(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-25
(54)【発明の名称】改善されたビームアラインメント感度を有するスライス格子カプラ
(51)【国際特許分類】
G02B 6/124 20060101AFI20220818BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20220818BHJP
G02B 6/12 20060101ALI20220818BHJP
G02B 6/122 20060101ALI20220818BHJP
G02B 6/13 20060101ALI20220818BHJP
G02B 6/34 20060101ALI20220818BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20220818BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALN20220818BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20220818BHJP
【FI】
G02B6/124
G01N21/64 G
G01N21/64 B
G02B6/12 301
G02B6/12 371
G02B6/122 311
G02B6/13
G02B6/34
C12M1/00 A
C12Q1/6869 Z
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021573776
(86)(22)【出願日】2020-04-29
(85)【翻訳文提出日】2022-02-10
(86)【国際出願番号】 US2020030345
(87)【国際公開番号】W WO2020251690
(87)【国際公開日】2020-12-17
(32)【優先日】2019-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516144164
【氏名又は名称】クアンタム-エスアイ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】QUANTUM-SI INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】シュミッド、ジェラード
(72)【発明者】
【氏名】プレストン、カイル
(72)【発明者】
【氏名】スチューマン、シャノン
【テーマコード(参考)】
2G043
2H137
2H147
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043BA16
2G043CA03
2G043DA02
2G043EA01
2G043EA14
2G043FA03
2G043FA06
2G043KA01
2G043KA02
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2G043KA09
2G043LA01
2G043LA03
2H137AA14
2H137AB11
2H137BA34
2H137BA35
2H137BC31
2H147AA02
2H147AB05
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2H147BC05
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2H147CD02
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4B029AA23
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4B063QA13
4B063QQ42
4B063QR32
4B063QS39
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(57)【要約】
入射ビーム(1-122)からの放射を格子カプラ(1-、2-、3-210)によって複数の導波路(1-、2-、3-212a...e)に結合することに関する装置と方法を説明する。格子カプラ(1-、2-、3-210)は、格子カプラ(1-、2-、3-210)の入射光(1-122)のミスアラインメントに対する感度を改善するために、オフセットされた受光領域とオフセットされた周期性を有する格子部分を有することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
格子であって、基板上に設置され、前記格子に入射した放射を前記基板上に設置された複数の光導波路へと結合するように配置された格子と、
前記複数の光導波路の第一の受光領域への第一の入口と、
前記複数の光導波路の第二の受光領域への第二の入口と、
を含む集積素子において、
前記第二の入口は、前記格子の線にほぼ垂直な第一の方向に、前記第一の入口に関して第一の量だけオフセットされる集積素子。
【請求項2】
前記複数の光導波路の第三の受光領域への第三の入口をさらに含み、前記第三の入口は、前記格子の前記線にほぼ垂直な第二の方向に、前記第一の入口に関して第二の量だけオフセットされ、前記第二の方向は前記第一の方向の反対である、請求項1に記載の集積素子。
【請求項3】
前記格子のうち、前記第一の入口に隣接して位置付けられた第一の部分は、前記格子のうち、前記複数の光導波路の第四の受光領域への第四の入口に隣接して位置付けられた第二の部分の第二の周期性とは異なる第一の周期性を有する、請求項1又は2に記載の集積素子。
【請求項4】
第一の導波路に結合された放射を受けるように配置された第一の光センサと、
第二の導波路に結合された放射を受けるように配置された第二の光センサと、
をさらに含む、請求項1~3の何れか1項に記載の集積素子。
【請求項5】
前記第一の入口は前記第一の受光領域に対して第一の位置角にあり、前記第二の入口は前記第二の受光領域に対して第二の位置角にある、請求項1~4の何れか1項に記載の集積素子。
【請求項6】
前記第一の入口は前記第二の入口と異なる幅を有する、請求項1~5の何れか1項に記載の集積素子。
【請求項7】
前記オフセットの前記第一の量は1マイクロメートル~20マイクロメートルの何れかの値である、請求項1~6の何れか1項に記載の集積素子。
【請求項8】
前記格子は複数の分離された格子部分を含む、請求項1~7の何れか1項に記載の集積素子。
【請求項9】
前記格子の線は、第一の誘電材料であって、前記第一の誘電材料より低い屈折率を有する第二の誘電材料の中に埋め込まれた第一の誘電材料を含む、請求項1~8の何れか1項に記載の集積素子。
【請求項10】
前記格子の線は金属を含む、請求項1~9の何れか1項に記載の集積素子。
【請求項11】
前記第一の誘電材料は、前記複数の光導波路を形成するために使用された材料及び層と同じである、請求項10に記載の集積素子。
【請求項12】
前記複数の光導波路の各導波路は、第一の誘電材料であって、前記第一の誘電材料より低い屈折率を有する第二の誘電材料の中に埋め込まれた第一の誘電材料を含む、請求項1~11の何れか1項に記載の集積素子。
【請求項13】
前記第一の誘電材料は窒化シリコンである、請求項12に記載の集積素子。
【請求項14】
前記第二の受光領域はテーパ付きの幅を有する、請求項1~14の何れか1項に記載の集積素子。
【請求項15】
前記第一の入口の幅は前記第二の入口の幅と異なる、請求項14に記載の集積素子。
【請求項16】
前記基板上に形成された複数のピクセルをさらに含み、各々が反応チャンバと光センサを含み、少なくとも1つの導波路は、複数の前記反応チャンバに励起放射を提供するように構成される、請求項1~15の何れか1項に記載の集積素子。
【請求項17】
各反応チャンバは、遺伝子配列特定、たんぱく質配列特定、又はその他の生物検定用のサンプルを受けるように構成される、請求項16に記載の集積素子。
【請求項18】
基板上に形成された複数の光導波路に放射を結合する方法において、
前記基板上に形成された格子で放射の1つ又は複数のビームを受けることと、
前記1つ又は複数のビームからの前記放射を前記複数の光導波路に接続された複数の受光領域に結合することと、
前記複数の光導波路のうちの第一の導波路から受け取った第一の放射量をモニタすることと、
前記1つ又は複数のビームが、前記格子の線にほぼ垂直な方向に、前記第一の導波路の入口に向かって移動したか、又は前記第一の導波路の前記入口から離れるように移動したかを、前記モニタされた放射量に少なくとも部分的に基づいて特定することと、
を含む方法。
【請求項19】
前記複数の光導波路のうちの第二の導波路から受け取った第二の放射量をモニタすることと、
前記第一及び第二の導波路が受け取った前記第一及び第二の放射量の差分をとることと、
前記差分が増大した場合、前記1つ又は複数のビームの動きは、前記格子の線にほぼ垂直な第一の方向に向かうと特定することと、
前記差分が減少した場合、前記1つ又は複数のビームの前記動きは前記第一の方向と反対の第二の方向に向かうと特定することと、
をさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記格子上の前記1つ又は複数のビームの初期アラインメントを、前記複数の導波路のうちの第三の導波路に結合された放射量を最大化することによってとることと、
前記ビームを、前記格子を通じて前記格子の線にほぼ垂直な前記第一及び第二の方向に移動させることと、
前記第一及び第二の導波路から受け取った前記第一及び第二の放射量の差に関する基準値を、前記格子の線にほぼ垂直な方向への前記ビームの位置に関して記録することと、をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
入口は前記第三の導波路に対して、他の導波路への他の入口の他の位置角とは異なる位置角にある、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記モニタすることは、前記基板上に集積されたセンサにより前記第一及び第二の放射量を検出することを含む、請求項18~21の何れか1項に記載の方法。
【請求項23】
複数のデータフレームにわたる前記センサからの信号を平均すること
をさらに含み、前記センサは、前記基板上に形成される複数のピクセル内に位置付けられ、前記データフレームは前記センサからの出力を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記結合することは、25%以内で同じ放射量を前記複数の導波路のうちの2つ以上の導波路に結合することを含む、請求項18~23の何れか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記複数の導波路のうちの2つ以上の導波路は各々、入口と、前記入口に隣接するテーパ付きの受光領域を有し、第一のテーパ付き受光領域の、前記2つ以上の導波路のうちの1つ目への入口における第一の幅は、第二のテーパ付き受光領域の、前記2つ以上の導波路の2つ目への入口における第二の幅とは異なる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記複数の光導波路のうちの1つ又は複数からの放射を前記基板上に形成された複数の反応チャンバに送達することをさらに含む、請求項18~25の何れか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記反応チャンバのうちの2つ以上において、遺伝子配列特定若しくはたんぱく質配列特定又はその他の生物検定のステップを実行することをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記複数の光導波路のうちの1つ又は複数からの放射を前記基板上に形成された複数のセンサに送達することをさらに含む、請求項18~25の何れか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記1つ又は複数のビームが前記第一及び第二の導波路の入口に向かって、又は前記第一及び第二の導波路の前記入口から離れるように移動したと特定したことに応じて、前記基板上に集積されたセンサから少なくとも1つの信号を出力して、前記1つ又は複数のビームのアラインメントが前記基板上で自動的に再びとられるようにすることをさらに含む、請求項18~28の何れか1項に記載の方法。
【請求項30】
集積素子の製造方法において、
基板上に複数の導波路を形成することと、
前記基板上に、前記複数の導波路への入口に亘る格子を形成することと、
前記複数の導波路のうちの第一の導波路への第一の入口を、前記格子のための基準線に沿って位置付けることと、
前記複数の導波路のうちの第二の導波路への第二の入口を、前記基準線から第一の距離だけオフセットさせることと、を含み、前記第一の距離は前記格子の線にほぼ垂直な第一の方向への距離である製造方法。
【請求項31】
前記第一の距離は0.1マイクロメートル~20マイクロメートルの値である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
入口は導波路に対して、他の導波路に対する他の入口の他の位置角とは異なる位置角にある、請求項30又は31に記載の方法。
【請求項33】
前記複数の導波路のうちの前記第一の導波路の前記第一の入口に隣接する第一のテーパ付き受光領域を形成することと、
前記複数の導波路のうちの前記第二の導波路の前記第二の入口に隣接する第二のテーパ付き受光領域を形成すること
をさらに含む、請求項30~32の何れか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記格子のうち、前記第一の入口に隣接して位置付けられる第一の部分を、前記格子のうち、前記複数の導波路のうちの第三の導波路への第三の入口に隣接して位置付けられる第二の部分とは異なる周期性を有するように形成することをさらに含む、請求項30~33の何れか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記格子を、前記複数の導波路を形成するために使用された材料と同じ材料から、及び同じ層内に少なくとも部分的に形成することをさらに含む、請求項30~34の何れか1項に記載の方法。
【請求項36】
格子であって、基板上に設置され、前記格子に入射した放射を前記基板上に設置された複数の光導波路へと結合するように配置された格子と、
前記複数の光導波路の第一の導波路への第一の入口と、
前記複数の光導波路の第二の導波路への第二の入口と、
を含む集積素子において、
前記格子のうち、前記第一の入口に隣接して位置付けられた第一の部分は、前記格子のうち、前記第二の入口に隣接して位置付けられた第二の部分とは異なる周期性を有する集積素子。
【請求項37】
前記第一の導波路に結合された放射を受けるように配置された第一の光センサと、
前記第二の導波路に結合された放射を受けるように配置された第二の光センサと、
をさらに含む、請求項36に記載の集積素子。
【請求項38】
前記第一の入口は第一の受光領域に対して第一の位置角にあり、前記第二の入口は第二の受光領域に対して第二の位置角にある、請求項36又は37に記載の集積素子。
【請求項39】
前記第一の入口は前記第二の入口とは異なる幅を有する、請求項36~38の何れか1項に記載の集積素子。
【請求項40】
前記格子の前記第一の部分と第二の部分の周期性の差は0.5nm~4nmの何れかの値である、請求項36~39の何れか1項に記載の集積素子。
【請求項41】
前記格子は複数の分離された格子部分を含む、請求項36~40の何れか1項に記載の集積素子。
【請求項42】
前記格子の線は、第一の誘電材料であって、前記第一の誘電材料より低い屈折率の第二の誘電材料の中に埋め込まれた第一の誘電材料を含む、請求項36~41の何れか1項に記載の集積素子。
【請求項43】
前記第一の誘電材料は、前記複数の光導波路を形成するために使用された材料及び層と同じである、請求項42に記載の集積素子。
【請求項44】
前記格子の線は金属を含む、請求項36~43の何れか1項に記載の集積素子。
【請求項45】
前記複数の光導波路の各導波路は、第三の誘電材料であって、前記第三の誘電材料より低い屈折率を有する第二の誘電材料の中に埋め込まれた第三の誘電材料を含む、請求項36~44の何れか1項に記載の集積素子。
【請求項46】
前記第三の誘電材料は窒化シリコンである、請求項45に記載の集積素子。
【請求項47】
前記第二の受光領域はテーパ付きの幅を有する、請求項36~46の何れか1項に記載の集積素子。
【請求項48】
前記第一の入口の幅は前記第二の入口の幅と異なる、請求項47に記載の集積素子。
【請求項49】
前記基板上に形成された複数のピクセルをさらに含み、各々が反応チャンバと光センサを含み、少なくとも1つの導波路は、複数の前記反応チャンバに励起放射を提供するように構成される、請求項36~46の何れか1項に記載の集積素子。
【請求項50】
前記反応チャンバのうちの2つ以上は、遺伝子配列特定、たんぱく質配列特定、又はその他の生物検定用のサンプルを受けるようになっている、請求項49に記載の集積素子。
【請求項51】
基板上に形成された複数の光導波路に放射を結合する方法において、
格子上で放射の1つ又は複数のビームを受けることと、
前記1つ又は複数のビームからの放射を複数の光導波路に結合することと、
前記複数の光導波路のうちの第一の導波路から受け取った第一の放射量をモニタすることと、
前記1つ又は複数のビームの前記格子上での入射ピッチ角が、前記格子の線にほぼ垂直な方向に変化したか否かを、前記第一の導波路からモニタされた前記第一の放射量に少なくとも部分的に基づいて特定することと、
を含む方法。
【請求項52】
前記複数の光導波路のうちの第二の導波路から受け取った第二の放射量をモニタすることと、
前記第一及び第二の導波路が受け取った前記第一及び第二の放射量の差分をとることと、
前記差分が増大した場合、前記1つ又は複数のビームのピッチ角の変化は、前記格子の線にほぼ垂直な第一の方向に向かうと特定することと、
前記差分が減少した場合、前記1つ又は複数のビームの前記ピッチ角は、前記第一の方向と反対の第二の方向に向かうと特定することと、
をさらに含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記格子上の前記1つ又は複数のビームの初期アラインメントを、前記複数の導波路のうちの第三の導波路に結合された放射量を最大化することによってとることと、
前記格子上の前記ビームの入射ピッチ角を、前記第一及び第二の方向に変化させることと、
前記第一及び第二の導波路から受け取った前記第一及び第二の放射量の差に関する基準値を、前記格子上の前記ビームのピッチ角に関して記録することと、
をさらに含む、請求項51又は52に記載の方法。
【請求項54】
前記モニタすることは、前記基板上に集積されたセンサにより前記第一及び第二の放射量を検出することを含む、請求項51~53の何れか1項に記載の方法。
【請求項55】
複数のデータフレームにわたる前記センサからの信号を平均すること
をさらに含み、前記センサは、前記基板上に形成される複数のピクセル内に位置付けられ、前記データフレームは前記センサからの出力を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記複数の光導波路のうちの1つ又は複数からの放射を前記基板上に形成された複数の反応チャンバに送達することをさらに含む、請求項51~55の何れか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記反応チャンバのうちの2つ以上において、遺伝子配列特定若しくはたんぱく質配列特定又はその他の生物検定のステップを実行することをさらに含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記複数の光導波路のうちの1つ又は複数からの放射を前記基板上に形成された複数のセンサに送達することをさらに含む、請求項51~57の何れか1項に記載の方法。
【請求項59】
前記1つ又は複数のビームがそれらのピッチ角をアラインメントのとれた回転方向から変化させたと特定したことに応じて、前記基板上に集積されたセンサから少なくとも1つの信号を出力して、前記1つ又は複数のビームのアラインメントが前記基板上で自動的にとられるようにすることをさらに含む、請求項51~58の何れか1項に記載の方法。
【請求項60】
集積素子の製造方法において、
基板上に複数の導波路を形成することであって、各導波路は格子に隣接する入口を有する、形成することと、
前記基板上に、前記複数の導波路への入口に亘る前記格子を形成することと、
を含み、
前記格子のうち、前記複数の導波路のうちの第一の導波路への第一の入口に隣接して位置付けられた第一の部分は、前記格子のうち、前記複数の導波路のうちの第二の導波路への第二の入口に隣接して位置付けられた第二の部分とは異なる周期性を有する方法。
【請求項61】
前記第一の部分及び第二の部分間の周期性の差は0.5nm~4nmである、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記複数の導波路のうちの前記第一の導波路の前記第一の入口に隣接する第一のテーパ付き受光領域を形成することと、
前記複数の導波路のうちの前記第二の導波路の前記第二の入口に隣接する第二のテーパ付き受光領域を形成すること
をさらに含む、請求項60又は61に記載の方法。
【請求項63】
前記第一の導波路の前記第一の入口を基準線上にあるように形成することと、第三の導波路の第三の入口を前記基準線からオフセットさせて形成することと、をさらに含む、請求項60~62の何れか1項に記載の方法。
【請求項64】
前記格子を、前記複数の導波路を形成するために使用された材料と同じ材料から、前記複数の導波路を形成するために使用された層と同じ層内に少なくとも部分的に形成することをさらに含む、請求項60~63の何れか1項に記載の方法。
【請求項65】
格子であって、基板上に設置され、前記格子に入射した放射を前記基板上に設置された複数の光導波路に結合するように構成された格子と、
前記複数の光導波路の第一の受光領域への第一の入口と、
前記複数の光導波路の第二の受光領域への第二の入口であって、前記第一の入口に関して、前記格子の線にほぼ垂直な第一の方向に第一の量だけオフセットされる第二の入口と、
前記複数の光導波路の第三の受光領域への第三の入口と、
を含む集積素子において、
前記格子のうち、前記第一の入口に隣接して位置付けられた第一の部分は、前記格子のうち、前記第三の入口に隣接して位置付けられた第二の部分とは異なる周期性を有する集積素子。
【請求項66】
前記第一の導波路に結合された放射を受けるように配置された第一の光センサと、
前記第二の導波路に結合された放射を受けるように配置された第二の光センサと、
をさらに含む、請求項65に記載の集積素子。
【請求項67】
前記格子は複数の分離された格子部分を含む、請求項65又は66に記載の集積素子。
【請求項68】
前記格子の線は第一の誘電材料であって、前記第一の誘電材料より低い屈折率を有する第二の誘電材料の中に埋め込まれた第一の誘電材料を含む、請求項65~67の何れか1項に記載の集積素子。
【請求項69】
前記第一の誘電材料は、前記複数の光導波路を形成するために使用された材料及び層と同じである、請求項68に記載の集積素子。
【請求項70】
前記複数の光導波路の各導波路は第一の誘電材料であって、前記第一の誘電材料より低い屈折率を有する第二の誘電材料の中に埋め込まれた第一の誘電材料を含む、請求項65~69の何れか1項に記載の集積素子。
【請求項71】
前記第一の誘電材料は窒素富化窒化シリコンである、請求項70に記載の集積素子。
【請求項72】
前記基板上に形成された複数のピクセルをさらに含み、各々が反応チャンバと光センサを含み、少なくとも1つの導波路は、励起放射を複数の前記反応チャンバに提供するように構成される、請求項65~71の何れか1項に記載の集積素子。
【請求項73】
各反応チャンバは、遺伝子配列特定又はたんぱく質配列特定用のサンプルを保持するように構成される、請求項72に記載の集積素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、1つ又は複数の格子を用いて放射を複数の光導波路へと結合することに関する。
【背景技術】
【0002】
光学計測器や集積光学素子の分野では、光放射があるチップ上の複数の離散部位に送達され得る。通信機器や分析機器の場合、光放射はあるチップ上に形成された複数の導波路に送達され得、これらは光放射をそのチップ上の1つ又は複数の部位へと搬送できる(例えば、信号処理のため、又はサンプル探査のため)。放射を複数の部位に送達する1つの方法は、入射ビームからの放射を複数の導波路へと、1つ又は複数の格子カプラを使って結合することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本願は、1つ又は複数の格子を用いて放射を複数の光導波路へと結合することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
光放射を基板上に形成された1つ又は複数の導波路に結合することに関する装置と方法を説明する。幾つかの実施形態において、格子カプラは、2つ以上の導波路へのオフセットされた、又は互い違いの入口を有するようにパターニングされ、その結果、入口をオフセットさせることによって、格子カプラ上で光ビームが入口に向かう、又はそこから離れる方向の何れに動いたかを明瞭化する導波路からの信号が提供される。幾つかの実施形態において、格子カプラは、2つ以上の導波路への入口に隣接する、格子周期性の異なる領域を有するようにパターニングされ、その結果、周期性の変化から、格子カプラ上での光ビームの入射角の変化を明瞭化する導波路からの信号が提供される。別の実施形態において、入口のオフセットと異なるピッチを格子カプラ内で組み合わせて、格子カプラ上での光ビームの動きと入射角の変化の両方を明瞭化することができる。ビームの動きと入射角を明瞭化することにより、入射ビームのアラインメントとミスアラインメントに対する格子カプラの感度を高めることができる。
【0005】
幾つかの実施形態は、格子であって、基板上に設置され、その格子に入射した放射を基板上に設置された複数の光導波路へと結合するように配置された格子と、複数の光導波路の第一の受光領域への第一の入口と、複数の光導波路の第二の受光領域への第二の入口と、を含み、第二の入口は、格子の線に垂直な第一の方向に、第一の入口に関して第一の量だけオフセットされる集積素子に関する。
【0006】
幾つかの実施形態は、放射を基板上に形成された複数の光導波路へと結合する方法に関し、方法は、放射の1つ又は複数のビームを基板上に形成された格子で受ける行為と、1つ又は複数のビームからの放射を複数の光導波路に接続された複数の受光領域に結合する行為と、複数の導波路のうちの第一の光導波路から受け取った第一の放射量をモニタする行為と、1つ又は複数のビームが、格子の線に垂直な方向に、第一の導波路の入口に向かって動くか、そこから離れるように動くかを、少なくとも一部に、モニタされた放射量に基づいて特定する行為と、を含む。
【0007】
幾つかの実施形態は、集積素子の製造方法に関する。方法は、基板上に複数の導波路を形成する行為と、基板上に、複数の導波路への入口を分散させた格子を形成する行為と、複数の導波路のうちの第一の導波路への第一の入口を、格子のための基準線に沿って位置付ける行為と、複数の導波路のうちの第二の導波路への第二の入口を、基準線から第一の距離だけオフセットさせる行為と、を含み得、第一の距離は格子の線に垂直な第一の方向への距離である。
【0008】
幾つかの実施形態は、格子であって、基板上に設置され、その格子に入射した放射を基板上に設置された複数の光導波路へと結合するように配置された格子と、複数の光導波路のうちの第一の導波路への第一の入口と、複数の導波路のうちの第二の光導波路への第二の入口と、を含み、格子のうち、第一の入口に隣接して位置付けられた第一の部分は、格子のうち、第二の入口に隣接して位置付けられた第二の部分とは異なる周期性を有する集積素子に関する。
【0009】
幾つかの実施形態は、放射を基板上に形成された複数の光導波路へと結合する方法に関し、方法は、放射の1つ又は複数のビームを格子上で受ける行為と、1つ又は複数のビームからの放射を複数の光導波路へと結合する行為と、複数の光導波路のうちの第一の導波路から受信した信号をモニタする行為と、格子上の1つ又は複数のビームの入射ピッチ角が格子の線に垂直な方向に変化するかを、少なくとも一部に、第一の導波路からモニタされた信号に基づいて特定する行為と、を含む。
【0010】
幾つかの実施形態は、集積素子の製造方法に関する。方法は、基板上に複数の導波路を形成する行為であって、各導波路は格子に隣接する入口を有する行為と、基板上に格子を、複数の導波路への入口を分散させるように形成する行為と、を含み得、格子のうち、複数の導波路のうちの第一の導波路への第一の入口に隣接して位置付けられた第一の部分は、格子のうち、複数の導波路のうちの第二の導波路への第二の入口に隣接して位置付けられた第二の部分とは異なる周期性を有する。
【0011】
本願の教示の上記及びその他の態様、実装、行為、機能、特徴、及び実施形態は、添付の図面に関する後述の説明からよりよく理解できる。
当業者であれば、本明細書で説明する図面は例示を目的としているすぎないことがわかるであろう。場合により、本発明の各種の態様は本発明の理解を促進するために誇張又は拡大して示されているかもしれないと理解されたい。図中、様々な図面を通じて、同様の参照文字は概して、同様の特徴、機能的に類似する、及び/又は構造的に類似する要素を指す。図面は必ずしも正確な縮尺によるのではなく、教示の原理を図解することに主眼が置かれている。図面は本願の教示の範囲を如何様にも限定しないものとする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1-1】幾つかの実施形態による格子カプラに入射する光パルスを示す斜視図である。
【
図1-2】幾つかの実施形態による、光放射を複数の導波路へと結合するように配置された格子カプラの例を示す平面図である。
【
図1-3】幾つかの実施形態による格子カプラの立面図である。
【
図2-1】幾つかの実施形態による改善されたビームアラインメント感度を有する例示的な格子カプラの平面図である。
【
図2-2】幾つかの実施形態による改善されたビームアラインメント感度を有する例示的な格子カプラの平面図である。
【
図2-3】幾つかの実施形態による複数の入射ビームに関する改善されたビームアラインメント感度を有する例示的な格子カプラの平面図である。
【
図2-4】幾つかの実施形態による改善されたビームアラインメント感度を有する格子カプラの受光領域から受信した信号の信号特性を描く。
【
図3-1】幾つかの実施形態による改善されたビームアラインメント感度を有する例示的な格子カプラの平面図である。
【
図3-2】幾つかの実施形態による改善されたビームアラインメント感度を有する例示的な格子カプラの平面図である。
【
図3-3】幾つかの実施形態による改善されたビームアラインメント感度を有する格子カプラの受光領域から受信した信号の信号特性を描く。
【
図3-4】幾つかの実施形態による、受光領域とそれに対応する格子部分の例を描く。
【
図3-5】幾つかの実施形態による、格子カプラ上の入射ビームのアラインメントをとり、それを維持する方法のフローチャート図である。
【
図4】幾つかの実施形態による集積素子の一部の切欠き斜視図を描く。
【
図5-1A】幾つかの実施形態による、小型モードロックレーザモジュールを含む分析器のブロック図である。
【
図5-1B】幾つかの実施形態による、分析器に組み込まれた小型モードロックレーザモジュールを描く。
【
図5-2】幾つかの実施形態による光パルストレインを描く。
【
図5-3】幾つかの実施形態による、1つ又は複数の導波路を介したパルスレーザにより光学励起できる平行反応チャンバの例を描き、さらに各チャンバの対応する検出器を示す。
【
図5-4】幾つかの実施形態による、導波路からの反応チャンバの光学励起を図解する。
【
図5-5】幾つかの実施形態による、集積された反応チャンバ、光導波路、及び時間ビニング受光素子のさらに詳細な部分を描く。
【
図5-6】幾つかの実施形態による、反応チャンバ内で起こり得る生理学的反応の例を描く。
【
図5-7】異なる減衰特性を有する2種類の蛍光体の放出確率曲線を描く。
【
図5-8】幾つかの実施形態による蛍光発光の時間ビニング検出を描く。
【
図5-9】幾つかの実施形態による時間ビニング受光素子を描く。
【
図5-10A】幾つかの実施形態による、反応チャンバからの蛍光発光のパルス励起と時間ビニング検出を描く。
【
図5-10B】幾つかの実施形態による、分析物のパルス励起の繰り返しの後の様々な時間ビンにおける累積蛍光性光子数のヒストグラムを描く。
【
図5-11A】幾つかの実施形態による、4つのヌクレオチド(T、A、C、G)又はヌクレオチド類似体に対応し得る異なるヒストグラムを描く。
【
図5-11B】幾つかの実施形態による、4つのヌクレオチド(T、A、C、G)又はヌクレオチド類似体に対応し得る異なるヒストグラムを描く。
【
図5-11C】幾つかの実施形態による、4つのヌクレオチド(T、A、C、G)又はヌクレオチド類似体に対応し得る異なるヒストグラムを描く。
【
図5-11D】幾つかの実施形態による、4つのヌクレオチド(T、A、C、G)又はヌクレオチド類似体に対応し得る異なるヒストグラムを描く。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の特徴と利点は、以下の詳細な説明を図面と共に読めばより明らかとなるであろう。図面を参照しながら実施形態を説明する際、方向を表す用語(「上方」、「下方」、「上」、「下」、「左」、「右」、「水平」、「縦」等)が使用されるかもしれない。このような用語は、読者が通常の向きで図面を見るための手掛かりにすぎないものとする。これらの方向を表す用語は、具現化される機器の特徴の好ましい、又は唯一の向きを表すものではない。機器は、他の向きを用いて具現化されてもよい。
【0014】
I.格子カプラ
格子カプラは、外部光ビームからの光放射を基板上に位置付けられた集積光導波路に結合するための有益な集積光学素子である。説明のために、
図1-1は、基板1-105上に集積された格子カプラ1-100の例を示している。格子カプラ1-100は、光格子1-110と、入口1-111を有する光導波路の受光領域1-112を含むことができる。図の例において、格子1-110は入口1-111に隣接して位置付けられ、格子カプラ1-100は、入射光放射(ビームの光軸1-101に沿って進む光パルスのビーム1-122として描かれている)を入口1-111を介して導波路の受光領域1-112へと方向転換させ、そこに結合するように構成される。受光領域1-112は、
図1-2に描かれているように、入口1-111から下流の1つ又は複数の導波路に接続され得る。
図1-1の図における方向を表す用語に関して、座標軸は、x及びy方向が、その上に格子カプラが形成される基板1-105の上面に平行となるように選択される。しかしながら、本発明は図のようなデカルト座標基準フレームの方位に限定されない。本発明を説明するために、その他の基準フレーム(極座標、球座標)及びその他の方位も使用し得る。
【0015】
あるコンポーネントが基板又は層の「上」又は「上方」にあると記載される場合、このコンポーネントはその基板若しくは層の上に直接あっても、又はそのコンポーネントとその基板若しくは層との間に材料の1つ若しくは複数の介在層又は1つ若しくは複数の介在コンポーネントがあってもよい。「~の上に直接」という語句は、コンポーネントが直に隣接する基板又は層と直接物理的に接触することを示すために使用される。
【0016】
図1-2は、基板1-105上に形成された例示的な格子カプラ1-100及び導波路1-213a、1-213bの一部の平面図である。格子カプラ1-100は、第一の導波路1-213に接続され、放射をそれに結合することができ、これは2つ以上の導波路1-213a、1-213bに接続できる。導波路セクションの何れも、単一横モード又はマルチモード導波路とし得る。導波路セクションの何れも、第一の屈折率を有する第一の誘電材料により形成された導波路コアと、コアを取り囲む、又は部分的に取り囲む1つ又は複数のクラッド層を含むことができる。1つ又は複数のクラッド層の屈折率の値は、導波路コアの屈折率より小さくすることができる。
【0017】
幾つかの実施形態によれば、パワー分岐素子1-225は、第一の導波路1-213から受け取ったパワーを2つの例示的な導波路1-213a、1-213bに分岐させ得る。幾つかの実装において、第一の導波路1-213からのパワーは3つ以上の導波路に分岐させ得る。幾つかのケースで、パワー分岐素子は使用されなくてもよく、1つの導波路1-213だけが格子カプラ1-100から延びていてもよい。幾つかのケースでは、導波路1-213a、1-213bは追加的なパワー分岐素子に接続され得、それによって導波路内の光パワーを複数の導波路にさらに分散させることができる。
【0018】
パワー分岐素子1-225の幾つかの例には、導波路カプラ又は導波路スプリッタが含まれ、この場合、第一の導波路内の伝播モードが1つ又は複数の隣接する導波路内の1つ又は複数の伝播モードにエバネッセント結合される。パワー分岐素子1-225の他の例には、マッハツェンダ干渉計及びマルチモード干渉カプラ等の干渉計利用のスプリッタが含まれる。パワー分岐素子1-225の種類と下流の導波路の数に関係なく、第一の導波路1-213からのパワーは、パワー分岐素子1-225の適当な設計と分割比を選択することにより、下流の導波路間で均等又は不均等に分割できる。
【0019】
図1-3は、1つの実施形態による、
図1-1に示される構造にほぼ対応する立面図を描く。光格子1-110は、第一の材料内の線1-116としてパターニングすることができ、これは格子線に隣接する隣接材料1-310より高い(又は場合によっては低い)屈折率を有する。(隣接材料1-310は、
図1-1では図示せず。)幾つかの実施形態において、光格子1-110は1つ又は複数の周囲材料に埋め込まれる。例えば、格子1-110を取り囲む1つの隣接材料1-310の代わりに、格子は異なる材料の2つ以上の層の間に形成され得る。格子1-110の線(又は歯)1-116は、1つの材料層から形成でき(
図1-1に描かれているとおり)、又は2つ以上の材料層を含み得る(
図1-3に描かれているとおり)。例えば、線1-116を形成する際、第二の材料1-312を第一の材料1-311の上に堆積させて、パターニングし得る。1つ又は複数の第二の材料層を追加することにより、格子1-110の屈折効率を改善し得る。格子線1-116を形成するために使用され得る材料には、誘電体(酸化物、窒化物)、半導体、金属及び、2つ以上の層が使用される場合はこれらの材料の組合せが含まれるがこれらに限定されない。このような例示的材料には、酸化シリコン、酸化タンタル、酸化アルミニウム、窒化シリコン、窒素富化窒化シリコン(例えば、Si
3N
4の化学量論比より多い窒素を有する)、シリコン、シリコンゲルマニウム、ゲルマニウム、アルミニウム、タングステン、及びポリマ材料が含まれる。1つの例示的な実施形態において、格子1-110は主として窒素富化窒化シリコンから形成でき、格子を取り囲む隣接材料1-310は酸化シリコンを含むことができる。
【0020】
光格子1-110を取り囲む1つ又は複数の隣接材料1-310は、光格子1-110により受光領域1-112に結合されている光放射に対して光学的に透明とすることができる。好ましくは、1つ又は複数の隣接材料1-310は、導波路に結合されている光放射に対して低い光損失を示す。1つ又は複数の隣接材料1-310に使用され得る材料には、前述のように、酸化物、窒化物、及びポリマが含まれるがこれらに限定されない。
【0021】
幾つかの実施形態によれば、光格子1-110の周期性Pは200nm~800nmとすることができる。他の実施形態において、格子1-110の周期性Pは200nm未満又は800nm超とし得る。格子のデューティサイクル(周期性Pに対するx方向への格子線1-116の幅の比は、20%~80%とすることができる。格子線1-116の厚さt
gは、幾つかの実施形態によれば20nm~500nmとすることができる。1つの入口1-111への結合に関連する格子の歯1-116の幅w
gは、50nm~500nmとすることができる。幾つかの実施形態によれば、格子1-110の、入口1-111に隣接する最後の線1-116は、入口1-111から、格子線1-116間の間隔と等しい距離だけ離間され得る(
図1-1に描かれているとおり)。幾つかのケースにおいて、格子1-110の最後の線1-116は、入口1-111から、格子線1-116間の間隔の整数又は格子線1-116間の間隔の非整数である距離だけ離間され得る。
【0022】
受光領域1-112と光導波路1-213は、受光領域1-112及び/又は導波路1-213に隣接する材料1-310より高い屈折率を有する第一の材料内にパターニングできる。幾つかの実施形態において、受光領域1-112と光導波路1-213は、1つ又は複数の周囲材料の中に埋め込むことができる。受光領域、導波路、及び1つ又は複数の周囲材料は、導波路により搬送される放射に対して光学的に透明とすることができる。好ましくは、受光領域1-112、導波路1-213、及び1つ又は複数の隣接材料1-310は、導波路により搬送される光放射に対して低い光損失(例えば、1dB/cm未満)を示す。受光領域1-112、導波路1-213、下流の導波路1-213a、1-213b、及び1つ又は複数の第二の材料1-310に使用され得る材料には、前述のように、酸化物及び窒化物が含まれるが、これらに限定されない。ある例として、導波路1-213、受光領域1-112、及び下流の導波路1-213a、1-213bは、窒化シリコン(又は、窒素富化窒化シリコン)から形成でき、1つ又は複数の隣接材料1-310は酸化シリコンから形成できる。
【0023】
幾つかの実施形態によれば、受光領域1-112は、
図1-1の例に示されるようにテーパ付きであり得る。テーパ付き領域に沿って、受光領域内の導波路コアの幅w
tはx方向へと、入口1-111から離れるにつれて大きさが減少し得て、最終的に、
図1-2に示されるように、下流の位置において導波路1-213の均一な部分のコアの幅wと一致する。他の実施形態において、テーパ付き領域1-112の導波路コアの幅w
tはx方向へと、入口1-111から離れるにつれて大きさが増大し得て、最終的に導波路1-213のコアの均一部分の幅wと一致する。追加的又は代替的に、受光領域1-112のコアの厚さt
wはテーパ付きとすることができ、大きさが変化して最終的に接続された導波路1-213のコアの厚さと一致する。受光領域1-112におけるコアの幅及び/又は厚さにテーパを付けることによって、例えば入射ビームの横方向の大きさ(モードプロファイル)がその導波路1-213によりサポートされる光モードの大きさ(例えば、最低次モードサイズ)と大きく異なる場合に、受光領域及び下流の導波路への光放射の結合効率を高めることができる。
【0024】
幾つかの実施形態によれば、導波路1-213の均一部分のコアの幅wは200nm~800nmとすることができる。導波路1-213の均一部分のコアの厚さtwは20nm~500nmとすることができる。幾つかの実装において、導波路コアの幅と厚さは、導波路1-213が導波路内で単一横光モード(最低次光モード)のみをサポートするように選択される。幾つかのケースでは、導波路1-113は複数の横光モードをサポートし得る。テーパ付きの受光領域1-112のコアの幅wtは、幾つかのケースでは入口1-111で200nm未満、又は他のケースでは入口で800nm超とし得る。幾つかの実装において、受光領域はテーパ付きでなくてもよい。受光領域1-112の入口におけるコアの厚さtwは、20nm~500nmとすることができる。
【0025】
格子1-110、受光領域1-112、及び導波路1-213は、例えば2017年12月15日に出願された、「光カプラ及び導波路システム」と題する米国特許出願第15/844,403号明細書に記載されているようなプレーナ微細加工技術を使って製造でき、同出願の全体を参照によって本願に援用する。このような微細加工技術は、フォトマスク及びフォトリソグラフィ技術を使ってレジスト内に格子と導波路をパターニングするステップと、異方性反応イオンエッチング等のエッチングプロセスを使って、酸化物及び/又は窒化物層内に格子及び導波路のパターンをエッチングするステップと、を含むことができる。このような微細加工技術はまた、格子カプラを形成するために使用されるレジスト及び層を堆積させるステップと、残ったレジスト及び層の部分を除去するステップも含むことができる。
【0026】
動作中、格子カプラ1-100は入射光放射を入射ビーム(これは、光軸1-101に沿って進む)の経路から離れる1つ又は複数の異なる方向へと回折させることができる。格子カプラを慎重に設計し(例えば、動作固有波長にとって適当な格子1-110のピッチPを選択する)、入射ビームを正しく向き付けることによって、入射光放射の大部分を格子1-100から入口1-111に向かって、基本的に受光領域1-112と同軸に回折させることができる。それによって、入射放射の大部分を受光領域1-112及び下流の導波路1-213に結合することができる。入射ビームの回転方向(
図1-1の例ではパルス1-122として示されている)は、ビームの位置と入射角により説明できる。例えば、格子1-110上のビームの位置は、格子1-110の中心又は、幾つかのケースでは入口1-111の中心に関するビームの中心(例えば、光軸1-101)の位置(x及びy方向)として説明され得る。ビームの入射角は、第一の入射角又はピッチ角θ
i(例えば、z軸からx方向に、y軸の周囲で回転させて測定)と、第二の入射角又はチルト角φ
i(例えば、z軸からy方向に、x軸の周囲で回転させて測定)により説明され得る。格子1-110上のビームの位置、ピッチ角θ
i、及びチルト角φ
iにより、入射ビームの受光領域1-112及び下流の導波路1-213への結合効率が変化する可能性がある。
【0027】
図1-1、
図1-2、及び
図1-3の格子カプラの実施形態に関する上述の特徴、材料、及び寸法は、格子1-110から複数の受光領域に直接結合する以下の実施形態で説明する格子カプラで実施できる。
【0028】
本発明者らは、光パルス1-122の入射ビーム(又は連続波の入射ビーム)が最も高い結合効率のために格子カプラ1-100とのアラインメントをとった場合、受光領域1-112又は下流の導波路に結合されるパワーの低減が検出されたときに、ビームの回転方向がどのように変化したかを知ることにおいて曖昧さ又は不確実さがある可能性があることを認識し、そのように理解した。例えば、格子1-110への入射ビームの位置に関して、最も高い結合効率のために向き付けられると、入口1-111に向かう、又は入口1-111から離れるビームの動きは、結合効率において非常に似通った特徴的低減を示す。したがって、下流の導波路におけるパワーの低減を検出することでは、入射ビームが入口1-111に向かって移動したか、そこから離れるように移動したかを容易に特定することができない。したがって、高い結合効率を保持するためのビーム位置の自動補正は、x方向へのビームの動きが曖昧であるため、複雑となる。
【0029】
同様の結果は、ピッチ角θiの変化についても得られる。例えば、ピッチ角に関して最も高い結合効率を得た後、ピッチ角を大きくしても、小さくしても、基本的に同じ結合効率の低下が見られる。したがって、高い結合効率を保持するためのビーム位置の自動補正は、ビームのθi方向の動きが曖昧であるため、さらに複雑となる。
【0030】
図2-1は、入射ビーム2-102のx方向の移動方向(結合効率の低下の原因となる)を明瞭化することのできる、改善されたビームアラインメント感度を有する格子カプラ2-100のある実施形態を描く。この図は、格子カプラの平面図を示す。図の実施形態において、格子カプラ2-100は5つの受光領域2-112a~2-112eを含み、これらは5つの入口2-111a~2-111eを有し、その中の幾つかはx方向又は格子の線2-116に垂直若しくは基本的に垂直な方向に、他の入口に関してオフセットされている。幾つかの実装において、5つより少ない、又は多い受光領域があってもよい。幾つかの用途には、格子カプラ2-100の中には10又は100を超える受光領域と入口があってもよい。図を簡素化するために、格子線と導波路の受光領域だけが示されている。格子線2-116と導波路の受光領域2-112a~2-112eは基板1-105上に周囲材料と共に形成でき、これは
図1-1~
図1-3に関して説明したとおりである。
【0031】
複数の入口2-111a~2-111eを使用することにより、格子カプラ2-100はハイパワービーム2-102からの放射を複数の導波路に直接結合できる。(例えば幅1/e2の例示的な横ビームプロファイルは破線の楕円として示されている。)複数の導波路に直接結合することは、光導波路への損傷を回避するため、及びより高いパワーで発生し得る望ましくない非線形光学的挙動を回避するために有利である可能性がある。さらに、y方向への入口2-111a~2-111eの横幅wtは、受光領域2-112a~2-112e間の所望のパワー比を得るような大きさとすることができる。例えば、外側の入口2-111a、2-111eは、中央の入口2-111cより広くすることができ、それによって、各受光領域2-112a、2-112c、及び2-112eは入射ビームからほぼ同量の光パワーを結合する。幾つかの実施形態において、受光領域の全てが入射ビームからほぼ同量の光パワーを結合し得、それによって、受光領域の下流の各導波路はほぼ同量の光パワーを搬送する。他の実施形態では、入口2-111a~2-111e及び受光領域2-112a~2-112eの適当な幅を選択することにより、他のパワー結合比を実現し得る。
【0032】
幾つかの実施形態によれば、入口2-111a~2-111eのうちの1つ又は複数は基本的に、直線でも曲線でもよい同じ基準線2-115に沿って位置付けられ得る。幾つかのケースでは、
図2-1に示される例に描かれているように、入口の過半数2-111a、2-111c、2-111eが同じ基準線2-115(x=X
iにおいて点線で描かれている)に沿って位置付けられている。基準線は図中、直線として示されているが、幾つかの実装では、基準線2-115は曲線であり得る(例えば、入射ビーム2-102の形状の曲率に対応するため)。基準線2-115は、入射ビームが2つ以上の受光領域のうちの1つへの最も高い結合効率のために格子上に位置付けられたときに、受光領域の2つ以上の入口が、2つ以上の受光領域への最も高い結合効率を提供するように位置付けられるであろう位置に対応することができる。改善されたx方向の感度を有する格子カプラ2-100の場合、少なくとも1つの入口はx方向に量|Δx|だけ基準線2-115から離して位置付けられる。幾つかの実施形態において、2つ以上の入口はx方向に量|Δx|だけ、又は2つの異なる量だけ基準線2-115から離して位置付けられる。幾つかのケースでは、入口の過半数がx方向に量|Δx|だけ、又は複数の異なる量だけ基準線2-115から離して位置付けられるようにすることが可能である。このようなケースでは、基準線2-115が整合する入口は1つと少なくし得る(例えば、全ての入口の平均のx位置に位置付けられる入口)。
【0033】
1つ又は複数の入口2-111b、2-111dを基準線2-115からオフセットさせることのできる量は、幾つかの実施形態によれば、また入射ビームの波長が400nm~800nm又はほぼこれらのエンド値である場合、0.5マイクロメートル~10マイクロメートル、又はほぼこれらのエンド値とすることができる。オフセットされた入口2-111b、2-111d及び受光領域2-112b、2-112dが結合できるパワーは、それらが基準線2-115に位置付けられたとした場合より低い。幾つかの実施形態において、オフセットされた入口及び受光領域の幅は、全ての入口及び受光領域間の所望のパワー比(例えば、各入口及び受光領域について同量のパワー)を結合するような大きさとし得る。
【0034】
ビームの動きの明瞭化は、オフセットされた入口(例えば、入口2-112d)に接続された導波路内のパワーをモニタすることによって検知できる。例えば、
図2-1を再び参照すると、当初のビームアラインメントは、基準線2-115に沿っている1つ又は複数の入口及び受光領域(例えば、入口2-111c及び受光領域2-112c)に結合されるパワーを最適化することができる。結合効率を最適化するために、基準線2-115に沿っている1つ又は複数の入口及び受光領域に接続された導波路からパワー又は強度をモニタできる。幾つかのケースで、モニタは導波路がパワーを送達するチップ上の1つ又は複数の部位で行うことができる。例えば、チップ上のある部位は、導波路内の放射の強度の量を検知できる受光素子を含み得る。結合効率を最適化した後、1つ又は複数のオフセットされた入口及び受光領域でモニタされたパワー又は強度は、入射ビームがどの方向(x)に移動したかを示すことができる。例えば、受光領域2-112dに接続された導波路内でパワーがモニタされる場合、パワーが増加することは、入射ビーム2-102が-x(上流)方向に移動したことを示すことになる。パワーが減少することは、入射ビーム2-102が+x(下流)方向に移動したことを示すことになる。本明細書で説明する例は入射ビームのパワーに関しているが、代替的又は追加的に強度もモニタし得る。
【0035】
同じ格子カプラ2-100について、受光領域2-112bに接続された導波路内でモニタされるパワーは、受光領域2-112dに接続された導波路内でモニタされるパワーのそれとは反対の挙動を示すことになる。入射ビーム2-102が-x方向に移動すると、その結果、受光領域2-112bに結合されるパワーが減少することになる。入射ビーム2-102が+x方向に移動すると、その結果、受光領域2-112bに結合されるパワーが増加することになる。2つの受光領域2-112b、2-112dに接続された2つの導波路からのパワー信号を区別することで、入力ビーム2-102の動きを検出する際の感度を高めることができる。
【0036】
図2-2は、改善されたビームアラインメント感度を有する格子カプラの他の実施形態2-200を描く。格子カプラ2-200は、
図2-1の格子カプラ2-100とほとんど同じであり得るが、入口及び受光領域2-112a~2-112eが、当接し、その縁で接触しているのではなく、y方向に空間的に分離されている点が異なる。格子2-210は、
図2-2に示されるように、分離された部分2-210a~2-210eを含み得るか、又は
図2-1に示されるように、連続線2-116でも形成され得る。入口2-111a~2-111e及び受光領域2-112a~2-112eをy方向に分離することにより、結合効率は低下し得るが、直に当接する入口面の不連続性の影響を軽減することにより、受光領域内の光モードプロファイルを改善し得る。格子2-210及び受光領域2-112a~2-112eは、
図1-1~
図1-3に関連して前述したように、基板1-105上に周囲材料と共に形成できる。
【0037】
用途によっては、複数の入射ビーム2-330を複数の集積導波路に結合することが望ましいかもしれない。
図2-3は、そのような用途について、改善されたビームアラインメント感度を有する格子カプラの他の実施形態2-300を示す。格子カプラ2-300は、格子2-310と、格子2-310に隣接する複数の受光領域2-312a~2-312dを含むことができる。格子は、図のように分離された部分2-310a~2-310dを含み得るか、又は連続線2-116を有する
図2-1の格子のように形成され得る。受光領域2-312a~2-312dは、図のようにy方向に分離され得るか、又は相互に直に隣接して当接し得る。受光領域及び入口の少なくとも1つは、基準線2-115からx方向にオフセットされ得る。幾つかの実装によれば、受光領域及び入口の幅はほぼ同じであり得る。幾つかの実施形態において、オフセットされた格子に関する受光領域及び入口の幅は基準線2-115上にある入口に関する受光領域及び入口の幅より大きくし得る(例えば、各受光領域内で同量のパワーを得るため)。
【0038】
複数の入射ビーム2-330が独立してではなく一体として一緒に移動する場合、
図2-1に関して前述したように、複数の入射ビーム2-330がx方向に動くことにより、オフセットされた受光領域に結合されるパワーは同じだけ変化する。例えば、入射ビーム2-330の+x方向への動きは、受光領域2-312bに接続された導波路に関するパワーの増加として、及び受光領域2-312cに接続された導波路のパワーの低下として検出できる。また、入射ビーム2-330の-x方向への動きは、受光領域2-312bに接続された導波路に関するパワーの低下として、及び受光領域2-312cに接続された導波路のパワーの増加として検出できる。格子2-310及び受光領域2-312a~2-312eは、
図1-1~
図1-3に関して前述したように、基板1-105上に周囲材料と共に形成できる。
【0039】
図2-4は、
図2-1に示されるカプラ等の、入射ビームのx位置の変化に対する改善された感度を有する格子カプラについてのシミュレーション結果をプロットしたものである。第一の曲線2-402は、基準線2-115上にある入口を有する受光領域2-112cから受信した信号S
cの変化を示す。受光領域2-112cへの最も高い結合効率は、基準x位置(任意選択により0マイクロメートルに設定される)に位置付けられた入射ビームの場合に得られる。第一の曲線2-402からわかるように、信号レベルは、x方向に沿ったビーム位置の増減について同様に変化する。曲線に非対称性があるが、差は小さく、実装された自動システムでは確実に識別することは困難又は不可能である可能性がある。例えば、-20マイクロメートル~20マイクロメートルの間の各信号値は、ビーム位置を一意的に識別しない。第二の曲線2-404は、
図2-1に示されるように、基準線2-115からオフセットされた2つの受光領域から受信した差信号S
d-S
bの変化を示す。差信号は、ビーム位置のx≒-7マイクロメートルからx≒+7への変化に対して連続的な増大を示し、-x方向へのビームの動きを+x方向へのビームの動きから明確に区別できる。曲線の非線形性は、電子的手段により較正及び補償できる。このシミュレーションでは、2つの受光領域は+5マイクロメートル及び-5マイクロメートルだけオフセットされているが、本発明はこれらのオフセット値のみに限定されない。幾つかの実施形態においては、これより小さい、又は大きいオフセットが使用され得る。
【0040】
改善されたビームアラインメント感度を有する格子カプラの他の実施形態3-100が
図3-1に示されている。図の例は、入射ビーム2-102のピッチ角θ
i(
図1-1に示される)の変化を明瞭化できる。このような実施形態では、格子カプラ3-100は、複数の部分3-110a~3-110eを有し、それらのうち少なくとも2つが異なる、又はオフセットされた格子周期性(例えば、P
1、P
2)を有する格子3-110を含むことができる。幾つかの実装において、受光領域3-112a~3-112eの入口は、前述のように直線でも曲線でもよい共通の基準線2-115に沿ってあり得る。格子部分3-110a~3-110eと受光領域3-112a~3-112eは、図のようにy方向に相互に直接当接し得るか、又は相互に分離され得る(
図2-2に示されるものと同様)。幾つかの実施形態において、格子部分3-110a~3-110eと受光領域3-112a~3-112eは、複数の導波路に複数の入射ビームを結合するために、
図2-3に示されるように分離され、そのような大きさとされ得る。
【0041】
格子部分のうちの1つ又は複数3-110a、3-110c、3-110eは、同じ格子周期性P
1を有し得て、これは基準周期性とし得る。幾つかのケースでは、格子部分の過半数3-110a、3-110c、3-110eが同じ基準格子周期性P
1を有し得る。基準周期性は、入射ビーム2-102が対応する受光領域のうちの1つへの最も高い結合効率のために向き付けられたときに、対応する受光領域(例えば、受光領域3-112a、3-112c、3-112e)の各々への最も高い結合効率を提供するものとし得る。格子部分の少なくとも1つ、3-110bは、基準周期性P
1とは異なるオフセットされた周期性P
2を有することができる。周期性をオフセットさせた結果、対応する受光領域3-112bへの結合効率は低下し得る。幾つかのケースでは、1つ又は複数の追加のオフセットされた周期性P
3を有する1つ又は複数の追加の格子部分3-110dがあり得る。格子3-110及び受光領域3-112a~3-112eは、
図1-1~
図1-3に関して前述したように、基板1-105上に周囲材料と共に形成できる。
【0042】
基準周期性P
1を有する格子部分3-110aについて、入射ビームの一部の回折は基本的にy方向、例えば対応する入口に直接、基本的に受光領域のコアと同軸に向かうことができる。入射ビームのピッチの+θ
i方向への変化により、パワー挙動において、-θ
i方向へのピッチの変化と基本的に同じ減少が生じることになる(再び
図1-1参照)。P
1より小さい周期性P
2を有する格子部分3-110bに関して、入射ビームの一部の回折は主としてy方向であるが、部分的に-z方向(紙の外に出る)の可能性もある。その結果、受光領域3-112bへの結合効率が低下する可能性がある。しかしながら、+θ
i方向に入射ビームのピッチが変化すると、受光領域3-112bから結合されるパワーが減り、-θ
i方向に入射ビームのピッチが変化すると、受光領域3-112bに結合されるパワーが増すことになる。そこで、受光領域3-112bに結合された導波路からのパワー又は強度をモニタすることにより、±θ
i方向への入射ビーム2-102のピッチの変化を明瞭化することができる。
【0043】
光子部分3-110bのそれと反対の挙動は、P1より大きい周期性P3を有する格子部分3-110dについて得ることができる。周期性P3が基準周期性P1より大きい場合、入射ビームの一部の回折は主としてy方向であるが、部分的に+z方向(図の平面に入る)の可能性もある。+θi方向に入射ビームのピッチが変化すると、受光領域3-112dから結合されるパワーが増加し、-θi方向に入射ビームのピッチが変化すると、受光領域3-112dに結合されるパワーが低下することになる。両方の受光領域3-112b、3-112dから受信される差分信号によって、±θi方向への入射ビームの回転方向の変化に関する検出感度を高めることができる。
【0044】
幾つかの実施形態によれば、基準周期性P1からの格子周期性のオフセット量は、基準周期性P1の0.1%~1%とすることができる。幾つかの可視的な光学的構成について、オフセットされた格子の周期性の変化は0.5nm~4nm、又は約0.5nm~約4nmとすることができる。
【0045】
図3-2は、オフセットされた受光領域3-212b、3-212dとオフセットされた格子周期性P
2、P
3の態様を組み合わせた格子カプラの例3-200を描く。格子カプラ3-200は、基準周期性P
1を有する格子部分3-210bと、1つ又は複数のオフセットされた周期性P
2、P
3を有する1つ又は複数の追加部分3-210a、3-210cを含む格子3-210を含むことができる。格子カプラ3-200は、基準線2-115に沿って位置付けられた入口を有する1つ又は複数の受光領域3-212a、3-212c、3-212eと、基準線2-115からx方向にオフセットされた入口を有する1つ又は複数の受光領域3-212b、3-212dをさらに含み得る。図の例の場合、受光領域3-212b及び/又は3-212dに接続された導波路から検出されるパワーの変化は、格子3-210上の入射ビームの位置の+x又は-x方向への動きを明瞭に示すことができる。受光領域3-212a、3-212eに接続された導波路から検出されるパワーの変化は、格子3-210上の入射ビーム+θ
i又は-θ
i方向への動きを明瞭に示すことができる。
【0046】
図3-3は、
図3-1に示されるカプラ等、入射ビームのピッチ角θ
iの変化に対する改善された感度を有する格子カプラのシミュレーション結果をプロットしたものである。第一の曲線3-302は、基準周期性P
1を有する格子に隣接する受光領域3-112cから受信した信号S
cの変化を示す。選択された格子のデザインと固有波長について、基準周期性を有する格子部分に隣接する受光領域への最も高い結合効率は、-4.0度の入射ピッチ角で得られる。第一の曲線3-302からわかるように、信号レベルは、ビームの入射ピッチ角の-4.0度の整列位置からの増大又は減少について、基本的に同じように変化する。各信号レベルは、ビームの入射角を一意的に識別しない。第二の曲線3-304は、オフセットされた周期性(P
2<P
1、P
3>P
1)を有する2つの格子部分に隣接する2つの受光領域から受信した差信号S
d-S
bの変化を示す。差信号は、入射角範囲にわたり基本的に線形であり、ピッチ角の変化の方向を明確に示すことかできる。このシミュレーションでは、オフセットされた格子周期性の差は、基準格子の周期性P
1から+1nm及び-1nmであったが、格子周期性のオフセットはこれらの値のみに限定されない。それより小さい、又は大きい格子周期性のオフセットが使用され得る。
【0047】
図2-1~
図3-2に示される実施形態の格子線と受光領域の入口は直線として描かれているが、幾つかの実装では、これらの実施形態の何れにおいても格子線と入口を湾曲させ得る。
図3-4は、受光領域3-412に隣接する格子3-410が曲線3-416を有する例を示している。それに加えて、受光領域3-412の入口3-411は曲面を有し得る。湾曲した格子線3-416及び/又は湾曲した入口3-411により、受光領域3-412への結合効率が改善され得る。幾つかのケースでは、湾曲した格子線3-416及び/又は湾曲した入口3-411により、追加的又は代替的に受光領域3-412における光モードプロファイルも改善され得る。
【0048】
図3-5は、本願の実施形態の格子カプラ上の入射ビームのアラインメントをとり、アラインメントを保持するための例示的な方法3-500を示すフローチャートである。方法の行為の幾つか又は全部は自動化され得る(例えば、自動のビームステアリング及び位置決め機器を使用することによる)。方法3-500は、格子カプラ2-100の格子2-110上の入射ビーム2-102について最初にアラインメントをとる行為(行為3-510)を含み得る。アラインメントのとられる位置は、基準受光領域(例えば、基準線2-115上にある入口2-111を有する受光領域及び/又は対応する基準格子周期性P
1のための入口を有する受光領域)への、より高い、又はほぼ最も高い結合効率を提供する回転方向であり得る。アライメントのとられた回転方向が得られた後、ビームの回転方向がx及び/又はθ
i方向にスキャンされて、センサと、ミスアラインメントのある回転方向の所定の範囲にわたる信号レベルが較正されてよい(行為3-520)。個々の自由度の各々について、アラインメント信号レベルをモニタすることかできる(行為3-530)。アラインメント信号レベルは、その上に導波路及び格子カプラが形成される基板上に集積された1つ又は複数のセンサによりモニタされ得る。幾つかの実装において、センサは分析器のピクセル内に位置付けられてよく、これについては後でさらに詳しく説明する。自動システムは、信号レベルの上昇について(行為3-540)、又は低下について(行為3-550)テストし得る。信号レベルの上昇が検出されると(例えば、ビームが+x方向に動いたことによる)、自動システムはビームを-x方向に、信号レベルが基本的にアラインメントのとられた信号レベルへと回復するまで移動させ(行為3-545)、信号のモニタを再開し得る(行為3-530)。アラインメントがとられた信号レベルは、自動アラインメントシステムの較正(行為3-520)中に特定された電圧レベルV
aであり得、システムは、V
aの数パーセント以内の値の範囲をアラインメントを示すものとして受け入れるように構成され得る。信号レベルの低下が検出された場合(例えば、ビームが-x方向に動いたことによる)、自動システムはビームを+x方向に、信号レベルがアラインメントのとられたレベルへと回復するまで移動させ(行為3-555)、信号のモニタを再開し得る(行為3-530)。幾つかの実施形態によれば、ビームの動きは、ガルバノメータ又はステップモータを使って、入射ビームの経路内で光学コンポーネントを移動させ、それによって入射ビームを移動させ、又はそのピッチ角を変更することで実装され得る。同様の行為は、ビームピッチ角θ
iの変化を検出し、ビームをアラインメントのとられた回転方向へと回復させるために実行できる。
【0049】
上述の実施形態の中で説明した格子カプラは、前述のように様々な光学的利用分野で使用できる。このような格子カプラを使用できる1つの分野は、チップ上の1つ又は複数のサンプルを分析すること(例えば、ラブオンチップ応用)に関する。サンプルを分析するための機器は常に改良されており、機器全体を小型化するのに役立つことのできる微細加工されたコンポーネント(例えば、電子チップ、マイクロ流体チップ)を内蔵し得る。分析対象のサンプルとしては、空気(例えば、有害ガスの漏出、燃焼副産物、又は有毒化学物質を検知する)、水又はその他の摂取可能な液体、食品サンプル、及び被検者から採取した生体サンプル(血液、尿等)を含めることができる。幾つかのケースでは、サンプルを分析するためのポータブルのハンドヘルド型機器を有することが望ましく、それによって技師又は医療関係者は、作業が行われ得て、サンプルを素早く正確に分析する必要のある現場に機器を容易に運ぶことができる。臨床現場では、ヒト遺伝子又はたんぱく質の配列を特定したり、全血球計算を行ったりする、より複雑なサンプル分析のために、デスクトップサイズの機器が望まれ得る。
【0050】
例えば、どちらも参照によって本願に援用される米国特許出願公開第2015/0141267号明細書及び米国特許第9,617,594号明細書に記載されているもののような高度な分析器では、使い捨て集積素子(簡潔にするために「チップ」及び「使い捨てチップ」と呼んでよい)を使って、大量並行サンプル分析を実行し得る。使い捨て集積素子は、パッケージされた生体光電子チップを含み得て、その上に1つのサンプル又は異なるサンプルの並行分析を行うための反応チャンバを有する多数のピクセルを存在させることができる。例えば、生体光電子チップ上の、反応チャンバを有するピクセルの数は、幾つかのケースでは約10,000~約10,000,000、幾つかのケースでは100,000~約100,000,000とすることができる。前述の格子カプラと導波路は、このような生体光電子チップ上のピクセルの各々に光放射を送達し得る。幾つかの実施形態において、使い捨てチップは、高度な分析機器の受容部中に取り付けられ、機器内の光学及び電子コンポーネントとインタフェースし得る。使い捨てチップは、新たなサンプル分析を行うたびに使用者が容易に交換できる。
【0051】
幾つかの実施形態による使い捨てチップの例示的な構造4-100が
図4に示されている。使い捨てチップ構造4-100は生体光電子チップ4-110を含み得て、これは半導体基板4-105を有し、基板上に形成された複数のピクセル4-140を含む。実施形態において、ピクセル4-140の1行又は列に励起放射を提供する行又は列の導波路4-115があり得る。励起放射は、前述の実施形態の格子カプラを使って導波路に結合され得る。例えば、格子カプラは、生体光電子チップ4-110の表面上に構成されて、集光されたレーザビームからの励起放射を複数の導波路4-115に接続される1つ又は複数の導波路に結合し得る。
【0052】
使い捨てチップ構造4-100は、生体光電子チップ4-110上のピクセル領域の周囲に形成される壁4-120をさらに含み得る。壁4-120は、生体光電子チップ4-110を支持するプラスチック又はセラミック製ケーシングの一部であり得る。壁4-120は少なくとも1つの貯蔵部4-130を形成し得、その中に少なくとも1つのサンプルが設置され得て、生体光電子チップ4-110の表面上の反応チャンバ1-130と直接接触し得る。壁4-120は例えば、容器4-130内のサンプルが光ポート4-150及び格子カプラを含む領域に流れ込むのを防止し得る。幾つかの実施形態において、使い捨てチップ構造4-100は、使い捨てチップの外面上の電気コンタクトとパッケージ内の相互接続手段をさらに含み得て、それによって生体光電子チップ4-110上の回路構成と、使い捨てチップがその中に取り付けられる機器内の回路構成との間の電気接続を確立できる。
【0053】
II.例示的な生体分析応用
集積格子カプラを高度な分析器の中で使用できる例示的な生体分析応用について説明する。例えば、本願の実施形態の格子カプラは、長期にわたり自動的に入射ビームと格子カプラとのアラインメントを保持し、下流の導波路内の一定のパワーレベルを保持する能力を高めるために使用できる。
【0054】
機器の受容部に取り付けられると、使い捨てチップ4-100(例えば
図4に示されるもの)は、高度な分析器内の光学及び電子装置と光学的及び電子的に通信できる。機器は、外部インタフェースのためのハードウェアを含み得て、チップからのデータを外部ネットワークに通信できる。実施形態において、「光学」という用語は紫外、可視、近赤外、及び短波長赤外スペクトルバンドを指し得る。様々な種類の分析を各種のサンプルについて実行できるが、以下の説明は遺伝子配列特定について述べており、少なくとも部分的に、たんぱく質配列特定にも応用可能である。しかしながら、本発明は遺伝子又はたんぱく質配列特定のために構成された機器に限定されない。
【0055】
概して、
図5-1Aを参照すると、ポータブルの高度な分析器5-100は、機器5-100の中に交換可能モジュールとして取り付けられ、又はそれ以外に連結される1つ又は複数のパルス光源5-108を含むことができる。ポータブル分析器5-100は、光結合システム5-115と分析システム5-160を含むことができる。光結合システム5-115は光学コンポーネント(これには例えば、以下のコンポーネントの中の何れも含まないか、その中の1つ、又はその中の複数のコンポーネントを含み得る:レンズ、ミラー、光学フィルタ、減衰器、ビームステアリングコンポーネント、ビーム成形コンポーネント)の何れかの組合せを含むことができ、パルス光源5-108から出力された光パルス5-122に対して動作し、これを分析システム5-160に結合するように構成できる。分析システム5-160は、光パルスをサンプル分析のための少なくとも1つの反応チャンバへと方向付け、1つ又は複数の光信号(例えば、蛍光、後方散乱放射)を少なくとも1つの反応チャンバから受信し、受信した光信号を表す1つ又は複数の電気信号を生成するように配置された複数のコンポーネントを含むことができる。幾つかの実施形態において、分析システム5-160は、1つ又は複数の受光素子を含むことができ、また、受光素子からの電気信号を処理するように構成された信号処理電子部品(例えば、1つ又は複数のマイクロコントローラ、1つ又は複数のフィールドプログラマブルゲートアレイ、1つ又は複数のマイクロプロセッサ、1つ又は複数のデジタルシグナルプロセッサ、ロジックゲート等)も含み得る。分析システム5-160はまた、外部機器(例えば、機器5-100を1つ又は複数のデータ通信リンクを介して接続できるネットワーク上の1つ又は複数の外部機器)とのデータの送受信を行うように構成されたデータ伝送ハードウェアも含むことができる。幾つかの実施形態において、分析システム5-160は、分析対象の1つ又は複数のサンプルを保持する生体光電子チップ5-140を受けるように構成できる。
【0056】
図5-1Bは、小型パルス光源5-108を含むポータブル分析器5-100のさらに詳細な例を描く。この例において、パルス光源5-108は小型の受動モードロックレーザモジュール5-110を含む。受動モードロックレーザは、自律的に光パルスを生成でき、外部からのパルス信号の印加は行われない。幾つかの実装において、モジュールは機器のシャーシ又はフレーム5-102に取り付けることができ、機器の外部ケーシングの中に位置付けられ得る。幾つかの実施形態によれば、パルス光源5-108は、光源を動作させ、光源5-108からの出力ビームに対して操作を行うために使用可能な追加のコンポーネントを含むことができる。モードロックレーザ5-110は、レーザキャビティ内の、又はレーザキャビティに連結された、レーザの縦周波数モードのフェーズロックを誘導する素子(例えば、可飽和吸収体、音響光学モジュレータ、カーレンズ)を含み得る。レーザキャビティは、一部にキャビティエンドミラー5-111、5-119により画定できる。このような周波数モードロックの結果、レーザのパルス動作が可能となり(例えば、キャビティ内パルス5-120はキャビティエンドミラー間で前後に跳ね返る)、部分的に透過性を有する一方のエンドミラー5-111からの出力光パルス5-122のストリームを生成する。
【0057】
幾つかのケースで、分析器5-100は取外し可能なパッケージ式生体光電子又は光電子チップ5-140(「使い捨てチップ」とも呼ばれる)を受けるように構成される。使い捨てチップは、例えば
図4に描かれているような生体光電子チップ4-110を含むことができ、これは複数の反応チャンバ、光励起エネルギを反応チャンバに送達するように配置された集積光学コンポーネント、及び反応チャンバからの蛍光発光を検出するように配置された集積受光素子と、を含む。幾つかの実装において、チップ5-140は毎回使用後に処分することができ、他の実装では、チップ5-140は2回以上再使用することもできる。チップ5-140が機器5-100により受けられると、これはパルス光源5-108及び分析システム5-160内の装置と電気的及び光学的に通信できる。電気通信は、例えばチップのパッケージ上の電気コンタクトを通じてなされ得る。
【0058】
幾つかの実施形態において、
図5-1Bを参照すると、使い捨てチップ5-140は、追加的な機器電子部品を含むことのできるプリント回路基板(PCB)等の電子回路基板5-130上に(例えば、ソケット接続を介して)取り付けることができる。例えばPCB 5-130は、電力、1つ又は複数のクロック信号、及び制御信号をチップ5-140に提供するように構成された回路構成、及び反応チャンバから検出された蛍光発光を表す信号を受信するように配置された信号処理回路構成を含むことができる。幾つかの実装において、チップ5-140から返されたデータは、一部又は全体が機器5-100上の電子部品により処理できるが、データはネットワーク接続を介して1つ又は複数のリモートデータプロセッサに伝送され得る。PCB 5-130はまた、チップからの、チップ5-140の導波路に結合される光パルス5-122の光学結合及びパワーレベルに関するフィードバック信号を受信するように構成された回路構成も含むことができる。フィードバック信号は、パルス光源5-108と光学システム5-115の一方又は両方に提供されて、光パルス5-122の出力ビームの1つ又は複数のパラメータを制御することができる。幾つかのケースでは、PCB 5-130は、光源及び光源5-108内の関連する回路構成を動作させるためのパワーをパルス光源5-108に提供し、又は送ることができる。
【0059】
幾つかの実施形態によれば、パルス光源5-108は、小型のモードロックレーザモジュール5-110を含む。モードロックレーザは、利得媒質5-105(幾つかの実施形態において、これはソリッドステート材料とすることができる)、出力カプラ5-111、及びレーザキャビティエンドミラー5-119を含むことができる。モードロックレーザの光キャビティは、出力カプラ5-111とエンドミラー5-119により範囲を画定できる。レーザキャビティの光軸5-125は、1つ又は複数の折り返し(ターン)を有して、レーザキャビティの長さを長くし、所望のパルス繰り返し周波数を提供することができる。パルス繰り返し周波数は、レーザキャビティの長さ(例えば、光パルスがレーザキャビティ内を往復する時間)により決まる。
【0060】
幾つかの実施形態において、レーザキャビティ内に、ビーム成形、波長選択、及び/又はパルス形成のための追加の光学素子(
図5-1Bでは図示せず)が存在し得る。幾つかのケースでは、エンドミラー5-119は可飽和吸収体ミラー(SAM:saturable-absorber mirror)を含み、これは縦キャビティモードの受動モードロックを誘導し、その結果、モードロックレーザのパルス式動作が得られる。モードロックレーザモジュール5-110は、利得媒質5-105を励起するためのポンプ源(例えば、レーザダイオードであり、
図5-1Bでは図示せず)をさらに含むことができる。モードロックレーザモジュール5-110のさらなる詳細は、2017年12月15日に出願された「小型モードロックレーザモジュール」と題する米国特許出願第15/844,469号明細書に記載されており、同出願を参照によって本願に援用する。
【0061】
レーザ5-110がモードロックされると、キャビティ内パルス5-120はエンドミラー5-119と出力カプラ5-111との間で循環することができ、キャビティ内パルスの一部は、出力カプラ5-111を通じて出力パルス5-122として伝送できる。したがって、出力パルス5-122のトレインは、
図5-2のグラフに示されているように、キャビティ内パルス5-120がレーザキャビティ内で出力カプラ5-111とエンドミラー5-119との間で前後に跳ね返る際に出力カプラにおいて検出できる。
【0062】
図5-2は、出力パルス5-122の時間強度プロファイルを示しているが、図は正確な縮尺によらない。幾つかの実施形態において、発出パルスのピーク強度値はほぼ同等であり得、プロファイルはガウス時間プロファイルを有し得るが、sech
2型プロファイル等のその他のプロファイルも使用可能であり得る。幾つかのケースで、パルスは対称の時間プロファイルを有し得るが、その他の時間形状も有し得る。各パルスの持続時間は、
図5-2に示されるように、全幅半値(FWHM)値により特徴付けられ得る。モードロックレーザの幾つかの実施形態によれば、超短光パルスのFWHM値は100ピコ秒(ps)未満とすることができる。幾つかのケースで、FWHM値は約5ps~約30psとすることができる。
【0063】
出力パルス5-122は、規則的な間隔Tだけ分離できる。例えば、Tは出力カプラ5-111とキャビティエンドミラー5-119との間の往復時間により決定できる。幾つかの実施形態によれば、パルス分離間隔Tは約1ns~約30nsとすることができる。幾つかのケースで、パルス分離間隔Tは約5ns~約20nsとすることができ、これは約0.7メートル~約3メートルのレーザキャビティの長さ(ほぼレーザキャビティ内の光軸5-125の長さ)に対応する。実施形態において、パルス分離間隔はレーザキャビティ内の往復時間に対応し、それによって3メートルのキャビティ長さ(往復距離6メートル)により得られるパルス分離間隔Tは約20nsとなる。
【0064】
幾つかの実施形態によれば、所望のパルス分離間隔Tとレーザキャビティ長さは、チップ5-140上の反応チャンバの数、蛍光発光特性、及びデータをチップ5-140から読み出すためのデータハンドリング回路構成の速度の組合せにより決定できる。実施形態において、異なる蛍光体は、それらの異なる蛍光減衰速度又は特徴的寿命によって区別できる。したがって、選択された蛍光体をそれらの異なる減衰速度間で区別するための適正な統計を収集するのに十分なパルス分離間隔Tをとる必要がある。それに加えて、パルス分離間隔Tが短すぎると、データハンドリング回路構成は、多くの反応チャンバにより収集されている大量のデータを処理しきれない。約5ns~約20nsのパルス分離間隔Tは、約2nsの減衰速度を有する蛍光体及び約60,000~10,000,000の反応チャンバからのデータを扱うのに適している。
【0065】
幾つかの実装によれば、ビームステアリングモジュール5-150は、パルス光源5-108からの出力パルスを受信することができ、少なくともチップ5-140の光カプラ(例えば、格子カプラ)上の光パルスの位置と入射角を調整するように構成される。幾つかのケースで、パルス光源5-108からの出力パルス5-122はビームステアリングモジュール5-150によって操作されて、追加的又は代替的に、チップ5-140上の光カプラにおけるビームの形状及び/又はビームの回転を変化させることができる。幾つかの実装において、ビームステアリングモジュール5-150はさらに、光カプラへの出力パルスのビームの集光及び/又は偏光調整を提供することができる。ビームステアリングモジュールの一例は、2016年5月20日に出願された、「パルスレーザ及び生体分析システム」と題する米国特許出願第15/161,088号明細書に記載されており、同出願を参照によって本願に援用する。ビームステアリングモジュールの他の例は、別の、2016年12月16日に出願された、「小型ビーム成形及びステアリングアセンブリ」と題する米国特許出願第62/435,679号明細書に記載されており、同出願を参照によって本願に援用する。
【0066】
図5-3を参照すると、パルス光源からの出力パルス5-122は、例えば使い捨ての生体光電子チップ5-140上の1つ又は複数の光導波路5-312に結合できる。幾つかの実施形態において、光パルスは、1つ又は複数の格子カプラ5-310を介して1つ又は複数の導波路に結合できるが、幾つかの実施形態ではチップ5-140上の1つ又は複数の光導波路の端への結合を使用できる。図には格子カプラの簡略化した例が示されている。幾つかの実施形態によれば、光パルス5-122のビームの格子カプラ5-310とのアラインメントを支援するために、クワッドディテクタ5-320を半導体基板5-305(例えば、シリコン基板)上に位置付けることができる。1つ又は複数の導波路5-312及び反応チャンバ又は反応チャンバ5-330は、基板、導波路、反応チャンバ、及び受光素子5-322間に誘電体層(例えば、二酸化シリコン層)を挟んで、同じ半導体基板に集積できる。
【0067】
各導波路5-312は、反応チャンバ5-330の下に、反応チャンバに結合された光パワーを導波路に沿って均等化するためのテーパ付き部分5-315を含むことができる。減縮テーパによって、より多くの光エネルギを導波路のコアの外側に印加して、反応チャンバとの結合を増大させ、反応チャンバへの放射結合に関する損失を含む導波路に沿った光損失を補償することができる。第二の格子カプラ5-317を各導波路の端に位置付けて、光エネルギを集積されたフォトダイオード5-324へと方向付けることができる。集積されたフォトダイオードは、導波路に結合されたパワーの量を検出し、検出された信号を、例えばビームステアリングモジュール5-150を制御するフィードバック回路構成に提供することができる。
【0068】
反応チャンバ5-330又は反応チャンバ5-330は、導波路のテーパ付き部分5-315と整列させ、タブ5-340で引っ込めることができる。各反応チャンバ5-330のための半導体基板5-305上に受光素子5-322を位置付けることができる。幾つかの実施形態において、半導体吸収体(
図5-5では光フィルタ5-530として示されている)は、導波路と各ピクセルにおける受光素子5-322との間に位置付けられ得る。金属コーティング及び/又は多層コーティング5-350は、反応チャンバ内にない蛍光体(例えば、反応チャンバ上の溶液中に分散している)の光学的励起を防止するために、反応チャンバの周囲及び導波路の上に形成できる。金属コーティング及び/又は多層コーティング5-350は、タブ5-340の縁より高くして、各導波路の入力及び出力端における導波路5-312内の光エネルギの吸収損失を低減させ得る。
【0069】
チップ5-140上に、導波路、反応チャンバ、及び時間ビニング受光素子の複数の行が存在し得る。例えば、幾つかの実装では128行があり、各々が512の反応チャンバを有し、全体で65,536の反応チャンバとすることができる。その他の実装は、これより少ない、又は多い反応チャンバを含み得、その他のレイアウト構成を含み得る。パルス光源5-108からの光パワーは、チップ5-140への光カプラ5-310と複数の導波路5-312との間に位置付けられた1つ又は複数のスターカプラ若しくはマルチモード干渉カプラを介して、又は他の何れかの手段によって、複数の導波路に分散させることができる。
【0070】
図5-4は、導波路5-315のテーパ付き部分内の光パルス5-122から反応チャンバ5-330への光エネルギ結合を示している。図は、光波の電磁場シミュレーションから作成されており、導波路の寸法、反応チャンバの寸法、異なる材料の光学特性、及び導波路5-315のテーパ付き部分の反応チャンバ5-330からの距離が考慮されている。導波路は例えば、二酸化シリコンの周囲媒質5-410の中に窒化シリコンで形成できる。導波路、周囲媒質、及び反応チャンバは、2015年8月7日に出願された、「分子を探査、検出、及び分析するための集積素子」と題する米国特許出願第14/821,688号明細書に記載された微細加工プロセスにより形成できる。幾つかの実施形態によれば、エバネッセント光波場5-420は、導波路により運ばれた光エネギを反応チャンバ5-330に結合する。
【0071】
反応チャンバ5-330内で起こる生物学的反応の非限定的な例が
図5-5に描かれている。この例は、ヌクレオチド又はヌクレオチド類似体が伸長する標的核酸の相補鎖に逐次的に取り込まれる様子を描く。逐次的な取込みは反応チャンバ5-330内で起こることができ、高度な分析器により検出されて、DNA配列を特定できる。反応チャンバは、約150nm~約250nmの深さと、約80nm~約160nmの直径を有することができる。メタライゼーション層5-540(例えば、基準電位のためのメタライゼーション)は、受光素子5-322の上方でパターニングして、隣接する反応チャンバ及びその他の望ましくない放射源からの迷光をブロックする絞り又は虹彩を提供できる。幾つかの実施形態によれば、重合酵素5-520を反応チャンバ5-330内に位置付ける(例えば、チャンバの底部に付着させる)ことができる。重合酵素は、標的核酸5-510(例えば、DNAから得られた核酸の一部)を取り込み、伸張する核酸の相補鎖を配列して、DNA 5-512の伸長鎖を生成することができる。異なる蛍光体で標識されたヌクレオチド又はヌクレオチド類似体は、反応チャンバの上方及びその中の溶液中に分散させることができる。
【0072】
標識されたヌクレオチド又はヌクレオチド類似体5-610が伸長する核酸の相補鎖の中に取り込まれると、
図5-6に描かれるように、1つ又は複数の付着した蛍光体5-630は、導波路5-315から反応チャンバ5-330に結合された光エネルギのパルスにより繰り返し励起させることができる。幾つかの実施形態において、1つ又は複数の蛍光体5-630は、1つ若しくは複数のヌクレオチド又はヌクレオチド類似体5-610に何れかの適当なリンカ5-620により付着できる。取込みイベントは最大約100msの時間にわたり継続し得る。この時間中、モードロックレーザからのパルスによる蛍光体の励起から得られる蛍光発光のパルスは、例えば時間ビニング受光素子5-322により検出できる。幾つかの実施形態において、各ピクセルに、信号処理(例えば、増幅、読出し、ルーティング、信号前処理等)のための1つ又は複数の追加の集積電子素子5-323が存在し得る。幾つかの実施形態によれば、各ピクセルは蛍光発光を透過させ、励起パルスからの放射の透過を減少させる少なくとも1つの光フィルタ5-530(例えば、半導体吸収体)を含むことができる。幾つかの実装では、光フィルタ5-530を使用しなくてもよい。異なる発光特性(例えば、蛍光減衰速度、強度、蛍光波長)を有する蛍光体を異なるヌクレオチド(A、C、G、T)に付着させ、DNA 5-512の鎖が核酸を取り込んでいる間の異なる発光特性を検出し、区別することによって、伸長するDNA鎖の遺伝子配列の特定が可能となる。
【0073】
幾つかの実施形態によれば、サンプルを蛍光発光特性に基づいて分析するように構成された高度な分析器5-100は、異なる蛍光分子間の蛍光寿命及び/又は強度の差、及び/又は異なる環境における同じ蛍光分子の寿命及び/又は強度の差を検出できる。説明のために、
図5-7は2つの異なる蛍光発光確率曲線(A及びB)をプロットしており、これらは例えば2つの異なる蛍光分子からの蛍光発光を表すことができる。曲線A(破線)を参照すると、短又は超短光パルスにより励起された後、第一の分子からの蛍光発光の確率p
A(t)は図のように時間と共に減衰し得る。幾つかのケースで、光子発出確率の経時的減少は、減衰指数関数p
A(t)=P
Aoe
-t/τ1により表すことができ、式中、P
Aoは初期発光確率、τ
1は第一の蛍光分子に関する、発光減衰確率を特徴付ける時間パラメータである。τ
1は、第一の蛍光分子の「蛍光寿命」、「発光寿命」、又は「寿命」と呼ばれてよい。幾つかのケースでは、τ
1の値は蛍光分子の局所的環境によって変更できる。他の蛍光分子は、曲線Aに示されるものとは異なる発光特性を有することができる。例えば、他の蛍光分子は、1つの指数関数型減衰とは異なる減衰プロファイルを有する可能性があり、その寿命は半減期の値又はその他の何れかのメトリクスにより特徴付けることができる。
【0074】
第二の蛍光分子は、
図5-7の曲線Bについて描かれているように、急激な減衰プロファイルp
B(t)を有し得るが、測定可能な程度に異なる寿命τ
2を有する。図の例において、曲線Bの第二の蛍光分子の寿命は曲線Aの寿命より短く、発光確率p
B(t)は、第二の蛍光分子の励起後まもなくは、曲線Aより高い。異なる蛍光分子は、幾つかの実施形態において、約0.1ns~約20nsの寿命又は半減期の値を有する可能性がある。
【0075】
蛍光発光寿命は、異なる蛍光分子の有無を見分けるため、及び/又は蛍光分子がさらされる異なる環境若しくは条件を見分けるために使用できる。幾つかのケースでは、蛍光分子を寿命(例えば、発光波長ではない)に基づいて見分けることにより、分析器5-100の様々な面を単純化できる。例えば、波長区別光学系(例えば、波長フィルタ、各波長の専用検出器、異なる波長の専用パルス光源、及び/又は回折光学系)は、蛍光分子を寿命に基づいて見分ける場合、その数を減らすか、排除できる。幾つかのケースで、1つの固有波長で動作する1つのパルス光源を使って、光スペクトルの同じ波長領域内で発光するが、測定可能な程度に異なる寿命を有する異なる蛍光分子を励起させることができる。同じ波長領域で発光する異なる蛍光分子を励起させ、見分けるために、異なる波長で動作する複数の光源ではなく、1つのパルス光源を使用する分析システムは、操作と保守をより単純に、且つより小型とすることができ、また、より低コストで製造できる。
【0076】
蛍光寿命分析に基づく分析システムには特定の利点があり得るが、分析システムにより得られる情報量及び/又は検出の正確さは、追加の検出技術を使用できるようにすれば高められる。例えば、幾つかの分析システム5-160は追加的に、蛍光波長及び/又は蛍光強度に基づいて検体の1つ又は複数の特性を見分けるように構成できる。
【0077】
再び
図5-7を参照すると、幾つかの実施形態によれば、異なる蛍光寿命は蛍光分子の励起後の蛍光発光イベントを時間ビニングするように構成された受光素子を用いて区別できる。時間ビニングは、受光素子のための1つの電荷蓄積サイクル中に行うことができる。電荷蓄積サイクルとは読出しイベント間の間隔であり、その間に光生成キャリアが時間ビニング受光素子のビンの中で蓄積される。発光イベントの時間ビニングによって蛍光寿命を特定する概念は、
図5-8において図表により紹介されている。t
1の直前の時間t
eで、ある蛍光分子又は同じ種類(例えば、
図5-7の曲線Bに対応する種類)の蛍光分子の集合が短又は超短光パルスにより励起される。分子の集合が大きい場合、発光強度は、
図5-8に描かれているように、曲線Bと同様の時間プロファイルを有する可能性がある。
【0078】
しかしながら、1つの分子又は少数の分子の場合、蛍光光子の発出は、この例について
図5-7の曲線Bの統計にしたがって起こる。時間ビニング受光素子5-322は、発光イベントから生成されたキャリアを個別の時間ビンに蓄積できる。これらのビンは
図5-8に示されているが、実施形態においてはこれより少ないビン又はこれより多いビンが使用され得る。ビンは蛍光分子の励起時間t
eに関して時間的に分解される。例えば、第一のビンは時間t
1とt
2の間の間隔中に生成されたキャリアを蓄積でき、時間t
eにおける励起イベントの後発生する。第二のビンは、時間t
2とt
3の間の間隔中に生成されたキャリアを蓄積でき、第三のビンは時間t
3とt
4の間の間隔中に生成されたキャリアを蓄積できる。多数の発光イベントを加算する際、時間ビン内で蓄積されたキャリアは
図5-8に示される減衰強度曲線を概算でき、ビニングされた信号を使って、異なる蛍光分子又は蛍光分子が置かれる異なる環境を区別できる。
【0079】
時間ビニング受光素子5-322は、2015年8月7日に出願された「受光光子の時間ビニングのための集積素子」と題する米国特許出願第14/821,656号明細書及び2017年12月22日に出願された、「直接ビニングピクセルを有する集積受光素子」と題する米国特許出願第15/852,571号明細書に記載されており、両出願の全体を参照によって本願に援用する。説明のために、時間ビニング受光素子の非限定的な実施形態が
図5-9に描かれている。1つの時間ビニング受光素子5-322は、光子吸収/キャリア生成領域5-902と、キャリア吐出しチャネル5-906と、複数のキャリア蓄積ビン5-908a、5-908bを含むことができ、これらは全て半導体基板上に形成される。キャリア輸送チャネル5-907は、光子吸収/キャリア生成領域5-902とキャリア蓄積ビン5-908a、5-908bとの間に接続できる。図の例では、2つのキャリア蓄積ビンが示されているが、それより多くても少なくともよい。キャリア蓄積ビンに読出しチャネル5-910を接続することができる。光子吸収/キャリア生成領域5-902、キャリア吐出しチャネル5-906、キャリア蓄積ビン5-908a、5-908b、及び読出しチャネル5-910は、半導体に局所的にドーピングを行い、及び/又は隣接する絶縁領域を形成して、受光容量、キャリアの閉じ込め、及び輸送を提供することができる。時間ビニング受光素子5-322はまた、基板上に形成された複数の電極5-920、5-921、5-922、5-923、5-924を含むこともでき、これらは素子内にキャリアを輸送するための電場を素子内に生成するように構成される。
【0080】
動作時に、パルス光源5-108(例えば、モードロックレーザ)からの励起パルス5-122の一部は、時間ビニング受光素子5-322の上方の反応チャンバ5-330に送達される。当初、一部の励起放射光子5-901は光子吸収/キャリア生成領域5-902に到達し、キャリアを生成し得る(薄い影付きの円として示される)。また、ある程度の蛍光発光光子5-903も存在し得、これらは励起放射光子5-901と共に到達して、対応するキャリアを生成する(濃い影付きの円として示される)。当初、励起放射により生成されるキャリアの数は蛍光発光により生成されるキャリアの数と比較して多すぎる可能性がある。時間間隔|te-t1|に生成された初期キャリアは、例えば第一の電極5-920によりキャリア吐出しチャネル5-906へとゲーティングされ、拒絶できる。
【0081】
その後の時点で、ほとんどの蛍光発光光子5-903が光子吸収/キャリア生成領域5-902に到達してキャリア(濃い影付きの円として示される)を生成し、それが反応チャンバ5-330からの蛍光発光を表す有益で検出可能な信号を提供する。幾つかの検出方法によれば、その後の時点で第二の電極5-921と第三の電極5-923をゲート制御して、その後の時点で(例えば、第二の時間間隔|t1-t2|中に)生成されたキャリアを第一のキャリア蓄積ビン5-908aへと方向付けることができる。続いて、その後の時点で(例えば、第三の時間間隔|t2-t3|中に)第四の電極5-922と第五の電極5-924をゲート制御して、キャリアを第二のキャリア蓄積ビン5-908bへと方向付けることができる。電荷蓄積はこのようにして、多数の励起パルスについて励起パルス後に続けられ、かなりの数のキャリアと信号レベルを各キャリア蓄積ビン5-908a、5-908bに蓄積できる。その後の時点で、信号はビンから読み出すことができる。幾つかの実装において、各蓄積ビンに対応する時間間隔はサブナノ秒の時間スケールであるが、幾つかの実施形態では(例えば、蛍光体がより長い減衰時間を有する実施形態では)それより長い時間スケールを使用できる。
【0082】
励起イベント(例えば、パルス光源からの励起パルス)後のキャリアの生成及び時間ビニングのプロセスは、1つの励起パルス後に1回行うことも、又は時間ビニング受光素子5-322の1回の電荷蓄積サイクル中に複数の励起パルス後に複数回繰り返すこともできる。電荷蓄積の完了後、キャリアは、読出しチャネル5-910を介して蓄積ビンから読み出すことができる。例えば、適当なバイアスシーケンスを電極5-923、5-924及び少なくとも電極5-940に印加して、蓄積ビン5-908a、5-908bからキャリアを取り出すことができる。電荷蓄積及び読出しプロセスは、チップ5-140上での大量並行動作で行うことかでき、その結果、データフレームが得られる。
【0083】
図5-9に関して説明した例は複数の電荷蓄積ビン5-908a、5-908bを含んでいるが、幾つかのケースでは、その代わりに1つの蓄積ビン5-908aを使用できる。例えば、時間ビニング受光素子5-322には1つのビン1だけがあってよい。このようなケースでは、1つの蓄積ビン5-908aを可変時間ゲート方式で動作させて、異なる励起イベント後に異なる時間間隔を見ることができる。例えば、第一の一連の励起パルス内のパルス後に、蓄積ビン5-908aのための電極をゲート制御して、第一の時間間隔中(例えば、第二の時間間隔|t
1-t
2|中)に生成されたキャリアを収集でき、蓄積された信号は第一の所定のパルス数の後に読み出すことができる。同じ反応チャンバでの次の一連の励起パルス内のパルスの後、蓄積ビン5-908aのための同じ電極をゲート制御して、異なる間隔中(例えば、第三の時間間隔|t
2-t
3|中)に生成されたキャリアを収集でき、蓄積された信号は、第二の所定のパルス数の後に読み出すことができる。キャリアは、必要であれば、その後の時間間隔中に同様の方法で収集できる。このようにして、励起パルスが反応チャンバに到達した後の異なる期間中の蛍光発光に対応する信号レベルを1つのキャリア蓄積ビンを使って生成できる。
【0084】
励起後の異なる時間間隔についてどのように電荷蓄積が行われるかにかかわらず、読み出される信号は、例えば蛍光発光減衰特性を表すビンのヒストグラムを提供することができる。例示的なプロセスは
図5-10A及び
図5-10Bに示されており、この場合、2つの電荷蓄積ビンが反応チャンバからの蛍光発光を取得するために使用されている。ヒストグラムのビンは、反応チャンバ5-330における蛍光体の励起後の各時間間隔中に検出された光子の数を示すことができる。幾つかの実施形態において、ビンの信号は、
図5-10Aに描かれるように、多数の励起パルスの後に蓄積される。励起パルスは、時間t
e1、t
e2、t
e3、...t
eNで発生させることができ、これらはパルス間隔時間Tだけ分離される。幾つかのケースで、反応チャンバ内で観察されている1回のイベント(例えば、DNA分析における1回のヌクレオチド取込みイベント)に関する電子蓄積ビンへの信号蓄積中に、10
5~10
7の励起パルス5-122(又はその一部)を反応チャンバに印加できる。幾つかの実施形態において、1つのビン(ビン0)は、各光パルスで送達される励起エネルギの振幅を検出するように構成でき、(例えば、データを正規化するための)基準信号として使用され得る。他のケースでは、励起パルス振幅は安定で、信号取得中に1回又は複数回特定されて、各励起パルス後に特定されなくてよく、その結果、各励起パルス後にビン0の信号取得は行われない。このような場合、
図5-9に関連して前述したように、励起パルスにより生成されたキャリアは、拒絶し、光子吸収/キャリア生成領域5-902から廃棄できる。
【0085】
幾つかの実装において、
図5-10Aに示されるように、励起イベント後、蛍光体から発せられる光子は1つだけであり得る。時間t
e1における最初の励起イベントの後、時間t
f1での発出光子は第一の時間間隔内(例えば、時間t
1からt
2の間)に発生し得るため、結果として得られる電子信号は第一の電子蓄積ビン(ビン1に寄与する)内に蓄積される。時間t
e2でのその後の励起イベント中、時間t
f2での発出光子は、第二の時間間隔内(例えば、時間t
2からt
3の間)に発生し得るため、その結果として得られる電子信号はビン2に寄与する。次の、時間t
e3での励起イベントの後、光子は第一の時間間隔内に発生する時間t
f3において発出される。
【0086】
幾つかの実装において、各励起パルスを反応チャンバ5-330で受信した後に蛍光光子は発出及び/又は検出されないかもしれない。幾つかのケースでは、反応チャンバに送達される10,000の励起パルスごとに反応チャンバで検出される蛍光光子は1つと少ない可能性がある。モードロックレーザ5-110をパルス光源5-108として実装する1つの利点は、モードロックレーザが、高いパルス繰り返し周波数(例えば、50MHz~250MHz)で高い強度と高速ターンオフ時間を有する短い光パルスを生成できることである。このような高いパルス繰り返し周波数では、10ミリ秒の電荷蓄積間隔内の励起パルスの数は50,000~250,000であり得、その結果、検出可能な信号を蓄積できる。
【0087】
多数の励起イベント及びキャリア蓄積後、時間ビニング受光素子5-322のキャリア蓄積ビンを読み出して、反応チャンバに関する多値信号(例えば、2つ以上の値のヒストグラム、N次ベクトル等)を提供できる。各ビンの信号値は、蛍光体の減衰速度に依存する可能性がある。例えば、また
図5-8を再び参照すると、減衰曲線Bを有する蛍光体は、減衰曲線Aを有する蛍光体より、ビン1対ビン2の信号比が高くなる。ビンからの値を分析し、較正値と、及び/又は相互に比較することにより、存在する特定の蛍光体を特定できる。配列特定の用途の場合、蛍光体の識別により、例えば伸長するDNA鎖に取り込まれるヌクレオチド又はヌクレオチド類似体を特定できる。その他の用途では、蛍光体の識別により、その蛍光体にリンクされるか、蛍光体で標識され得る関心対象の分子又は検体の識別情報を特定できる。
【0088】
信号分析の理解をさらに助けるために、蓄積された複数のビンの値は、例えば
図5-10Bに描かれるようなヒストグラムとしてプロットすることができ、又はベクトル若しくはN次空間内の位置として記録することができる。4つのヌクレオチド又はヌクレオチド類似体にリンクされた4種類の蛍光体に関する多値信号(例えば、較正ヒストグラム)のための較正値を取得するために、較正ランを別々に実行することができる。一例として、較正ヒストグラムは
図5-11A(Tヌクレオチドに関連する蛍光ラベル)、
図5-11B(Aヌクレオチドに関連する蛍光ラベル)、
図5-11C(Cヌクレオチドに関連する蛍光ラベル)、及び
図5-11D(Gヌクレオチドに関連する蛍光ラベル)のようになり得る。測定された多値信号(
図5-10Bのヒストグラムに対応する)を較正多値信号と比較することにより、伸長するDNA鎖に取り込まれているヌクレオチド又はヌクレオチド類似体の識別情報「T」(
図5-11A)を特定できる。
【0089】
幾つかの実装において、異なる蛍光体を区別するために、蛍光強度を追加的又は代替的に使用できる。例えば、幾つかの蛍光体は、それらの減衰速度は同様であるかもしれないものの、有意に異なる強度で発光するか、又はその励起確率において有意な差(例えば、少なくとも約35%の差)を有し得る。ビニングされた信号(ビン5-3)を測定された励起エネルギ及び/又はその他の取得信号に対応させることにより、異なる蛍光体を強度レベルに基づいて区別することを可能にすることができる。
【0090】
幾つかの実施形態において、同じ種類の異なる数の蛍光体を異なるヌクレオチド又はヌクレオチド類似体にリンクさせることができ、それによってヌクレオチドを蛍光体の強度に基づいて識別できる。例えば、2つの蛍光体を第一のヌクレオチド(例えば、「C」)又はヌクレオチド類似体にリンクさせることができ、4つ以上の蛍光体を第二のヌクレオチド(例えば、「T」)又はヌクレオチド類似体にリンクさせることができる。蛍光体の数の違いにより、異なるヌクレオチドに関連する励起及び蛍光体発光確率に違いがあり得る。例えば、信号蓄積間隔中に「T」ヌクレオチド又はヌクレオチド類似体にはより多くの発光があり得、それによってビンのみかけ上の強度は「C」ヌクレオチド又はヌクレオチド類似体より有意に高い。
【0091】
ヌクレオチド又は他の何れかの生物学的若しくは化学的検体を蛍光体減衰速度及び/又は蛍光体強度に基づいて区別することによって、分析器5-100内の光学励起及び検出システムを簡素化することができる。例えば、光励起は、単波長光源(例えば、複数の光源又は複数の異なる固有波長で動作する1つの光源ではなく、1つの固有波長を生成する光源)で実行できる。それに加えて、異なる波長の蛍光体を区別するために、検出システムの中で波長差別光学系及びフィルタが不要となり得る。また、各反応チャンバについて、1つの受光素子を使って異なる蛍光体からの発光を検出できる。
【0092】
「固有波長」又は「波長」という語句は、放射の限定されたバンド幅内の中央又は主要波長(例えば、パルス光源により出力される20nmのバンド幅の中の中央又はピーク波長)を指すために使用される。幾つかのケースでは、「固有波長」又は「波長」は、光源により出力される放射の全バンド幅内のピーク波長を指すためにも使用され得る。
【0093】
その発光波長が約560nm~約900nmの蛍光体は、時間ビニング受光素子(これは、シリコンウェハ上にCMOSプロセスを使って製作できる)により検出されるべき十分な量の蛍光を提供できる。これらの蛍光体は、遺伝子配列特定の用途の場合のヌクレオチド又はヌクレオチド類似体等の関心対象の生物学的分子にリンクさせることができる。この波長範囲での蛍光発光はシリコンベースの受光素子において、より長い波長の蛍光より高い応答性で検出できる。それに加えて、この波長範囲での蛍光体及び関連するリンカは、伸長するDNA鎖へのヌクレオチド又はヌクレオチド類似体の取込みを妨害しない。幾つかの実装において、その発光波長が約560nm~約660nmの範囲内である蛍光体は、単波長光源で光学的に励起させることができる。この範囲の例示的な蛍光体は、マサチューセッツ州ウォルサムのテルモ・フィッシャ・サイエンティフィック社から入手可能なAlexa Fluor 647である。より短波長(例えば、約500nm~約650nm)での励起エネルギは、約560nm~約900nmの波長で発光する蛍光体を励起するために使用され得る。幾つかの実施形態において、時間ビニング受光素子は、例えばGe等の他の物質を受光素子の能動領域に取り入れることによって、反応チャンバからのより長い波長の発光を効率的に検出できる。
【0094】
IV.結論
以上、高度な分析システム5-100のためのシステムアーキテクチャの幾つかの実施形態の様々な面を説明したが、当業者であれば様々な代替案、変更、及び改良を容易に着想するであろうと理解されたい。このような代替案、変更、及び改良は、本開示の一部とされるものとし、本発明の主旨と範囲に含まれるものとする。本願の教示は様々な実施形態や例に関して説明されているが、本願の教示がこれらの実施形態又は例に限定されることは意図されていない。反対に、本願の教示は当業者であればわかるように、各種の代替案、改良、及び等価物を包含する。
【0095】
本発明の様々な実施形態を説明し、図解したが、当業者であれば、記載されている機能を実行し、並びに/又は成果及び/若しくは利点の1つ又は複数を得るためのその他の様々な手段及び/又は構造を容易に想定し、それらの改変及び/又は変更の各々は記載されている独創的な実施形態の範囲に含まれるとみなされる。より一般的には、当業者であれば、記載されている全てのパラメータ、寸法、材料、及び構成は例であることが意図され、実際のパラメータ、寸法、材料、及び/又は構成は、この独創的な教示がそのために利用される具体的な1つ又は複数の用途に依存することが容易にわかるであろう。当業者は、記載されている具体的な独創的な実施形態に対する多くの等価物に気付き、慣例的な実験のみを使ってそれを確認することができるであろう。したがって、前述の実施形態は例として提示されているにすぎず、付属の特許請求項及びその等価物の範囲内で、独創的な実施形態は、具体的に記載され、特許請求されているもの以外の方法でも実施し得ると理解されたい。本開示の独創的な実施形態は、記載されている個々の特徴、システム、システムのアップグレード、及び/又は方法の各々に関していてよい。それに加えて、このような特徴、システム、及び/又は方法の2つ以上の何れの組合せも、そのような特徴、システム、システムのアップグレード、及び/又は方法が相互に矛盾しなければ、本開示の発明の範囲内に含まれる。
【0096】
さらに、本発明の幾つかの利点が示されているが、本発明の全ての実施形態が記載されている全ての利点を含んでいるとはかぎらないと理解すべきである。幾つかの実施形態は、有利であると記載されている何れかの特徴を実現しないかもしれない。したがって、上記の説明と図面は例示のためにすぎない。
【0097】
本願中で引用されている全ての文献及び同様の資料は、限定ではなく特許、特許出願、記事、書籍、論文、及びウェブページを含め、かかる文献及び同様の資料のフォーマットにかかわらず、それらの全体を参照によって本願に援用することを明記する。援用した文献及び同様の資料の1つ又は複数が本願と、定義された用語、用語の用法、記載されている技術又はその他において異なっているか矛盾している場合、本願を優先させる。
【0098】
使用されている項目の見出しは単に整理上の目的のためであり、記載されている主旨をいかなる方法でも限定しないと解釈するものとする。
また、記載されている技術は方法として具現化されてよく、そのうちの少なくとも一例を紹介した。方法の中で実行される行為は、何れの適当な順序で行われてもよい。したがって、実施形態は、幾つかの行為を、例示的な実施形態では逐次的な行為として示されていたとしても同時に実行することを含めて、示されているものとは異なる順序で行為が実行される実施形態も構成し得る。
【0099】
定義され、使用されている全ての定義は、その定義された用語の辞書上の定義、参照によって本願に援用されている文献の中の定義、及び/又は通常の意味より優先されると理解すべきである。
【0100】
多数の値と範囲が明細書及び特許請求の範囲の中で概数若しくは正確な値又は範囲として記されているかもしれない。例えば、幾つかのケースで、「約」、「ほぼ」、及び「実質的に」という用語がある値に関して使用されているかもしれない。このような言い方は、示された値の他、その値のプラス及びマイナスの合理的量のばらつきも包含することが意図されている。例えば、「約10~約20」という語句は、幾つかの実施形態においては「正確に10~正確に20」を、幾つかの実施形態では「10±δ1~20±δ2」を意味することが意図される。ある値に関するばらつきδ1、δ2の量は、幾つかの実施形態ではその値の5%未満、幾つかの実施形態ではその値の10%未満、さらには幾つかの実施形態ではその値の20%未満であってもよい。数値のより広い範囲が示される場合、例えば、2桁以上の差のある範囲の場合、ある値のばらつきδ1、δ2の量は、50%と高い場合もあり得る。例えば、動作可能範囲が2~200にわたる場合、「約80」は、40~120の値を含んでいてもよく、その範囲は1~300と大きくてもよい。正確な値が意図される場合は「正確に」という用語が使用され、例えば「正確に2~正確に200」とされる。
【0101】
「隣接する」という用語は、相互の近隣内(例えば、2つの要素のうちの大きい方の横又は縦の寸法の約5分の1未満の距離以内)に配置された2つの要素を指してよい。幾つかのケースで、隣接する要素間に介在する構造又は層があってもよい。幾つかのケースでは、隣接する要素は、介在する構造又は要素がなく、相互に直接隣接していてもよい。
【0102】
不定冠詞(a、an)は、明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、明確な別段のことわりがないかぎり、「少なくとも1つの」という意味であると理解すべきである。
「及び/又は」という語句は、本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、それと共に記載された要素の「何れか又は両方」、すなわち、あるケースでは共同で存在し、他のケースでは離接的に存在する要素を意味すると理解すべきである。「及び/又は」と共に列挙される複数の要素も同じように、すなわちそれと共に記載される「1つ又は複数の」要素として解釈すべきである。任意選択により、「及び/又は」の句により具体的に明示される要素以外にも、具体的に明示された要素に関係するか無関係かを問わず、他の要素が任意選択により存在し得る。それゆえ、非限定的な例とて、「A及び/又はB」との言い方は、「~を含む」というは非限定型な文言と共に使用された場合、1つの実施形態においてはAのみ(任意選択によりB以外の要素を含む)、他の実施形態ではBのみ(任意選択によりA以外の要素を含む)、また別の実施形態ではAとBの両方(任意選択により他の要素を含む)等を指すことができる。
【0103】
本明細書及び特許請求の範囲で使用されるかぎり、「又は」は上述の「及び/又は」と同じ意味を有すると理解すべきである。例えば、列挙された項目を分ける際、「又は」又は「及び/又は」は包含的に、すなわち、複数の要素又はそのリストのうち少なくとも1つだけでなく複数も含み、任意選択により列挙されていない追加の項目も含むと解釈するものとする。明確にこれに反することを示す用語、例えば「~の1つのみ」、又は「~のうちの正確に1つ」又は、特許請求の範囲で使用される場合は「~からなる」等の用語のみが、複数の要素又はそのリストのうちの正確に1つの要素を含むことを意味する。一般に、「又は」という用語が使用される場合、排他性を示す用語、例えば「何れか」、「~の一方」、「~のうちの1つのみ」、又は「~のうちの正確に1つ」等の用語と共に使用された場合のみ、排他的な選択肢を示す(すなわち、「両方ではなく一方又は他方」)と理解されるものとする。「基本的に~からなる」とは、特許請求の範囲の中で使用される場合、特許法の分野で使用されているその通常の意味を有するものとする。
【0104】
本明細書及び特許請求の範囲で使用されるかぎり、1つ又は複数の要素のリストに関する「少なくとも1つ」という語句は、その要素のリスト内の要素のうちの何れか1つ又は複数から選択される少なくとも1つの要素を意味するが、必ずしも要素のリスト内に具体的に挙げられたひとつひとつの全ての要素の少なくとも1つを含むとはかぎらず、その要素のリストの中の要素の何れの組合せも排除しないと理解すべきである。この定義により、「少なくとも1つの」という語句が指す要素のリスト内で具体的に明示された要素以外の要素も、具体的に明示されたこれらの要素に関係するか無関係かを問わず、任意選択により存在してよい。それゆえ、非限定的な例として、「A及びBのうちの少なくとも1つ」(又は、等価的に「A又はBのうちの少なくとも1つ」、又は等価的に「A及び/又はBのうちの少なくとも1つ」)は、1つの実施形態では、少なくとも1つの、任意選択により複数も含むAがあり、Bは存在しないこと(及び任意選択により、B以外の要素を含む)、他の実施形態では、少なくとも1つの、任意選択により複数も含むBがあり、Aは存在しないこと(及び任意選択によりA以外の要素を含む)、また別の実施形態では、少なくとも1つの、任意選択により複数も含むAと、少なくとも1つの、任意選択により複数も含むBがある(任意選択により、その他の要素を含む)等を指すことができる。
【0105】
特許請求の範囲の中及び上記の明細書の中で、あらゆる移行句、例えば「~を含む(comprising)」、「~を含む(including)」、「~を担持する(carrying)」、「~を有する(having)」、「~を含む(containing)」、「~を含む(involving)」、「~を保持する(holding)」、「~で構成される(composed of)」等は、非限定型として、すなわち、~を含むがこれらに限定されないことを意味すると理解されるものとする。移行句「~からなる(consisting of)」及び「基本的に~からなる(consisting essentially of)」だけがそれぞれ限定型又は半限定型移行句であるものとする。
【0106】
特許請求項は、その旨が明記されていないかぎり、記載された順序又は要素に限定されないように解釈すべきである。当業者であれば、付属の特許請求項の主旨と範囲から逸脱することなく、形態及び詳細において様々な変更を加えることができると理解すべきである。以下の特許請求項及びその等価物の主旨と範囲内に含まれる全ての実施形態が特許請求される。
【国際調査報告】