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特表2022-537161ストライプ面およびストライプ状カバー帆布を備える動力伝達ベルト
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-24
(54)【発明の名称】ストライプ面およびストライプ状カバー帆布を備える動力伝達ベルト
(51)【国際特許分類】
   F16G 1/08 20060101AFI20220817BHJP
   F16G 1/00 20060101ALI20220817BHJP
   F16G 1/28 20060101ALI20220817BHJP
   F16G 5/06 20060101ALI20220817BHJP
   F16G 5/20 20060101ALI20220817BHJP
   D04B 1/00 20060101ALI20220817BHJP
   D03D 1/00 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
F16G1/08 D
F16G1/00 D
F16G1/28 G
F16G5/06 D
F16G5/20 A
F16G5/20 C
D04B1/00 A
D03D1/00 A
D03D1/00 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021573936
(86)(22)【出願日】2020-06-12
(85)【翻訳文提出日】2022-01-25
(86)【国際出願番号】 US2020037633
(87)【国際公開番号】W WO2020252410
(87)【国際公開日】2020-12-17
(31)【優先権主張番号】P201930541
(32)【優先日】2019-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504005091
【氏名又は名称】ゲイツ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】ビア,カーラ ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア サエス,リディア
(72)【発明者】
【氏名】トルネロ ガルシア,ダビド
(72)【発明者】
【氏名】コロン マルティネス,ヴェガ
(72)【発明者】
【氏名】グラネル,ジョルディ
(72)【発明者】
【氏名】バートランド,ブレット
【テーマコード(参考)】
4L002
4L048
【Fターム(参考)】
4L002AA02
4L002AA05
4L002AB01
4L002AB02
4L002AB04
4L002AC01
4L002BA00
4L002BA05
4L002BB05
4L002DA00
4L002EA00
4L002EA05
4L002FA06
4L048AA07
4L048AA13
4L048AA51
4L048AB01
4L048AB06
4L048AB18
4L048AC12
4L048BA01
4L048CA04
4L048DA41
4L048DA44
(57)【要約】
異なる摩擦特性の2以上の交互に配置されるストライプ、またはバンドを有する伝動ベルト用のカバー帆布。ストライプは異なる生地構造であり得る。帆布は、異なる面密度あるいは糸密度、異なる透過性、または異なる開放性を備えたストライプを有する織布またはニットである。帆布は、Vリブドベルト、Vベルト、歯付きベルト、平ベルト、ラウンドベルト、またはその他の伝動ベルトの表面を覆い、ゴムのストライクスルー量や摩擦係数が異なるストライプを形成する。ストライプは、異なるゴム組成物または植毛または他の素材であり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる摩擦係数を有する2以上の交互に配置される領域で特定されるストライプを備える表面を備えることを特徴とする伝動ベルト。
【請求項2】
前記ストライプが、異なるゴム組成物が交互に配置される領域であることを特徴とする請求項1に記載の伝動ベルト。
【請求項3】
前記ストライプが、ゴム領域と交互に配置される植毛領域を備えることを特徴とする請求項1に記載の伝動ベルト。
【請求項4】
前記表面が補強帆布を備え、前記ストライプが、前記帆布内において、2以上の異なる織りパターンまたはニットパターンが交互に配置されるものに対応することを特徴とする請求項1に記載の伝動ベルト。
【請求項5】
異なる織りパターンまたはニットパターンの2以上の交互に配置される領域として特定されるストライプを備える補強帆布を備えることを特徴とする伝動ベルト。
【請求項6】
前記2以上の交互に配置される領域が、前記伝動ベルトのプーリ接触面上に配置され、対応するプーリ表面に対して異なる摩擦係数を有することを特徴とする請求項5に記載の伝動ベルト。
【請求項7】
接触面上の前記2以上の交互に配置される領域が、ゴムに対する異なるレベルのストライクスルーを有することを特徴とする請求項5に記載の伝動ベルト。
【請求項8】
前記2以上の交互に配置される領域が、更に異なる面密度を有することを特徴とする請求項5に記載の伝動ベルト。
【請求項9】
面密度の低い前記ストライプが、フロートを含むことを特徴とする請求項8に記載の伝動ベルト。
【請求項10】
前記帆布がニットであり、異なるニットパターンの1つが、ドロップステッチの1つ以上のウェールを含むことを特徴とする請求項5に記載の伝動ベルト。
【請求項11】
前記帆布が織布であり、前記異なる織りパターンの1つにおいて、縦糸または緯糸が1つ以上欠落していることを特徴とする請求項5に記載の伝動ベルト。
【請求項12】
前記帆布がリブ上に配置された複数のリブを備えるVリブドベルトであることを特徴とする請求項5に記載の伝動ベルト。
【請求項13】
異なる織りパターンまたはニットパターンの2以上の交互に配置される領域として特定されるストライプを備えることを特徴とする伝動ベルトを補強するための織布またはニット布からなる生地。
【請求項14】
前記生地がニットであり、異なるニットパターンの1つが、ドロップステッチの1つ以上のウェールを含むことを特徴とする請求項13に記載の生地。
【請求項15】
前記生地が織布であり、異なる織りパターンの1において、縦糸または緯糸が1つ以上欠落していることを特徴とする請求項13に記載の生地。
【請求項16】
前記2以上の交互に配置される領域が、更に異なる面密度を有することを特徴とする請求項13に記載の生地。
【請求項17】
面密度の低い前記ストライプが、フロートを含むことを特徴とする請求項16に記載の生地。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは動力伝達ベルト、または新奇なカバー帆布を備えたVベルトやマルチVリブドベルトなどの伝動ベルトに関し、より具体的には、ストライプ状リブカバー帆布、特に、密度または透過性の高いストライプと低いストライプが交互に配置されたリブカバー帆布を備える動力伝達ベルトまたは伝動ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
ゲイツ コーポレイションにより登録商標Micro-Vの商標で販売されているサーペンタインベルトやマルチグルーブベルトとも呼ばれるマルチVリブドベルト、または単にVリブドベルトは、産業上の多くの動力アプリケーションと同様に、自動車のフロントエンド・アクセサリ・ドライブにおいても広く普及している。ベルトは摩擦によって動力を伝達するため、スリップを引き起こす条件下で音を立てる可能性がある。例えば、ベルトがシーブに入るときに所定位置に移動したり、シーブ上でベルトが高張力状態から低張力状態に、またはその逆に調整されたりすることにより、ある程度の滑りは避けられない。滑りと騒音をより引き起こす状況のいくつかの例を挙げると、不十分なベルト張力、高すぎる負荷要求、ウェット状態、シーブのミスアライメント、低温などがある。シーブとベルトリブの間の摩擦係数(“COF")を増やせば、ベルトの動力伝達能力を高めることができるが、ミスアライメントの状態やスリップが発生した場合に騒音量が増えるため、騒音に対しては逆効果になる可能性がある。ベルト設計者は、負荷の増加、極端な温度、ウェット状態とドライ状態の両方など、競合する要求と、静粛なベルト伝動への要求とのバランスを取るように努める必要がある。理想的には、特性のバランスがベルトの耐用年数に亘って維持される必要がある。同様の懸念は、Vベルト、平ベルト、ラウンドベルトなどの他の摩擦伝動ベルトにも当てはまり、歯付きベルトなどのポジティブドライブベルトでさえ、その表面のCOFの制御が必要になる場合がある。
【0003】
ベルト表面のCOFを変更、制御するいくつかの方法は、繊維を帆布の形で表面に配置し、表面に存在するゴムの種類と量を制御する。表面に存在するゴムは、表面を完全に覆うコーティングまたは層であってもよく、あるいは、ベルト本体からのゴムまたは帆布の下のゴム層が、成形工程中に帆布を通って表面に流れてもよい。帆布を流通することで形成されるこの表面ゴムは、「ストライクスルー(浸出)」と呼ばれる。通常、COFはストライクスルーの増大とともに増加する。ベルト使用中にゴムと帆布が摩耗し、騒音や摩擦の挙動に望ましくない変化が生じる可能性がある。
【0004】
COFを制御するために、ストライクスルーを制御するための様々な取り組みが従来からあった。例えば、コンチテック(ContiTech)の米国特許第9,709,128号や、ゲイツ(Gates)の米国特許第9,341,233号は、COFを制御するためにストライクスルーを制御する取り組みについて記載している。米国特許第7,749,120号は、歯付き伝動ベルトのストライクスルーを最小化するための試みについて記載している。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、制御されたCOFを備えたVリブドベルトまたは他の伝動ベルトを提供するシステムおよび方法に関する。ここでベルトは、比較的高く安定したバランスが良いウェットCOFとドライCOFを備え、様々な環境条件に亘って低い騒音レベルで良好な負荷容量をもたらす。本発明は、少なくとも1つの表面に、互い違いの領域、またはストライプを有するベルトに関する。「ストライプ状(ストライプド)」とは、識別可能な差異を有する細長い帯または細長い領域が交互に存在することを意味する。ストライプは、染料、コーティング、ゴムのストライクスルー、またはその他の主要な効果によって隠されている可能性があるため、ベルトにおいて視覚的に明確である必要はない。ストライプは、異なるCOF特性を有する互い違いの領域であってもよい。交互に隣り合うストライプは、相対的高いCOFと低いCOFを備えてもよく、これにより、その表面にとっての中間の平均COFを規定する。
【0006】
一実施形態において、本発明は、ストライプ状リブカバー帆布、およびその表面に同帆布が適用された伝動ベルトに関する。ストライプは、透過性、あるいは密度(例えば、糸密度)、または多孔性が大きい領域と小さい領域が交互に配置されたものであってもよい。ストライプは、異なる織りまたはニット構造の領域を交互に配置したものでもよく、これは、異なる布伸縮特性、異なる透過性、または他の特性の違いをもたらし得る。ベルトにおいて、ストライプ状帆布がベルト表面に交互に視覚的に異なる領域をもたらす可能性がある。いくつかの実施形態では、ストライプは、より高いCOF、およびより低いCOFが交互に配置された領域であってもよい。ストライプは、ベルト本体から帆布を通して表面にストライクスルーしたゴムが多い領域と少ない領域が交互に配置されたものであってもよく、これは織りの透過性または開放性の違いの結果であり、COFの違いをもたらすであろう。ストライプは、上述の機能または効果の1つ、または複数を含み得る。ストライプは、ベルトの幅を横切って横方向に、ベルトの長さ方向に沿って縦方向に、またはベルトの長さ方向または幅方向に対してある角度をもって配置され得る。伝動ベルトは、例えばVリブドベルト、Vベルト、平ベルト、歯付きベルト、丸ベルトなどである。ストライプ状帆布は、例えばベルトの接触面、または噛合い面(ワーキングサーフェース)上に設けられる。これらは、Vリブドベルトのリブ、Vベルトの角度の付いた側面、同期ベルトの歯、ベルト背面、またはベルトの全ての側面などである。
【0007】
第2の実施形態において、ストライプは、異なる摩擦特性を有する異なる素材の組成物である。
【0008】
第3の実施形態において、ストライプは、植毛面(フロック面)がゴム状の表面と交互になるなど、異なる表面処理である。
【0009】
本発明はまた、伝動ベルトのカバー帆布として使用されるストライプ状帆布に関する。
【0010】
上記では、本発明の機能と技術的な利点を、以下の本発明の詳細な説明をよりよく理解するために、幾分大雑把に説明した。本発明の特許請求の範囲の主題を形成する本発明の追加の特徴および利点は以下に説明される。開示された概念および特定の実施形態は、本発明と同じ目的を実行するための他の構造を修正または設計するための基礎として容易に利用され得ることが当業者によって理解されるであろう。そのような同等の構造は、添付の特許請求の範囲に記載されている本発明の範囲から逸脱しないことも当業者によって認識されるであろう。本発明の構成および操作方法の両方に関して本発明の特徴であると考えられる新規の特徴は、更なる目的および利点とともに、添付の図とともに考え合わせることで、以下の説明からよりよく理解されるであろう。しかしながら、各図は、例示および説明のみを目的として提供されており、本発明の限界を定義することを意図されていないことを明確に理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本明細書に組み込まれ、その一部を形成し、同様の数字が同様の部材を表す添付の図面は、本発明の例示的な実施形態を説明し、詳細な説明とともに本発明の原理を説明するために提示される。図面には以下のものが含まれる。
【0012】
図1】本発明の一実施形態による、ストライプ状リブ表面を備えたVリブドベルトの部分的に断片化された斜視図である。
【0013】
図2】本発明の一実施形態による、ストライプ状カバー帆布を備えたバンデッドVベルトの部分的に断片化された斜視図である。
【0014】
図3】本発明の一実施形態による、ストライプ状歯布を備えた歯付きベルトの部分的に断片化された斜視図である。
【0015】
図4】従来のプレーンニットの生地を例示したものである。
【0016】
図5】従来のl×lプレーンニットの生地を例示したものである。
【0017】
図6】本発明によるプレーンニットストライプおよびドロップステッチストライプを備えるストライプニット生地を例示したものである。
【0018】
図7】本発明によるプレーンニットストライプとドロップステッチのストライプを備えた別のストライプニット生地の部分的な写真である。
【0019】
図8】本発明によるピケニットストライプおよびドロップステッチストライプを有する別のストライプニット生地の部分的な写真である。
【0020】
図9】本発明による織布ストライプ状生地の織物組織図である。
【0021】
図10】本発明による別の織布ストライプ状生地の織物組織図である。
【0022】
図11】本発明による別の織布ストライプ状生地の織物組織図である。
【0023】
図12】摩擦係数(COF)試験におけるプーリの配置を示す。
【0024】
図13】ミスアラインメントノイズ(MAN)試験におけるプーリの配置を示す。
【0025】
図14】本発明の第3の実施形態による、ストライプ状リブ表面を備えた平ベルトの部分的に断片化された図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、ストライプ状の表面を有する伝動ベルトに関する。「ストライプ状(ストライプド)」とは、識別可能な機能の違いを有する帯または細長い領域が交互に存在することを意味する。ストライプは、染料、コーティング、ゴムのストライクスルー、またはその他の主要な効果によって隠されている可能性があるため、ベルトにおいて視覚的に明確である必要はない。ストライプは、摩擦係数(COF)が大きい領域と小さい領域が交互になっていてもよい。ストライプは、例えば異なる織りまたはニットの領域を交互に配置した表面カバー帆布から構成されていてもよく、異なる伸縮特性、異なる透過性、異なる密度(例えば、糸密度)、多孔性、あるいは他の機能特性の違いをもたらし得る。ベルトにおいて、ストライプ帆布は、ベルト表面に視覚的に異なる領域を交互にもたらす場合ともたらさない場合がある。好ましくは、ストライプは、より高いCOFの領域とより低いCOFの領域が交互に配置されたものである。ストライプは、例えばベルト本体から表面へと帆布を通り抜けるゴムのストライクスルーが多い領域と少なくない領域が交互に配置されたものであり、これは、織りの透過性、密度、または開放性の違いによってもたらされ得る。ストライプは、異なる素材(例えばゴム)による組成物や、植毛(フロック)とゴムの領域が交互に配置されたものであってもよい。ストライプには、上述の機能や効果の1つまたは複数が含まれ得る。ストライプは、ベルト幅方向に横切って横方向に、ベルト幅方向に横切って斜めに、またはベルトの長手軸に平行に設けられ得る。ストライプは、ベルトのリブ、歯、側面、または背面に設けられる。
【0027】
本発明のカバー帆布のストライプは、ストライプに似ているだけで、透過性、ゴムのストライクスルー、糸密度、COFなどに機能的な違いを与えないものは含まない。例えば、l×1、2×2、3×3などの単純なリブニットは、同じ基本的なニットパターンを逆にしただけの交互のリブパターンを生成する。そのため、リブニットの交互のリブにおいて、透過性や、密度、ストライクスルーの値は異ならない。したがって、本明細書におけるストライプ帆布の定義に単純なリブニットは含まれない。同様に、他の点では均一な布地に異なる色のストライプを単に作成することは、本明細書のストライプの定義に含まれない。同じ密度または透過性を持つ異なる織りの領域を交互に配置する織物も、ストライプ状の定義に含まれない。
【0028】
ストライプは、作成されたとき、またはベルトに取り付けられたときの幅と密度によって特徴付けることができる。帆布は、ベルトモールドに適合させるため、または成形中にベルト表面プロファイルに一致するように伸ばされる可能性があるため、あるいは、その両方により、その設置密度は、多くの場合、製造時の密度よりも大幅に低いことを理解されたい。ストライプは、ベルト表面または成形品に適用した後に得られるCOFによっても特徴付けることができる。ストライプを特徴付ける別の方法は、視覚的な評価を用いた、ストライプ状帆布を透過するゴムのストライクスルーの程度によるものである。
【0029】
伝動ベルトは、例えば、Vリブドベルト、Vベルト、平ベルト、歯付きベルト、丸ベルトなどである。ストライプ、すなわちストライプ状帆布は、例えば、ベルトの接触面または噛合い面(ワーキングサーフェース)に設けられ、これはVリブドベルトのリブ、Vベルトの角度の付いた側面、同期ベルトの歯、ベルトの背面、またはベルトのすべての側面などである。ベルトは好ましくは摩擦伝動ベルトであり、帆布はプーリ接触面上に設けられる。ベルトは好ましくはVリブドベルトであり、ストライプ帆布は好ましくはリブ上に設けられる。
【0030】
図1は、リブ12上にストライプド摩耗面11を形成しているストライプ状リブカバー帆布13を備えたVリブドベルト10を示している。Vリブドベルト10はまた、ベルト本体19に埋め込まれた引張コード17を有する。背面15は、選択的に帆布を備えてもよく、それはストライプ状帆布かもしれない。明るいストライプ14は、1つのタイプのストライプを表し、暗いストライプ16は別のタイプのストライプを表す。明るいストライプ14は、例えば、より高い糸密度、より低い透過性、あるいは、ゴムのストライクスルーがより少ない帆布ストライプである。暗いストライプ16は、例えば、より低い糸密度、より高い透過性、あるいは、ゴムのストライクスルーがより多い帆布ストライプである。したがって、明るいストライプ14は、暗いストライプ16よりも低いCOFを示すかもしれず、またはその逆もあり得る。
【0031】
本発明はまた、ベルトの表面にカバー帆布を備える他のタイプのベルトにも向けられている。他のタイプのベルトには、丸ベルト、平ベルト、Vベルト、および歯付きベルトが含まれるが、これらに限定されるものではない。ベルトは、バンデッドVベルト(banded V-belt)や丸ベルトのようにバンドされていてもよい。すなわち、全ての面がストライプドカバー帆布で完全に覆われていてもよい。ベルトは、1つまたは複数の側面が覆われるものでもよい。カバー帆布の複数の層をベルト全体またはベルトの1つまたは複数の側面に使用できる。ストライプは、ベルト長手方向に平行または垂直を含む任意の角度で配置できる。
【0032】
図2は、プーリに接触する傾斜した側面21、ベルト背面25の裏側、および背面25の反対側を含むベルト表面全体を覆うストライプ状のバンドプライ帆布23を備えたバンデッドVベルト20を示す。Vベルト20は、ベルト本体29に埋め込まれた引張コード27も備える。明るいストライプ24は、1つのタイプのストライプを表し、暗いストライプ26は、別のタイプのストライプを表す。明るいストライプ14は、例えば、より高い糸密度、より低い透過性、あるいはゴムのストライクスルーがより少ない帆布ストライプである。暗いストライプ26は、例えば、より低い糸密度、より高い透過性、あるいはゴムのストライクスルーがより多い帆布ストライプである。したがって、明るいストライプ24は、暗いストライプ26よりも低いCOFを示し得る。
【0033】
図3は、ベルトの歯側にストライプド歯カバー帆布33を備えた歯付きベルト30を示しており、ランド38と交互に配置される歯32を備える。歯付きベルト30は、ベルト本体39に埋め込まれた引張コード37を備える。背面35は、選択的に帆布を備えてもよく、それはストライプ状帆布かもしれない。明るいストライプ34は、1つのタイプのストライプを表し、暗いストライプ36は別のタイプまたは別の特性のストライプを表す。明るいストライプ34は、例えば、より高い糸密度、より低い透過性、あるいはゴムのストライクスルーがより少ないストライプである。暗いストライプ36は、例えば、より低い糸密度、より高い透過性、あるいはゴムのストライクスルーがより多いストライプである。したがって、明るいストライプ14は、暗いストライプ16よりも低いCOFを示し得る。
【0034】
本発明の一実施形態では、帆布はニットであり、ストライプは、通常の方法でステッチを減らした結果である。図4は、ストライプを含まない基本的なニット帆布40を示している。これは、プレーンの横編みパターン、またはシングルジャージーニットであり、連続した糸が水平に走ってコース42を形成し、ループが垂直に引っ張られてウェール44を形成する。図5は、ストライプのない別の基本的なニットパターン、1×1のジャージーニット50を示し、各コース52は、2つのヤーン54、56によって形成され、これらは交互に配置され、コースおよびウェールの両方で1つおきのループを形成する。2本の糸が存在することで、図5の1×1ニットは、図4のプレーンニットよりも少し密度が高くなり、ほつれにくくなる。図6は、図4のプレーンニットパターンがステッチを減らすことによって低密度のストライプを形成するように変更されたストライプニットを示す。したがって、図6では、ストライプニット60は、より低い密度のストライプ64と交互に配置されるより高密度のストライプ66を備える。明らかに、ステッチが減らされた区間は、プレーンニット区間よりも大きな細孔、低い糸密度、および高い透過性をもたらす。図6の1~8までの数字は、ストライプ状帆布60を作るために使用できる編み針を表している。針2、3、6、および7はアクティブであり、プレーンニットストライプ66を生成する。一方、針1、4、5、および8は非アクティブであり、ドロップストライプ64を生成する。ドロップステッチはフロートステッチと呼ばれることもある。
【0035】
図7は、図5の1×1ニットパターンが高密度ストライプ76を形成するが、ステッチを減らすことによってパターンがより低密度のストライプ74を形成するように変更されたストライプドニット70を示している。10個のウェールが高密度のストライプ76を形成する。低密度ストライプ74は、図6に示すパターンの5つの繰り返しで構成される。すなわち、2つのプレーンウェールとそれに続く2つのドロップステッチウェールが5回繰り返される。このパターンは、もちろん糸のサイズ、ニットの堅さ、および測定前の収縮または伸長に応じて、密なストライプの場合は約5mm、より開いたストライプの場合は約10mmの公称寸法のストライプパターンを与え得る。明らかに、減らされたステッチは、プレーンニットセクションよりも大きな細孔、はるかに低い糸密度、および高い透過性をもたらす。ストライプの幅は、各タイプのストライプでウェールを増減することで簡単に変更できる。したがって、ニットのストライプの幅は、編んでいる最中に各区間でアクティブな針の数、およびドロップされるステッチの数、すなわち非アクティブな針の数によって制御することができる。
【0036】
図8は、フロートのウェールまたはドロップステッチで中断されたピケニットパターンに基づく、本発明の実施形態による別のストライプドニット帆布を示している。図8では、ストライプニット80は、ピケニットパターンに基づく高密度ストライプ86を有し、この場合、幅は3ウェールである。ピケニット部分は、プレーンループとタックステッチを交互に使用している。低密度ストライプ84は、やはり2ウェール幅のドロップステッチ(またはフロートステッチ)である。針に関しては、繰り返しパターンは、フロートステッチ用の2本の非アクティブな針の隣でピケニットを行う3本の針からなり、必要な回数だけ繰り返される。この場合にも、ストライプの幅は、ピケニットを行う針(またはウェール)の数とフロート区間の針の数を変えることによって変更できる。
【0037】
一般に、密度の高いストライプには高密度のニットパターンを適用でき、密度の低いストライプにはフロートステッチまたはドロップステッチを適用できる。あるいは、密度の低いストライプは、単純に密度の高いストライプよりも低密度のニットパターンで置き換えてもよく、例えば、ニット構造に大きな細孔を開くために、タックステッチを多めまたは長く有する。ニットは、フラットフォーム(フラットニット)またはチューブラーフォーム(丸編み)に形成されてもよい。
【0038】
別の実施形態によれば、帆布は、ニットの実施形態と同様に、異なる糸密度または開放度のストライプまたは領域を含む方法で織られてもよいが、緯糸および緯糸で織られている。帆布の組織図は、そのような織りパターンを示すことができる。本明細書に示される組織図において、正方形は、当技術分野で慣習的であるように、縦糸と横糸との間の糸の交差を表す。正方形の内側の線分は、交差部のトップにある糸、すなわち目に見える糸が、縦糸か横糸かを示す。縦の線分は、経糸が見える、すなわち緯糸の上に経糸があることを示す。水平の線分は、緯糸が緯糸の上にあることを示す。2つ以上のボックスにまたがる切れ目のない線は、縦糸または緯糸がないために交差がないことを示す。空のボックスは、縦糸も緯糸も存在しないことを示す。従来通り、縦糸は組織図では上向き(垂直)に配置され、緯糸は左右(水平)に配置される。ベルトに適用するとき、縦糸または緯糸のいずれをもベルトの長手方向に向けることができ、また縦糸と横糸をある角度(すなわち、バイアスまたはバイアス角度)をもってベルト上に配置し得る。縦糸と緯糸は垂直にすることもできるが、当技術分野で知られている方法を使用してそれらを直角以外の所望の角度にずらすこともできる。
【0039】
図9は、本発明による織布ストライプ状帆布の組織図である。図9において、帆布90は、低密度ストライプ94および高密度ストライプ96を含む。高密度のストライプは平織りである。低密度ストライプ94は、多数の縦糸を省略し、横糸(ピックまたはフィルヤーンとしても知られる)を高密度ストライプ96間の隙間を横切って浮かせることによって製造される。この場合も、ストライプの幅は、平織り区間の経糸の数(すなわち、1インチあたりの端数または“epi”または1インチあたりのピック数“ppi”)とフロート区間の欠落した経糸の数を変えることによって変更することができる。この場合、低密度ストライプ94は、高密度ストライプ96よりもはるかに幅が広い。したがって、低密度のストライプは1つの連続したフロートではなく、フロート区間の帆布の一体性を維持するために縦糸の周期的なペアを含む。それにもかかわらず、より開放されたストライプ94の全体的な糸密度は、より密に織られたストライプ96よりも小さい。
【0040】
図10は、本発明による別の織布ストライプ状帆布の組織図である。図10において、帆布100は、図9のように、低密度ストライプ104および高密度ストライプ106を含む。高密度のストライプは平織りである。低密度ストライプ104は、この場合にも、いくつかの縦糸を省略し、横糸を浮かせることによって形成される。この場合も、ストライプの幅は、平織り区間の経糸のepiとフロート区間の欠落した経糸の数を変えることによって変更できる。図10はまた、図9と同じパターンを有する規則的な区間107からなる水平ストライプ、および2本の緯糸をスキップし、これにより生じる隙間を横切って経糸を浮かせることによって形成される低密度水平ストライプ105を含む。このパターンは更に、緯糸も縦糸も存在しない、水平および垂直の低密度ストライプが交差する場所でより大きな細孔を形成する。したがって、格子縞または市松模様(すなわち、両方向に走るストライプを有する帆布)は、本明細書の「ストライプ状(ストライプド)」の定義に含まれ得る。
【0041】
図11は、本発明によるまた別のストライプ状帆布の組織図である。図11では、帆布110は、両方向のストライプを含み、低密度水平ストライプ115がより広くされるとともに、低密度垂直ストライプ114のような(また図9の区間94のような)まばらな緯糸とともに点在される。水平、垂直ストライプの両方の組み合わせにより、帆布110には4つの異なる領域が得られる。水平方向の高密度ストライプ117と垂直方向の高密度ストライプ116の交差部は、最も高い密度の領域をもたらす。水平方向の低密度ストライプ115と垂直方向の低密度ストライプ114との交差部は、縦糸または緯糸がない最大の細孔112を有する最低密度領域をもたらす。水平方向の高密度ストライプ117と垂直方向の低密度ストライプ114との交差部は、垂直方向のストライプを有する中密度領域をもたらす。水平方向の低密度ストライプ115と垂直方向の高密度ストライプ116との交差部は、水平方向のストライプを有する中間密度領域をもたらす。この場合も、領域の相対的な長さと幅は、より密な織り区間の経糸と緯糸のepi、およびフロート区間の欠落した経糸と緯糸の数を変えることによって変更できる。したがって、多くの種類の格子縞または市松模様(すなわち、両方向に走るストライプを有する帆布)は、本明細書の「ストライプ状(ストライプド)」の定義に含まれ得る。
【0042】
したがって、本発明のストライプ状帆布は、特に、圧力下におけるベルト硬化中に流通するであろう帆布のすぐ下に配置されるゴムに対して密度、透過性、または開放性が異なる領域が交互に配置される。異なる領域で織り方または編み方のスタイルまたは構造を変えることによって、異なる大きさの開放性を得ることができる。例えば、ニット生地では、低透過性のストライプは、プレーンニット構造によって得られ、より高い透過性のストライプは、例えば、タックステッチ(タック)やフロートステッチ(フロート)を含めたり、ステッチをドロップしたりして、ニット構造を変えることによって得られる。従来の織りに基づく織布では、平織り、綾織り、または他の通常の織りであるかどうかにかかわらず、より高い透過性のストリップは、特定の縦糸および/または緯糸を減らすかまたは省略することによって得られる。
【0043】
その全内容が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2010/0167860A1および米国特許出願公開第2010/0173740Alは、本発明による帆布およびVリブドベルトのための有用な素材および方法について記載している。帆布で覆われたリブ表面を備えるVリブドベルトの場合、帆布は所定の2方向に伸縮可能であることが好ましい。帆布の材料は、例えば十分な伸縮性を与えるように選択される。また、摩耗面に要求される性能(例えば、耐摩耗性、耐熱性、摩擦係数の安定性、耐水性、および滑りと騒音の特性の観点から)を考慮して、ベルトに十分な耐久性を与えるように材料が選択されてもよい。
【0044】
例えば、帆布の素材には、例えば弾性糸や繊維が含まれ、弾性糸または繊維には、ポリウレタンと、セルロースまたは非セルロースベースの糸または繊維、またはそれらのブレンドを含む少なくとも1つのタイプの非弾性糸または繊維が含まれる。セルロースベースの糸または繊維と、非セルロースベースの糸または繊維のブレンドは、スパン糸または撚り糸またはラップヤーンにおいて2種類の繊維をブレンドするか、ニット、織物に関わらず、生地製造プロセス中に異なる種類の糸を一緒に供給することによって行われる。弾性糸は、必要な程度の伸縮性を維持するのに役立ち、伸縮性は、フロートやその他のニットや織りを変更することで軽減できる。
【0045】
セルロースベースの糸または繊維には、例えば、綿、リネン(麻)、ジュート、ヘンプ(麻)、亜麻、アバカ、竹などの天然繊維、およびレーヨンやアセテートなどの人工繊維、また、それらの組み合わせが含まれ得る。綿は、好ましいセルロースベースの糸である。
【0046】
非セルロースベースの糸または繊維には、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレンナフタレート、アクリル、アラミド、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、液晶ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド、ポリケトン、PTFE、e-PTFE、PPS、PBO、ウール、シルクや、それらの組み合わせが含まれる。
【0047】
ウェット性能を改善するために、帆布は、ポリウレタンなどの弾性である第1の糸、および綿などのセルロースの第2の糸を含む2糸構造を含み得る。更に、弾性糸または弾性繊維、セルロース糸またはセルロース繊維、および他の糸を含む3つ以上の糸構造を使用することもできる。第3の糸は、所望の耐摩耗性に応じて選択されてもよい。
【0048】
好ましくは、第1の糸は、ポリウレタンなどの弾性糸であり、これは、帆布に高レベルの伸縮性を提供する。第2および第3の糸または繊維は、例えば、2つの異なるタイプの糸または繊維のブレンドからなり、これは、セルロースの糸または繊維と非セルロースの糸または繊維との組み合わせであり、異なる比率でブレンドされる。1つのタイプは、耐摩耗性または耐久性を提供する非セルロースの糸または繊維である。別のタイプはセルロースの糸または繊維で、優れたウェット性能を提供する。ある用途では、セルロースの糸または繊維だけで十分な耐久性とウェット性能を提供できる。
【0049】
セルロースベースの糸または繊維と、非セルロースベースの糸または繊維のブレンド比は、100:0から0:100の範囲であり得る。セルロースベースの糸または繊維の比率は5%から100%、非セルロースベースの糸または繊維の比率は0%から95%であることが好ましい。また、非弾性糸または非弾性繊維に対する弾性糸または弾性繊維の比率は、2%から40%であってもよい。
【0050】
Vリブドベルトを製造するための方法は、マンドレルの周りにベルトマトリックス(ベルト本体材料および引張コードを含む)を配置し、マンドレルの周りを覆うルトマトリックスの外周の周りに本発明の帆布を配置し、内周面に複数の溝を有するシェルの内側にマンドレルを配置し、ベルトマトリックスと帆布をシェルの内周面に向かって拡張し、それによりマルチリブ構造の下で帆布を内周面に押し付け、ベルトマトリックスを帆布とともに硬化させることを含み得る。帆布は、マルチリブ構造と拡張された円周に適応するように伸縮する。
【0051】
本発明のストライプ状帆布を使用して様々なタイプのベルトを製造するために、既知の如何なる方法も使用することができる。ストライプ状帆布が使用され得るベルトの製造方法は限定されない。
【0052】
ベルトノイズに対する様々なCOFのストライプの影響を理論的に調査するために3D FEA(3次元有限要素解析)モデルが作成された。FEAモデルは、ベルトの1つのリブが、ミスアライメント状態でプーリの溝内に径方向にスライドするモデルとして簡略化された。モデルはスティックスリップ現象を再現し、「スティック」が解放されてリブが溝に「滑り込む」前に蓄積された歪エネルギーを計算した。スリップ直前の高いエネルギー状態はノイズと関連していると考えられ、エネルギーが高いほど、スリップ時に放出されるノイズが大きくなり得る。モデルは様々なストライプ幅で実行され、スリップ時の歪エネルギーは、同じ平均COFの同等の非ストライプモデルと比較された。モデルの試験結果を表1に示す。歪エネルギーの単位はN・mmであるが、モデルのスケールは実際のベルトのスケールではないため、表1の歪エネルギーは相対的なランキングと考えられる。結果は、2つの異なる摩擦係数を持つストライプが、同じ平均COFを持つ非ストライプ表面と比較して、摩擦ベルト伝動でのノイズの原因となる歪エネルギーの解放を大幅に低減する可能性があることを示している。ストライプ幅は、改善の余地にはほとんど影響を与えないように見受けられる。幅の狭いストライプは幅の広いストライプよりも配向において優れているように見えるが、違いはそれほど大きくない。したがって、1mmのストライプは、%で歪エネルギーの最大の減少を示し、次に2mmのストライプが続くが、3mmのストライプと10mmのストライプは互いに同じようなものである。
【0053】
本発明は、COF試験およびミスアラインメントノイズ(MAN)試験において実際のベルトでも実証された。
【0054】
COF試験は、SAE J2432-MAR2015§10に従って、図12に示すレイアウトで実施された。図12を参照すると、従動試験プーリ122および原動プーリ121は両方とも、マルチVリブプロファイルで121.6mmの直径を有する。プーリ123、124、および126はアイドラである。各プーリは、従動プーリ122において20度のラップ角度が維持するように配置されている。原動プーリ121は400rpmで回転される。プーリ125には、プーリ125において180Nの緩み側ベルト張力が与えられるように、360Nの荷重Wが掛けられる。トルクが試験プーリ122に加えられ、プーリが回転を停止するまでゼロトルクから上昇される。COFは、計測された最大トルクから計算される。この試験では、ベルトの有効摩擦係数が測定されるが、これは上述したFEAモデリングで使用された理論上の摩擦係数と数値的に一致しないことを理解しておく必要がある。ウェットCOF試験は、プーリ121と122の間のベルトに300ml/minで水を噴霧し、従動プーリ122のラップ角度を45度に増やし、原動プーリ121を800rpmで回転させることによって行われる。
【0055】
ミスアラインメントノイズ(MAN)試験は、SAE J2432-MAR2015§9に従って、図13に模式的に示されている4点ドライブで実施された。図13を参照すると、プーリ311、132、および133は、それぞれ101mm、61mm、および140mmのマルチVリブ形状および直径を有する。プーリ131は原動プーリで、時計回りに1000rpmで回転する。プーリ134は直径50mmのアイドラである。プーリ133は、レイアウトの平面に対して垂直に変位でき、ミスアライメント角度を発生する。張力プーリ132の自重により、約267Nの張力が試験ベルトに加えられた。次に、プーリ133は、一定量オフセットされ、ノイズがマイクロフォンMによって測定された。湿度90%でのMAN試験には、ウォーターミストノズル136が含まれている。ベルトは、SAE J2432-MAR2015に従って、新品およびコンディショニング後にテストされた。ノイズの結果はデシベル(dB)の単位で得られる。静かなベルトで測定されたバックグラウンドノイズは、79~82dBの範囲である。約85dBを超えるベルト試験は、かなりノイズが大きいと言える。
【0056】
均一な摩擦面を備えた従来のベルトに対する本発明のストライプドベルトの利点を説明するために、一連の3つのVリブドベルトが形成された。ベルトの構造は、リブを覆う帆布のみが異なる。比較例(“Comp.”)ベルトAおよびBは、図5に示されるように、標準的なl×lジャージーニットのリブカバーを備えていた。ベルトAについては、標準のものに比べて、帆布は比較的小さいストレッチでモールドに装着され、比較的高い糸密度とされた。これにより、ほとんどのリブ表面において繊維は0.73と比較的低いドライCOFをもたらした。また、ミスアラインメントによるノイズの最も厳しい2つの試験条件(低温および高湿度においてプーリの2°のミスアラインメント)において低ノイズであった。ベルトAは静かに作動するが、より高いCOFを必要とするアプリケーションが存在する。
【0057】
比較例のベルトBについては、帆布は、約30%低い糸密度に対応するやや高いストレッチレベルでモールドに装着され、これによりリブ表面へのゴムのストライクスルーが多くなり、一部のアプリケーションで必要される1.59の高いドライCOFとなった。ただし、ベルトBは、両ミスアライメント試験条件において非常に大きいノイズのもと作動した。なお、ゴムのより多い表面において典型的であるはずのウェットCOFは比較例のベルトAよりも低かったが、ウェット試験の結果は、ストライクスルーが多いベルトBの方がノイズが大きくなった。
【0058】
本発明のベルトである実施例1は、図1に示されるストライプ状帆布を使用し、図7に示されるように、比較例のベルトBと同様の全体的な糸密度であるが、高いスロライクスルーのストライプと低いストライクスルーのストライプをリブに備え、比較例のベルトBにおいて望まれた高いCOFに近い1.54の平均ドライCOFを示した。ただし、本発明のベルトである実施例1のウェットCOFは同様に高くなり、比較例のベルトAの値に近づいた。本発明のベルトである実施例1は、ドライおよびウェットの平均COFがノイズの大きいベルトBのそれと非常に類似しているものの、2つのミスアライメント試験条件で静かに作動する。これは、同じ平均COFの均一なベルトよりもストライプドベルトの方が、ノイズが小さいという前述のモデルの予測を裏付けている。
【表1】
【表2】
【0059】
要するに、本発明者らは、異なる糸密度の帆布ストライプ、および異なるレベルのゴムのストライクスルーを備えたベルトは、両方のストライプの好ましい側面を顕在させることができることを発見した。すなわち、2つのタイプのストライプに予想されるマイナス面がなく、各タイプのストライプに求められる特性の望ましい組み合わせとなる。したがって、ベルトCは、ゴム状の表面に期待される高いドライCOFを示しながらも、繊維表面に期待される高いウェットCOFも示し、従来のより高いCOFベルトのドライ試験で予想されるノイズの発生はなく、ウェット試験でゴムベルトに予想されるノイズもない。
【0060】
帆布とVリブドベルトの追加例を表3に示し、様々なストライプ状帆布構造が伝動ベルトの製造に使用できることを示す。実施例2から実施例6は、前述のモデルのように、比較的狭いストライプである。実施例2のニット構造は、図6に示されたものと同様である。実施例3のニット構造は図6に似ているが、ドロップステッチ区間に2本ではなく3本の非アクティブな針がある。実施例4~6のニットが図8に示される。実施例9~14のニットは上述の実施例1と同様である。実施例7と実施例8のニットは実施例1と似ているが、表3に示すように、ストライプの幅が異なる。
【0061】
表3は、COFで示されるように、モールド上にベルトスラブを構築するときに帆布に掛かるストレッチ量がゴムのストライクスルーにどのように影響するかも示している。ストレッチが増大すると、帆布の密度が低下し、帆布がより開いた状態、すなわちゴムのストライクスルーに対して透過性が高くなる。ストライクスルー透過率が増加すると、ベルトのCOFが増大する。実施例9~14のノイズ試験の結果を比較すると、大きく伸長された帆布は、最終的にベルトのノイズが問題になる程度に高いCOFをもたらすようである。実施例4と実施例9を比較すると、上記のFEAモデルが予測したように、細いストライプは太いストライプよりもノイズが少ないことを示している。
【表3】
【0062】
本発明の第2実施形態(または実施形態のグループ)によれば、異なるCOFのストライプは、ベルト表面に2つの異なるゴム組成物を交互に配置することによって得られる。例えば、1つの組成物は、他の組成物よりも低いCOFを与える摩擦調整剤を含み得る。ストライプを得るのに任意の適切なプロセスを利用できる。2つのゴム組成物は、ゴムのストライプ状のシートを得るために、例えば、共押出しまたは共カレンダー成形される。ストライプ状のシートは、その後、ベルトモールドに装着されるか、他のベルト材料により増強されるであろう。また別の実施例としては、第1COFの第1ゴム材料がシート状に成形され、その上に第2COFの第2ゴム材料がコーティングプロセス、押出プロセス、またはプリントプロセスによってストライプ状に貼着されるかもしれない。2つのゴム組成物は、例えば、織布、ニット、または不織布からなるキャリア帆布上にストライプ状に適用され、そしてベルト構造に含まれ得る。ゴムのストライプをキャリアフィルムに貼着して、ベルトまたはモールドに転写することがでる。
【0063】
ゴム組成物のCOFを低下させるための適切な摩擦調整剤には、TFE、PTFE、FEPなどのフッ素ポリマー、モリブデン化合物、黒鉛素材、シリコーン素材、ブルーミングオイルなどが含まれるが、これに限定されるものではない。摩擦調整剤は、例えば粉末、液体、または繊維状である。繊維は、低COFゴムまたは高COFゴムの何れにも使用できる。綿または他のセルロース繊維は、2つのゴムの一方または両方で特に有用であり得る。ストライプの2つのゴムのうちの1つは、ベルトの本体と同じ構成であるかもしれない。ベルト本体は、高COFゴムまたは低COFゴムの何れかであり、他のゴム組成物がストライプの形で追加される。
【0064】
ストライプは、例えば、ベルトモールドまたはマンドレルにスパイラルパターンで装着される。また、ストライプパターンは、適切なプリント、コーティング、または押し出しプロセスによって、完成したベルトの表面に適用されてもよい。
【0065】
図1~3に示されるストライプは、この第2実施形態によるゴムストライプであり得る。
【0066】
本発明の第3実施形態(または実施形態のグループ)では、異なるCOFのストライプが、ゴム、布、またはゴム引き布の組成物を植毛ストライプと交互に配置することによって得られる。「植毛」とは、短繊維をベルトの表面に塗布し、これにより生じる繊維の表面配合を意味する。米国特許第6,561,937号明細書および米国特許第3,190,137号明細書は、均一な植毛表面を生成するために知られている様々な方法および材料を記載しており、参照により本明細書に組み込まれる。これらに開示される方法の何れも、本発明によるベルト表面上に植毛ストライプ、すなわち植毛されたストライプを生成するに適用できる。接着剤の選択、下方に位置する帆布またはゴム表面、すなわち交互に配置されるストライプに応じて、また植毛素材の選択に応じて、植毛ストライプは、交互に配置される領域よりも高いまたは低いCOFを有することができる。ゴム表面のストライプパターンの植毛は、ベルトの成形前または成形後に適用できる。適切な任意の植毛繊維、接着剤、および繊維を堆積し接着するためのプロセス、すなわちベルト表面に植毛するためのプロセスを使用できる。例えば、植毛は、機械的方法、ウインドブローン法、静電プロセス、またはそれらの組み合わせにより行われ得る。有用な繊維としては、綿、レーヨン、亜麻、ケナフなどのセルロース系繊維、ナイロン、アラミド、ポリエステルなどの合成繊維、あるいは炭素、ガラス、または他の無機繊維や、それらの組み合わせが挙げられる。
【0067】
図14は、植毛ストライプ142がゴム状ストライプ144と交互に配置されている例示的なベルト140を示している。
【0068】
異なるCOFのストライプは、3Dプリントまたはインクジェットプリント、押し出し、浸漬、スプレー、フリクショニング、スキミング、またはそれらの組み合わせや、2つのCOF値を持つストライプを作成する他の手段によって、ベルト表面に導入することもできる。これをキャリア素材のシート上で実行して、モールドに適用することもできる。キャリア素材を除去(転写ラベルプロセス)することも、キャリア素材をベルトに含めることもでき、含める場合、キャリア素材はCOF素材の1つでもあり得る。また、ストライプは、成形直後または成形前にベルト本体に適用することもできる。成形後に適用する場合、ベルトは、ストライプが適用される切削またはグラインドされたベルトプロファイルを有し得る。ストライプは、ベルト表面上で任意の角度で終わる可能性がある。素材は、ベルト製造工程でシートとして適用されることも、所望の角度でストリップとしてらせん状に巻くこともできる。
【0069】
本発明およびその利点は詳細に説明されてきたが、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、様々な代替、置換、および変更をここで行うことができることを理解されたい。更に、本出願の範囲は、本明細書に記載されている特定のプロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法、およびステップの実施形態に限定されることを意図するものではない。当業者は、本発明の開示から、ここで説明された実施形態に対応するのと実質的に同じ機能または実質的に同じ結果をもたらす現在存在し、または後に開発されるプロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法、またはステップを、本発明に基づき用いることができることを容易に理解するであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、その範囲内に、そのようなプロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法、またはステップを含むことを意図している。本明細書に開示される本発明は、本明細書に具体的に開示されていない要素が存在しない場合にも適切に実施することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【国際調査報告】