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▶ ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニーの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-25
(54)【発明の名称】金含有触媒、調製方法、及び使用
(51)【国際特許分類】
   B01J 27/02 20060101AFI20220818BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20220818BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20220818BHJP
   B01J 27/185 20060101ALI20220818BHJP
   B01J 27/13 20060101ALI20220818BHJP
   C07C 21/06 20060101ALI20220818BHJP
   C07C 17/08 20060101ALI20220818BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220818BHJP
【FI】
B01J27/02 Z
B01J37/02 101D
B01J37/08
B01J27/185 Z
B01J27/13 Z
C07C21/06
C07C17/08
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021560937
(86)(22)【出願日】2020-06-19
(85)【翻訳文提出日】2021-10-14
(86)【国際出願番号】 GB2020051484
(87)【国際公開番号】W WO2020254817
(87)【国際公開日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】1908844.2
(32)【優先日】2019-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】カーゼイ、ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ジョンストン、ピーター
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA08
4G169BA02A
4G169BA02B
4G169BA08B
4G169BA26A
4G169BA26B
4G169BA27A
4G169BB08A
4G169BB08B
4G169BB10A
4G169BB10B
4G169BB14A
4G169BB14B
4G169BC02A
4G169BC02B
4G169BC33A
4G169BC33B
4G169BD02A
4G169BD02B
4G169BD03A
4G169BD03B
4G169BD05A
4G169BD05B
4G169BD07A
4G169BD07B
4G169BD08A
4G169BD12A
4G169BD12B
4G169BE21A
4G169BE41B
4G169CB26
4G169DA06
4G169DA07
4G169DA08
4G169EA01Y
4G169EA02Y
4G169EA04Y
4G169EA06
4G169EA19
4G169EB18Y
4G169EC04Y
4G169EC05Y
4G169FA01
4G169FA02
4G169FB14
4G169FB19
4G169FB30
4G169FB34
4G169FB57
4G169FC08
4H006AA02
4H006AB46
4H006AC30
4H006BA05
4H006BA08
4H006BA10
4H006BA36
4H006BA55
4H006BE01
4H006EA03
4H039CA52
4H039CF20
(57)【要約】
【解決手段】 本発明は、既知の金含有触媒の改善に関する。特に、本発明は、無機酸化物、水酸化物、オキソ塩、又はオキソ酸の添加による金含有触媒の安定性及び/又は不活性化の阻害を改善することに関する。含浸法を介して、当該触媒を最も好適に調製する方法も開示される。このような触媒は、塩化ビニルモノマーの製造に有用である。
【選択図】図4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒であって、
硫黄含有リガンドを有する金の錯体と、
無機酸化物、水酸化物、オキソ塩、又はオキソ酸からなる群から選択される添加剤と、を担体上に含む、触媒。
【請求項2】
前記添加剤が、
(i)金属、半金属、若しくは非金属元素の酸化物又は水酸化物、又は
(ii)半金属若しくは非金属元素のオキソ塩若しくはオキソ酸である、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記添加剤が、ホウ素、ケイ素、硫黄、又はリンからなる群から選択される元素の酸化物、水酸化物、オキソ塩、又はオキソ酸である、請求項1又は請求項2に記載の触媒。
【請求項4】
前記添加剤が、ホウ素、ケイ素、又はリンの酸化物、水酸化物、オキソ塩、又はオキソ酸であり、前記触媒が、0.01~10重量%のホウ素、ケイ素、硫黄、又はリン含有量を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項5】
前記触媒の総重量に基づいて、10~0.1重量%の前記添加剤を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項6】
前記添加剤が、ホウ酸、ケイ酸、リン酸、又は硫酸からなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項7】
前記添加剤が、メタケイ酸ナトリウム五水和物、四ホウ酸ナトリウム、ホウ酸、及びオルトリン酸三ナトリウムからなる群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項8】
全触媒の総重量に基づいて、0.1重量%以下の金を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項9】
前記触媒の総重量に基づいて、0.05重量%以下の金を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項10】
前記担体が、炭素を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項11】
前記硫黄含有リガンドが、サルフェート、スルホネート、チオサルフェート、チオシアネート、チオ尿素、チオール、又は塩化チオニルからなる群から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の触媒を製造する方法であって、
i)金の溶液が提供され、
ii)硫黄含有リガンドの溶液が提供され、
iii)添加剤又はその前駆体の溶液が提供され、
iv)前記金溶液が前記硫黄含有リガンド溶液と混合されて、金錯体含浸溶液を提供し、
v-i)触媒担体が前記金錯体含浸溶液で含浸された後、前記含浸された担体を乾燥させ、次いで、(iii)からの前記溶液で含浸され、続いて前記含浸された担体を乾燥させるか、又は
v-ii)触媒担体が工程(iii)の前記溶液で含浸され、続いて含浸された担体を乾燥させ、次いで、前記金錯体含浸溶液で含浸され、続いて前記含浸された担体を乾燥させる、方法。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項に記載の触媒を製造する方法であって、
i)金錯体及び添加剤又はその前駆体を含む含浸溶液が提供され、
ii)触媒担体が工程(i)の前記溶液で含浸されて、含浸された担体を製造し、続いて前記含浸された担体を乾燥させる、方法。
【請求項14】
前記添加剤前駆体が、熱又は化学分解によって無機酸化物、水酸化物、オキソ塩、又はオキソ酸に変換される、請求項12又は請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~11のいずれか一項に記載の触媒の存在下で前記アルキンを塩化水素と反応させることを含む、アルキンの水素化プロセス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された金含有触媒、及びその調製方法を提供することに関する。特に、限定するものではないが、本発明は、無機酸化物、水酸化物、オキソ塩、又はオキソ酸から選択される添加剤を添加することによる、金含有触媒の安定性及び/又は不活性化の阻害を改善すること、並びにその調製プロセス、並びに塩化ビニルモノマー(vinyl chloride monomer、VCM)の製造における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニルモノマー(VCM)を製造するための既知の商業プロセスは、塩化銅の存在下でエチレン、塩化水素(hydrogen chloride、HCl)及び酸素を結合して、エチレン二塩化物を形成し得、これは高温で分解されて、VCM及びHClを形成する。代替的な商業プロセスでは、炭化物からのエチン(アセチレン)を、水銀系触媒上でHClと反応させる。このプロセスは、豊富な石炭資源から炭化物を介して安価なエチンへのアクセスがある場合に好ましい。このプロセスで使用される水銀触媒は、通常、活性炭上の8~10%水銀塩化物であり、非常に毒性である。このような毒性は、触媒の製造中、並びに触媒の装填中、及び製造キャンペーン後の触媒の除去中の取り扱いに起因する問題が生じる。製造キャンペーンは、一般に6ヶ月持続時間である。使用中の反応器からの昇華又は揮発によって、水銀触媒の不活性化及びHgClの損失は、重大な問題をもたらす可能性がある。水銀系触媒を使用するエチンプロセスは、エチレンプロセスよりも低い資本投資を必要とする。不揮発性及び低毒性触媒が、既存のプラント設計において著しい植物の変更を必要とすることなく、水銀触媒を置き換えることができる場合、これは有意な利点であろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
国際公開第2013/008004号では、その教示は、その全体が本明細書に組み込まれており、より早期のVCM触媒と比較して改善された毒性を有する触媒が記載されており、これは、エチンからのVCMの製造のための触媒プロセスに使用することができる。しかしながら、このような触媒の商業的な取り込みは、活性触媒を製造するために必要とされる金のコストに起因して妨げられてきた。比較的低濃度の金含有量が用いられる場合(高生産コストを回避するため)、触媒の安定性が悪影響を受け、触媒活性が低下する。更に、かかる金含有触媒を製造するとき、金ナノ粒子が典型的に形成され、これにより、触媒の使用中に炭素ナノチューブの形成をもたらし得、その後、触媒からの粉塵化につながり、金の損失及び触媒の不活性化をもたらすことが見出された。したがって、高価な金系活物質の含有量が比較的低い金含有触媒を提供する必要性が存在するが、それは、触媒安定性、活性、又は選択性の望ましくない還元を呈さず、好ましくは、使用時に炭素ナノチューブの形成を回避するために金ナノ粒子形成が低減又は打ち消される。
【0004】
本発明の好ましい実施形態は、従来技術における上記の欠点のうちの1つ以上を克服することを目的とする。特に、本発明の好ましい実施形態は、無機酸化物、水酸化物、オキソ塩、又はオキソ酸を添加することにより、改善された金含有触媒を提供することを試み、このような改善された触媒を製造する方法、及びアセチレンからの塩化ビニル単量体(VCM)の製造における化学プロセスにおける触媒の使用が、本明細書に記載されている。
【0005】
本発明の第1の態様では、触媒であって、
硫黄含有リガンドを有する金の錯体と、
無機酸化物、水酸化物、オキソ塩、又はオキソ酸からなる群から選択される添加剤と、
を担体上に含む、触媒が提供される。
【0006】
本発明の第2の態様では、当該触媒を製造する方法であって、
i)金の溶液が提供され、
ii)硫黄含有リガンドの溶液が提供され、
iii)添加剤又はその前駆体の溶液が提供され、
iv)金溶液が硫黄含有リガンド溶液と混合されて、金錯体含浸溶液を提供し、
v-i)触媒担体が金錯体含浸溶液で含浸された後、含浸された担体を乾燥させ、次いで、(iii)からの溶液で含浸され、続いて含浸された担体を乾燥させるか、又は
v-ii)触媒担体が工程(iii)の溶液で含浸され、続いて含浸された担体を乾燥させ、次いで、金錯体含浸溶液で含浸され、続いて含浸された担体を乾燥させる、方法。
【0007】
本発明の第3の態様によれば、当該触媒を製造する代替的な方法が提供され、この方法は、
i)金錯体及び添加剤又はその前駆体を含む含浸溶液が提供され、
ii)触媒担体が工程(i)の溶液で含浸されて、含浸された担体を製造し、続いて含浸された担体を乾燥させる、方法。
【0008】
本発明の第4の態様によれば、本発明の第1の態様による触媒の存在下で、当該アルキンをHClと反応させることを含む、アルキンの水素化プロセスが提供される。
【0009】
本明細書において、全ての%は、特に明記しない限り、総触媒重量の重量百分率に関する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
触媒
本発明の触媒において、活性触媒種は、正の酸化状態の金(Au)を、好ましくはAu3+及びAu1+として含むが、存在する金の一部は、金属金(Au)の形態であり得る。本発明のいくつかの実施形態では、触媒は、金属金を含むコアと、Au3+を含むより高い酸化状態金種を含むシェル又は表面層とを有する金粒子を含むと考えることができる。シェルは完全である必要はなく、好ましくは、粒子の全て又は実質的に全ての露出表面は、表面がより高い酸化状態金種を有し、例えば、金属金が担体によって部分的に囲まれている場合、「シェル」は、露出した粒子表面上のみに延在し得る。Au3+は、シェル内に存在する唯一のより高い酸化状態金種である必要はなく、Au1+もまた、例えば、存在してもよい。このようなより高い酸化状態種は、例えば、先行技術の触媒においてハロゲン化物によって安定化され得る。従来技術では、より高い酸化状態金種は、アセチレンとHClとの反応を触媒するための活性種であることが広く提案されている。本発明の触媒において、金は、硫黄含有リガンドとの錯体化によって、より高い酸化状態で安定化されると考えられる。粒子のコアは、典型的には、金属金(Au)を含むが、代替金種もコア内に存在し得る。
【0011】
本明細書で使用するとき、「添加剤」という用語は、無機酸化物、水酸化物、オキソ塩、又はオキソ酸を意味する。本明細書において、「無機」は、炭素を含有しないことを意味する。本明細書で使用するとき、「添加剤前駆体」という用語は、典型的には加水分解及び/又は乾燥後に、無機酸化物、水酸化物、オキソ塩、又はオキソ酸に変換することができる材料を意味する。添加剤前駆体は、炭素を含有しても含有しなくてもよい。
【0012】
以下に更に記載されるように、本発明の方法は、触媒担体を添加剤又は添加剤前駆体で含浸させることによって触媒を調製する。理論に束縛されるものではないが、添加剤又は添加剤前駆体は、金粒子の周囲に少なくとも部分的な層を形成すると考えられる。加水分解及び/又は乾燥後、その結果は一般に、金錯体の粒子の周囲の無機酸化物の層であるが、その層は、調製方法に応じて、無機酸化物、水酸化物、オキソ塩、又はオキソ酸のうちの1つ以上を含み得る。この層の存在は、金粒子の不活性化を防止すると考えられる。
【0013】
好適には、触媒は、10~0.01%添加剤、好ましくは10~0.1%添加剤、好ましくは5~0.1%、より好ましくは3~0.5%の添加剤を含有する。低濃度の添加剤は、触媒の活性に対する悪影響を有する添加剤の濃度を回避するために好ましいが、触媒の安定性の増加を達成するために、十分な量の添加剤が存在しなければならず、5~0.1%の濃度を達成するために添加剤は、これらの2つの要件の最良のバランスを達成することが見出されている。しかし、様々な量の添加剤が、選択される塩又は酸、及び触媒が使用される任意のプロセスの個々の操作パラメータに応じて好ましい場合がある。添加剤は、1つ以上の無機酸化物、水酸化物、オキソ塩、又はオキソ酸の混合物を含み得る。
【0014】
本明細書で使用するとき、オキソ塩は、式[Mz-のアニオンを含有する塩であり、式中、Mは、炭素又は酸素以外の元素である。例としては、メタケイ酸塩[SiO2-、オルトケイ酸塩[SiO4-、三ホウ酸塩[B2-、及びホスフェート[PO3-が挙げられる。オキソ酸は、対応するプロトン化形態であり、例えば、[PO3-及びHPOは、場合によっては、脱重合してもよい(例えば、[B2-及びB(OH))。好ましい元素Mとしては、Zr、Ce、La、Y、Ti、Bi、Zn、Al、V、Cr、Mn、Mo、W、Re、B、N、Si、P、S、Ge、As、Se、Sn、Sb、Te、Cl、Br、及びIが挙げられる。より好ましい元素Mとしては、Zr、Ce、La、B、Si、P、及びSが挙げられる。
【0015】
好ましい実施形態では、添加剤は、
(i)金属、半金属、又は非金属元素の酸化物又は水酸化物、又は
(ii)半金属又は非金属元素のオキソ塩又はオキソ酸である。
【0016】
本明細書において、金属元素は、B、Si、Ge、As、Sb、及びTeから選択される1つであり、好ましいメタロジンは、B及びSi、特にSiである。好ましい非金属は、S及びP、特にPである。
【0017】
好ましい実施形態では、添加剤は、ホウ素、ケイ素、硫黄、又はリンの酸化物、水酸化物、オキソ塩、又はオキソ酸であり、より好ましくはホウ素、ケイ素、又はリン、より好ましくはホウ素又はケイ素である。ホウ素、ケイ素、硫黄、又はリンの典型的な含有量は、触媒の総重量に基づいて、0.01~10重量%、例えば、0.1~10重量%、例えば、0.5~10重量%又は0.5~5重量%である。これらの元素の含有量は、ICP-MS、ICP-AES、及びICP-OESを含む誘導結合プラズマ(inductively coupled plasma、ICP)技術などの、当業者に既知の技術によって測定することができる。
【0018】
好ましい実施形態では、添加剤は、ケイ素の酸化物、水酸化物、オキソ塩、又はオキソ酸である。触媒は、1つ以上のシリコン種、例えば、二酸化ケイ素、ケイ酸塩、メタケイ酸塩などを含み得る。典型的なケイ素含有量は、触媒の総重量に基づいて、0.01~10重量%、例えば、0.1~10重量%、例えば、0.5~10重量%又は0.5~5重量%である。シリコンの含有量は、ICP-MS、ICP-AES、及びICP-OESを含む誘導結合プラズマ(ICP)技術などの、当業者に既知の技術によって測定することができる。
【0019】
有利には、添加剤は、半金属元素又は非金属元素の、安定した、比較的低又は非還元/酸化している酸化物、水酸化物、オキソ塩、又はオキソ酸とするべきである。いくつかの実施形態では、添加剤又は添加剤前駆体は、アルカリ、アルカリ性、又は希土類金属塩である。好ましい対イオンとしては、アンモニウム又はアルカリ金属、例えば、ケイ酸アンモニウム、ホウ酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、ケイ酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、又はリン酸ナトリウムが挙げられる。
【0020】
特に好適な無機オキソ酸は、ホウ酸、リン酸、ケイ酸、又は硫酸である。ホウ酸(B(OH))は、特に好ましいホウ素含有オキソ酸である。
【0021】
より詳細には、以下の添加剤は、メタケイ酸ナトリウム五水和物、四ホウ酸ナトリウム、ホウ酸、及びオルトリン酸三ナトリウムが特に有用であることが見出されている。特に、添加剤は、好ましくはケイ酸ナトリウム塩であり、最も好ましくはメタケイ酸ナトリウム五水和物である。
【0022】
いくつかの実施形態では、添加剤は、触媒担体への堆積後に(典型的には熱分解又は化学分解、及び好適に加水分解によって)非還元性無機酸化物を形成する添加剤前駆体から誘導される生成物であり得、このように形成され得る好ましい無機酸化物としては、SiO、Al、TiO、ZrO、La、CeO、それらの副酸化物、又はこれらの混合物が挙げられる。添加剤前駆体は、無機又は有機であり得る。好適な無機及び有機前駆体は、当業者によって理解され、上記元素、例えば、テトラエチルオルトケイ酸塩(tetraethylorthosilicate、TEOS)、チタンイソプロポキシドなどのアルコキシドを含むであろう。代替的な前駆体としては、対応する水酸化物及び酸化物への加水分解によって変換される金属塩化物又は金属硝酸塩などの金属塩が挙げられる。
【0023】
典型的には、触媒は1%未満の金を含有する。好ましくは、触媒は、0.5%未満の金を含有する。好ましくは、触媒は、0.1%未満の金を含有する。より好ましくは、触媒は、0.075%以下の金を含有し、最も好ましくは触媒は0.05%以下の金を含有する。いくつかの用途では、触媒は、商業的に許容可能な触媒活性を失うことなく、0.025%以下の金を含有し得る。0.1重量%未満の触媒の金濃度は、低金含有量触媒、及び非典型的であると考えることができる。低濃度の金の使用は、通常、金が触媒の最も高価な構成成分であるため、触媒の製造コストの対応する低減に起因して魅力的である。しかしながら、従来、これらの比較的低濃度の金(特に0.05%以下の濃度で)を利用する能力は、許容不能に低い生成物の転化濃度のとして観察される、許容不能に低い濃度の触媒活性をもたらす触媒生成物の安定性の損失に起因して制限されてきた。触媒中に添加剤を組み込むことにより、比較的低濃度の金(0.05%以下)を克服することに関連する欠点が克服されている。添加剤の添加は、本発明の金含有触媒において有利であることが見出されていることは驚くべきことである。
【0024】
追加的に、又は代替的に、比較的高濃度の金含有量(すなわち0.05%を超える)を有する低金含有触媒においても、触媒の特性において改善が観察される。より具体的には、ナノチューブ形成は、有利には阻害されていた。したがって、比較的高濃度の金(すなわち0.05%を超える)を含有する金含有触媒中の添加剤の添加は、驚くべき利益を有する。ナノチューブ形成は、触媒の不活性化をもたらし、したがって添加剤の添加は、金含有触媒の不活性化を阻害することが見出されている。ナノチューブ形成による触媒不活性化のプロセスは、触媒中の酸化金の低減、及び金粒子の成長に起因して起こり、比較的大きい(200nmを超える)金ナノ粒子を形成する。ナノ粒子はまた、炭素ナノチューブの形成のための核としても作用し得るとも考えられる。ナノチューブ形成は、触媒ペレット上に黄色粉末堆積物として現れ、この粉末に含有される金の粉塵形成及び損失をもたらし、触媒の不活性化をもたらす。
【0025】
理論に束縛されるものではないが、添加剤又は添加剤前駆体の薄膜は、焼結及びナノチューブ核形成を阻害する金粒子の周囲に形成されることであり得る。添加剤前駆体は、加水分解又は部分加水分解を受けて、金粒子の周囲に対応する非還元性酸化物又は副酸化物を形成し得、これは、使用時/使用中に触媒の金粒子の移動及び焼結を防止し得るか、又は炭素担体と金属粒子との間のバリアとして作用し得る。
【0026】
上記の段落を考慮すると、当業者は、本発明による金含有触媒中に添加剤を含めることの利益が、2倍であることを理解するであろう。1つ目は、低金含有触媒(最大0.05%)の安定性が改善され、活性の損失が打ち消されることであり、2つ目は、金含有触媒の不活性化の阻害が、触媒表面へのナノチューブの形成を制限することにより、達成されることである。
【0027】
任意の既知の触媒担体を使用して、本発明の触媒を作製し得る。アルミナ、シリカ、ゼオライト、シリカ-アルミナ、チタニア、又はジルコニア、及びこれらの錯体などの典型的な金属酸化物担体を使用し得る。
【0028】
最も好ましくは、触媒担体は、天然源(泥炭、木材、石炭黒鉛など、若しくはこれらの組み合わせ)又は合成炭素由来の炭素担体を含む炭素から作製される。炭素は、好ましくは活性炭であり、例えば、蒸気、酸、又は他の方法で化学的に活性化される活性炭である。好ましい炭素担体としては、高表面積活性炭、好ましくは800m/gを超える表面積、例えば1300m/gの炭素押出物が挙げられる。炭素押出物は、市販の「高純度」又は「超高純度」等級として入手可能であり、そのような等級は、典型的には、不純物を除去するために酸洗浄される。金属酸化物と炭素との組み合わせを触媒担体として使用し得る。
【0029】
触媒担体は、様々な形状(「成形単位」)で形成された粉末、粒状、又は粒子の形態を採り得る。好ましい形状の単位としては、球体、錠剤、シリンダ、マルチベッドシリンダ、リング、ミニリスなど、又はモノリスなどの巨形触媒単位が挙げられる。代替的に、粉末形態の触媒は、コーティング製剤に含まれ得、モノリスなどの反応器壁又は形状基質上にコーティングされ得る。触媒担体の1つの好ましい形態は、それぞれ0.1~10mmの直径、又はより好ましくは1~3mmの範囲の直径を有するシリンダ、球体、若しくはローブシリンダの形態の複数の形状単位を含む。ローブドシリンダなどの不均一な直径を有する断面形状の場合、この直径は、平均直径である。このような触媒担体形状は、市販されており、押出成形、錠剤化、又は他の方法によって作製されてもよい。
【0030】
硫黄は、還元状態若しくは酸化状態で硫黄を含有する硫黄化合物の形態で触媒中に存在し得、又は還元状態及び酸化状態の組み合わせ、例えば、チオサルフェートイオン中に存在し得る。より具体的には、硫黄は、金種と錯体を形成することができるリガンドである硫黄含有化合物中に存在するか、又は金種と錯体を形成する。より好ましくは、硫黄含有リガンドは、正の酸化状態で金を安定化させることができる。好適な硫黄含有リガンドは、酸化リガンド、特に、正の酸化状態の硫黄を含有する酸素供与リガンド、又はスルホン供与リガンドである。好ましい硫黄含有化合物としては、サルフェート、スルホネート、チオサルフェート、チオシアネート、チオ尿素、チオール、及び塩化チオニルが挙げられる。好ましいチオ尿素としては、チオ尿素自体又は置換チオ尿素が挙げられる。好ましいチオールとしては、チオプロピオン酸及びチオミアル酸が挙げられる。
【0031】
好ましい実施形態では、硫黄含有化合物は、硫黄原子を介して金種と錯体を形成することができるリガンドであるか、又は硫黄原子を介して金種と錯体を形成する。この実施形態では、リガンドは、1つ以上の硫黄原子を含み、そのうちの少なくとも1つは、スルホン供与性である。好ましいスルホン供与性リガンドとしては、チオサルフェート、チオシアネート、チオ尿素、チオール、及び塩化チオニルが挙げられる。好ましいチオ尿素としては、チオ尿素自体又は置換チオ尿素が挙げられる。好ましいチオールとしては、チオプロピオン酸及びチオミアル酸が挙げられる。
【0032】
新鮮な触媒中の硫黄の量は、乾燥触媒中で好ましくは約0.005~15重量%、より好ましくは0.03~7重量%、特に最大約5重量%の範囲である。金錯体が金チオサルフェート錯体である本発明の一実施形態では、錯体中のS対Auのモル比は、好ましくは約3:1~約8:1の範囲である。好ましい量の金を含有するこのような実施形態では、触媒中の硫黄の量は、0.03~1.50重量%の範囲であり得る。S含有錯体以外の供給源に由来するいくつかの硫黄も、例えば、担体材料に組み込まれる触媒中に存在し得る。
【0033】
触媒は、追加的に、金以外の金属、又は担体化合物を形成する任意の金属を含み得る。水素化塩素化反応に使用される金触媒と共に使用するための既知のプロモータとしては、コバルト、銅、又はランタンの化合物が挙げられ、このような金属は、本発明の触媒又は本発明のプロセスで使用される触媒中に存在し得る。グループ1及びグループ2の金属はまた、本発明の触媒に有利に組み込まれ得る。したがって、触媒は、金に加えて、コバルト、銅、ランタン、セリウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、及びバリウムからなる群から選択される金属又は金属の化合物を更に含み得る。追加の金属は、プロモータとして存在し得、又は触媒又はその調製において別の機能を有し得る。例えば、カルシウムなどのいくつかの金属は、触媒上での炭素堆積の形成を阻害すると考えられ、したがって、ある期間にわたって触媒の活性を維持するのを助けるために使用することができる。したがって、金属の存在が、短時間で触媒の活性を増加させない場合であっても、触媒が反応における使用中に触媒が不活性化する傾向を低減するか、又は触媒の実用上の別の有益な効果を有する場合、プロモータとみなすことができる。
【0034】
触媒の製造
本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の態様による触媒を製造する方法が提供され、
i)金の溶液が提供され、
ii)硫黄含有リガンドの溶液が提供され、
iii)添加剤又はその前駆体の溶液が提供され、
iv)金溶液を硫黄含有リガンド溶液と混合して、金錯体含浸溶液を提供し、
v-i)触媒担体が金錯体含浸溶液で含浸された後、含浸された担体を乾燥させ、次いで、(iii)からの溶液で含浸され、続いて含浸された担体を乾燥させるか、又は
v-ii)触媒担体が工程(iii)の溶液で含浸され、続いて含浸された担体を乾燥させ、次いで、金錯体含浸溶液で含浸され、続いて含浸された担体を乾燥させる。
v-i)に記載された含浸の順序を実施することが一般的に好ましい。
【0035】
本発明の第3の態様によれば、本発明の第1の態様による触媒を製造する代替的な方法が提供され、
i)金錯体及び添加剤又はその前駆体を含む含浸溶液が提供され、
ii)触媒担体が工程(i)の溶液で含浸されて、含浸された担体を製造し、続いて含浸された担体を乾燥させる、方法。
【0036】
この代替的な方法は、1つの含浸及び乾燥工程のみを必要とし、より単純で低コストの触媒調製経路を提供することから好ましい。
【0037】
本発明の第3の態様による好ましい実施形態では、
i)金の溶液が提供され、
ii)硫黄含有リガンドの溶液が提供され、
iii)添加剤又はその前駆体は、工程iv)の前に、金の溶液、又は硫黄含有リガンドの溶液のいずれかに添加され、
iv)金溶液を硫黄含有リガンド溶液と混合して、金又は硫黄含有リガンド溶液のいずれかが添加剤又はその前駆体を含み、含浸溶液を提供し、
v)触媒担体が含浸溶液で含浸され、続いて含浸された担体を乾燥させる。
【0038】
本発明の第3の態様による方法によって提供されるように、添加剤又は添加剤前駆体は、金の溶液、又は硫黄含有リガンドの溶液のいずれかに添加され得る。好ましくは、添加剤又は添加剤前駆体は、金含有溶液に添加した場合に金を溶液から沈殿させるであろう硫黄含有リガンド溶液に添加され、あるいは、添加剤又は添加剤前駆体を金含有溶液に添加し、リガンド含有溶液に導入された場合には、リガンドとの好ましくない反応を引き起こすであろう。
【0039】
いくつかの実施形態では、金の溶液のpH(金錯体を形成する前)は、強すぎる酸性でも強すぎるアルカリ性でもないことが好ましい。強酸性条件下では、いくつかの硫黄含有リガンドは不安定であり、これは、金錯体の形成に有害であり、含浸溶液中の望ましくない不純物をもたらす。例えば、チオサルフェートは、酸性条件下でテトラチオネートイオン([S2-)を形成することが知られている。強アルカリ性条件下では、金溶液はコロイドを形成し得、これも金錯体の形成に有害である。金の溶液の好ましいpH範囲は、5~8のpH、好ましくは5.5~7.5のpHである。好ましい実施形態では、金の溶液は、NaOH又はKOHなどの塩基を使用してHAuClの水溶液を調整することによって調製される。
【0040】
本発明の追加的かつ代替的な実施形態によれば、触媒担体を添加剤で含浸させる工程が、添加剤前駆体を提供し、前駆体を無機酸化物、水酸化物、オキソ塩、又はオキソ酸に変換して、触媒担体を望ましい添加剤で含浸させることを生じさせることによって達成され、必要に応じて乾燥を行うことができる、当該を製造する方法触媒が提供される。この場合、触媒担体は添加剤前駆体で含浸され、次いで、前駆体は、好ましくは添加剤への熱分解又は化学分解によって変換されるであろう。これにより、触媒担体に選択の添加剤が含浸されることになるだろう。
【0041】
金錯体、続いて添加剤前駆体の連続的含浸を伴う、本発明の第2の態様による方法では、添加剤前駆体が中性又は穏やかなアルカリ性条件下で加水分解に対して耐性である場合、第1含浸工程のための金錯体の強アルカリ性溶液を使用することが好ましい場合がある。この実施形態では、金錯体を含有する含浸溶液のpHは、好ましくは9以上のpH、好ましくは10以上のpH、より好ましくは11以上のpHである。適切なpHは、金錯体が形成されると、NaOH又はKOHなどの塩基を添加することによって達成され得る。いかなる理論にも束縛されるものではないが、触媒担体を含浸させるために使用される金錯体のアルカリ性溶液は、担体を塩基性化し、それによって、後続の含浸工程において添加剤前駆体を加水分解するために担体を予備的に調整すると考えられる。これは、例えば、無機前駆体が金属硝酸塩又は塩化物である場合に、対応する酸化物を形成するために前駆体の加水分解が必要とされる場合に特に好ましい。
【0042】
触媒は、当該技術分野において一般的に知られている様々な触媒調製技術、例えば、含浸法、好ましくは初期湿潤法を使用して、又は堆積沈殿法によって調製され得る。本発明による触媒を製造する方法において、触媒は、好ましくは、担体を、金と硫黄含有リガンドとの錯体の溶液で含浸させて、添加剤又は添加剤前駆体と組み合わせて金錯体を形成することによって作製される。好ましい金錯体は、環境上の少ない危険性を提示する、容易に入手可能な溶媒に可溶性である。好ましい溶媒は、有機溶媒、水、又はこれらの混合物である。溶媒は、好ましくは水である。含浸に好ましい溶液としては、金サルフェート、スルホネート、チオサルフェート、チオシアネート、チオ尿素、塩化チオニル、チオプロピオン酸、及びチオミアル酸の水溶液が挙げられる。
【0043】
好ましい一実施形態では、本発明の方法は、粒子状炭素担体を、金の化合物と、チオ硫酸イオンを含有する化合物と、を含む、錯体を含有する水溶液で含浸させ、続いて、添加剤又は添加剤前駆体で含浸させる(必要に応じて過剰な溶液を分離し、次いで含浸された材料を乾燥させることによって)ことを含む。
【0044】
含浸は、使用される溶液の量が担体の細孔を単に充填するように計算される、初期湿潤法又は「細孔充填」プロトコルによって実施されることが好ましい。好適には、金とチオスルフェートイオンを含有する化合物との化合物は、金-チオサルフェート錯体を共に形成し、添加剤は、形成された金含有錯体に対する安定化効果を有する。典型的には、含浸の初期湿潤法を使用して、使用される含浸溶液の体積は、担体の測定された(又は計算された)細孔容積の100%±最大約20%である。担体は、通常、混転することによって含浸溶液と混合されるか、又は含浸溶液は、ある期間にわたって撹拌された担体床に、例えば滴下又は噴霧によって添加され得る。代替として、金及び/又は硫黄化合物が、吸収又はイオン交換反応によって触媒担体上に堆積されるように、過剰量の含浸溶液を使用して、金錯体及び添加剤又は添加剤前駆体を含有する含浸溶液で触媒担体を含浸させてもよい。触媒製造の当業者であれば、活性金属化合物の溶液で担体材料を含浸させることにより、触媒を調製するこのような方法に通じている。
【0045】
含浸溶液中の金、硫黄、及び添加剤又は添加剤前駆体の量を計算して、最終触媒中の金、硫黄、及び添加剤の必要量を提供する。
【0046】
金錯体を含有する含浸溶液は、例えば、コバルト、銅、ランタン、セリウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、及びバリウムからなる群から選択される金属の化合物を含む追加の金属化合物を含有し得る。追加の金属は、存在する場合、別個の工程で、例えば、金含有触媒粒子を追加金属の化合物の溶液で含浸させることによって、又は金錯体を含有する溶液が触媒に添加される前に、担体材料をこのような溶液で含浸させることによって、触媒に添加され得る。
【0047】
代替的ではあるが、より好ましくない製造プロセスでは、触媒は、例えば、乾燥担体、金、リガンド、及び添加剤又は添加剤前駆体成分を混合することによって、既知の固体状態プロセスによって調製され得る。この場合、金リガンド錯体は初期工程で予め形成され得る。ボールミル粉砕は、特に適した固体状態プロセス方法であるが、触媒担体への活性成分のより均一な適用は、本明細書に開示される担体含浸法を介して達成することができる。
【0048】
上述したように、好ましくは触媒担体は炭素であり、これは、好ましくは塩酸、硝酸、リン酸、又は硫酸を使用して酸洗浄を受けてもよく、これは、好ましくは、含浸溶液を含有する金錯体で含浸させる前に実施され得る。これは、例えば、塩酸中に炭素を分散させることによって行われてもよく、任意選択的に加熱し、場合によっては沸騰し、流出させ、蒸留水又は脱イオン水で洗浄し、空気中で乾燥させることによって行うことができる。触媒の調製における酸洗浄手順の使用の代替として、前処理又は酸洗浄担体は、酸洗浄形態の炭素担体を使用することが望ましい場合、商業的材料として炭素担体の製造業者から得ることができる。
【0049】
任意選択的に、触媒は、化学プロセスで使用する前に活性化工程を必要とし得る。このような場合、触媒前駆体として乾燥され含浸された触媒担体を指すことがより正確であり得るが、簡潔にするために、本明細書では、触媒としてのこのような材料を参照する(それらが完全な触媒活性を達するために、活性化(又は予備活性化を必要とするかどうかにかかわらず))。
【0050】
触媒の使用
本発明の触媒は、金含有触媒が有用性を見出すことが知られている任意の化学プロセスにおいて有用であることが想定される。しかしながら、本発明の好ましい化学プロセスは、担体上の硫黄含有リガンドと添加剤との金の錯体を含む触媒の存在下で、アセチレンを塩化水素(HCl)と反応させることを含む、アセチレンの塩化水素処理による、塩化ビニル(塩化ビニル単量体又はVCMとも称される)の製造プロセスを含む。好ましくは、触媒は、本発明による触媒であり、及び/又は本発明の方法を用いて製造される。プロセスは、高温、通常は約100℃~250℃、より好ましくは<200℃で実施される。HCl及びアセチレンは、好ましくは予混合され、また好ましくは反応温度に予熱される。通常、HClは、化学量論的反応に必要な量を超えて存在する。触媒は、供給ガスが触媒床上を通過する又は触媒床を通って通過するように配置された、触媒粒子の固定床の形態で反応器内に存在し得る。流動床又は他の移動床配置を含む、代替的な反応器配置が使用され得る。代替的に、触媒は、モノリスの形態で提供され得るか、又は反応器容器の壁にコーティングされ得る。触媒床には、発熱反応による過熱を回避するため、又は必要に応じて温度を上昇させるために、温度を調節するための手段を備え得る。このプロセスで使用する前に触媒をHClで処理することが好ましい場合がある。この処理は、典型的には、少なくとも50℃、より具体的には100℃超の温度で少なくとも1時間、触媒上にHClを流すことによって実施される。この前処理は、好適な温度でアセチレンなしのHClの流れで操作することによって反応器内で行われ得る。
【0051】
本発明の一態様に関連して説明される特徴は、本発明の別の態様において等しく適用可能であり得ることが理解されるであろう。例えば、本発明の触媒に関連して説明される特徴は、本発明の製造方法によって調製された触媒に等しく適用可能であり、逆もまた同様である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
以下の実施例において、添付図面を参照して本発明を更に説明する。
図1図1は、新鮮な未処理の0.1%金含有触媒表面のSEM画像である。
図2図2は、新鮮な1%ホウ酸処理した0.1%金含有触媒表面のSEM画像である。
図3図3は、使用済み未処理の0.1%金含有触媒表面上のナノチューブ形成のSEM画像である。
図4図4は、ナノ炭素管形成を欠いている使用済み1%ホウ酸処理された0.1%金含有触媒のSEM画像である。
図5図5は、ケイ酸ナトリウムの添加で処理した0.05%金含有触媒に対する未処理の0.1及び0.05%金含有触媒について得られたVCMに対する相対変換率を示す。
図6図6は、このようなケイ酸塩の非存在下の金含有触媒に対して、ケイ酸塩の添加を有する0.05%金含有触媒によって得られる、VCM変換の有意な増加を示す。
【実施例
【0053】
実施例1(比較例).従来技術による0.1%Auチオスルフェート触媒の調製。
41%Auを含有する0.142gのHAuCl溶液を24mlの水に希釈した。別途、0.186gの無水チオ硫酸ナトリウムを24mlの水に溶解させた。次いで、金含有溶液をチオ硫酸塩溶液に撹拌しながら添加して、調製された金錯体の淡黄色混合溶液を得た。次いで、4.8mlのこの金錯体溶液を、撹拌しながら5.8gの市販の活性炭ペレットに添加した。炭素は、全ての液体を約5分以内で吸収した。約1時間、生成物を空気乾燥させた後、次いで、材料を120℃で一晩乾燥させて、約0.1%Auを含有する触媒を得た。図1は、この新たに調製された未処理触媒のSEM画像である。
【0054】
実施例2.炭素ナノチューブの形成に関する試験。
実施例1と同様に調製した5gの触媒を、直径2cmのステンレス鋼管に充填し、床をシリカウール充填でいずれかの端部で担持形成した。次いで、管を管炉内に配置した。HCl及びC(モル比1.2:1)の混合物を、触媒上を240ml/分の流量で220℃の温度で通過させた。VCMへの初期変換は、約90%で、48時間後に65%まで落下した。48時間後、触媒を窒素でフラッシュし、冷却し、次いで炉から取り出した。光学的検査は、炭素ペレット上の炭素ナノチューブの存在を示した。ナノチューブ形成度を以下のように評価した。0=ナノチューブは存在しない。1=ナノチューブはいくつかの粒子上に存在する。2=ナノチューブは多くの粒子上に存在する。3=ナノチューブほとんどの粒子上に存在する。
【0055】
SEM検査により、コーティングは、図3に示すように金粒子によってそれぞれ有核した炭素ナノチューブの質量からなることを示した。本実施例のナノチューブ形成度は、3であった。
【0056】
実施例3.本発明による触媒の調製。
メタケイ酸ナトリウム五水和物の形態の0.58gの添加剤をHAuCl溶液中に溶解させたことを除いて、実施例1と同様に触媒を調製した。その後、手順は実施例1と同じであった。
【0057】
実施例4.本発明による触媒の調製。
四ホウ酸ナトリウムの形態の0.58gの添加剤をHAuCl溶液中に溶解させたことを除いて、実施例1と同様に触媒を調製した。その後、手順は実施例1と同じであった。
【0058】
実施例5.本発明による触媒の調製。
0.58gのホウ酸がHAuCl溶液中に溶解したことを除いて、実施例1と同様に触媒を調製した。その後、手順は実施例1と同じであった。図2は、この新鮮なホウ酸処理触媒のSEM画像である。
【0059】
実施例6.本発明による触媒の調製。
0.58gのオルトリン酸三ナトリウムがHAuCl溶液中に溶解したことを除いて、実施例1と同様に触媒を調製した。その後、手順は実施例1と同じであった。
【0060】
実施例7.ナノチューブ形成のための本発明による触媒の試験。
実施例3~6のように調製した触媒を、2~5日間の範囲の期間にわたって、実施例2に記載の方法に従ってナノチューブ形成について試験した。全ての場合において、炭素ナノチューブ形成は、完全に防止された(ナノチューブ形成度=0)か、又はペレットのごくわずかな微小領域(ナノチューブ形成度=1)のみに存在した。図4は、実施例2の方法に従って試験した後の、実施例5のホウ酸処理触媒のSEM画像である。ここで、金粒径の増加があるが、識別可能なナノチューブの成長は存在しないことが分かる。本実施例のナノチューブ形成度は、0であった。
【0061】
実施例8(比較例).従来技術による0.05%Au触媒の調製。
41%Auを含有する0.071gのHAuCl溶液を使用して希釈HAuCl溶液を調製し、チオ硫酸塩溶液を調製するために0.093gのチオ硫酸ナトリウムを使用して、チオ硫酸塩溶液を調製した以外は、実施例1と同様に触媒を調製した。結果として得られた触媒は、約0.05%Auを含有した。
【0062】
実施例9.本発明による0.05%Au触媒の調製。
HAuCl溶液中に0.58gのメタケイ酸ナトリウム五水和物を溶解させたことを除いて、実施例8と同様に触媒を調製した。その後、手順は実施例8と同じであった。
【0063】
実施例10.活性を増加させるための、本発明による0.05%Au触媒の試験。
実施例9によるケイ酸塩添加剤を有する0.05%Au触媒を、実施例2に記載の変換試験に供した。変換率を図6に示す。ここで、ケイ酸塩を含有する触媒によって、ケイ酸塩が存在しない触媒と比較して、VCMへの変換の有意な増加が得られたことが分かる。実施例9で調製した材料については、図5に見られるように、6日後にナノチューブ形成が存在しなかった。
【0064】
図5は、上記のように、ケイ酸ナトリウム添加で処理したときの0.05%Auと比較して、2つの未処理触媒について(一方は0.1%Auを含有し、他方は0.05%Auを含有する)、実施例2のようではあるが、より長い時間(48時間に対して、最大6日間)での、220℃でのVCMに対する変換率を示す。図5では、ケイ酸ナトリウムの添加により、より低い0.05%Au含有触媒が、より高い0.1%Au含有(しかし未処理の)触媒に匹敵する選択性を達成することが明らかに分かる。
【0065】
0.05%Au及びケイ酸塩含有触媒について実施例10で実証された変換率の改善は、0.1%Au触媒に関して明らかには生じないが、ナノチューブ形成は有利に阻害される。したがって、本発明は、0.1%未満の金を有する触媒に特に適しており、かつ望ましい。
【0066】
実施例11~17
0.100gのAuを含有するHAuClの溶液を、示された脱塩水(demineralised water、DI)の量で希釈した。別途、含硫黄リガンド及び添加剤の溶液を、示される脱塩水(DI)の量で調製した。溶液を、金含有含浸溶液を製造するために示された順序で組み合わせた。次いで、この溶液を、混合しながら、初期湿潤技術を介して、100g(乾燥重量)の市販の活性炭ペレットに添加した。含浸された材料を約30分間静置し、その間、添加した溶液の全てを吸着させた。次いで、材料を105℃で一晩乾燥させて、約0.1%Auを含有する触媒を得た。
【0067】
実施例17の場合、以下のようにpH調整を行った。0.100gのAuを含有するHAuClの溶液を、30mlの脱塩水で希釈した。5gのNaOHを100mlの脱塩水に溶解させることによって、約5%KOH溶液を調製した。約1mlのKOH溶液を金含有溶液に滴下して、約6.8のpHを有する溶液を形成した。別途、0.336gのチオ硫酸アンモニウムを30mlの脱塩水に溶解させた。次いで、金含有溶液をチオ硫酸アンモニウム溶液に撹拌しながら添加して、調製された金錯体の混合溶液を得た。次いで、結果として得られた溶液を、上記の手順に従って初期湿潤技術で使用した。
【0068】
実施例11~16のXPS分析は、105℃で一晩乾燥した後に形成された材料中のSiOの存在を示した。
【0069】
実施例2の手順に従って、触媒を炭素ナノチューブ形成について試験した。

【0070】
【表1】

【0071】
Zr、Ce、及びLa前駆体
実施例18(比較例)
0.100gのAuを含有するHAuClの溶液を、12mlの脱塩水で希釈した。約1MのNaOH溶液を、4gのNaOHを100mlの脱塩水に溶解させることによって調製した。調製した1MのNaOH溶液1.60gを金含有溶液に滴下して、約6.5のpHを有する溶液を形成した。別途、0.336gのチオ硫酸ナトリウムを12mlの脱塩水に溶解させた。次いで、金含有溶液をチオ硫酸ナトリウム溶液に撹拌しながら添加して、約11.2のpHを有する調製された金錯体の混合溶液を得た。更に12mlの以前に調製した1MのNaOH溶液及び22mlの脱塩水を金含有溶液に添加して、約12.3のpHを有する調製された金錯体の溶液を得た。次いで、結果として得られた金含有溶液を、混合しながら、初期湿潤技術を介して、100g(乾燥重量)の市販の活性炭ペレットに添加した。含浸された材料を約30分間静置し、その間、添加した溶液の全てを吸着させた。次いで、材料を105℃で一晩乾燥させて、約0.1%Auを含有するAu/C触媒を得た。この触媒を実施例2と同様に試験した。炭素ナノチューブの形成度は、1であった。
【0072】
実施例19
実施例18と同様に、0.1%Au/C触媒を調製した。別途、1.467gのオキシ硝酸ジルコニル[ZrO(NO.2HO]を30ml脱塩水に溶解し、この溶液を、初期湿潤含浸技術を介して、50gの乾燥金含有炭素ペレットに添加した。材料を約30分間静置した後、材料を105℃で一晩乾燥させて、約0.1%Au及び1%Zrを含有する触媒を得た。
【0073】
実施例20
実施例18と同様に、0.1%Au/C触媒を調製した。別途、1.550gの硝酸セリウム六水和物[Ce(NO.6HO]を30ml脱塩水に溶解し、この溶液を、初期湿潤含浸技術を介して、50gの乾燥金含有炭素ペレットに添加した。材料を約30分間静置した後、材料を105℃で一晩乾燥させて、約0.1%Au及び1%Ceを含有する触媒を得た。この触媒を実施例2と同様に試験した。炭素ナノチューブの形成度は、1であった。
【0074】
実施例21
実施例18と同様に、0.1%Au/C触媒を調製した。別途、1.335gの塩化ランタン七水和物[LaCl.7HO]を30ml脱塩水に溶解し、この溶液を、初期湿潤含浸技術を介して、50gの乾燥金含有炭素ペレットに添加した。材料を約30分間静置した後、材料を105℃で一晩乾燥させて、約0.1%Au及び1%Laを含有する触媒を得た。
【0075】
上記の実施形態は、任意の限定的な意味ではなく、あくまで例として記載されており、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更及び修正が可能であることが当業者には理解されるであろう。
【0076】
本発明はまた、以下の実施形態を含む。
1. 硫黄含有リガンドと、無機塩又は酸を有する金の錯体と、を担体上に含む、触媒。
2. 触媒の総重量に基づいて、10~0.1重量%の無機塩又は酸を含む、実施形態1に記載の触媒。
3. 触媒の総重量に基づいて、5~0.1重量%の無機塩又は酸を含む、実施形態1に記載の触媒。
4. 触媒の総重量に基づいて、3~0.5重量%の無機塩又は酸を含む、実施形態1に記載の触媒。
5. 無機酸又は塩が、ホウ酸、リン酸、又は硫酸から選択される無機酸である、先行実施形態のいずれか1つに記載の触媒。
6. 無機酸又は塩が、アンモニウム、ケイ酸塩、ホウ酸塩、又はリン酸塩から選択される無機塩である、実施形態1~4のいずれか1つに記載の触媒。
7. 無機塩が、ケイ酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、又はリン酸ナトリウム塩である、実施形態6に記載の触媒。
8. 無機塩が、メタケイ酸ナトリウム五水和物、四ホウ酸ナトリウム、ホウ酸、及びオルトリン酸三ナトリウムから選択される、実施形態7に記載の触媒。
9. 無機塩が、アンモニウム塩である、実施形態6に記載の触媒。
10. 全触媒の総重量に基づいて、1.0重量%未満の金を含む、先行実施形態のいずれか1つに記載の触媒。
11. 全触媒の総重量に基づいて、0.1重量%以下の金を含む、先行実施形態のいずれか1つに記載の触媒。
12. 触媒の総重量に基づいて、0.05重量%以下の金を含む、先行実施形態のいずれか1つに記載の触媒。
13. 担体が、炭素を含む、先行実施形態のいずれか1つに記載の触媒。
14. 担体が、粉末、粒状、又は成形単位の形態である、先行実施形態のいずれか1つに記載の触媒。
15. 金の少なくとも一部が、正の酸化状態である、先行実施形態のいずれか1つに記載の触媒。
16. 硫黄含有リガンドが、正の酸化状態で硫黄を含有する酸化リガンドである、先行実施形態のいずれか1つに記載の触媒。
17. 硫黄含有リガンドが、スルホネート、チオサルフェート、チオシアネート、チオ尿素、塩化チオニル、チオプロピオン酸、及びチオミアル酸からなる群から選択される、実施形態16に記載の触媒。
18. 全触媒の総重量に基づいて、約0.005~15重量%の範囲の硫黄を含む、先行実施形態のいずれか1つに記載の触媒。
19. コバルト、銅、ランタン、セリウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、及びバリウムからなる群から選択される金属又は金属の化合物を更に含む、先行実施形態のいずれか1つに記載の触媒。
20. 実施形態1~19のいずれか1つに記載の触媒を製造する方法であって、
i)金の溶液が提供され、
ii)硫黄含有リガンドの溶液が提供され、
iii)無機塩又は酸の溶液が提供され、
iv)金溶液が硫黄含有リガンド溶液と混合されて、金錯体含浸溶液を提供し、
v)触媒担体が金錯体含浸溶液で含浸され、続いて含浸された担体を乾燥させ、
vi)触媒担体が無機塩又は酸で含浸され、続いて含浸された担体を乾燥させる、方法。
21. 実施形態1~19のいずれか1つに記載の触媒を製造する方法であって、
i)金の溶液が提供され、
ii)硫黄含有リガンドの溶液が提供され、
iii)無機塩又は酸が、工程iv)の前に、金の溶液又は硫黄含有リガンドの溶液のいずれかに添加され、
iv)金溶液が硫黄含有リガンド溶液と混合されて、金又は硫黄含有リガンド溶液のいずれかがまた、無機塩又は酸を含み、金錯体及び無機塩又は酸含有含浸溶液を提供し、
v)触媒担体が金錯体及び無機塩又は酸含有含浸溶液で含浸され、続いて含浸された担体を乾燥させる、方法。
22. 無機塩又は酸が、変換された前駆体から誘導される、実施形態20又は21に記載の方法。
23. 前駆体が、熱又は化学分解によって変換される、実施形態22に記載の方法。
24. 活性化工程を更に含む、実施形態20~23のいずれか1つに記載の方法。
25. 実施形態1~19のいずれか1つに記載の触媒の存在下で、又は実施形態20又は21に記載のプロセスによって作製される、少なくとも1つの化学基質を反応させることを含む、化学プロセス。
26. 当該化学基質の酸化を含む、実施形態23に記載の化学プロセス。
27. 実施形態1~19のいずれか1つに記載の存在下で当該アルキンを塩化水素と反応させることを含む、アルキンの水素化プロセス。
28. アセチレンの非存在下で、当該触媒を塩化水素で処理する工程を含む、実施形態25に記載のアルキンの水素化プロセス。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】