IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バイオジェン アイデック ヘモフィリア インコーポレイテッドの特許一覧

特表2022-537200血友病および低骨ミネラル密度を処置するための方法および組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-24
(54)【発明の名称】血友病および低骨ミネラル密度を処置するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/37 20060101AFI20220817BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20220817BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20220817BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20220817BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20220817BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20220817BHJP
   C07K 16/00 20060101ALN20220817BHJP
   C07K 14/755 20060101ALN20220817BHJP
【FI】
A61K38/37
A61K38/17 100
A61P19/10
A61P7/04
C12N15/62 Z ZNA
C07K19/00
C07K16/00
C07K14/755
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021575272
(86)(22)【出願日】2020-06-18
(85)【翻訳文提出日】2022-02-08
(86)【国際出願番号】 US2020038444
(87)【国際公開番号】W WO2020257462
(87)【国際公開日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】62/863,831
(32)【優先日】2019-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/968,785
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512147244
【氏名又は名称】バイオベラティブ セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】スス・デュアン
(72)【発明者】
【氏名】カタリン・キス-トス
(72)【発明者】
【氏名】ガウラヴ・マノハール・ラジャニ
(72)【発明者】
【氏名】ジョー・サラス
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084BA41
4C084BA44
4C084CA53
4C084DA39
4C084DC15
4C084NA14
4C084ZA531
4C084ZA532
4C084ZA971
4C084ZA972
4C084ZC541
4C084ZC542
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA66
4H045DA76
4H045EA24
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
血友病および低骨ミネラル密度(BMD)を有する対象を、凝固因子およびFcドメインを含むキメラタンパク質で処置する方法を、本明細書に開示する。ある特定の実施形態では、キメラタンパク質はrFVIIIFcである。ある特定の実施形態では、処置される対象は血友病Aを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血友病Aおよび低骨ミネラル密度(BMD)を有する対象を処置する方法であって、
(i)血友病Aおよび低BMDを有する対象を選択する工程と、
(ii)組換えFVIIIタンパク質およびFcドメイン(rFVIIIFc)を含む治療有効量のキメラタンパク質を該対象に投与する工程と
を含み、
該キメラタンパク質の投与は、該対象のBMDの減少を阻害する、前記方法。
【請求項2】
キメラタンパク質は、配列番号1によるアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
キメラタンパク質は、配列番号2によるアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
キメラタンパク質は、配列番号1によるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
キメラタンパク質は、配列番号5によるアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
キメラタンパク質は、配列番号5によるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
キメラタンパク質は、配列番号5によるアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖と、
配列番号4によるアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖と
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
キメラタンパク質は、配列番号5によるアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖と、
配列番号4によるアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖と
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
第1のポリペプチド鎖は、ジスルフィド結合を介して第2のポリペプチド鎖に共有結合している、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
第1のポリペプチド鎖は、Fcドメインのヒンジ領域における2つのジスルフィド結合を介して第2のポリペプチド鎖に共有結合している、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
キメラタンパク質はエフモロクトコグアルファである、請求項1または10に記載の方法。
【請求項12】
キメラタンパク質はヒト細胞によって産生されている、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
ヒト細胞はヒト胎児腎293(HEK293)細胞である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
キメラタンパク質は3~5日毎に25~65IU/kgの用量で投与される、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
Fcドメインはヒト免疫グロブリンG1(IgG1)のFcドメインである、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
対象のBMDは二重X線吸収測定法(DXA)によって測定される、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
対象は50歳以上である、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
対象のBMDはTスコアによって判定される、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
対象が-1.0未満のTスコアを有する場合、該対象は低BMDを有すると判定される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
対象が-1.0から-2.4の間のTスコアを有する場合、該対象は低BMDおよび骨減少症を有すると判定される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
対象が-2.5未満のTスコアを有する場合、該対象は低BMDおよび骨粗鬆症を有すると判定される、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
対象は50歳未満である、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
対象のBMDはZスコアによって判定される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
対象が-2.0未満のZスコアを有する場合、該対象は低BMDを有すると判定される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
骨形成、骨吸収、および/または骨喪失のうちの1つまたはそれ以上のバイオマーカーのレベルに基づいて、対象は低BMDを有すると予測される、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
バイオマーカーは対象の末梢血または尿から評価される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
骨形成の1つまたはそれ以上のバイオマーカーは、骨型アルカリホスファターゼ、1型プロコラーゲンN末端プロペプチド(P1NP)、1型プロコラーゲンC末端プロペプチド(P1CP)、および/またはオステオカルシンを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
骨吸収の1つまたはそれ以上のバイオマーカーは、血清の総アルカリホスファターゼ、核因子カッパBの受容体活性化因子(RANKL)、オステオプロテゲリン(OPG)、酒石酸耐性酸性ホスファターゼ(TRAP)、ヒドロキシリジン、ヒドロキシプロリン、デオキシピリジノリン(DPD)、ピリジノリン(PYD)、骨シアロタンパク質、カテプシンK、酒石酸耐性酸性ホスファターゼ5b(TRAP5b)、マトリックスメタロプロテイナーゼ9(MMP9)、ならびに/または1型コラーゲンのC末端および/もしくはN末端架橋テロペプチド(CTX-1およびNTX-1)を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
対象はビタミンD欠乏症を有していない、請求項1~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
対象は、Fc部分を有しない第VIII因子で予め処置されている、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
血友病Aおよび骨折のリスク増大を有する対象を処置する方法であって、
(i)血友病Aおよび骨折のリスク増大を有する対象を選択する工程と、
(ii)組換えFVIIIタンパク質およびFcドメイン(rFVIIIFc)を含む治療有効量のキメラタンパク質を該対象に投与する工程と
を含み、
該キメラタンパク質の投与は、該対象の該骨折のリスクを減少させる、前記方法。
【請求項32】
対象の骨折のリスクは骨折リスク評価ツール(FRAX)によって判定される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
対象の骨折のリスクは、低BMDリスク因子の評価によって判定される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
低BMDリスク因子は、関節症、身体活動の減少、HIVもしくはHCVによる感染、ビタミンD欠乏症、低体重指数(BMI)、および/または性腺機能低下症を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
対象の骨ミネラル密度(BMD)喪失の速度を減少させる方法であって、
(i)低BMDを有する対象を選択する工程と、
(ii)凝固因子およびFcドメイン(rFVIIIFc)を含む治療有効量のキメラタンパク質を該対象に投与する工程と
を含み、
その結果、該キメラタンパク質の投与は、該対象の該BMD喪失の速度を減少させる、前記方法。
【請求項36】
対象は軽度の血友病Aを有する、請求項1~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
対象は中等度の血友病Aを有する、請求項1~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
対象は重度の血友病Aを有する、請求項1~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
血友病Aを有する対象の骨ミネラル密度(BMD)を増大させ、出血エピソードを予防的に処置する方法であって:
(i)Fc部分を有しないFVIIIタンパク質で血友病Aの処置を受けている対象を特定する工程であって、該対象は処置中では十分な血液凝固を有したが、該対象は低BMDを有する、工程と;
(ii)Fc部分を有しない該FVIIIタンパク質での処置を中止し、組換えFVIIIタンパク質およびFcドメイン(rFVIIIFc)を含む治療有効量のキメラタンパク質を該対象に投与する工程と
を含み、
該キメラタンパク質の投与は、該対象のBMDを増大させ、出血エピソードを予防的に処置する、前記方法。
【請求項40】
血友病Aを有する対象の骨ミネラル密度(BMD)を増大させ、出血エピソードを予防的に処置する方法であって:
(i)ノンファクター補充タンパク質で血友病Aの処置を受けている対象を特定する工程であって、該対象は処置中では十分な血液凝固を有したが、該対象は低BMDを有する、工程と;
(ii)ノンファクター補充タンパク質での処置を中止し、組換えFVIIIタンパク質およびFcドメイン(rFVIIIFc)を含む治療有効量のキメラタンパク質を該対象に投与する工程と
を含み、
該キメラタンパク質の投与は、該対象のBMDを増大させ、出血エピソードを予防的に処置する、前記方法。
【請求項41】
対照の骨ミネラル密度(BMD)を増大させ、出血エピソードを予防的に処置する方法であって、
組換えFVIIIタンパク質およびFcドメイン(rFVIIIFc)を含む治療有効量のキメラタンパク質を該対象に投与する工程
を含み、
該対象は血友病Aおよび低BMDを有すると特定されており、該キメラタンパク質の投与は、該対象のBMDを増大させ、出血エピソードを予防的に処置する、前記方法。
【請求項42】
対象の骨折のリスクを減少させ、出血エピソードを予防的に処置する方法であって、
組換えFVIIIタンパク質およびFcドメイン(rFVIIIFc)を含む治療有効量のキメラタンパク質を該対象に投与する工程
を含み、
該対象は血友病Aおよび骨折のリスク増大を有すると特定されており、該キメラタンパク質の投与は、該対象の骨折のリスクを減少させ、出血エピソードを予防的に処置する、前記方法。
【請求項43】
対象の骨ミネラル密度(BMD)喪失の速度を減少させ、出血エピソードを予防的に処置する方法であって、
組換えFVIIIタンパク質およびFcドメイン(rFVIIIFc)を含む治療有効量のキメラタンパク質を該対象に投与する工程
を含み、
該対象は血友病AおよびBMD喪失を有すると特定されており、該キメラタンパク質の投与は、該対象の該BMD喪失の速度を減少させ、出血エピソードを予防的に処置する、前記方法。
【請求項44】
血友病Aを有し、Fc部分を有しないFVIIIタンパク質で処置されている対象の骨ミネラル密度(BMD)を増大させ、出血エピソードを予防的に処置する方法であって、
Fc部分を有しない該FVIIIタンパク質での処置を中止し、組換えFVIIIタンパク質およびFcドメイン(rFVIIIFc)を含む治療有効量のキメラタンパク質を該対象に投与する工程
を含み、
該対象は、Fc部分を有しない該FVIIIタンパク質での処置中では低BMDおよび十分な血液凝固を有すると特定されており、該キメラタンパク質の投与は、該対象のBMDを増大させ、出血エピソードを予防的に処置する、前記方法。
【請求項45】
血友病Aを有し、ノンファクター補充タンパク質で処置されている対象の骨ミネラル密度(BMD)を増大させ、出血エピソードを予防的に処置する方法であって、
ノンファクター補充タンパク質での処置を中止し、組換えFVIIIタンパク質およびFcドメイン(rFVIIIFc)を含む治療有効量のキメラタンパク質を該対象に投与する工程
を含み、
該対象は、該ノンファクター補充タンパク質での処置中では低BMDおよび十分な血液凝固を有すると特定されており、該キメラタンパク質の投与は、該対象のBMDを増大させ、出血エピソードを予防的に処置する、前記方法。
【請求項46】
対象は、Fc部分を有しない第VIII因子タンパク質を使用して血友病Aに伴う出血を減少させるように予め処置されている、請求項1~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
Fc部分を有しない第VIII因子タンパク質は、Fcドメインに融合されていないペグ化FVIIIである、請求項39、44、または46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
Fc部分を有しない第VIII因子タンパク質は、Fcドメインに融合されていない一本鎖FVIIIである、請求項39、44、または46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
Fc部分を有しない第VIII因子タンパク質は、ヒトにおいてその半減期を延長する部分を含まない組換えFVIIIである、請求項39、44、または46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
Fc部分を有しない第VIII因子タンパク質は、血液由来FVIIIまたは血漿由来FVIIIである、請求項39、44、または46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
Fc部分を有しない第VIII因子タンパク質は、ダモクトコグアルファペゴル、ツロクトコグアルファペゴル、ツロクトコグアルファ、ロノクトコグアルファ、シモクトコグアルファ、ルリオクトコグアルファペゴル、またはオクトコグアルファである、請求項39、44、または46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
対象は、ノンファクター補充タンパク質を使用して血友病Aに伴う出血を減少させるように予め処置されている、請求項1~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
ノンファクター補充タンパク質はエミシズマブである、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
エミシズマブはエミシズマブ-kxwhである、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
対象は、Fc部分を有しない第VIII因子タンパク質またはノンファクター補充タンパク質での処置中では十分な血液凝固を有していた、請求項30または36~54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
対象は、出血が検出されていない骨部位および/または関節にて低BMDを有する、請求項1~55のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年6月19日出願の米国仮出願第62/863,831号、および2020年1月31日出願の米国仮出願第62/968,785号に対する優先権の利益を主張するものであり、これらは両方とも参照によってそれらの全体を本明細書に組み入れる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出し、参照によってその全体を本明細書に組み入れる配列表を含む。2020年6月16日に作成された前記ASCIIコピーは、706564_SA9-503PC_ST25.txtと命名され、46,080バイトのサイズである。
【背景技術】
【0003】
血友病は、凝固因子をコードする遺伝子の欠陥によって引き起こされる出血性障害のグループであり、10,000人の男児出生のうち1~2人が罹患する。非特許文献1。血友病Aは、機能的な内因性凝固第VIII因子(FVIII)の非存在によって特徴付けられる。重度の血友病Aの患者は、コントロール不良外傷性出血だけでなく、関節への特発性出血も患う。血友病の処置向けの現在の標準治療とは、肥大滑液膜炎および軟骨分解(血友病性関節症)を招くおそれのある再発性関節出血(関節血腫)をはじめとした深刻な生命を脅かすおよび四肢を脅かす出血を防ぐことを目的とした、静脈内因子補充療法である。非特許文献2。数十年にわたって、最適な予防法によって関節の出血は減少するが、解消されることはない。非特許文献3。
【0004】
血友病のヒトは、一般集団と比較して、骨ミネラル密度(BMD)の減少および骨粗鬆症のリスクがより高い。非特許文献4。一研究によれば、血友病患者の27%が骨粗鬆症を有し、43%が低骨密度を有する。同上。BMDに関して増えつつある世界的な知見が示すところは、BMDは、多くの場合、症例対照よりも血友病患者では低いか、年齢に対して一般集団で予想されるよりも低いことである。この関連性にもかかわらず、血友病患者のBMD減少のメカニズムは現在不明である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Grawら、Nat.Rev.Genet.6(6):488~501頁(2005)
【非特許文献2】Manco-Johnsonら、NEJM 357(6):535~4頁(2007)
【非特許文献3】Manco-Johnsonら、Blood 129(17):2368~2374頁(2017)
【非特許文献4】Gerstnerら、Haemophilia、15(2):559~65頁(2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
血友病患者の腰椎と股関節のBMD両方の深刻な減少は、小児期に始まる。関節出血を防御し、経時的にBMDの喪失を最小限に抑える、血友病患者向けに治療選択を改善することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に提供されているのは、とりわけ、血友病および低BMDを有する対象を処置する方法および組成物である。本開示のある特定の態様は、血友病Aおよび低骨ミネラル密度(BMD)を有する対象を処置する方法であって、血友病Aおよび低BMDを有する対象を選択する工程と、組換え第VIII因子(FVIII)タンパク質およびFcドメイン(rFVIIIFc)を含む治療有効量のキメラタンパク質を対象に投与する工程とを含み、キメラタンパク質の投与は、対象のBMDの減少を阻害する、方法を対象とする。一部の実施形態では、Fcドメインは、免疫グロブリンG1(IgG1)のFcドメインである。一部の実施形態では、FcドメインはヒトIgG1のFcドメインである。一部の実施形態では、キメラタンパク質はrFVIIIFcである。本開示の一部の態様は、血友病Aおよび低骨ミネラル密度(BMD)を有する対象を処置するのに使用するための組換えFVIIIタンパク質およびFcドメインを含むキメラタンパク質を対象とする。
【0008】
一部の実施形態では、対象は軽度の血友病Aを有する。一部の実施形態では、対象は中等度の血友病Aを有する。一部の実施形態では、対象は重度の血友病Aを有する。
【0009】
一部の実施形態では、rFVIIIFcは、配列番号1によるアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、rFVIIIFcは、配列番号1によるアミノ酸配列を含む。
【0010】
一部の実施形態では、キメラタンパク質のFVIII部分は、配列番号2によるアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、キメラタンパク質のFVIII部分は、配列番号2によるアミノ酸配列を含む。
【0011】
一部の実施形態では、rFVIIIFcは、配列番号5と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、rFVIIIFcは、配列番号5と同一のアミノ酸配列を含む。
【0012】
一部の実施形態では、キメラタンパク質は、配列番号5と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖と、配列番号4と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖とを含む。一部の実施形態では、キメラタンパク質は、配列番号5と同一のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖と、配列番号4と同一のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖とを含む。一部の実施形態では、キメラタンパク質は、そのアミノ酸配列が配列番号5と同一である第1のポリペプチド鎖と、そのアミノ酸配列が配列番号4と同一である第2のポリペプチド鎖とを含む。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、ジスルフィド結合を介して第2のポリペプチド鎖に共有結合している。一部の実施形態では、キメラタンパク質は、2つのジスルフィド結合を介して第2のポリペプチド鎖に共有結合している第1のポリペプチド鎖を含む。一部の実施形態では、キメラタンパク質は、Fcドメインのヒンジ領域における2つのジスルフィド結合を介して第2のポリペプチド鎖に共有結合している第1のポリペプチド鎖を含む。一部の実施形態では、キメラタンパク質は、エフモロクトコグアルファである。一部の実施形態では、エフモロクトコグアルファは、商品名ELOCTA(登録商標)もしくはELOCTATE(登録商標)で販売されているか、またはそれらのバイオシミラーである。
【0013】
一部の実施形態では、キメラタンパク質は、Fcドメインのヒンジ領域における2つのジスルフィド結合を介して第2のポリペプチド鎖に共有結合している第1のポリペプチド鎖を含み、ここで、第1のポリペプチド鎖は、そのアミノ酸配列が配列番号5と同一である第1のポリペプチド鎖であって、Y346、Y718、Y719、Y723、Y770、およびY786に硫酸化チロシン、N41、N239、N916、N1224、およびN1515にN-グリコシル化部位を含む第1のポリペプチド鎖と、そのアミノ酸配列が配列番号4と同一である第2のポリペプチド鎖であって、N77にN-グリコシル化部位を含む第2のポリペプチド鎖とを含む。
【0014】
一部の実施形態では、本開示の方法は、(i)FVIIIタンパク質およびFcドメインを含むキメラポリペプチド、ならびに(ii)少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む、有効量の医薬組成物を対象に投与する工程を含み、ここで、キメラポリペプチドのFVIIIタンパク質の約1%~約40%は一本鎖FVIIIであり、キメラポリペプチドのFVIIIタンパク質の約60%~約99%はプロセシングを受けたFVIIIであり、ここで、一本鎖FVIIIタンパク質は単一のポリペプチド鎖上にFVIII重鎖およびFVIII軽鎖を含んでおり、プロセシングを受けたFVIIIは、2つのポリペプチド鎖上にFVIII重鎖およびFVIII軽鎖を含む。
【0015】
一部の実施形態では、キメラタンパク質は、ヒト細胞によって産生されている。一部の実施形態では、ヒト細胞はヒト胎児腎293(HEK293)細胞である。一部の実施形態では、ヒト細胞はHEK293F細胞である。
【0016】
一部の実施形態では、rFVIIIFcは3~5日毎に25~65IU/kgの用量で投与される。一部の実施形態では、組換えFVIIIタンパク質は、3日毎に25~65IU/kgの用量で投与される。一部の実施形態では、組換えFVIIIタンパク質は、4日毎に25~65IU/kgの用量で投与される。一部の実施形態では、組換えFVIIIタンパク質は、5日毎に25~65IU/kgの用量で投与される。
【0017】
一部の実施形態では、対象は50歳以上である。ある特定の実施形態では、対象は50歳未満である。
【0018】
一部の実施形態では、対象のBMDは、X線によって測定される。一部の実施形態では、対象のBMDは、二重X線吸収測定法(DXA)によって測定される。
【0019】
一部の実施形態では、低BMDを有する対象は、骨減少症および/または骨粗鬆症を有する。一部の実施形態では、低BMDを有する対象は、骨減少症を有する。一部の実施形態では、低BMDを有する対象は、骨粗鬆症を有する。一部の実施形態では、対象のBMDはTスコアによって判定される。一部の実施形態では、対象が-1.0未満のTスコアを有する場合、対象は低BMDを有すると判定される。一部の実施形態では、対象が-1.0から-2.4の間のTスコアを有する場合、対象は、低BMDおよび骨減少症を有すると判定される。一部の実施形態では、対象が-2.5以下のTスコアを有する場合、対象は、低BMDおよび骨粗鬆症を有すると判定される。
【0020】
一部の実施形態では、対象のBMDはZスコアによって判定される。一部の実施形態では、対象が-2.0未満のZスコアを有する場合、対象は低BMDを有すると判定される。
【0021】
一部の実施形態では、骨形成、骨吸収、および/または骨喪失のうちの1つまたはそれ以上のバイオマーカーのレベルに基づいて、対象は低BMDを有すると予測される。一部の実施形態では、バイオマーカーは対象の末梢血または尿から評価される(例えば、タンパク質のレベルまたは量がアッセイで測定される)。一部の実施形態では、1つまたはそれ以上のバイオマーカーのレベルは、末梢血であるか、または末梢血に由来する生物学的試料(例えば血清または血漿)において測定される。一部の実施形態では、骨形成の1つまたはそれ以上のバイオマーカーは、骨型アルカリホスファターゼ、1型プロコラーゲンN末端プロペプチド(P1NP)、1型プロコラーゲンC末端プロペプチド(P1CP)、および/またはオステオカルシンを含む。一部の実施形態では、骨吸収の1つまたはそれ以上のバイオマーカーは、血清の総アルカリホスファターゼ、核因子カッパBの受容体活性化因子(RANKL)、オステオプロテゲリン(OPG)、酒石酸耐性酸性ホスファターゼ(TRAP)、ヒドロキシリジン、ヒドロキシプロリン、デオキシピリジノリン(DPD)、ピリジノリン(PYD)、骨シアロタンパク質、カテプシンK、酒石酸耐性酸性ホスファターゼ5b(TRAP5b)、マトリックスメタロプロテイナーゼ9(MMP9)、ならびに/または1型コラーゲンのC末端およびN末端架橋テロペプチド(それぞれ、CTX-1およびNTX-1)、を含む。
【0022】
一部の実施形態では、対象はビタミンD欠乏症を有していない。一部の実施形態では、対象は、Fc部分を有しない第VIII因子で予め処置されている。
【0023】
本開示のある特定の態様は、血友病Aおよび骨折のリスク増大を有する対象を処置する方法であって、血友病および骨折のリスク増大を有する対象を選択する工程と、組換えFVIIIタンパク質およびFcドメインを含む治療有効量のキメラタンパク質を対象に投与する工程とを含み、キメラタンパク質の投与は、対象の骨折のリスクを減少させる、方法を対象とする。本開示の一部の態様は、血友病Aおよび骨折のリスク増大を有する対象を処置するのに使用するための組換えFVIIIタンパク質およびFcドメインを含むキメラタンパク質を対象とする。
【0024】
一部の実施形態では、対象の骨折のリスクは骨折リスク評価ツール(FRAX)によって判定される。一部の実施形態では、対象の骨折のリスクは、低BMDリスク因子の評価によって判定される。一部の実施形態では、低BMDリスク因子は、関節症、身体活動の減少、HIVもしくはHCVによる感染、ビタミンD欠乏症、低体重指数(BMI)、および/または性腺機能低下症を含む。
【0025】
本開示のある特定の態様は、血友病Aおよび骨折を有する対象を処置する方法であって、血友病および骨折を有する対象を選択する工程と、組換えFVIIIタンパク質およびFcドメインを含む治療有効量のキメラタンパク質を対象に投与する工程とを含む方法を対象とする。本開示の一部の態様は、血友病Aおよび骨折を有する対象を処置するのに使用するための組換えFVIIIタンパク質およびFcドメインを含むキメラタンパク質を対象とする。
【0026】
本開示のある特定の態様は、対象の骨ミネラル密度(BMD)喪失の速度を減少させる方法であって、低BMDを有する対象を選択する工程と;凝固因子およびFcドメインを含む治療有効量のキメラタンパク質を対象に投与する工程とを含み、その結果、キメラタンパク質の投与は、対象のBMD喪失の速度を減少させる、方法を対象とする。本開示の一部の態様は、血友病Aを有する対象を処置し、対象のBMD喪失の速度を減少させるのに使用するための、組換えFVIIIタンパク質およびFcドメイン(rFVIIIFc)を含むキメラタンパク質を対象とする。
【0027】
本開示のある特定の態様は、血友病Aを有する対象の骨ミネラル密度(BMD)を増大させ、出血エピソードを予防的に処置する方法であって、(i)Fc部分を有しないFVIIIタンパク質で血友病Aの処置を受けている対象を特定する工程であって、対象は処置中では十分な血液凝固を有したが、対象は低BMDを有する、工程と;(ii)Fc部分を有しないFVIIIタンパク質での処置を中止し、組換えFVIIIタンパク質およびFcドメイン(rFVIIIFc)を含む治療有効量のキメラタンパク質を対象に投与する工程とを含み、キメラタンパク質の投与は、対象のBMDを増大させ、出血エピソードを予防的に処置する、方法を対象とする。
【0028】
本開示のある特定の態様は、血友病Aを有する対象の骨ミネラル密度(BMD)を増大させ、出血エピソードを予防的に処置する方法であって、(i)ノンファクター補充タンパク質(non-factor replacement protein)で血友病Aの処置を受けている対象を特定する工程であって、対象は処置中では十分な血液凝固を有したが、対象は低BMDを有する、工程と;(ii)ノンファクター補充タンパク質での処置を中止し、組換えFVIIIタンパク質およびFcドメイン(rFVIIIFc)を含む治療有効量のキメラタンパク質を対象に投与する工程とを含み、キメラタンパク質の投与は、対象のBMDを増大させ、出血エピソードを予防的に処置する、方法を対象とする。
【0029】
本開示のある特定の態様は、対象の骨ミネラル密度(BMD)を増大させ、出血エピソードを予防的に処置する方法であって、組換えFVIIIタンパク質およびFcドメイン(rFVIIIFc)を含む治療有効量のキメラタンパク質を対象に投与する工程を含み、ここで、対象は血友病Aおよび低BMDを有すると特定されており、キメラタンパク質の投与は、対象のBMDを増大させ、出血エピソードを予防的に処置する、方法を対象とする。
【0030】
本開示のある特定の態様は、対象の骨折のリスクを減少させ、出血エピソードを予防的に処置する方法であって、組換えFVIIIタンパク質およびFcドメイン(rFVIIIFc)を含む治療有効量のキメラタンパク質を対象に投与する工程を含み、対象は血友病Aおよび骨折のリスク増大を有すると特定されており、キメラタンパク質の投与は、対象の骨折のリスクを減少させ、出血エピソードを予防的に処置する、方法を対象とする。
【0031】
本開示のある特定の態様は、対象の骨ミネラル密度(BMD)喪失の速度を減少させ、出血エピソードを予防的に処置する方法であって、組換えFVIIIタンパク質およびFcドメイン(rFVIIIFc)を含む治療有効量のキメラタンパク質を対象に投与する工程を含み、対象は血友病AおよびBMD喪失を有すると特定されており、キメラタンパク質の投与は、対象のBMD喪失の速度を減少させ、出血エピソードを予防的に処置する、方法を対象とする。
【0032】
本開示のある特定の態様は、血友病Aを有し、Fc部分を有しないFVIIIタンパク質で処置されている対象の骨ミネラル密度(BMD)を増大させ、出血エピソードを予防的に処置する方法であって、Fc部分を有しないFVIIIタンパク質での処置を中止し、組換えFVIIIタンパク質およびFcドメイン(rFVIIIFc)を含む治療有効量のキメラタンパク質を対象に投与する工程を含み、対象は、Fc部分を有しないFVIIIタンパク質での処置中では低BMDおよび十分な血液凝固を有すると特定されており、キメラタンパク質の投与は、対象のBMDを増大させ、出血エピソードを予防的に処置する、方法を対象とする。
【0033】
本開示のある特定の態様は、血友病Aを有し、ノンファクター補充タンパク質で処置されている対象の骨ミネラル密度(BMD)を増大させ、出血エピソードを予防的に処置する方法であって、ノンファクター補充タンパク質での処置を中止し、組換えFVIIIタンパク質およびFcドメイン(rFVIIIFc)を含む治療有効量のキメラタンパク質を対象に投与する工程を含み、対象は、ノンファクター補充タンパク質での処置中では低BMDおよび十分な血液凝固を有すると特定されており、キメラタンパク質の投与は、対象のBMDを増大させ、出血エピソードを予防的に処置する、方法を対象とする。
【0034】
一部の実施形態では、対象は、Fc部分を有しない第VIII因子タンパク質を使用して血友病Aに伴う出血を減少させるように予め処置されている。
【0035】
一部の実施形態では、Fc部分を有しない第VIII因子タンパク質は、Fcドメインに融合されていないペグ化FVIIIである。
【0036】
一部の実施形態では、Fc部分を有しない第VIII因子タンパク質は、Fcドメインに融合されていない一本鎖FVIIIである。
【0037】
一部の実施形態では、Fc部分を有しない第VIII因子タンパク質は、ヒトにおいてその半減期を延長する部分を含まない組換えFVIIIである。
【0038】
一部の実施形態では、Fc部分を有しない第VIII因子タンパク質は、血液由来FVIIIまたは血漿由来FVIIIである。
【0039】
一部の実施形態では、Fc部分を有しない第VIII因子タンパク質は、ダモクトコグアルファペゴル、ツロクトコグアルファペゴル、ツロクトコグアルファ、ロノクトコグアルファ、シモクトコグアルファ、ルリオクトコグアルファペゴル、またはオクトコグアルファである。
【0040】
一部の実施形態では、対象は、ノンファクター補充タンパク質を使用して血友病Aに伴う出血を減少させるように予め処置されている。
【0041】
一部の実施形態では、ノンファクター補充タンパク質はエミシズマブである。
【0042】
一部の実施形態では、エミシズマブはエミシズマブ-kxwhである。
【0043】
一部の実施形態では、対象は、Fc部分を有しない第VIII因子タンパク質またはノンファクター補充タンパク質での処置中では十分な血液凝固を有した。
【0044】
一部の実施形態では、対象は、出血が検出されていない骨部位および/または関節にて低BMDを有する。
【0045】
前述の態様および実施形態のそれぞれによれば、ある特定の実施形態では、対象は、軽度の血友病Aを有する。あるいは、前述の態様および実施形態のそれぞれによれば、ある特定の実施形態では、対象は、中等度の血友病Aを有する。あるいは、前述の態様および実施形態のそれぞれによれば、ある特定の実施形態では、対象は、重度の血友病Aを有する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1図1A~Bは、単球由来の細胞タイプを使用して、酒石酸耐性酸性ホスファターゼ(TRAP)染色、破骨細胞骨吸収活性、遺伝子発現プロファイリング、破骨細胞特異的遺伝子、および抗酸化経路関連遺伝子によりマクロファージおよび破骨細胞の形態を調べる、実験的in vitroモデルの概略図表示の図である。図1Aは、M-CSF単独を50ng/mlで7日間にわたって投与することによる、CD14単球を単球由来マクロファージに分化させるためのプロトコルを表示する概略図である。図1Bは、M-CSFを50ng/mlでおよびRANKL 100ng/mlを7日間にわたって投与することによる、CD14単球を単球由来破骨細胞に分化させるためのプロトコルを表示する概略図である。
図2図2A~Bは、単球由来の細胞タイプを使用して酒石酸耐性酸性ホスファターゼ(TRAP)染色を調べる、実験的in vitroモデルの概略図表示の図である。図2Aは、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)単独を50ng/mlで7日間にわたって投与することにより単球由来マクロファージに分化し、TRAP染色について調べられた、CD14単球の対照群を表示する概略図である。図2Bは、M-CSFを50ng/mlでおよびRANKL 100ng/mlを7日間にわたって投与することにより単球由来破骨細胞に分化し、ビヒクル、IgG1(25nM)、rFVIII(25nM)またはrFVIIIFc(25nM)で0日目に処置された、CD14単球の試験群を表示する概略図である。
図3図3A~Eは、単球由来マクロファージ(図3A)および単球由来破骨細胞(図3B~3E)のTRAP染色の視覚的図説の図である。図3Bは、ビヒクルで処置された単球由来破骨細胞のTRAP染色の視覚的図説である。図3Cは、IgG1単独で処置された単球由来破骨細胞のTRAP染色の視覚的図説である。図3Dは、組換え第VIII因子(rFVIII)単独で処置された単球由来破骨細胞のTRAP染色の視覚的図説である。図3Eは、rFVIIIFcで処置された単球由来破骨細胞のTRAP染色の視覚的図説である。
図4】CD14単球が、単球由来破骨細胞に分化する前に:ビヒクル処置、IgG1単独、rFVIII、またはrFVIIIFcの4つの処置のうちの1つで1日間処置されている場合、破骨細胞形成を判定するウォッシュアウト実験の概略図表示の図である。7日目に形態について細胞を解析した。
図5図5A~Dは、分化する前にビヒクル(図5A)、IgG1(図5B)、rFVIII(図5C)、またはrFVIIIFc(図5D)で1日間処置した場合、分化の7日後の単球由来破骨細胞形態の視覚的図説の図である。
図6】CD14単球を、M-CSFおよびRANKLならびに4つの処置パラダイムのうちの1つで3日間処置し(ビヒクル、IgG1、rFVIII、またはrFVIIIFc)、その後、単球をウシ皮質骨スライス上にプレーティングし、さらなる7~10日間培養し、次いでトルイジンブルーで染色して骨吸収を測定した場合の、骨吸収実験の概略図表示の図である。
図7図7A~Dは、ビヒクル(図7A)、IgG1単独(図7B)、rFVIII(図7C)、またはrFVIIIFc(図7D)で予め処置された単球由来破骨細胞と培養した骨スライスの視覚的図説の図である。
図8】CD14単球を0日目にビヒクル、IgG1単独、rFVIII、またはrFVIIIFcで処置し、M-CSFおよびRANKLを7日間添加することを通して単球由来破骨細胞へと分化させ、目的の遺伝子の発現を測定することによって、単球由来破骨細胞の遺伝子発現を決定する実験の、概略図表示の図である。
図9】0日目にビヒクル(黒色のバー)、IgG1(暗灰色のバー)、rFVIII(明灰色のバー)またはrFVIIIFc(白色のバー)で処置し、処置後7日目に単球由来破骨細胞に分化させたCD14単球の遺伝子発現の図形表示の図である。分化のマーカー(RANK、NFATC1)および骨吸収活性のマーカー(CATK、TRAP、MMP9)を、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)によって測定し、未処置群に正規化した。ns=有意ではない;****p<.005;n=6~10。
図10】CD14単球を0日目にビヒクル、IgG1単独、rFVIII、またはrFVIIIFcで処置し、M-CSFおよびRANKLを7日間添加することを通して単球由来破骨細胞へと分化させ、7日目に目的の酵素活性および遺伝子の発現を測定することによって、単球由来破骨細胞の遺伝子発現および酵素活性を決定する実験の、概略図表示の図である。
図11図11A~Bは、0日目にビヒクル(黒色のバー)、IgG1(暗灰色のバー)、rFVIII(明灰色のバー)またはrFVIIIFc(白色のバー)で処置され、処置後7日目に単球由来破骨細胞に分化させたCD14単球の遺伝子発現(図11A)および酵素活性(図11B)の図形表示の図である。図11Aは、qPCRによって測定され、ビヒクル処置群に正規化された抗酸化経路関連遺伝子(NQO1、GCLC)を図示する。図11Bは、測定され、ビヒクル処置群に正規化されたNQO1レダクターゼ比活性を図示する。ns=有意ではない;****p<.005;n=10(図11A);n=3(図11B)。
図12】CD14単球を0日目にビヒクル、IgG1単独、rFVIII、rFVIIIFc、またはrFVIIIFc-N297Aで処置し、M-CSFおよびRANKLを7日間添加することを通して単球由来破骨細胞へと分化させ、破骨細胞関連遺伝子の遺伝子発現を測定することによって、破骨細胞の遺伝子発現および酵素活性を決定する実験の、概略図表示の図である。
図13】0日目にビヒクル(黒色のバー)、IgG1(暗灰色のバー)、rFVIII(明灰色のバー)、rFVIIIFc(白色のバー)、またはrFVIIIFc-N297A(破線のバー)で処置され、処置後7日目に単球由来破骨細胞に分化させたCD14単球の遺伝子発現の図形表示の図である。RANK、NFATC1、CATK、およびTRAPの各レベルはqPCRによって測定した。ns=有意ではない;****p<.005;*p<.0.05;n=5。
図14A】様々な用量でrFVIII+IgG1で処置され、CD14およびCD51/61の表面発現について解析した単球における蛍光活性化フローサイトメトリーによって収集した免疫表現型を表示する一連の密度プロットの図である。図14Aは、rFVIII+IgG1の75nMから7.5nMのへの用量減量を表示する。
図14B】様々な用量でrFVIII+IgG1で処置され、CD14およびCD51/61の表面発現について解析した単球における蛍光活性化フローサイトメトリーによって収集した免疫表現型を表示する一連の密度プロットの図である。図14Bは、rFVIII+IgG1の4.2nMから0nM(ビヒクル対照)への用量減量を表示する。
図15A】様々な用量でrFVIIIFcで処置され、CD14およびCD51/61の表面発現について解析した単球における蛍光活性化フローサイトメトリーによって収集した免疫表現型を表示する一連の密度プロットの図である。図15Aは、rFVIIIFcの75nMから7.5nMのへの用量減量を表示する。
図15B】様々な用量でrFVIIIFcで処置され、CD14およびCD51/61の表面発現について解析した単球における蛍光活性化フローサイトメトリーによって収集した免疫表現型を表示する一連の密度プロットの図である。図15Bは、rFVIIIFcの4.2nMから0nM(ビヒクル対照)への用量減量を表示する。
図16】様々な用量でのrFVIII+IgG1(円を含む線)またはrFVIIIFc(四角を含む線)での処置後のフローサイトメトリーによってCD51/61high細胞として特徴付けられた、ビヒクル対照と比較した破骨細胞のパーセンテージの図形表示の図である。
図17図17A~Dは、ビヒクル(図17A)、rFVIIIFc(図17B)、rFVIII+IgG1(図17C)、またはrFVIIIFc-N297A(図17D)で処置され、CD16およびCD51/61の表面発現について解析した単球における蛍光活性化フローサイトメトリーによって収集した免疫表現型を表示する一連の密度プロットの図である。
図18図18A~Dは、FcγR1遮断抗体の抗原結合断片(Fab)(図18A~B)もしくはFcγR1に非特異的に結合するアイソタイプ対照Fab(図18C~D)の存在下で、rFVIIIFcまたはrFVIIIで処置され、CD16およびCD51/61の表面発現について解析した単球における蛍光活性化フローサイトメトリーによって収集した免疫表現型を表示する一連の密度プロットの図である。
図19図19A~Dは、FcγR2遮断抗体(図19A~B)もしくはFcγR2に非特異的に結合するアイソタイプ対照抗体(図19C~D)の存在下でrFVIIIFcまたはrFVIIIで処置され、CD16およびCD51/61の表面発現について解析した単球における蛍光活性化フローサイトメトリーによって収集した免疫表現型を表示する一連の密度プロットの図である。
図20図20A~Dは、FcγR3遮断抗体(図20A~B)もしくはFcγR3に非特異的に結合するアイソタイプ対照抗体(図20C~D)の存在下でrFVIIIFcまたはrFVIIIで処置され、CD16およびCD51/61の表面発現について解析した単球における蛍光活性化フローサイトメトリーによって収集した免疫表現型を表示する一連の密度プロットの図である。
図21図21A~Dは、ビヒクル(図21A)、rFVIIIFc(図21B)、rFVIII+IgG1(図21C)、またはrFVIIIFc-N297A(図21D)で処置され、CD51/61の表面発現について解析した単球における蛍光活性化フローサイトメトリーによって収集した免疫表現型を表示する図17に対応する一連のヒストグラムの図である。y軸は、解析ソフトウェアFlowJoによって計算された、最大カウント(100%)のパーセンテージとして調整されたフローイベントを表す。
図22図22A~Dは、FcγR1遮断抗体の抗原結合断片(Fab)(図22A~B)もしくはFcγR1に非特異的に結合するアイソタイプ対照Fab(図22C~D)の存在下でrFVIIIFcまたはrFVIIIで処置され、CD51/61の表面発現について解析した単球における蛍光活性化フローサイトメトリーによって収集した免疫表現型を表示する図18に対応する一連のヒストグラムの図である。y軸は、解析ソフトウェアFlowJoによって計算された、最大カウント(100%)のパーセンテージとして調整されたフローイベントを表す。
図23図23A~Dは、FcγR2遮断抗体(図23A~B)もしくはFcγR2に非特異的に結合するアイソタイプ対照抗体(図23C~D)の存在下でrFVIIIFcまたはrFVIIIで処置され、CD51/61の表面発現について解析した単球における蛍光活性化フローサイトメトリーによって収集した免疫表現型を表示する図19に対応する一連のヒストグラムの図である。y軸は、解析ソフトウェアFlowJoによって計算された、最大カウント(100%)のパーセンテージとして調整されたフローイベントを表す。
図24図24A~Dは、FcγR3遮断抗体(図24A~B)もしくはFcγR3に非特異的に結合するアイソタイプ対照(図24C~D)の存在下でrFVIIIFcまたはrFVIIIで処置され、CD51/61の表面発現について解析した単球における蛍光活性化フローサイトメトリーによって収集した免疫表現型を表示する図20に対応する一連の密度プロットの図である。y軸は、解析ソフトウェアFlowJoによって計算された、最大カウント(100%)のパーセンテージとして調整されたフローイベントを表す。
図25図25A~Jは、FVIIIのA2領域を遮断する抗体(GMA8017;図25Bおよび25G)、FVIIIのA3領域を遮断する抗体(GMA8010;図25Cおよび25H)の存在下で、もしくは、C2領域を遮断する抗体(GMA8006;図25Dおよび25I;GMA8026;図25Eおよび25J)の存在下で、rFVIII(図25A~E)またはrFVIIIFc(図25F~J)の存在下での単球および単球由来破骨細胞の視覚的図説の図である。
図26図26A~Eは、rFVIII(図26A)もしくはrFVIIIFc(図26B)単独でまたはフォンウィルブランド因子(VWF;図26C~E)の存在下で処置され、CD51/61の表面発現について解析した単球における蛍光活性化フローサイトメトリーによって収集した免疫表現型を表示する一連のヒストグラムの図である。y軸は、解析ソフトウェアFlowJoによって計算された、最大カウント(100%)のパーセンテージとして調整されたフローイベントを表す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本開示は、低骨ミネラル密度(BMD)を有する対象を処置するために使用される方法を対象とする。一態様では、血友病および低BMDを有する対象を処置する方法を、本明細書に開示する。本開示のある特定の態様は、血友病Aおよび低BMDを有する対象を処置する方法であって、血友病Aおよび低BMDを有する対象を選択する工程と、凝固因子およびFcドメインを含む治療有効量のキメラタンパク質を対象に投与する工程とを含む、方法を対象とする。また、本明細書は、血友病Aを有する対象をキメラタンパク質で処置するための方法であって、キメラタンパク質の投与は、対象のBMDの減少を阻害する、方法を開示する。ある特定の実施形態では、キメラタンパク質は、FVIIIおよびFc領域を含む。ある特定の実施形態では、キメラタンパク質は、FVIIIおよびFc領域からなる。様々な実施形態では、キメラタンパク質はrFVIIIFcである。
【0048】
1.定義
別途定義されない限り、本明細書で使用する全ての技術および科学的用語は、本開示に関連する当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。例えば、The Dictionary of Cell and Molecular Biology、第5版、2013年、Academic Press;およびthe Oxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology、第2版(改訂)、2006年、Oxford University Pressによって、本開示において使用される用語の多くに関する一般的な辞書が当業者に提供される。
【0049】
単数形「a」、「an」および「the」は文脈が明確に別途規定しない限り、複数の指示対象を含む。用語「a」(または「an」)も、用語「1つまたはそれ以上」および「少なくとも1つ」も、本明細書において交換可能に使用することができる。特定の態様では、用語「a」または「an」とは「単一(single)」を意味する。他の態様では、用語「a」または「an」とは、「2つ以上」または「複数」を含む。さらに、本明細書において使用される場合の「および/または」は、他方をも含め、または含めずに、特定の2つの特性またはコンポーネントのそれぞれの具体的な開示と解釈されるものとする。したがって、本明細書において「Aおよび/またはB」のような語句で使用される用語「および/または」は、「AおよびB」、「AまたはB」、「A(単独)」および「B(単独)」を含むものとする。同様に、「A、B、および/またはC」のような語句で使用される用語「および/または」は、以下の態様のそれぞれを包含するものとする:A、B、およびC;A、B、またはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;AおよびC;AおよびB;BおよびC;A(単独);B(単独);ならびにC(単独)。
【0050】
「約」という用語は、本明細書および本特許請求の範囲の全体を通して数値と連結して使用される場合、当業者によく知られかつ許容可能な精度の間隔を表示するものである。本明細書の特許請求の範囲、要約書、および発明を実施するための形態において全体的に、かかる精度の間隔は、±10%である。一部の実施形態では、記述した特定の数値に関して使用される場合、「約」とは、その値は記述した値から10%以下だけ変化し得ることを意味する。一部の実施形態では、記述した特定の数値に関して使用される場合、「約」とは、その値は記述した値から1%以下だけ変化し得ることを意味する。例えば、本明細書で使用される場合、表現「約100」とは、99および101ならびに間にあるすべての値(例えば、99.1,99.2,99.3,99.4等)を含む実施形態を開示する。
【0051】
単位、接頭辞、および記号は、国際単位系(SI)の認可した形態で示される。数値範囲は、当該範囲を定義する数を含む。ある範囲の値が記述される場合、当該範囲の記述された上限値と下限値の間にある介在する各整数値、およびこの各分数も、かかる値の間の各部分範囲とともに具体的に開示されることが理解されるべきである。いかなる範囲の上限値および下限値も独立して、当該範囲に含まれることができ、または当該範囲から除外することができ、いずれかの限界値が含まれ、いずれの限界値も含まれず、またはいずれの限界値も含まれる各範囲も、本開示内に包含される。値が、明白に記述される場合、記述された値とほぼ同じ数量または量も本開示の範囲内にあることも理解されるべきである。組合せが開示される場合、当該組合せの要素の各部分的組合せも具体的に開示され、本開示の範囲内にある。逆に、異なる要素または要素の群が個々に開示される場合、その組合せも開示される。開示の何らかの要素が複数の代替物を有するものとして開示される場合、各代替物が単一でまたは他の代替物との何らかの組合せで除外される、当該開示の例も、本明細書により開示される;開示の2つ以上の要素は、かかる除外を有することができ、かかる除外を有する要素の組合せはすべて、本明細書により開示される。
【0052】
当技術分野で知られるように、2つのポリペプチド間の「配列同一性」とは、一方のポリペプチドのアミノ酸配列と、第二のポリペプチドの配列とを比較することにより判定される。本明細書で論議の場合、特定の任意のポリペプチドが、別のポリペプチドと少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、または、100%同一であるか否かは、それに限定されないが、BESTFITプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package、Version 8 for Unix、Genetics Computer Group、University Research Park、575 Science Drive、Madison、WI 53711)のような、当技術分野で知られる方法およびコンピュータープログラム/ソフトウェア、を使用して判定することができる。BESTFITでは、Smith and Waterman、Advances in Applied Mathematics 2:482~489頁(1981)の部分的相同性アルゴリズムを使用して、2つの配列間の最良の相同性セグメントを見いだす。特定の配列が、本開示に従う基準配列と、例えば、95%同一であるか否かを判定するために、BESTFITまたは他の任意の配列アライメントプログラムを使用する場合、パラメータは、当然ながら、同一性のパーセンテージが基準ポリペプチド配列の完全長にわたって算出されるように、かつ、基準配列中のアミノ酸の総数のうちの5%までの相同性ギャップが許可されるように、セットされる。配列同一性および配列類似性のパーセントの判定に適するアルゴリズムの他の非限定的な例は、それぞれ、Altschulら、Nuceic Acids Res.25:3389~3402頁(1997)およびAltschulら、J.Mol.Biol.215:403~410頁(1990)に記載されるBLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムである。BLASTおよびBLAST 2.0を、本明細書に記載されたパラメータとともに使用して、核酸およびタンパク質の配列同一性パーセントを判定することができる。BLAST解析を実行するためのソフトウェアは、当技術分野で知られるように、National Center for Biotechnology Information(NCBI)を通じて公に入手可能である。このアルゴリズムは最初に、データベース配列内で同じ長さのワードとアライメントを取られた場合、いくつかの正値閾値スコアTに一致するかまたは満たすかのいずれかで、クエリー配列内で長さWの短いワードを特定することによる、高スコアリング配列ペア(HSP)の特定を含む。Tは、近傍単ワードスコア閾値(Altschulら、前出)と呼ばれる。これらの初期近傍ワードヒットは、それらを含有するより長いHSPを見いだす検索を開始するためのシードとして機能する。当該ワードヒットを、その累積アラインメントスコアが増大することができる限り、各配列に沿って両方向に拡張する。累積スコアは、ヌクレオチド配列について、パラメータM(一致する残基のペアに対する報酬スコア;常に>0)およびN(不一致残基に対するペナルティスコア;常に<0)を使用して計算される。アミノ酸配列の場合、スコアリングマトリックスを使用して累積スコアを算出する。各方向におけるワードヒットの拡張は、以下の場合に停止される:累積アラインメントスコアがその最大達成値から量Xだけ下がる;累積スコアが、1またはそれ以上の負のスコアリング残基アラインメントの蓄積に起因してゼロ以下になる;または、いずれかの配列の末端に到達する。BLASTアルゴリズムパラメータW、T、およびXは、アラインメントの感度および速度を決定する。ある特定の実施形態では、NCBI BLASTNまたはBLASTPプログラムを使用して配列のアライメントを取る。ある特定の実施形態では、BLASTNまたはBLASTPプログラムは、NCBIで使用されるデフォルトを使用する。ある特定の実施形態では、BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列の場合)は、デフォルトとして以下を使用する:ワードサイズ(W)28;期待閾値(E)10;0に設定されたクエリー範囲での最大一致;1、-2の一致/不一致スコア;線形ギャップコスト;低複雑性領域用フィルターを使用;およびルックアップテーブルのみのマスクを使用。ある特定の実施形態では、BLASTPプログラム(アミノ酸配列の場合)は、デフォルトとして以下を使用する:ワードサイズ(W)3;期待閾値(E)10;0に設定されたクエリー範囲における最大一致;BLOSUM62マトリックス(Henikoff & Henikoff、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915頁(1992)を参照されたい);存在のギャップコスト:11および拡張:1;ならびに条件付き組成スコアマトリックス調整。
【0053】
2.キメラタンパク質
「融合」または「キメラ」ポリペプチドまたはタンパク質は、第1のアミノ酸配列であって、これが本来自然には連結していない第2のアミノ酸配列に連結された、第1のアミノ酸配列を含む。通常には別々のタンパク質に存在するアミノ酸配列を、融合ポリペプチドに融合させてもよく、または、通常には同じタンパク質に存在するアミノ酸配列を、融合ポリペプチドに例えば、第VIII因子ドメインのIgFcドメインとの融合に、新規な構成で配置させてもよい。融合タンパク質は、例えば化学合成によって、または、ペプチド領域が所望の関係においてコードされるポリヌクレオチドを創製し、翻訳することによって、創製する。キメラポリペプチドは、第1のアミノ酸配列と共有結合、非ペプチド結合または非共有結合によって会合している第2のアミノ酸配列をさらに含むことができる。ある特定の実施形態では、キメラタンパク質とは、FVIIIタンパク質およびFc領域を含むキメラタンパク質である。例えば、キメラタンパク質は、Fc二量体のポリペプチド鎖のうちの1つに融合された1つのFVIIIタンパク質を含むことができる。一部の実施形態では、キメラタンパク質は、Fc二量体のポリペプチド鎖のうちの1つのN末端に直接融合された1つのFVIIIタンパク質を含む。一部の実施形態では、FVIIIタンパク質は、Fc二量体に融合されている唯一のタンパク質である。一部の実施形態では、キメラタンパク質は、Fc二量体のポリペプチド鎖のうちの1つのC末端に直接融合された1つのFVIIIタンパク質を含む。一部の実施形態では、キメラタンパク質は、リンカー配列を介在させることなく、ヒトIgG1の二量体Fcドメインの1つのポリペプチド鎖に融合された組換えBドメイン欠失ヒトFVIII(BDD-rFVIII)の単一分子を含むまたはそれからなる。例えば、参照によってそれらの全体を本明細書に組み入れる米国特許第9,050,318号および第9,241,978号を参照されたい。様々な実施形態では、キメラタンパク質はrFVIIIFcである。様々な実施形態では、rFVIIIFcは、ELOCTA(登録商標)またはELOCTATE(登録商標)と呼ばれるrFVIIIFcである。rFVIIIFcは、例えば、米国特許出願公開第2018/0360982(A1)号および米国特許第9,050,318号および第9,241,978号に詳細に開示されており、ここに参照によってそれらの全体を本明細書に組み入れる。
【0054】
一部の実施形態では、rFVIIIFcは配列番号1によるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、rFVIIIFcは、配列番号1のアミノ酸1~1665によるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、rFVIIIFcは配列番号5によるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、キメラポリペプチドのFVIII部分は、配列番号2によるアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含んでおり、キメラポリペプチドのFc部分は、配列番号5によるアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、キメラポリペプチドのFVIII部分は、配列番号2と同一のアミノ酸配列を含んでおり、キメラポリペプチドのFc部分は、配列番号5と同一のアミノ酸配列を含む。
【0055】
一部の実施形態では、キメラポリペプチドは、第1のポリペプチド鎖および第2のポリペプチド鎖を含み、ここで、第1のポリペプチド鎖はFVIII部分および第1のFc部分を含み、かつ第2のポリペプチド鎖は第2のFc部分を含む。一部の実施形態では、第2のポリペプチドは第2のFc部分からなる。一部の実施形態では、第1のFc部分は、第2のFc部分と同じアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖はFVIII部分およびFc部分を含み、ここで、FVIII部分はFc部分のN末端に融合されている。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖はFVIII部分およびFc部分を含み、ここで、FVIII部分はFc部分のC末端に融合されている。
【0056】
一部の実施形態では、キメラポリペプチドは第1のポリペプチド鎖および第2のポリペプチド鎖を含み、ここで、第1のポリペプチド鎖はFVIII部分および第1のFc部分を含み、かつ、第2のポリペプチド鎖は第2のFc部分を含み、ここで、第1のFc部分および第2のFc部分は共有結合によって互いに会合している。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、ジスルフィド結合を介して第2のポリペプチド鎖に共有結合している。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、Fc部分のヒンジ領域における2つのジスルフィド結合を介して第2のポリペプチド鎖に共有結合している。
【0057】
一部の実施形態では、キメラポリペプチドは第1のポリペプチド鎖および第2のポリペプチド鎖を含み、ここで、第1のポリペプチド鎖はFVIII部分および第1のFc部分を含み、かつ、第2のポリペプチド鎖は第2のFc部分を含み、ここで、FVIII部分は、配列番号2によるアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含んでおり、キメラポリペプチドのFc部分は、配列番号5によるアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含み、かつ、第2のFc部分は、配列番号5によるアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む。
【0058】
一部の実施形態では、キメラタンパク質はエフモロクトコグアルファである。
【0059】
一部の実施形態では、キメラタンパク質は、配列番号5によるアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖と、配列番号4によるアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖とを含む。一部の実施形態では、キメラタンパク質は、配列番号5と同一のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖と、配列番号4と同一のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖とを含む。一部の実施形態では、キメラタンパク質は、VWFまたはその断片、バリアント、または変異体を含まない。
【0060】
哺乳動物細胞によって分泌されるある特定のタンパク質は、分泌シグナルペプチドと会合しており、このペプチドは、粗面小胞体を通って成長するタンパク質鎖の輸送が開始されると、成熟タンパク質から切断される。当業者であれば、シグナルペプチドは一般に、ポリペプチドのN末端に融合し、完全型または「完全長」のポリペプチドから正常には切断されて、ポリペプチドの分泌型または「成熟」型を生成することを知っている。ある特定の実施形態では、天然シグナルペプチドまたはこの配列の機能的誘導体は、これと作動可能に会合しているポリペプチドの分泌を誘導する能力を保持する。あるいは、異種哺乳動物のシグナルペプチドを、例えばヒト組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)もしくはマウスのβ-グルクロニダーゼシグナルペプチド、またはそれらの機能的誘導体を、使用することができる。
【0061】
一部の実施形態では、キメラタンパク質は、1個の哺乳動物細胞または複数個の哺乳動物細胞によって産生されている。一部の実施形態では、キメラタンパク質は、1個のヒト細胞または複数個のヒト細胞によって産生されている。一部の実施形態では、キメラタンパク質は、ヒト胎児腎293(HEK293)細胞によって産生されている。
【0062】
本出願全体を通して「FVIII」と略される「第VIII因子」は、本明細書で使用される場合、別段の指定がない限り、凝固におけるその正常な役割における機能的FVIIIポリペプチドを意味する。したがって、用語FVIIIには、機能的であるバリアントポリペプチドが含まれる。「FVIIIタンパク質」は、「FVIIIポリペプチド」または「FVIII」と交換可能に使用される。FVIII機能の例には、それらに限定されないが、凝固を活性化する能力、第IX因子の補因子として作用する能力、またはCa2+およびリン脂質の存在下で第IX因子と共に、次いで第X因子を活性化型Xaに変換するテナーゼ複合体を形成する能力、が含まれる。ある特定の実施形態では、FVIIIタンパク質は、ヒト、非ヒト霊長類、ブタ、イヌ、ラット、またはマウスのFVIIIタンパク質とすることができる。ある特定の実施形態では、FVIIIタンパク質は、ヒトFVIIIタンパク質である。ある特定の実施形態では、FVIIIタンパク質は、ヒトFVIIIタンパク質に由来する。ヒトFVIIIタンパク質に由来することができるFVIIIタンパク質の非限定的な例が、本明細書に開示されており、それには、FVIII Bドメインの部分的または完全な欠失を有するFVIIIタンパク質、ならびに、FVIIIタンパク質のようにFVIII Bドメインに変異を有するFVIIIタンパク質が含まれるが、その結果、FVIIIタンパク質は、対応する野生型FVIIIタンパク質と比較して、トロンビンによって切断されないか、またはトロンビン切断の減少を有する。加えて、ヒトと他の種由来のFVIIIどうしを比較すると、機能性に必要と思われる保存された残基が特定された(Cameronら、Thromb.Haemost.79:317~22頁(1998);米国特許第6,251,632号)。多くの機能的断片、変異体および改変バージョンと同様に、完全長のポリペプチドおよびポリヌクレオチドの配列が知られる。種々のFVIIIのアミノ酸配列およびヌクレオチド配列は、例えば、米国公開第2015/0158929(A1)号、第2014/0308280(A1)号、および第2014/0370035(A1)号および国際公開第WO2015/106052(A1)号に開示されており、これらのそれぞれはその全体を参照によって本明細書に組み入れる。様々な実施形態では、FVIIIタンパク質は、ヒトFVIIIタンパク質、またはその機能的バリアントである。FVIIIポリペプチドには、例えば、完全長FVIII、N末端のMetのない完全長FVIII、成熟FVIII(シグナル配列のない)、N末端にさらなるMetを有する成熟FVIII、および/またはBドメインの完全または部分的欠失を有するFVIII、が含まれる。FVIIIバリアントには、部分的または完全な欠失であるか否かに関わりなく、Bドメインの欠失が含まれる。
【0063】
一部の実施形態では、本開示のキメラタンパク質または組成物のFVIIIは、Bドメイン欠失FVIIIを含む。FVIIIの「Bドメイン」とは、本明細書で使用される場合、内部アミノ酸配列同一性と、トロンビンによるタンパク質分解切断の部位、例えば、成熟ヒトFVIIIの残基Ser741~Arg1648と、によって定義される当技術分野で知られるBドメインと同じものである。その他のヒトFVIIIドメインは、成熟ヒトFVIIIに関連して、以下のアミノ酸残基によって定義される、成熟FVIIIの:A1、残基Ala1~Arg372;A2、残基Ser373~Arg740;A3、残基Ser1690~lle2032;C1、残基Arg2033~Asn2172;C2、残基Ser2173~Tyr2332。なんらの配列番号も参照せずに本明細書で使用される配列残基の番号は、特に明記しない限り、シグナルペプチド配列(19個のアミノ酸)を含有しないFVIII配列に対応する。FVIII重鎖としても知られるA3-C1-C2配列は、残基Ser1690~Tyr2332を含む。残部の配列、残基Glu1649~Arg1689は、通常にはFVIII軽鎖活性化ペプチドまたは単にFVIII軽鎖と呼ばれる。例えば、ブタ、マウス、およびイヌのFVIIIのBドメインを含めて、ドメインのすべての境界の位置もまた、当技術分野で知られる。ある特定の実施形態では、FVIIIのBドメインを欠失する(「Bドメイン欠失FVIII」または「BDD FVIII」)。BDD FVIIIの例は、REFACTO(登録商標)(組換えBDD FVIII)である。
【0064】
一部の実施形態では、Bドメイン欠失FVIIIは、米国特許第6,316,226号、第6,346,513号、第7,041,635号、第5,789,203号、第6,060,447号、第5,595,886号、第6,228,620号、第5,972,885号、第6,048,720号、第5,543,502号、第5,610,278号、第5,171,844号、第5,112,950号、第4,868,112号、第6,458,563号、または国際公開第WO2015106052(A1)号(PCT/US2015/010738)に開示される完全または部分的な欠失を有することができる。一部の実施形態では、Bドメイン欠失FVIIIは、ほとんどのBドメインの欠失を有するが、WO91/09122に開示されるように、一次翻訳産物の2つのポリペプチド鎖へのin vivoタンパク質分解プロセシングにとって必須であるBドメインのアミノ末端配列を依然として含有する。一部の実施形態では、Bドメイン欠失FVIIIは、アミノ酸747~1638の欠失、すなわち、事実上、Bドメインの完全な欠失を持って構築される。Hoeben R.C.、ら J.Biol.Chem.265(13):7318~7323頁(1990)。Bドメイン欠失第VIII因子は、FVIIIのアミノ酸771~1666またはアミノ酸868~1562の欠失も含有する場合がある。Meulien P.、ら Protein Eng.2(4):301~6ページ(1988)。ある特定の実施形態の一部とすることができるさらなるBドメイン欠失には:982から1562または760から1639(Tooleら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.(1986)83、5939~5942頁)、797から1562(Eaton,ら Biochemistry(1986)25:8343~8347頁)、741から1646(Kaufman(PCT公開出願第WO87/04187号))、747~1560(Sarver,ら、DNA(1987)6:553~564頁)、741から1648(Pasek(PCT出願第88/00831号))、または816から1598または741から1648(Lagner(Behring Inst.Mitt.(1988)No82:16~25、EP295597))のアミノ酸の欠失が含まれる。
【0065】
一部の実施形態では、BDD FVIIIには、1つまたはそれ以上のN結合型グリコシル化部位、例えば、残基757、784、828、900、963、または場合により943を保持する、Bドメインの断片を含有するFVIIIポリペプチドが含まれるが、これらの残基は、完全長FVIII配列のアミノ酸配列に対応する。Bドメイン断片の例には、Miao,H.Z.、ら、Blood 103(a):3412~3419頁(2004)、Kasuda,A、ら、J.Thromb.Haemost.6:1352~1359頁(2008)、およびPipe,S.W.、ら、J.Thromb.Haemost.9:2235~2242頁(2011)に開示されるように、Bドメインの226個のアミノ酸または163個のアミノ酸が含まれる(すなわち、Bドメインの最初の226個のアミノ酸または163個のアミノ酸が保持される)。ある特定の実施形態では、BDD FVIIIは、残基309に点突然変異(PheからSerへ)をさらに含んで、BDD FVIIIタンパク質の発現を改善する。Miao,H.Z.、ら、Blood 103(a):3412~3419頁(2004)を参照されたい。様々な実施形態では、BDD FVIIIには、Bドメインの一部を含有するが、1つまたはそれ以上のフーリン切断部位(例えば、Arg 1313およびArg 1648)を含有しないFVIIIポリペプチドが含まれる。Pipe,S.W.、ら、J.Thromb.Haemost.9:2235~2242頁(2011)を参照されたい。一部の実施形態では、BDD FVIIIは、成熟した完全長FVIII(rFVIII-SingleChainおよびAFSTYLA(登録商標)としても知られる)に対応するアミノ酸765~1652に欠失を含有する一本鎖FVIIIを含む。米国特許第7,041,635号を参照されたい。前述の欠失のそれぞれは、任意のFVIII配列で行うことができる。
【0066】
当技術分野では多数の機能的FVIIIバリアントが知られる。加えて、血友病患者ではFVIIIの数百もの非機能的変異が特定されており、これらの変異がFVIII機能に及ぼす影響は、変異の性質上というよりも変異がFVIIIの3次元構造内のどこにあるかによるものであると判断されてきた(その全体を参照によって本明細書に組み入れる、Cutlerら、Hum.Mutat.19:274~8頁(2002))。加えて、ヒト由来と他種由来のFVIIIどうしを比較すると、機能性に必要と思われる保存された残基が特定された(Cameronら、Thromb.Haemost.79:317~22ページ(1998);米国特許第6,251,632号、それぞれがその全体を参照によって本明細書に組み入れる)。
【0067】
第VIII因子タンパク質は、「プロセシングを受けた」FVIIIまたは「一本鎖」FVIIIのいずれかとして活性型で存在することができる。そのようなタイプのプロセシングを受けかつ一本鎖の形態は、米国特許公開第2018/0360982(A1)号で議論されており、その全体を参照によって本明細書に組み入れる。
【0068】
一部の実施形態では、第VIII因子活性を有するキメラポリペプチドは、第VIII因子タンパク質および第2の部分を含み、ここで、第VIII因子タンパク質は、2つの鎖、重鎖を含む第1の鎖および軽鎖を含む第2の鎖を含む、プロセシングを受けた第VIII因子であり、ここで、前記第1の鎖および前記第2の鎖は金属結合によって会合している。例えば、キメラポリペプチドのうちの少なくとも約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約99%が、プロセシングを受けた第VIII因子である第VIII因子の部分を含み、この場合、キメラポリペプチドの残部は、プロセシングを受けていない第VIII因子の部分(すなわち、一本鎖FVIII)を含む。
【0069】
一部の実施形態では、本開示は、第VIII因子活性を有するキメラポリペプチドを含み、ここで、第VIII因子の部分は、一本鎖第VIII因子である。一部の実施形態では、一本鎖第VIII因子はインタクトの細胞内プロセシング部位を含有することができる。一部の実施形態では、キメラポリペプチドの第VIII因子の部分のうちの少なくとも約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、または約40%は一本鎖第VIII因子である。別の実施形態では、キメラポリペプチドのうちの少なくとも約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、または約99%は、一本鎖第VIII因子である第VIII因子の部分を含み、この場合、キメラポリペプチドの残部がプロセシングを受けた第VIII因子である第VIII因子の部分を含む。別の態様では、一本鎖FVIII(scFVIII)は、細胞内プロセシング部位を含有しない。例えば、scFVIIIは、完全長第VIII因子の、アルギニン1645に対応するアミノ酸位置に置換または変異、アルギニン1648に対応するアミノ酸位置に置換または変異、または、アルギニン1645およびアルギニン1648に対応するアミノ酸位置に置換または変異、を含む。一部の実施形態では、アルギニン1645に対応するアミノ酸位置で置換されたアミノ酸は、アルギニン1648に対応するアミノ酸位置で置換されたアミノ酸とは異なるアミノ酸である。ある特定の実施形態では、置換または変異は、アルギニンからアラニンへの置換である。
【0070】
一部の実施形態では、第VIII因子活性を発色アッセイによってin vitroで測定する場合、一本鎖第VIII因子を含むキメラポリペプチドは、2つのFc部分と、この2つのFc部分のうちの1つに融合しているプロセシングを受けた第VIII因子と、からなるキメラポリペプチドに匹敵するレベルで、第VIII因子活性を有する。一部の実施形態では、一本鎖第VIII因子を含むキメラポリペプチドは、2つのFc部分と、この2つのFc部分のうちの1つに融合しているプロセシングを受けた第VIII因子と、からなるキメラポリペプチドに匹敵する、in vivoでの第VIII因子活性を有する。一部の実施形態では、一本鎖第VIII因子を含むキメラポリペプチドは、2つのFc部分と、この2つのFc部分のうちの1つに融合しているプロセシングを受けた第VIII因子と、からなるキメラポリペプチドに匹敵する、第Xa因子生成速度を有する。ある特定の実施形態では、キメラポリペプチドにおける一本鎖第VIII因子は、2つのFc部分と、プロセシングを受けた第VIII因子と、からなるキメラポリペプチドにおいて、プロセシングを受けた第VIII因子に匹敵するレベルで、活性化プロテインCによって不活化される。ある特定の実施形態では、キメラポリペプチドにおける一本鎖第VIII因子は、2つのFc部分と、プロセシングを受けた第VIII因子と、からなるキメラポリペプチドにおいて、プロセシングを受けた第VIII因子に匹敵する、第IXa因子相互作用速度を有する。一部の実施形態では、キメラポリペプチドにおける一本鎖第VIII因子は、2つのFc部分と、プロセシングを受けた第VIII因子と、からなるキメラポリペプチドにおいて、プロセシングを受けた第VIII因子に匹敵するレベルで、フォンウィルブランド因子に結合する。
【0071】
本開示は、第VIII因子活性を有するキメラポリペプチドを含む組成物を含み、ここで、前記ポリペプチドのうちの少なくとも約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約100%は、一本鎖第VIII因子である第VIII因子の部分と、第2の部分とを含み、ここで、前記一本鎖第VIII因子は、配列番号2によるアミノ酸配列と少なくとも90%、95%、99%同一であるか、またはそれと同一である。一部の実施形態では、第2の部分はFcとすることができる。一部の実施形態では、ポリペプチドは、第2のポリペプチドを含むハイブリッドの形態であり、ここで、前記第2のポリペプチドは、本質的にFcからなる。一部の実施形態では、ポリペプチドは、第VIII因子からなるポリペプチドに対して、少なくとも1.5倍から6倍長い、1.5倍から5倍長い、1.5倍から4倍長い、1.5倍から3倍長い、または1.5倍から2倍長い半減期を有する。
【0072】
3.骨ミネラル密度
本明細書で使用される場合、「骨ミネラル密度」または「BMD」とは、特定の骨領域で測定された骨ミネラル含有量として定義される。骨は、比較的高い代謝回転を備える動的な組織である。骨代謝は、それぞれ骨芽細胞と破骨細胞によって媒介される、骨形成と骨吸収の間の平衡によって特徴付けられる。これらの骨リモデリング細胞間の相互作用は、サイトカイン、増殖因子およびその他のタンパク質によって媒介される。
【0073】
本明細書で使用される場合、「骨粗鬆症」とは、骨の密度および質が減少している状態の広く認められている疾患を指す。本明細書で使用される場合、用語「骨粗鬆症」とは、原発性骨粗鬆症と続発性骨粗鬆症の両方を含めて、すべての形態の骨粗鬆症を包含する。骨粗鬆症は、BMDの激しい減少によって特徴付けられ、患者を骨折およびさらなる病的状態にかかりやすくする。骨粗鬆症はいくつかの要因によって、最も顕著には年齢、性別、その他の疾患の存在によって、影響を受ける。活性酸素種(ROS)も、破骨細胞形成中では細胞内シグナル伝達においてある役割を演じる(Domazetovicら、Clin Cases Miner Bone Metab 2017)。ビタミンD欠乏症またはビタミンD不足もまた、ある特定の血友病集団の低BMDと関連付けられてきた(Kemptonら、Haemophilia 2015、21、568~577頁)。一部の実施形態では、骨粗鬆症は原発性骨粗鬆症である。ある特定の実施形態では、骨粗鬆症は続発性骨粗鬆症である。様々な実施形態では、骨粗鬆症は血友病Aと関連付けられる。一部の実施形態では、骨粗鬆症は、血友病Aの結果であるか、またはその結果らしいと疑われる。
【0074】
骨粗鬆症は、最も一般的な炎症性骨喪失状態の1つであり、免疫系によって能動的に媒介される(Srivastava RKら、Front Immunol 2018)。転写因子核因子E2関連因子2(NRF2)は、RANKLによって能動的に阻害されるメカニズムである、抗酸化酵素のアップレギュレーションを介して破骨細胞形成を負に調節する(Kanzakiら、J Biol Chem 2013)。また、NRF2調節酵素ヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)は、マウスの破骨細胞形成を阻害するようである(Florczyk-Soluchら、Sci Reports 2018)。
【0075】
ある特定の実施形態では、対象はビタミンD欠乏症を有する。一部の実施形態では、20ナノグラム/ミリリットル~50ng/mLのビタミンDレベルが、健康なヒトにとって十分であるとされている。一部の実施形態では、12ng/mL未満のビタミンDレベルは一般に、ビタミンD欠乏症を示すとされている。一部の実施形態では、ビタミンD欠乏症とは約12ng/mL未満のビタミンDレベルを指す。ある特定の実施形態では、対象はビタミンD欠乏症を有していない。一部の実施形態では、対象のビタミンD摂取量および/またはレベルは考慮されておらずかつ/または不明である。一部の実施形態では、対象のビタミンDレベルは不明である。
【0076】
骨形成の例示的なバイオマーカーは、骨型アルカリホスファターゼ、1型プロコラーゲンN末端プロペプチド(P1NP)、1型プロコラーゲンC末端プロペプチド(P1CP)およびオステオカルシンである。骨吸収の例示的なバイオマーカーは、血清の総アルカリホスファターゼ、核因子カッパBの受容体活性化因子(RANKL)、オステオプロテゲリン(OPG)、酒石酸耐性酸性ホスファターゼ(TRAP)、ヒドロキシリジン、ヒドロキシプロリン、デオキシピリジノリン(DPD)、ピリジノリン(PYD)、骨シアロタンパク質、カテプシンK、酒石酸耐性酸性ホスファターゼ5b(TRAP5b)、マトリックスメタロプロテイナーゼ9(MMP9)、および1型コラーゲンのC末端およびN末端架橋テロペプチド(それぞれ、CTX-1およびNTX-1)である。骨形成インヒビターの例示的なバイオマーカーは、Dickkopf-1(DDK-1)の血清レベルおよびスクレロスチンの血清レベルである(Rodriguez-Merchan and Valentino、Blood Rev 2019;Kuo and Chen、Biomarker Res 2017)。
【0077】
様々な実施形態では、骨形成、骨吸収、および/または骨喪失の1つまたはそれ以上のバイオマーカーは、対象の末梢血から評価することができる。様々な実施形態では、骨形成、骨吸収、および/または骨喪失の1つまたはそれ以上のバイオマーカーは、対象の尿から評価することができる。様々な実施形態では、骨形成、骨吸収、および/または骨喪失の1つまたはそれ以上のバイオマーカーは、対象由来の末梢血または尿の試料から評価することができる。
【0078】
末梢血からのバイオマーカーレベルの評価は、例えば、様々ないくつかのアッセイのいずれかを使用して行うことができる。バイオマーカーレベルを決定するのに使用することができるアッセイの非限定的な例には、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、酵素免疫アッセイ、ラジオイムノアッセイおよび化学発光イムノアッセイが含まれる。一部の実施形態では、化学分析器も使用して、標準Technico Auto-アナライザー、Roche COBAS Integra 800、Olympus AU 5200アナライザーを含めて、対象試料のバイオマーカーのレベルを決定することができる。
【0079】
一部の実施形態では、バイオマーカーはヒドロキシプロリンである。一部の実施形態では、ヒドロキシプロリンは末梢血から評価される。一部の実施形態では、ヒドロキシプロリンは、対象の尿から評価される。一部の実施形態では、ヒドロキシプロリンは、末梢血または尿から評価され、Bergman and Loxley法(Bergman and Loxley、Analytical Chemistry、1963)によって分析される。
【0080】
破骨細胞は、大型多核細胞であり、骨吸収活性、骨組織を破壊する能力を備える、身体で唯一の細胞である。破骨細胞は、単球を始めとした造血前駆細胞に由来し、RANKL(核因子κBリガンドの受容体活性化因子)とM-CSF(マクロファージコロニー刺激因子)の2つの最未分化因子を必要とする(Kanzaki H.ら、J Biol Chem 2013)。単球とは、受け取った刺激因子に応じて、マクロファージ、樹状細胞および破骨細胞に分化することができる前駆細胞の一種である。
【0081】
最近の一研究では、組換えFVIII単独ではなく、Fcドメインに連結した組換えFVIII(rFVIIIFc)が、ヒト単球由来マクロファージをM2/Mox様マクロファージ調節表現型に歪めることが示された。Kis-Tothら、Blood Adv.、2(21):2904~2916頁(2018)。しかし、血友病におけるBMDの喪失のメカニズムに関する詳細な理解は現在不明である。
【0082】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示される方法は、骨折のリスク増大を有する対象を処置するために使用される。血友病患者は、健康な個体と比較してより骨折しやすい。一研究では、重度の血友病患者は、中等度および軽度の血友病患者と比較して、骨折を患っている可能性が44%より高いことがわかった。Gay ら、Br J Haematology.170:584~593頁(2015)。一部の実施形態では、対象は重度の血友病を有する。ある特定の実施形態では、対象は中等度の血友病を有する。様々な実施形態では、対象は軽度の血友病を有する。
【0083】
本明細書で使用される場合、用語「骨折リスク」とは、既知のリスク因子に基づく骨折の可能性の増大として定義される。既知のリスク因子に基づく骨折リスクは、臨床医によっておよび/またはFRAX骨折リスク評価ツールのような標準化ツールによって判定することができる。BMDを骨折リスクのリスク因子としてもよい。一般的に、BMDは低下するにつれ、骨折のリスクは増大する。
【0084】
本明細書で使用される場合、FRAXとは、University of Sheffieldで開発された骨折リスク評価ツールを指す。全体として、Kanis,J.A.、ら Osteoporosis Int’l.21.2:407~413頁(2010)を参照されたい。FRAXによって、股関節または骨粗鬆症の骨折の10年確率が算出される。FRAXによって、年齢、性別、体重、身長、骨折の病歴、骨折股関節の家族歴、喫煙状況、グルココルチコイドの使用、関節リウマチの有無、続発性骨粗鬆症、アルコール摂取量および骨ミネラル密度に基づいて骨折リスクが算出される。1年間のリスク骨折は10年間のリスク骨折の結果の10%に等しい(すなわち、60%の10年間のリスク骨折は6%の1年間のリスク骨折に等しいことになる)。
【0085】
ある特定の実施形態では、血友病患者のBMDは、出血イベントまたは骨折を含めて、特定のイベントに続いて判定される。BMDは、例えば、二重X線吸収測定法(DXA)または二重エネルギーX線吸収測定法(DEXA)によって試験することができる。BMDは、グラム毎平方センチメートル(g/cm)として測定することができる。集団にわたってBMDを解析するために、BMDを健康な若年成人の平均的な「Tスコア」と比較することができる。このTスコアは、患者と、同性の健康な平均的な若年成人の群との間の平均BMDの差異であり、標準偏差(SD)で測定される。例えば、-1.0以上(小さな負)のTスコアは正常と考慮することができる。-1.0未満(より大きな負)のTスコアは、骨減少症を示すとすることができる。-2.5未満のTスコアは、骨粗鬆症を示すと考慮することができる。BMD試験によって、股関節または腰椎の骨ミネラル密度を測定することができる。BMD試験によって、下腕、手首、指、または踵の骨ミネラル密度も測定することができる。BMDはまた、平均的な「Zスコア」と比較することができる。このZスコアは、患者と、健康な年齢および性別が一致する対照の群との間の平均BMDの差異であり、標準偏差で測定される。Zスコアは続発性骨粗鬆症の診断に有用であるとすることができる。-2.0未満のZスコアは、低骨ミネラル密度を示すとすることができる。TスコアおよびZスコアを含めて、骨ミネラル密度測定法に関するさらなる詳細については、その全内容を参照によって本明細書に組み入れる、Cummingsら、JAMA 288(15):1889~1897頁(2002)を参照されたい。
【0086】
ある特定の実施形態では、Tスコアを使用して、少なくとも20歳である対象のBMDを評価する。ある特定の実施形態では、Tスコアを使用して、少なくとも30歳である対象のBMDを評価する。ある特定の実施形態では、Tスコアを使用して、少なくとも40歳である対象のBMDを評価する。ある特定の実施形態では、Tスコアを使用して、少なくとも50歳である対象のBMDを評価する。
【0087】
ある特定の実施形態では、Zスコアを使用して、30歳未満である対象のBMDを評価する。ある特定の実施形態では、Zスコアを使用して、20歳未満である対象のBMDを評価する。
【0088】
一部の実施形態では、血友病Aおよび低BMDを有する対象は、若年成人の平均を下回る1から2.5の間の標準偏差である骨密度を有する。一部の実施形態では、血友病Aおよび低BMDを有する対象は、若年成人の平均を下回る2.5以上の標準偏差である骨密度を有する。一部の実施形態では、対象は、同じ年齢および性別の対象の平均骨密度よりも低い骨密度を有する。一部の実施形態では、対象は、同じ年齢および性別の対象の平均骨密度よりも少なくとも5%、6%、7%、8%、9%、または10%低い骨密度を有する。一部の実施形態では、対象は、同じ年齢および性別の対象の平均骨密度よりも少なくとも10%低い骨密度を有する。一部の実施形態では、BMDは腰椎で測定される。一部の実施形態では、BMDは股関節で測定される。一部の実施形態では、BMDは腕で測定される。一部の実施形態では、BMDは脚で測定される。一部の実施形態では、BMDは膝で測定される。一部の実施形態では、BMDは手首で測定される。一部の実施形態では、BMDは指で測定される。一部の実施形態では、BMDは踵で測定される。一部の実施形態では、低BMDを有する対象は、血友病Aを有していない対応する対象(または対応する対象の集団)と比較して、特定の部位で10%または15%より低いBMDを有する。
【0089】
一部の実施形態では、対象は、リスク因子を使用して、低BMDを有すると特定することができる。低BMDのリスク因子には、年齢、性別、民族性、血友病性関節症、身体活動の減少、慢性ウイルス感染症(例えばHIVまたはHCV)、ビタミンD欠乏症、低体重指数(BMI)、および/または性腺機能低下症が含まれる。Kempton CLら Haemophilia 21(5):568~77頁(2015)を参照されたい。他のリスク因子については、当技術分野で知られる現在認められている臨床ガイドラインおよび診療に従って評価することができる。
【0090】
対象が低BMDを有すると判定される場合、本明細書に開示される方法を使用して、対象のBMDの減少を阻害し、および/または対象のBMDのさらなる減少を防御することができる。対象が別のFVIII補充療法または別の血友病A療法で現在処置中である場合、対象のBMDの減少を阻害し、および/または時間の経過に伴う対照のBMDのさらなる減少を防御するために、本明細書に開示される方法への治療計画の変更を考慮することができる。
【0091】
本明細書に開示される実施例に詳述のように、ヒトマクロファージ処置へのrFVIIIFcの投与によって、in vitroで単球由来破骨細胞の形成および機能が効果的に阻害された。本発見が示唆するところは、rFVIIIFcによる補充療法は、血友病A患者の骨の健康に免疫調節効果の可能性を秘めることができる、ということである。正確なメカニズムは依然として不明であるが、そして科学理論になんら拘束されるものではないが、rFVIIIFcによって、血友病患者の免疫環境を抗酸化の、寛容原性の、および骨粗鬆症ではない状態に促進することによって、血友病A患者のBMDの減少を防御することができる。
【0092】
4.血友病
血友病の主たる3つの形態とは、血友病A(第VIII因子欠乏症)、血友病B(第IX因子欠乏症または「クリスマス病」)および血友病C(第XI因子欠乏症、軽度の出血傾向)である。他の止血障害には、例えば、フォンウィルブランド病、第XI因子欠乏症(PTA欠乏症)、第XII因子欠乏症、フィブリノーゲン、プロトロンビン、第V因子、第VII因子、第X因子または第XIII因子の欠乏症または構造的異常、GPIbの欠陥または欠乏症であるベルナール・スリエ症候群が含まれる。フォンウィルブランド因子(VWF)の受容体であるGPIbは、不完全である場合があり、一次血栓形成の不足(一次止血および出血傾向の増加)、およびグランツマンおよびネーゲリの血小板無力症(グランツマン血小板無力症)につながる恐れがある。肝不全(急性および慢性型)では、肝臓による凝固因子の産生が不十分である;これは出血のリスクを高める恐れがある。本明細書で使用される場合、血友病はカテゴリーによってグレード分けすることができる。例をあげると、「軽度」、「中程度」、「重度」と分類することができる。血友病Aは、FVIII血漿レベル1%以下(正常と比較して)(「重度」)、2%~5%(「中程度」)、および6~30%(「軽度」)によって定義される重症度に関する3つのグレードを有する。Whiteら Thromb.Haemost.85:560頁(2001)。
【0093】
「処置する」、「処置」、「処置すること」とは、本明細書において使用されるように、例えば疾患もしくは状態の重症度の減少;疾病経過の持続期間の短縮;疾患もしくは状態に伴う1つもしくはそれ以上の兆候の改善;疾患もしくは状態を必ずしも治癒するわけではないが当該疾患もしくは状態を有する対象に対する有益な効果の提供、または疾患もしくは状態に伴う1つもしくはそれ以上の兆候の予防、を指す。一態様では、本明細書に開示される方法は、血友病Aを有する対象を処置する方法である。ある特定の実施形態では、処置する工程は、対象の出血エピソードの可能性を減少させることまたは防止すること、およびまた例えば、rFVIII補充で処置されている対応する対照と比較して、対象のBMDを改善すること、またはBMDの減少を遅延させることを含む。ある特定の実施形態では、処置する工程は、例えば、rFVIII補充で処置されている対応する対象と比較して、対象の出血エピソードのリスクを減少させることおよびまた対象の骨折のリスクを減少させることを含む。ある特定の実施形態では、処置する工程は、例えば、rFVIII補充で処置されている対応する対象と比較して、対象の出血エピソードの重症度を減少させることおよびまた対象のBMDを改善することまたはBMDの減少を遅延させることを含む。ある特定の実施形態では、処置する工程は、例えば、rFVIII補充で処置されている対応する対象と比較して、対象の出血エピソードの重症度を減少させることおよびまた対象の骨折のリスクを減少させることを含む。一部の実施形態では、処置は予防処置を含む。一部の実施形態では、処置はオンデマンド療法を含む。
【0094】
血友病Aについてはいくつかの治療選択肢が現在利用可能であり、これには以下が含まれる:従来のFVIII補充(例えばADVATE(登録商標)/オクトコグアルファ、AFSTYLA(登録商標)/ロノクトコグアルファNUWIQ(登録商標)/シモクトコグアルファ)および半減期延長FVIII補充療法(例えばELOCTATE(登録商標)/エフモロクトコグアルファ、ESPEROCT(登録商標)/ツロクトコグアルファペゴル、およびADYNOVATE(登録商標)/ルリオクトコグアルファペゴル)。エミシズマブのような、他の非補充療法も今では利用できる。総説については、Peters & Harris、Nat Rev Drug Disc.(2018);Weyand & Pipe、Blood、133(5):389~398頁(2019)を参照されたい。オクトコグアルファ、ロノクトコグアルファ、シモクトコグアルファ、ツロクトコグアルファ、およびルリオクトコグアルファペゴルのような処置のBMDおよび骨粗鬆症に及ぼす影響は不明である。
【0095】
本明細書で提供のデータが実証したところは、rFVIIIFcを使用する処置が、経時的なBMD喪失を阻害することによって、血友病A患者にさらなる骨保護効果を提供することができることである。こういった骨の健康上の効果は、rFVIII単独での処置を使用しては観察されなかったが、このことにより、キメラタンパク質にFcドメインが存在することに起因する可能性が最も高いが、こういった効果はrFVIIIFcに固有であることが、示唆される。したがって、FVIIIFcは、低BMD、骨粗鬆症、および/または骨折リスクの増大を有する血友病Aの対象の処置に関する優れた選択とすることができる。さらに、BMDの減少は進行性疾患であり、血友病Aを有する対象では若年で開始するので、rFVIIIFcは、低BMDを発症するまたは有するリスクのあるあらゆる血友病Aの対象の処置に関する優れた選択とすることができる。
【0096】
様々な実施形態では、血友病Aを有する対象は、rFVIIIFc以外の処置による十分な凝固を有するが、低BMD、骨粗鬆症、および/または骨折リスクの増大を有する。一部の実施形態では、血友病Aを有する対象は、rFVIIIおよび半減期延長部分(例えばアルブミンまたはポリエチレングリコール)を含む融合タンパク質による十分な凝固を有するが、低BMD、骨粗鬆症、および/または骨折リスクの増大を有する。一部の実施形態では、血友病Aを有する対象は、rFVIIIによる十分な凝固を有するが、低BMD、骨粗鬆症、および/または骨折リスクの増大を有する。ある特定の実施形態では、血友病Aを有する対象は、凝固促進性二重特異性抗体(例えば、エミシズマブまたはエミシズマブ-kxwhのような、第IX因子および第X因子を結合する二重特異性抗体)による十分な凝固を有するが、低BMD、骨粗鬆症、および/または骨折リスクの増大を有する。一部の実施形態では、対象は骨減少症を有する。一部の実施形態では、対象は骨粗鬆症を有する。一部の実施形態では、対象は骨折リスクの増大を有する。
【0097】
様々な実施形態では、血友病Aを有する対象の十分な凝固とは、用量間で少なくとも1%、2%、3%、4%、または少なくとも5%のFVIII活性である。例えば、一部の実施形態では、用量間のFVIII活性は、用量間で1%、2%、3%、4%、または5%未満に低下しない。ある特定の実施形態では、FVIII活性は、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)アッセイで測定される。様々な実施形態では、血友病Aを有する対象の十分な凝固とは、5以下の出血の年換算出血率(ABR)である。様々な実施形態では、血友病Aを有する対象の十分な凝固とは、4以下の出血のABRである。様々な実施形態では、血友病Aを有する対象の十分な凝固とは、3以下の出血のABRである。様々な実施形態では、血友病Aを有する対象における十分な凝固とは、2以下の出血のABRである。様々な実施形態では、血友病Aを有する対象の十分な凝固とは、1以下の出血のABRである。ある特定の実施形態では、FVIII活性は、発色アッセイで測定される。様々な実施形態では、血友病Aを有する対象の十分な凝固とは、5未満の出血の年換算出血率(ABR)である。様々な実施形態では、血友病Aを有する対象の十分な凝固とは、4未満の出血のABRである。様々な実施形態では、血友病Aを有する対象の十分な凝固とは、3未満の出血のABRである。様々な実施形態では、血友病Aを有する対象の十分な凝固とは、2未満の出血のABRである。様々な実施形態では、血友病Aを有する対象の十分な凝固とは、1未満の出血のABRである。
【0098】
本明細書で使用される場合、用語「予防処置」とは、血友病の処置のための療法の投与を指し、かかる処置は、血友病の1つまたはそれ以上の症状、例えば、出血エピソード、例えば1つまたはそれ以上の特発性出血エピソード、および/または関節損傷の重症度を防止するまたは減少させることを意図する。Jimenez-Yusteら、Blood Transfus.12(3):314~19頁(2014)を参照されたい。かかる症状の、例えば、出血エピソードの重症度および関節疾患の進行を防止するまたは減少させるために、血友病A患者は、予防処置レジメンの一部として凝固因子の定期的な注入を受けてもよい。かかる予防処置の基礎とは、凝固因子レベル、例えば、FVIIIレベルが1%以上の血友病患者は、重度の血友病患者と比較して、特発性出血エピソードに見舞われることはめったになく、血友病関連併存疾患がより少ないという、観察である。例えば、Coppola A.ら、Semin.Thromb.Hemost.38(1):79~94頁(2012)を参照されたい。このような血友病患者を取り扱う医療関係者は、定期的な注入で因子レベルをおよそ1%に維持することにより、出血エピソードや関節損傷を含めて、血友病症状のリスクをもしかすると減少させる可能性があると推測した。同上を参照されたい。その後の研究によって、凝固因子による予防処置を受けている小児血友病患者においてこういった効果が確認され、その結果、予防処置は重度血友病のヒトにとってのゴールであるとしている。同上を参照されたい。
【0099】
「予防」処置とはまた、血友病Aの1つまたはそれ以上の症状の、例えば、出血エピソードの、発生または重症度を制御、管理、防止、または減少するために、本明細書に記載の組成物、例えば、キメラポリペプチドの対象への先行投与を指す場合もある。凝固因子、例えば、FVIIIによる予防処置は、重度血友病Aを有する対象の標準治療である。例えば、Oldenburg、Blood 125:2038~44頁(2015)を参照されたい。一部の実施形態では、予防処置とは、血友病Aの1つまたはそれ以上の症状の発生を減少させるのに、それを必要とする対象に本明細書に開示される組成物を投与する工程を指す。予防処置には、複数用量の投与を含めることができる。予防処置に使用される複数用量は典型的には、特定の投薬間隔で投与される。ある特定の実施形態では、年換算出血率を、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、6以下、5以下、4以下、3以下、2以下、または1以下に減少させることができる。ある特定の実施形態では、年換算出血率を、10未満、9未満、8未満、7未満、6未満、5未満、4未満、3未満、2未満、または1未満に減少させることができる。
【0100】
用語「オンデマンド療法」または「エピソード処置」とは、血友病Aの症状、例えば出血エピソードに応答した、または出血を引き起こす恐れのある活動に前もった、キメラ分子の「必要に応じた」投与を指す。一態様では、オンデマンド療法を、傷害後のような出血が開始する場合、または術前のような出血が予想される場合に対象に与えることができる。一態様では、オンデマンド療法を、コンタクトスポーツのような出血のリスクを高める活動に先立って与えることができる。一部の実施形態では、オンデマンド療法を、単回用量として与える。一部の実施形態では、オンデマンド療法を、第1の用量として、これに続いて、1つまたはそれ以上のさらなる用量として与える。キメラポリペプチドをオンデマンドで投与する場合、1つまたはそれ以上のさらなる用量は、第1の用量の、少なくとも約12時間後、少なくとも約24時間後、少なくとも約36時間後、少なくとも約48時間後、少なくとも約60時間後、少なくとも約72時間後、少なくとも約84時間後、少なくとも約96時間後、少なくとも約108時間後、または少なくとも約120時間後に投与することができる。しかし、オンデマンド療法に関連する投薬間隔は、予防処置に使用される投薬間隔と同じではないことに、留意されたい。
【0101】
本明細書で使用される場合、用語「用量」とは、対象への組成物の単一の投与を指す。単回用量は、例えばボーラスとして、またはある期間にわたって、例えば静脈内注入を介して、一度にすべて投与することができる。用語「複数用量」とは、2以上の用量、例えば、2以上の投与を意味する。2種以上の組成物の共投与に言及する場合、組成物Aの用量は、組成物Bの用量と同時に投与することができる。あるいは、組成物Aの用量は、組成物Bの用量の前または後に投与することができる。一部の実施形態では、組成物Aおよび組成物Bは、単一の製剤に組み合わされる。
【0102】
ある特定の実施形態では、「用量」とは、治療有効量のキメラタンパク質を指す。ある特定の実施形態では、用量とは、治療有効量のrFVIIIFcを指す。ある特定の実施形態では、治療有効量のrFVIIIFcは、約10IU/Kgから約300lU/kgである。一部の実施形態では、治療有効量のrFVIIIFcは、約20IU/Kgから約300lU/kgである。一部の実施形態では、治療有効量のrFVIIIFcは、約20IU/kgから約250IU/kg、約20IU/kgから約200IU/kg、約20IU/kgから約190IU/kg、約20IU/kgから約180IU/kg、約20IU/kgから約170IU/kg、約20IU/kgから約160IU/kg、約20IU/kgから約150IU/kg、約20IU/kgから約140IU/kg、約20IU/kgから約130IU/kg、約20IU/kgから約120IU/kg、約20IU/kgから約110IU/kg、約20IU/kgから約100IU/kg、約20IU/kgから約90IU/kg、約20IU/kgから約80IU/kg、約20IU/kgから約70IU/kg、約20IU/kgから約60IU/kg、約25IU/kgから約100IU/kg、約25IU/kgから約90IU/kg、約25IU/kgから約80IU/kg、約25IU/kgから約70IU/kg、約25IU/kgから約65IU/kg、である。一実施形態では、治療有効量のrFVIIIFcは、約20IU/kgから約100IU/kgである。一部の実施形態では、治療有効量のrFVIIIFcは、約25IU/kgから約65IU/kgである。一部の実施形態では、治療有効量のrFVIIIFcは、約20IU/kgから約100IU/kg、約30IU/kgから約100IU/kg、約40IU/kgから約100IU/kg、約50IU/kgから約100IU/kg、約60IU/kgから約100IU/kg、約70IU/kgから約100IU/kg、約80IU/kgから約100IU/kg、約90IU/kgから約100IU/kg、約20IU/kgから約90IU/kg、約20IU/kgから約80IU/kg、約20IU/kgから約70IU/kg、約20IU/kgから約60IU/kg、約20IU/kgから約50IU/kg、約20IU/kgから約40IU/kg、または約20IU/kgから約30IU/kg、である。
【0103】
他の実施形態では、治療有効量のrFVIIIFcは、約10IU/kg、約15IU/kg、約20IU/kg、約25IU/kg、約30IU/kg、約35IU/kg、約40IU/kg、約45IU/kg、約50IU/kg、約55IU/kg、約60IU/kg、約65IU/kg、約70IU/kg、約75IU/kg、約80IU/kg、約85IU/kg、約90IU/kg、約95IU/kg、約100IU/kg、約105IU/kg、約110IU/kg、約115IU/kg、約120IU/kg、約125IU/kg、約130IU/kg、約135IU/kg、約140IU/kg、約145IU/kg、約150IU/kg、約155IU/kg、約160IU/kg、約165IU/kg、約170IU/kg、約175IU/kg、約180IU/kg、約185IU/kg、約190IU/kg、約195IU/kg、約200IU/kg、約225IU/kg、約250IU/kg、約275IU/kg、または約300IU/kg、である。一実施形態では、治療有効量のrFVIIIFcは、約50IU/kgである。別の実施形態では、治療有効量のrFVIIIFcは、約100IU/kgである。別の実施形態では、治療有効量のrFVIIIFcは、約200IU/kgである。
【0104】
本明細書で使用される場合、用語「間隔」または「投薬間隔」とは、対象に投与される組成物Aの第1の用量と同じ組成物のその後の用量との間に経過する時間の量を指す。投薬間隔は、第1の用量と第2の用量の間に経過する時間を指す場合もあり、または、投薬間隔は、複数用量の間に経過する時間の量を指す場合もある。
【0105】
本明細書で使用される用語「投薬頻度」とは、特定の投薬間隔あたりに投与される用量の数を指す。例えば、投薬頻度は、週に1回、2週間毎に1回等と定めることができる。したがって、7日の投薬間隔は、7日に1回、または1週間毎に1回、または週に1回の投薬間隔と定めることもできる。
【0106】
一部の実施形態では、キメラタンパク質は、rFVIIIFcであり、以下の投薬間隔で対象に投与される、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、約10日、約11日、約12日、約13日、約14日、約15日、約16日、約17日、約18日、約19日、約20日、約21日、約22日、約23日、または約24日。一部の実施形態では、rFVIIIFcは、約25日、約26日、約27日、約28日、約29日、約30日、約45日、または約60日の投薬間隔でヒトに投与される。
【0107】
一部の実施形態では、rFVIIIFcは以下の投薬間隔で投与される、約1~約14日、約1~約13日、約1~約12日、約1~約11日、約1~約10日、約1~約9日、約1~約8日、約1~約7日、約1~約6日、約1~約5日、約1~約4日、約1~約3日、約1~約2日、約2~約14日、約3~約14日、約4~約14日、約5~約14日、約6~約14日、約7~約14日、約8~約14日、約9~約14日、約10~約14日、約11~約14日、約12~約14日、約13~約14日、または約5~約10日。他の実施形態では、rFVIIIFcは以下の投薬間隔で投与される、約1~約21日、約1~約20日、約1~約19日、約1~約18日、約1~約17日、約1~約16日、約1~約15日、約1~約14日、約1~約13日、約1~約12日、約1~約11日、約1~約10日、約1~約9日、約1~約8日、約1~約7日、約1~約6日、約1~約5日、約1~約4日、約1~約3日、約1~約2日、約2~約21日、約3~約21日、約4~約21日、約5~約21日、約6~約21日、約7~約21日、約8~約21日、約9~約21日、約10~約21日、約11~約21日、約12~約21日、約13~約21日、約14~約21日、約15~約21日、約16~約21日、約17~約21日、約18~約21日、約19~約21日、約20~約21日、約5~約10日、約10~約15日、約15~約20日。一部の実施形態では、rFVIIIFcは、約2~約6日の投薬間隔で投与される。一部の実施形態では、rFVIIIFcは、約3~約5日の投薬間隔で投与される。
【0108】
様々な実施形態では、治療有効量のrFVIIIFcは、25~65IU/kg(25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、または65IU/kg)であり、投薬間隔は3~5、3~6、3~7、3、4、5、6、7、もしくは8日またはこれ超毎に1回、または週毎に3回、または週毎に3回以下、である。一部の実施形態では、治療有効量のrFVIIIFcは、65IU/kgであり、投薬間隔は、週に1回、または6~7日毎に1回である。用量は、必要である限り繰り返し投与することができる(例えば、少なくとも10、20、28、30、40、50、52、または57週間、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10年)。様々な実施形態では、治療有効量のrFVIIIFcは、約25~65IU/kgであり、投薬間隔は、3~5日毎に1回である。
【0109】
5.方法
方法
本開示の一態様は、血友病および低BMDを有する対象を処置する方法である。本開示の方法は、血友病Aおよび低BMDを有する対象を選択する工程と、組換え第VIII因子(FVIII)タンパク質およびFcドメイン(rFVIIIFc)を含む治療有効量のキメラタンパク質を対象に投与する工程とを含み、キメラタンパク質の投与は、対象のBMDの減少を阻害する。一部の実施形態では、FcドメインはIgG1である。一部の実施形態では、FcドメインはヒトIgG1のFcドメインである。一部の実施形態では、キメラタンパク質はrFVIIIFcである。
【0110】
同様に、本開示の一態様は、血友病Aおよび低BMDを有する対象を処置するのに使用するための組換えFVIIIタンパク質およびFcドメインを含むキメラタンパク質である。
【0111】
ある特定の実施形態では、キメラタンパク質は、配列番号1によるアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、キメラタンパク質は、配列番号1によるアミノ酸配列と少なくとも99%同一のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、キメラタンパク質は、配列番号1と100%同一のアミノ酸配列を含む。
【0112】
ある特定の実施形態では、キメラタンパク質は、配列番号2によるアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、キメラタンパク質は、配列番号2によるアミノ酸配列と少なくとも99%同一のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、キメラタンパク質は、配列番号2と100%同一のアミノ酸配列を含む。
【0113】
ある特定の実施形態では、キメラタンパク質は、配列番号5と100%同一のアミノ酸配列を含む。
【0114】
ある特定の実施形態では、キメラタンパク質は、3~5日毎に25~65IU/kgの用量で投与される。
【0115】
ある特定の実施形態では、対象のBMDは、二重X線吸収測定法(DXA)によって測定される。
【0116】
ある特定の実施形態では、対象は50歳以上である。
【0117】
ある特定の実施形態では、対象は50歳未満である。
【0118】
ある特定の実施形態では、対象のBMDはTスコアによって判定される。ある特定の実施形態では、対象のBMDはTスコアによって判定される。ある特定の実施形態では、対象は50歳以上であり、対象のBMDはTスコアによって判定される。
【0119】
ある特定の実施形態では、対象が-1.0未満のT-スコアを有する場合、対象は低BMDを有すると判定される。ある特定の実施形態では、対象が-1.0から-2.4の間のTスコアを有する場合、対象は、低BMDおよび骨減少症を有すると判定される。ある特定の実施形態では、対象が-2.5未満のTスコアを有する場合、対象は、低BMDおよび骨粗鬆症を有すると判定される。
【0120】
ある特定の実施形態では、対象のBMDはZスコアによって判定される。ある特定の実施形態では、対象は50歳未満であり、対象のBMDはZスコアによって判定される。
【0121】
ある特定の実施形態では、対象が-2.0未満のZスコアを有する場合、対象は低BMDを有すると判定される。
【0122】
ある特定の実施形態では、対象は、骨形成、骨吸収、および/または骨喪失のうちの1つまたはそれ以上のバイオマーカーのレベルに基づいて、低BMDを有すると予測される。
【0123】
ある特定の実施形態では、バイオマーカーは対象の末梢血または尿から評価される。
【0124】
ある特定の実施形態では、骨形成の1つまたはそれ以上のバイオマーカーは、骨型アルカリホスファターゼ、1型プロコラーゲンN末端プロペプチド(P1NP)、1型プロコラーゲンC末端プロペプチド(P1CP)、オステオカルシンおよびそれらの任意の組合せからなる群から選択される。
【0125】
ある特定の実施形態では、骨吸収の1つまたはそれ以上のバイオマーカーは、血清の総アルカリホスファターゼ、核因子カッパBの受容体活性化因子(RANKL)、オステオプロテゲリン(OPG)、酒石酸耐性酸性ホスファターゼ(TRAP)、ヒドロキシリジン、ヒドロキシプロリン、デオキシピリジノリン(DPD)、ピリジノリン(PYD)、骨シアロタンパク質、カテプシンK、酒石酸耐性酸性ホスファターゼ5b(TRAP5b)、マトリックスメタロプロテイナーゼ9(MMP9)、1型コラーゲンのC末端架橋テロペプチド(CTX-1)、1型コラーゲンのN末端架橋テロペプチド(NTX-1)、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される。
【0126】
本開示の一態様は、血友病Aおよび骨折のリスク増大を有する対象を処置する方法である。本開示の方法は:(i)血友病Aおよび骨折のリスク増大を有する対象を選択する工程と、(ii)組換え第VIII因子タンパク質およびFcドメインを含む治療有効量のキメラタンパク質を対象に投与する工程とを含み、キメラタンパク質の投与は、対象の骨折のリスクを減少させる。
【0127】
ある特定の実施形態では、キメラタンパク質は、配列番号1によるアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、キメラタンパク質は、配列番号1によるアミノ酸配列と少なくとも99%同一のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、キメラタンパク質は、配列番号1と100%同一のアミノ酸配列を含む。
【0128】
ある特定の実施形態では、キメラタンパク質は、配列番号2によるアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、キメラタンパク質は、配列番号2によるアミノ酸配列と少なくとも99%同一のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、キメラタンパク質は、配列番号2と100%同一のアミノ酸配列を含む。
【0129】
ある特定の実施形態では、キメラタンパク質は、配列番号5によるアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、キメラタンパク質は、配列番号5によるアミノ酸配列と少なくとも99%同一のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、キメラタンパク質は、配列番号5と100%同一のアミノ酸配列を含む。
【0130】
ある特定の実施形態では、キメラタンパク質は3~5日毎に25~65IU/kgの用量で投与される。
【0131】
ある特定の実施形態では、対象の骨折のリスクは骨折リスク評価ツール(FRAX)によって判定される。
【0132】
ある特定の実施形態では、対象の骨折のリスクは、低BMDリスク因子の評価によって判定される。ある特定の実施形態では、低BMDリスク因子は、関節症、身体活動の減少、HIVもしくはHCVによる感染、ビタミンD欠乏症、低体重指数(BMI)、性腺機能低下症、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される。
【0133】
本開示の一態様は、対象の骨ミネラル密度(BMD)喪失の速度を減少させる方法である。本開示の方法は、(i)低BMDを有する対象を選択する工程と;(ii)凝固因子およびFcドメインを含む治療有効量のキメラタンパク質を対象に投与する工程とを含み、その結果、キメラタンパク質の投与は、対象のBMD喪失の速度を減少させる。
【0134】
ある特定の実施形態では、キメラタンパク質は、配列番号1によるアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、キメラタンパク質は、配列番号1によるアミノ酸配列と少なくとも99%同一のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、キメラタンパク質は、配列番号1と100%同一のアミノ酸配列を含む。
【0135】
ある特定の実施形態では、キメラタンパク質は、配列番号2によるアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、キメラタンパク質は、配列番号2によるアミノ酸配列と少なくとも99%同一のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、キメラタンパク質は、配列番号2と100%同一のアミノ酸配列を含む。
【0136】
ある特定の実施形態では、キメラタンパク質は、配列番号5によるアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、キメラタンパク質は、配列番号5によるアミノ酸配列と少なくとも99%同一のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、キメラタンパク質は、配列番号5と100%同一のアミノ酸配列を含む。
【0137】
ある特定の実施形態では、キメラタンパク質は3~5日毎に25~65IU/kgの用量で投与される。
【0138】
本開示の一態様は、血友病Aおよび骨折を有する対象を処置する方法である。本開示の方法は、血友病および骨折を有する対象を選択する工程と、組換えFVIIIタンパク質およびFcドメインを含む治療有効量のキメラタンパク質を対象に投与する工程とを含む。
【0139】
ある特定の実施形態では、キメラタンパク質は、配列番号1によるアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、キメラタンパク質は、配列番号1によるアミノ酸配列と少なくとも99%同一のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、キメラタンパク質は、配列番号1と100%同一のアミノ酸配列を含む。
【0140】
ある特定の実施形態では、キメラタンパク質は、配列番号2によるアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、キメラタンパク質は、配列番号2によるアミノ酸配列と少なくとも99%同一のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、キメラタンパク質は、配列番号2と100%同一のアミノ酸配列を含む。
【0141】
ある特定の実施形態では、キメラタンパク質は、配列番号5によるアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、キメラタンパク質は、配列番号5によるアミノ酸配列と少なくとも99%同一のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、キメラタンパク質は、配列番号5と100%同一のアミノ酸配列を含む。
【0142】
本開示の前述の態様および実施形態のそれぞれによれば、一部の実施形態では、対象は軽度の血友病Aを有する。
【0143】
本開示の前述の態様および実施形態のそれぞれによれば、一部の実施形態では、対象は中程度の血友病Aを有する。
【0144】
本開示の前述の態様および実施形態のそれぞれによれば、一部の実施形態では、対象は重度の血友病Aを有する。
【0145】
本開示の前述の態様および実施形態のそれぞれによれば、一部の実施形態では、対象はヒトである。
【0146】
本開示のある特定の態様は、血友病Aを有する対象の骨ミネラル密度(BMD)を増大させ、出血エピソードを予防的に処置する方法であって、(i)Fc部分を有しないFVIIIタンパク質で血友病Aの処置を受けている対象を特定する工程であって、対象は処置中では十分な血液凝固を有したが、対象は低BMDを有する、工程と;(ii)Fc部分を有しないFVIIIタンパク質での処置を中止し、組換えFVIIIタンパク質およびFcドメイン(rFVIIIFc)を含む治療有効量のキメラタンパク質を対象に投与する工程とを含み、キメラタンパク質の投与は、対象のBMDを増大させ、出血エピソードを予防的に処置する、方法を対象とする。
【0147】
本開示のある特定の態様は、血友病Aを有する対象の骨ミネラル密度(BMD)を増大させ、出血エピソードを予防的に処置する方法であって、(i)ノンファクター補充タンパク質で血友病Aの処置を受けている対象を特定する工程であって、対象は処置中では十分な血液凝固を有したが、対象は低BMDを有する、工程と;(ii)ノンファクター補充タンパク質での処置を中止し、組換えFVIIIタンパク質およびFcドメイン(rFVIIIFc)を含む治療有効量のキメラタンパク質を対象に投与する工程とを含み、キメラタンパク質の投与は、対象のBMDを増大させ、出血エピソードを予防的に処置する、方法を対象とする。
【0148】
本開示のある特定の態様は、対象の骨ミネラル密度(BMD)を増大させ、出血エピソードを予防的に処置する方法であって、組換えFVIIIタンパク質およびFcドメイン(rFVIIIFc)を含む治療有効量のキメラタンパク質を対象に投与する工程を含み、対象は血友病Aおよび低BMDを有すると特定されており、キメラタンパク質の投与は、対象のBMDを増大させ、出血エピソードを予防的に処置する、方法を対象とする。
【0149】
本開示のある特定の態様は、対象の骨折のリスクを減少させ、出血エピソードを予防的に処置する方法であって、組換えFVIIIタンパク質およびFcドメイン(rFVIIIFc)を含む治療有効量のキメラタンパク質を対象に投与する工程を含み、ここで、対象は血友病Aおよび骨折のリスク増大を有すると特定されており、かつキメラタンパク質の投与は、対象の骨折のリスクを減少させ、出血エピソードを予防的に処置する、方法を対象とする。
【0150】
本開示のある特定の態様は、対象の骨ミネラル密度(BMD)喪失の速度を減少させ、出血エピソードを予防的に処置する方法であって、組換えFVIIIタンパク質およびFcドメイン(rFVIIIFc)を含む治療有効量のキメラタンパク質を対象に投与する工程を含み、対象は血友病AおよびBMD喪失を有すると特定されており、キメラタンパク質の投与は、対象のBMD喪失の速度を減少させ、出血エピソードを予防的に処置する、方法を対象とする。
【0151】
本開示のある特定の態様は、血友病Aを有し、Fc部分を有しないFVIIIタンパク質で処置されている対象の骨ミネラル密度(BMD)を増大させ、出血エピソードを予防的に処置する方法であって、Fc部分を有しないFVIIIタンパク質での処置を中止し、組換えFVIIIタンパク質およびFcドメイン(rFVIIIFc)を含む治療有効量のキメラタンパク質を対象に投与する工程を含み、対象は、Fc部分を有しないFVIIIタンパク質での処置中では低BMDおよび十分な血液凝固を有すると特定されており、キメラタンパク質の投与は、対象のBMDを増大させ、出血エピソードを予防的に処置する、方法を対象とする。
【0152】
本開示のある特定の態様は、血友病Aを有し、ノンファクター補充タンパク質で処置されている対象の骨ミネラル密度(BMD)を増大させ、出血エピソードを予防的に処置する方法であって、ノンファクター補充タンパク質での処置を中止し、組換えFVIIIタンパク質およびFcドメイン(rFVIIIFc)を含む治療有効量のキメラタンパク質を対象に投与する工程を含み、対象は、ノンファクター補充タンパク質での処置中では低BMDおよび十分な血液凝固を有すると特定されており、キメラタンパク質の投与は、対象のBMDを増大させ、出血エピソードを予防的に処置する、方法を対象とする。
【0153】
一部の実施形態では、対象は、Fc部分を有しない第VIII因子タンパク質を使用して血友病Aに伴う出血を減少させるように予め処置されている。
【0154】
一部の実施形態では、Fc部分を有しない第VIII因子タンパク質は、Fcドメインに融合されていないペグ化FVIIIである。Fc部分を有しないペグ化第VIII因子分子の例には、それらに限定されないが、ADYNOVATE(登録商標)、ESPEROCT(登録商標)、およびJIVI(登録商標)が含まれる。
【0155】
一部の実施形態では、Fc部分を有しない第VIII因子タンパク質は、Fcドメインに融合されていない一本鎖FVIIIである。Fc部分を有しない第VIII因子分子の例には、それに限定されないが、AFSTYLA(登録商標)が含まれる。
【0156】
一部の実施形態では、Fc部分を有しない第VIII因子タンパク質は、ヒトにおいてその半減期を延長する部分を含まない組換えFVIIIである。ヒトにおいて半減期を延長する部分を含まない第VIII因子分子の例には、それらに限定されないが、ADVATE(登録商標)、XYNTHA(登録商標)、NOVOEIGHt(登録商標)、およびKOVALTRY(登録商標)が含まれる。
【0157】
一部の実施形態では、Fc部分を有しない第VIII因子タンパク質は、血液由来FVIIIまたは血漿由来FVIIIである。
【0158】
一部の実施形態では、Fc部分を有しない第VIII因子タンパク質は、ダモクトコグアルファペゴル、ツロクトコグアルファペゴル、ツロクトコグアルファ、ロノクトコグアルファ、シモクトコグアルファ、ルリオクトコグアルファペゴル、またはオクトコグアルファである。
【0159】
一部の実施形態では、対象は、ノンファクター補充タンパク質を使用して血友病Aに伴う出血を減少させるように予め処置されている。
【0160】
一部の実施形態では、ノンファクター補充タンパク質はエミシズマブである。
【0161】
一部の実施形態では、エミシズマブはエミシズマブ-kxwhである、
【0162】
一部の実施形態では、対象は、Fc部分を有しない第VIII因子タンパク質またはノンファクター補充タンパク質での処置中では十分な血液凝固を有していた。
【0163】
一部の実施形態では、対象は、出血が検出されていない骨部位および/または関節にて低BMDを有する。
【0164】
6.製剤
本明細書で使用される「投与する」または「投与する工程」とは、本明細書に記載の組成物、例えば、キメラタンパク質を対象に送達することを指す。組成物、例えば、キメラタンパク質は、当技術分野において知られる方法を使用して、対象に投与することができる。特に、組成物は、静脈内、皮下、筋肉内、皮内、または任意の粘膜表面を介して、例えば、経口的に、舌下的に、口腔的に、経鼻的に、直腸的に、経膣的に、または肺の経路を介して、投与することができる。一部の実施形態では、投与は静脈内である。一部の実施形態では、投与は皮下である。一部の実施形態では、投与は自己投与である。一部の実施形態では、親が子に組成物を投与する。一部の実施形態では、組成物は、医師、インターンまたは看護師のような医療関係者によって対象に投与される。
【0165】
本明細書で使用される用語「非経口」には、皮下、皮内、血管内(例えば、静脈内)、筋肉内、脊髄、頭蓋内、髄腔内、眼内、眼周囲、眼窩内、滑液嚢内および腹腔内の各注射または各注入、ならびに類似の任意の注射または注入の技法、が含まれる。組成物はまた、例えば、懸濁液、乳濁液、徐放性製剤、クリーム剤、ゲル剤または散剤とすることができる。組成物は、トリグリセリドのような従来の結合剤および担体を用いて、坐剤として製剤してもよい。
【0166】
一例では、医薬製剤は、液剤、例えば、緩衝化等張水溶液である。別例では、医薬組成物は、生理的または生理的に近いpHを有する。一例では、水性製剤は、生理的または生理的に近い浸透圧および塩分を有する。一例では、水性製剤は、塩化ナトリウムおよび/または酢酸ナトリウムを含有してもよい。
【0167】
一部の実施形態では、本発明の方法で使用されるFVIIIおよびFc領域を含むキメラタンパク質は、以下を含む医薬組成物に製剤化される:(a)キメラポリペプチド;(b)スクロース、トレハロース、ラフィノース、アルギニンから選択される1つもしくはそれ以上の安定剤、またはそれらの混合物;(c)塩化ナトリウム(NaCl);(d)L-ヒスチジン;(e)塩化カルシウム;および(f)ポリソルベート20またはポリソルベート80。ある特定の実施形態では、医薬組成物は、以下を含む:(a)キメラポリペプチド 50IU/ml~2500IU/ml;(b)スクロース 10mg/ml~25mg/ml;(c)塩化ナトリウム(NaCl) 8.8mg/ml~14.6mg/ml;(d)L-ヒスチジン 0.75mg/ml~2.25mg/ml;(e)塩化カルシウム二水和物 0.75mg/ml~1.5mg/ml;(f)ポリソルベート20またはポリソルベート80 0.08mg/ml~0.25mg/ml。一部の例では、本開示の方法で使用される医薬組成物は、凍結乾燥されている。
【0168】
本開示はまた、医薬品キットのコンポーネントを提供する。かかるキットは、1つまたはそれ以上の容器および場合による付属部品を含む。本明細書で提供のキットによって、それを必要とする対象への有効量のキメラタンパク質(例えば、rFVIIIFc)の投与が容易となる。ある特定の実施形態では、キットによって、静脈内注入を介したキメラタンパク質(例えば、rFVIIIFc)の投与が容易となる。ある特定の実施形態では、キットによって、静脈内注入を介したキメラタンパク質(例えば、rFVIIIFc)の自己投与が容易となる。
【0169】
一部の実施形態では、本開示は、凍結乾燥粉末または塊を含む第1の容器、ここで、粉末または塊は:(i)キメラタンパク質(例えば、rFVIIIFc)、(ii)スクロース(および/またはトレハロース、ラフィノースまたはアルギニン);(iii)NaCl;(iv)L-ヒスチジン;(v)塩化カルシウム二水和物;および(vi)ポリソルベート20またはポリソルベート80を含み;ならびに、第1の容器の凍結乾燥粉末と一緒にされる、希釈剤、例えば注射用の滅菌水を含む第2の容器、を含む医薬キットを提供する。一部の実施形態では、十分な希釈剤を供給して、本明細書に開示される所望の特性を備えるキメラタンパク質(例えば、rFVIIIFc)製剤約3mlを作製する。一部の実施形態では、第2の容器は、プランジャーと結び付いているプレフィルドシリンジであり、これによって、希釈剤を第1の容器に添加し、その結果、第1の容器の内容物を再構成し、シリンジ内に移し戻すことが可能となる。一部の実施形態では、キットは、シリンジを第1の容器に取り付けるためのアダプターをさらに供給する。一部の実施形態では、キットは、再構成されたFVIIIポリペプチド(例えば、rFVIIIFc)製剤を含有するシリンジに取り付けるニードル及ぶ注入チュービングをさらに供給し、これによって、製剤のIV注入が可能となる。
【0170】
一部の実施形態では、キメラタンパク質(例えば、rFVIIIFc)は、約200IUから約6000IU、例えば、約250IU、約500IU、約750IU、約1000IU、約1500IU、約2000IU、約3000IU、約4000IU、約5000IU、または約6000IUの総量で供給される。
【0171】
本明細書で使用される凝固因子のFVIII部分またはキメラタンパク質は、FVIII活性を有する。FVIII活性は、当技術分野で知られる任意の方法によって測定することができる。凝固系の機能を評価するいくつかの試験が利用可能である:活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)試験、発色アッセイ、ROTEMアッセイ、プロトロンビン時間(PT)試験(INRの判定にも使用)、フィブリノーゲン試験(多くの場合、クラウス法による)、血小板数、血小板機能検査(多くの場合PFA-100による)、TCT、出血時間、混合検査(患者の血漿を正常な血漿と混合する場合に異常が矯正されるか否か)、凝固因子アッセイ、抗リン脂質抗体、D-二量体、遺伝子検査(例えば、第V因子ライデン、プロトロンビン変異G20210A)、希釈ラッセル蛇毒時間(dRVVT)、種々の血小板機能検査、トロンボエラストグラフィ(TEGまたはSonoclot)、トロンボエラストメトリ((TEM(登録商標)、例えばROTEM(登録商標))、またはユーグロブリン溶解時間(ELT)。
【0172】
aPTT試験とは、「内因系」凝固経路(接触活性化経路とも呼ばれる)と共通凝固経路の双方の有効性を測定する性能指標である。この試験は、市販の組み換え凝固因子、例えば、FVIIIの凝固活性を測定するのに普通に使用される。この試験は、外因系経路を測定するプロトロンビン時間(PT)と併せて使用される。
【0173】
ROTEM分析は、止血の全動態に関する情報:凝固時間、血栓形成、血栓安定性および溶解を提供する。トロンボエラストメトリの様々なパラメータは、血漿凝固系の活性、血小板機能、フィブリン溶解、またはこれらの相互作用に影響を与える多くの因子に依存性である。このアッセイで、二次止血の全体像を提供することができる。
【0174】
発色アッセイ機構は血液凝血カスケードの原則に基づいており、この場合、活性化VIIIが、活性化第IX因子、リン脂質およびカルシウムイオンの存在下で第X因子の第Xa因子への変換を加速する。第Xa因子活性は、第Xa因子に特異的なp-ニトロアニリド(pNA)基質の加水分解によって評価される。405nmにて測定したp-ニトロアニリンの放出の初期速度は、第Xa因子活性に、故に試料中のFVIII活性に直接比例する。
【0175】
発色アッセイは、国際血栓止血学会(International Society on Thrombosis and Hemostasis)(ISTH)の学術標準化委員会(Scientific and Standardization Committee)(SSC)の第VIII因子および第IX因子小委員会、によって推奨されるものである。1994年以来、発色アッセイはまた、FVIII濃縮製剤の効力の帰属に関する、欧州薬局方(European Pharmacopoeia)の参照方法でもある。したがって、一実施形態では、FVIIIを含むキメラタンパク質は、成熟FVIIIまたはBDD FVIIIを含むキメラタンパク質(例えば、ADVATE(登録商標)、REFACTO(登録商標)、またはELOCTATE(登録商標))に匹敵するFVIII活性を有する。
【0176】
ある特定の実施形態では、有効量または有効用量は、単回用量として投与される。一部の実施形態では、有効量または有効用量は、1日を通して2以上の用量で投与される。
【0177】
本開示について詳細に記載してきたが、以下の実施例を参照することで同等のことが明確に理解されるが、それらは例示のみを目的として本明細書に含まれるものであり、本開示を限定することを意図するものではない。本明細書で参照されるすべての特許、刊行物、および記事は、参照によって明示的かつ具体的に本明細書に組み入れる。
【実施例
【0178】
本開示は、とりわけ、血友病Aおよび低BMDを有する対象を処置するための組成物、化合物、キット、および方法を提供するが、特定の科学理論によってなんら限定されるものではない。
【実施例1】
【0179】
組換え第VIII因子Fc融合タンパク質(rFVIIIFc)はin vitroで炎症性破骨細胞形成を負に調節する
重度の血友病A(HemA)患者で観察される骨ミネラル密度の低下から示唆されるところは、FVIII活性の非存在および関連する出血エピソードは骨の恒常性に多大な影響を及ぼすことである。
【0180】
いかなる科学理論にも拘束されるものではないが、そういった患者の炎症促進性環境が、関節炎関連骨粗鬆症の場合に報告されるイベントと同様に、憎悪した単球/マクロファージ由来の破骨細胞形成およびその後の骨侵食の一因であるかもしれない、と仮説を立てた。単球由来破骨細胞形成に及ぼすrFVIII対rFVIIIFc処置の効果について調査して、rFVIIIFcが抗酸化剤NRF2経路をアップレギュレートすることによって炎症促進性破骨細胞形成を阻害するか否かを判定した。
【0181】
本仮説を試験するために、末梢血単核細胞(PBMC)由来のヒト単球を分離し、rhM-CSFおよびrhRANKLと培養して、未処置でまたはhIgG1、rFVIIIもしくはrFVIIIFcの存在下で、破骨細胞形成を行った。処置によって誘発された遺伝子発現の変化を、Q-PCRによって測定した。破骨細胞の表現型決定に続いて、酒石酸耐性酸性ホスファターゼ(TRAP)染色を行い、多核化を観察した。処置された破骨細胞の機能を、骨吸収アッセイを使用して調べた。
【0182】
総RNAを、RNeasy Mini Kit(Qiagen、Valencia、CA)を使用してマクロファージから分離し、Superscript III Vilo Kit(Thermo Fisher Scientific)を使用して逆転写した。定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)アッセイを、Thermo Fisher Scientific製のTaqman遺伝子発現アッセイを使用して実行し、7500Fast機器で行った。比較サイクル閾値(comparative cycle threshold)法を使用して、内因性対照遺伝子36B4に対して転写物を定量化した。
【0183】
ヒト単球由来マクロファージを、健康なヒトドナーの末梢血単核細胞から分離したCD14単球から生成した。
【0184】
精製したCD14単球を、ペニシリン、ストレプトマイシン、および10%ウシ胎児血清を補充したRPMI 1640Glutamax培地(Thermo Fisher Scientific)にプレーティングした。単球を、特に記載がない限り、ヒトIgG1、Bドメイン欠失rFVIII、rFVIIIFc(各25nM)またはビヒクル(PBS)と7日培養期間、処置した処置濃度については予備実験で決定した。FcγRに結合できないrFVIIIFc分子の変異型であるrFVIIIFc N297Aも一部の実験で使用して、Fc部分の効果を判定した。Krishnamoorthy S、ら Cell Immunol.2016;301:30~39頁。研究の設計の概略図を図1に示す。
【0185】
結果
CD14単球を、M-CSF単独の存在下で7日間培養する、または0日目に4つの処置群のうちの1つで処置し、M-CSFおよびRANKLの存在下で7日間培養する、のいずれかとした(図2)。次に、各処置群の細胞を、TRAP染色によって形態学的特徴について観察した(図3)。RANKLなしで処置した対照細胞は、明確なマクロファージ形態を呈した(図3A)。ビヒクル(図3B)、IgG1単独(図3C)、またはrFVIII単独(図3D)で処置し、M-CSFおよびRANKLと培養した細胞は、破骨細胞に特徴的な大きな多核細胞体を呈した。rFVIIIFc処置細胞(図3E)は依然として小さいままであり、単一の核を含有したが、このことが示すところは、rFVIIIFc処置が多核破骨細胞の形成を阻害したことである。
【0186】
破骨細胞形成に及ぼす処置タイミングの効果を調べるために、CD14単球を、4つの処置のうちの1つで-1日目に処置した。24時間の処置後、培養培地を除去し、細胞を遠心分離し、DPBSで1回洗浄し、M-CSFおよびRANKLを含有する培養培地に再懸濁し、再プレーティングした(図4)。ビヒクル(図5A)、IgG1単独(図5B)、またはrFVIII単独(図5C)で-1日目に処置し、0日目に洗浄し、M-CSFおよびRANKLと培養し、TRAP染色によって調べた、CD14単球は、破骨細胞の形態に特徴的な大きな多核細胞に分化した。rFVIIIFcで同様に処置し(図5D)、TRAP染色で調べたCD14単球は、特徴的な大型多核細胞がほとんど観察されなかったので、破骨細胞に分化してはいなかったが、このことが示すところは、わずか1日間単球をrFVIIIFc処置することによって、7日間の分化後のin vitroでの破骨細胞の形成が実質的に阻害されたことである。このことは、FVIIIと単球の血液循環特性の両方に生理学的に関連しているが、なぜなら、rFVIIIFcは血液循環中の単球とのみ相互作用すると予想されるからである。rFVIIIFc処置は、完全に分化した単球由来破骨細胞に対して検出可能な影響をまったく示さなかった(データ示さず)。
【0187】
まとめ
単球由来破骨細胞の発生は、rFVIIIFcの存在下で著しく損なわれた。形態学的観察によれば、単球をrFVIIIFcでわずか1日間処置すれば、破骨細胞の形成を阻害するのに十分であった。
【実施例2】
【0188】
rFVIIIFcはin vitroで破骨細胞の骨吸収活性を阻害する
rFVIIIFcは破骨細胞形成を阻害することができたので、本発明者らは次に、破骨細胞の骨吸収活性に及ぼすrFVIIIFcの効果について調べた。CD14単球をビヒクル、IgG1単独、rFVIII単独、またはrFVIIIFcで0日目に処置し、M-CSFおよびRANKLの存在下で3日間培養した。3日目に、単球をウシ皮質骨スライスに再プレーティングし、M-CSFおよびRANKLの存在下で7~10日間共培養した。7~10日の共培養期間の後、単球由来細胞を除去し、骨スライスをトルイジンブルー染色によって調べた(図6)。ビヒクル(図7A)、IgG1(図7B)、またはrFVIII(図7C)で処置された単球と共培養した骨スライスは、明確な骨吸収を提示し(図7A、7B、7C;円で囲まれた領域)、この処置プールに由来する破骨細胞は依然として骨を能動的に破壊することができたことを示した。rFVIIIFcで処置された単球と共培養した骨スライス(図7D)は、対照の3群と比較した場合、著しく少ない骨吸収を提示したが(図7D、円で囲まれた領域)、このことより、単球を0日目にrFVIIIFcを処置すると、分化の7~10日後、細胞の骨再吸収化成が実質的に阻害されることが示唆された。
【0189】
まとめ
破骨細胞分化因子(M-CSFおよびRANKL)と培養した単球をrFVIIIFc処置すると、処置された細胞の骨吸収活性の低下にいたる。
【実施例3】
【0190】
破骨細胞形成における遺伝子発現および機能に及ぼすrFVIIIFcの効果
本発明者らは次に、rFVIIIFcの破骨細胞活性および形態の減少が破骨細胞関連遺伝子の低下と一致するか否かについて調査した。CD14単球をビヒクル、IgG1単独、rFVIII単独、またはrFVIIIFcで0日目に処置し、M-CSFおよびRANKLの存在下で7日間培養した。次いで、細胞を収集し、RNAを抽出し、遺伝子発現レベルを定量的リアルタイムPCRによって定量化した(図8)。次いで、破骨細胞関連遺伝子を、ビヒクル処置(図9、黒色のバー)、IgG1処置(図9、暗灰色のバー)、rFVIII処置(図9、明灰色のバー)、およびrFVIIIFc処置(図9、白色のバー)の各細胞で測定し、ビヒクル処置群の発現レベルに正規化した。破骨細胞分化(図9、RANK、NFATC1)および骨吸収活性(図9、CATK、TRAP、MMP9)のマーカーを解析した。解析した遺伝子のいずれについても、ビヒクル、IgG1、またはrFVIIIの各処置群間で有意な変化は観察されなかった。しかし、他の処置群と比較した場合、破骨細胞分化(RANK、NFATC1)マーカーと活性(CATK、TRAP、MMP9)マーカーの両方において、rFVIIIFc処置細胞については遺伝子発現の有意な低下が観察された。図9を参照されたい、白色のバー。
【0191】
本発明者らは次に、上記の4つの処置群における破骨細胞形成中のNRF2関連遺伝子の応答について調査した。NRF2は、破骨細胞形成中にダウンレギュレーションされる抗酸化経路を調節する上である役割を演じることが知られる(Kanzaki J Biol Chem)。NRF2は、GCLCやNQO1のような凍結保護酵素の発現を制御する。CD14単球をビヒクル、IgG1単独、rFVIII単独、またはrFVIIIFcで0日目に処置し、M-CSFおよびRANKLの存在下で7日間培養した。次いで、細胞を収集し、RNAを抽出し、遺伝子発現レベルを定量的リアルタイムPCRによって定量化した(図10)。NRF2制御遺伝子NQO1およびGCLCの発現は、ビヒクル処置細胞(図11A、黒色のバー)と比較した場合、IgG1単独(図11A、暗灰色のバー)またはrFVIII単独(図11A、明灰色のバー)で処置された単球において有意に変化していなかった。しかし、rFVIIIFcで処置された単球は、ビヒクルで処置した群と比較して、NQO1とGCLCの両方の発現の有意な増大を呈した。図11Aを参照されたい、白色のバー。
【0192】
本発明者らは次に、ビヒクル(図11B、黒色のバー)、IgG1単独(図11B、暗灰色のバー)、rFVIII単独(図11B、明灰色のバー)、またはrFVIIIFcで処置した(図11B、白色のバー)各単球におけるNQO1レダクターゼ活性について調査した。ビヒクル処置群と比較して、IgG1単独またはrFVIIIのいずれも、NQO1比活性の有意な増大を呈さなかった(図11B)。しかし、NQO1比活性は、rFVIIIFc処置細胞で有意に増大し、この重要な経路の調節は破骨細胞形成のrFVIIIFc媒介性阻害においてある役割を演じる可能性があることを示した。
【0193】
まとめ
rFVIIIFc処置細胞の遺伝子およびタンパク質の発現が示したところは、破骨細胞形成および骨吸収においてある役割を演じることが知られる、抗酸化剤NRF2経路のアップレギュレーションならびに破骨細胞特異的マーカーおよび遺伝子のダウンレギュレーション、である。逆に、凍結保護酵素(NQO1、GCLC)の増大が、未処置、IgG1単独、またはrFVIII処置の各細胞と比較して、rFVIIIFc処置破骨細胞で観察された。
【実施例4】
【0194】
破骨細胞形成の阻害におけるrFVIIIFcのFc部分の役割
本発明者らは次に、破骨細胞形成の阻害におけるrFVIIIFcのFc部分の役割について調査した。CD14単球をビヒクル、IgG1単独、rFVIII単独、rFVIIIFcおよびrFVIII Fc-N297A(FcγRに結合できない)で0日目に処置し、M-CSFおよびRANKLの存在下で7日間培養した。次いで、細胞を収集し、RNAを抽出し、遺伝子発現レベルを定量的リアルタイムPCRによって定量化した(図12)。破骨細胞分化(RANK、NFATC1)および活性(CATK、TRAP)のマーカーを測定し、ビヒクル処置群に正規化した(図13、黒色のバー)。IgG1単独(図13、暗灰色のバー)またはrFVIII単独(図13、明灰色のバー)で処置した各細胞は、ビヒクルで処置した群と比較して、遺伝子発現になんらの有意な変化を提示しなかった。rFVIIIFc処置細胞(図13、白色のバー)は、すべての破骨細胞関連マーカーの有意な低下を呈した。このような減少は、FcγR結合がrFVIIIFc-N297A処置群において消失した場合、観察されなかった(図13、斜線のバー)。
【0195】
まとめ
単球由来破骨細胞形成および破骨細胞特異的遺伝子発現に及ぼすrFVIIIFcの阻害効果には、FcドメインとFcγRの相互作用が必要である。
【実施例5】
【0196】
rFVIIIFcで処置された単球の用量依存的分化
本発明者らは、MCSF/RANKL分化単球の免疫表現型に及ぼすrFVIIIFcの投薬量の効果について調査した。CD14単球を、用量(75nM、42nM、24nM、13nM、7.5nM、4.2nM、2.4nM、1.3nM、0.7nM、または0nM)rFVIII+IgG1(図14A~14B)またはrFVIIIFc(図15A~15B)で0日目に処置し、M-CSFおよびRANKLの存在下で7日間培養した。次いで、細胞を収集し、蛍光モノクローナル抗体で染色し、フローサイトメーターによる収集に供した。細胞は、CD14(単球/マクロファージマーカー)およびCD51/61(破骨細胞マーカー)、ならびに他の単球/マクロファージマーカーCD16、CD32、CD64、CD163、CD33、CD35、CD44、CD11b、およびCD172abに対する蛍光抗体で染色した。破骨細胞は、CD14の低発現と合わさったCD51/61高細胞として特徴付けられる。
【0197】
まとめ
rFVIII+IgG1 0.7nMで処置された細胞のうちの61.9%、またはビヒクルで処置された細胞のうちの58.6%と比較して(図14B)、rFVIII+IgG1 75nM用量で処置された細胞のうちの51.6%が破骨細胞に分化した(CD51/61high/CD14low;図14A)ように、rFVIII+IgG1での処置は、破骨細胞形成の阻害に対してわずかな効果を呈するだけであった。逆に、rFVIIIFcによる処置は破骨細胞形成の実質的な阻害を呈した。たった0.7nM rFVIIIFcでの処置細胞のうちの62.6%またはビヒクルで処置された細胞のうちの58.5%(図15B)と比較して、75nM rFVIIIFcでの処置細胞のうちのわずか1.44%が破骨細胞に分化した(図15A)。加えて、より高用量のrFVIIIFc処置によって、処置細胞のうちではっきりと異なる(CD51/61negativeCD14low)免疫表現型が明らかとなった(図15A)。ビヒクル対照に正規化した場合、rFVIIIFc処置細胞に及ぼす破骨細胞形成の阻害効果に関連して、平均IC50 7.49nM(±0.66nM、n=3)が観察された(図16)。
【実施例6】
【0198】
破骨細胞形成のFcγ受容体媒介性阻害
本発明者らは次に、rFVIIIFcで処置された単球からの破骨細胞形成の阻害におけるFcγ受容体の役割について調査した。第1の実験では、CD14単球をビヒクル(図17A図21A)、rFVIIIFc(図17B図21B)、rFVIII+IgG1(図17C図21C)、またはrFVIIIFc-N297A(図17D図21D;FcγRに結合することができない)で0日目に処置し、M-CSFおよびRANKLの存在下で7日間培養した。次いで、細胞を収集し、蛍光モノクローナル抗体で染色し、フローサイトメーターによる収集に供した。細胞は、CD16(単球/マクロファージマーカー)およびCD51/61(破骨細胞マーカー)、に対する蛍光抗体で染色した。第2の実験では、0日目に、CD14単球をまず、FcγR1(抗CD64抗体Fab、図18)、FcγR2(抗CD32抗体、図19)、もしくはFcγR3(抗CD16抗体、図20)に対する遮断抗体または対応する各アイソタイプ対照抗体によって処置し、次いでrFVIIIFcまたはrFVIIIで処置し、次いでM-CSFおよびRANKLの存在下で7日間さらに培養した。次いで、細胞を収集し、蛍光モノクローナル抗体で染色し、フローサイトメーターによる収集に供した。細胞は、CD16(単球/マクロファージマーカー)およびCD51/61(破骨細胞マーカー)に対する蛍光抗体で染色した。
【0199】
まとめ
ビヒクル処置細胞(図17A;37.4% 図21A)とrFVIII+IgG1で処置された細胞(図17C;39.6% 図21C)の両方はそのうちの39.5%が、CD51/61high破骨細胞として特徴付けられたが、一方、rFVIIIFcで処置された細胞(図17B;5.57% 図21B)のうちのわずか5.54%がCD51/61high破骨細胞として特徴付けられた。N297の変異(rFVIIIFc-N297A)によりFcドメインとFcγ受容体との間の相互作用が除去されると、破骨細胞形成の部分的なレスキューがもたらされた(図17D図21D)。
【0200】
rFVIIIおよびFcγR1相互作用を遮断する抗体Fabで処置された細胞(抗CD64抗体、図18A;47.1% 図22A)のうちの47.2%が、rFVIIIFcおよび抗CD64抗体Fabで処置された細胞(図18B;3.02% 図22B)のうちの2.73%と比較して、破骨細胞として特徴付けられた。このパターンは、Fab対照抗体で処置された細胞(rFVIII+対照、図18C図22C;rFVIIIFc+対照、図18D図22D)において存続した。このパターンが示すところは、破骨細胞形成のrFVIIIFc阻害とは、FcγR1単独との相互作用を通して媒介されることはありそうにもないことである。
【0201】
rFVIIIおよびFcγR2相互作用を遮断する抗体で処置された細胞(抗CD32抗体、図19A;39.1% 図23A)のうちの39.2%が、rFVIIIFcおよび抗CD32抗体で処置された細胞(図19Bおよび図23B)のうちの17.0%と比較して、破骨細胞として特徴付けられた。破骨細胞形成のこういったレスキューは、アイソタイプ対照(rFVIII+対照、図19Cおよび図23C;rFVIIIFc+対照、図19Dおよび図23D)の処置で除去された。FcγR2との相互作用が遮断される後のこういった部分的なレスキューが示すところは、破骨細胞形成の阻害がFcγR2とのrFVIIIFc相互作用によって制御されていると思われることである。
【0202】
rFVIIIおよびFcγR3相互作用を遮断する抗体(抗CD16抗体、図20A;24.8% 図24A)で処置された細胞のうちの24.9%が、rFVIIIFcおよび抗CD16抗体(図20B;4.03% 図24A)で処置された細胞のうちの4.11%と比較して、破骨細胞として特徴付けられた。このパターンは、細胞をアイソタイプ対照抗体(rFVIII+対照、図20Cおよび図24C;rFVIIIFc+対照、図20Dおよび図24D)で処置した場合に、存続した。いかなる科学理論にも拘束されるものではないが、このパターンが示すところは、破骨細胞形成のrFVIIIFc阻害とは、FcγR3単独との相互作用を通して媒介されることはありそうにもないことである。
【実施例7】
【0203】
破骨細胞形成のFcγ受容体媒介性阻害におけるFVIII軽鎖の役割
本発明者らは、rFVIIIFcで処置された単球からの破骨細胞形成の阻害におけるFVIIIのC1ドメインおよびC2ドメインの役割について調査した。CD14単球を、rFVIII(図25A)、またはFVIIIのA2ドメイン(GMA8017、図25B)、FVIIIのA3ドメイン(GMA8010、図25C)、もしくはFVIIIのC2ドメイン(GMA8006;図25D;GMA8026、図25E)をターゲティングするモノクローナル抗体のうちのそれぞれ単独で0日目に処置し、次いでM-CSFおよびRANKLの存在下で7日間培養し、次いで、破骨細胞形成について視覚化した。CD14単球はまた、rFVIIIFc(図25F)で、または、FVIIIのA2ドメイン(GMA8017、図25G)、FVIIIのA3ドメイン(GMA8010、図25H)もしくはFVIIIのC2ドメイン(GMA8006;図25I;GMA8026、図25J)をターゲティングする各モノクローナル抗体の存在下でrFVIIIFcで0日目に処置し、次いで、M-CSFおよびRANKLの存在下で7日間培養し、次いで、破骨細胞形成について視覚化した。rFVIIIまたは抗体単独で処置された単球(図25A~E)は、7日間の培養後に特徴的な破骨細胞の形態を提示した。単球をrFVIIIFcで処置した場合(図25F)、先の実施例で論議のように、破骨細胞形態の発生は7日目に効果的に阻害された。FVIIIのA2ドメイン(図25G)またはFVIIIのA3ドメイン(図25H)を遮断する抗体の存在下でのrFVIIIFc処置単球によっても、破骨細胞形態の発生が効果的に阻害された。しかし、破骨細胞形成のrFVIIIFc依存性阻害は、FVIIIのC2ドメインをターゲティングする抗体の存在下で逆転する(図25I、25J)。rFVIIIFcおよびC2ターゲティング抗体で同時に処置された単球(図25I、25J)は、7日の培養後、対照の破骨細胞形態と同様の特徴的な破骨細胞形態を呈した。
【0204】
本発明者らはまた、フォンウィルブランド因子(VWF)に結合する場合の、rFVIIIまたはrFVIIIFcで処置された単球における破骨細胞形成について調査した。CD14+単球をVWF単独で0日目に処置した場合(図26A)、M-CSFおよびRANKLの存在下で培養の7日後、細胞のうちの72.3%が破骨細胞として特徴付けられた。CD14+単球をVWFの存在下で(図26B)またはVWFの非存在下(図26C)でrFVIIIで0日目に処置した場合は、細胞の大部分(69.6%、および73.3%)は、M-CSFおよびRANKLとの培養の7日後に破骨細胞として同様に特徴付けられた。まとめると、本発明者らは、rFVIII処置とともに添加されたVWFは効果がないことを確認した。CD14+単球をrFVIIIFc単独で0日目に処置した場合、7日目に破骨細胞として特徴付けられた細胞の割合ははるかにより小さく(14.2%)(図26E)、先に論議の破骨細胞形成の阻害と一致した。しかし、破骨細胞として特徴付けられた細胞の割合(45.7%)が増大したように、rFVIIIFcおよびVWFの両方で細胞を処置した場合(図26D)、この阻害は部分的に逆転した。
【実施例8】
【0205】
破骨細胞形成の阻害におけるrFVIIIFcのFc部分の役割に関するまとめ
破骨細胞形成の阻害におけるrFVIIIFcのFc部分の役割を研究するために、初代ヒト血液単球を、種々の濃度にてrFVIIIFcまたはrFVIIIプラスヒトIgGで処置し、次いで、in vitroで破骨細胞分化向けに培養した。複数の骨髄系統マーカーを使用して、免疫表現型を決定し、分化した単球と破骨細胞とを区別した。単球とのrFVIIIFc相互作用を媒介する上でのFcドメインまたはFVIIIドメインの関与を、各タイプのFcγRを遮断する抗体、または抗FVIII抗体および種々のFVIIIドメインに結合するフォンウィルブランド因子(VWF)を使用して探索した。
【0206】
いかなる科学理論にも拘束されるものではないが、結果が示したところは、rFVIIIFc処置単球から分化した細胞は、表現型的に破骨細胞とははっきりと異なり、大部分が依然として単球性のままであること、であった。この表現型をモジュレートするrFVIIIFcと単球との間の相互作用に関して、Fcドメインは細胞表面のFcγR2に最も効果的に関与した;FVIIIのC1ドメインおよびC2ドメインは、単球と相互作用するのに必要であると位置づけられ、これは、VWF複合体化rFVIIIFcの免疫調節効果の喪失によっても証明された。
【0207】
いかなる科学理論にも拘束されるものではないが、これらのデータによって、単球と相互作用するrFVIIIFcの「デュアルタッチポイント」モデルが示唆される。
FVIII部分は、C1ドメインおよびC2ドメインを介して単球と相互作用し、並行して、Fcドメインは同じ細胞上のFcγR2に優勢に関与し、その結果、破骨細胞への単球の分化能を続いて減少させる。したがって、rFVIIIFcは、rFVIIIと比べて特有の生物学的活性を保有することができ、この活性によって、患者の関節の骨侵食および骨量の喪失を軽減することができる。
【0208】
【表1】
【表2】
【表3】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15A
図15B
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
【配列表】
2022537200000001.app
【国際調査報告】