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特表2022-537647衛星に搭載されたセンサがターゲット領域にアクセスする可能性を判断する方法及び衛星アクセスシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-29
(54)【発明の名称】衛星に搭載されたセンサがターゲット領域にアクセスする可能性を判断する方法及び衛星アクセスシステム
(51)【国際特許分類】
   B64G 1/10 20060101AFI20220822BHJP
   B64G 1/66 20060101ALI20220822BHJP
【FI】
B64G1/10 328
B64G1/66 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021571825
(86)(22)【出願日】2020-06-03
(85)【翻訳文提出日】2022-01-21
(86)【国際出願番号】 EP2020065339
(87)【国際公開番号】W WO2020245193
(87)【国際公開日】2020-12-10
(31)【優先権主張番号】102019208112.6
(32)【優先日】2019-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597159765
【氏名又は名称】フラウンホーファーゲゼルシャフト ツール フォルデルング デル アンゲヴァンテン フォルシユング エー.フアー.
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】グルデ,マックス
(72)【発明者】
【氏名】ホルヒ,クレメンス
(72)【発明者】
【氏名】シェーファー,フランク
(57)【要約】
本発明は、衛星に搭載されたセンサがターゲット領域にアクセスする可能性を決定する為の方法及びシステムに関する。この方法及びシステムでは、衛星の位置が特定され、次に、ターゲット領域のターゲット基準点の方向へのセンサの視野半径が決定され、衛星位置点の方向へのターゲット領域の延長部分が特定されて、衛星位置点とターゲット領域のターゲット基準点との間の距離が、センサの視野半径とターゲット基準点の方向へのターゲット領域の延長部分との合計以下である場合に、アクセス可能性があると判断される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星に搭載されたセンサがターゲット領域にアクセスする可能性を判断する方法であって、
前記衛星の少なくとも1つの位置が特定され、
前記衛星と前記ターゲット領域との間に直接見通し線がある場合には、
前記衛星の位置に依存する衛星位置点を中心に、衛星基準方向と前記ターゲット領域内のターゲット基準点を向くターゲット方向との間で角度φが決定され、
前記衛星位置点を起点として、前記角度φの方向における前記衛星の視野半径Rsensor(φ)が決定され、
前記ターゲット基準点を中心に、基準方向と前記衛星位置点を向く方向との間の角度γが決定され、
前記ターゲット基準点を起点として、前記角度γの方向への前記ターゲット領域の延長部分RoT(γ)が決定され、
前記衛星位置点と前記ターゲット基準点との間の距離が、前記衛星の視野半径Rsensor(φ)と前記角度γの方向における前記ターゲット領域の延長部分RoT(γ)との合計以下である場合に、アクセス可能性があると判断する方法。
【請求項2】
前記衛星の前記視野半径Rsensor(φ)は、前記衛星の位置から前記センサが到達可能な地表又は基準楕円体の領域である視野領域FoRを楕円又は多角形で表すことによって決定され、前記角度φの方向における前記衛星基準点と前記楕円又は前記多角形との間の距離が前記視野半径Rsensor(φ)として決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記視野半径Rsensor(φ)は、前記衛星の基準高度arefに対する前記角度φの値にRoRの値が割り当てられたテーブル又は関数から基準視野半径RoR(φ)を特定し、前記衛星の現在の高度aに対する基準視野半径RoR(φ)から前記視野半径Rsensor(φ)を、Rsensor(φ)=RoR(φ)a/arefとして計算することによって決定され、前記テーブル又は関数は、好ましくは前記方法の開始前にコンパイルされている、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記角度γの方向における前記ターゲット領域の前記延長部分RoT(γ)は、前記ターゲット領域を楕円又は多角形として表現し、前記角度γの方向における前記ターゲット基準点とこの楕円又はこの多角形との間の距離を延長部分RoT(γ)として決定することによって決定される、請求項1乃至3の何れかに記載の方法。
【請求項5】
前記ターゲット領域の前記延長部分RoT(γ)は、前記ターゲット領域の前記延長部分RoTの値が前記角度γの値に割り当てられているテーブル又は関数から特定され、前記テーブル又は関数は、好ましくは前記方法の開始前にコンパイルされている、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記衛星基準方向が前記衛星の伝搬方向である、及び/又は、ターゲット基準点がターゲット領域の幾何中心である、及び/又は、前記衛星位置点が前記衛星の天底である、請求項1乃至5の何れかに記載の方法。
【請求項7】
前記角度γは、基準方向となる北方向と、前記ターゲット基準点から前記衛星の天底を向く方向との間で決定される、請求項1乃至6の何れかに記載の方法。
【請求項8】
前記衛星の位置は、夫々ターゲット基準点から見て、前記衛星が地平線上に出た時点又はそれ以降の時点である第1の時点での前記衛星の座標と、前記衛星が地平線の後ろに消えた時点又は前記第1の時点よりも後の、より早期の時点である第2の時点での座標を決定することによって、時間に依存した方法で特定され、前記第1の時点と前記第2の時点の間の複数の時点について前記衛星の位置が決定され、前記複数の時点について前記アクセスの可能性があるかどうかを判断する、請求項1乃至7の何れかに記載の方法。
【請求項9】
前記衛星の視野領域FoRとターゲット領域とのオーバーラップが、前記衛星位置点を中心とした半径Rsensor(φ)を有する円と、前記ターゲット基準点を中心とした半径RoT(γ)を有する円とのオーバーラップ領域として決定される、請求項1乃至8の何れかに記載の方法。
【請求項10】
前記センサの現在の分解能Resが、
Res= (Resref √(D^2 + a^2))/aref
として近似され、式中、Resrefは、前記衛星の基準高度arefにおけるセンサの分解能であり、aは前記衛星の現在の高度であり、Dは前記ターゲット基準点と前記現在の衛星位置点との間の前記地表又は前記基準楕円体上の距離である、請求項1乃至9の何れかに記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つのターゲット時点でのアクセス可能性が、前記少なくとも1つのターゲット時点での前記衛星の位置が、その位置と角度φとして特定されることによって決定され、前記視野半径Rsensor(φ)と前記角度γが前記少なくとも1つのターゲット時点で決定される、請求項1乃至10の何れかに記載の方法。
【請求項12】
前記衛星の位置を決定した後で、先ず、前記衛星と前記ターゲット領域との間に前記直接見通し線があるかどうかを判断し、前記衛星と前記ターゲット領域又は前記ターゲット基準点との間に直接見通し線がない場合には、アクセス可能性がないと判断する、請求項1乃至11の何れかに記載の方法。
【請求項13】
衛星に搭載されたセンサがターゲット領域にアクセスする可能性を判断する衛星アクセスシステムであって、
前記衛星の少なくとも1つの位置を特定するように構成された位置特定ユニットと、
オーバーラップ決定ユニットとを備え、前記オーバーラップ決定ユニットが、
前記衛星の位置に依存する衛星位置点を中心に、衛星基準方向と前記ターゲット領域内のターゲット基準点を向くターゲット方向との間の角度φを決定し、
前記衛星位置点を起点として、前記角度φの方向における前記衛星の視野半径Rsensor(φ)を決定し、
前記ターゲット基準点を中心に、基準方向と、前記衛星位置点を向く方向との間の角度γを決定し、
前記ターゲット基準点を起点として前記角度γの方向への前記ターゲット領域の延長部分RoT(γ)を決定するように構成され、
前記オーバーラップ決定ユニットは、前記衛星位置点と前記ターゲット基準点との間の距離が、前記衛星の前記視野半径Rsensor(φ)と、前記角度γの方向における前記ターゲット領域の前記延長部分RoT(γ)との合計以下である場合に、アクセス可能性があると判断するように構成されている、衛星アクセスシステム。
【請求項14】
前記衛星アクセスシステムが、請求項1乃至12の何れかに記載の方法を実行するように構成されている、請求項13に記載の衛星アクセスシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛星に搭載されたセンサがターゲット領域にアクセスする可能性を判断する為の方法及びシステムに関するものである。この方法及びシステムでは、衛星の位置が特定され、次に、ターゲット領域内のターゲット基準点の方向へのセンサの視野半径が決定され、衛星位置点の方向へのターゲット領域の延長部分が特定され、衛星位置点とターゲット領域内のターゲット基準点との間の距離が、センサの視野半径とターゲット基準点の方向へのターゲット領域の延長部分との合計以下である場合に、アクセス可能性があると判断される。
【背景技術】
【0002】
宇宙からのリモートセンシングは、地球の状態を定量的・定性的に把握する為の貴重なツールであり、ほぼ全ての技術分野において多数の基本的応用を促進している(非特許文献1)。
【0003】
地上の技術と比較して、衛星による地球観測の最大の利点は、非常に広い範囲を短い間隔で記録・分析できることである。
【0004】
特に、質量が500kgまでの小型衛星の分野では、大きな市場拡大が見込まれており(非特許文献2)、過去10年間で1200機の衛星が打ち上げられたのに対し、今後10年間で約7000機の小型衛星・超小型衛星が打ち上げられると予想されている。この技術分野は、通信や地球観測から、船舶の追跡やIoT(モノのインターネット)への応用まで多岐にわたる。中でも、幾つかのメガコンステレーションの設置が予定されており、つまり、構造的にほぼ同じで、同じタスクを実行する数百から数千の衛星群を意味する(スターリンクやワンウェブ等)。その為市場規模も大きく、2027年までに小型衛星の建設(60%)と打ち上げ(40%)だけで約380億ドルの資金が必要とされている。
【0005】
同種及び異種のコンステレーションを設計する際の中心的なパラメータは、カバレッジの質、即ち、地上で達成できる空間分解能とセンサアクセスの時間特性である(非特許文献3)。同種のコンステレーションは、非常に似たタイプの衛星、或いは同じタイプの衛星さえもが多数集まって構成されており、プラネット・ラボ社(Planet Labs)のDoveコンステレーションがその例である。これに対して、異種コンステレーションは、1つ以上のタスクを1つのグループとして一緒に実行する、任意のタイプの大量の衛星で構成される。これは、複数のセンサのデータフュージョンによる情報検索が求められている場合(スマートファーミング)や、タイムクリティカル性が最重要視されている場合(大災害管理、軍事アプリケーション等)に特に当て嵌まる。
【0006】
軌道上の全ての衛星は、独自の位置、方向、センサの配置に加えて、光学センサにおける視野(FoV)や分解能等の特定のセンサパラメータを有する。
【0007】
あるアプリケーション(例えば、衛星コンステレーションの設計)では、軌道上にあるセンサSによって1つ以上の領域Rが記録されることになっている。具体的には、どの衛星に搭載されたどのセンサSが、定義された時間間隔又は定義された時点で、領域Rのどの部分を観測できるかを調べることが目的である。更に、複数のセンサSがどの時点で領域Rを(ほぼ)同時に見ることができるかも関心の的である。
【0008】
この問題を解決する為に、様々な分析的及び数値的手法がある。
【0009】
解析的な解決策は、幾何学的な単純化に基づいて、一般的なセンサによる地表のカバレッジをモデル化しようとするものである(非特許文献4、非特許文献5)。その目的は主に、複数の衛星の相対的な位置関係と、その衛星のペイロードに課せられた要件に関するステートメントを作成して、そこからコンステレーションの設計に関する結論を導き出すことにある。これらの方法は非常に高速であるが、上述の例では、幾何学的に単純な、特に円形のFoVしか使用できず、通常、関係する全ての衛星の同じセンサ特性に基づいている。そうでなければ、計算はすぐに非常に不明確になり、数値的な手法の方がステートメントを出すのにより適している。
【0010】
更に、地表上でのセンサの伝搬は行われないか、非常に単純な伝搬しか行われない為、時間に依存したステートメントを作成することは困難である。従って、厳密に或るセンサSが或るターゲット領域Rにアクセスした時には、計算できないか、又は迂回的にしか計算できない。
【0011】
このような理由から、センサカバレッジを計算する為に、数値的手法がしばしば用いられる。これを行う為に、ターゲット領域Rは、サブ領域Ai,kのネットワークに分割される。そして、個々のメッシュkの各々について、そのメッシュがセンサの視野に入っているかどうかを個別に計算する(非特許文献3、非特許文献6、非特許文献7)。数値的手法の利点は、幾何学的及び物理的な複雑さを高いレベルでシミュレートできることである。これにより、シャドウイング(山の谷間や道路の峡谷)を正しく考慮する為に、デジタル標高モデルを組み込むことができる。更に、センサの種類に応じて、大気の通過(レイトレーシング等)、太陽の反射による散乱光(電気光学センサ)、又はエアグロー(地表からの熱放射)等の他の特性を計算に組み込むことができる。しかし、この手法の欠点は、センサの視野が幾何学的に複雑であったり、考慮する衛星の数が多かったり、又はターゲット領域が広かったりする場合には、このようなネットワークに関わる計算が非常に複雑になることである。従って、AGI社のシステムツールキット(STK)、カナダDRDC社のCSIAPSツール、又はオープンソースのOrekitライブラリ等、このような手法を実装した現在のソフトウェアでは、複雑な解析を行う為に長時間の計算が必要になる。又、計算の複雑さは、計算の精度が一定であれば、ターゲット領域の大きさの二次関数として増加する。従って、72時間のインターバルでアクセスし、約100個の衛星を調査する場合、CSIAPSはカバレッジの計算に数時間を要する。又、メモリ等の必要資源も、調査対象となる衛星やセンサの数に応じて急激に増加する。
【0012】
別法として、問題を逆にして、ターゲットの視点からアクセス解析を行うこともできる(非特許文献8)。ここで、結果を改善する為に、他の物理モデルを組み込むことも可能である。この手法は、点状のターゲットに最も適しているが、より大きな領域では、従来の数値的手法と同様の欠点がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】R.サンダウ(R. Sandau)著「地球観察の為の小衛星ミッションの現況と傾向(Status and trends of small satellite missions for Earth observation)」、アクタ アストロノート(Acta Astronaut), 66巻, 1‐2号(vol. 66, no.1-2), pp. 1-12, 2010年
【非特許文献2】ユーロコンサルト(Euroconsult)「小衛星マーケットの展望(Prospects for the Small Satellite Market)」、2017年
【非特許文献3】J.エイドリアンズ、S.メゲリアン、M.コトポニャック(J. Adriaens, S. Megerian, and M. Potkonjak)著「方向性視野センサネットワークの最適なワーストケースカバレッジ(Optimal worst-case coverage of directional field-of-view sensor networks)」、第3回年次IEEE コミュニケーションズ ソサイエティ カンファレンス オン センサ アンド アドホックコミュニケーションズ アンド ネットワーク(3rd Annu. IEEE Commun. Soc. Sens. Adhoc Commun. Networks), Secon 2006(Secon 2006), 1巻C号(vol. 1, no. C), pp.336-345, 2007年
【非特許文献4】D.C.ベステ(D. C. Beste)著「最適な連続カバレッジの為の衛星コンステレーションの設計(Design of Satellite Constellations for Optimal Continuous Coverage)」、IEEE トランザクション オン エアロスペース エレクトロニクス システム(IEEE Trans. Aerosp. Electron. Syst.), AES-14巻3号(vol. AES-14, no. 3), pp.466-473, 1978年
【非特許文献5】R.D.リューデルス(R. D. Luders)著「連続地域カバレッジの為の衛星ネットワーク(Satellite Networks for Continuous Zonal Coverage)」、ARS ジャーナル(ARS J.), 31巻2号(vol.31, no.2), pp.179-184, 1961年
【非特許文献6】P.パロー(P. Parraud)著「OREKIT:オペレーショナル飛行力学アプリケーション向けオープンソースライブラリ(OREKIT: AN OPEN SOURCE LIBRARY FOR OPERATIONAL FLIGHT DYNAMICS APPLICATIONS)」、2010年
【非特許文献7】Y.ウリビシェフ(Y. Ulybyshev)著「複合カバレッジ向けの衛星コンステレーション設計(Satellite Constellation Design for Complex Coverage)」、ジャーナル オブ スペースクラフト アンド ロケット(J. Spacecr. Rockets),45巻第4号(vol. 45, no. 4), 2008年
【非特許文献8】C.-Z.ラン,J.-S.リー、S.-J.マー、Q.シュウ(C.-Z. Lan, J.-S. Li, S.-J. Ma, and Q. Xu)著「宇宙ベースの光学系観察に基づく軌道ターゲットの視認性の予測と分析(Prediction and analysis of orbital target’s visibility based on space-based optics observation)、グアンディアン ゴンチャン オプトエレクトロニック エンジニアリング(Guangdian Gongcheng/Opto-Electronic Eng.), 35巻12号(vol.35, no.12),2008年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明が対処する課題は、好ましくは多数の衛星に関する潜在的なセンサアクセスの能力の迅速な判断を容易にし、評価することである。このプロセスにおいて、空間的及び時間的なカバレッジは、好ましくは、多数の任意のタイプのセンサによって促進され得る。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この課題は、請求項1に記載の衛星に含まれるセンサがターゲット領域にアクセスする可能性を判断する方法と、請求項13に記載の衛星アクセスシステムとによって解決される。夫々の従属請求項は、本発明による、衛星に含まれるセンサがターゲット領域にアクセスする可能性を決定する方法、及び衛星アクセスシステムの有利な展開を提供する。
【0016】
本発明により、衛星に含まれるセンサがターゲット領域にアクセスする可能性があるかどうかを判断する方法が提供される。ここでは、センサは衛星に搭載されており、地球の表面及び/又は大気の測定を行うことができる。このように、衛星に含まれるセンサは、地球を観測する。センサアクセス又はターゲット領域へのセンサアクセスは、センサがターゲット領域で意図した観察又は測定を実行できることを意味すると理解される。例えば、センサがカメラの場合、センサがターゲット領域にアクセスできる、又はターゲット領域の画像を撮影できるようにターゲット領域にアクセスできることを意味する。ターゲット領域とは、ここでは地表の領域のことである。
【0017】
通常、センサは、センサが所与の衛星位置又はセンサの所与の配向で観察できる地表の領域、即ち、センサが所与の衛星位置及びセンサの所与の配向で測定値又は画像を取り込むことができる領域である視野を有する。衛星の所与の位置でセンサがアクセス可能な領域は、視野範囲(FoR)と呼ばれる。従って、視野範囲とは、所与の衛星位置において、当該センサの全てのアラインメントに対するセンサの全ての視野の総量である。
【0018】
本発明による方法では、先ず、衛星の少なくとも1つの位置が特定される。次に、衛星とターゲット領域の間に視認があるかどうかが特定される。このようにして、本発明により、前記衛星と前記ターゲット領域との間に直接見通し線があるかどうかが決定される。ここで、視認がある場合にのみ、センサアクセスが可能であると想定する。
【0019】
ターゲット領域とは、センサがアクセスできる地表の一部分であると理解される。実際には、例えば、地表の特定の領域、ターゲット領域についてセンサから測定結果を得ることが望まれる。本発明による方法は、所与の時点で、所与のターゲット領域についてこれが可能であるかどうかを判断することを可能にする。本発明による方法は、有利なことに、ターゲット領域へのアクセスが可能な時期を判断する為にも使用され得る。
【0020】
前記衛星と前記ターゲット領域との間に直接見通し線がある場合、本発明に従って以下の処理が行われる。
【0021】
前記衛星の位置に依存する衛星位置点を中心に、衛星基準方向と、前記ターゲット領域のターゲット基準点を向くターゲット方向との間の角度φが決定される。ここで、衛星基準方向は、衛星に対して固定されている地表上の方向であってもよい。例えば、衛星基準方向は、衛星の伝搬方向、即ち、衛星の移動方向、又は、地表への投影方向であってもよい。特に、衛星基準方向は、例えば、地表上の衛星の天底の移動方向であってもよい。
【0022】
本明細書で地表に言及する場合、これは、実際の地表、又は地表の適切な近似、即ち、例えば、地表に適合した球形、又は適切な基準楕円体を意味し得る。
【0023】
ターゲット基準点は原則として、ターゲット領域内の任意の点であってよい。有利には、ターゲット基準点は、これがターゲット領域内にある場合、ターゲット領域の幾何中心であってもよい。ターゲット領域は、好ましくは、ここで数学的に単純に接続されており、即ち、好ましくは、如何なる穴も有してはならない。
【0024】
角度φは、衛星の位置に依存する衛星位置点を中心に決定される。従って、衛星基準方向は衛星位置点を起点とし、ターゲット方向も同様に衛星位置点を起点としていると仮定する。すると角度φはこれらの方向の間にある。本発明の有利な構成では、衛星位置点は、衛星の天底、即ち、衛星の直下の地表上の点であってもよい。ここで、天底とは、衛星を地表に対して垂直な方向に、地表に投影した結果得られる地表上の点であると理解され得る。
【0025】
本発明によれば、次に、衛星位置点を起点として、前記角度φの方向における前記衛星の視野半径Rsensor(φ)が決定される。従って、視野半径Rsensor(φ)は、所与の衛星位置においてセンサが地表に到達できる、衛星位置点を起点とした最大距離となる。ここで、視野半径Rsensor(φ)を、衛星の視野半径Rsensor(φ)と呼んでいる。又、この視野半径Rsensor(φ)は、センサの視野半径Rsensor(φ)とも呼ばれる。
【0026】
本発明によれば、前記ターゲット基準点を中心に、基準方向と、前記衛星位置点を向く方向との間の角度γが決定される。基準方向は、ここでは、ターゲット領域又は地表に対して固定された方向である。例えば、基準方向は、北方向であってもよい。ターゲット基準点は上述したターゲット基準点である。又、角度γは、基準方向としての地表の北方向と、ターゲット基準点から衛星の天底を指す方向との間で決定されると有利である。天底は、ここでは衛星基準点であれば有利であり得る。
【0027】
すると、前記ターゲット基準点を起点として、前記角度γの方向への前記ターゲット領域の延長部分RoT(γ)が決定され得る。従って、延長部分RoT(γ)は、ターゲット基準点から出発して、ターゲット領域が衛星位置点の方向に延びる距離を表す。
【0028】
ターゲット領域とセンサの視野は、両方とも極座標に変換される。これにより、複雑な幾何学的形状であっても、領域を非常に簡単かつ正確に数学的に記述することが可能となる(特に、上述したように数学的に単純に接続されている場合)。
【0029】
角度φ及びγ、視野半径Rsensor(φ)及び延長部分RoT(γ)は、任意の順序で決定されてもよく、同時に決定されてもよいことに留意されたい。
【0030】
次に、前記センサが前記ターゲット領域にアクセスする可能性があるかどうかが判断され得る。ここで、前記衛星位置点と前記ターゲット基準点との間の距離が、前記角度γの方向、即ち前記衛星位置点の方向において、前記衛星の視野半径Rsensor(φ)と前記ターゲット領域の延長部分RoT(γ)との合計以下である場合に、この可能性があると判断される。
【0031】
「距離」とは、常に、地表上の距離、又は使用されている地表の近似上の距離を意味すると理解され得ることに留意されたい。地球の表面が球で近似されている場合、距離は、対応する球の表面上の大円の円セグメントの長さとなる。一般に、距離は常に、対応する近似における当該点の間の地表上の最短の接続である。
【0032】
本発明の有利な構成では、前記視野半径Rsensor(φ)を決定する為に、前記センサの視野領域を楕円又は多角形で表わすことができる。前記楕円又は多角形は視野領域の近似値を表している。上記のように、視野領域は、センサが衛星の位置から到達可能な地表の領域である。楕円や多角形で近似することで、前記角度φの方向における前記衛星基準点と前記楕円との間又は前記衛星基準点と前記多角形との間の距離が、前記視野半径Rsensor(φ)として決定され得る。この構成は、角度φが既知である場合に非常に簡単な計算で視野半径Rsensor(φ)を特定することができるので非常に有利である。このように、視野領域を楕円や多角形で表わすことで、アクセス可能性の判断が大幅に加速する。
【0033】
本発明の特に有利な構成では、前記視野半径Rsensor(φ)は、前記角度φの値を視野半径の値に割り当てるテーブル又は関数を参照することによって決定され得る。特にここでは、前記テーブル又は関数が、前記角度φの値を基準視野半径(φ)に割り当てることが好ましい。このようにして、角度φは予め決定され、次に、前記基準視野半径RoR(φ)は、前記テーブルから、又は前記関数によって決定される。
【0034】
衛星が基準高度arefにあるときにセンサが有するであろう視野半径Rsensor(φ)は、ここでは基準視野半径RoR(φ)であると理解され得る。すると、視野半径Rsensor(φ)は、Rsensor(φ)=RoR(φ)a/arefによって、衛星の現在の高度aを用いて基準視野半径RoR(φ)から計算され得る。このテーブル又は関数は、好ましくは、方法の開始前にコンパイルされ得る。本発明のこの構成は、同様に、角度φの値と視野半径Rsensor(φ)又は基準視野半径RoR(φ)との間の割り当てを、方法の開始前に一度実行するだけでよい為、本発明による方法を大幅に加速することが可能となる。本発明で、その後、Rsensor(φ)又はRoR(φ)をテーブルから読み出すか、簡単な機能を使って識別するだけでよい。関数としては、例えば適切な多項式等、所与の値のペアを近似することができる全ての関数が可能である。
【0035】
本発明の有利な構成では、前記角度γの方向における前記ターゲット領域の前記延長部分RoT(γ)は、前記ターゲット領域が楕円又は多角形として表されることによって決定され得る。すると、前記角度γの方向における前記ターゲット基準点とこの楕円又は多角形との間の距離が延長部分RoT(γ)として決定される。この構成により、点と楕円又は多角形との間の前記距離が簡単な計算によって可能となるので、本発明による方法を大幅に加速することができる。なお、ターゲット領域を楕円又は多角形で表わすことは、ターゲット領域の近似値であってもよいが、最初からターゲット領域を楕円又は多角形で定義することも可能である。ターゲット基準点と楕円又は多角形との間の距離は、数学的に簡単かつ迅速に決定され得る。
【0036】
本発明の特に好ましい構成では、前記ターゲット領域の前記延長部分RoT(γ)は、前記ターゲット領域の延長部分RoTの値が角度γの値に割り当てられているテーブル又は関数から特定され得る。前記テーブル又は関数は、有利には、前記方法の開始前にコンパイルされ得る。これは又、多項式のような単純な近似関数を調査又は評価するだけで、所与の角度γから対応する延長部分RoT(γ)を特定することができる為、本方法が大幅に加速されることを意味する。テーブル又は関数が予め決定されている場合、アクセス可能性を実際に決定する為に更なる複雑な計算を行う必要はない。
【0037】
本発明による方法では、衛星の位置が特定される。有利には、位置は、時間に依存した方法で識別され得る。通常、衛星の軌道データは既知であるので、位置を決定する為の多くの選択肢がある。本方法を迅速に実施し、計算を単純にしたい場合は、先ず、第1の時点と第2の時点で衛星の座標を特定し、第1の時点と第2の時点の間の複数の時点について衛星の位置が決定され得る。そして、この複数の時点について、アクセス可能性があるかどうかを判断することができる。又、オプションとして、他の位置が、衛星の位置が複数の時点のうち2時点間で補間されることによって、アクセス可能性を判断することも可能である。最も単純なケースでは、前記第1の時点は、ターゲット基準点から見たときに衛星が地平線の上に出る時点、即ち、ターゲット基準点から見たときに衛星の仰角が0°になる時点とすることができる。しかし、第1の時点として、より遅い時点、例えば、衛星の高度が20°又は30°になった時点を選択することも可能であり、その場合計算時間は更に短縮されることを意味する。
【0038】
又、前記衛星が地平線の後ろに消えた時点、即ち、前記ターゲット基準点から見て前記衛星の仰角が0°になった時点が、第2の時点として使用され得る。しかし、第2の時点よりも早い時点を使用することもでき、その場合、前記ターゲット基準点から見たときに、前記衛星の仰角が30°、好ましくは20°になる。最適な仰角は、有利には、計算の前に、調査対象の衛星の最大視野角がどれくらい大きくなるかを調査することで決定され得る。これが非常に小さい場合、例えば10°であれば、それに応じて高い最小仰角が期待でき(この場合、従って80°以下)、手順を更に加速することが可能となる。
【0039】
本発明の有利な構成では、前記衛星の視野範囲FoRと前記ターゲット領域との間のオーバーラップ又はオーバーラップ領域が決定され得る。特に好ましい構成では、このオーバーラップ領域は、前記衛星位置点を中心とした半径Rsensor(φ)を有する円と、前記ターゲット基準点を中心とした半径RoT(γ)を有する円とのオーバーラップ領域として計算され得る。従って、オーバーラップ領域の大きさは、これら2つの円の交点として推定され得る。そして、オーバーラップは、中間レンズ状部分の面積として、2つの円の中心間の距離(衛星位置点とターゲット基準点との間の距離)の関数として生じ得る。オーバーラップAは、例えば、次のようにして推定され得る。
【数1】
【0040】
表面形状の複雑さに依存して、この方法によりオーバーラップが推定され得る。衛星の投影位置、即ち、衛星位置点は何れにしても不確定要素を含んでいる為、オーバーラップの精度は通常十分なものとなる。これは、予想されるオーバーラップの重要な指標となり、特に、オーバーラップがターゲット領域のごく一部にしか関係していない為ユーザの関心の対象外であるかどうかに関する指標を与え得る。
【0041】
本発明の有利な構成では、本方法は、ここではResと略記する、前記センサの現在の分解能を決定することも含み得る。すると、センサの現在の分解能は、次のように近似され得る。
【数2】
式中、Resrefは、前記衛星の基準高度arefにおける前記センサの分解能であり、aは、前記衛星の現在の高度であり、Dijは、地表上で測定された、前記ターゲット基準点iと前記現在の衛星位置点jとの間の距離である。このようにして、ユーザは、所与の時間に衛星アクセスが可能かどうかを判断するだけでなく、所望の精度又は分解能がここで得られるかどうかを判断することができる。
【0042】
本発明による方法は、有利には、ターゲット時点が予め定められており、その後、ターゲット時点での、前記衛星の位置と角度φ、前記視野半径Rsensor(φ)と角度γが決定されるように構成され得る。このようにして、衛星に搭載されているセンサが、ターゲット時点でターゲット領域にアクセスできる可能性があるかどうかが判断され得る。但し、どの時点でアクセス可能性があるかを判断する方法や、どの時点でアクセス可能性が開始し、どの時点でアクセス可能性が終了するかを判断する方法等も可能である。本方法がどのように構成されているかに関わらず、上述のステップは夫々その時点で実行され得る。
【0043】
その結果、当該時点において、衛星とターゲット領域との間、又は衛星とターゲット基準点との間に直接見通し線がないと判断された場合に、アクセス可能性がないという情報を有利に出力することができる。このようにして、見通し線が存在しない個々の衛星、或いはコンステレーション全体さえ、更なる検討から迅速に除外され得る。
【0044】
又、本発明によれば、衛星に搭載されたセンサがターゲット領域にアクセスする可能性の判断を可能にする衛星アクセスシステムが提供される。本発明によれば、この衛星アクセスシステムは、前記衛星の少なくとも1つの位置が特定される位置特定ユニットを備える。又、この衛星アクセスシステムは、アクセス可能性決定ユニットとも呼ばれるオーバーラップ決定ユニットを備えており、このユニットは、前記衛星の位置に依存する衛星位置点を中心に、衛星基準方向と、前記ターゲット領域内のターゲット基準点を向くターゲット方向との間の角度φを決定するように構成されている。又、前記オーバーラップ決定ユニットは、前記衛星位置点を起点として、前記角度φの方向における前記衛星の視野半径Rsensor(φ)を決定するように構成されている。又、前記ターゲット基準点を中心に、基準方向と、前記衛星位置点を向く方向との間の角度γを決定し、前記ターゲット基準点を起点とした前記角度γの方向における前記ターゲット領域の延長部分RoT(γ)を決定するように構成されている。
【0045】
すると、前記オーバーラップ決定ユニットは、前記衛星位置点と前記ターゲット基準点との間の距離が、前記衛星の前記視野半径Rsensor(φ)と、前記角度γの方向における前記ターゲット領域の延長部分RoT(γ)との合計以下であれば、アクセス可能性があると判断するように構成される。
【0046】
この場合、位置特定ユニット及び/又はオーバーラップ決定ユニットは、前記ステップを実行するようにプログラムされたコンピュータ及び/又はプロセッサ若しくはプロセッサユニットによって形成され得る。この種のユニットは、一般に、例えば、制御ユニットと呼ばれ得る。
【0047】
本発明による衛星アクセスシステムは、好ましくは、衛星に含まれるセンサがターゲット領域にアクセスする可能性を判断する為の上述の方法を実行するように構成されている。
【0048】
以下、本発明を、例示として、複数の図を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】衛星の視野範囲を示す図である。
図2】多角形で記述された視野範囲を示す図である。
図3】多角形で記述されたターゲット領域を示す図である。
図4】経時的な衛星の視野範囲とターゲット領域を示す図である。
図5】本発明による方法の一例を示す模式図である。
図6】オーバーラップの計算を示す模式図である。
図7】1日の間の多数の衛星のアクセス能力を示す例示的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図1は、衛星2の視野範囲FoR1を示す。本図において、サブ図1Aは平面図であり、サブ図1Bは透視図である。視野範囲1は、衛星の所与の位置において衛星2のセンサ3がアクセス可能である、従ってセンサがアクセスできる領域である。図1に示す例では、視野領域1は、衛星の天底5を中心に地表4に延在する楕円によって近似される。天底5は、ここで、地表4上の衛星の位置点を表している。ターゲット領域8内のターゲット基準点9を向いたターゲット方向7は、例えば地表上の天底5の移動方向であってもよい衛星基準方向6との角度φを包囲する。衛星基準点5と視野領域1、即ちここでは楕円1の外側の境界との間の距離は、基準視野半径RoR(φ)と呼ばれる。この場合、基準視野半径RoR(φ)は、衛星2が基準高度arefにあるときの、衛星位置点5と視野領域の端部との間の距離である。
【0051】
基準高度arefは、図1Bでは軌道高度として記されている。衛星2が任意の高度aにあるとき、衛星位置点5と結果として得られる視野領域1の境界との間の距離は、非常に近い近似では、RoR(φ)からRsensor(φ)=RoR(φ)a/arefとして計算され得る。
【0052】
図1では、衛星2の視野領域1が楕円で近似されている。図2は、より高い精度を実現する例である。この図では、視野領域1は、多角形、即ち直線部分で囲まれた領域で近似されている。図2に示した例では、異なる角度φ、φ、φに対応する3つの視野方向71、72、73が記されている。対応する視野半径Rsensor(φ)又はRoR(φ)は、何れの場合も、衛星基準点5と方向71、72又は73における多角形の対応部分との間の距離、即ち、衛星基準点と、対応する方向に延びる直線と多角形との交点との間の距離として得られる。多角形は技術的には通常、その頂点によって定義されるので、これら頂点は、RoRを決定する為のアンカーポイントとして直接使用され得る。
【0053】
図3は、この場合多角形で表現されたターゲット領域の一例を示す。図示の例では、多角形は6つのセクションで構成され、ターゲット領域8を包囲している。衛星位置点5を向く方向10は、ターゲット基準点9を中心とした基準方向11(ここでは北方向)に対して、ここでは角度γで示されている。角度γから、ターゲット基準点9を起点として、その角度の方向へのターゲット領域の延長部分RoT(γ)を求めることができる。この場合、角度γ方向の延長部分は、基準方向11に対して角度γである方向の延長部分である。この延長部分RoT(γ)は、ターゲット基準点9と上述の方向における衛星位置点5の方向における多角形8との間の距離である。
【0054】
図4は、衛星が移動している間の異なる時点t、t、t、tでの4つの視野領域1a、1b、1c、1dを示している。時点tと時点tの間では、衛星1の視野領域はターゲット領域8とオーバーラップしている。衛星の天底5の位置から、ターゲット基準点9は、衛星の伝搬方向6に対して角度φの方向に現れる。ターゲット基準点9の観点からは、衛星の天底5が北方向11に対して角度γで現れる。衛星基準点、即ち天底5とターゲット基準点9との間の距離は、図4ではDij7と示されている。そして、衛星2の所与の位置において、視野領域1がターゲット領域8にオーバーラップしている場合に、衛星はターゲット領域8にアクセス可能である。これは、例えば、距離Dijが決定されることによって決定され得る。この距離がDij≦RoT(γ)+Rsensor(φ)であれば、視野領域1とターゲット領域8とがオーバーラップし、センサはターゲット領域8にアクセス可能である。従って、例えば、センサは、ターゲット領域8から測定値を測定できる、又は、例えば光学センサの形態でターゲット領域8を捕捉できる。図4に示す例では、時点t及びtではこれに該当し、一方、時点t及びtでは、視野領域1とターゲット領域8との間にはオーバーラップがない。従って、本発明による方法を時点t又はtで実行した場合、結果として、アクセス可能性があることになる。しかし、時点t又はtでは、結果としてアクセスの可能性がないことになる。
【0055】
図4に示すように、本方法は、本発明による方法で、複数の時点t、t、t、tの夫々において、アクセス可能性があるかどうかが判断されるように実施され得る。このようにして、何時アクセスの可能性があるかを判断され得るが、この場合は、時点t及びtにおいてである。図示の例では、時点は夫々、時間的に互いに間隔Δtだけ離れている。本発明による方法は非常に迅速な計算が可能である為、Δtは非常に小さく選択され得る。この方法を更に加速したい場合は、Δtを大きくすることができる。又、距離Dijと半径和RoT(γ)+Rsensor(φ)との差分でΔtをスケーリングすることで、増分Δtを動的に適応させることも可能である。差分が大きい場合は大きな増分が、差分が小さい場合はより狭い増分が選択され得る。
【0056】
図5は、本発明による方法を模式的に示す。この図では、ターゲット領域8だけでなく、センサのパラメータ(分解能、視野等)も予め設定されている。これにより、上述したように、ターゲット領域8に対する角度γと、センサの視野領域1に対する角度φとが得られる。この角度γにより、例えば、ルックアップテーブル51aを用いて、延長部分RoT(γ)10が特定され得る。角度φから、別のルックアップテーブル51bと現在の軌道高度53並びにROR(φ)52によって、視野半径Rsensor(φ)52が決定される。又、衛星アクセス可能性53として、衛星とターゲット領域8、例えばターゲット基準点9との間に見通し線があるかどうかも予め設定されている。ステップ54で、衛星基準点5とターゲット基準点9との間の(所与の時間における)距離がDjiとして決定される。その後、比較55が実行され、その中で、Dji≦RoT(γ)+Rsensor(φ)であるかどうかが判断される。これが該当しない場合は、結果56として、ターゲット領域へのアクセスの可能性がないと判断され得る。しかし、この条件が満たされている場合には、結果57として、センサがターゲット領域にアクセスすることが可能であると判断され得る。従って、センサアクセス58が行われ得る。判断57がアクセスの可能性があることを示している場合、ステップ59で、オーバーラップ領域Aの面積及び/又は分解能60も、従って、任意に決定され得る。センサアクセスを特徴付ける他の可能な変数61も、従って、任意に決定され得る。
【0057】
図5の破線のボックスは、例えば図4に示したように、伝搬ステップ毎にどのステップを実行するかを示している。RoT(γ)10及びRoR(φ)52は、伝搬ステップ62で非常に高速に実行できる幾つかの計算を必要とするだけである為、例えばルックアップテーブル51a、51bを使用して求めることができると有利である。こうして本方法は非常に高速に実行され得る。
【0058】
図6は、ターゲット領域8と視野領域1との間のオーバーラップ領域63の面積を推定する方法の一例を示す。ここで、ターゲット領域8も、センサ視野領域1も、有利には円で近似され得る。2つの円の間のオーバーラップ領域は、上述のように計算することができ、有利にも、視野領域とターゲット領域が平面上に延在すると仮定することが可能である。殆どの用途では、オーバーラップの精度は重要ではないが、それは、意図された用途に使用するのにオーバーラップが十分な大きさであるかどうかという大まかな推定に過ぎないからである。
【0059】
以下では、本発明による手順の一例を再び詳細に説明する。
【0060】
センサアクセス特性を計算する為に、以下の情報が事前に設定され得る。
・センサが搭載されている衛星の動き、具体的には衛星が地平線上に出たとき、或いは地平線の下に沈んだときの座標(先行技術のソフトウェアを用いた伝搬に関して)。
・アクセス解析を行う予定期間。TLEの精度は経時的に低下する為(48時間で約1~2秒の精度低下)、通常、この期間は数日程度となる。
・センサアクセス分析の予定領域。これは例えば多角形で表される。
・センサ特性:衛星の基準高度における地上のセンサエリアの形状。
・アプリケーションに応じて、オプションで、例えば標高や大気、天底の最大センサ分解能等の他の物理モデル。
【0061】
最初のステップでは、観測対象となる衛星を伝搬させ、衛星とターゲット領域の間の視認を計算する。この計算は、幾何学的にはそれほど難しくなく、既存のソフトウェアソリューション(OrekitやSTK等)を使って実行され得る。具体的には、衛星が地平線上に現れ、ターゲット領域の視界から再び地平線の後ろに消えていくときの、衛星の時間的・空間的座標が計算される。
【0062】
ソフトウェアの実装において、ターゲット領域の幾何中心へのアクセスが、例えば、そこでの開始点として使用され得る。ターゲット領域の延長部分が十分に大きく、領域の幾何中心へのアクセス時にセンサアクセスが得られると予想される場合は、代わりにターゲット領域の輪郭上等の複数の点を計算に組み込むことができる。衛星伝搬のステップと、衛星アクセスの開始及び終了座標(衛星とターゲット領域の間に存在する見通し線)の決定は、従来技術の一部である。
【0063】
取得された衛星アクセスのインスタンス(各アクセスの開始と終了の位置と時間)は、第2のステップで、センサの伝搬とカバレッジの計算の為に、センサの特性と共に転送される。これは、例えば、衛星アクセスの開始点と終了点の間で段階的に行われる(経度、緯度、及び軌道高度での衛星の位置)。このプロセスでは、衛星の位置は、衛星アクセスの開始点と終了点の間で時間増分で伝搬され、各時間増分について、衛星に搭載されたセンサとターゲット領域との間にオーバーラップがあるかどうかが、以下に示すアルゴリズムによって計算される。この時点で、伝搬ステップの数を減らして、従ってソフトウェアの実装を更に高速化する為の様々なオプションがあることに留意されたい。その為、例えば、ルンゲクッタ法を用いて、最初の増分のペアの後に、センサの視野とターゲット領域の間の最初の接触を推定することで、増分は動的に適応され得る。
【0064】
アルゴリズムを説明する前に、この文脈で重要な2つの用語、視野(FoV)及び視野範囲(FoR)について簡単に説明する。衛星の真下に位置する点を「天底」と呼ぶ。特定の時点で、センサは決められた方向に配置されており、センサを地表に投影したもの、即ち現在の視野をFoVと呼ぶ。衛星とセンサは通常、その配置を変えることができるので、それに応じてFoVの位置も変わり得る。全ての可能なFoVの積分をFoRと呼び、それはセンサの種類によって異なる形をしている。
【0065】
概説したケースでは、FoRは2つのパラメータ、即ち図示の楕円の短いRoRalongと長いRoRacrossの半軸によって決定され得る。基準方向は、例えば、ここでは衛星の伝搬方向である。
【0066】
図1では、FoRは楕円で示されているが、より一般的には任意の多角形である(図2)。極座標を用いることで、このような多角形が幾何学的に近似され得る。
【0067】
以下のような幾何学的簡素化は、センサコンタクトの為の計算の複雑さを大幅に減少させるので、有利である。
【0068】
1.センサエリアを、方向依存性及び高度依存性パラメータに縮小する。従って、ターゲット領域と衛星の伝搬方向の間の角度φと衛星の現在の高度aが判っていれば、RoR(φ)を用いて対応するセンサ半径Rsensorが直ちに計算され得る。
sensor(Φ)=RoR(φ)a/aref
式中、図1に示すように楕円の場合は以下である。
【数3】
半径は、ここでは、衛星arefの基準高度でスケーリングされる。極座標への変換は、(角度の増分を減らすことで)分解能を向上させても、計算の複雑さに線形効果を与えるという利点がある。ネットワークベースの手法では、この依存性は二次的なものである。
【0069】
2.これと同様に、ターゲット領域Rの記述は、角度依存性パラメータに縮小され、ターゲットの半径(RoT)が縮小される。角度は、例えば、北の方向と衛星位置の間で測定される。
【0070】
ソフトウェアの実装では、RoR(φ)とRoT(γ)は計算開始時に一度だけ決定すればよく、再度計算することなく、例えばルックアップテーブルを使用して取得され得る。次に、より高い精度を得る為に、個々のテーブルの値の角度での補間が実行され得る。
【0071】
3.センサSjとターゲット領域Riとの間のオーバーラップを識別する為に、地表上の投影された衛星位置とターゲット領域の半径RoTの基準点(例えば、幾何学的中点)との間の距離Djiが決定される。ここで、距離は、例えば、ヴィンセンティ(Vincenty)のアルゴリズムを用いて、例えば、対応する地球の大円に沿って計算される(T.ヴィンセンティ(T. Vincenty)著「入れ子型方程式を応用した楕円体の測地線の直接及び逆解法(DIRECT AND INVERSE SOLUTIONS OF GEODESICS ON THE ELLIPSOID WITH APPLICATION OF NESTED EQUATIONS)、サーベイ レビュー(Surv. Rev.), 23巻176号(vol. 23, no. 176), pp.88-93,1975年)。
【0072】
対応する角度でのRsensorとRoTの和よりも小さければ、両領域がオーバーラップしていることになる。
【0073】
従って、Dji≦RoT(γ)+Rsensor(Φ)であればアクセスがある。
【0074】
ここで再度強調しておきたいのは、投影されたセンサ領域とターゲット領域の幾何学的な近似は、センサの伝搬が行われる前に一度だけ行われれば十分であるということである。各時間増分について、角度γとφのみが決定され、これと現在の高度aに基づいて、オーバーラップがあるかどうかが識別される。
【0075】
この手法を再び図4に模式的に示す。図4はここでの伝搬を示しており、図5はプログラムによる実装を示している。
【0076】
図5に関して、入力データは、左側に設定されている。ルックアップテーブル51a、51b(ルックアップ)のコンパイルは任意である。各伝搬ステップ(破線のボックス62)について、ターゲット半径10、センサ半径52、衛星と領域の間の距離54からのアクセスがあるかどうかが判断される。オーバーラップAや分解能Res等の他のパラメータも任意に決定される。そして、アクセスがあったインスタンスは、更なる処理の為に出力される。
【0077】
幾つかのアプリケーションでは、例えば、センサコンタクトの他の特性を決定することが有利な場合があり、それは以下である。
【0078】
1.オーバーラップAのサイズは、半径Rsensor(φ)及びRoT(γ)を有する2つの円の間の交点によって推定され得る(図6)。オーバーラップは、前のステップ54で既に計算された円の2つの中心の間の距離Djiの関数として、中間レンズ状部分の面積として生じる。
【数4】
【0079】
表面形状の複雑さに応じて、結果的にオーバーラップは多かれ少なかれ正確に推定され得る。衛星の投影位置は何れにしても不確実性を伴う為、オーバーラップの精度は通常重要ではない。しかし、予想されるオーバーラップの重要な指標となり、特にそれがターゲット領域のごく一部にしか関係していない為にユーザにとっては全く興味のないものであるかどうかの指標となり得る。
【0080】
2.光学センサでは、分解能は光路長に比例する。これは、基準値ResRefとaRefに関連するDjiと軌道高度から推定され得る。
【数5】
【0081】
既存の方法と比較した場合の本発明の利点は、例えば以下の通りである。
1.実装:本解決策は、ソフトウェアでの実装が簡単であり、高い並列性を有する。
2.品質:従来の解析方法と比較して、複雑なターゲット領域や視野のジオメトリも処理可能である。
3.詳細:解析手法と比較して、時間依存、場所依存の詳細な記述が可能。分解能やカバレッジのレベル等の重要な物理パラメータを簡単に計算することができる。
4.スケーラビリティ:数値手法とは異なり、精度を維持したまま計算時間が二次的に増加するのではなく、ターゲット領域の大きさに応じて線形に増加する。
5.複雑さが少ない:特性変数の数を3距離に減らすことで、ネットワークベースの数値手法に比べて計算速度を大幅に向上させることができる。
6.汎用性がある。センサモデルを単純化することで、ソフトウェアを適宜適応させることなく、多くの衛星を迅速に導入することができる。
7.リアルタイムでの表示:計算を単純化することで、数百機の衛星を考慮しても、リアルタイムにステートメントを作成することができ、新しい改善されたアプリケーションが可能になる。
【0082】
図7は、縦軸にプロットした様々な衛星のアクセス能力を、横軸に沿ってプロットした1日の間に示す。図4の三角形は、対応する衛星が、その三角形が示されている対応する時間帯に、この場合はハワイであるターゲット領域にアクセスできる可能性があることを意味する。灰色の背景は夜間、灰色でない背景は昼間を示す。時刻はUTCで表示されている。図7の時刻の下の一番上の線は、全てのアクセス能力の概要を示す。いずれかの衛星がアクセスしているのか、又はいずれの衛星もアクセスしていないのかが直ちに判明する。
【0083】
この方法は高速である為、新しいコンステレーションをシミュレートして最適に適応させる為のインクリメンタルな最適化手法として使用され得る。又、この手法は様々なセンサ構成に対応できる為、様々なモデルを迅速に実行し、それに応じて適応され得る。
【0084】
更に、アプリケーションの中には、タイムクリティカル性が何よりも重要であるものが多くある。これは、軍事配備を支援する場合や、危機や大災害の管理の場合等に当て嵌まる。この方法により、意思決定者は、潜在的に利用可能な衛星データの概要を、根拠のある情報ベースとして迅速に把握できる。
【0085】
宇宙技術では、他の技術分野と同様に、衛星に人工知能を搭載することが重要な課題となっている。例えば、インテリジェントな超小型衛星群を使用して、繰り返し率やカバレッジの地球観測性能を最適化する為に、資源効率の高いアルゴリズムが衛星に直接搭載しても使用され得る。従って、とりわけ、a)超小型衛星群の一部が機能しなくなったときに、冗長性を確立してカバレッジを維持する、b)危機が発生したときに特定の地域で経時的に自動的に繰り返し率を上げる、c)境界条件が変化したときにタスク配分を自動的に適応させる、といったことが可能になる。
【符号の説明】
【0086】
1 視野範囲
2 衛星
3 センサ
4 地表
5 天底
7 ターゲット方向
8 ターゲット領域
9 基準点
10 延長部分RoT(γ)
51a、51b ルックアップテーブル

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】