(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-26
(54)【発明の名称】高、低酸化グラフェンの混合スラリー及びその製造方法、高、低酸化グラフェンの複合膜及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 32/198 20170101AFI20220819BHJP
【FI】
C01B32/198
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022514771
(86)(22)【出願日】2020-08-26
(85)【翻訳文提出日】2022-03-04
(86)【国際出願番号】 CN2020111173
(87)【国際公開番号】W WO2021043030
(87)【国際公開日】2021-03-11
(31)【優先権主張番号】201910840143.6
(32)【優先日】2019-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522066816
【氏名又は名称】常州富▲シ▼科技股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】周 歩存
(72)【発明者】
【氏名】周 仁杰
(72)【発明者】
【氏名】▲盧▼ 静
(72)【発明者】
【氏名】▲蘇▼ 冬
(72)【発明者】
【氏名】王 兆成
(72)【発明者】
【氏名】李 峰
【テーマコード(参考)】
4G146
【Fターム(参考)】
4G146AA01
4G146AB07
4G146AC01A
4G146AC01B
4G146AC27A
4G146AC27B
4G146AD20
4G146BA01
4G146BC37A
4G146BC37B
4G146CB10
4G146CB17
4G146CB40
4G146DA06
(57)【要約】
酸化度の異なる酸化グラフェンスラリー、酸化グラフェン複合膜及びグラフェン熱伝導膜である。前記酸化グラフェンスラリーは、高酸化グラフェン及び低酸化グラフェンを含む酸化グラフェンと、溶媒と、を含む。スラリーは、酸化度の異なる2種類の酸化グラフェンを含むため、単位質量の酸化グラフェンの炭素含有量を増加させることにより、最終的に得られるグラフェン熱伝導膜が多くの炭素を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高酸化グラフェン及び低酸化グラフェンを含む酸化グラフェンと、
溶媒と、
を含むことを特徴とする、高、低酸化グラフェンの混合スラリー。
【請求項2】
前記酸化グラフェンの固形分は、5~8%であり、
好ましくは、前記低酸化グラフェンは、酸化グラフェンの重量の5~50%、好ましくは5~30%、さらに好ましくは10~30%を占め、
好ましくは、前記高酸化グラフェンの炭素含有量は、45~55%であり、
好ましくは、前記低酸化グラフェンの炭素含有量は、80~90%であり、
好ましくは、前記溶媒は、水、NMP、DMFのうちの1種又は2種以上の混合溶媒を含むことを特徴とする、請求項1に記載の高、低酸化グラフェンの混合スラリー。
【請求項3】
それぞれ高酸化グラフェン分散液と低酸化グラフェン分散液を製造し、高酸化グラフェン分散液と低酸化グラフェン分散液を混合し、分散して、高、低酸化グラフェンの混合スラリーを得るステップを含むことを特徴とする、高、低酸化グラフェンの混合スラリーの製造方法。
【請求項4】
高酸化グラフェン分散液の製造方法は、化学酸化法で製造した酸化グラフェンを溶媒に分散して、高酸化グラフェン分散液を得るステップを含み、
さらに好ましくは、前記化学酸化法は、グラファイトを高酸溶液において酸化剤と反応させて、酸化グラフェンを得ることであり、
さらに好ましくは、化学酸化法は、Bordie法、Staudenmaier法及びHummers法を含み、
好ましくは、高酸化グラフェン分散液において、高酸化グラフェンの固形分は、3~8%であり、
好ましくは、低酸化グラフェン分散液において、低酸化グラフェンの固形分は、7~11%であり、
好ましくは、高酸化グラフェン分散液と低酸化グラフェン分散液の混合液を高速で分散し、分散の線速度を50~300m/s、好ましくは、100m/sとすることを特徴とする、請求項3に記載の高、低酸化グラフェンの混合スラリーの製造方法。
【請求項5】
高、低酸化グラフェンの複合膜であって、
高酸化グラフェン及び低酸化グラフェンを含み、
前記低酸化グラフェンの含有量は、5~50%であり、好ましくは5~30%であり、さらに好ましくは10~30%であり、
好ましくは、前記高酸化グラフェンの炭素含有量は、45~55%であり、
好ましくは、前記低酸化グラフェンの炭素含有量は、80~90%であり、
好ましくは、前記酸化グラフェン複合膜の坪量は、100~250g/m
2であり、好ましくは180g/m
2であり、
好ましくは、前記酸化グラフェン複合膜の高酸化グラフェン及び低酸化グラフェンは、平面内に一定方向に配列することを特徴とする、高、低酸化グラフェンの複合膜。
【請求項6】
請求項3又は4に記載の方法で高、低酸化グラフェンの混合スラリーを製造するステップと、
スラリーを脱泡し、塗布し、乾燥させて、高、低酸化グラフェンの複合膜を形成するステップと、
を含むことを特徴とする、高、低酸化グラフェンの複合膜の製造方法。
【請求項7】
脱泡をインライン連続脱泡機で行い、回転速度を2000~3000r/minとし、さらに好ましくは、前記脱泡機の材料供給弁の開度を、25~35%とし、好ましくは30%とし、さらに好ましくは、前記脱泡機内の真空負圧を400~600Paとし、好ましくは500Paとし、
好ましくは、塗布方法は、ナイフ塗布方法及びスリット押出塗布方法を含み、好ましくはナイフ塗布方法であり、さらに好ましくは塗布機を用いるナイフ塗布方法であり、
好ましくは、塗布により形成された湿潤膜の厚さは、2~5mmであり、好ましくは3mmであり、
好ましくは、塗布速度を1~2m/minとし、好ましくは1.2m/minとし、
好ましくは、乾燥の温度を50~100℃とし、乾燥の時間を0.5~1.5hとすることを特徴とする、請求項6に記載の高、低酸化グラフェンの複合膜の製造方法。
【請求項8】
熱伝導率は、1000W/m・Kより大きく、
好ましくは、密度は、1.9~2.1g/cm
3であり、
好ましくは、厚さは、30~100μmであることを特徴とする、グラフェン熱伝導膜。
【請求項9】
請求項6又は7に記載の方法で高、低酸化グラフェンの複合膜を製造するステップと、
複合膜を高温処理するステップと、
高温処理した後の複合膜を圧縮して、グラフェン熱伝導膜を得るステップと、
を含むことを特徴とする、グラフェン熱伝導膜の製造方法。
【請求項10】
前記複合膜を高温処理する方法は、複合膜を室温から1000~3000℃まで昇温させ、5~15h処理するステップを含み、
好ましくは、昇温速度を0.2~5℃/minとし、さらに好ましくは、昇温速度を、100℃以下である場合に、1~1.5℃/minとし、100℃より大きく、かつ300℃以下である場合に、0.2~0.5℃/minとし、300℃より大きい場合に、3~5℃/minとし、
好ましくは、前記圧縮の圧力を10~30MPaとすることを特徴とする、請求項9に記載のグラフェン熱伝導膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料の分野に関し、具体的には、酸化グラフェンを用いるグラフェン熱伝導膜の製造プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
グラフェンは、優れた熱伝導性能を有し、広範な応用の将来性を有する。酸化グラフェンを配列して酸化グラフェン膜を形成してから、高温処理してグラフェン熱伝導膜を製造することは、一般的なグラフェン熱伝導膜の製造プロセスである。このような方法で製造されるグラフェン熱伝導膜は、複数層のグラフェンを積層してなる高配向性の熱伝導膜であり、機械的性能が高く、熱伝導率が高く、軽く、材料が薄く、柔軟さが高いなどの特徴を有し、電子、航空宇宙、医療などの業界における放熱の問題を解決することができる。
【0003】
従来技術に用いられる酸化グラフェンは、グラファイトを化学的に酸化して得られる酸化グラフェンであり、豊富な酸素含有官能基を有し、一般的に炭素含有量が約50%である。このような酸化グラフェンは、配列性能が高いが、グラフェン熱伝導膜の製造に用いられる場合に、単位質量の酸化グラフェンから最終的に得られる熱伝導膜が少ない炭素を含むため、コストを増加させ、工業生産に不利である。背景技術の欄の内容は、発明者らに知られている技術に過ぎず、当然ながら本分野の従来技術を代表するものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術に存在する問題のうちの1つ以上に対して、本発明は、酸化度の異なる2種類の酸化グラフェンを含み、単位質量の酸化グラフェンの炭素含有量を増加させることにより、最終的に得られるグラフェンの熱伝導膜の炭素を増加させる、酸化グラフェンスラリーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の目的に基づいて、本発明は、高酸化グラフェン及び低酸化グラフェンを含む酸化グラフェンと、溶媒と、を含む高、低酸化グラフェンの混合スラリーを提供する。
【0006】
本発明の高酸化グラフェンは、酸化度が高い酸化グラフェンを指し、低酸化グラフェンは、酸化度が低い酸化グラフェンを指す。
【0007】
酸化グラフェンは、グラファイトの層間にいくつかの物質及び構造を追加することにより、グラファイトシート層を剥離して得られるものであり、一定のインターカレーション及び酸化度に達してこそ剥離して非常に薄いシート層(3層以下)を得ることができる。酸化グラフェンは、酸化度が高く、酸素含有官能基が多く、剥離されるシート層が薄く、配列して膜を形成する場合に、より規則的であり、配列効果がより高いが、高酸化グラフェンは、炭素含有量が低く、高温処理して得られるグラフェンの量が少ない。低酸化グラフェンは、炭素含有量が高く、高温処理して得られるグラフェンの量が多いが、酸化度が低いため、グラファイトシートの縁部のみで酸化し、シート層数が少ない酸化グラフェンを剥離して得ることができないだけでなく、実験で酸化度が低く、かつ剥離された層が薄い酸化グラフェンを製造しにくい。低酸化グラフェンは、酸化度が低く、酸素含有官能基が少なく、剥離ときに層数が多く、低酸化グラフェンのみを配列して膜を形成すれば、膜を形成するときに高配向性の構造を得ることができず、規則性が低いため、高温処理して得られるグラフェン熱伝導膜の熱伝導率の向上に影響を与える。
【0008】
酸化グラフェンに対して、製造プロセスにおいて酸化度を制御しにくく、現在、酸化度が高酸化度と低酸化度との間にある酸化グラフェンを製造しにくく、かつ酸化グラフェンの酸化度がわずかに低下し、シート層をよく剥離できないと、膜を形成するときの酸化グラフェンの配列に影響を与え、最終的に高温処理して得られるグラフェン熱伝導膜の熱伝導率に大幅に影響を与えることになる。したがって、単一の酸化度を持つ酸化グラフェンを選択することは、大量の残留グラフェンと優れた熱伝導性能を両立するグラフェン熱伝導膜を得ることができない。
【0009】
本発明は、配列して膜を形成するときの規則性に与える影響が大きくない場合に、高温処理して得られるグラフェン熱伝導膜の量を増加させ、かつグラフェン熱伝導膜の熱伝導性能を向上させる高、低酸化グラフェンの混合スラリーを提供する。
【0010】
本発明の一態様において、前記酸化グラフェンの固形分は、5~8%である。
【0011】
本発明の一態様において、前記低酸化グラフェンは、酸化グラフェンの重量の5~50%、好ましくは5~30%、さらに好ましくは10~30%を占める。
【0012】
本発明の一態様において、前記高酸化グラフェンの炭素含有量は、45~55%である。
【0013】
好ましくは、前記低酸化グラフェンの炭素含有量は、80~90%である。
【0014】
低酸化グラフェンの炭素含有量を80~90%の範囲として選択する理由は、炭素含有量が高すぎる酸化グラフェンを剥離するときに層数が多く、配列時に規則性が低くなることである。
【0015】
本発明の一態様において、前記溶媒は、水、NMP、DMFのうちの1種又は2種以上の混合溶媒を含む。
【0016】
酸素含有官能基を含有しないグラフェンに比べて、酸化度の異なる2種類の酸化グラフェンを溶媒に混合する場合に、2種類の酸化グラフェンの表面がいずれも親水性の酸素含有官能基を含み、かつ両者がいずれも負電荷を帯びるため、溶媒において互いに反発し、凝集しにくく、優れた相互分散の性能を有するという点で相違する。
【0017】
本発明に係る高、低酸化グラフェンの混合スラリーの製造方法は、具体的には、
それぞれ高酸化グラフェン分散液と低酸化グラフェン分散液を製造し、高酸化グラフェン分散液と低酸化グラフェン分散液を混合し、分散させて、高、低酸化グラフェンの混合スラリーを得るステップを含む。
【0018】
理論的には、高酸化グラフェンと低酸化グラフェンは、溶液において表面の官能基が負電荷-COOHを帯びるため、互いに反発し、凝集しにくい。しかしながら、実際の生産において凝集するという問題が依然として発生し、得られるスラリーの安定性が依然として理想的ではない。多方面に分析した後、本願の発明者らは、凝集が酸化グラフェンの粒径、比表面及び吸油値などにより引き起こされず、スラリーにおける酸化グラフェンの電荷が体系に影響を与えることにより引き起こされることを発見した。酸化グラフェン分散液は、-COOH基を有するため酸性を呈し、分散時に分散液にアルカリを添加して中和する必要がある。2種類の酸化グラフェンを直接混合した後にアルカリを添加すれば、2種類の酸化グラフェンの酸化度が異なるため、それらの構造に含まれる-COOHの量が異なり、アルカリを添加して中和するときに、反応の不均一性を引き起こし、分散が不良になる。プロセス工程を変更し、まず2種類の酸化グラフェンをそれぞれ分散し、酸化グラフェンにおける-COOH基を十分に中和した後、両者を混合することにより、上記分散が不均一であるという問題を回避する。したがって、まず2種類の酸化グラフェンをそれぞれ溶媒に分散し、酸化グラフェンにおける-COOHを十分に中和した後に、両者を混合することにより、混合液中の2種類の酸化グラフェンが凝集しにくい。
【0019】
本発明の一態様において、高酸化グラフェン分散液の製造方法は、化学酸化法で製造した酸化グラフェンを溶媒に分散して、高酸化グラフェン分散液を得るステップを含む。
【0020】
好ましくは、前記化学酸化法は、グラファイトを強酸溶液において酸化剤と反応させて、酸化グラフェンを得ることである。
【0021】
さらに好ましくは、前記化学酸化法は、Bordie法、Staudenmaier法及びHummers法を含む。
【0022】
本発明の一態様において、高酸化グラフェン分散液において、高酸化グラフェンの固形分は、3~8%である。
【0023】
好ましくは、低酸化グラフェン分散液において、低酸化グラフェンの固形分は、7~11%である。
【0024】
低酸化グラフェンは、少ない酸素含有官能基を含み、結合する溶媒が少ないため、高濃度のスラリーをより容易に得る。低酸化グラフェンの剥離される層数は、高酸化グラフェンの剥離される層数より多いため、固形分が高い低酸化グラフェン分散液を得ることができる。
【0025】
本発明の一態様において、高酸化グラフェン分散液と低酸化グラフェン分散液の混合液を高速で分散し、分散の線速度を50~300m/sとし、好ましくは100m/sとする。
【0026】
本発明に係る高、低酸化グラフェンの複合膜は、高酸化グラフェン及び低酸化グラフェンを含み、前記低酸化グラフェンの含有量は、5~50%であり、好ましくは5~30%であり、さらに好ましくは10~30%である。
【0027】
高酸化グラフェンは、剥離度が高いため、低酸化グラフェンを規則的に配列することを助けることができ、低酸化グラフェンの炭素含有量が高いため、単位質量の酸化グラフェン複合膜で製造されるグラフェン熱伝導膜を増加させ、コストを低減する。高酸化グラフェンのみを用いてグラフェン熱伝導膜を製造すれば、最終的に得られるグラフェン熱伝導膜は、熱伝導率が高いが、厚さが薄く、低酸化グラフェンのみを用いてグラフェン熱伝導膜を製造するか、又は低酸化グラフェンの含有量が多すぎれば、酸化度が低い酸化グラフェンは、層数が少ない(10層以下)酸化グラフェンを剥離して得るのが難しいため、配列時に規則性が低く、最終的に熱処理して得られるグラフェン熱伝導膜の熱伝導率が低く、酸化度が中間にある酸化グラフェンのみを用いれば、その酸化度が高酸化グラフェンより低く、酸化度が低下するため、酸化グラフェンの配列に影響を与え、最終的に熱処理して得られるグラフェン熱伝導膜の熱伝導率が低くなることを引き起こす。したがって、低酸化グラフェンの含有量を10~30%として選択することにより、熱伝導率が高く、炭素の残留割合が高いグラフェン熱伝導膜を得ることができ、コストを最大限に低減する。
【0028】
本発明の一態様において、前記酸化グラフェン複合膜の坪量は、100~250g/m2であり、好ましくは180g/m2である。
【0029】
好ましくは、前記高酸化グラフェンの炭素含有量は、45~55%である。
【0030】
好ましくは、前記低酸化グラフェンの炭素含有量は、80~90%である。
【0031】
本発明の一態様において、前記複合膜の高酸化グラフェン及び低酸化グラフェンは、平面内に配向して配列する。平面内に配向して配列することは、酸化グラフェンが水素結合により膜を形成し、熱処理して得られるグラフェン熱伝導膜の熱量がグラフェンの一定方向に配列する方向に沿って伝導されるように、形成した平面内に一定方向に配列することを指す。
【0032】
本発明に係る高、低酸化グラフェンの複合膜の製造方法は、具体的には、
前記高、低酸化グラフェンの混合スラリーの製造方法で高、低酸化グラフェンの混合スラリーを製造するステップと、
スラリーを脱泡し、塗布し、乾燥させて、高、低酸化グラフェンの複合膜を形成するステップと、を含む。
【0033】
本発明の一態様において、脱泡をインライン連続脱泡機で行い、回転速度を2000~3000r/minとする。
【0034】
好ましくは、前記脱泡機の材料供給弁の開度を、25~35%とし、好ましくは30%とする。
【0035】
好ましくは、前記脱泡機内の真空負圧を400~600Paとし、好ましくは500Paとする。
【0036】
本発明の一態様において、塗布方法は、ナイフ塗布方法及びスリット押出塗布方法を含み、好ましくはナイフ塗布方法であり、さらに好ましくは塗布機を用いるナイフ塗布方法である。
【0037】
スリット押出塗布方法は、一定の流量のスラリーを押出ヘッドの材料供給口からダイヘッドの内部キャビティに入れ、かつ安定した圧力を形成し、最後にスラリーをダイヘッドのスリット出口から噴出して、基材に塗布することである。
【0038】
ナイフ塗布は、ドクターナイフで塗布して、厚い塗膜を製造する塗布方式である。
【0039】
好ましくは、塗布により形成された湿潤膜の厚さは、2~5mmであり、好ましくは3mmである。低酸化グラフェンの炭素含有量が高いため、最終的な熱伝導膜の炭素残留値を増加させることができ、このように塗布される酸化グラフェンの厚さが同じである場合に、より厚いグラフェン熱伝導膜を得ることができる。厚さが同じであるグラフェン熱伝導膜を製造する必要があれば、本発明の方法を用いて、塗布により形成された湿潤膜の厚さをより薄くすることができ、膜製造コストを大幅に低減し、効率を向上させることができる。
【0040】
好ましくは、塗布速度を1~2m/minとし、好ましくは1.2m/minとする。
【0041】
本発明の一態様において、乾燥の温度を50~100℃とし、乾燥の時間を0.5~1.5hとする。
【0042】
本発明に係るグラフェン熱伝導膜は、熱伝導率が1000W/m・Kより大きい。
【0043】
本発明の一態様において、前記グラフェン熱伝導膜の密度は、1.9~2.1g/cm3である。
【0044】
好ましくは、前記グラフェン熱伝導膜の厚さは、30~100μmである。
【0045】
本発明に係るグラフェン熱伝導膜の製造方法は、
前記高、低酸化グラフェンの複合膜の製造方法で高、低酸化グラフェンの複合膜を製造するステップと、
複合膜を高温処理するステップと、
高温処理した後の複合膜を圧縮して、グラフェン熱伝導膜を得るステップと、を含む。
【0046】
酸化グラフェン複合膜は、炭素含有量が高く、高温処理して得られるグラフェン熱伝導膜の量が多いため、膜製造コストを大幅に低減し、効率を向上させることができる。
【0047】
本発明の一態様において、前記複合膜を高温処理する方法は、複合膜を室温から1000~3000℃まで昇温させ、5~15h処理するステップを含む。
【0048】
好ましくは、昇温速度を0.2~5℃/minとする。
【0049】
さらに好ましくは、昇温速度を、100℃以下である場合に、1~1.5℃/minとし、100℃より大きく、かつ300℃以下である場合に、0.2~0.5℃/minとし、300℃より大きい場合に、3~5℃/minとする。
【0050】
本発明の一態様において、圧縮の圧力を10~30MPaとする。
【発明の効果】
【0051】
本発明の有益な効果は、以下のとおりである。
【0052】
本発明は、酸化度の異なる2種類の酸化グラフェンを混合してグラフェン熱伝導膜を製造し、酸化度が高い酸化グラフェンが豊富な官能基及び優れた配列規則性を有し、酸化度が低い酸化グラフェンが高い炭素含有量を有するため、製造されるグラフェン熱伝導膜をより厚くし、最終残留炭素の割合を向上させ、生産効率を向上させ、コストを効果的に低減することができる。濃度が同じである、酸化度が高い酸化グラフェンスラリーと本発明の高、低酸化グラフェンの混合スラリーとを比較すると、本発明のスラリーを塗布して2mmの湿潤膜を形成するだけで32μmのグラフェン熱伝導膜を得ることができる一方で、酸化度が高い酸化グラフェンスラリーを塗布して4.5mmの湿潤膜を形成してこそ31μmのグラフェン熱伝導膜を得ることができ、酸化度が高い酸化グラフェンスラリーと、高、低酸化グラフェンの混合スラリーとをそれぞれ塗布して4.5mmの湿潤膜とを形成すると、酸化度が高い酸化グラフェンスラリーにより最終的に31μmのグラフェン熱伝導膜を得る一方で、高、低酸化グラフェンの混合スラリーにより最終的に72μmのグラフェン熱伝導膜を得る。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図面は、本発明のさらなる理解を提供するためのものであり、明細書の一部を構成し、本発明の実施例と共に本発明を解釈するために用いられるが、本発明を限定するものではない。
【0054】
【
図1】実施例1における酸化グラフェン膜のSEM図である。
【
図2】実施例2における酸化グラフェン膜のSEM図である。
【
図3】実施例3における酸化グラフェン膜のSEM図である。
【
図4】比較例4における酸化グラフェン膜のSEM図である。
【
図5】比較例5における酸化グラフェン膜のSEM図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下、いくつかの例示的な実施例を簡単に説明する。当業者が認識できるように、本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、様々な方式で説明された実施例を修正することができる。したがって、図面及び説明は、実質的に、制限的ではなく例示的なものとして考えられる。
【0056】
以下、図面を参照しながら本発明の好ましい実施例を説明するが、ここで説明される好ましい実施例は、本発明を説明し解釈するためのものに過ぎず、本発明を限定するものではないと理解すべきである。
【0057】
本発明の第1実施形態に係る高、低酸化グラフェンの混合スラリーは、高酸化グラフェン及び低酸化グラフェンを含む酸化グラフェンと、溶媒と、を含む。酸化グラフェンの固形分は、5~8%、例えば、5%、5.2%、5.4%、5.5%、5.8%、6%、6.2%、6.5%、6.8%、7%、7.2%、7.5%、7.8%、8%などである。低酸化グラフェンは、酸化グラフェンの重量の5~50%、例えば、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、42%、45%、48%、49%、50%などを占める。高酸化グラフェンの炭素含有量は、45~55%、例えば、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%などである。低酸化グラフェンの炭素含有量は、80~90%、例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%などである。好ましい実施形態として、低酸化グラフェンは、酸化グラフェンの重量の5~30%、例えば、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、19%、20%、22%、25%、28%、29%、30%などを占める。最適な実施形態として、低酸化グラフェンは、酸化グラフェンの重量の10~30%、例えば、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%などを占める。低酸化グラフェンの炭素含有量を80~90%の範囲として選択する理由は、炭素含有量が高すぎる酸化グラフェンを剥離するときに層数が多く、配列時に規則性が低くなることである。溶媒は、水、NMP、DMFのうちの1種又は2種以上の混合溶媒を含む。
【0058】
本発明の高酸化グラフェンは、酸化度が高い酸化グラフェンを指し、低酸化グラフェンは、酸化度が低い酸化グラフェンを指す。
【0059】
酸化グラフェンは、グラファイトの層間にいくつかの物質及び構造を追加することにより、グラファイトシート層を剥離して得られるものであり、一定のインターカレーション及び酸化度に達してこそ剥離して非常に薄いシート層(3層以下)を得ることができる。酸化グラフェンは、酸化度が高く、酸素含有官能基が多く、剥離されるシート層が薄く、配列して膜を形成する場合に、より規則的であり、配列効果がより高いが、高酸化グラフェンは、炭素含有量が低く、高温処理して得られるグラフェンの量が少ない。低酸化グラフェンは、炭素含有量が高く、高温処理して得られるグラフェンの量が多いが、酸化度が低いため、グラファイトシートの縁部のみで酸化し、シート層数が少ない酸化グラフェンを剥離して得ることができないだけでなく、実験で酸化度が低く、かつ剥離された層が薄い酸化グラフェンを製造しにくい。低酸化グラフェンは、酸化度が低く、酸素含有官能基が少なく、剥離ときに層数が多く、低酸化グラフェンのみを配列して膜を形成すれば、膜を形成するときに高配向性の構造を得ることができず、規則性が低いため、高温処理して得られるグラフェン熱伝導膜の熱伝導率の向上に影響を与える。
【0060】
酸化グラフェンに対して、製造プロセスにおいて酸化度を制御しにくく、現在、酸化度が高酸化度と低酸化度との間にある酸化グラフェンを製造しにくく、かつ酸化グラフェンの酸化度がわずかに低下すると、膜を形成するときの酸化グラフェンの配列に影響を与え、最終的に高温処理して得られるグラフェン熱伝導膜の熱伝導率に大幅に影響を与えることになる。したがって、単一の酸化度を持つ酸化グラフェンを選択することは、大量の残留グラフェンと優れた熱伝導性能を両立するグラフェン熱伝導膜を得ることができない。
【0061】
本発明の第2実施形態に係る高、低酸化グラフェンの混合スラリーの製造方法は、具体的には、
それぞれ高酸化グラフェン分散液と低酸化グラフェン分散液を製造し、高酸化グラフェン分散液と低酸化グラフェン分散液を混合し、分散させて、高、低酸化グラフェンの混合スラリーを得るステップを含む。
【0062】
理論的には、低酸化グラフェンと低酸化グラフェンは、溶液において表面の官能基が負電荷-COOHを帯びるため、互いに反発し、凝集しにくい。しかしながら、実際の生産において凝集するという問題が依然として発生し、得られるスラリーの安定性が依然として理想的ではない。多方面に分析した後、本願の発明者らは、凝集が酸化グラフェンの粒径、比表面及び吸油値などにより引き起こされず、スラリーにおける酸化グラフェンの電荷が体系に影響を与えることにより引き起こされることを発見した。酸化グラフェン分散液は、-COOH基を有するため酸性を呈し、分散時に分散液にアルカリを添加して中和する必要がある。2種類の酸化グラフェンを直接混合した後にアルカリを添加すれば、2種類の酸化グラフェンの酸化度が異なるため、それらの構造に含まれる-COOHの量が異なり、アルカリを添加して中和するときに、反応の不均一性を引き起こし、分散が不良になる。プロセス工程を変更し、まず2種類の酸化グラフェンをそれぞれ分散し、酸化グラフェンにおける-COOH基を十分に中和した後、両者を混合することにより、上記分散が不均一であるという問題を回避する。したがって、まず2種類の酸化グラフェンをそれぞれ溶媒に分散し、酸化グラフェンにおける-COOHを十分に中和した後に、両者を混合することにより、混合液中の2種類の酸化グラフェンが凝集しにくい。
【0063】
高酸化グラフェン分散液の製造方法は、化学酸化法で製造した酸化グラフェンを溶媒に分散して、高酸化グラフェン分散液を得るステップを含む。化学酸化法は、グラファイトを強酸溶液において酸化剤と反応させて、酸化グラフェンを得ることである。化学酸化法は、Bordie法、Staudenmaier法及びHummers法を含む。
【0064】
高酸化グラフェン分散液において、高酸化グラフェンの固形分は、3~8%、例えば、3%、4%、5%、6%、7%、8%などである。低酸化グラフェン分散液において、低酸化グラフェンの固形分は、7~11%、例えば、7%、8%、9%、10%、11%などである。低酸化グラフェンは、少ない酸素含有官能基を含み、結合する溶媒が少ないため、高濃度のスラリーをより容易に得る。低酸化グラフェンの剥離される層数は、高酸化グラフェンの剥離される層数より多いため、固形分が高い低酸化グラフェン分散液を得ることができる。
【0065】
高酸化グラフェン分散液と低酸化グラフェン分散液の混合液を高速で分散し、分散の線速度を50~300m/s、例えば、50m/s、60m/s、70m/s、80m/s、90m/s、100m/s、120m/s、150m/s、180m/s、200m/s、220m/s、240m/s、250m/s、280m/s、290m/s、300m/sなどでとする。好ましい実施形態として、分散の線速度を100m/sとする。
【0066】
本発明の第3実施形態に係る高、低酸化グラフェンの複合膜は、高酸化グラフェン及び低酸化グラフェンを含み、低酸化グラフェンの含有量は、5~50%、例えば、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、42%、45%、48%、49%、50%などである。好ましい実施形態として、低酸化グラフェンの含有量は、5~30%、例えば、5%、6%、7%、8%、9%、10%、12%、15%、18%、19%、20%、21%、24%、25%、28%、29%、30%などである。最適な実施形態として、低酸化グラフェンの含有量は、10~30%、例えば、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%などである。
【0067】
高酸化グラフェンは、剥離度が高いため、低酸化グラフェンを規則的に配列することを助けることができ、低酸化グラフェンの炭素含有量が高いため、単位質量の酸化グラフェン複合膜で製造されるグラフェン熱伝導膜を増加させ、コストを低減する。高酸化グラフェンのみを用いてグラフェン熱伝導膜を製造すれば、最終的に得られるグラフェン熱伝導膜は、熱伝導率が高いが、厚さが薄く、低酸化グラフェンのみを用いてグラフェン熱伝導膜を製造するか、又は低酸化グラフェンの含有量が多すぎれば、酸化度が低い酸化グラフェンは、剥離して層数が少ない(10層以下)酸化グラフェンを得るのが難しいため、配列時に規則性が低く、最終的に熱処理して得られるグラフェン熱伝導膜の熱伝導率が低く、酸化度が中間にある酸化グラフェンのみを用いれば、その酸化度が高酸化グラフェンより低く、酸化度が低下するため、酸化グラフェンの配列に影響を与え、最終的に熱処理して得られるグラフェン熱伝導膜の熱伝導率が低くなることを引き起こす。したがって、低酸化グラフェンの含有量を5~50%として選択することにより、熱伝導率が高く、炭素の残留割合が高いグラフェン熱伝導膜を得ることができ、コストを最大限に低減する。
【0068】
酸化グラフェン複合膜の坪量は、100~250g/m2、例えば、100g/m2、110g/m2、120g/m2、140g/m2、150g/m2、180g/m2、200g/m2、220g/m2、230g/m2、240g/m2、250g/m2である。好ましい実施形態として、酸化グラフェン複合膜の坪量は、180g/m2である。高酸化グラフェンの炭素含有量は、45~55%、例えば、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%などである。低酸化グラフェンの炭素含有量は、80~90%、例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%などである。酸化グラフェン複合膜の高酸化グラフェン及び低酸化グラフェンは、平面内に一定方向に配列する。平面内に一定方向に配列することは、酸化グラフェンが水素結合により膜を形成し、熱処理して得られるグラフェン熱伝導膜の熱量がグラフェンの一定方向に配列する方向に沿って伝導されるように、形成した平面内に一定方向に配列することを指す。
【0069】
本発明の第4実施形態に係る高、低酸化グラフェンの複合膜の製造方法は、具体的には、
第2実施形態における方法で高、低酸化グラフェンの混合スラリーを製造するステップと、
スラリーを脱泡し、塗布し、乾燥させて、高、低酸化グラフェンの複合膜を形成するステップと、を含む。
【0070】
脱泡をインライン連続脱泡機で行い、回転速度を2000~3000r/min、例えば、2000r/min、2100r/min、2200r/min、2300r/min、2400r/min、2500r/min、2600r/min、2700r/min、2800r/min、2900r/min、3000r/minなどとする。脱泡機の材料供給弁の開度を、25~35%、例えば、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%などとする。好ましい実施形態として、脱泡機の材料供給弁の開度を30%とする。脱泡機内の真空負圧を、400~600Pa、例えば、400Pa、420Pa、440Pa、450Pa、480Pa、490Pa、500Pa、520Pa、550Pa、580Pa、590Pa、600Paなどとする。好ましい実施形態として、脱泡機内の真空負圧を500Paとする。塗布方法は、スリット押出塗布方法及びナイフ塗布方法などを含む。スリット押出塗布の方法は、一定の流量のスラリーを押出ヘッドの材料供給口からダイヘッドの内部キャビティに入れ、かつ安定した圧力を形成し、最後にスラリーをダイヘッドのスリット出口から噴出して、基材に塗布することである。ナイフ塗布は、ドクターナイフで塗布して、厚い塗膜を製造する塗布方式である。好ましくは、ナイフ塗布の方式を用い、さらに好ましくは、塗布機を用いてナイフ塗布を行う。塗布により形成された湿潤膜の厚さは、2~5mm、例えば、2mm、2.2mm、2.5mm、2.8mm、3mm、3.2mm、3.5mm、3.8mm、4mm、4.2mm、4.5mm、4.8mm、5mmなどである。好ましい実施形態として、塗布により形成された湿潤膜の厚さは、3mmである。低酸化グラフェンの炭素含有量が高いため、最終的な熱伝導膜の炭素残留値を増加させることができ、このように塗布される酸化グラフェンの厚さが同じである場合に、より厚いグラフェン熱伝導膜を得ることができる。厚さが同じであるグラフェン熱伝導膜を製造する必要があれば、本発明の方法を用いて、塗布により形成された湿潤膜の厚さをより薄くすることができ、膜製造コストを大幅に低減し、効率を向上させることができる。塗布速度を、1~2m/min、例えば、1m/min、1.1m/min、1.2m/min、1.3m/min、1.4m/min、1.5m/min、1.6m/min、1.7m/min、1.8m/min、1.9m/min、2m/minなどとする。好ましい実施形態として、塗布速度を1.2m/minとする。乾燥の温度を、50~100℃、例えば、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃などとする、乾燥の時間を、0.5~1.5h、例えば、0.5h、0.6h、0.7h、0.8h、0.9h、1.0h、1.1h、1.2h、1.3h、1.4h、1.5hなどとする。
【0071】
本発明の第5実施形態に係るグラフェン熱伝導膜は、熱伝導率が1000W/m・Kより大きく、例えば、1100W/m・K、1200W/m・K、1300W/m・K、1400W/m・K、1500W/m・K、1600W/m・K、1700W/m・K、1800W/m・Kなどである。グラフェン熱伝導膜の密度は、1.9~2.1g/cm3、例えば、1.9g/cm3、1.92g/cm3、19.5g/cm3、19.8g/cm3、2.0g/cm3、2.02g/cm3、2.05g/cm3、2.08g/cm3、2.1g/cm3などである。グラフェン熱伝導膜の厚さは、30~100μm、例えば、30μm、35μm、40μm、45μm、50μm、55μm、60μm、65μm、70μm、75μm、80μm、85μm、90μm、95μm、100μmなどである。
【0072】
本発明の第6実施形態に係るグラフェン熱伝導膜の製造方法は、
第4実施形態における方法で高、低酸化グラフェンの複合膜を製造するステップと、
複合膜を高温処理するステップと、
高温処理した後の複合膜を圧縮して、グラフェン熱伝導膜を得るステップと、を含む。
【0073】
酸化グラフェン複合膜の炭素含有量が高く、高温処理して得られるグラフェン熱伝導膜の量が多いため、膜製造コストを大幅に低減し、効率を向上させることができる。
【0074】
複合膜を高温処理する方法は、複合膜を室温から1000~3000℃、例えば、1000℃、1200℃、1500℃、1800℃、2000℃、2200℃、2500℃、2800℃、3000℃などまで昇温させ、5~15h、例えば、5h、6h、7h、8h、9h、10h、11h、12h、13h、14h、15hなど処理するステップを含む。昇温速度を、0.2~5℃/min、例えば、0.2℃/min、0.3℃/min、0.4℃/min、0.5℃/min、0.8℃/min、1℃/min、1.5℃/min、2℃/min、2.5℃/min、3℃/min、3.5℃/min、4℃/min、4.5℃/min、4.8℃/min、4.9℃/min、5℃/minなどとする。好ましい実施形態として、昇温速度を、100℃以下である場合に、1~1.5℃/min、例えば、1℃/min、1.1℃/min、1.2℃/min、1.3℃/min、1.4℃/min、1.5℃/minなどとし100℃より大きく、かつ300℃以下である場合に、0.2~0.5℃/min、例えば、0.2℃/min、0.3℃/min、0.4℃/min、0.5℃/minなどとし、300℃より大きい場合に、3~5℃/min、例えば、3℃/min、3.2℃/min、3.5℃/min、3.8℃/min、4℃/min、4.2℃/min、4.5℃/min、4.8℃/min、5℃/minなどとする。圧縮の圧力を、10~30MPa、例えば、10MPa、11MPa、12MPa、14MPa、15MPa、18MPa、20MPa、22MPa、24MPa、25MPa、28MPa、29MPa、30MPaなどとする。
【実施例】
【0075】
以下、本発明の優位性を実施例及び比較例により説明する。以下の実施例において、高酸化グラフェンは、炭素含有量が45~55%の酸化グラフェンを指し、低酸化グラフェンは、炭素含有量が80~90%の酸化グラフェンを指す。
(実施例1A)
【0076】
本実施例に係る高、低酸化グラフェンの混合スラリーの製造プロセスは、具体的には、以下のステップ1)~ステップ3)を含む。
【0077】
高酸化グラフェン分散液を製造するステップ1)では、1kgの高酸化グラフェンを19kgの脱イオン水に分散させて、固形分が5%の高酸化グラフェン分散液を合計20kg得る。
【0078】
低酸化グラフェン分散液を製造するステップ2)では、0.2kgの低酸化グラフェンを1.8kgの脱イオン水に分散させて、固形分が10%の低酸化グラフェン分散液を合計2kg得る。
【0079】
ステップ3)では、ステップ1)及びステップ2)で得られた分散液を混合し、高速で分散させ、線速度を70m/sとして、固形分が5.45%の酸化グラフェンスラリーを得て、低酸化グラフェンが全固形分の16.7%を占める。
(実施例1B)
【0080】
本実施例に係る、実施例1Aのプロセスを用いて高、低酸化グラフェンの複合膜を製造する製造プロセスは、具体的には、以下のステップ1)~ステップ4)を含む。
【0081】
ステップ1)では、実施例1Aのプロセスを用いて酸化グラフェンの混合スラリーを製造する。
【0082】
ステップ2)では、ステップ1)で得られたスラリーをインライン連続脱泡機で脱泡し、脱泡機の回転速度を2400r/minとし、材料供給弁の開度を30%とし、真空負圧を500Paとする。
【0083】
ステップ3)では、ステップ2)で脱泡されたスラリーを塗布機でナイフ塗布し、塗布して形成した湿潤膜の厚さが3mmであり、連続塗布速度を1.2m/minとする。
【0084】
ステップ4)では、ステップ3)で塗布して形成した湿潤膜を、乾燥チャネルの長さが64mの16トレイオーブンを用いて乾燥させ、各トレイのオーブンの温度をそれぞれ60℃、63℃、65℃、70℃、75℃、78℃、80℃、85℃、85℃、85℃、85℃、85℃、78℃、75℃、70℃、60℃として、坪量が180g/m
2の高、低酸化グラフェンの複合膜を得る。
図1から分かるように、少量の低酸化グラフェンを用いると、酸化グラフェンを配列するときの積層効果に影響を与えず、酸化グラフェンがよく積層される。
(実施例1C)
【0085】
本実施例に係る、実施例1Bのプロセスを用いてグラフェン熱伝導膜を製造する製造プロセスは、具体的には、以下のステップ1)~ステップ3)を含む。
【0086】
ステップ1)では、実施例1Bのプロセスを用いて酸化グラフェンの複合膜を製造する。
【0087】
ステップ2)では、複合膜を熱処理し、1.5℃/minの速度で100℃まで昇温させてから、0.2℃/minの速度で300℃まで昇温させ、さらに5℃/minの速度で3000℃まで昇温させ、1h処理し、複合膜の酸素含有官能基を除去して、厚さが90μmのグラフェン発泡膜を得る。
【0088】
ステップ3)では、ステップ2)で得られたグラフェン発泡膜を圧縮してその密度を向上させて、密度が2.1g/cm3で、熱伝導率が1560W/m・Kで、厚さが49μmであるグラフェン熱伝導膜を得る。
(実施例2A)
【0089】
本実施例に係る高、低酸化グラフェンの混合スラリーの製造プロセスは、具体的には、以下のステップ1)~ステップ3)を含む。
【0090】
高酸化グラフェン分散液を製造するステップ1)では、0.9kgの高酸化グラフェンを19.1kgの脱イオン水に分散させて、固形分が4.5%の高酸化グラフェン分散液を合計20kg得る。
【0091】
低酸化グラフェン分散液を製造するステップ2)では、0.35kgの低酸化グラフェンを4.65kgの脱イオン水に分散させて、固形分が7%の低酸化グラフェン分散液を合計5kg得る。
【0092】
ステップ3)では、ステップ1)及びステップ2)で得られた分散液を混合し、高速で分散させ、線速度を100m/sとして、固形分が5%の酸化グラフェンスラリーを得て、低酸化グラフェンが全固形分の28%を占める。
(実施例2B)
【0093】
本実施例に係る、実施例2Aのプロセスを用いて高、低酸化グラフェンの複合膜を製造する製造プロセスは、具体的には、以下のステップ1)~ステップ4)を含む。
【0094】
ステップ1)では、実施例2Aのプロセスを用いて酸化グラフェンの混合スラリーを製造する。
【0095】
ステップ2)では、ステップ1)で得られたスラリーをインライン連続脱泡機で脱泡し、脱泡機の回転速度を3000r/minとし、材料供給弁の開度を28%とし、真空負圧を500Paとする。
【0096】
ステップ3)では、ステップ2)で脱泡されたスラリーを塗布機でナイフ塗布し、塗布して形成した湿潤膜の厚さが2mmであり、連続塗布速度を2m/minとする。
【0097】
ステップ4)では、ステップ3)で塗布して形成した後の湿潤膜を、乾燥チャネルの長さが64mの16節のオーブンを用いて乾燥させ、各節のオーブンの温度をそれぞれ55℃、60℃、63℃、65℃、70℃、75℃、78℃、80℃、80℃、80℃、80℃、80℃、78℃、75℃、70℃、60℃として、坪量が110g/m
2の高、低酸化グラフェンの複合膜を得る。
図2から分かるように、少量の低酸化グラフェンを用いると、酸化グラフェンを配列するときの積層効果に影響を与えず、酸化グラフェンがよく積層される。
(実施例2C)
【0098】
本実施例に係る、実施例2Bのプロセスを用いてグラフェン熱伝導膜を製造する製造プロセスは、具体的には、以下のステップ1)~ステップ3)を含む。
【0099】
ステップ1)では、実施例2Bのプロセスを用いて酸化グラフェンの複合膜を製造する。
【0100】
ステップ2)では、複合膜を熱処理し、1℃/minの速度で100℃まで昇温させてから、0.5℃/minの速度で300℃まで昇温させ、さらに3℃/minの速度で2800℃まで昇温させ、1h処理し、複合膜の酸素含有官能基を除去して、厚さが60μmのグラフェン発泡膜を得る。
【0101】
ステップ3)では、ステップ2)で得られたグラフェン発泡膜をローラで圧延してその密度を向上させ、密度が2.0g/cm3で、熱伝導率が1232W/m・Kで、厚さが33μmであるグラフェン熱伝導膜を得る。
(実施例3A)
【0102】
本実施例に係る高、低酸化グラフェンの混合スラリーの製造プロセスは、具体的には、以下のステップ1)~ステップ3)を含む。
【0103】
高酸化グラフェン分散液を製造するステップ1)では、1.1kgの高酸化グラフェンを18.9kgの脱イオン水に分散させて、固形分が5.5%の高酸化グラフェン分散液を合計20kg得る。
【0104】
低酸化グラフェン分散液を製造するステップ2)では、0.96kgの低酸化グラフェンを11.04kgの脱イオン水に分散させて、固形分が8%の低酸化グラフェン分散液を合計12kg得る。
【0105】
ステップ3)では、ステップ1)及びステップ2)で得られた分散液を混合し、高速で分散させ、線速度を300m/sとして、固形分が6.44%の酸化グラフェンスラリーを得て、低酸化グラフェンが全固形分の46.6%を占める。
(実施例3B)
【0106】
本実施例に係る、実施例3Aのプロセスを用いて高、低酸化グラフェンの複合膜を製造する製造プロセスは、具体的には、以下のステップ1)~ステップ4)を含む。
【0107】
ステップ1)では、実施例3Aのプロセスを用いて酸化グラフェンの混合スラリーを製造する。
【0108】
ステップ2)では、ステップ1)で得られたスラリーをインライン連続脱泡機で脱泡し、脱泡機の回転速度を2800r/minとし、材料供給弁の開度を30%とし、真空負圧を500Paとする。
【0109】
ステップ3)では、ステップ2)で脱泡されたスラリーを塗布機でナイフ塗布し、塗布して形成した湿潤膜の厚さが3.5mmであり、連続塗布速度を1m/minとする。
【0110】
ステップ4)では、ステップ3)で塗布して形成した湿潤膜を、乾燥チャネルの長さが64mの16節のオーブンを用いて乾燥させ、各節のオーブンの温度をそれぞれ60℃、63℃、65℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、95℃、95℃、95℃、95℃、85℃、75℃、70℃、60℃として、坪量が248g/m
2の高、低酸化グラフェンの複合膜を得る。
図3から分かるように、少量の低酸化グラフェンを用いると、酸化グラフェンを配列するときの積層効果に影響を与えず、酸化グラフェンがよく積層される。
(実施例3C)
【0111】
本実施例に係る、実施例3Bのプロセスを用いてグラフェン熱伝導膜を製造する製造プロセスは、具体的には、以下のステップ1)~ステップ3)を含む。
【0112】
ステップ1)では、実施例3Bのプロセスを用いて酸化グラフェンの複合膜を製造する。
【0113】
ステップ2)では、複合膜を熱処理し、1℃/minの速度で100℃まで昇温させてから、0.2℃/minの速度で300℃まで昇温させ、さらに4℃/minの速度で2600℃まで昇温させ、1h処理し、複合膜の酸素含有官能基を除去して、厚さが150μmのグラフェン発泡膜を得る。
【0114】
ステップ3)では、ステップ2)で得られたグラフェン発泡膜を圧縮してその密度を向上させて、密度が1.95g/cm3で、熱伝導率が1120W/m・Kで、厚さが85μmであるグラフェン熱伝導膜を得る。
(比較例4A)
【0115】
本比較例に係る、酸化度が高い酸化グラフェンスラリーの製造プロセスは、具体的には、
0.6kgの高酸化グラフェンを19.4kgの脱イオン水に分散させて、固形分が3%の高酸化グラフェンスラリーを合計20kg得るステップを含む。
(比較例4B)
【0116】
本比較例に係る、比較例4Aのプロセスを用いて酸化グラフェン膜を製造する製造プロセスは、具体的には、以下のステップ1)~ステップ4)を含む。
【0117】
ステップ1)では、比較例4Aのプロセスを用いて酸化グラフェンスラリーを製造する。
【0118】
ステップ2)では、ステップ1)で得られたスラリーをインライン連続脱泡機で脱泡し、脱泡機の回転速度を2800r/minとし、材料供給弁の開度を30%とし、真空負圧を500Paとする。
【0119】
ステップ3)では、ステップ2)で脱泡されたスラリーを塗布機でナイフ塗布し、塗布して形成した湿潤膜の厚さが4.5mmであり、連続塗布速度を0.46m/minとする。
【0120】
ステップ4)では、ステップ3)で塗布して形成した湿潤膜を、乾燥チャネルの長さが64mの16トイレオーブンを用いて乾燥させ、各トイレのオーブンの温度をそれぞれ60℃、63℃、65℃、75℃、80℃、80℃、80℃、80℃、80℃、80℃、80℃、80℃、80℃、75℃、70℃、60℃として、坪量が135g/m
2の酸化グラフェン膜を得る。
図4から分かるように、高酸化グラフェンのみを用いると、酸化グラフェンはよく積層される。
(比較例4C)
【0121】
本比較例に係る、比較例4Bのプロセスを用いてグラフェン熱伝導膜を製造する製造プロセスは、具体的には、以下のステップ1)~ステップ3)を含む。
【0122】
ステップ1)では、比較例4Bのプロセスを用いて酸化グラフェン膜を製造する。
【0123】
ステップ2)では、酸化グラフェン膜を熱処理し、1℃/minの速度で100℃まで昇温させてから、0.2℃/minの速度で300℃まで昇温させ、さらに4℃/minの速度で2850℃まで昇温させ、1h処理し、酸化グラフェン膜の酸素含有官能基を除去して、厚さが106μmのグラフェン発泡膜を得る。
【0124】
ステップ3)では、ステップ2)で得られたグラフェン発泡膜を圧縮してその密度を向上させて、密度が2.0g/cm3で、熱伝導率が1605W/m・Kで、厚さが31μmであるグラフェン熱伝導膜を得る。
【0125】
比較例4で得られた31μmのグラフェン熱伝導膜と、実施例2で得られた33μmのグラフェン熱伝導膜とは、厚さが基本的に近いが、塗布時に比較例4において塗布してより厚い膜を形成する必要があり、塗布速度が明らかに低下し、塗布コストが高い。厚さが同じであるグラフェン熱伝導膜を得るために、比較例4においてより高いコストを必要とする。実施例1と比較例4とを比較すると、実施例1において少量の低酸化グラフェンを添加することは、熱伝導率に与える影響が小さい。
(比較例5A)
【0126】
本比較例に係る酸化度が低い酸化グラフェンスラリーの製造プロセスは、具体的には、
1.4kgの低酸化グラフェンを18.6kgの脱イオン水に分散させて、固形分が7%の低酸化グラフェンスラリーを合計20kg得るステップを含む。
(比較例5B)
【0127】
本比較例に係る、比較例5Aのプロセスを用いて酸化グラフェン膜を製造する製造プロセスは、具体的には、以下のステップ1)~ステップ4)を含む。
【0128】
ステップ1)では、比較例5Aのプロセスを用いて酸化グラフェンスラリーを製造する。
【0129】
ステップ2)では、ステップ1)で得られたスラリーをインライン連続脱泡機で脱泡し、脱泡機の回転速度を2800r/minとし、材料供給弁の開度を30%とし、真空負圧を500Paとする。
【0130】
ステップ3)では、ステップ2)で脱泡されたスラリーを塗布機でナイフ塗布し、塗布して形成した湿潤膜の厚さが2mmであり、連続塗布速度を2.3m/minとする。
【0131】
ステップ4)では、ステップ3)で塗布して形成した湿潤膜を、乾燥チャネルの長さが64mの16節のオーブンを用いて乾燥させ、各節のオーブンの温度をそれぞれ60℃、63℃、65℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、95℃、95℃、95℃、95℃、85℃、75℃、70℃、60℃として、坪量が140g/m
2の酸化グラフェン膜を得る。
図5から分かるように、低酸化グラフェンのみを用いて酸化グラフェン膜を製造すると、低酸化グラフェンの酸素含有官能基が少なく、剥離される層数が少ないため、配列時に積層効果が低い。
(比較例5C)
【0132】
本比較例に係る、比較例5Bのプロセスを用いてグラフェン熱伝導膜を製造する製造プロセスは、具体的には、以下のステップ1)~ステップ3)を含む。
【0133】
ステップ1)では、比較例5Bのプロセスを用いて酸化グラフェン膜を製造する。
【0134】
ステップ2)では、酸化グラフェン膜を熱処理し、1℃/minの速度で100℃まで昇温させてから、0.2℃/minの速度で300℃まで昇温させ、さらに4℃/minの速度で2800℃まで昇温させ、1h処理し、酸化グラフェン膜の酸素含有官能基を除去して、厚さが80μmのグラフェン発泡膜を得る。
【0135】
ステップ3)では、ステップ2)で得られたグラフェン発泡膜を圧縮してその密度を向上させ、密度が2.0g/cm3で、熱伝導率が736W/m・Kで、厚さが56μmであるグラフェン熱伝導膜を得る。
【0136】
比較例5Bの酸化グラフェン膜の配列効果が低いため、最終的に高温処理して得られたグラフェン熱伝導膜の熱伝導率が低い。
【0137】
なお、以上の記載は、本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を限定するものではなく、上記実施例を参照しながら本発明を詳細に説明したが、当業者であれば、依然として上記各実施例に記載された技術手段を修正するか、又はそのうちの一部の技術的特徴に対して均等物の置換を行うことができる。本発明の精神と原則内で行われるいかなる修正、均等物の置換、改善などは、いずれも本発明の保護範囲内に含まれるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2022-03-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高、低酸化グラフェンの混合スラリーであって、
高酸化グラフェン及び低酸化グラフェンを含む酸化グラフェンと、
溶媒と、
を含
み、
前記高酸化グラフェンの炭素含有量は、45~55%であり、
前記低酸化グラフェンの炭素含有量は、80~90%であることを特徴とする、高、低酸化グラフェンの混合スラリー。
【請求項2】
前記酸化グラフェンの固形分は、5~8%であ
ることを特徴とする、請求項1に記載の高、低酸化グラフェンの混合スラリー。
【請求項3】
前記低酸化グラフェンは、酸化グラフェンの重量の5~50%を占めることを特徴とする、請求項2に記載の高、低酸化グラフェンの混合スラリー。
【請求項4】
前記低酸化グラフェンは、酸化グラフェンの重量の5~30%を占めることを特徴とする、請求項3に記載の高、低酸化グラフェンの混合スラリー。
【請求項5】
前記低酸化グラフェンは、酸化グラフェンの重量の10~30%を占めることを特徴とする、請求項4に記載の高、低酸化グラフェンの混合スラリー。
【請求項6】
前記溶媒は、水、NMP、DMFのうちの1種又は2種以上の混合溶媒を含むことを特徴とする、請求項1に記載の高、低酸化グラフェンの混合スラリー。
【請求項7】
高、低酸化グラフェンの混合スラリーの製造方法であって、
それぞれ高酸化グラフェン分散液と低酸化グラフェン分散液を製造し、高酸化グラフェン分散液と低酸化グラフェン分散液を混合し、分散して、高、低酸化グラフェンの混合スラリーを得るステップを含
み、
前記高酸化グラフェンの炭素含有量は、45~55%であり、
前記低酸化グラフェンの炭素含有量は、80~90%であることを特徴とする、高、低酸化グラフェンの混合スラリーの製造方法。
【請求項8】
高酸化グラフェン分散液の製造方法は、化学酸化法で製造した酸化グラフェンを溶媒に分散して、高酸化グラフェン分散液を得
ることを含むことを特徴とする、請求項
7に記載の高、低酸化グラフェンの混合スラリーの製造方法。
【請求項9】
前記化学酸化法は、グラファイトを高酸溶液において酸化剤と反応させて、酸化グラフェンを得ることを特徴とする、請求項8に記載の高、低酸化グラフェンの混合スラリーの製造方法。
【請求項10】
化学酸化法は、Bordie法、Staudenmaier法及びHummers法を含むことを特徴とする、請求項9に記載の高、低酸化グラフェンの混合スラリーの製造方法。
【請求項11】
前記高酸化グラフェン分散液において、高酸化グラフェンの固形分は、3~8%であることを特徴とする、請求項7に記載の高、低酸化グラフェンの混合スラリーの製造方法。
【請求項12】
前記低酸化グラフェン分散液において、低酸化グラフェンの固形分は、7~11%であることを特徴とする、請求項7に記載の高、低酸化グラフェンの混合スラリーの製造方法。
【請求項13】
高酸化グラフェン分散液と低酸化グラフェン分散液の混合液を高速で分散し、分散の線速度を50~300m/sとすることを特徴とする、請求項7に記載の高、低酸化グラフェンの混合スラリーの製造方法。
【請求項14】
分散の線速度を100m/sとすることを特徴とする、請求項13に記載の高、低酸化グラフェンの混合スラリーの製造方法。
【請求項15】
高、低酸化グラフェンの複合膜であって、
高酸化グラフェン及び低酸化グラフェンを含み、
前記低酸化グラフェンの含有量は、5~50%であり
、
前記高酸化グラフェンの炭素含有量は、45~55%であり
、
前記低酸化グラフェンの炭素含有量は、80~90%で
あることを特徴とする、高、低酸化グラフェンの複合膜。
【請求項16】
前記低酸化グラフェンの含有量は、5~30%であることを特徴とする、請求項15に記載の高、低酸化グラフェンの複合膜。
【請求項17】
前記低酸化グラフェンの含有量は、10~30%であることを特徴とする、請求項16に記載の高、低酸化グラフェンの複合膜。
【請求項18】
前記酸化グラフェン複合膜の坪量は、100~250g/m
2
であることを特徴とする、請求項15に記載の高、低酸化グラフェンの複合膜。
【請求項19】
前記酸化グラフェン複合膜の坪量は180g/m
2
であることを特徴とする、請求項18に記載の高、低酸化グラフェンの複合膜。
【請求項20】
前記酸化グラフェン複合膜の高酸化グラフェン及び低酸化グラフェンは、平面内に一定方向に配列することを特徴とする、請求項15に記載の高、低酸化グラフェンの複合膜。
【請求項21】
請求項
1~6のいずれか一項に記載の高、低酸化グラフェンの混合スラリーを用い、または請求項7~14のいずれか一項に記載の方法で
製造する高、低酸化グラフェンの混合スラリーを
用いるステップと、
スラリーを脱泡し、塗布し、乾燥させて、高、低酸化グラフェンの複合膜を形成するステップと、
を含むことを特徴とする、高、低酸化グラフェンの複合膜の製造方法。
【請求項22】
脱泡をインライン連続脱泡機で行い、回転速度を2000~3000r/min
とすることを特徴とする、請求項
21に記載の高、低酸化グラフェンの複合膜の製造方法。
【請求項23】
前記脱泡機の材料供給弁の開度を、25~35%とすることを特徴とする、請求項22に記載の高、低酸化グラフェンの複合膜の製造方法。
【請求項24】
前記脱泡機の材料供給弁の開度を、30%とすることを特徴とする、請求項23に記載の高、低酸化グラフェンの複合膜の製造方法。
【請求項25】
前記脱泡機内の真空負圧を400~600Paとすることを特徴とする、請求項22に記載の高、低酸化グラフェンの複合膜の製造方法。
【請求項26】
前記脱泡機内の真空負圧を500Paとすることを特徴とする、請求項25に記載の高、低酸化グラフェンの複合膜の製造方法。
【請求項27】
塗布方法は、ナイフ塗布方法及びスリット押出塗布方法を含むことを特徴とする、請求項21に記載の高、低酸化グラフェンの複合膜の製造方法。
【請求項28】
塗布機を用いるナイフ塗布方法であることを特徴とする、請求項27に記載の高、低酸化グラフェンの複合膜の製造方法。
【請求項29】
塗布により形成された湿潤膜の厚さは、2~5mmであることを特徴とする、請求項21に記載の高、低酸化グラフェンの複合膜の製造方法。
【請求項30】
塗布により形成された湿潤膜の厚さは3mmであることを特徴とする、請求項29に記載の高、低酸化グラフェンの複合膜の製造方法。
【請求項31】
塗布速度を1~2m/minとすることを特徴とする、請求項21に記載の高、低酸化グラフェンの複合膜の製造方法。
【請求項32】
塗布速度を1.2m/minとすることを特徴とする、請求項31に記載の高、低酸化グラフェンの複合膜の製造方法。
【請求項33】
乾燥の温度を50~100℃とし、乾燥の時間を0.5~1.5hとすることを特徴とする、請求項21に記載の高、低酸化グラフェンの複合膜の製造方法。
【請求項34】
請求項15~20のいずれか一項に記載の高、低酸化グラフェンの複合膜を用い、または請求項21~33のいずれか一項に記載の方法で
製造する高、低酸化グラフェンの複合膜を
用いるステップと、
複合膜を高温処理するステップと、
高温処理した後の複合膜を圧縮して、グラフェン熱伝導膜を得るステップと、
を含むことを特徴とする、グラフェン熱伝導膜の製造方法。
【請求項35】
前記複合膜を高温処理する方法は、複合膜を室温から1000~3000℃まで昇温させ、5~15h処理するステップを含
むことを特徴とする、請求項
34に記載のグラフェン熱伝導膜の製造方法。
【請求項36】
前記複合膜を高温処理する方法は、昇温速度を0.2~5℃/minとすることを特徴とする、請求項35に記載のグラフェン熱伝導膜の製造方法。
【請求項37】
前記複合膜を高温処理する方法は、昇温速度を、100℃以下である場合に、1~1.5℃/minとし、100℃より大きく、かつ300℃以下である場合に、0.2~0.5℃/minとし、300℃より大きい場合に、3~5℃/minとすることを特徴とする、請求項36に記載のグラフェン熱伝導膜の製造方法。
【請求項38】
前記圧縮の圧力を10~30MPaとすることを特徴とする、請求項34に記載のグラフェン熱伝導膜の製造方法。
【国際調査報告】