IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユニフラックス アイ エルエルシーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-25
(54)【発明の名称】軽量不織マット
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/4218 20120101AFI20220818BHJP
   H01M 50/44 20210101ALI20220818BHJP
   H01M 50/437 20210101ALI20220818BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20220818BHJP
   H01M 50/429 20210101ALI20220818BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20220818BHJP
   H01M 50/42 20210101ALI20220818BHJP
   H01M 50/446 20210101ALI20220818BHJP
   H01M 50/411 20210101ALI20220818BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20220818BHJP
   D04H 1/4209 20120101ALI20220818BHJP
   D04H 1/64 20120101ALI20220818BHJP
   D04H 1/732 20120101ALI20220818BHJP
【FI】
D04H1/4218
H01M50/44
H01M50/437
H01M50/434
H01M50/429
H01M50/414
H01M50/42
H01M50/446
H01M50/411
H01M50/489
D04H1/4209
D04H1/64
D04H1/732
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021575893
(86)(22)【出願日】2020-06-18
(85)【翻訳文提出日】2022-02-17
(86)【国際出願番号】 US2020038540
(87)【国際公開番号】W WO2020257526
(87)【国際公開日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】62/864,244
(32)【優先日】2019-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520085268
【氏名又は名称】ユニフラックス アイ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】サイターズ、ケビン イー.
(72)【発明者】
【氏名】ミラー、ケネス ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ブランデル、ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】スタールマン、マーク ディー.
(72)【発明者】
【氏名】デ スーザ、マウリシオ ムンホス
(72)【発明者】
【氏名】ゾイトス、ブルース ケイ.
(72)【発明者】
【氏名】ケルサル、アダム
(72)【発明者】
【氏名】キャナン、チャド ディー.
【テーマコード(参考)】
4L047
5H021
【Fターム(参考)】
4L047AA04
4L047AA05
4L047AA08
4L047AA28
4L047AB03
4L047AB07
4L047BA12
4L047BB03
4L047BB04
4L047BB05
4L047BC01
4L047CB05
4L047CC12
5H021BB08
5H021CC02
5H021EE01
5H021EE05
5H021EE06
5H021EE11
5H021EE21
5H021EE28
5H021HH00
5H021HH01
5H021HH03
5H021HH06
(57)【要約】
不織マットは、主にB-ガラス繊維を含み、厚さが約10~約700ミクロン、坪量が約1~70g/mである。当該マットは、一般的に650℃までの温度で熱的に安定しており、電池セパレータとしての使用に適している。
【選択図】図17B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織繊維マットであって、
B-ガラス繊維、耐火性セラミック繊維、または多結晶ウール繊維を有し、
前記繊維マットは、約10~約700ミクロンの厚さと、約1~約70g/mの秤量を有する、
不織繊維マット。
【請求項2】
請求項1記載の不織繊維マットにおいて、前記B-ガラス繊維は、約1ミクロン以下の平均直径を有し、前記繊維マットの約50~約100重量パーセントの量で存在する、不織繊維マット。
【請求項3】
請求項2記載の不織繊維マットにおいて、前記B-ガラス繊維は、0.5ミクロン未満の平均直径を有する、不織繊維マット。
【請求項4】
請求項1記載の不織繊維マットであって、さらに結合剤を有する、不織繊維マット。
【請求項5】
請求項4記載の不織繊維マットにおいて、前記結合剤は、ナノフィブリル化セルロース、デンプン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、またはアクリルラテックスを有する、不織繊維マット。
【請求項6】
請求項4記載の不織繊維マットにおいて、前記結合剤は前記繊維マットの最大20重量%の量で存在する、不織繊維マット。
【請求項7】
請求項1記載の不織繊維マットであって、さらにコンディショニング剤を有する、不織繊維マット。
【請求項8】
請求項7記載の不織繊維マットにおいて、前記コンディショニング剤は前記繊維マットの約1~約20重量%の量で存在する、不織繊維マット。
【請求項9】
請求項7記載の不織繊維マットにおいて、前記コンディショニング剤は、アルコールアルコキシレート、アクリルアミドとアクリル酸の共重合体、またはポリアクリルアミド樹脂を有する、不織繊維マット。
【請求項10】
請求項1記載の不織繊維マットであって、追加のガラス繊維タイプをさらに有する、不織繊維マット。
【請求項11】
請求項10記載の不織繊維マットにおいて、前記追加のガラス繊維タイプはC-ガラス繊維を有する、不織繊維マット。
【請求項12】
請求項1記載の不織繊維マットであって、650℃までの熱安定性を有する、不織繊維マット。
【請求項13】
請求項1記載の不織繊維マットにおいて、前記繊維マットは、約10~約100ミクロンの厚さと、約1~約25g/mの秤量を有する、不織繊維マット。
【請求項14】
請求項1記載の不織繊維マットにおいて、前記繊維マットは、約200~約700ミクロンの厚さと、約30~約70g/mの秤量を有する、不織繊維マット。
【請求項15】
請求項1記載の不織繊維マットであって、約80~約99重量%のBガラスマイクロ繊維と、約1~約20重量%のナノフィブリル化セルロースとを有する、不織繊維マット。
【請求項16】
請求項1記載の不織マイクロ繊維マットを有する、電池。
【請求項17】
負極と、
正極と、
電解質溶液と、および、
前記負極と前記正極との間に配置されたセパレータと
を有する電池であって、前記セパレータはB-ガラス繊維を有し、および、約10~約700ミクロンの厚さと、約1~約70g/mの秤量を有する、電池。
【請求項18】
請求項17記載の電池において、前記セパレータは、約10~約100ミクロンの厚さと、約1~約25g/mの秤量を有する、電池。
【請求項19】
請求項17記載の電池において、前記セパレータは、約200~約700ミクロンの厚さと、約30~約70g/mの秤量を有する、電池。
【請求項20】
請求項17記載の電池において、前記セパレータは650℃までの熱安定性を有する、電池。
【請求項21】
不織繊維マットを製造する方法であって、前記方法は、
B-ガラス繊維および結合剤を有する懸濁液を形成する工程と、
前記懸濁液を約2.8~3.5のpHに酸性化してスラリーを形成する工程と、
スクリーン上に前記スラリーを散布する工程と、
約10~約700ミクロンの厚さと、約1~約70g/mの秤量を有する不織繊維マットを提供するために、前記スラリーから液体を除去する工程と
を有する、方法。
【請求項22】
請求項21記載の方法において、前記結合剤は、ナノフィブリル化セルロース、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、デンプン、またはアクリルラテックスを有する、方法。
【請求項23】
請求項21記載の方法であって、前記懸濁液にコンディショニング剤を添加する工程をさらに有する、方法。
【請求項24】
請求項21記載の方法において、前記スラリーから液体を除去する工程は、前記スラリーに真空を適用する工程を有する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年6月20日に出願された「Lightweight Nonwoven Fiber Mats」と題する米国仮出願第62/864,244号の優先権を主張するものであり、その開示内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本開示は、一般に、不織繊維マットおよびその調製方法に関する。特に、本開示は、多孔質膜を提供し、極端な熱事象における劣化および収縮に耐性のある軽量不織繊維マットを記載する。不織繊維マットは、例えば、電池セパレータとして使用することができる。
【0003】
リチウムイオン電池は、従来の鉛蓄電池などの他の電池と比較して、いくつかの利点を提供する。提供される利点のいくつかには、通常、同じ容量であれば他の電池よりも軽量であること、高い開放電圧が得られること、自己放電率が低いこと、電池のメモリー効果が少ないこと、有害物質の廃棄量が少ないことなどが挙げられる。しかし、リチウムイオン電池は、電池が過熱または過充電された場合に発生する可能性のある熱暴走など、いくつかの問題や安全上の懸念が発生する傾向にある。
【0004】
熱暴走は、セルが熱的に不安定になるときに発生し、これにより、セル内の温度が急上昇し、セルおよび/または電池の致命的な故障につながる可能性がある。熱暴走中、故障したセルの高熱が電池内の隣接するセルに伝わり、隣接するセルが熱的に不安定になることがある。電池内で連鎖反応が起こり、セルの破裂や火災、極端な場合は爆発につながる可能性がある。熱暴走は、過充電、高すぎる電圧での充電、セル内でのデンドライトの成長、その他の過熱やショートを含むさまざまな原因で発生する可能性がある。
【0005】
過去10年にわたる携帯用電源としてのリチウムイオン電池の広範な使用は、システム内の安全性を高める必要性を明らかにした。リチウムイオン電池には、ポリエチレンまたはポリプロピレンの高分子セパレータが一般的に使用されているが、これらのセパレータは、セルの過熱や熱暴走の場合に熱劣化の影響を受けやすい。セパレータが故障すると、セル内で直接ショートして爆発的なエネルギーが発生する可能性がある。セパレータの収縮および劣化により、電池内で危険なショートが発生する可能性がある。
【0006】
そのため、特にリチウムイオン電池においては、安全性を高めるための改良された材料や方法が引き続き必要とされている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
以下の図は、本発明の特定の態様を説明するために含まれており、排他的な実施形態と見なすべきではない。開示された主題は、当技術分野における通常の技能を有し、本開示の恩恵を受けた者に生じるように、形態および機能においてかなりの修正、変更、および同等のものが可能である。
図1図1は、本開示の実施形態によるBX9繊維の繊維化中に発生した「ショット」のSEM顕微鏡写真を示す;
図2図2Aおよび図2Bは、本開示の実施形態による、実施例1の超薄型マットの強熱減量と、標準的なCelgard(登録商標)2325セパレータとの比較をそれぞれ示している;
図3図3A、3B、および3Cは、本開示の実施形態による、実施例1の超薄型マットの中央孔径、累積孔容積、および表面積をそれぞれ示す;
図4図4Aおよび図4Bは、標準的なCelgard(登録商標)2325セパレータの中央孔径と累積孔容積をそれぞれ示す;
図5図5は、本開示の実施形態による実施例1の超薄型マットの異なる放電速度における容量性能を示す;
図6図6Aは、本開示の実施形態による実施例2の超薄型マットを用いて作製したセルの、異なる速度での%充電および%放電を示す; 図6Bは、一般的なポリプロピレン製セパレータを用いて作製したセルの、異なる速度での%充電および%放電を示す;
図7図7Aは、本開示の実施形態による実施例2の超薄型マットを用いて作製したセルの、C/3での充放電サイクルの前後のサイクリックボルタンメトリーを示す; 図7Bは、一般的なポリプロピレン製セパレータを用いて作製したセルの、C/3での充放電サイクルの前後のサイクリックボルタンメトリーを示す;
図8図8は、本開示の実施形態による実施例2の超薄型マットのSEM顕微鏡写真を示す;
図9図9は、本開示の実施形態による実施例3の超薄型マットの強熱減量を示す;
図10図10A、10B、および10Cは、本開示の実施形態による実施例3の超薄型マットの中央孔径、累積孔容積、および表面積をそれぞれ示す;
図11図11は、本開示の実施形態による実施例3の超薄型マットを用いて作製したセルの、異なる速度での%充電および%放電を示す;
図12図12は、本開示の実施形態による実施例3の超薄型マットを用いて作製したセルのC/3での充放電サイクルの前後のサイクリックボルタンメトリーを示す;
図13図13は、本開示の実施形態による実施例4の超薄型マットの強熱減量を示す;
図14図14A、14B、および14Cは、本開示の実施形態による実施例4の超薄型マットの、中央孔径、累積孔容積、および表面積をそれぞれ示す;
図15図15は、本開示の実施形態による実施例5の超薄型マットを用いて作製したセルの異なる速度での%充電および%放電を示す;
図16図16は、本開示の実施形態による実施例5の超薄型マットを用いて作製したセルのC/3での充放電サイクルの前後のサイクリックボルタンメトリーを示している;
図17図17Aおよび17Bは、本開示の実施形態による、加熱前および加熱後の収縮について、実施例5で試験された超薄型マットサンプルをそれぞれ示す;
図18図18は、本開示の実施形態による実施例6の超薄型マットの強熱減量を示す;
図19図19は、本開示の実施形態による実施例7の超薄型マットの強熱減量を示す;
図20図20A、20B、および20Cは、それぞれ、本開示の実施形態による実施例7の超薄型マットの中央孔径、累積孔容積、および表面積を示す;
図21図21は、本開示の実施形態による実施例8の超薄型マットの強熱減量を示す;
図22図22は、本開示の実施形態による実施例8の超薄型マットを用いて作製したセルの異なる速度での%充電および%放電を示す;
図23図23は、本開示の実施形態による実施例8の超薄型マットを用いて作製したセルのC/3での充放電サイクルの前後のサイクリックボルタンメトリーを示す;
図24図24は、本開示の実施形態による、実施例3、4、7、および8の超薄型マットのSEM顕微鏡写真を示す;
図25図25は、本開示の実施形態による実施例9の薄型マットの強熱減量を示す;
図26図26A、26B、および26Cは、本開示の実施形態による実施例9の薄型マットの中央孔径、累積孔容積、および表面積をそれぞれ示す;
図27図27は、本開示の実施形態による実施例9の薄型マットのSEM顕微鏡写真である;
図28図28A、28B、および28Cは、それぞれ、本開示の実施形態による実施例10の薄型マットの中央孔径、累積孔容積、および表面積を示す図であり;および
図29図29A、29B、および29Cは、本開示の実施形態による実施例11の薄型マットの中央孔径、累積孔容積、および表面積をそれぞれ示す。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、主にB-ガラス繊維(ホウケイ酸ガラス)、耐火性セラミック繊維(RCF)、または約10ミクロン~約500ミクロンの厚さの多結晶ウール繊維を含む不織繊維マットであって、最大厚さが700ミクロンまで、坪量が約1~約70g/m(GSM)、平均孔径が約0.5~約0.8ミクロン、累積細孔容積が約1~約5cm/g、透過性が約0.01~1ダルシー、表面積が約3~約35m/gの不織繊維マットを記載する。いくつかの実施形態では、B-ガラス繊維は、約1ミクロン以下の平均直径を有し、繊維マットの約50~約100重量パーセントの量で存在する。透過性、孔径、および同様の特性は、繊維の直径によって促進される;微細な繊維によって、本開示は、選択された材料の輸送を可能にする頑丈な多孔質膜を提供することができる。有利には、マットは、イオンおよび液体に対して透過性または半透過性であり、高温で熱的に安定しており、および/または電気的に絶縁性であるという特性を有していてもよい。例示的な実施形態では、マットは650℃まで熱的に安定している。
【0009】
B-ガラス、C-ガラス(耐酸性ホウケイ酸ガラス)、E-ガラス(カルシウムアルミノケイ酸ガラス)の組成を以下の表1に示すが、各成分の量は重量パーセントで表している。
【表1】
【0010】
マットには、あらゆる種類のB-ガラス繊維(または異なる種類のB-ガラス繊維の組み合わせ)を使用することができる。例えば、Lauscha Fiber International GmbHから市販されているBX9繊維、B00繊維、および/またはB02繊維を使用することができる。これらの繊維はすべて、表1に記載された組成を有し、以下の追加基準を満たしている。
● BX9繊維-平均繊維径0.5ミクロン未満、比表面積5.0~7.0m/g
● B00繊維-平均繊維径0.65ミクロン未満、比表面積3.8~5.8m/g
● B02繊維-平均繊維径0.7ミクロン未満、比表面積2.5~3.5m/g
【0011】
しかし、異なる化学物質、直径、形態、長さ、および公称表面積の繊維を含む他の種類の繊維を、添加剤レベル(例えば、マットの50%以下、マットの25%以下、またはマットの10%以下)で使用してもよい。例示的な実施形態では、上記の表1に記載された組成を有するC-ガラス繊維およびB-ガラス繊維は、ともに当該マットに存在する。
【0012】
多結晶ウール繊維は、約1~約28重量パーセントのシリカ(SiO)と、約72~約99重量パーセントの酸化アルミニウム(Al)を含むことができる高性能繊維である。高性能繊維は、約40重量パーセント~約60重量パーセントのAlと約40重量パーセント~約60重量パーセントのSiOを含む従来のRCFとは特性が異なる。高性能繊維は、その強靭さから、断熱材や支持体に使用するのに適している。
【0013】
様々な実施形態において、マットはまた、最大約20重量パーセントの量の結合剤(例えば、有機結合剤および/または無機結合剤)を含む。適切な有機結合剤には、ナノフィブリル化セルロース(NFC)、ミクロフィブリル化セルロース(MFC)、およびアクリルラテックスエマルジョンが含まれるが、これらに限定されない。その他の適切な有機結合剤としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルアルコール、シリコーン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン類(例えば、スチレン・ブタジエンゴムおよびスチレン無水マレイン酸)、デンプン類(すべての化学物質)、セルロース類(例えば、カルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロース)、その他のポリオレフィン類などのエマルジョン、および標準的な製紙技術で使用されるさまざまな化学物質の結合剤または樹脂を含む。また、無機結合剤を使用してもよく、異なる直径と異なる化学的性質を持つ追加の無機繊維、および/または無機粘土などの他の結合剤を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、マットは、標準的な製紙方法を用いて製造される。このような方法は、典型的には、繊維を水または他の適切な媒体に懸濁させ、スクリーン上で水切りして真空成形するか、またはドクターブレード、噴霧、発泡、長網抄紙機、または傾斜ワイヤーまたは回転成形技術を用いて成形することに依存する。
【0015】
マット適用
【0016】
いくつかの実施形態では、マットは電池セパレータに配合される。電池セパレータは、リチウムイオン電池、ニッケル-カドミウム(NiCd)電池、金属水素化物電池、または鉛酸電池などの任意の適切な電池に組み込むことができる。いくつかの実施形態では、電池セパレータは、ガラス繊維(例えば、前述のBX9繊維)、デンプン、NFC、ラテックス水性アクリル共重合体エマルジョン結合剤、および、湿潤剤、界面活性剤、乾燥強度添加剤などのコンディショニング剤、および、例えば、アルコールアルコキシレート、アクリルアミドとアクリル酸の共重合体、ポリアクリルアミド樹脂、カチオン性グリオキシル化樹脂、ポリアミドアミン樹脂、およびポリアミン-エピクロロヒドリン樹脂などの湿潤強度添加剤を混合することによって形成される。Lauscha Fiber International GmbHから市販されているBX9ガラス繊維は、B-ガラス(上記の表1参照)で構成されており、平均直径が0.5ミクロン未満で、比表面積が5~7m/gである。当業者であれば、市販されている繊維の所定のサンプルがある範囲の直径を示すことを認識するであろう。例えば、BX9繊維は、0.1ミクロン~10ミクロンの直径範囲を有し、繊維の直径の大部分は0.1ミクロン~1.5ミクロンである。本明細書で説明する実施形態では、他のガラス繊維を使用してもよい。これらの繊維は、異なるガラス化学的性質であってもよく、固有の表面積、平均直径、および直径範囲を有する。
【0017】
非繊維材料は、通常、BX9の商業生産において生成および捕捉される。これは「ショット」と呼ばれている。BX9繊維の場合、非繊維材料またはショットは、通常、45ミクロン以上の直径を有し、0.5重量%で存在する。しかし、いくつかの実施形態では、25ミクロン~45ミクロン、または25ミクロン未満の直径を持つショットを含むことができる。
【0018】
上記の成分(例えば、ガラス繊維、結合剤、およびコンディショニング剤)を含むスラリーまたは懸濁液をメッシュスクリーンに載せ、ブレードで排出および/または引きだし、噴霧し、または真空成形して、有限の厚さのフィルムを提供する。このフィルムは、熱安定性、累積細孔容積、透過性、および取り扱い性などの他の特性を有利に含み、これらは以下でより詳細に説明される。リチウムイオン電池にマットを使用することで、比容量と充放電率による性能を向上させることができる。
【0019】
本明細書に記載されているような熱的に安定したセパレータは、その強化された熱的安定性のために、以前に記載された問題を緩和することができる。繊維の性質、具体的には微細な平均直径と比較的高い公称比表面積により、燃料電池や電池セパレータとしての使用に有利な高多孔性材料が得られる。セパレータの多孔質性により、イオンやその他の小分子の通過性が改善され、様々なエネルギー電池に非常に有利になる。
【0020】
このマットの他の可能な適用は、コンデンサ、燃料電池膜、または他の任意のエネルギー貯蔵用途、および高温安定性、電気絶縁性、およびイオン/液体透過性の組み合わせを必要とするその他の用途を含む。
【発明を実施するための形態】
【0021】
例示的な実施形態
【0022】
超薄型不織繊維マット
【0023】
特定の実施形態では、マットは、約10ミクロン~約100ミクロンの厚さを有し、約1~約25GSMの坪量を有し、B-ガラス繊維(例えば、上述のBX9ガラス繊維)、RCF、または多結晶ウール繊維を主に含む(「超薄型マット」)。BX9繊維は、細径で表面積が大きいため、透過性のあるマトリックスを作ることができる。しかし、化学的性質、直径、長さ、および公称表面積が異なる他の繊維を、様々な割合で使用してもよい。例えば、C-ガラス繊維は、マットの50%以下、マットの25%以下、マットの10%以下の割合で添加してもよい。超薄型マットは、以下でさらに説明するように、超薄型マットの製造方法に応じて、結合剤、合成繊維、またはコンディショニング剤のいずれか1つについて様々な量および化学的性質を含み得る。
【0024】
いくつかの実施形態では、超薄型マットは、NFC、アクリルラテックス、および/またはポリビニルアルコールおよび/またはポリ酢酸ビニルなどの他のタイプのラテックスなどの結合剤を含む。結合剤は、最大約20重量%の量まで超薄型マットに存在してもよい。有利には、超薄型マットは、真空形成、傾斜ワイヤー、長網抄紙機、ドクターブレード、噴霧、発泡などの標準的な製紙技術によって製造することができ、650℃までの熱安定性を有することができる。様々な実施形態において、超薄型マットは、約1~約3ミクロンの平均孔径、約1~約5cm/gの累積孔容積、約0.01~約0.5ダルシーの透過性、および約3~約10m/gの表面積を有する。
【0025】
この極薄マットは、ナノポーラスまたはメソポーラスの電池セパレータや高温電気絶縁体に配合することができ、さまざまな種類の電池、コンデンサ、燃料電池、特に小型の携帯型リチウムイオン電池に使用することができる。ガラス繊維や多結晶繊維を含むことで、電池の熱的事象(暴走や過熱)時の熱安定性が向上したセパレータが得られる。
【0026】
いくつかの実施形態によると、超薄型マットは、約90~約99重量パーセントのB-ガラス繊維、例えばBX9ガラス繊維、および約1~約10重量パーセントの乾燥デンプン(コンディショニング剤なし)を含む。特定の実施形態では、超薄型マットは、約50~約95重量パーセントのBX9ガラス繊維、約1~約20重量パーセントの乾燥デンプン、および約5~約30重量パーセントのアクリルラテックス(コンディショニング剤なし)を含む。様々な実施形態では、超薄型マットは、約80~約99重量%のBX9ガラス繊維と、約1~約20重量%のNFC(コンディショニング剤なし)とを含む。特定の実施形態では、超薄型マットは、約80~約99重量パーセントのBX9ガラス繊維、約1~約20重量パーセントのNFC、および約0~約10重量パーセントの湿潤剤、界面活性剤、または乾燥強度および/または湿潤強度の添加剤などのコンディショニング剤を含む。いくつかの実施形態では、超薄型マットは、約50~約95重量パーセントのBX9ガラス繊維と、約1~約20重量パーセントのシリコーン、ポリビニルアルコール、またはポリ酢酸ビニル(コンディショニング剤なし)とを含む。さらに他の実施形態では、超薄型マットは、約50~約95重量パーセントのBX9ガラス繊維と、約5~約30重量パーセントのアクリルラテックスと、約1~約20重量パーセントのコンディショニング剤とを含む。
【0027】
薄型不織繊維マット
【0028】
定の実施形態では、マットは、約200ミクロン~約700ミクロンの厚さを有し、約30~約70GSMの坪量を有し、主にB-ガラス繊維、RCF、または多結晶ウール繊維を含む(「薄型マット」)を含む。同じ化学物質(B-ガラス)、または異なる化学物質、直径、長さ、および表面積の他の繊維を、様々な濃度で使用してもよい。例えば、C-ガラス繊維を少量(例えば、マットの50%以下、25%以下、または、例えば、マットの10%以下)で添加してもよい。特に、直径、長さ、表面積が異なるC-ガラス繊維を使用してもよい。
【0029】
また、薄型マットは、NFC、アクリルラテックス、シリコーン、および/またはポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリルなどの他の種類のラテックスなどの結合剤を含んでいてもよい。これらの結合剤は、最大で約20重量パーセントの量で薄型マットに存在してもよい。例示的な実施形態では、結合剤は、約1~約10重量パーセントの量で存在する。様々な実施形態では、薄型マットは、約1~約5ミクロンの平均孔径、約1~約5cm/gの累積孔容積、約0.01~約0.3ダルシーの透過性、および約10~約35m/gの表面積を有する。
【0030】
有利なことに、この薄型マットは650℃までの熱安定性を有し、標準的な製紙技術を用いて製造することができる。薄型マットの開発と製造には、回転成形や真空成形などの方法論を用いることができる。
【0031】
薄型マットは、電池セパレータに配合されることもある。上述の小型リチウムイオン電池や携帯型リチウムイオン電池の電池セパレータとして使用される超薄型マットと同様であるが、グリッドエネルギー貯蔵に使用される大型リチウムイオン電池には、より厚く、高密度で、より堅牢なセパレータが必要となる場合がある。しかし、厚さや面積密度にかかわらず、セパレータは多孔質膜を提供し、極端な熱事象での劣化や収縮に耐える必要がある。このような大型のセルにおけるセパレータの収縮と劣化は、電池内でショートが発生した場合、壊滅的で非常に危険な事象を引き起こす可能性がある。
【0032】
非繊維材料の除去は、薄型ガラスマットの安全性と機能性にとって極めて重要である。薄型マットを形成する際に、繊維スラリー中に大きなショット粒子が存在すると、ピンホールや裂け目などの重大な欠陥が発生する可能性がある。その結果として生じる欠陥は、電池セルに危険な故障を引き起こす可能性があるため、ショットの除去が不可欠である。直径が45ミクロンを超える大きなショット粒子は、スラリーから除去する必要がある。図1は、BX9繊維から分離した代表的なショットと非繊維材料のSEM顕微鏡写真である。
【0033】
いくつかの実施形態では、薄型マットは、100重量パーセントのB-ガラス繊維、例えばBX9ガラス繊維を含み、および結合剤を含まない。他の実施形態では、薄型マットは、約80~約99重量パーセントのBX9ガラス繊維、および約1~約20重量パーセントのNFC、アクリルラテックス、ポリビニルアルコール、シリコーン、および/またはポリ酢酸ビニルを含む。特定の実施形態では、薄型マットは、約50~約99重量パーセントのBX9ガラス繊維と、Lauscha Fiber International GmbHから市販されている約1~約50重量パーセントのC08繊維(C-ガラス化学的性質、平均直径1.0ミクロン未満、比表面積1~3m/g)とを含む。その他、回転式、火炎減衰式、その他任意の形成方法で形成されたガラス繊維を使用してもよい。これらには、例えば、Lauscha Fiber International GmbHから市販されているB00(B-ガラス化学的性質、平均直径0.5μm未満、比表面積3.8~5.8m/g)およびB02(B-ガラス、平均直径0.6μm未満、比表面積2.5~4.5m/g)が含まれる。ただし、異なる化学的性質、直径、形態、長さ、および公称表面積の繊維を含む、これらの繊維および他の種類の繊維は、添加レベル(例えば、マットの50%以下、マットの40%以下、マットの30%以下、マットの20%以下、またはマットの10%以下)で使用することができる。
【0034】
マット特性
【0035】
マットの製造には、いくつかの異なる製紙技術が利用された。一般に、これらの実施形態は、B-ガラス繊維、例えばBX9ガラス繊維、NFC、および/または他の結合剤、および他の結合剤の様々な混合を含む。これらの実施形態は、マットの湿潤および乾燥引張強度、マットの累積孔容積および透過性、ならびに電池内でのマットの長期安定性を最適化するために調製された。また、マットのさまざまな特性も評価された。
【0036】
熱安定性。 熱安定性は、セパレータが崩壊せずに電池が機能する最大動作温度を決定するために使用される指標である。安全性の観点から、熱安定性が高い(崩壊温度が高い)電池セパレータを利用することで、リチウムイオン電池が高温で動作しているときに起こる危険なショートを軽減することができる。言い換えれば、セパレータは熱暴走時の高温に耐えられるだけの弾力性があり、負極と正極が接触して生じる潜在的な危険反応からユーザーを保護する必要がある。高温(200℃~600℃)での収縮試験では、面積と面積密度(GSM)の変化を測定した。さらに、650℃までの熱重量分析(TGA)を行い、セパレータに含まれるラテックス結合剤、デンプン、その他の有機材料の正確な割合を決定した。さらに、TGAを使用して質量損失率を測定することで、高温下での特定のセパレータにおける結合剤の損失、または、酸化的破壊の存在を予測した。これらの事象は、セパレータの部分的または完全な破壊をもたらす可能性がある。以下の実施例に詳述されているように、セパレータは、200℃~400℃の温度では、破壊を含む物理的変化をほとんど示さなかった。
【0037】
取り扱い性 ガラス繊維を含む薄型不織マットは、素早く大量に生産され、エネルギー貯蔵装置や電池セパレータなど様々な製品に組み込まれるという課題に直面する。そのためには、マットは、破れずに扱えるように十分に堅牢である必要がある。そのため、取り扱い性を定性的、定量的に測定した。乾燥引張強度は、破断前に紙にかかる荷重を測定して定量化した(lbs./inおよびkg/m)。マットの取り扱い性は、マットを破らずにメッシュスクリーンから簡単に取り外すことで判断し、合格または不合格の記述を行った。各マットの面積密度は、GSMを計算することにより定量化された。
【0038】
孔径、累積細孔容積、透過性、および表面積。セパレータの累積細孔容積と透過性は、セル容量の増加を促進することができる。したがって、負極と正極との間のリチウムイオンの不断の通過に対応する適切な直径の十分な細孔容積を提供する熱的に安定した電池セパレータが望まれる。この観点から、累積細孔容積、透過性、および表面/界面トポグラフィーが特徴付けられた。これらの特性を定性および定量的に分析するために、水銀圧入ポロシメトリー(MIP)と走査型電子顕微鏡(SEM)によるイメージングを利用した。MIPでは、特定のマットに存在する細孔を3次元的に分析することができる。分析により、中央孔径値(ミクロン)、表面積(m/g)、および累積孔容積(cm/g)を表す値が得られた。透過性はダルシー単位で表された。SEMでは、アクリルラテックスエマルジョンなどのラテックス結合剤を含む配合物と含まない配合物でマットのトポグラフィーを定性的に観察することができ、これはトポグラフィーがラテックスのインターカレーションによって悪影響を受けているかどうかを判断する上で非常に重要な場合がある。
【0039】
充電/放電とサイクル保持。 様々な充電および放電速度において、セパレータ材料がセル全体の容量に与える影響を調べた。C/10から5Cまでのレートでセルの容量を測定した。
【0040】
一般に、リチウムイオン電池は、高い充電/放電速度ではより低い容量を示し、低い充電速度では電極間のリチウムイオンの移動がより完全に進行するため、より高い容量を実現できることが知られている。現実的には、これにより、所定の充電速度または放電速度での放電時間を長くしたり、充電時間を速くしたりすることができる。より大きな多孔性、細孔容積および貫通細孔を提供するセパレータは、電極間のリチウムイオンの移動を向上させることができる。リチウムイオンの移動が改善されると、より高い速度で高い容量を実現することができる。
【0041】
セパレータの実施形態の性能は、セパレータの実施形態を用いて作製したコインセルの比放電容量と比充電容量を用いて説明することができる。Cレート試験は、以下の方法でセルに実施した。速度は、通常、「C」値と呼ばれる。「1C」の充電/放電速度は、1時間で所定のセルの全容量を充電/放電する。「2C」の充電速度は、同じセルを30分で充電する。「C/2」の充電速度は、同じセルを2時間で充電する。
【0042】
セルは形成工程を経て、放電状態でテストを開始した。以下のCレート試験は、Cレートを減衰させながら充電と放電を行う1サイクルを含む。セルは、4.2Vの電圧が得られるまで5Cレートの充電を1回行い、セルに入力されたエネルギーを記録した。休止後、同じセルに2Cの充電速度を適用し、5Cレートで蓄積された部分的な電荷に加えて、セルに入力された追加のエネルギーを記録した。これを、1C、C/2、C/5、C/10の各レートで繰り返した。C/10の充電工程の後、セルは完全に充電されたとみなされた。このようにして、各レートで達成された総充電量の増加分(mAh/g)が決定された。
【0043】
放電容量については、放電中のセルを使ってテストを繰り返した。まず、5Cレートの放電を1サイクル行い、2.5Vの電圧が得られるまで放電し、エネルギー出力を決定した。次に、この同じセルに2Cの放電を行い、エネルギー出力を測定した。これを1C、C/2、C/5、C/10のレートで繰り返した。C/10サイクルの後、セルは完全に放電したと見なされた。以下の例は、一般的なポリプロピレン製セパレータと比較されている。
【0044】
この結果は、適用されたすべての速度で達成された累積電荷に対する各速度の増分電荷の比率で表される。示されたグラフは、充電および放電時に各速度で実現された容量を表しており、各Cレートで実現された全体の容量の部分を決定することによって生成された。
【0045】
サイクル寿命は、以下の実施形態で提示される無機の安定したセパレータの導入によって悪影響を受けてはならないパラメータである。セパレータのいかなる構成要素も、電解質の消費または吸収を引き起こしたり、物理的な変化を起こしたり、負極/正極材料に層を作ったり、充電/放電サイクル中の膨張、漏れ、収縮などのセルの変化をもたらしたりしてはならない。任意ではあるが、一般的には、容量が20%減少し、元の容量の80%になった時点で、自動車用電池セルの寿命が実質的に終了すると考えられている。一般的なリチウムイオン電池は、形成サイクル後に99%を超える形成後のクーロン効率を示す。また、負極、正極、電解質組成、および完全性の物理的変化も、サイクリックボルタンメトリーでモニターすることができる。以下の実施例を含むセルを何サイクルも使用した後のサイクリックボルタンメトリーの変化または特徴は、セパレータがセルと相互作用して不可逆反応を起こしていることを示している。実験の過程においてサイクリックボルタモグラムで観察された有意な偏差、特に垂直線は、コインセルでの不可逆反応の結果ではなく、むしろ実験を開始した機器のアーティファクトであると考えられる。C/3サイクル後に観察されたサイクリックボルタモグラムの実質的なシフトは、セパレータとセルの残りの部分との間で不可逆的な反応が起こったことを示している可能性がある。つまり、C/3サイクルの前後で収集したサイクリックボルタモグラムは、簡単に重ね合わせることができる。
【0046】
繊維指数とショット含有量。繊維指数は、完成した超薄型または薄型マットおよび非繊維性微粒子中の繊維状物質の割合として説明される。記載されている実施例の繊維指数を決定する際には、完成したマットを粉砕した後、水の中に入れる。繊維は、溶出法を用いて「ショット」から分離され、繊維質の材料がシステムから取り除かれ、残ったショットが集められ、乾燥され、秤量される。そして、繊維質マットのショットの割合を計算する。完成した超薄型または薄型マットの繊維指数は、ショットの割合との差から計算される。
【0047】
以下の実施例は、上述の材料と方法を例示するものであり、限定することを意図したものではない。
【実施例
【0048】
実施例1-デンプンを用いた超薄型マット
超薄型マットのベースとなるBX9ガラス繊維と乾燥デンプンを必要量配合した懸濁液を形成した。まず、BX9ガラス繊維0.45gを50℃の水100gに加え、10%硫酸(HSO)でpHを約3.0に酸性化した後、実験用強力ブレンダーで2分間混合して繊維を分散させた。次に、乾燥デンプン0.25gと水20gの溶液を、50℃で実験室用スタンドミキサーを用いて1000RPMで2分間またはデンプンが溶解するまで混合した。この2つの成分を混合し、50℃の3ガロンの温水に懸濁させ、10%HSOでpH3.0に酸性化した。
【0049】
その後、得られた懸濁液を5分間混合してから、真空形成を用いて超薄型マットを形成した。懸濁液を330メッシュのスクリーンの上にあるシートモールドのリザーバーに移し、手で混合して繊維を均一に分散させた。リザーバーを排水して、懸濁液をスクリーン上に堆積させ、超薄型マットを形成させた。得られた湿ったフィルムを330メッシュのスクリーン上に置いたままシートモールドから取り出し、60℃~65℃のオーブンで乾燥させた後、メッシュスクリーンから取り出した。
【0050】
その後、乾燥したフィルムについて、厚さ、面積密度(GSM)、強熱減量(LOI)(TGA経由)、収縮、MIP(中央孔径、表面積、および累積細孔容積)、透過性、SEMイメージング、比放電容量、および引張強度を分析した。それらの結果は、以下の表と添付の図に示され、説明されている。
【0051】
図2A図2Bは、フィルムのLOIと、標準的なCelgard(登録商標)2325セパレータとの比較を示している。真空形成された超薄型マットにガラス繊維を使用することで、250℃以上の温度で急速に崩壊した標準的なCelgard(登録商標)2325セパレータと比較して、600℃に近い温度でのLOIを測定すると、得られる電池セパレータの熱安定性が少なくとも20倍向上していることが分かる(99.5%から4.3%)。この例では、Celgard(登録商標)2325セパレータは600℃付近の温度で酸化(燃焼)し、超薄型マットは酸化しないことが明らかになった。
【0052】
図3Aは、乾燥フィルムの中央孔径を示す図であり、図3Bは、乾燥フィルムの累積細孔容積を示す図である。図3Cは、乾燥フィルムの表面積を示す図である。図4Aは、標準的なCelgard(登録商標)2325セパレータの中央孔径を示し、図4Bは、標準的なCelgard(登録商標)2325セパレータの累積孔容積を示している。BX9繊維を絡み合わせると、標準的なCelgard(登録商標)2325セパレータと比較して、中央孔径が175倍を超えるセパレータが得られた。
【0053】
コインセルは、この乾燥フィルムと、対照として標準的なCelgard(登録商標)2325セパレータを用いて製造した。正極はアルミニウム集電体箔上の市販の正極活物質LiNi0.5Co0.2Mn0.3(NCM523)からなり、負極は銅集電体箔上に負極活物質(日立MagE3グラファイト)を使用して構成された。電解質は、3:7 EC(エチレンカーボネート):EMC(エチルメチルカーボネート)の1.2Mの六フッ化リン酸リチウム(LiPF)であった。
【0054】
図5は、異なる放電速度における乾燥フィルムの容量性能を示したものである。理論に縛られることを望まないが、高い放電速度において、標準的なCelgard(登録商標)2325セパレータを超える超薄型マットの比容量が観察された増加は、超薄型マット材料を介したリチウムイオンのより迅速な輸送に起因する可能性がある。
【0055】
実施例1の乾燥フィルムをテストした結果を表2にまとめた。
【表2】
【0056】
実施例2-デンプンを用いた超薄型マット
実験室用スタンドミキサーを用いて、0.16gの乾燥デンプンを、酸性のpH(2.8~3.5の間)の熱水(50℃)500mLに入れて混合した。次に、0.19gのBX9ガラス繊維を加えて5分間予備混合し、スラリーを形成した。次に、このスラリーを実験室用ブレンダーに入れ、1分間混合した。ブレンダーの側面を洗浄し、さらに500mLの水(10%HSOで2.8~3.5のpHに酸性化)をブレンダーに加え、さらに1分間混合した。
【0057】
450メッシュの目が詰まった金属スクリーンの表面を水で濡らし、ブレンダーからのスラリーをスクリーン上に均一に注ぎ、真空にせずに完全に重力排水させ、フィルムを形成した。
【0058】
このマットを温度60℃のオーブンで5~15分または乾燥させた後、オーブンから取り出して冷却した。得られた乾燥マットをスクリーンから静かに取り出した。
【0059】
コインセルは、以下の一般的な市販の要素、物質、および条件を利用して製造された:アルミニウム集電体箔(面積:1.77cm)上の、正極活物質LiNi0.5Co0.2Mn0.3(NCM523)94wt%、導電性添加剤(C65導電性カーボンブラック)2.5wt%、およびポリフッ化ビニリデン(PVDF)結合剤(HSV 1800PVDF)3.5wt%の混合物からなる正極、および、負極は銅集電体箔(面積:2.01cm)上に負極活物質(グラファイト)94%、導電性添加剤(C65導電性カーボンブラック)2.5%、およびPVDF結合剤(HSV 900 PVDF)3.5%の混合物を使用して構成された。電解質は、3:7 EC(エチレンカーボネート):EMC(エチルメチルカーボネート)の1.2Mの六フッ化リン酸リチウム(LiPF)であった。セルは、Hohsen Corp.の2032コインセルケーシングに収容された。セルは、乾燥したマットから形成されたセパレータを利用した。セパレータは、使用前に130℃の真空オーブンで12時間乾燥させた。対照として、一般的なポリプロピレン(PP)製のセパレータを使用した。
【0060】
図6Aおよび6Bは、実施例2のセパレータ(図6A)および一般的なPPセパレータ(図6B)を用いて、それらのセパレータを含むセルが、C/10、C/5、C/2、1C、2C、および5Cの放電および充電レートの単一サイクルを経たときの、(比容量の関数として)充電および放電割合を示している。以下の表3に示されている割合は、記載されている放電および充電速度で1サイクル後に実現される充電または放電容量の量を示している。実施例2のセパレータは、一般的なPPセパレータと比較して、高い充放電速度で例示的な比充放電容量を示し、実施例2のセパレータを用いて調製されたコインセルが、高い充放電速度でより多くの容量を提供することができ、すべての放電速度でより長いランタイムをもたらし、すべての充電速度でより速い充電時間をもたらすであろうことを示している。
【0061】
実施例2のセパレータと一般的なPPセパレータを含むセルのクーロン効率は、C/3のレートでの比充電容量に対する比放電容量の割合として算出される。それらの結果は、以下の表3に示され、説明されている。C/3でのサイクリングの前後に、サイクリックボルタンメトリーを行った。図7Aおよび7Bは、それぞれ、実施例2のセパレータおよび一般的なPPセパレータのC/3のレートでの繰り返しサイクルの前後の、コインセル内のマットの安定性を示す。C/3の放電速度で15サイクル行う前後に観察された同一または類似のサイクリックボルタモグラムは、安定したセルのサイクリングを示している。言い換えれば、類似のサイクリックボルタモグラムは、サイクリング中に不可逆反応が発生しておらず、セパレータおよびその個々の構成要素がサイクリング中に安定していることを示唆している。実施例2のセパレータの場合、C/3でサイクルした後のサイクリックボルタモグラムは、より大きな偏差を示す一般的なPPセパレータと比べてほぼ同じである。実施例2のセパレータのサイクリックボルタモグラムは、一般的なPPセパレータよりも、記載されているコインセル調製物における安定性が高いことを示唆している。
【0062】
図8は、実施例2のセパレータの乾燥フィルムの代表的なSEM顕微鏡写真を表示しており、BX9繊維の絡み合いを示している。SEMでは、負極と正極の間のリチウムイオン輸送に利用可能な細孔マトリクスと空間を定性的に分析することができる。
【0063】
実施例2の乾燥フィルムをテストした結果を表3にまとめた。
【表3】
【0064】
実施例3-デンプンとアクリルラテックスを用いた超薄型マット
まず、アクリルラテックスエマルジョン5.0g、乾燥デンプン1.6g、ヒドロキシエチルセルロース増粘剤0.12gを、140gの水とともに実験室用スタンドミキサーを用いて50℃の温度で混合した。この混合物を10% HSOでpH3.0に酸性化した。これを、スタンドミキサーを用いて600RPMで10分間混合した。次に、5.0gのBX9ガラス繊維を、さらに80gの水と一緒にゆっくりと混合した。繊維を加えた後、スラリーを10分間混合して均質性を確保し、必要に応じてミキサーの速度を調整した。次に、19.9gのスラリーを4ガロンのタンクに入れた1ガロンの水に加え、10分間混合した。この混合物を3ガロンの水(50℃)に希釈し、10%HSOでpH3.0に酸性化し、5分間混合した後、真空形成を用いてマットを形成した。
【0065】
次に、懸濁液を330メッシュのスクリーンの上にあるシートモールドのリザーバーに移し、手で撹拌して繊維を均一に分散させた。リザーバーの水を抜き、懸濁液をスクリーン上に堆積させ、極薄のマットを形成させた。得られた湿ったフィルムを330メッシュのスクリーン上に置いたままシートモールドから取り出し、60℃~65℃のオーブンで乾燥させ、乾燥したマットをメッシュスクリーンから取り出した。
【0066】
TGAは、セパレータの無機的性質を維持しながら、どれだけの有機材料をセパレータに与えることができるかを理解するのに役立った。さらに、この分析により、真空形成中に保持されたデンプン、アクリルラテックスエマルジョン、およびBX9ガラス繊維の量に関する情報が得られた。ガラス繊維のマトリックスによって形成された細孔における孔径の変化と、アクリルラテックスエマルジョンの沈着は、SEMによってモニターされた。このとき、累積細孔容積、孔径、および透過性が決定された。引張強度の実験では、有機成分の導入に伴う引張強度の効果的な変化が決定された。以下の表4に示すTGAと引張強度実験の結果を使用して、デンプン、ラテックス結合剤、その他の薬剤の理想的なレベルを決定した。実施例1で行われたように、実施例3の結果を、標準的なCelgard(登録商標)2325セパレータと比較した。その結果を以下の表4に示す。図9は、実施例3のマットのLOI(TGA経由)を示し、図10Aは、中央孔径を示し、図10Bは、累積孔容積を示し、図10Cは、表面積を示す。
【表4】
【0067】
コインセルは、以下の一般的な市販の要素、物質、および条件を利用して製造された:アルミニウム集電体箔(面積:1.77cm)上の、正極活物質LiNi0.5Co0.2Mn0.3(NCM523)94wt%、導電性添加剤(C65導電性カーボンブラック)2.5%、およびポリフッ化ビニリデン(PVDF)結合剤(HSV 1800PVDF)3.5wt%の混合物からなる正極、および、負極は銅集電体箔(面積:2.01cm)上に負極活物質(グラファイト)94%、導電性添加剤(C65導電性カーボンブラック)2.5%、およびPVDF結合剤(HSV 900 PVDF)3.5%の混合物を使用して構成された。電解質は、3:7 EC(エチレンカーボネート):EMC(エチルメチルカーボネート)の1.0Mの六フッ化リン酸リチウム(LiPF)であった。セルは、Hohsen Corp.の2032コインセルケーシングに収容された。セルは、乾燥したマットから形成されたセパレータを利用した。セパレータは、使用前に130℃の真空オーブンで12時間乾燥させた。対照として、一般的なポリプロピレン(PP)製のセパレータを使用した。
【0068】
図11は、マットを含むセルを使用した(比容量の関数として)充電および放電割合を示している。図11に示すように、マットを含むセルは、C/10、C/5、C/2、1C、2C、および5Cの放電および充電レートの単一サイクルを経たときの、(比容量の関数として)充電および放電割合を示している。以下の表5に示されている割合は、記載されている放電および充電速度で1サイクル後に実現される充電または放電容量の量を示している。マットは、5Cレートで改善された充電および放電容量を示す。実施例2ほど顕著ではないが、おそらく細孔容積と透過性の減少に起因して、マットを用いて調製されたコインセルは、一般的なPPセパレータと比較して、C/2のレートまで改善された比充電および放電容量を示す。
【0069】
後述するマットを含むセルのクーロン効率は、C/3のレートでの比充電容量に対する比放電容量の比率である。それらの結果を以下の表5に示し、説明する。C/3でのサイクリングの前後に、サイクリックボルタンメトリーを行った。図12は、実施例3のC/3のレートでの繰り返しサイクルの前後の、コインセル内のマットの安定性を示している。いくつかの違いが観察されるが、これらの違いは、コインセルの完全性を損なう不可逆的な反応を示すものではなく、許容範囲内である。
【0070】
表5は、実施例3のマットをテストした結果をまとめたものである。
【表5】
【0071】
実施例4-ナノフィブリル化セルロースを用いた超薄型マット
あらかじめ混合しておいた1%NFCの懸濁液2.1gを、500mLの水とともに実験室用ブレンダーで20秒間混合した。この懸濁液に、0.5gのBX9ガラス繊維を加え、同じ速度でさらに10秒間混合した。次に、10%HSOでpH3.0~3.5に酸性化した1ガロンの水に各成分を懸濁した。この懸濁液を3~5分間混合させた。この混合物を3ガロンの熱水(50℃)に希釈し、10%のHSOでpH3.0に酸性化し、5分間混合した後、真空形成を用いてマットを形成した。
【0072】
懸濁液を330メッシュのスクリーンの上にあるシートモールドのリザーバーに移し、手で混合して繊維を均一に分散させた。リザーバーの水を抜いて、スクリーン上に懸濁液を堆積させ、超薄型のマットを形成させた。得られた湿ったフィルムを330メッシュのスクリーン上に置いたままシートモールドから取り出し、60℃~65℃のオーブンで乾燥させ、乾燥したマットをメッシュスクリーンから取り出した。
【0073】
この時点で厚さ、GSM、LOI、引張強度、表面積、累積細孔容積、孔径、および透過性を決定した。実施例1で行ったように、実施例4の結果を、標準的なCelgard(登録商標)2325セパレータと比較した。結果を以下の表6に示し、図13は、実施例4のマットのLOI(TGA経由)を示し、図14Aは、中央孔径を示し、図14Bは、累積孔容積を示し、図14Cは、表面積を示す。
【表6】
【0074】
実施例5-ナノフィブリル化セルロースを用いた超薄型マット
実験室用スタンドミキサーを用いて、NFC 0.08gを酸性のpH(2.8~3.5の間)の熱水(50℃)500mLに入れて混合した。次に、0.19gのBX9繊維を加えて5分間予備混合し、スラリーを形成した。次に、このスラリーを実験室のブレンダーに入れ、1分間混合した。ブレンダーの側面を洗浄し、さらに500mLの水(10%HSOで2.8~3.5のpHに酸性化)をブレンダーに加え、さらに1分間混合した。
【0075】
450メッシュの目が詰まった金属スクリーンの表面を水で濡らし、ブレンダーからのスラリーをスクリーン上に均一に注ぎ、完全に排水させた。スラリーを真空状態にせずに排水させ、フィルムが形成された。
【0076】
得られたマットを60℃のオーブンで5~15分または乾燥させた後、オーブンから取り出して冷却した。得られた乾燥マットをスクリーンから静かに取り出した。
【0077】
コインセルは、以下の一般的な市販の要素、物質、および条件を利用して製造された:アルミニウム集電体箔(面積:1.77cm)上の、正極活物質LiNi0.5Co0.2Mn0.3(NCM523)94wt%、導電性添加剤(C65導電性カーボンブラック)2.5wt%、およびポリフッ化ビニリデン(PVDF)結合剤(HSV 1800PVDF)3.5wt%の混合物からなる正極、および、負極は銅集電体箔(面積:2.01cm)上に負極活物質(グラファイト)94%、導電性添加剤(C65導電性カーボンブラック)2.5%、およびPVDF結合剤(HSV 900 PVDF)3.5%の混合物を使用して構成された。電解質は、3:7 EC(エチレンカーボネート):EMC(エチルメチルカーボネート)の1.0Mの六フッ化リン酸リチウム(LiPF)であった。セルは、Hohsen Corp.の2032コインセルケーシングに収容された。セルは、乾燥したマットから形成されたセパレータを利用した。セパレータは、使用前に130℃の真空オーブンで12時間乾燥させた。対照として、一般的なポリプロピレン(PP)製のセパレータを使用した。
【0078】
図15は、マットを含むセルが、C/10、C/5、C/2、1C、2C、および5Cの放電および充電レートの単一サイクルを経たときの、(比容量の関数として)充電および放電割合を示している。以下の表7に示されている割合は、記載された放電および充電速度で1サイクル後に実現される充電または放電容量の量を示している。実施例5のマットの累積細孔容積および透過性は、実施例1のマットよりも低いが、実施例5のマットを用いて作製したコインセルの比放電容量は、C/5の放電速度までは、対照のPPセパレータを用いて作製したものよりも大きい。
【0079】
実施例5のマットを含むセルのクーロン効率について、以下に説明する。図16は、実施例5のマットを用いてC/3の割合でサイクルを繰り返す前後のコインセルの安定性を示している。図16のサイクリックボルタモグラムは、2つの異なる電位でのサイクルの前後でほぼ区別がつかないことから、サイクル中に負極、正極、または電解質溶液に変化がないことが示唆される。この結果を表7に示す。
【表7】
【0080】
熱収縮は、熱的に安定した電池セパレータにとって非常に重要な指標である。加熱時にセパレータが収縮すると、負極と正極が接触し、危険なショート現象が発生する可能性がある。標準的なCelgard(登録商標)2325セパレータのサンプルと実施例5のマットをカットした。各サンプルの寸法(長さ、幅、および厚さ)と、各サンプルの質量を測定した。秤量および測定したサンプルを、200℃の窯で30分間処理した。その後、サンプルを窯から取り出し、室温まで冷却した。各サンプルの寸法(長さ、幅、および厚さ)と質量を再度測定し、焼成前の値と比較した。標準的なCelgard(登録商標)2325セパレータでは、サンプルの寸法が測定できず、サンプルが破壊されたと表現されるほど、サンプルを加熱した後に著しい劣化が観察される。しかし、実施例5のマットは、加熱後に測定可能な変化を示さず、加熱による物理的な変形に対する抵抗性が示唆された。その結果を表8および9ならびに図17A(加熱前)、17B(加熱後)に示す。
【表8】
【表9】
【0081】
実施例6-ポリビニルアルコールを用いた超薄型マット
ポリビニルアルコールの1%懸濁液は、使用直前に実験室用スタンドミキサーを用いてポリビニルアルコールを45秒間激しく混合することにより、水中で調製された。本実施形態では、予備混合したポリビニルアルコールの1%懸濁液2.1gが、実験室用ブレンダーを用いて、500mLの水と20秒間激しく混合された。この懸濁液に、0.45gのBX9ガラス繊維を加え、さらに60秒間同じ速度で混合した。
【0082】
次に、上述の成分を、あらかじめ10%HSOでpH3.0~3.5に酸性化した1ガロンの水に懸濁し、5分間混合した後、真空形成を用いてマットを形成した。
【0083】
懸濁液を330メッシュのスクリーンの上にあるシートモールドのリザーバーに移し、手で混合して繊維を均一に分散させた。リザーバーの水を排水して、スクリーン上に懸濁液を堆積させ、超薄型のマットを形成させた。得られた湿ったフィルムを330メッシュのスクリーン上に置いたままシートモールドから取り出し、60℃~65℃のオーブンで乾燥させ、乾燥したマットをメッシュスクリーンから取り出した。
【0084】
この時点で厚さ、LOI、および引張強度を測定した。その結果を以下の表10に示し、標準的なCelgard(登録商標)2325セパレータと比較した。図18は、LOI(TGA経由)を示す。
【表10】
【0085】
実施例7-アクリルラテックス、デンプン、コンディショニング/湿潤剤を用いた超薄型マット
3.2gのアクリルラテックスエマルジョン、3.1gの乾燥デンプン、0.1gのヒドロキシエチルセルロースを、140gの熱水(50℃)とともに実験室用スタンドミキサーを用いて混合した。この混合物を10%HSOでpH3.0に酸性化し、10分間混合した後、3.8gのアルコールアルコキシ速度湿潤剤を添加し、5分間混合させた。5.1gのBX9ガラス繊維を、追加の80gの水とともにゆっくりと混合した。繊維を加えた後、スラリーをさらに10分間混合して均質性を確保し、必要に応じてミキサーの速度を調整した。
【0086】
次に、18.0gのスラリーを4ガロンのタンクに入れた1ガロンの水に加え、10分間混合した。この混合物を熱水(50℃)で3ガロンに希釈し、10%HSOでpH3.0に酸性化し、5分間混合した後、真空形成でマットを形成した。
【0087】
懸濁液を330メッシュのスクリーンの上にあるシートモールドのリザーバーに移し、手で混合して繊維を均一に分散させた。リザーバーの水を排水して、スクリーン上に懸濁液を堆積させ、超薄型マットを形成させた。得られた湿ったフィルムを330メッシュのスクリーン上に置いたままシートモールドから取り出し、60℃~65℃のオーブンで乾燥させ、乾燥したマットをメッシュスクリーンから取り出した。
【0088】
アクリルラテックスエマルジョンと湿潤剤を導入することで、引張強度が向上することが示された。予想通り、より多くの有機物を導入したため、LOIが増加した。アクリルラテックスエマルジョンの存在は、図24のSEM顕微鏡写真で確認できるが、目に見える孔径には影響しなかった。結果は、標準的なCelgard(登録商標)2325セパレータと比較して以下の表11に示されている。図19はLOI(TGA経由)を示し、図20Aは中央孔径を示し、図20Bは累積細孔容積を示し、図20Cは表面積を示している。
【表11】
【0089】
実施例8-ドクターブレードで形成されたナノフィブリル化セルロースを用いた超薄型マット
セルロースガム増粘剤0.75gを225gの温水(35℃)中で実験室用スタンドミキサーを用いて、混合物が増粘するまで激しく混合した。この混合物に、2.5gのNFCを加え、均一に分散するまで激しく混合した。この混合物を10%HSOでpH3.0に酸性化し、10分間混合した。3.5gのBX9ガラス繊維および3.0gの粉砕されたBX9ガラス繊維を、1000mlの温水(35℃)とともに混合物にゆっくりと加えて、繊維の添加を助けた。粉砕されたBX9繊維は、BX9繊維を6時間ボールミルで粉砕することによって調製された。得られたスラリーを実験室用ブレンダーにより高濃度で3分間混合した。
【0090】
スラリーが形成されたら、目が詰まった335メッシュのスクリーンを水で濡らし、ゲートの高さを1.3mmに設定したスクリーンにドクターブレードをセットした。スラリーの一部をドクターブレードの前に注いだ。直後にドクターブレードを335メッシュスクリーンに沿って引っ張り、メッシュ上に均一で滑らかなコーティングを施した。
【0091】
形成されたフィルムを60℃のオーブンで5~15分または乾燥させた後、オーブンから取り出して冷却した。得られたフィルムをスクリーンから静かに取り出した。
【0092】
この時点で、厚さ、GSM、LOI、および引張強度を決定した。実施例1で行ったように、実施例8の結果を、標準的なCelgard(登録商標)2325セパレータと比較した。その結果を以下の表12に示す。実施例8のマットは、他の実施形態のマットの2倍の厚さであるが、引張強度は同等であり、ラテックスエマルジョンまたは他のタイプのコンディショニング剤を導入することで改善される可能性が高い。図21は、LOI(TGA経由)を示す。
【表12】
【0093】
コインセルは、以下の一般的な市販の要素、物質、および条件を利用して製造された:アルミニウム集電体箔(面積:1.77cm)上の、正極活物質LiNi0.5Co0.2Mn0.3(NCM523)94wt%、導電性添加剤(C65導電性カーボンブラック)2.5%、およびポリフッ化ビニリデン(PVDF)結合剤(HSV 1800PVDF)3.5wt%の混合物からなる正極、および、負極は銅集電体箔(面積:2.01cm)上に負極活物質(グラファイト)94%、導電性添加剤(C65導電性カーボンブラック)2.5%、およびPVDF結合剤(HSV 900 PVDF)3.5%の混合物を使用して構成された。電解質は、3:7 EC(エチレンカーボネート):EMC(エチルメチルカーボネート)の1.0Mの六フッ化リン酸リチウム(LiPF)であった。セルは、Hohsen Corp.の2032コインセルケーシングに収容された。セルは、実施例8の乾燥したマットから形成されたセパレータを利用した。セパレータは、使用前に真空オーブン内にて130℃で12時間乾燥された。対照として、一般的なポリプロピレン(PP)製のセパレータを使用した。
【0094】
図22は、実施例8のマットを含むセルが、C/10、C/5、C/2、1C、2C、および5Cの放電および充電レートの単一サイクルを経たときの、(比容量の関数として)充電および放電割合を示している。以下の表13に示されている割合は、記載された放電および充電速度で1サイクル後に実現される充電または放電容量の量を示している。実施例8のセパレータは、C/10までのすべての放電レートにおいて、より大きな比放電容量を示し、一般的なのポリプロピレン製セパレータと比較して、リチウムイオンの移動性が向上していることを示唆している。また、実施例8のセパレータを用いて作製したセルの比充電容量は、C/10までのすべての充電レートにおいて、ポリプロピレンタイプのセパレータを用いて作製したセルよりも大きいか、または同等である。
【0095】
セパレータを含むセルのクーロン効率については後述する。図23は、コインセルにおける実施例8のマットの安定性を、C/3のレートでの繰り返しサイクルの前後に示している。その結果を以下の表13に示す。
【表13】
【0096】
以下の表14は、実施例1、3、4、および6~8の結果を、対照としての標準的なCelgard(登録商標)2325セパレータと比較したものである。業界標準のCelgard(登録商標)2325セパレータは、ポリエチレンとポリプロピレンまたはそれらの組み合わせを利用して半透過性のバリアを提供するポリマーベースのセパレータである。しかし、これらのセパレータは、LOIからも分かるように、熱劣化や酸化破壊の影響を受けやすくなっている。さらに、ポリマーベースのセパレータを利用すると、平均孔径と透過性が大幅に低下する。
【表14】
【0097】
図24は、実施例3、4、7、および8に従って調製されたマットのSEM顕微鏡写真である。
【0098】
以下の表15は、実施例2、3、5、および8のセパレータのコインセル内での性能結果を、対照としての一般的なPPセパレータと比較したものである。表15に示された結果は、孔径、細孔容積、および透過性の増加を示している。セパレータの性質により、コインセル内でのイオンの通過性が向上している。さらに、サイクリックボルタンメトリーにより、実施例2および5のセパレータは、コインセル調製物中でより安定していることが示唆された。
【表15】
【0099】
5%のNFCを含む実施例5のセパレータは、調製中に失われる原料の量を制限しながら、実施例1のセパレータに比べて引張強度が改善されているので、例示的な実施形態である。さらに、実施例5のセパレータは、調製の容易さ、限られた材料、および必要な処理のため、特に例示的である。さらに、実施例5のセパレータは、標準的なCelgard(登録商標)2325セパレータと比較して、平均孔径および透過性が少なくとも100倍の増加を示した。実施例5のセパレータで調製したコインセルの比電荷容量は、実施例2、3、および8で調製したものよりも著しく低く、一般的なPPセパレータで調製したコインセルと同程度であるが、当業者であれば、この異常は、コインセルの形成時のエラー、実験設定、または他のいくつかの要因の結果である可能性があることを容易に理解できるであろう。さらに、実施例5に従って調製されたセパレータで調製されたコインセルの追加調製およびCレート試験を行うと、PPタイプのセパレータで調製されたものと比較して、比充電容量が改善されることが期待される。さらに、実施例5のセパレータを用いて調製したセルの比放電容量の割合は、PPタイプのセパレータを用いたものに比べて、5C放電レートで3倍大きい。サイクリックボルタンメトリーは、他の実施例と比較して、特に一般的なPPセパレータと比較して、実施例5のセパレータで調製されたコインセルの安定性を示した。
【0100】
実施例9-ナノフィブリル化セルロースを用いた薄型マット
タンクに250ガロンの水を入れ、10%のHSOでpHを2~4に調整した。その後、344.2gのBX9ガラス繊維と143.3gのNFCをタンクに入れ、よく分散したスラリーとなるように混合した。
【0101】
次に、BX9繊維のスラリーを洗浄装置に移し、繊維の中に存在してガラス繊維マットの最終品質に悪影響を及ぼす過剰なショットやスラグを除去した。洗浄された繊維は、大型の混合タンクに移された。
【0102】
その後、得られたスラリーを回転形成器のヘッドボックスに15gal/分の速度で移し、回転形成器ドラム(幅:33.7cm)上に3.5フィート/分の速度でマットを形成し、高周波(RF)オーブンと伝導オーブンでプレスおよび乾燥させた。
【0103】
得られたマットは、厚さ、面積密度(GSM)、LOI(TGA経由)、MIP(中央孔径、表面積、累積細孔容積)、透過性、SEM画像、および引張強度を決定することによって特徴付けられた。マットの結果を以下の表16に示す。図25は、マットのLOI(TGA経由)を示す。図26A、26B、および26Cは、マットの中央孔径、累積孔容積、および表面積を示す。図27は、マットのSEM顕微鏡写真である。
【0104】
結果を表16に示す。
【表16】
【0105】
実施例10-ナノフィブリル化セルロースを用いた薄型マット
タンクに250ガロンの水を入れ、10%のHSOでpHを2~4に調整した。その後、344.2gのBX9ガラス繊維と143.3gのNFCをタンクに入れ、よく分散したスラリーになるように混合した。
【0106】
次に、BX9繊維のスラリーを洗浄装置に移し、繊維の中に存在してガラス繊維マットの最終品質に悪影響を及ぼす過剰なショットやスラグを除去した。洗浄された繊維は、大型の混合タンクに移された。
【0107】
その後、得られたスラリーを回転形成器のヘッドボックスに15gal/分の速度で移し、回転形成器のドラム(幅:33.7cm)上に4.7フィート/分の速度でマットを形成し、高周波(RF)オーブンと伝導オーブンでプレス、乾燥させた。
【0108】
得られたマットは、厚さ、面積密度(GSM)、LOI(TGA経由)、MIP(中央孔径、表面積、累積細孔容積)、透過性、SEM画像、および引張強度を決定することによって特徴付けられた。マットの結果を以下の表17に示す。図28A、28B、および28Cは、マットの中央孔径、累積細孔容積、および表面積を示す。
【0109】
結果を表17に示す。
【表17】
【0110】
実施例11-ナノフィブリル化セルロースを用いた薄型マット
タンクに250ガロンの水を入れ、10%のHSOでpHを2~4に調整した。その後、344.2gのBX9ガラス繊維と143.3gのNFCをタンクに入れ、よく分散したスラリーとなるように混合した。
【0111】
次に、BX9繊維のスラリーを洗浄装置に移し、繊維の中に存在してガラス繊維マットの最終品質に悪影響を及ぼす過剰なショットやスラグを除去した。洗浄された繊維は、大型の混合タンクに移された。
【0112】
その後、得られたスラリーを回転形成器のヘッドボックスに15gal/分の速度で移し、回転形成器のドラム(幅:33.7cm)上に7.0フィート/分の速度でマットを形成し、高周波(RF)オーブンと伝導オーブンでプレスして乾燥させた。
【0113】
得られたマットは、厚さ、面積密度(GSM)、LOI(TGA経由)、MIP(中央孔径、表面積、累積細孔容積)、透過性、SEM画像、および引張強度を決定することによって特徴付けられた。マットの結果を以下の表18に示す。図29A、29B、および29Cは、マットの中央孔径、累積孔容積、および表面積を示す。
【0114】
結果を表18に示す。
【表18】
【0115】
BX9繊維と同じ化学組成の繊維を使用しても、異なる直径や表面積を持つ繊維を使用してもよいことを理解すべきである。さらに、同じまたは異なる繊維直径または表面積を有する代替繊維化学物質(例えば、A、C、D、またはE)を使用してもよい。これらの特性を制御することで、様々な化学的性質、厚さ、GSM、孔径、および/または孔径のマットを製造することができる。同様に、マットを調製するために、追加の伝統的な製紙プロセスを使用してもよい。実施形態は、より厚いまたはより薄型マットを得るために、より多くまたはより少ないガラス繊維を含んでもよい。
【0116】
以上、いくつかの例示的な実施形態のみを詳細に説明したが、当業者であれば、本発明の新規な教示および利点から実質的に逸脱することなく、例示的な実施形態において多くの他の変更が可能であることを容易に理解できるであろう。したがって、そのようなすべての変更は、以下の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲に含まれることが意図されている。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11
図12
図13
図14A
図14B
図14C
図15
図16
図17A
図17B
図18
図19
図20A
図20B
図20C
図21
図22
図23
図24
図25
図26A
図26B
図26C
図27
図28A
図28B
図28C
図29A
図29B
図29C
【手続補正書】
【提出日】2022-02-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
そのため、特にリチウムイオン電池においては、安全性を高めるための改良された材料や方法が引き続き必要とされている。
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、以下のものがある(国際出願日以降国際段階で引用された文献及び他国に国内移行した際に引用された文献を含む)。
(先行技術文献)
(特許文献)
(特許文献1) 米国特許出願公開第2017/0288188号明細書
(特許文献2) 特許第4491075号公報
(特許文献3) 米国特許出願公開第2015/0099155号明細書
(特許文献4) 米国特許出願公開第2006/0068294号明細書
(非特許文献)
(非特許文献1) Raj Borax Private Limited,"Boron in Glass and Glass Fibre"www.rajborax.com,29 April 2016.[online],[retrieved on 2020.24.09]. Retrieved from the Internet:<URL:http://www.rajborax.com/Boron%20in%20glass.html>
(非特許文献2) North American High Temperature Insulation Wool Industry,"Refractory Ceramic Fiber",www.htiwcoalition.org,2019.[online],[retreived on 2020-16-09].Retreived from the internet:<URL:https://www.htiwcoalition.org/rcf.html>
(非特許文献3) Nittobo Group."Special Materials-T-Glass",www.nittobo.co.jp,2020.[online],[retreived on 2020-16-09].Retreived from the Internet:<URL:https://www.nittobo.co.jp/eng/business/glassfiber/sp_material/t-glass.htm>
【国際調査報告】