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特表2022-537188低グリシドールモノグリセリド組成物の製造方法及び低グリシドールモノグリセリド組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-24
(54)【発明の名称】低グリシドールモノグリセリド組成物の製造方法及び低グリシドールモノグリセリド組成物
(51)【国際特許分類】
   C11B 3/04 20060101AFI20220817BHJP
   B01J 21/12 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
C11B3/04
B01J21/12 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021575070
(86)(22)【出願日】2020-06-18
(85)【翻訳文提出日】2022-01-21
(86)【国際出願番号】 EP2020066989
(87)【国際公開番号】W WO2020254506
(87)【国際公開日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】19180792.4
(32)【優先日】2019-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521549327
【氏名又は名称】パルスガールド アクチーセルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】プレウス、ラース
(72)【発明者】
【氏名】ヘーンケ、アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】クリステンセン、クラウス ヒード
【テーマコード(参考)】
4G169
4H059
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169BA03B
4G169CB35
4H059BA26
4H059BA30
4H059BA33
4H059CA33
4H059CA72
4H059EA17
(57)【要約】
本発明は、グリシドール含有量の少ないモノグリセリド組成物の製造方法に関する。さらに、本発明は、該方法により得ることができるそのようなモノグリセリド組成物に関するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも25%w/wのモノグリセリドを含み、グリシドール相当物の含有量が低いモノグリセリド含有生成物を製造する方法であって、該方法は、以下を含む:
少なくとも25%w/wのモノグリセリド及び少なくとも2ppmのグリシドール相当物の合計含有量を含む第1のモノグリセリド含有組成物(mcc1)を熱処理するステップi)であって、前記熱処理は、モノグリセリド含有組成物を90~210℃の範囲の温度に、グリシドール相当物の合計含有量を少なくとも50%低減するのに十分な時間加熱することを含むステップi)、及び/又は
少なくとも25%w/wのモノグリセリド及び少なくとも1ppmのグリシドール相当物の合計含有量を含む第2のモノグリセリド含有組成物を固体酸性材料と接触させるステップii)。
【請求項2】
ステップi)の熱処理が、第1のモノグリセリド含有組成物を95~195℃、より好ましくは100~180℃、さらに好ましくは120~170℃、最も好ましくは140~160℃の範囲の温度に加熱することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップi)の熱処理が、第1のモノグリセリド含有組成物を、mccのグリシドール相当物の合計含有量を少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%低減するのに十分な時間、加熱することを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ステップi)及び/又はステップii)の熱処理が、不活性雰囲気を用いて行われる、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
ステップii)の固体酸性材料が、モノグリセリド含有組成物の重量に対して0.1~10w/w%の量で使用される、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
ステップii)の固体酸性材料が、10gの固体酸性材料を25℃で100mlの脱塩水中で混合し、10分間平衡化させたときに最大でも5のpH、より好ましくは最大でも4のpH、さらに好ましくは最大でも3のpH、最も好ましくは最大でも2のpHを提供する、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
ステップii)が、第2のモノグリセリド含有組成物を50~180℃、より好ましくは60~160℃、さらに好ましくは70~140℃、最も好ましくは80~120℃の範囲の温度に加熱することを含む、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
ステップii)の固体酸性材料が、ゼオライト、ゼオタイプ、酸性粘土、金属酸化物、混合金属酸化物、硫酸化酸化物、担持酸及び陽イオン交換樹脂、並びにこれらの組み合わせからなる群からの1又は複数から選択される、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
第1及び/又は第2のモノグリセリド含有組成物が、以下を含む、請求項1~8のいずれかに記載の方法:
‐少なくとも25%w/wのモノグリセリド、
‐少なくとも1ppmのグリシドール相当物、及び
‐グリセロール、ジグリセリド、及びトリグリセリド。
【請求項10】
第1及び/又は第2のmccが、少なくとも30%w/wのモノグリセリド、より好ましくは少なくとも34%w/w、更に好ましくは少なくとも40%、最も好ましくは少なくとも50%w/wを含む、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
第1及び/又は第2のmccが、最大30%w/wのグリセロール、より好ましくは最大25%w/w、さらに好ましくは最大15%、最も好ましくは最大5%w/wを含む、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
第1及び/又は第2のmccが、最大で30w/wのトリグリセリド、より好ましくは最大で20w/wのトリグリセリド、さらに好ましくは最大で10w/wのトリグリセリド、最も好ましくは最大で5w/wのトリグリセリドを含む、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
第1及び/又は第2のmccが、少なくとも50%w/w、より好ましくは少なくとも60%w/w、さらに好ましくは少なくとも70%w/w、最も好ましくは少なくとも80%w/wのモノグリセリド及びジグリセリドの合計量を含む、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
第1及び/又は第2のmccが、少なくとも5ppm、より好ましくは少なくとも10ppm、さらに好ましくは少なくとも15ppm、最も好ましくは少なくとも20ppmのグリシドール相当物の量を含む、請求項1~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
ステップi)を含む、請求項1~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
ステップii)を含む、請求項1~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
ステップi)及びii)の両方を含む、請求項1~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
ステップi)とii)の両方を含み、ステップi)がステップii)の前に実行される、請求項1~17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
モノグリセリド含有生成物が、トラックでのバルク配送、中間バルクコンテナ、ドラム、缶、袋、ポリマーライナー付き箱を含む、適切な容器に包装される、請求項1~18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
以下のステップをさらに含む、請求項1~19のいずれかに記載の方法:
a)グリセロールを、ジグリセリド及び/又はトリグリセリドと、以下を含む反応した混合物を提供するのに十分な条件で接触させること:
‐少なくとも25%w/wのモノグリセリド、
‐少なくとも1%w/wのグリセロール、
‐ジグリセリド及び/又はトリグリセリド、及び
‐少なくとも1ppmのグリシドール相当物の含有量、
b)ステップa)の反応した混合物に由来する組成物を蒸留に供して、グリセロールの量を除去し、それによってグリセロールに関して富化した第1の蒸留物、及びモノグリセリドに関して富化した第1の蒸留残留物を提供すること、
c)任意に、第1の蒸留残留物を蒸留に供してモノグリセリドをさらに富化し、それによってモノグリセリドに関して富化された第2の蒸留物及びジグリセリドに関して枯渇した第2の蒸留残留物を提供すること、
d)任意に、第1の蒸留残留物及び/又は第2の蒸留物をさらに精製し、ステップb)の第1の蒸留残留物、ステップc)の第2の蒸留物、又はステップd)のさらなる精製組成物をモノグリセリド含有生成物として回収すること、
ここで、第1及び/又は第2のモノグリセリド含有組成物が、ステップa)、b)、c)、又はd)に由来する組成物である。
【請求項21】
ステップa)の反応した混合物が、以下を含む、請求項1~20のいずれかに記載の方法:
‐25~60%w/wのモノグリセリド、
‐10~50%w/wのジグリセリド、
‐1~30%w/wのトリグリセリド、
‐1~25%w/wのグリセロール、
‐0~10%w/wの遊離脂肪酸、及び
‐少なくとも1ppmのグリシドール相当物の含有量。
【請求項22】
ステップa)の反応した混合物が、少なくとも5ppm、より好ましくは少なくとも10ppm、さらに好ましくは少なくとも15ppm、最も好ましくは少なくとも20ppmのグリシドール相当物の量を含む、請求項1~21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
ステップa)の反応した混合物が、少なくとも50%w/w、より好ましくは少なくとも60%w/w、さらに好ましくは少なくとも70%w/w、最も好ましくは少なくとも80%w/wのモノグリセリド及びジグリセリドの合計量を有する、請求項1~22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
ステップb)において提供されるステップa)の反応した混合物に由来する組成物が、以下を含む、請求項1~23のいずれかに記載の方法:
‐25~80%w/wモノグリセリド、
‐10~50%w/wのジグリセリド、
‐1~30%w/wのトリグリセリド、
‐1~25%w/wのグリセロール、
‐0~10%w/wの遊離脂肪酸、及び
‐少なくとも1ppmのグリシドール相当物の含有量。
【請求項25】
少なくともステップi)を含み、実行されるステップi)が、ステップb)の間又はその前に実行される、請求項1~24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
少なくともステップi)及びステップc)を含み、実行されるステップi)がステップc)の蒸留の前に実行される、請求項1~25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
少なくともステップii)を含み、実行されるステップii)がステップb)の後であり、好ましくは、ステップc)及び/又はd)が方法の一部を形成する場合には、それらの後でもある、請求項1~26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
モノグリセリド含有生成物が、最大でも10ppm、より好ましくは最大でも5ppm、さらに好ましくは最大でも1ppm、最も好ましくは最大でも0.5ppmのグリシドール相当物の含有量を有する、請求項1~27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
モノグリセリド含有生成物が、少なくとも20、より好ましくは少なくとも40、さらに好ましくは少なくとも60、最も好ましくは少なくとも75のヨウ素価を有する、請求項1~28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
モノグリセリド含有生成物が、最大でも10meq/kg、より好ましくは最大でも5meq/kg、さらに好ましくは最大でも2meq/kg、最も好ましくは最大でも1meq/kgの過酸化物価を有する、請求項1~29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
例えば、請求項1に従って得ることができる、好ましくは、請求項2~30のうちの1つ又は複数に従って得ることができるモノグリセリド含有生成物。
【請求項32】
‐少なくとも90%w/wのモノグリセリド、より好ましくは95%w/wのモノグリセリド、さらに好ましくは少なくとも97%w/wのモノグリセリド、
‐最大でも10ppm、より好ましくは最大でも5ppm、さらに好ましくは最大でも1ppm、最も好ましくは最大でも0.5ppmのグリシドール相当物の含有量
を含み、
‐最大でも10meq/kg、より好ましくは最大でも5meq/kg、さらに好ましくは最大でも2meq/kg、最も好ましくは最大でも1meq/kgの過酸化物価
を有する、請求項31に記載のモノグリセリド含有生成物。
【請求項33】
さらに、少なくとも20、より好ましくは少なくとも40、さらに好ましくは少なくとも60、最も好ましくは少なくとも75のヨウ素価を有する、請求項32に記載のモノグリセリド含有生成物。
【請求項34】
少なくとも25%w/wのモノグリセリドを含み、グリシドール相当物の低い含有量を有するモノグリセリド含有生成物を製造するためのステップi)及び/又はステップii)の使用であって、
ステップi)は、少なくとも25%w/wのモノグリセリドを含む第1のモノグリセリド含有組成物を熱処理することを含み、前記熱処理は、グリシドール相当物の合計含有量を少なくとも50%低減するのに十分な時間、モノグリセリド含有組成物を90~210℃の範囲の温度で加熱することを含み、
そして
ステップii)は、少なくとも25%w/wのモノグリセリドを含む第2のモノグリセリド含有組成物を、固体酸性材料と接触させることを含む、上記使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低グリシドール含量を有するモノグリセリド組成物の製造方法に関するものである。さらに、本発明は、該方法により得ることができるモノグリセリド組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
モノグリセリドの工業生産には、グリシドールやグリシジルエステルの生成が伴う。これらの副産物は、近年、あまり好まれないことが分かってきた。しかし、これまでモノグリセリド製品からグリシドールやグリシジルエステルを除去する試みは成功していない。グリシドールやグリシジルエステルは、モノグリセリド生成物の製造に通常使用される高温でのプロセスによって生成されるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明者らは、モノグリセリド生成物のグリシドール及びグリシジルエステルのレベルを、熱処理を用いるがモノグリセリドの製造に必要な温度よりも低い温度を用いることで低減できることを見出した。製造時の高温条件がグリシドール問題の原因であるように見えるので、これは非常に驚くべきことである。
【0004】
さらに本発明者らは、モノグリセリド生成物を固体酸性材料と接触させることにより、グリシドール及びグリシジルエステルのレベルを低減できること、そしてこの接触は有利に熱処理と組み合わせて用いることができることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、本発明の一側面は、少なくとも25%w/wのモノグリセリドを含み、グリシドール相当物の低い含有量を有するモノグリセリド含有生成物を製造する方法に関し、該方法は、以下を含む
少なくとも25%w/wのモノグリセリドと少なくとも1ppmのグリシドール相当物の合計含有量とを含む第1のモノグリセリド含有組成物(mcc1)を熱処理するステップi)であって、前記熱処理は、グリシドール相当物の合計含有量を少なくとも50%低減するために十分な時間、モノグリセリド含有組成物を90~210℃の範囲の温度へ加熱することを含む、ステップi)、
及び/又は
少なくとも25%w/wのモノグリセリド及び少なくとも1ppmのグリシドール相当物の合計含有量とを含む第2のモノグリセリド含有組成物(mcc2)を、好ましくはモノグリセリドに不溶な固体酸性材料と接触させるステップii)。
【0006】
本発明の別の態様は、本明細書に記載の方法によって得られ得るモノグリセリド含有生成物に係るものである。
【0007】
さらに本発明の一態様は、少なくとも25%w/wのモノグリセリドを含み、グリシドール相当物の低い含有量を有するモノグリセリド含有生成物を製造するためのステップi)及び/又はステップii)の使用に関するものであり;ここで
ステップi)は、少なくとも25%w/wのモノグリセリドを含む第1のモノグリセリド含有組成物を熱処理することを含み、前記熱処理は、グリシドール相当物の合計含有量を少なくとも50%低減するのに十分な時間、モノグリセリド含有組成物を90~210℃の範囲の温度に加熱することを含み、
ここで
ステップii)は、少なくとも25%w/wのモノグリセリドを含む第2のモノグリセリド含有組成物を、好ましくはモノグリセリドに不溶な固体酸性材料と接触させることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、異なる温度での熱処理がグリシドール含有量とモノグリセリド(MAG)含有量に与える影響を示したものである。
図2図2は、150℃、異なる時間の熱処理がグリシドール含有量とMAGの含有量にどのような影響を与えるかを示したものである。
図3図3は、固体酸性材料の違いが、グリシドール含有量とMAGの含有量に影響を与えることを示している。
図4図4は、固体酸性材料Siral 40の添加量が、グリシドール含有量とモノグリセリド(MAG)含有量にどのような影響を与えるかを示している。
図5図5は、熱処理と固体酸性材料(Siral40)の様々な温度での相乗効果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
詳細な説明
本発明の一側面は、少なくとも25%w/wのモノグリセリドを含み、グリシドール相当物の低い含有量を有するモノグリセリド含有生成物を製造する方法に係り、該方法は以下を含む:
少なくとも25%w/wのモノグリセリド及び少なくとも2ppmのグリシドール相当物の合計含有量を含む第1のモノグリセリド含有組成物(mcc1)を熱処理するステップi)であって、前記熱処理は、グリシドール相当物の合計含有量を少なくとも50%低減するために十分な時間、モノグリセリド含有組成物を90~210℃の範囲の温度に加熱することを含む、ステップi)、
及び/又は
少なくとも25%w/wのモノグリセリド及び少なくとも1ppmのグリシドール相当物の合計含有量を含む第2のモノグリセリド含有組成物(mcc2)を、好ましくはモノグリセリドに不溶である固体酸性材料と接触させるステップii)。
【0010】
本発明の文脈では、用語「モノグリセリド含有生成物」は、少なくとも25%w/wのモノグリセリドを含む部分グリセリドを主に含む組成物に係るものである。
【0011】
本発明の文脈において、用語「グリシドール」は、IUPAC名2,3‐エポキシプロパン‐1‐オールを有し、エポキシド基とアルコール基の両方を含む化合物に係るものである。
【0012】
本発明の文脈において、「グリシドール相当物」という用語は、遊離グリシドール及びグリシジルエステルの両方に関係するものである。グリシドール相当物の合計含有量は、分析1.1に従って測定される。
【0013】
本発明の文脈において、用語「グリシドール相当物の低い含有量を有するモノグリセリド含有生成物」は、最大でも10ppmのグリシドール相当物の含有量を有するものである。
【0014】
本発明の文脈において、用語「モノグリセリド含有組成物」は、少なくとも25%w/wのモノグリセリド、好ましくは少なくとも50%w/wのグリセリドを含有する組成物に係るものである。モノグリセリド含有組成物は、典型的には、ジグリセリド及びトリグリセリド、並びに任意にグリセロールも含有する。
【0015】
本発明の文脈において、「Y及び/又はX」という語句は、「Y」又は「X」又は「Y及びX」を意味する。同じ論理の線に沿って、フレーズ「n、n、・・・、ni-1、及び/又はn」は、「n」又は「n」又は・・・又は「ni-1」又は「n」、或いは成分n、n、・・・、ni-1及びnの任意の組合せを意味する。
【0016】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、方法は、ステップi)及び任意にステップii)も含んでいる。しかしながら、方法がステップi)を含み、ステップii)を含まないこともまた好ましい場合がある。
【0017】
本発明の他の好ましい実施形態では、方法は、ステップii)及び任意にステップi)も含んでいる。しかしながら、方法がステップii)を含み、ステップi)を含まないことも好ましい場合がある。
【0018】
本発明のいくつかの特に好ましい実施形態では、方法はステップi)及びステップii)の両方を含み、好ましくはステップi)の後にステップii)として実施される。
【0019】
あるいは、また、好ましいことに、ステップi)及びii)は、同じmcc上で同時に実行されてもよく、その場合、mcc1及びmcc2は、同じ組成物である。
【0020】
上述のように、ステップi)は、少なくとも25%w/wのモノグリセリド及び少なくとも2ppmのグリシドール相当物の合計含有量を含む第1のモノグリセリド含有組成物(mcc1)を熱処理することを含み、前記熱処理は、モノグリセリド含有組成物を90~210℃の範囲の温度に、グリシドール相当物の合計含有量を少なくとも50%減らすのに十分な時間だけ加熱することを含む。
【0021】
ステップi)の熱処理は、好ましくは、第1のモノグリセリド含有組成物を95~195℃、より好ましくは100~180℃、さらに好ましくは120~170℃、最も好ましくは140~160℃の範囲内の温度に加熱することを含む。
【0022】
ステップi)の熱処理は、好ましくは、mcc1のグリシドール相当物の合計含有量を少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%減少させるのに十分な時間、第1のモノグリセリド含有組成物を加熱することを含む。さらに高いレベルの低減が必要とされる場合があり、したがって、ステップi)の熱処理は、好ましくは、第1のモノグリセリド含有組成物を、mcc1のグリシドール相当物の合計含有量を少なくとも95%、より好ましくは少なくとも99%、さらに好ましくは少なくとも99.9%低減するために十分な時間、加熱することを含む。
【0023】
ステップi)の熱処理は、不活性雰囲気を用いて行うことが好ましい。不活性雰囲気は、好ましくは、大気圧の空気よりも低い酸素分圧を有する(典型的には約0.2barである)。不活性雰囲気は、例えば、真空を作り出すことによって、及び/又は、例えば、窒素、アルゴン又は二酸化炭素のような適切な不活性ガスを使用することによって得ることができる。
【0024】
不活性雰囲気は、最大でも0.1バール、好ましくは最大でも0.05バール、より好ましくは最大でも0.01バール、さらに好ましくは最大でも0.001バール、最も好ましくは最大でも0.0001バールの酸素分圧を含むことができる。
【0025】
不活性雰囲気の使用は、例えば、処理中の過酸化物や他の劣化生成物の生成を避けるために有用である。
【0026】
代替的又は追加的に、適切な酸化防止剤を処理時に添加してもよく、酸化を回避又は低減するためにmcc1の一部を形成してもよい。
【0027】
上記のようにステップii)は、少なくとも25%w/wのモノグリセリドと少なくとも1ppmのグリシドール相当物の合計含有量とを含む第2のモノグリセリド含有組成物(mcc2)を、好ましくはモノグリセリドに不溶な固体酸性材料と接触させることを含む。
【0028】
ステップii)の温度及び接触時間は、mcc2のグリシドール相当物の含有量が少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%減少するように選択されることが好ましい。さらに高いレベルの低減が必要とされる場合があり、したがってステップii)は、好ましくは、第2のモノグリセリド含有組成物を、mccのグリシドール相当物の合計含有量を少なくとも95%、より好ましくは少なくとも99%、さらに好ましくは少なくとも99.9%低減するために十分な時間、固体酸性材料と接触させることを含む。
【0029】
グリシドール相当物の含有量が例えば75%減少した場合、ステップii)後のグリシドール相当物の含有量は、mcc2のグリシドール相当物の含有量より75%低いことを意味する。
【0030】
また、ステップii)は不活性雰囲気を用いて行うことが好ましく、特に熱処理と組み合わせることが好ましい。
【0031】
本発明の文脈において、用語「固体酸性材料」は、少なくとも50℃、好ましくは少なくとも100℃、より好ましくは少なくとも210℃で固体であり、さらに酸として作用することが可能である材料である。固体酸性材料は、例えば、固体上の精製された酸であってもよい。代替的に、しかし好ましくは、固体酸性材料は、マトリックス材料を含み、さらに、酸性官能基を含む表面を有していてもよい。マトリックス材料は、そのような酸性である必要はないが、好ましくはモノグリセリドに不溶性である。
【0032】
固体酸性材料は当業者に周知であり、例えば、“Solid Acid Catalysis:From Fundamentals to Applications”(「固体酸触媒:基礎から応用まで」)、H.Hattori,Y.Ono,2015(Hattori2015)の第2章及び第3章に記載されている。これは、全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれる。固体酸性材料が、Hattori2015の23~36ページのように定義されることが特に好ましい。
【0033】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、固体酸性材料はモノグリセリドに不溶である。
本発明の文脈において、用語「モノグリセリドに不溶」とは、当該固体酸性材料が、100℃の温度及び大気圧において、グリセロールモノオレエートへの溶解度が最大でも1g/kgであることを意味する。
【0034】
好ましくは、固体酸性材料は、100℃の温度及び大気圧において、グリセロールモノオレエートへの溶解度が最大でも0.1g/kgであり、より好ましくは最大でも0.01g/kgであり、さらに好ましくは最大でも0.001g/kgである。
【0035】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ステップii)の固体酸性材料は、mcc2の重量に対して0.1~10%w/w、より好ましくは0.5~8%w/w、さらに好ましくは1~6%w/w、より好ましくは2~5%w/wの量で使用される。
【0036】
固体酸性材料は、好ましくは、“Solid Acid Catalysis:From Fundamentals to Applications”(「固体酸触媒:基礎から応用まで」)、H.Hattori,Y.Ono,2015の第3章に記載されているように特徴付けられる。
【0037】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ステップii)は、第2のモノグリセリド含有組成物を50~180℃、より好ましくは60~160℃、さらに好ましくは70~140℃、最も好ましくは80~120℃の範囲の温度まで加熱することを含む。
【0038】
180℃を超える温度では、モノグリセリドの転換の度合いが高まり、例えば、2つのモノグリセリド分子をジグリセリド分子とグリセロール分子に転換させることがある。このような転換は、特にステップii)の間、好ましくは回避されるか、少なくとも低減される。
【0039】
固体酸性材料とmcc2との接触時間は、グリシドール相当物の所望の減少度を得るために選択される。接触時間は、好ましくは最大で24時間、より好ましくは最大で12時間、さらに好ましくは最大で6時間、最も好ましくは最大で4時間である。接触時間は、好ましくは1分~24時間の範囲、より好ましくは2分~12時間の範囲、さらに好ましくは5分~6時間の範囲、最も好ましくは10分~4時間の範囲である。
【0040】
固体酸性材料とmcc2との接触は、多くの異なる方法で実施することができる。固体酸性材料は、例えば、充填カラムに配置されるか、又はmcc2が流される固定相の一部を形成することができる。あるいは、固体酸性材料は、mcc2中に分散された小粒子の形態であってもよく、混合物が例えば攪拌によってかき混ぜられるmcc2と接触してもよい。固体酸性材料は、好ましくは、ステップii)が完了した時点で回収される。固体酸性材料は、好ましくは再利用され、ある程度の時間の操作の後に再生が必要となる場合がある。
【0041】
固体酸性材料が、グリシドール及び/又はグリシジルエステルの転換を触媒する、不均一系酸触媒であることが特に好ましい。
【0042】
ステップii)の固体酸性材料は、ゼオライト、ゼオタイプ、酸性粘土、金属酸化物、混合金属酸化物、硫酸化酸化物、担持酸、陽イオン交換樹脂、及びこれらの組み合わせからなる群から1以上選択されることが好ましい。
【0043】
例えば、ステップii)の固体酸性材料は、酸性X‐又はY‐ゼオライト、モルデナイト、ゼオライトソコニーモービル‐5(ZSM‐5)又はそれらの組み合わせを含む、又はからなる。
【0044】
ステップii)の固体酸性材料は、アルミノホスファート(AlPO)、シリコアルミニモホスファート(SAPO)、又はそれらの組み合わせを含む、又はからなることが特に好ましい。
【0045】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ステップii)の固体酸性材料は、酸漂白粘土、酸柱状粘土、又はそれらの組み合わせを含む。
【0046】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ステップii)の固体酸性材料は、Al、ZrO、又はそれらの組み合わせを含む。
【0047】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ステップii)の固体酸性材料は、結晶性SiO‐Al、結晶性SiO‐ZrO、非晶質SiO‐Al、又はそれらの組み合わせを含む、又はからなる。
【0048】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ステップii)の固体酸性材料は、硫酸化ZrOを含む。
【0049】
本発明の他の好ましい実施形態では、ステップii)の固体酸性材料は、SiO又はZrOに担持されたトリフルオロメタンスルホン酸(triflic acid)、硫酸又はスルホン酸を含む。
【0050】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ステップii)の固体酸性材料は、例えばスルホン化テトラフルオロエチレンベースのフルオロポリマー‐コポリマー(例えばNAFION(商標))のようなスルホン化マトリックスを含むか、又はからなる。
【0051】
第1及び/又は第2のモノグリセリド含有組成物は、好ましくは、以下を含む:
‐少なくとも25%w/wのモノグリセリド、
‐少なくとも1ppmのグリシドール相当物、及び
‐グリセロール、ジグリセリド、トリグリセリド。
【0052】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、第1及び/又は第2のmccは、少なくとも30%w/wのモノグリセリド、より好ましくは少なくとも34%w/w、さらに好ましくは少なくとも40%、最も好ましくは少なくとも50%w/wを含む。
【0053】
さらに高濃度のモノグリセリドが好ましい場合があり、本発明のいくつかの好ましい実施形態では、第1及び/又は第2のmccは、少なくとも80%w/wのモノグリセリド、より好ましくは少なくとも90%w/w、さらに好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも97%w/wを含む。
【0054】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、第1及び/又は第2のmccは、最大でも30%w/wのグリセロール、より好ましくは最大でも25%w/w、さらに好ましくは最大でも15%、最も好ましくは最大でも5%w/wを含む。
【0055】
さらに少ないグリセロールが、特にステップii)の内容において好ましい場合があり、したがって、本発明のいくつかの好ましい実施形態において、第1及び/又は第2のmccは、最大でも5%w/wのグリセロール、より好ましくは最大でも2%w/w、さらに好ましくは最大でも0.5%、最も好ましくは最大でも0.1%w/wを含む。
【0056】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、第1及び/又は第2のmccは、最大で30w/wのトリグリセリド、より好ましくは最大で20w/wのトリグリセリド、更に好ましくは最大で10w/wのトリグリセリド、最も好ましくは最大で5w/wのトリグリセリドを含む。
【0057】
さらに少ないトリグリセリドが必要とされる場合があり、したがって、本発明のいくつかの好ましい実施形態では、第1及び/又は第2のmccは、最大でも4%w/wのトリグリセリド、より好ましくは最大でも2%w/wのトリグリセリド、さらに好ましくは最大でも0.5%w/wのトリグリセリド、最も好ましくは最大でも0.1%w/wのトリグリセリドを含む。
【0058】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、第1及び/又は第2のmccは、少なくとも50%w/w、より好ましくは少なくとも60%w/w、さらに好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは少なくとも80%w/wのモノグリセリド及びジグリセリドの合計量を含む。
【0059】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、第1及び/又は第2のmccは、少なくとも1ppmのグリシドール相当物の含有量を有する。第1及び/又は第2のmccは、さらに、モノグリセリド含有生成物のものよりも高いグリシドール相当物の含有量、好ましくは少なくとも20%高い、より好ましくは少なくとも50%高い、さらに好ましくは少なくとも100%高い、最も好ましくは少なくとも200%高い、グリシドール相当物の含有量を有している。
【0060】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、第1及び/又は第2のmccは、少なくとも2ppm、より好ましくは少なくとも5ppm、さらに好ましくは少なくとも10ppm、最も好ましくは少なくとも15ppmのグリシドール相当物の量を含む。グリシドール相当物のさらに高い含有量に達することができ、本発明のいくつかの好ましい実施形態では、第1及び/又は第2のmccは、少なくとも25ppm、より好ましくは少なくとも50ppm、さらに好ましくは少なくとも100ppm、最も好ましくは少なくとも200ppmのグリシドール相当物の量を含む。
【0061】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、第1及び/又は第2のmccは、1~2000ppm、より好ましくは5~1000ppm、さらに好ましくは10~800ppm、最も好ましくは20~600ppmのグリシドール相当物の量を含む。例えば、第1及び/又は第2のmccは、好ましくは50~500ppm、より好ましくは100~300ppmのグリシドール相当物の量を含むことができる。
【0062】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、第1及び/又は第2のmccは、少なくとも20、より好ましくは少なくとも40、さらに好ましくは少なくとも60、最も好ましくは少なくとも75のヨウ素価を有する。例えば、mcc1が、20~200、より好ましくは40~150、さらに好ましくは60~140、最も好ましくは75~120のヨウ素価を有することが好ましい場合がある。
【0063】
本発明の他の好ましい実施形態では、第1のmccは、最大でも20未満、より好ましくは最大でも15、さらに好ましくは最大でも10、最も好ましくは最大でも5のヨウ素価を有する。
【0064】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、第1及び/又は第2のmccは、最大でも10meq/kg、より好ましくは最大でも5meq/kg、さらに好ましくは最大でも2meq/kg、最も好ましくは最大でも1meq/kgの過酸化物価を有している。mccを調製するために使用される原料は、均等に、好ましくは最大でも10meq/kg、より好ましくは最大でも5meq/kg、さらに好ましくは最大でも2meq/kg、最も好ましくは最大でも1meq/kgの低い過酸化物価を有することがさらに好ましい。
【0065】
本発明の方法は、以下の工程を含むことが特に好ましい:
a)グリセロールを、ジグリセリド及び/又はトリグリセリドと、以下を含む反応した混合物(reacted mixture)を提供するのに十分な条件で接触させること:
‐少なくとも25%w/wのモノグリセリド、
‐少なくとも1%w/wのグリセロール、
‐ジグリセリド及び/又はトリグリセリド、及び
‐少なくとも1ppmのグリシドール相当物の含有量、
b)ステップa)の反応した混合物に由来する組成物を蒸留に供して、グリセロールの量を除去し、それによってグリセロールに関して富化した第1の蒸留物、及びモノグリセリドに関して富化した第1の蒸留残留物を提供すること、
c)任意に、第1の蒸留残留物を蒸留に供してモノグリセリドをさらに富化し、それによってモノグリセリドに関して富化された第2の蒸留物及びジグリセリドに関して枯渇した第2の蒸留残留物を提供すること、
d)任意に、第1の蒸留残留物及び/又は第2の蒸留物をさらに精製する、
及びステップb)の第1の蒸留残留物、ステップc)の第2蒸留物、又はステップd)のさらなる精製組成物をモノグリセリド含有生成物として回収すること、
ここで、第1及び/又は第2のモノグリセリド含有組成物が、ステップa)、b)、c)、又はd)に由来する組成物である。
【0066】
本発明の文脈では、先の組成物「に由来する組成物」という用語は、先の組成物のモノグリセリドの少なくともかなりの部分を含み、好ましくは先の組成物よりもモノグリセリドとジグリセリドの間の重量比が実質的に同じかさらに高くなる。
【0067】
先の組成物「に由来する組成物」は、好ましくは、少なくとも50%w/wの先の組成物のモノグリセリド、より好ましくは少なくとも70%w/w、さらに好ましくは少なくとも90%w/w、最も好ましくは少なくとも95%w/wの先の組成物のモノグリセリドを含有する。
【0068】
本発明の好ましい実施形態において、先の組成物「に由来する組成物」は、先の組成物そのまま、又はそのモノグリセリド濃縮物である。
【0069】
本発明の文脈において、先の組成物の「モノグリセリド濃縮物」という用語は、先の組成物よりも高い絶対濃度のモノグリセリドを含むように先の組成物を処理することによって調製された組成物に係るものである。モノグリセリドを濃縮するためのこのような方法は、当業者にはよく知られており、例えば相分離を含む。
【0070】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、ステップa)の反応した混合物に由来する組成物は、ステップa)の反応した混合物からグリセロールの少なくとも一部を除去することによって、好ましくは液体グリセロール相を分離することによって得られるものである。
【0071】
上記のように、ステップa)は、グリセロールをジグリセリド及び/又はトリグリセリドと、以下を含む反応した混合物を提供するのに十分な条件下で接触させることを含む:
‐少なくとも25%w/wのモノグリセリド、
‐少なくとも1%w/wのグリセロール、
‐ジグリセリド及び/又はトリグリセリド、及び
‐少なくとも1ppmのグリシドール相当物の含有量。
【0072】
モノグリセリドの製造方法は当業者に周知であり、ステップa)の接触は、通常220~300℃の範囲、より好ましくは250~300℃の範囲の温度で行われる。接触はしばしば適切な触媒の存在下、モノグリセリドの形成を促進する圧力で行われる。
【0073】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ステップa)の反応した混合物は、さらに
‐10~50%w/wのジグリセリド、
‐1~30%w/wのトリグリセリド、及び
‐0~10%w/wの遊離脂肪酸
を含む反応した混合物
の1つ以上を含む。
【0074】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ステップa)の反応した混合物は、以下を含む:
‐25~60%w/wのモノグリセリド、
‐10~50%w/wのジグリセリド、
‐1~30%w/wのトリグリセリド、
‐1~25%w/wのグリセロール、
‐0~10%w/wの遊離脂肪酸、及び
‐少なくとも1ppmのグリシドール相当物の含有量。
【0075】
ステップa)の反応した混合物は、好ましくは少なくとも5ppm、より好ましくは少なくとも10ppm、さらに好ましくは少なくとも15ppm、最も好ましくは少なくとも20ppmの量のグリシドールを含む。
【0076】
グリシドール相当物のさらに高い含有量に達することができ、本発明のいくつかの好ましい実施形態において、ステップa)の反応した混合物は、少なくとも50ppm、より好ましくは少なくとも100ppm、さらに好ましくは少なくとも150ppm、最も好ましくは少なくとも200ppmの量のグリシドール相当物を含む。
【0077】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ステップa)の反応した混合物は、1~2000ppm、より好ましくは5~1000ppm、さらに好ましくは10~800ppm、最も好ましくは20~600ppmのグリシドール相当物の量を含む。例えば、ステップa)の反応した混合物は、好ましくは50~500ppm、より好ましくは100~300ppmのグリシドール相当物の量を含むことができる。
【0078】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ステップa)の反応した混合物は、少なくとも50%w/w、より好ましくは少なくとも60%w/w、さらに好ましくは少なくとも70%w/w、最も好ましくは少なくとも80%w/wのモノグリセリド及びジグリセリドの合計量を有する。
【0079】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ステップa)の反応した混合物は、少なくとも20、より好ましくは少なくとも40、さらに好ましくは少なくとも60、最も好ましくは少なくとも75のヨウ素価を有する。例えば、ステップa)の反応した混合物が、20~200、より好ましくは40~150、さらに好ましくは60~140、最も好ましくは75~120のヨウ素価を有することが好ましい場合がある。
【0080】
本発明の他の好ましい実施形態では、ステップa)の反応した混合物は、20未満、より好ましくは最大でも15、さらに好ましくは最大でも10、最も好ましくは最大でも5のヨウ素価を有する。
【0081】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、ステップa)の反応した混合物は、最大でも10meq/kg、より好ましくは最大でも5meq/kg、さらに好ましくは最大でも2meq/kg、最も好ましくは最大でも1meq/kgの過酸化物価を有している。ステップa)の反応した混合物を調製するために使用される原料が、同様に、好ましくは最大でも10meq/kg、より好ましくは最大でも5meq/kg、さらに好ましくは最大でも2meq/kg、最も好ましくは最大でも1meq/kgの低い過酸化物価を有することが、さらに好まれる。
【0082】
上記のようにステップb)は、ステップa)の反応した混合物に由来する組成物を蒸留に供してグリセロールの量を除去し、それによってグリセロールに関して富化された第1の蒸留物、及びモノグリセリドに関して富化された第1の蒸留残留物を提供することを含む。
【0083】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ステップb)において蒸留されるステップa)の反応した混合物に由来する組成物は、以下を含む:
‐25‐80%w/wのモノグリセリド、
‐10‐50%w/wのジグリセリド、
‐1~30%w/wのトリグリセリド、
‐1~25%w/wのグリセロール、
‐0~10%w/wの遊離脂肪酸、及び
‐少なくとも1ppmのグリシドール相当物の含有量。
【0084】
ステップb)の蒸留は、例えば、連続トレイ式、薄層式、充填カラム式又は短経路蒸留を含むことができる。好適な温度及び圧力は、0.001~50mbarで100~210℃の範囲が好ましく、110~190℃及び0.01~20mbarの範囲がより好ましく、120~170℃及び0.1~10mbarの範囲が更に好ましい。過熱蒸気は、例えば、トレイ式又は充填式蒸留塔におけるグリセロールの除去率を高めるために使用することができる。
【0085】
上述のように、本発明の方法は、任意に、第1の蒸留残留物を蒸留に供してモノグリセリドをさらに富化し、それによってモノグリセリドに関して富化された第2の蒸留物及びジグリセリドに関して枯渇した第2の蒸留残留物を提供するステップc)を含むことができる。
【0086】
したがって、本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本発明の方法は、第1の蒸留残留物を蒸留に供してモノグリセリドをさらに富化し、それによってモノグリセリドに関して富化された第2の蒸留物及びジグリセリドに関して枯渇した第2の蒸留残留物を提供するステップc)を含んでいる。
【0087】
しかしながら、本発明の他の好ましい実施形態では、方法はステップc)を含んでいない。
【0088】
ステップc)の蒸留は、例えば、150~250℃、0.0001~10mbar、好ましくは160~230℃、0.001~1mbar、さらに好ましくは170~220℃、0.001~0.1mbarの範囲の温度及び圧力を用いて連続短経路蒸留として実施することができる。
【0089】
上述したように、本発明の方法は、任意に、d)第1の蒸留残留物及び/又は第2の蒸留物のさらなる精製を含む。
【0090】
したがって、本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本発明の方法はステップd)を含む。しかしながら、本発明の他の好ましい実施形態では、方法はステップd)を含んでいない。
【0091】
さらなる精製は、例えば、充填蒸留塔又はトレイ式蒸留塔でのスチームストリッピング、漂白土などの吸着性漂白剤及び/又は過酸化水素、水素化ホウ素ナトリウム、次亜リン酸ナトリウムなどの還元性漂白剤を用いる漂白を含むことができる。
【0092】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、方法は少なくともステップi)を含み、ステップi)はステップb)の間又はその前に実行される。
【0093】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、方法は少なくともステップi)及びステップc)を含み、ステップi)はステップc)の蒸留の前に実施される。
【0094】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、方法は少なくともステップi)及びステップd)を含み、ステップi)はステップd)のさらなる精製の前に実施される。
【0095】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、本発明の方法は少なくともステップii)を含み、ステップii)は、ステップb)の後、好ましくはステップc)及び/又はd)が方法の一部を形成する場合には、その後に行われる。
【0096】
本発明者らは、比較的低濃度のグリセロールを有する組成物に対してステップii)を実施することが有利であることを見出した。したがって、mcc2は、最大でも10%w/w、より好ましくは最大でも5%w/w、さらに好ましくは最大でも1%w/w、最も好ましくは最大でも0.5%w/wのグリセロールの含有量を有していることが好ましい。
【0097】
製造後に直接使用しない場合、モノグリセリド含有生成物は、好ましくは適切な容器に包装される。これは、例えば、トラックでのバルク配送の容器、中間バルク容器、ドラム、缶、袋、又は箱であってもよい。箱が使用される場合、それは好ましくは、モノグリセリド含有生成物に接触するポリマーライナーを内部に有する。モノグリセリド含有生成物をトラックでのバルク配送の容器に移す場合、モノグリセリド含有生成物は、保管中及び輸送中に液体状態を保つのに十分な温度に保たれていることが好ましい場合が多い。
【0098】
本発明の別の態様は、例えば本明細書に記載の方法に従って得ることができるモノグリセリド含有生成物に関する。
【0099】
モノグリセリド含有生成物は、好ましくは、以下を含む:
‐少なくとも80%w/wのモノグリセリド、
‐最大で1ppmのグリシドール相当物、及び
‐任意でグリセロール、ジグリセリド、及びトリグリセリド。
【0100】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、モノグリセリド含有生成物は、少なくとも50%w/wのモノグリセリド、より好ましくは少なくとも60%w/w、さらに好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは少なくとも75%w/wを含む。
【0101】
さらに高濃度のモノグリセリドが好ましく、本発明のいくつかの好ましい実施形態では、モノグリセリド含有生成物は、少なくとも80%w/wのモノグリセリド、より好ましくは少なくとも90%w/w、さらに好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも97%w/wを含む。
【0102】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、モノグリセリド含有生成物は、最大でも5%w/wのグリセロール、より好ましくは最大でも2%w/w、さらに好ましくは最大でも0.5%、最も好ましくは最大でも0.1%w/wを含む。
【0103】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、モノグリセリド含有生成物は、最大でも2%w/w、より好ましくは最大でも1%w/w、さらに好ましくは最大でも0.3%、最も好ましくは最大でも0.1%w/wの水の合計量を含む。
【0104】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、モノグリセリド含有生成物は、最大でも5%w/wのトリグリセリド、より好ましくは最大でも2%w/wのトリグリセリド、さらに好ましくは最大でも0.5%w/wのトリグリセリド、最も好ましくは最大でも0.1%w/wのトリグリセリドを含む。
【0105】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、モノグリセリド含有生成物は、少なくとも70%w/w、より好ましくは少なくとも60%w/w、さらに好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは少なくとも80%w/wのモノグリセリド及びジグリセリドの合計量を含む。
【0106】
さらに高濃度のモノグリセリドが好ましく、本発明のいくつかの好ましい実施形態では、モノグリセリド含有生成物は、少なくとも80%w/wモノグリセリド、より好ましくは少なくとも90%w/w、さらに好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも97%w/wのモノグリセリド及びジグリセリドの合計量を含む。
【0107】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、モノグリセリド含有生成物は、最大でも10ppm、より好ましくは最大でも5ppm、さらに好ましくは最大でも1ppm、最も好ましくは最大でも0.5ppmのグリシドール相当物の含有量を有している。
【0108】
本発明者らは、本発明により、グリシドール相当物のさらに低い含有量を達成することが可能であることを実証し、本発明のいくつかの好ましい実施形態において、モノグリセリド含有生成物は、最大でも0.3ppm、より好ましくは最大でも0.1ppm、さらに好ましくは最大でも0.05ppm、及び最も好ましくは最大でも0.02ppmのグリシドール相当物の含有量を有している。
【0109】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、モノグリセリド含有生成物は、少なくとも20、より好ましくは少なくとも40、さらに好ましくは少なくとも60、最も好ましくは少なくとも75のヨウ素価を有する。例えば、モノグリセリド含有生成物が、20~200、より好ましくは40~150、さらに好ましくは60~140、最も好ましくは75~120のヨウ素価を有することが好ましい場合がある。
【0110】
本発明の他の好ましい実施形態では、モノグリセリド含有生成物は、20未満、より好ましくは最大でも15、さらに好ましくは最大でも10、最も好ましくは最大でも5のヨウ素価を有する。
【0111】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、モノグリセリド含有生成物は、最大でも10meq/kg、より好ましくは最大でも5meq/kg、さらに好ましくは最大でも2meq/kg、最も好ましくは最大でも1meq/kgの過酸化物価を有する。
【0112】
本発明者らは、本発明が、高含量のモノグリセリド、低含量のグリシドール相当物を有するモノグリセリド含有生成物の製造に特に有用であることを見出した。
【0113】
したがって、本発明のいくつかの特に好ましい実施形態では、モノグリセリド含有生成物は、以下を含む:
‐少なくとも90%w/wのモノグリセリド、より好ましくは95%w/wのモノグリセリド、さらに好ましくは少なくとも97%w/wのモノグリセリド、及び
‐最大でも10ppm、より好ましくは最大でも5ppm、さらに好ましくは最大でも1ppm、最も好ましくは最大でも0.5ppmのグリシドール相当物の含有量。
【0114】
さらに本発明者らは、本発明が、モノグリセリドの含有量が多く、グリシドール相当物の含有量が少なく、過酸化物価が低いモノグリセリド含有生成物を製造する場合に特に有用であることを見出した。このことは、過酸化物がより生成しやすい高不飽和度を有するモノグリセリド含有生成物を製造する場合に、さらに顕著である。
【0115】
したがって、本発明のいくつかの特に好ましい実施形態では、モノグリセリド含有生成物は、以下を含む:
‐少なくとも90%w/wのモノグリセリド、より好ましくは95%w/wのモノグリセリド、さらに好ましくは少なくとも97%w/wのモノグリセリド、
‐最大でも10ppm、より好ましくは最大でも5ppm、さらに好ましくは最大でも1ppm、最も好ましくは最大でも0.5ppmのグリシドール相当物の含有量、
及び:
‐最大でも10meq/kg、より好ましくは最大でも5meq/kg、さらに好ましくは最大でも2meq/kg、最も好ましくは最大でも1meq/kgの過酸化物価
を有する。
【0116】
本発明の他の好ましい実施形態では、モノグリセリド含有生成物は、以下を含む:
‐少なくとも90%w/wのモノグリセリド、より好ましくは95%w/wのモノグリセリド、さらに好ましくは少なくとも97%w/wのモノグリセリド
‐最大でも10ppm、より好ましくは最大でも5ppm、さらに好ましくは最大でも1ppm、最も好ましくは最大でも0.5ppmのグリシドール相当物の含有量、
及び:
‐最大でも10meq/kg、より好ましくは最大でも5meq/kg、さらに好ましくは最大でも2meq/kg、最も好ましくは最大でも1meq/kgの過酸化物価、
‐少なくとも20、より好ましくは少なくとも40、さらに好ましくは少なくとも60、最も好ましくは少なくとも75のヨウ素価
を有する。
【0117】
さらに本発明の一態様は、少なくとも25%w/wのモノグリセリドを含み、グリシドール相当物の低い含有量を有するモノグリセリド含有生成物を製造するためのステップi)及び/又はステップii)の使用に係るものであり;ここで
ステップi)は、少なくとも25%w/wのモノグリセリドを含む第1のモノグリセリド含有組成物を熱処理することを含み、該熱処理は、モノグリセリド含有組成物を90~210℃の範囲の温度、好ましくはグリシドール相当物の合計含有量を少なくとも50%低減するために十分な時間、加熱することを含み、かつ、ここで
ステップii)は、少なくとも25%w/wのモノグリセリドを含む第2のモノグリセリド含有組成物を、好ましくはモノグリセリドに不溶な固体酸性材料と接触させることを含む。
【0118】
上記の使用は、好ましくは、mcc中のグリシドール相当物の含有量、ひいては最終的なモノグリセリド含有生成物中のグリシドール相当物の含有量を減少させるためのものである。
【0119】
以上、本発明について、特定の実施形態及び態様を参照して説明した。しかしながら、上述した以外の実施形態も、本発明の範囲内で同様に可能である。本発明の様々な実施形態及び態様の異なる特徴及びステップは、特に断らない限り、本明細書に記載された方法以外の方法で組み合わせることができる。
【実施例
【0120】

分析1.1:グリシドール相当物の含有量の測定
グリシドール相当物の含有量は、AOCS Official Method Cd 29b‐13 rev.2017に準拠して測定される。
【0121】
分析1.2: モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、遊離グリセロール及び遊離脂肪酸の量の測定
モノグリセリド(MAG)、ジグリセリド(DAG)、トリグリセリド(TAG)、遊離グリセロール及び遊離脂肪酸(FFA)の量は、AOCS Official Method Cd 11b‐91,Reapproved 2009に従って測定される。
【0122】
分析1.3:過酸化物価の測定
試料の過酸化物価は、AOCS Official Method Cd 8b‐90に従って測定される。過酸化物価は、単位meq H/kg試料で提供される。
【0123】
分析1.4:ヨウ素価の測定
試料のヨウ素価(IV)は、AOAC Official Method 993.20 に従って測定される。ヨウ素価は、規定の手順に従って、試験片100gに吸収されたヨウ素のグラム数で表される。
【0124】
分析1.5:ロビボンド色(Lovibond color)の決定
ロビボンド色(ロビボンドカラー)は、AOCS Cc 13j‐97に準拠して測定される。サンプルは、セル経路長25.4mm(1インチ)のキュベットを用いて測定される。
【0125】
例1:モノグリセリド及びジグリセリドの従来の製造方法
a)、b)、c)、d)の工程を用いて、従来のモノグリセリド含有生成物を製造した。
a)90gのグリセロール、210gの高オレイン酸ヒマワリ油(ヨウ素価=80)及び0.75gのNaOH(s)を3首丸底フラッシュに攪拌しながら投入した。反応混合物を500mbarで250℃に加熱し、反応温度に達した後60分間反応させた。高温の反応混合物を氷/水浴中で80℃まで急冷した。0.72g HPO(85%水溶液)を攪拌下に加え、形成された沈殿物を濾過により除去した。反応混合物を組成及び全グリシドール含量について分析した。
【0126】
b)ステップa)の反応混合物を、80℃の加熱キャビネット内で60分間、分液ロートで分離させた。下部のグリセロール相を除去して捨て、上部のグリセリド相を回収して組成と全グリシドール含量を分析した。
【0127】
c)ステップb)の生成物をUIC KDL 5短経路真空蒸留装置で130℃、0.3mbarの圧力で蒸留し、生成物を残留物として回収した。この生成物を、グリシドール相当物の組成及び含有量について分析した。
【0128】
d)ステップc)の生成物をUIC KDL 5短経路真空蒸留装置で170℃、0.001mbarの圧力で蒸留し、生成物を蒸留液として回収した。この生成物を、組成及びグリシドール相当物の含有量について分析した。
【0129】
その結果を以下にまとめる。
【表1】
【0130】
例2:異なる温度での熱処理の効果
例1b)に記載したように調製した生成物を、N下で110、150、180、210、230及び250℃に10分間加熱した後、25℃に急冷した。この生成物を、グリシドール相当物の組成及び含有量について分析した。その結果を以下にまとめ、Fig.1に示す。
【表2】
【0131】
結論
グリシドールの減少に最も効果的な温度は約180℃である。180~250℃の温度範囲で運転するとMAGの含有量が減少することがさらに確認された。
【0132】
例3:140℃、異なる持続時間での熱処理
例1d)に記載したように調製した生成物を、N下で140℃に加熱し、N下で0、4、8及び12時間でサンプルを採取した後、25℃に急冷した。この生成物を、グリシドール相当物の組成及び含有量について分析した。その結果は、下記及びFig.2にまとめられている。
【表3】
【0133】
結論
グリシドールは8時間後に著しく減少したが、MAGの含有量は98.1%から95.2%に減少した。これは最終生成物の品質の低下である。
【0134】
例4:異なる固体酸性材料のグリシドール低減効果
例1d)の生成物を110℃に加熱し、1%又は2%の不均一系触媒を加え、混合物を110℃で10分間、N下で攪拌した。触媒を濾過で除去し、反応混合物を25℃まで急冷した。この生成物を、グリシドール相当物の組成及び含有量について分析した。その結果を以下にまとめ、図3に示す。
【表4】
【0135】
結論
グリシドールの減少は、各種酸触媒の添加により促進されるが、適用する酸触媒の種類により、MAG含有量の減少速度が異なる。
【0136】
例5:グリシドール除去における固体酸性材料濃度の影響
例1d)の生成物を110℃に加熱し、0.25、0.50又は1.00%のSiral 40を加え、混合物を110℃で10分間、N下で撹拌した。触媒を濾過で除去し、反応混合物を25℃まで急冷した。この生成物を、グリシドール相当物の組成及び含有量について分析した。その結果を以下にまとめ、Fig.4に示す。
【表5】
【0137】
結論
グリシドールの減少はSiral 40の添加量が多いほど顕著に増加するが、MAGの分解は非常に限定的であることが確認される。
【0138】
例6:低グリセロール環境下での熱処理と固体酸性材料の相乗効果
例1d)の生成物を110、150又は180℃に加熱し、1.00% Siral 40を加え、混合物を110、150又は180℃で10分間、N下で撹拌した。触媒を濾過して除去し,反応混合物を25℃まで急冷した。触媒を添加しない全く同じ手順で,各温度の参照試験を実施した。この生成物を、グリシドール相当物の組成、全体のロビボンド色、及び含有量について分析した。結果は以下のようにまとめられる。
【表6】
【0139】
結論
この例から、Siral40を添加することにより、110~180℃におけるグリシドールの分解が促進され、MAGの分解が抑制されることがわかる。さらに、Siral 40の添加により、150℃及び180℃におけるロビボンド赤及び黄の発色が抑制される。
【0140】
例7:蒸留前と蒸留後の熱処理
1)例1のステップa)及びb)に記載の方法で生成物を調製し、ステップb)の生成物のサンプルをN下で採取した後、25℃まで急冷した。サンプルをグリシドールについて分析した。
【0141】
2)ステップ1)の生成物を、N下で150℃に60分間加熱した。N下でサンプルを採取した後、25℃まで急冷した。サンプルをグリシドールについて分析した。
【0142】
3)ステップ2)の生成物を,例1のステップc)及びd)に従って蒸留した。得られた生成物のサンプルをN下で採取した後、25℃まで急冷した。サンプルをグリシドールについて分析した。
【0143】
4)ステップ3)の生成物を,N下で100℃に加熱した。N下で240分、480分、720分、1440分に試料を採取した後、25℃まで急冷した。この生成物を、グリシドール相当物の組成及び含有量について分析した。その結果を以下にまとめる。
【表7】
【0144】
結論
本発明者らは、モノグリセリド製造プロセスの複数の段階で熱処理を施すことが有益であることを見出した。
【0145】
例8:蒸留前の熱処理に続く固体酸性材料による処理
1)例1のステップa)及びb)に記載のように生成物を調製し、ステップb)の生成物のサンプルをN下で採取した後、25℃まで急冷した。サンプルをグリシドールについて分析した。
【0146】
2)ステップ1)の生成物を、N下で150℃に60分間加熱した。N下でサンプルを採取した後、25℃まで急冷した。サンプルをグリシドールについて分析した。
【0147】
3)ステップ2)の生成物を、例1のステップc)及びd)に従って蒸留した。ステップd)の生成物のサンプルをN下で採取した後、25℃まで急冷した。サンプルをグリシドールについて分析した。
【0148】
4)ステップ3)の生成物を150℃に加熱し、1w/w%Siral40を加え、混合物を150℃で10分間、N下で撹拌した。その後、Siral 40を濾過して除去し,反応混合物を25℃まで急冷した。この生成物を、グリシドール相当物の含有量について分析した。
【表8】
【0149】
結論
本発明者らは、蒸留前に熱処理を施し、続いて蒸留後にSIRAL40で処理することが有効であることを見出した。
【0150】
例9.大量生産‐蒸留前の熱処理
本発明の方法を大規模に実証するために、工業用モノグリセリド/モノジグリセリド製造プラントで一連の実験を行った。プロセスのセットアップの概要を図6に示す。
【0151】
熱処理装置は、グリセロールのデカンテーションの後に挿入されたが、これは最終生成物の品質が最も良くなることが期待されるからである。熱処理は、蒸留装置への中間生成物の2時間分の流量に相当する量を有し得る中間タンクを用いて連続プロセスとして実施された。タンクは標準的な非撹拌型ステンレス製で、保護用窒素雰囲気である。デカンテーションで得られた中間生成物は、プレート式熱交換器で加熱され、タンク内の生成物との混合を最小限にするため、タンク上部からタンク内側壁に供給された。生成物はタンクの底部からポンプで送り出され、通常の蒸留工程に入った。熱処理時間は、入口ポンプと出口ポンプでタンク内の量を制御することで調整した.タンク内の量は、標準的なレーダー式レベルセンサーで測定した。また、秤量セルを使用することも可能である。プラントでの最適な熱処理条件は、約150~160℃で約110~130分であった。
【0152】
各モノグリセリド含有組成物を用いた3回の実験による平均値で、以下の代表的な結果が得られた。
【表9】
【0153】
結論:本発明者らは、熱処理プロセスが様々な原料に基づくモノグリセリド組成物に適用でき、大規模に実施できることを実証した。
【0154】
例10.大量生産‐蒸留後の熱処理
本発明の方法を大規模に実証するために、工業用モノグリセリド/モノジグリセリド製造プラントで一連の実験を行った。プロセスのセットアップの概要を図7に示す。
【0155】
蒸留装置の後に熱処理装置を挿入し、モノグリセリド蒸留生成物からグリシドールを除去する可能性を実証した。熱処理は、蒸留装置への中間生成物の2時間分の流量に相当する量を収容できる中間タンクを使って連続プロセスとして運転された。タンクは標準的な非撹拌型ステンレススチール製で、保護窒素雰囲気である。蒸留生成物はプレート式熱交換器で加熱され、タンク内の生成物との混合を最小限にするため、タンク上部からタンク内側壁に供給された。生成物は分析前にタンクの底部からポンプで排出された。熱処理時間は,入口ポンプと出口ポンプでタンク内の量を制御することで調整した.以下の例では,反応時間2時間、熱処理温度155℃の条件で熱処理を行った。
【0156】
各モノグリセリド含有組成物について2回の実験を行い、その平均値から以下の代表的な結果を得た。
【表10】
【0157】
結論:本発明者らは、熱処理工程が様々な原料に基づく蒸留モノグリセリド組成物に適用でき、大規模32に実施可能であることを実証した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】