IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エクスハレイション テクノロジー リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-24
(54)【発明の名称】呼気の収集デバイス
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/02 20060101AFI20220817BHJP
   G01N 35/08 20060101ALI20220817BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
G01N1/02 W
G01N35/08 A
G01N37/00 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021574995
(86)(22)【出願日】2020-06-19
(85)【翻訳文提出日】2022-02-07
(86)【国際出願番号】 GB2020051487
(87)【国際公開番号】W WO2020254819
(87)【国際公開日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】1908784.0
(32)【優先日】2019-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521207298
【氏名又は名称】エクスハレイション テクノロジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】ヘレ フォンク-ニールセン
【テーマコード(参考)】
2G052
2G058
【Fターム(参考)】
2G052AA34
2G052AD02
2G052AD46
2G052CA04
2G052CA39
2G052DA08
2G052DA09
2G052EB04
2G052GA11
2G052GA21
2G058CC08
2G058EB19
2G058GA01
2G058GA11
(57)【要約】
ここに開示される発明は、呼気デバイスに組み入れるのに適した呼気凝縮液分析カートリッジを提供する。カートリッジは、周辺領域を有して呼気を受容する凝縮ゾーンを備える。凝縮された呼気サンプルが分析される分析チャンバが含まれる。凝縮ゾーンの表面は、周辺領域内に流体フロー経路を生成するように作用する。周辺領域を介する流体フロー経路は、凝縮ゾーンを分析チャンバに接続する。リップが、周辺領域を少なくとも部分的に覆い、該リップは凝縮ゾーンと協働して流体フローを制御する毛管を形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼気デバイスに組み入れるのに適した呼気凝縮液分析カートリッジであって、
周辺領域を有し、呼気を受容する凝縮ゾーンと、
サンプルが分析される分析チャンバと、
を備え、
前記凝縮ゾーンの表面は、前記周辺領域内に流体フロー経路を生成するように作用し、
前記凝縮ゾーンは、前記周辺領域を介して前記分析チャンバに流体フロー経路によって接続され、
さらに、前記周辺領域を少なくとも部分的に覆うリップを備え、該リップは、前記凝縮ゾーンと協働して流体フローを制御する毛管を形成する、カートリッジ。
【請求項2】
前記凝縮ゾーンは円形である、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項3】
前記凝縮ゾーンは、15.0~25.0mmの直径を有する、請求項2に記載のカートリッジ。
【請求項4】
前記直径は20.0mmである、請求項3に記載のカートリッジ。
【請求項5】
前記凝縮ゾーンは、親水性材料で被覆又は形成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項6】
前記凝縮ゾーンの表面の親水性は、呼気凝縮液との20.0°未満の角度を形成するように選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項7】
前記角度は5.0°~15.0°である、請求項6に記載のカートリッジ。
【請求項8】
前記検知ゾーンはエアベントを含み、前記凝縮ゾーンの表面の親水性は、呼気凝縮液との23.0°~35.0°の角度を形成するように選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項9】
前記角度は、24.0°~26.0°となるように選択される、請求項8に記載のカートリッジ。
【請求項10】
前記リップは、第1の端部が前記分析チャンバに隣接又は連続する狭幅ストリップを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項11】
前記ストリップの幅は125~400μmである、請求項10に記載のカートリッジ。
【請求項12】
前記ストリップの幅は125~300μmである、請求項11に記載のカートリッジ。
【請求項13】
前記凝縮ゾーンからの前記ストリップの距離は、好ましくは125~350μmである、請求項10~12のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項14】
前記距離は250~300μmである、請求項13に記載のカートリッジ。
【請求項15】
前記凝縮ゾーンの一部分は疎水性材料で構成又は被覆され、前記一部分は前記分析チャンバ及び前記周辺領域に隣接して位置する、請求項1から14のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項16】
前記カートリッジの全体寸法は、従来型のクレジットカードの全体寸法のものである、請求項1から15のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項17】
前記カートリッジは、該カートリッジが屈曲可能となることを補助する層状構造体を有する、請求項1から16のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに記載される発明は、通常は従来型のクレジットカードと同様のサイズであるとともに医療診断における使用のために設計されたマイクロ流体カートリッジに関する。カートリッジは、具体的には、呼気凝縮液の収集のためのもの、及び同じカートリッジ内の規定サンプル体積の呼気凝縮液の即時の分析のためのものである。カートリッジ内では、サンプルは、常にカートリッジの1以上の面と接触している。
【背景技術】
【0002】
本発明は、主にヒト被検体からの呼気の収集に関するが、ただし、動物、通常は哺乳類被検体からの呼気の収集にも関する。本発明の第1の態様では、呼気を収集及び分析する使い捨て型のマイクロ流体カートリッジが開示される。カートリッジは、呼気を受容してカートリッジに方向付ける流路を設けるだけでなく、カートリッジによって特定されるデータを処理する処理機能を有する、より大きなデバイスに組み入れられた使用が意図される。一旦使用されると、カートリッジは別のカートリッジに交換され、他のサンプルを受け入れ可能となる。
【0003】
呼気及び特に呼気の肺胞部分の分析は、被検体の健康状態の良好な表示を与え得ることがよく知られている。特に、過酸化水素、NOxなどの疾患に対する特定のマーカー化合物の有無によって、特定の医療的状態が診断又は除外可能となる。
【0004】
ただし、呼気の無用な部分を含むことによる汚染なしにサンプルが正しく取得されること、及び既に著しい呼吸困難にある被検体に非常に大きな苦痛をもたらすことなくサンプルが取得されることに注意が払われるべきである。
【0005】
マイクロ流体カートリッジは、呼気分析の分野では知られているが、それには多くの欠点がある。第1に、分析において使用されるサンプルサイズは、必ずしも好適に制御されるわけではない。これにより、いずれかの計算において推定される体積は正確であるとは限らず、又は凝縮された呼気に溶解した試薬のみなし濃度が不正確となり得るため、得られる結果に誤差が生じ得る。
【0006】
さらに、従来のカートリッジのサイズでは、構成成分の質量及びそれらの潜熱容量が分析温度に影響を与えるのに充分であることに起因して、分析の温度に対する制御性が低くなる。本発明は、発明の好適な実施形態において、通常型のクレジットカードのサイズのカートリッジであって、したがって、より低い熱容量のものであり、特に、クレジットカードの製造で利用されるものと同様の材料が使用される場合に、クレジットカードなどの製造において用いられる従来的な技術に基づいて比較的容易にかつ高いコスト効率で製造可能なカートリッジを提供する。
【0007】
軽量で使い捨て型の単回使用の診断ストリップは長年にわたって知られており、具体的な周知例は血糖自己測定(SMBG;Self‐Monitoring Blood Glucose)ストリップである。
【0008】
そのようなグルコースストリップは、年間数十億枚生産され、現在のところ約15%の妥当な精度を有する。大量に製造される場合、SMBGストリップは、2~5セントの単価となる。この低コストの生産は、製造量にある程度起因し、使用される製造技術にある程度起因する。製造技術は、チャンバ及びチャネルを形成する材料のスクリーン印刷、蒸着、レーザーアブレーション、及び積層を含み得る。SMBGストリップは、射出成形、付加製法又は除去製法からは一般的には作製されない。SMBGストリップに使用される基板は標準的には可撓性/準可撓性のポリマーであり、その上に、マイクロ流体チャネル及びチャンバを有するデバイスを構築するように薄膜積層材料が積層される。
【0009】
したがって、本発明の課題は、周知の呼気分析器の上記問題を解決すべく模索することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の第1の態様によると、呼気デバイスに組み入れるのに適した呼気凝縮液分析カートリッジが提供され、そのカートリッジは、
周辺領域を有し、呼気を受容する凝縮ゾーンと、
サンプルが分析される分析チャンバと、
を備え、
凝縮ゾーンの表面は、周辺領域内に流体フロー経路を生成するように作用し、
凝縮ゾーンは、周辺領域を介して分析チャンバに流体フロー経路によって接続され、
さらに、周辺領域を少なくとも部分的に覆うリップを備え、リップは、凝縮ゾーンと協働して流体フローを制御する毛管を形成する。
【0011】
好ましくは、凝縮ゾーンは円形であり、より好ましくは15.0~25.0mm、より一層好ましくは20.0mmの直径を有する。
【0012】
凝縮ゾーンの表面は、好ましくは、凝縮流体が表面にわたる膜を形成することを可能とする親水性材料で被覆又は形成される。
【0013】
凝縮ゾーンの表面の親水性は、好ましくは20.0°未満、より好ましくは5.0°~15.0°の呼気凝縮液との角度を形成するように選択される。これにより、呼気凝縮液が凝縮ゾーンから、及び検知ゾーンへと自由に流通することができる。
【0014】
あるいは、検知ゾーンはエアベントを含み、凝縮ゾーンの表面の親水性は23.0°~35.0°未満、さらには24.0°~26.0°の呼気凝縮液との角度を形成するように任意に選択される。これにより、その後に合成質量として検知ゾーンに流入する凝縮液の臨界質量が形成可能となる。
【0015】
好ましくは、リップが、その第1の端部が分析チャンバに隣接又は連続する狭幅ストリップを含む。ストリップの幅は、好ましくは125~400μm、特に好ましくは125~300μmである。
【0016】
凝縮ゾーンからのストリップの距離は、好ましくは125~350μmであり、特に好ましくは250~300μmである。
【0017】
任意に、凝縮ゾーンの一部は疎水性材料で形成又は被覆され、その部分は分析チャンバ及び周辺領域に隣接して位置する。
【0018】
便利なことに、カートリッジの全体寸法は、従来型のクレジットカードのものである。
【0019】
任意に、カートリッジは、カートリッジを屈曲可能として、したがって当該技術分野で利用される従来型のカートリッジよりも柔軟とすることを可能とすることを補助する層状構造を有する。
【0020】
カートリッジの2つの実施形態を例示のみの目的で示す添付図面を参照して本発明をここに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】カートリッジの第1の実施形態の構成部品を示す図である。
図2】凝縮ゾーンの周辺部付近に保持された流体を示す図である。
図3a】カートリッジ内の流体フローを示す図である。
図3b】カートリッジ内の流体フローを示す図である。
図3c】カートリッジ内の流体フローを示す図である。
図4a】ベースカードの側面図である。
図4b】ベースカードの平面図である。
図4c】ベースカードの斜視図である。
図5A】カバーシートの平面図である。
図5b】カバーシートの斜視図である。
図6a図4及び5のベースカード及びカバーシートが組み立てられたものの斜視図である。
図6b図4及び5のベースカード及びカバーシートが組み立てられたものの平面図である。
図7a】カバープレートの斜視図である。
図7b】カバープレートの平面図である。
図8a図4~7の要素が組み立てられたものの斜視図である。
図8b図4~7の要素が組み立てられたものの平面図である。
図9】カートリッジの第2の実施形態の動作を示す図である。
図10】カートリッジの第2の実施形態の動作を示す図である。
図11】カートリッジの第2の実施形態の動作を示す図である。
図12】カートリッジの第2の実施形態の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、呼気凝縮液を分析するためのデバイスで使用するためのカートリッジを提供することを目的とする。呼気が収集される冷却可能な収集ゾーンが、カートリッジに組み入れられる。収集ゾーンは1以上の分析領域に流体接続され、その分析領域において、通常は、規定体積の収集された呼気が試薬と混合されてから、必要な分析物の存在及び/又は濃度を特定するように分析される。カートリッジが組み入れられるデバイスには、サンプルがカートリッジに進入した時、充分なサンプルが収集された時を特定するような機能、アッセイが行われていることに関してカートリッジからの信号に対して演算を行うプロセッサ、及び読取り値又は結果をデバイスに搭載されたディスプレイ又は遠隔のディスプレイに送信する通信手段が設けられてもよい。
【0023】
この書類内に記載されるカートリッジは、リーダーデバイス内に嵌るように設計される。デバイス内において、収集ゾーンは、デバイス内に搭載されたペルチェ冷却器のような熱シンクとの冷却係合状態とされる。呼気サンプルの冷却、凝縮ゾーンにおける呼気サンプルの膜としての凝縮、サンプルの処理及び最終的な分析を含む全ての処理は、カートリッジ内で実行される。凝縮ゾーンは、重力の影響下での収集ゾーンから検知ゾーンへのサンプルの移動を補助する親水性表面を有し、液滴の形成を回避する。
【0024】
カートリッジは、その内部に、収集ゾーン及び検知ゾーンの2つの主要なゾーンを有する。収集ゾーンのうちの凝縮ゾーンは呼気が凝縮される場所である一方で、収集ゾーンに大部分で一体化された検知ゾーンは分析物の検出及び定量化が行われる場所である。分析物の検出及び定量化は、UV-Vis分光、蛍光分光、表面プラズモン共鳴、インピーダンス分光又は電気分析化学を含む多数の分析技術によって行われ得る。電気分析化学及びインピーダンス分光を含む技術の場合、検知ゾーン内に電極を有する必要がある。これらの電極は、導電箔の接着、蒸着、厚膜印刷などを含む多数の技術によって作製可能である。これらの電極は、カートリッジの「ベース」を構成する基板上に直接塗布されてもよいし、その後にカートリッジの「ベース」にスロット化される第2の材料上に印刷されてもよい。
【0025】
カートリッジは、好ましくは、クレジットカードの形態及びサイズで提供され、クレジットカードは、多くの人にとって扱いに馴染みがありかつ最適なサイズ及び形状を有するので、ユーザの観点及び製造コストの観点の双方からの有利な効果を与えるとともに、大規模かつ低コストの製造に寄与するプラットフォームも与える。クレジットカードは、ISO/IEC7810に準拠し、年間数十億枚が製造されることから、サプライチェーンが非常に発達及び成熟しているため、非常に最適化されたコスト構造を有する。
【0026】
上述のSMBGストリップと同様に、本特許内に記載するカートリッジは、印刷及び積層処理によって作製可能であるが、SMBGストリップとは異なり、クレジットカード形態で提供される。そのような処理を用いると、より軟質な材料の使用が可能となり、カートリッジが製造可能な公差が減少する。さらに、より軟質な材料は、圧縮性を与え、カートリッジが屈曲するための容量を層状構造に与え、カートリッジがより容易にデバイス内に嵌ることを可能とする。
【0027】
カートリッジは、呼気凝縮液の収集を含む幾つかの機能を有する。呼気を凝縮及び収集する必要があることから、サンプルの相変化が必要となり、これは、医療診断用途のために設計された従来技術の使い捨て型において直面しなかった要件をカートリッジに課すことになる。その用途によって課される1つのそのような要件は、呼気収集のための大きな表面積の必要性である。秒あたりに収集可能な呼気の量は、凝縮ゾーンの表面積に比例する。カートリッジがSMBGストリップと同様の寸法、通常は7mm×20mmのように小さい場合には、妥当な時間内で患者の呼気を収集する充分な面積はないことになる。本発明のクレジットカード形態の使用によって、約20.0mmの直径の円形呼気収集ゾーンが可能となる。ただし、15.0~25.0mmの直径が検討されてもよい。これは凝縮のために大きな表面積を与えるが、冷却可能であり、それにより患者の呼気が収集可能となる。
【0028】
この発明において、充分な患者の呼気が、60秒以内に収集可能となる。医療及び医療研究市場に位置付けられた従来技術の呼気凝縮収集器は、充分な体積のサンプルを収集するために、患者は数分間にわたって呼吸することを要する。これは、多くの臨床用途及び患者群には許容可能でない。喘息、慢性肺閉塞性疾患、嚢胞性線維症などの患者を考慮すると、それらのタイプの患者は呼吸をすることすら困難であるので、患者を数分間にわたって呼吸させるという他の呼気収集カートリッジ/デバイスの要件は非倫理的であり、かつ何らかの下流側アッセイの結果に影響を及ぼし得る。
【0029】
ここに記載するカートリッジは、呼気に対する抵抗が最小化されるので、患者におけるストレスを軽減するように最適化され、収集領域が大きくかつ必要となるサンプル体積が小さいことによってデバイス内への呼吸の必要継続時間が減少する。したがって、患者は、通常時の周期的呼吸のみを行いつつ、呼気凝縮液サンプルを素早くカートリッジに提供する。
【0030】
大きな凝縮面とともに、カートリッジは、デバイスに組み入れられたマイクロ流体的特徴、チャネル及びチャンバによって、患者に更なる利益も与える。従来的な呼気凝縮液収集デバイスは、数百マイクロリットルから数ミリリットルのサンプルを収集する。この従来技術のデバイスによる体積の要件は、呼気の凝縮がどれほど効率的であっても100マイクロリットル以上の呼気凝縮液を凝縮するのに一定量の時間を要することを意味する。ここに記載するカートリッジは、4マイクロリットルの検知体積を有し、必要とされるサンプルの実際の体積におけるこの減少は、サンプル収集時間が大幅に短縮されることを意味する。検知ゾーンに対する凝縮ゾーンの体積は約10:1であり、これは充分な体積の迅速な収集をさらに補助する。
【0031】
ここに記載するデバイスでは、凝縮ゾーンに親水性表面が設けられるので、凝縮される必要があるサンプルがさらに減少する。親水性表面の有利な効果は、凝縮ゾーンの表面に液滴が形成しないことである。この液滴形成の問題は、液滴は通常10マイクロリットル以上の体積となることである。したがって、液滴形成を促進する疎水性表面は、患者が約10マイクロリットルの体積を与えなければ液滴が形成されないという結果をもたらす。そして、これらの液滴は、それらの質量が疎水力を克服して液滴が流れ始めることを可能とするのに充分となるまで、表面に「付着し続ける」。親水性表面の使用によって、凝縮液の膜が液滴内ではなく表面上に形成され、その膜は、呼気が最初に凝縮された後に非常に早く流れ始めることになる。
【0032】
収集モードにある場合、カートリッジは、好ましくは鉛直面内に保持され、サンプルを収集ゾーンから検知ゾーンに向かって下方に移動させるのには重力で充分となる。呼気凝縮液膜の移動はランダムではなく、むしろ、サンプルは縁部に向かう傾向にあり、収集ゾーンの周囲付近のリップは、壁部及び凝縮ゾーンの凝縮面との組合せにおいて、サンプルを方向付ける毛管チャネルを与える。重力下で当初は下方に移動した後のサンプルは、カートリッジがこの向きにある場合に収集ゾーンの最下点となる毛管チャンバに進入する前に、収集ゾーンの縁部を伝う。この第2のチャンバを、検知ゾーン/チャンバという。このチャンバは、その側面、通常は4個の側面の周囲において、チャンバの蓋を与える上部カバーを有する切断積層体によって閉じられている。検知ゾーンは、有効に結合されているが、収集ゾーンに対して開口している。チャンバはまた、収集モードにありかつ患者がデバイス内に息を吹き込んでいる間には、鉛直面内に保持される。
【0033】
他の箇所に記載する一部の呼気凝縮デバイスは、鉛直面内に位置決めされた収集ゾーンを有するが、水平面内にセンサを有し、サンプルは一方の表面から他方の表面に滴下する。この構成は、一方の表面から他方の表面への液滴として移動するためには:液滴を形成してその液滴が表面から切り離されるためには、液滴が臨界質量を有していなければならないという不利な点を有する。ここでも、クレジットカードの形態を有して同一平面にあるカートリッジ内の収集ゾーン及び検知ゾーンによって、呼気凝縮液膜が収集ゾーンから検知ゾーンに容易に流通することができる。サンプルは、凝縮ゾーンの縁部に形成された毛管チャネルの縁部の壁部に沿って検知ゾーンに誘導される。
【0034】
本実施形態における検知ゾーンは、底部から充填されていく。これは、その後に底部から充填される前にサンプルがチャンバの側部を下方に流れるためである。これは、サンプルが均一な態様で毛管チューブを充填するとともに毛管の前面から充填していくように促進されることが多いSMBGストリップとは別のものであり、液体サンプルの前方に捕捉された空気の前面を効果的に押し出す。SMBGストリップは、閉じ込められた空気に逃げ道を与えるエアベントを有することが多い。捕捉された空気の問題は、クレジットカードデバイスの本実施形態において回避される。これは、液体サンプルはチャンバの底部に向けて壁部を下方に誘導され、チャンバを底部から充填するためであり、この過程は、サンプルの収集中にカートリッジの鉛直配置によって補助される。
【0035】
この検知チャンバ内で、試薬が、サンプルに添加可能となる。サンプルに対して電気化学的測定を行うために、pH及び導電性を含む幾つかのパラメータを制御することが賢明であるので、チャンバ内で、乾燥試薬が電解質の緩衝及び添加のために与えられる。また、特異性を持たせるために、分析物又は対象のパラメータを測定するように設計されたチャンバ内でアッセイを有することが必要となる。一酸化窒素、pH、過酸化水素などの分析物の場合、特異信号を与えるように設計されたアッセイが用いられることが多い。
【0036】
上述のように、アッセイは、サンプル体積に対する試薬の添加を必要とすることもあり、したがって、追加の試薬はその後に分散して所定の濃度を与える必要があるので、流体体積を制御する能力は一層重要である。例えば、多くの体外診断アッセイ(IVDS;In Vitro Diagnostic assays)において、光学的又は電気化学的に活性な材料が、サンプルに添加される。これらの種の濃度は、最終測定値に影響を与え得るものであり、アッセイの精密度及び精度の双方に影響を与える。アッセイに含まれるこれらの材料の質量は、最初に、製造工程、例えば、チャンバ又はウェル内への既知の質量の材料の制御された堆積によって制御されるが、サンプル内の最終濃度は材料が分散及び/又は溶解するサンプルの体積に依存する。サンプル体積の相違はそのサンプル内の添加材料の濃度に影響を与え、体積のばらつきはその後にアッセイの結果の精度に影響を与える。
【0037】
体積の制御は、一定体積のチャンバ、ポンプ及びバルブなどを用いて達成可能である。これらのマクロワールドな解決手段の一部はミリリットルよりも大きな体積には良好に作用するが、バルク特性に対して表面相互作用がより大きくなるマイクロリットルスケールの体積にはあまり有効ではないことがある。重力の影響下で充填されるとともにサンプルが一定体積のチャンバに進入するカートリッジは、ここに記載する発明によるものである。マイクロ流体用カートリッジは、チャンバが正しい体積まで充填されるとそれ以上の液体がチャンバに進入せず、過剰な液体はチャンバの外部に保持され、チャンバ内部のサンプルとチャンバ外部のサンプルとの間に非常に小さな接点しか有さないという特徴を有する。この小さな接点は、チョーク点として作用して、チャンバ内部の流体とチャンバ外部の流体との間に非常に小さな質量又は熱交換しかないという結果をもたらす。
【0038】
デバイスの一実施形態では、収集ゾーンが設けられ、収集ゾーンでは、呼気などの蒸気サンプルが凝縮され、凝縮が起こる表面の親水性に起因して、サンプルが重力下で検知ゾーンへの連続膜として収集ゾーンを下方に流通する。収集ゾーンの縁部周辺の部分的な蓋を含めることによって、サンプルの移動膜が伝わり易いチャネルが生成される。流動膜は、検知ゾーンのチャンバ内に移動し、溶液はチャンバの側部を下方に流れて表面張力によってチャンバの側部に「張り付き」、チャンバを連続的に底部から効果的に充填する。流体が流れ続けるシナリオでは、越流がサンプルに直接接触したままチャンバがオーバーフローし、合計体積が不明となることが予期され得る。ここに記載する設計では、1以上の毛管シンクによって、オーバーフローがチャンバ内でサンプルに自由に接触することが防止される。チャンバが充填される前に、シンクは流体サンプルをチャンバに誘導する部分となるが、チャンバが充填されると、現在充填されているチャンバの圧力によって、更なる流体がチャンバに進入することが防止される。流体がオーバーフローしてチャンバの上部に直接蓄積するのではなく、越流は毛管シンクに仕切られ、追加のサンプルは毛管オーバーフローシンク内に残される。
【0039】
さらに、収集ゾーンとの間の界面は、オーバーフローシンクとサンプルを含むチャンバとの間の湿潤な接触部が0.2mm未満の表面積を有するような材料で構成及び/又は形成され、したがって、それはチャンバ内のサンプルと、オーバーフローして毛管オーバーフローシンク内に捕捉されたサンプルとの間に非常に小さな界面しか与えない。試薬が検知チャンバ内で受動的又は能動的に添加される状況では、試薬が溶解するサンプルの体積がチャンバの寸法によって制御される一方で、それ以外の場合には未知のサンプル体積のオーバーフローは小さな界面を介してサンプルと接触するのみであるので、チャンバ内でサンプルに添加された材料の濃度のより正確な制御が保証される。
【0040】
界面は、毛管チューブなどの形態の構造などの形態を有し得る。代替的に又は追加的に、親水性ストリップ又はチャネルがチャンバ内の体積をチャンバ外のオーバーフローサンプルに結合させることを除き、収集ゾーン及び検知ゾーンの表面は疎水性材料で形成され得る。過剰なサンプルは、サンプルが吸着する表面積を与え、それにより、サンプルが検知チャンバに逆流し又は逆流しようとすることを防止するのに充分なエネルギーゲインを与える毛管構造によってチャンバ外部に存在したままとなるようにさらに促進されてもよい。
【0041】
この発明は、最初は検知チャンバ内のサンプルの体積及びその後のチャンバ内のサンプルに受動的又は能動的に添加された任意の材料の濃度のエレガントな制御を提供する。最終的なサンプルの検知体積が制御され、いずれの過剰なサンプルも検知チャンバの外部で保存される。結果として、分析を向上するために検知チャンバ内のサンプルに添加されるいずれの材料も、制御された最終濃度を与えるように溶解及び分散し得る。
【0042】
オーバーフローシンク毛管チャンバに結合された、サンプル用の毛管制御による主たるチャンバの使用は、流体レベルの検知、能動的なバルブ開閉及び/又はポンプ作動などを必要とすることなくサンプルの体積の制御を与える。
【0043】
図面を具体的に参照すると、図1は、発明の第1の実施形態によるカートリッジの内部作用構成を示す。カートリッジ10の全体的な外寸は、幅約38mm及び長さ約80mmを有するベース層11の寸法と同様である。
【0044】
これに分析層12が積層される。分析層12は直径約20mmの凝縮ゾーン13を含み、凝縮ゾーン13はその表面の大部分に沿って露出され、使用時にデバイスのマウスピース(不図示)に流体接続されることにより、ユーザからの呼気を受容し、その呼気が凝縮ゾーン13において流体に凝縮する。凝縮ゾーン13の表面は、凝縮された呼気がその表面にわたって膜として拡がるようにする親水性材料で形成又は被覆される。第1の実施形態では、その材料は、凝縮流体と当該材料との間の接触角が20.0°未満、好ましくは5.0~15.0°となるような親水性を有する。この膜構造は、分析領域が最下部となるようにカートリッジ10が保持される場合に流体が分析チャンバ15に向かって凝縮ゾーン13の縁部に沿って下方に流れるように作用する。
【0045】
前述したように、分析チャンバ15内の流体の体積が、正しく規定された体積となることが重要である。したがって、正しい体積が得られることを確実にするために、一旦正しい体積に達すると、凝縮ゾーン13に残る流体の更なる流入又は流体との混合が、最小化される。
【0046】
この目的のため、リップ16a、16bが、凝縮ゾーン13の縁部14の領域において凝縮ゾーン13の表面上でかつ表面に平行に設けられる。リップ16a、16bを図2に示す。図2の実施形態から分かるように、リップ16a、16bは、狭幅ストリップ19a、19bよりも広い幅の部分17a、17bを有し、その各々は分析チャンバ15に隣接して終端する第2の端部を有する。それにより、分析に必要ではない流体による分析チャンバ15における流体との接触又はそこへの流入は制限される。分析チャンバ15はルーフ18によって覆われ、それは分析チャンバ15のベース及び壁部とともに分析チャンバ15内の流体に必要な正しい体積を与える。
【0047】
好ましくは、リップは、第2の端部が分析チャンバに隣接又は連続する狭幅ストリップを含み、好ましくは125~400μm、特に好ましくは125~300μmの幅を有する。
【0048】
図3a~3cにまとめるように、流体は、凝縮ゾーン13において凝縮する。凝縮流体は、凝縮ゾーン13の縁部の周囲を流れて分析チャンバ15の下側領域20に流入する。必要量の流体が分析チャンバ15に入るまでフローは続く。その後、更なる流体が、リップ16a、16bの構造の下部に閉じ込められる。この閉じ込めは、任意的な実施形態において、リップ16a、16bの下部の表面を分離する凝縮ゾーン13の疎水性領域21によって補助され、凝縮ゾーン13の当該領域21は疎水性材料で形成又は被覆されている。
【0049】
ここで、発明の実施形態によるカートリッジのアセンブリを示す図4a~8bを参照する。組み立てられたカートリッジは、当技術で公知の手段によってともに保持された複数の層で構成された層状構造体を有する。層状構造体は柔軟性及び強度をカートリッジに与え、これは一般的に重要であるが、例えば、カートリッジが農業環境において使用されている可能性がある例、条件が医療環境ほどには良好に制御されていない例についても重要である。図4a~4cに、カートリッジの他の要素を支持するベースカード40を示す。ベースカード40は、略矩形であり、カートリッジの動作要素を収容する多数の切り欠き及び開口を有する。
【0050】
ベースカード40は略円形の中央開口41を有し、それは、例示の実施形態では10.5mmの半径を有する。開口の壁部は、凝縮ゾーンのリムの一部を構成する。更なる開口42は、分析領域を含む検知ゾーンを収容するような形状とされる。幅2.0mmのチャネル43は中央開口41を更なる開口42に接続させて、流体が収集ゾーンと検知ゾーンの間で流れることを可能とし、かつ、一部の実施形態では、分析を行うための試薬、電極などを備えるセンサカードを受容する。半径3.0mmの開口44によって、ベースカード40が周知の固定手段によってカートリッジの他の要素に固定可能となる。
【0051】
使用時に、ベースカード40は、ベースカード40が組み入れられるデバイスの本体に固定される。デバイスには流路が設けられ、その一端がユーザからの呼気を受容する。流路の第2の端部は、呼気又はその成分を収容するように開口42に合わせられる。
【0052】
図5A、5bは、使用時にベースカード40の表面45に着座して固定される第1のカバーシート50を示す。ベースカード40と同様に、第1のカバーシート50は中央開口51を有し、それは使用時に凝縮器プレートの壁部を構成する。中央開口51は、雫形状を有するが、その半径が中央開口41のものと一致する略円形部分を有する。チャネル55によって、適所に位置し得る何らかのネジ、ピン又は他の固定手段に関してカバーシート50がスライド可能とされて、開口54によって、カバーシート50が適所に固定可能となる。
【0053】
図7a,7b及び8a,8bは、カバーシート50上に固定された最終カバープレート70を示す。カバープレート70は、透明材料で形成されることが多く、平坦であり、固定手段を貫通可能とする開口74によって固定可能である。カバープレート70の一方の面は、大部分において、親水性材料によって覆われ、又は一部の実施形態では親水性材料によって形成され、その親水性材料は、それの上に当たって凝縮する呼気に膜を形成させるものである。カバープレート70は、親水性表面が開口44、54及びユーザからの呼気のフローに向くように、上述のカートリッジの他の要素に固定される。
【0054】
使用時に、この実施形態では、カバープレート70は、凝縮器プレートとして機能するので、最終的に組み立てられたデバイスにおいて、冷却手段と動作可能に接続されることになる。したがって、開口41、51内にあるカバープレート70の部分71は、冷却されて、そこに当たる呼気に対するヒートシンクとして作用し、それを液相に凝縮させる。
【0055】
図8a,8bから分かるように、部分71から検知ゾーンへの出口の領域では、ベースカード40が形成される材料は、略三角形の部分(表面)45、46においてカバーシート50の領域を越えて延在する。三角形部分(表面)45、46は、カバープレート70の表面及び開口41、51の壁部と結合して、過剰な液体を検知ゾーンから引き出すように作用して毛管チューブを形成し、それにより検知ゾーン内に正しい体積を与える。凝縮ゾーンからの三角形部分までの距離は、良好な毛管効果を与えるように、好ましくは125~350μm、特に好ましくは250~300μmである。
【0056】
好ましくは、リップは、第1の端部が分析チャンバに隣接又は連続する狭幅ストリップを含む。そのストリップの幅は、好ましくは125~400μm、特に好ましくは125~300μmである。
【0057】
図9~12に関して、これらは、必要な体積の液体を分析ゾーンに与えるように発明の第2の実施形態によって動作するカートリッジ90を示す。第2の実施形態は、凝縮器プレート91の表面が、凝縮呼気が表面上に膜を形成するようなものである点で、発明の第1の実施形態と同様に動作する。さらに、正確な測定が行われるようにするため、液体の正しい体積が確実に分析領域内に存在するように、デバイスにはリップ92、細いストリップ93及び他の構成が設けられる。
【0058】
親水性材料は、第2の実施形態では、23.0~35.0°、好ましくは24.0~26.0°、さらに好ましくは25.0°の凝縮呼気に対してより高い接触角を与えるように選択される。標準的な分類の使用可能な化合物はポリエステルである。これにより、凝縮呼気は、まず凝縮器プレート91から分析領域94に流れることが阻止され、プレート91上に蓄積される。
【0059】
凝縮呼気はそれでも親水性材料の表面上に膜を形成するが、臨界質量が蓄積すると、これにより、膜が崩壊して液体が分析領域94に流入することになる。液体は即座に流れるので、分析領域94内の空気が凝縮器プレート91に向けて漏出する機会が減少することになり、その空気は、液体が分析領域94に進入するにつれて液体の流入を阻止することになる。したがって、エアベント95が設けられ、そのエアベントは、そこを通る液体のフローに充分な直径を有さない。エアベント95は、寸法3×0.12mmのチャネルを長さ0.2mmにわたって備え、寸法4×0.45mm及び長さ3mmを有する出口領域に続く。したがって、液体が分析領域94に進入するにつれて、図11の矢印Aで示すエアベントを介して空気が出ていく。したがって、分析領域94は完全にエアポケットなく充填され、過剰な液体は細いストリップ93及びリップ92によって運ばれる。
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図4a
図4b
図4c
図5A
図5b
図6a
図6b
図7a
図7b
図8a
図8b
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】