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特表2022-537318ぶどう膜炎の処置におけるペプチド及びその使用の方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-25
(54)【発明の名称】ぶどう膜炎の処置におけるペプチド及びその使用の方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/02 20060101AFI20220818BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20220818BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20220818BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20220818BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20220818BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220818BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20220818BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20220818BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220818BHJP
   A61K 9/00 20060101ALI20220818BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220818BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20220818BHJP
   A61K 38/00 20060101ALI20220818BHJP
【FI】
A61K38/02
A61K38/16
A61K38/08
A61P27/02
A61K9/06
A61K9/08
A61K9/127
A61K9/107
A61K45/00
A61K9/00
A61P43/00 121
A61K9/14
A61K38/00 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021575064
(86)(22)【出願日】2020-06-16
(85)【翻訳文提出日】2022-02-10
(86)【国際出願番号】 US2020037882
(87)【国際公開番号】W WO2020257162
(87)【国際公開日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】62/862,326
(32)【優先日】2019-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521549279
【氏名又は名称】バイオマルク ファーマシューティカルズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】パリーク,インドゥー
(72)【発明者】
【氏名】バティア,アシシュ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA06
4C076AA09
4C076AA17
4C076AA19
4C076AA30
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB24
4C076CC04
4C076CC10
4C084AA01
4C084AA02
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA02
4C084BA08
4C084MA02
4C084MA58
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA33
4C084ZB11
4C084ZC75
(57)【要約】
本開示は、眼の炎症又は炎症性の眼の状態、例えばぶどう膜炎などを処置する方法を含む。より具体的には、本開示は、炎症性細胞における顆粒からの炎症メディエーターの放出と関連づけられる機序を阻害することによって、炎症性細胞からの炎症メディエーターの放出を阻害するか又は減少させることに関する。この点に関して、本開示は、炎症性細胞における小胞からの炎症メディエーターの分泌が関与する障害における薬理学的介入のためのいくつかの新規細胞内標的を例示する細胞内シグナル伝達機序を含む。本開示で開示されるようなペプチド断片及びそれらの変異体はこのような方法において有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象においてぶどう膜炎を処置する方法であって、
(a)参照配列、GAQFSKTAAKGEAAAERPGEAAVA(配列番号1)の4~24個の連続アミノ酸を有するアミノ酸配列;
(b)配列、GAQFSKTAAKGEAAAERPGEAAVA(配列番号1)を有するアミノ酸配列;及び
(c)(a)又は(b)で定められるアミノ酸配列に対して少なくとも約75%同一性を有するアミノ酸配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つのペプチドを含む治療的有効量の組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記ペプチドが、配列番号1の少なくとも9個の連続アミノ酸残基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ペプチドが配列番号106のアミノ酸配列を含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ペプチドが配列番号121のアミノ酸配列を含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記ペプチドがN末端アミノ酸においてミリストイル化又はアセチル化されている、請求項1~4の何れかに記載の方法。
【請求項6】
前記ペプチドがN末端アミノ酸においてアセチル化されており、配列番号106のアミノ酸配列からなる、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記ペプチドがN末端アミノ酸においてアセチル化されており、配列番号121のアミノ酸配列からなる、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記ペプチドがN末端アミノ酸においてミリストイル化されており、C末端アミノ酸においてNH2基でアミド化されており、配列番号106のアミノ酸配列からなる、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記ペプチドが、配列番号1の少なくとも4個の連続アミノ酸残基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ペプチドが、配列番号1の少なくとも10個の連続アミノ酸残基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ペプチドが、そのC末端アミノ酸においてアンモニアでアミド化されている、請求項1~7、9及び10の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記組成物が、薬学的に許容可能な担体を含む、請求項1~11の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記対象が哺乳動物である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記哺乳動物が、ヒト、イヌ、ウマ及びネコからなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記組成物が、局所投与、硝子体内注射(IVT)、結膜下注射、テノン嚢下注射(SBT)、球後注射、眼周囲注射、網膜下注射、強膜内、経強膜的、基質内、静脈内注射、眼内投与又は何らかのそれらの組み合わせによって投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記組成物が硝子体内注射により投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記組成物が局所注射により投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
第1の投与セッションで前記組成物が硝子体内注射により投与され、1回以上の続く投与セッションにおいて前記組成物が局所投与により投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記局所投与が、1日に1、2又は3回の局所投与を含む、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記組成物が、局所処方物、眼内処方物、眼の埋め込み物、点眼薬、眼用ゲル、軟膏、ミクロスフェア、マイクロエマルション、リポソーム性処方物又はそれらの何らかの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
第2の分子を前記対象に投与することをさらに含み、前記第2の分子が、抗生物質、抗ウイルス化合物、抗寄生虫化合物、抗炎症化合物、免疫調整化合物又は何らかのそれらの組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記ぶどう膜炎が、前部ぶどう膜炎、中間部ぶどう膜炎、後部ぶどう膜炎及び汎ぶどう膜炎からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記ぶどう膜炎が炎症性又は自己免疫性である、請求項1又は22に記載の方法。
【請求項24】
前記ペプチドが、配列番号106、121、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、247、248、249、250、251又は252で示されるアミノ酸配列と少なくとも約75%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記ペプチドが、約1μM~約10mMの濃度で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記ペプチドが、約1μg~約5mgの量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記ペプチドが、約0.01mL~約1mLの体積で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
対象においてぶどう膜炎を処置する方法での使用のための、
(a)参照配列、GAQFSKTAAKGEAAAERPGEAAVA(配列番号1)の4~24個の連続アミノ酸を有するアミノ酸配列;
(b)配列、GAQFSKTAAKGEAAAERPGEAAVA(配列番号1)を有するアミノ酸配列;及び
(c)(a)又は(b)で定められるアミノ酸配列に対して少なくとも約75%同一性を有するアミノ酸配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つのペプチドを含む組成物であって、前記方法が、前記対象の眼に前記組成物を投与することを含む、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
[0001] 本願は、その全体における参照により本明細書中に組み込まれる、2019年6月17日出願の米国特許仮出願第62/862,326号に対する優先権を主張する。
【0002】
技術分野
[0002] 本開示は、ぶどう膜炎などの眼の炎症及び炎症と関連する眼の障害を処置するための、ペプチド又はペプチド組成物及びそれらの使用の方法に関する。本開示はまた、炎症性細胞の遊走及びこれらの細胞からの炎症メディエーターの分泌を制御する細胞内シグナル伝達機序を調整するための、これらのペプチド又はペプチド組成物の使用にも関する。
【0003】
電子提出されたテキストファイルの説明
[0003] 本明細書とともに電子提出されたテキストファイルの内容は、それらの全体において参照により組み込まれる:配列リストのコンピュータ可読方式コピー(ファイル名:BMRK_007_01WO_SeqList.txt、データ記録:2020年6月16日;ファイルサイズ:80kb)。
【背景技術】
【0004】
背景
[0004] ぶどう膜炎は、眼疾患であり、感染性及び非感染性の両方の原因がある。ぶどう膜炎は、片眼又は両眼に影響する慢性炎症状態により引き起こされ得る。眼内炎症の最もよくある形態であるぶどう膜炎は、米国での予防可能な失明の10~15%を占める。米国のおよそ100,000人の個人がぶどう膜炎に罹患し、従ってぶどう膜炎は、難病とみなされ得る。5つのタイプの非感染性ぶどう膜炎:(1)眼の前部で起こる前部ぶどう膜炎;(2)眼の中間部で起こる中間部ぶどう膜炎;(3)脈絡膜、網膜及び眼神経を含む眼の後部で起こる後部ぶどう膜炎;(4)眼の全ての部分で起こる汎ぶどう膜炎;及び(5)自己免疫性ぶどう膜炎がある。
【0005】
[0005] 非感染性ぶどう膜炎は炎症により引き起こされ、点眼薬の形態で及びステロイドの経口又は静脈内注射によって供給されるコルチコステロイドで処置され得る。アトロピンは、角膜潰瘍により引き起こされる疼痛及び虹彩の攣縮を緩和するために、及びイヌ及びネコにおいてぶどう膜炎を処置するために、局所的に使用され得る。アトロピンは、抗コリン性又は副交感神経遮断剤である。また、スコポラミン及びイソプロパミドは、このクラスの薬物に属する。アトロピンは、副交感神経系に対して作用し、アセチルコリンの伝達を遮断する。
【0006】
[0006] ある一定のケースにおいて、免疫抑制剤又は生物製剤、例えばHumira(登録商標)(アダリムマブ)などが処方される。コルチコステロイドでの処置は、後嚢下白内障、二次性の開放隅角白内障、二次性感染、骨喪失及びHPA軸抑制の発症を含め、重篤な副作用を有し得る。アダリムマブなどの生物製剤での処置は、免疫系減弱、従って、身体が、B型肝炎、アレルギー性反応、神経系の問題及び乾癬を含め、上気道感染、細菌、ウイルス感染に罹患し易くなること、を含む一連の潜在的な重篤な副作用も有する。従って、上記副作用の1つ以上を起こさない、ぶどう膜炎に対する有効な治療剤が緊急に医学的に必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
概要
[0007] 本開示は、対象においてぶどう膜炎を処置する方法を提供し、この方法は、(a)参照配列、GAQFSKTAAKGEAAAERPGEAAVA(配列番号1)の4~24個の連続アミノ酸を有するアミノ酸配列;(b)配列、GAQFSKTAAKGEAAAERPGEAAVA(配列番号1)を有するアミノ酸配列;及び(c)(a)又は(b)で定められるアミノ酸配列に対して少なくとも約75%同一性を有するアミノ酸配列、からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つのペプチドを含む組成物の治療的有効量を前記対象に投与することを含む。
【0008】
[0008] いくつかの態様では、本ペプチドは、配列番号1の少なくとも9個の連続アミノ酸残基を含む。いくつかの態様では、本ペプチドは、配列番号106のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、本ペプチドは、配列番号121のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、本ペプチドは、N末端アミノ酸で、ミリストイル化又はアセチル化されている。いくつかの態様では、本ペプチドは、N末端アミノ酸でアセチル化されており、配列番号106のアミノ酸配列からなる。いくつかの態様では、本ペプチドは、N末端アミノ酸でアセチル化されており、配列番号121のアミノ酸配列からなる。いくつかの態様では、本ペプチドは、配列番号1の少なくとも4個の連続アミノ酸残基を含む。いくつかの態様では、本ペプチドは、配列番号1の少なくとも10個の連続アミノ酸残基を含む。いくつかの態様では、本ペプチドは、C末端アミノ酸においてアンモニアでアミド化されている。
【0009】
[0009] いくつかの態様では、本ペプチドは、配列番号79、106、121、137、219、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、247、248、249、250、251又は252で示されるアミノ酸配列と少なくとも約75%同一のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、本ペプチドは、N末端アミノ酸においてアセチル化されている。いくつかの態様では、本ペプチドは、N末端アミノ酸においてミリストイル化されている。いくつかの態様では、本ペプチドは、C末端アミノ酸においてアンモニアでアミド化されている。いくつかの実施形態では、本ペプチドは、直鎖ペプチドである。いくつかの実施形態では、本ペプチドは環状ペプチドである。いくつかの実施形態では、本ペプチドはペグ付加されている。
【0010】
[00010] いくつかの態様では、投与段階は、対象の眼において炎症性細胞からの少なくとも1つの炎症メディエーターの放出速度を低下させ、及び/又は対象の眼の炎症性細胞から放出される少なくとも1つの炎症メディエーターの量を減少させる。いくつかの態様では、本組成物は薬学的に許容可能な担体を含む。いくつかの態様では、対象は哺乳動物である。いくつかの態様では、哺乳動物は、ヒト、イヌ、ウマ及びネコからなる群から選択される。
【0011】
[00011] いくつかの態様では、局所投与、硝子体内注射(IVT)、結膜下注射、テノン嚢下注射(SBT)、球後注射、眼周囲注射、網膜下注射、強膜内注射、経強膜的、基質内、静脈内注射、眼内投与又は何らかのそれらの組み合わせによって投与が行われる。いくつかの態様では、本組成物は、局所処方物、眼内処方物、眼の埋め込み物、点眼薬、眼用ゲル、軟膏、ミクロスフェア、マイクロエマルション、リポソーム性処方物又は何らかのそれらの組み合わせを含む。いくつかの態様では、本組成物は、硝子体内注射によって、1回以上の投与セッションにより投与される。例えば、いくつかの実施形態では、本組成物は、毎日の硝子体内注射により投与される。いくつかの態様では、本組成物は、局所投与により投与される。例えば、いくつかの実施形態では、本組成物は、毎日の局所投与により投与される。いくつかの実施形態では、各毎日局所投与は、各日1、2又は3回の局所投与、例えば8時間ごとにおよそ1回の投与、を含む。いくつかの実施形態では、本組成物は、硝子体内注射及び局所投与の両方により投与される。いくつかの実施形態では、本組成物は、第1の投与セッションにおいて硝子体内注射により投与され、1回以上のその後の投与セッションでは局所投与によりに投与される。例えば、いくつかの実施形態では、本組成物は、1、2、3、4、5日以上にわたり、硝子体内注射により投与され、その後、局所投与を介して投与される。さらなる実施形態では、本組成物が局所的に投与される各日に、本組成物が1回、2回又は3回投与される。
【0012】
[00012] いくつかの態様では、本方法は、第2の分子を対象に投与することをさらに含み、この第2の分子は、抗生物質、抗ウイルス性化合物、抗寄生虫化合物、抗炎症化合物、免疫調整化合物又は何らかのそれらの組み合わせである。
【0013】
[00013] いくつかの態様では、ぶどう膜炎は、前部ぶどう膜炎、中間部ぶどう膜炎、後部ぶどう膜炎及び汎ぶどう膜炎からなる群から選択される。いくつかの態様では、ぶどう膜炎は炎症性又は自己免疫性である。いくつかの態様では、本ペプチドは、約1μM~約10mMの濃度で投与される。いくつかの態様では、本ペプチドは、約1μg~約5mgの量で投与される。いくつかの態様では、本ペプチドは、約0.01mL~約5mLの体積で投与される。
【0014】
[00014] 本開示は、対象においてぶどう膜炎を処置する方法での使用のための、(a)参照配列、GAQFSKTAAKGEAAAERPGEAAVA(配列番号1)の4~24個の連続アミノ酸を有するアミノ酸配列;(b)配列、GAQFSKTAAKGEAAAERPGEAAVA(配列番号1)を有するアミノ酸配列;及び(c)(a)又は(b)で定められるアミノ酸配列に対して少なくとも約75%同一性を有するアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つのペプチドを含む組成物をさらに提供し、この方法は、対象に本組成物を投与することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図面の簡単な説明
図1】[00015]図1は、H&Eで染色した、PBS(左パネル)又は50μl PBS中の10ng LPS(右パネル)の硝子体内注射から24時間後のウサギの眼の組織切片の代表的な画像を示す。LPSを注射した眼(右)において、組織腫脹及び炎症性細胞流入が明らかである。元の倍率40X。
図2】[00016]図2は、群A:LPS単独(即ち50μL PBS中10ng);群B:LPSの後にN末端アミノ酸でアセチル化されているペプチド106である「アセチル化ペプチド106」とも呼ばれるBIO-11006(100μMのアセチル化ペプチド106をLPS注射の2時間後に硝子体内注射した);群C:Ac-ペプチド106/LPS:LPS注射前にアセチル化ペプチド106を硝子体内注射;又は群D::眼へのアセチル化ペプチド106単独の硝子体内注射の何れかで処置したウサギにおける刺激/炎症性指標の目安の比較を示す。全ての値は、平均±1SEMである。各処置に対してN=2又は3。P≦0.05=LPSと比較。
図3】[00017]図3は、群A:LPS単独(即ち50μL PBS中10ng);群B:LPSの後に「アセチル化ペプチド106」とも呼ばれるBIO-11006(100μMのアセチル化ペプチド106をLPS注射の2時間後に硝子体内注射した);群C:LPS注射2時間前にアセチル化ペプチド106を硝子体内注射;又は群D:眼へのアセチル化ペプチド106単独の硝子体内注射の何れかで処置したウサギの眼房水中の細胞浸潤物の比較を示す。全ての値は、平均±1SEMである。各処置に対してN=2又は3。P≦0.05=LPSと比較。
図4】[00018]図4は、群A:LPS単独(上左);群B:LPSを投与し、次にアセチル化ペプチド106(BIO-11006)をLPSの2時間後に硝子体内投与(上右);群C:LPS投与2時間前にアセチル化ペプチド106を硝子体内注射(下左);又は群D:アセチル化ペプチド106単独で硝子体内注射(下右)の何れかでの処置から24時間後のウサギの眼の組織病理学的分析のための代表的な画像を示す。拡大率は全て400Xである。
図5】[00019]IRBPペプチドの注射によってラットに免疫付与した。免疫付与後第10日に、1つの群のラットに対してIVT注射により100μM BIO-11006又は生理食塩水(群A、対照)での処置を行った。BIO-11006 IVT注射後、1つの群のラットをさらに4日間にわたり処置し(群B、IVTのみ)、一方で第2の群に4日間にわたり100μM BIO-11006を1日3回局所的に適用して与えた(群C、IVT+局所)。免疫付与後第14日に、全ラットに対して眼の検査を行い(評価者にとって盲検)、次に安楽死させ、組織病理学検査のために眼を摘出した。図5は、表3で与えられるような眼の炎症/刺激スコアリングと合わせた盲検での眼の評価に基づく。N=4匹ラット/群。平均±SD。
図6】[00020]上のパネルは、免疫付与後第10日に開始された硝子体内への生理食塩水投与から4日後の実験的自己免疫性ぶどう膜炎(EAU)ラットの、H & E染色した前部ぶどう膜の画像を示す(群Aのラット)。虹彩及び毛様体組織腫脹及び細胞浸潤物(主に単核細胞;矢印)が存在し;表4に基づきグレード3である。下のパネルは、第10日に開始した硝子体内注射とそれに続くBIO-11006の4日間毎日の局所投与から4日後のEAUラットの、H & E染色した前部ぶどう膜の画像を示す(群Cのラット)。生理食塩水で処置したEAUラットと比較すると、組織腫脹はより小さく、細胞浸潤物がほぼ完全に阻害される。表4に基づきグレード0~0.5。
【発明を実施するための形態】
【0016】
詳細な説明
定義
[00021] 本明細書中で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明する目的のためであり、限定するものではないことを理解されたい。
【0017】
[00022] 別段の定めがない限り、本明細書中で使用される全ての技術及び科学用語は、本願が属する技術分野の熟練者にとって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書中に記載のものと同様又は同等の何れかの方法及び材料を本願の実施又は試験で使用し得るが、代表的な方法及び材料を本明細書中で記載する。
【0018】
[00023] 長年の特許法協定に従い、「a」、「an」及び「the」という語は、特許請求の範囲を含め本願で使用される場合、「1つ以上」を指す。従って、例えば、「担体」への言及は、1つ以上の担体、2つ以上の担体などの混合物を含み、「方法」への言及は、当業者にとって公知の同等な段階及び/又は方法などへの言及を含む。
【0019】
[00024] 別段示されない限り、本願及び特許請求の範囲で使用される成分量、反応条件などを表す全ての数字は、「約」という語によって全例で修飾されているものと理解されたい。従って、特にそれとは反対の指示がない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲で示される数値パラメーターは、本願により得られることが求められる所望の特性に依存して変動し得る近似である。一般に、「約」という用語は、重量、時間、用量の量などの測定可能な値に関連して本明細書中で使用される場合、当技術分野での許容可能な変動度内の値を包含することを意味する。いくつかの実施形態では、変動度はFDAガイドラインに基づく。
【0020】
[00025] 本明細書中で使用される場合、「処置」は、有益な又は所望の臨床結果を得るためのアプローチである。この開示の目的のために、有益な又は所望の臨床結果には、次のもののうち1つ以上が含まれるが限定されない:眼の炎症の重症度の低下、眼の炎症の持続期間短縮、その発症の減少、眼の炎症の発現又は進行の管理、寛解、予防及び/又は遅延、視力の改善又は失明の進行の停止若しくは遅延、眼痛、発赤及び/又は光に対する感受性の軽減又は黄斑浮腫、緑内障、白内障若しくは眼の炎症及び/又はぶどう膜炎と関連する他の状態のうち何れか1つ以上の進行若しくは重症度の軽減を含む、眼の炎症又は眼の状態(例えばぶどう膜炎)の1つ以上の症状の緩和。
【0021】
[00026] 「有効量」又は「治療的有効量」という用語は、アウトカムを達成するために、例えば有益な又は所望の結果に影響を与えるために十分である薬剤の量を指す。治療的有効量は、処置される対象及び疾患状態、対象の体重及び年齢、疾患状態の重症度、投与方式などのうち1つ以上に依存して変動し得る。
【0022】
MARCKSタンパク質
[00027] MARCKSタンパク質は、アクチン結合タンパク質であり、細胞骨格配向及び機能及び細胞遊走に寄与する。いくつかの実施形態では、本明細書中で開示されるN末端MARCKSペプチドは、白血球などの炎症性細胞を含む様々な細胞タイプの方向性のある遊走を阻害する。
【0023】
[00028] 白血球は、細胞質膜結合顆粒中で貯蔵される多くの炎症メディエーターを合成する。このようなメディエーターの例としては、好中球におけるミエロペルオキシダーゼ[MPO]、好酸球における好酸球ペルオキシダーゼ[EPO]及び主要塩基性タンパク質[MBP]、単球/マクロファージにおけるリゾチーム及びナチュラルキラー(NK)細胞及び細胞傷害性リンパ球におけるグランザイムが挙げられるが限定されない。このようなメディエーターは、損傷部位で放出され、エキソサイトーシス機序を介して炎症及び組織修復に寄与する。しかし、エキソサイトーシス過程に関与する調節分子及び特異的な経路は完全には述べられていない。
【0024】
[00029] いくつかの外因性刺激は、タンパク質キナーゼCの活性化及び続くリン酸化及び脱リン酸化事象を含む経路を介して、白血球の脱顆粒を誘発し得る。MARCKSタンパク質(本明細書中で使用される場合、MARCKSは「ミリストイル化アラニンリッチCキナーゼ基質」を意味する)は、タンパク質キナーゼC(PKC)のユビキタスなリン酸化標的であり、白血球で高発現される。MARCKSタンパク質は、呼吸気道を裏打ちする杯細胞によるムチンのエキソサイトーシス分泌の過程に機構的に関与する。およそ82kDのタンパク質であるMARCKSは、3つの進化的に保存された領域、N末端、リン酸化部位ドメイン(又はPSD)及び多重相同性2(multiple homology 2)(MH2)ドメインを有する。MARCKSは、ミリストイルCoA:タンパク質N-ミリストイルトランスフェラーゼ(NMT)により触媒される反応を介した、アミノ酸配列のN末端(即ち位置1)に存在するグリシンのアルファ-アミン位置での、MARCKSタンパク質のアミノ酸配列中のN末端アミノ酸におけるアミド結合を介して、ミリストイル化される。この機序は、MARCKS、ミリストイル化タンパク質の、細胞内顆粒の膜への結合を含むと思われる。
【0025】
[00030] MARCKSのミリストイル化N末端領域は、杯細胞におけるムチン分泌及びムチン顆粒膜へのMARCKSの結合の両方を遮断することが示されているので、分泌過程に不可欠であると思われる。このペプチドは、アミド結合を介してミリストイル化されるMARCKSタンパク質のN末端グリシンで始まるMARCKSタンパク質の24個のL-アミノ酸を含有し、ミリストイル化アルファ-N末端配列としても知られ(又は「MANS」、交換可能に「MARCKS N-末端」とも呼ばれる);即ち、ミリストイル-GAQFSKTAAKGEAAAERPGEAAVA(配列番号1)である。本明細書中で開示されるMANSペプチドのペプチド断片はまた、好ましくはL-アミノ酸から構成される。MARCKSはアクチン結合タンパク質なので、細胞骨格配向及び機能及び細胞遊走にとって非常に重要である。いくつかの実施形態では、本明細書中で開示されるN末端MARCKSペプチドは、ヒト好中球、線維芽細胞及び気道上皮細胞の方向性のある遊走を阻害する。
【0026】
[00031] ぶどう膜炎、喘息、COPD及び慢性気管支炎などの炎症性疾患において;嚢胞性線維症などの遺伝疾患において;アレルギー性状態(アトピー、アレルギー性炎症)において;気管支拡張症において;及び多くの急性、感染性呼吸器疾患、例えば肺炎、鼻炎、インフルエンザ又は一般的な風邪、関節炎又は自己免疫疾患において、炎症性細胞は通常、このような疾患に罹患している患者での炎症性疾患状態と関連する損傷又は感染の領域で見られるか又はそこに遊走する。これらの炎症性細胞は、これらの細胞から放出された炎症メディエーターにより引き起こされた組織損傷を介して、疾患の病態に大きく寄与し得る。この慢性炎症を介したこのような組織損傷又は破壊の一例はぶどう膜炎で起こる。
【0027】
[00032] 浸潤白血球の顆粒からの炎症メディエーター放出におけるMARCKSタンパク質の関与は、ぶどう膜炎などの眼疾患、喘息、COPD及び嚢胞性線維症などの気道の炎症を特徴とする肺疾患を含め、全ての組織及び臓器での疾患における炎症に関する。
【0028】
MARCKSのN-末端由来のペプチド
[00033] 本開示は、MARCKS N末端由来のペプチド断片(交換可能にただ「断片」又はただ「ペプチド」と呼ばれる)を提供する。いくつかの態様では、これらのペプチド断片は、炎症性白血球における炎症メディエーター顆粒又は小胞の放出の速度及び/又は量の低下に関与する。
【0029】
[00034] いくつかの態様では、本明細書中で開示されるペプチドは、MARCKS N末端、即ち、MARCKSのN末端1~24アミノ酸配列内由来の連続ペプチド断片由来である。いくつかの態様では、本ペプチドは、このような断片のN末端アミド、例えばこのような断片のN末端酢酸アミド及び/又は、同様にこのような断片のC末端アミド、例えばアンモニアのC末端アミドなどである。いくつかの態様では、本ペプチドは、例えば炎症性白血球における脱顆粒の過程を阻害することによって、炎症性白血球からの炎症メディエーターの放出を阻害し得るか又はその速度を低下及び/又は量を減少させ得る。このような放出の阻害又は減少は、炎症性白血球からの炎症メディエーターのMARCKS関連放出の阻害を含む。
【0030】
[00035] 別の態様では、本明細書中に記載のような、MANSペプチド又はその断片及びこのような断片のアミドは、炎症性細胞における膜結合に対してネイティブMARCKSタンパク質と競合して、このような炎症性細胞において、このような炎症メディエーターを含有する顆粒又は小胞からの炎症のメディエーターのMARCKS関連放出を減弱させ得る(和らげ得るか又は軽減し得る)。
【0031】
[00036] いくつかの態様では、本ペプチドは、MANSペプチドアミノ酸配列の約4~約23個の連続アミノ酸残基を有する。いくつかの態様では、断片は、それらが配列番号1の位置1においてN末端グリシンで始まらない場合、N末端がミリストイル化され得るか、又はN末端アセチル化を含め、C2~C12アシル基でN末端がアシル化され得、及び/又はNH2基でC末端がアミド化され得る。
【0032】
[00037] PKCのホルボールエステル誘導性の活性化に反応して特異的な顆粒内容物を分泌する白血球細胞タイプ及びモデル細胞タイプは、本明細書中で開示されるペプチドの有効性のインビトロでの実証に有用である。本開示の化合物及び組成物による膜結合炎症メディエーターの放出の減弱は、ヒト白血球細胞株を使用して実証され得る。例えば、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)の放出の減弱又は阻害を実証するために、ヒト血液から単離される好中球が使用され得る。本開示の化合物及び組成物による好酸球ペルオキシダーゼ(EPO)の放出の減弱化又は放出若しくは分泌の阻害を実証するために、ヒト前骨髄球細胞株HL-60クローン15が使用され得る。本開示の化合物及び組成物によるリゾチームの放出の減弱化又は放出若しくは分泌の阻害を実証するために、単球白血病細胞株U937が使用され得る。本開示の化合物及び組成物によるグランザイム放出の減弱化若しくは阻害を実証するために、リンパ球ナチュラルキラー細胞株NK-92が使用され得る。本明細書中に記載のものなどの炎症のメディエーターの放出を阻害するか又は減弱させるためのインビトロの方法において、細胞タイプのそれぞれを一連の範囲の濃度にわたる本開示のペプチド化合物又はペプチド組成物と予め温置し、それに続いてホルボールエステルなどの炎症メディエーターの放出の刺激物質を用いてこれらの細胞を温置する。炎症のメディエーターの放出の阻害パーセントは、放出されたメディエーターの濃度の分光光度的読み取りなどにおいて、ペプチド化合物又はペプチド組成物の非存在下でのメディエーター放出と比較したときに決定される。
【0033】
[00038] 本開示のペプチド中での相対的なアミノ酸配列の位置の重要性を示すために、MARCKSタンパク質N末端領域(即ちMANS-ミリストイル化アルファ-N末端配列ペプチド)の24個のアミノ酸配列と同一であるペプチドによる放出炎症メディエーター量を抑制又は減少させる相対的能力を、MANS中に存在する同じ24個のアミノ酸残基を含有するが、MANSにおける配列順序に関してランダムな順序で並んでいるペプチド(即ちRNSペプチド、そうでなければ「ランダムN末端配列ペプチド」とも呼ばれる)による放出炎症メディエーター量を抑制又は減少させる能力と比較した。試験される細胞タイプのそれぞれにおいて、MANSペプチドは、0.5~3.0時間の時間コースにわたり炎症メディエーターの放出を濃度依存的に減弱させたが、RNSペプチドは減弱させなかった。これらの結果は、MARCKSタンパク質、具体的にはそのN末端領域及びより具体的にはその24個のアミノ酸残基N末端領域で見られる順序である本開示のペプチドにおける相対的なアミノ酸配列の配置が、白血球脱顆粒の阻害に対処する少なくとも1つの細胞内経路に関与することを示唆する。
【0034】
[00039] 表1は、それぞれ対応するペプチド数及び配列番号を伴う一文字略称方式でのアミノ酸配列のリストを含有する。参照ペプチドアミノ酸配列(MANSペプチド)はペプチド1として挙げる。参照アミノ酸配列の4~23個の連続アミノ酸のアミノ酸配列を有する本開示のペプチドのアミノ酸配列は、ペプチド2~231として挙げ、それとともにMANSペプチドのアミノ酸を含むランダムN末端配列(RNS)のアミノ酸配列はペプチド232として挙げる。本開示のペプチドのアミノ酸配列の代表的な変異体のアミノ酸配列は本明細書中に記載のとおりであり、またペプチド233~245及び247~251としても挙げる。列挙される変異体ペプチドがペプチドの限定グループであることは意図されず、本開示の変異体ペプチドの代表例とするためにのみ提供する。本開示のペプチド(ペプチド232)の、代表的なリバースアミノ酸配列(ペプチド246)及び代表的なランダムアミノ酸配列も示す。
【0035】
[00040] いくつかの態様では、本ペプチドは、表1で列挙されるアミノ酸配列の何れか1つに対して少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は少なくとも約99.5%同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、本ペプチドは、表1で列挙されるアミノ酸配列の何れか1つを含む。いくつかの態様では、本ペプチドは、表1で列挙されるアミノ酸配列の何れか1つからなる。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
【表4】
【0040】
【表5】
【0041】
【表6】
【0042】
【表7】
【0043】
【表8】
【0044】
【表9】
【0045】
[00041] いくつかの態様では、本ペプチドは表1Aで列挙されるペプチドの何れか1つである。
【0046】
【表10】
【0047】
[00042] 本開示は、MANSペプチドのアミノ酸配列に関連するアミノ酸配列とともに24個未満のアミノ酸を含むアミノ酸配列を有するペプチドを提供する。本開示のペプチドは、24個未満のアミノ酸を含有するアミノ酸配列からなり、8~14、10~12、9~14、9~13、10~13、10~14個、少なくとも9個、少なくとも10個などのアミノ酸からなり得る。本ペプチドは一般的には直鎖であるが、環状ペプチドでもあり得る。環状ペプチドは、環のような形又は環状の環構造を含有するペプチドである。環状の環構造は、例えば、ペプチドのアミノ及びカルボキシル末端の間又はカルボキシル若しくはアミノ末端と側鎖との間、又はペプチド骨格とカルボキシル若しくはアミノ末端若しくは側鎖との間、又はペプチド骨格上の2つの位置の間、又は2つの側鎖の間の連結を通じて形成され得る。連結は、アミド結合又は他の化学的に安定な結合を介して形成され得る。いくつかの実施形態では、本ペプチドはヘッドトゥテイルの環状ペプチドである。いくつかの実施形態では、本ペプチドは、PEGが付加されている(PEG付加)。PEG付加は、ポリエチレングリコール(PEG)鎖をペプチドに共有結合する過程である。いくつかの実施形態では、PEG付加は、ペプチドの溶解度を向上させ及び/又は半減期を延長し、及び/又は免疫原性を低下させる。従って、いくつかの実施形態では、ペプチド薬のペプチドPEG付加の治療的有効性及び/又は忍容性。いくつかの実施形態では、本ペプチドは合成ペプチドである。いくつかの実施形態では、本ペプチドは単離ペプチドである。
【0048】
[00043] いくつかの態様では、本ペプチドは、(a)参照配列、ペプチド1の4~23個の連続アミノ酸を有するアミノ酸配列;(b)(a)で定められるアミノ酸配列と少なくとも約75%、少なくとも約80%同一性、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%又は少なくとも約95%同一性を有する配列;又は(c)変異体が置換変異体、欠失変異体、付加変異体及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、(a)で定められるアミノ酸配列の変異体、からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0049】
[00044] いくつかの実施形態では、本ペプチドは、(a)参照配列、ペプチド1の8~14個の連続アミノ酸を有するアミノ酸配列;(b)(a)で定められる配列と少なくとも約75%、少なくとも約80%同一性、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%又は少なくとも約93%同一性を有するアミノ酸配列;又は(c)変異体が置換変異体、欠失変異体、付加変異体及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、(a)で定められるアミノ酸配列の変異体、からなる群から選択されるアミノ酸配を有する。
【0050】
[00045] また他の実施形態では、本ペプチドは、(a)参照配列、ペプチド1の10~12個の連続アミノ酸を有するアミノ酸配列;(b)(a)で定められる配列と少なくとも約75%、少なくとも約80%同一性、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%又は少なくとも約93%同一性を有するアミノ酸配列;又は(c)変異体が置換変異体、欠失変異体、付加変異体及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、(a)で定められるアミノ酸配列の変異体、からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0051】
[00046] さらなる実施形態では、本ペプチドは、参照配列の少なくとも9、少なくとも10、9~14、9~13、10~13、10~14などの連続アミノ酸、ペプチド1;それと少なくとも約75%、少なくとも約80%同一性、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%又は少なくとも約93%同一性を有するアミノ酸配列;又は置換変異体、欠失変異体、付加変異体及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるそれらの変異体を有するアミノ酸配列を有する。
【0052】
[00047] いくつかの実施形態では、本ペプチドのアミノ酸配列は、参照配列ペプチド1のN末端アミノ酸から始まる。例えば、本ペプチドは、(a)参照配列のN末端アミノ酸から始まる、参照配列ペプチド1の4~23個の連続アミノ酸を有するアミノ酸配列(即ちペプチド2、ペプチド4、ペプチド7、ペプチド11、ペプチド16、ペプチド22、ペプチド29、ペプチド37、ペプチド46、ペプチド56、ペプチド67、ペプチド79、ペプチド92、ペプチド106、ペプチド121、ペプチド137、ペプチド154、ペプチド172、ペプチド191又はペプチド211);(b)(a)で定められるアミノ酸配列と少なくとも約75%、少なくとも約80%同一性、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%又は少なくとも約95%同一性を有する配列;又は(c)(a)で定められるアミノ酸配列の変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を有し得る。これらのペプチドは、ミリストイル基を除き、N末端グリシン上で、化学的部分を全く含有しないか又は化学的部分を含有する。好ましくは、化学的部分は、アミド結合の形態での、アシル基、例えばアセチル基、又はアルキル基である。
【0053】
[00048] 他の実施形態では、本ペプチドのアミノ酸配列は、参照配列ペプチド1のC末端アミノ酸で終わる。例えば、本ペプチドは、(a)参照配列のC末端アミノ酸で終わる、参照配列ペプチド1の4~23個の連続アミノ酸を有するアミノ酸配列(即ちペプチド3、ペプチド6、ペプチド10、ペプチド15、ペプチド21、ペプチド28、ペプチド36、ペプチド45、ペプチド55、ペプチド66、ペプチド78、ペプチド91、ペプチド105、ペプチド120、ペプチド136、ペプチド153、ペプチド171、ペプチド190、ペプチド210又はペプチド231);(b)(a)で定められるアミノ酸配列と少なくとも約75%、少なくとも約80%同一性、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%又は少なくとも約95%同一性を有する配列;又は(c)(a)で定められるアミノ酸配列の変異体、からなる群から選択されるアミノ酸配列を有し得る。
【0054】
[00049] 他の実施形態では、本ペプチドのアミノ酸配列は、参照配列、ペプチド1、(配列番号1)のN末端アミノ酸で始まらないが、参照配列ペプチド1の位置2~位置21のアミノ酸で始まる。例えば、本ペプチドは、(a)参照配列の位置2~位置21の間の何れかのアミノ酸で始まる、参照配列ペプチド1の4~23個の連続アミノ酸を有するアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有し得る。これらのペプチドは、4~23個の連続アミノ酸長であり得、参照配列、ペプチド1の中間のペプチドに相当し得;(b)(a)で定められるアミノ酸配列と少なくとも約75%、少なくとも約80%同一性、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%又は少なくとも約95%同一性を有する配列;又は(c)(a)で定められるアミノ酸配列の変異体であり得る。これらのペプチドは、アミノ酸配列、配列番号1のN末端グリシン由来又はそれと同等なN末端グリシンではないN末端アミノ酸上で、共有結合される化学的部位を含有し得ないか、又は化学的部位を含有し得る。好ましくは、化学的部位は、アミド結合の形態の、アシル基、例えばアセチル基若しくはミリストイ基など、又はアルキル基である。
【0055】
[00050] また他の実施形態では、本ペプチドのアミノ酸配列は、参照配列ペプチド1のペプチド219におけるように、連続残基A、K、G及びEを含む。例えば、本ペプチドは、(a)参照配列ペプチド1の4~23個の連続アミノ酸を有するアミノ酸配列であり、本ペプチドのアミノ酸配列が参照ペプチド1のペプチド219におけるような連続残基A、K、G及びEを含むもの(例えばペプチド219、ペプチド45、ペプチド79、ペプチド67、ペプチド80など);(b)(a)で定められるアミノ酸配列と少なくとも約75%、少なくとも約80%同一性、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%又は少なくとも約95%同一性を有する配列;又は(c)(a)で定められるアミノ酸配列の変異体、からなる群から選択されるアミノ酸配列を有し得る。
【0056】
[00051] 別の実施形態では、好ましいペプチド配列は、(a)参照配列、ペプチド1の10~23個の連続アミノ酸を有するアミノ酸配列;(b)(a)で定められるアミノ酸配列と少なくとも約75%、少なくとも約80%同一性、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%又は少なくとも約95%同一性を有する配列;又は(c)置換変異体、欠失変異体、付加変異体及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、(a)で定められるアミノ酸配列の変異体、からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0057】
[00052] さらなる実施形態では、本ペプチドのアミノ酸配列は、参照配列ペプチド1のN末端アミノ酸から始まり、参照配列ペプチド1のペプチド219でのように連続残基A、K、G及びEを含み、一方で他の実施形態では、本ペプチドのアミノ酸配列は、参照配列ペプチド1のC末端アミノ酸で終わり、参照配列ペプチド1のペプチド219でのように連続残基A、K、G及びEを含む。
【0058】
[00053] いくつかの態様では、本ペプチドは、配列番号1の少なくとも2個~少なくとも12個のアミノ酸、例えば配列番号1の少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個又は少なくとも10個の連続アミノ酸残基からなる。
【0059】
[00054] 代表的な態様では、本ペプチドはN末端アミノ酸においてアセチル化されている。代表的な態様では、本ペプチドは、配列番号106のアミノ酸配列を含み、N末端アミノ酸でアセチル化されている。
【0060】
[00055] いくつかの態様では、本ペプチドは、N末端アミノ酸においてミリストイル化されており、及び/又はC末端アミノ酸においてアンモニアによりアミド化されている。
【0061】
[00056] いくつかの態様では、本ペプチドは、(a)参照配列、GAQFSKTAAKGEAAAERPGEAAVA(配列番号1)の4~23個の連続アミノ酸を有するアミノ酸配列であり、(a)のアミノ酸配列のN末端アミノ酸が、参照配列、GAQFSKTAAKGEAAAERPGEAAVA(配列番号1)のアミノ酸位置2~21から選択される、アミノ酸配列を含む。さらに、これらのペプチドは、N末端アミノ酸においてミリストイル化され得、またC末端アミノ酸においてアンモニアによりアミド化され得る。より好ましいペプチド断片の長さは、少なくとも6個のアミノ酸~23個のアミノ酸である。
【0062】
[00057] いくつかの態様では、本ペプチドは、
(a)参照配列、GAQFSKTAAKGEAAAERPGEAAVA(配列番号1)の4~23個の連続アミノ酸を有するアミノ酸配列;
(b)配列、GAQFSKTAAKGEAAAERPGEAAVA(配列番号1)を有するアミノ酸配列;又は
(c)(a)で定められる配列と少なくとも約75%、少なくとも約80%同一性、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%又は少なくとも約95%同一性を有するアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有し、
本ペプチドのC末端アミノ酸は任意選択的に、独立して化学的に修飾され、本ペプチドのN末端アミノ酸は、独立して、C2~C13飽和又は不飽和脂肪族カルボン酸、C14飽和又は不飽和脂肪族カルボン酸、C15~C24飽和又は不飽和脂肪族カルボン酸及びトリフルオロ酢酸からなる群から選択されるカルボン酸でのアシル化により化学的に修飾されるか、又は化学的に修飾されず、ただし、前記ペプチドは、そのアミノ酸配列がC2~C13飽和若しくは不飽和脂肪族カルボン酸、C14不飽和脂肪族カルボン酸、C15~C24飽和若しくは不飽和脂肪族カルボン酸及びトリフルオロ酢酸からなる群から選択されるカルボン酸のみでのアシル化によって参照配列の配列GAQFで始まる場合、アシル化によって修飾されるか、又は化学的に修飾されないものとし、前記ペプチドは、任意選択的に、薬学的に許容可能な担体と、前記少なくとも1つのペプチドの非存在下で起こる炎症性細胞の同じタイプの少なくとも1つからの前記炎症メディエーターの放出と比較した場合に少なくとも1つの炎症性細胞からの前記炎症メディエーターの放出を減少させるための治療的に有効な炎症メディエーター放出減少量で、組み合わせられる。
【0063】
[00058] 本ペプチドは、上記の(a)のアミノ酸配列、(a)参照配列、GAQFSKTAAKGEAAAERPGEAAVA(配列番号1)の4~23個の連続アミノ酸を有するアミノ酸配列をさらに含み得、ここで、(a)のアミノ酸配列のN末端アミノ酸は、参照配列、GAQFSKTAAKGEAAAERPGEAAVA(配列番号1)のアミノ酸位置2~21から選択される。このペプチドは、さらに、そのN末端アミノ酸においてミリストイル化若しくはアセチル化され得るか、又は任意選択的にC末端アミノ酸においてアンモニアによりアミド化され得る。
【0064】
[00059] MANS由来のペプチド及びその使用方法は、両方とも全ての目的に対してそれらの全体において参照により本明細書中で組み込まれる米国特許第7,524,926号及び同第8,999,915号でさらに記載される。
【0065】
[00060] 特定の実施形態では、本ペプチド配列は、配列番号79、106、121、137及び219からなる群から選択される。
【0066】
[00061] MARCKSのN末端配列由来の修飾ペプチド
[00062] いくつかの態様では、本明細書中で開示されるペプチドの何れか1つが化学的に修飾され得、例えば表1又は表1Aで列挙されるペプチドのうち何れか1つが化学的に修飾され得る。
【0067】
[00063] いくつかの態様では、本明細書中で開示されるペプチドの何れか1つは、例えば(i)例えばC1又は好ましくはC2(酢酸)~C22カルボン酸などによるN末端アミン基(H2N-ペプチド-)におけるアミド形成;(ii)例えばアンモニアなどでの、又はC1~C22一級若しくは二級アミンでの、C末端カルボキシル基(-ペプチド-COOH)におけるアミド形成;及び(iii)それらの組み合わせからなる群から選択され得る化学的修飾によって、化学的に修飾され得る。
【0068】
[0064] いくつかの態様では、本ペプチドのアミノ酸のうち1つ以上(例えばN末端及び/又はC末端アミノ酸)は、任意選択的に、独立して化学的に修飾され;いくつかの実施形態では、ペプチドの1つ以上のアミノ酸が化学的に修飾され、一方で、他の実施形態では、本ペプチドのアミノ酸のうち、化学的に修飾されるものはない。一態様では、好ましい修飾は、ペプチド又はペプチドセグメントのN末端アミノ酸のアミン(-NH)基で起こり得る(N末端位置ではなくペプチド配列内で内部に存在するならば、アミン基はペプチドアミド結合を形成する)。別の態様では、好ましい修飾は、ペプチド又はペプチドセグメントのC末端アミノ酸のカルボキシ(-COOH)基で起こり得る(C末端位置ではなく、ペプチド配列内で内部に存在するならば、カルボキシ基はペプチドアミド結合を形成する)。別の態様では、好ましい修飾は、N末端アミン(-NH)基及びC末端カルボキシル(-COOH)基の両方で起こり得る。
【0069】
[00065] 本ペプチドは、参照アミノ酸配列に対して、1つ以上のアミノ酸欠失、置換及び/又は付加を含み得る。好ましくは、置換は、保存的アミノ酸置換であり得るか、又は置換は、非保存的アミノ酸置換であり得る。本開示のペプチドにおいて参照アミノ酸配列でなされ得るアミノ酸置換としては、次のものが挙げられるが限定されない:アラニン(A)は、リジン(K)、バリン(V)、ロイシン(L)又はイソロイシン(I)で置換され得;グルタミン酸(E)はアスパラギン酸(D)で置換され得;グリシン(G)はプロリン(P)で置換され得;リジン(K)は、アルギニン(R)、グルタミン(Q)又はアスパラギン(N)で置換され得;フェニルアラニン(F)は、ロイシン(L)、バリン(V)、イソロイシン(I)又はアラニン(A)で置換され得;プロリン(P)は、グリシン(G)で置換され得;グルタミン(Q)は、グルタミン酸(E)又はアスパラギン(N)で置換され得;アルギニン(R)は、リジン(K)、グルタミン(Q)又はアスパラギン(N)で置換され得;セリン(S)は、スレオニンで置換され得;スレオニン(T)は、セリン(S)で置換され得;バリン(V)は、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、メチオニン(M)、フェニルアラニン(F)、アラニン(A)又はノルロイシン(Nle)で置換され得る。例えば、本開示のペプチドにおいて参照アミノ酸配列に対してなされ得る置換としては、フェニルアラニン(F)をアラニン(A)に置換(例えば参照アミノ酸配列のアミノ酸位置4で)、グルタミン(Q)をグルタミン酸(E)に(例えば参照アミノ酸配列のアミノ酸位置3で)、アラニン(A)をリジン(K)に(例えば参照アミノ酸配列のアミノ酸位置2及び/又は8で)、及び/又はスレオニン(T)をセリン(S)に(例えば参照アミノ酸配列のアミノ酸位置7で)置換することが挙げられる。
【0070】
[00066] ペプチド79、12マーの置換変異体の例としては、例えば、ペプチド79中の位置3のQが配列238中でEにより置換されている、ペプチド238;ペプチド79の位置2のAがペプチド233中でKにより置換されている、ペプチド233;ペプチド79の位置8のAがペプチド234中でKにより置換されている、ペプチド234;ペプチド79の位置2及び8のAがペプチド235中でKにより置換されている、ペプチド235;ペプチド79中の位置4のFがペプチド237中でAにより置換されている、ペプチド237;ペプチド79中の位置10のKがペプチド239中でAにより置換されている、ペプチド239;ペプチド79中の位置11のGがペプチド240中でAにより置換されている、ペプチド240;及びペプチド79中の位置12のEがペプチド241中でAにより置換されている、ペプチド241が挙げられる。
【0071】
[00067] ペプチド106、10-merの置換変異体の例としては、例えば、ペプチド106の位置4のFがペプチド236中でAにより置換されている、ペプチド236;ペプチド106の位置1のGがペプチド242中でAにより置換されている、ペプチド242;ペプチド106の位置3のQがペプチド243中でAにより置換されている、ペプチド243;ペプチド106の位置5のSがペプチド244中でAにより置換されている、ペプチド244;ペプチド106の位置6のKがペプチド245中でAにより置換されている、ペプチド245;ペプチド106の位置7のTがペプチド247中でAにより置換されている、ペプチド247;ペプチド106の位置10のKがペプチド248中でAにより置換されている、ペプチド248;ペプチド106の位置6及び10のKが両方ともペプチド249中でそれぞれAにより置換されている、ペプチド249が挙げられる。
【0072】
[00068] ペプチド137、8-merの置換変異体の例としては、例えば、ペプチド137の位置4のFがペプチド250中でAにより置換されている、ペプチド250が挙げられる。
【0073】
[00069] ペプチド219、4-merの置換変異体の例としては、例えば、ペプチド219の位置2のKがペプチド251中でAにより置換されている、ペプチド251が挙げられる。
【0074】
[00070] 本明細書中で記載のものなどの置換変異体ペプチドは、単離ペプチドの形態又は化学修飾ペプチドの形態、例えば、本明細書中に記載のような、ミリストイルアミド、アセチルアミドなどのN末端アミド及び、例えば、アンモニアにより形成されるアミドなどのC末端アミドなど、及びN末端アミド及びC末端アミドの両方など、であり得る。
【0075】
[00071] いくつかの態様では、本ペプチドのアミノ酸のうち1つ以上がまた化学修飾され得る。当技術分野で公知の何れかのアミノ酸修飾は、当技術分野で公知の何れかの方法を使用して本ペプチドのアミノ酸に対してなされ得る。
【0076】
[00072] いくつかの実施形態では、N末端及び/又はC末端アミノ酸が修飾され得る。例えば、本ペプチドのN末端アミノ酸は、N末端(N末端)アミノ(-H2N-)基においてアルキル化、アミド化又はアシル化され得、例えば本ペプチドのC末端アミノ酸は、C末端カルボキシル(-COOH)基においてアミド化又はエステル化され得る。例えば、N末端アミノ基は、アセチル基(即ちCH3-C(=O)-又はミリストイル基、これらの両者とも現在好ましい基である)を含め、アミドを形成するために何らかのアシル又は脂肪アシル基を含むようにアシル化により修飾され得る。いくつかの実施形態では、N末端アミノ基は、式-C(O)R(式中、Rは、1~15個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状アルキル基である)を有するアシル基を含むように修飾され得るか、又は式-C(O)R1(式中、R1は、1~15個の炭素原子を有する直鎖状アルキル基である)を有するアシル基を含むように修飾され得る。N-アミドは、ホルムアミド(R=H)でもあり得る。本ペプチドのC末端アミノ酸もまた化学修飾され得る。例えば、C末端アミノ酸のC末端カルボキシル基は、カルボキシル基の代わりにカルボキサミド基への変換によって化学修飾され得る(即ちアミド化)。いくつかの実施形態では、N末端及び/又はC末端アミノ酸は化学修飾されない。いくつかの実施形態では、N末端基が修飾され、C末端基は修飾されない。いくつかの実施形態では、N末端及びC末端の両方が修飾される。
【0077】
[00073] 本ペプチドは、N末端アミノ酸のアミノ基においてアシル化されて、次のものからなる群から選択される酸によりN末端アミドを形成し得る:
(i-a)直鎖状、分岐状(C3より大きい)であり得るか又は環を含み得る(C3より大きい)、C2(アセチル)~C13脂肪族(飽和又は任意選択的に不飽和)カルボン酸(例えば、酢酸(好ましい基である)、プロパン酸、ブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸によるN末端アミド);
(i-b)直鎖状、分岐状であり得るか又は環を含み得る、飽和C14脂肪族カルボン酸;
(i-c)直鎖状、分岐状であり得るか又は環を含み得る、不飽和C14脂肪族カルボン酸;
(i-d)直鎖状、分岐状であり得るか又は環を含み得る、C15~C24脂肪族(飽和又は任意選択的に不飽和)カルボン酸(例えば、テトラデカン酸(好ましい基であるミリスチン酸)による、ヘキサデカン酸による、9-ヘキサデカン酸による、オクタデカン酸による、9-オクタデカン酸による、11-オクタデカン酸による、9,12-オクタデカジエン酸による、9,12,15-オクタデカトリエン酸による、6,9,12-オクタデカトリエン酸による、エイコサン酸による、9-エイコセン酸による、5,8,11,14-エイコサテトラエン酸による、5,8,11,14,17-エイコサペンタエン酸による、ドコサン酸による、13-ドコセン酸による、4,7,10,13,16,19-ドコサヘキサエン酸による、テトラコサン酸によるなど);
(ii)トリフルオロ酢酸;
(iii)安息香酸;及び
(iv-a)脂肪族アルキルスルホンアミドを形成するC1~C12脂肪族アルキルスルホン酸(ここで、スルホン酸のC1~C12脂肪族アルキル炭素鎖構造は、上記の脂肪族アルキルカルボン酸中の脂肪族アルキルカルボン酸鎖の構造と類似している)。例えば、ペプチドは、(C1-C11-アルキル-C(O)-NH-ペプチドとして表されるアミドを形成させるために、カルボン酸基の活性化によって、脱水カップリングを通じて、(C1-C11)-アルキル-C(O)OHとして表されるカルボン酸基を使用してアシル化され得る。同様に、スルホン酸種((C1-C12)-アルキル-S(O2)-Xとして表され、例えば式中、Xはハロゲン又はOCH3又は他の適合性の脱離基である)をN末端アミノ基と反応させて、(C1-C12)-アルキル-S(O2)-NH-ペプチドとして表されるスルホンアミドを形成させることによって、スルホンアミドが形成され得る。
(iv-b)脂肪族アルキルスルホンアミドを形成するC14~C24脂肪族アルキルスルホン酸(ここで、スルホン酸のC14~C24脂肪族アルキル炭素鎖構造は上記の脂肪族アルキルカルボン酸中の脂肪族アルキルカルボン酸鎖の構造と類似している)。例えば、(C13-C23)-アルキル-C(O)-NH-ペプチドとして表されるアミドを形成させるためにカルボン酸基の活性化による脱水カップリングを通じて(C13-C23)-アルキル-C(O)OHとして表されるカルボン酸基を使用して、ペプチドがアシル化され得る。同様に、スルホンアミドは、スルホン酸種((C14-C24)-アルキル-S(O2)-Xとして表される、例えば式中、Xはハロゲン又はOCH3又は他の適合する脱離基である)をN末端アミノ基と反応させて、(C14-C24)-アルキル-S(O2)-NH-ペプチドとして表されるスルホンアミドを形成させることによって形成され得る。
【0078】
[00074] いくつかの態様では、N末端アミノ酸のN末端アミノ基は、C1~C12脂肪族アルキル基でアルキル化され得、この脂肪族アルキル基の構造は上記のとおりである。例えば、脂肪族アルキルハロゲン化物又は脂肪族アルキルスルホン酸エステル(メシラート、トシラートなど)を使用して、好ましくは一級アルキルハロゲン化物又は一級アルキルスルホン酸エステルを使用して、アルキル化が引き起こされ得る。N末端アミノ酸は、アセチル基(即ち、好ましい基である-C(O)CH3)、ミリストイル基(好ましい基である)、ブタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、9-ヘキサデセノイル基、オクタデカノイル基、9-オクタデセノイル基、11-オクタデセノイル基、9,12-オクタデカジエノイル基、9,12,15-オクタデカトリエノイル基、6,9,12-オクタデカトリエノイル基、エイコサノイル基、9-エイコセノイル基、5,8,11,14-エイコサテトラエノイル基、5,8,11,14,17-エイコサペンタエノイル基、ドコサノイル基、13-ドコセノイル基、4,7,10,13,16,19-ドコサヘキサエノイル基、テトラコサノイル基を含め、アミドとして何れかのアシル又は脂肪族アシル脂肪アシル基を含むように、末端アミノでも修飾され得、これらの基はアミド結合によりペプチドの末端アミノ基に共有結合される。
【0079】
[00075] 本開示のペプチドのC末端アミノ酸のC末端カルボン酸基もまた化学的に修飾され得る。例えば、C末端アミノ酸は、好ましい基であるアンモニアのアミド;C1~C12脂肪族アルキルアミン、好ましくは直鎖状脂肪族アルキルアミンのアミド;ヒドロキシル置換されたC2~C12脂肪族アルキルアミンのアミド;直鎖状2-(C1~C12脂肪族アルキル)オキシエチルアミン基のアミド;及びnが0~10である、オメガ-メトキシ-ポリ(エチレンオキシ)n-エチルアミン基(オメガ-メトキシ-PEG-アルファ-アミン基又はオメガ-メトキシ-(ポリエチレングリコール)アミン基とも呼ばれる)のアミドなど、アミド基を形成させるための本ペプチドのC末端カルボン酸基のアミンとの反応によって、化学的に修飾され得る。本ペプチドのC末端アミノ酸のC末端カルボン酸基は、C1~C12脂肪族アルキルアルコールのエステル及び2-(オメガ-メトキシ-ポリ(エチレンオキシ)n)-エタノール(MPEG)基(式中、nは0~10である)のエステルからなる群から選択されるエステルの形態でもあり得る。一態様では、PEGエステル、MPEGエステル、PEGアミド、MPEGアミドなどのポリエチレングリコール構成要素は好ましくは、約500~40,000ダルトン、より好ましくは1000~25,000ダルトン及び最も好ましくは約1000~約10,000ダルトンの分子量を有する。
【0080】
[00076] 式ペプチド-C(O)OHにより表され得る本ペプチド上のC末端カルボン酸基はまた、アンモニア又は一級若しくは二級アミン、好ましくはアンモニア又は一級アミンとの反応を促進するために、カルボン酸ハロゲン化物、カルボン酸無水物、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、ペンタフルオロフェニル(OPfp)エステル、3-ヒドロキシ-2,3-ジヒドロ-4-オキソ-ベンゾ-トリアゾン(ODhbt)エステルなどの活性化形態への変換によってアミド化され得、好ましくは一方で、本ペプチド中の何らかの他の反応基は、ベンジルエステル、t-ブチルエステル、フェニルエステルなど、特にペプチド固相合成のペプチド合成の技術分野で周知である合成された化学的に適合する保護基により保護される。得られたペプチドアミドは、式ペプチド-C(O)-NR3R4(アミドは本ペプチドのC末端である)によって表され得、式中、R3及びR4は、独立して、水素;C1~C12アルキル、例えばメチル、エチル、ブチル、イソブチル、シクロプロピルメチル、ヘキシル、ドデシル、及び任意選択的により高い、例えばテトラデシルなどのC14~C24及び上記のような同等物からなる群から選択される。
【0081】
[00077] C末端アミノ酸のC末端カルボン酸は、2-ヒドロキシエチルアミン、4-ヒドロキシブチルアミン及び12-ヒドロキシドデシルアミンなどのヒドロキシル置換C2~C12脂肪族アルキルアミン(ヒドロキシル基はアミンの窒素原子ではなく炭素原子に結合されている)のアミドにも変換され得る。
【0082】
[00078] C末端カルボン酸は、ヒドロキシル置換C2~C12脂肪族アルキルアミンのアミドにも変換され得、ヒドロキシル基は、アシル化されて、上記のようにC2~C12脂肪族カルボン酸とのエステルを形成し得る。好ましくは、式ペプチド-C(O)NR5R6により表される本ペプチドのC末端のペプチドアミドにおいて、R5は水素であり、R6は、水素、C1~C12アルキル及びヒドロキシル置換C2~C12アルキルからなる群から選択される。
【0083】
[00079] C末端アミノ酸のC末端カルボン酸は、直鎖状2-(C1~C12脂肪族アルキル)オキシエチルアミンのアミドへ変換され得る。このようなアミドは、例えば、2-クロロエタノールを伴うジグリム中での直鎖状C1~C12脂肪族アルコールの水素化カリウムとの反応を行って直鎖状C1~C12脂肪族アルキルエタノールを提供し、これをアルデヒドへの酸化によってアミンに変換し得、続いてアミンへの還元的なアミン化(例えばアンモニアを使用)を行うことにより、又はアルキルハロゲン化物(例えば塩化チオニルを使用)への変換とそれに続くアンモニアなどのアミンでの処理によって、調製され得る。
【0084】
[00080] C末端アミノ酸のC末端カルボン酸は、直鎖状PEG-アミン(例えばオメガ-ヒドロキシ-PEG-アルファ-アミン;オメガ-(C1~C12)-PEG-アルファ-アミン、例えばオメガ-メトキシ-PEG-アルファ-アミンなど、即ちMPEG-アミン)のアミドに変換され得る。一態様では、ポリエチレングリコール又はPEG構成成分は、好ましくは約500~40,000ダルトン、より好ましくは1000~25,000ダルトン及び最も好ましくは約1000~約10,000ダルトンの分子量を有する。
【0085】
[00081] C末端アミノ酸のC末端カルボン酸は、オメガ-メトキシ-ポリ(エチレンオキシ)n-エチルアミンのアミドにもまた変換され得、ここでnは0~10であり、対応するオメガ-メトキシ-ポリ(エチレンオキシ)n-エタノールから、例えばアルコールから上記のようなアミンへの変換によって調製され得る。
【0086】
[00082] 別の実施形態では、C末端カルボキシルは、式ペプチド-C(O)-NR7R8により表されるアミドに変換され得、式中、R7は水素であり、R8は、直鎖状2-(C1~C12脂肪族アルキル)オキシエチル基であり、式中、C1~C12脂肪族アルキル部分は上記のとおりであり、メトキシエチル(即ちCH3O-CH2CH2-)、2-ドデシルオキシエチルなどの基を含むか;又はR7は水素であり、R8は、オメガ-メトキシ-ポリ(エチレンオキシ)n-エチル基であり、式中、ポリ(エチレンオキシ)部分のnは、0~10であり、例えば2-メトキシエチル(即ちCH3O-CH2CH2-)、オメガ-メトキシエトキシエチル(即ちCH3O-CH2CH2O-CH2CH2-)、最大CH3O-(CH2CH2O)10-CH2CH2-である。
【0087】
[00083] 本ペプチドのC末端アミノ酸のC末端カルボン酸基は、C1~C12脂肪族アルキルアルコールのエステル、上述のようなアルコールの脂肪族アルキル部分の形態でもあり得る。本ペプチドのC末端アミノ酸のC末端カルボン酸基は、nが0~10である2-(オメガ-メトキシ-ポリ(エチレンオキシ)n)-エタノール基のエステルの形態でもあり得、これは、エチレンオキシドの化学量論的な量、nの大きさに依存する化学量論的な量とナトリウム2-メトキシエタノラートとしての2-メトキシエタノールの反応から調製され得る。
【0088】
[00084] 本ペプチドのアミノ酸における側鎖もまた化学的に修飾され得る。例えば、フェニルアラニン又はチロシン中のフェニル基は、次のものからなる群から選択される置換基で置換され得る。
C1~C24脂肪族アルキル基(即ち、直鎖状又は分岐状及び/又は飽和又は不飽和及び/又は環状基を含有)、例えばメチル(好ましい)、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、シクロプロピル、2-メチルシクロプロピル、シクロへキシル、オクチル、デシル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、エイコサニル、ドコサニル、テトラコサニル、9-ヘキサデセニル、9-オクタデセニル、11-オクタデセニル、9,12-オクタデカジエニル、9,12,15-オクタデカトリエニル、6,9,12-オクタデカトリエニル、9-エイコセニル、5,8,11,14-エイコサテトラエニル、5,8,11,14,17-エイコサペンタエニル、13-ドコセニル及び4,7,10,13,16,19-ドコサヘキサエニル;
少なくとも1つの炭素原子が不飽和部位から除去されたヒドロキシル基で置換されるC1~C12脂肪族アルキル基、そのヒドロキシアルキル基の例としては、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシドデシルなどが挙げられる;
酢酸、ブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、9-ヘキサデセン酸、オクタデカン酸、9-オクタデカン酸、11-オクタデカン酸、9,12-オクタデカジエン酸、9,12,15-オクタデカトリエン酸、6,9,12-オクタデカトリエン酸、エイコサン酸、9-エイコセン酸、5,8,11,14-エイコサテトラエン酸、5,8,11,14,17-エイコサペンタエン酸、ドコサン酸、13-ドコセン酸、4,7,10,13,16,19-ドコサヘキサエン酸、テトラコサン酸など、ジカルボン酸、例えばコハク酸、又はヒドロキシ酸、例えば乳酸などの酸のC2~C25脂肪族カルボキシル基でエステル化されるヒドロキシル基で置換されるC1~C12アルキル基であり、エステル置換基の炭素原子の総数が3~25であるもの;
ハロゲン、例えばフルオロ-、クロロ-、ブロモ-及びヨード-;ニトロ-;
アミノ-、例えばNH2、メチルアミノ、ジメチルアミノ;トリフルオロメチル-;
カルボキシル(-COOH);
C1~C24アルコキシ(チロシンのアルキル化により形成され得るものなど)、例えばメトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブチルオキシ、イソブチルオキシ、シクロプロピルオキシ、2-メトキシシクロプロピルオキシ、シクロヘキシルオキシ、オクチルオキシ、デシルオキシ、ドデシルオキシ、ヘキサデシルオキシ、オクタデシルオキシ、エイコサニルオキシ、ドコサニルオキシ、テトラコサニルオキシ、9-ヘキサデセニルオキシ、9-オクタデセニルオキシ、11-オクタデセニルオキシ、9,12-オクタデカジエニルオキシ、9,12,15-オクタデカトリエニルオキシ、6,9,12-オクタデカトリエニルオキシ、9-エイコセニルオキシ、5,8,11,14-エイコサテトラエニルオキシ、5,8,11,14,17-エイコサペンタエニルオキシ、13-ドコセニルオキシ及び4,7,10,13,16,19-ドコサヘキサエニルオキシ;及び
C2~C12ヒドロキシアルキルオキシ、例えば2-ヒドロキシエチルオキシ及び上記のようなカルボン酸と又はトリフルオロ酢酸とのそのエステル。
【0089】
[00085] セリンヒドロキシル基は、次のものからなる群から選択される置換基でエステル化され得る:
上記のようなものなどのC2~C12脂肪族カルボン酸基;
トリフルオロ酢酸基;及び
安息香酸基。
【0090】
[0086] リジン中のイプシロンアミノ基は、例えば、上記のようなものなどのC2~C12脂肪族カルボン酸基(例えば、酸塩化物、無水物、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、ペンタフルオロフェニル(OPfp)エステル、3-ヒドロキシ-2,3-ジヒドロ-4-オキソ-ベンゾ-トリアゾン(ODhbt)エステルなど、化学的に活性化されたカルボン酸の形態とのアミンの反応による)、又は安息香酸基又はアミノ酸基とのアミド形成によって、化学的に修飾され得る。さらに、リジン中のイプシロンアミノ基は、1個又は2個のC1~C4脂肪族アルキル基でのアルキル化によって化学的に修飾され得る。
【0091】
[00087] グルタミン酸中のカルボン酸基は、アンモニア;メチルアミンを伴うものを含むC1~C12一級脂肪族アルキルアミン(そのアルキル部分は上記のとおり);又はアミノ酸のアミノ基などのアミンとのアミドの形成によって修飾され得る。
【0092】
[00088] グルタミン酸中のカルボン酸基は、上述のようなC1~C12脂肪族ヒドロキシアルキル基とのエステル、好ましくは上記のような、メタノール、エタノール、プロパン-1-オール、n-ドデカノールなどのC1~C12脂肪族アルキルの一級アルコールとのエステルの形成によって修飾され得る。
【0093】
[00089] いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書中で提供されるペプチド及びその塩を含む組成物を提供する。例えば、いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書中で提供されるペプチド及び薬学的に許容可能なその塩を包含する。薬学的に許容可能な本開示のペプチドの塩としては、例えば、その酸又は塩基性塩を生成させることにより修飾されるペプチドが挙げられる。酸付加塩の例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、カンファスルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パルモ酸塩(palmoate)、ペクチン酸塩(pectinate)、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩及びウンデカン酸塩が挙げられる。塩基性塩としては、アンモニウム塩、アルカリ金属塩、例えばナトリウム及びカリウム塩など、アルカリ土類金属塩、例えばカルシウム及びマグネシウム塩など、有機塩基との塩、例えばジシクロヘキシルアミン塩、N-メチル-D-グルタミン及び、アルギニン、リジンなどのアミノ酸との塩が挙げられる。また、塩基性窒素含有基は、低級アルキルハロゲン化物、例えばメチル、エチル、プロピル及びブチル塩化物、臭化物及びヨウ化物;ジメチル、ジエチル、ジブチルのようなジアルキル硫酸塩;及びジアミル硫酸塩、長鎖ハロゲン化物、例えばデシル、ラウリル、ミリスチル及びステアリル塩化物、臭化物及びヨウ化物など、ベンジル及びフェネチル臭化物などのようなアラルキルハロゲン化物などの薬剤で四級化され得る。
【0094】
[00090] 特定の実施形態では、修飾ペプチドは、BIO-11211、BIO-11000、BIO-11002、BIO-11005、BIO-11007、BIO-110018、BIO-11026、BIO-10901、BIO-10803、BIO-91200、BIO-91201及びBIO-91202からなる群から選択される。
【0095】
医薬組成物
[00091] いくつかの態様では、本明細書中で開示されるペプチドの何れか1つは、ぶどう膜炎の進行を阻止するために有用な医薬組成物中に含有される。本開示はまた、治療的有効量の本明細書中で開示されるペプチドの何れか1つの投与を含む、対象において細胞分泌過程を阻害するための方法も含む。
【0096】
[00092] 本開示は、上の段落に記載及び本明細書中に記載のようなペプチドと、賦形剤と、を含む組成物も包含する。本開示は、上の段落に記載及び本明細書中に記載のようなペプチド及び薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物も包含する。本医薬組成物は、さらに好ましくは無菌、滅菌可能又は滅菌されるものであり得る。これらのペプチドは、投与に有用な試薬とともにキット中に含有され得る。
【0097】
[00093] 一態様では、本開示は、医薬組成物を投与する方法に関する。本医薬組成物は、治療的有効量の既知の化合物と、薬学的に許容可能な担体と、を含む。薬学的に許容可能な担体は、好ましくは液体剤形である。液体調製物が使用され得、溶液又は懸濁液、例えば有効成分を含有する溶液、及び水、グリセロール及びプロピレングリコールの混合物の形態で調製され得る。必要に応じて、このような液体調製物は、次のもののうち1つ以上:増粘剤、例えばカルボキシメチルセルロースも使用され得、他の許容可能な担体を含み得、この選択は当技術分野で公知である。
【0098】
[00094] 特定の実施形態では、製剤は固体医薬組成物中に存在する。本開示による対象となる固体組成物は、賦形剤とともに形成され得、混合され得、及び/又は賦形剤により希釈され得る。対象の固体組成物は担体内にも封入され得、これは例えばカプセル、サシェ、錠剤、紙又は他の容器の形態であり得る。賦形剤が希釈剤として働く場合、これは、対象組成物に対するビヒクル、担体又は媒体として作用する固体、半固体、ゲル又は液体物質であり得る。眼への投与の場合、本明細書中で開示されるペプチドの何れか1つを伴う製剤処方物は、点眼薬、眼用ゲル、軟膏、軟膏、埋め込み物、ミクロスフェア又はリポソーム性処方物又はマイクロエマルションの形態で調製され得る。
【0099】
[00095] 様々な適切な賦形剤は、当業者により理解され、2404~2406頁の開示がそれらの全体において本明細書中に組み込まれるNational Formulary,19:2404-2406(2000)で見出され得る。適切な賦形剤の例としては、デンプン、アラビアゴム、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース、メタクリラート、シェラック、ポリビニルピロリドン、セルロース、水及びメチルセルロースが挙げられるが限定されない。製剤処方物はさらに、滑沢剤、例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム及び鉱油など;湿潤剤;乳化及び懸濁剤;保存剤、例えばヒドロキシ安息香酸メチル-及びプロピルなどを含み得る。ポリオール、緩衝液及び不活性充填剤も使用し得る。ポリオールの例としては、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、スクロース、マルトース、グルコース、ラクトース、デキストロースなどが挙げられるが限定されない。適切な緩衝液としては、リン酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸緩衝液などが挙げられるが限定されない。使用され得る他の不活性充填剤としては、当技術分野で公知であり、様々な剤形の製造において有用であるものが挙げられる。必要に応じて、固体処方物は、増量剤及び/又は造粒剤などの他の構成要素を含み得る。本開示の製剤は、当技術分野で周知の手順を使用することによる患者への投与後の有効成分の速放性、持続放出又は遅延放出性を提供するように処方され得る。
【0100】
[00096] 上の医薬品が非経口又は眼内投与のために使用されるべき事象において、このような処方物は、本開示の対象組成物を含む、無菌水性注射溶液、非水性注射溶液又は両方を含み得る。水性注射溶液が調製される場合、本対象組成物は、水溶性の薬学的に許容可能な塩として存在し得る。非経口又は眼内調製物は、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤及び、処方物を意図する受容者の血液と等張にする溶質を含有し得る。水性及び非水性無菌懸濁液は、懸濁剤及び増粘剤を含み得る。本処方物は、単位用量又は複数回投与容器、例えば密封アンプル及びバイアル中に存在し得る。即時注射溶液及び懸濁液は、以前に記載された種類の無菌粉末、顆粒剤及び錠剤から調製され得る。非経口又は眼内処方物は、リポソーム性組成物としてでもあり得る。
【0101】
[00097] 本対象組成物は、これが局所投与(例えば眼への点眼又はゲル又はクリーム)に適切であり得るようにも処方され得る。これらの処方物は、当業者にとって公知の様々な賦形剤を含有し得る。適切な賦形剤としては、セチルエステルワックス、セチルアルコール、白色ワックス、モノステアリン酸グリセリル、プロピレングリコール、モノステアラート、メチルステアラート、ベンジルアルコール、ラウリル硫酸ナトリウム、グリセリン、鉱油、水、カルボマー、エチルアルコール、アクリラート接着剤、ポリイソブチレン接着剤及びシリコーン接着剤が挙げられ得るが限定されない。
【0102】
ぶどう膜炎を処置する方法
[00098] 本開示は、本明細書中で開示されるペプチドの何れか1つを対象に投与することによって、対象においてぶどう膜炎を処置する方法を提供する。いくつかの態様では、本方法は、表1又は表1Aで挙げられるペプチドの何れか1つを対象に投与することを含む。本開示は、本明細書中で開示されるペプチドの何れか1つを含む組成物を対象に投与することによって、対象においてぶどう膜炎を処置する方法をさらに提供する。
【0103】
[00099] 本開示は、炎症性細胞からの炎症メディエーターのMARCKS関連放出を含む、眼での、特に白血球などの細胞の、MARCKS関連細胞遊走過程を阻止するための方法を提供する。
【0104】
[000100] 本開示は、その細胞の小胞内に含有される少なくとも1つの炎症メディエーターを含む、眼における少なくとも1つの炎症性細胞を、少なくとも1つのペプチドの非存在下で起こる同じタイプの炎症性細胞からの炎症メディエーターの放出と比較したときに炎症性細胞からの炎症メディエーターの放出を減少させるための有効量の本明細書中で開示されるペプチドと接触させることを含む、少なくとも1つの炎症性細胞からの少なくとも1つの炎症メディエーターのエキソサイトーシス放出を阻害する方法も提供する。
【0105】
[000101] いくつかの態様では、炎症性細胞は、白血球、顆粒球、好塩基球、好酸球、単球、マクロファージ又はそれらの組み合わせである。いくつかの態様では、少なくとも1つの炎症性細胞の少なくとも1つの顆粒から放出される炎症メディエーターは、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)、好酸球ペルオキシダーゼ(EPO)、主要塩基性タンパク質[MBP]、リゾチーム、グランザイム、ヒスタミン、プロテオグリカン、プロテアーゼ、走化性因子、サイトカイン、アラキドン酸の代謝産物、デフェンシン、殺菌性浸透性増強タンパク質(BPI)、エラスターゼ、カテプシンG、カテプシンB、カテプシンD、ベータ-D-グルクロニダーゼ、アルファ-マンノシダーゼ、ホスホリパーゼA、コンドロイチン-4-硫酸、プロテイナーゼ3、ラクトフェリン、コラゲナーゼ、補体活性化因子、補体受容体、N-ホルミルメチオニル-ロイシル-フェニルアラニン(FMLP)受容体、ラミニン受容体、チトクロムb558、単球-走化性因子、ヒスタミナーゼ、ビタミンB12結合タンパク質、ゼラチナーゼ、プラスミノーゲン活性化因子、ベータ-D-グルクロニダーゼ及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。好ましくは、炎症メディエーターは、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)、好酸球ペルオキシダーゼ(EPO)、主要塩基性タンパク質(MBP)、リゾチーム、グランザイム、インターロイキン、サイトカイン及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0106】
[000102] 本開示はさらに、本ペプチドの非存在下で起こる少なくとも同じタイプの炎症性細胞からの炎症メディエーターの放出と比較した場合に、炎症性細胞からの炎症メディエーターの放出を減少させるために、細胞内側の小胞内に含有される少なくとも1つの炎症メディエーターを含む少なくとも1つの炎症性細胞を含む対象の組織及び/又は体液に本明細書中で開示されるペプチドの何れか1つを含む治療的有効量の医薬組成物を投与することを含む、対象の眼組織又は眼液における少なくとも1つの炎症性細胞からの少なくとも1つの炎症メディエーターの放出を阻害する方法を提供する。より具体的には、炎症メディエーターの放出の阻害は、炎症性細胞からの炎症メディエーターの放出を阻止するか又は減少させることを含む。
【0107】
[000103] とりわけ、本開示は、MANSペプチド(即ちN-ミリストイル-GAQFSKTAAKGEAAAERPGEAAVA(配列番号1))又はそれらのペプチド断片を含む治療的有効量の医薬組成物の投与を含む、対象の眼において炎症を軽減させる方法を提供する。いくつかの態様では、本ペプチドは、GAQFSKTAAKGEAAAERPGEAAV(配列番号2);GAQFSKTAAKGEAAAERPGEAA(配列番号4);GAQFSKTAAKGEAAAERPGEA(配列番号7);GAQFSKTAAKGEAAAERPGE(配列番号11);GAQFSKTAAKGEAAAERPG(配列番号16);GAQFSKTAAKGEAAAERP(配列番号22);GAQFSKTAAKGEAAAER(配列番号29);GAQFSKTAAKGEAAAE(配列番号37);GAQFSKTAAKGEAAA(配列番号46);GAQFSKTAAKGEAA(配列番号56);GAQFSKTAAKGEA(配列番号67);GAQFSKTAAKGE(配列番号79);GAQFSKTAAKG(配列番号92);GAQFSKTAAK(配列番号106);GAQFSKTAA(配列番号121);GAQFSKTA(配列番号137);GAQFSKT(配列番号154);GAQFSK(配列番号172);GAQFS(配列番号191)及びGAQF(配列番号211)である。これらのペプチドは、N末端アミノ酸でミリストイル部分を含有する代わりに、N末端アミノ酸で化学的部分を含有しないか又は非ミリストイルの化学的部分を含有し、及び/又はC末端アミノ酸で化学的部分を含有し、例えば、本明細書中に記載のようなN末端アセチル基及び/又はC末端アミド基などを含有する。MANSペプチド及びそのN末端ミリストイル化断片における疎水性N末端ミリストイル部分の存在は、原形質膜とのそれらの適合性及びおそらく原形質膜へのそれらの透過性を促進し、本ペプチドが細胞により取り込まれることを可能にし得る可能性がある。(ミリストイル化される)MANSペプチド内及びミリストイル化MANSペプチド断片内のさらなる官能基及びそれらの相互作用がそれらの相対的な膜透過性を増強し得ると同時に、少なくとも部分的に、膜脂質二重層へのミリストイル基の疎水性挿入は、細胞の原形質膜へのMANSペプチド及びミリストイル化MANSペプチド断片の分配を可能にするのに十分である、分配係数若しくは最大10-1の脂質との見かけの会合定数又は約8kcal/molの単位ギブズ自由結合エネルギーを提供し得る。本断片は、それらの個々の構造の代表である分配係数及び膜親和性をそれぞれ示し得る。本断片は、固相ペプチド合成によるなど、当技術分野で公知のペプチド合成方法によって調製され、高圧液体クロマトグラフィーによるなど、当技術分野で公知の方法により精製され得る。各ペプチドの分子量は、それぞれが適切な分子量でピークを示すことで、質量分析により確認され得る。本開示の方法における個々のペプチドの有効性及び個々のペプチドの組み合わせ(例えば本ペプチドの2つの組み合わせ、本ペプチドの3つの組み合わせ、本ペプチドの4つの組み合わせ)は、本明細書中で開示される実施例で記載される手順を使用して不要な実験なく容易に決定され得る。ペプチドの組み合わせが使用される場合、好ましい組み合わせは、本ペプチドのうち2つを含み;本ペプチドの好ましいモル比は、50:50(即ち1:1)~99.99:0.01であり得、この比は、本明細書中で開示される実施例で記載される手順を使用して容易に決定され得る。
【0108】
[000104] ヒト又は動物での使用のための、本明細書中で開示されるペプチドの何れか1つの医薬組成物など、本明細書中で開示されるペプチドの何れか1つの治療的有効量を含む組成物の投与は、炎症性顆粒球細胞が存在する、又は炎症性顆粒球細胞が侵入する組織の表面と接触して、組織中若しくは組織上部位に又は体液含有層にペプチドを提供し、従って、本ペプチドが炎症性顆粒球細胞と接触することを可能にする。一態様では、このような組成物の投与は、炎症の最初の発症若しくは最初の検出又はヒト若しくは動物による炎症の最初の知覚時に、又は、さもなければ本ペプチドの非存在下で起こるであろう炎症の量の軽減のために、ヒト又は動物での炎症レベルの最初の知覚可能な変化時に、なされ得る。別の態様では、投与は、さもなければ本ペプチドの非存在下で起こるであろうさらなる炎症の量の軽減のために、ヒト又は動物での組織で進行している炎症の間になされ得る。投与の量及び頻度が、臨床評価により決定され得、疾患又は炎症の起源及び関与する組織の広がり及び患者の年齢及び体格の関数であり得る一方で、本医薬組成物の初回投与から2~8時間後、好ましくは6~12時間後に医薬組成物の投与が反復され得ることが予想される。
【0109】
[000105] 本開示の方法は、対象における少なくとも1つの炎症メディエーター分泌細胞又は組織からの炎症メディエーター分泌をまた減少させるための本明細書中に記載のような本開示のペプチドの投与によって対象において炎症を軽減させるためにも有用であり、これにより、前記ペプチドの前記投与がない場合に起こるものと比較して、対象における炎症メディエーター分泌が減少する。
【0110】
[000106] いくつかの態様では、対象は、哺乳動物、例えばヒト、イヌ、ウマ及びネコである。
【0111】
[000107] 本明細書中で開示されるペプチド及び組成物の投与の方法は、局所投与、硝子体内注射(IVT)、結膜下注射、テノン嚢下注射(SBT)、球後注射、眼周囲注射、網膜下注射、強膜内、経強膜的、基質内、静脈内注射、眼内投与又は何らかのそれらの組み合わせによるものであり得る。眼への投与は一般に、点眼薬、眼用ゲル、軟膏、軟膏、埋め込み物、ミクロスフェア又はリポソーム性処方物を含む。いくつかの実施形態では、本明細書中で開示されるペプチド及び組成物の投与の方法は、IVT注射及び局所投与の組み合わせによるものである。例えば、いくつかの実施形態では、本組成物は、IVT注射とそれに続く局所投与により;又は局所投与とそれに続くIVT注射により、投与される。いくつかの実施形態では、本組成物は、IVT注射を含む第1の投与セッションで投与される。IVT注射を含む第1の投与セッションには、さらなるIVT注射を含む1回以上の投与セッションが続き得る。IVT注射は、毎日、1日おき、3、4、5若しくは6日おき、又は毎週であり得る。いくつかの実施形態では、第1の又はその後の続くIVT注射投与セッションには、本ペプチド又は組成物の局所投与を含む1回以上の投与セッションが続く。例えば、本ペプチド又は組成物の局所投与を含む1回以上の投与セッションは、毎日、1日おき、3、4、5若しくは6日おき、又は毎週であり得る。局所投与は1日1回、1日2回、1日3回又は1日4回であり得る。いくつかの実施形態では、IVT注射後の局所投与は、ぶどう膜炎の軽減など、治療効果の促進を提供する。いくつかの実施形態では、投与レジメンは、最初のIVT注射とそれに続く、例えば2、3、4、5、6、7日又はそれを超える日数にわたる毎日の局所投与を含む。いくつかの実施形態では、毎日の局所投与はそれぞれ、1日1、2、3又は4回の投与を含む。例えば、いくつかの実施形態では、本組成物は、およそ8時間ごとに1回、局所的に投与される。いくつかの実施形態では、投与レジメンは、最初のIVT注射とそれに続く4日間にわたる1日3回の局所投与を含む。他の実施形態では、本明細書中で提供されるペプチド及び組成物の投与は、局所投与のみによる。いくつかの実施形態では、局所投与は治療効果の促進をもたらす。いくつかの実施形態では、局所投与は、IVTなどの眼への他の投与方法と比較してより安全及び/又はより有効である。
【0112】
[000108] さらに、対象に対する投与は、抗生物質、抗ウイルス化合物、抗寄生虫化合物、抗炎症化合物及び免疫調整物質からなる群から選択される第2の分子の投与をさらに含み得る。本明細書中で使用される場合、免疫調整物質又は免疫調整化合物は、免疫系の機能に影響を与え得る薬剤である。いくつかの態様では、免疫調整化合物は、免疫系の正常化又は調節を助ける。免疫調整物質の非限定例としては、アザチオプリン、メトトレキサート、シクロスポリン、タクロリムス、シロリムス及びエベロリムスが挙げられる。
【0113】
[000109] MARCKSは、アクチン結合タンパク質であり、細胞骨格の配向及び機能及び細胞遊走に非常に重要である。いくつかの実施形態では、本明細書中で開示されるN末端MARCKSペプチドの投与は、このような疾患に罹患している患者における炎症性疾患状態が付随する損傷又は感染の領域へのヒト好中球などの炎症性細胞の方向性のある遊走を阻害する。
【0114】
[000110] 本開示は、細胞内側の小胞内に含有される少なくとも1つの炎症メディエーターを含有する対象の組織又は体液中に含有され得る何らかの既知の炎症性細胞との、上記及び本願を通じて記載されるペプチドの接触及び/又は投与を含む。炎症性細胞は好ましくは、白血球、より好ましくは顆粒球であり、これらは、好中球、好塩基球、好酸球又はそれらの組み合わせとしてさらに分類され得る。本方法で接触させられる炎症性細胞は、単球/マクロファージでもあり得る。
【0115】
[000111] より具体的には、本開示は、本明細書中で開示されるペプチドの何れか1つで細胞の細胞質内の1つ以上の顆粒又は小胞中に炎症メディエーターを含有する炎症性細胞を標的とすることを含む。いくつかの態様では、この細胞を本明細書中で開示されるペプチドの何れか1つと接触させる。好ましくは、本ペプチドと炎症性細胞との接触は、これらの炎症性細胞が眼の組織又は眼の液体中に存在するぶどう膜炎有病対象又は罹患対象への投与を介するものである。本ペプチドの投与又は細胞との接触時に、本ペプチドは、炎症メディエーターを含有する細胞内顆粒又は小胞の膜へのネイティブMARCKSタンパク質の結合に対して競合的に競合し、その結合を競合的に阻害する。炎症性細胞における小胞へのMARCKSタンパク質の結合が遮断されると、その結果、これらの細胞におけるこれらの小胞は、細胞から炎症メディエーターのそれらの内容物をエキソサイトーシス的に放出するよう刺激された場合にそれらが通常行うように細胞の原形質膜に移動しない。従って、本開示の方法は、細胞の原形質膜への小胞の移動を阻害し、次に炎症性細胞からの炎症メディエーターの放出を減少させる。炎症性細胞からのメディエーターの放出速度及び放出量の両方とも、投与されるペプチドの濃度及び炎症性細胞との本ペプチドの接触持続時間に依存するので、経時的に細胞から放出される炎症メディエーターの量が減少する。
【0116】
[000112] いくつかの態様では、炎症部位が対象における炎症部位での疾患、状態、外傷、異物又はそれらの組み合わせの侵入の開始の結果により生じている、対象の炎症がある眼への、本明細書中に記載のような治療的有効量のMANSペプチド又はそれらの断片の投与は、炎症部位の浸潤白血球から放出される炎症メディエーターの量を減少させ得、この白血球は好ましくは顆粒球である。いくつかの態様では、本明細書中で開示されるペプチドの何れか1つの投与は、炎症部位に浸潤する顆粒球などの白血球から放出される炎症メディエーター量を減少させ得る。いくつかの態様では、投与は、同じ条件下で試験される本ペプチドの非存在下で前記顆粒球から放出される前記炎症メディエーターの量と比較して、約1%~約99%、例えば約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%又は約90%の範囲で、炎症部位において顆粒球から放出される炎症メディエーターの減少を引き起こす。
【0117】
[000113] いくつかの態様では、炎症刺激部位が前記部位への炎症性刺激物質の炎症刺激量の投与によって生じている動物での炎症刺激部位に対する治療的有効量の本明細書中で開示されるペプチドの何れか1つの投与は、前記炎症性刺激物質の同一である炎症刺激量の存在下において本ペプチド非存在下で前記顆粒球から放出される前記炎症メディエーターの量と比較した場合、前記炎症刺激部位で前記炎症性刺激物質により刺激される顆粒球から放出される炎症メディエーターの量を、約1%~約100%、例えば、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%又は約99%、減少させ得る。
【0118】
[000114] 本明細書中のインビトロの実施例で使用される炎症性刺激物質の例は、ホルボール12-ミリスタート13-アセタート(PMA)である。単球走化性因子タンパク質(MCP-1)は、ヒスタミンが放出される好塩基球の脱顆粒においてC5aとほぼ同程度有効であり、IL-8よりもかなり強力である。ヒスタミン放出は、ケモカイン(即ち走化性因子サイトカイン)、RANTES及びMIP-1での刺激後に起こり得る。
【0119】
[000115] いくつかの態様では、本ペプチドは、次の範囲の間にある全てのサブ範囲及び値を含め、約1μM~約10mM、例えば約10μM、約20μM、約30μM、約40μM、約50μM、約60μM、約70μM、約80μM、約90μM、約100μM、約150μM、約200μM、約250μM、約300μM、約350μM、約400μM、約450μM、約500μM、約550μM、約600μM、約650μM、約700μM、約750μM、約800μM、約850μM、約900μM、約950μM、約1mM、約2mM、約3mM、約4mM、約5mM、約6mM、約7mM、約8mM、約9mM又は約10mMなどの濃度で投与される。
【0120】
[000116] いくつかの態様では、本ペプチドは、次の範囲の間にある全てのサブ範囲及び値を含め、約1μg~約5mg、例えば約10μg、約20μg、約30μg、約40μg、約50μg、約60μg、約70μg、約80μg、約90μg、約100μg、約150μg、約200μg、約250μg、約300μg、約350μg、約400μg、約450μg、約500μg、約550μg、約600μg、約650μg、約700μg、約750μg、約800μg、約850μg、約900μg、約950μg、約1mg、約2mg、約3mg、約4mg又は約5mgなどの量で投与される。
【0121】
[000117] いくつかの実施形態では、本ペプチドは、次の範囲の間にある全てのサブ範囲及び値を含め、約0.01mL~約1mL、例えば約0.01mL、約0.05mL、約0.1mL、約0.5mL、約0.75mL又は約1mLなどの体積で投与され得る。
【0122】
[00118] 別の実施形態では、顆粒球は、動物、好ましくはヒト、の眼の組織上又は組織中に存在し、本ペプチドは、本ペプチドを含む医薬組成物、例えば水溶液中に本ペプチドを含む医薬組成物により投与され、この組成物は、局所適用によるか又は眼内注射により投与されるか、又は例えばゲル、軟膏、軟膏、埋め込み物、ミクロスフェア、マイクロエマルション又はリポソーム性処方物の形態の本ペプチドを含む医薬組成物が有用であり得る。
【0123】
[000119] いくつかの態様では、本明細書中で開示されるペプチドによる炎症メディエーターの放出の減少は、本ペプチドの非存在下で炎症性細胞から放出される量と比較した場合、少なくとも約5%~少なくとも約99%の減少の範囲であり得る。いくつかの態様では、本ペプチドは、本ペプチドの非存在下で炎症性細胞から放出される量と比較した場合、少なくとも1つの炎症性細胞から放出される炎症メディエーターの量を約1%~約99%、例えば約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%又は約90%減少させ得る。
【0124】
[000120] さらに、本開示は、対象においてぶどう膜炎を処置する方法での使用のための本明細書中で開示されるペプチドの何れか1つを含む組成物を提供し、この方法は、対象に本組成物を投与することを含む。
【0125】
[000121] 本開示はまた、対象においてぶどう膜炎を処置する方法での使用のための、(a)参照配列、GAQFSKTAAKGEAAAERPGEAAVA(配列番号1)の4~24個の連続アミノ酸を有するアミノ酸配列;(b)配列、GAQFSKTAAKGEAAAERPGEAAVA(配列番号1)を有するアミノ酸配列;及び(c)(a)又は(b)で定められるアミノ酸配列に対して少なくとも約75%同一性を有するアミノ酸配列、からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つのペプチドを含む組成物も提供し、この方法は、対象に本組成物を投与することを含む。
【0126】
[000122] 本開示をここで記載してきたが、例示目的のためにのみ本明細書中に含まれ、本開示の限定であることを意図するものではない特定の実施例を参照して、これらを例示する。
【実施例
【0127】
実施例
実施例1:ウサギにおけるLPS誘導性急性ぶどう膜炎モデルの作製
[000123] 10匹の雄New Zealand Whiteウサギ(オリクトラグス・クニクルス(Oryctolagus cuniculus))、3~4カ月齢及び体重約2~3kgをCovance,Denver,PAから購入した。30%湿度、室温(68±2°F)にて12時間光/12時間暗の環境条件下でステンレス鋼製のケージ中でウサギを飼育した。これらに対して自由摂餌及び摂水とした。ウサギを試験環境に1週間順応させ、試験参加に対する適切性を判定するための獣医師による身体検査を行い、受け入れられたウサギを無作為に試験群に割り当てた。
【0128】
[000124] ウサギを鎮静化した後、ケタミン(35mg/kg、IM)及びデクスメデトミジン(0.05mg/kg、IM)の注射を行い、局所5%ベタジン溶液を使用して眼を無菌的に準備し、続いて滅菌生理食塩水ですすぎ、0.5%プロパラカインHCLの1滴の適用を行った。ワイヤ開瞼器(wire lid speculum)を配置し、コリブリ型鉗子を用いて結膜を穏やかに把持し、レンズとの接触を回避するために針を僅かに後方に向けて、上の角膜縁の2mm後方に注射(27~30G針)を行った(扁平部を通じて)。注射後、針をゆっくりと引き抜き、セルローススポンジを使用して、注射部位を1分間圧迫し、液体の逆流を防いだ。次に眼用の抗生物質溶液の1滴を局所的に眼の表面に適用した。
【0129】
[000125] 図1で示されるように、生理食塩水を注入した対照眼組織(図1、左パネル)と比較した場合、眼組織へのLPS注射の24時間後、腫脹及び炎症性細胞浸潤物が明らかであった(図1、右パネル)。従って、実験室で急性ぶどう膜炎のこのモデルが確立された。
【0130】
実施例2-アセチル化ペプチド106はウサギにおいてLPS誘導性急性ぶどう膜炎を寛解させる。
[000126] 実験プロトコール:ウサギを以下で示されるように各3匹ずつの群に分けた。試験開始から24時間後に全群のウサギを分析した。
【0131】
[000127] 群A(LPS):上記のように2匹のウサギの右眼に50μl PBS中の10ng LPSを硝子体内注射した。この手順により、数時間内に急性ぶどう膜炎が生じ、注射後~24時間でピークに達する。
【0132】
[000128] 群B:(LPS+BIO-11006):上記のような50μl PBS中の10ng LPSを3匹のウサギの右目に硝子体内注射した。2時間後、次に、ウサギの右目にN末端アミノ酸でアセチル化されているペプチド106である50μl BIO-11006(「アセチル化ペプチド106」又は「ac-ペプチド106」)(100μM)を硝子体内注射した。
【0133】
[000129] 群C:(BIO-11006+LPS)。3匹のウサギの右目にアセチル化ペプチド106(100μM)を硝子体内注射した。2時間後、ウサギの右目に50μl PBS中の10ng LPSを硝子体内注射した。
【0134】
[000130] 群D:(BIO-11006のみ):3匹のウサギの右目にBIO-11006(アセチル化ペプチド106)(100μM)のみを硝子体内注射した。
【0135】
[000131] ペントバルビタールナトリウムIV(Euthasol)の過剰量を介して実験開始から24時間後に全ウサギを安楽死させ、以下のような炎症の測定のために、眼及び眼液を分析した。
【0136】
[000132] 眼の検査、刺激及び組織学:盲検で独立した獣医学の病理学者によって、眼の刺激(表2)及び炎症及び組織病理学を評価した。眼の表面の形態及び前眼部及び後眼部の炎症を評価するために、スリットランプ生体顕微鏡及び間接眼底鏡を使用した完全な眼の検査を実験開始から24時間後に行った。眼の組織病理学のために、安楽死及び眼房水の回収後、眼を摘出し、4%リン酸緩衝グルタルアルデヒドにすぐに1時間移し、次に10%リン酸緩衝ホルムアルデヒドに一晩移した。眼をパラフィン包埋し、切片を作製し(5μm厚さ)、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色し、光学顕微鏡を使用して調べた。
【0137】
【表11】
【0138】
[000133] 図2で示されるように、LPS処置陰性対照ウサギと比較した場合、LPS2時間後のBIO-11006(アセチル化ペプチド106)でのウサギの処置によって、刺激/炎症指標の顕著な低下が起こった。LPS前のBIO-11006(アセチル化ペプチド106)でのウサギの前処理は、刺激/炎症指標に影響がなかった。また、BIO-11006単独でのウサギの処置は、何ら顕著な応答を引き起こさなかった。
【0139】
[000134] 炎症の眼房水評価:安楽死直後に、血液混入を回避するために透明角膜アプローチを通じて30ゲージ針を使用して眼房水を吸引した。試料を氷上に置き、吸引と同じ日に細胞数の計数を行った。
【0140】
[000135] 図3で示されるように、LPS2時間後のBIO-11006(アセチル化ペプチド106)でのウサギの処置によって、LPS処置陰性対照ウサギと比較した場合、眼房水中で炎症性細胞浸潤物の完全な寛解が起こった。LPS前のBIO-11006(アセチル化ペプチド106)でのウサギの前処置は、炎症性細胞浸潤物に対して影響がなかった。また、BIO-11006(アセチル化ペプチド106)単独でのウサギの処置は、何ら顕著な応答を引き起こさなかった。
【0141】
[000136] 白血球計数:細胞ペレットを1mlのPBS中で再懸濁し、サイトスピン調製を行った。総白血球の定量のために異なる計数に対してスライドをH&Eで染色した。この実験からの代表的な画像を図4で示す。LPSで処置したウサギにおいて、眼において中等度から重度のPMN浸潤が見られた(上左パネル)。対して、LPSで処置し、続いてBIO-11006(アセチル化ペプチド106)で処置したウサギでは、軽度PMN浸潤しか見られなかった(上右パネル)。従って、LPS処置後のBIO-11006の投与は、LPS誘導性PMN浸潤に対する治療効果を有する。2つのさらなる対照群も評価した。BIO-11006で処置し、次にLPSで処置したウサギは、PMN浸潤の軽減を示さず(下左パネル)、一方でBIO-11006単独(LPSなし)での処置は、眼へのPMN浸潤に影響がなかった(下右パネル)。まとめると、図2~4で示される結果から、BIO-11006(アセチル化ペプチド106)がぶどう膜炎に対する治療効果を有し、眼へのPMNの浸潤を阻害することにより眼での炎症及び刺激を寛解させることが明らかになる。
【0142】
実施例3:ラットモデルにおけるBIO-11006での実験的自己免疫性慢性ぶどう膜炎の処置
[000137] ぶどう膜炎はまた、患者の免疫系が網膜の抗原又はタンパク質に対して応答する自己免疫障害としても特徴付けられ得る。自己免疫性ぶどう膜炎は、米国における重篤な失明のおよそ10%を占める。げっ歯類自己免疫性ぶどう膜炎モデルは特徴がよく分かっており、ぶどう膜炎を処置するための治療アプローチを評価するために一般的に使用されている。このモデルにおいて、フロイント完全アジュバント(FCA)中で保存性が高い網膜ペプチドを用いてラットに免疫付与した。第9日と第11日との間に、疾患が発症し、宿主免疫細胞が網膜及びぶどう膜と反応し;この病態は、ヒトで見られる自己免疫性ぶどう膜炎の主要な特徴を模倣する(Gilger BC,Immune relevant models for ocular inflammatory diseases,ILAR J.2018,Feb 21.doi:10.1093/ilar/ily002(Epub)。
【0143】
[000138] 免疫介在性慢性ぶどう膜炎のラットモデル:約6~8週齢及び125~175g体重の両方の性別のLewisラットをCharles River,Kingston,NYから購入した。同じ性別のラットをケージあたり2匹で飼育し、自由接餌及び摂水とし、30%湿度及び68~79°Fで、12時間光/12時間暗の光サイクル下で1週間順応させた。次にラットを下記のような試験群に無作為に割り当てた。ラットを各4匹(雄2匹及び雌2匹)の3つの群に分けた。
【0144】
[000139] 生存中及び死後分析の両方のために、関与する全ての獣医学眼科医及び病理医に対して、施される処置について盲検化した。炎症性/刺激スコアについて全てのラットを毎日監視した。動物をラット各4匹ずつの次の群に分けた:群A:免疫付与なし;生理食塩水で処置(対照);群B:ヒトIRBP及びフロイント完全アジュバント(FCA)で免疫付与及び負荷;及び群C:IRBP及びFCAで免疫付与及び負荷、100μMのBIO-11006の硝子体内(IVT)注射及び局所処置で処置。
【0145】
[000140] 免疫介在型のぶどう膜炎の生成:酸素中3%イソフルランへの曝露でラットを麻酔し、次に尾の基部に(100μl)及び各大腿(各50μl)においてFCAで乳化したヒトIRBPペプチド(30μg)を注射した。ぶどう膜炎発症は、このモデルにおいて免疫付与後9~11日に起こる(Gilger BC、上で引用)。
【0146】
[000141] 処置:免疫付与から10日後(ぶどう膜炎がこのモデルで始まった時間)に、実施例1下の上記注射プロトコール(ラット用に改変したように)を使用してIVT注射(5μl)によって100μM濃度のBIO-11006又は生理食塩水対照を投与し、IVT注射により100μM BIO-11006で又は生理食塩水(群1;対照)でラットの群を処置した。BIO-11006注射後、ラットの1群をBIO-11006(群2、IVTのみ)のIVT注射でさらに4日間処置し、一方で第3の群には、100μM BIO-11006を4日間にわたり1日3回、局所的に適用した(群3、IVT+局所)。第14日にCOに曝露することによって全ラットを安楽死させた。
【0147】
[000142] 炎症の眼房水測定:安楽死の直後に、血液混入を回避するために角膜アプローチを通じて30ゲージ針を使用して眼房水を吸引した。次に、眼房水を2つのアリコートに分け、一方はサイトカイン分析用とし、他方は細胞計数用とした。細胞計数試料を氷上に置き、吸引と同じ日に細胞の計数を行った。サイトカイン試料をドライアイス上に置き、-80℃で保管した。
【0148】
[000143] 眼の組織病理学のために、安楽死後及び眼房水回収後に眼を摘出し、すぐに4%リン酸緩衝グルタルアルデヒドに1時間、次に10%リン酸緩衝ホルムアルデヒドに一晩又は処理まで移した。次に、眼をパラフィン包埋し、切片を作製し(5μm)、H&Eで染色し、光学顕微鏡を使用して調べた。結果を図6で示す。
【0149】
[000144] 眼の検査、刺激及び組織病理学的スコア:盲検化した独立の獣医学の眼科医及び病理医によってそれぞれ、眼の炎症(表3)及び組織病理学(表4)グレードが与えられた。眼の表面の形態及び前眼部及び後眼部の炎症を評価するためのスリットランプ生体顕微鏡及び間接眼底鏡を使用した完全な眼の検査を免疫付与後毎日行った。
【0150】
[00145] 慢性前部ぶどう膜炎の自己免疫モデルは、眼での白血球流入及び炎症促進性サイトカイン産生を特徴とする。この実験からの結果は、本ペプチドの忍容性が良好であり、ぶどう膜炎に対して治癒効果を有することを示す。例えば、図5で示されるように、BIO-11006は、第10日で始まるIVT注射によってラットにおける実験的な自己免疫性ぶどう膜炎において炎症を寛解させ(バー2);その効果は、IVT後4日間の100μM BIO-11006の局所適用でさらに高められる(バー3)。さらに、図6で示されるように、BIO-11006で処置した実験的自己免疫ぶどう膜炎ラットの前部ぶどう膜において、虹彩及び毛様体組織腫脹及び主に単核である細胞の浸潤が劇的に減少する。
【0151】
【表12】
【0152】
【表13】
【0153】
実施例4:ペプチドの臨床効果の特徴評価
[000146] ぶどう膜炎、例えば、ウサギ及びラットにおける、自己免疫性慢性ぶどう膜炎(実施例3に記載)及びLPS誘導性急性ぶどう膜炎(実施例1及び2に記載)などの少なくとも1つの症状を処置するか又は寛解させるそれらの能力について、表5で挙げられる次のペプチドを試験する。
【0154】
【表14】
【0155】
[000148] 前出の実施例は、本開示の例示であり、それを限定するものと解釈されるものではない。本開示は、次の特許請求の範囲により定められ、特許請求の範囲の同等物がそこに含まれるものとする。
【0156】
[000149] 本明細書中に記載の方法は全て、本明細書中で別段の指定がない限り、又は別段明らかに文脈と矛盾しない限り、あらゆる適切な順序で行われ得る。本明細書中で提供されるありとあらゆる例又は代表的な言語(例えば「など」)の使用は、本発明の理解を単により良好に明るくするものであり、別段の主張がない限り本発明の範囲を限定することを提起するものではない。明細書中の中に、本発明の実施に必須のものとして何らかの非主張要素を示すものと解釈されるべき語はない。
【0157】
[000150] 本明細書中で引用される、刊行物、特許出願及び特許を含む参考文献は全て、各参考文献が個々に及び具体的に参照により組み込まれ、本明細書中でその全体において示される場合と同程度に、参照により本明細書によって組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
2022537318000001.app
【国際調査報告】