(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-26
(54)【発明の名称】低粘度の酸化グラフェンスラリー及びその製造方法、酸化グラフェン膜及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 32/198 20170101AFI20220819BHJP
B01J 13/00 20060101ALI20220819BHJP
C04B 35/52 20060101ALI20220819BHJP
【FI】
C01B32/198
B01J13/00 B
C04B35/52
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022512308
(86)(22)【出願日】2020-08-17
(85)【翻訳文提出日】2022-02-21
(86)【国際出願番号】 CN2020109442
(87)【国際公開番号】W WO2021032039
(87)【国際公開日】2021-02-25
(31)【優先権主張番号】201910778811.7
(32)【優先日】2019-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522066816
【氏名又は名称】常州富▲シ▼科技股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】▲盧▼ 静
(72)【発明者】
【氏名】周 歩存
(72)【発明者】
【氏名】周 仁杰
(72)【発明者】
【氏名】李 峰
【テーマコード(参考)】
4G065
4G146
【Fターム(参考)】
4G065AA08
4G065AB02X
4G065BB01
4G065BB06
4G065CA11
4G065CA12
4G065DA06
4G065EA01
4G065EA03
4G065EA04
4G065FA02
4G065FA03
4G146AA01
4G146AA15
4G146AB07
4G146AC01B
4G146AC02A
4G146AC02B
4G146AC22B
4G146AC26B
4G146AC27A
4G146AC30A
4G146AC30B
4G146CB10
(57)【要約】
低粘度の酸化グラフェンスラリー及びその製造方法、酸化グラフェン膜及びその製造方法、グラフェン熱伝導膜及びその製造方法を提供する。主に採用する方法は、酸化グラフェンを高圧剪断、高速衝突及び強いキャビテーションによって超微細化し、酸化グラフェンのシート径を減少させ、酸化グラフェンスラリーの粘度を低下させ、酸化グラフェンスラリーの固形分を向上させることにより、酸化グラフェンスラリーを塗布して酸化グラフェン膜を形成する効率を向上させることである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形分は、5~10%であり、
好ましくは、粘度は、10000~50000mPa・sであることを特徴とする、低粘度の酸化グラフェンスラリー。
【請求項2】
粘度は、20000mPa・sであり、
好ましくは、固形分は、8%であり、
好ましくは、平均直径が2~3μmの酸化グラフェンナノプレートレットであることを特徴とする、請求項1に記載の低粘度の酸化グラフェンスラリー。
【請求項3】
酸化グラフェンと溶媒を混合し、分散させ、超微細化することにより、酸化グラフェンの平均直径を減少させて、低粘度の酸化グラフェンスラリーを得ることを特徴とする、低粘度の酸化グラフェンスラリーの製造方法。
【請求項4】
前記酸化グラフェンをHummers法で製造し、
好ましくは、前記酸化グラフェンにおいて、酸素と炭素のモル比は、0.6~0.7であり、好ましくは0.65であり、
好ましくは、前記溶媒は水であり、
好ましくは、前記分散の線速度を2~20m/sとし、好ましくは5m/sとし、
好ましくは、前記分散の時間を1~5hとし、好ましくは2hとし、
好ましくは、前記超微細化の方法は、酸化グラフェンと溶媒との混合物に圧力をかけることにより、混合物がスリットを通過し、スリットを通過する過程において高圧剪断と高速衝突を受け、かつスリットを通過した後、圧力エネルギーの瞬間的な放出により強いキャビテーションを発生させることを含み、
好ましくは、かけられた圧力を50~250MPaとし、好ましくは100MPaとし、
好ましくは、酸化グラフェンの平均直径が2~3μmとなるまで超微細化し、
好ましくは、前記酸化グラフェンスラリーの超微細化前の粘度は、100000~200000mPa・sであり、
好ましくは、前記酸化グラフェンスラリーの超微細化後の粘度は、10000~50000mPa・sであり、好ましくは20000mPa・sであり、
好ましくは、前記酸化グラフェンスラリーの固形分は、5~10%であり、好ましくは8%であることを特徴とする、請求項3に記載の低粘度の酸化グラフェンスラリーの製造方法。
【請求項5】
酸化グラフェンの平均直径が2~3μmであることを特徴とする、酸化グラフェン膜。
【請求項6】
厚さは、50~500μmであり、好ましくは200μmであり、
好ましくは、密度は、1.0-2.0g/cm
3であり、好ましくは1.5g/cm
3であることを特徴とする、請求項5に記載の酸化グラフェン膜。
【請求項7】
請求項3~5のいずれか一項に記載の方法で低粘度の酸化グラフェンスラリーを製造し、脱泡処理した後、脱泡された酸化グラフェンスラリーを基材の表面に塗布し、乾燥させ、剥離して、酸化グラフェン膜を得ることを特徴とする、酸化グラフェン膜の製造方法。
【請求項8】
前記脱泡は、真空脱泡であり、前記真空脱泡の真空値は、-95~-50kPaであり、好ましくは-80kPaであり、
好ましくは、前記脱泡をインライン連続脱泡機で行い、
好ましくは、前記塗布をナイフ塗布又は押出塗布の方式で行い、前記塗布の速度を1~10m/minとし、好ましくは3m/minとし、
好ましくは、前記塗布の厚さを0.5~5.0mmとし、好ましくは1.5mmとし、
好ましくは、前記乾燥の温度を70~130℃とし、好ましくは100℃とし、
好ましくは、前記乾燥の時間を8~80minとし、好ましくは27~30minとし、
好ましくは、前記酸化グラフェン膜の厚さは、50~500μmであり、好ましくは200μmであることを特徴とする、請求項7に記載の酸化グラフェン膜の製造方法。
【請求項9】
熱伝導率は、1000~1600W/m・Kであり、好ましくは1500W/m・Kであり、
好ましくは、密度は、1.5~2.2g/cm
3であり、好ましくは2.0g/cm
3であり、
好ましくは、厚さは、10~150μmであり、好ましくは40μmであることを特徴とする、グラフェン熱伝導膜。
【請求項10】
請求項7又は8の方法で酸化グラフェン膜を製造し、熱処理し、圧延して、グラフェン熱伝導膜を得て、
好ましくは、前記熱処理の温度を、1000~3000℃とし、好ましくは2000℃とし、
好ましくは、前記酸化グラフェン膜の熱処理後の密度は、0.1~1.0g/cm
3であり、好ましくは0.3g/cm
3であり、
好ましくは、前記圧延の圧力を50~200tとし、好ましくは100tとすることを特徴とする、グラフェン熱伝導膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフェン材料の分野に関し、具体的には、熱還元法によりグラフェン熱伝導膜を製造する製造効率を向上させるプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
2004年の発見以来、グラフェンは、その大きな比表面積、高い電気伝導率、優れた化学的安定性及び熱力学的安定性、並びに物理的特性及び機械的特性により、センサデバイス、光電子、エネルギー材料として広く研究され、応用されてきた。
【0003】
従来技術において、熱伝導性能に優れたグラフェン熱伝導膜を製造する主な方法は、Hummers法で製造された酸化グラフェンの濾過ケーキを分散させてスラリーになり、スラリーを基材に塗布し、乾燥させて酸化グラフェン膜を得てから、酸化グラフェン膜を高温で熱還元してグラフェン熱伝導膜を得ることである。
【0004】
しかしながら、酸化グラフェンスラリーは、粘度が高いため、その固形分が最大2.0~4.0%に達する。固形分が低い含有量に制限されるため、酸化グラフェンスラリーの塗布効率が低く、大規模な生産を大幅に制限する。
【0005】
背景技術の部分の内容は、発明者が知っている技術に過ぎず、当然、本分野の従来技術を代表するものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術に存在する課題のうちの1つ以上に対して、本発明が解決しようとする技術的課題は、酸化グラフェンスラリーの塗布効率を向上させることであり、主に採用する方法は、酸化グラフェンを高圧剪断、高速衝突及び強いキャビテーションによって超微細化し、酸化グラフェンの直径を減少させ、酸化グラフェンスラリーの粘度を低下させ、酸化グラフェンスラリーの固形分を増加させることにより、酸化グラフェンスラリーの塗布効率を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る低粘度の酸化グラフェンスラリーは、固形分が5~10%であり、好ましくは8%である。
【0008】
本発明の一態様において、前記酸化グラフェンスラリーの粘度は、10000~50000mPa・sであり、好ましくは20000mPa・sである。
【0009】
粘度が高すぎるか又は低すぎると、いずれも塗布に不利であり、粘度が50000mPa・sよりも高くなると、酸化グラフェンスラリーの流延に不利であり、粘度が10000mPa・sよりも低くなると、酸化グラフェンスラリーの流動性が大きすぎ、塗布の厚さの制御に不利である。
【0010】
好ましくは、前記低粘度の酸化グラフェンスラリーは、酸化グラフェンナノプレートレットであり、平均直径が2~3μmである。
【0011】
本発明に係る低粘度の酸化グラフェンスラリーの製造方法では、酸化グラフェンと溶媒を混合し、分散させ、超微細化することにより、酸化グラフェンの平均直径を減少させて、低粘度の酸化グラフェンスラリーを得る。
【0012】
酸化グラフェンは、非常に豊富な酸素含有官能基を含有し、酸化過程においてシート層の縁部及びシート層の中間に官能基が存在するため、「欠陥」部分が発生し、この欠陥部分は、高圧粘度低下装置(キャビテーション効果、衝撃効果及び剪断効果)の作用で破砕されやすいため、酸化グラフェンの直径を平均17~18μmから2~3μmに減少させることができる。また、酸化グラフェンは、酸素含有官能基が親水性効果を有するため、水に分散することができる。一定の範囲の酸化度で、酸化グラフェンは、直径が小さいほど、受ける内部摩擦力が小さくなり、それに応じて、巨視的に粘度が低下することを表すため、酸化グラフェンスラリーの固形分を増加させて、酸化グラフェンスラリーの基材への塗布効率を向上させることができる。
【0013】
本発明の一態様において、前記酸化グラフェンをHummers法で製造する。
【0014】
好ましくは、前記酸化グラフェンにおいて、酸素と炭素のモル比は、0.6~0.7であり、好ましくは0.65である。
【0015】
好ましくは、前記溶媒は水である。
【0016】
好ましくは、前記分散の線速度を2~20m/sとし、好ましくは5m/sとする。
【0017】
さらに、好ましくは、前記分散の時間を1~5hとし、好ましくは2hとする。
【0018】
分散時、酸化グラフェンのシート層は、水中でばらばらになり、均一に分散する。
【0019】
本発明の一態様において、超微細化の方法は、酸化グラフェンと溶媒との混合物に圧力をかけることにより、混合物がスリットを通過し、スリットを通過する過程において高圧剪断と高速衝突を受け、かつスリットを通過した後、圧力エネルギーの瞬間的な放出により強いキャビテーションを発生させることを含む。
【0020】
好ましくは、かけられた圧力を50~250MPaとし、好ましくは100MPaとする。
【0021】
好ましくは、酸化グラフェンの平均直径が2~3μmとなるまで超微細化する。
【0022】
超微細化とは、高圧により液体材料に狭いスリットを高速に通過させるとき、圧力を突然放出できる高圧下の狭い領域内で発生した、爆発効果に類似する強いキャビテーション、液体材料がスリットを通過して発生した微細化作用、及びチャンバ内で衝突して発生した高速衝突作用により液体材料を破砕することにより、液体物質又は液体を担体とする固体粒子を超微細化し、酸化グラフェンナノプレートレットを微細化することである。超微細化において酸化グラフェンと溶媒との混合物にかけられた圧力を50~250MPaに設定することにより、酸化グラフェンを直径が平均17~18μmから2~3μmになるように微細化することができ、圧力が小さすぎて、50MPaよりも小さければ、微細化作用が不十分であり、酸化グラフェンの直径が2~3μmに達することができず、粘度低下の効果を達成できず、圧力が250MPaよりも大きければ、機械を破損しやすく、破損頻度が高いほど、製造コストが高くなる。
【0023】
本発明の一態様において、前記酸化グラフェンスラリーの超微細化前の粘度は、100000~200000mPa・sである。
【0024】
好ましくは、前記酸化グラフェンスラリーの超微細化後の粘度は、10000~50000mPa・sであり、好ましくは20000mPa・sである。
【0025】
さらに好ましくは、前記酸化グラフェンスラリーの固形分は、5~10%であり、好ましくは8%である。
【0026】
本発明に係る酸化グラフェン膜は、酸化グラフェンの平均直径が2~3μmである。
【0027】
本発明の一態様において、前記酸化グラフェン膜の厚さは、50~500μmであり、好ましくは200μmである。
【0028】
好ましくは、前記酸化グラフェン膜の密度は、1.0~2.0g/cm3である。
【0029】
本発明に係る酸化グラフェン膜の製造方法では、前記低粘度の酸化グラフェンスラリーの製造方法で低粘度の酸化グラフェンスラリーを製造し、脱泡処理した後、脱泡された酸化グラフェンスラリーを基材の表面に塗布し、乾燥させ、剥離して、酸化グラフェン膜を得る。
【0030】
基材は、酸化グラフェンスラリーを塗布し、乾燥させるための担体であり、酸化グラフェンスラリーを塗布し、乾燥させた後、基材の表面に酸化グラフェン膜を形成する。
【0031】
本発明の一態様において、前記脱泡は、真空脱泡であり、前記真空脱泡の真空値は、-95~-50kPaであり、好ましくは-80kPaである。
【0032】
好ましくは、前記脱泡をインライン連続脱泡機で行う。
【0033】
本発明の一態様において、前記塗布をナイフ塗布又は押出塗布の方式で行い、前記塗布の速度を1~10m/minとし、好ましくは3m/minとする。
【0034】
好ましくは、前記塗布の厚さを0.5~5.0mmとし、好ましくは1.5mmとする。
【0035】
本発明の一態様において、前記乾燥の温度を70~130℃とし、好ましくは100℃とする。
【0036】
好ましくは、前記乾燥の時間を8~80minとし、好ましくは27~30minとする。
【0037】
好ましくは、前記酸化グラフェン膜の厚さは、50~500μmであり、好ましくは200μmである。
【0038】
酸化グラフェンスラリーの固形分が増加するため、塗布の厚さが薄くなり、塗布速度が向上し、単位時間あたりの塗布効率が向上する。乾燥の時間は、塗布機のオーブンの長さ及び塗布速度に応じて調整され、塗布速度の向上により短縮され、酸化グラフェン膜の製造効率を大幅に向上させる。
【0039】
本発明に係るグラフェン熱伝導膜は、熱伝導係数が1000~1600W/m・kであり、好ましくは1500W/m・kである。
【0040】
好ましくは、前記グラフェン熱伝導膜の密度は、1.5~2.2g/cm3であり、好ましくは2.0g/cm3である。
【0041】
好ましくは、前記グラフェン熱伝導膜の厚さは、10~150μmであり、好ましくは40μmである。
【0042】
本発明に係るグラフェン熱伝導膜の製造方法では、前記酸化グラフェン膜の製造方法で酸化グラフェン膜を製造し、熱処理し、圧延して、グラフェン熱伝導膜を得る。
【0043】
好ましくは、前記熱処理の温度を、1000~3000℃とし、好ましくは2000℃とする。
【0044】
好ましくは、前記酸化グラフェン膜の熱処理後の密度は、0.1~1.0g/cm3であり、好ましくは0.3g/cm3である。
【0045】
さらに好ましくは、前記圧延の圧力を50~200tとし、好ましくは100tとする。
【0046】
本発明の有益な効果は、以下のとおりである。
【0047】
本発明は、酸化グラフェンナノプレートレットを微細化することにより、酸化グラフェンの直径を平均17~18μmから2~3μmに減少させ、酸化グラフェンスラリーの粘度を低下させ、スラリーの固形分を5~10%増加させる。以下、本発明の優位性を以下の(1)~(4)により説明する。
【0048】
(1)酸化グラフェンスラリーの固形分が増加するため、塗布の厚さを薄くし、塗布速度を速くすることにより、塗布効率を300%以上向上させ、単位生産能力を大幅に向上させる。
【0049】
(2)塗布の厚さが薄くなるため、乾燥時に高い温度で行っても、酸化グラフェン膜にバブリングを発生させず、酸化グラフェンスラリーの水分含有量が低くなるため、酸化グラフェン膜が水分子をより除去しやすく、乾燥の時間を減少させ、酸化グラフェン膜の製造効率を向上させる。
【0050】
(3)酸化グラフェン膜の製造効率が向上するため、製造コストを大幅に低減し、工業上の大規模な生産に適する。
【0051】
(4)従来技術に比べて、本発明で製造されるグラフェン熱伝導膜は、外観、厚さ、密度、熱伝導係数、凝集力などの各性能試験において正常である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図面は、本発明のさらなる理解を提供するためのものであり、明細書の一部を構成し、本発明の実施例と共に本発明を解釈するために用いられるが、本発明を限定するものではない。
【0053】
【
図1】酸化グラフェンの粘度低下前のAFM概略図である。
【
図2】酸化グラフェンの粘度低下後のAFM概略図である。
【
図3】酸化グラフェンの粘度低下前のAFM粒径分布図であり、横軸は、酸化グラフェンの直径の大きさ(μm)を示し、縦軸は、度数(個)を示す。
【
図4】酸化グラフェンの粘度低下後のAFM粒径分布図であり、横軸は、酸化グラフェンの直径の大きさ(μm)を示し、縦軸は、度数(個)を示す。
【
図5】本発明の第6の実施形態のステップ図である。
【
図6】実施例1の酸化グラフェン膜の実物図である。
【
図7】実施例1のグラフェン熱伝導膜の実物図である。
【
図8】実施例2の酸化グラフェン膜の実物図である。
【
図9】実施例3の酸化グラフェン膜の実物図である。
【
図10】比較例5の酸化グラフェン膜の実物図である。
【
図11】比較例5のグラフェン熱伝導膜の実物図である。
【
図12】6.0mmの厚さの酸化グラフェン膜が100℃で乾燥されるときにバブリングが発生した場合の酸化グラフェン膜の実物図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、いくつかの例示的な実施例を簡単に説明する。当業者が認識できるように、本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、様々な方式で説明された実施例を修正することができる。したがって、図面及び説明は、実質的に、制限的ではなく例示的なものとして考えられる。
【0055】
以下、図面を参照しながら本発明の好ましい実施例を説明するが、ここで説明される好ましい実施例は、本発明を説明し解釈するためのものに過ぎず、本発明を限定するものではないと理解すべきである。
【0056】
本発明の第1の実施形態に係る低粘度の酸化グラフェンスラリーは、固形分が、5~10%、例えば、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、10%などである。好ましい実施形態として、酸化グラフェンスラリーの固形分は、8%である。酸化グラフェンスラリーの粘度は、10000~50000mPa・s、例えば、10000mPa・s、11000mPa・s、12000mPa・s、15000mPa・s、20000mPa・s、22000mPa・s、23000mPa・s、25000mPa・s、30000mPa・s、32000mPa・s、35000mPa・s、40000mPa・s、42000mPa・s、45000mPa・s、48000mPa・s、50000mPa・sなどである。好ましい実施形態として、酸化グラフェンスラリーの粘度は、20000mPa・sである。粘度が高すぎるか又は低すぎると、いずれも塗布に不利であり、粘度が50000mPa・sよりも高くなると、酸化グラフェンスラリーの流延に不利であり、粘度が10000mPa・sよりも低くなると、酸化グラフェンスラリーの流動性が大きすぎ、塗布の厚さの制御に不利である。酸化グラフェンは、酸化グラフェンナノプレートレットであり、平均直径が2~3μm、例えば、2μm、2.1μm、2.2μm、2.3μm、2.4μm、2.5μm、2.6μm、2.7μm、2.8μm、2.9μm、3μmなどである。
【0057】
本発明の第2の実施形態に係る低粘度の酸化グラフェンスラリーの製造方法では、酸化グラフェンと溶媒を混合し、分散させ、超微細化することにより、酸化グラフェンの平均直径を減少させて、低粘度の酸化グラフェンスラリーを得る。
【0058】
酸化グラフェンは、非常に豊富な酸素含有官能基を含有し、酸化過程においてシート層の縁部及びシート層の中間に官能基が存在するため、「欠陥」部分が発生し、この欠陥部分は、高圧粘度低下装置(キャビテーション効果、衝突効果)の作用で破砕されやすいため、酸化グラフェンの直径を平均17~18μmから2~3μmに減少させる。また、酸化グラフェンは、酸素含有官能基が親水性効果を有するため、水に分散することができる。一定の範囲の酸化度で、酸化グラフェンは、直径が小さいほど、受ける内部摩擦力が小さくなり、それに応じて、巨視的に粘度が低下することを表すため、酸化グラフェンスラリーの固形分を増加させて、酸化グラフェンスラリーの基材への塗布効率を向上させることができる。
【0059】
酸化グラフェンをHummers法で製造する。酸化グラフェンにおいて、酸素と炭素のモル比は、0.6~0.7、例えば、0.6、0.61、0.62、0.63、0.64、0.65、0.66、0.67、0.68、0.69などである。好ましい実施形態として、酸化グラフェンの酸素と炭素のモル比は、0.65である。溶媒は水である。分散の線速度を2~20m/s、例えば、2m/s、3m/s、4m/s、5m/s、6m/s、7m/s、8m/s、9m/s、10m/s、11m/s、12m/s、13m/s、14m/s、15m/s、16m/s、17m/s、18m/s、19m/s、20m/sなどとする。好ましい実施形態として、分散の線速度を5m/sとする。
【0060】
分散の時間を1~5h、例えば、1h、1.2h、1.5h、1.8h、2h、2.2h、2.5h、2.8h、3h、3.2h、3.5h、3.8h、4h、4.2h、4.5h、4.8h、5hなどとする。好ましい実施形態として、分散の時間を2hとする。超微細化の方法は、酸化グラフェンと溶媒との混合物に圧力をかけることにより、混合物がスリットを通過し、スリットを通過する過程において高圧剪断と高速衝突を受け、かつスリットを通過した後、圧力エネルギーの瞬間的な放出により強いキャビテーションを発生させることを含む。かけられた圧力を50~250MPa、例えば、50MPa、51MPa、52MPa、53MPa、54MPa、55MPa、56MPa、57MPa、58MPa、59MPa、60MPa、70MPa、80MPa、90MPa、100MPa、110MPa、120MPa、130MPa、140MPa、150MPa、160MPa、170MPa、180MPa、190MPa、200MPa、210MPa、220MPa、230MPa、240MPa、245MPa、246MPa、247MPa、248MPa、249MPa、250MPaなどとする。好ましい実施形態として、超微細化の圧力を100MPaとする。酸化グラフェンの平均直径が2~3μm、例えば、2μm、2.1μm、2.2μm、2.3μm、2.4μm、2.5μm、2.6μm、2.7μm、2.8μm、2.9μm、3μmなどとなるまで超微細化する。
図1から分かるように、50μmのスケールに比べて、酸化グラフェンの直径が大きく、ある酸化グラフェンの直径は25μmに達することができ、右側のバースケールは、酸化グラフェンの高さを示す。
図2から分かるように、20μmのスケールに比べて、酸化グラフェンの直径が小さく、基本的にいずれも3μmよりも小さく、右側のバースケールは、酸化グラフェンの高さを示す。
図3及び
図4に示すように、粘度低下前の酸化グラフェンの直径は15~25μmの区間に集中し、直径の平均値は18.236μmであり、標準偏差は1.012であり、粘度低下後の酸化グラフェンの直径は1.6~4μmの区間に集中し、直径の平均値は2.495μmであり、標準偏差は0.936であり、粘度低下後の酸化グラフェンの直径が減少し、かつ直径の分布がより平均的である。
【0061】
超微細化とは、高圧により液体材料に狭いスリットを高速に通過させるとき、圧力を突然放出できる高圧下の狭い領域内で発生した、爆発効果に類似する強いキャビテーション、液体材料がスリットを通過して発生した微細化作用、及びチャンバ内で衝突して発生した高速衝突作用により液体材料を破砕することにより、液体物質又は液体を担体とする固体粒子を超微細化し、酸化グラフェンナノプレートレットを微細化することである。超微細化において酸化グラフェンと溶媒との混合物にかけられた圧力を50~250MPaに設定することにより、酸化グラフェンを直径が平均17~18μmから2~3μmになるように微細化することができ、圧力が小さすぎて、50MPaよりも小さければ、微細化作用が不十分であり、酸化グラフェンの直径が2~3μmに達することができず、粘度低下の効果を達成できず、圧力が250MPaより大きければ、機械を破損しやすく、破損頻度が高いほど、製造コストが高くなる。
【0062】
酸化グラフェンスラリーの超微細化前の粘度は、100000~200000mPa・s、例えば、100000mPa・s、105000mPa・s、110000mPa・s、115000mPa・s、120000mPa・s、125000mPa・s、130000mPa・s、135000mPa・s、140000mPa・s、145000mPa・s、150000mPa・s、160000mPa・s、170000mPa・s、180000mPa・s、190000mPa・s、195000mPa・s、200000mPa・sなどである。酸化グラフェンスラリーの超微細化後の粘度は、10000~50000mPa・s、例えば、10000mPa・s、11000mPa・s、12000mPa・s、15000mPa・s、20000mPa・s、22000mPa・s、23000mPa・s、25000mPa・s、30000mPa・s、32000mPa・s、35000mPa・s、40000mPa・s、42000mPa・s、45000mPa・s、48000mPa・s、50000mPa・sなどである。好ましい実施形態として、酸化グラフェンスラリーの超微細化後の粘度は、20000mPa・sである。酸化グラフェンスラリーの固形分は、5~10%、例えば、5%、5.1%、5.2%、5.3%、5.4%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、9.6%、9.7%、9.8%、9.9%、10%などである。好ましい実施形態として、酸化グラフェンスラリーの固形分は、8%である。
【0063】
本発明の第3の実施形態に係る酸化グラフェン膜は、酸化グラフェンの平均直径が、2~3μm、例えば、2μm、2.1μm、2.2μm、2.3μm、2.4μm、2.5μm、2.6μm、2.7μm、2.8μm、2.9μm、3μmなどである。酸化グラフェン膜の厚さは、100~500μm、例えば、100μm、120μm、150μm、180μm、200μm、220μm、250μm、280μm、300μm、320μm、350μm、380μm、400μm、420μm、450μm、480μm、500μmなどである。好ましい実施形態として、酸化グラフェン膜の厚さは、200μmである。酸化グラフェン膜の密度は、1.0~2.0g/cm3、例えば、1.0g/cm3、1.1g/cm3、1.2g/cm3、1.3g/cm3、1.4g/cm3、1.5g/cm3、1.6g/cm3、1.7g/cm3、1.8g/cm3、1.9g/cm3、2.0g/cm3などである。
【0064】
本発明の第4の実施形態に係る酸化グラフェン膜の製造方法では、本発明の第2の実施形態の方法で低粘度の酸化グラフェンスラリーを製造し、脱泡処理した後、脱泡された酸化グラフェンスラリーを基材の表面に塗布し、乾燥させ、剥離して、酸化グラフェン膜を得る。
【0065】
基材は、酸化グラフェンスラリーを塗布し、乾燥させるための担体であり、酸化グラフェンスラリーを塗布し、乾燥させた後、基材の表面に酸化グラフェン膜を形成する。
【0066】
脱泡は、真空脱泡であり、真空脱泡の真空値は、-95~-50kPa、例えば、-95kPa、90kPa、-85kPa、-80kPa、-75kPa、-70kPa、-65kPa、-60kPa、-55kPa、-50kPaなどである。好ましい実施形態として、真空脱泡の真空値は-80kPaである。脱泡をインライン連続脱泡機で行う。塗布をナイフ塗布又は押出塗布の方式で行い、塗布の速度を、1~10m/min、例えば、1m/min、1.1m/min、1.2m/min、1.3m/min、1.4m/min、1.5m/min、2m/min、2.5m/min、3m/min、3.5m/min、4m/min、4.5m/min、5m/min、5.5m/min、6m/min、6.5m/min、7m/min、7.5m/min、8m/min、8.5m/min、9m/min、9.5m/min、9.6m/min、9.7m/min、9.8m/min、9.9m/min、10m/minなどとする。好ましい実施形態として、塗布の速度を3m/minとする。塗布の厚さを、0.5~5.0mm、例えば、0.5mm、0.52mm、0.55mm、0.58mm、0.6mm、0.62mm、0.65mm、0.68mm、0.7mm、0.75mm、0.76mm、0.77mm、0.78mm、0.79mm、0.8mm、0.9mm、1mm、1.2mm、1.3mm、1.5mm、1.6mm、1.8mm、2mm、2.1mm、2.2mm、2.5mm、2.6mm、2.7mm、2.8mm、2.9mm、2.93mm、2.95mm、2.97mm、2.98mm、2.99mm、3.0mm、3.5mm、4mm、4.2mm、4.5mm、4.8mm、5mmなどとする。好ましい実施形態として、塗布の厚さを1.5mmとする。酸化グラフェンスラリーの固形分が増加するため、塗布の厚さが薄くなり、塗布速度が向上し、単位時間あたりの塗布効率が向上する。乾燥の温度は、70~130℃であり、例えば、70℃、71℃、72℃、73℃、75℃、78℃、80℃、82℃、85℃、88℃、90℃、92℃、95℃、98℃、100℃、102℃、105℃、108℃、110℃、112℃、115℃、118℃、120℃、122℃、125℃、126℃、127℃、128℃、129℃、130℃などである。好ましい実施形態として、乾燥の温度を100℃とする。乾燥の時間を、8~80min、例えば、8min、9min、10min、12min、15min、16min、18min、20min、22min、24min、25min、27min、28min、29min、30min、32min、34min、35min、38min、40min、45min、50min、55min、60min、65min、70min、75min、78min、80minなどとする。好ましい実施形態として、乾燥の時間を、27~30min、例えば、27min、28min、29min、30minなどとする。酸化グラフェン膜の厚さは、50~500μm、例えば、50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、100μm、120μm、150μm、180μm、200μm、220μm、250μm、280μm、300μm、320μm、350μm、380μm、400μm、420μm、450μm、480μm、490μm、500μmなどである。好ましい実施形態として、酸化グラフェン膜の厚さは、200μmである。
【0067】
本発明の第5の実施形態に係るグラフェン熱伝導膜は、熱伝導係数が1000~1600W/m・k、例えば、1000W/m・k、1100W/m・k、1200W/m・k、1300W/m・k、1400W/m・k、1500W/m・k、1600W/m・kなどである。好ましい実施形態として、グラフェン熱伝導膜の熱伝導係数は、1500W/m・kである。グラフェン熱伝導膜の密度は、1.5~2.2g/cm3、例えば、1.5g/cm3、1.6g/cm3、1.7g/cm3、1.8g/cm3、1.9g/cm3、2.0g/m3、2.1g/cm3、2.2g/cm3、2.2g/cm3などである。好ましい実施形態として、グラフェン熱伝導膜の密度は、2.0g/m3である。グラフェン熱伝導膜の厚さは、10~150μm、例えば、10μm、20μm、30μm、40μm、50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、100μm、110μm、120μm、130μm、140μm、150μmなどである。好ましい実施形態として、グラフェン熱伝導膜の厚さは、40μmである。
【0068】
本発明の第6の実施形態に係るグラフェン熱伝導膜の製造方法では、本発明の第4の実施形態の方法で酸化グラフェン膜を製造し、熱処理し、圧延して、グラフェン熱伝導膜を得る。具体的な製造プロセスは、
図5に示すように、まずHummers法で製造された酸化グラフェンの濾過ケーキを溶媒と混合し、撹拌して分散させて、酸化グラフェンスラリーを得て、そして、酸化グラフェンスラリーを超微細化して粘度を低下させて、低粘度の酸化グラフェンスラリーを得て、次に、低粘度の酸化グラフェンスラリーを脱泡し、基材に塗布し、乾燥させ、剥離して、酸化グラフェン膜を得て、さらに、酸化グラフェン膜を熱処理して、グラフェン発泡体膜を得て、最後に、グラフェン発泡体膜を圧延処理して、グラフェン熱伝導膜を得る。該酸化グラフェンスラリーの固形分は、5~10%であり、塗布効率を向上させる。該グラフェン熱伝導膜は、粘度低下処理を受けず固形分が2~4%である酸化グラフェンスラリーで製造されたグラフェン熱伝導膜に比べて、外観、密度、熱伝導係数、凝集力、引張強度などにおいて相当するが、製造効率がより高い。
【0069】
熱処理の温度を、1000~3000℃、例えば、1000℃、1100℃、1200℃、1300℃、1400℃、1500℃、1600℃、1700℃、1800℃、1900℃、2000℃、2100℃、2200℃、2300℃、2400℃、2500℃、2600℃、2700℃、2800℃、2900℃、3000℃などとする。好ましい実施形態として、熱処理の温度を2000℃とする。酸化グラフェン膜の熱処理後の密度は、0.1~1.0g/cm3、例えば、0.1g/cm3、0.2g/cm3、0.3g/cm3、0.4g/cm3、0.5g/cm3、0.6g/cm3、0.7g/cm3、0.8g/cm3、0.9g/cm3、1.0g/cm3などである。好ましい実施形態として、酸化グラフェン膜の熱処理後の密度は、0.3g/cm3である。圧延の圧力を、50~200t、例えば、50t、60t、70t、80t、90t、100t、110t、120t、130t、140t、150t、160t、170t、180t、190t、200tなどとする。好ましい実施形態として、圧延の圧力を100tとする。
【実施例】
【0070】
以下、本発明の優位性を実施例及び比較例によりさらに説明する。
(実施例1)
【0071】
ステップ1)では、分散装置を用いて固形分が5.0%の酸化グラフェンの濾過ケーキを脱イオン水に分散させ、分散の線速度を5m/sとし、2h分散させた後に得られた酸化グラフェンスラリーの粘度が100000mPa・sであり、
ステップ2)では、酸化グラフェンスラリーを超微細化し、圧力を50MPaとして、得られた低粘度の酸化グラフェンスラリーの粘度が20000mPa・sであり、
ステップ3)では、脱泡装置を用いてステップ2)の低粘度の酸化グラフェンスラリーを真空脱泡し、真空値が-80kPaであり、
ステップ4)では、ナイフ塗布の方式でステップ3)で脱泡した後のスラリーをPETフィルムに塗布し、80℃で75min乾燥させた後に酸化グラフェン膜を得て、直接剥離して巻き取り、塗布の厚さを2.5mmとし、塗布速度を1.2m/minとし、
ステップ5)では、ステップ4)で巻き取って得られた酸化グラフェン膜のコイル材をスリットして、
図6に示すように、300mm*300mmサイズの酸化グラフェン膜を得て、
ステップ6)では、ステップ5)で得られた酸化グラフェン膜を2000℃で高温熱処理して、密度が0.3g/cm
3のグラフェン発泡体膜を得て、
ステップ7)では、100tの圧力でステップ6)のグラフェン発泡体膜を圧延し、
図7に示すように、密度が2.0g/cm
3、厚さが40μm、熱伝導係数が1500W/m・Kであるグラフェン熱伝導膜を得る。
(実施例2)
【0072】
ステップ1)では、分散装置を用いて固形分が10.0%の酸化グラフェンの濾過ケーキを脱イオン水に分散させ、分散の線速度を5m/sとし、2h分散させた後に得られた酸化グラフェンスラリーの粘度が200000mPa・sであり、
ステップ2)では、酸化グラフェンスラリーを超微細化し、圧力を100MPaとし、得られた低粘度の酸化グラフェンスラリーの粘度が20000mPa・sであり、
ステップ3)では、脱泡装置を用いてステップ2)の低粘度の酸化グラフェンスラリーを真空脱泡し、真空値が-80kPaであり、
ステップ4)では、ナイフ塗布の方式でステップ3)で脱泡した後のスラリーをPETフィルムに塗布し、120℃で11min乾燥させた後に酸化グラフェン膜を得て、直接剥離して巻き取り、塗布の厚さを0.75mmとし、塗布速度を8.0m/minとし、
ステップ5)では、ステップ4)で巻き取って得られた酸化グラフェン膜のコイル材をスリットして、
図8に示すように、300mm*300mmサイズの酸化グラフェン膜を得て、
ステップ6)では、ステップ5)で得られた酸化グラフェン膜を2000℃で高温熱処理して、密度が0.3g/cm
3のグラフェン発泡体膜を得て、
ステップ7)では、100tの圧力でステップ6)のグラフェン発泡体膜を圧延し、密度が2.0g/cm
3、厚さが20μm、熱伝導係数が1500W/m・Kであるグラフェン熱伝導膜を得る。
(実施例3)
【0073】
ステップ1)では、分散装置を用いて固形分が8.0%の酸化グラフェンの濾過ケーキを脱イオン水に分散させ、分散の線速度を5m/sとし、2h分散させた後に得られた酸化グラフェンスラリーの粘度が150000mPa・sであり、
ステップ2)では、酸化グラフェンスラリーを超微細化し、圧力を100MPaとし、得られた低粘度の酸化グラフェンスラリー粘度が20000mPa・sであり、
ステップ3)では、脱泡装置を用いてステップ2)の低粘度の酸化グラフェンスラリーを真空脱泡し、真空値が-80kPaであり、
ステップ4)では、ナイフ塗布の方式でステップ3)で脱泡した後のスラリーをPETフィルムに塗布し、100℃で30min乾燥させた後に酸化グラフェン膜を得て、直接剥離して巻き取り、塗布の厚さを1.5mmとし、塗布速度を3m/minとし、
ステップ5)では、ステップ4)で巻き取って得られた酸化グラフェン膜のコイル材をスリットして、
図9に示すように、300mm*300mmサイズの酸化グラフェン膜を得て、
ステップ6)では、ステップ5)で得られた酸化グラフェン膜を2000℃で高温熱処理して、密度が0.3g/cm
3のグラフェン発泡体膜を得て、
ステップ7)では、100tの圧力でステップ6)のグラフェン発泡体膜を圧延し、密度が2.0g/cm
3、厚さが40μm、熱伝導係数が1500W/m・Kであるグラフェン熱伝導膜を得る。
(比較例4)
【0074】
ステップ1)では、分散装置を用いて固形分が2.0%の酸化グラフェンの濾過ケーキを脱イオン水に分散させ、分散の線速度を2m/sとし、2h分散させた後に得られた酸化グラフェンスラリーの粘度が20000mPa・sであり、
ステップ2)では、脱泡装置を用いてステップ1)の低粘度の酸化グラフェンスラリーを真空脱泡し、真空値が-80kPaであり、
ステップ3)では、ナイフ塗布の方式でステップ2)で脱泡した後のスラリーをPETフィルムに塗布し、70℃で5h乾燥させた後に酸化グラフェン膜を得て、直接剥離して巻き取り、塗布の厚さを6.0mmとし、塗布速度を0.3m/minとし、
ステップ4)では、ステップ3)で巻き取って得られた酸化グラフェン膜のコイル材をスリットして、300mm*300mmサイズの酸化グラフェン膜を得て、
ステップ5)では、ステップ4)で得られた酸化グラフェン膜を2000℃で高温熱処理して、密度が0.3g/cm3のグラフェン発泡体膜を得て、
ステップ6)では、100tの圧力でステップ5)のグラフェン発泡体膜を圧延し、密度が2.0g/cm3、厚さが40μm、熱伝導係数が1500W/m・Kであるグラフェン熱伝導膜を得る。
(比較例5)
【0075】
ステップ1)では、分散装置を用いて固形分が8.0%の酸化グラフェンの濾過ケーキを脱イオン水に分散させ、分散の線速度を5m/sとし、2h分散させた後に得られた酸化グラフェンスラリーの粘度が150000mPa・sであり、
ステップ2)では、脱泡装置を用いてステップ1)の低粘度の酸化グラフェンスラリーを真空脱泡し、従来の脱泡技術では、スラリーにおける気泡を完全に除去することができず、
ステップ3)では、ナイフ塗布の方式でステップ2)で脱泡した後のスラリーをPETフィルムに塗布し、100℃で乾燥させた後に酸化グラフェン膜を得て、直接剥離して巻き取り、塗布の厚さを1.5mmとし、塗布速度を3m/minとし、
図10に示すように、乾燥させた後の酸化グラフェン膜の外観には、欠陥が存在し、
ステップ4)では、ステップ3)で巻き取って得られた酸化グラフェン膜のコイル材をスリットして、300mm*300mmサイズの酸化グラフェン膜を得て、
ステップ5)では、ステップ4)で得られた酸化グラフェン膜を2000℃で高温熱処理して、密度が0.3g/cm
3のグラフェン発泡体膜を得て、
ステップ6)では、100tの圧力でステップ5)のグラフェン発泡体膜を圧延し、密度が2.0g/cm
3、厚さが40μm、熱伝導係数が900W/m・Kであるグラフェン熱伝導膜を得て、
図11に示すように、熱伝導膜の外観には、欠陥が存在する。
比較例5の固形分が8%の酸化グラフェンスラリーは、本発明の超微細化を受けないと、粘度が高すぎ、以下の(1)~(3)の結果をもたらす。
【0076】
(1)従来の脱泡技術では、酸化グラフェンスラリーにおける気泡を完全に除去することができず、気泡は乾燥後の酸化グラフェン膜の外観に影響を与えるため、酸化グラフェン膜の欠陥をもたらし、深刻なことに、酸化グラフェンスラリーの流動性が低いため、配管における輸送を完了することができない可能性もある。
【0077】
(2)従来の塗布技術では、粘度が高いと塗布の厚さの不均一性をもたらし、塗布の外観が平滑ではなく、塗布乾燥後の酸化グラフェン膜の厚さの均一性及び外観に影響を与え、さらに、
図11に示すように、グラフェン熱伝導膜の厚さの均一性及び外観に影響を与え、深刻なことに、酸化グラフェンスラリーの流動性が低いため、酸化グラフェンスラリーを塗布する時に配管詰まりを引き起こす。
【0078】
(3)分散させた後に得られたスラリーは、粘度が高すぎるため、酸化グラフェンは水に均一に分散できず、シート層間が十分ばらばらになることができず、最終的な熱伝導膜の熱伝導性能に影響を与え、厚さが40μmのグラフェン熱伝導膜の熱伝導性能は900W/m・Kのみである。
【0079】
実施例1~3から分かるように、本発明の超微細化の方法で、酸化グラフェンスラリーの粘度を低下させ、固形分を増加させることにより、以下の(1)~(2)の効果を達成できる。
【0080】
(1)いずれも20000mPa・s粘度の酸化グラフェンスラリーである場合、比較例4では2%の固形分しか達成できないが、本発明の実施例1~3では5~10%の固形分に達することができる。本発明の実施例1~3の酸化グラフェンスラリーは、固形分が多く、0.75~2.5mmの厚さを塗布するだけで、比較例4における6mmの厚さを塗布して得られたグラフェン熱伝導膜と同じである熱伝導性能の効果を達成することができる。
【0081】
(2)実施例1~3では、固形分が高いため、塗布の厚さが薄くなり、塗布速度が増大し、塗布速度が1.2~8m/minに達することができ、塗布効率を向上させる。比較例4では、酸化グラフェンの固形分が少ないため、6.0mmの厚さを塗布してこそ高い熱伝導効果を達成することができ、該厚さで、乾燥の温度が高すぎて、100℃に達すれば、酸化グラフェンにおける水分子が逃げにくく、酸化グラフェン膜の層間に空洞が形成され、
図12に示すような酸化グラフェン膜の形成をもたらすため、酸化グラフェン膜の外観を保証するために、乾燥温度を70℃に低下させるだけである。乾燥の温度が低く、かつ厚さが厚いため、塗布速度を低下させ、塗布速度を0.3m/minに設定してこそ酸化グラフェン膜を十分に乾燥させることを保証することができる。
【0082】
なお、以上の記載は、本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を限定するものではなく、上記実施例を参照しながら本発明を詳細に説明したが、当業者であれば、依然として上記各実施例に記載された技術手段を修正するか、又はそのうちの一部の技術的特徴に対して均等物の置換を行うことができる。本発明の精神と原則内で行われるいかなる修正、均等物の置換、改善などは、いずれも本発明の保護範囲内に含まれるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2022-02-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低粘度の酸化グラフェンスラリーの製造方法であって、
酸化グラフェンと溶媒を混合し、分散させ、超微細化することにより、酸化グラフェンの平均直径を減少させて、低粘度の酸化グラフェンスラリーを得
て、
前記超微細化の方法は、酸化グラフェンと溶媒との混合物に圧力をかけることにより、混合物がスリットを通過し、スリットを通過する過程において高圧剪断と高速衝突を受け、かつスリットを通過した後、圧力エネルギーの瞬間的な放出により強いキャビテーションを発生させることを含み、
前記超微細化の過程においてかけられた圧力を50~250MPaとすることを特徴とする、低粘度の酸化グラフェンスラリーの製造方法。
【請求項2】
前記酸化グラフェンをHummers法で製造
することを特徴とする、請求項
1に記載の低粘度の酸化グラフェンスラリーの製造方法。
【請求項3】
前記酸化グラフェンにおいて、酸素と炭素のモル比は0.6~0.7であることを特徴とする、請求項1に記載の低粘度の酸化グラフェンスラリーの製造方法。
【請求項4】
前記酸化グラフェンにおいて、酸素と炭素のモル比は0.65であることを特徴とする、請求項3に記載の低粘度の酸化グラフェンスラリーの製造方法。
【請求項5】
前記溶媒は水であることを特徴とする、請求項1に記載の低粘度の酸化グラフェンスラリーの製造方法。
【請求項6】
前記分散の線速度を2~20m/sとすることを特徴とする、請求項1に記載の低粘度の酸化グラフェンスラリーの製造方法。
【請求項7】
前記分散の線速度を5m/sとすることを特徴とする、請求項6に記載の低粘度の酸化グラフェンスラリーの製造方法。
【請求項8】
前記分散の時間を1~5hとすることを特徴とする、請求項1に記載の低粘度の酸化グラフェンスラリーの製造方法。
【請求項9】
前記分散の時間を2hとすることを特徴とする、請求項8に記載の低粘度の酸化グラフェンスラリーの製造方法。
【請求項10】
前記超微細化の過程においてかけられた圧力を100MPaとすることを特徴とする、請求項1に記載の低粘度の酸化グラフェンスラリーの製造方法。
【請求項11】
酸化グラフェンの平均直径が2~3μm
となるまで超微細化することを特徴とする、
請求項1に記載の低粘度の酸化グラフェンスラリーの製造方法。。
【請求項12】
前記酸化グラフェンスラリーの超微細化前の粘度は、100000~200000mPa・sであることを特徴とする、請求項1に記載の低粘度の酸化グラフェンスラリーの製造方法。
【請求項13】
前記酸化グラフェンスラリーの超微細化後の粘度は、10000~50000mPa・sであることを特徴とする、請求項12に記載の低粘度の酸化グラフェンスラリーの製造方法。
【請求項14】
前記酸化グラフェンスラリーの超微細化後の粘度は20000mPa・sであることを特徴とする、請求項13に記載の低粘度の酸化グラフェンスラリーの製造方法。
【請求項15】
前記酸化グラフェンスラリーの固形分は、5~10%であることを特徴とする、請求項1に記載の低粘度の酸化グラフェンスラリーの製造方法。
【請求項16】
前記酸化グラフェンスラリーの固形分は8%であることを特徴とする、請求項15に記載の低粘度の酸化グラフェンスラリーの製造方法。
【請求項17】
グラフェン熱伝導膜の製造方法であって、
酸化グラフェン膜を原料とし、熱処理し、圧延して、グラフェン熱伝導膜を得て、
前記酸化グラフェン膜は請求項1~15のいずれか一項に記載の方法で
製造した酸化グラフェンスラリーを
原料とし、脱泡処理した後、脱泡された酸化グラフェンスラリーを基材の表面に塗布し、乾燥させ、剥離して
、得ることを特徴とする
、グラフェン
熱伝導膜の製造方法。
【国際調査報告】