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特表2022-537322バルブ-プラグアセンブリを備えたサンプル収集システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-25
(54)【発明の名称】バルブ-プラグアセンブリを備えたサンプル収集システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/10 20060101AFI20220818BHJP
【FI】
G01N1/10 V
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021575219
(86)(22)【出願日】2020-06-20
(85)【翻訳文提出日】2022-02-09
(86)【国際出願番号】 US2020038858
(87)【国際公開番号】W WO2020257741
(87)【国際公開日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】62/864,500
(32)【優先日】2019-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/906,830
(32)【優先日】2020-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519255458
【氏名又は名称】スペクトラム・ソリューションズ・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】SPECTRUM SOLUTIONS L.L.C.
【住所又は居所原語表記】12248 Lone Peak Parkway, #106, Draper, Utah 84020, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ ケヴィン
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン ニール
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AA29
2G052AA30
2G052AA32
2G052AB20
2G052AD06
2G052DA02
2G052DA08
2G052DA12
2G052DA27
2G052FB02
(57)【要約】
生体サンプル収集システムは、(i)生体サンプルを受けるための開口を有するサンプル収集容器と、(ii)コア及び当該コアの周囲に配置されたカラーと、を備えた選択的に可動なバルブと、(iii)カラーに結合されており、一定量のサンプル保存薬を貯蔵するための薬剤チャンバを備えたシーリングキャップと、を備えることができる。シーリングキャップはサンプル収集容器に関連付けられて当該サンプル収集容器との間に流体密接続を形成することにより、コアに関連付けられた流体通流部が薬剤チャンバとの流体連通に移行して薬剤チャンバからサンプル保存薬がサンプル収集容器へ通過できるように、カラーに対して相対的にコアの物理的な再配置が行われる。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体サンプルを受けるための開口を有するサンプル収集容器と、
前記サンプル収集容器の前記開口に少なくとも部分的に関連付けられるコアと、当該コアの周囲に配置されたカラーと、を備えた、選択的に可動なバルブと、
前記カラーに結合されたシーリングキャップであって、一定量のサンプル保存薬を貯蔵するための薬剤チャンバを備えており、前記サンプル収集容器に関連付けられて当該サンプル収集容器との間に流体密接続を形成するシーリングキャップと、
を備えた生体サンプル収集システムであって、
前記シーリングキャップが前記サンプル収集容器に関連付けられることにより、前記コアに関連付けられた流体通流部が前記薬剤チャンバとの流体連通に移行して前記薬剤チャンバからサンプル保存薬が前記サンプル収集容器へ通過できるように、前記カラーに対して相対的に前記コアの物理的な再配置が行われる
ことを特徴とする生体サンプル収集システム。
【請求項2】
前記物理的な再配置は、前記シーリングキャップの方向とは逆方向における長手軸に沿った前記コアの直進移動を含む、
請求項1記載の生体サンプル収集システム。
【請求項3】
前記サンプル収集容器はさらに接続部材を備えている、
請求項1又は2記載の生体サンプル収集システム。
【請求項4】
前記シーリングキャップは、前記サンプル収集容器と当該シーリングキャップとを結合するために前記サンプル収集容器の前記接続部材に関連付けられる相手方接続部材をさらに備えている、
請求項1から3までのいずれか1項記載の生体サンプル収集システム。
【請求項5】
前記接続部材は、前記サンプル収集容器から突出した凸部又は前記サンプル収集容器における凹部を含み、
前記相手方接続部材は、前記接続部材と係合する寸法及び形状のフック又は凸部を含む、
請求項4記載の生体サンプル収集システム。
【請求項6】
前記接続部材及び前記相手方接続部材はねじ部を有する、
請求項4記載の生体サンプル収集システム。
【請求項7】
前記相手方接続部材のねじ部は、前記シーリングキャップの雌ねじ部を含む、
請求項6記載の生体サンプル収集システム。
【請求項8】
前記生体サンプル収集システムは、分離可能なツーピース型サンプル収集システムを含み、
前記サンプル収集容器は、前記分離可能なツーピース型サンプル収集システムの第1のピースを含み、
前記シーリングキャップに関連付けられた前記選択的に可動なバルブは、前記分離可能なツーピース型サンプル収集システムの第2のピースを含む、
請求項1から7までのいずれか1項記載の生体サンプル収集システム。
【請求項9】
前記選択的に可動なバルブが閉弁配置にあるとき、前記コアに関連付けられた前記流体通流部は前記カラーによって塞がれ、
前記選択的に可動なバルブが開弁配置にあるとき、前記流体通流部は少なくとも部分的に前記カラーによって塞がれない、
請求項1から8までのいずれか1項記載の生体サンプル収集システム。
【請求項10】
前記コアは、前記選択的に可動なバルブが閉弁位置にあるときに前記カラーとの間に流体密シールを形成するヘッド部材を有する、
請求項1から9までのいずれか1項記載の生体サンプル収集システム。
【請求項11】
前記カラー又はヘッド部材のうちいずれか1つ又は複数は、前記選択的に可動なバルブが閉弁位置にあるときに前記カラーと前記ヘッド部材との間に流体密シールを維持する環状の保持要素を備えている、
請求項10記載の生体サンプル収集システム。
【請求項12】
前記ヘッド部材と前記カラーとの間の保持力は、前記サンプル収集容器に前記シーリングキャップを関連付ける機械的な力より小さい、
請求項10又は11記載の生体サンプル収集システム。
【請求項13】
前記コアは、当該コアが前記サンプル収集容器の前記開口から横切ることを阻止する寸法及び形状のフランジを備えている、
請求項1から12までのいずれか1項記載の生体サンプル収集システム。
【請求項14】
前記コアは前記流体通流部を複数有する、
請求項1から13までのいずれか1項記載の生体サンプル収集システム。
【請求項15】
複数の前記流体通流部は、前記コアの径方向周囲に配置されている、
請求項14記載の生体サンプル収集システム。
【請求項16】
複数の前記流体通流部は前記コアの内側部分の両端に及び、前記各流体通流部の流入口から流出口まで途切れない、
請求項14又は15記載の生体サンプル収集システム。
【請求項17】
生体サンプルをサンプル収集チャンバ内に受けるよう構成された開口を有する当該サンプル収集チャンバを備えたサンプル収集容器と、
シーリングキャップと、
を備えた、生体サンプルを収集及び保存するためのキットであって、
前記シーリングキャップは、
一定量のサンプル保存薬を貯蔵する薬剤チャンバと、
閉弁配置に位置決めされ前記シーリングキャップに結合された選択的に可動なバルブであって、前記サンプル収集チャンバに関連付けられる選択的に可動なバルブと、
を備えており、
前記選択的に可動なバルブは、
流体通流部を形成するコアと、
前記コアのヘッド部材に関連付けられたカラーバルブヘッドと、
を備えており、
前記カラーは、前記ヘッド部材との間に流体密シールを形成し、
前記選択的に可動なバルブが開弁配置であるとき、前記流体通流部を介して前記薬剤チャンバから前記サンプル収集容器への流体連通が可能になる
ことを特徴とするキット。
【請求項18】
前記サンプル収集容器に関連付けられる漏斗部であって、ユーザから前記サンプル収集容器の前記サンプル収集チャンバ内への生体サンプルの受入を案内する漏斗部をさらに備えている、
請求項17記載のキット。
【請求項19】
分離可能なツーピース型サンプル収集システムであって、
生体サンプルを受けるための開口を有するサンプル収集容器を備えた第1のピースと、
選択的に可動なバルブに結合されたシーリングキャップを備えた第2のピースと、
を備えており、
前記選択的に可動なバルブは、
前記シーリングキャップの内側部分に結合されたカラーと、
コアと、
を備えており、
前記コアは、
前記選択的に可動なバルブが閉弁配置にあるときに前記カラーとの間に流体密接続を形成するヘッド部材と、
前記ヘッド部材とは反対側のフランジであって、前記サンプル収集容器の前記開口から前記コアが横切ることを阻止する寸法及び形状のフランジと、
を備えており、
前記コアは1つ又は複数の流体通流部を形成し、
前記選択的に可動なバルブが閉弁配置にあるとき、前記コアに関連付けられた前記1つ又は複数の流体通流部は前記カラーによって塞がれ、前記選択的に可動なバルブが開弁配置にあるとき、前記1つ又は複数の流体通流部は少なくとも部分的に前記カラーによって塞がれず、
前記1つ又は複数の流体通流部は、前記選択的に可動なバルブが開弁配置にあるとき、前記シーリングキャップの薬剤チャンバ内に貯蔵されたサンプル保存薬を前記薬剤チャンバから前記サンプル収集容器内へ流す
ことを特徴とするサンプル収集システム。
【請求項20】
前記カラー又はヘッド部材のうちいずれか1つ又は複数は、前記選択的に可動なバルブが閉弁位置にあるときに前記カラーと前記ヘッド部材との間に流体密シールを維持する環状の保持要素を備えている、
請求項19記載の生体サンプル収集システム。
【請求項21】
生体サンプルを受けるための開口を有するサンプル収集容器と、
プラグアセンブリと、
を備えた生体サンプル収集システムであって、
前記プラグアセンブリは、
流体通流部を有するポストであって、前記サンプル収集容器の前記開口に少なくとも部分的に関連付けられるポストと、
前記ポストに関連付けられたプラグであって、前記プラグアセンブリの閉止配置の際に前記流体通流部を塞ぐプラグと、
前記プラグアセンブリ及び前記サンプル収集容器に関連付けられるシーリングキャップであって、一定量のサンプル保存薬を貯蔵するための薬剤チャンバを備えたシーリングキャップと、
を備えており、
前記シーリングキャップが前記サンプル収集容器に関連付けられることにより、前記プラグが前記ポストとの関連付けから解除されて前記薬剤チャンバからサンプル保存薬が前記サンプル収集容器へ通過できるように、前記プラグアセンブリの物理的な再配置が行われる
ことを特徴とする生体サンプル収集システム。
【請求項22】
前記プラグアセンブリはさらに、前記ポストの周囲に配置されたカラーを備えている、
請求項21記載の生体サンプル収集システム。
【請求項23】
前記カラーは前記シーリングキャップに固定されて、前記ポストの側壁との間に流体密シールを形成する、
請求項22記載の生体サンプル収集システム。
【請求項24】
前記プラグは、閉止配置の際に前記カラーとの間に流体密シールを形成する、
請求項22又は23記載の生体サンプル収集システム。
【請求項25】
前記プラグは、開放配置の際に前記薬剤チャンバ内へ移動する、
請求項21から24までのいずれか1項記載の生体サンプル収集システム。
【請求項26】
移動した前記プラグは、前記薬剤チャンバ内の攪拌器を備える、
請求項25記載の生体サンプル収集システム。
【請求項27】
請求項20から26までのいずれか1項記載の生体サンプル収集システムを備えたキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願開示は一般に、生体サンプルを収集及び貯蔵するためのバイアル及び容器に関するものである。具体的には本願開示は、研究室又は他の生体サンプル分析設備において後に検査するための生体サンプルを収集及び保存するためのシステム及びキットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
生体サンプルのフィールド採取は、科学者、医師、遺伝子学者、疫学者等の人員に、非常に貴重な情報を与えることができる。例えば、患者の血液、化膿性分泌物又は痰の新鮮なサンプルを入手できることは、医師又は疫学者が感染症の病原因子を分離又は特定するのを助けることができる。唾液サンプルもまた、遺伝子配列解析、ファイロタイピング、その他遺伝子ベースの調査に必要な核酸を科学者又は遺伝子学者が利用できるようにすることができる。上記の例では、多くの他の状況の他、正確な結果の獲得を保証するためには、新鮮な生体サンプルを用いて作業を行うことが望ましい。しかし、プロバティブ組成物(probative composition、証明力のある組成物、例えば核酸、蛋白質、化学物質等)を分離するためには、特殊な装置を使用する必要があることが多く、また、制御された研究室条件を利用することが多い。
【0003】
患者/個人が、サンプル処理のために適した装置や所望の制御された環境を有する生体サンプル収集センターまで出向く必要があることは不便であり、またそのような必要性があり得ない場合も時折あり得る。また、特にサンプルサイズが大きく、及び/又は地理的に様々な場所にある場合(例えば、全国、民族全人口、又は地理的地域の全域にわたって、数千人もの個人の大規模遺伝子調査を行う場合等)、人員が患者/個人に直接会いに行くことも困難な場合もある。この問題をさらに複雑にしているのは、いかなる採取した生体サンプルも直ちに処理するのが有利であることが多いことであり、高忠実度のサンプル処理のために適した特殊な装置や制御された環境を利用できないため、フィールド人員が限られてしまうことがある。
【0004】
生体サンプル収集装置やキットの中には、上記の問題のうち一部に対応したものがある。例えば、商業用キットの中には、生体サンプルを入れるためのバイアルと、収集した生体サンプルに追加できる保存薬と、をユーザに提供するものがあり、この保存薬は生体サンプル中の要素を(ある程度の期間にわたって、ある程度)保存するように機能する。しかし、セルフ採取システムの実現はしばしば、生体サンプルを受入容器内に入れるために、経験不足又は訓練を受けていない個人に頼ることが多い。これは数多くの問題を呈しており、その中には例えば、後の処理のために生体サンプルを適正に保存するために必要とされることが多い技術的訓練や正確な測定等の問題が含まれる。上記の事項が欠けている状況では、初心者のユーザでも容易に使用できる生体サンプル収集システムであって、入れた生体サンプルを後の処理のために保存できる生体サンプル収集システムを提供することが重要となる。
【0005】
従って、生体サンプル収集保存システムについては、対応可能な数多くの欠点が存在する。
【発明の概要】
【0006】
生体サンプルを収集及び保存するためのキット、装置及び方法に関する分野における上記又は他の問題のうち1つ又は複数は、本願開示の実施態様により解決される。特に、1つ又は複数の実施態様は、生体サンプルを収集及び保存するための生体サンプル収集システム(又は生体サンプル収集システムを備えたキット)を含むことができる。
【0007】
一部の実施形態では、生体サンプル収集システムは、生体サンプルを受けるための開口を有するサンプル収集容器と、前記サンプル収集容器の前記開口に少なくとも部分的に関連付けられるコアと、当該コアの周囲に配置されたカラーと、を備えた、選択的に可動なバルブと、前記選択的に可動なバルブ及び前記サンプル収集容器に関連付けられるシーリングキャップと、を備えることができる。前記シーリングキャップは、一定量のサンプル保存薬(sample preservation reagent)を貯蔵するための薬剤チャンバ(reagent chamber)を備えることができる。前記シーリングキャップが前記サンプル収集容器に関連付けられることにより、前記コアに関連付けられた流体通流部が前記薬剤チャンバとの流体連通に移行して前記薬剤チャンバからサンプル保存薬が前記サンプル収集容器へ通過できるように、前記カラーに対して相対的に前記コアの物理的な再配置が行われる。
【0008】
他の複数の実施形態では生体サンプル収集システムは、生体サンプルを受けるための開口を有するサンプル収集容器と、プラグアセンブリと、を備えることができる。前記プラグアセンブリは、流体通流部を有するポストであって、前記サンプル収集容器の前記開口に少なくとも部分的に関連付けられるポストと、前記ポストに関連付けられたプラグであって、前記プラグアセンブリの閉止配置の際に前記流体通流部を塞ぐプラグと、を備えることができる。生体サンプル収集システムはさらに、前記プラグアセンブリ及び前記サンプル収集容器に関連付けられるシーリングキャップを備えることができる。前記シーリングキャップは、一定量のサンプル保存薬を貯蔵するための薬剤チャンバを備えることができる。前記シーリングキャップが前記サンプル収集容器に関連付けられることにより、前記プラグが前記ポストとの関連付けから解除されて前記薬剤チャンバからサンプル保存薬が前記サンプル収集容器へ通過できるように、前記プラグアセンブリの物理的な再配置が行われるようにすることができる。
【0009】
本願開示はさらに、生体サンプルを収集及び保存するための方法も含む。一例の方法は、本願開示のサンプル収集システムにおいて生体サンプルを受けることと、前記サンプル収集容器にシーリングキャップを関連付けることにより、例えば、当該シーリングキャップに関連付けられた選択的に可動なバルブを開弁させて前記シーリングキャップ内に保持されたサンプル保存薬を前記サンプル収集チャンバ内に放出し、又は、プラグアセンブリのプラグを外して、前記シーリングキャップ内に保持された薬剤を前記サンプル収集チャンバ内に放出することと、を含む。
【0010】
よって本願では、生体サンプルを収集するためのシステム、方法及びキットを開示する。本概要は思想の一部を簡素化した形で紹介するためのものであり、かかる思想は、以下の詳細な説明において詳細に説明する。本概要は、特許請求の範囲に記載の発明の重要な構成要件又は本質的な構成要件を特定することを意図したものではなく、また、特許請求の範囲に記載の発明の範囲を示唆するものとして用いられることを意図したものでもない。
【0011】
本願開示の他の構成要件及び利点については以下の説明において記載されると共に、一部は当該説明から明らかであり、あるいは、本願開示の実施により習得できるものである。本願開示の構成要件及び利点は、添付の特許請求の範囲に特に記載されている手段や組み合わせを用いることにより実現及び獲得することができる。本願開示の上記及び他の構成要件は、以下の説明及び添付の特許請求の範囲からより明確に認識することができ、あるいは、下記の本願開示の実施により習得することができる。
【0012】
本願開示の上記及び他の利点並びに構成要件を達成できる態様を説明するため、上記にて簡単に記載した本願開示のより詳細な説明については、添付の図面に記載されている本願開示の特定の実施形態を参照して行う。同図面はあくまで本願開示の典型的な実施形態のみを示したものであり、よって、本願開示の範囲を限定するものとみなすべきものではないことが明らかである。添付の図面を用いて本願開示の他の特異性及び詳細について記載及び説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】本願開示の1つ又は複数の実施形態の一例のサンプル収集システムの組立前の三次元モデルの斜視図であり、同図では、図中のシーリングキャップはサンプル収集容器に固定されていない状態である。
図1B】本願開示の1つ又は複数の実施形態の、図1Aのサンプル収集システムの組立後の三次元モデルの断面図であり、同図では、図中のシーリングキャップはサンプル収集容器に固定され、これに関連付けられたバルブは閉弁配置となっている。
図2図2Aは、本願開示の1つ又は複数の実施形態の閉弁配置で示された図1Bの選択的に可動なバルブの断面図である。図2Bは、本願開示の1つ又は複数の実施形態の、サンプル収集システムの他の構成要素から分離された図1B及び図2Aの選択的に可動なバルブの断面図であり、当該選択的に可動なバルブは閉弁配置である状態が示されている。図2Cは、本願開示の1つ又は複数の実施形態の、サンプル収集システムの他の構成要素から分離された図1B及び図2Aの選択的に可動なバルブの断面図であり、当該選択的に可動なバルブは開弁配置である状態が示されている。
図3】本願開示の1つ又は複数の実施形態の選択的に可動なバルブのコア部品の斜視図である。
図4】本願開示の1つ又は複数の実施形態の選択的に可動なバルブのカラー部品の斜視図である。
図5A】他の1つのサンプル収集システムの組立後の三次元モデルの断面図であり、同図では、図中のシーリングキャップはサンプル収集容器に固定され、これに関連付けられたプラグアセンブリは閉止配置となっている。
図5B図5Aに示されているプラグアセンブリ及びシーリングキャップの一部の拡大図である。
図6】一例のプラグの三次元図である。
図7】プラグアセンブリの一例のポストの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本願開示の実施形態は、生体サンプルを収集及び保存するためのシステム、キット及び/又は方法の分野における1つ又は複数の問題に対処するものである。生体サンプルは、例えば(発病した個人の処置のため、疫学上の理由のため等の)病原因子の特定若しくはキャラクタリゼーション、又は被検体の核酸の遺伝子分析(例えば遺伝子ファイトタイピング、遺伝子発現調査、ゲノム解析等)等を含めた様々な理由のために収集し、その含有物を評価することができる。上記の例を含めた大半の事例では、証明力(probative value)を保つように生体サンプルの忠実度(fidelity)を維持することが望まれる。しかしながら、分析のための生体サンプルの収集及び処理は伝統的には、熟練の技術者又は専門家にとって複雑な労力となっていた。これは複数の自明の理由により問題となっており、この理由には、特に被検体が地方の僻地に居住し、生体サンプルを適正に収集及び保存するために適正なスキルを有する人員のサービス提供を必要とする場合に、生体サンプルを個々に収集及び輸送することに係る時間及び費用が含まれる。
【0015】
本願開示の実施形態は、上記の問題のうち1つ又は複数に対処したサンプル収集保存システム及びキット、並びにこれを用いた方法を提供する。例えば、本願に開示されている生体サンプルを収集及び保存するためのシステム、キット及び方法を使用することにより、生体サンプルを収集して最初に保存する際に専門的な人員を呼ぶ必要が無くなる。さらに、本願開示の実施形態によってサンプル収集及び保存が簡単化し、これにより、生体サンプルを収集及び保存する際に未熟練のユーザが誤りを起こす可能性も減少する。
【0016】
上記の一例として、本願開示の生体サンプル収集キットは少なくとも、ツーピース型サンプル収集保存システムを備える。第1の部分は、漏斗部に着脱可能に関連付けることができるサンプル収集容器又は容器を備える。使用時にはこの漏斗部は、ユーザから収集容器又は容器のサンプル収集チャンバ内への生体サンプルの受入を案内するように機能する。また、この漏斗部によって、ユーザが収集容器をサンプル収集チャンバに係合して生体サンプルをサンプル収集チャンバに入れることを容易にすることもできる。必要な量の生体サンプルを入れた後(これは、サンプル収集容器に付されたマークにより表示することができる)、ユーザは(漏斗部を使用した場合には)漏斗部を取り外し、ツーピース型サンプル保存システムの第2の部分(例えば、選択的に可動なバルブ又はプラグアセンブリに関連付けられたシーリングキャップ等)を収集容器に関連付けることができる。シーリングキャップの薬剤チャンバには所定量のサンプル保存薬が事前に充填され、シーリングキャップを引き下げて収集容器のサンプル収集チャンバ内に入れられた生体サンプルを封入すると、選択的に可動なバルブ又はプラグアセンブリが開放配置に移行し、薬剤チャンバから保存薬がバルブコア又はプラグアセンブリポストの流体通流部を介してサンプル収集チャンバ内へ放出され、保存薬はサンプル収集チャンバ内で、ここに入っている生体サンプルと混合してこれを保存する。
【0017】
下記にて詳細に説明するが、薬剤チャンバから薬剤をサンプル収集チャンバ内へ放出するため、(選択的に可動なバルブ及びバルブアセンブリを備える実施形態に依存して)選択的に可動なバルブ及びバルブアセンブリを独立して開弁することができる。
【0018】
選択的に可動なバルブを備える実施形態については、選択的に可動なバルブのカラーはシーリングキャップと連動するように、(例えば摩擦嵌合等によって)シーリングキャップと機械的にインターロックされる。カラーは環状とし、バルブコアを包囲してバルブコアとの間に流体密接続を形成することができる。コアに関連付けられたフランジは、サンプル収集容器(又はこれに関連付けられた構造)の開口を覆うように嵌合する寸法及び形状とされ、これによりコアがサンプル収集チャンバ内に入り込むことを防止する。シーリングキャップがサンプル収集容器に関連付けられると、コアフランジがサンプル収集チャンバの開口に当接する。シーリングキャップを(例えばねじ部係合等により)サンプル収集容器にさらに固定すると、カラーがシーリングキャップと共に移動し、コアはサンプル収集容器に対して静止した状態に留まる。このようにしてコアはカラー及びシーリングキャップに対して相対移動し(例えば長手方向に直進移動し)、これにより選択的に可動なバルブが(例えば物理的な再配置等を受けて)開弁する。上述のようなシーリングキャップに対するコアの独立した相対移動は例えば、(流体密接続を形成する)コアとカラーとの間の力(例えば摩擦力、又は機械的インターロックを克服するために必要な力等)を、シーリングキャップ及びサンプル収集装置の取付機構間の力より小さくすることによって行うことができる。開弁配置に移行すると、コアによって提供された流体通流部がこれまで塞がれていたのが、少なくとも部分的に塞がれなくなり、これによりシーリングキャップの薬剤チャンバからサンプル保存液をサンプル収集チャンバ内へ流すための導管が形成される。
【0019】
一部の実施形態では、選択的に可動なバルブの開口は可逆であることが明らかである。すなわち、選択的に可動なバルブは開弁配置から閉弁配置に移行することができる。例えば、本願にて開示されている装置の複数の実施形態は、(例えば、コアのヘッド部材に長手方向力をカラーに向けて当てること等により)コアをカラーに手動で入れて戻すことができ、これにより、選択的に可動なバルブは閉弁配置に戻ることができる。
【0020】
プラグアセンブリを備える実施形態については、プラグアセンブリのカラーがシーリングキャップと連動するように、(例えば摩擦嵌合等によって)シーリングキャップと機械的にインターロックされる。カラーは環状とし、プラグアセンブリのポストを包囲して当該ポストとの間に流体密接続を形成することができる。追加的又は代替的に、カラーによって形成されたアパーチャ内にプラグを配置することができ、これによりカラーとプラグとの間に流体密接続を形成することができる。プラグは、カラーの上表面の一部に重なる寸法及び形状のヘッドを有することができ(これにより、プラグとカラーとの間に流体密接続を形成することができ)、並びに/又は、プラグはプラグ本体を有することができ、プラグ本体は、カラーにより形成されたアパーチャ内に嵌合して当該プラグ本体とカラーの側壁(例えばアパーチャを形成する側壁等)との間に流体密接続を形成する寸法及び形状である。ポストに関連付けられたフランジは、サンプル収集容器(又はこれに関連付けられた構造)の開口を覆うように嵌合する寸法及び形状とされ、これによりポストがサンプル収集チャンバ内に入り込むことを防止する。シーリングキャップがサンプル収集容器に関連付けられると、ポストフランジがサンプル収集チャンバの開口に当接する。シーリングキャップを(例えばねじ部係合等により)サンプル収集容器にさらに固定すると、カラーがシーリングキャップと共に移動し、ポストは静止した状態に留まる。このようにしてポストはカラー及びシーリングキャップに対して相対移動し(例えば長手方向に直進移動し)、これによりポストがプラグに当接してこれに圧力を加え、場合によってはこれにより、プラグがカラーから動かされて薬剤チャンバに入り込む。上述のようなシーリングキャップに対するポストの独立した相対移動は例えば、(流体密接続を形成する)ポストとカラー及び/又はプラグとの間の力(例えば摩擦力、又は機械的インターロックを克服するために必要な力等)を、シーリングキャップ及びサンプル収集装置の取付機構間の力より小さくすることによって行うことができる。開放配置に移行すると、ポストによって形成された流体通流部がこれまで塞がれていたのが、少なくとも部分的に塞がれなくなり、これによりシーリングキャップの薬剤チャンバからサンプル保存液をサンプル収集チャンバ内へ流すための導管が形成される。
【0021】
上記から明らかであるように、ここで提供した代替的及び/又は追加的実施形態の他、本願開示のシステム、キット及び方法は熟練者又は未熟練者によって、生体サンプルを収集して少なくとも最初に保存することに関して誤りの可能性を低減して使用することができる。よって、本願開示の実施態様は、診断目的、科学目的その他の目的のための生体サンプルの調達に係るコストを削減することができ、また、必要なインフラストラクチャ(例えば、サンプル収集及び保存に供される制御された環境、生体サンプルを物理的に収集、輸送及び/又は保存するための熟練の人員等)を設置する必要なく、サンプル収集エリアとなり得るエリアの地理的な範囲を拡大することができる。
【0022】
本願でいう「生体サンプル」との用語は、診断用分析、予後分析、遺伝子解析その他の科学的分析のために使用できる全ての細胞、組織、又は分泌液(宿主又は病原体のどちらであるかは問わない)を含むことができる。生体サンプルには例えば、ヒトの例えば皮膚等の細胞サンプルを含むことができる。また、細菌、ウィルス、原生動物、真菌、寄生生物、及び/又は他の原核共生生物、真核共生生物、病原体若しくは環境生物のいずれかを含むヒト以外の細胞サンプルを含むこともできる。また、「生体サンプル」との用語は、例えば血液、尿、唾液及び脳脊髄液等の流体サンプルも含み、例えば鼻咽頭領域や下気道からの粘液(すなわち痰)等を含む他の生体サンプルにも及ぶ。
【0023】
本願でいう生体サンプルの「プロバティブ成分」とは一般に、蛋白質、核酸、表面成分(surface moiety)、その他生体サンプルから分離できる化合物の全てをいう。好適には、プロバティブ成分は核酸であり又は核酸を含むものであり、より好適にはDNAであり又はDNAを含むものである。好適な一実施形態では生体サンプルは、好適なプロバティブ成分としてユーザの遺伝子物質(例えばDNAやRNA等)を含むと推測される唾液であり、又は唾液を含むものである。
【0024】
<選択的に可動なバルブを備えたサンプル収集システム及びキット>
一実施形態では、マルチピース型サンプル収集システム又はキットの一部である収集容器に生体サンプルを収集、保存及び貯蔵する。図1~4に示されている実施形態に類似する一例のサンプル収集装置が、米国意匠出願第29/698,615号(出願日:2019年7月18日)に記載されており、同文献の記載内容は参照により含まれるものとする。また、図5~7に記載されている実施形態に類似する一例のサンプル収集装置が、米国意匠出願第29/698,614号(出願日:2019年7月18日)に記載されており、同文献の記載内容は参照により含まれるものとする。
【0025】
図1Aに示されているように、システム100又はキットの第1のピースはサンプル収集容器102を備えることができ、第2のピースはサンプル収集漏斗部(不図示)を備えており、これは収集容器とは別体でパッケージングするか又は収集容器に着脱可能に接続することができ、第3のピースは、薬剤チャンバを有するシーリングキャップ110を備えており、薬剤チャンバは選択的にシーリングキャップ内に配され、又はシーリングキャップと一体とされる。また、シーリングキャップ110は、コアとカラーとから成る選択的に可動なバルブも備えている。シーリングキャップ110はサンプル収集容器102と関連付けられ、選択的に可動なバルブを介してサンプル保存薬をサンプル収集容器102内へ出し、サンプル収集チャンバの内容物を封入するように構成されている。
【0026】
図1Bは例として、図1Aのサンプル収集システム100の組立後の三次元モデルの断面を示す図である。システム100はサンプル収集容器102と、オプションとして漏斗部(不図示)とを備えており、これはサンプル収集容器102の上部分又は開口105と関連付けることができ、これによりサンプル収集容器102のサンプル収集チャンバ103と流体連通することができる。生体サンプル収集システム100は、シーリングキャップ110に関連付けられたコア106とカラー108とから成る選択的に可動なバルブ104も備えることができ、シーリングキャップ110は、当該シーリングキャップ110内に配置され又は当該シーリングキャップ110と一体とされた薬剤チャンバ111を備えている。シーリングキャップ110は、選択的に可動なバルブ104と共に、キャップ110がサンプル収集チャンバ103の開口105とバルブ104の少なくとも一部(例えばコア106のフランジ107等)とを覆うように嵌合して封止し、サンプル収集チャンバ103の開口105を覆うように、収集容器102の上部分と関連付けられる寸法及び形状とすることができる。
【0027】
一部の実施形態では、薬剤チャンバ111内の薬剤は、精製前又は検査前に生体サンプルのプロバティブ成分の完全性を保護する保存液又は緩衝液を含む。本願に記載のサンプル収集システムと共に使用できる保存薬の例が、米国特許第10,174,362号明細書、米国特許出願公開第2019/0062806号明細書、及び国際公開第2020/102570号に開示されており、これらの記載内容は参照により含まれるものとする。保存薬は典型的には化学溶液であり、1つ又は複数の塩類(例えばNaCl,KCl,NaHPO又はKHPO等であり、一部の実施態様では、関連分野において公知のように複数の塩類を組み合わせてリン酸緩衝生理食塩水とすることができる)、細胞溶解液(例えばトリトンX-100等の洗剤)、キレート化剤(例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA))、エチレン-グリコール-ビス(β-アミノエチルエーテル)-N,N,N’,N’-四酢酸(EGTA)、蒸留水、その他関連分野において公知の薬剤を含むことができる。
【0028】
1つ又は複数の実施形態では、前記薬剤又は緩衝液は、研究所、臨床施設その他の目的地への移送中、輸送中及び/又は貯蔵中に、サンプル中の少なくとも1つのプロバティブ成分(例えばDNAやRNA等の核酸、蛋白質等、及びこれらの組み合わせ)を安定化する。保存液が追加された後は、サンプルは常温以下で、プロバティブ成分が有意に失われることなく数週間又は数か月間貯蔵することができる。つまりサンプルは、保存液中に数週間又は数か月間貯蔵された後も、診断目的、遺伝子学的目的、疫学的目的、その他収集を行った目的のために使用できる、ということである。
【0029】
引き続き図1を参照すると、シーリングキャップ110及び唾液漏斗部(不図示)はそれぞれ独立して、接続機構を用いてサンプル収集容器102に取り付けることができる。この接続機構は例えば、ねじ部、スナップ接続部、締まり嵌め接続部、タング・アンド・グルーブ部材(さねはぎ)、バヨネット接続部、又は他のインターロック若しくは機械的連結機構を含むことができる。例えば、先に漏斗部を、相手方接続機構(例えば、不図示の相手方ねじ部等)を介してサンプル収集容器102に取り付けることができる。生体サンプルをユーザから容易に受け入れられるようにした後、相手方接続機構を逆転することにより(例えば漏斗部を回して外すことにより(不図示))漏斗部を取り外し、同一又は類似の相手方接続機構を用いてシーリングキャップ110を収集容器102に固定することができる。例えば、図1A及び図1Bに示されているように、シーリングキャップ110は当該シーリングキャップ110の内周壁に配された接続部材112(例えばねじ部等)を有することができ、この接続部材112は、サンプル収集容器102の外表面に配された接続部材114(例えば相手方ねじ部等)に対して相補的であり、これと協働する。
【0030】
一部の実施形態では、漏斗部と収集容器との間の接続機構は、溶液キャップと収集容器との間の接続機構とは異なる。例えば、漏斗部は締まり嵌め又はスナップ嵌めによって収集容器に嵌められ、それに対して、溶液キャップは回転により、収集容器の外側部分に配された相手方ねじ部と溶液キャップの内側部分に配されたねじ部との係合によって固定することができ、又はその逆とすることができる。用いられる取付機構の如何にかかわらず、サンプル保存液をサンプル収集チャンバ103に導入し、サンプル収集容器102にシーリングキャップ110を取り付けた結果として、サンプル収集チャンバ103に入れられた生体サンプルとサンプル保存液とを混合することができる。これは、上記にて示したように、選択的に可動なバルブ104が開弁して、この開弁したバルブ104により形成された流体通流部116を介して薬剤をサンプル収集チャンバ103内へ放出できるようにした結果により生じるものとすることができる。
【0031】
シーリングキャップ110は、薬剤チャンバ111内に一定量の薬剤を受けるように構成されており、また図1Bにおける組立後のサンプル収集システム100の断面図により示されているように、シーリングキャップ110には選択的に可動なバルブ104が関連付けられている。カラー108はスナップ嵌めによりシーリングキャップ110に入れることができ、これによりカラー108とシーリングキャップ110との間に流体密接続が形成される。図示されているように、カラー108は、シーリングキャップ110と係合して当該カラー108を安定化する保持リング又はフランジを備えている。
【0032】
図2A~2Cにさらに示されているように、コア106は流体通流部116を形成し、バルブ104が閉弁配置にあるときは(図2A及び図2B)、薬剤チャンバ111に入っているいかなる薬剤も当該薬剤チャンバ111内に保持及び封入される。バルブ104は図1B図2A及び図2Bでは、閉弁配置に配列しているのが示されている。しかし図2Cでは、選択的に可動なバルブ104は開弁配置に配することができる。開弁配置でシーリングキャップ110との関連付けが行われると、薬剤チャンバ111から(1つ又は複数の)通流部116を介して薬剤がサンプル収集チャンバ103へ移送することができる。
【0033】
つまり、図2A及び図2Bに示されているようにバルブ104が閉弁配置にあるとき、(1つ又は複数の)流体通流部116を選択的に可動なバルブ104のカラー108によって塞ぐことができる。この状態では、カラー108の内側側壁とコア106のヘッド部材109との相互作用により、少なくとも流体通流部116において及び/又は流体連通部106の周囲に流体密接続が形成される。カラー108とコア106との間のこの流体密接続が、薬剤チャンバ111からの薬剤の早急な又は意図しない放出を阻止する。
【0034】
一部の実施形態では、コアの(1つ若しくは複数の)流体通流部及び/又は構造が、サンプル収集チャンバとシーリングキャップとの間に侵入し及び/又はその間を横断する流体の攪拌器として機能できるという利点を奏することが明らかである。
【0035】
シーリングキャップ110及びサンプル収集容器102の互いに相補的なねじ部114,112が互いに係合し、シーリングキャップ110がサンプル収集容器102に向かって進行すると、コア106の近位のフランジ107が、当該サンプル収集容器102の開口105を画定するサンプル収集管の上部リップと係合する。シーリングキャップ110を(例えばねじ係合等により)さらにサンプル収集容器102に向けて固定して動かすと、カラー108はシーリングキャップ110と共に移動し、コア106はサンプル収集容器102に対して相対的に静止状態に留まる。このようにして、カラー108は長手方向にコア106に対して相対変位し、これにより選択的に可動なバルブ104は、(例えば図2Cに示されているように物理的な再配置を受けること等により)開弁配置に移行する。開弁配置に移行すると、コア106に形成された流体通路又は通流部116がこれまで塞がれていたのが、薬剤チャンバ111とサンプル収集チャンバ103との間において流体連通を可能にする。
【0036】
コア106に形成された流体通路/通流部116、及び上記にて説明したコア106の他の種々の構成要素については、図3A及び図3Bの一例のコア106の斜視図に示す。図1及び図2のカラー108も同様に、図4A及び図4Bを含めた複数の斜視図に示す。
【0037】
コア106が閉弁配置から開弁配置に移行すると、コア106の本体に配された環状の保持要素113がカラー108の内側側壁との間に流体密シールを形成する。開弁配置に完全に移行すると、環状の保持要素113はカラー108の上表面と揃い、当該カラー108との間に流体密接続を維持する。これにより、カラー108の内側側壁とコア106の外側側壁との間にサンプル保存薬が(流体チャンバから)溜まることが無くなり、サンプル保存薬は薬剤チャンバ111から、コア106に形成された流体通流部116を介して、中に入っている生体サンプルとサンプル保存薬とを混合してこれを保存するサンプル収集チャンバ103内へ送られる。このようにしてバルブアセンブリ104は、シーリングキャップ110がサンプル収集容器102に閉められたときに閉弁配置から開弁配置に移行することができる。
【0038】
一部の実施形態では、カラー108とチャンバ側壁との係合により生じる抵抗力は、カラー108とチャンバ側壁との間に締まり嵌めが形成されることにより生じるものである。この締まり嵌めは、一部の実施形態では流体密嵌めとすることができる。
【0039】
一部の実施形態では、選択的に可動なバルブ104を開弁するために必要な回転距離は、流体通流部116を少なくとも部分的に塞がない状態にするために必要な距離に比例する。この距離は、接続部材114,112の最初の係合からシーリングキャップ110及び容器102の封止位置までに当該キャップ110が辿る距離以下とすることができる。しかし、図中では複数の流体通流部116が示されているが、一部の実施形態ではこれより少なくすること(例えば流体通路/流通部を1つとし、又は4つより多くすること)ができることは明らかである。
【0040】
<プラグアセンブリを備えたサンプル収集システム及びキット>
図5~7を参照すると、一部のサンプル収集システムはプラグアセンブリを備えることができる。図示のように、プラグアセンブリの中空のカラー202は、シーリングキャップ210を用いてサンプル収集容器201を封止したときにシーリングキャップ210と連動してサンプル収集容器201に向かって移動するように、(例えば摩擦嵌合等によって)シーリングキャップ210と機械的にインターロックされる。図5A図5B及び図6に示されているように、プラグ204は円柱形の本体と2つのフランジとを備えている。上部フランジ205は、中空のカラー202によって形成されたアパーチャを跨ぐ寸法及び形状となっており、図示のように、上部フランジ205の下表面が中空のカラー202の上表面との間に流体密シールを形成できるように、カラーのアパーチャの径からはみ出すことができる。プラグ204の下部フランジ207は円柱形の本体から径方向に延在し、アパーチャを形成する中空のカラー202の側壁と係合する寸法及び形状となっている。
【0041】
ポスト206は、当該ポスト206の本体内を途切れずに貫通する複数の流体通流部212を形成する。ポストの円柱形の上部分は、中空のカラー202によって形成されたアパーチャ内に嵌まる寸法及び形状となっている。ポスト206の上部分の前縁部208は、プラグ204の下表面(例えば下部フランジ207)と関連付けられるように構成されている。図5A及び図5Bに示されている実施形態では、上部分の前縁部208は、プラグ204の下部分に形成された窪みと係合する冠状部を有する。一部の実施形態では、冠状部の外側リムは、プラグ204の下部フランジ207と係合する寸法及び形状となっている。ポスト206はさらに、サンプル収集容器(又はサンプル収集容器に関連付けられた構造)の開口と係合する寸法及び形状のベース部又はフランジ209を有する。
【0042】
上記のプラグ-ディスク装置(例えば装置200)は、生体サンプル(典型的には唾液)を収集するためにユーザに提供される際には、(1)サンプル収集容器201と、(2)事前にサンプル保存液を充填して保持している薬剤チャンバに対して流体密シールを形成するシールアセンブリを(封止配置で)有するシーリングキャップ210と、の2つのパーツに含まれている。ユーザは生体サンプルをサンプル収集管の中に入れることができ、使用後、サンプル収集管にシーリングキャップが関連付けられて、中に入っている生体サンプルを封入する。
【0043】
シーリングキャップ210がサンプル収集容器201に関連付けられると、ポスト206のベース部又はフランジ209は、サンプル収集容器の開口を形成するサンプル収集容器の上部リップと係合する。シーリングキャップ210を(例えばねじ係合等により)さらにサンプル収集容器201に向けて固定して動かすと、中空のカラー202はシーリングキャップ210と共に移動し、ポスト206はサンプル収集容器201に対して相対的に静止状態に留まる。このようにして、中空のカラー202は長手方向にポスト206に対して変位し、これによりポスト206の前縁部208(例えば冠状部分)がプラグ204の下側(例えば下部フランジ207)に押し付けられる。何処かの時点で、シーリングキャップ210を締結する回転力は、中空のカラー202からプラグ204が係合解除するために十分な力に変換される。最初に、中空のカラー202から離れていく方向に上部フランジ205が直進移動し、これにより中空のカラー202と上部フランジ205との間の流体密シールが破られ、それに対して第2の下部フランジ207は、中空のカラー202の側壁と接触した状態に留まる。しかし場合によっては、ポスト206はプラグ204を押し(そして移動させ)、下部フランジ207が側壁から係合解除して、プラグ204がシーリングキャップ210の薬剤チャンバ内に排出される。
【0044】
プラグ204が中空のカラー202から係合解除されると、ポスト206の上端部が薬剤チャンバと流体連通状態となり、このシールアセンブリは基本的に無封止配置に変わる。この無封止配置では、流体連通部212は塞がれておらず、薬剤チャンバからサンプル保存液をサンプル収集容器201へ輸送するための通路として機能する。ポスト206の本体は中空のカラー202の内側側壁との間に流体密シールを形成し、流体通流部/通路212を介してサンプル保存液を強制的に排出する。これにより、中空のカラー202の内側側壁とポスト206の外側側壁との間にサンプル保存薬が(薬剤チャンバから)溜まることが無くなり、サンプル保存薬は薬剤チャンバから、ポスト206に形成された流体通流部212を介して、中に入っている生体サンプルとサンプル保存薬が混合してこれを保存するサンプル収集容器201内へ送られる。このようにして上記のシールアセンブリは、シーリングキャップ210がサンプル収集容器201に閉められたときに封止配置から無封止配置に移行することができる。
【0045】
一部の実施形態では、シールアセンブリは可逆的に封止状態及び無封止状態とすることができる。つまり、シールアセンブリからプラグ204を中空のカラー202の開口に連続的に付けて取り外し、封止配置から無封止配置へ繰り返すことができる。例えば、シーリングキャップ210をサンプル収集容器201に関連付けることによってプラグ204が係合解除し、これによりシールアセンブリが封止配置から無封止配置に移行することができる。無封止配置の際には、ポスト206を後退させてプラグ204を中空のカラー202の中に戻し、シールアセンブリを無封止配置から封止配置に移行させることができる。
【0046】
別段の定義が無い限り、本願にて用いられている技術用語及び科学用語は全て、本願開示が属する分野の通常の知識を有する者によって通常理解されるものと同一の意味を有する。
【0047】
また、本願開示の特定の実施形態のシステム、装置、製品、キット、方法及び/又はプロセスは、本願にて開示及び/又は記載されている他の実施形態において記載した特定、構成(例えば構成要素、部材、要素、部品及び/又は部分等)を含み、導入し、又は他の態様で具備することができる。よって、特定の実施形態の種々の構成は、本願開示の他の実施形態と同等であり、組み合わせることができ、包含されることができ、及び/又は導入されることができる。よって、本願開示の特定の実施形態に関する特定の構成の開示内容が、当該特定の実施形態の当該構成の用途又は包含を限定するものと解すべきものではなく、本願開示の範囲から必ずしも逸脱することなく、他の実施形態が当該構成、部材、要素、部品及び/又は部分を備えることもできることが明らかである。
【0048】
さらに、ある構成が他の構成と組み合わせる必要があるとの記載が無い限り、本願におけるいかなる構成も、本願に記載されている同一又は異なる実施形態の他の構成と組み合わせることができる。また、本願に示されているシステム、方法、装置等の種々の周知の部分については、例示の実施形態の部分が見にくくなることを回避するため、本願では特に詳細に記載されていない。しかし、かかる部分も本願にて企図されているものである。
【0049】
本願開示は、その思想又は本質的な特徴から逸脱することなく他の具体的な形態で実施することができる。本願にて記載されている実施形態は、あらゆる点において例示であり、本発明を限定するものではないとみなすべきものである。よって、本発明の範囲は上記の説明により示されたものではなく、添付の特許請求の範囲により示されたものである。特定の実施形態及び詳細がここに含まれ、また本願開示の実施形態を例示する目的で添付の開示に含まれているが、当業者であれば本願開示又は本発明の範囲から逸脱することなく、本願に開示されている方法、製品、器具及び装置の種々の変更を行うことができることが明らかであり、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲にて定まる。特許請求の範囲の意味及び均等の範囲に属する変更は全て、特許請求の範囲に包含されるべきものである。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A-B】
図6
図7
【国際調査報告】