(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-24
(54)【発明の名称】メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)および5重量%未満の脂肪族逆溶媒中での5-メトキシ-N,N-ジメチルトリプタミン(5-MeO-DMT)の再結晶
(51)【国際特許分類】
C07D 209/16 20060101AFI20220817BHJP
【FI】
C07D209/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021575424
(86)(22)【出願日】2020-06-19
(85)【翻訳文提出日】2022-02-17
(86)【国際出願番号】 EP2020067113
(87)【国際公開番号】W WO2020254584
(87)【国際公開日】2020-12-24
(32)【優先日】2019-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521370802
【氏名又は名称】ジーエイチ リサーチ アイルランド リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】パトリック,レオナルド ゲラルド フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】ロビンソン,ショーン ネイル
(72)【発明者】
【氏名】ターウェイ,タイス
(57)【要約】
5-メトキシ-N,N-ジメチルトリプタミン(5-MeO-DMT)を精製する方法であって、粗製5-MeO-DMTを溶媒に室温を超える温度で溶解するステップと、得られた溶液を室温未満の温度に冷却して固体5-MeO-DMTを沈殿させるステップと、固体5-MeO-DMTを残留溶液から分離するステップと、溶媒を結晶性5-MeO-DMTから除去するステップとを含む、方法を提供する。この方法において、溶媒は1種または複数のエーテルおよび5重量%未満の逆溶媒を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5-メトキシ-N,N-ジメチルトリプタミン(5-MeO-DMT)を精製する方法であって、
粗製5-MeO-DMTを、室温を超える温度で溶媒に溶解するステップと、
得られた溶液を室温未満の温度に冷却して、固体5-MeO-DMTを沈殿させるステップと、
前記固体5-MeO-DMTを残留溶液から分離するステップと、
結晶性5-MeO-DMTから溶媒を除去するステップと
を含み、
前記溶媒が、1種または複数のエーテルおよび逆溶媒として5重量%未満の脂肪族炭化水素を含む、方法。
【請求項2】
前記1種または複数のエーテルが、1バールの圧力下で40~100℃の範囲の沸点を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1種または複数のエーテルが、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、エチルtert-ブチルエーテル(ETBE)、およびジイソプロピルエーテルから選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記再結晶溶媒が、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%、特に少なくとも90重量%の1種または複数のエーテルを含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記再結晶溶媒が、2重量%未満の脂肪族炭化水素を含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記再結晶溶媒が、1重量%未満の脂肪族炭化水素を含有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記再結晶溶媒が、少なくとも98重量%のMTBEを含有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記溶媒が、任意の逆溶媒を合計で5重量%未満含み、前記逆溶媒は、前記再結晶の間に生じる任意の温度における5-MeO-DMTの溶解度が、使用される前記エーテルへの溶解度、または複数のエーテルが使用される場合は前記溶解溶媒中に存在するエーテルの組合せへの溶解度の20%未満である液体を意味する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記再結晶溶媒が、2重量%未満の逆溶媒を含有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記再結晶溶媒が、1重量%未満の逆溶媒を含有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記溶液が、0~20℃の範囲の温度に冷却される、前記請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記温度が、7~12℃の範囲である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
残留再結晶溶媒の量を減少させるステップを追加で含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
227nmでのUV検出を使用するHPLCにより決定された不純物の合計量が0.5面積%未満に減少される、および/または227nmでのUV検出を使用するHPLCにより決定されたそれぞれ個々の不純物の量が0.1面積%未満に減少される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記HPLCが、オクタデシル炭素鎖結合シリカ(C18)カラムと、溶離液として0.013M酢酸アンモニウム水溶液およびアセトニトリルに基づく混合溶媒とを使用して実行される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
生成物中の残留溶媒の量が、5000ppm以下である、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
5-メトキシ-N,N-ジメチルトリプタミン(5-MeO-DMT)であって、不純物の合計量が0.5面積%未満であり、それぞれ個々の不純物の量が0.1面積%未満であり、不純物の量が、オクタデシル炭素鎖結合シリカ(C18)カラムと、溶離液として0.013M酢酸アンモニウム水溶液およびアセトニトリルに基づく混合溶液とを使用して実行される、227nmでのUV検出を使用するHPLCによって決定される、5-メトキシ-N,N-ジメチルトリプタミン。
【請求項18】
さらに残留溶媒の量が、5000ppm以下である、請求項17に記載の5-MeO-DMT。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機化合物、具体的には5-メトキシ-N,N-ジメチルトリプタミン(5-MeO-DMT)を精製する方法に関する。本発明は、特定の純度要件を満たす形態の5-MeO-DMTにさらに関する。
【背景技術】
【0002】
5-メトキシ-N,N-ジメチルトリプタミン(5-MeO-DMT)は以下に示される式を有する。
【0003】
【0004】
5-MeO-DMTは、5-HT1A受容体アゴニストおよび5-HT2A受容体アゴニストとして作用し、天然に存在するセロトニン作動性の幻覚作用のあるトリプタミンである。
【0005】
5-MeO-DMTは、ヒトの松果腺と網膜で合成され、尿、血液および脳脊髄液を含むヒトの体液で発見されている。
【0006】
5-MeO-DMTはディクチョロマ・インカネセンス(Dictyosomes incanescens)の樹皮から初めて単離されたが、他の植物にも含有されており、ブフォ・アルバリウス(Bufo alvarius)ヒキガエルの毒の主要な有効成分として特定されている。
【0007】
5-MeO-DMTの化学合成は、1936年にHoshinoおよびShimodairaが記述している(Bulletin of Chemical Society of Japan, 11(3), 221-224)。この刊行物では、医学的またはその他の用途を想定していない。
【0008】
HoshinoおよびShimodairaによると、5-メトキシ-インドリル-3-エチル-ベータ-ブロミドとジメチルアミンの反応の後、生成物を単離し、減圧下での蒸留により精製する。また、エーテル-石油エーテルからその物質が結晶化することも報告されている。その条件は開示されていない。
【0009】
得られた生成物は、融点が66~67℃である、素晴らしい無色のプリズムであると記述されている。生成物に含有される不純物の量については、特徴付けられていない。
【0010】
しかし、報告された融点と5-MeO-DMTの融点に関する後のデータ(69~70℃)とを比較すれば、不純物がまだ存在していると考えられる。
【0011】
加えて、減圧下でも5-MeO-DMTの沸点が高いこと(4mmで208~210℃)を考えれば、蒸留は有利な精製方法ではない。
【0012】
Someiら(Chem.Pharm.Bull.49(1)87-96(2001))は、セロトニン、N-メチルセロトニン、ブホテニン、5-メトキシ-N-メチルトリプタミン、ブホブタン酸、N-(インドール-3-イル)メチル-5-メトキシ-N-メチルトリプタミン、およびレスペダミンの合成を報告している。
【0013】
ブホテニンの合成の状況において、5-MeO-DMTを含む化合物の混合物は、カラムのクロマトグラフィーによって精製された成分から得られる。その後、5-MeO-DMTをEt2O-ヘキサンから再結晶する。再結晶条件または生成物に含まれる不純物の量に関する詳細は、開示されていない。再結晶に使用された液体混合物(Et2O-ヘキサン)は、HoshinoおよびShimodairaによって使用された混合物(エーテル-石油エーテル)と類似している。
【0014】
その生理活性に基づいて、最近では5-MeO-DMTの潜在的医療使用における関心が高まり、例えば、ヒト臨床試験における潜在的医療使用が研究されている。
【0015】
このようなヒト臨床試験での使用、および承認された医療製品での潜在的使用のためには、高純度の5-MeO-DMTが必要となる。ヒトに投与するためには、可能な限り高い純度が必要である。本発明によれば、原薬の不純物の合計量は0.5%未満であること、およびそれぞれ個々の不純物の量は0.1%未満であることが、特に望ましい。
【0016】
さらに、残留溶媒の量についての限界は守るべきである。
【0017】
このような背景から、5-MeO-DMTを精製する単純な方法、特に医薬品グレードの物質を得るように5-MeO-DMTを精製する単純な方法を提供することについての需要がある。特定の純度要件を満たす形態の5-MeO-DMTを提供することについても需要がある。
【0018】
本発明は、5-メトキシ-N,N-ジメチルトリプタミン(5-MeO-DMT)を精製する方法に関する。この方法は、
粗製5-MeO-DMTを溶媒に室温を超える温度で溶解するステップと、
得られた溶液を室温未満の温度に冷却して固体5-MeO-DMTを沈殿させるステップと、
固体5-MeO-DMTを残留溶液から分離するステップと、
溶媒を結晶性5-MeO-DMTから除去するステップと
を含み、
溶媒は、1種または複数のエーテルおよび逆溶媒として5重量%未満の脂肪族炭化水素を含む。
【0019】
本発明は、上記のステップを含む方法であって、溶媒が、任意の逆溶媒を合計で5重量%未満含み、逆溶媒は、再結晶の間に生じる任意の温度における5-MeO-DMTの溶解度が、使用されるエーテル、または複数のエーテルが使用される場合、溶解溶媒中に存在するエーテルの組合せへの溶解度の20%未満である液体を意味する、方法をさらに提供する。
【0020】
本発明は、合計量で0.5面積%未満の不純物を含有する形態であり、それぞれ個々の不純物の量は0.1面積%未満である、5-MeO-DMTを提供する。不純物の量は、以下に詳説するようにクロマトグラフィーによって決められる。
【0021】
具体的な実施形態は、従属請求項で定義される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、以下に記述されるHPLCにより分析された5-MeO-DMT試料の実施例のクロマトグラムを示す。
【
図2】
図2は、実施例のクロマトグラムの拡大図である。
【
図3】
図3は、HPLCにより決定したピーク面積を、分析試料中の5-MeO-DMTの濃度に対してプロットして得られた図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、特定の条件が守られれば、5-メトキシ-N,N-ジメチルトリプタミン(5-MeO-DMT)が精製できて、再結晶により医薬品グレードの物質を得ることができるという発見に基づいている。
【0024】
5-MeO-DMTは、天然資源から入手できるほか、合成方法を経由しても入手できる。それは、白色からオフホワイト、黄色またはオレンジ色の粉末である。
【0025】
天然資源からの単離によるまたは化学合成による5-MeO-DMTの調製によって、一般に材料(粗製5-MeO-DMT)が得られるが、この材料はかなりの量の不純物を含有しているので、医薬用途には適していない。
【0026】
粗製5-MeO-DMTは、通常、不純物を合計量で0.5%以上含有することがあり、個々の不純物を0.1%以上の量で含有する可能性がある。
【0027】
好ましくは、本発明の方法で使用される粗製5-MeO-DMTは、不純物を合計で5%以下、好ましくは、不純物を合計で2%以下含有する。
【0028】
5-MeO-DMTの着色は、1種または複数の不純物の存在を示すが、特定の調製物が医薬品用途としての要件を満たしているかどうかを示すものではない。
【0029】
5-MeO-DMT試料の純度は、HPLCにより分析する。個々の不純物は、それらの相対的保持時間(RRT)によって同定できる。検出方法は、227nmでのUV検出である。
【0030】
好適なカラムは、逆相カラムであり、特にオクタデシル炭素鎖結合シリカ(C18)カラムである。
【0031】
溶出のため、移動相A(0.013M酢酸アンモニウム水溶液)および移動相B(アセトニトリル)に基づく混合溶媒を使用する。具体的なグラジエント方法は、以下の実施例1で詳述する。
【0032】
純度を指すパーセント値は面積%であり、上記のHPLCクロマトグラムにおけるピーク面積に基づく。
【0033】
本発明者らは、遊離塩基形態にある粗製5-MeO-DMTの再結晶は、比較的低い融点にもかかわらず、高純度の5-MeO-DMT、すなわち、不純物の合計量が0.5%未満であり、それぞれ個々の不純物の量が0.1%未満であるような純度を有する形態を得るために適切な手法であることを認識した。
【0034】
5-MeO-DMTは、油の形態で冷却することによってを溶液から分離できるが、本発明者らは、特定のエーテルを含む溶媒が、純度を改善した5-MeO-DMTの固体、特に結晶性の固体形態を得るために、好適に使用できることを発見した。
【0035】
再結晶溶媒は、特に、1バールの圧力下で40~100℃の範囲の沸点を有する1種または複数のエーテルを含む。
【0036】
適切なエーテルは、脂肪族と脂環式のエーテルである。これらのエーテルは、エーテル部位以外の官能基を特に含まない。
【0037】
適切なエーテルの例(括弧内は沸点)として、ジ-n-プロピルエーテル(90℃)、ジ-イソ-プロピルエーテル(69℃)、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)(55℃)、エチルtert-ブチルエーテル(ETBE)(73℃)、tert-アミルメチルエーテル(TAME;2-メトキシ-2-メチルブタン)(86℃)、ジメトキシメタン(42.3℃)、ジエトキシメタン(88℃)、テトラヒドロフラン(66℃)、(+/-)-テトラヒドロ-2-メチルフラン(80℃)、テトラヒドロ-2,5-ジメチルフラン(90~92℃)、テトラヒドロピラン(88℃)が挙げられる。
【0038】
好ましくは、エーテルは、1バールの圧力下で50~80℃の範囲の沸点を有する。
【0039】
好ましいエーテルの例は、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、エチルtert-ブチルエーテル(ETBE)、ジイソプロピルエーテルである。最も好ましいエーテルは、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)である。
【0040】
再結晶溶媒は、少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、特に少なくとも90%の、1バールの圧力下で40~100℃の沸点を有する1種または複数のエーテル、特に、上記で具体的に特定されている1種または複数のエーテルを含有する。これらの%値は、溶媒の総重量に基づく重量%を意味する。
【0041】
1種または複数のエーテル以外に他の溶媒が存在する可能性があるが、再結晶溶媒は、逆溶媒として脂肪族炭化水素を5%未満、好ましくは2%未満、より好ましくは1%未満含有し、特に脂肪族炭化水素を含有しない。好ましくは、これらの制限はあらゆる炭化水素に適用される。
【0042】
上記の%値は、炭化水素逆溶媒を含む再結晶溶媒の総重量に基づく、重量%を意味する。
【0043】
さらに、好ましくは、1種または複数のエーテルのほかに他の溶媒が存在する可能性があり、再結晶溶媒は、任意の逆溶媒を5%未満、好ましくは2%未満、より好ましくは1%未満含有し、特に逆溶媒を含有しない。これらの%値は、逆溶媒を含む再結晶溶媒の総重量に基づく、重量%を意味する。
【0044】
1種を超える逆溶媒が存在する場合、逆溶媒について上記で定められた制限は、存在するすべての逆溶媒の合計量に関連する。
【0045】
少量の特定の逆溶媒が、市販の溶媒、例えば市販のエーテル中に存在する可能性がある。
【0046】
好ましくは、本発明の方法において逆溶媒は加えられない。
【0047】
本明細書で使用される場合に逆溶媒という用語は、再結晶の間に生じる任意の温度における5-MeO-DMTの溶解度が、使用されるエーテル、または1種を超えるエーテルが使用される場合、溶解溶媒中に存在するエーテルの組合せへの溶解度の20%未満である液体を指す。溶解度はmg/mLで表す。
【0048】
代表的な逆溶媒としては、石油エーテル、ヘプタン、ヘキサンのような脂肪族炭化水素などの炭化水素、および水が挙げられる。
【0049】
好ましい実施形態において、再結晶溶媒は、少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、特に好ましくは少なくとも90%のMTBEを含有する。特定の実施形態では、再結晶溶媒は少なくとも98%のMTBEを含有する。%値は、溶媒の総重量に基づく、重量%を意味する。
【0050】
さらなる好ましい実施形態において、5-MeO-DMTは、逆溶媒として炭化水素を加えることなく、98重量%MTBEにおける再結晶により精製される。
【0051】
本発明の方法は、粗製5-MeO-DMTを再結晶溶媒に溶解させることを伴う。5-MeO-DMTは、室温を超え、溶媒の沸点までの溶解温度で、再結晶溶媒に溶解される。
【0052】
室温は、20~25℃の範囲の中の温度を意味する。室温を超えるとは25℃を超えることを意味し、室温未満とは20℃未満であることを意味する。
【0053】
一実施形態において、5-MeO-DMTは、35~40℃の範囲の溶解温度で再結晶溶媒に溶解される。
【0054】
再結晶溶媒の使用量は、溶解温度で完全な溶解を達成するために十分な量である。
【0055】
例えば、少なくとも25%の飽和溶液が得られる。一実施形態において、量は、溶解温度で飽和溶液を達成するのに十分なものである。
【0056】
好ましくは、少なくとも50%、最大で90%の飽和溶液が得られる。
【0057】
溶解した後、溶液は室温未満の温度(つまり20℃以下)に冷却し、5-MeO-DMTが結晶化される。適切な温度の範囲は0~20℃である。一実施形態において、温度の範囲は7~12℃である。
【0058】
得られた生成物はろ過により回収できる。
【0059】
純度を改善するために、再結晶を1回または複数回繰り返してもよい。
【0060】
本発明による精製は、好ましくは、カラムクロマトグラフィーのステップを含まない。さらに、本発明による精製は、好ましくは、5-MeO-DMTを蒸留するステップを含まない。
【0061】
回収された生成物から、残留溶媒は、減圧下で少なくとも部分的に除去できる。生成物における溶媒の重量は、NMT5000ppm、好ましくはNMT2500ppm、より好ましくはNMT500ppm、特にはNMT100ppmである。
【0062】
本発明の方法は不純物の量を減少できる。特に、5-MeO-DMT試料における不純物の合計量を0.5%未満に減少でき、5-MeO-DMT試料におけるそれぞれ個々の不純物の量を0.1%未満に減少できる。これらの%値は、上記と同様にHPLCにより決定される面積%である。同時に、残留溶媒を低量にできる。
【0063】
したがって、本発明の一態様によれば、合計量で0.5面積%未満の不純物を含有する形態の5-MeO-DMTであって、それぞれ個々の不純物の量は、0.1面積%未満である、5-MeO-DMTが提供される。不純物の量は、オクタデシル炭素鎖結合シリカ(C18)カラムと、溶離液である0.013M酢酸アンモニウム水溶液およびアセトニトリルに基づく混合溶液とを使用して実行される、227nmでのUV検出を使用するHPLCによって決定される。
【0064】
5-MeO-DMTは、好ましくは残留溶媒の含有量が5000ppm以下、好ましくは2500ppm以下、より好ましくは500ppm以下、特には100ppm以下の形態で提供される。
【0065】
以下の実施例は、本発明をさらに説明することを意図する。
【実施例】
【0066】
[実施例1]
分析方法
5-MeO-DMTの純度をHPLCにより決定する。
方法パラメーター
【0067】
【0068】
グラジエント:
【0069】
【0070】
5-MeO-DMTの通常の保持時間は、5.5分である。
【0071】
試料調製(二連)
正確に秤量した試料12~18mgを100mlメスフラスコに入れ、メタノールにより体積を合わせる。よく混ぜる。
【0072】
分析手順の検証
使用したHPLC方法の直線性と精度を試験した。IR、NMR、GC-ヘッドスペース、KFおよびICP-MSは一般的な技法であり、日常的な手順に従って利用する。結果に基づいて、方法は目的に合うよう考慮される。
【0073】
HPLC方法の直線性。
5-MeO-DMTの保存液をメタノールで調製した。0.15mg/mlの名目濃度を得た。
【0074】
【0075】
すべての二重注入は±2%以内であった。
【0076】
名目濃度におけるY切片%は0.8%であると決定した。
図3に見られるように、方法は直線的であると見なされる。
【0077】
HPLC方法の精度
6つの試料溶液を名目濃度で調製した(100mlのメタノールに12~18mg)。純度の結果は以下の通りであった。
【0078】
【0079】
6つの試料全体での純度の値の合格基準は1%RSDであり、実際の読み取り値は0.07%であった。したがって、分析方法は十分な精度を示すと考えられる。
【0080】
[実施例2]
溶媒スクリーニング
5-MeO-DMTの溶解度スクリーニングは、室温と還流の両方でいくつかの溶媒で実行した。
【0081】
このスクリーニングでは、完全に溶解するまで200mgの5-MeO-DMTに溶媒を加えた。ただし、4mlの溶媒で試料の完全溶解が達成できないような、溶媒への低い溶解度(溶解度が0.05mg/ml未満)を持つ化合物は除いた。
【0082】
溶解度スクリーニングの結果を以下の表に示す。
【0083】
【0084】
溶解度スクリーニングの結果は、5-MeO-DMTがいくつかの溶媒に室温でとてもよく溶解することを示した。水およびヘプタンでは、低い溶解度が観察された。
【0085】
5-MeO-DMTは、室温のMTBEでは溶解が観察されなかったが、溶媒の温度が高くなると非常に溶解した。しかし、熱MTBE溶液を室温に冷却した場合に、結晶化が観察されなかったので、MTBEは再結晶溶媒に適した溶媒ではないと考えられた。
【0086】
[実施例3]
再結晶における最初の試み
溶解度研究の結果に続いて、イソプロパノール(IPA)とヘプタンまたは水との混合物から5-MeO-DMTを再結晶する目的で、いくつかの実験を実行した。目的は、5-MeO-DMTをIPAに溶解した後、水またはヘプタンを逆溶媒として加えて沈殿/結晶化をすることであった。5-MeO-DMTは室温でIPAに非常に溶解することが発見されたが、5-MeO-DMTは他の評価された溶媒よりもIPAに溶解しないので、再結晶化した5-MeO-DMTを最大限回収するために、IPAを使用した。
【0087】
最初の小規模実験において、80℃で完全に溶解するために、5-MeO-DMT(200mg)を必要最小量のIPA(0.3mL、1.5体積)に溶解した。しかし、溶液を室温に冷却した後、結晶化は観察されなかった。そこで、溶液から5-MeO-DMTを沈殿させるという目的で、ヘプタンを滴下添加した。不運にも、ヘプタンの添加によって、5-MeO-DMTを沈殿物ではなく油として発見した。また、ヘプタンの代わりに逆溶媒として水を使用して実験を繰り返した場合にも、油化は発生した。
【0088】
IPAと水またはヘプタンとの混合物からの結晶化の2回目の試みにおいて、油化を止めようとするため、溶媒添加を逆転させた。9.5体積(1.9mL)のヘプタンを5-MeO-DMT(200mg)に添加した後、得られたスラリーを80℃に温めた。完全な溶解が観察されるまで、IPA(2.1体積、0.4mL)を滴下添加した。しかし、室温に冷却しても、材料は結晶化しなかった。水(9.5体積、1.9mL)とIPA(5.3体積、1mL)とを使用する試みでも、室温に冷却しても、結晶化しなかった。
【0089】
使用する溶媒混合物の体積を減少させても結晶化できるかどうかを調査するため、17%のIPAを含むヘプタン溶液(9.4体積、1.9mL)を、すべての材料が完全に溶解するまで、5-MeO-DMT(200mg)に80℃で滴下添加した。不運にも、冷却した後、油化が観察された。34%のIPAを含む水(10.7体積)を5-MeO-DMT(200mg)に80℃で添加した場合にも、油化は生じた。
【0090】
17%のIPAを含むヘプタン溶液と34%のIPAを含む水溶液とを利用する前記の実験を60℃で繰り返した。不運にも、両方の場合で、冷却時に油化が観察された。
【0091】
さらに、5-MeO-DMTがより高い溶解度を有する溶媒を使用する小規模な最終実験を行なった。エタノール(0.5体積、0.1mL)を5-MeO-DMT(200mg)に60℃で加えた後、水を滴下添加した。しかし、水をバッチに添加したところ、5-MeO-DMTの油化が観察された。
【0092】
以下の表2は、前記の小規模な再結晶実験の要約を示す。
【0093】
【0094】
[実施例4]
加熱および油化の後の結晶化
結晶化の間に5-MeO-DMTが油化するのを避けるため、より大きな規模の実験を実行した。規模の増加に伴い、逆溶媒の添加にわたってより大きな制御、より慎重な添加、曇り点の潜在的な決定、油化の回避ができること、が予想された。5-MeO-DMT(2.0g)を60℃に温めた後、完全に溶解するため、必要な最小量のIPA(0.8mL、0.4体積)に溶解した。室温に冷却した後、結晶化が観察されなかったので、バッチを再度温めて60℃に戻した。溶液が曇るまで、水を滴下添加した。不運にも、溶液が曇ることなく、溶液から5-MeO-DMTが油化するので、曇り点は決定できなかった。
【0095】
溶液から油化するにもからにもかかわらず、5-MeO-DMTの結晶化がまだ可能であるかどうか決定するために、溶媒を蒸発により除去してオレンジ色の油状物を得た。一晩冷蔵庫に入れて油状物を冷却した後、オレンジ色の結晶性固体を得た。5-MeO-DMTの結晶化は遅かったものの、加熱および油化の後であっても、5-MeO-DMTの結晶化はまだ可能であったことを、この結果は示した。
【0096】
[実施例5]
MTBE/ヘプタンを使用する大規模な結晶化の試み
ヘプタンまたは水のいずれかとIPAまたはエタノールとの溶媒混合物を使用した場合に、問題が発生したため、MTBEを利用する溶媒系を再検討した。
【0097】
これまで、室温に冷却の後にMTBEからの結晶化は観察されなかった。そのため、MTBEからの結晶化の2回目の試みでは、溶液を0~5℃にさらに冷却した。
【0098】
完全に溶解するまで、MTBE(1mL、0.5体積)を結晶性固体に45~50℃で添加した。このMTBE添加量は、前記の2.4体積よりも少なく、おそらく溶媒検査が実行された小規模の試みによる。
【0099】
溶解後、バッチを40分以上かけて0~5℃に冷却して、結晶化をもたらす非常に濃厚な粘性溶液を得た。
【0100】
バッチを45~50℃に温め戻した後、1時間かけて室温に冷却した。室温で30分撹拌した後、バッチは非常に濃厚な粘性溶液になり、さらに0.4mL(0.2体積)のMTBEを添加した後、バッチをさらに15分撹拌した。撹拌の後、希薄なスラリーを得た。
【0101】
ヘプタン(0.7mL、0.35体積)を滴下添加した後、バッチを追加で15分撹拌して、より濃厚なスラリーを得た。バッチを0~5℃に冷却した後、ヘプタン(0.7mL、0.35体積)を滴下添加した。一度ろ過し、単離した固体を、冷たいヘプタン(2×2mL)で洗浄した後、一晩真空下で乾燥して、淡いオレンジ色の固体を得た。単離された固体(1.44g、72%回収量)の純度をHPLCにより分析した。
【0102】
実験条件を表3に要約する。分析の結果を表4に示す。
【0103】
[実施例6]
MTBE/ヘプタンを利用する結晶化
MTBE/ヘプタンを利用する2回目の実験を実行した。5-MeO-DMT(2.0g)をMTBE(1.4mL、0.7体積)に45~50℃で溶解した後、70分かけて室温に冷却した。結晶化時、撹拌を停止し、バッチを45~50℃に温め戻し、追加のMTBE(1mL、0.5体積)を添加した。室温に冷却し戻し、得られたスラリーを撹拌し、ヘプタン(1mL、0.5体積)で希釈した。ヘプタンを添加すると、大量の材料が容器の壁を覆うことが観察され、そこで、この材料を取り除くため、さらなる量のMTBE(1mL、0.5体積)を添加した。室温での90分間撹拌した後、バッチをろ過し、その後、MTBE:ヘプタン(2:1、1mL、0.5体積)およびヘプタン(1mL、0.5体積)で順次洗浄した。乾燥した後、淡いオレンジ色の固体を1.13g(57%回収量)得た。単離された材料の純度をHPLCにより分析した。
【0104】
実験条件を表3に要約する。分析の結果を表4に示す。
【0105】
[実施例7]
MTBE/ヘプタンを利用する結晶化
5-MeO-DMT(2.0g)をMTBE(2mL、1.0体積)に45~50℃で溶解した後、1時間かけて室温に冷却した。室温で1.5時間撹拌した後、得られたスラリーをMTBE(2×1mL、1.0体積)で20分かけて希釈した。その後、ヘプタン(1mL、0.5体積)を5分かけて添加した後、バッチを室温で2時間撹拌した。10分かけて8~12℃に冷却した後、バッチを8~12℃で15分間撹拌した後、さらなるヘプタン(1mL、0.5体積)で希釈した。8~12℃で追加の10分間撹拌した後、バッチを10分かけて0~5℃に冷却し、その後、さらに15分撹拌した。その後、ヘプタン(2mL、1.0体積)を5分かけて添加した後、バッチを0~5℃で1時間撹拌した。バッチを、ろ過し、MTBE:ヘプタン(1:1、2mL、1.0体積)で洗浄した。乾燥した後、淡いオレンジ色の固体を1.37g(69%回収量)得た。単離された固体の純度をHPLCにより分析した。
【0106】
実験条件を表3に要約する。分析の結果を表4に示す。
【0107】
[実施例8]
MTBEからの結晶化
再結晶化した材料の純度をさらに増やそうとして、溶媒としてMTBEだけを使用する実験を実行した。5-MeO-DMT(2.0g)をMTBE(4mL、2.0体積)に35~40℃で溶解した後、30分かけて室温に冷却した。室温で50分間撹拌した後に、結晶化は観察されなかった。そのため、バッチの温度を30分かけて7~12℃に低下させた。7~12℃で10分間撹拌した後、結晶化が生じた。7~12℃で1時間撹拌した後、続けてバッチをろ過した。7~12℃でMTBE(1mL、0.5体積)で洗浄した後、バッチを真空下で3.5時間吸引乾燥して、淡いオレンジ色の固体を1.02g(50%回収量)得た。単離された固体の純度をHPLCにより分析した。
【0108】
実験条件を表3に要約する。分析の結果を表4に示す。
【0109】
以下の表3は、5-MeO-DMTの再結晶のより大きな規模での試みの条件の要約を示す。
【0110】
【0111】
以下の表4は、再結晶実験から単離された材料の不純物のプロファイルを示す。
【0112】
【0113】
表3は、それぞれのより大きな規模での再結晶実験で使用された条件の要約を示している。すべての場合において材料の全体の純度は増加しており、RRT1.24における不純物は0.10%未満まで除去されたことを、分析の結果は示した。RRT2.38における不純物も3つの実験すべてで減少したが、実施例8による実験でのみNMT0.10%の目標を下回った。実施例5によるおよび実施例8による実験条件を使用した場合にのみ、RRT1.18における不純物を除去した。これらの結果に基づけば、すべての不純物が0.10%を下回っている材料を得るのに最も適した条件は、実施例8による実験の条件であることが明らかである。実施例8による試料の溶媒分析は、NMT5000ppmの予想限界値に対して、MTBEレベルが17ppmであったことを示した。
【国際調査報告】