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特表2022-537259水性懸濁液中の抗菌添加剤としての尿素の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-25
(54)【発明の名称】水性懸濁液中の抗菌添加剤としての尿素の使用
(51)【国際特許分類】
   A01N 47/28 20060101AFI20220818BHJP
   A01N 25/04 20060101ALI20220818BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20220818BHJP
   C05C 9/00 20060101ALI20220818BHJP
   A01G 7/06 20060101ALI20220818BHJP
【FI】
A01N47/28 A
A01N25/04 102
A01P3/00
C05C9/00
A01G7/06 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021572076
(86)(22)【出願日】2020-06-10
(85)【翻訳文提出日】2021-12-03
(86)【国際出願番号】 EP2020066051
(87)【国際公開番号】W WO2020254162
(87)【国際公開日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】19180888.0
(32)【優先日】2019-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518453383
【氏名又は名称】オムヤ インターナショナル アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100116975
【弁理士】
【氏名又は名称】礒山 朝美
(72)【発明者】
【氏名】ドメニコ ゾッコ
(72)【発明者】
【氏名】ヨアヒム グラウビッツ
(72)【発明者】
【氏名】ジーモン ウルビーラー
【テーマコード(参考)】
2B022
4H011
4H061
【Fターム(参考)】
2B022EA01
2B022EA10
2B022EB06
4H011AA01
4H011BA01
4H011BB14
4H011BC18
4H011DA15
4H011DG06
4H061AA01
4H061BB15
4H061CC04
4H061DD07
4H061FF01
4H061HH01
4H061HH08
4H061LL22
(57)【要約】
本発明は、水性懸濁液の総重量に対して5~85重量%の少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料を含み、かつpH7.0~14を有している水性懸濁液中の抗菌添加剤としての尿素の使用;微生物の増殖に対して水性懸濁液を保護するための方法;本発明の方法によって得られる水性調製物;並びに農業におけるこの水性調製物の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性懸濁液の総重量に対して5~85重量%の少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料を含み、かつpH7.0~14を有している水性懸濁液中の抗菌添加剤としての尿素の使用であって、
前記抗菌添加剤は、前記水性懸濁液の総重量に対して、少なくとも1.2重量%の量で前記水性懸濁液中に存在し、かつ
前記水性懸濁液中の尿素:水の重量比は、1:100~50:100である、
使用。
【請求項2】
前記抗菌添加剤が、水性溶液として、前記炭酸カルシウム含有材料を含む前記水性懸濁液に添加され、
好ましくは、前記水性溶液の総重量に対して、20~75重量%、より好ましくは30~72重量%、さらにより好ましくは40~65重量%、最も好ましくは50~60重量%の尿素を含む水性溶液の形態で添加される、
請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記抗菌添加剤が、乾燥材料として、前記炭酸カルシウム含有材料を含む前記水性懸濁液に添加される、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記抗菌添加剤が、前記水性懸濁液の総重量に対して、1.2~20重量%の量で、好ましくは1.5~15重量%の量で、より好ましくは2.0~10重量%の量で、最も好ましくは2.5~8.5重量%の量で、前記水性懸濁液に添加される、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記炭酸カルシウム含有材料が、前記炭酸カルシウム含有材料の総乾燥重量に対して、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも97重量%の炭酸カルシウムを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記水性懸濁液が、前記水性懸濁液の総重量に対して、10~84重量%、好ましくは30~83重量%、より好ましくは50~82重量%、さらにより好ましくは60~80重量%、最も好ましくは68~78重量%の少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記炭酸カルシウム含有材料が、粉砕炭酸カルシウム、好ましくは、大理石、石灰岩、ドロマイト、及び/又はチョーク;沈降炭酸カルシウム、好ましくはバテライト、カルサイトカルサイト、及び/又はアラゴナイト;及び表面反応炭酸カルシウム;並びにこれらの混合物からなる群から選択され、
前記表面反応炭酸カルシウムが、天然粉砕炭酸カルシウム又は沈降炭酸カルシウムと、二酸化炭素及び1つ又は複数のHイオン供与体との水性媒体中での反応生成物であり、前記二酸化炭素は、前記Hイオン供与体での処理によってその場で形成され、かつ/又は外部供給源から供給され、
より好ましくは、前記少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料が、粉砕炭酸カルシウムである、
請求項1~6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記抗菌添加剤が、前記水性懸濁液中に存在するときに、細菌の少なくとも1つの菌株及び/又は酵母の少なくとも1つの菌株及び/又はカビの少なくとも1つの菌株の発生を防止又は低減する、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
(i)前記細菌の少なくとも1つの菌株が、メチロバクテリウム属(Methylobacterium sp.);サルモネラ属(Salmonella sp.);エシェリキア属(Escherichia sp.)、例えばエシェリキア・コリ(Escherichia coli);シゲラ属(Shigella sp.);エンテロバクター属(Enterobacter sp.);シュードモナス属(Pseudomonas sp.)、例えば、シュードモナス・メンドシナ(Pseudomonas mendocina)、シュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)、シュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、及び/又はシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida);バークホルデリア属(Burkholderia sp.)、例えばバークホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia);ブデロビブリオ属(Bdellovibrio sp.);アグロバクテリウム属(Agrobacterium sp.);アルカリゲネス属(Alcaligenes sp.)、例えばアルカリゲネス・フェーカリス(Alcaligenes faecalis);フラボバクテリウム属(Flavobacterium sp.);オクロバクトラム属(Ochrobactrum sp.)、例えばオクロバクトラム・トリティシ(Ochrobactrum tritici);コクリア属(Kocuria sp.)、例えばコクリア・リゾフィラ(Kocuria rhizophila);リゾビウム属(Rhizobium sp.)、例えばリゾビウム・ラジオバクター(Rhizobium radiobacter);スフィンゴバクテリウム属(Sphingobacterium sp.);スフィンゴモナス属(Sphingomonas sp.);アエロモナス属(Aeromonas sp.);クロモバクテリウム属(Chromobacterium sp.);ビブリオ属(Vibrio sp.);ハイフォミクロビウム属(Hyphomicrobium sp.);レプトトリックス属(Leptothrix sp.);ミクロコッカス属(Micrococcus sp.);スタフィロコッカス属(Staphylococcus sp.)、例えばスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus);アグロマイセス属(Agromyces sp.);アシドボラクス属(Acidovorax sp.);コマモナス属(Comamonas sp.)、例えばコマモナス・アクアティカ(Comamonas aquatica);ブレブンディモナス属(Brevundimonas sp.)、例えば、ブレブンディモナス・インターメディア(Brevundimonas intermedia)及びブレブンディモナス・ディミヌタ(Brevundimonas diminuta);スフィンゴビウム属(Spingobium sp.)、例えばスフィンゴビウム・ヤノイクヤエ(Spingobium yanoikuyae);タウエラ属(Thauera sp.)、例えばタウエラ・メケルニケンシス(Thauera mechernichensis);カルディモナス属(Caldimonas sp.);ハイドロゲノファーガ属(Hydrogenophaga sp.);テピディモナス属(Tepidimonas sp.);及びそれらの混合物を含む群から選択され、かつ/又は
(ii)前記酵母の少なくとも1つの菌株が、サッカロミケス亜門(Saccharomycotina);タフリナ菌亜門(Taphrinomycotina);シゾサッカロミケス綱(Schizosaccharomycetes);担子菌門(Basidiomycota);ハラタケ亜門(Agaricomycotina);シロキクラゲ綱(Tremellomycetes);サビキン亜門(Pucciniomycotina);ミクロボトリウム菌綱(Microbotryomycetes);カンジダ属(Candida sp.)、例えば、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、カンジダ・ステラトイデア(Candida stellatoidea)、カンジダ・グラブラータ(Candida glabrata)、カンジダ・クルーセイ(Candida krusei)、カンジダ・グイリエルモンディ(Candida guilliermondii)、カンジダ・ビスワナチイ(Candida viswanathii)、カンジダ・ルシタニアエ(Candida lusitaniae)、及びそれらの混合物;ヤロウイア属(Yarrowia sp.)、例えばヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica);クリプトコッカス属(Cryptococcus sp.)、例えば、クリプトコッカス・ガッティ(Cryptococcus gattii)及びクリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans);ジゴサッカロマイセス属(Zygosaccharomyces sp.);ロドトルラ属(Rhodotorula sp.)、例えばロドトルラ・ムシラギノーサ(Rhodotorula mucilaginosa);サッカロミセス属(Saccharomyces sp.)、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae);ピキア属(Pichia sp.)、例えばピキア・メンブラネファシエンス(Pichia membranifaciens);及びそれらの混合物を含む群から選択され、かつ/又は
(iii)前記カビの少なくとも1つの菌株が、アクレモニウム属(Acremonium sp.);アルテルナリア属(Alternaria sp.);アスペルギルス属(Aspergillus sp.);クラドスポリウム属(Cladosporium sp.);フサリウム属(Fusarium sp.);ムコール属(Mucor);ペニシリウム属(Penicillium sp.);リゾプス属(Rhizopus sp.);スタキボトリス属(Stachybotrys sp.);トリコデルマ属(Trichoderma sp.);デマチウム属(Dematiaceae sp.);フォーマ属(Phoma sp.);ユーロチウム属(Eurotium sp.);スコプラリオプシス属(Scopulariopsis sp.);オーレオバシディウム属(Aureobasidium sp.);モニリア属(Monilia sp.);ボトリティス属(Botrytis sp.);ステムフィリウム属(Stemphylium sp.);ケトミウム属(Chaetomium sp.);マイセリア属(Mycelia sp.);ニューロスポラ属(Neurospora sp.);ウロクラジウム属(Ulocladium sp.);ペシロマイセス属(Paecilomyces sp.);ワレミア属(Wallemia sp.);カーブラリア属(Curvularia sp.);及びそれらの混合物を含む群から選択される、
請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記水性懸濁液のpHが、7.5~12、好ましくは8.2~10.0、最も好ましくは8.5~9.5である、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
前記水性懸濁液に、尿素以外のさらなる抗菌添加剤を添加しない、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
前記水性懸濁液中の尿素:水の重量比が、5:100~40:100、好ましくは9:100~30:100である、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
以下の工程を含む、微生物の増殖に対して水性懸濁液を保護するための方法:
(a)少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料を提供すること、
(b)抗菌添加剤として尿素を提供すること、
(c)工程(a)の少なくとも1つの前記炭酸カルシウム含有材料を工程(b)の少なくとも1つの前記抗菌添加剤と接触させて、水性懸濁液を提供すること、
ここで、前記水性懸濁液が、前記水性懸濁液の総重量に対して5~85重量%の少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料を含み、かつpH7.0~14を有しており、かつ
前記水性懸濁液が、前記水性懸濁液の総重量に対して、少なくとも1.2重量%の量で前記抗菌添加剤を含み、かつ前記水性懸濁液中の尿素:水の重量比が、1:100~50:100である。
【請求項14】
前記炭酸カルシウム含有材料が、粉砕炭酸カルシウム、好ましくは大理石、石灰岩、ドロマイト、及び/又はチョーク;沈降炭酸カルシウム、好ましくはバテライト、カルサイト、及び/又はアラゴナイト;及び表面反応炭酸カルシウム;並びにこれらの混合物からなる群から選択され、
前記表面反応炭酸カルシウムは、天然粉砕炭酸カルシウム又は沈降炭酸カルシウムと、二酸化炭素及び1つ又は複数のHイオン供与体との、水性媒体中での反応生成物であり、前記二酸化炭素は、前記Hイオン供与体での処理によってその場で形成され、かつ/又は外部供給源から供給され、
より好ましくは、前記少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料は、表面反応炭酸カルシウムである、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項13又は14のいずれか一項に記載の方法によって得られる水性調製物。
【請求項16】
植物における光合成プロセスの刺激、植物成長の刺激、植物病害に対する抵抗性の強化、栄養吸収の改善、及び植物栄養素のための植物ブースター及び/又はミネラル肥料としての、農業における請求項15に記載の水性調製物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性懸濁液の総重量に対して5~85重量%の少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料を含み、かつpH7.0~14を有している水性懸濁液中の抗菌添加剤としての尿素の使用;微生物の増殖に対して水性懸濁液を保護するための方法;本発明の方法によって得られる水性調製物;並びに農業におけるこの水性調製物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
炭酸カルシウム含有材料の水性懸濁液、分散液、又はスラリーは、例えば、作物の成長に最適な土壌条件を作り出すために土壌のpHを上昇させる土壌改良剤として、農業産業で広く使用されている。それらはまた、植物の栄養素にとって重要なカルシウムイオンの供給源を提供するための肥料としても使用されている。さらに、それらは、例えば粘土構造を破壊することによって、土壌の性質を改善するために使用されている。別の応用分野は、日焼け防止における使用である。農作物の葉や果実に炭酸カルシウムを含む材料の懸濁液を噴霧して、日光の有害な影響からある程度保護する膜を作成することができる。さらに、これらの懸濁液は動物飼料のサプリメントとして使用することもできる。
【0003】
炭酸カルシウム含有材料の典型的な水性調製物は、水、水不溶性固体化合物としての炭酸カルシウム含有材料、及び必要に応じて、調製物の総重量に基づいて0.1~99.0重量%の水不溶性固形分を有する懸濁液、スラリー、又は分散液の形態の分散剤などのさらなる添加剤を含むことを特徴とする。そのような調製物において、例えば、分散剤及び/又は粉砕助剤として使用され得る水溶性ポリマー及びコポリマーが、例えば、米国特許第5,278,248号明細書に記載されている。
【0004】
米国特許第7,695,541号明細書には、水不溶性塩として炭酸カルシウムを含む、7又はこれを超えるpHを有する非酸性の水性肥料懸濁液が記載されている。
【0005】
米国特許第4,994,284号明細書は、動物飼料サプリメントとして使用するためのアルカリ性水性懸濁液であって、とりわけ水及び石灰岩を含む懸濁液について言及している。
【0006】
米国特許第6,027,740号明細書には、節足動物の侵入から表面を保護する方法が開示されており、この方法は、果物、野菜、樹木、草などの農産物の表面に、水及び炭酸カルシウムなどの粒子状材料を含む有効量のスラリーを適用することを含み、ここで、この粒子状材料は微粉化されている。
【0007】
しかしながら、前述の水性調製物は、真菌、酵母、原生動物、及び/又は好気性及び嫌気性細菌などの微生物による汚染に曝されることが多い。微生物によるそのような汚染は、種によっては、ヒト、動物、及び/又は作物に対して危険要素となる。例えば、微生物種によっては、土壌の質が低下する場合がある。さらに、そのような微生物を含む水性調製物を植物と接触させると、植物の成長を低下させ得る。さらに、そのような微生物は、消費を目的とした作物や野菜に適用された場合、ヒトや動物に害を及ぼす可能性がある。微生物による汚染はまた、粘度及び/又はpHの変化、変色又は他の品質パラメータ、例えば貯蔵寿命の低下など、これらの水性調製物の調製特性の変化をもたらす可能性があり、それらの商業的価値に悪影響を与える。
【0008】
したがって、そのような懸濁液又はスラリーは、しばしば熱滅菌され、それによって、そうした微生物の形成を防ぐようにされている。しかしながら、滅菌が不十分になるリスクは常にあり、したがって、この方法は通常、少量の場合に限られる。さらに、熱滅菌には特別な装置が必要であり、非常に時間とエネルギーを消費する方法である。
【0009】
したがって、そのような水性調製物の製造業者は通常、抗菌剤を使用して懸濁液、分散液、又はスラリーを安定化しかつ保存するための対策を講じている。
【0010】
水性調製物の許容可能な微生物学的品質を確保するために、典型的には防腐剤又は殺生物剤が、この調製物のライフサイクル全体(製造、保管、輸送、使用)にわたって使用されている。当技術分野では、水性調製物の微生物学的品質を改善するためのいくつかの取り組みが提案されてきた。例えば、欧州特許第1 139 741号明細書には、溶液の形態の殺菌剤及び部分的に中和された形態のフェノールの誘導体を含有する、鉱物、充填剤、及び/又は顔料の水性懸濁液又は分散液が記載されている。米国特許出願公開第2006/0111410号公報は、微生物による攻撃及び破壊から炭酸カルシウムを含む組成物などの工業材料及び製品を保護するための1,2-ベンズイソチアゾリノン(BIT)及びテトラメチロールアセチレンジウレア(TMAD)を含む混合物について言及している。欧州特許出願公開第2 199 348 A1号公報は、少なくとも1つのリチウムイオンで中和された水溶性有機ポリマーを使用して、例えば、炭酸カルシウムを含む水性鉱物材料懸濁液を製造するためのプロセス、並びにこの製造プロセスにおける、分散及び/又は粉砕促進剤としての上記のリチウムイオンで中和された水溶性有機ポリマーの使用に関する。欧州特許出願公開第2 374 353 A1号公報は、例えば、炭酸カルシウム調製物のような鉱物材料の水性調製物を保存するためのプロセスについて言及している。さらに、欧州特許出願公開第2 108 260 A2号公報が、例えば炭酸カルシウムスラリーのような水性調製物をアルデヒド放出性及び/又はアルデヒド系殺生物剤によって細菌安定化するためのプロセス、並びにそのような水性調製物の殺生物処理に使用され得る組成物について言及していることを、本出願人は承知している。
【0011】
しかしながら、そのような抗菌剤は、その使用量において環境及びヒト又は動物の健康に危険性をもたらす場合がある。さらに、水性調製物における抗菌剤の使用は、特に抗菌剤濃度に関して、継続的に増大する制限の対象となっている。さらに、そのようなスラリー又は懸濁液への殺生物剤の添加には、高い安全基準が必要である。殺生物剤は、その毒性のために特定の政府規制に該当し、したがって、このような殺生物剤を含む組成物の取り扱い及び販売は、厳しい規制の対象となる。さらに、いくつかの殺生物剤は比較的高価であり、このため、貯蔵されている組成物の価格が上昇する。そして、多くの農業従事者や消費者は、殺生物剤/抗菌剤を含む肥料の使用や、殺生物剤と接触した作物や野菜の購入や摂取を拒否している。
【0012】
したがって、当技術分野では、公知の殺生物剤又は抗菌剤を使用せずに、懸濁液、分散液、及びスラリーなどの水性調製物を微生物の増殖に対して安定化する必要性が依然としてある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
よって、本発明の目的は、微生物の増殖、特に細菌及び/又は酵母及び/又はカビの増殖に対して安定化された炭酸カルシウム含有材料を含む懸濁液又はスラリーを提供することである。特に、本発明の目的は、公知の有毒/有害であり得る殺生物剤/抗菌剤を使用せずに微生物の増殖に対して安定化された炭酸カルシウム含有材料を含む懸濁液又はスラリーを提供することである。これらの組成物の調製が、時間及びエネルギーの節約となることが、本発明のさらなる目的であり、したがって、これらの組成物は、微生物の増殖を回避するために加熱工程に供されていない。本発明のさらなる目的は、水性懸濁液又はスラリーを、細菌及び/又は酵母及び/又はカビを増殖させることなく、特定の期間保存することができるようにすることである。本発明のさらなる目的は、追加の利点及び/又は特性を有する炭酸カルシウム含有材料を含む水性懸濁液又はスラリーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のこれらの及び他の目的は、炭酸カルシウム含有材料を含む水性懸濁液中の抗菌添加剤として尿素を使用することにより、本発明に記載され、かつ特許請求の範囲に定義される方法及び水性調製物によって解決することができる。
【0015】
本発明の一態様によれば、水性懸濁液の総重量に対して5~85重量%の少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料を含み、かつpH7.0~14を有している水性懸濁液中の抗菌添加剤としての尿素の使用が開示され、ここで、この抗菌添加剤は、水性懸濁液の総重量に対して、少なくとも1.2重量%の量でこの懸濁液中に存在し、かつ水性懸濁液中の尿素:水の重量比は、1:100~50:100である。
【0016】
発明者らは、驚くべきことに、請求項1に記載の抗菌添加剤として尿素を使用することにより、微生物の増殖、特に細菌及び/又は酵母及び/又はカビの増殖に対して、炭酸カルシウム含有材料を含む水性懸濁液を保護することが可能であることを見出した。請求項1に記載の抗菌添加剤として尿素を使用することによって、微生物の増殖を回避するために、水性懸濁液又はスラリーを加熱工程に供する必要がなく、したがって、尿素を抗菌添加剤として使用することにより、時間やエネルギーを消費する加熱工程なしでスラリーを提供することができる。
【0017】
カルバミドとしても知られる尿素は、化学式CO(NHの有機化合物である。この分子は、カルボニル(C=O)官能基によって結合された2つの-NH基を有する。尿素は、動物による窒素含有化合物の代謝に重要な役割を果たし、かつ哺乳類の尿中の主要な窒素含有物質である。身体は尿素を多くのプロセスに、特に窒素排泄に使用する。したがって、尿素はヒトや動物の体内で形成される天然に存在する物質であり、より正確には、肝臓が、尿素回路で2つのアンモニア分子(NH)と二酸化炭素(CO)分子とを結合させることによって尿素を形成する。尿素は無色、無臭の固体で、水に溶解しやすく、かつ毒性が低い(LD50はラットで15g/kg)。水に溶解すると、酸性でもアルカリ性でもない。したがって、尿素は安全で、環境及びヒトの健康に無毒である。尿素は農業では肥料として知られており、例えばヒトや動物の体内で自然に形成される。したがって、尿素は安全な化学物質と考えられる。さらに、尿素はEUで食品及び化粧品について、番号E927bの下で安定剤として承認されている。したがって、請求項1に記載の抗菌添加剤として尿素を使用することにより、微生物の増殖に対して保護されており、さらに、ヒト及び動物に対して毒性又は危険性のない懸濁液/スラリーを提供することが可能である。さらに、尿素は毒性がないため、尿素の使用には殺生物剤ほど高い安全基準は必要ない。
【0018】
さらに、尿素は窒素を含んでいるため、窒素源として肥料に使用することができる。よって、請求項1に記載の抗菌添加剤として尿素を少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料を含む水性懸濁液中で使用するとき、この水性懸濁液は、細菌及び/又は酵母及び/又はカビの増殖又は形成に対して保護されるだけでなく、これらの水性組成物を農業における窒素肥料としても使用することができる。
【0019】
本発明の別の態様によれば、微生物の増殖に対して水性懸濁液を保護するための方法が提供され、この方法は、以下の工程を含む:
(a)少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料を提供すること、
(b)抗菌添加剤として尿素を提供すると、
(c)工程(a)の少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料を、工程(b)の少なくとも1つの抗菌添加剤と接触させて、水性懸濁液を提供すること、
ここで、水性懸濁液は、この懸濁液の総重量に対して5~85重量%の少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料を含み、かつpH7.0~14を有しており、かつ
この水性懸濁液は、この懸濁液の総重量に対して、少なくとも1.2重量%の量で上記抗菌添加剤を含み、かつこの水性懸濁液中の尿素:水の重量比は1:100~50:100である。
【0020】
本発明の別の態様によれば、本発明に係る方法によって得られる水性調製物が提供される。
【0021】
本発明の別の態様によれば、植物における光合成プロセスの刺激、植物成長の刺激、植物病害に対する抵抗性の強化、栄養吸収の改善、及び植物栄養素のための植物ブースター及び/又はミネラル肥料としての農業における本発明の水性調製物の使用が提供される。
【0022】
本発明の有利な実施形態は、対応する従属請求項に定義されている。
【0023】
本発明の一実施形態によれば、抗菌添加剤が、水性溶液として、炭酸カルシウム含有材料を含む水性懸濁液に添加され、好ましくは、水性溶液の総重量に対して、20~75重量%、より好ましくは30~72重量%、さらにより好ましくは40~65重量%、最も好ましくは50~60重量%の尿素を含む水性溶液の形態で添加される。
【0024】
本発明の別の実施形態によれば、抗菌添加剤が、乾燥材料として、炭酸カルシウム含有材料を含む水性懸濁液に添加される。
【0025】
本発明の別の実施形態によれば、抗菌添加剤が、懸濁液の総重量に対して、1.2~20重量%の量で、好ましくは1.5~15重量%の量で、より好ましくは2.0~10重量%の量で、最も好ましくは2.5~8.5重量%の量で懸濁液に添加される。
【0026】
本発明の別の実施形態によれば、炭酸カルシウム含有材料は、炭酸カルシウム含有材料の総重量に対して、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも97重量%の炭酸カルシウムを含む。
【0027】
本発明の別の実施形態によれば、水性懸濁液は、懸濁液の総乾燥重量に対して、10~84重量%、好ましくは30~83重量%、より好ましくは50~82重量%、さらにより好ましくは60~80重量%、最も好ましくは68~78重量%の少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料を含む。
【0028】
本発明の別の実施形態によれば、炭酸カルシウム含有材料は、粉砕炭酸カルシウム、好ましくは大理石、石灰岩、ドロマイト、及び/又はチョーク;沈降炭酸カルシウム、好ましくはバテライト、カルサイト(方解石)、及び/又はアラゴナイト;及び表面反応炭酸カルシウム;並びにそれらの混合物からなる群から選択され、ここで、表面反応炭酸カルシウムは、天然粉砕炭酸カルシウム又は沈降炭酸カルシウムと、二酸化炭素及び1つ又は複数のHイオン供与体との水性媒体中での反応生成物であり、この二酸化炭素は、Hイオン供与体での処理によってその場(インサイチュ)で形成され、かつ/又は外部供給源から供給され、より好ましくは、この少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料は、粉砕炭酸カルシウムである。
【0029】
本発明の別の実施形態によれば、抗菌剤は、水性懸濁液中に存在するとき、細菌の少なくとも1つの菌株及び/又は酵母の少なくとも1つの菌株及び/又はカビの少なくとも1つの菌株の発生を防止又は低減する。
【0030】
本発明の別の実施形態によれば、
(i)この細菌の少なくとも1つの菌株が、メチロバクテリウム属(Methylobacterium sp.);サルモネラ属(Salmonella sp.);エシェリキア属(Escherichia sp.)、例えばエシェリキア・コリ(Escherichia coli);シゲラ属(Shigella sp.);エンテロバクター属(Enterobacter sp.);シュードモナス属(Pseudomonas sp.)、例えば、シュードモナス・メンドシナ(Pseudomonas mendocina)、シュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)、シュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、及び/又はシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida);バークホルデリア属(Burkholderia sp.)、例えばバークホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia);ブデロビブリオ属(Bdellovibrio sp.);アグロバクテリウム属(Agrobacterium sp.);アルカリゲネス属(Alcaligenes sp.)、例えばアルカリゲネス・フェーカリス(Alcaligenes faecalis);フラボバクテリウム属(Flavobacterium sp.);オクロバクトラム属(Ochrobactrum sp.)、例えばオクロバクトラム・トリティシ(Ochrobactrum tritici);コクリア属(Kocuria sp.)、例えばコクリア・リゾフィラ(Kocuria rhizophila);リゾビウム属(Rhizobium sp.)、例えばリゾビウム・ラジオバクター(Rhizobium radiobacter);スフィンゴバクテリウム属(Sphingobacterium sp.);スフィンゴモナス属(Sphingomonas sp.);アエロモナス属(Aeromonas sp.);クロモバクテリウム属(Chromobacterium sp.);ビブリオ属(Vibrio sp.);ハイフォミクロビウム属(Hyphomicrobium sp.);レプトトリックス属(Leptothrix sp.);ミクロコッカス属(Micrococcus sp.);スタフィロコッカス属(Staphylococcus sp.)、例えばスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus);アグロマイセス属(Agromyces sp.);アシドボラクス属(Acidovorax sp.);コマモナス属(Comamonas sp.)、例えばコマモナス・アクアティカ(Comamonas aquatica);ブレブンディモナス属(Brevundimonas sp.)、例えば、ブレブンディモナス・インターメディア(Brevundimonas intermedia)及びブレブンディモナス・ディミヌタ(Brevundimonas diminuta);スフィンゴビウム属(Spingobium sp.)、例えばスフィンゴビウム・ヤノイクヤエ(Spingobium yanoikuyae);タウエラ属(Thauera sp.)、例えばタウエラ・メケルニケンシス(Thauera mechernichensis);カルディモナス属(Caldimonas sp.);ハイドロゲノファーガ属(Hydrogenophaga sp.);テピディモナス属(Tepidimonas sp.);及びそれらの混合物を含む群から選択され、かつ/又は
(ii)この酵母の少なくとも1つの菌株が、サッカロミケス亜門(Saccharomycotina);タフリナ菌亜門(Taphrinomycotina);シゾサッカロミケス綱(Schizosaccharomycetes);担子菌門(Basidiomycota);ハラタケ亜門(Agaricomycotina);シロキクラゲ綱(Tremellomycetes);サビキン亜門(Pucciniomycotina);ミクロボトリウム菌綱(Microbotryomycetes);カンジダ属(Candida sp.)、例えば、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、カンジダ・ステラトイデア(Candida stellatoidea)、カンジダ・グラブラータ(Candida glabrata)、カンジダ・クルーセイ(Candida krusei)、カンジダ・グイリエルモンディ(Candida guilliermondii)、カンジダ・ビスワナチイ(Candida viswanathii)、カンジダ・ルシタニアエ(Candida lusitaniae)及びそれらの混合物;ヤロウイア属(Yarrowia sp.)、例えばヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica);クリプトコッカス属(Cryptococcus sp.)、例えば、クリプトコッカス・ガッティ(Cryptococcus gattii)及びクリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans);ジゴサッカロマイセス属(Zygosaccharomyces sp.);ロドトルラ属(Rhodotorula sp.)、例えばロドトルラ・ムシラギノーサ(Rhodotorula mucilaginosa);サッカロミセス属(Saccharomyces sp.)、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae);ピキア属(Pichia sp.)、例えばピキア・メンブラネファシエンス(Pichia membranifaciens);及びそれらの混合物を含む群から選択され、かつ/又は
(iii)このカビの少なくとも1つの菌株が、アクレモニウム属(Acremonium sp.);アルテルナリア属(Alternaria sp.);アスペルギルス属(Aspergillus sp.);クラドスポリウム属(Cladosporium sp.);フサリウム属(Fusarium sp.);ムコール属(Mucor);ペニシリウム属(Penicillium sp.);リゾプス属(Rhizopus sp.);スタキボトリス属(Stachybotrys sp.);トリコデルマ属(Trichoderma sp.);デマチウム属(Dematiaceae sp.);フォーマ属(Phoma sp.);ユーロチウム属(Eurotium sp.);スコプラリオプシス属(Scopulariopsis sp.);オーレオバシディウム属(Aureobasidium sp.);モニリア属(Monilia sp.);ボトリティス属(Botrytis sp.);ステムフィリウム属(Stemphylium sp.);ケトミウム属(Chaetomium sp.);マイセリア属(Mycelia sp.);ニューロスポラ属(Neurospora sp.);ウロクラジウム属(Ulocladium sp.);ペシロマイセス属(Paecilomyces sp.);ワレミア属(Wallemia sp.);カーブラリア属(Curvularia sp.);及びそれらの混合物を含む群から選択される。
【0031】
本発明の別の実施形態によれば、水性懸濁液のpHは、7.5~12、好ましくは8.2~10.0、最も好ましくは8.5~9.5である。
【0032】
本発明の別の実施形態によれば、この水性懸濁液に、尿素以外のさらなる抗菌添加剤を添加しない。
【0033】
本発明の別の実施形態によれば、この水性懸濁液中の尿素:水の重量比が、5:100~40:100、好ましくは9:100~30:100である。
【0034】
本発明の別の実施形態によれば、本発明の方法において、炭酸カルシウム含有材料が、粉砕炭酸カルシウム、好ましくは大理石、石灰岩、ドロマイト、及び/又はチョーク;沈降炭酸カルシウム、好ましくはバテライト、カルサイト、及び/又はアラゴナイト;及び表面反応炭酸カルシウム;並びにこれらの混合物からなる群から選択され、ここで、表面反応炭酸カルシウムは、天然粉砕炭酸カルシウム又は沈降炭酸カルシウムと、二酸化炭素及び1つ又は複数のHイオン供与体との水性媒体中での反応生成物であり、この二酸化炭素は、Hイオン供与体での処理によってその場で形成され、かつ/又は外部供給源から供給され、より好ましくは、この少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料は、表面反応炭酸カルシウムである。
【0035】
本発明の目的のために、以下の用語は以下の意味を有することを理解されたい。
本発明の意味における「炭酸カルシウム含有材料」は、炭酸カルシウムの供給源であり、好ましくは、粉砕炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、表面反応炭酸カルシウム、ドロマイト、及びそれらの混合物から選択される材料を指す。
【0036】
本発明の意味における「粉砕炭酸カルシウム」(GCC)は、石灰岩、大理石、又はチョークなどの天然源から得られ、例えば、サイクロン又は分類器による粉砕、ふるい分け、及び/又は分別などの湿式及び/又は乾式処理によって処理された炭酸カルシウムである。
【0037】
本発明の意味における「沈降炭酸カルシウム」(PCC)は、概して、水性環境での二酸化炭素と水酸化カルシウム(消石灰)との反応後の沈殿、又は水中でのカルシウム源と炭酸塩源との沈殿によって得られる合成材料である。さらに、沈降炭酸カルシウムは、カルシウム塩及び炭酸塩、例えば、塩化カルシウム及び炭酸ナトリウムを、水性環境に導入した生成物であってもよい。PCCは、バテライト、カルサイト、又はアラゴナイトの結晶形態であってもよい。PCCは、例えば、欧州特許出願公開第2 447 213 A1号公報、欧州特許出願公開第2 524 898 A1号公報、欧州特許出願公開第2 371 766 A1号公報、欧州特許出願公開第2 840 065 A1号公報、又は国際公開第2013/142473 A1号に記載されている。
【0038】
本発明に係る「表面反応炭酸カルシウム」は、天然粉砕炭酸カルシウム又は沈降炭酸カルシウムと、二酸化炭素及び1つ又は複数のHイオン供与体との水性媒体中での反応生成物であり、この二酸化炭素は、Hイオン供与体での処理によってその場で形成され、かつ/又は外部供給源から供給される。本発明に関して、Hイオン供与体は、ブレンステッド酸及び/又は酸性塩である。
【0039】
「乾燥(dry)」又は「乾燥された(dried)」材料という用語は、表面処理された炭酸カルシウムを含む材料の総重量に対して、水が0.001~20重量%である材料であると理解される。水分率(%)(「含水率」に等しい)は、150℃に加熱したときの重量損失として重量分析で決定される。本発明の意味での「乾燥(drying)」とは、表面処理炭酸カルシウム含有材料の含水率が、表面処理炭酸カルシウム含有材料の総重量に対して0.001~20重量%の範囲内になるまで加熱が行われることを意味する。
【0040】
本明細書における表面反応炭酸カルシウム含有鉱物材料以外の粒子状材料の「粒径」は、粒径dのその分布によって記載されている。ここで、値dは、粒子のx重量%がdよりも小さい直径を有することに関する直径を表す。これは、例えば、d20値は、全ての粒子の20重量%がその粒径よりも小さいことを意味する。したがって、d50値は、重量メジアン粒径であり、すなわち、すべての粒子の50重量%がこの粒径よりも大きく、かつ残りの50重量%はこの粒径よりも小さい。本発明の目的のために、粒径は、他に示されない限り、重量メジアン粒径d50として規定される。d98値は、すべての粒子の98重量%がその粒径よりも小さい粒径である。粒径は、Micromeritics Instrument Corporationの機器であるSedigraph(商標)5100又は5120を使用して決定した。この方法及び器具は当業者に公知であり、充填剤及び顔料の粒径を決定するために一般的に使用されている。測定は、0.1重量%のNa水溶液中で行った。試料は、高速攪拌機及び超音波を使用して分散させた。
【0041】
本明細書における表面反応炭酸カルシウム含有鉱物材料の「粒径」は、体積に基づく粒径分布として記載されている。ここで、値dは、粒子のx体積%がdよりも小さい直径を有することに関する直径を表す。これは、例えば、d20値は、全ての粒子の20体積%(vol%)がその粒径よりも小さい粒径であることを意味する。よって、d50値は、体積メジアン粒径であり、すなわち、すべての粒子の50体積%がその粒径よりも小さく、d98値は、すべての粒子の98体積%がその粒径よりも小さい粒径である。体積に基づく粒径分布、例えば、表面反応炭酸カルシウムを含む鉱物材料の、体積に基づくメジアン粒径(d50)又は体積に基づくトップカット粒径(d98)を決定するために、Mastersizer 2000 Laser Diffraction System(レーザー回折システム)を使用した。測定によって得られた生データは、定義された1.57のRI(粒子屈折率)及び0.005のiRI(吸収係数)で、ミー(Mie)理論及びMalvern Application Software(バージョン5.60)を使用して分析した。測定は水性分散液を用いて行った。この目的のために、試料を、高速攪拌機を用いて分散させた。あるいは、「粒径」は、重量メジアン粒径によって定義することができる。
【0042】
本発明の意味における炭酸カルシウム含有材料の「比表面積(SSA)」は、炭酸カルシウム含有材料の表面積をその質量で割ったものとして定義される。本明細書で使用する場合、比表面積は、BET等温線(ISO 9277:2010)を使用する窒素ガス吸着によって測定され、m/gで表記される。
【0043】
本発明の意味における「表面積」又は「外面」という用語は、ISO 9277:2010に従ってこのBETを測定するために使用される窒素がアクセス可能な炭酸カルシウム含有材料粒子の表面を指す。これに関して、表面積の完全な飽和に必要な表面処理剤の量は、単層濃度として定義されることに留意されたい。したがって、炭酸カルシウム含有材料粒子の表面に二層又は多層構造を形成することによって、より高い濃度が選択され得る。
【0044】
本発明の目的のために、「粘度」又は「ブルックフィールド(Brookfield)粘度」という用語は、ブルックフィールド粘度を指す。この目的のために、ブルックフィールド粘度は、Brookfield DV-III Ultra粘度計により、ブルックフィールドRVスピンドルセットの適切なスピンドルを使用して24℃±3℃、100rpmで測定され、mPa・sで表記される。スピンドルが試料に挿入されると、100rpmの一定の回転速度で測定が開始される。報告されるブルックフィールド粘度値は、測定開始から60秒後に表示される値である。当業者は、技術常識に基づいて、測定する粘度範囲に適したブルックフィールドRVスピンドルセットからスピンドルを選択する。例えば、200~800mPa・sの粘度範囲内の場合、スピンドル番号3が使用可能であり、400~1600mPa・sの粘度範囲内の場合、スピンドル番号4が使用可能であり、800~3200mPa・sの粘度範囲内の場合、スピンドル番号5が使用可能であり、1000~2000000mPa・sの粘度範囲内の場合、スピンドル番号6が使用可能であり、4000~8000000mPa・sの粘度範囲内の場合、スピンドル番号7が使用可能である。
【0045】
本出願の目的のために、「水不溶性」材料は、100gのこの材料を100gの脱イオン水と混合し、20℃で0.2μmの孔径を有するフィルターで濾過して液体濾液を回収するときに、環境圧力で100gのこの液体濾液を95~100℃で蒸発させた後で、0.1g又はこれ未満の回収された固体材料を提供する材料として定義される。「水溶性」材料は、100gのこの材料を100gの脱イオン水と混合し、20℃で0.2μmの孔径を有するフィルターで濾過して液体濾液を回収するときに、環境圧力で100gのこの液体濾液を95~100℃で蒸発させた後で、0.1gを超える回収された固体材料を提供する材料として定義される。
【0046】
本発明の意味における「懸濁液」又は「スラリー」は、不溶性の固体及び溶媒又は液体、好ましくは水、及び任意にさらなる添加剤を含み、通常、大量の固形物を含み、したがって、それを形成する液体よりも粘性が高く、密度が高くなり得る。
【0047】
本発明に係る「塩基」という用語は、ブレンステッド-ローリー理論によって定義される塩基を指す。したがって、本発明の意味での塩基は、水素イオン(H)、そうでなければプロトンとして公知のイオンを受け入れることができる物質である。
【0048】
本発明に係る「尿素」又は「カルバミド」という用語は、化学式CO(NHを有する有機化合物、並びにその水和物及びその塩を指す。
【0049】
本発明によれば、「微生物の増殖に対して水性懸濁液を保護する」という表現は、抗菌活性が尿素によって、誘導され又は延長され又は増加され又は影響を受け、それによって、微生物の増殖が防止又は低減されるようになっていることを意味する。
【0050】
本発明の意味において、抗菌剤は、水性調製物を安定化する能力を有する薬剤であり、すなわち、通常の量(例えば、抗菌剤の供給者によって提案される量)で投与されたときに、細菌の少なくとも1つの菌株及び/又は酵母の少なくとも1つの菌株及び/又はカビの少なくとも1つの菌株の微生物増殖を防止又は低減する能力を有する薬剤である。
【0051】
本発明によれば、「微生物の増殖を防止する」という表現は、抗菌剤が存在するときに、水性調製物において、細菌の少なくとも1つの菌株及び/又は酵母の少なくとも1つの菌株及び/又はカビの少なくとも1つの菌株の有意な増殖が観察されないことを意味する。本発明によれば、「微生物の増殖を低減する」という表現は、抗菌剤が存在するときに、水性調製物において、細菌の少なくとも1つの菌株及び/又は酵母の少なくとも1つの菌株及び/又はカビの少なくとも1つの菌株の増殖が遅くなることを意味する。
【0052】
本発明によれば、細菌の少なくとも1つの菌株及び/又は酵母の少なくとも1つの菌株及び/又はカビの少なくとも1つの菌株の「有意な増殖又は蓄積」は、24時間後の差、すなわち、細菌の少なくとも1つの菌株及び/又は酵母の少なくとも1つの菌株及び/又はカビの少なくとも1つの菌株の増殖が、トリプティックソイ寒天培地(TSA)でのプレートアウトによって測定された、測定技術に関連した誤差よりも大きい場合に観察され、ここでは、本明細書の実施例のセクションに記載されている細菌カウント法に従って、プレートを30℃でインキュベートし、48時間後に評価する。
【0053】
本発明に係る「固体」という用語は、標準環境温度及び標準環境圧力(SATP)の下で固体である材料を指し、これは、298.15K(25℃)の温度及び正確に100000Pa(1bar、14.5psi、0.98692atm)の絶対圧力を指す。
【0054】
本発明に係る「環境圧力」という用語は、標準環境温度の標準環境圧力(SATP)を指し、これは正確に100000Pa(1bar、14.5psi、0.98692atm)の絶対圧力を指す。「減圧」という用語は、「環境圧力」より低い圧力を指す。
【0055】
「備える/含む(comprising)」という用語が本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、それは、主要な又は副次的な機能的に重要なものである他の特定されていない要素を除外しない。本発明の目的のために、「からなる(consisting of)」という用語は、「含む(comprising of)」という用語の好ましい実施形態であると見なされる。以下で、ある群が少なくとも特定の数の実施形態を含むと定義される場合、これはまた、好ましくはこれらの実施形態のみからなる群を開示するとも理解されるべきである。
【0056】
「含む(including)」又は「有する(having)」という用語が使用される場合は常に、これらの用語は、上記で定義された「備える/含む(comprising)」と同等であることを意味する。
【0057】
単数名詞に言及する際に、不定冠詞又は定冠詞、例えば、「1つの(a/an)」又は「前記(the)」が使用される場合、特に明記されていない限り、これにはその名詞の複数形が含まれる。
【0058】
「得ることができる(obtainable)」又は「定義することができる(definable)」並びに「得られた(obtained)」又は「定義された(defined)」などの用語は言い換え可能に使用される。これは、例えば、文脈が明確に別段の指示をしない限り、そのような限定された理解が、好ましい実施形態として「得られた」又は「定義された」という用語によって常に含まれることを意味しているとしても、「得られた」という用語は、例えば、ある実施形態が、「得られた」という用語に続く一連の工程によって得られる必要があることを示すわけではないことを意味する。
【0059】
以下において、水性懸濁液中の抗菌添加剤としての尿素の本発明の使用の好ましい実施形態又は技術的詳細を言及するときに、これらの好ましい実施形態又は技術的詳細はまた、本発明の方法(プロセス)、本明細書で定義される本発明の水性調製物及び本発明の水性調製物の使用、並びに(適用可能な限り)本発明の方法を指すことを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0060】
抗菌添加剤としての尿素の使用
上記のように、本発明は、水性懸濁液中の抗菌添加剤としての尿素の使用に関するものであって、水性懸濁液の総重量に対して5~85重量%の少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料を含み、かつpH7.0~14を有している水性懸濁液中の抗菌添加剤としての尿素の使用が開示されており、ここで、この抗菌添加剤は、水性懸濁液の総重量に対して、少なくとも1.2重量%の量でこの懸濁液中に存在し、かつこの水性懸濁液中の尿素:水の重量比は1:100~50:100である。
【0061】
懸濁液の総重量に対して5~85重量%の少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料を含み、かつpH7.0~14を有する水性懸濁液に関する以下の情報は、尿素を含む懸濁液と含まない懸濁液との両方に関連している。
【0062】
本発明によれば、水性懸濁液は、この懸濁液の総重量に対して5~85重量%の少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料を含む。
【0063】
「少なくとも1つの」炭酸カルシウム含有材料という表現は、1つ又は複数、例えば、2つ又は3つの炭酸カルシウム含有材料が水性懸濁液中に存在し得ることを意味する。好ましい実施形態によれば、1つの炭酸カルシウム含有材料のみが水性懸濁液中に存在する。
【0064】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料は、炭酸カルシウム含有材料の総乾燥重量に対して、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも97重量%の炭酸カルシウムを含む。別の実施形態によれば、少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料は、炭酸カルシウムからなる。好ましい実施形態によれば、少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料は、炭酸カルシウムからなる。
【0065】
少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料は、好ましくは粒子状材料の形態である。本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料は、0.1~7μmの範囲内の重量メジアン粒径d50値を有する。例えば、少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料は、重量メジアン粒径d50が0.25μm~5μm、好ましくは0.6μm~4μmである。
【0066】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料は、15μm以下のトップカット(d98)を有することができる。例えば、少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料は、12.5μm以下、好ましくは10μm以下、最も好ましくは7.5μm以下のトップカット(d98)を有することができる。
【0067】
本発明の別の実施形態によれば、ISO 9277:2010に準拠したBET窒素法で測定した炭酸カルシウム含有材料の比表面積は、1~250m/gの範囲内、好ましくは2~200m/gの範囲内、最も好ましくは3~150m/gの範囲内である。
【0068】
本発明の好ましい実施形態によれば、少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料が、粉砕炭酸カルシウム、好ましくは大理石、石灰岩、ドロマイト、及び/又はチョーク;沈降炭酸カルシウム、好ましくはバテライト、カルサイト、及び/又はアラゴナイト;及び表面反応炭酸カルシウム;並びにこれらの混合物からなる群から選択され、ここで、表面反応炭酸カルシウムは、天然粉砕炭酸カルシウム又は沈降炭酸カルシウムと、二酸化炭素及び1つ又は複数のHイオン供与体との水性媒体中での反応生成物であり、この二酸化炭素は、Hイオン供与体での処理によってその場で形成され、かつ/又は外部供給源から供給される。
【0069】
天然又は粉砕炭酸カルシウム(GCC)は、石灰岩やチョークなどの堆積岩から、又は変成大理石の岩、卵殻、若しくは貝殻から採掘された、天然に存在する形態の炭酸カルシウムから製造されると理解される。炭酸カルシウムは、カルサイト、アラゴナイト、バテライトの3種類の結晶多形として存在することが公知である。最も一般的な結晶多形であるカルサイト(方解石)は、炭酸カルシウムの最も安定した結晶形であると考えられる。あまり一般的ではないのはアラゴナイトであり、離散的な又はクラスター化された針状斜方晶構造を有する。バテライトは最も希少な炭酸カルシウム多形であり、概して不安定である。粉砕炭酸カルシウムは、ほぼ例外なくカルサイト多形体であり、これは、三方晶-菱面体晶であると言われ、かつ炭酸カルシウム多形体の最も安定した形態を表す。本出願の意味における炭酸カルシウムの「供給源」という用語は、炭酸カルシウムが得られる天然に存在する鉱物材料を指す。炭酸カルシウムの供給源は、炭酸マグネシウム、アルミノケイ酸塩などのさらに天然に存在する成分を含み得る。
【0070】
概して、天然粉砕炭酸カルシウムの粉砕は、乾式又は湿式の粉砕工程とすることができ、任意の従来の粉砕装置を用いて、例えば、粉砕が二次的物体による衝撃の結果として主として生じるような条件下で、すなわち、以下の一つ又は複数の装置で実施することができる:ボールミル、ロッドミル、振動ミル、ロールクラッシャー、遠心衝撃ミル、垂直ビーズミル、摩滅粉砕機、ピンミル、ハンマーミル、粉砕機、シュレッダー、デクランパー、ナイフカッター、又は当業者に公知の他のこのような機器。鉱物材料を含む炭酸カルシウムが、鉱物材料を含む湿った粉砕炭酸カルシウムを含む場合、粉砕工程は、自生粉砕が行われるような条件下で、及び/又は水平ボールミル粉砕、及び/又は当業者に公知のそのようなプロセスによって実施してもよい。このようにして得られた鉱物材料を含む湿式処理された粉砕炭酸カルシウムは、周知のプロセスにより、例えば、乾燥前の凝集、ろ過、又は強制蒸発により洗浄しかつ脱水することができる。乾燥に続く工程(必要な場合)は、噴霧乾燥などの単一の工程又は少なくとも2つの工程で実施することができる。そのような鉱物材料は、選鉱工程(浮選、漂白、又は磁気分離工程など)を経て不純物を除去することも一般的である。
【0071】
本発明の一実施形態によれば、天然又は粉砕炭酸カルシウム(GCC)の供給源は、大理石、チョーク、石灰岩、又はそれらの混合物から選択される。好ましくは、粉砕炭酸カルシウムの供給源は大理石であり、より好ましくはドロマイト大理石及び/又は磁気大理石である。本発明の一実施形態によれば、GCCは乾式粉砕によって得られる。本発明の別の実施形態によれば、GCCは、湿式粉砕及び任意にその後の乾燥によって得られる。
【0072】
本発明の意味における「ドロマイト」は、CaMg(CO(「CaCO・MgCO」)の化学組成を有する鉱物、すなわち炭素質のカルシウム-マグネシウム鉱物を含む炭酸カルシウムである。ドロマイト鉱物は、ドロマイトの総重量に対して、少なくとも30.0重量%のMgCO、好ましくは35.0重量%を超え、より好ましくは40.0重量%を超えるMgCOを含むことができる。
【0073】
本発明の一実施形態によれば、炭酸カルシウムは、1種類の粉砕炭酸カルシウムを含む。本発明の別の実施形態によれば、炭酸カルシウムは、異なる供給源から選択された2つ又はそれを超える種類の粉砕炭酸カルシウムの混合物を含む。
【0074】
本発明の意味における「沈降炭酸カルシウム」(PCC)は、概して、水性環境での二酸化炭素と石灰との反応後の沈殿、水中でのカルシウムと炭酸イオン源との沈殿、又は溶液からのカルシウムイオンと炭酸イオン、例えばCaClとNaCOとの結合による沈殿によって得られる合成材料である。PCCを生成するためのさらに可能な方法は、石灰ソーダ法、又はPCCがアンモニア生成の副産物であるソルベイ(Solvay)法である。沈降炭酸カルシウムは、カルサイト、アラゴナイト、及びバテライトの3つの主要な結晶形で存在し、かつこれらの結晶形のそれぞれに多くの異なる多形体(晶癖)がある。カルサイトは、偏三角面体(S-PCC)、菱面体晶(R-PCC)、六方晶系角柱、ピナコイド、コロイド(C-PCC)、立方晶、角柱体(P-PCC)などの典型的な晶癖を持つ三方晶構造を有する。アラゴナイトは、双晶の六方晶系角柱状の典型的晶癖を有する斜方晶系構造のみならず、薄く細長い角柱、曲面羽根付き、急勾配錐体、チゼル状結晶、分岐樹木形態、及びサンゴ又は蠕虫様形態の様々な取り合わせを伴う構造を有する。バテライトは、六方晶系に属する。得られたPCCスラリー水溶液は、機械的に脱水し、かつ乾燥させることができる。
【0075】
本発明の一実施形態によれば、沈降炭酸カルシウムは、好ましくは、アラゴナイト、バテライト、又はカルサイトの鉱物学的結晶形態又はそれらの混合物を含む沈降炭酸カルシウムである。
【0076】
本発明の一実施形態によれば、炭酸カルシウムは、1種類の沈降炭酸カルシウムを含む。本発明の別の実施形態によれば、炭酸カルシウムは、沈降炭酸カルシウムの異なる結晶形態及び異なる多形から選択される2つ又はこれを超える沈降炭酸カルシウムの混合物を含む。例えば、少なくとも1つの沈降炭酸カルシウムは、S-PCCから選択された1つのPCC及びR-PCCから選択された1つのPCCを含むことができる。
【0077】
本発明の好ましい実施形態によれば、少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料は、粉砕炭酸カルシウム及び/又は沈降炭酸カルシウムであり、好ましくは粉砕炭酸カルシウムである。
【0078】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料、好ましくは粉砕炭酸カルシウム及び/又は沈降炭酸カルシウムは、炭酸カルシウム含有材料の総乾燥重量に対して、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも85重量%、より好ましくは少なくとも97重量%の炭酸カルシウムの含有量を有する。別の実施形態によれば、少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料は、炭酸カルシウムからなる。
【0079】
少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料、好ましくは粉砕炭酸カルシウム及び/又は沈降炭酸カルシウムは、好ましくは粒子状材料の形態である。本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料、好ましくは粉砕炭酸カルシウム及び/又は沈降炭酸カルシウムは、0.1~7μmの範囲内の重量メジアン粒径d50値を有する。例えば、少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料は、重量メジアン粒径d50が0.25μm~5μm、好ましくは0.6μm~4μmである。
【0080】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料、好ましくは粉砕炭酸カルシウム及び/又は沈降炭酸カルシウムは、15μm以下のトップカット(d98)を有する。例えば、少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料は、12.5μm以下、好ましくは10μm以下、最も好ましくは7.5μm以下のトップカット(d98)を有することができる。
【0081】
本発明の別の実施形態によれば、ISO 9277:2010に準拠したBET窒素法で測定した粉砕炭酸カルシウム及び/又は沈降炭酸カルシウムの比表面積は、1~100m/gの範囲内、好ましくは2~60m/gの範囲内、最も好ましくは3~8m/gの範囲内である。
【0082】
本発明の別の実施形態によれば、少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料は、表面反応炭酸カルシウムである。
【0083】
本発明の意味における表面反応炭酸カルシウムは、天然粉砕炭酸カルシウム又は沈降炭酸カルシウムと、二酸化炭素及び1つ又は複数のHイオン供与体との水性媒体中での反応生成物であり、この二酸化炭素は、Hイオン供与体での処理によってその場で形成され、かつ/又は外部供給源から供給される。
【0084】
天然及び/又は沈降炭酸カルシウムは、乾燥して使用するか、又は水に懸濁して、表面反応炭酸カルシウムを調製することができる。好ましくは、対応するスラリーは、スラリーの重量に対して、1重量%~90重量%、より好ましくは3重量%~60重量%、さらにより好ましくは5重量%~40重量%、最も好ましくは10重量%~25重量%の範囲内の天然又は沈降炭酸カルシウムの含有量を有する。
【0085】
本発明に関して、Hイオン供与体はブレンステッド酸及び/又は酸性塩である。
【0086】
本発明の好ましい実施形態では、表面反応炭酸カルシウムは、以下の工程を含む方法によって得られる:
(a)天然又は沈降炭酸カルシウムの懸濁液を提供すること、
(b)20℃で0又はこれ未満のpK値を有するか、又は20℃で0~2.5のpK値を有する少なくとも1つの酸を工程(a)の懸濁液に添加すること、及び
(c)工程(a)の懸濁液を、工程(b)の前、途中、又は後に二酸化炭素で処理すること。
別の実施形態によれば、表面反応炭酸カルシウムは、以下の工程を含む方法によって得られる:
(A)天然又は沈降炭酸カルシウムを提供すること、
(B)少なくとも1つの水溶性酸を提供すること、
(C)ガス状COを供給すること、及び
(D)工程(A)の上記天然又は沈降炭酸カルシウムを、工程(B)の上記少なくとも1つの酸及び工程(C)の上記COと接触させること、
ここで、この方法は以下を特徴とする:
(i)工程(B)の上記少なくとも1つの酸は、その最初に利用可能な水素のイオン化に関連して、20℃で2.5より大きく、かつ7又はこれ未満のpKを有し、かつ対応するアニオンが、水溶性カルシウム塩を形成可能なこの最初に利用可能な水素の喪失時に形成されること、及び
(ii)上記少なくとも1つの酸を天然又は沈降炭酸カルシウムと接触させた後、水素含有塩が、最初に利用可能な水素のイオン化に関連して、20℃で7を超えるpKを有し、かつその塩アニオンが水不溶性カルシウム塩を形成可能である場合には、少なくとも1つの水溶性塩を追加で提供すること。
【0087】
沈降炭酸カルシウムは、二酸化炭素及び少なくとも1つのHイオン供与体で処理する前に、上記のように天然炭酸カルシウムを粉砕するために使用されるのと同じ手段によって粉砕することができる。
【0088】
表面反応炭酸カルシウムの調製に使用される1つ又は複数のHイオン供与体は、調製条件下でHイオンを生成する任意の強酸、中強酸、若しくは弱酸、又はそれらの混合物であってよい。本発明によれば、少なくとも1つのHイオン供与体はまた、調製条件下でHイオンを生成する酸性塩であってもよい。
【0089】
一実施形態によれば、少なくとも1つのHイオン供与体は、20℃で0又はこれ未満のpKを有する強酸である。
【0090】
別の実施形態によれば、少なくとも1つのHイオン供与体は、20℃で0~2.5のpK値を有する中強酸である。20℃でのpKが0又はこれ未満である場合、硫酸、塩酸、又はそれらの混合物からこの酸を選択することが好ましい。20℃でのpKが0~2.5である場合、Hイオン供与体は、好ましくは、HSO、HPO、シュウ酸、又はそれらの混合物から選択される。少なくとも1つのHイオン供与体はまた、酸性塩であってよく、例えば、Li、Na、若しくはKなどの対応するカチオンによって少なくとも部分的に中和されているHSO 又はHPO 、あるいはLi、Na、K、Mg2+、若しくはCa2+などの対応するカチオンによって少なくとも部分的に中和されているHPO 2-であってよい。少なくとも1つのHイオン供与体は、1つ又は複数の酸、及び1つ又は複数の酸性塩の混合物であってもよい。
【0091】
さらに別の実施形態によれば、少なくとも1つのHイオン供与体は、最初に利用可能な水素のイオン化に関連して、20℃で測定したときに、2.5より大きくかつ7又はこれ未満のpK値を有する弱酸であり、かつ水溶性カルシウム塩を形成可能な対応するアニオンを有する。その後に、水素含有塩が、最初に利用可能な水素のイオン化に関連して、20℃で測定したときに7を超えるpKを有し、かつその塩アニオンが水不溶性カルシウム塩を形成可能である場合には、少なくとも1つの水溶性塩がさらに提供される。好ましい実施形態によれば、この弱酸は、20℃で2.5超~5のpK値を有し、より好ましくは、この弱酸は、酢酸、ギ酸、プロパン酸、及びそれらの混合物からなる群から選択される。上記水溶性塩の例示的なカチオンは、カリウム、ナトリウム、リチウム及びそれらの混合物からなる群から選択される。より好ましい実施形態では、このカチオンはナトリウム又はカリウムである。上記水溶性塩の例示的なアニオンは、リン酸アニオン、リン酸二水素アニオン、リン酸一水素アニオン、シュウ酸アニオン、ケイ酸アニオン、それらの混合物、及びそれらの水和物からなる群から選択される。より好ましい実施形態では、このアニオンは、リン酸アニオン、リン酸二水素アニオン、リン酸一水素アニオン、それらの混合物、及びそれらの水和物からなる群から選択される。最も好ましい実施形態において、このアニオンは、リン酸二水素アニオン、リン酸一水素アニオン、それらの混合物、及びそれらの水和物からなる群から選択される。水溶性塩の添加は、滴下して行ってもよいし、又は一段階で行ってもよい。滴下により添加する場合、この添加は好ましくは10分間以内に行われる。この塩を一段階で添加することがより好ましい。
【0092】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つのHイオン供与体は、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、クエン酸、シュウ酸、酢酸、ギ酸、及びそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、少なくとも1つのHイオン供与体は、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、シュウ酸;Li、Na、又はKなどの対応するカチオンによって少なくとも部分的に中和されているHPO ;Li、Na、K、Mg2+、又はCa2+などの対応するカチオンによって少なくとも部分的に中和されているHPO 2-;及びそれらの混合物からなる群から選択される。より好ましくは、少なくとも1つの酸は、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、シュウ酸、又はそれらの混合物からなる群から選択され、最も好ましくは、少なくとも1つのHイオン供与体はリン酸である。
【0093】
1つ又は複数のHイオン供与体は、濃縮溶液又はより希釈された溶液として懸濁液に添加することができる。好ましくは、Hイオン供与体の、天然又は沈降炭酸カルシウムに対するモル比は、0.01~4、より好ましくは0.02~2、さらにより好ましくは0.05~1、最も好ましくは0.1~0.58である。
【0094】
代替的には、天然又は沈降炭酸カルシウムを懸濁する前に、Hイオン供与体を水に加えることも可能である。
【0095】
次の工程では、天然又は沈降炭酸カルシウムを二酸化炭素で処理する。天然又は沈降炭酸カルシウムのHイオン供与体での処理に硫酸や塩酸などの強酸を使用すると、二酸化炭素が自動的に生成される。代替的又は追加的に、二酸化炭素は外部供給源から供給することができる。
【0096】
イオン供与体処理及び二酸化炭素による処理は、強酸又は中強酸を使用する場合に同時に実施してもよい。最初に、例えば、20℃で0~2.5の範囲内のpKを有する中強酸でHイオン供与体処理を実施することも可能であり、ここで二酸化炭素がその場で形成され、したがって、二酸化炭素処理は、Hイオン供与体処理と同時に自動的に実施され、その後、外部供給源から供給される二酸化炭素で追加の処理が行われる。
【0097】
前記懸濁液中のガス状二酸化炭素の濃度は、体積を単位として、(懸濁液の体積):(ガス状COの体積)の比が、1:0.05~1:20、さらにより好ましくは1:0.05~1:5となる。
【0098】
好ましい実施形態では、Hイオン供与体処理工程及び/又は二酸化炭素処理工程は、少なくとも1回、より好ましくは数回繰り返される。一実施形態によれば、少なくとも1つのHイオン供与体が、少なくとも約5分間、好ましくは少なくとも約10分間、典型的には約10~20分間、より好ましくは約30分間、さらにより好ましくは約45分間、場合によって約1時間又はそれを超える時間にわたって添加される。
【0099】
イオン供与体処理及び二酸化炭素処理に続いて、20℃で測定された水性懸濁液のpHは、当然、6.0を超え、好ましくは6.5を超え、より好ましくは7.0を超え、さらにより好ましくは7.5を超える値に達し、それによって、表面反応した天然又は沈降炭酸カルシウムを、6.0を超え、好ましくは6.5を超え、より好ましくは7.0を超え、さらにより好ましくは7.5を超えるpHを有する水性懸濁液として調製する。
【0100】
表面反応した天然炭酸カルシウムの調製に関する詳細は、国際公開第00/39222 A1号、国際公開第2004/083316 A1号、国際公開第2005/121257 A2号、国際公開第2009/074492 A1号、欧州特許出願公開第2 264 108 A1号公報、欧州特許出願公開第2 264 109 A1号公報、及び米国特許出願公開第2004/0020410 A1号公報に開示されており、これらの文献の内容は、本出願に含まれる。
【0101】
同様に、表面反応した沈降炭酸カルシウムが得られる。国際公開第2009/074492 A1号から詳細に説明可能であるように、表面反応沈降炭酸カルシウムは、沈降炭酸カルシウムを、Hイオン及び水性媒体に可溶化されかつ水不溶性カルシウム塩を形成可能なアニオンと、水性媒体中で接触させ、表面反応沈降炭酸カルシウムのスラリーを形成することによって得られ、ここで、この表面反応沈降炭酸カルシウムは、沈降炭酸カルシウムの少なくとも一部の表面上に形成された、不溶性の、少なくとも部分的に結晶性の上記アニオンのカルシウム塩を含む。
【0102】
この可溶化されたカルシウムイオンは、Hイオンによる沈降炭酸カルシウムの溶解時に自然に生成される可溶化カルシウムイオンと比較して、過剰の可溶化カルシウムイオンに相当し、ここで、このHイオンは、アニオンに対する対イオンの形態でのみ提供され、すなわち、酸又は非カルシウム酸性塩の形態でアニオンを添加することによって、かつさらなるカルシウムイオン又はカルシウムイオン生成源がない状態で提供される。
【0103】
この過剰の可溶化カルシウムイオンは、好ましくは、可溶性の中性若しくは酸性カルシウム塩の添加によって提供されるか、又はその場で可溶性の中性若しくは酸性カルシウム塩を生成する酸又は中性若しくは酸性の非カルシウム塩の添加によって提供される。
【0104】
このHイオンは、酸又は上記アニオンの酸性塩の添加によって提供することができるか、又は上記の過剰の可溶化カルシウムイオンの全部又は一部を提供するのに同時に役立つ酸又は酸性塩の添加によって提供することができる。
【0105】
表面反応した天然又は沈降炭酸カルシウムの調製のさらに好ましい実施形態では、天然又は沈降炭酸カルシウムを、ケイ酸塩、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム又はカリウムなどのアルカリ土類金属のアルミン酸塩、酸化マグネシウム、又はそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物の存在下で酸及び/又は二酸化炭素と反応させる。好ましくは、少なくとも1つのケイ酸塩は、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、又はアルカリ土類金属のケイ酸塩から選択される。これらの成分は、酸及び/又は二酸化炭素を加える前に、天然又は沈降炭酸カルシウムを含む水性懸濁液に加えてもよい。
【0106】
あるいは、ケイ酸塩及び/又はシリカ及び/又は水酸化アルミニウム及び/又はアルカリ土類金属のアルミン酸塩及び/又は酸化マグネシウム成分を、天然又は沈降炭酸カルシウムと酸及び二酸化炭素との反応が既に開始した時点で、天然又は沈降炭酸カルシウムの水性懸濁液に加えてもよい。少なくとも1つのケイ酸塩及び/又はシリカ及び/又は水酸化アルミニウム及び/又はアルカリ土類金属のアルミン酸塩成分の存在下での表面反応した天然又は沈降炭酸カルシウムの調製に関するさらなる詳細は、国際公開第2004/083316 A1号に開示されており、この文献の内容は、本出願に含まれる。
【0107】
表面反応炭酸カルシウムは、懸濁状態に保つことができ、任意に、分散剤によってさらに安定化することができる。当業者に公知の従来の分散剤を使用可能である。好ましい分散剤は、ポリアクリル酸及び/又はカルボキシメチルセルロースを含む。
【0108】
あるいは、上述した水性懸濁液を乾燥させてもよく、それにより、固体(すなわち、乾燥しているか、流体形態ではないほどにしか水を含まない)の表面反応した天然又は沈降炭酸カルシウムを顆粒又は粉末の形態で得ることができる。
【0109】
表面反応炭酸カルシウムは、バラ、ゴルフボール、及び/又は脳の形などの異なる粒子形状を有し得る。
【0110】
好ましい実施形態では、ISO 9277:2010に準拠したBET窒素法で測定した表面反応炭酸カルシウムの比表面積は、1~250m/gの範囲内、好ましくは2~200m/gの範囲内、最も好ましくは35~150m/gの範囲内である。例えば、表面反応炭酸カルシウムの比表面積は、窒素及びBET法を使用して測定すると、45~150m/g又は75~140m/gである。本発明の意味におけるBET比表面積は、粒子の表面積を粒子の質量で割ったものとして定義される。本明細書で使用される場合、比表面積は、BET等温線(ISO 9277:2010)を使用する吸着によって測定され、m/gで表記される。
【0111】
表面反応炭酸カルシウム粒子は、1~75μm、好ましくは2~50μm、より好ましくは3~40μm、さらにより好ましくは4~30μm、最も好ましくは5~15μmの体積メジアン粒径d50(vol)を有することがさらに好ましい。
【0112】
表面反応炭酸カルシウム粒子は、2~150μm、好ましくは4~100μm、より好ましくは6~80μm、さらにより好ましくは8~60μm、最も好ましくは10~30μmの粒径d98(vol)を有することが好ましい。
【0113】
粒径を決定する方法及び器具は当業者に公知であり、充填剤及び顔料の粒径を決定するために一般的に使用されている。
【0114】
比細孔容積は、水銀の最大適用圧力が414MPa(60000psi)で、ラプラス(Laplace)喉直径が0.004μm(~nm)に相当するMicromeritics Autopore V9620水銀ポロシメーターを使用した水銀圧入ポロシメトリーによって測定される。各圧力工程で使用される平衡時間は20秒である。試料材料は、分析のために3cmチャンバーの粉末針入度計に密封される。データは、ソフトウェアPore-Comp(Gane, P.A.C., Kettle, J.P., Matthews, G.P. and Ridgway, C.J., “Void Space Structure of Compressible Polymer Spheres and Consolidated Calcium Carbonate Paper-Coating Formulations”, Industrial and Engineering Chemistry Research, 35(5), 1996, pp.1753-1764)を使用して、水銀圧縮、針入度計の膨張、及び試料材料の圧縮について補正される。
【0115】
累積圧入データに見られる総細孔容積は、214μmから約1~4μmに至るまでの圧入データを有する2つの領域に分けることができ、任意の凝集体構造間の試料の粗い充填(パッキング)が強く寄与していることを示している。これらの直径未満では、粒子自体の微細な粒子間充填が存在する。それらが粒子内細孔も有する場合には、この領域は二峰性を示し、モードの転換地点よりも細い、すなわち二峰性の変曲点よりも細かい細孔内に水銀が侵入した比細孔容積をもってして、比粒子内細孔容積が定義される。これらの3つの領域の合計は、粉末の全体的な細孔容積を与えるが、元の試料の圧縮/分布の粗い細孔末端における粉末の沈殿によって大きく左右される。
【0116】
積算侵入曲線の一次導関数を取ることにより、必然的に細孔遮蔽を含む、等価ラプラス直径に基づく細孔径分布が明らかになる。その微分曲線は、粗い凝集体の細孔構造領域、粒子間細孔領域、及び存在する場合には粒子内細孔領域を明確に示している。粒子内細孔径範囲がわかれば、総細孔容積から残りの粒子間細孔容積及び凝集体間細孔容積を差し引いて、単位質量あたりの細孔容積として(比細孔容積として)、内部細孔のみの所望の細孔容積を得ることが可能である。当然のことながら、同じ減算の原理が、目的とする任意の他の孔径領域を分離する場合にも適用される。
【0117】
好ましくは、表面反応炭酸カルシウムは、水銀ポロシメトリー測定から計算される粒子内圧入比細孔容積が、好ましくは、0.1~2.3cm/g、より好ましくは0.2~2.0cm/g、特に好ましくは0.4~1.8cm/g、最も好ましくは0.6~1.6cm/gの範囲内である。
【0118】
水銀ポロシメトリー測定によって決定される表面反応炭酸カルシウムの粒子内細孔径は、好ましくは0.004~1.6μm、より好ましくは0.005~1.3μm、特に好ましくは0.006~1.15μm、最も好ましくは0.007~1.0μm、例えば0.01~0.9μmの範囲内である。
【0119】
水性懸濁液は、この懸濁液の総重量に対して5~85重量%の少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料を含む。好ましい実施形態によれば、水性懸濁液は、この懸濁液の総重量に対して、10~84重量%、好ましくは30~83重量%、より好ましくは50~82重量%、さらにより好ましくは60~80重量%、最も好ましくは68~78重量%の少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料を含む。
【0120】
水性懸濁液は、水及び少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料を含む。さらに、水性懸濁液は、水と混和性であるさらなる溶媒を含むことができる。例えば、水性懸濁液は、エタノール、メタノール、アセトン、エチレングリコール、グリセリン、又はプロパノールのような有機溶媒を含むことができる。好ましい実施形態によれば、水性懸濁液は、水及び少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料からなる。
【0121】
任意に、水性炭酸カルシウム含有材料は、さらなる添加剤を含む。
【0122】
本発明の好ましい一実施形態では、水性炭酸カルシウム含有材料は、例えば、ポリアクリレートなどの追加の分散剤又は粉砕剤を含む。本発明の好ましい別の実施形態では、水性炭酸カルシウム含有材料は、例えば、ポリアクリレートなどの追加の分散剤及び/又は粉砕剤を含まない。
【0123】
本発明によれば、水性懸濁液は、この懸濁液の総重量に対して5~85重量%の少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料を含み、pH7.0~14を有する。好ましい実施形態によれば、水性懸濁液のpHは、7.5~12、好ましくは8.2~10.0、最も好ましくは8.5~9.5である。
【0124】
懸濁液の総重量に対して5~85重量%の少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料と、任意に尿素とを含む水性懸濁液の7.0~14のpH値は、この懸濁液の総重量に対して5~85重量%の少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料と、任意に尿素とを含む水性懸濁液を調製することによって自動的に設定されるか、又はこの水性懸濁液に少なくとも1つの塩基を加えることによって調整することができる。
【0125】
「少なくとも1つの」塩基という表現は、1つ又は複数、例えば2つ又は3つの塩基をこの水性懸濁液に添加することができることを意味する。別の実施形態によれば、1つの塩基のみが水性懸濁液に添加される。好ましくは、この懸濁液の総重量に対して5~85重量%の少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料と、任意に尿素とを含む水性懸濁液の7.0~14のpH値は、この水性懸濁液を調製することによって自動的に設定される。
【0126】
この少なくとも1つの塩基は、水溶性であり、当業者に公知の任意の塩基であり得る。例えば、この塩基は、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸水素カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム、一級、二級、又は三級アミン、及びそれらの混合物からなる群から選択することができ、より好ましくは水酸化カルシウム及び/又は水酸化アンモニウムであり、最も好ましくは水酸化カルシウムである。
【0127】
本発明の意味での一級、二級、又は三級アミンは、アンモニアの誘導体であり、ここで、1つ又は複数の水素原子が、アルキル又はアリール基などの置換基で置換されている。
【0128】
水性懸濁液への少なくとも1つの塩基の添加は、当業者に公知の任意の従来の手段によって達成することができる。好ましくは、添加は、混合及び/又は均質化及び/又は粒子分割条件下で実施することができる。当業者は、これらの混合及び/又は均質化及び/又は粒子分割条件、例えば、混合速度、分割、及び温度などを、そのプロセス用の機器に従って適合させる。
【0129】
本発明のpH値は、懸濁液中のpHを測定するために使用可能な任意のpHメーター、例えば、Mettler Toledo Seven Easy pHメーター及びMettler Toledo InLab(登録商標) Expert Pro pH電極で測定することができる。pHは25℃で測定され、pH値が±0.2単位以内で5分間変化がない場合、本発明によればpHは安定している。
【0130】
本発明によれば、尿素は抗菌添加剤として使用される。
【0131】
本発明に係る「尿素」又は「カルバミド」という用語は、化学式CO(NHを有する有機化合物、並びにその水和物及びその塩を指す。本発明に係る「尿素水和物」は、尿素及び水分子を含む有機化合物である。尿素水和物は当業者に公知であり、例えば、CAS番号163931-63-3の尿素一水和物などが市販されている。本発明に係る「尿素塩」は、尿素及びさらなるイオンを含む有機化合物である。尿素塩は当業者に公知であり、例えば、CAS番号4861-16-2のリン酸尿素又はCAS番号124-43-6の過酸化水素尿素などが市販されている。
【0132】
本発明に係る尿素は、1つ又は複数の異なる化学物質を含み得る。例えば、尿素は、CO(NH及び尿素一水和物を含み得る。好ましい実施形態によれば、本発明に係る尿素は、単にCO(NHからなる。
【0133】
尿素は、乾燥材料として、又は水性溶液の形態で使用することができる。
【0134】
尿素を乾燥材料として使用する場合、この材料は固体材料であり、すなわち、この尿素が、298.15K(25℃)の温度及び正確に100000Pa(1bar、14.5psi、0.98692atm)の絶対圧力を指す標準環境温度及び標準環境圧力(SATP)の下で固体であることを意味する。固体尿素は、例えば、粉末、錠剤、顆粒、フレークなどとして使用することができる。
【0135】
しかしながら、尿素はまた、水性溶液の形態で使用することができ、ここで、この尿素は溶媒に溶解されている。
【0136】
尿素を溶解するために使用可能な溶媒は、水及び/又は水と混和性である有機溶媒、例えば、エタノール、メタノール、アセトン、エチレングリコール、グリセリン、又はプロパノールなどの有機溶媒であってよい。例えば、溶媒は、水と、水と混和性である少なくとも1つの有機溶媒との混合物である。好ましい実施形態によれば、溶媒は水のみからなる。
【0137】
一実施形態によれば、尿素は、水性溶液として使用され、好ましくは、水性溶液は、この水性溶液の総重量に対して、20~75重量%、より好ましくは30~72重量%、さらにより好ましくは40~65重量%、最も好ましくは50~60重量%の尿素を含む形態である。
【0138】
本発明の一実施形態によれば、抗菌添加剤は、水性溶液として、炭酸カルシウム含有材料を含む水性懸濁液に添加され、好ましくは、水性溶液は、この水性溶液の総重量に対して、20~75重量%、より好ましくは30~72重量%、さらにより好ましくは40~65重量%、最も好ましくは50~60重量%の尿素を含む形態である。
【0139】
本発明の別の実施形態によれば、抗菌添加剤は、乾燥材料として、炭酸カルシウム含有材料を含む水性懸濁液に添加される。
【0140】
本発明の別の実施形態によれば、抗菌添加剤は、懸濁液の総重量に対して、1.2~20重量%の量で、好ましくは1.5~15重量%の量で、より好ましくは2.0~10重量%の量で、最も好ましくは2.5~8.5重量%の量で、懸濁液中で使用される。
【0141】
本発明の別の実施形態によれば、抗菌添加剤は、懸濁液の総重量に対して、1.2~20重量%の量で、好ましくは1.5~15重量%の量で、より好ましくは2.0~10重量%の量で、最も好ましくは2.5~8.5重量%の量で、懸濁液に添加される。
【0142】
本発明によれば、尿素は、請求項1に記載の水性懸濁液中の抗菌添加剤として使用され、この水性懸濁液中の尿素:水の重量比は、1:100~50:100である。本発明の一実施形態によれば、水性懸濁液中の尿素:水の重量比が、5:100~40:100、好ましくは9:100~30:100である。
【0143】
発明者らは驚くべきことに、請求項1に記載の水性懸濁液中の抗菌剤として尿素を使用することによって、水性懸濁液中の細菌の少なくとも1つの菌株及び/又は酵母の少なくとも1つの菌株及び/又はカビの少なくとも1つの菌株の発生を防止又は低減することが可能であることを見出した。したがって、尿素は、請求項1に記載の水性懸濁液中の細菌の少なくとも1つの菌株及び/又は酵母の少なくとも1つの菌株及び/又はカビの少なくとも1つの菌株に対して有効である。
【0144】
本発明の一実施形態では、細菌の少なくとも1つの菌株は、グラム陰性菌、グラム陽性菌、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0145】
グラム陽性菌及びグラム陰性菌は当技術分野で周知であり、例えば、Biology of Microorganisms, “Brock”, Madigan MT, Martinko JM, Parker J, 1997, 8th Editionに記載されている。特に、そのような細菌は、それぞれが多くの細菌ファミリーからなる進化的に非常に遠縁の細菌のクラスを表す。グラム陰性菌は2つの膜(外膜及び内膜)を特徴とするが、グラム陽性菌は1つの膜しか含まない。通常、グラム陰性菌は、大量のリポ多糖と薄い単層のペプチドグリカンを含むが、グラム陽性菌は、実質的にリポ多糖を含まず、多層の厚いペプチドグリカンを有し、その被膜にはタイコ酸が含まれている。これらの違いのために、グラム陽性菌とグラム陰性菌とは、環境の影響に対して異なる反応を示す。グラム陽性菌とグラム陰性菌とを区別する方法には、DNAシークエンシング技術又は生化学的特性による種の同定が含まれる。あるいは、膜の数を、薄切片透過型電子顕微鏡法によって直接決定することができる。
【0146】
本発明の意味における「細菌の少なくとも1つの菌株」という用語は、細菌の菌株が、1つ又は複数の細菌の菌株を含み、好ましくはそれからなることを意味する。
【0147】
本発明の一実施形態では、細菌の少なくとも1つの菌株は、細菌の1つの菌株を含み、好ましくはそれからなる。あるいは、細菌の少なくとも1つの菌株は、2つ又はそれを超える細菌の菌株を含み、好ましくはそれらからなる。例えば、細菌の少なくとも1つの菌株は、2つ又は3つの細菌の菌株を含み、好ましくはそれらからなる。好ましくは、細菌の少なくとも1つの菌株は、2つ又はそれを超える細菌の菌株を含み、好ましくはそれらからなる。
【0148】
例えば、細菌の少なくとも1つの菌株は、メチロバクテリウム属(Methylobacterium sp.);サルモネラ属(Salmonella sp.);エシェリキア属(Escherichia sp.)、例えばエシェリキア・コリ(Escherichia coli);シゲラ属(Shigella sp.);エンテロバクター属(Enterobacter sp.);シュードモナス属(Pseudomonas sp.)、例えば、シュードモナス・メンドシナ(Pseudomonas mendocina)、シュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)、シュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、及び/又はシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida);バークホルデリア属(Burkholderia sp.)、例えばバークホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia);ブデロビブリオ属(Bdellovibrio sp.);アグロバクテリウム属(Agrobacterium sp.);アルカリゲネス属(Alcaligenes sp.)、例えばアルカリゲネス・フェーカリス(Alcaligenes faecalis);フラボバクテリウム属(Flavobacterium sp.);オクロバクトラム属(Ochrobactrum sp.)、例えばオクロバクトラム・トリティシ(Ochrobactrum tritici);コクリア属(Kocuria sp.)、例えばコクリア・リゾフィラ(Kocuria rhizophila);リゾビウム属(Rhizobium sp.)、例えばリゾビウム・ラジオバクター(Rhizobium radiobacter);スフィンゴバクテリウム属(Sphingobacterium sp.);スフィンゴモナス属(Sphingomonas sp.);アエロモナス属(Aeromonas sp.);クロモバクテリウム属(Chromobacterium sp.);ビブリオ属(Vibrio sp.);ハイフォミクロビウム属(Hyphomicrobium sp.);レプトトリックス属(Leptothrix sp.);ミクロコッカス属(Micrococcus sp.);スタフィロコッカス属(Staphylococcus sp.)、例えばスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus);アグロマイセス属(Agromyces sp.);アシドボラクス属(Acidovorax sp.);コマモナス属(Comamonas sp.)、例えばコマモナス・アクアティカ(Comamonas aquatica);ブレブンディモナス属(Brevundimonas sp.)、例えば、ブレブンディモナス・インターメディア(Brevundimonas intermedia)及びブレブンディモナス・ディミヌタ(Brevundimonas diminuta);スフィンゴビウム属(Spingobium sp.)、例えばスフィンゴビウム・ヤノイクヤエ(Spingobium yanoikuyae);タウエラ属(Thauera sp.)、例えばタウエラ・メケルニケンシス(Thauera mechernichensis);カルディモナス属(Caldimonas sp.);ハイドロゲノファーガ属(Hydrogenophaga sp.);テピディモナス属(Tepidimonas sp.);及びそれらの混合物を含む群から選択される。
【0149】
例えば、細菌の少なくとも1つの菌株は、エシェリキア属(Escherichia sp.)、例えばエシェリキア・コリ(Escherichia coli);スタフィロコッカス属(Staphylococcus sp.)、例えばスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus);及びそれらの混合物から選択される。
【0150】
追加的に又は代わりに、酵母の少なくとも1つの菌株は、サッカロミケス亜門(Saccharomycotina);タフリナ菌亜門(Taphrinomycotina);シゾサッカロミケス綱(Schizosaccharomycetes);担子菌門(Basidiomycota);ハラタケ亜門(Agaricomycotina);シロキクラゲ綱(Tremellomycetes);サビキン亜門(Pucciniomycotina);ミクロボトリウム菌綱(Microbotryomycetes);カンジダ属(Candida sp.)、例えば、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、カンジダ・ステラトイデア(Candida stellatoidea)、カンジダ・グラブラータ(Candida glabrata)、カンジダ・クルーセイ(Candida krusei)、カンジダ・グイリエルモンディ(Candida guilliermondii)、カンジダ・ビスワナチイ(Candida viswanathii)、カンジダ・ルシタニアエ(Candida lusitaniae)、及びそれらの混合物;ヤロウイア属(Yarrowia sp.)、例えばヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica);クリプトコッカス属(Cryptococcus sp.)、例えば、クリプトコッカス・ガッティ(Cryptococcus gattii)及びクリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans);ジゴサッカロマイセス属(Zygosaccharomyces sp.);ロドトルラ属(Rhodotorula sp.)、例えばロドトルラ・ムシラギノーサ(Rhodotorula mucilaginosa);サッカロミセス属(Saccharomyces sp.)、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae);ピキア属(Pichia sp.)、例えばピキア・メンブラネファシエンス(Pichia membranifaciens);及びそれらの混合物を含む群から選択される。
【0151】
本発明の意味における「酵母の少なくとも1つの菌株」という用語は、酵母の菌株が、1つ又は複数の酵母の菌株を含み、好ましくはそれからなることを意味する。
【0152】
本発明の一実施形態では、酵母の少なくとも1つの菌株は、酵母の1つの菌株を含み、好ましくはそれからなる。あるいは、前記酵母の少なくとも1つの菌株は、2つ又はそれを超える酵母の菌株を含み、好ましくはそれらからなる。例えば、酵母の少なくとも1つの菌株は、2つ又は3つの酵母の菌株を含み、好ましくはそれらからなる。好ましくは、酵母の少なくとも1つの菌株は、2つ又はそれを超える酵母の菌株を含み、好ましくはそれらからなる。
【0153】
追加的に又は代替的に、カビの少なくとも1つの菌株は、アクレモニウム属(Acremonium sp.);アルテルナリア属(Alternaria sp.);アスペルギルス属(Aspergillus sp.);クラドスポリウム属(Cladosporium sp.);フサリウム属(Fusarium sp.);ムコール属(Mucor);ペニシリウム属(Penicillium sp.);リゾプス属(Rhizopus sp.);スタキボトリス属(Stachybotrys sp.);トリコデルマ属(Trichoderma sp.);デマチウム属(Dematiaceae sp.);フォーマ属(Phoma sp.);ユーロチウム属(Eurotium sp.);スコプラリオプシス属(Scopulariopsis sp.);オーレオバシディウム属(Aureobasidium sp.);モニリア属(Monilia sp.);ボトリティス属(Botrytis sp.);ステムフィリウム属(Stemphylium sp.);ケトミウム属(Chaetomium sp.);マイセリア属(Mycelia sp.);ニューロスポラ属(Neurospora sp.);ウロクラジウム属(Ulocladium sp.);ペシロマイセス属(Paecilomyces sp.);ワレミア属(Wallemia sp.);カーブラリア属(Curvularia sp.);及びそれらの混合物を含む群から選択される。
【0154】
本発明の意味における「カビの少なくとも1つの菌株」という用語は、カビの菌株が、1つ又は複数のカビの菌株を含む、好ましくはそれからなることを意味する。
【0155】
本発明の一実施形態では、カビの少なくとも1つの菌株は、カビの1つの菌株を含み、好ましくはそれからなる。あるいは、カビの少なくとも1つの菌株は、2つ又はそれを超えるカビの菌株を含み、好ましくはそれらからなる。例えば、カビの少なくとも1つの菌株は、2つ又は3つのカビの菌株を含み、好ましくはそれらからなる。好ましくは、カビの少なくとも1つの菌株は、2つ又はそれを超えるカビの菌株を含み、好ましくはそれらからなる。
【0156】
少なくとも1つの抗菌剤は、水性懸濁液中に存在する場合、細菌の少なくとも1つの菌株及び酵母の少なくとも1つの菌株及びカビの少なくとも1つの菌に対して効果的であることが好ましい。
【0157】
あるいは、少なくとも1つの抗菌剤は、水性懸濁液中に存在する場合、細菌の少なくとも1つの菌株又は酵母の少なくとも1つの菌株又はカビの少なくとも1つの菌株の発生に対して効果的である。
【0158】
本発明の別の実施形態によれば、尿素以外のさらなる抗菌添加剤を、水性懸濁液に添加しないか、又は水性懸濁液中で使用しない。
【0159】
本発明の意味において、抗菌剤は、水性調製物を安定化する能力を有し、すなわち、通常の量(例えば、抗菌剤の供給者によって提案される量)で投与した場合に、細菌の少なくとも1つの菌株及び/又は酵母の少なくとも1つの菌株及び/又はカビの少なくとも1つの菌株の微生物増殖を防止又は低減する能力を有する薬剤である。抗菌剤は当業者に公知であり、例えば、グルタルアルデヒド、2,2-ジブロモ-3-ニトリロプロピオンアミド、ブロノポール、又はオルトフェニルフェノールなどが市販されている。
【0160】
本発明の別の実施形態によれば、尿素は水性懸濁液中の抗菌添加剤として使用され、水性懸濁液は、この懸濁液の総重量に対して5~85重量%の少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料及び水を含み、かつpH7.0~14を有し、ここで、この抗菌添加剤は、水性懸濁液の総重量に対して、少なくとも1.2重量%の量で懸濁液中に存在し、かつ水性懸濁液中の尿素:水の重量比は、1:100~50:100である。
【0161】
本発明の好ましい実施形態によれば、尿素は水性懸濁液中の抗菌添加剤として使用され、水性懸濁液は、この懸濁液の総重量に対して5~85重量%の少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料及び水を含み、かつpH7.0~14を有し、ここで、この抗菌添加剤は、水性懸濁液の総重量に対して、少なくとも1.2重量%の量で懸濁液中に存在し、かつ水性懸濁液中の尿素:水の重量比は、1:100~50:100であり、かつ尿素以外のさらなる抗菌添加剤を水性懸濁液中で使用しない。
【0162】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、尿素は水性懸濁液中の抗菌添加剤として使用され、水性懸濁液は、この懸濁液の総重量に対して5~85重量%の少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料及び水を含み、かつpH7.0~14を有し、ここで、この抗菌添加剤は、水性懸濁液の総重量に対して、少なくとも1.2重量%の量で懸濁液中に存在し、かつ水性懸濁液中の尿素:水の重量比は、9:100~30:100であり、かつ尿素以外のさらなる抗菌添加剤を水性懸濁液中で使用せず、かつこの尿素が、CO(NHだけからなる。
【0163】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、尿素は水性懸濁液中の抗菌添加剤として使用され、水性懸濁液は、この懸濁液の総重量に対して68~78重量%の少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料及び水を含み、かつpH8.5~9.5を有し、ここで、この抗菌添加剤は、水性懸濁液の総重量に対して、2.5~8.5重量%の量で懸濁液中に存在し、かつ水性懸濁液中の尿素:水の重量比は、9:100~30:100である。
【0164】
発明者らは、驚くべきことに、請求項1に記載の抗菌添加剤として尿素を使用することにより、微生物の増殖、特に細菌及び/又は酵母及び/又はカビの増殖に対して、炭酸カルシウム含有材料を含む水性懸濁液を保護することが可能であることを見出した。請求項1に記載の抗菌添加剤として尿素を使用することによって、微生物の増殖を回避するために、水性懸濁液又はスラリーを加熱工程に供する必要がなく、したがって、尿素を抗菌添加剤として使用することにより、時間やエネルギーを消費する加熱工程なしでスラリーを提供することができる。さらに、微生物の増殖、特に細菌及び/又は酵母及び/又はカビの増殖に対して、炭酸カルシウム含有材料を含む水性懸濁液を保護するために、尿素以外のさらなる抗菌剤を本発明で使用する必要はない。
【0165】
さらに、尿素はヒトや動物の体内で形成される毒性の低い天然物質であり、このため、環境やヒトの健康に安全であると考えられている。したがって、請求項1に記載の抗菌添加剤として尿素を使用することにより、毒性又は危険性のある化合物を提供することなく、微生物の増殖に対して保護された懸濁液/スラリーを提供することが可能である。さらに、少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料を含む水性懸濁液中で、請求項1に記載の抗菌添加剤として尿素を使用すると、この水性懸濁液は、細菌及び/又は酵母及び/又はカビの増殖又は形成に対して保護されるだけでなく、これらの水性組成物は、農業における窒素肥料としても使用することができる。
【0166】
水性組成物が農業において窒素肥料として使用される場合には、それらは、窒素源でもある硝酸アンモニウムをさらに含むことができる。硝酸アンモニウムは、アンモニウムカチオンの硝酸塩であり、Nに簡略化される化学式NHNOを有する。硝酸アンモニウムは白い結晶の固体であり、水に非常に溶けやすい。硝酸アンモニウムは当業者に公知であり、市販されている。水性組成物は、尿素の乾燥重量に基づいて、40重量%までの硝酸アンモニウムを含むことができる。
【0167】
微生物の増殖に対して水性懸濁液を保護するための方法
本発明によれば、微生物の増殖に対して水性懸濁液を保護するための方法が提供され、この方法は以下の工程を含む:
(a)少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料を提供すること、
(b)抗菌添加剤として尿素を提供すること、
(c)工程(a)の少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料を工程(b)の少なくとも1つの抗菌添加剤と接触させて、水性懸濁液を提供すること、
ここで、水性懸濁液は、この懸濁液の総重量に対して5~85重量%の少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料を含み、かつpH7.0~14を有しており、かつ
水性懸濁液は、抗菌添加剤を、この懸濁液の総重量に対して、少なくとも1.2重量%の量で含み、かつ水性懸濁液中の尿素:水の重量比は1:100~50:100である。
【0168】
本発明の別の態様によれば、微生物の増殖に対して水性懸濁液を保護するための方法が提供され、この方法は以下の工程を含む:
(a)少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料を提供すること、
(b)抗菌添加剤として尿素を提供すること、
(c)工程(a)の少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料を工程(b)の少なくとも1つの抗菌添加剤と混ぜ合わせて、水性懸濁液を提供すること、及び
(d)工程(c)で得られた水性懸濁液を混合すること、
ここで、水性懸濁液は、この懸濁液の総重量に対して5~85重量%の少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料を含み、かつpH7.0~14を有しており、かつ
水性懸濁液は、抗菌添加剤を、この懸濁液の総重量に対して、少なくとも1.2重量%の量で含み、かつ水性懸濁液中の尿素:水の重量比は1:100~50:100である。
【0169】
工程(a)の特徴付け:炭酸カルシウム含有材料の提供
工程(a)によれば、炭酸カルシウムを含む材料が上記で定義したように提供される。
【0170】
本発明の方法の一実施形態によれば、炭酸カルシウム含有材料が、粉砕炭酸カルシウム、好ましくは大理石、石灰岩、ドロマイト、及び/又はチョーク;沈降炭酸カルシウム、好ましくはバテライト、カルサイト、及び/又はアラゴナイト;及び表面反応炭酸カルシウム;並びにこれらの混合物からなる群から選択され、ここで、表面反応炭酸カルシウムは、天然粉砕炭酸カルシウム又は沈降炭酸カルシウムと、二酸化炭素及び1つ又は複数のHイオン供与体との水性媒体中での反応生成物であり、この二酸化炭素は、Hイオン供与体での処理によってその場で形成され、かつ/又は外部供給源から供給され、より好ましくは、この少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料は、表面反応炭酸カルシウムである。
【0171】
炭酸カルシウム含有材料は、水性懸濁液の形態又は乾燥形態で提供することができることが理解される。
【0172】
炭酸カルシウム含有材料が水性懸濁液の形態である場合、水性懸濁液は、水性懸濁液の総重量に対して5~85重量%の範囲の固形分を有する。好ましい実施形態によれば、水性懸濁液の固形分は、水性懸濁液の総重量に対して10~84重量%の範囲内、より好ましくは30~83重量%の範囲内、より好ましくは50~82重量%の範囲内、さらにより好ましくは60~80重量%の範囲内、最も好ましくは68~78重量%の範囲内にある。
【0173】
「水性」懸濁液という用語は、液相が水を含み、好ましくは水からなる系を指す。しかしながら、この用語は、水性懸濁液の液相が、メタノール、エタノール、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、及びそれらの混合物を含む群から選択される少量の少なくとも1つの水混和性有機溶媒を含むことを排除するものではない。水性懸濁液が少なくとも1つの水混和性有機溶媒を含む場合、水性懸濁液の液相は、この水性懸濁液の液相の総重量に対して、0.1~40.0重量%、好ましくは0.1~30.0重量%、より好ましくは0.1~20.0重量%、最も好ましくは0.1~10.0重量%の量の少なくとも1つの水混和性有機溶媒を含む。例えば、水性懸濁液の液相は水からなる。
【0174】
好ましい実施形態によれば、水性懸濁液は、水及び炭酸カルシウム含有材料からなる。
【0175】
あるいは、水性の表面反応炭酸カルシウムの懸濁液は、さらなる添加剤を含む。
【0176】
追加的又は代替的に、この水性炭酸カルシウム含有材料懸濁液は、例えば、ポリアクリレートなどの分散剤及び/又は粉砕剤を含む。
【0177】
あるいは、工程(a)で提供される炭酸カルシウム含有材料は、乾燥炭酸カルシウム含有材料である。
【0178】
例えば、工程(a)で提供される炭酸カルシウム含有材料は、工程(a)で提供される炭酸カルシウム含有材料の乾燥重量に対して10.0重量%未満の含水率を有する。
【0179】
一実施形態では、工程(a)で提供される炭酸カルシウム含有材料は、工程(a)で提供された炭酸カルシウム含有材料の乾燥重量に対して、0.01重量%~10.0重量%、好ましくは0.01重量%~8.0重量%、より好ましくは0.01重量%~6.0重量%の含水率を有する。
【0180】
工程(b)の特徴付け:抗菌添加剤としての尿素の提供
工程(b)によれば、抗菌添加剤としての尿素が、上記で定義しように提供される。
【0181】
抗菌添加剤である尿素は、乾燥材料として、又は水性溶液の形態で使用することができる。
【0182】
一実施形態によれば、尿素は乾燥材料の形態で提供される。より具体的には、乾燥材料は固体材料の形態で提供され、すなわち、尿素が、298.15K(25℃)の温度及び正確に100000Pa(1bar、14.5psi、0.98692atm)の絶対圧力を指す標準環境温度及び標準環境圧力(SATP)の下で固体であることを意味する。固体尿素は、粉末、錠剤、顆粒、フレークなどとして提供することができる。
【0183】
しかしながら、尿素はまた、尿素が溶媒に溶解されている水性溶液の形態で提供することができる。
【0184】
尿素を溶解するために使用可能な溶媒は、水及び/又は水と混和性である有機溶媒、例えば、エタノール、メタノール、アセトン、エチレングリコール、グリセリン、又はプロパノールなどの有機溶媒であってよい。例えば、溶媒は、水と、水と混和性である少なくとも1つの有機溶媒との混合物である。好ましい実施形態によれば、溶媒は水のみからなる。
【0185】
一実施形態によれば、尿素は、水性溶液として提供され、水性溶液は、この水性溶液の総重量に対して、好ましくは20~75重量%、より好ましくは30~72重量%、さらにより好ましくは40~65重量%、最も好ましくは50~60重量%の尿素を含む形態である。
【0186】
あるいは、尿素は、水性溶液の形態で、好ましくは水性溶液の総重量に対して、1.7~20重量%の量で、好ましくは1.8~15重量%の量で、より好ましくは2.0~10重量%の量で、最も好ましくは2.5~8.5重量%の量で尿素を含む水性溶液の形態で提供される。
【0187】
本発明の別の実施形態によれば、抗菌添加剤は、乾燥材料の形態で提供される。
【0188】
別の実施形態によれば、尿素は、水性溶液の形態で提供され、この水性溶液中の尿素:水の重量比は、1:100~50:100、好ましくは5:100~40:100、より好ましくは9:100~30:100である。
【0189】
工程(c)の特徴付け:炭酸カルシウム含有材料と抗菌添加剤との混ぜ合わせ
工程(c)によれば、工程(a)の炭酸カルシウム含有材料は、工程(b)の少なくとも1つの微生物添加剤(抗菌添加剤)と混ぜ合わされて、水性懸濁液を提供する。
【0190】
混ぜ合わせは、1つ又は複数の工程で実施することができる。
【0191】
混ぜ合わせは、工程(c)において、水性懸濁液が、この懸濁液の総重量に対して5~85重量%の少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料を含み、かつpH7.0~14を有しており、かつ水性懸濁液が、抗菌添加剤を、この懸濁液の総重量に対して、少なくとも1.2重量%の量で含み、かつ水性懸濁液中の尿素:水の重量比が1:100~50:100となるようにして実施する必要がある。
【0192】
工程(a)の炭酸カルシウム含有材料を、工程(b)の少なくとも1つの抗菌添加剤と混ぜ合わせて水性懸濁液を提供する工程は、1つ又は複数の工程で、好ましくは混合条件下で行われる。当業者は、プロセス用機器に応じて、これらの混合条件(混合パレットの構成や混合速度など)を調整する。
【0193】
例えば、混合は、プラウシェアミキサーによって行うことができる。プラウシェアミキサーは、機械的に製造された流動床の原理によって機能する。プラウシェアブレードは、水平の円筒形ドラムの内壁の近くで回転し、混合物の成分を製品床から開いた混合スペースへと移送する。機械的に製造された流動床は、非常に短時間で大きなバッチでも強力な混合を保証する。チョッパー及び/又は分散機は、乾式操作で塊を分散させるために使用される。本発明の方法で使用することができる機器は、例えば、Gebrueder Loedige Maschinenbau GmbH(ドイツ)、VISCO JET Ruehrsysteme GmbH(ドイツ)、又はMTI Mischtechnik International GmbH(ドイツ)から入手可能である。
【0194】
一実施形態によれば、工程(a)の少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料は、スラリーの形態で提供され、工程(b)の少なくとも1つの抗菌添加剤は、乾燥形態又は水溶液の形態で添加される。例えば、工程(a)のなくとも1つの炭酸カルシウム含有材料は、スラリーの形態で提供され、工程(b)の少なくとも1つの抗菌添加剤は、乾燥形態で添加される。あるいは、工程(a)の少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料は、スラリーの形態で提供され、工程(b)の少なくとも1つの抗菌添加剤は、水溶液の形態で添加される。
【0195】
好ましい実施形態によれば、工程(a)の少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料が、スラリーの形態で提供され、ここで、この水性懸濁液/スラリーは、スラリーの総重量に対して、5~85重量%、好ましくは10~84重量%、より好ましくは30~83重量%、さらにより好ましくは50~82重量%、さらにより好ましくは60~80重量%、最も好ましくは68~78重量%の少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料を含み、かつ工程(b)の少なくとも1つの抗菌添加剤が乾燥形態で添加される。
【0196】
別の好ましい実施形態によれば、工程(a)の少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料は、スラリーの形態で提供され、この水性懸濁液/スラリーは、スラリーの総重量に対して、5~85重量%、好ましくは10~84重量%、より好ましくは30~83重量%、さらにより好ましくは50~82重量%、さらにより好ましくは60~80重量%、最も好ましくは68~78重量%の少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料を含み、かつ工程(b)の少なくとも1つの抗菌添加剤は、炭酸カルシウム含有材料を含む水性懸濁液に、水性溶液の形態で添加され、この水性溶液は、水性溶液の総重量に対して、好ましくは20~75重量%、より好ましくは30~72重量%、さらにより好ましくは40~65重量%、最も好ましくは50~60重量%の尿素を含む。
【0197】
別の実施形態によれば、工程(a)の少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料は、乾燥材料又はスラリーの形態で提供され、工程(b)の少なくとも1つの抗菌添加剤は、水溶液の形態で提供される。例えば、工程(b)の少なくとも1つの抗菌添加剤は、水性溶液の総重量に対して、1.7~20重量%の量で、好ましくは1.8~15重量%の量で、より好ましくは2.0~10重量%の量で、最も好ましくは2.5~8.5重量%の量で抗菌添加剤を含む水性溶液の形態で提供され、かつ工程(a)の少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料が、乾燥材料の形態で添加される。
【0198】
一実施形態では、この方法は、連続モードで実施される。この場合、工程(a)の炭酸カルシウム含有材料に、少なくとも1つの抗菌添加剤を一定の流れで添加し、それによって、工程(c)において、少なくとも1つの抗菌添加剤の一定濃度が提供されるようすることが可能である。
【0199】
あるいは、少なくとも1つの抗菌添加剤が、工程(a)の炭酸カルシウム含有材料に1つの工程で添加され、ここで、この少なくとも1つの抗菌添加剤は、好ましくは、一度に添加される。
【0200】
別の実施形態では、この方法は、バッチモードで実施することができる。すなわち、少なくとも1つの抗菌添加剤が、工程(a)の炭酸カルシウム含有材料に1つの工程で添加され、ここで、この少なくとも1つの抗菌添加剤は、好ましくは、ほぼ等分量に分けて添加される。あるいは、工程(a)の水性の炭酸カルシウム含有材料に、不均等な分量に分けて、すなわち、より大きな分量及びより小さな分量で、少なくとも1つの抗菌添加剤を添加することも可能である。
【0201】
本発明の一実施形態によれば、工程(c)は、0.1秒間~1000秒間、バッチ又は連続プロセスで実施される。例えば、工程(c)は連続プロセスであり、1つ又は複数の接触工程を含み、総接触時間は、0.1~20秒間、好ましくは0.5~15秒間、最も好ましくは1~10秒間である。
【0202】
工程(a)の炭酸カルシウム含有材料と工程(b)の少なくとも1つの抗菌添加剤との充分な混ぜ合わせを得るために、混ぜ合わせる工程(c)は、好ましくは混合条件下で行われる。当業者は、プロセス用機器に応じて、これらの混合条件(混合パレットの構成や混合速度など)を調整する。
【0203】
一実施形態では、混ぜ合わせる工程(c)は、少なくとも1分間、好ましくは少なくとも5分間、例えば、少なくとも10分間、15分間、20分間、30分間、又は45分間で実施される。追加的又は代替的に、混ぜ合わせる工程(c)は、最大で60分間、好ましくは最大で45分間、例えば、最大30分間で実施される。
【0204】
例えば、混ぜ合わせる工程(c)は、1分間~60分間の範囲内、好ましくは10分間~45分間の範囲内、最も好ましくは10分間~30分間の範囲内で実施される。例えば、混ぜ合わせる工程(c)は、20分間±5分間で実施される。
【0205】
混ぜ合わせは、工程(c)において、水性懸濁液が、この懸濁液の総重量に対して5~85重量%の少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料を含み、かつpH7.0~14を有しており、かつ水性懸濁液が、抗菌添加剤を、この懸濁液の総重量に対して、少なくとも1.2重量%の量で含み、かつ水性懸濁液中の尿素:水の重量比が1:100~50:100となるようにして実施される。
【0206】
好ましい実施形態によれば、抗菌添加剤は、懸濁液の総重量に対して、1.2~20重量%の量で、好ましくは1.5~15重量%の量で、より好ましくは2.0~10重量%の量で、最も好ましくは2.5~8.5重量%の量で懸濁液に添加される。
【0207】
混ぜ合わせは、工程(c)において、水性懸濁液が、この懸濁液の総重量に対して5~85重量%の少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料を含み、かつpH7.0~14を有しており、かつ水性懸濁液が、この懸濁液の総重量に対して、少なくとも1.2重量%の量の抗菌添加剤を含み、好ましくは、懸濁液の総重量に対して1.2~20重量%の量で、より好ましくは1.5~15重量%の量で、さらにより好ましくは2.0~10重量%の量で、最も好ましくは2.5~8.5重量%の量で含み、かつ水性懸濁液中の尿素:水の重量比が1:100~50:100となるようにして実施される。
【0208】
本発明の別の実施形態によれば、水性懸濁液のpHは、7.5~12、好ましくは8.2~10.0、最も好ましくは8.5~9.5である。
【0209】
混ぜ合わせは、工程(c)において、水性懸濁液が、この懸濁液の総重量に対して5~85重量%の少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料を含み、かつpH7.0~14を有しており、好ましくはpH7.5~12、より好ましくはpH8.2~10.0、最も好ましくはpH8.5~9.5であり、かつ水性懸濁液が、抗菌添加剤を、この懸濁液の総重量に対して、少なくとも1.2重量%の量で含み、かつ水性懸濁液中の尿素:水の重量比が1:100~50:100となるようにして実施される。
【0210】
本発明の別の実施形態によれば、水性懸濁液中の尿素:水の重量比が、5:100~40:100、好ましくは9:100~30:100である。
【0211】
混ぜ合わせは、工程(c)において、水性懸濁液が、この懸濁液の総重量に対して5~85重量%の少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料を含み、かつpH7.0~14を有しており、かつ水性懸濁液が、抗菌添加剤を、この懸濁液の総重量に対して、少なくとも1.2重量%の量で含み、かつ水性懸濁液中の尿素:水の重量比が、1:100~50:100、好ましくは5:100~40:100、より好ましくは9:100~30:100となるようにして実施される。
【0212】
好ましい実施形態によれば、本発明に係る方法は、尿素以外のさらなる抗菌添加剤を水性懸濁液に添加するさらなる方法工程を含まない。
【0213】
好ましい別の実施形態によれば、本発明に係る方法は、加熱工程を含まない。「加熱工程」という用語は、水性懸濁液が特定の期間、例えば少なくとも30秒間、25℃を超えて加熱される工程を指す。
【0214】
発明者らは、驚くべきことに、本発明の方法により、微生物の増殖、特に細菌及び/又は酵母及び/又はカビの増殖に対して、炭酸カルシウム含有材料を含む水性懸濁液を保護することが可能であることを見出した。特に、本発明に係る方法により、微生物の増殖を回避するために、水性懸濁液又はスラリーを加熱工程に供する必要がなく、したがって、本発明の方法において、時間又はエネルギーを消費する加熱工程は存在する必要がない。
【0215】
工程(d)の特徴付け:工程(c)で得られた水性懸濁液の混合
工程(d)において、工程(c)で得られた水性懸濁液を混合する。
【0216】
当業者は、プロセス用機器に応じて、混合条件(混合パレットの構成や混合速度など)を調整する。
【0217】
例えば、混合は、プラウシェアミキサーによって行うことができる。プラウシェアミキサーは、機械的に製造された流動床の原理によって機能する。プラウシェアブレードは、水平の円筒形ドラムの内壁の近くで回転し、混合物の成分を製品床から開いた混合スペースへと移送する。機械的に製造された流動床は、非常に短時間で大きなバッチでも強力な混合を保証する。チョッパー及び/又は分散機は、乾式操作で塊を分散させるために使用される。本発明の方法で使用され得る機器は、例えば、Gebrueder Loedige Maschinenbau GmbH(ドイツ)、VISCO JET Ruehrsysteme GmbH(ドイツ)、又はMTI Mischtechnik International GmbH(ドイツ)から入手可能である。
【0218】
本発明の方法によって得られる水性調製物
本発明の一態様によれば、本発明に係る方法によって得られる水性調製物が提供される。
【0219】
別の実施形態によれば、水性調製物は、以下の工程を含む方法によって得られる:
(a)少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料を提供すること、
(b)抗菌添加剤として尿素を提供すること、
(c)工程(a)の少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料を工程(b)の少なくとも1つの抗菌添加剤と接触させて、水性懸濁液を提供すること、
ここで、水性懸濁液は、この懸濁液の総重量に対して5~85重量%の少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料を含み、かつpH7.0~14を有しており、かつ
水性懸濁液は、抗菌添加剤を、この懸濁液の総重量に対して、少なくとも1.2重量%の量で含み、かつ水性懸濁液中の尿素:水の重量比は1:100~50:100である。
【0220】
別の実施形態によれば、水性調製物が提供され、この水性調製物は、抗菌添加剤としての尿素と、懸濁液の総重量に対して5~85重量%の少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料とを含み、かつpH7.0~14を有し、ここで、抗菌添加剤は、水性懸濁液の総重量に対して、少なくとも1.2重量%の量で懸濁液中に存在し、かつ水性懸濁液中の尿素:水の重量比は1:100~50:100である。
【0221】
本発明者らは、驚くべきことに、本発明に係る水性調製物が、微生物の増殖に対して、特に、特に細菌及び/又は酵母及び/又はカビの増殖に対して保護されることを見出した。本発明の好ましい実施形態によれば、本発明の水性調製物は、抗菌添加剤として尿素のみを含み、さらなる抗菌剤を含まない。
【0222】
尿素はヒトや動物の体内で形成される天然物質であり、より正確には、肝臓が尿素回路で2つのアンモニア分子(NH)と二酸化炭素(CO)分子とを結合させることによって尿素を形成する。尿素は無毒性であるか、又は危険性がない。このため、得られる水性調製物は毒性化合物を含まず、したがって、安全で、環境及びヒトの健康に無毒である。さらに、得られる水性調製物は、殺生物剤を含む公知の水性調製物に必要とされるのと同等であるか、又はさらに低い安全基準を必要とする。
【0223】
本発明の別の態様によれば、本発明の方法によって得られる水性調製物が提供される。
【0224】
本発明の別の態様によれば、植物における光合成プロセスの刺激、植物成長の刺激、植物病害に対する抵抗性の強化、栄養吸収の改善、及び植物栄養素のための植物ブースター及び/又はミネラル肥料として農業で使用するための、本発明の方法によって得られる水性調製物が提供される。
【0225】
水性調製物の使用
本発明の一態様によれば、本発明に係る水性調製物は、植物における光合成プロセスの刺激、植物成長の刺激、植物病害に対する抵抗性の強化、栄養吸収の改善、及び植物栄養素のための植物ブースター及び/又はミネラル肥料として農業で使用される。
【0226】
尿素は窒素を含んでいるため、窒素源として肥料に使用することができる。したがって、本発明の水性調製物は、例えば、植物ブースターとして農業で使用することができると同時に、細菌及び/又は酵母及び/又はカビの増殖又は形成に対して保護される。
【0227】
水性懸濁液の保護方法
本発明の別の態様によれば抗菌添加剤としての尿素によって水性懸濁液を保護する(保存する)ための方法が提供され、水性懸濁液は、この懸濁液の総重量に対して5~85重量%の少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料を含み、かつpH7.0~14を有し、ここで、この方法は、抗菌添加剤をこの懸濁液に添加する工程を含み、それによって、抗菌添加剤の量は、水性懸濁液の総重量に対して少なくとも1.2重量%であり、かつ水性懸濁液中の尿素:水の重量比は、1:100~50:100であるようにされていることを特徴とする。
【0228】
本発明の方法の有利な態様を以下に定義する。
一態様によれば、抗菌添加剤は、炭酸カルシウム含有材料を含む水性懸濁液に、水性溶液として添加され、好ましくは、水性溶液は、この水性溶液の総重量に対して、20~75重量%、より好ましくは30~72重量%、さらにより好ましくは40~65重量%、最も好ましくは50~60重量%の尿素を含む形態である。
【0229】
別の態様によれば、抗菌添加剤は、炭酸カルシウム含有材料を含む水性懸濁液に乾燥材料として添加される。
【0230】
別の態様によれば、抗菌添加剤は、懸濁液の総重量に対して1.2~20重量%の量で、好ましくは1.5~15重量%の量で、より好ましくは2.0~10重量%の量で、最も好ましくは2.5~8.5重量%の量で懸濁液に添加される。
【0231】
別の態様によれば、炭酸カルシウム含有材料は、炭酸カルシウム含有材料の総乾燥重量に対して少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも97重量%の炭酸カルシウムを含む。
【0232】
別の態様によれば、水性懸濁液は、この懸濁液の総重量に対して10~84重量%、好ましくは30~83重量%、より好ましくは50~82重量%、さらにより好ましくは60~80重量%、最も好ましくは68~78重量%の少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料を含む。
【0233】
別の態様によれば、炭酸カルシウム含有材料は、粉砕炭酸カルシウム、好ましくは大理石、石灰岩、ドロマイト、及び/又はチョーク;沈降炭酸カルシウム、好ましくはバテライト、カルサイト、及び/又はアラゴナイト;及び表面反応炭酸カルシウム;並びにそれらの混合物からなる群から選択され、ここで、表面反応炭酸カルシウムは、天然粉砕炭酸カルシウム又は沈降炭酸カルシウムと、二酸化炭素及び1つ又は複数のHイオン供与体との水性媒体中での反応生成物であり、この二酸化炭素は、Hイオン供与体での処理によってその場で形成され、かつ/又は外部供給源から供給され、より好ましくは、少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料は、粉砕炭酸カルシウムである。
【0234】
別の態様によれば、抗菌添加剤は、水性懸濁液中に存在する場合、細菌の少なくとも1つの菌株及び/又は酵母の少なくとも1つの菌株及び/又はカビの少なくとも1つの菌株の発生を防止又は低減する。
【0235】
別の態様によれば、
(i)上記細菌の少なくとも1つの菌株が、メチロバクテリウム属(Methylobacterium sp.);サルモネラ属(Salmonella sp.);エシェリキア属(Escherichia sp.)、例えばエシェリキア・コリ(Escherichia coli);シゲラ属(Shigella sp.);エンテロバクター属(Enterobacter sp.);シュードモナス属(Pseudomonas sp.)、例えば、シュードモナス・メンドシナ(Pseudomonas mendocina)、シュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)、シュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、及び/又はシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida);バークホルデリア属(Burkholderia sp.)、例えばバークホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia);ブデロビブリオ属(Bdellovibrio sp.);アグロバクテリウム属(Agrobacterium sp.);アルカリゲネス属(Alcaligenes sp.)、例えばアルカリゲネス・フェーカリス(Alcaligenes faecalis);フラボバクテリウム属(Flavobacterium sp.);オクロバクトラム属(Ochrobactrum sp.)、例えばオクロバクトラム・トリティシ(Ochrobactrum tritici);コクリア属(Kocuria sp.)、例えばコクリア・リゾフィラ(Kocuria rhizophila);リゾビウム属(Rhizobium sp.)、例えばリゾビウム・ラジオバクター(Rhizobium radiobacter);スフィンゴバクテリウム属(Sphingobacterium sp.);スフィンゴモナス属(Sphingomonas sp.);アエロモナス属(Aeromonas sp.);クロモバクテリウム属(Chromobacterium sp.);ビブリオ属(Vibrio sp.);ハイフォミクロビウム属(Hyphomicrobium sp.);レプトトリックス属(Leptothrix sp.);ミクロコッカス属(Micrococcus sp.);スタフィロコッカス属(Staphylococcus sp.)、例えばスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus);アグロマイセス属(Agromyces sp.);アシドボラクス属(Acidovorax sp.);コマモナス属(Comamonas sp.)、例えばコマモナス・アクアティカ(Comamonas aquatica);ブレブンディモナス属(Brevundimonas sp.)、例えば、ブレブンディモナス・インターメディア(Brevundimonas intermedia)及びブレブンディモナス・ディミヌタ(Brevundimonas diminuta);スフィンゴビウム属(Spingobium sp.)、例えばスフィンゴビウム・ヤノイクヤエ(Spingobium yanoikuyae);タウエラ属(Thauera sp.)、例えばタウエラ・メケルニケンシス(Thauera mechernichensis);カルディモナス属(Caldimonas sp.);ハイドロゲノファーガ属(Hydrogenophaga sp.);テピディモナス属(Tepidimonas sp.);及びそれらの混合物を含む群から選択され、かつ/又は
(ii)上記酵母の少なくとも1つの菌株が、サッカロミケス亜門(Saccharomycotina);タフリナ菌亜門(Taphrinomycotina);シゾサッカロミケス綱(Schizosaccharomycetes);担子菌門(Basidiomycota);ハラタケ亜門(Agaricomycotina);シロキクラゲ綱(Tremellomycetes);サビキン亜門(Pucciniomycotina);ミクロボトリウム菌綱(Microbotryomycetes);カンジダ属(Candida sp.)、例えば、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、カンジダ・ステラトイデア(Candida stellatoidea)、カンジダ・グラブラータ(Candida glabrata)、カンジダ・クルーセイ(Candida krusei)、カンジダ・グイリエルモンディ(Candida guilliermondii)、カンジダ・ビスワナチイ(Candida viswanathii)、カンジダ・ルシタニアエ(Candida lusitaniae)、及びそれらの混合物;ヤロウイア属(Yarrowia sp.)、例えばヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica);クリプトコッカス属(Cryptococcus sp.)、例えば、クリプトコッカス・ガッティ(Cryptococcus gattii)及びクリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans);ジゴサッカロマイセス属(Zygosaccharomyces sp.);ロドトルラ属(Rhodotorula sp.)、例えばロドトルラ・ムシラギノーサ(Rhodotorula mucilaginosa);サッカロミセス属(Saccharomyces sp.)、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae);ピキア属(Pichia sp.)、例えばピキア・メンブラネファシエンス(Pichia membranifaciens);及びそれらの混合物を含む群から選択され、かつ/又は
(iii)上記カビの少なくとも1つの菌株が、アクレモニウム属(Acremonium sp.);アルテルナリア属(Alternaria sp.);アスペルギルス属(Aspergillus sp.);クラドスポリウム属(Cladosporium sp.);フサリウム属(Fusarium sp.);ムコール属(Mucor);ペニシリウム属(Penicillium sp.);リゾプス属(Rhizopus sp.);スタキボトリス属(Stachybotrys sp.);トリコデルマ属(Trichoderma sp.);デマチウム属(Dematiaceae sp.);フォーマ属(Phoma sp.);ユーロチウム属(Eurotium sp.);スコプラリオプシス属(Scopulariopsis sp.);オーレオバシディウム属(Aureobasidium sp.);モニリア属(Monilia sp.);ボトリティス属(Botrytis sp.);ステムフィリウム属(Stemphylium sp.);ケトミウム属(Chaetomium sp.);マイセリア属(Mycelia sp.);ニューロスポラ属(Neurospora sp.);ウロクラジウム属(Ulocladium sp.);ペシロマイセス属(Paecilomyces sp.);ワレミア属(Wallemia sp.);カーブラリア属(Curvularia sp.);及びそれらの混合物を含む群から選択される。
【0236】
別の態様によれば、水性懸濁液のpHは、7.5~12、好ましくは8.2~10.0、最も好ましくは8.5~9.5である。
【0237】
別の態様によれば、尿素以外のさらなる抗菌添加剤は、水性懸濁液に添加されない。
【0238】
別の態様によれば、水性懸濁液中の尿素:水の重量比は、5:100~40:100、好ましくは9:100~30:100である。
【0239】
本発明の範囲及び利益は、下記実施例に基づいてよりよく理解される。これらの実施例は、本発明のある特定の実施態様を示すように意図されており、かつ非限定的である。
【実施例
【0240】
1.測定方法
以下に実施例で実施した測定方法について説明する。
【0241】
材料のBET比表面積
本明細書全体を通して、材料の比表面積(m/g)は、当業者に周知のBET法(吸着ガスとして窒素を使用)を使用して決定される(ISO 9277:2010)。次に、鉱物充填剤の総表面積(m)は、処理前の鉱物充填剤の比表面積と質量(g)とを乗算することによって得られる。
【0242】
粒子状材料の粒径分布(<Xの直径の粒子の質量%)及び重量メジアン径(d 50
粒子状材料の重量メジアン粒径及び粒径質量分布は、沈降プロセス、すなわち重力場における沈降挙動の分析により決定した。測定は、Micromeritics Instrument Corporation社のSedigraph(商標)5100を使用して行った。
【0243】
表面反応炭酸カルシウムの体積に基づくメジアン粒径は、Malvern Mastersizer 2000を使用して決定した。
【0244】
この方法及び器具は当業者に公知であり、充填剤及び顔料の粒径を決定するために一般的に使用されている。測定は、0.1重量%のNa水溶液中で行われる。試料は、高速攪拌機及び超音波を使用して分散される。
【0245】
固形分
固形分(「乾燥重量」としても知られる)は、スイスのメトラー・トレド(Mettler-Toledo)社のMoisture Analyser MJ33(水分計)を使用して、以下の設定で決定した:120℃の温度、自動スイッチオフ3、標準乾燥、5~20gの生成物。
【0246】
pH測定
懸濁液のpHは、Mettler Toledo Seven Easy pHメーター及びMettler Toledo InLab(登録商標) Expert Pro pH電極を使用して25℃で測定する。機器の3点校正(セグメント法による)は、最初に、20℃でpH値が4、7、及び10の市販の緩衝液(Aldrich製)を使用して行う。報告されるpH値は、機器によって検出されたエンドポイント値である(このエンドポイントは、測定された信号の過去6回分の平均との差が0.1mV未満の場合である)。
【0247】
ブルックフィールド粘度
ブルックフィールド粘度は、Brookfield DV-III Ultra粘度計により、LV-3スピンドルを使用して20℃±3℃、100rpmで測定され、mPa・sで表記される。スピンドルが試料に挿入されると、100rpmの一定の回転速度で測定が開始される。報告されるブルックフィールド粘度値は、測定開始から60秒後に表示される値である。
【0248】
総生菌数(一般生菌数)
すべての引用した細菌数(総生菌数(TVC:Total viable counts)値)は、特に明記されていない限り、cfu/mLで示され、プレートアウト及び30℃でのインキュベーション後、少なくとも2日後に、「“Bestimmung von aerobe mesophilen Keimen”,Schweizerisches Lebensmittelbuch,chapter 56,section 7.01,edition of 1985,revised version of 1988」に記載のカウント方法に従って測定される。
【0249】
特に明記しない限り、トリプティックソイ寒天培地プレート(TSA、BD 236950を使用して調製)ごとに、0.1mLの溶液又は懸濁液をプレーティングする。10000cfu/mL~99999cfu/mLのカウントは、>1E4(>1×10)cfu/mLとして報告される。100000cfu/mL~999999cfu/mLのカウントは、>1E5(>1×10)cfu/mLとして報告される。1000000cfu/mLを超えるカウントは、>1E6(>1×10)cfu/mLとして報告される。
【0250】
濃縮尿素溶液(>25重量%尿素)に存在する細菌を特定するために、3mLの尿素溶液を滅菌した12mLの0.9重量%NaCl溶液で希釈する。次に、混合物を遠心分離し(400gで10分間)、0.1mLの上清がペレットに残るまで上清を除去する。このペレットを残りの上清に再懸濁し、TVCを上記のように0.1mLで測定する。細菌数はcfu/3mLとして示される。
【0251】
2.実施例
炭酸カルシウム含有材料の懸濁液の調製
炭酸カルシウム含有材料(イタリア産大理石、d50=10μm、21%<2μm、炭酸カルシウム含有量≧97.5重量%)の水性スラリーを、スラリーの総重量に基づいて、75重量%の固形分で調製する。このスラリーは、200Lの垂直ボールミルで、ナトリウム/カルシウム中和ポリアクリレート粉砕剤(Mw6000)の乾燥固形分に対して0.6重量%を使用して、95℃で湿式粉砕され、以下の最終粒径分布となる。
【0252】
H60は、d50=1.4~1.6μm、58.8~61.5重量%<2μm、37~40.3重量%<1μm、8.2~12.4重量%<0.2μmの粒径分布、100~150mPa・sのブルックフィールド粘度、pH8.5~9.0、及びスラリーの総重量に対して、≧75重量%の固形分であるという特徴を有するスラリーを指す。
【0253】
H90は、d50=0.67μm、89.9重量%<2μm、63.3重量%<1μm、21.2重量%<0.2μmの粒径分布、100~150mPa・sのブルックフィールド粘度、pH8.5~9.0、及びスラリーの総重量に対して、≧75重量%の固形分であるという特徴を有するスラリーを指す。
【0254】
H60及びH90の滅菌スラリーは、蒸気圧下で1kgのスラリーアリコートを2Lの容器に入れて121℃で15分間オートクレーブ滅菌することにより調製される。
【0255】
保護された炭酸カルシウム含有材料の懸濁液の調製
尿素を含有する炭酸カルシウム含有材料のスラリーは、上記のスラリー(H60又はH90)を乾燥尿素(Sigma-Aldrich 15604)又は濃縮尿素溶液(≧50重量%)、及び/又は水と混ぜ合わせることによって調製される。
【0256】
尿素溶液は、乾燥尿素及び脱イオン水を使用するか、又はVendor(Yara Canda Inc.)から供給された尿素溶液の総重量に基づいて、工業用グレードの50重量%尿素溶液を使用して調製される。
【0257】
得られた尿素含有量、水分含有量、及び炭酸カルシウム含有量は、水、尿素、及び/又は炭酸カルシウムスラリーの測定固形分を使用して混ぜ合わされたスラリーの測定量から計算される。計算では、スラリーの固形分は100%炭酸カルシウムからなると見なされる。
【0258】
接種材料の準備
非滅菌スラリー(H60又はH90)には、TVC>100000cfu/mLの環境細菌による汚染が含まれている。汚染は自然発生的に生じ、接種材料としての使用前に、TVCによる少なくとも100000cfu/mLを超える細菌負荷が確認される。16S RNAシークエンシング又はMALDI-TOF-MS分析によって特定されるように、以下の細菌種が発生することが公知である:リゾビウム・ラジオバクター(Rhizobium radiobacter)、ブレブンディモナス・インターメディア(Brevundimonas intermedia)、ブレブンディモナス・ディミヌタ(Brevundimonas diminuta)、スフィンゴモナス属(Sphingomonas sp.)、シュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)、シュードモナス属(Pseudomonas sp.)、コマモナス・アクアティカ(Comamonas aquatica)。
【0259】
単一の細菌種(例えば、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)(DSMZ 46295)又はシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)を含む接種材料の調製のために、細菌を、希釈ストリークによってトリプティックソイブロス寒天培地(BD 236950)に広げ、続いて、コロニーが出現するまで30℃で少なくとも24時間インキュベートする。3mLのトリプティックソイブロス(Fluka 22092)に単一コロニーを接種した後、毎分回転数(rpm)で、30℃で24時間撹拌しながらインキュベートすることによって、一晩培養物を生成する。
【0260】
実施例1
H90スラリーの総重量に基づいて固形分が75重量%の50gの滅菌スラリーH90に、様々な濃度の乾燥尿素を添加する。その後、試料を30℃で3日間保存する。保存後、試料に1mLの非滅菌炭酸カルシウムスラリー(H90)を接種し、30℃で3日間インキュベートし、TVCを測定する。試料にさらに1mLの非滅菌炭酸カルシウムスラリー(H90)を接種する。3回までの接種を行う。
【0261】
【表1】
【0262】
表1から理解されるように、低尿素濃度において、尿素は、細菌増殖から炭酸カルシウムスラリーを保護することができない。
【0263】
実施例2
H60スラリーの総重量に基づいて固形分が76.5重量%の50gの滅菌スラリーH60に、様々な量の61重量%の尿素溶液又は水を添加する。次に、試料に、1mLの非滅菌炭酸カルシウムスラリー(H60)、1mLの非滅菌炭酸カルシウムスラリー(H90)、0.02mLのエシェリキア・コリ(E.coli(Escherichia coli))(DSMZ 46295)の一晩培養物、及び0.02mLのシュードモナス・プチダ(P.putida(Pseudomonas putida))の一晩培養物を接種する。対照(コントロール)試料には接種しない。試料は30℃でインキュベートし、かつ様々な時点(0日、1日、4日、8日、9日、及び/又は13日)で、TVC及びpHを測定する。
【0264】
【表2】
【0265】
【表3】
【0266】
表2及び表3から理解されるように、高尿素濃度において、尿素は、細菌増殖から炭酸カルシウムスラリーを、少なくとも13日間にわたって保護することができる。
【0267】
実施例3
H60スラリーの総重量に基づいて、固形分が77.3重量%の50gの滅菌炭酸カルシウムスラリー(H60)に、工業用グレードの50重量%の尿素溶液(Yara Canda Inc.)又は水を添加して様々な最終濃度とする。工業用グレードには、天然に存在する細菌(すなわち、非増殖状態の細菌)が含まれていた。工業用尿素に負荷されている細菌は、TVCによって決定した5cfu/3mLである。菌種は、当業者に公知の16S RNAシークエンシングによってTVCから成長したコロニーを特性評価することによって同定される。
【0268】
同定された菌種は、スポロサルシナ・コレエンシス(Sporosarcina koreensis)(グラム陽性、ウレアーゼ陽性、胞子形成)、パエニバチルス属(Paenibacillus sp.)(グラム陽性、ウレアーゼ陽性、胞子形成)、及びハロバチルス・トゥルーペリー(Halobacillus trueperi)(グラム陽性菌、ウレアーゼ陰性、胞子形成)である。
【0269】
さらに、試料に、1mLの非滅菌炭酸カルシウムスラリー(H60)、1mLの非滅菌炭酸カルシウムスラリー(H90)、0.02mLのエシェリキア・コリ(E.coli(Escherichia coli))(DSMZ 46295)の一晩培養物、及び0.02mLのシュードモナス・プチダ(P.putida(Pseudomonas putida))の一晩培養物を人工的に接種する。対照(コントロール)試料には接種しない。試料は30℃でインキュベートし、様々な時点(0日、1日、4日、8日、11日、及び13日)で、TVC及びpHを測定する。
【0270】
【表4】
【0271】
実施例4
H60スラリーの総重量に基づいて、固形分が78.3重量%の50gの滅菌炭酸カルシウムスラリー(H60)に、61重量%の尿素溶液又は水を添加して様々な最終濃度とする。試料に、1mLの非滅菌炭酸カルシウムスラリー(H60)を接種する。試料を30℃でインキュベートし、様々な時点(0日、1日、4日、及び11日)でTVC及びpHを測定する。
【0272】
【表5】
【0273】
実施例5
H60スラリーの総重量に対して固形分75重量%の炭酸カルシウムスラリー(H60)1kgを、毎分約500回転(rpm)で撹拌し、攪拌中に27.5gの乾燥尿素をゆっくりと加えることにより、得られたスラリーの総重量に対して2.68重量%の尿素及び73重量%の炭酸カルシウムを含むスラリーを得る。このブレンドをさらに低速(<500rpm)で30分間混合する。
【0274】
乾燥尿素を添加しても、生成物に悪影響を与えることはない。凝集塊は形成されず、粘度は上昇しない。生成物は室温及び40℃で7日間安定なままである。
【国際調査報告】