(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-26
(54)【発明の名称】焙煎装置
(51)【国際特許分類】
A23N 12/08 20060101AFI20220819BHJP
【FI】
A23N12/08 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021573933
(86)(22)【出願日】2020-06-15
(85)【翻訳文提出日】2021-12-13
(86)【国際出願番号】 EP2020066463
(87)【国際公開番号】W WO2020254234
(87)【国際公開日】2020-12-24
(32)【優先日】2019-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】チェカロリ, ステファノ
(72)【発明者】
【氏名】デビュエフ, フラヴィアン フローラン
(72)【発明者】
【氏名】マーティン, ヴィンセント
(72)【発明者】
【氏名】ブリガンテ, ステュアート
(72)【発明者】
【氏名】グレヴィッチ‐ビーコック, ポール
【テーマコード(参考)】
4B061
【Fターム(参考)】
4B061BA09
4B061CD01
4B061CD06
4B061CD12
4B061CD19
(57)【要約】
本発明は、コーヒー豆を焙煎するための装置(10)であって、底部開口部(11)を有する焙煎チャンバ(1)と、チャンバの底部開口部を通して焙煎チャンバ内部に空気流を推進するように構成された空気ドライバ(2)と、焙煎チャンバの底部開口部に推進される空気流を加熱するように構成され、チャンバの底部開口部の下方に配置された電気ヒータ(3)と、ヒータ(3)から焙煎チャンバの底部開口部(11)へ熱風流を推進するための導管(6)と、を備え、導管(6)は、局所的横断狭窄部(61)を含み、少なくとも1つの温度プローブが、前記導管の前所的横断狭窄部(61)に配置されている、装置に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーヒー豆を焙煎するための装置(10)であって、
底部開口部(11)を有する焙煎チャンバ(1)と、
前記チャンバの前記底部開口部を通して前記焙煎チャンバ内部に空気流を推進するように構成された空気ドライバ(2)と、
前記焙煎チャンバの前記底部開口部に推進される前記空気流を加熱するように構成されており、前記チャンバの前記底部開口部の下方に配置された電気ヒータ(3)と、を備え
前記装置は、前記ヒータ(3)から前記焙煎チャンバの前記底部開口部(11)へ熱風流を推進するための導管(6)を備え、
前記導管(6)は、前記導管の断面を最小横断面に縮小する局所的横断狭窄部(61)を備え、
少なくとも1つの温度プローブ(7)が、前記導管の前記最小横断面に配置されている、装置。
【請求項2】
前記装置は、当該装置を制御するように構成されたコントローラ(8)を備え、前記コントローラは、前記少なくとも1つの温度プローブ(7)によって測定された前記空気流の温度に基づいて、前記電気ヒータ(3)及び/又は前記空気ドライバ(2)を制御するように適合されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
少なくとも2つの温度プローブ(7)が、前記導管の前記最小横断面に配置されており、各プローブは異なる半径方向位置に配置されている、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記局所的横断狭窄部の前記最小横断面の水力直径
【数1】
は、15~25mmである、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記狭窄部の設計は、前記導管の前記横断面の前記最小横断面への漸進的縮小部(61a)と、前記導管の前記横断面の前記最小横断面からの漸進的開口部(61b)とを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記最小横断面の前記水力直径
【数2】
は、前記狭窄部の上流の前記導管の前記水力直径(D)の1/3~2/3である、請求項1~5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記焙煎チャンバの前記底部(11)は、距離dだけ前記最小横断面の上方に配置されており、前記距離dは、前記最小横断面の前記水力直径
【数3】
の2~3倍である、請求項1~6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記導管(6)はスタティックミキサーを備え、前記スタティックミキサーは前記狭窄部の上流に配置されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記焙煎チャンバは、ハウジング(4)に取り外し可能に取り付けられ、前記焙煎チャンバの前記底部開口部(11)は、前記焙煎チャンバが前記焙煎装置の前記ハウジング(4)に取り付けられているときに、前記導管の熱風出口端部と連携する、請求項1~8のいずれか一項に記載の装置。装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱された空気を用いコーヒー豆を焙煎するための、家庭又は店舗及びカフェでの使用に特に適している装置に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭又は店舗及びカフェにおけるコーヒー豆の小規模な焙煎は、通常、コーヒー豆が熱風内で撹拌される小型装置を用いて実行される。1つの種類の装置は、コーヒー豆が投入され、熱が供給されている間にタンブリングされる回転穿孔ドラムを使用する。
【0003】
別の種類の装置は、熱風流動床チャンバを実装する流動床技術を使用する。このようなチャンバ内で、加熱された空気は、豆を持ち上げるのに十分な力で、コーヒー豆の下にあるスクリーン又は多孔板を通して押し出される。熱は、豆がこの流動床内でタンブリングし、流通するにつれて、豆に伝導される。
【0004】
米国特許第3964175号に記載されている工業用ロースターに由来するこの技術は、米国特許第4484064号、同第4494314号、同第4631838号、同第5269072号、同第5564331号に記載のような小型家庭用装置に適合されている。
【0005】
焙煎装置では、ガスバーナ又は電気ヒータのような、様々な種類のヒータを使用することができる。小型の焙煎装置の場合、通常、加熱抵抗などの電気ヒータが好ましい。
【0006】
流動床技術を実施する焙煎装置の大半は、同じ主要要素、すなわち焙煎チャンバ、ヒータ、及び空気ドライバ、の構成を有する。非常に一般的かつ明白に、これらの要素は垂直な軸に沿って重ねられ、空気ドライバが最も低い位置に配置され、その上方に電気抵抗、そして、電気抵抗の上方に焙煎チャンバが配置される。
【0007】
焙煎は、特定の熱対時間曲線をコーヒー豆に適用することによって行われる(焙煎プロファイルと呼ばれる)。この焙煎プロファイルの制御は、ヒータの電力及び/又は空気ドライバの電力の制御を介して行われ、通常、この制御は、温度センサにより温度を監視すること(フィードバックループによるプロセス制御)によって得られる。理想的には、このセンサは、豆自体の温度を測定するために焙煎チャンバの内部に配置される。更に、好ましくは小型ロースターでは、熱風流動床チャンバは、豆を手動で導入し排出するために、並びに洗浄作業のために、装置から取り外し可能である。このような取り外し可能なチャンバでは、温度プローブをチャンバの内部に配置することは推奨されず、通常、その構成では、温度センサを、取り外し可能なチャンバの下方に、例えば、チャンバに熱風を導くダクトの内部に、配置することが好ましい。しかしながら、この構成では、測定が非常に正確ではなく、温度フィードバックループ内で正確な情報が欠けているため最適な焙煎がもたらされないという効果を伴うことが観察されている。
【0008】
本発明の目的は、その問題を解決することである。
【発明の概要】
【0009】
本発明の第1の態様では、コーヒー豆を焙煎するための装置が提供され、該装置は、
底部開口部を有する焙煎チャンバと、
チャンバの底部開口部を通して焙煎チャンバ内部に空気流を推進するように構成された空気ドライバと、
焙煎チャンバの底部開口部に推進される空気流を加熱するように構成されており、チャンバの底部開口部の下方に配置された電気ヒータと、を備え、
装置は、ヒータから焙煎チャンバの底部開口部へ熱風を推進するための導管を備え、
導管は、当該導管の断面を最小横断面に縮小させる局所的横断狭窄部を備え、
少なくとも1つの温度プローブが、導管の局所的横断狭窄部の最小横断面に配置されている。
【0010】
焙煎装置は、底部開口部及び通常は頂部開口部を有する焙煎チャンバを備える。この焙煎チャンバは、熱風が底部開口部を通して導入されるとき、熱風の流動床を生成することができるように設計されている。
【0011】
一般的に、底部開口部は、熱風のチャンバの通過を可能にしながら、チャンバの内部に豆を保持するためのグリッドを備える。
【0012】
頂部開口部は、焙煎動作中に生成された煙及び粒子の排出を可能にする。また、焙煎される豆の投入及び焙煎動作の終了時の焙煎された豆の取り出しも可能にする。この最後の動作のために、焙煎チャンバは、装置のハウジングから取り外し可能である。
【0013】
装置は、焙煎チャンバ内部に空気流を、チャンバの底部開口部を通して推進するように構成された空気ドライバを備える。通常、この空気ドライバは、空気を焙煎チャンバに上向きに吹き出すように設計された送風機又はファンである。
【0014】
装置は電気ヒータを備え、この電気ヒータは、チャンバの底部開口部の下方に配置されており、流れ空気を、焙煎チャンバ内部に導入される前に、加熱するように構成されている。
【0015】
一般的に、ヒータは、熱風がヒータから焙煎チャンバに移動する間の熱損失を制限するために、チャンバの底部開口部の直下に配置されている。ヒータのこの位置はまた、焙煎チャンバにおける焙煎プロセス中に良好な温度調整も提供する。実際に、ヒータのどのような温度変化も焙煎チャンバ内部の温度に直接影響する。
【0016】
加えて、装置は、ヒータから焙煎チャンバの底部開口部へ熱風流を推進するための導管、パイプ、チャネル又は管を備える。したがって、この導管は、熱風流をヒータからチャンバの底部開口部に案内する。
【0017】
この導管は、導管の断面を最小横断面に縮小させる局所的横断狭窄部を含み、少なくとも1つの温度プローブは、導管のこの局所的横断狭窄部の導管の最小横断面に配置されている。
【0018】
この局所的横断狭窄部は、導管の短い長さに沿って導管の水力直径を縮小させる。この減少部を通って流通する空気流は、上流よりも均質化され、その結果、この位置で測定される温度はより正確かつ信頼性が高い。
【0019】
一般に、この装置は、装置を制御するように構成されたコントローラを備え、このコントローラは、少なくとも1つの温度プローブによって測定された空気流の温度に基づいて、電気ヒータ及び/又は空気ドライバを制御するように適合されている。
【0020】
焙煎チャンバに導入された熱風流をより正確かつ信頼性をもって測定できるので、フィードバックループによる電気ヒータ及び/又は空気ドライバの制御が改善され、所定の焙煎プロファイル曲線を豆に完全に適用することができる。したがって、一貫した焙煎を繰り返し適用することができる。
【0021】
少なくとも2つの温度プローブを最小横断面に配置することができ、各プローブは、異なる半径方向位置に配置される。温度を測定するいくつかのプローブが最小横断面の平面の異なる点に存在することは、熱風流の均質性の検証を可能にする。
【0022】
好ましい実施形態では、最小横断面の水力直径は、15~25mmとすることができる。
【0023】
このような範囲内では、異なる温度の異なる空気流というリスクが最小化される。
【0024】
水力直径とは、形状の異なる断面を有する導管と同じ断面積である円形断面を有する導管の直径を意味する。
【0025】
好ましくは、狭窄部の設計は、導管の横断面を最小横断面まで漸進的に縮小することと、導管の横断面を前記最小横断面から漸進的に拡大させることとを含む。
【0026】
したがって、狭窄部は、漸進的に収束する領域及び漸進的に発散する領域を含む。最小横断面における空気流の均質化の効果に加えて、この設計は、熱風流の速度を狭窄部の下流で加速させる。その結果、熱風を焙煎チャンバに高速で導入することができ、これには、豆が湿気の高いグリーン豆のように高密度であっても、空気の流動床が形成され、コーヒー豆を攪拌することができるという効果が伴われる。豆は、チャンバの底部開口部で熱風流によってエネルギー的に衝撃を受け、上向きに投げ出され、他の豆が底部に配置されることを可能にする。結果として、豆は、代替的にチャンバの底部に配置され、このことは全ての豆の均質化された焙煎を保証し、一部の豆の過熱を回避する。
【0027】
好ましくは、最小横断面の水力直径
【数1】
は、狭窄部の上流の導管の水力直径(D)の1/3~2/3である。
【0028】
一般に、導管は、最小横断面の上流及び下流で同じ水力直径及び同じ形状を有する。
【0029】
好ましくは、焙煎チャンバの底部は、距離dだけ最小横断面の上方に配置されており、距離dは、最小横断面の水力直径の2倍~3倍である。
【0030】
焙煎チャンバの底部がチャンバ内部に導入されたコーヒー豆を支持するので、この距離により、豆を撹拌するためにチャンバの底部開口部に、速度が上昇した熱風流を生成することができる。
【0031】
一実施形態では、導管はスタティックミキサーを備えることができ、このスタティックミキサーは、狭窄部の上流に配置されている。
【0032】
このスタティックミキサーは、熱風流を分裂させ、ヒータの下流で異なる温度を呈する空気の潜在的な種々のゾーンを混合するように構成されている。次いで、狭窄部は、焙煎チャンバに均質化された熱風を供給する前に、混合流の温度及び圧力を均質化することができる。
【0033】
スタティックミキサーは、熱風の乱流、回転又はスワールを生成するように設計することができる。
【0034】
任意の種類のエアスタティックミキサーを使用することができる。スタティックミキサーは、導管の側壁に、例えば、側壁の中空の溝として設計することができ、螺旋又はねじ山の形状を呈することができる。スタティックミキサーは、導管の断面を通って導管の側壁から延びるフィンを含み得る。
【0035】
上述のように、好ましくは、焙煎チャンバはハウジングに取り外し可能に取り付けられ、焙煎チャンバの底部開口部は、焙煎チャンバが装置のハウジングに取り付けられているときに、導管の熱風出口端部と連携する。
【0036】
本発明の上記の諸態様は、任意の好適な組み合わせで組み合わせることができる。更には、本明細書における様々な特徴を、上記の諸態様のうちの1つ以上と組み合わせることにより、具体的に図示及び説明されたもの以外の組み合わせを提供することができる。本発明の更なる目的及び有利な特徴は、「特許請求の範囲」、「発明を実施するための形態」、及び添付図面から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
添付の概略図を参照し、単に例示目的として、本発明の好ましい実施形態がここで更に記載される。
【
図2】
図1の装置の熱風流生成ユニットの概略図である。
【
図3】本発明による装置における導管及び焙煎チャンバの底部の垂直断面及び断面を示す概略図である。
【
図4】
図1による装置の制御システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
焙煎装置
図1は、焙煎装置10の例示的な側面図を示す。機能的には、焙煎装置10は、チャンバ1内部に導入された熱風流によってチャンバ1内に保持されたコーヒー豆を焙煎するように動作可能である。第1のレベルに装置は、ハウジング4と、焙煎ユニットと、制御システム80とを備える。次に、これらの構成要素を順次説明する。
【0039】
焙煎装置の焙煎ユニット
焙煎ユニットは、コーヒー豆を受け入れ、焙煎するように動作可能である。
【0040】
焙煎ユニットは、典型的には、焙煎装置10の第2のレベルに、チャンバ1と、空気流ドライバ2と、ヒータ3とを備えており、これらを順番に説明する。
【0041】
チャンバ1は、操作者によって導入されたコーヒー豆を受け入れ、保持するように構成されている。好ましい実施形態では、チャンバ1はハウジング4から取り外し可能である。チャンバは、
コーヒー豆の導入又は除去のため、又は
いったんチャンバを除去して、チャンバを洗浄及び保守するため、又は
チャンバの背後にある垂直のハウジング部分43を洗浄するために、
焙煎装置のわきに置くことができる。
【0042】
チャンバの底部開口部11は、空気が通過できるように構成されており、具体的には、豆を上に置くことができ、空気がそれを通って上方に流れることができる、多孔板を備えることができる。チャンバ1は、ユーザーがハウジングからチャンバを取り外し、ハウジングの外側に保持することを可能にするために、ハンドルを備える。
【0043】
チャフ収集器(図示せず)が、豆から漸進的に分離し、密度が小さいためチャフ収集器に吹き飛ばされる殻(チャフ)を受け入れるためにチャンバ1と流れ連通している。
【0044】
空気ドライバ2は、チャンバの底部の方向に空気流(点線矢印)を生成するように動作可能である。生成された流れは、豆を加熱し、撹拌して持ち上げるように構成される。その結果、豆が均質に加熱される。具体的には、空気流ドライバは、モータによって駆動されるファンであり得る。ハウジング内部に空気を供給するために、ハウジングの基部に空気入口42を設けることができ、空気流ドライバは、点線矢印で示されるように、この空気を通路5を通して上方に、空気出口孔41へチャンバ1の方向に吹き出すことができる。
【0045】
ヒータ3は、空気流ドライバ2によって生成された空気流を加熱するように動作可能である。図示した具体的な実施形態では、ヒータは、ファン2とチャンバの底部開口部11との間に配置され、空気流がチャンバ1に入る前に加熱され、豆を持ち上げることになる。ヒータ3は、通常、加熱をより良好に制御し、熱損失を回避するために、一般的に最大で10cmだけ空気出口孔41の直下に配置されている。
【0046】
ヒータ3は、焙煎プロファイルを豆に適用するように動作可能であり、この焙煎プロファイルは、時間に対する温度の曲線として定義される。
【0047】
チャンバがハウジングに取り付けられると、チャンバの底部は空気出口孔41に緊密に接続され、接続部において熱風流が漏れないようにする。
【0048】
チャンバの頂部開口部12は、煙及び粒子排出装置(図示せず)に接続される。
【0049】
図2は、
図1の熱風流生成ユニット、具体的には、ヒータから焙煎チャンバの底部開口部11への熱風流を推進する導管又はパイプ6をより正確に示す。この導管6は、局所的横断狭窄部61を含み、1つの温度プローブ7が、局所的横断狭窄部に配置されている。
【0050】
この狭窄部を通過すると、熱風流が均質化され、プローブ7によって測定される温度は、焙煎チャンバの底部11に更に供給される熱風の温度を正確に提供する。空気流がヒータ3に接触する通路5の部分がどの程度の大きさであるかが概略的に示されており、この部分は、ヒータの種々異なる部分によってそれぞれ加熱され、通路5の側面に大きかれ少なかれ近接している、複数の空気流を含み得る。これらの流れは異なって処理され、それらは同じ範囲の温度を有してもよいが、通路5の断面の異なる半径方向位置に配置された温度プローブは、異なる温度を測定することになる。特定の焙煎プロファイル(時間に対する温度曲線)を適用するようにフィードバックループ内のヒータ及び/又は空気ドライバを制御するために監視される情報が温度である場合、この温度差は許容されず、一貫していない焙煎につながる。
【0051】
狭窄部の領域の矢印によって示されるように、この狭窄部は、種々異なる不均質な流れを強制的に混合し、その結果、狭窄部の他の全ての断面で空気流は、同じ温度を有する。その結果、狭窄部は空気流を均質化し、狭窄部でプローブ7によって測定された空気流及び温度は、チャンバの底部11に供給される熱風流の温度を正確に反映し、加熱制御のフィードバックループにおいて信頼性をもって使用することができる。
【0052】
図3は、垂直平面BBに沿った垂直断面図、及び狭窄部61で導管の最小横断面を横断する水平面AAに沿った断面図により、導管6の狭窄部61に関してより詳細を提供する。
【0053】
導管6は、ヒータと接触したばかりの熱風流Fを焙煎チャンバの底部開口部11に導く。焙煎チャンバ1はコーヒー豆16を含む。豆は、グリッド又は篩によってチャンバ内部に保持される。したがって、熱風はグリッド又は篩を自由に通過する。
【0054】
導管6は、狭窄部61を備え、導管の上流の直径Dは、減少部61aを通して比較的に小さな直径
【数2】
に漸進的に減少される。好ましくは、導管の断面は円形であるが、焙煎装置の構造に応じて、他の形状を断面に対して想定することができる。
【0055】
好ましくは、この漸進的な縮小部61aを通して、狭窄部61の上流の導管の水力直径Dが、最小横断面の水力直径
【数3】
に、1/3~2/3
【数4】
の比率だけ低減される。
【0056】
断面図に示されるように、少なくとも1つのプローブ(ここでは2つ)が、狭窄部を通過する空気の温度を測定するために狭窄部に配置されている。断面が小さいので、測定された温度は、プローブの断面内の半径方向位置にかかわらず均一である。好ましくは、狭窄部の最小横断面の水力直径
【数5】
は、15~25mmである。
【0057】
導管6は、狭窄部のこの特定の内部設計を用いて製造することができる。あるいは、インサートを、直導管の内部に配置して取り付けてもよい。
【0058】
狭窄部は局所領域に限定される。最小横断面の下流で導管は、通常、最小横断面の上流と同じ断面を呈する。好ましくは、狭窄部は、漸進的な開口部61bを含む。漸進的な縮小部61aの長手方向の長さは約15mmとすることができ、同様に、漸進的な開口部61bは約15mmとすることができる。
【0059】
狭窄部の下流の漸進的な開口部61bに加えて、狭窄部の下流の空気流Fの速度が上昇する。この増加した空気速度は、空気流が焙煎チャンバ内でコーヒー豆16に衝撃を与える場合に特に有用である。なぜなら、この空気流は、これらの豆がグリーン豆のように高密度であっても、十分な力を豆に及ぼして、それらを持ち上げることができるからである。豆は互いに分離され、チャンバの最低位置に配置された豆が入れ替わり、豆を転倒させるリスクが制限される。狭窄部61がチャンバの底部11から離れていなければ、この効果は強化される。好ましくは、焙煎チャンバの底部11は、距離dだけ最小横断面の上方に配置され、この距離dは、最小横断面の水力直径
【数6】
の2倍~3倍である。
【0060】
加えて、狭窄部の下流で空気流にある程度の乱流が生じる場合であっても、狭窄部61と底部11との間の短い距離は、プローブ(複数可)によって測定される温度に変化をもたらさず、フィードバックループの信頼性は高い。
【0061】
焙煎装置の制御システム
図1及び
図4を参照すると、制御システム80が論じられ、ここで、制御システム80は、コーヒー豆を焙煎するために装置の構成要素を制御するように動作可能である。制御システム80は、典型的には、焙煎装置の第2のレベルに:ユーザインターフェース17、処理ユニット8、温度プローブ7、電源14、メモリユニット9、センサ18、任意選択的に、遠隔接続用の通信インターフェース13、任意選択的にコードリーダ15を備える。
【0062】
ユーザインタフェース17は、ユーザがユーザインタフェース信号によって処理ユニット8と接続できるようにするハードウェアを含む。より具体的には、ユーザインタフェースがユーザからコマンドを受信し、ユーザインタフェース信号が、このコマンドを入力として処理ユニット8に転送する。コマンドは、例えば、焙煎プロセスを実行するための命令、及び/又は焙煎装置10の動作パラメータを調節するための命令、及び/又は焙煎装置10の電源をオン又はオフするための命令であってもよい。処理ユニット8はまた、焙煎プロセスの一部として、ユーザインターフェース17にフィードバックを出力してもよい。これは例えば、焙煎プロセスが開始されたこと、若しくはプロセスに関連付けられたパラメータが選択されたこと、又はプロセス中にパラメータが展開したことを示すため、又はアラームを生成するためである。
【0063】
特定の実施形態では、ユーザインターフェースは、予め選択されたコーヒー豆リストで識別タイプを選択するなどの手動入力によって、又は例えばコーヒー豆パッケージから読み取られたコーヒーのデジタル参照を入力することによって、ユーザによってチャンバ内部に導入されたコーヒー豆の識別を提供するために使用され得る。
【0064】
ユーザインターフェースのハードウェアは、任意の好適なデバイス(複数可)を含んでもよく、例えば、ハードウェアは、ジョイスティックボタン、ノブ若しくは押しボタンなどのボタン、ジョイスティック、LED、グラフィックLDC若しくは文字LDC、タッチ感知ボタン及び/若しくはスクリーンエッジボタンを有するグラフィックスクリーン、のうちの1つ以上を含む。ユーザインターフェース20は、1つのユニット又は複数の別個のユニットとして形成することができる。
【0065】
ユーザインターフェースの一部はまた、以下に記載されるように、装置に通信インターフェース13が設けられている場合、モバイルアプリ上にあってもよい。その場合、入力及び出力は、通信インターフェース13を通してモバイルデバイスに送信することができる。
【0066】
センサ18は、焙煎プロセス及び/又は焙煎装置の状態を監視するために、処理ユニット8に入力信号を提供するように動作可能である。入力信号は、アナログ信号又はデジタル信号とすることができる。センサ18は、典型的には、チャンバ1に関連付けられた豆レベルセンサ、空気流量センサ、チャンバ及び/又はチャフ収集器に関連付けられた位置センサ、のうちの1つ以上を含む。
【0067】
同様に、温度プローブ7は、局所的横断狭窄部61において焙煎プロセスを監視するために入力信号を処理ユニット8に提供する。
【0068】
コードリーダ15を設けることができ、これは、コーヒー豆パッケージ上のコードを読み取り、チャンバ1に導入されたコーヒー豆の識別子である入力を自動的に提供するように動作可能であり得る。
【0069】
処理ユニット8は一般的に、メモリと、通常はマイクロプロセッサ又はマイクロコントローラなどの集積回路として構成されている入出力システム構成要素とを備える。処理ユニット8は、例えば、ASICなどの他の適切な集積回路、PAL、CPLD、FPGA、PSoCなどのプログラマブルロジックデバイス、システムオンチップ(SoC)、コントローラなどのアナログ集積回路を備えることができる。そのようなデバイスに関しては、適切な場合には、上記のプログラムコードは、プログラムされた論理とみなすことができ、又はプログラムされた論理を追加的に含むことができる。処理ユニット8はまた、上記の集積回路のうち1つ以上を備えてもよい。後者の例は、いくつかの集積回路がモジュール式に互いに通信するように構成されている例であり、例えば、ユーザインターフェース17を制御するためのスレーブ集積回路が、焙煎ユニット10を制御するためのマスタ集積回路と通信する。
【0070】
電源14は、上記の制御される構成要素及び処理ユニット8に電気エネルギーを供給するように動作可能である。電源14は、バッテリー又は商用電源を受電し調節するためのユニットなど、様々な手段を含むことができる。電源14は、焙煎装置10の電源をオン又はオフにするためにユーザインターフェース17の一部に動作可能に接続してもよい。
【0071】
処理ユニット8は一般に、プログラムコードとしての命令、及び任意選択でデータを記憶するためのメモリユニット9を備える。この目的のために、メモリユニットは、通常、例えば、命令としてのプログラムコード及び動作パラメータを記憶するためのEPROM、EEPROM、又はFlashなどの不揮発性メモリと、一時的データを記憶するための揮発性メモリ(RAM)とを備える。メモリユニットは、別個の及び/又は(例えば、半導体のダイ上に)集積されたメモリを備えることができる。プログラマブルロジックデバイスについては、命令をプログラムされた論理として記憶することができる。
【0072】
メモリユニット9に記憶された命令は、コーヒー豆焙煎プログラムを含むものとして理想的に考えることができる。
【0073】
コーヒー豆焙煎プログラムは、温度センサ7の信号を使用して、空気流ドライバ2及び/又はヒータ3の制御を行うことができる。
【0074】
処理ユニット8は、
温度センサ7の入力を受信し、
メモリユニット9に記憶された(又は最終的に、通信インターフェース13などの外部ソースから入力される)焙煎プログラムコード(又はプログラムされた論理)に従って入力を処理し、
焙煎レシピに従って焙煎プロセスである出力を提供するように動作可能である。より具体的には、出力は、少なくともヒータ3及び空気流ドライバ2の作動を含む。
【0075】
温度プローブ7によって測定された温度は、所定の焙煎プロファイルを豆に適用するために、ヒータ3の電力及び/又は空気ドライバ2の電力をフィードバックループで適合させるために使用される。
【0076】
ロースターに適用される制御の種類に応じて、ヒータ3に、1つの所定の電力を供給することができ、これはヒータの温度が一定であることを意味し、その場合、空気ドライバ2の電力は、ヒータを通る空気流の接触時間をその移動中に変化させるためにプローブ7で監視された温度に基づいて制御することができる。
【0077】
代替として、空気ドライバ2に、1つの所定の電力を供給することができ、これは流量が一定であることを意味し、その場合、空気がヒータを通過する間に、より多くの、又はより少ない空気を加熱するために、ヒータ2の電力を、プローブ7で監視された温度に基づいて制御することができる。
【0078】
最後の代替形態では、ヒータ3及び空気ドライバ2の両方を、プローブ7による温度の監視に基づいて制御することができる。
【0079】
本発明は、上記で例示された実施形態を参照して説明されているが、請求される本発明は、決してこれらの例示された実施形態によって限定されるものではないことが理解されるであろう。
【0080】
「特許請求の範囲」で定義されるような本発明の範囲を逸脱することなく、変形及び修正が実施可能である。更に、既知の均等物が特定の特徴に対して存在する場合、かかる均等物は、本明細書で具体的に言及されているかのように組み込まれる。
【0081】
本明細書で使用するとき、用語「備える」、「備えている」、及び同様の語は、排他的又は網羅的な意味で解釈されるべきではない。換言すれば、これらは、「~を含むが、それらに限定されない」ことを意味するものとする。
【符号の説明】
【0082】
1 焙煎チャンバ
11 底部開口部
12 頂部開口部
2 空気ドライバ
3 ヒータ
4 ハウジング
41 空気出口孔
42 空気入口
43 垂直部
5 空気通路
6 ダクト
61 狭窄部
61a 縮小部
61b 開口部
7 温度プローブ
8 制御システム
80 処理ユニット
10 焙煎装置
13 通信インターフェース
14 電源
15 コードリーダ
16 コーヒー豆
17 ユーザインタフェース
18 センサ
【国際調査報告】