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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-26
(54)【発明の名称】薄型人工補綴僧帽弁
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20220819BHJP
   A61F 2/966 20130101ALI20220819BHJP
【FI】
A61F2/24
A61F2/966
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021575410
(86)(22)【出願日】2020-06-19
(85)【翻訳文提出日】2022-02-08
(86)【国際出願番号】 US2020038726
(87)【国際公開番号】W WO2020257643
(87)【国際公開日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】62/864,008
(32)【優先日】2019-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513259997
【氏名又は名称】ニオバスク ティアラ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】フン, エリック ソン-サン
(72)【発明者】
【氏名】ウォン, カレン ツェク-ジ
(72)【発明者】
【氏名】ベン-エイブラハム, エフライム
【テーマコード(参考)】
4C097
4C267
【Fターム(参考)】
4C097AA27
4C097BB01
4C097BB04
4C097BB09
4C097CC01
4C097CC05
4C097DD01
4C097DD09
4C097DD10
4C097MM09
4C097SB03
4C097SB09
4C267AA05
4C267AA56
4C267BB02
4C267CC19
4C267EE01
(57)【要約】
天然弁を治療するための薄型人工補綴弁は、拡張構成と、折り畳まれた構成とを有する放射状に拡張可能なフレームを含む。人工補綴弁の心房端部は、天然弁の心房表面に係合する裾広がり形状を形成する。裾広がり形状は、最初に拡張させられると、天然弁の心室に向かって下向きに裾広がりになり、その後、裾広がり形状の反転が続き、完全に拡張させられると、心室に向かって先細りになり、天然弁の心房に向かって裾広がりになるテーパ状形状を形成する。人工補綴弁は、開閉し、人工補綴弁を通して流動する流体を制御する複数の人工補綴弁尖も有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の天然弁を治療するための薄型人工補綴弁であって、前記弁は、
拡張構成、折り畳まれた構成、心房端部、および心室端部を有する放射状に拡張可能なフレームであって、
前記折り畳まれた構成において、前記拡張可能フレームは、前記天然弁への低侵襲性送達のためにサイズおよび形状を決定され、
前記拡張構成において、前記拡張可能フレームは、前記天然弁に係合するように構成され、
前記心房端部は、前記拡張構成において、裾広がり形状を形成し、前記心房端部は、前記天然弁の心房表面に係合するように構成され、
前記裾広がり形状は、最初に拡張させられると、前記天然弁の心室に向かって下向きに裾広がりになり、その後、前記裾広がり形状の反転が続き、完全に拡張させられると、前記心室に向かって先細りになるテーパ状形状を形成し、前記天然弁の心房に向かって裾広がりになる、
放射状に拡張可能なフレームと、
遊離端、前記拡張可能フレームの内側部分に結合された対向する端、開放構成、および閉鎖構成を有する複数の人工補綴弁尖と
を備え、
前記開放構成において、前記複数の人工補綴弁尖の前記遊離端は、互いに比較的に離れるように配置され、それによって、流体が順行性方向に流動する開口を形成し、
前記閉鎖構成において、前記遊離端は、前記開放構成におけるより一緒に近づいて配置され、それによって、前記開口を実質的に閉鎖し、前記流体が前記開口を通って逆行性方向に流動することを防止する、人工補綴弁。
【請求項2】
各々が遊離端と対向する端とを有する複数の交連柱をさらに備え、前記対向する端は、前記拡張可能フレームに結合され、前記遊離端は、前記拡張可能フレームが前記拡張構成にあるとき、前記心室に面し、前記複数の人工補綴弁尖は、前記複数の交連柱に結合されている、請求項1に記載の人工補綴弁。
【請求項3】
前記遊離端は、それを通して延びている複数の開口を備え、前記複数の開口は、前記複数の人工補綴弁尖を前記複数の交連柱に固定する縫合糸フィラメントを受け取るようにサイズを決定されている、請求項2に記載の人工補綴弁。
【請求項4】
前記複数の交連柱の各々は、前記遊離端に結合された係止タブを有し、前記係止タブは、前記人工補綴弁を送達カテーテルと解放可能に結合するように構成されている、請求項2に記載の人工補綴弁。
【請求項5】
前記拡張可能フレームの前記心室端部に結合された複数の心室アンカをさらに備え、前記心室アンカは、前記拡張構成において、前記拡張可能フレームから放射状に外向きに延び、前記天然弁の心室側に係合するように構成されている、請求項1に記載の人工補綴弁。
【請求項6】
前記複数の心室アンカのうちの少なくとも1つと前記複数の交連柱のうちの少なくとも1つとは、複数の支柱によって境を限られた前記拡張可能フレームにおける共通閉鎖セル内に配置されている、請求項5に記載の人工補綴弁。
【請求項7】
前記複数の心室アンカの各々は、前記心室アンカの下方部分に結合された係止タブを備え、前記心室アンカ上の係止タブは、前記人工補綴弁を送達カテーテルと解放可能に結合するように構成されている、請求項5に記載の人工補綴弁。
【請求項8】
前記複数の心室アンカは、前記天然心臓内の天然僧帽弁の前部分上の線維三角部に係合するように構成された前心室アンカと、前記僧帽弁の弁輪の後部分または前記天然弁の後心室部分に係合するように構成された後心室アンカとを備えている、請求項5に記載の人工補綴弁。
【請求項9】
前記複数の心室アンカは、前記拡張可能フレームに結合された少なくとも2つの支柱の上を覆って配置されたカバー要素を備えている、請求項5に記載の人工補綴弁。
【請求項10】
前記複数の心室アンカは、前記拡張可能フレームに結合されたV形状の支柱を備え、前記V形状の支柱の頂点は、組織に係合するように構成され、前記人工補綴弁は、前記V形状の支柱の上を覆って配置されたカバー要素をさらに備えている、請求項5に記載の人工補綴弁。
【請求項11】
前記拡張可能フレームは、一緒に結合され、放物面形状を形成する複数の環状リングを備えている、請求項1に記載の人工補綴弁。
【請求項12】
前記複数の環状リングは、一緒に結合された減少する直径を有する複数の同心リングを備えている、請求項11に記載の人工補綴弁。
【請求項13】
隣接する環状リングは、一緒に結合され、前記拡張可能フレームの周りに円周方向に延びている複数の閉鎖セルを形成している、請求項11に記載の人工補綴弁。
【請求項14】
前記心室端部上の複数の心室ウィングをさらに備え、前記複数の心室ウィングは、拡張構成と、折り畳まれた構成とを有し、
前記折り畳まれた構成において、前記複数の心室ウィングは、前記人工補綴弁の縦軸と実質的に平行であり、
前記拡張構成において、前記複数の心室ウィングは、前記縦軸から放射状に外向きに延び、前記天然弁の心室表面に係合するように構成されたフランジを形成している、請求項1に記載の人工補綴弁。
【請求項15】
患者の天然弁を治療するための薄型人工補綴弁システムであって、前記システムは、
前記請求項1に記載の人工補綴弁と、
前記人工補綴弁に解放可能に結合された送達カテーテルと
を備え、
前記送達カテーテルは、前記人工補綴弁を前記天然弁に送達するように構成されている、システム。
【請求項16】
前記送達カテーテルは、前記人工補綴弁に解放可能に係合するための係止要素を備えている、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
人工補綴弁を患者の心臓内の天然弁に送達する方法であって、前記方法は、
前記人工補綴弁を搬送する送達カテーテルを提供することと、
前記人工補綴弁を前記天然弁に隣接して位置付けることと、
前記人工補綴弁が、前記天然弁の上方に配置され、前記心臓の心室に向かって裾広がりになる裾広がり形状を形成するように、前記人工補綴弁を部分的に展開することと、
前記初期裾広がり形状が、前記天然弁の上方に配置され、前記心室に向かって先細りになるテーパ状形状となるように、前記裾広がり形状を反転させることと、
前記人工補綴弁の心室端部上の複数の心室アンカまたは心室ウィングを前記天然弁の心室表面に係合するように放射状に拡張させることと、
前記人工補綴弁を前記送達カテーテルから解放することと
を含む、方法。
【請求項18】
前記複数の心室アンカまたは心室ウィングを放射状に拡張させることは、前記複数の心室アンカのうちの少なくともいくつかを前記天然弁の線維三角部または前記天然弁の後心室部分上に定着させることを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記複数の心室アンカまたは心室ウィングを放射状に拡張させることは、前記人工補綴弁の縦軸と実質的に平行である位置から、前記縦軸から放射状に外向きに延びている位置まで複数の心室ウィングを放射状に拡張させ、前記複数の心室ウィングを前記天然弁の心室表面と係合することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記人工補綴弁を横断した逆流を低減させること、または排除することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記天然弁は、僧帽弁である、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記人工補綴弁を前記送達カテーテルから解放することは、前記人工補綴弁上の複数の交連柱を前記送達カテーテルから係合解除することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記人工補綴弁を前記送達カテーテルから解放することは、前記複数の心室アンカ上の複数の係止タブを前記送達カテーテルから係合解除することを含む、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(優先権の主張)
本願は、その全内容が参照することによって本明細書に組み込まれる2019年6月20日に出願された米国仮特許出願第62/864,008号(弁理士整理番号第5131.019PRV号)の非仮出願であり、その利益を主張する。
【0002】
(背景)
僧帽弁逆流は、僧帽弁閉鎖障害としても知られ、深刻な心臓病であり、僧帽弁が、適切に閉鎖し、天然僧帽弁を横断する逆行性血流を防止することができない。この条件は、心臓機能を損なわせ得、かつ、衰弱させ、または生命を脅かし得る。
【0003】
僧帽弁閉鎖不全症のための現在の治療は、天然弁の従来の外科手術修復を含む。低侵襲性経カテーテル治療が、開発されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
僧帽弁の従来の外科手術修復は、効果的治療であり得るが、開心外科手術、長期入院、および回復期間を要求する。低侵襲性経カテーテル治療が、開発されており、有望であるが、埋め込みが困難であり得、多くのものは、商業用配布のための規制承認を受けていない。したがって、僧帽弁閉鎖不全症を治療するための改良されたデバイスの必要性が存在する。これらの課題のうちの少なくともいくつかは、本明細書に開示される例によって対処される。
【0005】
本明細書に開示される例は、僧帽弁逆流を治療するための埋め込み可能人工補綴僧帽弁を対象とするが、当業者は、これが、限定することを意図するものではなく、本明細書に開示されるデバイスおよび方法が、三尖弁等の他の心臓弁、大動脈弁、肺動脈弁のみならず、流体または他の材料の流動を制御するために使用される静脈弁または任意の解剖学的構造等の身体内の他の弁を治療するためにも使用され得ることを理解するであろう。
【0006】
図面では、それらは、必ずしも、正確な縮尺で描かれておらず、同様の番号は、異なる図において類似構成要素を説明し得る。異なる文字の添え字を有する、同様の番号は、類似構成要素の異なる事例を表し得る。図面は、概して、一例として、限定ではないが、本書に議論される種々の実施形態を図示する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、収縮期中の血流を示す心臓の左心室の概略図である。
【0008】
図2図2は、僧帽弁に逸脱弁尖を有する心臓の左心室の概略図である。
【0009】
図3A図3Aは、心臓が拡張させられ、弁尖が交わらない心筋症に罹患している患者の心臓の概略図である。
【0010】
図3B図3Bは、弁尖の正常な閉鎖を示す。
【0011】
図3C図3Cは、拡張した心臓内の異常な閉鎖を示す。
【0012】
図4図4は、損なわれた乳頭筋を有する心臓の左心室内の僧帽弁逆流を図示する。
【0013】
図5A図5A-5Bは、僧帽弁の解剖学的構造を図示する。
図5B図5A-5Bは、僧帽弁の解剖学的構造を図示する。
【0014】
図6A図6Aは、薄型人工補綴弁の例の上面図を示す。
【0015】
図6B図6Bは、図6Aにおける例の心室アンカを示す。
【0016】
図6C図6Cは、図6Aにおける弁の心室アンカに取り付けられ得るカバーを示す。
【0017】
図6D図6Dは、図6Aにおける弁の斜視図を示す。
【0018】
図7A図7Aは、薄型人工補綴弁の別の例の上面図を示す。
【0019】
図7B図7Bは、図7Aにおける例の心室アンカを示す。
【0020】
図7C図7Cは、図7Bの心室アンカ上で使用され得るカバーの例を示す。
【0021】
図7D図7Dは、図7Aにおける例の斜視図を示す。
【0022】
図8A図8Aは、薄型人工補綴弁の別の例の上面図を示す。
【0023】
図8B図8Bは、部分的に展開された構成における図8Aの人工補綴弁を示す。
【0024】
図8C図8Cは、完全に展開された構成における図8Aの人工補綴弁を示す。
【0025】
図8D図8Dは、天然僧帽弁内に配置された図8Aの人工補綴弁を示す。
【0026】
図9図9A-9Fは、人工補綴弁に解放可能に結合された送達カテーテルを示す。
【0027】
図10図10A-10Cは、人工補綴弁を送達カテーテルと解放可能に結合するための係止機構を示す。
【0028】
図11図11は、人工補綴弁を送達カテーテルと解放可能に結合するための係止機構の側面図を示す。
【0029】
図12図12A-12Bは、人工補綴弁を送達カテーテルと解放可能に結合するための係止機構を示す。
【0030】
図13A図13A-13Dは、人工補綴弁を天然弁内で展開する方法の例を図示する。
図13B図13A-13Dは、人工補綴弁を天然弁内で展開する方法の例を図示する。
図13C図13A-13Dは、人工補綴弁を天然弁内で展開する方法の例を図示する。
図13D図13A-13Dは、人工補綴弁を天然弁内で展開する方法の例を図示する。
【0031】
図14図14は、天然弁内の人工補綴弁の例を示す。
【0032】
図15-1】図15A-15Dは、人工補綴弁を天然弁内で展開する方法の別の例を示す。
図15-2】図15A-15Dは、人工補綴弁を天然弁内で展開する方法の別の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
(心臓の解剖学的構造)
【0034】
収縮期の正常な心臓Hの左心室LVが、図1で図示されている。左心室LVは、収縮しており、血液は、矢印の方向へ大動脈弁AV、三尖弁を通して外向きに流動する。僧帽弁は、左心室内の圧力が左心房LA内の圧力よりも高いときに反流を防止する「逆止弁」として構成されているので、僧帽弁MVを通る血液の反流または「逆流」は、防止される。僧帽弁MVは、図1で図示されるように、閉鎖するように均一に交わる遊離縁FEを有する一対の弁尖を備えている。弁尖LFの反対端は、弁輪ANと称される環状領域に沿って、周辺心臓構造に取り付けられている。尖LFの遊離縁FEは、弁尖LFの各々の下面の上を覆って固定された複数の分岐腱を含む腱索(chordae tendineae)CT(本明細書では「腱索(chordae)」とも呼ばれる)を通して、左心室LVの下側部分に固定される。腱索CTは、次に、左心室および心室中隔IVSの下側部分から上向きに延びている乳頭筋PMに取り付けられている。
【0035】
ここで図2-4を参照すると、心臓内のいくつかの構造欠陥が、不十分な張力が腱索を介して弁尖に伝達されるので、僧帽弁逸脱を引き起こし得る。他の弁尖LF1が正常な外形を維持する一方で、2つの弁尖は適正に交わらず、左心室LVから左心房LAの中への漏出が、矢印によって示されるように起こるであろう。
【0036】
逆流は、心筋症に罹患している患者でも起こり、図3Aに示されるように、心臓が拡張させられ、増大したサイズが、弁尖LFが適正に交わることを妨げる。心臓の拡大は、僧帽弁輪を拡大させ、遊離縁FEが収縮期中に交わることを不可能にする。前尖および後尖の遊離縁は、通常、図3Bに示されるように、接合線Cに沿って交わるが、図3Cに示されるように、かなりの間隙Gが、心筋症に罹患している患者において残され得る。
【0037】
僧帽弁逆流は、図4で図示されるように、乳頭筋PMの機能が損なわれている虚血性心疾患に罹患した患者でも起こり得る。左心室LVが収縮期中に収縮しているとき、乳頭筋PMは、適正な閉鎖を達成するように十分接触しない。弁尖LF1およびLF2が、次いで、図示されるように逸脱する。漏出が、再度、矢印によって示されるように、左心室LVから左心房LAへ起こる。
【0038】
図5Aは、前側ANTおよび後側POSTを有する二尖弁である僧帽弁MVの解剖学的構造をより明確に図示する。弁は、前(大動脈)尖ALおよび後(壁)尖PLを含む。腱索CTは、弁尖AL、PLを前外側乳頭筋ALPMおよび後内側乳頭筋PMPMと結合する。弁尖AL、PLは、前外側交連ALCおよび後内側交連PMCと称される線に沿って互いに接合する。弁輪ANは、弁尖を包囲し、前尖の両側で弁輪の前部分に隣接する2つの領域は、左線維性三角LFT、右線維性三角RFTとも称される。これらの領域は、概して、黒三角形によって示される。図5Bは、左右の線維性三角LFT、RFTをより明確に図示する
【0039】
(人工補綴弁)
【0040】
人工補綴弁は、僧帽弁逆流の治療として、心臓に外科的に埋め込まれている。これらの弁のうちのいくつかは、ブタ弁等の動物から採取された弁であり、他の弁は、組織被覆を伴うまたは伴わない人工補綴機械弁である。つい最近では、人工補綴弁を心臓に送達するために、低侵襲カテーテル技術が使用されている。これらの弁は、典型的に、人工補綴弁を患者の心臓に固定するためのアンカと、アンカに結合された機械弁とを含む。弁機構は、多くの場合、機械弁、動物組織を伴う弁、またはそれらの組み合わせのいずれかである。人工補綴弁は、埋め込まれると、正常に機能していない自然弁の役割を引き継ぎ、それによって、弁閉鎖不全症を低減させ、またはそれを排除する。これらの弁のうちのいくつかは、送達することが困難であり、いくつかは、正確に定着させることが困難である。その他は、サイズが大きく、それらは、心室を塞ぎ得る。これらの弁のうちのいくつかは、有望であると考えられるが、依然として、これらの課題のうちの少なくともいくつかに対処する改良された弁の必要がある。以下の明細書は、既存の人工補綴弁に関連付けられた課題のうちのいくつかを克服し得る人工補綴弁の例、人工補綴弁のための送達システム、および弁を送達する方法を開示する。
【0041】
図6Aは、平坦切断図に示された薄型人工補綴僧帽弁600の例を図示する。人工補綴僧帽弁600は、複数の相互接続された支柱から形成された拡張可能フレームであり、ステンレス鋼、ニチノール、または他の生体適合性材料等の材料の平坦シートから切断され得る。それは、バルーン拡張可能または自己拡張式であり得る。拡張可能フレームは、材料のシートから切断後、平坦平面構成にあり、下で議論されるように、熱処理され、所望の形状に形状設定され得る。平坦パターンは、人工補綴物の円周の周囲に延びている複数の支柱から形成される複数の同心環状リング602、604を含む。リングは、それらが人工補綴弁の中心により近づくにつれて、直径および円周がより小さくなる。したがって、リング602は、リング604より大きい直径およびより大きい円周を有する。隣接するリングは、複数の半径方向に延びている支柱612を用いて一緒に結合され、人工補綴弁の周囲に円周方向に配置される複数の閉鎖セルを形成し、隣接する閉鎖セルは、少なくとも1つの共通支柱を共有する。各リング602、604は、全て同じ幾何学形状を有する複数の円周方向に向けられた支柱を含み得る。例えば、最外リング602は、一緒に結合され、環状リングを形成する複数の叉骨形状の支柱を含む。叉骨形状の支柱の全ては、リング602内で同じであり得、それらは、2つの反対側に傾きが付けられた支柱を含み得、それらは、2つの反対側に傾きが付けられた支柱間の変曲点において、叉骨形状の支柱内に突起または頂部を形成する弧状支柱を用いて一緒に結合されている。
【0042】
リング602から半径方向内向きに配置された次の隣接するリング604も、同様に、一緒に結合された複数の叉骨形状の支柱によって形成される。リング604内の叉骨形状の支柱の全ては、リング604内で同じであり得、それらは、同様に、2つの反対側に傾きが付けられた支柱から形成され得、それらは、2つの反対側に傾きが付けられた支柱間の変曲点において、叉骨形状の支柱内に突起または頂部を形成する弧状支柱を用いて一緒に結合されている。リング604内の支柱のサイズおよび角度は、2つのリングが、互いに同心であるので、リング602と異なり得、したがって、リング604は、外側リング602より小さい直径および円周を有する。人工補綴物の中心から放射状に外向きに延びている複数の線形支柱612は、リング602と604とを一緒に結合し、閉鎖セル610を形成する。リング602と604との間に形成される閉鎖セル610の全ては、同じ幾何学形状を有し得るか、または、それらは、変動し得る。
【0043】
支柱は、叉骨形状であり得、それによって、応力および歪みを叉骨の頂点から離れるようにそらし、それによって、所与の最大歪みに関してより大きな角度運動範囲が達成されることを可能にし、または、同じ所与の運動範囲に関してより低い最大歪みが生じることを可能にする。
【0044】
Y形状の支柱616が、叉骨形状の第2のリング604に結合され、Yの尾部は、人工補綴物の中心に向かって半径方向内向きに延びており、それによって、閉鎖セルの対向する側の頂部および谷部と、閉鎖セルの2つの他の側のとがった端部とを伴うレモン形状の閉鎖セルを形成する。Yの尾部は、一緒に結合され、中心開口618を人工補綴物内に画定し得る。この例では、中心開口618は、3つのとがったアームが放射状に外向きに延び、星形形状を形成する星形形状である。
【0045】
複数の内側閉鎖セル620、ここでは、3つの閉鎖セル620が、閉鎖セル620の対向する側の2つのV形状の支柱622によって形成され、支柱622は、隣接するY形状の支柱616の尾部に結合され、閉鎖セル620を形成する。各閉鎖セル620は、交連タブ606と、2つの心室アンカ支柱614とを含む。
【0046】
交連タブ606は、人工補綴物の中心に隣接し得、人工補綴弁尖が交連タブに縫合され得るように、複数の縫合糸孔を含み得る。交連タブ606は、人工補綴弁尖を受け取るために、中央を通したスリットを伴う長方形形状の支柱であり得る。この例では、交連タブに取り付けられた3つの人工補綴弁尖(図示せず)が存在し、三尖弁人工補綴弁を形成する。人工補綴弁尖は、拡張可能フレームの視認を容易にするために図示されない。交連タブは、支柱614間に配置され、支柱614は、人工補綴物を天然弁の前部分(線維三角部等)および天然弁の後部分等の天然弁の心室部分に定着させる心室アンカタブを形成する。支柱614は、心室アンカの一部を形成する。2つの支柱614が、交連タブ606の両側に配置される。支柱614の一端は、Y形状の支柱616の尾部に結合され、支柱614の対向する端は、放射状に外向きに曲がり得る遊離端である。遊離端は、カバー(図示せず)の取り付けのために使用される貫通孔を含み得る。カバーは、Dacronのようなポリマー等の任意の材料であり得、組織に係合するための軟質非外傷性先端である足場を形成する。Dacronまたは他のポリマーカバー材料は、より広い表面積を提供し、したがって、心室アンカタブが組織を穿刺する機会を低減させる。心室タブは、次いで、拡張中、弁フレームから離れるように角張り、線維三角部、または天然弁の心室側の任意の他の前部分、または天然弁の後弁輪上の任意の部分上に定着することを可能にすることができる。
【0047】
複数のアンカタブ608(ここでは、マッシュルーム頭部形状のタブ608またはT形状の頭部である)が、このデバイスの中心に向かって半径方向内向きに面し得、それらは、人工補綴物が、下で説明されるであろうように、送達カテーテルに結合されることを可能にする。このまたは任意の他の例では、T形状またはマッシュルーム頭部アンカタブは、省略され、下でより詳細に説明されるであろうように、単に、タブを通した開口を有し得、開口は、ピンまたは他のコネクタ要素が、送達カテーテルと解放可能に結合するための開口内に配置されることを可能にする。アンカタブ608は、Y形状の支柱616の2つの尾部を一緒に接合する支柱の一部上に配置される。したがって、この例では、送達カテーテルと成され得る3つの接続点が存在する。
【0048】
図6Bは、カバー624が支柱614および人工補綴フレームの上を覆って配置され、心室アンカを生成することに役立つ足場を形成する人工補綴弁600を図示する。これは、陰影付き領域によって示される。足場は、拡大頭部領域と、より狭い本体とを含む。再び、拡大頭部は、組織外傷を排除または低減させるために、より大きい表面積を提供し、したがって、定着中、組織に加えられる圧力を最小化する。図6Bの他の側面は、図6Aと同じである。
【0049】
図6Cは、支柱614に取り付けられ、心室アンカの非外傷性先端を形成し得るカバー624の例を示す。カバーは、Dacron、または別のポリマー、または所望の機械的特性を有する任意の材料であり得る。カバー624は、拡大頭部領域と、より狭い細長い本体領域とを有する。拡大頭部領域は、定着中、組織との接触圧力を低減させ、組織穿刺および外傷を排除または低減させるために、より広い表面積を提供する。
【0050】
図6Dは、図6A-6Bに示される人工補綴弁600の斜視図であるが、カバー類630は、拡張可能フレームの上を覆って配置されるように示され、形状設定後のものである。非外傷性アンカタブを形成するために心室アンカ614の上を覆って配置されたカバー類に加え、同じ材料または別の材料が、支柱および閉鎖セルの任意または全てのものの上を覆って配置され、弁周囲漏出を最小化し、組織内部成長を促進し得る。図6Dは、形状設定後の完全に拡張させられた構成における人工補綴弁600を示し、人工補綴物は、心房方向に上向きに裾広がりにされ(または心室方向に先細りになり)、人工補綴物の流入端部である上側心房端部は、最大直径であり、弁は、流出端部である心室端部でより小さい直径に先細りになる。フレームの漏斗形状は、放物面の凹面部分が心房に向かって上方に面し、放物面の凸面部分が心室に向かって下向きに面した状態の放物面状としても説明され得る。人工補綴弁は、中間拡張構成を有し、放物面が反転され、それによって、人工補綴物は、上側端から下側端に外向きに裾広がりになり、したがって、裾広がりが、心室の方向になり、またはテーパの向きが、心房の方向になる。放物面形状の場合、放物面の凹面部分は、心室に向かって下向きに面する一方、放物面の凸面部分は、心房に向かって上向きに面する。この中間拡張構成は、下でより詳細に例証および説明される。人工補綴弁600は、3つの交連柱も含み、3つの人工補綴弁尖632は、交連柱に結合され、人工補綴弁機構を形成する。
【0051】
図7Aは、平坦切断図に示された薄型人工補綴僧帽弁700の例を図示する。人工補綴僧帽弁700は、複数の相互接続された支柱から形成された拡張可能フレームであり、ステンレス鋼、ニチノール、または他の生体適合性材料等の材料の平坦シートから切断され得る。それは、バルーン拡張可能または自己拡張式であり得る。拡張可能フレームは、材料のシートから切断後、平坦平面構成にあり、下で議論されるように、熱処理され、所望の形状に形状設定され得る。平坦パターンは、人工補綴物の円周の周囲に延びている複数の支柱から形成された複数の同心環状リング702、704を含む。リングは、それらが人工補綴弁の中心により近くなるにつれて、直径および円周がより小さくなる。したがって、リング702は、リング704より大きい直径およびより大きい円周を有する。隣接するリングは、複数の半径方向に延びている支柱712を用いて一緒に結合され、人工補綴弁の周囲に円周方向に配置された複数の閉鎖セルを形成し、隣接する閉鎖セルは、少なくとも1つの共通支柱を共有する。各リング702、704は、全て同じ幾何学形状を有する複数の円周方向に向けられた支柱を含み得る。例えば、最外リング702は、一緒に結合され、環状リングを形成する複数の叉骨形状の支柱を含む。叉骨形状の支柱の全ては、リング702内で同じであり得、それらは、2つの反対側に傾きが付けられた支柱を含み得、それらは、2つの反対側に傾きが付けられた支柱間の変曲点において、叉骨形状の支柱内に突起または頂部を形成する弧状支柱を用いて一緒に結合されている。
【0052】
リング702から半径方向内向きに配置された次の隣接するリング704も同様、一緒に結合された複数の叉骨形状の支柱で形成される。リング704内の叉骨形状の支柱の全ては、リング704内で同じであり得、それらは、同様に、2つの反対側に傾きが付けられた支柱間の変曲点において、叉骨形状の支柱内に突起または頂部を形成する弧状支柱を用いて一緒に結合された2つの反対側に傾きが付けられた支柱から形成され得る。リング704内の支柱のサイズおよび角度は、2つのリングが、互いに同心であるので、リング702と異なり得、したがって、リング704は、外側リング702より小さい直径および円周を有する。人工補綴物の中心から放射状に外向きに延びている複数の線形支柱712は、リング702および704を一緒に結合し、閉鎖セル710を形成する。リング702と704との間に形成される閉鎖セル710の全ては、同じ幾何学形状を有し得るか、または、それらは、変動し得る。一緒に結合され、閉鎖セルを形成するためのリングを作製する接続された支柱の構造体は、形状設定されると、例えば、ヒナギクに類似した花状形状を提供する格子構造を生成する。
【0053】
支柱は、叉骨形状であり得、それによって、応力および歪みを叉骨の頂点から離れるようにそらせ、それによって、所与の最大歪みに関してより大きな角度運動範囲が達成されることを可能にし、または、同じ所与の運動範囲に関してより低い最大歪みが生じることを可能にする。
【0054】
Y形状の支柱716が、叉骨形状の第2のリング704に結合され、Yの尾部は、人工補綴物の中心に向かって半径方向内向きに延びており、それによって、涙滴形状の対向する側にとがった端部を伴ういくつかの涙滴形状の閉鎖セルと、図6Aの例におけるものと実質的に同じであるいくつかのレモン形状の閉鎖セルとを形成する。Yの尾部は、V形状の支柱を用いて一緒に結合され、人工補綴物内の中心開口718と内側閉鎖セル720を画定し得る。この例では、中心開口718は、中心円形孔を有し、複数のとがったアームが、中心円形孔から放射状に外向きに延びている。
【0055】
内側閉鎖セル720は、V形状の支柱722によって形成され、支柱722は、隣接するY形状の支柱716の尾部に結合され、閉鎖セル720を形成する。閉鎖セル720は、3つの交連タブ706を含み、3つのV形状の支柱が、閉鎖セル720から放射状に外向きに延びており、それらは、天然弁の心室下方表面に係合するように構成された心室アンカ724を形成する。心室アンカの脚部は、Y形状の支柱の尾部に結合され得、Vの頂点(またはVのトラフまたはVの遊離端)は、図6Cにおけるカバーに類似するカバーがアンカに取り付けられ、非外傷性先端を形成し得るように、縫合糸を受け取るようにサイズを決定されたそれを通して延びている孔を含み得る。
【0056】
交連タブ706は、人工補綴物の中心に隣接し得、人工補綴弁尖が交連タブに縫合され得るように、複数の縫合糸孔を含み得る。交連タブ706は、人工補綴弁尖を受け取るために、中央を通したスリットを伴う長方形形状の支柱であり得る。この例では、交連タブに取り付けられた3つの人工補綴弁尖(図示せず)が存在し、三尖弁人工補綴弁を形成する。人工補綴弁尖は、拡張可能フレームの視認を容易にするために図示されない。交連タブは、人工補綴物を天然弁の前部分(線維三角部等)および天然弁の後部分等の天然弁の心室部分に定着するように、隣接する心室アンカ724間に配置される。心室アンカの遊離端は、放射状に外向きに曲げられ得る。遊離端は、カバー(図示せず)の取り付けのために使用される貫通孔を含み得る。カバーは、Dacronのようなポリマー等の任意の材料であり得、組織に係合するための軟質非外傷性先端である足場を形成する。Dacronまたは他のポリマーカバー材料は、より広い表面積を提供し、したがって、心室アンカタブが組織を穿刺する機会を低減させる。心室タブは、次いで、拡張中、弁フレームから離れるように角張り、線維三角部、または天然弁の心室側の任意の他の前部分、または天然弁の後弁輪上の任意の部分上に定着させることを可能にすることができる。
【0057】
交連706(ここでは、マッシュルーム頭部形状のタブ708またはT形状の頭部である)に結合される複数のアンカタブ708が、デバイスの中心に向かって半径方向内向きに面し得、それらは、人工補綴物が、下で説明されるであろうように、送達カテーテルに結合されることを可能にする。交連上の3つのアンカタブ708に加え、3つの追加のアンカタブ726が、2つの隣接するY形状の支柱716の尾部を接合する支柱に結合され、アンカタブ726は、人工補綴物の中心に向かって半径方向内向きに面する。アンカタブ726も、マッシュルーム頭部形状、またはT形状、または他の形状であり得る。アンカタブ708、726の両方は、人工補綴物を送達カテーテルと解放可能に結合するために使用され得る。したがって、この例では、送達カテーテルと成され得る6つの接続点が存在する。図7Aにおける例の他の側面は、図6Aにおける例に実質的に類似し得る。
【0058】
図7Bは、カバー730が心室アンカ714および人工補綴フレームの上を覆って配置され、心室アンカを生成することに役立つ足場を形成する人工補綴弁700を図示する。足場は、拡大頭部領域と、より狭い本体とを含む。再び、拡大頭部は、組織外傷を排除または低減させるために、より大きい表面積を提供し、したがって、定着中、組織に加えられる圧力を最小化する。図7Bの他の側面は、図7Aと同じである。
【0059】
図7Cは、心室アンカ714に取り付けられ、心室アンカの非外傷性先端を形成し得るカバー730の例を示す。カバーは、Dacron、または別のポリマー、または所望の機械的特性を有する任意の材料であり得る。カバー730は、拡大頭部領域と、より狭い細長い本体領域とを有する。拡大頭部領域は、定着中、組織との接触圧力を低減させ、組織穿刺および外傷を排除または低減させるために、より広い表面積を提供する。
【0060】
図7Dは、図7A-7Bに示される人工補綴弁700の斜視図であるが、カバー類は、拡張可能フレームの支柱の視認を容易にするために除去されており、形状設定後のものである。心室アンカの上を覆って配置されるカバー類に加え、同じ材料または別の材料は、同じ材料または別の材料が、支柱および閉鎖セルの任意またの全てのものの上を覆って配置され得る。図7Dは、形状設定後の完全に拡張させられた構成における人工補綴弁700を示し、人工補綴物は、心房方向に裾広がりになり(または心室方向に先細りになり)、人工補綴物の流入端部である上側心房端部は、最大直径であり、弁は、流出端部である心室端部上でより小さい直径に先細りになる。フレームの漏斗形状は、放物面の凹面部分が心房に向かって上方に面し、放物面の凸面部分が心室に向かって下向きに面した状態の放物面状としても説明され得る。人工補綴弁は、中間拡張構成を有し、人工補綴物は、心房に向かって先細りになり、または心室に向かって裾広がりになり、放物面形状である場合、放物面は、反転され、それによって、人工補綴物は、上側端から下側端に外向きに裾広がりになり、放物面の凹面部分が心室に向かって下向きに面する一方、放物面の凸面部分が、心房に向かって上向きに面する。この中間拡張構成は、下でより詳細に例証および説明される。
【0061】
図8Aは、平坦切断図に示された薄型人工補綴僧帽弁800の例を図示する。人工補綴弁800は、図6A-6Dにおける人工補綴弁600に実質的に類似し、主な差異は、人工補綴物を天然弁の心室側に定着し、隣接する天然弁尖を捕捉するのに役立つための心室花弁またはウィング830の追加である。人工補綴僧帽弁800は、複数の相互接続された支柱から形成された拡張可能フレームであり、ステンレス鋼、ニチノール、または他の生体適合性材料等の材料の平坦シートから切断され得る。それは、バルーン拡張可能または自己拡張式であり得る。拡張可能フレームは、材料のシートから切断後、平坦平面構成にあり、下で議論されるように、熱処理され、所望の形状に形状設定され得る。平坦パターンは、人工補綴物の円周の周囲に延びている複数の支柱から形成された複数の同心環状リング802、804を含む。リングは、それらが人工補綴弁の中心により近くなるにつれて、直径および円周がより小さくなる。したがって、リング802は、リング804より大きい直径およびより大きい円周を有する。隣接するリングは、複数の半径方向に延びている支柱812を用いて一緒に結合され、人工補綴弁の周囲に円周方向に配置された複数の閉鎖セルを形成し、隣接する閉鎖セルは、少なくとも1つの共通支柱を共有する。各リング802、804は、全て同じ幾何学形状を有する複数の円周方向に向けられた支柱を含み得る。例えば、最外リング802は、一緒に結合され、環状リングを形成する複数の叉骨形状の支柱を含む。叉骨形状の支柱の全ては、リング802内で同じであり得、それらは、2つの反対側に傾きが付けられた支柱間の変曲点において、叉骨形状の支柱内に突起または頂部を形成する弧状支柱を用いて一緒に結合された2つの反対側に傾きが付けられた支柱を含み得る。
【0062】
リング802から半径方向内向きに配置された次の隣接するリング804も同様、一緒に結合された複数の叉骨形状の支柱で形成される。リング804内の叉骨形状の支柱の全ては、リング804内で同じであり得、それらは、同様に、2つの反対側に傾きが付けられた支柱間の変曲点において、叉骨形状の支柱内に突起または頂部を形成する弧状支柱を用いて一緒に結合された2つの反対側に傾きが付けられた支柱から形成され得る。リング804内の支柱のサイズおよび角度は、2つのリングが、互いに同心であるので、リング802と異なり得、したがって、リング804は、外側リング802より小さい直径および円周を有する。人工補綴物の中心から放射状に外向きに延びている複数の線形支柱812は、リング802および804を一緒に結合し、閉鎖セル810を形成する。リング802と804との間に形成される閉鎖セル810の全ては、同じ幾何学形状を有し得るか、または、それらは、変動し得る。
【0063】
支柱は、応力および歪みを叉骨の頂点から離れるようにそらせ、それによって、所与の最大歪みに関してより大きな角度運動範囲が達成されることを可能にし、または、同じ所与の運動範囲に関してより低い最大歪みが生じることを可能にするために、叉骨形状であり得る。
【0064】
Y形状の支柱818が、叉骨形状の第2のリング804に結合され、Yの尾部が人工補綴物の中心に向かって半径方向内向きに延び、それによって、閉鎖セルの対向する側の頂部および谷部と、閉鎖セルの2つの他の側のとがった端部とを伴うレモン形状の閉鎖セルを形成する。Y形状の支柱は、叉骨形状の第2のリング804にも結合され得、Yの尾部は、人工補綴物の中心に向かって半径方向内向きに延び、涙滴形状の対向する側にとがった端部を伴ういくつかの涙滴形状の閉鎖セルを形成する。Yの尾部は、一緒に結合され、中心開口818を人工補綴物内に画定し得る。この例では、中心開口818は、3つのとがったアームが放射状に外向きに延び、星形形状を形成する星形形状である。
【0065】
複数の内側閉鎖セル820、ここでは、3つの閉鎖セル820が、閉鎖セル820の対向する側の2つのV形状の支柱822によって形成され、支柱822は、隣接するY形状の支柱816の尾部に結合され、閉鎖セル820を形成する。各閉鎖セル820は、交連タブ806と、2つの心室アンカ支柱814とを含む。
【0066】
交連タブ806は、人工補綴物の中心に隣接し得、人工補綴弁尖が交連タブに縫合され得るように、複数の縫合糸孔を含み得る。交連タブ806は、人工補綴弁尖を受け取るために、中央を通したスリットを伴う長方形形状の支柱であり得る。この例では、交連タブに取り付けられる3つの人工補綴弁尖(図示せず)が存在し、三尖弁人工補綴弁を形成する。人工補綴弁尖は、拡張可能フレームの視認を容易にするために図示されない。交連タブは、支柱814間に配置され、支柱816は、人工補綴物を天然弁の前部分(線維三角部等)および天然弁の後部分等の天然弁の心室部分に定着する心室アンカタブを形成する。支柱814は、心室アンカの一部を形成する。2つの支柱814が、交連タブ806の両側に配置される。支柱814の一端は、Y形状の支柱818の尾部に結合され、支柱814の対向する端は、放射状に外向きに曲がり得る遊離端である。遊離端は、縫合等、カバー(図示せず)の取り付けのために使用される貫通孔を含み得る。カバーは、Dacronのようなポリマー等の任意の材料であり得、組織に係合するための軟質非外傷性先端である足場を形成する。Dacronまたは他のポリマーカバー材料は、より広い表面積を提供し、したがって、心室アンカタブが組織を穿刺する機会を低減させる。心室タブは、次いで、拡張中、弁フレームから離れるように角張り、線維三角部、または天然弁の心室側の任意の他の前部分、または天然弁の後弁輪上の任意の部分上に定着することを可能にすることができる。心室アンカは、天然弁尖を心室アンカと拡張可能フレームの外面との間に捕捉することにも役立ち得る。人工補綴弁が、心室ウィングまたは花弁(下で説明されるように)を有する場合、天然弁尖は、ウィングまたは花弁によっても捕捉され得、これは、天然弁尖を流動経路から外に保つことに役立ち得る。任意の数の心室アンカが存在し得るが、この例では、3つが存在する。
【0067】
複数のアンカタブ808(ここでは、マッシュルーム頭部形状のタブ808またはT形状の頭部である)が、デバイスの中心に向かって半径方向内向きに面し得、それらは、人工補綴物が、下で説明されるであろうように、送達カテーテルに結合されることを可能にする。アンカタブ808は、Y形状の支柱816の2つの尾部を一緒に接合する支柱の一部上に配置される。したがって、この例では、送達カテーテルと成され得る3つの接続点が存在する。
【0068】
人工補綴弁800は、弧状支柱830も含み、それらは、反対方向に傾く、対向する端部と、変曲点における湾曲コネクタとを有する。ここでは、3つの弧状支柱830が存在し、弧状支柱の各端部は、Y形状の支柱818のアームに結合され、花弁またはウィングを形成する。花弁またはウィングは、第2の心室アンカを人工補綴物の心室側に形成し、同様に、天然弁尖を捕捉することに役立つ。花弁またはウィングは、送達および初期展開中、人工補綴物から離れるように心室に向かって下向きに延び得、次いで、花弁またはウィングは、完全に拡張させられた構成において、放射状に外向きに、アンカから離れるように延び、弁輪が花弁またはウィングと上側リングとの間に捕捉されるように、弁輪の直下の天然弁の心室部分に係合し得る拡張可能フレームの周囲に円周方向に配置されるフランジを形成する。上側心房裾広がり領域および下側心室ウィングまたは花弁は、したがって、上側および下側肩部を提供し、それらは、天然弁輪をそれらの間に捕捉し、または挟み、人工補綴物を天然の解剖学的構造の中に定着させるための組織の良好な引っ掛かりを提供し得るクランプとしての機能を果たし得る。加えて、心室ウィングまたは花弁は、天然弁尖を捕捉し、それらを流動通路から外に移動させ、最適弁機能を確実にすることにも役立ち得る。ここでは、3つの支柱830が、示されるが、任意の数が、使用され得る。心室アンカ814は、図6Aに前述のものと実質的に同じであり、花弁またはウィングとともに使用され、人工補綴弁を天然弁に固定することにさらに役立ち得る。
【0069】
図8Bは、形状設定された後の、部分的に展開された構成における図8Aの人工補綴弁800を図示し、心房端部は、円錐形形状に拡張させられており、心房直径は、心室に向かって増加し、円錐または裾広がり領域を形成する。拡張構成は、凹面部分が心室に向かって下向きに面するが、依然として、弁輪850の上方に配置される放物面であり得る。送達カテーテルは、便宜上、示されない。花弁またはウィング830は、拡張可能フレームから下向きに軸方向に延び、弁輪850を通した天然弁オリフィスを通過する。花弁またはウィング830は、この部分的に展開された構成における人工補綴物の縦軸と実質的に平行に延びている。図6Bにおけるカバー624に類似するカバー(図示せず)が、支柱814および人工補綴フレームの任意または全ての部分の上を覆って配置され、足場を形成し得、これは、心室アンカを生成することに役立つ。足場は、拡大頭部領域と、より狭い本体とを含む。再び、拡大頭部は、組織外傷を排除または低減させるために、より大きい表面積を提供し、したがって、定着中、組織に加えられる圧力を最小化する。図8Bの他の側面は、図8Aと同じである。
【0070】
図8Cは、完全に展開された構成における図8Bの人工補綴弁800を示し、心房円錐は、反転され、放物面を形成しており、凹面部分は、心房に向かって上向きに面するが、弁輪850の上方にある。円錐は、次いで、天然弁の中に嵌まることができ、裾広がり円錐の壁は、弁が天然弁オリフィスを通してスリップすることを防止する。花弁またはウィング830も、ここでは、放射状に外向きに拡張させられており、したがって、それらは、人工補綴物の縦軸に直交または別様に横方向であり、天然弁の下側表面に対して心室側に定着させられ得るフランジを形成する。加えて、人工補綴弁は、心室アンカも有し、それらは、放射状に外向きに延び、例えば、天然弁の前側上の線維三角部または天然弁の後部分上で弁輪の下面と係合するように示される。再び、図6Bにおけるカバー624のようなカバーが、心室アンカ814の上を覆って配置され、心室アンカの非外傷性先端を形成し得る。カバーは、Dacron、または別のポリマー、または所望の機械的特性を有する任意の材料であり得る。カバーは、拡大頭部領域と、より狭い細長い本体領域と有し得る。拡大頭部領域は、定着中、組織との接触圧力を低減させ、組織穿刺および外傷を排除または低減させるために、より広い表面積を提供する。
【0071】
図8Dは、天然僧帽弁MV内で完全に展開された図8Aからの人工補綴弁800を示す。完全に展開されると、裾広がりのより大きい直径部分は、左心房LA内に置かれ、人工補綴物が左心室LVの中に移動することを防止する。心室アンカタブ814は、天然弁の前部分上の線維三角部上に定着するための2つの前アンカタブと、天然弁の後棚等の後部分上に定着する後アンカタブとを含み得る。心室ウィング830または花弁も、心室側に配置され、さらに、天然弁の心室側に定着することに役立つ。図8Dは、拡張可能フレームに結合されるDacronまたは別のポリマー、布地、または組織等のカバー860とともに示される。人工補綴弁尖862は、交連柱に取り付けられるように示される。交連柱上のアンカタブ808は、人工補綴物を送達カテーテルと解放可能に結合するために使用される。ここでは、3つのアンカタブが存在する。
【0072】
(送達カテーテルとの解放可能結合)
【0073】
図9A-9Fは、送達カテーテルを図示し、それは、本明細書に開示される人工補綴弁のいずれかを搬送するために使用され得る。送達カテーテルは、人工補綴物に解放可能に結合され得、それによって、人工補綴物が正しく位置付けられ、展開されると、人工補綴弁が送達カテーテルから解放され、定位置に残される一方、送達システムは、患者から除去される。
【0074】
図9Aは、送達カテーテル900の外面を示し、それは、外側シース902と、テーパ状非外傷性遠位先端904とを含む。テーパ状非外傷性遠位先端904は、人工補綴弁が挿入および拡張させられる前に除去され得る。
【0075】
図9Bは、外側シース902が、概して、管状シャフトであることを示し、単一管腔906が、シャフトを通して延びている。管腔906は、本明細書に開示される人工補綴弁のいずれかを格納し、送達中、人工補綴弁を折り畳まれた構成に保つ拘束を提供するように構成される。
【0076】
図9Cは、外側シース902の管腔906内に図式的に配置された人工補綴物908を示す。人工補綴物908は、本明細書に開示される人工補綴弁のいずれかであり得、折り畳まれた構成に拘束される。
【0077】
図9Dは、外側シース902の近位後退が、拘束を人工補綴物908から除去し、人工補綴物が部分的に自己拡張することを可能にするが、シースが、依然として、送達カテーテルと解放可能に係合されている人工補綴物の部分の上を覆って配置され、これが、人工補綴物が反転および完全に拡張することを防止する拘束を提供することを示す。ここでは、送達カテーテルに解放可能に結合される人工補綴物の部分のみが、図示される。人工補綴弁の残りは、便宜上、図9D-9Fから省略されている。外側シース906が、近位に後退させられるにつれて、人工補綴物は、自己拡張し、部分的に展開された人工補綴物を形成し、放物面が、凹面部分が患者の心臓の心室に向かって下向きに面した状態で形成される。したがって、反転された円錐形状が、形成され、円錐の小端部は、心房に向かってに面し、円錐の大端部は、心室に向かって下向きに面する。コネクタタブを伴う人工補綴物のアームのみが、送達カテーテルに結合されたままである。タブの例は、以前に上で説明されたマッシュルーム頭部形状のタブまたはT形状のタブを含む。人工補綴物は、送達および拡張のこの段階では、天然弁の上方の心房内に留まる。
【0078】
図9Eは、外側シース902のさらなる近位後退(または外側シース902の管腔906内に配置された中間シャフト910の遠位前進)が、人工補綴弁が開放し続け、反転することを可能にし、それによって、放物面が、反対方向に面し、放物面の凹面部分が、心房に向かって面することを示す。人工補綴弁908は、送達カテーテル900に結合されたままである。
【0079】
図9Fは、人工補綴弁が、正しく位置付けられ、天然弁の中に拡張させられたときの人工補綴弁908の送達カテーテル900からの解放を示す。ここでは、内側シャフト912は、中間シャフト910の管腔内にスライド可能に配置される。内側シャフト912が、遠位に前進させられるにつれて、ディスクまたはキャップ914が、中間シャフト910に結合されるハブから離れるように移動させられる。ハブは、スロット916を含み、それらは、人工補綴物のマッシュルーム頭部またはT形状の頭部を捕捉する。したがって、キャップ914が、ハブおよびスロット914から離れるように移動するにつれて、マッシュルーム頭部またはT形状の頭部は、非拘束状態になり、スロット914から外に自由に自己拡張する。スロットから外に出ると、人工補綴物908は、次いで、送達カテーテル900から取り外される。結合機構に関するさらなる詳細は、下で説明される。
【0080】
図9A-9Fの例では、3つのみの接続が、人工補綴弁と送達カテーテルとの間に存在する。追加の接続点が、図7Aに見られるような6つの接続点が存在するように、タブを心室アンカ上に追加すること等によって、使用され得る。任意の数の接続点が、使用され得、交連上または心室アンカ上のコネクタの任意の組み合わせが、使用され得る。さらに、この例、または人工補綴物と送達カテーテルとの間の複数の解放可能接続が存在する任意の例では、接続の全ては、同時に、個々に、順次方式において、互いに独立して、次々に、または所望の群化において、または段階において、解放され得る。
【0081】
図10A-10Cは、人工補綴弁と送達システムを解放可能に結合するために使用され得る結合機構の別の例を示す。この例は、図9A-9Fに示されるものに類似し、主な差異は、ハブ上のスロット付き領域であり、ディスクまたはキャップは、逆転される。外側シースは、便宜上、図10A-10Cから省略される。
【0082】
図10Aでは、送達カテーテルは、内側シャフト1006と、内側シャフト1006の上を覆ってスライド可能に配置された中間シャフト1004とを含む。人工補綴弁1002は、送達カテーテルに解放可能に結合される。再び、送達カテーテルに結合される人工補綴弁の部分のみが、示される。人工補綴弁1002は、本明細書に開示される人工補綴弁のいずれかであり得る。この図では、人工補綴物は、部分的に、展開および拡張させられ、放物面を形成し、凹面部分は、心室に向かって下向きに面する。放物面は、反転円錐としても説明され得、円錐の小端部は、心房に向かって面し、円錐の大端部は、心室に向かって下向きに面する。
【0083】
図10Bでは、外側シース(図示せず)のさらなる後退が、人工補綴物が、円錐を形成し、より大きい直径の端部が、心房に向かって面し、より小さい直径の端部が、心室に向かってに面するように、人工補綴物が、継続して拡張および反転することを可能にする。スロット1010を伴うハブ1008は、内側シャフト1006に結合される。スロット1010は、ディスクまたはキャップ1012がハブ1008と並置されると、T形状の頭部またはマッシュルーム頭部を人工補綴物上に受け取り、それらを保持するようにサイズを決定される。ディスクまたはキャップ1012は、中間シャフト1004に結合される。
【0084】
図10Cでは、内側シャフト1006の遠位前進は、ハブ1008をキャップまたはディスク1012から離れるように移動させ、スロット1010を露出させ、人工補綴物のマッシュルーム頭部またはT形状の頭部が、送達カテーテルから解放することを可能にする。または、中間シャフト1004が、近位に後退させられ、別個のディスクまたはキャップをハブから分離し得るか、または、中間シャフト1004の近位後退と内側シャフト1006の遠位前進の組み合わせが、2つを分離し、人工補綴弁を送達カテーテルから解放するために使用され得る。
【0085】
図10A-10Cの例では、3つのみの接続が、人工補綴弁と送達カテーテルとの間に存在する。追加の接続点が、図7Aに見られるように、6つの接続点が存在するように、タブを心室アンカ上に追加すること等によって、使用され得る。任意の数の接続点が、使用され得、交連上または心室アンカ上のコネクタの任意の組み合わせが、使用され得る。
【0086】
図11は、人工補綴弁と送達カテーテルとの間の解放可能接続の側面図を示し、人工補綴弁が送達カテーテルと解放可能に結合されることを可能にする係止機構の例をハイライトする。
【0087】
送達カテーテル1100は、内側シャフト1106の上を覆ってスライド可能に配置された中間シャフト1104の上を覆ってスライド可能に配置された外側シース1102を含む。全3つのシャフトは、互いに対して近位または遠位に移動し得る。外側シース1102は、人工補綴弁1116を格納する管腔を含む。人工補綴弁1116は、本明細書に開示される人工補綴弁のいずれかであり得る。この図は、送達カテーテルに解放可能に結合される人工補綴弁の部分のみを示す。弁の残りは、便宜上、省略されている。スロット1110を伴うハブ1108は、中間シャフトに結合される。キャップまたはディスク1112は、内側シャフト1106に結合される。マッシュルーム頭部またはT形状の頭部等のタブ1114は、ハブ内のスロット1110内に嵌まり得、キャップ1112がハブと並置されると、タブ1114は、捕捉され、したがって、人工補綴弁は、送達カテーテルに結合される。人工補綴弁が完全に展開され、位置付けられると、内側シャフト1106は、中間シャフト1104に対して移動させられ得、したがって、キャップは、ハブから離れるように移動させられ、それによって、タブ1114が、スロット1110から解放し、人工補綴弁を送達カテーテルから結合解除することを可能にする。
【0088】
図12A-12Bは、人工補綴弁を送達カテーテルと解放可能に結合するための係止機構の別の例を図示する。
【0089】
図12Aは、送達カテーテル1200を示し、それは、人工補綴弁を格納する外側シース(図示せず)と、外側シース内にスライド可能に配置された中間シャフト1202と、中間シャフト1202内にスライド可能に配置された内側シャフト1210とを含む。キャップ1206が、中間シャフト1202に結合され、ハブ1208が、ハブから近位に、かつ送達カテーテル1200の縦軸と平行に延びているピン1212を有する。ここでは、送達カテーテルと解放可能に結合される人工補綴弁1204のアームまたは部分のみが、示される。人工補綴弁1204は、本明細書に開示される例のいずれかであり得、タブの先端を通して開口を伴うタブ1214を含む。ピン1212は、キャップがピンと並置されると、開口内に配置され、人工補綴弁を送達カテーテルと解放可能に結合し得る。
【0090】
図12Bは、人工補綴弁1204の送達カテーテル1200からの解放を示す。ここでは、中間シャフト1202は、近位に後退させられるか、または、内側シャフト1210は、遠位に前進させられるか、または、シャフト1202、1210の近位および遠位運動の両方の組み合わせが、キャップ1206をピン1212から離れるように移動させ、人工補綴弁1204上のコネクタタブ内の開口1214が、ピンからスライドして外れ、それによって、人工補綴弁を送達カテーテルから結合解除することを可能にする。
【0091】
人工補綴物を送達カテーテルに結合し、それから結合解除するための係止機構の例のいずれかでは、人工補綴弁を再捕捉することが望ましくあり得る。これは、人工補綴弁が送達カテーテルから解放されるまで、随時、遂行され得る。したがって、人工補綴物が、再位置付けを要求する場合、またはある他の理由から、医師が、インプラント人工補綴物を埋め込まないことを決定する場合、オペレータは、人工補綴物が、凹面が下流に面したその不偏形状に戻ることを可能にし得、人工補綴物は、その折り畳まれた構成において再シース)され、拘束され得る。再位置付けまたは人工補綴物を展開するための決定が行われると、展開手技は、再始動され得る。
【0092】
(送達方法)
【0093】
図13A-13Dは、人工補綴弁を患者内の僧帽弁に送達する方法の例を図示する。
【0094】
図13Aでは、シース1302は、鼠径部内の静脈を通して、または切開を介して経皮的に、およびガイドワイヤを経由して等、当技術分野において公知の技法を使用して、患者の心臓の中に導入される。シース1302は、中隔壁を横断して右心房RAから左心房LAに経中隔的に前進させられる。本明細書に説明される人工補綴弁のいずれか等の人工補綴弁1306を搬送する送達カテーテル1304が、シース1302を通して左心房の中に前進させられる。送達カテーテルの遠位先端は、天然僧帽弁MVに隣接するように、位置付けられ、または操向される。シースは、近位に後退させられるか、または、送達カテーテルが、シースを過ぎて遠位に前進させられ、人工補綴弁1306を部分的に露出させ得る。
【0095】
図13Bでは、シースは、人工補綴弁1306から除去され、それによって、拘束を除去し、人工補綴弁1306が中間構成に拡張することを可能にする。中間構成は、円錐形状または放物面であり、凹面表面は、心室に向かって下向きに面する。円錐の小径部分は、左心房に面し、円錐のより大きい直径部分は、心室に面する。人工補綴弁は、依然として、送達カテーテルに結合され、左心房LA内で僧帽弁MVの上方に配置される。
【0096】
図13Cでは、人工補綴弁1306が、さらに拡張させられ、随意に、遠位圧力が、僧帽弁MVに対して人工補綴物に加えられ、人工補綴物1306は、反転し、それによって、円錐は、ここで、左心房LAに面するその大直径部分と、左心室LVに向かって面するより小さい直径部分とを有する。円錐は、放物面形状であり得、凹面部分は、左心房LAに向かって面し、凸面部分は、左心室に向かって面する。心室アンカタブも、放射状に外向きに拡張し、天然弁の心室部分に係合する。例えば、人工補綴弁は、天然僧帽弁の前部分上の線維三角部に係合する2つの前心室アンカ1308と、心室側上の天然弁の後部分に係合する後心室アンカ1310とを有し得る。後部分が、環状後棚領域を有する場合、後心室アンカは、そこに着地し得る。
【0097】
図13Dでは、人工補綴弁1306は、完全に展開され、天然弁の中に定着させられ、送達カテーテルおよびシースは、患者から除去されている。
【0098】
図14は、天然僧帽弁MV内に配置された人工補綴弁1402を示す。完全に展開されると、円錐のより大きい直径部分は、左心房LA内に置かれ、人工補綴物が左心室の中に移動することを防止する。心室アンカタブは、天然弁の前部分上の線維三角部上に定着するための2つの前アンカタブ1406と、天然弁の後棚等の後部分上に定着する後アンカタブ1404都を含み得る。図14は、心室アンカタブ1404、1406および交連タブ1408の支柱を示すために、カバーを伴わずに、かつ人工補綴弁尖を伴わずに示される。この例では、全3つの心室アンカおよび全3つの交連タブが、前述のもの等の送達カテーテルと解放可能結合するためのアンカタブを含む。
【0099】
図15A-15Dは、図8A-8Cにおける例等の人工補綴弁の別の例示的展開を図示する。
【0100】
図15Aでは、シース1502は、鼠径部内の静脈を通して、または切開を介して経皮的に、およびガイドワイヤを経由して等、当技術分野において公知の技法を使用して、患者の心臓の中に導入される。シース1502は、中隔壁を横断して右心房RAから左心房LAに経中隔的に前進させられる。図8A-8Cにおける弁等の人工補綴弁1506を搬送する送達カテーテル1504が、シース1502を通して左心房の中に前進させられる。送達カテーテルの遠位先端は、天然僧帽弁MVに隣接するように、位置付けられ、または操向される。シースが、近位に後退させられるか、または、送達カテーテルが、シースを過ぎて遠位に前進させられ、人工補綴弁1506を部分的に露出させ得る。
【0101】
図15Bでは、シースは、人工補綴弁1506から除去され、それによって、拘束を除去し、人工補綴弁1506が中間構成に拡張することを可能にする。中間構成は、円錐形状または放物面であり、凹面表面は、心室に向かって下向きに面する。円錐の小径部分は、左心房に面し、円錐のより大きい直径部分は、心室に面する。人工補綴弁は、依然として、送達カテーテルに結合され、左心房LA内で僧帽弁MVの上方に配置される。ウィングまたは花弁1508が、人工補綴弁1506から下向きに軸方向に延び、人工補綴弁の縦軸と実質的に平行であり得る。ウィングまたは花弁は、天然弁のオリフィスを通過する。
【0102】
図15Cでは、人工補綴弁1506が、さらに拡張させられ、随意に、遠位圧力が、僧帽弁MVに対して人工補綴物に加えられ、人工補綴物1506は、反転し、それによって、円錐は、ここで、その大直径部分を左心房LAに面させ、より小さい直径部分を左心室LVに向かって面させる。円錐は、放物面形状であり得、凹面部分は、左心房LAに向かって面し、凸面部分は、左心室に向かって面する。心室アンカタブも、存在する場合、放射状に外向きに拡張し、天然弁の心室部分に係合する。例えば、人工補綴弁は、天然僧帽弁の前部分上の線維三角部に係合する2つの前心室アンカと、心室側上の天然弁の後部分に係合する後心室アンカとを有し得る。後部分が、環状後棚領域を有する場合、後心室アンカは、それに着地し得る。ウィングまたは花弁1508は、放射状に外向きに拡張し、したがって、それらは、人工補綴物の縦軸に垂直または別様に横方向であり、心室表面上の僧帽弁の底部に係合し、さらに、デバイスを定着させ得る下側フランジを形成し、また、天然弁尖を捕捉することに役立つ。
【0103】
図15Dでは、人工補綴弁1506は、完全に展開され、天然弁の中に定着させられ、送達カテーテルおよびシースは、患者から除去されている。
【0104】
(カバー類)
【0105】
図の多くは、人工補綴弁尖が取り付けられていない、カバーもフレームに取り付けられていない拡張可能人工補綴弁フレームのみを図示する。しかしながら、上記に議論されるように、組織、ポリマー、または布地等のカバーが、心室アンカに適用され、穿刺せずに、または外傷を組織に引き起こさずに、天然弁内の組織に係合し得る足場を形成することに役立ち得る。
【0106】
加えて、本明細書に開示される例のいずれかでは、カバーは、フレームの全てまたはフレームの一部に適用され得る。カバーは、Dacron等の布地、または心膜組織等の組織、または任意の他の生体適合性材料であり得る。カバーは、フレームに適用され、フレームの周囲の弁周囲漏出を防止し、かつ組織内部成長を促進し、さらに、人工補綴物を天然解剖学的構造に定着させ、固定することに役立ち得る。例えば、カバーは、心房床に対して置かれる円錐形フランジに適用され得るか、または、弁輪の心室部分に対して置かれる心室フランジに適用され得るか、または、カバーは、両方に適用され得る。フレーム全体が覆われ得るか、または一部のみが覆われ得る。
【0107】
議論されるように、例は、概して、便宜上、人工補綴弁フレームに取り付けられる人工補綴弁尖を図示しない。しかしながら、人工補綴弁尖は、当技術分野において公知であり、一般に、2つまたは3つの人工補綴弁尖が、フレームに適用され、二尖弁または三尖弁人工補綴弁のいずれかを形成し得る。当然ながら、単一人工補綴弁尖、または4つの弁尖、または4つを上回る弁尖等の任意の数の弁尖が、使用され得る。人工補綴弁尖は、心膜組織等の組織であり得るか、または、それらは、布地、ポリマー、または当技術分野において公知の他の材料であり得る。
(注記および例)
【0108】
以下の非限定的例は、とりわけ、本主題のある側面を詳述し、本明細書で議論される課題を解決し、利点を提供する。
【0109】
例1では、患者の天然弁を治療するための薄型人工補綴弁は、拡張構成、折り畳まれた構成、心房端部、および心室端部を有する放射状に拡張可能なフレームであって、折り畳まれた構成において、拡張可能フレームは、天然弁への低侵襲性送達のためにサイズおよび形状を決定され、拡張構成において、拡張可能フレームは、天然弁に係合するように構成され、心房端部は、拡張構成において、裾広がり形状を形成し、天然弁の心房表面に係合するように構成され、裾広がり形状は、最初に拡張させられると、天然弁の心室に向かって下向きに裾広がりになり、その後、裾広がり形状の反転が続き、完全に拡張させられると、心室に向かって先細りになるテーパ状形状を形成し、天然弁の心房に向かって裾広がりになる、放射状に拡張可能なフレームと、遊離端、拡張可能フレームの内側部分に結合された対向する端、開放構成、および閉鎖構成を有する複数の人工補綴弁尖であって、開放構成において、複数の人工補綴弁尖の遊離端は、互いに比較的に離れるように配置され、それによって、流体が順行性方向に流動する開口を形成し、閉鎖構成において、遊離端は、開放構成におけるより一緒に近づいて配置され、それによって、開口を実質的に閉鎖し、流体がそれを通して逆行性方向に流動することを防止する、複数の人工補綴弁尖とを備えている。
【0110】
例2は、例1の人工補綴弁であり、各々が遊離端と対向する端とを有する複数の交連柱をさらに備え、対向する端は、拡張可能フレームに結合され、遊離端は、拡張可能フレームが拡張構成にあるとき、心室に面し、複数の人工補綴弁尖は、複数の交連柱に結合されている。
【0111】
例3は、例1-2のいずれかに記載の人工補綴弁であり、遊離端は、それを通して延びている複数の開口を備え、複数の開口は、複数の人工補綴弁尖を複数の交連柱に固定する縫合糸フィラメントを受け取るようにサイズを決定されている。
【0112】
例4は、例1-3のいずれかに記載の人工補綴弁であり、複数の交連柱の各々は、遊離端に結合された係止タブを有し、係止タブは、人工補綴弁を送達カテーテルと解放可能に結合するように構成されている。
【0113】
例5は、例1-4のいずれかに記載の人工補綴弁であり、拡張可能フレームの心室端部に結合された複数の心室アンカをさらに備え、心室アンカは、拡張構成において、拡張可能フレームから放射状に外向きに延び、天然弁の心室側に係合するように構成されている。
【0114】
例6は、例1-5のいずれかに記載の人工補綴弁であり、複数の心室アンカのうちの少なくとも1つおよび複数の交連柱のうちの少なくとも1つは、複数の支柱によって境を限られた拡張可能フレームにおける共通閉鎖セル内に配置されている。
【0115】
例7は、例1-6のいずれかに記載の人工補綴弁であり、複数の心室アンカの各々は、心室アンカの下方部分に結合された係止タブを備え、心室アンカ上の係止タブは、人工補綴弁を送達カテーテルと解放可能に結合するように構成されている。
【0116】
例8は、例1-7のいずれかに記載の人工補綴弁であり、複数の心室アンカは、天然心臓内の天然僧帽弁の前部分上の線維三角部に係合するように構成された前心室アンカと、僧帽弁の弁輪の後部分または天然弁の後心室部分に係合するように構成された後心室アンカとを備えている。
【0117】
例9は、例1-8のいずれかに記載の人工補綴弁であり、複数の心室アンカは、拡張可能フレームに結合された少なくとも2つの支柱の上を覆って配置されたカバー要素を備えている。
【0118】
例10は、例1-9のいずれかに記載の人工補綴弁であり、複数の心室アンカは、拡張可能フレームに結合されたV形状の支柱を備え、V形状の支柱の頂点は、組織に係合するように構成され、人工補綴弁は、V形状の支柱の上を覆って配置されたカバー要素をさらに備えている。
【0119】
例11は、例1-10のいずれかに記載の人工補綴弁であり、拡張可能フレームは、一緒に結合され、放物面形状を形成する複数の環状リングを備えている。
【0120】
例12は、例1-11のいずれかに記載の人工補綴弁であり、複数の環状リングは、一緒に結合された減少する直径を有する複数の同心リングを備えている。
【0121】
例13は、例1-12のいずれかに記載の人工補綴弁であり、隣接する環状リングは、一緒に結合され、拡張可能フレームの周りに円周方向に延びている複数の閉鎖セルを形成している。
【0122】
例14は、例1-13のいずれかに記載の人工補綴弁であり、心室端部上の複数の心室ウィングをさらに備え、複数の心室ウィングは、拡張構成と、折り畳まれた構成とを有し、折り畳まれた構成において、複数の心室ウィングは、人工補綴弁の縦軸と実質的に平行であり、拡張構成において、複数の心室ウィングは、縦軸から放射状に外向きに延び、天然弁の心室表面に係合するように構成されたフランジを形成する。
【0123】
例15は、患者の天然弁を治療するための薄型人工補綴弁システムであって、システムは、例1-14のいずれかに記載の人工補綴弁と、人工補綴弁に解放可能に結合された送達カテーテルとを備え、送達カテーテルは、人工補綴弁を天然弁に送達するように構成されている。
【0124】
例16は、例15に記載のシステムであり、送達カテーテルは、人工補綴弁に解放可能に係合するための係止要素を備えている。
【0125】
例17は、人工補綴弁を患者の心臓内の天然弁に送達する方法であって、方法は、人工補綴弁を搬送する送達カテーテルを提供することと、人工補綴弁を天然弁に隣接して位置付けることと、人工補綴弁を部分的に展開し、したがって、人工補綴弁は、天然弁の上方に配置される裾広がり形状を形成し、心臓の心室に向かって裾広がりになる、ことと、裾広がり形状を反転させ、したがって、初期裾広がり形状は、天然弁の上方に配置されたテーパ状形状となり、心室に向かって先細りになる、ことと、人工補綴弁の心室端部上の複数の心室アンカまたは心室ウィングを天然弁の心室表面に係合するように放射状に拡張させることと、人工補綴弁を送達カテーテルから解放することとを含む。
【0126】
例18は、例17に記載の方法であり、複数の心室アンカまたは心室ウィングを放射状に拡張させることは、複数の心室アンカのうちの少なくともいくつかを天然弁の線維三角部または天然弁の後心室部分上に定着させることを含む。
【0127】
例19は、例17-18のいずれかに記載の方法であり、複数の心室アンカまたは心室ウィングを放射状に拡張させることは、複数の心室ウィングを人工補綴弁の縦軸と実質的に平行である位置から、縦軸から放射状に外向きに延びている位置まで放射状に拡張させ、複数の心室ウィングと天然弁の心室表面を係合することを含む。
【0128】
例20は、例17-19のいずれかに記載の方法であり、人工補綴弁を横断した逆流を低減させること、または排除することをさらに含む。
【0129】
例21は、例17-20のいずれかに記載の方法であり、天然弁は、僧帽弁である。
【0130】
例22は、例17-21のいずれかに記載の方法であり、人工補綴弁を送達カテーテルから解放することは、人工補綴弁上の複数の交連柱を送達カテーテルから係合解除することを含む。
【0131】
例23は、例17-22のいずれかに記載の方法であり、人工補綴弁を送達カテーテルから解放することは、複数の心室アンカ上の複数の係止タブを送達カテーテルから係合解除することを含む。
【0132】
例24では、例1-23のうちの任意の1つまたは任意の組み合わせの装置または方法は、随意に、列挙される全ての要素またはオプションが、使用または選択するために利用可能であるように構成されることができる。
【0133】
上で詳述される実施形態は、発明を実施するための形態の一部を形成する付随の図面の参照を含む。図面は、例証として、本発明が実践され得る具体的実施形態を示す。これらの実施形態は、本明細書では、「例」とも称される。そのような例は、図示または説明されるものに加え、要素を含むことができる。しかしながら、本発明者らは、図示または説明されるそれらの要素のみが提供される例も想定する。さらに、本発明者らは、本明細書に図示または説明される特定の例(またはその1つ以上の側面)に対して、または他の例(またはその1つ以上の側面)に対してのいずれかにおいて、図示または説明されるそれらの要素(またはその1つ以上の側面)の任意の組み合わせまたは順列を使用する例も想定する。
【0134】
本書とそのように参照することによって組み込まれる任意の文書との間の矛盾する使用の場合、本書における使用が、優先される。
【0135】
本書では、用語「a」または「an」は、特許文書において一般的であるように、「少なくとも1つ」または「1つ以上の」の任意の他の事例または使用から独立して、1つ以上のものを含むために使用される。本書では、用語「または」は、別様に示されない限り、非排他的である、すなわち、「AまたはB」が、「Aを含むが、Bを含まない」、「Bを含むが、Aを含まない」、および「AおよびBを含む」ものを指すためように使用される。本書では、用語「including(~を含む)」および「in which」は、それぞれの用語「comprising(~を備えている)」および「wherein」の平易な英語均等物として使用される。また、以下の請求項では、用語「including(~を含む)」および「comprising(~を備えている)」は、非制限的であり、すなわち、請求項におけるそのような用語の後のそれらの列挙されたものに加え、要素を含むシステム、デバイス、物品、組成物、調合物、またはプロセスも、依然として、その請求項の範囲内に該当すると見なされる。さらに、以下の請求項では、用語「第1」、「第2」、および「第3」等は、単に、標識として使用され、その目的語に関して数値要件を課すことを意図するものではない。
【0136】
上記の説明は、制限的ではなく、例証的であるものと意図される。例えば、上記に説明される例(またはその1つ以上の側面)は、互いに組み合わせて使用され得る。他の実施形態も、上記の説明を精査することに応じて、当業者等によって、使用されることができる。要約は、読者が、本技術的開示の性質を迅速に確認することを可能にするために提供される。これは、請求項の範囲または意味を解釈または限定するために使用されるものではないことを理解されたい。上記の発明を実施するための形態では、種々の特徴は、一緒に群化され、本開示を簡潔にし得る。これは、請求されない開示される特徴が任意の請求項に不可欠であることを意図するものとして解釈されるべきではない。むしろ、本発明の主題は、特定の開示される実施形態の全て未満の特徴にあり得る。したがって、以下の請求項は、本明細書では、例または実施形態として、発明を実施するための形態の中に組み込まれ、各請求項は、別個の実施形態として独立し、そのような実施形態は、種々の組み合わせまたは順列において、互いに組み合わせられることができることが想定される。本発明の範囲は、そのような請求項が権利を与えられる、均等物の全範囲とともに、添付の請求項を参照して決定されるべきである。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B-8C】
図8D
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図10A
図10B
図10C
図11
図12A
図12B
図13A
図13B
図13C
図13D
図14
図15A
図15B
図15C
図15D
【手続補正書】
【提出日】2022-02-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の天然弁を治療するための薄型人工補綴弁であって、前記弁は、
拡張構成、折り畳まれた構成、心房端部、および心室端部を有する放射状に拡張可能なフレームであって、
前記折り畳まれた構成において、前記拡張可能フレームは、前記天然弁への低侵襲性送達のためにサイズおよび形状を決定され、
前記拡張構成において、前記拡張可能フレームは、前記天然弁に係合するように構成され、
前記心房端部は、前記拡張構成において、裾広がり形状を形成し、前記心房端部は、前記天然弁の心房表面に係合するように構成され、
前記裾広がり形状は、最初に拡張させられると、前記天然弁の心室に向かって下向きに裾広がりになり、その後、前記裾広がり形状の反転が続き、完全に拡張させられると、前記心室に向かって先細りになるテーパ状形状を形成し、前記天然弁の心房に向かって裾広がりになる、
放射状に拡張可能なフレームと、
遊離端、前記拡張可能フレームの内側部分に結合された対向する端、開放構成、および閉鎖構成を有する複数の人工補綴弁尖と
を備え、
前記開放構成において、前記複数の人工補綴弁尖の前記遊離端は、互いに比較的に離れるように配置され、それによって、流体が順行性方向に流動する開口を形成し、
前記閉鎖構成において、前記遊離端は、前記開放構成におけるより一緒に近づいて配置され、それによって、前記開口を実質的に閉鎖し、前記流体が前記開口を通って逆行性方向に流動することを防止する、人工補綴弁。
【請求項2】
各々が遊離端と対向する端とを有する複数の交連柱をさらに備え、前記対向する端は、前記拡張可能フレームに結合され、前記遊離端は、前記拡張可能フレームが前記拡張構成にあるとき、前記心室に面し、前記複数の人工補綴弁尖は、前記複数の交連柱に結合されている、請求項1に記載の人工補綴弁。
【請求項3】
前記遊離端は、それを通して延びている複数の開口を備え、前記複数の開口は、前記複数の人工補綴弁尖を前記複数の交連柱に固定する縫合糸フィラメントを受け取るようにサイズを決定されている、請求項2に記載の人工補綴弁。
【請求項4】
前記複数の交連柱の各々は、前記遊離端に結合された係止タブを有し、前記係止タブは、前記人工補綴弁を送達カテーテルと解放可能に結合するように構成されている、請求項2に記載の人工補綴弁。
【請求項5】
前記拡張可能フレームの前記心室端部に結合された複数の心室アンカをさらに備え、前記心室アンカは、前記拡張構成において、前記拡張可能フレームから放射状に外向きに延び、前記天然弁の心室側に係合するように構成されている、請求項1に記載の人工補綴弁。
【請求項6】
前記複数の心室アンカのうちの少なくとも1つと前記複数の交連柱のうちの少なくとも1つとは、複数の支柱によって境を限られた前記拡張可能フレームにおける共通閉鎖セル内に配置されている、請求項5に記載の人工補綴弁。
【請求項7】
前記複数の心室アンカの各々は、前記心室アンカの下方部分に結合された係止タブを備え、前記心室アンカ上の係止タブは、前記人工補綴弁を送達カテーテルと解放可能に結合するように構成されている、請求項5に記載の人工補綴弁。
【請求項8】
前記複数の心室アンカは、前記天然心臓内の天然僧帽弁の前部分上の線維三角部に係合するように構成された前心室アンカと、前記僧帽弁の弁輪の後部分または前記天然弁の後心室部分に係合するように構成された後心室アンカとを備えている、請求項5に記載の人工補綴弁。
【請求項9】
前記複数の心室アンカは、前記拡張可能フレームに結合された少なくとも2つの支柱の上を覆って配置されたカバー要素を備えている、請求項5に記載の人工補綴弁。
【請求項10】
前記複数の心室アンカは、前記拡張可能フレームに結合されたV形状の支柱を備え、前記V形状の支柱の頂点は、組織に係合するように構成され、前記人工補綴弁は、前記V形状の支柱の上を覆って配置されたカバー要素をさらに備えている、請求項5に記載の人工補綴弁。
【請求項11】
前記拡張可能フレームは、一緒に結合され、放物面形状を形成する複数の環状リングを備えている、請求項1に記載の人工補綴弁。
【請求項12】
前記複数の環状リングは、一緒に結合された減少する直径を有する複数の同心リングを備えている、請求項11に記載の人工補綴弁。
【請求項13】
隣接する環状リングは、一緒に結合され、前記拡張可能フレームの周りに円周方向に延びている複数の閉鎖セルを形成している、請求項11に記載の人工補綴弁。
【請求項14】
前記心室端部上の複数の心室ウィングをさらに備え、前記複数の心室ウィングは、拡張構成と、折り畳まれた構成とを有し、
前記折り畳まれた構成において、前記複数の心室ウィングは、前記人工補綴弁の縦軸と実質的に平行であり、
前記拡張構成において、前記複数の心室ウィングは、前記縦軸から放射状に外向きに延び、前記天然弁の心室表面に係合するように構成されたフランジを形成している、請求項1に記載の人工補綴弁。
【請求項15】
患者の天然弁を治療するための薄型人工補綴弁システムであって、前記システムは、
前記請求項1に記載の人工補綴弁と、
前記人工補綴弁に解放可能に結合された送達カテーテルと
を備え、
前記送達カテーテルは、前記人工補綴弁を前記天然弁に送達するように構成されている、システム。
【請求項16】
前記送達カテーテルは、前記人工補綴弁に解放可能に係合するための係止要素を備えている、請求項15に記載のシステム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明はさらに、例えば、以下を提供する。
(項目1)
患者の天然弁を治療するための薄型人工補綴弁であって、前記弁は、
拡張構成、折り畳まれた構成、心房端部、および心室端部を有する放射状に拡張可能なフレームであって、
前記折り畳まれた構成において、前記拡張可能フレームは、前記天然弁への低侵襲性送達のためにサイズおよび形状を決定され、
前記拡張構成において、前記拡張可能フレームは、前記天然弁に係合するように構成され、
前記心房端部は、前記拡張構成において、裾広がり形状を形成し、前記心房端部は、前記天然弁の心房表面に係合するように構成され、
前記裾広がり形状は、最初に拡張させられると、前記天然弁の心室に向かって下向きに裾広がりになり、その後、前記裾広がり形状の反転が続き、完全に拡張させられると、前記心室に向かって先細りになるテーパ状形状を形成し、前記天然弁の心房に向かって裾広がりになる、
放射状に拡張可能なフレームと、
遊離端、前記拡張可能フレームの内側部分に結合された対向する端、開放構成、および閉鎖構成を有する複数の人工補綴弁尖と
を備え、
前記開放構成において、前記複数の人工補綴弁尖の前記遊離端は、互いに比較的に離れるように配置され、それによって、流体が順行性方向に流動する開口を形成し、
前記閉鎖構成において、前記遊離端は、前記開放構成におけるより一緒に近づいて配置され、それによって、前記開口を実質的に閉鎖し、前記流体が前記開口を通って逆行性方向に流動することを防止する、人工補綴弁。
(項目2)
各々が遊離端と対向する端とを有する複数の交連柱をさらに備え、前記対向する端は、前記拡張可能フレームに結合され、前記遊離端は、前記拡張可能フレームが前記拡張構成にあるとき、前記心室に面し、前記複数の人工補綴弁尖は、前記複数の交連柱に結合されている、項目1に記載の人工補綴弁。
(項目3)
前記遊離端は、それを通して延びている複数の開口を備え、前記複数の開口は、前記複数の人工補綴弁尖を前記複数の交連柱に固定する縫合糸フィラメントを受け取るようにサイズを決定されている、項目2に記載の人工補綴弁。
(項目4)
前記複数の交連柱の各々は、前記遊離端に結合された係止タブを有し、前記係止タブは、前記人工補綴弁を送達カテーテルと解放可能に結合するように構成されている、項目2に記載の人工補綴弁。
(項目5)
前記拡張可能フレームの前記心室端部に結合された複数の心室アンカをさらに備え、前記心室アンカは、前記拡張構成において、前記拡張可能フレームから放射状に外向きに延び、前記天然弁の心室側に係合するように構成されている、項目1に記載の人工補綴弁。
(項目6)
前記複数の心室アンカのうちの少なくとも1つと前記複数の交連柱のうちの少なくとも1つとは、複数の支柱によって境を限られた前記拡張可能フレームにおける共通閉鎖セル内に配置されている、項目5に記載の人工補綴弁。
(項目7)
前記複数の心室アンカの各々は、前記心室アンカの下方部分に結合された係止タブを備え、前記心室アンカ上の係止タブは、前記人工補綴弁を送達カテーテルと解放可能に結合するように構成されている、項目5に記載の人工補綴弁。
(項目8)
前記複数の心室アンカは、前記天然心臓内の天然僧帽弁の前部分上の線維三角部に係合するように構成された前心室アンカと、前記僧帽弁の弁輪の後部分または前記天然弁の後心室部分に係合するように構成された後心室アンカとを備えている、項目5に記載の人工補綴弁。
(項目9)
前記複数の心室アンカは、前記拡張可能フレームに結合された少なくとも2つの支柱の上を覆って配置されたカバー要素を備えている、項目5に記載の人工補綴弁。
(項目10)
前記複数の心室アンカは、前記拡張可能フレームに結合されたV形状の支柱を備え、前記V形状の支柱の頂点は、組織に係合するように構成され、前記人工補綴弁は、前記V形状の支柱の上を覆って配置されたカバー要素をさらに備えている、項目5に記載の人工補綴弁。
(項目11)
前記拡張可能フレームは、一緒に結合され、放物面形状を形成する複数の環状リングを備えている、項目1に記載の人工補綴弁。
(項目12)
前記複数の環状リングは、一緒に結合された減少する直径を有する複数の同心リングを備えている、項目11に記載の人工補綴弁。
(項目13)
隣接する環状リングは、一緒に結合され、前記拡張可能フレームの周りに円周方向に延びている複数の閉鎖セルを形成している、項目11に記載の人工補綴弁。
(項目14)
前記心室端部上の複数の心室ウィングをさらに備え、前記複数の心室ウィングは、拡張構成と、折り畳まれた構成とを有し、
前記折り畳まれた構成において、前記複数の心室ウィングは、前記人工補綴弁の縦軸と実質的に平行であり、
前記拡張構成において、前記複数の心室ウィングは、前記縦軸から放射状に外向きに延び、前記天然弁の心室表面に係合するように構成されたフランジを形成している、項目1に記載の人工補綴弁。
(項目15)
患者の天然弁を治療するための薄型人工補綴弁システムであって、前記システムは、
前記項目1に記載の人工補綴弁と、
前記人工補綴弁に解放可能に結合された送達カテーテルと
を備え、
前記送達カテーテルは、前記人工補綴弁を前記天然弁に送達するように構成されている、システム。
(項目16)
前記送達カテーテルは、前記人工補綴弁に解放可能に係合するための係止要素を備えている、項目15に記載のシステム。
(項目17)
人工補綴弁を患者の心臓内の天然弁に送達する方法であって、前記方法は、
前記人工補綴弁を搬送する送達カテーテルを提供することと、
前記人工補綴弁を前記天然弁に隣接して位置付けることと、
前記人工補綴弁が、前記天然弁の上方に配置され、前記心臓の心室に向かって裾広がりになる裾広がり形状を形成するように、前記人工補綴弁を部分的に展開することと、
前記初期裾広がり形状が、前記天然弁の上方に配置され、前記心室に向かって先細りになるテーパ状形状となるように、前記裾広がり形状を反転させることと、
前記人工補綴弁の心室端部上の複数の心室アンカまたは心室ウィングを前記天然弁の心室表面に係合するように放射状に拡張させることと、
前記人工補綴弁を前記送達カテーテルから解放することと
を含む、方法。
(項目18)
前記複数の心室アンカまたは心室ウィングを放射状に拡張させることは、前記複数の心室アンカのうちの少なくともいくつかを前記天然弁の線維三角部または前記天然弁の後心室部分上に定着させることを含む、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記複数の心室アンカまたは心室ウィングを放射状に拡張させることは、前記人工補綴弁の縦軸と実質的に平行である位置から、前記縦軸から放射状に外向きに延びている位置まで複数の心室ウィングを放射状に拡張させ、前記複数の心室ウィングを前記天然弁の心室表面と係合することを含む、項目17に記載の方法。
(項目20)
前記人工補綴弁を横断した逆流を低減させること、または排除することをさらに含む、項目17に記載の方法。
(項目21)
前記天然弁は、僧帽弁である、項目17に記載の方法。
(項目22)
前記人工補綴弁を前記送達カテーテルから解放することは、前記人工補綴弁上の複数の交連柱を前記送達カテーテルから係合解除することを含む、項目17に記載の方法。
(項目23)
前記人工補綴弁を前記送達カテーテルから解放することは、前記複数の心室アンカ上の複数の係止タブを前記送達カテーテルから係合解除することを含む、項目17に記載の方法。
図面では、それらは、必ずしも、正確な縮尺で描かれておらず、同様の番号は、異なる図において類似構成要素を説明し得る。異なる文字の添え字を有する、同様の番号は、類似構成要素の異なる事例を表し得る。図面は、概して、一例として、限定ではないが、本書に議論される種々の実施形態を図示する。
【国際調査報告】