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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-25
(54)【発明の名称】ヘリコプタ用の反トルクロータ
(51)【国際特許分類】
   B64C 27/78 20060101AFI20220818BHJP
【FI】
B64C27/78
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021575014
(86)(22)【出願日】2020-05-26
(85)【翻訳文提出日】2022-02-08
(86)【国際出願番号】 IB2020054979
(87)【国際公開番号】W WO2020254895
(87)【国際公開日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】19180445.9
(32)【優先日】2019-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518160436
【氏名又は名称】レオナルド・エッセ・ピ・ア
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ミケーレ・デッリ・パオリ
(72)【発明者】
【氏名】ファビオ・ナンノーニ
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト・ヴァンニ
(57)【要約】
説明される反トルクロータ(4、4’)は、第1の軸(A)のまわりで回転可能なマスト(6)と、それぞれの第2の軸(B)に沿って延在する複数のブレード(8)と、前記ブレード(8)に接続され、第1の軸(A)に沿って前記マスト(6)に対してスライドする制御要素(16)であって、マスト(6)と共に一体的に回転可能である、制御要素(16)と、第1の軸(A)に沿って軸方向にスライドし、角度的には前記第1の軸(A)に対して固定されている、制御ロッド(10)と、制御要素(16)の、第1の軸(A)のまわりの、制御ロッド(10)に対する相対回転を可能にように構成されて、制御ロッド(10)と前記制御要素(16)との間に挿入された接続要素(17)であって、第1の軸(A)に沿って、制御ロッド(10)と共に一体的にスライドする、接続要素(17)と、活動状態の構成または非活動状態の構成で利用可能な伝達ユニット(45)とを備え、そしてまた、伝達ユニット(45)は、軸方向および角度方向において制御ロッド(10)と一体的であって制御ロッド(10)から半径方向に突出している環状の隆起部(61)と、隆起部(61)と係合して、角度方向において制御要素(16)と一体的であるシート(64)とを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘリコプタ(1)用の反トルクロータ(4’)であって、
- 第1の軸(A)のまわりで回転可能なマスト(6)と、
- 前記マスト(6)に対して蝶番式に取り付けられ、前記第1の軸(A)と交差するそれぞれの第2の軸(B)に沿って延在する複数のブレード(8)であって、それぞれの迎え角を変化させるように、それぞれの前記第2の軸(B)のまわりで回転可能である、複数のブレード(8)と、
- 前記第1の軸(A)に沿って前記マスト(6)に対してスライドし、前記マスト(6)と共に一体的に回転する制御要素(16)であって、前記制御要素(16)の前記軸(A)に沿った並進に続いて、前記ブレード(8)を、それぞれの前記第2の軸(B)のまわりで回転させるように、前記ブレード(8)に対して動作可能に接続された、制御要素(16)と、
- 角度的には前記第1の軸(A)に対して固定されたまま、前記第1の軸(A)に沿って、前記マスト(6)に対して軸方向にスライドする制御ロッド(10)と、
- 前記制御ロッド(10)と前記制御要素(16)との間に挿入された第1の軸受(17)であって、前記第1の軸(A)に沿って、前記マスト(6)に対して、前記制御ロッド(10)と共に一体的にスライドし、前記第1の軸(A)のまわりの、前記制御ロッド(10)に対する前記制御要素(16)の相対回転を可能にするように構成されている、第1の軸受(17)と、
- 前記制御ロッド(10)および前記制御要素(16)に対して動作可能に接続された伝達ユニット(45)と、
を備え、前記伝達ユニット(45)は、
- 活動状態の構成では、前記制御ロッド(10)の並進に続いて、前記制御要素(16)を前記第1の軸(A)に沿ってスライドさせ、
- 非活動状態の構成では前記制御要素(16)から離れるように、選択的に利用可能であり、
前記第1の軸受(17)が故障した場合に、前記伝達ユニット(45)は、前記活動状態の構成に設定され、前記第1の軸受(17)は、もはや前記制御ロッド(10)から前記制御要素(16)まで軸方向荷重を伝えることができず、前記制御ロッド(10)の前記軸方向の並進に続いて、前記制御要素(16)の前記軸方向の両方向への並進を引き起こし、
前記第1の軸受(17)が、前記制御要素(16)と前記制御ロッド(10)との相対回転を正確に可能にし、前記制御要素(16)と前記制御ロッド(10)との間のいかなる相対的並進も防止する場合には、前記伝達ユニット(45)は、前記非活動状態の構成に設定され、
そしてまた、前記伝達ユニット(45)は、
- 軸方向において前記制御ロッド(10)と一体的であって前記制御ロッド(10)から半径方向に突出している環状の隆起部(61)、および
- 前記隆起部(61)と係合して、角度方向および軸方向において前記制御要素(16)と一体的であるシート(64)
を備え、
前記隆起部(61)と前記シート(64)との間に挿入された第2の軸受(100、101)を備え、
前記反トルクロータ(4’)は、検知手段(50)をさらに備え、
そしてまた、前記検知手段(50)が、前記伝達ユニット(45)が前記活動状態の構成にあるという事実に関連した信号を生成するように適合された第1のセンサ(52)を備える、ことを特徴とする、反トルクロータ(4’)。
【請求項2】
前記伝達ユニット(45)が前記非活動状態の構成にある場合に、前記隆起部(61)が軸方向の遊びを伴って前記シート(64)と係合し、前記伝達ユニット(45)が前記活動状態の構成にある場合に、前記隆起部(61)が、使用中に前記シート(64)と接触することを特徴とする、請求項1に記載のロータ。
【請求項3】
前記隆起部(61)および前記シート(64)が、前記第1の軸(A)を含有している面においてそれぞれの台形のプロファイルを有することを特徴とする、請求項1または2に記載のロータ。
【請求項4】
前記隆起部(61)および前記シート(64)のうちの少なくとも1つが、少なくとも部分的に減摩材でコーティングされていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のロータ。
【請求項5】
前記伝達ユニット(45)が、
- 前記制御ロッド(10)と同軸に取り付けられたスリーブ(60)であって、前記制御ロッド(10)の反対側から、前記隆起部(61)が半径方向に突出する、スリーブ(60)と、
- 前記制御要素(16)に取り付けられたリング(64)であって、前記隆起部(61)に向かって開く前記シート(64)を画定する、リング(64)と
を備えることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のロータ。
【請求項6】
前記第1の軸受(17)が第1の転がり軸受(17)であり、
そしてまた、前記第1の軸受(17)が、
- 前記第1の軸(A)のまわりで前記制御要素(16)と共に一体的に回転する第1のリング(30)と、
- 前記第1の軸(A)に関して、前記第1のリング(30)に対して半径方向内側にある第2のリング(31)であって、前記第1の軸(A)に沿って前記制御ロッド(10)と共に一体的にスライドする、第2のリング(31)とを備えることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のロータ。
【請求項7】
ロータであって、
- 前記第1の軸受(17)の、前記第1の軸(A)のまわりの、前記制御ロッド(10)に対する回転を可能にするように、前記制御ロッド(10)と前記第1の軸受(17)の前記第2のリング(31)との間に挿入された減摩材製の境界面(120)と、
- 半径方向において前記制御ロッド(10)と前記第2のリング(31)との間に挿入された管状要素(90)であって、軸方向において前記制御ロッド(10)および前記第2のリング(31)と共に一体的にスライドする、管状要素(90)とを備え、
前記境界面(120)が、少なくとも前記管状要素(90)の第1の表面(94)を備え、前記管状要素(90)が前記制御ロッド(10)に対して第1の軸受(17)と共に連帯的に回転できるように、前記第1の表面(94)が前記制御ロッド(10)に接触して配置されていることを特徴とする、請求項6に記載のロータ。
【請求項8】
前記境界面(120)が、軸方向延長部を有するとともに前記第1の表面(94)と接触するように配置されている前記制御ロッド(10)の第2の表面(18)を備えることを特徴とする、請求項7に記載のロータ。
【請求項9】
前記第2のリング(31)が、軸方向において、スリーブ(60)と前記管状要素(90)の半径方向に突出する隆起部(92)との間で阻止されることを特徴とする、請求項7または8に記載のロータ。
【請求項10】
前記検知手段(50)が、
- 前記管状要素(90)の回転を検知するように適合された第2のセンサ(53)、ならびに/あるいは
- 前記第1の接続要素(16)および/または前記管状要素(90)の温度および加速度のうちの少なくとも1つを検知するように適合された第3のセンサ(51)を備えることを特徴とする、請求項9に記載のロータ。
【請求項11】
ヘリコプタ(1)用の反トルクロータ(4、4’)であって、
- 第1の軸(A)のまわりで回転可能なマスト(6)と、
- 前記マスト(6)に対して蝶番式に取り付けられ、前記第1の軸(A)と交差するそれぞれの第2の軸(B)に沿って延在する複数のブレード(8)であって、それぞれの迎え角を変化させるように、それぞれの前記第2の軸(B)のまわりで回転可能である、複数のブレード(8)と、
- 前記マスト(6)に対して前記第1の軸(A)に沿ってスライドし、前記マスト(6)と共に一体的に回転する制御要素(16)であって、前記制御要素(16)の前記軸(A)に沿った並進に続いて、前記ブレード(8)を、それぞれの前記第2の軸(B)のまわりで回転させるように、前記ブレード(8)に対して動作可能に接続された、制御要素(16)と、
- 角度的には前記第1の軸(A)に対して固定されたまま、前記第1の軸(A)に沿って、前記マスト(6)に対して軸方向にスライドする制御ロッド(10)と、
- 前記制御ロッド(10)と前記制御要素(16)との間に挿入された第1の軸受(17)であって、前記第1の軸(A)に沿って、前記マスト(6)に対して、前記制御ロッド(10)と共に一体的にスライドし、前記第1の軸(A)のまわりの、前記制御ロッド(10)に対する前記制御要素(16)の相対回転を可能にするように構成されている、接続要素(17)と、
- 前記制御ロッド(10)および前記制御要素(16)に対して動作可能に接続された伝達ユニット(45)と、
を備え、前記伝達ユニット(45)は、
- 活動状態の構成では、前記制御ロッド(10)の並進に続いて、前記制御要素(16)を前記第1の軸(A)に沿ってスライドさせ、
- 非活動状態の構成では前記制御要素(16)から離れるように、選択的に利用可能であり、
そしてまた、前記伝達ユニット(45)は、
- 軸方向において前記制御ロッド(10)と一体的であって前記制御ロッド(10)から半径方向に突出している環状の隆起部(61)、および
- 前記隆起部(61)と係合して、角度方向および軸方向において前記制御要素(16)と一体的であるシート(64)を備え、
前記伝達ユニット(45)は、前記接続要素(17)に障害がある場合には前記活動状態の構成に設定され、
前記伝達ユニット(45)は、前記接続要素(17)が前記制御ロッド(10)に対する前記制御要素(16)の相対回転を正確に可能にする場合には前記非活動状態の構成に設定され、
前記反トルクロータ(4、4’)が検知手段(50)をさらに備え、
そしてまた、前記検知手段(50)が、前記伝達ユニット(45)が前記活動状態の構成にあるという事実に関連した信号を生成するように適合された第1のセンサ(52)を備え、
前記接続要素(17)が第2の転がり軸受(17)を備え、
そしてまた、前記第2の軸受(17)が、
- 前記第1の軸(A)のまわりで、前記制御要素(16)と共に一体的に回転する第1のリング(30)と、
- 前記第1の軸(A)に関して、前記第1のリング(30)に対して半径方向内側にある第2のリング(31)であって、前記第1の軸(A)に沿って前記制御ロッド(10)と共に一体的にスライドする、第2のリング(31)と
を備え、
前記伝達ユニット(45)は、前記接続要素(17)の回転体(32)が使用中に壊れた場合には、前記活動状態の構成に設定されて、前記制御ロッド(10)の、前記制御要素(16)に対する軸方向の移動を可能にし、あるいは、使用中に、前記回転体(32)の回転によって、前記接続要素(17)の前記第2のリング(31)が駆動され、使用中に、摩擦によって制御ロッド(10)に対する捩りモーメントを発生し、
前記接続要素(17)が使用中に前記制御ロッド(10)に対する前記制御要素(16)の相対回転を正確に可能にする場合には、前記非活動状態の構成に設定されて、前記制御要素(16)と前記制御ロッド(10)との間のあらゆる相対運動を防止するものである、
反トルクロータ(4、4’)において、
- 前記第2の軸受(17)の、前記第1の軸(A)のまわりの、前記制御ロッド(10)に対する回転を可能にするように、前記制御ロッド(10)と前記第2の軸受(17)の前記第2のリング(31)との間に挿入された減摩材製の境界面(120)と、
- 半径方向において前記制御ロッド(10)と前記第2のリング(31)との間に挿入された管状要素(90)であって、軸方向において前記制御ロッド(10)および前記第2のリング(31)と共に一体的にスライドする、管状要素(90)と
を備え、
前記境界面(120)が、少なくとも前記管状要素(90)の第1の表面(94)を備え、前記管状要素(90)が、前記制御ロッド(10)に対して、前記第2の軸受(17)と共に連帯的に回転できるように、前記第1の表面(94)が前記制御ロッド(10)に接触して配置されており、
前記境界面(120)が、軸方向延長部を有するとともに前記第1の表面(94)と接触するように配置されている前記制御ロッド(10)の第2の表面(18)を有し、
前記検知手段(50)が、
- 前記管状要素(90)の回転を検知するように適合された第2のセンサ(53)、ならびに/あるいは
- 前記第2の軸受(17)および/または前記管状要素(90)の温度および加速度のうちの少なくとも1つを検知するように適合された第3のセンサ(51)を備えることを特徴とする、反トルクロータ(4、4’)。
【請求項12】
前記伝達ユニット(45)が前記非活動状態の構成にある場合に、前記隆起部(61)が軸方向の遊びを伴って前記シート(64)と係合し、前記伝達ユニット(45)が前記活動状態の構成にある場合に、前記隆起部(61)が使用中に前記シート(64)と接触することを特徴とする、請求項11に記載のロータ。
【請求項13】
前記隆起部(61)および前記シート(64)が、前記第1の軸(A)を含有している面においてそれぞれの台形のプロファイルを有することを特徴とする、請求項11または12に記載のロータ。
【請求項14】
前記隆起部(61)と前記シート(64)との間に挿入された第1の軸受(100、101)を備えることを特徴とする、請求項11から13のいずれか一項に記載のロータ。
【請求項15】
前記隆起部(61)および前記シート(64)のうちの少なくとも1つが、少なくとも部分的に減摩材でコーティングされていることを特徴とする、請求項11から14のいずれか一項に記載のロータ。
【請求項16】
前記伝達ユニット(45)が、
- 前記制御ロッド(10)と同軸に取り付けられたスリーブ(60)であって、前記制御ロッド(10)の反対側から、前記隆起部(61)が半径方向に突出する、スリーブ(60)と、
- 前記制御要素(16)に取り付けられたリング(64)であって、前記隆起部(61)に向かって開く前記シート(64)を画定する、リング(64)と
を備える、ことを特徴とする請求項11から15のいずれか一項に記載のロータ。
【請求項17】
前記第2のリング(31)が、軸方向において、スリーブ(60)と前記管状要素(90)の半径方向に突出する隆起部(92)との間で阻止されることを特徴とする、請求項11から16のいずれか一項に記載のロータ。
【請求項18】
- 胴体(2)と、
- 主ロータ(3)と、
- 請求項1から17のいずれか一項に記載の反トルクロータ(4、4’)と
を備えるヘリコプタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この特許出願は、2019年6月17日出願の欧州特許出願第19180445.9号の優先権を主張するものであり、その開示の全体が参照によってここで組み込まれる。
【0002】
本発明はヘリコプタ用の反トルクロータに関する。
【背景技術】
【0003】
ヘリコプタは、基本的に、胴体と、胴体の頂部に配置されて胴体自体の軸のまわりで回転する主ロータと、胴体のテール端に配置された反トルクロータとを備えることが知られている。
【0004】
ヘリコプタはまた、たとえばタービンなどの1つまたは複数のパワーユニットと、タービンから主ロータに動力を伝えるように適合されてタービンと主ロータとの間に挿入された伝達ユニットとを、既知のやり方で備える。
【0005】
そしてまた、より詳細には、反トルクロータは、
- 第1の軸のまわりで回転可能なマストと、
- 第1の軸のまわりで回転可能なハブと、
- 前記ハブに蝶番式に取り付けられてそこから片持ばり式に突出する複数のブレードであって、それぞれが、第1の軸と交差するそれぞれの第2の軸に沿って延在する、複数のブレードとを基本的に備える。
【0006】
反トルクロータのマストは、主伝達ユニットによって駆動される1組の歯車によって回転駆動される。
【0007】
反トルクロータのブレードは、第1の軸のまわりでマストと一体的に回転し、第2の軸のまわりで選択的に傾斜され得て、それぞれの迎え角を変化させることができ、結果的に反トルクロータからの推力を調整することができる。
【0008】
反トルクロータは、それぞれのブレードの迎え角を調整するために、
- 機械的接続またはフライバイワイヤリンクにより、パイロットによって操作可能なペダルであって、マストの内部で第1の軸に沿ってスライドするが、角度的には第1の軸に対して固定されている、ペダルに対して、動作可能に接続されているロッドと、
- 第1の軸のまわりで、マストと共に一体的に回転する制御要素であって、関連する第2の軸に対する偏心位置においてそれぞれのブレードに対して接続された複数のアームを装備している、「スパイダ」としても知られている、制御要素と、
- ロッドからの軸方向荷重を制御要素に伝えるように構成されて、第1の軸に対してスライドするようにロッドと制御要素との間に挿入された転がり軸受と
を備える。
【0009】
そしてまた、より具体的には、転がり軸受は、
- 制御要素に対して固定された半径方向外側の外輪と、
- 制御ロッドに対して固定された半径方向内側の内輪と、
- 半径方向内側の内輪によって画定されたレースウェイおよび半径方向外側の外輪によって画定されたレースウェイおいてそれぞれ回転する複数の回転体と
を備える。
【0010】
制御ロッドは、ペダルの動作によって、第1の軸に対して平行にスライドする。このようにスライドすると、転がり軸受がスライドすることを介して、制御要素は、所与の進行経路に沿って、第1の軸に対して平行にスライドする。
【0011】
このようにスライドすると、ブレードが、関連する第2の軸のまわりで回転し、それぞれの迎え角が、所与の進行路に関連した均一量だけ変化する。
【0012】
前述の結果、転がり軸受が故障して、反トルクロータが実際上制御不能になり、ヘリコプタにとって危険な状況になり得る。
【0013】
詳細には、たとえば軸受内部への偶発的な異物の導入、潤滑油の喪失、または回転体のレースウェイもしくは表面の損傷によって、内輪または外輪の回転体および/またはレースウェイが損傷を受けると、第1の障害状況が生じ得る。
【0014】
この状況では、転がり軸受は、制御ロッドに対する制御要素の相対回転を可能にすることの代わりに、外輪から内輪へ、経時的に漸増する不適切な捩りモーメントを伝えることになる。
【0015】
この捩りモーメントが制御ロッドに伝わって、制御ロッドが損傷を受けるリスクが生じる。
【0016】
回転体が壊れて回転体から内輪が離脱すると、第2の障害状況が生じ得る。この場合、軸受は、もはや第1の軸に対して平行にスライドすることなく、ロッドは、もはや制御要素を並進させることはないであろう。
【0017】
この業界では、ヘリコプタが完全に制御不能なる前にパイロットが迅速に着陸させることができるように、転がり軸受の障害状態を速やかに検知することの必要性が認識されている。
【0018】
この業界ではまた、転がり軸受が故障した場合にも反トルクロータの正確な制御を保証する必要があることが認識されている。
【0019】
米国特許第B-9,359,073号は、請求項1のプリアンブルによるヘリコプタ用の反トルクロータを説明している。
【0020】
より詳細には、米国特許第B-9,359,073号は、連続して配置されたマスト、ロッド、ならびに第1の軸受および第2の軸受を備える反トルクロータを説明している。
【0021】
第1の軸受は、マストと共に回転する第1のリングと第2のリングとを備える。
【0022】
第2の軸受は第3のリングおよび第4のリングを備える。
【0023】
第2の軸受の第3のリングと第1の軸受の第1のリングとは、互いに回転しないように接続されている。
【0024】
反トルクロータは、第4のリングに対する第3のリングの回転を防止するように適合されて第3のリングと第4のリングとの間に挿入されたロック装置をも備える。このロック装置には、第1の軸受の適正な動作の場合には壊れることなく、第1の軸受が破損した場合には壊れ得る要素が備わっている。
【0025】
特許文献1に示された解決策では、第2の障害状況において、すなわち回転体が壊れて回転体から内輪が離脱した場合には、反トルクロータの可制御性を維持することができない。
【0026】
特許文献2は、請求項1および請求項11のプリアンブルによる反トルクロータを開示している。
【0027】
特許文献3が開示しているセグメント化されたフェイルセーフの駆動軸システムは、2次回転用のジャーナル軸受の内部に配設された1次回転用の玉軸受を備えるセグメント支持組立体であって、ジャーナル軸受が、内部に故障検知用の振動プローブを有するエラストマのダンパの内部に配設されている、セグメント支持組立体と、セグメントと歯車歯との間の1次弾性結合のための可撓性ダイアフラムを備える結合組立体であって、ダイアフラムに障害があるときには2次結合のために歯車歯が係合する、結合組立体とを含む。歯車歯は回転軸と同心ではないので、振動は1次弾性結合の障害を指示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】米国特許第9,359,073号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第3,216,696号明細書
【特許文献3】米国特許第5,407,386号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
本発明の目的は、前述の必要性のうちの少なくとも1つを簡単かつ低コストのやり方で満たすことを可能にする反トルクロータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0030】
前述の目的は、本発明によって、請求項1および請求項11において定義される反トルクロータに関連することにおいて達成される。
【0031】
本発明のよりよい理解のために、2つの好ましい実施形態を、純粋に非限定的な実例として添付図面を参照しながら以下で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の第1の実施形態による反トルクロータを備えるヘリコプタの斜視図である。
図2図1の反トルクロータの上面図である。
図3図1の反トルクロータの斜視図である。
図4図2のラインIV-IVに沿った断面図である。
図5図4の特定の詳細の拡大図である。
図6図1図5の反トルクロータのさらなる実施形態による反トルクロータの詳細を、さらに拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1を参照して、参照数字1は、詳細には、
- 胴体2と、
- 1つまたは複数のタービン5と、
- 胴体2の頂部に配置され、軸Aのまわりで回転可能な主ロータ3と、
- 胴体2のテール端に配置され、軸Aと交差するそれ自体の軸のまわりで回転可能な反トルクロータ4と
を基本的に備えるヘリコプタを指示する。
【0034】
ヘリコプタ1は、タービン5からの動力を主ロータ3に伝える伝達ユニット11をも備える。
【0035】
そしてまた、伝達ユニット11は、
- タービン5からの動力をロータ3に伝える歯車列12と、
- 歯車列12からの動力をロータ4に伝えるシャフト13と
を備える。
【0036】
ロータ3は、既知のやり方で、ヘリコプタ1の垂直離陸および前方飛行を可能にする配向可能な推力を供給するように適合される。
【0037】
ロータ4は、胴体2に対して逆トルクをもたらす推力を生成する。
【0038】
この逆トルクは、ロータ3からのトルクとは反対方向に向けられるものである。
【0039】
したがって、ロータ4によって生成される推力の量に応じて、ヘリコプタ1を所望のヨー角に配向すること、または実行が望まれる運動に応じて前記ヨー角を変化させることが可能である。
【0040】
図2図5を参照して、ロータ4は、
- シャフト13に対して既知のやり方で動作可能に接続されたマスト6であって、軸Aのまわりで回転可能である、マスト6と、
- 軸Aと交差するそれぞれの軸Bに沿って片持ばり式に延在する、図示の事例では3つの、複数のブレード8と、
- ブレード8を蝶番式に取り付けられて、外部からマスト6の一部に固定されたハブ9であって、軸Aのまわりでマスト6と共に一体的に回転する、ハブ9と
を基本的に備える。
【0041】
より具体的には、ブレード8は、ハブ9に対して蝶番式に取り付けられており、
- 軸Aのまわりでハブ9およびマスト6と共に一体的に回転可能であり、また
- それぞれの軸Bのまわりで、それぞれの迎え角を変化させるように、同時に同一の角度だけ傾けられ得る。
【0042】
詳細には、ハブ9は、それぞれのブレード8に対して接続するように、軸Aに対して半径方向に突出する複数の接続要素27を備える。各ブレード8は、ハブ9の関連する接続要素27に対して蝶番式に取り付けられて軸Aに対して半径方向内側に配置された根元部分14をも備える。
【0043】
ロータ4はまた、前述の迎え角を変化させるために、
- たとえばペダルといった、パイロットによって操作可能な操縦装置15(図1には概略的にのみ示されている)と、
- 操縦装置15により、機械的接続またはフライバイワイヤ法によって操作可能な、軸Aに対して平行にスライドする制御ロッド10と、
- 軸Aのまわりでマスト6と共に一体的に回転する制御要素16であって、関連する軸Bに対して偏心してブレード8に接続された、制御要素16と、
- ロッド10と要素16との間に挿入された軸受17であって、軸Aに対して平行に、ロッド10と連帯的にスライドする、軸受17と
を備える。
【0044】
より具体的には、マスト6は中空である。
【0045】
マスト6はまた、
- 軸端20と、
- 端20の反対側の開いた軸端21と、
- ハブ9をはめられて軸端20と軸端21との間に挿入された主要部分22と
を備える(図4および図5)。
【0046】
主要部分22はまた、シャフト13からの動力を受け取るように設計されたフランジ19を画定する。
【0047】
より具体的には、マスト6の直径は、フランジ19において最大になり、フランジ19から軸端20および21に向かって直径は漸減する。
【0048】
ロッド10は、マスト6の内部に部分的に収容されている。
【0049】
ロッド10はまた、
- 端23と、
- 端23の反対側の端24と、
- マスト6の端20および21を縦貫する主本体25と
を備える。
【0050】
端23および24は、マスト6の外部で、それぞれ端20および21の側に配置されている。
【0051】
主本体25は、レバー機構(図示せず)または無線操縦リンクによって、操縦装置15に対して動作可能に接続されている。
【0052】
そしてまた、要素16は、
- マスト6の中に部分的に収容された管状体40であって、軸Aに対してスライドするやり方でマスト6に接続され、ロッド10を部分的に収容する、管状体40と、
- 軸Aに対して垂直に延在するフランジ42であって、管状体40のマスト6と反対側の端に固定された、フランジ42と、
- フランジ42に対して、軸Aと交差するそれぞれの軸Cのまわりで蝶番式に取り付けられた複数のレバー43(図4)であって、それぞれのブレード8に対して、関連する軸Bに対する偏心位置において蝶番式に取り付けられた、複数のレバー43と
を備える(図5)。
【0053】
フランジ42および軸受17は、マスト6の外部に収容され、ロッド10を取り囲む。
【0054】
より具体的には、フランジ42および軸受17は、端21および24に対して、端20および23の反対側の端に配置されている。
【0055】
フランジ42は、環状の可変長ベロー継手44によってマスト6に接続されており、軸Aに沿ってスライドすることができる。
【0056】
レバー43は、軸Aに対して全体的に傾斜しており、フランジ42から端20および23の方へ延在する。
【0057】
ロッド10が軸Aに沿って並進すると、軸受17によって要素16が並進する。
【0058】
要素16が軸Aに沿ってスライドするのに続いて、軸Aに対するレバー43の傾斜が互いに同一の角度だけ変化して、ブレード8が、それぞれの軸Bのまわりで、互いに同一の角度だけ同時に回転する。
【0059】
詳細には、レバー43は、それぞれのブレード8の根元部分14に対して蝶番式に取り付けられている。
【0060】
軸受17は、軸方向荷重を、軸Aに対して平行に、両方向に伝えることができる。
【0061】
言い換えれば、軸受17は、ロッド10の、軸Aに沿った両方向の並進が、要素16の同じ向きの並進をもたらすように構成されている。
【0062】
したがって、軸受17が画定する伝達ユニットにより、ロッド10と要素16とが、軸Aに対して、軸方向に一体となって角度的には可動に接続される。
【0063】
そしてまた、軸受17は、
- 要素16と共に一体的に回転する外輪30と、
- ロッド10と共に一体的にスライドする内輪31と、
- それぞれのリング30および31によって画定されたそれぞれのレースウェイ33および34において回転する、図示の事例ではボールの2重環である複数の回転体32と
を備える。
【0064】
図示の事例では、リング31の、互いに軸の反対側にある2つの肩35および36が、リング30に向かって半径方向に突出して、回転体32に対するそれぞれの軸の当接面を画定する。回転体32は、詳細には、軸方向において肩35と36との間に挿入される。
【0065】
その上、リング31は、図示の事例では2つのハーフリングに作製され、互いに接触して軸方向に配置されている。
【0066】
リング30の肩37が、軸方向において肩35と肩36との間に挿入されており、リング31に向かって半径方向に突出し、回転体32のためのそれぞれの当接面を画定する。肩37は、軸Aに対して半径方向の、軸受17の対称面上で、軸方向において回転体32の間に挿入されている。
【0067】
その上、外輪30は、軸Aに対する半径方向において、フランジ42に対して反対側の要素16の管状体40に固定されている。
【0068】
ロータ4はまた、ロッド10および要素16に対して動作可能に接続された動力伝達ユニット45をさらに備える。
【0069】
伝達ユニット45は、
- 活動状態の構成では、軸Aに沿った前記ロッド10の並進に従って、軸Aに沿って要素16をスライドさせるように利用可能であり、
- 非活動状態の構成では、要素16から外れるように利用可能である。
【0070】
より詳細には、軸受17に障害があると、伝達ユニット45は活動状態の構成に設定される。
【0071】
以下、この説明では、軸受17の「障害」という用語は、軸受17がロッド10から要素16への軸方向荷重を伝えること、すなわち、ロッド10の軸方向の並進に従って要素16を軸方向の両方向に並進させることが、もはや不可能なあらゆる動作状態を意味する。
【0072】
非限定的な例として、軸受17の内輪31が回転体32による回転で駆動されるとき第1の「障害」の動作状態が生じ、摩擦によってロッド10に対する捩りモーメントが発生する。
【0073】
軸受17の回転体32が壊れたとき第2の「障害」動作状態が生じ、その結果、ロッド10が要素16に対して軸方向に可動になる。
【0074】
そうでなければ、軸受17が、ロッド10に対する要素16の相対回転を正しく許容するとともに要素16とロッド10との間のいかなる相対的並進も防止するとき、伝達ユニット45は非活動状態の構成に設定される。
【0075】
ロータ4は検知手段50をも備え、検知手段50は、
- 軸受17の障害に関連した第1の信号を生成するように適合されたセンサ51、および/または
- 活動状態の構成の伝達ユニット45に関連した第2の信号を生成するように適合されたセンサ52を備える。
【0076】
そしてまた、伝達ユニット45は、有利には、
- 軸方向においてロッド10と一体であって、ロッド10から半径方向に突出している環状の隆起部61と、
- 隆起部61と係合して、角度方向および軸方向において要素16と一体の、シート64と
を備える。
【0077】
より詳細には、伝達ユニット45は、
- ロッド10と一体の、図示の事例ではナットである円筒体60であって、ロッド10の反対側から半径方向に突出する環状の隆起部61を備える、円筒体60と、
- シート64が備わっていて要素16と一体のリング63であって、シート64が、軸Aに向かって開き、隆起部61と係合する、リング63と
を基本的に備える(図4および図5)。
【0078】
隆起部61は、向かい合った2つの壁65と66とによって軸方向の境界を定められる。
【0079】
図示の事例では、隆起部61は台形のプロファイルを有し、壁65と66との間に挿入された壁67をさらに備える。詳細には、壁67は軸Aと平行に延在する。
【0080】
詳細には、壁65および66は、ロッド10に関して軸Aの反対側に収斂するそれぞれの面上にあって、軸Aに対して互いに傾斜しており、軸Aの半径方向の面に対して対称に延在する。
【0081】
シート64は、向かい合った2つの壁71と72とによって軸方向の境界を定められる。
【0082】
図示の事例では、シート64も台形のプロファイルを有し、軸方向において壁71と72との間に挿入された壁73をさらに備える。詳細には、壁73は軸Aと平行に延在する。
【0083】
壁71と72とは、壁65および66と同様に、ロッド10に関して軸Aの反対側に収斂するそれぞれの面上にあって、軸Aに対して互いに傾斜しており、軸Aの半径方向の面に対して対称に延在する。
【0084】
隆起部61は、軸Aに対する軸方向および半径方向の遊びを伴ってシート64と係合する。
【0085】
より具体的には、伝達ユニット45が非活動状態の構成に設定されているとき、隆起部61は、シート64から軸方向に離れ、すなわち、隆起部61の壁66と67との両方が、図5に示されるように、シート64のそれぞれの壁71および72から離れる。
【0086】
逆に、伝達ユニット45が活動状態の構成に設定されているとき、隆起部61は、軸方向においてシート64と接触する。より具体的には、壁71が壁65と接触するかまたは壁72が壁66と接触して、ロッド10が軸Aに対して平行な両方向にスライドすると要素16が両方向にスライドすることを保証する。
【0087】
その上、シート64の壁73は、隆起部61の壁67から半径方向に離れる。
【0088】
詳細には、円筒体60は、ネジ接続80によってロッド10に接続されている。
【0089】
伝達ユニット45はロックナット81をも備え、これは、ロッド10にねじ留めされ、軸受17の軸方向反対側の端の円筒体60に対して軸方向に当接して配置されている。
【0090】
詳細には、ロックナット81はロッド10の端24にねじ留めされている。
【0091】
リング63は、軸方向において互いに接触する2つのハーフリング82および83によって形成されている。
【0092】
より具体的には、ハーフリング83は、軸方向においてハーフリング82と軸受17との間に挿入される。
【0093】
ハーフリング83はまた、軸方向において軸受17と接触している。
【0094】
ハーフリング82および83は、シート64のそれぞれの部分を画定する。
【0095】
詳細には、隆起部61およびシート64は低摩擦材料150でコーティングされている。
【0096】
より正確には、隆起部61の壁66および67とシート64の壁71および72との上に低摩擦材料150が堆積されている。
【0097】
より具体的には、壁71が壁65と接触するか、または壁72が壁66と接触する。
【0098】
好ましくは、ロータ4はスリーブ90をも備え、これは、半径方向においてリング31とロッド10との間に挿入され、軸方向においてロッド10と円筒体60との間に挿入される。
【0099】
より詳細には、スリーブ90は、ロッド10と同軸で延在する。
【0100】
スリーブ90は、
- 主本体91と、
- 主本体91から半径方向に突出して、軸Aの反対の側から要素16に向かう、主本体91よりも直径が大きい軸端隆起部92と
を基本的に備える。
【0101】
より詳細には、主本体91は、
- 軸受17のリング31と接触する、半径方向外側の表面93と、
- 軸Aに対して半径方向の外側でロッド10の表面18と接触する、半径方向内側の表面94と
を備える。
【0102】
隆起部92が画定するスリーブ90の軸端は、ロッド10の環状の肩121に対して当接して配置されて、ロッド10の端23に面している。
【0103】
円筒体60は、半径方向に延在してリング31と接触するように配置されている端面140を備える。
【0104】
軸受17の全体がロッド10に対して軸Aのまわりで回転できるように、ロータ4は、好ましくは、ロッド10と軸受17との間に減摩材で作製された境界面120を備える。
【0105】
境界面120が備える減摩材の第1のコーティングは、スリーブ90の表面94およびロッド10の表面18の上に配置されて軸方向に延在している。
【0106】
境界面120は第2のコーティングをも備え、これは、肩121と、軸方向において軸受17のリング31の反対側で肩121に接触する隆起部92の表面122との上で、半径方向に延在する。
【0107】
境界面120は、ロッド10の、軸Aのまわりの望ましくない回転を防止するように適合されている。軸受17の障害状態に続いて、回転体32がリング31に捩りモーメントを伝え、これが摩擦によって結果的にスリーブ90に伝わると、この望ましくない回転が生じ得る。
【0108】
図示の事例では、スリーブ90は鋼製であり、表面93および94は、硬質酸化物で、より具体的にはタングステンでコーティングされている。
【0109】
あるいは、スリーブ90は青銅製であり、潤滑剤を受け入れる空洞を伴う構造を有する。
【0110】
表面18ならびに表面93および94の材料は、前述の障害状態において、スリーブ90の望ましくない回転によって、ロッド10に、望ましくない回転をもたらすのに十分な捩りモーメントが伝わるのを回避するような摩擦係数を有する。
【0111】
境界面120には、軸受17のリング31と接触する表面140に堆積された第3のコーティングも備わっている。
【0112】
軸受17のリング30は、軸方向において向かい合うそれぞれの部品によって、軸方向において要素16の管状体40とリング63との間に固定されている。
【0113】
軸受17のリング31は、軸方向において向かい合うそれぞれの部品によって、軸方向においてスリーブ90の隆起部92と円筒体60との間に固定されている。
【0114】
検知手段50は、軸Aのまわりのスリーブ90の回転に関連した第3の信号を生成するように適合されたセンサ53をも備える。
【0115】
その上、センサ51は、軸受17および/またはスリーブ90の温度および加速度のうち少なくとも1つを検知するように適合されている。
【0116】
使用中に、ロータ3の動作が生成する推力により、ヘリコプタ1を空中に維持すること、およびヘリコプタ1を前方飛行させることが可能になる。
【0117】
ロータ3の動作は、胴体2に対するトルクをも生成するが、これは、ロータ4の推力によって生成される逆トルクによって平衡を保たれる。
【0118】
パイロットは、ヘリコプタ1のヨー角を制御するために、ロータ4のブレード8のピッチを調整して、結果的にロータ4が発生する推力を調整するように、操縦装置15を操作する。
【0119】
ロータ4の動作中に、マスト6は、シャフト13による軸Aのまわりの回転で駆動され、軸Aのまわりの回転で、ハブ9、要素16およびブレード8を駆動する。ロッド10は、その代わりに、角度的には軸Aに対して固定されたままである。
【0120】
ロータ4の動作は以下で説明され、軸受17が正確に作動して、結果的に、伝達ユニット45が非活動状態の構成に設定された状態から始まる。
【0121】
この状態では、操縦装置15の動作により、ロッド10が軸Aに沿って所定方向に並進する。
【0122】
この並進により、軸受17と要素16とが、軸Aに沿って一体的に並進する。
【0123】
その結果、要素16がブレード8から離れ(またはブレード8に近づき)、軸Bに対するレバー43の傾斜が変化する。
【0124】
レバー43のこの移動により、各ブレード8が、関連する軸Bのまわりで等しい角度だけ同時に回転し、結果としてブレード8の迎え角を調整する。
【0125】
軸受17の障害に続いて、回転体32が、リング31に対して、したがってスリーブ90に対して、捩りモーメントを不適切に伝えると、境界面120の第1および第2のコーティングが、ロッド10が回転駆動されるのを防止する。
【0126】
より具体的には、第1のコーティングを形成する表面94および18と、第2のコーティングを形成する表面122および肩121との減摩材が、スリーブ90の望ましくない回転によって、ロッド10に、ロッド10の望ましくない回転が生じるのに十分な捩りモーメントが伝わるのを防止する。
【0127】
表面140に堆積された、境界面120の第3のコーティングの減摩材が、軸受17のリング31の望ましくない回転によってリング63およびロッド10に望ましくない回転が生じるのを防止する。
【0128】
加えて、センサ51が、軸受17およびスリーブ90の温度および加速度を検知して、これらの値が軸受17の障害に関係する場合には第1の信号を生成する。
【0129】
その上、前述の状況では、隆起部61の壁65および66が、図5に示されるように、軸方向においてシート64のそれぞれの壁71および72から離れる。
【0130】
その結果、円筒体60およびリング63によって形成された伝達ユニット45が、ロッド10から要素16への移動の伝達において能動的な役割を果たさない。
【0131】
障害がある場合には、軸受17は、もはや、ロッド10から要素16に軸方向荷重を伝えること、すなわち、ロッド10と要素16との、軸Aに対して平行で一体的な並進をもたらすことはできない。
【0132】
センサ53が生成する第3の信号が、パイロットに危険な状況であることを通知する。
【0133】
この状況では、伝達ユニット45が活性化されて、少なくとも所定期間にわたって反トルクロータ4の可制御性を確保することを可能にする。
【0134】
より詳細には、操縦装置15の動作により、ロッド10およびリング63が、隆起部61を軸方向においてリング63のシート64と接触させる位置まで並進する。
【0135】
より具体的には、隆起部61の壁65(66)が、まずリング63のシート64の壁71(72)と接触し、次いでリング63のシート64の壁71(72)を軸方向に押し進める。
【0136】
このようにして、伝達ユニット45が活動状態の構成になり、ロッド10の並進が続行され、円筒体60およびリング63を介して要素16を並進させる。
【0137】
伝達ユニット45を活性化すると要素16上に少量の遊びが生じ、これは、隆起部61をシート64に対して当接させるためにロッド10がカバーしなければならないオーバトラベルに対応するものである。
【0138】
センサ52は、伝達ユニット45が活動状態の構成にあることをパイロットに通知する第2の信号を生成する。
【0139】
図6を参照して、参照数字4’は、本発明の第2の実施形態による反トルクロータを指示する。
【0140】
ロータ4’はロータ4に類似であり、以下ではロータ4との差に関してのみ説明され、可能な場合には、ロータ4と4’との同一または同等の部品は同一の参照数字を用いて指示される。
【0141】
詳細には、ロータ4’は、隆起部61とシート64との間の摩擦を低減するために、
- 隆起部61の壁65とシート64の壁71との間に挿入された軸受100と、
- 隆起部61の壁66とシート64の壁72との間に挿入された軸受101と
を備える点においてロータ4と異なる。
【0142】
好ましくは、軸受100および101は、ローラ軸受、ボール軸受、またはニードル軸受である。
【0143】
詳細には、各軸受100(101)は、
- 壁66(67)に固定されたリング103と、
- 壁71(72)に固定されたリング104と、
- リング103と104との間に挿入された複数の回転体105と
を備える。
【0144】
図示の事例では、リング103および104は円錐台タイプである。
【0145】
図示の事例では、回転体105は、軸Aに対して傾斜したそれぞれの軸を有するニードルである。
【0146】
ロータ4’の動作はロータ4の動作に類似であるため、詳細には説明されない。
【0147】
本発明によるロータ4および4’の特性の検討から、これを用いて達成され得る利点は明らかである。
【0148】
詳細には、回転体32が受けた損傷によってリング31と30とが物理的に分離した場合には、ロッド10の並進により、隆起部61が、シート64に対して当接する。このようにして、要素16の正確な並進が保証され、結果として、ブレード8の迎え角とロータ4および4’との可制御性が保証される。
【0149】
このために、伝達ユニット45の隆起部61およびシート64は、軸受17に関するロッド10から要素16までの制御の、追加の冗長な伝送路を画定する。
【0150】
このようにして、伝達ユニット45は、軸受17に障害があっても、ブレード8の迎え角の可制御性を保証する。
【0151】
隆起部61が、一旦シート64に対して当接すると、センサ52は第2の信号を生成し、これが、パイロットに、伝達ユニット45が活動状態の構成にあることを通知する。このようにして、パイロットは、できるだけ早く着陸するのが望ましいことを通知される。
【0152】
軸受17の障害に続いて、回転体32が、リング31に対して捩りモーメントを不適切に伝えてスリーブ90が回転する場合には、境界面120によって、この捩りモーメントがロッド10に伝わるというリスクが実質的に制限される。
【0153】
この捩りモーメントによってロッド10が損傷を受けて、結果的にロータ4または4’が制御不能になるというリスクは、このようにして実質的に制限される。
【0154】
センサ53は第3の信号を生成し、これが、パイロットに、ハザード条件と、できるだけ早く着陸するのが望ましいこととを通知する。
【0155】
最後に、本明細書で説明されて例証されたロータ4および4’に関する修正形態や変形形態が、特許請求の範囲によって定義された範囲から逸脱することなく作製され得ることは明らかである。
【符号の説明】
【0156】
1 ヘリコプタ
2 胴体
3 主ロータ
4,4’ 反トルクロータ
5 タービン
6 マスト
8 ブレード
9 ハブ
10 制御ロッド
11 伝達ユニット
12 歯車列
13 シャフト
14 根元部分
15 操縦装置
16 制御要素
17 軸受
18 表面
19 フランジ
20 軸端
21 軸端
22 主要部分
23 端
24 端
25 主本体
27 接続要素
30 外輪、リング
31 内輪、リング
32 回転体
33,34 レースウェイ
35,36,37 肩
40 管状体
42 フランジ
43 レバー
44 ベロー継手
45 動力伝達ユニット
50 検知手段
51,52,53 センサ
60 円筒体
61 隆起部
63 リング
64 シート
65,66,67,71,72,73 壁
80 ネジ接続
81 ロックナット
82,83 ハーフリング
90 スリーブ
91 主本体
92 軸端隆起部
93,94 表面
100,101 軸受
103,104 リング
105 回転体
120 境界面
121 肩
122 表面
140 端面
150 低摩擦材料
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】