(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-29
(54)【発明の名称】脂肪ブレンド、そのエマルション、および関連する使用
(51)【国際特許分類】
A23D 9/00 20060101AFI20220822BHJP
A23D 7/005 20060101ALI20220822BHJP
A23L 13/00 20160101ALI20220822BHJP
A23D 7/00 20060101ALI20220822BHJP
【FI】
A23D9/00 518
A23D7/005
A23L13/00 A
A23D7/00 504
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021545937
(86)(22)【出願日】2020-06-26
(85)【翻訳文提出日】2021-10-04
(86)【国際出願番号】 EP2020068090
(87)【国際公開番号】W WO2020260628
(87)【国際公開日】2020-12-30
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390009287
【氏名又は名称】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Firmenich SA
【住所又は居所原語表記】7,Rue de la Bergere,1242 Satigny,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ エルニ
(72)【発明者】
【氏名】マーク ルビン
(72)【発明者】
【氏名】ハワード ムント
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト ワーグナー
(72)【発明者】
【氏名】ミレラ パスク
【テーマコード(参考)】
4B026
4B042
【Fターム(参考)】
4B026DC01
4B026DC06
4B026DG01
4B026DG02
4B026DG03
4B026DH05
4B026DH10
4B026DK05
4B026DL04
4B026DL05
4B026DL10
4B026DX01
4B026DX02
4B026DX05
4B042AC03
4B042AC05
4B042AD36
4B042AK05
4B042AK06
4B042AK10
4B042AK11
4B042AK20
(57)【要約】
本開示は、全体として、脂肪ブレンド、脂肪ブレンドのエマルション(油中水型脂肪ブレンドなど)、およびその使用に関する。特定の実施形態では、本明細書に開示される特定の油中水型エマルションは、様々な食品、ペットフード、または飼料製品、例えば肉代替製品の有機官能特性、知覚されるテクスチャー、知覚されるジューシーさ、または口当たりを改善するために好適に使用することができる。特定の態様では、本開示は、様々な食品、ペットフード、または飼料製品における動物の部分的または完全な代替品としての、本明細書に開示される油中水型エマルションの使用にも関する。特定の態様では、本開示は、油中水型エマルションの製造方法、およびかかる油中水型エマルションを含む様々な食品にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体油内に分散された固体脂肪粒子を含む脂肪組成物であって、前記固体脂肪粒子は、植物由来の脂肪を含み、前記液体油は、植物由来の油を含む、脂肪組成物。
【請求項2】
前記固体脂肪粒子が、カカオバター、パーム脂肪、パーム核脂肪、ヤシ脂肪、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される植物由来の脂肪を含む、請求項1記載の脂肪組成物。
【請求項3】
前記固体脂肪粒子が、カカオバターを含む、請求項1または2記載の脂肪組成物。
【請求項4】
前記固体脂肪粒子の融点が、少なくとも30℃、または少なくとも35℃、または少なくとも40℃である、請求項1から3までのいずれか1項記載の脂肪組成物。
【請求項5】
前記固体脂肪粒子の融点が、80℃以下である、請求項1から4までのいずれか1項記載の脂肪組成物。
【請求項6】
前記液体油の融点が、15℃以下、または10℃以下、または8℃以下、または5℃以下である、請求項1から5までのいずれか1項記載の脂肪組成物。
【請求項7】
1つ以上の脂溶性フレーバー化合物をさらに含む、請求項1から6までのいずれか1項記載の脂肪組成物。
【請求項8】
レシチンなどの乳化剤をさらに含む、請求項1から7までのいずれか1項記載の脂肪組成物。
【請求項9】
連続相と分散相とを含むエマルションであって、前記連続相は、請求項1から8までのいずれか1項記載の脂肪組成物を含み、前記分散相は、水性媒体を含む、エマルション。
【請求項10】
前記分散相が、前記エマルションの総重量に対して前記エマルションの0.1重量%~50重量%、または3重量%~45重量%、または5重量%~40重量%、または8重量%~30重量%を占める、請求項9記載のエマルション。
【請求項11】
前記水性媒体が、水溶性繊維を含む、請求項9または10記載のエマルション。
【請求項12】
可食性物品のフレーバーを改変するための、請求項1から8までのいずれか1項記載の脂肪組成物または請求項9から11までのいずれか1項記載のエマルションの使用。
【請求項13】
前記可食性物品が、肉代替製品である、請求項12記載の使用。
【請求項14】
植物由来のタンパク質と、植物由来の繊維と、請求項9から11までのいずれか1項記載のエマルションとを含む、可食性物品。
【請求項15】
肉代替製品である、請求項14記載の可食性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年6月28日に出願された欧州特許出願第19183261.7号の優先権を主張し、該出願は、その全体が本明細書に記載されているものとして参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本開示は、全体として、脂肪ブレンド、脂肪ブレンドのエマルション(油中水型脂肪ブレンドなど)、およびその使用に関する。特定の実施形態では、本明細書に開示される特定の油中水型エマルションは、様々な食品、ペットフード、または飼料製品、例えば肉代替製品の有機官能特性、知覚されるテクスチャー、知覚されるジューシーさ、または口当たりを改善するために好適に使用することができる。特定の態様では、本開示は、様々な食品、ペットフード、または飼料製品における動物の部分的または完全な代替品としての、本明細書に開示される油中水型エマルションの使用にも関する。特定の態様では、本開示は、油中水型エマルションの製造方法、およびかかる油中水型エマルションを含む様々な食品にも関する。
【0003】
関連技術の説明
肉製品は、人間や他の動物によって広く消費されており、世界中の人間のカロリー摂取量に占める割合は増加し続けている。それでも、肉の生産は、土地面積当たりのカロリーベースでは、植物生産よりもはるかに効率が悪い。そのため、肉の消費量が増えると、(熱帯雨林などの)森林を耕作地に転換する必要性が高まり、それに伴って温室効果ガスの排出量も増加する。また、肉には、人間の健康や幸福に悪影響を及ぼす傾向にある長鎖飽和脂肪が多く含まれていることが多い。しかし、肉製品の美味しさや満腹感はしばしば植物性供給源からは得ることが困難であるため、人間は肉製品を好んで消費する傾向にある。
【0004】
近年、肉系食品の好ましい特徴の多くを示す植物性材料を開発する取り組みが活発化している。このような植物性材料は、「肉代替品」と呼ばれることがある。このような肉代替品技術の開発に向けた多大な努力にもかかわらず、得られた製品は、天然の肉に単に表面的に類似しているに過ぎない。肉製品には多くの天然フレーバー化合物が含まれており、調理過程で他の同様の化合物が発生する。そのような化合物には、脂肪酸や特定のアロマ化合物などがある。このような化合物は、肉代替品では不足していることが多く、また、消費者にとって非常に異なる味の体験が生じるように含まれている。このような肉代替品の主成分は、一般的には植物性タンパク質および水である。対照的に、肉の望ましい味に寄与するフレーバー化合物の多くは、本質的に疎水性である。そのため、肉代替品中に存在していても、同じようには口に運ばれない。そのため、肉代替製品を改良して、そのような製品を食べる体験が、本物の肉製品を食べる体験のより近い模擬となる方法を開発することが依然として求められている。
【0005】
概要
本開示は、植物性タンパク質の存在下で特定のアロマ化合物を有益に提供する特定の組成物の発見に関し、これにより、本物の肉製品の味覚プロファイルをより忠実に模擬することが可能となる。例えば、肉代替品におけるフレーバーの不均衡を招く要因の1つが、植物性タンパク質への特定のアロマ化合物の選択的な結合であり、これにより、製品のゆがんだ、料理に適さない、本物に忠実でないフレーバープロファイルが生じ得ることが発見された。この課題の部分的な解決策を提供するために、本開示は、比較的高いlog P値(例えば、log P>1.5)を有することが多いアロマ化合物などの親油性フレーバー化合物の結合や、チオールやジスルフィドなどのような他の化合物の、食品、ペットフード製品、または飼料製品、より具体的には肉代替品の植物性タンパク質マトリックスへの結合を好適に低減することができる脂肪組成物およびそのエマルションを提供する。なお、本文脈における「log P」とは、水と1-オクタノールとの分配係数の、10を底とするlogを意味する。
【0006】
本明細書に開示される組成物を肉代替製品に使用することにより、肉代替製品の消費時および調理時(例えば、家庭で料理する際)の双方において、肉代替品のアロマプロファイル、味覚プロファイル、感覚的知覚、およびテクスチャーの知覚の1つ以上を改善して、本物の肉製品のそのような特性により正確に一致させることができる。
【0007】
本明細書に開示される組成物は、特定の油中水型エマルションに使用すると、親水性および親油性化合物の双方が肉代替製品の植物性タンパク質マトリックスに結合するのを低減することができる。場合によっては、フレーバー化合物を乳化形式で施与することにより、本開示の特定のフレーバー入り油中水型エマルションは、場合によっては、得られる肉代替製品に高濃度のフレーバー化合物を使用することなく、本物の肉製品に見られるものにより忠実なフレーバープロファイルを提供することができる。
【0008】
第1の態様では、本開示は、固体脂肪粒子と液体油とを含む脂肪組成物であって、固体脂肪粒子は、液体(食用)油内に分散されている、脂肪組成物を提供する。そのいくつかの実施形態では、脂肪組成物は、乳化剤を含む。そのいくつかの実施形態では、脂肪組成物は、1つ以上の脂溶性フレーバー化合物、脂溶性アロマ化合物、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、液体(食用)油と固体脂肪粒子との重量対重量比は、30:70~99:1の範囲である。乳化剤が存在するいくつかの実施形態では、乳化剤は、脂肪組成物の総重量に対して0.2重量%~35重量%の範囲の濃度で存在する。
【0009】
第2の態様では、本開示は、連続相と分散相とを含むエマルションであって、連続相または分散相のうちの一方は、第1の態様の脂肪性組成物を含み、連続相または分散相のうちの他方は、水性媒体を含む、エマルションを提供する。いくつかの実施形態では、水性媒体は、水と、任意に1つ以上の水溶性フレーバー化合物とを含む。そのいくつかの実施形態では、連続相は、脂肪組成物を含み、分散相は、水性媒体を含む。さらにそのようないくつかの実施形態では、連続相は、エマルションの30重量%~99重量%を占め、分散相は、エマルションの0.1重量%~50重量%を占める。
【0010】
第3の態様では、本開示は、可食性物品のフレーバーを改変するための、第1の態様の脂肪組成物または第2の態様のエマルションの使用を提供する。いくつかの実施形態では、可食性物品は、食品、ペットフード製品、または飼料製品である。いくつかのさらなる実施形態では、可食性物品は、肉代替製品である。いくつかの実施形態では、可食性物品は、1つ以上の植物性タンパク質、例えば、エンドウタンパク、ダイズタンパク、ナッツタンパクなどを含む。さらにいくつかの実施形態では、可食性物品は、1つ以上の植物繊維、例えば、竹繊維、サイリウム繊維などを含む。いくつかの実施形態では、脂肪組成物またはエマルションは、可食性物品において、可食性物品の総重量に対して0.1重量%~10重量%の範囲の濃度で使用される。いくつかの実施形態では、可食性物品のフレーバーを改変することは、可食性物品のジューシーさを向上させることを含む。いくつかの実施形態では、可食性物品のフレーバーを改変することは、可食性物品の口当たりを向上させることを含む。いくつかの実施形態では、可食性物品のフレーバーを改変することは、可食性物品の口へのまとわりつきを向上させることを含む。いくつかの実施形態では、可食性物品のフレーバーを改変することは、可食性物品内の流体のとろみを増加させることを含む。可食性物品が肉代替品であるいくつかの実施形態では、肉代替品は、牛肉代替品、家禽類代替品、魚類代替品、豚肉代替品、または貝類代替品、例えば、カニ肉代替品、ホタテガイ代替品、またはエビ代替品である。
【0011】
第4の態様では、本開示は、可食性物品のフレーバーを改変する方法であって、第1の態様の脂肪組成物または第2の態様のエマルションを可食性物品に導入するステップを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、可食性物品は、食品、ペットフード製品、または飼料製品である。いくつかのさらなる実施形態では、可食性物品は、肉代替製品である。いくつかの実施形態では、可食性物品は、1つ以上の植物性タンパク質、例えば、エンドウタンパク、ダイズタンパク、ナッツタンパクなどを含む。さらにいくつかの実施形態では、可食性物品は、1つ以上の植物繊維、例えば、竹繊維、サイリウム繊維などを含む。いくつかの実施形態では、脂肪組成物またはエマルションは、可食性物品の総重量に対して0.1重量%~10重量%の範囲の濃度で可食性物品に導入される。いくつかの実施形態では、可食性物品のフレーバーを改変することは、可食性物品のジューシーさを向上させることを含む。いくつかの実施形態では、可食性物品のフレーバーを改変することは、可食性物品の口当たりを向上させることを含む。いくつかの実施形態では、可食性物品のフレーバーを改変することは、可食性物品の口へのまとわりつきを向上させることを含む。いくつかの実施形態では、可食性物品のフレーバーを改変することは、可食性物品内の流体のとろみを増加させることを含む。可食性物品が肉代替品であるいくつかの実施形態では、肉代替品は、牛肉代替品、家禽類代替品、魚類代替品、豚肉代替品、または貝類代替品、例えば、カニ肉代替品、ホタテガイ代替品、またはエビ代替品である。
【0012】
第5の態様では、本開示は、可食性物品における動物性脂肪を置き換えるための、第1の態様の脂肪組成物または第2の態様のエマルションの使用を提供する。いくつかの実施形態では、可食性物品は、食品、ペットフード製品、または飼料製品である。いくつかのさらなる実施形態では、可食性物品は、肉代替製品である。いくつかの実施形態では、可食性物品は、1つ以上の植物性タンパク質、例えば、エンドウタンパク、ダイズタンパク、ナッツタンパクなどを含む。さらにいくつかの実施形態では、可食性物品は、1つ以上の植物繊維、例えば、竹繊維、サイリウム繊維などを含む。いくつかの実施形態では、脂肪組成物またはエマルションは、可食性物品において、可食性物品の総重量に対して0.1重量%~10重量%の範囲の濃度で使用される。可食性物品が肉代替品であるいくつかの実施形態では、肉代替品は、牛肉代替品、家禽類代替品、魚類代替品、豚肉代替品、または貝類代替品、例えば、カニ肉代替品、ホタテガイ代替品、またはエビ代替品である。
【0013】
第6の態様では、本開示は、可食性物品における動物性脂肪を低減または排除する方法であって、第1の態様の脂肪組成物または第2の態様のエマルションを可食性物品に導入するステップを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、可食性物品は、食品、ペットフード製品、または飼料製品である。いくつかのさらなる実施形態では、可食性物品は、肉代替製品である。いくつかの実施形態では、可食性物品は、1つ以上の植物性タンパク質、例えば、エンドウタンパク、ダイズタンパク、ナッツタンパクなどを含む。いくつかのさらなる実施形態では、可食性物品は、1つ以上の植物繊維、例えば、竹繊維、サイリウム繊維などを含む。いくつかの実施形態では、脂肪組成物またはエマルションは、可食性物品の総重量に対して0.1重量%~10重量%の範囲の濃度で可食性物品に導入される。可食性物品が肉代替品であるいくつかの実施形態では、肉代替品は、牛肉代替品、家禽類代替品、魚類代替品、豚肉代替品、または貝類代替品、例えば、カニ肉代替品、ホタテガイ代替品、またはエビ代替品である。
【0014】
第7の態様では、本開示は、第1の態様の脂肪組成物または第2の態様のエマルションを含む、可食性物品を提供する。いくつかの実施形態では、可食性物品は、食品、ペットフード製品、または飼料製品である。いくつかのさらなる実施形態では、可食性物品は、肉代替製品である。いくつかの実施形態では、可食性物品は、1つ以上の植物性タンパク質、例えば、エンドウタンパク、ダイズタンパク、ナッツタンパクなどを含む。さらにいくつかの実施形態では、可食性物品は、1つ以上の植物繊維、例えば、竹繊維、サイリウム繊維などを含む。いくつかの実施形態では、脂肪組成物またはエマルションは、可食性物品において、可食性物品の総重量に対して0.1重量%~10重量%の範囲の濃度で存在する。いくつかの実施形態では、可食性物品のフレーバーを改変することは、可食性物品のジューシーさを向上させることを含む。いくつかの実施形態では、可食性物品のフレーバーを改変することは、可食性物品の口当たりを向上させることを含む。可食性物品が肉代替品であるいくつかの実施形態では、肉代替品は、牛肉代替品、家禽類代替品、魚類代替品、豚肉代替品、または貝類代替品、例えば、カニ肉代替品、ホタテガイ代替品、またはエビ代替品である。
【0015】
第8の態様では、本開示は、第2の態様のエマルションの製造方法であって、(a)第1の態様の脂肪組成物を提供するステップと、(b)連続相としての脂肪組成物に、分散相としての水性媒体を、連続相の相転移温度を上回る温度で乳化させて、乳化組成物を形成するステップであって、脂肪組成物は、任意に乳化剤を含むものとするステップと、(c)乳化組成物を、連続相の相変化温度を下回る温度に冷却するステップとを含む方法を提供する。
【0016】
本開示の他の態様および実施形態は、以下の詳細な説明に記載されている。
【0017】
以下の図面は、本明細書に開示される組成物および方法の様々な実施形態を説明する目的で提供される。図面は、説明のみを目的として提供されており、好ましい組成物または好ましい方法を記載することを意図したものではなく、また特許請求される発明の範囲を限定する元となることも意図していない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】押出成形されていないおよび押出成形されたエンドウタンパク単離サンプルの総イオン強度を示す図である。
【
図2】押出成形されたおよび押出成形されていない油中水型反応フレーバーのサンプルの総イオン強度を示す図である。
【
図3】押出成形されたおよび押出成形されていない油反応フレーバーのサンプルの総イオン強度を示す図である。
【
図4】実施例2で製造したエマルションを、加熱したミリスチン酸イソプロピル(疎水性溶媒)で希釈し、光学顕微鏡で測定した液滴サイズ分布を示す図である。
【
図5】本開示の特定の実施形態により製造された材料を溶融させて測定した粘弾性特性を示す図である。G’は弾性せん断弾性率を表し、G’’は粘性せん断弾性率を表す。測定は、振動の振幅および周波数を一定にして行った(ひずみ振幅:0.3%、周波数:0.5Hz)。
【
図6】ひずみ振幅掃引実験の結果を示す図である。37℃の連続脂肪相の溶融温度を上回る温度で粘弾性特性を測定した。G’は弾性せん断弾性率、G’’は粘性せん断弾性率を表す。測定は、0.5Hzの一定の周波数で、振動するせん断ひずみの振幅を低から高へと増加させて行った。
【0019】
詳細な説明
以下の詳細な説明は、本明細書で提供される様々な態様および実施形態を示すものである。本説明は、当該技術分野の当業者の観点から読まれるものである。したがって、そのような当業者に周知の情報は、必ずしも含まれているわけではない。
【0020】
脂肪組成物
少なくとも1つの態様において、本開示は、固体脂肪粒子と液体(食用)油とを含む脂肪組成物であって、固体脂肪粒子は、液体(食用)油内に分散されている、脂肪組成物を提供する。
【0021】
固体脂肪粒子は、室温、例えば22℃で一般的に固体である任意の適切な脂肪または脂肪混合物で構成することができる。脂肪粒子に含まれる脂肪は、動物や植物の供給源など、任意の適切な供給源から得ることができる。
【0022】
いくつかの実施形態では、脂肪粒子は植物由来の脂肪を含む。適切なそのような植物由来の脂肪としては、カカオバター、パーム脂肪(すなわち、固体のパーム油)、ヤシ脂肪(すなわち、固体のヤシ油)、パーム核脂肪(すなわち、固体のパーム核油)、水添植物油、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、植物由来の脂肪としては、カカオバターが挙げられる。いくつかのそのような実施形態では、脂肪粒子は、植物由来の脂肪を、脂肪組成物中の固体脂肪粒子の総重量に対して少なくとも75重量%、または少なくとも80重量%、または少なくとも85重量%、または少なくとも90重量%、または少なくとも95重量%、または少なくとも97重量%、または少なくとも99重量%含む。
【0023】
他のいくつかの実施形態では、脂肪粒子は、動物由来の脂肪を含む。適切なそのような動物由来の脂肪としては、バター、ラード、獣脂、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。そのようないくつかの実施形態では、脂肪粒子は、動物由来の脂肪を、脂肪組成物中の固体脂肪粒子の総重量に対して25重量%以下、または20重量%以下、または15重量%以下、または10重量%以下、または5重量%以下、または3重量%以下、または1重量%以下含む。
【0024】
総じて、固体脂肪粒子を構成する脂肪はトリグリセリドであるが、一定量のジグリセリドまたはモノグリセリドを含んでいてもよい。なお、本明細書で使用する場合に、「脂肪」という用語は、室温(22℃)などの所与の温度で固体状態にある脂肪酸グリセリドを指す。固体脂肪粒子を構成する脂肪は、トリグリセリドを、固体脂肪粒子中の脂肪酸グリセリドの総重量に対して少なくとも75重量%、または少なくとも80重量%、または少なくとも85重量%、または少なくとも90重量%、または少なくとも95重量%、または少なくとも97重量%含む。固体脂肪粒子中の脂肪酸グリセリドを構成する脂肪酸は、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸との任意の適切な混合物であり得る。いくつかの実施形態では、固体脂肪粒子を構成する脂肪は、1~75、または2~65、または5~55の範囲のヨウ素価を有する。
【0025】
固体脂肪粒子は、任意の適切な融点を有することができる。いくつかの実施形態では、固体脂肪粒子は、少なくとも30℃、または少なくとも35℃、または少なくとも40℃の融点を有する。いくつかのさらなる実施形態では、固体脂肪粒子は、80℃以下の融点を有する。
【0026】
いくつかの実施形態では、固体脂肪粒子は、食用ワックスを含む。食用ワックスの非限定的な例としては、水添ダイズ脂肪、パーム脂肪、ヤシ脂肪、カカオバター、カルナウバワックス、米ぬかワックス、シアバター、およびそれらの混合物が挙げられる。いくつかの実施形態では、食用ワックスは、パームオレインまたはシアオレインおよびそれらの混合物などの、より融点の高い脂肪分を有する動物性脂肪である。
【0027】
上述したように、脂肪組成物はまた、固体脂肪粒子が分散された液体(食用)油を含む。動物油、魚油、植物油、藻類油、またはそれらの組み合わせなど、室温(例えば、22℃)で一般的に液体である油であれば、任意の適切なものを使用することができる。いくつかの実施形態では、液体油は、植物由来の油である。他のいくつかの実施形態では、油は、植物由来の油ではない。液体油の例としては、ヒマワリ油、ナタネ油、またはキャノーラ油、ダイズ油、パーム油、ヤシ油、落花生(ピーナッツ)油、パーム核油、オリーブ油、綿実油、ゴマ油、アマニ油、藻類油、魚油、アボカド油、アルガン油、およびそれらの任意の混合物が挙げられる。いくつかの実施形態では、液体油は、中鎖トリグリセリド油(MCT)、ダイズ油、綿実油、ピーナッツ油、ゴマ油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、キャノーラ油、サフラワー油、アボカド油、オリーブ油、アルガン油、またはそれらの任意の混合物からなる。
【0028】
総じて、液体油および固体脂肪粒子は、その融点に違いがある。総じて、液体油は、25℃以下、または20℃以下、または15℃以下、または10℃以下、または8℃以下、または5℃以下の融点を有する。
【0029】
いくつかの実施形態では、固体脂肪粒子のより高い融点と液体油のより低い融点との融点の差は、5℃~105℃、または8℃~90℃、または10℃~80℃、または12℃~70℃、または15℃~60℃の範囲である。
【0030】
固体脂肪粒子および液体油は、室温付近で固体脂肪粒子を分散させるのに十分な液体油がある限り、任意の適切な相対量で脂肪組成物中に存在することができる。いくつかの実施形態では、脂肪組成物における液体油と固体脂肪粒子の重量比は、30:70~99:1、または40:60~98:2、または55:45~97:3、または60:40~95:5、または70:30~93:7、または72:28~92:8の範囲である。
【0031】
いくつかの実施形態では、脂肪組成物が動物性油脂を実質的に含まないことが望ましい場合がある。したがって、いくつかの実施形態では、脂肪組成物は、動物由来の油脂を、脂肪組成物の総重量に対して5重量%以下、または3重量%以下、または1重量%以下、または0.5重量%以下、または0.3重量%以下、または0.1重量%以下含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、脂肪組成物が、遺伝子組換え植物由来の油脂(GMO由来の油脂)を実質的に含まないことが望ましい場合がある。したがって、いくつかの実施形態では、脂肪組成物は、GMO由来の油脂を、脂肪組成物の総重量に対して5重量%以下、または3重量%以下、または1重量%以下、または0.5重量%以下、または0.3重量%以下、または0.1重量%以下含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、脂肪性組成物は乳化剤を含む。存在する場合、乳化剤は、任意の適切な濃度で存在することができる。いくつかの実施形態では、脂肪組成物中の乳化剤の濃度は、脂肪組成物の総重量に対して0.2重量%~35重量%、または0.3重量%~20重量%、または0.4重量%~15重量%、または0.5重量%~10重量%、または0.6重量%~8重量%の範囲である。
【0034】
一般に、乳化剤は、2つの相の間の界面に集中してその界面の特性を改変する両親媒性分子である。乳化剤の適切な非限定的な例は、McCutcheon’s Emulsifiers & Detergents or the Industrial Surfactants Handbookに記載されている。乳化剤の非限定的な具体例としては、レシチン、ポリオキシエチレン、ステアリン酸塩、ポリソルベート20、ソルビタン誘導体(ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65)、リン酸化グリセリドの混合アンモニウム塩、酵素的に加水分解されたカルボキシメチル-セルロース、脂肪酸のモノおよびジグリセリド、脂肪酸のモノおよびジグリセリドのエステル(酢酸エステル、乳酸エステル、クエン酸エステル、酒石酸エステル、モノおよびジアセチル酒石酸エステル、酢酸と酒石酸の混合エステルなど)、スクシニル化モノグリセリド、脂肪酸のスクロースエステル、スクログリセリド、脂肪酸のポリグリセロールエステル、ポリリシノール酸ポリグリセロール、脂肪酸のプロパン-1,2-ジオールエステル、脂肪酸のプロピレングリコールエステル、グリセロールおよびプロパノールのラクチル化脂肪酸エステル、脂肪酸のモノおよびジグリセリドと相互作用した熱酸化ダイズ油、ステアロイル乳酸ナトリウム、ステアロイル乳酸カルシウム、酒石酸ステアリル、クエン酸ステアリル、ステアロイルフマル酸ナトリウム、ステアロイルフマル酸カルシウム、ドデシル硫酸ナトリウム、エトキシル化モノおよびジグリセリド、メチルグルコシドヤシ油エステル、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレエート、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0035】
いくつかの実施形態では、乳化剤は、トリグリセリド含有量が異なるレシチン(ホスファチジルコリンPC、ホスファチジルエタノールアミンPE、ホスファチジルイノシトールPI、およびホスファチジン酸PAを含むグリセロリン脂質の混合物など)を含む(純粋なレシチンまたは脱油レシチン、異なるPC対PE対PI比)。このようなレシチンは、油性のペーストまたは粉末の形態を含む、任意の適切な形態で使用することができる。レシチンは、Cargill(銘柄:EMELPUR、EMULTOP、LECIMULTHIN、EPIKURON)、Archer Daniels Midland(銘柄:ULTRALEC、ADLEC)、Solae(銘柄:SOLEC)、およびBunge(銘柄:BUNGEMAXX)など、多くの供給元から市販されている。
【0036】
適切な乳化剤は、Griffin, J. Cosmet. Chem., vol. 1, p. 311 (1949)に記載されている経験的スケールで測定されたその親水性と親油性とのバランス(HLB)に応じて特徴付けることができる。このスケールは0~20の範囲であり、0は完全に親油性の分子、20は完全に親水性の分子である。界面活性剤の機能は、一般的にはそのHLB値で表すことができる。消泡界面活性剤は、1~3のHLB範囲を有する。油中水型乳化剤は、3~6のHLB範囲を有する。湿潤剤は、7~9のHLB範囲を有する。水中油型乳化剤は、8~18のHLB範囲を有する。洗浄剤は、13~15のHLB範囲を有する。可溶化剤は、15~18のHLB範囲を有する。
【0037】
いくつかの実施形態では、脂肪組成物中に存在する乳化剤は、10以下、9以下、または8以下、または7以下、または6以下のHLB値を有する。いくつかの実施形態では、脂肪組成物中に存在する乳化剤は、3~9、または4~9、または5~9、または6~9、または7~9、または3~8、または3~7、または3~6の範囲のHLB値を有する。このような乳化剤は、低HLB乳化剤と呼ばれることがある。
【0038】
油中水型エマルションの形成に適した低HLB乳化剤の非限定的な例としては、アルコールアルコキシレート、アルキルアミンアルコキシレート、ポリエーテルアミンアルコキシレート、エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックポリマー、リン酸エステル、アルキルスルフェート、アルキルエーテルスルフェート、アルキルおよびアルキルベンゼンスルホネート、脂肪酸エステル、脂肪油アルコキシレート、サッカリド誘導体、ソルビタン誘導体、アルキルフェノールアルコキシレート、アリールフェノールアルコキシレート、スルホスクシネート、スルホスクシナメート、およびそれらの任意の組み合わせが挙げられる。乳化剤は、非イオン性、アニオン性、カチオン性、または双性イオン性であることができる。いくつかの実施形態では、乳化剤は、食品、ペットフード、または飼料製品での使用に適しており、脂肪酸エステル、サッカリド誘導体、ソルビタン誘導体、特にソルビタンエステル、モノ/ジグリセリド、クエン酸エステル、レシチン、および他のリン脂質、ならびにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。そのような低HLB乳化剤の市販の例としては、DuPont-Daniscoから入手可能なDIMODAN乳化剤(蒸留モノグリセリド)、Paalsgardから入手可能なCITREM(モノ/ジグリセリドのクエン酸エステル)、DuPont Nutritionから入手可能なSOLEC(ダイズレシチン)、または同じくDuPont Nutritionから入手可能なGRINSTED STS/SMS(ソルビタンエステル)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
そのいくつかの実施形態では、脂肪組成物は、脂溶性アロマ化合物などの脂溶性フレーバー化合物を含む。そのような脂溶性フレーバー化合物は、任意の適切な量で脂肪組成物中に存在することができる。例えば、いくつかの実施形態では、脂溶性フレーバー化合物は、脂肪組成物の総重量に対して脂肪組成物の0.1重量%~80重量%、または1重量%~60重量%を占める。
【0040】
当該技術分野で知られているものに従って、任意の適切な脂溶性フレーバー化合物を使用することができる。フレーバー化合物については、以下でさらに詳細に説明する。
【0041】
脂肪組成物のエマルション
別の態様において、本開示は、連続相と分散相とを含むエマルションであって、連続相または分散相のうちの一方は、上述の態様およびその任意の実施形態の脂肪性組成物を含み、連続相または分散相のうちの他方は、水性媒体を含む、エマルションを提供する。
【0042】
いくつかの実施形態では、連続相は、脂肪組成物を含み、分散相は、水性媒体を含む。脂肪組成物は、本開示の前出のセクションに記載されている実施形態に従って、任意の適切な特性を有することができる。水性媒体は、水を含む。例えば、いくつかの実施形態では、水は、水性媒体の総重量に対して、水性媒体の少なくとも75重量%、または少なくとも80重量%、または少なくとも85重量%、または少なくとも90重量%、または少なくとも95重量%、または少なくとも97重量%、または少なくとも99重量%を占める。いくつかのさらなる実施形態では、水性媒体は、水溶性フレーバー化合物を含む。
【0043】
本明細書で使用する場合に、「エマルション」という用語は、通常は、混和しない(すなわち、混じり合わない)2つ以上の液体の混合物を意味する。エマルションでは、一方の液体(分散相)が他方の液体(連続相)に分散している。特定の例では、一方の相は疎水性または親油性の相であり、他方の相は親水性の相である。本明細書に開示される特定の実施形態では、エマルションは油中水型エマルションであり、親水性相が分散している連続的な疎水性(すなわち親油性)相を含む。
【0044】
エマルションは、任意のタイプのエマルションであることができる。例えば、いくつかの実施形態では、エマルションは、マクロエマルション、マイクロエマルション、またはナノエマルションである。
【0045】
本明細書に開示されるエマルションは、任意の適切な手法で製造することができる。例えば、いくつかの実施形態では、エマルションは、高せん断ブレンダー、コロイドミル、インペラミキサーを用いた機械的混合や高圧ホモジナイザーの使用などにより機械的な力を加えて分散相液滴を乳化させることによって製造される。いくつかの実施形態では、そのようなエマルションは、超音波処理、転相乳化、膜乳化、またはマイクロ流体チャネルを用いた乳化によって製造される。
【0046】
エマルションは、連続相と分散相との任意の適切な重量比を有することができる。例えば、いくつかの実施形態では、連続相は、エマルションの総重量に対してエマルションの30重量%~99重量%、または35重量%~98重量%、または38重量%~97重量%、または40重量%~95重量%、または45重量%~93重量%を占める。特定の関連する実施形態では、分散相は、エマルションの総重量に対してエマルションの0.1重量%~50重量%、または3重量%~45重量%、または5重量%~40重量%、または8重量%~30重量%を占める。
【0047】
いくつかの実施形態では、水性媒体は、可溶性繊維を含む。そのような実施形態では、可溶性繊維は、任意の適切な濃度で存在することができる。例えば、いくつかの実施形態では、可溶性繊維は、水性媒体中に、水性媒体の総重量に対して0.1重量%~5重量%、または1重量%~2重量%の範囲の濃度で存在する。いくつかの実施形態では、可溶性繊維は、エマルションを、室温を上回る温度に、例えば肉を調理するための標準的な温度に加熱したときにヒドロゲルを形成するのに適した濃度で存在する。
【0048】
本明細書で使用する場合に、「可溶性繊維」という用語は、Prosky et al, J. Assoc. Anal. Chem., vol. 70(5), p. 1017 (1988) に記載されている方法などにより水に可溶な多糖類を指す。このような繊維は、様々な供給源からの繊維を含むことができる。適切な繊維のいくつかの非限定的な例としては、果実繊維、穀物繊維、天然可溶性繊維、および合成可溶性繊維が挙げられる。天然可溶性繊維としては、可溶性トウモロコシ繊維、マルトデキストリン、アカシア、および加水分解グアーガムが挙げられる。合成可溶性繊維としては、ポリデキストロース、化工食物デンプンなどが挙げられる。本開示の実施形態において有用な可溶性繊維の食品グレードの供給源としては、イヌリン、トウモロコシ繊維、大麦、トウモロコシ胚芽、挽いたオーツ麦殻、ミル処理したトウモロコシふすま、小麦ふすまのアリューロン層の誘導体、亜麻粉、全亜麻仁ふすま、冬大麦フレーク、挽いてコースキルン処理されたオーツ麦のひき割粉、トウモロコシ、エンドウ繊維(例えば、カナダ産黄色エンドウ(Canadian yellow pea))、デンマーク産ジャガイモ繊維、こんにゃく繊維、サイリウム繊維(例えば、プラナゴ・オベート(planago ovate)種皮由来)、サイリウム皮繊維、液体アガベ繊維、米ぬか繊維、オーツ麦スプラウト繊維、アマランススプラウト繊維、レンズ豆粉繊維、ブドウ種子繊維、リンゴ繊維、ブルーベリー繊維、クランベリー繊維、イチジク繊維、シランダパワー繊維、イナゴマメ粉繊維、ミル処理したプルーン繊維、マンゴー繊維、オレンジ繊維、オレンジパルプ、イチゴ繊維、カラギーナンハイドロコロイド、キリンサイ属コットンニル種海藻(eucheuma cottonnil seaweed)誘導体、綿実繊維、ダイズ繊維、キウイ繊維、アカシアガム繊維、竹繊維、チア繊維、ジャガイモ繊維、ジャガイモデンプン、ペクチン(炭水化物)繊維、加水分解グアーガム、ニンジン繊維、ダイズ繊維、チコリ根繊維、オーツ麦繊維、小麦繊維、トマト繊維、ポリデキストロース繊維、精製コーンスターチシロップ、イソマルトオリゴ糖混合物、可溶性デキストリン、シトラスバイオフラボノイド混合物、細胞壁破壊栄養酵母、親油性繊維、プルーン果汁、カラマツ由来誘導体、オリゴース繊維、サトウキビ由来誘導体、短鎖フラクトオリゴ糖、グルコースの合成ポリマー、ポリデキストロース、ペクチン、ポラニオン化合物、セルロース繊維、硬木植物由来セルロース繊維、およびカルボキシメチルセルロースが挙げられる。
【0049】
いくつかの実施形態では、水性媒体は、水溶性フレーバー化合物を含む。当該技術分野で知られているものに従って、任意の適切な水溶性フレーバー化合物を使用することができる。フレーバー化合物については、以下でさらに詳細に説明する。
【0050】
場合によっては、得られたエマルションを特定の物理的特性の観点から説明することが望ましいことがある。例えば、いくつかの実施形態では、エマルションは、その粘性せん断弾性率G’’(0.3%、0.5Hz)よりも高い弾性せん断弾性率G’(0.3%、0.5Hz)を有する油中水型エマルションである。この表記方法を用いた場合、括弧内の数字は、ひずみ振幅を%値で示したものと、振動せん断の周波数とを示しており、周波数0.5Hz、ひずみ振幅0.3%のせん断振動で測定したせん断弾性率を意味する。弾性せん断弾性率とは、所与の周波数およびひずみ振幅に対する材料の弾性的な挙動を表すもので、慣例的にG’と表記され、パスカル(Pa)の単位で測定される。粘性せん断弾性率は、所与の周波数およびひずみ振幅に対する材料の粘性挙動を表すもので、慣例的にG’’と表記され、この場合にもパスカル(Pa)の単位で測定される。これらの特性値は、例えば、R.G. Larson, The Structure and Rheology Complex Fluids (1998)、またはF.A. Morrison, Understanding Rheology (2001)で定義されている。
【0051】
これらの粘弾性特性は、一定の温度または温度範囲の間、例えば4℃~80℃の範囲の温度で、一定の周波数(すなわち、0.5Hz)または周波数範囲で、レオメーター(例えば、DHR-2型、TA Instruments)で、ねじり/せん断ひずみ(すなわち、ひずみ振幅0.3%、周波数0.5Hzの正弦波状に変化するせん断ひずみ)下で、またはねじり/せん断ひずみの範囲下で行われる振動せん断ひずみ(小変形)下の動的試験中に測定される、例えば、コーン-プレート形状(例えば、直径40mmのコーン/プレート形状および2度の円錐角を有する)で、例えば0.1%~100%の範囲の振幅を有する振動せん断ひずみの範囲を試験する。このような方法は、さらに、P. Fischer et al., “Rheology of Food Materials”, in Current Opinion in Colloid & Interface Science, vol. 16(1), pp. 36-40 (2011)に記載されている。例えば、G’(0.3%、0.5Hz)は、周波数0.5Hz、ねじり/せん断応力0.3%、温度5℃~80℃で測定された材料の弾性せん断弾性率である。G’(18℃、0.5Hz)は、周波数0.5Hz、温度18℃、0.1%~100%の任意のねじり/せん断応力で測定された材料の弾性せん断弾性率である。G’’(0.3%、0.5Hz)は、周波数0.5Hz、ねじり/せん断応力0.3%、5℃~80℃の任意の温度で測定された材料の粘性せん断弾性率である。
【0052】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるエマルションは、粘性せん断弾性率G’’(0.5Hz、37℃)よりも高い弾性せん断弾性率G’(0.5Hz、37℃)を、8%未満、または7%未満、または5%未満のせん断ひずみで有する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるエマルションは、20以下、または15以下、または10以下、または5以下、または3以下、または2以下、または1以下、または0.5以下の比G’(0.3%、0.5Hz)/G’(0.3%、0.5Hz)を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるエマルションは、少なくとも0.001、または少なくとも0.01、または少なくとも0.05の比G’(0.3%、0.5Hz)/G’(0.3%、0.5Hz)を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるエマルションは、1以下の比G’/G’’(0.5Hz、18℃)を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるエマルションは、少なくとも0.01の比G’/G’’(0.5Hz、18℃)を有する。
【0053】
分散相は、総じてエマルション内で液滴を形成する。液滴サイズは、様々な要因に応じて、任意の適切なサイズであることができる。いくつかの実施形態では、エマルションは、0.1μm~30μm、または0.8μm~20μm、または2μm~10μmの範囲の平均直径を有する液滴サイズを有する。液滴サイズは、最大でも5%、好ましくは1%未満の実験誤差の範囲内で正確な測定が可能な、十分に確立された任意の方法で測定することができる。十分に確立された適切な方法では、光学顕微鏡が使用される(例えば、R. J. Hunter, Introduction to Modern Colloid Science (1994))。いくつかの例では、液滴サイズ分布は、加熱したミリスチン酸イソプロピルで希釈したサンプルの光学顕微鏡のソフトウェア(Nikon Eclipse Software)を用いた画像分析によって測定することができる。「平均」という用語は、算術平均を指す。
【0054】
本明細書に開示されるエマルションは、特定の実施形態において、食品、ペットフード製品、および飼料製品に一般的に含まれる、他の添加剤、アジュバントなどを含むことができる。例えば、本明細書に開示されるエマルションは、特定の実施形態において、可食性製品で一般的に使用される任意の追加の成分または成分の組み合わせを含むことができ、これらに限定されるものではないが以下のものが挙げられる:
酸、例えば、クエン酸、リン酸、アスコルビン酸、硫酸ナトリウム、乳酸、または酒石酸、
苦味成分、例えば、カフェイン、キニーネ、緑茶、カテキン、ポリフェノール、グリーンロブスタコーヒー抽出物、グリーンコーヒー抽出物、塩化カリウム、メントール、またはタンパク質(植物、藻類、または菌類に由来するタンパク質およびタンパク質単離物など)、
着色料、例えば、カラメル色素、赤色40号、黄色5号、黄色6号、青色1号、赤色3号、紫ニンジン、黒ニンジン汁、紫芋、野菜汁、果汁、ベータカロチン、ウコンクルクミン、または二酸化チタン、
保存料、例えば、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、ソルビン酸カリウム、メタ重硫酸ナトリウム、ソルビン酸、または安息香酸
酸化防止剤、例えば、アスコルビン酸、EDTAカルシウム二ナトリウム、α-トコフェロール、混合トコフェロール、ローズマリー抽出物、ブドウ種子抽出物、レスベラトロール、またはヘキサメタリン酸ナトリウム、
ビタミン類または機能性成分、例えば、レスベラトロール、Co-Q10、ω-3脂肪酸、テアニン、塩化コリン(シトコリン)、ファイバーソル、イヌリン(チコリ根)、タウリン、パナックスジンセン抽出物、グアナナ抽出物、ショウガ抽出物、L-フェニルアラニン、L-カルニチン、L-酒石酸塩、D-グルコロノラクトン、イノシトール、バイオフラボノイド、エキナセア、ギンコビロバ、イェルバ・マテ、亜麻仁油、ガルシニアカンボジア果皮抽出物、白茶抽出物、リボース、ミルクシスル抽出物、ブドウ種子抽出物、ピロジキシン塩酸塩(ビタミンB6)、シアノオバラミン(ビタミンB12)、ナイアシンアミド(ビタミンB3)、ビオチン、乳酸カルシウム、パントテン酸カルシウム(パントテン酸)、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、塩化クロム、ポリニコチン酸クロム、硫酸銅、葉酸、ピロリン酸第二鉄、鉄、乳酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、リン酸一カリウム、リン酸一ナトリウム、リン、ヨウ化カリウム、リン酸カリウム、リボフラビン、硫酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、チアミンモノニトレート、ビタミンD3、ビタミンAパルミテート、グルコン酸亜鉛、乳酸亜鉛、または硫酸亜鉛、
起雲剤、例えば、エステルガン、臭素化植物油(BVO)、またはイソ酪酸酢酸スクロース(SAIB)、
緩衝剤、例えば、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、または塩、
フレーバー、例えば、プロピレングリコール、エチルアルコール、グリセリン、アラビアガム(アラビアゴム)、マルトデキストリン、変性コーンスターチ、デキストロース、天然フレーバー、天然フレーバーに他の天然フレーバーを加えたもの(天然フレーバーWONF)、天然および人工フレーバー、人工フレーバー、二酸化ケイ素、炭酸マグネシウム、またはリン酸三カルシウム、または
デンプンおよび安定剤、例えば、ペクチン、キサンタンガム、カルボキシルメチルセルロース(CMC)、ポリソルベート60、ポリソルベート80、中鎖トリグリセリド、セルロースゲル、セルロースガム、カゼインナトリウム、化工食物デンプン、アラビアガム(アラビアゴム)、イヌリン、またはカラギーナン。
【0055】
追加の成分の一例としては、遊離脂肪酸が挙げられる。適切な例としては、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、カプリン酸、カプリル酸などが挙げられる。これらの遊離脂肪酸は、任意の適切な濃度で存在することができる。例えば、いくつかの実施形態では、遊離脂肪酸は、エマルション中に、エマルションの総重量に対して3重量%~20重量%、または5重量%~18重量%、または7重量%~16重量%の範囲の濃度で存在する。
【0056】
また、最終製品のpH調整を支援するために、他の酸が存在してもよい。この目的に適した酸としては、乳酸、クエン酸、およびそれらの組み合わせなどの可食性の酸が挙げられる。このような酸は、任意の濃度で存在することができる。例えば、いくつかの実施形態では、遊離脂肪酸は、エマルション中に、エマルションの総重量に対して0.2重量%~3.0重量%、または0.5重量%~2.0重量%、または0.7重量%~1.8重量%の範囲の濃度で存在する。
【0057】
フレーバー化合物
上述のように、脂肪組成物および水性媒体の双方は、特定の実施形態において、それぞれ脂溶性および水溶性のフレーバー化合物を含むことができる。本明細書で使用する場合に、「フレーバー」または「フレーバー化合物」は、単独で、またはそのような他の化合物と組み合わせて可食性組成物に加えられて、その有機官能特性、特にそのフレーバー、味、またはアロマを付与、改善、または改変する。このような化合物は、天然でも合成でもよい。そのようなフレーバー化合物は、S. Arctander, Perfume and Flavor Chemicals (1969)もしくはその最新版のような参考文献、またはFenaroli’s Handbook of Flavor Ingredients (1975)、もしくはM.B. Jacobs, Synthetic Food Adjuncts (1947)などの他の著作に多数掲載されている。フレーバー付与配合物の製造に現在使用されている溶媒やアジュバントも、当業界では周知である。これらの物質は、食品や消費者製品にフレーバーまたはアロマを付与する当業者には周知である。フレーバー添加剤の好適な例としては、メチルフランチオール、すなわち2-メチル-3-フランチオールなどの化合物が挙げられる。
【0058】
本明細書に開示される脂肪組成物またはエマルションに使用することができるフレーバー化合物の非限定的な例としては、有機塩、無機塩、有機酸、糖、アミノ酸、およびその塩(グルタミン酸塩またはアスパラギン酸塩など)、リボヌクレオチド、およびその供給源、ならびに前述のものの任意の組み合わせが挙げられる。
【0059】
甘味料は、フレーバー化合物の一般的な例である。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に開示される脂肪組成物またはエマルションは、スクロース、グルコース、フルクトース(例えば、高果糖コーンシロップの形態で)、またはそれらの任意の組み合わせなどの高カロリー糖などの追加の甘味料を含む。いくつかの実施形態では、甘味組成物は、1つ以上のレバウジオシドを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される脂肪組成物またはエマルションは、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテーム、シクラメート、ネオテームなどの1つ以上の高強度人工甘味料を含む。いくつかの他の実施形態では、本明細書に開示される脂肪組成物またはエマルションは、アルロース、キシリトール、エリスリトールなどの、1つ以上の低カロリー炭水化物または糖アルコールを含む。いくつかの他の実施形態では、本明細書に開示される脂肪性組成物またはエマルションは、モグロシドを、例えばラカンカの果汁または抽出物として、またはモグロシドIII、モグロシドIV、モグロシドV、シアメノシドI、イソモグロシドV、モグロシドIVE、イソモグロシドIVE、イソモグロシドIV、モグロシドIIIE、11-オキソモグロシドV、シアメノシドIの1,6-α異性体、およびそれらの任意の組み合わせの1つ以上として含む。甘味料組成物に好適に含まれ得る追加のモグロシド化合物は、米国特許出願公開第2017/0119032号に記載されている。
【0060】
他の様々な甘味料も、本明細書に開示される脂肪組成物またはエマルションに含めることができる。非限定的な例としては、D-プシコース、L-リボース、D-タガトース、L-グルコース、L-フコース、L-アルビノース、D-ツラノース、D-ロイクロース、イソマルト、ラクチトール、マンニトール、ソルビトール、マルトデキストリン、サッカリン、アリテーム、サイクラミン酸、タガトース、マルトース、ガラクトース、マンノ-ス、ラクトース、D-トリプトファン、グリシン、マルチトール、ラクチトール、イソマルト、水添デンプン加水分解物(HSH)、化学的修飾モグロシド(グルコシル化モグロシドなど)、カレラームおよび他のグアニジン系甘味料、ハチミツ、エルサレムアーティチョークシロップ、カンゾウ根、ラカンカ(果実、粉末、または抽出物)、ルクマ(果実、粉末、または抽出物)、カエデ樹液(例えば、アセル・サッカルム(Acer saccharum)、アセル・ニグルム(Acer nigrum)、アセル・ルブルム(Acer rubrum)、アセル・サッカリナム(Acer saccharinum)、アセル・プラタノイデス(Acer platanoides)、アセル・ネグンド(Acer negundo)、アセル・マクロフィルム(Acer macrophyllum)、アセル・グランジデンタトゥム(Acer grandidentatum)、アセル・グラブラム(Acer glabrum)、アセル・モノ(Acer mono)から抽出した樹液を含む)、メープルシロップ、メープルシュガー、クルミ樹液(例えば、ジュグランス・シネレア(Juglans cinerea)、ジュグランス・ニグラ(Juglans nigra)、ジュグランス・アイラティフォリア(Juglans ailatifolia)、ジュグランス・レギア(Juglans regia)から抽出した樹液を含む)、カバノキ樹液(例えば、ベツラ・パピリフェラ(Betula papyrifera)、ベツラ・アレガニエンシス(Betula alleghaniensis)、ベツラ・レンタ(Betula lenta)、ベツラ・ニグラ(Betula nigra)、ベツラ・ポプリフォリア(Betula populifolia)、ベツラ・ペンドゥラ(Betula pendula)から抽出した樹液を含む)、スズカケノキ樹液(例えば、プラタナス・オシデンタリス(Platanus occidentalis)から抽出した樹液など)、アイアンウッド樹液(例えば、オストリア・バージニカ(Ostrya virginica)から抽出した樹液など)、マスコバド、糖蜜(例えば、ブラックストラップ糖蜜など)、糖蜜糖、モナチン、モネリン、サトウキビ糖(天然糖、未精製サトウキビ糖、またはスクロースとも呼ばれる)、パーム糖、パノチャ、ピロンチーロ、ラパデュラ、粗糖、米糖化液、モロコシ、モロコシシロップ、キャッサバシロップ(タピオカシロップとも呼ばれる)、タウマチン、ヤーコン根、モルトシロップ、大麦麦芽シロップ、大麦麦芽粉末、甜菜糖、サトウキビ糖、結晶質果汁の結晶、カラメル、カルビトール、イナゴマメシロップ、キャスター糖、水添デンプン加水分解物、缶果汁の加水分解物、加水分解デンプン、転化糖、アネトール、アラビノガラクタン、アロープ、シロップ、P-4000、アセスルファムカリウム(アセスルファムKまたはace-Kとも呼ばれる)、アリテーム(アクラーム(aclame)とも呼ばれる)、アドバンテーム、アスパルテーム、バイユノシド、ネオテーム、ベンズアミド誘導体、ベルナデーム(bernadame)、キャンデレル、カレラーム(carrelame)および他のグアニジン系甘味料、植物繊維、コーンシュガー、カップリングシュガー、クルクリン、シクラメート、シクロカリオシドI、デメララ、デキストラン、デキストリン、糖化性麦芽、ズルチン、スクロール、バルジン、ズルコシドA、ズルコシドB、エムリン、エノキソロン、マルトデキストリン、サッカリン、エストラゴール、エチルマルトール、グルシン、グルコン酸、グルコノラクトン、グルコサミン、グルクロン酸、グリセロール、グリシン、グリシフィリン(glycyphillin)、グリチルリチン、グリチルレチン酸モノグルクロニド、金色糖、黄色糖、ゴールドシロップ、グラニュー糖、アマチャヅル、ヘルナンドゥルシン、異性化液糖、ジャラブ、チコリ根食物繊維、キヌレニン誘導体(N’-ホルミルキヌレニン、N’-アセチルキヌレニン、6-クロロキヌレニンを含む)、ガラクチトール、リテッセ、リジケーン(ligicane)、リカシン、ルグズナム、グアニジン、ファレルナム、マビンリンI、マビンリンII、マルトール、マルチソルブ、マルトデキストリン、マルトトリオール、マンノサミン、ミラクリン、ミズアメ、モグロシド(例えば、モグロシドIV、モグロシドV、およびネオモグロシドを含む)、ムクロジオシド、ナノ糖、ナリンギンジヒドロカルコン、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、ニブシュガー、ニゲロオリゴ糖、ノルブ、オルジェーシロップ、オスラジン、ペクメズ、ペンタジン、ペリアンドリンI、ぺリルアルデヒド、ペリラルチン、ペトフィラム(petphyllum)、フェニルアラニン、フロミソシドI、フロロジジン、フィロズルチン、ポリグリシトールシロップ、ポリポドシドA、プテロカリオシドA、プテロカリオシドB、レビアナ、製糖シロップ、ラブシロップ(rub syrup)、ルブソシド、セリゲアイン(selligueain)A、シュグル(shugr)、シアメノシドI、ラカンカ(siraitia grosvenorii)、ダイズオリゴ糖、スプレンダ、SRIオキシムV、ステビオールグリコシド、ステビオールビオシド、ステビオシド、ストロジン1、2および4、スクロン酸(sucronic acid)、スクロノネート(sucrononate)、糖、スオサン、フロリジン、スーパーアスパルテーム、四糖、トレイトール、糖蜜、トリロブテイン(trilobtain)、トリプトファンおよび誘導体(6-トリフルオロメチルトリプトファン、6-クロロ-D-トリプトファン)、バニラシュガー、ボレミトール、カバノキシロップ、アスパルテーム-アセスルファム、アスグリン(assugrin)、ならびにそれらの任意の2つ以上の組み合わせまたはブレンドが挙げられる。
【0061】
前述の実施形態のいずれかに従って定められた脂肪組成物またはエマルションはまた、特定の実施形態において、甘味を増強する化合物(例えば、ヘスペレチン、ナリンゲニン、フロレチン、ロイフォリンなど)、苦味をブロックまたはマスキングする化合物、うま味を増強する化合物、酸味もしくはカンゾウ味を低減する化合物、塩味を増強する化合物、冷感効果を増強する化合物、口当たりを向上させる化合物、または前述のものの任意の組み合わせなど、1つ以上の追加のフレーバー改変化合物をも含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される脂肪組成物またはエマルションは、1つ以上の甘味増強化合物を含む。そのような甘味増強化合物としては、ヘスペリチン、ナリンゲニン、ロイフォリン、フロレチン、グルコシル化された天然ステビオールグリコシド、カンゾウ由来のグルクロネート、アロマデンドリン-3-O-アセテートなどの天然由来の化合物、もしくは他の類似のフラボノール、もしくはフラボノイド、または米国特許第8,541,421号明細書、同第8,815,956号明細書、同第9,834,544号明細書、同第8,592,592号明細書、同第8,877,922号明細書、同第9,000,054号明細書、および同第9,000,051号明細書、ならびに米国特許出願公開第2017/0119032号明細書に記載されている任意の化合物などの合成化合物が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの好適な例としては、3-((4-アミノ-2,2-ジオキソ-1H-ベンゾ[c][1,2,6]チアジアジン-5-イル)オキシ)-2,2-ジメチル-N-プロピルプロパンアミド、N-(1-((4-アミノ-2,2-ジオキソ-1H-ベンゾ[c][1,2,6]チアジアジン-5-イル)オキシ)-2-メチルプロパン-2-イル)イソニコチンアミド、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0063】
いくつかのさらなる実施形態では、本明細書に開示される脂肪組成物またはエマルションは、1つ以上のうま味またはこく味増強化合物を含む。そのようなうま味増強化合物としては、エリカミドなどの天然由来の化合物、または米国特許第8,735,081号明細書、同第8,124,121号明細書、および同第8,968,708号明細書に記載されている任意の化合物などの合成化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
いくつかのさらなる実施形態では、本明細書に開示される脂肪組成物またはエマルションは、1つ以上の冷感増強化合物を含む。そのような冷感増強化合物としては、メントールまたはその類似体などの天然由来の化合物、または米国特許第9,394,287号明細書および同第10,421,727号明細書に記載されている任意の化合物などの合成化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
いくつかのさらなる実施形態では、本明細書に開示される脂肪組成物またはエマルションは、1つ以上の苦味ブロッキング化合物を含む。そのような苦味ブロッキング化合物としては、メントールまたはその類似体などの天然由来の化合物、または米国特許第8,076,491号明細書、同第8,445,692号明細書、および同第9,247,759号明細書、ならびに国際公開第2020/033669号に記載されている任意の化合物などの合成化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
いくつかのさらなる実施形態では、本明細書に開示される脂肪組成物またはエマルションは、1つ以上の口当たり調整化合物を含む。そのような口当たり調整化合物としては、タンニン、セルロース系材料、竹粉などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
いくつかのさらなる実施形態では、本明細書に開示される脂肪組成物またはエマルションは、1つ以上のフレーバーマスキング化合物を含む。そのようなフレーバーマスキング化合物としては、セルロース系材料、菌類から抽出された材料、植物から抽出された材料、クエン酸、炭酸(または炭酸塩)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
フレーバー組成物は、水溶性であっても油溶性であってもよい。その溶解性に応じて、フレーバー組成物は、分散相および/または連続相中に存在することができる。フレーバー組成物の溶解性は、水または油への溶解に応じて、特に分配係数(P)(LogP値)を用いて評価することができる。
【0069】
いくつかの例では、フレーバー付与化合物は、牛肉、ラム肉、豚肉などの赤身の肉製品に典型的に見られる血液のような血液のフレーバー特性を模擬する化合物であることができる。このようなフレーバー化合物またはフレーバー化合物の組み合わせは、イミテーションバーガーなどに使用することができる。このようなフレーバー化合物は、ヘムを模倣するためにタンパク質および鉄から形成される、植物性のメタロプロテインであることが多い。
【0070】
製造方法
別の態様では、本開示は、前出の態様(およびその任意の実施形態)のエマルションの製造方法であって、(a)(先行する実施形態のいずれかに記載の)脂肪組成物を提供するステップと、(b)連続相としての脂肪組成物に、分散相としての(先行する実施形態のいずれかによる)水性媒体を、連続相の相転移温度を上回る温度で乳化させて、乳化組成物を形成するステップであって、脂肪組成物は、任意に乳化剤を含むものとするステップと、(c)乳化組成物を、連続相の相変化温度を下回る温度に冷却するステップとを含む方法を提供する。
【0071】
「相転移温度」という用語は、溶融温度または融点に言及する場合、媒体(または連続相)が例えば固体から液体へと変化する温度を意味する。
【0072】
いくつかの実施形態では、本方法は、脂肪組成物を80℃~150℃の範囲の温度、または95℃~120℃の範囲の温度に加熱する予熱ステップを含む。
【0073】
いくつかの実施形態では、本方法は、水性媒体を60℃~100℃の範囲の温度、または70℃~90℃の範囲の温度に加熱する予熱ステップを含む。
【0074】
いくつかの実施形態では、冷却ステップ(c)は、5℃/h~30℃/hの範囲の速度で、または10℃/h~25℃/hの範囲の速度で、または12℃/h~15℃/hの範囲の速度で、エマルションの温度を低下させることによって行われる。
【0075】
用途、方法、可食性物品
別の態様では、本開示は、可食性物品のフレーバーを改変するための、(先行する実施形態のいずれかに記載の)脂肪組成物または(先行する実施形態のいずれかに記載の)エマルションの使用を提供する。いくつかの実施形態では、可食性物品のフレーバーを改変することは、可食性物品のジューシーさを向上させることを含む。いくつかの実施形態では、可食性物品のフレーバーを改変することは、可食性物品の口当たりを向上させることを含む。いくつかの実施形態では、可食性物品のフレーバーを改変することは、可食性物品の口へのまとわりつきを向上させることを含む。いくつかの実施形態では、可食性物品のフレーバーを改変することは、可食性物品内の流体のとろみを増加させることを含む。なお、「ジューシーさを向上させる」という表現は、可食性物品におけるジューシーさの感覚的属性の改善を意味する。
【0076】
関連する態様において、本開示は、可食性物品のフレーバーを改変する方法であって、(先行する実施形態のいずれかに記載された)脂肪組成物または(先行する実施形態のいずれかに記載された)エマルションを可食性物品に導入するステップを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、可食性物品のフレーバーを改変することは、可食性物品のジューシーさを向上させることを含む。いくつかの実施形態では、可食性物品のフレーバーを改変することは、可食性物品の口当たりを向上させることを含む。いくつかの実施形態では、可食性物品のフレーバーを改変することは、可食性物品の口へのまとわりつきを向上させることを含む。いくつかの実施形態では、可食性物品のフレーバーを改変することは、可食性物品内の流体のとろみを増加させることを含む。なお、「ジューシーさを向上させる」という表現は、可食性物品におけるジューシーさの感覚的属性の改善を意味する。
【0077】
別の関連する態様では、本開示は、可食性物品における動物性脂肪を置き換えるための、(先行する実施形態のいずれかに記載された)脂肪組成物または(先行する実施形態のいずれかに記載された)エマルションの使用を提供する。
【0078】
別の関連する態様では、本開示は、可食性物品における動物性脂肪を低減または排除する方法であって、(先行する実施形態のいずれかに記載された)脂肪組成物または(先行する実施形態のいずれかに記載された)エマルションを可食性物品に導入するステップを含む方法を提供する。
【0079】
別の関連する態様において、本開示は、(先行する実施形態のいずれかに記載された)脂肪性組成物または(先行する実施形態のいずれかに記載された)エマルションを含む、可食性物品を提供する。
【0080】
前述の態様は、特に、可食性物品、または可食性物品に関連する使用もしくは方法を対象とする。そのような可食性物品は、食品、ペットフード製品、または飼料製品などの任意の食用製品であり得る。
【0081】
いくつかのさらなる実施形態では、可食性物品は、肉代替製品である。肉代替品は、食べたときに、肉を食べた感覚的な経験を模擬することを目的とした非肉製品である。いくつかの実施形態では、肉代替品製品は、牛肉代替製品、家禽類代替製品、魚類代替製品、豚肉代替製品、または貝類代替製品、例えば、カニ肉代替製品、ホタテガイ代替製品、またはエビ代替製品である。非限定的な例としては、ベジタリアンバーガー、ソーセージ、イミテーションチキンナゲット、イミテーションデリミート、イミテーションポウルトリー、イミテーションビーフ、イミテーションポーク、イミテーションハム、イミテーションフレッシュソーセージ、またはイミテーション生肉調製物、イミテーション硬化肉製品、およびイミテーション再成形肉が挙げられる。
【0082】
(先行する実施形態のいずれかの)脂肪組成物または(先行する実施形態のいずれかの)エマルションは、可食性物品中に任意の適切な濃度で存在することができる。いくつかの実施形態では、脂肪組成物またはエマルションは、可食性物品中に、可食性物品の総重量に対して0.01重量%~10重量%、または0.1重量%~10重量%、または0.5重量%~5重量%の範囲の濃度で存在する。
【0083】
脂肪性組成物またはエマルションは、任意の適切な様式で可食性物品に導入することができる。いくつかの実施形態では、例えば、脂肪組成物またはエマルションは、注入、真空タンブリング(任意に担体材料と一緒に)によって、または食品の製造前(例えば、そのベーキング、その押出成形などの前)に食品と混合することによって、可食性物品に加えられる。
【0084】
上述したように、本明細書に記載された脂肪組成物またはエマルションを使用する目的の1つは、可食性物品中の動物性脂肪などの動物性製品の量を減らすことができるようにすることにある。いくつかの実施形態では、可食性物品は、動物由来の脂肪酸グリセリドを、1重量%以下、または0.5重量%以下、または0.1重量%以下、または0.05重量%以下、または0.01重量%以下含む。
【0085】
なお、肉代替製品は、他の非肉製品内に含まれていてもよいし、他の非肉製品と混合されていてもよい。したがって、本明細書に開示されているフレーバー付与された製品(例えば、肉代替品)は、パスタソースに、スープに、特に魚または肉製品に使用されるマリネまたはペーストに、菓子製品に、および乳製品に含めることができる。
【0086】
いくつかの実施形態では、可食性物品は、1つ以上の植物性タンパク質、例えば、エンドウタンパク、ダイズタンパク、ナッツタンパクなどを含む。いくつかのさらなる実施形態では、可食性物品は、1つ以上の植物繊維、例えば、竹繊維、サイリウム繊維などを含む。いくつかの実施形態では、脂肪組成物またはエマルションは、可食性物品において、可食性物品の総重量に対して0.1重量%~10重量%の範囲の濃度で使用される。
【0087】
いくつかの実施形態では、フレーバー付与された製品は、植物、動物、卵、乳製品などに由来するタンパク質などのタンパク質をさらに含む。いくつかの実施形態では、タンパク質は、植物由来のタンパク質を、可食性物品中のタンパク質の総重量に対して少なくとも75重量%、または少なくとも80重量%、または少なくとも85重量%、または少なくとも90重量%、または少なくとも95重量%、または少なくとも97重量%、または少なくとも99重量%含む。任意の適切な植物性タンパク質または植物性タンパク質のブレンドを使用することができる。非限定的な例としては、ダイズタンパク、トウモロコシタンパク、エンドウタンパク、キャノーラタンパク、ヒマワリタンパク、モロコシタンパク、コメタンパク、アマランスタンパク、ジャガイモタンパク、タピオカタンパク、アロールートタンパク、ヒヨコマメタンパク、ルピナスタンパク、小麦タンパク、オーツ麦タンパク、ライ麦タンパク、大麦タンパク、豆またはレンズ豆タンパク、発酵ダイズ製品(豆腐、テンペなど)由来のタンパク、ピーナッツタンパク、カシュータンパク、ナッツタンパク(アーモンドタンパク、クルミタンパクなど)、キヌアタンパク、マイコプロテイン、チアプロテイン、ヘンププロテイン、パンプキンシードタンパク、スピルリナタンパク、ブロッコリータンパク、ケールタンパク、ブリュッセルスプラウトタンパク、およびそれらの任意の混合物が挙げられる。いくつかの実施形態では、タンパク質は、エンドウタンパクを含む。
【0088】
また、可食性物品は、繊維または繊維のブレンドを含むこともできる。総じて、そのような繊維は、植物材料に由来する。総じて、植物性繊維は主に、セルロース、レジスタントスターチ、レジスタントデキストリン、イヌリン、リグニン、(菌類における)キチン、ペクチン、β-グルカン、および様々なオリゴ糖などの非デンプン多糖類および他の植物成分から構成される。繊維に適した植物性供給源の非限定的な例としては、マメ科植物(エンドウ、ダイズ、ルピナス、その他のマメ類)、オーツ麦、ライ麦、チア、大麦、果物(イチジク、アボカド、プラム、プルーン、ベリー、バナナ、リンゴ、マルメロ、キウイ、ブドウ、トマト、およびナシ)、野菜(ブロッコリー、ニンジン、インゲン、カリフラワー、ズッキーニ、セロリ、ノパル、およびアーティチョーク)、根菜類/葉茎菜類(サツマイモ、およびタマネギ)、サイリウム種皮、亜麻仁、ナッツ(アーモンド)、全粒粉、小麦ふすま、トウモロコシふすま、種子類、ジャガイモ皮、リグナン、およびそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0089】
本明細書に開示されるエマルションのせん断および温度に対する高い安定性により、本発明のフレーバー付与されたエマルションは、押出成形されたおよび/または焼かれた食品、ペットフードまたは飼料製品であって、より詳細には動物性および/または植物性タンパク質を含むものに特に適している。場合によっては、押出成形されたおよび/または焼かれた食品、ペットフードまたは飼料製品は、肉および/または魚ベースの食品または代替品およびそれらの混合物(言い換えれば、肉ベースの食品および/または魚ベースの食品または肉代替品または魚代替品、ならびにそれらの混合物)の中から選択することができ、押出成形されたおよび/または焼かれた食品、肉代替品、または押出成形されたおよび/または焼かれた食品魚代替品が好ましい。押出成形されたおよび/または焼かれた食品、ペットフード、または飼料製品の非限定的な例は、肉代替品(例えば、バーガー)を製造する元となるタンパク質のテクスチャー調整を目的とした、スナック製品または押出成形された植物性タンパク質である。フレーバー付与されたエマルションは、押出成形の前または後に、押出成形されていない植物性タンパク質単離物/濃縮物か、またはバーガーやナゲット(など)を形成する元となることができる組織化植物性タンパク質のいずれかに加えることができる。
【0090】
本明細書に開示される脂肪組成物またはエマルションは、多種多様な食用最終製品に使用することができる。最終製品は、より詳細には、食品、ペットフード、または飼料製品である。本明細書に開示される脂肪組成物またはエマルションは、ベジタリアン肉代替品または肉代用品、ベジタリアンバーガー、ソーセージ、パテ、イミテーションチキンナゲットなどに特に有利である。肉は、本開示において、赤身肉(牛肉、豚肉、マトン、ラム、および鹿肉など)および家禽(鶏肉、七面鳥、ガチョウ、およびアヒルなど)、ならびに魚および貝を包含する。いくつかの実施形態では、可食性物品は、牛肉代替品、家禽代替品、または豚肉代替品である。
【0091】
せん断および高温に対する耐久性ゆえ、本明細書に開示されるエマルションは、以下の製品例においても特に重要であることができる:
・焼かれた製品(例えば、パン、ドライビスケット、ケーキ、他の焼かれた製品)、
・シリアル製品(例えば、朝食用シリアル、既製の予備調理済み米製品、米粉製品、雑穀およびモロコシ製品、生または予備調理済みの麺およびパスタ製品)、
・乳製品(例えば、フレッシュチーズ、ソフトチーズ、ハードチーズ、乳飲料、ホエイ、バター、部分的または全体的に加水分解された乳タンパク質含有製品、発酵乳製品、コンデンスミルクおよびその類似品)、
・乳製品(例えば、フルーツヨーグルト、またはフレーバー付与されたヨーグルト、アイスクリーム、フルーツアイス、フローズンデザート)、
・非乳製品成分(植物性タンパク質、植物性脂肪)を含む乳製品類似品(イミテーション乳製品)、
・菓子製品(例えば、チューインガム、ハードキャンディ、およびソフトキャンディ)、
・チョコレート、およびコンパウンドコーティング、
・油脂またはそのエマルションをベースとする製品(例えば、マヨネーズ、スプレッド、マーガリン、ショートニング、レムラード、ドレッシング、香辛料の調製物)、
・スパイス、マリネまたは加工された魚製品(例えば、魚肉ソーセージ、すり身)、
・卵または卵製品(乾燥卵、卵白、卵黄、カスタード)、
・デザート(例えば、ゼラチン、およびプリン)、
・ダイズタンパク質または他のダイズフラクションから製造された製品(例えば、豆乳およびそれから製造された製品、ダイズレシチン含有調製物、豆腐もしくはテンペ、またはそれらから製造された製品、醤油などの発酵製品)、
・野菜調製物(例えば、ケチャップ、ソース、加工および再構成野菜、乾燥野菜、冷凍野菜、予備調理済み野菜、酢漬け野菜、野菜濃縮物またはペースト、調理済み野菜、ジャガイモ調製物)、
・スパイスまたはスパイス調製物(例えば、マスタード調製物、ホースラディッシュ調製物)、スパイス混合物、および特にスナックの分野で使用されるシーズニング、
・スナック品(例えば、焼かれたまたは揚げられたポテトチップスまたはポテト生地製品、パン生地製品、トウモロコシ、米、または挽いたナッツをベースにした押出成形物)、
・レディディッシュ(例えば、インスタントヌードル、ライス、パスタ、ピザ、トルティーヤ、ラップ)、ならびにスープおよびブロス(例えば、ストック、セイボリーキューブ、ドライスープ、インスタントスープ、予備調理済みスープ、レトルトスープ)、ソース(インスタントソース、ドライソース、既製のソース、グレービー、スイートソース)、
・拡張された肉製品(例えば、ミートパティ、ソーセージ、チリ、ソールズベリーステーキ、ピザのトッピング、ミートボール、ひき肉、ボローニャ、チキンナゲット、ポークフランクフルト、ビーフ)。
【0092】
定義および解釈上の留意点
別段の記載がない限り、パーセンテージ(%)は、組成物の重量%を意味する。
【0093】
組成物またはエマルション中の成分の総量は100%であることが理解されるべきである。
【0094】
特に明記しない限り、「x~y」という形式で表される数値範囲は、xおよびyを含むと理解される。特定の特徴について複数の好ましい範囲が「x~y」という形式で記述されている場合、異なる端点を組み合わせたすべての範囲も企図されていると理解される。
【0095】
本発明において、「含む(comprise)」または「含む(comprising)」という用語は、「含む(including)」という意味を意図している。これは、「~のみからなる」を意味することを意図したものではない。
【0096】
実施例
実施例1
分散相にフレーバー組成物を含む油中水型エマルションの製造
143gの食用油(MCT油、表1参照)を、熱水浴中に置かれた反応容器内で100℃の温度に加熱した。この加熱した油相に14.2gの固体脂肪粒子F(水添ダイズ油)を加えて、粒子を溶融させた。
【0097】
この加熱した混合油相O(連続相)に、Dimodan HPとCitrem Liq Kとの50:50w/wの乳化剤ブレンドを9.6g加えた。これらのステップをすべて、インペラ式撹拌機を用いて100rpmの低い撹拌速度で撹拌しながら行った。
【0098】
水性液滴相A(Fatty Juicy Flavor(水溶性フレーバー))を、別途、沸騰を避けて80℃の温度に予熱した。その後、インペラ式撹拌機の撹拌速度を3000rpmに上げ、水相A33.4gを毎秒約2ミリリットルの添加速度で加えて、加熱した油相Oに水滴相Aを乳化させた。上げられた撹拌速度で、この液状プレエマルションを2分間撹拌した。
【0099】
その後、撹拌機で200rpmの低速で撹拌しながら、30分かけて水浴の温度を10℃まで下げて、最終的な油中水型エマルションを得た。
【0100】
得られたエマルションは、濃厚なクリーム状の広がりのあるテクスチャーを示し、液滴の沈降や相分離に対して安定したままであった。
【0101】
油中水型エマルションを得るために使用した成分の量を表1に示す。
【0102】
【0103】
実施例2
分散相および連続相中のフレーバー組成物を含むエマルションフレーバー成分の製造
乳化剤(Citremおよびレシチン、以下の表2参照)を同量のヒマワリ油(食用油)に混合し、65~70℃に加熱して溶融および溶解させた。残りの連続したヒマワリ油およびカカオバター(固体脂肪粒子F)を、Thermomix内にて100rpmで55℃に加熱して、溶融および合一した。その後、溶解した乳化剤をバルク油に加えた。
【0104】
続いて、2つの油溶性フレーバー(Firmenich社製Pork Fat Type Thermal Reaction Flavor、およびFirmenich社製Pork Sausage Type Liquid Flavor)を加え、油性の連続相に分散させた。
【0105】
Thermomixを300rpmに設定し、水溶性フレーバー(Fatty Juicy Flavor水相)を徐々に連続流(毎分約100g)で油相に加えて、微分散および乳化を行う。
【0106】
その後、エマルションを冷却容器に移し、氷浴中にて1500rpmで連続撹拌しながら毎分約1.5℃で5~12℃まで急冷して、クリーム状のテクスチャーを得る。
【0107】
【0108】
実施例3
押出成形食品のモデルに使用した実施例3の配合:
Pork Fat Type Thermal Reaction Flavor(油溶性フレーバー)(Firmenich)0.2%を消費。
【0109】
実施例4
押出成形食品のモデルにおけるフレーバーの保護および放出
押出成形プロセス中の本発明のフレーバー送達系の性能を確認するために、分析技術を用いてスラリーの上方のヘッドスペースに放出された揮発性物質の総濃度を測定することにより、押出成形されたフレーバー付与されたエンドウタンパク単離サンプルと、押出成形されていないフレーバー付与されたエンドウタンパク単離サンプルとの比較を行った。
【0110】
ポークフレーバー(Pork Fat Type Thermal Reaction Flavor(油溶性フレーバー)Firmenich)を含む油中水型エマルションフレーバー(実施例2)に、エンドウタンパク単離物(Pea Protein Isolate、PPI)(Nutralys F85M、Roquette freres社製)を1.5%の供給量で混合し、異なる温度で押出成形した。油反応フレーバー(Pork Fat Type Thermal Reaction Flavor(油溶性フレーバー)Firmenich)(実施例3)に、エンドウタンパク単離物(PPI)(Nutralys F85M)を0.2%の供給量で混合し、異なる温度で押出成形した。
【0111】
フレーバー付与されたすべての系について、AFFIRM(フレーバーおよびフレグランスのリアルタイム分析、Analysis of Flavors and Fragrances In Real time)を用いて、等タンパク質濃度負荷で評価した。
【0112】
押出成形されたそれぞれの系20gを80gの水と1分間ブレンドし、500mlのショットボトルに移した。フレーバー付与された非押出成形PPI粉末8gを、500mlのショットボトルに入れた92gの水と混合した。
【0113】
ショットボトルを密閉し、撹拌し、1時間かけて平衡化させた。ヘッドスペースを1分間サンプリングした。ヘッドスペースに放出されたすべての分子のシグナル強度を、フレーバー付与されていないサンプルのシグナルのバックグラウンドシグナルを差し引くことにより求めた。
【0114】
図1に、フレーバー付与されていない非押出成形エンドウタンパク単離物サンプルと、フレーバー付与されていない押出成形エンドウタンパク単離物サンプルとの、等タンパク質濃度での総イオンシグナル強度を示す。観測された総シグナル強度は、押出成形PPIに比べて、非押出成形PPIの方が高かった。よって、PPIの加工により、ヘッドスペースに放出される揮発性物質の量の減少が誘発された。
【0115】
図2および
図3に、油中水型エマルションのフレーバー付与された押出成形エンドウタンパク単離物サンプルと、油反応の、フレーバー付与された押出成形エンドウタンパク単離物サンプルとの総イオンシグナル強度を示す。
【0116】
油中水型エマルションのフレーバー付与された(
図2参照)については、異なる押出成形条件の間、総シグナル強度は比較的一定に保たれた。フレーバー付与された押出成形サンプル(
図3参照)は、フレーバー付与された非押出成形サンプルよりも高い総シグナル強度(フレーバー付与された非押出成形PPI粉末では1億、フレーバー付与された押出成形PPI粉末では2億9千万~3億6千万)を有し、押出成形条件によらず比較的一定に保たれている。これは、本発明に記載されている方法が、加工食品用途においてより優れたフレーバー保護および放出を保証することを示している。
【0117】
実施例5
本発明によるフレーバー付与されたエマルションの構造およびレオロジー特性
エマルションタイプおよび液滴サイズ分布
実施例1および実施例2で製造した材料のエマルションタイプを確認するために、加熱した疎水性溶媒対親水性溶媒を用いた希釈試験を行った。材料0.1gのサンプルを3gの熱水(80℃に加熱)に混合し、材料0.1gの第2のサンプルを同様に加熱したミリスチン酸イソプロピル(疎水性溶媒)に混合した。その後、両サンプルを光学顕微鏡で観察した。
【0118】
加熱したミリスチン酸イソプロピルに混合したサンプルでは、加熱したエマルションが加熱した疎水性溶媒とよくブレンドされ希釈され、明確なサイズ分布を有する分散エマルション液滴を顕微鏡により観察することができた。対照的に、熱水に混合した加熱エマルションサンプルでは、ブレンドおよび希釈ができず、本発明により製造された材料は、熱水中で非晶質の油性塊状物として存在していた。
【0119】
この希釈試験により、エマルションタイプが油中水型であることが確認された。試験の第2部では、加熱したミリスチン酸イソプロピルで希釈した水滴の液滴サイズ分布を、光顕微鏡のソフトウェア(Nikon Eclipse Software)を用いた画像解析により測定した。得られた液滴サイズ分布を、特性パラメータの結果とともに
図4に示す。数値ベースの平均直径は約5μmで、標準偏差は2μmであった。
【0120】
レオロジー特性評価
特に、弾性率(G’)および粘性率(G’’)を、2つの異なるタイプの試験で測定した:
(a)一定の周波数およびひずみ振幅で材料をせん断振動に供する温度掃引実験を用いて、ある温度範囲でG’およびG’’を測定した。この試験は、サンプルを温度変化に曝しながら粘弾特性を調べるものであり、溶融や固化などの相転移を検出することができる、
(b)一定の温度および一定の振動周波数でひずみ振幅掃引実験を行い、ひずみ振幅を逐一増加させることで、小さなせん断振動から大きなせん断振動までの粘弾性特性を評価することができる。
【0121】
どちらの試験でも、弾性率(G’)および粘性率(G’’)の相対的な大きさによって材料の性質が明らかとなり、G’>G’’は、その材料が主に弾性(「固体状」で流動しにくい)であることを意味し、G’’>G’は、その材料が主に「流体状」であることを意味する。同様に、材料の全体的な強度や柔らかさもこれらの係数の全体的な水準に反映される。
【0122】
温度掃引実験:本発明により製造された材料を溶融させて行う粘弾性特性の測定
前述の例で製造した材料の温度依存性の挙動を、実施例2の場合について、非常に小さな振動せん断ひずみ(一定のせん断ひずみ振幅0.3%、一定の振動周波数0.5Hz)の下でサンプルを試験しながら5℃~80℃で実施した温度掃引試験について
図5に示す。最も低い温度から約18℃までは、材料は硬くて純粋な固体状の状態を維持しており、この領域では、粘弾性特性は、その融点を下回る連続脂肪相の固体状の性質に支配されている。温度を上げると、溶融遷移の際に予想されるように、係数の全体的な値が大きく減少する。
【0123】
しかし、驚くべきことに、本発明により製造された材料が溶融しても、弾性率は粘性率よりも優れており、G’>G’’となっている。この挙動は、実施例2で配合された材料に分散相が存在することによるものであり、材料が溶融時に直接的に純粋な液状になるのを防いでいる。この挙動は、単純に溶融すると液体となる古典的で単純な脂肪材料とは全く対照的である。
【0124】
このようなタイプの軟質固体の挙動は、材料の加工用途、例えば押出成形加工の際に有利である。なぜならばこれは、加工の際にかかる応力の下で流れに対する障壁を材料に与え、それによって脂肪の過度の分散を回避し、結果として脂肪相の構造的完全性の喪失を回避することができるからである。
【0125】
ひずみ振幅掃引実験:連続脂肪相の溶融温度を上回る温度での粘弾性特性
本発明により製造された材料の軟質固体特性をさらに評価するために、
図6に、適用されるせん断ひずみのレベルが増加した場合の材料の挙動を示す。前述の例で試験したサンプルを、周波数が一定(0.5Hz)だが振幅が増加するひずみ振動を用いてせん断させ、その際、約0.1%の非常に小さなひずみから始まり、100%以上のひずみにまで達した。この試験は、
図5に示した溶融遷移よりもはるかに高い温度である37℃で行った。
図6は、小さなせん断ひずみでは、サンプルは主に弾性(G’>G’’)であり、粘弾性パラメータはほぼ一定であることを明確に確認している。せん断ひずみが増加すると、レオロジーの遷移が起こり、どちらの係数も最初に小さくなるが、これは、サンプルが、せん断されると弱くはなるものの、依然として固体のような状態を維持していることを示している。さらにひずみが大きくなると、G’およびG’’が交差し、最終的に材料は流体状となる(G’’>G’)。この遷移は、3~5%程度のせん断ひずみで起こる。したがって、これらのデータから、脂肪相が一旦溶融すると、実施例2により製造された材料は、静止状態や小さなせん断ひずみの下では軟質の固体であるが、せん断ひずみをより高い値にまで増加させると、容易に流動して液状となることができることが明らかである。同様の結果が実施例1のエマルションでも得られた。このようなタイプのレオロジー挙動には2つの利点がある。
【0126】
(i)食品加工:製造プロセス(液体混合や押出成形など)でのせん断により、容易に液滴や粒子に分散させることができるが、せん断が終わった後もその形状や完全性を維持する材料が望ましい。特に、そのような材料を得ることで、最終または中間の食品からの望ましくない油の分離を回避したり、食品への望ましくない油の浸透を回避したりすることができる。本明細書に記載したエマルションは、従来の単純な油や溶融脂肪とは対照的に、こうした特性を有している。
【0127】
(ii)食品を食べる際の感覚/テクスチャーの知覚:本実施例に記載されたレオロジー特性は、ジューシーさ、口当たり、口へのまとわりつき、とろみなどのテクスチャー属性に関連して、食品に望ましい有機官能特性を付与することができる(例えば、Le Calve et al, Fat perception: How sensitive are we?, Journal of Texture Studies, 46, 200, 2015参照)。
【0128】
実施例6
エマルションの成分例
以下の表3に、本開示の特定の実施形態によるエマルションの典型的な成分を示す。量は、エマルションの総重量に対して重量%で示されている。
【0129】
【0130】
実施例7
牛肉代用品の成分例
以下の表4に、実施例6のエマルションを含む人工牛肉製品の典型的な成分を示す。量は、エマルションの総重量に対する重量%で示されている。
【0131】
【0132】
実施例8
官能試験
実施例7に従って植物性ハンバーグを製造し、ナタネ油、ヤシ油、およびフレーバー付与エマルションを牛脂に置き換えた比較例のハンバーグと比較して評価した。8人の専門家である官能パネラーが2つのハンバーガーを試食し、その味を評価した。官能試験の結果(平均値として)を表5に示す。
【0133】
【0134】
これらの測定値のいずれにおいても、その差は統計的に有意ではなく、このことは、専門の官能試験者が、牛脂を含むハンバーガーと、植物性脂肪および本開示のフレーバー付与エマルションを含むハンバーガーとを有意に区別できなかったことを示唆している。
【国際調査報告】