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特表2022-537261蒸発器カートリッジ、並びに、そのような蒸発器カートリッジを有する吸入器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-25
(54)【発明の名称】蒸発器カートリッジ、並びに、そのような蒸発器カートリッジを有する吸入器
(51)【国際特許分類】
   A24F 40/10 20200101AFI20220818BHJP
   A24F 40/42 20200101ALI20220818BHJP
   A24F 40/44 20200101ALI20220818BHJP
   A24F 40/46 20200101ALI20220818BHJP
【FI】
A24F40/10
A24F40/42
A24F40/44
A24F40/46
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021572392
(86)(22)【出願日】2020-06-17
(85)【翻訳文提出日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 EP2020066737
(87)【国際公開番号】W WO2020254390
(87)【国際公開日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】102019116728.0
(32)【優先日】2019-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】595112018
【氏名又は名称】ハウニ・マシイネンバウ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ベルクマン・マクス
(72)【発明者】
【氏名】コルニルス・ラッセ
(72)【発明者】
【氏名】ギーゼ・マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ハンネケン・クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ヤクリン・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ケスラー・マルク
(72)【発明者】
【氏名】クライネ・ヴェヒター・ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー・トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ロンミング・ニクラス
(72)【発明者】
【氏名】シュミット・レーネ
(72)【発明者】
【氏名】シュースター・クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ヴットケ・トビアス
【テーマコード(参考)】
4B162
【Fターム(参考)】
4B162AA05
4B162AA22
4B162AB14
4B162AB23
4B162AC17
4B162AC18
4B162AC27
4B162AC41
(57)【要約】
【解決手段】本発明は、吸入器の構成要素としての蒸発器カートリッジ10に関し、この蒸発器カートリッジが、貫通した流動通路16を有する中空体15と、液体の貯蔵のための貯蔵タンク17とを備えており、その際、この貯蔵タンク17が、前記流動通路16への少なくとも1つのアクセス開口部18を有しており、且つ、それぞれの前記アクセス開口部18の領域内において、このアクセス開口部18全体にわたって延在する蒸発器ユニット19が配置されており、この蒸発器ユニット19が、ウィック要素20と加熱要素21とを有しており、その際、前記蒸発器ユニット19が、液体が少なくとも初期に毛細管現象により前記貯蔵タンク17から前記蒸発器ユニット19を通って前記流動通路16への方向に搬送可能であるように、液体浸透的に形成されている様式の上記蒸発器カートリッジ10において、前記ウィック要素20が多数の粒状物質状の粒24から形成されており、これら粒が、これら粒のばら積み堆積及び/または構成に基づいて微細通路23を形成する。本発明は、更に吸入器14に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入器の構成要素としての蒸発器カートリッジ(10)であって、この蒸発器カートリッジが、貫通する流動通路(16)を有する中空体(15)と、液体の貯蔵のための貯蔵タンク(17)とを備えており、
この貯蔵タンク(17)が、前記流動通路(16)への少なくとも1つのアクセス開口部(18)を有しており、且つ、それぞれの前記アクセス開口部(18)の領域内において、このアクセス開口部(18)全体にわたって延在する蒸発器ユニット(19)が配置されており、この蒸発器ユニット(19)が、ウィック要素(20)と加熱要素(21)とを有しており、
前記蒸発器ユニット(19)が、液体が少なくとも初期に毛細管現象により前記貯蔵タンク(17)から前記蒸発器ユニット(19)を通って前記流動通路(16)への方向に搬送可能であるように、液体浸透的に形成されている様式の上記蒸発器カートリッジ(10)において、
前記ウィック要素(20)が多数の粒状物質状の粒(24)から形成されており、これら粒が、これら粒のばら積み堆積及び/または構成に基づいて微細通路(23)を形成する、
ことを特徴とする蒸発器カートリッジ(10)。
【請求項2】
前記微細通路(23)は、貫通して、前記ウィック要素(20)の流入側Eから、このウィック要素(20)の流出側Aへと延在していることを特徴とする請求項1に記載の蒸発器カートリッジ(10)。
【請求項3】
前記蒸発器カートリッジ(10)は、吸入器(14)の形成のために、少なくとも電子式の制御ユニット(11)とエネルギー供給源(12)とを備えるカートリッジ担持体(13)との機械的および電気的な結合のために形成および設備されており、
その際、前記蒸発器ユニット(19)が、前記エネルギー供給源(12)との電気的な接触のための電気的な接点(22)を備えている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の蒸発器カートリッジ(10)。
【請求項4】
粒状の前記ウィック要素(20)を形成する粒状の材料は、少なくとも部分的に導電性であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の蒸発器カートリッジ(10)。
【請求項5】
前記アクセス開口部(18)の領域内において、収容室(25)が、前記蒸発器ユニット(19)の収容のために形成されており、
その際、この収容室(25)が、前記貯蔵タンク(17)から前記蒸発器ユニット(19)内への液体の収容のため、および、前記蒸発器ユニット(19)から前記流動通路(16)内へのガス状の流体/蒸気の引き渡しのために、
少なくとも部分的に、液体浸透的、および、気体浸透的、もしくは、蒸気浸透的な構造によって区画されている、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の蒸発器カートリッジ(10)。
【請求項6】
前記蒸発器カートリッジ(10)は、担持要素(29)を備えており、この担持要素が、前記中空体(15)を形成し、且つ、一方では、前記流動通路(16)を形成するための貫通開口部(30)を有しており、および、他方では、前記蒸発器ユニット(19)の収容のための切欠き部(31)を有している、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の蒸発器カートリッジ(10)。
【請求項7】
粒状のおよび導電性の材料から形成された沈積物は、この沈積物が、平行な及び/または一列に接続された抵抗を有する3次元的な抵抗加熱マトリックスを形成するように固定されていることを特徴とする請求項4から6のいずれか一つに記載の蒸発器カートリッジ(10)。
【請求項8】
前記ウィック要素(20)の前記粒(24)は、これら粒の材料選択、及び/または、これら粒の大きさに関して、同じに、及び/または、同じでなく形成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一つに記載の蒸発器カートリッジ(10)。
【請求項9】
前記ウィック要素(20)の前記粒(24)は、前記貯蔵タンク(17)を出発点として、前記流動通路(16)への方向に、局部的に異なる粒径を有していることを特徴とする請求項1から8のいずれか一つに記載の蒸発器カートリッジ(10)。
【請求項10】
前記ウィック要素(20)の前記粒(24)は、前記貯蔵タンク(17)を出発点として、前記流動通路(16)への方向に、局部的に、異なる材料から成っていることを特徴とする請求項1から9のいずれか一つに記載の蒸発器カートリッジ(10)。
【請求項11】
前記ウィック要素(20)の前記粒(24)は、緩いばら積み堆積として、前記収容室(25)の内部で位置していることを特徴とする請求項5から10のいずれか一つに記載の蒸発器カートリッジ(10)。
【請求項12】
前記ウィック要素(20)の前記粒(24)は、互いに結合されたばら積み堆積として、前記収容室(25)の内部で位置していることを特徴とする請求項5から10のいずれか一つに記載の蒸発器カートリッジ(10)。
【請求項13】
前記粒径は、0.1μmと2mmとの間の値、および、特に有利には3μmと300μmとの間の値であることを特徴とする請求項1から12のいずれか一つに記載の蒸発器カートリッジ(10)。
【請求項14】
最大の前記粒径は、それぞれに搬送されるべき液体の流動特性に依存して、毛細管現象による搬送を不可能にする大きさの範囲外にあることを特徴とする請求項1から13のいずれか一つに記載の蒸発器カートリッジ(10)。
【請求項15】
前記粒(24)は、砂及び/または黒鉛から成っていることを特徴とする請求項1から14のいずれか一つに記載の蒸発器カートリッジ(10)。
【請求項16】
前記粒(24)は、少なくとも部分的に帯磁性であることを特徴とする請求項1から15のいずれか一つに記載の蒸発器カートリッジ(10)。
【請求項17】
前記ウィック要素(20)と前記加熱要素(21)とは、別個のユニットであり、これらユニットが、接触領域(35)内において互いに接触して位置しており、
その際、このウィック要素(20)が、前記貯蔵タンク(17)に面しており、および、前記加熱要素(21)が前記流動通路(16)に面しており、および、前記加熱要素(21)が、電気的な接点(22)を有しており、および、
その際、前記ウィック要素(20)が微細通路(23)を有しており、および、前記ウィック要素(20)によって前記貯蔵タンク(17)から保護されている前記加熱要素(21)が、液体浸透的および蒸気浸透的に形成されている、
ことを特徴とする請求項1から16のいずれか一つに記載の蒸発器カートリッジ(10)。
【請求項18】
前記加熱要素(21)は、基本的にケイ素から成る、または、ケイ素またはpドープされたまたはnドープされたケイ素を有するMEMS構造部材(微小電気機械システム)であり、このMEMS構造部材が、前記ウィック要素(20)に面した上側を出発点として、前記流動通路(16)に面した下側に至るまで、液体浸透的および気体浸透的もしくは蒸気浸透的な貫通部を有している、
ことを特徴とする請求項17に記載の蒸発器カートリッジ(10)。
【請求項19】
前記ウィック要素(20)の前記粒(24)の最小の粒の大きさは、少なくとも前記加熱要素(21)への接触領域内において、この加熱要素(21)の前記貫通部の平均的な直径よりも大きいことを特徴とする請求項17または18に記載の蒸発器カートリッジ(10)。
【請求項20】
前記蒸発器カートリッジ(10)は、ケーシング(33)を備えており、このケーシングが、前記中空体(15)および前記蒸発器ユニット(19)を囲繞し、このケーシング(33)のケーシング壁(34)が、前記貯蔵タンク(17)を、周囲環境に向かって画成していることを特徴とする請求項1から19のいずれか一つに記載の蒸発器カートリッジ(10)。
【請求項21】
前記ケーシング壁(34)は、前記ウィック要素(20)を、このウィック要素の定位置において保持することを特徴とする請求項20に記載の蒸発器カートリッジ(10)。
【請求項22】
作用物質を添加された蒸気の吸入のために形成および設備されている吸入器(14)であって、この吸入器が、
少なくとも、1つの電子式の制御ユニット(11)と1つのエネルギー供給源(12)とを備える1つのカートリッジ担持体(13)と、1つの蒸発器カートリッジ(10)とを備えている様式の、上記吸入器(14)において、
請求項1から21のいずれか一つによる前記蒸発器カートリッジ(10)が形成および設備されていることを特徴とする吸入器(14)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸入器の構成要素としての蒸発器カートリッジに関し、この蒸発器カートリッジが、貫通した流動通路を有する中空体と、液体の貯蔵のための貯蔵タンクとを備えており、
その際、この貯蔵タンクが、前記流動通路への少なくとも1つのアクセス開口部を有しており、且つ、それぞれの前記アクセス開口部の領域内において、このアクセス開口部全体にわたって延在する蒸発器ユニットが配置されており、この蒸発器ユニットが、ウィック要素と加熱要素とを有しており、
その際、前記蒸発器ユニットが、液体が少なくとも初期に毛細管現象により前記貯蔵タンクから前記蒸発器ユニットを通って前記流動通路への方向に搬送可能であるように、液体浸透的に形成されている。
【0002】
更に、本発明は、作用物質を添加された蒸気の吸入のために形成および設備されている吸入器に関し、この吸入器が、
少なくとも、1つの電子式の制御ユニットと1つのエネルギー供給源とを備える1つのカートリッジ担持体と、1つの蒸発器カートリッジとを備えている。
【背景技術】
【0003】
そのような蒸発器カートリッジおよび吸入器は、ここで特に電子式のたばこ、いわゆる電子たばことの関連における嗜好品産業において、並びに、医療の領域内において、流動性の嗜好品及び/または流動性の医療用の製品を、蒸気の形態において及び/またはエアロゾルとして吸入可能とするために使用される。消費の際に、通常、人は吸入器の吸い口片において吸引し、このことによって流動通路内において吸引力が生成し、この吸引力が、この流動通路を通っての空気流を生成する。空気流が、しかしながら同様に機械的に、例えばポンプによって生成されることも可能である。
消費する人にエアロゾルまたはエアロゾル-蒸気混合物を与えるために、流動通路内において、空気流に、蒸発器ユニットによって生成され且つ準備され蒸発させられた液体が付加される。液体は、蒸発器カートリッジにおいて、または、この蒸発器カートリッジ内において貯蔵されている。液体として、同じまたは異なる蒸気密度の異なる成分を有する種々の混合物が使用される。
電子たばこ内における使用のための典型的な混合物は、例えば、場合によってはニコチン及び/またはほぼ適宜の味覚物質を添加された、グリセリンおよびプロピレングリコールの成分を有している。医療または治療の領域内における使用のため、例えば喘息薬剤の吸入のために、混合物が、相応して医療用の成分および作用物質を有していることは可能である。
【0004】
蒸発器カートリッジの個々の構成要素、即ち、中空体、貯蔵タンク、および、蒸発器ユニットが、共通の1つの構造部材内において統合されていることは可能であり、その際、この構造部材が、その場合に、吸入パフの最終的な数に関して消費する人によって指定されている使い捨て品物であり、且つ、少なくとも、1つの電子式の制御ユニットおよび1つのエネルギー供給源を備える、再利用可能な複数回使用品物としてのカートリッジ担持体と共に、1つの吸入器を形成する。
蒸発器カートリッジが、しかしながら、複数の構造部材の組み立てによって初めて形成されていることも可能であり、その際、個々の構造部材、即ち特に中空体と蒸発器ユニットが、カートリッジ担持体内において、複数回使用品物として配置されており、且つ、貯蔵タンクが、別個の構造部材として使い捨て品物を形成する。
最終的に、吸入器は、通常、液体を備えている使い捨て品物の交換によって、可変に使用可能である。
【0005】
相応して、使い捨て品物と複数回使用品物とは、互いに解離可能に結合されている。複数回使用品物としてのカートリッジ担持体は、通常、少なくとも、1つの電子式の制御ユニットと1つのエネルギー供給源とを備えている。エネルギー供給源が、例えば電気化学的な使い捨てバッテリー、または、再充電可能な電気化学的な蓄電池、例えばリチウムイオン電池であることは可能であり、これを用いて、加熱要素が、蒸発器ユニットの電気的な接点を介して、エネルギーを供給される。
電子式及び/または電気式の制御ユニットは、蒸発器カートリッジの内部の蒸発器ユニットの制御のために利用される。カートリッジ担持体が、しかしながら、同様に蒸発器カートリッジの構成要素を備えることも可能である。
使い捨て品物が、差し込み部材として、複数回使用品物に対して差し込み可能に、または、装入部材として、この複数回使用品物内へと装入可能に形成されていることは可能である。差し込み結合の代わりに、同様に、ねじり結合、スナップ止め結合、または、他のクイック結合も使用可能である。使い捨て品物と複数回使用品物との結合によって、機械的および電気的な連結が、機能準備の整った吸入器の形成のために形成される。
【0006】
中心的な、且つ、最終的に利用(例えば、電子たばことして、または、医療用の吸入器として)を規定する構成要素は、蒸発器カートリッジの構成要素としての貯蔵タンクである。この蒸発器カートリッジは、通常、人によって選択され、所望され及び/または必要とされる液体、もしくは、(以下で同様に一般的に流体とも称される)液体混合物、並びに、流動通路を形成する中空体、および、蒸発器ユニットを備えている。この流体は、蒸発器カートリッジの貯蔵タンク内において貯蔵されている。
液体浸透的な蒸発器ユニットを用いて、流体は、貯蔵タンクから、少なくとも初期に毛細管現象による搬送に基づいて、ウィック要素および加熱要素を通って導かれる。加熱要素に印加される、エネルギー供給源によって生成された電圧は、この加熱要素内において電流の流れを誘起する。加熱要素の加熱抵抗、有利にはオーム抵抗に基づいて、この電流の流れは、加熱要素の加熱、および、最終的に、蒸発器ユニット内において存在する流体の蒸発を誘起する。このようにして生成された蒸気及び/またはエアロゾルは、流動通路への方向に蒸発器ユニットから逃れ出、且つ、蒸気添加として、空気流動に混ぜ合わせられる。
この流体は、これに伴って、予め与えられた流動方向を有する予め与えられた道程、即ち、ウィック要素を通り加熱要素に向かっておよびこの加熱要素を通る流体としての、および、ガス状にこの加熱要素から流動通路内への、道程を有している。流動通路内において、蒸発させられた流体は、空気流によって随伴され、その際、例えば消費する人が流動通路において吸引するまたはポンプが流動通路を通る空気流を搬送するというやり方で、この流動通路が圧力/負圧に曝される場合、蒸気/霧及び/またはエアロゾルが形成される。
【0007】
流体が、貯蔵タンクから、直接的に流動通路内へと流動しないために、蒸発器ユニットは、この貯蔵タンクから流動通路へのアクセス部を完全に覆っている。完全に覆っているということは、この関連において、液体が、強制的に蒸発器ユニットを通って案内されており、従って、流体が、直接的に貯蔵タンクから蒸発器ユニット内へと到達可能ではなく、むしろ、ウィック要素と加熱要素とを介しての「迂回路」を取る必要があることを意味する。
ウィック要素は、一方では、特にほぼ荷空けされた貯蔵タンクの際に、吸入器における少量の一服のために未だ十分な流体を提供するための、流体の中間貯蔵のために利用される。
このウィック要素は、他方では、特に、貯蔵タンクから流動通路の方向への、流体の輸送のために利用され、且つ、同時に、貯蔵タンクの方向への流体及び/または気体もしくは蒸気の逆流を阻止するため並びにより高い温度の際の個々の成分の添加を防止するための、一種の逆戻り防止として作用する。
【0008】
従来公知の蒸発器カートリッジは、ウィック要素を備える蒸発器ユニットを有しており、このウィック要素が、互いに製織された/捻じられた、複数のフィラメント/ファイバーから、例えば木綿またはグラスファイバーから形成されている。ファイバーウィックは、毛細管現象による諸特性を有しており、これら毛細管現象による諸特性が、流体との初期の接触の際に、このファイバーウィックが貯蔵タンク内へと没入し、この貯蔵タンク内におけるこの流体が収容され、且つ、加熱要素への方向に搬送されることを誘起する。
加熱要素は、通常、白熱コイルの形態において形成されている。この巻回された金属線材は、例えば、特殊鋼、銅、銅化合物、または、ニッケルから成っている。この蒸発器ユニットは、通常、ただ手動でだけ製造され得、且つ、流体の中間貯蔵のための制限された貯蔵容量を有している。
更に別の欠点は、微細通路の制限された数に基づいての流体の少ない輸送率にある。それに加えて、不均一な、および、制御可能でない温度分布が、ウィックコイルシステムに沿って与えられる。換言すれば、加熱要素の均等且つ連続的な流体の供給は、ただ制限されてだけで保障されている。それに加えて、有害物質発生の結果を有する局部的な過熱がある。更にこの解決策は、如何なる逆戻り防止も有していない。
【0009】
他の公知の解決策において、蒸発器ユニットは、従って、ウィック要素として1つの部材から成るようなウィックブロックを備えている。通常セラミックの材料から成るこのウィックブロックは、蒸発器ユニットおよび蒸発器カートリッジの自動的な製造を簡略化し、且つ、ファイバーウィックに比して増大された輸送率のための複数の微細通路を有している。
それにも関わらず、同様にこの解決策も、複数の欠点を有している。引き続き制限された輸送率および中間貯蔵容量と並んで、そのようなブロック状のウィックブロックは、極めて非可撓性であり、特に困難に組み付けされ得る。何故ならば、これらウィックブロックが、正確に-狭小な許容差範囲内において-前もって製造された収容部/保持部、またはその種の他のもの内に装入可能なだけであるからである。
【0010】
このウィック体の例えばセラミックの材料が微細通路を有し、導電性に形成されている場合、1つの部材から成るようなウィック体において、このウィック体自体は、加熱要素として利用される。その場合に、このウィック体は、二重の機能を有しており、且つ、蒸発器ユニットを形成する。他の場合において、このウィック体に対して付加的に、別個の構成要素が加熱要素として利用され得る。上述のうち後者の場合、このウィック体と別個の加熱要素とは、蒸発器ユニットを形成する。
この加熱要素は、その場合に、通常、平面状および肉薄の、例えば、基本的に、ケイ素から成る、または、ケイ素またはpドープまたはnドープされたケイ素を有しているMEMS構造部材(Micro-electro-mechanical-system(微小電気機械システム))であり、このMEMS構造部材が、液体浸透的に形成されている。
前述された欠点は、特に、ウィック要素と加熱要素とが、接触領域内において互いに接触して位置する別個の物体である解決策の場合に増強される。
【0011】
更に別の欠点は、接触領域内において、異なる表面粗さによって、即ち一方ではウィック要素の多孔性の構造および他方では加熱要素の通常平滑な表面が、互いに向かい合って位置していることによって生じる。
接触領域内において、異なる粗さに基づいて、不定の、および、微細通路を形成しない空隙が生成する。これら空隙は、流体による、加熱要素の不十分な流体供給を誘起する。換言すれば、そのような空隙は、ウィック要素の流出側と加熱要素の流入側との間の十分な流体連結を妨害する。
更に別の空隙は、ウィック要素と加熱要素との表面の非面平行の整向によって、例えば湾曲させられた表面及び/または組み付け不良によって生成する。このことは、組み付け結果の不十分な再現可能性を誘起し、このことによって、変動する蒸発条件が結果として生じる。存在する空隙は、熱的に絶縁性の蒸気気泡形成、いわゆる(局部的な)過熱の所望されない効果を伴うライデンフロスト効果(Leidenfrosteffekt)を誘起する。その他の点では、蒸気気泡は、ウィック要素から加熱要素内への流体の追加搬送を妨害する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の根底をなす課題は、一定の且つ再現可能な蒸発条件を保障する、コンパクトな蒸発器カートリッジを提案することである。この課題は、更に、相応する吸入器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この課題は、冒頭に記載された様式の蒸発器カートリッジにより、
前記ウィック要素が多数の粒状物質状の粒から形成されており、これら粒が、これら粒のばら積み堆積及び/または構成に基づいて微細通路を形成する、
ことによって解決される。
ばら積み堆積によって、緩いおよび結合された、粒の相並んだ配設が説明され、その際、同様に揺動された及び/または圧縮された粒の配置も含まれている。粒の形成に関して、例えば、粒自体が、微小空隙及び/または微細通路を有することが可能であることが説明されている。
これに伴って、蒸発器ユニット内において、互いに接触して位置する個々の粒の間、及び/または、個々の粒を通って、多数のランダムな微細通路が、貯蔵タンクと流動通路との間に形成され、この微細通路が、蒸発器ユニットの流出側での一定および均等な蒸発を保障する。換言すれば、粒状のウィック要素によって、蒸発器ユニット内への流入側と、この蒸発器ユニットからの流出側との間の最適な流体連結が製造される。
【発明の効果】
【0014】
ウィック要素の本発明に従う構成により、従来技術から公知の解決策に対して、たくさんの利点が達成される。改善された輸送率と並んで、より多く且つ特に均等に流体が貯蔵タンクから蒸発器ユニットを通って案内され、粒状のウィック要素が、粒状のおよびこれに伴って多孔性のウィック構造に基づいて、流体のための増大された中間貯蔵容量を保証する。
更に、ウィック要素は、逆戻り防止を改善する。何故ならば、形成された微細通路が非直線的な経過を有しているからである。粒状のウィック要素の組み付けは、特に有利になる。何故ならば、ウィック要素が、それぞれの組み付け場所において、このウィック要素の収容部のそれぞれの適宜の輪郭/幾何学的形状に対して適合可能であるからである。
粒構造によって、ウィック要素は、粒状のウィック要素の組み付け/充填の際に、フレキシブルにそれぞれの輪郭/幾何学的形状に対して適合し、且つ、
-所望されない、微細通路を形成しない-空隙を満たし、且つ、隣接する面に対しての間隙形成を回避する。結果として、粒状のウィック要素によって一定の且つ再現可能な蒸発条件が保障される。
その際、-蒸発器カートリッジの構成要素としてのウィック要素及び/または加熱要素を有する-蒸発器ユニットが、カートリッジ担持体にまたはこのカートリッジ担持体の内に、即ち複数回使用品物にまたはこの複数回使用品物の内に、配置されているのかどうか、または、蒸発器ユニットが使い捨て品物に/内において配置されているのかどうかは、何ら重要ではない。
【0015】
ウィック要素の微細通路は、ただウィック機能だけを有するか、または、組み合わせられたウィック機能と加熱機能とを有するかどうかに依存せずに、貫通して、流入側Eから流出側Aへと延在し、従って、
流体が、貯蔵タンクからウィック要素を通って流動通路の方向へ輸送され、および、その際加熱され、従って、ガス状の流体/蒸気がこのウィック要素からこの流動通路内へと輸送されるか、または、
流体が、貯蔵タンクから、液体浸透的および蒸気浸透的であり且つこの流体から蒸気を生成する加熱要素へと輸送され、この蒸気が、この加熱要素から、流動通路内へと輸送される。
【0016】
蒸発器カートリッジは、一方では、使い捨て品物としてのこの蒸発器カートリッジの構成要素としての貯蔵タンクが、1つの制御ユニットおよび1つのエネルギー供給源と並んで例えばこの蒸発器カートリッジの構成要素としての蒸発器ユニットを備える、複数回使用品物としての少なくとも1つのカートリッジ担持体と結合されることによって形成され得る。
他方では、蒸発器カートリッジが、少なくとも蒸発器ユニットと貯蔵タンクとから形成された、使い捨て品物としてのユニットであることは可能であり、この蒸発器カートリッジが、吸入器の形成のために、少なくとも電子式の制御ユニットとエネルギー供給源とを備えるカートリッジ担持体との機械的および電気的な結合のために形成および設備されており、その際、蒸発器ユニットが、エネルギー供給源との電気的な接触のための電気的な接点を備えている。
このことによって、一定のおよび再現可能な蒸発条件を有するコンパクトな蒸発器カートリッジ/吸入器が提供される。
【0017】
合目的な更なる構成は、粒状のウィック要素を形成する粒状の材料が、少なくとも部分的に導電性であることによって特徴付けられている。従って、このウィック要素は、同時に更に加熱要素も形成する。蒸発器ユニットは、相応して1つの単独の要素であり、即ち、「1つの部材から成るように」形成されており、このことによって、特にコンパクトな構造様式が達成される。
ウィック要素と加熱要素との間の流体連結は、このバリエーションの際に最適である。何故ならば、微細通路が、中断無しに且つ貫通して、蒸発器ユニット内への流入側から、この蒸発器ユニットからの流出側に至るまで形成されているからである。
【0018】
有利な実施形態において、アクセス開口部の領域内において、収容室が、蒸発器ユニットの収容のために形成されており、その際、この収容室が、貯蔵タンクから蒸発器ユニット内への液体の収容のため、および、この蒸発器ユニットから流動通路内へのガス状の流体/蒸気の引き渡しのために、少なくとも部分的に、液体浸透的、および、気体浸透的、もしくは、蒸気浸透的な構造によって区画されている。
蒸発器ユニットのための収容室が、ケーシング壁、突出部、プレート、蓋、巻体要素、スライダー、または、それぞれの他の区画部、または、これらの組み合わせによって形成されていることは可能である。貯蔵タンクからの、少なくとも1つの、液体浸透的および蒸気浸透的な通路と、流動通路への少なくとも1つの、液体浸透的および蒸気浸透的な通路とが存在することは重要である。
収容室は、ウィック要素と加熱要素とを、共に、且つ、定位置において、および、しかしながら貯蔵タンクと流動通路との間のアクセス開口部の手前で保持し、従って、液体が、一方では、高い信頼性で、直接的に貯蔵タンクから流動通路内へと流動することが阻止され、および、他方では、均等に且つ一定に、流動通路への方向に案内される。
流動通路への出側および貯蔵タンクからの入側の面積によって、ウィック要素にわたっての分圧は調整され得る。
【0019】
有利な更なる構成において、蒸発器カートリッジは、担持要素を備えており、この担持要素が、中空体を形成し、且つ、一方では、流動通路を形成するための貫通開口部を有しており、および、他方では、蒸発器ユニットの収容のための切欠き部を有している。
この形成によって、特にコンパクトな蒸発器カートリッジが提供される。
【0020】
有利には、粒状のおよび導電性の材料から形成された沈積物は、この沈積物が、平行な及び/または一列に接続された抵抗を有する3次元的な抵抗加熱マトリックスを形成するように固定されている。
従って、ウィック要素は、毛細管現象による流体輸送のウィック機能と並んで、特に効果的に、規定され且つ再現可能な蒸発条件のための加熱要素として使用可能である。導電性のウィック要素は、例えば、押圧接触を介して電気的に結合され得、その際、少なくとも2つの接点が必要とされる。
【0021】
有利には、ウィック要素の粒は、これら粒の材料選択、及び/または、これら粒の大きさに関して、同じに、及び/または、同じでなく形成されている。
このことは、ウィック要素の内部での粒が、全て同じ材料から成り且つ全て同じ大きさ(規定された領域の内側で1つの大きさの規模を意味している)であるか、または、
全ての粒が、1つの材料から成るがしかしながら異なる大きさであるか、または、
粒が、異なる材料から成るがしかしながら全て同じ大きさであるか、または、
粒が、異なる材料から成り且つ異なる大きさであることを意味する。
従って、ウィック要素は、例えば、異なる液体および液体混合物のために、例えば、異なる輸送率(液体供給)、及び/または、異なる熱伝導率、及び/または、異なる流動抵抗(例えば、適合された逆戻り防止のため)と、簡単な方法で、個々に組み合わせ可能である。
【0022】
有利な実施形態は、ウィック要素の粒は、貯蔵タンクを出発点として、流動通路への方向に、局部的に異なる粒径を有していることによって特徴付けられている。
例えば、粒は、層毎に、これら粒の大きさに関して変化可能である。例えば粒状のウィック要素内における流動変化度を調節するために、この層毎の構造は、更に、フレキシブルに組み付け/充填の際に行われ得る。
【0023】
有利には、ウィック要素の粒は、貯蔵タンクを出発点として、流動通路への方向に、局部的に、異なる材料から成っている。
例えば、貯蔵タンク内において位置する液体に対する熱伝達を回避するために、例えば貯蔵タンクに面したウィック要素の側に、低い熱伝導率を有する材料が装入され、これに対して、蒸発工程をこの流動通路への方向に補助するためもしくは熱をこの流動通路への移行領域内において保持するために、流動通路に面したウィック要素の側に、高い熱伝導率を有する材料が装入されるというやり方で、粒の材料の層毎の変化によって、例えばウィック要素の変化可能な熱伝導率は達成され得る。
【0024】
有利には、ウィック要素の粒は、緩いばら積み堆積として、収容室の内部で位置している。
このバリエーションにおいて、特に均等な、且つ、特に空隙低減および間隙低減された粒の分布は保証されており、このことによって、一定の、且つ、再現可能な蒸発条件が更に最適化されている。
【0025】
他の有利なバリエーションにおいて、ウィック要素の粒は、互いに結合されたばら積み堆積として、収容室の内部で位置している。
例えばペースト状の成分またはその種の他の物を用いての、ばら積み堆積された粒の結合は、
同様に一定のおよび再現可能な蒸発条件が更に最適化し且つ特に粒の導電性の場合のために固定された沈積物を準備する、規定された構造が提供されることを保障する。
【0026】
有利な粒径は、0.1μmと2mmとの間の値、および、特に有利には3μmと300μmとの間の値である。これらの範囲内の粒径によって、先に記載された利点は、特に効果的に達成可能である。
【0027】
合目的に、最大の粒径は、それぞれに搬送されるべき液体の流動特性に依存して、毛細管現象による搬送を不可能にする大きさの範囲外にある。
換言すれば、特に-少なくとも初期の-毛細管現象による液体の搬送流を、均等な且つ一定の供給に関して保証するために、最大の粒径の制限によって、ウィック要素の内部での微細通路の形成は保障される。
【0028】
有利には、粒は、砂及び/または黒鉛から成っている。この安いコストの粒タイプは、自然界においてほぼ限りなく使用され、且つ、化学的に不活性であり、且つ、環境と共存できる。
【0029】
有利な更なる構成において、粒は、少なくとも部分的に帯磁性である。このことによって、例えば流動抵抗に影響を及ぼすために、粒は、合目的に整向され得る。
【0030】
特に有利な実施形態は、ウィック要素と加熱要素とが、別個のユニットであり、これらユニットが、接触領域内において互いに接触して位置しており、
その際、このウィック要素が、貯蔵タンクに面しており、および、加熱要素が流動通路に面しており、および、加熱要素が、エネルギー供給源との電気的な結合のための、電気的な接点を有しており、および、
その際、ウィック要素が微細通路を有しており、および、このウィック要素によって貯蔵タンクから保護されている加熱要素が、液体浸透的および蒸気浸透的に形成されている、
ことによって特徴付けられている。
ウィック要素内における微細通路は、先に記載された方法において、粒配置、及び/または、これら粒自体によって形成されている。液体および気体もしくは蒸気のための加熱要素の透過性が、例えば、穿孔加工、レーザー加工、エッチング加工、またはその種の他のものによって形成されていることは可能である。
蒸発器ユニットの、いわば「2つの部材から成る」この構成の際に、それぞれの要素が、それ自体で、最適にそれぞれの機能性に対して適合されていることは可能であり、
即ち、ウィック要素が、貯蔵タンクから加熱要素に対する特に液体の貯蔵および伝導に対して適合されていることは可能であり、および、加熱要素が、特にウィック要素からの液体の受け取りに対して、および、気体もしくは蒸気への液体の変態に対して、並びに、流動通路内へのこの気体もしくは蒸気の引き渡しに対して適合されていることは可能である。
【0031】
ウィック要素が粒状物質状の粒から形成されていることによって、このウィック要素が、狭小に且つ平面状に、加熱要素に当接している。従って、加熱素におけるウィック要素の均等な当接が保証されており、このことによって、一方では、最適な流体連結が、および、他方では、均一の熱的な結合が提供される。
組み付けられた/ばら積み堆積された状態において、ウィック要素は、流入側によって、貯蔵タンクへの方向に液体に、および、流出側によって、加熱要素に当接している。他方また、加熱要素は、流入側によってウィック要素に当接し、且つ、流出側によって、流動通路へと指向している。この有利な実施形態により、加熱要素の一定の且つ均一の流体供給が、および、従って、再現可能な蒸発条件が保障されている。
【0032】
有利には、加熱要素は、基本的にケイ素から成る、または、ケイ素またはpドープされたまたはnドープされたケイ素を有するMEMS構造部材(微小電気機械システム)であり、このMEMS構造部材が、ウィック要素に面した上側を出発点として、流動通路に面した下側に至るまで、液体浸透的および気体浸透的もしくは蒸気浸透的な貫通部を有している。
この場所を取らない加熱要素によって、特に効果的な蒸気形成は達成可能である。
【0033】
有利には、ウィック要素の粒の最小の粒の大きさは、少なくとも加熱要素への接触領域内において、この加熱要素の貫通部の平均的な直径よりも大きい。
このことによって、加熱要素の貫通部の目詰まりは、効果的に防止される。
【0034】
有利な実施形態において、蒸発器カートリッジは、ケーシングを備えており、このケーシングが、中空体および蒸発器ユニットを囲繞し、その際、ケーシング壁が、貯蔵タンクを、周囲環境に向かって画成している。
従って、簡単な且つ構造空間を節約する構造様式は保証されている。
【0035】
合目的なバリエーションにおいて、ケーシング壁は、ウィック要素を、このウィック要素の定位置において保持する。
貯蔵タンクのための区画部として、および、収容室の内部でのウィック要素の固定手段としてのケーシング壁の二重の機能により、簡単な構造様式が提供されている。
【0036】
この課題は、冒頭に記載された様式の吸入器によって、
請求項1から21のいずれか一つによる蒸発器カートリッジが形成および設備されていることによっても解決される。
【0037】
そこから与えられる利点は、既に、蒸発器カートリッジとの関連において記載されており、その理由で、ここで繰返しを回避するために、前記の説明を参照されたい。
【0038】
蒸発器カートリッジおよび吸入器に関する、更に別の合目的及び/または有利な特徴、および、更なる構成は、従属請求項、および、明細書から与えられる。蒸発器カートリッジと吸入器との特に有利な実施形態を、添付された図に基づいて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】カートリッジ担持体と蒸発器カートリッジとを有する、本発明に従う吸入器の有利な実施形態の、部分断面における概略図である。
図2】蒸発器カートリッジの更に別の実施形態の、部分断面における拡大図である。
図3】蒸発器カートリッジの一部分の有利な実施形態の、断面における拡大図である。
図4】蒸発器カートリッジの一部分の更に別の実施形態の図である。
図5】蒸発器カートリッジの一部分の更に別の実施形態の図である。
図6図1に従う蒸発器カートリッジの実施形態の、部分断面における拡大図である。
図7】蒸発器カートリッジの一部分の更に別の実施形態の拡大図である。
図8図7に従う蒸発器カートリッジの、切断面A-Aに沿っての図である。
図9】蒸発器カートリッジの更に別の実施形態の、部分断面における拡大図である。
図10図9に従う蒸発器カートリッジの図である。
図11】蒸発器カートリッジの更に別の実施形態の、部分断面における拡大図である。
図12図11に従う蒸発器カートリッジの図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図内において図示されている蒸発器カートリッジ、並びに、吸入器は、作用物質、例えば、ニコチンを添加された、液体から成る蒸気、及び/または、エアロゾルの吸入のために利用され、且つ、相応して、電子たばことの関連において説明されている。
蒸発器カートリッジおよび吸入器は、同じ方法で、医薬品的な及び/または栄養補充的な製品から成る、医療用の作用物質を添加された蒸気の吸入のために使用可能である。
【0041】
図示された蒸発器カートリッジ10は、貫通した流動通路16を有する中空体15と、液体の貯蔵のための貯蔵タンク17とを備えており、
その際、この貯蔵タンク17が、この流動通路16への少なくとも1つのアクセス開口部18を有しており、且つ、それぞれのアクセス開口部18の領域内において、アクセス開口部18全体にわたって延在する蒸発器ユニット19が配置されており、この蒸発器ユニットが、ウィック要素20と加熱要素21とを有しており、
その際、この蒸発器ユニット19が、液体が少なくとも初期に毛細管現象により貯蔵タンク17から蒸発器ユニット19を通って流動通路16への方向に搬送可能であるように、液体浸透的に形成されている。
【0042】
2つまたはそれ以上の流動通路16が同様に設けられていることは可能である、その中空体の少なくとも1つの流動通路16を有する該中空体15は、吸引通路/煙道を形成している。この中空体15の形状と同様に流動通路16の経過も、ほぼ適宜であることは可能である。
例えば空気を吸入可能とするために、それぞれの流動通路16の流入側Esが周囲環境に対して開口していること、および、特に消費する人の吸引により例えば負圧を生成することを可能とするために、流出側Asが開口していることは重要である。開口とは、この関連において、流入側Esと流出側Asとが、通気的であることを意味する。
貯蔵タンク17と流動通路16との間のアクセス開口部18の領域内において、蒸発器ユニット19は、一種の液体遮断部を形成し、この液体遮断部が、液体が貯蔵タンク17から、直接的に、且つ、液体として、流動通路16内へと流動することを防止する。
貯蔵タンク17の形状と構成とに依存せずに、同様に2つまたはそれ以上の貯蔵タンク17が設けられていることも可能であり、且つ、中空体15、並びに、この中空体15に対する貯蔵タンク17の配置/位置決めにより、蒸発器ユニット19は、
液体が必然的に貯蔵タンク17から流動通路16への方向に案内され、且つ、遅くとも、この蒸発器ユニット19からの流出の際に気体もしくは蒸気として、この流動通路16内へと引き渡されることを保障する。
【0043】
この蒸発器カートリッジ10は、本発明に従い、ウィック要素20が多数の粒状物質状の粒24から形成されており、これら粒が、これら粒のばら積み堆積及び/または構成に基づいて微細通路23を形成することによって特徴付けられる。
【0044】
互いに接触して位置する粒24は、一方では、隣接する粒24と共に微小空隙を形成し、他方では、これら粒24自体が、微小空隙、いわゆる細孔を有していることは可能である。粒24内における、および、これら粒24の間の、全ての微小空隙の結合および協働によって、微細通路23が形成されており、これら微細通路は、少なくとも初期に毛細管現象による搬送を保証し、且つ、貫通して形成されており、且つ、非直線的な経過を有している。
ウィック要素20と加熱要素21とを備える蒸発器ユニット19を通っての貫流の際に、蒸発器カートリッジ10の作動状態において、貯蔵タンク17の液体から、流動通路16へと、蒸気及び/またはエアロゾルが形成され、その際、ウィック要素20の多孔性の構造が、一方では、液体のための蓄積媒体を形成し、且つ、他方では、流動抵抗を具現する。液体の流動方向は、貯蔵タンク17から蒸発器ユニット19を通って流動通路16への方向に行われる。
【0045】
本発明に従う蒸発器カートリッジ10が、使い捨て品物として、構造的な1つのユニットであることは可能であり、このユニットが、諸構成要素として、中空体15、貯蔵タンク17、および、蒸発器ユニット19を備えている。
蒸発器カートリッジ10が、しかしながら、同様に複数の部材から成るように形成されていることも可能であり、その際、この蒸発器カートリッジ10の構成要素が、使い捨て品物と複数回使用品物とに、
例えば貯蔵タンク17が使い捨て品物であり、この貯蔵タンクが、カートリッジ担持体13との集合の際に初めて備えられ得、且つ、このカートリッジ担持体が、複数回使用品物であることが可能であり、且つ、制御ユニット11およびエネルギー供給源12と並んで、例えば中空体15および蒸発器ユニット19のような蒸発器カートリッジ10の構成要素を備えることが可能であり、蒸発器カートリッジ10の構造的なユニットを誘起するように、分配される。
蒸発器カートリッジ10は、相応して、この蒸発器カートリッジの構成要素、即ち、流動通路16、貯蔵タンク17および蒸発器ユニット19を有する中空体15によって規定され、且つ、複数回使用品物もしくは使い捨て品物のためのこれら構成要素の設計的/構造的な対応関係によっては規定されない。
【0046】
以下で記載される特徴および更なる構成は、自体で見て、または、有利な実施形態の互いの組み合わせにおいて具現する。請求の範囲内及び/または明細書内及び/または図の説明内においてまとめられている、または、共通の実施形態内において記載されているこれら特徴が、同様に機能的に独自にも、更に別の前記された蒸発器カートリッジ10を更に構成することが可能であることは、明確に指摘される。
【0047】
ウィック要素20は微細通路23を有しており、これら微細通路が、貫通して、ウィック要素20の流入側Eからこのウィック要素20の流出側Aへと延在している。第1の実施形態において、ウィック要素20は、同時に、加熱要素21を形成している(特に図2参照)。
このウィック要素20は、これに伴って、蒸発器ユニット19全体を形成している。この目的のために、粒状のウィック要素20を形成する粒状の材料は、少なくとも部分的に導電性である。これら導電性の粒24は、有利には、少なくとも、下側の、流動通路16に面した領域内において位置している。相応して、電気的な接点22は、ウィック要素20の導電性の領域内において配置されている。
この構成において、微細通路23は、貯蔵タンク17内における液体に曝された、ウィック要素20の流入側Eから、直接的に流動通路16に対して隣接している、ウィック要素20の流出側Aに至るまで延在している。
【0048】
有利には、蒸発器カートリッジ10は、吸入器14の形成のために、少なくとも電子式の制御ユニット11とエネルギー供給源12とを備えるカートリッジ担持体13との機械的および電気的な結合のために形成および設備されており、その際、蒸発器ユニット19が、エネルギー供給源12との電気的な接触のための電気的な接点22を備えている。
吸入器14は、例えば電子たばことして、例えば吸入する人によって作動状態にされ得、または、例えば人が自身もはや吸引可能ではないまたは十分に吸引可能ではない場合のための医療用の器具として、ポンプによって作動状態にされ得る。
【0049】
アクセス開口部18の領域内において、収容室25は、図2の例においてウィック要素20の、および、図6の例においてウィック要素20および加熱要素21の蒸発器ユニット19の収容のために形成されており、その際、この収容室25が、貯蔵タンク17から蒸発器ユニット19内への液体の収容のため、および、この蒸発器ユニット19から流動通路16内への蒸気の引き渡しのために、少なくとも部分的に、液体浸透的、および、気体浸透的、もしくは、蒸気浸透的な構造によって区画されている。
蒸発器ユニット19のための収容室25が、蒸発器カートリッジ10の他の構成要素のケーシング壁によって、別個の壁要素、突出部、プレート、蓋、巻体要素、スライダー、または、それぞれの他の区画部、または、これらの組み合わせによって形成されていることは可能である。収容室25が、それぞれの適宜な形態及び/または輪郭を有していることは可能である。図2および6の例において、収容室25は、例えば、周囲にわたって壁要素26によって区画されている。
貯蔵タンク17へと整向されて、その収容室内において位置する蒸発器ユニット19を有する該収容室25は、例えば、液体浸透的に形成されているカバー要素27によって覆われている。流動通路16に向かって、収容室25が、例えば、液体浸透的、および、気体浸透的、もしくは、蒸気浸透的な格子構造28(図2参照)によって、または、相応して液体浸透的および蒸気浸透的に形成されている別個の加熱要素21(図6参照)によって区画されていることは可能である。
【0050】
有利には、蒸発器カートリッジ10は、担持要素29を備えており、この担持要素が、中空体15を形成し、且つ、一方では、流動通路16を形成するための貫通開口部30を有しており、および、他方では、蒸発器ユニット19の収容のための切欠き部31を有している。
【0051】
担持要素29は、有利には管体形状の本体である。この本体の周囲壁内において切欠き部31が形成されており、この切欠き部内において蒸発器ユニット19が配置されている。
有利には、担持要素29と蒸発器ユニット19とから形成されたユニットは、貯蔵タンク17を形成するケーシング33の内部に配置されており、その際、貯蔵タンク17の内側容積部が、ケーシング33のケーシング壁34と、担持要素29との間で形成されている。担持要素29は、ただ部分的にだけ、ケーシング33にわたって延在している(例えば図2参照)。他の実施形態において、担持要素29が、同様に完全に(例えば図6参照)、ケーシング33にわたって延在していることも可能である。
【0052】
粒24は、緩いばら積み堆積として、収容室25の内部で、もしくは、切欠き部31内において位置している。この場合、粒24自体は、蒸発器カートリッジ10の作動状態において、未だ互いに相対的に移動可能であり、且つ、従って、可変の微細通路23を形成する。
相並んでおよび相互に重なり合って位置している粒24は、互いに突っ張るように支持されている。その際、粒24は、純粋に機械的に互いに当接可能である。粒24は、しかしながら、同様に、相互間で機械的に互いに噛み合わせされていることも可能である。微細通路の形成のために重要なことは、相応して、粒24が互いに接触して位置することである。
他の実施形態、特に、ウィック要素20が同時に加熱要素21として形成されている、そのような実施形態において、粒24は、収容室25の内部もしくは切欠き部31内において、少なくとも部分的に互いに結合されている。特に有利には、粒状のおよび導電性の材料から形成された沈積物は、この沈積物が、平行な及び/または一列に接続された抵抗を有する3次元的な抵抗加熱マトリックスを形成するように固定されている。
この抵抗加熱マトリックスにおいて、電気的な接点22は形成、もしくは、配置されている。粒24の固定のための全ての手段は、その際、貯蔵タンク17と加熱要素21との間の液体連結を、選択的にウィック要素20の構成要素または別個の部材として保障する。
【0053】
ウィック要素20の粒24が、これら粒の材料選択、及び/または、これら粒の大きさに関して、同じに、及び/または、同じでなく形成されていることは可能である。全ての粒24は、同じ大きさを有することは可能であり、従って、1つの大きさの範囲内にあることは可能である。粒24が、しかしながら、異なる大きさ、即ち、異なる大きさの範囲内にあることは可能である。有利には、粒径は、0.1μmと2mmとの間の値、および、特に有利には3μmと300μmとの間の値である。純粋に例示的に、全ての粒24が、50μmと100μmとの間の(1つの大きさの範囲に相応する)大きさの範囲内にあることは可能である。
ウィック要素20の粒24が、しかしながら、同様に、貯蔵タンク17を出発点として、流動通路16への方向に、局部的に異なる粒径を有していることは可能である。従って、貯蔵タンク17に近いウィック要素20の層が、例えば(1つの大きさの範囲に相応する)200μmから300μmまでの粒径を有する粒24を有しており、これに対して、流動通路16に近いウィック要素20の層が、例えば(1つの大きさの範囲に相応する)50μmから100μmまでの粒径を有する粒24を有していることは可能である。
粒径と、例えば異なる大きさの範囲の粒24を有する層内におけるそれぞれの分布との選択によって、特に、ウィック要素20の流動抵抗は、個々に、最終的にしかもその上同様に、最初にも、ばら積み堆積の際に調節可能である。ウィック要素20内における調節された粒径の選択によって、このウィック要素20のための個々の細孔変化度は、調節され得る。
細孔変化度を安定的に保持するために、微細孔の領域内における粒24の最小の粒直径は、その際、有利には、次により粗い領域内における細孔よりも大きいべきである。最大の粒径は、それぞれに搬送されるべき液体の流動特性に依存して、それぞれに、毛細管現象による搬送を不可能にする大きさの範囲外にある。換言すれば、粒24は、これら粒がウィック要素20として未だに毛細管現象による作用を生成する程にだけ大きいべきである。
加熱毛細管の目詰まり及び/または加熱要素21からの粒24の流出を防止するために、同じ程度に、粒直径は、加熱要素21の細孔/毛細管直径よりも小さく形成されているべきではない。
【0054】
全ての粒24が、同じ材料から成ることは可能である。これら粒24が、しかしながら、同様に少なくとも2つの異なる材料から成ることも可能である。有利には、粒24は、砂(石英)及び/または黒鉛から成っている。材料として、しかしながら、同様に、各種の他の材料、または、材料混合物が考慮の対象になる。
粒24のための有利な材料は、例えば、PEEK粒状物質(ポリエーテルエーテルケトン粒状物質)、PEK粒状物質(ポリエーテルケトン粒状物質)、PA粉状体、VM17粒状物質、ガラス、凍石、二酸化ケイ素、リグニン、エアロゲル、バイトン、シリコン、灰、チャコール、ベトナイト(Betonit)、ゼオライト、ディアトミート、マグネシウムシリケート、コランダム、珪藻土、粉砕された斑岩、並びに、これらからの混合物である。
特に有利には、ウィック要素20の粒24は、貯蔵タンク17を出発点として、流動通路16への方向に、局部的に、異なる材料から成っている。局部的な配置として、例えば、それぞれに同じ材料から成る粒24の層を成した構造が理解される。
【0055】
ウィック要素20の粒24の材料の選択によって、このウィック要素20の種々の特性は調節可能である。例えば、異なる熱伝導率を有する粒24は、使用され得る。特に有利には、粒24の熱伝導率は、貯蔵タンク17を出発点として、流動通路16への方向に、連続的に、または、歩進的/層毎に増大する。
特に熱伝導性の層は、例えば、流動通路16への境界領域内において形成されていることは可能であり、これに対して、貯蔵タンク17への方向に、ただ少しだけの熱伝導性を有する層が形成されている。粒24の異なる材料選択は、同様に、粒24が、例えば圧縮可能に形成されていることが可能であることも誘起する。粒24が例えば担持要素29の切欠き部31内において保持される、押付け圧力の大きさに依存して、弾性的な変形によって、アクティブに、個々の粒24または隣接する粒24の細孔の大きさは影響を及ぼされ得る。
蒸発器カートリッジ10に、選択的に、位置調節機構が付設されていることは可能であり、この位置調節機構を用いて、この蒸発器カートリッジ10の作動状態において、ウィック要素20に対する押付け圧力が、調節可能である。この位置調節機構が、例えばレバー要素、回転要素、または、それぞれに他の押圧手段であることは可能である。
【0056】
同様に多層状のウィック要素20も形成可能である。1つの実施形態において、第1の層が、第1の粒タイプの粒24によって形成されていることは可能である。第2の層は、第2の粒タイプの粒24によって形成されている。第3の層は、再び、第1の粒タイプの粒24によって形成されている。
中間の層内における第2の粒タイプの粒24は、特有の特性を有しており、この特性が、例えば、制御ユニット11のマイクロコントローラーによって検知可能である。蒸発器カートリッジ10の作動の間じゅう、例えば、第2の層内における粒24の湿潤の変化は、第2の粒タイプの特有の特性の検知可能な変化を誘起する。
例えばセンサーであることが可能であるマイクロコントローラーを介して、この変化は検知される。例えば加熱要素21のいわゆるドライパフを防止するために、制御ユニット11によって、その場合に、蒸発プロセス内において、制御的に介入され得る。
【0057】
ウィック要素20の粒24が、同じ、または、異なる幾何学的な形状を有することは可能である。粒24が、例えば、ニードル形状、球形状、米粒の形状であることは可能であり、または、同様に三角形状であることも可能である。粒24が、丸味を帯びさせられたエッジ部を有することは可能であり、または、角が角張って形成されていることは可能である。
概念「粒」のもとで、明確に、如何なる繊維状の要素も意味せず、即ち、如何なる細い、微細な糸形状の形成物も意味しない。粒24のそれぞれの形態、および、この粒の粒径に依存して、例えば、長手方向及び/または球面状の細孔が形成されていることは可能である。これら細孔が、同様に不規則に形成されていることも可能である。
粒24が、同様に少なくとも部分的に帯磁性であることも可能である。このことによって、粒24が、例えば収容室25もしくは切欠き部31内への充填/ばら積み堆積の間じゅう、外部の磁界の賦与によって、所望された整向方向に整向することは可能である。粒24のこの整向の可能性によって、例えば、ニードル形状の粒24が、流動通路16に対して垂直に整向されることは可能であり、ウィック要素20を例えば逆止弁または制御弁として使用可能とするために、ウィック要素20の特性を個々に規定することは可能である。
【0058】
更に別の特に有利な更なる構成において、ウィック要素20と加熱要素21とは、別個のユニットであり、これらユニットが、接触領域35内において互いに接触して位置しており、その際、このウィック要素20が、貯蔵タンク17に面しており、および、加熱要素21が流動通路16に面している。このバリエーションにおいて、加熱要素21は、エネルギー供給源12との電気的な接触のための電気的な接点22を有している。
図6に従う実施形態の例において、その場合に、ウィック要素20と加熱要素21とから形成された「2つの部材から成る」蒸発器ユニット19が、担持要素29の切欠き部31内において配置されている。側方に周囲にわたって、蒸発器ユニット19は、切欠き部31の壁要素26によってはめ込まれ且つ保持されている。貯蔵タンク17に向かって、ウィック要素20の流入側Eが指向している。
ウィック要素20の、緩いまたは互いに結合された粒24がこれら粒の位置/姿勢から離れることを防止するために、このウィック要素20は、貯蔵タンク17に向かって固定されている。この固定は、種々の方法で行われ得る。例えばカバー要素による、機械的な固定は、特に容易である。選択的に、しかしながら、同様に化学的、静電気的、空気圧的、または、磁気的な固定は、使用可能である。
全ての固定は、しかも貯蔵タンク17への方向に液体浸透的に形成されており、且つ、貯蔵タンク17と加熱要素21との間の液体連結を保証し、この加熱要素がこの加熱要素の流出側(流出口)Aによって、流動通路16に向かって指向している。
ウィック要素20は、これに伴って、加熱要素21を、貯蔵タンク17への直接的な接触から保護する。
【0059】
ウィック要素20は、微細通路23を有している。加熱要素21は液体浸透的および蒸気浸透的に形成されている。ウィック要素20が、先に記載された実施形態の内の1つの実施形態において形成および設備されていることは可能である。ウィック要素の流出側Aによって、このウィック要素20は、加熱要素21の流入側(流入口)Eに当接し、且つ、接触領域35を形成している。
加熱要素21自体は、有利には、直線状及び/または非直線状の貫通部を有しており、これら貫通部が、流動通路16へと開口している。加熱要素21が、平坦な、または、湾曲された、または、他の方法で成形された形成を有していることは可能である。
特に有利には、加熱要素21は、基本的にケイ素から成る、または、ケイ素またはpドープされたまたはnドープされたケイ素を有するMEMS構造部材(微小電気機械システム)であり、このMEMS構造部材が、ウィック要素20に面した上側を出発点として、流動通路16に面した下側に至るまで、液体浸透的および気体浸透的もしくは蒸気浸透的な貫通部を有している。
ウィック要素20の粒24の最小の粒の大きさは、少なくとも加熱要素21への接触領域35内において、この加熱要素21の貫通部の平均的な直径よりも大きい。
【0060】
先に記載されているように、蒸発器カートリッジ10は、ケーシング33を備えており、このケーシングが、中空体15もしくは担持要素29および蒸発器ユニット19を囲繞し、その際、ケーシング壁34が、貯蔵タンク17を、周囲環境に向かって画成している。ケーシング33は、有利には、円筒形またはロッド形状に形成されている。ケーシング壁34が、ウィック要素20に対して離間されて配置されていることは可能である。
他の実施形態において、ケーシング壁34が、ウィック要素20を、このウィック要素の定位置において保持することは可能である。貯蔵タンク17が、同様にケーシング33に依存せずに、且つ、このケーシング33に対して別個に形成されていることも可能である。
図3から5、および、図7から12内において、本発明に関連する特徴の更に別の実施形態が記載される。
【0061】
図3内において、例えば、貫通した貫通開口部30を有する管体形状の担持要素29が図示されており、この管体形状の担持要素が、切欠き部31内において、2つの部材から成る蒸発器ユニット19を担持している。
【0062】
蒸発器ユニット19は、少なくともウィック要素20の領域内において液体浸透的に形成されている弾性的なスリーブ36によって、切欠き部31内において保持されており、この目的のためにこのスリーブ36が例えばパーフォレーション45を有することは可能である。弾性的なスリーブ36の代わりに、例えば、同様に、不織布材料から成る巻体も使用され得る。
図4および5内において、それぞれに1つの管体形状の担持要素29が図示されており、この管体形状の担持要素において、蒸発器ユニット19は、同様に、弾性的なスリーブ36によって定位置において保持される。
図4内において、スリーブ36は、ウィック要素20を覆っている。スリーブ36は、しかしながら、スリット37を有しており、このスリットが、ウィック要素20を解放するために、スリーブ36における張力(矢印Z参照)によって、窓状部38へと(図5参照)開放される。
スリット37の代わりに、基本的に、窓状部38が設けられていることは可能であり、この窓状部は、スリーブ36の回転(矢印D参照)によって、このスリーブ36がウィック要素20を覆う位置から、この窓状部38がこのウィック要素20を越えて位置する位置へと移動可能である。
【0063】
図7および8は、1つの実施形態を示しており、この実施形態において、担持要素29は管体形状に形成されており、その際、貫通開口部30の内部に、互いに結合された2つのチャンバー39、40が形成されている。第1のチャンバー39は、吸い口片41として利用され、第2のチャンバー40内において、インサート42が形成されており、このインサートは、加熱要素21とウィック要素20とを有する蒸発器ユニット19を担持している。
蒸発器ユニット19は、インサート42と、担持要素29の壁部43の内側との間で「挟み込まれており」、即ち、定位置において保持されている。インサート42は、更に、貫通開口部44を有しており、この貫通開口部が、第1のチャンバー39と、流動通路16の形成のために作用結合されている。
担持要素29は、ウィック要素20が管体形状の担持要素29の壁部43の内側面に対して当接する領域内における壁部43内において、パーフォレーション45を有しており、このパーフォレーションが、貯蔵タンク17に対する液体連結を保障する。貯蔵タンク17は、相応して、ケーシング33のケーシング壁34と、管体形状の担持要素29の壁部43との間に形成される。
【0064】
図9から12までは、可能な蒸発器カートリッジ10の更に別の実施形態を示している。この実施形態において、円筒形のケーシング33は、内側室46の形成のために設けられており、この内側室内において、流動通路16として、貫通した煙道が設けられている。ケーシング33の形状が、しかしながら適宜であることは可能である。担持要素29は、流動通路16の一部にわたって延在している。この担持要素29内において、切欠き部31が形成されており、この切欠き部内において、加熱要素21が配置されている。
図9および10のバリエーションにおいて、格子構造47は、内側室46を2つの領域48、49に分割し、その際、1つの領域48が、液体の貯蔵タンク17として、1つの領域49が、粒状のウィック要素20の収容のために利用される。
格子構造47は、担持要素29の下方で、ウィック要素20が担持要素29を完全に囲繞し且つ相応して同様に加熱要素21も覆うように配置されている。
【0065】
図11および12のバリエーションにおいて、2つの格子構造50、51が設けられており、これら格子構造が、内側室を3つの領域52、53、54に分割する。これら両方の格子構造50、51は、加熱要素21を有する切欠き部31の上方および下方で、ウィック要素20の収容のために利用される中間の領域53が、担持要素29を少なくとも加熱要素21の領域内において覆うように配置されている。他の領域52、54内において、液体が貯蔵されることは可能である。
【0066】
本発明に従う蒸発器カートリッジを備える、本発明に従う吸入器14の機能原理は、例えば吸入器14としての電子たばこに基づいて、特に図1との関連において説明される。
【0067】
消費する人は、例えば、吸入器14の吸い口片41において吸引し、この吸入器が、カートリッジ担持体13と蒸発器カートリッジ10とから形成されており、その際、この蒸発器カートリッジ10の貯蔵タンク17内において、液体が存在し、この液体が、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、および、場合によっては更に別の作用物質、及び/または味覚物質を含有している。
吸引によって、流動通路16内において負圧が生成され、この負圧が、それ自身で、例えば図示されていないセンサーを介して、制御ユニット11を作動状態にする。制御ユニット11は、加熱要素21を制御し、この加熱要素が、エネルギー供給源12からエネルギーを供給される。貯蔵タンク17からの液体は、ウィック要素20を用いて、少なくとも初期に毛細管現象により、微細通路23を通って、この貯蔵タンク17から加熱要素21への方向に輸送される。
加熱された加熱要素21において、もしくは、この加熱された加熱要素内において、液体は、気体もしくは蒸気へと変態され、その際、この加熱要素21が、液体、もしくは、この液体から形成された気体、もしくは、この液体から形成された蒸気を、液体浸透的、および、気体浸透的もしくは蒸気浸透的な構造に基づいて、流動通路16への方向に輸送し、且つ、この流動通路に引き渡す。加熱要素21から流出する気体は、流動通路16内において空気流と混合し、その際、固有の再凝縮工程/蒸気形成工程の状態になり、且つ、消費する人によって吸引および吸入される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【誤訳訂正書】
【提出日】2022-02-14
【誤訳訂正1】
【訂正対象書類名】明細書
【訂正対象項目名】全文
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸入器の構成要素としての蒸発器カートリッジに関し、この蒸発器カートリッジが、貫通した流動通路を有する中空体と、液体の貯蔵のための貯蔵タンクとを備えており、
その際、この貯蔵タンクが、前記流動通路への少なくとも1つのアクセス開口部を有しており、且つ、それぞれの前記アクセス開口部の領域内において、このアクセス開口部全体にわたって延在する蒸発器ユニットが配置されており、この蒸発器ユニットが、ウィック要素と加熱要素とを有しており、
その際、前記蒸発器ユニットが、液体が少なくとも初期に毛細管現象により前記貯蔵タンクから前記蒸発器ユニットを通って前記流動通路への方向に搬送可能であるように、液体浸透的に形成されている。
【0002】
更に、本発明は、作用物質を添加された蒸気の吸入のために形成および設備されている吸入器に関し、この吸入器が、
少なくとも、1つの電子式の制御ユニットと1つのエネルギー供給源とを備える1つのカートリッジ担持体と、1つの蒸発器カートリッジとを備えている。
【背景技術】
【0003】
そのような蒸発器カートリッジおよび吸入器は、ここで特に電子式のたばこ、いわゆる電子たばことの関連における嗜好品産業において、並びに、医療の領域内において、流動性の嗜好品及び/または流動性の医療用の製品を、蒸気の形態において及び/またはエアロゾルとして吸入可能とするために使用される。消費の際に、通常、人は吸入器の吸い口片において吸引し、このことによって流動通路内において吸引力が生成し、この吸引力が、この流動通路を通っての空気流を生成する。空気流が、しかしながら同様に機械的に、例えばポンプによって生成されることも可能である。
消費する人にエアロゾルまたはエアロゾル-蒸気混合物を与えるために、流動通路内において、空気流に、蒸発器ユニットによって生成され且つ準備され蒸発させられた液体が付加される。液体は、蒸発器カートリッジにおいて、または、この蒸発器カートリッジ内において貯蔵されている。液体として、同じまたは異なる蒸気密度の異なる成分を有する種々の混合物が使用される。
電子たばこ内における使用のための典型的な混合物は、例えば、場合によってはニコチン及び/またはほぼ適宜の味覚物質を添加された、グリセリンおよびプロピレングリコールの成分を有している。医療または治療の領域内における使用のため、例えば喘息薬剤の吸入のために、混合物が、相応して医療用の成分および作用物質を有していることは可能である。
【0004】
蒸発器カートリッジの個々の構成要素、即ち、中空体、貯蔵タンク、および、蒸発器ユニットが、共通の1つの構造部材内において統合されていることは可能であり、その際、この構造部材が、その場合に、吸入パフの最終的な数に関して消費する人によって指定されている使い捨て品物であり、且つ、少なくとも、1つの電子式の制御ユニットおよび1つのエネルギー供給源を備える、再利用可能な複数回使用品物としてのカートリッジ担持体と共に、1つの吸入器を形成する。
蒸発器カートリッジが、しかしながら、複数の構造部材の組み立てによって初めて形成されていることも可能であり、その際、個々の構造部材、即ち特に中空体と蒸発器ユニットが、カートリッジ担持体内において、複数回使用品物として配置されており、且つ、貯蔵タンクが、別個の構造部材として使い捨て品物を形成する。
最終的に、吸入器は、通常、液体を備えている使い捨て品物の交換によって、可変に使用可能である。
【0005】
相応して、使い捨て品物と複数回使用品物とは、互いに解離可能に結合されている。複数回使用品物としてのカートリッジ担持体は、通常、少なくとも、1つの電子式の制御ユニットと1つのエネルギー供給源とを備えている。エネルギー供給源が、例えば電気化学的な使い捨てバッテリー、または、再充電可能な電気化学的な蓄電池、例えばリチウムイオン電池であることは可能であり、これを用いて、加熱要素が、蒸発器ユニットの電気的な接点を介して、エネルギーを供給される。
電子式及び/または電気式の制御ユニットは、蒸発器カートリッジの内部の蒸発器ユニットの制御のために利用される。カートリッジ担持体が、しかしながら、同様に蒸発器カートリッジの構成要素を備えることも可能である。
使い捨て品物が、差し込み部材として、複数回使用品物に対して差し込み可能に、または、装入部材として、この複数回使用品物内へと装入可能に形成されていることは可能である。差し込み結合の代わりに、同様に、ねじり結合、スナップ止め結合、または、他のクイック結合も使用可能である。使い捨て品物と複数回使用品物との結合によって、機械的および電気的な連結が、機能準備の整った吸入器の形成のために形成される。
【0006】
中心的な、且つ、最終的に利用(例えば、電子たばことして、または、医療用の吸入器として)を規定する構成要素は、蒸発器カートリッジの構成要素としての貯蔵タンクである。この蒸発器カートリッジは、通常、人によって選択され、所望され及び/または必要とされる液体、もしくは、(以下で同様に一般的に流体とも称される)液体混合物、並びに、流動通路を形成する中空体、および、蒸発器ユニットを備えている。この流体は、蒸発器カートリッジの貯蔵タンク内において貯蔵されている。
液体浸透的な蒸発器ユニットを用いて、流体は、貯蔵タンクから、少なくとも初期に毛細管現象による搬送に基づいて、ウィック要素および加熱要素を通って導かれる。加熱要素に印加される、エネルギー供給源によって生成された電圧は、この加熱要素内において電流の流れを誘起する。加熱要素の加熱抵抗、有利にはオーム抵抗に基づいて、この電流の流れは、加熱要素の加熱、および、最終的に、蒸発器ユニット内において存在する流体の蒸発を誘起する。このようにして生成された蒸気及び/またはエアロゾルは、流動通路への方向に蒸発器ユニットから逃れ出、且つ、蒸気添加として、空気流動に混ぜ合わせられる。
この流体は、これに伴って、予め与えられた流動方向を有する予め与えられた道程、即ち、ウィック要素を通り加熱要素に向かっておよびこの加熱要素を通る流体としての、および、ガス状にこの加熱要素から流動通路内への、道程を有している。流動通路内において、蒸発させられた流体は、空気流によって随伴され、その際、例えば消費する人が流動通路において吸引するまたはポンプが流動通路を通る空気流を搬送するというやり方で、この流動通路が圧力/負圧に曝される場合、蒸気/霧及び/またはエアロゾルが形成される。
【0007】
流体が、貯蔵タンクから、直接的に流動通路内へと流動しないために、蒸発器ユニットは、この貯蔵タンクから流動通路へのアクセス部を完全に覆っている。完全に覆っているということは、この関連において、液体が、強制的に蒸発器ユニットを通って案内されており、従って、流体が、直接的に貯蔵タンクから蒸発器ユニット内へと到達可能ではなく、むしろ、ウィック要素と加熱要素とを介しての「迂回路」を取る必要があることを意味する。
ウィック要素は、一方では、特にほぼ荷空けされた貯蔵タンクの際に、吸入器における少量の一服のために未だ十分な流体を提供するための、流体の中間貯蔵のために利用される。
このウィック要素は、他方では、特に、貯蔵タンクから流動通路の方向への、流体の輸送のために利用され、且つ、同時に、貯蔵タンクの方向への流体及び/または気体もしくは蒸気の逆流を阻止するため並びにより高い温度の際の個々の成分の添加を防止するための、一種の逆戻り防止として作用する。
【0008】
従来公知の蒸発器カートリッジは、ウィック要素を備える蒸発器ユニットを有しており、このウィック要素が、互いに製織された/捻じられた、複数のフィラメント/ファイバーから、例えば木綿またはグラスファイバーから形成されている。ファイバーウィックは、毛細管現象による諸特性を有しており、これら毛細管現象による諸特性が、流体との初期の接触の際に、このファイバーウィックが貯蔵タンク内へと没入し、この貯蔵タンク内におけるこの流体が収容され、且つ、加熱要素への方向に搬送されることを誘起する。
加熱要素は、通常、白熱コイルの形態において形成されている。この巻回された金属線材は、例えば、特殊鋼、銅、銅化合物、または、ニッケルから成っている。この蒸発器ユニットは、通常、ただ手動でだけ製造され得、且つ、流体の中間貯蔵のための制限された貯蔵容量を有している。
更に別の欠点は、微細通路の制限された数に基づいての流体の少ない輸送率にある。それに加えて、不均一な、および、制御可能でない温度分布が、ウィックコイルシステムに沿って与えられる。換言すれば、加熱要素の均等且つ連続的な流体の供給は、ただ制限されてだけで保障されている。それに加えて、有害物質発生の結果を有する局部的な過熱がある。更にこの解決策は、如何なる逆戻り防止も有していない。
【0009】
他の公知の解決策において、蒸発器ユニットは、従って、ウィック要素として1つの部材から成るようなウィックブロックを備えている。通常セラミックの材料から成るこのウィックブロックは、蒸発器ユニットおよび蒸発器カートリッジの自動的な製造を簡略化し、且つ、ファイバーウィックに比して増大された輸送率のための複数の微細通路を有している。
それにも関わらず、同様にこの解決策も、複数の欠点を有している。引き続き制限された輸送率および中間貯蔵容量と並んで、そのようなブロック状のウィックブロックは、極めて非可撓性であり、特に困難に組み付けされ得る。何故ならば、これらウィックブロックが、正確に-狭小な許容差範囲内において-前もって製造された収容部/保持部、またはその種の他のもの内に装入可能なだけであるからである。
【0010】
このウィック体の例えばセラミックの材料が微細通路を有し、導電性に形成されている場合、1つの部材から成るようなウィック体において、このウィック体自体は、加熱要素として利用される。その場合に、このウィック体は、二重の機能を有しており、且つ、蒸発器ユニットを形成する。他の場合において、このウィック体に対して付加的に、別個の構成要素が加熱要素として利用され得る。上述のうち後者の場合、このウィック体と別個の加熱要素とは、蒸発器ユニットを形成する。
この加熱要素は、その場合に、通常、平面状および肉薄の、例えば、基本的に、ケイ素から成る、または、ケイ素またはpドープまたはnドープされたケイ素を有しているMEMS構造部材(Micro-electro-mechanical-system(微小電気機械システム))であり、このMEMS構造部材が、液体浸透的に形成されている。前述された欠点は、特に、ウィック要素と加熱要素とが、接触領域内において互いに接触して位置する別個の物体である解決策の場合に増強される。
【0011】
更に別の欠点は、接触領域内において、異なる表面粗さによって、即ち一方ではウィック要素の多孔性の構造および他方では加熱要素の通常平滑な表面が、互いに向かい合って位置していることによって生じる。
接触領域内において、異なる粗さに基づいて、不定の、および、微細通路を形成しない空隙が生成する。これら空隙は、流体による、加熱要素の不十分な流体供給を誘起する。換言すれば、そのような空隙は、ウィック要素の流出側と加熱要素の流入側との間の十分な流体連結を妨害する。
更に別の空隙は、ウィック要素と加熱要素との表面の非面平行の整向によって、例えば湾曲させられた表面及び/または組み付け不良によって生成する。このことは、組み付け結果の不十分な再現可能性を誘起し、このことによって、変動する蒸発条件が結果として生じる。存在する空隙は、熱的に絶縁性の蒸気気泡形成、いわゆる(局部的な)過熱の所望されない効果を伴うライデンフロスト効果(Leidenfrosteffekt)を誘起する。その他の点では、蒸気気泡は、ウィック要素から加熱要素内への流体の追加搬送を妨害する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の根底をなす課題は、一定の且つ再現可能な蒸発条件を保障する、コンパクトな蒸発器カートリッジを提案することである。この課題は、更に、相応する吸入器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この課題は、冒頭に記載された様式の蒸発器カートリッジにより、
前記ウィック要素が多数の粒状物質状の粒から形成されており、これら粒が、これら粒のばら積み堆積及び/または構成に基づいて微細通路を形成する、
ことによって解決される。
ばら積み堆積によって、緩いおよび結合された、粒の相並んだ配設が説明され、その際、同様に揺動された及び/または圧縮された粒の配置も含まれている。粒の形成に関して、例えば、粒自体が、微小空隙及び/または微細通路を有することが可能であることが説明されている。
これに伴って、蒸発器ユニット内において、互いに接触して位置する個々の粒の間、及び/または、個々の粒を通って、多数のランダムな微細通路が、貯蔵タンクと流動通路との間に形成され、この微細通路が、蒸発器ユニットの流出側での一定および均等な蒸発を保障する。換言すれば、粒状のウィック要素によって、蒸発器ユニット内への流入側と、この蒸発器ユニットからの流出側との間の最適な流体連結が製造される。
【発明の効果】
【0014】
ウィック要素の本発明に従う構成により、従来技術から公知の解決策に対して、たくさんの利点が達成される。改善された輸送率と並んで、より多く且つ特に均等に流体が貯蔵タンクから蒸発器ユニットを通って案内され、粒状のウィック要素が、粒状のおよびこれに伴って多孔性のウィック構造に基づいて、流体のための増大された中間貯蔵容量を保証する。
更に、ウィック要素は、逆戻り防止を改善する。何故ならば、形成された微細通路が非直線的な経過を有しているからである。粒状のウィック要素の組み付けは、特に有利になる。何故ならば、ウィック要素が、それぞれの組み付け場所において、このウィック要素の収容部のそれぞれの適宜の輪郭/幾何学的形状に対して適合可能であるからである。
粒構造によって、ウィック要素は、粒状のウィック要素の組み付け/充填の際に、フレキシブルにそれぞれの輪郭/幾何学的形状に対して適合し、且つ、
-所望されない、微細通路を形成しない-空隙を満たし、且つ、隣接する面に対しての間隙形成を回避する。結果として、粒状のウィック要素によって一定の且つ再現可能な蒸発条件が保障される。
その際、-蒸発器カートリッジの構成要素としてのウィック要素及び/または加熱要素を有する-蒸発器ユニットが、カートリッジ担持体にまたはこのカートリッジ担持体の内に、即ち複数回使用品物にまたはこの複数回使用品物の内に、配置されているのかどうか、または、蒸発器ユニットが使い捨て品物に/内において配置されているのかどうかは、何ら重要ではない。
【0015】
ウィック要素の微細通路は、ただウィック機能だけを有するか、または、組み合わせられたウィック機能と加熱機能とを有するかどうかに依存せずに、貫通して、流入側Eから流出側Aへと延在し、従って、
流体が、貯蔵タンクからウィック要素を通って流動通路の方向へ輸送され、および、その際加熱され、従って、ガス状の流体/蒸気がこのウィック要素からこの流動通路内へと輸送されるか、または、
流体が、貯蔵タンクから、液体浸透的および蒸気浸透的であり且つこの流体から蒸気を生成する加熱要素へと輸送され、この蒸気が、この加熱要素から、流動通路内へと輸送される。
【0016】
蒸発器カートリッジは、一方では、使い捨て品物としてのこの蒸発器カートリッジの構成要素としての貯蔵タンクが、1つの制御ユニットおよび1つのエネルギー供給源と並んで例えばこの蒸発器カートリッジの構成要素としての蒸発器ユニットを備える、複数回使用品物としての少なくとも1つのカートリッジ担持体と結合されることによって形成され得る。
他方では、蒸発器カートリッジが、少なくとも蒸発器ユニットと貯蔵タンクとから形成された、使い捨て品物としてのユニットであることは可能であり、この蒸発器カートリッジが、吸入器の形成のために、少なくとも電子式の制御ユニットとエネルギー供給源とを備えるカートリッジ担持体との機械的および電気的な結合のために形成および設備されており、その際、蒸発器ユニットが、エネルギー供給源との電気的な接触のための電気的な接点を備えている。
このことによって、一定のおよび再現可能な蒸発条件を有するコンパクトな蒸発器カートリッジ/吸入器が提供される。
【0017】
合目的な更なる構成は、粒状のウィック要素を形成する粒状の材料が、少なくとも部分的に導電性であることによって特徴付けられている。従って、このウィック要素は、同時に更に加熱要素も形成する。蒸発器ユニットは、相応して1つの単独の要素であり、即ち、「1つの部材から成るように」形成されており、このことによって、特にコンパクトな構造様式が達成される。
ウィック要素と加熱要素との間の流体連結は、このバリエーションの際に最適である。何故ならば、微細通路が、中断無しに且つ貫通して、蒸発器ユニット内への流入側から、この蒸発器ユニットからの流出側に至るまで形成されているからである。
【0018】
有利な実施形態において、アクセス開口部の領域内において、収容室が、蒸発器ユニットの収容のために形成されており、その際、この収容室が、貯蔵タンクから蒸発器ユニット内への液体の収容のため、および、この蒸発器ユニットから流動通路内へのガス状の流体/蒸気の引き渡しのために、少なくとも部分的に、液体浸透的、および、気体浸透的、もしくは、蒸気浸透的な構造によって区画されている。
蒸発器ユニットのための収容室が、ケーシング壁、突出部、プレート、蓋、巻体要素、スライダー、または、それぞれの他の区画部、または、これらの組み合わせによって形成されていることは可能である。貯蔵タンクからの、少なくとも1つの、液体浸透的および蒸気浸透的な通路と、流動通路への少なくとも1つの、液体浸透的および蒸気浸透的な通路とが存在することは重要である。
収容室は、ウィック要素と加熱要素とを、共に、且つ、定位置において、および、しかしながら貯蔵タンクと流動通路との間のアクセス開口部の手前で保持し、従って、液体が、一方では、高い信頼性で、直接的に貯蔵タンクから流動通路内へと流動することが阻止され、および、他方では、均等に且つ一定に、流動通路への方向に案内される。
流動通路への出側および貯蔵タンクからの入側の面積によって、ウィック要素にわたっての分圧は調整され得る。
【0019】
有利な更なる構成において、蒸発器カートリッジは、担持要素を備えており、この担持要素が、中空体を形成し、且つ、一方では、流動通路を形成するための貫通開口部を有しており、および、他方では、蒸発器ユニットの収容のための切欠き部を有している。
この形成によって、特にコンパクトな蒸発器カートリッジが提供される。
【0020】
有利には、粒状のおよび導電性の材料から形成された沈積物は、この沈積物が、平行な及び/または一列に接続された抵抗を有する3次元的な抵抗加熱マトリックスを形成するように固定されている。
従って、ウィック要素は、毛細管現象による流体輸送のウィック機能と並んで、特に効果的に、規定され且つ再現可能な蒸発条件のための加熱要素として使用可能である。導電性のウィック要素は、例えば、押圧接触を介して電気的に結合され得、その際、少なくとも2つの接点が必要とされる。
【0021】
有利には、ウィック要素の粒は、これら粒の材料選択、及び/または、これら粒の大きさに関して、同じに、及び/または、同じでなく形成されている。
このことは、ウィック要素の内部での粒が、全て同じ材料から成り且つ全て同じ大きさ(規定された領域の内側で1つの大きさの規模を意味している)であるか、または、
全ての粒が、1つの材料から成るがしかしながら異なる大きさであるか、または、
粒が、異なる材料から成るがしかしながら全て同じ大きさであるか、または、
粒が、異なる材料から成り且つ異なる大きさであることを意味する。
従って、ウィック要素は、例えば、異なる液体および液体混合物のために、例えば、異なる輸送率(液体供給)、及び/または、異なる熱伝導率、及び/または、異なる流動抵抗(例えば、適合された逆戻り防止のため)と、簡単な方法で、個々に組み合わせ可能である。
【0022】
有利な実施形態は、ウィック要素の粒は、貯蔵タンクを出発点として、流動通路への方向に、局部的に異なる粒径を有していることによって特徴付けられている。
例えば、粒は、層毎に、これら粒の大きさに関して変化可能である。例えば粒状のウィック要素内における流動変化度を調節するために、この層毎の構造は、更に、フレキシブルに組み付け/充填の際に行われ得る。
【0023】
有利には、ウィック要素の粒は、貯蔵タンクを出発点として、流動通路への方向に、局部的に、異なる材料から成っている。
例えば、貯蔵タンク内において位置する液体に対する熱伝達を回避するために、例えば貯蔵タンクに面したウィック要素の側に、低い熱伝導率を有する材料が装入され、これに対して、蒸発工程をこの流動通路への方向に補助するためもしくは熱をこの流動通路への移行領域内において保持するために、流動通路に面したウィック要素の側に、高い熱伝導率を有する材料が装入されるというやり方で、粒の材料の層毎の変化によって、例えばウィック要素の変化可能な熱伝導率は達成され得る。
【0024】
有利には、ウィック要素の粒は、緩いばら積み堆積として、収容室の内部で位置している。
このバリエーションにおいて、特に均等な、且つ、特に空隙低減および間隙低減された粒の分布は保証されており、このことによって、一定の、且つ、再現可能な蒸発条件が更に最適化されている。
【0025】
他の有利なバリエーションにおいて、ウィック要素の粒は、互いに結合されたばら積み堆積として、収容室の内部で位置している。
例えばペースト状の成分またはその種の他の物を用いての、ばら積み堆積された粒の結合は、
同様に一定のおよび再現可能な蒸発条件が更に最適化し且つ特に粒の導電性の場合のために固定された沈積物を準備する、規定された構造が提供されることを保障する。
【0026】
有利な粒径は、0.1μmと2mmとの間の値、および、特に有利には3μmと300μmとの間の値である。これらの範囲内の粒径によって、先に記載された利点は、特に効果的に達成可能である。
【0027】
合目的に、最大の粒径は、それぞれに搬送されるべき液体の流動特性に依存して、毛細管現象による搬送を不可能にする大きさの範囲外にある。
換言すれば、特に-少なくとも初期の-毛細管現象による液体の搬送流を、均等な且つ一定の供給に関して保証するために、最大の粒径の制限によって、ウィック要素の内部での微細通路の形成は保障される。
【0028】
有利には、ウィック要素の粒は、砂及び/または黒鉛から成っている。この安いコストの粒タイプは、自然界においてほぼ限りなく使用され、且つ、化学的に不活性であり、且つ、環境と共存できる。
【0029】
有利な更なる構成において、ウィック要素の粒は、少なくとも部分的に帯磁性である。このことによって、例えば流動抵抗に影響を及ぼすために、粒は、合目的に整向され得る。
【0030】
特に有利な実施形態は、ウィック要素と加熱要素とが、別個のユニットであり、これらユニットが、接触領域内において互いに接触して位置しており、
その際、このウィック要素が、貯蔵タンクに面しており、および、加熱要素が流動通路に面しており、および、加熱要素が、エネルギー供給源との電気的な結合のための、電気的な接点を有しており、および、
その際、ウィック要素が微細通路を有しており、および、このウィック要素によって貯蔵タンクから保護されている加熱要素が、液体浸透的および蒸気浸透的に形成されている、ことによって特徴付けられている。
ウィック要素内における微細通路は、先に記載された方法において、粒配置、及び/または、これら粒自体によって形成されている。液体および気体もしくは蒸気のための加熱要素の透過性が、例えば、穿孔加工、レーザー加工、エッチング加工、またはその種の他のものによって形成されていることは可能である。
蒸発器ユニットの、いわば「2つの部材から成る」この構成の際に、それぞれの要素が、それ自体で、最適にそれぞれの機能性に対して適合されていることは可能であり、
即ち、ウィック要素が、貯蔵タンクから加熱要素に対する特に液体の貯蔵および伝導に対して適合されていることは可能であり、および、加熱要素が、特にウィック要素からの液体の受け取りに対して、および、気体もしくは蒸気への液体の変態に対して、並びに、流動通路内へのこの気体もしくは蒸気の引き渡しに対して適合されていることは可能である。
【0031】
ウィック要素が粒状物質状の粒から形成されていることによって、このウィック要素が、狭小に且つ平面状に、加熱要素に当接している。従って、加熱素におけるウィック要素の均等な当接が保証されており、このことによって、一方では、最適な流体連結が、および、他方では、均一の熱的な結合が提供される。
組み付けられた/ばら積み堆積された状態において、ウィック要素は、流入側によって、貯蔵タンクへの方向に液体に、および、流出側によって、加熱要素に当接している。他方また、加熱要素は、流入側によってウィック要素に当接し、且つ、流出側によって、流動通路へと指向している。この有利な実施形態により、加熱要素の一定の且つ均一の流体供給が、および、従って、再現可能な蒸発条件が保障されている。
【0032】
有利には、加熱要素は、基本的にケイ素から成る、または、ケイ素またはpドープされたまたはnドープされたケイ素を有するMEMS構造部材(微小電気機械システム)であり、このMEMS構造部材が、ウィック要素に面した上側を出発点として、流動通路に面した下側に至るまで、液体浸透的および気体浸透的もしくは蒸気浸透的な貫通部を有している。
この場所を取らない加熱要素によって、特に効果的な蒸気形成は達成可能である。
【0033】
有利には、ウィック要素の粒の最小の粒の大きさは、少なくとも加熱要素への接触領域内において、この加熱要素の貫通部の平均的な直径よりも大きい。
このことによって、加熱要素の貫通部の目詰まりは、効果的に防止される。
【0034】
有利な実施形態において、蒸発器カートリッジは、ケーシングを備えており、このケーシングが、中空体および蒸発器ユニットを囲繞し、その際、ケーシング壁が、貯蔵タンクを、周囲環境に向かって画成している。
従って、簡単な且つ構造空間を節約する構造様式は保証されている。
【0035】
合目的なバリエーションにおいて、ケーシング壁は、ウィック要素を、このウィック要素の定位置において保持する。
貯蔵タンクのための区画部として、および、収容室の内部でのウィック要素の固定手段としてのケーシング壁の二重の機能により、簡単な構造様式が提供されている。
【0036】
この課題は、冒頭に記載された様式の吸入器によって、
請求項1から21のいずれか一つによる蒸発器カートリッジが形成および設備されていることによっても解決される。
【0037】
そこから与えられる利点は、既に、蒸発器カートリッジとの関連において記載されており、その理由で、ここで繰返しを回避するために、前記の説明を参照されたい。
【0038】
蒸発器カートリッジおよび吸入器に関する、更に別の合目的及び/または有利な特徴、および、更なる構成は、従属請求項、および、明細書から与えられる。蒸発器カートリッジと吸入器との特に有利な実施形態を、添付された図に基づいて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】カートリッジ担持体と蒸発器カートリッジとを有する、本発明に従う吸入器の有利な実施形態の、部分断面における概略図である。
図2】蒸発器カートリッジの更に別の実施形態の、部分断面における拡大図である。
図3】蒸発器カートリッジの一部分の有利な実施形態の、断面における拡大図である。
図4】蒸発器カートリッジの一部分の更に別の実施形態の図である。
図5】蒸発器カートリッジの一部分の更に別の実施形態の図である。
図6図1に従う蒸発器カートリッジの実施形態の、部分断面における拡大図である。
図7】蒸発器カートリッジの一部分の更に別の実施形態の拡大図である。
図8図7に従う蒸発器カートリッジの、切断面A-Aに沿っての図である。
図9】蒸発器カートリッジの更に別の実施形態の、部分断面における拡大図である。
図10図9に従う蒸発器カートリッジの図である。
図11】蒸発器カートリッジの更に別の実施形態の、部分断面における拡大図である。
図12図11に従う蒸発器カートリッジの図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図内において図示されている蒸発器カートリッジ、並びに、吸入器は、作用物質、例えば、ニコチンを添加された、液体から成る蒸気、及び/または、エアロゾルの吸入のために利用され、且つ、相応して、電子たばことの関連において説明されている。
蒸発器カートリッジおよび吸入器は、同じ方法で、医薬品的な及び/または栄養補充的な製品から成る、医療用の作用物質を添加された蒸気の吸入のために使用可能である。
【0041】
図示された蒸発器カートリッジ10は、貫通した流動通路16を有する中空体15と、液体の貯蔵のための貯蔵タンク17とを備えており、
その際、この貯蔵タンク17が、この流動通路16への少なくとも1つのアクセス開口部18を有しており、且つ、それぞれのアクセス開口部18の領域内において、アクセス開口部18全体にわたって延在する蒸発器ユニット19が配置されており、この蒸発器ユニットが、ウィック要素20と加熱要素21とを有しており、
その際、この蒸発器ユニット19が、液体が少なくとも初期に毛細管現象により貯蔵タンク17から蒸発器ユニット19を通って流動通路16への方向に搬送可能であるように、液体浸透的に形成されている。
【0042】
2つまたはそれ以上の流動通路16が同様に設けられていることは可能である、その中空体の少なくとも1つの流動通路16を有する該中空体15は、吸引通路/煙道を形成している。この中空体15の形状と同様に流動通路16の経過も、ほぼ適宜であることは可能である。
例えば空気を吸入可能とするために、それぞれの流動通路16の流入側Esが周囲環境に対して開口していること、および、特に消費する人の吸引により例えば負圧を生成することを可能とするために、流出側Asが開口していることは重要である。開口とは、この関連において、流入側Esと流出側Asとが、通気的であることを意味する。
貯蔵タンク17と流動通路16との間のアクセス開口部18の領域内において、蒸発器ユニット19は、一種の液体遮断部を形成し、この液体遮断部が、液体が貯蔵タンク17から、直接的に、且つ、液体として、流動通路16内へと流動することを防止する。
貯蔵タンク17の形状と構成とに依存せずに、同様に2つまたはそれ以上の貯蔵タンク17が設けられていることも可能であり、且つ、中空体15、並びに、この中空体15に対する貯蔵タンク17の配置/位置決めにより、蒸発器ユニット19は、
液体が必然的に貯蔵タンク17から流動通路16への方向に案内され、且つ、遅くとも、この蒸発器ユニット19からの流出の際に気体もしくは蒸気として、この流動通路16内へと引き渡されることを保障する。
【0043】
この蒸発器カートリッジ10は、本発明に従い、ウィック要素20が多数の粒状物質状の粒24から形成されており、これら粒が、これら粒のばら積み堆積及び/または構成に基づいて微細通路23を形成することによって特徴付けられる。
【0044】
互いに接触して位置する粒24は、一方では、隣接する粒24と共に微小空隙を形成し、他方では、これら粒24自体が、微小空隙、いわゆる細孔を有していることは可能である。粒24内における、および、これら粒24の間の、全ての微小空隙の結合および協働によって、微細通路23が形成されており、これら微細通路は、少なくとも初期に毛細管現象による搬送を保証し、且つ、貫通して形成されており、且つ、非直線的な経過を有している。
ウィック要素20と加熱要素21とを備える蒸発器ユニット19を通っての貫流の際に、蒸発器カートリッジ10の作動状態において、貯蔵タンク17の液体から、流動通路16へと、蒸気及び/またはエアロゾルが形成され、その際、ウィック要素20の多孔性の構造が、一方では、液体のための蓄積媒体を形成し、且つ、他方では、流動抵抗を具現する。液体の流動方向は、貯蔵タンク17から蒸発器ユニット19を通って流動通路16への方向に行われる。
【0045】
本発明に従う蒸発器カートリッジ10が、使い捨て品物として、構造的な1つのユニットであることは可能であり、このユニットが、諸構成要素として、中空体15、貯蔵タンク17、および、蒸発器ユニット19を備えている。
蒸発器カートリッジ10が、しかしながら、同様に複数の部材から成るように形成されていることも可能であり、その際、この蒸発器カートリッジ10の構成要素が、使い捨て品物と複数回使用品物とに、
例えば貯蔵タンク17が使い捨て品物であり、この貯蔵タンクが、カートリッジ担持体13との集合の際に初めて備えられ得、且つ、このカートリッジ担持体が、複数回使用品物であることが可能であり、且つ、制御ユニット11およびエネルギー供給源12と並んで、例えば中空体15および蒸発器ユニット19のような蒸発器カートリッジ10の構成要素を備えることが可能であり、蒸発器カートリッジ10の構造的なユニットを誘起するように、分配される。
蒸発器カートリッジ10は、相応して、この蒸発器カートリッジの構成要素、即ち、流動通路16、貯蔵タンク17および蒸発器ユニット19を有する中空体15によって規定され、且つ、複数回使用品物もしくは使い捨て品物のためのこれら構成要素の設計的/構造的な対応関係によっては規定されない。
【0046】
以下で記載される特徴および更なる構成は、自体で見て、または、有利な実施形態の互いの組み合わせにおいて具現する。請求の範囲内及び/または明細書内及び/または図の説明内においてまとめられている、または、共通の実施形態内において記載されているこれら特徴が、同様に機能的に独自にも、更に別の前記された蒸発器カートリッジ10を更に構成することが可能であることは、明確に指摘される。
【0047】
ウィック要素20は微細通路23を有しており、これら微細通路が、貫通して、ウィック要素20の流入側Eからこのウィック要素20の流出側Aへと延在している。第1の実施形態において、ウィック要素20は、同時に、加熱要素21を形成している(特に図2参照)。
このウィック要素20は、これに伴って、蒸発器ユニット19全体を形成している。この目的のために、粒状のウィック要素20を形成する粒状の材料は、少なくとも部分的に導電性である。これら導電性の粒24は、有利には、少なくとも、下側の、流動通路16に面した領域内において位置している。相応して、電気的な接点22は、ウィック要素20の導電性の領域内において配置されている。
この構成において、微細通路23は、貯蔵タンク17内における液体に曝された、ウィック要素20の流入側Eから、直接的に流動通路16に対して隣接している、ウィック要素20の流出側Aに至るまで延在している。
【0048】
有利には、蒸発器カートリッジ10は、吸入器14の形成のために、少なくとも電子式の制御ユニット11とエネルギー供給源12とを備えるカートリッジ担持体13との機械的および電気的な結合のために形成および設備されており、その際、蒸発器ユニット19が、エネルギー供給源12との電気的な接触のための電気的な接点22を備えている。
吸入器14は、例えば電子たばことして、例えば吸入する人によって作動状態にされ得、または、例えば人が自身もはや吸引可能ではないまたは十分に吸引可能ではない場合のための医療用の器具として、ポンプによって作動状態にされ得る。
【0049】
アクセス開口部18の領域内において、収容室25は、図2の例においてウィック要素20の、および、図6の例においてウィック要素20および加熱要素21の蒸発器ユニット19の収容のために形成されており、その際、この収容室25が、貯蔵タンク17から蒸発器ユニット19内への液体の収容のため、および、この蒸発器ユニット19から流動通路16内への蒸気の引き渡しのために、少なくとも部分的に、液体浸透的、および、気体浸透的、もしくは、蒸気浸透的な構造によって区画されている。
蒸発器ユニット19のための収容室25が、蒸発器カートリッジ10の他の構成要素のケーシング壁によって、別個の壁要素、突出部、プレート、蓋、巻体要素、スライダー、または、それぞれの他の区画部、または、これらの組み合わせによって形成されていることは可能である。収容室25が、それぞれの適宜な形態及び/または輪郭を有していることは可能である。図2および6の例において、収容室25は、例えば、周囲にわたって壁要素26によって区画されている。
貯蔵タンク17へと整向されて、その収容室内において位置する蒸発器ユニット19を有する該収容室25は、例えば、液体浸透的に形成されているカバー要素27によって覆われている。流動通路16に向かって、収容室25が、例えば、液体浸透的、および、気体浸透的、もしくは、蒸気浸透的な格子構造28(図2参照)によって、または、相応して液体浸透的および蒸気浸透的に形成されている別個の加熱要素21(図6参照)によって区画されていることは可能である。
【0050】
有利には、蒸発器カートリッジ10は、担持要素29を備えており、この担持要素が、中空体15を形成し、且つ、一方では、流動通路16を形成するための貫通開口部30を有しており、および、他方では、蒸発器ユニット19の収容のための切欠き部31を有している。
【0051】
担持要素29は、有利には管体形状の本体である。この本体の周囲壁内において切欠き部31が形成されており、この切欠き部内において蒸発器ユニット19が配置されている。
有利には、担持要素29と蒸発器ユニット19とから形成されたユニットは、貯蔵タンク17を形成するケーシング33の内部に配置されており、その際、貯蔵タンク17の内側容積部が、ケーシング33のケーシング壁34と、担持要素29との間で形成されている。担持要素29は、ただ部分的にだけ、ケーシング33にわたって延在している(例えば図2参照)。他の実施形態において、担持要素29が、同様に完全に(例えば図6参照)、ケーシング33にわたって延在していることも可能である。
【0052】
粒24は、緩いばら積み堆積として、収容室25の内部で、もしくは、切欠き部31内において位置している。この場合、粒24自体は、蒸発器カートリッジ10の作動状態において、未だ互いに相対的に移動可能であり、且つ、従って、可変の微細通路23を形成する。
相並んでおよび相互に重なり合って位置している粒24は、互いに突っ張るように支持されている。その際、粒24は、純粋に機械的に互いに当接可能である。粒24は、しかしながら、同様に、相互間で機械的に互いに噛み合わせされていることも可能である。微細通路の形成のために重要なことは、相応して、粒24が互いに接触して位置することである。
他の実施形態、特に、ウィック要素20が同時に加熱要素21として形成されている、そのような実施形態において、粒24は、収容室25の内部もしくは切欠き部31内において、少なくとも部分的に互いに結合されている。特に有利には、粒状のおよび導電性の材料から形成された沈積物は、この沈積物が、平行な及び/または一列に接続された抵抗を有する3次元的な抵抗加熱マトリックスを形成するように固定されている。
この抵抗加熱マトリックスにおいて、電気的な接点22は形成、もしくは、配置されている。粒24の固定のための全ての手段は、その際、貯蔵タンク17と加熱要素21との間の液体連結を、選択的にウィック要素20の構成要素または別個の部材として保障する。
【0053】
ウィック要素20の粒24が、これら粒の材料選択、及び/または、これら粒の大きさに関して、同じに、及び/または、同じでなく形成されていることは可能である。全ての粒24は、同じ大きさを有することは可能であり、従って、1つの大きさの範囲内にあることは可能である。粒24が、しかしながら、異なる大きさ、即ち、異なる大きさの範囲内にあることは可能である。有利には、粒径は、0.1μmと2mmとの間の値、および、特に有利には3μmと300μmとの間の値である。純粋に例示的に、全ての粒24が、50μmと100μmとの間の(1つの大きさの範囲に相応する)大きさの範囲内にあることは可能である。
ウィック要素20の粒24が、しかしながら、同様に、貯蔵タンク17を出発点として、流動通路16への方向に、局部的に異なる粒径を有していることは可能である。従って、貯蔵タンク17に近いウィック要素20の層が、例えば(1つの大きさの範囲に相応する)200μmから300μmまでの粒径を有する粒24を有しており、これに対して、流動通路16に近いウィック要素20の層が、例えば(1つの大きさの範囲に相応する)50μmから100μmまでの粒径を有する粒24を有していることは可能である。
粒径と、例えば異なる大きさの範囲の粒24を有する層内におけるそれぞれの分布との選択によって、特に、ウィック要素20の流動抵抗は、個々に、最終的にしかもその上同様に、最初にも、ばら積み堆積の際に調節可能である。ウィック要素20内における調節された粒径の選択によって、このウィック要素20のための個々の細孔変化度は、調節され得る。
細孔変化度を安定的に保持するために、微細孔の領域内における粒24の最小の粒直径は、その際、有利には、次により粗い領域内における細孔よりも大きいべきである。最大の粒径は、それぞれに搬送されるべき液体の流動特性に依存して、それぞれに、毛細管現象による搬送を不可能にする大きさの範囲外にある。換言すれば、粒24は、これら粒がウィック要素20として未だに毛細管現象による作用を生成する程にだけ大きいべきである。
加熱毛細管の目詰まり及び/または加熱要素21からの粒24の流出を防止するために、同じ程度に、粒直径は、加熱要素21の細孔/毛細管直径よりも小さく形成されているべきではない。
【0054】
全ての粒24が、同じ材料から成ることは可能である。これら粒24が、しかしながら、同様に少なくとも2つの異なる材料から成ることも可能である。有利には、粒24は、砂(石英)及び/または黒鉛から成っている。材料として、しかしながら、同様に、各種の他の材料、または、材料混合物が考慮の対象になる。
粒24のための有利な材料は、例えば、PEEK粒状物質(ポリエーテルエーテルケトン粒状物質)、PEK粒状物質(ポリエーテルケトン粒状物質)、PA粉状体、VM17粒状物質、ガラス、凍石、二酸化ケイ素、リグニン、エアロゲル、バイトン、シリコン、灰、チャコール、ベトナイト(Betonit)、ゼオライト、ディアトミート、マグネシウムシリケート、コランダム、珪藻土、粉砕された斑岩、並びに、これらからの混合物である。
特に有利には、ウィック要素20の粒24は、貯蔵タンク17を出発点として、流動通路16への方向に、局部的に、異なる材料から成っている。局部的な配置として、例えば、それぞれに同じ材料から成る粒24の層を成した構造が理解される。
【0055】
ウィック要素20の粒24の材料の選択によって、このウィック要素20の種々の特性は調節可能である。例えば、異なる熱伝導率を有する粒24は、使用され得る。特に有利には、粒24の熱伝導率は、貯蔵タンク17を出発点として、流動通路16への方向に、連続的に、または、歩進的/層毎に増大する。
特に熱伝導性の層は、例えば、流動通路16への境界領域内において形成されていることは可能であり、これに対して、貯蔵タンク17への方向に、ただ少しだけの熱伝導性を有する層が形成されている。粒24の異なる材料選択は、同様に、粒24が、例えば圧縮可能に形成されていることが可能であることも誘起する。粒24が例えば担持要素29の切欠き部31内において保持される、押付け圧力の大きさに依存して、弾性的な変形によって、アクティブに、個々の粒24または隣接する粒24の細孔の大きさは影響を及ぼされ得る。
蒸発器カートリッジ10に、選択的に、位置調節機構が付設されていることは可能であり、この位置調節機構を用いて、この蒸発器カートリッジ10の作動状態において、ウィック要素20に対する押付け圧力が、調節可能である。この位置調節機構が、例えばレバー要素、回転要素、または、それぞれに他の押圧手段であることは可能である。
【0056】
同様に多層状のウィック要素20も形成可能である。1つの実施形態において、第1の層が、第1の粒タイプの粒24によって形成されていることは可能である。第2の層は、第2の粒タイプの粒24によって形成されている。第3の層は、再び、第1の粒タイプの粒24によって形成されている。
中間の層内における第2の粒タイプの粒24は、特有の特性を有しており、この特性が、例えば、制御ユニット11のマイクロコントローラーによって検知可能である。蒸発器カートリッジ10の作動の間じゅう、例えば、第2の層内における粒24の湿潤の変化は、第2の粒タイプの特有の特性の検知可能な変化を誘起する。
例えばセンサーであることが可能であるマイクロコントローラーを介して、この変化は検知される。例えば加熱要素21のいわゆるドライパフを防止するために、制御ユニット11によって、その場合に、蒸発プロセス内において、制御的に介入され得る。
【0057】
ウィック要素20の粒24が、同じ、または、異なる幾何学的な形状を有することは可能である。粒24が、例えば、ニードル形状、球形状、米粒の形状であることは可能であり、または、同様に三角形状であることも可能である。粒24が、丸味を帯びさせられたエッジ部を有することは可能であり、または、角が角張って形成されていることは可能である。
概念「粒」のもとで、明確に、如何なる繊維状の要素も意味せず、即ち、如何なる細い、微細な糸形状の形成物も意味しない。粒24のそれぞれの形態、および、この粒の粒径に依存して、例えば、長手方向及び/または球面状の細孔が形成されていることは可能である。これら細孔が、同様に不規則に形成されていることも可能である。
粒24が、同様に少なくとも部分的に帯磁性であることも可能である。このことによって、粒24が、例えば収容室25もしくは切欠き部31内への充填/ばら積み堆積の間じゅう、外部の磁界の賦与によって、所望された整向方向に整向することは可能である。粒24のこの整向の可能性によって、例えば、ニードル形状の粒24が、流動通路16に対して垂直に整向されることは可能であり、ウィック要素20を例えば逆止弁または制御弁として使用可能とするために、ウィック要素20の特性を個々に規定することは可能である。
【0058】
更に別の特に有利な更なる構成において、ウィック要素20と加熱要素21とは、別個のユニットであり、これらユニットが、接触領域35内において互いに接触して位置しており、その際、このウィック要素20が、貯蔵タンク17に面しており、および、加熱要素21が流動通路16に面している。このバリエーションにおいて、加熱要素21は、エネルギー供給源12との電気的な接触のための電気的な接点22を有している。
図6に従う実施形態の例において、その場合に、ウィック要素20と加熱要素21とから形成された「2つの部材から成る」蒸発器ユニット19が、担持要素29の切欠き部31内において配置されている。側方に周囲にわたって、蒸発器ユニット19は、切欠き部31の壁要素26によってはめ込まれ且つ保持されている。貯蔵タンク17に向かって、ウィック要素20の流入側Eが指向している。
ウィック要素20の、緩いまたは互いに結合された粒24がこれら粒の位置/姿勢から離れることを防止するために、このウィック要素20は、貯蔵タンク17に向かって固定されている。この固定は、種々の方法で行われ得る。例えばカバー要素27による、機械的な固定は、特に容易である。選択的に、しかしながら、同様に化学的、静電気的、空気圧的、または、磁気的な固定は、使用可能である。
全ての固定は、しかも貯蔵タンク17への方向に液体浸透的に形成されており、且つ、貯蔵タンク17と加熱要素21との間の液体連結を保証し、この加熱要素がこの加熱要素の流出側(流出口)Aによって、流動通路16に向かって指向している。
ウィック要素20は、これに伴って、加熱要素21を、貯蔵タンク17への直接的な接触から保護する。
【0059】
ウィック要素20は、微細通路23を有している。加熱要素21は液体浸透的および蒸気浸透的に形成されている。ウィック要素20が、先に記載された実施形態の内の1つの実施形態において形成および設備されていることは可能である。ウィック要素の流出側Aによって、このウィック要素20は、加熱要素21の流入側(流入口)Eに当接し、且つ、接触領域35を形成している。
加熱要素21自体は、有利には、直線状及び/または非直線状の貫通部を有しており、これら貫通部が、流動通路16へと開口している。加熱要素21が、平坦な、または、湾曲された、または、他の方法で成形された形成を有していることは可能である。
特に有利には、加熱要素21は、基本的にケイ素から成る、または、ケイ素またはpドープされたまたはnドープされたケイ素を有するMEMS構造部材(微小電気機械システム)であり、このMEMS構造部材が、ウィック要素20に面した上側を出発点として、流動通路16に面した下側に至るまで、液体浸透的および気体浸透的もしくは蒸気浸透的な貫通部を有している。
ウィック要素20の粒24の最小の粒の大きさは、少なくとも加熱要素21への接触領域35内において、この加熱要素21の貫通部の平均的な直径よりも大きい。
【0060】
先に記載されているように、蒸発器カートリッジ10は、ケーシング33を備えており、このケーシングが、中空体15もしくは担持要素29および蒸発器ユニット19を囲繞し、その際、ケーシング壁34が、貯蔵タンク17を、周囲環境に向かって画成している。ケーシング33は、有利には、円筒形またはロッド形状に形成されている。ケーシング壁34が、ウィック要素20に対して離間されて配置されていることは可能である。
他の実施形態において、ケーシング壁34が、ウィック要素20を、このウィック要素の定位置において保持することは可能である。貯蔵タンク17が、同様にケーシング33に依存せずに、且つ、このケーシング33に対して別個に形成されていることも可能である。
図3から5、および、図7から12内において、本発明に関連する特徴の更に別の実施形態が記載される。
【0061】
図3内において、例えば、貫通した貫通開口部30を有する管体形状の担持要素29が図示されており、この管体形状の担持要素が、切欠き部31内において、2つの部材から成る蒸発器ユニット19を担持している。
【0062】
蒸発器ユニット19は、少なくともウィック要素20の領域内において液体浸透的に形成されている弾性的なスリーブ36によって、切欠き部31内において保持されており、この目的のためにこのスリーブ36が例えばパーフォレーション45を有することは可能である。弾性的なスリーブ36の代わりに、例えば、同様に、不織布材料から成る巻体も使用され得る。
図4および5内において、それぞれに1つの管体形状の担持要素29が図示されており、この管体形状の担持要素において、蒸発器ユニット19は、同様に、弾性的なスリーブ36によって定位置において保持される。
図4内において、スリーブ36は、ウィック要素20を覆っている。スリーブ36は、しかしながら、スリット37を有しており、このスリットが、ウィック要素20を解放するために、スリーブ36における張力(矢印Z参照)によって、窓状部38へと(図5参照)開放される。
スリット37の代わりに、基本的に、窓状部38が設けられていることは可能であり、この窓状部は、スリーブ36の回転(矢印D参照)によって、このスリーブ36がウィック要素20を覆う位置から、この窓状部38がこのウィック要素20を越えて位置する位置へと移動可能である。
【0063】
図7および8は、1つの実施形態を示しており、この実施形態において、担持要素29は管体形状に形成されており、その際、貫通開口部30の内部に、互いに結合された2つのチャンバー39、40が形成されている。第1のチャンバー39は、吸い口片41として利用され、第2のチャンバー40内において、インサート42が形成されており、このインサートは、加熱要素21とウィック要素20とを有する蒸発器ユニット19を担持している。
蒸発器ユニット19は、インサート42と、担持要素29の壁部43の内側との間で「挟み込まれており」、即ち、定位置において保持されている。インサート42は、更に、貫通開口部44を有しており、この貫通開口部が、第1のチャンバー39と、流動通路16の形成のために作用結合されている。
担持要素29は、ウィック要素20が管体形状の担持要素29の壁部43の内側面に対して当接する領域内における壁部43内において、パーフォレーション45を有しており、このパーフォレーションが、貯蔵タンク17に対する液体連結を保障する。貯蔵タンク17は、相応して、ケーシング33のケーシング壁34と、管体形状の担持要素29の壁部43との間に形成される。
【0064】
図9から12までは、可能な蒸発器カートリッジ10の更に別の実施形態を示している。この実施形態において、円筒形のケーシング33は、内側室46の形成のために設けられており、この内側室内において、流動通路16として、貫通した煙道が設けられている。ケーシング33の形状が、しかしながら適宜であることは可能である。担持要素29は、流動通路16の一部にわたって延在している。この担持要素29内において、切欠き部31が形成されており、この切欠き部内において、加熱要素21が配置されている。
図9および10のバリエーションにおいて、格子構造47は、内側室46を2つの領域48、49に分割し、その際、1つの領域48が、液体の貯蔵タンク17として、1つの領域49が、粒状のウィック要素20の収容のために利用される。
格子構造47は、担持要素29の下方で、ウィック要素20が担持要素29を完全に囲繞し且つ相応して同様に加熱要素21も覆うように配置されている。
【0065】
図11および12のバリエーションにおいて、2つの格子構造50、51が設けられており、これら格子構造が、内側室を3つの領域52、53、54に分割する。これら両方の格子構造50、51は、加熱要素21を有する切欠き部31の上方および下方で、ウィック要素20の収容のために利用される中間の領域53が、担持要素29を少なくとも加熱要素21の領域内において覆うように配置されている。他の領域52、54内において、液体が貯蔵されることは可能である。
【0066】
本発明に従う蒸発器カートリッジを備える、本発明に従う吸入器14の機能原理は、例えば吸入器14としての電子たばこに基づいて、特に図1との関連において説明される。
【0067】
消費する人は、例えば、吸入器14の吸い口片41において吸引し、この吸入器が、カートリッジ担持体13と蒸発器カートリッジ10とから形成されており、その際、この蒸発器カートリッジ10の貯蔵タンク17内において、液体が存在し、この液体が、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、および、場合によっては更に別の作用物質、及び/または味覚物質を含有している。
吸引によって、流動通路16内において負圧が生成され、この負圧が、それ自身で、例えば図示されていないセンサーを介して、制御ユニット11を作動状態にする。制御ユニット11は、加熱要素21を制御し、この加熱要素が、エネルギー供給源12からエネルギーを供給される。貯蔵タンク17からの液体は、ウィック要素20を用いて、少なくとも初期に毛細管現象により、微細通路23を通って、この貯蔵タンク17から加熱要素21への方向に輸送される。
加熱された加熱要素21において、もしくは、この加熱された加熱要素内において、液体は、気体もしくは蒸気へと変態され、その際、この加熱要素21が、液体、もしくは、この液体から形成された気体、もしくは、この液体から形成された蒸気を、液体浸透的、および、気体浸透的もしくは蒸気浸透的な構造に基づいて、流動通路16への方向に輸送し、且つ、この流動通路に引き渡す。加熱要素21から流出する気体は、流動通路16内において空気流と混合し、その際、固有の再凝縮工程/蒸気形成工程の状態になり、且つ、消費する人によって吸引および吸入される。
【誤訳訂正2】
【訂正対象書類名】特許請求の範囲
【訂正対象項目名】全文
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入器の構成要素としての蒸発器カートリッジ(10)であって、この蒸発器カートリッジが、貫通する流動通路(16)を有する中空体(15)と、液体の貯蔵のための貯蔵タンク(17)とを備えており、
この貯蔵タンク(17)が、前記流動通路(16)への少なくとも1つのアクセス開口部(18)を有しており、且つ、それぞれの前記アクセス開口部(18)の領域内において、このアクセス開口部(18)全体にわたって延在する蒸発器ユニット(19)が配置されており、この蒸発器ユニット(19)が、ウィック要素(20)と加熱要素(21)とを有しており、
前記蒸発器ユニット(19)が、液体が少なくとも初期に毛細管現象により前記貯蔵タンク(17)から前記蒸発器ユニット(19)を通って前記流動通路(16)への方向に搬送可能であるように、液体浸透的に形成されている様式の上記蒸発器カートリッジ(10)において、
前記ウィック要素(20)が多数の粒状物質状の粒(24)から形成されており、これら粒が、これら粒のばら積み堆積及び/または構成に基づいて微細通路(23)を形成する、
ことを特徴とする蒸発器カートリッジ(10)。
【請求項2】
前記微細通路(23)は、貫通して、前記ウィック要素(20)の流入側Eから、このウィック要素(20)の流出側Aへと延在していることを特徴とする請求項1に記載の蒸発器カートリッジ(10)。
【請求項3】
前記蒸発器カートリッジ(10)は、吸入器(14)の形成のために、少なくとも電子式の制御ユニット(11)とエネルギー供給源(12)とを備えるカートリッジ担持体(13)との機械的および電気的な結合のために形成および設備されており、
その際、前記蒸発器ユニット(19)が、前記エネルギー供給源(12)との電気的な接触のための電気的な接点(22)を備えている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の蒸発器カートリッジ(10)。
【請求項4】
粒状の前記ウィック要素(20)を形成する粒状の材料は、少なくとも部分的に導電性であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の蒸発器カートリッジ(10)。
【請求項5】
前記アクセス開口部(18)の領域内において、収容室(25)が、前記蒸発器ユニット(19)の収容のために形成されており、
その際、この収容室(25)が、前記貯蔵タンク(17)から前記蒸発器ユニット(19)内への液体の収容のため、および、前記蒸発器ユニット(19)から前記流動通路(16)内へのガス状の流体/蒸気の引き渡しのために、
少なくとも部分的に、液体浸透的、および、気体浸透的、もしくは、蒸気浸透的な構造によって区画されている、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の蒸発器カートリッジ(10)。
【請求項6】
前記蒸発器カートリッジ(10)は、担持要素(29)を備えており、この担持要素が、前記中空体(15)を形成し、且つ、一方では、前記流動通路(16)を形成するための貫通開口部(30)を有しており、および、他方では、前記蒸発器ユニット(19)の収容のための切欠き部(31)を有している、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の蒸発器カートリッジ(10)。
【請求項7】
粒状のおよび導電性の材料から形成された沈積物は、この沈積物が、平行な及び/または一列に接続された抵抗を有する3次元的な抵抗加熱マトリックスを形成するように固定されていることを特徴とする請求項4から6のいずれか一つに記載の蒸発器カートリッジ(10)。
【請求項8】
前記ウィック要素(20)の前記粒(24)は、これら粒の材料選択、及び/または、これら粒の大きさに関して、同じに、及び/または、同じでなく形成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一つに記載の蒸発器カートリッジ(10)。
【請求項9】
前記ウィック要素(20)の前記粒(24)は、前記貯蔵タンク(17)を出発点として、前記流動通路(16)への方向に、局部的に異なる粒径を有していることを特徴とする請求項1から8のいずれか一つに記載の蒸発器カートリッジ(10)。
【請求項10】
前記ウィック要素(20)の前記粒(24)は、前記貯蔵タンク(17)を出発点として、前記流動通路(16)への方向に、局部的に、異なる材料から成っていることを特徴とする請求項1から9のいずれか一つに記載の蒸発器カートリッジ(10)。
【請求項11】
前記ウィック要素(20)の前記粒(24)は、緩いばら積み堆積として、前記収容室(25)の内部で位置していることを特徴とする請求項5から10のいずれか一つに記載の蒸発器カートリッジ(10)。
【請求項12】
前記ウィック要素(20)の前記粒(24)は、互いに結合されたばら積み堆積として、前記収容室(25)の内部で位置していることを特徴とする請求項5から10のいずれか一つに記載の蒸発器カートリッジ(10)。
【請求項13】
前記粒径は、0.1μmと2mmとの間の値、および、特に有利には3μmと300μmとの間の値であることを特徴とする請求項1から12のいずれか一つに記載の蒸発器カートリッジ(10)。
【請求項14】
最大の前記粒径は、それぞれに搬送されるべき液体の流動特性に依存して、毛細管現象による搬送を不可能にする大きさの範囲外にあることを特徴とする請求項1から13のいずれか一つに記載の蒸発器カートリッジ(10)。
【請求項15】
前記ウィック要素(20)の前記粒(24)は、砂及び/または黒鉛から成っていることを特徴とする請求項1から14のいずれか一つに記載の蒸発器カートリッジ(10)。
【請求項16】
前記ウィック要素(20)の前記粒(24)は、少なくとも部分的に帯磁性であることを特徴とする請求項1から15のいずれか一つに記載の蒸発器カートリッジ(10)。
【請求項17】
前記ウィック要素(20)と前記加熱要素(21)とは、別個のユニットであり、これらユニットが、接触領域(35)内において互いに接触して位置しており、
その際、このウィック要素(20)が、前記貯蔵タンク(17)に面しており、および、前記加熱要素(21)が前記流動通路(16)に面しており、および、前記加熱要素(21)が、電気的な接点(22)を有しており、および、
その際、前記ウィック要素(20)が微細通路(23)を有しており、および、前記ウィック要素(20)によって前記貯蔵タンク(17)から保護されている前記加熱要素(21)が、液体浸透的および蒸気浸透的に形成されている、
ことを特徴とする請求項1から16のいずれか一つに記載の蒸発器カートリッジ(10)。
【請求項18】
前記加熱要素(21)は、基本的にケイ素から成る、または、ケイ素またはpドープされたまたはnドープされたケイ素を有するMEMS構造部材(微小電気機械システム)であり、このMEMS構造部材が、前記ウィック要素(20)に面した上側を出発点として、前記流動通路(16)に面した下側に至るまで、液体浸透的および気体浸透的もしくは蒸気浸透的な貫通部を有している、
ことを特徴とする請求項17に記載の蒸発器カートリッジ(10)。
【請求項19】
前記ウィック要素(20)の前記粒(24)の最小の粒の大きさは、少なくとも前記加熱要素(21)への接触領域内において、この加熱要素(21)の前記貫通部の平均的な直径よりも大きいことを特徴とする請求項17または18に記載の蒸発器カートリッジ(10)。
【請求項20】
前記蒸発器カートリッジ(10)は、ケーシング(33)を備えており、このケーシングが、前記中空体(15)および前記蒸発器ユニット(19)を囲繞し、このケーシング(33)のケーシング壁(34)が、前記貯蔵タンク(17)を、周囲環境に向かって画成していることを特徴とする請求項1から19のいずれか一つに記載の蒸発器カートリッジ(10)。
【請求項21】
前記ケーシング壁(34)は、前記ウィック要素(20)を、このウィック要素の定位置において保持することを特徴とする請求項20に記載の蒸発器カートリッジ(10)。
【請求項22】
作用物質を添加された蒸気の吸入のために形成および設備されている吸入器(14)であって、この吸入器が、
少なくとも、1つの電子式の制御ユニット(11)と1つのエネルギー供給源(12)とを備える1つのカートリッジ担持体(13)と、1つの蒸発器カートリッジ(10)とを備えている様式の、上記吸入器(14)において、
請求項1から21のいずれか一つによる前記蒸発器カートリッジ(10)が形成および設備されていることを特徴とする吸入器(14)。
【国際調査報告】