から約1.7の範囲の[(Y2O3+La2O3)/Al2O3]のモル比を有する。ここに記載されたように、La2O3、B2O3、MgO、およびNa2OとK2Oなどのアルカリ金属酸化物は、随意的である。このガラス基板において、La2O3およびB2O3は共存しない。
【0064】
いくつかの実施の形態によれば、本開示は、
約45モル%から約70モル%のSiO2、
約15モル%から約30モル%のAl2O3、および
約7モル%から約20モル%のY2O3、
から実質的になるガラス基板を提供する。
【0065】
本開示において提供されるガラス基板は、加工を容易にするための良好な性質、並びに高弾性率および高い破壊靱性を含む優れた機械的性質を有する。いくつかの実施の形態において、そのガラス基板は、約0.87MPa・m0.5から約2.0MPa・m0.5、例えば、約0.87MPa・m0.5から約1.5MPa・m0.5、約0.87MPa・m0.5から約1.2MPa・m0.5、または約0.87MPa・m0.5から約1.07MPa・m0.5の範囲の破壊靱性(KIC)を有する。
【0066】
いくつかの実施の形態において、前記ガラス系物品は約0.87MPa・m0.5、約0.9MPa・m0.5、約1MPa・m0.5、約1.1MPa・m0.5、約1.2MPa・m0.5、約1.3MPa・m0.5、約1.4MPa・m0.5、約1.5MPa・m0.5、約1.6MPa・m0.5、約1.8MPa・m0.5、約2MPa・m0.5、またはその指定値の間の任意の範囲の破壊靱性値を有し得る。
【0067】
前記ガラス基板は、約100GPaから約140GPa、例えば、約100GPaから約130GPa、約100GPaから約120GPa、約105GPaから約120GPa、約110GPaから約120GPaの範囲のヤング率も提供する。
【0068】
前記ガラス基板は、約30GPaから約60GPa、約35GPaから約50GPa、約39GPaから約50GPa、または約40GPaから約50GPaの範囲の剛性率も有する。
【0069】
別の態様において、本開示は、ここに記載されたガラス基板を製造する方法および使用する方法も提供する。ガラス系物品は、個々の酸化物を溶融し、混合する工程を含む方法によって、調製することができる。しかしながら、いくつかの実施の形態において、混合エントロピーを最大にするために、例えば、結晶化を抑制するために、「混乱原理(confusion principle)」を用いることができる。
【0070】
本開示において提供されるガラス基板は、そのような破壊靱性および高弾性率を提供する非晶構造を有する。しかしながら、いくつかの他の実施の形態において、そのガラス基板は、さらに改善された弾性率および破壊靱性を有するように、結晶構造で製造されることもある。
【0071】
本開示は、そのようなガラス基板を備えたガラス物品(または構成部材)、およびそのガラス基板を備えたデバイスまたはそのガラス基板を有するガラス物品も提供する。
【0072】
ガラス物品の例としては、以下に限られないが、パネル、基板、情報記録ディスクまたはメモリディスク、カバー、バックプレーン、および電子機器に使用される任意の他の構成部材が挙げられる。例えば、いくつかの実施の形態において、そのガラス組成物またはガラス基板は、メモリディスク用の基板、もしくは表示装置におけるカバーまたはバックプレーンとして使用することができる。
【0073】
本開示において提供されるガラス基板は、高いヤング率および高い破壊靱性に加え、高い硬度、および対応する高い歪み/徐冷点での比較的低い軟化点を有する。ビッカース硬度(VHN、200g荷重)は、700~850、例えば、750から850、または767から818の範囲にあることがある。対応する歪み/徐冷点(Δ軟化点-歪み点)は、890~1050℃の軟化点で190~300、例えば、190から270の範囲にあり得る。比較的低い軟化点が、対応する高い歪み/徐冷点で示される。
【0074】
これらの機械的属性を有するガラスは、高いヤング率(剛性)を必要とする、メモリディスクから、ディスプレイ用途に及ぶ様々な用途に必要とされている。ディスプレイについて、高いヤング率は、膜応力の影響を最小にし、高い歪み点と徐冷点は、応力および低温緩和を最小にし、その両方とも、ガラスが薄膜トランジスタの堆積中に後続の加工を経るときに、重要である。これらの用途の両方にとって、ガラスの高い破壊靱性は、所定の傷サイズ集団について改善された強度をもたらす。これらの組成物が対処している難題は、長年に亘り、過去において有利な機械的属性を使用することによって、対処されてきた。本開示は、ここに記載されたような、高い弾性率、高い破壊靱性、および高い硬度を達成するために、網状構造改質剤の高いカチオン場の強度を利用するように設計された独特なガラス基板を提供する。
【0075】
このガラス基板の密度は、比較的高く、例えば、2.8g/cm3から3.9g/cm3の範囲にある。このガラス基板は、比較的高い屈折率(1.708まで)を有する。
【0076】
本開示において提供されるガラス基板は、低い応力光学係数(SOC)を有し、これは、約4ブルースターより低い、例えば、約1ブルースターから約4ブルースターの範囲にある。SOCは、ガラスの複屈折に関連付けられることが、当業者により理解されよう。このガラス基板は、約1ブルースターから約3ブルースター、または約1.5ブルースターから約2.5ブルースターのSOCを有し得る。いくつかの実施の形態において、SOCは約1.7ほど低い。
【0077】
いくつかの実施の形態において、前記ガラス基板は、約10×10-7/℃から約60×10-7/℃の範囲、例えば、約30×10-7/℃から約56×10-7/℃の範囲、または約35×10-7/℃から約55×10-7/℃の範囲にある熱膨張係数(CTE)(22~300℃)を有する。
【実施例】
【0078】
以下の実施例は、開示された主題による方法および結果を示すために下記に述べられている。これらの実施例は、ここに開示された主題の全ての実施の形態を含めることを意図しておらず、そうではなく、代表的な方法および結果を示すことを意図している。これらの実施例は、当業者に明白な、本開示の同等物および変更例を排除する意図はない。
【0079】
数(例えば、量、温度など)に関連する精度を確実にするために努力を払ってきたが、ある程度の誤差および偏差を考慮すべきである。特に明記のない限り、温度は、℃で表されているか、周囲温度であり、圧力は、大気圧であるか、または大気圧に近い。組成自体は、酸化物基準のモルパーセントで与えられており、100%に正規化されている。反応条件、例えば、成分濃度、温度、圧力および記載された過程から得られる生成物の純度と収率を最適にするために使用できる他の反応範囲と条件のバリエーションおよび組合せが数多くある。そのような工程条件を最適化するには、妥当な日常的実験しか必要ない。
【0080】
表1~7に述べられたガラス特性は、ガラスの技術分野で慣習的な技術にしたがって決定した。それゆえ、温度範囲25~300℃に亘る線熱膨張係数(CTE)は、×10-7/℃で表され、徐冷点は、℃で表されている。CTEは、ASTM基準E228にしたがって決定した。徐冷点は、特に明記のない限り、ASTM基準C336にしたがってファイバ伸長技術により決定した。g/cm3で表される密度は、アルキメデス法(ASTM C693)により測定した。℃で表される溶融温度(ガラス溶融物が200ポアズの粘度を示す温度として定義される)は、回転円筒式粘度測定法(ASTM C965-81)により測定された高温粘度データにフィッティングされたフルチャーの式を利用して計算した。
【0081】
℃で表されるガラスの液相温度は、ASTM C829-81の標準勾配ボート液相線法を使用して測定した。これは、白金ボート内に粉砕ガラス粒子を入れ、そのボートを、勾配温度の領域を有する炉に入れ、24時間に亘り適切な温度領域内でボートを加熱し、顕微鏡検査によりガラスの内部に結晶が現れる最高温度を決定する各工程を含む。より詳しくは、ガラス試料は、ワンピースでPtボートから取り出され、Ptと空気の界面に対して、および試料の内部に形成された結晶の位置と性質を特定するために、偏光顕微鏡法を使用して検査される。炉の勾配は非常によく知られているので、温度対位置は、5~10℃以内で、うまく推測することができる。試料の内部で結晶が観察される温度は、ガラスの液相線(対応する試験期間について)を表すものと解釈される。より遅く成長する相を観察するために、試験は、時々、より長い期間(例えば、72時間)で行われる。ポアズで表される液相粘度は、液相温度およびフルチャーの式の係数から決定した。
【0082】
GPaで表されるヤング率値は、ASTM E1875-00e1に述べられた一般型の共鳴超音波スペクトロスコピー技術を使用して決定した。
【0083】
例示のガラスが、表1~7に示されている。例示のガラスは、シリカ源として市販の砂を使用して調製し、90質量%が標準米国100メッシュ篩を通過するように粉砕した。アルミナがアルミナ源であり、ペリクレースが、MgOの供給源であった。Y2O3、La2O3、およびB2O3も、配合に基づいて使用した。原材料を完全に混合し、均一性を確実にするために、数時間に亘り、1600℃と1650℃の間の温度で、二重に溶融し、撹拌した。結果として得られたガラスのパテを徐冷点で、またはその近くで徐冷し、次いで、様々な実験方法を行って、物理的、粘性および液相属性を決定した。
【0084】
これらの方法は特有ではなく、表1~7のガラスは、当業者に周知の標準方法を使用して調製することができる。そのような方法は、連続溶融過程に使用される溶融装置が、ガス、電力、またはその組合せにより加熱される、連続溶融過程に行われるであろうような、連続溶融過程を含む。
【0085】
例示のガラスを製造するのに適した原材料としては、SiO2の供給源としての市販の砂;Al2O3の供給源としてのアルミナ、水酸化アルミニウム、アルミナの水和形態、並びに様々なアルミノケイ酸塩、硝酸塩およびハロゲン化物;B2O3の供給源としてのホウ酸、無水ホウ酸および酸化ホウ素;MgOの供給源としてのペリクレース、マグネシア、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、並びにマグネシウムのケイ酸塩、アルミノケイ酸塩、硝酸塩およびハロゲン化物の様々な形態が挙げられる。化学的清澄剤が望ましい場合、スズをSnO2として、別の主要ガラス成分との混合酸化物(例えば、CaSnO3)として、もしくはSnO、シュウ酸スズ、スズハロゲン化物、または当該技術分野に公知のスズの他の化合物として酸化状態で、添加することができる。
【0086】
前記ガラスは、清澄剤としてSnO2も含有することがある。TFT基板用途のための十分な品質のガラスを得るために、他の化学的清澄剤も利用しても差し支えない。例えば、例示のガラスは、清澄を促進するために、意図的な添加剤として、As2O3、Sb2O3、CeO2、Fe2O3、およびハロゲン化物のいずれか1つまたは組合せを用いても差し支えなく、これらの内のいずれを、実施例に示されたSnO2の化学的清澄剤と組み合わせて使用しても差し支えない。これらの内、As2O3およびSb2O3は、一般に、有害物質と認識され、ガラス製造の過程で、またはTFTパネルの加工において生成されるであろうような廃棄流の規制に曝される。したがって、As2O3およびSb2O3の濃度を、個別にまたは組合せで、0.005モル%以下に制限することが望ましい。
【0087】
例示のガラスに意図的に含ませられる元素に加え、周期表のほぼ全ての安定元素が、原材料中の低レベルの汚染、製造過程における耐火物および貴金属の高温腐食、または最終的なガラスの属性を微調整するために低レベルでの意図的な導入のいずれかにより、ある程度のレベルでガラス中に存在する。例えば、ジルコニウムは、ジルコニウムが豊富な耐火物との相互作用により汚染物質として導入されることがある。さらに別の例として、白金およびロジウムは、貴金属との相互作用により導入されることがある。さらに別の例として、鉄は、原材料中のトランプとして導入されることがある、またはガス状含有物の制御を向上させるために意図的に添加されることがある。さらに別の例として、マンガンは、色を制御するために、またはガス状含有物の制御を向上させるために、導入されることがある。
【0088】
さらに別の例として、アルカリが、Li2O、Na2OおよびK2Oの総濃度について、約0.1モル%までのレベルでトランプ成分として存在することがある。
【0089】
水素は、ヒドロキシル陰イオンのOH-の形態で必然的に存在し、その存在は、標準的な赤外線分光法技術により確認できる。溶存ヒドロキシルイオンは、例示のガラスの徐冷点に著しくかつ非直線的な影響を与え、それゆえ、所望の徐冷点を得るために、埋め合わせをするように主要酸化物成分の濃度を調節する必要があるであろう。ヒドロキシルイオン濃度は、原材料の選択または溶融システムの選択により、ある程度制御することができる。例えば、ホウ酸は、ヒドロキシルの主要供給源であり、ホウ酸を酸化ホウ素と置換することは、最終的なガラスのヒドロキシル濃度を制御するための有用な手段であり得る。同じ論法が、ヒドロキシルイオン、水和物、もしくは物理吸着または化学吸着された水分子を含む化合物を含む他の潜在的な材料に適用される。溶融過程にバーナーが使用される場合、ひいては、天然ガスおよび関連する炭化水素の燃焼による燃焼生成物によってもヒドロキシルイオンが導入され得、それゆえ、埋め合わせをするように、溶融に使用されるエネルギーを、バーナーから電極に変えることが望ましいであろう。あるいは、代わりに、溶存ヒドロキシルイオンの有害な影響を埋め合わせるように主要酸化物成分を調節する反復プロセスを用いてもよい。
【0090】
硫黄は、多くの場合、天然ガス中に存在し、同様に、多くの炭酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物、および酸化物の原材料中のトランプ成分である。硫黄は、SO2の形態で、ガス状含有物の厄介な供給源であり得る。SO2が豊富な欠陥を形成する傾向は、原材料中の硫黄レベルを制御することにより、また比較的還元された多価陽イオンを低レベルでガラス基質中に含ませることによって、かなりの程度まで管理することができる。理論で束縛する意図はないが、SO2が豊富なガス状含有物は、主に、ガラス中に溶解した硫酸イオン(SO4=)の還元によって、生じるようである。
【0091】
例示のガラスの上昇したバリウム濃度は、溶融の初期段階においてガラス中の硫黄の保持を増加させるようであるが、上述したように、低い液相温度、それゆえ、高いT35k-T液相および高い液相粘度を得るために、バリウムが必要である。原材料中の硫黄レベルを低レベルに慎重に制御することは、ガラス中の溶存硫黄(おそらく硫酸イオンとして)を減少させる有用な手段である。特に、硫黄は、好ましくは、バッチ材料中200質量ppm未満、より好ましくは、バッチ材料中100質量ppm未満である。
【0092】
還元された多価元素は、例示のガラスがSO2膨れを形成する傾向を制御するためにも使用できる。理論で束縛する意図はないが、これらの元素は、硫酸イオンを還元するための起電力を抑制する潜在的な電子供与体として働く。硫酸イオンの還元は、
SO4=→SO2+O2+2e-
などの半反応で記載することができ、式中、e-は電子を示す。この半反応の「平衡定数」は、
Keq=[SO2][O2][e-]2/[SO4
=]
であり、式中、角括弧は化学的活性を示す。理想的には、SO2、O2および2e-から硫酸イオンを形成するように反応を仕向けたいであろう。硝酸塩、過酸化物、または他の酸素の豊富な原材料を添加することは、役に立つであろうが、溶融の初期段階における硫酸イオンの還元に反対に作用するであろう。このことは、そもそもそれらを添加する恩恵を弱めるであろう。SO2は、ほとんどのガラス中に非常に低い溶解度を有し、それゆえ、ガラス溶融過程に添加することは実現困難である。電子は、多価元素の還元によって「添加される」であろう。例えば、第一鉄イオン(Fe2+)の適切な電子供与半反応は、
2Fe2+→2Fe3++2e-
と表される。
【0093】
電子のこの「活性」は、硫酸イオンの還元反応を左に仕向け、ガラス中のSO4=を安定化させることができる。適切な還元された多価元素としては、以下に限られないが、Fe2+、Mn2+、Sn2+、Sb3+、As3+、V3+、Ti3+、および当業者になじみのある他の元素が挙げられる。各々の場合、ガラスの色に対する有害な影響を避けるようにそのような成分の濃度を最小にすること、またはAsおよびSbの場合には、エンドユーザの過程における廃棄物管理が複雑になるほど十分に高いレベルでそのような成分を添加することを避けることが重要であろう。
【0094】
例示のガラスの主要酸化物成分、および上述した微量のまたはトランプ成分に加え、ハロゲン化物が、原材料の選択により導入される汚染物質として、またはガラス中のガス状含有物をなくすために使用される意図的な成分としてのいずれかで、様々なレベルで存在することがある。ハロゲン化物は、清澄剤として、約0.4モル%以下のレベルで含まれることがあるが、可能であれば、排ガス取扱い設備の腐食を避けるために、より少ない量で使用することが一般に望ましい。いくつかの実施の形態において、個々のロゲン化物元素の濃度は、各個別のハロゲン化物について、約200質量ppm未満である、または全てのハロゲン化物元素の合計について、約800質量ppm未満である。
【0095】
表1は、実験例1~5(「Ex.1~5」)の組成を示している。表2は、実験例6~10(「Ex.6~10」)の組成を示している。表3は、実験例11~16(「Ex.11~16」)の組成を示している。表4は、実験例17~22(「Ex.17~22」)の組成を示している。表5は、実験例23~28(「Ex.23~28」)の組成を示している。表6は、実験例29~34(「Ex.29~34」)の組成を示している。表7は、実験例35~42(「Ex.35~42」)の組成を示している。
【0096】
軟化点、徐冷点、ヤング率、剛性率、ポアソン比、破壊靱性、および硬度を含む、例1~42の特性データも、表1~7に列挙されている。表1~7から分かるように、例示のガラスは、そのガラスを、以下に限られないが、メモリディスクおよびAMLCD基板用途などのディスプレイ用途を含む様々な用途に適したものにする高い弾性率および高い破壊靱性などの良好な性質を有する。
【0097】
図1を参照すると、これらのガラスの軟化点と歪み点との間の温度差は、それらの軟化点に対して小さい。これらのガラス基板のデータも、一般的なホウケイ酸ガラス、溶融石英、およびソーダ石灰組成物のものと比べられている。本開示に与えられるガラス組成物は、一般的なガラスを上回る加工上の利点も提供する。
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
主題が、例示の実施の形態に関して説明されきたが、それらに限定されない。そうではなく、付随の特許請求の範囲は、当業者によって想起されるような、他の変種および実施の形態を含むと広く解釈されるべきである。
【0106】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0107】
実施形態1
約45モル%から約70モル%のSiO2、
約15モル%から約30モル%のAl2O3、
約7モル%から約20モル%のY2O3、および
必要に応じて、0モル%から約9モル%のLa2O3、
を含むガラス基板。
【0108】
実施形態2
前記ガラス基板が、約27モル%から約43モル%のR2O3を含み、ここで、R2O3は、Al2O3、Y2O3、およびLa2O3を含む、実施形態1に記載のガラス基板。
【0109】
実施形態3
R2O3が、約28モル%から約40モル%、約30モル%から約40モル%、または約32モル%から約38モル%の範囲にある、実施形態2に記載のガラス基板。
【0110】
実施形態4
前記ガラス基板が、約0.3から約1.7の範囲の[(Y2O3+La2O3)/Al2O3]のモル比を有する、実施形態1に記載のガラス基板。
【0111】
実施形態5
SiO2が、約50モル%から約70モル%、約52モル%から約70モル%、約52モル%から約66モル%、約54モル%から約66モル%、または約60モル%から約66モル%の範囲にある、実施形態1に記載のガラス基板。
【0112】
実施形態6
Al2O3が、約16モル%から約30モル%、約17モル%から約30モル%、約18モル%から約30モル%、約18モル%から約28モル%、または約18モル%から約25モル%の範囲にある、実施形態1に記載のガラス基板。
【0113】
実施形態7
Y2O3が、約8モル%から約20モル%、約9モル%から約20モル%、約7モル%から約16モル%、約7モル%から約15モル%、約8モル%から約16モル%、または約10モル%から約16モル%の範囲にある、実施形態1に記載のガラス基板。
【0114】
実施形態8
La2O3が、約0.1モル%から約9モル%、約1モル%から約9モル%、約2モル%から約9モル%、または約3モル%から約9モル%の範囲にある、実施形態1に記載のガラス基板。
【0115】
実施形態9
0モル%から約6モル%のB2O3をさらに含み、La2O3を実質的に含まない、実施形態1に記載のガラス基板。
【0116】
実施形態10
0モル%から約6モル%のMgOをさらに含む、実施形態1に記載のガラス基板。
【0117】
実施形態11
0モル%から約12モル%の、Li2O、Na2O、K2O、またはその組合せをさらに含む、実施形態1に記載のガラス基板。
【0118】
実施形態12
(Al2O3-R2O-RO)のモル百分率の差が、約7から約22の範囲にあり、ここで、R2Oは、Li2O、Na2O、K2O、およびそれらの任意の組合せからなる群より選択されるアルカリ金属酸化物を含み、ROは、MgO、SrO、BaO、およびそれらの任意の組合せからなる群より選択されるアルカリ土類金属酸化物を含む、実施形態1に記載のガラス基板。
【0119】
実施形態13
CaO、Eu2O3、Nb2O3、Si3N4、WO3、ZrO4、およびTiO2を実質的に含まない、実施形態1に記載のガラス基板。
【0120】
実施形態14
約0.87から約2.0MPa・m0.5の範囲の破壊靱性(KIC)を有する、実施形態1に記載のガラス基板。
【0121】
実施形態15
約100GPaから約140GPaの範囲のヤング率、および約30GPaから約60GPaの範囲の剛性率を有する、実施形態1に記載のガラス基板。
【0122】
実施形態16
約45モル%から約70モル%のSiO2、
約15モル%から約30モル%のAl2O3、
約7モル%から約20モル%のY2O3、
0モル%から約9モル%のLa2O3、
0モル%から約6モル%のMgO、および
0モル%から約12モル%の、Li2O、Na2O、K2O、およびその組合せからなる群より選択されるアルカリ金属酸化物、
から実質的になるガラス基板。
【0123】
実施形態17
前記ガラス基板が、約27モル%から約43モル%のR2O3を含み、ここで、R2O3は、Al2O3、Y2O3、およびLa2O3を含み、該ガラス基板が、約0.3から約1.7の範囲の[(Y2O3+La2O3)/Al2O3]のモル比を有する、実施形態16に記載のガラス基板。
【0124】
実施形態18
実施形態1または16に記載のガラス基板を備えたガラス物品。
【0125】
実施形態19
実施形態1または16に記載のガラス基板を備えたデバイス。
【0126】
実施形態20
ディスプレイ用途のための電子機器である、実施形態19に記載のデバイス。
【0127】
実施形態21
情報記録ディスクである、実施形態19に記載のデバイス。
【国際調査報告】