(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-26
(54)【発明の名称】β-グルカン組成物およびその用途
(51)【国際特許分類】
A61K 31/716 20060101AFI20220819BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20220819BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220819BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220819BHJP
【FI】
A61K31/716
A61P37/02
A61P35/00
A61P29/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021574227
(86)(22)【出願日】2020-06-15
(85)【翻訳文提出日】2022-02-09
(86)【国際出願番号】 CN2020096224
(87)【国際公開番号】W WO2020249133
(87)【国際公開日】2020-12-17
(31)【優先権主張番号】201910526252.0
(32)【優先日】2019-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521544883
【氏名又は名称】正大制▲薬▼(青▲島▼)有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】521544894
【氏名又は名称】青▲島▼▲海▼洋生物医▲薬▼研究院股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】于 ▲廣▼利
(72)【発明者】
【氏名】▲呂▼ 友晶
(72)【発明者】
【氏名】曲 ▲顯▼俊
(72)【発明者】
【氏名】▲趙▼ 晨▲陽▼
(72)【発明者】
【氏名】▲ハオ▼ 杰杰
(72)【発明者】
【氏名】李 全才
(72)【発明者】
【氏名】▲趙▼ 峡
(72)【発明者】
【氏名】胡 ▲ティン▼
(72)【発明者】
【氏名】菅 ▲華▼▲詩▼
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA20
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA55
4C086NA14
4C086ZB07
4C086ZB11
4C086ZB26
(57)【要約】
β-グルカン組成物およびその用途。具体的には、免疫関連疾患を改善または治療するための組成物の調製におけるβ-グルカン組成物の応用を提供し、前記β-グルカンは、分子内にβ-1,3およびβ-1,6グルコシド結合を含むβ-グルカンであり、その分子量は、1~50kDaである。前記β-グルカンは、新しい構造、制御可能な品質、豊富な供給源、簡単な調製プロセス、高い製品純度、強力な生物学的活性および容易な工業生産等の利点を有し、得られた水溶性β-グルカン組成物は、より優れた抗腫瘍活性を有し、安全で効果的な新しい免疫関連疾患の改善または治療用および抗腫瘍薬として開発されることが期待される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
β-グルカン組成物であって、
前記組成物は、式(I)または式(II)に示される構造を有するβ-グルカンを含み、
【化1】
ここで、nは、1~20から選択される整数であり、Rは、Hおよび/または4個以下のグルコース残基であることを特徴とする、前記β-グルカン組成物。
【請求項2】
前記式(I)または式(II)の構造におけるRは、式(III)または式(IV)または式(V)または式(VI)の構造のうちの一つまたは複数であり、ここで、
式(III):Glcβ1-、
式(IV):Glcβ1-3Glcβ1-またはGlcβ1-6Glcβ1-、
式(V):Glcβ1-3Glcβ1-3Glcβ1-またはGlcβ1-6Glcβ1-3Glcβ1-または
Glcβ1-3Glcβ1-6Glcβ1-またはGlcβ1-6Glcβ1-6-Glcβ1-、
式(VI):Glcβ1-3Glcβ1-3Glcβ1-3Glcβ1-または
Glcβ1-6Glcβ1-3Glcβ1-3Glcβ1-または
Glcβ1-3Glcβ1-6Glcβ1-3Glcβ1-または
Glcβ1-3Glcβ1-3Glcβ1-6Glcβ1-または
Glcβ1-6Glcβ1-6Glcβ1-3Glcβ1-または
Glcβ1-6-Glcβ1-3-Glcβ1-6Glcβ1-または
Glcβ1-3Glcβ1-6Glcβ1-6Glcβ1-または
Glcβ1-6Glcβ1-6Glcβ1-6Glcβ-であることを特徴とする、請求項1に記載のβ-グルカン組成物。
【請求項3】
前記β-グルカン組成物において、重合度5~10の重量含有量は、0~50.0%であり、重合度10~20の重量含有量は、0~80.0%であり、重合度20~25の重量含有量は、0~25.0%であり、重合度25~30の重量含有量は、0~45.0%であり、重合度30~40の重量含有量は、0~30.0%であり、重合度40~50の重量含有量は、0~15.0%であり、重合度50~60の重量含有量は、0.1%~55.0%であり、重合度60~70の重量含有量は、0.1%~20.0%であり、重合度70~80の重量含有量は、0.1%~15.0%であり、重合度>80の重量含有量は、0~40.0%であることを特徴とする、請求項1に記載のβ-グルカン組成物。
【請求項4】
前記β-グルカン組成物において、重合度5~10の重量含有量は、0~45.0%であり、重合度10~20の重量含有量は、0~75.0%であり、重合度20~25の重量含有量は、0~20.0%であり、重合度25~30の重量含有量は、0~40.0%であり、重合度が30~40であるβ-グルカンの重量含有量は、0~25.0%であり、重合度40~50の重量含有量は、0~10.0%であり、重合度50~60の重量含有量は、0.1%~50.0%であり、重合度60~70の重量含有量は、0.1%~15.0%であり、重合度70~80の重量含有量は、0.1%~10.0%であり、重合度>80の重量含有量は、0~35.0%であることを特徴とする、請求項3に記載のβ-グルカン組成物。
【請求項5】
前記β-グルカン組成物は、重合度が20~80であるβ-グルカンで構成され、ここで、重合度20~25の重量含有量は、13.2%~19.8%であり、重合度25~30の重量含有量は、29.1~43.7%であり、重合度30~40の重量含有量は、18.2~27.4%であり、重合度40~50の重量含有量は、7.3~10.9%であり、重合度50~60の重量含有量は、4.5%~6.7%であり、重合度60~70の重量含有量は、3.5%~5.3%であり、重合度70~80の重量含有量は、4.2%~6.2%であることを特徴とする、請求項4に記載のβ-グルカン組成物。
【請求項6】
前記β-グルカン組成物は、重合度が20~80であるβ-グルカンで構成され、ここで、重合度20~25の重量含有量は、16.5%であり、重合度25~30の重量含有量は、36.4%であり、重合度30~40の重量含有量は、22.8%であり、重合度40~50の重量含有量は、9.1%であり、重合度50~60の重量含有量は、5.6%であり、重合度60~70の重量含有量は、4.4%であり、重合度70~80の重量含有量は、5.2%であることを特徴とする、請求項4に記載のβ-グルカン組成物。
【請求項7】
前記β-グルカン組成物は、重合度が10~80であるβ-グルカンで構成され、ここで、重合度10~20の重量含有量は、40.6%~60.8%であり、重合度20~25の重量含有量は、13.4%~20.0%であり、重合度25~30の重量含有量は、7.7%~11.5%であり、重合度30~40の重量含有量は、7.6%~11.4%であり、重合度40~50の重量含有量は、4.2%~6.2%であり、重合度50~60の重量含有量は、2.3%~3.5%であり、重合度60~70の重量含有量は、1.6%~2.4%であり、重合度70~80の重量含有量は、0.8%~1.2%であることを特徴とする、請求項4に記載のβ-グルカン組成物。
【請求項8】
前記β-グルカン組成物は、重合度が10~80であるβ-グルカンで構成され、ここで、重合度10~20の重量含有量は、50.7%であり、重合度20~25の重量含有量は、16.7%であり、重合度25~30の重量含有量は、9.6%であり、重合度30~40の重量含有量は、9.5%であり、重合度40~50の重量含有量は、5.2%であり、重合度50~60の重量含有量は、2.9%であり、重合度60~70の重量含有量は、2.0%であり、重合度70~80の重量含有量は、1.0%であることを特徴とする、請求項4に記載のβ-グルカン組成物。
【請求項9】
免疫関連疾患を改善または治療するための組成物の調製における、請求項1~8のいずれか1項に記載のβ-グルカンの使用。
【請求項10】
前記免疫関連疾患は、腫瘍または炎症であることを特徴とする、免疫関連疾患を改善または治療するための組成物の調製における、請求項9に記載のβ-グルカンの使用。
【請求項11】
前記腫瘍は、結腸直腸がん、肺がん、線維肉腫、黒色腫、腎臓がん、肝臓がん、乳がん、またはその組み合わせから選択されることを特徴とする、免疫関連疾患を改善または治療するための組成物の調製における、請求項10に記載のβ-グルカンの使用。
【請求項12】
免疫関連疾患を改善または治療するための組成物であって、
前記組成物は、
(1)上記請求項中に記載のβ-グルカン、および
(2)薬学的に許容される担体を含むことを特徴とする、前記組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物の分野に関し、具体的には、β-グルカン組成物およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
研究によると、様々な供給源のβ-1,3-グルカンは、抗腫瘍、免疫調節、老化防止および抗炎症性特性を含む、様々な生物学的活性を有する。現在、市場に出回っているほとんどのβ-1,3-グルカンは、大麦、オーツ麦、食用キノコ(椎茸、舞茸(Grifola frondosa)、担子菌(Schizophyllum commune))、酵母等の陸生生物に由来し、原料の供給源が異なるため、得られたβ-1,3-グルカンの分子量、結合様式および分枝度等が大きく異なり、品質の管理が困難であり、例えば、注射用のβ-グルカンは、主に椎茸に由来し、β-1,6-分枝を有するβ-1,3-グルカン(LNT)であり、その分子量が400~800kDaに達するため、水溶性が低く、分離および精製が困難で、不純物含有量が高くなる。β-グルカンの応用分野の継続的な拡大、市場需要量の継続的な増殖により、既存の椎茸β-グルカンは、もはや市場の需要を満たすことはできない。
【0003】
従って、制御可能な品質、豊富な供給源、簡単な調製プロセス,高い製品純度、強力な生物学的活性および容易な工業生産を備えたβ-グルカンを開発することが当技術分野において緊急に必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、β-1,3/1,6-グルカンの具体的な構造および免疫関連疾患を治療するための組成物の調製における当該組成物の応用を分析することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様は、β-1,3/1,6-グルカンの組成物を提供し、前記組成物は、式(I)および/または式(II)に示される構造を有するβ-グルカンを含み、
【化1】
ここで、nは、1~20から選択される整数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20)であり、Rは、Hおよび/または4個以下のグルコース残基である(例えば、1、2、3または4個のグルコース残基)。
【0006】
好ましくは、前記式(I)または式(II)の構造におけるRは、式(III)または式(IV)または式(V)または式(VI)の構造のうちの一つまたは複数であり、ここで、
式(III):Glcβ1-、
式(IV):Glcβ1-3Glcβ1-またはGlcβ1-6Glcβ1-、
式(V):Glcβ1-3Glcβ1-3Glcβ1-またはGlcβ1-6Glcβ1-3Glcβ1-または
Glcβ1-3Glcβ1-6Glcβ1-またはGlcβ1-6Glcβ1-6Glcβ1-、
式(VI):
Glcβ1-3Glcβ1-3Glcβ1-3Glcβ1-または
Glcβ1-6Glcβ1-3Glcβ1-3Glcβ1-または
Glcβ1-3Glcβ1-6Glcβ1-3Glcβ1-または
Glcβ1-3Glcβ1-3Glcβ1-6Glcβ1-または
Glcβ1-6Glcβ1-6Glcβ1-3Glcβ1-または
Glcβ1-6Glcβ1-3Glcβ1-6Glcβ1-または
Glcβ1-3Glcβ1-6Glcβ1-6Glcβ1-または
Glcβ1-6Glcβ1-6Glcβ1-6Glcβ-である。
【0007】
好ましくは、前記β-グルカン組成物において、重合度5~10の重量含有量は、0~50.0%であり、重合度10~20の重量含有量は、0~80.0%であり、重合度20~25の重量含有量は、0~25.0%であり、重合度25~30の重量含有量は、0~45.0%であり、重合度30~40の重量含有量は、0~30.0%であり、重合度40~50の重量含有量は、0~15.0%であり、重合度50~60の重量含有量は、0.1%~55.0%であり、重合度60~70の重量含有量は、0.1%~20.0%であり、重合度70~80の重量含有量は、0.1%~15.0%であり、重合度>80の重量含有量は、0~40.0%である。
【0008】
好ましくは、前記β-グルカン組成物において、重合度5~10の重量含有量は、0~45.0%であり、重合度10~20の重量含有量は、0~75.0%であり、重合度20~25の重量含有量は、0~20.0%であり、重合度25~30の重量含有量は、0~40.0%であり、重合度が30~40であるβ-グルカンの重量含有量は、0~25.0%であり、重合度40~50の重量含有量は、0~10.0%であり、重合度50~60の重量含有量は、0.1%~50.0%であり、重合度60~70の重量含有量は、0.1%~15.0%であり、重合度70~80の重量含有量は、0.1%~10.0%であり、重合度>80の重量含有量は、0~35.0%である。
【0009】
好ましくは、前記β-グルカン組成物は、重合度が20~80であるβ-グルカンで構成され、ここで、重合度20~25の重量含有量は、13.2%~19.8%であり、重合度25~30の重量含有量は、29.1~43.7%であり、重合度30~40の重量含有量は、18.2~27.4%であり、重合度40~50の重量含有量は、7.3~10.9%であり、重合度50~60の重量含有量は、4.5%~6.7%であり、重合度60~70の重量含有量は、3.5%~5.3%であり、重合度70~80の重量含有量は、4.2%~6.2%である。
【0010】
好ましくは、前記β-グルカン組成物は、重合度が20~80であるβ-グルカンで構成され、ここで、重合度20~25の重量含有量は、16.5%であり、重合度25~30の重量含有量は、36.4%であり、重合度30~40の重量含有量は、22.8%であり、重合度40~50の重量含有量は、9.1%であり、重合度50~60の重量含有量は、5.6%であり、重合度60~70の重量含有量は、4.4%であり、重合度70~80の重量含有量は、5.2%である。
【0011】
好ましくは、前記β-グルカン組成物は、重合度が10~80であるβ-グルカンで構成され、ここで、重合度10~20の重量含有量は、40.6%~60.8%であり,重合度20~25の重量含有量は、13.4%~20.0%であり、重合度25~30の重量含有量は、7.7%~11.5%であり、重合度30~40の重量含有量は、7.6%~11.4%であり、重合度40~50の重量含有量は、4.2%~6.2%であり、重合度50~60の重量含有量は、2.3%~3.5%であり、重合度60~70の重量含有量は、1.6%~2.4%であり、重合度70~80の重量含有量は、0.8%~1.2%である。
【0012】
好ましくは、前記β-グルカン組成物、前記β-グルカン組成物は、重合度が10~80であるβ-グルカンで構成され、ここで、重合度10~20の重量含有量は、50.7%であり、重合度20~25の重量含有量は、16.7%であり、重合度25~30の重量含有量は、9.6%であり、重合度30~40の重量含有量は、9.5%であり、重合度40~50の重量含有量は、5.2%であり、重合度50~60の重量含有量は、2.9%であり、重合度60~70の重量含有量は、2.0%であり、重合度70~80の重量含有量は、1.0%である。
【0013】
好ましくは、前記β-1,3/1,6-グルカン分子量は、1~50kDa、好ましくは、2~30kDa、より好ましくは、2~10kDaである。
【0014】
好ましくは、前記β-1,3/1,6-グルカンの比旋光度は、-15.0°以上、好ましくは、-15°~-25°、より好ましくは、-16°~21°である。
【0015】
好ましくは、前記β-1,3/1,6-グルカンにおいて、硫酸ラジカルの含有量は、0.01wt%~2wt%、好ましくは、0.01wt%~0.5wt%である。
【0016】
好ましくは、前記β-1,3/1,6-グルカンにおいて、塩素イオンの含有量は、0.01wt%~2wt%、好ましくは、0.01wt%~0.5wt%である。
【0017】
好ましくは、前記β-1,3/1,6-グルカンにおいて、タンパク質の含有量は、0.01wt%~5wt%、好ましくは、0.01wt%~0.5wt%である。
【0018】
好ましくは、前記β-1,3/1,6-グルカンの紫外線全波長走査スペクトルは、300~900nmの波長範囲内で明らかな吸収はなく、より好ましくは、230~900nmの波長範囲内で明らかな吸収はない。
【0019】
好ましくは、前記β-1,3/1,6-グルカンの紫外線全波長走査スペクトルは、260~280nmの波長範囲内で吸収ピークを有さない。
【0020】
好ましくは、前記β-1,3/1,6-グルカンの側鎖において、少なくとも20%の側鎖の長さは、1または2個のグルコース残基である。
【0021】
好ましくは、式(I)または式(II)に示される構造のβ-グルカンにおいて、少なくとも3~20個のRは、それぞれ独立して、1または2個のグルコース残基である。
【0022】
好ましくは、式(I)または式(II)に示される構造のβ-グルカンにおいて、少なくとも3~10個のRは、それぞれ独立して、式(III)または式(IV)等の構造であり、ここで、式(III)および式(IV)構造は、上記で定義されたとおりである。
【0023】
好ましくは、前記β-1,3/1,6-グルカンの側鎖において(R≠Hの場合)、少なくとも5%の側鎖(R)の長さは、3または4個のグルコース残基であり(好ましくは、5~15%、より好ましくは5~10%の側鎖の長さは、3または4個のグルコース残基である)、残りの側鎖(R)の長さは、1または2個のグルコース残基である。
【0024】
好ましくは、側鎖(R)の長さが1または2個のグルコース残基である場合、側鎖(R)は、それぞれ独立して、式(III)および式(IV)の構造であり、ここで、式(III)および式(IV)の構造は、上記で定義されたとおりである。
【0025】
好ましくは、側鎖(R)の長さが3または4個のグルコース残基である場合、側鎖(R)は、それぞれ独立して、式(V)または式(VI)の構造であり、ここで、式(V)または式(VI)構造は、上記で定義されたとおりである。
【0026】
本発明の第2の態様は、免疫関連疾患を改善または治療するための組成物の調製における、第1の態様に記載のβ-グルカンまたは第1の態様に記載のβ-1,3/1,6-グルカンの組成物の用途を提供する。
好ましくは、前記免疫関連疾患は、腫瘍または炎症である。
好ましくは、前記腫瘍は、結腸直腸がん、肺がん、線維肉腫から選択される。
【0027】
本発明の第3の態様は、免疫関連疾患を改善または治療するための組成物を提供し、前記組成物は、
(1)第1の態様に記載のβ-グルカンまたは第1の態様に記載のβ-1,3/1,6-グルカンの組成物、および
(2)薬学的に許容されるベクターを含む。
【0028】
本発明の第4の態様は、第1の態様に記載のβ-1,3/1,6-グルカンまたは第1の態様に記載のβ-1,3/1,6-グルカンの組成物の調製方法を提供し、次のような段階を含む。
(1)脱脂段階:南極の褐藻を乾燥および粉砕し、有機溶媒に浸し、攪拌して、脱脂藻類粉末を得る。
(2)水抽出:前記脱脂藻類粉末を室温下で水で攪拌および抽出して水抽出液を得る。
(3)等級付け段階:段階(2)で得られた水抽出液を遠心分離し、遠心分離によって得られた上澄みに1~3mol/Lの塩化カルシウム水溶液を加え、攪拌した後遠心分離し、上澄みを取って、透析または限外ろ過脱塩を実行し、減圧濃縮および乾燥して、粗多糖類を得る。
(4)精製段階:段階(3)に記載の粗多糖類を蒸留水で溶解し、蒸留水および塩化ナトリウム水溶液を移動相として使用し、陰イオン交換樹脂で分離および精製し、水溶出成分を収集し、減圧濃縮し、凍結乾燥して、前記β-1,3/1,6-グルカンを得る。
【0029】
別の好ましい例において、前記陰イオン樹脂の分離および精製は、強陰イオン子樹脂の分離および精製である。
【0030】
別の好ましい例において、前記陰イオン樹脂の分離および精製は、まず強陰イオン樹脂の分離および精製、次に弱陰イオン樹脂の分離および精製であるか、または,まず弱陰イオン子樹脂の分離および精製、次に強陰イオン樹脂の分離および精製である。弱陰イオン樹脂と強陰イオン樹脂とを組み合わせることで、意外と、不純物をより効果的に除去することができ、より長い側鎖グルコース残基、より高い純度、および三重らせん構造を有するβ-1,3/1,6-グルカンを得ることができる。
【0031】
好ましくは、前記強陰イオン樹脂は、第四級アンモニウム基を含む陰イオン樹脂である。
【0032】
好ましくは、前記弱陰イオン樹脂は、ジエチルアミノエチル基を含む陰イオン樹脂である。
【0033】
好ましくは、前記南極の褐藻は、海のキノコ、海の芽および/またはレッソニア(Lessonia)、南極のダービリア(Durvillaea Antarctica)である。
【0034】
本発明の第5の態様は、免疫チェックポイント薬物および/または化学治療剤の併用における、第1の態様に記載のβ-1,3/1,6-グルカンの組成物の用途を提供する。
【0035】
好ましくは、前記免疫チェックポイント薬物は、プログラム細胞死1タンパク質(PD-1)拮抗剤、PD-L1拮抗剤、細胞毒性Tリンパ球抗原(CTLA-4)拮抗剤、リンパ球活性化遺伝子-3(LAG-3)拮抗剤、T細胞免疫グロブリン-3(TIM-3)拮抗剤、T細胞免疫グロブリン、ITIMドメインタンパク質(TIGIT)拮抗剤、またはその組み合わせから選択される。
【0036】
好ましくは、前記免疫チェックポイント薬物は、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体から選択される。
【0037】
好ましくは、前記抗PD-1抗体またはPD-L1抗体は、デュルバルマブ(Durvalumab)、アテゾリズマブ(Atezolizumab)、ニボルマブ(Nivolumab)、BMS202、スパルタリズマブ(Spartalizumab)、カムレリズマブ(Camrelizumab)、またはその組み合わせから選択される。
【0038】
好ましくは、前記化学治療剤は、細胞毒性化学治療剤から選択される。
【0039】
好ましくは、前記化学治療剤は、アントラサイクリン、5-Fu、アルカロイドのうちの一つから選択される。
【0040】
好ましくは、前記化学治療剤は、シスプラチン、カルボプラチンのうちの一つまたは複数から選択される。
【0041】
好ましくは、免疫チェックポイント薬物および/または化学治療剤と併用して使用された前記薬物または製剤は、同時に、順次的にまたは別々に投与される。
【0042】
本発明の第6の態様は、薬物組み合わせを提供し、前記薬物組み合わせは、次のような成分を含む。
【0043】
(i)第1の有効成分:前記第1の有効成分は、第1の態様に記載のβ-1,3/1,6-グルカンの組成物である。
【0044】
(ii)第2の有効成分:前記第2の有効成分は、免疫チェックポイント薬物および/または化学治療剤を含む。
【0045】
好ましくは、前記第1の有効成分および第2の有効成分は、単一の剤形またはそれぞれ独立した剤形である。
【0046】
好ましくは、前記免疫チェックポイント薬物は、上記で定義されたとおりである。
【0047】
好ましくは、前記化学治療剤は、上記で定義されたとおりである。
【0048】
本発明の第7の態様は、白血球および/または血小板減少症を治療するための薬物または製剤の調製における、第1の態様に記載のβ-1,3/1,6-グルカンの組成物の用途を提供する。
【0049】
好ましくは、前記白血球は、リンパ球である。
【0050】
好ましくは、前記リンパ球は、B細胞および/またはT細胞である。
【0051】
好ましくは、前記薬物または製剤は、免疫チェックポイント薬物と併用して使用することもできる。
【0052】
好ましくは、免疫チェックポイント薬物と併用して使用された前記薬物または製剤は、同時に、順次的にまたは別々に投与される。
【0053】
好ましくは、前記薬物または製剤は、少なくとも一つの化学治療剤と併用して応用されることもできる。
【0054】
好ましくは、化学治療剤と併用して応用された前記薬物または製剤は、同時に、順次的にまたは別々に投与される。
【0055】
好ましくは、前記薬物または製剤は、個体の癌を治療するために使用される。
【0056】
好ましくは、前記癌症は、黒色腫、結腸直腸がん、肺がん、腎臓がん、肝臓がん、乳がんのうちの一つまたは複数である。
【0057】
好ましくは、前記薬物または製剤は、薬学的に許容されるベクターまたは賦形剤をさらに含む。
【発明の効果】
【0058】
本発明の範囲内で、本発明の上記の各技術的特徴と以下(例えば、実施例)に具体的に説明される各技術的特徴との間を、互いに組み合わせることにより、新しいまたは好ましい技術的解決策を構成することができることに理解されたい。スペースに限りがあるため、ここでは繰り返さない。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図1】側鎖が式(IV)中のGlcβ1-6Glcβである場合のESI-CID-MS/MSグラフを示す。
【
図2】側鎖が式(IV)中のGlcβ1-3Glcβである場合のESI-CID-MS/MSグラフを示す。
【
図3】側鎖が式(V)中の構造である場合のESI-CID-MS/MSグラフを示す。
【
図4】側鎖が式(VI)中の構造である場合のESI-CID-MS/MSグラフを示す。
【
図8】β-グルカン組成物がコンゴーレッド最大吸収波長をシフトできることを示す。
【
図9】β-グルカン組成物が式(II)の構造を有する場合の
13C-NMRグラフを示す。
【
図10】β-1,3/1,6-グルカンが顆粒球よりも単球対して高い親和性を有することを示す。(A~C)リンパ球(赤い点CD11b-)、単球(緑の点CD11b+Ly6Chi)、顆粒球(青い点CD11b+Ly6G+)のフローサイトメトリー。(D)血球をβ-1,3/1,6-グルカン-FITC(200μg/mL)と37℃で2時間共培養する。続いて、赤血球は溶解され、細胞は対応するフロースルー抗体で染色する。フローサイトメトリーによって単球(緑の色、CD11b+)および顆粒球(青い色、CD11b+)へのβ-1,3/1,6-グルカン-FITCの結合親和性を検出する。
【
図11】本発明のβ-1,3/1,6-グルカンが、細胞毒性なしに、BMDMsの食作用活性を増加させることを示す。(AおよびB)β-1,3/1,6-グルカンまたはLNTを使用してGM-BMDM(A)およびM-BMDM(B)を24時間インキュベートする。ニュートラルレッド(neutral red)法によって二つのマクロファージの食作用活性を検出する。MTT法(C、D)によって細胞生存率を検出する。
【
図12】本発明のβ-1,3/1,6-グルカンが、DLD1異種移植マウスモデルにおいて、腫瘍負荷を低減し、脾臓指数を改善することを示す。DLD1腫瘍を移植したマウスは、vehicle(ビヒクル)または本発明のβ-1,3/1,6-グルカンで治療される。腫瘍体積(A)および体重(E)を示す。腫瘍を切除し、写真を撮り(B)、秤量し(C)、脾臓指数(D)を計算する。
【
図13】本発明のβ-1,3/1,6-グルカンがDLD1異種移植モデルにおいてマクロファージ食作用活性および前炎症性サイトカイン分泌をアップレギュレートすることを示す。(A)vehicleまたは本発明のβ-1,3/1,6-グルカンで処理されたマウスの腹腔マクロファージによって貪食された9つの結腸直腸がん細胞株(HCT-116、LS174T、SW480、DLD1、HT-29、LS180、HCT-15、LOVO、T84)を検出する。(B~G)V-PLEXマウス炎症性因子キット(LabEx)を使用して、薬物負荷グループおよび本発明のβ-1,3/1,6-グルカングループにおけるマウス血漿前炎症性サイトカインおよびケモカインのレベルを検出する。
【
図14】本発明のβ-1,3/1,6-グルカンが、腫瘍微小環境において前炎症性マクロファージおよびB細胞を増加させることを示す。(A)フローサイトメトリーによって血液中のCD11b+、CD335+、CD19+、CD11c+細胞の割合を検出する。(B)血中好中球(CD11b+LY6G+)および前炎症性単球(CD11b+Ly6Chi)の割合を検出する。(C~F)腫瘍浸潤CD11b+細胞、単球由来浸潤マクロファージ(CD11b+Ly6Chi)、TAMs(CD11b+CD80+またはCD11b+CD206+)、CD19+細胞の割合を検出する。(G)vehicleおよび本発明のΒ-1,3/1,6-グルカン(小さな腫瘍グループおよび大きな腫瘍グループ)で治療されたマウス腫瘍におけるCD45+白血球の割合を測定する。
【
図15】本発明のβ-1,3/1,6-グルカンがAOM-DSS誘発性結腸直腸がんモデルにおける腫瘍負荷を低減することを示す。C57マウスの未処理グループまたはAOM/DSS誘発グループ、または誘発後の本発明のβ-1,3/1,6-グルカン(1、3および9mg/kg)処理グループ。(A)治療後の各グループの体重を記録する。(B)犠牲後の結腸の長さを測定する。(C~E)結腸を縦方向に切開し、腫瘍数(CおよびE)および直径(D)を収集する。
【
図16】本発明のβ-1,3/1,6-グルカンが、AOM-DSS投与によって引き起こされる免疫細胞組成物の変化を逆転させることを示す。(A~D)血液中のCD11b+、CD335+、CD19+、CD4+、CD8+、CD11c+の割合(A)、脾臓中のCD19+の割合(B)、リンパ節中のCD4+、CD8+の割合(C)を検出する。(E、F、G、H、I)それぞれ本発明のβ-1,3/1,6-グルカンで治療されるか、または本発明のβ-1,3/1,6-グルカンなしで治療される正常またはAOM/DSSマウスの血漿中の前炎症性サイトカインおよびケモカインレベルを検出する。
【
図17】それぞれ調製例1および調製例2の方法に従って調製されたβ-1,3/1,6-グルカンの紫外線全波長走査スペクトルを示す。
【
図18】実施例21の実験結果を示す。(A)は投与後のマウスの体内の平均腫瘍重量および阻害率を示し、(B)は投与後のマウスの体内の腺重量を示す。
【
図19】実施例22の実験結果を示す。(A)はシスプラチンと併用して使用された場合のβ-1,3/1,6-グルカンおよびその抗腫瘍増殖量を示し、(B)は、雄の昆明マウスの腫瘍重量の阻害を示す。
【
図20】実施例25(i)のPD-1抗体と併用したβ-1,3/1,6-グルカンの静脈内注射が、マウス結腸がんMC38マウス皮下移植腫瘍の増殖を効果的に阻害できることを示し、図において、PD1-200(qw)は、PD-1抗体(200g/マウス)のグループを表し、PD1-200(qw)+BG0.3(biw)、PD1-200(qw)+BG1(biw)およびPD1-200(qw)+BG3(biw)は、それぞれβ-1,3/1,6-グルカン(0.3、1または1mg/kg)グループと併用したPD1抗体(200mg/マウス)を表す。
【
図21】PD-1抗体と併用したβ-1,3/1,6-グルカンの静脈内注射が、マウス結腸がんMC3マウス移植腫瘍の免疫関連サイトカインの発現量に及ぼす影響を示す。
【
図22】PD-1抗体と併用したβ-1,3/1,6-グルカンの経口投与が、マウス結腸がんMC38マウス移植腫瘍の増殖に及ぼす影響を示す。
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下、添付の図面および具体的な実施例と併せて本発明の技術的解決策をされに詳細に説明し、添付の図面と併せて本発明の具体的な実施例を読んだ後、本発明の他の利点および特徴は、より明確であるが、本発明の保護の範囲は、実施例によって説明される範囲に限定されない。当業者は、以下の開示の本質に従って、本発明に対していくつかの修正および調製を行うことができ、これらの調製も本発明の範囲に属する。
【0061】
用語
特に定義しない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される以下の用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有する。特に明記しない限り、本明細書の全体で引用されるすべての特許、特許出願、出版物は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0062】
1)重合度(Degree of Polymerization):dpは、ポリマー高分子の繰り返し構造ユニットの数を指し、糖類化合物において、重合度は、一般に化合物の単糖残基の数を指す。
【0063】
2)多糖(Polysaccharide):グリコシド結合によって形成される糖鎖を指し、複数の単糖残基の縮合および脱水によって形成される高分子炭水化物である。
【0064】
3)グルコース(Glucose):Glcは、C6H12O6、自然界で最も広く分布し、最も重要な単糖である。
【0065】
4)オリゴ糖(Oligosaccharide):オリゴ糖とも呼ばれ、グリコシド結合を介して2~20個の同じまたは異なる単糖残基を結合することによって形成される糖類化合物である。
【0066】
5)糖残基:糖類物質の加水分解後に得られる加水分解された基を指す。
【0067】
6)グルコースオリゴ糖:グリコシド結合によって結合されたグルコース残基から構成されるオリゴ糖を指す。
【0068】
7)グルカン:グリコシド結合によって結合されたグルコース残基で構成される多糖類である。
【0069】
8)ESI:エレクトロスプレーイオン化(Electrospray ionization)は、マススペクトルでより一般的に使用されるイオン化法である。
【0070】
9)CID:衝突誘起解離(Collision Induced Dissociation)は、中性分子と衝突することによってエネルギーがイオンに移動するプロセスであり、エネルギー伝達が結合の切断および再配列を引き起こすのに十分である。
【0071】
10)MS:質量分析法(mass spectrometry)は、イオンの電荷対質量比(電荷対質量比)を測定する分析方法である。
【0072】
本発明において、「β-1,3/1,6-グルカン」および「β-グルカン」は、交換可能に使用され、その概念表現は、同じ意味を有する。
【0073】
本発明において、「β-1,3/1,6-グルカン」は、式Iの構造、式IIの構造、またはその誘発形態、またはその組み合わせを含み、例えば、本発明のβ-1,3/1,6-グルカン組成物において、式Iの構造は、0~100%であり得、残りは、式IIの構造であり、または式IIの構造は、0~100%であり得、残りは、式Iの構造である。本発明において、式IIの構造は、開環の式Iと見なすことができる。さらに、式Iおよび式IIは、適切な条件または試薬によって互いに交換することができる。
【0074】
別の好ましい例において、前記β-1,3/1,6-グルカンは、260~280nmの吸収ピークを含まないか、または基本的に含まない。
【0075】
別の好ましい例において、前記β-1,3/1,6-グルカンの旋光度は、-15°より大きく、例えば、-15°~-25°の間、好ましくは、-16°~-21°の間である。
【0076】
本明細書において、「強陰イオン樹脂」および「強陰イオン交換樹脂」は、交換可能に使用され、第四級アミン基等のより強い反応性基を含む陰イオン樹脂を指す。一般的に、強陰イオン樹脂は、スルホン酸基、カルボキシル基等の基を有する不純物を除去するために使用されることができる。
【0077】
本明細書において、「弱陰イオン樹脂」および「弱陰イオン交換樹脂」は、交換可能に使用され、如ジエチルアミノエチル基等のより弱い反応性基を含む陰イオン樹脂を指す。一般的に、弱陰イオン樹脂は、核酸、タンパク質、色素等の不純物を除去するために使用されることができる。
【0078】
本発明の主な利点および有益な効果は次のとおりである。
【0079】
本発明のβ-グルカン組成物は、異なる重合度を有し、異なる分枝および側鎖を有するβ-グルカンの混合物であり、側鎖は、β-1,3-およびβ-1,6-グルコースから構成され、側鎖の長さは、4個の糖残基を超えず、構造は新しく、品質は制御可能であり、本発明によって得られたβ-グルカン組成物は、より優れた抗腫瘍活性を有し、免疫関連疾患を改善または治療するための新しいタイプの安全で効果的な抗腫瘍薬に開発することが期待される。
【0080】
特に、本発明者は、β-1,3/1,6-グルカンの調製方法をさらに改良し、強陰イオンクロマトグラフィーおよび弱陰イオンクロマトグラフィーを組み合わせて精製することにより、紫外線全波長走査スペクトルで末端にのみ吸収ピークが現れ、かつ230-900nmの範囲内(特に260~280nmの領域)に明らかな吸収ピークがなく、かつ旋光度がさらに増加(例えば、旋光度が-15°~-21°の範囲内である)したβ-1,3/1,6-グルカンを得た。
【0081】
以下、本発明は、具体的実施例と併せてさらに説明される。これらの実施例は、本発明を説明するためにのみ使用され、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。以下の実施例において、具体的条件を示さない実験方法は、通常従来の条件または製造業者によって提案された条件に従う。特に明記されない限り、パーセンテージと部数とは、重量パーセンテージと重量部数とで計算される。
【0082】
実施例1.β-1,3/1,6-グルカンの調製
調製例1
(1)脱脂段階:南極の褐藻を乾燥および粉砕し、有機溶媒に浸し、攪拌して、脱脂藻類粉末を得る。
(2)水抽出段階:前記脱脂藻類粉末を室温下で蒸留水で攪拌および抽出して水抽出液を得る。
(3)分級段階:段階(2)で得られた水抽出液を遠心分離し、遠心分離によって得られた上澄みに1~3mol/Lの塩化カルシウム水溶液を加え、攪拌した後遠心分離し、上澄みを取って、蒸留水で透析または限外ろ過して脱塩し、減圧濃縮および乾燥して粗多糖類を得る。
(4)精製:段階(3)に記載の粗多糖類を蒸留水で溶解し、蒸留水および塩化ナトリウム水溶液を移動相として使用し、強陰イオン交換樹脂で分離および精製し、水溶出成分を収集し、減圧濃縮し、凍結乾燥して、前記β-1,3/1,6-グルカンを得る。
【0083】
特に説明しない限り、実施例2~19で使用されるβ-1,3/1,6-グルカンまたは検証されたβ-1,3/1,6-グルカンは、当該調製例の方法によって調製される。
【0084】
調製例2
(1)脱脂段階:南極の褐藻を乾燥および粉砕し、有機溶媒に浸し、攪拌して、脱脂藻類粉末を得る。
(2)水抽出段階:前記脱脂藻類粉末を室温下で蒸留水で攪拌および抽出して水抽出液を得る。
(3)分級段階:段階(2)で得られた水抽出液を遠心分離し、遠心分離によって得られた上澄みに1~3mol/Lの塩化カルシウム水溶液を加え、攪拌した後遠心分離し、上澄みを取って、蒸留水で透析または限外ろ過して脱塩し、減圧濃縮および乾燥して、粗多糖類を得る。
(4)精製段階:段階(3)に記載の粗多糖類を蒸留水で溶解し、蒸留水および塩化ナトリウム水溶液を移動相として使用し、強陰イオン交換樹脂で分離および精製し、水溶出成分を収集し、減圧濃縮する。
(5)第2回目の精製:段階(4)に記載の水溶出成分を、蒸留水を移動相として使用し、弱陰イオン交換樹脂で分離および精製し、水溶出成分を収集する。
(6)脱色段階:段階(5)のに記載の水溶出成分を活性炭カラムで分離および精製し、蒸留水を移動相として使用し、水溶出成分を収集する。減圧濃縮し、凍結乾燥して、前記β-1,3/1,6-グルカンを得る。
【0085】
特に説明しない限り、実施例20~25で使用されるβ-グルカンまたは検証済みのβ-グルカンは、当該調製例の方法によって調製される。
【0086】
実施例2~7:β-グルカン組成物の分析
本実施例におけるβ-グルカン組成物は、十八角形レーザー光散乱装置(MALLS)および示差検出器(RI)と併用して、高性能ゲル浸透クロマトグラフィー(HPGPC)を使用して分析する。
【0087】
測定方法:0.1mol/LのNa
2SO
4を使用して、β-グルカン組成物を様々な濃度の溶液に調製し、低濃度から高濃度までDNDC機器に順次に注入し、β-グルカン組成物のdn/dcを計算する。十八角形レーザー光散乱装置(MALLS)および示差検出器(RI)を併用して、高性能ゲル浸透クロマトグラフィー(HPGPC)を使用して分析し、クロマトグラフィー条件は、クロマトグラフィーカラムTSK-Gel G3000PW(7.5×300mm)、移動相0.1mol/LのNa
2SO
4、カラム温度35℃、流速0.5ml/分間、示差検出器および十八角度レーザー検出器を併用する。β-グルカン組成物のdn/dc測定値を代入して、β-グルカン組成物の重量平均分子量および分布分析(結果は表1および
図5~7に示される)が得られる。
【0088】
重合度5~10(Dp5~10)のβ-グルカン、重合度10~20のβ-グルカン、重合度20~25のβ-グルカン、重合度25~30のβ-グルカン、重合度30~40のβ-グルカン、重合度40~50のβ-グルカン、重合度50~60のβ-グルカン、重合度60~70のβ-グルカン、重合度70~80のβ-グルカン、重合度>80のβ-グルカンの重量パーセンテージを計算する。
【0089】
実施例2~7で得られた結果は、表1に示される。
【0090】
【0091】
実施例8:β-グルカン側鎖の長さの同定
1)β-グルカン組成物中の側鎖オリゴ糖の調製:β-グルカン組成物を溶解し、約5%の濃度に調製し、10μlのエンド-1,3-β-グルカナーゼを加え、40℃下で8時間酵素加水分解する。10分間煮沸し、遠心分離機で10000rpmで10分間遠心分離し、上澄みを収集し、凍結乾燥して、β-グルカン組成物中の側鎖オリゴ糖を得る。
【0092】
2)ESI-CID-MS/MSによって本発明のβ-グルカン組成物中の側鎖オリゴ糖の構造を分析する。マススペクトル条件は、LTQ-QrbitrapXL質量分析計、キャピラリー電圧-3000V、注入コーン電圧-50V、イオン源温度80℃、解離温度150℃、シース流量8arb、サンプル流量3~5μL/分間である。衝突ガスは、ヘリウムガスであり、衝突電圧は、15~30eVである。
【0093】
3)各重合度のβ-グルカン組成物中の側鎖オリゴ糖のマススペクトルグラフは、
図1~4に示される。マススペクトルグラフ中の各信号ピークに対して割り当てることにより、β-グルカン組成物中の側鎖オリゴ糖の分子構造、即ち、一般式(III)または式(IV)または式(V)または式(VI)に示される構造を検証する。ここで、
図1は、側鎖が式(IV)中のGlcβ1-6Glcβである場合のマススペクトルグラフを示し、
図2は、側鎖が式(IV)中のGlcβ1-3Glcβである場合のマススペクトルグラフを示し、
図3は、側鎖が式(V)中の構造である場合のマススペクトルグラフを示し、
図4は、側鎖が式(VI)中の構造である場合のマススペクトルグラフを示す。
【0094】
実施例9:高級構造情報
本発明のβ-グルカン組成物は、三重らせん構造を有する。コンゴーレッドは、三重らせん鎖コンフォメーションを有する多糖類と複合体を形成することができ、複合体の最大吸収波長は、コンゴーレッドと比較して赤方偏移が発生する。本発明のβ-グルカン組成物は、塩基性条件下でコンゴーレッドと複合体を形成して、その最大吸収波長の赤方偏移が15nmを超えるようにすることができる(
図8)。
【0095】
本発明のβ-グルカン組成物の還元末端は、糖アルコール構造を有する。式(I)の構造との違いは、式(II)構造が還元末端に糖アルコール構造を有し、
13C-NMRにおいて、63.16ppmでの特徴的なシグナルとして現れることである(
図9)。
【0096】
実施例10:骨髄由来のマクロファージの食作用を増強することができるβ-1,3/1,6-グルカン
本実施例において、本発明のβ-1,3/1,6-グルカン糖の、末梢血自然免疫細胞の二つの主要な集団、即ち、単球(CD11b+Ly6Chi、
図10Aおよび10B)および顆粒球(CD11b+Ly6G+、
図10Aおよび10C)に対する結合親和性および選択性を検出する。
図10Dに示されるように、β-1,3/1,6-グルカン-FITCは、単球(12.8%)によく結合し、ごく少数の顆粒球(1.5%)に結合する。
【0097】
続いて、本発明のβ-1,3/1,6-グルカンが示差的に分極したBMDMsの食作用活性に及ぼす影響を評価する。β-1,3/1,6-グルカンによってわずかにアップレギュレートしたマクロファージGM-BMDMsおよびM-BMDMsの食作用活性は、
図11AおよびBに示される。10μg/mlより高い用量の場合、構造的に類似したβ-グルカン(glucan)LNTの細胞食作用は、本発明のβ-1,3/1,6-グルカンの細胞食作用よりも高い(
図11B)。しかしながら、
図11Cおよび11Dに示されるように、LNTは、用量依存の方式でBMDMsの細胞生存率を有意に低下させる。本発明のβ-1,3/1,6-グルカンについては、100μg/mlの濃度下でも細胞毒性を観察されない。
【0098】
実施例11:腫瘍移植マウスモデルにおいて腫瘍負荷を低減し、脾臓指数を改善する本発明のβ-1,3/1,6-グルカン
血液単球は、腫瘍微小環境に動員されてマクロファージに分化し、免疫阻害および腫瘍促進微小環境を生成する。免疫阻害マクロファージを前炎症性状態にリモデリングし、腫瘍微小環境を操作し、インビボでの腫瘍の増殖を阻碍する。ヒト結腸直腸がん細胞DLD1異種移植マウスモデルにおける本発明のβ-1,3/1,6-グルカンの抗腫瘍効果を検出する。
【0099】
図12A~Cに示されるように、本発明のβ-1,3/1,6-グルカンは、腫瘍体積(
図12A、
図12B)および腫瘍重量(
図12C)を阻害する。古典的な化学療法化合物とは異なり、本発明のβ-1,3/1,6-グルカンは、用量に依存しない方法で腫瘍増殖を阻害することに留意すべきである。2mg/kgの低用量のβ-1,3/1,6-グルカンは、高用量(4mg/kgおよび8mg/kg)よりも腫瘍増殖に対して強い阻害効果を示す(
図12A)。本発明のβ-1,3/1,6-グルカンは、免疫刺激因子として、担癌マウスの脾臓指数を有意にアップレギュレートし、免疫細胞の活性化および浸潤が増加されたことを示唆する(
図12D)。どの処理も、マウス体重に有意な影響を与えない(
図12E)。
【0100】
実施例12:インビトロでマクロファージの食作用活性および前炎症性サイトカイン/ケモカインの分泌をアップレギュレートする本発明のβ-1,3/1,6-グルカン
本実施例において、対照グループおよび本発明のβ-1,3/1,6-グルカン処理グループのマウスの腹腔マクロファージを誘発し、9つの異なる結腸直腸がん細胞株と共培養し、マクロファージの食作用を検出する。
【0101】
図13Aに示されるように、β-1,3/1,6-グルカングループのマウスによって誘発されたマクロファージは、我々が検出したすべての癌細胞株に対してより強い食作用活性を示す。サイトカインおよびケモカインの分泌は、体の免疫機能の活性化の重要な指標である。本発明のβ-1,3/1,6-グルカンは、前炎症性サイトカインの分泌(IL-1βおよびTNFα、主に単球/マクロファージによって分泌される)を強力に増加させる。β-1,3/1,6-グルカン治療は、マクロファージ等の免疫細胞によって生成されたIL-2、IL12p70等の前炎症性サイトカインおよびケモカインCXCL1の発現レベルをアップレギュレートすることもできる。β-1,3/1,6-グルカンの2mg/kgおよび4mg/kgグループのマウスのIFNγレベルは、増加される。これらのデータは、本発明のβ-1,3/1,6-グルカンがインビボでマクロファージの食作用活性を誘発するだけでなく、前炎症性サイトカイン/ケモカインの分泌を促進し、抗腫瘍効果を発揮することを示唆する。
【0102】
実施例13:腫瘍微小環境において前炎症性マクロファージおよびB細胞の浸潤を増加させる本発明のβ-1,3/1,6-グルカン
循環血液系における免疫細胞組成物を検出する。B細胞(CD19+)および樹状細胞(CD11c+)の割合が増加する一方で、骨髄細胞(CD11b+)の割合は、わずかに減少することが分かる(
図14A)。β-1,3/1,6-グルカン治療は、骨髄性亜集団、前炎症性単球由来マクロファージ(CD11b+Ly6C
hi)の形成を誘発する(
図14B)。
【0103】
腫瘍を解剖し、腫瘍浸潤免疫細胞のパーセンテージを計算する。腫瘍内において、本発明のβ-1,3/1,6-グルカン治療後に骨髄細胞(CD11b+)のパーセンテージをわずかにアップレギュレートする(
図14C)。さらに、β-1,3/1,6-グルカンは、前炎症性単球由来マクロファージ亜集団(CD11b+Ly6Chi)の浸潤を促進する(
図14D)。対照グループと比較して、本発明のβ-1,3/1,6-グルカンマウスにおいて、抗腫瘍前炎症性腫瘍関連マクロファージ(TAMs)(CD11b+CD80+)は、アップレギュレートされ、元の腫瘍免疫阻害TAMs(CD11b+CD206+)はダウンレギュレートされる(
図14E)。これらのデータは、本発明のβ-1,3/1,6-グルカン治療が腫瘍における抗腫瘍骨髄細胞の割合を調節することを示す。血液系におけるB細胞の誘発と一致し、本発明のβ-1,3/1,6-グルカン治療後に、浸潤B細胞の割合も増加される(
図14F)。従って、本発明のβ-1,3/1,6-グルカンは、全身性および腫瘍内免疫細胞の組成物を調節して、前炎症性および抗腫瘍状態にすることにより、インビボでの腫瘍増殖を阻害することができる。
【0104】
β-1,3/1,6-グルカンによって治療された腫瘍の体積に従ってそれをグループ化して、免疫細胞(CD45+)の浸潤を検出する。大きな腫瘍とは、本発明のβ-1,3/1,6-グルカン治療グループにおいて体積が平均レベルより大きい腫瘍を指し、その逆も同様である。
図14Fに示されるように、本発明のβ-1,3/1,6-グルカンによって治療されたすべての腫瘍は、より多くの免疫細胞(CD45+)を含む。さらに、大きな腫瘍は、小さな腫瘍よりも免疫細胞の浸潤が多かった。とにかく、これらのデータは、本発明のβ-1,3/1,6-グルカンがインビボで前炎症性マクロファージ等の免疫細胞の腫瘍浸潤を誘発し、癌細胞増殖を阻害する可能性がある。
【0105】
実施例14:AOM-DSS誘発性結腸直腸がんモデルにおける腫瘍負荷を低減する本発明のβ-1,3/1,6-グルカン
免疫担当マウスの体内における本発明のβ-1,3/1,6-グルカンの抗腫瘍効果を検証するために、AOM/DSS誘発性C57BL/6Jマウス結腸直腸がんモデルにおいて、β-1,3/1,6-グルカンの抗腫瘍効果を検出する。腫瘍進行の後期において、β-1,3/1,6-グルカングループは、1および3mg/kgの用量下でvehicleグループよりも体重が高く、これらの治療されたマウスがより良い体調にあったことを示す(
図15A)。3mg/kgのβ-1,3/1,6-グルカン治療によって結腸の長さがわずかに増加されたことを除いて(
図15B)、結腸の長さに有意差は見られない。1mg/kgの低用量のβ-1,3/1,6-グルカンによって治療された後でも、マウスあたりに誘発された結腸直腸腫瘍の数は減少する(
図15C)。
図15Dに示されるように、β-1,3/1,6-グルカンによって治療された後、3mg/kgの用量下で、腫瘍直径が2mm~4mmおよび4mm以上である腫瘍の数が減少する。AOM/DSSを使用した後、本発明の1mg/kgのβ-1,3/1,6-グルカンは、vehicleよりも直径が4mmより大きい腫瘍の数をより少なく誘発する(
図15E)。
【0106】
実施例15:AOM-DSSによって誘発された免疫細胞組成物の変化を逆転させる本発明のβ-1,3/1,6-グルカン
AOM/DSS誘発および本発明のβ-1,3/1,6-グルカン治療後に、骨髄細胞(CD11b+)を含む様々な免疫細胞の変化を観察する。AOM/DSSは、循環血液系における骨髄細胞(CD11b+)の割合を増加させ、本発明のβ-1,3/1,6-グルカン治療によってこの傾向を逆転する(
図16A)。同時に、β-1,3/1,6-グルカンは、インビボでAOM/DSS投与によって引き起こされた血液(
図16A)および脾臓(
図16B)でダウンレギュレートされたB細胞を増加させ、血液(
図16A)およびリンパ節(
図16C)におけるCD4T細胞の減少を逆転させる。従って、β-1,3/1,6-グルカン治療は、AOM/DSS投与によって引き起こされた免疫細胞組成の変化を逆転させる。さらに、本発明のΒ-1,3/1,6-グルカンは、炎症性因子IFNγ(
図16D)、TNF-α等、およびケモカインCXCL1の分泌のアップレギュレーションを誘発する(
図16E、
図16F、
図16G、
図16H、および
図16I)。
【0107】
これらのデータは、免疫担当マウスに対する本発明のΒ-1,3/1,6-グルカンの抗腫瘍効果は、免疫細胞組成物の調節および免疫刺激因子としての前炎症性サイトカイン/ケモカインの分泌に関連することを表す。
【0108】
実施例16:ヌードマウスにおける散発性ヒト結腸がん細胞株の接種に対する本発明のβ-1,3/1,6-グルカンの阻害効果
液体窒素で冷凍保存されたマウス結腸がん細胞株HCT-116を蘇生させ、10%のウシ胎児血清を含む5A培地で培養し、培養フラスコ内で培養細胞を増殖させ、必要な量の細胞に達した後、細胞を消化して収集し、10%ウシ胎児血清を含む5A培地で25000万/mlの細胞懸濁液に希釈し、従来の消毒後、0.2mlの各マウスをマウスの右前肢腋窩に皮下接種し、腫瘍が1gの組織塊に増殖した場合、動物を犠牲にして腫瘍組織を剥がし、約2~3立方ミリメートルの腫瘍塊に切断し、カテーテル法によって継代ヌードマウスの皮下に移植し、2回連続継代する。表に示されるHT-29、SW-480、DLD-1およびRKO細胞株を同じ方法でモデリングおよび実験する。担癌ヌードマウスを約1gの腫瘍増殖で継代させた後、上記の方法を用いて腫瘍塊移植モデリングを実行し、移植後2日目にマウスをランダムにグループに分けて投与を開始する。
【0109】
ランダムのグループ分け法によって動物をグループに分け、各グループに8匹の動物がいる。各グループの動物の投与量は、次の表に示されるようである。
【0110】
【0111】
投与経路は、尾静脈内注射によって投与され、各動物の用量は、投与前の各動物の最後の体重に従って決定される。各グループは、週に2回投与され、実験が完了するまで投与され続ける。実験を完了し、偶発的に死亡した動物および生存した動物を安楽死させた後、腫瘍組織を剥がし、腫瘍重量を秤量し、各グループの腫瘍重量の差を計算し、腫瘍阻害率IRTWを参照指標としてさらに計算し、計算公式は、次のとおりである。
IRTW(%)=(Wモデルグループ-W投与グループ)/Wモデルグループ×100%
【0112】
表の結果から、本発明のβ-1,3/1,6-グルカンは、1mg/kg、3mg/kg、9mg/kgの投与量、および週2回の実験条件下でHCT-116、HT-29、SW-480、DLD-1およびRKO細胞ヒト結腸がん異種BALB/cnudeヌードマウス移植腫瘍の増殖を有意に阻害することが分かる。
【0113】
【0114】
実施例17:マウスS180肉腫残存癌モデルに対する本発明のβ-1,3/1,6-グルカンの阻害効果
S180マウス線維肉腫細胞を使用し、10%FBSを含むDMEM高グルコース培地を使用して培養増殖する。細胞が対数増殖期に入ると、次の試験を実行することができる。対数増殖期の細胞を収集して遠心分離し、カウントする。細胞濃度を調整し、第1世代の繁殖マウスとして昆明マウスの腹腔に1匹あたり0.2mlを接種する。1週間飼育した後、第1世代の繁殖マウスの腹腔内の腹水を遠心分離してカウントし、細胞濃度を調整して、第2世代の繁殖マウスとして昆明マウスの腹腔に1匹あたり0.2mlを接種し、さらに1週間飼育した後、第2世代の繁殖マウスの腹腔内の腹水を遠心分離してカウントし、細胞濃度を調整して、昆明マウスの背中に1匹あたり0.2mlを皮下接種する。すべての接種プロセスは、超クリーンなワークベンチで無菌的に実行される。接種後、マウスの増殖状況を観察し、マウスの増殖状態に応じてスクリーニングし、村主―ニング後、ランダムにクループに分ける。実験結果は、次の表に示され、3mg/kgのβ-1,3/1,6-グルカンは、手術後の腫瘍の再増殖を有意に阻害する可能性がある。
【0115】
【0116】
実施例18:マウスルイス(Lewis)肺がん残存癌モデルに対する本発明のβ-1,3/1,6-グルカンの阻害効果
マウス肺がんルイス細胞を使用し、10%FBSを含むDMEM高グルコース培地を使用して培養増殖する。細胞が対数増殖期に入ると、次の段階の試験を実行することができる。対数増殖期の細胞を収集して遠心分離し、カウントする。細胞濃度を調整し、繁殖マウスとしてマウス1匹あたり0.2mlをC57BL/6マウスの右側の腋窩に皮下接種する。腫瘍が1000mm3より大きく増殖すると、無菌的に取り出し、秤量し,質量対体積比1:4の塩化ナトリウム注射液を加えて希釈して粉砕し、従来の消毒後、0.2mlの各マウスをマウスの右前肢腋窩に皮下接種して継代する。腫瘍が1000mm3より大きく増殖すると、第2世代の腫瘍を取り出し、無菌的に取り出し、秤量し,質量対体積比1:4の塩化ナトリウム注射液を加えて希釈して粉砕し、従来の消毒後、0.2mlの各マウスをマウスの背中に皮下接種し、接種後、マウスの増殖状況を観察し、マウスの増殖状態に応じてスクリーニングし、スクリーニングした後ランダムにグループに分けて投与する。実験結果は、次に表に示されるようであり、本発明のβ-1,3/1,6-グルカンは、1mg/kg、3mg/kg、9mg/kgでの手術後の腫瘍の再増殖を有意に阻害することができる。
【0117】
【0118】
実施例19:AOM/DSS誘発性マウス炎症関連結腸直腸がんに対するβ-1,3/1,6-グルカンの阻害効果
癌は、人間の死の主要な原因の一つであり、癌症例の約1/4の病因および発病のメカニズムは、慢性炎症に関連する。炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease、IBD)は、病院や発病メカニズムが不明な腸の炎症性疾患の一種であり、その病理学的特徴から、潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis、UC)およびクローン病(Crohn’s disease、CD)と分けられ、年々増加し、かつ若くなりつつある。IBD患者の結腸直腸がん(colorectal cancer、CRC)の発生リスク率は増加し、8~10年後に毎年年0.5%~1%増加し、30年後にIBD患者の最大18%がCRCに発展する可能性がある。IBD関連CRCは、すべての結腸直腸がんの1%~2%しか占めていないが、それは、IBD患者が死亡する従来の原因である。アゾキシメタン(azoxymethane、AOM)/デキストラン硫酸ナトリウム(dextran sodium sulfate、DSS)によって誘発された大腸炎関連の癌(colitis associated cancer、CAC)動物モデルは、IBD誘発性CRCのプロセス全体をうまくシミュレートするため、新薬の有効性およびメカニズムを研究するために広く使用され、その病理学的変化および発癌を解明することは、結腸直腸がん治療の新しい候補標的を発見するのに役立つ。
【0119】
本実験は、AOMの腹腔内注射およびDSS飲料液の定期投与の方法により、マウス結腸直腸がんモデルを確立し、実験の開始時に、6~8週齢の70匹の雄C57BL/6マウスをランダムにグループに分け、各グループは、10匹で、合計七つのグループである。通常の対照である第1のグループを除いて、残りのグループは、AOM/DSSでモデリングされる。モデリンググループのマウス実験が開始した初日に、マウスに10mg/kgの用量のアゾキシメタン(AOM)を1回腹腔内注射し、7日後に、マウスに1%のデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)を含む飲料水を与える。7日後に、14日間の通常の飲料水を与え、7日間1%のDSS飲料水および14日間の通常の飲料水をサイクルとして循環し、そのように、これを合計3サイクルを繰り返し、最後にマウスを誘発してCACを形成される。
【0120】
実験を完了させ、マウスを解剖し、結腸直腸全体を除去し、腸間膜および付着した脂肪組織を注意深く取り除き、その長さを測定し、次に結腸直腸内腔全体を通常の生理食塩水で洗浄し、縦方向に解剖し、解剖顕微鏡下でノギスで肉眼で見える腫瘍をカウントして測定し、最後に、結腸の長さ、腫瘍形成率、腫瘍の総数等の観点から本発明のβ-1,3/1,6-グルカンの効果を評価する。
【0121】
実験結果は、次の図に示されるようであり、空白グループと比較して、モデルグループの結腸の長さは、有意に短縮され(P<0.01)、腫瘍形成率は、77.78%に達し、AOM/DSS誘発性マウス結腸直腸がんモデルは成功的である。β-1,3/1,6-グルカン(3mg/kg)グループの腫瘍形成率は、16.67%であり、モデルグループと比較して、腫瘍形成率は低下し、β-1,3/1,6-グルカン(3mg/kg)がAOM/DSS誘発性マウス結腸直腸がんに対して阻害効果を有することを示す。
【0122】
【0123】
実施例20.調製例1および調製例2で得られたβ-1,3/1,6-グルカンの特性化
試験方法は、次のとおりである。
【0124】
(i)紫外線全波長走査スペクトル:β-グルカン組成物を溶解し、5wt%の濃度に調製し、純水でベースラインを確立し、走査波長を190~900nmに設定し、走査精度を1nmに設定し、紫外線全波長走査を行う。
【0125】
(ii)側鎖の長さを実施例8の方法で測定する。
【0126】
【0127】
実施例21.β-1,3/1,6-グルカン抗マウスS-180実験の尾静脈内注射
免疫機能が正常なマウスでの動物実験(尾椎の静脈内投与)
1.実験方法:
腫瘍細胞:S-180、接種部位:肩甲骨、マウス種:KM(雄のマウス)、マウス数:各グループ13匹、腫瘍細胞接種の翌日から投与開始、投与頻度:毎日投与、投与サイクル:20日、投与方法:尾椎の静脈内注射。
空白対照グループ:モデルグループ(CNグループ)
陽性対照グループ:シスプラチン(2mg/kg)(PCまたはCPグループ)、椎茸多糖類LNT(1.5mg/kg)
実験グループ:BL:β-1,3/1,6-グルカン低用量(0.3mg/kg)、BM:β-1,3/1,6-グルカン中度用量(1.5mg/kg)、BH:β-1,3/1,6-グルカン高用量(7.5mg/kg)。
【0128】
2.実験結果
結果は、
図18A~Bに示されるようである。陽性対照グループおよび実験グループのマウスは、接種後20日でもまだ良好な生理学的状態にあり、動物は、犠牲になる前に非常に活発で、行動が機敏である。
モデルグループと比較して、β-1,3/1,6-グルカンは、低用量、中度用量、高用量でS-180腫瘍の増殖を有意に阻害することができ、腫瘍阻害率は、60%~70%に達する。シスプラチングループのマウスの胸腺重量は、モデルグループよりも有意に低く、β-1,3/1,6-グルカン投与グループ(0.3、1.5、7.5mg/kg)の胸腺重量は、シスプラチングループよりも有意に高く、高用量BG136投与グループのマウスの胸腺重量は、モデルグループと同等である。これは、β-1,3/1,6-グルカンがマウスの免疫系を活性化することにより、抗腫瘍効果を発揮する可能性があることを示す。
【0129】
実施例22.β-1,3/1,6-グルカン抗腫瘍試験の経口投与
1.実験方法:
腫瘍細胞:S-180、接種部位:腋窩、マウス種:昆明マウス(Kunming)、マウス数:各グループ13匹(雌マウス7匹および雄マウス6匹)、投与開始時間:接種翌日から投与開始、投与頻度:毎日投与、投与サイクル:10日、投与方法:経口投与、投与量(mg/kg):1 モデル(CN)、2 シスプラチン(CPまたはPC):1.5mg、3 β-1,3/1,6-グルカン:1mg(B1)、4 β-1,3/1,6-グルカン:5mg(B5)、5 β-1,3/1,6-グルカン:25mg(B25)、6 シスプラチン1.5mg+BG1mg(CPB1)、7 シスプラチン1.5mg+BG5mg(CPB5)、8 シスプラチン1.5mg+BG25mg(CPB25)。
【0130】
2.実験結果:
実験結果は、
図19AおよびBに示されるようである。当該実験結果から、β-1,3/1,6-グルカンの経口投与は、S-180腫瘍に対して有意な阻害効果があり、β-1,3/1,6-グルカンの経口投与量が1mg/kgである場合、全体の阻害率は、58%以上であり、雄マウスの腫瘍阻害率は、70.4%に達することが分かる。BG136を25mg/kgのシスプラチン(1.5mg/kg)薬物と併用すると、阻害率は、さらに改善され、腫瘍阻害率は、77.3%に達する。
【0131】
実施例23.マウス腫瘍モデルのための化学療法と併用したβ-1,3/1,6-グルカン
白血球和血小板に対する化学療法と併用したβ-1,3/1,6-グルカンの効果
3x105個のマウス黒色腫細胞株B16(PerkinElmerからの贈り物)の細胞懸濁液をC57BL/6Jマウス(雌、6~8週齢、済南朋悦実験動物会社)に皮下注射する(Overwijk & Restifo、2001)。腫瘍移植から約2日後、カルボプラチン(30mg/kg、週2回)の腹腔内注射およびBG136(4mg/kg)または椎茸多糖類LNT(2mg/kg)の尾静脈内注射を実行し、投与期間中に腫瘍体積を検出し、15日目に、動物を犠牲にした後、腫瘍質量を検出する。動物を犠牲にした後、心臓から採血し、EDTA-抗凝固チューブに入れ、混合した後、50μlの全血を採集し、血液分析器で免疫細胞の濃度を検出する。
【0132】
試験結果は、調製例2で調製されたβ-1,3/1,6-グルカンがカルボプラチンの腫瘍阻害効果を増強し、免疫応答を刺激し、カルボプラチン投与後の免疫阻害を逆転させ、血小板を減少させることができることを示す。
【0133】
実施例24
免疫細胞は様々な種類の腫瘍細胞で重要な役割を果たすため、β-1,3/1,6-グルカンの抗腫瘍、白血球および血小板増加効果は、様々な腫瘍細胞(例えば、肺がん、腎臓がん、肝臓がん、乳がん等)で役割をはたし、かつ免疫細胞は、腫瘍の転移および発生においても調節的な役割を果たすことにより、β-1,3/1,6-グルカンは、腫瘍細胞の転移および発生を阻害することができる。
【0134】
実施例25.マウス腫瘍モデルに対するPD-1抗体と併用したβ-1,3/1,6-グルカンの影響
使用されたPD-1抗体:名称:インビボMAb抗マウスPD-1(CD279)、Bioxcellから購入
(i)結腸がんMC38マウス皮下移植腫瘍に対するPD-1抗体と併用したβ-1,3/1,6-グルカンの静脈内注射の効果
本実施例でマウス結腸がん細胞株MC38を選択し、PD-1抗体と併用したβ-1,3/1,6-グルカンがマウス移植腫瘍増殖に及ぼす影響を検出し、試験結果は、
図20A~Cに示されるようである。
【0135】
図20AおよびBの結果は、PD-1抗体と併用したβ-1,3/1,6-グルカンの尾静脈内注射が、MC38移植腫瘍の増殖を効果的に阻害することができ、阻害効果が単独で投与されたPD-1抗体グループよりも有意に優れ、有意な相乗効果を有し、明らかな薬物毒性はなく(
図1C)、良好な薬物安全性を有することを示す。
【0136】
(ii)マウス腫瘍免疫関連サイトカインの発現に対するPD-1抗体と併用したβ-1,3/1,6-グルカンの静脈内注射の影響
本実施例において、RT-PCR方法によって、マウス前立腺がん細胞MC38移植腫瘍における様々なサイトカインの発現を定量化する。結果は、
図21A~Fに示されるようである。
【0137】
図21A、BおよびCの結果から、β-1,3/1,6-グルカンをPD-1抗体と併用した後、マウス腫瘍のマクロファージによって生成された腫瘍壊疽因子α(TNFα)、インターロイキン1β(IL1-β)および一酸化窒素シンターゼ(iNOS)の発現量は有意に増加され、β-1,3/1,6-グルカンは、PD-1抗体と相乗作用して、腫瘍内の免疫活性化を刺激することができることを示すことが分かる。
【0138】
図21D、EおよびFの結果から、β-1,3/1,6-グルカンをPD-1抗体と併用した後、前炎症性Th1極性かサイトカイン(インターフェロンγ、IFN-γ)、インターロイキン2(IL-2)およびグランザイムB(GZMB)の発現量は増加され、PD-1抗体と併用したβ-1,3/1,6-グルカンは、体の自然免疫および適応免疫を橋渡しし、最高の抗腫瘍免疫を発揮することができることをさらに説明されることが分かる。
【0139】
(iii)マウス腫瘍モデルに対するPD-1抗体と併用した経口投与β-1,3/1,6-グルカンの影響
マウス結腸がん細胞株MC38を選択し、マウス移植腫瘍の増殖に対するPD-1抗体と併用したβ-1,3/1,6-グルカンの影響を検出する。結果は、
図22A~Cに示されるようである。
【0140】
図22AおよびBの結果から、PD-1抗体と併用してβ-1,3/1,6-グルカンを経口投与すると、MC38移植腫瘍の増殖を効果的に阻害することができ、阻害効果は、単独で投与されたPD-1抗体グループよりも有意に優れ、有意な相乗効果を有し、明らかな薬物毒性はなく(
図22C)、良好な薬物安全性を有することを示す。
【0141】
本発明で言及されたすべての文書は、あたかも各文書が個別に参照として引用されたかのように、本出願における参照として引用される。さらに、本発明の上記の教示内容を読んだ後、当業者は本発明に様々な変更または修正を加えることができ、これらの同等の形態も、本出願の添付の請求範囲によって定義される範囲に含まれる。
【国際調査報告】