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2022-537432即時移動可能なコーティングを有するステント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-25
(54)【発明の名称】即時移動可能なコーティングを有するステント
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/848 20130101AFI20220818BHJP
【FI】
A61F2/848
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576146
(86)(22)【出願日】2020-06-18
(85)【翻訳文提出日】2021-12-20
(86)【国際出願番号】 EP2020066852
(87)【国際公開番号】W WO2020254454
(87)【国際公開日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】102019116791.4
(32)【優先日】2019-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512267564
【氏名又は名称】イノラ ゲーエムベーハ
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】シュルマン-カウフェルド,セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ブルナッチ,ナディア
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA42
4C267AA47
4C267AA50
4C267AA55
4C267BB02
4C267BB03
4C267BB04
4C267BB06
4C267BB11
4C267BB12
4C267BB19
4C267BB20
4C267BB26
4C267BB31
4C267BB39
4C267BB40
4C267CC08
4C267CC22
4C267GG02
4C267GG16
4C267GG21
4C267GG23
4C267GG24
4C267GG43
4C267HH08
(57)【要約】
本発明は物質でコーティングされた埋め込み可能な医療器具に関する。本発明は物質の迅速な放出を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
迅速に放出可能な物質または物質混合物でコーティングされた埋め込み可能な医療器具であって、
物質および/または物質混合物が表面に塗布された本体を含み、
前記物質または前記物質混合物の用量が、コーティングされた表面積に対して5μg/mmを超える、埋め込み可能な医療器具。
【請求項2】
動脈硬化状態の血管狭窄のための、迅速に放出可能な物質または物質混合物でコーティングされた埋め込み可能な医療器具であって、
物質および/または物質混合物が表面に塗布された本体を含み、
前記物質または前記物質混合物の用量が、コーティングされた表面積に対して5μg/mmを超える、埋め込み可能な医療器具。
【請求項3】
前記本体が、金属、合成材料、天然産物またはこれらの材料の組合せからなり、特にスチール、コバルト-クロムおよび/またはニッケル-チタン合金からなるものであって、変形可能であることを特徴とする、請求項1に記載の埋め込み可能な医療器具。
【請求項4】
限られた期間もしくは間だけ埋め込まれたままであるか、またはその位置が埋め込みの間もしくは後にその全体的もしくは部分的に変化する、請求項1に記載の埋め込み可能な医療器具。
【請求項5】
前記物質が、タキサン、スタチンもしくはmTOR阻害剤であるか、またはこれを他の物質との混合物として含有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の埋め込み可能な医療器具。
【請求項6】
前記医療器具が内腔を有し、好ましくは、前記内腔が、拡大のために特に物質でコーティングされたバルーンを含有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の埋め込み可能な医療器具。
【請求項7】
物質でコーティングされたバルーンが、後拡大のためにステントの内腔に位置することを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載のステントの形態の埋め込み可能な医療器具。
【請求項8】
動脈硬化を阻害するおよび/または動脈硬化性プラークの退縮を促進する少なくとも1つの更なる物質であって、特にスタチンである物質、ならびに/または抗菌作用を有する、および/もしくは血液凝固を阻害するおよび/もしくは血栓溶解を促進する少なくとも1つの更なる物質を含有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の埋め込み可能な医療器具。
【請求項9】
前記物質が、パクリタキセルであるか、またはパクリタキセルを含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の埋め込み可能な医療器具。
【請求項10】
前記物質が、シロリムス、エベロリムス、ゾタロリムス、バイオリムスおよびテムシロリムスから選択される、もしくはこれらの物質の1つを含む、ならびに/またはこれらの物質の1つとの物質混合物を含むことを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の埋め込み可能な医療器具。
【請求項11】
前記物質または物質混合物の用量が、10μg/mmを超えることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の埋め込み可能な医療器具。
【請求項12】
ステントであるか、またはステントを含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の埋め込み可能な医療器具。
【請求項13】
ステントおよび関連形態の医療器具をコーティングするための方法であって、医療器具の表面をコーティングするためのコーティング溶液が、好ましくは約0℃~マイナス20℃の範囲の低い温度で使用される、方法。
【請求項14】
コーティング溶液が、体積測定器具、好ましくはシリンジ、マイクロシリンジまたは半自動もしくは完全自動作動ピストンシリンジを用いて表面に塗布される、請求項11に記載のステントおよび関連形態の医療器具をコーティングするための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋め込み可能な医療器具に関し、好ましくは、動脈硬化状態の血管狭窄のためのステント、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品と医療器具の組合せは、多くの臨床適用において利点があることが示されている。重要な分野は、機械的な介入後の望ましくない血管変化の防止することである。これに関して、機械的に安定な支持体が永久にもしくは一時的に血管内腔に挿入される(ステントもしくはステントグラフトとして公知である)または血管壁がバルーンカテーテルのバルーンによって機械的に処置されると同時に、医薬品によって望ましくない変化から保護される。
【0003】
ステントは、小さい直径を有し、通常は、例えば血管、胆管または他の管形状の構造の体内に導入され、しばしば、多かれ少なかれ固い組織や構造にも導入される管状の実体である。第2のステップとして、適用部位のみでより大きい直径を達成し、これらは十分に大きい内腔(例えば血流を妨げないため)を保証する。このようなステップは、弾性材料(例えばニチノール)からなる半径方向に圧縮されたステントをチューブもしくはカテーテルから外すことにより、あるいは特にスチールもしくはコバルト-クロム合金、または実際には他の合金などの塑性的に変形可能な材料から製造されたステントについてはバルーンカテーテルのバルーンによる積極的拡張により、行われ得る。狭窄もしくは閉塞血管、狭窄管または組織内の通路の直接的な作製は、ステントの慣例的な使用箇所である。
【0004】
いずれの場合においても、現在まで利用可能であり、医薬品でコーティングされたまたはされていないステントは、永久インプラントである。近年公表されて、しばしば使用される生分解性ステントでさえも、数週間、数カ月または数年間、埋め込み部位に留まるものである。
【0005】
ステントの埋め込みは、通常、通路の強制開通または再開通を伴い、これは周囲組織への実質的な損傷につながる。回復中に、数カ月間は続く組織増殖または瘢痕化が生じ、次いでステントによって作製された空いた通路の狭窄または閉鎖をもたらし得る。これは、組織の過度の持続増殖を阻害する、ゆっくり溶出する物質でステントをコーティングすることによって、非常に効果的に防止され得る。ステントからの物質の長期溶出だけが長期的な効果を保証するものと確信されてきたものであり、依然として確信されている(Gershlick AH.Treating atherosclerosis:local drug delivery from laboratory studies to clinical trials.Atherosclerosis 2002;160:259-271.p267:“Retention,which is very much the problem with non-stent drug delivery can be overcome if the agent can be attached to the stent but then be made to elute off slowly once the stent is deployed”;Iofina E,Langenberg R,Blindt R,Kuhl H,Kelm M,Hoffmann R.Polymer-based paclitaxel-eluting stents are superior to nonpolymer-based paclitaxel-eluting stents in the treatment of de novo coronary lesions.Am J Cardiol.2006;98:1022-1027“Achieving the correct balance between rate of elution and degree of retention is clearly important”またはMuller-Hulsbeck St. EluviaTM peripheral stent system for the treatment of peripheral lesions above the knee.Expert Opin.Drug Deliv 2016;13:1639-1644:“The available preclinical and clinical data on treatment with EluviaTM suggest that prolonged paclitaxel elution in the femoropopliteal arteries prevents restenosis and may reduce the need for reintervention.”)。
【0006】
永久インプラントとして、ステントは、遅延長期溶出のための理想的な必要条件を構成する。しかし、ステントは、可能な限り非侵襲性で、埋め込み後に可能な限り迅速に大きくなり、且つ局所炎症を最小にするように、極めて繊細な構造を有するものである。ステントの低い質量および表面積は、これらに付着し得る医薬品の用量を大幅に制限している。実際に、冠動脈用のステント上で非常に有効な遅延溶出医薬品は慣例的なものである。末梢動脈用の最初の有効製品も認可されており、その分野において既に使用されている。
【0007】
あるいは、この15年間、医薬品でコーティングされたバルーンカテーテルが開発され、認可されて、選択された適応症において臨床実践に導入されてきている。パクリタキセルは好ましい医薬品である。バルーンカテーテルのバルーンは、膨張時に血流を遮断する。したがって、冠動脈における殆どの場合、これらは最大1分間しか膨張できず、脚の動脈では数分の膨張時間は可能である。このような短い期間で、医薬品をバルーン膜から可能な限り完全に放出しなければならず、且つ十分な割合で血管壁に移送しなければならない。
【0008】
処置される同一の直径および同一の長さの血管について、バルーンカテーテルのコーティングされたバルーンは、コーティングされたステントよりもはるかに多くの医薬品を含有している。バルーン上のより高い用量の医薬品は、バルーンから血管壁への不完全な移送を補償する手段として、または永久インプラントからの医薬品の持続流の欠如を補償する手段として理解されるべきである。このように、医薬品でステントおよびバルーンをコーティングする場合、非常に異なる原理が用いられる(表1)。
【0009】
【表1】
【0010】
ステントからの物質の遅延送達は、拡散により達成される。拡散は、水不溶性ポリマーから、または非常に特別な、高い接着性を有する、非常にゆっくり溶ける、もしくは生分解性のコーティングから生じる。ステントからの送達の遅延は、例えば、コーティングされたステントの後処理(アニーリング)により、特に低い溶解度改変を医薬品にもたらすことによっても促進される。
【0011】
増殖阻害医薬品の長期的な持続送達に関する問題は、ステント内の血栓性閉塞の形成(ステント血栓症)および動脈壁の変性であり、動脈壁がステントから外れ、これによって、血管壁への内方成長が妨げられるまたは遅れ、広がっていく血管内腔においてステント位置の変化につながり得ることである。
【0012】
これらの問題を解決する1つの手法は、自己拡張型ステントによるものである。これらに基づいて、近年では、例えば米国特許出願公開第2017/0196717号明細書から公知のもの等の医薬品支持体が開発されている。これらは、血管壁を伸ばし、同時に医薬品を血管壁内に深く導入するように構築されている。以前に使用されていたステントとは対照的に、このタイプのステントは、ほんの数分間だけ処置部位に留まった後、血管および患者の体から完全に除去される。これらは、顕著な形状記憶を有する金属からなり、通常の自己拡張型ステントのように、処置される血管内腔のおよそ所望の直径を有するが、体内に導入される際は、はるかにより小さい直径に圧縮される。このようなタイプのコーティングステントが有する問題は、
(a)非常に複雑な構造を有する実体を、好ましくは拡張状態において均一にコーティングすること、
(b)物質の塗布が、迅速かつ可能な限り完全に行われなければならないこと、
(c)一方で、ステントの圧縮中にコーティングの非常に良好な接着が必要とされること、
(d)血液または他の体液で満たされたカテーテルに通す導入中の接着が保証されなければならないこと、
(e)カテーテルからの高圧縮ステントの配置中の接着、および
(f)有効用量を確実に推定すること
にある。
【発明の概要】
【0013】
本発明の目的の1つは、前述した問題を解決すること、特に、ステント等の埋め込み可能な医療器具用のコーティングであって、組織、例えば血管壁と接触した直後に有効用量の医薬品を移送し、これによって「即座に溶出可能」であるコーティングを提供することにある。
【0014】
このような目的は、独立請求項の特徴を有する埋め込み可能な医療器具によっても達成される。したがって、第1の態様にて、本発明は、物質および/または物質の混合物が本体の表面に塗布された本体を含む、埋め込み可能な医療器具、例えば、動脈硬化状態の血管狭窄のためのステントに関する。本発明によれば、物質または物質混合物の用量は、コーティングされた表面に対して少なくとも5μg/mmである。
【0015】
有利には、これは物質の迅速な送達につながる。これは埋め込み可能な医療器具(以下では単に医療器具とも言う;バルーンカテーテルのバルーンは埋め込まれないので、ここには含まれない)の短い留置時間であっても、十分な量の物質が標的部位に移送され、任意選択的で新たな血管狭窄に対抗することを保証できる。以下において医薬品とも称する物質を溶出させるために、最大20分の時間が好ましく、15分または10分以下などのさらにより迅速な移送速度がより好ましい。最大5分の溶出期間が特に好ましい。このような場合、医療器具の表面に最初に配備された、すなわちヒトの体と接触する前の物質の少なくとも40%、好ましくは45%超、より好ましくは少なくとも60%、特に好ましくは少なくとも65%が前述の時間にわたって周囲組織に送達される場合、物質の迅速な送達が得られる。
【0016】
言い換えれば、本発明の文脈における用語「迅速かつ完全な放出」は、埋め込み可能な医療器具がヒトの体に完全に導入されてから10~20分後に、平均20%以下、好ましくは30%以下、特に40%以下が医療器具の表面に残っていることを意味すると理解されたい。
【0017】
驚くべきことに、優勢な意見とは対照的に、埋め込み可能なまたは埋め込まれた医療器具、特にステント中の物質の迅速な送達は、再狭窄を効果的に防止できることが示されている。再狭窄を効果的に防止するためには、可能な限り均一に分配された有効用量の物質が罹患組織に存在することが確保されなければならないことを考慮すると、これは少々驚くものであった。バルーンカテーテルの場合、これは、物質を周囲組織に大きい均一な表面積にわたり可能な限り完全に塗布することにより確保される。現在まで使用されてきたステントの場合は、対照的に、より小さい用量の連続送達がより長い時間にわたり行われる。これに関して、物質は送達部位から周囲組織内に拡散する。バルーンカテーテルとは対照的に、分配はインプラントの留置時間にわたって得られる。
【0018】
埋め込み可能な医療器具、特にステントの場合、物質の迅速な溶出または送達は、本発明に係る埋め込み可能な医療器具の実施形態において、表面積の少なくとも5μm/mmの物質の濃度で、再狭窄を効果的に防止することが示されている。
【0019】
特に有利には、物質または物質混合物は、非結合な形態で、すなわち物質(単数または複数)の送達を阻害する物質を含む化合物としてではなく、医療器具上に存在する。言い換えれば、再狭窄阻害物質に加えて、医療器具の表面上のコーティングは、物質の送達の速度を実質的に低減するポリマーも他の化合物も含まないものである。これは、既に公知であるステントと比較して、物質の送達を加速させる。その結果、医療器具の表面と組織の接触点で、または組織中に、物質の付着部が形成される。これらの付着部が大きいほど、より多くの医薬品が短期間にわたり組織に移送される。
【0020】
本発明の好ましい実施形態では、本体のコーティングされた表面、特にその意図された使用の場合に血管内腔から離れる方を向いた、医療器具またはステントの表面上にて、物質に加えて、薬学的に慣例の添加剤および補助物質が配備される。これは、例えばポリマー等の物質の送達を阻害する化合物が明白に存在しないことを意味すると理解されるべきである。このようなタイプの添加剤は、例えば、物質もしくは物質混合物または物質もしくは物質混合物を含有する層の、例えば血管への埋め込み前の医療器具の表面上への接着、送達および安定性を改善するのに適している。言い換えれば、薬理学的に害のないまたは殆ど害のない補助物質が、物質に添加できる。適切な物質は、物質の意図される送達前の接着を改善するための、物質の送達を加速させるための補助物質、これらの化学的安定性を改善することに寄与する、コーティング溶液のpHを調整する、または層の構造、例えばその柔軟性、滑り特性および水中溶解度に影響を及ぼす補助物質である。このような補助物質は、医薬分野において公知であり、バルーンカテーテルをコーティングするためにさえ、医薬品との混合物として慣例的に使用されており;ヨウ化X線造影剤、尿素等の親水性補助物質または実際にはブチルヒドロキシトルエン(BHT)、レスベラトロール、ノルジヒドログアイアレチン酸(NDGA)および没食子酸プロピルなどの親油性抗酸化剤が、コーティングされたバルーンカテーテル上での使用のために十分に確立されている。補助物質は、さらに好ましくはデクスパンテノールであり、これは前述の特性と血管壁の回復の促進を併せ持つ。ステアリン酸マグネシウムまたは他の脂肪酸塩などの固体流動化剤も好ましい。流動化剤は、コーティングに添加されてもよく、コーティングされた医療器具に後で塗布されてもよく;効果的に作用するためにその表面に存在する。
【0021】
本体は、好ましくは、金属、合成材料、天然産物もしくはこれらの材料の組合せを含む、またはこれらから調製されるものである。特に好ましくは、本体は、少なくとも一部が、スチール、コバルト-クロムまたはニッケル-チタン合金であるニチノールからなる。
【0022】
本体は、塑性的に変形可能または弾性的に変形可能なものでもよい。または加えて、本体は、突起および空洞の特定の配列によって変形可能なものでもよい。
【0023】
有利には、本発明に係る医療器具は、一時的に埋め込まれるだけであり、すなわち所定の期間だけ動作位置に留まるものである。時間は、好ましくは最大30分、特に最大15分である。永久インプラント、したがって血管壁への永久変化は防止される。
【0024】
本発明の好ましい実施形態では、さらに、医療器具は内腔を有し、自己拡張型ステントの内腔には後拡大のためのバルーンもある。これは、後からバルーンを導入し、その後それを正確に配置することを必要とせず、医療器具、特にステントが特定の部位でおよび/または使用中により大きい直径に拡張できるようになる。これは、医療器具の適用の範囲を広げ、その使用を簡素化して、高速化させる。
【0025】
本体は、内腔を区切る細長い形状を有する。外側に伸びるスパイク様の構成要素は、内腔から離れる方を向いた本体の表面に配備され得る。意図される通りに使用されている場合、これらの構成要素は、医療物質を組織内に深く導入するように作用する。これに関して、本発明の文脈では、物質は、これらのスパイク様の構成要素間の中間領域および/またはこれらのスパイク様の構成要素上に配備される。スパイク様の構成要素によって物質を組織内に導入することは、本発明における物質の迅速な送達および組織内へのその浸透を促進させ、したがって特に組み合わさった利点がある。
【0026】
本発明の更に好ましい実施形態では、物質は、タキサン、スタチン、もしくはmTOR阻害剤である、またはこれらを他の物質との混合物として含有する。これらの物質は、本発明に係る医療器具の使用に、特に送達速度および本当に達成可能な用量の作用に関して適していることが示されている。
【0027】
あるいは加えて、物質はパクリタキセルである。パクリタキセルは、良好な再狭窄阻害特性を有し、良好な適合性を有する。
【0028】
これは、リムス群の物質、特にシロリムス、エベロリムス、ゾタロリムス、バイオリムスおよびテムシロリムスなどにも当てはまり、したがって物質は、好ましくは、これらの群から選択されるものか、またはこのような物質の混合物である。作用および適合性は、更なる物質、特に追加の物質との適切な組合せによって増強することができ、良い作用は個々の効果の和を驚くほど超える。これに関して、本発明に係る医療器具は、好ましくは、動脈硬化の阻害および/または動脈硬化性プラークの退縮を促進し、作用の持続時間を延ばすのに適切な少なくとも1つの更なる物質を含有する。
【0029】
これに関して、スタチン、好ましくはセリバスタチン、アトルバスタチンおよび/もしくはフルバスタチン、ならびに/または抗菌作用および/もしくは血液凝固阻害および/もしくは血栓溶解促進物質が、特に好ましい。
【0030】
特に好ましくは、物質または物質混合物の用量は、10μg/mm表面積を超え;特に10μg/mm~50μg/mmの範囲の用量が好ましい。
【0031】
以下に、本発明について例を用いてより詳細に記載する。これに関して、例は事実上決して限定的なものではなく、開示される特徴の組合せも本発明の範囲を限定しないものであることを意図している。
【0032】
さらなる態様にて、本発明は、ステントおよび関連形態の医療器具をコーティングするための方法であって、コーティング溶液が、コーティングされる表面に低い温度、好ましくは約0℃~マイナス20℃の範囲で塗布される、方法に関する。
【0033】
好ましい実施形態では、コーティング溶液は、体積測定器具、好ましくはシリンジ、マイクロシリンジまたは半自動もしくは完全自動作動ピストンシリンジを用いて表面に塗布される。この手順は、機器および専門技術に関して比較的少ない経費を伴い、例えば上記のスパイクステントで遭遇するものなどの凹凸のある表面でも、驚くほど均質な結果をもたらす。
【発明を実施するための形態】
【0034】
[コーティングのための医療器具]
医療器具には、医学的に許容される方法で、迅速溶出医薬品でコーティングすることができ、短期間または永久に体内に導入される、コーティングを伴う任意選択的な医療器具が適している。材料としては、金属、合成材料または天然産物およびステントグラフトなどのこのタイプの産物の組合せが適している。材料は、塑性的または弾性的に変形可能であり得、形状記憶を有し得る。表面は、平ら、例えば滑らかであっても、多孔性もしくは構造化されていても、または追加の材料で覆われていてもよい。医療品は、ほんの短期間、すなわち数秒~数時間の間、処置される組織または内腔と接触するものが好ましい。これは、使用直後に除去されるか、または体内でのその位置が埋め込みの間に変化する医療器具を包含する。一例では自己拡張型またはバルーン拡張型ステントであり、そのストラットは、例えば拡張/後拡大により、埋め込み中または埋め込み直後に血管壁に対して機能する。このプロセスの間に物質を送達することにより、血管壁の区域に物質が供給され、物質は後に、コーティングされたステントストラットとの直接的な接触を有しない。このようなタイプのステントのコーティングについては、実施例15に記載する。
【0035】
医薬品の即時的な送達のさらなる利点は、組織との最初の接触直後にステントの公知の適合性のストラットが、医薬品の送達を遅延させ、ステント材料の適合性を損ない得るポリマーもコーティングの他の成分も含有しないことにある。医療器具の表面積の特に高い医薬品用量/mmを有した本明細書に開示のコーティングは、バルーン単独では十分に拡張できない血管の区域においてスポットでのみ使用される非常に薄肉の短いステント(タック、これはスポットステント留置に使用されるステントである)に、特に有利である。機械的な拡張が困難な血管のこれらのセグメントは特に、再狭窄を阻害する薬物での追加の処置を必要とする。
【0036】
特に好ましい医療器具は、他の医療器具の例として後述するステントである。
【0037】
[医薬品、物質]
医薬品、物質には、原理上は、任意選択的な医薬品またはそうでなければ薬理学的に有効な物質および物質混合物が適している。好ましい物質は、過度の組織増殖を阻害するためにステントからゆっくり放出される物質(例えば抗新生物物質、例えばパクリタキセルおよび他のタキサンならびにシロリムス、エベロリムス、ゾタロリムスおよび他のmTOR阻害剤)、回復を向上させるための、炎症の阻害のための物質、動脈硬化につながるプロセスの進行および動脈硬化そのものを阻害するか、または動脈硬化性プラークの退縮を促進する物質、例えばスタチン、例えば(セリバスタチン、アトルバスタチン、フルバスタチン)、ならびに抗菌作用を有する物質、または血液凝固に影響を及ぼすための物質、例えばヘパリンおよびヘパリン断片ならびに血栓溶解薬、例えばウロキナーゼ、ストレプトキナーゼまたは組換え組織プラスミン活性化因子である。
【0038】
[用量]
本発明に係る医療器具および方法は、体の空間的に狭く、限定された疾患領域を標的とした治療のために使用される。投与のタイプによって、体全体に対する負荷を非常に低いままに維持しながら、少量の医薬品にもかかわらず、局所的に高い物質濃度を得ることができる。
【0039】
医薬品は、医療器具に塗布される、または医療器具に含有される。医療器具が組織と接触すると、これらは体内に送達される。用量は、体内の表面、例えば動脈壁と密接に接触する医療器具の表面積に対するものである。この用量は、標的組織と接触した状態の医療器具の表面上において、医療器具の滅菌後、物質または物質混合物5μg/mmを超え、好ましくは10μg/mmを超え、最も好ましくは15μg/mmを超える。ステントの場合、これらの制限は、ステントストラットの反内腔面(abluminal face)にも当てはまる。
【0040】
[コーティングのための液体調製物]
ステントおよび他の医療器具は、パクリタキセル(タキサンを代表する)および/またはラパマイシン(mTOR阻害剤、マクロライド)および/または他の物質、好ましくは上記のものでコーティングされ、医薬品は、水と非混和性もしくは混和性であるかまたはさらに水を含有する有機溶媒中で部分的もしくは完全に溶解される、またはさらに懸濁される。溶媒混合物は、好ましくは10体積%以上の水、より好ましくは15体積%以上の水、最も好ましくは20体積%以上の水を含有する。好ましい濃度は、溶液1mL中に10~100mgの物質または物質混合物である。水と混和性である好ましい有機溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルスルホキシドである。これらは、水と非混和性であるかまたはごく僅かな水を取り込む追加の溶媒を含有でき、一例としては、エーテル、酢酸エチルエステル、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、キシレンもしくは他の関連溶媒、またはさらにハロゲン含有溶媒、例えばクロロホルム、ジクロロメタンもしくはトリフルオロエタノールである。
【0041】
[医療器具への医薬品の塗布]
ステントまたは他の医療器具は、物質溶液に浸漬することによりコーティングされてもよい。これについての問題は、ほんの僅かな溶媒および医薬品のみしか平らな表面に接着しないことである。医薬品の塗布された用量は、低い温度、例えば約0℃~マイナス20℃(実施例1)、ならびに/または反復浸漬および乾燥(実施例1、表2を参照されたい)によって、実質的により高かった。物質は浸漬溶液に可溶であることを考慮すると、接着物の量が増加することは驚くべきことである。全体として、3μg/mm(2261μg)の通常の用量および医療器具の表面上の医薬品の実質的により高い密度(μg/mm)(表3、右側の列)において、同一サイズ(4.0×60mm)の臨床的に有効なバルーンよりも多くの物質が塗布された。コーティング溶液は、表面に噴霧されてもよい。方向付けられた噴霧によりまたは適切な保護対策により、ステントの場合、ステントの埋め込み後の内腔側(血流に向く側)表面のコーティングを避けることができる。
【0042】
ステントの非常に繊細な形態にもかかわらず(図1図6を参照されたい)、規定体積のコーティング溶液は、マイクロシリンジによりステント表面にうまく塗布されている。
【0043】
液体調製物でコーティングした後に、医療器具は乾燥させる。
【0044】
[動脈または他の管もしくは組織内への導入のためのコーティングされたステントおよび同等の医療器具の調製]
ステントおよび同等の医療器具(例えばバルーンカテーテル)は、体内へ導入するために、可能な限り小さい直径に縮小されなければならない。したがって、例えば自己拡張型ステントの直径は圧縮され、狭いチューブに押し込まれるか、または引き込まれる。拡張状態から適用カテーテル内への製品の移送は、漏斗形状の導入補助具を使用することにより、容易となる。
【0045】
拡張、膨張状態でコーティングされたバルーンは、コーティング後に折り畳まれるか、またはコーティング前に折り畳まれているならば、それらは、例えば真空を適用することによって再び折り畳まれ、取り外し可能な保護シース内に収納される。コーティングされた構造の変形ならびにチューブの入り口およびチューブの内腔の両方で構造がこすれ合うことは、コーティングおよび/または医薬品の損失を引き起こす。
【0046】
患者における使用のための製品は、無菌である。これらは、好ましくは、エチレンオキシドを使用して滅菌され;他の方法、例えば、無菌条件下での製造および包装または熱もしくは放射線滅菌が可能である。
【0047】
[適用]
コーティングされた医療器具は、可能な限り最小の侵襲性の方法により体内の使用場所に運ばれ、そこで配置または膨張される。治療的または予防的に有効な用量の物質の溶出直後に、これらは除去されるか、これらの位置が完全にもしくは部分的に変化するか、またはこれらは埋め込まれたままにされる。インプラントが治療的に処置される組織またはその近傍の組織にほんの短時間接触する場合においても、所望の効果は得られる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1a】実施例におけるコーティングされていないステントの写真画像を示す図である。
図1b】実施例におけるスパイクステントとして公知の浸漬コーティングされたステントの写真画像を示す図である。
図2】実施例におけるコーティングされたステントの写真画像を示す図である。
図3】実施例におけるコーティングされたステントの一部分の写真画像を示す図である。
図4】実施例におけるコーティングされたステントの写真画像を示す図である。
図5】実施例におけるコーティングされたステントの写真画像を示す図である。
図6】実施例におけるコーティングされたステントの写真画像を示す図である。
【実施例
【0049】
[実施例1]
<埋め込み後に医薬品の即時の実質的に完全な送達を伴うステントのコーティング>
コーティング溶液:テトラヒドロフラン/水60/40V/V、20mgパクリタキセル/mLまたはエタノール/テトラヒドロフラン/水60/20/20V/V/V、20mgパクリタキセル/mL。
【0050】
コーティング溶液中に8回短時間浸漬することにより、医薬品の適用のための突起の構成要素を有する4.0×60mmステント;ステントの総表面積:188.5mmについて、コーティングした(ReFlow 米国特許出願公開第2017/0196717号明細書または段落1~3を参照)。各層について、溶液中にステントを1秒間浸漬し、次いで50℃の空気流中で20秒間乾燥させた。
【0051】
【表2】
【0052】
[実施例2]
<埋め込み後に医薬品の即時の実質的に完全な送達を伴うステントのコーティング>
コーティング溶液:エタノール/アセトン/水40/40/20V/V/V、30mgパクリタキセル/mL。
【0053】
冷却したコーティング溶液(-20℃)中に10回短時間浸漬することにより、医薬品の適用のための突起の構成要素を有する4.0×60mmステント;ステントの総表面積:188.5mmについて、コーティングした(ReFlow 米国特許出願公開第2017/0196717号明細書を参照されたい)。各層について、溶液中にステントを1秒間浸漬し、次いで50℃の空気流中で20秒間乾燥させた。
【0054】
【表3】
【0055】
バルーン(臨床的に試験された有効な製品)を、3.5μgパクリタキセル/mm、全体で約2850μgのパクリタキセルでコーティングした。実施例2、表3では、ほぼ同じ用量が実質的により小さい表面積に良好に付着したことがわかる。
【0056】
図1について、図1aに、コーティングされていないステントを示し、図1bに、スパイクステントとして公知の浸漬コーティングされたステントを示す。結論:コーティングされたバルーンカテーテルと同様に、ステントの小さい表面積にもかかわらず、処置される血管表面(処置される血管の直径および長さによって定義される)に同様の大きさの用量を有するコーティングを施すことが可能であった。
【0057】
[実施例3]
<ステント上の用量に対する反復浸漬および乾燥の影響>
コーティング溶液:
(a)エタノール/テトラヒドロフラン/水(60/20/20)、20mgパクリタキセル/mL
(b)エタノール/アセトン/水(40/40/20V/V/V)、30mgパクリタキセル/mL
【0058】
実施例1に記載されたように、ステントを、冷却したコーティング溶液(-20℃)であるコーティング溶液中への短時間の反復浸漬によりコーティングした。各層について、溶液中にステントを1秒間浸漬し、次いで50℃の空気流中で20秒間乾燥させた。
【0059】
【表4】
【0060】
医薬品の適用のための突起の構成要素を有する4.0×60mmステントを、冷却したコーティング溶液中への短時間の反復浸漬により、コーティングした(ReFlow 米国特許出願公開第2017/0196717号明細書を参照されたい)。なお、「コーティングサイクル」とは、溶液中にステントを1秒間浸漬し、次いで50℃の空気流中で20秒間乾燥させることを意味している。
【0061】
ステントの全表面積は188.5mmであり、したがって、対応する寸法のバルーンの表面積(810mm)よりも実質的に小さいものであった。
【0062】
[実施例4]
<先細のチャネルに通す、投与のために準備されたカテーテル内へのコーティングされたステントの導入中の医薬品の損失>
医薬品の適用のための突起の構成要素を有する4.0×60mmステントを、冷却したコーティング溶液中への短時間の反復浸漬によりコーティングした(ReFlow 米国特許出願公開第2017/0196717号明細書を参照されたい)。なお、「コーティングサイクル」とは、ステントを-20℃に冷却された溶液中に1秒間浸漬し、次いで50℃の空気流中で20秒間乾燥させることを意味している。コーティングサイクルは8回行った。
【0063】
コーティング溶液:エタノール/アセトン/水、ここで、エタノールおよびアセトンの割合はそれぞれ40体積%とし、水の割合は20体積%とした。コーティング溶液中のパクリタキセル濃度は24mg/mLであった。
【0064】
【表5】
【0065】
先細の穴を有するステンレススチールブロックに通すことによって、コーティングされたステントを小さい直径に圧縮し、次いで適用カテーテルの内腔に導入し;押しつぶされた小片のパクリタキセル含有量を決定した。これらの小片は、合計(n=6)でステント上の医薬品用量のほんの0.42±0.37%を含有していた。
【0066】
【表6】
【0067】
浸漬コーティング:パクリタキセル24mg/mL、エタノール/アセトン/水40/40/20V/V/V。
【0068】
[実施例5]
<測定された体積のコーティング溶液での埋め込み後に医薬品の即時の実質的に完全な送達を伴うステントのコーティング>
コーティング溶液(a):エタノール/アセトン/水または(b):エタノール/THF/水、ここで、エタノールの割合はそれぞれ40体積%であり、アセトンまたはTHFの割合は40体積%または50体積%であり、水の割合は20体積%または10体積%に対応するものとした。コーティング溶液中のパクリタキセル濃度は、12.5mg/mLであった。医療器具の回転(21rpm)およびハミルトンマイクロシリンジを使用することにより、75μL/ステント(4.0×60mm)の体積でコーティングを行った。
【0069】
ステントの凹凸のある表面全体に溶液を分配することにより、医薬品の適用のための突起の構成要素を有する4.0×60mmステント;ステントの総表面積=188.5mmについて、コーティングした(ReFlow 米国特許出願公開第2017/0196717号明細書を参照されたい)。
【0070】
この方法を使用して、銀灰色の金属性ステント上に予想外に均一な白色コーティングも作製した。
【0071】
図2に、コーティングを有するステントを示す。これは、RF-3dコーティング溶液を適用したものである(ハミルトンシリンジによって塗布されたパクリタキセル12.5mg/mL、エタノール/アセトン/水40/50/10V/V/V)。
【0072】
【表7】
【0073】
[実施例6]
<測定された体積のコーティング溶液での埋め込み後に医薬品の即時の実質的に完全な送達を伴うステントのコーティング>
コーティング溶液:エタノール/アセトン/THF/水、ここで、エタノール、アセトンおよびTHFの割合はそれぞれ30体積%とし、水の割合は10体積%に対応するものとした。コーティング溶液中のパクリタキセル濃度は、20mg/mLであった。医療器具の回転(21rpm)およびハミルトンマイクロシリンジを使用することによって、75μL/ステント(4.0×60mm)の体積でコーティングを行った。
【0074】
ステントの凹凸のある表面全体に溶液を分配することにより、医薬品の適用のための突起の構成要素を有する4.0×60mmステント;ステントの総表面積=188.5mmについて、コーティングした(ReFlow 米国特許出願公開第2017/0196717号明細書を参照されたい)。
【0075】
図3に、図2のようにコーティングされたステントの一部分の写真画像を示す。コーティングについて、RF-G-20コーティング溶液(パクリタキセル20mg/mL、エタノール/アセトン/THF/水30/30/30/10(V/V))もハミルトンシリンジで塗布した。
【0076】
【表8】
【0077】
[実施例7]
<測定された体積のコーティング溶液での埋め込み後に医薬品の即時の実質的に完全な送達を伴うステントのコーティング>
コーティング溶液:エタノール/アセトン/水、ここで、エタノールおよびアセトンの割合はそれぞれ40体積%とし、水の割合は20体積%に対応するものとした。コーティング溶液中のパクリタキセル濃度は、20mg/mLであった。加えて、イオプロミドを2mg/mLの濃度で添加した。医療器具の回転(21rpm)およびハミルトンマイクロシリンジを使用することによって、75μL/ステント(4.0×60mm)の体積でコーティングを行った。
【0078】
ステントの凹凸のある表面全体に溶液を分配することにより、医薬品の適用のための突起の構成要素を有する4.0×60mmステント;ステントの総表面積=188.5mmについて、コーティングした(ReFlow 米国特許出願公開第2017/0196717号明細書を参照されたい)。
【0079】
図4に、この方法でコーティングされたステントを示す。使用されたコーティング溶液はRF-C-20-UV-2溶液(パクリタキセル20mg/mLおよびイオプロミド(2mg/mL)、エタノール/アセトン/水40/40/20(V/V))であった。ステントへの塗布は再び、ハミルトンシリンジで行った。
【0080】
【表9】
【0081】
[実施例8]
<測定された体積のコーティング溶液での埋め込み後に医薬品の即時の実質的に完全な送達を伴うステントのコーティング>
コーティング溶液:エタノール/アセトン/水、ここで、エタノールおよびアセトンの割合はそれぞれ40体積%とし、水の割合は20体積%に対応するものとした。コーティング溶液中のパクリタキセル濃度は20mg/mLであった。加えて、デクスパンテノールを2mg/mLの濃度で添加した。医療器具の回転(21rpm)およびハミルトンマイクロシリンジを使用することにより、75μL/ステント(4.0×60mm)の体積でコーティングを行った。
【0082】
ステントの凹凸のある表面全体に溶液を分配することにより、医薬品の適用のための突起の構成要素を有する4.0×60mmステント;ステントの総表面積=188.5mmについて、コーティングした(ReFlow 米国特許出願公開第2017/0196717号明細書を参照されたい)。
【0083】
図5に、RF-C-20-DP-2コーティング溶液でコーティングされたステントを示す。また、表10を参照されたい(エタノール/アセトン/水40/40/20(V/V)中パクリタキセル20mg/mLおよびデクスパンテノール(2mg/mL))。ここで再び、ステントへの塗布はハミルトンシリンジで行った。
【0084】
【表10】
【0085】
[実施例9]
<測定された体積のコーティング溶液での埋め込み後に医薬品の即時の実質的に完全な送達を伴うステントのコーティング>
コーティング溶液:エタノール/アセトン/水、ここで、エタノールおよびアセトンの割合はそれぞれ40体積%とし、水の割合は20体積%に対応するものとした。コーティング溶液中のパクリタキセル濃度は、20mg/mLであった。加えて、尿素を2mg/mLの濃度で添加した。医療器具の回転(21rpm)およびハミルトンマイクロシリンジを使用することにより、75μL/ステント(4.0×60mm)の体積でコーティングを行った。
【0086】
ステントの凹凸のある表面全体に溶液を分配することにより、医薬品の適用のための突起の構成要素を有する4.0×60mmステント;ステントの総表面積=188.5mmについて、コーティングした(ReFlow 米国特許出願公開第2017/0196717号明細書を参照されたい)。
【0087】
図6に、コーティングされたステントを示す。図6に示すステントにおけるステントコーティングは、RF-C-20-UR-2コーティング溶液によって得られたものである(ハミルトンシリンジによって塗布されたパクリタキセル20mg/mLおよび尿素(2mg/mL)、エタノール/アセトン/水40/40/20(V/V)。
【0088】
【表11】
【0089】
[実施例10]
<ステントのコーティングおよびその後のコーティングされていないバルーンカテーテルへの取り付け>
医薬品の適用のための突起の構成要素を有するステント(ReFlow 米国特許出願公開第2017/0196717号明細書を参照されたい)に、埋め込み後に医薬品の即時の実質的に完全な送達を保証するコーティングを施した。コーティング溶液は、20mg/mLパクリタキセルまたは20mg/mLパクリタキセルおよび2mg/mLデクスパンテノールを含有するものとした。使用された溶媒混合物はエタノール/アセトン/水であり、ここで、エタノールおよびアセトンの割合はそれぞれ40体積%とし、水の割合は20体積%に対応するものとした。ハミルトンマイクロシリンジを使用し、75μL/ステントの体積で、回転(21rpm)によりコーティングを行った。
【0090】
適切なサイズのバルーン(バルーン直径=ステント直径、バルーン長=ステント長)を有するバルーンカテーテルを、ステント用の適用カテーテルに近位端から導入し、遠位でバルーンが適用カテーテルから完全に飛び出るようにした。コーティング後、ステントをバルーンカテーテルの折り畳まれたバルーンの上に押し込み、その後バルーンカテーテルのシャフトに接着させ、バルーンがコーティングされたステントの内腔に位置するようにした。先細の穴を有する金属ブロックに通して適用カテーテル内にあるバルーンシャフトを引っ張ることによって、バルーンおよびステントを適用カテーテルの直径に圧縮し、適用カテーテルに導入した。
【0091】
[実施例11]
<(a)バルーンカテーテルのバルーンおよび(b)ステントのコーティングとその後のコーティングされたステントのコーティングされたバルーンカテーテルへの取り付け>
バルーンカテーテルの折り畳まれたバルーン(4.0×80mm)を膨張させ、回転(21rpm)下でコーティングした。コーティング溶液は、20mg/mLパクリタキセルまたは20mg/mLパクリタキセルおよび2mg/mLデクスパンテノールを含有するものとした。使用された溶媒混合物は、エタノール/アセトン/水であり、ここで、エタノールおよびアセトンの割合はそれぞれ40体積%であり、水の割合は20体積%に対応するものとした。ハミルトンシリンジを使用して、75μLの体積でコーティングを行った。コーティングされたバルーンをしぼませ、PTFEチューブに押し付けることにより、真空下で再び折り畳んだ。
【0092】
コーティングされ、折り畳まれたバルーンを有するバルーンカテーテルをステント用の適用カテーテルに近位端から導入し、遠位でバルーンが適用カテーテルから完全に飛び出るようにした。
【0093】
医薬品の適用のための突起の構成要素を有するステント(ReFlow 米国特許出願公開第2017/0196717号明細書を参照されたい)に、埋め込み後に医薬品の即時の実質的に完全な送達を保証するコーティングを施した。コーティング溶液は、20mg/mLパクリタキセルまたは20mg/mLパクリタキセルおよび2mg/mLデクスパンテノールを含有するものとした。使用された溶媒混合物はエタノール/アセトン/水であり、ここで、エタノールおよびアセトンの割合はそれぞれ40体積%とし、水の割合は20体積%に対応するものとした。ハミルトンマイクロシリンジを使用して、75μL/ステントの体積で、回転(21rpm)によりコーティングを行った。
【0094】
コーティング後、ステントを上記のバルーンカテーテルの再び折り畳まれたバルーンの上に押し込み、次いでバルーンカテーテルのシャフトに接着させ、バルーンがコーティングされたステントの内腔に位置するようにした。
【0095】
先細の穴を有する金属ブロックに通して、適用カテーテル内にあるバルーンシャフトを引っ張ることによって、バルーンおよびステントを適用カテーテルの直径に圧縮し、適用カテーテルに導入した。
【0096】
[実施例12]
<ステント内腔にバルーンカテーテルのバルーンを有するステントのコーティング>
バルーンカテーテルの同様にコーティングされていないバルーンを有する最初にコーティングされていないステントを、適用カテーテルに入れた。バルーンカテーテルの遠位端はバルーンおよびステントと共に適用カテーテルから飛び出した。医薬品の適用のための突起の構成要素を有するステントであって、バルーンカテーテルのシャフトに固定され、バルーンがステントの内腔に位置するステントに、埋め込み後に医薬品の即時の実質的に完全な送達を保証するコーティングを施した。
【0097】
コーティング溶液は、20mg/mLパクリタキセルまたは20mg/mLパクリタキセルおよび2mg/mLデクスパンテノールを含有するものとした。使用された溶媒混合物は、エタノール/アセトン/水であり、ここで、エタノールおよびアセトンの割合はそれぞれ40体積%であり、水の割合は20体積%に対応するものとした。ハミルトンマイクロシリンジを使用して、75μL/ステント(4.0×60mm)の体積で、回転(21rpm)によりコーティングを行った。
【0098】
乾燥後に、先細の穴を有する金属ブロックに通して適用カテーテル内にあるバルーンシャフトを引っ張ることによって、バルーンおよびステントを適用カテーテルの直径に圧縮し、適用カテーテルに導入した。
【0099】
[実施例13]
<バルーンカテーテルのバルーンのコーティングおよびコーティングされていないステントの内腔への取り付け>
適切なサイズの折り畳まれたバルーン(バルーン直径=ステント直径、バルーン長=ステント長+20mm)を有するバルーンカテーテルを、近位端からステント用の適用カテーテルに導入し、遠位でバルーンが適用カテーテルから完全に飛び出るようにした。
【0100】
バルーン(4.0×80mm)を膨張させ、回転(21rpm)下でコーティングした。コーティング溶液は、20mg/mLパクリタキセルまたは20mg/mLパクリタキセルおよび2mg/mLデクスパンテノールを含有するものとした。使用された溶媒混合物は、エタノール/アセトン/水であり、ここで、エタノールおよびアセトンの割合はそれぞれ40体積%であり、水の割合は20体積%に対応するものとした。ハミルトンマイクロシリンジを使用して、75μLの体積でコーティングを行った。コーティングされたバルーンを乾燥後にしぼませ、PTFEチューブに押し付けることによって真空下で再び折り畳んだ。PTFEチューブは後で除去した。
【0101】
バルーンがコーティングされていないステントの内腔に位置するように、医薬品の適用のための突起の構成要素を有する、コーティングされていないステント(ReFlow 米国特許出願公開第2017/0196717号明細書を参照されたい)について、コーティングされたバルーンの上に押し込み、バルーンカテーテルのシャフトに接着させた。
【0102】
先細の穴を有する金属ブロックに通して、適用カテーテル内のバルーンシャフトを引っ張ることによって、バルーンおよびステントを適用カテーテルの直径に圧縮し、適用カテーテルに導入した。
【0103】
[実施例14]
<埋め込み後に医薬品の即時の実質的に完全な送達を伴うステントのブタへの適用試験>
滅菌後、実施例4、5a、7および8のステントを、ブタ(約30kgの体重)の内腸骨動脈、大腿動脈および大腿深動脈内に導入し、適用カテーテルから配置し、次いでコーティングされていないバルーンカテーテルで2分間完全に拡張させ、次いで動物を傷つけることなく特別な回収機構により完全に除去した。ステント除去の約15分後、実施例4のステントを使用した場合は、パクリタキセル用量の4.2±4.0%、実施例5aのステントを使用した場合は、用量の5.1±2.4%、実施例7のステントを使用した場合は、用量の4.0±0.6%、実施例8のステントを使用した場合は、用量の9.9±7.0%が動脈壁に見出された。これらの値は、臨床試験済みのコーティングされたバルーンを使用した後に測定された値と類似していた(Scheller B,Speck U,Abramjuk C,Bernhardt U,Bohm M,Nickenig G. Paclitaxel balloon coating - a novel method for prevention and therapy of restenosis.Circulation 2004;110:810-814;Kelsch B,Scheller B,Biedermann M,Clever YP,Schaffner S;Mahnkopf D;Speck U,Cremers B. Dose-response to paclitaxel-coated balloon catheters in the porcine coronary overstretch and stent implantation model.Invest Radiol 2011;46:255-263)。平均では用量の20%がステント上に残った。
【0104】
[実施例15]
末梢動脈のための自己拡張型ニチノールステントのコーティング(VascuFlex(登録商標)末梢ステント、B.Braun Vascular Systems)8×60mm、約700mmの表面積、ハミルトンマイクロシリンジを使用してコーティング、コーティング溶液:エタノール/アセトン/水40/40/20V/V/V、30mgパクリタキセル/mL
【0105】
【表12】
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】