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特表2022-537410ファージ複製起点を用いたベクターの産生
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-25
(54)【発明の名称】ファージ複製起点を用いたベクターの産生
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/63 20060101AFI20220818BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20220818BHJP
   C12N 15/861 20060101ALI20220818BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20220818BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20220818BHJP
   C12N 15/869 20060101ALI20220818BHJP
   C12N 15/863 20060101ALI20220818BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220818BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220818BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220818BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20220818BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220818BHJP
【FI】
C12N15/63 Z ZNA
C12N15/86 Z
C12N15/861 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/867 Z
C12N15/869 Z
C12N15/863 Z
C12N1/21
C12N5/10
A61K48/00
A61K31/7088
A61P43/00 105
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576043
(86)(22)【出願日】2020-06-19
(85)【翻訳文提出日】2022-02-17
(86)【国際出願番号】 US2020038651
(87)【国際公開番号】W WO2020257590
(87)【国際公開日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】62/864,689
(32)【優先日】2019-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520375033
【氏名又は名称】アスクレピオス バイオファーマシューティカル, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】サムルスキ, リチャード ジュード
(72)【発明者】
【氏名】スアレス, レスター
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA90X
4B065AA95Y
4B065AA98X
4B065AA98Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZB21
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086NA13
4C086ZB21
(57)【要約】
本発明は、導入遺伝子を含む環状核酸ベクターを製造する方法であって、(a)宿主系をテンプレートと接触させる工程であって、ここで、前記テンプレートが、少なくとも1つの隣接切断部位(単数または複数)、ならびに(i)少なくとも1つのファージ複製起点(ORI);(ii)少なくとも1つの末端反復(TR)、および;(iii)導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモーター配列を含む工程;(b)前記宿主系を、環状核酸を産生するのに十分な複製時間にわたってインキュベートする工程;および(c)産生された前記環状核酸を回収する工程であって、前記環状核酸が自己アニーリングする工程を含む、方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導入遺伝子を含む環状核酸ベクターを製造する方法であって、
a.宿主系をテンプレートと接触させる工程であって、前記テンプレートが、少なくとも1つの隣接切断部位および以下を含む工程:
i.少なくとも1つのファージ複製起点(ORI);
ii.少なくとも1つの末端反復(TR)、および;
iii.導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモーター配列;
b.前記宿主系を、環状核酸を産生するのに十分な複製時間にわたってインキュベートする工程;および
c.工程bで産生された前記環状核酸を回収する工程であって、
前記環状核酸が自己アニーリングする、回収する工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記テンプレートが、第2の隣接切断部位をさらに含み、前記2つの部位内に前記(i)~(iii)がある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記テンプレートが、少なくとも1つのORIのすぐ下流に少なくとも1つのさらなる切断部位をさらに含む(例えば、図5を参照のこと)、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
回収された前記環状核酸の少なくとも1つの切断部位を切断する工程(例えば、図5を参照のこと)をさらに含む、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
回収後に前記環状核酸のin vitro複製工程をさらに含む、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記テンプレートが少なくとも1つのアダプター配列をさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記テンプレートが少なくとも2つのアダプター配列をさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記アダプター配列が、切断されたDNAの閉鎖を誘導する(例えば、図1~5、7、および9を参照のこと)、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記アダプター配列が切断部位をさらに含む、請求項6または7に記載の方法。
【請求項10】
前記回収された環状核酸が、前記導入遺伝子の送達のために使用される、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記回収された環状核酸が、組換えウイルスベクター産生のために使用される、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記環状核酸が、自己アニーリングされた二本鎖である、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記ベクターが一本鎖である、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
第2のTRが存在し、前記導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモーター配列の両側がTRに隣接している、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記ORIが左TRの上流にある、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記ORIが前記TRに隣接しており、かつ前記導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモーター配列の上流にある、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記宿主系が細菌パッケージング細胞である、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記宿主系が無細胞系である、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記宿主系が無細胞系であり、かつヘルパーファージ粒子を含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記宿主系が宿主細胞である、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記宿主細胞が、哺乳動物細胞、細菌細胞、または昆虫細胞である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ウイルスベクターが、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レンチウイルス(LV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、アデノウイルス(AV)、またはポックスウイルス(PV)である、請求項11に記載の方法。
【請求項23】
前記ベクターが、DNAウイルスまたはRNAウイルスである、請求項11および22に記載の方法。
【請求項24】
前記ウイルスがAAVであり、かつ変異体ITRを有し、ここで、前記変異体ITRがダブルD変異体ITRである、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記少なくとも1つのTRが、変異体ITR、合成ITR、野生型ITR、または非機能的ITRである、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記ベクターが隣接DD-ITRを有し、前記隣接DD-ITRの間に、前記導入遺伝子のセンス鎖に作動可能に連結されたプロモーター、複製欠損ITR、および前記導入遺伝子のアンチセンス相補物がある、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記ITRがAAV ITRである、請求項25~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記ORIが、前記ITRの上流、かつ前記上流ITRのすぐ下流に配置されている、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記少なくとも1つのファージORIが、M13由来ORI、F1由来ORI、およびFd由来ORIからなる群から選択される、請求項1~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記テンプレートが、複製を開始しない短縮ORIである第2のORIをさらに含む、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記短縮ORIがORIΔ29である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記少なくとも2つの切断部位が制限部位である、請求項1~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記少なくとも2つの制限部位が同じであるか異なる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記制限部位が、前記導入遺伝子配列内に見いだされない、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記切断部位が、ヌクレアーゼによって切断される、請求項1~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記プロモーターが、構成性プロモーター、抑制性プロモーター、ユビキタスプロモーター、誘導性プロモーター、ウイルスプロモーター、組織特異的プロモーター、および合成プロモーターからなる群から選択される、請求項1~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記導入遺伝子が治療遺伝子である、請求項1~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
導入遺伝子を含む環状核酸ベクターを製造する方法であって、
a.宿主系をプラスミドテンプレートで形質転換する工程であって、前記プラスミドテンプレートが以下を含む工程:
i.ファージ複製起点(ORI);
ii.短縮ファージORI(例えば、ORIΔ29);
iii.少なくとも1つの末端反復(TR)、および;
iv.導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモーター配列、
ここで、前記プラスミドテンプレートが、5’から3’への方向で、センス鎖およびアンチセンス鎖をアニーリングすることが可能なヘアピン配列によって分離されたセンス配列およびアンチセンス配列を含む;
b.前記宿主系を、環状核酸を産生するのに十分な複製時間にわたってインキュベートする工程;および
c.産生された前記環状核酸を回収する工程であって、前記環状核酸が自己アニーリングする工程
を含む、方法。
【請求項39】
前記ORIに隣接するリンカーおよび自己相補リンカーをさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記導入遺伝子が、センス鎖およびアンチセンス鎖を二本鎖に結合可能なリンカー配列によって分離されたセンス配列およびそのアンチセンス相補物を含む、請求項38または39に記載の方法。
【請求項41】
前記短縮ORIがORIΔ29である、請求項38~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
請求項1~41のいずれか1項に記載の方法によって製造された環状核酸ベクター。
【請求項43】
環状核酸ベクターであって、
少なくとも1つの隣接切断部位、ならびに
i.少なくとも1つのファージ複製起点(ORI);
ii.少なくとも1つの末端反復(TR);および
iii.導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモーター配列
を含む、環状核酸ベクター。
【請求項44】
前記テンプレートが、第2の隣接切断部位をさらに含み、前記2つの部位内に前記(i)~(iii)がある、請求項43に記載のベクター。
【請求項45】
前記ベクターが、前記少なくとも1つのORIのすぐ下流に少なくとも1つのさらなる切断部位をさらに含む(例えば、図5を参照のこと)、請求項43または44に記載のベクター。
【請求項46】
前記ベクターが、少なくとも1つのアダプター配列をさらに含む、請求項43~45のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項47】
前記ベクターが、少なくとも2つのアダプター配列をさらに含む、請求項43~46のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項48】
前記アダプター配列が、切断されたDNAの閉鎖を誘導する(例えば、図1~5、7、および9を参照のこと)、請求項46または47に記載のベクター。
【請求項49】
前記アダプター配列が切断部位をさらに含む、請求項46または47に記載のベクター。
【請求項50】
前記ベクターが、前記導入遺伝子の送達のために使用される、請求項43~49のいずれかに記載のベクター。
【請求項51】
前記ベクターが、組換えウイルスベクター産生のために使用される、請求項43~49のいずれかに記載のベクター。
【請求項52】
前記ベクターが、自己アニーリングし、かつ二本鎖である、請求項43~51のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項53】
前記ベクターが一本鎖である、請求項43~52のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項54】
第2のTRが存在し、前記導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモーター配列の両側がTRに隣接している、請求項43~53のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項55】
前記ORIが左TRの上流にある、請求項43~54のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項56】
前記ORIが前記TRに隣接しており、かつ前記導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモーター配列の上流にある、請求項43~55のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項57】
前記少なくとも1つのTRが、変異体ITR、合成ITR、野生型ITR、または非機能的ITRである、請求項43~56のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項58】
前記ベクターが隣接DD-ITRを有し、前記隣接DD-ITRの間に、前記導入遺伝子のセンス鎖に作動可能に連結されたプロモーター、複製欠損ITR、および前記導入遺伝子のアンチセンス相補物がある、請求項43~57のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項59】
前記ITRがAAV ITRである、請求項57または58に記載のベクター。
【請求項60】
前記ORIが、前記ITRの上流、かつ前記上流ITRのすぐ下流に配置されている、請求項43~59のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項61】
前記ファージORIが、M13由来ORI、F1由来ORI、およびFd由来ORIからなる群から選択される、請求項43~60のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項62】
前記テンプレートが、複製を開始しない短縮ORIである第2のORIをさらに含む、請求項43~61のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項63】
前記短縮ORIがORIΔ29である、請求項43~62のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項64】
前記少なくとも2つの切断部位が制限部位である、請求項43~63のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項65】
前記少なくとも2つの制限部位が同じであるか異なる、請求項64に記載のベクター。
【請求項66】
前記制限部位が、前記導入遺伝子配列内に見いだされない、請求項64に記載のベクター。
【請求項67】
前記切断部位が、ヌクレアーゼによって切断される、請求項43~66のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項68】
前記プロモーターが、構成性プロモーター、抑制性プロモーター、ユビキタスプロモーター、誘導性プロモーター、ウイルスプロモーター、組織特異的プロモーター、および合成プロモーターからなる群から選択される、請求項43~67のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項69】
前記導入遺伝子が治療遺伝子である、請求項43~68のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項70】
環状核酸ベクターであって、
i.ファージ複製起点(ORI);
ii.短縮ファージORI(例えば、ORIΔ29);
iii.少なくとも1つの末端反復(TR)、および;
iv.導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモーター配列
を含み、
ここで、前記ベクターが、5’から3’への方向で、センス鎖およびアンチセンス鎖をアニーリングすることが可能なヘアピン配列によって分離されたセンス配列およびアンチセンス配列を含む、環状核酸ベクター。
【請求項71】
前記ORIに隣接するリンカーおよび自己相補リンカーをさらに含む、請求項70に記載のベクター。
【請求項72】
前記導入遺伝子が、センス鎖およびアンチセンス鎖を二本鎖に結合可能なリンカー配列によって分離されたセンス配列およびそのアンチセンス相補物を含む、請求項70または71に記載のベクター。
【請求項73】
前記短縮ORIがORIΔ29である、請求項70~72のいずれか1項に記載のベクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)の下で2019年6月21日提出の米国仮出願第62/864,689号(その内容全体が本明細書中で参考として援用される)に基づく利益を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、遺伝子発現用のベクターを生成するための方法および細胞株に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
外因性DNAによってコードされたタンパク質が長期発現するような様式で、外因性DNAを細胞に導入することが望ましい。ウイルスベースのプロトコールが開発されており、このプロトコールは、外因性DNAを細胞に導入するためにウイルスベクターを使用し、その後に、導入されたDNAを標的細胞のゲノムに組み込むか、エピソームに保持することができる。用途が見いだされているウイルスベースのベクターには、レトロウイルスベクター(例えば、モロニーマウス白血病ウイルスベースのベクター)、アデノウイルス由来のベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)由来のベクター、HSV由来のベクター、シンドビス由来のベクターなどが含まれる。AAVベクターの使用に大きな関心が寄せられている。しかしながら、AAVの大規模産生に有効な方法は、まだわかっていない。
【0004】
ファージミドは、ファージ由来複製起点(ORI)を使用して組換えタンパク質をディスプレイする。ファージORIは、一本鎖環状DNAを非常に高い効率で複製する。しかしながら、ファージORI複製には、組換えタンパク質をディスプレイするファージ粒子を作出するために、ヘルパーファージによって提供されるさらなるタンパク質が必要である。ヘルパーファージは、機能的ファージを作製するために必要な全ての他のタンパク質を供給するので、ファージミドシステムに不可欠である。ヘルパーファージは、いくらか改変された通常のFfファージである:このファージは、さらなる複製起点を含み、通常は抗生物質耐性遺伝子を保有し、そのパッケージングシグナルは厳格に無効化されている。
【0005】
細菌にヘルパーファージが感染する場合、無効化されたパッケージングシグナルは、ファージ粒子の産生を防止しない。しかしながら、細菌にファージミドおよびヘルパーファージの両方が感染すると、ファージミドDNA(最適なパッケージングシグナルを含む)が優先してパッケージングされる。結果として、ファージミド調製物は、表現型および遺伝子型の両方が異質である:ディスプレイタンパク質は、野生型(ヘルパーファージ由来)または組換え(ファージミド由来)のいずれかであり得、パッケージングされたゲノムは、ファージまたはファージミドのいずれかであり得る。理論上、無効化されたパッケージングシグナルは、任意のファージミド調製物中のヘルパーファージ粒子数を著しく減少させるはずである。しかしながら、ヘルパーファージ数は、時折ファージミド粒子数と等しいかそれを超える場合があり、その後の選択を著しく妨害する場合がある。ヘルパーファージを必要とせずにウイルス産生で利用されるファージミドの効率的な核酸生成を利用する方法を本明細書中に記載する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の要旨
本明細書中に記載の本発明の1つの態様は、導入遺伝子を含む環状核酸ベクターを製造する方法であって、(a)宿主系をテンプレートと接触させる工程であって、前述のテンプレートが、少なくとも1つの隣接切断部位(単数または複数)およびこれらの部位(単数または複数)内に以下を含む工程:(i)少なくとも1つのファージ複製起点(ORI);(ii)少なくとも1つの末端反復(TR)、および;(iii)導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモーター配列;(b)前述の宿主系を、環状核酸を産生するのに十分な複製時間にわたってインキュベートする工程;および(c)産生された前述の環状核酸を回収する工程であって、前述の環状核酸が自己アニーリングする工程を含む、方法を提供する。
【0007】
任意の態様の1つの実施形態では、テンプレートは、少なくとも2つの切断部位を含む。任意の態様の1つの実施形態では、テンプレートは、少なくとも1つのORIのすぐ下流に少なくとも1つのさらなる切断部位をさらに含む(例えば、図5を参照のこと)。任意の態様の1つの実施形態では、方法は、回収された環状核酸の少なくとも1つの切断部位を切断する工程(例えば、図5を参照のこと)をさらに含む。
【0008】
任意の態様の1つの実施形態では、方法は、回収後に、例えば、環状核酸のin vitro複製工程をさらに含む。
【0009】
任意の態様の1つの実施形態では、テンプレートは、少なくとも1つのアダプター配列または少なくとも2つのアダプター配列をさらに含む。任意の態様の1つの実施形態では、アダプター配列は、切断されたDNAの閉鎖を誘導する(例えば、図1~5、7、および9を参照のこと)。任意の態様の1つの実施形態では、アダプター配列は切断部位をさらに含む。
【0010】
任意の態様の1つの実施形態では、回収された環状核酸は、導入遺伝子の送達のために使用される。
【0011】
任意の態様の1つの実施形態では、回収された環状核酸は、組換えウイルスベクター産生のために使用される。任意の態様の1つの実施形態では、ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レンチウイルス(LV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、アデノウイルス(AV)、またはポックスウイルス(PV)である。任意の態様の1つの実施形態では、ベクターは、DNAウイルスまたはRNAウイルスである。任意の態様の1つの実施形態では、ウイルスはAAVであり、かつ変異体ITRを有し、ここで、変異体ITRがダブルD変異体ITRである。
【0012】
任意の態様の1つの実施形態では、環状核酸は自己アニーリングし、かつ二本鎖である。任意の態様の1つの実施形態では、ベクターは一本鎖である。
【0013】
任意の態様の1つの実施形態では、第2のTRが存在し、導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモーター配列の両側がTRに隣接している。
【0014】
任意の態様の1つの実施形態では、ORIは左TRの上流にある。任意の態様の1つの実施形態では、ORIはTRに隣接しており、かつ導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモーター配列の上流にある。
【0015】
任意の態様の1つの実施形態では、宿主系は細菌パッケージング細胞である。任意の態様の1つの実施形態では、宿主系は無細胞系である。任意の態様の1つの実施形態では、宿主系は無細胞系であり、かつヘルパーファージ粒子を含む。
【0016】
任意の態様の1つの実施形態では、宿主系は宿主細胞である。例示的な宿主細胞には、哺乳動物細胞、細菌細胞、または昆虫細胞が含まれる。
【0017】
任意の態様の1つの実施形態では、少なくとも1つのTRは、変異体ITR、合成ITR、野生型ITR、または非機能的ITRである。
【0018】
任意の態様の1つの実施形態では、ベクターは隣接DD-ITRを有し、前述の隣接物の間に、導入遺伝子のセンス鎖に作動可能に連結されたプロモーター、複製欠損ITR、および導入遺伝子のアンチセンス相補物がある。
【0019】
任意の態様の1つの実施形態では、ITRはAAV ITRである。
【0020】
任意の態様の1つの実施形態では、ORIは、ITRの上流、かつ上流ITRのすぐ下流に配置されている。
【0021】
任意の態様の1つの実施形態では、少なくとも1つのORIは、M13由来ORI、F1由来ORI、またはFd由来ORIである。
【0022】
任意の態様の1つの実施形態では、テンプレートは、複製を開始しない短縮ORIである第2のORIをさらに含む。任意の態様の1つの実施形態では、短縮ORIはORIΔ29である。
【0023】
任意の態様の1つの実施形態では、少なくとも2つの切断部位は、制限部位である。任意の態様の1つの実施形態では、少なくとも2つの制限部位は、同じであるか異なる。任意の態様の1つの実施形態では、制限部位は、前述の導入遺伝子配列内に見いだされない。
【0024】
任意の態様の1つの実施形態では、切断部位は、ヌクレアーゼによって切断される。
【0025】
任意の態様の1つの実施形態では、プロモーターは、構成性プロモーター、抑制性プロモーター、ユビキタスプロモーター、誘導性プロモーター、ウイルスプロモーター、組織特異的プロモーター、および合成プロモーターからなる群から選択される。
【0026】
任意の態様の1つの実施形態では、導入遺伝子は治療遺伝子である。
【0027】
本明細書中に記載の発明の別の態様は、導入遺伝子を含む環状核酸ベクターを製造する方法であって、(a)宿主系をプラスミドテンプレートで形質転換する工程であって、前述のプラスミドテンプレートが以下を含む工程:(i)ファージ複製起点(ORI);(ii)短縮ファージORI(例えば、ORIΔ29);(iii)少なくとも1つの末端反復(TR)、および;(iv)導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモーター配列、ここで、前述のプラスミドテンプレートが、5’から3’への方向で、センス鎖およびアンチセンス鎖をアニーリングすることが可能なヘアピン配列によって分離されたセンス配列およびアンチセンス配列を含む;(b)前述の宿主系を、環状核酸を産生するのに十分な複製時間にわたってインキュベートする工程;および(c)産生された前述の環状核酸を回収する工程であって、前述の環状核酸が自己アニーリングする工程を含む、方法を提供する。
【0028】
任意の態様の1つの実施形態では、プラスミドテンプレートは、ORIに隣接するリンカーおよび自己相補リンカーをさらに含む。
【0029】
任意の態様の1つの実施形態では、導入遺伝子は、センス鎖およびアンチセンス鎖を二本鎖に結合可能なリンカー配列によって分離されたセンス配列およびそのアンチセンス相補物を含む。例えば、リンカーは、ホリデイ配列または複製欠損TRである。
【0030】
本明細書中に記載の発明の別の態様は、本明細書中に記載の方法のうちのいずれかによって製造された環状核酸ベクターを提供する。
【0031】
本明細書中に記載の発明の別の態様は、環状核酸ベクターであって、少なくとも1つの隣接切断部位(単数または複数)ならびに、前述の部位(単数または複数)内に、(i)少なくとも1つのファージ複製起点(ORI);(ii)少なくとも1つの末端反復(TR);および(iii)導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモーター配列を含む、環状核酸ベクターを提供する。
【0032】
本明細書中に記載の発明のさらに別の態様は、環状核酸ベクターであって、(i)ファージ複製起点(ORI);(ii)短縮ファージORI(例えば、ORIΔ29);(iii)少なくとも1つの末端反復(TR)、および;(iv)導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモーター配列を含み、ここで、前述のベクターが、5’から3’への方向で、センス鎖およびアンチセンス鎖をアニーリングすることが可能なヘアピン配列によって分離されたセンス配列およびアンチセンス配列を含む、環状核酸ベクターを提供する。
定義
【0033】
便宜上、明細書、実施例、および添付の特許請求の範囲で使用されるいくつかの用語および句の意味を以下に提供する。別段の指示がない限り、あるいは文脈から理解されない限り、以下の用語および句には以下に提供した意味が含まれる。本定義は特定の実施形態の説明を補助するために提供しているが、テクノロジーの範囲が特許請求の範囲のみによって限定されるので、本定義は、特許請求の範囲に記載のテクノロジーを制限することを意図しない。別段の定義がない限り、本明細書中で使用した全ての技術用語および科学用語は、本テクノロジーが属する分野の当業者によって一般的に理解されている意味を有する。当該分野での用語の使用と本明細書中に提供した用語の定義との間に明らかな矛盾がある場合、明細書中に提供した定義を優先するものとする。
【0034】
免疫学および分子生物学における一般用語の定義は、The Merck Manual of Diagnosis and Therapy,19th Edition,Merck Sharp&Dohme Corp.出版,2011(ISBN 978-0-911910-19-3);Robert S.Porter et al.(eds.),The Encyclopedia of Molecular Cell Biology and Molecular Medicine,Blackwell Science Ltd.出版,1999-2012(ISBN 9783527600908);およびRobert A.Meyers(ed.),Molecular Biology and Biotechnology:a Comprehensive Desk Reference,VCH Publishers,Inc.出版,1995(ISBN 1-56081-569-8);Immunology by Werner Luttmann,Elsevier出版,2006;Janeway’s Immunobiology,Kenneth Murphy,Allan Mowat,Casey Weaver(eds.),Taylor&Francis Limited,2014(ISBN 0815345305,9780815345305);Lewin’s Genes XI,Jones&Bartlett Publishers出版,2014(ISBN-1449659055);Michael Richard Green and Joseph Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,4th ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,USA(2012)(ISBN 1936113414);Davis et al.,Basic Methods in Molecular Biology,Elsevier Science Publishing,Inc.,New York,USA(2012)(ISBN 044460149X);Laboratory Methods in Enzymology:DNA,Jon Lorsch(ed.)Elsevier,2013(ISBN 0124199542);Current Protocols in Molecular Biology(CPMB),Frederick M.Ausubel(ed.),John Wiley and Sons,2014(ISBN 047150338X,9780471503385),Current Protocols in Protein Science(CPPS),John E.Coligan(ed.),John Wiley and Sons,Inc.,2005;およびCurrent Protocols in Immunology(CPI)(John E.Coligan,ADA M Kruisbeek,David H Margulies,Ethan M Shevach,Warren Strobe,(eds.)John Wiley and Sons,Inc.,2003(ISBN 0471142735,9780471142737)(その内容全体が、本明細書中で参考として全て援用される)に見出すことができる。
【0035】
本明細書中で使用される場合、用語「治療遺伝子」は、所望の治療効果を有する分子をコードする遺伝子またはその機能的断片を指す。例えば、非存在または変異によって病的な細胞成長または細胞増殖を増大させる遺伝子。本明細書中で使用される治療遺伝子は、かかる非存在または変異した遺伝子と置換されるであろう。治療遺伝子が染色体外の位置に由来する細胞によって発現されるように染色体外を維持するか、治療遺伝子が内因性遺伝子と組換えられるように細胞ゲノム内に遺伝子を組み込み得るようにすることによって、治療遺伝子はその治療効果を生じ得る。
【0036】
本明細書中で使用される場合、「接触」は、広義には、テンプレートまたはプラスミドテンプレートが宿主系に存在するように前述のテンプレートを宿主系に配置することを指す。狭義には、接触は、テンプレートまたはプラスミドテンプレートを本明細書中に記載の宿主系に配置する任意の適切な手段を指す。例えば、環状核酸が宿主細胞機序によって産生されるようにテンプレートが細胞内部に適切に輸送される手段によって接触することができる。かかる接触には、例えば、形質転換、トランスフェクション、エレクトロポレーション、またはリポフェクションが含まれ得る。
【0037】
本明細書中で使用される場合、用語「ヌクレオチド配列」、「核酸配列」、および「DNA配列」は、本明細書中で互換的に使用され、標的細胞に送達されるべき核酸(例えば、環状核酸)の配列を指す。一般に、核酸は、ポリペプチドをコードする読み取り枠または目的の非翻訳RNA(例えば、細胞または被験体への送達用)を含む。核酸配列は、制御配列をさらに含んでよく、これらの組み合わせは、導入遺伝子または発現構築物と呼ばれ得る。好ましくは、核酸は、ITR(例えば、ITRが起源とするウイルス内に天然に存在しない)と共存して天然に存在しない異種核酸である。かかる核酸は、異種核酸と呼ばれる。
【0038】
本明細書中で使用される場合、用語「プロモーター」は、ポリヌクレオチドの転写を開始し、制御するヌクレオチド配列を指す。プロモーターには、誘導性プロモーター(プロモーターに作動可能に連結されたポリヌクレオチド配列の発現が、分析物、補因子、制御タンパク質などによって誘導される場合)、抑制性プロモーター(プロモーターに作動可能に連結されたポリヌクレオチド配列の発現が、分析物、補因子、制御タンパク質などによって抑制される場合)、および構成性プロモーターが含まれ得る。用語「プロモーター」または「調節エレメント」には、全長プロモーター領域およびこれらの領域の機能的(例えば、転写または翻訳を調節する)セグメントが含まれることが意図される。
【0039】
本明細書中で使用される場合、用語「作動可能に連結された」は、記載の成分が通常の機能を果たすように構成されたエレメントの配置を指す。したがって、コード配列を有する核酸配列に作動可能に連結された所与のプロモーターは、適切な酵素が存在する場合に核酸配列を発現させることができる。プロモーターは、核酸配列の発現を指示する機能がある限り、核酸配列と連続している必要はない。したがって、例えば、翻訳されないが転写はされる介在配列がプロモーター配列と核酸配列との間に存在することができ、このプロモーター配列は、コード配列を有する核酸に「作動可能に連結された」と依然として見なすことができる。したがって、用語「作動可能に連結された」は、転写複合体によってプロモーターエレメントが認識されたときに目的のコード配列の転写開始が可能である任意の間隔または方向でプロモーターエレメントおよび目的のコード配列を含むことが意図される。
【0040】
本明細書中で使用される場合、用語「発現」は、RNAおよびタンパク質の産生に関与する細胞過程(必要に応じて、例えば、転写、転写物のプロセシング、翻訳およびタンパク質の折りたたみ、修飾、およびプロセシングが含まれるが、これらに限定されない)を指す。「発現産物」には、遺伝子から転写されたRNA、および遺伝子から転写されたmRNAの翻訳によって得られたポリペプチドが含まれる。用語「遺伝子」は、適切な制御配列に作動可能に連結された場合にin vitroまたはin vivoで(DNAから)RNAに転写される核酸配列を意味する。遺伝子は、コード領域に先行する領域および続く領域(例えば、5’非翻訳(5’UTR)配列または「リーダー」配列および3’UTRまたは「トレイラー」配列、ならびに個別のコードセグメント(エクソン)の間の介在配列(イントロン))を含んでも含まなくてもよい。
【0041】
本明細書中で使用される場合、用語「相補物」は、例として挙げられたDNA(例えば、相補物が産生されるテンプレート)の塩基に相補的な塩基を有するDNA配列を指す。TはAに相補的であり、CはGに相補的であると理解される。
【0042】
本明細書中で使用される場合、「自己相補性」は、5’末端から読み取った配列および3’末端から読み取った配列が相補的であるDNA配列を有する一本鎖DNAを指す。かかる配列は、それ自体が二本鎖DNAを形成することができる。例えば、5’-GCTTCGATCGAAGC-3’(配列番号234)は、自己相補性配列である。
【0043】
本明細書中で使用される場合、「プラスミド断片」は、少なくとも2つの切断部位の切断によって切り出されたプラスミドの二本鎖線状DNAを指す。例えば、本発明のプラスミド断片は、少なくとも2つの切断部位内に含まれる全てのエレメント(例えば、ORI、ITR、および導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモーター)を含む一本鎖線状DNAである。プラスミド断片は、少なくとも1つのアダプターが少なくとも1つの末端にアニーリングされる場合に「テンプレート」と考えられる。
【0044】
本明細書中に記載の種々の実施形態では、記載の特定のポリペプチドのうちのいずれかのバリアント(天然に存在するか存在しない)、対立遺伝子、ホモログ、保存的に改変されたバリアント、および/または保存的に置換されたバリアントを包含することをさらに意図する。アミノ酸配列に関して、当業者は、コードされた配列中の単一のアミノ酸またはごく一部のアミノ酸が変更された核酸配列、ペプチド配列、ポリペプチド配列、またはタンパク質配列の置換物、欠失物、または付加物の各々が「保存的に改変されたバリアント」(この変更によってあるアミノ酸が化学的に類似するアミノ酸と置換され、かつポリペプチドの所望の活性が保持される場合)であると認識するであろう。かかる保存的に改変されたバリアントは、本開示と一致する多形バリアント、種間ホモログ、および対立遺伝子に加えられ、排除されない。
【0045】
本明細書中で使用される場合、「a」、「an」、または「the」は、これらを使用する文脈に応じて、単数または複数である場合がある。例えば、「a cell」は、単一の細胞を意味する場合があるか、複数の細胞を意味する場合がある。
【0046】
また、本明細書中で使用される場合、「および/または」は、1またはそれを超えるリスト中の関連項目のありとあらゆる可能な組み合わせを指し、かつ包含し、選択肢と解釈されるときの組み合わせが無いこと(「または」)も指し、かつ包含する。
【0047】
さらに、本発明の組成物の量、用量、時間、および温度などの測定可能な値について言及する場合に本明細書中で使用される用語「約」は、指定した量の±20%、±10%、±5%、±1%、±0.5%、さらに±0.1%の変動を含むことを意味する。
【0048】
本明細書中で使用される用語「~を含むこと」または「~を含む」は、方法または組成物に不可欠である組成物、方法、およびその各成分(単数または複数)に関して使用されるが、不可欠であるかどうかに無関係に不特定の要素を含む可能性が開かれている。
【0049】
本明細書中で使用される用語「~から本質的になる」は、所与の実施形態に必要な要素を指す。この用語は、実施形態の基本的かつ新規または機能的な特徴(単数または複数)に実質的に影響を及ぼさない要素の存在を許容する。用語「~からなる」は、実施形態の記載において引用されていないいかなる要素も排除した、本明細書中に記載の組成物、方法、およびその各成分を指す。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1図1は、5’から3’への方向で、BAMHI制限部位、F1 ORI、ITR-L、導入遺伝子に連結したプロモーター(星印で示す)、DD-ITR(変異体)、導入遺伝子に連結したプロモーター(星印で示す)、ITR-R、およびHINDIII制限部位を有し、かつ制限部位を介して各末端にライゲーションされたアダプター配列を有する環状核酸の製造についての略図を示す。プラスミド断片を、BAMHI制限酵素およびHINDIII制限酵素での切断を介してプラスミドから切り出す。アダプター配列をプラスミド断片にライゲーションして、テンプレートを形成する。テンプレートを、in vitroまたはin vivoで(例えば、E.coli細胞、細胞抽出物(例えば、E.coli細胞抽出物)、または細菌パッケージング細胞中で)複製することができる。
【0051】
図2図2は、5’から3’への方向で、BAMHI制限部位、F1 ORI、ITR-L、導入遺伝子に連結したプロモーター(星印で示す)、ITR-R、およびHINDIII制限部位を有し、かつ制限部位を介して各末端にライゲーションされたアダプター配列を有する環状核酸の製造についての略図を示す。プラスミド断片を、BAMHI制限酵素およびHINDIII制限酵素での切断を介してプラスミドから切り出す。アダプター配列をプラスミド断片にライゲーションして、テンプレートを形成する。テンプレートを、in vitroまたはin vivoで(例えば、E.coli細胞、細胞抽出物(例えば、E.coli細胞抽出物)、または細菌パッケージング細胞中で)複製することができる。
【0052】
図3図3は、5’から3’への方向で、BAMHI制限部位、ITR-L、F1 ORI、導入遺伝子に連結したプロモーター(星印で示す)、DD-ITR(変異体)、導入遺伝子に連結したプロモーター(星印で示す)、ITR-R、およびHINDIII制限部位を有し、かつ制限部位を介して各末端にライゲーションされたアダプター配列を有する環状核酸の製造についての略図を示す。プラスミド断片を、BAMHI制限酵素およびHINDIII制限酵素での切断を介してプラスミドから切り出す。アダプター配列をプラスミド断片にライゲーションして、テンプレートを形成する。テンプレートを、in vitroまたはin vivoで(例えば、E.coli細胞、細胞抽出物(例えば、E.coli細胞抽出物)、または細菌パッケージング細胞中で)複製することができる。
【0053】
図4図4は、5’から3’への方向で、BAMHI制限部位、ITR-L、F1 ORI、導入遺伝子に連結したプロモーター(星印で示す)、ITR-R、およびHINDIII制限部位を有し、かつ制限部位を介して各末端にライゲーションされたアダプター配列を有する環状核酸の製造についての略図を示す。プラスミド断片を、BAMHI制限酵素およびHINDIII制限酵素での切断を介してプラスミドから切り出す。アダプター配列をプラスミド断片にライゲーションして、テンプレートを形成する。テンプレートを、in vitroまたはin vivoで(例えば、E.coli細胞、細胞抽出物(例えば、E.coli細胞抽出物)、または細菌パッケージング細胞中で)複製することができる。
【0054】
図5図5は、5’から3’への方向で、BAMHI制限部位、F1 ORI、PVUII制限部位、ITR-L、導入遺伝子に連結したプロモーター(星印で示す)、ITR-R、およびHINDIII制限部位を有し、かつ制限部位を介して各末端にライゲーションされたアダプター配列を有する環状核酸の製造についての略図を示す。プラスミド断片を、BAMHI制限酵素およびHINDIII制限酵素での切断を介してプラスミドから切り出す。アダプター配列をプラスミド断片にライゲーションして、テンプレートを形成する。テンプレートを、in vitroまたはin vivoで(例えば、E.coli細胞、細胞抽出物(例えば、E.coli細胞抽出物)、または細菌パッケージング細胞中で)複製することができる。複製後、環状核酸をPVUII制限酵素でさらに切断してアダプター配列およびORIを切断すると、一方が開放型末端となり、他方が閉鎖型末端となる。
【0055】
図6図6は、閉鎖型環状直鎖rAAVゲノムの生物産生の略図を示す。プラスミドテンプレートをE.coli細胞に形質転換し、複製させる。閉鎖型直鎖DNAに自己アニーリングする閉鎖型環状ssDNAであるAAV核酸ベクターが複製される。
【0056】
図7図7は、5’から3’への方向で、Sfi1制限部位またはPvuII制限部位、F1 ORI、ITR-L、導入遺伝子に連結したプロモーター(星印で示す)、DD-ITR(変異体)、導入遺伝子に連結したプロモーター(星印で示す)、ITR-R、および第2のSfi1制限部位またはPvuII制限部位を、制限部位を介して末端にライゲーションされたアダプター配列と共に有するベクターの製造の略図を示す。アダプター配列のライゲーション前に、ベクターを、Sfi1制限酵素またはPvuII制限酵素を用いた切断を介して切り出す。このベクターを、in vitroで(例えば、細菌パッケージング細胞中で)複製することができる。
【0057】
図8図8は、5’から3’への方向で、F1 ORI、ITR-L、導入遺伝子に連結したプロモーター(星印で示す)、DD-ITR(変異体)、導入遺伝子に連結したプロモーター(星印で示す)、ITR-R、ヘアピン配列、相補ITR-R、導入遺伝子に連結された相補プロモーター(星印で示す)、相補DD-ITR(変異体)、導入遺伝子に連結された相補プロモーター(星印で示す)、相補ITR-L、およびORIΔ29を有する自己相補性一本鎖DNAベクターの製造の略図を示す。この方法は、細菌パッケージング細胞およびヘルパーファージを使用する。アスタリスクは、相補配列(例えば、相補的なTR配列または導入遺伝子配列)を示す。
【0058】
図9図9は、一本鎖ベクター生成の略図を示す。(1)は、隣接PvuII制限部位、F1 ORI(例えば、M13)、ITR(制限部位を介して末端にライゲーションされたアダプター配列を有する少なくとも1つの二本鎖ITRが含まれる)を有するベクターを示す。プラスミドをPvuII制限酵素で切断し、アダプター配列をアニーリングして、DNAを環状化する。(2)は、M13 ORIを有するテンプレートの宿主細胞中でのウイルスゲノム複製由来の中間体ダイマーをHirt抽出によって単離し、これをさらなる複製のためのテンプレートとして使用し、rAAVウイルス産生または導入遺伝子のin vivo送達のために使用することもできることを示す。ダブルD ITR(DD-TR)が好ましい基質である。(3)は、下流でのin vivo適用ができることを示す。
【0059】
図10図10は、5’から3’への方向で、BAMHI制限部位、F1 ORI、DD-ITR(変異体)、導入遺伝子に連結したプロモーター(星印で示す)、DD-ITR(変異体)、導入遺伝子に連結したプロモーター(星印で示す)、DD-ITR(変異体)、およびHINDIII制限部位を含み、かつ制限部位を介して各末端にライゲーションされたアダプター配列を有する環状核酸の製造についての略図を示す。プラスミド断片を、BAMHI制限酵素およびHINDIII制限酵素での切断を介してプラスミドから切り出す。アダプター配列をプラスミド断片にライゲーションして、テンプレートを形成する。テンプレートを、in vitroまたはin vivoで(例えば、E.coli細胞、細胞抽出物(例えば、E.coli細胞抽出物)、または細菌パッケージング細胞中で)複製することができる。
【0060】
図11図11は、5’から3’への方向で、BAMHI制限部位、F1 ORI、DD-ITR(変異体)、導入遺伝子に連結したプロモーター(星印で示す)、DD-ITR(変異体)、およびHINDIII制限部位を有し、かつ制限部位を介して各末端にライゲーションされたアダプター配列を有する環状核酸の製造についての略図を示す。プラスミド断片を、BAMHI制限酵素およびHINDIII制限酵素での切断を介してプラスミドから切り出す。アダプター配列をプラスミド断片にライゲーションして、テンプレートを形成する。テンプレートを、in vitroまたはin vivoで(例えば、E.coli細胞、細胞抽出物(例えば、E.coli細胞抽出物)、または細菌パッケージング細胞中で)複製することができる。
【0061】
図12図12は、5’から3’への方向で、BAMHI制限部位、DD-ITR(変異体)、F1 ORI、導入遺伝子に連結したプロモーター(星印で示す)、DD-ITR(変異体)、導入遺伝子に連結したプロモーター(星印で示す)、DD-ITR(変異体)、およびHINDIII制限部位を有し、かつ制限部位を介して各末端にライゲーションされたアダプター配列を有する環状核酸の製造についての略図を示す。プラスミド断片を、BAMHI制限酵素およびHINDIII制限酵素での切断を介してプラスミドから切り出す。アダプター配列をプラスミド断片にライゲーションして、テンプレートを形成する。テンプレートを、in vitroまたはin vivoで(例えば、E.coli細胞、細胞抽出物(例えば、E.coli細胞抽出物)、または細菌パッケージング細胞中で)複製することができる。
【0062】
図13図13は、5’から3’への方向で、BAMHI制限部位、DD-ITR(変異体)、F1 ORI、導入遺伝子に連結したプロモーター(星印で示す)、DD-ITR(変異体)、およびHINDIII制限部位を有し、かつ制限部位を介して各末端にライゲーションされたアダプター配列を有する環状核酸の製造についての略図を示す。プラスミド断片を、BAMHI制限酵素およびHINDIII制限酵素での切断を介してプラスミドから切り出す。アダプター配列をプラスミド断片にライゲーションして、テンプレートを形成する。テンプレートを、in vitroまたはin vivoで(例えば、E.coli細胞、細胞抽出物(例えば、E.coli細胞抽出物)、または細菌パッケージング細胞中で)複製することができる。
【0063】
図14図14は、5’から3’への方向で、BAMHI制限部位、F1 ORI、PVUII制限部位、DD-ITR(変異体)、導入遺伝子に連結したプロモーター(星印で示す)、DD-ITR(変異体)、およびHINDIII制限部位を有し、かつ制限部位を介して各末端にライゲーションされたアダプター配列を有する環状核酸の製造についての略図を示す。プラスミド断片を、BAMHI制限酵素およびHINDIII制限酵素での切断を介してプラスミドから切り出す。アダプター配列をプラスミド断片にライゲーションして、テンプレートを形成する。テンプレートを、in vitroまたはin vivoで(例えば、E.coli細胞、細胞抽出物(例えば、E.coli細胞抽出物)、または細菌パッケージング細胞中で)複製することができる。複製後、環状核酸をPVUII制限酵素でさらに切断してアダプター配列およびORIを切断すると、一方が開放型末端となり、他方が閉鎖型末端となる。
【0064】
図15図15は、5’から3’への方向で、Sfi1制限部位またはPvuII制限部位、F1 ORI、DD-ITR(変異体)、導入遺伝子に連結したプロモーター(星印で示す)、DD-ITR(変異体)、導入遺伝子に連結したプロモーター(星印で示す)、DD-ITR(変異体)、および第2のSfi1制限部位またはPvuII制限部位を有し、制限部位を介して末端にライゲーションされたアダプター配列を有するベクターの製造の略図を示す。アダプター配列のライゲーション前に、ベクターを、Sfi1制限酵素またはPvuII制限酵素を用いた切断を介して切り出す。このベクターを、in vitroで(例えば、細菌パッケージング細胞中で)複製することができる。
【0065】
図16図16は、5’から3’への方向で、F1 ORI、DD-ITR(変異体)、導入遺伝子に連結したプロモーター(星印で示す)、DD-ITR(変異体)、導入遺伝子に連結したプロモーター(星印で示す)、DD-ITR(変異体)、ヘアピン配列、相補DD-ITR(変異体)、導入遺伝子に連結された相補プロモーター(星印で示す)、相補DD-ITR(変異体)、導入遺伝子に連結された相補プロモーター(星印で示す)、相補DD-ITR(変異体)、およびORIΔ29を有する自己相補性一本鎖DNAベクターの製造の略図を示す。この方法は、細菌パッケージング細胞およびヘルパーファージを使用する。アスタリスクは、相補配列(例えば、相補的なTR配列または導入遺伝子配列)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0066】
発明の詳細な説明
本明細書中に記載の本発明の1つの態様は、導入遺伝子を含む環状核酸ベクターを製造する方法であって、(a)宿主系をテンプレートと接触させる工程であって、前述のテンプレートが、少なくとも1つの隣接切断部位(単数または複数)ならびに(i)少なくとも1つのファージ複製起点(ORI);(ii)少なくとも1つの末端反復(TR)、および;(iii)導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモーター配列を含む工程;(b)前述の宿主系を、環状核酸を産生するのに十分な複製時間にわたってインキュベートする工程;および(c)産生された前述の環状核酸を回収する工程であって、前述の環状核酸が自己アニーリングする工程を含む、方法を提供する。
【0067】
本明細書中に記載の発明の別の態様は、導入遺伝子を含む環状核酸ベクターを製造する方法であって、(a)宿主系をプラスミドテンプレートで形質転換する工程であって、前述のプラスミドテンプレートが以下を含む工程:(i)ファージ複製起点(ORI);(ii)短縮ファージORI(例えば、ORIΔ29);(iii)少なくとも1つの末端反復(TR)、および;(iv)導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモーター配列、ここで、前述のプラスミドテンプレートが、5’から3’への方向で、センス鎖およびアンチセンス鎖をアニーリングすることが可能なヘアピン配列によって分離されたセンス配列およびアンチセンス配列を含む;(b)前述の宿主系を、環状核酸を産生するのに十分な複製時間にわたってインキュベートする工程;および(c)産生された前述の環状核酸を回収する工程であって、前述の環状核酸が自己アニーリングする工程を含む、方法を提供する。
【0068】
1つの実施形態では、環状核酸を産生するために使用されるテンプレートを、テンプレートの成分を含む二本鎖プラスミドDNA(例えば、図1~5、7、および9を参照のこと)をプラスミド上に存在する切断部位を特異的に標的にするヌクレアーゼ(例えば、制限酵素)で切断することによって生成する。別の実施形態では、二本鎖プラスミドテンプレートを使用して環状核酸を産生することができる。テンプレート(すなわち、本明細書中に記載のプラスミドテンプレート)の成分を含むプラスミドを、当該分野で公知の標準的なクローニング技術を使用して生成することができる。切断部位を切断するとプラスミド断片(すなわち、2つの切断部位の間に見いだされる一本鎖線状DNA)が切り出される。1つの実施形態では、次いで、プラスミド断片を切断末端でアダプタータンパク質にアニーリングする。例えば、切断部位が制限酵素で切断されると、「粘着」末端(すなわち、一方の鎖のいくつかの非対合ヌクレオチドが他方の鎖を超えて伸びているDNA二重らせんの末端)が産生される。相補粘着末端を有するアダプター配列は、当該分野で公知の標準的な技術(例えば、T4リガーゼおよびATPを使用したライゲーション反応)を使用して粘着末端にアニーリングすることができる。アダプター配列がプラスミド断片の末端にアニーリングされるとDNAが環状化し、それにより、本明細書中でテンプレートと呼ばれる閉鎖型末端DNA構造が作出される。
【0069】
テンプレートを、宿主系においてin vitroまたはin vivoで複製することができる。例えば、E.coli細胞(例えば、Shepherd,et al.Scientific Reports 9,Article number:6121(2019)に記載の標準的な方法を使用);細胞抽出物(例えば、Wang,G.,et al.Cell Research 7,1-12(1997)に記載のE.coli細胞抽出物);または当該分野で公知の細菌パッケージング細胞株(これらの引用の内容全体が、本明細書中で参考として援用される)。例えば、Chastenn,L.,et al.Nucleic Acids Res.2006 Dec;34(21):e145(その内容全体が、本明細書中で参考として援用される)に記載のように、細菌パッケージング細胞株は、M13系ヘルパープラスミドを発現することができる。
【0070】
あるいは、本明細書中に記載のテンプレートは、複製される必要はなく,宿主系(例えば、in vitro細胞株)に直接接触させるために使用することができる。
【0071】
テンプレート上に配置されたファージORIは、本明細書中で環状核酸と呼ばれる一本鎖の相補環状DNAの複製を開始させる。1つの実施形態では、テンプレートを、宿主系内で環状核酸を複製するのに十分な時間インキュベートする。1つの実施形態では、ファージORIは、いかなるさらなる成分(例えば、ヘルパーファージ)も必要とせずに複製を開始させる。別の実施形態では、ファージORIによる複製は、さらなる成分(例えば、ヘルパーファージ)の存在下で開始される。環状核酸の複製のために使用される宿主系は、例えば、in vitroまたはin vivo宿主系であり得る。
【0072】
1つの実施形態では、テンプレートは一本鎖であり、in vitroまたはin vivoでのテンプレートの複製により一本鎖環状核酸が生成される。一本鎖環状DNAは、例えば、導入遺伝子配列で自己アニーリングして二本鎖になることができる。
【0073】
ORIがプラスミドテンプレートの両側に存在する(例えば、プラスミドテンプレートが、テンプレートの他のエレメントに隣接するF1 ORIおよびORIΔ29を有する(例えば、図8を参照のこと))場合、一本鎖環状核酸は自己相補性導入遺伝子(例えば、治療導入遺伝子)を含む。1つの実施形態では、一本鎖環状核酸は、導入遺伝子のセンス配列および導入遺伝子のアンチセンス配列を1本の鎖上に含む。1つの実施形態では、センス配列およびアンチセンス配列は、鎖を湾曲させてセンス配列およびアンチセンス配列を結合させるリンカー(例えば、ホリデイリンカー)または欠損ITRで分離されている。リンカーが、鎖を湾曲させて導入遺伝子のセンス配列およびアンチセンス配列の結合を容易にする任意の配列であり得ることが本明細書中で特に意図される。1つの実施形態では、一本鎖環状核酸は、ORIに隣接する相補領域および自己相補性領域をさらに含む。例えば、図8を参照のこと。
【0074】
環状核酸は、特定の宿主系で知られている標準的な技術(装置によって媒介される放出(超音波処理)または化学物質によって媒介される放出(界面活性剤)など)を使用して宿主系から放出される(すなわち、解放される)。放出後、環状核酸を、標準的な方法(例えば、カラムクロマトグラフィを使用した精製による)を使用して回収する。
【0075】
本明細書中で生成された環状核酸は、閉鎖型、開放型、または開放型および閉鎖型の両方であり得る。1つの実施形態では、環状核酸は閉鎖型である。閉鎖型DNAベクターは、任意の立体配置(例えば、ドギーボーン、ダンベル、環状、閉鎖型線状二重鎖など)を有することができる。
【0076】
1つの実施形態では、環状核酸は、ORIの下流に隣接した少なくとも第3の固有の切断部位を含む。環状核酸の複製後、この固有の切断部位を切断して環状核酸からORIを除去し、開放型末端を得ることができる。この核酸は、開放型および閉鎖型の両方である。開放型および閉鎖型の核酸を、例えば、導入遺伝子発現を介した遺伝子送達のために被験体に投与することができる。
【0077】
本明細書中に記載の方法を使用して生成された環状核酸複製物を、前述の複製物が発現する導入遺伝子の送達のために使用するか、例えば、さらなるin vitroまたはin vivoでの複製によってさらなる環状核酸を生成するために使用することができる。環状核酸複製物を、さらに、組換えウイルスベクター産生において、例えば、HEK293細胞内でのアデノ随伴ウイルスベクターの産生のために使用することができる。
【0078】
さらに、環状核酸を、例えば、下流に適用するためにキャプシドまたはリポソームにパッケージングすることができる。
【0079】
1つの実施形態では、本明細書中に記載の方法を使用して製造された環状核酸を、組換えベクター(例えば、組換えウイルスベクター)の産生で使用することができる。例として、少なくとも1つのITRを有する環状核酸を、AAVベクターの産生において少なくとも1つのITRを発現するプラスミドの代わりに使用することができる。テンプレート組換えプラスミドを使用したAAVゲノムの複製については、例えば、Samulski,RJ,et al.Journal of Viol.Oct.1987(その内容全体が、本明細書中で参考として援用される)でさらに考察されている。組換えベクターの産生および核酸送達用ベクターの使用についてのプロトコールを、例えば、Current Protocols in Molecular Biology,Ausubel,F.M.et al.(eds.)Greene Publishing Associates,(1989)および他の標準的な実験マニュアル(例えば、Vectors for Gene Therapy.In:Current Protocols in Human Genetics.John Wiley and Sons,Inc.:1997)に見出すことができる。さらに、AAVベクターの産生は、例えば、米国特許第9,441,206(その内容全体が本明細書中で参考として援用される)にさらに記載されている。
【0080】
本発明の方法で使用されるベクターの非限定的な例には、核酸を細胞内に送達させるために使用される任意のヌクレオチド構築物(例えば、プラスミド、テンプレート、非ウイルスベクター、またはウイルスベクター(組換えレトロウイルスゲノムをパッケージングすることができるレトロウイルスベクターなど))が含まれる(例えば、Pastan et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:4486(1988);Miller et al.,Mol.Cell.Biol.6:2895(1986)を参照のこと)。次いで、例えば、組換えレトロウイルスベクターを使用して細胞に感染させ、それにより感染された細胞に本発明の治療導入遺伝子を送達させることができる。変更された核酸を哺乳動物細胞内に正確に移入する方法は、レトロウイルスベクターを使用することであるが、勿論これに限定されない。この手順のために他の技術が広く利用でき、アデノウイルスベクター(Mitani et al.,Hum.Gene Ther.5:941-948,1994)、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター(Goodman et al.,Blood 84:1492-1500,1994)、レンチウイルスベクター(Naldini et al.、Science 272:263-267、1996)、偽型レトロウイルスベクター(Agrawal et al.,Exper.Hematol.24:738-747,1996)、および現在公知であるか、その後に同定される任意の他のベクター系の使用が含まれる。当該分野で周知であり、かつ2またはそれを超える異なるウイルス由来のウイルスタンパク質および/または核酸を、機能的なウイルスベクターを産生するために任意の組み合わせで含むことができるキメラウイルス粒子も含まれる。また、本発明のキメラウイルス粒子は、(例えば、特定の細胞もしくは組織へのベクターの標的化を容易にし、そして/または特異的免疫応答を誘導するための)非ウイルス起源のアミノ酸配列および/またはヌクレオチド配列を含むことができる。所与の条件のためのインキュベーション条件(例えば、タイミング、環境、培地など)は当該分野で公知であり、当業者が容易に同定することができる。
【0081】
細胞内で産生されたウイルスベクターを、任意の標準的な技術を使用して放出させる(すなわち、ベクターを産生した細胞から開放する)ことができる。例えば、ウイルスベクターを、機械的方法(例えば、顕微溶液化、遠心分離、または超音波処理)または化学的方法(例えば、溶解緩衝液および界面活性剤)を介して放出することができる。次いで、当該分野で標準的な方法を使用して放出されたウイルスベクターを回収し(すなわち、採取し)、精製して、純粋な集団を得る。例えば、ウイルスベクターを、精製方法(深層濾過またはタンジェンシャルフローフィルトレーション(TFF)を使用した明澄化工程が含まれる)によってウイルスベクターが放出された緩衝液から回収することができる。本明細書の実施例に記載のように、ウイルスベクターを、超音波処理によって細胞から放出させ、カラムクロマトグラフィを使用した明澄化ライセートの精製によって回収することができる。
【0082】
1つの実施形態では、ベクターは、非ウイルスベクターまたはウイルスベクターであり得るが、これらに限定されない。任意の態様の1つの実施形態では、ベクターは、DNAウイルスまたはRNAウイルスである。本発明のウイルスベクターの非限定的な例には、AAVベクター、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、アルファウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、およびキメラウイルスベクターが含まれる。
【0083】
当該分野で公知の任意のウイルスベクターを、本発明で使用することができる。かかるウイルスベクターの例には、以下に由来するベクターが含まれるが、これらに限定されない:アデノウイルス科;ビルナウイルス科;ブニヤウイルス科;カリシウイルス科、カピロウイルス属;カルラウイルス属;カルモウイルスのウイルス属;カリモウイルスの属;クロステロウイルス属;コメリナイエローモットルウイルス属;コモウイルスのウイルス属;コロナウイルス科;PM2ファージ属;コルシコウイルス科;潜在ウイルスの属;種子伝染性潜伏ウイルスの属;ククモウイルスのウイルス属のファミリー([PHgr]6ファージ属;サイシオウイルス科;カーネーションリングスポットウイルスの属;ディアンソウイルスのウイルス属;ソラマメウイルトウイルスの属;ファバウイルスのウイルス属;フィロウイルス科;フラビウイルス科;フロウイルス属;ジェミニウイルス(Germinivirus)の属;ジアルジアウイルスの属;ヘパドナウイルス科;ヘルペスウイルス科;ホルデイウイルスのウイルス属;イラルウイルス(Illarvirus)のウイルス属;イノウイルス科;イリドウイルス科;レヴィウイルス科;リポスリックスウイルス科;ルテオウイルス属;マラフィウイルスのウイルス属;トウモロコシ白化萎縮ウイルス属;ミクロウイルス科(icroviridae);ミオウイルス科;ネクロウイルス属;ネポウイルスのウイルス属;ノダウイルス科;オルトミクソウイルス科;パポーバウイルス科;パラミクソウイルス科;パースニップイエローフレックウイルス属;パルティティウイルス科;パルボウイルス科;ピーエネーションモザイクウイルス属;フィコドナウイルス科;ピコルナウイルス科;プラズマウイルス科;プロドウイルス科;ポリドナウイルス科;ポテックスウイルス属;ポティウイルス;ポックスウイルス科;レオウイルス科;レトロウイルス科;ラブドウイルス科;リジジオウイルスの属;シホウイルス科;ソベモウイルス属;SSV1型ファージ;テクチウイルス科;テヌイウイルス;テトラウイルス科;トバモウイルスの属;トブラウイルスの属;トガウイルス科;トムブスウイルスの属;トロウイルスの属;トティウイルス科;ティモウイルスの属;および植物ウイルスサテライト。
【0084】
本発明の方法によって産生されたウイルスベクターは、任意の天然に存在するおよび/または組換えのウイルスベクターのヌクレオチド配列のゲノム(一部または全体)(例えば、AAV、AV、LVなど)またはバリアントを含んでよい。ウイルスベクターバリアントは、核酸レベルおよびアミノ酸レベルで有意に相同するゲノム配列を有し、一般的に物理的および機能的に等価なウイルスベクターを産生し、類似の機序によって複製し、類似の機序によってアセンブリし得る。
【0085】
バリアントウイルスベクター配列を、本明細書中に記載の宿主系中でウイルスベクターを産生するために使用することができる。例えば、所与のベクターに対して(例えば、AAV、AV、LVなど)に対して少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、またはそれを超えるヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列同一性を有する配列(例えば、約75~99%のヌクレオチド配列同一性を有する配列)。
【0086】
ウイルス発現系が、本明細書中に記載の方法を使用して所与のウイルスベクターをその産生中に補完するのに必要な任意のエレメントを含むようにさらに改変されると理解すべきである。例えば、ある特定の実施形態では、核酸カセットは、末端反復配列に隣接している。1つの実施形態では、rAAVベクターの産生のために、AAV発現系は、組換えAAVプラスミド、Repを発現するプラスミド、Capを発現するプラスミド、およびアデノウイルスヘルパープラスミドのうちの少なくとも1つをさらに含むであろう。所与のウイルスベクターの相補エレメントは当該分野で周知であり、したがって、当業者は、本明細書中に記載のウイルス発現系を改変することができるであろう。
【0087】
AAVベクターを製造するためのウイルス発現系(例えば、AAV発現系)は、例えば、誘導性プロモーターの調節下でトランスの複製(Rep)遺伝子および/またはキャプシド(Cap)遺伝子をさらに含み得る。RepおよびCapは、これらの遺伝子の発現が共に「オン」になるような1つの誘導性プロモーターの調節下、または別個のインデューサーによって「オン」になる2つの個別の誘導性プロモーターの調節下で発現することができる。AAVゲノムの左側には、p5およびp19と呼ばれる2つのプロモーターが存在し、これらによって異なる長さの2つの重複する伝令リボ核酸(mRNA)を産生することができる。これらの核酸の各々はイントロンを含み、このイントロンはスプライシングで切り出されるか切り出されない場合があり、それにより、4つのRep遺伝子(Rep78、Rep68、Rep52、およびRep40)が得られる可能性がある。Rep遺伝子(特に、Rep78およびRep68)は、自己プライミング作用においてITRによって形成されたヘアピンに結合し、ヘアピン内の指定の末端分離部位を切断する。これらの遺伝子は、AAVゲノムのAAVS1特異的組み込みに必要である。4つ全てのRepタンパク質は、ATPに結合し、ヘリカーゼ活性を保有することが示された。プラス鎖AAVゲノムの右側は、p40と呼ばれる1つのプロモーターから始まり、3つのキャプシドタンパク質(VP1、VP2、およびVP3)の重複配列をコードする。cap遺伝子は、アセンブリ活性化タンパク質(AAP)と呼ばれるさらなる非構造タンパク質を産生する。このタンパク質は、ORF2から産生され、キャプシドアセンブリ過程に不可欠である。AAVベクターの製造に必要なエレメントは、当該分野で公知であり、例えば、米国特許第5478745A号;同第5622856A号;同第5658776A号;同第6440742B1号;同第6632670B1号;同第6156303A号;同第8007780B2号;同第6521225B1号;同第7629322B2号;同第6943019B2号;同第5872005A号;および米国特許出願公開第2017/0130245号;同第20050266567A1号;同第20050287122A1号(各々の内容全体が本明細書中で参考として援用される)にさらに概説され得る。
【0088】
1つの実施形態では、AAVベクターを産生するための細胞を、懸濁培地中で培養する。別の実施形態では、細胞を、無動物成分条件下で培養する。無動物成分培地は、所与の細胞株(例えば、HEK293細胞)に適合する任意の無動物成分培地(例えば、無血清培地)であり得る。AAVベクターを増殖することができることが当該分野で公知の任意の細胞株を、本明細書中に記載の方法を使用したAAV産生のために使用することができる。AAVベクターを生成するために使用することができる例示的な細胞株には、HEK293、CHO、Cos-7、およびNSOが含まれるが、これらに限定されない。
【0089】
1つの実施形態では、AAVベクター産生のための細胞株は、AAVベクター産生に必要な成分(例えば、Rep、Cap、VP1など)のいずれかを安定に発現する。1つの実施形態では、AAVベクター産生のための細胞株は、AAVベクター産生に必要な成分(例えば、Rep、Cap、VP1など)のいずれかを一過性に発現する。
【0090】
AAVベクター産生のための細胞株がrepまたはcapを安定にも一過性にも発現しない事象では、これらの配列は、例えば、本明細書中に記載の方法を使用して産生された環状核酸を介してAAV発現系に提供されることになる。AAVのrepおよびcap配列は、当該分野で公知の任意の方法によって提供され得る。現在のプロトコールは、典型的には、AAVのrep/cap遺伝子を単一のプラスミド上で発現する。AAVの複製配列およびパッケージング配列は、共に提供される必要はないが、共に提供されると都合が良い場合がある。AAVのrepおよび/またはcap配列は、任意のウイルスベクターまたは非ウイルスベクターによって提供され得る。例えば、rep/cap配列は、ハイブリッドのアデノウイルスベクターまたはヘルペスウイルスベクターによって提供され得る(例えば、欠失アデノウイルスベクターのEla領域またはE3領域に挿入される)。また、EBVベクターは、AAVのcap遺伝子およびrep遺伝子を発現するために使用され得る。この方法の1つの利点は、EBVベクターはエピソームベクターであるが、連続的な細胞分裂にわたって高コピー数を依然として維持するであろうということである(すなわち、「EBV系核エピソーム」と命名された染色体外エレメントとして細胞内に安定に組み込まれる(Margolski,Curr.Top.Microbial.Immun.158:67(1992)を参照のこと))。
【0091】
典型的には、AAV rep/cap配列は、これらの配列の救出を防止し、そして/またはパッケージングを維持するためにTRに隣接しないであろう。
【0092】
本明細書中に記載の方法を使用してレンチウイルスを製造するためのウイルス発現系は、核酸カセットに隣接した長末端反復(LTR)をさらに含むであろう。LTRは、レトロウイルスRNAの逆転写によって形成されたレトロトランスポゾンまたはプロウイルスDNAのいずれかの末端で数百回または数千回反復する同一のDNA配列である。LTRは、LTR特異的インテグラーゼを介した宿主染色体へのレトロウイルスDNAの組み込みを媒介する。LTRおよびレンチウイルスベクターの製造方法は、例えば、米国特許第7083981B2号;同第6207455B1号;同第6555107B2号;同第8349606B2号;同第7262049B2号;および米国特許出願公開第20070025970A1号;同第20170067079A1号;同第20110028694A1(各々の内容全体が本明細書中で参考として援用される)にさらに記載されている。
【0093】
本明細書中に記載の方法を使用してアデノウイルスを製造するためのウイルス発現系は、核酸カセットに隣接したおよそ90~140塩基対(正確な長さはセロタイプに依存する)の同一の逆位末端配列(ITR)をさらに含むであろう。ウイルスの複製起点は、正確にはゲノム末端のITR内にある。アデノウイルスゲノムは、およそ36000塩基対の直鎖二本鎖DNA分子である。しばしば、遺伝子療法で使用されるアデノウイルスベクターは、新規の遺伝情報を導入することができるE1領域を欠失している;E1欠失によって組換えウイルスの複製が欠損する。ITRおよびアデノウイルスベクターの製造方法は、例えば、米国特許第7510875B2号;同第7820440B2号;同第7749493B2号;同第7820440B2号;同第10041049B2;国際特許出願番号WO2000070071A1号;WO2000070071A1号;および米国特許出願公開第20030022356A1号;同第20080050770A1号(各々の内容全体が本明細書中で参考として援用される)にさらに記載されている。
【0094】
1つの実施形態では、ウイルス発現系は、宿主細胞(ウイルス、哺乳動物細胞、または昆虫細胞など)であり得る。昆虫細胞の例には、Sf9、Sf21、Hi-5、およびS2の各昆虫細胞株が含まれるが、これらに限定されない。例えば、AAVベクターを製造するためのウイルス発現系は、例えば、ウイルス発現系が昆虫細胞である場合、バキュロウイルス発現系をさらに含み得る。バキュロウイルス発現系は、バキュロウイルス感染昆虫細胞からのウイルスの効率的な大量産生および組換えタンパク質の発現のために設計されている。バキュロウイルス発現系は、例えば、米国特許第6919085B2号;同第6225060B1号;同第5194376A号(各々の内容全体が本明細書中で参考として援用される)にさらに記載されている。
【0095】
別の実施形態では、ウイルス発現系は無細胞系である。ウイルスベクター産生のための無細胞系は、例えば、Cerqueira A.,et al.Journal of Virology,2016;Sheng J.,et al.The Royal Society of Chemistry,2017;およびSvitkin Y.V.,and Sonenberg N.Journal of Virology,2003(その内容全体が本明細書中で参考として援用される)にさらに記載されている。
【0096】
本明細書中に提供した1つの態様は、本明細書中に記載の方法のうちのいずれかを使用して製造されたベクターである。
【0097】
本明細書中に提供した別の態様は、環状核酸ベクターであって、少なくとも1つの隣接切断部位、ならびに(i)少なくとも1つのファージ複製起点(ORI);(ii)少なくとも1つの末端反復(TR)、および;(iii)導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモーター配列を含む環状核酸ベクターである。
【0098】
本明細書中に提供したさらに別の態様は、環状核酸ベクターであって、(i)ファージ複製起点(ORI);(ii)短縮ファージORI(例えば、ORIΔ29);(iii)少なくとも1つの末端反復(TR)、および;(iv)導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモーター配列を含み、ここで、前述のベクターが、5’から3’への方向で、センス鎖およびアンチセンス鎖をアニーリングすることが可能なヘアピン配列によって分離されたセンス配列およびアンチセンス配列を含む、環状核酸ベクターである。
【0099】
宿主系が所与のベクターに必要な成分をさらに含むと理解される。例えば、AAVの産生には少なくとも1つの複製(Rep)遺伝子および/または少なくとも1つのキャプシド(Cap)遺伝子が存在する必要がある。1つの実施形態では、ベクターはAAVであり、宿主系は、少なくとも1つの複製(Rep)遺伝子および/または少なくとも1つのキャプシド(Cap)遺伝子を構成性に発現する。別の実施形態では、ベクターはAAVであり、少なくとも1つのRep遺伝子を発現する核酸および少なくとも1つのCap遺伝子を発現する核酸を、本明細書中に記載の方法の工程(a)の前に宿主系に形質転換するか、本明細書中に記載の方法の工程(a)と同時に形質転換する。AAVゲノムの左側には、p5およびp19と呼ばれる2つのプロモーターが存在し、これらによって異なる長さの2つの重複する伝令リボ核酸(mRNA)を産生することができる。これらの核酸の各々はイントロンを含み、このイントロンはスプライシングで切り出されるか切り出されない場合があり、それにより、4つのRep遺伝子(Rep78、Rep68、Rep52、およびRep40)が得られる可能性がある。Rep遺伝子(特に、Rep78およびRep68)は、自己プライミング作用においてITRによって形成されたヘアピンに結合し、ヘアピン内の指定の末端分離部位を切断する。これらの遺伝子は、AAVゲノムのAAVS1特異的組み込みに必要である。4つ全てのRepタンパク質は、ATPに結合し、ヘリカーゼ活性を保有することが示された。プラス鎖AAVゲノムの右側は、p40と呼ばれる1つのプロモーターから始まり、3つのキャプシドタンパク質(VP1、VP2、およびVP3)の重複配列をコードする。cap遺伝子は、アセンブリ活性化タンパク質(AAP)と呼ばれるさらなる非構造タンパク質を産生する。このタンパク質は、ORF2から産生され、キャプシドアセンブリ過程に不可欠である。AAVベクターの製造に必要なエレメントは、当該分野で公知であり、例えば、米国特許第5478745A号;同第5622856A号;同第5658776A号;同第6440742B1号;同第6632670B1号;同第6156303A号;同第8007780B2号;同第6521225B1号;同第7629322B2号;同第6943019B2号;同第5872005A号;および米国特許出願公開第2017/0130245号;同第20050266567A1号;同第20050287122A1号(各々の内容全体が本明細書中で参考として援用される)にさらに概説され得る。種々の実施形態では、RepおよびCap遺伝子を発現する核酸を、標準的な方法(例えば、プラスミド、ウイルス、リポソーム、マイクロカプセル、非ウイルスベクターによるか、裸のDNAとして)を使用して形質転換する。
【0100】
1つの実施形態では、宿主系は、昆虫細胞、哺乳動物細胞、ウイルス、または細菌パッケージング細胞などの宿主細胞であり得る。例えば、AAVベクターを製造するための宿主系は、例えば、宿主系が昆虫細胞である場合、バキュロウイルス発現系をさらに含むことができる。バキュロウイルス発現系は、バキュロウイルス感染昆虫細胞からのウイルスの効率的な大量産生および組換えタンパク質の発現のために設計されている。バキュロウイルス発現系は、例えば、米国特許第6919085B2号;同第6225060B1号;同第5194376A号(各々の内容全体が本明細書中で参考として援用される)にさらに記載されている。昆虫細胞の例には、Sf9、Sf21、Hi-5、およびS2の各昆虫細胞株が含まれるが、これらに限定されない。
【0101】
別の実施形態では、宿主系は無細胞系である。例えば、ベクターを合成し、in vitro系でアセンブリすることができる。必要とされる酵素タンパク質(例えば、レンチウイルスについてはpol;AAVについてはRep)を発現するカセットを調製することができる。1つの実施形態では、無細胞系はヘルパーファージ粒子を含む。ヘルパーファージ粒子(例えば、M13K07)は、ファージベクターを使用する場合に粒子形成に必要な遺伝子産物を提供する。ヘルパーファージ粒子は、例えば、(2005)Helper Phage.In:Encyclopedic Reference of Genomics and Proteomics in Molecular Medicine.Springer,Berlin,Heidelberg(その内容全体が本明細書中で参考として援用される)にさらに概説されている。
【0102】
必要とされる構造タンパク質を発現する他のカセット(例えば、レンチウイルスについてはgagおよびenv;AAVについては、VP1、VP2、およびVP3を発現するcap遺伝子)をアセンブリすることができる。LTRまたはITRなどのパッケージング配列の間に最終的に隣接する所望の導入遺伝子に作動可能に連結された遺伝子を有する別のベクターが合成されるであろう。これを実施するための種々の方法が当該分野で公知である。ベクター産生のための無細胞系は、例えば、Cerqueira A.,et al.Journal of Virology,2016;Sheng J.,et al.The Royal Society of Chemistry,2017;およびSvitkin Y.V.,and Sonenberg N.Journal of Virology,2003(その内容全体が本明細書中で参考として援用される)にさらに記載されている。
【0103】
複製起点
【0104】
本明細書中に記載のテンプレートは、繊維状ファージ(Ffファージ)由来の少なくとも1つの複製起点(ORI)(すなわち、複製が開始される部位)を含む。繊維状ファージORIは、周知の通り、複製の開始、複製の終結、および複製によって産生された複製形態のパッケージングのための部位を定義するファージゲノム領域である。ファージのみに由来するORIを有する(すなわち、ファージ以外の生物に由来するORIを含まない)プラスミドは、ファージミドとして公知である。繊維状ORIを介したファージミドの複製は、例えば、Specthrie,L,et al.Journal of Mol Biol.V.228(3),1992;およびNafisi,PM,et al.Synthetic Biol.2018(その各々の内容全体が、本明細書中で参考として援用される)にさらに概説されている。本発明で用いる適切な繊維状ファージORIは、M13、f1、またはfdファージ複製起点である。
【0105】
本明細書中に記載のファージORIを用いることは、複製を開始させるためのヘルパーファージが必ずしも必要でなく、複製物におけるヘルパーファージ汚染の可能性が排除されるので有利である。本明細書中に記載のファージORIは、一本鎖環状物(すなわち、環状核酸)の複製を独立して開始させる。
【0106】
本発明のORIは、テンプレート上のその位置に関して制限されない。ORIは、少なくとも1つのITRまたは少なくとも1つの切断部位の上流または下流に配置することができる。1つの実施形態では、ORIは左TRの上流にある。1つの実施形態では、ORIは、TRに隣接し、かつ導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモーター配列の上流にある。
【0107】
1つの実施形態では、テンプレートはF1 ORIを含む。F1は、ファージ粒子の複製およびssDNAのパッケージングが可能なファージ由来ORIである。1つの実施形態では、F1に由来するORIは、配列番号235のヌクレオチド配列を有する。
【化1】
【0108】
別の実施形態では、ORIはM13に由来する。M13 ORIは、テンプレートのM13ヘルパー依存複製を容易にする。1つの実施形態では、M13に由来するORIは、配列番号236のヌクレオチド配列を有する。
【化2】
【0109】
1つの実施形態では、少なくとも1つのORIは、野生型ORIと比較して変異した第2のORIを含む。変異したORIは、単一のヌクレオチド変異(例えば、ヌクレオチドの欠失、挿入、または置換)を含むことができるか、野生型ORI配列の少なくとも1つの部分(例えば、少なくとも5つのヌクレオチド)を欠くように短縮され得る。変異ORIは、非機能的ORIであり得る。例えば、非機能的ORIは、野生型ORIの機能(例えば、複製の開始)が低下しているか、完全に喪失されているであろう。
【0110】
1つの実施形態では、変異ORIは変異F1 ORI(F1-ORIΔ29)である。変異ORIΔ29は、複製開始能力を欠く短縮F1 ORIである。ORIΔ29は、例えば、Specthrie,L,et al.Journal of Mol Biol.V.228(3),1992にさらに概説されている。1つの実施形態では、ORIΔ29は、配列番号237のヌクレオチド配列を有する。
【化3】
【0111】
1つの実施形態では、変異ORIは変異M13 ORI(M13-ORIΔ29)である。変異ORIΔ29は、複製開始能力を欠く短縮M13 ORIである。1つの実施形態では、ORIΔ29は、配列番号238のヌクレオチド配列を有する。
【化4】
【0112】
本明細書中に記載の環状核酸は、他のタイプおよび種のORIを含まず、例えば、ベクターは、細菌または哺乳動物のORIを含まない。
【0113】
ある特定の例では、ORIは、複製後にテンプレートから切り取られる。1つの実施形態では、ORIは少なくとも2つの切断部位に隣接している(すなわち、切断部位はORIのすぐ上流に配置され、第2の切断部位はORIのすぐ下流に配置されている)。この配置を有するテンプレートは複製後に切断されて、テンプレートからORIが除去される。被験体への導入遺伝子送達のためのテンプレートがファージORIを含まないことが本明細書中で特に意図される。
【0114】
ある特定のORIには、複製を開始するためのさらなる細胞成分が存在することが必要である。例えば、M13 ORIには、M13由来ヘルパーファージが必要である。1つの実施形態では、ファージ由来ORIには、例えば、一本鎖テンプレートのin vitro複製中にヘルパーファージが存在することが必要である。1つの実施形態では、宿主系は、ヘルパーファージを一過性に発現する。例えば、ヘルパーファージを、テンプレートの発現前、発現後、または発現と実質的に同時に宿主系で発現させることができる。別の実施形態では、宿主系は、ヘルパーファージを構成性に発現する。当業者は、特定のORIでの複製開始のためにさらなる成分(例えば、ヘルパー遺伝子)が必要であるかどうかを査定することができるであろう。
【0115】
末端反復
【0116】
本明細書中に記載のテンプレートは、少なくとも1つの末端反復(TR)(例えば、逆位末端配列(ITR))を含む。例えば、テンプレートは、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、またはそれを超えるTRを含むことができる。1つの実施形態では、第2のTRが存在し、導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモーター配列の両側がTRに隣接している。
【0117】
種々の実施形態では、TRはITRである。ITRは、ヘアピン構造を形成し、逆位末端配列として機能する(すなわち、複製、組み込み、および/またはプロウイルス救出などの所望の機能を媒介する)任意のウイルス末端反復または合成配列を含む。ITRは、AAV ITRまたは非AAV ITRであり得る。例えば、非AAV ITR配列(他のパルボウイルス(例えば、イヌパルボウイルス、ウシパルボウイルス、マウスパルボウイルス、ブタパルボウイルス、ヒトパルボウイルスB-19)の非AAV ITR配列など)またはSV40複製起点としての機能を果たすSV40ヘアピンを、ITRとして使用することができ、ITRを、短縮、置換、欠失、挿入、および/または付加によってさらに改変することができる。さらに、ITRは、例えば、米国特許第9,169,494号(その内容全体が本明細書中で参考として援用される)に記載のように、部分的または完全に合成され得る。典型的には、ITRは145ヌクレオチド長である。末端の125個のヌクレオチドが回文構造の二本鎖T型ヘアピン構造を形成する。この構造において、A-A’パリンドロームがステムを形成し,2つの小さい方のパリンドロームB-B’およびC-C’がTのクロスアームを形成する。D配列中の他の20個のヌクレオチドは一本鎖のままである。AAVゲノムの文脈において、2つのITR(ゲノムの各末端に1つずつ)が存在するであろう。
【0118】
AAV ITRは、任意のAAV(セロタイプ1、2、3a、3b、4、5、6、7、8、9、10、11、または13が含まれるが、これらに限定されない)、ヘビAAV、トリAAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、ヒツジAAV、ヤギAAV、エビAAV、または現在公知であるか、その後に発見される任意の他のAAVに由来してよい。AAV ITRは、末端反復が所望の機能(例えば、複製または組み込み)を媒介する限り、未変性の末端反復配列を有する必要はない(例えば、未変性のAAV ITR配列を、挿入、欠失、短縮、および/またはミスセンス変異によって変更してよい)。
【0119】
1つの実施形態では、ITRは野生型ITRである。別の実施形態では、ITRは変異体ITRである。変異体ITRは、非機能的ITRであり得る。例えば、非機能的ITRは、野生型ITRの機能(例えば、複製、組み込み、および/またはプロウイルス救出を媒介する)が低下しているか、完全に喪失されているであろう。
【0120】
1つの実施形態では、変異体ITRはDD変異体ITR(DD-ITR)である。DD-ITRは、元のITRと同一の配列を有するが、A配列に隣接する第2のD配列を含み、したがって、DおよびD’が存在する。DおよびD’をアニーリングすることができる(例えば、米国特許第5,478,745(その内容が本明細書中で参考として援用される)に記載)。各Dは、典型的には、約20nt長であるが、5ヌクレオチド長ほどの大きさしかない場合がある。より短いD領域は、A-Dジャンクションを保存している(例えば、3’末端でのA-Dジャンクションを保存する欠失によって生成される)。好ましくは、D領域は、ニッキング部位および/またはA-Dジャンクションを保持している。DD-ITRは、典型的には、約165ヌクレオチドである。DD-ITRは、DNA構築物の複製のためのシスの情報を提供する能力を有する。したがって、DD-ITRは、例えば、図1に示すように、ホリデイ構造を形成することができるDエレメントおよびD’エレメントに隣接する逆位回文配列(例えば、5’から3’への方向の配列5’-DABB’CC’A’D’-3’の(+)鎖および5’から3’への方向の配列5’-DACC’BB’A’D’-3’を有する(+)鎖に相補的な(-)鎖)を有する。ある特定の実施形態では、DD-ITRは、その成分(例えば、A-C)が欠失していてよく、一方で、DエレメントおよびD’エレメントが依然として保持されている。ある特定の実施形態では、ITRは、ホリデイ構造を形成する能力を依然として保持し、かつ2コピーのDエレメント(DおよびD’)を保持する欠失を含む。DD-ITRを、未変性のAAV ITRまたは合成ITRから生成することができる。ある特定の実施形態では、欠失はB領域エレメントにある。ある特定の実施形態では、欠失はC領域エレメントにある。ある特定の実施形態では、欠失は、ITRのBエレメント内およびCエレメント内の両方にある。1つの実施形態では、Bエレメントおよび/またはCエレメントの全体が欠失しており、例えば、単一のヘアピンエレメントと置換されている。1つの実施形態では、テンプレートは、少なくとも2つのDD-ITRを含む。
【0121】
合成ITRは、1またはそれを超える欠失、付加、置換、またはこれらの任意の組み合わせに起因して野生型ITR(例えば、AAVセロタイプ2ITR(ITR2)配列)とヌクレオチド配列が異なる天然に存在しないITRを指す。合成ITR配列と野生型ITR(例えば、ITR2)配列との間の相違は、単一ヌクレオチドの変化ほど小さくてよい(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、60、70、80、90、または100またはそれを超えるヌクレオチドまたはこれらの任意の範囲の変化)。いくつかの実施形態では、合成ITR配列と野生型ITR(例えば、ITR2)配列との間の相違は、わずか約100、90、80、70、60、50、45、40、35、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1ヌクレオチドまたはこれらの間の範囲でよい。
【0122】
さらなるTR(例えば、長末端反復(LTR))を、本発明で使用することができる。
【0123】
1つの実施形態では、テンプレート上に存在するITRを、例えば、AAVベクターの産生のために使用することができる。AAVベクターの産生方法は、上に記載されている。
【0124】
切断部位
【0125】
本明細書中に記載のテンプレートは、テンプレートの他のエレメントに隣接している少なくとも1つの切断部位を含む。切断部位は、ホスホジエステルバックボーンが選択的に破壊されるヌクレオチド配列である。例えば、酵素がホスホジエステルバックボーンを配列内の選択された部位で切断するので、ヌクレアーゼによって認識されるヌクレオチド配列は切断部位である。かかる切断部位は、エンドヌクレアーゼに応じて一本鎖または二本鎖であってよい。化学的切断部位(マクサム・ギルバート配列決定法で行われるピリミジン切断反応およびプリン切断反応、または米国特許第4,795,700号(本明細書中で参考として援用される)に記載の酸化などの化学的方法による切断など)も含まれる。
【0126】
1つの実施形態では、テンプレートは、少なくとも1つの第2の切断部位をさらに含み、テンプレート上の前述の部位内にさらなるエレメント(例えば、少なくとも1つのORI、少なくとも1つのTR、および治療導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモーター)を、少なくとも2つの切断部位がこれらのエレメントに隣接するように含む。1つの実施形態では、第3の切断部位がORIのすぐ下流に配置されている。
【0127】
1つの実施形態では、切断部位は、ヌクレアーゼによって切断される。本明細書中で使用される場合、用語「ヌクレアーゼ」は、DNA切断活性を保有する分子を指す。ヌクレアーゼ剤の特定の例には、亜鉛フィンガータンパク質、メガヌクレアーゼ、TALドメイン、TALEN、酵母アセンブリ、リコンビナーゼ、ロイシンジッパー、CRISPR/Cas、エンドヌクレアーゼ、および当業者に公知の他のヌクレアーゼが含まれる。ヌクレアーゼを、所与の標的部位(例えば、切断部位)を特異的に切断するように選択するか、設計することができる。例えば、切断されたポリヌクレオチドと異なるポリヌクレオチドとの間に重複末端が作出されるように標的部位で切断するためのヌクレアーゼを選択することができる。本明細書中で使用される場合、用語「ヌクレアーゼの認識部位」は、ヌクレアーゼによってニックまたは二本鎖切断が誘導されるDNA配列を指す。
【0128】
1つの実施形態では、ヌクレアーゼはプロテロメラーゼであり、切断部位はプロテロメラーゼ標的配列(例えば、TelN認識部位)である。プロテロメラーゼ標的配列は、DNAテンプレート中に存在するとプロテロメラーゼの酵素活性によって閉鎖型直鎖DNAに変換可能な任意のDNA配列である。換言すれば、プロテロメラーゼ標的配列は、プロテロメラーゼによって二本鎖DNAを切断および再ライゲーションして共有結合によって閉鎖された線状DNAを形成するために必要である。
【0129】
典型的には、プロテロメラーゼ標的配列は、本明細書中で完全逆位反復とも記載される任意の完全な回文配列(すなわち、2回回転対称性を有する任意の二本鎖DNA配列)を含む。米国特許第9,109,250号(その内容全体が本明細書中で参考として援用される)に示されるように、種々の中温性バクテリオファージおよび細菌プラスミド由来のプロテロメラーゼ標的配列は全て、完全逆位反復を含むという共通の特徴を有する。完全逆位反復の長さは、特定の生物に応じて異なる。Borrelia burgdorferiでは、完全逆位反復は、14塩基対長である。種々の中温性バクテリオファージにおいて、完全逆位反復は、22塩基対長またはそれを超える。また、一部の例(例えば、E.coli N15)では、中央の完全逆位パリンドロームは、逆位反復配列に隣接する(すなわち、より巨大な不完全逆位パリンドロームが形成される)。
【0130】
1つの実施形態では、プロテロメラーゼは、配列番号239の配列を有する。
【0131】
配列番号239は、プロテロメラーゼのヌクレオチド配列である。
【化5】
【0132】
1つの実施形態では、ヌクレアーゼは制限エンドヌクレアーゼであり、切断部位はエンドヌクレアーゼの認識部位(すなわち、制限部位)である。制限エンドヌクレアーゼは、DNA分子の部位特異的切断を触媒することができる加水分解酵素である。制限エンドヌクレアーゼ作用の遺伝子座は、特異的ヌクレオチド配列の存在によって決定される。かかる配列は、制限エンドヌクレアーゼの認識部位と呼ばれる。種々の供給源由来の制限エンドヌクレアーゼは、その認識部位(すなわち、制限部位)のヌクレオチド配列が単離され、特徴づけられている。いくつかの制限エンドヌクレアーゼは、両方の鎖上の同一の点のホスホジエステル結合を加水分解して、平滑末端を産生する。相互に由来する少数のヌクレオチドによって分離された結合の加水分解を触媒して、切断された分子の各末端に遊離一本鎖領域を産生する制限エンドヌクレアーゼもある。かかる一本鎖末端は自己相補性を示し、それ故に付着性があり、加水分解されたDNAを再連結するために使用され得る。かかる酵素による切断に感受性を示す任意のDNAが同一の認識部位を含むはずであるので、同一の付着末端が産生され、その結果、制限エンドヌクレアーゼで処置されているDNAの異種配列を、同様に処置された他の配列に連結することが可能である。Roberts,R.J.,Crit.Rev.Biochem.4,123(1976)を参照のこと。制限部位は、その存在が比較的稀であるが、制限エンドヌクレアーゼを一般的に利用すると、制限部位配列を保有する二本鎖オリゴヌクレオチドの化学合成によって大量に増幅される。したがって、DNAの実質的に任意のセグメントを、適切な制限オリゴヌクレオチドを分子の末端に付着させることによって任意の他のセグメントにカップリングし、産物を適切な制限エンドヌクレアーゼで加水分解することによって必要な付着末端を産生することができる。Heyneker,H.L.,et al.,Nature 263,748(1976)およびScheller,R.H.,et al.,Science 196,177(1977)を参照のこと。制限エンドヌクレアーゼ認識部位の分布の重要な特徴は、前述の部位が読み枠に関して無作為に分布することである。したがって、隣接コドンの間で制限エンドヌクレアーゼによる切断が起こり得るか、この切断がコドン内で起こり得る。
【0133】
制限部位を、その認識部位の塩基数(例えば、通常は4塩基と8塩基の間)によって分類することができる。配列中の塩基数により、任意の所与のゲノム内で偶然に認識部位が出現する頻度が決定されるであろう(例えば、4塩基対配列は、理論的には、4すなわち256bp毎に1回、6塩基では4すなわち4,096bp毎に1回、および8塩基では4すなわち65,536bp毎に1回認識部位が生じるであろう)。制限部位は回文構造(塩基配列を逆方向および順方向のいずれから読んでも同じであることを意味する)であることが多い。ミラー様回文構造は、通常のテキストにおいて見いだされるものと類似しており、DNAの一本鎖の配列を順方向および逆方向のいずれから読んでも同じである(例えば、GTAATG(配列番号240))。また、逆位反復パリンドロームは、順方向および逆方向のいずれから読んでも同じであるが、順方向および逆方向の配列が相補DNA鎖(すなわち、二本鎖DNA)に見いだされる配列である(例えば、GTATAC(配列番号241)は、CATATG(配列番号242)と相補的である)。逆位反復パリンドロームはより多く認められ、ミラー様パリンドロームより生物学的に重要である。
【0134】
1つの実施形態では、テンプレート中の制限部位は、一般的ではない制限部位である(すなわち、前述の部位は、導入遺伝子配列中に一般的に見いだされない)。例えば、制限部位は、ミラー様パリンドローム制限部位、すなわち8塩基対の制限部位である。1つの実施形態では、テンプレートで使用される制限部位は、本発明の導入遺伝子(すなわち、治療導入遺伝子)中に見いだされない。当業者は、例えば、基本的な局所アラインメント検索ツール(BLAST)を使用して制限部位および導入遺伝子配列のヌクレオチドアラインメントを行うことによって、特定の制限部位が特定の導入遺伝子配列内に見いだされるかどうかを査定することができる。
【0135】
1つの実施形態では、制限部位は、表1から選択される。表1から制限部位を選択する場合、その制限部位の切断に対応する制限酵素を使用する。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【0136】
表1では、全ての制限部位を、一文字表記による命名法を使用して5’から3’への方向で記載し、切断点を「/」で示す。括弧内の数字は、非回文構造の酵素の切断点を示す。例えば、GGTCTC(1/5)は、5’...GGTCTCN/...3’およびその相補物3’...CCAGAGNNNNN/...5’での切断を示す。
【0137】
1つの実施形態では、テンプレートは、少なくとも1つのSwaI制限部位(例えば、少なくとも1つ、少なくとも2つ、またはそれを超えるSwaI制限部位)を含む。SwaI制限部位は、5’-ATTTAAAT-3’(配列番号27)のオクタヌクレオチド配列を有する。SwaI制限酵素は、制限配列の中央を切断して平滑末端化したDNA断片が作出される。
【0138】
1つの実施形態では、少なくとも2つの制限部位は同じである。例えば、テンプレートは、2つのSf1制限部位を含むことができる。あるいは、少なくとも2つの制限部位は異なる。例えば、テンプレートは、Sfi1制限部位およびMwoI制限部位を有することができる。1つの実施形態では、少なくとも2つの相補SwaI配列をアニーリングして、テンプレート配列内にループを形成する。SwaIループを、SwaI制限酵素で切断することができる。
【0139】
典型的には、切断部位を切断するために、核酸を、切断部位を活性化する酵素(例えば、プロテロメラーゼまたは制限酵素)に、切断部位を切断するのに十分な時間および条件下で接触させる。当業者は、正確な条件(例えば、温度、反応における試薬の濃度、および所与の酵素についての接触タイミング)を決定することができる。例えば、公知の制限酵素についての正確な条件を、ワールド・ワイド・ウェブwww.enzymefinder.neb.comで見出すことができる。
【0140】
アダプター配列
【0141】
アダプター配列は、短鎖で合成された一本鎖または二本鎖のオリゴヌクレオチドであり、他のDNA分子またはRNA分子の末端にライゲートすることができる。1つの実施形態では、本明細書中に記載のアダプター配列は、一本鎖であり、例えば、ヘアピンループを介してライゲートされるDNAを閉鎖する。アダプター配列は、DNAの環状化手段として、切断されたプラスミド断片の一方または両方の末端に付加される。1つの実施形態では、アダプター配列はプラスミド断片にライゲーションされ、アダプター配列はアダプター配列がライゲーションされた切断DNAの末端での閉鎖を指示する(例えば、図1~5、7、または9を参照のこと)。DNA末端を閉鎖するために使用することができるアダプタータンパク質の例には、例えば、米国特許出願公開第2009/0098612号;および米国特許第6,369,038号;同第6,451,563号;同第6,849,725号(その内容全体が本明細書中で参考として援用される)にさらに記載のヘアピンループが含まれる。プラスミドから切り出されたプラスミド断片の切断末端に付加した場合にDNAを環状化することができる任意の配列がアダプター配列であり得ることが想定される。
【0142】
種々の実施形態では、アダプター配列または相補アダプター配列を、ヌクレアーゼ(例えば、制限酵素)によって切断されたプラスミド断片の粘着末端にライゲーションする。アダプター配列を、本明細書中に記載の方法によって任意のプラスミド断片にハイブリッド形成することができる。1つの実施形態では、アダプター配列は、プラスミド断片へのアダプター配列のライゲーション/ハイブリッド形成を容易にする制限部位配列をさらに含み、プラスミド断片は、プラスミドからのプラスミド断片の切り出し後に前述の制限部位と同一または相補的な制限部位を有する。当業者は、例えば、標準的なサブクローニング法またはPCRベースの技術を使用してアダプター配列に制限部位配列を付加する方法を承知しているであろう。制限部位配列を有するアダプター配列をライゲーションするために、例えば、アダプター配列を対応する制限酵素と接触させることによって制限部位を切断しなければならない。制限部位および相補制限部位をライゲーションする方法は、当該分野で周知であり、例えば、ワールド・ワイド・ウェブwww.neb.comで見出すことができる。例えば、切り出されたベクターおよびアダプタータンパク質を、リガーゼ(例えば、T4リガーゼ)およびATPの存在下にてin vitroでインキュベートする。
【0143】
例として、配列番号243の配列を有するヘアピンループアダプター配列は、Sfi1制限部位配列(例えば、配列番号161)をさらに含むことができる。Sfi1制限部位配列を有するアダプター配列を、制限酵素Sfi1で、制限部位を切断するのに十分な時間にわたって消化することができる。これにより、Sfi1制限酵素によって切り出されたプラスミド断片にアダプタータンパク質をハイブリッド形成するために使用することができる「粘着末端」がアダプター配列上に作出されるであろう。
【0144】
配列番号243は、ヘアピンループアダプタータンパク質のヌクレオチド配列である。
【化6】
【0145】
プロモーター
【0146】
1つの実施形態では、導入遺伝子は、プロモーターに作動可能に連結されている。導入遺伝子の発現を指示する種々のプロモーターを、本明細書中に記載している。例には、構成性プロモーター、抑制性プロモーター、および/または誘導性プロモーターが含まれるが、これらに限定されず、これらのプロモーターのいくつかの非限定的な例には、ウイルスプロモーター(例えば、CMV、SV40)、組織特異的プロモーター(例えば、筋肉MCK、心臓(例えば、NSE)、眼(例えば、MSK))、および合成プロモーター(SP1エレメント)、およびニワトリβアクチンプロモーター(CBまたはCBA)が含まれる。プロモーターは、ヌクレアーゼ配列と作動可能に関連する任意の位置に存在することができる。
【0147】
誘導性プロモーター
【0148】
誘導性プロモーターは、インデューサーの存在、リプレッサーの非存在、または誘導性プロモーター由来の転写を誘導するのに適切な任意の他の物理的または化学的条件によって誘導されるプロモーターであり得る。用語「インデューサー」および「誘導条件」などは、そのように理解されるべきである。
【0149】
非限定的な例として、本発明の実施形態で用いる誘導性プロモーターは、小分子誘導性プロモーター、テトラサイクリン制御性(例えば、誘導性または抑制性)プロモーター、アルコール誘導性プロモーター、ステロイド誘導性プロモーター、ミフェプリストン(RU486)誘導性プロモーター、エクジソン誘導性プロモーター、ラパマイシン誘導性プロモーター、メタロチオネイン誘導性プロモーター、ホルモン誘導性プロモーター、cumate誘導性プロモーター、温度誘導性プロモーター、pH誘導性プロモーター、および金属誘導性プロモーターであってよい。
【0150】
温度誘導性プロモーター-誘導性プロモーターは、温度低下によって誘導され得る(例えば、低温ショック応答性プロモーター)。いくつかの実施形態では、誘導性プロモーターは、CHO細胞のS1006a遺伝子(カルサイクリン)に由来する合成低温ショック応答性プロモーターである。S1006a遺伝子(カルサイクリン)プロモーターの温度感受性は、Thaisuchat et al.,2011(Thaisuchat,H.et al.(2011)’Identification of a novel temperature sensitive promoter in cho cells’,BMC Biotechnology,11.doi:10.1186/1472-6750-11-51)(本明細書中で参考として援用される)によって同定された。いくつかの実施形態では、誘導性プロモーターは、Thaisuchat et al.,2011の図2に示された合成低温ショック応答性プロモーターの1つである。これらのプロモーターは、Thaisuchat et al.,2011の図3に示されるように、温度低下によって誘導される。これらの合成プロモーター構築物のうちのほとんどは、37℃での公知のプロモーターSV40に類似の発現を示し、温度を33℃に低下させた場合には2~3倍誘導される。いくつかの実施形態では、誘導性プロモーターは、Thaisuchat et al.,2011の図2の由来のsps5である。いくつかの好ましい実施形態では、誘導性プロモーターは、Thaisuchat et al.,2011の図2由来のsps8である。
【0151】
pH誘導性プロモーター-誘導性プロモーターは、プロモーターを含む細胞が曝露されたpHの低下または上昇によって誘導され得る。適切には、誘導性プロモーターは、pH低下によって誘導され得る(すなわち、酸性条件下で誘導可能なプロモーター)。適切な酸性誘導性プロモーターは、Hou et al.,2016(Hou,J.et al.(2016)’Isolation and functional validation of salinity and osmotic stress inducible promoter from the maize type-II H+-pyrophosphatase gene by deletion analysis in transgenic tobacco plants’,PLoS ONE,11(4),pp.1-23.doi:10.1371/journal.pone.0154041))(本明細書中で参考として援用される)に記載されている。
【0152】
いくつかの実施形態では、誘導性プロモーターは、YGP1遺伝子またはCCW14遺伝子に由来する酸性条件下で誘導可能な合成プロモーターである。酸性条件によるYGP1遺伝子またはCCW14遺伝子の誘導性は、Rajkumar et al.,2016(Rajkumar,A.S.et al.(2016)’Engineering of synthetic,stress-responsive yeast プロモーター’,44(17).doi:10.1093/nar/gkw553)(本明細書中で参考として援用される)によって研究され、転写因子結合部位を改変することによって改良された。いくつかの実施形態では、誘導性プロモーターは、Rajkumar et al.,2016の図1A、2A、3A、および4Aにおける酸性条件下で誘導可能な合成プロモーターのうちの1つである。これらのプロモーターは、Rajkumar et al.,2016の図1B、2B、3B、および4Bに示すように、pHの低下によって誘導される。これらの合成プロモーターのうちのほとんどは、pH6からpH3に低下した場合に最大10~15倍誘導される。いくつかの好ましい実施形態では、誘導性プロモーターは、Rajkumar et al.,2016の図1由来のYGP1prである。他の好ましい実施形態では、誘導性プロモーターは、Rajkumar et al.,2016の図1由来のYGP1prである。
【0153】
容量オスモル濃度誘導性プロモーター-誘導性プロモーターは、容量オスモル濃度誘導性プロモーターであり得る。容量オスモル濃度によって誘導される適切なプロモーターは、Zhang et al.(Molecular Biology Reports volume 39,pages7347-7353(2012))(本明細書中で参考として援用される)に記載されている。
【0154】
炭素源誘導性プロモーター-誘導性プロモーターは、特定の炭素源(例えば、非糖炭素源)の添加によって誘導され得る。あるいは、誘導性プロモーターは、炭素源の抜き取りまたは非存在によって誘導され得る。種々の炭素源の存在または非存在によって誘導される適切なプロモーターは、Weinhandl et al.,2014(Weinhandl,K.et al.(2014)’Carbon source dependent promoters in yeasts’,Microbial Cell Factories,13(1),pp.1-17.doi:10.1186/1475-2859-13-5)(本明細書中で参考として援用される)に記載されている。
【0155】
アルコール(例えば、エタノール)誘導性プロモーター-誘導性プロモーターは、エタノールの添加によって誘導され得る。エタノールによって誘導される適切なプロモーターは、Matsuzawa et al.(Applied Microbiology and Biotechnology volume97,pages6835-6843(2013))(本明細書中で参考として援用される)に記載されている。
【0156】
アミノ酸誘導性プロモーター-誘導性プロモーターは、1またはそれを超えるアミノ酸の添加によって誘導され得る。適切には、アミノ酸は、芳香族アミノ酸であり得る。適切には、アミノ酸は、GABA(γアミノ酪酸)(神経伝達物質でもある)であり得る。芳香族アミノ酸およびGABAによって誘導される適切なプロモーターは、Kim et al.(Applied Microbiology and Biotechnology,volume 99,pages2705-2714(2015))(本明細書中で参考として援用される)に記載されている。
【0157】
ホルモン(例えば、エクジソン)誘導性プロモーター-誘導性プロモーターは、ステロイドホルモンによって誘導され得る。適切には、ステロイドホルモンは、エクジソンであり得る。哺乳動物エクジソン誘導系は、No,Yao and Evans(No,D.,Yao,T.P.and Evans,R.M.(1996)’Ecdysone-inducible gene expression in mammalian cells and transgenic mice’,Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America,93(8),pp.3346-3351.doi:10.1073/pnas.93.8.3346)(本明細書中で参考として援用される)によって作出された。No,Yao and Evans,1996の図2に示すように、哺乳動物細胞中で改変されたエクジソン受容体を発現させると、エクジソンの添加時にエクジソン応答性プロモーター由来の発現が誘導される。No,Yao and Evans,1996の図6に示すように、この系は、テトラサイクリン誘導系より基本活性が低く、誘導性が高かった。適切な市販の誘導系は、Agilent technologiesから入手可能であり、Agilent Technologies(2015)’Complete Control Inducible Mammalian Expression System Instruction Manual’,217460(本明細書中で参考として援用される)に記載されている。
【0158】
テトラサイクリン制御性プロモーター-いくつかの実施形態では、プロモーターは、テトラサイクリンまたはその誘導体の存在または非存在によって誘導され得る。
【0159】
テトラサイクリンまたはその誘導体の非存在下で誘導される適切なプロモーターは、tet-OFF系におけるプロモーターである。tet-OFF系では、テトラサイクリン調節性トランスアクチベーター(tTA)は、テトラサイクリンまたはその誘導体の非存在下でtTA依存性プロモーターによる転写を活性化可能である。tTAおよびtTA依存性プロモーターは、Gossen and Bujard,1992(Gossen,M.and Bujard,H.(1992)’Tight control of gene expression in mammalian cells by tetracycline-responsive promoters’,Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America,89(12),pp.5547-5551.doi:10.1073/pnas.89.12.5547)(本明細書中で参考として援用される)によって最初に作出された。tTAは、Escherichia coliのTn10でコードされるテトラサイクリン耐性オペロン(tetリプレッサー)の、活性化サイクリン調節性トランスアクチベーター(tTA)との融合によって作出され、tTA依存性プロモーターは、tetオペレーター配列とヒトサイトメガロウイルスプロモーターIE(hCMV-IE)由来の最小プロモーターとの組み合わせによって作出された。テトラサイクリンまたはその誘導体が添加された場合、tTAはtTA依存性プロモーター内のその標的配列にもはや結合することができず、tTA依存性プロモーターに由来する発現は存在しない。これは、Jaisser,2000(Jaisser,F.(2000)’Inducible gene expression and gene modification in transgenic mice’,Journal of the American Society of Nephrology,11(SUPPL.16),pp.95-100)(本明細書中で参考として援用される)の図1Aに示され、96ページで説明されている。テトラサイクリンまたはその誘導体のtTAへの結合によってもたらされる配置変化機序は、Orth et al.,2000(Orth,P.et al.(2000)’Structural basis of gene regulation by the tetracycline inducible Tet repressor-operator system’,Nature Structural Biology,7(3),pp.215-219.doi:10.1038/73324)(本明細書中で参考として援用される)に記載されている。テトラサイクリンがTetRに結合すると結合したDNA結合ドメインの分離が増大し、TetRのそのオペレーターDNAに対する親和性が失われる。
【0160】
テトラサイクリンまたはその誘導体の存在によって誘導される適切なプロモーターは、tet-ON系におけるプロモーターである。Gossen et al(Science23 Jun 1995:Vol.268,Issue5218,pp.1766-1769 DOI:10.1126/science.7792603)(本明細書中で参考として援用される)に記載のように、tet-ON系では、逆テトラサイクリン調節性トランスアクチベーター(rtTA)は、テトラサイクリンまたはその誘導体の存在下でtTA依存性プロモーターによる転写を活性化可能である。テトラサイクリンまたはその誘導体の非存在下では、tTAはtTA依存性プロモーター内のその標的配列にもはや結合することができず、tTA依存性プロモーターに由来する発現は存在しない。これは、Jaisser,2000(Jaisser,F.(2000)’Inducible gene expression and gene modification in transgenic mice’,Journal of the American Society of Nephrology,11(SUPPL.16),pp.95-100)(本明細書中で参考として援用される)の図1Bに示され、96ページで説明されている。
【0161】
適切には、逆テトラサイクリン調節性トランスアクチベーター(rtTA)の改良バリアントを使用する。
【0162】
適切な改良バリアントは、Urlinger et al.,2000(Urlinger,S.et al.(2000)’Exploring the sequence space for tetracycline-dependent transcriptional activators:Novel mutations yield expanded range and sensitivity’,Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America,97(14),pp.7963-7968.doi:10.1073/pnas.130192197)(本明細書中で参考として援用される)の表1に記載されている。バリアントrtTA-S2およびrtTA-M2は、Urlinger et al.,2000の図3(テトラサイクリンまたはその誘導体の非存在下でのtTA依存性プロモーター由来のバックグラウンド発現が最小であることを示す)において基本活性がより低いことを示した。さらに、rtTA-M2は、Urlinger et al.,2000の図3に示すようにテトラサイクリンおよびその誘導体に対する感受性が増加し、rtTAの1/10の濃度で機能する。いくつかの好ましい実施形態では、rtTAの改良バリアントは、Urlinger et al.,2000のrtTA-M2である。
【0163】
別の改良バリアントは、Zhou et al.,2006(Zhou,X.et al.(2006)’Optimization of the Tet-On system for regulated gene expression through viral evolution’,Gene Therapy,13(19),pp.1382-1390.doi:10.1038/sj.gt.3302780)(本明細書中で参考として援用される)の表1に記載されている。Zhou et al.,2006の図3に記載するように、これらのバリアントの大多数は、rtTAより転写活性およびドキシサイクリン感受性が高いことが示された。最も高性能のバリアントは、活性が7倍であり、ドキシサイクリンに対する感受性が100倍であった。いくつかの好ましい実施形態では、rtTAの改良バリアントは、Zhou et al.,2006由来のV14、V15、またはV16である。
【0164】
適切な市販のテトラサイクリン誘導系は、Life-TechnologiesのT-Rex系である(例えば、Life-Technologies(2014)’Inducible Protein Expression Using the T-RExTM System’,1,pp.1-12を参照のこと。以下で入手可能である:www.lifetechnologies.com/de/de/home/references/protocols/proteins-expression-isolation-and-analysis/protein-expression-protocol/inducible-protein-expression-using-the-trex-system.reg.us.html/)。
【0165】
例えば、テトラサイクリン非存在かつエストロゲン存在下での誘導-誘導性プロモーターは、ある分子の非存在かつ異なる分子の存在によって誘導され得る。いくつかの実施形態では、Iida et al.,1996(Iida,A.et al.(1996)’Inducible gene expression by retrovirus-mediated transfer of a modified tetracycline-regulated system.’,Journal of virology,70(9),pp.6054-6059.doi:10.1128/jvi.70.9.6054-6059.1996)(本明細書中で参考として援用される)に記載のように、誘導性プロモーターは、テトラサイクリンの除去およびエストロゲンの添加によって誘導され得る。この特異的誘導性は、tTAトランスアクチベーターのカルボキシ末端へのエストロゲン受容体のリガンド結合ドメインの付加によって得られた。Iida et al.,1996の図3に示すように、かかる改変トランスアクチベーターは、テトラサイクリンの非存在かつエストロゲンの存在において目的の遺伝子の高発現を示した。
【0166】
小分子エンハンサーによる誘導-誘導性プロモーターは、小分子エンハンサーによって誘導され得る。小分子エンハンサー(芳香族カルボン酸、ヒドロキサム酸、およびアセトアミドなど)によって誘導される適切なプロモーターは、Allen et al.(Biotechnol.Bioeng.2008;100:1193-1204)(本明細書中で参考として援用される)に記載されている。
【0167】
ミフェプリストン(RU-486)誘導性プロモーター-誘導性プロモーターは、合成ステロイドによって誘導され得る。いくつかの実施形態では、誘導性プロモーターは、RU-486としても公知のミフェプリストンによって誘導され得る。ハイブリッドミフェプリストン(mifespristone)応答性転写因子であるLexPRトランスアクチベーターは、Emelyanov and Parinov,2008(Emelyanov,A.and Parinov,S.(2008)’Mifepristone-inducible LexPR system to drive and control gene expression in transgenic zebrafish’,Developmental Biology,320(1),pp.113-121.doi:10.1016/j.ydbio.2008.04.042(本明細書中で参考として援用される))により、細菌LexAリプレッサーのDNA結合ドメイン、ヒトプロゲステロン受容体の短縮リガンド結合ドメイン、およびヒトNF-kB/p65タンパク質の活性化ドメインの融合によって作出された。Emelyanov and Parinov、2008の図1および図2に示すように、ミフェプリストンを添加すると、LexPRは、LexA結合部位を保有するプロモーター配列に由来する発現を誘導する。適切な市販のミフェプリストン誘導系は、GeneSwitch Systemである(例えば、Fisher,T.(1994)’Inducible Protein Expression Using GeneSwitch TM Technology’,pp.1-25を参照のこと)。
【0168】
Cumate誘導性プロモーター-いくつかの実施形態では、誘導性プロモーターは、cumateの存在または非存在によって誘導され得る。
【0169】
Mullick et al.,2006(Mullick,A.et al.(2006)’The cumate gene-switch:A system for regulated expression in mammalian cells’,BMC Biotechnology,6,pp.1-18.doi:10.1186/1472-6750-6-43(本明細書中で参考として援用される))のcumateスイッチ系では、リプレッサーCymRがプロモーターの下流に配置されたCuO配列を含むプロモーター由来の転写を遮断する。cumateが添加された時点で、CymRリプレッサーは、CuOに結合することができず、CuOを含むプロモーター由来の転写を進行することができる。これは、Mullick et al.,2006の図1Bおよび図2に示されている。
【0170】
別のcumateスイッチ系では、VP16の活性化ドメインとのCymRの融合から作出されたキメラトランスアクチベーター(cTA)は、cumateの存在下でプロモーターの上流にCuO配列を含むプロモーターに由来する転写を防止しない。cumateの非存在下では、キメラトランスアクチベーター(cTA)は、CuO配列に結合し、転写を防止する。これは、Mullick et al.,2006の図1Cおよび図3に示されている。
【0171】
第3の立体配置では、逆キメラトランスアクチベーター(rcTA)は、cumateの非存在下でプロモーターの上流にCuO配列を含むプロモーターに由来する転写を防止する。cumateの存在下では、rcTAはCuO配列に結合し、CuO配列含むプロモーター由来の転写を進行することができる。これは、Mullick et al.,2006の図1Dおよび図7に示されている。
【0172】
適切な市販のcumate誘導系は、SBI Biosciences(SBI(2020)’Cumate-inducible Systems For the ultimate in gene expression control,use SBI’s cumate-CUMATE-INDUCIBLE SYSTEMS’,pp.1-13(本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)に見出される。
【0173】
4-ヒドロキシタモキシフェン(OHT)誘導性プロモーター-誘導性プロモーターは、4-ヒドロキシタモキシフェン(OHT)によって誘導され得る。適切な4-ヒドロキシタモキシフェン 誘導性プロモーターは、Feil et al.(Biochemical and Biophysical Research Communications Volume237,Issue3,28 August 1997,Pages752)(本明細書中で参考として援用される)によって記載されている。
【0174】
gas誘導性プロモーター-誘導性プロモーターは、gas誘導性プロモーター(例えば、アセトアルデヒド誘導性プロモーター)であり得る。適切なgas誘導性プロモーターは、Weber et al.,2004(Weber,W.et al.(2004)’Gas-inducible transgene expression in mammalian cells and mice’,Nature Biotechnology,22(11),pp.1440-1444.doi:10.1038/nbt1021)(本明細書中で参考として援用される)に記載されている。図1Aに示すように、Asperigillus nidulans由来の未変性のアセトアルデヒド誘導AlcR-PalcA系は、AlcR特異的オペレーターモジュールをヒト最小プロモーターに導入すること(合わせてPAIRと呼ばれる)によって哺乳動物用に適合されている。図1C図2、および図3に示すように、AlcRが目的の細胞内に構成性に発現される場合、アセトアルデヒドを導入すると、アセトアルデヒドはAlcRに結合し、次いで、PAIRプロモーターの調節下にある目的の遺伝子が発現される。アセトアルデヒドの非存在下では、目的の遺伝子は発現されない。
【0175】
リボスイッチ、リボザイム、およびアプタザイム誘導性プロモーター-誘導性プロモーターは、リボザイムの存在または非存在によって誘導され得る。リボザイムを、同様に、リガンドによって誘導することができる。
【0176】
誘導性プロモーターは、代謝産物の非存下で誘導され得る。いくつかの実施形態では、代謝産物は、グルコサミン-6-リン酸応答性であり得る。グルコサミン-6-リン酸応答性遺伝子リプレッサーとして作用する適切なリボザイムは、Winkler et al.,2004(Winkler,W.C.et al.(2004)’Control of gene expression by a natural metabolite-responsive ribozyme’,Nature,428(6980),pp.281-286.doi:10.1038/nature02362)(本明細書中で参考として援用される)に記載されている。リボザイムは、図2Cに示した濃度に依存する様式でグルコサミン-6-リン酸によって活性化され、glmS遺伝子の伝令RNAを切断する。改変すると、この天然系をglmS遺伝子以外の目的の遺伝子の制御のために適用することが可能である。
【0177】
また、タンパク質発現を、リガンド誘導性アプタザイムによって下方制御することができる。タンパク質発現を、リボザイムの小分子誘導自己切断によりmRNAが分解されることによってタンパク質発現を下方制御するアプタザイムによって下方制御することができる(Zhong et al.,2016(Zhong,G.et al.(2016)’Rational design of aptazyme riboswitches for efficient control of gene expression in mammalian cells’,eLife,5(NOVEMBER2016).doi:10.7554/eLife.18858)(本明細書中で参考として援用される))。適切なアプタザイムは、(Zhong et al.,2016)の図4Aに示されている。(Zhong et al.,2016)の図4に示すように、これらのアプタザイムは、目的の遺伝子の相対発現を低下させる。
【0178】
また、タンパク質発現を、少分子依存性リボザイムによって上方制御することができる。リボザイムは、テトラサイクリン依存性であり得る。リガンドの非存在下で本来はmRNAを切断するリボザイム切断を防止することによってタンパク質発現スイッチをオンにすることができる適切なテトラサイクリン依存性リボザイムは、Beilstein et al.(ACS Synth.Biol.2015,4,5,526-534)(本明細書中で参考として援用される)に記載されている。
【0179】
また、Nomura et al.(Chem.Commun.,2012,48,7215-7217)(本明細書中で参考として援用される)に記載のように、タンパク質発現を、グアニン依存性アプタザイムによって制御することができる。
【0180】
さらに、哺乳動物細胞におけるRNAiを化学的に誘導可能なマイクロRNA前駆体アナログと薬物誘導性アロステリックリボザイムを組み合わせたRNA構造は、Kumar et al(J.Am.Chem.Soc.2009,131,39,13906-13907)(本明細書中で参考として援用される)に記載されている。
【0181】
メタロチオネイン誘導性プロモーター-メタロチオネイン誘導性プロモーターは、文献に記載されている。例えば、Shinichiro Takahashi’’Positive and negative regulators of the metallothionein gene’’Molecular Medicine Reports March 9,2015,P795-799(本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。
【0182】
ラパマイシン誘導性プロモーター-誘導性プロモーターは、ラパマイシンなどの小分子薬物によって誘導され得る。ラパマイシンを使用した遺伝子発現を薬理学的に調節するためのヒト化系は、Rivera et al.,1996(Rivera et al Nature Medicine volume2,pages1028-1032(1996))(本明細書中で参考として援用される)に記載されている。ラパマイシンがFKBP12に結合し、次いで、この複合体がFRAPに結合する天然の能力を、Rivera et al.,1996は、目的の遺伝子のラパマイシン特異的発現を誘導するために使用した。FKBP12/FRAPタンパク質のうちの1つのDNA結合ドメインへの融合および他のタンパク質のアクチベータードメインへの融合によって誘導を行った。図1bに示すように、FKBPおよびFRAPは相互作用しないので、FKBPがDNA結合ドメインと融合され、かつFRAPがアクチベータードメインに融合される場合、ラパマイシンの非存在下で目的の遺伝子は転写されないであろう。図2および図3に示すように、ラパマイシンの存在下で、FKBPおよびFRAPは相互作用し、DNA結合ドメインおよびアクチベータードメインは密接に接触し、その結果目的の遺伝子を転写する。
【0183】
化学誘導接近誘導性プロモーター-誘導性プロモーターは、化学誘導接近によって調節され得る。タンパク質の存在量または活性の調節に適切な小分子ベースの系は、Liang et al.(Sci Signal.2011 Mar15;4(164):rs2.doi:10.1126/scisignal.2001449)(本明細書中で参考として援用される)に記載されている。
【0184】
遺伝子発現は、Belshaw et al.,1996(Belshaw,P.J.et al.(1996)’Controlling protein association and subcellular localization with a synthetic ligand that induces heterodimerization of proteins’,Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America,93(10),pp.4604-4607)(本明細書中で参考として援用される)に示された2つのタンパク質結合表面を組み合わせた分子による化学誘導接近によって誘導され得る。2つのタンパク質結合表面を組み合わせた分子による化学誘導接近による目的の遺伝子の転写活性化は、Belshaw et al.の図3に示さされている。
【0185】
Rheoswitch(登録商標)誘導性プロモーター-誘導性プロモーターは、合成小分子によって誘導され得る。いくつかの実施形態では、これらの合成小分子は、ジアシルヒドラジンリガンドであり得る。遺伝子発現の誘導可能な上方制御および下方制御に適切な系は、Cress et al.(Volume66,Issue8 Supplement,pp.27)or Barrett et al.(Cancer Gene Therapy volume25,pages106-116(2018))(本明細書中で参考として援用される)に記載されている。RheoSwitch(登録商標)系は、それぞれがDNA結合ドメインおよび酸性転写活性化ドメインに融合されたエクジソン受容体(EcR)およびRXRに由来する2つのキメラタンパク質からなる。核内受容体は、合成小分子リガンドが結合するとヘテロ二量体化して機能的転写因子を作出し、目的の遺伝子に連結された応答性プロモーター由来の転写を活性化することができる。
【0186】
CRISPR誘導性プロモーター-遺伝子発現は、CRISPRベースの転写制御因子によって誘導され得る。Ferry,Lyutova and Fulga,2017(Ferry,Q.R.V.,Lyutova,R.and Fulga,T.A.(2017)’Rational design of inducible CRISPR guide RNAs for de novo assembly of transcriptional programs’,Nature Communications.Nature Publishing Group,8,pp.1-10.doi:10.1038/ncomms14633)(本明細書中で参考として援用される)の図1Aに示すように、ヌクレアーゼ欠損Cas9は、その関連する一本鎖ガイドRNA(sgRNA)を設計することによって目的の配列に指向することができ、sgRNA-Cas9複合体にエフェクタードメインを係留することによって遺伝子発現を調整することができる。sgRNAの最小の操作に基づいた適切な多用途の誘導性CRISPR-TRプラットフォームは、Ferry,Lyutova and Fulga,2017に記載されている。
【0187】
CRISPRベースの転写制御は、同様に、薬物によって誘導され得る。適切な薬物誘導性CRISPRベースの転写制御因子系は、Zhang et al.,2019(Zhang,J.et al.(2019)’Drug Inducible CRISPR/Cas Systems’,Computational and Structural Biotechnology Journal.Elsevier B.V.,17,pp.1171-1177.doi:10.1016/j.csbj.2019.07.015)(本明細書中で参考として援用される)に示されている。
【0188】
1つの実施形態では、細胞をインデューサーと接触させるか、細胞を適切な誘導条件に適用すると、誘導性プロモーターに作動可能に連結された遺伝子が発現する。
【0189】
本明細書中に記載の誘導性プロモーターは、誘導性プロモーターのインデューサーまたはリプレッサー(例えば、第2の異なるプロモーターのインデューサーまたはリプレッサー)の発現またはインデューサーもしくはリプレッサー自体をさらに調節することができる。1つの実施形態では、細胞は、タンパク質発現を停止することができる抑制性エレメントに作動可能に連結された第1の誘導性プロモーターを含む。
【0190】
1つの実施形態では、第1の誘導性プロモーターは、第1の誘導性プロモーターの発現を抑制するタンパク質をさらにコードする。
【0191】
1つの実施形態では、細胞は、第2の誘導性プロモーターの発現を誘導するタンパク質をさらにコードする第1の誘導性プロモーターを含む。
【0192】
組織特異的プロモーター
【0193】
本明細書中に開示の方法および組成物のいくつかの実施形態では、プロモーターは、肝臓特異的プロモーターであり、表2に開示したプロモーターが含まれるが、これらに限定されないプロモーターから選択することができる。「肝臓特異的」または「肝臓特異的発現」は、シス制御エレメント、シス制御モジュール、またはプロモーターが、他の組織(例えば、脾臓、筋肉、心臓、肺、および脳)と比較して優先的または支配的な様式で、肝臓(または肝臓由来細胞)内の遺伝子発現を増強するか駆動する能力を指す。遺伝子発現は、mRNAまたはタンパク質の形態であり得る。好ましい実施形態では、肝臓特異的発現は、他の(すなわち、非肝臓)組織または細胞における発現が無視できるような発現である(すなわち、発現は、高度に肝臓特異的である)。
【0194】
肝臓特異的プロモーターは、本明細書中の表2に開示の肝臓特異的シス制御エレメント(CRE)、合成肝臓特異的シス制御モジュール(CRM)、または合成肝臓特異的プロモーターを含む。これらの肝臓特異的プロモーターエレメントは、最小肝臓特異的プロモーターを含む。
【0195】
肝臓特異的プロモーターエレメントは、例えば、国際出願番号PCT/GB2019/053267号(その全体が本明細書中で参考として援用される)にさらに記載されている。
【0196】
表2は、肝臓特異的プロモーター配列の例を示す。表2中の肝臓特異的プロモーター(promote)配列のサイズが比較的小さいことは、ベクターへの負荷量が最小となるので有利である。これは、容量が限られたベクター(AAVベースのベクターなど)でCREを用いる場合に特に重要である。
【表2】
【0197】
他の肝臓特異的プロモーターには、LDL受容体、第VIII因子、第IX因子、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)、オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)、およびα1-抗トリプシン(hAAT)のプロモーター、ならびにHCBプロモーターが含まれるが、これらに限定されない。他の肝臓特異的プロモーターには、AFP(α胎児タンパク質)遺伝子プロモーターおよびアルブミン遺伝子プロモーター(欧州特許出願特許第0415731号に開示)、α-1抗トリプシン遺伝子プロモーター(Rettenger,Proc.Natl.Acad.Sci.91(1994)1460-1464に開示)、フィブリノゲン遺伝子プロモーター、APO-A1(アポリポタンパク質A1)遺伝子プロモーター、ならびに肝臓転移酵素(例えば、SGOT、SGPT、およびγ-グルタミルトランスフェラーゼなど)のプロモーター遺伝子が含まれる。2001/0051611号およびPCT特許公開WO90/07936号およびWO91/02805号(その全体が本明細書中で参考として援用される)も参照のこと。いくつかの実施形態では、肝臓特異的プロモーターは、例えば、US20170326256A1(その全体が本明細書中で参考として援用される)に開示の組換え肝臓特異的プロモーターである。
【0198】
いくつかの実施形態では、肝臓特異的プロモーターは、B型肝炎X-遺伝子プロモーターおよびB型肝炎コアタンパク質プロモーターである。いくつかの実施形態では、肝臓特異的プロモーターを、これらのそれぞれのエンハンサーと共に使用することができる。エンハンサーエレメントを、リソソーム酵素をコードする核酸の5’末端または3’末端のいずれかに連結することができる。B型肝炎X遺伝子プロモーターおよびそのエンハンサーを、Twu,J Virol.61(1987)3448-3453に記載の方法を使用して、332塩基対のEcoRV-NcoI DNA断片としてウイルスゲノムから得ることができる。B型肝炎コアタンパク質プロモーターを、Gerlach,Virol189(1992)59-66に記載の方法を使用して、584塩基対のBamHI-BgIII DNA断片としてウイルスゲノムから得ることができる。BamHI-BgIII断片中の負の制御配列を前述の断片を挿入する前に除去する必要がある場合がある。
【0199】
肝臓特異的プロモーターの機能的バリアント
【0200】
いくつかの実施形態では、肝臓特異的プロモーターの機能的バリアントを、プロモーター内で基準プロモーターエレメントと置換した場合に、実質的にその活性を保持するプロモーターエレメントと見なすことができる。例えば、表2に開示の所与のプロモーターの機能的バリアントを含む肝臓特異的プロモーターの機能的バリアントは、好ましくは、(非改変プロモーターエレメントを含む不変のプロモーター配列と比較して)不変のプロモーターの活性の少なくとも35%、または少なくとも40%、または少なくとも45%、または少なくとも50%、または少なくとも55%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、より好ましくはその活性の少なくとも90%、より好ましくはその活性の少なくとも95%、さらにより好ましくはその活性の100%を保持する。
【0201】
いくつかの実施形態では、表2に開示の肝臓特異的プロモーターの機能的バリアントまたは機能的断片は、元の非改変配列に対して少なくとも約75%の配列同一性、または少なくとも約80%の配列同一性、少なくとも約90%の配列同一性、少なくとも約95%の配列同一性、少なくとも約98%の配列同一性を有し、また、対応する非改変プロモーター配列のプロモーター活性の少なくとも35%、またはプロモーター活性の少なくとも約45%、またはプロモーター活性の少なくとも約50%、またはプロモーター活性の少なくとも約60%、またはプロモーター活性の少なくとも約75%、またはプロモーター活性の少なくとも約80%、またはプロモーター活性の少なくとも約85%、またはプロモーター活性の少なくとも約90%、またはプロモーター活性の少なくとも約95%を有する。プロモーターに作動可能に連結された遺伝子(例えば、治療遺伝子またはレポーター遺伝子)の発現が肝臓由来細胞において優先的または支配的に生じる肝臓特異性を同定することができる。例えば、発現レベルが他の細胞型(すなわち、非肝臓由来細胞)よりも肝臓由来細胞において有意に高い場合を優先的または支配的な発現と定義することができる。
【0202】
例えば、配列番号247の機能的バリアントまたは機能的断片は、配列番号247または元の非改変配列に対して少なくとも約75%の配列同一性、または配列番号247または元の非改変配列に対して少なくとも約80%の配列同一性、配列番号247または元の非改変配列に対して少なくとも約90%の配列同一性、配列番号247または元の非改変配列に対して少なくとも約95%の配列同一性、配列番号247または元の非改変配列に対して少なくとも約98%の配列同一性を有し、また、配列番号247の対応する非改変プロモーター配列のプロモーター活性の少なくとも35%、またはプロモーター活性の少なくとも約45%、またはプロモーター活性の少なくとも約50%、またはプロモーター活性の少なくとも約60%、またはプロモーター活性の少なくとも約75%、またはプロモーター活性の少なくとも約80%、またはプロモーター活性の少なくとも約85%、またはプロモーター活性の少なくとも約90%、またはプロモーター活性の少なくとも約95%を有する。
【0203】
適切には、プロモーターエレメントの機能的バリアントは、基準プロモーターエレメントに対して有意なレベルの配列同一性を保持する。適切な機能的バリアントは、基準プロモーターエレメントに対して少なくとも70%同一、より好ましくは基準プロモーターエレメントに対して少なくとも80%、90%、95%、または99%同一の配列を含む。
【0204】
本明細書中の表2に開示の肝臓特異的プロモーターの配列を実質的に活性を喪失することなく変更することができることに留意すべきである。したがって、肝臓特異的プロモーターの活性に有意に有害な改変が回避される場合、以下に考察した肝臓特異的プロモーターの機能的バリアントを、表2に開示の肝臓特異的プロモーターの配列を改変することによって調製することができる。本開示に提供した情報を考慮すると、機能的バリアントを得るための本明細書中の表2に開示の肝臓特異的プロモーターの改変は容易である。さらに、本開示は、任意の所与の肝臓特異的プロモーターバリアントの機能性を容易に査定する方法を提供する。
【0205】
導入遺伝子
【0206】
本発明の方法を使用して製造した環状核酸またはベクターは、in vitro、ex vivo、およびin vivoでの細胞への核酸の送達に有用である。特に、環状核酸またはベクターを、核酸を動物(哺乳動物細胞が含まれる)に送達または移入するために有利に使用することができる。
【0207】
目的の任意の核酸配列(単数または複数)は、本発明を使用して製造されたDNA構築物に送達され得る。1つの実施形態では、目的の核酸には、ポリペプチド(ウイルスポリペプチド(例えば、ウイルスによって発現され、そして/またはウイルス粒子産生に必要な任意のポリペプチド、例えば、Cap、Rep、およびAdヘルパー遺伝子ポリペプチドなど)、治療ポリペプチド(例えば、医学的または獣医学的使用)、免疫原性ポリペプチド(例えば、ワクチン用)、または診断ポリペプチドが含まれる)をコードする核酸が含まれる。1つの実施形態では、目的の核酸には、遺伝子編集ポリペプチド(例えば、CRISPR、Cas、TALEN、またはメガヌクレアーゼなど)をコードする核酸が含まれる。1つの実施形態では、目的の核酸には、RNA干渉核酸(例えば、miRNA、shRNA、siRNA、dsRNA、または抑制性オリゴヌクレオチドなど)が含まれる。
【0208】
1つの実施形態では、導入遺伝子は治療遺伝子である。治療遺伝子には、嚢胞性線維症膜貫通制御タンパク質(CFTR)、ジストロフィン(ミニジストロフィンおよびマイクロジストロフィンが含まれる)(例えば、Vincent et al.,(1993)Nature Genetics5:130;米国特許出願公開第2003/017131号;国際公開WO/2008/088895号、Wang et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA97:13714-13719(2000);およびGregorevic et al.,Mol.Ther.16:657-64(2008)を参照のこと)、ミオスタチンプロペプチド、フォリスタチン、アクチビンII型可溶性受容体、IGF-1、抗炎症性ポリペプチド(IκBドミナント変異体など)、サルコスパン、ユートロフィン(Tinsley et al.,(1996)Nature 384:349)、ミニ-ユートロフィン、凝固因子(例えば、第VIII因子、第IX因子、第X因子など)、エリスロポエチン、アンギオスタチン、エンドスタチン、カタラーゼ、チロシンヒドロキシラーゼ、スーパーオキシドジムスターゼ、レプチン、LDL受容体、リポタンパク質リパーゼ、オルニチントランスカルバミラーゼ、β-グロビン、α-グロビン、スペクトリン、α-抗トリプシン、アデノシンデアミナーゼ、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ、β-グルコセレブロシダーゼ、スフィンゴミエリナーゼ、リソソームヘキソサミニダーゼA、分枝鎖ケト酸デヒドロゲナーゼ、RP65タンパク質、サイトカイン(例えば、α-インターフェロン、β-インターフェロン、インターフェロン-γ、インターロイキン-2、インターロイキン-4、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、およびリンホトキシンなど)、ペプチド成長因子、神経栄養因子およびホルモン(例えば、ソマトトロピン、インスリン、インスリン様成長因子1および2、血小板由来成長因子、上皮成長因子、線維芽細胞成長因子、神経成長因子、神経栄養因子-3および-4、脳由来神経栄養因子、骨形態形成タンパク質(RANKLおよびVEGFが含まれる)、グリア由来成長因子、およびトランスフォーミング成長因子-αおよび-βなど)、リソソーム酸α-グルコシダーゼ、α-ガラクトシダーゼA、受容体(例えば、腫瘍壊死成長因子可溶性受容体)、S100A1、パルブアルブミン、アデニリルシクラーゼ6型、Gタンパク質共役受容体キナーゼ2型ノックダウンに影響を及ぼす分子(構成性に活性な短縮bARKetなど)、抗炎症因子(TRAPなど)、抗ミオスタチンタンパク質、アスパルトアシラーゼ、ならびにモノクローナル抗体(一本鎖モノクローナル抗体が含まれる;Mabの例はハーセプチン(登録商標)Mabである)が含まれるが、これらに限定されない。他の異種核酸配列の例は、自殺遺伝子産物(例えば、チミジンキナーゼ、シトシンデアミナーゼ、ジフテリア毒素、および腫瘍壊死因子)、がん治療で使用される薬物に対する耐性を付与するタンパク質、腫瘍抑制遺伝子産物(例えば、p53、Rb、Wt-1)、TRAIL、FAS-リガンド、ならびに必要とする被験体に治療効果を有する任意の他のポリペプチドをコードする。また、パルボウイルスベクターを使用して、モノクローナル抗体および抗体断片(例えば、ミオスタチンに指向する抗体または抗体断片)を送達させることができる(例えば、Fang et al.,Nature Biotechnol.23:584-590(2005)を参照のこと)。
【0209】
ポリペプチドをコードする核酸配列には、レポーターポリペプチド(例えば、酵素)をコードする核酸配列が含まれる。レポーターポリペプチドは、当該分野で公知であり、緑色蛍光タンパク質、β-ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ルシフェラーゼ、およびクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子が含まれるが、これらに限定されない。
【0210】
あるいは、本発明の特定の実施形態では、核酸(例えば、導入遺伝子)は、アンチセンス核酸、リボザイム(例えば、米国特許第5,877,022号に記載)、スプライソソーム媒介トランススプライシングを行うRNA(Puttaraju et al.,(1999)Nature Biotech 17:246;米国特許第6,013,487号;米国特許第6,083,702号を参照のこと)、干渉RNA(RNAi)(遺伝子サイレンシングを媒介するsiRNA、shRNA、またはmiRNAが含まれる)(Sharp et al.,(2000)Science 287:2431を参照のこと)、および他の非翻訳RNA(「ガイド」RNAなど)(Gorman et al.,(1998)Proc.Nat.Acad.Sci.USA95:4929;Yuan et al.の米国特許第5,869,248号)などをコードし得る。非翻訳RNAの例には、多剤耐性(MDR)遺伝子産物に対するRNAi(例えば、腫瘍を処置および/もしくは予防するためならびに/または化学療法による損傷を防止するための心臓への投与のため)、ミオスタチンに対するRNAi(例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィ用)、VEGFに対するRNAi(例えば、腫瘍を処置および/または予防するため)、ホスホランバンに対するRNAi(例えば、心血管疾患を処置するため、例えば、Andino et al.,J.Gene Med.10:132-142(2008)およびLi et al.,Acta Pharmacol Sin.26:51-55(2005)を参照のこと);ホスホランバン抑制性分子またはドミナントネガティブ分子、例えば、ホスホランバンS16E(例えば、心血管疾患を処置するため、例えば、Hoshijima et al.Nat.Med.8:864-871(2002)を参照のこと)、アデノシンキナーゼに対するRNAi(例えば、癲癇用)、サルコグリカンに対するRNAi(例えば、α、β、γ)、ミオスタチン、ミオスタチンプロペプチド、フォリスタチン、またはアクチビンII型可溶性受容体に対するRNAi、抗炎症性ポリペプチドに対するRNAi(IκBドミナント変異体など)、ならびに病原性生物およびウイルス(例えば、B型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、CMV、単純ヘルペスウイルス、ヒト乳頭腫ウイルスなど)に対して指向するRNAiが含まれる。
【0211】
あるいは、本発明の特定の実施形態では、治療導入遺伝子は、プロテインホスファターゼ阻害剤I(I-1)、serca2a、ホスホランバン遺伝子を制御する亜鉛フィンガータンパク質、Barkct、β2-アドレナリン作動性受容体、β2-アドレナリン作動性受容体キナーゼ(BARK)、ホスホイノシチド-3キナーゼ(PI3キナーゼ)、Gタンパク質共役受容体キナーゼ2型ノックダウンに影響を及ぼす分子(構成性に活性な短縮bARKctなど);カルサルシン、ホスホランバンに対するRNAi;ホスホランバン抑制性分子またはドミナントネガティブ分子、例えば、ホスホランバンS16E、enos、inos、または骨形態形成タンパク質(BNP2、7など、RANKLおよび/またはVEGFが含まれる)をコードし得る。
【0212】
また、環状核酸またはベクターは、宿主染色体上の遺伝子座と相同性を有し、前述の遺伝子座で組換えられた核酸を含み得る。このアプローチを、例えば、宿主細胞における遺伝的欠陥を修正するために利用することができる。
【0213】
さらなる代替物として、環状核酸またはベクターは、in vitro、ex vivo、またはin vivoで細胞内に産生されることが望ましい任意のポリペプチドをコードすることができる。例えば、環状核酸またはベクターは、培養細胞および培養細胞から単離された発現遺伝子産物に導入され得る。
【0214】
1つの実施形態では、治療遺伝子は、プロモーターに作動可能に連結される。治療導入遺伝子の発現を指示する種々のプロモーターを、本明細書中に記載している。例には、構成性プロモーター、抑制性プロモーター、および/または誘導性プロモーターが含まれるが、これらに限定されず、いくつかの非限定的な例には、ウイルスプロモーター(例えば、CMV、SV40)、組織特異的プロモーター(例えば、筋肉MCK)、心臓(例えば、NSE)、眼(例えば、MSK)、および合成プロモーター(SP1エレメント))、およびニワトリβアクチンプロモーター(CBまたはCBA)が含まれる。プロモーターは、ヌクレアーゼ配列と作動可能に関連する任意の位置に存在することができる。
【0215】
さらに、1またはそれを超えるプロモーター(同じであるか、異なる場合がある)は、同一の核酸分子内に共に存在するか、核酸分子上の異なる位置に存在することができる。さらに、内部リボゾーム進入シグナル(IRES)および/または他のリボソーム-リードスルーエレメントが核酸分子上に存在することができる。1またはそれを超えるかかるIRESおよび/またはリボソームリードスルーエレメント(同じであるか、異なる場合がある)は、同一の核酸分子内に共に存在するか、核酸分子上の異なる位置に存在することができる。複数のヌクレアーゼ配列が核酸分子上に存在する場合、かかるIRESおよびリボソームリードスルーエレメントを使用して、cap非依存性機序によって伝令RNA配列を翻訳することができる。
【0216】
本発明の環状核酸ベクターは、標準的なDNAベクターと比較して、広範な細胞(分裂細胞、非分裂細胞、肝臓細胞、腎臓細胞、CNS細胞、皮膚細胞、網膜細胞、または心臓細胞などが含まれる)への核酸の形質導入効率を高める手段を提供する。いくつかの実施形態では、本明細書中に記載の環状核酸ベクターの形質導入効率は、標準的なDNAベクターと比較して少なくとも約10%(例えば、プラスミドベクターまたは非閉鎖型線状ベクターと比較して少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、500%、またはそれを超えて)増加する。本明細書中で使用される場合、「形質導入」は、細胞への遺伝子材料の移入を指す。形質導入効率は、当該分野で周知の技術によって測定することができ、例えば、当業者は、PCRベースのアッセイまたはウェスタンブロッティングによって細胞に移入されている遺伝子材料のレベルを測定/決定することができる。1つの実施形態では、導入効率を、類似の核酸(例えば、プロモーター、導入遺伝子など)を含むウイルスベクターに対して測定することができる。ウイルスベクターは、当該分野で公知の任意のベクター(AAV、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、およびパルボウイルスベクターなどが含まれる)であり得る。
【0217】
本明細書中に引用した全ての刊行物、特許出願、特許、特許公開、および他の文献は、文献が示された文および/または段落に関する教示のために、その全体が参考として援用される。
【0218】
以下の実施例は、本発明を例示するために記載し、本発明を制限すると解釈されないものとする。
【0219】
2019年6月21日に出願された発明者がAsklepios Biopharmaceuticals,Inc.およびRichard Jude Samulskiである国際出願番号PCT/US2019/038515(PCT整理番号046192-092620WOPT)における任意の開示が、本出願のクレームのいずれか1つまたは複数に定義の発明、または本出願もしくは本出願に由来する任意の特許において将来的に出願され得る補正されたクレームで定義されるべき任意の発明の範囲内にあり、かつクレームが適用される任意の関連国の法律が国際出願番号PCT/US2019/038515号(PCT整理番号046192-092620WOPT)の開示が関連国のクレームに対する先行技術の一部であると定めている範囲内にある限り、これにより、本発明者らは、本出願または本出願に由来する任意の特許の無効の防止に必要な範囲まで、本出願または本出願に由来する任意の特許のクレームに由来する前記開示を放棄する権利を保有する。
【0220】
例えば、制限されないが、本発明者らは、現在のもしくは将来に補正された本出願、または本出願に由来する任意の特許の任意のクレームに由来する任意の1またはそれを超える以下の主題を放棄する権利を保有する:
A.国際出願番号PCT/US2019/038515号(PCT整理番号046192-092620WOPT)の実施例7および8に開示の任意の主題;または
B.国際出願番号PCT/US2019/038515号(PCT整理番号046192-092620WOPT)の図11~14に開示の任意の主題;または
C.環状核酸ベクターを製造する方法であって、宿主系をテンプレートと接触させる工程であって、前述のテンプレートが、少なくとも1つの隣接切断部位および以下を含む工程:(i)少なくとも1つのファージ複製起点(ORI);(ii)少なくとも1つの末端反復(TR)、および;(iii)導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモーター配列、ここで、少なくとも1つのTRがAAVダブルD-ITR(dd-ITR)である;(b)前述の宿主系を、環状核酸を産生するのに十分な複製時間にわたってインキュベートする工程;および(c)産生された前述の環状核酸を回収する工程であって、前述の環状核酸が自己アニーリングする、回収する工程を含む、方法;または
D.環状核酸ベクターを製造する方法であって、宿主系をテンプレートと接触させる工程であって、前述のテンプレートが、少なくとも2つの隣接切断部位を含み、かつ、前述の部位内に、以下が存在する工程:(i)少なくとも1つのファージ複製起点(ORI);(ii)少なくとも1つの末端反復(TR)、および;(iii)導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモーター配列、ここで、少なくとも1つのTRがAAVダブルD-ITR(dd-ITR)である;(b)前述の宿主系を、環状核酸を産生するのに十分な複製時間にわたってインキュベートする工程;および(c)産生された前述の環状核酸を回収する工程であって、前述の環状核酸が自己アニーリングする工程を含む、方法;または
E.導入遺伝子を含む環状核酸ベクターを製造する方法であって、(a)宿主系をプラスミドテンプレートで形質転換する工程であって、前述のプラスミドテンプレートが以下を含む工程:(i)ファージ複製起点(ORI);(ii)短縮ファージORI(例えば、ORIΔ29);(iii)少なくとも1つの末端反復(TR)、および;(iv)導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモーター配列、ここで、前述のプラスミドテンプレートが、5’から3’への方向で、センス鎖およびアンチセンス鎖をアニーリングすることが可能なヘアピン配列によって分離されたセンス配列およびアンチセンス配列を含み、ここで、少なくとも1つのTRがAAVダブルD-ITR(dd-ITR)である;(b)前述の宿主系を、環状核酸を産生するのに十分な複製時間にわたってインキュベートする工程;および(c)産生された前述の環状核酸を回収する工程であって、前述の環状核酸が自己アニーリングする工程を含む方法
F.以下から選択される環状核酸のうちのいずれか:
a.少なくとも1つの切断部位、ファージORI、少なくとも1つのdd-ITR、および導入遺伝子に連結された少なくとも1つのプロモーターを、任意の順序で5’から3’への方向にて有する環状核酸;または
b.少なくとも2つの切断部位、ファージORI、少なくとも1つのdd-ITR、および導入遺伝子に連結された少なくとも1つのプロモーターを、任意の順序で5’から3’への方向にて有する環状核酸;または
c.少なくとも3つの切断部位、ファージORI、少なくとも1つのdd-ITR、および導入遺伝子に連結された少なくとも1つのプロモーターを、任意の順序で5’から3’への方向にて有する環状核酸;または
d.少なくとも1つの切断部位、少なくとも2つのファージORI、少なくとも1つのdd-ITR、および導入遺伝子に連結された少なくとも1つのプロモーターを、任意の順序で5’から3’への方向にて有する環状核酸;または
e.少なくとも2つの切断部位、少なくとも2つのファージORI、少なくとも1つのdd-ITR、および導入遺伝子に連結された少なくとも1つのプロモーターを、任意の順序で5’から3’への方向にて有する環状核酸;または
f.少なくとも3つの切断部位、少なくとも2つのファージORI、少なくとも1つのdd-ITR、および導入遺伝子に連結された少なくとも1つのプロモーターを、任意の順序で5’から3’への方向にて有する環状核酸;または
g.少なくとも1つの切断部位、ファージORI、少なくとも2つのdd-ITR、および導入遺伝子に連結された少なくとも1つのプロモーターを、任意の順序で5’から3’への方向にて有する環状核酸;または
h.少なくとも2つの切断部位、ファージORI、少なくとも2つのdd-ITR、および導入遺伝子に連結された少なくとも1つのプロモーターを、任意の順序で5’から3’への方向にて有する環状核酸;または
i.少なくとも3つの切断部位、ファージORI、少なくとも2つのdd-ITR、および導入遺伝子に連結された少なくとも1つのプロモーターを、任意の順序で5’から3’への方向にて有する環状核酸;または
j.少なくとも1つの切断部位、少なくとも2つのファージORI、少なくとも2つのdd-ITR、および導入遺伝子に連結された少なくとも1つのプロモーターを、任意の順序で5’から3’への方向にて有する環状核酸;または
k.少なくとも2つの切断部位、少なくとも2つのファージORI、少なくとも2つのdd-ITR、および導入遺伝子に連結された少なくとも1つのプロモーターを、任意の順序で5’から3’への方向にて有する環状核酸;または
l.少なくとも3つの切断部位、少なくとも2つのファージORI、少なくとも2つのdd-ITR、および導入遺伝子に連結された少なくとも1つのプロモーターを、任意の順序で5’から3’への方向にて有する環状核酸;または
m.少なくとも1つの切断部位、ファージORI、少なくとも3つのdd-ITR、および導入遺伝子に連結された少なくとも1つのプロモーターを、任意の順序で5’から3’への方向にて有する環状核酸;または
n.少なくとも2つの切断部位、ファージORI、少なくとも3つのdd-ITR、および導入遺伝子に連結された少なくとも1つのプロモーターを、任意の順序で5’から3’への方向にて有する環状核酸;または
o.少なくとも3つの切断部位、ファージORI、少なくとも3つのdd-ITR、および導入遺伝子に連結された少なくとも1つのプロモーターを、任意の順序で5’から3’への方向にて有する環状核酸;または
p.少なくとも1つの切断部位、少なくとも2つのファージORI、少なくとも3つのdd-ITR、および導入遺伝子に連結された少なくとも1つのプロモーターを、任意の順序で5’から3’への方向にて有する環状核酸;または
q.少なくとも2つの切断部位、少なくとも2つのファージORI、少なくとも3つのdd-ITR、および導入遺伝子に連結された少なくとも1つのプロモーターを、任意の順序で5’から3’への方向にて有する環状核酸;または
r.少なくとも3つの切断部位、少なくとも2つのファージORI、少なくとも3つのdd-ITR、および導入遺伝子に連結された少なくとも1つのプロモーターを、任意の順序で5’から3’への方向にて有する環状核酸;または
s.少なくとも1つの切断部位、ファージORI、少なくとも4つのdd-ITR、および導入遺伝子に連結された少なくとも1つのプロモーターを、任意の順序で5’から3’への方向にて有する環状核酸;または
t.少なくとも2つの切断部位、ファージORI、少なくとも4つのdd-ITR、および導入遺伝子に連結された少なくとも1つのプロモーターを、任意の順序で5’から3’への方向にて有する環状核酸;または
u.少なくとも3つの切断部位、ファージORI、少なくとも4つのdd-ITR、および導入遺伝子に連結された少なくとも1つのプロモーターを、任意の順序で5’から3’への方向にて有する環状核酸;または
v.少なくとも1つの切断部位、少なくとも2つのファージORI、少なくとも4つのdd-ITR、および導入遺伝子に連結された少なくとも1つのプロモーターを、任意の順序で5’から3’への方向にて有する環状核酸;または
w.少なくとも2つの切断部位、少なくとも2つのファージORI、少なくとも4つのdd-ITR、および導入遺伝子に連結された少なくとも1つのプロモーターを、任意の順序で5’から3’への方向にて有する環状核酸;または
x.少なくとも3つの切断部位、少なくとも2つのファージORI、少なくとも4つのdd-ITR、および導入遺伝子に連結された少なくとも1つのプロモーターを、任意の順序で5’から3’への方向にて有する環状核酸;または
y.少なくとも1つの切断部位、ファージORI、少なくとも5つのdd-ITR、および導入遺伝子に連結された少なくとも1つのプロモーターを、任意の順序で5’から3’への方向にて有する環状核酸;または
z.少なくとも2つの切断部位、ファージORI、少なくとも5つのdd-ITR、および導入遺伝子に連結された少なくとも1つのプロモーター有する環状核酸であって、前述の少なくとも2つの切断部位が、任意の順序で5’から3’への方向にて、他の成分に隣接している、環状核酸;または
aa.少なくとも3つの切断部位、ファージORI、少なくとも5つのdd-ITR、および導入遺伝子に連結された少なくとも1つのプロモーターを、任意の順序で5’から3’への方向にて有する環状核酸;または
bb.少なくとも1つの切断部位、少なくとも2つのファージORI、少なくとも5つのdd-ITR、および導入遺伝子に連結された少なくとも1つのプロモーターを、任意の順序で5’から3’への方向にて有する環状核酸;または
cc.少なくとも2つの切断部位、少なくとも2つのファージORI、少なくとも5つのdd-ITR、および導入遺伝子に連結された少なくとも1つのプロモーターを、任意の順序で5’から3’への方向にて有する環状核酸;または
dd.少なくとも3つの切断部位、少なくとも2つのファージORI、少なくとも5つのdd-ITR、および導入遺伝子に連結された少なくとも1つのプロモーターを、任意の順序で5’から3’への方向にて有する環状核酸;または
ee.少なくとも1つの切断部位、ファージORI、少なくとも6つのdd-ITR、および導入遺伝子に連結された少なくとも1つのプロモーターを、任意の順序で5’から3’への方向にて有する環状核酸;または
ff.少なくとも2つの切断部位、ファージORI、少なくとも6つのdd-ITR、および導入遺伝子に連結された少なくとも1つのプロモーターを、任意の順序で5’から3’への方向にて有する環状核酸;または
gg.少なくとも3つの切断部位、ファージORI、少なくとも6つのdd-ITR、および導入遺伝子に連結された少なくとも1つのプロモーターを有する環状核酸であって、前述の少なくとも2つの切断部位が他の成分に隣接しており、第3の切断部位が少なくとも1つのORIの下流にある、環状核酸
hh.少なくとも1つの切断部位、少なくとも2つのファージORI、少なくとも6つのdd-ITR、および導入遺伝子に連結された少なくとも1つのプロモーターを、任意の順序で5’から3’への方向にて有する環状核酸;または
ii.少なくとも2つの切断部位、少なくとも2つのファージORI、少なくとも6つのdd-ITR、および導入遺伝子に連結された少なくとも1つのプロモーターを、任意の順序で5’から3’への方向にて有する環状核酸;または
jj.少なくとも3つの切断部位、少なくとも2つのファージORI、少なくとも6つのdd-ITR、および導入遺伝子に連結された少なくとも1つのプロモーターを、任意の順序で有する環状核酸。
G.dd-ITRではない少なくとも1つのさらなるITRをさらに含む[E]由来の環状核酸のうちのいずれか。
H.少なくとも1つのアダプター配列をさらに含む[E]由来の環状核酸のうちのいずれか。
I.少なくとも2つのアダプター配列をさらに含む[E]由来の環状核酸のうちのいずれか。
J.導入遺伝子に作動可能に連結された少なくとも1つのさらなるプロモーターをさらに含む[E]由来の環状核酸のうちのいずれか。
【0221】
制限されないが、本発明者らは、上記の放棄の権利の保有を、少なくとも本出願に添付の請求項1~73および[0150]に記載のパラグラフ1~75に適用することを明言する。
【0222】
本明細書中に記載の発明を、以下の番号をつけたパラグラフにさらに記載することができる:
1.導入遺伝子を含む環状核酸ベクターを製造する方法であって、
a.宿主系をテンプレートと接触させる工程であって、前述のテンプレートが、少なくとも1つの隣接切断部位、および以下を含む工程:
i.少なくとも1つのファージ複製起点(ORI);
ii.少なくとも1つの末端反復(TR)、および;
iii.導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモーター配列;
b.前述の宿主系を、環状核酸を産生するのに十分な複製時間にわたってインキュベートする工程;および
c.産生された前述の環状核酸を回収する工程であって、
前述の環状核酸が自己アニーリングする工程
を含む、方法。
2.前述のテンプレートが、第2の隣接切断部位をさらに含み、前述の2つの部位内に(i)~(iii)がある、パラグラフ1に記載の方法。
3.前述のテンプレートが、少なくとも1つのORIのすぐ下流に少なくとも1つのさらなる切断部位をさらに含む(例えば、図5を参照のこと)、前述のパラグラフのいずれかに記載の方法。
4.回収された前述の環状核酸の少なくとも1つの切断部位を切断する工程(例えば、図5を参照のこと)をさらに含む、前述のパラグラフのいずれかに記載の方法。
5.回収後に前述の環状核酸のin vitro複製工程をさらに含む、前述のパラグラフのいずれかに記載の方法。
6.前述のテンプレートが少なくとも1つのアダプター配列をさらに含む、前述のパラグラフのいずれかに記載の方法。
7.前述のテンプレートが少なくとも2つのアダプター配列をさらに含む、前述のパラグラフのいずれかに記載の方法。
8.前述のアダプター配列が、切断されたDNAの閉鎖を誘導する(例えば、図1~5、7、および9を参照のこと)、前述のパラグラフのいずれかに記載の方法。
9.前述のアダプター配列が切断部位をさらに含む、前述のパラグラフのいずれかに記載の方法。
10.前述の回収された環状核酸が、前述の導入遺伝子の送達のために使用される、前述のパラグラフのいずれかに記載の方法。
11.前述の回収された環状核酸が、組換えウイルスベクター産生のために使用される、前述のパラグラフのいずれかに記載の方法。
12.前述の環状核酸が、自己アニーリングされた二本鎖である、前述のパラグラフのいずれかに記載の方法。
13.前述のベクターが一本鎖である、前述のパラグラフのいずれかに記載の方法。
14.第2のTRが存在し、前述の導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモーター配列の両側がTRに隣接している、前述のパラグラフのいずれかに記載の方法。
15.前述のORIが左TRの上流にある、前述のパラグラフのいずれかに記載の方法。
16.前述のORIが前述のTRに隣接しており、かつ前述の導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモーター配列の上流にある、前述のパラグラフのいずれかに記載の方法。
17.前述の宿主系が細菌パッケージング細胞である、前述のパラグラフのいずれかに記載の方法。
18.前述の宿主系が無細胞系である、前述のパラグラフのいずれかに記載の方法。
19.前述の宿主系が無細胞系であり、かつヘルパーファージ粒子を含む、前述のパラグラフのいずれかに記載の方法。
20.前述の宿主系が宿主細胞である、前述のパラグラフのいずれかに記載の方法。
21.前述の宿主細胞が、哺乳動物細胞、細菌細胞、または昆虫細胞である、前述のパラグラフのいずれかに記載の方法。
22.前述のウイルスベクターが、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レンチウイルス(LV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、アデノウイルス(AV)、またはポックスウイルス(PV)である、前述のパラグラフのいずれかに記載の方法。
23.前述のベクターが、DNAウイルスまたはRNAウイルスである、前述のパラグラフのいずれかに記載の方法。
24.前述のウイルスがAAVであり、かつ変異体ITRを有し、ここで、前述の変異体ITRがダブルD変異体ITRである、前述のパラグラフのいずれかに記載の方法。
25.前述の少なくとも1つのTRが、変異体ITR、合成ITR、野生型ITR、または非機能的ITRである、前述のパラグラフのいずれかに記載の方法。
26.前述のベクターが隣接DD-ITRを有し、前述の隣接物の間に、前述の導入遺伝子のセンス鎖に作動可能に連結されたプロモーター、複製欠損ITR、および前述の導入遺伝子のアンチセンス相補物がある、前述のパラグラフのいずれかに記載の方法。
27.前述のITRがAAV ITRである、前述のパラグラフのいずれかに記載の方法。
28.前述のORIが、前述のITRの上流、かつ前述の上流ITRのすぐ下流に配置されている、前述のパラグラフのいずれかに記載の方法。
29.前述の少なくとも1つのファージORIが、M13由来ORI、F1由来ORI、またはFd由来ORIからなる群から選択される、前述のパラグラフのいずれかに記載の方法。
30.前述のテンプレート(temple)が、複製を開始しない短縮ORIである第2のORIをさらに含む、前述のパラグラフのいずれかに記載の方法。
31.前述の短縮ORIがORIΔ29である、前述のパラグラフのいずれかに記載の方法。
32.前述の少なくとも2つの切断部位が制限部位である、前述のパラグラフのいずれかに記載の方法。
33.前述の少なくとも2つの制限部位が同じであるか異なる、前述のパラグラフのいずれかに記載の方法。
34.前述の制限部位が、前述の導入遺伝子配列内に見いだされない、前述のパラグラフのいずれかに記載の方法。
35.前述の切断部位が、ヌクレアーゼによって切断される、前述のパラグラフのいずれかに記載の方法。
36.前述のプロモーターが、構成性プロモーター、抑制性プロモーター、ユビキタスプロモーター、誘導性プロモーター、ウイルスプロモーター、組織特異的プロモーター、および合成プロモーターからなる群から選択される、前述のパラグラフのいずれかに記載の方法。
37.前述の導入遺伝子が治療遺伝子である、前述のパラグラフのいずれかに記載の方法。
38.導入遺伝子を含む環状核酸ベクターを製造する方法であって、
a.宿主系をプラスミドテンプレートで形質転換する工程であって、前述のプラスミドテンプレートが以下を含む工程:
i.ファージ複製起点(ORI);
ii.短縮ファージORI(例えば、ORIΔ29);
iii.少なくとも1つの末端反復(TR)、および;
iv.導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモーター配列、
ここで、前述のプラスミドテンプレートが、5’から3’への方向で、センス鎖およびアンチセンス鎖をアニーリングすることが可能なヘアピン配列によって分離されたセンス配列およびアンチセンス配列を含む;
b.前述の宿主系を、環状核酸を産生するのに十分な複製時間にわたってインキュベートする工程;および
c.産生された前述の環状核酸を回収する工程であって、
前述の環状核酸が自己アニーリングする工程
を含む方法。
39.前述のORIに隣接するリンカーおよび自己相補リンカーをさらに含む、前述のパラグラフのいずれかに記載の方法。
40.前述の導入遺伝子が、センス鎖およびアンチセンス鎖を二本鎖に結合可能なリンカー配列によって分離されたセンス配列およびそのアンチセンス相補物を含む、前述のパラグラフのいずれかに記載の方法。
41.前述の短縮ORIがORIΔ29である、前述のパラグラフのいずれかに記載の方法。
42.パラグラフ1~41のいずれかの方法によって製造された環状核酸ベクター。
43.環状核酸ベクターであって、
少なくとも1つの隣接切断部位:
i.少なくとも1つのファージ複製起点(ORI);
ii.少なくとも1つの末端反復(TR);および
iii.導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモーター配列
を含む、環状核酸ベクター。
44.前述のテンプレートが、第2の隣接切断部位をさらに含み、前述の2つの部位内に(i)~(iii)がある、前述のパラグラフのいずれかに記載のベクター。
45.前述のベクターが、前述の少なくとも1つのORIのすぐ下流に少なくとも1つのさらなる切断部位をさらに含む(例えば、図5を参照のこと)、前述のパラグラフのいずれかに記載のベクター。
46.前述のベクターが、少なくとも1つのアダプター配列をさらに含む、前述のパラグラフのいずれかに記載のベクター。
47.前述のベクターが、少なくとも2つのアダプター配列をさらに含む、前述のパラグラフのいずれかに記載のベクター。
48.前述のアダプター配列が、切断されたDNAの閉鎖を誘導する(例えば、図1~5、7、および9を参照のこと)、前述のパラグラフのいずれかに記載のベクター。
49.前述のアダプター配列が切断部位をさらに含む、前述のパラグラフのいずれかに記載のベクター。
50.前述のベクターが、前述の導入遺伝子の送達のために使用される、前述のパラグラフのいずれかに記載のベクター。
51.前述のベクターが、組換えウイルスベクター産生のために使用される、前述のパラグラフのいずれかに記載のベクター。
52.前述のベクターが、自己アニーリングし、かつ二本鎖である、前述のパラグラフのいずれかに記載のベクター。
53.前述のベクターが一本鎖である、前述のパラグラフのいずれかに記載のベクター。
54.第2のTRが存在し、前述の導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモーター配列の両側がTRに隣接している、前述のパラグラフのいずれかに記載のベクター。
55.前述のORIが左TRの上流にある、前述のパラグラフのいずれかに記載のベクター。
56.前述のORIが前述のTRに隣接しており、かつ前述の導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモーター配列の上流にある、前述のパラグラフのいずれかに記載のベクター。
57.前述の少なくとも1つのTRが、変異体ITR、合成ITR、野生型ITR、または非機能的ITRである、前述のパラグラフのいずれかに記載のベクター。
58.前述のベクターが隣接DD-ITRを有し、前述の隣接物の間に、前述の導入遺伝子のセンス鎖に作動可能に連結されたプロモーター、複製欠損ITR、および前述の導入遺伝子のアンチセンス相補物がある、前述のパラグラフのいずれかに記載のベクター。
59.前述のITRがAAV ITRである、前述のパラグラフのいずれかに記載のベクター。
60.前述のORIが、前述のITRの上流、かつ前述の上流ITRのすぐ下流に配置されている、前述のパラグラフのいずれかに記載のベクター。
61.前述のファージORIが、M13由来ORI、F1由来ORI、またはFd由来ORIからなる群から選択される、前述のパラグラフのいずれかに記載のベクター。
62.前述のテンプレート(temple)が、複製を開始しない短縮ORIである第2のORIをさらに含む、前述のパラグラフのいずれかに記載のベクター。
63.前述の短縮ORIがORIΔ29である、前述のパラグラフのいずれかに記載のベクター。
64.前述の少なくとも2つの切断部位が制限部位である、前述のパラグラフのいずれかに記載のベクター。
65.前述の少なくとも2つの制限部位が同じであるか異なる、前述のパラグラフのいずれかに記載のベクター。
66.前述の制限部位が、前述の導入遺伝子配列内に見いだされない、前述のパラグラフのいずれかに記載のベクター。
67.前述の切断部位が、ヌクレアーゼによって切断される、前述のパラグラフのいずれかに記載のベクター。
68.前述のプロモーターが、構成性プロモーター、抑制性プロモーター、ユビキタスプロモーター、誘導性プロモーター、ウイルスプロモーター、組織特異的プロモーター、および合成プロモーターからなる群から選択される、前述のパラグラフのいずれかに記載のベクター。
69.前述の導入遺伝子が治療遺伝子である、前述のパラグラフのいずれかに記載のベクター。
70.以下を含む環状核酸ベクター:
i.ファージ複製起点(ORI);
ii.短縮ファージORI(例えば、ORIΔ29);
iii.少なくとも1つの末端反復(TR)、および;
iv.導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモーター配列、
ここで、前述のベクターが、5’から3’への方向で、センス鎖およびアンチセンス鎖をアニーリングすることが可能なヘアピン配列によって分離されたセンス配列およびアンチセンス配列を含む。
71.前述のORIに隣接するリンカーおよび自己相補リンカーをさらに含む、前述のパラグラフのいずれかに記載のベクター。
72.前述の導入遺伝子が、センス鎖およびアンチセンス鎖を二本鎖に結合可能なリンカー配列によって分離されたセンス配列およびそのアンチセンス相補物を含む、前述のパラグラフのいずれかに記載のベクター。
73.前述の短縮ORIがORIΔ29である、前述のパラグラフのいずれかに記載のベクター。
74.前述のヌクレアーゼがプロテロメラーゼである、前述のパラグラフのいずれかに記載のベクター。
75.前述のヌクレアーゼがプロテロメラーゼである、前述のパラグラフのいずれかに記載のベクター。
【実施例
【0223】
実施例1:環状核酸を産生するテンプレートの作製。
被験体においてヒト第IX因子ミニ遺伝子を発現するためのベクターの生成に有用なテンプレートを作製する方法を本明細書中に例示する。5’から3’への方向に、BAMHI制限部位、F1 ORI、PvuII制限部位、ITR-L、第IX因子のコード領域に作動可能に連結された配列番号247肝臓特異的プロモーター、ITR-R、およびHINDIII制限部位を有するプラスミドを、BAMHI制限酵素およびHINDIII制限酵素を用いて37℃で24時間消化する。消化物を電気泳動ゲルにて泳動して、プラスミド断片を可視化および単離する。プラスミド断片をゲルから切り取り、精製する。BAMHI制限部位配列を有するアダプター配列およびHINDIII制限部位配列を有するアダプター配列を、同一の様式でさらに消化し、精製する。
【0224】
環状核酸テンプレートを形成するために、アダプター配列をプラスミド断片の切断物にアニーリングする。精製されたプラスミド断片およびアダプター配列を、リガーゼ(T4リガーゼなど)およびATPの存在下にて室温で少なくとも1時間ライゲーションする。ライゲーション反応物を65℃で10分間熱失活させて、リガーゼ酵素を不活化する。
【0225】
環状核酸テンプレートをE.coli細胞に形質転換し、37℃で14~16時間振盪して増殖させて、環状核酸の複製を誘導する。第IX因子導入遺伝子をコードする環状核酸を、細胞を溶解するための細菌溶解試薬を使用してE.coli細胞から放出させる。放出後、第IX因子の環状核酸を、例えば、カラムクロマトグラフィを使用した精製による標準的な方法を使用して回収する。自己アニーリングした環状核酸を回収し、in vivoでの導入遺伝子の送達のために直接使用するか、ウイルス産生のために使用することができる(実施例2を参照のこと)。
【0226】
回収された第IX因子の環状核酸を、PvuII制限酵素を用いて25℃で24時間さらに消化して、PvuII切断部位を切断する(例えば、図5を参照のこと)。PvuIIでの切断によってORIが除去され、第IX因子の核酸産物に開放型の末端が作出される。開放型環状核酸を、導入遺伝子のin vivo送達または組換えウイルスDNAの産生のために使用することができる。環状核酸は、組換えウイルス産生や導入遺伝子のin vivo送達のために使用すべきPvuIIで消化される必要はない。
実施例2:環状核酸は、受容細胞中で存続する
【0227】
臨床での妥当性を実証するために、肝臓特異的プロモーター(配列番号247)によって駆動されるヒト第IX因子のミニ遺伝子を含む発現カセットを、異なるベクター(本発明の(すなわち、実施例1で産生された)自己アニーリングした環状核酸)、対応する線状DNA、および対応するプラスミドDNAを使用して血友病Bマウスの肝臓に送達させた。マウスを、注射後の種々の時間(3、4、5、6、7、8、9、10週間後、および3ヶ月後、5ヶ月後、10ヶ月後、1年後など)で血清ヒト第IX因子濃度を分析することによってベクターの存在および第IX因子の遺伝子発現について分析する。
【0228】
第IX因子発現カセットを含む環状核酸のレシピエントは、一本鎖線状DNAおよびプラスミドDNA対照のレシピエントより大量のベクターが経時的に存在し、第IX因子濃度が高いと予想される。ベクターの存在量およびヒト第IX因子の濃度は、環状核酸のレシピエント中で経時的に持続され、対照のレシピエント中で経時的に減少すると予想される。さらに、経時的に、レシピエントマウスにおける環状核酸中での第IX因子の発現は、対照のレシピエントにおける第IX因子の発現より実質的に高いレベルかつ実質的に長期間存続すると予想される。この予想を、ELISA分析による血清中のヒト第IX因子の定量および出血性素因の補正の同定によって判定し、また、ベクター投与後の異なる時間におけるサザンブロット分析による処置マウスの肝臓中のベクターの定量によって判定する。さらに、処置マウスにおけるベクターを含む肝細胞核数を肝臓切片のin situハイブリッド形成によって判定して、ベクターを含む肝細胞核の相対数が類似するかどうかを検証する。
【0229】
in vivoでの送達DNAの分子構造
【0230】
ベクターは、経時的に存続するレシピエント組織中でコンカテマーを形成すると予想される。コンカテマーは染色体外に存続するか、宿主細胞ゲノムに組み込まれる。これを実証するために、レシピエントマウス肝臓組織を、サザンブロット分析によってベクターDNAの分子構造について分析する。DNAを単離し、次いで、ベクター内を切断しないか、発現カセット中を1回切断する制限エンドヌクレアーゼで消化する。切断DNAを分析して、マウスゲノムへのDNAの組み込みまたは染色体外の保持を判定する。ベクターDNA内を切断できないエンドヌクレアーゼでの消化に由来する全ての試料中の高分子量バンドの産生は、マウスゲノムへのDNAベクターの組み込みまたはin vivoでのコンカテマーの急速な形成のいずれかと一致する。これら2つの可能性を、発現カセット中を1回切断する制限エンドヌクレアーゼでの肝臓DNA試料の消化によって識別する。この消化による高分子DNAシグナルのDNAラダーへの変換は、in vivoにおけるコンカテマー化を示すであろう。
【0231】
高分子量DNAの大部分は、コンカテマーに由来し得る。しかしながら、これが細胞外であるかゲノムに組み込まれているかどうかを判断するために、マウスに本発明の環状核酸を注射するか、第IX因子トランスポゾン(Yant et al.,Nat.Genet.25:35-41)を2/3部分的肝切除物に組み込む。トランスポゾン群では、一方のプラスミドから発現されたトランスポザーゼは、第2のプラスミド由来のトランスポゾンITRに隣接したヒト第IX因子の発現カセットの放出および放出された導入遺伝子の発現カセットのマウスゲノムへの挿入を媒介する。部分的な肝切除によって肝細胞が1または2ラウンド細胞分裂し、染色体外DNAが有意に喪失する場合、これは、組み込みプラスミド注入マウス(その導入遺伝子発現が肝細胞増殖の誘導によって変化しないはずである)と対照的に、ベクターDNA処置マウスにおける部分的肝切除後の同一の期間にわたる遺伝子発現が1/10に低下することを示すであろう。これらのデータは、本発明の転写活性環状核酸が優位に肝臓内の染色体外に残存することを示すであろう。別の結果は、活性環状核酸が肝臓細胞染色体に組み込まれることを示すであろう。
【0232】
方法
【0233】
動物研究。8~10週齢の雌C57BL/6マウスを、Taconic Farms,Inc.(Germantown,NY)から入手する。全ての動物に対する手技を、スタンフォード大学および国立衛生研究所が定めたガイダンスにしたがって実施する。40マイクログラムのDNAを含む2mlの0.85%生理食塩液を、以前に記載のように(Liu et al.,(1999)Gene Ther.6:1258-1266;Zhang et al.,(1999)Human Gene Therapy 10:1735-1737)、マウス尾静脈に注射する。各注射について、DNAの質量は同じであるが、一方で分子比は変動し得る(例えば、2倍)。他の研究では、分子比の小さな変動は、遺伝子発現に有意な影響を及ぼさないと予想されている。後眼窩技術によって定期的にマウスから出血させる。一部の例では、以前に記載のように(Park et al.,Nat.Genet.24:49-52(2000))、マウスの肝臓の2/3を外科的に部分切除する。マウスにおける出血時間を、以前に記載のように(Yant et al.,(2000)Nat.Genet.25:35-41)、2~3mmの尾の切り口由来の血液の凝固に必要な時間を測定することによって判定する。
【0234】
in situハイブリッド形成。尾静脈注入による40μgの各対照DNAの投与から2~3週間後のマウスのパラフィン包埋肝臓の5マイクロメートルの切片を、以前に記載のプロトコール(Miao et al.(2000)J.Virol.74:3793-3803)にしたがってin situハイブリッド形成のために処理する。脱パラフィン、再水和、変性、およびプロテイナーゼでの消化後、切片を、Roche Molecular Biochemicals(Indianapolis,IN)のDIG標識キットを使用してジゴキシゲニンで標識したベクターに特異的な変性DNAプローブとインキュベートする。ハイブリッド形成後、切片を、アルカリホスファターゼと抱合したヤギ抗ジゴキシゲニン抗体とインキュベートし、アルカリホスファターゼ結合ベクターDNAを、ニトロブルーテトラゾリウムクロリド-5-4-クロロ-3-インドリルホスファート(Roche Molecular Biochemicals)によって可視化する。
【0235】
ELISA定量。DNA送達後、マウスから定期的に採血し、ヒト第IX因子(hFIX)(Walter et al.,(1996)PNAS USA93:3056-3061)をELISAによって定量する。
【0236】
サザンブロット分析。DNA注射後の一定期間にマウスを屠殺し、総肝臓DNAを塩析法によって調製する。20ミリグラムの肝臓DNAを制限酵素で消化し、ゲル電気泳動によって分離し、プローブとしてcDNAを使用したサザンブロットハイブリッド形成によって分析する。放射性DNAバンドを、ホスホイメージャー分析によって定量する。
【0237】
本発明は、本明細書中に開示の例示の実施形態によって本発明の範囲が制限されないものとし、これらの実施形態は本発明の1つの態様の例示を意図し、機能的に等価な任意のクローン、DNA、またはアミノ酸の配列が本発明の範囲内にある。実際に、本明細書中に示し、記載した実施形態に加えて、本発明の種々の修正形態が、前述の説明および添付の図面から当業者に明らかとなるであろう。かかる修正形態は、添付の特許請求の範囲の範囲内にあることが意図される。
実施例3:環状核酸は形質導入を高める。
【0238】
実施例1で産生された第IX因子を発現する自己アニーリングした環状核酸は、核酸構築物を発現する標準的なベクター(例えば、レンチウイルスベクター)と比較して、形質導入を高める。各構築物を、尾静脈注射によってマウスに注射した。第IX因子の導入遺伝子の発現は肝臓特異的プロモーターによって駆動されるため、発現は、肝臓に制限されると予想される。注射7日後(dpi)に、マウスを屠殺し、肝臓を入手し、ウェスタンブロッティングによって第IX因子の導入遺伝子のタンパク質発現について探索する。環状核酸由来の導入遺伝子発現は、標準的なベクターと比較して70倍に高められることが見出される。全ての結果を、測定された効果がバッチや精製方法に特異的でないことを確認するためにいくつかの方法(例えば、密度超遠心分離、アフィニティクロマトグラフィ)によって精製された独立したベクター調製物を使用した複数の実験で確認する。第IX因子を発現する環状核酸の形質導入は、類似の核酸構築物を発現するAAVベクターの形質導入と比較して有意に高められることがさらに見出される。これらの実験を、ヒト酸性Acid-a1,4-グルコシダーゼ(GAA)を発現する環状核酸を用いて繰り返し、標準的なベクターと比較して高められた形質導入が同様に認められる。
【0239】
適切な時点で試験されたことをさらに確実にするために、7、14、21、および42dpiに回収した測定物を使用して環状核酸および標準的な核酸ベクター由来の導入遺伝子発現の経時変化を取った。発現動態は同一なようであり、7dpiで頑強な発現が認められ、標準的なベクターの注射の7日後と42日後との間に7.5倍に増加し、環状核酸注射後の同一の期間中に12倍に増加する。全ての時点で、環状核酸は、標準的なベクターよりおよそ2桁優れている(7日目で100倍、14日目で176倍、21日目で81倍、および42日目で159倍)。まとめると、これらのデータは、本発明の環状核酸が導入遺伝子の形質導入を高めるのに非常に有効なベクターであることを実証している。
実施例4:環状核酸を使用したウイルスベクターの製造。
【0240】
実施例1で産生された末端が開放型および閉鎖型の第IX因子核酸構築物を使用して、AAV産生のための安定な細胞株(Pro10細胞)中でウイルスベクターを製造する。例えば米国特許第9,441,206号に記載のAAV産生のためのこれらの安定なPro10細胞は、AAVベクターの大量産生に理想的である。細胞株を、トランスフェクションによって第IX因子核酸構築物と接触させて環状核酸を発現させる。第IX因子核酸構築物の発現を、プラスミドに特異的なプライマーを使用したPCRベースのアッセイによって確認する。
【0241】
トランスフェクション。安定なPro10細胞を、第IX因子核酸構築物でトランフェクトし、Rep2およびセロタイプ特異的Cap2をコードするパッケージングプラスミドでもトランスフェクトする:あるいは、本明細書中に記載の方法によって作製された自己アニーリングした環状核酸としてAAV-Rep/Capも提供し、そして/または本明細書中に記載の方法によって作製した自己アニーリングした環状核酸としてAd-ヘルパープラスミド(XX680:アデノウイルスヘルパー配列をコードする)も提供する。
【0242】
トランスフェクション1日目に、ViCell XR Viability Analyzer(Beckman Coulter)を使用して細胞をカウントし、トランスフェクションのために希釈する。トランスフェクションカクテルを混合するために、以下の試薬を、以下の順序:プラスミドDNA、OPTIMEM(登録商標)I(Gibco)もしくはOptiPro SFM(Gibco)、または他の無血清の適合トランスフェクション培地でコニカルチューブに添加し、次いで、トランスフェクション試薬をプラスミドDNAに対して特定の比で添加する。カクテルを反転させて混合した後に室温でインキュベートする。トランスフェクションカクテルをピペットでフラスコに入れ、振盪機/インキュベーターに戻す。全ての最適化研究を、培養体積30mLで行い、その後により大きな培養体積で可視化する。トランスフェクションの48時間後に細胞を採取する。
【0243】
Wave Bioreactorシステムを使用したrAAVの産生。トランスフェクションの2日前にwaveバッグに播種する。バッグへの播種から2日後に、細胞培養物を計数し、次いで、細胞培養物をトランスフェクション前に拡大/希釈する。次いで、waveバイオリアクターの細胞培養物をトランスフェクトする。トランスフェクションから少なくとも48時間後に細胞培養物をwaveバイオリアクターバッグから採取する。
【0244】
力価:AAV力価を、DNase消化後に検量線(AAV ITR特異的)に対するqPCRおよび第IX因子の核酸構築物に特異的なプライマーを使用して計算する。
【0245】
振盪フラスコおよび60個のWaveバイオリアクターバッグからの浮遊細胞の回収。トランスフェクションから48時間後、細胞培養物を、振盪フラスコから注ぎ出すか、waveバイオリアクターバッグからポンピングすることによって500mLポリプロピレンコニカルチューブ(Corning)に回収する。次いで、細胞培養物を、Sorvall RC3C plus遠心機およびH6000Aローターを用いて655×gで10分間遠心分離する。上清を破棄し、細胞を1×PBSに再懸濁し、50mLコニカルチューブに移し、655×gで10分間遠心分離する。この時点で、ペレットを、-60℃未満で保存するか、精製を継続することができる。
【0246】
qPCRを用いた細胞ライセート由来のrAAVの力価測定。10mLの細胞培養物を取り出し、Sorvall RC3C plus遠心機およびH6000Aローターを用いて655×gで10分間遠心分離する。上清を細胞ペレットからデカントする。次いで、細胞ペレットを、5mLのDNase緩衝液(5mM CaC12、5mM MgC12、50mM Tris-HCl(pH8.0))に再懸濁し、その後に超音波処理して細胞を効率的に溶解する。次いで、300uLを取り出し、1.5mL微量遠心管に入れる。次いで、140単位のDNaseIを各試料に添加し、37℃で1時間インキュベートする。DNase消化の有効性を判定するために、4~5mgの第IX因子核酸構築物を、DNaseを添加済みおよび無添加の非トラスフェクション細胞ライセートに添加する。50μLのEDTA/サルコシル溶液(6.3%サルコシル、62.5mM EDTA(pH8.0))を各チューブに添加し、70℃で20分間インキュベートする。次いで、50μLのプロテイナーゼK(10mg/mL)を添加し、55℃で少なくとも2時間インキュベートする。試料を15分間ボイルしてプロテイナーゼKを失活させる。qPCRによって分析するためのアリコートを各試料から取り出す。細胞あたりどのくらいのrAAVベクターが生成されるかを有効に判定するために、2つのqPCR反応を行う。一方のqPCR反応を、プラスミドXX680、pXR2、および第IX因子核酸構築物のバックボーン上の相同配列に結合するように設計されたプライマーセット2sを使用して設定する。第2のqPCR反応を、第IX因子ミニ遺伝子内の領域に結合して増幅するためのプライマーセットを使用して設定する。qPCRを、30RocheのSybrグリーン試薬およびライトサイクラー480を使用して行う。試料に対して95℃で10分間の変性、その後の45サイクル(90℃で10秒間、62℃で10秒間、および72℃で10秒間)および融解曲線解析(99℃で30秒間を1サイクル、65℃で1分間継続)を実施する。
【0247】
粗ライセート由来のrAAVの精製。各細胞ペレットを、最終体積10mLに調整する。ペレットを短時間ボルテックスし、1秒間のオン、1秒間のオフによってバーストする収率30%の超音波処理を4分間行う。超音波処理後、550UのDNaseを添加し、37℃で45分間インキュベートする。次いで、ペレットを、Sorvall RCSB遠心機およびHS-4ローターを使用して9400×gで遠心分離して細胞デブリをペレット化し、明澄化されたライセートをType70Ti遠心管(Beckman 361625)に移す。rAAVの単離のための浮遊HEK293細胞の採取および溶解に関して、当業者は、顕微溶液化などの機械的方法または界面活性剤などの化学的方法を用いることができ、その後に深層濾過またはタンジェンシャルフローフィルトレーション(TFF)を使用した明澄化工程を使用することができる。
【0248】
AAVベクターの精製。明澄化したAAVライセートを、当業者が承知しており、以下の文書(Allay et al.、Davidoff et al.、Kaludov et al.、Zolotukhin et al.、Zolotukin et alなど)(その全体が本明細書中で参考として援用される)に記載されていると考えられるカラムクロマトグラフィ法によって精製する。
実施例5:コンカテマーDNAの増幅
【0249】
ヒト第IX因子遺伝子、DD-ITR、およびプロテロメラーゼTelNの結合配列を含むテロメア末端をコードする核酸を含む環状核酸を、DNAテンプレートとして使用する。テンプレートのテロメア末端を含む回文配列の半分の切片に相補的な単一の回文構造のオリゴヌクレオチドを、特異的プライマーとして使用する。プライマーは、DNAテンプレート上の2つの同一の部位に結合する。
【0250】
環状核酸の変性および単一のプライマーのアニーリングを、例えば、30mM Tris-HCl(pH7.5)、20mM KCl、2.5mM MgCl2を含むアニーリング/変性緩衝液中で行う。95℃で1分間加熱し、この温度で1~10分間保持し、その後にテンプレートへの特異的プライマーの結合を最大にするように最適化された冷却プロフィールを慎重に調節することによって変性させる。次いで、適切なDNAポリメラーゼによるDNA増幅に最適な温度まで低下させる。かかる適切な酵素の1つは、Bacillus subtilisファージφ29から単離した30℃で最適に作用するφ29である。
【0251】
次いで、酵素φ29およびPPi(酵母無機ピロホスファターゼ)を含む適切な体積の反応緩衝液を、アニーリングしたDNA/プライマー反応物に添加する。反応混合物を、およそ30℃で5時間と20時間の間またはそれを超えてインキュベートする。適切な反応緩衝液は、典型的には、35mM Tris-HCl、50mM KCl、2.5mM MgCl2、10mM(NH4)2SO4、4mM DTT、1mM dNTPを含む。
【0252】
次いで、RCAによって増幅されたコンカテマーDNAを、プロテロメラーゼTelNと、適切な緩衝液(10mM TrisHCl(pH7.6)、5mM CaCl2、50mMグルタミン酸カリウム、0.1mM EDTA、1mM DTTなど)中で、反応が完了するまで30℃でインキュベートする。得られた閉鎖型線状DNA産物は、例えば、精製すべき量に応じてゲル電気泳動または適切なクロマトグラフ法によって精製され得る。
【0253】
これらの方法は、産物がテンプレートと同一であるサイクル反応のために提供する。この反応物は、この方法の工程のサイクルを追加することによって非常に少量のテンプレートから容易にスケールアップされる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【配列表】
2022537410000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-02-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導入遺伝子を含む環状核酸ベクターを製造する方法であって、
a.宿主系をテンプレートと接触させる工程であって、前記テンプレートが、少なくとも1つの隣接切断部位および以下を含む工程:
i.少なくとも1つのファージ複製起点(ORI);
ii.少なくとも1つの末端反復(TR)、および;
iii.導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモーター配列;
b.前記宿主系を、環状核酸を産生するのに十分な複製時間にわたってインキュベートする工程;および
c.工程bで産生された前記環状核酸を回収する工程であって、
前記環状核酸が自己アニーリングする、回収する工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記テンプレートが、第2の隣接切断部位をさらに含み、前記2つの部位内に前記(i)~(iii)がある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記テンプレートが、少なくとも1つのORIのすぐ下流に少なくとも1つのさらなる切断部位をさらに含む(例えば、図5を参照のこと)、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
回収された前記環状核酸の少なくとも1つの切断部位を切断する工程(例えば、図5を参照のこと)をさらに含む、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
回収後に前記環状核酸のin vitro複製工程をさらに含む、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記テンプレートが少なくとも1つのアダプター配列をさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記テンプレートが少なくとも2つのアダプター配列をさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記アダプター配列が、切断されたDNAの閉鎖を誘導する(例えば、図1~5、7、および9を参照のこと)、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記アダプター配列が切断部位をさらに含む、請求項6または7に記載の方法。
【請求項10】
前記回収された環状核酸が、前記導入遺伝子の送達のために使用される、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記回収された環状核酸が、組換えウイルスベクター産生のために使用される、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記環状核酸が、自己アニーリングされた二本鎖である、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記ベクターが一本鎖である、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
第2のTRが存在し、前記導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモーター配列の両側がTRに隣接している、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記ORIが左TRの上流にある、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記ORIが前記TRに隣接しており、かつ前記導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモーター配列の上流にある、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記宿主系が細菌パッケージング細胞である、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記宿主系が無細胞系である、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記宿主系が無細胞系であり、かつヘルパーファージ粒子を含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記宿主系が宿主細胞である、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記宿主細胞が、哺乳動物細胞、細菌細胞、または昆虫細胞である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ウイルスベクターが、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レンチウイルス(LV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、アデノウイルス(AV)、またはポックスウイルス(PV)である、請求項11に記載の方法。
【請求項23】
前記ベクターが、DNAウイルスまたはRNAウイルスである、請求項11および22に記載の方法。
【請求項24】
前記ウイルスがAAVであり、かつ変異体ITRを有し、ここで、前記変異体ITRがダブルD変異体ITRである、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記少なくとも1つのTRが、変異体ITR、合成ITR、野生型ITR、または非機能的ITRである、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記ベクターが隣接DD-ITRを有し、前記隣接DD-ITRの間に、前記導入遺伝子のセンス鎖に作動可能に連結されたプロモーター、複製欠損ITR、および前記導入遺伝子のアンチセンス相補物がある、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記ITRがAAV ITRである、請求項25~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記ORIが、前記ITRの上流、かつ前記上流ITRのすぐ下流に配置されている、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記少なくとも1つのファージORIが、M13由来ORI、F1由来ORI、およびFd由来ORIからなる群から選択される、請求項1~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記テンプレートが、複製を開始しない短縮ORIである第2のORIをさらに含む、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記短縮ORIがORIΔ29である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記少なくとも2つの切断部位が制限部位である、請求項1~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記少なくとも2つの制限部位が同じであるか異なる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記制限部位が、前記導入遺伝子配列内に見いだされない、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記切断部位が、ヌクレアーゼによって切断される、請求項1~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記プロモーターが、構成性プロモーター、抑制性プロモーター、ユビキタスプロモーター、誘導性プロモーター、ウイルスプロモーター、組織特異的プロモーター、および合成プロモーターからなる群から選択される、請求項1~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記導入遺伝子が治療遺伝子である、請求項1~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
導入遺伝子を含む環状核酸ベクターを製造する方法であって、
a.宿主系をプラスミドテンプレートで形質転換する工程であって、前記プラスミドテンプレートが以下を含む工程:
i.ファージ複製起点(ORI);
ii.短縮ファージORI(例えば、ORIΔ29);
iii.少なくとも1つの末端反復(TR)、および;
iv.導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモーター配列、
ここで、前記プラスミドテンプレートが、5’から3’への方向で、センス鎖およびアンチセンス鎖をアニーリングすることが可能なヘアピン配列によって分離されたセンス配列およびアンチセンス配列を含む;
b.前記宿主系を、環状核酸を産生するのに十分な複製時間にわたってインキュベートする工程;および
c.産生された前記環状核酸を回収する工程であって、前記環状核酸が自己アニーリングする工程
を含む、方法。
【請求項39】
前記ORIに隣接するリンカーおよび自己相補リンカーをさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記導入遺伝子が、センス鎖およびアンチセンス鎖を二本鎖に結合可能なリンカー配列によって分離されたセンス配列およびそのアンチセンス相補物を含む、請求項38または39に記載の方法。
【請求項41】
前記短縮ORIがORIΔ29である、請求項38~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
請求項1~41のいずれか1項に記載の方法によって製造された環状核酸ベクター。
【請求項43】
環状核酸ベクターであって、
少なくとも1つの隣接切断部位、ならびに
i.少なくとも1つのファージ複製起点(ORI);
ii.少なくとも1つの末端反復(TR);および
iii.導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモーター配列
を含む、環状核酸ベクター。
【請求項44】
前記テンプレートが、第2の隣接切断部位をさらに含み、前記2つの部位内に前記(i)~(iii)がある、請求項43に記載のベクター。
【請求項45】
前記ベクターが、前記少なくとも1つのORIのすぐ下流に少なくとも1つのさらなる切断部位をさらに含む(例えば、図5を参照のこと)、請求項43または44に記載のベクター。
【請求項46】
前記ベクターが、少なくとも1つのアダプター配列をさらに含む、請求項43~45のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項47】
前記ベクターが、少なくとも2つのアダプター配列をさらに含む、請求項43~46のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項48】
前記アダプター配列が、切断されたDNAの閉鎖を誘導する(例えば、図1~5、7、および9を参照のこと)、請求項46または47に記載のベクター。
【請求項49】
前記アダプター配列が切断部位をさらに含む、請求項46または47に記載のベクター。
【請求項50】
前記ベクターが、前記導入遺伝子の送達のために使用される、請求項43~49のいずれかに記載のベクター。
【請求項51】
前記ベクターが、組換えウイルスベクター産生のために使用される、請求項43~49のいずれかに記載のベクター。
【請求項52】
前記ベクターが、自己アニーリングし、かつ二本鎖である、請求項43~51のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項53】
前記ベクターが一本鎖である、請求項43~52のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項54】
第2のTRが存在し、前記導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモーター配列の両側がTRに隣接している、請求項43~53のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項55】
前記ORIが左TRの上流にある、請求項43~54のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項56】
前記ORIが前記TRに隣接しており、かつ前記導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモーター配列の上流にある、請求項43~55のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項57】
前記少なくとも1つのTRが、変異体ITR、合成ITR、野生型ITR、または非機能的ITRである、請求項43~56のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項58】
前記ベクターが隣接DD-ITRを有し、前記隣接DD-ITRの間に、前記導入遺伝子のセンス鎖に作動可能に連結されたプロモーター、複製欠損ITR、および前記導入遺伝子のアンチセンス相補物がある、請求項43~57のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項59】
前記ITRがAAV ITRである、請求項57または58に記載のベクター。
【請求項60】
前記ORIが、前記ITRの上流、かつ前記上流ITRのすぐ下流に配置されている、請求項43~59のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項61】
前記ファージORIが、M13由来ORI、F1由来ORI、およびFd由来ORIからなる群から選択される、請求項43~60のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項62】
前記テンプレートが、複製を開始しない短縮ORIである第2のORIをさらに含む、請求項43~61のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項63】
前記短縮ORIがORIΔ29である、請求項43~62のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項64】
前記少なくとも2つの切断部位が制限部位である、請求項43~63のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項65】
前記少なくとも2つの制限部位が同じであるか異なる、請求項64に記載のベクター。
【請求項66】
前記制限部位が、前記導入遺伝子配列内に見いだされない、請求項64に記載のベクター。
【請求項67】
前記切断部位が、ヌクレアーゼによって切断される、請求項43~66のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項68】
前記プロモーターが、構成性プロモーター、抑制性プロモーター、ユビキタスプロモーター、誘導性プロモーター、ウイルスプロモーター、組織特異的プロモーター、および合成プロモーターからなる群から選択される、請求項43~67のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項69】
前記導入遺伝子が治療遺伝子である、請求項43~68のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項70】
環状核酸ベクターであって、
i.ファージ複製起点(ORI);
ii.短縮ファージORI(例えば、ORIΔ29);
iii.少なくとも1つの末端反復(TR)、および;
iv.導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモーター配列
を含み、
ここで、前記ベクターが、5’から3’への方向で、センス鎖およびアンチセンス鎖をアニーリングすることが可能なヘアピン配列によって分離されたセンス配列およびアンチセンス配列を含む、環状核酸ベクター。
【請求項71】
前記ORIに隣接するリンカーおよび自己相補リンカーをさらに含む、請求項70に記載のベクター。
【請求項72】
前記導入遺伝子が、センス鎖およびアンチセンス鎖を二本鎖に結合可能なリンカー配列によって分離されたセンス配列およびそのアンチセンス相補物を含む、請求項70または71に記載のベクター。
【請求項73】
前記短縮ORIがORIΔ29である、請求項70~72のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項74】
導入遺伝子を送達するための、請求項42~73のいずれかに記載の環状核酸を含む組成物。
【請求項75】
in vitro、in vivoまたはex vivoで投与されるものである、請求項74に記載の組成物。
【請求項76】
導入遺伝子を送達するための医薬の製造における、請求項42~73のいずれかに記載のいずれかの環状核酸の使用。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0253
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0253】
これらの方法は、産物がテンプレートと同一であるサイクル反応のために提供する。この反応物は、この方法の工程のサイクルを追加することによって非常に少量のテンプレートから容易にスケールアップされる。
特定の実施形態では、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
導入遺伝子を含む環状核酸ベクターを製造する方法であって、
a.宿主系をテンプレートと接触させる工程であって、前記テンプレートが、少なくとも1つの隣接切断部位および以下を含む工程:
i.少なくとも1つのファージ複製起点(ORI);
ii.少なくとも1つの末端反復(TR)、および;
iii.導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモーター配列;
b.前記宿主系を、環状核酸を産生するのに十分な複製時間にわたってインキュベートする工程;および
c.工程bで産生された前記環状核酸を回収する工程であって、
前記環状核酸が自己アニーリングする、回収する工程
を含む、方法。
(項目2)
前記テンプレートが、第2の隣接切断部位をさらに含み、前記2つの部位内に前記(i)~(iii)がある、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記テンプレートが、少なくとも1つのORIのすぐ下流に少なくとも1つのさらなる切断部位をさらに含む(例えば、図5を参照のこと)、項目1または2に記載の方法。
(項目4)
回収された前記環状核酸の少なくとも1つの切断部位を切断する工程(例えば、図5を参照のこと)をさらに含む、項目1~3のいずれかに記載の方法。
(項目5)
回収後に前記環状核酸のin vitro複製工程をさらに含む、項目1~4のいずれかに記載の方法。
(項目6)
前記テンプレートが少なくとも1つのアダプター配列をさらに含む、項目1~5のいずれか1項に記載の方法。
(項目7)
前記テンプレートが少なくとも2つのアダプター配列をさらに含む、項目1~6のいずれか1項に記載の方法。
(項目8)
前記アダプター配列が、切断されたDNAの閉鎖を誘導する(例えば、図1~5、7、および9を参照のこと)、項目6または7に記載の方法。
(項目9)
前記アダプター配列が切断部位をさらに含む、項目6または7に記載の方法。
(項目10)
前記回収された環状核酸が、前記導入遺伝子の送達のために使用される、項目1~9のいずれかに記載の方法。
(項目11)
前記回収された環状核酸が、組換えウイルスベクター産生のために使用される、項目1~9のいずれかに記載の方法。
(項目12)
前記環状核酸が、自己アニーリングされた二本鎖である、項目1~11のいずれか1項に記載の方法。
(項目13)
前記ベクターが一本鎖である、項目1~12のいずれか1項に記載の方法。
(項目14)
第2のTRが存在し、前記導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモーター配列の両側がTRに隣接している、項目1~13のいずれか1項に記載の方法。
(項目15)
前記ORIが左TRの上流にある、項目1~14のいずれか1項に記載の方法。
(項目16)
前記ORIが前記TRに隣接しており、かつ前記導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモーター配列の上流にある、項目1~15のいずれか1項に記載の方法。
(項目17)
前記宿主系が細菌パッケージング細胞である、項目1~16のいずれか1項に記載の方法。
(項目18)
前記宿主系が無細胞系である、項目1~17のいずれか1項に記載の方法。
(項目19)
前記宿主系が無細胞系であり、かつヘルパーファージ粒子を含む、項目1~18のいずれか1項に記載の方法。
(項目20)
前記宿主系が宿主細胞である、項目1~19のいずれか1項に記載の方法。
(項目21)
前記宿主細胞が、哺乳動物細胞、細菌細胞、または昆虫細胞である、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記ウイルスベクターが、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レンチウイルス(LV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、アデノウイルス(AV)、またはポックスウイルス(PV)である、項目11に記載の方法。
(項目23)
前記ベクターが、DNAウイルスまたはRNAウイルスである、項目11および22に記載の方法。
(項目24)
前記ウイルスがAAVであり、かつ変異体ITRを有し、ここで、前記変異体ITRがダブルD変異体ITRである、項目22に記載の方法。
(項目25)
前記少なくとも1つのTRが、変異体ITR、合成ITR、野生型ITR、または非機能的ITRである、項目1~24のいずれか1項に記載の方法。
(項目26)
前記ベクターが隣接DD-ITRを有し、前記隣接DD-ITRの間に、前記導入遺伝子のセンス鎖に作動可能に連結されたプロモーター、複製欠損ITR、および前記導入遺伝子のアンチセンス相補物がある、項目1~25のいずれか1項に記載の方法。
(項目27)
前記ITRがAAV ITRである、項目25~26のいずれか1項に記載の方法。
(項目28)
前記ORIが、前記ITRの上流、かつ前記上流ITRのすぐ下流に配置されている、項目1~27のいずれか1項に記載の方法。
(項目29)
前記少なくとも1つのファージORIが、M13由来ORI、F1由来ORI、およびFd由来ORIからなる群から選択される、項目1~28のいずれか1項に記載の方法。
(項目30)
前記テンプレートが、複製を開始しない短縮ORIである第2のORIをさらに含む、項目1~29のいずれか1項に記載の方法。
(項目31)
前記短縮ORIがORIΔ29である、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記少なくとも2つの切断部位が制限部位である、項目1~31のいずれか1項に記載の方法。
(項目33)
前記少なくとも2つの制限部位が同じであるか異なる、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記制限部位が、前記導入遺伝子配列内に見いだされない、項目32に記載の方法。
(項目35)
前記切断部位が、ヌクレアーゼによって切断される、項目1~34のいずれか1項に記載の方法。
(項目36)
前記プロモーターが、構成性プロモーター、抑制性プロモーター、ユビキタスプロモーター、誘導性プロモーター、ウイルスプロモーター、組織特異的プロモーター、および合成プロモーターからなる群から選択される、項目1~35のいずれか1項に記載の方法。
(項目37)
前記導入遺伝子が治療遺伝子である、項目1~36のいずれか1項に記載の方法。
(項目38)
導入遺伝子を含む環状核酸ベクターを製造する方法であって、
a.宿主系をプラスミドテンプレートで形質転換する工程であって、前記プラスミドテンプレートが以下を含む工程:
i.ファージ複製起点(ORI);
ii.短縮ファージORI(例えば、ORIΔ29);
iii.少なくとも1つの末端反復(TR)、および;
iv.導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモーター配列、
ここで、前記プラスミドテンプレートが、5’から3’への方向で、センス鎖およびアンチセンス鎖をアニーリングすることが可能なヘアピン配列によって分離されたセンス配列およびアンチセンス配列を含む;
b.前記宿主系を、環状核酸を産生するのに十分な複製時間にわたってインキュベートする工程;および
c.産生された前記環状核酸を回収する工程であって、前記環状核酸が自己アニーリングする工程
を含む、方法。
(項目39)
前記ORIに隣接するリンカーおよび自己相補リンカーをさらに含む、項目38に記載の方法。
(項目40)
前記導入遺伝子が、センス鎖およびアンチセンス鎖を二本鎖に結合可能なリンカー配列によって分離されたセンス配列およびそのアンチセンス相補物を含む、項目38または39に記載の方法。
(項目41)
前記短縮ORIがORIΔ29である、項目38~40のいずれか1項に記載の方法。
(項目42)
項目1~41のいずれか1項に記載の方法によって製造された環状核酸ベクター。
(項目43)
環状核酸ベクターであって、
少なくとも1つの隣接切断部位、ならびに
i.少なくとも1つのファージ複製起点(ORI);
ii.少なくとも1つの末端反復(TR);および
iii.導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモーター配列
を含む、環状核酸ベクター。
(項目44)
前記テンプレートが、第2の隣接切断部位をさらに含み、前記2つの部位内に前記(i)~(iii)がある、項目43に記載のベクター。
(項目45)
前記ベクターが、前記少なくとも1つのORIのすぐ下流に少なくとも1つのさらなる切断部位をさらに含む(例えば、図5を参照のこと)、項目43または44に記載のベクター。
(項目46)
前記ベクターが、少なくとも1つのアダプター配列をさらに含む、項目43~45のいずれか1項に記載のベクター。
(項目47)
前記ベクターが、少なくとも2つのアダプター配列をさらに含む、項目43~46のいずれか1項に記載のベクター。
(項目48)
前記アダプター配列が、切断されたDNAの閉鎖を誘導する(例えば、図1~5、7、および9を参照のこと)、項目46または47に記載のベクター。
(項目49)
前記アダプター配列が切断部位をさらに含む、項目46または47に記載のベクター。
(項目50)
前記ベクターが、前記導入遺伝子の送達のために使用される、項目43~49のいずれかに記載のベクター。
(項目51)
前記ベクターが、組換えウイルスベクター産生のために使用される、項目43~49のいずれかに記載のベクター。
(項目52)
前記ベクターが、自己アニーリングし、かつ二本鎖である、項目43~51のいずれか1項に記載のベクター。
(項目53)
前記ベクターが一本鎖である、項目43~52のいずれか1項に記載のベクター。
(項目54)
第2のTRが存在し、前記導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモーター配列の両側がTRに隣接している、項目43~53のいずれか1項に記載のベクター。
(項目55)
前記ORIが左TRの上流にある、項目43~54のいずれか1項に記載のベクター。
(項目56)
前記ORIが前記TRに隣接しており、かつ前記導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモーター配列の上流にある、項目43~55のいずれか1項に記載のベクター。
(項目57)
前記少なくとも1つのTRが、変異体ITR、合成ITR、野生型ITR、または非機能的ITRである、項目43~56のいずれか1項に記載のベクター。
(項目58)
前記ベクターが隣接DD-ITRを有し、前記隣接DD-ITRの間に、前記導入遺伝子のセンス鎖に作動可能に連結されたプロモーター、複製欠損ITR、および前記導入遺伝子のアンチセンス相補物がある、項目43~57のいずれか1項に記載のベクター。
(項目59)
前記ITRがAAV ITRである、項目57または58に記載のベクター。
(項目60)
前記ORIが、前記ITRの上流、かつ前記上流ITRのすぐ下流に配置されている、項目43~59のいずれか1項に記載のベクター。
(項目61)
前記ファージORIが、M13由来ORI、F1由来ORI、およびFd由来ORIからなる群から選択される、項目43~60のいずれか1項に記載のベクター。
(項目62)
前記テンプレートが、複製を開始しない短縮ORIである第2のORIをさらに含む、項目43~61のいずれか1項に記載のベクター。
(項目63)
前記短縮ORIがORIΔ29である、項目43~62のいずれか1項に記載のベクター。
(項目64)
前記少なくとも2つの切断部位が制限部位である、項目43~63のいずれか1項に記載のベクター。
(項目65)
前記少なくとも2つの制限部位が同じであるか異なる、項目64に記載のベクター。
(項目66)
前記制限部位が、前記導入遺伝子配列内に見いだされない、項目64に記載のベクター。
(項目67)
前記切断部位が、ヌクレアーゼによって切断される、項目43~66のいずれか1項に記載のベクター。
(項目68)
前記プロモーターが、構成性プロモーター、抑制性プロモーター、ユビキタスプロモーター、誘導性プロモーター、ウイルスプロモーター、組織特異的プロモーター、および合成プロモーターからなる群から選択される、項目43~67のいずれか1項に記載のベクター。
(項目69)
前記導入遺伝子が治療遺伝子である、項目43~68のいずれか1項に記載のベクター。
(項目70)
環状核酸ベクターであって、
i.ファージ複製起点(ORI);
ii.短縮ファージORI(例えば、ORIΔ29);
iii.少なくとも1つの末端反復(TR)、および;
iv.導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモーター配列
を含み、
ここで、前記ベクターが、5’から3’への方向で、センス鎖およびアンチセンス鎖をアニーリングすることが可能なヘアピン配列によって分離されたセンス配列およびアンチセンス配列を含む、環状核酸ベクター。
(項目71)
前記ORIに隣接するリンカーおよび自己相補リンカーをさらに含む、項目70に記載のベクター。
(項目72)
前記導入遺伝子が、センス鎖およびアンチセンス鎖を二本鎖に結合可能なリンカー配列によって分離されたセンス配列およびそのアンチセンス相補物を含む、項目70または71に記載のベクター。
(項目73)
前記短縮ORIがORIΔ29である、項目70~72のいずれか1項に記載のベクター。
【国際調査報告】