(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-26
(54)【発明の名称】メタノールへのバイオマスアップグレード法
(51)【国際特許分類】
C07C 29/50 20060101AFI20220819BHJP
C01B 3/38 20060101ALI20220819BHJP
C07C 31/04 20060101ALI20220819BHJP
【FI】
C07C29/50
C01B3/38
C07C31/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021575355
(86)(22)【出願日】2020-06-04
(85)【翻訳文提出日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 EP2020065475
(87)【国際公開番号】W WO2020254121
(87)【国際公開日】2020-12-24
(32)【優先日】2019-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(32)【優先日】2019-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000282
【氏名又は名称】トプソー・アクチエゼルスカベット
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】モーデンスン・ピーダ・ムルゴー
(72)【発明者】
【氏名】ハンスン・ジョン・ブーイル
(72)【発明者】
【氏名】オースベアウ-ピーダスン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ニルスン・シャロデ・ストゥプ
【テーマコード(参考)】
4G140
4H006
【Fターム(参考)】
4G140EA03
4G140EA06
4G140EB37
4H006AA02
4H006AB84
4H006AC41
4H006BA21
4H006BA55
4H006BC10
4H006BE30
4H006BE60
4H006FE11
(57)【要約】
本発明は、バイオガスをメタノールにアップグレードする方法であって、次のステップ:
-バイオガスを含む改質器供給流を提供するステップ、
-任意選択的に、改質器供給流をガス精製ユニット中で精製するステップ、
-任意選択的に、改質器供給流を水蒸気供給原料と一緒に予改質ユニット中で予改質するステップ、
-電力源を用いて加熱された改質反応器中で水蒸気メタン改質を行うステップ、
-合成ガスをメタノール合成ユニットに提供して、メタノール及びオフガスを含む生成物を供するステップ、
を含む、前記方法に関する。
本発明は、バイオガスをメタノールにアップグレードするための装置にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオガスをメタノールにアップグレードする方法であって、次のステップ:
a)前記バイオガスを含む改質器供給流を提供するステップ、
b1)-任意選択的に、前記改質器供給流をガス精製ユニット中で精製するステップ、
b2)-任意選択的に、前記改質器供給流を水蒸気供給原料と一緒に予改質ユニット中で予改質するステップ、
c)前記改質器供給流の水蒸気改質を触媒するように配置された構造化触媒を収容する圧力シェルを含む改質反応器中で、前記改質器供給流の水蒸気メタン改質を行い、ここで、前記構造化触媒は、電気伝導性材料のマクロ構造物を含み、このマクロ構造物は、セラミックコーティングを担持しており、このセラミックコーティングは触媒活性材料を担持している、ステップ;但し、前記水蒸気メタン改質は、次のステップ:
-c1)前記改質器供給流を改質反応器に供給するステップ、
-c2)改質器供給流を、構造化触媒上で水蒸気改質反応させ、そして合成ガスを改質反応器から排出するステップ、及び
-c3)前記圧力シェルの外側に設置された電力供給源を前記構造化触媒に接続する電気伝導体を介して電力を供給し、前記マクロ構造物の電気伝導性材料中に電流を流し、それによって、構造化触媒の少なくとも一部を少なくとも500℃の温度に加熱するステップ、
を含む;及び
d)ステップc2)の合成ガスの少なくとも一部をメタノール合成ユニットに供給して、メタノール及びオフガスを含む生成物を供するステップ;
を含む、前記方法。
【請求項2】
供給される電力が、再生可能なエネルギー資源を用いて発生させたものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記改質器供給流が、第一のH/C比を有し、及び第二のH/C比を有する第二の炭化水素供給ガスが、改質反応器の上流で改質器供給流と混合され、但し、第二のH/C比は、第一のH/C比よりも大きい、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
水供給原料から水素富化流を生成するために電解ユニットが使用され、及び前記水素富化流が、前記合成ガスのモジュールを1.5~2.5の範囲にあるようにバランスするために合成ガス中に加えられる、請求項1~3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
前記電解ユニットが、固体酸化物電解セルユニットであり、そして前記水供給原料が、該方法の他のプロセスから生成された水蒸気の形態である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記オフガスから水素の少なくとも一部を抜き取りそして前記オフガスからの水素の前記少なくとも一部を合成ガスに戻して、前記合成ガスのモジュールを1.5~2.5の範囲にバランスするために、メンブレンユニットまたはPSAユニットがメタノール合成ユニットに含まれる、請求項1~5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
水蒸気の過熱と水蒸気の生成との組み合わせを、前記改質反応器からの前記合成ガスの廃熱回収に統合し、及び過熱された水蒸気を、バイオガスからメタノールへのアップグレートのための該方法のステップc)において水蒸気供給原料として使用する、請求項1~6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
前記改質反応器内のガスの圧力が、20barと100barとの間、好ましくは50barと90barとの間である、請求項1~7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
前記改質反応器を出るガスの温度が900℃と1150℃との間である、請求項1~8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
構造化触媒の幾何学的表面積に対するガスの流量として評価した空間速度が0.6Nm
3/m
2/hと60Nm
3/m
2/hとの間であり、及び/または構造化触媒の占有体積に対するガスの流量が700Nm
3/m
3/hと70000Nm
3/m
3/hとの間である、請求項1~9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
前記改質反応器のプロット面積が0.4m
2と4m
2との間である、請求項1~10のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
メタノールの生産が、再生可能エネルギーの入手可能性に応じて調節される、請求項1~11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
メタノールを燃料等級のメタノールにアップグレードするステップを更に含む、請求項1~12のいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
メタノールを化学品等級のメタノールにアップグレードするステップを更に含む、請求項1~12のいずれか一つに記載の方法。
【請求項15】
ステップd)のメタノールの少なくとも一部を、輸送燃料の生産のための装置に使用するステップを更に含む、請求項1~14のいずれか一つに記載の方法。
【請求項16】
オフガスの少なくとも一部が、前記改質反応器の上流にリサイクルされる、請求項1~13のいずれか一つに記載の方法。
【請求項17】
前記改質器供給流中のバイオガスの炭素の80%~100%がメタノールに転化される、請求項1~16のいずれか一つに記載の方法。
【請求項18】
前記改質器供給流のバイオガスの量が500Nm
3/h~8000Nm
3/hとなる、請求項1~17のいずれか一つに記載の方法。
【請求項19】
ステップa)の後かつステップc)の前に、改質器供給流のCO
2の一部を除去するために分離ユニットが使用される、請求項1~18のいずれか一つに記載の方法。
【請求項20】
ステップd)で生成されるオフガスの一部が、アップグレードするべきバイオガスを生成するためのバイオガス生産施設にリサイクルされる、請求項1~19のいずれか一つに記載の方法。
【請求項21】
バイオガスをメタノールにアップグレードするための装置であって、
-任意選択に、ガス精製ユニット、
-任意選択に、予改質ユニット、
-バイオガスの水蒸気改質を触媒するために配置された構造化触媒を収容する圧力シェルを備えた改質反応器、但し、前記構造化触媒は、電気伝導性材料のマクロ構造物を含み、前記マクロ構造物はセラミックコーティングを担持しており、ここで前記セラミックコーティングは触媒活性材料を担持しており;及び前記改質反応器は、更に、前記圧力シェルの外側に配置された電力供給源と、前記電力供給源を前記構造化触媒に接続する電気伝導体とを含んで、前記マクロ構造物の電気伝導性材料中に電流を流し、それにより、構造化触媒の少なくとも一部を少なくとも500℃の温度に加熱する;
-前記改質反応器からの合成ガスを受け取り、そしてメタノールとオフガスとを含む生成物を製造するために配置されたメタノール合成ユニット、
を含む、前記装置。
【請求項22】
触媒ペレットが、改質反応器の構造化触媒の上面に、その周りに、その内部に、またはその下に積載される、請求項21に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、バイオマスをメタノールにアップグレードするための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオバスは、加熱、電気及び多くの他の作業に使用することができる再生可能なエネルギー源である。バイオマスは、浄化し、そしてそれがバイオメタンになる時は、天然ガス標準品にアップグレードすることができる。バイオガスは、再生可能な資源と考えられる、というのも、それの生産及び使用サイクルは連続的であり、そして実質的に二酸化炭素を発生しないからである。有機材料が成長した時、これが変換及び使用される。これは次いで、連続的に反復するサイクルで再成長する。炭素の将来の見通しからすれば、材料を最終的にエネルギーに変換する場合には、二酸化炭素は、排出される分は、一次生物資源の成長において大気から吸収される。バイオガスは、酸素の不在下に有機物の分解によって生成されるガスの混合物である。バイオガスは、農業廃棄物、肥料、一般廃棄物、植物材料、下水、グリーン廃棄物または食品廃棄物などの原料から製造できる。バイオガスは、主にメタン(CH4)及び二酸化炭素(CO2)であり、そして少量の硫化水素(H2S)、水分、シロキサン類、及び恐らくは他の成分を含み得る。バイオガスのうち30%までまたは更には40%までが二酸化炭素であり得る。典型的には、この二酸化炭素はバイオガスから除去され、そして二次加工のためのメタン富化ガスを提供するためまたはそれを天然ガス網に提供するために排出される。
【0003】
バイオガスは、循環産業経済を実現するための本質的なプラットホームとして指摘されており、この場合、これは、廃棄物流を再び産業に組み込むことを可能する。このような方策は、20世紀に確立された「資源の投入、生産、廃棄」社会からの脱却と、「生産、使用、返還」社会への移行を可能とするが、これは、真に継続可能な未来を達成するために必要である。この考えは、欧州内で関心が高まっており、大規模なバイオガスプラントが既に設置されている。デンマーク内だけでも、大きな生産能力が既に設置されており、そして2020年までには17PJ/aの生産能力まで増えることが期待されているが、全体的な潜在能力は、デンマークでは60PJ/aほどにもなるかもしれない。現在は、バイオガスプラントは、典型的には、天然ガス供給網に連結される、というのも、これが、最も実現可能な利用法であるからである。しかし、おおよそで40%のCO及び60%のCH4を含むバイオガスの性質は、ガスからCO2を除く必要があるので、天然ガス網に直接それを混合することを許さず、これは、ガス分離プラントを必要とする。
【0004】
本発明の課題の一つは、バイオガスの二酸化炭素が製品の製造にも利用される、方法及び装置を提供することである。本発明の課題の一つは、バイオガスをメタノールに転化するための方法及び装置を提供することである。本発明の更に別の課題の一つは、バイオガスをメタノールに転化するための、持続可能な方法及び装置を提供することである。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、炭素が完全にまたは実質的に完全に利用される現実的なゼロエミッションプラントを可能にする、電気加熱式水蒸気メタン改質器(eSMR)を適用することによる、バイオガスからのメタノールの持続可能な生産に関する。
【0006】
本発明の態様は、一般的に、バイオマスをメタノールにアップグレードするための方法及び装置に関する。
【0007】
本発明の第一の観点は、バイオガスをメタノールにアップグレートするための方法であって、次のステップ:
a)バイオガスを含む改質器供給流を提供するステップ、
b1)任意選択で、改質器供給流をガス精製プラントで精製するステップ、
b2)任意選択で、改質器供給流を、蒸気供給原料と一緒に予改質ユニット中で予改質するステップ、
c)改質器供給流の水蒸気改質を触媒するように配置された構造化触媒を収容する圧力シェルを含む改質反応器中で、前記改質器供給流の水蒸気メタン改質を行い、ここで、前記構造化触媒は、電気伝導性材料のマクロ構造物を含み、このマクロ構造物は、セラミックコーティングを担持しており、このセラミックコーティングは触媒活性材料を担持している、ステップ、
を含む方法に関する。
【0008】
前記水蒸気メタン改質は、次のステップ:
-c1)改質器供給流を、改質反応器に供給するステップ、
-c2)改質器供給流を、構造化触媒上で水蒸気改質反応に付し、そして合成ガスを改質反応器から排出するステップ、及び
-c3)圧力シェルの外側に設置された電力供給源を構造化触媒に接続する電気伝導体を介して電力を供給し、マクロ構造物の電気伝導性材料中に電流を流し、それによって、構造化触媒の少なくとも一部を少なくとも500℃の温度に加熱するステップ、
d)ステップc2)の合成ガスの少なくとも一部をメタノール合成ユニットに供給して、メタノール及びオフガスを含む生成物を供するステップ、
を含む。
【0009】
旧来のメタノール生産は、炭化水素の水蒸気改質と、その後のメタノール合成ユニットを含み;これが、主な付随CO2排出を生じさせる。合成ガスの少なくとも一部をメタノール合成ユニットに供するステップd)は、合成ガス、この場合はドライもしくはドライヤー合成ガスをメタノール合成ガスユニットに導く前に、合成ガスから水が除去されるケースも含む。ステップc)で得られる合成ガスは、例えば、メタノール合成ユニットの上流で、ガスの露点よりも低い温度に冷却し、そして水を含む液相と、ドライ合成ガスを含む気相とに分離することができる。
【0010】
更に、CO2は、典型的には、残りのガスを、水蒸気と一緒に水蒸気メタン改質器に供給する前に、ガス分離ユニットにおいて、バイオガス、すなわち改質器供給流から除去される。CO2の副生成物は、典型的には、大気に排出されるか、または可能な場合には、収集されそして化学品として販売される。バイオガスのCO2を除去/アップグレードするための分離プラントを構築する代わりに、CO2及びCH4の生得の混合物は、sSMRによるメタノール生産のための良好な供給原料であり、この場合、本質的に全ての炭素原子をメタノールに転化することができる。バイオガスプラントと組み合わせたこのようなプラントは、簡単により魅力的なものとすることができる、なぜならば、メタンを超えてメタノールを製造することによって、最終生成物の実質的により高い価格設定が達成されるからである。
【0011】
更に、この旧来のメタノール生産は、エネルギー貯蔵の機会が少なく、また、再生可能な電気に伴うエネルギーの増減のデボトルネッキングにならない。高吸熱性水蒸気反応は、1000℃付近の温度で操業される大規模な炉を用いる燃焼式改質器中で促進される故に、プロセスエコノミーは、高いプロセス効率及び統合された廃熱管理を可能とする規模の経済によって大幅に支援される。それ故、このようなプラントは、統合された設計及び大きな先行資本投資の故に、規模縮小することが経済的に困難である。その結果、典型的なメタノールプラントは、2000MT/dの生産能力を上回る。
【0012】
メタノール生産の代替的なルートは、メタノール生産のためのCO2と混合した水素生成用の水の電気分解である。このコンセプトは実証されており、水素生産のためにアルカリ電気分解を用いることにより、アイスランドにおいて11MT/dの生産能力で既に行われている。しかし、このようなプラントは、大量の電気が使用でき、電気の価格が安く及び/またはハイグレードのCO2が入手し易い場所に制限される。特にCO2は、希少な資源であり、典型的には、財政的見地から見ればその利用は魅力あるものではない。全体的には、メタノールプラントに対する電気分解作動型フロントエンドのプロセスエコノミーは、旧来の改質法に比べると非常に高額なままである、というのも、水の電気分解及びその後の圧縮と組み合わせたCO2分離/精製は、非常に高い正味エネルギーを使用し、全体的に見れば、等価の化石燃料よりもメタノール生産価格は4~6倍高くなる。メタノール合成へのメークアップガスとしてCO2及び水素のみを使用することも、ガスの反応性が低いために、より多くの触媒の在庫量及びより大きな反応器などを必要とする。固体酸化物電解セル(SOEC)による共電解(co-electrolysis)の使用は、より効率が高くかつ小規模なメタノール合成を可能にするが、この方策は今のところは実験室規模でしかない。加えて、一般的に、電気分解もまた、現在は高い先行資本投資を要し、これは、プロセスエコノミーにより多くの課題を課すに過ぎない。
【0013】
「メタノール合成ユニット」という用語は、合成ガスをメタノールに転化するように構成された一つまたは複数の反応器のことを意味する。このような反応器は、例えば、沸騰水式反応器、断熱式反応器、凝縮メタノール式反応器またはガス冷却式反応器であることができる。更に、これらの反応器は、多くの並行なシェルや、熱交換及び/または生成物凝縮を中間に配した連続反応器シェルであることができる。メタノール合成ユニットは、メタノール反応器(複数可)への供給物をリサイクル及び加圧するための装置も含む。「改質器供給流」という用語は、バイオガスを含む改質器供給流並びに精製された改質器供給流の両方、予改質済みの改質器供給流、及び炭化水素ガスが加えられた及び/または水蒸気が加えられた及び/または水素が加えられた、及び/またはメタノール合成ユニットからのオフガスが加えられた改質器供給流を包含することを意味する。改質器供給流の全ての成分は、改質反応器の上流で、別々にまたは一緒に加圧される。典型的には、水蒸気は別に加圧され、そして改質器供給流の他の成分は一緒に加熱してよい。改質器供給流の成分の圧力(複数可)は、改質反応器内の圧力が5~100barの間、好ましくは20barと40barとの間、または好ましくは70barと90barとの間となるように選択される。
【0014】
一つの態様では、供給される電力は、少なくとも一部は、再生可能なエネルギー源によって発生させたものである。エネルギーベクトルとしてのメタノールの完全な利用は、より最適な生産ルートが導入されない限りは実現できない。この目的のためには、本発明の方法及びプラントは、メタノールへの改質器供給流中のバイオガスのエネルギー価を高めるために再生可能な電気を使用する。電気加熱された水蒸気メタン改質器(eSMR)は、非常にコンパクトな改質反応器であり、その結果、資本投資は、旧来の水蒸気改質装置よりも少なくなる。eSMRへの供給原料は、原則的には、バイオガスまたは天然ガスなどの任意のメタン含有源由来のものであることができるが、加熱が電気によって促進されるので、これは、直接的なCO2排出を減じる点で、既存の燃焼式改質器に対する改善となる。加えて、バイオガス中の全ての炭素からメタノールへの実質的に完全な転化を可能にする、バイオガス供給原料との優れた相助作用が存在する。
【0015】
本発明に関連して「バイオガス」という用語は、以下の組成を有するガスを意味する:
【0016】
【0017】
一つの態様では、改質器供給流は、第一のH/C比を有し、そして第二のH/C比を有する第二の炭化水素供給ガスが、改質反応器の上流で改質器供給流と混合され、但し、第二のH/C比は、第一のH/C比よりも大きい。第二の炭化水素供給物の例は、天然ガスまたはシェールガスであり得る。ここで、ガスのH/C比は、炭化水素及び他のガス成分両方中における、ガス中の水素原子と炭素原子との間の比率である。
【0018】
水供給原料から水素富化流を生成するために電解ユニットが使用される一つの態様では、この水素富化流は、合成ガスのモジュールMを1.5~2.5の範囲にあるようにバランスするために合成ガス中に加えられる。合成ガスのモジュールMは次式である。
【0019】
【数1】
好ましくは、合成ガスのモジュールMは、1.95~2.1の範囲にあるようにバランスされる。水素富化流は、有利には、ステップa)とd)との間、特にステップb1)とステップc)との間、特にステップc)とステップd)との間に加えられる。
【0020】
一つの態様では、電解ユニットは、固体酸化物電解セルユニットであり、そして水供給原料は、該方法の他のプロセスから生成された水蒸気の形態である。水蒸気は、例えば、メタノール合成ユニットで生成され、すなわち、バイオガスをメタノールにアップグレードするための装置内のeSMRの下流で、メタノール合成ガスユニットまたは廃熱ボイラで生成される水蒸気である。
【0021】
一つの態様では、オフガスから水素の少なくとも一部を抜き取りそして合成ガスのモジュールMを1.5~2.5の範囲にバランスするためにこの少なくとも一部の水素を合成ガスに戻すために、メンブレンユニットまたは圧力スイング吸着(PSA)ユニットが、該メタノール合成ユニットに含まれる。好ましくは、合成ガスのモジュールMは、1.95~2.1の範囲にあるようにバランスされる。この場合もまた、モジュールMは次のように定義される:
【0022】
【数2】
一つの態様では、水蒸気の過熱と水蒸気の生成との組み合わせを、改質反応器からの高温の合成ガスの廃熱回収に統合し、そして過熱された水蒸気を、バイオガスからメタノールへのアップグレートのための該方法のステップc)において水蒸気供給原料として使用する。
【0023】
一つの態様では、改質反応器内のガスの圧力は、20barと100barとの間、好ましくは50barと90barとの間である。
【0024】
一つの態様では、改質反応器を出るガスの温度は900℃と1150℃との間である。
【0025】
一つの態様では、構造化触媒の幾何学的表面積に対するガスの流量として評価した空間速度は、0.6Nm3/m2/hと60Nm3/m2/hとの間であり、及び/または構造化触媒の占有体積に対するガスの流量は、700Nm3/m3/hと70000Nm3/m3/hとの間である。好ましくは、構造化触媒の占有体積に対するガスの流量は7000Nm3/m3/hと10000Nm3/m3/hとの間である。
【0026】
一つの態様では、改質反応器のプロット面積は0.4m2と4m2との間である。好ましくは、プロット面積は0.5m2と1m2との間である。ここで、「プロット面積」という用語は、「土地面積」と同意である、すなわち改質反応器が設置された時に占める土地の面積である。
【0027】
一つの態様では、メタノールの生産は、再生可能なエネルギーの入手可能性に応じて調節される。
【0028】
一つの態様では、該方法は、粗製メタノールを燃料等級のメタノールへとアップグレードするステップを更に含む。
【0029】
一つの態様では、メタノールは、化学品等級のメタノールにアップグレードされる。
【0030】
一つの態様では、該方法は、ステップd)のメタノールの少なくとも一部を、輸送燃料の生産のための装置に使用するステップを更に含む。特に、メタノールは、メタノールからのガソリンの合成のための装置における供給原料として使用される。
【0031】
一つの態様では、改質器供給流のバイオガス中の炭素の80%と100%との間の炭素が、MeOHに転化される。
【0032】
一つの態様では、改質器供給流のバイオガスの量は、500Nm3/h~8000Nm3/hになる。
【0033】
一つの態様では、ステップa)の後かつステップd)の前に、改質器供給流のバイオガスのCO2の一部を除去するために分離ユニットが使用される。予改質ユニットが存在する場合には、CO2の除去は、好ましくは、予改質ユニットの上流に、すなわちステップb2)の前に行われる。精製ユニットが存在する場合は、CO2の除去は、好ましくは、精製ユニットの上流で、すなわちステップb1)の前に行われる。分離ユニットは、例えばメンブレンユニットである。
【0034】
有利には、バイオガスからメタノールへのアップグレードのための装置は、改質反応器の上流で改質器供給流のバイオガス中のCO2の一部を除去するためのメンブレンユニットと、SOECとの両方を含む。それ故、該装置は、電気が得にくい期間のメンブレンユニットの使用と、電気が比較的得やすい期間のSOECの使用とを切り替えることができる。このようにして、該プロセスへのCO2添加量を減らすことによるモジュール低下を調節し、他方で、電気が得やすい期間ではメンブレンを迂回させ、その代わりにモジュールのバランスを図るためにSOECによって余分な水素を生産することが可能になる。
【0035】
25%超のCO2を含む改質器供給流を、本発明の方法への供給原料として使用する場合は、以下のメタノール生産の全体的な反応スキームの故に、約25%のCO2及び約75%のCH4を含む改質器供給流に到達するためにはそのCO2の一部を除去することが有利である;
0.75CH4+0.25CO2+0.5H2O→CO+2H2→CH3OH
【0036】
本発明の態様の一つでは、ステップd)で生成されるオフガスの一部は、本発明の方法でアップグレードするべきバイオガスを生成するためのバイオガス生産施設にリサイクルされる。前記オフガスは典型的には水素を高含有率で含むために、この水素は、バイオガス生産設備に、すなわち発酵プラントに使用でき、そこでは、これは酸化炭素類と反応してメタンを生成することができる。事実上は、これは、水素富化オフガスの或る量がバイオガス生産設備にリサイクルされるプロセス設計では、生成されたバイオガスは、前記の水素富化オフガスをリサイクルしないバイオガス生産設備で生成されるバイオガスと比べると、より高いCH4/CO2を有することを意味する。
【0037】
本発明の他の観点の一つは、バイオガスをメタノールにアップグレードするための装置であって、
-任意選択に、ガス精製ユニット、
-任意選択に、予改質ユニット、
-炭化水素を含む供給ガスの水蒸気改質を触媒するために配置された構造化触媒を収容する圧力シェルを備えた改質反応器、但し、前記構造化触媒は、電気伝導性材料のマクロ構造物を含み、このマクロ構造物はセラミックコーティングを担持しており、ここで前記セラミックコーティングは触媒活性材料を担持しており;及び前記改質反応器は、更に、圧力シェルの外側に配置された電力供給源と、この電力供給源を構造化触媒に接続する電気伝導体とを含んで、マクロ構造物の電気伝導性材料中に電流を流し、それにより、構造化触媒の少なくとも一部を少なくとも500℃の温度に加熱する;
-改質反応器からの合成ガスを受け取り、そしてメタノールとオフガスとを含む生成物を製造するために配置されたメタノール合成ユニット、
を含む装置に関する。
【0038】
該装置の改質反応器の構造化触媒は、水蒸気改質用に構成されている。この反応は、以下の反応に従って起こる:
CH4+H2O ⇔ CO+3H2
CH4+2H2O ⇔ CO2+4H2
CH4+CO2 ⇔ 2CO+2H2
【0039】
構造化触媒は、金属構造物、セラミック相及び活性相から構成される。金属構造物は、FeCr合金、アルニコまたは類似の合金であってよい。セラミック相は、Al2O3、MgAl2O3、CaAl2O3、ZrO2、またはこれらの組み合わせであってよい。触媒活性材料は、Ni、Ru、Rh、Ir、またはこれらの組み合わせであってよい。
【0040】
一つの態様では、触媒ペレットが、改質反応器の構造化触媒の上面に、その周りに、その内部に、またはその下に積載される。該反応のための触媒材料は、Ni/Al2O3、Ni/MgAl2O3、Ni/CaAl2O3、Ru/MgAl2O3、またはRh/MgAl2O3であってよい。触媒活性材料は、Ni、Ru、Rh、Ir、またはこれらの組み合わせであってよい。これは、改質反応器内の全体的なガス転化を改善することができる。
【0041】
一つの態様では、マクロ構造物(複数可)は、複数の並行な流路、複数の並行ではない流路、及び/または複数の迷路様流路を有する。これらの流路は、各流路を画定する壁を有する。ガスに曝される構造化触媒の表面積が可能な限り大きくなるのであれば、マクロ構造物の異なる複数種の平面形状及び立体形状を使用することができる。好ましい態様の一つでは、マクロ構造物は並行な流路を有し、というのも、このような並行な流路は、非常に小さな圧力低下を有する構造化触媒を与えるからである。好ましい態様の一つでは、並行な縦流路が、マクロ構造物の長手方向で斜めに形成される。このようにして、マクロ構造物中を流れるガスの分子は、その殆どが、必ずしも壁と接触すること無く流路中を真っ直ぐに流れる代わりに、流路内部で壁に衝突し易くなる。これらの流路の寸法は、十分な抵抗性を持つマクロ構造物を供するようために適当なものであるべきである。例えば、これらの流路は、(流路に対して垂直な断面として見て)四角形であることができ、そして1mmと3mmとの間の四角形の辺長を有することができるが、断面で約4cmまでの最大寸法を有する流路も考慮し得る。更に、壁の厚さは、比較的大きな電気抵抗を提供するのに十分に薄く、かつ十分な機械的強度を提供するのに十分に厚いものであるのがよい。壁は、例えば、0.2mmと2mmとの間の厚さ、例えば約0.5mmの厚さを有してよく、そして壁によって担持されるセラミックコーティングは、10μmと500μmとの間の厚さ、例えば50μmと200μmとの間の厚さ、例えば100μmの厚さを有する。他の態様の一つでは、構造化触媒のマクロ構造物は交差波形化(cross-corrugated)されている。一般的に、マクロ構造物が並行な流路を有する場合には、改質反応器装置の入口から出口での圧力低下は、触媒材料がペレットの形態である標準的なSMRなどの反応器と比較してかなり減少させ得る。
【0042】
一つの態様では、マクロ構造物(複数可)は、押出しかつ焼結された構造物である。代替的に、マクロ構造物(複数可)は、3D印刷された構造物(複数可)である。3D印刷構造物は、その後に焼結してまたは焼結しないで提供し得る。マクロ構造物の押出または3D印刷、任意選択でその後のそれの焼結は、結果として、均一にかつ一体的に形作られたマクロ構造物を与え、これは、その後、セラミックコーティングでコーティングし得る。
【0043】
好ましくは、マクロ構造物は、粉末状金属粒子とバインダーとの混合物を3D印刷または押出しして、押出構造物とし、次いでこの押出構造物を焼結して、単位体積あたり高い幾何学的表面積を有する材料を供することによって製造されたものである。好ましくは3D印刷された押出構造物は、マクロ構造物を供するために還元性雰囲気中で焼結される。代替的に、マクロ構造物は、金属添加物付加製造溶融プロセス、すなわち粉末床溶融結合または指向性エネルギー堆積法などの、その後の焼結を必要としない3D印刷プロセスで3D印刷される。このような粉末床溶融法または指向性エネルギー堆積法の例は、レーザービーム、電子ビームまたはプラズマ3D印刷法である。他の代替案として、マクロ構造物は、バインダーベース金属添加物付加製造プロセスによって3D金属構造物として製造され、そしてその後、T1>1000℃の第一の温度T1で非酸化性雰囲気中で焼結して、マクロ構造物としたものであってよい。
【0044】
触媒活性材料を含んでいてもよいセラミックコーティングは、酸化性雰囲気中での第二の焼結の前にマクロ構造物上に供される。これは、セラミックコーティングとマクロ構造物との間に化学結合を形成するためである。代替的に、触媒活性材料を、第二の焼結の後にセラミックコーティング上に含浸させてもよい。セラミックコーティングとマクロ構造物との間に化学結合が形成される場合は、電気的に加熱されたマクロ構造物と、セラミックコーティングに担持された触媒活性材料との間の特に高い熱伝導が可能となり、熱源と、構造化触媒の触媒活性材料との間の近いほぼ直接的な接触を与える。熱源と触媒活性材料とが近接しているため、伝熱が効果的であり、その結果、構造化触媒を非常に効率よく加熱することができる。それ故、改質反応器装置単位体積あたりのガス処理の観点で小型の改質反応器装置が可能であり、よって、該構造化触媒を収容する改質反応器装置は小型のものとすることができる。本発明の改質反応器装置は炉を必要とせず、これは、全体的な反応器サイズを大幅に縮小させる。更に、単一の圧力シェル内で製造された合成ガスの量が、既知の管状水蒸気改質器と比べてかなり増加することが利点である。標準的な管状水蒸気改質器では、管状水蒸気改質器の一つの管中で製造される合成ガスの量はせいぜい500Nm3/hである。対照的に、本発明の反応器システムは、一つの圧力シェル内で2000Nm3/hまでまたはそれ超、例えば更には10000Nm3/hまでまたはそれ超までの製造のためにアレンジされる。これは、フィードガス中のO2の存在無しに及び製造される合成ガス中のメタン含有率が10%未満で行うことができる。一つの圧力シェルが、10000Nm3/hまでの合成ガスを製造するための触媒を収容する場合は、複数の圧力シェルを提供することまたは複数のこのような別個の圧力シェルに供給ガスを分配するための手段はもはや必要ではない。
【0045】
ここで使用する場合、「3D印刷」という記載は、金属付加製造プロセスを指すことを意図している。このような金属付加製造プロセスは、コンピュータ制御の下に材料を構造体に接合させる3D印刷法を包含し、この場合、構造体は、該マクロ構造体を供するために、例えば焼結によって固化されるべきである。更に、このような金属付加製造プロセスは、引き続く焼結を必要としない3D印刷法、例えば粉末床溶融法または指向性エネルギー堆積法を包含する。このような粉末床溶融法または指向性エネルギー堆積法の例は、レーザービーム、電子ビームまたはプラズマ3D印刷法である。
【0046】
好ましくは、触媒活性材料は、5nm~250nmの大きさを有する粒子である。セラミックコーティングは、例えば、Al、Zr、Mg、Ce及び/またはCaを含む酸化物であってよい。例示的なコーティングは、アルミン酸カルシウムまたはマグネシウムアルミニウムスピネルである。このようなセラミックコーティングは、更に別の元素、例えばLa、Y、Ti、Kまたはそれらの組み合わせを含んでよい。好ましくは、伝導体は、マクロ構造物とは異なる材料でできている。伝導体は、例えば鉄、ニッケル、アルミニウム、銅、銀またはこれらの合金製であることができる。セラミックコーティングは電気絶縁材料であり、そして典型的には約100μmの範囲、例えば10~500μmの範囲の厚さを有する。
【0047】
マクロ構造物は、有利には、マクロ構造物全体中の電気伝導性を達成し、それによって構造化触媒全体中の熱伝導性を達成し、そして特に、マクロ構造体によって担持された触媒活性材料の加熱を供するために、凝集性のまたは一貫して内部接続した材料である。凝集性のまたは一貫して内部接続された材料によって、マクロ構造物内の電流の均一な分布、それ故、構造化触媒内の熱の均一な分布を保証することができる。本明細書全体を通じて、「凝集性」という用語は、一貫して内部接続または内部結合した材料を指すことを意図している。凝集性または一貫して内部接続した材料である構造化触媒の効果は、構造化触媒の材料内の接続性、それ故、マクロ構造物の伝導性についての制御が得られる点にある。マクロ構造物の更なる変更、例えばマクロ構造物の一部内へのスリットの提供またはマクロ構造物内への絶縁材料の提供などが行われた場合であっても、マクロ構造物はなおも、凝集性または一貫して内部接続された材料と称される点に留意すべきである。
【0048】
一つの態様では、構造化触媒は、伝導体間の電流経路を、構造化触媒の最も長い寸法よりも長い長さまで長くするために配置された電気絶縁部分を有する。構造化触媒の最大分法よりも長い伝導体間の電流経路の提供は、電流が構造化触媒の一部を流れることを妨げる、伝導体間に位置する電気絶縁部分の提供によるものであってよい。このような電気絶縁部分は、電流経路を長くするために、それ故、構造化触媒の抵抗を高めるために配置される。一つの態様では、少なくとも一つの電気絶縁部分は、伝導体間の最小の電流経路が、マクロ構造物の最大寸法よりも長くなることを保証するために定められた長さを有する。
【0049】
このような絶縁部分の非限定的な例は、構造物中の切れ目、スリットまたは穴である。任意選択的に、構造物中の切れ目またはスリット中のセラミックなどの固形絶縁材料を使用することができる。固形絶縁材料が多孔性のセラミック材料である場合には、触媒活性材料は、例えば含浸によって、細孔中に有利に含ませることができる。切れ目またはスリット内の固形絶縁材料は、切れ目またはスリットの各側の構造化触媒の部分を互いに離れた状態にすることを助ける。ここで使用する場合、「構造化触媒の最大寸法」という記載は、構造化触媒が取る幾何学的形状の最も大きな内法を指すことを意味する。構造化触媒が箱形である場合は、最大寸法は、一つの角から最も離れた角までの対角線(体対角線とも称される)であろう。
【0050】
構造化触媒中を流れる電流は、電流経路を長くするために配置された電気絶縁部分によって、構造化触媒中を通るそれの道のりを捻るかまたは曲がりくねった状態にするようにアレンジしてもよいが、改質反応器装置を通るガスは、改質器反応器装置の一方の末端で導入され、そして改質反応器装置から排出される前に一度、構造化触媒中を通過する点に留意すべきである。有利には、構造化触媒と、改質反応器装置の残りの部分との間の関連する空隙には不活性材料が存在し、改質反応器装置内のガスが、構造化触媒及びそれよって担持されている触媒活性材料中を通ることを保証する。
【0051】
一つの態様では、構造化触媒中のガス流路は、一つの伝導体から構造化触媒を経由して次の伝導体までの電流の経路の長さよりも短い。電流経路の長さに対するガス流路の長さの比率は、0.6未満、0.3未満または0.1未満、または更には0.002までであってよい。
【0052】
一つの態様では、構造化触媒は、構造化触媒中の電流経路をジグザグの経路にするために配置された電気絶縁性部分を有する。ここで、「ジグザグの経路」及び「ジグザグのルート」という記載は、一つの伝導体から他の伝導体までの経路をトレースする様々な角度のコーナーを有する経路を指すことを意味する。ジグザグの経路は、例えば、上昇、転向、その後に下降する経路である。経路をジグザグの経路にするためには一つの転向部で十分であるものの、ジグザグの経路は、多くの転向部を有してよく、構造化触媒中を何度も上昇、その後に下降してよい。
【0053】
以下は、添付の図面に示した本発明の態様の詳細な説明である。これらの態様は例であり、本発明を明確に伝えるように詳述したものである。しかし、記載の詳細さの程度は、態様の予想されるバリエーションを制限することを意図したものではなく、その反対に、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨及び範囲内に該当する全ての変更、等価及び代替を包含することを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】
図1は、メタノール生産へのバイオガスアップグレートのための装置の概略図である。
【
図2】
図2a~2cは、燃焼式改質器 対 電気式改質器 対 アルカリ電解に基づいた各種メタノールプラントの比較事例を示す。
【
図3】
図3は、プラント排出+発電からの排出からの合計寄与量としてのMeOH生産に伴うCO
2換算排出量(CO
2e)を示す。
【
図4】
図4は、天然ガス価格及び電気価格の関数として最小事業経費を有する技術のグラフである。
【0055】
[図面の詳細な説明]
図1は、メタノール生産へのバイオガスアップグレートのための装置100の概略図である。この装置は、電気加熱式水蒸気メタン改質器(eSMR)10を備えたメタノールプラントである。
【0056】
メタノールへのバイオガスアップグレードのための装置100は、改質セクション10及びメタノールセクション60を含む。改質セクション10は、予加熱セクション20、精製ユニット30、例えば脱硫ユニット、予改質器40及びeSMR50を含む。メタノールセクションは、第一の分離器85、圧縮ユニット70、メタノール合成ユニット80、第二の分離器90並びに熱交換器を含む。第一及び第二分離器65及び90は、例えばフラッシュ式分離器であってよい。
【0057】
バイオガスを含む改質器供給流1は、予熱セクション20中で予熱されて、予熱改質器供給流2となり、これは、精製ユニット30に送られる。精製された予熱改質器供給流3は、更なる加熱のために、精製ユニット30から予熱セクション20に送られる。更に、水蒸気4が、精製された予熱改質器供給流に加えられ、その結果、供給ガス5となり、予改質器40に送られる。予改質ガス6は、予改質器40を出て、予加熱セクション20で加熱され、ガス7となる。
図1の態様では、水素14がガス7に加えられ、供給ガス8となり、これがeSMR50に送られる。供給ガス8は、eSMR50中で水蒸気メタン改質され、改質ガス9となり、これは、eSMR50から及び改質セクション10からメタノールセクション60に送られる。
【0058】
メタノールセクション60では、改質ガス9は、熱交換器において水12を加熱し、これを水蒸気13とする。第一の分離器85において、水が合成ガス9から分離されて、ドライ合成ガス11を与え、このドライ合成ガス11は、第二の分離器90からのリサイクルガスと混合されてメタノール合成ユニット80中に入る前に、ドライ合成ガスを圧縮するために配置された圧縮器70に送られる。メタノール合成ユニット80からの生産されたメタノールの殆どは、第二の分離器90中で凝縮及び分離され、そしてメタノール25としてメタノールセクションから出る。第二の分離器90からのガス状成分は、メタノール合成ユニット80にリサイクルされる第一の部分と、改質セクション10の予熱セクション20への燃料18として使用されるオフガス17としてリサイクルされる及び/またはeSMR50への供給物16としてリサイクルされる第二の部分とに分けられる。典型的には、追加の圧縮器が、第二の分離器95からのガス状成分の第一の部分をメタノール合成ユニット80にリサイクルするために使用される。水12は、該装置100の熱交換器内で及び記載の態様では、メタノール合成ユニット80の冷却側内で、加熱され水蒸気とされる。
【0059】
完全な炭素利用を達成するために、SOECベースの水電解ユニット110を使用した場合には相助作用を得ることができる。SOECユニット110は、改質及びメタノールセクションにおける廃熱管理から利用可能な水蒸気生産の一部、例えば流れ13を利用することができ、そしてこの水蒸気を中でもH2に転化することができる。このH2は、改質反応器への供給ガス中の水素源として使用できる。これを達成するためには比較的小型のSOECユニットが必要である点に留意されたい。代替的に、任意の他の適当な水素源を利用してよい。
【0060】
第二の炭化水素供給ガスが、改質反応器の上流で改質器供給流に加えられるかまたはこれと混合される場合では、この第二の炭化水素供給ガスは、典型的には、予改質ユニット及び精製ユニットの上流で改質器供給流に加えられる。
図1では、これは、予熱改質器供給流2への第二の炭化水素供給ガスの添加に相当するであろう。この第二の炭化水素供給ガスは、流れ1の改質器供給流のH/C比よりも高いH/C比を有する天然ガスの流れであってよい。
【0061】
改質ユニットの上流でバイオガス中のCO2の一部を除去するために分離ユニットが使用される場合には、この分離ユニットは、有利には予熱ユニット20の上流にある。改質器供給流の主たる部分がバイオガスである場合は、改質器供給流中のCO2の一部を除去することによって、約25%のCO2を含む改質器供給流を達成することができ、これは、下流のメタノール生産にとって好ましい。
【0062】
電気加熱式水蒸気メタン改質器及びメタノール合成ユニットを含む本発明による装置100は、eSMR-MeOHとしても略される。このようなeSMR-MeOH装置は、従来の工業的プロセス(SMR-MeOH)で使用されるプラントと大部分が類似しているが、幾つかの本質的な観点で異なっている。先ず、eSMR10の使用は、旧来のSMR-MeOH装置の燃焼式水蒸気改質器中の強力な燃焼のための要件を取り除き、それによって、パージガスの扱いが伴うeSMR-MeOHレイアウトからの少量のCO2排出のみを残す。第二に、改質器供給流としてまたはそれの主たる部分としての、天然ガスではなくバイオガスの使用は、バイオガスの自然の高CO2含有率が、以下に記載のように、モジュール調節を生得的に可能にするために、合成ガスへの酸素添加の要件を取り除く。
【0063】
(天然ガスとしての)メタンが供給原料として使用される場合の全体的なプラント化学量論から、反応スキームは次のように表現できる:
CH4+0.5O2→CO+2H2→CH3OH
【0064】
代替的に、CO2供給原料が利用可能な場合には、これは酸素源として使用でき、次の全体的なプラント化学量論を与える:
0.75CH4+0.25CO2+0.5H2O→CO+2H2→CH3OH
【0065】
燃焼式改質器と比べて、eSMRではより高い温度に到達し得、これは、このレイアウトではより高いメタンの転化率を与え;結局は、これは、オフガスの扱いを少なくする。バイオガス中のCO
2含有率は変わり得るため、合成ガスへの水素の添加が、プロセスのカーボン利用を高めるために有利であり得る。完全な炭素利用を達成するために、SOECをベースとする水電解ユニット110を使用すると優れた相助作用を得ることができる。この水電解ユニット110は、改質セクション10及びメタノールセクション60における廃熱管理から利用可能な水蒸気生産量の一部を利用することができる。これは、
図1において並行な水素源14として示されている。これを達成するために比較的小型のSOECユニット110が必要である点、及びこのプロセスは、それが無くとも実行できる点に注意すべきである。旧来の方策と同じメタノール合成技術を使用でき、そしてメタノール反応器は、このレイアウトでは、典型的なメタノールプラントのものに相当するCO/CO
2比を有し、それ故、類似の活性及び安定性を有する。ある程度は、メタノール合成ユニットからのオフガスの少なくとも一部を、炭素効率の向上のため及び未転化のメタンの回収のために、改質セクションに供給原料としてリサイクルすることができる。同じやり方で、潜在的なメタノール蒸留からのオフガスの少なくとも一部を回収し、そして操業圧力まで圧縮すれば、これを供給原料として戻すことが可能である。少なくともある程度は、予熱は過剰の水蒸気で行うことができる、というのも、高い予熱であるからである。電気加熱式改質は、例えば、反応のための熱を供給するためにジュール加熱によって直接加熱されたモノリス型の触媒を使用することができる。要するに、eSMR10は、中心に配置された触媒モノリスを有する圧力シェルとして考えられ、前記触媒モノリスは、シェル内の誘電性取付部品中を貫通する伝導体によって外部に配置された電力源に接続されている。該eSMRのシェルは、高温域をeSMRの中央に閉じ込めるためにライニングされた耐熱性物質である。
【0066】
改質反応器の観点から、該eSMRは、慣用の燃焼式改質器に対して幾つかの利点を有する。最も明確なものの一つは、該改質反応器は、大きな外部伝熱面積の装置にもはや制限されないため、電熱技術を用いた場合にかなりよりコンパクトな反応器設計を作ることができる点である。二桁のサイズ縮小が考えられる。これは、この技術のかなりより少ない資本投資に繋がる。eSMRの統合された予熱及び改質セクション(電源含む)構成は、かなりより少ない資本投資を有すると見積もられた。メタノールプラントの合成ガス調製セクションは、旧来の燃焼式改質器ベースのメタノールプラントの資本投資の60%超を占めるため、改質器装備に対する劇的な節約は、eSMRベースのメタノールプラントのコストのかなりの減少に繋がる。
【0067】
図2a~2cは、燃焼式改質器(
図2a) 対 電気式改質器(
図2b) 対 アルカリ電解(
図2c)に基づいた各種メタノールプラントの比較事例を示す。
図2bのeSMRの主な利点は、これが、反応のための熱を供するために炭化水素を燃焼することを必要とせず、その結果、この技術の直接的なCO
2排出量は大きく減少する点にある。これは、
図2a~2cに例示されており、これらは、燃焼式改質器法及び電解法の両方と比べて、eSMR-MeOH技術を用いた場合に、消費財及びCO
2排出量が如何に顕著に変化し得るかを示している。燃焼式改質器レイアウト(
図2a)及びeSMR-MeOHレイアウト(
図2b)の消費量は、両方とも、化学品等級のメタノール生産(すなわち、製品の蒸留を含む)のためのハルダー・トプソー開発のフローシートに基づくものであり、他方で、電解レイアウト(
図2c)は、H
2生産及びCO
2精製をベースとしたアルカリ電解(AEL)についての発行された消費量と組み合わせた、ベストケースの全体的な化学量論分析である。化学的な見地からは、SMR-MeOHプラントからのCO
2排出量を増加させるであろうバイオガスとの燃焼を必要とすることによってSMR-MeOHレイアウトに不利益を与えないように、消費財は、実質的に純粋なCH
4及びCO
2に分割されることに留意されたい。所与のケースでは、燃焼式改質器(SMR-MeOH)と比べて、メタン消費量の30%の削減及びCO
2排出量の80%の削減がeSMR-MeOHによって達成される。全ての提示されたケースについてプロセスの改善を考慮し得ること、それ故、限定的に考えるべきでないことが強調される。単位が記載されていない場合は、記載の数値は、
図2a~2cにおける成分の相対的なモル流量を表す。
【0068】
図2a~2cの消費財の概要は、電解と比較した、eSMR-MeOHを使用した場合のメタノール生産のための著しく低い電気使用を示す。電解レイアウトにおいてAELの代わりにSOECを使用することにより、電気使用量は、(水蒸気の入手可能性に依存して)潜在的に11~13kWh/Nm
3MeOHまで減少し得、これは、この技術の改善点であるものの、eSMR-MeOHよりは、なおも顕著に高い。電解法には、この技術の性能を改善するために概念開発をなおも行うことができるものの、これはまだ全て研究段階であり、旧来のメタノール合成技術と組み合わせたAELなどの唯一確立された技術のみが、現在、工業的な用途に用意ができたものと考えることができ、これも比較の焦点となる理由である点に留意されたい。
【0069】
AELによるメタノール生産(“AEL-MeOH”)のエネルギー消費量は次のように計算される。
Etotal=EAEL+ECO2+Ecompress-Esteam
【0070】
ここで、EAELは、エネルギー効率71%でのアルカリ電解のエネルギー消費量である。ECO2は、CO2精製のエネルギー消費量であり、供給原料として煙道ガスを使用した場合に2.6MJ/Nm3CO2と見積もられる。Ecompressは、水の冷却のためのエネルギーは含めずに、75%の効率で0.7kWh/Nm3メタノールと計算される圧縮用電力である。Esteamは、メタノール合成で除去される発熱エネルギーの75%回収率として、0.7kWh/Nm3メタノールと計算される水蒸気生産からの潜在的なエネルギー回収量である。前記の計算は、メタノール合成ユニットにおける副生成物の生成に関しての考察またはプラントレイアウトにおけるそれらの組み入れは含んでいない。
【0071】
図3は、SMR、eSMR及びAEMのそれぞれのメタノール生産に伴うCO
2換算排出量(CO2
e)を示す。これらの各生産技術について、黒色のボックスは、メタノールが再生可能なエネルギーによって生産された場合の全体的な換算排出量(CO
2e)を表し、そして白色のボックスは、メタノールが2019年のデンマーク電力網からの電気で生産された場合の全体的な換算排出量(CO
2e)を表す。化学プラントからの全体的なCO
2排出量を計算する際は、電気消費量も評価する必要がある、というのも、これもまた、潜在的に大きなCO
2排出フットプリントとなり得るからである。正確な排出量は、電気源に依存する。電気が完全に持続可能な資源によってまたは一例としての2019年のデンマークエネルギー供給網(この年のデンマークエネルギー供給網では、年間電気使用量の60%超が持続可能な資源、例えば太陽電池、風力及びバイオマスによってカバーされている)のいずれかで提供された時の、それに伴う換算CO
2排出量(CO
2e)に注目されたい。eSMR-MeOH技術によるメタノール生産の場合の実際のCO
2eは、これに基づいて
図3に示すように計算され、そして慣用の燃焼式技術及びAEL-MeOHを基準にして評価した。電気源とは無関係に、eSMR-MeOHは、慣用の方法、すなわちSMR-MeOHに対してメタノール生成物のCO
2フットプリントを著しく改善する。他方、2019年のデンマークのエネルギー供給網をベースとした場合、電解法は、CO
2eに対して有利な効果を持たない。電気が完全に再生可能である場合にのみ、電解法は、eSMR-MeOHルートと比較可能なCO
2eを有するものの、AEL-MeOHの方がなおも35%大きい。
【0072】
図4は、天然ガス価格及び電気価格を関数として最小事業経費を有する技術の概要である。
【0073】
持続可能な技術を魅力的なものとするためには、これは、確立された製造ルートと比べて費用競争力のあるものである必要がある。
図4は、どの技術がガス及び電気価格を関数として最小事業経費を与えるかの概要を示す。この概要は、事業経費だけを示す点に留意されたい。プラントの減価償却までの費用を生産コストに含めた場合は、「eSMR-MeOH」と示されるエリアの大きさは、「AEL-MeOH」及び「SMR-MeOH」と示されるエリア中まで大きく増大する、というのも、eSMR-MeOH技術は、前記の二つの他の技術と比べて、資本投資がかなり少ないからである。この概要からは、燃焼式技術(SMR-MeOH)は、ガスのコストが低いということによって前世紀では最も安価な製造ルートであったことが分かる。しかし、低下する電気価格は、電気作動型技術に向かう動機付けとなる。eSMR作動型フロントエンドが、メタノール生産のための費用競争力のあるルートのための次のステップとして提案される。この機会を例証するためには、欧州での約6~8ドル/MMBTUの天然ガス価格と比較した時に競争的事例を見出し得る。eSMR-MeOH技術の事業経費は、CO
2税があるケースにおいては更に有利になる。CO
2税は、燃焼式改質器法の事業経費を大幅に高める。これは、
図4に破線で示されており、現在の北欧の代表的なCO
2税を示す。eSMR-MeOHレイアウト内での開発は今なお比較的初期段階にあるため、
図4はただの参考用である点が強調される。eSMR-MeOH内の開発は、消費量、それにより事業経費を更に改善するであろう。
【0074】
以上、本発明を様々な態様によって例示しそしてこれらの態様は相当に詳細に記載したが、添付の特許請求の範囲の範囲を、このような詳細な記載に減縮または如何様にも限定することは本発明者の意図ではない。追加の利点及び変更は、当業者には直ちに明らかであろう。それ故、本発明はその広範の観点では、記載した具体的な詳細な記載、代表的な方法及び例示に限定されるものではない。それ故、本発明者の一般的な発明的思想の趣旨または範囲から逸脱することなく、このような詳細な記載からの発展が可能である。
【実施例】
【0075】
例1
例1は、バイオガスをメタノールに転化した本発明の態様の一つに関する。
図1を参照されたい。供給ガス(1)を、メタノールループからのリサイクルガスと混合して、次の脱硫ステップ(30)及び予改質ステップ(40)のための水素を提供する。電気加熱式改質器(50)を用いて、このガスを水蒸気(4)で合成ガスに転化する。これを冷却して、凝縮物とドライ合成ガス(11)に分離し、ここで、ドライ合成ガスは圧縮し、そして沸騰水式メタノール反応器(80)を用いてメタノールループに供給する。この圧縮されたメークアップ合成ガスを、ループ中でリサイクルガス(95)と混合し、そしてメタノール反応器(80)に送ってメタノールを生成する。このメタノールを冷却及び凝縮することによって、分離して最終生成物(25)を生成する。この分離からのオフガスの殆どは、メタノール反応器に直接リサイクル(95)され、他の画分(16)は供給物にリサイクルされ、他方で、最後の画分は燃料富化オフガスとして輸出される。
【0076】
全体的には、該方法のこの態様は、炭素供給原料(CO2+CH4)の95.4%をメタノールに転化することを可能にする。
【0077】
【国際調査報告】