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特表2022-537491排気装置、及び排気装置を有する便器
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-26
(54)【発明の名称】排気装置、及び排気装置を有する便器
(51)【国際特許分類】
   E03D 9/05 20060101AFI20220819BHJP
【FI】
E03D9/05
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021569045
(86)(22)【出願日】2020-06-11
(85)【翻訳文提出日】2022-01-11
(86)【国際出願番号】 IL2020050644
(87)【国際公開番号】W WO2020250225
(87)【国際公開日】2020-12-17
(31)【優先権主張番号】267248
(32)【優先日】2019-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521506489
【氏名又は名称】インベント エアケア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シャハル、イェヘスケル
(72)【発明者】
【氏名】シャハル、トメル
【テーマコード(参考)】
2D038
【Fターム(参考)】
2D038BB16
2D038BB18
2D038BB25
2D038KA01
2D038KA06
(57)【要約】
洗浄液源と洗浄入口及び汚物出口を伴って構成される便器とを有する水洗トイレ・システムと関連して使用するための排気装置。排気装置は、気密空間を構成するハウジングと、ハウジングを貫通して延在するとともに、洗浄入口に結合可能な前部と、洗浄液源に結合可能な後部とを備えるフラッシング導管とを有し、フラッシング導管が、気密空間内に配置される吸引開口を伴って構成される。吸引開口には、フラッシング導管を通じて便器へ向けて洗浄液が流れる最中に洗浄液が気密空間に流入するのを防ぐように構成される液体流れ防止機構が取り付けられる。汚物導管が、ハウジングを貫通して延在するとともに、汚物出口に結合可能な前部と、下水ラインに結合可能な後部とを有し、汚物導管は、気密空間内に配置されるガス排出ポートを伴って構成される。ガス推進ユニットが、気密空間内に配置され、ガス排出ポートと流通するとともに、吸引開口からガス排出ポートに向かう方向でガスを選択的に推進するように構成され、ガス・フロー弁が、ガス推進ユニットが作動しているときに吸引開口とガス排出ポートとの間の方向でガスを選択的に推進するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄液源と、洗浄入口及び汚物出口を備えて構成された便器とを有する水洗トイレ・システムに関連して使用するための排気装置であって、
気密空間を構成するハウジングと、
前記ハウジングを通して延びるフラッシング導管であって、前記洗浄入口に結合可能な前部、及び前記洗浄液源に結合可能な後部を有し、且つ前記気密空間内に配置される吸引開口を備えて構成され、前記吸引開口には液体流れ防止機構が取り付けられ、前記液体流れ防止機構は、洗浄液が前記フラッシング導管を通って前記便器に向かって流れている間に洗浄液が前記気密空間内に流入するのを防ぐように構成されている、フラッシング導管と、
前記ハウジングを通して延びる汚物導管であって、前記汚物出口に結合可能な前部、及び下水ラインに結合可能な後部を有し、且つ前記気密空間内に配置されるガス排出ポートを備えて構成される汚物導管と、
前記気密空間内に配置され、且つ前記ガス排出ポートと流通するガス推進ユニットであって、ガスを前記吸引開口から前記ガス排出ポートに向かう方向に選択的に推進するように構成されたガス推進ユニットと、
前記ガス推進ユニットが作動しているときにガスを前記吸引開口と前記ガス排出ポートとの間の方向に選択的に推進するように構成されたガス・フロー弁と
を有する、排気装置。
【請求項2】
前記ガス・フロー弁は、前記ガス推進ユニットが作動していないときに前記ガス・フロー弁を通るガスの流れを防止するように更に構成されている、請求項1に記載の排気装置。
【請求項3】
前記ガス・フロー弁は、流れ許容位置と流れ防止位置との間で設定可能であり、前記ガス・フロー弁は、前記ガス推進ユニットが作動しているときに前記流れ許容位置に向けて変位され、前記ガス推進ユニットが作動していないときに前記流れ防止位置に向けて変位されるように構成されている、請求項1又は2に記載の排気装置。
【請求項4】
前記ガス・フロー弁は低圧依存性逆止弁である、請求項1、2又は3のいずれか一項に記載の排気装置。
【請求項5】
前記ガス・フロー弁は、
前記フラッシング導管の前記吸引開口と流通する気密弁チャンバを内部に画定する弁ハウジングと、
チャンバ出口通路が内部に配置された傾斜ポート壁をそれぞれが有する1つ又は複数の保持セクションであって、前記チャンバ出口通路は、前記弁チャンバと前記ハウジングの前記気密空間との間の流通を可能にするように構成されている、1つ又は複数の保持セクションと、
各チャンバ出口通路の外部に配置され、且つ前記チャンバ出口通路の表面積よりも大きい表面積を有するシール要素であって、前記保持セクション内に配置され、また前記保持セクション内でシール位置と許容位置との間で傾斜変位可能であるように構成されたシール要素と
を有する、請求項1から4までのいずれか一項に記載の排気装置。
【請求項6】
前記弁ハウジングは前記吸引開口の全周を取り囲むように構成され、それにより前記弁チャンバを介してのみ前記気密空間と前記フラッシング導管との間でガス流が可能である、請求項5に記載の排気装置。
【請求項7】
前記シール位置において、前記シール要素は、前記チャンバ出口通路を通る流体の通過を防止するように少なくとも前記チャンバ出口通路の周辺の上に密封的に載置され、前記許容位置において、前記シール要素は、前記チャンバ出口通路を通る流体の通過を可能にするように前記チャンバ出口通路から少なくとも部分的に離間される、請求項5又は6に記載の排気装置。
【請求項8】
前記シール要素は通常はシール位置にある、請求項5、6又は7のいずれか一項に記載の排気装置。
【請求項9】
前記シール要素は、前記ガス推進ユニットによって生成される吸引力によって前記許容位置に向けて変位されるように構成されている、請求項5から8までのいずれか一項に記載の排気装置。
【請求項10】
前記シール要素は、それに作用する重力によって前記シール位置に向けて変位されるように構成されている、請求項5から9までのいずれか一項に記載の排気装置。
【請求項11】
前記シール要素は、楔状の断面を備えて構成されている、請求項5から10までのいずれか一項に記載の排気装置。
【請求項12】
前記シール要素は、前記保持セクション内での前記シール要素の変位中に摩擦力を低減するように構成された1つ又は複数の支持アームによって前記保持セクション内で支持されている、請求項5から11までのいずれか一項に記載の排気装置。
【請求項13】
前記シール要素は、その下端縁部から下向きに延びる2つの支持アームを有し、前記支持アームは、前記シール要素の下端縁部よりも小さい下端縁部を備えて構成される、請求項12に記載の排気装置。
【請求項14】
前記支持壁は、前記傾斜ポート壁の方に向かってし、且つ地面と平行に延びる水平軸Xと鋭角を画定している、請求項5から13までのいずれか一項に記載の排気装置。
【請求項15】
前記吸引開口は前記フラッシング導管の上部に配置される、請求項1から14までのいずれか一項に記載の排気装置。
【請求項16】
前記ガス排出ポートは前記汚物導管の上部に配置される、請求項1から15までのいずれか一項に記載の排気装置。
【請求項17】
前記液体流れ防止機構は液体弁であり、前記液体弁は、前記吸引開口と位置合わせして前記フラッシング導管内に配置されるフラップ部材を有する、請求項1から16までのいずれか一項に記載の排気装置。
【請求項18】
前記フラップ部材は、前記吸引開口の表面積よりも大きい表面積を有するシール部を備えて構成されている、請求項17に記載の排気装置。
【請求項19】
前記フラップ部材は、前記シール部が前記吸引開口を密封的に覆って前記吸引開口を通る洗浄液の流れを防止する閉位置と、前記シール部が前記吸引開口から少なくとも部分的に離間されて前記吸引開口を通る流体の流れを可能にする開位置との間で変位可能である、請求項17又は18に記載の排気装置。
【請求項20】
前記フラッシング導管は、その周囲に沿って、且つ前記吸引開口の後方に環状の陥凹部を有し、前記フラップ部材は、その後縁部から延びる適合突起を有し、前記適合突起は前記環状の陥凹部内に配置及び固定される、請求項17、18又は19のいずれか一項に記載の排気装置。
【請求項21】
前記フラップ部材は円錐台形状を有する、請求項17から20までのいずれか一項に記載の排気装置。
【請求項22】
前記フラップ部材は、前記フラップ部材を通常の開位置に維持するように構成された維持要素を有する、請求項17から21までのいずれか一項に記載の排気装置。
【請求項23】
前記フラップ部材は、水性環境において耐久性のある材料から形成されている、請求項22に記載の排気装置。
【請求項24】
前記フラッシング導管は、前記フラッシング導管内に配置され且つ前記吸引開口と位置合わせされたテーパ部を備えて構成され、前記テーパ部は、前記フラッシング導管の前記前部に向かって先細になっている、請求項17から23までのいずれか一項に記載の排気装置。
【請求項25】
前記液体流れ防止機構は、前記吸引開口を前記ガス・フロー弁と流体接続する隆起部材であり、前記隆起部材は、前記洗浄液源内の洗浄液の水位線よりも上の高さまで上方に延びている、請求項1から17までのいずれか一項に記載の排気装置。
【請求項26】
前記フラッシング導管及び前記汚物導管はいずれも、通常はハウジングを通して延び、互いに対して固定的に配置され、また前記ハウジングを通して平行に延びるそれぞれの部分を有する、請求項1から25までのいずれか一項に記載の排気装置。
【請求項27】
前記ガス推進ユニットは、前記フラッシング導管と前記汚物導管との間に配置される、請求項1から26までのいずれか一項に記載の排気装置。
【請求項28】
前記ガス推進ユニットと前記ガス排出ポートとの流通は、前記ガス推進ユニットが作動している場合に、前記ガス推進ユニットによって前記気密空間から外に推進されるガスが前記気密空間に向かって逆流するのを妨げられるように構成されている、請求項1から27までのいずれか一項に記載の排気装置。
【請求項29】
前記ガス推進ユニットは、前記ガス推進ユニットが作動しているときにガスを前記気密空間からそのガス入口へ及びそのガス出口から外へ推進するように構成され得る、請求項1から28までのいずれか一項に記載の排気装置。
【請求項30】
ガス排出部材が前記ガス出口と前記ガス排出ポートとの間に配置され、これらの間の直接的なガス流を促進するように前記ガス排出部材は構成されている、請求項29に記載の排気装置。
【請求項31】
前記排気装置は、その作動が引き起こされた際に前記ガス推進ユニットを動作させる及びその動作を停止させるように構成されたコントローラを更に有する、請求項1から30までのいずれか一項に記載の排気装置。
【請求項32】
前記コントローラは、洗浄液が前記フラッシング導管内を流れるときに前記ガス推進ユニットの動作を停止させるように構成されている、請求項31に記載の排気装置。
【請求項33】
前記ガス排出ポートには、粒子物質が前記ハウジング内に入るのを防止するためのスクリーニング・メッシュが取り付けられる、請求項1から32までのいずれか一項に記載の排気装置。
【請求項34】
洗浄液源と関連して使用するための便器であって、前記便器は、
便器であって、洗浄入口、汚物出口、及び前記便器の後部に配置される指定空間を有する便器と、
前記便器と一体の又は前記便器に組み込まれる排気装置であって、前記指定空間内に配置される排気装置と、
を有し、
前記排気装置は、
気密空間を構成するハウジングと、
前記ハウジングを通して延びるフラッシング導管であって、前記洗浄入口に結合可能な前部、及び前記洗浄液源に結合可能な後部を有し、且つ前記気密空間内に配置される吸引開口を備えて構成され、前記吸引開口には液体流れ防止機構が取り付けられ、前記液体流れ防止機構は、洗浄液が前記フラッシング導管を通って前記便器へ向かって流れている間に洗浄液が前記気密空間内に流入するのを防ぐように構成されている、フラッシング導管と、
前記ハウジングを通して延びる汚物導管であって、前記汚物出口に結合可能な前部、及び下水ラインに結合可能な後部を有し、且つ前記気密空間内に配置されるガス排出ポートを備えて構成される汚物導管と、
前記気密空間内に配置され、且つ前記ガス排出ポートと流通するガス推進ユニットであって、ガスを前記吸引開口から前記ガス排出ポートに向かう方向に選択的に推進するように構成されたガス推進ユニットと、
前記ガス推進ユニットが作動しているときにガスを前記吸引開口と前記ガス排出ポートとの間の方向に選択的に推進するように構成されたガス・フロー弁と
を有している、便器。
【請求項35】
前記液体流れ防止機構は、洗浄液が前記フラッシング導管を通って前記便器へ向かって流れている間に前記吸引開口をシールするように構成された液体弁である、請求項34に記載の便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の主題は、排気装置、特に便器と関連して使用するための排気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人類は、長年にわたって、排泄物の処理にトイレや下水道を利用している。トイレが最初に利用可能になって以来、様々な形態のトイレが設計されてきており、現在、世界中に多くの種類のトイレがある。しかし、トイレは不要な液体や固形物の処理に適しているものの、その殆どは、廃棄プロセスに伴うガス、多くの場合不快な臭いを含むガスを処理するようには設計されていない。
【0003】
付随するガスを処理するために、トイレの近くに外部換気装置を設置することがあり、それにより、トイレを備えた建物の外の空気にガスを排出する。そのような外部換気は、費用がかかり、美的でなく、騒音が発生する可能性があり、また外部換気を建物の外部に接続するために必要なパイプラインに起因して、トイレの配置の可能性を制限する場合がある。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、便器から、便器を下水システムに接続する下水ラインに向けて空気を進ませるように構成された、排気装置及び排気装置を有する便器に関する。特に、本開示は、便器を洗浄液(フラッシュ液)源及び下水ラインにそれぞれ接続する洗浄入口及び汚物出口を有する便器を伴うアプリケーションに適した内部排気システムを提供することを目的としている。便器は壁に取り付けることも床に取り付けることもできる。
【0005】
本発明の第1の観点によれば、洗浄液源と洗浄入口及び汚物出口を伴って構成される便器とを有する水洗トイレ・システムと関連して使用するための排気装置が開示され、排気装置は、
気密空間を構成するハウジングと、
ハウジングを貫通して延在するとともに、前記洗浄入口に結合可能な前部と、洗浄液源に結合可能な後部とを有するフラッシング導管であって、フラッシング導管が、空間内に配置される吸引開口を伴って構成され、前記吸引開口には、前記フラッシング導管を通じて便器へ向けて洗浄液が流れる最中に洗浄液が空間に流入するのを防ぐように構成される液体流れ防止機構が取り付けられる、フラッシング導管と、
ハウジングを貫通して延在するとともに、前記汚物出口に結合可能な前部と、下水ラインに結合可能な後部とを有する汚物導管であって、空間内に配置されるガス排出ポートを伴って構成される、汚物導管と、
気密空間内に配置され、ガス排出ポートと流通するとともに、吸引開口から前記ガス排出ポートに向かう方向でガスを選択的に推進するように構成されるガス推進ユニットと、
ガス推進ユニットが作動しているときに吸引開口とガス排出ポートとの間の方向でガスを選択的に推進するように構成されるガス・フロー弁と
を有する。
【0006】
本発明の第2の観点によれば、洗浄液源と関連して使用するための便器が開示され、前記便器は、
洗浄入口、汚物出口、及び、その後部に配置される指定空間を有する便器と、
前記便器と一体の又は前記便器と一体化されるとともに前記指定空間内に配置される排気装置と
を有し、
排気装置は、
気密空間を構成するハウジングと、
ハウジングを貫通して延在するとともに、前記洗浄入口に結合可能な前部と、洗浄液源に結合可能な後部とを有するフラッシング導管であって、フラッシング導管が、空間内に配置される吸引開口を伴って構成され、前記吸引開口には、前記フラッシング導管を通じて便器へ向けて洗浄液が流れる最中に洗浄液が空間に流入するのを防ぐように構成される液体流れ防止機構が取り付けられる、フラッシング導管と、
ハウジングを貫通して延在するとともに、汚物出口に結合可能な前部と、下水ラインに結合可能な後部とを有する汚物導管であって、空間内に配置されるガス排出ポートを伴って構成される、汚物導管と、
空間内に配置され、ガス排出ポートと流通するとともに、吸引開口から前記ガス排出ポートに向かう方向でガスを選択的に推進するように構成されるガス推進ユニットと、
ガス推進ユニットが作動しているときに吸引開口とガス排出ポートとの間の方向でガスを選択的に推進するように構成されるガス・フロー弁と
を有することができる。
【0007】
本発明の第3の観点によれば、洗浄液源及び下水ラインに接続可能な便器が開示され、前記便器は、ボウルを有する前部と、洗浄入口、汚物出口、及び、排気装置を収容するように構成される指定空間とを有する後部を有し、前記排気装置は、洗浄液源と洗浄入口との間に結合可能なフラッシング導管と、汚物出口と下水ラインとの間に結合可能な汚物導管とを有する。
【0008】
本開示の観点のいずれかの特定の構成によれば、ガス推進ユニットを空間内に配置することができる。
【0009】
一般に、第1及び第2の観点に係る排気装置は、洗浄液源と便器の洗浄入口との相互接続、及び、下水ラインと便器の汚物出口との相互接続をそれぞれ行う。排気装置は、便器の洗浄入口から汚物出口に接続された下水ラインに向けてガスを推進するように構成される。排気装置は、従来の水洗トイレ・システムと関連して使用するためのスタンドアロン装置となることができ、それにより、従来の水洗トイレ・システムを相互接続する排気装置を、便器と洗浄液源及び下水ラインの両方との間の任意の場所に配置することができる。
【0010】
第1の実例において、排気装置は、洗浄液源に結合される洗浄液導管と、埋設型フラッシュタンクの場合などにおける壁の前面から延在する下水ラインの一部とに接続され得る。或いは、排気装置を壁の後面に位置させて洗浄液源の一部と壁の後側に位置される下水ラインの一部とに接続することができ、一方、そのフラッシュ導管及び汚物導管が壁の前面を貫通して延在することができる。また、排気装置は、水洗トイレ・システムの洗浄入口及び汚物出口を、付加的な導管によって離間態様で、洗浄液源及び下水ラインとそれぞれ相互接続することもできる。しかしながら、排気装置を可能な限り洗浄入口の近くに位置させることが好ましく、洗浄入口に対して直接に位置させることが更に好ましい。他の場合には、排気装置を便器と一体にする又は便器と一体化させることができる。
【0011】
本開示の目的の1つは、便器から発生するガス及び付随する臭気が下水ラインに向けて流れることができるようにし、それにより、この開示される主題の排気装置は、流通を選択的に確立して、ガス推進ユニットが作動しているときにフラッシング導管から汚物導管へ向かう方向でガスを推進するように構成される。また、ガス・フロー弁は、ガス推進ユニットがそのガス・フロー弁によって作動していないときにガスがガス・フロー弁を通じて流れるのを防止するように構成される。したがって、排気装置は、下水ラインからのガスが排気装置を通じて便器に向けて流れるのを絶えず防止するように構成される。また、下水ライン及び空間から発生するガス及び臭気は、便器に設置されたトラップウェイによって汚物導管から便器に向けて更に流れるのが妨げられる。
【0012】
ガス推進ユニットとガス排出ポートとの流通は、ガス推進ユニットが作動している限りにおいてガス推進ユニットにより空間から外向きに推進されるガスが空間に逆流するのを妨げられるように構成される。
【0013】
ガス・フロー弁は、流れ許容位置と流れ防止位置との間で設定可能であり、この場合、ガス・フロー弁は、ガス推進ユニットが作動しているときに流れ許容位置に向けて変位されるとともに、ガス推進ユニットが作動していないときに流れ防止位置に向けて変位されるように構成される。ガス推進ユニットが作動しているとき、便器から発生するガス(例えば、排泄物処理プロセスに伴うガス)は、排気装置を通じて下水ラインに向かって一方向に流れ、それにより、下水ラインから汚物導管に向かって到達するガスが妨げられる(例えば、下水ラインに向かって推進されるガスによって)。ガス推進ユニットが作動しているとき、ガスは便器から空間内へ推進される。ガス推進ユニットが作動していないとき、下水ラインから発生するガス及び付随する臭気は、便器に向かって流れて、空間を占有し、この場合、ガスは、流れ防止位置にあるガス・フロー弁によって便器に向けて更に流れることが妨げられる。
【0014】
ガス・フロー弁は低圧依存逆止弁となり得る。ガス推進ユニットが作動しているとき、ガス推進ユニットによって空間内に低圧が生成され、これにより、ガス・フロー弁は、流れ許容位置に向けて変位されて、ガスが空間に向けてガス・フロー弁を流通できるようにし、また、ガス推進ユニットが作動していないとき、ガス・フロー弁は、自動的に流れ防止位置をとり、空間から又は空間に向かってガスがガス・フロー弁を流通しないようにする。
【0015】
この開示される主題のガス・フロー弁の実例において、ガス・フロー弁は、
フラッシング導管の吸引開口と流通する気密弁チャンバを内部に画定する弁ハウジングと、
チャンバ出口通路が内部に配置されて成る傾斜ポート壁をそれぞれが有する1つ又は複数の保持セクションであって、チャンバ出口通路が、弁チャンバとハウジングの空間との間の流通を可能にするように構成される、1つ又は複数の保持セクションと、
各チャンバ出口通路の外部に配置されるとともに、チャンバ出口通路の表面積よりも大きい表面積を有するシール要素であって、前記シール要素が、保持セクション内に配置されるとともに、保持セクション内のシール位置と許容位置との間で傾斜して変位可能であるように構成される、シール要素と、
を有することができる。
【0016】
シール位置において、シール要素は、チャンバ出口通路を通じた流体の通過を防ぐために少なくともチャンバ出口通路の外周にわたってシール状態で載る。許容位置において、シール要素は、チャンバ出口通路を通じた流体の通過を可能にするためにチャンバ出口通路から少なくとも部分的に離間される。シール位置は、ガス・フロー弁の流れ防止位置と関連付けることができ、また、許容位置は、ガス・フロー弁の流れ許容位置と関連付けることができる。シール要素は通常はシール位置にあり得る。
【0017】
弁ハウジングは、吸引開口の全周を取り囲むように構成することができ、それにより、ガスが弁チャンバを介してのみ空間とフラッシング導管との間で流れることができる。
【0018】
シール要素は、ガス推進ユニットによって生成される吸引力により許容位置に向けて変位されるように構成され得る。例えば、ガス推進ユニットが作動していてガス・フロー弁がシール位置にあるとき、空間内に真空をもたらすことができ、この真空は、シール要素に吸引力を加え、許容位置へ向かうシール要素の変位をもたらす。許容位置では、作動しているガス推進ユニットにより生成される一定の流れにより、シール要素がその許容位置を維持することができる。
【0019】
シール要素は、それに作用する重力によってシール位置に向けて変位され得る。場合によっては、シール要素の重心が傾斜ポート壁に向けてシフトされる。したがって、ガス推進ユニットの動作が停止されると、ガス推進ユニットによって生成される吸引力が停止し、その結果、シール要素が許容位置に向かって変位する。
【0020】
排気装置は、液体流れ防止機構によって洗浄液が排気装置を通じて流れるのを防止するように構成される。液体流れ防止機構は、洗浄液が前記フラッシング導管を通じて便器に向けて流れる最中に洗浄液が空間に流入するのを防止するように構成される。ここに開示される主題の第1の実例では、液体流れ防止機構が液体弁である。通常は開放され得る液体弁は、自動化された態様で、前記フラッシング導管を通じて洗浄液が流れる際に、吸引開口の外周をシール状態で覆うように構成される。
【0021】
フラッシング開口に取り付けられる液体弁は、吸引開口と位置合わせされてフラッシング導管内に配置されるフラップ部材を有することができる。フラップ部材は、吸引開口の表面積よりも大きな表面積を有するシール部を伴って構成される。シール部はフラップ部材の上面に位置される。フラップ部材は、シール部が吸引開口をシール状態で覆って洗浄液が吸引開口を通じて流れるのを防止する閉位置と、シール部が吸引開口から少なくとも部分的に離間されて吸引開口を通じた流体の通過を可能にする開位置との間で変位可能である。
【0022】
洗浄液がフラッシング導管内を流れるとき、フラップ部材は、フラッシング導管を通じて流れる洗浄液の圧力によって、その閉位置に向けて変位され得る。例えば、洗浄液がフラッシング導管内を流れるとき、洗浄液がフラップ部材に圧力を加えることができ、その結果、フラップ部材が閉位置に向かって変位する。フラッシング導管内の洗浄液の流れが弱まると、フラップ部材は、それに作用する重力によってその開位置に向かって変位されるように構成される。例えば、フラッシング導管内の洗浄液の流れが弱まると、重力に逆らって洗浄液の流れによってフラップ部材に加えられる圧力が止まり、それにより、フラップ部材が開位置に向かって変位する。
【0023】
この開示される主題の特定の実例において、フラッシング導管は、フラッシング導管内に配置されてその吸引開口と位置合わせされるテーパ部を有することができる。フラッシング導管の前部に向かって先細るテーパ部は、前記テーパ部を通じて流れる洗浄液の圧力を増大させるように構成され得る。フラッシング導管の内径を小さくすることにより、テーパ部における洗浄液圧が上昇し、フラップ部材の下端側にかかる圧力が増大される。フラップ部材に作用する増大された圧力は、フラップ部材を変位させて開位置に維持する圧力を強化して、フラップ部材のシール部が吸引開口をシール状態で覆う時間を延長するように設定される。
【0024】
ここに開示される主題の第2の実例において、液体流れ防止機構は、吸引開口をガス・フロー弁と流体接続するとともにフラッシング導管の吸引開口から洗浄液源内の洗浄液の水位線よりも上の高さまで上方に延在する隆起部材として形成され得る。洗浄液源及び隆起部材が連通容器であるため、洗浄液が隆起部材を通じて空間に向けて流れるのが防止される。
【0025】
以下の特徴的な形態及び構成のいずれか1つ又は複数を、別個に又はそれらを組み合わせて、本開示の観点のいずれかに適用することができる。
- 各保持セクションは、傾斜ポート壁から離間されるとともにチャンバ出口通路の下方で延在する下端ショルダによって傾斜ポート壁に接続される外部支持壁を更に有することができる。
- 下端ショルダは、支持壁から傾斜ポート壁に向かう傾斜を形成する角度のある断面又は丸みを帯びた断面を伴って構成され得る。
- 支持壁は、傾斜ポート壁に向かって傾斜して、地面と平行な水平軸Xと鋭角を規定できる。
- シール要素が楔状の断面を有することができる。
- シール要素は、保持セクション内のシール要素の変位中に摩擦力を低減するように構成される1つ又は複数の支持アームによって保持セクション内で支持され得る。
- シール要素は、その下端縁部から下向きに延在する2つの支持アームを有することができ、これらの支持アームはシール要素の下端縁部よりも小さい下端縁部を伴って構成される。
- 支持アームは、下端ショルダの断面と同様の断面を伴って構成され得る。
- シール要素は、保持セクション内に配置される回動アクセルによって保持セクション内で回動可能に関節結合され得る。
- 抗傾斜要素が支持壁とシール要素とを接続することができ、抗傾斜要素は、シール要素が許容位置に向かって変位するときにエネルギーを蓄積し、シール要素をシール位置に向けて変位させるためにエネルギーをシール要素に加えるように構成される。
- テーパ部は、フラッシング導管の前部に向けて先細る。
- 液体流れ防止機構が液体弁である場合、液体弁のフラップ部材は、吸引開口の後方にあるフラッシング導管に接続された後縁部を有することができる。フラッシング導管は、その外周に沿って吸引開口の後方に環状の陥凹部を有することができ、フラップ部材は、環状の陥凹部の内側に位置されて固定されるその後縁部から延在する適合突起を有することができる。
- フラップ部材は、フラップ部材を通常開位置に維持するように構成される維持要素を有することができる。維持要素は、洗浄液が流れること及びフラップ部材に圧力を加えるのを止めるときに、フラップ部材に作用するあらゆる反対の力に打ち勝つように、フラップ部材に加えられる重力を増大させるように構成され得る。
- フラップ部材は、円錐台形状を有することができる。
- フラップ部材は、水性環境(又は含水環境)で耐久性のある材料から形成され得る。
- ガス推進ユニットは、フラッシング導管と汚物導管との間に配置され得る。
- ガス推進ユニットとガス排出ポートとの流通は、ガス推進ユニットが作動している限りにおいてガス推進ユニットによって空間から外向きに推進されるガスが空間に逆流するのを妨げられるように設定され得る。
- ガス推進ユニットは、ガス推進ユニットが作動しているときに空間からそのガス入口に及びそのガス出口から外向きにガスを推進するように構成され得る。
- ガス排出部材をガス出口とガス排出ポートとの間に配置することができ、これらの間の直接的なガスの流れを促進するようにガス排出部材が構成される。
- 排気装置は、コントローラであって、その作動が引き起こされた際にガス推進ユニットを動作させる及びその動作を停止させるように構成されるコントローラを更に有することができる。
- コントローラは、常時動作モード、作動依存モード、及び、オフモードの間で設定され得る。
- コントローラは、その現在のモードを示すため及び/又は排気装置がメンテナンスを必要とするときにユーザに警告するための照明源を有することができる。
- コントローラは、ユーザにより手動で作動されるように又は自動化された態様で作動されるように構成され得る。
- コントローラは、洗浄液がフラッシング導管内で流れるときにガス推進ユニットの動作を停止させるように構成され得る。
- フラッシング導管及び汚物導管は、通常は、ハウジングを貫通して延在することができる。
- フラッシング導管及び汚物導管が互いに対して固定して位置され得る。
- フラッシング導管及び汚物導管は、ハウジングを貫通して略平行に延在するそれらのそれぞれの部分を有することができる。
- 吸引開口をフラッシング導管の上部に配置できる。
- ガス排出ポートを汚物導管の上部に配置できる。
- ガス排出ポートには、粒子物質がハウジングに入るのを防ぐためのスクリーニング・メッシュを取り付けることができる。他の実例において、スクリーニング・メッシュは、ガス排出ポートの代わりに、汚物導管の後部と一体で又は汚物導管の後部と一体化されて取り付けられ得る。
- ガス排出ポートには排出圧逆止弁を取り付けることができる。
【0026】
ここで、本明細書中に開示される主題をよりよく理解し、その主題が実際にどのように実行され得るかを例示するために、以下の添付図面を参照して、実施例を単なる非限定的な実例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】従来の水洗トイレ・システムの断側面図である。
図2】この開示される主題の第1の観点に係る、図1の従来の水洗トイレ・システムと関連して使用される排気装置の側面図を示す。
図3A図2Aに見られる排気装置の正面斜視図を示す。
図3B図3Aの排気装置の背面斜視図を示す。
図3C】明確にするためにバック・カバーが取り外された、図3Bの排気装置を示す。
図3D図3CのA-A線に沿う断面図である。
図4A】流れ防止位置にある、図2Aに見られる排気装置のガス・フロー弁の正面斜視図を示す。
図4B】流れ許容位置にある、図2Aに見られる排気装置のガス・フロー弁の正面斜視図を示す。
図4C図4Aのガス・フロー弁のシール要素の斜視図である。
図5A】そのフラップ部材が閉位置にある、図2Aに見られる排気装置の液体弁の正面斜視図を示す。
図5B】そのフラップ部材が開位置にある、図2Aに見られる排気装置の液体弁の正面斜視図を示す。
図6図3CのA-A線に沿う断側面図であり、例図は排気装置を通る洗浄液流の流路を示している。
図7図3CのA-A線に沿う断側面図であり、例図はガス推進ユニットが作動しているときの排気装置内のガス流の流路を示している。
図8図3CのA-A線に沿う断側面図であり、ガス推進ユニットが作動していないときの排気装置内のガス流の流路を示している。
図9】この開示される主題の第2の観点に係る、排気装置と一体の又は一体化された水洗トイレ・システムの便器の側面図を示す。
図10A】この開示される主題の第3の観点に係る、図1の従来の水洗トイレ・システムと関連して使用される排気装置の側面図を示す。
図10B図10Aの排気装置の長手方向軸に沿う断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、便器11、洗浄液源30、及び、下水ライン36を伴う、当技術分野において知られている水洗トイレ・システム10の断面図である。便器11は、後部12及び前部13を有する。便器11の後部12は洗浄入口14及び汚物出口16を有し、これらはいずれも便器11の後側に面する。前部13は、ボウル22と、ボウル22の上端部に配置される洗浄入口14に流体接続される洗浄水分配部24と、ボウル22の下端部に位置される汚物出口16に流体接続される液体トラップウェイ26とを有する。
【0029】
洗浄液源30(例えば、槽、液体供給パイプ)には、そこから延びる洗浄液管32が設けられる。洗浄液源30は、フラッシング作用時に洗浄液管32を通じて洗浄液を分配するように構成される。図示のように、洗浄液源30は壁40の背後に位置され、この場合、洗浄液管32は、壁40を貫通して壁40の前面から延びる。下水ライン36は、壁40の前面に設けられるとともに、汚物出口16から下水システム(図示せず)へ向かう汚物を受けて廃棄を促進するように構成される。図示のように、便器11は、洗浄入口14により洗浄液管32を介して洗浄液源30に流体接続されるとともに、汚物出口16を介して下水ライン36に流体接続される。
【0030】
更に、便器11及び洗浄液源30とともに水洗トイレ・システム50を画定する、全体的に100で示される排気装置を示す図2図8を参照する。排気装置100は、図1に示されて開示されるタイプの水洗トイレ・システム10と関連して使用するように構成され、したがって、同様の参照番号が同様の要素を示すために使用される。
【0031】
排気装置100はハウジング102を有し、ハウジング102は、フロント・カバー104、リア・カバー106、及び、外周側壁107を有する箱状構造であり、これらは共同してそれらの間に配置される気密空間108をもたらす。フロント・カバー104は、洗浄入口14及び汚物出口16に面するように構成され、また、リア・カバー106は、洗浄液管32及び下水ライン36に面するように構成される。
【0032】
排気装置100は、(洗浄液管32を介して)洗浄液源30を洗浄入口14と相互接続するためのフラッシング導管110と、下水ライン36を汚物出口16と相互接続する汚物導管130とを有する。フラッシング導管110及び汚物導管130はいずれも、通常、ハウジング102を貫通して延在するとともに、互いに対して固定して位置されて、それらのそれぞれの部分がハウジング102を貫通して略平行に延在する。以下で明らかになるように、フラッシング導管110と汚物導管130は、ガスをフラッシング導管110から汚物導管130に向かって又はその逆にハウジングを介して推進できるように、ハウジング102の空間108によって流通している。図示のように、汚物導管130は、フラッシング導管110よりも大きな直径を伴って構成され、それにより、汚物導管130内の洗浄液流の圧力は、洗浄液がガス排出ポート134に到達するのを防ぐように低減される。
【0033】
フラッシング導管110は、洗浄入口14に結合されるフロント・カバー104を貫通して延在する前部112と、洗浄液源30の洗浄液管32に結合されるリア・カバー106を貫通して延在する後部111とを有する。
【0034】
フラッシング導管110は、空間108内に吸引開口113を伴って構成され、それにより、吸引開口113は、フラッシング導管110をハウジング102の空間108と流体接続している。図示の実例において、フラッシング導管110は、フラッシング導管110の上側セクションに位置される。他の実例(図示せず)では、吸引開口113をフラッシング導管110の上側位置以外の位置に位置させることができる。吸引開口113は液体流れ防止機構を備えており、この液体流れ防止機構は、洗浄液が前記フラッシング導管110を通じて便器11へ向けて流れる最中に洗浄液が空間108に流入するのを防止するように構成される。開示された主題の第1の実例において、液体流れ防止機構は、洗浄液が吸引開口113を介して空間108に流入するのを防止するように構成される液体弁114である(図5A及び図5B)。通常は開かれている液体弁114は、以下でより詳細に説明されるように、洗浄液の流れによってもたらされるフラッシング動作時に、自動化された態様で、吸引開口113をシール状態で覆うように構成される。
【0035】
この開示される主題において、液体弁114は、フラッシング導管110内に配置される弾性フラップ部材115を有する。フラップ部材115は、吸引開口113と位置合わせされて吸引開口113の表面積よりも大きい表面積を有するシール部116を伴って構成される。フラップ部材115は、シール部116が吸引開口113をシール状態で覆って洗浄液が吸引開口を通じて流れるのを防止する閉位置(図5A及び図6)と、シール部116が吸引開口113から少なくとも部分的に離間されて吸引開口を通じた流体の通過を可能にする開位置(図5B図7、及び、図8)との間で変位可能である。フラップ部材115は、フラッシング導管を通じて流れる洗浄液により加えられる圧力によってその閉位置に向けて変位されるように構成されるとともに、それに作用する重力によってその開位置に向けて変位されるように構成される。
【0036】
フラップ部材115は、複数の方法でフラッシング導管110に接続され得る。この開示される主題の図示の実例において、フラッシング導管110は、その外周に沿って吸引開口113に向かって後方に環状の陥凹部118(図3D)を有する。フラップ部材115は、環状の陥凹部118の内側に位置されて固定されるその後縁部から延びる一致する突起118Aを有する。この開示される主題の実例において、フラップ部材115は、水性環境で耐久性のある材料から形成される。フラップ部材115は、薄いとともに、単一の材料層又は複数の材料から形成される幾つかの層として形成されてもよい。フラップ部材115は、ゴム又はシリコーンなどの弾性材料、或いは、ステンレス鋼リーフなどの硬質材料から形成される。フラップ部材115は、吸引開口113の形状に一致する形状を有し、更なる実例では、フラッシング導管110の形状に一致する形状を有する。開示される主題の図示の実例では、フラップ部材115が円錐台形状を有する。
【0037】
この開示される主題の実例において、フラップ部材115は維持要素119を有する。維持要素119は、フラップ部材115上に配置されるとともにフラップ部材115に加えられる重力を増大させることによってフラップ部材115を通常開位置に維持するように構成されるマスである。維持要素119は、洗浄液が流れること及びフラップ部材に圧力を加えるのを止めるときに、フラップ部材115に作用するあらゆる反対の力に打ち勝つように、フラップ部材115に加えられる重力を増大させるように構成される(以下で更に後述する)。維持要素は、シール部116上に配置されるとともに、閉位置へのフラップ部材115の変位を最小限に妨げるように構成される。他の実例(図示せず)によれば、維持要素が付勢部材、例えばスプリングであってもよい。
【0038】
この開示される主題の特定の実例において、フラッシング導管110は、吸引開口113と位置合わせされるテーパ部120を有する。図示のように、テーパ部120は、フラッシング導管110内に配置されるとともに、少なくとも吸引開口113の下方でフラッシング導管110の前部112へ向けて先細る。図示の実例において、テーパ部120はフラッシング導管110と一体である。他の実例(図示せず)において、テーパ部120は、フラッシング導管に嵌め込まれる挿入体としてフラッシング導管110と一体化され得る。
【0039】
排気装置100の汚物導管130は、汚物出口16に結合されるフロント・カバー104を貫通して延在する前部132と、下水ライン36に結合されるリア・カバー106を貫通して延在する後部131とを有する。汚物導管130は、汚物導管130の上部に位置されて空間108内に配置されるガス排出ポート134を伴って構成され、それにより、ガス排出ポート134が汚物導管130をハウジング102の空間108と流体接続する。ガス排出ポート134には、微粒子物質がガス排出ポートを通じて空間108に入るのを防ぐように構成されるスクリーニング・メッシュ136が設けられる。そのような微粒子物質は、例えば、下水系に由来するラットや虫などの下水居住物を含み得る。他の実例(図示せず)において、スクリーニング・メッシュ136は、ガス排出ポート134の代わりに、汚物導管130の後部131と一体に取り付けられ又は一体化され得る。
【0040】
排気装置100は、空間108内に配置されるガス推進ユニット150を更に有する。特定の実例に係るガス推進ユニット150は、ガス推進ユニット150が作動しているときに空間108からそのガス入口152内へ及びそのガス出口154から外向きにガスを推進するように構成されるファン型ガス・ブロワである。ガス推進ユニット150は、フラッシング導管110と汚物導管130との間に配置される。ガス出口154は、そこからガスをガス排出ポート134に向けて推進するように構成される。排気装置100は、ガス出口154から外向きに推進されるガスが空間108内に位置されるガスから分離されるように構成される。
【0041】
ガス放出部材156がガス出口154とガス排出ポート134との間に配置され、それらの間の直接ガス流を促進させる。ガス推進ユニット150が複数のガス推進ユニットを有することができることが理解される。
【0042】
他の実例(図示せず)において、ガス推進ユニット150は、作動していないときにガスが流通するのを防ぐように構成され得る。更に他の実例(図示せず)では、排出圧逆止弁をガス排出ポート134に取り付けることができ、排出圧逆止弁は、ガス出口154と排出圧逆止弁との間のガス圧が上昇する(すなわち、ガス推進ユニットが作動している)ときにだけガス排出ポート134から汚物導管130へ向かう方向でガス流を可能にするように構成される。
【0043】
この開示される主題の実例において、排気装置100は、コントローラ180であって、その作動が引き起こされた際にガス推進ユニット150を動作させる及び動作を停止させるように構成されるコントローラ180を更に有する。図示の実例において、コントローラ180は、空間108内に位置されるとともに、ガス推進ユニット150に電気的に接続される。他の実例(図示せず)において、コントローラ180は、他の場所に位置されて、ガス推進ユニット150と電子通信(有線又は無線のいずれか)し得る。コントローラ180は、ユーザによって手動で作動される又は自動化された態様で作動されるように構成され得る。例えば、コントローラ180の作動を引き起こすための自動化された態様は、便器11内のユーザの存在又は悪臭を放つガスの存在を検出するように構成される1つ又は複数のセンサ(例えば、近接センサ)から入力を受けることを含む。
【0044】
また、コントローラ180は、ガス推進ユニット150の動作を停止するためにユーザによって手動で作動される又は自動化された態様で作動されるようにも構成される。例えば、コントローラ180の作動を引き起こすための自動化された態様は、ユーザの存在の欠如を検出するように構成される1つ又は複数のセンサ(例えば、近接センサ)から入力を受けることを含む。或いは、所定の持続時間を伴うタイマーを、タイマーが終了するときにガス推進ユニット150がオフになるようにコントローラ180の作動時に作動させることができる。
【0045】
コントローラは、ガス推進ユニット150が作動している常時動作モードと、ガス推進ユニット150がコントローラ180の作動を引き起こすのに応じて動作される及び動作を停止される作動依存モードと、ガス推進ユニット150が作動していないオフモードとの間で設定可能である。
【0046】
この開示される主題の想定し得る実例において、コントローラ180は、フラップ部材115が閉位置にあるときにガス推進ユニット150の動作を停止させるように構成され得る。他の実例(図示せず)において、コントローラ180は、照明源と電気的に通信できるとともに、照明源がオンのときにガス推進ユニット150を動作させるとともに照明源がオフのときにガス推進ユニット150の動作を停止させるように構成され得る。
【0047】
排気装置100は、ガスが吸引開口113から空間108へ向かう方向で流れることを選択的に可能にするように構成されるガス・フロー弁190を更に有する(図4A図4C)。ガス・フロー弁190は、流れ許容位置と流れ防止位置との間で設定可能である。ガス・フロー弁190は、空間108内で、吸引開口113と位置合わせされてフラッシング導管110の上部の上方に位置される。ガス・フロー弁190は、トップ・カバー193を伴うハウジング壁192を有する弁ハウジング191を有し、それにより、フラッシング導管110とともに気密弁チャンバ194をもたらす。弁チャンバ194は、吸引開口113を介してフラッシング導管110と流通している。図示のように、弁ハウジング191のハウジング壁192は、ガスが空間108とフラッシング導管110との間で弁チャンバ194を介してのみ流れることができるように、フラッシング導管110の上端にある吸引開口113の全周を取り囲む。
【0048】
ガス・フロー弁190は2つの保持セクション195を更に有する。各保持セクション195は、弁チャンバ194とハウジング102の空間108との間の流通を可能にするために、チャンバ出口通路198が内部に配置されて成る傾斜ポート壁197を有する。各保持セクション195は、傾斜ポート壁197から離間されてチャンバ出口通路198の下方で延在する下端ショルダ201によって傾斜ポート壁197に接続される外部支持壁200を更に有する。傾斜ポート壁197、支持壁200、及び、下端ショルダ201は、これらの間で一緒に閉じ込め空間202を画定する。各保持セクション195は、閉じ込め空間202内に閉じ込められる楔状のシール要素196を伴って構成される。閉じ込め空間202も楔形状であり、閉じ込め空間202は、この空間内に閉じ込められたシール要素196の移動の自由を制限するためにシール要素196の断面より僅かに広い断面を伴って構成される。下端ショルダ201は、以下で更に詳しく説明するように、シール要素196の傾斜変位のための支点として機能するように構成される。
【0049】
シール要素196は、チャンバ出口通路198の表面積よりも大きい表面積を伴って構成される。シール要素196は、閉じ込め空間202内において通常シール位置(図4A)と許容位置(図4B)との間を傾斜して変位可能である。シール位置において、シール要素196はチャンバ出口通路198の少なくとも外周にわたってシール状態で載ってチャンバ出口通路198を通じた流体の通過を防止する。幾つかの実例(図示せず)において、下端ショルダ201は、支持壁200から傾斜ポート壁197に向けて傾斜を形成する角度のある又は丸みを帯びた断面を伴って構成され得る。傾斜を形成する角度のある又は丸みを帯びた断面は、その傾斜変位中に摩擦力を減少させることができる。そのような実例において、下端ショルダ201は、シール要素196を傾斜ポート壁197に向けて変位させて傾斜ポート壁197の外周上にわたって係合させる。傾斜ポート壁197とのシール係合は、シール要素196が傾斜ポート壁197のチャンバ出口通路198に対して適切に対抗しない場合に起こり得るチャンバ出口通路198を通じた流体の通過を防止する。
【0050】
許容位置において、シール要素196は、矢印199の方向で、チャンバ出口通路198を通じた流体の通過を可能にするように、チャンバ出口通路198から少なくとも部分的に離間される。シール要素196は、ガス推進ユニット150によってシール要素に加えられる吸引力によって許容位置に向けて変位されるように構成される。ガス推進ユニット150は、ガス推進ユニット150が作動しているときに空間108内に吸引力を生成するように構成される。ガス推進ユニット150によって生成される吸引力は、シール要素196をそのシール位置からその許容位置に向かう方向で変位させるように構成される。また、吸引力は、ガス推進ユニット150が作動している限りにおいてシール要素196を許容位置に維持するようにも構成される。
【0051】
ガス推進ユニット150が作動していないとき、シール要素196は、シール位置に向けて変位されるように構成される。この開示される主題によれば、シール要素196は、重力によって自動化された態様でシール位置に向けて変位されるように構成される。この開示される主題の特定の実例において、支持壁200は、傾斜ポート壁197に向けて傾斜して、地面と平行に延びる水平軸Xと鋭角を規定する。したがって、シール要素196は、その許容位置でも傾斜ポート壁197に向けて傾斜されたままであり、それにより、ガス推進ユニット150の動作の停止が、重力のみによってシール位置に向けた自発的な変位をもたらす。
【0052】
他の実例(図示せず)では、抗傾斜要素が、シール位置からの変位時にシール要素196に付勢力を加えるように構成され得る。更に他の実例(図示せず)において、シール要素196は、回動アクセルを介して閉じ込め空間202で回動可能に関節結合され得る。そのような実例において、シール要素196は、そのシール位置とその許容位置との間で回動アクセルを中心に回動可能に変位可能となり得る。
【0053】
この開示される主題の一実例において、シール要素196は、1つ又は複数の支持アーム203によって保持セクション195内に支持され、それにより、1つ又は複数の支持アーム203は、その傾斜変位中の摩擦力を低減するように構成される。図示の実例において、シール要素196は、シール要素196の下端縁部204から下向きに延在する2つの支持アーム203を有する。場合によっては、2つの支持アーム203の下端縁部204は、下端ショルダ201の断面に一致する断面を伴って構成される。他の実例(図示せず)において、1つ又は複数の支持アーム203は、下端ショルダ201から上向きに延在することができ、或いは、傾斜ポート壁197又は支持壁200から横方向に延在することができる。
【0054】
図6は、洗浄液がフラッシング導管110を通じて便器11へと流れる流路及び便器11から下水ライン36へと流れる流路を示す。トイレを洗い流す際、洗浄液は、洗浄液源30から、洗浄液管32を通じてフラッシング導管110(矢印301)へと流れ込む。洗浄液は、フラッシング導管110の長さに沿って流れ(矢印302)、フラップ部材115に圧力を加える(矢印303)。洗浄液流によって加えられる圧力は、フラップ部材115をその閉位置に向けて変位させる(すなわち、シール部116を変位させて吸引開口113に当て付け、吸引開口113をシール状態で覆うことによって)。
【0055】
その後、洗浄液は、洗浄入口14を通過して洗浄分配部24を介してボウル22に流入する(矢印304)。洗浄液は、液体トラップウェイ26を通じて更に流れ、汚物出口16から流出する(矢印305)。その後、洗浄液は、汚物導管130の長さにわたって流通して下水ライン36へ流入する(矢印306)。
【0056】
図7は、ガス推進ユニット150が作動している(すなわち、空間108内に吸引力を生成している)ときに便器11から下水ライン36に向かって生じるガスの流路を示す。図示のように、ガスは、ボウル22から推進され(矢印401)、洗浄入口14を介してフラッシング導管110内へ推し進められる(矢印402)。その後、ガスは、液体弁114を通じて流れ(この場合、そのフラップ部材115が開位置にある)、吸引開口113を通過する(矢印403)。その後、ガスは、流れ許容位置にあるガス・フロー弁190を通じ空間108内へと更に推進される(矢印404)。空間108の内部で、ガスは、ガス入口152に向かって推進され(矢印405)、ガス出口154からガス排出部材156へと外向きに推進される。その後、ガスは、ガス排出ポート134から汚物導管130内へと推進される(矢印406)。汚物導管130において、ガスは、液体トラップウェイ26によって汚物出口16を介して便器11に向かって流れることが妨げられ、したがって、ガスは、下水ライン36を介して下水システムに向けて推進される。
【0057】
図8は、ガス推進ユニット150が作動していないときの下水ライン36から便器11に向かうガスの流路を示す。図示のように、下水ガスは、下水ライン36から汚物導管130内へと流れる(矢印501)。その後、ガスは、ガス入口152から空間108内へと流出する(矢印502)。ガスはガス・フロー弁190(この場合、その流れ防止位置にある)に向けて更に流れる。ガス・フロー弁190において、ガスは、そのシール位置にあるシール要素196によってチャンバ出口通路198を介してフラッシング導管110へと更に流れることが妨げられる。
【0058】
排気装置100’がその指定された空間560内で便器522の後部512と一体である又は便器522の後部512で一体化されるという点で先の実例の水洗トイレ・システム50とは異なる水洗トイレ・システム52を示す図9を更に参照する。それ以外の点において、排気装置100'は、先の実例の排気装置100と同様であり、前述したように、水洗トイレ・システム52の洗浄入口514及び汚物出口516を、洗浄液管32及び下水ライン36とそれぞれ相互接続している。また、関連する排気装置100'を伴う水洗トイレ・システム52の動作も、上記の開示と同様である。
【0059】
便器11及び洗浄液源30とともに水洗トイレ・システム54を画定する排気装置100’’を示す図10A及び図10Bが更に参照される。水洗トイレ・システム54は、排気装置100’’が壁40の背後に位置されて洗浄液源30の洗浄液管32を下水ライン36と相互接続するという点で前述した水洗トイレ・システム50とは異なる。他の実例(図示せず)において、排気装置100’’は、洗浄液源30と一体であり得る又は一体化され得る。
【0060】
図示のように、排気装置100”は、フラッシング導管610の後部611で洗浄液管32に接続されるとともに、汚物導管631の後部で下水ライン36にも接続される。水洗トイレ・システム54は、フラッシング導管610の前部612を洗浄入口14に接続するための相互接続フラッシング・チューブ614と、汚物導管630の前部632を汚物出口16に接続するための相互接続汚物チューブ634とを更に有する。他の実例(図示せず)において、フラッシング導管610の前部612は、壁を貫通して延在するとともに、洗浄入口14に直接に接続することができ、また、汚物導管630の前部632は、壁を貫通して延在できるとともに、汚物出口に直接に接続され得る。
【0061】
また、排気装置100’’は、この開示される主題の第2の実例によれば液体流れ防止機構が隆起部材600であるという点で、前述の排気装置100と異なる。この開示される主題の第2の実例は、洗浄液源が重力を介して(例えば、フラッシング・タンク)及び更なる圧力手段を伴うことなく(例えば、高圧水管)動作する場合に使用され得る。
【0062】
隆起部材600は、ハウジング602内に位置される中空管として形成される。隆起部材600は、その下端部601Aに流体接続されるフラッシング導管610の吸引開口613を、その上端部601Bに流体接続されるガス・フロー弁690の気密弁チャンバ694と流体接続するように構成される。隆起部材600は、吸引開口613を介したフラッシング導管610とガス・フロー弁690を介した空間608との間の流通を可能にする。隆起部材600は、洗い流し動作時に水が隆起部材600の上端にあるガス・フロー弁690に到達するのを防止するように、フラッシング導管610から洗浄液源30内の洗浄液31の水位線31’よりも上の高さまで延在するように構成される。これは、洗浄液源30及び隆起部材600が連通容器だからである。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
【国際調査報告】