(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-25
(54)【発明の名称】鋳型内の溶鋼の流動を均衡させるための方法および溶鋼の連続鋳造システム
(51)【国際特許分類】
B22D 11/16 20060101AFI20220818BHJP
B22D 11/10 20060101ALI20220818BHJP
【FI】
B22D11/16 104J
B22D11/10 330Z
B22D11/16 104B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576222
(86)(22)【出願日】2020-06-16
(85)【翻訳文提出日】2022-02-18
(86)【国際出願番号】 EP2020066604
(87)【国際公開番号】W WO2020254309
(87)【国際公開日】2020-12-24
(32)【優先日】2019-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520368552
【氏名又は名称】イービーディーエス エンジニアリング
【氏名又は名称原語表記】EBDS ENGINEERING
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ツリアニ ジアンニ
(72)【発明者】
【氏名】カスティオー エティエンヌ
【テーマコード(参考)】
4E004
【Fターム(参考)】
4E004AA04
4E004FB10
4E004MB10
4E004MB20
4E004MC12
4E004NA01
4E004NB01
4E004PA05
4E004SA10
4E004SC01
4E004SC07
(57)【要約】
鋳型内における溶鋼の流動を均衡させるための方法であって、鋳型内の鋼面より下に開口する保護ノズルを通して分配器から鋳型(12)内に鋼が送り込まれるこの方法は、a)鋳型内の流動の特徴一式を取得するステップと、b)前のステップで取得した流動の特徴を既定のモデルと比較し、流動を均衡させるために取るべき調整措置を決定するステップと、c)流動を調整するステップとを含む。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳型(12)内における溶鋼の流動を均衡させるための方法であって、前記鋳型(12)内の鋼面より下に開口する保護ノズル(11)を通して分配器(8)から前記鋳型(12)内に鋼が送り込まれる方法において、
a)前記鋳型(12)内の前記流動の特徴一式を取得するステップと、
b)前のステップで取得した前記流動の特徴を既定のモデルと比較し、前記流動を均衡させるために取るべき調整措置を決定するステップと、
c)前記流動を調整するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記ステップa)~c)が、鋳造作業の間、連続的に繰り返される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記流動の前記特徴が、前記鋳型(12)内における前記鋼の熱的特徴の分析によって得られる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記鋳型(12)が、冷却流体の循環によって金属プレート(22)を冷却できるように構成された冷却装置(14)が背後に設けられた前記金属プレート(22)の組立体からなるタイプのものであり、前記金属プレート(22)のうち少なくとも1つのプレートの壁の中に、前記鋳型(12)の鋳込み軸と平行でない方向に延びる光ファイバ(28)であって、複数のブラッグ・フィルタ(34)を具備する光ファイバ(28)を備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
- 前記鋳型(12)の少なくとも1つの壁の温度を前記光ファイバ(28)によって測定するステップと、
- 前記流動を調整するステップと
をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記保護ノズル(11)と前記鋳型(12)との間の相対的な動きを起こさせることによって前記流動の前記調整が行われる、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記保護ノズル(11)と前記鋳型(12)との間の前記相対的な動きが、前記鋳型(12)の長手方向軸と平行な方向に行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記保護ノズル(11)と前記鋳型(12)との間の前記相対的な動きが、前記鋳型(12)の長手方向軸に従って前記保護ノズルの角度をずらすことによって行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記保護ノズル(11)と前記鋳型(12)との間の前記相対的な動きが、前記鋳型(12)の長手方向軸と平行な方向にも、前記鋳型(12)の長手方向軸に従ってノズルの角度をずらすことによっても行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記保護ノズル(11)が前記分配器(8)と一体をなしており、前記保護ノズル(11)と前記鋳型(12)との間の前記相対的な動きが、前記分配器(8)を前記鋳型(12)に対して移動させることによって果たされる、請求項5~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
分配器から連続鋳造鋳型に至る溶鋼連続鋳造システムにおいて、
- 分配器(8)と、
- 冷却流体の循環によって金属プレート(22)を冷却できるように構成された冷却装置(14)が背後に設けられた前記金属プレート(22)の組立体からなるタイプの鋳型(12)であって、前記金属プレート(22)のうち少なくとも1つのプレートの壁の中に前記鋳型(12)の鋳込み軸と平行でない方向に延びる光ファイバ(28)であって、複数のブラッグ・フィルタ(34)を具備する光ファイバ(28)を備える鋳型(12)と、
- 鋼の鋳込み時に下端が前記鋳型(12)内の鋼面より下に開口する保護ノズル(11)であって、前記分配器(8)と一体をなす保護ノズル(11)と、
- 前記光ファイバ(28)に光を送出し、前記光ファイバ(28)による反射光および伝送光の少なくとも1つを受け取るようにアレンジされた送受装置と、
- プロセッサであって、
a)前記送受装置で受け取った前記反射光および伝送光の少なくとも1つに関するデータを前記鋳型内(12)の流動に関する情報に変換し、
b)その情報を既定のモデルと比較し、
c)前記流動を均衡させるために取るべき調整措置を決定し、
d)制御信号を発出する
ようにアレンジされたプロセッサと、
- 前記制御信号を受け取り、前記制御信号に応じて前記鋳型(12)内の前記鋼の前記流動を調整するようにアレンジされた調整手段(36)と
を備えるシステム。
【請求項12】
前記調整手段(36)が、分配器保持台車を備える、請求項11に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属の連続鋳造設備に関する。より詳細には、本発明は、鋳型内の溶鋼の流動を均衡させるための方法に関する。別の態様によれば、本発明は、溶鋼の連続鋳造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
金属の連続鋳造設備、たとえば鋼の連続鋳造設備は、タンディッシュまたは分配器から溶融金属を注ぎ込んでしかるべき形状に凝固させるための鋳型を備えるのが一般的である。たとえば、底なしの鋳型はその1つであり、その場合、金属は冷却されてスラブを形成する。溶融金属を冷却するため、鋳型の壁には、液冷式などの冷却装置がその脇または背後に設けられる。鋳型および冷却装置の設計は、スラブが鋳型を出るとき、スラブ中心部にまだ溶融状態で存在する金属を閉じ込めておくのに十分な厚さでその外側面が凝固しているように、金属の流動速度に合わせた形で行われる。
【0003】
分配器には、鋳型の方へ流動する際の溶融金属を保護するためのものとして、1つ、場合により複数のノズルが、鋳型内の鋼面より下に装備される。一般に、ノズルは鋳型に対して対称形に配置されて、連続鋳造作業の間、可能な限り均一な流動が得られるようにする。実際、鋳型内の流動が不均衡であると、ブレークアウトのリスク、鋳造後の鋼の不均質さ、潤滑パウダーの分布不良など、スラブの品質に悪影響が出る可能性がある。
【0004】
それでも、分配器から鋳型内に至る溶鋼の流動の均衡が何らかのトラブルによって乱されることはあり得る。たとえば、ノズルの孔の1つが浸食されたり、アルミナで閉塞したりすること、ノズル内で鋼が凝固すること、さらにはノズル内に破片が詰まることなどが起こり得る。こうしたトラブルは、流動の対称性を乱し、潜在的には生産されるスラブの品質を損ねる可能性があるばかりか、連続鋳造設備を傷める結果ともなりかねない。現状では、そうした状況を検出するすべはなく、それに対処する方策に至ってはなおさらである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、溶鋼の流動に乱れが生じているトラブルを検出し、流動の対称性を回復させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのため、本発明では、鋳型内における溶鋼の流動を均衡させるための方法であって、鋳型内の鋼面より下に開口する保護ノズルを通して分配器から鋳型内に鋼が送り込まれる方法において、
a)鋳型内の流動の特徴一式を取得するステップと、
b)前のステップで取得した流動の特徴を既定モデルと比較し、流動を均衡させるために取るべき調整措置を決定するステップと、
c)流動を調整するステップと
を含む方法を提供する。
【0007】
こうして、流動の特徴を計測し、その計測結果を既定モデルと比較することによって流動が乱されているかどうかを判定することができる。それにより、流動の質をほぼ瞬時に評価することができる。そして、乱れがある場合、すなわち、計測した特徴とモデルとの間に十分大きな開きがある場合には、乱れを緩和させるように流動を調整することによって対処することができる。そうして、生産されるスラブの品質を大きく改善させる。
【0008】
有利には、ステップa)~c)は、鋳造作業の間、連続的に繰り返される。
【0009】
そうすることで、連続鋳造設備の動作期間を通してこの方法を実施することができる。
【0010】
有利には、流動の特徴は、鋳型内における鋼の熱的特徴の分析によって得られる。
【0011】
鋳型の温度は数多くの位置で容易に測定することが可能であり、そのことは、この方法を容易に実施可能なものとすることに役立つ。
【0012】
有利には、鋳型は、冷却流体の循環によって金属プレートを冷却できるように構成された冷却装置が背後に設けられた金属プレートの組立体からなるタイプのものであり、前記金属プレートのうち少なくとも1つのプレートの壁の中に、鋳型の鋳込み軸と平行でない方向に延びる光ファイバであって、複数のブラッグ・フィルタを具備する光ファイバを備える。
【0013】
有利には、方法は、そのほか、
- 鋳型の少なくとも1つの壁の温度を光ファイバによって測定するステップと、
- 流動を調整するステップと
を含む。
【0014】
こうして、温度の測定は、信頼性が高く、鋳型内への設置が容易な光ファイバによって行われる。とりわけ、ベルギー特許出願第2018/5193号、または本願と同時提出のベルギー特許出願に記載の鋳型を用いることができる。
【0015】
有利には、ノズルと鋳型との間の相対的な動きを起こさせることによって流動の調整が行われる。
【0016】
好ましくは、ノズルと鋳型との間の相対的な動きは、鋳型の長手方向軸と平行な方向に行われる。
【0017】
有利には、ノズルは分配器と一体をなしており、ノズルと鋳型との間の相対的な動きは、分配器を鋳型に対して移動させることによって果たされる。たとえば、分配器保持台車を少しだけ動かすことによる。
【0018】
本発明の変形形態によれば、ノズルと鋳型との間の相対的な動きは、鋳型の長手方向軸に従ってノズルの角度をずらすことによって行われる。2つの動き(直線運動と回転運動)を組み合わせることも可能である。
【0019】
変形形態として、分配器が、鋳込みノズル交換装置を装備するか、または流動の方向に対して直角に移動するプレートを使った絞り動作による鋼流量の調節装置を装備する場合は、そうした装置を鋳型に対して移動させるだけで十分である。
【0020】
そのため、流動の調整は、簡単に実施できる操作によって行われる。
【0021】
本発明では、分配器から連続鋳造鋳型に至る溶鋼連続鋳造システムにおいて、
- 分配器と、
- 冷却流体の循環によって金属プレートを冷却できるように構成された冷却装置が背後に設けられた金属プレートの組立体からなるタイプの鋳型であって、前記金属プレートのうち少なくとも1つのプレートの壁の中に鋳型の鋳込み軸と平行でない方向に延びる光ファイバであって、複数のブラッグ・フィルタを具備する光ファイバを備える鋳型と、
- 鋼の鋳込み時に下端が鋳型内の鋼面より下に開口する保護ノズルであって、分配器と一体をなすノズルと、
- 光ファイバに光を送出し、光ファイバによる反射光および伝送光の少なくとも1つを受け取るようにアレンジされた送受装置と、
- プロセッサであって、
a)送受装置で受け取った反射光および伝送光の少なくとも1つに関するデータを鋳型内の流動に関する情報に変換し、
b)その情報を既定のモデルと比較し、
c)流動を均衡させるために取るべき調整措置を決定し、
d)制御信号を発出する
ようにアレンジされたプロセッサと、
- 制御信号を受け取り、その制御信号に応じて鋳型内の鋼の流動を調整するようにアレンジされた調整手段と
を備えるシステムをさらに提供する。
【0022】
有利には、調整手段は、分配器保持台車を備える。
【0023】
そのため、調整手段は、単純な手段によって形成される。
【0024】
ここからは、限定的でない例として取り上げる本発明の実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明による鋳型内の溶鋼の流動を均衡させるための方法の実施を可能にする金属連続鋳造設備の全体図である。
【
図5】
図4の壁に含まれる光ファイバの長手方向断面図である。
【
図6】
図5の光ファイバの動作を説明した図である。
【
図7】鋳型内の溶鋼の流動を均衡させる方法の実施を示した
図1の設備の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1に金属連続鋳造設備2を示した。この設備は従来どおりの構成をもつものであり、その構成要素の大半は簡単に紹介するにとどめる。
【0027】
設備2は、冷却しようとする溶融金属が入った取鍋4を備える。ここでは、取鍋4は2つあり、いずれも機械式アーム6によって支えられている。この機械式アーム6はとりわけ、
図1に示す位置まで取鍋4を運ぶ前に、炉や転炉など(図示せず)、取鍋4に溶湯を注入することできる充填ゾーンから、満杯の状態で移送システム(図示されていない天井クレーンなど)によって鋳込みゾーンに運ばれて来た取鍋4を移動させることができる。機械式アーム6はまた、空になった後の取鍋4を、移送システムによって再び引き取られる位置まで持っていくことができ、取鍋4はそこから準備ゾーンに運ばれて再調製された後、充填ゾーンに戻される。
【0028】
設備2は、取鍋4の下方に位置する分配器、すなわち分配器8を備える。取鍋4は、分配器8に溶融金属を流し込むことができる開閉式の底を有する。
【0029】
分配器8は、溶融金属の流動を制御できるストッパ10で塞ぐことができる湯口を備える。分配器の湯口は、保護ノズル11(浸漬鋳込みノズル、SENともいう)に続いており、注ぎ込まれる溶融金属を保護することができる。保護ノズル11は、分配器8と一体をなす。
【0030】
図2aおよび拡大図の
図2bを見るとよくわかるように、保護ノズル11は、鋳型12の上部開口部に開口する。これは、鉛直の鋳込み軸を有する底のない鋳型である。鋳型12についてはこの先で詳しく説明する。
【0031】
設備2は、鋳型12の外側面に配置された冷却装置14を備える。これは、液体による冷却装置である。そのため、冷却装置は、水などの冷却流体が流れる管路を備える。冷却流体は、鋳型12内の溶融金属から熱を吸収することで、溶融金属を冷却し、凝固させる。この場合、金属は、液状芯部20を包み込む形で凝固した外側面18を有するスラブを形成するように凝固する。
【0032】
設備2は、鋳型12の下流側にローラ・ガイド16を備える。ガイド16は、外側面18が凝固したスラブを鋳型12の外へ案内することができる。
図2aからわかるように、スラブは、ガイド16内を移動するにつれて徐々に凝固する。つまり、鋳型12から遠ざかるにつれて、凝固したスラブの外側面18の体積は増大し、スラブの液状芯部20の体積は減少する。
【0033】
図3に鋳型12をさらに詳細に示した。図では、4枚のプレート22(断面図の位置関係から4枚目は見えない)を有している。プレート22は、熱伝導率が高く、そのために冷却装置14と鋳型12との間の熱交換が容易となる材料である銅または銅合金製である。プレート22は、鋳型12が全体に長方形または正方形の断面を有するようにアレンジされる。しかし、鋳型が、横断面であろうとなかろうと、何らかの異なる形状を有するようにプレートをアレンジすることも考えられる。たとえば、薄いスラブの鋳造で従来から使用されている上部が漏斗形のものである。
【0034】
以下では、簡単にするため、ベルギー特許出願第2018/5193号に記載の鋳型のレイアウト、すなわち、鋳型の壁の中に形成した通路に収められた光ファイバを具備するレイアウトに基づいて、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明の別の実施形態では、本願と同時提出のベルギー特許出願に記載されるように、鋳型の表面に形成された溝であって、ストリップによって埋められた溝の中に光ファイバを収めることができることも理解されなければならない。
【0035】
鋳型12のプレート22の1つを
図4に拡大図で示した。この図では、鉛直方向が鋳込み軸に相当する。プレート22は、鋳型12の鋳込み軸と平行でない方向に延びる少なくとも1つの通路24をその壁の中に備える。より詳細には、通路24は、鋳込み軸に対して75°~105°の範囲の角度を有する。ここでは、通路24は、鋳込み軸に対して直角である。通路24の数は、ここでは4である。通路24が開口するプレート22のゾーンには、通路24を守るための保護カバー26が設けられる。
【0036】
光ファイバ28は、通路24の各々に収められる。
図5および
図6に参照されるように、各々の光ファイバ28は、クラッド30と、クラッド30によって囲まれたコア32とを備える。光ファイバ28は、そのコア32の中に複数のブラッグ・フィルタ34を備える。光ファイバ28は、1メートル当たり少なくとも10個のブラッグ・フィルタ10を備え、好ましくは1メートル当たり少なくとも20個のブラッグ・フィルタを、より好ましくは1メートル当たり少なくとも30個のブラッグ・フィルタを、さらに好ましくは1メートル当たり少なくとも40個のブラッグ・フィルタを備える。変形実施形態として、ただ1つのみの光ファイバを含む鋳型とすることもできよう。以下では、説明を容易にするため、設備2は、光ファイバを1つのみ備えるものと考える。
【0037】
図6に光ファイバ28の動作を示す。ブラッグ・フィルタ34は、フィルタ製造者による調節が可能な反射波長と呼ばれる、所定の値にセンタリングした波長帯域で光を反射させることができるフィルタである。この所定の値はまた、特にフィルタが置かれている温度の関数でもあり、その関係は各々のフィルタについて次式のように書くことができる。
λ
反射=f(λ
0,T)
ここで、λ
反射はフィルタによって有効に反射される波長、fは既知の関数、Tはフィルタの温度、λ
0は所定の温度、たとえば周囲温度でフィルタによって反射される波長である。
【0038】
この2つの性質により、光ファイバ28を温度センサとして使用することが可能となる。まず、たとえば5ナノメートルずつずらして選んだそれぞれ異なる反射波長の値λ0を有するブラッグ・フィルタ34を光ファイバ28内に配設する。続いて、多色スペクトル35aの光ビーム、たとえば白色光を光ファイバ28内に送出し、次いで反射ビームのスペクトル35bに現れる波長のピークを決定する。各ピークについて、測定値λ反射と周囲温度における反射波長の理論値λ0とを比較し、関数fによって当該のフィルタの温度Tを計算する。別の方法として、光ファイバ28が収まる通路24の構成上可能であれば、伝送されてくるビーム35cのスペクトルの谷をもとに、それらのステップを行うこともできる。
【0039】
このように、鋳型12のプレート22の1つに光ファイバ28を設置することで、そのプレートの温度、特に鋳込まれた金属と接するそのプレートの壁の温度を所定の位置で測定し、その経時的な変化をたどることができる。十分な数の測定箇所を得るため、向かい合わせの2つのプレート22内に、望むらくは鋳型12の4つのプレート22の各々に、少なくとも1つの光ファイバ28を設置することが好ましい。
【0040】
設備2は、鋳型12内の溶鋼の流動の均衡化を目的として、
- 光ファイバ28に光を送出し、光ファイバ28による反射光および伝送光の少なくとも1つを受け取るようにアレンジされた送受装置と、
- プロセッサであって、
a)送受装置で受け取った反射光および伝送光の少なくとも1つに関するデータを鋳型内の流動に関する情報に変換し、
b)その情報を既定のモデルと比較し、
c)流動を均衡させるために取るべき調整措置を決定し、
d)調整システムに制御信号を発出する
ようにアレンジされたプロセッサと、
- プロセッサから発出される制御信号に応じて、鋳型12内の鋼の流動を調整するようにアレンジされたシステムと
をさらに備える。
【0041】
これらの要素の動作について以下に説明する。
【0042】
流動時には常時、鋳型12内の流動の特徴一式の計測が行われる。とりわけ、送受装置は、光ファイバ28に光を送出し、光ファイバ28による反射光および伝送光の少なくとも1つによって鋳型12の壁の温度が測定される。しかし、より一般的には、鋳型12内の鋼の熱的特徴が分析される。
【0043】
そして、プロセッサを用いて、それらの特徴の計測結果が既定のモデルと比較される。既定のモデルとは、たとえば、正常な状態の流動、すなわち流動に乱れがないときにあらかじめ行われた同じ特徴についての計測結果であることができる。
【0044】
計測結果が所定の距離ほどはモデルからずれていない場合には、比較結果は流動の乱れが全く起きていないことを示すものであると解釈される。したがって、流動の調整対策として何も講じる必要はない。好ましくは、一連の計測および比較のステップは流動の間を通して連続的に繰り返される。
【0045】
逆の場合、比較結果は、少なくとも何らかの乱れが起きており、したがって流動を調整する必要があることを示すものであると解釈される。プロセッサは、比較結果を考慮して、流動を均衡させるために取るべき調整措置を決定し、調整措置の実施を可能にする制御信号を調整手段に対して発出する。
【0046】
プロセッサがモデルから大きく外れた計測結果を検出したときは、警報信号が発出されるように、さらには鋳造作業が停止されるようにすることができる。
【0047】
調整措置は、設備2の分配器保持台車36を用いて鋳型12の長手方向軸と平行な方向に分配器8を移動させることによって構成されてもよい。保護ノズル11は分配器8と一体をなすため、この移動は、鋳型12に対する保護ノズル11の動きを可能にする。そうすることで、溶融金属の流動の対称性を回復させる。
【0048】
その上で改めて計測ステップおよび比較ステップを実施して、保護ノズル11の移動が期待どおりの効果をもたらしたかを判定する。計測結果とモデルとの開きが所定の距離を上回っている限りは、移動をさらに続けるようにすることができる。その距離が所定の距離未満になったところで、分配器保持台車を停止して保護ノズル11の移動を止める。しかし、起こり得る新たなトラブルを検出できるように、計測および比較の作業は継続して行われる。
【0049】
本発明は、説明した実施形態だけに限定されるものではなく、当業者であれば、それ以外の実施形態も明らかなものとして思い浮かぶであろう。
【符号の説明】
【0050】
2 設備(金属連続鋳造設備)
4 取鍋
6 機械式アーム
8 分配器
10 ストッパ
11 保護ノズル
12 鋳型
14 冷却装置
16 ガイド
18 凝固した外側面
20 液状芯部
22 プレート
24 通路
26 保護カバー
28 光ファイバ
30 クラッド
32 コア
34 ブラッグ・フィルタ
35a 多色スペクトル
35b 反射ビームのスペクトル
36c 伝送ビームのスペクトル
36 分配器保持台車
【国際調査報告】