IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ドイチェス クレブスフォルシュングスツェントルムの特許一覧

特表2022-537336制御性CD4+ T細胞を生成するためのスフィンゴ脂質
<>
  • 特表-制御性CD4+  T細胞を生成するためのスフィンゴ脂質 図1
  • 特表-制御性CD4+  T細胞を生成するためのスフィンゴ脂質 図2
  • 特表-制御性CD4+  T細胞を生成するためのスフィンゴ脂質 図3
  • 特表-制御性CD4+  T細胞を生成するためのスフィンゴ脂質 図4
  • 特表-制御性CD4+  T細胞を生成するためのスフィンゴ脂質 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-25
(54)【発明の名称】制御性CD4+ T細胞を生成するためのスフィンゴ脂質
(51)【国際特許分類】
   C07C 215/10 20060101AFI20220818BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20220818BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20220818BHJP
   A61K 31/133 20060101ALI20220818BHJP
   A61K 31/16 20060101ALI20220818BHJP
   A61K 31/661 20060101ALI20220818BHJP
   C07C 225/06 20060101ALI20220818BHJP
   C07F 9/09 20060101ALI20220818BHJP
【FI】
C07C215/10
C12N5/0783
A61P37/06
A61K31/133
A61K31/16
A61K31/661
C07C225/06
C07F9/09 U
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021575266
(86)(22)【出願日】2020-06-18
(85)【翻訳文提出日】2021-12-27
(86)【国際出願番号】 EP2020066942
(87)【国際公開番号】W WO2020254491
(87)【国際公開日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】19180971.4
(32)【優先日】2019-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505033721
【氏名又は名称】ドイチェス クレブスフォルシュングスツェントルム
【氏名又は名称原語表記】Deutsches Krebsforschungszentrum
【住所又は居所原語表記】Im Neuenheimer Feld 280,69120 Heidelberg,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】クイ グォリャン
(72)【発明者】
【氏名】マー シコン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C086
4C206
4H006
4H050
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065BA30
4B065BB10
4B065BB18
4B065BB19
4B065BB20
4B065BB40
4C086AA01
4C086AA03
4C086DA42
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB08
4C206AA01
4C206AA03
4C206FA02
4C206FA03
4C206GA01
4C206GA25
4C206NA14
4C206NA20
4C206ZB08
4H006AA03
4H006AB20
4H006BN10
4H006BR10
4H006BU32
4H050AA03
4H050AB20
(57)【要約】
本発明は、医薬としての使用のための、および対象が自己免疫疾患に罹患するのを予防するかまたは自己免疫疾患に罹患している対象を治療する方法における使用のための、式(I)の物質(式中、R1は6~20個の炭素原子を有するアルキル基またはアルケニル基であり;R2はHであるか、または存在せず、その際、Oは二重結合によって結合されており;R3はHまたはアシル基-C(O)R5であり、式中、R5は1~10個の炭素原子を有するアルキル基またはアルキレン基であり;かつR4はHまたはリン酸基である)に関する。本発明はさらに、制御性T細胞(Treg細胞)をインビトロで生成するための方法であって、前駆CD4+T細胞を提供する段階、段階1)において提供される前駆CD4+T細胞を、本明細書において定義される物質の存在下で培養する段階、および任意で、生成された制御性T細胞(Treg細胞)を単離する段階を含む、方法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬としての使用のための、式(I)の物質:
式中
R1は6~20個の炭素原子を有するアルキル基またはアルケニル基であり、
R2はHであるか、または存在せず、その際、Oは二重結合によって結合されており、
R3はHまたはアシル基-C(O)R5であり、式中、R5は1~10個の炭素原子を有するアルキル基またはアルキレン基であり、かつ
R4はHまたはリン酸基である。
【請求項2】
対象が自己免疫疾患に罹患するのを予防するかまたは自己免疫疾患に罹患している対象を治療するための方法における使用のための、式(I)の物質:
式中
R1は6~20個の炭素原子を有するアルキル基またはアルケニル基であり、
R2はHであるか、または存在せず、その際、Oは二重結合によって結合されており、
R3はHまたはアシル基-C(O)R5であり、式中、R5は1~10個の炭素原子を有するアルキル基またはアルキレン基であり、かつ
R4はHまたはリン酸基である。
【請求項3】
スフィンガニン、スフィンガニン-1-リン酸、および/または3-ケト-スフィンガニンであり、好ましくは、スフィンガニンである、請求項1または2記載の、使用のための物質。
【請求項4】
エリトロ形で存在し、好ましくは、エリトロ-スフィンガニン、エリトロ-スフィンガニン-1-リン酸、および/またはエリトロ-3-ケト-スフィンガニンであり、さらにより好ましくは、D-エリトロ形で存在し、さらにより好ましくは、D-エリトロ-スフィンガニン、D-エリトロ-スフィンガニン-1-リン酸、および/またはD-エリトロ-3-ケト-スフィンガニンであり、最も好ましくはD-エリトロ-スフィンガニンである、請求項1~3のいずれか一項記載の、使用のための物質。
【請求項5】
レチノイン酸、コパキソン、インスリン、CD3と相互作用する能力がある分子、CD28と相互作用する能力がある分子、トランスフォーミング成長因子β(TGFβ)、インターロイキン-2(IL-2)、短鎖脂肪酸、胆汁酸、多糖類A、n3多価不飽和脂肪酸、レチノイン酸、ビタミンD(VitD)、ビタミンC(VitC)、ポリフェノール、クエルセチン、レスベラトロール、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、ラパマイシン、および/または自己反応性タンパク質に由来するペプチド断片からなる群より好ましくは選択される作用物質、より好ましくは、トランスフォーミング成長因子β(TGFβ)および/またはインターロイキン-2(IL-2)より選択される作用物質と組み合わせて使用される、請求項1~4のいずれか一項記載の、使用のための物質。
【請求項6】
制御性T細胞(Treg細胞)をインビトロで生成するための方法であって、以下の段階を含む方法:
1)前駆CD4+T細胞を提供する段階、
2)段階1)において提供される前駆CD4+T細胞を、式(I)の物質:
(式中
R1は6~20個の炭素原子を有するアルキル基またはアルケニル基であり、
R2はHであるか、または存在せず、その際、Oは二重結合によって結合されており、
R3はHまたはアシル基-C(O)R5であり、式中、R5は1~10個の炭素原子を有するアルキル基またはアルキレン基であり、かつ
R4はHまたはリン酸基である)
の存在下で培養する段階、および任意で、
3)生成された制御性T細胞(Treg細胞)を単離する段階。
【請求項7】
式(I)の物質が、スフィンガニン、スフィンガニン-1-リン酸、および/または3-ケト-スフィンガニンであり、好ましくは、該物質がスフィンガニンである、請求項6記載の方法。
【請求項8】
式(I)の物質が、エリトロ形で存在し、好ましくは、エリトロ-スフィンガニン、エリトロ-スフィンガニン-1-リン酸、および/またはエリトロ-3-ケト-スフィンガニンであり、より好ましくは、該物質がD-エリトロ形で存在し、さらにより好ましくは、D-エリトロ-スフィンガニン、D-エリトロ-スフィンガニン1-リン酸、および/またはD-エリトロ-3-ケト-スフィンガニンであり、最も好ましくはD-エリトロ-スフィンガニンである、請求項6または7記載の方法。
【請求項9】
制御性T細胞(Treg細胞)の生成を誘導する能力がある付加的な化合物の存在下で;
好ましくは、CD3と相互作用する能力がある分子、CD28と相互作用する能力がある分子、トランスフォーミング成長因子β(TGFβ)、インターロイキン-2(IL-2)、短鎖脂肪酸、胆汁酸、多糖類A、n3多価不飽和脂肪酸、レチノイン酸、ビタミンD(VitD)、ビタミンC(VitC)、ポリフェノール、クエルセチン、レスベラトロール、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、ラパマイシン、および/または自己反応性タンパク質に由来するペプチド断片の存在下で;
より好ましくは、TGFβおよび/またはIL-2の存在下で;
さらにより好ましくは、(1)TGFβおよび/もしくはIL-2、ならびに(2)抗CD3抗体および/もしくは抗CD28抗体、ならびに/または(3)ペプチド断片の存在下で;
さらに一層好ましくは、TGFβ、抗CD3抗体、および抗CD28抗体の存在下、またはTGFβおよびペプチド断片の存在下で;
最も好ましくは、TGFβ、IL-2、抗CD3抗体、および抗CD28抗体の存在下、またはTGFβ、IL-2、およびペプチド断片の存在下で、
前駆CD4+T細胞を培養する段階をさらに含む、請求項6~8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
前駆CD4+T細胞が、対象から、好ましくは、脾臓、リンパ節、もしくは末梢血から単離されたナイーブCD4+T細胞であるか、または該前駆CD4+T細胞が、対象から単離された脾細胞もしくは末梢血単核細胞(PBMC)、好ましくは静脈内血液から単離されたものである、請求項6~9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
前駆CD4+T細胞が、細胞表面マーカーを用いるフローサイトメトリー選別または磁気細胞選別によって単離され、好ましくは、これらの細胞表面マーカーが、CD4+およびCD25+もしくはCD25であるか、またはCD4+およびCD25+もしくはCD25およびCD127-もしくはCD127である、請求項6~10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
対象が自己免疫疾患に罹患している、請求項10または11記載の方法。
【請求項13】
段階2)の物質が、最終濃度が0.1~20μMとなるように、好ましくは最終濃度が1~15μMとなるように、より好ましくは最終濃度が3~10μMとなるように、最も好ましくは最終濃度が5~6.25μMとなるように添加される、請求項6~12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
段階2)の前駆CD4+T細胞が、24~144時間、好ましくは24時間~120時間、より好ましくは48時間~96時間、培養される、請求項6~13のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
好ましくは、医薬としての使用のための、より好ましくは、対象が自己免疫疾患に罹患するのを予防するかまたは自己免疫疾患に罹患している対象を治療する方法における使用のための、請求項6~14のいずれか一項記載の方法によって得られる制御性T細胞(Treg細胞)。
【請求項16】
自己免疫疾患が、自己免疫性脳炎、自己免疫性脳脊髄炎、関節リウマチ、1型糖尿病、乾癬、自己免疫性腎疾患、全身性エリテマトーデス、セリアック病、炎症性腸疾患、または移植片対宿主病であり、好ましくは多発性硬化症である、請求項2~5のいずれか一項記載の使用のための物質、請求項12~14のいずれか一項記載の方法、または請求項15記載の使用のための制御性T細胞(Treg細胞)。
【請求項17】
トランスフォーミング成長因子β(TGF-β)および/またはインターロイキン-2(IL-2)、ならびに請求項1~4のいずれか一項で定義される物質、ならびに任意で、制御性T細胞(Treg細胞)の生成を誘導する能力がある付加的な化合物、好ましくは、CD3と相互作用する能力がある分子、CD28と相互作用する能力がある分子、短鎖脂肪酸、胆汁酸、多糖類A、n3多価不飽和脂肪酸、レチノイン酸、ビタミンD(VitD)、ビタミンC(VitC)、ポリフェノール、クエルセチン、レスベラトロール、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、ラパマイシン、および/または自己反応性タンパク質に由来するペプチド断片
を含むキットであって、
より好ましくは、該キットが、(1)TGFβおよび/もしくはIL-2、ならびに(2)抗CD3抗体および/もしくは抗CD28抗体、ならびに/または(3)ペプチド断片を含み;
さらにより好ましくは、該キットが、TGFβ、抗CD3抗体、および抗CD28抗体を含むか、または該キットが、TGFβおよびペプチド断片を含み;
最も好ましくは、該キットが、TGFβ、IL-2、抗CD3抗体、および抗CD28抗体を含むか、または該キットが、TGFβ、IL-2、およびペプチド断片を含む、
キット。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
制御性T細胞(Treg細胞またはTreg)は、当初はCD4+CD25+T細胞と呼ばれた。Treg細胞は、免疫系の制御に主に関係している。形成のメカニズムに起因して、Treg細胞は、胸腺において分化した後に身体末梢部に輸送される天然Treg細胞(nTreg)と、身体末梢部で生成される誘導性/適応性Treg細胞(iTreg)とに分かれる。Treg細胞は、CD4の発現と、活性化エフェクターT細胞(CD25T細胞、CD25-T細胞とも呼ばれる)におけるCD25の発現と比べて高い、インターロイキン-2受容体のα鎖の発現(CD25、CD25+とも呼ばれる)とを特徴とする。したがって、Treg細胞は、CD25の発現レベルに基づいてエフェクターT細胞と区別することができる。CD4+T細胞のうちの約2~10%が、高レベルのCD25を発現し(CD25)、Treg細胞である。CD25を高発現することに加えて、Treg細胞はまた、活性化エフェクターT細胞(CD127T細胞、CD127+T細胞とも呼ばれる)におけるCD127の発現と比べて低い、インターロイキン-7受容体のα鎖の発現(CD127、CD127-とも呼ばれる)を示す。さらに、CD4+CD25Treg細胞は、典型的には、後述するようにそれらの発達および抑制能力にとって不可欠である転写因子フォークヘッドボックス(Foxp3)を発現する。
【0002】
Treg細胞による免疫系制御の主な焦点は、活性化の抑制およびまた自己反応性エフェクターT細胞、すなわちCD4+T細胞およびCD8+T細胞ならびにB細胞の増大の抑制、ならびに樹状細胞、マクロファージ、およびナチュラルキラー細胞の活性化の調節である。制御性T細胞は、外来抗原に対する免疫応答の制限および自己抗原に対する寛容性の維持において不可欠な役割を果たしている。寛容性を維持し、ゆえに関連して自己免疫疾患を予防することに加えて、制御性T細胞は、アレルゲンおよび病原性微生物に対する免疫応答の抑制的調節において重要な役割を果たしている。これらはまた、臓器移植に対する免疫系の寛容誘導にも寄与し、妊娠中には胎児に対する過剰な免疫応答を防ぐ。したがって、Treg細胞は、抗原、典型的には自己抗原に対する寛容性を促進または維持する。CD4+CD25+T細胞のみが、高い抑制的活性を有する。
【0003】
自己免疫疾患には、身体が自己抗原に反応するという共通点がある。自己抗原は侵入者マーカーと誤解され、担体細胞は自身の免疫系によって攻撃される。
【0004】
甲状腺炎、卵巣炎、胃炎、または炎症性腸疾患などを含む多種多様な自己免疫疾患において、Treg細胞に欠陥があることが示されている。これらの欠陥は、炎症を起こした組織でのTreg細胞数の減少、欠陥を有するTreg細胞、インターロイキン-2 受容体を介するシグナル伝達の低減、および抑制的活性の不安定性により明らかになる。これに関して、FOXP3を発現するCD4+CD25+T細胞は、自己免疫反応の制御において最も重要であると認識されてきた。例えば、Foxp3遺伝子に変異が起こると非機能性Treg細胞が生じ、場合によっては、過剰増殖性T細胞を伴う致死的な多発性自己免疫疾患がヒトにおいて起こる。多発性硬化症(MS)患者の末梢血から単離されたTreg細胞は、機能障害を有することが判明している。多発性硬化症の実験動物モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)における研究により、CD4+CD25+T細胞の養子移入によって機能性Treg細胞の数を増やすと、ある程度の防御を実現できることが明らかにされた。
【0005】
移植片対宿主病における自己免疫の出現が説明されている(Tivol et al., Blood, 2005)。
【0006】
低リスクの副作用をもたらす物質を用いる、CD4+CD25+T細胞を標的とする自己免疫疾患の有効な治療方法を提供することが、当技術分野では必要とされている。このニーズは、免疫抑制薬を用いる現行の治療方法が、機能している免疫細胞も不活性化するため、これらの薬物には有害な副作用のリスクがあるということに端を発している。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、自己免疫疾患を治療するためのTreg細胞の生成におけるスフィンゴ脂質の有用性を開示する。
【0008】
本発明において、スフィンゴ脂質を用いてTreg細胞の生成を促進することによって自己免疫疾患を治療することができ、その際、Treg細胞はインビトロでもインビボでも生成できることが示されている。本発明の方法によって生成されるTreg細胞は、自己免疫疾患に罹患している対象に導入されてよい。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発明の詳細な説明
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明の特徴は、個々のパラグラフで説明する。しかし、これは、あるパラグラフで説明される特徴が、他のパラグラフで説明される1つまたは複数の特徴と切り離されていることを意味しない。そうではなく、あるパラグラフで説明される特徴は、他のパラグラフで説明される1つまたは複数の特徴と組み合わせられてよい。
【0010】
本明細書において使用される場合、用語「含む(comprise/s/ing)」は、開示されている特徴および具体的に言及されていない別の特徴を含むまたは包含することを意図している。用語「含む(comprise/es/ing)」はまた、示された特徴「からなる(consist/s/ing)」という意味でも意図され、したがって、示された特徴以外の別の特徴を含まない。したがって、本発明の主題は、記載されている特徴に加えて付加的な特徴を特色とし得る。
【0011】
第1の局面において、本発明は、医薬としての使用のための、式(I)の物質を提供する:
式中
R1は6~20個の炭素原子を有するアルキル基またはアルケニル基であり、
R2はHであるか、または存在せず、その際、Oは二重結合によって結合されており、
R3はHまたはアシル基-C(O)R5であり、式中、R5は1~10個の炭素原子を有するアルキル基またはアルケニル基であり、かつ
R4はHまたはリン酸基である。
【0012】
第2の局面において、本発明は、対象が自己免疫疾患に罹患するのを予防するかまたは自己免疫疾患に罹患している対象を治療する方法における使用のための、式(I)の物質を提供する:
式中
R1は6~20個の炭素原子を有するアルキル基またはアルケニル基であり、
R2はHであるか、または存在せず、その際、Oは二重結合によって結合されており、
R3はHまたはアシル基-C(O)R5であり、式中、R5は1~10個の炭素原子を有するアルキル基またはアルケニル基であり、かつ
R4はHまたはリン酸基である。
【0013】
前記についての1つの態様において、本発明は、式(I)の物質を提供し、該物質は、スフィンガニン、スフィンガニン-1-リン酸、および/または3-ケト-スフィンガニンであり、好ましくは、式(I)の物質はスフィンガニンである。
【0014】
前記についての1つの態様において、物質はエリトロ形で存在し、好ましくは、エリトロ-スフィンガニン、エリトロ-スフィンガニン-1-リン酸、および/またはエリトロ-3-ケト-スフィンガニンであり、さらにより好ましくは、該物質はD-エリトロ形で存在し、さらにより好ましくは、D-エリトロ-スフィンガニン、D-エリトロ-スフィンガニン-1-リン酸、および/またはD-エリトロ-3-ケト-スフィンガニンであり、最も好ましくはD-エリトロ-スフィンガニンである。
【0015】
前記についての1つの態様において、物質は、作用物質と組み合わせて使用される。好ましい態様において、作用物質は、レチノイン酸、コパキソン、インスリン、CD3と相互作用する能力がある分子、CD28と相互作用する能力がある分子、トランスフォーミング成長因子β(TGFβ)、インターロイキン-2(IL-2)、短鎖脂肪酸、胆汁酸、多糖類A、n3多価不飽和脂肪酸、レチノイン酸、ビタミンD(VitD)、ビタミンC(VitC)、ポリフェノール、クエルセチン、レスベラトロール、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、ラパマイシン、および/または自己反応性タンパク質に由来するペプチド断片からなる群より選択され、より好ましくは、作用物質はTGFβおよび/またはIL-2である。
【0016】
第3の局面において、本発明は、制御性T細胞(Treg細胞)をインビトロで生成するための方法であって、以下の段階を含む方法を提供する:
1)前駆CD4+T細胞を提供する段階、
2)段階1)において提供される前駆CD4+T細胞を、本明細書において定義される式(I)の物質の存在下で培養する段階、および任意で、
3)生成された制御性T細胞(Treg細胞)を単離する段階。
【0017】
前記についての1つの態様において、本発明は、前駆CD4+T細胞を、制御性T細胞(Treg細胞)の生成を誘導する能力がある付加的な化合物の存在下で;好ましくは、CD3と相互作用する能力がある分子、CD28と相互作用する能力がある分子、トランスフォーミング成長因子β(TGFβ)、インターロイキン-2(IL-2)、短鎖脂肪酸、胆汁酸、多糖類A、n3多価不飽和脂肪酸、レチノイン酸、ビタミンD(VitD)、ビタミンC(VitC)、ポリフェノール、クエルセチン、レスベラトロール、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、ラパマイシン、および/または自己反応性タンパク質に由来するペプチド断片の存在下で;より好ましくは、TGFβおよび/またはIL-2の存在下で;さらにより好ましくは、(1)TGFβおよび/もしくはIL-2、ならびに(2)抗CD3抗体および/もしくは抗CD28抗体、ならびに/または(3)ペプチド断片の存在下で;さらに一層好ましくは、TGFβ、抗CD3抗体、および抗CD28抗体の存在下またはTGFβおよびペプチド断片の存在下で;最も好ましくは、TGFβ、IL-2、抗CD3抗体、および抗CD28抗体の存在下またはTGFβ、IL-2、およびペプチド断片の存在下で、培養する段階をさらに含む、前記の方法を提供する。
【0018】
前記についての1つの態様において、前駆CD4+T細胞は、対象から、好ましくは、脾臓、リンパ節、もしくは末梢血から単離されたナイーブCD4+T細胞であるか、または前駆CD4+T細胞は、対象から単離された脾細胞もしくは末梢血単核細胞(PBMC)、好ましくは静脈内血液から単離されたものである。
【0019】
前記についての1つの態様において、前駆CD4+T細胞は、細胞表面マーカーを用いるフローサイトメトリー選別または磁気細胞選別によって単離され、好ましくは、これらの細胞表面マーカーは、CD4+およびCD25+もしくはCD25であるか、またはCD4+およびCD25+もしくはCD25およびCD127-もしくはCD127である。
【0020】
前記についての1つの態様において、対象は、自己免疫疾患に罹患している。
【0021】
前記についての1つの態様において、段階2)の物質は、最終濃度が0.1~20μMとなるように、好ましくは最終濃度が1~15μMとなるように、より好ましくは最終濃度が3~10μMとなるように、最も好ましくは最終濃度が5~6.25μMとなるように添加される。
【0022】
前記についての1つの態様において、段階2)の前駆CD4+T細胞は、24~144時間、好ましくは24時間~120時間、より好ましくは48時間~96時間、培養される。
【0023】
第4の局面において、本発明は、好ましくは、医薬としての使用のための、より好ましくは、対象が自己免疫疾患に罹患するのを予防するかまたは自己免疫疾患に罹患している対象を治療する方法における使用のための、本発明の方法によって得られる制御性T細胞(Treg細胞)を提供する。
【0024】
本発明のある態様において、自己免疫疾患は、自己免疫性脳炎、自己免疫性脳脊髄炎、関節リウマチ、1型糖尿病、乾癬、自己免疫性腎疾患、全身性エリテマトーデス、セリアック病、炎症性腸疾患、または移植片対宿主病であり、好ましくは、自己免疫疾患は多発性硬化症である。
【0025】
第5の局面において、本発明は、トランスフォーミング成長因子β(TGF-β)および/またはインターロイキン-2(IL-2)ならびに式(I)の物質、ならびに任意で、制御性T細胞(Treg細胞)の生成を誘導する能力がある付加的な化合物、好ましくは、CD3と相互作用する能力がある分子、CD28と相互作用する能力がある分子、短鎖脂肪酸、胆汁酸、多糖類A、n3多価不飽和脂肪酸、レチノイン酸、ビタミンD(VitD)、ビタミンC(VitC)、ポリフェノール、クエルセチン、レスベラトロール、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、ラパマイシン、および/または自己反応性タンパク質に由来するペプチド断片を含むキットを提供し;好ましくは、キットは、(1)TGFβおよび/もしくはIL-2、ならびに(2)抗CD3抗体および/もしくは抗CD28抗体、ならびに/または(3)ペプチド断片を含み;さらにより好ましくは、キットは、TGFβ、抗CD3抗体、および抗CD28抗体を含むか、またはキットは、TGFβおよびペプチド断片を含み;最も好ましくは、キットは、TGFβ、IL-2、抗CD3抗体、および抗CD28抗体を含むか、またはキットは、TGFβ、IL-2、およびペプチド断片を含む。
【0026】
本発明は、以前の報告(Wu et al., 2019)の追跡研究でなされた予想外の発見から生まれたものである。公開されている報告において、タンパク質SPTLC2(遺伝子Sptlc2にコードされる)(Hanada et al., 2003)が感染症に対する防御的T細胞応答に必要とされることが発見された。T細胞は感染症およびがんを防ぐことが公知であるため、SPTLC2は抗腫瘍T細胞機能にも必要とされるという仮説が立てられた。この仮説を検証するために、Sptlc2Flox/Floxマウス(Xian-Cheng Jiang教授(Upstate University, New York)によって作製された)をCd4-Creマウス(Jackson Laboratoryによって市販されている)と交配してSptlc2Flox/FloxCd4-Creマウスを作り出した。遺伝子Sptlc2およびCd4は、タンパク質SPTLC2およびCD4(CD4は、Treg細胞のマーカータンパク質である)をそれぞれコードする。Sptlc2Flox/FloxCd4-Creマウスでは、遺伝子Sptlc2が、CD4タンパク質を発現するT細胞において欠損していた。実際、T細胞におけるSptlc2の遺伝子欠損により、抗腫瘍免疫が弱まった(図1A)。1つの予想外の知見は、制御性T細胞(Treg細胞)と呼ばれるT細胞の部分集団が、SPTLC2欠損によって減少することであった。Treg細胞は、B16腫瘍増殖を促進することが公知である(Klages et al., 2010)。しかし、Sptlc2Flox/FloxCd4-Creマウスにおいては、腫瘍増殖の増加とTreg細胞の減少に相関関係があった。したがって、このデータは、SPTLC2が微小環境に関わらずTreg細胞形成を増大させたという見解を裏付ける。Treg細胞は自己免疫の抑制に不可欠であるため、SPTLC2を阻害することは、自己免疫疾患を治療するために有用である可能性がある。
【0027】
自己免疫を治療するためにSPTLC2を阻害することの可能性を探るために、Sptlc2Flox/FloxマウスをFoxp3Cre-YFPマウス(Alexander Rudensky教授(Memorial Sloan Kettering Cancer Center, New York)によって作製された;YFP=黄色蛍光タンパク質)と交雑することにより、Treg細胞に特異的なSptlc2欠損を有するマウス系統であるSptlc2Flox/FloxFoxp3Cre-YFPマウスを作った。この系統では、遺伝子Sptlc2が、Foxp3タンパク質を発現するTreg細胞において欠損している。インビトロ培養アッセイ法を用いることにより、SPTLC2がTreg細胞の免疫抑制機能に必要とされることが判明した(図2)。Treg細胞は、多発性硬化症、関節リウマチ、1型糖尿病、および移植片対宿主(GvH)病などの自己免疫疾患の発症を防ぐために自己寛容を維持するにあたって非常に重要な役割を果たすため、多発性硬化症のEAEマウスモデルを用いて、SPTLC2が自己免疫を制御するかどうかを明らかにした。
【0028】
Sptlc2Flox/FloxFoxp3Cre-YFPマウスは、野生型対照マウスと比べて、より重症のEAEを発症した(図3)。これらの結果がきっかけとなって、本発明者らは、SPTLC2の下流の代謝産物、例えばスフィンガニンを補充するとTreg細胞生成が増大し自己免疫疾患が改善するという仮説を立てた。SPTLC2の下流の代謝経路を図4Dに示している。この仮説を検証するために、インビトロTreg細胞生成系のT細胞にスフィンガニンを添加した。報告されているとおり、サイトカインTGF-βは、Foxp3を発現するTreg細胞を誘導した(Chen et al., 2003)。スフィンガニンは、Foxp3タンパク質発現をさらに増大させた(図4A)。一方、炎症性T細胞(インターロイキン-17産生T細胞またはTh17細胞とも呼ばれる)分化条件下では、スフィンガニンはIL-17産生を低減させた。Th17細胞はEAE発症を促進し、Treg細胞はEAE発症を抑制するため(Park et al., 2005; McGeachy et al., 2005)、スフィンガニンによってEAE症状が改善するかどうか調べた。スフィンガニンを用いてEAEマウスを処置すると、EAE臨床スコアが低下した(図5)。まとめると、本発明者らの実験結果から、1)インビトロおよびインビボの両方で、スフィンガニンによって免疫抑制性Treg細胞が増加し、炎症性Th17細胞が減少したことならびに2)スフィンガニンによってEAEの症状が改善したことが示唆される。
【0029】
このようにして、1)Treg細胞を生成して炎症を抑制するための新しい方法、および2)自己免疫疾患を治療するための低分子物質が特定された。
【0030】
低分子物質は、式(I)の物質である:
式中
R1は6~20個の炭素原子を有するアルキル基またはアルケニル基であり、
R2はHであるか、または存在せず、その際、Oは二重結合によって結合されており、
R3はHまたはアシル基-C(O)R5であり、式中、R5は1~10個の炭素原子を有するアルキル基またはアルケニル基であり、かつ
R4はHまたはリン酸基である。
【0031】
本明細書において使用される場合、用語「アルキル」は、直鎖または分枝鎖であってよい、指定された数の炭素原子を含む飽和炭化水素鎖を意味する。式(I)の物質中のアルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、およびエイコシル基、ならびにそれらの多数の様々な分枝異性体より選択される。10~16個の炭素原子を有する直鎖R1アルキル基および分枝R1アルキル基が、特に好ましい。
【0032】
用語「アルケニル」は、直鎖または分枝鎖であってよい、指定された数の炭素原子を含む不飽和炭化水素鎖を意味する。アルケニル基は、1個、2個、または3個の不飽和結合を有してよい。式(I)の物質中のアルケニル基は、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、およびエイコセニル基、ならびにそれらの多数の様々な分枝異性体より選択される。10~16個の炭素原子を有する直鎖R1アルケニル基および分枝R1アルケニル基が、特に好ましい。
【0033】
アルキル基またはアルケニル基は、置換されていなくてもよいし、またはハロゲン、C1~6アルキル、C1~6ハロアルキル、C1~6アルコキシ、C1~6ハロアルコキシ、C1~6アルケニル、-OH、-NH2、および-NH(CH3)より独立に選択される1個もしくは2個の存在物で置換されていてもよい。
【0034】
用語「ハロアルキル」は、1つまたは複数の水素原子がハロで置換されているアルキルを意味し、すべての水素がハロで置換されているアルキル部分を含む。
【0035】
用語「アルコキシ」は、-O-アルキル基を意味する。
【0036】
用語「ハロアルコキシ」は、1つまたは複数の水素原子がハロで置換されているアルコキシを意味する。
【0037】
用語「ハロ」または「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素のラジカルを意味する。
【0038】
最も好ましい式(I)の物質は、式C18H39NO2を有するスフィンガニンであり、式(I)においてR1はC13アルキル基であり、R2はHであり、R3はHであり、かつR4はHである。
【0039】
「式(I)の物質」は、1つまたは複数の、例えば2個または3個の、式(I)の物質と理解される。
【0040】
医薬としての使用のための、好ましくは、対象が自己免疫疾患に罹患するのを予防するかまたは自己免疫疾患に罹患している対象を治療する方法における使用のための式(I)の物質が、本明細書において説明される。これに関して、式(I)の物質は、自己免疫疾患を改善する際に有効であるTreg細胞の生成を増大させることによって作用する。
【0041】
本発明のある態様において、式(I)の物質は、別の作用物質と組み合わせて使用される。「作用物質」とは、自己免疫疾患を治療するために有用であるか、または使用されるかもしくは使用されるであろう、任意の成分を意味し、これは、全般的な免疫抑制活性を有する任意の成分を含み、例として、糖質コルチコイド、例えば、プレドニゾン、デキサメタゾン、もしくはヒドロコルチゾン、細胞増殖抑制剤、アルキル化剤、例えば、ナイトロジェンマスタード(シクロホスファミド)、ニトロソ尿素、もしくは白金化合物、代謝拮抗物質、例えば、メトトレキサートなどの葉酸類似体、アザチオプリンもしくはメルカプトプリンなどのプリン類似体、フルオロウラシルなどのピリミジン類似体、またはタンパク質合成阻害剤、細胞障害性抗生物質、例えば、ダクチノマイシン、アントラサイクリン、マイトマイシンC、ブレオマイシン、もしくはミトラマイシン、抗体、例えば、ムロモナブ-CD3などのモノクローナル抗体、イムノフィリンに作用する薬物、例えば、シクロスポリン、タクロリムス、シロリムス、エベロリムス、IFN-βなどのインターフェロン、オピオイド、ミコフェノール酸、またはフィンゴリモドもしくはミリオシンなどの小型の生物学的製剤がある。したがって、本発明の好ましい態様において、作用物質は、好ましくは、レチノイン酸、コパキソン、インスリン、CD3と相互作用する能力がある分子、CD28と相互作用する能力がある分子、トランスフォーミング成長因子β(TGFβ)、インターロイキン-2(IL-2)、短鎖脂肪酸、胆汁酸、多糖類A、n3多価不飽和脂肪酸、レチノイン酸、ビタミンD(VitD)、ビタミンC(VitC)、ポリフェノール、クエルセチン、レスベラトロール、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、ラパマイシン、および/または自己反応性タンパク質に由来するペプチド断片からなる群より選択される、免疫抑制性作用物質、より好ましくは、TGFβおよび/またはIL-2である。
【0042】
さらに、「作用物質」は、所与の自己免疫疾患を治療するために特に使用されるか、または使用されるであろう、任意の成分を含む。MSの場合のこのような薬物の例は、テクフィデラ、ジレニア、オクレバス、コパキソン、オーバジオ、アボネックス、タイサブリ、レビフ、アクサー、レムトラダ、または現在開発中の薬物、例えば、ウブリツキシマブ、タイサブリ、レムトラダ、アーゼラ、l ABT-555、もしくはジェンマブのようなS1P調節物質である。1型糖尿病の場合のこのような成分の例は、インスリンまたは現在開発中の薬物、例えば、ナトリウム・グルコース共輸送体(SGLT)阻害剤(ジンキスタ、スーグラ、フォシーガ、ジャディアンス)、モノクローナル抗体(例えば、REMD-477、ペプリズマブ)、細胞療法薬(例えば、VC-01、VC-02 CLBS-03、もしくはDCVAC/Dia)、インターロイキン受容体アゴニスト、およびグルカゴン様ペプチド1受容体アゴニストである。他の自己免疫疾患を治療するための作用物質の例は、当業者に公知である。さらに、「作用物質」はまた、一般に健康を促進するような物質または成分、例えば、ビタミン、抗酸化剤なども含む。本発明において、「作用物質」について、1つもしくは複数、例えば、2個、3個、もしくは4個の作用物質を使用することができる、かつ/または組み合わせることができることもまた、理解される。
【0043】
さらに、本発明は、Treg細胞をインビトロで生成する方法も提供する。
【0044】
本発明において、「制御性T細胞」または「Treg細胞」は、当技術分野において公知であるように、共通の意味で理解される。具体的には、本明細書において言及される場合、制御性T細胞は、病原性のエフェクターT細胞応答または望まれないエフェクターT細胞応答を抑制する、より具体的には、自己抗原に対する病原性のエフェクターT細胞応答を抑制する、さらにより具体的には、自己免疫疾患において病原性のエフェクターT細胞応答を抑制する、最も具体的には、自己免疫疾患を改善する能力を有しているT細胞である。さらに、本明細書において言及される場合、Treg細胞は、CD4+CD25+T細胞、好ましくはCD4+CD25T細胞、より好ましくはCD4+CD25+CD127-T細胞、さらにより好ましくはCD4+CD25CD127T細胞として特徴決定され得る。本明細書において使用される場合、用語CD25+およびCD25、用語CD127+およびCD127、用語CD25-およびCD25、ならびに用語CD127-およびCD127は、当技術分野において公知の定義に合うように使用される(Simonetta F. et al., 2013)。さらに、本明細書において言及される場合、Treg細胞は、FOXP3タンパク質の発現を特徴とし得る(Hori et al., 2003)。したがって、本明細書において言及される場合、さらにより好ましくは、Treg細胞は、CD4+CD25CD127FOXP3+T細胞である。
【0045】
さらに、本発明の方法に従って生成されるTreg細胞は、好ましくは、多量のFOXP3タンパク質の産生を特徴とする(Chen et al., 2003)。さらに、本発明の方法に従って生成されるTreg細胞は、好ましくは、PD-1としても公知のプログラム細胞死タンパク質1を高レベルで発現することを特徴とする。PD-1は、細胞表面に存在する免疫チェックポイントタンパク質であり、T細胞の炎症性活性を抑制することによって免疫系を下方制御し自己寛容を促進することにより、細胞に対する免疫系の応答を制御する際に役割を果たす(Ishida et al., 1992)。これは、自己免疫疾患を防いでいる。したがって、本発明の方法に従って生成されるTreg細胞は、式(I)の物質で処理されていないTreg細胞と比べて、高い免疫抑制能力を有する(Park et al., 2016)。
【0046】
用語「前駆CD4+T細胞」は、本明細書において使用される場合、FOXP3タンパク質を高発現しPD-1タンパク質を高発現するTreg細胞に、好ましくはCD4+CD25CD127T細胞に、より好ましくはCD4+CD25CD127FOXP3+T細胞に、さらにより好ましくはCD4+CD25CD127FOXP3+T細胞に、最も好ましくは本発明のTreg細胞に発達することができる、任意のCD4+T細胞を意味する。用語「前駆CD4+T細胞」は、脾臓、リンパ節、扁桃腺、または末梢血単核細胞(PBMC)、未熟なCD4+胸腺細胞から単離されたナイーブCD4+T細胞を含む、好ましくは対象から単離された非Treg CD4+T細胞を含む。
【0047】
「ナイーブT細胞」は、典型的には胸腺に由来しT細胞受容体を発現するリンパ球である。ナイーブT細胞は、典型的には、骨髄内で基本的な発達を経て、胸腺内で正および負の選択プロセスをさらに経ている。しかし、ナイーブT細胞は、末梢に存在するコグネイト抗原に出会っていない。本明細書において使用される場合、用語「分化」または「分化すること」は、ナイーブT細胞がさらに発達させられて、分化T細胞であるTreg細胞になるプロセスを意味する。これは、特定の分化T細胞系列、すなわちTreg細胞系列として分化T細胞が同定可能になるように特異的な遺伝子発現を導入することにより、実現される。ナイーブCD4+T細胞は、典型的には、CD4の発現を特徴とし、かつCD25またはCD25-である(CD4+CD25T細胞またはCD4+CD25-T細胞)。
【0048】
ナイーブCD4+T細胞の提供は当技術分野において公知であり、任意の方法によって、かつナイーブCD4+T細胞の単離を可能にする任意の供給源から、行うことができる。ナイーブCD4+T細胞は、それらが天然に存在する身体部分から単離することができる。したがって、Treg細胞は、胸腺、腸間膜リンパ節を含むリンパ節、脾臓、または末梢血から単離することができる。ナイーブCD4+T細胞を単離するための方法は、当技術分野において公知である。ナイーブCD4+T細胞を単離するための適切な方法には、蛍光活性化細胞選別(FACS)を含むフローサイトメトリー選別または磁気細胞選別が含まれる。これに関して、分離手順は、以前に説明されているように、ナイーブCD4+T細胞の特性、例えばCD4+、CD25-を考慮に入れる(Berod et al., 2014)。
【0049】
次に、ナイーブCD4+T細胞は、Treg細胞に分化させるために使用される。本発明によれば、分化は、ナイーブCD4+T細胞を式(I)の物質の存在下で培養することによって実現される。
【0050】
本発明の方法の別の態様において、リンパ節、脾臓、または末梢血単核細胞(PBMC)から単離された前駆CD4+T細胞が提供される。該細胞の提供は、当技術分野において公知である(Goyvaerts et al., 2012; Blackley et al., 2007; Bezie S. et al., 2018)。該細胞は、体液または体組織を含む、対象の身体部分から単離され得る。体液は、例えば、末梢血、好ましくは静脈内血液、または全血などの血液であってよい。体組織は、脾臓、脾臓組織、または扁桃腺であってよい。単離された前駆CD4+T細胞、例えば、ナイーブCD4+T細胞、PBMC、または脾細胞は、式(I)の物質と共に培養される。培養は、適切な培地において行われる。適切な培地は、本発明の方法に従って生成されるTreg細胞の生成を可能にする培地である。培地は、好ましくは液体培地であり、生理学的に許容される溶液、細胞培養培地、または栄養培地であってよい。培地は、アルブミンおよび/もしくは血清成分を含むか、または含まなくてよい。特に好ましい態様において、培地は、10%ウシ胎児血清、ペニシリン/ストレプトマイシン抗生物質、および非必須アミノ酸を添加したRPMI1640である。培地は、Treg細胞の培養プロセスの過程がインビボで存在する条件にできるだけ近くなることを可能にするために、かつ/または本発明の方法に従って生成されるTreg細胞が対象に注入されることを可能にするために、生理学的に許容されてよいか、または生理学的に許容されるべきである。
【0051】
培地は、一般にTreg細胞の産生を誘導する能力がある付加的な化合物を含んでよい。「Treg細胞の産生を誘導する能力がある付加的な化合物」または同様の表現は、病原性のエフェクターT細胞応答または望まれないエフェクターT細胞応答を抑制する能力を有していることを特徴とする、好ましくは、CD4+CD25、より好ましくはCD4+CD25CD127、およびさらにより好ましくはCD4+CD25CD127FOXP3+を特徴とするTreg細胞の生成を促進するために有用であるかもしくは使用される化合物として公知であるか、または開発される、任意の化合物を意味する。したがって、培地は、前駆CD4+T細胞からTreg細胞の産生を誘導する能力がある化合物、例えば、ナイーブCD4+T細胞、脾細胞、またはPBMCをTreg細胞に分化させる能力がある化合物を、付加的な化合物として含んでよい。これには、CD3と相互作用する能力がある分子、好ましくは抗CD3抗体、CD28と相互作用する能力がある分子、好ましくは抗CD28抗体、TGFβ、IL-2、短鎖脂肪酸、例えばC1~6、胆汁酸、例えばイソアロリトコール酸(Hang et al., 2018)、多糖類A、n3多価不飽和脂肪酸、例えばC18~22、レチノイン酸、VitD、VitC、ポリフェノールEGCG(Wong et al., 2011)、クエルセチン、レスベラトロール、NSAIDS、例えばアスピリン(Javeed et al., 2009)、および/またはラパマイシンが含まれる。「付加的な化合物」は、「1つまたは複数の、例えば、2個、3個、または4個の付加的な化合物」と理解される。
【0052】
さらに、培地は、前述のように、自己反応性タンパク質に由来するペプチド断片(本明細書において「ペプチド断片」とも呼ばれる。すなわち、対象が自己免疫応答を起こし得る、対象の自己タンパク質)を付加的な化合物として含んでもよい。これに関して、ペプチド断片は、対象のエフェクターT細胞が標的とする、このタンパク質の配列もしくはエピトープを含むか、またはそれからなる。したがって、培地に添加すべきタンパク質およびその結果としてそのペプチド断片は、対象において治療しようとする疾患に応じて変わる。例えば、1型糖尿病に罹患している対象において、エフェクターT細胞はインスリン特異的である。したがって、1型糖尿病に罹患している対象に投与するためにTreg細胞を生成する場合には、インスリンペプチドを培地に添加してよい。別の例は、MSに対するミエリン塩基性タンパク質(MBP)、MSに対するミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)、MSに対するミエリン関連糖タンパク質(MAG)、またはMSに対するプロテオリピドタンパク質(PLP)である。「ペプチド断片」は、「1つまたは複数の、例えば、2個、3個、または4個のペプチド断片」と理解される。
【0053】
好ましくは、式(I)の物質に加えて、培地は、TGFβおよび/またはIL-2を含み、より好ましくは、培地は、(1)TGFβおよび/もしくはIL-2;(2)CD3と相互作用する能力がある分子、例えば抗CD3抗体、および/もしくはCD28と相互作用する能力がある分子、例えば抗CD28抗体;ならびに/または(3)上記に定義したペプチド断片を含む。さらにより好ましくは、培地は、(1)TGFβおよび/もしくはIL-2;ならびに(2)CD3と相互作用する能力がある分子、例えば抗CD3抗体、およびCD28と相互作用する能力がある分子、例えば抗CD28抗体;または(3)上記に定義したペプチド断片を含む。さらに、さらにより好ましくは、培地は、TGFβ、IL-2、CD3と相互作用する能力がある分子、例えば抗CD3抗体、およびCD28と相互作用する能力がある分子、例えば抗CD28抗体を含むか;または培地は、TGFβ、IL-2、および上記に定義したペプチド断片を含む。さらに一層好ましくは、培地は、TGFβ、抗CD3抗体、および抗CD28抗体を含むか、または培地は、TGFβ、および上記に定義したペプチド断片を含む。最も好ましくは、培地は、TGFβ、IL-2、抗CD3抗体、および抗CD28抗体を含むか、または培地は、TGFβ、IL-2、および上記に定義したペプチド断片を含む。
【0054】
本発明のTreg細胞を生成する仕方に応じて、培地は、分化が起こるように、付加的な化合物を含んでよい。本発明の方法に従って生成されるTreg細胞に分化させる予定のナイーブCD4+T細胞を含む培地は、式(I)の物質に加えて、TGFβおよび/またはIL-2、ならびに任意で、CD3と相互作用する能力がある分子、例えば抗CD3抗体、および/またはCD28と相互作用する能力がある分子、例えば抗CD28抗体を含むことが好ましく、かつより好ましくは、TGFβ、IL-2、抗CD3抗体、および抗CD28抗体を含む。脾細胞またはPBMCを含む培地は、式(I)の物質に加えて、TGFβおよび/またはIL-2、ならびに任意で、上記に定義したペプチド断片、ならびに任意で、CD3と相互作用する能力がある分子、例えば抗CD3抗体、および/またはCD28と相互作用する能力がある分子、例えば抗CD28抗体を含むことが好ましく、かつより好ましくは、TGFβ、IL-2、上記に定義したペプチド断片、抗CD3抗体、および抗CD28抗体を含む。
【0055】
培地はまた、細胞培養、細胞療法、および/またはTreg細胞培養において通常である添加物も含んでよい。これらの例には、抗生物質、アミノ酸添加物、ビタミン添加物、および/または微量元素添加物である。
【0056】
培地中の前駆CD4+T細胞の濃度は、総体積に対して合わせられ、好ましくは、1~5×106細胞/mlである。
【0057】
培養期間は、当業者によって容易に決定され得る。好ましくは、前駆CD4+T細胞は、24~144時間、好ましくは24時間~120時間、より好ましくは48時間~96時間、任意で、上記に定義した付加的な化合物の存在下で、培養される。
【0058】
式(I)の物質を培養初期から培養段階に添加することは必要ではない。その代わりに、上記に定義した付加的な化合物の存在下で、一定期間、培地において前駆CD4+T細胞を先に培養した後に、式(I)の物質を培地に添加してもよい。例えば、ナイーブCD4+T細胞などの前駆CD4+T細胞、脾細胞、またはPBMCの培養は、TGF-β/IL-2/CD3と相互作用する能力がある分子/CD28と相互作用する能力がある分子/上記に定義したペプチド断片の存在下で、12~72時間、好ましくは24~48時間の期間、行ってよく、その後、式(I)の物質を添加し、さらに12~72時間、好ましくは24~48時間の期間、合計して24~144時間、好ましくは24時間~120時間、より好ましくは48時間~96時間、培養を進める。
【0059】
式(I)の物質は、最終濃度が0.1~20μM、好ましくは1~15μM、より好ましくは3~10μM、最も好ましくは5~6.25μMとなるように、培地に添加される。
【0060】
培養は、Treg細胞を生成するのに適した温度、好ましくは25~37℃、最も好ましくは37℃で行われる。
【0061】
培養後、本発明の方法に従って生成されるTreg細胞を含む培地を、それ自体で、必要に応じた目的のために使用してもよく、またはTreg細胞を単離し、したがって精製して、該培地の他の細胞もしくは成分を排除してもよい。単離は、例えば、マーカーCD4+CD25CD127を有する細胞をFACSによって選別するための、当技術分野において公知の方法によって実施され得る(Bezie S. et al., 2018)。
【0062】
式(I)の物質を用いる本発明の方法によって、Treg細胞が生成し、一方、炎症性のIL-17産生T細胞(Th17細胞)の産生が抑制されることが、本発明において示された。TGFβはTh17細胞の産生を誘導するが、Th17細胞の産生に対するこの抑制は、TGFβの存在下でも達成される。したがって、式(I)の物質を用いる利点は、自己免疫反応を改善する能力がある抑制性の高いTreg細胞の生成に加えて、少量のTh17細胞の産生である。その結果として、式(I)の物質を対象に投与することにより、Th17細胞の産生は、式(I)の物質を未使用の場合と比べて減少し、その結果、Th17細胞に起因する炎症反応が無くなるか、または低減する。本発明の方法に従って生成されるTreg細胞を対象に投与することにより、培地中に混在するTh17細胞が少なくなり、また、その結果、本発明の方法に従って生成されるTreg細胞が投与される対象においてTh17細胞に起因する炎症反応が無くなるか、または低減する。本発明の方法において、Th17細胞の産生は、式(I)の物質を未使用の場合と比べて、式(I)の物質の存在下では大きく減少する。したがって、式(I)の物質の存在下で、本発明の方法の段階2)で得られる、培養培地中に存在するすべてのFoxp3発現CD4+細胞(例えばCD4+CD25CD127FOXP3+)のうちの1~20%、好ましくは2~15%、より好ましくは4~10%、さらにより好ましくは5~8%、および最も好ましくは約6.1%が、Th17細胞である。これに関して、用語「約」は、示された数の±0.5~10%、例えば、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10%を意味する。
【0063】
本発明の方法において、Foxp3発現CD4+細胞の産生は、式(I)の物質を未使用の場合と比べて、式(I)の物質の存在下では増大する。したがって、式(I)の物質の存在下で、本発明の方法の段階2)で得られる、培養培地中に存在するすべてのCD4+細胞のうちの31~90%、好ましくは40~86%、より好ましくは50~80%、さらにより好ましくは60~75%、および最も好ましくは約72%または85.4%が、Foxp3発現CD4+細胞(例えばCD4+CD25CD127FOXP3+)である。これに関して、用語「約」は、示された数の±0.5~10%、例えば、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10%を意味する。
【0064】
自己免疫疾患は、身体の正常部分に対する異常な免疫反応の結果として起こる病態である。本発明のある態様において、自己免疫疾患は、自己免疫性脳炎、自己免疫性脳脊髄炎、関節リウマチ、1型糖尿病、乾癬、自己免疫性腎疾患、全身性エリテマトーデス、セリアック病、炎症性腸疾患、または移植片対宿主病であり、好ましくは、自己免疫疾患は多発性硬化症である。
【0065】
本発明は、望ましい特徴を与える、式(I)の物質および薬学的に許容される担体を含む医薬であって、任意で、上記に定義した作用物質をさらに含む、医薬を提供する。さらに、本発明は、望ましい特徴を与える、本発明の方法に従って生成されるTreg細胞および薬学的に許容される担体を含む医薬であって、任意で、上記に定義した作用物質をさらに含む、医薬も提供する。さらに、本発明は、式(I)の物質、本発明の方法に従って生成されるTreg細胞、および薬学的に許容される担体を含む医薬であって、任意で、上記に定義した作用物質をさらに含む、医薬も提供する。該医薬を生産するためには、式(I)の物質、および/または本発明の方法に従って生成されるTreg細胞、ならびに任意で作用物質が、(1種または複数種の)薬学的に許容される担体と共に、薬学的剤形において混合されなければならない。
【0066】
医薬は、全身投与、鼻腔投与、非経口投与、膣内投与、トピック投与、直腸投与、または経口投与を含む、対象に医薬を投与するのに適した任意の種類の投与様式向けに製造することができる。親の投与には、皮下投与、皮内投与、筋肉内投与、静脈内投与、または腹腔内投与が含まれる。
【0067】
医薬は、経口投与用の固形剤形、例えば、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤;経口投与用の液体剤形、例えば、薬学的に許容される乳剤、マイクロエマルジョン、液剤、懸濁剤、シロップ剤、およびエリキシル剤;注射製剤、例えば、無菌の注射可能な水性懸濁剤または油性懸濁剤;直腸投与または膣内投与用の組成物、好ましくは坐剤;ならびに皮膚投与または経皮投与用の剤形、例えば、軟膏剤、パスタ剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、パウダー剤、液剤、噴霧剤、吸入剤、または貼付剤を含む、様々な剤形として製剤化することができる。好ましくは、本発明の方法に従って生成されるTreg細胞は、液体剤形として、より好ましくは注射製剤として製剤化される。
【0068】
任意の特定の対象に対する具体的な治療有効用量レベルは、式(I)の物質および/または本発明の方法に従って生成されるTreg細胞の活性、剤形、対象の年齢、体重、および性別、治療期間、ならびに医薬技術において公知である他の因子を含む、様々な因子に応じて変わる。
【0069】
1日おきに合計8回の適用で対象に投与される式(I)の物質の総用量は、1000μg/kg体重であってよい。単回投与または複数回投与で対象に投与される本発明の方法に従って生成されるTreg細胞の総用量は、例えば、以前に報告されているように1回の輸注で患者当たり5×106~2.6×109個の量であってよい(Bluestone et al., 2015)。単回投与用組成物は、1日量を構成するこのような量またはその分割量を含んでよい。
【0070】
用語「対象」は、本明細書において使用される場合、哺乳動物、例えば、霊長類、げっ歯動物、ネコ科の動物、イヌ科の動物、または家畜化された農場動物である。好ましくは、対象は、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ネコ、イヌ、雌ウシ、ウマ、ヤギ、またはヒツジである。
【0071】
本発明の方法に従って生成されるTreg細胞は、自己免疫疾患に罹患している対象に投与されてよい。これに関して、本発明の方法に従って生成されるTreg細胞は、自己由来の前駆CD4+T細胞から、例えば、自己由来のナイーブCD4+T細胞または自己由来のPBMCから、すなわち、自己免疫疾患を予防または治療するために、本発明の方法に従って生成されるTreg細胞が再導入されるまさにその対象であるドナーから、生成されてよい。あるいは、本発明の方法に従って生成されるTreg細胞は、同種異系または異種の前駆CD4+T細胞から、例えば、同種異系もしくは異種のナイーブCD4+T細胞または同種異系もしくは異種の脾細胞もしくはPBMCから、すなわち、本発明の方法に従って生成されるTreg細胞が導入される対象とは異なる(同じ種または異なる種の)ドナーから、生成されてもよい。ある態様において、ドナーは、健常なドナーであってよく、すなわち、ドナーは自己免疫疾患に罹患していない。あるいは、ドナーは自己免疫疾患に罹患していてもよい。前駆CD4+T細胞は、本発明の方法によって処理された後に、それらが単離されたのと同じ対象に再導入される自己由来細胞であることが好ましい。
【0072】
さらに、本発明は、自己免疫疾患を治療または予防する方法であって、自己免疫疾患を治療または予防するのに十分な量の式(I)の物質を対象に投与する段階を含む方法を提供する。
【0073】
さらに、本発明は、自己免疫疾患を治療または予防する方法であって、自己免疫疾患を治療または予防するのに十分な量の本発明に従って生成されたTreg細胞を対象に投与する段階を含む方法を提供する。
【0074】
さらに、本発明は、自己免疫疾患を治療または予防する方法であって、以下の段階を含む方法を提供する:
1)前駆CD4+T細胞を提供する段階、
2)段階1)において提供される前駆CD4+T細胞を、式(I)の物質の存在下で培養する段階、
3)任意で、生成された制御性T細胞(Treg細胞)を単離する段階、および
(4)このようにして生成された制御性T細胞(Treg細胞)を、自己免疫疾患を治療または予防するのに十分な量で対象に戻す段階。
【0075】
戻す段階は、Treg細胞を対象に導入するのに適した任意の様式で実施することができる。特に好ましい戻し方は、静脈内適用、動脈内適用、腔内適用、くも膜下腔内適用、または皮内適用である。静脈内適用は、末梢系への、したがって血液循環への直接導入を可能にし、そこでTreg細胞が自然に作用することから、好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
図1】T細胞においてSptlc2が欠損すると、腫瘍増殖が増大したが、Treg細胞形成が低減した。Sptlc2Flox/FloxCd4-Cre(Fl/Fl、マウス8匹)マウスおよびSptlc2+/+Cd4-Cre(+/+、マウス11匹)マウスに、2×105個の黒色腫B16細胞を皮下移植した。腫瘍サイズは、カリパスを用いて測定し、長さ×幅×幅÷2として算出した。折れ線グラフは、腫瘍増殖の推移を示している(A)。腫瘍を70μMセルストレイナーに通して粉砕して単細胞懸濁液を作り、遠心沈殿し、40%パーコールに再懸濁した。腫瘍細胞および腫瘍浸潤細胞を含む40%パーコールを80%パーコール上に重層し、2000rpmで15分間、遠心した。遠心分離後、腫瘍浸潤白血球が、40%パーコールと80%パーコールの間の中間層に存在し、これらをFACS染色および細胞計数のために回収した。棒グラフは、Treg細胞数を腫瘍重量で割ることによって算出された、腫瘍中のFOXP3タンパク質発現Treg細胞の密度を示している(B)。データは、平均値±SEMとして表され、(A)については3回、(B)については2回の独立した実験の累積である。*はp<0.05、スチューデントのt検定。
図2】Treg細胞においてSptlc2が欠損すると、Treg細胞の免疫抑制機能が影響を受けた。YFP陽性CD4+Treg細胞とYFP陰性CD4+非Treg細胞をFACSによって選別した。2×104個の非Treg細胞を、T細胞を刺激する抗CD3および抗CD28でコーティングしたマイクロビーズの存在下(マイクロビーズ4×104個/細胞培養物;16ng/ml抗CD3および16ng/ml抗CD28)、250μl完全培地中で培養した。非Treg細胞を指定の比率でTreg細胞と共培養した(例えば、「8:1」は、2×104個の非Treg細胞と2.5×103個のTreg細胞を意味する)。折れ線グラフは、非Treg:Treg細胞と抑制率(%)の関係を示す。データは、3回の独立した実験の累積である。結果は、平均値±SEMとして表している。*はp<0.05、スチューデントのt検定。
図3】Treg細胞においてSptlc2が欠損すると、EAEマウスモデルにおいて自己免疫が強化された。折れ線グラフは、EAE誘発後の日数とEAE臨床スコアの関係を示している。5ペアのマウスを使用した。結果は、平均値±SEMとして表している。*はp<0.05、スチューデントのt検定。
図4】スフィンガニンは、Treg細胞のインビトロ生成を促進し、炎症性Th17細胞形成を抑制した。Foxp3Cre-YFPマウスから、YFP陰性CD4+非TregナイーブT細胞をFACSによって選別した(完全培地250μl中1×105個の細胞)。ナイーブT細胞を抗CD3および抗CD28で3日間活性化し、これは、Treg細胞の場合はサイトカインTGFβ(5ng/ml)およびIL-2(10ng/ml)の存在下または不在下で、Th17細胞の場合はTGFβ(5ng/ml)、IL-6(20ng/ml)、および抗IFNγ(10μg/ml)の存在下または不在下で行った。A:サイトカインTGFβ(5ng/ml)または溶媒対照DMSO(TGFβ無し)の存在下でスフィンガニン(5μM)を用いてTreg細胞形成を誘導した後のFoxp3タンパク質発現についてのフローサイトメトリー解析。B:スフィンガニン(5μM)の存在下または不在下でTGFβ(5ng/ml)、IL-6(20ng/ml)、および抗IFNγ(10μg/ml)を用いてTh17細胞形成を誘導した後のIL-17タンパク質発現についてのフローサイトメトリー解析。C:TGFβ(5ng/ml)およびL-セリン(5μM)、3-KDS(5μM)、シンガニン(5μM)、ジヒドロセラミド(50nM)、セラミド(50nM)、スフィンゴシン(1μM)、スフィンゴシン-1-リン酸(1μM)、シンガニン-1-リン酸(1μM)、または溶媒対照DMSO(TGFβのみ)の存在下でTreg細胞形成を誘導した後のFoxp3タンパク質発現についてのフローサイトメトリー解析。D: スフィンゴ脂質の構造を示しており、スフィンゴ脂質の生合成経路を表している。各FACSプロット中の数字は、そのFACSプロット内で示される細胞集団全体に対する指定された細胞集団のパーセンテージを示す。
図5】スフィンガニン処置により、EAE発症が緩和された。折れ線グラフは、EAE誘発後の日数とEAE臨床スコアの関係を示している。結果は、平均値±SEMとして表している。*はp<0.05、**はp<0.01、スチューデントのt検定。
【実施例
【0077】
方法
マウス
C57BL/6遺伝背景のSptlc2Fl/FlマウスおよびFoxp3Creマウスは、それぞれ、Xian-Cheng Jiang教授(SUNY Downstate Medical Center, New York)およびAlexander Rudensky教授(Memorial Sloan Kettering Cancer Center, New York)によって提供された。C57BL/6遺伝背景のCd4CreマウスをJackson Laboratoryから購入した。マウスはすべて、DKFZの特定病原体除去施設で飼育した。すべての実験において、年齢および性別が一致した同腹仔(5~10週齢)を対照マウスとして使用した。研究はすべて、Karlsruhe県庁におけるドイツ州議会による承認後にDKFZ規則に従って実施した。
【0078】
B16黒色腫の移植および腫瘍浸潤免疫細胞の調製
B16-F10黒色腫細胞を、Sptlc2Flox/FloxCd4-Creマウス、Sptlc2+/+Cd4-Creマウス、Sptlc2Flox/FloxFoxp3-Cre-YFPマウス、およびSptlc2+/+Foxp3-Cre-YFPマウスに皮下注射した(マウス一匹につき2×105個の細胞)。カリパスを用いて腫瘍を2~3日ごとに測定した。指定の時間にマウスを犠死させ、ピンセットおよびハサミを用いて腫瘍を採取した。腫瘍を70μmセルストレイナーに通して粉砕して単細胞再懸濁液を作製した。腫瘍細胞を遠心分離し、勾配遠心分離のために40%パーコールに再懸濁し、80%パーコールに載せた。遠心分離後、免疫細胞が、40%パーコールと80%パーコールの間の中間層に存在した。次いで、これらの免疫細胞をフローサイトメトリー染色のために新しいチューブに吸引採取した。
【0079】
EAE誘発およびモニタリング
完全フロイントアジュバント中で乳化させた200μgのMOG35-55ペプチドで、各マウスを皮下免疫した。百日咳毒素(マウス1匹につき400ng)を腹腔内に注射した。指示された場合、マウスにスフィンガニンを腹腔内注射した(免疫処置日から実験最終日まで、1日おき)。以下の採点基準を用いてEAE症状を毎日採点した:0、徴候なし;1、垂れた尻尾;2、不全対麻痺(1本または2本の後肢の不完全な麻痺);3、対麻痺(2本の後肢の完全な麻痺);4、前肢の衰弱または麻痺を伴う対麻痺;5、瀕死の状態または死亡。マウスの福祉の観点から、本発明者らはスコアが3に達した場合はマウスを犠死させた。
【0080】
マウス初代T細胞培養
完全培地を細胞培養のために使用し、この培地は、無添加RPMI1640培地に10%ウシ胎児血清、ペニシリン/ストレプトマイシン抗生物質、および非必須アミノ酸を添加することによって調製した。Treg細胞およびTh17細胞のインビトロ分化のために、フローサイトメトリー選別機を用いてSptlc2+/+Foxp3Cre-YFP野生型マウスから脾臓ナイーブT細胞を精製した。Foxp3は細胞核内で発現され、FOXP3タンパク質のFACS染色は細胞固定および透過処理を必要とし、これは細胞を死滅させ、その後の細胞培養のためには不適切である。このFoxp3Cre-YFPマウス系統では、FOXP3タンパク質の発現を、YFPタンパク質の発現によって知ることができる。FOXP3発現細胞の場合は、細胞を固定し透過処理せずに、したがって細胞生存率を維持しながら、FACSで直接的に選別することができなかった。YFP陽性CD4+Treg細胞とYFP陰性CD4+非Treg細胞をFACSによって選別した。ナイーブCD4+T細胞(培地250μl中1×105個の細胞)を、T細胞を刺激する抗CD3および抗CD28で3日間活性化し、これは、Treg細胞の場合はサイトカインTGFβ(5ng/ml)およびIL-2(10ng/ml)の存在下または不在下で、Th17細胞の場合はTGFβ(5ng/ml)、IL-6(20ng/ml)、および抗IFNγ(10μg/ml)の存在下または不在下で行った。記載するように(1μMまたは5μM)、スフィンガニンまたは他のスフィンゴ脂質を添加した。Foxp3タンパク質発現およびインターロイキン-17(IL-17)タンパク質発現をフローサイトメトリーアッセイ法によって調べた。
【0081】
フローサイトメトリー
FACS緩衝液(0.5%FCSを含むPBS)を用いて、細胞表面抗原を染色した。細胞内抗原を染色するために、Biolegend固定緩衝液(サイトカインのため)またはeBioscience固定/透過処理緩衝液(転写因子のため)で細胞を固定した。LIVE/DEAD固定可能な死細胞染色(Thermo Fisher Scientific)を用いて死細胞を排除した。Treg細胞共培養抑制アッセイ法のために、レスポンダー細胞をCelltrace Violetで標識し(37℃、20分)、1%FBSを含むRPMI 1640培地で3回洗浄した。試料をLSR IIに流し、Flowjoソフトウェア(FlowJo, LLC, BD)を用いて解析した。
【0082】
抗体およびサイトカイン
フローサイトメトリーを用いて以下の抗原:CD4(GK1.5)、IL-17(TC11-18H10.1)、およびFoxp3(FJK-16s)を検出するために、抗体をBiolegend、eBioscience、およびBD Biosciencesに注文した。抗CD3(17A2)および抗CD28(37.51)を細胞培養のために使用した。
【0083】
実施例1
T細胞においてSptlc2が欠損すると、腫瘍増殖が増大したがTreg細胞形成が低減した。
Sptlc2Flox/FloxCd4-Creマウス(Fl/Fl、マウス8匹)およびSptlc2+/+Cd4-Cre(+/+、マウス11匹)マウスに、2×105個の黒色腫B16細胞を移植した。結果を図1に示している。本発明者らは、T細胞においてSptlc2が遺伝子欠損すると抗腫瘍免疫が弱まることを観察によって認め(図1A)、本発明者らは、さらに、制御性T細胞(Treg細胞)と呼ばれるT細胞の部分集団がSPTLC2欠損によって減少することも観察によって認めた(図1B)。
【0084】
実施例2
Treg細胞におけるSptlc2欠損は、Treg細胞の免疫抑制機能に影響を及ぼした。
本発明者らは、フローサイトメトリー選別機を用いて、Sptlc2Flox/FloxFoxp3Cre-YFPマウスまたはSptlc2+/+Foxp3Cre-YFPマウスからTreg細胞および非Treg細胞を精製した。Foxp3は細胞核内で発現され、FOXP3タンパク質のFACS染色は細胞固定および透過処理を必要とし、これは細胞を死滅させ、その後の細胞培養のためには不適切である。このFoxp3Cre-YFPマウス系統では、FOXP3タンパク質の発現を、YFPタンパク質の発現によって知ることができる。本発明者らは、細胞を固定し透過処理せずに、したがって細胞生存率を維持しながら、FOXP3発現細胞をFACSで直接的に選別することができなかった。YFP陽性CD4+Treg細胞とYFP陰性CD4+非Treg細胞をFACSによって選別した。非Treg細胞を蛍光色素Celltrace Violet(CTV、細胞増殖の測定用)で標識し、T細胞を刺激する抗CD3および抗CD28の存在下で3日間、Sptlc2欠損Treg細胞もしくはSptlc2が十分にあるTreg細胞と共に、またはそれらを伴わずに、共培養した。抑制率(%)は、[(Treg細胞が無い場合のT細胞増殖率-Treg細胞が有る場合のT細胞増殖率)/Treg細胞が無い場合のT細胞増殖率(%)]として算出した。本発明者らは、SPTLC2がTreg細胞の免疫抑制機能に必要とされることを発見した。結果を図2に示している。
【0085】
実施例3
Treg細胞においてSptlc2が欠損すると、EAEマウスモデルにおいて自己免疫が強化された。
Sptlc2Flox/FloxFoxp3Cre-YFPマウスまたはSptlc2+/+Foxp3Cre-YFPマウスにEAEを誘発した。簡単に説明すると、完全フロイントアジュバント中で乳化させた200μgのMOG35-55ペプチドで、各マウスを皮下免疫した。百日咳毒素(マウス1匹につき400ng)を腹腔内に注射した。EAE症状を毎日採点した。Sptlc2Flox/FloxFoxp3Cre-YFPマウスは、野生型対照マウスと比べて、より重症のEAEを発症した。結果を図3に示している。
【0086】
実施例4
スフィンガニンは、Treg細胞のインビトロ生成を促進し、炎症性Th17細胞形成を抑制した。
フローサイトメトリー選別機を用いて、Sptlc2+/+Foxp3Cre-YFP野生型マウスから脾臓ナイーブT細胞を精製した。ナイーブCD4+T細胞を、T細胞を刺激する抗CD3および抗CD28ならびにIL-2で3日間活性化し、これは、サイトカインTGFβの存在下または不在下で(図4A、Treg細胞形成を誘導するため)、またはTGFβおよびインターロイキン-6(IL-6)の存在下または不在下で(図4B、Th17細胞形成を誘導するため)行った。スフィンガニン(5μM)または溶媒対照DMSOを添加した。Foxp3タンパク質発現およびインターロイキン-17(IL-17)タンパク質発現をフローサイトメトリーアッセイ法によって調べた。あるいは、Foxp3タンパク質発現をフローサイトメトリー解析する前に、スフィンガニンもしくは他のスフィンゴ脂質または溶媒対照の存在下、Treg細胞誘導条件下(図4Aについてと同じ)でナイーブCD4+T細胞を培養した(図4C)。構造およびスフィンゴ脂質生合成経路を図に示している(図4D)。報告されているとおり、サイトカインTGF-βは、Foxp3を発現するTreg細胞を誘導した(Chen et al., 2003)。スフィンガニンまたは他のスフィンゴ脂質がFoxp3タンパク質発現を増大させ、Treg細胞形成を誘導し、かつIL-17タンパク質発現を低減することが判明した。
【0087】
実施例5
スフィンガニン処置により、EAE発症が緩和された。
完全フロイントアジュバント中で乳化させた200μgのMOG35-55ペプチドで、C57BL/6マウスを皮下免疫してEAE発症を誘発した。百日咳毒素(マウス1匹につき400ng)を腹腔内に注射した。マウスにスフィンガニンを腹腔内注射した(1000μg/kg体重、2日ごとに1回注射、1日目~15日目)。EAE症状を毎日採点した。結果を図5に示している。
【0088】
参照文献
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】