(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-25
(54)【発明の名称】中枢神経系障害の併用処置
(51)【国際特許分類】
A61K 31/132 20060101AFI20220818BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20220818BHJP
A61K 31/197 20060101ALI20220818BHJP
A61K 31/164 20060101ALI20220818BHJP
A61K 31/7076 20060101ALI20220818BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220818BHJP
【FI】
A61K31/132
A61P25/28
A61K31/197
A61K31/164
A61K31/7076
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021575244
(86)(22)【出願日】2020-06-17
(85)【翻訳文提出日】2022-02-14
(86)【国際出願番号】 US2020038131
(87)【国際公開番号】W WO2020257279
(87)【国際公開日】2020-12-24
(32)【優先日】2019-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521550404
【氏名又は名称】フィリーラ ニュー ジーランド リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】システィ, ニコラス
【テーマコード(参考)】
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA18
4C086GA16
4C086MA02
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4C086NA05
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4C086ZC75
4C206AA01
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4C206MA02
4C206MA04
4C206MA57
4C206MA72
4C206NA05
(57)【要約】
本発明は、アルツハイマー病患者を含む患者に、別個にもしくは組み合わせにおいて、銅レベルおよび/または銅の値を正常化し得る薬剤、ならびにビタミンB5レベルを正常化し得る薬剤を投与する工程を包含する、中枢神経系の障害を処置または防止するための組成物および方法に関する。本開示は、活性薬剤が、銅(II)キレート剤(例えば、トリエチレンテトラミン二塩酸塩またはトリエチレンテトラミン二コハク酸塩)およびビタミンB5剤(例えば、ビタミンB5またはその薬学的に受容可能な塩)である薬学的調製物を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬学的に受容可能なキャリア、ならびに治療上有効な量の銅(II)キレート剤およびビタミンB
5剤を含む、薬学的組成物。
【請求項2】
前記銅キレート剤は、トリエチレンテトラミンまたはその薬学的に受容可能な塩である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記銅キレート剤は、トリエチレンテトラミンの塩酸付加塩またはトリエチレンテトラミンのコハク酸付加塩である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記ビタミンB
5剤は、ビタミンB
5、ホスホパンテテイン、パンテノール、もしくはコエンザイムAまたはその薬学的に受容可能な塩からなる群より選択される、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記銅キレート剤は、トリエチレンテトラミン二塩酸塩であり、前記ビタミンB
5剤は、ビタミンB
5である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記銅キレート剤は、トリエチレンテトラミン二コハク酸塩であり、前記ビタミンB
5剤は、ビタミンB
5である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記銅キレート剤は、トリエチレンテトラミン二コハク酸塩の多形体である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記銅キレート剤は、トリエチレンテトラミン二塩酸塩の多形体である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
前記組成物は、時限放出または緩徐放出のために製剤化される、請求項6に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
前記組成物は、経口投与のために製剤化される、請求項6に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
前記組成物は、カプセル剤である、請求項10に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
前記カプセル剤は、約0.5g~約2.5gのトリエチレンテトラミン二コハク酸塩および約100mg~約500mgのビタミンB
5を含む、請求項10に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
被験体をアルツハイマー病に関して処置する方法であって、前記方法は、前記被験体に、治療上有効な量の銅キレート剤および治療上有効な量のビタミンB
5剤を投与する工程を包含し、ここで前記被験体における1またはこれより多くのアルツハイマー病症状が改善される、方法。
【請求項14】
前記銅キレート剤は、銅(II)を結合する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
銅(II)を結合する前記銅キレート剤は、トリエチレンテトラミンのコハク酸付加塩である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
トリエチレンテトラミンのコハク酸付加塩は、トリエチレンテトラミン二コハク酸塩である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ビタミンB
5剤は、ビタミンB
5、ホスホパンテテイン、パンテノール、もしくはコエンザイムAまたはその薬学的に受容可能な塩からなる群より選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記ビタミンB
5剤は、ビタミンB
5である、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記銅キレート剤は、1日あたり約9mg/kg~約200mg/kgの範囲に及ぶ量で投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記被験体に、約1.2~約2.4g/日の範囲に及ぶ量の銅キレート剤を経口投与する工程を包含する、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
前記銅キレート剤および前記ビタミンB
5剤は、別個の薬学的組成物で投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項22】
前記銅キレート剤および前記ビタミンB
5剤は、単一の薬学的組成物で投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項23】
前記組成物は、経口投与に適した形態にある、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
前記経口投与に適した形態は、カプセル剤である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記経口投与に適した形態は、錠剤である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記錠剤は、腸溶錠または層化錠である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記経口投与に適した形態は、持続放出調製物、遅延放出調製物、緩徐放出調製物、制御放出調製物、または延長放出調製物である、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
治療上有効な量のトリエチレンテトラミン二コハク酸塩およびビタミンB
5を含む、薬学的組成物。
【請求項29】
アルツハイマー病に関して被験体を処置する方法であって、前記方法は、請求項28に記載の組成物を前記被験体に投与する工程を包含する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2019年6月17日出願の米国仮特許出願第62/862,415号(これは、その全体において参考として援用される)の優先権の利益を主張する。
【0002】
参照による援用
本明細書で列挙される全ての特許、特許出願および他の文書は、それらの全体において本明細書に参考として援用される。
【0003】
分野
本発明は、中枢神経系および他の障害の処置、防止または改善の方法に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
以下の記載は、本発明を理解するにあたって有用であり得る情報を含む。それは、本明細書で提供される情報のうちのいずれかが、ここで記載されるかもしくは特許請求される発明に対する先行技術または関連技術であること、または具体的にもしくは暗に参照される任意の刊行物もしくは文書が、その記載されるかもしくは特許請求される発明の特許性を評価するにあたって使用され得る先行技術もしくは参考文献であることを容認するものではない。
【0005】
ある特定の銅キレート剤は、ある特定の障害(心血管、糖関連障害(glucose disorder)、および血管障害を含む)を処置することにおける使用に関して記載されている。米国特許第10,543,178号は、糖尿病性ニューロパチーに関して被験体を処置する方法におけるトリエチレンテトラミンのコハク酸付加塩の使用を記載する。関連の米国特許第9,993,443号は、以下の多くの心臓障害、糖関連障害および血管障害と関連する組織損傷に関して被験体を処置する方法におけるトリエチレンテトラミンのコハク酸付加塩の使用を記載する:(a)糖尿病性心筋症、糖尿病性急性冠症候群、糖尿病性高血圧性心筋症、グルコース寛容減損と関連する急性冠症候群、空腹時血糖異常と関連する急性冠症候群、グルコース寛容減損と関連する高血圧性心筋症、空腹時血糖異常と関連する高血圧性心筋症、グルコース寛容減損と関連する虚血性心筋症、もしくは空腹時血糖異常と関連する虚血性心筋症;(b)心筋梗塞、冠動脈疾患と関連する虚血性心筋症、心筋症、心筋炎、特発性心筋症、代謝性心筋症、アルコール性心筋症、薬物誘発性心筋症、虚血性心筋症、および高血圧性心筋症、いかなるグルコース代謝異常とも関連しない急性冠症候群、いかなるグルコース代謝異常とも関連しない高血圧性心筋症、もしくはいかなるグルコース代謝異常とも関連しない虚血性心筋症;または(c)大動脈、頚動脈、脳血管動脈、冠動脈、腎動脈、網膜動脈、腸管動脈、大腿動脈、膝窩動脈、神経脈管動脈、細動脈ツリー(arteriolar tree)、および毛細血管床から選択される動脈の疾患状態、ならびに大動脈、冠動脈、頚動脈、脳血管動脈、腎動脈、腸管動脈、大腿動脈、もしくは膝窩動脈から選択される主要血管のアテローム性障害。
【0006】
心筋組織、腎組織、眼組織、神経組織、および血管組織において組織損傷を有する患者の銅(II)の値を下げるための種々のキレート剤の使用は、トリエンチン、2,2,2テトラミン四塩酸塩(TETA)および2,3,2テトラミン四塩酸塩を含め、米国特許第8,987,244号に記載される。
【0007】
米国特許第8,563,538号は、2,3,2テトラミン塩酸塩(例えば、2,3,2テトラミン四塩酸塩)を含め、非糖尿病性ヒト被験体において心不全を処置する方法における2,3,2テトラミン組成物の使用を記載する。用量としては、0.1mg/kg、1.0mg/kg、10mg/kg、100mg/kg、ならびに0.001~100mg/kg/日、0.01~25mg/kg/日、0.05~10mg/kg/日、0.1~5mg/kg/日、および0.5~5mg/kg/日の用量範囲が挙げられる。1日に1~4回、1~1000ミリグラムの範囲に及ぶ量の2,3,2テトラミンの投与(例えば、錠剤またはカプセル剤での経口)がまた、記載される。1つの実施形態において、上記組成物は、亜鉛塩を含む。米国特許第8,034,799号はまた、非糖尿病性ヒト被験体における心不全を、銅レベル(例えば、銅(II))を低減し得る薬剤(トリエンチンのような銅キレート剤、ならびに2,3,2テトラミン、D-ペニシラミン、N-アセチルペニシラミン、トリチオモリブデート(trithimolybdate)、およびテトラチオモリブデート(tetrathimolybdate)が挙げられる)で処置する方法を記載し、特許請求する。それはまた、2,2,2テトラミンおよび2,3,2テトラミン塩酸塩の使用を記載し、特許請求する。
【0008】
米国特許第7,928,094号は、約9~200mg/kg/日の範囲に及ぶ量で、糖尿病の長期間の合併症と関連する1またはこれより多くの状態に関してヒトを処置することにおける銅キレート剤トリエチレンテトラミン二塩酸塩(トリエンまたはトリエン-2HClもしくはトリエンチン二塩酸塩としても公知)の使用を記載する。特許請求される状態としては、心筋症、アテローム性動脈硬化症、腎臓の合併症、ネフロパシー、視力の低下、網膜症、白内障形成、およびニューロパチーが挙げられる。1つの実施形態において、上記トリエンは、約1.2~約2.4グラム/日の範囲に及ぶ量で与えられ得る。上記特許はまた、糖尿病と関連するヒトにおける組織損傷(心筋、心臓微小血管系、脳、脳微小血管系、腎臓、腎臓微小血管系、骨格筋、骨格筋微小血管系、皮膚組織、皮膚組織微小血管系、網膜組織、網膜微小血管系、末梢神経組織、および末梢神経微小血管系における組織損傷が挙げられる)を改善するためのトリエンの使用を特許請求する。上記トリエンの経口形態および長期放出形態の投与が、記載される。
【0009】
中枢神経系(CNS)障害が、新たな治療の必要性があることは、理解される。CNS疾患としては、広くは、脳および脊髄の任意の構成要素の疾患、障害および状態が挙げられる。それらは、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、変性性運動失調、例えば、フリードライヒ運動失調症、多発性硬化症、多系統萎縮症および白質ジストロフィー)、脳血管疾患、てんかん発作(seizure)、てんかん、ウイルス疾患(例えば、髄膜炎、脳炎)、脳腫瘍および神経炎症性疾患のような疾患の進行中に神経系が冒される障害を含む。CNS障害はまた、上記障害の発生の最後期ステージの間にのみ神経系が冒される障害を含む。上記障害は、希少代謝性疾患(例えば、有機酸血症または脂肪酸障害(fatty acid disorder)および遺伝性ミトコンドリア障害)を含む。
【0010】
神経変性疾患は、ニューロンの構造または機能の進行性の喪失(ニューロンの死滅を含む)によって特徴づけられる。これらの状態は、進行性でありかつしばしば致命的である。神経変性のプロセスは、十分に理解されておらず、神経変性に由来する疾患は、依然として、処置が絶えず求められているにもかかわらず、治療法は存在しない。
【0011】
いくつかの神経変性疾患はまた、炎症性の構成要素(例えば、多発性硬化症)を含む。多発性硬化症は、旧来は炎症媒介性脱髄疾患と考えられていたが、実際は、CNSの軸索損傷、ニューロン死滅および萎縮症が、患者における不可逆的神経障害の主な原因である神経変性疾患である。従って、多発性硬化症は、神経変性疾患と考えられ得るが、神経炎症性疾患または自己免疫疾患とも考えられ得る。
【0012】
脳血管疾患は、脳に供給する血管の疾患に関連する脳機能障害の一群である。4つのタイプが存在する:脳卒中、一過性脳虚血発作(TIA)、くも膜下出血および血管性認知症。
【0013】
てんかんは、神経系の予測不能な、重篤かつ潜在的に致死的な障害である。世界で約5000万人の人々が、てんかんを有する。
【0014】
認知症は、通常の加齢、機能の顕著な低下、およびせん妄の非存在によって説明され得ない認知の複数の領域における欠陥によって特徴づけられる臨床上の症候群である。さらに、精神神経性の症状および限局的な神経的所見が通常存在する。認知症は、病因に基づいてさらに分類される。アルツハイマー病(AD)は、認知症の最も一般的な原因であり、ADおよび血管性認知症の混合型、レビー小体型認知症(DLB)、ならびに前頭側頭葉型認知症が続く。
【0015】
アルツハイマー病は、特有の問題である。National Institute on Agingによれば、ADは複雑であり、任意の1つの薬物が、それを成功裡に処置することになる確率は低い。現在のアプローチは、人々が精神機能を維持し、行動症状を管理し、疾患の症状を遅らせるのを助けることに焦点をあてている。いくつかの処方薬は、ADと診断されている人々を処置するために、米国食品医薬品局によって現在承認されている。大部分の医薬は、アルツハイマーの早期または中期のステージにある人々に最もよく機能する。例えば、彼らは、一定期間、いくつかの症状(例えば、記憶の喪失)を遅らせ得る。National Institute on Agingによれば、「これらの薬物療法のいずれも、疾患自体を停止させないことを理解することは、重要である」。
その結果として、CNS障害、特に、認知症および最も特に、アルツハイマー病の新たな処置および予防的処置に対する切迫した必要があることが理解される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第10,543,178号明細書
【特許文献2】米国特許第9,993,443号明細書
【特許文献3】米国特許第8,563,538号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
簡単な要旨
本明細書で記載され、特許請求される発明は、この簡単な要旨に示されるか記載されるかまたは参照されるものが挙げられるが、これらに限定されない多くの特質および実施形態を有する。これは、包括的であることを意図せず、本明細書で記載され、特許請求される発明は、この緒言の中で特定される特徴もしくは実施形態に、またはこれら特徴もしくは実施形態によって限定されず、例証を目的で含まれるに過ぎず、限定ではない。
【0018】
本明細書で記載され、特許請求される発明は、CNS障害、ならびに上昇したまたは抑制された銅の値を上昇させるかまたは別の方法で正常化し得る薬剤および抑制されたビタミンB5レベルを上昇させるかまたは正常化し得る薬剤でのそれらの処置を含む。銅の値を上昇または正常化し得る薬剤は、銅キレート剤を含み、ビタミンB5レベルを上昇させるかまたは正常化し得る薬剤は、ビタミンB5剤である。それらは、別個に、または組み合わせにおいて一緒に投与される。好ましい銅キレート剤は、銅(II)キレート剤である。好ましいビタミンB5剤は、ビタミンB5である。
【0019】
本発明は、部分的に、銅およびビタミンB5のレベルを正常化することを目的とした処置のための新たな用量および投与形態に基づき、これは、例えば、本明細書で言及される種類の大血管、微小血管および/または毒性/代謝性の疾患を処置および防止することにおいて、ならびに銅レベルが異常でありかつビタミンB5レベルが抑制されている組織修復プロセスにおいて有用である。これは、被験体のグルコース代謝とは無関係であり、フルクトサミンオキシダーゼが任意のこのような疾患に関与するか否かとは無関係である。本発明はまた、糖尿病におけるレドックス活性遷移金属イオンの心血管蓄積に関する処置の用量および投与形態に関する。
【0020】
本発明の1つの局面において、中枢神経系の障害を処置または防止するための方法であって、必要性のある哺乳動物に、別個にまたは組み合わせにおいて、CNS銅レベルを正常化し得る薬剤およびビタミンB5を増大または正常化し得る薬剤を投与する工程を包含する方法が提供される。
【0021】
1つの局面において、本発明は、必要性のある哺乳動物に、別個にまたは組み合わせにおいて、(1)治療上有効な量のパントテン酸(ビタミンB5としても公知)剤(ビタミンB5自体を含む)、およびホスホパンテテイン(phosphopantatheine)、パンテノール、もしくはコエンザイムAまたはこれらの組み合わせもしくはこれらの薬学的に受容可能な塩、ならびに(2)治療上有効な量の銅キレート剤もしくはその薬学的に受容可能な塩を投与する工程を包含する。
【0022】
本発明は、例えば、ヒトを含め、哺乳動物において中枢神経系障害を治療上有効な量の銅キレート剤(例えば、トリエチレンテトラミンおよびその薬学的に受容可能な塩(例えば、二塩酸塩または二コハク酸塩))および治療上有効な量のパントテン酸(ビタミンB5としても公知)または別のビタミンB5剤もしくはその薬学的に受容可能な塩で処置、防止または改善する(本明細書以降、「処置すること」といわれる)方法に関する。
【0023】
本発明の別の局面において、上記方法は、薬学的に受容可能なキャリアおよび治療上有効な量の銅キレート剤(例えば、トリエチレンテトラミンのコハク酸付加塩)を含む組成物を使用する。別の局面において、上記方法は、薬学的に受容可能なキャリアおよび治療上有効な量のビタミンB5剤(例えば、ビタミンB5自体)を含む組成物を使用する。1つの局面において、上記銅キレート剤(例えば、トリエチレンテトラミンのコハク酸付加塩)および上記ビタミンB5剤(例えば、ビタミンB5)は、被験体に、別個の組成物として同時にまたは異なる時に投与される。別の局面において、上記銅キレート剤および上記ビタミンB5剤は、被験体に、両方の薬剤を含む組成物として投与される。従って、例えば、1つの実施形態において、トリエチレンテトラミンのコハク酸付加塩(例えば、トリエチレンテトラミン二コハク酸塩)および上記ビタミンB5は、被験体に、両方の薬剤を含む組成物として投与される。
【0024】
本発明の1つの好ましい局面において、処置されるべき中枢神経系の障害は、アルツハイマー病であり、好ましい実施形態において、アルツハイマー病は、上記銅キレート剤およびビタミンB5剤の組み合わせで、別個の化合物としてまたは組み合わせにおいて、好ましくは、それぞれ、一方のまたは両方の薬剤を含むカプセル剤によって経口的に投与されて、処置される。1つの実施形態において、上記CNS患者、例えば、上記アルツハイマー病患者は、ウィルソン病を有しない。
【0025】
本発明の別の局面において、上記中枢神経系の障害は、多発性硬化症、運動ニューロン疾患、レビー小体型認知症、血管性認知症、てんかん、統合失調症、統合失調感情障害、統合失調症様障害、妄想症候群ならびに精神作用物質の摂取に関連するおよび関連しない他の精神病性状態、情動障害、双極性障害、躁病、うつ病、種々の病因の不安障害、ストレス反応、意識障害、昏睡、アルコール性もしくは他の病因のせん妄、攻撃性、精神運動性興奮および他の行為障害、種々の病因の睡眠障害、種々の病因の離脱症候群、嗜癖、種々の病因の疼痛症候群、精神作用物質による中毒、種々の病因の脳循環障害、種々の病因の心身障害、転換性障害、解離性障害、排尿障害、自閉症および他の発達障害(夜間頻尿症、吃音、チックを含む)、種々のタイプの認知障害(アルツハイマー病、パーキンソン病を含む)、中枢神経系および末梢神経系の他の疾患の過程における精神病理学的症状および神経学的障害からなる群より選択される。
【0026】
本発明において有用な銅キレート剤は、本明細書に記載されており、現在公知であろうと、後に開発されようと、任意の治療上有効な銅キレート剤を含む。好ましい銅キレート剤は、銅(II)(ときおり、銅II、またはCu2+といわれ、これは第二銅イオンである)のキレート剤である。好ましい銅(II)キレート剤は、トリエチレンテトラミン(トリエンチン)およびその薬学的に受容可能な塩である。好ましいトリエチレンテトラミン塩は、二塩酸塩および二コハク酸塩である。二コハク酸塩が最も好ましい。
【0027】
従って、本発明の1つの局面において、上記銅キレート剤は、注記されるように、トリエチレンテトラミンまたはその薬学的に受容可能な塩である。本発明の別の関連する局面において、トリエチレンテトラミンの薬学的に受容可能な塩は、二塩酸塩である。本発明の別の関連する局面において、トリエチレンテトラミンの薬学的に受容可能な塩は、二コハク酸塩である。
【0028】
本発明の他の局面において、上記薬学的に受容可能な塩は、トリエチレンテトラミン二コハク酸塩の多形体である。
【0029】
本発明の別の局面において、上記薬学的に受容可能な塩は、トリエチレンテトラミン二塩酸塩の形態I多形体である。本発明の別の局面において、上記薬学的に受容可能な塩は、トリエチレンテトラミン二塩酸塩の形態II多形体である。他の有用な多形体は、本明細書に記載される。
【0030】
本発明の別の局面において、上記銅キレート剤は、以下からなる群より選択される: トリエチレンテトラミン(トリエンチン)、トリエンチン塩酸塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン四酢酸(DPTA)、2,2,2テトラミン四塩酸塩(TETA)、2,3,2テトラミン四塩酸塩、D-ペニシラミン(DPA)、1,4,8,11テトラアザシクロテトラデカン(tetraazacyclotretradecane)(サイクラム)、5,7,7’,12,14,14’ ヘキサメチル-1,4,8,11テトラアザシクロテトラデカン(サイクラムS)、2,3ジメルカプトプロパン-1-スルホン酸ナトリウム(DMPS)、N-アセチルペニシラミン(NAPA)、D-ペニシラミン(PA)、デスフェロキサミン、2,3-ジメルカプトプロパノール(BAL)、2,3-ジメルカプトコハク酸(DMSA)、トリチオモリブデート、3-7-ジアザノナン-1,9-ジアミン(3-7-Diazanonan-1,9-diamin)(BE 6184)、1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン-1,4,8,11-四酢酸、1,4,8,11-テトラアザビシクロ[6.6.2]ヘキサデカン、4,11-ビス(N,N-ジエチル-アミドメチル)-1,4,8,11-テトラアザビシクロ[6.6.2]ヘキサデカン、4,11-ビス(アミドエチル)-1,4,8,11-テトラアザビシクロ[6.6.2]ヘキサデカン、メラトニン、クリオキノール、クプリゾン、N,N’-ジエチルジチオカルバメート、酢酸亜鉛、亜鉛塩、バソクプロインジスルホン酸、バソクプロインジスルホン酸塩、ネオクプロイン(2,9-ジメチル-1,10-フェナントロリン)、テトラチオモリブデート、トリメタジジン、トリエチレンテトラミン四塩酸塩、2,3,2-テトラアミン、ピリジン-2,6-ビス(チオカルボン酸)またはピロリジンジチオカルバメート、テトラエチレンペンタミン、N,N,N’,N-テトラキス(2-ピリジルメチル)エチレンジアミン、1,4,7,11-テトラアザウンデカン四塩酸塩、テトラエチレンペンタミン五塩酸塩、D-ペニシラミン(DPA)、1,10-オルトフェナントロリン、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、2,2’-ビシコニン酸(2,2’-bicinchinonic acid)、diamsar、3,4’,5,トリヒドロキシスチルベン(レスベラトロール)、メルカプトデキストラン、o-フェナントロリン、ジスルフィラム(アンタビュース)、sar、ジエチレントリアミン五酢酸カルシウム三ナトリウム(上記の化合物の塩)、およびメチマゾール(1-メチル-2-チオールイミダゾール)ならびにこれらの薬学的に受容可能な塩。別の局面において、上記銅キレート剤は、現在公知であるが、本明細書で列挙されていない別の治療上有用な銅(II)キレート剤であるか、または後に開発される治療上有用な銅(II)キレート剤である。
【0031】
本発明の別の局面において、上記方法は、上記銅キレート剤を、1日あたり約9mg/kg~約200mg/kgの範囲に及ぶ量において哺乳動物に投与する工程を包含する。本発明の別の局面において、上記方法は、哺乳動物に、約1.2~約2.4グラム/日の範囲に及ぶ量の銅キレート剤を経口投与する工程を包含する。他の用量および用量範囲は、以下に記載される。本発明の1つの局面において、投与される合計の1日用量は、50mg~2500mgのトリエチレンテトラミンのコハク酸付加塩の範囲に及ぶ。
【0032】
本発明の別の局面において、パントテン酸(ビタミンB5としても公知)、または別のビタミンB5剤(例えば、ホスホパンテテイン、パンテノール、もしくはコエンザイムAまたはこれらの組み合わせもしくはこれらの薬学的に受容可能な塩)は、その必要性のある、抑制されたビタミンB5レベルを有する患者に、約1mg~約1000mg、好ましくは約10mg~約250mgの間、およびより好ましくは約10mg~約100mgの間の範囲において、投与される。
【0033】
上記銅キレート剤およびビタミンB5剤の用量は、単独でまたは一緒に、経口投与のための丸剤、錠剤またはカプセル剤の形態において(カプセル剤が好ましい)、提供され得る。
【0034】
従って、本発明はまた、治療上有効な量の銅キレート剤および治療上有効な量のパントテン酸(ビタミンB5としても公知)剤またはその薬学的に受容可能な塩での、例えば、ヒトを含め、哺乳動物における中枢神経系障害を処置、防止または改善する(本明細書中以降「処置する」)のための薬学的組成物に関する。1つの好ましい実施形態において、上記被験体は、アルツハイマー病に関して処置されるヒトである。
【0035】
本発明の別の局面において、上記銅キレート剤(好ましくは、トリエチレンテトラミンの塩酸付加塩またはコハク酸付加塩)は、本明細書で記載される組成物または製剤のいうちのいずれかの中にあり、治療上有効な量のパントテン酸(ビタミンB5としても公知)、ホスホパンテテイン、パンテノール、もしくはコエンザイムAまたはこれらの組み合わせもしくはこれらの薬学的に受容可能な塩、および薬学的に受容可能なキャリアをさらに含む。
【0036】
上記銅キレート剤および上記ビタミンB5剤は、被験体に、別個にまたは組み合わせにおいて投与され得る。従って、本発明の別の局面において、上記方法は、薬学的に受容可能なキャリアおよび治療上有効な量の銅キレート剤(例えば、トリエチレンテトラミンのコハク酸付加塩)を含む組成物を使用する。別の局面において、上記方法は、薬学的に受容可能なキャリアおよび治療上有効な量のビタミンB5剤(例えば、ビタミンB5自体)を含む組成物を使用する。1つの局面において、上記銅キレート剤(例えば、トリエチレンテトラミンのコハク酸付加塩)および上記ビタミンB5剤(例えば、ビタミンB5)は、同時にまたは異なる時に、別個の組成物として被験体に投与される。別の局面において、上記銅キレート剤および上記ビタミンB5剤は、両方の薬剤を含む組成物として被験体に投与される。従って、例えば、1つの実施形態において、トリエチレンテトラミンのコハク酸付加塩(例えば、トリエチレンテトラミン二コハク酸塩)および上記ビタミンB5は、両方の薬剤を含む組成物として被験体に投与される。好ましい実施形態において、上記被験体はヒトであり、アルツハイマー病に関して、トリエチレンテトラミン二コハク酸塩およびビタミンB5が別個にまたは一緒に投与されて処置される。
【0037】
上記に鑑みれば、本発明の1つの局面において、上記銅キレート剤(好ましくは、例えば、トリエチレンテトラミンの塩酸付加塩またはコハク酸付加塩)組成物および/または上記ビタミンB5剤(好ましくは、例えば、ビタミンB5)は経口投与に適した形態にあることが理解される。本発明の別の局面において、上記銅キレート剤および/または上記ビタミンB5剤(好ましくは、トリエチレンテトラミンの塩酸付加塩またはコハク酸付加塩およびビタミンB5)は、経口投与に適した形態、すなわちカプセル剤にある。本発明の別の局面において、上記銅キレート剤および/または上記ビタミンB5剤(好ましくは、トリエチレンテトラミンの塩酸付加塩またはコハク酸付加塩およびビタミンB5)は、経口投与に適した形態、すなわち、錠剤にある。本発明の別の局面において、上記銅キレート剤および上記ビタミンB5剤は、経口投与に適した形態、すなわち、腸溶錠または層化錠にある。
【0038】
本発明の別の局面において、上記銅キレート剤および/または上記ビタミンB5剤(好ましくは、トリエチレンテトラミンの塩酸付加塩またはコハク酸付加塩およびビタミンB5)は、経口投与に適した形態にあり、持続放出調製物、遅延放出調製物、緩徐放出調製物、制御放出調製物、または延長放出調製物である。本発明の1つの局面において、上記銅キレート剤および/または上記ビタミンB5剤(好ましくは、トリエチレンテトラミンの塩酸付加塩またはコハク酸付加塩およびビタミンB5)は、経皮投与、経粘膜投与、非経口投与、注射、または坐剤としての投与に適した形態にある。
【0039】
本発明の別の実施形態において、本明細書で記載される疾患および障害を処置するために有用な材料を含む製造物品、または「キット」が、提供される。上記キットは、銅キレート剤(例えば、トリエチレンテトラミンのコハク酸付加塩)および/またはビタミンB5剤(例えば、ビタミンB5)を含む容器を含む。上記キットは、上記容器上にまたは上記容器と関連付けられた、ラベルまたはパッケージ挿入物をさらに含み得る。用語「パッケージ挿入物(package insert)」とは、治療用生成物の市販のパッケージの中に慣習的に含まれる指示に言及するために使用され、上記指示は、このような治療用生成物の使用に関する適応症、使用法、投与量、投与、禁忌および/または警告についての情報を含む。適切な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、ブリスターパックなどが挙げられる。上記容器は、種々の材料(例えば、ガラスまたはプラスチック)から形成され得る。上記容器は、上記状態を処置するために有効である銅キレート剤および/もしくはビタミンB5剤(例えば、トリエチレンテトラミンのコハク酸付加塩および/もしくはビタミンB5)、またはその製剤を保持し得、滅菌アクセスポートを有し得る(例えば、上記容器は、静脈内液剤バッグ、または皮下注射針によって穿刺可能な栓を有するバイアルであり得る)。上記容器はまた、上記銅キレート剤およびビタミンB5剤が、別個の組成物としてまたは単一の組成物において組み合わせて一緒に(例えば、配合錠またはカプセル剤中で)提供される錠剤またはカプセル剤(カプセル剤が好ましい)の形態にある組成物を含むパッケージであり得る。上記ラベルまたはパッケージ挿入物は、上記組成物が、選択したCNS状態(例えば、アルツハイマー病)を、または本明細書で記載される他の障害のうちの多くを処置するために使用されることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
発明の詳細な説明
本明細書で記載され、特許請求される発明は、CNS障害、ならびに上昇したまたは抑制された銅の値を上昇または別の方法で正常化し得る薬剤および抑制されたビタミンB5レベルを上昇または正常化し得る薬剤でのそれらの処置を含む。銅の値を上昇または正常化し得る薬剤は、銅キレート剤を含み、ビタミンB5レベルを上昇または正常化し得る薬剤は、ビタミンB5剤である。それらは、別個にまたは組み合わせて一緒に投与される。好ましい銅キレート剤は、銅(II)キレート剤である。好ましいビタミンB5剤は、ビタミンB5である。
【0041】
本発明は、部分的に、銅およびビタミンB5のレベルを正常化することを目的とした処置のための新たな用量および投与形態に基づき、これは、例えば、本明細書で言及される種類の大血管、微小血管および/または毒性/代謝性の疾患を処置および防止することにおいて、ならびに銅レベルが異常でありかつビタミンB5レベルが抑制されている組織修復プロセスにおいて有用である。これは、被験体のグルコース代謝とは無関係であり、フルクトサミンオキシダーゼが任意のこのような疾患に関与するか否かとは無関係である。本発明はまた、糖尿病におけるレドックス活性遷移金属イオンの心血管蓄積に関する処置の用量および投与形態に関する。
【0042】
本発明の1つの局面において、中枢神経系の障害を処置または防止するための方法であって、必要性のある哺乳動物に、別個にまたは組み合わせにおいて、CNS銅レベルを正常化し得る薬剤およびビタミンB5を増大または正常化し得る薬剤を投与する工程を包含する方法が提供される。
【0043】
1つの局面において、本発明は、必要性のある哺乳動物に、別個にまたは組み合わせにおいて、(1)治療上有効な量のパントテン酸(ビタミンB5としても公知)剤(ビタミンB5自体、およびホスホパンテテイン、パンテノール、もしくはコエンザイムAまたはこれらの組み合わせもしくはこれらの薬学的に受容可能な塩を含む)、および(2)治療上有効な量の銅キレート剤またはその薬学的に受容可能な塩を投与する工程を包含する。
【0044】
本明細書で記載され、特許請求される発明は、CNS障害、ならびに単独でまたは一緒に投与される、銅キレート剤およびビタミンB5剤を含む、それから本質的になる、またはそれからなる方法および組成物でのそれらの処置に関する。
【0045】
本発明は、本明細書で記載されるかもしくは言及される1もしくはこれより多くの疾患、障害および状態の処置における銅キレート剤の使用、またはその疾患、障害および状態の処置における使用のための医薬の製造における銅キレート剤の使用を提供する。上記医薬は、銅キレート剤を含む、それから本質的になる、またはそれからなる。1つの実施形態において、上記医薬は、トリエチレンテトラミンのコハク酸付加塩を含む、それから本質的になる、またはそれからなる。1つの実施形態において、上記医薬は、ビタミンB5剤を含む、それから本質的になる、またはそれからなる。1つの実施形態において、上記医薬は、ビタミンB5を含む、それから本質的になる、またはそれからなる。1つの実施形態において、上記医薬は、銅キレート剤およびビタミンB5剤を含む、それから本質的になる、またはそれからなる。1つの実施形態において、上記医薬は、トリエチレンテトラミンのコハク酸付加塩およびビタミンB5を含む、それから本質的になる、またはそれからなる。用語「含む(comprising)」とは、「含む(including)、「含有する(containing)」または「によって特徴づけられる(characterized by)」と同義であり、包括的かつ制限がなく(open-ended)、追加の、記載されていない要素または成分を上記医薬(または方法の場合には工程)から排除しない。語句「からなる(consisting of)」とは、上記医薬(または方法の場合には工程)において特定されていないいかなる要素、工程、または成分をも排除する。語句「から本質的になる(consisting essentially of)」とは、その特定された材料および上記医薬の基本的かつ新規な特徴(または方法の場合には工程)に本質的に影響を及ぼさないものに言及する。本発明の基本的なかつ新規な特徴は、本明細書全体を通じて記載され、被験体におけるビタミンB5および銅(特に、銅(II))レベルを調節するために、本発明の医薬および方法の能力を含む。本明細書で記載される医薬および方法を含む、本発明の機能的かつ新規な特徴における本質的な変化は、被験体において不必要なまたは臨床上望ましくない、有害な、不利なまたは有害なビタミンB5の減少および/または銅正常化の減弱を含む。1つの実施形態において、上記医薬は、トリエチレンテトラミン二コハク酸塩およびビタミンB5および薬学的に受容可能なキャリアを含む、それから本質的になる、またはそれからなる。1つの実施形態において、上記処置の方法は、必要性のある被験体に、別個にまたは一緒に、トリエチレンテトラミン二コハク酸塩およびビタミンB5を投与することを含む、それから本質的になる、またはそれからなる。
【0046】
好ましい実施形態において、上記被験体は、アルツハイマー病を有するか、それを有すると疑われるか、それを発生させているか、それを発生させることが疑われるか、またはそれを発生させると予測される。これらの被験体は、「アルツハイマー病患者」または「アルツハイマー病を有する被験体もしくは患者」と本明細書でいわれ得る。1つの実施形態において、上記CNS患者、例えば、上記アルツハイマー病患者は、ウィルソン病を有しない。
【0047】
1つの局面において、本発明は、2種の活性成分を個々に一緒に経口摂取した場合と同じ曲線下面積を有すると予測される、1個の錠剤の中に銅キレート剤およびビタミンB5剤の両方、ならびに調製に適した薬学的に受容可能な添加剤の経口消費される固定された組み合わせ製剤である。1つの実施形態において、上記製剤は、トリエチレンテトラミンおよびビタミンB5の固定された組み合わせである。本発明の好ましい実施形態において、上記固定された組み合わせにおけるトリエチレンテトラミンは、トリエチレンテトラミン二塩酸塩またはトリエチレンテトラミン二コハク酸塩の形態にあり、上記薬学的に受容可能な添加剤は、希釈剤、崩壊剤、流動促進剤(glidant)、滑沢剤、着色剤およびこれらの組み合わせから選択される。上記ビタミンB5剤はまた、インビボでビタミンB5へと代謝される薬剤であり得る。
【0048】
上記銅キレート剤は、インビボで上記銅キレート剤を放出するプロドラッグであり得る。
【0049】
1つの実施形態において、上記固定された組み合わせ製剤は、長期作用性または緩徐放出製剤である。別個のまたは組み合わされた投与のために、上記製剤は、迅速放出もしくは緩徐放出;即時放出、遅延放出、時限放出、もしくは持続放出;またはこれらの組み合わせを提供するように調製され得る。製剤は、液体、液剤、懸濁物、エマルジョン、エリキシル剤、シロップ剤、舐剤、滴剤(点眼剤が挙げられるが、これに限定されない)、錠剤、粒剤、散剤、ロゼンジ、トローチ、カプセル剤、ゲル、軟膏、クリーム剤、ローション剤、油状物、フォーム剤、スプレー、ミスト、またはエアロゾルの形態にあり得る。カプセル剤が現在のところは好ましい。
【0050】
好ましい銅キレート剤は、銅(II)キレート剤である。好ましい銅(II)キレート剤は、トリエチレンテトラミンのコハク酸付加塩であり、最も好ましくはトリエチレンテトラミン二コハク酸塩である。
【0051】
本明細書で記載され、特許請求される方法および薬学的組成物を使用するアルツハイマー病患者の処置は、好ましい治療である。
【0052】
定義
本明細書で使用される場合、用語「CNS障害」とは、ビタミンB5および銅(特に銅(II))の調節が有益であり得る中枢神経系の任意の疾患、障害または状態に言及し、抑制されたまたは低減されたビタミンB5および抑制された、低減されたまたは増大された銅(特に銅(II))、および特に抑制されたまたは低減された銅(II)が、上記疾患、障害または状態の発症、進行、または持続に関係があるとされ得る任意の疾患、障害または状態を含む。
【0053】
CNS障害としては、アルツハイマー病が挙げられる。CNS障害としては、多発性硬化症、レビー小体型認知症、血管性認知症、てんかん、統合失調症、統合失調感情障害、統合失調症様障害、運動ニューロン疾患、妄想症候群および精神作用物質の摂取に関連するおよび関連しない他の精神病性状態、情動障害、双極性障害、躁病、うつ病、種々の病因の不安障害、ストレス反応、意識障害、昏睡、アルコール性もしくは他の病因のせん妄、攻撃性、精神運動性興奮および他の行為障害、種々の病因の睡眠障害、種々の病因の離脱症候群、嗜癖、種々の病因の疼痛症候群、精神作用物質による中毒、種々の病因の脳循環障害、種々の病因の心身障害、転換性障害、解離性障害、排尿障害、自閉症および他の発達障害(夜間頻尿症、吃音、チックを含む)、種々のタイプの認知障害(アルツハイマー病、パーキンソン病を含む)、中枢神経系および末梢神経系の他の疾患の過程における精神病理学的症状および神経学的障害が挙げられる。
【0054】
本発明はまた、脳血管疾患(すなわち、脳に供給する血管の疾患に関連する脳機能障害の群)の処置を含む。本発明の方法および組成物で処置され得る4タイプが存在する:脳卒中(特に、出血性)、一過性脳虚血性発作(TIA)、くも膜下出血および血管性認知症。
【0055】
「との組み合わせにおいて」または「とともに」とは、ある量の上記銅キレート剤が、上記ビタミンB5剤と同時~上記ビタミンB5剤の約1時間またはこれより長く、例えば、約2時間もしくはこれより長く、約3時間もしくはこれより長く、約4時間もしくはこれより長く、約5時間もしくはこれより長く、約6時間もしくはこれより長く、約7時間もしくはこれより長く、約8時間もしくはこれより長く、約9時間もしくはこれより長く、約10時間もしくはこれより長く、約11時間もしくはこれより長く、または約12時間もしくはこれより長く、約13時間もしくはこれより長く、約14時間もしくはこれより長く、約15時間、約16時間もしくはこれより長く、約17時間もしくはこれより長く、約18時間もしくはこれより長く、約19時間もしくはこれより長く、約20時間もしくはこれより長く、約21時間もしくはこれより長く、約22時間もしくはこれより長く、約23時間もしくはこれより長く、または約24時間もしくはこれより長く前または後のどこででも投与されることを意味する。すなわち、ある特定の実施形態において、上記銅キレート剤およびビタミンB5剤は、逐次的に投与される、例えば、ここで上記銅キレート剤は、上記ビタミンB5剤の前または後に投与される。他の実施形態において、上記銅キレート剤およびビタミンB5剤は、同時に投与される、例えば、ここで上記銅キレート剤およびビタミンB5剤は、2種の別個の製剤として同時に投与されるか、または上記被験体に投与される単一の組成物へと組み合わされる。上記銅キレート剤およびビタミンB5剤が、上記で例証されるように逐次的に投与されるかもしくは同時に投与されるか、またはこれらの任意の有効なバリエーションで投与されるかにかかわらず、上記薬剤は、本発明の目的のために一緒にまたは組み合わせにおいて投与されると考えられる。上記2つの薬剤の投与経路は変動し得、ここで代表的投与経路は、以下でより詳細に記載される。本発明において、銅キレート剤は、ビタミンB5剤との組み合わせにおいてまたはともに提供される。
【0056】
本明細書で使用される場合、用語「患者を供する」または「に投与する」は、哺乳動物、患者または個人への1またはこれより多くの投与量が関わるか否かに関係なく、活性化合物または代謝産物のインビボでの存在を確実にする任意の能動的または受動的様式を含む。好ましくは、投与様式は経口である。しかし、全ての他の投与様式(特に、非経口、例えば、静脈内、筋肉内など)がまた、企図される。
【0057】
疾患および状態を含む、用語「CNS障害を処置すること」などは、CNS障害、疾患または状態(例えば、その1またはこれより多くの症状のような)を防止する、遅らせる、低減する、減少させる、停止させるおよび/または逆転させることに言及し得る。
【0058】
「アルツハイマー病を処置すること」とは、上記疾患(例えば、その1またはこれより多くの症状を含む)を防止する、遅らせる、低減する、減少させる、停止させるおよび/または逆転させることに言及する。本発明の方法および組成物によって対処されるアルツハイマー病症状は、以下のうちの1またはこれより多くにおける改善を含む:記憶喪失、覚えておくまたは考えを整理することに伴う困難、集中することが困難、認知症、以下の領域のうちの最小で2つが関わる認知機能障害または行動障害:(1)新しい情報を獲得するおよび覚えておく能力の障害(症状としては、質問または会話の反復、身の回り品を置き忘れる、出来事または約束を忘れる、よく見知った道で迷子になるが挙げられる);(2)論理的思考および複雑な作業の取り扱いの障害、劣った判断;(3)視空間認知能力の障害;(4)言語機能の障害(発話、読み、書き);(5)人格、行動、または態度の変化(症状としては以下が挙げられる:興奮、動機付けの減損、イニシアチブ、無関心、気力(drive)の喪失、引きこもり、以前の活動への興味の低下、共感の喪失、強迫的(compulsive)または強迫的(obsessive)な行動、社会的に容認しがたい行動のような特徴のない気分の変動)。
【0059】
用語「防止すること」とは、全体的にまたは部分的に防止する、または改善するもしくは制御することを意味する。
【0060】
本明細書で使用される場合、「有効量」とは、所望の治療結果または予防結果を達成するために、必要な投与量でのおよび期間にわたる有効な量に言及する。例えば、および限定によってではなく、「有効量」は、疾患、障害または状態(例えば、アルツハイマー病)の徴候および/または症状を処置し得る、本明細書で開示される化合物または組成物の量に言及し得る。
【0061】
本明細書で使用される場合、本発明の物質/分子、アゴニストまたはアンタゴニストの「治療上有効な量」とは、個体の疾患状態、年齢、性別、および体重、ならびに上記物質/分子、アゴニストまたはアンタゴニストが個体において所望の応答を誘発する能力のような要因に応じて変動し得る。治療上有効な量はまた、好ましくは、上記物質/分子、アゴニストまたはアンタゴニストの任意の毒性または有害な効果を、治療上有益な効果が上回り得る量である。「治療上有効な量」は、代表的には、所望の応答(例えば、治療的または防止的なまたは改善する応答、例えば、研究者、獣医師、医師、または他の臨床医が求める例えば、組織、系、動物またはヒトの生物学的または医学的応答)を達成するまたは達成するように計算された薬剤の所定の量である。
【0062】
本明細書で使用される場合、「予防上有効な量」とは、所望の予防結果を達成するために、必要な投与量でのおよび期間にわたる有効な量に言及する。代表的には、必ずではないが、予防用量は、疾患、障害または状態の前にまたはその早期段階で被験体において使用されるので、予防上効果的な量は、治療上有効な量より少なくてもよい。
【0063】
「薬学的に受容可能な」とは、上記製剤の他の成分と適合性でありかつそのレシピエントへの投与に概して安全であるか、または投与の際に望ましくない有害な物理的反応を引きおこさない、例えば、キャリア、希釈剤または賦形剤を意味する。
【0064】
本明細書で使用される場合、「哺乳動物」とは、その通常の意味を有し、霊長類(例えば、ヒトおよび非ヒト霊長類)、実験動物(例えば、マウスおよびラットのような齧歯類)、家畜(例えば、ウシ、ブタ、ヒツジおよびウマ)、および飼い慣らされた動物(例えば、イヌおよびネコ)が挙げられる。
【0065】
本明細書で使用される場合、哺乳動物における状態、障害、および/または疾患の用語「処置」または「処置すること」は、文脈が許容する場合、(i)上記状態もしくは疾患を防止する、すなわち、上記疾患の1もしくはこれより多くの臨床症状を回避する;(ii)上記状態もしくは疾患を阻害する、すなわち、1もしくはこれより多くの臨床症状の発生もしくは進行を停止させる;および/または(iii)上記状態もしくは疾患を軽減する、すなわち、1もしくはこれより多くの臨床症状の退縮を引きおこす、ことを意味する。従って、「処置」(および「処置する」または「処置すること」のようなその文法上のバリエーション)は、通常、処置されている個体、組織または細胞の自然な経過を変化させようとする試みにおける臨床的介入に言及し、予防のためにまたは臨床病理の過程の間のいずれかで行われ得る。処置の所望の効果としては、疾患、障害または状態の発生または再発の防止、上記疾患の徴候または症状の緩和、上記疾患の任意の直接的または間接的な病理的帰結の減少、疾患進行速度の低下、疾患状態の改善もしくは軽減、ならびに退縮もしくは予後改善が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、本発明の化合物、方法および組成物は、疾患、障害もしくは状態の発生を遅らせるために、または疾患、障害もしくは状態の進行を遅らせるために、使用され得る。その用語は、被験体が完全な回復まで処置されることを必ずしも示唆しない。よって、「処置」は、特定の疾患、障害もしくは状態の症状もしくは重篤度を低減、緩和、もしくは改善する、または特定の疾患、障害もしくは状態を発生させるリスクを防止するもしくは別の方法で低減することを含む。それはまた、状態の完全または部分的な退縮状況を維持または促進することを含み得る。
【0066】
本明細書で使用される場合「と関連する」とは、両方の状況が存在することを意味するに過ぎず、一方が他方に必ず因果関係があることを意味すると解釈されるべきではない。
【0067】
用語「キレート化可能な銅」とは、銅(II)のような異なる酸化状態(oxygen state)を含むそのキレート化可能な形態のうちのいずれかにある銅を含む。よって、用語「銅の値(copper value)」(例えば、元素、塩など)は、このようなキレート化に利用可能な(例えば、細胞外組織中に、ならびにおそらく細胞内組織とは対照的に、細胞外部および/またはコラーゲンに結合している)ならびに/または他の手段(例えば、亜鉛投与)によって還元され得る、身体中の任意の適切な形態にある銅を意味する。本発明の方法および組成物は、キレート化可能な銅、好ましくはキレート化可能な銅(II)を結合するために、および銅の値を正常化するまたは銅の値を正常レベルに向かって戻すために、使用される。
【0068】
用語「薬学的製剤」とは、その中に含まれる活性成分の生物学的活性が有効であることを可能にするような形態にあり、かつ上記製剤が投与される被験体に対して許容不能に毒性のさらなる構成要素を含まない調製物に言及する。本発明の薬学的製剤は、銅キレート剤および/またはビタミンB5剤を含む。
【0069】
「銅キレート剤」は、銅を結合または修飾し、好ましくは、銅(II)値を選択的に結合または修飾し、血液および/または組織の銅レベルを正常化し、不要な銅蓄積を防止するために使用される。銅キレート剤としては、そのプロドラッグが挙げられる。銅の値を正常化する他の薬剤、および銅(II)を選択的に結合するかまたは修飾する他の薬剤は、現在公知であろうと、後に開発されようと、この定義の中に含まれる。
【0070】
「ビタミンB5剤」とは、ビタミンB5(パントテン酸としても公知)、ならびにホスホパンテテイン、パンテノール、およびコエンザイムAおよびこれらの組み合わせまたはこれらの薬学的に受容可能な塩を含む。ビタミンB5剤は、現在公知であろうと、後に開発されようと、被験体、例えば、アルツハイマー病患者への投与後に、インビボでビタミンB5へと代謝される任意の薬学的に受容可能な化合物を含む。ビタミンB5レベルを正常化する他の薬剤は、この定義の中に含まれる。
【0071】
本明細書で使用される場合、用語「被験体」などは、「個体」および「患者」を含め、これら全てが本明細書で交換可能に使用され得、任意の哺乳動物(ヒト、飼い慣らされた動物および家畜、ならびに動物園の、野生動物公園の、競技用、またはペットの動物(例えば、イヌ、ウマ、ネコ、ヒツジ、ブタ、ウシなど)が挙げられる)に言及する。本明細書での好ましい哺乳動物は、成人、小児、および高齢者を含むヒトである。好ましい競技用動物は、ウマおよびイヌである。好ましいペット動物は、イヌおよびネコである。上記被験体は、例えば、水生公園動物(例えば、イルカ、クジラ、アザラシまたはセイウチ)であり得る。ある特定の実施形態において、上記被験体、個体または患者は、ヒトである。
【0072】
銅キレート剤およびビタミンB5剤は、単独で、または1もしくはこれより多くのさらなる成分との組み合わせにおいて投与され得、1もしくはこれより多くの薬学的に受容可能な賦形剤、希釈剤および/もしくはキャリアを含む薬学的組成物へと製剤化され得る。
【0073】
「薬学的に受容可能なキャリア」とは、本明細書で使用される場合、被験体に安全に投与され得る、活性成分以外の薬学的製剤中の成分に言及する。薬学的に受容可能なキャリアとしては、緩衝液、賦形剤、安定化剤、または保存剤が挙げられるが、これらに限定されない。薬学的に受容可能な希釈剤、キャリアおよび/または賦形剤は、薬学的組成物を調製するにあたって有用な物質を含み、それらがその意図した機能を果たすことを可能にしながら、本明細書で記載される化合物と共投与され得、概して安全で、非毒性であり、生物学的にも他の点でも望ましくないものではない。薬学的に受容可能な希釈剤、キャリアおよび/または賦形剤は、獣医学的使用およびヒトの薬学的使用に適切なものを含む。適切なキャリアおよび/または賦形剤は、本発明の化合物の性質を考慮すれば、当業者によって容易に認識される。しかし、例示によれば、希釈剤、キャリアおよび/または賦形剤は、溶液、溶媒、分散媒、遅延剤(delay agent)、ポリマー薬剤および脂質薬剤、マイクロスフェア、エマルジョンなどを含む。さらなる例示によれば、適切な液体キャリア(特に、注射用液剤用のもの)は、水、水性塩類溶液、水性デキストロース溶液等(等張性の溶液は、静脈内、髄腔内、および大槽内投与に好ましい)およびビヒクル(例えば、リポソームはまた、本発明の薬剤の投与に適している)を含む。
【0074】
組成物は、任意の標準的な公知の投与形態(錠剤、丸剤、カプセル剤、半固体、散剤、持続放出製剤、液剤、懸濁物、エリキシル剤、エアロゾル、注射用液体、ゲル、クリーム剤、経皮送達ビヒクル(例えば、経皮パッチ)、挿入物(例えば、CNS挿入物)、または任意の他の適切な組成物を含む)の形態をとり得る。本発明が関連する分野の当業者は、処置されるべき状態および使用されるべき活性成分の性質を考慮して、過度な実験なしに、最も適した投与形態を認識する。種々の用量および用量範囲は、本明細書で記載される。上記銅キレート剤およびビタミンB5剤のうちの1またはこれより多くが単一組成物へと製剤化され得ることは、認識されるべきである。ある特定の実施形態において、好ましい投与形態は、注射用液剤および経口製剤を含む。
【0075】
標準的な希釈剤、キャリアおよび/または賦形剤に加えて、本発明に従う組成物は、1もしくはこれより多くのさらなる成分とともに、あるいは例えば、銅キレート剤および/もしくはビタミンB5剤の活性もしくはバイオアベイラビリティーを増強する、完全性を保護するのに役立つかまたはその半減期もしくは貯蔵寿命を増大させる、被験体への投与の際に緩徐放出を可能にする、または他の所望の利益を提供するような様式で、製剤化され得る。例えば、緩徐放出ビヒクルとしては、マクロマー、ポリ(エチレングリコール)、ヒアルロン酸、ポリ(ビニルピロリドン)、またはヒドロゲルが挙げられる。さらなる例示によれば、上記組成物はまた、保存剤、可溶化剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、甘味剤、着色剤、矯味矯臭剤、コーティング剤、緩衝液などを含み得る。本発明が関連する分野の当業者は、特定の目的に所望され得るさらなる添加剤を容易に特定する。
【0076】
本発明の化合物は、持続放出システムによって投与され得る。持続放出組成物の適切な例としては、成形された物品(例えば、フィルム、またはマイクロカプセル)の形態にある半透性ポリマーマトリクスが挙げられる。持続放出マトリクスとしては、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号; EP 58,481)、L-グルタミン酸およびγ-エチル-L-グルタメートのコポリマー、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、エチレンビニルアセテート、またはポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸(EP 133,988)が挙げられる。持続放出組成物はまた、リポソームに捕捉された化合物を含む。銅キレート剤および/またはビタミンB5剤を含むリポソームは、公知の方法(例えば、DE 3,218,121; EP 52,322; EP 36,676; EP 88,046; EP 143,949; EP 142,641;特願83-118008;米国特許第4,485,045号および同第4,544,545号;ならびにEP 102,324に記載されるものが挙げられる)によって調製され得る。通常は、リポソームは、脂質含有量が約30モルパーセント超のコレステロールである小さな(約200~800Å)単層タイプのものであり、選択された割合は、最も有効な治療のために調節される。例えば、PGLAナノ粒子またはマイクロ粒子を使用する緩徐放出送達、またはインサイチュイオン活性化ゲル化システムがまた、使用され得る。
【0077】
さらに、本発明に従う薬学的組成物は、特定の場合において、被験体に対して治療上または他に有益であり得るさらなる活性成分または薬剤とともに製剤化され得ることが企図される。本発明が関連する分野の当業者は、本明細書における発明の記載および処置されるべき障害の性質を考慮して、適切なさらなる活性成分を特定し得る。
【0078】
上記組成物は、例えば、Gennaro A R: Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 第20版, Lippincott, Williams & Wilkins, 2000のような標準的な参考文献において見出され得るような標準的技術に従って製剤化され得る。
【0079】
ある特定の実施形態において、本発明は、(a)銅キレート剤(例えば、銅(II)キレート剤(例えば、トリエチレンテトラミンのコハク酸付加塩、好ましくはトリエチレンテトラミン二コハク酸塩))、および(b)1またはこれより多くのビタミンB5剤(例えば、ビタミンB5)を含む組み合わせ生成物を提供し、ここで上記構成要素(a)および(b)は、同時にまたは逐次的に投与されるために適合される。本発明の特定の実施形態において、本発明に従う組み合わせ生成物は、上記構成要素のうちの少なくとも1つが、他の構成要素が処置されている被験体に対して効果をなお有している間に投与される様式で使用される。
【0080】
上記銅キレート剤および/またはビタミンB5剤は、同じまたは1もしくはこれより多くの異なる容器中に含まれ得、別個に投与される得か、または任意の組み合わせにおいて一緒に混合され、同時に投与され得る。好ましくは、それらは、経口投与のためにカプセル剤において組み合わされる。
【0081】
このような組み合わせ生成物は、本明細書で提供される方法および原理、ならびに当該分野で公知の方法および原理に従って製造され得る。本明細書で記載されるとおりの方法において使用される組み合わせ生成物がまた、提供される。
【0082】
別個の投与または共投与(common administration)のために、上記製剤は、迅速放出もしくは緩徐放出;即時放出、遅延放出、時限放出、もしくは持続放出;またはこれらの組み合わせを提供するように調製され得る。製剤は、液体、液剤、懸濁物、エマルジョン、エリキシル剤、シロップ剤、舐剤、滴剤(点眼剤が挙げられるが、これに限定されない)、錠剤、粒剤、散剤、ロゼンジ、トローチ、カプセル剤、ゲル、軟膏、クリーム剤、ローション剤、油状物、フォーム剤、スプレー、ミスト、またはエアロゾルの形態にあり得る。さらなる実施形態として、上記薬学的製剤は、眼に配置されるコンタクトレンズ内に含まれ得るか、それによって送達され得るか、またはそれに付着され得る。
【0083】
製造物品/キット
本発明はまた、本明細書で記載される疾患および障害を処置するために有用な材料を含む製造物品、または「キット」を含み、これが提供される。上記キットは、銅キレート剤(例えば、トリエチレンテトラミンのコハク酸付加塩)および/またはビタミンB5剤(例えば、ビタミンB5)を含む容器を含む。上記キットは、上記容器上にまたは上記容器と関連付けられた、ラベルまたはパッケージ挿入物をさらに含み得る。用語「パッケージ挿入物」とは、治療用生成物の市販のパッケージの中に慣習的に含まれる指示に言及するために使用され、上記指示は、このような治療用生成物の使用に関する適応症、使用法、投与量、投与、禁忌および/または警告についての情報を含む。適切な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、ブリスターパックなどが挙げられる。上記容器は、種々の材料(例えば、ガラスまたはプラスチック)から形成され得る。上記容器は、上記状態を処置するために有効である銅キレート剤および/もしくはビタミンB5剤(例えば、トリエチレンテトラミンのコハク酸付加塩および/もしくはビタミンB5)、またはその製剤を保持し得、滅菌アクセスポートを有し得る(例えば、上記容器は、静脈内液剤バッグ、または皮下注射針によって穿刺可能な栓を有するバイアルであり得る)。上記容器はまた、上記銅キレート剤およびビタミンB5剤が、別個の組成物としてまたは単一の組成物において組み合わせて一緒に(例えば、配合錠またはカプセル剤中で)提供される錠剤またはカプセル剤(カプセル剤が好ましい)の形態にある組成物を含むパッケージであり得る。上記ラベルまたはパッケージ挿入物は、上記組成物が、選択したCNS状態(例えば、アルツハイマー病)を、または本明細書で記載される他の障害のうちの多くを処置するために使用されることを示す。
【0084】
銅キレート剤
本発明において有用な銅キレート剤は、本明細書に記載され、現在公知であろうと、後に開発されようと、任意の治療上有効な銅キレート剤を含む。好ましい銅キレート剤は、銅(II)(ときおり、銅I、またはCu2+といわれ、これは第二銅イオンである)のキレート剤である。好ましい銅(II)キレート剤は、トリエチレンテトラミン(トリエンチン)およびその薬学的に受容可能な塩(塩酸塩およびコハク酸塩を含む)である。好ましいトリエチレンテトラミン塩は、二塩酸塩および二コハク酸塩である。二コハク酸塩が最も好ましい。
【0085】
従って、本発明の1つの局面において、上記銅キレート剤は、注記されるように、トリエチレンテトラミンまたはその薬学的に受容可能な塩である。本発明の別の関連する局面において、トリエチレンテトラミンの薬学的に受容可能な塩は、二塩酸塩である。本発明の別の関連する局面において、トリエチレンテトラミンの薬学的に受容可能な塩は、二コハク酸塩である。
【0086】
本明細書中の状態、障害および/または疾患のうちの1またはこれより多くの処置のための哺乳動物投与に適した銅の値のいくつかの好ましいキレート剤としては、例えば(適切な場合には、例えば、低カルシウム血症を回避するための適切なカルシウムナトリウム塩のような塩として)、トリエンチン(トリエン)、トリエンチン塩酸塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン四酢酸(DPTA)、2,2,2テトラミン四塩酸塩(TETA)、2,3,2テトラミン四塩酸塩、D-ペニシラミン(DPA)、1,4,8,11テトラアザシクロテトラデカン(サイクラム)、5,7,7’,12,14,14’ヘキサメチル-1,4,8,11テトラアザシクロテトラデカン(サイクラムS)、2,3ジメルカプトプロパン-1-スルホン酸ナトリウム(DMPS)、N-アセチルペニシラミン(NAPA)、D-ペニシラミン(PA)、デスフェロキサミン、2,3-ジメルカプトプロパノール(BAL)、2,3-ジメルカプトコハク酸(DMSA)、トリチオモリブデート、3-7-ジアザノナン-1,9-ジアミン(BE 6184)、1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン-1,4,8,11-四酢酸、1,4,8,11-テトラアザビシクロ[6.6.2]ヘキサデカン、4,11-ビス(N,N-ジエチル-アミドメチル)-1,4,8,11-テトラアザビシクロ[6.6.2]ヘキサデカン、4,11-ビス(アミドエチル)-1,4,8,11-テトラアザビシクロ[6.6.2]ヘキサデカン、メラトニン、クリオキノール、クプリゾン、N,N’-ジエチルジチオカルバメート、酢酸亜鉛、亜鉛塩、バソクプロインジスルホン酸、バソクプロインジスルホン酸塩、ネオクプロイン(2,9-ジメチル-1,10-フェナントロリン)、テトラチオモリブデート、トリメタジジン、トリエチレンテトラミン四塩酸塩、2,3,2-テトラアミン、ピリジン-2,6-ビス(チオカルボン酸)またはピロリジンジチオカルバメート、テトラエチレンペンタミン、N,N,N’,N-テトラキス(2-ピリジルメチル)エチレンジアミン、1,4,7,11-テトラアザウンデカン四塩酸塩、テトラエチレンペンタミン五塩酸塩、D-ペニシラミン(DPA)、1,10-オルトフェナントロリン、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、2,2’-ビシコニン酸、diamsar、3,4’,5,トリヒドロキシスチルベン(レスベラトロール)、メルカプトデキストラン、o-フェナントロリン、ジスルフィラム(アンタビュース)、sar、ジエチレントリアミン五酢酸カルシウム三ナトリウム(上記の化合物の塩)、およびメチマゾール(1-メチル-2-チオールイミダゾール)が挙げられる。
【0087】
本発明の別の局面において、上記薬学的に受容可能な塩は、トリエチレンテトラミン二コハク酸塩の多形体であり、約170℃~約190℃の間のDSCで外挿された開始温度およびピーク融解温度を有する。本発明の別の局面において、上記薬学的に受容可能な塩は、トリエチレンテトラミン二コハク酸塩の多形体であり、DSCで外挿された開始温度およびピーク融解温度は、それぞれ、180.05℃および179.91℃である。本発明の別の局面において、上記薬学的に受容可能な塩は、トリエチレンテトラミン二コハク酸塩の多形体であり、3148、1645、1549、1529、1370、1271、1172、1152、および1033(±2cm-1)における波数において赤外ピークを有する。
【0088】
本発明の別の局面において、上記薬学的に受容可能な塩は、トリエチレンテトラミン二塩酸塩の形態I多形体であり、約111℃~132℃の間のDSCで外挿された開始温度およびピーク融解温度によって特徴づけられる。本発明の別の局面において、上記薬学的に受容可能な塩は、トリエチレンテトラミン二塩酸塩の形態I多形体であり、DSCで外挿された開始温度およびピーク融解温度が、それぞれ121.96℃および122.78℃であることによって特徴づけられる。本発明の別の局面において、上記薬学的に受容可能な塩は、1043、1116、1300、1328、1557、2833、2895、2902、および3216(±2cm-1)の波数における赤外ピークによって特徴づけられるトリエチレンテトラミン二塩酸塩の形態I多形体である。
【0089】
本発明の別の局面において、上記薬学的に受容可能な塩は、約106℃~約126℃の間のDSCで外挿された開始温度およびピーク融解温度によって特徴づけられるトリエチレンテトラミン二塩酸塩の形態II多形体である。本発明の別の局面において、上記薬学的に受容可能な塩は、DSCで外挿された開始温度およびピーク融解温度が、それぞれ116.16℃および116.76℃であることによって特徴づけられるトリエチレンテトラミン二塩酸塩の形態II多形体である。本発明の別の局面において、上記薬学的に受容可能な塩は、1039、1116、1352、1519、2954、2986、3276、および3298(±2cm-1)の波数における赤外ピークによって特徴づけられるトリエチレンテトラミン二塩酸塩の形態II多形体である。
【0090】
本発明の別の局面において、上記薬学的に受容可能な塩は、トリエチレンテトラミン二コハク酸塩の多形体であり、ここで上記多形体は、米国特許第8,067,641号に見出される表3Bの座標によって規定される構造を有する結晶である。本発明の別の局面において、上記薬学的に受容可能な塩は、トリエチレンテトラミン二コハク酸塩の多形体であり、ここで上記多形体は、米国特許第8,067,641号に見出される表3Cの座標によって規定される構造を有する結晶である。
【0091】
用量、量および濃度
本発明は、上記銅キレート剤を、1日あたり約9mg/kg~約200mg/kgの範囲に及ぶ量で哺乳動物に投与する工程を包含する。本発明の別の局面において、上記方法は、哺乳動物に、約1.2~約2.4グラム/日の範囲に及ぶ量の銅キレート剤を経口投与する工程を包含する。他の用量および用量範囲は、以下に記載される。
【0092】
本発明の1つの局面において、投与される合計1日用量は、50mg~2500mgのトリエチレンテトラミンのコハク酸付加塩の範囲に及ぶ。
【0093】
本発明の別の局面において、上記組成物は、50mg~500mgのトリエチレンテトラミンのコハク酸付加塩を含む。本発明の別の局面において、上記組成物は、110~290mgのトリエチレンテトラミンのコハク酸付加塩を含む。別の局面において、上記組成物は、130~270mgのトリエチレンテトラミンのコハク酸付加塩を含む。本発明の別の局面において、上記組成物は、140~260mgのトリエチレンテトラミンのコハク酸付加塩を含む。本発明の別の局面において、上記組成物は、180~220mgのトリエチレンテトラミンのコハク酸付加塩を含む。本発明の別の局面において、上記組成物は、50mg~100mgのトリエチレンテトラミンのコハク酸付加塩を含む。本発明の別の局面において、上記組成物は、50mg、110mg、約130mg、140mg、および150mgからなる群より選択される量のトリエチレンテトラミンのコハク酸付加塩を含む。本発明の別の局面において、上記組成物は、1.2mg、10mg、12mg、20mg、30mg、および40mgからなる群より選択される量のトリエチレンテトラミンのコハク酸付加塩を含む。
【0094】
本発明の関連する局面において、パントテン酸(ビタミンB5としても公知)、または別のビタミンB5剤(例えば、ホスホパンテテイン、パンテノール、もしくはコエンザイムA)またはこれらの組み合わせもしくはこれらの薬学的に受容可能な塩は、約1mg~約1000mg、好ましくは約10mg~約250mgの間、およびより好ましくは約10mg~約100mgの間の範囲において、抑制されたビタミンB5レベルを有する、必要性のある患者に投与される。
【0095】
製造
本発明における使用に適した銅キレート剤(例えば、トリエチレンテトラミン二塩酸塩またはトリエチレンテトラミン二コハク酸塩を含む)およびビタミンB5剤(ビタミンB5を含む)は、市販の供給源から購入され得るか、または当該分野で公知の方法に従って調製され得る。錠剤またはカプセル剤にある、銅キレート剤およびビタミンB5剤の2構成要素の緩徐放出調製物が好ましく、最も好ましくはカプセル剤にあるものである。
【0096】
製薬グレードのビタミンB5およびビタミンB5剤は、当該分野で公知の広く種々の供給源から入手可能である(例えば、医薬原料グレード(raw pharma grade)および緩徐放出形態にあるものを含む)。
【0097】
銅キレート剤は、公知の製造供給源から得られ得るか、または当該分野で公知の方法を使用して合成され得る。いくつかの銅キレート剤は、米国特許第9,556,123号(これは、トリエチレンテトラミンの合成およびそれらの生成において有用な中間体を記載する)に記載される方法を使用して製造される。米国特許第8,912,362号は、種々の純度(95%純粋、96%純粋、97%純粋、98%純粋、99%純粋および100%純粋を含む)の単離されたトリエチレンテトラミン塩酸塩および二塩酸塩を記載し、特許請求する。それはまた、約99%純粋を超える純度および10ppm未満の重金属を有する単離されたトリエチレンテトラミン塩を特許請求する。
【0098】
米国特許第8,394,992号は、トリエチレンテトラミン二塩酸塩を調製するための有用なプロセスであって、上記プロセスは、(a)トリエチレンテトラミン四塩酸塩と、溶媒中の塩基とを反応させて、トリエチレンテトラミンおよび塩化物塩を生成する工程;(b)上記塩化物塩を溶液から(例えば、沈殿または濾過によって)除去する工程;(c)上記トリエチレンテトラミンと約2当量の濃塩酸とを反応させて、トリエチレンテトラミン二塩酸塩を形成する工程;および(d)上記溶液にアルコールを添加し、トリエチレンテトラミン二塩酸塩を沈殿させる工程を包含するプロセスを記載する。塩基としては、ナトリウムメトキシドおよびナトリウムエトキシドが挙げられる。溶媒としては、エタノール、メタノールおよびtert-ブチルメチルエーテルが挙げられる。アルコールとしては、エタノール、メタノールおよびイソプロパノールが挙げられる。収率は、86%超および100%までであり得る。上記‘992特許はまた、結晶性トリエチレンテトラミン二塩酸塩の熱力学的多形体を特許請求する。
【0099】
米国特許第8,067,641号は、トリエチレンテトラミン二コハク酸塩の多形体(種々の形態Iおよび形態IIの多形体を含む)の調製、および実質的に純粋な多形体を有する薬学的組成物を記載する。
【0100】
薬学的調製物
薬学的調製物がまた、提供される。本明細書で使用される場合、薬学的調製物は、薬学的に受容可能なビヒクル中に存在する、銅キレート剤(例えば、トリエチレンテトラミン二塩酸塩またはトリエチレンテトラミン二コハク酸塩)およびビタミンB5剤(例えば、ビタミンB5(単独で、または1もしくはこれより多くのさらなる活性薬剤または不活性薬剤の存在下でのいずれか)を含む組成物を意味する。用語「薬学的に受容可能な」とは、上記に示される意味を有し、連邦政府もしくは州政府の規制当局によって承認されているか、または哺乳動物(例えば、ヒト)における使用に関して米国薬局方もしくは他の一般に認識されている薬局方に列挙されるそれらビヒクルを含む。用語「ビヒクル」とは、本発明の化合物が哺乳動物への投与のために一緒に製剤化される希釈剤、佐剤、賦形剤、またはキャリアをいう。
【0101】
賦形剤の選択は、活性成分によって、および上記組成物を投与するために使用される特定の方法によって、部分的に決定される。よって、本発明の薬学的組成物の広く種々の適切な製剤が存在する。
1つの局面において、本開示は、活性薬剤が、銅(II)キレート剤(例えば、トリエチレンテトラミン二塩酸塩またはトリエチレンテトラミン二コハク酸塩)およびビタミンB5剤(例えば、ビタミンB5またはその薬学的に受容可能な塩)である薬学的調製物を提供する。本発明の方法における上記銅キレート剤の投与形態は、上記銅キレート剤と、1またはこれより多くの薬学的に受容可能な希釈剤、キャリア、佐剤などを、薬学的製剤の分野の当業者に公知の様式で合わせることによって調製され得る。本発明の方法において使用されるビタミンB5剤の投与形態は、上記ビタミンB5剤と、1またはこれより多くの薬学的に受容可能な希釈剤、キャリア、佐剤などとを、薬学的製剤の分野の当業者に公知の様式で合わせることによって調製され得る。いくつかの局面において、および好ましくは、上記銅キレート剤の投与形態および上記ビタミンB5剤の投与形態は、注記されるように、単一の組成物中で合わされる。
【0102】
本発明の特定の製剤は、固体形態にある。本発明の特定の製剤は、経皮パッチの形態にある。
【実施例】
【0103】
本発明は、組織の銅の増大を取り巻く発見および組織損傷をもたらす機構に関する方法、ならびにCNS障害(特に、アルツハイマー病)の処置においてパントテン酸(ビタミンB5)またはその代謝産物(ホスホパンテテイン、パンテノール、もしくはコエンザイムAまたはこれらの組み合わせ)とともに銅キレート化化合物を投与することの有益な効果に関連し、これを記載する。
【0104】
以下の実施例は、当業者に、本発明をどのように作製し、使用するかの完全な開示および記載を提供するように示され、発明者らが彼らの発明としてみなしているものの範囲を限定することも意図されず、実施例が、以下の実験が全てのまたは唯一の実験であることを表すことも意図されない。
【0105】
実施例1および2は、本明細書で記載され、特許請求される発明の効果を評価および定量するための動物モデルを記載する。
【0106】
実施例3は、銅キレート剤およびビタミンB5剤を含む組成物が、アルツハイマー病のボランティアにおいて試験される、安全性および耐容性に関する臨床試験を記載する。その結果は、銅キレート剤およびビタミンB5剤の共投与の安全性を示す。これらの結果は、銅キレート剤およびビタミンB5剤への患者の曝露が、安全に行われ得ることを示す。
【0107】
実施例4は、銅キレート剤およびビタミンB5剤を含む組成物が、活動性のCNS障害、すなわち、アルツハイマー病を有するボランティア患者において試験される臨床試験を記載する。その結果は、銅キレート剤およびビタミンB5剤の共投与の安全性および有効性を示す。
【0108】
実施例1 - トランスジェニック動物モデルにおける処置
本明細書で記載され、特許請求される方法および組成物を、動物モデルにおいて、例えば、アルツハイマー病の(例えば、家族性形態のアルツハイマー病のMcGill-R-Thy1-APPトランスジェニックラット動物モデル)または他のCNS障害の周知のインビボモデルのうちのいずれか1つにおいて、治療上有効な量の銅キレート剤(好ましくはトリエチレンテトラミン塩酸付加塩またはトリエチレンテトラミンのコハク酸付加塩)を、好ましくは約100mg~約1.5g/日の間で、および治療上有効な量のパントテン酸(ビタミンB5)またはその代謝産物(ホスホパンテテイン、パンテノール、もしくはコエンザイムAまたはこれらの組み合わせもしくはこれらの薬学的に受容可能な塩、好ましくは、パントテン酸)を、好ましくは1日あたり約0.1mg~約1.5gの量で投与することによって試験する。上記薬剤を、ピーナッツバター中で投与し、例えば、その後、アルツハイマー病に特徴的な認知機能障害および/または認知症の徴候に関して動物を評価する。
【0109】
実施例2 - 非トランスジェニック記憶障害マウスモデルにおける処置
非トランスジェニック記憶障害マウスモデルを、アルツハイマー病の早期ステージおよびADにおけるアミロイドオリゴマーの重要な役割を模倣するために、Aβ(1-42)ペプチドの1回のICV注射によって当該分野で公知の方法を使用して作製する。アンチセンスAβ(42-1)ペプチドを有するコントロールマウスでは、記憶障害は観察されない。記憶障害動物およびコントロール動物に(用量応答曲線を作るために)ピーナッツバター中でのトリエチレンテトラミン二コハク酸塩およびビタミンB5の選択した用量の投与後に、非トランスジェニックアミロイド障害マウスでの経口経路による3週間の処置の後の、トリエチレンテトラミン二コハク酸塩およびビタミンB5がエピソード記憶の障害を部分的にまたは完全に逆転させる能力。クリオキノールおよびメマンチンを、この迅速かつ効率的なマウスモデルを検証するために、比較物質(comparator)として使用する。
【0110】
まとめると、本開示は、トリエチレンテトラミン二コハク酸塩である第1の銅キレート剤薬物が、ビタミンB5である第2のビタミンB5剤薬物と共投与される多剤併用を提供する。1つの局面において、本明細書で提供される多剤併用は、疾患もしくは障害に罹患しているかもしくは疾患もしくは障害と診断された患者、または症状を経験し、その症状について処置を必要とする患者(例えば、CNS障害と診断された患者(アルツハイマー病と診断された患者が挙げられるが、これらに限定されない))を処置するために使用され得る。1つの局面において、本明細書で提供される多剤併用は、このような疾患または障害を処置、低減、またはそれと関連する症状の頻度および/もしくは重篤度を改善するために使用され得る。
【0111】
実施例3 - ヒト安全性および耐容性試験
このフェーズIプロトコールは、二次有効性エンドポイントを伴う、6ヶ月の継続期間の二重盲検無作為化プラシーボ対照用量上昇群比較安全性および耐容性試験である。その試験プロトコールおよびインフォームドコンセントプロセスは、各参加施設において認定されたヒト被験体委員会によって承認される。1g、1.5gから約2.5gのトリエチレンテトラミン二コハク酸塩を含むカプセル剤および100mg、200mgおよび500mgのビタミンB5を含むカプセル剤または錠剤を、各被験体ボランティアに毎日投与する。標準治療処置を伴うプラシーボアームを、合計4つのアームに関して含める。
【0112】
National Institute of Neurological and Communicative Disorders and Stroke-the Alzheimer’s Disease and Related Disorders AssociationのADの可能性の基準を満たす80名の被験体を、登録する。登録基準は、処置の無作為化および第1の用量の試験薬の投与の時点で、12~26の間のミニメンタルステート検査スコアおよび1(軽度の重篤度)または2(中程度の重篤度)の臨床認知症評価(CDR)スコアを含んだ。認知機能に影響を及ぼす医学的状態または試験完了の可能性(心不全を含む)を有する潜在的被験体を排除する。プロトコールに関与してその責任を全うする意志のある信頼のおける介護者がいない者も同様である。経口薬物療法またはインスリンでの処置を必要とする糖尿病を有する患者もまた、排除する。同意を提供する全ての被験体を無作為化し、少なくとも1用量の試験薬を受容する。85%超の薬物療法の遵守が継続して参加するために要求され、通院するごとに丸剤を計数することによって評価される。
【0113】
被験体は、登録前の90日間にわたって彼らが安定な用量を維持することを条件として、処方されたコリンエステラーゼインヒビター薬物療法を服用してもよい。安定な用量の抗鬱薬および抗精神病薬はまた、症状が適切にコントロールされていれば許容される。メマンチンは、この試験の間に米国において処方用途に関して承認されている。メマンチンの使用は、転帰分析において計画された共変量として組み込まれる。
【0114】
安全性のモニタリングのために、ベースラインの健康状態を、身体検査および神経学的検査、慣用的な血液検査、および心電図によって評価する;これらを、試験終了時に反復する。3ヶ月ごとに、身体検査および神経学的検査、全血球数計算、血中グルコースレベル、ヘモグロビンA1Cレベル、および肝機能マーカー(アラニンアミノトランスフェラーゼおよびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼレベル)を得る。臨床上の有害事象のモニタリングを、FDA規則に従って行う。独立した安全性モニタリング委員会は、試験を通して、有害事象報告を体系的に検討する。
【0115】
有効性転帰を評価して、認知症臨床試験において使用される転帰に対する処置効果の潜在的な大きさを調査する。その試験は、これらの転帰に対して統計的に有意な効果を示すように設計されない。なぜなら安全性および耐容性は、主要エンドポイントであるからである。6ヶ月にわたる全体的な変化の分析を計画して、転帰の尺度を3ヶ月ごとに集める。統計的有意差が、6ヶ月で特定される場合、その3ヶ月データのさらなる分析を行って、処置応答の時間経過を決定する。臨床転帰の尺度は、以下である:
・Clinical Dementia Rating sum of boxes(CDR-SB):これは、CDRと同じデータ収集プロセスを使用する、代替の採点システムである。順序尺度データ(ordinal-level data)を提供するその標準的採点とは対照的に、CDR-SBは、計画された統計分析に適した間隔尺度データ(interval-scale data)を提供する。
・Alzheimer’s Disease Assessment Scale Cognitive Score(ADAS-COG):これは、認知機能を、記憶、言語、および実行に対して強調して測定するための非常に高感度の70点心理測定スケールである。
・Neuropsychiatric Inventory:これは、認知症を有する患者において起こる行動障害(behavioral disturbance)を評価するために開発された。それは、認知症と関連する行動および精神医学的症状の重篤度および頻度を評価する。
・Alzheimer’s Disease Functional Assessment and Change Score:このスケールは、手段的および基本的日常生活動作の変化を経時的に評価する。
・Nurses’ Observation Scale for Geriatric Patients:これは、複数の機能領域(すなわち、記憶、手段的日常生活動作、セルフケア、気分、社会的行動、および不穏行動(disturbing behavior))の信頼性の高い評価を提供するように設計された容易に行われるスケールである。その手段は、30項目の各々に関して発生頻度に応じて5点スケールで介護者の評価を得る。それは、被験体の生活に対する認知症の影響の介護者の解釈の要約を提供する。
【0116】
さらに、Clinician’s Interview-Based Impression-Plusは、ベースラインおよび試験終了時に評価される。これは、全ての心理測定検査スコアを知ることから切り離された臨床医によって、被験体と介護者との間で独立した包括的な面接を通じて得られる全体的評価である。参照のためのベースラインからの結果を使用して、臨床医は、「変化の印象(Impression of Change)」を得るために、最後の通院時に被験体および介護者を面接した。
【0117】
小さなサンプルサイズを考慮すれば、有効性分析は、探索的であることが意図される。適切な場合、独立性に関してt検定およびχ2検定を使用して、4つの処置群(活性薬 対 プラシーボ)が、ベースライン時の年齢、教育、性別、民族性(白色人種 対 少数民族)、ベースライン時のミニメンタルステート検査スコア、APOE4アレルの存在、および試験期間の間のメマンチンの使用に関して類似であるか異なるかを検定した。
【0118】
臨床上の有効性変数に対する、およびそれらの経時的な変化の割合に対するトリエチレンテトラミン二コハク酸塩およびビタミンB5の効果を、ベースラインおよび終了時スコアのみが得られるClinician’s Interview-Based Impression-Plus Impression of Changeを除いて、反復測定に関するマルチレベルモデルを使用して評価する。マルチレベル分析(入れ子にした変動性(nested variability)でデータを分析するための統計的技術)はまた、「階層線形モデリング」または「混合モデル」と一般にいわれる。それは、同じ被験体内での数回の反復観察のようなクラスター内での独立性の欠如を修正する。結果は、安全性および耐容性、ならびにトリエチレンテトラミン二コハク酸塩およびビタミンB5でのアルツハイマー病患者の処置の有効性を評価するために表にされる。
【0119】
実施例4 - アルツハイマー病を有する患者におけるトリエチレンテトラミン二コハク酸塩およびビタミンB5でのヒト有効性試験
実施例3に記載される臨床転帰尺度を使用して、有効性試験を、主要なアルツハイマー病有効性エンドポイントおよび関連する二次エンドポイントに関して、患者ボランティアにおいて実施例3から選択された選択用量を使用して、押し進める。安全性および耐容性、ならびにトリエチレンテトラミン二コハク酸塩およびビタミンB5でのアルツハイマー病患者の処置の有効性を、6ヶ月で予め計画した中間分析とともに、12ヶ月後に評価する。この試験は、安全性および耐容性を含め、アルツハイマー病患者におけるトリエチレンテトラミン二コハク酸塩およびビタミンB5の共投与の効果を測定するために設計される。
【0120】
多施設無作為化並行二重盲検プラシーボ対照治験を行って、軽度から中程度の可能性のあるADを有する285名の患者において12ヶ月間にわたって、患者の無作為化後に投与されるトリエチレンテトラミン二コハク酸塩およびビタミンB5の選択された1日用量の有効性および耐容性を評価する。主要転帰尺度は、Alzheimer’s Disease Assessment Scale cognitive subscale(ADAS‐cog)である;二次転帰尺度は、Clinical Global Impression of Change(CGIC)およびProgressive Deterioration Scale(PDS)であり、機能変化を、Alzheimer’s Disease Cooperative Study-Activities of Daily Living(ADCS-ADL)スケールで評価し、このスケールでは、スコアは、0~78の範囲に及び、スコアが高いほど、より良好な機能を示す。混合モデル反復測定分析を使用し、アルツハイマー病におけるトリエチレンテトラミン二コハク酸塩およびビタミンB5の有効性を定量する。
【0121】
2薬物レジメンの共投与の効果を、アルツハイマー病患者での臨床試験において評価する。CNS患者、特に、アルツハイマー病患者が銅キレート剤およびビタミンB5剤の組み合わせで処置され得るという発見が、銅の値およびビタミンB5レベルを正常化するために、抑制されたビタミンB5および低減または増大した銅、特に、銅(II)の両方を有するより広い範囲の患者を、処置効果は顕著であるが、有害効果をともなわずに処置することを可能にすると予測される。
【0122】
前述は、本発明の原理を例証するに過ぎない。当業者は、本明細書に明示的に記載されても示されてもいないが、本発明の原理を具現化し、その趣旨および範囲内に含まれる種々の取り合わせを考案することができることを認識する。さらに、本明細書で記載される全ての例および条件付きの文言(conditional language)は、本発明の原理および当該技術を促進するために本発明者らが与えた概念を理解するにあたって、読み手を助けることを主に意図し、このような具体的に記載された例および条件に限定されないものと解釈されるべきである。さらに、本発明の原理、局面および実施形態、ならびにその具体例を記載する本明細書での全ての記述は、その構造的および機能的均等物の両方を包含することが意図される。さらに、このような均等物は、現在公知の均等物および将来的に開発される均等物、すなわち、構造にかかわらず同じ機能を果たす開発される任意の要素の両方を含むことが意図される。従って、本発明の範囲は、本明細書で示されかつ記載される例示的実施形態に限定されるとは意図されない。むしろ、本発明の範囲および趣旨は、添付の特許請求の範囲によって具現化される。
【手続補正書】
【提出日】2022-02-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬学的に受容可能なキャリア、ならびに治療上有効な量の銅(II)キレート剤およびビタミンB
5剤を含む、薬学的組成物。
【請求項2】
前記銅キレート剤は、トリエチレンテトラミンまたはその薬学的に受容可能な塩である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記銅キレート剤は、トリエチレンテトラミンの塩酸付加塩またはトリエチレンテトラミンのコハク酸付加塩である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記ビタミンB
5剤は、ビタミンB
5、ホスホパンテテイン、パンテノール、もしくはコエンザイムAまたはその薬学的に受容可能な塩からなる群より選択される、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記銅キレート剤は、トリエチレンテトラミン二塩酸塩であり、前記ビタミンB
5剤は、ビタミンB
5である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記銅キレート剤は、トリエチレンテトラミン二コハク酸塩であり、前記ビタミンB
5剤は、ビタミンB
5である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記銅キレート剤は、トリエチレンテトラミン二コハク酸塩の多形体である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記銅キレート剤は、トリエチレンテトラミン二塩酸塩の多形体である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
前記組成物は、時限放出または緩徐放出のために製剤化される、請求項6に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
前記組成物は、経口投与のために製剤化される、請求項6に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
前記組成物は、カプセル剤である、請求項10に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
前記カプセル剤は、約0.5g~約2.5gのトリエチレンテトラミン二コハク酸塩および約100mg~約500mgのビタミンB
5を含む、請求項10に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
被験体をアルツハイマー病に関して処置する
ための銅キレート剤およ
びビタミンB
5剤を
含む組成物であって、ここで前記被験体における1またはこれより多くのアルツハイマー病症状が改善される、
組成物。
【請求項14】
前記銅キレート剤は、銅(II)を結合する、請求項13に記載の
組成物。
【請求項15】
銅(II)を結合する前記銅キレート剤は、トリエチレンテトラミンのコハク酸付加塩である、請求項14に記載の
組成物。
【請求項16】
トリエチレンテトラミンのコハク酸付加塩は、トリエチレンテトラミン二コハク酸塩である、請求項15に記載の
組成物。
【請求項17】
前記ビタミンB
5剤は、ビタミンB
5、ホスホパンテテイン、パンテノール、もしくはコエンザイムAまたはその薬学的に受容可能な塩からなる群より選択される、請求項13に記載の
組成物。
【請求項18】
前記ビタミンB
5剤は、ビタミンB
5である、請求項13に記載の
組成物。
【請求項19】
前記銅キレート剤は、1日あたり約9mg/kg~約200mg/kgの範囲に及ぶ量で投与される、請求項12に記載の
組成物。
【請求項20】
前記銅キレート剤が、約1.2~約2.4g/日の範囲に及ぶ量
で経口投与
されることを特徴とする、請求項12に記載の
組成物。
【請求項21】
前記銅キレート剤および前記ビタミンB
5剤は、別個の薬学的組成物で投与される、請求項12に記載の
組成物。
【請求項22】
前記銅キレート剤および前記ビタミンB
5剤は、単一の薬学的組成物で投与される、請求項12に記載の
組成物。
【請求項23】
前記組成物は、経口投与に適した形態にある、請求項21または22に記載の
組成物。
【請求項24】
前記経口投与に適した形態は、カプセル剤である、請求項23に記載の
組成物。
【請求項25】
前記経口投与に適した形態は、錠剤である、請求項23に記載の
組成物。
【請求項26】
前記錠剤は、腸溶錠または層化錠である、請求項25に記載の
組成物。
【請求項27】
前記経口投与に適した形態は、持続放出調製物、遅延放出調製物、緩徐放出調製物、制御放出調製物、または延長放出調製物である、請求項23に記載の
組成物。
【請求項28】
治療上有効な量のトリエチレンテトラミン二コハク酸塩およびビタミンB
5を含む、薬学的組成物。
【請求項29】
アルツハイマー病に関して被験体を処置する
ための請求項28に記載の組成
物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0122
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0122】
前述は、本発明の原理を例証するに過ぎない。当業者は、本明細書に明示的に記載されても示されてもいないが、本発明の原理を具現化し、その趣旨および範囲内に含まれる種々の取り合わせを考案することができることを認識する。さらに、本明細書で記載される全ての例および条件付きの文言(conditional language)は、本発明の原理および当該技術を促進するために本発明者らが与えた概念を理解するにあたって、読み手を助けることを主に意図し、このような具体的に記載された例および条件に限定されないものと解釈されるべきである。さらに、本発明の原理、局面および実施形態、ならびにその具体例を記載する本明細書での全ての記述は、その構造的および機能的均等物の両方を包含することが意図される。さらに、このような均等物は、現在公知の均等物および将来的に開発される均等物、すなわち、構造にかかわらず同じ機能を果たす開発される任意の要素の両方を含むことが意図される。従って、本発明の範囲は、本明細書で示されかつ記載される例示的実施形態に限定されるとは意図されない。むしろ、本発明の範囲および趣旨は、添付の特許請求の範囲によって具現化される。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
薬学的に受容可能なキャリア、ならびに治療上有効な量の銅(II)キレート剤およびビタミンB
5
剤を含む、薬学的組成物。
(項目2)
前記銅キレート剤は、トリエチレンテトラミンまたはその薬学的に受容可能な塩である、項目1に記載の薬学的組成物。
(項目3)
前記銅キレート剤は、トリエチレンテトラミンの塩酸付加塩またはトリエチレンテトラミンのコハク酸付加塩である、項目1に記載の薬学的組成物。
(項目4)
前記ビタミンB
5
剤は、ビタミンB
5
、ホスホパンテテイン、パンテノール、もしくはコエンザイムAまたはその薬学的に受容可能な塩からなる群より選択される、項目1に記載の薬学的組成物。
(項目5)
前記銅キレート剤は、トリエチレンテトラミン二塩酸塩であり、前記ビタミンB
5
剤は、ビタミンB
5
である、項目1に記載の薬学的組成物。
(項目6)
前記銅キレート剤は、トリエチレンテトラミン二コハク酸塩であり、前記ビタミンB
5
剤は、ビタミンB
5
である、項目1に記載の薬学的組成物。
(項目7)
前記銅キレート剤は、トリエチレンテトラミン二コハク酸塩の多形体である、項目1に記載の薬学的組成物。
(項目8)
前記銅キレート剤は、トリエチレンテトラミン二塩酸塩の多形体である、項目1に記載の薬学的組成物。
(項目9)
前記組成物は、時限放出または緩徐放出のために製剤化される、項目6に記載の薬学的組成物。
(項目10)
前記組成物は、経口投与のために製剤化される、項目6に記載の薬学的組成物。
(項目11)
前記組成物は、カプセル剤である、項目10に記載の薬学的組成物。
(項目12)
前記カプセル剤は、約0.5g~約2.5gのトリエチレンテトラミン二コハク酸塩および約100mg~約500mgのビタミンB
5
を含む、項目10に記載の薬学的組成物。
(項目13)
被験体をアルツハイマー病に関して処置する方法であって、前記方法は、前記被験体に、治療上有効な量の銅キレート剤および治療上有効な量のビタミンB
5
剤を投与する工程を包含し、ここで前記被験体における1またはこれより多くのアルツハイマー病症状が改善される、方法。
(項目14)
前記銅キレート剤は、銅(II)を結合する、項目13に記載の方法。
(項目15)
銅(II)を結合する前記銅キレート剤は、トリエチレンテトラミンのコハク酸付加塩である、項目14に記載の方法。
(項目16)
トリエチレンテトラミンのコハク酸付加塩は、トリエチレンテトラミン二コハク酸塩である、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記ビタミンB
5
剤は、ビタミンB
5
、ホスホパンテテイン、パンテノール、もしくはコエンザイムAまたはその薬学的に受容可能な塩からなる群より選択される、項目13に記載の方法。
(項目18)
前記ビタミンB
5
剤は、ビタミンB
5
である、項目13に記載の方法。
(項目19)
前記銅キレート剤は、1日あたり約9mg/kg~約200mg/kgの範囲に及ぶ量で投与される、項目12に記載の方法。
(項目20)
前記被験体に、約1.2~約2.4g/日の範囲に及ぶ量の銅キレート剤を経口投与する工程を包含する、項目12に記載の方法。
(項目21)
前記銅キレート剤および前記ビタミンB
5
剤は、別個の薬学的組成物で投与される、項目12に記載の方法。
(項目22)
前記銅キレート剤および前記ビタミンB
5
剤は、単一の薬学的組成物で投与される、項目12に記載の方法。
(項目23)
前記組成物は、経口投与に適した形態にある、項目21または22に記載の方法。
(項目24)
前記経口投与に適した形態は、カプセル剤である、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記経口投与に適した形態は、錠剤である、項目23に記載の方法。
(項目26)
前記錠剤は、腸溶錠または層化錠である、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記経口投与に適した形態は、持続放出調製物、遅延放出調製物、緩徐放出調製物、制御放出調製物、または延長放出調製物である、項目23に記載の方法。
(項目28)
治療上有効な量のトリエチレンテトラミン二コハク酸塩およびビタミンB
5
を含む、薬学的組成物。
(項目29)
アルツハイマー病に関して被験体を処置する方法であって、前記方法は、項目28に記載の組成物を前記被験体に投与する工程を包含する、方法。
【国際調査報告】