(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-24
(54)【発明の名称】ポンプ、血管アクセスデバイス及び固定デバイスを含む静脈内システム並びにその方法
(51)【国際特許分類】
A61M 5/168 20060101AFI20220817BHJP
A61M 5/172 20060101ALI20220817BHJP
A61M 1/36 20060101ALI20220817BHJP
A61M 60/113 20210101ALI20220817BHJP
A61M 60/279 20210101ALI20220817BHJP
A61M 60/37 20210101ALI20220817BHJP
A61M 60/523 20210101ALI20220817BHJP
A61M 60/531 20210101ALI20220817BHJP
【FI】
A61M5/168 500
A61M5/172 500
A61M5/168 510
A61M1/36 105
A61M1/36 107
A61M60/113
A61M60/279
A61M60/37
A61M60/523
A61M60/531
A61M1/36 141
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021573585
(86)(22)【出願日】2020-05-29
(85)【翻訳文提出日】2022-01-31
(86)【国際出願番号】 US2020035371
(87)【国際公開番号】W WO2020251786
(87)【国際公開日】2020-12-17
(32)【優先日】2019-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511300891
【氏名又は名称】バード・アクセス・システムズ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100116322
【氏名又は名称】桑垣 衛
(72)【発明者】
【氏名】ブランチャード、ダニエル ビー.
(72)【発明者】
【氏名】マクファーランド、トッド ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ハウエル、グレード ハロルド
【テーマコード(参考)】
4C066
4C077
【Fターム(参考)】
4C066CC02
4C066CC10
4C066DD16
4C066FF01
4C066FF04
4C066QQ77
4C066QQ82
4C077AA05
4C077BB01
4C077DD01
4C077DD07
4C077EE01
4C077HH03
4C077HH18
4C077JJ03
4C077JJ16
(57)【要約】
本明細書に開示する実施形態は、静脈内(IV)ポンプ、血管アクセスデバイス(VAD)、固定デバイスを含むシステムとその方法とに関する。静脈内(IV)ポンプ、血管アクセスデバイス(VAD)及び固定デバイスは、使用中のVADデバイスの特性、投与される流体の特性及び患者の生理学的特性を決定するために、センサ、プリント回路基板(PCB)、通信モジュール等を含むことができる。ポンプユニットは、この情報を利用して、投与される流体の流れ特性を変更することができる。VAD特性は、事前に決定してVADに格納するか、センサから導出するか、又は一意の識別子を使用してリモートデータベースから導出することができる。流体特性及び生理学的特性は、ポンプ、VAD、固定デバイス又はそれらの組合せに配置されたセンサから決定することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1センサ及び第1プリント回路基板(PCB)のうちの1つを含む血管アクセスデバイス(VAD)と、
第2センサ及び第2PCBのうちの1つを含む固定デバイスであって、患者の皮膚表面に前記VADを固定するように構成されている固定デバイスと、
前記VADと流体連通しているポンプユニットであって、
前記VAD及び前記固定デバイスのうちの少なくとも一方と通信し、
流体の流れ特性を変更するために、前記VAD及び前記固定デバイスのうちの少なくとも一方から情報を受信する
ように構成されているポンプユニットと、
を備える、注入システム。
【請求項2】
前記VAD及び前記固定デバイスのうちの一方から受信される前記情報が、VAD特性、流体特性及び生理学的特性のうちの1つを含む、請求項1に記載の注入システム。
【請求項3】
前記VAD特性が、センサデータ及び一意の識別子のうちの1つを含む、請求項2に記載の注入システム。
【請求項4】
前記ポンプユニットが、さらなるVAD特性を取り出すためにデータベースに対して一意の識別子を照会する、請求項3に記載の注入システム。
【請求項5】
前記流体の前記流れ特性が、流量、流量の変化、圧力及び圧力の変化のうちの1つを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の注入システム。
【請求項6】
前記第1センサ及び前記第2センサが、体温、心拍数、流体圧、pH、グルコース及び乳酸のうちの1つを検出する、請求項1~5のいずれか一項に記載の注入システム。
【請求項7】
前記第1センサ及び前記第2センサのうちの1つが2つ以上のセンサのアレイを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の注入システム。
【請求項8】
前記ポンプユニットが、前記第1センサ、前記第2センサ、前記第1PCB及び前記第2PCBのうちの少なくとも1つに動作可能に接続された電源を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の注入システム。
【請求項9】
前記ポンプユニットが、VAD特性、流体特性、生理学的特性及び流れ特性のうちの1つに関する情報を送受信するために、リモートデバイス及びネットワークのうちの1つと通信可能に結合されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の注入システム。
【請求項10】
前記ポンプユニットが、流れ特性の変化、生理学的特性の変化、流体特性の変化、VAD特性の変化及びそれらの組合せからなる群から選択される所望の限界値に従って、臨床医、介護者及び患者のうちの1人にアラートを発するように構成されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の注入システム。
【請求項11】
前記VADが、前記第1センサ及び前記第1PCBの両方を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の注入システム。
【請求項12】
前記固定デバイスが、前記第2センサ及び前記第2PCBの両方を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の注入システム。
【請求項13】
患者の血管系に流体を提供するポンプユニットであって、
ポンプと、
前記流体の流体特性を検出するセンサと、
血管アクセスデバイス(VAD)と通信可能に結合されたプリント回路基板(PCB)と、
を備え、
前記流体の流れ特性を決定するために前記VAD及び前記センサから情報を取得するように設計されている、ポンプユニット。
【請求項14】
前記流れ特性が、流量、流量の変化、圧力及び圧力の変化のうちの1つを含む、請求項13に記載のポンプユニット。
【請求項15】
前記流体特性が、流体のタイプ、体積、濃度、pH、密度及び粘度のうちの1つを含む、請求項13又は14に記載のポンプユニット。
【請求項16】
前記患者の皮膚表面に前記VADの外側部分を固定する固定デバイスをさらに含み、前記固定デバイスが、前記患者の生理学的特性を検出するセンサを含むとともに、前記VADと通信可能に結合される、請求項13~15のいずれか一項に記載のポンプユニット。
【請求項17】
前記ポンプユニットが、リモート場所に流れ特性情報を提供し、前記リモート場所が、ハンドヘルドデバイス、スマートフォン、ラップトップコンピュータ、サーバ、記憶装置、患者電子医療記録システム及びナースステーションのうちの1つを含む、請求項13~16のいずれか一項に記載のポンプユニット。
【請求項18】
前記ポンプユニットが、前記VAD及び前記センサのうちの1つからの情報の変化に応じて前記流体の前記流れ特性を変更する連続フィードバックループを含む、請求項13~17のいずれか一項に記載のポンプユニット。
【請求項19】
前記ポンプユニットが、流れ特性の変化、生理学的特性の変化、流体特性の変化、VAD特性の変化及びそれらの組合せからなる群から選択される所望の限界値に従って、臨床医、介護者及び患者のうちの1人にアラートを発するようにさらに構成されている、請求項13~18のいずれか一項に記載のポンプユニット。
【請求項20】
患者に透析を提供する方法であって、
ポンプユニット、血管アクセスデバイス(VAD)及び固定デバイスを提供するステップであって、前記VAD及び前記固定デバイスのうちの一方がセンサを含む、ステップと、
前記VADを使用して患者の血管系にアクセスするステップと、
前記固定デバイスを使用して前記患者の皮膚表面に前記VADの外側部分を固定するステップと、
前記ポンプユニットに配置された電源から前記VADに電力を提供するステップと、
前記VADからVAD特性を導出するステップと、
前記ポンプユニットに含まれるセンサから流体の流体特性を導出するステップと、
前記流体の流れ特性を決定するステップと、
前記流体の前記流れ特性に従ってポンプ出力を変更するステップと、
を含む、方法。
【請求項21】
前記VAD特性及び前記流体特性のうちの1つの変化に応じて、前記ポンプユニットが前記流体の前記流れ特性を変更する、連続フィードバックループをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記固定デバイスが、前記患者の生理学的特性を検出するセンサを含み、前記生理学的特性が、心拍数、ECG、酸素飽和度、血圧、深部体温、血糖値及び乳酸値のうちの1つを含む、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
前記VAD特性、前記流体特性及び前記患者の生理学的特性のうちの1つの変化に応じて、前記ポンプユニットが前記流体の前記流れ特性を変更する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
流れ特性の変化、生理学的特性の変化、流体特性の変化、VAD特性の変化及びそれらの組合せからなる群から選択される所望の限界値に従って、臨床医、介護者及び患者のうちの1人にアラートを発するステップをさらに含む、請求項20~23のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ、血管アクセスデバイス及び固定デバイスを含む静脈内システム並びにその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大部分の静脈内(IV)送達は、能動的なポンプによるか、又は受動的な重力流に依存する。これらのポンプ又は重力流システムに接続された血管アクセスデバイス(VAD)としては、末梢IVカテーテル、正中線カテーテル、末梢挿入型中心静脈カテーテル(PICC)、短期又は長期の中心静脈カテーテル(CVC)等を挙げることができる。これらの異なる血管アクセスデバイスは、カテゴリ間及びカテゴリ内の両方において異なる流体力学的特性を示す。デバイスのサイズ、長さ、内腔構成等の相違は、すべて、システム全体の流体力学的特性又は流れ特性に対して影響を与える可能性がある。目下、IVポンプは、これら流体力学的特性の相違を十分に考慮しておらず、VADの適切なメンテナンスも促進していない。
【0003】
したがって、必要とされているのは、ポンプ、VAD及び固定デバイスを含むシステム及び方法である。システムの特性は、ポンプユニットに提供され、それにより、ポンプは、異なる流れ特性に対応するように出力を変更することができる。異なるシステム特性としては、使用中のVADの特定のタイプ、投与される流体、患者の生理機能等を挙げることができる。システム特性は、固定デバイス、VAD、ポンプ自体又はそれらの組合せにおけるセンサにより、検出してポンプユニットに提供することができる。
【発明の概要】
【0004】
簡単に要約すると、本明細書に開示する実施形態は、静脈内(IV)ポンプ、血管アクセスデバイス(VAD)及び固定デバイスを含むシステムと、その方法とに関する。静脈内(IV)ポンプ、血管アクセスデバイス(VAD)及び固定デバイスは、使用中のVADデバイスの特性、投与される流体の特性、及び患者の生理学的特性を決定するために、センサ、プリント回路基板(PCB)、通信モジュール等を含むことができる。そして、ポンプユニットは、この情報を使用して、投与される流体の流れ特性を変更する。
【0005】
VAD特性は、事前に決定してVADに格納するか、センサから導出するか、又は一意の識別子を使用してリモートデータベースから導出することができる。VAD特性としては、VAD又はその構成要素の長さ等の寸法、サイズ、ゲージ、内腔の数、内腔構成、断面積、断面形状等を挙げることができ、それらの詳細はVAD自体に格納することができる。VAD特性としては、VADの上記態様のうちの1つ又は複数を決定するために使用することができる、VADに配置されたセンサから導出されたデータも挙げることができる。VAD特性としては、所定タイプのVAD又はその構成要素のメーカ、モデル、バッチ番号、製造番号又は一意の識別子も挙げることができる。これらの識別詳細は、VAD自体に格納し、VADの特性のうちの1つ又は複数を取り出すためにデータベースに対して照会することができる。
【0006】
センサ及びPCBは、VADの任意の構成要素に配置することができる。例えば、センサ及びPCBは、針なしインジェクションキャップ内に配置することができる。1つの実施形態では、センサは、ポンプをVADに接続する延長管内に位置決めされる。
【0007】
投与される流体の特性(「流体特性」)としては、流体のタイプ(例えば、薬物タイプ、リンゲル液、生理食塩水等)、体積、特定の成分(有効成分、非有効成分等)の濃度、pH、粘度、密度等を挙げることができる。
【0008】
患者の生理学的特性としては、心拍数、ECG、酸素飽和度、血圧、深部体温、血糖値、乳酸値等を挙げることができる。
投与される流体の流れ特性すなわち流体力学的特性としては、投与される流体の移動に関連する特性が挙げられ、流量、流量の変化、圧力、圧力の変化、背圧等を挙げることができる。
【0009】
本発明の一態様では、ポンプユニットは、事前規定された特性に応じて事前規定された設定すなわち「モード」に基づき流体力学的特性を変更することができる。例えば、ポンプは、ポンプに取り付けられているVADの所定の特性に基づき性能を変更することができる。本発明の一態様では、ポンプユニットは、連続フィードバックループを使用して、変化に応じて流体力学的特性を適応させることができる。
【0010】
本明細書に開示されるのは、注入システムである。該注入システムは、第1センサ及び第1プリント回路基板(PCB)のうちの1つを含む血管アクセスデバイスと、第2センサ及び第2PCBのうちの1つを含む固定デバイスであって、患者の皮膚表面に血管アクセスデバイスを固定するように構成されている固定デバイスと、血管アクセスデバイスと流体連通しているポンプユニットと、を備える。ポンプユニットは、血管アクセスデバイス及び固定デバイスの一方と通信可能に連結され、そこに配置された流体の流れ特性を変更するためにそこから情報を受信する。
【0011】
いくつかの実施形態では、血管アクセスデバイス及び固定デバイスのうちの一方から受信される情報は、血管アクセスデバイス特性、流体特性及び生理学的特性のうちの1つを含む。血管アクセスデバイス特性は、センサデータ及び一意の識別子のうちの1つを含む。ポンプユニットは、さらなる血管アクセスデバイス特性を取り出すためにデータベースに対して一意の識別子を照会する。流体の流れ特性は、流量、流量の変化、及び圧力のうちの1つを含む。第1センサ及び第2センサは、体温、心拍数、流体圧、pH、グルコース及び乳酸のうちの1つを検出する。第1センサ及び第2センサのうちの1つが2つ以上のセンサのアレイを含む。ポンプユニットは、第1センサ、第2センサ、第1PCB及び第2PCBのうちの1つに動作可能に接続された電源を含む。ポンプユニットは、VAD特性、流体特性、生理学的特性及び流れ特性のうちの1つに関する情報を送受信するために、リモートデバイス及びネットワークのうちの1つと通信可能に結合されている。
【0012】
また、本明細書に開示されるのは、患者の血管系に流体を提供するポンプユニットである。該ポンプユニットは、ポンプと、流体の流体特性を検出するセンサと、血管アクセスデバイスと通信可能に結合されたプリント回路基板(PCB)と、を備える。ポンプユニットは、流体の流れ特性を決定するために血管アクセスデバイス及びセンサから情報を取得するように設計されている。
【0013】
いくつかの実施形態では、流れ特性は、流量、流量の変化、及び圧力のうちの1つを含む。流体特性は、流体のタイプ、体積、濃度、pH、及び粘度のうちの1つを含む。ポンプユニットは、患者の皮膚表面に血管アクセスデバイスの外側部分を固定する固定デバイスをさらに含む。該固定デバイスは、患者の生理学的特性を検出するセンサを含むとともに、血管アクセスデバイスと通信可能に結合される。ポンプユニットは、リモート場所に流れ特性情報を提供し、リモート場所は、ハンドヘルドデバイス、スマートフォン、ラップトップコンピュータ、サーバ、記憶装置、患者電子医療記録システム及びナースステーションのうちの1つを含む。ポンプユニットは、血管アクセスデバイス及びセンサのうちの1つからの情報の変化に応じて流体の流れ特性を変更する連続フィードバックループを含む。
【0014】
また、本明細書に開示されるのは、患者に透析を提供する方法である。該方法は、ポンプユニット、血管アクセスデバイス及び固定デバイスを提供するステップであって、血管アクセスデバイス及び固定デバイスのうちの一方がセンサを含む、ステップと、血管アクセスデバイスを使用して患者の血管系にアクセスするステップと、固定デバイスを使用して患者の皮膚表面に血管アクセスデバイスの外側部分を固定するステップと、ポンプユニットに配置された電源から血管アクセスデバイスに電力を提供するステップと、血管アクセスデバイスから血管アクセスデバイス特性を導出するステップと、ポンプユニットに含まれるセンサから流体の流体特性を導出するステップと、流体の流れ特性を決定するステップと、流体の流れ特性に従ってポンプ出力を変更するステップと、を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、方法は、血管アクセスデバイス特性及び流体特性のうちの1つの変化に応じて、ポンプユニットが流体の流れ特性を変更する、連続フィードバックループをさらに含む。固定デバイスは、患者の生理学的特性を検出するセンサを含み、生理学的特性は、心拍数、ECG、酸素飽和度、血圧、深部体温、血糖値及び乳酸値のうちの1つを含む。血管アクセスデバイス特性、流体特性及び患者の生理学的特性のうちの1つの変化に応じて、ポンプユニットは流体の流れ特性を変更する。
【0016】
本開示のより詳細な説明を、添付図面に示すその具体的な実施形態を参照することによって行う。これらの図面は、単に本発明の典型的な実施形態を示すものであり、したがって、本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではないことが理解される。本発明の実施形態例について、以下の添付図面を使用してさらに具体的に且つ詳細に記載及び説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A】本開示の一実施形態による、VAD、固定デバイス及び関連するリモートデバイスを含む静脈内ポンプシステムを示す。
【
図1B】本開示の一実施形態による、VAD、固定デバイス及び関連するリモートデバイスを含む静脈内ポンプシステムを示す。
【
図2】本開示の一実施形態によるポンプの概略図を示す。
【
図3A】本開示による血管アクセスデバイスの実施形態を示す。
【
図3B】本開示による血管アクセスデバイスの実施形態を示す。
【
図4A】本開示による固定デバイスの一実施形態の平面図を示す。
【
図4B】本開示による固定デバイスの一実施形態の平面図を示す。
【
図4C】本開示による固定デバイスの一実施形態の側面図を示す。
【
図5A】本開示による固定デバイスの一実施形態の平面図を示す。
【
図5B】本開示による固定デバイスの一実施形態の平面図を示す。
【
図5C】本開示による固定デバイスの一実施形態の側面図を示す。
【
図6】本開示の一実施形態による、VAD及び固定デバイスを含む静脈内ポンプシステムの概略図を示す。
【
図7】本開示の一実施形態による静脈内ポンプシステム内の情報の流れのフロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ここで、同様の構造が同様の参照符号で提供される図を参照する。図面は、本発明の例示的な実施形態の図式化した概略表現であり、限定的ではなく且つ必ずしも正確な縮尺で描かれていないことが理解される。
【0019】
固定システムの説明に役立つように、以下の座標用語を用いる(
図4A~
図4Cを参照)。「縦(longitudinal)軸」は、デバイスのカテーテルの軸に対して概して平行である。「横(lateral)軸」は縦軸に対して垂直である。「横断(transverse)軸」は、縦軸及び横軸両方に対して垂直に延在する。さらに、本明細書で用いる場合の「縦方向」は、縦軸に実質的に平行な方向を指し、「横方向」は、横軸に実質的に平行な方向を指し、「横断方向」は、横断軸に実質的に平行な方向を指す。本明細書で用いる場合の「軸方向の」という用語は、カテーテルの軸を指し、したがって、本明細書で用いる場合の「縦の」という用語と実質的に同義である。
【0020】
明確にするために、「基端の」という語は、本明細書に記載するデバイスを使用している臨床医に相対的に近い方の方向を指し、「先端の」という語は、臨床医から相対的に遠い方向を指すことが理解されるべきである。例えば、患者の体内に配置されたカテーテルのチップは、デバイスの先端部とみなされ、体外に残っているカテーテルハブは、デバイスの基端部に向かう。また、特許請求の範囲を含む、本明細書で用いる場合の「含む」、「有する」及び「有している」という語は、「備える」という語と同じ意味を有するものとする。
【0021】
同様に本固定システムについて説明するために使用する「上方」、「下方」、「上」、「下」、「下側」、「上側」等の用語は、実施形態の図示する向きに関して使用される。例えば、「上側」という用語は、カテーテルの軸を通過する横軸よりも上方に位置するデバイスの側を述べるために使用される。「下側」という用語は、カテーテルの軸を通過する横軸よりも下方に位置するデバイスの部分を述べるために使用される。「左」及び「右」という用語は、本開示を通して一貫して使用され、デバイスを使用している臨床医の観点から構造を説明するために使用される。
【0022】
簡単に要約すると、本明細書における実施形態は、概して、静脈内(IV)ポンプ、血管アクセスデバイス(VAD)及び固定デバイスを含むシステムとその方法とに関する。実施形態はポンプユニットを含み、ポンプユニットは、VAD及び任意選択的に固定デバイスと通信可能に結合されて、それらに配置されたセンサ及びプリント回路基板(PCB)から情報を取得する。そして、ポンプユニットは、この情報を使用して、ポンプユニットを通過する流体の流れ特性を変更することができる。本明細書における実施形態は、システムのさらなる態様とその使用方法とについてさらに記載する。
【0023】
図1は、静脈内ポンプシステム(「システム」)100の例示的な実施形態を示す。システム100は、IVポンプユニット200、血管アクセスデバイス(VAD)300及び固定デバイス400を含む。
図1にはデュアルルーメンPICC VADを示すが、本明細書で考察するようなシステム100とともに、例えば、カテーテル、針、ポートカテーテル等を含むことを含む、他のタイプのVADを使用することができることが理解されよう。ポンプユニット200は、システム100を通る流体移動を可能にする。ポンプユニット200及び供給ライン112によりシステム100に流体を提供するために、流体滴下アセンブリ110も含まれる。任意選択的に、対応する供給ライン122内にさらなる流体入口を設けるために、シリンジ120が含まれる。これにより、臨床医は、さらなる流体、例えば薬剤を投与することができる。VAD 300はカテーテル310を含み、その先端部分は患者の血管系内に配置される。VAD 300の基端部は、供給ライン112、122によりシステム100とVAD 300を流体接続するコネクタ320を含む。コネクタ320は、BD MAXPLUS
TM、BD MAXZERO
TM及びNEUTRACLEAR
TM等、針なしインジェクションキャップ321を含むことができる。VAD 300は、VAD 300の外側部分を患者の皮膚表面に固定するために、固定デバイス400と協働する固定特徴部322をさらに含むことができる。VAD 300は、ハブ316も含むことができる。一実施形態では、システム100は、リモートデバイス150と通信可能に結合することができる。
図1Bに示すように、リモートデバイス150はハンドヘルドデバイスを含むことができるが、本明細書において考察するように、スマートフォン、ラップトップコンピュータ、サーバ、記憶装置、患者電子医療記録システム及びナースステーション等の他のリモートデバイスが企図される。
【0024】
図2は、
図1のポンプユニット200のさらなる詳細を示し、それは、対応する供給ライン122(
図1)と流体連通するように構成されている流体入口210及び流体出口212を含む。一実施形態では、システム100は、透析装置に血液を循環させるための透析システムの一部として使用することができる。したがって、入口210は、患者から血液供給を受け取ることができ、出口212は返血を提供することができる。一実施形態では、システム100は、患者の血管系に流体、生理食塩水、血液、又は薬剤等を提供するポンプ駆動静脈内注入システムの一部として使用することができる。したがって、入口210は、滴下アセンブリ110等の供給源から注入流体を受け取ることができ、出口212は、VAD 300に注入流体を提供することができる。
【0025】
ポンプユニット200に、流体の移動をもたらすためのポンプ220が含まれる。さらに、ポンプユニット250に、流体入口210と流体連通してさまざまな入口ポート230が含まれ、ヘパリン、生理食塩水、又は動脈投与等を含む、さらなる流体が提供されるのを可能にする。ポンプユニット200内に、1つ又は複数のセンサ240も含まれ、流体の1つ又は複数の特性を測定するように配置されている。こうしたセンサの例としては、血糖値計、酸素センサ、乳酸センサ、心拍出量センサ、ヘマトクリットセンサ、又は電解質センサ等が挙げられる。センサ240の位置は、図示する位置とは異なり得る。有利には、センサ240をVAD 300自体に配設するのではなくポンプユニット200内に配設することにより、VAD 300又は固定デバイス400のサイズを過度に増大させることなく、比較的大きいサイズのセンサを採用することができる。
【0026】
図3A及び
図3Bは、VAD 300の例示的な実施形態を示す。
図3Aは、シングルルーメンVAD 301の一実施形態を示し、
図3Bは、デュアルルーメンVAD 302の例示的な実施形態を示す。VAD 301、302は、長尺状カテーテルチューブ312を含むカテーテル310を含み、カテーテルチューブ312は、その基端部と先端部との間に延在する1つ又は複数の内腔314を画定している。カテーテルチューブ312の基端部はハブ316に動作可能に接続され、ハブ316はさらに、1つ又は複数の延長脚部318に動作可能に接続されている。延長脚部318の基端部にルアーコネクタ等のコネクタ320が配設されているが、回転ナット等の他のコネクタも企図される。
【0027】
ハブ316は、例えば、ハブ316の本体から反対方向に延在する2つの翼状部等、固定特徴部322を含む。しかしながら、固定特徴部322のサイズ及び形状は、図示するものから異なる場合があり、さまざまな突出部、当接面、又はアパーチャ等を含み、本発明の範囲内にあり得ることが理解されよう。例示的な固定特徴部と関連する固定デバイスとは、2001年6月29日に出願され、「汎用カテーテル固定システム(Universal Catheter Anchoring System)」と題する米国特許第6,770,055号明細書、2014年12月23日に出願され「静脈内カテーテル固定デバイス(Intravenous catheter anchoring device)」と題する米国特許第9,616,200号明細書、2012年7月2日に出願され、「スナップクランプを有する安定化デバイス(Stabilizing device having a snap clamp)」と題する米国特許第9,694,130号明細書、及び2012年1月30日に出願され「医療用品用の固定システム(Anchoring system for a medical article)」と題する米国特許第9,480,821号明細書にも示されており、それらの各々は、それらの全体が参照により本明細書に援用される。一実施形態では、各固定翼状部322はアパーチャ324を含む。ハブ316は、本明細書では、実施形態に含まれる流体通路の数に応じて「分岐ハブ」とも称することができることに留意されたい。
【0028】
一実施形態では、VAD 300とともに、1つ又は複数のセンサ、例えばセンサ332、334が含まれ、それらは本明細書ではまとめて「センサアレイ」330と称する。センサアレイ330は、センサアレイ330の動作を管理し且つ/又はVAD 300デバイスに関する情報を格納及び提供するように構成されているプリント回路基板(PCB)336をさらに含むことができる。センサアレイ330は、注入流体の1つ又は複数の特性、患者の生理学的態様又はそれらの組合せを検出する。一実施形態では、センサアレイ330は、圧力センサ、ECGセンサ、温度センサ、グルコースセンサ、酸素飽和度センサ等を含む。
【0029】
一実施形態では、PCB 336は、センサ動作を管理するマイクロプロセッサを含む。一実施形態では、PCB 336は、センサアレイ330に電力を供給する電源362をさらに含むことができるが、他の実施形態では、本明細書で考察するように、PCB及びさらにはVAD 300からリモートに電源を配設することができる。PCB 336に、例えばフラッシュメモリ等の不揮発性メモリ記憶場所もまた含めて、そこに一時的に又は永久的にデータが格納されるようにすることができる。記憶場所は、ユーザによってアクセス可能とすることができ、又は、本明細書に記載する様式で所望の場所に送信することができる。一実施形態では、PCB 336は、PCB 336がリモートデバイス又は場所150と通信可能に結合されるのを可能にする、通信モジュールをさらに含む。本明細書で用いる場合の「通信可能に結合され」は、有線又は無線通信モードを含む。例示的なリモート場所としては、固定デバイス400、ポンプ200、ハンドヘルドデバイス、スマートフォン、ローカルエリアネットワーク(LAN)、電子医療記録(EMR)サーバ、又はクラウドストレージ施設等を挙げることができる。例示的な無線通信モードとしては、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)、無線周波数、又は近距離無線通信(NFC)等を挙げることができる。
【0030】
一実施形態では、VAD 300は、VAD 300のセンサアレイ330、PCB 336、電源362、固定デバイス400、ポンプ200又はそれらの組合せの間で電力及び/又はデータ伝送を提供する、物理的な有線接続、例えば電気接点340を含むことができる。センサデータは、取外し可能な物理的接続、電線等を介する等、物理的接続を介して、VAD 300から送信することができる。一実施形態では、センサデータは、PCB 336に含まれるメモリ場所、又はVAD 300の他の場所に格納される。一実施形態では、PCB 336はクロック/タイマ回路を含む。
【0031】
一実施形態では、VAD 300とともに複数のセンサが含まれるが、さまざまなセンサの数、タイプ、サイズ、配置、機能及び所望の用途は、本明細書に図示及び記載するものとは異なり得る。センサアレイ330は、1つの実施形態では、1つのセンサのみを含むことができることに留意されたい。以下1つのみの特定のセンサについて考察する場合、VAD 300又はシステム100内の同じか又は異なる場所に、2つ以上の特定のタイプのセンサを含めることができることが理解されることにも留意されたい。
【0032】
一実施形態では、センサアレイ330はハブ316内に配設され、ハブ316は、こうしたセンサに対して必要な容積を提供するようなサイズである。ハブ316のサイズ、形状及び構成は、センサを収容するために図示及び記載するものとは異なり得ることに留意されたい。他の実施形態では、センサアレイ、又はセンサアレイ330の個々のセンサは、カテーテルチューブ312、又は延長脚部318等に沿った又はそのいずれかの端部における部分を含む、VAD 300の他の部分に配置することができる。本明細書で考察するように、VAD 300とともに、患者の身体測定値、生理学的態様及び/又はVAD 300の物理的態様を検出する種々のセンサを含めることができることも留意されたい。センサアレイ330を含むVAD 300のさらなる例は、米国特許第10,433,790号明細書に記載されており、その特許の全体が参照により本明細書に援用される。
【0033】
一実施形態では、
図3A及び
図3Bに示すように、固定翼状部322のアパーチャ324、コネクタ320又はそれらの組合せは、VAD 300のセンサアレイ330及び/又はPCB 336に電力及び/又はデータ通信を提供するための電気接点340を含む。一実施形態では、固定翼状部322の各アパーチャ324に環状電気接点340が含まれ、この電気接点は、PCB 336及びセンサアレイ330に動作可能に接続されている。
図4A~
図4Cに示す固定デバイス400等の固定デバイスは、患者の皮膚の上に配置され、カテーテル312の先端部分が患者の体内に挿入されると、VAD 300と動作可能に接続し、VAD 300を適所に固定するように構成されている。そのために、固定デバイス400は、接着パッド410に取り付けられた保持具454と、ハブ316を適所に固定するためにハブ316の固定翼状部322の最上部で取外し可能に枢動するように(スナップフィット配置で)蝶番式に取り付けられている固定アーム456とを含む。
【0034】
一実施形態では、固定デバイス400は、センサアレイ330及び/又はPCB 336に電力及び/又はデータ転送を提供するさらなる機能を含む。固定デバイス400は2つの柱458を含み、それらの各々は、電気接点460としての役割を果たすように構成されるとともに、電源462、例えばバッテリと動作可能に接続されている。図示するように、電源462は、固定デバイス400の上に配置されているが、実施形態では、電源はVAD 300にも配置することができる。柱458は、固定翼状部322の対応するアパーチャ324内に受け入れられるように構成され、それにより、アパーチャ322の電気接点340とともに電気的接触が確立される。固定デバイス400に含まれる電源362は、このように、センサアレイ330及びPCB 336に電力を提供することができる。当然ながら、他の外部電源を採用することができる。一実施形態では、固定デバイス400は、センサアレイ330から受信されるセンサデータを送信する通信モジュールを含むことができる。
【0035】
図3Bは、デュアルルーメンVAD 302の一実施形態を示す。追加の内腔実施形態(例えば、トリプルルーメンVAD、クワッドルーメンVAD等)も企図され、本発明の範囲内にあることが理解されよう。
図3Aのものと同様に、
図3Bに示すVAD 302は、対応するセンサ332、334を含む、
図3Aに示すものと同様のセンサアレイ330と、PCB 336とを含む。固定デバイス400の電気接点460(
図4A~
図4C)と電気的に接続するための電気接点340もまた示されている。
図3BにおけるVAD 302の各延長脚部318は、各延長脚部においてデータが検知され得るように対応するセンサ332を含むことに留意されたい。他の実施形態では、センサ及び/又はPCBは、
図1Aに示すように、各コネクタ320に取り付けられた針なしインジェクションキャップ321に関連付けられる。針なしインジェクションキャップのセンサ及びPCBは、VADの他の構成要素のセンサに置き換わるか、又はそれらに追加することができる。他の実施形態では、例えば、乳酸センサ、グルコースセンサ、酸素センサ、超音波構成部品、GPS位置センサ、温度センサ、管腔内直径を測定するサイジングセンサ、流体速度センサ、加速度計、血液容積センサ、心拍出量センサ等を含む、患者の生理学的態様及び/又はVAD 302の態様を検知する、ここに図示するものよりも多いか又は少ないセンサを採用することができる。
【0036】
図4A~
図5Cは、固定デバイス400の実施形態の詳細を示す。一実施形態では、固定デバイスは、センサアレイ430、PCB 436、電源462又はそれらの組合せを含むポッド470を含む。固定デバイス400のセンサアレイ430は、本明細書に記載するような1つ又は複数のセンサを含むことができる。センサアレイ430又はその一部は、固定デバイス400の下面に配設することができる。一実施形態では、センサアレイ430又はその一部は、固定デバイス400の下面にアクセスするために、保持具454、アンカパッド410を貫通して延在することができる。固定デバイス400が患者の皮膚表面に固定されると、センサアレイ430もまた、患者の皮膚表面に接触することができる。センサアレイ430は、心拍数、体温、又は酸素飽和度等、患者のさまざまな生理学的特性を検出することができる。
【0037】
固定デバイス400のセンサアレイ430、PCB 436、電源462のうちの1つ又は複数は、VAD 300のセンサアレイ330、PCB 336又は電源362と結合することができる。これは、本明細書に記載するように、それぞれのPCB 336、436に配置された通信モジュールにより無線で、又はアパーチャ324、柱458及び関連する電気接点340、460の物理的な有線接続により、達成することができる。一実施形態では、これにより、PCB及び/又は電源をVAD 300又は固定デバイス400のいずれかに配設する必要がなくなる。一実施形態では、PCB 336、436及びセンサアレイ330、430のうちの1つ又は複数は、互いに通信可能に結合され、関連して機能することができる。一実施形態では、VAD 300又は固定デバイス400のいずれかに配置された単一の電源が、VAD 300及び固定デバイス400の両方のPCB 336、436及びセンサアレイ330、430に電力を供給することができる。一実施形態では、VAD 300又は固定デバイス400のいずれかに配置された単一のPCBが、VAD 300及び固定デバイス400の両方のセンサアレイ330、430を管理することができる。
【0038】
1つの実施形態では、ポッド470は、固定デバイス400から取外し可能であるように構成され、したがって、連続する固定デバイスとともに再使用可能とすることができる。これは、VAD 300及び/又は固定デバイス400が交換されるときに有用であり得る。したがって、ポッド470は、固定デバイスから取り外して、別の固定デバイスに配置することができ、したがって、資源及びコストを節約することができる。バッテリ及びPCBを同様の他の場所に配設することができることにも留意されたい。したがって、これら及び他の変形形態が企図される。本明細書に記載するものに関連するカテーテル固定デバイスに関するさらなる詳細は、米国特許第6,770,055号明細書に見出すことができ、その特許は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0039】
一実施形態では、
図6に示すように、PCB 236、電源262又はそれらの組合せは、ポンプ200に配置し、VAD 300及び/又は固定デバイス400のPCB 336、436及び/又はセンサアレイ330、430又はそれらの組合せと結合することができる。本明細書に記載するように、PCB 236は、任意のセンサアレイ240、330、430又はそれに結合された他のPCB 336、436を管理し、それらから任意のデータを受信し、受信したデータを格納及び分析するために、マイクロプロセッサ、不揮発性記憶装置及び通信モジュールを含むことができる。一実施形態では、PCB 236は、本明細書に記載するように、無線通信により、センサアレイ240、330、430又は他のPCB 336、436に通信可能に結合することができる。一実施形態では、PCB 236は、有線通信により、センサアレイ240、330、430又はPCB 336、436と通信可能に結合することができる。さらに、センサアレイ330、430及びPCB 336、436に、ポンプ200に配置された電源262によって電力を供給することができる。
図6に概略的に示すように、物理的な電力及び/又はデータ接続部280が、ポンプ200からVAD 300まで延在することができる。接続部280は、ポンプからVAD 300まで延在する別個の電線とすることができ、又は、供給ライン122の壁内に埋め込むことができる。後者の場合、接続部280は、コネクタ320内に配設され且つ延長脚部318を通って延在する電気接点340と結合して、固定特徴部322の電気接点340と結合することができる。したがって、PCB 236は、本明細書に記載するように、アパーチャ324、柱458及び関連する電気接点340、460により、固定デバイスのPCB 436及びセンサアレイ430と結合することができる。
【0040】
有利には、PCB及び電源等、システム100の再使用可能な構成要素は、ポンプユニット200に配置し、VAD 300及び固定デバイス400に配置されたセンサアレイと結合することができる。これにより、患者に取り付けられる構成要素の重量が低減するとともに、使い捨てのVAD/固定構成要素のコストが削減される。同様に、ポンプユニット200は、より大型の電源、すなわち、システム100の使用寿命を大幅に延長する、より大型のバッテリ、充電式バッテリ、主電源変換装置等を収容することができる。さらに、ポンプユニット200は、より大きい記憶能力及び処理能力を提供するより大型のPCB構成要素を収容することができる。さらに、電源、PCB、通信モジュール等のうちの1つ又は複数がポンプユニット200に配置される実施形態では、寿命が尽きた構成要素、例えばバッテリを、挿入部位を妨害することなく交換することができる。
【0041】
一実施形態では、ポンプユニット200は、システム100に対する流動力学的特性の相違に対応するようにポンプ220の出力を変更することができる。システム100の流体力学的特性又は流れ特性は、使用されるVADのタイプ、使用される流体のタイプ、及び患者の生理機能の相違により影響を受ける可能性がある。これらの特性のうちのいくつかは事前決定することができるが、他は経時的に変化する可能性がある。システム100のポンプユニット200は、VAD 300、固定デバイス400、又はポンプ200自体内のセンサ240からの情報を分析して、必要な正確な出力を決定することができる。さらなるこれらの流れ特性は、ハンドヘルドデバイス、ナースステーション、又はEMR等、リモート場所150に通信することができ、それにより、注入プロセスをログ記録し、モニタリングし、更新することができる。流れ特性、生理学的特性、流体特性、VAD特性又は特性の組合せに関連する所望の限界値に従って、臨床医、介護者又は患者へのアラートもまた送信することができる。
【0042】
図7は、一実施形態による、システム100内の情報の流れの概略図を示す。ポンプユニット200とともに、異なるタイプのVAD 300、例えばVAD 301、302を使用することができる。各タイプのVADが、VADの所定の特性に応じて異なる流動力学的特性を規定する。例えば、各タイプのVAD 300は、カテーテルチューブの長さ、内腔の数、内腔断面積、内腔断面形状、分岐ハブのタイプ、カテーテルチューブチップ構成、カテーテルチップ開口部の形状及びサイズ等が異なる可能性がある。各タイプのVAD 300は、延長脚部の有無、延長脚部の数、延長脚部の長さ、断面積及び断面形状、コネクタの数及びタイプ、コネクタのサイズ、長さ及び断面積/形状も異なる可能性がある。各タイプのVAD 300は、可撓性、デュロメータ硬さ、弾性、可鍛性等、使用される材料の特性も異なる可能性がある。上述した特性の各々が、VAD 300を通過する流体の流動力学的特性に影響を与える可能性がある。
【0043】
したがって、各タイプのVAD 300が、異なる流れ特性を示す可能性がある。これらの流れ特性は、事前に決定し、PCB 336の不揮発性記憶媒体における等、VADデバイス自体に格納することができる。一実施形態では、各タイプのVADに、英数字コード、又はアイコン等、一意の識別子を指定することができる。この一意の識別子は、VAD自体に格納し、デバイスの外側に視覚的に印刷するか、PCB 336に電子的に格納するか、又はそれらの組合せとすることができる。そして、この一意の識別子を取り出して、VAD特性を取り出すことができるデータベースに対して比較することができる。
【0044】
一実施形態では、VADは、交換可能な構成要素を含むことができる。例えば、コネクタ320、針なしインジェクションキャップ321、延長脚部318、ハブ316、カテーテル310又はそれらの組合せが、交換可能であり得る。したがって、本明細書に記載するようにVAD 300又はポンプ200に配置されたセンサは、異なる構成要素の、又はデバイスを通って流れる流体の重要なパラメータを測定することができる。そして、ポンプ200は、情報を分析して、VADの流れ特性を導出することができる。
【0045】
システム100を通過する流体の流体力学的特性は、使用される流体のタイプに応じてもまた異なる可能性がある。センサアレイ240、330、430は、システムを通過する流体の特性を測定することができる。これらの流体特性としては、使用される流体のタイプ(生理食塩水、薬剤、血液、血漿等)、粘度、濃度、pH、温度、体積、流量、グルコースレベル、酸素飽和度、電解質レベル、ヘマトクリット等を挙げることができる。
【0046】
ポンプユニット200は、使用されている流体のタイプ、濃度、体積等、流体特性に関するさらなる情報をユーザから受け取ることができる。これらは、ポンプユニット200に直接、又はリモート場所150及びネットワーク160を介して、入力することができる。さらに、ポンプユニット200は、提供される流体特性を使用して、データベースに照会してさらなる流体特性を受け取ることができる。例えば、ユーザは、投与される流体、薬物等のタイプを提供することができ、ポンプユニット200は、ネットワーク160により、リモート場所150に位置するデータベースに照会して、流体特性に関するさらなる情報を取り出すことができる。一実施形態では、センサアレイ240、330、430は、患者の生理学的態様を検出することができる。例示的な生理学的態様としては、深部又は末梢体温、酸素飽和度、心拍数、ECG、血圧、血糖値、乳酸値等が挙げられる。
【0047】
したがって、ポンプユニット200は、VAD特性、流体特性、生理学的特性をセンサアレイ240、330、430又はネットワークから取得して分析し、注入に必要な流れ特性を決定する。そして、ポンプユニット200は、それに従ってポンプ出力を変更することができる。一実施形態では、ポンプユニット200は、注入の過程の間に経時的に流れ特性を変更するようにスケジュールを決定することができる。例えば、注入の過程を通して、薬剤の異なる組合せを適用することができ、各組合せが異なる流量を必要とする可能性がある。
【0048】
一実施形態では、ポンプユニット200は、センサアレイ240、330、430からのVAD特性、流体特性及び生理学的特性の変化をモニタリングして、それに従ってポンプ出力を変更する連続フィードバックループを含む。例えば、ポンプユニット200は、患者体温、患者の心拍数、酸素飽和度の変化を検出し、それに従って、流体の温度又は薬剤の濃度を変更することができる。
【0049】
例えば、ポンプユニット200は、VADの流体圧の変化又は経過時間を検出して、閉塞を解消する必要があるか又はVADを交換する必要があると判断することができる。流体特性、流れ特性及びVAD特性を使用して、閉塞、閉塞の形成、静脈炎、浸潤、治療の終了、感染、VADの離脱、漏れ、キンク等を検出することができる。ポンプユニット200は、それに従って流れ特性を変更し、すなわち、閉塞を解消するために圧力を上昇させるか又は流体流を停止させ、アラートを提供することができる。アラートは、ポンプユニット200によって提供される、視覚、聴覚又は触覚アラートであり得る。一実施形態では、ポンプユニット200は、ハンドヘルドデバイス、スマートフォン又はナースステーション等のリモート場所と通信してアラートを提供することができる。
【0050】
一実施形態では、ポンプユニット200は、VADにフラッシング又は洗浄が必要であると判断することができる。これは、流体圧の変化により、又は経過した時間により等によって判断することができる。そして、ポンプユニットは、VADを洗浄及びフラッシングするポンプ出力変更のスケジュールを実施することができる。ポンプ出力設定、スケジュール等は、ユーザによりさらに格納され、分析され、変更されるように、リモート場所150に提供することができる。
【0051】
本発明の実施形態は、本開示の趣旨から逸脱することなく他の所定の形態で実現することができる。記載した実施形態は、すべての点で限定的ではなく例示的であるとみなされるべきである。したがって、実施形態の範囲は、上述した記載によるのではなく添付の特許請求の範囲によって示される。請求項の意味及び均等性の範囲にあるすべての変更が、請求項の範囲内に包含される。
【国際調査報告】