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特表2022-537136生物学的に封じ込められた細菌及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-24
(54)【発明の名称】生物学的に封じ込められた細菌及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/21 20060101AFI20220817BHJP
   C12N 15/31 20060101ALI20220817BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20220817BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20220817BHJP
   A61K 35/74 20150101ALI20220817BHJP
   A61K 35/742 20150101ALI20220817BHJP
   A61K 35/741 20150101ALI20220817BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220817BHJP
   C07K 14/195 20060101ALN20220817BHJP
   C12R 1/01 20060101ALN20220817BHJP
【FI】
C12N1/21 ZNA
C12N15/31
C07K19/00
C12N15/62 Z
A61K35/74 Z
A61K35/742
A61K35/741
A61P43/00 105
C07K14/195
C12R1:01
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021573317
(86)(22)【出願日】2020-06-12
(85)【翻訳文提出日】2022-02-03
(86)【国際出願番号】 US2020037571
(87)【国際公開番号】W WO2020252370
(87)【国際公開日】2020-12-17
(31)【優先権主張番号】62/861,181
(32)【優先日】2019-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】521254432
【氏名又は名称】ノヴォム バイオテクノロジーズ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NOVOME BIOTECHNOLOGIES,INC.
【住所又は居所原語表記】100 Kimball Way,South San Francisco,CA 94080,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ウィテカー,ウェストン ロバート
(72)【発明者】
【氏名】デローチ,ウィリアム ケイン
(72)【発明者】
【氏名】ラス フォー,ザカリー ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】シェパード,エリザベス ジョイ スタンリー
(72)【発明者】
【氏名】ポポフ,ローレン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AB01
4B065AC20
4B065BA02
4B065BB18
4B065CA46
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BC31
4C087BC53
4C087BC54
4C087BC55
4C087BC68
4C087BC74
4C087CA08
4C087CA12
4C087MA35
4C087MA37
4C087NA14
4C087ZB21
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA11
4H045EA65
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、意図される場合に改変細胞の生存及び複製を可能にする一方、改変細胞がそれらの意図される環境からエスケープすることを防止する生物学的封じ込め方法及び機構を提供する。これは、改変細胞の生存能を、外因的に供給される制御分子の存在に連結して、細胞が増殖することができる位置及び時間を規定することによって達成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝子改変細菌であって、
(a)制御分子によって活性化される第1のアクチベーターと;
(b)前記第1のアクチベーターによって活性化される第1のプロモーターと;
(c)前記第1のプロモーターに作動可能に連結されている第1の必須遺伝子と、任意に、
(d)前記制御分子によって活性化される第2のアクチベーターと;
(e)前記第2のアクチベーターによって活性化される第2のプロモーターと;
(f)前記第2のプロモーターに作動可能に連結されている第2の必須遺伝子と
を含む遺伝子改変細菌。
【請求項2】
前記第1のプロモーターは、前記第2のアクチベーターによって活性化されず、及び前記第2のプロモーターは、前記第1のアクチベーターによって活性化されない、請求項1に記載の細菌。
【請求項3】
(g)前記制御分子によって活性化される第3のアクチベーターと;
(h)前記第3のアクチベーターによって活性化される第3のプロモーターと;
(i)前記第3のプロモーターに作動可能に連結されている第3の必須遺伝子と
をさらに含む、請求項1に記載の細菌。
【請求項4】
前記第3のプロモーターは、前記第1又は第2のアクチベーターによって活性化されず、及び前記第3のプロモーターは、前記第1又は第2のアクチベーターによって活性化されない、請求項3に記載の細菌。
【請求項5】
前記第1、第2及び/又は第3の必須遺伝子の発現は、前記制御分子の存在に依存する、請求項1~4のいずれか一項に記載の細菌。
【請求項6】
前記細菌の増殖及び/又は生存能は、前記制御分子の存在に依存する、請求項1~5のいずれか一項に記載の細菌。
【請求項7】
前記制御分子は、ヒト食餌中において定期的に存在しない、請求項1~6のいずれか一項に記載の細菌。
【請求項8】
前記制御分子は、単糖又は多糖である、請求項1~7のいずれか一項に記載の細菌。
【請求項9】
前記制御分子は、海洋多糖及び抗生物質又はその誘導体から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の細菌。
【請求項10】
前記海洋多糖は、ポルフィラン及びアガロースから選択される、請求項9に記載の細菌。
【請求項11】
前記抗生物質又はその誘導体は、アンヒドロテトラサイクリンである、請求項9に記載の細菌。
【請求項12】
前記第1、第2及び/又は第3のアクチベーターは、センサードメイン及び調節ドメインを含む2成分系(TCS)タンパク質である、請求項1~11のいずれか一項に記載の細菌。
【請求項13】
前記第1、第2及び/又は第3のアクチベーターは、センサードメイン及び調節ドメインを含むハイブリッド2成分系(HTCS)タンパク質である、請求項1~11のいずれか一項に記載の細菌。
【請求項14】
前記HTCSタンパク質は、天然に存在するHTCSタンパク質又はその機能的断片若しくは改変体である、請求項13に記載の細菌。
【請求項15】
前記HTCSタンパク質は、キメラHTCSタンパク質であり、前記センサードメインは、第1の天然に存在するHTCSタンパク質由来のセンサードメイン又はその機能的断片若しくは改変体であり、及び前記調節ドメインは、第2の天然に存在するHTCSタンパク質由来の調節ドメイン又はその機能的断片若しくは改変体である、請求項13に記載の細菌。
【請求項16】
前記天然に存在するHTCSタンパク質は、細菌HTCSタンパク質である、請求項14又は15に記載の細菌。
【請求項17】
前記細菌HTCSタンパク質は、バクテロイデス(Bacteroides)HTCSタンパク質である、請求項16に記載の細菌。
【請求項18】
前記バクテロイデス(Bacteroides)HTCSタンパク質は、バクテロイデス・オバタス(Bacteroides ovatus)、バクテロイデス・ドレイ(Bacteroides dorei)、バクテロイデス・ノルジイ(Bacteroides nordii)、バクテロイデス・サリエルシアエ(Bacteroides salyersiae)又はバクテロイデス・ユニフォルミス(Bacteroides uniformis)HTCSタンパク質である、請求項17に記載の細菌。
【請求項19】
前記HTCSタンパク質は、配列番号19、23、25、38、39、42、43、51、52、53、54、59若しくは64~71のいずれか1つに対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列又はその機能的断片若しくは改変体を含む、請求項13~18のいずれか一項に記載の細菌。
【請求項20】
前記第1、第2及び/又は第3のアクチベーターをコードする1つ以上の導入遺伝子を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の細菌。
【請求項21】
前記第1、第2及び/又は第3のプロモーターは、配列番号1、2、7、8、9、10、11、12、13、45、46、62、63若しくは73のいずれか1つに対して少なくとも80%の同一性を有するヌクレオチド配列又はその機能的断片若しくは改変体を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の細菌。
【請求項22】
前記必須遺伝子は、チミジル酸シンターゼ(ThyA)、アルギニル-tRNAシンテターゼ(argS)、システイニル-tRNAシンテターゼ(cysS)、ペニシリン耐性タンパク質(lytB)及びペプチド鎖放出因子(RF-2)から選択される、請求項21に記載の細菌。
【請求項23】
前記第1、第2及び/又は第3のアクチベーター及び/又はプロモーターは、前記細菌に対して異種である、請求項1~22のいずれか一項に記載の細菌。
【請求項24】
前記第1、第2及び/又は第3の遺伝子は、改変されていない類似の又はさもなければ同一の細菌において、それぞれ前記第1、第2及び/又は第3のプロモーターに作動可能に連結されない、請求項1~23のいずれか一項に記載の細菌。
【請求項25】
前記細菌の培養は、前記制御分子の非存在下で10-5、10-6、10-7、10-8又は10-9未満の頻度において増殖及び/又は生存可能な細菌をもたらす、請求項1~24のいずれか一項に記載の細菌。
【請求項26】
前記細菌と前記制御分子との培養及びその後の培地からの前記制御分子の除去後、培地中の前記細菌の半減期は、1日未満である、請求項1~25のいずれか一項に記載の細菌。
【請求項27】
対象への前記細菌及び制御分子の投与後、前記対象における細菌の量は、前記対象からの前記制御分子の除去又は停止から2日以内に10倍低下する、請求項1~26のいずれか一項に記載の細菌。
【請求項28】
前記制御分子は、ポルフィランであり、且つ前記第1及び第2のアクチベーターは、それぞれHTCSタンパク質であり、及び(i)前記ポルフィランは、存在する場合、前記第1及び第2のHTCSタンパク質を活性化し、(ii)前記第1及び第2のHTCSタンパク質は、活性化される場合、それぞれ前記第1及び第2のプロモーターを活性化し、及び(iii)前記第1及び第2のプロモーターは、活性化される場合、それぞれ前記第1及び第2の必須遺伝子の発現を指示し、それにより、前記ポルフィランの存在に依存する前記細菌の前記増殖及び/又は生存能をもたらす、請求項1~27のいずれか一項に記載の細菌。
【請求項29】
共生細菌である、請求項1~28のいずれか一項に記載の細菌。
【請求項30】
バクテロイデス(Bacteroides)、アリスティペス(Alistipes)、フィーカリバクテリウム(Faecalibacterium)、パラバクテロイデス(Parabacteroides)、プレボテラ(Prevotella)、ロセブリア(Roseburia)、ルミノコッカス(Ruminococcus)、クロストリジウム(Clostridium)、オシリバクター(Oscillibacter)、ジェミガー(Gemmiger)、バルネシエラ(Barnesiella)、ディアリスター(Dialister)、パラステレラ(Parasutterella)、ファスコラークトバクテリウム(Phascolarctobacterium)、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)、サテレラ(Sutterella)、ブラウティア(Blautia)、パラプレボテラ(Paraprevotella)、コプロコッカス(Coprococcus)、オドリバクター(Odoribacter)、スピロプラズマ(Spiroplasma)、アナエロスティペス(Anaerostipes)及びアッケルマンシア(Akkermansia)からなる群から選択される属のものである、請求項1~29のいずれか一項に記載の細菌。
【請求項31】
前記属は、バクテロイデス(Bacteroides)である、請求項30に記載の細菌。
【請求項32】
SusC及びSusDから選択される、タンパク質をコードする1つ以上の導入遺伝子又はその機能的断片若しくは改変体をさらに含む、請求項1~31のいずれか一項に記載の細菌。
【請求項33】
炭素源として優先栄養素を利用する前記細菌の能力を増加させる1つ以上の導入遺伝子を含む、請求項32に記載の細菌。
【請求項34】
前記優先栄養素は、海洋多糖である、請求項33に記載の細菌。
【請求項35】
前記海洋多糖は、ポルフィランである、請求項34に記載の細菌。
【請求項36】
1つ以上の治療的導入遺伝子をさらに含む、請求項1~35のいずれか一項に記載の細菌。
【請求項37】
前記治療的導入遺伝子は、プロモーターに作動可能に連結されている、請求項36に記載の細菌。
【請求項38】
前記プロモーターは、非天然プロモーターである、請求項37に記載の細菌。
【請求項39】
前記プロモーターは、ファージ由来プロモーターである、請求項37又は38に記載の細菌。
【請求項40】
前記プロモーターは、コンセンサス配列GTTAA(n)4~7GTTAA(n)34~38TA(n)TTTGを含む、請求項37~39のいずれか一項に記載の細菌。
【請求項41】
前記プロモーターは、配列番号48、配列番号49又は配列番号50を含む、請求項37~40のいずれか一項に記載の細菌。
【請求項42】
前記導入遺伝子のいずれかは、プラスミド上にあり、細菌人工染色体上にあり、且つ/又は遺伝的に統合されている、請求項36~41のいずれか一項に記載の細菌。
【請求項43】
請求項1~42のいずれか一項に記載の細菌と、薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項44】
カプセル又は錠剤として処方される、請求項43に記載の医薬組成物。
【請求項45】
前記カプセルは、腸溶性カプセルである、請求項44に記載の医薬組成物。
【請求項46】
前記制御分子をさらに含む、請求項43~45のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項47】
制御分子の非存在下で細菌の増殖及び/又は生存能を低下させる方法であって、前記細菌を、
(a)前記制御分子によって活性化される第1のアクチベーターと;
(b)前記第1のアクチベーターによって活性化される第1のプロモーターと;
(c)前記第1のプロモーターに作動可能に連結されている第1の必須遺伝子と
を含むように遺伝的に改変することを含む方法。
【請求項48】
前記細菌を、
(d)前記制御分子によって活性化される第2のアクチベーターと;
(e)前記第2のアクチベーターによって活性化される第2のプロモーターと;
(f)前記第2のプロモーターに作動可能に連結されている第2の必須遺伝子と
を含むように遺伝的に改変することをさらに含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記細菌を、
(g)前記制御分子によって活性化される第3のアクチベーターと;
(h)前記第3のアクチベーターによって活性化される第3のプロモーターと;
(i)前記第3のプロモーターに作動可能に連結されている第3の必須遺伝子と
を含むように遺伝的に改変することをさらに含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
対象の腸をコロニー形成する方法であって、請求項1~42のいずれか一項に記載の細菌又は請求項43~46のいずれか一項に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項51】
疾患又は障害の治療を、それを必要とする対象において行う方法であって、請求項1~42のいずれか一項に記載の細菌又は請求項43~46のいずれか一項に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項52】
前記制御分子を前記対象に投与することをさらに含む、請求項50又は51に記載の方法。
【請求項53】
前記制御分子は、前記細菌の前に、前記細菌と同時に又は前記細菌の後に前記対象に投与される、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記細菌又は医薬組成物は、12時間、24時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、1週間、2週間、3週間、4週間、1か月、2ヵ月、3ヵ月、4ヵ月、5ヵ月又は6ヵ月毎に前記対象に投与される、請求項51~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記対象への前記細菌又は医薬組成物の連続投与間の時間は、約1日である、請求項51~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記対象は、動物である、請求項51~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記対象は、ヒトである、請求項56に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2019年6月13日に出願された米国仮特許出願第62/861,181号明細書の利益及びそれに対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
細胞に基づく治療法は、空間的及び時間的特異性、論理及び新しい活動が必要とされる疾患において、従来の低分子及びタンパク質に基づく治療法を補完する新たなアプローチであるが、細胞全体を遺伝子工学的に操作することによってのみ開発可能である。細胞に基づく治療法に特有の課題は、治療機能を妨げないが、規定された時間及び空間に生存を制限し得る方法で治療細胞の複製を制御することである。生物学的封じ込めは、遺伝的に改変された細胞治療法の必要な特徴であり、この操作により、治療細胞は、意図された位置及び/又は持続時間外で複製できないように改変される。意図された治療期間を超えて持続するか、又は環境若しくは他の人にエスケープする治療薬は、対処しなければならないリスクとなる。
【0003】
適合性の不利、例えば実験室でのみ補完できる栄養素要求性を付与する導入された変異は、生物学的封じ込めの有効な手段を提供する。しかしながら、多くの適用のために、例えば病原性微生物を克服するか又は効力に必要な存在量に達するために、細胞治療薬が患者において生存可能であることが必要であろう。インビボでの細胞の制御可能な増殖を可能にするために、容易に制御可能な環境シグナル、典型的には小分子の存在に生存能を依存させる多数の戦略が考案されている。しかしながら、今日までに発表されたほとんどの生物学的封じ込め方法は、制御分子の存在下で細胞を殺傷する手段として誘導される毒素を利用する。このアプローチには、2つの欠点がある。第1に、これらの生物学的に封じ込めされた細胞のデフォルト状態は、生存であり、これは、クリアランスが必要である場合、制御分子に能動的に曝露されない細胞のいずれも持続し続けることを意味する。患者からの完全なクリアランスは、100%の治療細胞が適切な濃度の制御分子と接触することを必要とし、これは、実際には達成することが困難である。これは、排出率が高く、ヒトからヒトへの伝播が可能である細菌治療に関連して特に問題である。
【0004】
毒素依存性生物学的封じ込め方法の第2の欠点は、毒素遺伝子を無効にする任意の変異(例えば、ナンセンス変異、トランスポゾン挿入など)が生物学的封じ込め戦略を破壊するため、細胞がエスケープできる頻度が高いことである。エスケープ率を低下させるために、毒素の複数のコピーをコードすることができ、それによりエスケープに複数の変異が必要となるが、これは、単一の変異よりも頻度が低いであろう。この冗長性は、エスケープ率を問題なく低下させるが(Cai et al.,(2015)PROC.NATL.ACAD.SCI.U.S.A.112,1803-1808;Chan et al.,(2015)NAT.CHEM.BIOL.12,82-86;Gallagher et al.,(2015)NUCLEIC ACIDS RES.43,1945-1954)、可動遺伝因子は、非モデル生物で一般的であり、複製が誘導されると、高頻度で複数の場所に挿入することが可能である。機能喪失変異が生物学的封じ込めを破壊するあらゆる戦略(毒素に依存する全ての戦略を含む)は、この基本的な限界に直面している。
【0005】
毒素を使用する代わりに、他のものは、制御分子の存在を必須遺伝子の発現に連結するための戦略を記載しており、ここで、制御分子の非存在下では、必須遺伝子は、産生されず、細胞は、もはや生存可能ではない。この戦略は、細胞のデフォルト状態が死であり、それらが生きたままであるために制御分子を能動的に供給されなければならないため、株脱落に関する懸念を回避する。
【0006】
さらに、毒素とは対照的に、必須遺伝子を非機能的にする変異は、生物学的封じ込めからのエスケープの代わりに生存能の喪失をもたらすであろう。しかしながら、今日までに記載されている多くの誘導可能な生存能戦略について、生物学的封じ込めは、制御分子の非存在下で発現をブロックする転写リプレッサーに依存する。毒素に基づく戦略と同様に、リプレッサーに基づく生物学的封じ込めは、リプレッサーが機能することを妨げ、それにより必須遺伝子の恒常的な発現をもたらす機能喪失変異によって容易に破壊することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、当技術分野では、エスケープ頻度を低減又は排除する新しい生物学的封じ込め戦略が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、一つには、組換え細菌の生物学的封じ込めのために必須遺伝子の発現を活性化するための活性化剤の使用に関する。 上述したように、リプレッサーは、リプレッサーが機能しないようにする機能喪失変異で容易に破壊され、したがって必須遺伝子の構成的発現を生じさせることができるが、アクチベーターに対する最も一般的な変異は、いかなる条件下でも必須遺伝子発現を生じさせず、したがって逃避しにくいであろうこととは対照的である。
【0009】
しかし、生物学的封じ込めにアクチベーターを使用する場合の1つの課題は、リプレッサーの追加コピーを含むとエスケープ頻度がある程度減少するリプレッサーとは異なり、アクチベーターのエスケープ変異体は優性である(生物学的封じ込めを破壊するために構成的に活性になるには1コピーのみが変異する必要がある)。したがって、活性化因子のコピーを追加しても、脱出の頻度を減らすことはできない。
【0010】
本明細書に開示されるのは、活性剤に基づく生物学的封じ込めを覆す稀な率を利用しつつ、小分子感知二成分系(TCS)を必須遺伝子の発現を制御するように方向転換することによって、冗長性の効果を低減する優性活性剤変異の問題を回避する生物学的封じ込めの方法及び組成物である。このように操作された腸内細菌の治療株は、患者がTCSによって感知された制御分子を摂取すると腸内で繁殖することができるが、制御分子が摂取されない場合または制御分子を欠く他の環境では患者において繁殖することができない。本開示は、任意の生物においてこの戦略を実施するための組成物および方法を提供し、バクテロイデス属の腸内細菌の種においてポルフィラン依存性生物学的封じ込めを実施する複数の実施例を含む。
【0011】
1つの局面において、本開示は、制御分子によって活性化される第1の活性化因子、第1の活性化因子によって活性化される第1のプロモーターおよび第1のプロモーターに作動可能に連結される第1の必須遺伝子を含む遺伝子組み換え細菌に関連する。特定の実施形態では、細菌は、制御分子によって活性化される第2の活性化因子、第2の活性化因子によって活性化される第2のプロモーターおよび第2のプロモーターに作動可能に連結されている第2の必須遺伝子を含み得る。特定の実施形態において、第1のプロモーターは、第2の活性化因子によって活性化されず、第2のプロモーターは、第1の活性化因子によって活性化されない。
【0012】
特定の実施形態では、細菌は、制御分子によって活性化される第3の活性化因子、第3の活性化因子によって活性化される第3のプロモーターおよび第3のプロモーターに作動可能に連結されている第3の必須遺伝子をさらに含む。特定の実施形態において、第3のプロモーターは、第1または第2の活性化因子によって活性化されず、第1または第2のプロモーターは、第3の活性化因子によって活性化されない。
【0013】
特定の実施形態において、第1、第2及び/又は第3の必須遺伝子の発現は、制御分子の存在に依存する。特定の実施形態では、細菌の成長および/または生存率は、制御分子の存在に依存する。特定の実施形態では、対照分子は、ヒトの食事に定期的に存在しない。特定の実施形態では、制御分子は、単糖類または多糖類、例えば、海洋多糖類または抗生物質、または前述のいずれかの誘導体である。特定の実施形態において、海洋多糖類は、ポルフィランもしくはアガロース、または前述のいずれかの誘導体である。特定の実施形態では、抗生物質は、アンヒドロテトラサイクリンまたはその誘導体である。
【0014】
特定の実施形態において、第1、第2及び/又は第3の活性化剤は、センサードメインと調節ドメインとを含む2成分系(TCS)タンパク質である。特定の実施形態では、第1、第2及び/又は第3の活性化剤は、センサードメインと調節ドメインとを含むハイブリッド2成分系(HTCS)タンパク質である。
【0015】
特定の実施形態では、HTCSタンパク質は、天然に存在するHTCSタンパク質、又はその機能的断片若しくはバリアントである。例えば、天然に存在するHTCSタンパク質は、細菌HTCSタンパク質、例えば、バクテロイデス(例えば、バクテロイデス・オバータス、バクテロイデス・ドレイ、バクテロイデス・ノルディ、バクテロイデス・サリエルシエ、又はバクテロイデス・ユニフォルミス)HTCSタンパク質とすることができる。
【0016】
特定の実施形態において、HTCSタンパク質は、キメラHTCSタンパク質であり、センサードメインは、第1の天然に存在するHTCSタンパク質又はその機能的断片若しくは変種からのセンサードメインであり、調節ドメインは、第2の天然に存在するHTCSタンパク質又はその機能的断片若しくは変種からの調節ドメインである。
【0017】
特定の実施形態では、HTCSタンパク質は、配列番号19、23、25、38、39、42、43、51、52、53、54、59又は64~71のいずれか1つに対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列又はその機能的フラグメントもしくは変異体を含んでいる。
【0018】
特定の実施形態において、細菌は、第1、第2及び/又は第3の活性化剤をコードする1つ又は複数の導入遺伝子を含む。
【0019】
特定の実施形態では、第1、第2および/または第3のプロモーターは、配列番号1、2、7、8、9、10、11、12、13、45、46、62、63または73のいずれか1つ、またはその機能的断片もしくは変異体、例えば配列番号44に対して少なくとも80%の同一性を有するヌクレオチド配列から構成される。
【0020】
特定の実施形態では、必須遺伝子は、チミジル酸合成酵素(ThyA)、アルギニルtRNA合成酵素(argS)、システイニルtRNA合成酵素(cysS)、ペニシリン耐性タンパク質(lytB)およびペプチド鎖放出因子(RF-2)から選択される。
【0021】
特定の実施形態において、第1、第2、及び/又は第3の活性化因子及び/又はプロモーターは、細菌に異種である。特定の実施形態では、第1、第2および/または第3の遺伝子は、修飾されていない類似のまたはそうでなければ同一の細菌において、第1、第2および/または第3のプロモーターにそれぞれ作動可能に連結されない。
【0022】
特定の実施形態において、細菌の培養は、10-5,10-6,10-7,10-8又は10-9未満の頻度で制御分子の非存在下で増殖および/または生存が可能な細菌を結果としてもたらす。特定の実施形態では、制御分子による細菌の培養、およびその後の培養物からの制御分子の除去の後、培養物中の細菌の半減期は、1日未満である。特定の実施形態では、対象への細菌および制御分子の投与後、対象中の細菌の量は、対象からの制御分子の除去または中止の2日以内に10倍減少する。
【0023】
特定の実施形態において、制御分子はポルフィランであり、第1及び第2の活性化剤はそれぞれTCS又はHTCSタンパク質であり、(i)ポルフィランは、存在すると、第1及び第2のTCS又はHTCSタンパク質を活性化し、(ii)第1及び第2のTCS又はHTCSタンパク質は、活性化した場合、それぞれ第1及び第2のプロモーターを活性化し、(iii)第1及び第2のプロモーターは、活性化されると、それぞれ第1及び第2の必須遺伝子の発現を指令し、それによって、細菌の成長及び/又は生存率がポルフィランの存在に依存することになる。特定の実施形態において、細菌は、常在菌である。
【0024】
特定の実施形態では、細菌は、SusC又はSusD、例えば配列番号20又は21などのデンプン結合タンパク質に相同なタンパク質をコードする1又は複数のトランスジーンをさらに含む。特定の実施形態では、細菌は、特権的な栄養素を炭素源として利用する能力を高める1つ以上の導入遺伝子、例えばポルフィランのような海洋多糖類を含む。
【0025】
特定の実施形態では、細菌は、1つ以上の治療用トランスジーンをさらに含んでいる。特定の実施形態では、治療用導入遺伝子は、非ネイティブプロモーター(例えば、ファージ由来プロモーター)などのプロモーターに作動可能に連結されている。特定の実施形態では、プロモーターは、コンセンサス配列GTTAA(n)4-7GTTAA(n)34-38TA(n)2TTTGを含む。特定の実施形態では、プロモーターは、配列番号48、配列番号49または配列番号50を含む。特定の実施形態において、導入遺伝子のいずれかは、プラスミド上、細菌人工染色体上および/またはゲノム的に統合されている。
【0026】
別の態様では、本開示は、本明細書に開示されるような細菌と、薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物に関する。特定の実施形態では、組成物は、カプセル、例えば、腸溶性コーティングカプセル又は錠剤として製剤化される。特定の実施形態では、組成物は、制御分子をさらに含む。
【0027】
別の態様において、本開示は、制御分子の非存在下で細菌(例えば、常在菌)の増殖及び/又は生存率を低下させる方法に関する。この方法は、制御分子によって活性化される第1の活性化因子、第1の活性化因子によって活性化される第1のプロモーター、及び第1のプロモーターに作動可能に連結される第1の必須遺伝子を含むように細菌を遺伝的に改変することを含む。特定の実施形態では、この方法は、制御分子によって活性化される第2の活性化因子、第2の活性化因子によって活性化される第2のプロモーターおよび第2のプロモーターに作動可能に連結される第2の必須遺伝子を含むように細菌を遺伝的に改変することをさらに含む。
【0028】
特定の実施形態において、この方法は、制御分子によって活性化される第3の活性化因子、第3の活性化因子によって活性化される第3のプロモーターおよび第3のプロモーターに作動可能に連結される第3の必須遺伝子を含むように細菌を遺伝的に改変することをさらに含む。
【0029】
別の態様において、本開示は、配列番号39、43、53、54、59もしくは64~71のいずれか1つのアミノ酸、またはその機能的断片もしくは変異体、または配列番号39、43、53、54、59、もしくは64から71のいずれか1つと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一性のあるアミノ酸配列、その機能的断片もしくは変異体を含むタンパク質(例えば、単離タンパク質)に関する。さらなる態様において、本開示は、タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸(例えば、単離核酸)、核酸を含む発現ベクター、発現ベクターを含む宿主細胞(例えば、細菌)およびタンパク質、核酸、発現ベクターまたは宿主細胞を含む医薬組成物に関連する。
【0030】
別の態様において、本開示は、配列番号29、30、31、34、35、36、37、40、55、56、60、61もしくは72のいずれか1つのヌクレオチド配列、またはその機能的断片もしくは変異体、または配列番号29、30、31、34、35、36、37、40、55、56、60、61もしくは72のいずれか1つと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列、またはその機能的断片もしくは変異体を含む核酸(例えば、単離核酸)に関する。さらなる態様において、本開示は、核酸を含む発現ベクター、発現ベクターを含む宿主細胞(例えば、細菌)及びタンパク質、核酸、発現ベクター又は宿主細胞を含む医薬組成物に関する。
【0031】
別の態様において、本開示は、(i)配列番号19のアミノ酸、またはその機能的断片もしくは変異体、または配列番号19に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列、またはその機能的断片もしくは変異体を含むポルフィランによって活性化されたHTCS、(ii)配列番号73のヌクレオチド配列、またはその機能的断片もしくは変異体、または配列番号73に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列またはその機能的断片もしくは変異体を含むHTCSによって活性化されたプロモーター;および(iii)プロモーターに作動可能に連結された必須遺伝子(例えば、argS遺伝子)を含む遺伝子組換え細菌に関するものである。特定の実施形態において、必須遺伝子(例えば、argS遺伝子)は、配列番号47のヌクレオチド配列、またはその機能的断片もしくは変異体、または配列番号47に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列、またはその機能的断片もしくは変異体を含むリボソーム結合部位(RBS)に動作可能に結合している。
【0032】
別の態様において、本開示は、(i)配列番号59のアミノ酸、またはその機能的断片もしくは変異体、または配列番号59に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列、またはその機能的断片もしくは変異体を含むポルフィランによって活性化されたHTCS、(ii)配列番号45のヌクレオチド配列、またはその機能的断片もしくは変異体、または配列番号45に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列またはその機能的断片もしくは変異体を含むHTCSにより活性化するプロモーター、および(iii)プロモーターに作動可能に連結された必須遺伝子(例えば、lytB遺伝子)を含む遺伝子組換え細菌に関するものである。特定の実施形態において、必須遺伝子(例えば、lytB遺伝子)は、配列番号84のヌクレオチド配列、またはその機能的断片もしくは変異体、または配列番号84に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列、もしくはその機能的断片もしくは変異体を含むリボソーム結合部位(RBS)に動作可能に結合している。
【0033】
別の態様において、本開示は、(i)配列番号19のアミノ酸、またはその機能的断片もしくは変異体、または配列番号19に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列、またはその機能的断片もしくは変異体を含むポルフィランによって活性化された第1のHTCS、(ii)配列番号73のヌクレオチド配列、またはその機能的断片もしくは変異体、または配列番号73に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列、またはその機能的断片もしくは変異体を含む第1のHTCSによって活性化された第1のプロモーター、(iii)第1プロモーターに作動可能に連結された第1の必須遺伝子(例えば、argS遺伝子)、(iv)配列番号59のアミノ酸、またはその機能的断片もしくは変異体、または配列番号59に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列、またはその機能的断片もしくは変異体を含むポルフィランによって活性化された第2のHTCS、(v)配列番号45のヌクレオチド配列、またはその機能的断片もしくは変異体、または配列番号45に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列、またはその機能的断片もしくは変異体を含む第2のHTCSにより活性化された第2のプロモーター並びに(vi)第2のプロモーターに作動可能に連結されている第2の必須遺伝子(例えば、lytB遺伝子)を含む遺伝子組換え細菌に関する。特定の実施形態において、第1の必須遺伝子(例えば、argS遺伝子)は、配列番号47のヌクレオチド配列、またはその機能的断片もしくは変異体、または配列番号47もしくはその機能的断片もしくは変異体と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む第1リボソーム結合部位(RBS)に対して作動可能に連結され、このRBSは、配列番号47、または配列番号47の機能的断片もしくは変異体に対して少なくとも99%、または少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有する。特定の実施形態では、第2の必須遺伝子(例えばlytB遺伝子)は、配列番号84のヌクレオチド配列、またはその機能的断片もしくは変異体、または配列番号84に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列、もしくはその機能的断片もしくは変異体を含む第2リボソーム結合部位(RBS)に作動可能に結合している。
【0034】
別の態様において、本開示は、被験者の腸をコロニー化する方法に関し、本方法は、本明細書に記載の細菌又は医薬組成物を投与することを含む。
【0035】
別の態様において、本開示は、それを必要とする対象における疾患又は障害を治療する方法に関し、本方法は、本明細書に記載の細菌又は薬学的組成物を対象に投与することを含む。特定の実施形態では、本方法は、被験体に制御分子を投与することをさらに含む。特定の実施形態では、対照分子は、細菌の前に、細菌と同時に、または細菌の後に、被験体に投与される。特定の実施形態では、細菌または医薬組成物は、12時間、24時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月または6ヶ月ごとに、被験体に投与される。特定の実施形態では、対象への細菌又は医薬組成物の連続投与間の時間は、約1日である。
特定の実施形態では、対象は、動物、例えば、ヒトである。
本開示のこれら及び他の態様及び特徴は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0036】
本開示は、以下の図面を参照してより詳細に理解することができる。
図1】様々な生物学的封じ込め戦略及び変異が生物学的封じ込めを破壊する最も可能性のある失敗様式の比較を示す。
図2】様々な生物学的封じ込め戦略において実施された冗長性及び変異が生物学的封じ込めを破壊する最も可能性のある失敗様式の比較を示す。
図3】適切な制御分子プロモーター要素の同定を実証する一連の棒グラフを示す。図3Aは、野生型NB001バクテロイデス(Bacteroides)における候補ポルフィラン応答性プロモーター(配列番号1~10)のルシフェラーゼレポーター誘導を示す。ポルフィランの非存在下又は存在下で発光を測定し、OD600nmにより正規化した。図3Bは、野生型NB003における候補アガロース応答性プロモーター(配列番号11、12)のルシフェラーゼレポーター誘導を示す。発光を測定し、アガロースの非存在下又は存在下でOD600nmにより正規化した。図3Cは、野生型NB004における推定テトラサイクリン応答性プロモーター(配列番号13)のルシフェラーゼレポーター誘導を示す。発光を測定し、アンヒドロテトラサイクリンの非存在下又は存在下でOD600nmにより正規化した。
図4】ポルフィラン誘導性プロモーターP_por10の特徴付けを示す。図4Aは、P_por10駆動ルシフェラーゼコンストラクトのプラスミドマップ(配列番号26)を示す。図4Bは、様々な濃度のポルフィランで増殖させたP_por10駆動ルシフェラーゼプラスミドで形質転換された野生型NB001の、OD600nmにより正規化された測定された発光を示す。
図5】ポルフィラン誘導性HTCS単独ではポルフィラン応答に十分でないことを実証する棒グラフを示す。P_por10駆動ルシフェラーゼ要素を、完全ポルフィラン多糖利用遺伝子座(PUL)を含むNB004又はポルフィランPULのハイブリッド2成分系(HTCS)のみを含むNB004において刺激した。ポルフィランの非存在下又は存在下で発光を測定し、OD600nmにより正規化した。
図6】必須遺伝子thyAのポルフィラン誘導性調節及びポルフィラン依存性生物学的封じ込めを示すインビトロ増殖アッセイを示す。図6Aは、ポルフィランを添加した培地中の変性RBSライブラリー(配列番号30)に結合したP_por10駆動thyA-ルシフェラーゼの、OD600nmにより正規化した発光を示す。各ドットは、クロ-ンライブラリ-メンバーである。図6Bは、P_por10駆動thyA発現コンストラクト(配列番号31)のプラスミドマップを示す。図6Cは、野生型(「wt」)株NB001、thyAノックアウト(「KO」)株NB023及び生物学的封じ込め(「BC」)株NB024の増殖曲線を示す。株を、標準的なBHIS培地、チミジンを添加した培地又はポルフィランを添加した培地中で増殖させた。図6Dは、0.0%ポルフィラン、0.002%ポルフィラン、0.02%ポルフィラン又は0.2%ポルフィランを添加したBHIS中の生物学的封じ込め株NB024の増殖曲線を示す。
図7】ポルフィラン誘導性プロモーターとの必須遺伝子プロモーター置換のために使用されるプラスミドマップ(配列番号32に対応する)を示す。
図8】複数の必須遺伝子のポルフィラン誘導性調節を示す成長曲線を示す。図8Aは、ポルフィランを含まないBHIS培地及び0.2%ポルフィランを含む培地中における、ポルフィランPULを保有する野生型株NB075の増殖曲線を示す。図8Bは、ポルフィランを含まない培地及び0.2%ポルフィランを含む培地中における、ポルフィラン駆動thyA遺伝子を保有するthyA欠失株sWW090の増殖曲線を示す。図8Cは、ポルフィランを含まない培地及び0.2%ポルフィランを含む培地中における、ポルフィラン駆動argS遺伝子を保有する株sWW180の増殖曲線を示す。図8Dは、ポルフィランを含まない培地及び0.2%ポルフィランを含む培地中における、ポルフィラン駆動cysS遺伝子を保有する株sWW202の増殖曲線を示す。図8Eは、ポルフィランを含まない培地及び0.2%ポルフィランを含む培地中における、ポルフィラン駆動lytB遺伝子を保有するlytB欠失株sWW090の増殖を示す。図8Fは、ポルフィランを含まない培地及び0.2%ポルフィランを含む培地中における、ポルフィラン駆動RF-2遺伝子を保有するRF-2欠失株sW206の増殖を示す。
図9】野生型及びポルフィラン依存性生物学的封じ込め株の増殖を比較するインビトロケモスタット増殖アッセイを示す。0.5%ポルフィランを含むBHIS培地を、ポルフィランを含まないBHISで培地の半分を8.7時間毎に置き換えることによって希釈した。コロニー形成単位(CFU)を、野生型株sZR0103(灰色線)及び生物学的封じ込め株sZR0250(黒線)並びにポルフィランなしで増殖することができる生物学的封じ込め株のエスケープ(黒破線)についてモニターした。
図10】ポルフィラン離脱後のSprague-Dawleyラットの腸からの野生型及びポルフィラン依存性株の排除を実証する線グラフを示す。ポルフィラン-PULのみを含む野生型株sWW808又はポルフィラン生物学的封じ込め株sWW805の10CFUを0日目にラットに強制経口投与し、ポルフィランを添加した飼料を給餌した。3日後、各群の半数のラットは、ポルフィランを欠く食餌に切り替えられたが、残りの半数は、ポルフィラン含有食餌のままであった。糞便のCFUプレーティングを用いて、排除された株の存在量を決定した。図10Aは、野生型株sWW808についてのインビボ実験の結果を示す。図10Bは、生物学的封じ込め株sWW805についてのインビボ実験の結果を示し、ポルフィラン離脱後の生物学的封じ込め株の迅速なクリアランスを実証する。影付きの領域は、95%信頼区間を示す。
図11】アンヒドロテトラサイクリン誘導性プロモーターとの必須遺伝子プロモーター置換に利用されるコンストラクトのプラスミドマップ(配列番号37)を示す。
図12】野生型、1×生物学的封じ込めポルフィラン依存性株並びに2×生物学的封じ込めポルフィラン及びアンヒドロテトラサイクリン依存性株の生物学的封じ込めを比較するインビトロ増殖アッセイを示す。野生型株NB075、ポルフィラン制御cysS生物学的封じ込め株sWW202及びポルフィラン制御cysS/aTc制御argS二重生物学的封じ込め株sCG037をインビトロでの増殖についてモニターした。株を、リッチ培地、ポルフィランのみを含む培地、aTcのみを含む培地又はポルフィラン及びaTcの両方を含む培地中で増殖させた。両方の生物学的封じ込め株は、増殖するために栄養素補給を必要としたが、2×生物学的封じ込め株のみに、aTc及びポルフィランが存在しない場合にエスケープコロニーが観察されなかった。
図13】野生型及び2×生物学的封じ込めポルフィラン及びアンヒドロテトラサイクリン依存性株の生物学的封じ込めを比較する、ケモスタットにおいて実施されたインビトロ増殖アッセイを示す。ポルフィラン及びaTcを、1日目に、1日当たり2.16容量のフラスコ培地をBHISのみで置き換えることによって培地から除去した。7日目に、ポルフィラン及びaTcを培地に再導入して、生存細胞が存在するかどうかを評価したが、増殖は、検出されなかった。
図14】例えば、単一の制御分子を使用する二重生物学的封じ込めのために使用することができるキメラHTCSの生成を示す。図14Aは、単一の制御分子を用いて複数のプロモーターを調節するためのキメラHTCSの使用を実証する概略図を示す。図14Bは、NB001ポルフィラン応答性HTCS由来のポルフィラン感知ドメイン及びバクテロイデス・ノルジイ(Bacteroides nordii)HTCS由来の調節ドメインを有するキメラHTCSの発現に利用されるコンストラクトpWW1267のプラスミドマップを示す(配列番号39)。図14Cは、3つのキメラHTCS:HTCS-17106(pW1266)、HTCS-10809(pW1265)又はHTCS-17150(pW1267)の1つを発現するコンストラクトで形質転換された、NB075又はNB075株におけるルシフェラーゼのプロモーター駆動発現を示す棒グラフである。培地中の0.2%ポルフィランの非存在下又は存在下での活性をそれぞれ明るい灰色及び黒色のバーで示す。ポルフィランの存在に応答した活性のおよその倍率変化を各キメラHTCSについてのバーの上に示す。
図15】生物学的封じ込めに使用するための改善された変異体キメラHTCSの生成を示す。図15Aは、ルシフェラーゼがキメラHTCS関連プロモーター(配列番号45)によって駆動される、キメラHTCSの活性を測定するためのアッセイの概略図を示す。図15Bは、ポルフィランの非存在下(x軸)又は存在下(y軸)で増殖させた場合の、変異キメラHTCSを発現する株について得られたルシフェラーゼ値を示す。各ドットは、ユニークな変異体を含む株を表し、四角は、最初に設計されたキメラHTCSの複製を含む株を表し、三角は、改良された変異体キメラHTCSを含む株pWW1333を表す。図15Cは、レポータープラスミド(配列番号41)からの発光によって評価される、ポルフィランの非存在下(灰色)又は存在下(黒色)での、HTCSなし(左)、最初に設計されたキメラHTCS(pW1267;中央)及び改善された変異体キメラHTCS(pWW1333;右)の存在下でのプロモーター活性をさらに示す。
図16】野生型ポルフィラン応答性HTCS(「WT HTCS」)及びキメラHTCS(「HTCS-17150v2」、「キメラHTCS」)が、他のプロモーターとのクロストークなしに、それらの関連するプロモーターをそれぞれ活性化することを実証する。試験した株をX軸上で特定し、各株の下の識別子は、その株において発現されるHTCS及びその株においてルシフェラーゼ発現を駆動するために使用されるプロモーターの概略図を示す。灰色及び黒色のバーは、ポルフィランの非存在下又は存在下での発光を表す。
図17】生物学的に封じ込めされない(sWW180;左上)、野生型ポルフィランHTCSのみで生物学的封じ込めした(NB075;右上)、キメラHTCSのみで生物学的封じ込めした(sW939;左下)又は野生型ポルフィランHTCS及び種々の必須遺伝子を制御するキメラHTCSで二重生物学的封じ込めした(sW942;右下)株の、ポルフィランの存在下(黒破線)又は非存在下(灰色破線)での、経時的なOD600nm増殖曲線によって示されるような増殖を実証する。影付きの領域は、各群(n=3)についての95%信頼区間を表す。
図18】ポルフィランを欠く新鮮なBHISで希釈された0.2%ポルフィランを最初に含有したBHISの100mlケモスタット中の、単一(sWW180;黒実線)、二重(sW942;黒破線)又は無(NB075;灰色実線)生物学的封じ込めを有する、コロニー形成単位(CFU)によって測定された株の存在量を示す。検出限界は、灰色破線で示されている。
図19】4つの異なるヒト微生物叢の1つを保有するマウス(ドナーA~D)における、ポルフィランを消費する非生物学的封じ込め株(NB144;左)及び生物学的封じ込め株(sZR0323;右)の存在量を実証する。マウスに1日目に株を1回強制経口投与し、最初の4週間にわたり、ポルフィランを含む食餌(実線)を与え、その後、ポルフィランを欠く食餌(破線)に切り替えた。影付きの領域は、各群(n=2)についての95%信頼区間を表す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本開示は、意図される場合に改変細胞の生存及び複製を可能にする一方、改変細胞がそれらの意図される環境からエスケープすることを防止する生物学的封じ込め方法及び機構を提供する。これは、改変細胞の生存能を、外因的に供給される制御分子の存在に連結して、細胞が増殖することができる位置及び時間を規定することによって達成される。本明細書に記載される本発明の好ましい実施形態は、腸内での改変細菌細胞の制御可能な増殖を可能にするが、そのような実施形態が例としてのみ提供されることは、当業者に明らかであろう。他の実施形態は、本発明から逸脱することなく、異なる細胞型(例えば、哺乳動物細胞又は酵母細胞)を利用するか、又は異なる環境(例えば、口、皮膚、土壌又は工業用発酵槽)に合わせることができる。場合により、生物学的封じ込めは、空間的である。場合により、生物学的封じ込めは、位置的である。いくつかの実施例では、生物学的封じ込めは、一時的である。
【0038】
生物学的封じ込めのための制御分子依存性の生存能を達成するための代替戦略が以前に提案されており、実験室で実証されているが、高い株エスケープ率、生体内での使用に適していない制御分子への依存又は許容条件でさえコロニー形成を妨げる生物学的封じ込めを実施しながらの適応度の重度の低下に関連する制限のため、いずれもインビボで有効であることが示されていない。図1は、種々の生物学的封じ込め戦略及び変異が生物学的封じ込めを破壊する最も可能性のある失敗様式(右)の比較を示す。一般的な機能喪失変異により、毒素及びリプレッサーが機能しなくなることがある。アクチベーターは、制御分子がなくても遺伝子を恒常的に発現するように変異させることもできるが、この機能獲得型変異は、はるかに少ない。
【0039】
必須遺伝子のアクチベーター駆動発現に基づく生物学的封じ込めからのエスケープには、制御分子が存在しない場合に必須遺伝子の恒常的発現を可能にする稀な機能獲得型変異が必要である。これがどのように達成され得るかの一例は、アクチベーターを恒常的に活性にする変異であろう。このような変異の頻度を減らすことは、有利であるが、冗長性を加える手段として同じ制御分子で複数の必須遺伝子を駆動すると、優性変異としての役割を果たし、全ての必須遺伝子を活性化するためにアクチベーターのコピーを1つのみ変異させなければならない。そのため、エスケープ率を減らすために冗長性を利用する能力が低下する。図2は、種々の生物学的封じ込め戦略において実施される冗長性及び変異が生物学的封じ込めを破壊する最も可能性のある失敗様式(右)の比較を示す。リプレッサーと異なり、アクチベーターを破壊する変異は、優性である可能性が高く(中央の行)、従って冗長性を効果的に付加するために直交バージョン(下部)を必要とする。
【0040】
従って、本開示は、部分的には、1つのアクチベーターを恒常的に活性にする変異が他のプロモーターに影響を与えないような、同じ分子に応答するが、異なるプロモーターを標的とする複数のアクチベーターを使用する生物学的封じ込め戦略の発見に関する。このタイプの天然に存在するアクチベーターを同定することは、不可能ではないにしても、極めて困難である。従って、本明細書に記載されるのは、操作された2成分系(TCS)又はハイブリッド2成分系(HTCS)であり、これらは、通常、(リプレッサーとは対照的に)アクチベーターであり、生物学的封じ込めの手段として必須遺伝子発現を駆動するために使用され得る。TCS及びHTCSは、治療又は産業的用途における生物学的封じ込めに適した多くの小分子に応答する。このような分子としては、炭水化物、金属イオン、アミノ酸、リン酸塩、硝酸塩、pH、モル浸透圧濃度、膜応力及び抗生物質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
TCS及びHTCSのモジュラー性は、同じ分子に応答するが、異なるプロモーターを活性化する複数の直交バージョンの操作を可能にする。標準的TCSは、刺激に応答し、ヒスチジンからアスパラギン酸へのリン酸基転移を介して応答レギュレーター(RR)を活性化するセンサーヒスチジンキナーゼ(HK)から構成される。リン酸化されると、RRは、特定の標的プロモーターを活性化又は抑制するであろう。HTCSは、刺激依存的な様式で標的プロモーターを同様に調節するが、典型的には同じポリペプチド上にセンサー及びDNA結合制御ドメインを含む。ほとんどの細菌は、低い配列同一性を有するが、高度の構造類似性を保持し、各シグナル伝達事象に関与する別々のモジュールドメインを有する数十のTCS又はHTCSを含む。この構造的類似性のため、1つのTCS又はHTCSのセンサーからのシグナル伝達を別のもののプロモーターにリダイレクトするキメラTCS又はHTCSを生成することが可能である。
【0042】
シグナル伝達の再配線は、いくつかの学術刊行物(Lynch and Sonnenburg(2012)Mol.Microbiol.85:478-491;Skerker et al.,(2008)Cell 133:1043-1054;Utsumi et al.,(1989)Science 245:1246-1249;Whitaker et al.,(2012)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.109:18090-18095)において実証されているが、同じ分子によって同時に誘導される2つの直交レギュレーターを操作する能力は、示されていない。キメラTCS又はHTCSを操作することにより、複数のアクチベーターが同じ制御分子に応答できるが、他のアクチベーターによって制御される必須遺伝子を発現することはできず、変異によって1つのTCSが恒常的に活性化されるようになった場合のエスケープを防ぐ。このアプローチは、生物の適応度を低下させる広範なゲノム改変を必要とする(Mandell et al.,(2015)Nature 518:55-60;Rovner et al.,(2015)Nature 518:89-93)か、又は分子選択に制限を課す(Lopez and Anderson,(2015)ACS Synth.Biol.4:1279-1286)、冗長な生物学的封じ込めのための既存の選択肢よりもはるかに容易に実施され得る強固な生物学的封じ込め系を提供する。
【0043】
I.定義
用語「異種」は、遺伝物質が細胞中に天然に存在しないか、又は天然に存在するが、導入された遺伝物質と比較して配列若しくは遺伝的状況が変化している細胞に導入された遺伝物質を指す。用語「組換え微生物」は、天然の遺伝物質を改変若しくは除去するか、又は異種の遺伝物質を付加するように遺伝的に改変された生物を指す。本発明者らは、主に細菌細胞に言及するが、このような実施形態が例としてのみ提供されることは、当業者に明らかであろう。他の実施形態は、本発明から逸脱することなく、異なる細胞型(例えば、哺乳動物細胞又は酵母細胞)を利用し得る。
【0044】
用語「生存能」は、生物が特定の環境条件下で繁殖する可能性を指す。所与の環境条件下で生存可能な細胞は、その環境条件下で繁殖することができる。所与の環境条件下で生存不能である細胞は、その環境条件下で繁殖することができない。
【0045】
用語「生物学的封じ込め」又は「生物学的な封じ込め」は、生物の生存能が、規定された位置及び時間に制限されることを確実にする方法を指す。
【0046】
用語「制御分子」は、典型的には、生物学的に封じ込めされた組換え微生物の生存能を制御するために使用することができる、1500ダルトン未満の重量の有機化合物を指すが、これに限定されない。
【0047】
用語「アクチベーター」は、活性化の条件下で調節する遺伝子の発現を増加させる遺伝子、遺伝子産物、タンパク質又はその一部を指す。アクチベーターが機能的に発現していない場合(例えば、機能喪失変異の場合)、活性化条件下でも、調節されている遺伝子の発現は、低い。
【0048】
用語「リプレッサー」は、抑制条件下で調節する遺伝子の発現を減少させる遺伝子、遺伝子産物、タンパク質又はその一部を指す。リプレッサーが機能的に発現していない場合(例えば、機能喪失変異の場合)、抑制の条件下でも、調節されている遺伝子の発現は、高い。
【0049】
用語「毒素」は、その生成物が、直接的又は間接的のいずれかで、目的の条件下で生存能の喪失をもたらし得る遺伝子を指す。
【0050】
用語「必須遺伝子」とは、その機能発現が目的の条件下で生存能を維持するために必要である遺伝子を指す。
【0051】
用語「2成分系」(TCS)及び「ハイブリッド2成分系」(HTCS)は、センサードメインが環境シグナル(例えば、分子)に応答し、遺伝子調節、典型的には転写調節をもたらす保存されたリン酸基転移ドメインを介してシグナルを伝達する、微生物に共通の一種のシグナル伝達経路を指す。標準的なTCSには、ヒスチジンキナーゼ及び応答レギュレーターの2つの成分がある。HTCSでは、リン酸基転移ドメインは、標準的に配置されず、ヒスチジンキナーゼ及び応答レギュレーターに関連するドメインは、単一のタンパク質に含まれ得る。本明細書では、ほとんどの原理がTCS及びHTCSの両方に適用され、TCS及びHTCSという用語は、別段の指示がない限り、本明細書では互換的に使用される。
【0052】
用語「エスケープ頻度」は、特定の細胞群において生物学的封じ込めが失敗する頻度を指す。例えば、「10-5のエスケープ頻度を有する」生物学的封じ込めの実施は、10個のうちの1つの細胞が、それらが制限されている状態(例えば、制御分子が存在しない場合)の外で生存可能であることが見出される細胞集団を産生するであろう。生物学的封じ込めからのエスケープは、典型的には、生物学的封じ込め機構を破壊した変異の結果である。
【0053】
本明細書で使用される用語「相同性」又は「配列同一性」は、それぞれ2つのポリヌクレオチド又はポリペプチド配列のヌクレオチド対ヌクレオチド又はアミノ酸対アミノ酸の一致を指し得る。配列同一性は、任意の適切なアラインメントアルゴリズムにより、例えばBLASTアルゴリズムを使用して測定され得る(例えば、blast.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST.cgiで入手可能なBLASTアラインメントツールを参照されたい)。他のアラインメントアルゴリズムも複数のポリヌクレオチド又はポリペプチド配列間の配列同一性パーセントを測定するために使用され得る。
【0054】
用語「治療的導入遺伝子」は、治療的利益を付与することができる異種遺伝子又はDNA配列を指す。
【0055】
用語「診断的導入遺伝子」は、状態又は病態を診断するために用いることができる異種性遺伝子又はDNA配列を指す。
【0056】
本明細書で使用される場合、生物学的実体(例えば、遺伝子、タンパク質(例えば、HTCS)、プロモーター又はリボソーム結合部位)の「機能的断片」という用語は、例えば、対応する全長の生物学的実体の生物学的活性の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は100%を保持する全長の生物学的実体の断片を指す。
【0057】
II.2成分系
本開示は、部分的には、アクチベーターと、プロモーターと、特定の実施形態において、生物学的封じ込めを達成するために役立ち得るプロモーターに作動可能に連結された必須遺伝子とを含む遺伝子改変細菌に関する。遺伝子改変細菌のアクチベーター、プロモーター及び必須遺伝子は、2成分系又はハイブリッド2成分系(TCS又はHTCS)を含み得る。細菌が制御分子に曝露されると、制御分子は、アクチベーターに結合し、且つアクチベーターを活性化し、これは、プロモーターを活性化して必須遺伝子を発現させる。従って、特定の実施形態では、細菌の増殖及び/又は生存能は、必須遺伝子の発現を調節する制御分子の存在に依存する。
【0058】
特定の実施形態では、アクチベーターは、単一のポリペプチドである。特定の実施形態では、アクチベーターは、2つ以上のポリペプチドを含む。例えば、アクチベーターは、制御分子を感知(例えば、制御分子に結合)し、プロモーターを活性化することができる単一のポリペプチドであり得る。特定の実施形態では、アクチベーターは、2つのポリペプチドを含み、1つのポリペプチドは、制御分子を感知(例えば、制御分子に結合)することができ、1つのポリペプチドは、プロモーターを活性化することができる。
【0059】
TCS又はHTCSが(例えば、点変異によって)構成的に活性になるように変異する場合又は代替機構(例えば、プロモーターへのトランスポゾン挿入、必須遺伝子の上流のゲノム再構成などによって)によって起こり得る生物学的閉じ込めエスケープを回避するために、複数のTCS又はHTCSを使用することができる。特に、交差活性化しない異なるアクチベーター/プロモーター対を組み込むことは、冗長性を提供し、エスケープ率を低下させる。
【0060】
従って、特定の実施形態では、細菌はまた、同じ制御分子又は異なる制御分子によって活性化される第2のアクチベーターと、第2のアクチベーターによって活性化される第2のプロモーターと、第2のプロモーターに作動可能に連結される第2の必須遺伝子とを含み得る。特定の実施形態では、第1のプロモーターは、第2のアクチベーターによって活性化されず、及び第2のプロモーターは、第1のアクチベーターによって活性化されない。
【0061】
特定の実施形態では、細菌は、同じ制御分子又は異なる分子によって活性化される第3のアクチベーターと、第3のアクチベーターによって活性化される第3のプロモーターと、第3のプロモーターに作動可能に連結される第3の必須遺伝子とをさらに含む。特定の実施形態では、第3のプロモーターは、第1又は第2のアクチベーターによって活性化されず、及び第3のプロモーターは、第1又は第2のアクチベーターによって活性化されない。特定の実施形態では、3つのアクチベーターは、3つの異なる制御分子によって活性化され、特定の実施形態では、3つのアクチベーターは、2つの異なる制御分子によって活性化され(すなわち、1つの制御分子は、アクチベーターの2つを活性化するが、第3のものを活性化しない)、特定の実施形態では、3つのアクチベーターは、同じ制御分子によって活性化される。
【0062】
特定の実施形態では、細菌は、第1、第2及び/又は第3のアクチベーターをコードする1つ以上の導入遺伝子を含む。
【0063】
特定の実施形態では、第1、第2及び/又は第3のアクチベーターは、センサードメイン及び調節ドメインを含む2成分系又はハイブリッド2成分系(TCS又はHTCS)タンパク質である。特定の実施形態では、センサードメインは、制御分子に結合し、調節ドメインは、必須遺伝子のプロモーターを活性化する。特定の実施形態では、第1、第2及び/又は第3のアクチベーターは、センサードメイン及び調節ドメインを含むハイブリッド2成分系(HTCS)タンパク質である。
【0064】
特定の実施形態では、調節ドメインは、AraCファミリーヘリックス-ターン-ヘリックスモチーフを含む(例えば、Religa et al.(2007)PNAS 102(22):9272-7を参照されたい)。
【0065】
TCS又はHTCSタンパク質は、天然に存在するTCS若しくはHTCSタンパク質又はその機能的断片若しくは改変体であり得る。例えば、天然に存在するTCS又はHTCSタンパク質は、バクテロイデス(Bacteroides)(例えば、バクテロイデス・オバタス(Bacteroides ovatus)、バクテロイデス・ドレイ(Bacteroides dorei)、バクテロイデス・ノルジイ(Bacteroides nordii)、バクテロイデス・サリエルシアエ(Bacteroides salyersiae)又はバクテロイデス・ユニフォルミス(Bacteroides uniformis)HTCSタンパク質などの細菌TCS又はHTCSタンパク質であり得る。
【0066】
特定の実施形態では、TCS又はHTCSタンパク質は、キメラTCS又はHTCSタンパク質であり、センサードメインは、第1の天然に存在するTCS若しくはHTCSタンパク質又はその機能的断片若しくは改変体由来のセンサードメインであり、及び調節ドメインは、第2の天然に存在するTCS若しくはHTCSタンパク質又はその機能的断片若しくは改変体由来の調節ドメインである。
【0067】
キメラHTCSタンパク質の一実施形態では、1つのHTCSのセンサーは、第2のHTCSのDNA結合領域に連結される(例えば、図14Aを参照されたい)。これは、実施例6により詳細に記載されるように、キメラHTCSが制御分子を感知するが、第1のものと異なるプロモーターを標的とするように、第2のHTCSのセンサードメインを第1のHTCSのセンサードメインで置き換えることによって行うことができる。
【0068】
キメラTCSを作製するために、1つのTCS(例えば、天然に存在するTCS)のセンサードメインを第2のTCS(例えば、天然に存在するTCS)の調節ドメインと組み合わせて使用することができる。HTCSタンパク質と異なり、キメラTCSでは、センサードメイン及び調節ドメインは、別々のポリペプチド上にあり、従って2つのポリペプチドの1つ(ヒスチジンキナーゼ又は応答レギュレーターのいずれか)のみが従来の意味において「キメラ」タンパク質である。しかしながら、例えば、第1のTCSの調節ドメイン及び第2のTCSの調節ドメインを有し、それにより第1のTCSのセンサードメインが第1及び第2のTCSの両方の調節ドメインを活性化する、第1のTCSのセンサードメインを含む細菌を操作することにより、同様の系を設計することができる。
【0069】
新しく設計されたプロモーターは、キメラ活性化分子のみに応答し、宿主によって産生されるか若しくは宿主によって一般に遭遇される分子又は宿主に天然の他のHTCS若しくは他のレギュレーターに応答しないことを考慮することが重要であるため、TCS又はHTCSは、生物学的に封じ込めされた株に存在しないか又は稀にのみ見出される調節ドメインを含むべきである。
【0070】
特定の実施形態では、HTCSタンパク質は、配列番号19、23、25、38、39、42、43、51、52、53、54、59若しくは64から71のアミノ酸配列又はその機能的断片若しくは改変体或いは配列番号19、23、25、38、39、42、43、51、52、53、54、59若しくは64~71のいずれか1つに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列又はその機能的断片若しくは改変体を含む。
【0071】
センサードメインは、典型的には、総タンパク質配列の約半分であり、調節ドメインは、タンパク質の残りの半分である。調節ドメインは、例えば、プロモーター配列を認識するDNA結合ドメイン、例えばヘリックス-ループ-ヘリックスドメインを含み得る。特定の実施形態では、配列番号19のHTCSタンパク質は、約アミノ酸1~約アミノ酸751のセンサードメイン、約アミノ酸752~約アミノ酸1323の調節ドメインを含み、約アミノ酸1233~約アミノ酸1313のDNA結合ドメインを有する。特定の実施形態では、配列番号23のHTCSタンパク質は、約アミノ酸1~約アミノ酸787のセンサードメイン、約アミノ酸788~約アミノ酸1368の調節ドメインを含み、約アミノ酸1279~約アミノ酸1359のDNA結合ドメインを有する。特定の実施形態では、配列番号25のHTCSタンパク質は、約アミノ酸1~約アミノ酸248のセンサードメイン、約アミノ酸249~約アミノ酸772の調節ドメインを含み、約アミノ酸699~約アミノ酸772のDNA結合ドメインを有する。特定の実施形態では、配列番号38のHTCSタンパク質は、約アミノ酸1~約アミノ酸774のセンサードメイン、約アミノ酸775~約アミノ酸1349の調節ドメインを含み、約アミノ酸1261~約アミノ酸1341のDNA結合ドメインを有する。特定の実施形態では、配列番号39のHTCSタンパク質は、約アミノ酸1~約アミノ酸751のセンサードメイン、約アミノ酸752~約アミノ酸1326の調節ドメインを含み、約アミノ酸1238~約アミノ酸1318のDNA結合ドメインを有する。特定の実施形態では、配列番号42のHTCSタンパク質は、約アミノ酸1~約アミノ酸768のセンサードメイン、約アミノ酸769~約アミノ酸1336の調節ドメインを含み、約アミノ酸1249~約アミノ酸1329のDNA結合ドメインを有する。特定の実施形態では、配列番号43のHTCSタンパク質は、約アミノ酸1~約アミノ酸751のセンサードメイン、約アミノ酸752~約アミノ酸1319の調節ドメインを含み、約アミノ酸1232~約アミノ酸1312のDNA結合ドメインを有する。特定の実施形態では、配列番号51のHTCSタンパク質は、約アミノ酸1~約アミノ酸775のセンサードメイン及び約アミノ酸776~約アミノ酸1349の調節ドメインを含み、約アミノ酸1259~約アミノ酸1339のDNA結合ドメインを有する。特定の実施形態では、配列番号52のHTCSタンパク質は、約アミノ酸1~約アミノ酸760のセンサードメイン、約アミノ酸761~約アミノ酸1311の調節ドメインを含み、約アミノ酸1226~約アミノ酸1306のDNA結合ドメインを有する。特定の実施形態では、配列番号53のHTCSタンパク質は、約アミノ酸1~約アミノ酸751のセンサードメイン、約アミノ酸752~約アミノ酸1325の調節ドメインを含み、約アミノ酸1235~約アミノ酸1315のDNA結合ドメインを有する。特定の実施形態では、配列番号54のHTCSタンパク質は、約アミノ酸1~約アミノ酸751のセンサードメイン、約アミノ酸752~約アミノ酸1302の調節ドメインを含み、約アミノ酸1217~約アミノ酸1297のDNA結合ドメインを有する。特定の実施形態では、配列番号59のHTCSタンパク質は、約アミノ酸1~約アミノ酸751のセンサードメイン、約アミノ酸752~約アミノ酸1326の調節ドメインを含み、約アミノ酸1238~約アミノ酸1318のDNA結合ドメインを有する。特定の実施形態では、配列番号64のHTCSタンパク質は、約アミノ酸1~約アミノ酸751のセンサードメイン、約アミノ酸752~約アミノ酸1326の調節ドメインを含み、約アミノ酸1238~約アミノ酸1318のDNA結合ドメインを有する。特定の実施形態では、配列番号65のHTCSタンパク質は、約アミノ酸1~約アミノ酸751のセンサードメイン、約アミノ酸752~約アミノ酸1326の調節ドメインを含み、約アミノ酸1238~約アミノ酸1318のDNA結合ドメインを有する。特定の実施形態では、配列番号66のHTCSタンパク質は、約アミノ酸1~約アミノ酸751のセンサードメイン、約アミノ酸752~約アミノ酸1326の調節ドメインを含み、約アミノ酸1238~約アミノ酸1318のDNA結合ドメインを有する。特定の実施形態では、配列番号67のHTCSタンパク質は、約アミノ酸1~約アミノ酸751のセンサードメイン、約アミノ酸752~約アミノ酸1326の調節ドメインを含み、約アミノ酸1238~約アミノ酸1318のDNA結合ドメインを有する。特定の実施形態では、配列番号68のHTCSタンパク質は、約アミノ酸1~約アミノ酸751のセンサードメイン、約アミノ酸752~約アミノ酸1326の調節ドメインを含み、約アミノ酸1238~約アミノ酸1318のDNA結合ドメインを有する。特定の実施形態では、配列番号69のHTCSタンパク質は、約アミノ酸1~約アミノ酸751のセンサードメイン、約アミノ酸752~約アミノ酸1326の調節ドメインを含み、約アミノ酸1238~約アミノ酸1318のDNA結合ドメインを有する。特定の実施形態では、配列番号70のHTCSタンパク質は、約アミノ酸1~約アミノ酸751のセンサードメイン、約アミノ酸752~約アミノ酸1326の調節ドメインを含み、約アミノ酸1238~約アミノ酸1318のDNA結合ドメインを有する。特定の実施形態では、配列番号71のHTCSタンパク質は、約アミノ酸1~約アミノ酸751のセンサードメイン、約アミノ酸752~約アミノ酸1326の調節ドメインを含み、約アミノ酸1238~約アミノ酸1318のDNA結合ドメインを有する。
【0072】
従って、特定の実施形態では、意図されるHTCSタンパク質は、配列番号19のアミノ酸1~751、配列番号23の1~787、配列番号25の1~248、配列番号38の1~774、配列番号39の1~751、配列番号42の1~768、配列番号43の1~751、配列番号51の1~775、配列番号52の1~760、配列番号53の1~751、配列番号54の1~751、配列番号59の1~751、配列番号64の1~751、配列番号65の1~751、配列番号66の1~751、配列番号67の1~751、配列番号68の1~751、配列番号69の1~751、配列番号70の1~751若しくは配列番号71の1~751を含むアミノ酸配列又はその機能的断片若しくは改変体或いは配列番号19のアミノ酸1~751、配列番号23の1~787、配列番号25の1~248、配列番号38の1~774、配列番号39の1~751、配列番号42の1~768、配列番号43の1~751、配列番号51の1~775、配列番号52の1~760、配列番号53の1~751、配列番号54の1~751、配列番号59の1~751、配列番号64の1~751、配列番号65の1~751、配列番号66の1~751、配列番号67の1~751、配列番号68の1~751、配列番号69の1~751、配列番号70の1~751又は配列番号71の1~751に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むセンサードメインを含む。
【0073】
特定の実施形態では、意図されるHTCSタンパク質は、配列番号19のアミノ酸752~1323若しくは1233~1313、配列番号23の788~1368若しくは1279~1359、配列番号25の249~772若しくは699~772、配列番号38の775~1349若しくは1261~1341、配列番号39の752~1326若しくは1238~1318、配列番号42の769~1336若しくは1249~1329、配列番号43の752~1319若しくは1232~1312、配列番号51の776~1349若しくは1259~1339、配列番号52の761~1311若しくは1226~1306、配列番号53の752~1325若しくは1235~1315、配列番号54の752~1302若しくは1217~1297、配列番号59の752~1326若しくは1238~1318、配列番号64の752~1326若しくは1238~1318、配列番号65の752~1326若しくは1238~1318、配列番号66の752~1326若しくは1238~1318、配列番号67の752~1326若しくは1238~1318、配列番号68の752~1326若しくは1238~1318、配列番号69の752~1326若しくは1238~1318、配列番号70の752~1326若しくは1238~1318又は配列番号71の752~1326若しくは1238~1318を含むアミノ酸配列又はその機能的断片若しくは改変体或いは配列番号19のアミノ酸752~1323若しくは1233~1313、配列番号23の788~1368若しくは1279~1359、配列番号25の249~772若しくは699~772、配列番号38の775~1349若しくは1261~1341、配列番号39の752~1326若しくは1238~1318、配列番号42の769~1336若しくは1249~1329、配列番号43の752~1319若しくは1232~1312、配列番号51の776~1349若しくは1259~1339、配列番号52の761~1311若しくは1226~1306、配列番号53の752~1325若しくは1235~1315、配列番号54の752~1302若しくは1217~1297、配列番号59の752~1326若しくは1238~1318、配列番号64の752~1326若しくは1238~1318、配列番号65の752~1326若しくは1238~1318、配列番号66の752~1326若しくは1238~1318、配列番号67の752~1326若しくは1238~1318、配列番号68の752~1326若しくは1238~1318、配列番号69の752~1326若しくは1238~1318、配列番号70の752~1326若しくは1238~1318又は配列番号71の752~1326若しくは1238~1318に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む調節ドメインを含む。特定の実施形態では、意図されるHTCSタンパク質は、(i)配列番号19のアミノ酸1~751、配列番号23の1~787、配列番号25の1~248、配列番号38の1~774、配列番号39の1~751、配列番号42の1~768、配列番号43の1~751、配列番号51の1~775、配列番号52の1~760、配列番号53の1~751、配列番号54の1~751、配列番号59の1~751、配列番号64の1~751、配列番号65の1~751、配列番号66の1~751、配列番号67の1~751、配列番号68の1~751、配列番号69の1~751、配列番号70の1~751若しくは配列番号71の1~751を含むアミノ酸配列又はその機能的断片若しくは改変体或いは配列番号19のアミノ酸1~751、配列番号23の1~787、配列番号25の1~248、配列番号38の1~774、配列番号39の1~751、配列番号42の1~768、配列番号43の1~751、配列番号51の1~775、配列番号52の1~760、配列番号53の1~751、配列番号54の1~751、配列番号59の1~751、配列番号64の1~751、配列番号65の1~751、配列番号66の1~751、配列番号67の1~751、配列番号68の1~751、配列番号69の1~751、配列番号70の1~751又は配列番号71の1~751に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むセンサードメインと;(ii)配列番号19のアミノ酸752~1323若しくは1233~1313、配列番号23の788~1368若しくは1279~1359、配列番号25の249~772若しくは699~772、配列番号38の775~1349若しくは1261~1341、配列番号39の752~1326若しくは1238~1318、配列番号42の769~1336若しくは1249~1329、配列番号43の752~1319若しくは1232~1312、配列番号51の776~1349若しくは1259~1339、配列番号52の761~1311若しくは1226~1306、配列番号53の752~1325若しくは1235~1315、配列番号54の752~1302若しくは1217~1297、配列番号59の752~1326若しくは1238~1318、配列番号64の752~1326若しくは1238~1318、配列番号65の752~1326若しくは1238~1318、配列番号66の752~1326若しくは1238~1318、配列番号67の752~1326若しくは1238~1318、配列番号68の752~1326若しくは1238~1318、配列番号69の752~1326若しくは1238~1318、配列番号70の752~1326若しくは1238~1318又は配列番号71の752~1326若しくは1238~1318を含むアミノ酸配列又はその機能的断片若しくは改変体或いは配列番号19のアミノ酸752~1323若しくは1233~1313、配列番号23の788~1368若しくは1279~1359、配列番号25の249~772若しくは699~772、配列番号38の775~1349若しくは1261~1341、配列番号39の752~1326若しくは1238~1318、配列番号42の769~1336若しくは1249~1329、配列番号43の752~1319若しくは1232~1312、配列番号51の776~1349若しくは1259~1339、配列番号52の761~1311若しくは1226~1306、配列番号53の752~1325若しくは1235~1315、配列番号54の752~1302若しくは1217~1297、配列番号59の752~1326若しくは1238~1318、配列番号64の752~1326若しくは1238~1318、配列番号65の752~1326若しくは1238~1318、配列番号66の752~1326若しくは1238~1318、配列番号67の752~1326若しくは1238~1318、配列番号68の752~1326若しくは1238~1318、配列番号69の752~1326若しくは1238~1318、配列番号70の752~1326若しくは1238~1318又は配列番号71の752~1326若しくは1238~1318に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む調節ドメインとを含む。
【0074】
意図されるタンパク質(例えば、HTCSタンパク質)における第1のドメイン(例えば、センサードメイン)と第2のドメイン(例えば、調節ドメイン)とは、リンカーによって連結され得る。リンカーは、切断可能なリンカー又は切断不可能なリンカーであり得る。任意に又は加えて、リンカーは、可撓性リンカー又は非可撓性リンカーであり得る。リンカーは、第1のドメインと第2のドメインとを互いに立体障害なしで連結することを可能にするために十分な長さを有する必要があり、また、タンパク質の意図する活性を保持するために十分に短くなければならない。リンカーは、タンパク質の不安定性を回避するか又は最小限にするために十分に親水性であることが好ましい。リンカーは、タンパク質の不溶性を回避するか又は最小限にするために十分に親水性であることが好ましい。リンカーは、融合タンパク質がインビボで作用できるようにインビボで十分に安定である必要がある(例えば、酵素によって切断されないなど)。
【0075】
リンカーは、約1オングストローム(Å)~約150Å長、又は約1Å~約120Å長、又は約5Å~約110Å長、又は約10Å~約100Å長とすることができる。リンカーは、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、27、30を超える若しくはそれを超えるオングストローム長及び/又は約110、100、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、43、42、41、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31若しくはそれ未満のÅ長とすることができる。さらに、リンカーは、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110及び120Å長とすることができる。
【0076】
特定の実施形態では、リンカーは、ポリペプチドリンカーを含む。リンカーが使用される場合、リンカーは、親水性アミノ酸残基、例えばGln、Ser、Gly、Glu、Pro、His及びArgを含み得る。特定の実施形態では、リンカーは、1~25アミノ酸残基、1~20アミノ酸残基、2~15アミノ酸残基、3~10アミノ酸残基、3~7アミノ酸残基、4~25アミノ酸残基、4~20アミノ酸残基、4~15アミノ酸残基、4~10アミノ酸残基、5~25アミノ酸残基、5~20アミノ酸残基、5~15アミノ酸残基、5~10アミノ酸残基又は1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10アミノ酸残基を含むペプチドである。例示的なリンカーは、グリシン及びセリンリッチリンカー、例えば(GlyGlyPro)又は(GlyGlyGlyGlySer)を含み、ここで、nは、1~5である。特定の実施形態では、リンカーは、(GlySer)である。さらなる例示的なリンカー配列は、例えば、George et al.(2003)Protein Engineering 15:871-879並びに米国特許第5,482,858号明細書及び第5,525,491号明細書に開示されている。特定の実施形態では、リンカーは、天然に存在するタンパク質、例えば天然に存在するHTCSタンパク質に由来する。特定の実施形態では、リンカーは、NPPF(配列番号78)、KAPW(配列番号79)、APPF(配列番号80)、LPPW(配列番号81)又はKPPF(配列番号82)を含む。特定の実施形態では、リンカーは、4つ以上のアミノ酸残基を含み、そのうちの2つ以上は、プロリンである。例えば、特定の実施形態では、リンカーは、XPPX(配列番号83)を含み、ここで、X及びXは、任意のアミノ酸である。
【0077】
TCS又はHTCSの使用により、細株のエスケープ率が低下する。特定の実施形態では、細菌の培養は、制御分子の非存在下で10-5、10-6、10-7、10-8又は10-9未満の頻度において増殖及び/又は生存可能な細菌をもたらす。特定の実施形態では、細菌と制御分子との培養及びその後の培地からの制御分子の除去後、細菌は、培地中において、3日未満、2日未満、1日未満又は12時間未満生存可能である。特定の実施形態では、細菌と制御分子との培養及びその後の培地からの制御分子の除去後、細菌は、10回、9回、8回、7回、6回、5回、4回、3回、2回又は1回未満分割することが可能である。
【0078】
特定の実施形態では、対象、例えばヒト対象への細菌及び制御分子の投与後、対象内の細菌の量は、対象からの制御分子の除去又は停止から2日以内に少なくとも約10倍、5倍又は2倍低下する。対象内の細菌の量は、当技術分野で既知の任意の手段、例えば定量的PCR(例えば、治療遺伝子の)により、又は唯一の炭素源としての制御分子を含むプレート上にサンプルをプレーティングし、CFUを計数することにより測定することができる。
【0079】
特定の実施形態では、第1、第2及び/又は第3のプロモーターは、配列番号1~13、44~46、62、63若しくは73のいずれか1つのヌクレオチド配列又はその機能的断片若しくは改変体或いは配列番号1~13、44~46、62、63若しくは73のいずれか1つに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列又はその機能的断片若しくは改変体を含む。特定の実施形態では、第1、第2及び/又は第3のプロモーターは、配列番号1、2、7、8、9、10、11、12、13、45、46、62、63若しくは73のヌクレオチド配列又はその機能的断片若しくは改変体(例えば、配列番号44)或いは配列番号1、2、7、8、9、10、11、12、13、45、46、62、63若しくは73のいずれか1つに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列又はその機能的断片若しくは改変体(例えば、配列番号44)を含む。Ppor10s6v7と呼ばれる配列番号44は、最少のポルフィラン応答性プロモーターであり、これは、特定の実施形態では、活性を改善し得る変異を含む配列番号8の切断形態である。
【0080】
特定の実施形態では、第1、第2及び/又は第3のアクチベーター及び/又はプロモーターは、細菌に対して異種である。特定の実施形態では、第1、第2及び/又は第3の遺伝子は、改変されていない類似の又はさもなければ同一の細菌において、それぞれ第1、第2及び/又は第3のプロモーターに作動可能に連結されない。
【0081】
必須遺伝子が、上記のように、TCS又はHTCSによって転写的に直接制御されるシステムを実施することに加えて、このシステムは、必須遺伝子機能を間接的に調節するTCS又はHTCSを用いて実施され得ることが当業者によって認識されるであろう。例えば、TCS又はHTCSは、1つ以上の異なるアクチベーターの発現を制御し得、これは、次いで、必須遺伝子の発現を駆動する。当業者は、TCS又はHTCS活性を必須遺伝子機能に機能的に連結する手段として、転写調節の代替法も認識するであろう。例えば、本明細書に記載される生物学的封じ込め戦略は、必須遺伝子翻訳、成熟、翻訳後修飾又は局在化を制御することによって実施することもできる。例えば、TCS又はHTCSは、翻訳開始を変化させるRNA分子、適切なタンパク質フォールディングを確実にするシャペロン、翻訳後プロセシングを媒介するプロテアーゼ又は必須遺伝子機能を間接的に制御するために単独で若しくは組み合わせて使用され得る種々の他の因子の発現を駆動し得る。当業者は、必須遺伝子のTCS又はHTCS調節の原理が、それら自体必須ではないが、両方が一緒に欠失されると生存能の喪失を生じる冗長遺伝子対に適用され得ることも認識するであろう。この場合、TCS又はHTCSは、生存能を制御する手段として、両方の遺伝子の機能に連結させることができるか、又は一方の冗長遺伝子を単純に削除して、他方がそれ自体必須であることを確実にすることができる。
【0082】
特定の実施形態では、生物学的封じ込めは、炭水化物制御生物学的封じ込め戦略を用いて実施され、それにより、腸内で見出される炭水化物上で増殖する組換え微生物の能力が制限され、制御分子が供給される。組換え微生物の腸内で見出される炭水化物上での増殖能を制限することは、天然の多糖利用遺伝子座(PUL)をノックアウトすることによって達成することができる。PULは、SusC及びSusD相同体を含む推定オペロンを検索することによって同定され得る(例えば、B.テタイオタオミクロン(B.thetaiotaomicron)における少なくとも12の推定PUL:BTO139-BT0146、BT0188-BT0196、BT0752-BT0758、BT1278-BT1287、BT1617-BT1622、BT1871-BT1877、BT2189-BT2198、BT2457-BT2463、BT3517-BT3532、BT3748-BT3754、BT4629-BT4636及びBT4722-BT4730を同定したXu et al.(2003).Symbiosis 299,2074-2077を参照されたい)。PULは、確立された方法を用いて完全に又は部分的に欠失され得る(Koropatkin et al.(2008)Structure 16,1105-1115)。単一のPUL又は複数のPULの欠失は、腸内の生存能を部分的に又は完全に排除するために使用され得る。複数のPULの欠失は、確立された方法を用いて連続して行うことができる(Koropatkin et al.、前出)。次いで、異種PULを導入して、腸内で一般に見出されない炭水化物上で増殖する能力を付与することができる。多数の炭水化物-PUL対は、少なくとも部分的に生存能を回復させることができ得るが、理想的な炭水化物は、上記のポルフィランPULなどの他の腸内微生物によって分解されないものであろう。ポルフィランPULの移動は、以下の実施例に記載のように行うことができる。
【0083】
IV.必須遺伝子
必須遺伝子とは、目的の条件下で生存能を維持するために機能発現が必要な遺伝子である。特定の実施形態では、必須遺伝子は、チミジル酸シンターゼ(ThyA)、アルギニルtRNAシンテターゼ(argS)、システイニルtRNAシンテターゼ(cysS)、ペニシリン耐性タンパク質(lytB)及びペプチド鎖放出因子(RF-2)から選択される。他の例示的な必須遺伝子には、表1に列挙されるものが含まれる。表1は、B.テタイオタオミクロン(B.thetaiotaomicron)についての予測される必須遺伝子を提供する(Goodman et al.(2009)Cell Host Microbe 6(3):279-289)。他の細菌についての必須遺伝子は、当技術分野で公知であるか、又は表1に列挙されるものと80%以上の配列同一性を有する遺伝子(例えば、表1に列挙されるものに対してオルソロガスな遺伝子)として同定され得る。
【0084】
【表1】
【0085】
V.制御分子
特定の実施形態では、制御分子は、ヒト食餌中において定期的に存在しない。特定の実施形態では、制御分子は、単糖又は多糖、例えば海洋多糖若しくは抗生物質又はいずれかの誘導体である。特定の実施形態では、海洋多糖は、ポルフィラン若しくはアガロース又はその誘導体である。特定の実施形態では、抗生物質又はその誘導体は、アンヒドロテトラサイクリンである。
【0086】
特定の実施形態では、制御分子は、所与の集団の一般的な食餌の一部ではない分子又は所与の集団の腸の約10%、5%、1%、0.1%、0.01%未満若しくは約0.001%未満に見出される分子である。所与の集団は、地理的に記述され得、例えば、制御分子は、従来の北米(ヨーロッパ、南米、アフリカ、アジアなど)食餌の一部ではないものであり得る。集団は、他の方法、例えば亜集団でも定義され得る。ある場合には、制御分子は、第1の集団の食餌において一般に見出されないが、第2の集団の食餌において一般的である場合がある。いくつかの実施形態では、希少炭水化物は、集団の腸の1%、0.1%、0.01%又は0.001%未満に見出されるものである。いくつかの場合、制御分子は、海洋炭水化物、例えばポルフィラン又はアガロースである。いくつかの場合、制御分子は、薬物、例えば抗生物質又は抗生物質誘導体、例えばテトラサイクリン又はアンヒドロテトラサイクリンである。いくつかの場合、制御分子は、1-クロロ-1-デオキシ-D-フルクトース又は1,6-ジクロロ-1,6-ジデオキシ-D-フルクトースなどのハロゲン化炭水化物である。いくつかの場合、制御分子は、北米(ヨーロッパ、南米、アフリカ、アジアなど)食餌から欠けているものである。いくつかの場合、制御分子は、北米(ヨーロッパ、南米、アフリカ、アジアなど)食餌において、平均で頻繁に消費されないもの(例えば、年に20回、年に10回、年に9回未満、年に8回、年に7回、年に6回、年に5回、年に4回、年に3回未満)である。いくつかの場合、制御分子は、天然に存在しない。いくつかの場合、制御分子は、環境の温度が所与の範囲内にある場合に存在する。
【0087】
特定の実施形態では、制御分子は、ポルフィランであり、且つ第1及び第2のアクチベーターは、それぞれHTCSタンパク質であり、及び(i)ポルフィランは、存在する場合、第1及び第2のHTCSタンパク質を活性化し、(ii)第1及び第2のHTCSタンパク質は、活性化される場合、第1及び第2のプロモーターをそれぞれ活性化し、及び(iii)第1及び第2のプロモーターは、活性化される場合、それぞれ第1及び第2の必須遺伝子の発現を指示し、それにより、ポルフィランの存在に依存する細菌の増殖及び/又は生存能をもたらす。特定の実施形態では、細菌は、共生細菌である。
【0088】
VI.改変細菌
例えば、開示される医薬組成物又は方法に使用するための意図される改変細菌としては、例えば、大腸菌(Escherichia coli)、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)、バクテロイデス門(Bacteroidetes)、ファーミキューテス門(Firmicute)、アクチノ細菌(Actinobacteria)、プロテオ細菌(Proteobacteria)又はウェルコミクロビウム門(Verrucomicrobia)の門のメンバー及びバクテロイデス(Bacteroides)、アリスティペス(Alistipes)、フィーカリバクテリウム(Faecalibacterium)、パラバクテロイデス(Parabacteroides)、プレボテラ(Prevotella)、ロセブリア(Roseburia)、ルミノコッカス(Ruminococcus)、クロストリジウム(Clostridium)、オシリバクター(Oscillibacter)、ジェミガー(Gemmiger)、バルネシエラ(Barnesiella)、ディアリスター(Dialister)、パラステレラ(Parasutterella)、ファスコラークトバクテリウム(Phascolarctobacterium)、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)、サテレラ(Sutterella)、ブラウティア(Blautia)、パラプレボテラ(Paraprevotella)、コプロコッカス(Coprococcus)、オドリバクター(Odoribacter)、スピロプラズマ(Spiroplasma)、アナエロスティペス(Anaerostipes)又はアッケルマンシア(Akkermansia)属の細菌が挙げられる。例えば、開示される医薬組成物又は方法に使用するための意図される細菌は、バクテロイデス(Bacteroides)属のものとすることができ、すなわちバクテロイデス(Bacteroides)種細菌とすることができる。
【0089】
例示的なバクテロイデス(Bacteroides)種としては、B.アシジファシエンス(B.acidifaciens)、B.アミロフィルス(B.amylophilus)、B.アサッカロリチクス(B.asaccharolyticus)、B.バルネシアエス(B.barnesiaes)、B.ビビウス(B.bivius)、B.ブッカエ(B.buccae)、B.ブッカリス(B.buccalis)、B.カッカエ(B.caccae)、B.カエシコラ(B.caecicola)、B.カエシガリナルム(B.caecigallinarum)、B.カピロサス(B.capillosus)、B.カピルス(B.capillus)、B.セルロシリチクス(B.cellulosilyticus)、B.セルロソルベンス(B.cellulosolvens)、B.チンチラ(B.chinchilla)、B.クラルス(B.clarus)、B.コアギュランス(B.coagulans)、B.コプロコラ(B.coprocola)、B.コプロフィルス(B.coprophilus)、B.コプロスイス(B.coprosuis)、B.コルポリス(B.corporis)、B.デンチコラ(B.denticola)、B.ジシエンス(B.disiens)、B.ジスタソニス(B.distasonis)、B.ドレイ(B.dorei)、B.エゲルチイ(B.eggerthii)、B.エンドドンタリス(B.endodontalis)、B.ファエシチンチラエ(B.faecichinchillae)、B.ファエシス(B.faecis)、B.フィネゴルジイ(B.finegoldii)、B.フルクスス(B.fluxus)、B.フォルシスス(B.forsythus)、B.フラギリス(B.fragilis)、B.フルコスス(B.furcosus)、B.ガラクツロニクス(B.galacturonicus)、B.ガリナセウム(B.gallinaceum)、B.ガリナルム(B.gallinarum)、B.ギンギバリス(B.gingivalis)、B.ゴルドステイニイ(B.goldsteinii)、B.グラシリス(B.gracilis)、B.グラミニソルベンス(B.graminisolvens)、B.ヘルコゲネス(B.helcogenes)、B.ヘパリノリチクス(B.heparinolyticus)、B.ヒペルメガス(B.hypermegas)、B.インテルメジウス(B.intermedius)、B.インテスチナリス(B.intestinalis)、B.ジョンソニイ(B.johnsonii)、B.レビイ(B.levvi)、B.ロエシェイイ(B.loescheii)、B.ルチ(B.luti)、B.マカカエ(B.macacae)、B.マシリエンシス(B.massiliensis)、B.メラニノゲニクス(B.melaninogenicus)、B.メルダエ(B.merdae)、B.ミクロフスス(B.microfusus)、B.ムルアチアシヅス(B.multiacidus)、B.ノドスス(B.nodosus)、B.ノルジイ(B.nordii)、B.オクラセウス(B.ochraceus)、B.オレイシプレヌス(B.oleiciplenus)、B.オラリス(B.oralis)、B.オリス(B.oris)、B.オウロルム(B.oulorum)、B.オバタス(B.ovatus)、B.パウロサッカロリチクス(B.paurosaccharolyticus)、B.ペクチノフィルス(B.pectinophilus)、B.ペントサセウス(B.pentosaceus)、B.プレベイウス(B.plebeius)、B.ニューモシンテス(B.pneumosintes)、B.ポリプラグマツス(B.polypragmatus)、B.プラエアクツス(B.praeacutus)、B.プロピオニシファシエンス(B.propionicifaciens)、B.プトレジニス(B.putredinis)、B.ピオゲネス(B.pyogenes)、B.レチキュロテルミチス(B.reticulotermitis)、B.ロデンチウム(B.rodentium)、B.ルミニコラ(B.ruminicola)、B.サラニトロニス(B.salanitronis)、B.サリボスス(B.salivosus)、B.サリエルシアエ(B.salyersiae)、B.サルトリイ(B.sartorii)、B.セジメント(B.sediment)、B.スプランクニクス(B.splanchnicus)、B.ステルコリロソリス(B.stercorirosoris)、B.ステルコリス(B.stercoris)、B.スシノゲネス(B.succinogenes)、B.スイス(B.suis)、B.テクツス(B.tectus)、B.テルミチジス(B.termitidis)、B.テタイオタオミクロン(B.thetaiotaomicron)、B.ウレフォルミス(B.uniformis)、B.ウレオリチクス(B.ureolyticus)、B.ベロラリス(B.veroralis)、B.ブルガツス(B.vulgatus)、B.キシラニソルベンス(B.xylanisolvens)、B.キシラノリチクス(B.xylanolyticus)又はB.ズーグレオフォンナンス(B.zoogleofonnans)が挙げられる。
【0090】
本明細書で使用される場合、用語「種」は、ゲノム配列及び表現型特性によって慣用的に定義される分類学的実体を指す。「株」は、従来の微生物学的技術に従って単離及び精製された種の特定の例である。本開示は、開示される細株の誘導体を包含する。用語「誘導体」は、娘株(子孫)又は株の生物学的活性を負に変化させることなく、元のものから培養(サブクローン化)されたが、何らかの方法で改変された(遺伝子レベルを含む)染色体を含む。
【0091】
特定の実施形態では、意図される改変細菌は、処置される対象の糞便中又は平均的なヒトの糞便中の全培養可能微生物の0.1%、0.5%、1%、5%、10%、20%、30%又は40%超を構成する属のものである。特定の実施形態では、意図される改変細菌は、処置される対象の糞便の1グラム当たり又は平均的なヒトの糞便の1グラム当たり1012、1011、1010、10、10、10コロニー形成単位を超えるレベルで検出される属のものである。特定の実施形態では、意図される改変細菌は、処置される対象の腸内ミクロビオーム又は平均的なヒトの腸内ミクロビオームの0.1%、0.5%、1%、5%、10%、20%、30%又は40%超を構成する属のものである。ヒトの腸又は糞便ミクロビオーム組成物は、16Sリボソーム配列決定を含む、当技術分野で公知の任意の技術によってアッセイされ得る。バクテロイデス(Bacteroides)は、ヒト腸内で最も天然に豊富な属である(Huttenhower et al.(2012)Nature 486.7402:207)。
【0092】
rRNA、16S rDNA、16S rRNA、16S、18S、18S rRNA及び18S rDNAは、リボソームの成分の成分であるか、又はその成分をコードする核酸を指す。リボソームには、小サブユニット(SSU)及び大サブユニット(LSU)と呼ばれる2つのサブユニットがある。rDNA遺伝子とその相補的RNA配列とは、それらが可変であるが、生物間の分子比較を可能にするために十分に保存されているため、生物の進化的関係量の決定に広く用いられている。
【0093】
30S SSUの16S rDNA配列(長さ約1542ヌクレオチド)は、実施形態において、原核生物の分子ベースの分類学的割り当てのために使用され得、40S SSUの18S rDNA配列(長さ約1869ヌクレオチド)は、真核生物に使用され得る。例えば、16S配列は、それらが一般に高度に保存されているが、大部分の細菌の属及び種を分化させるために十分なヌクレオチド多様性を有する特異的超可変領域を含むため、系統発生学的再構築のために使用され得る。16S rDNA配列データは、分類学的分類を提供するために使用されてきたが、同じ属及び種内で分類される密接に関連した細株は、異なる生物学的表現型を示す場合がある。
【0094】
意図される細菌種又は株のアイデンティティは、16S rRNA又は全ゲノム配列解析によって特徴付けることができる。例えば、特定の実施形態では、意図される細株は、参照配列に対して特定の%同一性を有する16S rRNA又はゲノム配列を含むことができる。
【0095】
配列同一性は、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して、当業者の範疇内である種々の方法で決定することができる。プログラムblastp、blastn、blastx、tblastn及びtblastxによって使用されるアルゴリズムを使用するBLAST(Basic Local Alignment Search Tool)解析(Karlin et al.,(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264-2268;Altschul,(1993)J.Mol.Evol.36,290-300;Altschul et al.,(1997)Nucleic Acids Res.25:3389-3402(参照により組み込まれる)は、配列類似性検索のために調整される。配列データベースを検索する際の基本的な問題の議論については、Altschul et al.,(1994)Nature Genetics 6:119-129(これは、参照により完全に組み込まれる)を参照されたい。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメーターを決定することができる。ヒストグラム、説明、アラインメント、期待値(すなわちデータベース配列に対する一致を報告するための統計的有意性閾値)、カットオフ、マトリクス及びフィルタの検索パラメーターは、デフォルト設定である。blastp、blastx、tblastn及びtblastxによって使用されるデフォルトのスコアリングマトリクスは、BLOSUM62行列である(Henikoff et al.,(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915-10919(参照により完全に組み込まれる)。4つのblastnパラメーターは、以下のように調整され得る:Q=10(ギャップ生成ペナルティ);R=10(ギャップ拡張ペナルティ);wink=1(クエリに沿ったwink.sup.th位置ごとにワードヒットを生成する);及びgapw=16(ギャップアラインメントが生成されるウィンドウ幅を設定する)。均等なBlastpパラメーター設定は、Q=9;R=2;wink=1;及びgapw=32であり得る。検索は、NCBI(National Center for Biotechnology Information)BLAST Advanced Optionパラメーター(例えば、-G、ギャップを開放するためのコスト[Integer]:デフォルト=ヌクレオチドで5/タンパク質で11;-E、ギャップを伸長するためのコスト[Integer]:デフォルト=ヌクレオチドで2/タンパク質で1;-q、ヌクレオチドミスマッチについてのペナルティ[Integer]:デフォルト=-3;-r、ヌクレオチド一致に関する報酬[Integer]:デフォルト=1;-e、期待値[Real]:デフォルト=10;-W、ワードサイズ[Integer]:デフォルト=ヌクレオチドで11/megablastで28/タンパク質で3;-y、ビットでのblast伸長についてのDropoff(X):デフォルト=blastnで20/その他で7;-X、ギャップアラインメントについてのXドロップオフ値(ビットでの):デフォルト=blasnに適用不可能な全てのプログラムについて15;及び-Z、ギャップアラインメントについての最終Xドロップオフ値(ビットでの):blastnで50、その他で25)を使用して行うこともできる。ペアワイズタンパク質アラインメントのためのClustalWも使用され得る(デフォルトパラメーターは、例えば、Blosum62マトリクス及びギャップオープニングペナルティ=10及びギャップ伸長ペナルティ=0.1を含み得る)。GCGパッケージバージョン10.0において利用可能な配列間のBestfit比較は、DNAパラメーターGAP=50(ギャップ生成ペナルティ)及びLEN=3(ギャップ伸長ペナルティ)を使用し、タンパク質比較における均等な設定は、GAP=8及びLEN=2である。
【0096】
特定の実施形態では、意図される改変細菌は、ヒト腸で安定にコロニー形成することができる。開示される細菌は、例えば、ヒト対象への投与後、糞便内容物の1グラム当たり1012、1011、1010、10、10又は10cfuを超える存在量をもたらす可能性がある。例えば、開示される細菌の約10、約10、約10、約10、約10、約10、約10、約1010、約1011又は約1012細胞をヒト対象に投与することにより、投与の12時間、24時間、36時間、48時間、60時間又は72時間で糞便内容物の1グラム当たり1012、1011、1010、10、10又は10cfuを超える存在量がもたらされる可能性がある。
【0097】
開示される細菌は、例えば、改変されていない類似の又はさもなければ同一の細菌と比較して増加した存在量、安定性、予測可能性又は初期コロニー形成の容易さでヒト腸にコロニー形成するように改変され得る。例えば、意図される細菌は、優先栄養素を炭素源として利用する能力を増加させるように改変され得る。「優先栄養素」は、腸内の他の細菌の1%以下の増殖補助を提供しながら、特定の細株の増殖を補助するために消費され得る分子又は分子のセットとして定義される。従って、特定の実施形態では、改変細菌は、そのコロニー形成を維持し、他の炭素又はエネルギー源の非存在下でさえ、対象の腸内で予測可能に高い存在量まで拡大するために優先栄養素を消費する能力を有する一方、対象の腸内のほとんどの他の細菌は、そうではない。例示的な優先栄養素には、例えば、海洋多糖、例えばポルフィランが含まれる。当業者が認識するように、意図される優先栄養素は、所与の細菌及び対象について意図される制御分子と重複し得る。
【0098】
例えば、特定の実施形態では、細菌は、多糖利用遺伝子座(PUL)、炭水化物、例えば優先栄養素を消費する能力を細菌に付与する可動遺伝因子の全部又は一部を含み得る。例示的なポルフィラン消費PULは、配列番号14に示されるポルフィラン消費バクテロイデス(Bacteroides)株NB001由来のPULである。従って、特定の実施形態では、改変細菌は、配列番号14又はその機能的断片若しくは改変体を含む。特定の実施形態では、改変細菌は、配列番号14に対して少なくとも80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有するヌクレオチド配列又はその機能的断片若しくは改変体を含む。
【0099】
他の例示的なPULは、配列番号15に提供されるアガロース消費バクテロイデス(Bacteroides)株NB002及び配列番号16に提供されるNB003に由来するものである。従って、特定の実施形態では、改変細菌は、配列番号15若しくは16又はその機能的断片若しくは改変体を含む。特定の実施形態では、改変細菌は、配列番号15若しくは16に対して少なくとも80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有するヌクレオチド配列又はその機能的断片若しくは改変体を含む。
【0100】
対象の腸における存在量を増加させるためのさらなる例示的な細菌改変、優先栄養素、優先栄養素を利用する細菌の能力を増加させる導入遺伝子、PUL並びに改変細菌の増殖を調節するための他の方法及び組成物は、国際(PCT)特許公開国際公開第2018112194号パンフレットに記載されている。
【0101】
特定の実施形態では、異種ヌクレオチド配列を含む、開示される導入遺伝子又は核酸は、少なくとも1つのプロモーター、例えばファージ由来プロモーターに作動可能に連結される。用語「作動可能に連結される」は、機能的関係にあるポリヌクレオチド要素の連結を指す。核酸配列は、それが別の核酸配列と機能的関係に置かれる場合、「作動可能に連結される」。例えば、プロモーター又はエンハンサーは、それが遺伝子の転写に影響を及ぼす場合、遺伝子に機能的に連結される。作動可能に連結されるヌクレオチド配列は、典型的には、連続している。しかしながら、エンハンサーは、一般に、プロモーターから数キロベース分離された場合に機能し、イントロン配列は、可変長であり得るため、いくつかのポリヌクレオチド要素は、作動可能に連結され得るが、直接隣接せず、異なる対立遺伝子又は染色体からトランスでも機能し得る。特定の実施形態では、プロモーターは、コンセンサス配列GTTAA(n)4~7GTTAA(n)34~38TA(n)TTTGを含む。特定の実施形態では、プロモーターは、配列番号48、配列番号49若しくは配列番号50又はその機能的断片或いは配列番号48、配列番号49若しくは配列番号50に対して少なくとも80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有するヌクレオチド配列又はその機能的断片を含む。さらなる例示的なファージ由来プロモーターは、国際(PCT)特許公開国際公開第2017184565号パンフレットに記載されている。
【0102】
特定の実施形態では、細菌は、デンプン結合タンパク質に相同なタンパク質をコードする1つ以上の導入遺伝子、例えばSusC又はSusD、例えば配列番号20若しくは21又はその機能的断片若しくは改変体をさらに含む。特定の実施形態では、導入遺伝子は、配列番号20及び21若しくはその機能的断片又は配列番号20若しくは21に対して少なくとも80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有するタンパク質又はその機能的断片の1つ以上をコードする。
【0103】
特定の実施形態では、細菌は、治療的導入遺伝子をさらに含む。いくつかの場合、治療的導入遺伝子は、gad65、il10、il22、TNF-α、nags、add、xapA、deoD、xdhA、xdhB、xdhC、mtr、プロピオン酸トランスポーター、キヌレニントランスポーター、胆汁酸塩トランスポーター、アンモニアトランスポーター、GABAトランスポーター、PheP又はAroPであり得る。いくつかの場合、細菌は、診断的導入遺伝子を含む。いくつかの場合、診断的導入遺伝子は、TtrR/TtrSである。いくつかの場合、細菌は、外膜輸入タンパク質をさらに含む。
【0104】
特定の実施形態では、開示される導入遺伝子又は核酸は、プラスミド上にあり、細菌人工染色体上にあり、且つ/又はゲノムに統合されている。細菌が複数のタンパク質をコードする1つ以上の導入遺伝子又は核酸を含む場合、タンパク質の2つ以上をコードするオープンリーディングフレームは、例えば、単一のオペロンに存在し得ることが意図される。
【0105】
特定の実施形態では、開示される遺伝子(例えば、必須遺伝子又は導入遺伝子)又は核酸は、少なくとも1つのリボソーム結合部位(RBS)に作動可能に連結される。例示的なRBSには、配列番号47、74、75、76、77、84若しくは85のいずれか1つのヌクレオチド配列又は配列番号47、74、75、76、77、84若しくは85のいずれか1つに対して少なくとも80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有するヌクレオチド配列又は前述したヌクレオチド配列のいずれかの機能的断片若しくは変異体を含むものが含まれる。
【0106】
細菌は、配列番号47、74、75、76、77、84若しくは85のいずれか1つのヌクレオチド配列又はその機能的断片若しくは改変体或いは配列番号47、74、75、76、77、84若しくは85のいずれか1つに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列又はその機能的断片若しくは改変体を含む核酸を含み得ることが意図される。
【0107】
細菌は、配列番号39、43、53、54、59若しくは64~71のいずれか1つのアミノ酸配列又はその機能的断片若しくは改変体或いは配列番号39、43、53、54、59若しくは64~71のいずれか1つに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列又はその機能的断片若しくは改変体を含むタンパク質を含み得ることが意図される。
【0108】
細菌は、配列番号39、43、53、54、59若しくは64~71のいずれか1つのアミノ酸配列又はその機能的断片若しくは改変体或いは配列番号39、43、53、54、59若しくは64~71のいずに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列又はその機能的断片若しくは改変体をコードするヌクレオチド配列を含む1つ以上の核酸を含み得ることが意図される。
【0109】
細菌は、配列番号29、30、31、34、35、36、37、40、55、56、60、61若しくは72のいずれか1つのヌクレオチド配列又はその機能的断片若しくは改変体或いは配列番号29、30、31、34、35、36、37、40、55、56、60、61若しくは72のいずれか1つに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列又はその機能的断片若しくは改変体を含む1つ以上の核酸を含み得ることが意図される。
【0110】
細菌は、(i)配列番号19のアミノ酸又はその機能的断片若しくは改変体或いは配列番号19に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列又はその機能的断片若しくは改変体を含むポルフィランによって活性化されるHTCSと;(ii)配列番号73のヌクレオチド配列又はその機能的断片若しくは改変体或いは配列番号73に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列又はその機能的断片若しくは改変体を含むHTCSによって活性化されるプロモーターと;(iii)プロモーターに作動可能に連結される必須遺伝子(例えば、argS遺伝子)とを含み得ることが意図される。特定の実施形態では、必須遺伝子(例えば、argS遺伝子)は、配列番号47のヌクレオチド配列又はその機能的断片若しくは改変体或いは配列番号47に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列又はその機能的断片若しくは改変体を含むリボソーム結合部位(RBS)に作動可能に連結される。
【0111】
細菌は、(i)配列番号59のアミノ酸又はその機能的断片若しくは改変体或いは配列番号59に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列又はその機能的断片若しくは改変体を含むポルフィランによって活性化されるHTCSと;(ii)配列番号45のヌクレオチド配列又はその機能的断片若しくは改変体或いは配列番号45に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列又はその機能的断片若しくは改変体を含むHTCSによって活性化されるプロモーターと;(iii)プロモーターに作動可能に連結される必須遺伝子(例えば、lytB遺伝子)とを含み得ることが意図される。特定の実施形態では、必須遺伝子(例えば、lytB遺伝子)は、配列番号84のヌクレオチド配列又はその機能的断片若しくは改変体或いは配列番号84に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列又はその機能的断片若しくは改変体を含むリボソーム結合部位(RBS)に作動可能に連結される。
【0112】
細菌は、(i)配列番号19のアミノ酸又はその機能的断片若しくは改変体或いは配列番号19に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列又はその機能的断片若しくは改変体を含むポルフィランによって活性化される第1のHTCSと;(ii)配列番号73のヌクレオチド配列又はその機能的断片若しくは改変体或いは配列番号73に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列又はその機能的断片若しくは改変体を有する第1のHTCSによって活性化される第1のプロモーターと;(iii)第1のプロモーターに作動可能に連結される第1の必須遺伝子(例えば、argS遺伝子)と;(iv)配列番号59のアミノ酸又はその機能的断片若しくは改変体或いは配列番号59に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸又はその機能的断片若しくは改変体を含むポルフィランによって活性化される第2のHTCSと;(v)配列番号45のヌクレオチド配列又はその機能的断片若しくは改変体或いは配列番号45に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列又はその機能的断片若しくは改変体を含む第2のHTCSによって活性化される第2のプロモーターと;(vi)第2のプロモーターに作動可能に連結される第2の必須遺伝子(例えば、lytB遺伝子)とを含み得ることが意図される。特定の実施形態では、第1の必須遺伝子(例えば、argS遺伝子)は、配列番号47のヌクレオチド配列又はその機能的断片若しくは改変体或いは配列番号47に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列又はその機能的断片若しくは改変体を含む第1のリボソーム結合部位(RBS)に作動可能に連結される。特定の実施形態では、第2の必須遺伝子(例えば、lytB遺伝子)は、配列番号84のヌクレオチド配列又はその機能的断片若しくは改変体或いは配列番号84に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列又はその機能的断片若しくは改変体を含む第2のリボソーム結合部位(RBS)に作動可能に連結される。
【0113】
VII.方法
別の態様では、本開示は、制御分子の非存在下で細菌(例えば、共生細菌)の増殖及び/又は生存能を低下させる方法に関する。本方法は、細菌を、制御分子によって活性化される第1のアクチベーターと、第1のアクチベーターによって活性化される第1のプロモーターと、第1のプロモーターに作動可能に連結される第1の必須遺伝子とを含むように遺伝子改変することを含む。特定の実施形態では、本発明は、細菌を、制御分子よって活性化される第2のアクチベーターと、第2のアクチベーターよって活性化される第2のプロモーターと、第2のプロモーターに作動可能に連結される第2の必須遺伝子とを含むように遺伝子改変することをさらに含む。特定の実施形態では、第1のプロモーターは、第2のアクチベーターによって活性化されず、及び第2のプロモーターは、第1のアクチベーターによって活性化されない。交差活性化しない異なるアクチベーター/プロモーター対を組み込むことにより、冗長性が提供され、エスケープ率が低下する。
【0114】
従って、制御分子の非存在下で細菌の増殖及び/又は生存能をさらに低下させるために、制御分子によって活性化される第3のアクチベーターを導入し得る。従って、本方法は、細菌を、制御分子によって活性化される第3のアクチベーターと、第3のアクチベーターによって活性化される第3のプロモーターと、第3のプロモーターに作動可能に連結される第3の必須遺伝子とを含むように遺伝子改変することをさらに含み得る。特定の実施形態では、第3のプロモーターは、第1又は第2のアクチベーターによって活性化されず、及び第3のプロモーターは、第1又は第2のアクチベーターによって活性化されない。さらなるアクチベーター/プロモーター対の組み込みにより、さらなる冗長性が提供され、エスケープ率をさらに低下させる。
【0115】
特定の実施形態では、本発明は、細菌を、第1、第2及び/又は第3のアクチベーターをコードする1つ以上の導入遺伝子を含むように遺伝的に改変することをさらに含む。
【0116】
本開示は、対象の腸をコロニー形成する方法にも関し、この方法は、本明細書に記載される細菌又は医薬組成物を投与することを含む。腸のコロニー形成を増加させるための戦略は、以下により詳細に論じられる。
【0117】
VIII.医薬組成物/単位
本明細書に開示される細菌は、薬学的に許容される賦形剤と組み合わせて医薬組成物を形成することができ、これは、当技術分野において公知の任意の手段によって患者に投与することができる。本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される賦形剤」は、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症なしに、妥当な利益/リスク比に見合って、対象、例えばヒト対象への投与に適した緩衝液、キャリア、または賦形剤の1以上を意味すると理解される。 賦形剤(複数可)は、製剤の他の成分と適合し、かつ受領者に有害でないという意味で「許容可能」であるべきである。
【0118】
薬学的に許容される賦形剤には、医薬投与に適合する緩衝剤、溶媒、分散媒体、コーティング剤、等張剤および吸収遅延剤等が含まれる。薬学的に許容される賦形剤には、充填剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、およびそれらの任意の組み合わせも含まれる。賦形剤、担体、安定剤、およびアジュバントのさらなる例については、例えば、Handbook of Pharmaceutical Excipients, 8th Ed., Edited by P.J. Sheskey, W.G. Cook, and C.G. Cable, Pharmaceutical Press, London, UK[2017]を参照。薬学的活性物質に対するこのような媒体および薬剤の使用は、当技術分野において既知である。
【0119】
企図される細菌は、凍結乾燥状態(任意に1つ以上の適切な凍結保護剤を伴う)、冷凍(例えば、標準又は過冷却フリーザー内)、噴霧乾燥、及び/又は凍結乾燥を含む、当業者に知られているように、任意の形態、例えば安定形態で開示される組成物に使用することができる。安定な製剤または組成物は、その中の生物学的活性物質が、保存時にその物理的安定性、化学的安定性、および/または生物学的活性を本質的に保持するものである。安定性は、選択された温度および湿度条件下で、選択された期間にわたって測定することができる。傾向分析を用いて、材料が実際にその期間保管される前に予想される保存期間を推定することができる。生きた細菌の場合、例えば、安定性は、温度、湿度及び期間の予め定められた条件下で1 log cfu/gの乾燥製剤を失うのに要する時間として定義することができる。
【0120】
本明細書に開示される細菌は、1つ又は複数の凍結保護剤と組み合わせてもよい。例示的な凍結保護剤には、フルクトリゴ糖(例えば、ラフィロース(登録商標))、トレハロース、マルトデキストリン、アルギン酸ナトリウム、プロリン、グルタミン酸、グリシン(例えば。グリシンベタイン)、モノ、ジ、またはポリサッカライド(グルコース、スクロース、マルトース、ラクトースなど)、ポリオール(マンニトール、ソルビトール、グリセロールなど)、デキストラン、DMSO、メチルセルロース、プロピレングリコール、ポリビニルピロリドン、Tween80などのノニオン性界面活性剤、および/またはそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0121】
医薬組成物は、その意図する投与経路に適合するように製剤化されるべきである。本明細書に開示される企図された細菌組成物は、任意の適切な方法によって調製することができ、様々な形態に製剤化し、多数の異なる手段によって投与することができる。想定される組成物は、所望により従来から許容される担体、アジュバント、およびビヒクルを含む製剤で、経口、直腸、または腸に投与することができる。本明細書で使用される場合、「直腸投与」は、浣腸、座薬、または結腸鏡検査による投与を含むと理解される。開示された医薬組成物は、例えば、ボーラス投与またはボーラス放出に適するかもしれない。例示的な実施形態では、開示された細菌組成物は、経口投与される。
【0122】
経口投与のための固形剤形には、カプセル、錠剤、カプレット、丸薬、トローチ、トローチ剤、粉末、顆粒が含まれる。カプセルは、典型的には、細菌組成物からなるコアと、コアをカプセル化するシェルとからなる。いくつかの実施形態では、コアは、固体、液体及びエマルジョンのうちの少なくとも1つからなる。いくつかの実施形態では、シェル材料は、軟質ゼラチン、硬質ゼラチン及びポリマーのうちの少なくとも1つからなる。適切なポリマーには、以下が含まれるが、これらに限定されるものではない。ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース、エチルセルロース、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、酢酸トリメリット酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、サクシネートヒドロキシプロピルメチルセルロース及びカルボキシメチルセルロースナトリウム等のセルロース性高分子、アクリル酸ポリマーおよびコポリマー、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、メチルアクリレート、アンモニオメチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレートおよび/またはエチルメタクリレートから形成されるポリマー(例えば、オイドラギッド(登録商標)という商品名で販売されているそれらのコポリマー)、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸フタル酸、酢酸ビニル-クロトン酸コポリマー、エチレン酢酸ビニルコポリマーなどのビニルポリマーおよびコポリマーおよびシェラック(精製ラック)。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのポリマーが味覚マスキング剤として機能する。
【0123】
錠剤、丸薬などは、圧縮、多重圧縮、多重層化および/またはコーティングすることができる。企図されるコーティングは、単一または複数であることができる。一実施形態では、企図されるコーティング材料は、植物、菌類及び微生物の少なくとも1つから抽出されたサッカライド、多糖類及び糖タンパク質の少なくとも1つを含んでいる。非限定的な例としては、コーンスターチ、小麦スターチ、ジャガイモスターチ、タピオカスターチ、セルロース、ヘミセルロース、デキストラン、マルトデキストリン、シクロデキストリン、イヌリン、ペクチン、マンナン。アラビアガム、ローカストビーンガム、メスキートガム、グアーガム、カラヤガム、ガッティガム、トラガカントガム、フノリ、カラギーナン、ポルフィラン、寒天、アルギン酸塩、キトサンまたはジェランガムが挙げられる。いくつかの実施形態では、企図されるコーティング材料は、タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、企図されるコーティング材料は、脂肪及び油のうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、脂肪及び油の少なくとも一方は、高温溶融性である。いくつかの実施形態では、脂肪および油の少なくとも一方は、水素化または部分的に水素化されている。いくつかの実施形態では、脂肪及び油の少なくとも一方は、植物に由来する。いくつかの実施形態では、脂肪及び油の少なくとも一方は、グリセリド、遊離脂肪酸及び脂肪酸エステルの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、企図されるコーティング材料は、少なくとも1つの食用ワックスを含んでいる。企図される食用ワックスは、動物、昆虫または植物に由来し得る。非限定的な例としては、蜜蝋、ラノリン、ベイベリーワックス、カルナウバワックス及び米ぬかワックスが挙げられる。錠剤および丸薬は、さらに、腸溶性コーティングまたは逆腸溶性コーティングを用いて調製することができる。
【0124】
あるいは、本明細書に開示された細菌組成物を具現化した粉末または顆粒は、食品に組み込むことができる。いくつかの実施形態では、企図される食品は、経口投与用の飲料である。 好適な飲料の非限定的な例としては、水、果汁、果実飲料、人工的に味付けした飲料、人工的に甘くした飲料、炭酸飲料、スポーツ飲料、液体日記製品、シェイク、アルコール飲料、カフェイン入り飲料、乳児用調製粉乳等が挙げられる。経口投与のための他の適切な手段としては、適切な溶媒、保存料、乳化剤、懸濁剤、希釈剤、甘味料、着色剤および香味剤の少なくとも1つを含む水性および非水性溶液、乳濁液および非発泡性顆粒から再構成した溶液および/または懸濁液が挙げられる。
【0125】
本明細書に開示される細菌を含む医薬組成物は、単位投与形態、すなわち医薬単位で提示することができる。組成物、例えば本明細書で提供される医薬単位は、細菌の総質量又はコロニー形成単位のいずれかによって測定される、任意の適切な量の細菌を含むことができる。
【0126】
例えば、開示される医薬組成物又はユニットは、約10cfuから約1012cfu、約10cfuから約1012cfu、約10cfuから約1012cfu、約10cfuから約1012cfu、約10cfuから約1012cfu、約1010cfuから約1012cfu、約1011cfuから約1012cfu、約10cfuから約1011cfu、約10cfuから約1011cfu、約10cfuから約1011cfu、約10cfuから約1011cfu、約10cfuから約1011cfu、約1010cfuから約1011cfu、約10cfuから約1010cfu、約10cfuから約1010cfu、約10cfuから約1010cfu、約10cfuから約1010cfu、約10cfuから約1010cfu、約10cfuから約10cfu、約10cfuから約10cfu、約10cfuから約10cfu、約10cfuから約10cfu、約10cfuから約10cfu、約10cfuから約10cfu、約10cfuから約10cfu、約10cfuから約10cfu、約10cfuから約10cfu、または約10cfuから約10cfuの各菌株を含んでいてもよいし、約103cfu、約10cfu、約10cfu、約10cfu、約10cfu、約1010cfu、約1011cfuまたは約1012cfuの各菌株を含んでいてもよい。
【0127】
特定の実施形態では、医薬組成物又はユニットは、制御分子をさらに含んでもよい。特定の実施形態では、医薬組成物は、被験者に投与されたときに細菌の生存能力を維持するのに十分な量の制御分子を含んでいる。例えば、制御分子は、1回の投与当たり約10mgから約100gの量で存在してもよい。特定の実施形態では、制御分子は、用量当たり約10mgから約10g、用量当たり約10mgから約1g、用量当たり約10mgから約100mg、用量当たり約100mgから約1g、用量当たり約100mgから約10g、用量当たり約100mgから約100g、用量当たり1gから約10g、用量当たり約1gから100g又は用量当たり約10gから約100gまでの量にて存在してもよい。
【0128】
IX.治療用途
いくつかの実施形態において、本開示は、疾患又は障害を有する対象を治療する方法を提供し、生存率のために制御分子を必要とするように操作された細菌を対象に投与することを含む。該細菌は、治療用トランスジーンを発現してもよい。細菌は、疾患または障害を治療するのに十分な時間、対象への制御分子の投与によって対象内で維持され得る。
【0129】
いくつかの実施形態では、疾患または障害を有する対象を診断またはモニタリングする方法は、対象に対し、生存能力のために制御分子を必要とするように操作された細菌を投与することを含む。この細菌は、診断用トランスジーンを発現し、疾患または障害を診断または監視するのに十分な時間、対象への制御分子の投与によって対象内で維持され得る。場合によっては、細菌は人から人への感染、または生物から生物への感染が不可能であることもある。制御分子及び細菌は、被験者に経口投与することができる。いくつかの態様において、対象はヒトである。いくつかの例では、最後の投与から少なくとも1日、2日、3日、4日、1週間または2週間後に、対照分子細菌が対象で検出されることはない。
【0130】
本明細書で使用される場合、「治療する(treat)」、「治療する(treating)」および「治療(treatment)」は、対象、例えば、ヒトにおける疾患の治療を意味する。これは、 (a)疾患を抑制すること、すなわち、その発症を阻止すること及び(b)疾患を緩和すること、すなわち、疾患状態の退行を引き起こすことを含む。本明細書で使用される場合、用語「対象」及び「患者」は、本明細書に記載の方法及び組成物によって治療される細菌を指す。そのような生物は、好ましくは、哺乳類、例えば、ヒト、伴侶動物(例えば、犬、猫またはウサギ)、または家畜動物(例えば、牛、羊、豚、ヤギ、馬、ロバ、およびラバ、水牛、牛またはラクダ)を含むが、これらに限定されるものではない。
【0131】
医薬組成物または細菌の正確な投与量は、治療される患者の観点から個々の医師によって選択されることが理解され、一般に、投与量および投与は、治療される患者に細菌剤の有効量を提供するように調節される。本明細書で使用する「有効量」は、有益なまたは所望の生物学的反応を引き出すために必要な量を指す。有効量は、1つまたは複数の投与、用途または用量で投与することができ、特定の製剤または投与経路に限定することを意図していない。当業者には理解されるように、医薬単位、医薬組成物または細菌株の有効量は、所望の生物学的エンドポイント、送達される薬剤、標的組織、投与経路などの要因によって変化し得る。 考慮され得る追加の要因には、疾患状態の重症度、治療される患者の年齢、体重及び性別、食事、投与の時間及び頻度、薬物の組み合わせ、反応感受性並びに治療に対する耐性/反応が含まれる。
【0132】
企図される方法は、細菌のコロニー形成を支援するために、制御分子及び/又は特権的な栄養素を対象に投与することをさらに含むことができる。例示的な特権的栄養素は、海洋多糖類、例えば、ポルフィランを含む。例えば、開示される特権的栄養素は、開示される細菌の前に、それと同時に、またはその後に、対象に投与され得る。
【0133】
企図される方法は、12時間、24時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、週、2週間、3週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、又は6ヶ月ごとに開示される細菌又は医薬組成物を対象に投与することを含んでよい。特定の実施形態では、開示された細菌又は医薬組成物の対象への連続投与間の時間は、12時間、24時間、36時間、48時間、2日、3日、4日、5日、6日、7日、1週間、2週間、3週間又は4週間より長い。
【0134】
特定の実施形態では、開示された細菌と、開示された制御分子及び/又は特権的栄養素、例えば、海洋多糖類、例えば、ポルフィランが、同じ頻度で被験者に投与される。例えば、細菌及び特権栄養剤は共に、8時間、12時間、24時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、週、2週間、3週間、4週間、月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、又は6ヶ月毎に対象に投与されてもよい。特定の実施形態では、開示された細菌と、開示された制御分子及び/又は特典のある栄養素、例えば、海洋多糖類、例えば、ポルフィランとが、異なる頻度で対象に投与される。例えば、細菌は、8時間、12時間、24時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、又は6ヶ月ごとに対象に投与されてもよく、制御分子および/または特典栄養剤は、8時間、12時間、24時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、週、2週間、3週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、または6ヶ月ごとに対象に投与され得る。例えば、特定の実施形態では、細菌は、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、又は6ヶ月ごとに対象に投与されてもよく、特典のある栄養素は、8時間、12時間、24時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、又は7日ごとに対象に投与されてもよい。
【0135】
本明細書に記載の方法及び組成物は、単独で又は他の治療剤及び/若しくは様式と組み合わせて使用することができる。本明細書で使用される「組み合わせて」投与されるという用語は、ある時点で患者に対する治療の効果が重なるように、被験者が障害を患っている間に、2つ(またはそれ以上)の異なる治療が被験者に送達されることを意味すると理解される。特定の実施形態では、第2の治療の送達が始まるとき、1つの治療の送達はまだ起こっており、投与の点で重複があるようにする。これは、本明細書において、「同時」または「同時送達」と呼ばれることがある。他の実施形態では、一方の処置の送達は、他方の治療の送達が開始される前に終了する。いずれの場合も特定の実施形態では、複合投与のため、治療がより効果的である。例えば、第2の治療はより効果的であり、例えば、第2の治療が第1の治療の非存在下で投与された場合に見られるであろうよりも、第2の治療の少ない量で同等の効果が見られる、または第2の治療が症状をより大きく軽減する、または類似の状況が第1の治療で見られる。特定の実施形態において、送達は、症状または障害に関連する他のパラメータの低減が、他方の治療がない場合に送達された一方の治療で観察されるであろうものよりも大きくなるようなものである。2つの治療の効果は、部分的に相加的、全体的に相加的、または相加的よりも大きくなり得る。送達は、送達された第1の治療の効果が、第2の治療が送達されたときにまだ検出可能であるようなものとすることができる。特定の実施形態では、第1及び/又は第2の治療の副作用は、複合投与のために低減される。
【0136】
特定の実施形態において、本開示は、対象から治療用細菌を除去する方法に関し、細菌は、機能が低下した治療用トランスジーンをコードする(例えば、治療用トランスジーンが変異し、それによってその治療機能を低下又は消失させる)。ある実施形態では、機能の低下は、治療用トランスジーンが非機能的であるような完全な低下である。
【0137】
機能が低下した治療用トランスジーンを有する細菌は、繁殖上の利点を有し、機能的な治療用トランスジーンを有する細菌と競合する可能性がある。したがって、特定の実施形態において、対象は、第1の期間(例えば、6ヶ月、5ヶ月、4ヶ月、3ヶ月、2ヶ月、1ヶ月、2週間、1週間)、対照分子(及び任意に本明細書に開示する細菌)を投与され、その後、対象が対照分子を受け取らない第2の期間(例えば、1週間、2週間、3週間、1ヶ月、2ヶ月)であってよいと企図するものである。第2の期間の間、機能低下した治療用トランスジーンを含む細菌は、対象から除去される。特定の実施形態では、本方法は、機能低下した治療用トランスジーンを含む細菌が対象から除去された後、本明細書に記載の治療レジメンのいずれかに従って、対象が機能治療用トランスジーンを含む細菌を投与される第3の期間をさらに含む。
【0138】
キット
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるような細菌を含むキットが提供される。一態様では、そのようなキットは、本明細書に記載の細菌及び細菌における1つ以上の必須遺伝子の発現に必要とされる制御分子を含む。
【0139】
本明細書を通じて、組成物が特定の成分を有する(having)、含む(including)または構成される(comprising)と記載される場合、またはプロセスおよび方法が特定のステップを有する、含むまたは構成されると記載される場合、さらに、本開示による組成物で、言及した成分から本質的になる、またはそれからなるものが存在し、本開示によるプロセスおよび方法で、言及した処理ステップから本質的になる、またはそれからなるものがあることが企図される。
【0140】
本願において、要素又は成分が、引用された要素又は成分のリストに含まれる及び/又はそこから選択されると言われる場合、要素又は成分は、引用された要素又は成分のうちの任意の1つであり得ること、又は要素又は成分は、引用された要素又は成分のうちの2以上からなる群から選択され得ることを理解されたい。
【0141】
さらに、本明細書に記載される組成物又は方法の要素及び/又は特徴は、本明細書に明示されているか暗黙のうちにかかわらず、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく様々な方法で組み合わせることができることを理解されたい。例えば、特定の化合物に言及する場合、その化合物は、文脈から特に理解されない限り、本開示の組成物の様々な実施形態及び/又は本開示の方法において使用することが可能である。言い換えれば、本願内で、実施形態は、明確かつ簡潔な願書を書き、描くことを可能にする方法で説明され、描かれてきたが、本教示及び開示から離れることなく、実施形態を様々に組み合わせ又は分離することが意図され、理解されよう。例えば、本明細書で説明され描かれた全ての特徴は、本明細書で説明され描かれた開示の全ての態様に適用可能であることが理解されよう。
【0142】
「少なくとも1つの」という表現は、文脈や用途から他に理解されない限り、表現以降の各記載対象及び2つ以上の記載対象の様々な組み合わせを個別に含むと理解されるべきである。3つ以上の言及されたオブジェクトに関連する表現「および/または」は、文脈から他に理解されない限り、同じ意味を有すると理解されるべきである。
【0143】
用語「含む(include)、(includes)、(including)」、「持つ(have)、(has)、(having)」または「含む(contain)、(contains)、(containing)」(その文法的等価物を含む)の使用は、特に明記するか文脈から理解しない限り、例えば、追加の非引用要素またはステップを除外しない、オープンエンドおよび非限定として概して理解されるべきである。
【0144】
用語「約」の使用が定量値の前である場合、本開示は、特に断らない限り、特定の定量値自体も含む。本明細書で使用される場合、用語「約」は、特に明記又は推論されない限り、公称値からの±10%の変動又は対数スケールでの±10倍の変動を意味する。
【0145】
本開示が動作可能である限り、特定の動作を実行するためのステップの順序又は順序は重要ではないことを理解されたい。さらに、2つ以上のステップまたはアクションが同時に実施されてもよい。
【0146】
本明細書における任意の及び全ての例又は例示的な言語、例えば「例えば」又は「含む」の使用は、単に本開示をより良く説明することを意図しており、請求されない限り本開示の範囲に制限を与えることはない。本明細書におけるいかなる文言も、請求されていない要素を本開示の実施に必須であると示すものと解釈されるべきではない。
【実施例
【0147】
以下の実施例は、単なる例示であり、決して本開示の範囲及び内容を限定するものではない。
【0148】
実施例1 - 優先栄養素制御配列の同定
ハイブリッド2成分系(HTCS)活性化に対する必須遺伝子活性の機能的連結は、適切な制御分子の同定を必要とする。適切な制御分子の特徴は、消費に安全であり、宿主によって吸収され得ず、平均的な宿主食餌において最小限の存在であり、宿主微生物叢によって消費され得ないことである。例えば、紅藻ポルフィラ・ウンビリカリス(Porphyra umbilicalis)に見出される海洋多糖であるポルフィランは、よく適した分子として同定された。試験したさらなる例示的な分子には、アガロース及びアンヒドロテトラサイクリンが含まれた。
【0149】
多糖利用のための可動遺伝因子(多糖利用遺伝子座又はPULと呼ばれる)を同定するために、バクテロイデス(Bacteroides)を、唯一の炭素源として0.8%ノリ抽出物の形態で200μg/mlゲンタマイシン及びポルフィランを含有する最小培地中に200倍希釈した。一次排水を回収し、約2時間沈澱させ、培地中に10倍希釈し、これを次いで37℃で24時間嫌気的にインキュベートすることによって選択を行った。次いで、培養物を新鮮な培地中にさらに200倍希釈し、37℃でさらに24時間嫌気的にインキュベートした。次いで、飽和培養物を連続希釈としてBlood-Heart-Infusion培地+10%ウマ血液寒天プレート上にプレーティングし、37℃で嫌気的に24時間インキュベートした。次いで、コロニーを新鮮な培地に取り、37℃で24時間嫌気的にインキュベートして、分析及び低温保存のために調製した。
【0150】
例示的な株NB001、NB002及びNB003を、増殖可能であるとして選択し、Illumina MiSeq又はiSeqによって単離及び配列決定した。相同性検索を行って、それらの活性に関連する多糖利用遺伝子座(PUL)を同定した。NB001、バクテロイデス・オバタス(Bacteroides ovatus)の株は、Hehemann et al(2010),NATURE 464:908-912からのポルフィランについて以前に公表されたPULと98.1%の同一性を有し、推定ポルフィラン誘導性HTCS(配列番号18及び19)を含有するPUL(配列番号14)を含有した。バクテロイデス・ドレイ(Bacteroides dorei)(配列番号15)の株であるNB002及びバクテロイデス・ユニフォルミス(Bacteroides uniformis)(配列番号16)の株であるNB003において、新規なアガラーゼ含有PULが同定された。このPULは、推定アガロース応答性HTCS(配列番号:22及び23)を含んでいた。NB004は、テトラサイクリン耐性を示し、既知のテトラサイクリン耐性遺伝子(配列番号:24及び25)と高度に相同なTCS駆動オペロンを含んでいた。同定された例示的なHTCS及びTCSを利用して、必須遺伝子活性をポルフィラン、アガロース又はアンヒドロテトラサイクリンに連結することができる。
【0151】
>78キロベースのポルフィランPUL(配列番号1~10)の分析に続いて、10個の候補プロモーター配列を合成した。各候補をルシフェラーゼレポーター遺伝子に結合させ、ポルフィランの非存在下又は0.2%ポルフィランの存在下で発光を定量した。結果を表2に記載する。プロモーター配列の6つは、ポルフィランに応答し、P_por10(配列番号8)は、図3Aに示すように、ポルフィラン添加時に最大の発現を示した。アガロース(配列番号22及び23)及びアンヒドロテトラサイクリン(配列番号24及び25)に応答するさらなるプロモーターを同定し、図3B、3Cに示す。
【0152】
【表2】
【0153】
最大の誘導倍率を示したP_por10を、生物学的封じ込めにおける使用のために選択した。図4A(配列番号26)に示すように、P_por10駆動ルシフェラーゼを保有する株NB001を用いて、ポルフィラン誘導曲線を特徴付けた。ルシフェラーゼタンパク質発現をポルフィラン依存性転写レベルのレポーターとして使用し、発光/OD600nmによって定量した。ルシフェラーゼのほぼ1,000倍の誘導が、図4Bに示すように、約10-7~2×10-4ポルフィラン抽出物の濃度(重量/体積)間で観察された。
【0154】
P_por10 HTCS単独がルシフェラーゼ発現に十分であるかどうかを調べるために、P_por10ルシフェラーゼコンストラクト(配列番号26)を、その天然プロモーター下でのポルフィランHTCS(配列番号18及び19)の発現を含むように改変した。得られたコンストラクト(配列番号27)を、完全ポルフィランPUL、NB001又はポルフィランPUL、NB004を欠く株のいずれかを含む株に移した。発光出力を測定し、ポルフィランPULを有する株は、ポルフィラン依存性ルシフェラーゼ誘導を示したが、HTCSのみを含む株は、ポルフィラン依存性誘導を示さなかった(図5)。これらの結果は、HTCS及び追加遺伝子がポルフィラン応答プロモーターの誘導に必要であることを示唆する。例えば、SusC及びSusD遺伝子(配列番号20及び21)は、HTCS(配列番号18及び19)に加えて、複合多糖上のポルフィラン応答性プロモーター(配列番号1、2及び7~10)の誘導に必要であり得る。
【0155】
実施例2-インビトロ優先栄養素依存性生物封じ込め
実施例1で同定したポルフィラン増殖用PUL(P_por10)を用いて、必須遺伝子thyA、チミジル酸シンテターゼのポルフィラン依存性誘導を発現するバクテロイデス(Bacteroides)株を作製した。内因性thyA(配列番号28)を、Koropatkin et al,(2008)STRUCTURE 16:1105-1115に記載されているのと同様の方法を用いて、トリメトプリム及びチミジン対抗選択の修飾によりノックアウトし、株NB023を得た。変性したリボソーム結合部位(RBS)(配列番号30)を有するP_por10(配列番号8)駆動型thyA-ルシフェラーゼプラスミドを作製し、図6Bに示す。このプラスミドをNB023に組み込んだ。この株を、クロロフェニルアラニン対抗選択を伴う最小培地中で増殖させ、BHIS寒天プレート上に画線し、GFP陽性及び/又はクロラムフェニコール耐性を示すコロニーを選択し、PCR及びサンガー法によって遺伝子プロモーター置換について検証した。
【0156】
個々のRBSライブラリーメンバーをthyA発現についてアッセイした。それぞれを、チミジンを含有する培地中で増殖させ、次いでチミジンを含有しないが、ポルフィランを含有する培地中に希釈した。固有のRBSを有する株を、図6Aに描写される発光及び最終OD600nmについてアッセイした。高OD600nmまで増殖することができる株の全ては、同様のレベルの発光を示し、狭範囲のthyA発現が増殖に許容可能であることを示唆した。thyA欠失を最もよく相補したNB024株を配列決定し(配列番号31)、さらなる実験のために選択した。
【0157】
図6Cは、栄養素可変培地におけるNB024、野生型株NB001及びthyA欠失株NB023についての増殖アッセイの結果を示す。3つの株の全ては、チミジンを含有する培地中で増殖することができる(破線)。野生型NB001のみが標準的なBHIS培地(点線)中での増殖を示す。ポルフィランを添加したBHIS(実線)では、NB024は、野生型に匹敵するレベルで増殖するが、おそらくthyA誘導に必要な時間により、わずかな初期の遅れを伴う。thyA欠失株NB023は、ポルフィランを添加したBHIS培地で増殖しない。
【0158】
NB024のさらなる試験は、図6Dに描写されるBHIS培地におけるポルフィラン濃度依存性増殖応答を実証した。まとめると、これらの結果は、ポルフィラン応答性HTCS(配列番号18及び19)の機能的連結及び必須遺伝子thyAの発現を実証する。
【0159】
NB024生物学的封じ込めのエスケープ率を評価した。NB024を、チミジンを添加したBHISプレート上にプレーティングし、5つの個々のコロニーを採取した。コロニーを、0.2%ノリ抽出物(ポルフィラン)を添加したBHIS中で14時間、37℃で増殖させた。次いで、飽和培養物をポルフィラン欠損BHIS寒天上に均一に又は連続希釈によりプレーティングした。嫌気性増殖の48時間後に見えるコロニーを、エスケープコロニーとみなした。3,500,00個中約1個の細胞が、ポルフィラン添加を欠くプレート上で増殖を示した。
【0160】
実施例3-バクテロイデス(Bacteroides)における必須天然遺伝子の優先栄養素プロモーター制御の設計
生物学的封じ込め戦略を追加の必須遺伝子に拡張するために、必須遺伝子の内因性プロモーターを、図7(配列番号32)に示すポルフィラン誘導性プロモーターで置き換えるベクターを開発した。この置換法では、相同組換えを用いて、目的の遺伝子のプロモーターをポルフィラン誘導性プロモーター及び変性RBSライブラリーを含むカセットで置換し、増殖に許容可能な適切な翻訳強度を見出す。テトラサイクリン選択は、プラスミドの組み込みの同定を可能にする一方、4-クロロフェニルアラニンに対する対抗選択及びGFP陽性コロニーの選択は、天然のプロモーター置換の同定を可能にする。
【0161】
プラスミドpWD035(配列番号33)を使用して、ポルフィラン利用遺伝子座を、Shepherd et al,(2018)NATURE 557:434-438に記載されるように組み込んで、株NB075を作製した。4つの必須遺伝子、アルギニル-tRNAシンテターゼ(argS)、システイニル-tRNAシンテターゼ(cysS)、ペニシリン耐性タンパク質(lytB)又はペプチド鎖放出因子(RF-2)の1つの天然プロモーターを、プロモーター置換系(それぞれ配列番号32、34、35及び36)を用いて置換した。0.2%ポルフィラン存在下で増殖可能な株を適切な翻訳強度を同定するために単離し、配列決定を行った。各必須遺伝子のコンストラクトは、以下の通りである:argS、配列番号32;cysS、配列番号34;lytB、配列番号35;RF-2、配列番号36。生物学的に封じ込めされた株のsWW090(thyA)、sWW180(argS)、sWW202(cysS)、sWW205(lytB)及びsWW206(RF-2)は、BHISのみの培地で増殖しないが、ポルフィランを添加したBHISで増殖する。結果を図8に示す。
【0162】
これらの生物学的に封じ込めされた株のエスケープダイナミクス及び潜在的機構をモニターするために、生物学的に封じ込めされていない株及び生物学的に封じ込めされた株を、0.5%ポルフィランを含有するケモスタット中で増殖させ、連続的に希釈し、8.7時間ごとに培地容量を交換した。野生型株sZR0103は、10コロニー形成単位(CFU)/mlを超える密度に急速に到達し、その密度を維持した。argS生物学に的封じ込めされた株sZR0205も、10CFU/mlを超える密度に到達したが、ポルフィランが消費され、培地から希釈されるにつれて、光学密度が急速に低下した(約500倍)。図9に示すように、ポルフィラン補充への依存性をエスケープした生物学的に封じ込めされた株の突然変異細胞は、アッセイの2日目までに出現し、4日目までに野生型に匹敵するレベルに近づいた。エスケープ株の配列決定の結果、評価した331のエスケープコロニーのうち、エスケープコロニーの94%は、HTCSを恒常的に活性化するHTCSに対する48のユニークな突然変異の1つであり、4%は、ポルフィラン誘導性プロモーターへのトランスポゾン挿入であり、2%は、生物学的に封じ込めされた遺伝子の直接上流のゲノム再編成であった。
【0163】
実施例4-バクテロイデス(Bacteroides)のインビトロ優先栄養素依存性生物学的封じ込め
インビボでの生物学的閉じ込めの有効性を実証するために、Sprague-Dawleyラットにポルフィランを添加した食餌を与え、非生物学的封じ込め株であるsWW808又は追加の抗生物質マーカーを有する生物学的封じ込め株sWW180の改変体であるsWW805のいずれかに10CFUを投与した。両方の株は、ポルフィランを消費するように改変され、両方の株は、競合環境を確保するために非ポルフィラン消費野生株と共投与された。コロニー形成は、各群のラットの半分は、ポルフィランを有さない食餌に切り替える前に3日間起こったが、残りの半分は、ポルフィラン添加食餌に残った。毎日糞便中の株量をモニターしたところ、生物学的封じ込め株は、ポルフィラン非存在下で腸管から速やかに除去されることが観察された一方、野生型株では、図10に示した優先栄養素であるポルフィランが存在しないため、10倍の個体数の減少が認められた。生物学的封じ込め株を非競合環境で試験した場合、ポルフィランの除去後、エスケープ株は、実施例3で特徴付けられたものと同様に、必須遺伝子の恒常的発現をもたらす突然変異を有することが見出された。
【0164】
実施例5-バクテロイデス(Bacteroides)におけるハイブリッド2成分優先栄養素制御の操作
生物学的封じ込め株のエスケープ率を減少させるために、第2の優先栄養素制御を用いて冗長性を組み込んだ。ポルフィラン誘導性プロモーターによって駆動されるcysS発現を有する株sWW202を用いて、argS発現のアンヒドロテトラサイクリン(aTc)誘導性制御を導入した。株sCG037を生成するために、Lim et al,(2017)CELL 169:547-558に以前に記載されたaTc誘導性プロモーター及びRBSライブラリーを使用して、実施例3に記載されたものと同様にaTc生物学的封じ込めプラスミド(配列番号37、図11)の組み込みを行った。sCG037は、増殖のためにポルフィラン及びaTc補充の両方を必要とすることが予測され、これは、インビトロで観察され、図12に示された。
【0165】
エスケープダイナミクスをモニターし、冗長性がエスケープ率を低下させるかどうかを評価するために、非生物学的封じ込め株(NB075)及び二重生物学的封じ込め株sCG037を、0.2%ポルフィラン及び10ng/ml aTcを含有するケモスタット中で増殖させ、これを培地から連続希釈した。両方の株は、最初に10CFUを超える濃度に達し、4日目までに培地からポルフィラン及びaTcを除去すると減少し、検出限界(103.5細胞/フラスコ)に達した。7日目にポルフィラン及びaTcを培地に戻して添加し、生物学的封じ込め細胞が生存し、増殖可能であったかどうかを評価した。2日後、生物学的封じ込め株の増殖は、検出されず、これは、全ての二重生物学的封じ込め細胞が除去されたことを示唆する。結果を図13に示す。
【0166】
実施例6-バクテロイデス(Bacteroides)におけるキメラハイブリッド2成分系優先栄養素制御の操作
単一の制御分子の投与が複数の必須遺伝子の発現と連結するように治療株を単純化するために、キメラHTCSを設計した。このようなキメラHTCSの一実施形態では、1つのHTCSのセンサーが第2のHTCSのDNA結合領域に連結される。これは、キメラHTCSが第1のHTCSの制御分子を感知するが、第1のHTCSと異なるプロモーターを標的とするように、第2のHTCSのセンサードメインを第1のHTCSのセンサードメインで置き換えることによって行うことができる。
【0167】
ポルフィランY_Y_Yドメイン(配列番号19、残基683~747)に対して高い相同性を有するシグナル伝達Y_Y_Yドメインを有するHTCSをキメラHTCSの生成における使用について試験した。新しく設計されたプロモーターは、キメラHTCSのみに応答し、宿主によって産生されるか若しくは宿主によって一般的に遭遇される分子又は宿主に天然の他のHTCS若しくは他のレギュレーターに応答しないことを考慮することが重要であるため、HTCSは、生物学的封じ込め株に存在しないか又は稀にのみ見出される調節ドメインを含むべきである。従って、このセットは、他のHTCS調節ドメイン、特に標的株中のHTCS調節ドメインに対して高い相同性を有するHTCSを除去することによって精密化された。
【0168】
バクテロイデス・ノルジイ(Bacteroides nordii)由来の第1のHTCS(配列番号51)、バクテロイデス・ノルジイ(Bacteroides nordii)由来の第2のHTCS(配列番号38)及びバクテロイデス・サリエルシアエ(Bacteroides salyersiae)由来のHTCS(配列番号52)を実験のために選択した。これらの3つのHTCSのそれぞれのC末端領域(調節ドメインを含む)をポルフィランHTCS(配列番号19、実施例1に記載の通り)のN末端領域(ポルフィランセンサードメインを含む)に融合させた。本発明者らは、多くの異なる融合位置を試験し、ポルフィランHTCSのY_Yドメインの直接下流の、内膜の推定ペリプラズム側の5残基内の位置(ポルフィランHTCSの残基753、配列番号19)が、機能的キメラを生成するための最も確かな位置であることを見出した。ポルフィランHTCSのセンサードメイン及びバクテロイデス・ノルジイ(Bacteroides nordii)由来の第1のHTCSの調節ドメインを含むキメラHTCSを生成した。このHTCSは、HTCS-17106(配列番号53)と呼ばれ、HTCS-17106をコードする例示的なベクターは、pWW1266(配列番号55)と呼ばれる。バクテロイデス・サリエルシアエ(Bacteroides salyersiae)由来のポルフィランHTCSのセンサードメイン及びHTCSの調節ドメインを含むキメラHTCSを生成した。このHTCSは、HTCS-10809(配列番号54)と呼ばれ、HTCS-10809をコードする例示的なベクターは、pWW1265(配列番号56)と呼ばれる。ポルフィランHTCSのセンサードメイン及びバクテロイデス・ノルジイ(Bacteroides nordii)由来の第2のHTCSの調節ドメインを含むキメラHTCSを生成した。このHTCSは、HTCS-17150(配列番号39)と呼ばれ、HTCS-17150をコードする例示的なベクターは、pWW1267(配列番号40)と呼ばれる。pWW1267の概略図を図14Bに示す。
【0169】
キメラHTCSのそれぞれに応答するプロモーターを同定した。HTCS-17106に応答するプロモーターを配列番号62に示し、HTCS-10809に応答するプロモーターを配列番号63に示す。キメラHTCSのそれぞれについてのルシフェラーゼレポーターを、対応するプロモーターをルシフェラーゼ遺伝子に結合することによって生成した。HTCS-17106のルシフェラーゼレポーターは、配列番号57に示され、HTCS-10809のルシフェラーゼレポーターは、配列番号58に示され、HTCS-17150のルシフェラーゼレポーターは、配列番号41に示される。ポルフィラン利用遺伝子座(実施例3に記載の通り)及び上記のルシフェラーゼレポーターの1つを含むバクテロイデス・ブルガツス(Bacteroides vulgatus)株を、空のベクター又は関連するキメラHTCSを発現するコンストラクトのいずれかでさらに改変した。キメラHTCSの存在下において、ポルフィラン応答性ルシフェラーゼ発現は、図14Cに示されるように、各キメラHTCSについて観察された。キメラHTCSは、例えば、実施例5に記載される系と同様に、単一の制御分子を使用するという利点を伴って、生物学的封じ込めのエスケープ率を減少させるために、野生型ポルフィラン応答性HTCSと組み合わせて使用され得る。
【0170】
実施例7-標的化変異を介する改善されたキメラハイブリッド2成分系の操作
生物学的封じ込め株の生成を補助するために、HTCS-17150(配列番号39、実施例6に記載の通り)を、ポルフィラン応答性を改善するために変異させた。膜貫通領域の残基(残基753~777)を変性オリゴでの増幅による変異の標的とし、得られたpWW1267発現コンストラクトの改変体(配列番号40)を、図15Aに示すように、ポルフィラン利用遺伝子座(実施例3に記載の通り)及びキメラHTCS関連ルシフェラーゼレポーター(配列番号41、実施例6に記載の通り)を含有するバクテロイデス・ブルガツス(Bacteroides vulgatus)株に付加した。次いで、HTCS-17150変異体を含む株をポルフィランの存在下又は非存在下での活性についてスクリーニングした。結果を図15Bに示す。図15Bの各点は、HTCS-17150変異体を発現する株を表し、対角線に沿った点は、もはやポルフィランに応答せず、プロットの左上部分の点は、ポルフィランの存在下で所望のより高い活性を示し、ポルフィランの非存在下でより低い活性を示す。対照(非変異HTCS-17150を発現する株、図15Bに正方形として示される)と比較して、改善されたポルフィラン応答性を有する多数の株が同定された。図15Cに示すように、選択した株を再画線し、反復試験した。コンストラクトpWW1333(配列番号60)を含む例示的な株は、ポルフィランの非存在下でより低い活性を示し、ポルフィランの存在下でより高い活性を示した。pWW1333は、HTCS-17150v2と呼ばれ、配列番号59に示されるアミノ酸配列を有する変異体HTCS-17150を発現した。HTCS-17150v3-HTCS-17150v10と呼ばれるさらなる改善された変異体HTCSは、それぞれ配列番号64~71に示されるアミノ酸配列を有する。
【0171】
実施例8-操作されたキメラハイブリッド2成分系の直交性
第1及び第2のHTCS(例えば、野生型HTCS及びキメラHTCS)を用いて二重生物学的封じ込めを実施する場合、第1のHTCSの活性化は、第2のHTCSに関連するプロモーターを活性化しないことが重要である。さもなければ、単一のHTCSにおける活性化エスケープ変異は、エスケープのために十分であり得る。本実施例に記載されるHTCSの直交性を実証するために、本発明者らは、(i)HTCS-17150v2応答性プロモーター(配列番号45)と組み合わせた野生型ポルフィラン応答性HTCS(配列番号19)、及び(i)野生型ポルフィラン応答性プロモーター(配列番号8)と組み合わせたキメラHTCS-17150v2(実施例7に記載の通り)を試験した。各HTCSは、対照としてその関連プロモーターも用いて試験した。結果を図16に示し、野生型ポルフィラン応答性HTCS及びHTCS-17150v2に関連するプロモーターは、他のHTCSの存在下で活性化されず、関連するHTCS及びポルフィランの両方が存在する場合にのみ活性化されることを示す。
【0172】
実施例9-バクテロイデス(Bacteroides)における二重ハイブリッド2成分系優先栄養素制御の操作
この実施例は、二重生物学的封じ込めを実施するための、第1及び第2のHTCS(ポルフィラン応答性野生型HTCS及びポルフィラン応答性キメラHTCS)を含む株の生成を記載する。
【0173】
バクテロイデス・ブルガツス(Bacteroides vulgatus)株(sWW810)を、(実施例3に記載のプラスミドpWD035(配列番号33)を使用し、またキメラHTCS(実施例7に記載の配列番号59)も発現する)ポルフィラン消費が可能であるように改変した。この株をさらに改変して、必須遺伝子ペニシリン耐性タンパク質(lytB)の天然プロモーターを、HTCS(配列番号45)に応答するプロモーターで置き換えた。プロモーターは、実施例3で上記したプロモーター置換系を用いて置き換えた。簡潔には、この置換方法は、相同組換えを用いて、天然プロモーターを、目的のプロモーター及び変性RBSライブラリーを含むカセットで置き換え、増殖に許容される適切な翻訳強度を見出す。0.2%ポルフィランの存在下でのみ増殖することができる生物学的封じ込め株が単離され、sWW939と呼ばれる。適切な結果として生じる翻訳強度を有する、sWW939由来のカセットを含むコンストラクトは、pZR3007(配列番号61)と呼ばれる。
【0174】
株sWW180(実施例3に記載の通りであり、argSの発現を駆動する野生型ポルフィランHTCSで生物学的に封じ込めされた)をpZR3007でさらに改変して、キメラHTCSの制御下でlytBも有する二重生物学的封じ込め株(sWW942)を生成した。非生物学的封じ込め株(NB075)、2つの単一生物学的封じ込め株(sWW180及びsWW939)及び二重生物学的封じ込め株(sWW942)を、BHIS培地のみ及びポルフィランを添加したBHIS培地中での増殖について試験した。結果を図17に示す。
【0175】
増殖ダイナミクス及び潜在的エスケープ能力を比較するために、非生物学的封じ込め株(NB075)、単一生物学的封じ込め株(sWW180)及び二重生物学的封じ込め株(sWW942)を、最初に0.5%ポルフィランを含有するケモスタット中で増殖させ、これを、ポルフィランを欠く培地で連続的に希釈し、11時間毎に培地容量を交換した(図9に関連する実験設定と同様)。結果を図18に示す。非生物学的封じ込め株(NB075)は、10CFU/mlを超える濃度に迅速に達し、これを維持した。単一生物学的封じ込め株(sWW180)も、10CFU/mlを超える密度に達したが、ポルフィランが消費され、培地から希釈されるにつれて、最初に密度が急速に低下した(100倍を超える)。しかしながら、生物学的封じ込め株の変異体細胞は、ポルフィラン補充に対するそれらの依存性をエスケープしたため、単一生物学的封じ込め株は、4日目までに野生型に匹敵するレベルに近づいた。二重生物学的封じ込め株(sWW942)は、最初に、単一生物学的封じ込め株と同様に密度が低下したが、エスケープ変異体は、決して現れず、密度は、検出限界未満に低下した。32日後、ポルフィランを培地に添加して、任意の生存する二重生物学的封じ込め細胞の増殖を促進したが、ポルフィランでの3日後、二重生物学的封じ込めケモスタットから細胞を回収することはできなかった。これは、ある時点で300億個を超える細胞を保有していたケモスタットが、ポルフィランを欠くリッチ培地中で二重生物学的封じ込めによって滅菌されたことを示している。
【0176】
実施例10-ヒト微生物叢を有するマウスにおけるインビボ生物学的封じ込め
この実施例は、ヒト微生物叢を有するマウスにおけるインビボでの生物学的封じ込めを記載する。
【0177】
バクテロイデス・ブルガツス(Bacteroides vulgatus)株を、(プラスミドpWD035(配列番号33)を使用して)ポルフィラン消費が可能であるように改変して、株NB144を生成した。NB144を、プラスミドpZR2837(配列番号72)を使用して生物学的封じ込めのためにさらに改変して、株sZR0323を生成した。sZR0323株において、argSは、RBS(配列番号47)に関連し、ポルフィランHTCS(配列番号19)に応答するプロモーター(配列番号73)の制御下にある。
【0178】
無菌Swiss-Websterマウスを無記名の健常ヒトドナー4名(ドナーA~D)のうちの1名からの微生物叢でコロニー形成させた。3週間の微生物叢安定化後、マウスに10CFUのNB144又はsZR0323のいずれかを投与し、ポルフィランを補充した食餌を給餌した。定量的ポリメラーゼ連鎖反応(QPCR)を介して糞便中の株存在量を毎日モニターして、ポルフィラン利用遺伝子座のコピー数を定量した。結果を図19に示す。両方の株は、1週間以内に少なくとも10細胞/g糞便のコロニー形成レベルに達し、食餌にポルフィランを含めた間、10~1010細胞/gに留まった。4週間後、ポルフィランを食餌から除去した。食餌切り替え後、ドナーB及びC由来の微生物叢を含むマウス群において、非生物学的封じ込め株及び生物学的封じ込め株の両方が実質的に大量に低下し、非生物学的封じ込め株は、100倍を超えて低下し、生物学的封じ込め株は、10細胞/g糞便の検知限度未満にさらに低下することが観察された。ドナーA及びD由来の微生物叢を含むマウスの他の群では、非生物学的封じ込め株は、約10細胞/g糞便の高存在量のままであったが、生物学的封じ込め株は、存在量が約1000倍低下したことが観察された。このデータは、生物学的封じ込め株がヒト微生物叢を有するマウスに関連して実質的に減弱されることを示す。
【0179】
実施例11-バクテロイデス(Bacteroides)における優先栄養素制御による相補的な生物学的封じ込め機構の操作
先の実施例に記載した生物学的封じ込め戦略は、相補的な生物学的封じ込め機構を加えることによってさらに改変することができる。そのような機構の1つは、ポルフィラン上で増殖する能力を欠くが、他の全ての多糖利用能力を保持する、操作されていない競合株の導入による競合生態系の確立である。もう1つのこのような機構は、多糖代謝に関与する多糖利用遺伝子座など、ポルフィランの存在下で増殖しないと株の適応度を著しく損なう、生物学的封じ込め株の遺伝子の欠失を介するものである。
【0180】
参照による援用
本明細書で言及された各特許および科学文書の開示全体は、すべての目的のために参照により援用される。
等価物
本開示は、その精神または本質的な特徴から逸脱することなく、他の具体的な形態で具現化することができる。そのため、前述の実施形態は、本明細書に記載された開示について限定するのではなく、あらゆる点で例示的であると見なされる。したがって、本開示の範囲は、前述の説明によってではなく、添付の請求項によって示され、請求項の意味および同等の範囲内に入るすべての変更は、そこに包含されることが意図される。
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【配列表】
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【国際調査報告】